◆−光への憧憬 +どうか忘れないで+ 10−十叶 夕海 (2006/4/29 22:36:31) No.32488 ┣霧を掴むにはどうするか?−月読乾 (2006/4/30 19:54:58) No.32489 ┃┗砂漠の中から、黄金一粒を見つけるよりは 易し?−十叶 夕海 (2006/5/1 13:58:22) No.32490 ┣光への憧憬 +どうか忘れないで+ 11−十叶 夕海 (2006/5/11 21:59:54) No.32497 ┃┗聖夜までは遠すぎる−月読乾 (2006/5/11 23:28:01) No.32498 ┃ ┗夜明けすらまだ遠く・・・・−十叶 夕海 (2006/5/12 11:51:08) No.32499 ┣光への憧憬 +どうか忘れないで+ 11.5−十叶 夕海 (2006/5/14 21:47:33) No.32500 ┃┗ジョーカーは常に地獄と逆転の狭間に…−月読乾 (2006/5/15 18:52:47) No.32505 ┃ ┗艶然と微笑む・・・・−十叶 夕海 (2006/5/15 20:39:12) No.32506 ┣光への憧憬 +どうか忘れないで+ 12−十叶 夕海 (2006/5/21 00:24:42) No.32515 ┃┗血と硝煙と安らぎと…−月読 乾 (2006/5/21 17:11:56) No.32517 ┃ ┗今は遠き その日・・・・・−十叶 夕海 (2006/5/21 20:26:01) No.32518 ┣光への憧憬 +どうか忘れないで+ 13−十叶 夕海 (2006/5/24 23:03:17) No.32524 ┃┗13番目はジョーカーの数字。−月読 乾 (2006/5/29 20:32:01) No.32536 ┃ ┗さすればこそ、切り札になりうる−十叶 夕海 (2006/5/29 21:52:10) No.32537 ┣光への憧憬 +どうか忘れないで+ 14−十叶 夕海 (2006/5/28 19:38:38) No.32534 ┃┗全ての終息は静かな日の店の前で少しずつ…−乾 (2006/6/4 22:53:22) No.32548 ┃ ┗迎え・・・・そしてまた始まる。−十叶 夕海 (2006/6/5 14:38:02) No.32549 ┗光への憧憬 +どうか忘れないで+ 15−十叶 夕海 (2006/6/7 21:35:49) No.32550 ┗alive a life−乾 (2006/6/8 18:46:55) No.32551 ┗そして、今日も続いて行く・・・・・。−十叶 夕海 (2006/6/9 11:49:59) No.32552
32488 | 光への憧憬 +どうか忘れないで+ 10 | 十叶 夕海 | 2006/4/29 22:36:31 |
10 彷徨う宝石とロンドンの街との邂逅 「ああ、そう言えば、四人目に行く前に、少し面白い・・・・かどうかはおいておくが、話にしやすいのが、あるな。」 「どういうのです?」 「まさか、あのエドかレッドのお話かな?」 「そのまさか。 詠太郎、アクアマリンとアメジストどっちが、あの仕事をしていたとき、不穏に感じた?」 ジュリは、からかうように、詠太郎を促した。 「アメジストかな。」 「うん、それなら、エドの方か。」 そして、ジュリは語りだす。 アビゴルが仲間になり、三百年ほどたった頃のお話を・・・・・・。 あれは、うん、ヴィクトリア朝真っ盛りってトコのイギリスだった。 いわゆる、ホームズやモリアーティなんかが、活躍していた頃。 その頃は、貴族社会真っ盛りとかってやつで、身分差が今よりはっきりしていたけど、それでも私たちが側に暮らしていた。 こういう社会だったから、私が身を寄せる家を探すのに、あまり苦労はしなかった。 アビゴルは、有色人種だったから、少し大変だったけど・・・・。 その身を寄せた家・・・居候をさせてもらった家の長男が、エドワードだった。 金髪碧眼、長身痩躯・・・・外見は判子を押したように、イギリスのお貴族様だった。 だけどね、貴族にありがちな傲慢さと言うか、人を資源として使うって言う発送がなかったね。 だって、カヴァネス・・・女家庭教師にも、妹の勉強を教えるって言う以外の仕事はさせなかった。 ああと、その頃の女家庭教師っていうのは、半分メイド・・・・女の召使いと同義だったからね。 まあ、19世紀半ば過ぎだから、その二百年前とかだいぶましと言えば、ましな環境だったかもしれない。 そして、1888年8月31日、ホワイトチャペルあたりで、年増の売春婦のx惨殺死体が見つかった。 たまたま、その時の野次馬のなかに居たんだけどね。 それが普通の・・・『精気』だとか、『断末魔の感情』とか言うのかな。 ああいう、酷い死に方をした人間にしたら、本当に少なかった。 それこそ、今で言う交通事故死をした人間と老衰で逝った人間ほどにね。 ・ ・・・一つだけ、心当たりがあった。 《闇の宝石(ダークジュエル)》とかいうもの。 いわゆる、《ホープダイヤ》《アマンラスダイヤ》とかそう言うのだ。 そういう『マイナスの感情』を吸って、『人格のない闇のモノ』・・・私達、人外のものと同じような存在が居た。 じっさい、そのメアリ・アン・ニコルズとか言う売春婦が殺される以前にも、似たような死に方というのかな・・・もう少し原型が残っていたようだけどね。 その死に方をした令嬢が、共通して持っていたのが、バラなんかの花弁を銀製で、おしべとかを大きい親指ぐらいのアメジストのブローチだった。 もちろん、これは、公になってないし、貴族の方々も、スキャンダルを嫌っていっさい表沙汰になっていない。 ともかく、《闇の宝石》ならば、回収して、取り込めば、自分の力にもなるから、そう言った意味では、期待していた。 《ジャック・ザ・リッパー》 正確に言えば、《闇の宝石の傀儡人形(ダークジュエルマリオネット)を探すために、その年の秋は、奔走したね。 「でも、それを追わなければ、エドワードは死ななかったのかもね。」 「いいのか、主? このまま、話しても。 わざわざ、恥を話すこともないとは思うが?」 黒尽くめの神影は、主であり創造者のジュリにそう言った。 「いいの。 それに、話しておきたい。」 「ならば、かまわない。」 「それで・・・・・」 乾詠太郎には、ただ二人の会話を聞くことしかできなかった。 そして、さらに話は続く・・・・・。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 多分、13回で終わらないです。 どうしましょう。 珍しく、プロット通りにいっていたのに。 それでも、15回ぐらいで終わるはずです。 次回 『11 人外と人は 交わりえぬものなのか?』 それではお楽しみに。 『光への憧憬』も、ラストスパートです。 |
32489 | 霧を掴むにはどうするか? | 月読乾 | 2006/4/30 19:54:58 |
記事番号32488へのコメント こんばんは、乾です。 正直、今までに比べて今回は妖気みたいな物… 目に見えない得体の知れない物に対する話になりそうですね。 最後まで、つき合わせてもらいます。 >「ああ、そう言えば、四人目に行く前に、少し面白い・・・・かどうかはおいておくが、話にしやすいのが、あるな。」 >「どういうのです?」 >「まさか、あのエドかレッドのお話かな?」 >「そのまさか。 > 詠太郎、アクアマリンとアメジストどっちが、あの仕事をしていたとき、不穏に感じた?」 >ジュリは、からかうように、詠太郎を促した。 >「アメジストかな。」 >「うん、それなら、エドの方か。」 >そして、ジュリは語りだす。 >アビゴルが仲間になり、三百年ほどたった頃のお話を・・・・・・。 アメジスト… 西洋、東洋を問わずに宗教的な象徴として使われ、 あのダヴィンチが知性を刺激する石と言ったそうですね(今、速攻でとりあえずの知識を調べました)。 いずれにせよ、人の英知を象徴するからには、同時に因縁にも事欠かない石でもありそうですね。 >あれは、うん、ヴィクトリア朝真っ盛りってトコのイギリスだった。 >いわゆる、ホームズやモリアーティなんかが、活躍していた頃。 >その頃は、貴族社会真っ盛りとかってやつで、身分差が今よりはっきりしていたけど、それでも私たちが側に暮らしていた。 え?何だかコナン;ドイルの小説の登場人物がまるで、実在してたかの様な… 霧の倫敦だからって…まさか…まさかね(汗) >アビゴルは、有色人種だったから、少し大変だったけど・・・・。 >その身を寄せた家・・・居候をさせてもらった家の長男が、エドワードだった。 >金髪碧眼、長身痩躯・・・・外見は判子を押したように、イギリスのお貴族様だった。 >だけどね、貴族にありがちな傲慢さと言うか、人を資源として使うって言う発送がなかったね。 >だって、カヴァネス・・・女家庭教師にも、妹の勉強を教えるって言う以外の仕事はさせなかった。 >ああと、その頃の女家庭教師っていうのは、半分メイド・・・・女の召使いと同義だったからね。 >まあ、19世紀半ば過ぎだから、その二百年前とかだいぶましと言えば、ましな環境だったかもしれない。 貴族… この時期から、象徴的で有名無実の存在になりつつ始める頃でしたっけ? 寛容で親しみ易い人みたいに感じますが… 生い立ちが少し気になるかも… 後、家庭教師の女性の経歴も気になりますが、そこは今後出てくるのかな? >そして、1988年8月31日、ホワイトチャペルあたりで、年増の売春婦のx惨殺死体が見つかった。 有名なあの事件… 今は、色々な仮説が出てますが、2世紀前の犯罪人(?)… >たまたま、その時の野次馬のなかに居たんだけどね。 >それが普通の・・・『精気』だとか、『断末魔の感情』とか言うのかな。 >ああいう、酷い死に方をした人間にしたら、本当に少なかった。 >それこそ、今で言う交通事故死をした人間と老衰で逝った人間ほどにね。 『納得できる』殺され方…? 冗談でも無いけど、自然死ではあり得ないのに? >・ ・・・一つだけ、心当たりがあった。 >《闇の宝石(ダークジュエル)》とかいうもの。 >いわゆる、《ホープダイヤ》《アマンラスダイヤ》とかそう言うのだ。 >そういう『マイナスの感情』を吸って、『人格のない闇のモノ』・・・私達、人外のものと同じような存在が居た。 >じっさい、そのメアリ・アン・ニコルズとか言う売春婦が殺される以前にも、似たような死に方というのかな・・・もう少し原型が残っていたようだけどね。 >その死に方をした令嬢が、共通して持っていたのが、バラなんかの花弁を銀製で、おしべとかを大きい親指ぐらいのアメジストのブローチだった。 >もちろん、これは、公になってないし、貴族の方々も、スキャンダルを嫌っていっさい表沙汰になっていない。 >ともかく、《闇の宝石》ならば、回収して、取り込めば、自分の力にもなるから、そう言った意味では、期待していた。 >《ジャック・ザ・リッパー》 >正確に言えば、《闇の宝石の傀儡人形(ダークジュエルマリオネット)を探すために、その年の秋は、奔走したね。 冤罪で死んだ男の愛用していた椅子… ヒトラーの愛車… 主君に不幸を齎す刀… 色々とありますが、それは人の悪意が形を持った物? それ自体が既に存在している…? 正直、関わる事を耳にするだけで、今は得たいの知れない物を感じます。 >「でも、それを追わなければ、エドワードは死ななかったのかもね。」 >「いいのか、主? > このまま、話しても。 > わざわざ、恥を話すこともないとは思うが?」 >黒尽くめの神影は、主であり創造者のジュリにそう言った。 >「いいの。 > それに、話しておきたい。」 >「ならば、かまわない。」 >「それで・・・・・」 >乾詠太郎には、ただ二人の会話を聞くことしかできなかった。 >そして、さらに話は続く・・・・・。 何故、エドワード氏が『それ』と関わる事に? 正直、今の時点では分からない事が多すぎて… 何を… |
32490 | 砂漠の中から、黄金一粒を見つけるよりは 易し? | 十叶 夕海 | 2006/5/1 13:58:22 |
記事番号32489へのコメント >こんばんは、乾です。 > >正直、今までに比べて今回は妖気みたいな物… > >目に見えない得体の知れない物に対する話になりそうですね。 > >最後まで、つき合わせてもらいます。 こんばんわ、ユアです. そうですね、でもそう言うものの方が、今の社会は多いのかもしれません。 では、返レスをば。 > >>「ああ、そう言えば、四人目に行く前に、少し面白い・・・・かどうかはおいておくが、話にしやすいのが、あるな。」 >>「どういうのです?」 >>「まさか、あのエドかレッドのお話かな?」 >>「そのまさか。 >> 詠太郎、アクアマリンとアメジストどっちが、あの仕事をしていたとき、不穏に感じた?」 >>ジュリは、からかうように、詠太郎を促した。 >>「アメジストかな。」 >>「うん、それなら、エドの方か。」 >>そして、ジュリは語りだす。 >>アビゴルが仲間になり、三百年ほどたった頃のお話を・・・・・・。 > >アメジスト… > >西洋、東洋を問わずに宗教的な象徴として使われ、 >あのダヴィンチが知性を刺激する石と言ったそうですね(今、速攻でとりあえずの知識を調べました)。 > >いずれにせよ、人の英知を象徴するからには、同時に因縁にも事欠かない石でもありそうですね。 ですね、エネルギーの関係上、ダイヤモンドの方がそう言うのが多いようですけど。 アメジストも勝るとも劣らない程度の逸話があるようです。 > >>あれは、うん、ヴィクトリア朝真っ盛りってトコのイギリスだった。 >>いわゆる、ホームズやモリアーティなんかが、活躍していた頃。 >>その頃は、貴族社会真っ盛りとかってやつで、身分差が今よりはっきりしていたけど、それでも私たちが側に暮らしていた。 > >え?何だかコナン;ドイルの小説の登場人物がまるで、実在してたかの様な… > >霧の倫敦だからって…まさか…まさかね(汗) > このお話の中では、存在していたということで。 人の思念というのは、何よりも強いということですね. >>アビゴルは、有色人種だったから、少し大変だったけど・・・・。 >>その身を寄せた家・・・居候をさせてもらった家の長男が、エドワードだった。 >>金髪碧眼、長身痩躯・・・・外見は判子を押したように、イギリスのお貴族様だった。 >>だけどね、貴族にありがちな傲慢さと言うか、人を資源として使うって言う発送がなかったね。 >>だって、カヴァネス・・・女家庭教師にも、妹の勉強を教えるって言う以外の仕事はさせなかった。 >>ああと、その頃の女家庭教師っていうのは、半分メイド・・・・女の召使いと同義だったからね。 >>まあ、19世紀半ば過ぎだから、その二百年前とかだいぶましと言えば、ましな環境だったかもしれない。 > >貴族… >この時期から、象徴的で有名無実の存在になりつつ始める頃でしたっけ? もう少し後ですね。 第一次世界大戦が原因で大きく崩れ始めるようなのです。 > >寛容で親しみ易い人みたいに感じますが… >生い立ちが少し気になるかも… 侯爵というだけあって、それなりですが、それ以上でもありません。 > >後、家庭教師の女性の経歴も気になりますが、そこは今後出てくるのかな? 出てきますが、ノーコメントということで。 > >>そして、1988年8月31日、ホワイトチャペルあたりで、年増の売春婦のx惨殺死体が見つかった。 > >有名なあの事件… >今は、色々な仮説が出てますが、2世紀前の犯罪人(?)… ですね。 私なりの解釈がこれになるかなと。 > >>たまたま、その時の野次馬のなかに居たんだけどね。 >>それが普通の・・・『精気』だとか、『断末魔の感情』とか言うのかな。 >>ああいう、酷い死に方をした人間にしたら、本当に少なかった。 >>それこそ、今で言う交通事故死をした人間と老衰で逝った人間ほどにね。 > >『納得できる』殺され方…? >冗談でも無いけど、自然死ではあり得ないのに? そう言う感情は、宝石に吸収されてしまいました。 だから、ジュリが気がついたんです。 > >>・ ・・・一つだけ、心当たりがあった。 >>《闇の宝石(ダークジュエル)》とかいうもの。 >>いわゆる、《ホープダイヤ》《アマンラスダイヤ》とかそう言うのだ。 >>そういう『マイナスの感情』を吸って、『人格のない闇のモノ』・・・私達、人外のものと同じような存在が居た。 >>じっさい、そのメアリ・アン・ニコルズとか言う売春婦が殺される以前にも、似たような死に方というのかな・・・もう少し原型が残っていたようだけどね。 >>その死に方をした令嬢が、共通して持っていたのが、バラなんかの花弁を銀製で、おしべとかを大きい親指ぐらいのアメジストのブローチだった。 >>もちろん、これは、公になってないし、貴族の方々も、スキャンダルを嫌っていっさい表沙汰になっていない。 >>ともかく、《闇の宝石》ならば、回収して、取り込めば、自分の力にもなるから、そう言った意味では、期待していた。 >>《ジャック・ザ・リッパー》 >>正確に言えば、《闇の宝石の傀儡人形(ダークジュエルマリオネット)を探すために、その年の秋は、奔走したね。 > >冤罪で死んだ男の愛用していた椅子… > >ヒトラーの愛車… > >主君に不幸を齎す刀… > >色々とありますが、それは人の悪意が形を持った物? > >それ自体が既に存在している…? > >正直、関わる事を耳にするだけで、今は得たいの知れない物を感じます。 そうですね。 でも、このお話は、近くて遠い場所のお話なのです。 > >>「でも、それを追わなければ、エドワードは死ななかったのかもね。」 >>「いいのか、主? >> このまま、話しても。 >> わざわざ、恥を話すこともないとは思うが?」 >>黒尽くめの神影は、主であり創造者のジュリにそう言った。 >>「いいの。 >> それに、話しておきたい。」 >>「ならば、かまわない。」 >>「それで・・・・・」 >>乾詠太郎には、ただ二人の会話を聞くことしかできなかった。 >>そして、さらに話は続く・・・・・。 > >何故、エドワード氏が『それ』と関わる事に? > >正直、今の時点では分からない事が多すぎて… >何を… ジャック・ザ・リッパー野事件前のに・・・・ というやつなのです。 今回は、少々意味不明が多いですが、ご容赦を。 では、次回。 |
