◆−チルドレン 第一章:十七話−かほ (2005/4/1 21:42:19) No.31337 ┗チルドレン 第一章:十八話−かほ (2005/5/1 16:04:33) No.31408
31337 | チルドレン 第一章:十七話 | かほ | 2005/4/1 21:42:19 |
…馬鹿みたいだ私。 扉の前でまるで石みたいに固まって動けない。 動かなきゃ。 けど――― 『ぎゃあぁああぁあああああああああぁあぁあああぁあああ!』 思考を遮って叫び声が上がった。 いきなりの出来事に驚き、握っていたドアノブを押してしまった。 「あ――――」 扉のしまりがゆるかったのか、扉がゆっくりと開いていく。 まず目に入ったのは赤。 赤い血が一面に広がっていた。 その血溜まりの中に少年が倒れていて、男の人がその少年の上に覆い被さり泣いていた。 …ぎぃ……。 軽く軋んだ音を立てて、扉が開ききった。 そして、視線が合わさった。 窓枠に優雅に腰掛けていた彼は、軽く血にまみれていた。 美しく長い金髪、透き通る様に白い肌に、血が所々塗られていた。 「…エルツ?」 彼は、じっ、と私の顔を見つめると言った。 「ぼうっ、と馬鹿みたいに突っ立ってどうした? てか何してんの?」 「……っこっちのセリフよそれは!何してるの!?何っ、何をっ………!」 彼は表情を動かさない。 笑ったところを見たこともなければ、怒ったところもない。 唇は言葉を紡ぐためにしか動かなく、両端を上げたこともなければ、無駄に大きく開け、怒鳴ったこともなかった。 だから、この時も彼は無表情だった。 「何って…食事」 「…は……」 「知らない?魔族は負の感情を糧として生きてる」 「…何を………」 何を言っている? 負の感情が生きる糧? 負の感情がないと生きていけない? いや、けど… 「…負の感情を得るだけ……なら、殺さなくてもいいはずでしょ? …なんで、なんで、殺してるの!?」 「より美味しい食事を得るため。 そんなこと言ったって人間だって、…まぁ植物も生きてるけどこの際それは置いといて、人間だって植物だけでも生きることは出来るけど、より美味しいもの――肉を食べるために動物を殺すだろう?それと一緒だよ」 唇を知らないうちに噛んでいた。 次に言う言葉が見つからない。 彼の言うことは一理あるかもしれない…。 けど―― 視界の端にある無惨な現状。 これは――― 「…確かに、そうかもしれない…、だけど……こんなの酷すぎる。 許されることじゃない。 止めて。 もうしないで。」 「…人間たちだって動物を殺してるくせによく言うね。 無理だよ。 俺だって美味しいもの食べたいんだ」 「…これからも殺すつもり?」 「うん」 「…なら、あなたはこの世界の害になる。 私が…、私があなたを殺します。」 −続く− −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 高校受検終了!おめでとう私!! そして合格おめでとう私! てなわけで、たぶんこれから復活しますので、よろしくお願いします。 |
31408 | チルドレン 第一章:十八話 | かほ | 2005/5/1 16:04:33 |
記事番号31337へのコメント ――――…羊が一匹、羊が二匹……… ――羊が五十四匹……六十匹……… 「…七十一匹、七十二匹、七十三匹、七十四匹―――――」 そこまで数えて、ミナはだるそうにベッドから体を起こした。 「………眠れない」 おかしい、いつもなら三匹目でぐっすりのはずなのに…。 ぼぅっと考えながら、頭をぽりぽりとかく。 そして大きく欠伸をする。 「…眠たいのになぁ」 これが世の言う不眠症というやつだろうか。 眠たいのに眠れないなんて地獄だ。 眠れないときは怖い夢を見たときだけで十分なのに。 …それに、見たとしても母さんが一緒に寝てくれたらすぐ寝れたから……… ぢくっ… 「え?」 一瞬、胸に嫌な痛みがはしる様な感覚にミナは胸を押さえた。 次の瞬間、その胸を押さえた手に、ぽつっと、熱い雫が落ちてきた。 「あ、あれ?」 ミナはおそるおそる胸を押さえてない方の手を顔に持っていくと、指先で軽く頬に触れた。 「……あれ?私、泣いてる?」 頬についた涙のすじを指先でゆっくりとなぞる。 「…え、なんでだろ…、なんで…泣いてるの…?」 しかも、止まらない。 ぼろぼろと、次から溢れては流れていく。 「…な、なんで?…止まらない、止まらないよぉ…」 拭っても、ぬぐっても、溢れてくる。 「…や…だ……、止めて…とめて………助けてっ………」 ――――――母さん! どくんっ…と、心臓が――――心が、脈打った気がした。 「…………あ……」 自分でも分からなかった。 けど、今解った。 「…あ…ぁ………うぅ……」 ぼだぼだっ、と涙が落ちる。 「…あ…いた…い、あいたいよお……母さん……っ」 あいたいあいたいあいたいあいたい…… ぼろぼろと、涙が頬を焼いて流れていく。 解ったら、余計に涙が止まらなくなった。 けどもう、止めようとは思わなかった。 だって自分はまだ子供なのだ。 母親が恋しくて泣いたってかまわないはずだ。 −つづく− |