◆−「妹」・・・・(ルナ・リナ昔話)−和泉 (2004/10/10 14:30:15) No.30761
30761 | 「妹」・・・・(ルナ・リナ昔話) | 和泉 | 2004/10/10 14:30:15 |
こちらでは初めてです。和泉と申します。 私はDICの方で長編小説を垂れ流しているんですけど、一度こちらにも参加してみたいと思ってましたから、長編とは別の話を書きました。 内容は・・・まあ、ありがちなリナの子供の頃の話なんですけど、ほとんどギャグです。 -------------------------------------------------- 私の名前はルナ・・・ルナ・インバース・・10歳 バカっぽい顔と滑舌が悪いことが悩みである。 日々、飽きもせずに挑んでくる挑戦者たちとの戦闘に明け暮れる、ハードな毎日をおくっている。 私の日課は、その挑戦者達に備えて鍛錬を行うこと、ついでに、無謀な挑戦者たちを軽くあしらうこと・・・そして、妹を一人前の戦士として育て上げること ほけ〜♪(呆) あたしは、いつものように家の前で妹が帰ってくるのを、バカづらこいて待っていた。 「ただいま〜♪・・バカづら姉ちゃん!!」 どぎゅっ!・・・(ひざ) 「ただいま♪じゃないでしょ、リナ・・・ちょいと23秒ぱかし遅刻よ・・・(ふみふみ)・・・・」 「うぎゅぎゅ・・・すみませぬ〜・・・(じたばたじたばた!)・・」 元気よく帰ってきた妹の顔面に、あたしは容赦なくひざを入れる。我が家では帰宅時間は厳守なのだ。 なぜなら、買い物担当のリナが時間に遅れると、商店のタイムサービスに出遅れて、良い物が買えないからである。 「まあ、いいわ・・それじゃ、おつかい行ってきなさい・・・・今日のメニューと買う物は?」 「はひっ!・・・メニューはロールキャベツ!・・買ってくるものは、テリーの肉屋からぶたミンチ、ロリッチの八百屋からキャベツとにらっ!」 ごぎゅっ!・・・・ 「チェックが甘いわね、にら・・りなはウイリスの八百屋がいつもより2割引きよ・・・そっちの方が安いわ・・(ふみふみ)・・・・・それから」 ぐしゃ!!・・・ 「誰がバカづらじゃ?こら・・・・」 「はうっ!・・・さうでした!・・(じたばたじたばた!)・・ つか、ツッコみ、遅っ!・・・しかも、また噛んでるしっ!!・・・」 「うるさいわねっ!・・さっさと買い物言って来なさい、にらっ!・・・」 「にらじゃなくてりなですっ!・・・まあいいや、言ってきま〜す♪・・・・・・」 うみゅ・・今日もタフだ・・・・ その夜・・・ 「にら・・・」 「リナです・・・」 「このロールキャベツ・・・」 「うん、おいしいね♪姉ちゃん・・・つか、噛むな・・・・」 ごりっ!・・・(ゲンコツ 「辛いわ・・塩加減を間違ったわね、に・・・えっと、リナ・・」 「うぎゅぎゅ・・ごめんなさひ・・・あと、わざとじゃなかったんすね、にら!・・・」 夕食も買い物もリナの役目である。 ドメスティックバイオレンスというなかれ、これもリナを一人前の戦士に育て上げるためである。 料理は関係あるのか?・・・・うみゅみゅ!・・見逃してくだされ・・・ こうまでしなければ、私が計画する『世界を見る一人旅』には耐えられないのだ。 「ほら、いつまでも食べてないの!・・・ 終わったら、洗い物と明日の朝食の仕込みがあるんだからね!・・・」 ずんどうになみなみと入ったロールキャベツを完食したリナ。 相変わらず大食いである。こいつの生活はカロリー消費量がハンパじゃない。食っては消化し、食っては消化し。 リナの身体の中では、いつも食欲とカロリー消費の戦いを繰り広げているのだ。 リナの食費が我が家の財政を逼迫するまでになっていた。だからこそ、食事係は全てリナである。 