32497 | 光への憧憬 +どうか忘れないで+ 11 | 十叶 夕海 | 2006/5/11 21:59:54 |
記事番号32488へのコメント 11 私の選択が間違っていたのかもしれない。 それで その年のノエル始め・・・・・正式名称は忘れたけれど。 12月25日から数えて四週間前の日曜から、準備を始めるんだ。 あと、ノエルカレンダーとかいうやつの指令をこなしつつね。 指令って言っても、『顔を洗うこと』とか『親の手伝いをすること』とか、そんな簡単なの。 それといっしょに、ボンボンとか、チョコとか、入ってるのが、楽しみだった。 でもね、その年は、ノエル・・・クリスマスは人間とは祝えなかった。 12月10日の真夜中。 その前の十日間一切気配のなかった《闇の宝石(ダークジュエル)》の気配というか、波動というかそんなのが、居候していた屋敷の中―エドの妹・ビヴァリーの女性家庭教師のメアリの部屋からした。 今までのが、凪の海なら、その時のは、テュポンが怒り狂う嵐の海だね。 私は、アビゴルと神影を呼び出しながら、吸血鬼としての身体能力をフル活用して、わずか数十秒で、ほぼ対角線上にあるメアリの部屋に行った。 そこに、メアリは居たが、私が知る『メアリ』は居なかった。 ・ ・・・瞳に矛盾したようだけど、闇色の光というのかなそんなのを宿し、『彼女』はいた。 そこへ、エドとビヴァリーや、ほかの使用人が集まってきた。 「・・・メアリ、なんで!!」 もう、手遅れだった。 あまり、《闇の宝石》に関わっていない私でも、そのとき解った。 そして、同時に彼女の簡素な寝間着の胸に、アメジストと銀で作られたブローチがあった。 このままだと、心を持たない夜の住人になってしまう。 メアリは、母親から習ったというミートパイなんかを良く作ってくれた。 メアリは、私が悪夢にうなされているときに限って、良く部屋に来た。 メアリは、昼寝の時とかは、子守唄を良く歌ってくれた。 メアリは、ホントに安い花売りの花でも喜んでくれた。 メアリは、笑顔がすてきだった。 どうする?どうすればいい? 「ジュリ様。 ジュリ様、今一番いい思う道選ぶいい。」 アビゴルが、誰もが言葉を失っていた中でそう言った。 「ありがと。 エド、みんなを遠ざけて。 ・ ・・・・・それと、二年間ありがとう。」 それだけ言って、メアリの部屋と廊下を結界で区切り、この世界と切り離した。 ・ ・・・・私の力というよりは、神影のだね。 しかし、それは、同時にエドやビヴァリーとの別れを意味していた。 今でも、ちゃんと別れが言えなかったのは、後悔している。 『さあどうする? 《凍れる樹姫》よ?』 「・・・・・・・その名前を知っているってことは、最近生まれた訳じゃないんだね。」 《凍れる樹姫》というのは、私の裏の・・・特に人外に関わる業界で、アビゴルのことがあった前後から呼ばれるようになった仇名だよ。 特に、氷系と樹・・・木の精霊系の攻撃と補助の魔術が得手としていて、三人の美男子を従者のように従えているから、つけられたというのが、有名かつ一番もっともな由来だね。 でも、私がイギリスに来てからは、同族のマルティナ=シュヴィルにしか教えていなかった。 だから、少なくとも、1800年前後以前の生まれだと分かった。 「じゃ、私がどうするかも分かるね。」 『けけけ、この女を殺すのかい? お前を妹のように扱ってくれた何の罪もねぇ女をよぉ。』 「・・・・・・魂まで、弄ばれて人外になるよりは、マシだろう。」 「・・・・・主、来るぞ!!」 ・ ・・・・・・この先は、結果だけ言おう。 アメジストの《闇の宝石》に取り憑かれたメアリは、私が殺した。 そのアメジストのブローチごと心臓を抉りだしてね。 そして、何も告げずにその足で、エドの屋敷を飛び出した。 しばらくは、欧州やら、亜米利加、印度、明治維新したばかりの日本にも言った。 それから、イギリスに戻ったのは、1930年過ぎかな。 亜米利加で、禁酒法時代が終わったあたりだったから。 さほど、時間を置かずに、第二次世界大戦が始まった。 こっちだと、太平洋戦争だね。 その戦火の中で、私は、マルティナを失ったと思い・・・・・実際は一年半前まで生きていたけど・・・・ドイツに流れた。 そこで、私は、ゲシュタポに・・・ナチスに捕まった。 『ジプジー』としてね。 そこで、四人目のマリヤとその兄のシャルルにね。 「・・・・・・どうした? ・・・・おい・・・何をする・・・・離せ・・・こら、詠太郎!!」 詠太郎は、向かい側に座っていたジュリの隣に座ったかと思うと、彼女の華奢な身体を抱き寄せた。 もちろん、ジュリの文句を一蹴した上でである。 「あのな、ジュリ。 泣きたいときに泣けずに、後から泣きたくなったら、泣けと言ったのは、一年半前の事件の時のお前だからな。」 「・・・・・分かった。 ・ ・神影、一時間ほどどっか行ってろ。」 「はいはい。 僕らのジュリ、貴方が望むなら。」 そして、ジュリは、あのとき流せなかった涙をこのとき初めて流せた。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ いろいろな意味でごめんなさい。 言い訳などは、最後の大きな後書きで処理します。 ともあれ、次回で。 |
32498 | 聖夜までは遠すぎる | 月読乾 | 2006/5/11 23:28:01 |
記事番号32497へのコメント こんばんは、乾です。 結末があっさりしているだけにショッキングで… でも、これは『まだ終わっていない』ですよね? >それで その年のノエル始め・・・・・正式名称は忘れたけれど。 >12月25日から数えて四週間前の日曜から、準備を始めるんだ。 >あと、ノエルカレンダーとかいうやつの指令をこなしつつね。 >指令って言っても、『顔を洗うこと』とか『親の手伝いをすること』とか、そんな簡単なの。 >それといっしょに、ボンボンとか、チョコとか、入ってるのが、楽しみだった。 >でもね、その年は、ノエル・・・クリスマスは人間とは祝えなかった。 ノエル…?それっての英国のスペル? …無知でごめんなさい…(汗) とりあえず、お手伝いなどのいい事をする見返りに、プレゼントをもらうって風習かな? でも、また不穏な空気が漂って来て… >12月10日の真夜中。 >その前の十日間一切気配のなかった《闇の宝石(ダークジュエル)》の気配というか、波動というかそんなのが、居候していた屋敷の中―エドの妹・ビヴァリーの女性家庭教師のメアリの部屋からした。 >今までのが、凪の海なら、その時のは、テュポンが怒り狂う嵐の海だね。 >私は、アビゴルと神影を呼び出しながら、吸血鬼としての身体能力をフル活用して、わずか数十秒で、ほぼ対角線上にあるメアリの部屋に行った。 >そこに、メアリは居たが、私が知る『メアリ』は居なかった。 >・ ・・・瞳に矛盾したようだけど、闇色の光というのかなそんなのを宿し、『彼女』はいた。 >そこへ、エドとビヴァリーや、ほかの使用人が集まってきた。 >「・・・メアリ、なんで!!」 >もう、手遅れだった。 >あまり、《闇の宝石》に関わっていない私でも、そのとき解った。 >そして、同時に彼女の簡素な寝間着の胸に、アメジストと銀で作られたブローチがあった。 >このままだと、心を持たない夜の住人になってしまう。 吸い込まれるように限りなく輝く『闇』… 正直、文章を読むだけでもその危険な感じが伝わって来ます… でも、メアリ嬢は何故それを身に着けてたのか… >このままだと、心を持たない夜の住人になってしまう。 >メアリは、母親から習ったというミートパイなんかを良く作ってくれた。 >メアリは、私が悪夢にうなされているときに限って、良く部屋に来た。 >メアリは、昼寝の時とかは、子守唄を良く歌ってくれた。 >メアリは、ホントに安い花売りの花でも喜んでくれた。 >メアリは、笑顔がすてきだった。 >どうする?どうすればいい? >「ジュリ様。 > ジュリ様、今一番いい思う道選ぶいい。」 >アビゴルが、誰もが言葉を失っていた中でそう言った。 >「ありがと。 > エド、みんなを遠ざけて。 >・ ・・・・・それと、二年間ありがとう。」 >それだけ言って、メアリの部屋と廊下を結界で区切り、この世界と切り離した。 >・ ・・・・私の力というよりは、神影のだね。 >しかし、それは、同時にエドやビヴァリーとの別れを意味していた。 >今でも、ちゃんと別れが言えなかったのは、後悔している。 まるで、星は互いを何も知る事が無くても、引力で闇の中を惹かれ合うかのように、闇の中の『何か』を感じ取れる事に気づいている時… 傷つきながらも、また『その時』が来た時、相手に何かできる事をするのは、決してその相手に対してだけじゃなく、同時に自分の呪縛を振り切る為の『抗い』なのかも… >『さあどうする? > 《凍れる樹姫》よ?』 >「・・・・・・・その名前を知っているってことは、最近生まれた訳じゃないんだね。」 >《凍れる樹姫》というのは、私の裏の・・・特に人外に関わる業界で、アビゴルのことがあった前後から呼ばれるようになった仇名だよ。 >特に、氷系と樹・・・木の精霊系の攻撃と補助の魔術が得手としていて、三人の美男子を従者のように従えているから、つけられたというのが、有名かつ一番もっともな由来だね。 >でも、私がイギリスに来てからは、同族のマルティナ=シュヴィルにしか教えていなかった。 >だから、少なくとも、1800年前後以前の生まれだと分かった。 >「じゃ、私がどうするかも分かるね。」 >『けけけ、この女を殺すのかい? > お前を妹のように扱ってくれた何の罪もねぇ女をよぉ。』 >「・・・・・・魂まで、弄ばれて人外になるよりは、マシだろう。」 >「・・・・・主、来るぞ!!」 乗り移るか… ある意味で一番タチの悪い奴… それほそうと…そう言うとおり名があったんですね… カッコいい様な、微妙な様な… …そんな事要ってる場合じゃないな。 こいつ、ジュリさんを知っている…? ・ ・・・・・・この先は、結果だけ言おう。 >アメジストの《闇の宝石》に取り憑かれたメアリは、私が殺した。 >そのアメジストのブローチごと心臓を抉りだしてね。 >そして、何も告げずにその足で、エドの屋敷を飛び出した。 >しばらくは、欧州やら、亜米利加、印度、明治維新したばかりの日本にも言った。 >それから、イギリスに戻ったのは、1930年過ぎかな。 >亜米利加で、禁酒法時代が終わったあたりだったから。 >さほど、時間を置かずに、第二次世界大戦が始まった。 >こっちだと、太平洋戦争だね。 >その戦火の中で、私は、マルティナを失ったと思い・・・・・実際は一年半前まで生きていたけど・・・・ドイツに流れた。 >そこで、私は、ゲシュタポに・・・ナチスに捕まった。 >『ジプジー』としてね。 >そこで、四人目のマリヤとその兄のシャルルにね。 100年… どうしたって言うんだろう… 既に、色んな事がありすぎて… ドイツで、そこで今度こそ何があったんだろう… >「・・・・・・どうした? > ・・・・おい・・・何をする・・・・離せ・・・こら、詠太郎!!」 >詠太郎は、向かい側に座っていたジュリの隣に座ったかと思うと、彼女の華奢な身体を抱き寄せた。 >もちろん、ジュリの文句を一蹴した上でである。 >「あのな、ジュリ。 > 泣きたいときに泣けずに、後から泣きたくなったら、泣けと言ったのは、一年半前の事件の時のお前だからな。」 >「・・・・・分かった。 >・ ・神影、一時間ほどどっか行ってろ。」 >「はいはい。 > 僕らのジュリ、貴方が望むなら。」 >そして、ジュリは、あのとき流せなかった涙をこのとき初めて流せた。 …思わずやってしまったのかな… |
32499 | 夜明けすらまだ遠く・・・・ | 十叶 夕海 | 2006/5/12 11:51:08 |
