◆−おばかなしょーとしょーと−エーナ (2004/11/7 12:57:11) No.30869 ┗暇人の暇人による暇人のための暇のつぶし方。 01−エーナ (2004/11/22 22:00:51) No.30919 ┗暇人の暇人による暇人のための暇のつぶし方。 02−エーナ (2004/11/23 10:27:37) No.30920 ┗Re:うっわァ。勇気あるなぁ。−はるか (2004/12/9 18:57:52) No.30960 ┗Re:うっわァ。勇気あるなぁ。−エーナ (2004/12/10 01:08:52) No.30961
30869 | おばかなしょーとしょーと | エーナ | 2004/11/7 12:57:11 |
「リィナっ」 「何?ガウリイ」 「生麦生米生卵!」 自慢したいらしい。 「・・・生麦生米生卵青巻紙赤巻紙黄巻紙東京特許許可局隣の客はよく柿食う客だカエルぴょこぴょこ三ぴょこぴょこ合わせてぴょこぴょこ六ぴょこぴょこ坊主が上手に屏風に坊主の絵を書いた」 「・・・・・・・・・。」 ガウリイは、ちょびっと泣いた。 「大食い選手権っ!」 「ごちそうさま」 ランチセット36人前完食。 「だ、第二予選!」 「けっこうなお手前で」 和菓子95個、抹茶一杯。ちなみに作法も完璧。 「・・・本戦突入!」 「評価、二つ星」 ステーキセット31人前完食。パン、ライスそれぞれ10人前ずつ。 「準々決勝・・・」 「新そばね」 わんこそば265杯。 「・・・準決勝」 「スポンジの焼きが甘い」 ケーキ、ホールで12個。 「決勝・・・っ!」 「あら、もう終わり?」 激辛地獄ラーメン29杯完食。 その食堂は潰れたそうな。 「いたいのいたいの飛んでけ〜♪ジュンちゃん、もう泣かないの。男の子でしょ?」 「びぇぇぇぇぇぇぇぇん!」 「うぅっ・・・どーして泣きやんでくれないの〜っ!?」 「非生産的ね、保育士のおねーさん。軽い怪我をしたときもっとすばやくかつ生産的に泣き止ませる方法があるわ」 「・・・る、ルキちゃん・・・?」 「治癒《リカバリィ》。こうやって諸悪の根源たる傷を治療してやれば痛みは消えるわけだから泣く原因もなくなるわけよ。 もっとも、精神的に強くなってほしいのならばよくしみる消毒液と絆創膏を用意するだけにしておいたほうがいいわ」 「・・・・・・・・・・・・あなた、ホントはいくつ?」 「2歳」 保育士のお姉さんは2本立った指を見て転職したそうな。 「ミカエル様」 「・・・ルナさん、そういう呼び方はちょっと・・・」 「ミカエルちゃま」 「いやあの」 「弟様」 「だから」 「ミッ○ー」 「著作権法に引っかかるって」 「みかえるん」 「からかってるんですか?」 「美人」 「何でっ!?」 「見返る美人」 「名詞を動詞に変換しないでよ」 「ぎんぱっつん」 「・・・・・・・・・。」 「ミカエルさん」 「・・・それでいいよ・・・・・・」 ちょっとお疲れ気味。 「カノジョっ!お茶でもどう?」 おしりさわさわ。 「ぃいやあああああああああああああっ!」 モーニングスターでホームラン。 「・・・哀れベルゼ。あたしの友達にナンパと同時にセクハラなんてするから」 「アシュちゃん、あの生命体何っ!?」 「不幸な事にウチの同僚」 哀れでも同情はしないらしい。 「かわいそうに・・・」 「フィリアちゃん」 「アシュちゃん」 『今度来たら三途の川の対岸に渡らせてやりましょう』 女の友情・・・? 「・・・あの、申し上げにくいんですが・・・お宅のルキちゃん、授業で居眠りばかり・・・」 まどーしきょーかいの先生、訪問。 「ああ、そういうのは直接本人に言ったほうがいいわよー」 理解のある母親、退室。 「・・・ところでルキちゃん、何で居眠りばっかりしてるのかな?授業についていけなくなるわよ?」 「つまんないもーん」 「ああ、授業がわからないのね。たとえばどんな所が解らないのかしら?」 「んー。・・・精霊魔法と黒魔法の複合魔法におけるエネルギーの割合と形状における特異性、それらを統合する核となる召喚魔法の対象は蛍妖精に限定されるわけで、結局は絶対支配結界である王国《マルクト》を応用して発生した力場を構成する呪文の・・・・・・って先生、聞いてる?」 「・・・ルキちゃん、先生の講師をしてっ!」 後にこの先生は首になったそうだ。 |
