◆−定期的な漫遊記投稿ですv−かお (2006/2/2 22:55:13) No.32227
 ┣エル様漫遊記・番外編〜ブレイクオブディスティニー編〜−かお (2006/2/2 22:58:08) No.32228
 ┣エル様漫遊記・番外編〜騎士道のススメ編〜−かお (2006/2/2 23:00:48) No.32229
 ┃┗Re:初めまして−河田 優妃 (2006/2/4 22:51:06) No.32235
 ┃ ┗初めまして−かお (2006/2/8 00:05:14) No.32238
 ┣エル様漫遊記・番外編(52)〜理由なき冤罪編〜−かお (2006/2/17 21:26:08) No.32293
 ┗エル様漫遊記・番外編(53)〜復讐の刃編〜−かお (2006/2/17 21:28:26) No.32294


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32227定期的な漫遊記投稿ですvかお E-mail URL2006/2/2 22:55:13



 こんにちわ。
 またまたやってきています(爆!)
 というか、長編の合間のオアシス?(なのか!?)
 ということで、エル様漫遊記・番外編。
 ちなみに、注記しておきますが(まてまて!)
 このリナ=インバースは、金色の王(エル様)となっています。
 そして、この本編にあたるのは、ここにはまだ投稿してませんので。
 もし、番外編があるなら、本編もあるはず。
 と、捜さないでください・・(汗)
 映画版のは一つほど、ここ(書きなぐり)にも投稿してあります・・・・・。
(とゆーかすでに完全無欠版は投稿しました。)
 本編がどーしても読みたい人は、このしがない私のページからどうぞ(まて!)
 おいおいと更新していますので・・・。
 この番外編。
 主に、スレイヤーズ、スペシャルが主です。
 そして、たまぁぁぁぁに、オリジナルもありますが(爆!)
 上記を納得の人は、お目汚しにまでお読みください・・・・。




#####################################
 こんにちわ♪
 やってきました♪久方ぶりに♪(まて!)
 ちなみに、このエル様漫遊記・番外編。
 以前の話の内容は・・こーなってます(まて!)
 
  第1話 その後前偏・後編 スペシャル7巻   影の鏡
  第2話 デリィシャス4巻&スペシャル19巻  ルナテクヘステバル
  第3話         なし         ☆降魔戦争時☆
  第4話         デリィシャス2巻   呪術士の森
  第5話         なし         ☆ゼリス誕生偏☆
  第6話         スペシャル1巻    ナーガの挑戦
  第7話         スペシャル1巻    セイルーンの王子
  第8話         スペシャル9巻    闇に住まう村
  第9話         スペシャル5巻    ジェフリー君の騎士道
  第10話        RPGゲームブック  目指せサイラーグ
  第11話        スペシャル5巻    レスキュウ作戦
  第12話・前偏・後編  なし         ☆エル樣とユニット様☆
  第13話        スペシャル13巻   BP攻防戦
  第14話        日帰りクエスト(?) ☆日帰りクストキャラ☆
  第15話        スペシャル1巻    エルシアの城
  第16話        スペシャル10巻   破壊神はつらいよ
  第17話        スペシャル10巻   歌姫の伝説
  第18話        スペシャル6巻    愛しの根性なし
  第19話        スペシャル11巻   全ては真実のために
  第20話        スペシャル6巻    根性なき戦い
  第21話        スペシャル1巻    ロバーズキラー
  第22話        スペシャル10巻   歌姫の出発
  第23話        スペシャル7巻    頑張れネクロマンサー
  第24話        スペシャル11巻   一把一からあげ
  第25話        スペシャル9巻    イリーズの旅路
  第26話        スペシャル2巻    リトル・プリンセス
  第27話        スペシャル13巻   まったりとしてこくがなく  
  第28話        スペシャル17巻   小さな濃いメロディ  
  第29話        スペシャル一巻    悪役ファイト 
  第30話        スペシャル一巻    りべんじゃあ
  第31話        スペシャル14巻   遠き日の決着
  第32話        スペシャル二巻    白竜の山
  第33話        スペシャル12巻   家政婦はみたかもしんない
  第34話        スペシャル17巻   仁義なき場所とり
  第35話        スペシャル17巻   嵐の前に
  第36話        スペシャル10巻   白い暗殺者
  第37話        スペシャル13巻   仰げば鬱陶し
  第38話        スペシャル19巻   愛は強し
  第39話        スペシャル7巻    ガッツだ!元ネクロマンサー
  第40話     スペシャルまだ未収録    オールディズ・プライド
  第41話         スペシャル2巻   ラビリンス
  第42話         スペシャル2巻   リナ抹殺指令
  第43話         スペシャル8巻   ザ・ガードマン
  第44話         スペシャル2巻   ザ・チャイルド
  第45話         スペシャル2巻   リトルプリンセス2
第46話         スペシャル20巻  ミッション・ボジプル
  第47話         スペシャル3巻   ヒドラ注意報
  第48話 スペシャル17巻&ディリシャス3巻 巨大生物の山
  第49話         スペシャル24巻  地底王国の脅威
   以上となってます♪


  ちなみに、今回は♪♪
  第50話         スペシャル15巻  ブレイク・オブ・デスティニー
  第51話         スペシャル25巻  騎士道のススメ

  次回。
  第52話         スペシャル9巻   理由なき冤罪
  第53話         スペシャル3巻   復讐の刃

  の予定です♪ 
  ちなみに、これは、パロディです♪
  それでもって、リナがリナではなく、金色の王であるエル様となってます♪
  それでは♪
  (以前のは、著者別からどーぞ♪)大概すべて読みきりですので♪
  あしからず♪
  ではでは♪
  ちなみに、これ、リクエスト、受付中♪
  (すでにただいまリクエスト、10個以上…うけてますv)
  リクエスト予定作品。
  (はるか様)
  ・忍び寄る闇(SP14巻分)(ガウリイ達の方)
  ・ビーストストライク(SP14巻分)(ガウリイ達の方)
  ・汝その名はスイートポテト(SP21巻分)
  ・ホーンテッド・ナイト(SP14巻分)
  (星野様)
  ・SP八巻分。
  ・エイプリルの事件簿(SP15巻分)
  ・プライド・オブ・ダークネス(SP15巻分)
  (水島飛鳥様
  ・プライド・オブ・ダークネス(二名様受付中v)
  (?様←つまりは誰だったか忘れました・・・・汗)
  ・復讐の刃(SP3巻分)
  ・お子様クエスト(SP4巻分)
  ・ないしょの作戦(SP5巻分)
  ・激闘!料理人(SP6巻分)
  ・理由なき冤罪(SP9巻分)
  ・ランナウェイ・ガール(SP20巻分)
  それでは、いくのです♪
  

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32228エル様漫遊記・番外編〜ブレイクオブディスティニー編〜かお E-mail URL2006/2/2 22:58:08
記事番号32227へのコメント
まえがき&ぼやき:

こんにちわ。
またまたやってきました番外編v
今回は、水島飛鳥様のリクエスト。
SP25巻分。ブレイク・オブ・ディスティニー編なのですv
今回は、ガウリイ達はでてきません。
つまりガウリイ達と出会う前のお話・・となっております。
あしからず・・・
出てくるのは当然リナ(エル様)とそしてスミレちゃん。
そして回想シーンに・・某お人(?)・・(笑

#####################################

  エル様漫遊記〜ブレイク・オブ・ディスティニー編〜

ざっざっざ……
積もる落ち葉を踏み分けて響く足音が二つ。
どうでもいいけど、足音くらい消して歩きなさいよねぇ〜……
あたしの横にいる長い漆黒の黒髪を結わえて頭の上のほうでポニーテールにし、
赤いレースのようなリボンで蝶々結びをしている見た目十歳前後……というか。
どう見ても十歳より年下。
よくていえば、八歳程度。
そんな彼女もまたあきれて小さくため息を吐いていたりする。
あたし達は足音すらも立てずに歩いている…というのに……
まったくもってなってないったら。
あたし達が見ている【彼ら】は、一応山道にはなれているがゆえに呼吸も歩みのリズムも乱してはない。
一見普通の旅人風…に見えなくもないが。
その目の前の男二人のうちの一人が抱えている麻の袋がもごもご動き。
くぐもった呻きがもれていたりする…というのを除けば。
普通こういった山道などで、人とすれ違った場合、軽く挨拶くらいはする。
というのが、人間達の中では一応常識。
…まったく……
「こんな寒い山の中。子供を抱えて何してるのかしらv重そうだしv」
ぴくくっ!
あたしの横にいる少女――ユニットの言葉に、
面白いまでに一瞬凍りつき、はじかれるようにこちらをみてくる男たち。
一応この辺りを人々曰く。
『雪も深い。』…ということなので、別に着なくてもいいけども。
とりあえず軽い防寒用の服を身につけているあたしと。
膝の上辺りまでレースのついたひらひらのスカートにの下にズボンを穿き。
もこもこの毛のついたブーツと手袋…ついでにローブを纏っているユニット。
一見したところ、あたしとユニットは【旅の姉妹】。
もしくは、あたしの格好からして、【少女を護衛している魔道士】と見られなくもなかったり。
あたしの姿をみて、魔道士、とみるか旅の女の子のハッタリ、と捉えるか。
その判断基準は人それぞれ。
「たいしたことはねえさ。それにこれは子供ではないぞ?」
荷物をもっていない男がにやけたような、
見る人からすれば獰猛の笑みとでもとれるような、そんな笑みを浮かべていいながら、
麻袋を担いでいる男のほうにと『先にいけ。』と手で合図なんかおくっているけど。
そして、あたし達のほうをみて。
「人手は足りてるから心配するな。かえって飯くってぐっすり眠って忘れちまいな。ここでみたことは。」
などといってくる。
どうやら旅の姉妹がハッタリをかねて、姉のほうが魔道士の姿をしている。
…と捉えているようだけど。
そんなことをいいつつ、男は右手で荷物を担いでいる仲間にかるく手をふり、
そして左手をそっと後ろに回していたりする。
どうもこちらの不意をついてナイフを取り出すつもりのようだけど。
……見え見えだし……
男の左手が動くより早く。
「氷の矢(フリーズアロー)v」
こっきぃぃん!
あたしのつぶやきと同時に、そこにいた二人の男たちめがけて冷気の矢が出現し。
一瞬もしないうちに男たちをその場に氷のオブジェと貸してゆく。
「あら?これくらいのことすらよけられないなんてv」
「本当v」
そんな至極当たり前な会話をしつつ。
とりあえずそのまま…というのも気の毒なので、その上から数キロばかりの重さの雪を積もらせておいて。
とりあえず雪の中にと埋めておく。
ふよふよふよ……
今埋めた氷のオブジェとは別に、何やらどこかに埋まってしまった男たちがもっていた麻袋のみが、
ユニットの目の前にてふよふよと浮かんでいたりするけども。
「さってと♪…とりあえず近くで火でもおこしましょ♪」
「賛成v」
ひとまず、雪のどこかに埋まった男たちはほうっておき。
とりあえずあたし達はなぜか凍り付いて固まりと化している袋と共に、一度この場を離れることに。


「…あ…あじがとう……」
袋の中から取り出した女の子がなぜかガタガタ震えつつも、声を震わせてあたし達にといってくる。
一瞬、ユニットをみてぼ〜となっていたりしたけど、それはそれ。
見た目の年齢は五つか六つ。
実際はまだ五歳になって間もない少女。
栗色の髪を頭の左右でくくり、きている服もいたって普通。
まあ、髪の色はあたしも栗色・・・にしているものの。
あたしは明るめの栗色、この少女は暗めの栗色、といった違いがあるけども。
どこをどうみてもただの人間の女の子。
まずこんな格好の子供を身代金目的で誘拐…つまり攫うものがいるとすれば。
その相手は、『何も考えていない人間』というより他にはない。
まあ、この子の場合はそういったコトとはまた違う事情だけど。
「もう大丈夫よ。今のところは。」
そんなあたしの言葉に。
「……ぞ〜でなくて……ざぶい……」
カタカタと震えつつ、両手を肩と肩とに組み合わせ、何やらいってくるけど。
「ま、なぜかいきなり凍ったしねぇ。」
「そうね。」
「・・・・・・・・・」
少女としては、袋の中にいたために何が起こったのかわかっていなかったりするので。
彼女からすれば、自分がなぜここまで寒いのかわかってなかったりするこの現状る
ま、一緒に凍らせたほうが、そもそもその方が、あの男たちも『この子を人質にする』。
……ということも出来ないしね♪
「あらあら。自分で周りの温度くらい調節できなきゃv」
にこやかに言い放ち。
「えい♪」
パチン。
と軽くユニットが指を鳴らすと同時。
ごうっ!!
少女の周囲に炎の柱が出現し、そのまま少女を取り囲む。
「……って!?んきゃぁぁ〜〜!!??」
何やら炎に囲まれて悲鳴をあげてるけど。
別にやけどするような炎を出現させているわけでもないのにねぇ。
「さってと。で?名前は?どこに住んでるの?」
わかっているけど、ひとまずなぜか真っ青と成り果てて硬直している少女にと問いかける。
そんなあたしに対し、
「……殺されるかとおもった。でも、また今のをやられても嫌なんで答える。」
炎の収まりと共に、なぜか今度は寒さに…ではなく、恐怖でカタカタと震えながら。
「名前はマリリン。おと〜さんと一緒にリシアルドの村にすんでる。」
ついでに暖を取るために暖めていた岩にと手をかざしつつ、顔色も悪く質問に答えてくる。
そんな少女、マリリンの声に。
『リシアルド?』
思わず同時につぶやくあたしとユニット。

リシアルドの村。
それは知るものぞ知る小さな村。
といってもあたしには知らないことなんてないんだけど。
人口が微々たる村ではあるが、その地方でしか取れない野菜。
雪アスパラガス、と呼称される品物が名産品の一つ。
というか、それしか名産品はないんだけど。
昨日たちよった麓の町でも本来は出回っていたりするのだが、今現在は売り切れ状態。
店の人や町の人いわく。
「いつもは山の中にあるリシアルド、という村でとれたものを町まで運んでいるのだが。
  最近その山に野盗たちが居座って、困ったことに物資の流通がママらなくなっている。」
などといっていたりする。
とりあえず、せっかくだから…というのと、何やら面白そうなことが起こっている。
ということもあり、こうして直接、リシアルドの村に出向いてゆくべく。
山道をてくてくと歩いていたあたしとユニット。

「山の中でね。ウサギ追いかけてたらあのおじさんたちに攫われたの。
  何でかはわかんない。丸焼きにされるのもいやだから答えるけど。
  うちの財産は…大きいタンスとベット…くらいかなぁ?」
などといってくるこのマリリン。
そういえば、このマリリンの父親…家のいたるところに【あるもの】を隠している。
ということ、このマリリンには教えてなかったりするのよねぇ。
まあ、別にいいけど。
「どうやら身代金目的ではなさそうね。」
判っているくせに、しれっとにこやかに笑みを浮かべて言い放つユニットに。
「みたいね。とりあえずあたし達もどうせ村にいくつもりだったし。家までおくっていくわよ。」
そんなあたし達の言葉に。
「…一人ででも帰れるけど……何か断ったら今度こそ丸焼きにされそ〜なんでお願いする……」
いってこくり、と小さくうなづくマリリンの姿る
そしてふと。
「…そういえば、あのおじさんたちは?」
今さらながらにふと気づき、問いかけてくるけども。
「ああ。何かいきなり吹雪が起こって。それでそのまま雪の中に埋もれてたけど。」
「……ふぶき?」
雪は積もっているものの、空は晴れ渡っている。
雪が降った…という痕跡すらない澄み切った空。
「そんなことより。とりあえず村にいきましょv」
一人首をかしげるマリリンを伴い、あたし達はリシアルドの村にとむかってゆく。


山道をすすんでゆくことしばし。
山間に身を寄せ合うかのように集まった屋根の群れがみえてくる。
二十件にも満たない小さな家々。
それが目指すリシアルドの村。
家が近づくにつれ元気を取り戻したマリリンは、とてとてと村のややハズレにとある一軒屋にと向かってゆく。
他と変わらぬ小さな木の家。
近づくにつれ、コーン、コーン…と家の中より誰にでもわかるほどに響き渡っている音。
「おと〜さ〜ん!!」
マリリンの呼びかけと共に、音はやみ。
「ただいま〜。」
いい加減に直せばいいものを、ガタのきた玄関の扉をあけて中にと飛び込むマリリン。
そんな彼女の後ろに続いて入る、あたしとユニット。
小さな部屋に小さな暖炉。
小さなテーブルに椅子二つ。
奥にある扉は寝室にとつながっている。
そして、暖炉のそばの低い作業椅子に腰を下ろしている男が一人。
年の頃は手入れもせず伸び放題にしている髪とひげのせいで、外見上の見た目は四十前後に見えていたりする。
実際はこの人間は三十に入ったばかりなんだけど。
まあ、そんなどうでもいいことはおいとくとして。
人間の中でいうならば大柄で、多少ずっとりとした体を粗末な袖長ズボンのモコモコした服にて包んでおり、
彼の前には、いままでやっていた木彫り細工の像やらクズがあたりにちらばっていたりする。
男の手に握られているのはノミと木槌。
「マリリン。」
入ってきたマリリンに気づき、手にしていたノミと木槌をおき、低く響く声で娘の名前をよび。
そして、ちらっとあたしとユニットに視線を走らせ。
「…?そちらの人たちは?」
などとマリリンに聞いていたりする。
「丸焼きつくろうとしてた人〜。」
「?丸焼き?」
未だに、先ほど自らの周囲を囲んだ炎が忘れられないようだけど。
体を温めるのにはてっとり早いのにね♪
マリリンの言葉に首をかしげている父親。
ちなみに、名前はクライヴ。
「説明すると長くなるから。簡単に説明するけど。
  さっき山の中で、そのマリリンを攫おうとしていた奴らと出くわしたのよ。」
「何!?」
あたしの説明に、面白いまでに驚き。
そして。
……まさか!?あいつらは娘にまで!?
等と思っていたりするこのクライヴ。
普通、あ〜んなことをしていたら、それくらいじゃすまないでしょうに?
あの人間がこの彼にと追っ手をかけなかったのは、退職金がわり、と思えばいい。
ということだった様だけど。
それまでこの人間ってほとんどお金とか使うこともなかったからねぇ。
他のメンバーと違って。
まあ、それはそれとして。
「そ…それで?」
多少顔色も悪くといかけてくるクライヴに。
「それで、たまたま通りかかったあたし達が助けた。それだけのことよ。」
「あと寒くて丸焼き〜。」
あたしの言葉に続けてマリリンが何やらいっているけど。
でも、その言葉じゃあ、クライヴには意味は通じないってば♪
本来なら、相手が何を訴えたいのか、というのは瞬時にわからないとダメなんだけどねぇ。
「…そ、そうか。それは…世話になった。」
ちょこちょことかけよったマリリンの頭をなでながら。
「私はクライヴ=ドゥワーズという。この村で炭焼きをやってくらしておる。」
などといってくるこのクライヴ。
そんな彼の言葉に。
「炭焼き…ねぇ。どうせなら細工物にしたほうが収入あがるのにv」
にこやかに、的確なことをいっているユニット。
まあ、確かにその通りだけど。
暖炉の傍には、いくつかの木彫りの像がならべられたり、または転がっていたりする。
竜神や竜王を一応モデルにしている細工物、と見る人がみれば一目瞭然。
超一級の出来…とは到底いかないものの、彼独自の味がそれぞれに反映されている。
好みにもよるにしろ、手ごろな値段ならば欲しがるものもそれなりにいる、といえなくもない。
「あれを炭にする。面白い、といってくれる者は多いが、あまり売れん。」
そんな細工物たちにと目をやり答えてくるクライヴ。
まあ、人間の自称金持ちや、とある宗教団体がらみの者たちの間では、
こんな像、すなわち一般に言われている【神像】を炭にしているところなどが他にあまりないゆえに、
それゆえに、ある筋ではちょっとした珍しさからも価値がでている現実があったりするけども。
一応売りに出されている品物も、通常の炭よりすこし高めとなっているがゆえに、
あまり一般には知られていない。
「ま、とりあえず。そっちが名乗ったことでもあるしるあたしはリナよ。リナ=インバース。」
「ミリアム=ユニットです?」
びくっ!
あたしの名前をきき、まともに体わ一瞬震わせているクライヴ。
そして。
「……リナ=インバース…?どこかで聞いたような名だが……」
まさか…あの?
などと思いつつ、小さくつぶやくクライヴだけど。
「まあ、よく似たような名前はあるし。とりあえず、見てのとおり旅の魔道士よ。
  今この子と一緒に、この村に雪アスパラっていう名物野菜がある。
  というのでちょっと食べによったんだけど。」
「そういうのが食べられる食堂などはこの村にはなさそうですね。」
交互にいうあたしとユニットの言葉に。
「ああ。そういう店はないな。」
娘が攫われかけた、ということを気にしつつ、淡々と答えてくる。
「なら、ちょっとわるいんですけど。適当な…もとい、村長さんとかに私たちのことわ紹介してもらえませんか?
  今夜の宿もどうにかしたいしv」
にっこりと微笑み話しかけるユニットに続き。
「そうね。この辺りに居座っているっていう野盗たちをどうにかできるかもしれないしv」
というか、関わる気だけど。
そんなあたしやユニットの言葉に。
びっくんっ!
……やはり、この少女が…あの?!
などと思い、またまた一瞬体を震わせる。
そんなに怖がらなくても…ねぇv
そして、だがしかし、今の私には関係ないはず…そう思いつつ。
「……野盗を……」
小さくつぶやき。
「……わかった。まっていてくれ。」
いいつつも、一旦奥の部屋にとひっこみ、そしてほどなく姿をあらわす。
どうせならばついでに着替えくらいすればいいものを。
この人間、この辺りのことはルーズなのよねぇ。
「案内しよう。――マリリン。来なさい。」
「うん。」
駆け寄るマリリンを従えて、彼はあたしのほうにと歩み寄り。
「それと。リナさんたち。これは娘を助けてくれた礼だ。うけとってくれ。」
いって、先ほど部屋からとってきた小さな麻袋をあたしにと手渡してくる。
袋の中には金貨が十八枚ほどはいっていたりするけども。
まあ、アレがあるから、生活には困っていない。
というのはあるんだけど、この家族は。
彼の妻のドロシーが生きているときは、彼女…アレを使わさなかったんだけど。
元々、そのお金がたとえ盗みなどで蓄えられたお金…といっても、お金にはかわりがないのに。
かといって役人に届けるわけにもいかず。
結果としてタンスや床下などにしまいこんでいたりするんだけど。
マリリンはその辺りのことは詳しく知らされてないし。
「あら。でも。」
とりあえず形だけ断るフリをするあたしにと。
「うけとってくれ。娘を助けてくれた礼だ。」
真剣な顔をしていってくる。

とりあえず、どうしても…ということもあり、それを受け取り懐の中にと収め。
そして、あたし達はクライヴに案内され、ユニットとともにこの村の村長の家にとむかってゆく。


山の中はいたって静か。
それが夜ともなればなおさらに。
これが夏場ならば茂る木の葉が風でざわめき、動物たちなど…
…といった鳥や虫達の奏でる賑わいが闇を満たすのであるが。
この辺りは未だに冬の気候。
別にあたしやユニットには気温などは関係ないものの、
なぜか一般的に人々にもわかりやすいようにいうなれば、たかが、気温の一度や氷点下零。
そしてマイナス何度…という程度の気温で人々は家々に閉じこもり暖を取っていたりする。
というか、家の中より外で家など…例えばカマクラや氷の家をつくったほうが暖かいでしょうにねぇ。
雪をあまり上手に扱ってないわよね。
ほんと?
ともあれ、クライヴから村長に紹介されたあたし達は、
【盗賊達を追い払い、すこしの謝礼と雪アスパラ食べ放題をその報酬とする。】
という旨の約束をとりつけ、宿もないこともあり、村長の家にと泊まることに。
本当は宿とかなくても、そのようの代用のモノはもっているんだけどね。
あと外に雪などで家を創ってもいいし。
でもやっぱり泊まったほうが何かと楽しそうだし…ねv

一般的に、雪アスパラ。
という名前から人々が連想すること…といえば、単に白いアスパラのようなもの。
だがしかし、実際のところ、収穫時期はもとより、見た目まで異なっていたりする。
まあ、アスパラそのものが、元々いろいろな種類として出回っているうちの一つだし。
夕食時、目をきらきらと輝かせるユニットに、村長の妻である女性が見せたその現物は。
茎の長いブロッコリーににた物体。
まあ、アスパラもブロッコリーも同じ種ではあるんだけど。
色もブロッコリーと同じく、緑が鮮やかに反映されている。
ユニットって、あたしの【世界】の様々な代物…見聞きするの楽しみとしてるからねぇ。
自分のトコにはないものもあるからって……
で、気に入ったら取り入れたりするのよね。
まあ、あたしも同じことをしているから別に何もいうことないけど。
ともあれ、緑の茎の皮をむくと真っ白な芯が現れ、その部分を塩で湯がいたり、バターソテーにしたり。
…と、様々なアレンジを施して食べるのが雪アスパラの定説。
ユニットは面白がって茎の皮をむく手伝いをしてたけど。
ああいう作業って…彼女…好きだからねぇ。
わざわざ手間隙をかけるのが。
……ま、気持ちはわかるけど。
味としては一般の人々にも知れ渡っているアスパラをまろやかにした様な風味で、
何もつけなくても天然の甘みが十分にと味わえる。
ゆえに、子供や家族のために…と、この品物を買い求める人間達はすくなくない。
というか、食べられる品、と位置づけられている品全てに天然のおいしさがあるんだけどね♪

ともあれ、あたしも多少は手伝わったそれらの料理を食べ終えた後。
用意された一室にてのんびりとすごすあたしとユニット。
これから何があるらかわかっているがゆえに、たわいのない会話をすることしばし。
と。
どう〜ん!!
静かな夜空に響き渡るちょっとした爆発音。

「い…いったい!?」
その音に何やら飛び起きて、それぞれの家の中で同じように叫びつつ、
何やら外を見ていたりする村人たちの様子が視てとれる。
人々を窓をあけ、外をみてみれば、村のハズレのほうから立ち上る炎の名残り。
「あ?きたみたいね?」
「そうね?」
いいつつも、あたし達は部屋からひとまず出てゆくことに。
みれば、今では寝巻き姿の村長がおろおろしていたりするけども。
そして、あたしたちの姿をみとめ。
「……い、いったい!?」
戸惑い、混乱しつつも問いかけてくる。
「たいしたことじゃないですよ。
  ただ野盗さんたちがどこかの家にでも襲撃をかけてきた。というだけでしょうし♪」
にこやかに、軽くさらり、といったユニットの言葉に、なぜかそのままの姿勢で硬直している村長の姿。
別にそこまで驚くこともないでしように♪
とりあえず、あたし達はそのまま瞬時にと、音のしたほうにと移動してゆく。
あたし達の姿が瞬時に掻き消えたことで、なぜか卒倒している村長だったりするけども。
本当、根性がなってないわよねぇ〜v

とりあえず、精神世界面にそのままとどまり、様子を伺うことしばし。
あたし達が視ているその先では。
「なぜ今さら?!」
村をとりまく村の奥。
対峙している男にと叫んでいるクライブ。
葉の落ちた木々が立ち並ぶその奥に二つの影が対峙しており、一人はいうまでもなくクライヴと。
そして、もう一人は……
「伝えたはずだぞ。クライヴ。おまえの力が借りたい。とな。」
などというその声に。
「断ったはずだぞ!ルゾット!」
いいつつも怒りをあらわにして叫んでいるクライヴ。
「ああ。聞いたよ。けど『イヤです。』といわれて、『そうですか。』なんて引き下がるのは子供の使いだ。
  大人の交渉っていうのは……」
「――ボスっ!」
ルゾット、と呼ばれた男は別のほうから聞こえてきた自分を呼ぶ声に。
どうやら首尾よくいったようだな。
などとおもい、にやり、と笑い。
「大人の交渉だ。クライヴ。」
ゆっくりと後退しながら。
「力を貸せ。…そうすれば、娘は無事に帰してやるよ。」
「何!?……はっ!しまったっ!」
ここにいたり、ようやく自分がおびき出された…ということに気づき、何やらさけんでいるクライヴ。
そして、その直後。
ごうっ!
吹きすさむ烈風がクライヴの足をとめる。
積もった雪が舞い上がり、雪によって目でみえている視界を悪くする。
…というか、あいつら自分達の上司が何を考えているのかくらい見抜けばいいものを……
ルゾットの周りに隠れていた盗賊団の仲間の一人が呪文を使ったがゆえに、雪が舞い上がり、
周囲の視界を白く染める。
そのために、未だに方向をつかめずにいまだもたついているクライヴの姿。
……まったく……
「明かり(ライティング)v」
かっ!!
あたしの言葉とともに、辺りがちょっとした昼間程度の明るさにと包まれる。
光の中、空を飛んで逃げてゆくルゾットと、そしてもう一人の姿が垣間見える。
明るい光のした、あたし達二人がいつの間にか自分の真横にいるのにきづき、驚き目を丸くし。
「リ…リナさんたち!?」
なにやら叫んでくるクライヴだけど、別にどうってことないでしょうに。
元々、あたしたちはここにいたのであって、ただクライヴの目にも見えるよに、
物質世界面にと移動しただけなんだし。
くすっ。
「とにかく。クライヴさん。今はそんなことよりマリリンちゃんのほうが先決では?」
驚き何やら固まっているクライヴにと、にこにこと話しかけているユニット。
「あ…ああ……」
今まで気配すらも…というか、近づいてくる気配すらもなかったのに。
この二人…いつのまに自分の真横にいたんだ?
などとおもいつつも、だがしかし、ユニットの言葉をうけ、はっと我にともどり。
そして、あわてて顔色をかえて家のほうにと駆け出してゆくクライヴ。
ちなみに爆発そのものは、おとりとして術が放たれた…というのもあり。
クライヴの家には被害はないものの、家からすこしはなれた位置においてある、
薪置き場の一つからくすぶった煙がいま゛たにもくもくと立ち上っていりたりする。
当然家のほうはといえば被害はなし。
クライヴはそのまま、家に駆け込むと、
その横手においてあるちょっとした子供くらいならば簡単にと入れる大きさのカメを覗き込み。
「……っ!!」
その表情を苦痛と心痛にゆがませる。
いうまでもなく、彼はこの中にマリリンを隠してルゾットのほうにと出向いていったのだけど。
本当、どこかこの人間、抜けてるからねぇ。
どうせならこんな入り口付近の目につくカメの中でなく。
天井裏とか、床下収納庫とかにでも隠せばいいものを。
てっとり場やいのは、姿を他人から見えないように消せばいいんだけど。
なぜかそれはあまりできる人間達って…いないしねぇ〜……
しばし、カメの中を食い入るようにとみつめ、そしてカサリと中に入っている一枚の羊皮紙を手にとり、
それをじっと再び穴が開くほどみつめ。
「く…くそっ!くそくそ!よくもマリリンを〜!!」
クライヴの慟哭は夜空にとひびいてゆく。
やがて、そんな中。
辺りを照らしていた光珠が輝きを失い、再び辺りが夜の闇にと包まれる。
ともかく、一刻もはやくマリリンを助けないと……
そんなことを思いつつ、出入り口のほうにと向けて、一歩足を踏み出すクライヴ。
「それで?クライヴさんは今から彼らをおいかけるんですか?」
そんなクライヴににこやかに話しかけるユニットに。
「…そういうあんたたちはまさかついてくる気じゃあ……これは私の問題だ。」
あたし達をちらり、とみやり淡々といってくる。
そんなクライヴに対し。
「まあ。たしかにあんたの問題ではあるけどね。
  でもクライヴ。同時にこれはマリリンの問題でもあるわけで。
  たしかあのルゾットってやつ、人身売買も手がけてたわよね〜♪ちょっぴり変わった相手にとか♪」
びくっ!
あたしの言葉に、またまた一瞬からだを震わせているけど。
まあ、この人間も昔はな〜んも考えずにやってたしね。
趣味等で人を買い取っていたものたちに対しての子供たちの転売。
まあ、今回のルゾットの目的はまったく異なるんだけど。
ナーガの言葉をそのまま実行、という時点ですでに失敗はみえてるのに…ね。
くすっ。
そんなあたし達の言葉に。
「……あんたらは……」
どこまで知っているんだ?
などといいけかて、口をつぐみ。
そしてしばしだまりこんだ後。
「…あんたが、もしあの
盗賊殺し(ロバーズキラー)のリナ=インバースなら……頼みたいことがある……」
いってそのまま奥の部屋にとはいってゆく。
とりあえず、何があったのか気になって…もとい、心配しているだろうから。
とユニットがひとまず村長のところに移動し。
クライヴの娘のマリリンが攫われた、という旨を伝えにいき。
それゆえにあたしよりもすこし遅れて奥の寝室に入ってくるユニットだけど。
彼とて昔は盗賊家業をあのルゾットの元でやっていただけに、
あたしのことは風の噂で聞き知っている。
まあ、あたしも暇だったし。
よくこの世界…というか、ここにきてから盗賊たちで遊んでたりしたしね?
まあ、それはそれとして。
「……かつて私は盗賊の首領。ルゾットの仲間だった。
  あんたたちが見たかどうかはわからないが。先ほど話していた男だ。」
ガタガタと奥のタンスの引き出しを一つ抜き取りながら、何やら説明してくるこのクライヴ。
「今さら何かりきったことをいってきてるのよ。」
くすっ。
そんなあたしの言葉に、なぜか驚き。
あたし達のほうを振り返りつつ。
「…知っていたのか?」
などと聞いてくるけど。
「まあね。」
ひとまず軽く肯定しておく。
というか、あたしにわからないことなんてないしねぇ。
わざと知らないようにしていない限り絶対にありえないし。
…ユニットとかが絡んでいたらともかくとして……
そんなあたしの言葉に目を見開きつつも。
「……私は呪文を少々扱うことができてな。昔はそれを使ってルゾットたちと共に散々悪事を働いてきた。
  …だが、あるとき、行商の中にいた子供にいわれてな。『何でこんな悪いことをするんだ。』と……
  それで始めて気がついた。自分がどれほど罪深いことをやっていたのかを……」
いいつつも、カタン、とようやくたてつけの悪いタンスの引き出しを抜き取り床の上にとおく。
というか、いるのよねぇ。
自分では何も考えずにただ回りに流されるままに生きている存在って。
特に彼らの場合は物心付いたときにはすでに盗賊団の中にいたわけで。
彼らに限らず、大部分の組織などは攫ったりした子供などを自分達の仲間や後継者とすべく、
何やらいろいろとやっているからねぇ。
ルゾットにしてもまた然り。
そもそもルゾットも元はそんな子供の一人だったんだし。
子供を誘拐し、そして育てた人物はといえば、全て盗賊のメンバー。
ゆえに、正しいことを教える…といったそんな存在もいるはずもなく。
結果、感覚がずれた存在、というか生き物が出来上がっていたりするのだけど。
きちんと教育をそういった場所でも施すものは施しているのにねぇ。
まったく……
「七年前。私は盗賊団を抜け、流れ流れてさまよううちに、一人の女性とであった。
  それがマリリンの母親だ。私と彼女は結ばれ、この村にと移り住み。マリリンを授かった。
  だが…二年前…彼女は流行り病で……私が昔に為した悪事のつけがきた。そう思った……
  しかし…マリリンだけは絶対に守ってみせる。そう決意した。」
いいつつも、抜き取ったタンスの衣服の下にある板をカタカタと外しているクライヴ。
そしてその板を外した下には数枚の金貨が。
「神像を彫りつづけているのもすこしでも昔の罪を償うことができれば。とおもってのこと。
  私は過去を忘れた。だが…ルゾットのやつは私のことを忘れてはいなかった。」
いってゴトリ、とその吸うまいの金貨を手につかみ、そのままさらにその下の板をはずしてゆく。
「半月ほど前。ある日奴は私の目の前に現れ、過去のことは水に流すから力をかせ。
  といってきた。七年前と違い、配下に呪文を使うことのできる奴を多く抱え込んでいるようだ。
  どうやら何か大きなことをたくらんでいるらしい。」
いって、彼が三重底となっていた最後の一つの板を外し終えると、
その視界の先には、びっしりと敷き詰められた金貨の数々。
そこからかるく一掴みわど金貨をつかみ、それを袋につめ。
そして、再び底板や他の板などを元にと戻し。
そしてまたまたガタガタさせながらタンスの中にと引き出しをもどし。
「私は断った。…が、それで奴のとった手はこれ…マリリンの誘拐だ。
  過去との決着は私がつけねばならん。」
いって、金貨の袋をあたしにと差出し。
「あんたたちにはそれを見届けてほしい。
  そしてもし…私の力が及ばなかったら、マリリンを助けてやってほしい。」
いって頭を下げてくる。
「ま、別にいいけどね?」
「それじゃあとっとと早く、マリリンちゃんを助けにいきましょv」
そんなあたしとユニットのその言葉に。
「……恩にきる。」
いってクライヴは深々と頭を下げてくる。
面白いからルゾットが、あの子に危害を加える気はない…というのは黙っておきますか?