「ふぅ・・・終わったよ、姉ちゃん♪」 「ご苦労・・休んでよし・・・」 紅茶をすすりながら、自分の部屋でくつろぐあたしに、リナが報告に来る。これもいつもの日課である。 「うん♪・・・ところで、姉ちゃん・・・・・ また、呪文を覚えたんだ♪・・見てくんない?」 「呪文?・・・あんた、またハタ迷惑なやつを覚えたんじゃないしょうね?・・・・」 「ううん・・・空を飛べるやつだよ♪・・・・見てて・・・ ぶつぶつぶつ(呪文)・・・・れびてーしょん!」 ふわり(浮)・・・どごぉぉん!・・・・・・ぽて・・・・ リナの身体が、宙に浮いたと思ったら、一気に天井に突っ込んでそのまま落ちてきた。 「ハタ迷惑じゃん・・・」 「うう・・・・おかしいな・・・・(ぴくぴく)」 初めての呪文はほとんど失敗する。メガブランドという呪文を見せた時には私の足元に炸裂させやがった。 その時、リナがあたしにどんな目に合わされたかは想像にお任せする。 それで懲りると思ったが、飽きもせずに新しい呪文を覚えては、私に見せようとする。 しかし、このストイックな気質は悪くない。必ずこいつは、将来大魔道士になれる。そうあたしは確信している。 「まあともかく、宙に浮く呪文は使えそうね・・・・頑張ってマスターしなよ、リナ・・・(なでなで♪)」 「うん♪・・ありがと、姉ちゃん・・・ところでさ、その手提げ(てさげ)って姉ちゃんの?」 机の上に置いてあった真新しい手提げ袋にリナは興味を示した。 「ん?・・・ああ、これ?・・・うん、そうよ・・・今日家庭科の授業で私が作ったのよ・・・」 「へえ・・かわいい♪・・・くまさんのアップリケじゃん?」 ぐしゃっ!・・ 「うさぎよ・・・(ふみふみ)」 「へ・・・へえ、そうなんだ〜♪・・・・(じたばたじたばた!)」 「気に入ったんならあげるわよ、それ・・・」 「え!いいのっ♪・・・やった〜♪・・・・ありがとう、姉ちゃん♪」 踏まれても蹴られても、めげないタフな妹リナ・・そうやって何をやっても私に慣ついてくる・・・・ たまにかわいいと思ったりするのだが・・・ 翌朝・・・ 「ほら・・・支度早くしなさい、学校行くわよ!」 「うぎゅ・・・わかたよ、姉ちゃん♪・・行って来ま〜す♪」 トースト10斤を完食したリナ。あたしが声をかけないと、いつまでも食いつづけるうわばみのような妹だ。 昨日あたしがあげた手提げ袋に教科書を詰めて、出かけた。 てくてく♪・・リナと手を繋いで学校に向かう・・・・・ 「姉ちゃん・・今日、転校生が来るんだよ♪・・・・」 「転校生?・・・ああ、魔道士協会の評議長が変わったもんね・・・・その息子でしょ?・・・」 「ふ〜ん・・・何で知ってるの?」 「評判悪いもの、その評議長・・・・その兄貴が私と同じ年なのよ・・多分そいつも今日くるはずよ・・・ 気を付けなよ、リナ・・・」 「よっ!おはようさん・・ドツキ漫才姉妹♪・・・」 「ああ、リッキー・・おはよ・・・・」 あいさつして、私達と並んで歩き出したのは、同い年のクラスメートのリッキー。俗にいうツッパリというやつである。(古っ!) ただ、こいつは決して悪い奴ではない。言葉や格好が粗野なだけで、弱い奴には手を出さないし、年下の面倒見もよい。リナもこいつに慣ついている。 こいつは元々、あたしに挑戦してきた力自慢だったのだが、あたしがねじ伏せてしまったものだから、すっかりあたしに心服してしまった。 別に彼氏にしたつもりはないのだが、毎朝声をかけてついてくるものだから、やけに親しくなってしまった。 「おはよう♪リッキー・・・」 「よう、リナ♪・・随分とコアなもん持ってるな・・・・何だこりゃ・・くまさんか?」 リッキーは私といつも一緒にいるリナとも仲が良い。今日もリナの頭をなでながら、明るく話をしている。 「あ・・・えっと・・・・これさ」 「ははは♪・・くまなのにひげ生えてるじゃないか?