30919 | 暇人の暇人による暇人のための暇のつぶし方。 01 | エーナ | 2004/11/22 22:00:51 |
記事番号30869へのコメント 「暇ね」 さらりと吐かれた爆弾発言。 普通の人ならどこかに出かけてみるとか、自宅で昼寝をしてみるとかするものだが、彼女にとっては勝手が違う。 その言葉に、ゼロスは凍りついた。 嵐が起こる、と。 暇人の暇人による暇人のための暇のつぶし方。 ・・・思えば、この町に来て危惧してしかるべきだったのだろう。 ゼロスは心の中で冷や汗を流した。 時は数分前にさかのぼる・・・ ゼフィーリア国境近くに位置する町、クレウ。 この町は、特に名産物も観光名所もない。規模も普通の地方都市、という程度だ。 しかし。ここにはある特色があった。 「・・・世界一治安がいい街ねぇ。あたしにとっちゃつまらない街よね」 「・・・いざこざを期待しないでください。こっちの胃が持ちません!」 「あんた胃なんてないじゃない」 「気分の問題です。比喩ですよ、比喩」 ルキは、傭兵らしき人間がちらほらいる中で、青い制服を着た男たちが、談笑しながら歩いている姿をちらりと見やる。 昼間、30分ごとに3・4人のグループを作って巡回する警衛兵。一体全員でどれだけの数がいるのやら。 その巡回のおかげで治安はいい。町としても過ごしやすくてすばらしいといえるだろう。 「警衛兵が多いわね。こういう大所帯のお役所って動きが鈍くなって木っ端役人が汚職で逮捕されたりするのよ。 ・・・でもまあ、いわゆる『悪の組織』とか『秘密結社』とかあからさま過ぎるのはなさそうね。裏で役人とつながったりもしてない、と」 「町に着いて一番の感想がそれですか・・・」 「別にいいじゃない。けどさー。なんかこう・・・血湧き肉踊るような事件とかないかしら」 恐ろしい事を言い出すルキに、ゼロスは嘆息する。彼女はいつもこうなのだ。暴れさえしなければ大丈夫だが。 自分を人間だと豪語してはばからないルキだが、その能力は人間の域を超えている。 精霊魔法・白魔法しか使えないとはいえ冥王《ヘルマスター》と同等の魔力容量《キャパシティ》、父親と同レベルの剣術――ただし肉体の構造の違いから、パワーよりもスピード重視だが――、母親と同等の機転、翼の形をした虚無の端末を自由に出し入れできたりもする。 これを最強といわずして一体なんだというのだろうか。 こんな人物が、曰く『血湧き肉踊る』ようなものを求めたらどうなるか。その結果、おして知るべし、である。 「暇ね」 「え゛っ?」 ルキのこの一言は、嵐の前の静けさをあらわすものである。 思わず引きつった声で意味なく言葉を吐き出すゼロス。この言葉の後に一体どんな惨劇が待っているのか彼は身にしみていた。 曰く、ゼロスを使って曲芸を始める。 曰く、道場に殴りこみ。 曰く、ナンパしてきたチンピラを皮切りに芋づる式に『悪の組織』やらなんやらを潰す。 曰く、酒を飲んで絡んできた男――時に言うのを少しはばかられるような趣味を持つ女――を身包み剥がす。特に夜。 曰く、伝承歌《サーガ》好きの夢見る子供(無邪気)を集めてガン○ムごっこ。 全部が全部しゃれにならない。 ゼロ龍(番外編Encounter参照)が曲芸で使われたときには世界の終末にでもなったかと思われるほど町の人があわてまくっていた。 殴りこみに行った時が一番おとなしかったが、重傷を負わされた道場の人たちはかなり哀れである。 