◆−始めましてお久しぶりっ!…だといいなぁ…−氷紅梦無 (2006/5/25 19:22:59) No.32525 ┗ここから始まる時間旅行!後篇−氷紅梦無 (2006/5/25 19:24:28) No.32526 ┣初めましてです。−侑子紅子 (2006/5/28 18:47:29) No.32532 ┃┗お、遅くなりましたぁっ!!−氷紅梦無 (2006/6/4 13:19:26) No.32544 ┗こないだはありがとうございました。−十叶 夕海 (2006/6/4 15:39:57) No.32546 ┗こちらこそありがとうございます。−氷紅梦無 (2006/6/17 17:05:20) No.32566
32525 | 始めましてお久しぶりっ!…だといいなぁ… | 氷紅梦無 | 2006/5/25 19:22:59 |
どうもこんにちはコンバンワおはよーございます。氷紅梦無です。 多分ほとんどの方、始めまして。 お久しぶり!の人…いるといいなぁ… さて。これから読もうかなーと思ってくださっている貴方へ。 この話は見ての通り後編です。 こんな名前始めてみるなー、とか、このヒト小説なんて書いてたの?な人は、悪いことは言いませんので過去ログで前編を探してみることをお勧めします。 でないとワケ解んないと思いますので。 では、注意事項はコレだけです。 それでも読む!と言うありがたい方は、どうぞごゆるりとお楽しみください。 氷紅梦無でした。 |
32526 | ここから始まる時間旅行!後篇 | 氷紅梦無 | 2006/5/25 19:24:28 |
記事番号32525へのコメント まえがき。 この物語は横のスクロールバーを見ても明らかなように馬鹿みたいに長いです。 無理をしないように時間のある事を確認してからお読みください。 では。 ここから始まる時間旅行!後編の始まりです――――――――― この話の主人公こと俺、諒日睦(あさひまこと)にとって、その日はとても特別な日だった。 その朝、俺は遅刻しそうで。 変な羽根を捕まえた時に一緒に自転車見つけて。 迷わずかっ飛ばして。 学校に着いたら知らない奴らがいて。 とりあえず学校から飛び出して。 どうやらタイムスリップしてるらしくって。 不良に絡まれて。 かるくボコして。 親父が見てて。 親父が好きな公園に連れてかれて。 ちょっと話して。 親父が去って。 昼飯喰って。 ちょっと寝て。 目が覚めたら誰かいて。 プロフィール謎だらけで。 「タイムスリップ、したんでしょ?」と言われて。 時が、止まって―――――― ここから始まる時間旅行! 後篇 「………………は?ちょ、で、と、な………え?だっ…俺っ…なぁ?!」 しばしの沈黙の後、ようやくひねり出した言葉は意味不明だった。 「えと。『はい?ちょっと待て、でも、えと、何でそんな事…えぇ?だって俺、なんも言ってないぞ?!』かな? ………落ち着いた?」 言葉の断片から俺の言いたい事をわざわざ理解して口に出してくれたおかげで少しは。…よくわかったなぁ。 「お、おう。けっこー落ち着いた。…あと台詞の訳正解。一語一句まで」 「え、まぢで。やぁったっ」 俺の言葉に両手をぎゅっと握って喜んでいる。――――――………やっぱ、子供? 「まぁいい。落ち着きついでに疑問が幾つか。答えてくれるか?」 「んー?質問によるけど答えるよー。さすがに来週の天気当てろとかは無理」 「誰がそんな下らん事聞くかっ!」 ◆◇◆ 聞くべきことはただ一つ。ついでに聞きたいことがもう一つ。 「……で、だ。なんで俺の状況を知ってる?それと、俺は元の時間に戻れるのか?」 「うや?ん―…と」 じろじろと俺の格好を見てから、こくりと頷いた。 「うん大丈夫。君こっちに来たの最近でしょ?モノには時間軸ってもんがあってそれは周囲の環境が変化すると一旦は反発するんだけどその反動か一回定着しちゃうと再び動かすのが困難に―――――…ってこんなこと話されても意味不明だよね」 「いや言ってる事の意味ならなんとか解るが」 今のところ、という言葉が前につくが、一応は解る。 …意味は解るがこれ以上言われても同じように解るかは疑問だ。専門用語でてきそうだし。 「まぁ正直な所こんな今解明されてるか不安な原理説明したって君にも僕にもなんのメリットもないんで気にしないで。とりあえず帰れないことはないから」 「気にするなって…」 無理な相談、という言葉を知っているのかこいつは。 「……でさ、君何に乗ってきたの?」 うわぁ。 ホントに何もなかったように自分の聞きたい事だけ聞いて来やがったよ。俺がそんな意味不明で気になりすぎる会話をそう簡単に忘れられると思ってんのかこいつわ。 結論:人の話を聞かないタイプだと思う。 …はいそこっ。見たまんまだとかいってんじゃねー。そこはツッコんじゃいけねえんだよっ! 「お―――いっ。戻ってこーい」 と、目の前に手のひらをかざしてひらひら振られ、思考の国から帰ってくる。 「へ?!あ、すまん。ぼーっとしてたっつーかちょっとつっこみ返しを…」 「どこからのつっこみ?」 「気にするな」 目の前の小首をかしげてる子供っぽい奴と全く同じ台詞を吐いたと俺も思った。…まぁあれだ。気にすんな。 「で、えーっと?何に乗って来たか、だっけ?」 「うん」 「え―――――――っと………………………あ、自転車」 どうもあまり気にしてなかったのが災いしたらしく、思い出すのにしばし時間がかかった。 で、その言葉に対する反応は。 「はぁ?自転車ぁ?…………なんだってンなもんに…」 なんか馬鹿にされた気がした。ついでに注意する前の先公みたいな口調にも聞こえた。 「だっ…しゃーね―だろ!遅刻も皆勤賞も目の前だったんだから…!」 「いやわかんないから。それに僕が言ってんのは別のコト。 …しっかし…自転車、かぁ。盲点だったなー。 今までなら時計とか車とかだったし…もうちょい索敵対象広げた方がいいか…?いやでもこれ以上広げるとヒットしすぎるんだよね…ん―――」 今度はこっちが思考のループに陥りやがった。腕組んでなんかブツブツ言ってるし。俺も引き上げてやるべきかな? 「お―――――い。何の話だ?」 トントンっと肩を叩いてやる。手ぇ振るよか簡単だし確実だろう。 「にゃっ!?は、あ、えーと…こっちの話。気にしない。気にされても説明するのめんどいし」 「そこでさりげなくめんどいとか言ってんじゃねぇ」 それって知ってるけど教えないって意味だろ。面倒臭いなんて理由で知る権利を奪われるなど納得がいかん。 「あ、んでさ、もうひとつの質問に答えるね?“なんで状況を知ってる”ってやつ」 「…あぁ」 体よくあしらわれた気がものすごく。…まあそれは知りたいがな… とゆーかいつ帰れるのかとかは定かじゃねーんだよなー。…大丈夫なのか?本当に。 「それは結構簡単だよー。だって君一人だけものすごく時間軸違うんだよ?」 「……………えっと。今のは笑う所か?」 「いやほんとに。それなりの測定機あれば時間軸って解るんだよ?」 ………………嘘くせー。 「うう…信じてもらえない―――…」 沈むなそこで。お前歳幾つよ? ◆◇◆ しばらくして、思い出したようにそいつが言い出した。 「んとね、もう一個の状況把握の為の材料だけど。君さ、紅い羽根持ってなかった?」 「紅い羽根?んなもん持って…………………………あ!」 思い当たる羽は一つだけ。確か朝っぱらに拾った先が紅く染まった綺麗な羽が… 「っと、確か学ランのポケットに入れた―――あれ?」 見つからない。 確かに学ランのこっちのポケットに入れた筈だし、軽い羽とはいえそれなりに深いポケットだし、一応蓋らしき物も付いている。落ちるはずも無いんだが? 「……………おろ? ……い、一応持ってたんだが。あ――…今、消えた」 どこで落としたかな―――…とかぐるぐる考える俺をよそに、そいつはあっさり頷くと、 「そりゃそーだ。まだ持ってたら君がどうやって時間越えたのかわかんないし」 「はい?」 消えるのが当然だと?んじゃあの羽は何なんだ? 不振な目を向け、無言で説明を促す。 「あ―――――えっと。……うん、それも説明する」 ちょっと迷うというか困ってる感じで空やら自分の指やらに落ち着きなく視線をさまよわせたが、説明するという事で決着がついたようだ。 が、その前にと前置きし、俺の顔を覗き込む。 「君の名前教えてくれないかな?」 「あぁ、まだ言ってなかったか… てか自分は名乗らないのに人には聞くのか」 「僕は『名乗らない』んじゃなくて『名乗れない』なの」 あっさりきっぱり言ってくるけどそういう理屈って通用するんだろうか。そして通用していいんだろうか。 つーか理屈って言っていいのかね。屁理屈だと思うのは俺だけ? ―――でもまあ名前なんぞ所詮は自称だしな。名乗りたくなければ本人以外は知ることはできないわけで。 「あさひまこと。字はこんなん」 と生徒手帳を見せる。生年月日とか書いてあるので親父に見せるわけにゃあいかなかったが、こいつは最初っからタイムスリップ云々を言ってきたやつだし問題なんぞどこにもない。 そもそも俺の名前(特に睦)は口で言っても通じない事が多い。おかげでこういった身分証とどこでもいっしょだ。 目の前にぶら下げられた生徒手帳に下から手を当てて角度を調節し、書かれている事を声に出して読む。 「えーと、諒日睦。これは?…あ、まつりか。茉莉中学校三学年一組。一九九〇年十一月一五日生まれ…か」 ぱ、と手帳から手を放すと、何を思ったか俺をまじまじと見てくる。 その瞳はなぜか真剣そのもので、あまりにまっすぐに物を映していて、それに映った自分はどう見えるのだろうなどとふと想像して少し怖くなった。どういう生きかたをしたらこんな綺麗な目が出来るんだろう。 名前が無いなどという状況。もしも本当だとしたらこいつには自分を表す記号が―――ひいては自分の存在を肯定する物が無いことになる。そんな環境にあってなお、何故こんなに人懐っこく振舞えるんだろう。 たぶん、俺がその答えに行き着くことはない――…と、思う。 「…なんだよ」 一部の友人以外には知られていないことだが、俺は結構変に物事の裏側を読む癖がある。 今巡った思考を見抜かれるのではないか。一瞬そんな考えが脳裏に浮かび、口を開くのが少し…いや、結構怖かった。 ――――そして、言われた事は。 「…意外に普通」 「――――意外って何だ意外って。まるで手帳に普通の事が書いてあったらいけねーみてーじゃねーかコン畜生っ! 何だ?!何が書いてあったんだお前の頭の中の予想図にはっ!!」 少しでもこいつが繊細みたいな考えかたしたのが馬鹿らしくなった。 拍子抜けもあって、とりあえず頭わしづかみにしてがくがく振りながら思いっきし怒鳴る。 「あうあうあう――っ!なっ、なにすんのさいきなりーっ。あーびっくりしたぁ…」 びっくりしたとかいう言葉とは裏腹に極々簡単に俺の手から逃げると、平然と…つーかむしろ妙に楽しそうに指折り数えてあれこれ言い始める。 「そーだなー…特に何ってワケじゃなかったんだけども。強いて言うなら“実は歳大学生です”とか“実は地球外からやって来ました”とか“実は国籍違います”とか“実は未分証明書はフグの調理師免許でした”とか…」 溜め息一つ。とりあえずこの後の動作が決まった。 そいつを横目に見ながらおもむろに立ちあがり、ベンチの後ろにまわって真後ろに立つ。俺が立ちあがったのを気付いていないのか気にしていないのか知らないが、なおも例をあげようとしているそいつの頭(こめかみの辺り)にそっと手(拳)をそえ―――― 「そーかそーか俺をそんなに普通のヒトにしたくないのかそぉかよーく解ったそしてテメェも人の事どーこー言えるはずねぇぐらい普通じゃねーのわかってんのかコラ♪」 ちょうど骨が当たるような感じでぐりぐりと拳をえぐり込んでみる。ついでにいっそ清々しいくらい明るい声もプラスして抗議の悲鳴も聞こえないふりをしてやった。 「あ゛いだだだだだだだだだだだだだっ!!!ギブッ!ごめんっ!ちょっとからかってみただけっ!痛い痛い!ごめんなさい―――っ!」 「あぁ…なんか聞こえるなぁ…気のせーかな?気のせーだよなぁ…うんうん。こんな平和で和やかで微笑ましい光景に悲鳴なんぞ聞こえるはずも…」 「認めるっ!遊んじゃってごめんー!ってか謝るからそろそろやめれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」 とりあえず、天気図上では曇りの表示になるであろう空はそれでもやっぱり晴れているように見え、降り注ぐ光はぽかぽかと暖かかった。…一応真冬と言われそうな時期なんだがな。 …平和だ。うん。 ◆◇◆ で。しばらく聞こえないふりをしてぐりぐりやってから解放した。半分くらい泣いてたし。 ベンチに座りなおして隣をしばらく眺める。 「う゛――――…まーだ痛い……」 解放してもしばらくは頭の両脇(こめかみの辺り)を抑えてうなっていたが、ようやく言葉を発するようになった。 「自業自得だ不審者その一」 間髪入れずにこれ以上無いってくらい冷たい声で応対してやる。 「…その呼び方は拒否っていいかな」 「それこそ却下」 「うーわひどー。鬼―」 大げさにのけぞってむくれた子供みたいな声をあげる。…まあ見たまんまだとは俺も思うが。 「ちぇー。…まあお遊びはここまでとして。 君が持ってた羽の話しよーか。君さ、その紅い羽って自転車に乗る前から持ってたんだよね?」 俺が乗ってこないのでつまらなくなったか、舌打ち一つで簡単にもとの体勢に戻る。子供なんだかただそんなポーズをしている馬鹿みたいな大人なのか。…後者なら果てしなく怖いんだが… 閑話休題。(それはさておき。) まぁそいつの言動にかなりが付くほど呆れていたのだが、その言葉でふと思い出した。こんなことになった原因を。 「…あぁ。……そういやあの羽見つけたおかげであんな不思議自転車見つけたんだっけ…」 「にゃ?そなの?」 首をかしげて意味不明な造語をぽんぽん作るな。猫かお前は。 「そーなんだよこれがまた。…そうかー。あの羽見つけたおかげでこんな所に居るだよなー」 「…えっと、睦くん。うつむいたまま静かに低い笑い声はいかがな物かと」 「フフフフフフ。気にすんな。わざとだ」 「そっちの方がタチ悪い――…」 再びのけぞりつつ、今度はそのまま少し俺から距離を取る。冗談なんだが。 「はい、んで?なんで俺があの羽持ってたって思った?」 もう少し遊んでみるのもいろんな反応が見れそうで面白そうだったが、そろそろ進まんと日が暮れちまう。 ちなみにこれは冗談ではない。しばらく寝たのもあいまって意外に時間が進んでいる。後一時間しないうちに日が暮れ始めるだろう。 「…うん。説明するっていったよね。たとえ説明する途中で変な突っ込みされそーでやだなぁとか思ってても言った限りはやんないと駄目なんだよね」 「……………」 悪かったな。変な突っ込みばっかして。…つーかそんなに嫌になったか俺の言動。 「う――色々はしょれれば楽なんだけど、君には通じそうにないし一から話す。関係無さそうでも寝るなよー」 「寝ねーよ」 「ならよし」 とりあえず信じる事にしたのか一度頷き、どこからともなく(多分体の影になって見えなかっただけで反対側に置いてあったんだと思う)リュックを取り出して中に手を突っ込んでかきまわす。そのリュックはそれなりの大きさはあるようなのだが、不思議なくらい薄べったいせいであまり大きく見えない。 「ん――――…、あれ?確かこの辺だったと思ったんだけどな。 うや?あれ?――――――忘れてきたかな…?いやまさかね…―――――――――ってあったっ!」 