◆−ちょっと待て!あぁるぴぃじぃ異世界ゲームっ!?――7−エーナ (2004/4/21 18:18:26) No.29864 ┣ちょっとばかりおしらせ(でも見なくてもいいと思います)−エーナ (2004/4/24 16:21:11) No.29880 ┗第五部 The Snowing city 〜雪降る都に〜 第四話−エーナ (2004/4/25 11:20:41) No.29890 ┣第五部 The Snowing city 〜雪降る都に〜 第五話−エーナ (2004/4/26 19:18:07) No.29898 ┗第五部 The Snowing city 〜雪降る都に〜 第六話−エーナ (2004/5/4 20:48:48) No.29971
29864 | ちょっと待て!あぁるぴぃじぃ異世界ゲームっ!?――7 | エーナ | 2004/4/21 18:18:26 |
すぅ様。そしてこのシリーズを見てくださった(ている)方々ごめんなさい。そしてありがとうございます。 一応更新しますがたぶん第五部のほうがメインになります。 更新がんばってみます。 お目汚しでしょうが、苦し紛れに書いたこの話をお送りします。 ちょっと待て!あぁるぴぃじぃ異世界ゲームっ!? ――蛇骨館、過去への鍵を求めて そのいち 「――だめだだめだ!許可なき者は立ち入り禁止!」 蛇骨館、正門。 あたしたちはここで、門番とにらめっこしていた。 「いいから通せって言ってるんだよ!」 門番Aの言葉を、キッドは即座に一蹴。 「お前らみたいな変なやつらにかまってるほど俺たちもヒマじゃあないんだ」 Bが疲れたように言う。多少はAよりましだが、言っている中身は大差ない。 「・・・じゃあ、かまわなきゃいいわけよね?」 あたしがにやりと言った言葉に、先頭のキッドがびくりと震え、ぎぎぎ・・・と音をたてて首をこちらに向ける。 「・・・リナさん・・・何をするつもりなんですか・・・?」 引きつりつつもゼロスがあたしに問うてきた。 「しれたことよ。 蛇骨大佐ってヤツを直談判するのにおとなしくこそこそと入るいわれはないでしょ? ――突っ込むわよっ!!」 あたしはぴきーんと目を光らせて門の向こうに見える館を指差す。 すると身の危険を感じてか、キッドがあたしの後ろへと隠れる。 「んなっ・・・きさまどういう――」 「問答無用っ!煉獄火炎陣《ヴレイヴ・ハウル》アレンジバージョン!」 ――づごぅん! 『のぎゃぁああああっ!?』 門番二人の間を駆け抜け、柵と敷石を巻き込んで直線状に術が炸裂する。 本来なら前方広範囲に使う術なのだが、アレンジして範囲を直線状にしたのだ。 煮えたぎる溶岩が道を作り、熱波で門番を気絶させる。 もちろん人間に当たったらやけどではすまない。 「ふっ・・・派手に行くわよ!」 「・・・・・・・・・ゼロス、リナを止められるやつはいないのか?」 「・・・彼女の姉君以外には知りません。少なくとも今ここで止められるのは誰もいないと思います・・・・・・」 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 ゼロスとキッドは二人して嘆息した。 「・・・ん?」 空気が震える響きに、あたしは眉をひそめる。 「ツクヨミ、今何か聞こえなかった?」 あたしはツクヨミに尋ねて確認してみる。 「え?あたいは聞いてないけど・・・どうかした?」 「・・・いや、なんでもないわ」 聞こえてなかった、か。 ならば好都合である。今の時点で気付かれたらかなりやばい事になる。 それにゼロスがすぐ近くにいる。もうすぐ門番を突破して館の中に入ってくるはずだ。 さあ、物語を始めようじゃないの。 あたしはツクヨミに気付かれぬようふっと笑い、上へと行く為のスイッチを押す。 即座にエレベーターが作動し、唸りを上げて床に着いた。 「バンバン行くわよ!封除《アンロック》!」 扉の前にいた兵士をなぎ倒し、玄関にあった仕掛け扉を無理やり解除。 階段を駆け上り、大きなフロアへと出る。 右はゴーレムみたいなのがふさいでて、前は行き止まり・・・左かな? 渡り廊下を駆け抜け、扉を勢いよく開ける。 ――ばんっ! 「何ここ・・・図書館?・・・いや、ンなわけないか。 ・・・ん?」 あたしは、階段の上にいた女性に気がついた。 ほんの少し癖のある金色の髪、赤いライトアーマー。 その後姿は―― 「早かったわね」 こちらを振り向き、彼女は言った。 「おまえ、なにもんだ?」 「あたしは『堕天使』。よろしく」 キッドの言葉に、彼女――『堕天使』はそっけなく返す。 「・・・・・・怪しいわよ。その仮面」 「・・・不可抗力よ。あたしの顔は似てる人がいるから無用な混乱を避けようと思ってね」 あたしの言葉に彼女は白い仮面を触り、嘆息して肩をすくめる。 ・・・って、似てる人ってあたしのことか? いやまあ親子なんだから似て当たり前なんだが。 「まだ昼間よ。あなたたちどこから入ってきたの? ・・・というか普通隠密行動は夜にするものだけど・・・・・・」 「正面からどうどうとよ!」 「なるほど。呪文で門ごと門番を吹き飛ばしたか何かね。これじゃあ隠密行動も何もあったものじゃないわね」 あたしが胸を張って言うと、『堕天使』は納得するように腕を組んで言った。 うっ・・・・・・するどひ。さすがはあたしの娘・・・ 「さて、それじゃあリナ・・・ああ、便座上あなたの事を名前で呼ばせてもらうわよ。 あなたはこの世界にいるにあたって知らなければならない事があるわ。 『ヤダ』、って言うのはなしよ。これから先あなたが深くかかわらなきゃいけない事柄なんだから」 彼女はつらつらと語りだす。 二つの世界の事。その片方でしかあたしが生き残る事ができなかった事。 『天使の迷う場所』の事。ワームホールの事。 それから付け足しに、本来なら巨大な力を持ってでしかパラレルワールドに干渉できない事。 「もしそれが本当だとして、何故リナが死ぬ事になった? 問題は十年前に何があったかってことだよな」 キッドが口を開き、『堕天使』に問う。 「それを知るためには先に進むしかないわ・・・ん?」 何かに気がつき、『堕天使』はあたしたちの後ろにいる人物に視線を注ぐ。 