◆−紫煙の幻想 0−とーる (2005/10/5 19:38:32) No.31924
 ┣紫煙の幻想 1−とーる (2005/10/6 20:57:29) No.31926
 ┃┗Re:紫煙の幻想 1−エスエル (2005/10/7 20:02:30) No.31928
 ┃ ┗Re:ありがとうございます−とーる (2005/10/8 18:28:07) No.31929
 ┃  ┗Re:ありがとうございます−エスエル (2005/10/8 20:08:02) No.31930
 ┣紫煙の幻想 2−とーる (2005/10/9 23:04:06) No.31936
 ┣紫煙の幻想 3−とーる (2005/10/12 18:14:56) No.31942
 ┣紫煙の幻想 4−とーる (2005/10/15 15:13:39) No.31953
 ┃┗Re:紫煙の幻想 4−柳 侑莱維 (2005/10/15 17:23:24) No.31956
 ┃ ┗Re:こんにちは−とーる (2005/10/16 13:45:15) No.31959
 ┃  ┗Re:こんにちは−柳 侑莱維 (2005/10/16 20:31:41) No.31961
 ┣紫煙の幻想 5−とーる (2005/10/18 18:27:24) No.31964
 ┃┗お初にお目に掛かります。−十叶夕海 (2005/10/18 20:35:09) No.31966
 ┃ ┗Re:お初にお目に掛かります。−とーる (2005/10/20 17:05:43) No.31972
 ┣紫煙の幻想 6−とーる (2005/10/21 18:07:05) No.31982
 ┣紫煙の幻想 7−とーる (2005/10/25 14:27:15) No.31997
 ┣紫煙の幻想 8−とーる (2005/10/30 13:27:13) No.32015
 ┣紫煙の幻想 9−とーる (2005/11/3 14:00:47) No.32020
 ┣紫煙の幻想 10−とーる (2005/11/8 17:45:59) No.32027
 ┣紫煙の幻想 11−とーる (2005/11/16 18:33:36) No.32057
 ┗紫煙の幻想 12−とーる (2005/11/22 18:25:48) No.32072


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31924紫煙の幻想 0とーる 2005/10/5 19:38:32


 
 
 
―プロローグ―








 

「なぁーゼロスー」

「はい?」
 

山道を歩いている途中、間延びした声がかけられる。
僕はきょとんとして振り返った。
そこにいるのは金髪の剣士のガウリイ=ガブリエフ。
ま、彼意外であるはずがないんですけど。
こんな風に僕を呼ぶのは彼しかいませんからね。
色んな意味で・・・。


「何ですか?」

「ゼロスたち魔族ってのはさぁ、
 何だ、ほら・・・えーっと・・・せ、せー・・・」

「精神生命体・・・でしょ」

「おお、それだ」


いつも通りのガウリイさんのおとぼけな言葉。
前を歩きつつ振り返って溜息をつきながら教えるのは
ご存じ、栗色の髪の魔道士リナ=インバース。
それにガウリイさんがぽんと手を叩いてにっこりと笑う。
リナさんは盛大に肩を落とした。

初めてこれを見た人は驚くか呆れるか、
はたまた何だこのコンビは、と不思議がるでしょうか?
まぁ僕はこんな2人、
いつもの事ですから慣れちゃいましたけどね・・・。

僕は言葉の続きを促す


「それで?精神生命体がどうかしましたか?」

「あぁ。で、そのせーしんせーめーたいってのは
 どんな姿でも変えられるんだろ?」

「はぁ・・・まぁ・・・そんな感じですけど」


何だか少しだけ違うような気もしなくはないですが。
それが一体何の話に繋がるんでしょうか?



「じゃあ、何でゼロスはその姿になろうって決めたんだ?」



・・・そういう事ですか。
おぼけなのか鋭いのかどっちかに決めてほしいですねぇ。
前もミルガズィアさんの所で
『かなりのじーちゃんなんだな』とか言われましたし。
あんなに剣の腕が・・・
しかもゴルン・ノヴァさんを使えるというのに。


「それもそうね」
「だろ?」


って、リナさんまで乗ることはないでしょう!?
まったくこの人たちは。


「別に理由なんてありませんよ・・・何となくですから」


僕が苦笑気味の顔で2人にそう言う
ガウリイさんは「ほー」と、
リナさんは「へー」と言ってすぐにこの話は終わった。
でもまさか・・・。
こんな話を振られるとは思いませんでした。
ま、別にこれでいいでしょう。
2人に話す必要なんてありませんからね。





どうして僕がこの姿をしているのか
そんな事は。





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31926紫煙の幻想 1とーる 2005/10/6 20:57:29
記事番号31924へのコメント

 
 
 
―誕生と使命―
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
意識が広がる。
それはゆっくりと、
ゆっくりと静かに広がっていった。

意識の周りを囲んでいるのは全てが深い闇。
今この瞬間“自我”が存在している場所はこの闇の中だ。
真っ暗な・・・
それでもそれが当たり前なのだと理解している深い闇。