『悪の組織』とやらを潰したときは街中で大乱闘。 絡んできた人間を身包みはいだ時は酒場を34件はしごして計72名もの被害者が出た。 ガ○ダムごっこの時は、めちゃくちゃ精巧なゴーレムを人数分作り上げ、雰囲気バリバリに彩色して町外れで大暴れ。 本当ならゼロスは人間の負の感情をたべて『はっはっは。ご馳走様でした』とでも言う立場なのだろうが、ルキのゼロスに対する使い方が荒すぎる。消耗の度合いのほうが大きいのだ。 何を起こすのかは知らないが、ゼロスは戦慄した。このままだとこちらの身が持たない。かといって逃げたらそれ以上の惨劇が待っている。 「なんか面白い事・・・ん?」 ルキはふと足を止め、兵の駐屯所の少し色あせた壁に張られたチラシを見る。 「ほほぉう」 にやり、とルキが笑みを深くする。『面白い事』が見つかったようだ。 ゼロスは、どうかおとなしめのイベントでありますように、と心の中で切に願った。 が。 『 毎年恒例秋季剣術大会 日ごろ町の安全を守る警衛兵の士気向上のため、 実戦レベルでの剣術大会を開催するものである。 満16歳未満のジュニア部、満16歳以上の青年 部、満35歳以上の壮齢部の三つに分かれており、 それぞれ優勝者には特別昇級、もしくは特別推薦状 を与える。なお副賞として賞金が与えられる。ジュ ニア部は金貨20枚、青年部・壮齢部にはそれぞれ 金貨100枚ずつを支払うものとする。一般参加も 認められており、トーナメント方式で大会を開催す る。傭兵の皆さんも振るってご参加ください。 ――主催 クレウ市議会』 「ちょっと面白そうじゃない?」 張り紙を指差すルキ。 おそらくこれは兵士たちの士気向上のためだけではなく、警衛兵の実力を示して『警衛兵と揉め合いを起こすとためにならないぞ』ということを主張する意味合いもあるのだろう。 開催目的はまともであるのだが、ここに彼女が乱入したらどうなるか。 きらきらと上質な紅玉《ルビー》以上の魅力を見せる瞳に、ゼロスはくらくらとする――もちろん比喩だが――頭を抱えて、地面にうずくまった。 「あら、参加締め切り今日の正午?あと数十分しかないわね。 ってワケでゼロス。宿の一人部屋二つ見つけておいてね〜♪」 楽しげにひらひらと手を振って、即刻走り去るルキに、ゼロスは心の中でだくだくと涙を流す。 「ううっ・・・いろんな意味で悲しいです・・・」 そのつぶやきは本人以外に誰も聞く者はいなかった。 青年部の受付をしていた新米警衛兵ロバルト=ハンダック(23)は木製の椅子ともども転げ落ちた。 今年の夏に入隊した彼は、とりあえずそこそこの実入りと純粋に身を守る力――護身術に毛がはえた程度だが――を求めて、隣町から引っ越してきたのだ。寮で生活している彼だが、外から来たからといって、全く面識がないところから街の人たちととくに打ち解け合うために色々やったわけではない。母親がこちらの町の出身で、この町で家庭を持った叔母や、その友人たちとは小さいころから面識があったためか、かなり速くこの町の住人としてなじんできた。世話好きの叔母に紹介されて、叔母の友人の娘で仕立て屋の看板娘ローラ・ラーファル(22)と最近交際を始めたばかりだ。 その彼は驚きのあまり、あごをはずしかけて目の前の女性を見上げた。 まだ若い容貌のこの女性は、金髪でブロード・ソードを携えている。 彼が驚いたのは容姿でも、女性が参加するという事でもなく、彼女の名前。 女性が名乗ったのは『ルキ=ファー=ガブリエフ』という名前だった。 世話好きで噂好きの叔母がどこかの商店で、よく仕入れの旅に行く店主――もちろんこの店主も叔母の友人だ――から噂話を聞いて、それを週末の休日、叔母から食事に招かれる時にたまたま耳に入れて覚えていたのだ。 『堕天使』。太陽のような金髪に血色の瞳。二つ名と容貌の特徴の噂が先行していて案外本名が知られていない。 