あたしたちもそちらを向くと・・・一人の老人が立っていた。 「遅いじゃないの。預言者。あなたが言いたい事はみんな言っちゃったわよ」 文句のひとつも言ってやろうかという意気込みで『堕天使』は『預言者』に詰め寄った。 「それはすまんな。まさか昼間に堂々と入り込むとはわしも予想してはおらんかった」 「まあ、いいわ。さて、リナ。ここまでくっちゃべっておいてなんなんだけど・・・・・・ あたし、一応ヤマネコの護衛ってことになってるのよねー。あははははは」 まるで軽い事のように彼女が言い放つ。 ・・・おひ。ルキとバトル!? 「おいリナ!こいつと知り合いだったんじゃねえのか!?」 「そうだけどっ!そういうことは本人に言って!」 「あああああっ!早まらないでくださいお願いしますっ!」 あたしに迫るキッドに首を横にぶんぶん振るあたし。そして顔を青ざめさせて後退るゼロス。 「・・・・・・人を化け物みたいに言わないでよね。あたしと戦う前に、彼らと戦ってちょうだい」 ルキの言葉に、預言者のさらに後ろから出てきたのは。 「ようやく出番であります!」 「最近ないがしろにされてる気がするのは気のせいなんだな!?」 「うがーっ!」 「うっさい裂火陣《フレア・ビット》っ!」 ――ぐぼぼんっ! 小さな火の玉がいくつもそれらに命中し、黒焦げにさせる。 ぴろりんっ! 「・・・お。またレベルスターを獲得したみてぇだな」 と、キッドが効果音を聞いてぽつりと言った。 「・・・塩・砂糖・・・・・・・・・弱いわね・・・弱すぎるわ・・・ 単なる当て馬だったけど、これだけすがすがしくやられるって言うのもなんだかこちらとしても、物悲しいものが・・・」 言って、『堕天使』はつぶやいて嘆息する。 「まあいっか。どうせ調味料コンビだし。 あいつの部下だった調味料トリオはもっとましなんだけど。 ・・・それじゃ、行きますか」 ルキはそう言って、いつも使っている剣を抜く。 切っ先はあたしたちに向いて揺るがない。 殺気はない。なくても彼女は人を殺すことができる。その点はゼロスに非常に近いものがあるのだ。 彼女が本気で戦うのならあたしでも勝てないだろう。 「・・・お手柔らかに頼むわよ」 「そうするわ」 あたしが言うと、ルキはけろりと答えた。 ちょっとむかつくが、ルキは強い。 まあ、確かにここで彼女があたしたちを倒すのはたやすいだろうが、それでは『物語』とやらが続かない。 それは彼女にとっても不本意。本気であたしたちを倒す気など毛頭ないだろう。 あたしもスワローを構え、一歩、踏み出した。 ちょっとだけおおきなあとがき エ:はーるがきーたーはーるがきーたーどこへーきたー♪ L:あーんーたーのーあーたーまーはーいつもーはるー♪ エ:ぐげふっ!? L:隣の家のサクラが葉桜になりかけてるエーナに代わって、あとがきを進行させていただきます。 L様です♪よぉろしくぅっ! エ:エ・・・L様・・・私戦闘不能になってないんですけど。 L:んじゃ今日のゲスト、『死神』君っ!さっさとヤってちょうだいっ! 死:・・・オメガフレア。 ――づごぼごぐどぼぅんっ! エ:にゃぎゅやぁぁ・・・・・・ L:おー。見事に飛んでった飛んでった。 それじゃあ本編に一度登場した『死神』君、自己紹介をお願いしまっす! 死:・・・・・・一応『死神』と呼ばれている。 足手まといになるのなら殺すぞ。 L:それをあたしに言って半殺しにあったのはどこの誰だったかしら。 死:・・・・・・・・・・・・・・・。(視線をLからそらしている) L:その話を追求すると時間がかかるからまあいいわ。 それで、自己紹介は? 死:・・・・・・・・・私の本名はジャキ=ジール。二万年前に栄え、滅びた魔法王国ジールの出身だ。 ジールが滅ぶ際にタイムホールに飲み込まれ、今から約600年前の中世にとばされた。 そしてそこで魔王として人間(おもにガルディア王国の軍)と戦った。 L:そこから先はトリガーをやっていない方にはわからない話題てんこ盛りなのでストップね。 さて、さっき『死神』がオメガフレアを使ってたんだけど、あれはトリガーの特殊三人技だったのよね。 何で一人で使えてたのかって言うと・・・作者の一身上の都合ね。 あたしが思うにリナがダークエマターのエレメントを持っちゃったからだわ。 さて『死神』君。あんたお姉さん探してるのよね? 死:愚問だ。その通りに決まっている。 L:・・・シスコン。(ぼそっ) 死:貴様、今なんと言った!?言え! L:シスコン。 死:・・・コロス。 L:いやーん。Lちゃんこわーいv 死:なめているのか貴様!! L:いやん。おこっちゃ、い・やv 死:インボディトゥーソードソーヘブンサンダガアイスガファイガダークボムダークミストブラックホールオメガフレアダークエターナルっっ!! L:ククククク・・・・・・アーッハッハッハッハッハ!(キッド&ジール女王風に) 死:避けるなぁぁぁぁぁぁっ!! L:さり気に自分が誰か言ってるようなセリフはいてるわよ〜♪ それじゃあ皆様またお会いしましょうv(からかいながら逃げるL) ――(誰もいなくなって進行できないので)幕―― |
29880 | ちょっとばかりおしらせ(でも見なくてもいいと思います) | エーナ | 2004/4/24 16:21:11 |
記事番号29864へのコメント どーも、エーナです。 お知らせです。でも多分見なくてもいいと思います。 ただいまネットカフェから接続中です。 え?何でかって? 答えは簡単、パソがぶっ壊れたからです!(えばるな。) …というわけで、パソコンが修理中なので今日・明日(明日は更新できるかもしれませんが)あたり更新できないと思います。 失礼いたしました。 それより長い期間更新しなかった時期があるじゃないか!!・・・というつっこみはなしにしてぷりぃづv(←かなり切実) |
29890 | 第五部 The Snowing city 〜雪降る都に〜 第四話 | エーナ | 2004/4/25 11:20:41 |
