-忙しいカタート-桜我天秦(6/18-08:34)No.3122
 ┗Re:忙しいカタート-松原ぼたん(6/18-19:23)No.3133
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3122忙しいカタート桜我天秦 6/18-08:34

「はあ……」
 男は深いため息をついた。男の顔には酷く困惑した表情がはりついていた。
「どうかしたましたか?」
 側に床に落ちている書類の整理をしていた金髪の女性、獣王ゼラスが男のため息を聞いて男に問いただした。
「いや……ちょっとな」
 男はあきらかに作ったとわかる疲れで引きつった笑みを浮かべて答えた。が、そんな笑みではなんでもないでもそまされるはずもない。
「もしかして」
 ゼラスは人差し指を立てる。
「今日中に終わらせるはずの書類がこんなにも部屋中に溜まっていて、それでいて分別していた書類がフィブリゾのおかげでごちゃまぜになった事を悩んでおられるのですか?」
「いや……書類なら私の力でなんとかなる。問題はもっと別の所なのだ」
 そう言って、男はもう一度深いため息をつく。
「はて……それじゃあなんなんでしょうか……」
 ゼラスは人差し指を立てた方の手を頬に宛がい、首をかしげる。
「その内わかるさ……とにかく、この書類全部を集めておいてくれ。私は出迎えにいかなくてはならん」
 男はそう言って、一個しかないドアから出て行こうとする。
「どなたをですか?シャブラニグドゥ様」
「……ロード・オブ・ナイトメア様だ」
 この世界の魔王、シャブラニグドゥは苦笑しながら自分を生み出した者を向かえに行った。
「……なるほど」ゼラスは、妙になっとくした顔で一人、頷いた。それと同時に、顔が少しばかり引きつっていた。


「大変だ大変だ大変だっ!」
 十二歳ぐらいの男の子が慌てて廊下を走っている。その様子は、とても嬉しい知らせのようではなかった。
「た・い・へ・ん・だーっ!」
 バタンッ!と、男の子はドアをいきおいよく蹴破って部屋に入った。
 その部屋には、何か小難しそうな本を読んでいる黒髪の身体の細い青年と、その近くで黒い硝子細工で作られた眼鏡を掛けた白髪の女性が床に座っていた。
 白髪の女性はなにやらぽかん、とした表情で少年の足元を見ている。
「大変だよっ!」
 少年が下で踏んでいる者を気づいているのか気づいていないのかはわからないが、とりあえず気にしないで必死な顔で叫んだ。
「何が大変なんだ?フィブリゾ」
 黒髪の青年が読んでいた本をパタンッと閉じて、少年、フィブリゾの方に振り向きながら言った。
「そんなに落ち着いて聞かないでよグラウシェラーッ!ロード・オブ・ナイトメア様が来るんだよっ!」
 ピタッ。
 部屋の時間があきらかに停止した雰囲気が部屋中を包み込む。
 フィブリゾに踏まれている者も踏まれている事を忘れたかのように動きが止まっている。
「……ウソ」
 白髪の女性の言葉が、部屋の時間が止まったような雰囲気を壊す突破口となった。
「こんな嘘をボクが言うと思うかい?ダルフィン」
 白髪の女性、ダルフィンにフィブリゾは諭すような口調で言う。が、ダルフィンは少年の顔をじっくりと見て、
「見えるっ!」
 と、フィブリゾを指差しながらきっぱりと言い放った。
「だあぁぁっ!ボクがそんな事言う訳ないじゃないかっ!本当なんだよっ!L様が来られるのっ!」
 フィブリゾはいらついたように足踏みをする。……やはり気づいていないのだろうか。それとも気づいていないふりをしているのか。……たぶん後者だろう。
「もしそれが本当なら、まいったな……俺は今日講師のアルバイトがあるんだが……」
 黒髪の青年、グラウシェラーはさも困ったように頭をぽりぽりと掻く。
「講師のアルバイトを取るか、命を取るか。どっちがいいかい?」
 フィブリゾは正座で座っているんじゃないかと思われる目つきでグラウシェラーを睨む。
「もちろん……命に決まっているだろうが」
「だったらL様の訪問を祝うための用意をするんだよ、い・い・ね?」
「まあ……それでもいいが……」
 グラウシェラーは気まずそうにフィブリゾから目をそらす。
「どうしたんだよ?」
 ぶすっと頬っぺたを膨らませてグラウシェラーを睨む。
「いや、あのな」
 グラウシェラーは言い辛そうに言葉を濁す。言い辛そうにしているグラウシェラーを見て、憐れと思ったか、優柔不断だとか思ったは知らないが、海王が口を開いた。
「あのねフィブリゾ」
「何?」……あくまで気づいていない事を貫き通すつもりらしい。意外に極悪人である。
「ガーヴを踏んでいるんだけど、あなた」
「へ?」
 フィブリゾはさも今気づいたように片足を上げて足元を見る。フィブの足元には、しっかりと床にうつ伏せになって倒れている赤毛の男、ガーヴが子供サイズの足跡をいくつもつけてピクピクしていた。
「ガーヴ、そんな所で寝てると風邪引くよ」
「お・ま・え・が、ね・さ・せ・た・ん・だ・ろ・う・がぁっ!!」
 ガーヴはゆっくりと立ちあがる。その背中には怒りの炎がメラメラと燃え盛っているような雰囲気がガーヴを包み込んでいた。
 あーあ、とグラウシェラーは思った。
 まあ、いつもの事だから……でもちょっと時期が悪いわよね、とダルフィンは思った。
 どうやら、フィブリゾとガーヴのやり取りはいつもあることらしい。二人は場慣れしているようだ。
「くたばれぇっ!」
「わっ、ちょっとタンマっ!」
「まったなーしっ!」
 かくて、恒例の辺りの魔族を巻き込む大喧嘩が始まった。ただ、他の二人はしぶしぶと後片付けの用意とL様歓迎パーティの指示にそれぞれ部屋を出た。