しばらくかかって…本当に探し物入ってるのかと俺の方が不安になり始める頃、それは出てきた。それは―――― 「…あ――…時計のでき損ない?」 「見たまんまだねぇ睦くん」 楽しそうな声は置いといて、しっかりと眺める。 針だけの、文字盤の無い時計。首にかけるための長い鎖の先で揺れる、手のひらにすっぽり収まりそうな普通の懐中時計。だがよく見ると動いていない。 …あれ? 「―――で?これ、なんだ?」 どこかで見たことがあるような気がしてしばらく記憶を探るが、結局見つからずに答えを聞くことにした。 「これは…あー…ちょっと長くなるから覚悟よろしく。話戻すけど、これはね」 そこでまるで子供がないしょ話をするように少し声を潜め、楽しそうに告げた。 「タイムマシンなんだ」 「へぇ」 その声はどこまでも軽く、まるで小説の終わりを嬉々として語るかのように気負いなく弾んでいた。 だから、一瞬何でもないことだと本気で思って一言で流してしまった。 それは相手にしてみれば予想外の反応だったのか、 「あれ?もーちょい驚くかと思ってたのに。つまんないのー。…まぁいいや。でね」 「………………………おい。おいちょっと待て。今なんて言った?」 本気でマズイこと聞き流した気がして思わず待ったをかける。話を遮られることに関しての不快感はゼロなのか、んー?と不思議そうな顔をながらも言いなおす。 「聞こえなかった?だから、タイムマシン。君が時を越えた原因。…まあ同一の個体ではないけども」 「…タイムマシン…?こんなちっさい時計モドキが、か?」 「そ」 あっさりと頷かれて、逆にすんなりと信じる事ができた。こんなまっすぐな眼をしてここまでぶっ飛んだ嘘を吐ける奴なんぞそう居るわけでもあるまいしな。たとえ居たとしても、そんな嘘を俺について何か利益があるとも思えない。 軽く息を吐く俺をどう思ったのか知らないが、そいつは正面に見える崖と手すり、そして両側にある木とで区切られた空をしばらく見ていた。 二羽の鳥が競うように空を横切ったあと、ちらりと俺を横目で見やり、そいつはしばし考えてから切り出した。 「…昔々、この宇宙には別の文明が栄えてたんだ。技術なんか今の比じゃないくらい高かった。 人の心の力――精神力をエネルギー源にする術だってあったんだよ。でも、ね。そのうち戦争が始まっちゃった。人間の性って奴なのかねぇ…?」 「………あ……?」 唐突に始まった話は、今までと違う、まるで子供に御伽噺を聞かせるような口調で、内容も作り話の色彩を帯びていた。 話しながらベンチにもたれ、視線を青空をゆっくりと流れる大きく膨らんだ雲にむける。子供っぽい口調で話す内容は、その声に不似合いな物だった。 ――――――――――――それは、御伽噺だった。 高すぎる技術は魔法じみてくる。だが、魔法に限りなく近い技術も、過去の科学と同様に戦争の道具と成り果てた。 そして歴史が示すように、高い技術を持てば持つほど一度の戦闘での戦死者が爆発的に増えていった。 人を救うための技術ですら、その正逆を歩めばヒトを破壊するのだ。 やがて、それの究極の実例を示すように、勢力の片側が恐ろしい兵器を生み出す。 人の恐怖、憎悪、焦り…戦場で最も生まれやすいそれら全ての負の感情を糧とし、更に殺戮を撒く、意思を持った宇宙船―――― そこで急に話を切ると、ふとこちらを向いた。 「―――はい、ここで問題です。そんな宇宙船が戦争…いや、世界に出たらどうなると思う?はい、睦くん」 と、背もたれの上に置いた左腕にあごを乗せて俺に笑いかけ、右手の手のひらをむけてくる。 …唐突に話をふるな。しかもなんか悲惨そうな話の中で。…とはいえ返せる答えを持つ限りは答えなければならないわけで。 「どーなるって…やっぱ創った奴らだけが残る…勝つんじゃねーか?」 「うん。ホントはそうなるはずだったから正解。でも実際は、その“創った奴ら”が真っ先に滅ぼされた」 「…え?」 ポロリと零れた声は届かなかったのか、話はそのまま続いた。 ごろりと横になるように背もたれに思いっきりよっかかり、再び空を見上げる。 どこかが壊れたのかもしれない…そもそも負の感情をエネルギーにする戦闘艦という存在自体に問題があったのではないか… 幾つも説が流れたが、どれが正解だったのかなど、今となっては確かめる術も無い。 とにかく確かなのは、その船が人類の手を離れ、人間の視点から見た“暴走”に走ったということのみ。 そして、世代を交代するような猶予すらなく、宇宙に静寂が満ちた。 その宇宙船と、それを護る為に製造された四隻の宇宙船によって、その文明自体が滅ぼされたことによって――― しばらくは沈黙が落ちた。ほんの数秒だとは思うが、今の季節とやりきれない寒さを痛いほどに感じ、起きたときにかけてあった黒のロングコートを羽織った。風が遮断されることで少しずつ体が温まってくる。 口が開きづらかった。 相手は柔らかく、下手したら無条件の優しささえ感じさせる笑みを浮かべて揺れる木の葉を眺めている、さっきまでじゃれ合いのようなことをしていた相手だというのに。でも、聞かないわけにはいかなかった。この話が終わらない限り、俺が元いた時間に帰ることはないのだと、何処かで勘付いていたからだ。 だから、短く固いその沈黙を破ることが出来た。 「……なんだ…?その…話」 言いながら、この沈黙を破る事をためらった気持ちの理由が見つかった気がした。 ――――人は、辛い記憶であればあるほど、それを茶化して語りたがる。それは自分が当時の自分に感情移入しない為であり、それは終わった事であると再認識する為の儀式に近い。自分をこれ以上傷つけないようにする為という自衛行動の一端であるという説もある―――と、俺は何処かで聞いた。 何かで読んだのかもしれないし、テレビだったのかもしれない。だが、今は情報源が何であるかは知る必要はなかった。 今大事なのは、こいつの言動がどうしても『それ』に見えて仕方がない、ということだ。 馬鹿馬鹿しい妄想かもしれないし、勘違いであるという可能性だってある。だが、なぜか…その思いがどうしても消えなかった。 少し掠れ気味な俺の声に、一瞬きょとんとした顔をすると、さっきまでとは違う意味を含んだ笑みを浮かべて立ちあがり、ズボンのポケットに時計モドキを落としながら答えた。 「御伽話(おとぎばなし)だよ。この先ずっと語り継がれることも、思い出されることさえもない…ね」 その言葉は、声は変わらないはずなのにどこか違っていた。子供っぽいとまで聞こえる無邪気な調子が消え、ひどく疲れきった…ヒトの汚さを見続けた老人のような醒めきった響きがあった。意外なほど静かな立ち居振舞いと長身痩躯も、それを際立たせるだけだった。 ほんの一瞬しか見えなかったが、その諦めたような、疲れたような笑みは、目の前にいる子供っぽい言動の男が確かな“大人”なのだと納得するには十分だった。 子供…何も知らない存在では、あんな顔が出来るはず―――― 一歩、二歩、三歩。静かに歩くと、そいつは不意に振り向いた。その時には、 「んで。 そんな進展もないくせに暗さだけ残すよーな昔話は置いといて。 これはそんな昔に創られたもん。アンティーク…もはやオーパーツだぁね〜」 もう思いっきり笑顔だった。 へにゃ〜とか擬音がつきそうなゆるゆるの笑顔。なんか一瞬にして前言撤回したくなりましたがナニカ? 「雰囲気ぶち壊しはお前の特技か…」 「…?」 何でもね、と手を振って誤魔化した。 ◆◇◆ しばらく不思議そうになんなのかと聞かれたが、黙秘権を行使して(ひたすらに黙りこくって)切り抜けた。 「――む―――…オーパーツは解るよね?」 あまり納得はしてなさそうだが、これ以上問い詰めても進展しないと悟ったのか話題を変えてきた。 「…あぁ。ピラミッドやら心臓の絵やら水晶ドクロやらのどー考えてもその時代の技術力じゃあ作れっこないよーなもの…だろ?年末あたりのテレビでよくやる」 「最後のはどーかと思うけど正解。解ってんならいいやっ」 ててっ、と数m走り、公園の真ん中に鎮座しているひょうたんのような形をした砂場の淵で足を止める。 くるりと回転してこちらをむくと、いつ取り出したのか何かを俺に投げて来た。 「お?」ぱしっ ゆるい放物線を描いて俺の顔面に飛んでくるそれを片手でキャッチ。…顔面衝突コースはわざとか? 「…えーと、そこの不審者その一?この金属ボールはなんだ?当たると痛そーだが」 飛んできたのはまんま金属ボール。手のひらに収まるくらいの鈍い銀色をした球体で、ぐるりと一回りする溝以外、飾りも何もないような無表情な物体だった。 「当たった人は見た事ないけど多分痛いね。…ってかさっきから付ける名前が安直過ぎだと思うんだけどそこんとこどーよ睦くん」 砂場の淵であるコンクリートの上でしゃがみこみ、誰かの忘れ物であろうスコップで砂に意味なく模様をつけているそいつが言ってよこす。 反論。 「いーんだよ仮称なんだから。それともなにか?仰々しい名前とか付けたほうがいいか?天使のでも引っ張ってくれば簡単だと思うが」 それに反論が返ってくる。 「メタトロンとか?やめよーよ…。あとその不審者その一ってのも。僕拒否ったじゃん」 それに更に反論を返してみる。 「いや、サキエルとかゼルエルとかの方。あと呼び名なら拒否は却下って言ったぞ。つーか他にどー呼べと?名前ないんだろお前」 また反論が返ってくる。 「さらにマニアックなものを…ってかそれって使徒じゃん。まぁ名前ないのは事実だけどもーちょいやり方はあると思うよ?」 反論に反論を重ねる俺達。 「同じよーなもんだろ?それに元ネタは天使だとか聞いたぞ。ついでだからお前にその辺の名前でもつけよーか。仮称だし別にいいよな?」 更に反論を… 「確かにそーだったかもしんない…よく覚えて無いや。でも仮称とはいえそんなのつけられるのやだ…」 どうでもいいが二つの話題を同時進行っていかがな物かと思うんだがそこんとこどーよ?俺はめんどい。 「んで?この金属ボールがどーしたって?」 という事で強引に話をまとめて結論(でいいのか自信がない。話まだ続きそうだし)を求める。 転がしたり弾いてみたり回転加えながら投げてみたりと色々弄くっても何も起こらないしなにも見つからない。大体これが何をする物なのか聞いてない。ついでにあの時計モドキとの因果関係も。 今度は熊手のような物をいじくりまわし、ふりかえりもせずに答える。 「えーとね、それも時計モドキと同じくらいに作られた物で――…、なんだろ、音楽の再生機?まぁそんなこと出来るやつ。時計モドキもそーだけど、電源も電池とかもいらないからお得だよ」 「あ?じゃぁなにか?この金属ボールもあの時計モドキもねじ巻きとかそういうもん原動力にしてんのか?」 冗談でそんな事を言うと、しばし考えた後にひっくり返していたバケツを放りだして立ちあがり、振りかえりながら手についた砂を払う。 そして、やっぱり気の抜ける笑顔で告げた。 「ううん。精神力」 ……………………………………。 「なんだそれ」 まっさきに心の底から思ったことを聞いてみた。 「なんだそれといわれても…ん――…、気魂、気、心力、精力、気力、生命力、活力、元気、根性…とまぁ信仰から来たものからミもフタもない言い方まで色々あるけど、そんなとこ。心の力ってのも近いかな? …ってかさっきの昔話でも出てたでしょ?精神力を糧とし〜って」 「……………………」 いや、言ってることは解る。解るが…精神力ってエネルギーか?少なくともあんな機械が動かせるなんて聞いたこともねーぞ?――――ものすごく今更な気もするし二度目だが、こいつが一気にうそ臭く思えてきた… 黙り込む俺を見てどう思ったのかは知らないが、とことこ近づいてくると手を出してそいつは言った。 「それ貸して」 「元々俺のじゃねーんだが?」 漆黒の目を覗き込みながら答え、上着で半分くらい隠れて小さく見える手のひらに載せる。俺よりも年上(のはず)なのになんか落としそーに見えるんだよこいつ。金属で出来てるんだから落としても簡単には壊れないんだろーが…。 どこと無くはらはらして見ている俺をよそに、 「見てて」 とだけ言うと、俺の目の前に金属ボールがくるように持ち、目を閉じた。 そして数秒もしないうちにそれに刻まれた線が鮮やかな翠色に光ったかと思うと――― ――――――――音が、流れ出した。 それは淡々としていて、水面に張った氷を歩くように繊細な、少しだけ軋んだ音。それは、 「……………オルゴール?えっと…トロイメライ、っていったっけ?」 流れ出した曲は日本でもそれなりに有名な物であり、俺も幾度か耳にしている。あやふやな記憶の中から曲名を引っ張り出してみるが、合ってるかどうかは自信がない。確かそんなんだったと思う、といった程度だ。 「ご名答。音楽の再生機だって言ったでしょ?」 そういえば言ってたなそんな事。ん?ってぇことはもしかして…? 「なぁ、さっき歌ってたとき…」 「あ、気づいた。正解だよー。これで伴奏流してたのさ」 やっぱり…。さっきは深く考える暇がなかったお陰でお流れになった疑問がするりと氷解した。 そして、唐突に思った。 「…今更なんだが。俺の置かれてるこの状況って夢だとかって思ったほうがいいのかね?」 いやだって、時間を飛び越えて行った先で言われたことは『それは大昔の遺物です』じゃなぁ…。 「…………ほんとに今更だね睦くん。まぁ当たり前っちゃぁ当たり前だし無理に信じろとは言わないけどね?言わないけど…でもさぁ…う――」 ぶつぶつ言いながら小石を蹴り、信じてーっと全身からオーラっぽいものを発しているヤツをどーしよう…? ◆◇◆ 「―――――…まぁ夢だと思いたいんならそれでもいいけどさ」 最後にぽつりと言ってぐだぐだ言うのを自ら打ち切った。 それと同時にいまだに鳴り続けていて最早場違いになっていたオルゴールの音が止む。金属ボールをポケットに突っ込み、代わりのように反対のポケットから時計モドキを取り出す。 鎖の先を持ってそれを揺らし、動かない針を見つめる。 「あの時計モドキ…もとい時空間圧縮凍結式転移装置中枢演算ユニットは、瞬時に膨大な量の精神力を消費して名前通り時空間を凍結してその上を渡る。理論上はどの時間、どの空間にも渡ることが出来るが、元の時空間との差や距離に比例して精神力の消費が増大して行く。その欠点を補うため、練度と密度を上げた精神エネルギーを『器』に流し込み、いわゆる『燃料』とすることにした――――と」 すらすらと当たり前のことを説明するかのごとく言葉をつむいだ声はどこか冷たく、ただ何かを読み上げているだけだと告げていた。 言い終わったそいつは、解る?とでも言いたげな視線をこっちに投げかけてくる。 …正直なところ時空間なんちゃらは覚えきれなかったが、その原理というか“出来ること”は理解できた。ついでになんとなくだが羽の役割も。 「そしてその口上はどこからだ?」 視線には答えずに、こっちの疑問だけを返す。 それで内容理解は十分とみたのか、また元の柔らかくも子供っぽい口調に戻り、考えながら返して来る。 「うや?えと、取扱説明書より、だよー」 「あるのか説明書」 「あるのさ説明書。んでね、この演算ユニットは大昔に試験用に数基作られたんだけど」 「はぁ」 それがなんでこんなところに…っつーかよく動いたよなぁ。そんな超が付くほど古い物。 「それがなんかよくわかんない組織に奪われちゃったらしくてさーっ♪」 後頭部に手を当ててあははーと笑う。 「え、えっと…?」 …いや、よくわかんない“組織”って…。笑い飛ばしていいもんか? 説明は続いた。 