記事番号29864へのコメント やわらかく踊るように軽やかなピアノの音色。 二つの旋律が交じり合い、耳に心地よい空間を作り出している。 通常の教室と比べてやや大きめな部屋――まるで教会のよう――で、鳴り響く。 冬の寒い時期だというのにそれはまるで春の音色を思わせる。 「・・・あ」 音色が、ふと、とまる。 ピアノの鍵盤の上に指を滑らせていた人物は、声の主へと振り返った。 「ええと・・・お邪魔でしたか?」 演奏をとめてしまったためか、ばつが悪そうにサーラがたずねる。 「いーわよ、別に。あたしも気合はいりすぎて早く来ちゃっただけだし。 暇だったからちょっと弾いてただけよ」 演奏者――ルキはまったく気にしてない様子でけろりと言った。 「今の曲、なんて言うんですか?」 「ああ、さっきのは『花のワルツ』って言うのよ。 あたし冬の曲より春らしい曲のほうが好きだから、季節外れにも、ね」 言ってルキはくすくす笑う。 「ピアノ、お上手ですね」 「まあ、たいがいの楽器は演奏できるかしら。 さすがに大きな吹奏楽器は演奏できないけど。 ほかにもパートリーはあるから聞いてみる? そうね・・・練習曲なんてどうかしら」 ルキは言いながら鍵盤の上に指を踊らせる。 左手の指のテンポが、右と比べて異常に早い。 ――『革命のエチュード』。 左手の練習曲の集大成とも言える曲で、ちょっとかじった程度の人間にできる曲ではない。 まず、指が動かないからである。 「さて、もう一度ワルツよ」 かわいらしいメロディーが流れ出す。 愛くるしい姿でじゃれまわる子犬を想像させる曲。 ――おなじみ、『子犬のワルツ』である。 「最後は・・・」 ラヴェル作曲――『水の戯れ』。 水が流れる感覚をピアノの音で表現した美しい曲である。 「す・・・すごい!全部の曲を暗譜してるんですか!?」 「覚えられる範囲だけね」 「音のフルコースって感じですね。ご飯ならもうお腹いっぱい!」 「楽しんでもらえてよかったわ。さて、そろそろ時間だけど・・・」 壁にかかった振り子時計を見やると、そろそろ9時である。 ルキが四人に集合をかけたのはこの時刻。 と、そのとき。 一枚板でできたドアが、音を立てて開いた。 第五部 The Snowing city 〜雪降る都に〜 第四話 「みんな、おはよう。さて、今日は呪文についてよ」 あたしは椅子に座った四人を見回してそういった。 「ここは魔導士協会の音響室。 呪文を教えられる上級生コースの人にしか用はないんだけど、今回は特別。 ここは元々発声練習をする場所なんだけど・・・あたしがここを選んだのは、内部の音が外に漏れにくいからよ。 ほら、入ってくる時に気がついたでしょ?」 言外にここであったことは他言するな、と含めておく。 「そういえば二重扉になってましたね。手前に小さい部屋もありましたし」 あたしの言葉に、コウはそう答えた。 その答えにあたしは満足して、にんまりと笑う。 「ここに何故ピアノがあるのかだけど・・・これは音程を調整するためよ。 発音がよくなきゃ呪文は発動しないからね」 「まるで歌ですね」 「近いものがあるわね。 『呪歌』という言葉があるように、歌と呪文は密接な関係があるわ。 歌を精霊にさせげることで雨乞いをおこなう地方だってあるくらいよ。 さて、何故それに効果があるのか。何故呪文によって魔法が発動するのかを今日教えるわ」 グロードの言葉にあたしはつらつらと説明をおこなう。 「それじゃあ、最初に。 言葉には意味があるわ。瞳といえば人体のこの部分、髪の毛といえばこの部分、というようにね。 呪文である『混沌の言葉《カオス・ワーズ》』と『力ある言葉《パワー・ワーズ》』はそれを突き詰めた形なのよ。 さて、この二つの言葉には役割分担があるわ。 『混沌の言葉《カオス・ワーズ》』は魔法の効果を呼び寄せ、かき集め、まとめる。 そして『力ある言葉《パワー・ワーズ》』は方向性を持たせてその力を解き放つ。 魔族、神族、竜族、エルフなんかには『力ある言葉《パワー・ワーズ》』だけで呪文を発動させたり、全くの詠唱なしで呪文を発動させたりするのもいるけど、それはその呪文の代わりとなる現象を自力で起こすことができるからよ。 その現象は、魔力や精神力が総じて高くないと発動させることはできないわ。 そうそう。魔族や神族の場合、魔法を発動させる手段がもうひとつあるのよ。 手を動かすように、足を動かすように、それは自然にできる事だから厳密に言えば魔法とはいえないかもしれないけど。 その手段とは、自らの力を使って何らかのエネルギーを発生させたり、逆に消したりする事よ。 たとえば、魔族の空間移動なんかが挙げられるわね。 とゆーわけだからゼロス、手伝いなさい。つーか実験台」 「ううっ・・・ルキさんヒト使いが荒いですよ・・・」 いじけながら精神世界側《アストラルサイド》から出てくるゴキブリ。 しゃきっとせんか、しゃきっと!一応高位魔族でしょうが! 「何よ変態神官。文句あるの?」 「そんな古いネタを出さないでください!11年も前の話じゃないですか!」 「ふっ。精神生命体にとってはわずかな時間よ」 「・・・それは判りますけど・・・・・・あうう・・・もういいです」 「・・・情け無い・・・」 ぼそりといったのは誰だったろうか。 まあ、だれでもいーや。 「それじゃあゼロス。そこから部屋の端まで移動してみなさい」 「・・・なんか標本みたいな扱い・・・・・・」 「違うわ。実験動物みたいな扱いよ」 「・・・しくしくしくしく・・・」 あたしが言った言葉に涙するゼロス。 魔族の誇りはどこへ行った? 泣きながらゼロスの姿が掻き消えると、教室の端っこで斜線を背負いながら床にのの字を書いていた。 「どうせ僕なんて所詮しがない中間管理職・・・」 「・・・・・・このシリーズであたしを除けば一番出演回数多いくせに何言ってるのよ」 「あ、それもそうですね♪」 うっわ立ち直り早っ! 「・・・ルキさん」 サーラが少し困った顔であたしに声をかけてきた。 「このヒト、ホントに魔族?」 「魔族よ。ただし『情けない』が形容詞の」 『・・・・・・・・・・・・・・・』 あたしの言葉に四人全員が黙りこくった。 「さて、話を元に戻すけど、『言葉には意味がある』・・・そう言ったわね? これは精霊魔法、黒魔法、神聖魔法共通なんだけど、『混沌の言葉《カオス・ワーズ》』で力を借りる相手に呼びかけるの。 