-魔法学園リラその6-魔沙羅 萌(6/23-22:02)No.3192
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3192魔法学園リラその6魔沙羅 萌 6/23-22:02

期末テスト1週間前突入!と言うわけでしばらくお休みさせて頂きます。
てなわけで、《水竜王御取り締まりバージョン》いきます!


第6話《前編》、竜王縛る〜玻璃ちゃんの大提案〜


ぴこ。
またしてもルークのノート型パソコンはかわいらしい音をたてて起動しはじめていた。
別にルークがスイッチを押した訳ではない。
どうやらミリーナからの通信が入ったようだ。
しばらくして……
「どうだった、ミリーナ?」
リナは画面にあらわれたミリーナに対してそう問い掛けた。
『はい、その『水竜王』は30分前には両神山にいました。
念のため、5分前の『磁力異常発見装置』による数値も調べてみましたが、やはり両神山に異常が表れています』
「わかったわ。ありがとう、ミリーナ」
ぴこ。
ルークはノート型パソコンが沈黙するのを見て、それを自分の鞄にしまった。
「さてと……行くわよ!両神山へ!」


「どうでもいいがリナ、これからどうするんだ?」
ここは両神山の麓。
両神には嵐が来ていないらしい。山にはかすかに霧がかかっている。
それがなんとも言えないほど神秘的だ。
「……どうしよう」
勢いでここまできたのはいいが、リナたちはまだ、なにひとつこれからする事を決めてはいなかった。
「また鎖で縛ればいいんじゃないんですか。壊すわけにもいかないし」
萌の提案にルークは呆れた顔をしながらこう答える。
「いい案だと言いたいところだが……『鎖』はどうするつもりなんだ、お前さんは」
「あ……」
どうやら萌はそこまで考えていなかったらしい。
「大丈夫だよ、ルークさん。とってもいいモノがいるじゃないですか。ここに」
「あっ、なるほどっ!ゼロス!あんた『鎖』になりなさい!」
リナは玻璃の面白い思いつきに、ゼロスに『先生』をつけるのも忘れて提案(?)をしていた。
「ちょ、ちょっとリナさん!どうして僕がそんな物に……」
「あんたの他に誰ができるのよ!適役じゃない(はあと)」
リナはにこやかな笑みを浮かべながらゼロスに向かってそんな事を言う。
「決定だな」
ルークが追い討ちをかける。
「そ、そんな……しかたがありませんねえ、やります、やりますよお」
リナ、ルーク、玻璃たち3人による一方的な押し付けに、ゼロスは意外にもあっさり折れた。
他の2人に助けを求めるのは無駄だと悟ったからだ。
助けを求めても、ガウリイは何もわかってないだろうし、萌は『見た目』とやらを気にしない性質だからだ。もし、助け船をだしてもらえたとしても、2人ともリナの前ではなす術もなく言い包められるだろうから。
「それじゃあゼロス先生、鎖役よろしくお願いします。
リナ姉ちゃんとルーク兄ちゃんと玻璃ちゃんで『おとり』、よろしく。
わたしとガウリイ兄ちゃんでゼロス先生(鎖)仕掛けてくるから」
そう提案する萌にリナは不思議そうに聞き返す。
「萌、そのおとりってなによ?あと人選の方法は?」
「え、ええと、鎖を仕掛けた所まで誘い込む人が必要でしょ?
それに、鎖を仕掛ける人は本当は玻璃ちゃんがいいんだけど、そっちの方にこういうの詳しい人いなそうだし、ガウリイ兄ちゃんならできそうだけど頼り無いし。
かといって仕掛ける人もそれなりの《経験とカン》が必要だし。
だからこうなったの」
「なるほど、それもそうね。それじゃあそっちは任せたわよ。準備が終わったら連絡してね」


ガウリイと萌、そしてゼロスは山を登っていた。
そこには歩く間もないくらい鬱蒼と茂った雑草と細くて高い杉の木ばかりが生えている。
道と言う道はない。あるとしたら、猟師でも見つかりそうもないような獣道だけ……。
そんな中をガウリイと萌は巧みに道を見つけ、どこに鎖を仕掛けるべきか話し合いながら登っている。ゼロスから見れば、人間にそんなことができるのかとおもいっきり思ってしまう光景だった。
「ガウリイ兄ちゃん、ここらへんでいいかな?」
萌がいるのはそこいら辺で一番太くて高い楠の木。
その木の太い枝の上だ。ざっと見て、高さ3mくらいの所だ。
萌の背中のあたりまである二つに分けた茶色がかった黒髪も、緑色系統の色で合わせている服も、妙にその光景とマッチしている。
「うーん…そうだな、その、もう少し太い枝がいいと思うぜ」
ガウリイはそんな萌を見上げながら笑顔でこたえる。
ちなみに《鎖》の一方はもう仕掛けてある。そちらの方は萌の判断だ。
「ガウリイさんって妙に勉強や、一般常識以外には詳しい物があるんですよね」
ゼロス(鎖)はちょっとばかりヤケになった言い方でガウリイに話し掛けた。
「そうかぁ?あ、萌、むすべたか?」
ガウリイはゼロスに軽い相槌を打ちつつ萌に問い掛けた。
「大丈夫!今結べたところ。これから下りるね」