そいつによると、その“盗んだ奴等”は時計モドキが何をする物なのかは解っても、構造、素材、動作の仕方等はよく解ってなかったらしい。 実験とカムフラージュを兼ねて様々な物に取り付け、弄くりまわした。その一つがあの自転車。ほかには車のメーターや懐中時計にもしたらしい。…そーゆーのって文明違っても形同じなんだな…。 で、だ。正直なとこ、あんまり解析やらは進まなかったみたいなんだな。 理由は簡単。やる前に人類が滅びたのだ。 …その後、どれだけの間が開いたのか知らないが再び人類が栄え始める。 その頃、初めて時計モドキの被害者が出た。どういう設定になっていたのか解らんが、二〜三百年も未来に跳んだとのこと。 さぞかし驚いたろーなー… 「…人類が栄え始めた頃から二〜三〇〇年先だぁ…?想像も出来ねーな。ちなみにそん時は誰が助けに行ったんだ?さすがにお前は居ないだろ?」 むしろ知ってることが驚きだぞ。 その問いに、そいつは人差し指を唇の前で立ててのたまった。 「企業秘密♪」 「…それは、企業か?」 「それも企業秘密」 「……………」 聞いても絶対に教えてくれそうになかった。つーか企業秘密って随分と利便性のある言葉だな。あぁ日本語って便利。 面倒な話だが、本来俺が居る時間の更に先、遠い未来の時代には、そんな過去の遺物が存在することを知っている奴等がいた。 こいつを含めた一団である。 そいつ等は過去に存在した文明の遺物が自分たちの知っている歴史の中で発動したことを知り、更にそれらの事後処理を何者かが行っていたことも知った。そして、それがどうやら自分達のようだ、とも。 彼等は件の機械の設計図らしきモノを他の遺跡の出土品などから引っ張り出し、それを復元することに成功した。 かくして、最初の被害者は即座に元の時空に帰ることが出来た。 「おーい。質問」 「はい睦くん」 そこまで聞いて、手を挙げて質問の意を示す。先公がするように指してくれたので、 「なんで作り直す必要があったんだ?」 「中枢ユニット単体じゃあ一回使うと消えちゃうからね。 その時空に行くための一基、被害者を送るための一基、事後に自分が元の時空に戻るための一基っていうのが必要になる」 「ふーん」 「話戻すね?」 一度成功したからには安全性やらは確認された。 そのため、これからも出るであろう被害者を元の時間へ帰すことを試み始めた。 とはいえ、こいつ等には時計モドキが動かない限りそれがどこにあるのか全くわからない。何しろ動くまではその時代に昔から在った物なのだ。時間軸のずれなど起こりようが無い。故に、いつ如何なる場合も後手後手だった。 どんな機械が原因なのかは判明していたため、それを探索する装置という物も作られた。 だが、さすがに全時空をスキャンなど不可能に等しい。 それに、捜査範囲内の車ならば車を、時計ならば時計を、というように一つの種類の物しか調べることが出来ないという、本当に実直な物なのだ。 …それでも数百年単位で探査を出来るらしいのだから、十分凄いと思うのはいけないのだろーか… 「――――――よーするに、結局はこっちとむこうの、時を越えた発想勝負って事になったのさ」 言いながら再び砂場のほとりまで行き、淵であるコンクリートの上をとてとてと危なっかしい足取りで辿る。両手を広げた姿は本当に子供のように見えた。 「動いてさえくれていれば感知できるんだ。言ったよね?時間軸は測定気さえあればずれが解る。 でもなかなか動いてくれない。それでも何とかしてきたんだけど…ね」 そこまで言って、くるりとこちらにむき直ってきた。くくられた長い黒髪が跳ねるようにして身体に隠れる。 右手を挙げ、指を三本立て、一本を折りながら言った。 「実を言うとね、君は最後から三番目なんだ。残り二基」 「へ?」 …当たり前といえば当たり前だ。考えてみれば試験用に造られた物がそう何十基もある訳がない。 「ところでそれって何基あったんだ?」 「うや?え――っと…うん、七基だね」 またも指折り数えて確認し、うなずきながら答える。 七基ってことは半分はもう過ぎているわけだ。 「あ、そーだ。君がこっちに来た時間…えと、自転車見つけて動かしちゃった時間って何時か解る?大体でいいんだけど。あと位置も」 ポン、と手のひらに拳を打ち下ろし、思い出したような口調で言い出した。…ってか今思い出したんだろーなー… 「結構今更だな…えーと、二〇〇五年三月十日、午前八時…」 そこで言葉が止まる。 自転車を見つけた時間や場所はハッキリと覚えている。だが、それをそのままこいつに伝えていいもんだろうか? 正確な時間を告げ、その時間にきっちりと帰されたりするとまず間違いなく学校にゃ遅刻だ。 ホンの数十分巻き戻るだけで俺は遅刻なんぞせずにすむ。 ついでにさっきこいつは何て言った? 『――――大体でいいんだけど』 つーことは多少ずれていても問題無し、と。 「八時――――あ――…二〇分ぐらいだったか?正直よく覚えてねーや」 「あそ。なら二〇分でいいね?」 「おう。―――んで、自転車のあった場所ってーのは…あ、こっち来い」 口で言うよりも指差したほうが早いと思い、そいつに手招きしながら崖に小走りでむかう。 がけっぷちから自転車のあった場所を眼下の町を指差すことで説明しながら、俺は心の中でこっそりほくそ笑んだ。 これにて俺の遅刻は幻となった。 ◆◇◆ 俺の説明で納得したらしいそいつは、手すりに背中を預けて説明を再開する。 「でね、あの羽だけど「その時空間なんちゃらを動かす為の『燃料』だろ?俺をこっちにやるときに使われたから消えて無くなった―――違うか? あぁそれとな、あの時計モドキ。たしか自転車のベルんとこに代わりみたいに着いてたと思う。乗ってたときになんか引っかかってたんだが、ベル鳴らすための取っ手みたいのが無かったんだ」 そしてむこうの台詞を遮って自分の考えを喋り立てる俺。 ぽかんとした顔のそいつはまばたきを数回し、小首をかしげてのたまった。 「あ、そーなの?」 「ってちょっと待たんかワレ」 『そーなの?』って…知らなかったのかお前!知らないで俺に説明なんぞしてたのかっ?! 「え?あ、いや、言葉が足らなかったねごめんね。僕が知らなかったのは後半、えーと…どこに付いてたかってとこ。『羽が何か』は知ってたよっ!」 かなり胡散臭い目になっていたであろう俺に慌てた様子で腕をぶんぶか振って弁解。 …まぁ、羽の説明しようとしてた所を遮ったんだから、そのまま言わせてればちゃんと解説できてたんだろーし…な。多分。 「そこまで解ったんなら話は早いね。 んじゃさ、何で君が来たのかってのも解るよね?」 人差し指をぴっと立て、これも言わないで済むと考えている顔で聞いてくる。 「…………何が?」 期待を裏切るのは俺としても心苦しいが…すまん。質問の意味からさっぱり解らん。 っつーか何が聞きたいお前は。 『なぜ俺が時を越えたのか』なのか『なぜ俺がその機械を動かしたor動かせたのか』なのか、それとも他のなにかなのか。質問の意図ははっきりと解りやすく。日本語って便利だけど難しーんだっ。 「…もしかしてまた言葉足らなかった?」 「………」 はっきりとわかりやすく頷く。何かを聞きたいってのは解るんだがな。肝心の質問が読み取れん。 「えーっと…なんで時を越えたのが君だったのか…じゃない、なんでタイムマシンが君が動かした時に動いたか…かな?」 それなりに苦労しながら質問を言い直し、どうだっとばかりに俺を見てくる。 腕を組み、頷いて『質問の仕方は合格』と表し、持っている答えをすぱっと返してみる。 「あ、そゆことね。はいはい。――――解んね」 嘘だが。 「え゛」 説明追加と聞いて、呻きながら半身引くそいつ。長くなるから覚悟しろっていったのおめーじゃねーか。 「…嘘だよ。俺があの羽を持ってたからだろ。 ってぇ事は、だ。俺が羽拾っても自転車に気付かなければ俺は飛ばされなかったし、自転車に気付いても羽を持ってなかったら同じく跳ばされなかった。そもそも俺があの時間に家を出ていなかったら羽も自転車も見つけてないだろーな…」 IF(もしも)をあげていったらきりがねーが、なんにしろあの日――十何年先か――は色々と不測の事態が多すぎる日だった。 寝坊はするわ羽は見つけるわ自転車に気付くわ気軽に乗るわ…。それら全てが重なってこうなった。それって… 「ものすごい確率だよねー。ってか君ぶっちゃけ運悪すぎ?」 「言うな。事故だ事故っ」 でも、考えてみると確かに物凄く低確率なことだ。天文学的数字と言っても過言ではないかもしれない。 豆知識パート2♪ 天文学的数字とは文字通り天文学で(星同士の距離だの大きさだので)扱うような桁が馬鹿みたいにある数字のことだ。 地球の大きさを言われても実感が沸かないように、日常で使うことがまず無いような数字である。 「……………」 「なんだよ。なんか言いたげだな」 じ――――…っと見てきて本当に何か言いたげだったそいつは、若干言いづらそうにしながらもはっきりと、 「ん、いやその…君って結構物事見てるんだなー…と」 なんだかケンカを大量大安売りしてそうな台詞をのたまってくれた。 なんか癪に触ったので、そいつの人当たりのいい笑顔を真似してみたりなんかしながら言ってみる。 「遠まわしにケンカ叩き売りされてる気がしてならねーんだが怒っていい?」 「何気ない口調で怒っていいとか聞かないでよ若人。キレやすい現代っ子の一人か君は… あ、でもこれでよーやく説明終わりっ。なんでこんなとこに居るのかってのと、ちゃんと帰れるってのは解ったっしょ?」 パンっと手のひらを合わせて自分は言うことは全部言ったと宣言する。 …ってーか今の話からするとお前別の時間から来たんだろ…?現代っ子って… 「気にしない気にしない。細かい事気にしてるとはげるってよく言うじゃん」 多分俺がしかめっ面してたからだと思うが、能天気というか何も考えてなさそうな笑顔でぱたぱた手を振って軽い声で笑い飛ばしてくれる。 「お前はエスパーか。勝手に人の考え読むんじゃねぇ」 「違うし。人の表層意識だけ読み取るのなんか本物の読心術の使い手だって難しいんだぞー」 「逢った事あるのかお前」 「んーにゃ。どっかの本で読んだだけ」 「……………………」 こいつの言動に不思議言葉や怪情報が入るのはもう突っ込まないようにしよう…キリがねーし今の状況もそれに匹敵するような不思議で溢れてるしな。 ◆◇◆ 「んでさー、そろそろ君を帰す準備を始めたいワケだけども」 「?…特別な準備っているのか?」 こっちに来た時が羽持って自転車かっ飛ばしただけ、とゆー極々簡単なものだっだだけに、準備という言葉が不思議に思える。 「あ――…まあやることは動かすだけなんだけども…」 そこで言葉を切って時計を見ると、考えるように口元に手を当ててブツブツとつぶやく。 「…あ――…そっか。…だもんなぁ…んー。やっぱ選ぶのは…」 「…………」 途切れ途切れに聞こえてくる言葉に何も言えない俺はかなり手持ち無沙汰だ。 ―――目の前の内容の解らない独り言ってやだなぁ… 「ねぇ睦くん。今すぐ帰る?…えと、元の時間に」 考えがまとまったのか、ひょいとうつむきがちだった顔を上げる。 「え、と?今すぐじゃいけねーのか?」 ただしその問いはこちらにとっては不思議な物だ。だから答えではなく問いを返してしまったのは仕方が無いことだと思う。 で、だ。 「え――――――……と。いや駄目じゃないよダメじゃない。大丈夫だよ?安心して」 『大丈夫』とかそーゆー台詞は言うべき相手の顔をまっすぐ見て始めて効力を発揮するもんだと思いっきり実感させてくれてありがとう。っつーか安心させようという気が少しでもあるんだったら空とか街灯とか雲の端っことか遠くに転がってる木の枝とかその他に視線をさまよわせるの止めよーか? 「…なんか不安材料があるんならはっきりと俺の目を見て言おうかそこな不審者その一」 「うーわーあーぁー…っと。だいじょーぶ!送るのにはなんの支障も無いからっ!」 とりあえず頭を鷲掴みにしてがっくんがっくん揺らしながら言ってみるが、さして効果は無かったらしい。 あっさりと抜けると、何かを含んだ笑みで保証してくれた。 「……………………送るのに“は”ってなんだ“は”って」 「えと………、黙秘権とかけまして、どこぞの謎の獣神官と解きます」 「その心は」 「騙すんじゃなくて言わないだけ♪」 「…………………ぉうりゃっ!」 とりあえず鉄拳制裁確定。 「…これ、は、手加減した方…なのかな?」 そいつがうずくまって脳天を抑えながらもそんなうめくような声を発したのはしばらく経ってからだった。 俺は即答を避け、しばらく考えるふりをしてから、 「―――…あぁ、一応な」 「してないんだ」 が、相手にふりは通用しなかったらしい。即答された。 「なんで解る」 「勘。」 「あー。確かにお前勘よさそーだしなー」 「……………………………も、いいです……」 ズボンをはたいて立つと、ぼやくように言った。俺が遠回しに肯定したところとかはあえて突っ込まないことにしたらしい。 「あー。とりあえず荷物持って……このあたりでいいかな。うん、このへんに立って」 案外早く頭から手を離すと、手すりから二〜三mほど離れ、手招きをする。 どうやら“準備”に入るらしい。 「お?おう」 ベンチの下から鞄を引きずり出して肩に掛け、言われたところまで戻る。 俺が荷物と共に移動している間にどこからかやや太めの木の枝を抱えてきたそいつは、俺が指定した場所に立つのを見届けた後、俺のまわりを一回り。 その後を地に下ろされた枝がついて行き、公園の砂利の上に歪な円が浮かび上がった。 …感想が一つ浮かんだ。 「お前ってさ………………実は絵下手だったりする?」 「え?!何、なんで!?」 「いや、なんとなく…俺でももーちょい丸く描けるなー…とか思ったりなんかしてねーぞ」 「…思いっきり本心言ってくれてありがとー。 うー…なんでかなぁ…?なんか色んな人から下手だ下手だって言われるんだよ…いつまで経っても上達しないなーとか…」 枝を立てたままぐるぐる回して無意味に地面をえぐり、肩を落として思いっきりいじけたってーか拗ねたってーか…えらく落ち込んだ声を出す。 自覚してる上に気にしてたのか。言っちゃいけなかったかもしんない。 「あ―――…えーと、だ。その辺はまあ置いといて。 これはあれか?魔方陣?」 これ以上地雷踏む前に話題の転換。悪かったな気付くの遅くてっ。 てゆーかもう踏んでるとかゆーなそこっ! …でも自分で言っちゃあなんだが、魔方陣とかそーゆーのにしちゃあシンプル過ぎるよなぁ… 「う?んーにゃ。ただの範囲決め。そっから出たら駄目だかんねー」 ふるふると首を振り、あっさりと立ち直る。…こいつ、どこまでがポーズか、っつーかどこからが本気か解んね――… …全部本気だったりしてな。(それはそれで結構怖い話だといま本気で思った) 「よっと。あ、睦くん睦くん。君お昼ご飯って食べちゃった?」 俺が結構失礼なことを考えているとは露知らず、そいつは線を描いた枝を少し離れたところに放り投げ、手を払いながら振りかえる。 「ん?ああ、弁当持ってきてたし。…あ、そーか、帰ってからも昼飯あるんだ」 「おぉ気付いた。えらいえらい。んじゃまぁ、これは当てた賞品ということで」 呑気な足取りでベンチに置きっぱなしだったそいつのリュックを取ると、またもその中を引っ掻き回してビニール袋に入った何かを引っ張り出す。それを押し付けるように渡され、中を見るとパンだった。 「あ、それとこれもおまけっ!」 そう言って三たびリュックをかき混ぜ、取り出したのは、 「……板ガム?」 しかも何故に某ブ○ックブラ○ク?