とりあえず、クライヴからマリリン救出の依頼料をうけとり、行動するならばはやいほうがいい。
ということで、そのままあたし達は夜の道なき道を進んでゆくことに。
向かう先はカメの中にと入っていた一枚の羊皮紙に書かれていた場所。


あたし達がそんな会話をしているそんな最中。
「……しかし、ボスのやつは何だってあんな奴にこだわるんだ?」
過去にいなくなった、という元福首領。
その彼を再び仲間に引き入れたい。
『あいつの実力はおまえたち全員を束ねてもおつりがくるほどだ。ようやく足取りがつかめた。』
などと首領であるルゾットがいってきたのは、ほんの半月ほど前。
それからずっとこのあたりで野営しているものの、彼らとしては面白くない。
しかも話をきけば、その元福首領は一味から抜け出るときにお金を持ち去ったとか。
だが、首領曰く、
『彼がかせいでいたお金からすれば微々たるもの。おまえら全店の稼ぎをもってしてもおいつかない。』
との存在。
そうまで一味をすでに抜けた相手を褒めちぎられたならば面白いはずもなく。
…だからこそ、彼を仲間にするのなら彼の実力を自分達で確かめさせろっ!
といったのは誰だったのか……
「くしゅっん!」
夜の闇にまぎれて襲撃してくる、とも限らない。
ゆえに、雪でかるくカマクラをつくり、寒さをしのいでいるこの人間。
ちなみに名前をガトル。
出来れば朝になってから待っていたいのは山々なれど。
ボスに。
『やはりおまえら程度ではおじけづくの仕方ないか。』
そういわれ半ば意地で待ち伏せしているこのガトル。
いつ来るとも判らないクライヴを待ち続け、降り積もる雪の中。
彼はただ一人その場にてじっとクライヴを待ち続けてゆく――


ざくざくざく。
夜更けとともに振り出した雪が元々積もっていた雪の上にと更につもり、
さくさくと進むクライヴの足音を響かせる。
目の前にほのかな明るさの【明かり(ライティング)】を灯した松明を片手にもち。
もう片方の手にはマリリンのかわりに入っていた紙をみつ、足をもつれさせながらも先を急ぐクライヴの姿。
「まあ、でもあのルゾットが多少なりとも心が広くてよかったわね?」
「というか、大概一味を抜け出るときに【お宝】を持ち逃げしていたりしたら。
  見せしめとして処刑…というのが一般的になってるわよね。なぜか悪人さんたちって?」
クライヴと共に進みつつ、にこやかにほがらかな会話をしているあたしとユニットの言葉に。
「……?世間の常識…というのもはそんなものなのか?
  …というか、それ以前にどうしてなぜそのことを?
  …私はたしかに、一味を抜け出るとき多少の品を持って出たが……」
袋に詰め込んだオリハルコンや金塊等。
それらをこに人間は一味から出るとき持ち出しているからねぇ。
…あと、とある倉創りの置物とか。
ちなみに中身は当然昔の貴重品等入り。
そんなことを言った後にと首をかしげ。
「……いや、というか…私はたしか、一味を抜け出るときに品物を持って出た…
  とは、説明していないと思うのだが?」
何やら改めて問いかけてくる。
くすっ。
「あら。それくらい誰でもわかるわよ?あの炭焼き神像もどきが売れたとしても。
  はっきりいってもうからないしね。特注の炭焼き神像でも金貨が数十枚程度でしょうし♪」
そんなあたしの言葉に。
「……いや、だから…その、【炭焼きの特注もうけている。】…ということも話してないのだが……」
マリリンから聞いたのか?
などと思いつつ、またまた首をかしげているこのクライヴ。
そのマリリンはといえば、只今【眠り(スリーピング)】をかけられ熟睡中。
おきたとき楽しめそうよね♪
「とにかく。まあ誰にでもわかることはともかくとして。」
にこやかに言いつつも、明かりの先の暗闇の中、とある方向を指し示しているユニット。
ユニットが指し示した方向。
すなわち、闇の中に別の明かりが灯っている方向をみて紙を握り締めているクライヴ。
そんな会話をしつつも、あたし達はなぜか焚き火をして暖を取っている男性の元にとやがてたどり着く。
…どうでもいいけど、術が使えるんだったら、自分の力で暖くらいとりなさいよね……

「ついたみたいね♪」
にこにこというユニットに。
「そろそろのんびりと話している場合じゃないみたいね。」
未だにあちらのほうはこちらに気づいていない。
「じゃあ、あたし達の姿はひとまず見えなくしとくから♪」
いうなり、ふいっとクライヴの視界からあたしたちの姿が掻き消える。
別に何てことはなく。
ただちょぴり光の屈折率を変えただけのこと。
目に映りこむ色彩云々…というのは、光の屈折によるものがそもそも主たる要因だしね。
「……なっ!?」
それをみて、何やら小さく叫んでいるクライヴだけど。
そんなクライヴの声に、すこし先にいる男――ガトルもクライヴにと気づきこちらを振り向いてくる。
「…どうなっているのかはしらんが……まずは私一人で何とかしてみせる。」
なぜか多少動揺しつつも、ゆっくりとクライヴはガトルのほうに向けて足をすすめてゆき。
そして。
「マリリンは!?」
あの紙に書かれていた場所はここのハズ。
等と、そんなことを思いつつ、相手に叫びかけていたりする。
ちなみに、あたし達はといえば、ふわふわと空中に座ってのんびりと眺めることに♪
ともあれ、この場に一人だけしかいない…というのに今さらながらに気づき。
「ルゾットはどうした!?」
そこにルゾットの姿が見えないことに対して続けて叫んでいるクライヴだけど。
そんな彼の言葉に口元をゆがませて。
「…子供は無事だ。ボスはこない。」
そうクライヴにといっているのは、薄い金の髪をざんばらに散らし、
不健康そのもの…といったやせ方をしている男。
そんな彼――ガトルの言葉に。
「ここに来い。と指示があったはずだが!?」
マリリンの姿どころか、ルゾットの姿も見えないので何やら叫んでいたりするクライヴ。
そんなクライヴに対し。
「それでいいんだよ。俺はガトルだ。」
いいつつ、ガトルは足元の石を拾い上げ。
それと共に懐から一枚の羊皮紙洋皮の切れ端をくるみ、それを無造作にぽいっとクライヴの足元にと放り投げ。
「……わからねぇな。何だってボスはおまえみてぇなジジイにこだわるのか。どうも気にいらねぇ。」
などといっているし。
そり、あんたたちに支払うお金が惜しいから、に決まってるじゃないのよね♪
そんなこととは、これっぽっちも知らず。
「その紙におまえが次にいく場所がかいてある。」
いってにやり、と口元に笑みを浮かべる。
そんな彼の言葉に。
「……次に?」
意味がわからずに問いかけるクライヴに。
「ああ。ただし!俺に勝てれば、の話だけどなっ!」
言うなり後ろに飛びのき呪文を唱えだす。
……どうでもいいけど、混沌の言葉(カオスワーズ)なしで、力ある言葉だけで術くらい発動させなさいよね……
まったくもって情けない……
「待て!どういうことだ!?説明しろっ!一体……!?」
意味がわからずに叫ぶクライヴの言葉に対し、返事の代わりとして。
「火炎球(ファイアーボール)!!」
どっごぉ〜んっ!
周囲にガトルの放った術の音が響き渡る。

「……というか、これ、はっきりいって威力がまったく全然ないんだけど……」
ぼそり、とつぶやくあたしに。
「確かに。気持ち程度ちょっぴり雪が解けただけだし。」
そんな様子をふよふよと空中にと創り出した椅子に座って観戦しているあたしとユニット。
最も、クライヴやガトルからは、情けないことにあたしたちの姿は見えてないけど。

「…問答無用…というわけか……」
その瞬間、その場から飛びのき、身を低く構え、何やらつぶやいているクライヴ。
ほう。
よけたか。
などとそんなクライヴをみて思っているガトル。
「いいだろう。おまえには何の恨みもないが。
  倒すことでしか道がひらけん。というならば仕方がないっ!ゆくぞっ!」
「そうこなくっちゃなっ!」
クライヴの言葉をうけて、『さて、お手並み拝見といくか!』などと思いつつ応えているガトル。
そんなガトルにむて、完結に混沌の言葉(カオスワーズ)を唱え。
「炎の矢(フレアアロー)!!」
クライヴの声とともに、虚空にと出現した炎の矢。
その数たったの二本。
「いけいっ!」
声をうけ、その矢はガトルにむかってゆくが。
ひょい。
それを何なくかわし。
「火炎球(ファイアーボール)!!」
それと共にクライブに向けて術を解き放っているガトル。
だがしかしその直後にも再び、
今度は【力ある言葉】のみで発生している炎の矢二本がまたまたガトルにむかっていき。
ひょいっと再びそれを交わすガトル。
そしてふと。
「……おい。おまえ…今混沌の言葉(カオスワーズ)…唱えてたか?」
そのことに気づいて疑問に思い問いかける。
そんなガトルの言葉に。
「笑止っ!初めに唱えればそれ即ち心の力によって発動するものなりっ!」
「……いや、無理だとおもうんだが…・・・ 」
何やらぽりぽりと頭をかいてづふやくガトル。
「くっ。このままではラチがあかん。仕方がない。今こそ解こう。封印を!」
一瞬唖然としているガトルの前で、そんなことを言い放ち。
長袖長ズボンの下。
両手両足首から、そこにつけていたバンドを取り外し、足元にと落とし。
「高まれ!わが魔力!受けよ!これぞ真の炎の矢(フレアアロー)!!」
クライヴがいうと同時。
力ある言葉のみで発動した十九本の炎の矢が、そのままガトルにと向かって襲いかかってゆく。
「…何っ!?…って、馬鹿なぁぁ!!??」
ちゅどごぉぉ〜ん……
断末魔の悲鳴と共に、炎に飲み込まれ、いともあっさりとぽてり、と倒れているガトルの姿。
このクライヴ、勘違いしているところはあるにしろ。
基本の混沌の言語(カオスワーズ)は全て把握してるからねぇ。
だから別にちょっとした小さな術ならば、力ある言葉のみで術は発動するし。
というか、普通誰でもそういうことはできるのが当たり前なんだけどねv
術の威力に大小があれはすれどもv
まあ、それはそれとして。
ふとみればクライヴのほうの多少吹くが焦げていたりするけども。
「まずは一人めv」
「というか、弱すぎるわよねぇ。」
ふわり、と雪の上に降り立ち交互にいうあたしとユニットの言葉に。
そのまま無言で足元のバンドを拾い上げ、そのバンドを懐にしまいつつ。
「いや。相手は強かった。封印を解かねばならんほどに…な。」
いって空をみあげ。
「これらのバンドの中には重りがはいっている。魔道の師匠から教わった。
  『これを身に着けておき、イザというときに外せばそのときこそ真の力が出せる。』…と。
  だがまさか、ここまで魔力がパワーアップするとは……」
などといってるけど。
「それ、パワーアップの仕方、間違ってるってばv」
ある意味、力をつける。
という意味ではあってるけど。
「思い込みって面白いわね〜。」
そんなユニットとあたしの言葉に。
「何!?」
なぜか愕然としてあたし達のほうを振り向くクライヴ。
とりあえず今はクライヴにも姿が見えるようにしてるけど。
「馬鹿な!?」
などといってくる。
「普通。それでパワーアップするのは。持続力とかスピードとかだし。」
「あと基本的体力?」
そんなあたし達の意見に対し。
「それは違う。」
いってゆっくりと左右に首をふりつつ。
「かつて私の師匠はいった。魔道とは本来この世界には存在せぬ法則や力を存在させうる技術のこと。
  つまり!魔道とは常識はずれっ!」
あながち違っているともいえないけど、確実に間違い、勘違いしまくっているのよねぇ。
このクライヴは。
まあ、師匠があの自称【千の偽名をもつ魔道士(サウザンド)】だからねぇ。
くすっ。
「「違うってばv」」
同時にハモルあたし達を無視し。
「手足に重りをつけていたのに外すとなぜか魔力がアップ!常識ハズレのきわみっ!
  それこそ即ち、魔道の極意!師匠のおっしゃりたかったのはきっとそういうことに違いないっ!」
「だから、それ、思い込みだってばv」
「人間って精神的な抑制を無意識に施すことがあるしねぇ。」
「そもそも、あの変わったお羊の頭蓋骨をかぶって、さらには自分の名前も実は忘れている。
  という人間のいうことだしv」
そんなあたしとユニットの言葉に。
「?リナさんたちは師匠を知っているのか?」
「知ってるわよわv」
というか、知らないこと事態がないんだけど。
そこまでいう必要もないし。
「ともかく。その魔力のパワーアップの仕方は間違っているから?」
続けていうユニットの言葉に。
「しかし、実際に炎の矢(フレアアロー)の出現本数は増えたぞ?」
「だ・か・ら?心理的な問題だってばv」
「一種のマインド・コントロールみたいなものねぇ。」
「?」
あたしたちの言葉に首をかしげつつ。
「よくわからんが…とにかく。そんなことより次のポイントにむかおう。」
「何か次はもうちょっと見ごたえがあればいいけどな〜v」
「無理でしょ。たかが盗賊なんだし。」
そんな会話をするあたしたちの前で、しばし足元から先ほどバンドと共に拾った羊皮紙をながめ。
「こっちだ。」
いってそのまま木々の奥にと進みだしてゆくクライヴだけど。
ま、別にいいけどねv


「ほほう。ガトルの奴を倒したか。どうやら多少はやるようだな。」
指定された第二ポイントでクライヴを待ち受けていたのは、なぜか熊の毛皮を纏い、でっぷりと太った男性。
人間でいうならば、【ごつい】とか【筋肉マッチョ】とかいうのがしっくり来るのであろうけど……
筋肉つけていても、当の本人が弱いんだから意味ないと思うし……
そもそも、普通、その道を極めている存在などは、外見上からはわからないようにする。
というのは常識だし。
まあ、本当に極めている…という存在達(やつら)っていないけど……
とりあえず、あたし達はまたまた空中にて観戦中。
空にいるあたし達に気づくことすらなく。
「だがなっ!それでいい気になるなよっ!ガトルの奴など俺たちの仲じゃあ一番の小物さっ!」
などとわめきたてているけど。
……弱いものほどよく吠える。
とはよくいったものよねぇ。
「……で?娘…マリリンは?」
そんなことはどうでもいい。
クライヴの気がかりはマリリンのみ。
ゆえに憮然と言うクライヴに対し。
「ふん。そうあせるな。」
いって懐からまたまた羊皮紙を取り出して足元におき、そばの石を重しがわりにのせると。
「知りたければ、このメギストに打ち勝ち。記された場所に向かうがいいっ!」
などといってくる。
…どうでもいいけどこいつら……
どうして【ルゾットに図られている。】ということに気づかないのかしらねぇ……
意地と、そしてプライドなどがいりまじり、おかしい…と思いやつもいなくなっているようだし……
「わかった。ならぱいくぞっ!」
クライヴの声を合図に、二人は同時に呪文の詠唱を始め。
「……っ!」
完成直前。
呻いて詠唱を止めるクライヴ。
というか、羊皮紙が燃えるから…といった理由で止めてるけど。
特定のモノのみを燃やさないようにアレンジすればいいだけなのにね♪
人間達がよく使う術で最もポビュラーなものは火炎系のもの。
そしてよく使われるのが火炎球(ファイアーボール)や炎の矢(フレアアロー)。
これらははっきりいって、ただ混沌の言語(カオスワーズ)を丸暗記し、その言葉を唱えただけで誰でも使える。
という一般的なものだし。
メギストからすれば、自分の足元に紙をおくことでクライヴの火炎系の術を封じたというだけのこと。
というか、たとえ紙が燃えたとしても、再生させればいいだけなのに。
その点、二人とも気づいてないし。
なぜか炭から元の物質への変換って…こいつら出来ないのよねぇ。
普通出来て当たり前なことなのにね♪
マリリンの手がかりが途絶えることを畏れたクライヴが詠唱を止めると同時。
メギスト、と名乗った男の呪文が完成する。
「気片鏡(エアカレイド)!」
力ある言葉が放たれると同時。
メギストの周囲が陽炎のように揺らぎ、そしてクライヴを取り巻くように出現するメギストの幻たち。
一種の幻術ではあるがすこし異なる。
風等を利用して光の屈折を利用し、自らの影を生み出すこの術。
だからこそ、この場所の周囲にこいつはいくつも松明を灯しているんだし……
「何!?」
それをみて驚愕の声を上げるクライヴ。
『ふはは!驚いたか!風を操り、姿と声をいくつも生み出すこのメギストの術!
  いずれが本体か見抜けまいっ!』
などといってるけど…
というか、最初の位置に立っているのが本物だし。
そもそも、幻影の人影のほうには影が出てないし……
思いっきり松明の明かりで影…当人には出来てるんだけどねぇ……
そんなことは、子供でもわかることなのに。
「くっ!どれが本物だ!?」
……本気でクライヴは気づいてないし……
そのままきょろきょろと周囲を見渡し。
「はっ!そうか!前に師匠がおっしゃっていた!目で見るな。心の目。心眼をつかえ。と!」
いいつつ、呪文を唱えながらその場にて目をとじる。
気配を捉える…という着眼点はいいけどねぇ。
『こけおどしのつもりかっ!それとも大人しく覚悟したかっ!』
メギストは内懐からナゲナイフを取り出してクライヴめがけて投げはなつ。
そのまま、無言で一歩横に足を踏み出すクライヴ。
ナイフが裂いたのは今までクライヴがいた場所。
『……何っ!?かわした…だと!?』
……というか、たかが一本のナイフくらい…誰でもよけられるってば……
自覚も何もないことをメギストはいってるし……
そして、クライヴは目を開くと同時。
「心眼ボンバ〜!!」
つっどぉぉん!!
面白い必殺技名の叫びとともに、クライヴを中心におきた爆発はメギストや幻を含め。
そのまま彼を中心としてゆきを舞い上げつつ広がってゆく。
クライヴを中心として、雪が積もっていたその場所には小さなクレーターが出き大地をさらけ出している。
そんな雪の中にできたクレーターの中心に一人ぽつん、とたたずみ。
そして何やら動けなくなっているメギストにと目をむけて。
「……これが心眼の力……」
「違うってばv」
「今のはどうみても炸弾陣(ディルブランド)よねぇvただ自分を中心にして発生させただけでv」
「そうね。力ある言葉が違っているだけだし。」
ふよふよと空中にて座りつつ、つぶやくあたし達の声に顔をあげ。
「何が違うというのだ?」
などといってくるクライヴだけど。
「そもそも【心眼】というのは、そうものではないしv」
「何をいう。師匠曰く、『見えない敵を討つための極意。それが心眼。』とおっしゃっていた。
  間違っているとでも?」
「それ自体は間違ってないけどね。解釈が違うってば?」
「というか、次の場所を書いた紙。雪と土砂に埋まったみたいよ?リナ。どうする?」
にこにこと、そんなあたし達の会話にわって入ってくるユニット。
「まあ。確かに。このクライヴに説明してもねぇ。とりあえず、次いきましょv」
パチン♪
説明しても、解釈を捉え間違える。
というのが判っているがゆえに、あえてそのことには余り触れず、軽く指を鳴らす。
と。
ふわっ。
雪と土砂の中に埋もれていた羊皮紙が空中にと浮かび上がり、すとん、とあたしの手の中に収まってくる。
「さ。次ね♪」
本当は、この紙に書かれている場所にいってもマリリンはいないけど♪
「…あ、ああ……」
今の…どうやったんだ?
などと思いつつも、ひとまずうなづき紙をうけとるクライヴ。
ま、あと数人分は楽しめそうね♪

夜の闇の中であった空もやがてしらじらと明け、太陽が上空にもうすぐ差し掛かろうとしている。
先刻からただひたすらに指定された場所にいっては、
そこで待ち受けている盗賊団員の一人とクライヴは戦い。
そして倒して羊皮紙を手にいれ、次の場所へと移動する。
ひたすらそれの繰り返し。
それら全ていちいち律儀に相手をし。
面白いことに勘違いしまくっている技や理屈などで倒していっているクライヴ。
どうでもいいけど…いまだにルゾットの意図…わかってないし……
「聞くが…おまえの後には何人いる?」
対峙した細身の男にクライヴがうんざりして問いかける。
面倒ならいちいち相手をせずに、マリリンの居場所を気配等で捉えて移動すればいいものを♪
あたし達はそんなクライヴをみつつ、空中でお茶とかのんでくつろいでいるけど。
「くくく。心配するな。この余興もここで終わりさ。」
「…なら、次の場所にいるなだな。マリリンと…ルゾットは。」
「そういうことさ。だがなっ!勘違いするなよっ!ここで余興がおわる、といったのは、おまえはここで…!」
ごめっ!
男の言葉を最後まで聞かず、クライヴが投げつけた石は男の顔面を直撃する。
……というか、相手がかがんで石…拾ってるんだから…投げる…ということくらい判断しなさいよね……
余りに時間が経過しマリリンのことが気がかりな気持ちと。
そしてまた、いい加減に面倒くさくなってきた…というのが行動の根底にあるようだけど。
「ようやく終わりみたいね♪」
男が倒れたのをみて、ふわり、と横に降り立ちいうあたしに。
「ああ。そのようだな。」
いって大きくうなづくクライヴ。
「とりあえず、いきましょ♪」
にっこりいって、何やら水晶を虚空から取り出してにこにこしているユニット。
……ま、アレを見せたほうが確かに面白いし。
ということで、あたしとユニットの二人でそのことに関しては同意してるしね♪
クライヴは今だに知らないようだけど?


連なる山のその奥に、今では使われていない猟師小屋が一つ。
知らないモノがみれば、ただの壊れかけた廃屋に見えるけど。
ともあれ、その戸口を背に待ち受けている男が一人。
体格はクライヴとほぼ同格。
あごや額に刻まれた傷跡。
そしてさらにはあごひげ…さすが幼馴染…というか、同じ時期に攫われて共に育った。
というだけはあり、身づくろいに関して疎いのはクライヴとまったく同じ。
ちなみに年もクライヴと同い年。
「来たぞ。ルゾット。」
「待っていたぞ。クライヴ。」
クライヴと盗賊団の首領ルゾット。
ようやく二人対峙しているこの現状。
後はクライヴが倒した一味のメンバーがそろえば舞台は整うわね?
「しかし。かわってないな。クライヴ。のりで魔力が上がるところも昔のままだ。
  おまえならやれる…と思ってはいたが。本当に部下達全員を倒すとは、さすがだな。」
親しげにしみじみと話しかけているルゾットだけど。
ノリ、というか正確にいえば気分る
つまり精神的な問題なんだけどね♪
つまりは気分がのらないときには、精神的な抑制がかかり、全力を発揮できない。
というだけで。
今のクライヴのテンションは完全に上がっているけど。
「ご託はいいっ!マリリンはどこだ!?」
時間を考えても、もしも客と取引していれば、マリリンは商品として売られているかもしれない。
そんな不安を心に抱きつつ、怒りを押し殺し問いかける。
そんなクライヴの問いに、ルゾットは口の端を笑みの形に歪め。
「まあそう怒るな。おまえの娘は無事だ。用はすんだ。つれて帰っていいぞ。」
猫なで声でいうと、後ろの小屋の戸をひらく。
「おど〜ざ〜んっ!」
同時にそこから飛び出してクライヴのほうにと駆け出したのは、だぶだぶパジャマ姿のマリリン。
「マリリンっ!」
そんなマリリンをしゃがんで両手を広げて抱きしめているクライヴ。
「ごわかった〜。」
等と言っているマリリンだけど。
待遇はまあまあよかったうちだとは思うけどねぇ♪
小屋の中にはいくつもの小さな松明がともされており、小屋の中の温度はそこそこ保たれている。
さらには、きちんと朝食も出されていたし♪
まあ、そんなことは説明することでもないから言わないけど。
「大丈夫か?酷いことをされなかったか?」
「…うん。丸焼きにもされなかった……」
どうやら未だに昨日のコトが頭を離れないようだけど。
「そうか。…よかった。もう大丈夫だぞ。」
そんな二人をしばしみつつも。
「感動的な親子の再会って奴か。それじゃあ俺はいくぜ。」
いってくるりときびすを返し立ち去ろうとするルゾットに対し。
「――まてっ!どういうことだ!?ルゾット!私の力を貸せ、といったはずっ!?」
言って何やらひきとめているクライヴ。

「だから。力は貸したってば。」
「…ねぇ〜……」

ぽそり、と後ろで話すあたし達の声は耳に入らないらしく。
クライヴに問われて肩越しにふりむき。
「知らなくていい。とにかく用はおわった。それだけのことだ。」
まあ、確かに用はおわったけどねぇ。
そんなルゾットに対し。
「そうはいかんっ!おまえがまたいつ同じ理由でやってきて、また同じことを繰り返さない。
  という保証はないからなっ!」
何やらいって食い下がっているクライヴ。

「…未だに気づいてないし……」
「…普通、わかるのにね?」
そんなやり取りをすこしはなれた後方でみつつ、つぶやくあたし達とは対照的に。

「無用な心配だ。」
「そういわれて安心などできるとおもうか?!それにおまえがマリリンを攫ったことにはかわりはない。
  このまま見過ごすわけにはいかんっ!」
いってゆっくりとマリリンから手を離し、ひたり、とルゾットを見つめるクライヴ。
そんなクライヴの言葉にため息一つつき。
「ならばどうする?」
いって足をとめてクライヴのほうにと振り向くルゾット。
ここまで言われても、本当の理由に気づかないなんて…本当、面白いったら?
「マリリン。すこし離れておいで。いい子だから。」
「……うん。」
言われて、彼女はこくん、と小さくうなづくと寒かったらしく、
またまた小屋の中にとはいり、そっと扉の影にと身を隠す。
確かに中のほうが温度は高いけどね。
それを見届け、ルゾットのほうに静かに歩み寄り拳を振り上げ。
「これはマリリンのぶんっ!」
ばきゃっ!!
繰り出された一撃をルゾットはよけることもなく、ただ後ろに身を引いて威力を殺し頬でうける。
そして半歩さがってにらみつけ。
「…これで気がすんだか?」
などといっているけど。
理由説明しないと、このクライヴは鈍いから分からないってば♪
理由が分かっていないがゆえに、クライヴが納得するはずもなく。
「まだだっ!」
いって踏み込み再び拳をくりだし。
「これはドロシーの分っ!」
「誰だ?!それっ!?」
そういや…ルゾットはクライヴの妻の名前…知らなかったわねぇ。
クライヴの言葉に突っ込みをいれつつも、今度は身をかわして後ろに退って距離をとる。
「そんなことはどうでもいいっ!」
「よくねえだろ!?普通!」
何やら叫びつつ。
そして。
「いい加減にしろ。これ以上やるなら俺も手出しせざるをえん。
  そうなればおまえの娘を巻き込むことにも……」
「――ボスっ!!」
言葉をさえぎり響く声に、愕然と振り向くルゾットとクライヴ。
ちっ!
動けるくらいに手加減していたかっ!クライヴのやつはっ!
などと内心思いつつ。
「「…くっ!!」」
その姿を認め、小さく呻いているクライヴと、そんなことを思っているルゾットの声が重なる。
数人ほどは未だに起き上がれなかったり、雪の中に埋もれたままになっていて、脱落しているものの。
この場に律儀にもやってきている十五名の人間達。
「思ったよりやるようだな。ジジィ。それは認めてやる。だが、これだけの人数相手じゃあ勝てないだろ?」
などといってくるのは一番初めに戦っていたガトル、という人間。
そんな彼に続き。
「そうそう。大人しくボスのいうことを聞いたほうが利口ってもんだぜ?」
などと別の男性もそんなことを言っているけど。
くすっ。

「すご〜い。本気で今の今まで気づいてないんだ〜v」
パチパチパチ。
そんな彼らをみつつも、
ふわり、と手にしていた水晶珠を頭上に浮かべた状態で、パチパチと手を叩き褒めているユニットだし。
「まあ、ある意味確かに。褒めたくもなるわねぇ。ここまで分かってないと。」
思わずあたしとしても本音が出るけど。
やっぱり、わかっていても近くで見るのとでは気分的にもかなり違うし。
「ここまでわかっていない。っていうのが面白いしv
  あなたたち、そのルゾットさんに何をされたかわかってないでしょう?」
「というか。そもそも【お宝】を独り占めにしたくての行動だもんねぇ。これv」
そんなあたし達の会話に、いまさらながらにあたし達にと気づき、
「何だ!?貴様らは!?」
とかいってくる盗賊メンバーのうちの一人。
「な…何を訳のわからんことを!?」
そんなあたし達の声をうけ、面白いまでにあからさまに動揺しているルゾット。
「あら?なら説明できるの?ルゾット。ここまで来たクライヴに人質…つまりマリリンをあっさりと返して。
  そして、『もう用はすんだ。帰れ。』だなんてv
  しかも、その小屋の中、寒くならないようにしっかりと暖房をかねて火はおこしてあるし♪」
「商品にするとしたら、逆に寒さで感覚を麻痺させて騒がなくなったところで行動するでしょうしねぇ。」
至極最もなあたしとユニットの会話に。
あたし達が『誰』なのかは気にはなるが、だがしかし。
彼らとてそんなあたし達の言葉をきき、ここにいたりようやく疑惑を抱いていたりする。
だから、気づくの遅すぎだってばv
やってきてルゾットの部下たちが一斉にとルゾットに視線をむけ。
「そういや。確かに妙だったな。理由を聞いても答えてくれないし。
  自分も早々に立ち去りたがっていたようにみえた。」
いいながら、じりじりとルゾットから距離をおきつつ、マリリンを小屋の中より手招きして呼び寄せ、
あたし達のいるほうにと後退してくるクライヴ。
そんなクライヴに対してにっこりと。
「あら?クライヴさん?もしかしてまだわかりませんか?
  つまり、クライヴさんたちはきちんとそこのルゾットさんに力を貸してるんですよv」
「そうそう。つまり平たくいえば。
  収入を独り占めするのに部下たちが邪魔だから。っていうんでクライヴを利用したのよ。」
「…な…何を……」
そんなあたし達の台詞にあからさまにうろたえているルゾット。
ざわり。
そんなあたし達の会話をきき、ルゾットの部下たちがざわめき立つ。
「つまり?もし違う。それは嘘だ。っていうんだったら。
  どうしてわざわざ攫ったマリリンをあっさりと戻したのか。
  わざわざ部下たち全員にクライヴと戦わせて、彼が部下たちをやっつけるのを見越して、
  それで、『部下たちにお金を払うまいとしたんじゃあないっ!』っていうんだったら。
  きちんと説明してみてよねv」
くすくす笑いながらいうあたしの言葉に。
「て…てめえに説明する必要はねぇ!」
狼狽しつつも叫んでいるルゾット。
「あら?でもそれで、その人たちが納得するかしら?」
にっこりと、ダメおしをしているユニット。
目の前では、面白いまでにルゾットに詰め寄っている彼の部下たちの姿があったりする。

「…ボス。本当のところ…どうなんですか?」
「このジジイをさんざん褒めちぎって俺たちをけなしていたのは……」
「オレなんか『おまえなんかクライヴの足元にも及ばない。』とまでいわれたぞ。」
「説明してもらいましょうか。ことと次第によっては……」
そんな部下たちの剣幕に押されつつ。
「…だ、だからだな。
  俺はただ、最近慢心していたおまえたちに、世の中は広いんだ。ということを教えるために……」
目を泳がせながらいっても説得力はないってばv

「…つまり、どういうことなのだ?」
未だに理解していないクライヴがあたし達の後ろにと移動し終わり聞いてくる。
くすっ。
「は〜いvここにちょっとした記録映像があるから映しま〜すv
  ある酒場でのやり取りを収めた記憶珠(メモリーオーブ)♪」
元気に手を上げて、にこやかに言い放ち。
それと同時に、ふわふわと浮かんでいた水晶が、大気中にとある映像……
つまりホログラフ…もとい、立体映像を映し出してゆく。


「お〜ほっほっほっ!あなた、話がわかるじゃない。」
「姐さん。ささっ。遠慮しないで。」
映し出された映像は、とある酒場の中の風景。
棘付きショルダーガードにどくろのネックレス。
そして意味もなく高笑いをしている女性。
言うまでもなくナーガに対して何やら食事を勧めているルゾットの姿。
ナーガからすれば、食事を奢るかわりに相談に乗って欲しい。
といわれ、一緒にいたりするのだけど。
きっとこの姐さんは名のあるお人に違いない。
そんなことを思っているルゾット。
デカイことをするために呪文を扱えるモノたちを招き入れた。
だがしかし、彼らへの分け前が割高となり、このままでは軍隊が本腰を入れて討伐に来かねない。
そんなことを思案していたそんな中。
ちんぴら…といっても過言でない者たちが旅の商人を襲っており。
それを商人もろとも呪文で吹き飛ばして撃退し。
そして落ちていたお金を拾い、立ち去る彼女をみて、
この人だ!この人にアドバイスをしてもらえばっ!
などと思い、それを実行しているルゾット。
その辺りの経緯はクライヴたちにはわからないようだけど。
「ふっ。それで?何が聞きたいんだったかしら?」
こんな格好をしているからには、絶対にどこか名のある組織の一員のハズ!
いや、もしかしたら闇の組織の首領かもしれない。
そう勝手に一人思いこんでいるがゆえに、
「実は困っていまして。配下のものが余り使えない。というのにも関わらず。
  分け前は術が使える分、かさばりやして……何とかならねぇかと……」
そんなルゾットの言葉を、盗賊のこと、とは捕らえずに。
「ふっ!甘いわねっ!そんなことで人に相談するなんてっ!お〜ほっほっほっ!
  でも、食事のお礼としてアドバイスはしてあげるわっ!」
「本当ですかいっ!?ささ。遠慮なさらずにどんどんやっちゃってください。」
「お〜ほっほっほっ!悪いわねっ!」
いいつつも、追加注文をしばしした後。
「つまり。そのつかえないやつら。という人たちには、それを自覚させればいいのよ。
  誰か一人にその人たちが全員倒されれば、支払いはしなくてすむし。
  万が一、それで何かいってきたとしても、
  『慢心しているおまえたちに世間は広い、とわからせるため。』とかいって、
  自己を見つめなおす機会とかいって、はぐらかせばいいのよっ!」
「……なるほどっ!」
ナーガの台詞にぽん、と手をうっているルゾット。
「でも。そのとき、その『誰か一人。』というやつに支払いをするのも馬鹿らしいからね。
 そう、お金とは関係ない人を使うのがベストねっ!」
まあ、その辺りは上にたつものとしての力量にもよるけど。
そんなことを思いつつ、ただひたすらに延々と高笑いをし続けているナーガの姿。

しばし、そんな光景がその場にて映し出され……


「これ。すこしまえに、そこのルゾットさんが何やら話していたのを記録していたやつなんだけど♪」
にっこりと映像を映し終えた水晶をちょこん、と両手でもち言っているユニット。
そんなユニットの言葉と、今の映像をうけ。
ざわっ!!
「ボスっ!?」
「どういうことですか!?」
などとルゾットに詰め寄っている彼の部下たちの姿が。
くすっ。
「お宝を持ち逃げする。という手もあるけけど。それだと後々追い掛け回される恐れは濃厚。
  けど…部下たち全員が。今の映像でも言われていたとおり。誰かに倒されれば。
  当然、そんな心配もなくなる。なおかつ、お金とは関係ないもの…
  つまり、そこで昔の仲間のクライヴのことを思い出し、調べればすぐに居場所がわかった。
  そ・こ・でvクライヴを仲間にいれる。と宣言し、皆の前で彼をとことん褒めちぎる。
  当然、それはそこにいる人間達にとっては面白いはずもないし。
  散々対抗心を煽られ…つい、『自分達でクライヴの力を試させろっ!』と。
  メンバーの内の誰か一人がいうと、それにあっさりと面白いまでに全員同意した。
  とまあ、こんなところかしら?」
あたしの言葉に、さらに一味のざわめきが大きくなり――
「あvもしかして、もうルゾットさん。品物を別のところに移動していたりするとかv」
まだ、ここのアジトの品は移動させてないようだけど。
実はいくつかあるほかの場所のはルゾットはもう移動させてるしねぇ〜。
部下たちの目を盗んで?
そんなユニットの言葉に。
「そ…そんなわけがあるかっ!ちゃんとアジトにあるっ!
  おまえらっ!そんな女子供の口先にだまされてどうするっ!
  俺たちを仲間割れさせよう、ってのが見えみえだろうがっ!」
説得力がまるでないことを何やらわめいているルゾット。

「どうかしらねぇ。きちんとアジトにいって確認するべきだと思うけど♪」
「たしか。この近くのアジトは……」

そんなあたしとユニットの言葉に。
「杉の谷の向こうだ。」
一味の内の中の一人がルゾットに詰め寄りながらもポロッと漏らす。
いるのよねぇ。
アジトの場所をつい言う人間って。
注意が他のことに向いていればなおさらに。
「おいこらっ!何をばらしてんだ!?おまえ!」
別の人間があわててたしなめているけど、遅いってば♪
それに、元々あたし達はしってたし。

「あと。確か三箇所だったっけ?リナv」
「あら。五箇所よ。ここを入れて六ヶ所v」

そんなあたし達の会話に。
「…なっ!…し、始末するしかねぇなっ!」
何やらうろたえつつもいってくるけど。
くすくす。
クライヴはといえば、なぜかあわててマリリンを抱きかかえ、そのままずざっと後ろのほうに走りぬけ。
そして距離を多少あたし達からとりながら。

「そうそう。皆に紹介するのが遅れたが。
  …こちらの女性は、今回、私に力を貸してくれることになった。
  ……リナ=インバースさんと、ミリアム=ユニットさんだ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・
『……げっ!!??』
そんなクライヴの説明に、なぜか一瞬ルゾット一味は黙り込み、そして小さな叫び声をあ
げてくる。
なぜか全員から戸惑いと、恐怖…といった負の感情が撒き散らされているけど。
「…まったく。普通みただけで【誰か】くらいはわからないとv」
「さっきから。私も【リナ】って呼んでたのに…ねv」
にっこり同時に微笑み。
そして。
なぜか逃げようとしているルゾットたちにとむけ。
「とりあえず。ルゾット一味には報奨金というか懸賞金もでているし♪」
パチン♪
軽く指を鳴らすと同時。

どすすすすっ!!

ルゾットたちの頭上より、氷のちょっとした槍…というか柱のようなものが出現し。
そして、そのまま彼らの頭上よりそれらは降り注いでゆく。
ついでに炎の槍らしきものも同時に降っていたりするけど。

「あ?地面が何か融解しかけてるv」
「あら〜。あの程度で体が溶けかけてるわねぇv」

『〜〜〜〜○X△!!??』
なぜか多少温度が上がった地面に触れて、思いっきり体の一部などを溶かし始めている彼らだけど。
…ま、別に死ぬようなことでもないし…ね♪

しばし、なぜか声にもならない男たちの悲鳴が周囲にと響き渡ってゆく。


山間の小さな村にひさかたぶりの平和と活気が戻っている。
近くに居座っていた野盗は壊滅し、ふもとの町との行き来を邪魔するもの…といえば。
積もっている雪くらいなもの。
名物、雪アスパラの出荷も再開され、町から買い付けに来た人間達などで村は多少にぎ
わっている。
ルゾット一味は役所に突き出し、彼らにかけられていた懸賞金をうけとり。
そしてまた、アジトに監禁されていた商品…となるはずだった子供たちも保護し。
それゆえにそれをも含めて役所のほうから礼金をうけとり。
それ以外の品物などの一部は没収し、
あとどうでもいいものはルゾットたちとともに、役所に届け出ておいたけど。
ふもとの、いくつかの食堂や宿では『子供を助けてくれた礼。』または、
『家宝を取り戻してくれたお礼。』などといって滞在中は無料としてくれるらしいけども。

「世話になったな。」
「せわにな〜。」
そんなこんなであたし達はリシアルドの村を後にしてゆく。
そもそも、ルゾットもナーガの意見をそのまま実行しようとしたのが運のつき…よねv
くすっv
本当、いろんなところでナーガは種をまいてるから。
だから面白いんだけどねv

さって、次はどこにいきますか…ねv


                           〜ブレイクオブデスティニー編完了〜


#####################################

あとがきもどき:
薫:・・・・・ようやく打ち込み完了です・・・・
L:というか。これ、あたしとユニットのパターンでいってるけど・・・
姫:たしか。二部の形で・・・ルークとミリーナがかみ合ってくる・・というのも考えてたわよね
ぇ?
薫:・・・・ぎくっ!・・・まあ、それはそれとして(滝汗・・・
  ともあれ!ここにブレイク・オブ・ディスティニー編をお送りしましたのですっ!
  今回一番被害・・もとい、とばっち・・もとい、不幸せ・・もとい、幸運だったのは誰でしょう
(汗
L:あら?その幾度も言い直しているその言い回し・・どういう意味かしらねぇv
姫:というか、そもそも、あたしもリナも活躍してないし?
L:そうよねぇ。
姫:そうそう。
薫:んきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
  と・・とりあえず、私は次にいくのですっ!
L:というかっ!はやく連載中の続きとか、あたしの本編の続きいきなさいっ!
姫:あと、私のほうもねv
薫:・・・あうあうあう・・・・・・・・・・
  何はともあれ・・・・・・・・・
姫&L&薫:それでは、また次回で・・・・

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32229エル様漫遊記・番外編〜騎士道のススメ編〜かお E-mail URL2006/2/2 23:00:48
記事番号32227へのコメント

まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

とりあえず。気分転換に先に打ち込みなのですv(こらこらこら)
今回は、スレイヤーズSP25巻。騎士道のススメ編です。
漫遊の番外としては何話にしようかなぁ(こら・・・汗
ちなみに時間軸の設定として。
サイラーグの事件がおわり。セイルーンにと向かう途中の話となっていますv
それゆえにルナが出てきますが(笑)
ルナを伴い、リナと合流したナーガとともに。
シルフィールをひきつれて、セイルーンに向かう途中のお話ですv
意味のわからない人は薫のHPの漫遊本編を参考にしてくださいな(他人任せ・・
何はともあれ、いっきますっ!

#####################################


      エル様漫遊記〜騎士道の勧め編〜


砂時計の落ちる音は、フェォークがお皿にあたる音によって掻き消える。
「…あ、あのぉ〜……」
「シルフィールさん。邪魔をしたら後が怖いですわよ?」
「あら?ルナ?どういう意味かしら?」
びびくうっ!
あたしの言葉になぜかびくり、と震えるルナの姿に。
「すげ〜!四度目のおかわりだぜ!?」
「もう片方の色っぽい姉ちゃんも頑張れ〜!!」
あたし達のテーブルの周りには、やんややんやと喝采を上げている人間達の姿。
そしてその後ろにはなぜか顔色を悪くしたこの店の店長も混じっていたりする。
「しかし…さすがというか……」
何というか…
そこまでいいかけ思いつつ、言葉を区切っているシルフィール。
サイラーグからシルフィールをつれて、ルナを含んでセイルーンにと向かっているあたし達。
「リナ。……おまえ、それもう四皿目……」
一皿をすでに食べ終えているガウリイが何やらいってくるけど。
「あら?どうってことないでしょう?」
「お〜ほっほっほっ!こっちもあと一口よっ!」
いってナーガが最後に残ったパスタを一口。
サイラーグを出て最寄の港町から、
ここ、ラルティーグ王国の片隅にある海辺の城下町にとやってきているあたし達。
今この場にいるのは、あたし以外には野次馬たちと。
そしてまた、一緒に行動しているガウリイにルナに。
そしてシルフィールにナーガ。
この四人。
あたしを含めて五人だけど。
高台にはこの地一帯を任されている領主、ルールディンの城が垣間見えているここ、ベロゥル・シティ。
俗に一般にいう、海辺の城下町。
「すげ〜!全部たべたぜ!?」
「さって。約束だし。そこのルナとシルフィールの二人の食事代も無料でいいわよね♪」
あたしの言葉に、なぜか顔色を真っ青にして砂時計をみていた店の主人。

この町についたのがお昼ごろ。
ふと目に入った食事の看板に。
【当店名物。大盛りパスタ。時間内に食べきった方は無料】
とかかれており、表向きは資金の節約にもなるし。
ということで、それに挑戦しているあたしとガウリイとナーガ。
なぜかルナとシルフィールは参加せずに普通の食事を頼もうとするので、
面白半分に、
『一人でもし二皿以上たべられたら、二人の普通の注文分の食事も無料にならないかしら?』
と掛け合ってみたところ、店の主人は、そんなことは出来るはずもないから。
と笑いつつもあっさりと、『出来たら無料にしてあげるよ。』といってきたのはすこし前。

まだ半分以上砂時計の時間は残っている。
「すげ〜な!」
ざわざわとざわめくギャラリーたち。
とりあえず…っと♪
「…そんな……」
がっくりとうなだれる店主の声とともに。

にゅるにゅる…にょぷんっ!

