◆−ある愛の光景 〜聖しこの夜〜−棒太郎 (2005/12/25 01:36:37) No.32153 ┣おまけ−棒太郎 (2005/12/25 10:15:28) No.32154 ┗ダルフィンさま(笑)−猫楽者 (2005/12/28 12:06:22) No.32164 ┗お約束(笑)−棒太郎 (2005/12/30 09:46:53) No.32170
32153 | ある愛の光景 〜聖しこの夜〜 | 棒太郎 | 2005/12/25 01:36:37 |
『ある愛の光景』 〜聖しこの夜〜 「メリクリ!イエェーーーーッ!!!」 「「「「「「「イエエーーーーッ!!!」」」」」 パン、パーンとクラッカーが盛大に鳴り響き、グラスが次々と打ち合わされる。 窓の外ではシンシンと雪が降り積もり、一面銀世界の様相。 それを目の端に見ながら、グラスが空けられてゆく。 カラフルに飾り付けられた室内は、陽気な声がそこかしこに響き渡る。 「しっかし今年は・・・・・・まぁ、すごいわねぇ・・・・」 この光景を眺めながらリナはしみじみと呟いた。 今日はインバース家で毎年恒例のクリスマスパーティーが行なわれているのだが、今年はいつもより少し異なっていた。 「さあ、今日はパーッといきましょう」 ハッハッハ、と声をかけたのはパリッとした礼服に身を包んだ好青年。 そう、今年はタイタス率いるゴーメンガースト組が加わっているからであった。 ルナの招待でクリスマスパーティーに御呼ばれすることになったタイタスから派遣された住人たちが、インバース家人たちのあっという間に次々と飾り付けをしていったのだった。 そして様々な酒や料理やデザートなどが運び込まれ、そこらへんの王宮もかくや、という豪勢な会場・食卓となったのだった。 この展開にさすがに呆気にとられていたリナたちだったが、だが腐ってもインバース。 すぐさま目の前に並ぶご馳走や酒を次々と確保していった。 「ちょっとリナ、ガウリイさん!はしたないわよ!」 「まあまあ、いいじゃないですか。今日は無礼講ですよ」 「んもう、タイタス。あの子を甘やかさないでちょうだい」 「年に一度のこの日ですから。大目に見てあげてましょうよ。それと―――怒ったその顔もキュートですよ、ルナさん」 「も、もう・・・タイタスったら・・・な、なにを言うのよ」 軽いウィンクとともに囁かれた言葉に、ルナの頬が紅く染まったのはアルコールの所為ばかりではないだろう。 「ガウリイ!そりゃ、アタシのだっつってんでしょうが!!」 「何を!!そりゃこっちのセリフだ!!」 「おにょれ〜〜、てや!もらった!!」 「ぬお!?なんの、とりゃ!」 それとは正反対に色気の欠片もないやり取りも聞こえてくるのだった。 窓の外では雪がシンシンと降り続けていた。 *********** 「・・・・・・・地上は雪、か・・・・・」 椅子に腰掛けていたダルフィンがふと、呟いた。 「は・・・・・?なにか――――」 その前に控え、報告書を読み上げていた部下が訊ねた。 「なんでもないわ・・・・・で、グラウからなんと?」 「はっ。覇王様よりこちらの人員の派遣の要請がきております」 「ふぅん、しばらく動けないからその代わりの駒が欲しいのね」 「期間は当座のところその間であろうと―――――」 「いいわ、放っておきなさい」 「な―――そ、それは―――――」 ダルフィンの言葉に絶句する。 「自業自得よ。人間の”力”を甘くみたおバカさんに、そこまでしてあげる必要もないわ」 「し、しかし―――――」 「私に意見するつもり?」 にこやかに微笑みながら、だが芯まで凍るような眼光の瞳が向けられる。 「い、いえ――――決してそのような―――」 「なら下がりなさい」 「は、はは・・・・失礼いたします」 戦々恐々としながら退室する部下を尻目に、ダルフィンは彼方へと視線を向けた。 (今日は確か、聖誕祭―――だったわね。そういえば、あの時も村の連中が祭りの準備をはじめなければ、といっていたわね・・・・・・) ほんの一時、”人間”として過ごしたあのときが思い出された。 (工房の女たちもプレゼントがどうのこうのと騒いでいたわね・・・・) 時の彼方へ過ぎ去った思い出が―――――奥底にひっそりと大切にしまいこんだ思い出がふと、綻びから漏れ出す。 (・・・・貴方は・・・静寂の銀世界に・・何を見ていたの・・・・・・?) 思い浮かぶはひとりの男の顔。 その度に、ともに湧き起こる感情は、苦く、烈しく、己が身を苛む。甘く、重く、己が身を蝕む。 (ねえ・・・・デイル・・・・・・・・) ファサッ 「・・・・・・・ん」 何かが肩に掛かる感触に、ダルフィンはテーブルに伏していた顔をあげた。 最初は頭がボンヤリとしていたが、次第に目覚めてくるにつれ、目に映ってきた光景に、驚きの色を浮かべ 瞳を見開いた。 「こ、ここは――――?」 そこは自分の居城にある自分の部屋ではなかった。だが、見覚えのある――いや、決して忘れない部屋であった。 赤々と燃える暖炉も、自分の座っている椅子もテーブルも、傍のベッドも、皆はっきりと覚えている。 「おや、起こしてしまいましたか」 決して忘れないその声。 振り返ると、大きくこけた頬に変わらぬ優しい笑みが浮かんでいる。 「デ、イ・・・・・・」 呟くようなダルフィンの声に、だが彼は大きく咳き込んだ。 「デイル!」 慌てて立ち上がり、彼の傍による。 「大丈夫・・・ですよ。ダルフィンさん」 幸い大きな発作にはならなかった。 ほっと安堵の息をつきながら、ダルフィンは頭の中でどういうことなのか考えだした。 いま自分のいる”ここ”は間違いなくあのときだ。だが――― 「まだ粉雪が降り続いてますね」 デイルは窓の外を眺めながら言った。 だが、あれは冬に入る前のことだった。こうして雪を眺めたことなどないのだ。 「雪は決して優しくはありませんが・・・・・・けれど、こうして白い無垢な世界を見ていると少しは心が洗われるようですね」 決して私の罪が贖われることはありませんが――――そう小さく呟いた彼の言葉を、ダルフィンはただ黙って聞いていた。 「・・・・・・デイル、そろそろ夜も更けてきたし、床に入りましょう」 「・・・・・そうですね。もう、寝ましょうか」 そう言うと、ダルフィンは暖房を保たせるため、暖炉に薪を足した。そしてデイルはベッドに入り込み、静かに身体を横たえた。 スッと目を閉じようとしたとき、 「なっ!?」 突然声を上げた。 「ダ、ダルフィンさん!?」 ダルフィンがベッドの中、デイルの傍に入り込み、彼の身体を抱きしめたのだ。 「な、なにを―――!?」 「・・・・・・今夜は冷えるわ・・・身体が冷えたら、よくないわ・・・・」 「し、しかし―――!?」 「・・・・・・・・・お願い・・・・・今夜だけ・・・・・こうさせて・・・・・・・」 消え入りそうなその声に何かを感じ取ったのか、デイルは声を上げるのをやめ、力を抜いた。 「・・・・・・・・ありがとう」 ひとつの事実だけが、彼女には分かっていた。ここがたとえなんであろうと、次に目を覚ませば、彼はいないのだということを。 「・・・・・ねえ、デイル・・・・」 「なんですか・・・・・?」 彼のぬくもりを感じながら、ダルフィンが囁くように声をかけた。 「いつか・・・・・・貴方の身体が治ったら・・・・・・・・・どこか遠い、美しいところへ行きたいですわ・・・・・・・・」 「・・・・いいですね。行ってみたいですね・・・・・・」 「ほんと・・・・・・?約束ですわよ・・・・・・・・」 「ええ・・・約束します」 その言葉にほんの小さな笑みを浮かべて、ダルフィンは少し強く彼の身体を抱きしめた。 その瞳には微かに涙が潤んでいた。 この約束が果たされることがないのは、わかっている。 しかし、この瞬間だけは永遠の約束であった。 「デイル・・・・・・暖かいわ・・・・・」 ダルフィンが呟くと、デイルも優しく彼女を抱きしめた。 窓の外は、粉雪がいつまでもシンシンと降り続いていた。 「デイル・・・・・・・・」 閉じられた瞳から小さな涙がひと筋、流れ落ちた。 椅子に腰掛けたまま、眠りについているダルフィンの傍らに、なにかの影が離立っていた。 薄い闇の中を、白髪白髯が映えており、また白縁の赤の衣装もそうであった。 足元に下ろしていた白い袋を担ぎ上げると、闇に溶け込むように部屋の外へと消えていった。 出ていく一瞬、振り向いたその姿が、黒い箱を背負った黒装束に見えたのは気のせいだったのか。 