何故なら“自我ある闇の者”から、
新たに造り出された“自我ある闇の者”だからだ。





「目覚めよ」





あぁ。
この音・・・声は新しい“自我ある闇の者”を造った
“我が主”の物だ。
金髪金眼の人間の姿を保っている。



―――“闇”が魔族と呼ばれる存在だという事は
“自我”を意識した時から了承している。



“魔族”に造りだされた“魔族”が
それに反する意識を持っているはずがない。



そういう風に造られているのだから。



姿形も。

その魂も。

意識も。

存在全てが。





「・・・ふむ・・・」


“我が主”は考察するように、
値踏みするように“自我”を見下ろして目を細める。
しばらくした後ですっと腕を持ち上げ
“我が主”が“自我”へと力を入れ込み始めた。


「そうだな・・・。お前の名に私の名の半分を与えよう」


“自我”は元から受け継いでいた力に、さらに力を吸収していく。
吸収した力は重なり合ってぐんぐんと
1つのまとまった形へと変化していった。
口はしに小さな笑みを浮かべて“我が主”はそれを見ている。

そして“自我”は忽然と1つの姿をとった。
もちろん“我が主”のように人間の姿ではない。





人間の言葉で説明しようとするならば。
黒みに紫がかった三角錐。





「お前の名はゼロス。
 この私・・・獣王ゼラスの部下、獣神官ゼロスだ」


―――はい、ゼラス様。


「早速だがお前に使命を与えよう」


―――何なりと。






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31928Re:紫煙の幻想 1エスエル 2005/10/7 20:02:30
記事番号31926へのコメント

はじめまして、とーるさん。
素敵な作品だったので、思わずレスさせていただきました。
あーゼロスですかあ、いいですねえ。
あーーーあーーーあーーーーー
こんないい作品をよんじゃうとですねえ、本当、泣きたくなるんですよね。
えぇ、まあその作品の感動と…



と…


自分が、ここ十ヶ月くらい…っつーか、スレイヤーズもとい神坂せんせーにハマってから一度も…

・・・・・・・・・・・・・・・・

グラ×シェラ   S×L  フィブ×シェラ


・・・・・・・・

・・・・・しか書いたことがないことを・・・・


だから異常にとーるさんみたいな作品かきたいんですが・・・・かけないんですよねぇ・・・(なんやそれ!)



で、すいません。
申しおくれましたが、私は、エスエルという未知の物体です。

趣味は、小説投稿(出版社に)そして落選!
特技は、落選すること!
好きなものは、インコちゃん。南国系の。

ちなみに…また馬鹿がはじまるんですが、うちには、4羽のセキセイインコがいます。来維琉(ライル) ピン  シビア  白亜(はくあ)です。
ただいま、ピンたんと、シビちゃんの子供期待中です。

って…これいじょう喋らせると何がおこるかわからなくなるのでこのへんで…

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31929Re:ありがとうございますとーる 2005/10/8 18:28:07
記事番号31928へのコメント

 
どうもこんばんは。
こちらこそ初めまして、エスエルさん。
作者のとーるという者です。

私S×Lは大好きなんですv
というか、私は大のL様FANなので
何かとL様関係や魔族絡みの話が多くなってしまい・・・
L様は出てきませんがこうしてゼロス話なのです。
この話の傾向はシリアスになりそうですねー。
今までのは結構ギャグとか入ってたんですが・・・

えー・・・
ここまで書けばバレたかと思いますけれど
私の方は甘い恋愛物などを書くのは苦手でして(苦笑
一度エスエルさんのS×L小説を読ませてもらいたいと
思いますので、今から探しに行こうと思います。

乱雑のレスすみません(汗
コメントありがとうございましたv
良ければ続きをごらん下さいませ・・・。
ではでは。

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31930Re:ありがとうございますエスエル 2005/10/8 20:08:02
記事番号31929へのコメント

はじめましてこんばんわです。
わおぅ、久しぶりにS×Lファンのかたに出会えてとても嬉しく思えます。

>一度エスエルさんのS×L小説を読ませてもらいたいと
>思いますので、今から探しに行こうと思います。
えっぇと…大変うれしいお言葉なんですけど…

まじで

やめたほーがいいとおもいます!!

危険です!これからとーるさんに何がおこるか危険ですから!!
あんな物体をみたらもう死ぬかもしれません!いや、二週間は再起不能になることでしょう!!まず、吐きますよ?!

これは、本当です(笑)


で、ですが。もしよかったら、S×Lのリクでもお申し付けくださいませ〜。
あぁ、あれです。私、もともとが小説好きですし、そんな分野になると猛烈に燃えますから(笑)

では。

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31936紫煙の幻想 2とーる 2005/10/9 23:04:06
記事番号31924へのコメント




―出会うもの―










―――この辺りにするか。

そんなに深くはない森の中にふっと人影が忽然と現れる。
年の頃は7,8歳くらいの金髪金眼の少年だった。
もちろんただの少年が魔法も何も使わずに
虚空から現れるわけがない。
少年は、この場所に相応しいと思ったゼロスの変化した姿だった。

辺りを見回し、ゼラスが与えた使命を思い出していると
ふいにガサリと茂みが揺れた。


「ガアァアアッ!!」

「・・・・・」


咆哮にちらりとそちらに目をやる。
レッサーデーモンが1匹、ゼロスに向かって突進してきた。
その突進をひらりとかわして怪訝そうに目を細める。

―――邪魔だな

すっと人差し指を真っ直ぐ向けて―――



ちゅどんッ!!!