(眠気覚まし用激辛風味) 「そ♪」 そして何故にそんな楽しそうに笑うか貴様… とりあえずパンを鞄に突っ込み、ガムを学ランのポケットに落とす。 「あ、そーだそーだ忘れるとこだった。はいこれ」 そんな事を言って最後に取り出したのは一枚の羽。先のほう三分の一程が紅く染まった、始まりの羽。 「…これ」 「これでしょ?朝持ってたやつって」 「…あぁ。これも勘か?」 「……へへっ」 笑顔で頷きながら俺の右手を取り、押し付けるように握らせる。 つられて曖昧に笑いながら、俺は言った。 「タイムパラドックスは駄目ですか」 「ダメですよ」 へにゃりという笑いの中に苦笑が混じる。 「とゆーかですね、駄目なんですよぉ?君は一度こっちに来なきゃ。 偶然っていうものは『偶然であること』を必然とするけど、それ自体は必然じゃない。必然であるのはその事柄が『偶然である』ということだけ。起こるべきことが起こらずとも、それが偶然起こるんだったら時間はそのまま進んでいくのさ。それは必然じゃないから。 でも、今回の場合それで困るのは誰?…君自身だよね諒日睦。 君がここで出会った人たちにしたことはきっと必然の部類に入ること―――その中には君自身に深くかかわることだってあるはずなんだ。ここに来るきっかけは偶然であっても、ここに来たこと自体は必然のはずだからね。 だから君はいつかはこっちに、今という時間に来なくちゃいけないのさ。来ないで人生終わることはありえないし、そーゆーのは早い方がいいっしょ?」 「…………………」 「ってゆーのが僕の持論なんだけど…難しかった?」 「…………ちょ、ちょびっと」 「まぁわかんないなら『タイムパラドックスは駄目ですよー』って覚えときゃオッケーだから。これから先活かすことないだろーけど」 この先活かすこと、か。無いことを祈るぞ。そう何度もあったらこっちが堪らん。 「さぁて。そろそろ送ろーか?」 そう言って再びどこからともなく時計モドキ、もといタイムマシンを取り出す。 ごちゃごちゃと組み合わさる歯車を回し、どういう状態が合っていると言うのかまったく解らないそれの針をを合わせていく。 …と思ったら、ズボンのポケットを探り、紅い部分が四分の一くらいという差はあるが、あれと似たような羽を取り出す。 羽に注がれた俺の視線に気付いたのか、羽の根元を持ってくるくると回しながらまた笑う。 「さすがにこれ無いときついしねー。 えーと、二〇〇五年三月十日八時二〇分でよかったよね?もーちょいサバよむ?」 「いや、もー既に二〇分くらいよんでるし…つーかよく覚えてんなー、時間」 「ま、ね」 くすくすと笑い、もう一度合わせ始める。 もうすぐ、夕焼けが始まる時間だった。 ◆◇◆ 「…………えーと、こっちの右で…っと」 うつむきがちに時計の歯車と向き合う姿を見て、何か礼をしなきゃな――…とぼんやり思う。 「……………………………あ。」 何をすればこいつにとって礼になるんだろうかと考えていた時、ふと気付いた。 こいつは多分、ずっと一人だ、と。 さっきの説明で『一団』と言っていたところから、確かに帰らなければならない場所はあるんだろう。 だが、そこにいて尚、こいつには名前が無い。無いままで放置されている。それは、誰もこいつを気に掛けていない証拠じゃねーのか? 『帰れる所がある事』と『帰る所がある事』は違う。とてもよく似てるけど、違う。 そこまで気付いて、俺は堪らなくなって声を上げた。 「――――……ち、ちょい待ったっ!すとっぷ!」 「今度は何かな?睦くん」 さっきまでと同じように、自分のしていることが遮られても何も言わずに相手である俺の動きを待つ。まるで誰かと会話をするのが何よりも楽しいとでも言うように。 …なんというか、それだけでちょっと悲しくなった。 だから、どうしても“何か”を言わなければならないという強迫観念めいた思いが膨らんだのは、ある意味当然だったのかもしれなかった。 だが、あいにく俺にはこいつに掛ける言葉もやれる物も持っていない。礼として『ありがとう』の言葉を送ったところで何も変わらないし、何も残らない。 俺は気の利いた言葉に縁は無いし、別れの言葉なんぞでお茶を濁すのはもってのほかだ。 言えること。出来ること。やれる物。わかること。あいつがしてもらって嬉しいこと?俺があいつに出来ること…………………あ。 あった。一つだけ、あった。―――簡単で、でも“今の俺”じゃなかったらまず出来なかったであろう、出来ること。 「ちょ、ほんとに、本当にちょっとだけ待て!」 鞄を足元に落とし、もう一度生徒手帳を取り出して後ろの方――メモ帳の欄を開き、そいつの方にむけて見せ付けるように開く。 そこに書いてある幾つかの文字の中で大きく丸がついている単語を――もう暗記するほど見た単語を読み上げる。 「奏人!都邑奏人でどーだ?名前」 しばらく俺もそいつも何も言わず、生徒手帳を馬鹿みたいに広げて持っている俺にとって痛いほど冷たい風が俺達の間を思いっきり吹き抜ける。 くそ長いコートの裾が膝の少し下で揺れた。 …頼むからなんか言ってくれ… 「…へ?」 ようやく帰ってきたのはなんとも間抜けな声。ぽかん、とした顔でまじまじと俺を見返し、 「とゆう、かなと?…えと、とゆうって…都邑?」 「あっ…あぁ。 い、一応意味あるぞ。『都会の中で奏でる人』だ」 これは実は漫画のキャラクターの名前として考えたものだったりする。だが、あまりにもこいつのイメージにぴったりだったので拝借することにしたのだ。 …すまん葵。俺〆切ぶっちぎるかも。(一度使ったものは二度と使わない主義) 「漢字は…」 と字の説明をしようとした時、急に目の前の男が動いた。 たっ 「え?」 自分で描いた線を飛び越え、俺の横をすり抜けて走る。 驚きや静止の声をあげる間もなく柵に走りより、その手前でジャンプ。柵の上に飛び乗るとその上でくるりと回転し、バランスを取る。 こちらを向いてぱっと腕を広げ、満面の笑顔で告げた。 「都邑奏人!たった今から僕の名前!…気にいったっ!」 俺は、子供のように素直で透明な笑顔を見せるそいつ…奏人の後ろの空に眼が吸い寄せられた。空にある全ての雲をかき集めたんじゃねーかと思うくらいにはぐれ雲が無い。 そして、空に唯一ある大きく厚く豊かな雲がちょうど奏人の背中に重なっている。 ひたすらに蒼く突き抜けた空のど真ん中に浮かび、長身痩躯を軸として広がっているその雲は、まるで鳥が羽根を広げたみたいに見えた。 ざぁっ…………… 風にさらわれた常緑樹の葉が立てる音が響く。 そして、それがスイッチだったんだと言わんばかりに鮮やかに、オレンジのような赤のような色がその場に満ちていく。傾いた太陽だけがほんの少しの間だけ放つ、それまでと違う色。多分昔の人達が『茜色』と呼んだであろう、なめらかな色。 奏人の背中を中心として伸びる羽根のような雲にも、その色は伸びていた。真っ白だった大きな雲は、地上と同じ色を受けて鮮やかに変身していく。 刻々と変わる色はさながら命を授ける血液のように雲の中をめぐる。ほんの少しの凹凸で変わる色が、雲に複雑な陰影を生み出す。 上空はまだ蒼色を残しているというのに、色という名の血液が通った雲はその中に堂々と浮かび、色の差が更に雲の形を際立たせる。 それは、まるで背中から紅い翼が生えたように見えた。 絶句している俺に気付かないのか、奏人は背中に手をやってごそごそやり、手を下ろした時には風景になびく黒髪が追加された。 手から下がる細い布についた金具と石が風に揺れてちゃらちゃらと鳴り、束縛を解かれた長い漆黒の糸は太股の半分くらいまで緩やかに波打っていた。 奏人はぐしぐしと顔を乱暴に拭うと、さっきと変わらない人懐っこい笑顔を浮かべ、男と思えないような綺麗で笑いを含んだ声を投げてきた。 「そのコートあげるや。餞別っ」 「え、あ、おう。…ありがとなっ」 いきなりの申し出に面食らいながらも、嬉しそうで、楽しそうな笑顔と声に俺もつられて笑顔となる。 ふと思い立ち、俺も髪を縛っているゴムをほどく。背中の中程まである髪が背中に隠れながらもなびき、風であおられてしゃらしゃらと鳴る。俺はこうやって髪が流れる音と感触が好きだから長い髪にしていたりする。 髪を解いた俺を嬉しそうに目を細めて見つめると、一度息を吸って、吐いて。 奏人は笑顔で手を広げ、懐中時計のリューズ―――タイムマシンのスイッチを押す。ほどかれた長い黒髪が風になぶられて大きく広がり、マントのようにひるがえる。毛先が茜色に照らされて透き通るように煌いた。 「ばいばい諒日睦!未来より来たりし若人よ!君の未来に幸多からんことを!」 奏人がそう叫んだ時、背中に生えるように重なっていた雲が、ぐんと近くなったように見えた。…いや、たしかな質量を持って現れた。 雲が重なっただけの見かけのものではない、カモメのように翼の先端が紅く染まった、奏人自身の翼。 鳥のような、聖書に出てくる天使のような羽根が、奏人の背中から伸び、広がるのを見た。 ほんの一瞬だけ見えたそれは、ただの見間違いだったのかもしれない。 でも、傾いた太陽が照らす見知った街と、同じ色がついた雲と翼、そしてあいつの満面の笑顔は、風景にこの上なく馴染んでいて。 ―――忘れられない、風景になった。 そして。 ビビ――――――っ!! 「―――…ぅおうっ!?」 いきなり背後から不機嫌そうなクラクションが聞こえ、素で心臓が跳ね上がったような気がした。 特別な音やら光やらのあからさまな異変は起こることなく、極々普通に俺はその場に立っていた。 テレビ画面が切り替わるようなもんだ。一瞬でさっきと違う景色が見えるようになったけど、それが不思議だと感じないのだ。だから余計に驚いた。 まだどきどき言ってる胸に手を当てて振り返ると、黒っぽい乗用車の中で黒っぽいスーツを窮屈そうに着こみ、壮絶な目で俺を睨むおっさんと目が合った。…鋭い目つきにでっけえ身体。なんかどっかで会ったよーな気がする顔立ち…既視感(デジャビュ)ってヤツかね? とりあえず手を振ってみた。 ビビ――――――っ!! 怒られた。 まぁ道の真ん中にボーっと突っ立ってる中坊から手ぇ振られりゃ怒るわな。急いでそーだったんで早々に道の端により、急加速して行く車を見送った。 ―――――おっと! もう少しで車が角を曲がる、というところで、俺は急にしゃがみこんだ。理由は簡単。しゃがみこんだ数瞬後に、俺の頭が在った場所をスポーツバッグが猛スピードで通り過ぎると読んだから。 ぶぉんっ! 「うおぅ危ねーっ!」 予感ってーか読み的中。ざーとらしく声を上げて相手を挑発するのは基本中の基本として。 馬鹿みたいにでっかいバッグが空気を切る音がした時には俺はもうしゃがむ動作は終わっており、次の動きに移っていた。 ―――すなわち、反撃の動作に。 すぐ後ろに居た襲撃者に同じくバックをぶん投げることで応戦!しかし相手も慣れたもので、大きく身体を傾けることで避ける! が、んなこととっくに予測済みだ。大きく傾いたことでバランスが崩れかけている襲撃者に容赦なく足元に回し蹴り(足払いとも言う)を仕掛けて完全にバランスを崩し、その回転を利用して立ち上がりながら襲撃者の腹のあたりに肘打ち。 といっても腕全体で押し出したような感じなのでダメージはそう多くない。手加減もしてあるしな。 でもそれなりに吹っ飛んでちょうど俺がさっき放り投げたバックに頭から突っ込んでいった。 ―――おぅし計算どーりっ! しかしこのコート動きやすいなぁ…。後ろの切れ込みも深いし、両脇もちょっと切れてるし、肩の上げ下げにも支障無し…。回し蹴りすっげーやり易い。 そんな感想を抱きつつコートやズボンの埃を払いながら、今から何を言おうか頭の中でシミュレート。 一瞬で最適な物を見つけ、密かに笑いながらちょこっと息を吸い込み―――― 「おっしゃっ!!ぴったしかんかん!…コホン。 Good Morning アオイ ヨシカワ!It’s a fine day today. Congratulations!今朝で二〇連敗だ!」 一度ガッツポーズを決め、唯一これだけは英語教師に誉められた発音の良さを披露し、いやみにならない程度に爽やかに朝の挨拶をする。楽しい人間関係にはやっぱ挨拶は必須だしな☆ 爽やかに過ぎるような挨拶を受けた当人はというと、“なぜか”とてもとても恨めしそうにこっちを睨み、コンクリートに寝っ転がったままひっくい声を返してきた。 「まーこーと――――――…嫌味か?嫌味なんだな嫌味なんだろこん畜生はっきりきっぱり言いやがれあぁそうさ俺はどうせお前に勝負挑んでから早二〇連敗の駄目駄目ちゃんだよ一度も二〇秒持ったことない激弱だよ三年生全員に卒業までに一発も当てられっこないとか思われてるよっつーか言われ続けてるよどーせそーさってかお前が言い続けてるヤツのナンバー1だよ解ってんのかコラ――――っ!!」 息継ぎゼロの仰向け姿勢でよくここまでの長台詞を言えるもんだ。しかも噛まずに。放送委員会のアナウンサーとかやってみたらどうだ? それはともかく、はっきりくっきり言うことの許可を本人直々に頂いたのだから、ここは本心をさらけ出すべきなんだろうなぁ…、ということで。 「おう。素敵に思いっきりこれ以上無いってほどに嫌味だな。」 「ほんとにはっきりくっきりすっぱり胸張って答えやがったよこいつ…。 つーかお前英語赤点まであと少しだったろ。数学の次に苦手なんだっけ?無理して英語を使うな。脳みそ擦り切れんぞ」 「ふっ。国語赤点にだけは言われたかねー台詞だなー。俺だって数学で赤点だけは取らなかったのによ」 姿勢的にも言葉的にも思いっきり見下して言ってやる。 無理して国語(日本語)使うな。脳みそ擦り切れる可能性はお前の方があるだろーが。 そしてそろそろ起きやがれ。いつまで俺のバッグを枕にしてるつもりだ。 ―――…俺もこいつもよくぞまぁ高校入学なんぞできたもんだよ。 こいつの名前は吉川 葵(よしかわ あおい)。一応クラスメート兼技の練習台。 ―――もとい、俺の弟子っぽいヤツ。(なんか教えた覚えはねーが)…でもどっちかって言うと悪友としての評判のほうが高かったりするんだが。 意外に絵が上手く、趣味が雑誌への漫画の投稿というある意味すごい奴でもある。 で、次の漫画の主人公の名付け親になってくれと頼まれてたワケだ。 まぁそれはさておき、さっきほどいたばっかの黒髪をまとめてゴムで留める。 ついでに連絡事項があったのを思い出した。 「あぁそーだ。葵ー、俺もしかしたらあいつの名前の締め切りぶっちぎるかもー」 「何ぃっ!?」 その一言でガバっ!と体を起こしてきたのは少しばかり驚いた。 「おいちょっと待てっ!それだけは洒落にならんぞ!頼むからそれだけはしてくれるなよっ?!つーかンな事したら編集者の如くお前ん家までついてってその日の内にあげてもらうぞ!?」 (その剣幕に多少驚きながらも)努力する、と軽くいなしつつバッグを取る。…あのパンとか潰れてねーかな…? 自力で起きあがり、学ランに付いた汚れをを必死で叩き落としている見た目通りに頑丈な悪友を尻目に今日の昼飯の安否を確認する。 …潰れてた。まぁそれでパンの味変わったりするわけじゃねーんだがな… 「そーいえば睦よー。お前、なんかあったか?」 ふと不思議そうな顔をして言ってくる。手は相変わらず学ランの背中部分をバコバコ叩いていて、何気ない口調だった。 「うあ?なに、なんか違う?」 「色々とな。黒のロングコートなんざ着てるし…とりあえずまぁオモシロおかしい目にあってきたんじゃねーかなーと思っただけだ。なんも無いならいいんだけどよ」 「んー…そうだなぁ…」 そんなに何か変わって見えるんだろうか。 ―――とはいえ、常人と比べると少しばかりこいつは勘が鋭い。