◆−sisin相応、4(前書き)−ぷらすとーる (2005/6/13 20:50:37) No.31525
 ┗Re:sisin相応、4−ぷらすとーる (2005/6/13 20:51:04) No.31526


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31525sisin相応、4(前書き)ぷらすとーる URL2005/6/13 20:50:37


こんばんは、ぷらすとーるです。
今回、ようやく第4話をUPしました。
新キャラも出て、話も大きく動き出すところです。

拙い作品ですが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

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31526Re:sisin相応、4ぷらすとーる URL2005/6/13 20:51:04
記事番号31525へのコメント

あれからつい少し前に王さんが機械に襲われた事や、私達が狙われた事が嘘の様に何事も無く街を移

動する事が出来ていた。

まあ、時間にして1時間弱くらいなんだけど、今はそのくらいの時間が物凄く長い時間が経った様に

感じてしまう。
昼下がりの街は慌しく行き交う人々で埋め尽くされ、少し前まで意識もしていなかった安穏とした時

間を私は思い出した…
この都市のウリである、人工重力で地面から浮いたまま街の外側から中央に向けて流れる水のオブジ

ェを道標に南の方角に歩き始めてから…

「あ…!」

「!?」

オブジェの水の流れに視線を移していた王さんは、私の声に視線を水から私の目に向けた。

「あの感じが…消えてる…」

『私の中から聴こえて来る』様な…その感覚がさっきから感じられなくなってる…
つい1、2時間前にあった、まるで他人の考えている事が自分の中でリアルに再生される様なあの感

覚は気が付いたらすっかり消えていた。

「!」

その私の様子から王さんも何が起きたか読み取ったらしく…

「街には人が多すぎる…」

「え!?」

王さんのその言葉の意味が良く分からず、私は王さんを見る。

「陽が落ちて、陰が来る…」

王さんはどこかサングラスの上からでも分かる、定まらない視線で言葉を紡ぎ始めた。

「それが交わろうとしている今…は自分と他人の境目が曖昧になるな…」

「え?そう言う時こそ私の中に色々な考えが入って来ないかと…」

事実、薄々考えていた。もし、これ以上私の中で私じゃない『誰か』が動き始めたら私はどうなるの

かと…

「気を付けといた方がいい。そう言う時こそ『鬼』は姿を現すからな。」

「鬼…?あの、さっきから私達を狙っている…?」

「あれは人だ。鬼はそれだけで生きる物じゃない。」

きちんと分かる言い方の答えを聞けず、私は少々脹れて街角でカードを使い買ったジュースのキャッ

プを空けようと…

『ザプッ!!』

(!)

その水音で振り向いた私に写ったのは、水沿いにいた王さんの後ろを水の中から白い人間の両手が…

いや、正確にはそうじゃなくて、『人間の両手だけ』が王さんの体を掴んでいる姿だった。

「王さん!」

周りの人たちも異変に気付き、固まって軽いパニックになっている。
私はとにかく王さんを掴んでる『二本の腕』を何とかほどこうと、とにかく駆け寄って

「近づくな!こいつは俺なくて俺を使ってあんたを引き寄せようと…」

『パシャン!!』

その王さんの言葉が終わらない内に、『カシャン!』と乾いた小さな音を立てて地面に落ちたサング

ラスを残して、王さんの体は水のオブジェの中に腕ごと引きずり込まれていった。

「王さん!」

とにかく私は王さんが言いかけた警告の言葉なんか無視して水の中を覗いてみて…

「王…さん…?」

その水の中には…何も無かった。
王さんも、腕の主も…

「何が…どうなったって言うの…?」

頭の中が何だかポッカリと軽くなる様な感触が私の混乱した思考の中をよぎっていた。

「お、おい。お嬢ちゃん…あのすっかり消えちまった兄ちゃんの知り合いかい?」

「何なんだ??あのサングラスの兄ちゃん、どうなったんだ?水じゃどうしようもねえぞ!」

2人の若い痩せた人と中年の人が声を掛けてくれて…でも、そんなのは今の私の頭に入る訳が無かっ

た。
唯、残ったサングラスを自分でもよく分からないまま手にしていた。
会って数時間だったし、その態度は決して優しく接してくれた訳でもない。
でも、この不可思議な状況で私はあの人…『霊獣白虎』の名前を持つ人を何故か…

(月の流れが変わるよ。もうすぐ南方の星がでる。)