・・・・かわいい、くまさんだなぁ、おい♪・・・・・」 「・・・・・・・・・・・はぅ・・・もはや手遅れ・・・あでゅー、リッキー♪」 「あでゅー、リナぁ♪・・・って、ナニが?」 ぐしゃぁぁ!!・・・・・ 「さて・・・ぴくぴくバカはほっといて、行くわよリナ・・・・」 「う・・・うぎゅ・・・・・あの、姉ちゃん・・・・今のネリチャギ、芯食ったよ・・・ いつもより、ハードに血出てるよ、リッキー」 「大丈夫よ♪・・・生きてさえいれば、午前中には復活するわ・・・・」 「そういう問題ですか・・・(汗)」 「リナちゃ〜ん♪・・・」 「あ、アイリちゃん♪・・・」 学校に向かって歩いていると、森を出たところで女の子が声をかけてくる。毎日同じ時間、同じ場所で。 リナに声をかけてきたのは、リナの友達のアイリちゃん。父親が魔道士協会の職員である。 実はアイリちゃんは、リナと仲良しである反面、あたしのことを嫌っている。 いつもリナの生傷を見ながらリナのことを同情し、虐待・・・もとい鍛錬・指南をするあたしを常に敵視しているのである。 「おはようございます、バカづらルナ姉さん♪・・・」 「うん・・おはよう、アイリちゃん♪・・・」 「相変わらず姉ちゃんの怒るポイントがつかめないけど・・・・ まあ、いいか♪・・・姉ちゃん、私達先に行くね・・・・行こっ、アイリちゃん♪・・・」 私達はゆっくりと歩いて、学校に行く。別に意味はないけど、景色を見ながら歩くのが好きなだけ。 リナはアイリちゃんと仲良く手を繋いで、駆け足で学校へ行く。 ほけ〜♪(呆)・・・・ 「おい、バカづら・・お前だろ、ルナってのは?」 私はいつものように教室で、一人寂しく休み時間を過ごしていた。(寂しいんかい! そこに、話し掛けてきたの転校生、魔道士協会評議長の息子ドビーである。 10歳にしては背が高く、短髪で、肥満気味のクソガキ。いかにもベタな悪ガキといった風情である。 「お前がここの学校仕切ってんだろ?・・でもこれからは良い気になるんじゃないぞ・・・ お前を俺の子分にしてやるよ・・これが誓いの盃だ・・・安心しろ・・・・中身は水だ・・・」 そういって、おちょこを差し出すドビー・・・盃なんて、きょうびヤー公でもやらんぞ・・・・ 逆らったらどうなるか・・・親の七光りで嫌がらせでもするつもりか? まあ、こんな話をしてる時点でこいつの器がわかるというものなのだが・・・見下ろされて、くそえらそうに言われることが気分が良かろうはずがない・・・・ しかし、今日はドビーには手を出さず、様子を見ることにした。私がこいつを懲らしめることは簡単だが、私以外に変な仕返しをされることになると厄介だからである。 「おい、ルナ!・・聞いてんのかよ?」 「聞いてるぜぇ?・・」 「あらリッキー・・生還したのね・・・」 ぐいっ!・・・・ドビーに応えたのはリッキーだった。後から指先でドビーの短髪をつかんで睨み付ける。 私を助けているつもりなのか?・・・ 「いてぇぇぇ!!!」 「リッキー・・やめときなって・・・そんな奴相手にしても、腹の足しにもならないわよ」 「ああ・・そうなんだが、俺が個人的にこいつが気にいらないだけさ・・・ちょっと、シメてきてやるよ・・・・」 「いてぇぇぇよぉ!!・・・やめてくれぇぇぇ!!!」 情けない声を上げて、リッキーに乞うドビー。見かけの割りには弱い。リッキーに抵抗することはできないでいる。 がたっ・・・私はイスから立ち上がった。 「リッキー・・あんたが個人的にそいつをシメるのは構わないけどさ、あたしがあんたにナイト気取られているみたいで、気に入らないのよね・・・」 私はリッキーを睨み付けながら、言った。口にしたのは本心ではない。 ただ、評議長の息子だというドビーに手を出せば、あたしの周りの人がただではすまないと思ったからである。 