『うどわぁぁぁ〜〜!!??』

なぜか、店のドアから窓から換気口から。
とにかく突如として部屋の中に数百匹のマナコが投げ込まれ。
騒いでいたギャラリーたちが何やらそれをうけてさらに騒いでいたりする。
「ちょっとぉぉ〜!!」
ぷにゃっ。
…あ、ナーガがナマコに埋もれてるし?
抗議の声を上げようとして、そのままナマコの波に飲み込まれているナーガに。
「…エル様…これ知ってましたね……」
なぜか小さくつぶやいているルナの姿が。
ルナは刹那、自らのテーブルの回りには結界を張り、
ナマコが自分が座っているテーブルには来ないようにしていたりする。
一方では。
「…はうっ!」
なぜかルナと同席して座って食事をしていたシルフィールはといえば。
たかが、ナマコの姿をみてそのま卒倒して気絶していたりするけども。
「って!オレ、ナマコは注文してないぞ!?」
そんな店に埋もれるほどに投げ込まれたナマコをみていっているガウリイ。
「…ガウリイさん……そ〜いう問題じゃあないと思います……」
なぜかため息まじりのルナの声がしていたりするけど。
「ナマコって新鮮さが命なのよね〜。」
死亡したナマコは何かペタっとなるし。
なぜかナマコに埋もれ、店内にいた人々は面白いまでにパニックと化してたりv
これがわかってたからこの町によったのよねぇ?
ふふ?
ちなみに、当然ながらあたしの周囲には投げ込まれたナマコはかかってもいないけど。
「……ふぅ。…あの?これ処分してもいいですか?」
「好きになさいな?」
パニックになっている人々とは対照的に、そんな人々をみつつ紅茶を飲むあたしにルナが聞いてくるけど。
そんなあたしの言葉をうけ。
ルナがちいさくつぶやき。
次の瞬間。
店内のマナコの姿はことごとくかききえてゆく。
どうやらナマコたちは元いた海に戻したらしいけど。
どうせだったら、投げ込んだ当人たちの家に瞬間移動させたらよかったのにv



「…そりゃあ。『真なる騎士団(ライトナイツ)』さ。」
「…騎士団?」
お皿を磨く手も休めずに言う男の言葉に、眉をひそめているシルフィール。
現場となった食堂の近くにある別の食堂。
夕方でもなく、昼時でもない時間であるがゆえに店の中には客が少ない。
「もちろん。正規の騎士じゃねぇ。自分達でそう名乗っているだけの連中さ。」
「つまり…ごろつきってことか?」
テーブルカウンタにこしかけて店の主人にと話しているガウリイとシルフィール。
シルフィールはなぜか未だに顔色わるいけど。
ガウリイの言葉に。
「まあ。そうともいうな。」
いって苦笑する。

あの一件の後。
なぜかあたし達は店の人に感謝され、ルナがすこし残っていた臭いとかも取り除いていたせいか。
その辺りのことに関しても感謝してきていたらしいけど。
ナマコが吐き出したモノをみて気絶したナーガと、ナマコをみて気絶したシルフィールをつれ。
ひとまず宿をとり二人を寝かせてしばらくし。
目をサメ舌ナーガが何かわめき、犯人をみつける!
とかいって外に出て行こうとしたので、とりあえずナーガにはルナを同伴させている。
今ここでナーガがまた道に迷っていなくなったら、セイルーンで待っている事柄の楽しみがなくなるしね?
何かナーガの荷物にナマコが二匹ばかり入っていてナーガが意地になった。
というのはあるにしろ。
ともあれ、しでかしてくれたことはきちんと本人たちにけじめをつけてもらう。
ということで意見はまとまり。
とりあえず二手に分かれ、気がついたシルフィールをつれてひとまず聞きこみをしているあたし達。

「何かよ。『今の騎士団はなっていない。自分達こそが騎士としてふさわしい。』とかいってるらしいけどな。
  で、騎士団の回りにちょくちょく嫌がらせをしてるみたいだぜ?
  このへんの店には結構騎士団の連中が出入りしているからな。
  今回、というかさっきはあの店が標的にされたんだろう。あんたたちはそれに巻き込まれたってわけだ。」
「…子供じゃあるまいし……」
店の主人の説明につぶやくガウリイに。
「ここの騎士団は一体、何をなさっているんですか?!」
未だに多少顔色も悪くシルフィールが何やら問いかけているけども。
「いや。野放しにしてる。ってわけじゃあないんだけど……」
男の言葉をさえぎって、バタン、と店の入り口の扉が開く。
外の明るさによって戸口にたった人物が逆行となり、その姿を影と化している。
がちゃり。
と鋼のかすれる音。
鎧兜を身につけた男性は、店すらもあたし達以外にはいない店内にと踏み入って、店内をぐるりと見渡すと。
「すこし前。この近くで真なる騎士団(ライトナイツ)を標榜するものたちが騒ぎを起こしたらしい。
  何か事件に関係ありそうなことを知っているものはいないか!?」
などといって朗々と声を張り上げていたりする。
どうでもいいけど…メンバーはとっくにわかっているんだから、そこからどうにかするのが彼の役目でしょうにねv
「…もしかしてあの人も偽者?」
小声で顔をしかめ、問いかけるシルフィールの言葉に。
「鎧の胸に鹿の紋があるだろ。さっきいった連中を追っている正規の騎士殿だよ。」
などといって、店の主人は答えてくる。
「へ〜……。野放しにしてるわけじゃないんだ。」
ガウリイがそんなことをいっているけど。
「あら?野放しにしているようなものよ。誰がやっているかわかっていて。何の手もうてないんだし♪」
にこやかにいうあたしの言葉に。
「…リナさん?『誰がやってるかわかっている。』って……」
声を震わせ問いかけてくるシルフィール。
「まあそれはそれとして。とりあえずあたし達も巻き込まれたんだけどv
  状況説明くらいはしてくれるわよねvコルド=バンキンス♪
  いやっていうんだったらルナを通してラルティーグ国王にかけあうけど?」
そんなあたしの問いかけに。
「?きでんは?見たところ旅の魔道士殿と見受けるが?そちらは剣士殿に巫女殿か?
  いや、それ以前にどうしてわしの名前を……」
「あら?誰でもみればわかるってば?」
あたしの即答に。
「リナさん。わからないとおもいます。」
「…いや、そ〜でもないぞ?シルフィール。このおっさん…胸のところに名前入りプレートついてる……」
「……あ……」
『…………』
鎧の紋の下に小さくプレートに名前を刻んで胸につけていたりするしv
この男って♪
ガウリイの突っ込みに互いに顔を見合わせて思わず無言になっているシルフィールと店主。
「おお!これに気づくとはさすがっ!」
いってすらっとなぜか剣をひっこぬき、そのまま剣を天へと突き上げ。
どすっ!
とうぜん切っ先が天井に刺さるかそれにもかまわず。
「騎士とは即ちっ!全てをさらけだし己が剣にて道をゆくものっ!ゆえに名を公然と名乗るのは道理っ!」
などといってるし。
「どうでもいいけど。状況を説明してくれない?でないとあたし暴れるわよ?」
「お、おいっ!リナっ!それはまてっ!」
「そうですっ!りなさん!えっと…ゴルド=バンキンスさん。といいましたわよね?
  わたくしたち、先刻食事をしていたらあれに巻き込まれたのです。いきなりのことでしたし。
  聞くところによれば真なる騎士団(ライトナイツ)という集団の仕業らしいですけど。
  調査は順調なのですか?
バンキンスの行動に、多少ひきながらシルフィールが問いかけてるけど。
そんなあたし達の問いかけに一つうなづいて。
「なるほど。それは災難でしたな。淑女(レディ)。
  しかし、心配にはおよびません。調査はすすんでおります。
  これまで聞き込んだ話によれば犯行が行われた直後。
  被害にあった店の周りを大量のナマコを抱えた青年が二十人ほどたむろしていたとか……」
「つうか……それって、かなり不自然だろ〜が……」
「都会人の周囲の無関心ぶりは嘆かわしいものがありますな。」
「そういうレベルの問題ではないかと……。そのときに通報していれば犯人を捕らえることもで
きたのでは?」
ガウリイにつっこまれ、さらっというゴルドの言葉に、とまどいつつも問いかけているシルフィール。
「というか。そもそもあの店といわず、
  この一帯の店にメンバーが出入りしているのにも関わらず、取り押さえていない。というのが問題よね♪」
こしかけたままで続けていうあたしの言葉に。
「そうはいわれるが……。では貴殿達が店にはいられたときにはその青年たちはいなかった…と?」
「背中に籠をしょっている人はみましたが。普通は商品納入者と捕らえるとおもいますわね。」
「普通。いやがらせをする…とはおもわんよな。」
ゴルドの言葉にシルフィールが答え、何か挙動不審っぽい人たちはいたけど気にしなかったし。
などと思いつつ言っているガウリイ。
「とりあえず。人の食事を邪魔してくれた彼らにはそれ相応のお灸は必要よね♪」
「今の話からすれば…その真なる騎士団(ライトナイツ)という人たちは、二十人程度の規模。ということですわね。」
にっこりと微笑むあたしに続きそういっているシルフィールの言葉をきき。
「それを確認してどうなさるつもりかな?
  それにお灸…とかいっていましたが。その点は遠慮願いたい。
  これは私の任務。領主より拝命しております。くれぐれも手出しなきように。」
いいつつも天井に突き刺さったままだった剣をひっこぬき、鞘に収めて軽く会釈をし。
そのままこちらの言葉も聞かずにくるり、ときびすを返して店を出てゆく。
本っ当、融通がきかないからねぇ。
あの人間って♪

「…ま。あんなかんじだ。」
ゴルドの姿が見えなくなるのを待ち、カウンターの奥から店の主人があたし達にと声をかけてくる。
そして。
「おまけにこの事件の担当をしているのはどうやら今の一人だけ。って噂もあってな。」
「「一人!?」」
面白いまでにガウリイとシルフィールの声が重なる。
食事中の出来事とあって、ガウリイも珍しく話しについてきてるのよね♪
あと食べ物を粗末にしたらいけない云々……とガウリイは祖母から散々言われているのもあって♪
そんな二人の声に肩をすくめ。
「領主(ロード)には本当に事件を解決する気があるのやら……
  まあ、真なる騎士団(ライトナイツ)達の活動っていうのもイタズラに毛の生えたようなもんだからな。
  捜査に本腰を入れるまでもない。って思っているのかもしれんが……うちらにとってはいい迷惑だよ。
  前にもこの辺りの店主たちが少しずつお金を出し合って傭兵でも雇ってごろつきたちをどうにかしよう。
  って話が出たこともあったんだが……さっきの騎士様がやってきて。
  『そういうことは騎士団にまかせろ。おまえたちの手出しは無用。』とこうさ。
  ……で、それで未だにごろつきどもは野放しってわけだ。」
いってしみじみと。
「…しかし…今回被害にあった店…運がいいというか、うらやましい…というか。
  『力る旅の人』がいたおかげで店の被害はなかったとか……
  いやはや、世の中。すごい力の持ち主が噂の赤法師レゾ以外にもいるもんだねぇ〜……」
などとそんなことをいっているけど。
「あら。それって誰でもできるってば♪」
「できませんって。リナさん。…それができるのはリナさんやルナさんくらいかと……」
「ま。リナだし。」
あたしのしごく当然なつぶやきに、なぜか突っ込みをいれてくるシルフィールとガウリイ。
「ま。何にせよ。人の食事の邪魔をしてくれたお礼はお礼だし♪
  あなたたちは騎士に止められたからって手出しできなくなっているようだけど。
  別に悪いのはあっちだし♪文句をいってきたら即刻消滅させ…もとい、国王にいえばいいんだし♪」
「……リナ。おまえ今…消滅させる……とかいわなかったか?」
「気のせいよ。」
ガウリイの突っ込みはさらりと返しておいて…っと。
「「…国王って……普通無理なのでは……」」
なぜか同時につぶやいているシルフィールと店の主人の言葉とほぼ同時。
ドッン!!
『わきゃぁ〜〜!!!』
何やら店の外のほうから鈍い物音とと、人々の悲鳴が聞こえてくる。
「…な、何だ?!」
それをうけ、戸惑いの声を上げているガウリイに。
「どうせまた。あの真なる騎士団(ライトナイツ)とか名乗っている奴らが何かしたんじゃない?」
さらり、というあたしの言葉に。
「ありえるな。何しろ先刻被害にあった店は、
  『旅の人のお力添えで何ごともなかったかのように元通りになった』…と聞いたし。
  意地になってまた何かしでかしたんだろう。……本当にいい迷惑だよ。」
などとため息をつきながらいってくる店の主人。
「幼子でもこんなイタズラはしないわよね〜。さって。とりあえず外にいってみましょ。
  あ。キリク、話ありがとね。いくわよ。二人とも♪」
いいつつも店の主人の名前をよび、お金をカウンターの上にとおき外にでてゆく。
「あ!まってください!リナさん!」
「あっ!お…おい!リナ!」
そんなあたしの後をあわてて追いかけてくる二人。
そして。
「??名前…いってないのに……何であの嬢ちゃん…私の名を?」
なぜか一人首をかしげまくるキリクの姿が見受けられていたりする。
名前なんて誰でもわかるのにね♪

あたし達が店の外に出るのと同時。
どかんっ!
またまた別の爆発音。
空に立ち上る一筋の煙。
「あら?何かあったみたいね♪」
「…十分何事かありだとおもうぞ……」
「…一体?」
その煙をみて、何やらいっているガウリイとシルフィール。
「とりあえず♪一気に近くまでいってみましょ♪」
パチン♪
「うわっ!?」
「きゃっ!?」
にっこり微笑み、かるく指を鳴らしたその刹那。
あたし達三人の姿はその場から掻き消え。
次の瞬間には、何やら内部からの爆発で粉々になり。
さらにはその壊れた内部の残骸に、面白いまでに【もずく】がへばりついている光景がみてとれる。

「……あ、あんたら…一体どこから……」
何やらあたし達が出現したのをうけて、腰に剣を下げた近くにいた警備兵が声をかけてくる
けど。
近くにいたならいたで、すこしは手をうたないと♪
「…こりゃひどい…・・・ 」
「…というかリナさん…今の……」
「え?たかが瞬間移動しただけよ?」
あたしの言葉とほぼ同時。

「…んっふっふっ…ふ……」
吹く風に聞き覚えのある含み笑いが混じり始め。
そしてそれはどんどんとトーンをあげ。
「お〜ほっほっほっほっ!二度もこの私にこんな真似をしてくれるとはっ!お〜ほっほっほっ!
  真なる騎士団(ライトナイツ)とかいう輩!許しておかなくてよっ!お〜ほっほっほっ!」
壊れたテーブル、壊れた椅子。
周囲に倒れ伏した人々。
その全てが黒い海草…もずくまみれになっていたりする。
壊れた店の中心にすくっとたっているもずくまみれの影一つ。
そして、そのすこし先では。
トイレから出てきたルナが頭を抱えていたりするけども。
「あらあら♪本日二度目ね……ナーガ。それくらい投げ込まれた直後によけないと♪」
そんなあたしの言葉にこちらに気づき、
「リナ達じゃあるまいしっ!
  しかし…この白蛇(サーペント)のナーガ様をたてつづけに狙ったそのつけはっ!
  きっちりつけさせてもらうわよっ!お〜ほっほっほっほっ!」
もずくまみれのまま、高笑いをし言い放つナーガの姿に、
周囲にいた子供などは泣き出していたりするけども。
そして野次馬たちですらその場に固まっていたりする。
「……ま、まさか私がトイレに行っている間に…しかも店を吹き飛ばすとは……」
いいつつもナーガをみてため息をついているルナ。
「とりあえず♪この【もずく】は邪魔ね♪」
とりあえず人目があので指先に光を灯し、壊れた食堂の上にとほうりなげる。
その光に吸い込まれるようにしてその辺りをうめつくしていたモズクたちはどんどんと上空にと舞い上がり、
やがて綺麗さっぱりモズクたちはこの場から消滅してゆく。
といっても、ちょっとここにあったモズクは別のところに移動させただけだけど♪

「あ…あのぉ?ところで?エ…でなかった。リナさん…これ…どうしますか?」
ため息をつきつつも、あたしのほうに近寄ってきてつぶやくように聞いてきているルナ。
ルナとナーガはこの店にと聞き込みにやってきており。
そして、ルナがトイレにたったそのてきに、店の中にモズクが投げ込まれたのだけど。
ちなみに…乾燥させてあったわかめ付き♪
つまり、投げ込んだ後、水をちょっと加えればあっという間に増える、という寸法。
昔やったわねぇ〜、これ。
暇だったから、部下たちの体を一時普通の人間にしておいて。
クリスタル・ケースの中に十数名ほど閉じ込めて、増えるわかめの中で水泳大会っていうのを♪
なんでかその程度で死んだものもいたりしたけど。
死んだ部下にはそれなりに制裁は加えたし♪

「…とうとう建物まで壊しやがったか……」
「いったいいつになったらあのごろつきたち…どうにかしてくれるのかしら?」
などといった非難の声が、町の人々からその場にいる騎士のメンバーに向けられていたりするけど。
というか、この建物を吹き飛ばしたのはナーガなんだけどね。
面白いから黙っときましょっと?

「そうねぇ〜。とりあえず♪元に戻しますか♪」
パチ♪
いってかるく人差し指と親指をはじく。
と。
ぶわっ!
なぜかその辺りに散らばっていた瓦礫が浮き上がり、次の瞬間には、一瞬の光の後。
そこには何事もなかったかのような一件の建物が。
「なっ!?」
それを見て何やら固まるシルフィールに。
なぜか町の人たちにいたっては、気を失うものや、その場に立ち尽くしている存在たちまでいたりする。
「ほらほら。ナーガ。いつまでも笑ってないで。真なる騎士団(ライトナイツ)達にお灸をすえにいくわよ♪」
壊れた建物が元通りになったことすら気づかずに、延々と高笑いを続けていたナーガにと声
をかける。
ちなみに、元通りになった食堂の扉や窓は開け広げている状態にしてみたり♪
「お〜ほっほっほっ!…って、あら。リナ。いつのまに?この建物を元通りにしたの?」
「今?」
「そ…そう。」
ナーガはこういった類を見るのはもう慣れてるからねぇ。
あたしの一言にそれですまし。
「ふっ!この白蛇(サーペント)のナーガ様に喧嘩を売ったことを後悔させてあげるわっ!
  真なる騎士団(ライトナイツ)まってなさいよっ!お〜ほっほっほっ!」
青空にナーガの高笑いが響き渡る。

「…一体リナさんって……」
「あら。シルフィールさん。私氏にもできることですから。」
シルフィールのつぶやきに、あわててルナが言っているけど。
その額に流れている一筋の汗は何かしら?ルナ?

あたし達は再び合流し、何やらざわめくその場を後にして、
おいたをした存在(もの)たちにお灸をすえるべく動き出す。
じわじわと逃げ道をたってゆく…というやり方が一番効果的だしね♪


口笛が潮風にまじり流れる。
男はポケットに手をつっこんだまま、浜の坂道を上がり…そして、ぴたり、と口笛がやむ。
「ひゅ〜♪あんたは?」
とりあえずシルフィールに目立つ位置にとたってもらっている。
ゆえに、シルフィールの姿をみとめ、かるく口笛をふき、じろじろとシルフィールをみてるけど。
ま、シルフィールは一見したところ、【どこかいいところの娘さん、もしくはお嬢様。】
と大概の人間は捉えるからねぇ。
ここ、ベロゥル・シティは海に面しているが為に漁で生計を立てている人間も多少いる。
港には些細な数の漁船が連なり波にとゆらゆらゆれている。
そのすこし…というか、すぐ近くに山が海に面している場所があり。
その山の横は波に削られ、ちょっとした絶壁となっている。
そんな中に、いくつかの平らな場所もあり、何かすこし力が加わればあっさりと崩れる。
そんな場所。
そんな場所のひとつにあたし達はいたりする。
はっきりいって家ともいえないか〜なり貧弱な建物が、ぽつりと一軒たっている。
ここがこの男…ミックの住まい。
「おまちしてました。」
そういうシルフィールの言葉に。
「こんな美人にまっていてもらえるなんて。俺も罪だね〜。あ。俺はいつでもOKだから♪」
とことん勘違いしまくってにやっと笑っているミック。
「勘違いしないよ〜に?あたし達は真なる騎士団(ライトナイツ)のメンバーであるミック。
  あんたをまっていたんだから♪」
家の周囲にはあたしとシルフィール。
すこしはなれたところにガウリイ。
そしてルナはナーガのお守り?を言いつけ…もとい押し付けて。
この周囲を取り囲むようにして待機していたあたし達。
「…な……」
ふわっ。
すたっ。
屋根の上に座って様子を見ていたのだが、どうやら勘違いをしているようなのでふわり、と降り立ち。
シルフィールの横にと着地して目の前の男性――ミックに言い放つ。
「…なっ!?……何をっ!わけのわからないことをいってやがるっ!俺はっ!」
おもいっきりうろたえてるし。
というか…隠すの…下手よねぇ〜……
「ナマコ。というのは失敗でしたわね。」
そんな男に向かってシルフィールが一歩前にでて言い放つ。
「ど…どういう意味だ?」
それって、思いっきり認めてる台詞だけど?
露骨に眉をひそめ、つぶやくようにいっているミックの言葉に。
「ナマコはこの辺りでは一般には食されませんもの。かくいうわたくしも食べたことはありませんわ。」
すこし顔色もわるくシルフィールが言ってるけど。
ああいう姿形のモノって…シルフィール、ダメだからねぇ〜……情けないことに。
「な…何がいいてぇ!?」
そんなシルフィールの言葉に、露骨にうろたえているミック。
「つまり?このこの辺の猟師にとってはナナコが売り物にならないからジャマものってことよ。
  おいしいく食べるのは鮮度が命だからねぇ?
  猟師が港にもってかえらないものを手にいれるとしたら。
  わざわざ遠出してまで手にいれる。ってことはないだろうし。
  かといって即席で創造りだすこともあんたたち人間ってなぜか出来ないからねぇ。
  なら残る方法はメンバーの中に猟師がいて、自分でとれば問題ないしv
  というか間抜けよね〜。そんなものを持って帰った時点で。
  あんたが真なる騎士団(ライトナイツ)のメンバーかもしれない。
  というので、他の人たち、あんたに仕事を回さないらしいわよ♪」
にっこり微笑むあたしの言葉に続き。
「お〜ほっほっほっ!」
上から響いてくる高笑い。
ミックの家のすこし上の崖の上。
そこにすくっと立ち無意味に胸をそらして高笑いをしている人物のシルエットが逆行に浮かび上がる。
「…あ。シルフィール。飛んで?浮遊(レビテーション)♪」
「?…あ、はい。」
その姿をみとめ、ふわっと浮き上がるあたしに続き、
首をかしげつつも言われるままにふわり、と呪文を唱えてシルフィールが浮き上がると同時。
「火炎球(ファイアーボール)!」
ナーガの放った術がものの見事に、家の横の茂みにと炸裂する。
ミックを狙ったらしいけど、一瞬崖下をみてしまい、立ちくらみをおこしかけたがゆえに、
どうやら狙いが外れたようなんだけど。
「ふ…ふははっ!よくわかったなっ!」
…というか、ナーガは失敗してそこに呪文を叩き込んだんだけど♪
多少ちょっぴしこげつつも、中には服に日がついて斜面から転がり落ちているやつもいるようだけど。
別にそれは関係ないし。
などといいつつも、茂みの中から出てくる影三つ。
他にもいた後の二人はといえば、何か燃えつつ地面をごろごろしてるけど、それはそれ。
腕を組みたたずむ真ん中の一人は、全身鎧に兜にマントの騎士姿。
彼を挟んだ左右の二人は黒服に黒ジャケット。
どこぞの制服っぽいいでたちではあるが。
三人とも黒字のハンカチで鼻から下を隠しており、ちょっぴり髪の毛などがこげていたりするのは。
先ほどのナーガの術ともいえないものの影響。
「いろいろとかぎまわっている奴らがいるる…とはきいたが。
  しかしまさか、これだけ早くミックの下にたどり着くとはな。」
とかいっているけど。
というか♪
あんたたちのメンバーがまだ、誰しも家には帰っていない、というのが問題よね♪
全員の家、あたし知ってるし。
「あ…あの?リナさん?彼らは……」
戸惑いつつ、空中に浮かんだままあたしに問いかけてくるシルフィール。
「真なる騎士団(ライトナイツ)とそのリーダー♪」
「…え?!」
「ふははっ!私こそ真なる騎士団(ライトナイツ)のジルバ!
  ロードの飼い犬と堕ちた今の騎士団を排し、真の騎士道を実践せんっ!と望むものっ!」
「お〜ほっほっほっ!この白蛇(サーペント)のナーガ様に恐れをなして姿をあらわしたわけねっ!」
…会話、かみ合ってないしv
「ふっ。わかってないな!真の騎士道というものが!騎士たるもの弱きを助け強きをくじくべしっ!
  つまりは反体制、という意味だっ!」
いいつつも、剣を抜き放ち、天にむかって高々と掲げて言い放つ。
そんなジルバの言葉に。
「…ロードの飼い犬…って…普通騎士団とはそういうものでしょう?
  というか、神や魔。世界そのものがあるいみそ〜ですし……」
その後ろからぽつり、といっているとある声。
「うおっ!?不意打ちか!?」
…って、後ろに出現していたルナに今さらづいて何かいってるし。
そして。
「…あのぉ?リナさん?これどうします?」
いってすこし上空を見上げてあたしに聞いてきているルナ。
「それより♪避難しないとねv」
くすっ。
「?」
「…あ!?グレっ!?」
くすり、と微笑みつぶやくあたしの声に男たちは首をかしげ、
ルナはようやくあることに気が付いて即座にこの場から姿をかき消していたりする。
「お〜ほっほっほっ!この白蛇(サーペント)のナーガ様の実力をみせてあげるわっ!地撃衝雷(ダクハウト)っ!!」
タッン!
早口で呪文をまくしたて、地面に手をついて力ある言葉を解き放つ。
…さて、問題です♪
それでなくても不安定な山の中腹。
大地に干渉したらどうなるか?
ガラ…ガラガラ…ズズ〜ン!!
「うわっ!?」
「お〜ほっほっほっ!…って、んきゃぁぁ〜!?」
あv
ナーガの足元も崩れて一緒にナーガもおちて言ってるしv
ナーガのはなった 術によって斜面が崩れ、面白いことにがけ崩れが発生していたりするけども。

「…むちゃくちゃするなぁ……」
すこし離れた場所で待機していたガウリイが、土砂から逃げつつもそんなことをつぶやき。
「あ〜らら。ついに真なる騎士団(ライトナイツ)はやっちゃったわねぇ〜♪」
わざと聞こえよがしに大きめな声でいいつつ、すとん、と大地に降り立つあたし。
「…今のは違うのでは……」
何やら横でシルフィールが突っ込んでくるけど、ひとまず無視。
ガララ……
「お〜ほっほっほっ!よくもやってくれたわねっ!真なる騎士団(ライトナイツ)のジルバ!」
無傷で土砂の中から立ち上がり、間一髪、仲間に助けられ上空に浮かんでいた真なる騎士団(ライトナイツ)の三人に、
ナーガが高らかに言い放つ。
「というか!今のはおまえがっ!」
何やら相手もわめいてくるが。
「ふっ。みぐるしいわね!不意打ちでこの白蛇(サーペント)のナーガ様をどうこうできるとでも!?」
すでに何ごとか!?
というので野次馬たちもちらほらと集まりだしている。
「…お〜い、リナ?ほっといていいのか?」
「リナさん?」
そんなあたしの横にきて、その光景をみつつ聞いてくるガウリイに、移動してきていたルナが聞いてくるけど。
「面白いし。しばらくみてましょ?」
『……面白いって……』
あたしの即答に、なぜか声を重ねるルナ・ガウリイ・シルフィールの三人。
一方で。
「お〜ほっほっほっ!そっちがそういうつもりならば!こっちは!火炎球(ファイアーボール)!」
ごぶばあぁん!!
ナーガが上空のジルバたちにと放った光球は、本来ならばジルバたちを吹き飛ばすもの。
だがしかし。
その一撃がはじけたのは、彼らにたどり着くすこし前。
炎は大気を灼き、そのときに生じた爆風で三人は地面に何か落っこちてきてるけど。
ナーガの放った光球は、すこし横手から飛んできた小石にて空中で撃墜されていたりする。

「あら♪」
「あ。さっきのおっさん。」
「確か…ゴルドさん…でしたっけ?」
小石が飛んできた方向に佇んでいるのは一人の男性。
全身鎧の一人の騎士。
「…ひょっとして彼が?」
ルナも聞き込みで、一人の騎士が捜査に当たっている…というのは聞いているのでつぶやき、
そしてふと気づいて。
「…なるほど。エル様がここに来られた訳がよ〜くわかりました……」
小さな声で何やらぽそり、といっていたりするけど。
「お〜ほっほっほっ!ずいぶん愉快なまねをしてくれたわねっ!そこのあなたっ!」
「手出し無用。これは私の任務だ。レディ・ナーガとやら。」
ナーガに対してまで一応『淑女』という言葉を使っているのはいうまでもなく。

「ふっ。久しぶりですね。父上。」
「「・・・・・・・・・・・・・・」」
集まっていた数名の野次馬たちがその言葉に一瞬無後になり。
そして。
「「な…何ぃぃ〜!?」」
あ、何か人々が叫んでる♪
今まで気づきもしなかった…というのがそもそもおかしいわよね♪
「…え?あの?…父って……」
「そういや。気配がそっくりだな。このおっさんとあのに〜ちゃん。」
戸惑いの声を上げるシルフィールに、ぽん、と手を叩いていっているガウリイ。
「ふっ。今日こそは観念するがよいっ!ジルバ=バンキス!我が不詳の息子よっ!
  騎士道を教え育てたはずなのに、何ゆえか騎士の教えをことごとく間違って解釈し。
  道を誤った愚か者よっ!」
「何をおっしや。!父上!父よ。あなたは教えてくれた。騎士道とは己を貫くことなり。と!
  つまり!途中で『俺ひょっとして間違ってる?』とか思うと負け!」
何やら互いに剣を抜き放って言い合っているこのバンキス父子。

周りでは。
「…解釈間違ってるよなぁ…つうかはた迷惑な……」
「子育ては難しい。という典型よね〜。」
何やら集まっていた野次馬たちがそんな会話をしていたりするけども。

「あながち間違いでもないが!だがジルバ!
 いずれにしろ!わが子の不始末はわしがしまつをつけるのが道理!
  騎士たるもの、己の行動に責をもつべしっ!」

「あ〜…それであの騎士様…一人で突っ走ってたのかぁ〜……」
「というか。親子喧嘩に巻き込まないでわしいわね。」
「まったくだ。」
何やら人々の不満の声が大きくなり…それと同時。

「お〜ほっほっほっ!事情はどうあれ!この白蛇(サーペント)様におそれを抱き、崖もろとも崩して抹殺しようとはっ!
  あまつさえモズクやナマコまみれにしてくれたというのは間違いないわよっ!
  覚悟するのねっ!お〜ほっほっほっ!」
一瞬目を点にしていたナーガが、高笑いとともに言い放つ。
その言葉をうけ。
「…そういえば……」
「ああ!山の形がかわってる!おのれっ!真なる騎士団(ライトナイツ)っ!」
「今までは子供の悪戯に毛の生えたようなものだったけど。こうなればもう許せないわっ!」
「ああ!家が土砂におしつぶされてる!?けが人とかいるんじゃないの!?」
…今さらながらにそのことに気づき、騒ぎ始めている人々。
「お〜ほっほっほっ!覚悟するのねっ!炎の矢(フレアアロー)!!」
ナーガが唱えた呪文を解き放ち、生まれた十数条の光の矢は、エセ騎士たちに向かって突っ込み…
そんな中、無造作にジルバが一歩前に出て。
「はあっ!」
気合とともに一閃。
自分のマントをつかみふり、炎の矢を打ち払う。
「へぇ〜…まあまあやるんだ。」
「ダメねぇ。動かずにどうにかしないと♪しかもマント燃えてるし♪炎くらい消滅させればいいのにねぇ♪」
「…あ、あの?ガウリイ様?リナさん?今の…そう簡単にできることではないと思うのですが……」
「人間にしてはまあまあ。といっても。たしかにまだまでですね。」
「でしょ?」
ガウリイとあたしの台詞に、なぜかシルフィールが突っ込みを入れてくるけど。
そんなシルフィールに続けていっているルナ。
「ジルバ!今日こそは!」
いってゴルドが駆け出すと同時。
「お〜ほっほっほっ!なめてもらってはこまるわねっ!石霊呪(ヴ・レイワー)!」
ごぼっ……
ナーガの声にしたがって、崩れていた岩から岩人形が出現する。
ちょっぴしいつものごとくにデッサンが狂ってるけど。
「邪魔をするなっ!女性といえどもすておかんぞ!?」
ほえるゴルドだが。
「やっておしまいっ!ゴーレム!」
ナーガの命令によって、ゴーレムは近くにいた人間達に向かって手当たり私大に岩を投げつけだす。
「っ!?」
ボンッ!
それをみて、すかさず懐からあるものを取り出して地面に叩きつけているジルバと、
そしてジルバと共に一緒にいる人間達。
音とともに周囲に煙が立ち込め、人々がむせかえる。
それにともなって、ゴーレムが手当たり次第に投げている岩のせいか、
なぜか集まってきている野次馬たちからも悲鳴が上がっているけども。
「お〜ほっほっほっ!この程度で逃げられるとでも思っているのかしら!?お〜ほっほっほっ!」
ナーガの高笑いがそんな中、響き渡っていたりする。

「…で、どうします?」
「きまってるじゃないvおいかけるわよv」
煙を利用して、仲間の力で空をとばせてもらい、その場から逃げ出している三人を確認し、
ルナがあたしに聞いてくるけど。
「…あのぉ?あの人はどうするんですか?」
「ほっといてもくるわよ。ナーガだし。」
「…あの姉ちゃんの扱いって……」
あたしの言葉に戸惑い気味のシルフィールに、ぽかん、としつつ言っているガウリイ。
とりあえず、なぜか騒がしいその場を後にして、あたし達は男たちをおいかけてゆく。
当然のことながらすぐさまに男たちに追いつくあたし達。
「…ななな!?」
「何でおいかけてこれた!?」
まったく自覚も何もない台詞をほざいている三人。
「あのくらいで逃げられるとでもおもったの?
  さってと♪人の食事の邪魔をしてくれたそれなりの償いはしてもらわないとねぇ♪」
にっこり微笑むあたしの言葉に。
「な…何のことだ!?」
今さらとぼけなくても…ねぇ♪
「炸弾陣(ディルブランド)v」
どごが〜んっ!
…あら?
「あ〜らら。かぁなり威力を抑えてゼロ以下にしたのにねぇ。」
「…どこがですか?」
その場にできたちょっとした深さのクレーターをみつつも、
なぜかつぶやき突っ込みをいれてくるシルフィール。
「リナにしては。これ、威力はないほうだぞ?シルフィール。」
「・・・・・・・・・・・」
「あのぉ?一応気の毒なので忠告しますけど……あなたがた、勘違いしてません?
  この御方や、あの人は、『間違った方向に進もうとしている青少年たちの歩む道を正したい。』
  …などとは、ほとんどあまり考えておられませんよ?
  そもそも、これくらいですんでいるのが奇跡……」
「ル〜ナ?何がいいたいのかしらぁ〜?ともあれ♪聞き分けのない子はお仕置きしないとね♪」
びくうっ!
あたしの言葉に、なぜか男三人とルナが同時に震え固まり、そして…
ダッ!
それぞれ男たちは三方向にと駆け出して行く。
「逃げられるわけないじゃない♪」
とりあえず、一人…っと♪
ぐいっ、とひっぱり…といっても、傍目には、じたばたしている男がこちら側に、
後ろ向きで走ってきているように映るけど。
「氷結弾(フリーズブリット)♪」
コッキィィン…
そのままの姿勢で男があたしの言葉と同時に凍りつく。
ちなに、凍り付いているのはたったの二十日足らずほど。
根性がなくても、それくらいで死んだりはしないしね♪


「…それで?どうするんですか?リナさん?」
シルフィールがあたしにと聞いてくる。
なぜか海に浮いていたナーガをルナが拾って宿屋につれてきていたりするけども。
結局のところ。
ナーガが作り出したゴーレムは、ナーガまでも押しつぶし、ナーガは海の中に落ちていたりv
当然、ナーガの悲鳴とそして煙が晴れたそこには。
ナーガの姿も、真なる騎士団(ライトナイツ)の姿もないわけで。
人々はゴルド=バンキスに詰め寄るものの、
「わしの騎士としての務めだ!」
などといってとりつくしまもないゴルド。
一人のメンバーを氷付けにしたそのあとで、何かルナは町全体に回復術をかけてたけど。
ついでにこの町の魔道士協会にも顔を出して何やら身分を証明していたし。
残りのメンバーのうちの一人は、本能的に家にもどろうとしていたところを、
家の一部と一緒にちょっぴり叩いておいたので、
家族に『メンバーの一員。』というのがバレて、かなりおとがめうけてたし♪
気づかない放任主義の家族にも責任はあるから。
関係者の家などについては、あたし修理をルナにしないようにいっておいたし♪
「それじゃ。シルフィールは何もなかったことにして。町をでて。とっととセイルーンにといく?
  いっとくけど。ルナが何にもしなかったら、シルフィールもナマコまみれになってたのよ♪」
「……何とかしましょう。あんな人たち。野放しにしてはおけませんわ。」
あたしの言葉に、その光景を想像し、真っ青になりつつも即答してくるシルフィール。
「そうよねぇ〜♪乙女をナマコまみれにした罪は償ってもらわないと♪」
「ふっ!もずくの恨みもあってよっ!お〜ほっほっほっ!」
「…なあ?ルナさん?……いいのか?」
「ガウリイさん。リナさんの言葉には逆らわない。これが何よりも重要ですわ。」
「…そんなもんか?」
「ええ!」
どうしてそこで力一杯肯定する必要があるのかしらねぇ、ルナは♪
とりあえず…っと。
「それじゃ♪とりあえず、明日から真なる騎士団(ライトナイツ)のメンバー潰しね♪」
「これ以上の被害を出さないためにも頑張りましょう。」
「お〜ほっほっほっ!まっていなさいよっ!ジルバ!と仲間たち!お〜ほっほっほっ!」

