◆−無駄とはステキなことである−パッチー (2005/5/7 22:41:31) No.31427
 ┗あとがき−パッチー (2005/5/7 22:56:44) No.31428
  ┗幾多の無駄の上に意味は存在する…(←何気にマジ。)。−ぷらす (2005/5/8 19:15:24) No.31431
   ┗主人公の存在とは−パッチー (2005/5/8 19:25:53) No.31432


トップに戻る
31427無駄とはステキなことであるパッチー 2005/5/7 22:41:31


世の中には、無駄なことがある。

たまにこう思わないだろうか。「こんなもの、無くなればいいのに」「こんなこと、何でするんだろ

う」と。

しかし、それらには明確な意味があるんだ。

無駄なことをする。という、明確な意味が・・・

僕はそれに気づいた。だから、それらを実行することにした。

これは、僕が今までしてきた、とても無駄だけれど、意味のある事のひとつだ。

面白いかどうかはわからないけれど、どうか読んで欲しい。




その日、僕は意味も無くセイルーン郊外に来ていた。

なぜかって?意味も無い事に答えるのは、至極難しい。あえて言うなら、ただ無駄だったから、とし

か言えないだろう。

話が脱線したが元に戻そう。僕はセイルーン郊外を歩いていた。

てくてくとただ歩いていると、向こうから凄い勢いで女性が走ってきた。

とても急いでいるのだろうが、相手が急いでいるのであれば挨拶をするのが僕の主義だ。

急いでいる以上、多分答えは返ってこないだろう。しかし、無駄だが意味のある事はするべきなのだ



彼女が通り過ぎる瞬間に、軽く右手を上げて声をかける。

「こんにちわ」

キキーッ

声をかけられた瞬間、女性は両足でブレーキをかけ、振り返った。

「こんにちわ!!急いでいるので失礼!!」

といって、またもや猛スピードで走り出す女性。

いや、今の人は・・・どうやら女の子のようだ。

「・・・猛スピードで郊外を走り回る・・・・少女A・・・・」

・・・簡単に状況を解析して、僕は急に彼女のあとを追わねばならない気がしてきた。

無駄だ。激しく無駄な展開になりそうな気がする!!

僕の無駄感知能力は今日も休み無く動いている。他の人にとってはなんて無駄な能力だろうか(笑)

彼女を追って、僕もまた走り始めた・・・


「キャァァァァァ!!」

絹を引き裂くような、女の悲鳴。美しい、ブロンドの少女だ。

「ひっひっひっひ。そんなに嫌がるんじゃねぇよ。」

リーダー格らしき男が、下品な笑いを浮かべる。

「そうそう、悪いようにはしねぇよ・・・ただ、ちょっと俺等に付き合ってもらうだけだ」

4〜5人は居るだろうか。少女を取り囲み、一歩、また一歩と近づいていく。

後ずさり、背中に当たる木の感触に気づき・・・


「そこまでよ!!!」


森の中に、響き渡る声。

力強く・・・それでいて若々しいソプラノの声。

「誰だ!!」

「いねぇ、馬鹿な!?」

口々に驚きの声を上げる男達。

しかし、ただ一人・・・少女だけが、その声の出所を見ることが出来た。

「・・・上・・・!?」

少女の声に、あわてて上を向く男達のリーダー。

高く聳え立つ老樹の頂上に、一人の少女が立っていた。

腕を組み、まるでサーガの主人公のように白いマントをたなびかせ、彼女は男達と少女を見下ろして

いた。

「お前達!先ほどからの悪逆非道、許すまじ!!正義の名の下、このアメリアが成敗する!!とぅ!

!」

10Mはあろうかという巨木から、彼女は飛び降りた。


どべしゃ!!

かなりの猛スピードで。

彼女は、地面とのキスを果たした。

確かに足を下に向けて降りたはずだが、何故か着陸の際には上下が逆になっていたのだ。

呆然とする少女と男達。そして笑い転げる男に、余りの痛さにうずくまって転げまわるアメリアとい

う少女・・・笑い転げる男?