「ったく、頂上にいるなんて非常識な竜ね。登るのが大変ぢゃない!」
リナはそうぼやきつつ、山を登っていた。
こっちは獣道ではない。ちゃんとした人のための山道だ。
「そんなにぼやかないで下さい、リナ先輩。仕方がないじゃありませんか。
そもそも、あの竜がココに逃げ込んだのが悪いんです。とっとと捕まえちゃいましょうよ」
「なあ、そんな事はどうでも良いが、リナさん、玻璃、どこまで登るか?この山。
ある程度近付くと気付かれちまうだろ」
ルークは『どうでも良い』会話にうんざりした様子だ。
「まかせてください。私がこっちにまわった理由がそれです」
玻璃は笑顔でルークの問いに答える。
「何かいい策があるの、玻璃?」
「当たり前ですよ、リナ先輩。あの『水竜王』は誰かに見つからないように『霧』をはっています。それを逆手にとるんですよ。私は『水属性』ですから。
何より、私は水の精霊とは話ができます。それを利用して、『彼』がどこにいるかとか、私たちの気配を拡散してもらうんです」
玻璃は長々とよくわからない説明をしつつ、またも笑顔で二人に微笑み掛けた。
「……まあ、ならいいんだけどね」
リナはその説明を半分無視しつつ玻璃にこたえた。
『もしもし、リナ姉ちゃん、聞こえますか?萌です。『鎖』の結びつけ、終わりました』
突然リナの持っていたトランシーバーから萌の声が聞こえてくる。
「こちらリナ。報告ありがとう。他に用件はある?」
『はい。玻璃にアレをやるから頂上に来いって伝えてください』
こんどは萌が意味不明な事を言っている。
「ちょ、、ちょっと萌、『アレ』ってなによ、アレって」
『あ、ええとそれはですねえ……』
ボン!……。
なにかが壊れた音がして…萌からの通信が突然とぎれた。
「…あーあ、また萌ちゃんやっちゃったよ。これで何個目かなあ。電化用品が壊れるの」
玻璃は呆れた声を出す。
「今月に入ってから5個目だ。あいつなんであんなんも使えないんだよ!
ガウリイさんだって使えるじゃねえか」
「そおねえ、さすがにコンピューター壊された時にはまいったわね。
で、玻璃、『アレ』ってなによ」
リナの質問に玻璃はちょっとばかり躊躇ってから答えた。
「それは後でのお楽しみって言うやつですよ、リナ先輩。じゃ、それでは」
そういって玻璃は山を駆け上っていった。
「何なのよまったく。さてと、ルーク!行きましょうか」
「お前が命令するな!」