「・・・・・?」


いきなり消滅したレッサーデーモンを
訝しげにゼロスは眉を潜めた。
腕を持ち上げただけで何の力も突きつけてはいないのに。
今度は背中の方の茂みが音を立てて
ゼロスは今度はそっちへ目線を向けた。


「こんな所まで逃げ込むなんて・・・。
 まったく、野良は手間をとらせてくれるよね・・・」


1人の青年がそこに立っていた。
茶色いマントの下にゆったりとした薄い茶色の服、
薄い青のズボン。
腕と足首、そして腰には黄色の紐がきっちり結んであり、
手には宝玉のついた木の杖を持っている。

トントン、と杖を地面へ打ち付けて
青年は溜息をつきながら言う。
だがその表情は小さく静かに微笑みを浮かべていた。


「―――おや?子供・・・?」


その場にいる自分以外の存在に青年はようやく気がついた。
ゼロスはただ黙って青年を見上げているだけ。


「君、どうしたんだい?
 この森は危なくて誰も近づかない所なんだけど・・・」

「・・・迷って」

「・・・迷う?」


ぽつりと呟いたゼロスのそんな言葉
青年はきょとんと首を傾げた。



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31942紫煙の幻想 3とーる 2005/10/12 18:14:56
記事番号31924へのコメント



―関わり―










「あそこが私の村だよ」

ゼロスを見下ろしながら少し先の村を指差してそう言った。
一応こくりと頷いておくと、青年・・・
ルヴィリオは嬉しそうににっこりと笑った。





「えーっと・・・迷うって・・・ここでかい?」

「はい」

「お父さんやお母さんは?」

「いません」

「あ!辛い事を聞いたね。ごめんね。じゃあどこから来たのか分かるかい?」

「分かりません」

「うーん、困ったな・・・。もしかして記憶喪失なのかな?」

「・・・は?」

「そうなんだね・・・。それじゃあ私がいったん君を引き取ろう」

「え、いや、僕は」

「ああ遠慮しないでいいよ。困った時はお互い様。
 ならこれもスィーフィード様のお導きだろうからね」

「・・・はぁ」

「私の名前はルヴィリオ。ルヴィで構わないよ。
 名前は覚えてるかな?」

「―――ゼロスです」





先ほどの会話をぼんやりと思い出して
ゼロスは深々と溜息をついた。
子供の姿の方が何かと便利に有効に使えるだろうと
考えたすえにそう思ってこの姿になってはみた。

だがこれは何なのか。

仕方ない事なのだろうが、
かなりの子供扱いに眉をひそめたい。
それともルヴィがただのお人よしなだけか。

―――決して今の人間界の均衡が保たれていると
   いうわけではないのにな・・・

だから“自分”は造られたのだろうから。
ゼロスは冷めた眼差しで村を眺めた。


「・・・あぁお帰りルヴィさん・・・・ん?その子供は・・・」

「村長。只今戻りました。
 あぁ、そこの森で迷子になっていた子です。どうやら可哀相な事に
 記憶喪失らしくて・・・いったん私が引き取ろうかと思いまして」

「・・・・そうですか」


村長、と呼ばれた初老を少しすぎたばかりの男はゼロスを見る。

―――なるほど。

その目を一目見やってからゼロスは自分から目線を外す。
この男の目に潜む色は嫌悪の色だった。
たとえ子供であろうと、
他所から来た何者かも分からない表情のない子供。

自分の村には入れたくないというのがこの男の本音だろう。


「それでは失礼しますね。後で祭壇の方へ行くので」

「あ、あぁ・・・それはもう頼みましたよ」


男は一瞬戸惑ったような表情をしてから、
そそくさとその場を後にした。
ルヴィはふぅと息を吐くと申し訳無さそうにゼロスを見下ろした。


「ごめんね・・・不快だったろう?
 ここのところ、いたる場所でデーモンが多発して・・・
 村長も他の人も少しピリピリしているものだからね・・・」

「・・・そうですか」

―――あの目に気がついていたのか。
   それほど馬鹿でもないらしい。





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31953紫煙の幻想 4とーる 2005/10/15 15:13:39
記事番号31924へのコメント



―感情―










ルヴィの家は大きいでもなく、しかしそれほど小さくもなく。
まぁごくごく普通の一軒家だった。
ふいにゼロスは先ほどの会話を思い出して
何となくルヴィにと問いかけてみる。


「・・・祭壇とは?」

「あぁ、さっきの村長との会話のことかい?」


あったかいホットミルクをゼロスに手渡しながら
その問いかけにルヴィは微笑んだ。
1つだけゼロスは頷いてみせた。
ルヴィは自分のホットミルクを飲みつつソファに腰掛ける。


「うーんと・・・この村の近くに小さな神殿があってね・・・
 どうやらそこにある祭壇がちょっと不穏な空気を見せているだとかで、
 壊してくれって村長達に頼まれたんだよ」