親の威光で何かの仕返しをされたのでは困る。 リッキーには、おそらくそのことがわかってない。 「うっ・・・わ・・わかったよ・・・・」 どうしても、リッキーはあたしにからみたがる。 まあ、話は面白いし、パシリにも使えるから、付きまとわれても鬱陶しいとかはないのだが、私に気があるのがミエミエなのが気に食わない。 はっきり言えば良いのに♪・・・断るから(をい 「てめえら、覚えてろよ!・・・」 『ナニを?・・・』 「うっ・・・と・・とにかく覚えてろ・・・このままではすまないぞ」 『クソして寝ろ・・・」 「やばいよ、あんた達・・・あいつに逆らったら」 「わかってるわよ・・・どうしたもんかね」 デイブが逃げた後、友達のネリーがあたし達に警告してきた。ネリーは肉屋のテリーの娘である。 う〜ん・・・こいつの名前の付け方も・・・・・・まあいいか 魔道士協会というのは、領主御用達の教育機関だが、第2の警察機関でもある。関係なさそうにも思えるが、商工会にも何らかの圧力をかけることができるのだ。 魔道士協会評議長の息子ドビーに逆らうことができないのは、下手に逆らうとそのコの家は商売ができなくなるように圧力がかけられる可能性があるからである。 もちろん、雑貨屋をやってるウチも例外ではない。 「アイリちゃんアイリちゃん♪」 「なに〜♪・・リナちゃん」 リナ達は図工の時間である。紙粘土で動物を作るという宿題が出されており、今日はその提出日だった。 「アイリちゃん、見て見て♪・・・あたしの宿題」 そう言いながら、リナはアイリちゃんに自信たっぷりに自分の粘土細工を見せた。 「あ・・これ、リナちゃんの手提げと同じじゃん♪・・・くまさん♪」 「いや・・・これ、うさちゃんなんだ・・・・手提げ、ルナ姉ちゃんが作ったんだけど、姉ちゃん不器用でさ」 「いや・・不器用というか、右脳が死滅してるというか・・・・とにかく・・ そうなんだ(汗)・・・でもかわいいよ♪・・ところで、私のも見て・・・」 「へえ・・これ、アイリちゃんが作ったの?・・・ティッピだよね?・・・すご〜い♪・・・・」 アイリちゃんは器用である。リナみたいに、適当にこねたブサイクな代物ではなく、アイリちゃんのはへらや串を使って、忠実に愛犬のティッピを再現していた。 「へえ・・・すごい、手が込んでるね・・すご〜い・・すご〜い」 感心しきりのリナ・・・ 「うん♪・・すんごい時間かけて作ったんだ・・・おかげでママに怒られちゃったけどね」 「おい・・お前ら・・・・」 「ん?・・・ナニ?・・・・・えっと・・・転校生のデイブ君?」 がしゃ・・・ 「『ナニ』じゃねえよ・・・お前らあいさつがねえじゃんよ・・・・俺様が同じクラスになったんだから、あいさつをするのが当然だろ?」 「ナニすんのよ!!・・粘土壊れちゃったでしょ!!・・・」 ひどいことをする。デイブは机の上のリナとアイリちゃんの粘土細工を払い落として、どっかと腰かけて言い放った。 「うっう(泣)・・・ひどいよぉ・・・・せっかく作ったのに」 壊れちゃった粘土細工を拾うアイリちゃん。 2人の粘土細工は壊れてしまった。きれいに作られてたアイリちゃんの粘土細工も。 「また作ればいいだろ!?・・・それより、お前らお仕置きだ」 ぶちっ!!・・・・ 「・・・デイブ・・・・・殺る・・・・」 「やばいのか?・・・」 「やばいわ・・・」 学校の帰り道、ようやく事の重大さに気付いたリッキー。こいつのせいで、あたし達に関わった友達はみんなドビーに脅されるかもしれない。 そうすると、あたしはどうやって授業ノートを調達すればいいのか。自分で授業を聞かないといけないではないか。 あたしの睡眠時間が減ってしまう。 「ルナ、リッキー・・・」 「うん?・・・あら、ネリー・・・あんた達、みんなどうしたの?