一瞬噂話の名前が間違っていたか、同姓同名の別人かとも思ったが、本人が自分が『堕天使』だと名乗ったので間違いはないだろう。 名簿に名前を書き込んで受付を済ませた彼女はすぐに出て行ってしまったが、終了間近であまり人の居ない受付所で、今出て行った女性が堕天使だなどと気付く人間はいなかった。 「受付の兵士さんは床に座るのがご趣味?そろそろ受付が終わるんだから、さっさとして欲しいんだけど」 呆れたまなざしでこちらを見る女性――これまた傭兵だ――はこちらに手を出して立ち上がらせてくれた。男としては少々情けない構図だが。 すみません、とロバルトは言いつつ、名簿を差し出す。 「・・・ルキ=ファー=ガブリエフ?堕天使?」 眉をひそめて信じられない、といった面持ちで彼女は書かれたあまり上手くない字を読み上げる。 彼女もまた堕天使の本名を知っていたらしい。華奢で顔に愛らしさと美しさが混在する成長期特有の女性の魅力を持った女性で、ドレスでも着ておとなしく座っていれば良家のお嬢様で通用するかもしれないが、雰囲気や立ち居振る舞いが素人のそれでないことは彼でもなんとなくわかった。もしかしたらそれなりの情報通なのかもしれない。 「ふぅん・・・」 それ以上何も言わず、据え付けの羽ペンを取って、女性は名簿に書き付けた。 そのままじゃあね、といってきびすを返した彼女が記したサインを見る。思ったより達筆で少し読みにくかったが、綺麗な文字だ。 そこにはこう書かれていた。 『ヴィキ=イブリース』と。 あとがき エ:はい、おひさしぶりです。 L:はい、 ――めしゃぁっ! L:・・・お久しぶりに潰してみました。 おほほほほほv久々にストレス発散できたわ。 エ:ひ、ひどい・・・ L:もとはと言えば書かないお前が悪い。 しかも。第六部検討中だとか言ってぜんっぜん音沙汰ないじゃないの!これ番外編でしょ!? エ:はい、そうです・・・『暇人の暇人による暇人のための暇のつぶし方』は、言い換えると『暇なルキの暇なルキによる暇なルキのための暇のつぶし方』という事で。 L:・・・ネーミングセンス無い。覇王《ダイナスト》並み。 エ:あああああああああ。ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・! L:んっふっふっふっふっふ。まあいいわ。次に期待してあげようじゃないの。 と、言うわけで、そろそろあとがきを終わらせていただきます。 次のあとがきは『血塗られた惨劇・エーナは殺された!〜ま、どうせ自業自得だけどね〜』をお送りします! エ:すでに死亡決定っ!?いやぁぁぁぁぁっ! L:それじゃあさよーならー♪ |
30920 | 暇人の暇人による暇人のための暇のつぶし方。 02 | エーナ | 2004/11/23 10:27:37 |
記事番号30919へのコメント 暇人の暇人による暇人のための暇のつぶし方 「ゼロスのヤツおっそいわね〜ここの勘定あいつに奢ってもらおうかしら」 はぐ、と12皿目のスパゲティを口に運びつつルキはちょっとだけ毒づいた。 宿を取らせに行かせたゼロスはルキのところへはまだ戻ってきていない。ルキの胸にはオリハルコンのペンダントがぶら下がっており、特に探知を避ける魔法もかけていないので、ゼロスには簡単にこちらの居場所を知ることが出来る。 彼女はいらついていた。その原因はゼロスが遅いということだけではない。むしろ、もうひとつの要因のほうが大きかった。 今思い出しても腹が立つ、と、彼女は金属製のフォークを握りつぶした。 思いのほか手に力が入っていたことに気がついて、ひしゃげたフォークの曲がっ他ところをまっすぐにしようとするがうまくいかない。 二度目のため息を吐き出して、陶器の皿の上にフォークを乗せる。ぱちんと指を軽く鳴らし、金色に染まった瞳が二サンドきらめくと、寸分たがわないもとの姿へと戻る。 