記事番号32498へのコメント >こんばんは、乾です。 > >結末があっさりしているだけにショッキングで… > >でも、これは『まだ終わっていない』ですよね? こんにちは、夕海です。 そうですね、この話自体は「終わって』ます、終わってますが、『終わって』ません。 細く見たいのを数日中にのせる予定。 > >>それで その年のノエル始め・・・・・正式名称は忘れたけれど。 >>12月25日から数えて四週間前の日曜から、準備を始めるんだ。 >>あと、ノエルカレンダーとかいうやつの指令をこなしつつね。 >>指令って言っても、『顔を洗うこと』とか『親の手伝いをすること』とか、そんな簡単なの。 >>それといっしょに、ボンボンとか、チョコとか、入ってるのが、楽しみだった。 >>でもね、その年は、ノエル・・・クリスマスは人間とは祝えなかった。 > >ノエル…?それっての英国のスペル? >…無知でごめんなさい…(汗) 一応、フランス語だね。 だけど、当時は、クリスマスと言わずに、ノエルと言っていたからね。 > >とりあえず、お手伝いなどのいい事をする見返りに、プレゼントをもらうって風習かな? > >でも、また不穏な空気が漂って来て… 違います。 例えば、12月の第二水曜日にツリーを出すとか、そういう予定表が本来の役目です。 まあ、お菓子だけを食べてもいい習慣です。 その辺の記憶は、少々怪しいですが。 > >>12月10日の真夜中。 >>その前の十日間一切気配のなかった《闇の宝石(ダークジュエル)》の気配というか、波動というかそんなのが、居候していた屋敷の中―エドの妹・ビヴァリーの女性家庭教師のメアリの部屋からした。 >>今までのが、凪の海なら、その時のは、テュポンが怒り狂う嵐の海だね。 >>私は、アビゴルと神影を呼び出しながら、吸血鬼としての身体能力をフル活用して、わずか数十秒で、ほぼ対角線上にあるメアリの部屋に行った。 >>そこに、メアリは居たが、私が知る『メアリ』は居なかった。 >>・ ・・・瞳に矛盾したようだけど、闇色の光というのかなそんなのを宿し、『彼女』はいた。 >>そこへ、エドとビヴァリーや、ほかの使用人が集まってきた。 >>「・・・メアリ、なんで!!」 >>もう、手遅れだった。 >>あまり、《闇の宝石》に関わっていない私でも、そのとき解った。 >>そして、同時に彼女の簡素な寝間着の胸に、アメジストと銀で作られたブローチがあった。 >>このままだと、心を持たない夜の住人になってしまう。 > >吸い込まれるように限りなく輝く『闇』… > >正直、文章を読むだけでもその危険な感じが伝わって来ます… > >でも、メアリ嬢は何故それを身に着けてたのか… それの正体?が、補足に関わる訳です。 だから、それは今は秘密です。 > >>このままだと、心を持たない夜の住人になってしまう。 >>メアリは、母親から習ったというミートパイなんかを良く作ってくれた。 >>メアリは、私が悪夢にうなされているときに限って、良く部屋に来た。 >>メアリは、昼寝の時とかは、子守唄を良く歌ってくれた。 >>メアリは、ホントに安い花売りの花でも喜んでくれた。 >>メアリは、笑顔がすてきだった。 >>どうする?どうすればいい? >>「ジュリ様。 >> ジュリ様、今一番いい思う道選ぶいい。」 >>アビゴルが、誰もが言葉を失っていた中でそう言った。 >>「ありがと。 >> エド、みんなを遠ざけて。 >>・ ・・・・・それと、二年間ありがとう。」 >>それだけ言って、メアリの部屋と廊下を結界で区切り、この世界と切り離した。 >>・ ・・・・私の力というよりは、神影のだね。 >>しかし、それは、同時にエドやビヴァリーとの別れを意味していた。 >>今でも、ちゃんと別れが言えなかったのは、後悔している。 > >まるで、星は互いを何も知る事が無くても、引力で闇の中を惹かれ合うかのように、闇の中の『何か』を感じ取れる事に気づいている時… > >傷つきながらも、また『その時』が来た時、相手に何かできる事をするのは、決してその相手に対してだけじゃなく、同時に自分の呪縛を振り切る為の『抗い』なのかも… かも知れないですね。 ジュリは、過去を全て語ると言いながら、意図的に隠しているところもありますし? > >>『さあどうする? >> 《凍れる樹姫》よ?』 >>「・・・・・・・その名前を知っているってことは、最近生まれた訳じゃないんだね。」 >>《凍れる樹姫》というのは、私の裏の・・・特に人外に関わる業界で、アビゴルのことがあった前後から呼ばれるようになった仇名だよ。 >>特に、氷系と樹・・・木の精霊系の攻撃と補助の魔術が得手としていて、三人の美男子を従者のように従えているから、つけられたというのが、有名かつ一番もっともな由来だね。 >>でも、私がイギリスに来てからは、同族のマルティナ=シュヴィルにしか教えていなかった。 >>だから、少なくとも、1800年前後以前の生まれだと分かった。 >>「じゃ、私がどうするかも分かるね。」 >>『けけけ、この女を殺すのかい? >> お前を妹のように扱ってくれた何の罪もねぇ女をよぉ。』 >>「・・・・・・魂まで、弄ばれて人外になるよりは、マシだろう。」 >>「・・・・・主、来るぞ!!」 > >乗り移るか… >ある意味で一番タチの悪い奴… そうですね、人質と盾を両方いっぺんに手に入れる事が出来ますから。 >それほそうと…そう言うとおり名があったんですね… >カッコいい様な、微妙な様な… ちなみにだが、《こおれるいつきひめ》です。 《こおれるじゅひめ》でも、《こおれるきひめ》でもないですよ。 > >…そんな事要ってる場合じゃないな。 >こいつ、ジュリさんを知っている…? ジュリさん自信じゃなくて、風聞程度ですけどね。 それなりに、有名ですからね、ジュリは。 > >・ ・・・・・・この先は、結果だけ言おう。 >>アメジストの《闇の宝石》に取り憑かれたメアリは、私が殺した。 >>そのアメジストのブローチごと心臓を抉りだしてね。 >>そして、何も告げずにその足で、エドの屋敷を飛び出した。 >>しばらくは、欧州やら、亜米利加、印度、明治維新したばかりの日本にも言った。 >>それから、イギリスに戻ったのは、1930年過ぎかな。 >>亜米利加で、禁酒法時代が終わったあたりだったから。 >>さほど、時間を置かずに、第二次世界大戦が始まった。 >>こっちだと、太平洋戦争だね。 >>その戦火の中で、私は、マルティナを失ったと思い・・・・・実際は一年半前まで生きていたけど・・・・ドイツに流れた。 >>そこで、私は、ゲシュタポに・・・ナチスに捕まった。 >>『ジプジー』としてね。 >>そこで、四人目のマリヤとその兄のシャルルにね。 > >100年… > >どうしたって言うんだろう… > >既に、色んな事がありすぎて… > >ドイツで、そこで今度こそ何があったんだろう… それがふたたび紡がれる葉次回以降の事だ。 > >>「・・・・・・どうした? >> ・・・・おい・・・何をする・・・・離せ・・・こら、詠太郎!!」 >>詠太郎は、向かい側に座っていたジュリの隣に座ったかと思うと、彼女の華奢な身体を抱き寄せた。 >>もちろん、ジュリの文句を一蹴した上でである。 >>「あのな、ジュリ。 >> 泣きたいときに泣けずに、後から泣きたくなったら、泣けと言ったのは、一年半前の事件の時のお前だからな。」 >>「・・・・・分かった。 >>・ ・神影、一時間ほどどっか行ってろ。」 >>「はいはい。 >> 僕らのジュリ、貴方が望むなら。」 >>そして、ジュリは、あのとき流せなかった涙をこのとき初めて流せた。 > >…思わずやってしまったのかな… > 思わずですね。 一年半前のときに、同じ事をジュリがしてますし。 その時に、『私の泣き顔見たら、瞬殺よ?』と言われてるし、乾詠太郎なら、こう動くだろうな・・・・に任せたら、こうなりました。 それでは。 > |
32500 | 光への憧憬 +どうか忘れないで+ 11.5 | 十叶 夕海 | 2006/5/14 21:47:33 |
記事番号32488へのコメント 11.5 暗躍のイカレ帽子屋 「詠太郎。 夕飯でも食べてこい。 ・ ・・・それまでには落ち着いているから。」 ジュリにそう言われ、渋々、詠太郎は、外に夕食を食べにいった。 神影も何処かへ行ってしまった。 時間は、午後九時十分前。 「・・・・・いるんだろう? 《イカレ帽子屋(マッドハッター)》?」 少々白目の部分まで赤くしたジュリが、いつもにも増して不機嫌そうに・・・・・視線に物理的な力があれば、射殺せそうなくらいに・・・窓の方に言った。 「ええ、いますよ。 我らが『樹姫』?」 そう揶揄るようにからかうように、尊敬するように誰かがそう言った。 その誰かとは、今まで誰もいなかった窓際にいた。 白塗りピエロメイクを派手めに仕上げ、今回は紫色のスーツと神父服を合わせたような衣装に同色でどくろだの蝙蝠だのを彫金した飾りがついたシルクハット姿。 髪はと瞳は、赤と緑と違うが、何処か暗く濁ったような鮮烈さである。 胸が平たいところからみれば、おそらく男性だろう。 しかし、中性的な容貌があいまってか、年齢も推し量りにくい。 十代と言われても、四十代と言われても納得できそうだ。 「呼ぶな、《イカレ帽子屋(マッドハッター)》。 いや、アルベスタ=リバードラゴン?」 「その名前をそんなに敵意たっぷりで呼ばないでください。 我らが主人のいと遠き血筋の『樹姫』。」 「うるさい。 育ての親の旅芸人の団長達を殺し、 あの国の王妃王女を唆し、ソラを殺した。 メアリに、《闇の宝石(ダークジュエル)》を渡し、 《タロウマスター》をも、口で丸め込み、 マルティナを唆し、滅ぼさせた。 お前が何を言う・・・・・お前が見ているのは、結局あの地獄の第八層で眠り続けるあの悪魔の血筋を多く受け継いでいる私だ。 それを手に入れるためだけに、人を陥れ欺き死へ誘った。 ・ ・・・・・・昔、サラ師匠のところに居たときに、『アルお兄ちゃん』なんて呼んでいたなんて、今思えば、虫酸が走る!!」 ジュリは、吐き捨てるように《イカレ帽子屋》に言った。 そう、ジュリが、詠太郎に話した過去話のほぼすべてに、この《イカレ帽子屋》は関わっていた。 しかし、それをジュリは話していない。 それは、話せば、関係まで話さなくては行けない。 だから、黙っているのだ。 「ねぇ、《樹姫》。 人間に幾度背を向けられました? 数えきれないでしょう? 私たちのように、地獄の子宮(シオウル)で、 神を憎み、光を呪い、淫楽を友として悦楽に身を委ねれば、人間界にいて人に裏切られ、苦しむよりも、ずっと楽しいですよ?」 アルベスタは、そう甘い蜜のような言葉を紡ぎながら、ジュリが座る椅子に近づく。 そして、ジュリの顎を引き、口づけを落とす。 「・・・アルベスタ、私をお前達サイドに引き込みたいなら、乾詠太郎を殺せば、容易いだろう。 だけど、それは、同時に私と私の《使い魔》が、完全に対立することになる。」 「・・・・・・くすくす・・・くすくす。 分かりましたよ、今しばらくは、沈黙しましょう。 それでは、《樹姫》あるいは、《吸血鬼に近き者》 また、いつか会うまで、ご健勝であられますように。」 そうして、《イカレ帽子屋》アルベスタ=リバードラゴンは 地獄へ帰っていった。 それが何を意味するのか、この物語で語られるのはいつのことか? そして、ジュリは詠太郎が帰るまで 自信を抱き締め、いすに座り込んだままだった。 @@@@@@@@@@@@@ 補完話です。 次回から、また本筋に戻ります。 それでは、次回。 |
32505 | ジョーカーは常に地獄と逆転の狭間に… | 月読乾 | 2006/5/15 18:52:47 |
記事番号32500へのコメント こんばんは、乾です。 夕陽も長くなり、ちょっと雨が降りそうな夕方の残り陽を背に、パソコンを打っています。 >「詠太郎。 > 夕飯でも食べてこい。 >・ ・・・それまでには落ち着いているから。」 >ジュリにそう言われ、渋々、詠太郎は、外に夕食を食べにいった。 >神影も何処かへ行ってしまった。 >時間は、午後九時十分前。 >「・・・・・いるんだろう? > 《イカレ帽子屋(マッドハッター)》?」 >少々白目の部分まで赤くしたジュリが、いつもにも増して不機嫌そうに・・・・・視線に物理的な力があれば、射殺せそうなくらいに・・・窓の方に言った。 >「ええ、いますよ。 > 我らが『樹姫』?」 >そう揶揄るようにからかうように、尊敬するように誰かがそう言った。 >その誰かとは、今まで誰もいなかった窓際にいた。 …… …… …… !! 前回の話に出てきたのと同一人物(?)!!? 今もちゃんと存在していたんですね? むしろ、このジュリさんと彼(?)の会話のやり取りだけを聞くと2人はあれからも、『期が熟した』ら会っているのでしょうか? >白塗りピエロメイクを派手めに仕上げ、今回は紫色のスーツと神父服を合わせたような衣装に同色でどくろだの蝙蝠だのを彫金した飾りがついたシルクハット姿。 >髪はと瞳は、赤と緑と違うが、何処か暗く濁ったような鮮烈さである。 >胸が平たいところからみれば、おそらく男性だろう。 >しかし、中性的な容貌があいまってか、年齢も推し量りにくい。 >十代と言われても、四十代と言われても納得できそうだ イメージ的には『バットマン』のジョーカーみたいな感じ? 厚化粧に中世的な得体の知れない男(?)… 不気味な嫌悪感は感じます。 『意識して』か、 『既にそう言う者』だからか… >「呼ぶな、《イカレ帽子屋(マッドハッター)》。 > いや、アルベスタ=リバードラゴン?」 >「その名前をそんなに敵意たっぷりで呼ばないでください。 > 我らが主人のいと遠き血筋の『樹姫』。」 >「うるさい。 > 育ての親の旅芸人の団長達を殺し、 > あの国の王妃王女を唆し、ソラを殺した。 > メアリに、《闇の宝石(ダークジュエル)》を渡し、 > 《タロウマスター》をも、口で丸め込み、 > マルティナを唆し、滅ぼさせた。 > お前が何を言う・・・・・お前が見ているのは、結局あの地獄の第八層で眠り続けるあの悪魔の血筋を多く受け継いでいる私だ。 > それを手に入れるためだけに、人を陥れ欺き死へ誘った。 >・ ・・・・・・昔、サラ師匠のところに居たときに、『アルお兄ちゃん』なんて呼んでいたなんて、今思えば、虫酸が走る!!」 >ジュリは、吐き捨てるように《イカレ帽子屋》に言った。 >そう、ジュリが、詠太郎に話した過去話のほぼすべてに、この《イカレ帽子屋》は関わっていた。 !? ここに来て、何か彼女の出生に重大な物が? しかし、彼が関わっていたとなると… 今までの話そのものが裏の大きな意味も持ち始めて…? しかし、それをジュリは話していない。 >それは、話せば、関係まで話さなくては行けない。 >だから、黙っているのだ。 >「ねぇ、《樹姫》。 > 人間に幾度背を向けられました? > 数えきれないでしょう? > 私たちのように、地獄の子宮(シオウル)で、 > 神を憎み、光を呪い、淫楽を友として悦楽に身を委ねれば、人間界にいて人に裏切られ、苦しむよりも、ずっと楽しいですよ?」 >アルベスタは、そう甘い蜜のような言葉を紡ぎながら、ジュリが座る椅子に近づく。 >そして、ジュリの顎を引き、口づけを落とす。 >「・・・アルベスタ、私をお前達サイドに引き込みたいなら、乾詠太郎を殺せば、容易いだろう。 > だけど、それは、同時に私と私の《使い魔》が、完全に対立することになる。」 >「・・・・・・くすくす・・・くすくす。 >分かりましたよ、今しばらくは、沈黙しましょう。 > それでは、《樹姫》あるいは、《吸血鬼に近き者》 > また、いつか会うまで、ご健勝であられますように。」 > > > >そうして、《イカレ帽子屋》アルベスタ=リバードラゴンは > >地獄へ帰っていった。 > > >それが何を意味するのか、この物語で語られるのはいつのことか? > > > > >そして、ジュリは詠太郎が帰るまで >自信を抱き締め、いすに座り込んだままだった 大きな運命への抵抗… ここでの僅か数分にも満たない会話が、今後どういう意味を持つのでしょう… |
32506 | 艶然と微笑む・・・・ | 十叶 夕海 | 2006/5/15 20:39:12 |