と言うか確かな動察力を持っている。他の人間にはまず解らないほどの変化なのだろう。 そう思い、ちょっと笑って言ってやる。 「…面白い奴に会って、ゴッドファーザーになってきたな。あと面白いってーかちぃとばっかし理不尽なことにも。 ―――道すがらで話してやるよ。突拍子もないし荒唐無稽だが、なんかのネタにゃあなるかもしんねーしな?」 そんなことを言いながら一枚の羽をポケットから出し、妙な顔をした葵を置いといて路地に向かう。 ビルにはさまれた狭い地面の上には一台の自転車が立っていた。 ベルのところに針の無い時計が付いた、古びているように見えるのに不思議と真新しい艶がある、ゴミに囲まれた変な自転車。 お情けっぽく付いている籠の中に羽を入れ、踵を返す。 あいつの言う『必然』と『偶然』があるのなら、あれは俺の元へ届くだろう。 そしてまた俺は跳ばされ、不良や親父やあいつに会うだろう。 でも、それはまだ始まっていない話だ。 そして、もう終わった話だ。 「よしっ!復活完了!行こーぜ睦!」 「おう!」 そして俺は、また日常に戻ってきた。 その後、俺はいつもどおり遅刻とは無縁の時間に学校に着き、いつもどおりのクラスメートの顔を見ながら教室に入った。 その日は授業がほっとんど無いことを除けばいつもどおりで、特に変わったことも起きなかった。 ………………俺を除いて。 「――――おーい、睦ー。寝るなー。後ちょいで二年の歌が終わるんだぞー。起きてろ指揮者っ。さっきまで腹減ったって騒いでた元気はどこ行ったー」 小声の葵の声を聞きながら、俺の意識は浮き沈みを繰り返していた。 理由は簡単だ。 Q,俺が帰る間際の時間は? A,文字通り夕暮れ時である五時半過ぎ。 ちなみに俺の家は大体七時あたりに夕飯を食う。 そして俺は九〜十時には大体寝ちまう。そこんところはよく子供っぽいと言われるが、今はそれはどーでもいい。 ――――問題は一つ。俺の身体はいまだにあっちの時間で動いている訳なのだよつまり結局のところさぁ。 そして今の時刻は一時ちょい。 …眠いんだよむっちゃ。 その前はものすごく腹減ったし。←夕飯時 あれだ、時差ぼけって奴だ。海外行ったときになる。 …でも昼夜逆転はかなりひどいもんだと思う。地球の反対側行った時と同じだぞ多分。時差ぼけだけ体験してもこれっぽっちも嬉しくねー。どーせなら海外に実際に行ってみた―――――――くはないな。俺えいごッテナンデスカー?な人だし。 …ブ○ックブ○ックガムの意味が今よーやく理解できた。今すぐ帰るのかと聞いてきたあいつの顔が目に浮かぶ。 つーか解ってて黙りやがったなあの野郎。 『騙すんじゃなくて言わないだけ♪』 あぁそーだな言わないだけだな大事なことを。 眠さでまともに動かない身体を無理やり動かし、強制的に眠気をすっ飛ばすためのガムの包み紙を開いて辛さへの覚悟を固めつつ、俺が思ったことはただ一つだった。 あンの―――――――――――確信犯がっ!!!!! 後編、終了。 「つ………………………………………っかれたぁぁぁぁぁ・……っ」 馬鹿みたいに眠い身体を引きずり、俺はどうにか無事に何事も無く家に帰り着いた時の第一声は、コレだった。 …いや、まぢできついよ?半日を二回ほど繰り返してるから、ほぼ丸一日動きっぱだぜ? 非常識なくらい疲れた。 …とソファーでだれていたら、 「ただいまー」 親父か。今日は早いな。 がちゃ。 「あれ?どうしたの睦くん。えらく疲れてるみたいだけど?」 「…色々あった。疲れたってかむしろ眠い」 「大変だねぇ。でも寝る時はちゃんとベッドに入りなよ?風邪引くから」 「俺そんなにヤワじゃねーから大丈夫」 「お母さんが困るの。睦くんもう大きいから二階まで運べないしね」 「………」 そう言えば。 俺の名前は諒日睦。 で、あの時親父に名乗ったのも諒日睦。 ―――関連性…あるんだろうな。やっぱり。 親父と俺は変な所で思考回路が似ている。材料が揃うまで考えること保留とかいい例だが… 俺に睦とつけたのも何か意味があるんだろうな。 あのぼけっぷりに相殺されてる感があるが、親父はあれで頭の回転は速い。あの後すぐに近くに親戚も同じ苗字もいないって気づいただろう。 じゃあ、なんで俺に――――息子に、聞いた名前をつけたんだ? 結論:解らんことは聞くのが早い。 「なー親父、昔、あ――…十六、七年ぐらい前だけど…俺と同じ名前の奴と会わなかったか?」 「え?」 ぽかん、とした声。 「あ、いや、覚えが無いならいいんだけど」 その声にちょっと奏人を連想して、少し慌てて言いつくろう。だが。 「―――?……あ。あれやっぱり睦くん?」 ぽんっと手のひらにこぶしを打ちつけ、半疑問形で答えてくる。 ………………まぢ? 「よかったー。実は名前つけるとき悩んだんだよー。だってもし息子じゃなかったら何かこんがらがる事になってたでしょ?昔の僕。 睦くんの名前違ってたかもしれないんだもん」 ………………。いやいやいや。よかったーって。なんですかその商店街の福引で当たりくじ引いた時みたいな軽い喜びは。 「ってなにいけしゃあしゃあと笑顔で肯定したあげく俺の名付け話秘話を語り始めるかボケ親父。俺がそんな事になるのかも知れないって少しでも思ってたなら小さい頃に話しとくのが道理ってもんじゃねーのかオイ」 「おぉ。睦くんそんな長い言葉よく一息で言えるね。…そんな怖い顔しないでもちゃんと話すよ…。 だって、幾つの時に話したって睦くん絶対信じてくれないって確信あったし。 現に睦くん、行って帰ってくるまでそーゆー超自然現象って信じなかったでしょ?それに、そうじゃないかもって可能生だってあったんだし… と。それが言わなかった理由」 「…百%否定できない要素だけで構成されてる所が妙に腹立たしいんだが… っていうか親父こそよく信じたな。別に誰かに教えられたわけじゃねーんだろ?その…あれが実の息子だって」 「ん―――…まぁ、勘だよ。それに、睦くんよく似てるし」 「…誰と?」 「僕と―――お母さん」 「………………」 …惚気か? 「それに、どこか僕に近い気配はしてたしねー。顔云々は後で気付いた。―――それにまぁ…」 「まだあるのか?」 「名無しの彼は、元気だった?」 「――――――――――――――――――――――――…え゛?」 『ここから始まる時間旅行!』 終了。 始めましてこんにちわっ!あーコンバンワかな?それともおはようございます? まぁいいや。 氷紅梦無です。 ここに『ここから始まる時間旅行!』の完結篇をお届けします。 いやーよ―やく出来ました―。 永かった……(遠い眼) いやまぢで。 受験を挟んだおかげで年も年度も越しちゃったしな―――――…。 最初書き始めたときは正直睦くんどーやって帰そーかなーって思ってたんですよねぇ…。 不審者…もとい都邑奏人が出てくる事と、帰る時間と、雲が背中に重なって翼に見えるってのは決まってたんですけど。(先に設定決めろよ) あ、あと時差ぼけ。 それと、一番最初に『これはロストユニバースやスレイヤーズとはまったく関係無いSSです』とかって書いたのですが、訂正させていただきます。 これは『限りなくオリジナルに近いロストユニバースの二次小説』でした。 後書きで言っても遅いかもしれないですが。 ロストユニバースって途中で奏人が言ってた『人の不の感情をエネルギーにして動く宇宙船』をぶち倒してゆくお話なのです。ぶっちゃけちゃうと。 …っていうか二次小説って言っていいんでしょうか。 ロスユニの登場人物は全く出てこない上に、これから数百…下手したら千年経ってるかも知れないほど遠い時代を舞台にしてるんですよね。ロストユニバース。 まぁここだけの話、登場人物の中で一番妙な素性してんの(元)名無しの変な人だったり「ていりゃっ!」 がすっ!(氷紅の首筋に素晴らしいスピードで蹴りが叩きこまれる。かなりイイ所に決まったらしく一発で落ちる氷紅) ぐはっ! 「こぉんの無計画者ぁ!なぁにが『よーやく出来ましたー』だ!かなりの間放置してて書いてすらいなかったくせにっ!」 (氷紅が聞ける状態じゃないことすら見ずに喚く。まぁ口調で解るだろうが本作に出てきた不審者その一こと都邑奏人である) 「つーか終わらせてすらいないくせに他のに手をつけるってどーゆー了見だよっ?!」 うごぁ…い、言い訳っつーかこっちの言い分は無視…か…。 「言い分ってゆーのは正当な理由がある人に限り使える言葉。よって君のたわごとは言い訳ね」 …さりげなくと言えないくらいにすっぱりとひどいな…。 「あれ、つーかもう話せるほどに復活しちゃったの?けっこー本気で叩きこんだんだけど」 今もまだむっちゃ痛いし頭がふらふらしてきれーな花畑がお前の顔にかかるようにぼんやり見えているが、一応復活したぞ。あぁ、ちょっと先には川が見えるな。 「…それは復活と言っちゃいけない…そしてそれ渡ったら多分帰れないから…」 まぁそこは置いといてだ。 さっきお前が喚いてた『次のに手をつける云々』だが。ぶっちゃけネタが浮かべば僕はあっさりとそっちを始めるぞ?それで他のほうに使えるネタが浮かべばそっちに行くし。これをほっぽらかしているように見えたのだってただネタが見つかんなかっただけだし。 「ふむ。ようは天気屋で移り気で気分にムラがあるタイプ、と」 嫌になるほどぶっちゃけてくれてありがとうっ。 …そしてそのとてつもなく何かを言いたそーな眼はなんだ? 「…うん。言いたいことならあるよー。言っていいんだよね?いいっつったと見なすよ今の言葉。 …君さ、今までの後書きとかコメントとかとかなり口調違うよね?そっちが素?」 ―――素の一つ、だな。正確に言えば。どれが素なのかとかは自分でもしょーじき解らん。 「ふーん。あとさ、あとがきって本来本文のフォローとかなんじゃないの?」 それについては何も言わんがな…ただそーいったフォローだけが後書きじゃないぞ?世の中には後書きで『本書の使用上の注意』とかを薬よろしく書き綴った小説家がいるんだし。 「…電撃文庫?」 内輪ネタだしわかる人にしか解らんがな。 「んじゃ一番言いたい事言うよ?いいかげんこのくそ長いあとがき終わらせないとね。 ――――つぅかっ!こんなくそ長いの書いてる暇あるなら勉強すりゃぁよかったじゃんよ“元”受験生っ!第一志望校落ちたくせに――――っ!!!」 してたわいっ!五月蝿いわっ!過去のことを掘り返すな戸籍無しーっ!!それに滑り込みでも公立校だ文句あるかっ?っつーかいちばん言いたいことってそれかぁっ! 「そーだよ悪いかっ!それと戸籍無しゆーなーっ!名前出来たしあとで造るもんっ!」 開き直ったなこん畜生!造るってなんだ造るって!おもくそ偽造臭い字じゃんか! 「しょーがないでしょ実際偽造なんだし後から割り込ませる以上偽造って言われても文句言えないんだよ! つーか誰のせいでこんな事出来る設定になったぁっ!!」 ん?僕。てーか偽造は認めるんだなお前。(ニヤリと笑いながら) 「…………殴っていいかな。蹴っ飛ばすでも可」 どっちも却下だンなもん。それにお前さっきイイ感じに上段回し蹴り叩きこんだろ首筋に。(首狩りとも言う)それで我慢しろ。花畑見えるかと思ったわい。つーか見えたけどな。これ以上誰が好きこのんで痛い思いなんざするか。 「………君ってさ、なんかすっごい理不尽だー、とか言われたことない?」 …………。何故それを知っているっ?!友人からなら違う言い回しも含めて死ぬほど言われた覚えがあるぞっ!? 「………………………もういいよ…」 なんだ、もういいのか? 一人寂しくオーパーツの調査回収および破壊を頑張ってる都邑奏人くん。『僕ら』とか言って変なところで鋭いとみた少年をはぐらかしたつもりだったのが見事に思惑が外れてしっかりと同情されて名前まで貰っちゃった気分はどーよ? 「……ていっ」(首筋に音も無く手刀を叩きこんでみる) あぐっ 「……………落ちたかな?…うん。動かない」 (つま先でちょっとつつき、動かないのを確認。思いっきり爽やかな笑顔で振りかえり) 「さてと。“何故か急に”作者が倒れてしまったので、僕が代理で締めさせていただきます。 んじゃ、中篇でも前編でもやりましたが。 この物語は、面白かったですか? それともつまらなかったですか? たくさんたくさん笑いましたか? もう読みたくないと思いましたか? 意見、感想、何でもいいです。書いてください。教えてください。 そして、こんな非常識な長さの駄文にここまで付き合ってくださった貴方に心からの感謝を。 叶うならば、もしも再びこの名を目にした時、貴方が物語の扉を開いて下さらん事を… それでは、またの機会に…」 (奏人、優雅に一礼。全てが闇に消える) |
32532 | 初めましてです。 | 侑子紅子 | 2006/5/28 18:47:29 |
記事番号32526へのコメント 初めまして。侑子紅子(ゆうしこうこ)と読みます。 前篇を読んでだいぶたったので、もう一回読んでから後篇に取りかかりました。 占めて40分!(テスト前にもかかわらず…;) では感想などを。 >この話の主人公こと俺、諒日睦(あさひまこと)にとって、その日はとても特別な日だった。 > > > >その朝、俺は遅刻しそうで。 >変な羽根を捕まえた時に一緒に自転車見つけて。 >迷わずかっ飛ばして。 >学校に着いたら知らない奴らがいて。 >とりあえず学校から飛び出して。 >どうやらタイムスリップしてるらしくって。 >不良に絡まれて。 >かるくボコして。 >親父が見てて。 >親父が好きな公園に連れてかれて。 >ちょっと話して。 >親父が去って。 >昼飯喰って。 >ちょっと寝て。 >目が覚めたら誰かいて。 >プロフィール謎だらけで。 >「タイムスリップ、したんでしょ?」と言われて。 >時が、止まって―――――― めくるめく日々…。 体験したいような、したくないような…。(あ、したくない比率の方が高いや。←オイ) >「………………は?ちょ、で、と、な………え?だっ…俺っ…なぁ?!」 >しばしの沈黙の後、ようやくひねり出した言葉は意味不明だった。 >「えと。『はい?ちょっと待て、でも、えと、何でそんな事…えぇ?だって俺、なんも言ってないぞ?!』かな? >………落ち着いた?」 >言葉の断片から俺の言いたい事をわざわざ理解して口に出してくれたおかげで少しは。…よくわかったなぁ。 >「お、おう。けっこー落ち着いた。…あと台詞の訳正解。一語一句まで」 >「え、まぢで。やぁったっ」 >俺の言葉に両手をぎゅっと握って喜んでいる。――――――………やっぱ、子供? >「まぁいい。落ち着きついでに疑問が幾つか。答えてくれるか?」 >「んー?質問によるけど答えるよー。さすがに来週の天気当てろとかは無理」 >「誰がそんな下らん事聞くかっ!」 わお、大正解! ある意味、すごい才能の持ち主ですね。 >聞くべきことはただ一つ。ついでに聞きたいことがもう一つ。 >「……で、だ。なんで俺の状況を知ってる?それと、俺は元の時間に戻れるのか?」 >「うや?ん―…と」 >じろじろと俺の格好を見てから、こくりと頷いた。 >「うん大丈夫。君こっちに来たの最近でしょ?モノには時間軸ってもんがあってそれは周囲の環境が変化すると一旦は反発するんだけどその反動か一回定着しちゃうと再び動かすのが困難に―――――…ってこんなこと話されても意味不明だよね」 >「いや言ってる事の意味ならなんとか解るが」 >今のところ、という言葉が前につくが、一応は解る。 >…意味は解るがこれ以上言われても同じように解るかは疑問だ。専門用語でてきそうだし。 >「まぁ正直な所こんな今解明されてるか不安な原理説明したって君にも僕にもなんのメリットもないんで気にしないで。