◆−りめいくっ!song6−鮎 (2004/7/7 07:04:22) No.30381 ┗りめいくっ!song7−鮎 (2004/7/7 21:00:18) No.30389
30381 | りめいくっ!song6 | 鮎 | 2004/7/7 07:04:22 |
こんにちは。鮎です。 そろそろ前のが落ちそうなので、新たに投稿。 ############### 広場に入った瞬間、リナ達は目を疑いたくなった。 広場にも、歪みらしき影が、いるには、いる。だが、それは人を襲うことなく、得体の知れないものを目の当たりにして、固まり、怯える人々の間をうろうろと動く。 「どういうことだ・・・・?」 ゼルガディスの疑問に、誰もが答えられずに黙り込んで、立ち尽くしていると。 歪みの動きに、変化があった。 一斉に同じ方角に、頭と思われる部位を向けて。あるものは素早く、あるものはゆっくりと、進みだした。入り口の方へ――すなわち、リナ達の方へ。それに混乱して、広場に立ち尽くしていた街の人々も、悲鳴を上げて逃げ惑う。それでも間をぬって、歪みは真っ直ぐにこちらへ向かう。一つとして誰も襲うことなく。 「リナさんに引き寄せられて・・・・?」 「どうやらそうみたいね。あんな変な知り合いに、心当たりはないけど・・・・」 「・・・・来るぞ!」 ゼルガディスの声に合わせるように、一群が触手を、針を、するりと伸ばした。 ただ一人、リナ・インバースの方へ。 (なんだってのよ、一体・・・・) 迎え撃つ呪文を口早に唱えながら、彼女はそう思わずにはいられなかった。 「・・・・?」 熱い。何故だかすごく熱い。 自分の胸元でぎゅっと手を握り締めて、刹那は顔をしかめた。 言い様のない不思議な感覚に導かれて歩き、段々と視界は悪くなるばかりである。頼りになるのは、片手の、ゼロスの手を握る感触のみ。熱でも出たのだろうかと額に手を当てるが、そこはいつもと変わらず、ほのかな温かさを保っている。 「どうしました?」 様子に気付いたゼロスの声に、刹那は顔を上げた。その服の隙間から、微かな光が漏れる。 「ちょっと失礼」 言うと、するりと手を刹那の首へ持っていく。その首に掛けられた紐を引き、ペンダントを引き出した。服の外に出した瞬間、強い光が刹那の暗い視界さえも照らす。 「え、何?」 「セツナさん、このペンダントは?」 「ペンダント?・・・・ああ、私のおじいちゃんから貰ったんだけど。どうかしたの?」 「光ってますよ」 ゼロスの見つめるそれは、淡い、だが強く輝く球状の石。光は絶え間なく二人の視界を照らし続ける。それに、刹那は首を思いっきり振る。 「発光するペンダントなんて知らないよ」 「ですが、実際光っていますよ?」 「えー・・・・?」 足を止めて話してみた二人だったが、答えが出る事はなかった。とりあえず、それは再び服の下にしまわれた。まだ首を捻り続ける刹那の手を引いて、ゼロスは再び歩き始める。 「何でかなー・・・・宇宙との交信かぁ?」 「・・・・あの、真面目に言ってます、それ?」 「大真面目」 言ってから、再び刹那は胸を押さえる。先ほどの感覚が再び襲ってきて、少しだけ顔をしかめた。その原因を探ろうと頭を働かせようとして―― ぐい、と腕を引っ張られた。 ゼロスの方へ傾いた体の脇を、風が通り過ぎた。あいにく視界が悪く、刹那にはその正体は判らなかったが。ゼロスはそのまま刹那を背後に庇うと、前方を笑顔のまま見つめた。 「セツナさん、変なものというのは、あれですか?」 見つめる先には、大きな獣が居た。真っ黒な体の中で、唯一その瞳が、金色に浮かび上がって見える。それが見える訳もないのに、刹那は不意に呟いた。 「金色・・・・」 「目、良くなったんですか?」 「全然」 すかさず答えてから、刹那は前を指差して、 「うん。あれだと思う。多分。怪しい気配がするし。なんとなく」 「・・・・思いっきり不安なんですけど。僕・・・・」 「あはは。やっぱり?」 言いながら、ゼロスは立ち位置をずらし、獣の突進をかわした。それを気にした様子もなく、獣は何度も突進を続ける。刹那はぽりぽり頬を掻いて、 「えーと。私も何かしたほうがいい?」 「相手の事も見えないのに、どうやって戦うって言うんです?とりあえずは何もしなくていいですよ」 同時に、ゼロスは錫杖を獣に向かって一閃する。瞬間、見えない何かに弾き飛ばされ、民家の壁までそれは吹っ飛ぶ。壁の砕ける音に、刹那は尋ねてみた。 「倒せそう?」 「いいえ。さっぱりです」 見えないけれど、多分満面の笑みで――実際そうだが――明るく言い放った彼に、刹那はきょとん、と目を瞬いた。ゼロスよりも強いという事だろうか。 内心の疑問に答えるように、ゼロスは軽い口調で、 「力でいえば、圧倒的に僕の方が強いですよ。