まったく、力の無駄遣いだ、とそうルキは思うが、それが余計にいらつきを大きくした。 眉根を寄せて、ルキは言い放つ。 「遅い!」 ルキの後ろに出現した、陰をそのまままとったような神官は申し訳なさそうに肩をすくめる。 その動作がルキに見えるわけがないのだが、井戸水をそのまま汲んできたのであろう冷たい水を口に含んで怒りを水といっしょに押し流そうとする。 「すみません、適当な宿が見つからなくてですね」 「どうせそこそこの値段でそこそこの設備の宿が空いてなかったんでしょ。 安宿もたぶん満室ね。傭兵がたむろしてるわよ、たぶん」 ゼロスが向かいに回り込んで椅子に座る。 いかにも機嫌が悪いという表情を目にして、ゼロスは内心嘆息する。無論顔には出さないが。 「はあ、まあ・・・一般参加も認められてる公式の大会ですし。 宿をまわってみて耳にしたんですが、それなりに有名なイベントみたいですよ」 「で、それなりのやつらが大勢集まるってわけよねー」 はん、と息巻いて言いはなつルキ。 「・・・ルキさん」 ゼロスが呼びかける。がたがたと木製の椅子が床と接触する音。 「何?」 頬杖をついてトントンと指先をテーブルにぶつけ、足を組む。 今は1時を少し回ったくらいの時間。当然、食堂には少し遅めの昼食を取る者もいるわけで。 「そういうことを言うって事は・・・わかってるんですよね?」 「とーぜんよ!」 ばん!と指先をテーブルにぶつけるのを止めて、今度は掌を軽く叩きつける。 「よぉ、嬢ちゃん・・・ずいぶん威勢がいいじゃねえか」 タコ頭――この町に滞在している傭兵の一人だろう――が、真っ昼間から酒臭い息を吐いてルキのそばへと歩み寄ってきた。 他にも、十数人ものむさくるしい男たちが二人の周囲を固めた。 「威勢がよくなきゃこの商売やってらんないわよ・・・そうでしょ?」 「そりゃあちげぇねえ!でもな嬢ちゃん・・・嬢ちゃんみたいな子供がやっていい商売じゃないんだぜ?」 「あぁら、リナ=インバースもその娘も有名になった時は14かそこらだったと思うけど?」 「そんな特別な女なんぞ化けもんさ!もっとも、そんなヤツだって男に押し倒されりゃ泣くか喜ぶかしかできないけど名!」 周囲に下卑た笑いが広がる。 「あら、もう一つ出来る事があるわよ」 にこり、とこれ以上もないほどさわやかに微笑むルキ。 別に笑い声をかき消すほどの大きな声でもなかったのだが、その雰囲気に気圧されて、笑い声がおさまった。 「ブチ殺すvとかね!」 ――めしっ!どすっ! 右足で男性用必殺攻撃をコンマ1秒のスピードでこなし、そのままかがんでから身体のばねを使ってみぞおちをかかとで蹴りつける。 魔力強化をかけて硬度を増した金属を仕込んだブーツは、その気になれば内臓すらもこなごなに砕いただろう。 「・・・知りませんよ」 「手なんて出さなくていいわよ〜♪」 肩をすくめるゼロスに、ルキは楽しげに答えた。ようやくストレスの発散口を見つけた彼女は、楽しげに哀れな子羊たちを見定めた。 泡を吹いて倒れこんだタコ頭を踏みつけ、向こう側の男を張り倒す。 その戦神とも言うべき攻撃の猛々しさを感じ取った男たちは店から逃げ出そうと悲鳴を上げて駆け出した。 「お勘定ッ!」 ――がんっ! 店のおばちゃんのフライパンアタック。 分厚い鉄のフライパンはかなり重く、鈍器には最適。料理で鍛え上げられた腕で振り回すそれは凶器となって出口に殺到する被害者を襲う。 グッジョブ!と、お互い視線だけで褒め称えあい、ついには下品な傭兵を全員ノしてしまった。 「大惨事ですねえ」 「絡んでくるこいつらが悪いんでしょ」 すっきりとした面持ちで腕を組むルキに、ゼロスはあーあ、といった面持ちで視線を向けた。 「でも弱ったわね。せっかく大会に登録したって言うのにこの町から追い出されかねないわ」 「ああ、それならあたしが口裏合わせておくよ。 こいつらが先に襲ってきたって事にして正当防衛にしちまえばいいさ。 