記事番号32505へのコメント >こんばんは、乾です。 > >夕陽も長くなり、ちょっと雨が降りそうな夕方の残り陽を背に、パソコンを打っています。 こんばんは、ユアです、 そうですね、すっかり、日が長くなりましたね。 > > >>「詠太郎。 >> 夕飯でも食べてこい。 >>・ ・・・それまでには落ち着いているから。」 >>ジュリにそう言われ、渋々、詠太郎は、外に夕食を食べにいった。 >>神影も何処かへ行ってしまった。 >>時間は、午後九時十分前。 >>「・・・・・いるんだろう? >> 《イカレ帽子屋(マッドハッター)》?」 >>少々白目の部分まで赤くしたジュリが、いつもにも増して不機嫌そうに・・・・・視線に物理的な力があれば、射殺せそうなくらいに・・・窓の方に言った。 >>「ええ、いますよ。 >> 我らが『樹姫』?」 >>そう揶揄るようにからかうように、尊敬するように誰かがそう言った。 >>その誰かとは、今まで誰もいなかった窓際にいた。 > >…… > >…… > >…… > > > > > > > > > > > > > > > > > > > >!! >前回の話に出てきたのと同一人物(?)!!? じゃ無いです。 ・・・・と、言い切ると語弊がありますが。 そう言う種明かしも含めて、次々回での邂逅なのです。 > >今もちゃんと存在していたんですね? > >むしろ、このジュリさんと彼(?)の会話のやり取りだけを聞くと2人はあれからも、『期が熟した』ら会っているのでしょうか? 会ったのは、これを第二次世界大戦と二十年前と1年半前の3回です。 あと、今回と。 > >>白塗りピエロメイクを派手めに仕上げ、今回は紫色のスーツと神父服を合わせたような衣装に同色でどくろだの蝙蝠だのを彫金した飾りがついたシルクハット姿。 >>髪はと瞳は、赤と緑と違うが、何処か暗く濁ったような鮮烈さである。 >>胸が平たいところからみれば、おそらく男性だろう。 >>しかし、中性的な容貌があいまってか、年齢も推し量りにくい。 >>十代と言われても、四十代と言われても納得できそうだ > >イメージ的には『バットマン』のジョーカーみたいな感じ? すみません、少々分かりません。 『天使禁漁区』の登場人物からですね。 > >厚化粧に中世的な得体の知れない男(?)… > >不気味な嫌悪感は感じます。 彼の言葉を借りるなら、『光栄ですよ。私は名前の通りの『無価値』から、『有害』になれましたから』でしょうか。 > >『意識して』か、 > >『既にそう言う者』だからか… どちらでもあり、どちらでもない。 というか、バイなお人ですし/////。 > >>「呼ぶな、《イカレ帽子屋(マッドハッター)》。 >> いや、アルベスタ=リバードラゴン?」 >>「その名前をそんなに敵意たっぷりで呼ばないでください。 >> 我らが主人のいと遠き血筋の『樹姫』。」 >>「うるさい。 >> 育ての親の旅芸人の団長達を殺し、 >> あの国の王妃王女を唆し、ソラを殺した。 >> メアリに、《闇の宝石(ダークジュエル)》を渡し、 >> 《タロウマスター》をも、口で丸め込み、 >> マルティナを唆し、滅ぼさせた。 >> お前が何を言う・・・・・お前が見ているのは、結局あの地獄の第八層で眠り続けるあの悪魔の血筋を多く受け継いでいる私だ。 >> それを手に入れるためだけに、人を陥れ欺き死へ誘った。 >>・ ・・・・・・昔、サラ師匠のところに居たときに、『アルお兄ちゃん』なんて呼んでいたなんて、今思えば、虫酸が走る!!」 >>ジュリは、吐き捨てるように《イカレ帽子屋》に言った。 >>そう、ジュリが、詠太郎に話した過去話のほぼすべてに、この《イカレ帽子屋》は関わっていた。 > > >!? >ここに来て、何か彼女の出生に重大な物が? >しかし、彼が関わっていたとなると… > >今までの話そのものが裏の大きな意味も持ち始めて…? ですね。 偶然だったのか、彼に糸を引かれた偶然なのか・・・・・。 > >しかし、それをジュリは話していない。 >>それは、話せば、関係まで話さなくては行けない。 >>だから、黙っているのだ。 >>「ねぇ、《樹姫》。 >> 人間に幾度背を向けられました? >> 数えきれないでしょう? >> 私たちのように、地獄の子宮(シオウル)で、 >> 神を憎み、光を呪い、淫楽を友として悦楽に身を委ねれば、人間界にいて人に裏切られ、苦しむよりも、ずっと楽しいですよ?」 >>アルベスタは、そう甘い蜜のような言葉を紡ぎながら、ジュリが座る椅子に近づく。 >>そして、ジュリの顎を引き、口づけを落とす。 >>「・・・アルベスタ、私をお前達サイドに引き込みたいなら、乾詠太郎を殺せば、容易いだろう。 >> だけど、それは、同時に私と私の《使い魔》が、完全に対立することになる。」 >>「・・・・・・くすくす・・・くすくす。 >>分かりましたよ、今しばらくは、沈黙しましょう。 >> それでは、《樹姫》あるいは、《吸血鬼に近き者》 >> また、いつか会うまで、ご健勝であられますように。」 >> >> >> >>そうして、《イカレ帽子屋》アルベスタ=リバードラゴンは >> >>地獄へ帰っていった。 >> >> >>それが何を意味するのか、この物語で語られるのはいつのことか? >> >> >> >> >>そして、ジュリは詠太郎が帰るまで >>自信を抱き締め、いすに座り込んだままだった > >大きな運命への抵抗… > >ここでの僅か数分にも満たない会話が、今後どういう意味を持つのでしょう… そうですね。 でも、次は、1年半前の事件ですね。 ともあれ、次回、 |
32515 | 光への憧憬 +どうか忘れないで+ 12 | 十叶 夕海 | 2006/5/21 00:24:42 |
記事番号32488へのコメント 12 死なせるつもりじゃなかった 「おかえり、詠太郎。 ・ ・・・どうした?」 「いや、ジュリさん、さっきより元気なさそうだから。」 「そうか?」 心配する詠太郎の言葉をさらりと否定するジュリ。 むしろ、こういって、逆に心配する。 「詠太郎こそ、大丈夫? ご飯は食べてるけど、二晩続けて徹夜は大丈夫?」 「・・・ああ、大丈夫だ。 ライターは徹夜してなんぼだから。」 そして、ソファに二人が座り直し、詠太郎は、こう聞いてきた。 「質問なんだけど、あのアメジストはどうなったの?」 「飲んだ。」 「はい?」 「飲み込んだ。 ・ ・・あいつの端末だと知っていれば、飲み込んで取り込まなかったんだが・・・」 ジュリはあっさり言っているあたり、人外としては、至極当然のことなようだ。 「ま、ともかく四人目を話そうか。」 第二次世界大戦 その時の空襲で、マルティナと互いの生死の分からないまま、別れた後、流れ流れて、 ドイツーナチスドイツは、ユダヤ人や一部のキリスト教徒、ジプジーを収容所にいれ、虐殺していった。 私も、ジプジートして、入れられた。 おかしいよね、ジプジーは、黒髪に褐色の肌が、普通のなのに。 まあ、あれはある種の魔女狩りだね。 その時の政権に合わない人を『消す』ための・・・・ね。 どこだったかな。 少なくとも、アウシュビッツとか有名な収容所じゃない。 ぎゅうぎゅう詰めで、五十人用のテントに百人とか詰め込まれていた。 そこは、女性用と男性用のテントが隣接していてね。 私が、そこで仲良くなった兄妹も、そこに居た。 兄が、リヒャルド。 妹が、マリヤ。 ドイツで生まれたジプジーの子供だった。 兄妹二人とも、髪は薄い茶色のなのに、褐色の肌だった。 年齢は、兄が22歳、妹が 正確に言えば、ジプジーの母親が、ドイツ人との間に産まされた意に染まぬ、子供だったけれど。 でもね、明るかったよ、彼らは。 だから、逃がしたかった。 ドイツの支配圏から逃げれれば、ジプジートはいえ、最低限の人権は認められる。 だから、あの日の私は、自分とその二人を逃がすために、脱獄というのかな。 その収容所を逃げ出した。 敷地の境の鉄条網が見えた頃かな・・・・。 銃撃された。 いくら何でも、いきなり発砲してはこないだろう。 そんな甘い考えが無かったと言えば、嘘になる。 私にも、何十発単位で機関銃の弾が撃ち込まれた。 数分意識が飛んだよ。 次に、私が見たのは、ソラと神影が、ドイツ軍と交戦している姿と其れに庇われるように、兄の遺体に並んでかろうじて生きているマリヤだった。 「マリヤ?」 「ジュリ、あれ・・・ドイツ軍と戦って居るのジュリの知り合い?」 口調ははっきりしていたが、死の色は濃かった。 腹部に数発、足に数発。 一斉掃射を浴びたにしては少なかったが、人間には、致命傷だ。 その代わりに、兄の身体は、穴だらけで、遺体というよりは、肉塊という方がしっくり来るね。 「うん。」 「すごいね。 ジュリって、本当の魔法使いなんだ。」 「そうじゃない。 私は、誰も助けれない。」 「ううん、ジュリはすごいよ。 ・ ・・・ナチス野郎に、面と向かって、逆らえるのはスゴイ。」 「マリヤ、死にたくないよね?」 「うん、生きて、母さんみたいな踊り子になりたかった。」 「・・・・私の使い魔になれば叶うかもしれない・・・・・・・」 「いいよ、使い魔にして。 私が居なくなったら、ジュリ泣くでしょ?」 そうやって、私は四人目を《使い魔》にした。 その後の出来事の方が、重いというか、衝撃があったけど。 そこまで、話すと、ジュリは、一つ息を吐き、詠太郎にこう言葉を向ける。 「詠太郎は、タロットについて何を知っている? 確か、昔の同僚に、タロットを武器として使うやつが居ただろう?」 「・・・・・占い道具ですかね。 あるいは、呪具。」 その答えを予想していたかのように、ジュリは、にやりと人の・・・もとい吸血鬼の悪い微笑みを浮かべ、こう言った。 「使い魔か、使役天使というのもあるよ。 私が、エドのとことでの真実を知ったのも、彼女に会ったからだ。」 「それは、そうとして、ドイツ軍と交戦したなら、なんで記録に残ってないの? あと、ソラさん、あまり戦闘に向いてないように感じたんだけど。」 「一つ目は、科学とやら、浸透していたあの頃に、公式記録に、そんなばからしい記録が残せるはずが無いだろう。 いくら、聖杯伝説を捜索していたナチスと言えどね。 二つ目は、ウルージの件の後、森の奥とか、絶海の孤島なんかに、こもっていた時に、私と神影とアビゴルで、仕込んだ。 ほとんど、補助と回復に偏ったが、人間相手なら、格闘だけで勝てるはずだ。」 あっさりと述べられる言葉に、詠太郎は、流石に硬直していた。 日付が変わろうとする30分前のことだった。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 次回と次々回で、終われるかなという希望観測が見えてきました。 のびても、もう一回とかそんな感じでしょう。 では次回で。 |
32517 | 血と硝煙と安らぎと… | 月読 乾 | 2006/5/21 17:11:56 |
記事番号32515へのコメント こんにちは、乾です。 最近は、ダヴィンチコードの公開や、ユダの福音書の発見とかで、 中世史を覆す様なニュースが出てきましたね。 この話も、それらの一部にあるかも…と思わせる感じです。 >「おかえり、詠太郎。 >・ ・・・どうした?」 >「いや、ジュリさん、さっきより元気なさそうだから。」 >「そうか?」 >心配する詠太郎の言葉をさらりと否定するジュリ。 >むしろ、こういって、逆に心配する。 >「詠太郎こそ、大丈夫? > ご飯は食べてるけど、二晩続けて徹夜は大丈夫?」 >「・・・ああ、大丈夫だ。 > ライターは徹夜してなんぼだから。」 暗い夜が更けるまで、後数時間… その間に、話の結末も段々と近づいている気がします… 一見さり気ない会話も、夜の闇のまほろばの中での確かな記憶… >そして、ソファに二人が座り直し、詠太郎は、こう聞いてきた。 >「質問なんだけど、あのアメジストはどうなったの?」 >「飲んだ。」 >「はい?」 >「飲み込んだ。 >・ ・・あいつの端末だと知っていれば、飲み込んで取り込まなかったんだが・・・」 >ジュリはあっさり言っているあたり、人外としては、至極当然のことなようだ。 >「ま、ともかく四人目を話そうか。」 鉱石を飲み込む事そのものも充分驚いたけど、 それで処分する事の理屈がちょっと… やはり、その瘴気の様な物を吸収して、 毒気に耐えて中和するとかそう言う事…? >第二次世界大戦 >その時の空襲で、マルティナと互いの生死の分からないまま、別れた後、流れ流れて、 >ドイツーナチスドイツは、ユダヤ人や一部のキリスト教徒、ジプジーを収容所にいれ、虐殺していった。 >私も、ジプジートして、入れられた。 >おかしいよね、ジプジーは、黒髪に褐色の肌が、普通のなのに。 >まあ、あれはある種の魔女狩りだね。 >その時の政権に合わない人を『消す』ための・・・・ね。 >どこだったかな。 >少なくとも、アウシュビッツとか有名な収容所じゃない。 >ぎゅうぎゅう詰めで、五十人用のテントに百人とか詰め込まれていた。 >そこは、女性用と男性用のテントが隣接していてね。 >私が、そこで仲良くなった兄妹も、そこに居た。 >兄が、リヒャルド。 >妹が、マリヤ。 >ドイツで生まれたジプジーの子供だった。 >兄妹二人とも、髪は薄い茶色のなのに、褐色の肌だった。 >年齢は、兄が22歳、妹が >正確に言えば、ジプジーの母親が、ドイツ人との間に産まされた意に染まぬ、子供だったけれど。 >でもね、明るかったよ、彼らは。 >だから、逃がしたかった。 …逃がせば、ひょっとしたら贖罪にはなるのかも知れない… 関わりを絶って、彼等の幸福を傍観していれば過去の傷を癒せなくても、紛らわすことは… >ドイツの支配圏から逃げれれば、ジプジートはいえ、最低限の人権は認められる。 >だから、あの日の私は、自分とその二人を逃がすために、脱獄というのかな。 >その収容所を逃げ出した。 >敷地の境の鉄条網が見えた頃かな・・・・。 >銃撃された。 >いくら何でも、いきなり発砲してはこないだろう。 >そんな甘い考えが無かったと言えば、嘘になる。 >私にも、何十発単位で機関銃の弾が撃ち込まれた。 >数分意識が飛んだよ。 >次に、私が見たのは、ソラと神影が、ドイツ軍と交戦している姿と其れに庇われるように、兄の遺体に並んでかろうじて生きているマリヤだった。 >「マリヤ?」 >「ジュリ、あれ・・・ドイツ軍と戦って居るのジュリの知り合い?」 >口調ははっきりしていたが、死の色は濃かった。 >腹部に数発、足に数発。 >一斉掃射を浴びたにしては少なかったが、人間には、致命傷だ。 >その代わりに、兄の身体は、穴だらけで、遺体というよりは、肉塊という方がしっくり来るね。 繰返す事に、どうしたらいいんだろう? 自分を捨てる事で、何かをする… でも、どこかに自分の意思を叫ぶ勝手な声がする… 今はその叫びも掻き消し、どちらかを選ばないといけないけど… >「うん。」 >「すごいね。 > ジュリって、本当の魔法使いなんだ。」 >「そうじゃない。 > 私は、誰も助けれない。」 >「ううん、ジュリはすごいよ。 >・ ・・・ナチス野郎に、面と向かって、逆らえるのはスゴイ。」 >「マリヤ、死にたくないよね?」 >「うん、生きて、母さんみたいな踊り子になりたかった。」 >「・・・・私の使い魔になれば叶うかもしれない・・・・・・・」 >「いいよ、使い魔にして。 > 私が居なくなったら、ジュリ泣くでしょ?」 >そうやって、私は四人目を《使い魔》にした。 >その後の出来事の方が、重いというか、衝撃があったけど。 彼女が今に至った理由… 『その後の事』はどうなって行くのでしょう…? >そこまで、話すと、ジュリは、一つ息を吐き、詠太郎にこう言葉を向ける。 >「詠太郎は、タロットについて何を知っている? > 確か、昔の同僚に、タロットを武器として使うやつが居ただろう?」 >「・・・・・占い道具ですかね。 > あるいは、呪具。」 >その答えを予想していたかのように、ジュリは、にやりと人の・・・もとい九月の悪い微笑みを浮かべ、こう言った。 >「使い魔か、使役天使というのもあるよ。 > 私が、エドのとことでの真実を知ったのも、彼女に会ったからだ。」 >「それは、そうとして、ドイツ軍と交戦したなら、なんで記録に残ってないの? > あと、ソラさん、あまり戦闘に向いてないように感じたんだけど。」 >「一つ目は、科学とやら、浸透していたあの頃に、公式記録に、そんなばからしい記録が残せるはずが無いだろう。 > いくら、聖杯伝説を捜索していたナチスと言えどね。 > 二つ目は、ウルージの件の後、森の奥とか、絶海の孤島なんかに、こもっていた時に、私と神影とアビゴルで、仕込んだ。 > ほとんど、補助と回復に偏ったが、人間相手なら、格闘だけで勝てるはずだ。」 >あっさりと述べられる言葉に、詠太郎は、流石に硬直していた。 >日付が変わろうとする30分前のことだった。 いや、幾ら身体能力はそうでも… 戦闘向きでない相手に覚えさせるのは… 彼はどういう感じで修行を受け入れたんだろう? に、してもタロット…? まだまだ夜が更けるのは長くなりそうです。 |
32518 | 今は遠き その日・・・・・ | 十叶 夕海 | 2006/5/21 20:26:01 |