静かな夜に、あたし達の声に混じりナーガの高笑いが響き渡る――


どぐわんっ!
ちょっとした些細な音が町の中にと巻き起こる。
「…な、何だ!?おまえら!?俺に何の恨みがあって!?」
逃げ場をなくした男が一人。
裏通りの塀に背中をおしつけて、おびえた眼差しをこちらにとおくってくる。
「ふっ。しれたことよっ!ナマコとモズクの恨みっ!それに昨日海に落とされた恨みもあってよっ!」
ナーガがきっぱりと言い切っているけど。
海に落ちたのはナーガの自業自得だし♪
真なる騎士団(ライトナイツ)のメンバーは三十人弱。
どうでもいいけど、この町の若者の大多数を占めている。
まったく…いるのよね〜……
他人に便乗して、騒ぎたがる存在って。
「悪いことはいいませんわ。今からでも遅くはありません。
  足を洗って迷惑をかけた人々に誠心誠意真心こめて謝り。行動で示すべきですわ。
  例えば一生町のゴミ拾いをするとか。」
あたしとナーガのすこし後ろで両手を合わせ、祈るような形でいっているシルフィール。
目の前にいる男性は、今、このベロゥル・シティで騒ぎを起こしている真なる騎士団(ライトナイツ)の一人。
騎士団と名乗ってはいても、ただのごろつき。
しかもその騒ぎ方といえば、小さな子供の嫌がらせ以下。
いぶりだし方としてはいたって単純。
昨日、彼らがある店にと投げ込んでいたモズクと海草を、
投げ込んだ当人たちの家に瞬間的に送り返していたので。
男たちが家に戻ると家の中がモズクまみれであったり、部屋というか家の中そのものが埋もれていたり…
一緒に住んでいる家族がいる者などは、なぜか鉄やで家族に気づかれないように、
それを処分しようと朝早くから籠等に入れたそれをもってうろうろとしていたりする。
今いる男もそんなうちの一人。
「…な、何のことだ?」
露骨にとぼけて籠を手にしたままおびえる男。
ちなみに面白いものでこれで七人目。
とりあえず先の六人は反省させる目的もかねて、ひとまず蚊などに姿を変えてみたり♪
中にはナーガの術で氷付けになったり、なぜか全身黒漕げになって動かなくなってたり。
などといったものたちもいたりしたけど、まあそれは別にどうってことないし。
「お〜い?そうとぼけても、逃げたのはおまえさんだぞ?」
「こっちから真なる騎士団(ライトナイツ)のメンバーよね。って話しかけたら逃げたのはそっちだし♪」
「あのぉ?素直になられたほうがいいですよ?先ほどからしらを切りとおした人たちって…
  蚊とかゴキブリに姿を変えられていたりしますし……」
そんなガウリイとあたしの言葉に続いて、ルナが何やらため息まじりにといってくる。
シルフィールはなぜかそれらは自分の中では見なかったことにしていたりするけど。
別に誰でもそんなことはできるのにね♪
「しらないもんはしらねぇ!」
なおもしらを切る男の言葉に。
「あらそう。まずは右足に一発お願いしてくるわけね。お〜ほっほっほっ!」
無意味に髪をかきあげ高笑いをするナーガに。
「誰もそんなことはいってねぇだろうがっ!」
「あら。全身がいいみたいね♪」
「ふっ!まかせてっ!」
にっこり微笑むあたしの言葉に、ナーガが聞こえよがしにと呪文を唱え始め。
「わ…わかった!しゃべるっ!しゃべるからっ!」
男の叫びにもナーガの呪文の詠唱は止まらない。
「きゃ〜!!変質者!烈閃咆(エルメキアフレイム)!」
ふと、シルフィールが屋根の上にと視線をむけ、そこにうごめく黒い姿を見咎めて、
早口で呪文を唱えて何やら術を解き放っているけど。
「はいはい。あんたはとっとと話すのね♪まさか他のお仲間、六人と同じ目にあいたくないでしょ♪」
ちなみに、正確にいうならば、昨日の二人を含めたら只今お灸をすえているのは八人だけど。
彼らはどうやら目立つことが好きなようなので、
この町の広場にちょっとした柵もどきをつくって一般公開していたり♪
ちなみに本名と説明書きプレート付き?
小さな虫などに姿を変えたものたちも、それぞれ一緒にいれて。
体験コーナーのようにしてハエやゴキブリたたきをご自由にv
というのも書いていていたりするけど。
朝から設置しているせいか、未だに挑戦者はどうやらいないようだけど。
無視になった彼らは数千回以上潰されたりしないと元に戻れないようにちょっぴしいじくってるし。
その旨も一応説明として書いておいてはいるけども。
「「……ぎゃっ!?」」
何か屋根の上のほうで悲鳴が聞こえたようだけど。
どうやら完全に直撃したみたいねぇ。
あれくらいよけないと♪
「話す!話すからっ!やめてくれぇぇ〜〜!!」
「お〜ほっほっほっ!」
カッキィィン……
男がいうまもなく、ナーガの呪文が完成し、その場になぜかその場に氷付けになるこの男。
ちなみに名前をライ、っていったりするけども。
…ま、この状態じゃあ情けないことに話せないでしょうねぇ。
氷のオブジェとなっても話す根性くらいはもちなさいよね?
「あらあらvナーガ、聞き出す前に氷付けにしたり意味ないじゃないのよ。
  とりあえず、これも同じく広場に送って…っと♪」
軽く指を鳴らすと同時、目の前の氷の彫像が掻き消える。
「…あ、あの?ルナさん?本当にリナさんって……」
「え?リ…リナさんはリナさんですわよ。シルフィールさん。ほほほほほ……」
シルフィールの問いかけに、何やら上ずった声で言っているルナ。
どうでもいいけど、目が泳いでいるわよ♪ルナ♪
しかもびちりと脂汗までかいてるし……
「ま。い〜わ。次いきましょ。次。」
「お〜ほっほっほっ!この白蛇(サーペント)のナーガ様にかかれば!
  メンバーの名前なんてすぐさまに造作もなくわかるわよっ!」
「…つ〜か…リナが教えたんだろうが……何でかリナのやつ、メンバー全員の名前…知ってたし……」
ナーガの声にぽつり、と突っ込みを入れているガウリイの姿。
何はともあれ、一人づつ説得とお灸をすえるのをかねて挨拶にいきますかね♪

人の考えは人それぞれ。
とりあえず話しがある。
といわれたのであたし達はメンバーへのお仕置もどきの続きをしつつ。
ルナに代表して駐留所までいってもらっているけども。
別にナーガの術や妨害しようとした真なる騎士団(ライトナイツ)のメンバーが家屋とかをちょっぴし傷つけた。
ともいえないそんな些細なことで話があるとか何とか。
別に関係者以外の住宅はその場で再生しているんだから問題ないでしょうに♪
ゆっくりと、じわりと確実に、一人ひとりにお灸をすえてゆくあたし達。
ジルバも何か邪魔しにきたりゴルドもまたやってきたりはしたものの
とりあずその辺りをうろついていた野良犬をけしかけ…もとい、なつかせたら、
なぜか悲鳴…でなかった、歓喜の声を上げてはしゃいでいたし♪
何かルナやガウリイ、そしてシルフィールやナーガ曰く、あれはおびえている。
といっていたけど。
だってたかが野良犬だし♪
「…いや…本当に勘弁してほしいのですが……」
「私にそういわれましても……」
あたしたちのところにと話があるから、とやってきたのは。
この町に駐留する、一応ルーディンナイツの騎士団長、カロッゾ。
駐留所に向かいつつ、一緒に歩いているルナにと話しかける。
あたしがルナに話をきいといてねv
といったので、ルナはひとりこうして別行動をしているのだけど。
兜はつけていないものの、鎧に剣、といういでたち。
鎧の胸に刻まれた鹿の紋が金細工なのが団長っぽい。
「もちろん。我々も承知しています。そもそもはあのエセ騎士達が野放しになっている。
  そのこと事態が問題なのだ…と。あなた方があの連中をどうにかしたい。
  そう思うのも通りでしょう。ましてや貴殿はかの赤の竜神の力を受け継いでいる。
  という赤の竜神騎士(スィーフィードナイト)とか。
  見逃すわけにはいかない。というのもよくわかります。」
いってルナと並んであるきつつ、カロッゾはため息一つ。
すこし離れた後ろに、お供の別の騎士が二人ほどいたりするけど。
「…しかし…昨日の今日でここまで騒ぎが大きくなると……しかも建物とかも壊してますし……
  それもエセ騎士のメンバーとおぼしき家ばかり……」
「私としては、リナさんがちょっかい…もとい、関わりをもたれて、今のところこれですんでいる…
  というのが奇跡以外ないんですが……」
ルナの戸惑い気味の言葉に。
「まあ、我らとて貴女の妹御の噂は聞いております。あの白蛇(サーペント)のナーガという人のも。
  それに小さな女の子が加わった時などは、もう言葉に言い表せないようなことが常に起こる…というのも。」
いって深くため息をつき、なぜかその瞳の色に恐怖をたたずえて。
「リナ殿とナーガ殿。二人合わせてチーム、リ・ナーガ。
  二人が組めば町すらも一瞬にして壊滅する…という……」
「あのぉ?…お願いですから…リナさんの前では…その名前を合体させた呼び方……
  …言わないでくださいます?下手をしたらとばっちりが…いえ……」
いいかけて、はた、と口をつぐむルナの様子に。
「?リナ殿は貴殿の妹…ときいておりますが?」
「…え、ええ。恐れ多い…もとい、そのようにしております……」
「……『しております。』って……」
「カロッゾ殿?…といいましたわよね?…世の中、説明できないこともあるのですわ……
  唯一いえることは…私なんかでは、あの御方をお止めする…というのは。
  死よりも、消滅するよりも恐ろしい…ということです……」
下手したらこの世界そのものがそこで一瞬のうちに終わりますし。
そんなことを思いつつも。
「と…ともあれ。あなたたち騎士団があのメンバーのことを。
  あのゴルド=バンキス殿一人に任せているから解決できていない。
  それがあるから楽しんで、あの御方…もといリナさんは首を突っ込んでいると思われるのですが?」
「??…何か異様に妹御のことを畏れているような?…まあ確かに、貴殿のいうことも最も……
  騎士団の指揮権と人事は私に任されているのでバンキスを外して別の……
  と、言いたいところなのだが。いろいろと事情があってな……」
「?事情?」
その言葉に足をとめ、問いかけるルナの言葉に。
「…バンキスのヤツも…腕はよいのですが…。
  変に責任感が強すぎる…というか…頑固なところがありまして……
  『息子のことは自分で何とかする。手出しはしないでくれ。それが聞いてもらえないならば騎士団をやめる。』
  といっていまして……」
「辞めさせればいいんじゃないですの?…というか、他にも何か?」
ルナの問いかけに深く再びため息をつき。
「…あのゴルド=バンキスは今回のことで多少暴走気味なものの。古株で人望はあり腕は確か。
  それに昔、彼は領主の命を救ったこともあり、以来領主のお気に入り。
  これまでの真なる騎士団(ライトナイツ)の活動も、所詮子供の悪戯に毛が生えたようなものだったし……
  こんなことで失うには惜しい人材なわけで……」
「…中間管理職の悲哀…ですか……」
それ…ものすごぉぉくわかるんですけど……
などとなぜかルナは心でつぶやきつつ。
「ですけど…そちらで何とかしていただかないと……領主どころか国王交代。
  ということにもなりかねませんわよ?まだあの御方は退屈しのぎに介入している程度なので……
  これで今のところはすんでいますけど。しかも、昨日の今日ですし…まだ二日目ですし……」
「…町の広場にいきなりあんなものが出現したり…
  どうみても腐乱した犬が真なる騎士団(ライトナイツ)をおいかけていても…
  …まだ『この程度』…なのですか?」
ルナの言葉に、なぜかびっしょりと油汗を流して問いかけるそんなカロッゾの言葉に。
「今は本当に。大人しい目だとおもいますけど……
  その気になれば、あの御方にとっては、メンバー全員を一瞬もしないうちにどうにかする。
  なんてことは簡単すぎるほどに可能ですし……まあ、私も出来なくはないですけど……
  その場合。記憶操作とかの後始末をするのは必ず私なので……
  あの御方は、わざとそういうことはあまりされませんからね……」
「…いや、だからどうして妹御のことを…『あの御方』…と……」
「聞かないでください。」
「…ふ、深くはききませんが……で、ではどうすれば……」
ルナが本気でおびえ、恐怖の色を瞳に浮かべているのをみてとり、
一瞬口をつぐみつつも、うなるカロッゾに。
「ともかく。巻き込まれた店の方は、話を聞く限りかなり今までに被害をうけているようですし。
  中には騎士団は何をやっている。という声もききましたし……
  このままでは、リナさんも面白がって更に何かする可能性も否めないですし……
  そういえば?先ほどカロッゾ殿は人事権をもっている。とかいっていましたわよね?」
「あ…ああ。」
「…でしたら。こういうのはどうでしょう?」
ルナから耳打ちされた言葉に目を見開いているカロゾ。
そのくらい早めに気づきなさいよね♪
しっかし…ルナには後でちょっぴりお仕置きしておきますか?

そんな彼らを視つつも、とりあえず約十五人目のメンバーはといえばモグラにと変えているあたし。
町の広場に、モグラたたきコーナーを新たに設けておきますか♪
一万回以上、数万回ほど叩かれたら元に戻るようにしておいて…とv

その日の夕方近く。
戻ってきたルナと、そしてカロッゾの言葉をうけ、ひとまず、なぜかシルフィールもルナに言われて。
セイルーンへは急いだほうがいいとおもったらしく。
とりあえず、ここはこれ以上遊んでいても面白くなさそうなのでその意見を聞きいれ…
そしてあたし達から真なる騎士団(ライトナイツ)へとあてた手紙を、街中にとばらまいとおく。
ちなみにこれ、ある程度の時間がたったら消えるもの♪
ルナに命じて作らせたんだけど、それはそれ♪

人の言葉を話すゴキブリにモグラにエトセトラ……
何かお仕置きとお灸をすえたメンバーたちはといえば、町の広場で見世物と成り果てていたりするけど。
別にあたしのしったことじゃないし♪


「…本当に来るのか?」
「人間の心理としましては、来ざるを得ないでしょう。」
「ま、のんびりいきましょ?」
「お〜ほっほっほっ!この白蛇(サーペント)のナーガ様に恐れをなしたかしら!
  …ってもう一杯おかわりいいかしら?」
「ええ。」
なごやかにそんな会話をしているあたし達。
港からすこしはなれた小さな砂浜にのんびりと敷物を敷いてのお茶タイム。
周囲には大小の岩が多少ごろごろしており、見渡す限りの砂浜。
というわけでもないけども。
「…というか。町から出ようとしたら。問答無用でメンバーは広場いき。あれって本当なんですか?」
多少顔色が悪くも問いかけてくるシルフィールに。
「シルフィールさん。メンバー全員の名前がわかった時点で、
  多少離れていても何らかのつながりはもてますのよ?」
そんなシルフィールに、言い訳…というかごまかすかのように説明しているルナ。
なぜか姿を変えた真なる騎士団(ライトナイツ)のメンバーは。
素直に全員の名前と住処を教えてくれていたりする。
ちょっぴり真実を言わなかったり、嘘をついたら、
『姿が元に戻る期間が死ぬまで、もしくは一生戻らなくなるから♪』
と事実を突きつけただけで、なぜか姿が変わったメンバーたちは素直に教えてくれたりした。
という事実があったりするけども
何かそんな彼らの姿をみて騒いでいた貴族らしき人々もいたりしたけども。
身内の不始末、というか行動は理解してないとね♪
「オレとしては怖くてでてこれないと思うなぁ〜……」
そんなことをいいつつ、ちらり、とある方向をみていっているガウリイ。
昨日の手紙で指定した場所はここ。
時間は今日の正午。
ルナ・シルフィール・ガウリイ、そしてナーガを含めた五人でのお茶会もどき。
「それはわたくしも同感ですわ。ガウリイ様。
  でもメンバーが三十人弱もいた…というのには驚きましたわね。
  しかもの貴族の子息なども含まれていましたし……」
昨日聞き出したメンバーの名前と住処などを思い出し、シルフィールがつぶやいているけど。
何か顔色が悪いようだけど、ま、気のせいでしょ?

「…何だよ?誰もいないじゃねぇか?」
そんな会話をしていると、岩陰の反対側より聞こえてくる声。
「あの昨日のやつ、結局嘘かよ?」
「決闘だ。とおもってきたのにな〜。」
「これだと広場の奴らをからかっていたほうがよっぽど面白かったかもな。」
何やらそんなことをいってるし。
当然彼らの中にジルバの姿はない。
…が。
「お〜ほっほっほ!まってたわよっ!真なる騎士団(ライトナイツ)っ!火炎球(ファイアーボール)っ!」
ナーガがその声をきくなり、相手を確認しないまま、ぴょこん、と近くの岩にと飛び上がり。
そして男たちに向けて言い放ち、いきなり呪文を解き放つ。
…が。
「あ。ナーガ?それただの野次馬?」
「……え?」
ドガァァン!!
あたしの言葉に振り返ったナーガの術は、男たちの後方にあるちょっとした不出来な岩もどきにと炸裂する。
時刻が昼に近づいているので『面白そう。』というのでやってきている野次馬のうちの一組が、
砂地に足を踏み入れてきただけのこと。
他にも数組ほどそんな人たちがやってきていたりするけど。
暇な奴らって結構いるのよね〜。
気持ちはわかるけど♪
何やらナーガに間違えられて攻撃もどきをうけそうになっていた男たちは、
情けないにもてんで悲鳴をあげて転げるようにはなれていっているけど。
「…ふっ。人間細かいことをきにしちゃあ……」
ダメよ。
ナーガがそういいかけたその刹那。
「ふ…ふはははっ!呼び出して不意打ちをしかけてくるとはっ!
  しかぁし!よくも我らにきづいたな!女子供には似合いの手とでもいうべきか!?」
ナーガが放った術が炸裂した場所。
つまりは、不釣合いな岩もどきがごろごろしている場所より声がしてくる。
何やら岩もいくつか燃えてるけど♪
あわててそんな岩…つまりは、即席のハリボテの岩の中から出てくる人影。
いうまでもなく、ジルバとそして真なる騎士団(ライトナイツ)の面々だったりするんだけど。
ジルバ以外は全員黒い服。
なぜか全員が布で顔の半ばを隠しているのはお約束…とはいうものの、
なぜか全員震えており、しかもなぜかこっちをみておびえているし。
「…というか…不意打ちをする気だったのはそちらでは?」
そんな男たちをみて突っ込みをいれているシルフィール。
「まあ、岩のふりをしているのはわかってたけど。」
「あら。ガウリイさん。さすがですわね。でも怖くてそのまま隠れていたみたいですわね。彼ら。」
しみじみといっているそんなガウリイとルナの言葉に。
「決してそうではないっ!これは単に相手が卑劣な罠をはっていたときのために用心として。
  昨日の晩からこうしてじっと岩のふりをしてまっていたのだっ!」
「家にかえるのが怖かったとみた?」
しごく最もなあたしの指摘に。
「というか…それなら、私たちが昼前からお茶会を開いていたのに気づかなかったの?」
ジルバたちをみて眉を潜めて問いかけているナーガ。
ナーガにまで突っ込まれてどうするのよ?
「笑止っ!騎士たるもの覗きのようなこそこそとしたまねはせんっ!
  よって覗き穴というものも元々作ってはいないっ!」
そんなジルバの言葉に。
「…作り忘れてたんじゃないのか?」
「ガウリイ様。それはわたくしもそう思います。」
ぼそぼそと何やら言っているガウリイとシルフィール。
あら、正解?
「それはそうとして。不意打ちをかけようと思ってたようだけど。何でかかってこなかったのかしら?」
あたしの問いかけに。
「しつこいっ!不意打ちなどとは思ってもないっ!」
「嘘をついたら即座に広場の仲間たちに仲間入り?にするけど?」
「実は不意打ちをしようとおもってました。」
あたしの言葉に、なぜかいともあっさりと認めるジルバ。
「だ…だが!心得にも、『騎士たるもの、任の完遂を目指し万全をもってあたるべしっ!』とあるっ!
  即ち!任のためなら罠も不意打ちも何でもありっ!」
『うわっ。卑怯なっ!』
野次馬たちより上がる非難の声。
「ふっ。何とでもいうがいいっ!考えが浅い一般人どもよっ!
  確かにこれは、『騎士たるもの正々堂々たれ。』という心得と矛盾してみえるが。
  相手を十分に弱らせてから堂々と勝負を挑めば問題なしっ!」
そうしないと摩訶不思議な術をどうやらこいつらは使ってくるようだし……
などと高らかにいいつつも、そんなことを思っているこのジルバ。
「すごい問題あると思いますが……」
「…といか。リナにかなうわけないけどなぁ〜……」
ぽそり、と何やらつぶやいているシルフィールとガウリイはひとまず無視。
「ふっ。騎士道の何たるかもわからぬものと話していても埒はあかぬっ!
  ともあれ!貴様らのよびだし…もとい脅迫…いや、挑戦状!確かにうけとっ!」
言うとジルバは背中から一枚の紙のようなものを取り出し、あたし達に向かってかざし広げる。
それはいうまでもなく昨日ルナが町中にばら撒いた紙。
そこには。

【子供の悪戯以下しかできない真なる騎士団(ライトナイツ)っておばかさん。
  意義ある場合は明日の正午。港東の砂浜にこられたし。
  お馬鹿集団と自覚がある人はこなくてもかまわないですが、その場合。
  正午をすぎれば全員名前も住所もわかっているので広場の人たちの仲間になってもらいます。
  逃げようとしたりした場合は、死ぬまで姿がかわったままになるのでそのつもりで?】

そう書かれていたりする。
ちなみに、この手紙が掻き消える前に彼らがあたし達の前に姿を現さなかった場合。
実は問答無用で姿がかわり、次の瞬間には唐突に広場に移動する。
という事実もあったりしたんだけど。
握る手をぶるぶるさせながらも、なぜか多少震えつつ。
「…我々に対する挑戦状とうけとったが。というか!お馬鹿さんとは何だ!?
  それにっ!広場の仲間の現状。あれは何だ!?」
などと叫んでくるけど。
「あら?別にたいしたことじゃないでしょ?
  たかが別の生き物とかに姿を変えて、ついでに見世物にしてるだけなんだし?
  あんたたちの所業で離れていた観光客とかも寄り付くようになるわよ♪
  人の言葉を話す蚊とかゴキブリとかモグラとか、そんな生き物がいる町だって?」
「…魚とかにかえてたのもいただろうが……」
「…蟻もいましたね……」
あたしのにこやかな声に、何やらぽそっといってくるガウリイとシルフィール。
「お〜ほっほっほっ!お馬鹿さんだからお馬鹿さんだ!といったのよっ!
  子供の悪戯みたいなことばっかりやっていて。自称【騎士団】っていっている限りっ!
  あなたたちは子供以下の何ものでもないわっ!お〜ほっほっほっ!」
「まあ。普通は幼児期まででしょうねぇ。そういうことをするのは。
  でも姿を変えられただけですんでいるんですから。いいとおもいますけど?私は?」
「…よくないとおもいます。ルナさん……」
しみじみというルナに、なぜか突っ込みをいれているシルフィール。
「何だとぉ〜!?というかっ!目の前で仲間がいきなり姿を変えた我らの驚きがわかるか!?」
「だからぁ。驚くほどのことじゃないでしょうに?」
至極当然なあたしの言葉に、他のメンバーは黙っているものの、
なぜか恐怖心を抱いてカタカタと小刻みに震えていたりする。
そんなあたしの言葉をうけ、ジルバは何やら叫びつつも、しゃりん、と剣を抜き。
そしてその切っ先でこちらを指し。
「騎士たるもの。女子供は傷つけぬこと。と心得にはあるっ!しかぁしっ!
  確固たる意思をもって我々に挑戦してきたものにあってはそれにはあたらずっ!
  ゆえにっ!おまえたちの挑戦状うけたっ!
  姿を変えられた仲間のためにも殲滅あるのみっ!ゆけいっ!」
「「おおっ!!」」
ジルバの声に一斉を上げて他のメンバーたちもまた、手に手に剣を抜き放つ。
どうでもいいけど、剣でなくてナイフやなぜか木の枝をもっている輩もいるが。
…しかも全員なぜかしり込みしてるし……
「お〜ほっほっほっ!この白蛇(サーペント)のナーガ様にたてつこうとは!百年はやいわよっ!」
言い放ち、呪文を唱え。
「風魔咆裂弾(ボムディウィン)!!」
ぶごっ!!
ナーガの放ったちょっとした風の力ともいえないもので、なぜか大半吹き飛ばされ。
そして砂に埋もれて先頭不能状態となっていたりする。
「…普通。砂場に呼び出された時点でわかりません?」
「あいつらは何も考えてないのよ♪」
「…納得。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そんな彼らをみてため息まじりにつぶやくルナの言葉に答えると。
ガウリイが横でうなづき、シルフィールは無言になっているけど。
「お〜ほっほっほっ!ぶざまねっ!真なる騎士団(ライトナイツ)!」
ナーガの高笑いが響き渡る。
みれば残っているのは三人のみ。
そんなナーガの高笑いの声をさえぎり。

「ふははっ!無様よなっ!ジルバ!
  騎士団を標榜しておっても、所詮は魔道士の小細工も切り抜けられぬ程度よっ!」
ナーガの声をさえぎって響く挑発の声は、無論、あたし達でも見物に聞いてる野次馬たちのものではない。
野次馬の中にとある、別の岩もどきが、声と友にパカン、と割れ破れ。
そして中から姿を現してくるのは、全身鎧(フルプレート)に長剣姿の初老の男性。
そういやこいつも覗き穴…作り忘れていたっけ。
どうでもいいけど。
一応真なる騎士団(ライトナイツ)の活動取締りを任されている正騎士で、ついでにいえばジルバの父。
「あ、あのおっさん。」
「…というか、もしかしてあの人も息子さん同様にハリボテに隠れてじっとしていたんでしょうか?」
「親子よね〜♪」
そんなあたし達の会話にる
「いったはずだっ!手出し無用!と!それなのにっ!何なのだ!?広場のあれは!?
  人の邪魔をするでないっ!それにっ!街の治安を守るのは我ら騎士団の努め!
  私闘のような真似はゆるさんっ!」
「お〜ほっほっほっ!いってくれるわねっ!ゴルド=バンキス!
  そもそもあなたがきちんとしていないせいで、あいつらをのさばらしていたんでしょう!?
  それで治安も何もあったものじゃあないわねっ!
  人の親としても、騎士としてもあなた、未熟以下の何ものでもないわよっ!お〜ほっほっほっ!」
「…つ〜か、んな姉ちゃんに指摘されているぞ?あの騎士?」
「でも確かにそうよねぇ〜。」
高々と言い放つナーガのこと場に、野次馬たちからもそんな声があがっているけど。
「未熟とは何だ!?未熟とはっ!こうして今儂が過ちを償わせるために参上したのはっ!
  騎士として、そして父としてであるからこそっ!
  ジルバ!おまえたちのなした数々の過ち。今ここで償わせてくれるっ!」
「笑止!飼い犬として安寧に浸った騎士団など。いかほどの道があるっ!」
何やら親子していっているけど。
「ゆくぞ!ジルバ!」
「おおっ!」
ゴルドとジルバの二人が剣を抜き放ち、吠えて砂をけりかけより……

「そこまでだっ!!」
朗々とした一喝が響き渡る。
ばさっ!
布を剥ぎ取る音が同時にいくつか響き渡る。
何のことはない。
ちょっぴり人間にはそれを纏っていれば見えなくなる布を貸しておいたルーディン騎士団の面々が、
布を取り去り投げ捨てていたりするのだが。
ちなみに、同じ布をもっているものであれば、それがどんなに力ない存在でも姿を確認、
視ることは可能。
一件したところ、人の目には何もなかったと傍目には見えていた砂地から突如として出現する騎士団の姿。
それゆえに、なぜか人間達の目には何もなかったはずの砂地から突如として、
人間が出現したよに見えていたりするんだけど。
布は大地に触れると同時に砂となり、周囲の砂と同化する。
体から離して投げ捨てたら砂に還るようにしてたんだけど。
ともあれ、砂地地帯に現れたのは鎧兜の騎士たちの姿。
というか、真なる騎士団(ライトナイツ)やゴルドも、
自分達を包囲して固めるために移動していた彼らにまったく気づいてなかったしねぇ。
情けない……
騎士団の胸には鹿の紋が刻まれており、それが本家のルーディン騎士団だ、とものがたっている。
いともあっさりと包囲されている真なる騎士団(ライトナイツ)の面々。

「…普通あれ…驚きますわよね……」
何やら多少顔色もわるく言っているシルフィールに。
「でも、足音はしてたぞ?あいつらそれにもきづかなかったのか?普通わかるぞ?」
最もなことをいっているガウリイ。
音を掻き消す効果まではあれには持たせてなかったからねぇ。
あの布は♪

「…な、何だ!?」
なぜか狼狽して驚愕しつつ周囲をみて何やら言っているジルバの叫びに。
「知れたこと!我らルーディン騎士団の名において!
  昨今行動が目にあまる真なる騎士団(ライトナイツ)を取り締まるために参じたにきまっておろうっ!」
高々といっているのは、ルーディン騎士団のカロッゾ。
一応騎士団の団長を務めている人間。
「お…お待ちください!騎士団長!約束が違いますっ!この件は私に任せると……」
困惑の声をあげるゴルドの言葉に。
カロッゾは平然と。
「おまえの息子の件に手出しはせんっ!その約束はたがえぬっ!さて……」
そういいつつもジルバのほうに向き直り、懐から取り出した一枚の書状をかざし。
「ジルバ=バンキス!本日只今をもって、貴公を我らルーディン騎士団の正騎士として採用するっ!」
高々に響くカロッゾの声。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
何やら一瞬、その場がしずまりかえり。
そして。
『ええええぇぇぇぇぇぇぇぇ〜!?』
あたし達と、騎士団以外の全員の驚愕の声が野次馬たちをも含めて響き渡る。
ゴルドやジルバもまた同じく叫んでいるけど。
「尚、その教育係にはゴルド=バクキスを任命するっ!
  息子の教育指導の任。責任をもって果たしてみよっ!
  ……約束どおり、息子の件には手出しはせんよ。口出しはするが…な。」
ゴルドはカロッゾの言葉にどう反論していいかわからずに、面白いことに口をぽかん、とあけっぱなし。
「わ…私は飼い犬などにはっ!」
一方でうろたえつつも抗議の声をあげるジルバに、カロゾは笑みを浮かべ。
「だが、今のやりかたでは何もかわらんぞ!真の騎士どころか塀の外で吠える犬とかわらんわっ!
  現在の騎士のあり方が不服だ、というのなら中からそれをかえてみせよっ!
  飼い犬たるを拒み、体制たるを拒み、それでもなお騎士としていきてみよっ!」
「……うっ……!?」
傍目にもジルバの心が揺れているのが丸判り。

「お〜。揺れてるなぁ。つうか、さすがリナの姉ちゃん。スィ何とか。」
そんな光景をみてのんびりというガウリイに。
「ガウリイ様。ですから幾度も説明しましたが。赤の竜神騎士(スィーフィードナイト)様ですって……」
そんなガウリイにため息をつきつつも、突っ込みをいれているシルフィール。
今カロッゾが言っていることは、昨日ルナがカロッゾに提案し。
そしてあたしに了解…というか承諾を求めてきたもの。
あまりこの街に長く滞在していれば確実に【あたし】のことがごまかしがきかなくなってしまう…
という危機感をなぜかもっていたようだけど。
カロッゾに人事権があると聞いてルナが提案したのがこの手。
一種の【飼い殺し案】と、一部にはいう存在もいるけども。
だけど、ルナに指摘されるまでこんな手すら思いつかないなんて……
管理職にはあのカロッゾ、向いてないわね。

「これは正式な命令であるっ!騎士たるもの、命令には従うべしっ!」
「・・・・・・・・・・・」
カロッゾにそういわれ、ジルバは面白いまでに沈黙している。
そんな戸惑い、状況についていけずにダマリコンダジルバに。
「ちょっ!?ちょっとジルバさん!?どういうことです!?」
「まてよ!?親のコネで騎士様かよ?!」
「あんたまさか、こんな話受ける気じゃねえよなっ!?」
などと口々に騒ぎ始めている真なる騎士団(ライトナイツ)のメンバーたち。
そんな彼らにジルバが答えるよりも先に。
「騎士二人の処遇が決定したところで!次は真なる騎士団(ライトナイツ)の諸君の処遇だっ!
  ジルバ=バンキスがいなくなったあともその志をつぎ、活動を続けてゆく。
  というのならば、我ら騎士団、厳しい決断せねばならんっ!しかしっ!
  これを機に真なる騎士団(ライトナイツ)を抜けるのであれば、我ら騎士団としてはその罪を不問とするっ!
  団をぬける意思のあるものは今すぐ口元の布を外し素顔をみせよっ!
  見せぬものは団に残ると解釈する。いかにっ!?」
実際はゴルドもジルバもこの展開についてゆけずに、ただ呆然としているだけなんだけど。
黙っているジルバをみつつ、そんなカロッゾの呼びかけに、
「……あ〜あ。ジルバが抜けるんじゃあな〜……」
「意地はって広場の仲間入り…はなぁ〜……」
「な〜んかしらけちまった……」
一同に口々に何やらいいながらね次々と布を取ってゆく元メンバー達。
ちなみに、【広場いき】とすでになっているメンバーの面々も、なぜか。
姿を変えた時点でメンバーを抜けるからっ!と悲鳴ながらにいってきていたりしたけども。
だけど、街の評判を多少面白…もとい、悪くしたというのもあることから。
約数ヵ月後から半年間くらいの間はそのままで。
という合意は彼らにもとってあるし♪
この場合、砂に埋もれていた真なる騎士団(ライトナイツ)の面々も含め。
全員が布を取り素顔を見せるまでにさほど時間はかからなかったりしているけど。

ルナがジルバを【正騎士】に…と提案した真の狙いは即ち、このこと。
ジルバの考えはともかくとして、他のものたちはただジルバに便乗してやっていただけ。
それこそ幼子のようなのりで。
だけどもあたし達を巻き込んだことにより、彼らにとっては信じられないような出来事。
即ち。
何やら彫刻や銅像もどき。
さらには姿の変貌…などといった些細な出来事うけて、逃げ出したり足をあらおうとし。
その時点で行動に移したものは、メンバーの目前で軽やかな音ともに姿を変え、広場に移動。
そんな些細なこともあって、彼らはなぜかタイミングを探していた…というのもあったりするんだけど。

「うむっ!」
メンバー全員が布を取り去るのを見届けカロッゾは鷹揚にうなづいて、
お供の騎士ともどもゆっくりと後ろに退きつつ、
「では!全員退団とみなすっ!ここに真なる騎士団(ライトナイツ)の完全解隊を宣言するっ!」
後ろに退きつつ、そういうカロッゾの声が一つの合図。
「お〜ほっほっほっ!火炎球(ファイアーボール)!!」
ドバッン!!
その声を合図にナーガが呪文を唱えていたものを解き放ち。
「炸弾陣(ディルブランド)♪」
つっど〜んっ!!
なぜかにっこり微笑んでいうあたしの言葉と同時。
ジルバたちの周囲の砂がまきあがる。
砂が舞い上がり、そして……

「は…話が違う…許すって……」
何やらびくびくと痙攣しながら寝言をつぶやいているけど。
なぜかそれぞれ、様々な虫や昆虫、そして動物。
つまりは人とは異なる生き物もどきになった元団員のひとりがいってくる。
そんな彼らの問いかけに、カロッゾはしれっとしつつ…といっても額に一筋汗を流しつつ。
「いや。約束どおり我ら騎士団としては貴公らの罪を不問とするぞ?」
多少何やら震えるように答え、
「つまりは。あなた方がこれまで街の人たちに迷惑をかけた…というのは別問題。ということですわ。
 よりによってリナさんをも巻き込みましたし。」
そんな彼らをみつつ、ため息とともに言っているルナ。
「昨日。商店街の人たちと、リナさんたちは話しをつけておられますわ。
  確かに、リナさんの言うとおり。
  あなたたちの所業で遠のいてしまった観光客などを呼び戻す。
  というのは慈善活動ともいえますわ。」
魔力を使えば、というか術を使えば姿を変えることなどはたやすい。
と、ルナが弁解のようにシルフィールに説明しているので、
赤の竜神騎士(スィーフィードナイト)様がいうのならばそうなのでしょう。
と、納得しているシルフィールがルナに続いて何やら元メンバーたちにといっているけど。
「ま、そういうことで♪しっかりと【客寄せ】してよね♪
  そのほうが下手に手伝ってもらうより能率がいい、っていう話だったし♪」
人の顔をしたままのいわば人面もどき。
それらが言葉を話し、観光客を呼び込む。
というのがあたしの意見。
街の人たちも、面白そうだから。というので、昨日の夕方の話し合いできまってたし♪
街の人全員が全員、知らないことにしろ。
そんなあたしの言葉に、なぜか砂に埋もれたまま、
自らの姿に気づいて驚愕を通り越してパニックになっているものや、呆然としているもの。
つまりは元真なる騎士団(ライトナイツ)のメンバーの面々。
「…何か人事とは思えないなぁ〜……」
オレなんかリナにあったときに…蟻にかえられたし……すぐに戻してもらったけど…
そんなことを思いつつ、何やらつぶやいているガウリイ。
「な…何で私まで……」
なぜか焦げた塊。
犬となっているゴルバ=バンキスが何やらいってるけど。
「…元々、おまえの不始末とわがままかでこのお人たちまで巻き込むことになって。
  こんな事態になったのだ。おまえとてリナ=インバース殿の噂は知っていように……
  いずれは元に戻れるらしいから、大人しくあきらめてあまんじてうけておけ。バンキス。」
…いつ元に戻れるのかは正確には聞いてはいないが……
そんなことを思いつつも、体のみ顔を除く全てが犬となっているゴルドに話しかけているカロッゾ。
なぜかイヤな汗をつぅ…と流していたりするけど。
ちなみに、集まってきていた野次馬たちはといえば。
たかが、元メンバーたち全員の姿がかわったのを目の当たりにし。
何やら騒いだり爆笑したり…という行動をしていたりするけど。
ま、関係ないし。
「…うっ……」
カロッゾの言葉に、なぜかあたしに対して恐怖を抱き押し黙るゴルド。

「とりあえず。一件落着ね。」
「お〜ほっほっほっ!この白蛇(サーペント)のナーガ様の実力がわかったかしら!?」
「…あんたはあまり何もしてないと思うが……」
「お〜ほっほっほっ!細かいことを気にしたらダメよ!お〜ほっほっほっ!」
あたしの言葉と、ナーガの高笑いがあたりにと響き。
そんなナーガにと突っ込みをいれているガウリイ。

「…あ、あの?ルナ様?こんなことが一瞬で可能なリナさんって……」
「え?リナさんはリナさんですわよ。シルフィールさん。
  と…ともあれ、私たちはセイルーンに急ぎましょうっ!」
だらだらと冷や汗と脂汗を流しつつ、どこか別の場所をみて、どうにか話題を替えようとしているルナ。


何はともあれ、海辺の町を騒がせていたエセ騎士団騒動は穏便にと幕をおろしゆく。
形としては騎士団の采配で、全てが収まり、騎士団は面目回復。
オブジェなどになっていた存在たちも姿をかえておき。
広場に設置したちょっとした次空間テーマパークは結構人々に人気がでて、
街の人たちからの評判も上々。
なぜか元メンバーの団員たちは、泣きながら
『元の姿にもどしてください。もう悪さはしません。』
といっているとか。
ちなみにバンキス親子はといえば、騎士団の文字通り、
姿が戻るまでは、『騎士団の飼い犬』としてすごすことに決定していたりするけども。

「さってと。すこし時間すぎちゃったから。急いでセイルーンにいきますか♪」
「お〜ほっほっほっほ!」
「…ガウリイ様。もしかしてリナさん…ってこれまでもこんなだったのですか?」
「ま。姿を変えられるのはオレもやられたし。」
「―――………」
何かそんな会話をしているガウリイとシルフィール。
「…リナさん。あまり派手…もとい、無茶はしないでくださいませ……」
なぜか疲れたように言ってくるルナ。
とりあえず、あたし達は数日ぶりにベロゥル・シティを後にして、セイルーンの首都へと向かってゆく。
「…と、ともかくいきましょう……」
いったい本当にリナさんって……
何かお姉さんだ、というルナ様までおびえているように見えるのですけど……
そんなことを思いつつ、シルフィールがいってくる。
くすっ。
「あら。シルフィール。あたしはあたしだってば♪」
「リナさん。いきなり心を読まれるのは……驚かれますよ?」
「あら?誰でもできるじゃないvこんな程度くらいはv些細なことで驚いていたらどうにもならないわよv」
「…人間にとっては些細ではないと思うのですが……」
「ふっ。愚問ね。シルフィール。こんな程度でおどろいていたら。
  リナと一緒に旅というか行動なんてできないわよっ!お〜ほっほっほっ!」
そんなのどかな会話を繰り広げつつも。
あたし達が向かうはセイルーン。

ま、すこしは楽しめたかしらv

ちなみに、その後。
ルーディン騎士団の心得に、
【最低限の常識、マナーは身につけるべし。】
というのが追加されたらしいけど。
ま、しばらく、彼らはあのままにしておきますかね?