子供だから大丈夫だろうと、
そう彼は高をくくっているのだろうか。
いとも簡単にゼロスにぺらぺらと喋るルヴィ。
お人よしさといい、
どうやら彼には警戒心というものがないらしい。


「祭壇を壊したりしていいんですか?」

「うーん、この村はどうやら遠い昔神様の裏切りを
 受けてしまったらしくて・・・今はあまり神様という存在を
 敬ってなかったりするんだよ。
 だから躊躇せずに僕にそれを頼んだみたいだよ」

「そうですか」


―――馬鹿ではないみたいだが、
    所詮はその程度の人間だな・・・。





人間は見かけに騙される。

巧みな演技を見抜けない。

そして過ちを繰り返して。

何て愚かで小さな存在だ。





「ゼロスは祭壇が気になるのかい?」

「別に」

「神殿に行きたい?」

「どっちでも」

「そっか・・・私としては一緒に来てくれると嬉しいな」


くすくすとルヴィは悪戯っぽそうに笑って
テーブルに空のカップを置く。
そしてゼロスの方をちらっと見やった。

―――何を考えている・・・?
    こいつの心はまったく読めない。



魔族であるがゆえに糧である
畏怖、
恐怖、
怒り、
恐れの感情にはとても敏感だ。



そして糧とは相容れない
歓喜、
至福、
喜び、
憧れなどの感情にも敏感である。



このルヴィリオという男には、
いっさいそんな感情の乱れが感じられない。
その視線に気がつかない振りをして
こくり、とゼロスはホットミルクを一口飲んだ。





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31956Re:紫煙の幻想 4柳 侑莱維 2005/10/15 17:23:24
記事番号31953へのコメント

いゃーーーーーいいですねーーーーーーーーーーーーーーー。
たまんなくいいですーーーーーーーーーーー。
ああもう最高でした。
読後感がもう。。


リクのことですが…申し訳ないですが、どんな話にしたらいいのか、仰ってもらえませんか〈涙〉本当にすみません。エス×エル、私のって、ものすごい吐血気味なんです。だからみなさんはかせちゃほんとにいけないなって…。

なので、ほんと、なんでもいいですので…。
それと私の駄文じゃとーるさんのご希望にあうかもわからないし、あれだったらあれなので、できたら…。。。。

では、またです。

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31959Re:こんにちはとーる 2005/10/16 13:45:15
記事番号31956へのコメント

前のレスのお言葉に甘えまして・・・。
どうもこんにちは、侑莱維さん。
最高とまで言ってくれてありがとうございます。
正直自分で書いておきながら、ですます口調ではないゼロスに
多少てこずってはいたりするんですけどね(苦笑


S×L設定無しにお手数をかけていたのですね(汗
気づかなくてすみませんでした。
・・・そうですねぇ・・・
それでは『SがL様に告白する』というコンセプトで
リクエストを再度お願いしても宜しいでしょうか?
出来れば甘くして下さると嬉しいです。

ではでは。
2度目のコメントありがとうございました。


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31961Re:こんにちは柳 侑莱維 2005/10/16 20:31:41
記事番号31959へのコメント

了解です。少し遅くなるかもしれませんが、ではです

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31964紫煙の幻想 5とーる 2005/10/18 18:27:24
記事番号31924へのコメント




―祭壇―










結局ルヴィと一緒に神殿へと行く事になった。
神殿はゼロスが現れた場所から比較的近い所にあった。

一見すればただの洞穴に見えるかもしれない。
だが近くに行ってみると土にまみれ同化した石柱が
洞穴の横に2本見え隠れしている。
しかし、それも神殿だと言われなければ
ただの荒れた遺跡にさえ見えるかもしれない。


「行くよ、ゼロス。私から離れないでね」

「・・・はい」


ルヴィの後を1,2歩遅れて歩くゼロスにそう言う。
ゼロスの答えを聞いたルヴィはにっこりと笑う。
別段ゼロスを心配しているようには見えない。

一体何を考えて、
端から見たら小さな子供を一緒に連れてきたのだろうか。

薄暗い通路をさくさく進む男に聞こえないように
呆れたようにゼロスは息を吐いた。





そしてそんなに歩かないうちに少し広い広間へと出る。





広間の中央に祭壇のような物があり、
その上に一振りの剣があった。
視線をそれに止めたゼロスは目を細めて納得した。

―――祭壇ではなくこの中級魔族か

一振りの剣。
人間から見たらただの剣だが、
ゼロスから見たそれは何者でもない魔族だった。

中級魔族の力ではおそらく完璧な人間に姿を返られず、
仕方なしに剣に姿を変えて何も知らずにここに入ってくる人間を
次から次へと獲物にしていたという所だろう。

ただ上級魔族としてのゼロスには
それは何ともお粗末と思ってしまうのだが。

―――これだと中級魔族でも下の方に位置するな

ゼロスがそう思った時、
剣・・・その魔族がふわりと浮き上がる。


『何者にも匹敵する力が欲しければ私を握るがいい』


力。

人間が得ろうとするモノ。

人間は手にしたいと一度は願うモノ。





―――この男もこの言葉に惑わされて
    魔族だと知らずに奴を手に取るだろ・・・





カツーン・・・!





