◆−約束、時。−リル (2005/3/15 17:30:57) No.31271 ┗はじめまして−京極師棄 (2005/3/19 18:14:25) No.31279 ┗Re:はじめまして−リル (2005/3/22 14:03:24) No.31291
31271 | 約束、時。 | リル | 2005/3/15 17:30:57 |
約束、時。 「何、これ……」 凍りついた城の中、あたしは小さく呟いた。 いや、凍りついた城、というのは間違った表現かもしれない。何しろ―― 凍り付いているのは、城ではなく、その中の人間たちなのだから。 「……とりあえず、中へ入ってみましょうよ」 アメリアの提案に、あたしたちは城の中へと足を踏み入れる。 少し、話をさかのぼってみよう。 実を言うと、あたしたちは思いっきり迷っていた。 右を見ても雪、左を見ても雪…… とりあえずレゾとの戦いも終わったわけだし、ゆっくりのんびり旅を楽しんでいたわけなのだが……なんであたし達は、ンなとこにいるんだ!? 「あー、もうっ!前の戦いだって頑張ったんだから、少しぐらい報われたっていいじゃないっ!」 「誰に向かって叫んでるつもりなんだ、それは」 「うっさいよ、ゼルっ!あんたらはいいわよね、ゼルは温度とか感じなさそうだし、ガウリイは神経なさそーだし……」 後のほうは小さく言ったつもりだったのだが、どうやら聞こえていたらしく、ゼルガディスの方がジト目であたしを睨んでくる。何よー、誰が見てもそう思うわよー。 「でも本当に寒いですよ。暖かくなる呪文とかないんですか?」 「あったらとっくに使ってるわよっ!」 震えながらも問うアメリアに、あたしは叫びながら彼女に答える。こうしていないと耐えることができないのだ。 「ここらへんに、確かファルマー城ってとこが……」 あたしが取り出した古地図を、アメリアも後ろから覗き込む。 「結構古い地図ですからねー。もしかしたらつぶれちゃったのかもしれませんね……」 「……なあリナ、あれ」 「へ?」 ガウリイの指した先に見えたのは―― お約束のごとく、そびえたつ白い城だった。 ……そして事件は、冒頭へと戻るのである。 「どーゆうことだろうね、これ……」 周りを見回しながら、それでもあたしは奥へと足を運んでいく。 まるで氷のオブジェである。 この城全てが一つの町としてあったのだろう。入った最初は普通の格好の人々が多かったのだが、進むうちに兵士や、メイドの姿が見えてくるようになった。 椅子に座って眠っているものも居れば、誰かと話をしながら歩くものも居る。生活感にあふれていながらも、いたるところに埃がかぶさっている。 そして―― 「客人か、珍しい……」 キイ、と開いた扉のむこうから、しわがれた老人の声が聞こえてきた。 部屋の一番奥、飾り気のない玉座に座った一人の老人―― このファルマー城の王、だろう。氷の部屋の中、一人だけ色をつける老人。あたしたちを見据えて静かに座っている。 「その男は、このファルマーの王でありながら国民を魔物に売ったのです。ここへは立ち寄らずにまっすぐ目的地に向かったほうが得策でしょう。旅の方」 後ろから、もう一つの声がした。 凍りついた部屋の中、あたしたちは振り向く。いたのは40代ほどの女性だ。彼女は淡々と話し続ける。 「このファルマーは二十年ほど前から魔物の危機にさらされています。魔物は人間の血肉を必要としたため、ここの民を魔物に捧げ続けています。そして、さらには自分の息子であるリチェルト王子までも……」 彼女は、王の隣の人物に目を移した。その人物は王に向かって大きく剣を振りかぶり――やはり、同じように凍りついている。 「ですので、ここはかまわず素通りください、お客様が、た……?」 彼女が怪訝な顔をしてこちらを見たのも当然だった。いや、正しくはこちらの後ろを。またあの子は――……っ!ある人物を除く三人は、慣れた様子で後ろを振り返る。 「何を言っているのです!一つの国を脅かす魔物!放っておけるワケがないでしょうっ!」 「そこ、脆くなっておりますのでお気をつけください」 「何しろ築二十年ですので」と女性が付け加えるが、びしっとあさっての方向にポーズを決めたアメリアは、予想のとおり二階の手すりから「あーれー」とお笑い芸人よろしく落っこちる。女性は見てみぬふりを決め込んだのか、あたしたちのほうへお辞儀した。 「グランス城メイド、マリーでございます。どうかお見知りおきを」 「グランス城、ですか?ここのメイドでなく」 「ええ。