死んだら元に戻るし…ね?


                 ――騎士道の勧め編終了――




#######################################

あとがきもどき:
薫:・・うにゅぅ……
  なぜか最近、編集や打ち込みやってたら・・ルナが邪魔してきますわ……
  それまでいい子にねてたんだからずっと寝ててほしいのに……
  なぜに手にまとわりついたり、あげくはキーボードの上を歩くかなぁ・・うちのネコ(汗・・
  でもって、なぜか手をあまがみしたり舐めたりしてくるので・・なかなかに作業がはかどりません……
  何はともあれ。ちなみに。これ、元は25巻の騎士道の勧め。です。
  時間的には、前書きにも触れていたとおり。
  サイラーグからセイルーンに向けてリナ達が移動している最中のこと。
  となっております(笑)
  なのでルナもいるんですけどねぇ…サイラーグの一件の後始末させられたもので(まて
  この当時のガウリイ、まだリナ(エル様)のこと…よくわかってない状態です(笑
  なので金色の王…というのは当然知るはずもなく(爆!
  でも気の毒なのは…シルフィール…かな?
  何の免疫(?)もなく巻き込まれてる〜・・・(こらこら。
  なぜか、次はオールディズだといっていたのにもかかわらず。
  先に別なのを打ち込みした薫ですが(自覚あり)
  ・・・ま…まさか100Kを超えるとは…あなおそろしや(滝汗……
  …二つに分けるかどうかは…しばらく考えますのです…はい(滝汗…
  何はともあれ、ではまた次回にて。
  ではでは。
  

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32235Re:初めまして河田 優妃 2006/2/4 22:51:06
記事番号32229へのコメント

初めまして。
あたしは、河田優妃(かわたゆうひ)という者です。
何を隠そう、かおさんのサイトにお世話になっている、
自称、謎の受験生です。
L様漫遊記『ブレイク・オブ・デスティニー』編『騎士道のススメ』編
めっちゃ面白かったです。
やっぱ、L様最強っすね。大好きです。
では、失礼しました。

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32238初めましてかお E-mail URL2006/2/8 00:05:14
記事番号32235へのコメント

はじめまして。優妃さん。感想ありがとうございますv
>何を隠そう、かおさんのサイトにお世話になっている、自称、謎の受験生です。
・・え゛!?・・きてくださっているんですか・・あわわ(滝汗・・
お世辞でもそういっていただけると大変にうれしいです。
気がむきましたらこれからもよろしくおねがいしますね。
でも受験生って・・・・しかもなぞって・・・・・
この時期・・大変でしょうけど頑張ってくださいね。
大学にしろ高校にしろ受験シーズンですしね・・この時期・・・
私はこの時期は花粉に悩まされますが(杉花粉・・とんでほしくないよ〜・・涙
>L様漫遊記『ブレイク・オブ・デスティニー』編『騎士道のススメ』編
>めっちゃ面白かったです。
今回はあまりエル様活躍してないですけどねぇ。
気の毒なのはやっぱりシルフィール・・ですかね?(まて
>やっぱ、L様最強っすね。大好きです。
私もエル様大好きですっ!
エル様でてくるドラマCDとかでればいいのになぁ・・アトガキ風味でドラマCD・・売れるとおもうが(本気
>では、失礼しました。
わざわざ感想、ありがとうございます。
こちらの投稿もちまちまと頑張って打ち込みして見直し次第頑張りますので。
これからも気が向きましたらでいいのですのでよろしくおねがいしますのです。
それでは。
わざわざコメント(感想)ありがとうございました!
ではv

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32293エル様漫遊記・番外編(52)〜理由なき冤罪編〜かお E-mail URL2006/2/17 21:26:08
記事番号32227へのコメント

まえがき&ぼやき:

ううむ…こんにちわ♪
とりあえず、ひとまず。この一件の後の本編版(まて)が終わったこともあり…
いい加減にこちらの打ち込みですv
どなた様からか(誰だったか不明)リクエストを受けてはいる九巻分。
「理由なき冤罪」編となっておりますv
ちなみに、この回…薫のオリジナルキャラの菫ちゃんがでてきます。
ちなみにSPには出てこないキャラも出てきますが…それは話の流れから(笑
それでもいいよ?という人のみどうぞ…なのですv
(本編と照らし合わせたらよくわかる…?かな?←こらまて)
ではv設定としては、エルメキアから…つまり、ミプロス島からもどってきて。
それからしばし旅をしているリナ(エル様)達一行です?


#####################################

     エル様漫遊記 〜理由なき冤罪編〜


「……リナ=インバース…だな?」
男が声をかけてきたのは、あるはれた日の昼下がり。
あたしとナーガとユニットが、
町のカフェ・テラスで、優雅に午後のティー・タイムセットの早食い競争をしていたときのこと。
エルメキア帝国から沿岸諸国連合にと入り。
なぜかミプロス島以後、面白そうだから一緒に行動する?
といってついてきているユニット。
まあ気持ちは判るけど。
年は四十過ぎ。
正確にいえば、四十に再。
ブラウンの短髪でそれなりの格好をしているが。
あたし達の周りでは、なぜか数名の人だかりが出来ており。
その後ろのほうでは店主がなぜか涙を流していたりする。

【ティー・タイムセット。ケーキ食べ放題。飲料追加別料金。銀貨五枚にて】
そう表に書かれている看板。
ゆえに、そのままこの店でケーキでも食べよう。
ということにより、ちょっとしたお遊びでケーキを一番少なく食べた者が三人分の食事代もち。
とそう決めて、優雅に食事をしているあたし達。

「そうだけど?」
あっさりいいつつ、またまたケーキを一口。
余り甘くもなく、まずくもなく。
そこそこの味。
「あ…あの〜?もう在庫が切れるのですが……」
しくしく泣きながら何やら後ろのほうで店のオーナーが小さな声でいってるけど。
「ナーガさん。ナーガさんが一番少ないわよ?」
「…あんたたち、いったいそんなにどこに入るのよっ!」
にこやかなユニットのこと場に、なぜかナーガが突っ込みを入れているけど。
あたしが只今百十二個。
ユニットがなぜか百三十個。
そして…ナーガが只今九十五個目にととりかかっているのだが。
実は、この言いだしっぺってナーガなのよねぇv
ケーキの数でお勘定を払う人を決める。といいだしたのは?
ユニットになら勝てる…とおもってたらし〜けど。
ふっ。
甘いわねv
すでにもう店のケーキはあたし達で品切れ状態になっており、ナーガの負けは明白。
お皿にとっていた残りの一つを口にと運びつつ。
食後の紅茶を飲みだすあたしのすこし後ろ斜め横で、男は胸元からごそごそとある物をとりだして、
「私はルヴィナガルド王国。特別捜査官。ワイザー=フレオンだ。」
何やらルヴィナガルド王家の紋章の刻印が入ったペンダントをかざして言ってくるけど。

ルヴィナガルド王国。
はっきりいってこういう国がある、というのはこの地に住まう存在達にすら余り知られていない。
湾岸諸国連合に名を連ねている小国の内の一つで、
国とはいうものの、領土ははっきりいってこの地でいう一般的な地方領主程度。
というか、かなりの狭さ。
特徴を無理やりに挙げるとすれば、船の材料になるルヴィナ杉の名産地…という。
はっきりいって印象が薄すぎる国。
ゆえにこの国の名前は、はっきりいって知っている人は知っているけども。
『あ〜。そういば。沿岸諸国連合の一つにそういうのもあったっけ?』
という知名度だったりする。
あたし達がここに来たのも表向きには、
【やたらと印象が薄い国が近くにあるし。ついでによってみましょう。】
というもの。
本来の目的は実は別にあったりするんだけど。

「おまえたちがこの町に来た。というのは魔道士協会を通してきいた。」
胸元にペンダントをしまいこみながら、わざと周りにいる応援団…もとい、野次馬たちにも聞こえよがしに。
「リナ=インバース。白蛇(サーペント)のナーガ。おまえたちを連続幼児誘拐事件の容疑者として取り調べる。」
そんな彼の言葉にしばし沈黙し、そして。
「何ですってぇ〜!?ちょっと!?あなた!何なのよ!?その【幼児誘拐】っていうのはっ!」
面白いことにワイザーの言葉に、ナーガが何やら抗議の声を出してるけど。
「ふっ!とぼけても無駄なことっ!
  ここ最近のルヴィナガルド各地で起こった連続幼児誘拐事件っ!その容疑にきまっておろうっ!」
そういえば、ワイザーはナーガのこと、一応知らないふりをしてるのよね〜。
白蛇(サーペント)のナーガで調べても資料とすれば昔のナーガの母親のもの。
それくらいしか出てこないし。
そんなことをいいつつも、ちらり、と店の端にと目をやり、そして。
「私の勘がそう告げているっ!おまえ達が犯人だ…とっ!」
「あのねぇ〜!ちょっとリナ!何かいってよっ!」
何やらナーガが叫んでるけど。
「あ。ナーガさんの負けねvってことでここの勘定はナーガさん持ちねv」
「そうね?」
「ちょっと!リナ!スミレちゃんっ!そういう時じゃあっ!」
面白いまでにナーガがうろたえてるけど。
「何もいわんとはっ!やはりそうかっ!
  それに次なる犠牲者を連れていることからもおまえたちが犯人なのは明白っ!大人しく罪を認めるがいいっ!」
何やらワイザーは言ってるけど。
次の犠牲者…って……
なぜかそんなことを思いつつ、あたしを除く全員の視線がユニットにと注がれる。
今日のユニットの服は、薄ピンクのひらひらレース付き、フリル付き。
リボンも合わせてひらひらの赤いやつにかえているけども。
か〜なりかわいいわよねv
この格好v
「ま。それはともかく?アレがいるから乗ってあげるけど♪何だってあたしたち…なわけ?」
くすっ。
ちらっと視線を店の隅にいる人物にと向け、にこやかにと問いかけるあたしの言葉に。
…こちらが利用しようとしているのが…わかっているのか?
などとそんなことを思いつつ。
「私が怪しい、と思ったものはみんな犯人だっ!」
「あのねぇ!…ふっ。話にならないわ。いきましょ。リナ。スミレちゃん。」
いって立ち上がり、席を外そうとするナーガに。
「ナーガさんvお勘定v」
にっこりといっているユニット。
「ちょっと!今はそれどころじゃないでしょ!?」
もしこんなことがお父様の耳に入ったら…とナーガが一瞬そんなことを思ってるけど。
実は、ワイザーは自力で調べて、ナーガが【誰】なのか。
そして、あたしがルナの【妹】っていうのも調査済みなのよねぇ。
あたしに関してはそこまでしかわかってないようだけど?
だからこそ、革新的にあたし達にこうしてコンタクトをわざとらしく取ってきてるんだし。
「あら。ナーガ。負けた人がここの代金を持つんでしょ?昨日の盗賊からの収入があるし♪」
「そうそう?」
「そんなことをしてたら、私たち犯人にされちゃうわよっ!?というかっ!あなたっ!
  この白蛇(サーペント)のナーガ様に向かってそんなことをいうからには根拠があるんでしょうねっ!」
「ふっ。確たる証拠があれば、とっくに捕まえているっ!
  しかしっ!様々な証拠はおまえたちが犯人と告げているっ!」
「どういう証拠よっ!」
「その美少女も被害にあわすつもりだろうがっ今の会話からして。
  『おごるから。』とかいって連れ歩いているに違いないっ!そんなか弱き小さな女の子を!」
いってユニットをビシっと指差しつつ言っているワイザー。
今日のユニットのこの格好って、面白いことに見た目どうみても。
七歳か八歳そこら…にしか見えなかったりするのよね〜。
人間ってすぐに見た目にだまされるんだから、本当に面白いわ?
「きゃ〜?『かわいい?』だなんてそんな本当のことを?」
きゃっきゃと何やら楽しんでいっているユニットだし。
「…ユニット。楽しんでるわね?」
「あら?リナだってわかっているからこそここにきたくせにv」
「まあねv」
そんな会話をしているあたし達の前で。
「お〜ほっほっほ!語るに落ちたわねっ!つまり『何の根拠もない。』ということじゃないのよっ!
  お〜ほっほっほっ!ということで、リナ。誤解をといておいたから勘定はリナ持ちね。」
そんなことをいってくるけど。
今のあたしとユニットの会話はどうやら耳にはいってないようだしv
「あら。別にあたしは誤解をといてくれ。なんていってないし♪」
「リナちゃん…冷たい……」
そんなあたしとナーガの会話をききつつも
「ふっ!この後に及んであくまでもシラをきる気か!?
  いいだろう!自らの行った数々の悪事とその状況。忘れたというならば思い出させてやろうっ!」
いいつつ、懐から紙をとりだし。
「今からおよそ一ヶ月前。メテルト村のトム君五歳が行方不明になったとき。
  近くの麦畑でみっかったのは、レッサーデーモンのものとおぼしき巨大な足跡!
  さらには数日後。ファリト村のジェニーちゃん三歳が行方不明になったとき。
  村に面した湖で何か巨大な生物が水面から首を出しているのが目撃され
  時を同じくして、ルマフィック村のボブさんが五歳になる自分の息子リック君をつれて、
  日暮れの道を荷馬車にのって移動していると、いきなり夜空にオレンジ色の光があらわれ。
  光に目がくらんだと思ったら、リック君の姿は消えていた!これら全て面妖、としかいいようがないっ!
  よって、リナ=インバースと白蛇(サーペント)のナーガ!貴様らの仕業だっ!」
そういうワイザーの言葉に。
「ちょっと!リナはともかくとして私にはそんな真似できないわよっ!」
「え〜?ナーガさんの場合は『人徳』でいろいろできると思うなぁ。私。」
「お〜ほっほっほ!褒めてくれてありがとう。スミレちゃん。ともかくっ!この私は無関係よっ!」
「ふっ。犯人はたいがい、そういうものだ。」
「それより。ナーガ。お勘定?」
そんなあたしたちの声に。
「ちょっとっ!今はそれどころじゃっ!」
何かナーガが言いかけているけど、とりあえず…っと。
「さってと。ナーガをからかうのはこのくらいにしておいて?監視役の人間は外にでていったしv
  素直にこの一件に関して協力してくれ。っていうんなら、考えてもいいわよvワイザーv」
ワイザーを監視していた人物が外に出たのを確認し、にこやかにと話しかけるあたしの言葉に。
「…な…何を!?」
「あ?ワイザーさんがうろたえてる?まあ、監視がついてたしねぇ?」
「でも、今は外に出て行ったみたいだし。
  どうしてもこの一件、『解決したい。』っていうんだったら、協力してあげてもいいけどv」
あからさまに動揺しているワイザーはひとまず置いとくとして。
「あ。ナーガさん?このまま犯人扱いをされているフリをしていたら。
  この国にいる間、その滞在期間中のお金は全部ワイザーさんが出してくれるってv
  真実の犯人を追い詰めて捕まえるまではv」
「なっ!?お…おいっ!」
「ふっ。お〜ほっほっほっ!わかったわっ!そういうことなら!
  つまり、犯人扱いされているフリをすればいいのねっ!」
ガタッ!
あ、ワイザーがこけかけてるv
「…いやあの……」
くすっ。
「だ・か・ら?あたし達を利用して計画を握りつぶす。っていうんだったら。
 それくらいの誠意はみせてよね?ワイザー?それとも何?本当にあたし達を敵に回す?」
にっこりと微笑みかけるあたしの言葉に。
……まさか全てお見通し!?
などと戸惑いまくっているワイザー。
「あら?当然じゃない?わかってていってるのよ?」
そんなあたしの言葉に。
「うなっ!?ひ…人の心を!?…あの噂の数々って……」
何か面白いまでに戸惑っているワイザーはひとまず無視し。
「さって。話がついたところで?」
にっこりとユニットがいうと同時。
…いや、私は何も言っていないが……
ワイザーがそんなことを心で思う間もなく。
『きゃぁぁぁぁっ!!!』
店の外から聞こえてくる女性の悲鳴。
「ってことで?ここの勘定はワイザー持ちね。あたし達はおどらされているフリしとくから♪」
「あら、何かしら。いってみましょ?」
なぜか呆然としているワイザーをそのままに、軽くテーブルの上を一瞥し。
外にでてゆくあたしとユニット。
そして外にでつつ。
「ナーガ。犯人扱いをされているフリ。忘れないようにね?お財布が逃げるわよ?」
「お〜ほっほっほっ!任せといて!」
全ての勘定がワイザー持ち、というので先ほど犯人扱いを受けたことをすっかり忘れ去り、
おごってもらうために、ワイザーに踊らされているフリをすることを決めているナーガ。
ま、ナーガは素でも問題ないけど、『おごってもらえる』という言葉があったほうが。
相手にもナーガのミスで気づかれなくてすむしv

一人呆然と鳥の記されたワイザーに、
「…ワイザー…これ……」
先ほどあたし達の勝負を見ていたうちの一人が声をかける。
ちなみに机の上には簡単に水で文章がつづられていたりする。
それは時間とともにくずれ、水は蒸発し何ごともなかったかのように普通の机に戻ってゆく。
しばし、二人はそんな机の文字をみて顔を見合わせつつも。
…だがしかし、こうでもしないと助けられない…というのは明白。
どうして知ったのか、どこまで知っているのか判らない…が。
そんなことを心で互いに思いつつも、
ともあれ…計画通りに勧めるしか…ない。
そう思い立ち、ひとまず代金を支払い外にと出てゆくワイザーと。
そしてすこし送れて猛一人の男もまた店の外にと出てゆく光景が見受けられていたりする。
くすっ。
これを知っててあたし…ここに実は来たのよね♪

「ねえねえ。あのぉ?何かあったんですか?」
その辺りにいる通行人を捕まえて話しかけているユニット。
相手は一瞬、ユニットのかわいさに、ぼ〜となるものの、すぐにはっと我にと戻り。
「何かまた子供がさわられたって誰かがいっていたんだが……」
何やらそんな答えを返してくる。
「何!?私は王国特別捜査官(インスペクター)ワイザー=フレイオンだ!どっちだ!」
店からでてて問いかけるワイザーの言葉に、その彼の肩書きに別の通行人が、
「湖のほうですっ!」
などと何かいってるけど。
見れば、当人たちからすれば気づかれていないつもりらしいけど。
露骨に怪しいワイザーの監視役の人間も人ごみにまぎれているけど。
野次馬たちと同じく、湖のほうにと、ワイザーともども駆け出してゆく。

「って!なぜ私がおまえたちの勘定を払わなければならんのだ!?」
何やら走りつつ、文句を言ってくるワイザーだけど。
「お〜ほっほっほっ!人を犯人扱いしたお詫びでしょうがっ!」
「あのなっ!」
「あvあれv」
ワイザーの言葉をさえぎり、ユニットが息も乱さず上空を指し示す。
といっても、あたしもナーガも、ついでにワイザーも息一つ乱してないけれど。
みれば上空に飛んでいる黒い影一つ。
「なっ!?何でんなものがいるのよっ!?」
「あら〜。レッサーデーモナねぇ。しっかもかなり下級の下級のやつね。あれ。」
「どうせならもっとましなヤツを憑依されればいいのにねぇv」
そんなほのぼのとしたあたしとユニットの会話に。
「……下級って…やはりおまえたちがアレを操っているのだろうっ!?
  捜査官と対面しているときに別のモノを使って事件を起こし、そちらに目をそらせようとするっ!
  ありがちな手だなっ!」
なにやらいいかけようとするワイザーだが、
斜め横を走ってきている野次馬のフリをしている監視役の人間に気づき、そんなことをいってくるけど。
「お〜ほっほっほっ!そんなことするはずないじゃないっ!
  それにっ!リナだったらそんな小細工を使わなくても人を消すくらいどうってことなくてよっ!絶対にっ!」
「ナーガさん?それ、褒めてるの?」
「お〜ほっほっほっ!深くつっこまないで……」
ユニットの突っ込みに高笑いしつつも、消え入りそうな声になっているナーガ。
そりゃ簡単だけどね。そんなことはv
そんな会話をしつつも、空を飛ぶレッサーデーモンもどきを追いかけて、
やがて他の野次馬として付いてきている人間達と友に、あたし達は湖のそばへとたどり着く。


湖の中央にはちょっとした霧が立ち込め、そこにあるモノを覆い隠していたりする。
おもいっきり魔力によって霧が生み出されているって丸判りだけど。
「子供がっ!」
「誰かっ!あのデーモンをっ!」
「子供が巻き込まれたらどうするのよっ!」
「誰かっ!子供を助けてくれたらお礼をするわっ!」
何やら集まっている人々がそんな会話をしてるけど。
「お〜ほっほっほっ!この白蛇(サーペント)のナーガ様に任せなさい!」
子供の両親の声を小耳に挟み、ナーガはふぁさり、と髪をかきあげて。
そういいつつも、カオスワーズをつむぎだしているナーガ。
「ねぇねぇ。リナ。私がいってもい〜い?」
目をきらきらとさせてあたしに聞いてくるユニットだけど。
「いいわよ。」
「わ〜いv」
ふいっ。
あたしの返事をうけて、ユニットがその場から姿を掻き消すと同時。
『な゛っ!?』
それをみてなぜか驚きの声を上げているものたちと、
そしてまた、それと同時に完成した術を解き放つナーガの姿をみて声を上げる人々の声が一致する。
「魔竜烈火砲(ガーヴフレア)っ!!」
ガーヴの能力を借りた黒魔法。
一応効果は些細だけど多少あったりする。
ほんとうに微々たるものだけど。
あたしからすれば効果ともいえない分野だけど。
ともあれ、ナーガのさした手の平から伸びた赤い光が、
空中のレッサーデーモンに向かってまっすぐに突き進み。
そしてその光がレッサーデーモンに直撃するその直前。
「やっほ〜♪」
びくうっ!
・・・
「でぇぇいっ!仮にも魔族が驚くんじゃないわよっ!」
思わずその光景をみ、素直な感想がもれてしまう。
子供を運んでいたレッサーデーモンもどきは、
いきなり目の前にと出現したユニットに驚いて、一瞬空中でびくり、と震えて止まってるし……
さらには何か驚いていたりもするし……
まったくもって一応魔族ともあろうものが情けないっ!
羽ばたきを止めるとほぼ同時。
ナーガの放った術がそれを直撃し、
「…がっ!?」
何か短い悲鳴を上げて死んでるけど……姿はそのまま無と化していっていたりする。
「…いくら下っ端とはいえ…情けないったら……」
あたしのつぶやきと、
「はい。保護完了v」
すとっ。
ユニットがレッサーデーモンもどきの手から零れ落ちた子供を受け止めたのはまったく同時。
にこやかに、何やら空中でそんなことをいっているユニットだけど。
ちなみに、当然何の力も使うことなく浮いているので、風などの抵抗…というのもまったくない。
呆気にとられている人々の目前で、ふいっとユニットと子供の姿が湖の上から掻き消え。
そして。
「はいv到着v」
『……うわっ!?』
湖の上空から掻き消えると同時。
あたしの横に出現したユニットと子供をみてなぜか本気で驚いているこの場にいる人間達。
子供のほうはといえば、何が起こったのか理解できずに、目をぱちくりとさせているけども。
「お〜ほっほっほっ!このナーガ様にかかればこんなものよっ!さあ!子供は助けたわよっ!」
そんなナーガの高笑いにはっと我にと戻り。
「てめぇ〜!なんつ〜危ないことをっ!」
「子供が巻き添えになったらどうするつもりだったのよ〜!」
「わ〜ん。おか〜さん、こわかったよ〜!」
「おひぃぃ!!??」
面白いまでに子供の両親にタコ殴りにされているナーガに、そしてまた泣き喚いている子供。
そして。
「…いや、今の…どうやったの?」
「すごい速さだねぇ。」
「まだ小さいのに呪文が仕えるの?お嬢ちゃん。」
わいわい、がやがやと何やらあたし達…というか、ユニットの周りに出来ている人だかり。
ふりふり、ふわふわの服を着た美少女が、小さな子供を抱きかかえている…ある意味、絵になるけどねぇ。
「それはそうと♪湖って調べたのかしら?とりあえず、納得してもらうためにも、
  こっちはかってに真犯人を追い詰めるから♪」
ちらり、と野次馬の中にいるワイザーを監視している国王配下の存在の姿を垣間見て、
にこやかにわざとそんな彼らにも聞こえるようにワイザーにと話しかける。
【話はあわせてね♪で、あたしたちに奢る、という件をお忘れなく♪】
ぱしっ。
とりあえず、ワイザーと、実はもう一人ほどいるワイザーの協力者の脳裏に直接言葉を送り込む。
何かたかがその程度のことで驚いてるワイザーたちだけど。
とりあえず、
「…し、真犯人…だと!?どうせそんなことをいって逃げるのだろうがっ!そうはさせんぞ!
  だがその茶番、つきあってやろうっ!そのうち尻尾をだすだろうしなっ!」
何か多少声を振るわせつつ、ワイザーがとある場所をみつつも視線をそらしながら言ってくる。
どうやら、了解したみたいね♪
話をあわせる…というので意見もまとまったことでv
「そういえば。何かこの湖の周りに面した村々で行方不明者がでているんですって?」
にっこりと、自分の周りにタムロしている野次馬たちに笑みを浮かべてわかりきったことを聞いているユニット。
その笑みに周囲の人々は、一瞬惚けつつも、
「よくわからないけど。そうらしいよ。
  君もはやくこんなところにいないで、両親のところに戻ったほうがいいよ?」
野次馬の中の一人の人間の言葉に。
「…両親…なんていませんけど?」
「馬鹿っ!」
「てめぇっ!こんないたいけな子供に聞いちゃならねぇことをっ!」
あ〜らら♪
完全に彼ら、遊ばれてるわv
すこし寂しそうな表情をつくり、うつむき…といっても、うつむいて忍び笑いをしているけど……
そんなユニットの姿をみて、何やら野次馬たちはといえば面白いことになっているようだけど。
どうも泣いてる…と勘違いしてるようなのよねぇ。
ほんと、人間って面白いわ♪

「まさかあんたっ!あの子を親元から誘拐してきているんじゃないでしょうねっ!」
「違うってばっ!」
こちらはこちらで、そんな会話を小耳に挟んだナーガを袋だたきにしていた、
連れさらわれそうになっていた男の子の両親が、ナーガを攻め立てていたりするけども。
というか、あたしにもユニットにも【両親】なんて元々いないんだけどねぇ。
仮にそういうようにしていたりする存在は、その時々の暇つぶし…もとい、状況によって変わってくるけど。
例えば、今あたしがインバース夫妻の娘、という形式上でいえばしている。
ということとか…ね♪
そんなほのぼのとした会話をしつつも。
何事もなくしばしの時間はすぎてゆく。

実は、この湖に関してはこの国の上のほうから。
『国家機密。人に聞かれても応えるな。応えた場合は反逆罪として処刑する。』
そんなお達しが湖近辺の村には内密に出されているがゆえに、誰も手出しができていない。
というこの状況。
まったく…そういうおふれを出すこと自体、
【何かここで国がらみでやってます。】といってるようなものでしょうにね♪
あからさまに誰の目からみても怪しい湖。
湖のことを詳しく調べれば国がらみで何かしている。
というのは赤ん坊でもわかる事実。


湖の周辺にはいくつかの村や町がほんの数十個弱存在しており、
そのほとんどの村や町で被害が起こっている。
唯一、あからさまに何もおきていない村が一つ。
はっきりいって、そこを拠点にしています…といっているようなモノ。
湖のすぐそばにある小さな村。
家もほんの十数棟。
という何とも小さな場所。
湖の中央には、常に霧が立ち込めており、あからさまに怪しさ丸出し。
町の人々がいうには、
湖の真ん中には小さい島があり、霧がかかって猟師たちが遠出をしなくなったのは約半年くらい前から。
湖に定期的に出ている船を知っているか。
との問いには、町の人たちは『よく知らない。』との返答。
対して、湖の周辺の猟師たち曰く。
『知らない。何もしらない。絶対知らない。』の一点ばり。

「何かあるぞっ!って言っているようなものよね〜。」
「そうね〜。」
優雅にテーブルにつき紅茶を一口。
「……いやあの…というか……」
何か横ではじと汗流しつつ、固まっているワイザーの姿。
「お〜ほっほっほっ!しかし。リナが一緒だと野宿も楽ねっ!家だせるしっ!」
「普通できますよ?ナーガさん?」
「……いや……できんとおもうぞ?」
この近くには、泊まるような宿もないので、湖のふもと近くに、
ちょっとした、いつも野宿となったときに使う小さな家もどきを出現させて、その中で夕食をとっているあたし達。
ナーガは幾度か見慣れているのでもう余り動じることはなくなっているけども。
ワイザーのほうはといえば、完全になぜか怯えていたりする
「あら。誰でもできるってば。物質を収縮させて簡単に持ち運んだりするのはv」
「―――・・・・・・・・・」
ぽつり、とつぶやくワイザーに、にこやかに話しかけるとなぜか無言と成り果てていたりする。
そういえば、外にいる連中も何やら唖然となっているようだけど。
別にどうってことはないのにね♪
「それはそうと。外の人間達にトラップは教えなくていいの?」
こくこくと、ホットミルクを飲みつつも、あたしに聞いてくるユニットに対し。
「別に教えなくても問題ないでしょ♪」
「それもそ〜ね。」
「?リナ?そのトラップ…って何よ?スミレちゃんも?」
未だに無言のままで、何やら固まっているワイザーとは対照的に、
ナーガがワイングラスをもって問いかけてくる。
「え?ああ。ただこの『家』に攻撃呪文とかでも放とうものなら。
  精神世界面(アストラルサイド)に生息しているとある生命体が、
  その術者の体内に入り込んで内部からその肉体を溶かしていって食べるだけのことよ。」
「生き物の心拍数に反応するらから【嘘等をついて動揺などしたりしたら、さらに活性化する。】
  という性質をもっているそれが入り込む。ただそれだけのことなんですけどね。」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・』
あたしとユニットの説明になぜか無言となっているナーガとワイザー。
…いや、精神世界面(アストラルサイド)に生息している生命体って……魔族じゃあるまいし……
などとナーガは思っているけど。
「あら?魔族だけじゃないのよ?あっちに生息している生命体って♪」
「ちょっと!リナ!何度もいうけど、かってに人の心の中を読まないでよっ!」
「……いや…【心の中を読む】って……」
そんなあたしとナーガのやりとりに、何やらぽつり、とつぶやくワイザー。
「と…ともかく。私は外にいる……」
女の子三人の中に男が一人…しかも泊まる…というわけにはいかないし。
……それに……
などと思いつつも、何やらふらふらと外にでてゆくワイザーの姿がみうけられていたりする。
とりあえず♪
今晩にでも当人たち以外…つまり彼ら以外の全員に、彼らのやり取りの夢でもみせておきますか?


く〜す〜ぴ〜……
ナーガは布団の中で爆睡中。
ちゅごごぉぉん!
予想通り…とはいうものの、あたし達がいる建物の外より聞こえるちょっとした音。
「…なっ!?…ぐっ!馬鹿な!?」
「うぎゃぁぁ〜!!」
何かそれと同時に短くしたとある声と叫び声が静かな真夜中の空にと響き渡っていたりする。
何やら面白いまでに顔を隠した数名の男たちがそれをみて驚いていたりするけど。
くすっ。
「…馬鹿も何も。普通みれば判るでしょうに♪」
「そうそう。あの家にちょっとした仕掛けがしてあることくらい…ねぇ?」
そんな男たちの上空…つまり、正確にいえば生い茂っている木々の上。
そこから、そんな男たちにと話しかけているあたしとユニット。
というか…本当にみただけでちょっぴし空間操作がされている…ということくらい判りなさいよね……
それも魔力に関してのみの、魔力干渉による空間操作なんだし……
「というか。自分の放った術で黒焦げになっている、そこの人の人の手当をしなくてもいいのかしら?」
くすくすと、笑いつつ足をぶらぶらさせて、木の枝に座って下を見下ろし言っているユニット。
情けないことに、あたし達がいる【建物】に向かって火炎球(ファイアーボール)を放ったはいいものの。
とある空間干渉が施されている……
というのすらにも気づかずに、自らの術をそのままわが身にと受けている襲撃者。
そんな姿が眼下に見えていたりする。
くすっ。
「…しっかし。ベルギスもほんと、考えがないわよねぇ。たかが四人程度を差し向けるなんて。」
「「なっ!!??」」
あたしの投げかけた言葉に、面白いまでに動揺を見せる男たち。
そもそもわざと、あたし達は『目立つように聞き込みをしていた。』
ということすら、こいつらは気づいてなかったようだしねぇ。
わざと目立てば、おのずから獲物は向こうからやってくるし。
そう、今のように。
「とりあえず♪見張り役と連絡係の人は凍っちゃったわよ?」
あたし達の眼下にいるのは三人。
一人は何やら黒焦げと成り果て、一人は動揺を隠し切れず。
さらに残りの一人は何やら叫びながら地面をのたうちまわっていたりする。
何か内部からとある【虫】がその人間を溶かして食べ始めているようだけど。
別に問題ないし♪
見張り役と連絡係をかねていた残りの一人はといえば、すこし離れた場所にいたものの。
なぜかあっさりと凍りついていたりする。
なので、ちょうどいいので湖の中にといるとある生物のご飯代わりに投げ込んでみたりしてるけど。
「あ。逃げられないわよ?」
くすっ。
『い…いつの間に?!』
その場から動けないことに今さらながらにようやく気づき叫んでいる二人の黒尽くめの男たち。
たかが、月明かりを利用して、人で言うところの影縛り(シャドウスナップ)もどきをけた…というだけなのに。
「正直に、素直にいわないと、あなたたちもそこのミゼットさんみたいに体が溶けちゃうわよ?」
みれば情けないことに、体の中から手足が半分ほど溶かされて、のたうちまわっている黒尽くめの男が一人。
そんな彼の姿が、彼らの視界に映りこむ。
「さ〜て。生き証人もゲットしたし。共和国連合特別捜査官(インスペクター)のライド♪
  とりあえずこの二人を連れて戻って議会に差し出してもい〜わよ♪」
「……なっ!?」
何やら男たちがあたしの言葉に叫ぶけど。
「はい♪捕獲♪」
パチン♪
軽く指を鳴らすと同時に、男たちの頭上に水晶が出現し、彼らを水晶の中にと閉じ込める。
それと同時に、がさり…と音がし。
「…な、…なんで私のことを……」
いいつつ出てくる一見したところ、どこにでもいる村人その一のような格好をしている一人の男性。
そして、その後ろには。
「……いやあの……今何をしたんだ?」
なぜか呆然とあたしに聞いてくるワイザーの姿が。
くすっ。
「何でって。あたし達がこの国に入ったとき。あの店で食べ放題をやっている。って。
  わざと情報をあたし達にくれたじゃない♪ワイザーがあたし達と接触しやすいように?」
この国、ルヴィナガルド王国にと入り、これみよがしに行商人のふりをして。
とある店の食べほうだいの情報を教えてきたのが、他でもないこのライド。
ちなみに沿岸諸国連合のいくつかの国々で発足させている『共同議会』における、
【特別捜査官(インスペクター)】、という肩書きをもっていたりする。
この沿岸諸国連合そのものが、小さな国々などが集まって一まとめに見られることもあり。
かといって小さな国などにおいては、もし万が一、
大きな犯罪や、また国としては動けない状況下などに置かれたときのために、
それぞれ代表国が代表者を選び、治安にあたっていたりする…という現実がある。
このライドもそんなメンバーの中の捜査官…という立場の人間。
ちなみに、ワイザーとはすこし前の事件で顔見知りだったりもする人物。
一年前、ルヴィナガルドはその連合代表委員会から一方的に抜け出して、
そしてこのたびの計画を実行に移していたりするんだけど。
いきなりの脱退を不審に思い、ワイザーも。
そしてまた、このライドも内密に内情を調べていたからねぇ。
というか、本当、この国の国王のベルギスってどこかが抜けてるわよねぇ〜。
「常に私たちの近くにいて、近衛団の人たちの動きをライドさんは探っていたじゃないですかv」
「ナーガは気づいてなかったようだけどね。」
くすっ。
交互にいいつ、思わず笑みをこぼすユニットとあたしの台詞に。
『・・・・・・・・・・・・・・・』
なぜか無言と成り果て、その場に固まっているワイザーとライド。
…初めから、もしかして、もしかしなくても…よまれてたのか?
などと思いつつ、何やら互いに冷や汗を流していたりするけども。
「あら。だから。そういってるじゃないのよ。初めからvとりあえず、もう夜も遅いし♪
  明日の朝一番で、小島の塔にいくつもりだし。ということで後は任せるわ?」
「そうね。今からいってもいいけど、もう暗いしねv」
本当は暗さなどは関係ないけど。
なぜか固まる二人をそのままに、ひとまず【建物】の中にと入ってゆくあたしとユニット。

後には。
「……さすがというか…初めからお見通し…って訳か……」
なぜか脂汗を流しつつ、つぶやいているワイザーに。
「……ま、まあ。あのリナ=インバース殿は。あの赤の竜神騎士(スィーフィードナイト)の妹御…らしいですし……」
あたし達から手渡された黒尽くめたちの入った水晶を眺めつつも何やらつぶやいているライド。
くすっ。
さって。
明日は明日で面白くなりそうね♪


次の日の翌朝。
日も昇っていない朝もやがかかるそんな中。
湖のほとりを歩いているあたし達。
「…それはそうと……こんな時間から船はどうするんですか?」
なぜかデスマス口調となっているワイザー。
「まあ。この時間だとまだなぜか、誰も起きてないしねぇ。」
くすっ。
というか、実は今。
この国を中心とした諸国を含めて、昨夜のうちに面白い出来事が起こっていたりするのよね。
それも国民といわず、全体的に。
それでなぜか騒ぎになっているところはなっていたりするし。
まあ、それはそれとして。
「ねぇねぇ?リナ、船どうする?つくる?」
ちょこん、と首をかしげて言ってくるユニットの言葉に。
「そねぇ。」
いって、ふいっと湖に向かって手をかざす。
と。
ざっ!!
水が瞬く間にと空中にとせり上がり、それは一つの塊となり。
それはやがて一つの固体と成してゆく。
見た目、【透き通った船】の出来上がり♪
ちなみに材料は水で出来ていても、別に乗っても濡れたりする心配は皆無。
「さvいきましょv」
「ふっ。ま、リナだし。…というか、これ、一種の水の術…よね?のっても平気?」
ふぁさっと髪を書き上げ、問いかけてくるナーガに対し。
「……いや、突っ込むところが違う気が……」
何やらうなっているワイザー。
ちなみに、昨夜のうちにライドは証人入りの水晶を持って、一度戻っていたりするけど。
別にナーガには説明する必要もないので彼のことなどは説明してないけども。
「あらvワイザーさんはのらないんですか?まあ別にいいですけど。
  子供たちがどんな目にあっていてもいいのならv」
何やら固まっているワイザーに、にこやかに話しかけているユニット。
というか、【ここ】にいる子供たちはまた、【実験体】にされる前の子供たちだからねぇ。
実験施設は、城の近くのとある設備にいくつか分かれてあったりするんだし♪
「…うっ!…わ、わかった。」
何よりもこの半年で行方不明となった子供たちの保護が何よりも最優先。
そう自分に言い聞かし、何やらうめくようにいってくるワイザーの姿が。
とりあえず、あたしたち全員。
水の船にのって湖の上を移動してゆく。