この町は治安がいいけど、大会の時期だけはどうしても警備が緩んじまうんだ。 ここに倒れてるやつらの何人かは似たような乱闘騒ぎを起こして、大会に参加する前に追い出されたことがたびたびあるやつらでね。 か弱い女の子と前科ありのむさいオヤジの言い分とどっちを聞くかなんて明白だろ?」 「おばちゃん話がわっかるぅ〜♪」 豪胆な女主人と堕天使が朗らかに笑い合う。 そのとき、ルキの背後でもぞりと何かが動く気配。 「この、アマ・・・っ!」 剣を持って起き上がりかけた男の頭ががしりとつかまれた。 強い力で締め付けられる頭が振りほどけず、男は逃れようともがくが、つかんでいる指は微動だにしない。 男が気を失っていないのにも気がついていたし、男がこちらに危害を加えようとしても、ゼロスが防ぐのをわかっていたので、ルキは全く驚きもあわてもしていない。 くるりと男のほうを向いて――予想外の光景に目を丸くする。 男の頭をつかんでいるのはゼロスではなかった。しかし、それは知っている顔。 『ああぁああぁぁあああぁあっ!?』 傭兵の頭をつかんでいる男とお互いに指を指しあい、ルキと新たに出現した男は同時に声を上げた。 ゼロスも少なからず驚いているようだ。 「あんた、どうして――」 「それはこっちの――」 お互いに言いかけて、止まる。 出現したのは、傭兵の頭をいまだ握っている男を含め、二人。 「おやまあ、彼らと知り合いかい?半年振りだねえ――ガーヴさん」 食堂の女主人の言葉が、全員が呆然としている場でやけに大きく聞こえた。 「その、なんていうか・・・なんでまた、こんな低レベルなやつらにからまれてたんだ・・・じゃなくて、ですか?」 ひきつり気味に敬語を使おうと言語と奮闘しているガーヴ。 ルキとガーヴは向かい合わせに座っており、それぞれ隣にはぴりぴりとした視線を互いに送りあっているゼロスとヴァルガーヴ。 「べつにいいわよ。敬語とかですます口調なんか使わなくて」 「しかしですね」 「それ、あんたのキャラじゃないから。明らかに。って言うか気持ち悪いって言うか、『今』あたしは上司じゃないし・・・ ・・・それ以前にあんた、ゼロスが『あたくしはゼロスでございます事よ』なんて言ってるトコ想像してみなさいよ」 「・・・・・・・・・。・・・いや、なんかちょっと吐き気が」 「でしょ?」 周囲のモノたち――特に隣の二人――から見ると、色々突っ込みどころがある会話なのだが、あいにく二人はにらみ合いでそれどころではなかったため、誰も止める者がいなかった。ちなみに、周囲に倒れてるやつ等は返事のしようがなかったし、おばちゃんは店の奥に引っ込んでいる。 「で、半年振りっておばちゃんが言ってたところを見ると、春季の大会の参加者だったわけ?」 「ああ。壮齢部で優勝してな。ちまちま傭兵家業するより楽だし、そこそこ名も売れるし金も入るからな」 苦笑いするガーヴに、ふぅん、とルキは相槌を打った。 二人はおもむろに手を振り上げ、がいん!と擬音語が飛び出しそうな勢いで隣に座るゼロスとヴァルガーヴの頭を殴る。 にらみ合いを止めさせられた二人は少々恨めしそうに隣を見やるが、殴られた部分をさするだけで何も言わなかった。 「でも、これって公式の大会だから無登録じゃ参加できないでしょ?あんた家名ないのにどうやって登録したわけ?」 「ああ、それならほら、2年前・・・あんたに復活させてもらってから魔族も神族も俺らに手ぇ出せなくなっただろ。 そんときから戻る場所がねぇんならいっそ傭兵でもするかって事になってな。そのとき家名をでっち上げた。身元不明の傭兵なんざごろごろいるからな」 「へぇ。で、どんな家名?」 「こいつがドラグーンで俺がフランベルジェ」 一瞬、きょとんとした顔になったルキだが、すぐに大きな声で笑い出した。 「あはははははははは!竜騎士《ドラグーン》と炎の剣《フランベルジェ》?ぴったりすぎ!」 