記事番号32517へのコメント >こんにちは、乾です。 こんにちは、ユアです。 > >最近は、ダヴィンチコードの公開や、ユダの福音書の発見とかで、 >中世史を覆す様なニュースが出てきましたね。 > >この話も、それらの一部にあるかも…と思わせる感じです。 歴史は、所詮、勝者の歴史。事実であっても、真実ではない。 これも、ジュリの目から見た事実です。 それに、増えるでしょうね、そう言うニュースは。 > >>「おかえり、詠太郎。 >>・ ・・・どうした?」 >>「いや、ジュリさん、さっきより元気なさそうだから。」 >>「そうか?」 >>心配する詠太郎の言葉をさらりと否定するジュリ。 >>むしろ、こういって、逆に心配する。 >>「詠太郎こそ、大丈夫? >> ご飯は食べてるけど、二晩続けて徹夜は大丈夫?」 >>「・・・ああ、大丈夫だ。 >> ライターは徹夜してなんぼだから。」 > >暗い夜が更けるまで、後数時間… >その間に、話の結末も段々と近づいている気がします… > >一見さり気ない会話も、夜の闇のまほろばの中での確かな記憶… そうですね。 時間は、刻々と、草木も眠る丑三つ時に近づきます。 > >>そして、ソファに二人が座り直し、詠太郎は、こう聞いてきた。 >>「質問なんだけど、あのアメジストはどうなったの?」 >>「飲んだ。」 >>「はい?」 >>「飲み込んだ。 >>・ ・・あいつの端末だと知っていれば、飲み込んで取り込まなかったんだが・・・」 >>ジュリはあっさり言っているあたり、人外としては、至極当然のことなようだ。 >>「ま、ともかく四人目を話そうか。」 > >鉱石を飲み込む事そのものも充分驚いたけど、 >それで処分する事の理屈がちょっと… だってね、残しといたら、どういう悪さをするか分からないでしょう? 飲み込むのは、性急すぎる気もしないでもないけど。 > >やはり、その瘴気の様な物を吸収して、 >毒気に耐えて中和するとかそう言う事…? 正解。 正気というか、その宝石の生命力というのかな、其れを吸収した上で、能力向上する訳です。 > >>第二次世界大戦 >>その時の空襲で、マルティナと互いの生死の分からないまま、別れた後、流れ流れて、 >>ドイツーナチスドイツは、ユダヤ人や一部のキリスト教徒、ジプジーを収容所にいれ、虐殺していった。 >>私も、ジプジートして、入れられた。 >>おかしいよね、ジプジーは、黒髪に褐色の肌が、普通のなのに。 >>まあ、あれはある種の魔女狩りだね。 >>その時の政権に合わない人を『消す』ための・・・・ね。 >>どこだったかな。 >>少なくとも、アウシュビッツとか有名な収容所じゃない。 >>ぎゅうぎゅう詰めで、五十人用のテントに百人とか詰め込まれていた。 >>そこは、女性用と男性用のテントが隣接していてね。 >>私が、そこで仲良くなった兄妹も、そこに居た。 >>兄が、リヒャルド。 >>妹が、マリヤ。 >>ドイツで生まれたジプジーの子供だった。 >>兄妹二人とも、髪は薄い茶色のなのに、褐色の肌だった。 >>年齢は、兄が22歳、妹が >>正確に言えば、ジプジーの母親が、ドイツ人との間に産まされた意に染まぬ、子供だったけれど。 >>でもね、明るかったよ、彼らは。 >>だから、逃がしたかった。 > >…逃がせば、ひょっとしたら贖罪にはなるのかも知れない… > >関わりを絶って、彼等の幸福を傍観していれば過去の傷を癒せなくても、紛らわすことは… そうですね。(なんか、こればっか。) それが、欺瞞とか自己満足にすぎなくても。 > > >>ドイツの支配圏から逃げれれば、ジプジートはいえ、最低限の人権は認められる。 >>だから、あの日の私は、自分とその二人を逃がすために、脱獄というのかな。 >>その収容所を逃げ出した。 >>敷地の境の鉄条網が見えた頃かな・・・・。 >>銃撃された。 >>いくら何でも、いきなり発砲してはこないだろう。 >>そんな甘い考えが無かったと言えば、嘘になる。 >>私にも、何十発単位で機関銃の弾が撃ち込まれた。 >>数分意識が飛んだよ。 >>次に、私が見たのは、ソラと神影が、ドイツ軍と交戦している姿と其れに庇われるように、兄の遺体に並んでかろうじて生きているマリヤだった。 >>「マリヤ?」 >>「ジュリ、あれ・・・ドイツ軍と戦って居るのジュリの知り合い?」 >>口調ははっきりしていたが、死の色は濃かった。 >>腹部に数発、足に数発。 >>一斉掃射を浴びたにしては少なかったが、人間には、致命傷だ。 >>その代わりに、兄の身体は、穴だらけで、遺体というよりは、肉塊という方がしっくり来るね。 > >繰返す事に、どうしたらいいんだろう? > >自分を捨てる事で、何かをする… >でも、どこかに自分の意思を叫ぶ勝手な声がする… それは分からず。 私は、ただ呆然と座り込むことしかできない。 > >今はその叫びも掻き消し、どちらかを選ばないといけないけど… だけど、後悔はしたくない。 > >>「うん。」 >>「すごいね。 >> ジュリって、本当の魔法使いなんだ。」 >>「そうじゃない。 >> 私は、誰も助けれない。」 >>「ううん、ジュリはすごいよ。 >>・ ・・・ナチス野郎に、面と向かって、逆らえるのはスゴイ。」 >>「マリヤ、死にたくないよね?」 >>「うん、生きて、母さんみたいな踊り子になりたかった。」 >>「・・・・私の使い魔になれば叶うかもしれない・・・・・・・」 >>「いいよ、使い魔にして。 >> 私が居なくなったら、ジュリ泣くでしょ?」 >>そうやって、私は四人目を《使い魔》にした。 >>その後の出来事の方が、重いというか、衝撃があったけど。 > >彼女が今に至った理由… > >『その後の事』はどうなって行くのでしょう…? 彼女は、変わらず明るかった。 それが、逆に辛いほどに。 > >>そこまで、話すと、ジュリは、一つ息を吐き、詠太郎にこう言葉を向ける。 >>「詠太郎は、タロットについて何を知っている? >> 確か、昔の同僚に、タロットを武器として使うやつが居ただろう?」 >>「・・・・・占い道具ですかね。 >> あるいは、呪具。」 >>その答えを予想していたかのように、ジュリは、にやりと人の・・・もとい九月の悪い微笑みを浮かべ、こう言った。 >>「使い魔か、使役天使というのもあるよ。 >> 私が、エドのとことでの真実を知ったのも、彼女に会ったからだ。」 >>「それは、そうとして、ドイツ軍と交戦したなら、なんで記録に残ってないの? >> あと、ソラさん、あまり戦闘に向いてないように感じたんだけど。」 >>「一つ目は、科学とやら、浸透していたあの頃に、公式記録に、そんなばからしい記録が残せるはずが無いだろう。 >> いくら、聖杯伝説を捜索していたナチスと言えどね。 >> 二つ目は、ウルージの件の後、森の奥とか、絶海の孤島なんかに、こもっていた時に、私と神影とアビゴルで、仕込んだ。 >> ほとんど、補助と回復に偏ったが、人間相手なら、格闘だけで勝てるはずだ。」 >>あっさりと述べられる言葉に、詠太郎は、流石に硬直していた。 >>日付が変わろうとする30分前のことだった。 > >いや、幾ら身体能力はそうでも… >戦闘向きでない相手に覚えさせるのは… > >彼はどういう感じで修行を受け入れたんだろう? 自分から、希望したんです。 ウルージのことでの、無力感?を後悔して。 プラス 普通の人間のように、型を教え、練習し、実践組み手を繰り返す。という方法で。 魔法も同様に。 > >に、してもタロット…? > >まだまだ夜が更けるのは長くなりそうです。 そうですね。 次回が一番長いかもです。 それでは。 |
32524 | 光への憧憬 +どうか忘れないで+ 13 | 十叶 夕海 | 2006/5/24 23:03:17 |
記事番号32488へのコメント 13 アイツとの面白くもない邂逅 「言っておくが、今から話すことは、はっきり言って、私としても忌々しいという記憶だ。」 今回、初めてだろう。 ジュリは、顔を顰め、怒りか憤りか悲しみか、そんな感情を等分に混ぜたような表情が浮かぶ。 「私は、吸血気になるまで、本当にただの人間だと思っていた。 でも、ほんの0.数パーセントの血のせいで、《タロットマスター》とも殺し合ったし、アイツとも出会った。」 「ジュリさん、話したくないなら・・・・・」 「そうも行くまいよ。」 マリヤではなくなった、マリヤを呼び出す前に、私は、今のスペインのグラナダ・・・・・そう、アルブンハラ宮殿で有名で、柘榴の街でもあるね。 そこへ行った。 アルブンハラ宮殿は、ヨーロッバ風というよりはムスリム風の宮殿でね。 ウルの住んでいた・・・・12年間住んでいた屋敷と同じ匂いがするから、あのウルの事件の後、たまに三四十年に一回来ていた。 そこでだったかな。 来てから、三日目の夜に、ライオンだかなんだかを台にした噴水の側で、月光浴をしつつ、ぼんやりしていた時のことだ。 「《凍れる樹姫》とは、貴女ですか?」 「誰かな?」 月の光のような淡い金髪に、緑色の瞳、年齢は二十歳位の白人女だった。 いろんな意味で、私と正反対のね。 「・・・不肖ながら、《タロットマスター》57代目のグロリア=ティリエと申します。」 「・・・・・・壮大な自殺者の57代目ね。 何の用? 私は、ただ思い出に耽っていただけなのだけど?」 「滅ぼしに来ました。」 さらり、とそんなことを言った。 聖母みたいな柔らかい微笑みをしたままだよ? 恐ろしったらありゃしない。 近くの丘に場所を移した。 このグロリアとは、互いの《使い魔》と術を行使して、闘った。 もう二度としたくない。 実際、ほとんど、相打ちに近かった。 ただ、私が吸血鬼だったから、生き残れた。 それだけ・・・・ッていいたいけど。 あの時は、私も死にかけていた。 あの野郎が、現れなかったら、危なかっただろうね。 ・ ・・あの野郎って言うのは、白塗りピエロメイクを派手めにして、紫色のコートにスーツのような服、同色でどくろだの蝙蝠だのを彫金した飾りがついたシルクハット姿で、おそらく男・・・・ものすごい美人で性別が分かりにくいやつだった。 髪と瞳は、吐き気がするような濁った赤と緑。 作ったような貼付けたような艶然とした微笑みを浮かべて、私を見下ろしていた。 「はじめまして、我らが《凍れる樹姫》。」 「だ・・・誰・・・だ。」 「ああと、喋らないで。」 回復というのか、無理矢理××をされるような感触と一緒に、傷が塞がるのが分かった。 視力が回復して見てみると、短い紫水晶付きの杖から、私の患部に向けていた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何者?」 「喋れる程度には、回復したようですね。 わたくしは、アルベスタ=リバードラゴン。 役職は、悪魔軍七代君主が一人、《ベリアル》です。」 「・・・・・・アルベスタとやら、何をしにきた?」 「いえいえ、貴女様の中の我が主・ルシュファー様のいと遠き血筋に目覚めていただきたいと思いまして。」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すまん、もう一度言ってくれ。」 そのアルベスタとやらの話を聞く気になぜかなっていた。 神影やソラ、アビゴルを呼ぶ気などしなかった。 「貴女に、我が主のいと遠き血筋に、目覚めていただきたいと。」 「・・・・・・本当の両親が、悪魔崇拝だったとでも?」 「いいえ、本当に遠いですよ、私が、この役目を賜る前のお話ですし。」 「なぜ、私?」 「一番濃く凝縮されておりますので。」 「失せろ。 ・ ・治してくれたのは、感謝するがな。 ・ ・・・・・・殺したければ、殺せ。」 「はいはい。 今回は、僕としても、今回のことをお知らせできたので、満足ですね。 それでは、我らが、《凍れる樹姫》。 また、会いましょう。」 「じゅ、じゅ、ジュリさん?」 「どうした、詠太郎。 素っ頓狂な声をあげて。」 ジュリは、こう言っていたが、ベリアルーグレイターデーモンクラスのことを話されて、驚かない人間が居るんだろうか? あの仕事をしていた乾詠太郎なら、なおさらだろう。 あの仕事の時は、相手にしていたのは、せいぜい中級悪魔までで、先輩が何度か退治したという話を聞いていた位だった。 「・・・・ベリアルと言っても、二代目以降だ。 初代ほどではないさ。」 「それでも・・・・・」 「くすくす、そんなに、私が心配だったか?」 「それもあるけど。」 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ 予定の半分しか、入りませんでした。 もう一回分、増えそうです。 では次回。 |
32536 | 13番目はジョーカーの数字。 | 月読 乾 | 2006/5/29 20:32:01 |
記事番号32524へのコメント >「言っておくが、今から話すことは、はっきり言って、私としても忌々しいという記憶だ。」 >今回、初めてだろう。 >ジュリは、顔を顰め、怒りか憤りか悲しみか、そんな感情を等分に混ぜたような表情が浮かぶ。 >「私は、吸血気になるまで、本当にただの人間だと思っていた。 > でも、ほんの0.数パーセントの血のせいで、《タロットマスター》とも殺し合ったし、アイツとも出会った。」 >「ジュリさん、話したくないなら・・・・・」 >「そうも行くまいよ。」 自分だと思っていた物が、そう思っていただけ… 事実だと思っていた事が、そう信じていただけ… 真実だと思っていた話が、そう感じていただけ… 虚像だと思っていた物が、そう思いたかっただけ… 嘘だと思っていた事が、そう信じたかっただけ… 幻想だと思っていた話が、そう感じたかっただけ… でも、そんな事はどこにも誰にもある事だから… ほんの少しつつけば、現実と異形の間にある物の境界は、限りなくゼロに近くなってしまう… ひょっとしたら、欺瞞と現実と真実を彷徨いながら何かを掴もうとしているのは、ちょっときっかけがあればどこにでも、誰にでも… >マリヤではなくなった、マリヤを呼び出す前に、私は、今のスペインのグラナダ・・・・・そう、アルブンハラ宮殿で有名で、柘榴の街でもあるね。 >そこへ行った。 >アルブンハラ宮殿は、ヨーロッバ風というよりはムスリム風の宮殿でね。 >ウルの住んでいた・・・・12年間住んでいた屋敷と同じ匂いがするから、あのウルの事件の後、たまに三四十年に一回来ていた。 >そこでだったかな。 >来てから、三日目の夜に、ライオンだかなんだかを台にした噴水の側で、月光浴をしつつ、ぼんやりしていた時のことだ。 >「《凍れる樹姫》とは、貴女ですか?」 >「誰かな?」 >月の光のような淡い金髪に、緑色の瞳、年齢は二十歳位の白人女だった。 >いろんな意味で、私と正反対のね。 >「・・・不肖ながら、《タロットマスター》57代目のグロリア=ティリエと申します。」 >「・・・・・・壮大な自殺者の57代目ね。 考えてみれば、結構律儀だ… 一年毎の初詣に行く習慣を守れるのと、どっちか難しいんだろう…(時流の問題もありそうだし。)? しかし、このタロットマスターの57代目…? 起源とか、大体どう言う形で世代が変わるのか、色々と気になりますね。 > 何の用? > 私は、ただ思い出に耽っていただけなのだけど?」 >「滅ぼしに来ました。」 >さらり、とそんなことを言った。 >聖母みたいな柔らかい微笑みをしたままだよ? >恐ろしったらありゃしない。 あまりにも、『壮大なさり気ない』相手には、世俗的な言葉の一つを吐かないとやってられないのかな? 因縁は、これから分かるのでしょうか? >近くの丘に場所を移した。 >このグロリアとは、互いの《使い魔》と術を行使して、闘った。 >もう二度としたくない。 >実際、ほとんど、相打ちに近かった。 >ただ、私が吸血鬼だったから、生き残れた。 >それだけ・・・・ッていいたいけど。 >あの時は、私も死にかけていた。 >あの野郎が、現れなかったら、危なかっただろうね。 >・ ・・あの野郎って言うのは、白塗りピエロメイクを派手めにして、紫色のコートにスーツのような服、同色でどくろだの蝙蝠だのを彫金した飾りがついたシルクハット姿で、おそらく男・・・・ものすごい美人で性別が分かりにくいやつだった。 >髪と瞳は、吐き気がするような濁った赤と緑。 >作ったような貼付けたような艶然とした微笑みを浮かべて、私を見下ろしていた。 >「はじめまして、我らが《凍れる樹姫》。」 >「だ・・・誰・・・だ。」 >「ああと、喋らないで。」 >回復というのか、無理矢理××をされるような感触と一緒に、傷が塞がるのが分かった。 >視力が回復して見てみると、短い紫水晶付きの杖から、私の患部に向けていた。 良く分からないけど、そこまで想像を絶する凄まじさ? それも、単に強大な戦闘力があるからとか、残虐な凶暴さのあるからとかじゃなくて、もっと根っこからの怖さを感じるもの? そして、この人か… この人を例えどの状況で会っても一般人ですと思うのは、ダ・ヴィンチの聖杯の謎を解くよりも難しいんだろうな… >「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何者?」 >「喋れる程度には、回復したようですね。 > わたくしは、アルベスタ=リバードラゴン。 > 役職は、悪魔軍七代君主が一人、《ベリアル》です。」 >「・・・・・・アルベスタとやら、何をしにきた?」 >「いえいえ、貴女様の中の我が主・ルシュファー様のいと遠き血筋に目覚めていただきたいと思いまして。」 >「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すまん、もう一度言ってくれ。」 >そのアルベスタとやらの話を聞く気になぜかなっていた。 >神影やソラ、アビゴルを呼ぶ気などしなかった。 >「貴女に、我が主のいと遠き血筋に、目覚めていただきたいと。」 >「・・・・・・本当の両親が、悪魔崇拝だったとでも?」 >「いいえ、本当に遠いですよ、私が、この役目を賜る前のお話ですし。」 >「なぜ、私?」 >「一番濃く凝縮されておりますので。」 >「失せろ。 >・ ・治してくれたのは、感謝するがな。 >・ ・・・・・・殺したければ、殺せ。」 >「はいはい。 > 今回は、僕としても、今回のことをお知らせできたので、満足ですね。 > それでは、我らが、《凍れる樹姫》。 > また、会いましょう。」 いや、ストレートすぎる話ですね… 向こうが、既に承諾するとかそうじゃない話と知ってて言ってる様な気が… >「じゅ、じゅ、ジュリさん?」 >「どうした、詠太郎。 > 素っ頓狂な声をあげて。」 >ジュリは、こう言っていたが、ベリアルーグレイターデーモンクラスのことを話されて、驚かない人間が居るんだろうか? >あの仕事をしていた乾詠太郎なら、なおさらだろう。 >あの仕事の時は、相手にしていたのは、せいぜい中級悪魔までで、先輩が何度か退治したという話を聞いていた位だった。 >「・・・・ベリアルと言っても、二代目以降だ。 > 初代ほどではないさ。」 >「それでも・・・・・」 >「くすくす、そんなに、私が心配だったか?」 >「それもあるけど。」 ん?一体どう言う因縁が? |