自分の中から力を引き出すって言うのもありだけど、人間にはこの呪文は扱う事はほとんど不可能よ。 そもそも、『混沌の言葉《カオス・ワーズ》』というのは原初の言葉。 世界がまだ混沌から生れ落ちていないころから存在した言語なの。 だからこの言語は世界の中外のあらゆる存在、石ころだろうがちりあくただろうが魔王だろうが神だろうがこの言葉には反応するわけ。 ただ、反応しても貸せる力が無けりゃ魔法の発動は無理なんだけどね。 『力ある言葉《パワー・ワーズ》』というのは、その力をまとめやすい言葉でできてるわけ。 方向性をこの言語で持たせるというけど、『混沌の言葉《カオス・ワーズ》』によって方向性はほぼ決められてるようなものよ。 けどね、『混沌の言葉《カオス・ワーズ》』で力をかき集めても、それを発動できなければ意味が無いわけ。 まるで弓と矢のような関係よ。 『混沌の言葉《カオス・ワーズ》』が矢。『力ある言葉《パワー・ワーズ》』が弓。 矢はまっすぐ飛ぶけど、弓がなければ飛ばないでしょう?それよ同じよ。 ・・・まあ、こんなものかしらね」 それを一気に言い切って、あたしは一息ついた。 四人は全員ノートに書き込みをしている。 おお?留学生だけあるわね。悪ガキ君もちゃんとやってるじゃない。 「皆勉強熱心ね・・・よし、だったらあたしが面白いもの見せてあげる」 あたしは見につけていたポーチの中から、陶製の何の変哲も無いコップを取り出す。 何でこんなものが入っていたのかは突っ込む無かれ。 あたしはコップを机におく。 四人も内容を書き終わったようで、こちらに視線を向けている。 「それじゃあ、ちょっとした魔法を見せてあげるわ」 あたしの完全オリジナル。 誰にも、何にも真似する事のできない呪文。 「プルヴィス・プルヴィム・フィエリ、キニス・キネム・フィエリ、テラ・テラム・フィエリ・・・ 誘え、還れ。すべてはすべてに。其は原初の姿!」 まばゆい光を伴い、対象物は呪文によって姿を変える。 「時空還元呪《クロノ・リヴァーシア》!」 光がこぼれ、徐々にその姿が輪郭を伴っていった。 「・・・土?」 ディートが怪訝そうに眉をひそめた。 そう。土。 この呪文は全てを元々の姿に戻す時空魔法。 悪夢を統べる存在《ロード・オブ・ナイトメア》であるあたしにしか使えない呪文。 ・・・といっても不完全版だが。完全版なんぞを唱えたらここらへん一帯が混沌に帰すぞ。まぢで。 「・・・今の呪文の前半部分、いまいち意味がわからなかったんですけど・・・」 「あらゼロス、混沌に沈みたいのなら教えてあげるけど」 あたしがにこやかに言ってやると、ゼロスがぴしりと硬直した。 こうやって脅しかけておけば聞かないわよね。絶対。 「そ、それじゃあ僕はこれで・・・」 あたしのやばそうなセリフにたじろぎ、ゼロスはどこかへ消えた。 逃げたな・・・まあいっか。 「さて、今日の授業はこれで終わり。じゃあ解散」 あたしはそう言って部屋を出る。 二つ目の扉を開けたところで、そこにいた老人と目が合った。 「・・・すまんが、留学生とやらはここにおるのかね?」 あたしはぴくりと眉を跳ね上げる。 「おじいさん、悪いけど部外者のそういう詮索はしちゃあだめなのよ? こっちにも教える義務は無いしね」 「そういわんとおしえてくれんかのう。ほら、銀髪の・・・見た目18くらいの男の子なのじゃが」 「・・・・・・混沌に沈みたいのなら自分の口で言ってちょうだい。 はっきり言うけど、あんたに教える気は毛頭無いの。 このままお引取り願うわ。 ――さもなくば」 あたしは先ほどの口調とは打って変わって老人をねめつける。 「・・・ほう。さすがは『堕天使』・・・我の事を気づいておったか」 「当然じゃない。隠そうとしたって障気で一発よ。 あいにくとあたしはそういう感覚は鋭いの」 楽しげに言う老人――魔族はあたしの言葉にふむ、と唸った。 「まあ、よかろう。今日はあきらめるが、明日以降どうなるかな・・・?」 そう言い残して、そいつは消えた。 あとがき エ:パソ直ったぁっ!打ち込み打ち込みv L:・・・・・・昨日父親の気が変わってネットカフェから直行で引き取りに言ったくせに。 エ:私だって、昨日打ち込みしたかったよぅ!でも、でも・・・っ! 買い物につき合わされて延々3時間! L:帰ってから夕飯がてらブラックジャックのビデオ見て。 エ:ぐげふっ! L:まあ、それはともかく・・・用語解説やりなさい。 エ:はいっ・・・; 文中にあったルキの呪文の一部分、 『プルヴィス・プルヴィム・フィエリ、キニス・キネム・フィエリ、テラ・テラム・フィエリ』 ・・・の部分ですが、これは聖書の一説です。 塵は塵に、灰は灰に、土は土に。 ちょうどよかったので引用させてもらいました。 L:ま、こんなもんね。 さてさて次はどうなる事やら! あのじーさんいったいなんなの!? グロードとの関係は!? エ:・・・・・・そこら辺知ってるくせに何言ってるんですか。 L:ちょっとした遊び心よ。 それでは! エ:またお会いしましょう! |
29898 | 第五部 The Snowing city 〜雪降る都に〜 第五話 | エーナ | 2004/4/26 19:18:07 |