タプン……
水面上を滑るように、あたし達四人ののた【水の船】は進んでゆく。
もやの中からは、水面をはねる水の音。
「なるほどね。水の精霊にも干渉して、水面の上を滑るように勧める。
  さっすが私の生涯最大のライバルねっ!リナ=インバース!
  混沌の言語(カオスワーズ)もなしに高度な術を使うとはっ!お〜ほっほっほっ!」
なぜか船の先端に立ち尽くし、無意味なまでに胸をそり、高笑いを上げていっているナーガ。
「あ。ナーガvそんなところにつったっていたら……v」
「クラーケンにつかまりますよv」
そんなナーガに、にこやかにあたしとユニットがいうと同時。
ビュルッ!
ばっちゃぁぁ〜〜んっ!!
水面から伸びてきた白っぽい触手が高笑いしているナーガの体を絡めとり、
そして、そのまま湖の中にとひっぱりこんでるしv
それと同時。
「のきゃぁぁ〜〜!?」
「何だぁ!?これはっ!?」
ナーガとワイザーの声が、霧のかかる水面にとこどまする。
みれば水面から出てきたタコとイカを足したよう触手に絡め取られているナーガの姿が。
「クラーケンか!?」
それをみて、ワイザーが恐怖と驚愕の混じった声を何やら上げているけど。
どうしてこの程度の生き物が出てきたくらいで驚かないといけないのかしらねぇ〜……

一般では、なぜかその巨体…ともいえない、些細な大きさの体が生み出す破壊力が恐ろしい。
といわれている、何ともポビュラーな生き物。
主に湖や海に基本的には生息していたりする。
ちょっとした小さな船などは、なぜか攻撃…ともいえないモノをうけただけで、いともあさりと転覆。
もしくは転覆したりする。といわれていたりする。
最も、このクラーケンも実験の過程で生み出された生き物だけど。

触手は大きくしなり、ぺいっ…とナーガをこちらにむかって投げはなってくるけど。
「あvどうやらナーガさんをこれにぶつけて船ごと沈めるつもりみたいv」
「みたいね〜v」
「って!!あんたらっ!何をのんきなっ!!」
のんびりという、ユニットとあたしの声に、なぜか抗議の声を上げてくるワイザー。
「あらv平気だってばv」
あたしの言葉が言い終わるよりも早く。
ばちっ!!
「んきぁぁ〜〜!!」
叩きつけられそうになっていたナーガが、船の上空にてはじかれ、
その反動で反対側にと弾き飛ばされてゆく。
「あら〜。風の気流が取り巻いているの…気づいてなかったのねぇ。」
「ま。ナーガさんだし。」
そんなあたしたちの会話に。
「……いや、【風の気流】って……それに、あの人も仲間なんじゃあ……」
ワイザーがなぜか飛んでゆくナーガをみつつ、冷や汗流していってくるけど。
「それより。次がくるわよ?」
あたしの言葉と同時。
ざばざばぁぁ!!
船を取り囲むようにして出てくる触手が十数本。
それらが正確にいうならば十六体ほど、船を取り囲むようにして出現していたりする。
「うわっ!?こんなのが湖にこんなにっ!?地元の猟師たちが困るではないかっ!」
何かワイザーが叫んでるけど。
「ねえねえ?リナ?あそんでいい?いい?」
わくわく。
うずうず。
目をきらきらさせて、両手を組んであたしに言ってきているユニット。
う〜ん……ま、いっかv
「湖を蒸発。もとい消滅させない程度にねv再生するのも馬鹿らしいから。」
「うんっ!」
ふわっ。
あたしの言葉をうけて、ふわっとユニットが上空にと浮かび。
そして。
ふわり、と水面上にと着地する。
水面上にと立っている状態のユニットをみて。
「…なっ!?お…おいっ!?」
ワイザーが言いかけるのと同時。
「じゃ、私はちょっとこれで遊ぶ…もとい、お掃除しておくから。リナ達は先にいっててv」
そんなことを言っているユニットにむけて、クラーケンたちが触手を伸ばしてくる…が。
バシュッ。
ユニットに届く前に、触手はことごとく無と化してゆく。
元々、ユニットは、
たしかに、ここに【いる】ようにはみえてても、その意識が実体化しているだけであって。
本来は、ユニットは別の世界の存在だしねぇ。
あたしの世界だし……ここ……
ゆえに、傷とかなどは当然、つけられるはずもなく。
って元々傷とかって、実はあたしたちはわざとそのように自分自身でそのように見せかけるだけだし。
「じゃあ、あたしたちはいきましょ?」
そんなあたしの言葉に。
「…お、おいっ!あんな子供を一人のこしていくのか!?」
何やらワイザーが叫んでくるけど。
「じゃぁ、ワイザーは、あれに巻き込まれたい?」
にっこりいって、視線で指し示したその先には。
きゃ〜きゃ〜いいつつも、細い槍状にした雷を、自分の周囲に降り注がせて遊んでいるユニットの姿が。
「………。さあっ!先を急ごうっ!」
その光景を目の当たりにし、なぜか額からつうっ…と汗を流しつつ。
いって、びしっと小島のほうを指差すワイザー。
とりあえず、ユニットをその場にのこし、あたしたちは小島にと向かってゆく。

湖をはさんで別の国にと隣接しているこの場所。
ゆえに、他の人間にもわかりそうなものなのに。
さっきのような合成獣(キメラ)を湖に放っているがゆえに、未だは人もめっきり近寄らないこの湖。
島の一角に残橋と、数艘の船の姿がみてとれる。
「…どうでもいいけど…痕跡残しまくり…よねぇ。」
「ふっ。悪人なんてそんなものよ。」
にこやかなあたしの言葉に、水クラゲから降りつつも言っているナーガ。
「漁船…ではなさそうだな。」
ここまできたら、演技してもムダ…のような気がするし。
などと思いつつ、小島の残橋に泊まっている船を見て何やらつぶやいているワイザー。
「ま。ここしばらくは。猟師たちもこの場所まできてないらしいからねぇ〜。
  まったく。たかが、海蛇竜もどきなどが湖に放たれている…ということくらいで。
  湖に漕ぎ出すことすらしないなんて…ねぇ。根性がなってないわよね。」
至極最もなあたしの言葉に。
「…いやあの…普通の人間はびびって何もできんと思うが?…根性以前の問題じゃあ……」
何やらぽつり、とそんなことをいっているワイザー。
「あら?あれくらいの相手なら、
  小石一つか、はたまた枯れ木で十分すぎるほどに対処はどうにでもなるわよv」
「それ、リナやあのスミレちゃんだけだと思うわよ?それよりっ!お〜ほっほっほっ!
  誘拐犯を捕らえたら、その犯人が持っているお宝は私のものよっ!」
などと高笑いしつついうナーガに。
「…あの…特別捜査官(インスペクター)の前でそういうことは……」
などとため息と共に、何やらつぶやいているワイザー。
未だに周囲は霧に包まれており、見上げても空の色すら霧で見えない状況。
…ま、だからいいんだけどね♪
「とりあえず。こういうのって定番で中央近くにアジトへの入り口ってあるし。
  島の中央にむけて進んでいきましょ♪」
にっこりいって、一歩足を前に踏み出すと同時。
あからさまに周囲にと満ちる殺気。
それとともに、たったの二十五個程度の紅い光が霧の中より垣間見え。
「「るぐぉぉぉ〜〜!!」」
何やら雄たけびとともに、光点…つまりは、炎の矢もどきがあたし達めがけてせまってくる。
「くっ!」
それを間一髪でとびのき、かわしているワイザー。
「…まったく……」
ばしゅっ!
あたしのつぶやきとともに、
あたしに向かってきていた炎の矢もどきは小さな音とともにその場から掻き消え、
そして残りの矢は周囲の空間をやき、そのまま炸裂する。
きゅごごごぉぉおんっ!
「んきゃぁぁ〜〜!!」
「あららvナーガは逃げ遅れたみたいねぇ。ダメねぇ。こんな術ともいえないものは消滅させないとv」
「……いや、消滅って…・・・ 」
何やら起き上がりつつも、つぶやくワイザーはひとまずおいとくとして。
みれば、ナーガは今の一撃といえない代物で、目を回して気絶していたりするけども。
ちなみに、直撃されて吹き飛ばされているけどナーガは無傷だったりするのよねぇ。
ま、ナーガだし?
ワイザーのつぶやきのほぼ直後。
『……何のようだ?』
炎の矢もどきがとんできた方向から聞こえてくる男性の声。
「あら?聞くまでもないでしように?刺客送ってきたり、見張りがわりに海蛇竜もどき達を飼っていたり。
  そんなことをしている、ってことは。
  一応悪いことをしている、っていう自覚はある。という証拠でしょv」
そんなあたしの声に。
『……なるほど…な。しかし、何ゆえにこんなことに首をつっこむ?』
「面白そうだから♪」
「いうまでもないっ!子供を取り戻すためだっ!」
あたしの声とワイザーの声がかさなり。
ふと。
「……いや、面白そうって……」
ちらり、とあたしをみて何やら言いかけてくるワイザー。
『……い、いずれにせよ。ここまできた以上。ただで帰すわけにはいかんな。』
なぜか一瞬の沈黙の後に、そんなことを言い放ってくる霧の向こう側にいる人物。
その声を合図に霧の奥から、ゆっくりと浮かび上がる影が三つ。
どこからどうみてもレッサーデーモンもどき。
「あらあら。たったの三体?」
くすっ。
思わず笑みを漏らすあたしの言葉に。
『…本来なら、一体で十分。…おまえたちにはそれを倒すことなどはできはせまい。
  何しろそれは在り方が違うから…な。』
わざとらしい言い回しで姿を見せずに請えのみを、とあるモノを使ってこちらに流してくるけど。
「?どういうことだ!?」
その声に露骨に眉を潜めて問いかけているワイザー。
『確かに。見た目も能力的にもただのレッサーデーモンとかわりはない。
  …だが、在り方が違う。普通のレサーデーモンは呪文で異世界より召喚する……』
淡々と、ワイザーの問いかけに答えているけど。
異世界じゃなくって、精神世界面(アストラル・サイド)からだってば。
物質世界も、精神世界も同じ惑星上のものなんだし。
『…しかし、これは我々が研究の末にあるものをベースに作り上げたもの。
  何のために我々が子供を誘拐していた…とおもっているのだ?』
「まさか!?きさまらっ!?」
その声に驚愕の声を上げているワイザー。
『そう。まだ自我の確立されていない子供をベースに使い、レサーデーモンと化す。
  それが我々が行っている研究なのだよ。
  そして…その成功例がおまえたちの目の前にいる…ということだ。』
などといってくるけど。
というか、何を依代にしているか…なんて、普通みただけでわかるけどねぇ。
「馬鹿なっ!?」
「というか。わざわざ手間をかけなくても。自我をもっている状態でも憑依さらればいいじゃないのよ。
  それすらできない下っ端ばかり召喚するから、出来ないのよ。」
ワイザーの叫びと、至極最もなあたしの意見が同時にかさなり。
「…あんたはどっちの味方だ……」
などといいつつ、突っ込みをいれてくるワイザー。
『ふっ。何をたわけたことを。本来、デーモンは召喚した術者の命令しかきかん。』
などといってくるけど。
そんなことないってば。
無知って…本当、ある意味面白いわよねぇ。
あたし達の台詞に動じることなく、淡々と続けざまに。
『つまりは。術者にとっての道具でしかない。
  しかし…ある条件を満たし、誰のいうことでもきくデーモンを作り出すことができたなら…
  それは最強の軍隊として活用できるのではないか?つまり、デーモンの兵器転用だ。
  それを造り出すのに最も適した材料が、人間の子供だった。そういうことだ。
  嘘というのは自由だが、デーモンを倒したその後には、
  さらわれていた子供たちの死体がおまえたちの目の前に転がっていることになるぞ?』
「…くっ!」
その声に何やら歯をかみ締めているワイザーだけど。
…まったく……
「…あのねぇ〜。どこをどうみても、それの元ってねずみじゃないのよ。ね・ず・みv
  それにいっとくけど、憑依している状態の下っ端魔族もどきだけ。
  殺したり、消滅させたりするのってものすっごく簡単よ?それなのに兵器転用も何もないわよね〜v」
くすくすくす。
そんなあたしの至極最もな言葉に。
「…?それは?……」
何やら問いかけてきているワイザー。
「だ・か・らv人間などを例えば依代などにした場合、ここまで形は変わらないのよv
  というか、力ももう少し向上するはずだしねぇ。
  そもそも、自力で具現化すらできない下っ端が憑依してるんだし。」
くすっ。
レゾから教わった方法…完全にマスターしてないわねv
最も、召喚している魔族の格が違う。
…という根本的なことすらにも気づいていないこの人間達にいってもムダだろうけどv
『……意味のわからんことを…とにかく。おしゃべりはここまでにして…やれ。
  おまえたちはこのデーモン達には手も足も出せないだろうから…な。』
完全に勝利を確信している声。
いるのよねぇ。
知識が乏しくて勘違いしている存在ってけっこう。
「「ぎぉぉぉぉおおお!!」」
その声に答え、デーモン達が吠え、それぞれの前に数十本の炎の矢を出現させる。
それと同時。
『おまえたちは手も足もだせまいっ!殺せっ!!デーモン達よっ!』
などと命令してるけど。
くすっ。
「あんたたち?【誰】に向かって攻撃してくる気?」
にっこり。
にっこり微笑み、声にちょっぴり気をこめて言っただけで、
ビクッン!!
なぜかあからさまにその場に硬直するレッサーデーモンたち。
それらが硬直するのとほぼ同時。
「お〜ほっほっほっ!手も足も出させいだろう…ですって!?」
復活してきたナーガが高笑いとともに、すばやく呪文を唱え、
そして。
「覇王氷河烈(ダイナスト・ブレス)!!」
キガキギィィィン!!
ワイザーが止める間もなく、
ナーガの放った術によってデーモンの体が一瞬にして氷結し、砕けて白い塵と化す。
「どわぁぁ!?きさまぁぁ!?何ということをぉぉ!?」
面白いまでに意味もなく叫ぶワイザーの声をさらり、と無視し。
「ほ〜ほっほっほっ!どう?倒してあげたわよっ!
  この白蛇のナーガ様に向かって、あんなたわごとをいうなんて!それこそ十年早いわねっ!」
胸をそらしつつ、高笑いしているナーガ。
そんなナーガはともかくとして、あからさまにナーガの行動に驚きを隠さずに、
『…ば…馬鹿な!?なぜあれが嘘だとわかった!?』
などといっている声の主。

「なっ!?今の話はハッタリだったのか!?」
「というか、だから、普通みただけで依代になっている生物ってわかるから。
  すぐに嘘だってわかるって、ワイザー。」
そんなワイザーにとひとまず突っ込みをいれておく。
『……くっ!!』
悔しがるうめき声一つを残し、それっきり途絶える声と。
「お〜ほっほっほっ!どうやらこの私に挑んだことの愚かさを悟って逃げ出したようねっ!」
まったく違うことを言っているナーガ。
「……いや、見ただけで判るって……普通、わからんと思うぞ?
  しかし……ううむ……今の今まで、あんたのことはただのオマケ、とおもっていたが。
  あの嘘をあさりと見破るとは!このワイザー、感心したぞっ!さ……」
さすがは、セイルーンの…といいかけるワイザーの声より早く。
「ほ〜ほっほっほっ!…?嘘って?」
高笑いを続けていたナーガが、笑いを止めて逆に問いかけてきていたりする。
「……いや、だからだな。あのデーモンが誘拐された子供たちをペースに造られた…という話を……」
目を点にしつつ、説明するワイザーの言葉に、ただただナーガは眉を潜めるばかり。
くすっ。
「あら。ワイザー?ナーガは初めの一撃で目を回していたから。
  さっきのやつのハッタリは聞いてないわよ?」
そんなあたしの言葉に続き。
「ふっ。細かいことを気にしないのよ。リナ。気がついたら、誰かの声がしてて。
  しかも、『おまえたちにはこのデーモンには手も足もだせまい。』
  なんてえらそうにいっていたから。かる〜く倒してみただけよ。」
ふぁさり、と髪をかきあげ言ってくるナーガだけど。
そんなナーガの言葉に。
「……しかし…ハッタリだったからよかったものの……」
何やらぶつぶつとつぶやいているワイザーの姿が。
「だ・か・ら?みただけで依代となっている生物くらいわからなきゃ?」
「いや、それは無理だと思うぞ?」
あたしの言葉に、なぜか額に汗を一筋流しつつも突っ込んでくるワイザー。
「?ちょっとリナ。どういうことよ?」
意味がわからずに、問いかけてくるナーガはひとまずおいとくとして…と。
「とりあえず。この島の中にある施設その一にでもいきましょvワイザーも異論はないでしょ?」
実は、ここにいる子供たちって…まずは適正を見るために仮に集められているのよね〜♪
主たる実験は、面白いことにしろの中の研究所とか、町中の王国保有施設とかでやってるし?
そんなあたしの言葉に。
「…無論だ。子供たちかに実験材料にされる前に、早く助け出さねば……」
ここにいるのは、ここ一ヶ月の間に集められた子供たちばかり…だけどねv
「ちょっと!どういうことなのか説明してよっ!」
未だに、何やらわめいているナーガだけど。
とりあえずひとまず無視し、あたし達はそのまま、島の中央にと進んでゆく。


軽く指を鳴らしただけで、あからさまにバレバレのカモフラージュ…もどきで隠されていた、
地下にと続く入り口の扉はあっさりと消滅する。
地下へと続く階段の置くには、ヒカリゴケに寺差出された白い通路があるのみ。
周囲に人の気配はないる
…というか、確かに『遊んでもいい。』とはいったけど…
…何やらユニットのほうは面白いことしてるわねぇ〜……
国全体、というか主に首都が面白いまでにそれをうけてパニックになってるし。
そしてまた、朝起きて外に出た人々も、空を見上げて何か叫んでるしv
ま、ここにいるナーガやワイザーには説明する必要もないからいわないけど…ね♪
「ほ〜ほっほっほっ!」
階段にナーガの高笑いが響き渡る。
階段を降りてゆくと、湖の下の洞窟にと続いており、
天然の洞窟を利用した均されている道を突き進んでゆく。
途中には、人が術で掘った場所も点在しており、一種の簡単な隠れ施設状態となっているこの場所。
「どうでもいいけど…どうせこういった場所をを作るくらいなら……仕掛けくらいつくりなさいよね……」
思わずつぶやくあたしの言葉に。
「お金がなかったのよ。きっと。」
あさりといいきり、そして。
「だって、壁に伝声管が張り巡らさせれてるし。」
壁にと伝わっている管をみて、そんなことを言っているナーガだけど。
「みたいねv」
あたしがナーガに答えると同時。
『やはり、しつこくやってきおったか。』
その管から伝わってくるのは先ほどの男性の声。
「何!?どこだ!?姿をみせろっ!」
立ち止まり、きょろきょろと辺りを見渡しながら言っているワイザー。
「だ・か・らぁ。ここにはいないってば。声だけを伝声管使って飛ばしてるのよ。」
どうなら、こんなものをつかわずに、声くらい様々な場所に飛ばしなさいよねぇ〜……
そんなあたしの言葉に。
『ご明察のとおり。…しかし、ここまできたからには、こちらも腹をきめるしかないな。』
「あら。案外思い切りがいいのね。」
その声に素直な感想を述べているナーガ。
そんなナーガの声にはおかまいなしに。
『こうなっては。我らときさまら。もはや決着をつけるしかない。お互いつまらん小細工は抜きだ。
  そのまま通路をまっすぐ通って右に折れ、最初のドアからはいってこい。
  その部屋に私もいる。そこで決着をつけてやる。』
「別にいいけど。それじゃ、いきましょv」
「――ちょっとまてっ!どう考えても罠だぞ!?これは!?」
あたしの言葉にワイザーが突っ込んでくるけど。
「お〜ほっほっほ!わかってないわねっ!ワイザー!真の美学というものがっ!
  たとえ罠だとわかっていても、あえて敵地に侵入し、なおかつ戦いに勝利するっ!
  これぞ究極の戦法の一つよっ!」
そんなワイザーに高笑いしつつも、何やらどうでもいいようなことを述べているナーガの姿。
そんな二人をそのままに、何はともあれ、指示されたほうにと進んでゆくことに。

しばく進み、やがてあるのは一つの扉。
「おいっ!本気で行く気か!?」
何やら未だにわめいているワイザー。
さってと。
パチン♪
軽く指を鳴らすと同時。
ボシュッ。
目の前の扉が、なぜか瞬く間に消滅し、扉の向こう側の空間が垣間見える。
その先にと見えているのは住人ほどの魔道士姿の人間と。
そして様々な種類の合成獣(キメラ)の数。
たかがほんの十八匹。
元々は、倉庫にしていた空間であるがゆえに、彼ら人間にとっては待ち伏せには最適。
だがしかし、いきなり扉が消滅したのをうけ、面白いまでにおろおろしている合成獣(キメラ)達。
彼らが受けていた命令は、【扉が開いたら炎の矢を扉に向けて解き放て。】というもの。
扉が消滅…即ち、掻き消える…というような状況における命令はうけていない。
「「…なっ!??」」
扉が消滅したという些細な程度で驚きの声を上げている魔道士たちの姿もみえていたりする。
「……いやあの…今…何をしたんだ?」
なぜか多少声を振るわせつつつぶやいているワイザーに。
「ほ〜ほっほっほっ!観念して集めていたお宝全部よこすのねっ!!」
まったく関係ないことを高々と言い放っているナーガ。
そんなナーガの声に、はた、とれにと戻り。
「…あ、あいつらをやっ……っ!」
「凍v」
こっきぃぃ〜ん
にっこりとあたしがつぶやくと同時、
なぜか待ち伏せしていたそれらは全て、ちょっとした凍りに覆われて身動きが取れなくなっていたりする。
『――…なっ!?』
それと同時に聞こえてくるあからさまな驚愕の声。
「あら?この程度で驚いてどうするのよ?というかそっちがこの部屋にいない。
  というのは初めからわかってたし。…あ、こいつらは別に気にしなくてもいいわよ?
  たかが、カタートの氷と同じ強度だから、どうとでもなるし?」
ちなみに、Sを氷付けにしているアレと同じ物にしてみたり♪
別に説明することでもないので言わないけど♪
「ふっ。読めたわよ。ここで待っている。といったわりに。私たちのことは他の者に任せて。
  そして自分だけは安全な場所で高みの見物する気だったのねっ!」
声がしてくる場所がわからないからか、
氷付けになっている氷のオブジェに、ピシっ!と指を突きつけ言い放つナーガ。
『…な、何を根拠に!?』
ナーガの指摘に、面白いまでにうろたえた声を出してくる声の主。
「お〜ほっほっほ!この白蛇のナーガ様をなめてもらっては困るわねっ!
  しょせん、あなたは、その程度の器の持ち主ってことよっ!」
一応、ナーガ。
たまぁぁに、こういう面では鋭いからぇ。
一応、これでもあの国の王族だし。
このナーガってv
「普通子供でもわかるわよ。だってこの部屋には下っ端デーモンすらいないし。」
「ふっ。そういうことね!」
「…というか、たかが、レッサーデーモン程度クラスの下っ端呼び出しても役に立たないでしょうに。
  あ〜んな能力ないやつを呼び出すより、せめて純魔族。
  もしくはこの世界で言われているところの高位魔族くらい呼び出しなさいよねぇv」
そんな至極もっともなあたし達の意見に。
「……いや…能力のないって……十分に一般人には脅威かと……」
あたしの言葉に、何やら後ろでつぶやいているワイザーがいたりするけど。
「とりあえず?この部屋であたし達を何とかしよう。とおもった。ってことは。
  リセウムがいるのはこの奥ってことね♪今からいくからまってなさいね?」
『…って、まてぃぃ〜!?何でこの私の名前を知っている?!』
あたしの声に、あからさまに反応してくる声の主。
「あら?普通、声とか、あと姿を視たりするくらい。どんなに離れていたとしても簡単よ?
  普通誰だってわかるってばv」
「…それは、リナの基準だと思うけど……」
にこやかに言い切るあたしに、ナーガが何やら突っ込みをいれてくるけど。
「まったく。ワイザーも。ナーガも、些細なことを気にしないの?ともかくいきましょv」
にっこり微笑み、かるく、パチン♪と指を鳴らすと同時。
あたし達の姿はその場から掻き消え、

次の瞬間。

「…うわっ!!??」
何やらあからさまな驚愕した声は…目の前にいる人間から。
そして、なぜか思いっきり震えつつ、恐怖という名の負の感情を辺りに撒き散らしていたりする。
目の前にいるのは貧相な中年魔道士。
ちなみに名前をリセウム?
リセウムはそのまま、震えながら鉄扉の横にすえつけられたとあるレバーにと手をかけて。
「子供たちは全員!この鉄扉の向こうにいるっ!
  しかしっ!私がこのレバーをひけばどうなるとおもうっ!?」

ひゅるるる……
ばしゅっ!!!!

そんなリセウムの言葉と同時。
なぜか地上のほうから降ってきたちょっとした光珠が、その場にいた幾匹かのレッサーデーモンを無に還し。
そして、それと同時に、さらにリセウムまでをも吹き飛ばす。
薄暗かった地下がそれと同時に、太陽の光で満ち溢れる。

「…て…天井が!?」
それに気づき、何やら叫ぶワイザーに。
「あらvどうってことないわよvたかが、この洞窟の天井部分が消滅しただけだしv」
説明するあたしの言葉に続き。
「リナ〜vこっちは終わったわよ〜v何か国全体が面白いことになってるけど♪」
ふわっ。
そんなことをいいつつも、上のほうからふわり、と降りてくる少女が一人。
「…なっ!?なななっ!?」
そしてまた…空を振り仰ぎ、何やらナの字を連発しているリセウムの姿。
ぽっかりと開けた上空にて、そこから見えている空。
その空をスクリーンに見立てて映し出されている光景は――
「……いや、ちょっとまて…何をしたんだ!?何を!?」
何やら空をみて、口をあんぐりあけつつも、言っているワイザー。
「え?ただ、別に。人々が知りたがっていたことを視せたり、聞かせたりしてるだけですけど?」
にっこりと応えているのは、いうまでもなく……
「あら?何かこの光景みて首都では暴動が起こっているみたいねv」
くすっ。

ユニットとあたしの協力…もとい、心優しき思いから、人々の知りたがっていること。
即ち。
今、この国で何が行われているか♪
という詳細な映像が空に映し出されていたりするんだけど。
その映像を目にすると、自然とその『会話』が脳裏にと直接響く…というオマケ付き♪
おもいっきり、この国の国王ベルギスが、人体実験を指示している様子や。
そして子供たちが実験体にされる様子。
そしてまた、その施設がある場所などにかおいては、なぜか映像が空に映し出されると同時、
空から降ってきたちょっとした隕石によって、実験施設は思いっきり誰の目にも明らかなほど。
人の目にとさらされている。
ちなみに、その隕石の被害は微々たるもので、施設の存在が誰の目にも明らかになる。
という程度のもの。

そんなユニットとあたしの言葉に。
「?ちょっとリナ?どういうことよ?」
空を振り仰いだ後に、あたしにと聞いてくるナーガ。
「だから。簡単にいったら、この国の国王の指示の元に行われていた実験。
  それらが、一般の人々の目にも触れた…というだけのことよv
  どうなら、この場所はまず第一段階目の適正を調べる施設みたいだし。
  つまりは、まだ実験に使われる前の子供たちしかいないようだけど。
  国の施設の地下などで行われていた実験の内容や状況は空の映像を見ても判るとおり。
  何か偶然振ってきた隕石によって、人目に触れているようだしv」
そんなあたしの至極心優しい説明に。
「…なっ!?馬鹿な!?ま…まやかしだっ!こんな…こんなことが!?」
面白いまでに動揺し、パニックに陥っているリセウム。
「…何というか……こういうパニックになるようなことは…避けたかったのだがな……」
まさかこんなことまでできるとは…などと内心思いつつ。
「と…とにかく。もはやこれで終わり…ということだ。おまえたちのやろうとしていたことは。
  ここにいる旅のリナ=インバース殿と、この私。
  特別捜査官(インスペクター)ワイザーが確かに見聞きしたこともあるし…な…それに……」
淡々と語りつつも、なぜか空に映し出されている光景をみて、一筋汗を流しているワイザーに。
「…なっ!?特別捜査官(インスペクター)だと!?馬鹿な!?
  そんなものがここにいるハズはないっ!それに…リナ=インバース…だとぉぉ!?」
何やらわめいているリセウムの姿が。
どうやらあたしに関するちょっとした噂は耳にしたことがあるので、驚愕の声を出しているようだけど。
「あら?その【人間とは思えないあの!リナ=インバース!?】というのは、どういう意味かしらねぇ♪」
…なっ!?心の中を!?
あたしの言葉に、なぜかその場で脂汗を大量にかき、硬直してるリセウムだし……

「リナ〜♪子供たち、助けたわよ?」
そんな会話の最中。
鉄の扉を開き、そこに捕らわれていた子供たちを部屋から出して解き放っているユニット。
子供たちはなぜか、ほとんど震えて泣いていたりするけども。
ユニットが微笑みかけると、泣いている子供たちもピタリ、と泣き止んでいたりする。
この辺りはさすがユニット、といえなくもないけども。
子供って、同じ子供同士だと安心する…という傾向があるからねぇ。
ユニットの場合はそれだけじゃないけどv
「ここにいるハズはない。といれても…ここにこうして、私やリナ殿がいるのは事実。
  それに…上空の映像が事実だとすれば…もはや全て白日の下にされされている。
  とそういうことだ。ゆえに、救いの手はどこからもない、というのは明白。」
すでに城にも国民がおしかけて、対応に追われていたりするし♪
というか、兵士なども知らなかった存在(もの)達のほうが多数を占めるので、
事実を見極めようと国民たちと同じく、それぞれに行動していたりするし。
そんなワイザーの言葉に、がっくりと膝をそのばにつけて崩れ落ちるリセウムの姿が。
まったく…ほんと、何かあったときに弱いわよねぇ。
お役所仕事の存在達ってv

しばらく数時間の間。
ベルギスの行動における一部始終の詳細と…そしてまた。
それぞれの実験施設においての実験内容が空にと映し出されてゆく光景と……
そして、何やら怯えつつも、ひとまず一瞬のうちにと湖の中央にある小島の下の地下。
つまりは、子供たちが捕らわれていた場所より…それぞれが湖のほとりに移動し。
その映像の中に自分達の子供の姿をみつけたそれぞれの家族が、映像をたよりにやってきて。
そして、しばしの対面を果たしてゆく光景が見受けられてゆく。
なぜか、リセウムは未だに力が抜けたようになってるけど。
まったく…この程度のことで…情けないわねぇ〜……



「…しっかし。何考えてるのかしら?人間って。」
「お〜ほっほっほっ!食べ放題よっ!」
「欲と権力に目をくらませた存在(もの)ってそんなものよ。」
何やら目の前に椅子にて、顔色の悪いワイザーと、そして戻ってきていたライドの二人の姿。
向かいのテーブルでは、あたしとナーガとユニットが一つのテーブルを囲み、ちょっとした食事タイム。

一昨日の出来事は、当然のことながらすぐさま国内に事実として伝わり。
そしてまた。
沿岸諸国共同議会に参加している国々にも当然伝わり…
結果、この国は王室そのものが解体される運びとなっていたりする。
最も。
施設のことごとくが人目にさらされ、圧力などをかけても不可能。
と悟った国王とその直属の近衛団隊員の面々は、国民の弾圧や、そしてまた、
他の国々などの操作の手が入るまえに、主たる実験の結果の資料をもって逃亡を図っており。
残されたのは、城内の実験施設と…黒く焼け焦げて判別不能な何かがあった場所。
そしてまた、国のいくつかの場所に点在していた数点あった施設のみ。
それら、国内にあった施設などからは、姿の変わり果てた行方不明であった人々や。
そしてまた、子供たちなども次々と見つかり。
今、この国、ルヴィナガルドにおいては、悲しみ、怒り…などといった、様々な負の気で満ち溢れている。

「…一つ、いまさらながらに聞くが……リナ殿?貴殿はもしや初めから全て知っていたのでは?」
本気で今さらながらに聞いてくるワイザー。
「当たり前じゃない。というか、誰でも知ってたってば♪」
「「……いや、誰でもって……」」
「ほ〜ほっほっほっ!ちょっと!ビールジョッキ特大おかわりねっ!」
そんな会話をしているあたし達とはうってかわり、
次々にビールを飲み干して、おかわりをしつつ、食事を追加注文しているナーガの姿。
「そもそも。国王自らが指揮をとっていたようだしねぇ。」
「というか、子供でもすこし考えたら。このたびの一件はこのルヴィナガルドの王室。
  もしくは、国の中枢近くにいる人間が裏について圧力をかけている。って丸判りだったしv」
そんなあたしとユニットの言葉に。
「?どういうこと?というか。
  何で自分の国の子供を攫ってデーモンにする。なんてバカなことをしてたわけ?」
食事の手をとめることもなく、横から聞いてくるナーガ。
「あら。この国って何のとりえもないし。場所的に交易の拠点にもなれないし。
  かといって、これ、といった観光名所すらも作ってないし。」
「名産品…といえば、唯一、自然の恵みのルヴィナ杉だけだし。
  そもそも。この国って植林とかも率先してやってないようだし。
  いつかは資源に限りが出てくるのは目に見えてるわよね。」
自然の資源は補充をしない限り、いつかは尽きるもの。
木々の生長速度などを一気に勧める…ということすら、ここの生き物(存在)達ってなぜかできないし。
ユニットとあたしで交互に説明しつつ。
「でもって。その艇柵としてあげられたのが。
  【誰にでもコントロールが可能なデーモンの制作。】なんでしょ。
  というか、あんな自力で具現化すらもできない下っ端の魔族もどきをつかっても、
  さしたる結果は得られないでしょうけど。」
いって、言葉をくぎり、ティーカップにと口を運び紅茶を飲み干す。
「そんな役に立たないモノをよその国に売りつけたり。
  自国でつかって戦争をしかけたり。などといろいろと画策していたようだけどね。」
「まったく、欲と権力と力とに目をくらませた存在(もの)って本当面白いわよねぇ〜vどこかが抜けてるしv」
そんなあたし達の会話に。
「……いや、【あまり役に立たない】って……」
「…十分に一般の人々には脅威なんじゃあ……」
何やら小さくつぶやいているワイザーとライド。
そして、あたしとユニットの言葉をうけ。
「ふっ。そういうこと。上にたつものは自らに自信をもたないとね。
  そういう安易な考えに走るのは力がない、と認めている。というようなものね。
  お〜ほっほっほっほ!」
何やら一人いいつつも、無意味に胸をそらせて高笑いを上げているナーガ。
そして
「まあ、つまりはそういうことね。
  他の国などから子供などをさらえば、調査の手が伸びてくる可能性がある。
  そうなったら国際問題になるので、事をもみ消しやすいように自国から人々…
  …つまり、実験体を確保する。そうすれば、上から圧力がかかれば下の存在は手出しができない。」
「あら。ナーガさんvめずらしくまともな意見v」
「私はいつでもまともなことをいっているわよっ!」
ナーガの指摘ににこやかに言うユニットに、なぜかナーガが突っ込んでいるけど。
一応このナーガ。
上に立つものとしての自覚など…というのもは、王宮教育で受けているからねぇ。
いつも、【まともなことをいっている。】というたわごとはともかくとしても。
「ナーガの戯言はおいといて。つまり、このナーガですらすこし考えれば判るんだから。
  あたしが知ってても当たり前でしょ?共和国連合の人々すらも知ってたくらいだし。
  ま、作戦としてはまずまずね。そもそも、国王が指揮している以上。
  王国そのまのから圧力がかかれば、王国特別捜査官(インスペクター)や、
  共和国連合特別捜査官(インスペクター)が動こうとしても限度というか限りがあるし。
  その点、あたし達を【犯人】と相手には思っているように振舞ってさえいれば、
  国王ベルギスの域のかかった人間達も、『的外れな捜査をしている。』とおもって圧力をかけてこないし。
  あたし達が動くことによって、国王のたくらみをつぶす。というのは。
  でも、いくら理由がわかっていたとしてもv
  人をいきなり罪人扱いした報いはきちんと受けてもらうからねv」
にこやかなあたしの言葉に。
「「…むくいって……」」
なぜか異口同音でつぶやくワイザーとライド。
そんな二人に対し、にっこりと。
「あたし達が連盟に参加している国に滞在中の食事代や宿泊費など。
  それら全てあんたたちにうけもってもらうから?」
ずざっ!!
なぜかそんなかなり優しいあたしの提案に血の気をなぜかひかせ、顔色をまともにかえている二人だけど。
そしてまた。
「お〜ほっほっほっ!これで当分、確実に暖かいお布団でねれるのねっ!
  それに食事代にも困らない、というわけねっ!さすがリナっ!」
何やらビールジョッキ片手に高笑いをしているナーガの姿があったりするけど。

結局のところ……
この近辺での食事代などといったモノは彼らもち。
ということで、話はまとまり。
あたし達はのんびりと、この周辺でしばらく過ごすことに。

ちなみに、ベルギスは追っ手が自らの身に及ぶ前に、
近衛兵を数人連れて国外へ逃げていっていたりするけど。
ま、あの人間はあのままほっときますか?
そのほうが、後々楽しめるしね?

ルヴィナガルド王室がらみの今回の一件は全て明るみとなり、王室は解体され
この国は新たな共和国として再出発することになるみたいだけど。
それは別にあたし達にとってはどうでもいいこと。

さってと。
資金源もできたことだし。
しばらくのんびりとして楽しみますか…ねv


         ――理由なき冤罪編・終了――


######################################

あとがきもどき:今回はちと嗜好を変えて・・(こらこら・・・

わ〜わ〜……
何やら外が騒がしい。
一体……
ばたんっ!
「…こ…国王!大変ですっ!」
「何ごとだ!?」
「実は…実は!?」
自らの近衛を勤めているものの言い方も何やら不可解。
そしてまた。
「陛下っ!あれはいったいどういうことなのですかっ!?」
「陛下っ!」
「国王陛下っ!」
何やら次々と、やってくるこのたびの一件を知らしてなかった重臣たち。
一部の重臣は知ってはいたが、基本的に。
何やら人権問題がどうの…とかうるさくいうような人物には関わらせてはなかった。
「何ごとだ!騒々しいぞ!」
凛、として言い放つ、そんな彼の言葉に。
「それはこちらの台詞ですっ!国王ベルギス様。あれはいったいどういう意味なのか…
  きちんとご説明いただけますでしょうか!?」

アレ…というのは。
先刻、人の目にもあらわになったとある施設の内部。
そこには…あからさまに、元が人間であろう…ものたちが異形と化している姿が。
クリスタルケースの中において、国民はおろか兵士達の目にも確認されている。

「何ゆえに、陛下が指定された施設の内部から、あのようなモノが!?
  あんな…あんな、非道…ともまさる、人体実験の証などっ!!」
「……なっ!?」
あの実験は内密に行っていたはず。
実験も地下で行っていたのだから人目につくはずはない。
「実は…陛下。さきほど、正体不明な何かが施設に落下しまして……
  一階部分は消滅…地下施設が人目にさらされております……」
「……なっ!?馬鹿な!?」
一番初めに報告にやってきた人物より…そのことをきき。
驚愕の声をあげるこの国、ルヴィナガルド王国国王ベルギスの姿が。
国王の私室において見受けられていたことは…国民たちの目にもあきらか。
というのも、その光景までもが空に映像…として流れていたりするのだからして。

…知らないのは…当人ばかりなり……


                              ――END?――


#####################################

本当のあとがきもどき?:
薫:はいっ!ようやく「理由なき冤罪」編の打ち込み完了ですっ!
L:・・あたし達が活躍してる部分・・あんたはしょってない?
薫:・・・ぎくっ!!
姫:・・私のシーンもカットされてるし……
薫:・・ぎくぎくぎくっ!
姫:せっかく、いろいろと遊んで…もとい、お灸をすえてたのにv
L:ユニットばっかりずるいわよっ!まあ、あたしも後からちょこっと遊んだけどv
薫:・・・・・異形とかしてたまだ魂がのこってる人とかを元に戻したりとか…
  挙句は実はもう転生してるのに、その人を生き返らせて・・
  転生していた別の存在が消滅したり・・とかが、ちょこっとですか?(滝汗・・・
L:ちょこっとよ。というか、あれはただの遊びじゃくて。気がむいただけv遊びはまた別よ〜♪
姫:そうよねぇ。
薫:・・ふかく考えないようにします(汗
L:とりあえず。ようやくこの番外編を打ち込みしたようだけど…
  先に、この後の一件に関わるとある話を打ち込みしてるのに…
  後からこれじゃ、順番が逆じゃないのv
薫:・・・・あ、あのぉ?ところで?おふたりがその手の後ろにもっているそれ・・はいったい・・
L:あらvプレゼントv
姫:そうそうv遠慮なくうけとってねv薫さんv
薫:いやあのっ!何やらはげしくうけとり・・・・・・・ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!