そう。男が一人、物陰から身をよじりながら這い出してきた。

苦しそうに腹を押さえ、爆笑を必死の思いでかみ殺しているようだ。

しかし、物陰から出たせいで見つかったので、笑いを抑える理由は無くなった。

「ふっはっはっはっはっはっはっはっ!!無駄すぎる!馬鹿すぎる!ステキすぎるぞぉぉぉぉ!!」

男の笑い声だけが、静まり返っている森の広場に広がっていった。


10分後


「ひー、ひー・・・・も、もう結構。さ、続きをやってくれ」

『出来るか!!』

男達と、さらに少女の突込みが返ってくる。

「てめぇ・・・良い所でジャマしやがって・・・・」

「そうだそうだ!せっかく人が気合入れて悪い事してたっつーのに」

「悪者っぷりに傷がついちまったじゃねぇか」

男達に詰め寄られる私。

「まあまあ。ほら、もう一回やってよ。彼女も乗り気みたいだし」

リーダーは(これからは悪リーと呼ぶ)私が指差すほうに顔を向け・・・・

「・・・・あほかこのガキ」

ゲシッ、と木によじ登っていたアメリアにけりを入れる。

見事な蹴りだ。悪者やってるくせに武器を使わず延髄蹴りとは・・・これも今日の無駄日記帳(戦争

とは万歳だ)に書き込んでおこう。

「てめ、さっきから何ぶつぶつ言ってやがんだこらぁ!!」

おっと。口に出していたらしい。「何でもないよ、セニョール」

「・・・・てめぇ、さっきから俺等を馬鹿にしてるだろ?」

「そんなことは無いよ、ミスター。私はイタリア帰りのセイルーン育ちでな。時たま語尾にセニョー

ルとついてしまうだけだ」

「・・・・お前等、こいつぶっ殺せ」

おや、ミスターは気に食わなかったようだ。

「まあ待て諸君。私は死ぬ前に先ほどの騒動をもう一度見たいんだ。ぜひ見せておくれ」

「はあ?」

部下の一人が、困った顔をして悪リーを見る。

私はにっこりと笑って、リーダーにこういった。

「一人、金貨10枚出そう」

『やります!!!』




「・・・げっへっへっへっへっ、逃げるなよおじょうちゃん」

舌なめずりをして、リーダー格の男が下品な笑いを浮かべる。

「そうそう、悪いようにはしないからさ」

先ほどと若干口調が違うようだが、まあこの程度の誤差は気にしない。

私は木陰の切り株に腰を下ろして、目の前で繰り広げられている喜劇を眺めている。

「・・・誰か・・・・誰か助けて!!」

・・・彼女は役者だろうか?ほとんど先ほどと変わらぬ演技力だ。

この状況で冷静に分析している私は、物陰から静かな拍手を送る。

ああ、なんて無駄な展開になってきたんだろう。仕組んだのは私とはいえ、本当にやり直してくれる

とは。

盗賊という連中の評価を少し考え直そう。

さて、もうひとつの問題・・・・

私は一生懸命木によじ登っているアメリアに声をかける。「大丈夫ですか?」

「はい!正義のためです!!」

意味がつながらないが、大丈夫そうなのでほうっておこう。

演劇はクライマックスを迎える。

ジリジリと近づいてくる悪党達。少女は一歩、二歩と下がり、背後にある木の存在に気づく。

そして・・・・

「そこまでよ!!!」


森の中に、響き渡る声。

力強く・・・それでいて若々しいソプラノの声。

男達は周囲を見回し、発した人物を探す。

だが、それを最初に見つけたのは少女だった。

彼女の視線を追って、男達は上を向く。

「とう!!」

高い老樹から、白い影が飛び降りた。

白いマントをたなびかせ、さながら白鳥が舞い降りるかのように地面へと近づき・・・

ドベシャァァッ

またもや顔でランディングする。

「・・・あー。痛いのが趣味なのか?変わったヒロインだな・・・」

「違います!!」

悪リーの一言に、アメリアは立ち上がって突っ込んだ。

僕は思わず「凄い生命力だ・・・」と言ってしまったが、どうやら聞きとがめられなかったようだ。

気を取り直して、アメリアは彼等を指差し叫ぶ。「貴方達!!うら若き乙女に乱暴狼藉を働くなど、

天が許そうともこのアメリアが許しません!!」

「正義の鉄槌!受けなさい!!てぇぇい!!」

バシッ、バタッ、ドタッ