広間に響くのは、
ルヴィが持っていた杖の先を床に打ち付ける澄んだ音。

予想外の動きにゼロスは静かに目を見開いた。


「甘く見ないでもらいたいね。
 私はそんなに愚かな人間に成り下がった覚えはないよ」

『・・・何・・・?』

「相手が魔族と分かった以上容赦はしない。
 さあ、かかっておいで」





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31966お初にお目に掛かります。十叶夕海 2005/10/18 20:35:09
記事番号31964へのコメント


お初にお目に掛かります。
当方、十叶 夕海(とがの ゆあ)と申します、不肖の身でありながら、この方にて、小説を書かせていただいているものでございます。

貴方様の作品、至極興味惹かれ、レスさせていただきました。

お近づきに、貴方様から一つリクエストをお受けしたいと存じます。
・・・・・要するに、一つリクエストしてくださいという事になります。
遅筆ゆえに、少々遅くなるとは存じますが。


それと、当方、小説1にて、『孤独な涙』という神ま戦争をモチ−フに半ばオリジナルのような形で、書いておりますので、気が向けばお読みくださいませ。


では、今回は初回ゆえに、このような口調になりましたが、次回以降は、少々フランクな敬語で行きますので、ご安心召されませ。

では、これにて失礼。



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31972Re:お初にお目に掛かります。とーる 2005/10/20 17:05:43
記事番号31966へのコメント


こちらこそどうも始めまして。
作者のとーると申します。
今回はコメントありがとうございました。

十叶さんの作品は何度か拝見させてもらっているのですが
私の方はコメント出来てなくて・・・。
すみません・・・(汗

リクエストの事ですが宜しいのでしょうか?
それでは『切ない印象の詩』などをお願いします。
もちろんオリジナルでも構いませんので・・・。

ありがとうございます。
時間を見つけてそちらも拝見させていただきますね。

ではでは。
改めてありがとうございました。

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31982紫煙の幻想 6とーる 2005/10/21 18:07:05
記事番号31924へのコメント




―その力―










『人間ごときがほざいてくれる!』

「ゼロス、後ろにいてね」


ただの剣の姿から異形の姿へと変わる・・・
いや・・・
“本当の姿に戻った”と言う方が正しいだろう。
魔族は地面を滑るようにして一気に間を詰めてくる!
しかしルヴィはひらりとその突進を軽く横へと交した。



ゅんっ!



その加速を維持したまま、すれ違い様に素早く
腕を一閃させてがら空きのルヴィの胴を狙う。
だがそれもルヴィは難なくするりと交す。
その顔は焦りも恐れの感情を現れていない。
ただの先ほどから変わらない
小さく笑みを浮かべたままの表情だ。


『・・・貴様ぁ・・・!!』


余裕にも見下しにも見えるそれ。
癇に触れたのか魔族は怒気を増大させた。




キュゴゥッ!!



両手を薙ぎ払って一気に何発かの衝撃波を放つ。
その攻撃にルヴィはすっと目を細める。
そして、すっと杖を構えた。



ゆら



―――・・・・・ん?

一瞬ルヴィの姿が虚空に溶けるような錯覚に
後ろで見ていたゼロスは、訝しげに眉を寄せる。
だがそれも一瞬の事でルヴィは衝撃波を次々と交わして行く。

攻撃の軌道が全て読めているかのように紙一重。
まるで手の平を擦り抜けていく風に舞った木の葉のようだ。

ルヴィはするすると衝撃波を全て交した後、
杖の先を強く床に打ち付けた。



カーンッ!



「氷結の鋭利」



ゴォオオオオオオオッ!!



幾十の巨大な氷柱がルヴィの周りに突如現れて
次の瞬間には魔族へと真っ直ぐに突き進む!


『ぐうぁあッ!??
 な・・・なん・・・貴様・・・何故呪文を唱えずに・・・っ!?』


手足を氷柱に貫かれて苦痛にもがきながらも魔族は叫ぶ。
それにはゼロスも同感だった。

―――人間は呪文を唱えなければ・・・
    魔法を使う事が出来ないはずだが・・・!?

ルヴィは答えずにまたも杖を床に打ちつける。


「太陽の道標」



こうっ!!



上空から鋭く眩い光が魔族を貫いて
その姿を焼き付けるように照らし出した。


『・・・・ぁ・・・・・・ああああああ・・・・・・・・・・ッ!!!!!』





光が収まり神殿に残るは、
穏やかに立ち尽くすルヴィと言葉を無くすゼロスだけだった。






NEXT

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31997紫煙の幻想 7とーる 2005/10/25 14:27:15
記事番号31924へのコメント




―ルヴィリオ―










カツン



「浄化の救い」


ふわりと杖から溢れる光に祭壇が照らされていく
祭壇を全て照らし終えるとルヴィは軽く杖を振って光を消した
やはり今の魔法も同様に呪文など唱えていない

ゼロスは未だに呆然としていた

―――一体何なんだ・・・この人間・・・
     いや・・・それ以前に“人間”と言えるのか・・・?