記事番号29890へのコメント あらすじ 一日目は世界・魔族神族について。二日目は呪文。 三日目は基本を終えて精霊魔法についての話! けど、昨日のじーさん魔族・・・どうやら覇王《ダイナスト》の一派らしいわね(大ヒント)。 さて、グロードがどうしたのかしら? 何で魔族とかかわりがあるのか?それは今日のお楽しみ! 第五部 The Snowing city 〜雪降る都に〜 第四話 「おっはよー♪皆元気にしてるかしら?」 「寒い。風邪ひく。・・・つーかなんであんたセーター一枚で大丈夫なんだよ!」 雪がちらつく寒空のもと、あたしは魔導士協会の魔法練習用に貸し出しをしているグラウンドに集合をかけた。 みんな寒そうにしているが、コートを着てるから大丈夫だと思うけどな・・・ 「あたし?あたしは精霊魔法の応用で風の精霊《シルフ》に頼んで空気摩擦を起こして熱量確保してるんだけど。 ほら、足元雪溶けてるでしょ?」 指し示すと、その部分の雪が溶け、確かに地面の砂が見えている。 「・・・それってけっこう難しいんじゃないですか?」 「まーね。みんな暖を取ろうとすると火を使うでしょ? でも、火を使うと色々大変だから風の呪文を応用してるのよ。乾布摩擦みたいな感じでね。 何で誰も思いつかないのかかなり不思議なんだけど。 どうせだしもうちょい範囲広げましょうか」 グロードの言葉にあたしは答える。 あたしがぱちんと指をならすと熱風がふわりと広がり、全員の周囲を包んだ。 ついでに上空から降り来る雪も散らしておく。 「さて。ようやく教室から飛び出したことだし、いっちょ派手なの見せてあげるわ」 あたしはこきこきと背筋を伸ばし、呪文を唱え始める。 「――烈火球《バースト・フレア》!」 ――ごがぁん! 誰もいない方向に炎が直進し、空気を震わせ炎を散らす。 その炎は雪をすべて蒸発させ、地面を焦がしていた。 「まあ、手ぇ抜いたしこんなものかしら」 「手・・・手を抜いてあんなに効果が出るんですか!?」 「まー、あれくらいが平均だと思うけど、あたしが本気でやるとマグマだまりになっちゃうからねー。 さすがにそれはいただけないでしょ」 ・・・ちなみに実証済みである。 小さいころに呪文を本気ではなったら、盗賊のアジトがマグマの吹き溜まりと化した事が・・・・・・ ・・・・・・あの時は母さんに本気で怒られたなあ・・・・・・・・・だからさすがに火力は調整してるんだけど・・・ 「コウ、この人は『堕天使』って呼ばれるくらいすごい人なんだからつっこんでも無駄よ、きっと」 「・・・・・・サーラ、あんたいい性格してるじゃない。きっと大物になれるわよ」 にこやかに言うサーラに対してあたしがぼそりといった。 「やだ、そんな言い性格だなんてvどうせならグロードに言われたいですv」 きゃ☆・・・とか言いながらもじもじするサーラ。 ・・・・・・そうなのか?そういうキャラなのか!? 天然ボケ+恋の病・・・・・・・・・ある意味最強? 「・・・サーラのことはほっといたほうがいいぜ。無駄に首突っ込んでも疲れるだけだ」 「・・・みたいね」 あたしは初めて悪ガキ君と意気投合した。 ・・・・・・何にもしてないのに疲れた気分・・・・・・ 「そ・・・それじゃあ精霊魔法についての説明よ。 そういえば、コウ、あなた最初氷の矢《フリーズ・アロー》使ってたけど・・・あれは呪文の丸覚え?」 「ん?まあな。こっちに来た留学生から教えてもらった。 あと、明かり《ライティング》と炎の矢《フレア・アロー》と浄結水《アクア・クリエイト》ができるぜ」 「そう。じゃあその呪文の説明を先にしましょうか。 その四つは水か炎の精霊の力をたかった呪文だけど・・・どれがどれかわかるかしら?」 「・・・浄結水《アクア・クリエイト》と氷の矢《フリーズ・アロー》が水だろ? 炎が炎の矢《フレア・アロー》と明かり《ライティング》・・・だよな」 指折り呪文の数を数えてディートが言った。 まあ、いいほうでしょ。 「そ。水の呪文は特に言うべきところはないけど、問題は炎の魔法の明かり《ライティング》。 さて、四人とも炎がどんなものは知ってるわね?」 「炎は炭素と酸素を結合させたりする化学現象です。他にも例はありますが、これが一番しっくり来る説明だと思います」 「グロード正解!その通りよ。 炎とは化学反応を起こす過程で赤や青、物質によっては黄色などの光を、そして熱量を伴う現象。 炎の精霊はそれを起こす力を持っているの。だから、特別に炎の光の部分だけ取り出したのが明かり《ライティング》ってわけ。 だから相反する水の中でも消える事は無いってわけ。 精霊同士は仲が悪いわけじゃないんだけど、どうしても現象が反発してしまうのよね。 ついでに、炎の呪文の変化形がどうして雷になるのかちょっとおかしいような気もするけど、エネルギー量がどちらもすさまじいってことで『同類』と覚えといて。 水や風、大地の精霊は物質ではあるけど、それ自体自然にエネルギーを生み出すことはないからね」 「へー。そういうことなんですね。勉強になります」 「そう、よかったわ・・・・・・って、ゼロス!あんたいつの間に・・・」 いつの間にか出現したゼロス。 ・・・・・・こいつ・・・・・・魔族の癖してどうしてこんなことも知らないのかしら。 「ルキさんが『炎はどんなものか』といっているあたりからです」 「あーそう・・・つーかあんた魔族なのにどうしてこんなことも知らないのよ」 「物理世界側《マテリアル・サイド》で起こる現象なんて興味ありませんし。僕ら魔族には効きませんからね」 講師がルキさんだったから、耳を傾けただけですよ、などとのたまうゼロスに、あたしは。 「崩霊裂《ラ・ティルト》!」 と、呪文をプレゼントしてやった。 「あだっ!」 あたしの力で防御無視して放たれた術に、ゼロスは痛そうに右腕をさする。 「と、今のが精霊魔法最強の呪文、崩霊裂《ラ・ティルト》よ。 上級・高位魔族にはあんまり効かないから。ついでに言うと中級の魔族も一発じゃ死なないし滅びないからね」 「え?え!?それじゃあルキさん、どうやって魔王を倒したんですか!?」 ・・・! ・・・言うんじゃなかったかな。 「・・・・・・また今度説明するわ」 コウの言葉に、あたしは答えた。 「ちょっ・・・ルキさん!?」 「当たり障りのない部分だけよ。ただ『在る』という事だけ。 それ以外説明する気は無いわ」 ゼロスには悪いが、これだけはいっておかねば。 「・・・・・・魔族の僕としては遠慮しておきたいんですけど・・・・・・ほかならぬあなたの言う事ですしね。仕方がないでしょう」 「たぶん母さんは是としないわね。・・・・・・関連した術を封印するつもりだと思うわ。 人間としては妥当な選択・・・・・・あたしにはそれは口出しできない。 ただ、その危険性は伝えなきゃならない。誰も使う気を起こさないように」 「・・・ルキさん・・・・・・」 ゼロスはそれ以上何も言わなかった。 「はい、それじゃあ解散!また明日も精霊魔法に関する講義をするからね」 「あー、終わった終わった」 ディートはあたしの言葉が終わるなり身を翻す。 