「あ…!」

今度は男の子、それもまだ幼い声が『私』の中に反響した。

(猛火が君を惑わそうとするよ。でも、君が恐れすぎてはダメだ。)

「猛火…?」

そう、私が焦点の定まらない意識で呟いた時…

『ゴワッッ!!』

「うわッッ!」

「な…なんだあ…!?こいつは凄い炎だ!!」

「水じゃ消せねえぞ!」

後ろの二人がパニックになってる声が聞こえた。
それは黒い…まるで真っ黒な闇そのものが燃えている様な『炎』だった。
その炎の熱気が私の意識を呼び覚ました。

「!!」

炎は一つ、二つ…分かれていって大勢の人が居る大通りに広がっていく。
私はとにかく水のオブジェに体を突っ込み、何とか息と視界の自由だけをかろうじて出来るくらいに

顔を覗かせとにかく水の流れに強引に逆らって進み始めた。

(真に恐れるべき物は目に映る物じゃない。君自身が作りだしているんだ。)

(ひょっとして…声を聞かせてるのは『貴方』なの…?)

その瞬間、私は気付いた。
私に声を掛けている物…『水』に。

(王さんはどうなったの?貴方は何か分かるの…?)

炎の揺らめくタイミングを見計らいながら、私はそれとなく心の声を掛けてみる。

(白虎は心配ない、彼の天命はまだ残っているからね。その時に白虎を君の望む形で迎えられるかは

君次第だ。)

(随分態度が大きいね!)

最後の『声』に軽く悪態を付いて、私はそのまま充分に水に濡れた体をオブジェから出し、そのまま

大通りを突っ切った。
幸い、『炎』が狙ってるのは私だけの様だ。周りの人たちに被害を掛ける様子は無い。
不思議と恐怖を感じなかった。とにかく陽の落ち始めた街中を真っ直ぐ南の方角に向けて突っ切る。

「おいやめろって!絶対無理だ!」

「このオブジェの水をひっくり返さない限りは…」

(!)

今、気付いた。いや、気付くべきだった!
私はクルリときびすを返し、後ろの二人に向かって思いっきり体を…

『ドンッ!!』

「お…!おい!!何をするんだお嬢…」

『カラン…!』

私の体を思いっきりぶつけた若い痩せた男の人から、赤い宝玉が転がり落ちた。

「貴方達だったんですね…」

この炎を操り、『暗示』の言葉で私をパニックに陥れたのは、この二人の…

「少々、露骨すぎたかね…?」

中年の男はニヤニヤと笑いながら、痩せた男に視線を移す。

「あ〜あ…だからもうちょっと自然に行こうと言ったのに…」

痩せた男も、何だか悪戯を見つかった子供の様な態度で中年の男に呼応する。

「貴方達が、王さんを…」

その言葉に二人はわざと『キョトン』とした態度で…

「知らんね。大方俺たちと同じ『この力』を手にした奴の仕業だろ。」

中年の男は皮肉たっぷりに言う。
この二人は王さんを何処かへ連れ去った『腕』とは無関係…?

「なあ、お嬢ちゃん。あんたも『力』を身につけたんだろう…?だったらこれが今までの俺らに比べ

、どれだけ面白い生き方を出来るかわからんかね?」

「『力』があるからそれを行使する。力が無ければやろうともしない事を?最低ですね!」

その言葉に私は思わず憤慨して反論した。

「まあ、どうでもいい。俺たちはこの『力』を使いたいんだよ…」

そう言って、二人は漆黒の炎をまたおぼろげに浮かばせて…

『ゴアア!!』

(え…!?)

それは私が驚いた以上に、前の二人を驚愕させていた。
漆黒の炎の勢いは突然大きく燃えて弾け、消えてしまった。

「……!?」

二人は困惑と驚愕が入り混じった表情でお互いを見合わせる。
そして、くすぶっていた漆黒の炎は大きく形を変え、炎は熱波となって二人を取り囲んだ。

「本当に…」

男達の後ろから、凛とした良く通る女性の声が聞こえた。

「そこの子の言うとおりだわ。」

それは、面長の細い顔に切れ長の目。高く整った鼻。長い艶やかな黒髪をした女の私から見ても『ハ

ッ!』と息を呑む様な美人の…

「身に不相応な力を使う資格の奴ほどどうしようもない…そうよね?」

あの交差点での女の人…『朱雀』さん!

「また会ったわね、宜しく。ここの朱雀を勤めさせてもらってる漣朱雀です。」