“人間”ではないのならば何なのだろう

“魔族”ならば自分も分かるはずだ

“神族”ならば敵対する者としてまた然り





―――こいつは何なんだ・・・

すっと目を細めてゼロスはルヴィを見やる
ルヴィは他に瘴気の残る所はないかと祭壇を見回している
そしてようやく調べ終えたのか、
ゆっくりと立ち上がるとゼロスへと振り向いた
ゼロスは素早く警戒していた目を普通に戻す


「さて、それじゃあ帰ろうかゼロス」

「・・・祭壇は壊さなくていいんですか?」

「うん。どうやらさっきの魔族が原因のようだからね。
 どっちにしろ、多分もうここに村人は来る事はないだろうし・・・
 “壊しておきました”とでも言えば、この件は終わるよ」

「そうですか」


笑ってこっくりと頷くルヴィにゼロスは静かにそう答えた
そして出口へと戻る彼の後にまたついて歩き始めた





――― 相手が魔族と分かった以上容赦はしない ―――





ふとその言葉に引っ掛かりを覚えた
あの戦いの中でもルヴィリオという者に、
結局の所、何の感情の乱れも感じられなかった

ただその言葉の中に何かを感じた気がする

―――・・・ただの魔族嫌いか、魔族に恨みを持つのか。

何せあれが本格的に始まる寸前なのだ。
高まる瘴気にレッサーデーモンなどは頻繁に出没しているし
今回のように中級魔族くらいが人間界にちょっかいを出しているだろう

近しい者が魔族に殺された
それとて不思議ではないのだろうが・・・

―――違う気がするな

前を行くルヴィの背中
ゼロスはそれをまた怪訝そうに見やった





NEXT

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32015紫煙の幻想 8とーる 2005/10/30 13:27:13
記事番号31924へのコメント




―刃―










ルヴィが“祭壇を壊した”と村長に伝えると、
村長はそれはそれは心底安心しきったような顔になった。
それを冷めた目でゼロスは後ろから見やっていた。





その夜。

魔族は人間のように睡眠や食事をとらなくても
負の感情を喰らっていれば、存在し続ける事が出来る。
だが変に思われるとやっかいなので、
一応あてがわれたベッドに入ってごろんと横にはなってみた。

こんな事に付き合ってる自分がとても馬鹿馬鹿く思える。
ゼロスは重々しく溜息をついた。

―――・・・これは・・・

ふいに窓の外に負の感情を感じて眉をひそめる。
闇夜に紛れているつもりだろうがゼロスにそんな手は通じない。



カタリ



窓がゆっくりと開け放たれ数人の気配が入ってきた。

―――なるほどな。
    この村を知った余所者は消すという魂胆なのか・・・

この村はある種の隠れ里のような所なのだろう。
ならば余所者であるゼロスを消そうとするのは分かりきった事だ。
忍び足で数人の気配がベッドに近寄ってくる。

ずいぶんと慣れた足取りだ。
どうやらこれが初めてではないらしい。

だが魔道に関しては素人だと分かる
素人でなければ、
こんな刃を持って忍び込むなど面倒な事はしないだろう。





―――私は・・・獣神官ゼロス





刃が振り上げられた





―――獣王ゼラス様の・・・直属の部下だ!





閉じていた眼光をすっと開いた。
アストラル・サイドに渡り、
刃を振り下ろした男の後ろへと瞬時に姿を現す。


「・・・っ!?」


消えたゼロスに息を飲む男を―――



カツン



「私の家で何をしているのかな、ルフラット君?」


いつのまにか開いたドアの向こうに
マントと紐を外して楽な格好になったルヴィが立っていた。
それはまるで・・・。
ゼロスがやろうとしていた事を止めるかのように。





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32020紫煙の幻想 9とーる 2005/11/3 14:00:47
記事番号31924へのコメント




―瞳の色―










ルヴィはドアのところに佇んで
静かな微笑みを浮かべつつ男を見つめる。
男は刃を振り上げたまま動かない。
普通にルヴィの威圧感に気圧されているように見える。
ゼロスは怪訝に眉をひそめた。

―――たとえ素人でも
    こういう事はなれていると思ったが・・・?


「ルフラット君?誰に頼まれたのかな?」


名前を呼ばれて男はびくり、と肩を揺らした。


「もちろんそこのアースード君と
 ゼイツ君にも聞いているんだけどね」


窓の下で背を低く保っていた2人の男も視線を彷徨わせる。
どうにもゼロスは不思議に思えてしかたがない。
本業ではないのだろうが、
今までもこういう事をしてきたはずだろう。

なら何故その手の動き止まる?