竜騎士《ドラグーン》とは、本来城を守る近衛兵の一種である。名前がカッコいいから某RPGじゃあ跳躍しまくっているが。 ネーミングからカッコいい・強いを連想されるが、元々の仕事は案外知られていない。 炎の剣《フランベルジェ》は両手持ちの大剣で、本来儀式用に使われるものなのだが、両刃が炎のように波打っているため傷口を広げる効果があり、殺傷能力が極めて高い。語源は『炎』を意味するフランス語のフランボワヤンから来ている。ちなみに、同じ形状のレイピアでフランベルクというのも存在している。 「でもさぁ、今回ぴったりじゃない名前で大会に参加してるやつがいるのよね。 どっかの傭兵が青年部の登録所で『ルキ=ファー=ガブリエフ』を語ってたのよ。おかげでこっちは偽名使わなくちゃならないハメになったわ」 「・・・それで機嫌が悪かったんですか」 「そういうこと!ぜっったいあたしの手で叩きのめしてやるんだからッ!」 ぎりぎりと拳を握るルキ。その怒気にガーヴは一瞬気おされ、ゼロスは嘆息した。 あとがき エ:はい、暇話第二話です。 L:うっわぁ。なんかすごい事になってるわね。 エ:再登場ガーヴ&ヴァルガーヴ。第三部が終わって傭兵家業をしながら世界各地でふらふらしていたお二人さんですが、偶然この町に参上。 壮齢部門前回の優勝者で今回の優勝有力候補。青年部には偽者が参加。ルキちゃん怒ってます。 L:ていうかさ。ルキの偽名ってイブリースの部分はいいけど何でファーストネームがヴィキなわけ? エ:ヴィキ(Vicki)はヴィクトリア(Victoria)の愛称。リナ曰く『全く違う名前だと反応しづらい』(すぺしゃる三升)だそうですし。 まあ、もう一つ理由があるんですけどね。 L:なになに? エ:まあ後の話でばらすと思いますが、L様にはお教えしておきましょう。 ごにょごにょごにょ・・・ L:あ、なんかいいわねそれ。 でもそれを聞いてみると・・・この話の文中に伏線が。 エ:ああっ!ばらしちゃダメですって! L:ふっ。まあいいわ。これで前回の宣言は取り消してあげる。まあ、次にヘマしたらどうなるかわかるわよねぇ? エ:あああああああああ・・・善処します・・・・・・しくしく・・・それではそろそろ終幕です・・・ さよーならー・・・・・・ |
30960 | Re:うっわァ。勇気あるなぁ。 | はるか | 2004/12/9 18:57:52 |
記事番号30920へのコメント お久しぶりですっ!!はるかです! ・・・・・・・・・・・・覚えていらっしゃいますか・・・・・? いやなんか最近とことん存在感薄かったんでどうかなぁ、とか思ったり。 まぁそれはともあれ、レスいきます♪ ルキちゃん・・・・・・・やっぱりどこからどうみてもリナ似ですね。 んでもって途中でリナが『特別な女』とか言われてたし。 ・・・・・・・・・・・・・・ふっ、伝説は永遠よねっ。(意味不明) ふと思ったんですが、ガーヴとヴァルガーヴ、こちらの設定ではどうなっているのでしょうか? ゼロスの様子を見ると二人とも滅びた後。 そしてどうやらヴァルガーヴは結局生まれ変わっても更正せず? あれ?フィリアはおいてきたのかなぁ・・・・・・・? しかし人間界に生まれ変わったんなら名字もちゃんとあるはずだが・・・? さて、一体どうなっているのでしょうか。不思議だったりします。 時間軸は一体いつ? でもまぁとにかく感心したのが勇気ある某青年ですね。 汚い字でルキの名をかたるとは。 ・・・・・・・・・・・・・線香一本ぐらいは売ってあげてもいいですね。 一本1000円で。(オイ) まぁ本当に馬鹿なやつなのか、 エーナさんのことですから実は結構強いキャラだったりとかありそうですが。(^^; まぁともあれ続き待ってます♪ あ、そうそう、たとえあんまり書き込みはなくても、 エーナさんのものは絶対ちゃんと読ませていただいているので♪ それではっ! |
