◆−王宮−ハイドラント (2005/9/12 22:05:44) No.31835 ┗時計−ハイドラント (2005/9/23 18:47:18) No.31887 ┗蝋燭−ハイドラント (2005/9/26 14:14:04) No.31906
31835 | 王宮 | ハイドラント | 2005/9/12 22:05:44 |
マエガキ 短いお話を書き殴ってみました。 お時間に余裕のある方は、さらっと読み流していってくださいませ。 あんまり熟読されますと、粗とか見えてきてかえって楽しくない気がします。 ――王宮―― その王国には王宮だけがありました。 王宮には少女と青年が住んでいました。 王宮は時がとまっていましたので、二人は歳を取ることがありませんでした。 王宮には出口がありませんでしたが、とてもひろかったので、けして窮屈ではありませんでした。 もしどこか遠いところへいきたくなったら、本を読めばいいのです。 あるいは絵画を眺めればいいのです。 図書館と画廊には、無数(無限かもしれません。時々ふえているような気がします)の本と絵画がそれぞれありました。 どちらかというと少女は本を読むのが好きで、青年が絵画を見るのが好きでした。 王宮はいつも夜でした。 でも二人とも朝も昼も夕方も大きらいでしたので、何の問題もありませんでした。 王宮にはたくさんの中庭がありました。 色とりどりの造花が咲き乱れる花園。 金銀の果実を実らせる水晶の森。 水が下から上に流れる滝。 宝石の砂漠。 月まで昇っていける梯子のある丘。 月の内部はとてもおおきくて複雑な迷路になっています。 迷路の入り口辺りには、甘いお酒がたたえられた美しい泉がありました。 空っぽの玉座はとても座り心地がよく、座ったまま眠ってしまうこともたびたびありました。 食堂にはいつも豪華な食事が用意されていて、劇場では自動人形(オートマタ)達が終わることのない劇を続けています。 もう時を刻むことのない時計塔のてっぺんは、月よりもずっとずっと高いところにありました。 ここから飛び降りると空を飛ぶことができました。 でもあんまり遠くまではいけません。 見えない不思議な壁に邪魔されてしまうのです。 王宮には開けてはいけない扉がありました。 それは地下へ通じるという扉です。 地下には何があるのかは少女も青年も知りませんでしたが、開けてはいけないということはたぶん恐ろしいものがあるかいるかするのでしょう。 あるいは何かよくないことがおきるのかもしれません。 それでも無性に開けたくなる時がありましたが、どうにか我慢しました。 まあ最近はそんなことめったにありませんけど。 その王国には王宮だけがありました。 王宮には少女と青年が住んでいました。 ここに住み始めてどれだけになるでしょうか。 いつから住んでいるのかは本人達にもわかりませんでした。 それ以前はどこに住んでいたかということも。 二人がいつ出会ったかということも。 二人は深く愛し合っていました。 会話はあまりしません。 一緒にいるだけで十分なのです。 少女も青年もずっと昔からしあわせでしたし、今もしあわせです。 でも今の少女にはひとつだけ気になることがありました。 それは視線でした。 最近になって時々感じるようになった、二人をじっと見つめる二人以外の誰かの視線。 もしかしたら何かを訴えかけているのかもしれません。 でもここには二人以外に誰もいません。 いないはずです。 青年に相談しても気のせいだと言って全く取り合ってくれませんでした。 それで青年がきらいになるわけではありませんでしたが、不満ではありました。 やがて視線だけでなく、声まで聞こえるようになりました。 視線と同じく、青年には聞こえない声でした。 もちろん青年の声ではありません。 最初は何を言っているのかさっぱりわかりませんでしたが、次第にうまく聞き取れるようになりました。 ――タスケテ、タスケテ。 助けを求めて、少女に呼びかけるその声。 ――サムイ、サムイヨ、ココカラダシテ。 たぶんまだ幼い少年のものです。 ――ナニモミエナイヨ、コワイヨ、タスケテ。 少女はその声の主を助けてあげたいと思いました。 声の主はどこにいるのでしょうか。 少女は王宮のありとあらゆるところを探しました。 もちろん月の内部の迷路もふくめてです。 けれども少年は見つかりません。 あと残っているのは開けてはいけない扉だけでした。 もうここしか考えられません。 少女は青年に事情を説明して、扉を開けてもよいか尋ねました。 もちろん勝手に開けることだってできるのですが、こういうことはやはり両者の合意が必要だと考えたからです。 