―――ああ・・・力か





男の瞳を見た時、
ようやくその事にゼロスは考えついた。
この男たちは恐怖を感じているのだ。



目の前のルヴィリオに。

呪文を唱える事なく発動されている彼の謎の力が。



謎の力を自在に使う魔道士と、
素人を殺す事を安易に知っている村人。

彼らの力の差はこうも歴然としすぎている。



適うわけがないと。



「まぁ、その様子をみると村長に言われたんだろうね」

「・・・ひ」


ルヴィは軽く溜息のような物をすると、
部屋の中に足をゆっくりと踏み入れてくる。

おかっぱの黒髪がその動作に伴ってふわりと揺れた。

微笑んでいた瞳を開いて紫煙の瞳で彼を射抜く。
何故だろうか。
思わずゼロスはその瞳に見入った。


「さて、ルフラット君、アースード君、ゼイツ君・・・
 引いてくれるね?」


からん・・・と男の手から刃が滑り落ちる。
その音をきっかけにして、
男たちは素早く窓から脱出してこの場を去っていった。

静まりかえった部屋に窓だけが
小さな余韻をキィ、キィ、と残している。


「大丈夫だったかい?ゼロス」

「・・・・・・」


安心させるように笑ってくるルヴィをしばしゼロスは見つめる。

―――行動を止めたのだろうか、
    それともただの偶然だろうか・・・?

ゼロスは黙って頷いた。


「そうかい・・・それは良かったよ」



―――読めない





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32027紫煙の幻想 10とーる 2005/11/8 17:45:59
記事番号31924へのコメント




―畏怖の矛先―










朝から村の雰囲気はおかしさで溢れていた。
それもそうだろう。
いなくなったと思っていた
得体の知れない子供がまだいたのだから。
だが、ルヴィはそれをまともに取り合わなかった。

それどころか追い返したのは自分だと言うのに
村の雰囲気に不思議そうな顔をしている。

―――この男・・・結構な狐だったんだな・・・

ルヴィの様子にゼロスは思わずそんな事を考える。
もちろんゼロスも普段と変わらず無表情にしていたが。

ふいにルヴィが何事かを思い出したように
ぽん、と手を打った。


「あぁゼロス。
 薬草を取りに行くんだけど、一緒に行くかい?」

「・・・待ってます」

「そうかい。それじゃあ行って来るね。
 えーっと・・・1時間くらいしたら戻るから」

「・・・はい」


ルヴィはゼロスの言葉を聞くと
にっこりと笑って森の方へと歩いていった。

ゼロスはすぐにルヴィの家へと戻らず立ち止まっていた。
そして完全に彼の姿が見えなくなったとたん、
辺りに生まれる感情。
生まれたというよりは強くなったと言うべきだろうか。

―――まったく正体が分からないものに
    人間が簡単に抱く感情か・・・

この村に来て2日目だがそれを多大に感じた。
こうして今も、
少しずつ強まっていくそれを喰らっていく。

満たされていく感覚はどこか至福に似ているだろう。

―――もっと抱いてみろ





それは存在する上での糧になる。





足元に影が出来てゼロスはゆっくりと空を仰いだ。
昨日よりも幾分しっかりとした造りの刀を持つ男が
魔族でなくても分かるような、殺気を纏って立っていた。

確かルフラット、と呼ばれていた男だったか。


「この村に来た事を・・・
 あの魔道士に連れてこられた事を恨めっ!!」


月並みなセリフを吐いた男に
ゼロスは内心、密かに笑みを漏らしてしまう。
何という愚かで浅はかなこの人間に。
さて、どうしてくれよう。










「―――きゃぁあああああっ!!!!!」










刀を振り下した腕が、
村の入り口の方から甲高い悲鳴によって硬直する。
苛立ちながらばっと振り返った男は、愕然と目を見開く。


「グガァアアッ!!」

「ガァウウッ!!」


何匹ものレッサーデーモンが
今まさに、村に攻め込んでこようとしていた。





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32057紫煙の幻想 11とーる 2005/11/16 18:33:36
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―襲撃―










「グァァアアアアアーッ!!」

「きゃあああ!!」

「早くっ・・・早く逃げろーっ!!」


人間と悲鳴と闇獣の咆哮が村の中を支配していく。
レッサーデーモンが陸から空から次から次へと攻め込んで来る。
ゼロスはアストラル・サイドへ戻らず、
民家の壁に背をもたれさせてその様子を見ていた。

普通の村人にとってレッサーデーモンの力は脅威だろう。
しかしこの程度なら人間でも腕の魔道士や
戦士ならば簡単に勝てるくらいだ。

―――・・・あいつは村から出ていて
    1時間しないと戻ってこない・・・

ルヴィリオが驚愕するのか、
何とも思わないか、それがゼロスには興味があった。

穏やかな雰囲気を崩す事のない彼の反応が。

―――気になるのは・・・
    あの神殿で一瞬だけ見せた雰囲気だけが・・・
    唯一・・・





「お・・・まえッ!!」





ざり、と地を踏みしめる音と声に、
ゼロスはゆっくり目を向ける。

左肩を鮮血で染めるルフラットがそこに立っていて
こっちを憎しみのこもった目で睨みつけていた。


「お前が・・・!お前があいつらを
 引き、込んだ、んだろう・・・ッ!!?」


―――憎しみに捕らわれた愚かな人間


「・・・さえっ・・・
 お前、さえ、いなければぁああ!!!!!」










ドシュッ!!