32537 | さすればこそ、切り札になりうる | 十叶 夕海 | 2006/5/29 21:52:10 |
記事番号32536へのコメント >>「言っておくが、今から話すことは、はっきり言って、私としても忌々しいという記憶だ。」 >>今回、初めてだろう。 >>ジュリは、顔を顰め、怒りか憤りか悲しみか、そんな感情を等分に混ぜたような表情が浮かぶ。 >>「私は、吸血気になるまで、本当にただの人間だと思っていた。 >> でも、ほんの0.数パーセントの血のせいで、《タロットマスター》とも殺し合ったし、アイツとも出会った。」 >>「ジュリさん、話したくないなら・・・・・」 >>「そうも行くまいよ。」 > > >自分だと思っていた物が、そう思っていただけ… >事実だと思っていた事が、そう信じていただけ… >真実だと思っていた話が、そう感じていただけ… >虚像だと思っていた物が、そう思いたかっただけ… >嘘だと思っていた事が、そう信じたかっただけ… >幻想だと思っていた話が、そう感じたかっただけ… > >でも、そんな事はどこにも誰にもある事だから… >ほんの少しつつけば、現実と異形の間にある物の境界は、限りなくゼロに近くなってしまう… > >ひょっとしたら、欺瞞と現実と真実を彷徨いながら何かを掴もうとしているのは、ちょっときっかけがあればどこにでも、誰にでも… 的確過ぎます、乾さん。すごいですよ。 其れが故に、ジュリ嬢は迷っている。 > >>マリヤではなくなった、マリヤを呼び出す前に、私は、今のスペインのグラナダ・・・・・そう、アルブンハラ宮殿で有名で、柘榴の街でもあるね。 >>そこへ行った。 >>アルブンハラ宮殿は、ヨーロッバ風というよりはムスリム風の宮殿でね。 >>ウルの住んでいた・・・・12年間住んでいた屋敷と同じ匂いがするから、あのウルの事件の後、たまに三四十年に一回来ていた。 >>そこでだったかな。 >>来てから、三日目の夜に、ライオンだかなんだかを台にした噴水の側で、月光浴をしつつ、ぼんやりしていた時のことだ。 >>「《凍れる樹姫》とは、貴女ですか?」 >>「誰かな?」 >>月の光のような淡い金髪に、緑色の瞳、年齢は二十歳位の白人女だった。 >>いろんな意味で、私と正反対のね。 >>「・・・不肖ながら、《タロットマスター》57代目のグロリア=ティリエと申します。」 >>「・・・・・・壮大な自殺者の57代目ね。 > >考えてみれば、結構律儀だ… > >一年毎の初詣に行く習慣を守れるのと、どっちか難しいんだろう…(時流の問題もありそうだし。)? そうですね。 でも、律儀で剣呑なお嬢さんって、どうなんでしょう? > >しかし、このタロットマスターの57代目…? > >起源とか、大体どう言う形で世代が変わるのか、色々と気になりますね。 ダライラマに似てますね。 一応、もう語るべくもない、ことになりかけてますが。 > >> 何の用? >> 私は、ただ思い出に耽っていただけなのだけど?」 >>「滅ぼしに来ました。」 >>さらり、とそんなことを言った。 >>聖母みたいな柔らかい微笑みをしたままだよ? >>恐ろしったらありゃしない。 > >あまりにも、『壮大なさり気ない』相手には、世俗的な言葉の一つを吐かないとやってられないのかな? > >因縁は、これから分かるのでしょうか? そうです、本当は、もっと伏せ字だらけな台詞にしたかったんですけど。 因縁は・・・・シリーズの評判次第ということで。 > >>近くの丘に場所を移した。 >>このグロリアとは、互いの《使い魔》と術を行使して、闘った。 >>もう二度としたくない。 >>実際、ほとんど、相打ちに近かった。 >>ただ、私が吸血鬼だったから、生き残れた。 >>それだけ・・・・ッていいたいけど。 >>あの時は、私も死にかけていた。 >>あの野郎が、現れなかったら、危なかっただろうね。 >>・ ・・あの野郎って言うのは、白塗りピエロメイクを派手めにして、紫色のコートにスーツのような服、同色でどくろだの蝙蝠だのを彫金した飾りがついたシルクハット姿で、おそらく男・・・・ものすごい美人で性別が分かりにくいやつだった。 >>髪と瞳は、吐き気がするような濁った赤と緑。 >>作ったような貼付けたような艶然とした微笑みを浮かべて、私を見下ろしていた。 >>「はじめまして、我らが《凍れる樹姫》。」 >>「だ・・・誰・・・だ。」 >>「ああと、喋らないで。」 >>回復というのか、無理矢理××をされるような感触と一緒に、傷が塞がるのが分かった。 >>視力が回復して見てみると、短い紫水晶付きの杖から、私の患部に向けていた。 > >良く分からないけど、そこまで想像を絶する凄まじさ? >それも、単に強大な戦闘力があるからとか、残虐な凶暴さのあるからとかじゃなくて、もっと根っこからの怖さを感じるもの? 単に、ここまで、勢力戦はやりたくない。 それにね、アイツは、周りに被害が及ばないように闘っていたけど、其れをしていないアイツを相手にしてれば、負けてた。 > >そして、この人か… > >この人を例えどの状況で会っても一般人ですと思うのは、ダ・ヴィンチの聖杯の謎を解くよりも難しいんだろうな… そうですね。 これから先も、ジュリと乾にちょっかいかけてくるでしょうし. > >>「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・何者?」 >>「喋れる程度には、回復したようですね。 >> わたくしは、アルベスタ=リバードラゴン。 >> 役職は、悪魔軍七代君主が一人、《ベリアル》です。」 >>「・・・・・・アルベスタとやら、何をしにきた?」 >>「いえいえ、貴女様の中の我が主・ルシュファー様のいと遠き血筋に目覚めていただきたいと思いまして。」 >>「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・すまん、もう一度言ってくれ。」 >>そのアルベスタとやらの話を聞く気になぜかなっていた。 >>神影やソラ、アビゴルを呼ぶ気などしなかった。 >>「貴女に、我が主のいと遠き血筋に、目覚めていただきたいと。」 >>「・・・・・・本当の両親が、悪魔崇拝だったとでも?」 >>「いいえ、本当に遠いですよ、私が、この役目を賜る前のお話ですし。」 >>「なぜ、私?」 >>「一番濃く凝縮されておりますので。」 >>「失せろ。 >>・ ・治してくれたのは、感謝するがな。 >>・ ・・・・・・殺したければ、殺せ。」 >>「はいはい。 >> 今回は、僕としても、今回のことをお知らせできたので、満足ですね。 >> それでは、我らが、《凍れる樹姫》。 >> また、会いましょう。」 > >いや、ストレートすぎる話ですね… > >向こうが、既に承諾するとかそうじゃない話と知ってて言ってる様な気が… 鋭いです。 アイツは、承諾云々以前に、挨拶をする必要があって出てきた感じですし。 > >>「じゅ、じゅ、ジュリさん?」 >>「どうした、詠太郎。 >> 素っ頓狂な声をあげて。」 >>ジュリは、こう言っていたが、ベリアルーグレイターデーモンクラスのことを話されて、驚かない人間が居るんだろうか? >>あの仕事をしていた乾詠太郎なら、なおさらだろう。 >>あの仕事の時は、相手にしていたのは、せいぜい中級悪魔までで、先輩が何度か退治したという話を聞いていた位だった。 >>「・・・・ベリアルと言っても、二代目以降だ。 >> 初代ほどではないさ。」 >>「それでも・・・・・」 >>「くすくす、そんなに、私が心配だったか?」 >>「それもあるけど。」 > >ん?一体どう言う因縁が? それは、これ以降に。 というか、1年半前に、ジュリは知ってて、からかってます。 |
32534 | 光への憧憬 +どうか忘れないで+ 14 | 十叶 夕海 | 2006/5/28 19:38:38 |
記事番号32488へのコメント 14 奪うモノが与えられた小ちゃな希望(ひかり) 「・・・・・・所で、詠太郎。 この下に、《ブラックコール》って、喫茶店あるの知ってる?」 「ああ、俺と同じくらいの店主の。」 「・・・・そいつが、私の息子だ。」 「はあ!!?」 ジュリの突然の話題変換に、詠太郎は、まともな言葉を返す余裕すらない。 それに、半分呆れ、こう返す。 「・・・・義理だ義理。 養子ってやつ。」 「なんで?」 「話すよ、その辺も含めて。」 タロッとマスターと闘って、三十年近くは、世界中・・・特にアメリカとかアジアとか、意識的にヨーロッパに避けてたね。 日本に来たのは、三十年近く前。 それでも、日本中を放浪してた。 この街に落ち着いたのは、二十三年二十四年前かな。 放浪するなかで、仲良くなった妖魔・真澄司乃っていう結構な美人さん。 緩いウェーブな鳶色というのかなそんな肩ぐらいの髪に、青いすみれ色の瞳、長身だし、日本人にしては彫りが深い顔。 そいつのところにいた。 元々、明治維新前後の日本に来た時に、知り合ってね。 その時から、口は悪いし、横柄だし。 しょうがないとは思っていた。 そういう風に思わせてくれるやつだった。 実際ね、そいつ千年前の安倍晴明が生きていた頃から、生きている妖魔でね。 主である真澄某が、急死したんで、人間の形に封じられたまま千年以上生きてる変わり種だね。 揶揄すれば、それ以上に強烈な皮肉で返すようなやつだった。 でもね、そう言うやつなのに、結構世話好きなんだ。 だから、しばらく居候してた。 そんな日々のある日のこと・・・・・。 雨が降っていた。 土砂降りって言うのも生温いぐらいの雨が一日中降っていて、夕方になって土砂降り程度になっていたから、買い物にいこうと下におりたんだ。 ああと、司乃は、ここと同じようなビルで・・・・向こうは二階建てだったけど・・・・一階で骨董品屋をやっていて、二階が住居だった。 それでね、一階の階段口に少しスペースがあるんだけど、そこに一人の乳児が座り込んでいた。 赤ん坊というほどではないが、やっと歩き始めたような男の子だった。 黒い髪は、雨で、瞳は涙で、それぞれ濡れていた。 暖かそうな小さなダッフルコートを来ていたが、其れも濡れて用をなしていなかった。 「どうした?」 と聞きは、したけど、まだ喋れそうにも無い乳児だった。 胸に、『この子の名前は、都筑 俊。1980年10月3日です。』と書かれたプレートをつけていた。 「俊・・ね。」 私は、その乳児を抱えると隣にある子供服の店に行った。 運良く開いていて、服一式を買い、風呂を借りた。 そこの女オーナーリンコさんは、おしゃべり好きだから、次の日に商店街中に広がることを確信していたが。 『一歳半なら、ミルクと離乳食は、併用した方がいいわよ』という言葉を受け、俊を連れ、司乃のビルに戻った。 「馬鹿か?」 「ほっとけないでしょ?」 「それは、認めるけど。 一緒に買い物に行く。 その分じゃ、ガキに何を買っていいか分からないだろう?」 「まあね。」 「あのソラとか言うのも、出しておけ。 パンツスタイルでも、女で通用するだろうからな。」 それで、結局、俊の親は見つからなかったせいもあったし、数年前に作った私の『上条樹里』としての養子になった。 初めてだったかもしれないね。 それまで、奪うものだった私が、何かを与えることが出来たのは・・・・。 「お母さん」 そう呼ばれると、なんかむず痒いけど、嬉しかったね。 あの子は、自慢の息子。 そう胸を張って言える。 ・ ・・・あの子に出会って、数年後。 古い知り合いに、招待されて、軽井沢だったかな。 そこで、天春市楼(あまかす・いちろう)に出会った。 おまけに、盗難殺人事件に巻き込まれて、探偵役を一緒に勤めたねぇ。 いろいろ、私たちとあったのに、それでも、人外を受け入れてくれた。 あと、普通自動車の免許を取得したのも、そのくらいだ。 その後だったね。 この時の縁が元で、このビルを天春に売ってもらってすぐ、だね。 あのアルベスタ=リバードラゴンが、現れたのは。 天春の雑誌のコラムをあげた日だった。 当時六歳の俊を寝かしつけて、『狩りにでも行くか』と、居間を通り、玄関に出ようとした時、居間から、声をかけられた。 「お久しぶりです。 40年ぶりでしょうか?」 闇色の正装に、悪趣味なシルクハット、そう二代目のベリアル。 「それが?」 「いえいえ、《凍れる樹姫》が、幼子を拾ったと魔大公からお聞きしまして。」 「アスタロトが?」 「ええ、とても可愛い御子だそうで。」 「・・・・・・手を出したら、滅ぼすぞ?」 私は、殺されるのすら覚悟して、言葉を返した。 しかし、其れに対して、『おほほほ』と、声をあげて高笑い?をするアルベスタ。 「分かっておりますよ。 それでは、ご健勝であられてください。 御子様も・・・・・・ね。」 そうとだけいうと、指を一本顔の横に立て、にこやかに妖艶に微笑むと、霧がほどけるように消えた。 それから、二十年近く。 俊は、高校を出た後、喫茶店を開くために、修行に行ったし、私も、探偵業で名前が売れ始めていた。 親バカかもしれないが、俊は容姿端麗・文武両道でね。 県下で一番難関の高校で、10番以内の成績だし、弓道部の主将もしていたし、バレンタインとか誕生日なんかになると、山ほど、もらってね。 迎えに行かなくちゃ行けないくらいだった。 可愛かったし、愛おしかったね、俊は。 八百年ほど生きて来たなかで、穏やかすぎる時間だった。 そして、三年ほど前に、空き店舗だった一階に『ブラックコール』が開店して。 さらに、1年半後。 1年半前に、あの事件で、お前に出会ったのさ。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ ということで、次回で完結です。 それでは、次回をお楽しみに。 |
32548 | 全ての終息は静かな日の店の前で少しずつ… | 乾 | 2006/6/4 22:53:22 |