「Merry Xmas――――」 完全にその姿はどこにも見えなくなった。 その言葉と、彼女の傍に置かれた尺丈に似た杖を残して―――――― ************************************ Merry Xmas、みなさま。いかがお過ごしですか。 世間がクリスマスで浮かれる中、私はずーっと正月の飾りを作っておりました。 クリスマスの空気なんざ、綺麗さっぱりありません・・・・・・・ さて、今回の『ある愛の光景』。変化球を投げてみました。 最初で、またバカ兄弟スパーク!と思わせて、本命は彼女。 しかも本編準拠Verですから、切ないですねー。 まあ、たまにはこんなのも。 それでは今日はこのへんで。 |
32154 | おまけ | 棒太郎 | 2005/12/25 10:15:28 |
記事番号32153へのコメント 「デイル・・・・・・暖かいわ・・・・・」 ダルフィンが呟くと、デイルも優しく彼女を抱きしめた。 窓の外は、粉雪がいつまでもシンシンと降り続いていた。 「―――――って、これで終わるこたぁないわよね!」 「ぐぉっ!?ダ、ダルフィンさん!?」 万力のごとく、ガッチリとデイルの身体をホールド! もがけばもがくほど、ギリギリと食い込んでゆく! 「ちょ、ちょっと、ダルフィンさん!お、落ち着いて、落ち着いてください!話せばわかります!」 「何?デイル。私は物凄く落ち着いてるわよ?」 血走った眼でそう言われても、なんの説得力もありません。 「デイル〜〜、私たちは読者様の期待に応えなきゃならない義務ってものがあるのよ」 「い、いえ、それは絶対違うと思います!」 フーッとデイルの首筋に息を吹きかけながら、のたまうダルフィン。 さながら獲物に巻きつき、捉えた大蛇のようであった。 「据え膳喰わぬは女の恥、とも言うし――――――それじゃぁ、いただきま〜〜〜〜す♪」 「のわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」 雪の夜空に絶叫が響き渡った。 窓の外は、粉雪がいつまでもシンシンと降り続いていた。 おちまい♪ ************************************ はい、舌の根乾かぬうちにやっちゃいました。 やっぱり、期待してくれてる人もどこかにいると思うし。 やっぱりこのシリーズだし。 ではでは。 |
32164 | ダルフィンさま(笑) | 猫楽者 E-mail | 2005/12/28 12:06:22 |
記事番号32153へのコメント こんにちは、棒太郎さん。 ご無沙汰しております。お元気ですか、猫楽者です。 『ある愛の光景』 〜聖しこの夜〜 とても楽しく読ませていただきました。 インバース家 + タイタスさんと愉快な仲間たち(笑)の素敵なクリスマスパーティ♪ 楽しそうですね♪ メンバーがメンバーですから、ふざけ半分にでも暴れ始めたら(汗) 周りへの被害が大変そうですね(笑) 皆さんの前でも、良い雰囲気のルナさんタイタスさんと いつもどおり・・・と言いますか・・・色気皆無のリナさんガウリイさんが、対照的でしたね。 魔族側は、覇王さま(汗) ダルフィンさまへの援軍要請は、あっさり却下されてしまいましたね(笑) 獣王さまへの要請も、似たような経緯で却下されていそうですし・・・・。 覇王さま。めげずに頑張ってください。 夢の中での、ディルさんとの再会。 じ〜んとしました。 穏やかで、とても大切なかけがえのない時を過ごしておられる。 ダルフィンさまとディルさんの、暖かな素敵なクリスマスでしたね。 黒子さま・・・・魔王さまの腹心たる、海王さまに気づかれずに部屋に進入するとは(汗) さすがです。 ダルフィンさまには何よりの“クリスマスプレゼント”ですね。 黒子さまが、ゼロスさんとか魔剣士さまたちに、どんな“クリスマスプレゼント”を送られたのか(笑) とても気になります〜。 しんしんと雪の降る、とても暖かで静かな雰囲気で 今年のダルフィンさまのクリスマスは終わる・・・・・のかと思っておりましたら(笑) スパークしましたね(汗) この後の展開を考えると(笑&汗) ダルフィンさま(笑)ディルさんのお体の事を考えて・・・・手加減してあげてくださいね(笑) ディルさん・・・・ガンバです(汗) いつもと違うダルフィンさんとディルさんの雰囲気に、ほんわりと暖かい気持ちになりました。 とても面白かったです。 今年も後、数日で終わりますね。 今年も棒太郎さんのお話を、とても楽しく読ませていただきました。 ありがとうございました。 本編の方も盛り上がってますね。 本当に寒くなってまいりましたね。 お体にお気をつけて、お元気で。 では、失礼します。 良いお年を。 某ミミとシッポの大冒険ネットゲームにハマリつつある猫楽者でした。 |