振り下ろされる刀が体―――
ではなく、大地にそれは虚しく突き刺さる。





自分が正面から貫くはずだった男―ルフラットは
自らの胴が背後から深く貫かれていた。



黒みに紫がかった三角錐に。



虚空に三角錐が溶けるように消えると
男は支える物が無くなって、糸が切れたように地に横たわる。

―――末路はただ滅び行くだけだ

ゼロスはちらり、と
動かぬ男に目をやって手をかざして力を加えた。
男の体がゆっくりと砂へと変化して風に消えた。

村の叫び声はずいぶん小さくなったが
まだ消えてはいないようだ。





「ちょっとぉー・・・どうなってんのコレ?
 何でこんな雑魚ばっかしかいないのよぉ?」

「さぁね。どこかに隠れてるんだか何だか
 僕は知らないけど」

「知らないってあんたねぇ!
 これはじゅーっだいにんむなのよ?じゅーっだいにーんーむ!」

「普通に仕事って言えばいいだろ・・・。
 まぁ、ある意味重大っていうのは認めてあげるよ」





ふいに村の入り口の方から
言い合いのような物が聞こえてきて目を向ける。
そしてその目を、ゼロスは珍しく見開いた。

―――あれは・・・


「ふんだっ!
 でもぉこの冥将軍セルネルちゃんはごまかせなくってよ!」

「もちろん冥神官ラルトフ・・・僕も手加減はしないけどね」


―――冥王様の直属の配下





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32072紫煙の幻想 12とーる 2005/11/22 18:25:48
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―さがしもの―










―――冥王様の直属の配下か。
    誰も聞いてないのに自ら正式な名前を言うとは・・・
     よほど、自己主張が好きなようだな・・・

彼らの出現に、
ゼロスはすっとアストラル・サイドへと身を置く。

実際に会った事はない・・・
というか上司のゼラス、神殿にいた魔族、レッサーデーモン以外の魔族には
ゼロスは直接会った事はないのだが。

人間の役職に置き換えるならば
“同僚”というような存在なのだろう。

今、その存在と鉢合わせをしたら
まずい事にはならないが面倒な事にはなる。


「んー・・・でもさぁー・・・
 本格な検討はもうついてるんでしょぉ?
 フィブリゾ様の方が、確信があるっていうかぁ・・・」

「みたいだけどね。けど見過ごせないみたいだし。
 多いほど、少ないほどってやつだろ?」

「まぁねー。
 それよりぃー・・・前から思ってたんだけどぉ
 あんた“けど”とか“だけど”とかうるさいのよねぇ」

「僕は君みたいな“のぉ”とか“ねぇ”とか気持ち悪いよ?」

「何ですってぇ?」

「癖だけど?」


彼らは人間の姿をしているが・・・
見た目は10歳〜15歳くらいの子供を装っている。
というか、まるっきりその姿が似合っている。
ぶつぶつとセルネルが不満そうに言うと、
ラルトフはひょいっと肩を竦めてそう言う。


「まぁそれはおいといてぇ。
 セルネルちゃんの強さを見せる為に
 こう・・・派手ぇ!に最前線にいたいっていうかさぁ・・・」

「あのね、僕らが最前線ってありえないんだけど?」

「分かってるわよぉ!
 ほらぁ、さっさと探してくわよ、ラルトフ」

「セルネル・・・分かってるんだったら
 ごちゃごちゃ言わないでほしいんだけどね・・・」


良いコンビネーションなのか悪いのか。
セルネルとラルトフは黙る事なく、
子供のような言い合いながら村の中へと歩き出す。

――――何を探す・・・?

ゼロスは、その後ろ姿を目で追った後で、
すぐに眉をひそめてしまった。



森の方に1つの影がうっすらと見えたのだ。



それは濃い色を増していき、
だんだんとその形を作っていった。

―――まだ1時間たっていないな・・・。
    となれば村人の悲鳴に気づいたか、煙に気づいたか・・・

そしてその影・・・
ルヴィリオが森の中からはっきりと姿を現した。
村の中へと入ってゆっくりその惨状を目に映していく。





「・・・ゼロスがいないな・・・」





そのあまりにもぽつりとした言い様。
何故か力が抜けるような感覚にゼロスは陥る。

自分の村がこんなになってしまったというのに、
第一声がそれでいいのか。


「あれ?まだ生きてる人間がいるけど・・・
 って事は・・・」

「え、じゃあ、あいつがそうなのねぇ?
 きゃっほー!よーやく、見つけたじゃないのぉーっ!」


ふとラルトフがルヴィリオを見つけて驚く。
そしてセルネルも同じようにしてから
両手を大きく上げて、きゃいきゃいと喜んだ。

ルヴィリオはその様子をじっくりと見てから聞いた。


「まぁ・・・これは君達がやったんだろうね?
 ・・・さて・・・私に何か用かな?」

「用?」

「用・・・ってねぇ」


その言葉にセルネルとラルトフが顔を見合わせた。
そしてにぃっ、と子供のような無邪気さに似せかけて
濃厚な闇のような笑みを浮かべた。


「あんたって人間にしては変な力を持ってるんでしょぉ?」

「便利そうだけど、
 僕らの為には使ってくれなさそうだからさ。
 死んでほしいんだけどね」

「・・・なるほどね・・・」


ルヴィリオは彼らに微笑みかけた。






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