30961 | Re:うっわァ。勇気あるなぁ。 | エーナ | 2004/12/10 01:08:52 |
記事番号30960へのコメント お久しぶりです、はるか様。エーナです。 >ルキちゃん・・・・・・・やっぱりどこからどうみてもリナ似ですね。 いやはや、確かに基本思考が似てますしね。 やっぱり二人とも計算高いですし。でも舌先三寸は母親のほうが上。 >そしてどうやらヴァルガーヴは結局生まれ変わっても更正せず? そこら辺は変わってないですね。でもガーヴが健在である限り『へいアニキ!』なノリですむので大丈夫そう。人格修正はルキが面倒くさがってやろうとしませんし。 ちなみにゼロスとにらみ合っていたのは『昨日の敵は今日の友?なんてふざけんじゃねぇぞーっ!・・・でも親分の手前ケンカできない』ってところでしょうか。ゼロスの心理も似たようなもの。 >あれ?フィリアはおいてきたのかなぁ・・・・・・・? 彼女はただいま『古代竜《エンシェント・ドラゴン》保育園』(名前が安直)の院長センセー兼インバース商会フォーロシア支店(おもに雑貨。あと壷とモーニングスターを扱っている)の支店長。アシュが入り浸りになってお手伝いしています。忙しい忙しい。一応ヴァルも手伝いますがあくまでも手伝いのレベルを超えないので手が離せません。ヴァルガーヴはフィリアに気があるようですが、思考回路がまだ子供から抜けきってない、うちのヴァルガーヴはそれすら気がついていない様子。おやびん(ガーヴのこと)もそういうのに鈍いので気を利かすことも出来ず、はたから見るとかわいそう。まあお互い寿命は長いですから気長にいきましょう、ってところです。 あ、フィリアとアシュだけでは保育園は資金的にも人員的にもフォローしきれないのでお金はルキのポケットマネーとインバースの公式の支援、人員的にはルキが火竜王《フレア・ロード》あたりを脅して黄金竜《ゴールド・ドラゴン》に支援させています。 >しかし人間界に生まれ変わったんなら名字もちゃんとあるはずだが・・・? >さて、一体どうなっているのでしょうか。不思議だったりします。 おやびんと子分、このお二人さん生まれ変わったというわけではありません。 ガーヴはルキ(悪夢を統べる存在《ロード・オブ・ナイトメア》)によって復活させられた・・・つまり、完璧に滅ぶ直前の状態に戻ったのと動議です。そのときすでに魔族から離反しているのでいまさら魔族には戻れない、というより戻りたくない。そこで第三部最後の『魔・神・魔竜王協定』が効力を発します。ちなみに、中身は『お前ら三者ケンカなんぞするな。ルキが生きてる限りこの効力は絶対だからね。もしやったらおしおきフルコースv』というヤツです。悪夢を統べる存在《ロード・オブ・ナイトメア》の名義で行われているので絶対の効力を持ちます。永遠に束縛するのではないので残念。ちなみに、ここで協定を結んだ代表三者レイ=マグナス=シャブラニグドゥ・ウラバザード・ガーヴ以外・・・魔族の腹心以下(ゼロスのぞく)、ウラバザード以外の竜王(ラグラディアは除く)以下、ヴァルガーヴはルキ=悪夢を統べる存在《ロード・オブ・ナイトメア》だとは知りませんのであしからず。 >時間軸は一体いつ? 第五部のちょっと前です。 >でもまぁとにかく感心したのが勇気ある某青年ですね。 >汚い字でルキの名をかたるとは。 ええと・・・某青年とは受付の兵士さんですか? 彼が名を騙ったわけではありませんよ?偽者はルキと入れ違いになっています。 まあ、受付の兵士は代筆も出来る人じゃないといけないので読み書きが出来ないといけませんが。どうせですから彼が代筆したことにしちゃいましょう(今決めたのかっ!?)。 それでははるか様、レスありがとうございます。うう、こうしんがとどこおってるのでちゃっちゃと再開したいです・・・期末の馬鹿やろーっ!単位のバカヤローっ! |