次々と倒されていく悪リー部下達。

「さあ、貴方で最後よ!!覚悟しなさい!!」

「くっそぉぉ、覚えてやがれ!!」

捨て台詞を残して、悪リーは去っていく。

悪リーの姿が見えなくなると、アメリアは少女に声をかける。

「大丈夫?もう、悪者は居なくなったわ。」

「ああ、ありがとうございます。貴方のお名前は・・・・?」

少女の声に、アメリアはマントを翻して、こう答えた。

「正義の使徒、アメリアよ!!さらば!!」

光の中を、彼女は走り去っていった・・・・・


「はい。カットー。お疲れ様ー」

僕が声をかけると、草むらからがやがやと悪リーたちが出てくる。

「いやー。良い画取れたよ。じゃあ、これ報酬ね」

そう言って僕は、少女と悪リーたちに金貨の袋を渡す。

「いやー働くってのも意外といいもんだな。お嬢さん、良い演技だったぜ」

「うふふ。こう見えても、旅の一座でスター張ってたんだもの。このくらい朝飯前よ」

労働の報酬にしては割り高だが、僕としても良い物が見れたので文句は無い。

何か忘れている気がするが、まあ大したことじゃないだろう。


「・・・あの、リーダー。今気づいたんですが・・・」

「うん?何だ。」

「俺等、強盗ですよね・・・全部奪えばいいのでは?」

・・・・・

「俺達ゃ強盗だぁ!!有り金全部出せ!!」

今の今まで嬉しそうに金貨袋を抱いていた男とは思えない形相で、悪リーは僕に掴みかかってきた。

「あらよっと」

掴みかかられたら投げ飛ばすのが、僕の主義だ。

綺麗な放物線を描いて、悪リーは飛んでいった。

「・・・・・・・あれ?」

悪リーの部下が、間の抜けた声をあげた。

きっと彼の頭の中では、僕がぶん殴られているシーンがコマ送りで流れていたのだろう。

残念ながら、世の中彼の想像通りに事が運ぶことは無い。

僕はつかつかと彼に歩み寄って、肩に手をかけ・・・





その後のことは、それほど面白くなかった。

戻ってきたアメリアが、悪リーたちを投げ飛ばしている僕を見て「悪認定」してしまったり、少女が

僕をかばおうとしたり、とか。まあ、どうでもいいことだ。

とにかく。僕は今日も一杯無駄な事をすることが出来た。

明日も、こんな日だと良いな・・・

今日の日記、終わり。



つけたし。金髪の少女だが、名前はアリスというらしい。身寄りがないそうなので僕が引き取った。以上




トップに戻る
31428あとがきパッチー 2005/5/7 22:56:44
記事番号31427へのコメント

何だこれは。


読み直して、真剣にそう思いました。
書いている最中の記憶があやふやですが、気づいてみるとかなりとんでもない内容になっているな・・・(笑)

この小説を最後まで読んでくれて、そしてこのあとがきを読んでくれている方。本当にありがとうございます。
もしかしたら、この小説の続きも書くかもしれません・・・が、書かない可能性のほうが大きい気がするのも否めない・・・もし書いたとしたら、またとんでもない内容になるでしょう(笑)

それではこの辺で。さようなら!

トップに戻る
31431幾多の無駄の上に意味は存在する…(←何気にマジ。)。ぷらす 2005/5/8 19:15:24
記事番号31428へのコメント

こんばんは。無駄マニア(笑)の主人公の日常の一コマ、拝見させて頂きました。やはりこういう話にはアメリアは適任だと再確認。このまま続けて行けばよりまったりとした脱力感に磨きが出そうですね。ところで、この主人公は何者なんでしょう?それを考える事事態が「無駄」ですか…(汗)?

トップに戻る
31432主人公の存在とはパッチー 2005/5/8 19:25:53
記事番号31431へのコメント

こんばんわ。ぷらすさん。チャットではいつもお世話になってます(笑)

主人公の存在・・・それはまあ、おいおい出てくると思います。続きが出たら(笑)
アメリアは、こういう話ではとても使いやすいです。また、使わせていただくことになりそうですが(笑)
次の話は、更に無駄を突き詰めていきたいと思います。
それでは!レスありがとうございました!!