・・・・・」 ネリーがあたし達に声をかけてきた。そこにいたのはネリーだけではなく、クラスの友達が5人。あたしの仲良しばかりである。 なぜかみんな沈んだ顔をしている。あたし達のせいで早くもドビーの何かされたのか。 「あのさ・・・変なこというけど聞いて、ルナ・・・・あたし達の顔を適当に殴ってほしいの・・・」 「あ?・・何言ってんだ?・・・・何でお前らを殴らないといけないんだよ・・・できるわけねえだろ?・・・・」、とはリッキー 「何かワケありね、ネリー・・・言って・・・・・」、とはあたし 「うう(泣)・・・ごめん、ルナ・・あたし達全員、ドビーからあんた達のバカづらに磨きかけてこいって言われてるの・・・」 「んだと?・・・誰がバカづらだ!!こら・・・・」 「い・・・いや・・・怒るとこ間違ってるわよ、リッキー・・・・」 「バカづらと言われて怒らない、お前もな・・・」 普通にツッコんだのはネリー。 なるほど、ドビーはあたし達をクラスから孤立させるという嫌がらせをはじめたようである。 ネリーが殴ってくれと言ったのは、彼女にはあたし達のバカづらに磨きをかけるなど到底無理だからである。 あたし達に殴られた顔をドビーに見せて、やったけど返り討ちにあった、ということにするつもりなのである。 「そういうことね、わかったわ・・・」 そういって、あたしは荷物を置き、上着を脱いだ。 「おい!・・・まさか本当にやるつもりじゃ」 ぼぐっ!!・・・・・(殴) 「いってぇ!・・・何すんだよ、ルナ!・・・・何で俺が」 あたしはネリーではなく、リッキーの顔面を殴りつけた。こいつもタフである。このくらいでまいるような奴じゃない。 「たまには良いじゃん♪・・・手加減したげるわ・・・・・あんたも遠慮なく来なよ・・・ 適当にあたしの顔にあざ作ってくれたらいいから」 「る・・・ルナ」 「なるほど・・そういうことな・・・・よっしゃ♪」 どぐっ!・・ぐしゃっ!・・ごりっ!・・・ あたしとリッキーは久しぶりに殴りあった。 「あいたたた・・・・ こんなもんで、どうかしら?ネリー・・・・これで、あんた達に襲われたように見えるんじゃない? これで、ドビーの命令を果たしたってことにしなよ・・・」 リッキーの顔面にはもちろん、あたしの顔にも適当にあざができた。 こんなことをやるのは、もちろんネリー達があたし達を襲ったようにドビーに見せかけるためである。 「うう(泣)・・・ごめん、ルナ・・・・あたし達のために、バカづらが、むしろいい女に・・・」 「気にしなくていいわよ・・あたしもこいつも嫌いじゃないから・・・あはは♪」 「だから、お前が気にしろっつの、バカづら!・・・」 我ながら、上等な手段を思いついたものだ。これでクラスから孤立したのはあたし達ではなくドビーである。 今後も、ドビーがネリーやあたし達に嫌がらせをするかもしれないが、そのことは後から考えることにした。 その夜・・・ 「おいルナ・・随分いい女になったな・・・・ それは良いとして、リナ遅いんじゃないか?・・・(ぐう、ぎゅるるる♪)」 顔にあざを作ったあたしを、微塵も心配することなく真顔で言い放つ父さん。腹の虫が鳴いている。 「そうね父さん・・・全くあいつったら、私達がこんなにお腹すかしてるっていうのに・・・(ぎゅるる、ぎゅるるる♪)・・・」 あたしは、父さん母さんと3人でリナが帰ってくるのを、いい女なのにバカづらこいて待っていた。 リナが帰ってこないから、皿の上には何もない。あたし達は両手に握られたナイフフォークが空しく眺めている。 しかも、さっきから腹の虫がなりっぱなしである。 「つか・・わざわざナイフフォークを待って待つ必要あるの?(ぎゅるるぎゅるりら♪)・・・・」 母さんが普通にツッコむ。 