「サーラ、今日は寒いし寮に入っておこうよ」 「ええ。グロードも・・・」 「あ、ちょっと、グロードには少し話があるのよ。 ・・・いいかしら?」 「べつに・・・かまいませんが」 怪訝そうな表情を浮かべ、グロードはあたしに視線を向ける。 「そう。じゃあ、ちょっと着て。ゼロスは席外して。 あんた邪魔だから。覗き見したら怒るからね♪」 「は、はいぃっ!」 握りこぶし+笑顔で誠心誠意のことばは、ゼロスにすさまじい効果をもたらした。 ゼロスの姿は掻き消え、後にはあたしとグロードだけが残った。 「ちょっと、来て」 「・・・え?」 ――ぅヴん! あたしが手をとってぐいっと引っ張ると、あたりは全く違う景色へとたちかわる。 景色は歪み、色が消え、再び形をとって色が入る。 大理石のような床は虚空に浮き。 白いテーブルと椅子。 紫がかった桃色の小さな花の樹木が、満天の星空のもとで咲き誇り、光を放っている。 ミカエルたちの通常使う休憩所、通称『紫蛍桜の部屋』である。 あたしがここに来る事は珍しい。なんたってこちらは生身。 『人間』として生活している以上、こんな異空間に来る事は極めてまれである。 「これは・・・空間移動!?」 「そーよ。まあ、座ってちょうだい」 あたしは椅子を勧める。彼はおとなしく座った。 「あたしがあなたをここにつれてきた理由は、わかる?」 「・・・いいえ」 「ちょっと、話がしたかったのよね。グロード=ラディミル君」 ――いえ、それとも。 「グロゥ=D=ラディミル・・・と、言ったほうがいいかしら」 「――!!」 グロード・・・もとい、覇王神官《プリースト》グロゥは目を見開く。 ちなみにゼロスは当然のことながら彼が魔族だと気がついていた。 ゼロスはあたしが『誰』だかよくわかっているので、このことをあたしには一言も言わなかったのである。 「昨日ね、あなたの『同類』が協会に来たのよ。・・・あ、ゼロスのことじゃあないわよ。来たのは覇王《ダイナスト》の眷属だから。 あなたを探していたみたいだったわ。 ちょっとそこら辺の情報はあたしもつかんでないんだけど、今信頼のおけるヒトに調査させてる」 香茶でも飲む?と、あたしは言って指を鳴らす。 するとティーポットとカップが出現する。 「・・・原子と分子の再構成・・・? こんなこと、人間にできるはずが」 まさか、と。 彼はポツリとつぶやいた。 「あなたは、まさか」 「そこから先は言っちゃダメよ。これはあたしの厚意なんだから。その事実は心の中だけにしまってちょうだい」 「・・・っ」 「あ、クッキー食べる? あたしバターが効いてるのがすきなんだけど、あれってなれないヒトにはくどいのよね。 普通のチョコチップにしましょうか」 再び指をならすとクッキーが出現した。 あたしはひとつとり、ためしに食べてみる。 うん、おいしい。 まあ形が全く同じになってしまうのが難点だが。 だから、あたしは手で作るほうが好きなのだ。思いがけないハプニングが起こると楽しくって。 「食べないの?せっかく出したのに」 「そんな・・・恐れ多い」 「恐れ多い・・・ね」 あたしは金色に瞳をきらめかせ、彼に視線を向ける。 「それは魔族としての発言かしら?」 「当然です。我々は上からの命令には逆らえない。 ・・・最近例外も出ているようですが、それはあなたがことごとく滅ぼしてしまった」 「ぷっ・・・くっくくくくくくく・・・・・・あーおかしい!」 あたしは肩を震わせて笑った。 「勘違いにもほどがあるわ。 あたしはあたしに逆らう・・・つまり、世界の理を曲げようとしたものを滅ぼしただけ。 同じような存在はけっこうそばにあるものよ?」 「・・・たとえば?」 「不完全だけど、あたしの母さんと父さん・・・それからゼロスね」 それと。 「目の前にもいるし」 「まさか、僕が・・・!?」 「そーよ。だからこそ、なんでしょうね。 覇王《ダイナスト》はあなたの変化に気がついた。 だから外の世界へと追いやり、あなたを遠ざけようとした」 彼は目を見開き、何か言いたげに口を二三度開いたが、結局何も言わず黙ってしまった。 「名目はおそらく『外界の偵察』ってところかしら。 あんたの見た目の年齢から見て・・・18年位前からね。 さて、ご感想は?」 言って、あたしは紅茶のカップを傾ける。 「・・・感想?」 「決まってるじゃ無い、人間界に来ての感想よ。 人間として暮らしてみて、どう思ったのかしら?」 「・・・僕は・・・」 一瞬そこで言葉が止まり、目を伏せるグロード。 だが、思い切って顔を上げ、その口から言葉がこぼれだす。 「――正直言って、人間の命はとてももろいのに、どうしてそんな風に生きる事ができるのかと疑問に思いました。 人間は自由奔放・・・お互いにお互いを縛られる事があってもそれは一部の事。 ・・・・・・魔族は、上には逆らう事ができない・・・少し、うらやましかったです」 あたしはその言葉に満足し、満面の笑顔を形作る。 目の前のあたしを気にして嘘なんぞ答えたら即混沌行きだったんだが。 「しょーじきな感想どーもありがとv さて、あなたにはいくつかの選択肢があるわ」 あたしは四本の指をたてて言葉を選ぶ。 「その一、このまま覇王《ダイナスト》とその一派を気にせず与えられた『任務』を続ける・・・ ・・・今のお友達とは別れなくてもいいけど、まず間違いなくいずれ幽閉か何かされるわね。 その二、他の『同類』のところへ行って、滅ぼしてもらう・・・つまり自殺。 その三、全く今までの関係全てを捨てて、新しく生きてみる。 よーするに、逃亡生活ってわけ。 その四、どこでもいいから他のところに逃げ込む。 ――そして最後に、その五」 あたしは唇の端を吊り上げ、勝気な笑みを作る。 あたしにとっては大サービスよ? 「人間になってみる」 「な・・・っ!?」 案の定、彼から驚愕と困惑の感情が伝わってきた。 「1・2・3はもちろん問題外。 4はあたしのコネを使えば簡単。 最後の五は・・・まあ、部下にちょっと命令すれば大丈夫でしょ。 さて、あなたはどうしたいかしら?」 「僕、は・・・・・・僕は、魔族です」 「・・・・・・・・・・・・そう」 あたしは彼の言葉に嘆息する。 うーん。