◆−前を向いて。−惣流 舞 (2005/9/2 00:22:05) No.31781


トップに戻る
31781前を向いて。惣流 舞 E-mail URL2005/9/2 00:22:05


たまにここに投稿したくなるんです無性に。
というわけで、ほとんどの方にははじめまして。
古株のお方にはお久しぶりです。
惣流舞と申します。
いご、お見知りおきをー。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 手を、伸ばす。でも届かない。
 こんなもどかしい思いを、一体何度繰り返せばいいのだろうか。
 あたしはこんな夢を、一体何度繰り返し見ているのだろうか。
 隣に誰かがいる幸せ。
 隣に誰かがいる恐怖。
 その隣り合わせの感情を、いつも持て余している。

 ガタン、と大きくはないが、決して小さいわけでもない音を立ててあたしは目覚めた。額を触れば、わずかだが水滴を指先に感じる。荒い息を繰り返し、自分の中に渦巻く、この持て余した感情を収めようと、なんとも悲しいことに、そのことに慣れてしまった体はほんの2.30秒すれば落ち着いてくる。
 隣の部屋にいる彼は、ここ最近の自分の、この情けない様子を知っているだろうか。不意に、心配になる。彼には極力弱い自分なんて見せたくない。いつも前を向いている自分だけを見ていてほしい。それはとても傲慢な願いであるだろうが、『強い自分』でいたい自分にはどうしようもない。
「でも、多分ガウリイにはわかってるんでしょうね…」
 ポツリと、思わず漏らしてしまった。何故なら、こういう状態はここ二週間ほど続いている。気配に聡い彼が、まさかわからないわけでもあるまい。それが、自分を余計に憂鬱な気分にしてしまっている。
 ハァー、と溜息を吐くと、その陰鬱な感情を振り払うように、パチッと顔を叩くと、ベッドをすばやく降り、鏡台の前へ裸足のまま歩いてゆく。鏡に映る、情けない顔をした自分を睨み付けると、しっかりしろ、と言い聞かせる。
「しっかりしろ、リナ・インバース。アンタは今を生きてるんだから」
 最後に、景気付けにヨシッと呟くと、鏡台にあらかじめ置いてあるブラシを取り、癖の強い栗色の髪の毛を梳いてゆくが、もともとの髪質のせいもあって思うようにいかない苛立ちが募る。仕舞いには、ま、いっか、なんて簡単にブラシを放り投げ、パジャマから旅着へと、なるべく己の小さな胸を見ないようにして―――さらに落ち込みたくないからだ―――着替える。
 そして、最後にショルダーガードの留め金をパチンと言う音と共に締めると、それを合図にしたように隣の部屋に寝泊りしていた相棒が声をかける。
「リナ、朝飯にしようぜ」
 ノックをせず、扉の向こう側からかけられたのんびりとした声にどこか胸を撫で下ろしながら、
「そうね。降りましょ」
 最後に鏡で身だしなみをチェックして、前に落ちてきた髪の毛の一房をピンッと後ろに払い、部屋を後にする。
「お待たせ、ガウリイ」
 ドアを開けば、毎日顔をつき合わせている容姿端麗な相棒が笑顔で待っている。
 ガウリイはあたしの顔をジッと見つめると、いきなりあたしの頭を撫で付ける。
「おはよう、リナ」
「おはよう、ガウリイ」
 何するのよ、と言う台詞は朝だけは言わないことにしているのはあたしだけの秘密。
 何気ないその気使いが、実はとても嬉しいなんていうことはあたしだけの秘密。
 その存在が、どれほどあたしの支えになっているのかも、勿論あたしだけの秘密。

 大丈夫。
 あたしはまだいける。
 また、前を向いて歩いていける。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 はい。相変わらず良くわかんないお話です。
 そしてやはり短いですね(汗)
 要約すると、不安になってるリナ。でも、頑張ろう!!
 そんなお話です。
 死霊都市の王の後か、デモン・スレイヤーズの後くらいだと思ってください(笑)
 ほんわか(?)していただけると、嬉しい限りです。
 ではでは。

   惣流 舞