◆−あの人と私 +新月+ (連作詩)−十叶夕海 (2005/9/18 19:59:47) No.31859
 ┣あの人と私 +上弦の三日月+ (連作詩)−十叶夕海 (2005/9/18 22:37:24) No.31863
 ┣あの人と私 +満月+ (連作詩)−十叶夕海 (2005/9/18 22:46:33) No.31864
 ┣あの人と私 +下弦の三日月+ (連作詩)−十叶夕海 (2005/9/19 21:05:50) No.31868
 ┗あの人と私 +そして・・・紅月+ (連作詩)(完結)−十叶夕海 (2005/9/19 21:39:59) No.31869


トップに戻る
31859あの人と私 +新月+ (連作詩)十叶夕海 2005/9/18 19:59:47





「馬鹿ですよね、貴女に思いを寄せても叶わないと知っていたのに。」



貴女に 幾千幾万の愛のセリフを

貴女に 幾千幾万の愛の唄を

爪弾こうとも

貴女に 私の思いは届く事はない

あの人は 月のように

涼やかで 静謐な美しさで

一瞬で私を虜にした

叶うべく奇跡など

光の質量ほどもないのに

それでも 私は 貴女に恋をした

心を奪われた




護衛とその護衛対象・・・・・・・・

絶対に思いを交わすどころか

言葉を交わす事さえもままならぬカンケイ

それでも

神でも 神竜でも

この思いを殺す事なんて出来やしない

私はただ この思いを胸に抱き

夜毎 日毎

ただそんざいするだけ・・・・・・・・・





トップに戻る
31863あの人と私 +上弦の三日月+ (連作詩)十叶夕海 2005/9/18 22:37:24
記事番号31859へのコメント



「お前は嘘がつけない男なんだよ。
 姫様は、鈍すぎて気が付いていないようだけどな。」



私が、あの人への愛を自覚してから

しばらくあと 噂好きで同僚にそう言われた

たしかに あの人は

絶対完璧超絶絶望的にニブいが

そいつにバレるなんて思っても・・

いや 想定しておくべきだった

・・・・・・・あの人に知られていないことを

喜ぶべきか 悲しむべきか

迷うが

やはり、知られなかった事を喜ぶべきか・・・・・


でもこの頃は

幸せだった

姫様とあいつと笑い合うことが出来たから


トップに戻る
31864あの人と私 +満月+ (連作詩)十叶夕海 2005/9/18 22:46:33
記事番号31859へのコメント



  「貴女のいない毎日になれることはないでしょう」


でも あの人は18歳になり

成人を迎えた

そして 王位継承権からもれた

貴女は 予定通り

北の大国への半ば人質として

結婚し あいつを連れて

行ってしまった

そのあと 貴女の兄君の護衛にされた

貴女が視界にいない毎日は

泥のように遅々として進まなかった

それでも 貴女への思いは変わらなかった

どこか赤い月にも似た思いは

日に日に私の心を大きく占めていった



トップに戻る
31868あの人と私 +下弦の三日月+ (連作詩)十叶夕海 2005/9/19 21:05:50
記事番号31859へのコメント



「・・・・なぜ・・・・?
 あの大国が・・・・姫様は・・・。」



死んでいないだけの日が何年過ぎただろう

・・・・三年程か・・・・

そんなある日

『北の大国が周囲の小国の連合軍に攻めらた』と

姫様は・・・

姫様はどうなった?

死んだのか?

それとも・・・・

もう。。。。。

私は その報告を聞いてすぐに

飛竜に飛び乗り 

姫様が嫁いだ国に向かった

一も二も無く

ただ その国に向かった

死なないで

慰み者にされないで

そんな願いが脳裏を

稲妻のように駆け巡る


姫様どうかご無事で・・・・・・・






トップに戻る
31869あの人と私 +そして・・・紅月+ (連作詩)(完結)十叶夕海 2005/9/19 21:39:59
記事番号31859へのコメント

「お前は決して必要以外私に触れるなど言うことは無いのに。
 ・・・・何故か包まれているかのような安心かが傍にいるとあった。」



私が北の大国の主城に着いたときには

もう 吟遊詩人が語るような勇壮な白亜の城は

面影すら見つかられなかった

私は 焦っていた

死んでいるか

生きていても男の慰み者になっているか

姫様のことが・・・・・・・



私は 気を取り直して

姫様の居室になっていそうな区画に向かった

何処の城でも

大体の構造は似たようなものだ

しばらく走った

その間にも

私の中の焦燥は大きくなり

私を食い尽くそうとする


「おい、××か?」

唐突に私は現実にもどることとなった

その引き金は 

姫様の護衛として一緒に行った同僚だった

「・・・・ちょうど良かった。
 こっちへ来い。」

同僚に案内され向かったのは

半ばガレキに埋もれた地下室だった

そこには姫様がいた

一緒に持っていた白銀の玩具のような半ば砕かれた鎧

下に来ている少年のような服と一緒に巻かれた包帯

それに染み込んだ赤い液体

「どういうことだっつっても。
 姫様は、この城を守ろうとして重傷を負った。
 そして、死にかけてる。
 それだけだ。」

・・・・・・どうしようもない感情が駆け巡る

城を守れなかった北の大国の王に対する怒り?

同僚のふがいなさへの怒り?

姫様のお転婆に対する怒り?

いいや違う

違うのだ

私への怒りだ

姫様を守れなかった

10年前の約束を守れず

姫様を守りきれなかった

自分への怒りだ

「・・・××ですか?」

苦しげな吐息共に姫様がそう呟いた

本人は普通に話しているつもりでもその消耗は隠せなかった

私は そっと姫様を抱き上げた

「・・・最後に・・・話せて良かった・・・
 ・・・・・・ねえ、知って・・・ました?
 ・・・・・・私が・・・貴女のこと・・・
 多分・・・・好きな・・・のを・・・・・
 姫とし・・・・て・・・・・じゃなくて・・・・・
 一人・・・・の・・・・女の・・子・・・・として・・・好きなの・・・
 ・・・・・・あ〜ぁ・・・・・・・・
 普通の女・・・・の子だ・・・った・・・ら・・良・・・かった・・・・のに・・・・・・・
 ××・・・・お前は・・・・決し・・・て必要・・・以・・外
 私・・・・に・・・触・・れるなど言う・・・ことは・・無かっ・・・たのに。
 ・・・・何故か・・包まれてい・・・るかの・・・ような安・・・心が
 傍・・・・に・・・いる・・と・・・・あ・・・っ・・・・・・・・・・。」

姫様は 言葉を最後まで紡ぐことなく・・・・・

その瞳から意思の炎を消した・・・・・




本当に もし別の身分に生まれていたら

私達幸せでになれたでしょうに・・・・・・