32170 | お約束(笑) | 棒太郎 | 2005/12/30 09:46:53 |
記事番号32164へのコメント > こんにちは、棒太郎さん。 >ご無沙汰しております。お元気ですか、猫楽者です。 > > 『ある愛の光景』 〜聖しこの夜〜 とても楽しく読ませていただきました。 こんにちは、猫楽者さん。お久しぶりです。 今年もなんとか年の瀬を迎えることが出来ました。 >インバース家 + タイタスさんと愉快な仲間たち(笑)の素敵なクリスマスパーティ♪ >楽しそうですね♪ >メンバーがメンバーですから、ふざけ半分にでも暴れ始めたら(汗) >周りへの被害が大変そうですね(笑) > >皆さんの前でも、良い雰囲気のルナさんタイタスさんと >いつもどおり・・・と言いますか・・・色気皆無のリナさんガウリイさんが、対照的でしたね。 あの面子たちのパーティーはほんとに凄まじいドンチャン騒ぎになると思います。 でもタイタスがきちんと統率の取れたドンチャン騒ぎにすると思います(どんな騒ぎだ) やっぱり色気より食い気なのが、リナとガウリイでしょう。 >魔族側は、覇王さま(汗) >ダルフィンさまへの援軍要請は、あっさり却下されてしまいましたね(笑) >獣王さまへの要請も、似たような経緯で却下されていそうですし・・・・。 >覇王さま。めげずに頑張ってください。 相変わらず扱いの酷い、不幸なヤツです(笑) >夢の中での、ディルさんとの再会。 >じ〜んとしました。 >穏やかで、とても大切なかけがえのない時を過ごしておられる。 >ダルフィンさまとディルさんの、暖かな素敵なクリスマスでしたね。 最初にあの約束のやり取りが浮かんで、この流れになりました。 しんみりとした感じがでるような情景を書いてみました。 >黒子さま・・・・魔王さまの腹心たる、海王さまに気づかれずに部屋に進入するとは(汗) >さすがです。 >ダルフィンさまには何よりの“クリスマスプレゼント”ですね。 >黒子さまが、ゼロスさんとか魔剣士さまたちに、どんな“クリスマスプレゼント”を送られたのか(笑) >とても気になります〜。 やっぱり、この男と分かりましたか(笑) ほんとに何者なのか? ダルフィンへはこれでしたが、他へはろくでもないものを贈ってそうです。 >しんしんと雪の降る、とても暖かで静かな雰囲気で >今年のダルフィンさまのクリスマスは終わる・・・・・のかと思っておりましたら(笑) >スパークしましたね(汗) >この後の展開を考えると(笑&汗) >ダルフィンさま(笑)ディルさんのお体の事を考えて・・・・手加減してあげてくださいね(笑) >ディルさん・・・・ガンバです(汗) これもまあ、やっぱりお約束は大事かと(笑) 読者様の期待には応えないと(笑) >いつもと違うダルフィンさんとディルさんの雰囲気に、ほんわりと暖かい気持ちになりました。 >とても面白かったです。 > >今年も後、数日で終わりますね。 >今年も棒太郎さんのお話を、とても楽しく読ませていただきました。 >ありがとうございました。 >本編の方も盛り上がってますね。 > >本当に寒くなってまいりましたね。 >お体にお気をつけて、お元気で。 > >では、失礼します。 >良いお年を。 > >某ミミとシッポの大冒険ネットゲームにハマリつつある猫楽者でした。 今年の後半から執筆が途切れがちになって申し訳ないです。 それでも読んでくださってありがとうございます。 なんとか春までにはメドをつけたいと思います。 今年は本当に冷えますね。誰だ、暖冬なんて言ったのは! それでは、よいお年を |