最後の選択肢を選ぶと思ったんだけどなあ・・・・・・ あたしの読み違いかな?・・・残念ね。 「――今は、まだ」 をを?面白くなってきたなってきた♪ 「『中立』のあなたの事でしょうから、選択肢を選んだ後、僕のことはほうっておかれるでしょう?」 「まーね。魔王としちゃあほっておかなきゃならないのよねーこれが」 彼の言葉にあっさり答え、あたしは肩をすくめて見せた。 言ったとおり、『金色の魔王』としてはあたしは彼に必要以上干渉する事はできない。 「それでも僕は、この選択肢を望みます」 「よし決まりっ! きなさい、リリス!」 「はぁーい♪」 どこか、間延びした返事が返ってきた。 この声の主・・・彼女の名は、リリス。 『紫蛍桜の部屋』の管理者で、あたしの部下の一人。 彼女はここからはめったに出ることはないので、ここにあまり来ないあたしとは顔を合わせる機会が少ない。 たまには使ってやらないとかわいそうだし。 「Lさまぁ、お呼びですかぁ?」 「呼んだわ。リリス」 出てきたのは、掌サイズの黒服の女の子。 リリスはこの『妖精』の姿がお気に入りで、背中にはご丁寧にも七色に光を反射する透明な羽が二対ついている。 「どーいうごよーけんですかぁ?」 ぱたぱたと背中の羽をはためかせ、かわいらしいしぐさで首をかしげる。 「彼を人間にしてちょうだい」 「珍しーですね。そんなことをあたしに頼むなんてー」 「無駄口叩いてないでさっさとやる!」 「わかりましたー。サービスはじょーじょーですかぁ?」 へらりと毒のない笑み――間抜けな、とも言う――を浮かべ、やはり間の伸びた声で尋ねてくる。 「ええ。上々のレベルで頼むわ。 さあ、グロード、魔族という『楽園』からリリスという名の『蛇』に誘われ、あなたは人間という『荒れ野』に追放される。 まあ、がんばりなさい。あたしも心から応援してあげるから」 心から。 あたしも、この結果を見てみたい。はたして精神生命体は人間になりうるのか。 『ヒト』から『人』へ・・・ これはあたしからの、最高のプレゼント。 あとがき エ:あああああっ!長い!めちゃめちゃ長い!その上オリ設定オリ解釈オリキャラがすがす・・・ L:・・・・・・あんたね・・・前後に切るとかしなさいよ。 エ:だって、話しの都合上一気に行きたかったんだもん。 L:・・・もん、って・・・・・・・・・バカ? エ:ぴぃえええええええん!L様がいぢめるぅっ! L:うっわガキ!いいわよいぢめてやるから! ごりゅっ。 エ:がふっ・・・ちょっとしたお茶目だったのに・・・・・・ L:ふっ。一言が人生を左右することだってあるのよ。 さて、ミリエラ二号が沈黙したところで、また今度!それでは! |
29971 | 第五部 The Snowing city 〜雪降る都に〜 第六話 | エーナ | 2004/5/4 20:48:48 |
記事番号29890へのコメント 第五部 The Snowing city 〜雪降る都に〜 第六話 月の明かりのもと、あたしは薄暗い協会の廊下を歩いていた。 「・・・ふわぁ・・・」 うー、眠い。 ん?何でこんなことしてるのかって? 当番よ、日直当番。母さんの代わりにやってあげてるの。 まったく・・・・・・19歳のうら若き乙女にこんなことさせて・・・・・・ あたしゃ法律上はまだ未成年なんだけど! 「・・ん?」 あたしは光量を少し強くした明かり《ライティング》を前方にかざす。 何か、人影が見えるのだ。廊下の壁に誰かがもたれかかっている。 「おや、こんな夜遅くまで見回りですか?」 「・・・そー言うあんたこそ、どーしてここにいるのよ」 「いえ、僕が自主的に来たわけではなく・・・」 ほほをぽりぽりかきつつ、ゼロスは自分の右・・・つまりあたしにとっての左を見た。 ・・・この気配・・・・・・ 「・・・グロード?」 「・・・はい」 廊下の角から出てきたのは、紛れもなくグロードだった。 ただし、人間の。 今まで全く感じたことのない気配だったからもしかしてと思ったのだが・・・・・・ 「調子はどう?」 「ええ。けっこういいですよ」 「それはよかった。リリスも仕事が早いわね・・・」 「お礼を言おうとご自宅に向かったら、こちらにいらっしゃると彼から聞いて・・・」 「・・・・・・ゼロス、あんたストーカーみたいな真似を・・・」 あたしがじと目で見ると、ゼロスは視線をそらし――ニコ目なので視線がどっちを向いているのか判らないが、あたしにはそう感じられた――月のほうを見る。 「あっはっはっはっは・・・ほ、ほらルキさん月がほぼ円形ですよ。いやぁ、もうすぐ満月ですねえ」 うっわ。無理のある話題転換。 ・・・・・・まあいいか。ゼロスの変体ぶりは今に始まった事じゃないし。 「・・・・・・それにしても」 あたしは顔をしかめる。 「どうかなさったんですか?」 「・・・うーん・・・今日・・・いや、もう昨日か。あいつら、手を出してこなかったのよね・・・」 「・・・あの、ルキさん・・・『あいつら』といいますと?」 「まあ、単数形でも十分なんだけどね・・・覇王《ダイナスト》一派のことよ」 首をかしげるゼロスに、あたしは嘆息して答える。 ずべしゃ。 もののみごとにゼロスがずっこける。グロードはシリアスにも顔をしかめていたが。 あたしはゼロスのその反応に、あたしはちょっと呆れる。 「もしかして、あんた覇王《ダイナスト》の動き察知してないの!?」 「えええええええっ!?このことで僕以外の魔族が関わってるなんて初耳ですよ!?」 やおらがばっと立ち上がると、ゼロスは驚愕した声で叫ぶ。 つーかうるさい。近所迷惑。 「・・・・・・あー・・・・・・ゼロス・・・・・・順を追って説明するわ」 事の始まりは18年ほど前。 『存在のオリジナル化』した覇王神官グロゥの行動を不審に思い、覇王《ダイナスト》は外の世界の偵察という名目で結界内から彼を放り出した。 たぶん様子を見ようとしたんだと思うわ。 行き着いた先がフォーロシア王国のラディミル家。 ラディミル家は何の変哲もない中流貴族の家庭だけど、そこの伯爵夫妻はお人よしで、なおかつ子供がいなかったため、赤ん坊の姿をしていた当時のグロードを引き取る。 