当然だめだという答えが返ってきましたが、それでもあきらめず説得を続けました。 やがて青年は折れました。 ――ただし僕は責任持たないからな。 そう言ってしぶしぶ扉を開けることを許可しました。 扉を開けると、地下へ続く階段がありました。 少女はランプを片手に、恐る恐る降りていきました。 本当は青年についてきて欲しかったのですが、これはまあ仕方のないことです。 ――タスケテ、タスケテ。 声はまた聞こえてきました。 階段を降りきった先は自然洞窟でした。 岩でできた壁、床、天井。 ひんやりしていて湿気が多く苔がたくさんはえていました。 洞窟は幸い一本道でした。 行き止まりには牢屋がありました。 中には一人の少年が座っていました。 服はボロボロで、目はうつろ。 寒さのためでしょう、からだは小刻みに震えていました。 この少年が声の主なのでしょうか。 ――タスケテ、ハヤクダシテ。 でも今も助けを求める声は聞こえているのに、牢屋の中の少年は口を閉ざしたまま。 ――ハヤク、ココカラダシテ。 それに声は明らかに違うところから聞こえてきます。 もっとずっと遠いところからです。 これはどういうことでしょう。 しかしこの際どういうことでもかまいません。 牢屋の扉は外側からなら簡単に開けられるようになっていましたので、少女は少年を助けてあげました。 牢屋の中に入り、少年はどうやら自力では立てないようでしたので、手を貸してあげます。 バランスを崩しそうになりながらも立ち上がった少年を、手を握ったまま牢屋の外へ、そして洞窟の出口まで連れていきます。 少年と一緒に王宮までもどってきた時、少女は突如、まぶしい光に襲われました。 意識が遠のいていきます。 * 少年は目を覚ましました。 ずいぶんと長い夢を見ていたようです。 内容はあまりよくは覚えていませんが、どこか暗くて冷たくてじめじめしたところに閉じ込められていたような気がします。 楽しい夢ではありませんでした。 寝っころがったまま、目覚まし時計を手元に引き寄せます。 時計を見ると、もう起きて学校にいかないといけない時刻でした。 少年は立ち上がり、急いで支度をはじめました。 アトガキ ちょっとした童話風(かな?)の物語です。 青年がちょっと魅力に欠けてますね。 本当に相思相愛なのかと作者ながらも疑問を抱いてしまいます。 なんせ推理小説ではないので地の文でウソ吐き放題ですからね(笑)。 読んでくださった方どうもありがとうございます。 |
31887 | 時計 | ハイドラント | 2005/9/23 18:47:18 |
記事番号31835へのコメント マエガキ 詩みたいなものです。 だから何なんだ、というような味がします。 ――時計―― 海は凪いでいる。 船は海面をゆっくりと滑っていく。 遠くを鳥が飛んでいる。 もう兄さんはいない。 胸に抱きしめた鳩時計。 いつになっても出てこない鳩と、止まったままの二つの針。 兄さんの拾ってきた時計。 壊れた時計。 眠った時計。 兄さんが見つけた時からずっと壊れていた。 兄さんが拾った時からずっと眠っていた。 兄さんの恋人。 片時も手放さなかった。 兄さんは知らなかった。 僕も時計に恋していたことを。 時計を直してもらいにいこう。 そう提案したのは僕だった。 海の向こうには時計を修理してくれる人がいる。 だから船で海を渡ろう。 そして、兄さんを海の上まで誘い出した僕は、兄さんを海に突き落としてやった。 兄さんが時計を独占するから。 だから殺してやった。 愚かな兄さん。 こんなちっぽけな船で海を渡れると本当に思っていたのだろうか。 でも愚かなのは僕も同じだったようだ。 帰れなくなってしまった。 方角はこっちであっているはずなのに、一向にたどり着かない。 そもそも、この船は本当に前に進んでいるのだろうか。 進んでいるように見えるのはウソで、本当は同じ場所でずっとぷかぷか浮かんでいるだけなのかも知れない。 そんなことを考えた途端、本当に船が止まっているような気がした。 いや、止まっているのではない。 回っているのだ。 船尾を軸にして同じところをくるくると。 そう、まるで時計のように。 そういえば、本当にここは海の上なのだろうか。 ふとそんな疑問が頭に浮かんだ。 それだけではない。 僕が乗っているのは本当に船なのだろうか。 そもそも僕なんてものは本当に存在しているのだろうか。 ひょっとしてここは時計の中で、僕も時計の一部なのではないだろうか。 草むらに捨てられていた時計。 持ち帰って姉さんにプレゼントした。 素敵な鳩時計。 