ぐちゅっ・・・

L:さってと。何かに噛み砕かれて飲み込まれた薫はおいといて。
姫:私たちがあまり活躍してなかったけど、・・次こそは活躍させるようにしっかりと言い聞かせておくからv
L:それじゃ、まったね♪
姫&L:それでは、まったね〜〜♪

(後にはずるずると・・・何かながいものが移動してゆく・・・・)
 

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32294エル様漫遊記・番外編(53)〜復讐の刃編〜かお E-mail URL2006/2/17 21:28:26
記事番号32227へのコメント

まえがき&ぼやき:

こんにちわ。またまたやってきました(こらこら
漫遊番外編ですv
このたびは、セイルーンの二度目に向かう途中。
つまりは、ザナッファーの一件が終わった以降のお話で。
セイルーン領内へと向かう途中のお話となっております。
正確にいうならば、白銀の魔獣編が終わって…しばらくして…からですね。
この後、食べ放題(まて)にいって、それからセイルーンに向かう・・という形です(笑
何はともあれ、いくのですv
こちらは約テキストで64KBとなっております。
リクエストを受けた作品です。
一人は「るー」さん…一人は…不明(すいません…汗)

#####################################

     エル様漫遊記・番外編 〜復讐の刃編〜


自然の調和。
様々な条件が重なった下では自然は様々な形を成してゆく。
それはどの場所においてもいえること。
そう。
それがどのような惑星上であろうとも、その外部においてもまた然り。
「白き世界に煌き集うは光の舞 夜の星星の煌きと 昼間の煌き 二つが手を取り合い……」
「?……あの?リナさん?」
さくさくと銀色に輝く大地を踏みしめつつ進むあたしのつぶやきに、
なぜかついて外に出てきたアメリアが話しかけてくる。
ひとまず無視することにして。
「光の舞は 昼と夜の狭間を照らしたまわん。」
これは一つの実験。
聞かれても問題ないようにポエムのように聞こえはすれども。
「あの〜。リナさん?さっきから何を……」
宿の外にある木の幹に手をあてて、しばし目をつむり、
直接【ある命令】をこの辺りの精霊達にしていると、またまたアメリアたちが問いかけてくる。
とりあえず、命令もどきはし終えたので。
「何よ。アメリア。さっきから。」
そんなあたしの問いかけに。
「何よ。じゃないですよ。朝早くから出て行くからてっきりこの雪の中。
  盗賊でも懲らしめにいくのかとおもって。急いで着替えて出てきたのに。
  さっきから何やってるんですか?」
なぜか多少声を振るわせつつアメリアが聞いてくる。

ラウド公国に続く裏街道。
公国といっても規模は小さく、また山間部に位置していることから余り名も知られていない。
とはいえ、
その国を抜けて裏街道ともいえる道になっていない道を超えれば、セイルーン領内に普通よりも早くつける。
というのでこちら側からセイルーンに向かう人々にとっては、ある意味貢献している。
といっても…この辺りの地理的条件などに加え、さらには地層の含有物など。
それらなどの影響もあり、
さらには多少の標高もあることからほぼ一年のほとんどが雪にと覆われていたりする。
それゆえに、あまり旅人…という人間達などはあまり見えなかったりもするのだが。
あと余談ではあるがこの山を越える道を選べば、セイルーン、カルマート、そしてラルティーグ…と。
三つの国とつながっていたりするのだけども。
つまりは、国境近くの小さな公国…といったところ。
周りの国々の名前でこの国は有名になっていない…という事実もまた然り。

「あら?何って。みてわかるでしょう?ちょっぴり雪景色だし。ポエムを作ってたのよv」
嘘ではないし?
事実はポエムに見せかけた実験だけど♪
そんなあたしの言葉に。
「……ぽ…ポエ……」
なぜか恐ろしいものをみたかのように目を見開き。
そして次の瞬間。
「びぇぇ〜〜〜!!」
いきなり泣き始めていたりするアメリア。
その声をききつけ。
「何だ!?」
「どうしたんだ!?」
なぜかそれぞれ寝巻きのままだ、宿から出てくる二人の姿が。
「何があったんだ?」
青い上下の星柄の寝巻きのの上にマントを羽織ったゼルがそんなことをいいつつも、
なぜかこちらをみてしばし硬直。
「?…何か空気が異様に怯えてるようなきがするんだが……」
きょろきょろと周囲をみて、
何やらそんなことを言っているゼルと同じく宿備え付けの寝巻きを着ているガウリイ。
「びぇぇ〜リナさんがぁぁ!」
未だになぜか泣いているアメリア。
「リナ。おまえアメリアに何かしたのか?」
「アメリアのやつ。ひどく怯えてるぞ?…おまえ何をしたんだ?」
まだ朝も早い。
というので普段身につけているコルセットなども身に着けておらず。
赤い上下の寝巻き代わりにしている服があたしの全身にぴったりとまとわりつき、
スタイルのよさを外部にも知らしめているけど。
そんなあたしに交互に何やらいってくるゼルとガウリイ。
「あら。別に何もしてないわよ。ただ、この雪景色のポエムもどきを作ってたのよv」
嘘でもないしv
「びぇぇ〜〜!!」
そんなあたしの言葉にますます泣き喚くアメリア。
「何…!?ポ…ポエム!?」
「…どうりで空気が怯えてるわけだ…って。ポエムだぁ!?リナがか!?」
何やら二人してそんなことをいってくる。
「あら?あたしがポエムとか作ったらおかしい?
  そういえば以前もそんな反応したやつらがいたわねぇ。」
そんな態度をとった部下たちはそれなりにお仕置きはしたけども♪
「いやまて。ガウリイ。もしかしたらこいつはリナじゃないのかもしれない。
  いくらどう考えてもリナの中にポエムなんてものを作る感性があるとは思えんっ!」
きっぱりと言い切っているゼル。
ほぉ〜……
「いや。リナには違いないぞ?というか。いつものコルセットをつけてない…というはあるにしろ。
 それに何か空気そのものが怯えているような感じだしなぁ〜……」
「びぇぇ〜!!リナさんがぁぁ!!」
「よしよし。怖かったな。かわいそうに。こんなに怯えて。」
口々にすき買ったなことをいっている、ガウリイ・ゼル・アメリアの三人。
ほほぉぉぅ……
「んっふっふっ……あんたたち。いいたいことはそれだけかしら?」
にっこり微笑み。
ぱしっ!!
「「「〜〜〜!!???」」」
小さな音と同時に何やらその場でもがき苦しみ始めている三人の姿がなぜかあるけども。
「しぱらく反省しなさいな?」
空気中に球体を作り出し、その中に三人を閉じ込め、ちょっと水圧なども加えておく。
何やらもがき苦しんでじたばたしてるけど。
ま、この程度じゃ死ぬこともないでしょv
なぜかもがき苦しんでいる三人をそのまに、あたしは一人先に宿にと戻ってゆく。
さってと、そろそろ服を着替えておきますか…ねv
なぜか三人が三人とも、あたしは本物だったの!?
というようなことを今さらながらに思っているけど。
あたしはあたしに決まってるじゃないのよね?
空中に浮かんでいる水の球体を引き立てるかのように風が吹き、
雪が舞い上がりきらきらと煌きながら空中にと舞ってゆく。
とある星では【ダイヤモンド・ダスト】と呼ばれている現象。
これが晴れた日とかにも起こるように、ちょっとした【命令】をしていたのよねv


「「「は〜くしょっんっ!!」」」
「あらあら。三人とも。風邪?」
にっこりとテーブルにすわりながらも何やらカタカタと震えている三人にと話しかける。
なぜか、ゼル・アメリア・ガウリイの三人は仲良く同時にくしゃみをしているしv
「誰のせいだっ!誰のっ!!」
「う〜……死ぬかと思いました……」
なぜか抗議の声を上げてくるゼルにアメリア。
そして。
「いくら何でも雪の中でいきなり水におぼれさせることはないだろ!?しかも何か息苦しかったぞ!?」
何やら文句をいってきているガウリイ。
「あら?水中でもきちんと息くらいはできないと♪」
「水の中で術が唱えられるかっ!」
「う〜…凍えそうですぅ〜……」
ほんのしばらくほうっておいただけなのに、そんなことをいってくるし。
ガウリイがどうにか根性でゴルンノヴァで発動させて、水の壁を切り開き。
彼らは水の球体から出てきているんだけど。
「あら?普通できるわよ?それに、モトを正せば自業自得じゃないv」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
にっこり微笑み、いいきるあたしの言葉になぜか三人とも無言になり。
「でもいくら何でも……」
などとづふやくアメリアに。
「あら?ならギガスレイブとかのほうがよかったかしら?」
ぶんぶんっ!
あたしのナイスな提案になぜか三人とも同時に首を横に振ってるし。
まったく。
あの程度のことで何を文句をいってるのやらv
そんなほのぼのとした会話をしていると。
「…あの?あなた…見たところ魔道士よね?」
同じ宿の一階で食事をとっていたポニーテールをした赤い瞳の女性が話しかけてくる。
鎧はつけていないものの、背中にはとある形式の長剣を。
そして腰には長剣とショートソードを一本づつさしている。
彼女はざっとあたし達を見渡して。
「実はあなたたちに頼みたいことが……」
むろん、彼女がもっている剣はその三本だけではないにしろ。
「?」
ハテナマークを飛ばし、その女性を未だにがちがち震えつつ見つめていっているアメリア。
彼女はざっとあたし達を見渡して。
「実はあなたたちに頼みたいことが……」
などといってくる。
別に引き受けてもいいけど、ここはやっぱりv
「い・やv」
即座に返事を返し。
「追加注文をお願いするわ。トーストサンドセットを追加ね?」
まったく無視して食事を注文する。
そんなあたしの言葉にしばし言葉を失い、そしてもう一度挑戦…とばかりに。
「いえあの…できれば話だけでも……」
「減るからねぇ。だからいや?」
きっぱり再び言い切るあたしの言葉に、驚愕の表情を浮かべ。
「わ…技が深いっ!」
などといってるけど。
というか実はあたし、彼女には以前この姿でないときに一度あったことがあるのよね〜v
当人、そのことに気づいてないようだけどv
あたしも別に言う必要もないので言わないけどね♪
ちなみに彼女の兄とはあたしもガウリイも面識あるし。
「――わかったわ……邪魔したわね。」
自ら敗北を悟り、そのまま二階へともどってゆく。
そんな彼女の後姿を見送りつつ。
「今のって……どういうやりとりだったんですか?」
首をかしげて何やらいっているアメリア。
ひんなアメリアに。
「つまりだな。今リナがただ単に【やだ。】と答えていたとすれば、
  『聞くくらいならいいでしょ。別に減るわけではないし。』
  という反し技をあの女性はいうつもりだったんだが。
  だが先にリナがそこまで読んで答えた…というわけだ。」
「なるほど。ま、リナさんは相手の考えを読むのは朝飯前ですしね。
  でも、リナさん?何かあの人…困っていたようですけど?
  でもどうして話も聞いてあげなかったんですか?」
ゼルの説明をうけて納得し、あたしに聞いてくるアメリア。
「あら。別に今きく必要がないからよ?それに今は食事中だし。」
「そういや。リナ。オレ達どこにむかってるんだっけ?」
「あのな〜。ガウリイ。俺たちは今からライド公国に向かうところだろうが。
  その途中の森が『旅人が抜けられないからどうにか原因を突き止めて元通りにしてくれ。』
  という依頼だったろうが。」
とぼけたことを言うガウリイにゼルがため息をつきつつ説明する。
そんなゼルの説明に。
「そうだっけ?」
きょとん、とするガウリイに対し。
「まあ。ガウリイさんですから仕方ないですけど。でも街道沿いの森に何があったんでしょうか?」
ガウリイに対しては一言ですまし首をかしげているアメリア。
「ま。とにくか。いってくるしかないでしょv」
ここ数年、というか1,2年ばかり森に足を踏み入れた人々が森を抜けることもできず、
そして森の中で迷った挙句に元の場所に戻ってしまった。
という報告は近辺の村々などにも伝わっており。
ゆえに、旅人の姿も遠のいているこの現状。
そんな会話をしつつも、とりあえず朝食をすませてあたし達は問題の森にと足を向けることに。


「…これは……」
「何かここの空気…というか、気配、おかしくないか?」
歪んでいるというか何というか……
ラウド公国に続いているちょっとした森。
小さな丘…というか森を越えた先にラウド公国はあるのだが。
その森に足を踏み入れしばらく進むとゼルとガウリイがそんなことをいっていたりする。
ガウリイにいたっては野生の勘で空間が捻じ曲げられている、
というかねじれている、ということに気がついて的確なことを思い言っていたりするけども。
「たしか。ここの森の道ってそんなに長くはないはずですよね?」
そんなアメリアのつぶやきに。
「そりゃあね?」
くすっ。
いってその辺りの石をふわり、と浮かせ手ににぎり、かるくその辺りにと投げてみる。
と。
どごっ!!
「ってぇぇ!!?」
なぜか背後から出現した、今あたしが投げた石がまともにガウリイの頭に直撃する。
あらあら。
それくらいよけられないと?
「と。まあ、今のでも判るとおり。
  今、この森はどうやら魔法の迷路(マジック・メイス)になっているようだしv」
「なるほど。」
その様子とあたしのこと場にぽん、と手をうち納得しているアメリア。
「…だから、人々がこの森を抜けられなくなっていたのか。案外あの話も嘘とはおもえないな。」
かつてある魔道士がこの森に【写本】を隠し、その影響かこの森は迷いの森となった。
という話がまことしやかに近隣の村などでは言われていたりする。
そういった話もあり、ゼルもまた今回の依頼に同行する形でついてきているのだけど。
今の行動と説明で、しみじみと納得しているアメリアとゼルとは対照的に。
「というかっ!今のは何なんだ!?またリナが何かしたのか!?」
なぜか未だに頭を抑えつつ、何やらいってくるガウリイ。
「あら?あたしは別に何もしてないわよv
  ただ、その辺りの石をかる〜く投げてみただけだしv
  ガウリイの背後に石が出現したのは、この森そのものが空間が歪んでいて。
  さらには幻影の術などともアレンジされて森に入った存在の方向感覚が麻痺されたり。
  また、空間湾曲によって生じた誤差で偶然にもそうなっただけだしv」
そんなにこやかなあたしの説明に。
「リナさん。ガウリイさんにそんな説明をしても無駄でしょう。」
「だな。…それより、どうやら降ってきたぞ?」

今日は降らないだろう。
と宿のオヤジはいっていたが……
そんなことを思いつつも空を見上げてつぶやいているゼル。
昨日まで降っていた雪のため、辺り一面銀世界。
街道沿いを歩いていた…というのにも関わらず、どんどんと森の奥。
つまりは森の奥からつづいている、ちょっとした小山にと踏みいっているあたし達。
浮遊(レビテーション)で空に浮かんでアメリアが確認しようも、先ほどあたしが説明したとおり、
この森の空間はねじれているので上空にすらも浮かび上がれなかったりする。
初めはちらほらと降っていた雪も間をおかず、視界が真っ白になるくらいに降り始めていたりする。

「みたいね〜vあら、視界も悪くなってきたわね。でもこのあたしに一言の断りもなく降り始めるなんて。
  お母さんはそんな子に育てた覚えはないんだけどv」
そんなあたしの言葉に。
「わけのわからん愚痴をこぼすな。リナ。…って……」
ぴたっ。
あたしのつぶやきと同時、なぜか降り始めていた雪がぴたりと止む。
それをみて何やらゼルが言いかけていた言葉を途切れさせていたりするけど。
「…世の中ってすごい偶然がありますよね。」
雪が止んだのをうけて、そんなことをいっているアメリアに。
「「……本当に偶然か?」」
空を見上げて何やら同時につぶやいているゼルとガウリイ。
「あら?偶然って怖いわねぇ。とりあえず、今のうちにどこか雪をしのげる場所にいきましょ♪
  ちょうどこの先に何か建物らしきものがあるみたいだし。」
あたしの言葉に。
「お〜、本当だ。何かあるな。いってみようぜ。」
手を額にあてて、その姿を認めていっているガウリイ。
そんなあたし達の台詞に。
「「…どこに?そんなものが?」」
なぜか二人して顔を見合わせて首をかしげているゼルとアメリアの姿があったりする。
くすっ。
「ともかく。いってみましょ♪」
そんな彼らと共にひとまず、この先にとあるとある建物へとむかってゆく。
だってこのほうが楽しめるし…ね♪


「…本当にありましたね。リナさんやガウリイさんが言うとおり……」
「だな。リナやガウリイにかかると、普通の常識が通用しないな。…どうやら城塞のようだが……」
目の前にでん、と建つ建物をみて、しみじみとそんな会話をしているアメリアとゼル。
百年ばかり前にと建てられた城塞。
しかし、一部を除いて壊れている様子はまったくない。
「…なあ?リナ?これって……」
その壊れている一部、というのが入り口の扉。
何やらすっぱりと切り刻まれており、建物の中が外からも見てとれる。
入り口の扉の様子と、建物の中をみて何やら言いかけてくるガウリイ。
「……これは……」
「……何かすごい殺伐とした風景だなぁ〜……」
ガウリイの言葉に、ひょい、と壊れた入り口から中を覗きこみ、
そこにある光景をみて何やらいっているアメリアとゼル。
足元に倒れている切り刻まれた跡がくっきりと判る樫の扉。
その先に死屍累々と横たわる食人鬼(グール)や生きた死体(ゾンビ)、そして骸骨戦士(スケルトン)。
「…誰かが殴りこみでもしたんでしょうか?」
「…生きた死体(ゾンビ)はともかく……骸骨戦士(スケルトン)や食人鬼(グール)まで……」
その光景をみて何やらつぶやいているアメリアとゼルに対し。
「でもこれらって元々死体だろ?」
「ええぇ〜!?ガウリイさんがまともなことをいってますっ!」
「だからか。雪がまた降り始めたのは。」
ガウリイの言葉に交互に言っている二人の姿。
「あ…あのな…おまえら……」
ガウリイが言いかけると同時。
ギィィ…ンッ……
建物の奥のほうから風にのり、刃の音が聞こえてくる。
「あら?誰かいるみたいね。いってみましょvまた雪が降り始めたことでもあるし♪」
先ほどまで一時止んでいた雪は再び降り出し、
風とともに、一般に吹雪と呼ばれる状態に空模様はなりかけている。
すでにあたし達が歩いてきた元の道の姿も、アメリアたちの目には見えなくなっていたりするのだが。
周囲の天候がどうなろうと、また何が起こっても、普通の元の姿って視えるものなのに…ねv
「それもそ〜ですね。」
「だな。」
「…って、おまえら……」
ガウリイをあっさり無視し、
あたしの言葉に同意するアメリアとゼルの言葉に、ガウリイが抗議の声を上げているけど。
とりあえずそんなガウリイはほっといて、あたし達はそのまま音の聞こえてくる方向にと進んでゆく。

奥に進んでゆくことしばし。
風にのって聞こえてきていた刃の音がだんだんとはっきりとし始める。
そして。
とある部屋の前の廊下にと出たとき、目に飛び込んでくる光景が一つ。
どうやらそろそろクライマックス…といっても過言でないのかもしれないけど。
「……あれ?あの人……」
「さっきの子だな。」
あたし達の視線の先には、ロングソードでどうみても、【鎧】と対峙している女性が一人。
その女性の姿をみて、アメリアとゼルが同時にいっているけど。

「くうっ!」
かきぃぃっ!
鎧の…つまりは、動く鎧(リビング・メイル)対峙しつつ、
それの放った一撃をかろうじて頭上で受け止めるものの。
一応腐っても相手は動く鎧(リビング・メイル)。
パワーは彼女よりも上なのでたまらず彼女はそのばに膝をつく。
続いて動く鎧(リビング・メイル)の放った蹴りが彼女の胸板を叩き、
「くっ!!」
息をつまらせ、それと共に体勢を崩していたりする。

「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」
ざむっ!
一瞬あきれてみていたものの、見かねたゼルが呪文を唱え解き放つ。
動く鎧(リビング・メイル)は彼女にまさに突きを繰り出そうとしていたところ。
その状態でまともにゼルの放った光の槍に貫かれ、しばし一瞬硬直したのち。
カラ…ン……
硬い静かな音をたて、
動く鎧(リビング・メイル)であったそれは、むなしく鎧ごと床にころがり崩れてゆく。
鎧にその辺りにいる低級霊などを憑依させて作り出す【動く鎧(リビング・メイル)】は、
一応、一般的には人間達の間などでは番兵などによく使われていたりする。
最も、その辺りの木の枝などでつついてもあさりと消滅するようなものが憑依している。
という場合がほとんどだけど。
「…やっぱり中はがらんどう…ですね。」
崩れた鎧をみてつぶやいているアメリア。
そして。
「大丈夫ですか?やっぱり、あなたは今朝の……」
未だに荒い息をついて起き上がろうとしている女性のほうにと声をかけていたりする。
そこでようやくあたし達にと気づき。
「…あっ!あんたたち!?…どうして!?」
面白いまでに驚いてざっとあたし達を見渡していたりする彼女だけど。
「あら?あたしたちはこの森に用があってね?」
にっこりと微笑み、返事を返すあたしの声に。
「…道に迷った…とかではなくて?」
眉をすこし顰めていってくるけど。
ともあれ、剣を鞘にとおさめつつ。
「ともかく。とりあえず助かったわ。ありがとう。
  どうもあの動く鎧(リビング・メイル)って奴、苦手なのよねぇ。」
などといってくる。
そんな彼女の台詞に。
「あれを普通の武器だけで倒すには延々とかなり根性をいれてどつかないといけないしな。」
「正義の心があれば問題ないですっ!」
つぶやくようにいうゼルに、きっぱりと言い切っているアメリア。
そんな二人の言葉は何のその。
「何しろ下手に斬りかかれば刃こぼれするし。いくら斬っても血もしぶかないし……
  それにのたうちまわって苦しんだりもしないから、何かこう…張り合いがないのよね。
  やっぱり、こうごりっとした感触がないと…ごりっとした……」
などといってるし。
そんな彼女の言葉に。
「…何かずいぶんと殺伐としてますね。」
ぼそり、と横にいるゼルに言っているアメリア。
「…な〜んかどこかであったような気配なんだけどなぁ?」
などとつぶやき、首をかしげているガウリイ。
くすっ。
「あら?ガウリイにしては珍しく覚えてたわねv彼女、レミーっていって。
  ほら。あのアトラス・シティでのロッドの妹よv」
彼女のことは、あのときちょっぴりガウリイには説明してるし。
「…って、貴方たち、兄さんをしってるの!?…って、私…名乗ったかしら?」
ふとあたしが名前を言ったことに関して首をかしげているけども。
「ちょっとまて。リナ。ロッド…というのは、もしやあの。あの【人斬りロッド】か!?」
裏の内情にも多少は通じているのでゼルが思い出し、何やらあたしに聞いてくるけど。
「そvそのロッドよvアトラス・シティでちょっと知り合ってねvで、彼女がその妹v」
「…人斬りって……。それはともかくとして。ええと…レミーさん…でしたっけ?
  こんなところで何をしてるんですか?」
あたしやゼルの会話にぽそり、とつぶやきつつも、気を取り直し、
そこにいる彼女――【レミー】にと話しかけているアメリア。
「そういえば、そうだな。
  この森は何らかの力で魔法の迷路(マジック・メイス)になっているのにわざわざ……」
アメリアの言葉に腕を組み、そうつぶやくゼルの言葉に。
「それはケルンの仕業よ。ここの魔道士。……私の父さんの仇なのよ。」
「「?ケルン?仇??」」
レミーの言葉に、思わず顔を見合わせているゼルとアメリア。
…思い込みって本当、面白いわv
とりあえず。
「仇…って、まさかよったおまえの父親が通りすがりの魔道士をどついたのが原因とか?」
「どこの世界にそんな話があるのよ?」
思わず確認のために目を点にして問いかけるゼルの言葉に、一瞬呆気にとられ言い返してくるけど。
実はいるのよねぇ〜。
そういう人間も♪
彼女ではないにしろ。
アメリアもゼルもあの一件には関わってるし。
まあ、それはそれとして。
「私たちの父は魔道士だったのよ……」
いって、聞いてもいないのにうってかわって遠くをみつつぽつり、ぽつりと話し出し。
「今からおよそ一年ばかり前。魔族の研究をしていた父さんが、
  知り合いのケルンという魔道士に殺され。ケルンは父さんの研究を奪ったわ。
  そして逃げたの。私はそれからずっとケルンの行方を追って……
  そして…やっとこの森にケルンがいることを突き止めたのよ。
  兄さんに連絡しようにもどこにいるかわからないし…
  ……何よりもこの私が留守中にケルンは父さんを殺したのよ。
  この仇は絶対に私の手でっ!!」
いってぎゅっと剣を握り締める。
そんなレミーの言葉をうけ。
「なるほど。…だからリナ。…つまりは、あのとき俺たちの声をかけたのか。
  相手はプロの魔道士だしな。」
「でもこれで判りました!何て悪党なんでしょうっ!
  この森に変な術わかけているのも、そのケルンという輩の仕業ですねっ!
  自らの身を守るためっ!わかりました!レミーさんっ!
  そういうことなら喜んで協力させていただきますっ!
  あ、私アメリアっていいます。さあ!その悪の権化、魔道士ケルンを退治しにいきましょうっ!」
ゼルの言葉をさえぎるように一人、拳を握り締め、びっと天井部分にある天窓のほうを指差して、
そして高らかに言い切るアメリア。
「確かに。…その魔道士がこの森を迷いの森にしているのならほっとけないな…それに……」
そんな力をもっている、となればアレをもっているのかもしれないし。
などと思いつつ言っているゼル。
「とりあえずvあたし達の目的はこの森の異変を突き止めて元の森にすることだしv
  ついでだから協力するわv」
「……何かまたやっかいなことに巻き込まれたような気がするなぁ〜……」
あたしの横で何やらぽそり、とつぶやいているガウリイ。
あら、別にそんなことはないのにね?
そんなあたしの言葉に。
「貴方たち、この森の異変を調べに来たの?今朝は話も聞いてくれなかったのに……
  ともかく、そういうことなら理由はともあれ、目的は同じね。
  こちらからもお願いするわ。えっと……」
いってざっともう一度あたし達を見渡してくるレミーに対し。
「あたしはリナよ。でもってこっちがガウリイ。で、ゼルガディスにアメリアよ。」
そんなあたしの簡単な説明に。
「なるほど。ちょっとかわった柄のバスターソードをもっているのがガウリイさんで。
 ゼフィーリア製のショートソードをもっているのがリナさん。
  そしてエルメキア製のロングソードをもっているのがゼルガディスさんで。
  そして何ももっていないのがアメリアさんね。」
そんなレミーの言葉に。
「何かかわった見分け方をする人ですね……」
何やら目を点にしてつぶやいているアメリア。
「私はレミー。でもって、それでこの子が……」
いって腰にさしていたロングソードをちゃっきっと抜き放ち、前にと突き出して。
「私の愛剣ジャック君。ライゼールの産まれよ。
  で、こっちの腰のショートソードはディルス王国製のリパー君。刃のラインがかわいいのよ?
  でね。背中の異国風のがカルマ君。綺麗なラインしてるでしょ?それからねぇ〜……」
懐から、袖から背負い袋から。
大小合計三十本近い刃物を引っ張り出し、うきうきとウレシそうに製造場所と名前を紹介してくる。

「こ…この人って……」
「どうやら……刃物マニア…らしいな……」
その様子をみて、目をパチクリさせてつぶやくアメリアに、ため息をつきつつも何やら言っているゼル。
そして。
「……そういや…リナが前にそんなことをいっていたような気も……」
額に一筋汗をながし、ぽつり、といっているガウリイ。

「このカルマ君あたりで、父さんを殺したあの魔道士をざくうっとやるのを想像しただけで…
  うふふふふ……」
いって、ペロリ、と刃を舐めるレミーをみて。
「…な…何かもしかして私たち…危ない人と知り合ったんじゃあ……」
「というか。そんなに剣があっても普通つかわんだろうに。」
「失礼ねっ!私は全部使ってるわよっ!」
じと汗を流しつつつぶやくアメリアに、ため息交じりに言っているゼル。
そしてそんなゼルの言葉にすかさず抗議しているレミー。
「それもどうかと……。あ、そういえば剣といえばガウリイさんもかわった剣をもっていますよ。」
とりあえず、話題を変えようとガウリイにいきなり話を振っているアメリア。
あまりレミーさんについては突っ込みをしていったら何ですし…
などと思っているみたいだけど。
別に気にすることでもないでしょうにねv
「まあよのなかにはいろんな人がいるしv」
にっこりと微笑みガウリイにと視線をむけ。
「せっかくだし、ガウリイ。見せてあげたら?その烈光の剣(ゴルンノヴァ)♪」
「だから…これは光の剣だって……。それにおいそれと意味もなく……」
あたしの言葉に何やら剣の柄に手をかけて言ってくるガウリイだけど。
「あら。いいじゃない。別にvそれともあたしが発動させてあげましょうか?」
にっこり微笑むあたしの言葉に、
「…リナが使った後ってこいつ何かかなり威力が落ちるから遠慮しとく……ま、まあすこしなら……」
なぜかあたしが手にしただけで、ゴルンノヴァのやつは弱体化するのよねぇ……
まったくもって情けないったら。
そんなことを言っている最中。
今のあたしの言葉になぜかびくりっ!と精神体そのものを震わせているゴルンノヴァ……
ああもうっ!
本当に情けないわよっ!
後でみっちりとお灸をすえておきますか…ね♪
何やらガウリイはそんなことを言いつつも、なぜか人間達は【光の剣】と呼んでいるそれ。
つまりはゴルンノヴァを手に取り、
「光よっ!」
ヴッン……
ガウリイの掛け声とともに、光の刃が出現する。
だがしかし、それをみて指を顔の横に持っていき左右に振りつつ。
「ダメよ。そんなの剣じゃないわ。剣っていうのはやっぱり頬ずりしたときひんやりとしてて。
  そして舐めたら鉄の味がして…鉄の味って血の味に似てるのよね。
  そしてこう物を斬ったときにこう、ごりっ!とした手ごたえを感じるものじゃないと。
  それが剣ってものよ。うふ…うふふふふっ……」
ガウリイの光の刃をみつつ、【ロングソードのジャック君】をペロリ、と舐めてそんなことを言っているレミー。
そんなレミーの様子をみて。
「…この姉ちゃん…かなり度を越してるぞ……」
「…一線を越えちゃってますね……」
すこし後ずさりし、ぽそぽそと二人して話しているゼルとアメリア。
レミーはレミーで剣を舐めつつうっとりし、瞳の色まで変わってるし。
ま、レミーだしねぇ。
「…どうも近寄りがたいな。…コレクションの域を超えてるぞ……」
「危ない趣味ですよね……」
そんな二人の会話には耳にもくれず、未だにうふうふいいつつ剣を舐めているレミーの姿。
このレミーっていわゆる【刃物マニア】なのよねぇv
ちなみにただ集めている、といったコレクション集…というだけでなく。
集めた全てを実際に使ってその感触を楽しむタイプだし。
兄のロッドも似たようなもので、彼は人斬りマニアだしねぇv
「……何かとんでもない姉ちゃんだな……」
そんなレミーをみつつ、剣を鞘に収めてつぶやいているガウリイ。
それはそれとして。
「それはそうと。さってと。挨拶はこれくらいにして。先にいきましょv」
「「「…今の、挨拶といえ(るのか)(るんですか)?」」」
あたしの言葉に何やら同時に言ってくるゼル・アメリア・ガウリイ達。
「いえるわよvさ、いきましょv」
「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
一言のうちにと済まし、とりあえず廊下の奥にと足を向けてゆくあたしに続き。
「とりあえず、深く考えないことにして。そうですねっ!
  悪の魔道士ケルンとやらに正義の鉄槌を下さねばっ!!」
一人そんなことをいいつつ、レミーのことは深く考えないようにし、その矛先を別にと向けているアメリア。
「…ま、まあ確かに。そのケルンってヤツをどうにかしないことには…な。」
「ようわからんが。つまりはこの姉ちゃんの仇討ちを手伝うってことか?
  何かまたやっかいなことに巻き込まれたような気がするなぁ〜。」
何やらそんなことを言っているゼルとガウリイはひとまず無視し、あたし達は廊下の先にと進んでゆく。

しばらく進んでゆくとちょっとした広い部屋にとたどり着く。
その部屋からはうくつかの道が伸びていたりする。
そして、部屋の中央には――
「って!?ゴーレム?!」
「こういう場所の定番…だな。」
「そうね?」
でんっ!
と石像に擬態しているゴーレムが中央に一体。
「ここは私に任せてっ!」
いうなりダッシュをかけ、
「ジャック君〜!!」
ざっんっ!
動き出した人間の大人の二、三倍ほどの大きさの白いゴーレムを一撃の下に倒しているレミー。

それをみて。
「ほう。ただの刃物マニア、というだけでなく腕もいいな。」
「いやあの…それより……」
その剣捌きをみて、感心した声を上げているゼルに。
そしてまた、レミーの行動に気づいて目を点にしてつぶやいているガウリイ。
視線の先では。

「次っ!カルマ君っ!でもってリパー君っ!でもって!!」
等といいつつ、もっている全ての剣でゴーレムをざくざくと切り刻んでいるレミーの姿が。

「…ほ…本当に全部使ってますね……」
「何だかなぁ〜……」
そんなレミーをみて目を点にしてつぶやいているアメリアに、
ぽりぽりと額をかきつつつぶやいているガウリイ。
やがて、全ての剣においてゴーレムを粉砕し、それぞれの剣をしまいつつ。

「何かこう…斬り応えがないわねぇ。ゴーレムって。
  ゴリッとした感触もないし。どばっと血も出ないし……」
などとぶつぶつレミーは言っていたりするけど。
そんなレミーの様子等をみつつ。
「…やっぱり危ない人ですぅ〜……」
「と…とにかく、先に進もう。」
半ば泣きべそをかいているアメリアに、みなかったことにして気にしないことにしていっているゼル。
「そうね。」
一言のうちに賛同し、そして今いる部屋から外に面している扉にと向かいすたすたと歩き出す。
そんなあたしに。
「?リナ?どこにいくんだ?」
首をかしげて問いかけてくるガウリイ。
くすっ。
「こういうタイプの城塞はね。侵入者対策に大回りするように建設されているのよ。」
「そういうことだな。だが、確か住んでいるもののために、いろいろなちょっとした……
  つまりは、見た目わかりにくい近道があったりするはずだが……」
あたしに続き言ってくるゼル。
「そういうこと?ここからだと中庭辺りかしら?」
そんなあたしの言葉に。
「あ。本当です。何か人がよく通った跡のようなものがのこってますっ!
  さあ!悪の魔道士ケルンっ!今こそ正義の鉄槌をっ!」
「あ。アメリア、ちょっとまてっ!」
窓から外をみてそのまま駆け出してゆくアメリアを、ふとあることに気づいて止めているゼルに。
「…って、うわぁ〜!!?」
何か変だなぁ〜?
と思いつつ、同じく中庭に出たガウリイが何やら叫び声を上げてるけど。
「…って、何?!」
アメリアとガウリイに続き、中庭に出ようとしたレミーが思わず足をとめ、
「あ、そうそうv言い忘れてたけどvここの中庭に生えている植物って。み〜んな食虫植物だからv」
「ってことは早くいぇぇ〜!!」
「んきゃぁぁ〜!?」
なぜか必死で絡まってくる蔦をなぎ払っているガウリイに。
ちょっとした大きさのうつぼかずらに飲み込まれそうになりかけ、何やら叫んでいるアメリア。
「…そういうことは先にいっといてやれ……」
横でゼルが何やらいってくるけど。
「あら?ゼルだって何もいわなかったじゃない。」
そんなあたし達の視線の先では、
「どうでもいいが!何とかなんないのか!?これっ!?」
ざわざわとよってくる蔦を必死で裁いているガウリイに、
「やっ!」
ごめっ!
ボゴッ…
溶解液の中に入れられかけるが、術を唱えて浮き上がり、
蓋がすでに閉じられた状態になっているので仕方なく、自らの横を拳で叩き破ってそこから出ているアメリア。
そして。
「氷の矢(フリーズアロー)!!」
こっきぃんっ!
ぴしっ!
アメリアの言葉と同時、氷の矢が降り注ぎ、一角の植物たちを氷付けにする。
「ビクトリ〜!!」
凍った植物の中心でそんなことを言っているアメリアに。
「…凍った植物って…すこしは斬り応えあるかしら?」
などといっているレミー。
「…お〜い?…ガウリイのやつまで氷付けになってるぞ?」
なぜか蔦もどきを裁くのに必死で氷をよけられなかったガウリイは、
そのまま植物と一緒に氷付けになっていたりするけども。
「まだまだね。ガウリイも♪」
くすくす。
そんなあたしの至極最もな意見に、
「…そういう問題か?」
などとあたしをじと目でみて突っ込みを入れてくるゼル。

とりあえずそのまま、中庭の先にとある木のうろの中に作られている隠し通路より、
あたし達は先にむけて進んでゆく。
ガウリイはなぜかくしゃみを連発しているけど、ま、関係ないしv


「ここですねっ!」
「ケルンっ!とうとう追い詰めたわよっ!」
バタンっ!
進んでゆくことしばし。
城塞の一番最上階にとある一つの扉の前にたどり着くあたし達。
何やら勢い込んでアメリアとレミーが扉を開け放っているけども。
そこはちょっとした書斎となっており、その先にある机の上にも様々な書類や書物が山となっていたりする。
そしてそんな中にいるのは一人の老魔道士。
「悪の魔道士ケルンっ!観念なさいっ!」
扉を開け放つと同時に言い放つアメリア。
だがしかし。
「…というか…どうみたってただのお年寄りだぞ?」
「人を殺してまで研究を奪うような爺さんにはみえないな。」
ぼそぼそとそんなことを言っているガウリイとゼル。
くすくす。
「そりゃあね。だってあれケルンじゃないしv」
さらり、といったあたしの言葉に。
「…ってこらまて。リナ。」
なぜか頭を抱えて言ってくるゼルに。
「…レミーさん?」
戸惑いつつもレミーをみつつ問いかけているアメリア。
目の前にいるのは、白い髭に白い髪。
一見よぼよぼとしている老人。
「いや、というか、この爺さん、人じゃあないし。」
あたしに続き、さらり、とこれまたいうガウリイの言葉に。
「「・・・・・・・・・・・」」
なぜか一瞬黙り込むアメリアとゼル。
一方で。
「…ん?何じゃ?おまえたちは?」
そんなあたし達に気づいてこちらを見てくるその男性。
そんな彼に対し。
「すいません。家を間違えました。」
いってペコリ、と頭を下げて謝っているレミーだけど。
ちなみに、この男性。
人間の年齢で示すならば二百三十一歳。
ちなみに一応エルフ?
見た目の年齢は六十そこそこだけど。
「ちなみに、彼はエルフのレグレスよ?」
ガウリイは気配でエルフって見抜いていたようだけど♪
「「…って!?エルフ!?」」
あたしの説明に、なぜか同時に叫んでいるアメリアとゼル。
「?どこかでお会いしましたかの?いやはや…歳をとるともの覚えが悪くて……」
あたし達をみつつも、首をかしげそんなことをいってくるエルフのレグレス。
一応この建物に住んでいる張本人。
「ま、最近はエルフの間でも若ボケが流行っているらしいし。」
「…レミーさん?じゃあ、この人はケルンじゃないんですね?」
さらり、と流すあたしの前でレミーに確認しているアメリア。
「ええ。違うわ。…まったく、こんな紛らわしいところに住んでいるなんて…斬るわよ……」
ぽそり、と最後のほうはつぶやくように言っているレミー。
「?何事かのぉ?一体?」
一人、事情が理解できずに首をかしげているレグレスだし。
「…ちょっとまて。というか…この爺さん…エルフ…といったが本当か?
  というか、エルフがこんなところで何をしている?」
こめかみに手をあてて、何やら確認をこめて問いかけてくるそんなゼルに対し。
「うん?お若いの。わしがここにいるのは研究のためじゃよ。植物の品種改良の…な。」
いって。
「時に。おまえさんがた、何しにここへ?人間なぞついぞ久しいが……?」
などとかわりに聞いてくるレグレス。
そんな彼の問いかけに。
「あ。すいません。実は私たちこのレミーさんのお父さんを殺害した悪の魔道士を探しているんです。
  どうもこの近くにいる…ということらしいんですけど。
  ここに住んでいるのでしたら何か心当たりはありませんか?」
ぺこり、とひとまず頭を下げて、それでいて説明をしているアメリア。
そんなアメリアの言葉に、しばし考え。
「その人間かどうかは知らんが…確かにこの森にすこし前から人間が住み着いているらしいが。
  そやつ、面倒なことに、ときどきレッサーデーモンなどを呼び出して。
  このわしのところから食料を奪ってゆくのでな。もしかしたらそやつのことではないのか?」
…自分が動くのが面倒だからって…レッサーデーモンなどを呼び出して…
召喚したそれらに食料…とってこさせてるのよね…あいつは……
「「…レッサーデーモンが食料を奪うって……」」
思わず同時に何やらつぶやいているガウリイとゼル。
「きっとその人間がケルンだわっ!」
一人確信をこめて叫ぶレミーに。
「すいません。その人の住んでいる場所ってわかります?」
問いかけているアメリア。
そんなアメリアたちの問いかけに。
「ちょっとまっておれ。地図をかいてやろう。」
いってざっと簡単な地図を書いてアメリアにと渡しているレグレス。
「そうとわかればっ!まっていなさいよっ!ケルンっ!」
一人何やら叫んでいるレミー。
とりあえず、ゼルはそこの書物が気になるらしく手に取ってみていたりするものの、
書物に書かれている文字は全て古代文字や古代エルフ文字…とここでは呼ばれているもの。
このレグレス。
ここで寒さや熱さ、そして病気にも強い植物の研究をしているからねぇ。
ここ百年くらい♪