「ただいま〜・・・」 「あら・・帰ってきたみたいよ・・・・おかえり〜♪リナ」 母さんが、席を立ってナイフフォークを持ったまま、リナを玄関まで向かえに行く。 「きゃぁぁああ!!・・・リナっ、どうしたのよその有り様は・・・・」 母さんの悲鳴が聞こえた。リナに何かあったらしい。あたしと父さんも慌ててナイフフォークを持って玄関に向かった。(持たんでいい持たんでいい) 「おいリナ!・・どうしたんだ?・・・生傷は良いとして、元気ないじゃないか!」 「ふんっ!」どすっ!「ぐふっ!」・・・・・・・ごと・・・・・ぴくぴく 「生傷の方を心配せんかいっ!あんたはっ!・・・」 父さんの言葉にキレた母さんは、わき腹にこぶしをめり込ませた。 リナが生傷だらけなのは、いつものことである。私のしごきがきつい時はこんなもんじゃない。 しかし、いまだにリナが生傷を作ることに母さんはなれていないのである。 ただ、今日のリナは確かに、元気がない。いつもなら、『ただいま〜♪』と元気よく帰ってくるはずなのだが。 「ルナ姉ちゃん・・・」 「ナニよリナ・・どうしたのよ?・・・学校で何かあったの?」 「姉ちゃん・・・う・・・うぇぇえええぇぇぇん!!!!(泣)」 あたしにすがり付いて、泣き始めた。リナが泣くのを久しぶりに見た。どんなに私に殴られても蹴られても泣いたことがなかったのに。 「ちょっとぉ!どうしたのよ?・・・誰かにやられたの?」 「ひぐっ(泣)・・ううん・・・デイブとケンカしたけど・・・ぐず(鼻)・・・・ノーチャンスでネリチャギ一発ボルケーノで沈めた・・・」 「そう・・・じゃ、いいじゃん?」 うみゅ・・・ケンカには勝ったか、結構結構♪・・・・・ ドビーの弟デイブに反撃を与える間もなく、かかと落としをキメて、血吹かせて倒したようである。 「勝ったのね・・・じゃあなんで泣いてるのよ?」 「ひぐっ・・・ひあぁぁぁああん!!・・・・・姉ちゃんが作った手提げが・・・・・ひぐっ・・・こんなになっちゃったよぉぉぉぉ!!!・・・びえぇぇぇええぇぇん!」 泣きながら、あたしのあげた手提げを見せたリナ。手提げは刃物で切られて使い物にならない有り様になっている。 なるほど、ケンカに負けた腹いせにデイブとやらがやったのだろう。リナの生傷もそいつの仲間の仕業ね。 全く兄弟そろって姑息な兄弟である。 「何だ・・手提げにイタズラされてたから、泣いてたのか?リナ・・・・」 ぴくぴくから目覚めた父さんは、少し安心している。 「びぇぇぇええぇぇぇえええ!!(大泣)・・・」 「わかったわかった・・・あんた、そのくらいで泣かないのっ!・・・情けないわね!・・・・」 「だってだってぇ!!・・・せっかく・・・ひぐっ・・・・・姉ちゃんがあたしに」 「ルナ・・新しいの作ってやったらどうだ?・・・」 「あ・・・うん、まあいいけど・・・リナ、もう泣かないで、みっともない・・・・ 新しいの作ってあげるからさ・・・・」 「う・・・うぎゅっ!・・・ひぐっ・・」 「よしっ♪・・・んじゃ、今日は姉ちゃんが晩ごはん作ってあげるわ!・・・・」 「え♪・・本当♪・・・」 「る・・・ルナが作るのか?」 「うん、任せて♪・・・とりあえず、リナがケンカに勝ったごほうびよ♪・・・」 あたしが料理を作ることに父さんは不満そうだが、リナは心底嬉しそうな顔を見せた。 「さ・・・さすが、姉ちゃん・・・ごほうびじゃなくてお仕置きだったんだ・・・ね・・(ぴくぴく)・・・」 「ふ・・・ふっ・・・・今ごろ気付いても・・・おそ・・・・・ぐふぅ!(吐血)・・・(ぴくぴく)・・・」 「自爆しといて強がるな、ルナ・・・」 どうすれば、こういう味になるのか自分でも不思議である。 実は料理を作るのは5年ぶりなのだ。前作った時も誰も食べなかったので、2度と作らないと決めていた。 つか、今思い出した。 今日も、父さんと母さんは一口も食べなかった。 (つづくかも) |