フォーロシアでは貴族にはほとんどの場合『D』のミドルネームをつけるため、ミドルネームとファーストネームがくっついてグロード、ってなったわけね。 精神生命体は基本的に『忘れる』という事をしないため、学校の成績はかなりよかったみたいね。 なんたって教科書をざっと見ただけで全部記憶してるんだから。 ・・・さて、小等院と中等院を15歳で卒業したグロード。 『成績優秀者』として学費が三分の二免除され、国立学院――大学と高校が一緒になったようなもの――に入学し、そこで3年ほどがんばってたのよね。 その3年で眼鏡君たちとそれなりの交流を持ったんだけど、彼は始め極力彼らを避けようとしていた。 ・・・ん?なんでかって? だって、彼らと一緒にいたら本当に目立つじゃない! え?ゼロス、まだなぜか判らないって? いーわよ、教えてあげるわ。 コウ=ファミル=グラディルード、ディート=フィロス=グラディルード・・・このお二人さん、なんとフォーロシアの第三王子と第四王子! まあ、第一第二の王子がけっこう元気にやってるし、わりと聡明だから継承するのはどっちかだと思うけどね。 この二人も王位継承にはあんまり興味ないみたい。 コウは学者肌だし、ディートは王になるより遊んで暮らしたいみたいね。 さて、サーラ=フィオリスのことだけど・・・まあ、彼女は一応『一般市民』の部類に入るわね。 王族でも貴族でもないし。 ・・・ただし、この『一般市民』って言うのは王族・貴族・軍人以外の全員を指す言葉よ。 彼女の家系は代々貴族・王族御用達の商家の家系。高級家具を扱ってるみたいね。要するに大金持ち。 ・・・そうそう。こういうものについてはインバース商会は大衆向けの物がほとんどだから、安くて丈夫なものは売ってるけど、超高級なものは売ってないわね。 まあ、彼女は家の関係で彼らと会ったんだと思うわ。 まあ、そんなこんなでいろいろあったんだけど、結局三人とは親しい友達になったのよね。 それは『存在のオリジナル化』によって、周囲の人間から影響され、考え方や価値観が変化したおかげもあるわ。 そしてグロード自身魔族そのものの存在意義を心のどこかで問うようになっていたのよ。 いいえ、魔族だけじゃないわ。人間も含め、全ての知性がある生物に向かって・・・ ドラゴンは翼があるけど、筋肉の大きさからしてそれをはばたかせる事などできないはず・・・ そもそも竜に羽をつけるという進化は、肉食恐竜の卵から馬が生まれるようなもの。 要するに、『ありえない』という事をグロードは考え始めちゃったのね。精神生命体もしかり。 ・・・そう。彼は正しいわ。 人間以外の全ての知性ある生命体は、このあたし、悪夢を統べる存在《ロード・オブ・ナイトメア》が完成した種としてわざわざ世界に植えつけたの。 その存在に多少の調節をして、だけど。 エルフは長命すぎて、環境の変化に適応できるはずがない。 ドラゴンもその問題を抱え、なおかつ『気』を吸収して生きるなどという生物学的にありえない生活様式。 人間はそれほど長命ではないから、世代交代のたびに環境に適応するように変化する。 逆に、自分たちが心地よくすごすために環境を変化させることもいとわない種。 これで繁栄しないほうがおかしいのよ。 その技術的進化を抑えるストッパーが、魔族と神族。 ・・・・・・それら全てをわずか20年足らずで悟ったグロードはかなり賢いと思うわ。 だからこそ、死なせるには惜しい・・・そんなふうに考えちゃうのよね、あたしも。 「・・・ってわけよ」 「な・・・なるほど。なんだかすごいことになってますねー・・・」 「何いってんの。あたしが人間として暮らしてるほうがよっぽどすごいじゃない」 「いやまあそれはそうですが・・・」 ゼロスはぽりぽりとほほを掻く。 「このこと誰にも言っちゃダメよ」 「何言ってるんですか。僕が何故あなたのことを今まで誰にも話さなかったと思ってるんです?」 「あー・・・それもそうね。あんたにとっちゃこんなに面白い事はないんだし」 「・・・・・・・・・・・・(判ってない・・・ルキさんわかってない・・・)。」 「・・・・・・大変なんだな、ゼロス」 ・・・? なぜかゼロスがしゃがみこんでのの字を書き出し、グロードがそれに声をかけた。 「・・・・・・・・・はい」 滂沱の涙をながしつつ、ゼロスはそれにうなずいた。 まったく、なんだって言うのかしら? ・・・まあいっか。 「まあ、そろそろ見回りも終わりだし、あたし帰るわ。グロードも宿舎に帰ったほうがいいわよ」 「・・・はあ・・・それでは失礼します」 いって、彼はきびすを返し、そこから立ち去って行った。 あとがき エ:GWのくせに更新が遅い今日この頃・・・(涙) ようやく第六話の更新です。 L:暴爆呪《ブラスト・ボム》っ! づがぁぁあん! エ:久々に呪文で吹っ飛んでいくわたしぃ・・・しぃ・・・ぃ・・・(エコー) L:さて、それでは久々に呪文でエーナを吹っ飛ばしたところで! 今回はグロード君の身の上話!ついでに他の三人の詳しい説明も。 そして最後にほのかなゼロL?・・・つーかナニコレ。 エ:気にしないでください! L:うっわ復活した!? ・・・心臓に悪いわね・・・ エ:その程度で死んだら悪夢を統べる存在《ロード・オブ・ナイトメア》の名が泣くような気が。 L:くっ・・・痛いところをついてくるわね・・・ エ:・・・・・・・・・痛いのか・・・? L:いや、痛くないけど。 物事にはノリというものが必要なのよっ! エ:・・・否定はしませんが・・・・・・ なんか最近L様ルキと分裂してません?最近別物に思えて仕方ないんですけど。 L:そうだけど。 エ:・・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・まぢっすか? L:半分別物よね。ルキ側の情報はあたし知ってるけど、ルキのほうはこっち知らないし。 オフレコ? エ:・・・と、言うよりL様が素で『ルキ=ファー=ガブリエフ』をやってるようにしか見えないんですが。 L:それが一番近い感じね。 まああんまり気にしないでね〜♪ エ:・・・はあ。 L:それでは皆様、これであとがきを終わりますv ちゃんちゃん♪ |