ともあれ、あたし達はレグレスから地図を受け取り、その場所を後にしてゆく――


「……完全に迷いましたね。」
「……というかこの地図って……」
先刻、レグレスから受け取った地図は目安として様々な植物の名前が記されており、
例えば、【○○から○○が生えている方向へ。】といったような説明書きがなされている。
ちなみに、森の中の道…などといったものは知るさていない。
「大丈夫よ。気にしなくても。そりあえず一度休憩しましょ。」
「それもそうですね。」
「だな。」
そんな会話をしつつも、ひとまず一時ほど休むことに。

パチパチ…
むぐぐぐ…
何やら火の爆ぜる音とともに、聞こえてくるくぐもった声がしてくるけど。
とりあえず無視。
「…しかし…おいリナ……」
「でも、リナさん。それ便利ですよね。いろいろと収納できて。」
とある方向をみつつ、つぶやいてくるゼルに、しみじみといってくるアメリア。
とりあえず、休憩がてら食事でもとろう、ということで。
次元式収納スペースを利用している袋より料理危惧などを取り出して、
シチューを作り食べているあたし達。
「でもああいうのをみていたら斬りたくなるんだけど…ちょっと斬ったらダメかしら?」
『ん〜!!!』
バタン、バタン。
レミーの声に何やらもだえている簀巻き状の物体が一つ。
「というか、何でガウリイをああやってつるしてるんだ?」
つう…と額に一筋の汗を流しつつ、あたしに聞いてくるゼルだけど。
「あら?人間極限状況に陥ったら更に野生の本能って研ぎ澄まされるものよv
  それとも何?精神世界面(アストラルサイド)から移動してケルンのところにいってみる?
  あたしは迷うことはないけど。いっとくけど迷っても手助けはしないわよv」
「――……ま、まあ何だ。たしかにガウリイのヤツの勘で移動するのがベストだな。」
「この森そのものに変な空間干渉が起こっている以上、下手にリナさんがよく使う、
  例の瞬間移動とか空間移動でもしたりしたら…それこそどうなるかわかりませんしね。」
そんなあたしの言葉に、何やらそんなことをいってくるゼルとアメリア。
「それはそうと。レミー。
  刃を舐めつつ木に吊るしているガウリイをみてるけど。別に斬りかかってもいいわよv」
「…って、リナさん、それはあまりにガウリイさんが気の毒なんじゃあ……」
「あら?いい敏捷性の訓練になるじゃないv」
「……死ぬなよ。」
にっこりとアメリアの言葉をうけ、即答するあたしをみつつ、
ゼルがガウリイのほうをみて何やらぽそり…といってるけど。
『〜〜〜!!??』
ちょっとまてぇ〜〜!!??
グルグルに蔦や縄で縛られ、その辺りにと生えている木の枝に、
蓑虫よろしくぶら下がっているガウリイが抗議の声を出そうとして呻いているけど。
ちなみにしっかりと布で口元を押さえているせいか、なぜか声を出すことが出来なくなっているガウリイ。
あの程度のことで…ねぇ?
「ふっふっふっ。なら遠慮なくv」
『〜〜〜〜〜!!!!!』
ペロリ、と刃を舐めてそしてガウリイに向かっていっているレミー。
そんなレミーをみつつも、
なぜか木にくくりつけられた状態でバタバタと必死にもがき逃げようとしているガウリイの姿。
そんなほのぼのとした光景がこの場において見受けられていたりするけど。
くすくすくす。
レミーが繰り出した一撃を必死になってもがいて交わしているガウリイ。
「ほらほら♪ガウリイ、きちんとよけないと危ないわよv」
「ちょっと!暴れたら斬れないじゃないのよっ!」
のどかに食事をしているそんな中。
なぜかレミーが刃を振るう音が辺りに響きわたり。
そしてまた、反動をつけては必死にその刃を交わしてゆくガウリイの姿がしばし見受けられていたりする。
ま、ガウリイにとっては、いい訓練もどきにはなるでしょうv


「そういえばレミーさん。ケルンって悪の魔道士は、
  レミーさんのお父さんの研究を盗んだ。とのことですけど…いったいどんな研究なんですか?」
なぜかしばらくの間抗議してきたものの、
『あれくらいどうってことなていでしょv』
というそんなあたしの一言に黙り込み、そしてまた、
『ケルンの住処に着いたら何か食べてもいいし、それにすこし休んでもいいからv』
とガウリイに言ったところ、
しぶしぶながらその本能のままに、ケルンの住みかがある方向に向けて進みだしているガウリイ。
「結局斬れなかった……、斬りたかったのにぃぃ!!」
吊るされていたガウリイ相手に一太刀も浴びせられずにぶつぶつつぶやいているレミー。
そして叫ぶと同時に辺りにある木を先ほどから手当たり次第に切り倒していたりする。
そんなレミーを見かねて話題を変えようと話しかけているアメリア。
「自然は大切だってばv」
ある程度レミーが木々を切り倒したのをうけて、にっこりと微笑みながら指を鳴らし、
瞬時に切り倒された木々を再生していっているけど。
「レミーさん?」
それをみて一瞬目を丸くしているレミーにと再度問いかけているアメリア。
「…え?…ええ……。父が研究していたのは主に召喚術に関してなの。
  その中でも一度召喚したレッサーデーモン等の中に更にへへツの魔族を憑依させて力を強化する。
  というのもあったんですけど……」
「元々レッサーデーモンとかって呼ばれているヤツラは自力で具現化すら出来ない、
  下っ端以外の何ものでもない力ないヤツラだからねぇ。確かにそれは可能ねv」
「…まあ、それはそうだろうが……しかし、それはやっかいだな……」
「大丈夫ですよ。ゼルガディスさんっ!正義は常に私たちの味方ですっ!」
そんなゼルのつぶやきにきっぱりと言い切るアメリア。
「…まあ、正義うんぬん…というのはともかくとして…しかし…雪…どんどん酷くなってないか?」
ぽつり、とつぶやき空を見上げているゼル。
空より降り注ぐ雪は視界を白く染め上げ、すでに雪も多少積もっている。
先をゆくガウリイが行きをかきわけて道を作りつつ、
そんなガウリイがかきわけた雪の中の道の後ろをあたし達は歩いていっているのだけど。
「ま、気にしても始まらないってv」
そんな声を聞きながら、あっさりかわし雪を掻き分けすすんでゆくことしばし。
やがて。
雪の降りしきる中。
「…なあ。何かみえてきたぞ?」
ぐぎゅるぅぅぅ〜〜……
お腹を盛大にならしつつ、ガウリイがそんなことをいってくる。
「あら。さすがガウリイ?ガウリイの食欲は侮れないわねv」
ガウリイが指摘するとおり、視界の先にと見えているのはちっょとした何かの建物の影。
その姿を捉え。
「……食い意地と天性の野生の勘がプラスされ…こうも早く見つけるとは…な……」
「まあ、ガウリイさんですしっ!ともかくっ!今度こそ悪人退治ができるのですねっ!」
「ふふ…ケルン。まってなさいよ。スパーと斬ってあげるから。うふふふふ……」
視界の先にある建物の影を認め、口々にそんなことを言っているゼル・アメリア、そしてレミー。
人間、極限状況に追い込まれたら面白い能力を発揮する。
…というこのガウリイのはいい例ね?
「リナっ!ついたら本当に何か食べ物もらえるんだろうなっ!」
ガウリイからしてみれば、気になるのはその一点のみらしく、あたしに確認をしてくるけど。
「塔に行けば食料くらいはあるってばv」

そんな会話をしつつも、あたし達は見えている建物の影のほうに向けて進んでゆく。



木々と、そして真っ白な雪景色の中にぽつん…とそびえている黒い塔。
「ここよっ!間違いないわっ!ケルンのいる塔よっ!」
いって、ぎゅっと腰にさしている剣に手をかけているレミーに対し。
「本当に間違いないのか?」
先刻のこともあるし…な…
などと思いつつ念を押して確認を入れているゼル。
「とりあえずv入ってみれば判るわよv」
にっこりいって塔の入り口である扉の前に立つ。
そんなあたしより先に一歩前に踏み出て。
「ケルーンっ!」
ざっんっ!!
叫びとともに、木製の扉を叩ききっているレミー。
その扉のすこし先に今度は別の金属製の扉が。
暖房対策用に幾重かになっていたりするのだけど。
「あら、そんなことしなくてもいいのに♪」
言って軽く手を突き出して指を鳴らすと同時。
ギ〜ィ……
バタン。
いともあっさりと扉の全てが開いてゆく。
「…リナさんの手にかかったら身も蓋もないですね。」
「だな。」
その光景をみて何やら二人してつぶやいているアメリアとゼルだし。
どういう意味かしらねぇ〜v
「とにかく入ろうぜ。」
そのまますたすたと何も考えずに塔の中にと入っていっているガウリイ。
どうも空腹と寒さとで早く中に入りたい…というのもあるようだけど。
別にこのくらいの気温、寒くも何ともないでしょうにね♪
雪が積もっているという程度で気温はとある世界で示すところの氷点下一度くらいだしv

「明かり(ライティング)。」
中の薄暗さを見てとりゼルが呪文を放ち、天井部分に光球を打ち出し、
それと共に部屋の中が明るく照らし出される。
塔の中の一階部分のロビーにあたる部分。
そして正面の置くに上にと続く階段がらせん状にと見てとれる。
そしてその階段の入り口付近に立ちふさがるように建っている二体の石像と、
そして動く鎧(リビングメイル)。
ちなみに近づいたものに攻撃を…という命令を受けているそれらだけど。
「…いかにも、っていう感じの配置ですね。」
「みえみえのトラップだな。」
それをみてしばしそんなことを言っているアメリアとゼル。
一方で。
「…また動く鎧(リビングメイル)……
  ごりっとした感触のヤツはいないのかしら…ごりっとした……」
などとぶつぶつ言っているレミー。
あたし達が中に入り内部を確認するとほぼ同時。
『……何ものだ?』
部屋の中に低く声が響いてくる。
ここにある石造は侵入者対策にもなっており、
誰か着たら中に仕込んであるレグレス版が反応し、術者とつながるように設定されていたりする。
『何者だ?ここに何をしにきた?』
その声をうけ。
「その声は…ケルンッ!!」
いって何やら叫んでいるのはレミー。
『…ほう。このわしをしっておるのか?』
レミーの声に声のみの反応が返ってくるが。
「忘れたとは言わせないわっ!自分が殺した男の娘をっ!」
『…ふ…ふははは。そうか…その声…
  ……どこかできいたことがある…とおもったら。グルザムの娘かっ!?』
などといってるけど…すぐにわかりなさいよね……
「そうよっ!ふふふ。やっと見つけたわよっ!覚悟なさいっ!
  私がこの剣ですぱぁ…と斬ってあげるから、すぱぁ…って、うふふふふ……」
いいつつ、剣を抜き放ち、ぺろり…と刃を舐めているレミー。

「…どうやら間違いないようだな。」
「…というか寒いですぅ〜……」
そんなやり取りを聞きつつも、何やらそんなことをいっているゼルとアメリア。

『面白い。どうやら仲間を連れてきているようだが……わしはこの塔の五十一階におる。
  果たしてここまでたどり着けるかな?まああてにしないで待っておるぞ。』
そういいプツリ…と途絶える声。
「う〜!!寒いですっ!」
我慢の限界らしく何やら声が途絶えると同時に叫んでいるアメリア。
そんなアメリアをみてため息一つつき。
「炎の矢(フレアアロー)。」
つい今まで声を出していた石像に向かって術を解き放っているゼル。
石像に炎の矢が当たった部分が一瞬赤く染まるがすぐさまに元の色にと戻りゆく。
だがしかし、そのまま続けざまに。
「炎の槍(フレアランス)。」
別の術を解き放ち石像にとあて、
「ほら。こいつですこしは暖をとれ。」
などとぶっきらぼうにアメリアに言っているゼル。
ゼルに言われ、石像の近くにより、
「わ〜。暖かいです。」
石像に近づき手をかざすアメリアに。
「お〜いっ!リナっ!こんなにあったぞ〜!食い物っ!」
先ほどから静か…であったようなガウリイはといえば何のことはなく。
中に入るなり、すこし先にとある食糧庫にと気づき、
お腹がすいていた…ということもあり、一人でそこにいき食べ物を物色していたりしたのだけど。
口にウィンナーをくわえ、なおかつ両手一杯に様々な食べ物を持って戻ってくるガウリイの姿。
「…おまえ…どこにいったのかとおもったら……」
そんなガウリイの姿をみてあきれてつぶやいているゼル。
「あ。ちょうどいいですし。あくを退治しにいく前に腹ごしらえをしておきましょうっ!」
ガウリイが手にしている食材をみて、ぽん、と手を打ち言ってくるアメリア。
「でも生肉もありますけど……」
ガウリイ、丁寧に生肉までもってきてるからねぇ。
「そこの動く鎧(リビングメイル)を倒して鉄板代わりにすればいいのよ♪」
レミーのつぶやきに、にっこりと答え、そのまま荷物の中からいくつかの料理器具を取り出す。
器具、といってもフライパンや鍋…といった品物だけど。
動く鎧(リビングメイル)をもってきてそれを熱して火の代わりに取り扱う。
なぜか素直に言うことを聞いてくれるのでこちらとしては楽だけど。
たかが少〜しばかり憑依している存在に対して力をこめて話しただけ、というのにね♪

ぐつぐつぐつ……
なぜか赤く鈍く光る鎧を前にして、とりあえず暖を取りながら食事タイムにとあたし達は突入してゆく。
熱された鉄は程よい温度を生み出し、肉や魚…といった食材もほどなくいい具合に焼けてゆく。
果物などを搾ったジュースもあることから、
しばし雪の中歩いていたために体がかじかんでいたアメリアたちはほっと一息ついていたりする。
そんなに寒くなかったのにね音符
「おいしいです。」
嬉しそうに食事をほうばりつつ言っているアメリア。
「……いっても無駄だろうからあまり突っ込まないが……」
なぜかそんな光景をみつつ、ため息をついていっているゼル。
「ん?ゼル?食べないのか?」
一人黙々と食べているガウリイ。
「でもレミーさんのお父さんって、何か…こう、何というか…」
「まあ、確かに。悪役みたいな名前ではあるな。」
言いかけたアメリアにぽつり、と言うゼルに対し。
「…あなたたち…斬るわよ?」
いって抜き身の剣を構えてペロリ、と舐めているレミー。
「まあまあ、そんなことより。上にいるケルンってやつ、どれくらいの弱さなの?」
にっこりと判っているけど問いかける。
そんなあたしの言葉に。
「…強さの間違いじゃあ……。とにかく、ケルン本人はそれほど強くはないはずよ。
  ただ…ケルンが父の研究を使って生み出しているであろうデーモンがやっかい、
  というくらいかしら。」
「…例の魔族の上にさらに別の…というやつか。
  …しかし…何であんたの父親はそんな研究を……」
レゾは以前、自らの目を治したい、というのと、半ば腹いせと実験をかねて、
自らのコピーに魔族を合成していたことがあったが。
そんなことを思いつつも問いかけているゼル。
「世界のため。と聞いているわ。」
一言の元に済ましているレミー。
まあ、ある意味嘘ではないけどねぇ。
その力を使っての世界征服を本気でグルザムは考えてたし。
本当、無知って面白いわよね〜♪
「とりあえず、しっかりと食べて、体も温まったらケルンのところに向かいましょv」
「異議なしっ!」
「あ。こっちのお肉、焼けたみたいです。」
一人張り切っているレミーの横ではもくもくと肉や野菜を焼いては食べているアメリアと。
そして、焼けたモノをただもくもくと食べ続けているガウリイの姿が見受けられていたりするけど。
まあ、人のことわざの中に、【腹が減っては戦はできぬ。】という言語もあることだし…ね♪


「…何かありきたりだなぁ〜……」
などとぼそり、とつぶやいているガウリイ。
「もう少しひねりがあっても……」
などとこれまた不満そうに言っているアメリア。
「平たく言えば芸のないやつなんだろう。」
一言の元に的確な表現で言い表しているゼル。
食糧庫兼備蓄庫にあった食材を全て平らげ、
先ほどケルンが言っていた塔の五階にと向かっているあたし達。
「というか考えがないのよ。」
そういうあたし達の目の前には一枚の扉が。
生きた死体(ゾンビ)に食人鬼(グール)に骸骨戦士(スケルトン)、
動く鎧(リビングメイル)に低級悪霊(ゴースト)。
そしてお約束の石人形(ストーンゴーレム)など。
それらをあっさりとなぎ倒して五階にたどり着いているあたし達。
レミーはレミーでゴースト相手に何の力をもこめずに剣を振り回していたりしたけどそれはそれ。
「悪の魔道士ケルンっ!街道の森を迷いの森にしただけでなくっ!
  何の罪もない人の研究を奪い殺した罪っ!言語道断ですっ!今こそ正義の裁きをうけなさいっ!」
「ついに追い詰めたわよっ!ケルンっ!」
バタンっ!
扉を開け放つと同時に何やら言っているアメリアとレミー。
扉を開け放った先にある部屋には、窓辺の机に体を預けのんびりと立っている男が一人と。
そして、その左右にはブレスデーモンが一体づつ。
「ふっ。ここまでよくたどり着けたな。
  よくあの警護者(ガーディアン)達を突破できたな。時間はかなりかかったようだが。」
などと鼻で笑いながらいってくる。
くすっ。
「ああ、時間がかかったのは食事してたからよ。
  備蓄庫兼食糧庫にあった食糧は全てあたし達でいただいたしv」
「お腹もいっぱいで百人力ですっ!さあ!悪の魔道士ケルンっ!観念なさいっ!」
あたしの言葉に続けてアメリアがぴしっと指をつけつけていっているけど。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
なぜかあたしの言葉に一瞬黙り込み。
そして。
「何ぃぃ!?ちょっとまて!今全部といわなかったか!?全部とっ!!
  まさか、あの食糧庫にあったものを全て食べたんじゃあ!?」
なぜか思いっきり叫んでくるケルン。
「お〜。うまかったぞ〜。」
そんな彼に対してのんびりとさらり、と返事を返しているガウリイの言葉をうけ。
「ゆ…許せんっ!
  人がせっかくデーモン達に命じ、こつこつと盗んできた食糧を備蓄していたというのにっ!
  しかも自分の食事も節約していた、というのにっ!」
何かどうでもいいところで怒ってるしv

「…というか、デーモンに盗みって……」
「スケール小さいですね……」
ぽそり、とそんなケルンの言葉に至極最もな感想を漏らしているゼルとアメリア。

「おのれっ!ケルンっ!父の研究を使って盗みを働くなどっ!」
こちらもまた違うとコロで何やらいきまいているレミー。
「そうはいうが、そもそもおまえの父は世界征服のためにしていた研究だろうがっ!」
そんなレミーに対して突っ込みを入れているケルンだけど。

「…レミーさんのお父さんって……」
「…何か頭痛くなってきた……」
そんな親だからこそ、このレミーやあのロッド…といった子供が育ったんじゃあ…
などと思いつつ頭を抑えているゼル。
ケルンの言葉に一瞬目を点にしながらも。
「ともかくっ!悪の魔道士ケルンっ!経緯はどああれ、レミーさんのお父さんを殺害しっ!
  あまつさえこの森を迷いの森(マジック・メイス)と化して人々の足を奪うなど!
  例え太陽さんが許してもこのアメリアは許しませんっ!
  正義の名の下に成敗しますっ!覚悟なさい!」
今のレミーとのやり取りはひとまず聞かなかったことにして、
ぴしっと再びケルンに指を突きつけ言い放つアメリアの姿。

「…ええいっ!人がせっかく節約して食事していたものわ!許さん!やれぃ!」
なぜか違うところで怒りつつわめいているケルンだけど。
ケルンの言葉に従い、ケルンの左右にいたブラスデーモンが同時に咆える。
と同時。
バシュッ!!
あたし達の目の前の視界がちょっぴし明るくなってゆく。

「ほぉ〜。さすがだな。」
それをもて思わず感心した声をだしているゼルだけど。
くすっ。
「あら?たかが九十三本程度の炎の矢のどこが【さすが】なのかしら♪」
「…十分すごいとおもうぞ?」
至極当たり前な感想をいうあたしに、なぜか突っ込みを入れてきているガウリイ。

あたし達に向かってくる炎の矢。
当然あたしにはかすりもしないけど。
というか向かってもこないし。
「何のっ!」
すばやく術を唱え、魔力をこめた拳でそんな炎の矢を殴っては霧散させているアメリアに。
「ふっ。こんなものっ!颶風斬!!」
気合の一閃と共に居合いに抜いたレミーの長刀が、彼女めがけて降り注ぐ炎の矢全てを凪ぎ斬る。
が。
ぼひゅっ。
…ぼてっ。
そのまま炎は剣を素通りし、炎に撒かれて決めポーズのまま床にと倒れているレミー。
くすっ。
「まだまだねぇ。居合いだけで炎くらい掻き消さないとv」
辺り構わず炎の矢が飛び交い、その辺りにある家具などもなぜか燃え始めていたりする。
「ああっ!?私の財産が!?」
それをみていまさらながら叫んでいるケルン。
ムギュッ…
「ああ!?レミーさん!?」
倒れているレミーを踏んづけて、ようやく彼女が倒れているのに気づき声をあげ、
「あなた!父親だけでなく娘さんなまでっ!許せませんっ!」
などといっているアメリア。
「…いや…というか…今踏んづけたのはおまえじゃあ……」
むぎゅっ、とレミーを踏んづけて、あわててその場を飛びのいてケルンに言い放っているアメリアに、
ポソリ、と突っ込みをいれているゼル。
一方で。
「だぁぁ!キリがないっ!」
いいつつも、向かい来る全ての炎の矢をいともあっさりと叩ききり、
その全てを霧散させているガウリイの姿が見受けられていたりするけど。

「霊縛符(ラファスシード)!」
アメリアの言葉に伴い、一瞬デーモン達の動きが停止する。
「あらあら、アメリア。それくらいじゃあそれには効かないわよ♪」
にこやかに、静観もとい、傍観しつつ、そういうあたしの声と共に。
『あぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
雄たけびを上げると同時にまったく何事もなかったかのように動き始めているデーモン達。
「ちっ。さすが並のブラス・デーモンじゃあないな。」
剣に魔皇霊斬(アストラルヴァイン)をかけて炎を斬っているゼルが何やらつぶやいているけど。
くすくすくす。
「ほらほらvどうにかしないと周りはもう火の海よv」
トコロ構わずに炎を解き放っているブラスデーモンたちの炎により、
あたし達のいる部屋は面白いことに燃え上がっていたりする。

「…って、しまったぁぁ〜〜!!!?」
いまさらながらにあたしの指摘に気づいて、何やら頭を抱えてケルンが叫んでいるけど。
気づくの遅いってば。

ガラ……

ガラガラガラ…
ガラガラガラッ…
ずっずぅぅ〜〜んっ!!!!!

燃え広がった炎はいともあっさりと、あたし達のいる部屋全体を包み込み。
そしてまた、ついでにそのまま部屋は崩壊し。
さらには他の階にも燃え広がっていた炎の影響もあり。
塔そのもの。
つまりは、塔自体、そのもの全てが瞬く間にと倒壊してゆく――


「あ…危なかった……」
「ですね。」
「まったく。ドジよねぇ〜v」
崩れ落ちる塔の中。
窓からあわてて外に飛び出しているゼルとアメリア。
あたしにいたってはあわてることなんかまったくないけども。
「あら?レミーだけでなくケルンとガウリイまで一緒に巻き込まれてるわねv」
みれば崩れ落ちる塔の中。
逃げ遅れたレミーとケルンはそのまま一緒に瓦礫と共に地面におちていき、
ガウリイにいたっては何やら意味不明な掛け声と共に、自分に向かってくる瓦礫を叩ききりつつ、
崩れ落ちる塔の瓦礫を利用して崩壊する塔の内部より脱出を図っていたりするけども。
「あ、本当だ。…そういえば、忘れてました。レミーさんとガウリイさん。」
空中に浮かんだ状態で崩れてゆく塔をみてそんなことを言っているアメリアに。
「…しかし…あいつは相変わらず人間離れしてるな……」
塔の崩壊に巻き込まれながらも、瓦礫をぴょんぴょんと飛んで上に上にと移動しているガウリイの姿を認め、
何やらぽそり…とつぶやいているゼル。
「あら。あんなの誰でもできるって。というか。石をいきなり熱したり冷やしたりしたら。
  どうなるかくらい判るでしょうにねぇ。というか確実に脆くなるのはわかりきったことだし♪」
くすくすくす。
何のことはない。
それでなくても脆くなっていた塔を構成していたレンガが、炎の直撃などをうけ脆くも崩れた。
というだけのこと。
まあ別の要素もあったりはするけど、それはそれ。
やがて。
ズズ〜ンっ!!
雪を周囲に舞い上げながら塔は静かに完全に倒壊してゆく。
後にはただ、元塔を構成していた瓦礫の山が残るのみ。

「お〜い。レミーさぁん。どこですかぁ〜?」
瓦礫の中、声をかけているアメリア。
「…というか、生きているのか?あの姉ちゃん……」
すっかり崩れ落ちた塔の名残り…ともいえる瓦礫の山をみてぽつり、といっているゼル。
そして。
「でも気配はしてるぞ?」
「…おまえ、本当に人間か?」
瓦礫の中。
無傷で地面に降り立っていたガウリイの言葉にじと目で突っ込みを入れているけど。
「いやぁ。褒められても。」
「褒めてないっ!…それより…リナ…
  …おまえ、塔が崩れるってわかってただろ?だから何も手出ししなかった…違うか?」
「あら?何のことかしらv」
そんなゼルの言葉をさらり、とかわし。
「それよりもv何をそ〜と立ち退こうとしてるのかしらねぇvん?」
びくぅぅっ!
何やらここの様子を見に来て、そしてあたしの姿を認めてそっと立ち去ろうとしていた影に向かって声をかける。
崩れ落ちた塔の残骸。
その後ろの木々の陰に隠れている人陰一つ。
あたしの声に、ものの見事に反応して硬直し、びくつき固まっているけど。
そして。
「…あ…あはは…こ…こんばんわ…です……」
何やら声を擦れさせつつも木々の陰より出てくる黒い物体。
その姿を認め…
「なっ!!?…ゼロスっ!?」
「あれ?ゼロスさん?」
「お〜。ゼソス。」
「ゼ・ロ・スですっ!」
その姿をみて、なぜか構えて警戒を強くするゼルに、ふとその姿をみてきょんとした声を出しているアメリア。
そしてまた、お約束にも名前を間違い手いうガウリイにすかさず突っ込みを入れているのは…
どこにでもあるような錫杖に黒い神官服を身に纏い。
そして始終にこやかな笑みを浮かべている自称、【謎の神官ゼロス】その当人。
そんな黒い影――ゼロスに向かい。
「なぜおまえがここにいるっ!?」
先のクロツ達の一軒にもこいつは絡んでいた…
そんなことを思いつつ、警戒色を強くして問いかけるそんなゼルに対し、
「そういわれましても……と、ところで?どうしてこんなところにエルさ…とと。
  リナさんたちはどうしてこんなところに?」
……今【エル様】って言いそうになったわね…こいつは……
「私たちは悪の魔道士ケルンを成敗しにきたんですっ!」
きっぱりと瓦礫の山の中を探索しながらゼロスに言っているアメリア。
そんなアメリアの言葉に。
「…え゛っ!?」
なぜか短く声をだし一瞬固まり。
そして。
「…あ…あのぉ?もしかして…もしかしなくても…この塔の中に…いました?」
なぜかかなり恐怖しつつ聞いてくるけど。
くすっ。
「いたわよv当然vで?というか、あたし達が中にいたのに、あんたは何をしてくれたのかしらねぇ〜v」
「でぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!?」
あたしの言葉に面白いまでに驚いてるし。
じ・つ・はv
あの塔の中心。
つまり塔を支えていた柱に異界黙示録の写本が隠してあったのよねぇ。
で、こいつ処分がてらにその柱ごと消滅させたのよねぇ〜。
あたし達が中にいた、というのに?
そのおかげもあって、あっさりと炎の矢をあんな雑魚が放った程度であっさりと塔は倒壊したんだしv
面白いまでに狼狽しつつも。
「ひ…人の気配はまったくしませんでしたよっ!?」
何か叫んでくるゼロスだけど。
「隠してたものv」
「…エル様ぁぁぁ〜……!!」
どすっ!!
面白い迄にうろたえて、何やら叫んでいるゼロスはなぜか、
ゼロスの頭上より落ちてきた氷のツララによってそのまま大地…というか、雪の中にと倒れてゆく。
「……あ、レミーさんっ!」
とりあえず、みなかったことにして、レミーの探索を続けるアメリアに。
「…もしかして塔が崩壊したのもあいつがかかわっているんじゃあ……」
ゼロスに対する警戒を解かずに何やらつぶやいているゼル。
あらv
確かにその通りではあるけどねv
ガラガラと瓦礫の中からレミーを見つけて引っ張り出しているアメリア。
そして。
「う…ううぅん……あれ?はっ!?そうだっ!?ケルンは!?」
アメリアにひっぱりだされ、しばらくして気がつき。
きょろきょろと周囲を見渡してぱっと起き上がっているレミーの姿が。
「ケルンならたぶん。その瓦礫の下のどこかだ。」
……生きていれば…な。
という最後の言葉は押さえ、淡々と言い放つゼル。
「あら、ゼルvたかが建物の崩壊に巻き込まれたくらいで死んだりはしないってv」
「…十分にありえると思うなぁ〜……」
にこやかに返すあたしの言葉に、なぜか突っ込みをいれてくるガウリイ。
耐久力が乏しいせいか、崩壊した建物などに巻き込まれ、
また押しつぶされたりして死亡する存在って実はけっこういるにはいるのよねぇ〜。
多少防御力を自力で上げればどうとでもなることなのに。
「だ・か・らっ!人の考えを勝手に読むなっ!!…それはそうと…何だってゼロスのやつが……」
あたしに一応抗議しつつも、
ゼロスのやつ…今度は何をたくらんでいる?
などと思い、最後のほうはつぶやくようにして言っているゼルだけど。
「仕事でしょvそんなことより夜露をしのぐのにさっきの建物に戻りましょv」
「?リナさん?…って!?」
「うわっ!?」
「またかぁぁ!?」
にっこり言うあたしの言葉と同時、あたし達の姿はその場から瞬時にと掻き消える。
後に残るは、瓦礫の下に埋もれたままのケルンと。
そして瓦礫の中にぽつん…とたたずむレミー。
そして雪の中に突っ伏しているゼロス。
この三人のみ。


「リナさんっ!いきなりの移動はやめてくださいっ!心臓に悪いですっ!」
「…というより…ここ…どこだ?」
何やら周囲は焦げ臭い。
四方の壁は未だに多少の煙がくすぶっていたりするけど。
あたし達が出現したのはちょっとした小さな部屋。
といっても、先ほどが先ほどだけに部屋の中は未だに多少アメリアたちからしてみれば暖かい。
何やら文句をいってくるアメリアに、周囲を確認して言っているゼル。
そして。
「…つ〜か…あの姉ちゃんたち…おいてきてるけど…いいのか?」
一人首をかしげているガウリイ。
と。
「…うん?…な?あんたがた…いったいどこから……!?」
ガコン…
という音とともに、明かりが差し込み、聞こえてくるのは聞き覚えのある声。
「あんたは――!?」
「ああっ!?たしかエルフのレグレスさんっ!?」
その姿をみて驚きの声を上げているゼルとアメリア。
隠し扉を開いてここ、隠し部屋の中にと入ってきたのは他ならない、先刻のエルフのレグレス。
「何であんたが……」
いいかけるゼルに、
「あんたらは…いったいどこから入ってきなさった?…まさかさっきのやつの仲間か?」
多少警戒を含めて問いかけてくるこのレグレス。
今あたし達がいるのは、レグレスが住んでいる、先刻初めに訪れたある建物。
その中の一角にあるちょっとした隠し部屋。
「?さっきの?とは?」
レグレスの言葉に眉を潜めているゼルに。
「私たち、いきなりリナさんにここに移動させられたんです。
  レグレスさんがいる…ということは、もしかしてここってあの建物ですか?」
そんなレグレスにと返事を返し、あたしにと聞いてくるアメリア。
くすっ。
「まあね。だってケルンのやつが住んでいた塔は壊れたし。雪の中野宿するのも何だしねv」
さらっと答えるあたしに。
「…いきなりつれてこられたって……」
何やらつぶやいているレグレス。
「それはそうと。さっきのヤツ…とは?それにこの部屋……」
あきらかにこの中で何かが燃えたような痕跡が残っている。
壁についたススや未だに残る炎の熱気。
それらを感じ取りつつも、ひとまず疑問を解決しようと問いかけているゼル。
そんなゼルの問いかけに。
「…先刻。何ものかがこの部屋に侵入してな。
  この部屋には貴重な【写本】を保管していたんじゃが……」
「何っ!?」
レグレスの言葉にまともに目の色を変えているゼルだし。
まあこの部屋に炎を放ったのは言うまでもなくゼロスなんだけど。
それは別に説明することでもないからおいとくとして?
「あら、ゼルv
  どうせここにあった写本は【植物に関する知識】のばっかりだったし。気にすることはないわよv」
「リナっ!おまえ……っ!!ここに写本があったのしってたのか!?」
「あら?当たり前じゃない。普通わかるでしょうに?近くにあればなおさらにv
  まあ、気にしない、気にしない。みたところ何でか燃えちゃったみたいだしv
  それより、ここから近くの村にでも移動してゆっくり休みましょv
  確かここって地下に村に続く隠し通路があったと思うしv」
そんなあたし達の会話に。
「……いったいあんたらは……」
なぜかしばし戸惑いを隠せないレグレスの姿が見受けられていたりするけど。

結局のところ、あたし達は簡単にレグレスにと説明し。
そしてレグレスも使用しているとある隠し通路でもある抜け道より、
森の先にとある小さな村にと移動することに。
ここの写本とそして塔の中にあった写本。
そしてそれをも含め、この森に自然発生していたとある力の【場】は、
塔の崩壊と写本の消滅とともに消滅していたりする。
ゆえに森にかかっていたとある【術もどき】は消え去っていたりするんだけども。
とりあえず…アメリアたちが気づくまでは黙っているとしますかねv


「…ま…まさかここに来ていらっしゃったとは……」
よろよろと背中になぜか未だに氷のツララをつきたてたまま立ち上がる黒い物体。
と。
「そこのあなたっ!」
「は…はいいぃ!」
いきなり呼ばれ、なぜかその場に立ち尽くす。
そんなゼロスに向かって、
「リナさんたちはどこにいきましたの!?というかケルンは!?」
何やらそんなことを叫びつつ、剣を無意味に構えてじりじりとゼロスに向かって進んでいるレミー。
あたし達の姿が消え、さらには塔もなく。
仕方ないので周囲を確認していたところゼロスの姿をその視界に捉え。
あたしが先ほど話しかけていた…ということもあいまって、それもあっての行動らしいけど。
「あ…あのぉ?」
ゼロスからすれば、何がどうなっているのか情けないことにも理解できないらしく、
とりあえずこの人間に聞いてみましょうか?
などと思っていたりするけども。
「ああっ!ケルンを斬りたかったのにぃぃ!塔までなくなるなんてっ!
  …というわけで、仕方ないからあなたっ!この私にすぱぁっ、と斬られなさいっ!
  そう……すぱぁっ…と。ふふふふふ……」
「…え?…いやあの…ええぇぇぇ!?」
ペロリ、と刃を舐めて近寄るレミーをみて何やら一瞬驚きの声を上げ、
「いやあのっ!どうして僕があなたに斬られないといけないんですかっ!?」
「ケルンを斬れなかったからよっ!」
「そんな理不尽なっ!?」
何やらそんなやり取りをしつつ、ぶんぶん剣を振り回すレミーを避けつつも、
ゼロスもまた、その場を遠のいてゆく。
そんなほのぼのとした光景が、あたし達が消えた後、見受けられていたりする。
その事実は、ゼルやアメリアたちは知る由もない様だけど。


「とりあえず。終わりよければ全てよし。ですねっ!」
「……い〜のか?」
「……も、好きにしてくれ。ともかく。先を急ぐぞ。」
次の日。
森が元通りになったのを確認し、そんな会話をしているアメリア・ガウリイ・ゼルの三人。
「そうね?とりあえず道も広くなってるみたいだし。いきましょv」
昨日。
ゼロスが逃げ回り、そんなゼロスをレミーが追いかけ、木々を軒並み切り倒しているので、
ちょっとした道が今現在は新たに出来上がっていたりする。
今回のコレはみているだけだったけど、すこしは楽しめたわね♪

そんなほのぼのとした会話をしつつも、あたし達は森を抜けて次なる目的地にと向かってゆく。
さってと。
本体そのものに突き刺さっている氷のツララすら未だに消さないゼロスには、
後ですこしお灸を据えにいきますか…ね?
森の異変を何なく解決し、あたし達は次にと向かってゆく。
もう少ししたらどうもゼロスのヤツも合流してきそうだけど…ま、どうでもいいか?
そろそろセイルーンで面白いことがあるし…ね♪


                     ――復讐の刃編・完了――

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あとがきもどき:
薫:そういえば。
   今まで出てきたエルフの年齢法則からいくと・・・
   「お子様クエスト」のモリーンが見た目年齢五歳程度。実年齢十九歳。
   ゲームに出てきた「ろいやる1,2」のラークの見た目が七歳程度。実年齢二十六歳。
   それらを統計すると実年齢に約0.26を乗算したら見た目の年齢・・という法則が(こらまて)
   それからいくと…メフィの年齢も大体の予測・・つきますよねぇ(笑
   これ打ち込みしててそういえば…お子様クエストの漫遊編もまだ打ち込みしてなかったなぁ・・
   と今さらながらに思ったり……
   あの回は、白銀の前なのでゼルがでてこないんだよなぁ(まて
      何はともあれ、ようやく「復讐の刃」編は完了です。
   一番気の毒だったのは…誰なのでしょう?(笑
   エル様…わかっているがゆえにこのたびは傍観主義に徹していたようですが…
   まあ、みていたほうが楽しい・・・ということもありますから…ねぇ(タブン…
   ゼルたちにとってはラッキー!?だった・・かも!?
   何はともあれ、ここまでお付き合いいただきましてまことにありがとうございました。
   それでは、また次回にてv
   (さて…いい加減に何かの連載の続きをやらなければ…汗)
   ではでは・・・・