ただ、こちらの攻撃が効いていないみたいですね。空気を切っているのと似たようなものですよ」 「それって、つまり」 「きりがない、という事です」 肩をすくめて、そう結論付けると、ものすごく嫌そうに刹那は声を上げた。大変だ。このままでは、夜までに終わらないじゃあないか。睡眠時間が削れるのは防がないと、とぶつぶつ呟くのが微かに聞こえてくる。 「そういう問題ですか・・・・?」 「そういう問題なの」 呆れた彼の問いにも、きっぱりと真顔で答えて。心なしか胸も張って。 そこに、またもや声が響く。 ――本を使うんだよ、刹那―― 「へ?」 「どうしました?」 「いや、なんてゆーか」 ――いいから、さっさと出す!―― 「え、うん」 「・・・・?」 声の聞こえていないゼロスには、突然慌てだし、荷物を手探りする刹那の行動は不思議でしょうがない。目が見えないので目的の物が中々出てこないらしく、時間がかかっている。 「代わりにお探ししましょうか?」 「あ。お願い。真っ黒い本があるでしょ?」 「・・・・これですね」 ゼロスは、一冊の本を取り出した。表紙に見たことのない文字が書かれている。とりあえず素直に刹那に手渡すと、彼女はそれを迷わず開いた。 中には、やはり見慣れない文字が書き連ねられている。その一文の上を、す、と刹那の手がなぞった途端、文字は光の糸になって、本から溢れ出した。 「これは・・・・」 驚くゼロスの目の前で、刹那は続けてまた一文をなぞり、開いた表紙をかざす。 目が見えない筈なのに、それは獣の方をしっかりと向いていた。 ――適当に開いて、文字を指でなぞる―― (て、適当?) ――さっさとやる!―― (う・・・・判りましたぁ・・・・) ゼロスは知る由もないが、刹那は叱咤を受けつつ、本を適当に開いて、かざした。 ――さあ、後は判る筈だよ―― 思いっきり人任せな説明に、抗議の声は出てこなかった。声の――クロスの言った通り、自然と言葉が滑り出た。 廻り、放れ、歪んだくびき、在るべき淵へと沈み往け―― 影なるものよ、永久に、還れ、永久に、眠れ―― 「全ては、母なる内へと解け消えよ」 金光の糸は次々と獣に絡みつき、その体を縛める。 獣が吼えた。怯えるように――安堵するように。 その瞬間、刹那の脳裏に声が飛び込む。 『また、お前は裏切るのか』 「え・・・・?」 『・・・・謳い手よ、お前は――』 言葉が終わる前に。音もなく端から砕け、金色の粒子となり。それも、すぐに掻き消えた。 後に残るのは、驚きに目を開いたゼロスと、刹那だけ。 「今のは、一体・・・・」 呆然と呟いて、刹那の方に振り向く。 本を抱えたまま、目の前をじっと見つめていたが、微かに一言、 「今の声・・・・」 「・・・・声?」 呟きの意味が判らず、首を傾げるゼロス。 ゼロスの態度に、刹那はますます困惑した表情になり、 「何で・・・・?」 微かな声を漏らして、刹那の体が崩れ落ちた。地面にぶつかる前に、慌ててその体を受け止めて。 完全に気を失っている彼女に、探るような視線を向けてから。 相変わらずの笑顔を浮かべたまま、困りきった声音で呟き、空を仰いだ。 「厄介な事になりそうですねぇ・・・・」 終わりは、唐突に訪れた。 執拗にリナを狙う歪みたちに、仲間たちも疲れてきた頃。 「・・・・だああぁぁっ!もうっ!!」 叫んで、リナは歪みと距離をとる。両手を空にかざす様に持ち上げて、 「――黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅き」 「待て、リナ!それだけはやめろっ!?」 「街ごと吹っ飛んじゃいますよ!?」 「ええいっ、放せっ!一気に終わらせてやるんだからぁっ!!」 「落ち着け、リナ!」 慌てて歪みを捨て置いて、ガウリイ達はリナの体を押さえつける。 本気でやる。リナなら絶対にやる。一堂はそう思って、かなり真剣である。 「ああっ!いいから放して・・・・」 瞬間、歪みが掻き消えた。 「・・・・え?」 「・・・・お?」 あまりにも唐突な展開に、あっけに取られて周りを見回す。しつこいくらいの歪みは、一つたりとも残ってはいなかった。綺麗さっぱり、消えている。 「・・・・ゼロスの仕業か?」 ゼルの推察に、リナは肩を竦める。 「さあ?ゼロスが役に立ってくれたとは思わないけど」 「笑って見てるだけの気もしますしね」 アメリアが、同意するように付け足す。と、 「きちんと働きましたよ。――もっとも、歪みを消したのは僕じゃあないですけどね」 その声に振り向けば、珍しく歩いてやってくるゼロスの姿。にこにこ笑顔は相変わらずだが、その両腕に人を抱えている。 「セツナさん!?」 アメリアが驚いて駆け寄る。