目の前に見えるは一匹の竜。
それは彫り物なんかではなく、本物の水竜王に見えるほどの神々しさだった。
しかしそれは同時に地獄の王のようにまがまがしいものを感じさせた。
大体大きさは大人の身長の2倍くらいだろうか?
そんなモノが来ときの分け目に横たわっている。
「うわあ、ほんっきで水竜王だ」
「おい、お前なんか考えてから来てるのかよ」
感嘆の声を上げているリナをジト目で見つつ、ルークはそうつっこんだ。
「うっさいわね、考えてないわけないでしょ。こうすんのよ!
……火炎球(ファイアー・ボール)!」
ズボガァァァァァーーーーーーーーン!!
めちゃめちゃいい音をたててリナのはなった火炎球は木彫りの水竜王の近くに直撃した。
もちろん、山自体が湿っていたから火事にならなかっただけである。
乾燥していたらどうするつもりだったのだろうか?
「をい……お前は場所を少しはわきまえろよ!」
「なによ……普段はまわりの視線も気にせず『ミリーナ、愛してるぜ』なんてらぶらぶ攻撃しているあんたに言われたくないわね」
「お前が人のこといえるのか?いっつもガウリイさんとべったりなくせによ」
「な、なによ突然変なこと言い出して!なんか悪いの?幼なじみといっしょにいて!」
ルークのある意味とてつもなく鋭いつっこみに、リナは顔を真っ赤にしつつこたえる。
うるぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーん!!
突然!今まで忘れられ掛けていた彫り物の水竜王が吠える。
『な!』
リナもルークもおもわず驚嘆の声をあげる。
その彫り物が異様な物体に変わっていく。
『ウラヤマシイ……ナニモカモ……モットイキタカッタ……
ニクイ……アイツラガ……セメテアノコタチダケデモ……
ワタシハモウイナイ……ボクハナンデコロサレタンダ……
モウイヤダ……ミンナコワシテヤル……コロシテヤル……』
その水竜王の口からはいろいろな声が聞こえてくる。
そして、そのすべてがまがまがしい瘴気を帯びている。
「なによ、こいつは!」
おもわずリナは大声を上げて駆け出す。
「俺が知るかよっ!」
ルークもリナとほぼ同時に駆け出している。
うるぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーーん!!
水竜王の彫り物はそのほぼ原形をとどめていないままの姿で咆哮をあげながら追ってくる!
「リナ!ルーク!こっちだ!はやく!」
「ガウリイ!」
いつからそこにいたのか。ガウリイが10mぐらい先で呼んでいる。

「なんなんだ、あれは」
リナたちはガウリイと合流したが、まだ走りつづけている。どうやらガウリイは『鎖』までの道を教えにきたらしい。
「どうやら怨念の塊のようなんだけどな。どうやら手当たり次第なんでもいいから壊したいらしいぜ」
「…よくわからんがリナみたいな奴なんだな」
ルークの説明にガウリイはいつも通りにボケをかます。
「うっさいわね……あたしは……あんなに…性格悪くないわ」
「おい大丈夫か、リナ」
「だいじょぶなわけないでしょうが!
大体ねえ、どこに《鎖》を…仕掛けたって言うのよ。
なにも…こんなに倒れた木とかがあるところじゃなくったっていいじゃない!」
「い、いやあ、ここ以外に仕掛けられそうなところがなかったもんで……そろそろだぜ」
そう言われてリナは視線を少しだけ上にあげる。
すると……とてつもなく細い糸のような鎖が見える。
あれがゼロスじゃなければとてもあの化け物を捕まえられるものじゃない。
るごうがぁぁぁぁぁーーー!!
「かかった!」
誰かが思わず感嘆の声を上げる。
そう、一応かかったのだ。あの化け物が。

〔続く〕

長くてごめんなさい。
どうやら前後編になりそうです。と言っても後編はもっと短いと思うけど。
と言うわけで、次は《水竜王御取り締まりバージョン第6話、続、竜王縛る》になると思います。

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3226Re:魔法学園リラその6松原ぼたん E-mail 6/27-15:48
記事番号3192へのコメント
 面白かったです。

>期末テスト1週間前突入!と言うわけでしばらくお休みさせて頂きます。
 頑張って下さいね(人事ぢゃねーだろ)。
>どうやらミリーナからの通信が入ったようだ。
 通信はいると起動するのか・・・・便利というか不便と言うか・・・・。
>ぴこ。
 確かにかわいらしい。
>「あっ、なるほどっ!ゼロス!あんた『鎖』になりなさい!」
 をを、便利。
>わたしとガウリイ兄ちゃんでゼロス先生(鎖)仕掛けてくるから」
 いくら何でも勝手に鎖が動いたりしないの?
>「ったく、頂上にいるなんて非常識な竜ね。登るのが大変ぢゃない!」
 じゃあ常識的な竜って?
>「…あーあ、また萌ちゃんやっちゃったよ。これで何個目かなあ。電化用品が壊れるの」
 相性悪いのね。
>「なによ……普段はまわりの視線も気にせず『ミリーナ、愛してるぜ』なんてらぶらぶ攻撃しているあんたに言われたくないわね」
>「お前が人のこといえるのか?いっつもガウリイさんとべったりなくせによ」
>「な、なによ突然変なこと言い出して!なんか悪いの?幼なじみといっしょにいて!」
>ルークのある意味とてつもなく鋭いつっこみに、リナは顔を真っ赤にしつつこたえる。
 端から見てると笑い事だぞ、その会話。
>「…よくわからんがリナみたいな奴なんだな」
 笑。
>あれがゼロスじゃなければとてもあの化け物を捕まえられるものじゃない。
 ゼロスってべんりー。

 本当におもしろかったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。