……もし皆様方があの方の言う通りあの魔物を退治していただけるのなら……」 「もちろんですっ!頑張りましょうね、リナさんっ!」 「ごめんアメリアあたしパス」 「ええぇぇ……」 アメリアが不満そうな声を上げる。いきなり何考えてるかな、この子は。 「だって寒いもん。お金にもならなそうだし」 「リナさん、ひどいっ!ならいいです、私たちだけでやりますっ!頑張りましょうね、ゼルガディスさん!」 「……俺もか」 「当たり前です!」 「魔物を倒すなら、裏口から出て北へまっすぐ、氷の張る洞窟です。それと、この鍵を」 「鍵ですか?」 「この城のなかを自由にお使いください、では、私は」 「行きますよ、ゼルガディスさん!おーっ!」 「…………」 ……嵐が去った。 「どうする?ガウリイ」 「待つしかないだろ」 「それもそうかぁ……」 壁によりかかると、一枚の写真が目に入った。写っているのは、さっきのリチェルト王子と、20歳ほどの知らない女性。どちらも楽しそうに笑いあっている。 「……似てるわね」 「誰と?」 「さっきのマリーさんとよ。となるとこれはもしかすると……」 ふむ、とマリーさんのいなくなったドアを見やる。 壁の時計が、ちょうど2時を刻んだ。 二十年前から動き続ける、一つの時計が。 「倒したらしいな」 横のガウリイがポツリとつぶやく。 先ほどからだいぶたった今、空から血の雨が降ってきていた。 ――一体、何人の血を吸ってきたのか―― 血の雨はとどまるところを知らず降り続け、人々を溶かす。 蘇った人々は王に問う。これはどういうことか――何故こんなことに――と。 王は答え、リチェルト王子に王位を譲った。 そして―― 「行くんですか?」 あたしの質問に、門から出ようとしていたマリーさんがびくりと肩を震わせた。 お互いに沈黙が続く。 「……何か聞きたいことがあるのではないのですか?」 「何か聞かれたいことでもあるんですか?」 再び沈黙。 「……リチェルト王子が、あなたのことを探していたわ」 「あの方が――」 「パメラ!」 バン、という扉を開ける音と声で会話をさえぎったのは、ちょうどいいタイミングで現れてくれたリチェルト王子。 彼はマリーさんの姿を認めると、そちらに近寄っていく。 「私は、あなたによく似た人を知っている――顔をお上げください」 「あなたのお母様ほどの年なのですよ」 「パメ――」 「私は、グランス王家に仕えるただのメイドのマリーでございます」 「でも――」 「私は、ただのマリーでございます。どうかお忘れください」 そして、マリーさんは――パメラは、門から去っていく。 「……マリーさん、どうしたんですか?なんだか、すごく悲しそうに……」 入れ替わりに帰ってきたアメリアが、あたしに訊いた。 「……グランス城のメイド、マリーに会ったら言ってくれ。私は、君が帰ってくるのを待っている、と――」 お話は、これで終わり。旅の途中の、本当に小さな出来事―― ◆◆◆あとがき◆◆◆ あー、こんにちは。お久しぶり、または、はじめましてのリルです。 ンなもん乗っけていいんだろうか、とか思います。 まあ結末は、マリーは氷付けにされてなかったから年をとっていたけど、王子は年をとっていなかったってことです。分かりにくそうだなー、と。 最初前後編にしようかと思ってたんですけど、まあいいや!ということで。 感想お待ちしております。 |
31279 | はじめまして | 京極師棄 | 2005/3/19 18:14:25 |
記事番号31271へのコメント はじめまして京極といいます。 なかなか興味深い話を見たのでレスさせていただきます。 無情なる時ということなのですね。 再びあえたとしても悲しい出会いということですか。 一人で過ごした人の心とはどういう風になってるのでしょう。 そう考えていくとなかなかおもしろいことになりそうです。 それでは短いながらもコレにて・・・・・・ |
31291 | Re:はじめまして | リル | 2005/3/22 14:03:24 |
記事番号31279へのコメント わー、きゃあああーっ!(嬉しい悲鳴) ありがとうございます、京極さん。レスもらえるとは思ってなかったです! 原作っぽくギャグいっぱい入れたかったんですけど、はは、失敗、かな? 深く(?)考えていくと「主人公何にもやってねーよ」ってことになるので、ご容赦を、って深くってそっちじゃないだろ。なんかリナ達めちゃくちゃ強引にいれちゃったー。シリアスな話のあとがき(?)がこんなのでいいんだろうか。 じゃ、何にも答えてませんが、それじゃっ |