腕の中で眼を閉じる彼女を調べて、ほっと息をつく。 「良かった。怪我はしてませんね」 「まあ、疲れて気絶したんだと思いますけど・・・・」 何やら歯切れの悪い調子に、ゼルは問いただす。 「何かあったのか」 「ええ、まあ」 言葉を濁すと、ゼロスは一同を見渡して、 「とりあえず、僕は先に宿に戻ります」 「あ、ちょっと!」 言い返す暇も与えずに、彼は刹那と共に姿を消した。その様子に、ゼルガディスはますます眉を顰める。リナは、まだしがみついているガウリイに肘鉄を入れて、立ち上がった。 「考えてもしょうがないわ。宿に戻りましょう」 「セツナさんも心配ですしね」 周りを見れば、街の人がちらほらと様子を察して戻ってきていた。 ############### 何だかいつもいつも行き当たりばったり・・・・ 無事に終わるか不安でしょうがないです。 まあ、こんなところで。鮎でした。 |
30389 | りめいくっ!song7 | 鮎 | 2004/7/7 21:00:18 |
記事番号30381へのコメント こんにちわ。鮎です。 続いていこう第七作目。 ############### 「そうか・・・・」 部下の長い報告を受けて、彼女はたった一言、言葉を紡いだ。 暫し黙考していたが、ふいに目の前に立つ彼に視線を向けて、 「この間の手紙の事だが」 「ああ。何か判りましたか?」 というか、何が書いてあったんです? 当たり前といえば当たり前の質問に、何故か遠くを見つめて、 「聞くな」 「は?えっと、それは、どういう・・・・」 「いいから、何も聞くな」 目を瞬く彼をすっぱりと無視して。それだけ返し、彼女は話を先へと進める。 「判ったことは、お前の監視している人間は、普通ではないという事だ」 「と、仰いますと?」 「判らないのか?」 不機嫌そうに眉をしかめて、彼女は続ける。 「あの手紙の形をした『力』の塊に、平気で触れていられる人間などいるはずがない。 いるとするならば・・・・」 言葉を切ると、彼女は部下に背を向ける。もっとも、背を向けようが向けまいが、彼らにはたいした違いもないけれど。 それでも、背を向けて。彼女は静かに目を閉じた。 「・・・・いるとするならば、それは人の枠に囚われない、変質した存在」 声は、静かに空間に響いた。 『裏切るのか?』 『謳い手よ・・・・』 最後に聞いたあの声が、頭から離れない。 知らない。私は、それを知らない。 ――知っているはず 霞がかかったような声が、自分に言い聞かせる。 ――どんなに姿が変わり、時が過ぎても、お前は覚えているはず 圧倒的な存在感に満ちた、力強い声。聞き覚えのない声。 でも、どこか懐かしい声。 ――裏切りではない 嫌だ。 聞きたくない。 ――なぜなら、お前は 聞きたくない・・・・? 何で・・・・? 判らない。でも、とにかく聞きたくない。 嫌。嫌――― ――我が 声は、自然に滑り出た。 「あああぁぁああっ!!」 「大丈夫でしょうか・・・・」 アメリアは、階段の上を見上げて、呟いた。 その手は、くるくるとパスタをフォークに巻きつける。 足早に宿に戻ったが、そこにはすでにゼロスの姿はなく。 主人の話によると、刹那を部屋に連れて行った後、何処かへ出かけたきりだという。 いまだ目の覚めない刹那に事情の説明を求めるわけにもいかず、かといってゼロスはさっぱり出てこない。 やることもなく、夕食になってしまったのである。 「大丈夫じゃないか?疲れただけってゼロスも言ってたし」 暢気に返すと、ガウリイはナイフをチキンへと突き立てた。 大きなそれを、一口で平らげる。 「だーかーら、心配なんじゃない」 リナはそう言うと、スープを一気に飲み干す。 続いて素早くサラダを片付けながら、 「まったく。ゼロスの奴、どこに消えた・・・・」 憮然として呟いたゼルガディス。先ほどまで、時間を無駄にはしたくない、とぼやいていた。刹那を無理に起こそうともしたが、さすがにリナ達に止められた。 もっとも、部屋にはしっかりと鍵がかかっていて、容易に中に入れなそうではあるのだが。 苛立ちを此処にはいない魔族へと向けると、彼は紅茶を口にする。 「まあ、そのうち戻ってくるでしょ」 あっさりとリナは言う。 普段どおりに何皿もの料理を食べつくして、果物のジュースへと手を伸ばし、 「セツナが起きるのが先か、どっちかわかんないけど。 待つしかないでしょ?」 こくり、とジュースを飲みながら、デザートへと移ろうとメニューへと手を伸ばした。 その瞬間。 「あああぁぁああっ!!」 絶叫が、場を切り裂いた。 ############### はっはっは。深くは気にしないで下さい。 書いてる自分もよく判らないです。あは。 では、鮎がお送りいたしました。 |