 はい、いかがでしたでしょうか?
 私にしては短いですが、まあ、それはご愛嬌って事で。
 結構尻切れとんぼで終わってますが、この後の事は皆さんで考えてください。
 また、サングラスを匂わせる眼鏡が出てますが、これはこの時代にサングラスなんてあるのかなあ?なんて思ったのであえてダイレクトに書きませんでした。
 今回はカタートの高位魔族を書きましたが、一番難しいのは私の中では覇王でした。結構想像が固まらない事です。
 それにしても私って朱に染まりは魔を使う者の後編も書かずに何やっているんでしょうかね(苦笑)
 ガーヴとフィブが書けましたけど、ガーヴファンの方ごめんなさい(^^;
 でも、やはり不幸なガーヴですから、こうしないと味が出ませんので(笑)
 次は今度こそ朱に染まりはです(^^;
 では、次の作品でお会いいたしましょう
 

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3133Re:忙しいカタート松原ぼたん E-mail 6/18-19:23
記事番号3122へのコメント
 面白かったです。

>「今日中に終わらせるはずの書類がこんなにも部屋中に溜まっていて、それでいて分別していた書類がフィブリゾのおかげでごちゃまぜになった事を悩んでおられるのですか?」
 フィブ、なにをした?
>「……ロード・オブ・ナイトメア様だ」
 なるほど。
>「もしそれが本当なら、まいったな……俺は今日講師のアルバイトがあるんだが……」
 こらこら(笑)。
> ガーヴはゆっくりと立ちあがる。その背中には怒りの炎がメラメラと燃え盛っているような雰囲気がガーヴを包み込んでいた。
 ガーヴが魔族を裏切った理由って、まさかこれじゃあ・・・・?(笑)
> また、サングラスを匂わせる眼鏡が出てますが、これはこの時代にサングラスなんてあるのかなあ?なんて思ったのであえてダイレクトに書きませんでした。
 アニメでアメリアがしてましたねぇ、サングラス(笑)。

 本当に面白かったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。

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3143Re:忙しいカタート桜我天秦 6/19-05:30
記事番号3133へのコメント
どもども、最近遅筆ぎみ(確実に遅筆な)桜我天秦です。


>>「今日中に終わらせるはずの書類がこんなにも部屋中に溜まっていて、それでいて分別していた書類がフィブリゾのおかげでごちゃまぜになった事を悩んでおられるのですか?」
> フィブ、なにをした?
 たぶん、駄々をこねたとか(笑)

>>「……ロード・オブ・ナイトメア様だ」
> なるほど。
 本当はL様も出るはずだったんですが、あえてバランスを考慮した為出ませんでした。

>> ガーヴはゆっくりと立ちあがる。その背中には怒りの炎がメラメラと燃え盛っているような雰囲気がガーヴを包み込んでいた。
> ガーヴが魔族を裏切った理由って、まさかこれじゃあ・・・・?(笑)
 いえ、私としては裏切った理由は、Sが、誰を捨て石にしようかと悩んで居た所をフィブが「ガーヴがいいのでは?」と耳打した結果で、裏切ったと思います(笑)
>> また、サングラスを匂わせる眼鏡が出てますが、これはこの時代にサングラスなんてあるのかなあ?なんて思ったのであえてダイレクトに書きませんでした。
> アニメでアメリアがしてましたねぇ、サングラス(笑)。
 確かにそうなんですけど、とりあえずベースは小説です。ですので、小説にはサングラスは出てないと確信したのでああなりました。
 もう一つ言えば、サングラスをどんな風に表現できるか、との考えもありました。

> 本当に面白かったです。
> ではまた、ご縁がありましたなら。

 いつも感想をくださってありがとうございます。ではまた