記事番号32534へのコメント こんばんは。 柄にも無く忙しい事があり、レスが遅くなってしまいました… 言い訳はともかく、後1話でこの物語りも完結? とにかく、レスさせてもらいますね。 >「・・・・・・所で、詠太郎。 > この下に、《ブラックコール》って、喫茶店あるの知ってる?」 >「ああ、俺と同じくらいの店主の。」 >「・・・・そいつが、私の息子だ。」 >「はあ!!?」 >ジュリの突然の話題変換に、詠太郎は、まともな言葉を返す余裕すらない。 >それに、半分呆れ、こう返す。 >「・・・・義理だ義理。 > 養子ってやつ。」 >「なんで?」 >「話すよ、その辺も含めて。」 昼ドラ…(汗)? いえ…色々と言いたい事はありますが、いきなり顔馴染みが顔馴染みの息子だと(血縁、非血縁とか以前に、親子…)言われましても… 最も、それも訳ありだって事だからだそうですし、一体何が? >タロッとマスターと闘って、三十年近くは、世界中・・・特にアメリカとかアジアとか、意識的にヨーロッパに避けてたね。 >日本に来たのは、三十年近く前。 >それでも、日本中を放浪してた。 >この街に落ち着いたのは、二十三年二十四年前かな。 >放浪するなかで、仲良くなった妖魔・真澄司乃っていう結構な美人さん。 >緩いウェーブな鳶色というのかなそんな肩ぐらいの髪に、青いすみれ色の瞳、長身だし、日本人にしては彫りが深い顔。 >そいつのところにいた。 >元々、明治維新前後の日本に来た時に、知り合ってね。 >その時から、口は悪いし、横柄だし。 >しょうがないとは思っていた。 >そういう風に思わせてくれるやつだった。 正直、前の30年の範囲に比べたらアジアの小国の中は単純な範囲では、比較にならない狭さだけど、それでも事実上、文化と気候の違うところと言う意味では、やはり未知の領域なのでしょうか? 最初の7年間の間、日本でどんなとこを廻って来たのかも気になるけど、気になる『匂い』を持つ人が、ついにこの国でも現れる事になったと… >実際ね、そいつ千年前の安倍晴明が生きていた頃から、生きている妖魔でね。 >主である真澄某が、急死したんで、人間の形に封じられたまま千年以上生きてる変わり種だね。 >揶揄すれば、それ以上に強烈な皮肉で返すようなやつだった。 >でもね、そう言うやつなのに、結構世話好きなんだ。 >だから、しばらく居候してた。 どう言う感じで過ごして来たのか… 下手に自分と同じ境遇だと、嫌悪になるか好意になるか…がありがちですが、こう言う形で彼女の話になった以上は、そんな単純な間柄では無い事になる? 後、揶揄すれば返す…は、どっちから問題があるのか(汗) >そんな日々のある日のこと・・・・・。 >雨が降っていた。 >土砂降りって言うのも生温いぐらいの雨が一日中降っていて、夕方になって土砂降り程度になっていたから、買い物にいこうと下におりたんだ。 >ああと、司乃は、ここと同じようなビルで・・・・向こうは二階建てだったけど・・・・一階で骨董品屋をやっていて、二階が住居だった。 >それでね、一階の階段口に少しスペースがあるんだけど、そこに一人の乳児が座り込んでいた。 >赤ん坊というほどではないが、やっと歩き始めたような男の子だった。 >黒い髪は、雨で、瞳は涙で、それぞれ濡れていた。 >暖かそうな小さなダッフルコートを来ていたが、其れも濡れて用をなしていなかった。 >「どうした?」 >と聞きは、したけど、まだ喋れそうにも無い乳児だった。 >胸に、『この子の名前は、都筑 俊。1980年10月3日です。』と書かれたプレートをつけていた。 >「俊・・ね。」 !? 捨てられた…子? 何故、名前を付けて生年月日も書いたのでしょうか? 普通に考えれば、子供を事情で捨てる場合、逆に身元は明かさない…と思うのですが… それとも、『そう言う子供にする』為の言葉? >私は、その乳児を抱えると隣にある子供服の店に行った。 >運良く開いていて、服一式を買い、風呂を借りた。 >そこの女オーナーリンコさんは、おしゃべり好きだから、次の日に商店街中に広がることを確信していたが。 >『一歳半なら、ミルクと離乳食は、併用した方がいいわよ』という言葉を受け、俊を連れ、司乃のビルに戻った。 >「馬鹿か?」 >「ほっとけないでしょ?」 >「それは、認めるけど。 > 一緒に買い物に行く。 > その分じゃ、ガキに何を買っていいか分からないだろう?」 >「まあね。」 >「あのソラとか言うのも、出しておけ。 > パンツスタイルでも、女で通用するだろうからな。」 >それで、結局、俊の親は見つからなかったせいもあったし、数年前に作った私の『上条樹里』としての養子になった。 >初めてだったかもしれないね。 >それまで、奪うものだった私が、何かを与えることが出来たのは・・・・。 >「お母さん」 >そう呼ばれると、なんかむず痒いけど、嬉しかったね。 >あの子は、自慢の息子。 >そう胸を張って言える。 >・ ・・・あの子に出会って、数年後。 >古い知り合いに、招待されて、軽井沢だったかな。 >そこで、天春市楼(あまかす・いちろう)に出会った。 >おまけに、盗難殺人事件に巻き込まれて、探偵役を一緒に勤めたねぇ。 >いろいろ、私たちとあったのに、それでも、人外を受け入れてくれた。 >あと、普通自動車の免許を取得したのも、そのくらいだ。 >その後だったね。 >この時の縁が元で、このビルを天春に売ってもらってすぐ、だね。 >あのアルベスタ=リバードラゴンが、現れたのは。 >天春の雑誌のコラムをあげた日だった。 >当時六歳の俊を寝かしつけて、『狩りにでも行くか』と、居間を通り、玄関に出ようとした時、居間から、声をかけられた。 >「お久しぶりです。 > 40年ぶりでしょうか?」 >闇色の正装に、悪趣味なシルクハット、そう二代目のベリアル。 >「それが?」 >「いえいえ、《凍れる樹姫》が、幼子を拾ったと魔大公からお聞きしまして。」 >「アスタロトが?」 >「ええ、とても可愛い御子だそうで。」 >「・・・・・・手を出したら、滅ぼすぞ?」 >私は、殺されるのすら覚悟して、言葉を返した。 >しかし、其れに対して、『おほほほ』と、声をあげて高笑い?をするアルベスタ。 >「分かっておりますよ。 > それでは、ご健勝であられてください。 > 御子様も・・・・・・ね。」 >そうとだけいうと、指を一本顔の横に立て、にこやかに妖艶に微笑むと、霧がほどけるように消えた。 >それから、二十年近く。 >俊は、高校を出た後、喫茶店を開くために、修行に行ったし、私も、探偵業で名前が売れ始めていた。 >親バカかもしれないが、俊は容姿端麗・文武両道でね。 >県下で一番難関の高校で、10番以内の成績だし、弓道部の主将もしていたし、バレンタインとか誕生日なんかになると、山ほど、もらってね。 >迎えに行かなくちゃ行けないくらいだった。 >可愛かったし、愛おしかったね、俊は。 >八百年ほど生きて来たなかで、穏やかすぎる時間だった。 >そして、三年ほど前に、空き店舗だった一階に『ブラックコール』が開店して。 >さらに、1年半後。 >1年半前に、あの事件で、お前に出会ったのさ。 ここ最近、『今この瞬間』では、一番新しい『遭遇』? 俊さんは、この話にどう言う意味があるんでしょうか? |
32549 | 迎え・・・・そしてまた始まる。 | 十叶 夕海 | 2006/6/5 14:38:02 |
記事番号32548へのコメント >こんばんは。 >柄にも無く忙しい事があり、レスが遅くなってしまいました… こんばんは。 こっちは、完全までは行きませんが、それなりに回復しました。 > >言い訳はともかく、後1話でこの物語りも完結? >とにかく、レスさせてもらいますね。 > 『どうか忘れないで』としては、終わりです。 まだ、とりあえずにしても、後一つ物語がありますし。 >>「・・・・・・所で、詠太郎。 >> この下に、《ブラックコール》って、喫茶店あるの知ってる?」 >>「ああ、俺と同じくらいの店主の。」 >>「・・・・そいつが、私の息子だ。」 >>「はあ!!?」 >>ジュリの突然の話題変換に、詠太郎は、まともな言葉を返す余裕すらない。 >>それに、半分呆れ、こう返す。 >>「・・・・義理だ義理。 >> 養子ってやつ。」 >>「なんで?」 >>「話すよ、その辺も含めて。」 > >昼ドラ…(汗)? > >いえ…色々と言いたい事はありますが、いきなり顔馴染みが顔馴染みの息子だと(血縁、非血縁とか以前に、親子…)言われましても… > >最も、それも訳ありだって事だからだそうですし、一体何が? 確かに(苦笑) まあ、彼には彼の物語があるのです。 > >>タロッとマスターと闘って、三十年近くは、世界中・・・特にアメリカとかアジアとか、意識的にヨーロッパに避けてたね。 >>日本に来たのは、三十年近く前。 >>それでも、日本中を放浪してた。 >>この街に落ち着いたのは、二十三年二十四年前かな。 >>放浪するなかで、仲良くなった妖魔・真澄司乃っていう結構な美人さん。 >>緩いウェーブな鳶色というのかなそんな肩ぐらいの髪に、青いすみれ色の瞳、長身だし、日本人にしては彫りが深い顔。 >>そいつのところにいた。 >>元々、明治維新前後の日本に来た時に、知り合ってね。 >>その時から、口は悪いし、横柄だし。 >>しょうがないとは思っていた。 >>そういう風に思わせてくれるやつだった。 > >正直、前の30年の範囲に比べたらアジアの小国の中は単純な範囲では、比較にならない狭さだけど、それでも事実上、文化と気候の違うところと言う意味では、やはり未知の領域なのでしょうか? そうだね。 前に行った場所でも、時代が違えばまた、違う領域だしね。 > >最初の7年間の間、日本でどんなとこを廻って来たのかも気になるけど、気になる『匂い』を持つ人が、ついにこの国でも現れる事になったと… そのうち、三年は、日本中を回ったけど、同じ国で郷土料理がここまで違うのはすごいね。 > >>実際ね、そいつ千年前の安倍晴明が生きていた頃から、生きている妖魔でね。 >>主である真澄某が、急死したんで、人間の形に封じられたまま千年以上生きてる変わり種だね。 >>揶揄すれば、それ以上に強烈な皮肉で返すようなやつだった。 >>でもね、そう言うやつなのに、結構世話好きなんだ。 >>だから、しばらく居候してた。 > >どう言う感じで過ごして来たのか… それなりに、安穏と。 争いがないけど、まるきり平穏でもなしに。 > >下手に自分と同じ境遇だと、嫌悪になるか好意になるか…がありがちですが、こう言う形で彼女の話になった以上は、そんな単純な間柄では無い事になる? あえて言うなら、好意の仲にも、嫌悪を混ぜた仲というのが近いでしょうか。 > >後、揶揄すれば返す…は、どっちから問題があるのか(汗) 両方に(即断言) (口)喧嘩するほど仲がいいともいうし。 > >>そんな日々のある日のこと・・・・・。 >>雨が降っていた。 >>土砂降りって言うのも生温いぐらいの雨が一日中降っていて、夕方になって土砂降り程度になっていたから、買い物にいこうと下におりたんだ。 >>ああと、司乃は、ここと同じようなビルで・・・・向こうは二階建てだったけど・・・・一階で骨董品屋をやっていて、二階が住居だった。 >>それでね、一階の階段口に少しスペースがあるんだけど、そこに一人の乳児が座り込んでいた。 >>赤ん坊というほどではないが、やっと歩き始めたような男の子だった。 >>黒い髪は、雨で、瞳は涙で、それぞれ濡れていた。 >>暖かそうな小さなダッフルコートを来ていたが、其れも濡れて用をなしていなかった。 >>「どうした?」 >>と聞きは、したけど、まだ喋れそうにも無い乳児だった。 >>胸に、『この子の名前は、都筑 俊。1980年10月3日です。』と書かれたプレートをつけていた。 >>「俊・・ね。」 > >!? >捨てられた…子? > >何故、名前を付けて生年月日も書いたのでしょうか? > >普通に考えれば、子供を事情で捨てる場合、逆に身元は明かさない…と思うのですが… > >それとも、『そう言う子供にする』為の言葉? 鋭いね。 名前は、ともかく生年月日は、その年の男の子というための定義付けだったね。 藤の童だしね。 > > >>私は、その乳児を抱えると隣にある子供服の店に行った。 >>運良く開いていて、服一式を買い、風呂を借りた。 >>そこの女オーナーリンコさんは、おしゃべり好きだから、次の日に商店街中に広がることを確信していたが。 >>『一歳半なら、ミルクと離乳食は、併用した方がいいわよ』という言葉を受け、俊を連れ、司乃のビルに戻った。 >>「馬鹿か?」 >>「ほっとけないでしょ?」 >>「それは、認めるけど。 >> 一緒に買い物に行く。 >> その分じゃ、ガキに何を買っていいか分からないだろう?」 >>「まあね。」 >>「あのソラとか言うのも、出しておけ。 >> パンツスタイルでも、女で通用するだろうからな。」 >>それで、結局、俊の親は見つからなかったせいもあったし、数年前に作った私の『上条樹里』としての養子になった。 >>初めてだったかもしれないね。 >>それまで、奪うものだった私が、何かを与えることが出来たのは・・・・。 >>「お母さん」 >>そう呼ばれると、なんかむず痒いけど、嬉しかったね。 >>あの子は、自慢の息子。 >>そう胸を張って言える。 >>・ ・・・あの子に出会って、数年後。 >>古い知り合いに、招待されて、軽井沢だったかな。 >>そこで、天春市楼(あまかす・いちろう)に出会った。 >>おまけに、盗難殺人事件に巻き込まれて、探偵役を一緒に勤めたねぇ。 >>いろいろ、私たちとあったのに、それでも、人外を受け入れてくれた。 >>あと、普通自動車の免許を取得したのも、そのくらいだ。 >>その後だったね。 >>この時の縁が元で、このビルを天春に売ってもらってすぐ、だね。 >>あのアルベスタ=リバードラゴンが、現れたのは。 >>天春の雑誌のコラムをあげた日だった。 >>当時六歳の俊を寝かしつけて、『狩りにでも行くか』と、居間を通り、玄関に出ようとした時、居間から、声をかけられた。 >>「お久しぶりです。 >> 40年ぶりでしょうか?」 >>闇色の正装に、悪趣味なシルクハット、そう二代目のベリアル。 >>「それが?」 >>「いえいえ、《凍れる樹姫》が、幼子を拾ったと魔大公からお聞きしまして。」 >>「アスタロトが?」 >>「ええ、とても可愛い御子だそうで。」 >>「・・・・・・手を出したら、滅ぼすぞ?」 >>私は、殺されるのすら覚悟して、言葉を返した。 >>しかし、其れに対して、『おほほほ』と、声をあげて高笑い?をするアルベスタ。 >>「分かっておりますよ。 >> それでは、ご健勝であられてください。 >> 御子様も・・・・・・ね。」 >>そうとだけいうと、指を一本顔の横に立て、にこやかに妖艶に微笑むと、霧がほどけるように消えた。 >>それから、二十年近く。 >>俊は、高校を出た後、喫茶店を開くために、修行に行ったし、私も、探偵業で名前が売れ始めていた。 >>親バカかもしれないが、俊は容姿端麗・文武両道でね。 >>県下で一番難関の高校で、10番以内の成績だし、弓道部の主将もしていたし、バレンタインとか誕生日なんかになると、山ほど、もらってね。 >>迎えに行かなくちゃ行けないくらいだった。 >>可愛かったし、愛おしかったね、俊は。 >>八百年ほど生きて来たなかで、穏やかすぎる時間だった。 >>そして、三年ほど前に、空き店舗だった一階に『ブラックコール』が開店して。 >>さらに、1年半後。 >>1年半前に、あの事件で、お前に出会ったのさ。 > >ここ最近、『今この瞬間』では、一番新しい『遭遇』? 二番目です。 あの『一年半前』の事件の直後に、もう一度。 > >俊さんは、この話にどう言う意味があるんでしょうか? > 作家としてのワトソンかな。 『ホームズシリーズ』の。 本にする訳じゃないけど、記憶しておくという意味で。 彼も、半分、ジュリの助手にちかいから。 では。 |
32550 | 光への憧憬 +どうか忘れないで+ 15 | 十叶 夕海 | 2006/6/7 21:35:49 |