壊れていて鳩は出ないし、針も長針だけしか動かないけれど、そんなことはどうでもいいくらい素敵な時計。 病気の姉さんは不思議なことに、時計をもらった日から、少しずつ元気になっていった。 姉さんは時計に恋をしたようだった。 姉さんの快復は恋の賜物なのだろう。 最初は嬉しかった。 でもやがて私は姉さんに嫉妬するようになった。 そして私も時計に恋をするようになったからだ。 時計は姉さんのもの、元々は私のものだったけど、姉さんにプレゼントしてしまった。 私の恋は叶わぬ恋。 姉さんさえいなくなれば。 病気が悪化して、死んでしまえばいいのに。 しかし姉さんの病気はどんどん快方に向かっている。 まさか殺すわけにはいかない。 時計を取り上げようかと思ったけど、姉さんはそんな私の考えを読んだのか、何があっても時計を手放さなくなった。 寝る時もドアと窓にしっかりと鍵を掛けて、私が入ってこれないようにした。 仕方なく私は自分のために空想を時計を作ることにした。 姉さんのものとそっくりの時計を。 すると不思議なことが起こった。 時が経つごとに空想の時計が本物の時計であるかのように思えてきたのだ。 それだけではない。 姉さんの持つ本物の時計が、私の空想の産物であるかのように思えてきた。 それは単なる気のせいではなかった。 空想の時計となった姉さんの本物の時計はやがて消えてなくなり、本物の時計となった私の空想の時計だけが残った。 そしてその日から、再び姉さんの病気は悪化し始め、やがて姉さんは死んだ。 私が殺したようなものだ。 愛しい時計と一緒に私はあてのない旅に出た。 好きな人と世界中を旅するのが夢だった。 今、私は砂漠にいる。 時計を抱きしめたまま、砂の地面を歩いている。 陽射しの照りつける砂漠。 何でこんなところにいるのかは分からない。 どういう経緯でここにやってきたのか全く覚えていない。 ふと疑問を感じる。 ここは本当に砂漠なのだろうか。 私は本当に歩いているのだろうか。 そもそも私なんてものは本当に存在しているのだろうか。 ひょっとしてここは時計の中で、私も時計の一部なのではないだろうか。 海は凪いでいる。 船は海面をゆっくりと滑っていく。 遠くを鳥が飛んでいる。 もう兄さんはいない。 胸に抱きしめた鳩時計。 いつになっても出てこない鳩と、止まったままの二つの針。 アトガキ 歌の雅号とは別に改名するかも知れません。 理由は特にないです。 読んでくださった方どうもありがとうございます。 このツリーでの別作品の投稿はあるかないか分かりません。 |
31906 | 蝋燭 | ハイドラント | 2005/9/26 14:14:04 |
記事番号31887へのコメント マエガキ へたくそなお歌です。 ――蝋燭―― 蝋燭の火がゆらゆら揺れた 虫を一匹焼き殺した 蝋燭の火はゆらゆら揺れた 長い長い夢を見ていた 蝋燭の火がゆらゆら揺れる それを見つめる少年一人 小さな掌 白い掌 凍えた掌 温かに 鳥が飛んでる どこか遠くで 鳥が啼いてる 君のすぐ傍 君は森をさまよって どこへゆきたい さまよい続ける 君は森を踏んづけて どこへゆきたい どこへもゆけない 実はね君はからかわれている いたずらエルフにいたずらされてる いたずらエルフは残酷残忍 ずっとここから出られない ずっとどこへも出られない いたずらエルフは仲間と一緒に 踊っているけど みんなヘタクソ お酒を飲んだせいかも知れない お酒は森の川を流れる それはほんとはほんとうじゃない ほんとは泉の水がお酒さ お酒は亡霊騎士のもの 亡霊騎士がお酒を守る いたずらエルフはお酒を盗んだ 亡霊騎士はとっても怒った いたずらエルフは仲間と一緒に 踊っているけど 亡霊騎士だ! 亡霊騎士が追いかけてきた ヘタクソ踊り 即座に止めて 四方八方逃げていく 亡霊騎士の狙いは一つ いたずらエルフは捕まった 自慢のつるぎで一刀両断 いたずらエルフは真っ二つ 真っ二つになり逃げていく 片方倒れて 両方倒れる 月がそれ見て笑ってる 星はそれ見て嗤ってる それから君も微笑ってる 何も知らない だけど微笑む 何も知らない だから微笑む それでも安心できないよ いたずらエルフがやられても いたずらはまだ終わらない 君は森をさまよって どこへゆきたい さまよい続ける 君は森を踏んづけて どこへゆきたい どこへもゆけない ずっとここから出られない ずっとどこへも出られない だけど君は見つけたよ 蝋燭の火を見つけたよ 蝋燭の火に導かれ 蝋燭の火に誘われて 蝋燭の火に近づいた 蝋燭の火がゆらゆら揺れた ……君を一匹焼き殺した アトガキ 何なんでしょうね、これ? |