記事番号32488へのコメント 15 これからも、一緒に 「・・・・・こんなもんか?」 「そうですね。」 「他に、聞きたいことは?」 「聞きたいというか、他の三人に、会ってみたいんですけど?」 「ソラとアビゴルとマリヤに?」 詠太郎の提案に、ジュリは、一瞬の逡巡の後に、こういった。 それと、同時に指が一度パチンと鳴る。 「分かった。」 数瞬遅れて、ジュリ達の私室に続くドアが開く。 念動力で開けたようだ。 それに会わせて、ソラ、マリヤ、アビゴルの順番で、倒れてきた。 手には、コップや集音マイクらしきものが握られているところから、盗み聞いてをしていたのだろう。 三人は、急いで、立ち上がり、並んだ。 これに、神影を加えると、男女人種、高低、明暗そろった四人なのだ。 「初めまして、《ジュリ様の下僕》のソラです。」 「よろしく、私はアビゴル言う。」 「初めまして!! 私は、マリヤ=カレスティル。 よろしくね、詠太郎。」 「・・・・・ソラ、そう言うのやめてって、言わなかった?」 「・・・事実を公言しただけですが?」 どうやら、昔よりも自信がついているようだ。 いい方か悪い方かは、置いておいて。 「・・・・ソラ、ジュリ様、困らせる行けない。 だから、『下僕』言う、行けない。」 「ねぇ、ねぇ、それより、この子が、乾詠太郎さんだよね。 ・ ・・・《血塗れのカタリナ(ブラッディ・カタリナ)》だよね。 嘘だぁ、こんなに昼行灯っぽいのに、あの殺気ビンビンなお兄さんな訳ないもん。」 「・・・・会ったことあった?」 詠太郎が不思議そうに、マリヤを見ていると、彼女は、ぷぅ〜と頬をくらまさせる。 しかし、すぐに、詠太郎に、近寄り胸ぐらつかみ、外見にあったけれど、それでも、ドスの聞いた声で、こう言った。 「覚えてないの!! 四年前のロンドンのピカデリー広場の死闘を!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・ ・・・・・・・・・ああ、あの時のジプジー吸血鬼。」 「やっと、思い出したの? ・ ・・・でも、ソラさん、酷くない? あの情熱的な時間はなんだったのって、感じよ。」 という、感じで、しばらく、からかわれたというか、いじられたというか。 それでも、ジュリは、こう言って止めた。 「・・・・マリヤなりに、認めてんのさ。 ここ、六十年、一番力の弱いマリヤですら、30分持ったエクソシストは、お前だけだったからね。 私や、神影なんか、何年フルパワーで闘ってないんだっけ・・・・ねぇ?」 「たしか、純粋な殴り合いでしたら、百年ほど前の司乃さんとのガチンコ勝負でですね。」 「・・・・司乃、私とジュリ様、ソラを相手する、引き分け可能。 司乃、強い。」 ・・・・ある意味、空恐ろしいことを『この前、ハンバーグ食べたの何時だったけ?』というような気軽さで、会話している。 それでも、これが、この『上条探偵事務所』の日常なのだと、思える詠太郎。 みょうに、しみじみとした眼で、それを見ていた詠太郎に、ソラが、何かを差し出した。 それは、くたくたのタオル生地で作られた薄い緑で作られたカエル人形だった。 「小太郎!? うわ、いつの間に落としたんだ。」 「いい式神ですね。」 ソラは、にこりと微笑んで言うのだが、そのカエル人形がぺしぺしと、彼の手のひらをはたく。 「あ、こら、小一郎。」 『主、こやつ、俺に針で、針で・・・・・修繕をされてしまいましたぁ』 など、など、また会話が弾む。 それでも、朝日が昇る十数分前、夜空が白み始めた。 ぴろぴろぴろ 「・・・あ、編集長からだ。」 詠太郎のケータイにメールが入る。 それを読むなり、彼は、慌てて立ち上がり、カエル人形をつかみ、出入り口に向かう。 「どうした?」 「・・・天春さん、今日の午後三時までに、プロット仕上げて、出せって。」 「そうか、頑張れ。 分からないことは、いつでもメールしろ。」 「ああ、ありがとう。 それじゃ。」 詠太郎は、昇り始めた朝日を浴びつつ、帰り路についた。 その足音が聞こえなくなった頃。 ジュリは、一言呟いた。 「アイツの命が、終わるまで、共に在れたらいいわね。 ・ ・・・仲間にしたい。というのもあるけど、承諾しないわね。」 「どうしました、ジュリさん?」 「いいや、なんでもない。 ・ ・・輸血用血液でも啜って寝る。」 ソラに、訊ねられたが、誤摩化し、台所に向かう。 それをあえて、繰り返し、主に聞かないソラ。 これも、この主従の日常。 二ヶ月後、『月刊・黄泉』の最新号が、 ジュリ達に、届けられた。 @@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@ これにて、『どうか忘れないで』というのは、おしまいです。 しかし、『光への憧憬』は、シリーズとして続きます。 それでは、次話『Lacrimosa +雪の山荘殺人事件+』をお楽しみに。 |
32551 | alive a life | 乾 | 2006/6/8 18:46:55 |
記事番号32550へのコメント >「・・・・・こんなもんか?」 >「そうですね。」 >「他に、聞きたいことは?」 >「聞きたいというか、他の三人に、会ってみたいんですけど?」 >「ソラとアビゴルとマリヤに?」 >詠太郎の提案に、ジュリは、一瞬の逡巡の後に、こういった。 >それと、同時に指が一度パチンと鳴る。長い夜が明けて、 こんばんは、乾です。 長い夜のうたかたの話は一旦終わり、新しい朝が来てまず最初の提案が 『みんなに会いたい。』 数々の話が紡いできた、続きのその1ページだけ先が始まる… そんな感じでしょうか? >「分かった。」 >数瞬遅れて、ジュリ達の私室に続くドアが開く。 >念動力で開けたようだ。 >それに会わせて、ソラ、マリヤ、アビゴルの順番で、倒れてきた。 >手には、コップや集音マイクらしきものが握られているところから、盗み聞いてをしていたのだろう。 >三人は、急いで、立ち上がり、並んだ。 >これに、神影を加えると、男女人種、高低、明暗そろった四人なのだ。 ッッ!!? …コント…!? …これは、コント…!? それはおいといて、今まで話の中に出てきた相手と依合する。 あの話を聞いているからこそ、 目の前に、それまでの遠くて近かったところの相手が見えた感じ? >「初めまして、《ジュリ様の下僕》のソラです。」 >「よろしく、私はアビゴル言う。」 >「初めまして!! > 私は、マリヤ=カレスティル。 > よろしくね、詠太郎。」 >「・・・・・ソラ、そう言うのやめてって、言わなかった?」 >「・・・事実を公言しただけですが?」 >どうやら、昔よりも自信がついているようだ。 >いい方か悪い方かは、置いておいて。 >「・・・・ソラ、ジュリ様、困らせる行けない。 > だから、『下僕』言う、行けない。」 >「ねぇ、ねぇ、それより、この子が、乾詠太郎さんだよね。 >・ ・・・《血塗れのカタリナ(ブラッディ・カタリナ)》だよね。 >嘘だぁ、こんなに昼行灯っぽいのに、あの殺気ビンビンなお兄さんな訳ないもん。」 >「・・・・会ったことあった?」 >詠太郎が不思議そうに、マリヤを見ていると、彼女は、ぷぅ〜と頬をくらまさせる。 >しかし、すぐに、詠太郎に、近寄り胸ぐらつかみ、外見にあったけれど、それでも、ドスの聞いた声で、こう言った。 >「覚えてないの!! > 四年前のロンドンのピカデリー広場の死闘を!!」 >「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ >・ ・・・・・・・・・ああ、あの時のジプジー吸血鬼。」 >「やっと、思い出したの? >・ ・・・でも、ソラさん、酷くない? >あの情熱的な時間はなんだったのって、感じよ。」 >という、感じで、しばらく、からかわれたというか、いじられたというか。 >それでも、ジュリは、こう言って止めた。 >「・・・・マリヤなりに、認めてんのさ。 > ここ、六十年、一番力の弱いマリヤですら、30分持ったエクソシストは、お前だけだったからね。 > 私や、神影なんか、何年フルパワーで闘ってないんだっけ・・・・ねぇ?」 >「たしか、純粋な殴り合いでしたら、百年ほど前の司乃さんとのガチンコ勝負でですね。」 >「・・・・司乃、私とジュリ様、ソラを相手する、引き分け可能。 > 司乃、強い。」 >・・・・ある意味、空恐ろしいことを『この前、ハンバーグ食べたの何時だったけ?』というような気軽さで、会話している。 >それでも、これが、この『上条探偵事務所』の日常なのだと、思える詠太郎。 うう… 結構ひどいぞ… 4者4様で… あ! それと、まだ朝までの話には出なかった名前がありますね。 ここら辺は、いつか語られるのか… >みょうに、しみじみとした眼で、それを見ていた詠太郎に、ソラが、何かを差し出した。 >それは、くたくたのタオル生地で作られた薄い緑で作られたカエル人形だった。 >「小太郎!? > うわ、いつの間に落としたんだ。」 >「いい式神ですね。」 >ソラは、にこりと微笑んで言うのだが、そのカエル人形がぺしぺしと、彼の手のひらをはたく。 >「あ、こら、小一郎。」 >『主、こやつ、俺に針で、針で・・・・・修繕をされてしまいましたぁ』 >など、など、また会話が弾む。 >それでも、朝日が昇る十数分前、夜空が白み始めた。 >ぴろぴろぴろ >「・・・あ、編集長からだ。」 >詠太郎のケータイにメールが入る。 >それを読むなり、彼は、慌てて立ち上がり、カエル人形をつかみ、出入り口に向かう。 >「どうした?」 >「・・・天春さん、今日の午後三時までに、プロット仕上げて、出せって。」 >「そうか、頑張れ。 > 分からないことは、いつでもメールしろ。」 >「ああ、ありがとう。 > それじゃ。」 >詠太郎は、昇り始めた朝日を浴びつつ、帰り路についた。 >その足音が聞こえなくなった頃。 >ジュリは、一言呟いた。 >「アイツの命が、終わるまで、共に在れたらいいわね。 >・ ・・・仲間にしたい。というのもあるけど、承諾しないわね。」 >「どうしました、ジュリさん?」 >「いいや、なんでもない。 >・ ・・輸血用血液でも啜って寝る。」 >ソラに、訊ねられたが、誤摩化し、台所に向かう。 >それをあえて、繰り返し、主に聞かないソラ。 >これも、この主従の日常。 > > > >二ヶ月後、『月刊・黄泉』の最新号が、 > >ジュリ達に、届けられた。 長い夜が明けたら、また朝が来る… 繰り返す中で、少しだけ変化があって、それが明日に繋がるなら、 とりあえずはそれでいい… 得た物を持って、また、長い朝と長い夜の1日が始まる… |
32552 | そして、今日も続いて行く・・・・・。 | 十叶 夕海 | 2006/6/9 11:49:59 |
記事番号32551へのコメント >>「・・・・・こんなもんか?」 >>「そうですね。」 >>「他に、聞きたいことは?」 >>「聞きたいというか、他の三人に、会ってみたいんですけど?」 >>「ソラとアビゴルとマリヤに?」 >>詠太郎の提案に、ジュリは、一瞬の逡巡の後に、こういった。 >>それと、同時に指が一度パチンと鳴る。長い夜が明けて、 > >こんばんは、乾です。 >長い夜のうたかたの話は一旦終わり、新しい朝が来てまず最初の提案が > >『みんなに会いたい。』 > >数々の話が紡いできた、続きのその1ページだけ先が始まる… > >そんな感じでしょうか こんにちは、ユアです。 そうですね、この話にしても、少々重い感じはありますが、基本的に『日常の一ページ』なので。 > >>「分かった。」 >>数瞬遅れて、ジュリ達の私室に続くドアが開く。 >>念動力で開けたようだ。 >>それに会わせて、ソラ、マリヤ、アビゴルの順番で、倒れてきた。 >>手には、コップや集音マイクらしきものが握られているところから、盗み聞いてをしていたのだろう。 >>三人は、急いで、立ち上がり、並んだ。 >>これに、神影を加えると、男女人種、高低、明暗そろった四人なのだ。 > >ッッ!!? > >…コント…!? > >…これは、コント…!? コントではなく、素ですね。 > >それはおいといて、今まで話の中に出てきた相手と依合する。 >あの話を聞いているからこそ、 >目の前に、それまでの遠くて近かったところの相手が見えた感じ? ええ、それに、存在している伝説とかって、会うと、そうではなくて親しみやすいってこと結構あるようですからね。 > >>「初めまして、《ジュリ様の下僕》のソラです。」 >>「よろしく、私はアビゴル言う。」 >>「初めまして!! >> 私は、マリヤ=カレスティル。 >> よろしくね、詠太郎。」 >>「・・・・・ソラ、そう言うのやめてって、言わなかった?」 >>「・・・事実を公言しただけですが?」 >>どうやら、昔よりも自信がついているようだ。 >>いい方か悪い方かは、置いておいて。 >>「・・・・ソラ、ジュリ様、困らせる行けない。 >> だから、『下僕』言う、行けない。」 >>「ねぇ、ねぇ、それより、この子が、乾詠太郎さんだよね。 >>・ ・・・《血塗れのカタリナ(ブラッディ・カタリナ)》だよね。 >>嘘だぁ、こんなに昼行灯っぽいのに、あの殺気ビンビンなお兄さんな訳ないもん。」 >>「・・・・会ったことあった?」 >>詠太郎が不思議そうに、マリヤを見ていると、彼女は、ぷぅ〜と頬をくらまさせる。 >>しかし、すぐに、詠太郎に、近寄り胸ぐらつかみ、外見にあったけれど、それでも、ドスの聞いた声で、こう言った。 >>「覚えてないの!! >> 四年前のロンドンのピカデリー広場の死闘を!!」 >>「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、あの時のジプジー吸血鬼。」 >>「やっと、思い出したの? >>・ ・・・でも、ソラさん、酷くない? >>あの情熱的な時間はなんだったのって、感じよ。」 >>という、感じで、しばらく、からかわれたというか、いじられたというか。 >>それでも、ジュリは、こう言って止めた。 >>「・・・・マリヤなりに、認めてんのさ。 >> ここ、六十年、一番力の弱いマリヤですら、30分持ったエクソシストは、お前だけだったからね。 >> 私や、神影なんか、何年フルパワーで闘ってないんだっけ・・・・ねぇ?」 >>「たしか、純粋な殴り合いでしたら、百年ほど前の司乃さんとのガチンコ勝負でですね。」 >>「・・・・司乃、私とジュリ様、ソラを相手する、引き分け可能。 >> 司乃、強い。」 >>・・・・ある意味、空恐ろしいことを『この前、ハンバーグ食べたの何時だったけ?』というような気軽さで、会話している。 >>それでも、これが、この『上条探偵事務所』の日常なのだと、思える詠太郎。 > >うう… >結構ひどいぞ… >4者4様で… 悪気はないです。 ・・・だからこそ、始末が悪いという説もありますが。 > >あ! >それと、まだ朝までの話には出なかった名前がありますね。 > >ここら辺は、いつか語られるのか… 一応、下の小太郎くん以外は、出てきますよ。 マリヤちゃんは、あのドイツ軍云々の時に四人目になった小ですし。 > > >>みょうに、しみじみとした眼で、それを見ていた詠太郎に、ソラが、何かを差し出した。 >>それは、くたくたのタオル生地で作られた薄い緑で作られたカエル人形だった。 >>「小太郎!? >> うわ、いつの間に落としたんだ。」 >>「いい式神ですね。」 >>ソラは、にこりと微笑んで言うのだが、そのカエル人形がぺしぺしと、彼の手のひらをはたく。 >>「あ、こら、小一郎。」 >>『主、こやつ、俺に針で、針で・・・・・修繕をされてしまいましたぁ』 >>など、など、また会話が弾む。 >>それでも、朝日が昇る十数分前、夜空が白み始めた。 >>ぴろぴろぴろ >>「・・・あ、編集長からだ。」 >>詠太郎のケータイにメールが入る。 >>それを読むなり、彼は、慌てて立ち上がり、カエル人形をつかみ、出入り口に向かう。 >>「どうした?」 >>「・・・天春さん、今日の午後三時までに、プロット仕上げて、出せって。」 >>「そうか、頑張れ。 >> 分からないことは、いつでもメールしろ。」 >>「ああ、ありがとう。 >> それじゃ。」 >>詠太郎は、昇り始めた朝日を浴びつつ、帰り路についた。 >>その足音が聞こえなくなった頃。 >>ジュリは、一言呟いた。 >>「アイツの命が、終わるまで、共に在れたらいいわね。 >>・ ・・・仲間にしたい。というのもあるけど、承諾しないわね。」 >>「どうしました、ジュリさん?」 >>「いいや、なんでもない。 >>・ ・・輸血用血液でも啜って寝る。」 >>ソラに、訊ねられたが、誤摩化し、台所に向かう。 >>それをあえて、繰り返し、主に聞かないソラ。 >>これも、この主従の日常。 >> >> >> >>二ヶ月後、『月刊・黄泉』の最新号が、 >> >>ジュリ達に、届けられた。 > >長い夜が明けたら、また朝が来る… > >繰り返す中で、少しだけ変化があって、それが明日に繋がるなら、 >とりあえずはそれでいい… > >得た物を持って、また、長い朝と長い夜の1日が始まる… それをまた永き時間をを彷徨い、うつむき考える。 最後まで、読んで頂いてありがとうございました。 |