とりあえず帰れないことはないから」 >「気にするなって…」 >無理な相談、という言葉を知っているのかこいつは。 >「……でさ、君何に乗ってきたの?」 >うわぁ。 >ホントに何もなかったように自分の聞きたい事だけ聞いて来やがったよ。俺がそんな意味不明で気になりすぎる会話をそう簡単に忘れられると思ってんのかこいつわ。 マイペースなお人。 いろんな意味で頑張ってください睦さん! > 結論:人の話を聞かないタイプだと思う。 個人的な意見:素敵じゃないですかマイペース人。 >…はいそこっ。見たまんまだとかいってんじゃねー。そこはツッコんじゃいけねえんだよっ! >「お―――いっ。戻ってこーい」 >と、目の前に手のひらをかざしてひらひら振られ、思考の国から帰ってくる。 >「へ?!あ、すまん。ぼーっとしてたっつーかちょっとつっこみ返しを…」 >「どこからのつっこみ?」 >「気にするな」 >目の前の小首をかしげてる子供っぽい奴と全く同じ台詞を吐いたと俺も思った。…まぁあれだ。気にすんな。 > >「で、えーっと?何に乗って来たか、だっけ?」 >「うん」 >「え―――――――っと………………………あ、自転車」 >どうもあまり気にしてなかったのが災いしたらしく、思い出すのにしばし時間がかかった。 >で、その言葉に対する反応は。 >「はぁ?自転車ぁ?…………なんだってンなもんに…」 >なんか馬鹿にされた気がした。ついでに注意する前の先公みたいな口調にも聞こえた。 >「だっ…しゃーね―だろ!遅刻も皆勤賞も目の前だったんだから…!」 >「いやわかんないから。それに僕が言ってんのは別のコト。 > …しっかし…自転車、かぁ。盲点だったなー。 >今までなら時計とか車とかだったし…もうちょい索敵対象広げた方がいいか…?いやでもこれ以上広げるとヒットしすぎるんだよね…ん―――」 >今度はこっちが思考のループに陥りやがった。腕組んでなんかブツブツ言ってるし。俺も引き上げてやるべきかな? >「お―――――い。何の話だ?」 >トントンっと肩を叩いてやる。手ぇ振るよか簡単だし確実だろう。 >「にゃっ!?は、あ、えーと…こっちの話。気にしない。気にされても説明するのめんどいし」 >「そこでさりげなくめんどいとか言ってんじゃねぇ」 >それって知ってるけど教えないって意味だろ。面倒臭いなんて理由で知る権利を奪われるなど納得がいかん。 >「あ、んでさ、もうひとつの質問に答えるね?“なんで状況を知ってる”ってやつ」 >「…あぁ」 >体よくあしらわれた気がものすごく。…まあそれは知りたいがな… >とゆーかいつ帰れるのかとかは定かじゃねーんだよなー。…大丈夫なのか?本当に。 >「それは結構簡単だよー。だって君一人だけものすごく時間軸違うんだよ?」 >「……………えっと。今のは笑う所か?」 >「いやほんとに。それなりの測定機あれば時間軸って解るんだよ?」 >………………嘘くせー。 >「うう…信じてもらえない―――…」 >沈むなそこで。お前歳幾つよ? 見たまんまって突っ込めませんでした… ただ素敵、と。 説明を面倒くさがって言わない人…友人にものすごく似てます。 測定器で測れる時間軸ですか。便利そうですね。 >しばらくして、思い出したようにそいつが言い出した。 >「んとね、もう一個の状況把握の為の材料だけど。君さ、紅い羽根持ってなかった?」 >「紅い羽根?んなもん持って…………………………あ!」 >思い当たる羽は一つだけ。確か朝っぱらに拾った先が紅く染まった綺麗な羽が… >「っと、確か学ランのポケットに入れた―――あれ?」 > >見つからない。 > >確かに学ランのこっちのポケットに入れた筈だし、軽い羽とはいえそれなりに深いポケットだし、一応蓋らしき物も付いている。落ちるはずも無いんだが? >「……………おろ? >……い、一応持ってたんだが。あ――…今、消えた」 >どこで落としたかな―――…とかぐるぐる考える俺をよそに、そいつはあっさり頷くと、 >「そりゃそーだ。まだ持ってたら君がどうやって時間越えたのかわかんないし」 >「はい?」 >消えるのが当然だと?んじゃあの羽は何なんだ? >不振な目を向け、無言で説明を促す。 >「あ―――――えっと。……うん、それも説明する」 >ちょっと迷うというか困ってる感じで空やら自分の指やらに落ち着きなく視線をさまよわせたが、説明するという事で決着がついたようだ。 > >が、その前にと前置きし、俺の顔を覗き込む。 >「君の名前教えてくれないかな?」 >「あぁ、まだ言ってなかったか… >てか自分は名乗らないのに人には聞くのか」 >「僕は『名乗らない』んじゃなくて『名乗れない』なの」 >あっさりきっぱり言ってくるけどそういう理屈って通用するんだろうか。そして通用していいんだろうか。 >つーか理屈って言っていいのかね。屁理屈だと思うのは俺だけ? > > ―――でもまあ名前なんぞ所詮は自称だしな。名乗りたくなければ本人以外は知ることはできないわけで。 成る程、と思いました。 確かに、自分の名前なんて言わないと分からないですもんね。 >「あさひまこと。字はこんなん」 >と生徒手帳を見せる。生年月日とか書いてあるので親父に見せるわけにゃあいかなかったが、こいつは最初っからタイムスリップ云々を言ってきたやつだし問題なんぞどこにもない。 > そもそも俺の名前(特に睦)は口で言っても通じない事が多い。おかげでこういった身分証とどこでもいっしょだ。 >目の前にぶら下げられた生徒手帳に下から手を当てて角度を調節し、書かれている事を声に出して読む。 >「えーと、諒日睦。これは?…あ、まつりか。茉莉中学校三学年一組。一九九〇年十一月一五日生まれ…か」 >ぱ、と手帳から手を放すと、何を思ったか俺をまじまじと見てくる。 > > その瞳はなぜか真剣そのもので、あまりにまっすぐに物を映していて、それに映った自分はどう見えるのだろうなどとふと想像して少し怖くなった。どういう生きかたをしたらこんな綺麗な目が出来るんだろう。 >名前が無いなどという状況。もしも本当だとしたらこいつには自分を表す記号が―――ひいては自分の存在を肯定する物が無いことになる。そんな環境にあってなお、何故こんなに人懐っこく振舞えるんだろう。 > >たぶん、俺がその答えに行き着くことはない――…と、思う。 この辺り、ギャグな雰囲気から一気にシリアスになっていて、読んでいてドキッとしました。 >「…なんだよ」 >一部の友人以外には知られていないことだが、俺は結構変に物事の裏側を読む癖がある。 >今巡った思考を見抜かれるのではないか。一瞬そんな考えが脳裏に浮かび、口を開くのが少し…いや、結構怖かった。 >――――そして、言われた事は。 > >「…意外に普通」 > >「――――意外って何だ意外って。まるで手帳に普通の事が書いてあったらいけねーみてーじゃねーかコン畜生っ! >何だ?!何が書いてあったんだお前の頭の中の予想図にはっ!!」 > 少しでもこいつが繊細みたいな考えかたしたのが馬鹿らしくなった。 >拍子抜けもあって、とりあえず頭わしづかみにしてがくがく振りながら思いっきし怒鳴る。 >「あうあうあう――っ!なっ、なにすんのさいきなりーっ。あーびっくりしたぁ…」 > びっくりしたとかいう言葉とは裏腹に極々簡単に俺の手から逃げると、平然と…つーかむしろ妙に楽しそうに指折り数えてあれこれ言い始める。 >「そーだなー…特に何ってワケじゃなかったんだけども。強いて言うなら“実は歳大学生です”とか“実は地球外からやって来ました”とか“実は国籍違います”とか“実は未分証明書はフグの調理師免許でした”とか…」 > >溜め息一つ。とりあえずこの後の動作が決まった。 > >そいつを横目に見ながらおもむろに立ちあがり、ベンチの後ろにまわって真後ろに立つ。俺が立ちあがったのを気付いていないのか気にしていないのか知らないが、なおも例をあげようとしているそいつの頭(こめかみの辺り)にそっと手(拳)をそえ―――― >「そーかそーか俺をそんなに普通のヒトにしたくないのかそぉかよーく解ったそしてテメェも人の事どーこー言えるはずねぇぐらい普通じゃねーのわかってんのかコラ♪」 > ちょうど骨が当たるような感じでぐりぐりと拳をえぐり込んでみる。ついでにいっそ清々しいくらい明るい声もプラスして抗議の悲鳴も聞こえないふりをしてやった。 >「あ゛いだだだだだだだだだだだだだっ!!!ギブッ!ごめんっ!ちょっとからかってみただけっ!痛い痛い!ごめんなさい―――っ!」 >「あぁ…なんか聞こえるなぁ…気のせーかな?気のせーだよなぁ…うんうん。こんな平和で和やかで微笑ましい光景に悲鳴なんぞ聞こえるはずも…」 >「認めるっ!遊んじゃってごめんー!ってか謝るからそろそろやめれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」 > とりあえず、天気図上では曇りの表示になるであろう空はそれでもやっぱり晴れているように見え、降り注ぐ光はぽかぽかと暖かかった。…一応真冬と言われそうな時期なんだがな。 >…平和だ。うん。 そしてまたギャグに戻っているのに、変わり方が不自然でない。 表現力って、こういうことを言うのだろうと思いました。 へ、平和で穏やかで微笑ましい…? 叫んでいる人、堂々無視してますねー…。 >で。しばらく聞こえないふりをしてぐりぐりやってから解放した。半分くらい泣いてたし。 >ベンチに座りなおして隣をしばらく眺める。 >「う゛――――…まーだ痛い……」 >解放してもしばらくは頭の両脇(こめかみの辺り)を抑えてうなっていたが、ようやく言葉を発するようになった。 >「自業自得だ不審者その一」 >間髪入れずにこれ以上無いってくらい冷たい声で応対してやる。 >「…その呼び方は拒否っていいかな」 >「それこそ却下」 >「うーわひどー。鬼―」 >大げさにのけぞってむくれた子供みたいな声をあげる。…まあ見たまんまだとは俺も思うが。 > >「ちぇー。…まあお遊びはここまでとして。 > 君が持ってた羽の話しよーか。君さ、その紅い羽って自転車に乗る前から持ってたんだよね?」 >俺が乗ってこないのでつまらなくなったか、舌打ち一つで簡単にもとの体勢に戻る。子供なんだかただそんなポーズをしている馬鹿みたいな大人なのか。…後者なら果てしなく怖いんだが… いや、面白いと思います。 不審者その一になんか惹かれました(え) > まぁそいつの言動にかなりが付くほど呆れていたのだが、その言葉でふと思い出した。こんなことになった原因を。 >「…あぁ。……そういやあの羽見つけたおかげであんな不思議自転車見つけたんだっけ…」 >「にゃ?そなの?」 >首をかしげて意味不明な造語をぽんぽん作るな。猫かお前は。 >「そーなんだよこれがまた。…そうかー。あの羽見つけたおかげでこんな所に居るだよなー」 >「…えっと、睦くん。うつむいたまま静かに低い笑い声はいかがな物かと」 >「フフフフフフ。気にすんな。わざとだ」 >「そっちの方がタチ悪い――…」 >再びのけぞりつつ、今度はそのまま少し俺から距離を取る。冗談なんだが。 >「はい、んで?なんで俺があの羽持ってたって思った?」 > もう少し遊んでみるのもいろんな反応が見れそうで面白そうだったが、そろそろ進まんと日が暮れちまう。 > >ちなみにこれは冗談ではない。しばらく寝たのもあいまって意外に時間が進んでいる。後一時間しないうちに日が暮れ始めるだろう。 > >「…うん。説明するっていったよね。たとえ説明する途中で変な突っ込みされそーでやだなぁとか思ってても言った限りはやんないと駄目なんだよね」 >「……………」 >悪かったな。変な突っ込みばっかして。…つーかそんなに嫌になったか俺の言動。 >「う――色々はしょれれば楽なんだけど、君には通じそうにないし一から話す。関係無さそうでも寝るなよー」 >「寝ねーよ」 >「ならよし」 > とりあえず信じる事にしたのか一度頷き、どこからともなく(多分体の影になって見えなかっただけで反対側に置いてあったんだと思う)リュックを取り出して中に手を突っ込んでかきまわす。そのリュックはそれなりの大きさはあるようなのだが、不思議なくらい薄べったいせいであまり大きく見えない。 >「ん――――…、あれ?確かこの辺だったと思ったんだけどな。 >うや?あれ?――――――忘れてきたかな…?いやまさかね…―――――――――ってあったっ!」 >しばらくかかって…本当に探し物入ってるのかと俺の方が不安になり始める頃、それは出てきた。それは―――― >「…あ――…時計のでき損ない?」 >「見たまんまだねぇ睦くん」 >楽しそうな声は置いといて、しっかりと眺める。 >針だけの、文字盤の無い時計。首にかけるための長い鎖の先で揺れる、手のひらにすっぽり収まりそうな普通の懐中時計。だがよく見ると動いていない。 確信犯… インテリアっぽい時計ですかね。 >「―――で?これ、なんだ?」 >どこかで見たことがあるような気がしてしばらく記憶を探るが、結局見つからずに答えを聞くことにした。 >「これは…あー…ちょっと長くなるから覚悟よろしく。話戻すけど、これはね」 >そこでまるで子供がないしょ話をするように少し声を潜め、楽しそうに告げた。 > >「タイムマシンなんだ」 >「へぇ」 > > その声はどこまでも軽く、まるで小説の終わりを嬉々として語るかのように気負いなく弾んでいた。 >だから、一瞬何でもないことだと本気で思って一言で流してしまった。 >それは相手にしてみれば予想外の反応だったのか、 >「あれ?もーちょい驚くかと思ってたのに。つまんないのー。…まぁいいや。でね」 >「………………………おい。おいちょっと待て。今なんて言った?」 >本気でマズイこと聞き流した気がして思わず待ったをかける。話を遮られることに関しての不快感はゼロなのか、んー?と不思議そうな顔をながらも言いなおす。 >「聞こえなかった?だから、タイムマシン。君が時を越えた原因。…まあ同一の個体ではないけども」 >「…タイムマシン…?こんなちっさい時計モドキが、か?」 >「そ」 > あっさりと頷かれて、逆にすんなりと信じる事ができた。こんなまっすぐな眼をしてここまでぶっ飛んだ嘘を吐ける奴なんぞそう居るわけでもあるまいしな。たとえ居たとしても、そんな嘘を俺について何か利益があるとも思えない。 >軽く息を吐く俺をどう思ったのか知らないが、そいつは正面に見える崖と手すり、そして両側にある木とで区切られた空をしばらく見ていた。 >二羽の鳥が競うように空を横切ったあと、ちらりと俺を横目で見やり、そいつはしばし考えてから切り出した。 > >「…昔々、この宇宙には別の文明が栄えてたんだ。技術なんか今の比じゃないくらい高かった。 >人の心の力――精神力をエネルギー源にする術だってあったんだよ。でも、ね。そのうち戦争が始まっちゃった。人間の性って奴なのかねぇ…?」 >「………あ……?」 > 唐突に始まった話は、今までと違う、まるで子供に御伽噺を聞かせるような口調で、内容も作り話の色彩を帯びていた。 >話しながらベンチにもたれ、視線を青空をゆっくりと流れる大きく膨らんだ雲にむける。子供っぽい口調で話す内容は、その声に不似合いな物だった。 > タイムマシンといえばやはりドラ○もんが思い浮かんでしまいます。 でも、これは違う系統のものなのでしょう、きっと。 >――――――――――――それは、御伽噺だった。 > >高すぎる技術は魔法じみてくる。だが、魔法に限りなく近い技術も、過去の科学と同様に戦争の道具と成り果てた。 >そして歴史が示すように、高い技術を持てば持つほど一度の戦闘での戦死者が爆発的に増えていった。 >人を救うための技術ですら、その正逆を歩めばヒトを破壊するのだ。 >やがて、それの究極の実例を示すように、勢力の片側が恐ろしい兵器を生み出す。 >人の恐怖、憎悪、焦り…戦場で最も生まれやすいそれら全ての負の感情を糧とし、更に殺戮を撒く、意思を持った宇宙船―――― > > >そこで急に話を切ると、ふとこちらを向いた。 >「―――はい、ここで問題です。そんな宇宙船が戦争…いや、世界に出たらどうなると思う?はい、睦くん」 >と、背もたれの上に置いた左腕にあごを乗せて俺に笑いかけ、右手の手のひらをむけてくる。 > …唐突に話をふるな。しかもなんか悲惨そうな話の中で。…とはいえ返せる答えを持つ限りは答えなければならないわけで。 >「どーなるって…やっぱ創った奴らだけが残る…勝つんじゃねーか?」 >「うん。ホントはそうなるはずだったから正解。でも実際は、その“創った奴ら”が真っ先に滅ぼされた」 >「…え?」 >ポロリと零れた声は届かなかったのか、話はそのまま続いた。 >ごろりと横になるように背もたれに思いっきりよっかかり、再び空を見上げる。 > > >どこかが壊れたのかもしれない…そもそも負の感情をエネルギーにする戦闘艦という存在自体に問題があったのではないか… >幾つも説が流れたが、どれが正解だったのかなど、今となっては確かめる術も無い。 >とにかく確かなのは、その船が人類の手を離れ、人間の視点から見た“暴走”に走ったということのみ。 >そして、世代を交代するような猶予すらなく、宇宙に静寂が満ちた。 >その宇宙船と、それを護る為に製造された四隻の宇宙船によって、その文明自体が滅ぼされたことによって――― 私も、創った人が勝つと思ったのですが…船が暴走し、真っ先に滅ぼされてしまうとは…。皮肉なものですね、自分たちを自分たちが創ったもので消されるのは。 >しばらくは沈黙が落ちた。ほんの数秒だとは思うが、今の季節とやりきれない寒さを痛いほどに感じ、起きたときにかけてあった黒のロングコートを羽織った。風が遮断されることで少しずつ体が温まってくる。 > 口が開きづらかった。 >相手は柔らかく、下手したら無条件の優しささえ感じさせる笑みを浮かべて揺れる木の葉を眺めている、さっきまでじゃれ合いのようなことをしていた相手だというのに。でも、聞かないわけにはいかなかった。この話が終わらない限り、俺が元いた時間に帰ることはないのだと、何処かで勘付いていたからだ。 > だから、短く固いその沈黙を破ることが出来た。 > >「……なんだ…?その…話」 > > 言いながら、この沈黙を破る事をためらった気持ちの理由が見つかった気がした。 >――――人は、辛い記憶であればあるほど、それを茶化して語りたがる。それは自分が当時の自分に感情移入しない為であり、それは終わった事であると再認識する為の儀式に近い。自分をこれ以上傷つけないようにする為という自衛行動の一端であるという説もある―――と、俺は何処かで聞いた。 >何かで読んだのかもしれないし、テレビだったのかもしれない。だが、今は情報源が何であるかは知る必要はなかった。 > 今大事なのは、こいつの言動がどうしても『それ』に見えて仕方がない、ということだ。 >馬鹿馬鹿しい妄想かもしれないし、勘違いであるという可能性だってある。だが、なぜか…その思いがどうしても消えなかった。 > > 少し掠れ気味な俺の声に、一瞬きょとんとした顔をすると、さっきまでとは違う意味を含んだ笑みを浮かべて立ちあがり、ズボンのポケットに時計モドキを落としながら答えた。 >「御伽話(おとぎばなし)だよ。この先ずっと語り継がれることも、思い出されることさえもない…ね」 > その言葉は、声は変わらないはずなのにどこか違っていた。子供っぽいとまで聞こえる無邪気な調子が消え、ひどく疲れきった…ヒトの汚さを見続けた老人のような醒めきった響きがあった。意外なほど静かな立ち居振舞いと長身痩躯も、それを際立たせるだけだった。 > ほんの一瞬しか見えなかったが、その諦めたような、疲れたような笑みは、目の前にいる子供っぽい言動の男が確かな“大人”なのだと納得するには十分だった。 >子供…何も知らない存在では、あんな顔が出来るはず―――― > よく見てますね…。 本のタイトルを借りるなら、「失はれた物語」ですかね。 > 一歩、二歩、三歩。静かに歩くと、そいつは不意に振り向いた。その時には、 > > > > > > > >「んで。 >そんな進展もないくせに暗さだけ残すよーな昔話は置いといて。 >これはそんな昔に創られたもん。アンティーク…もはやオーパーツだぁね〜」 > > もう思いっきり笑顔だった。 > >へにゃ〜とか擬音がつきそうなゆるゆるの笑顔。なんか一瞬にして前言撤回したくなりましたがナニカ? >「雰囲気ぶち壊しはお前の特技か…」 >「…?」 >何でもね、と手を振って誤魔化した。 雰囲気を盛り上げるのは君の得意技さ!(何) >しばらく不思議そうになんなのかと聞かれたが、黙秘権を行使して(ひたすらに黙りこくって)切り抜けた。 > >「――む―――…オーパーツは解るよね?」 >あまり納得はしてなさそうだが、これ以上問い詰めても進展しないと悟ったのか話題を変えてきた。 >「…あぁ。ピラミッドやら心臓の絵やら水晶ドクロやらのどー考えてもその時代の技術力じゃあ作れっこないよーなもの…だろ?年末あたりのテレビでよくやる」 >「最後のはどーかと思うけど正解。解ってんならいいやっ」 >ててっ、と数m走り、公園の真ん中に鎮座しているひょうたんのような形をした砂場の淵で足を止める。 >くるりと回転してこちらをむくと、いつ取り出したのか何かを俺に投げて来た。 > >「お?」ぱしっ > >ゆるい放物線を描いて俺の顔面に飛んでくるそれを片手でキャッチ。…顔面衝突コースはわざとか? >「…えーと、そこの不審者その一?この金属ボールはなんだ?当たると痛そーだが」 >飛んできたのはまんま金属ボール。手のひらに収まるくらいの鈍い銀色をした球体で、ぐるりと一回りする溝以外、飾りも何もないような無表情な物体だった。 >「当たった人は見た事ないけど多分痛いね。…ってかさっきから付ける名前が安直過ぎだと思うんだけどそこんとこどーよ睦くん」 >砂場の淵であるコンクリートの上でしゃがみこみ、誰かの忘れ物であろうスコップで砂に意味なく模様をつけているそいつが言ってよこす。 > >反論。 >「いーんだよ仮称なんだから。それともなにか?仰々しい名前とか付けたほうがいいか?天使のでも引っ張ってくれば簡単だと思うが」 >それに反論が返ってくる。 >「メタトロンとか?やめよーよ…。あとその不審者その一ってのも。僕拒否ったじゃん」 >それに更に反論を返してみる。 >「いや、サキエルとかゼルエルとかの方。あと呼び名なら拒否は却下って言ったぞ。つーか他にどー呼べと?名前ないんだろお前」 >また反論が返ってくる。 >「さらにマニアックなものを…ってかそれって使徒じゃん。まぁ名前ないのは事実だけどもーちょいやり方はあると思うよ?」 >反論に反論を重ねる俺達。 >「同じよーなもんだろ?それに元ネタは天使だとか聞いたぞ。ついでだからお前にその辺の名前でもつけよーか。仮称だし別にいいよな?」 >更に反論を… >「確かにそーだったかもしんない…よく覚えて無いや。でも仮称とはいえそんなのつけられるのやだ…」 > > どうでもいいが二つの話題を同時進行っていかがな物かと思うんだがそこんとこどーよ?俺はめんどい。 > >「んで?この金属ボールがどーしたって?」 >という事で強引に話をまとめて結論(でいいのか自信がない。話まだ続きそうだし)を求める。 >転がしたり弾いてみたり回転加えながら投げてみたりと色々弄くっても何も起こらないしなにも見つからない。大体これが何をする物なのか聞いてない。ついでにあの時計モドキとの因果関係も。 > 今度は熊手のような物をいじくりまわし、ふりかえりもせずに答える。 >「えーとね、それも時計モドキと同じくらいに作られた物で――…、なんだろ、音楽の再生機?まぁそんなこと出来るやつ。時計モドキもそーだけど、電源も電池とかもいらないからお得だよ」 >「あ?じゃぁなにか?この金属ボールもあの時計モドキもねじ巻きとかそういうもん原動力にしてんのか?」 >冗談でそんな事を言うと、しばし考えた後にひっくり返していたバケツを放りだして立ちあがり、振りかえりながら手についた砂を払う。 >そして、やっぱり気の抜ける笑顔で告げた。 > >「ううん。精神力」 > >……………………………………。 > >「なんだそれ」 >まっさきに心の底から思ったことを聞いてみた。 >「なんだそれといわれても…ん――…、気魂、気、心力、精力、気力、生命力、活力、元気、根性…とまぁ信仰から来たものからミもフタもない言い方まで色々あるけど、そんなとこ。心の力ってのも近いかな? >…ってかさっきの昔話でも出てたでしょ?精神力を糧とし〜って」 >「……………………」 >いや、言ってることは解る。解るが…精神力ってエネルギーか?少なくともあんな機械が動かせるなんて聞いたこともねーぞ?――――ものすごく今更な気もするし二度目だが、こいつが一気にうそ臭く思えてきた… >黙り込む俺を見てどう思ったのかは知らないが、とことこ近づいてくると手を出してそいつは言った。 >「それ貸して」 >「元々俺のじゃねーんだが?」 > 漆黒の目を覗き込みながら答え、上着で半分くらい隠れて小さく見える手のひらに載せる。俺よりも年上(のはず)なのになんか落としそーに見えるんだよこいつ。金属で出来てるんだから落としても簡単には壊れないんだろーが…。 > どこと無くはらはらして見ている俺をよそに、 >「見てて」 >とだけ言うと、俺の目の前に金属ボールがくるように持ち、目を閉じた。 > >そして数秒もしないうちにそれに刻まれた線が鮮やかな翠色に光ったかと思うと――― > > >――――――――音が、流れ出した。 天使の名前ですか。 有名どころしか分かりません。 ヘラ、アテネ、ガブリエル、ミカエルなど。 >それは淡々としていて、水面に張った氷を歩くように繊細な、少しだけ軋んだ音。それは、 >「……………オルゴール?えっと…トロイメライ、っていったっけ?」 >流れ出した曲は日本でもそれなりに有名な物であり、俺も幾度か耳にしている。あやふやな記憶の中から曲名を引っ張り出してみるが、合ってるかどうかは自信がない。確かそんなんだったと思う、といった程度だ。 >「ご名答。音楽の再生機だって言ったでしょ?」 >そういえば言ってたなそんな事。ん?ってぇことはもしかして…? >「なぁ、さっき歌ってたとき…」 >「あ、気づいた。正解だよー。これで伴奏流してたのさ」 >やっぱり…。さっきは深く考える暇がなかったお陰でお流れになった疑問がするりと氷解した。 > > そして、唐突に思った。 >「…今更なんだが。俺の置かれてるこの状況って夢だとかって思ったほうがいいのかね?」 >いやだって、時間を飛び越えて行った先で言われたことは『それは大昔の遺物です』じゃなぁ…。 >「…………ほんとに今更だね睦くん。まぁ当たり前っちゃぁ当たり前だし無理に信じろとは言わないけどね?言わないけど…でもさぁ…う――」 >ぶつぶつ言いながら小石を蹴り、信じてーっと全身からオーラっぽいものを発しているヤツをどーしよう…? トロイメライって知りません…; 私が知ってるのはメヌエットとトルコ行進曲くらいです…。 とりあえず、信じてみましょう! 人のこと言える立場じゃないですけど…。 >すらすらと当たり前のことを説明するかのごとく言葉をつむいだ声はどこか冷たく、ただ何かを読み上げているだけだと告げていた。 >言い終わったそいつは、解る?とでも言いたげな視線をこっちに投げかけてくる。 > …正直なところ時空間なんちゃらは覚えきれなかったが、その原理というか“出来ること”は理解できた。ついでになんとなくだが羽の役割も。 >「そしてその口上はどこからだ?」 >視線には答えずに、こっちの疑問だけを返す。 >それで内容理解は十分とみたのか、また元の柔らかくも子供っぽい口調に戻り、考えながら返して来る。 >「うや?えと、取扱説明書より、だよー」 >「あるのか説明書」 >「あるのさ説明書。んでね、この演算ユニットは大昔に試験用に数基作られたんだけど」 ああ、このやりとりが好き。 >「…人類が栄え始めた頃から二〜三〇〇年先だぁ…?想像も出来ねーな。ちなみにそん時は誰が助けに行ったんだ?さすがにお前は居ないだろ?」 >むしろ知ってることが驚きだぞ。 >その問いに、そいつは人差し指を唇の前で立ててのたまった。 >「企業秘密♪」 >「…それは、企業か?」 >「それも企業秘密」 >「……………」 >聞いても絶対に教えてくれそうになかった。つーか企業秘密って随分と利便性のある言葉だな。あぁ日本語って便利。 本当、妙な言い回しが出来るのって日本語くらいだと思います。 日本語、だから好きなんですけど。 >「あ、そーだ。君がこっちに来た時間…えと、自転車見つけて動かしちゃった時間って何時か解る?大体でいいんだけど。あと位置も」 > ポン、と手のひらに拳を打ち下ろし、思い出したような口調で言い出した。…ってか今思い出したんだろーなー… >「結構今更だな…えーと、二〇〇五年三月十日、午前八時…」 >そこで言葉が止まる。 > > 自転車を見つけた時間や場所はハッキリと覚えている。だが、それをそのままこいつに伝えていいもんだろうか? >正確な時間を告げ、その時間にきっちりと帰されたりするとまず間違いなく学校にゃ遅刻だ。 >ホンの数十分巻き戻るだけで俺は遅刻なんぞせずにすむ。 >ついでにさっきこいつは何て言った? > >『――――大体でいいんだけど』 > >つーことは多少ずれていても問題無し、と。 > >「八時――――あ――…二〇分ぐらいだったか?正直よく覚えてねーや」 >「あそ。なら二〇分でいいね?」 >「おう。―――んで、自転車のあった場所ってーのは…あ、こっち来い」 >口で言うよりも指差したほうが早いと思い、そいつに手招きしながら崖に小走りでむかう。 >がけっぷちから自転車のあった場所を眼下の町を指差すことで説明しながら、俺は心の中でこっそりほくそ笑んだ。 > > >これにて俺の遅刻は幻となった。 な、成る程、あったまいい! 遅刻が無しに…けがの功名ってやつですかね。 >豆知識パート2♪ >天文学的数字とは文字通り天文学で(星同士の距離だの大きさだので)扱うような桁が馬鹿みたいにある数字のことだ。 >地球の大きさを言われても実感が沸かないように、日常で使うことがまず無いような数字である。 へぇ… >「気にしない気にしない。細かい事気にしてるとはげるってよく言うじゃん」 >多分俺がしかめっ面してたからだと思うが、能天気というか何も考えてなさそうな笑顔でぱたぱた手を振って軽い声で笑い飛ばしてくれる。 >「お前はエスパーか。勝手に人の考え読むんじゃねぇ」 >「違うし。人の表層意識だけ読み取るのなんか本物の読心術の使い手だって難しいんだぞー」 >「逢った事あるのかお前」 >「んーにゃ。どっかの本で読んだだけ」 >「……………………」 >こいつの言動に不思議言葉や怪情報が入るのはもう突っ込まないようにしよう…キリがねーし今の状況もそれに匹敵するような不思議で溢れてるしな 漫才でしょうこれはもはや。 >「え――――――……と。いや駄目じゃないよダメじゃない。大丈夫だよ?安心して」 >『大丈夫』とかそーゆー台詞は言うべき相手の顔をまっすぐ見て始めて効力を発揮するもんだと思いっきり実感させてくれてありがとう。っつーか安心させようという気が少しでもあるんだったら空とか街灯とか雲の端っことか遠くに転がってる木の枝とかその他に視線をさまよわせるの止めよーか? >「…なんか不安材料があるんならはっきりと俺の目を見て言おうかそこな不審者その一」 >「うーわーあーぁー…っと。だいじょーぶ!送るのにはなんの支障も無いからっ!」 >とりあえず頭を鷲掴みにしてがっくんがっくん揺らしながら言ってみるが、さして効果は無かったらしい。 >あっさりと抜けると、何かを含んだ笑みで保証してくれた。 >「……………………送るのに“は”ってなんだ“は”って」 >「えと………、黙秘権とかけまして、どこぞの謎の獣神官と解きます」 >「その心は」 >「騙すんじゃなくて言わないだけ♪」 >「…………………ぉうりゃっ!」 > > >とりあえず鉄拳制裁確定。 軽くスレイヤーズとリンク。 騙すと言わないの境目はどこら辺にあるのでしょうか。 >「…これ、は、手加減した方…なのかな?」 >そいつがうずくまって脳天を抑えながらもそんなうめくような声を発したのはしばらく経ってからだった。 >俺は即答を避け、しばらく考えるふりをしてから、 >「―――…あぁ、一応な」 >「してないんだ」 >が、相手にふりは通用しなかったらしい。即答された。 >「なんで解る」 >「勘。」 >「あー。確かにお前勘よさそーだしなー」 >「……………………………も、いいです……」 >ズボンをはたいて立つと、ぼやくように言った。俺が遠回しに肯定したところとかはあえて突っ込まないことにしたらしい。 > 勘がよさそうって…どのへんで判断? この辺も、流れが良くて好きです。 > …感想が一つ浮かんだ。 >「お前ってさ………………実は絵下手だったりする?」 >「え?!何、なんで!?」 >「いや、なんとなく…俺でももーちょい丸く描けるなー…とか思ったりなんかしてねーぞ」 >「…思いっきり本心言ってくれてありがとー。 >うー…なんでかなぁ…?なんか色んな人から下手だ下手だって言われるんだよ…いつまで経っても上達しないなーとか…」 >枝を立てたままぐるぐる回して無意味に地面をえぐり、肩を落として思いっきりいじけたってーか拗ねたってーか…えらく落ち込んだ声を出す。 > 自覚してる上に気にしてたのか。言っちゃいけなかったかもしんない。 > >「あ―――…えーと、だ。その辺はまあ置いといて。 > これはあれか?魔方陣?」 > これ以上地雷踏む前に話題の転換。悪かったな気付くの遅くてっ。 >てゆーかもう踏んでるとかゆーなそこっ! 私ひとの地雷踏むの嫌いじゃないです(うわ) 本音が聞けますから。 >言えること。出来ること。やれる物。わかること。あいつがしてもらって嬉しいこと?俺があいつに出来ること…………………あ。 >あった。一つだけ、あった。―――簡単で、でも“今の俺”じゃなかったらまず出来なかったであろう、出来ること。 > >「ちょ、ほんとに、本当にちょっとだけ待て!」 >鞄を足元に落とし、もう一度生徒手帳を取り出して後ろの方――メモ帳の欄を開き、そいつの方にむけて見せ付けるように開く。 >そこに書いてある幾つかの文字の中で大きく丸がついている単語を――もう暗記するほど見た単語を読み上げる。 > > > > > > > > > > > >「奏人!都邑奏人でどーだ?名前」 > > > > > > > > > > > > > しばらく俺もそいつも何も言わず、生徒手帳を馬鹿みたいに広げて持っている俺にとって痛いほど冷たい風が俺達の間を思いっきり吹き抜ける。 >くそ長いコートの裾が膝の少し下で揺れた。 …頼むからなんか言ってくれ… >「…へ?」 >ようやく帰ってきたのはなんとも間抜けな声。ぽかん、とした顔でまじまじと俺を見返し、 >「とゆう、かなと?…えと、とゆうって…都邑?」 >「あっ…あぁ。 >い、一応意味あるぞ。『都会の中で奏でる人』だ」 >…すまん葵。俺〆切ぶっちぎるかも。(一度使ったものは二度と使わない主義) >「漢字は…」 >と字の説明をしようとした時、急に目の前の男が動いた。 > >たっ > >「え?」 >自分で描いた線を飛び越え、俺の横をすり抜けて走る。 >驚きや静止の声をあげる間もなく柵に走りより、その手前でジャンプ。柵の上に飛び乗るとその上でくるりと回転し、バランスを取る。 >こちらを向いてぱっと腕を広げ、満面の笑顔で告げた。 > > >「都邑奏人!たった今から僕の名前!…気にいったっ!」 ああ、いい話… とゆうかなとと読むのですか… 良かったね奏人君! >ざぁっ…………… > > 風にさらわれた常緑樹の葉が立てる音が響く。 >そして、それがスイッチだったんだと言わんばかりに鮮やかに、オレンジのような赤のような色がその場に満ちていく。傾いた太陽だけがほんの少しの間だけ放つ、それまでと違う色。多分昔の人達が『茜色』と呼んだであろう、なめらかな色。 > 奏人の背中を中心として伸びる羽根のような雲にも、その色は伸びていた。真っ白だった大きな雲は、地上と同じ色を受けて鮮やかに変身していく。 >刻々と変わる色はさながら命を授ける血液のように雲の中をめぐる。ほんの少しの凹凸で変わる色が、雲に複雑な陰影を生み出す。 >上空はまだ蒼色を残しているというのに、色という名の血液が通った雲はその中に堂々と浮かび、色の差が更に雲の形を際立たせる。 > > それは、まるで背中から紅い翼が生えたように見えた。 綺麗な表現です… ここが、一番印象に残りました。 > 髪を解いた俺を嬉しそうに目を細めて見つめると、一度息を吸って、吐いて。 >奏人は笑顔で手を広げ、懐中時計のリューズ―――タイムマシンのスイッチを押す。ほどかれた長い黒髪が風になぶられて大きく広がり、マントのようにひるがえる。毛先が茜色に照らされて透き通るように煌いた。 > >「ばいばい諒日睦!未来より来たりし若人よ!君の未来に幸多からんことを!」 > > 奏人がそう叫んだ時、背中に生えるように重なっていた雲が、ぐんと近くなったように見えた。…いや、たしかな質量を持って現れた。 >雲が重なっただけの見かけのものではない、カモメのように翼の先端が紅く染まった、奏人自身の翼。 >鳥のような、聖書に出てくる天使のような羽根が、奏人の背中から伸び、広がるのを見た。 >ほんの一瞬だけ見えたそれは、ただの見間違いだったのかもしれない。 > でも、傾いた太陽が照らす見知った街と、同じ色がついた雲と翼、そしてあいつの満面の笑顔は、風景にこの上なく馴染んでいて。 > > >―――忘れられない、風景になった。 私からも、二人の未来に幸多からんことを。 >「まーこーと――――――…嫌味か?嫌味なんだな嫌味なんだろこん畜生はっきりきっぱり言いやがれあぁそうさ俺はどうせお前に勝負挑んでから早二〇連敗の駄目駄目ちゃんだよ一度も二〇秒持ったことない激弱だよ三年生全員に卒業までに一発も当てられっこないとか思われてるよっつーか言われ続けてるよどーせそーさってかお前が言い続けてるヤツのナンバー1だよ解ってんのかコラ――――っ!!」 > >息継ぎゼロの仰向け姿勢でよくここまでの長台詞を言えるもんだ。しかも噛まずに。放送委員会のアナウンサーとかやってみたらどうだ? > それはともかく、はっきりくっきり言うことの許可を本人直々に頂いたのだから、ここは本心をさらけ出すべきなんだろうなぁ…、ということで。 >「おう。素敵に思いっきりこれ以上無いってほどに嫌味だな。」 >「ほんとにはっきりくっきりすっぱり胸張って答えやがったよこいつ…。 > つーかお前英語赤点まであと少しだったろ。数学の次に苦手なんだっけ?無理して英語を使うな。脳みそ擦り切れんぞ」 >「ふっ。国語赤点にだけは言われたかねー台詞だなー。俺だって数学で赤点だけは取らなかったのによ」 > 姿勢的にも言葉的にも思いっきり見下して言ってやる。 >無理して国語(日本語)使うな。脳みそ擦り切れる可能性はお前の方があるだろーが。 >そしてそろそろ起きやがれ。いつまで俺のバッグを枕にしてるつもりだ。 >―――…俺もこいつもよくぞまぁ高校入学なんぞできたもんだよ。 本当に、良い性格してます。 そこが良いのですが。 >「色々とな。黒のロングコートなんざ着てるし…とりあえずまぁオモシロおかしい目にあってきたんじゃねーかなーと思っただけだ。なんも無いならいいんだけどよ」 >「んー…そうだなぁ…」 >そんなに何か変わって見えるんだろうか。 >―――とはいえ、常人と比べると少しばかりこいつは勘が鋭い。と言うか確かな動察力を持っている。他の人間にはまず解らないほどの変化なのだろう。 >そう思い、ちょっと笑って言ってやる。 > > >「…面白い奴に会って、ゴッドファーザーになってきたな。あと面白いってーかちぃとばっかし理不尽なことにも。 > >―――道すがらで話してやるよ。突拍子もないし荒唐無稽だが、なんかのネタにゃあなるかもしんねーしな?」 名付け子はゴッドチャイルドでしたっけ。 義理のお父さんになったまこと君。 >そんなことを言いながら一枚の羽をポケットから出し、妙な顔をした葵を置いといて路地に向かう。 >ビルにはさまれた狭い地面の上には一台の自転車が立っていた。 >ベルのところに針の無い時計が付いた、古びているように見えるのに不思議と真新しい艶がある、ゴミに囲まれた変な自転車。 >お情けっぽく付いている籠の中に羽を入れ、踵を返す。 >あいつの言う『必然』と『偶然』があるのなら、あれは俺の元へ届くだろう。 >そしてまた俺は跳ばされ、不良や親父やあいつに会うだろう。 > >でも、それはまだ始まっていない話だ。 >そして、もう終わった話だ。 > >「よしっ!復活完了!行こーぜ睦!」 >「おう!」 > >そして俺は、また日常に戻ってきた。 始まっていなくて、終わった話。 矛盾しているからこそ、意味が深まります。 >その前はものすごく腹減ったし。←夕飯時 >あれだ、時差ぼけって奴だ。海外行ったときになる。 >…でも昼夜逆転はかなりひどいもんだと思う。地球の反対側行った時と同じだぞ多分。時差ぼけだけ体験してもこれっぽっちも嬉しくねー。どーせなら海外に実際に行ってみた―――――――くはないな。俺えいごッテナンデスカー?な人だし。 > …ブ○ックブ○ックガムの意味が今よーやく理解できた。今すぐ帰るのかと聞いてきたあいつの顔が目に浮かぶ。 > つーか解ってて黙りやがったなあの野郎。 >『騙すんじゃなくて言わないだけ♪』 >あぁそーだな言わないだけだな大事なことを。 > >眠さでまともに動かない身体を無理やり動かし、強制的に眠気をすっ飛ばすためのガムの包み紙を開いて辛さへの覚悟を固めつつ、俺が思ったことはただ一つだった。 > > > > > >あンの―――――――――――確信犯がっ!!!!! なんだか、「らしいな」とほのぼの思いました。 >「それに、どこか僕に近い気配はしてたしねー。顔云々は後で気付いた。―――それにまぁ…」 >「まだあるのか?」 > > > > > > >「名無しの彼は、元気だった?」 > > >「――――――――――――――――――――――――…え゛?」 こういう落ちでしたか…。 ほのかに、続編を期待しております。 > この物語は、面白かったですか? > それともつまらなかったですか? > たくさんたくさん笑いましたか? > もう読みたくないと思いましたか? 私の思いは、続きがあれば読みたいな。といったものです。 >そして、こんな非常識な長さの駄文にここまで付き合ってくださった貴方に心からの感謝を。 >叶うならば、もしも再びこの名を目にした時、貴方が物語の扉を開いて下さらん事を… > > >それでは、またの機会に…」 > >(奏人、優雅に一礼。全てが闇に消える) もちろん、是非目を通させて頂きます。 次回の作品も、楽しみにしてます。 |
32544 | お、遅くなりましたぁっ!! | 氷紅梦無 | 2006/6/4 13:19:26 |
記事番号32532へのコメント 感想を下さってありがとうございます!ちゃんと読んでくれてる方が居て本当によかった…こーやってコメントない限り読んでもらっているかなんてまるっきりわかんないですから。 ともあれ、遅くなりましたが(約1週間)、お返事をさせていただきますっ! >初めまして。侑子紅子(ゆうしこうこ)と読みます。 >前篇を読んでだいぶたったので、もう一回読んでから後篇に取りかかりました。 >占めて40分!(テスト前にもかかわらず…;) >では感想などを。 始めまして、紅子さん。前編から読んでくださってたんですか?ありがとうございます。…40分…ですか。(汗)すいません。非常識に長くて。テスト大丈夫でした? > めくるめく日々…。 > 体験したいような、したくないような…。(あ、したくない比率の方が高いや。←オイ) …僕も同じく、です。体験はしたくないなー。(なら書くなよ) > 個人的な意見:素敵じゃないですかマイペース人。 > どうも。僕自身かなりマイペースっつーか親しい人のペースを乱すの大得意だったりするので。(迷惑)プロットみたいのを見せてる友人からは何度も『似てる』って言われてました。 > 成る程、と思いました。 > 確かに、自分の名前なんて言わないと分からないですもんね。 まぁ、だから偽名が通用するんですけどね。 > インテリアっぽい時計ですかね。 その辺はご想像にお任せします。『ただの懐中時計』なので。 >> >>たぶん、俺がその答えに行き着くことはない――…と、思う。 > この辺り、ギャグな雰囲気から一気にシリアスになっていて、読んでいてドキッとしました。 あー。どうも。 > そしてまたギャグに戻っているのに、変わり方が不自然でない。 > 表現力って、こういうことを言うのだろうと思いました。 …あぅ。なんか無意味に照れるのですが…こーゆー所はひどく無意識です。そう感じていただけたなら幸いですが。 > へ、平和で穏やかで微笑ましい…? > 叫んでいる人、堂々無視してますねー…。 この辺りの会話を見せたら『氷紅が二人居る…』とかよく解らない事をのたまってくれた友人が居ます。どういう意味でしょう…? > 私も、創った人が勝つと思ったのですが…船が暴走し、真っ先に滅ぼされてしまうとは…。皮肉なものですね、自分たちを自分たちが創ったもので消されるのは。 あとがきでも書きましたが、この戦いの続きは『ロスト・ユニバース』を読んでください。 > 天使の名前ですか。 > 有名どころしか分かりません。 > ヘラ、アテネ、ガブリエル、ミカエルなど。 ヘラはゼウスの正妻、アテネは知恵と戦いの神様、ガブリエルはマリアに受胎告知をした事で有名な天使、ミカエルは大天使のうちの一人で悪魔と戦うらしいです。 今辞書引いてきました。 > トロイメライって知りません…; > 私が知ってるのはメヌエットとトルコ行進曲くらいです…。 …えっと、僕自身口ずさめるほど親しんでいるわけでは… 強いて理由を言うなら『何となく』でしょうか…? > とりあえず、信じてみましょう! > 人のこと言える立場じゃないですけど…。 人のこと言える立場じゃ…って…何したんですか? > 本当、妙な言い回しが出来るのって日本語くらいだと思います。 > 日本語、だから好きなんですけど。 最近は国語教師すら訳の解らない日本語使うんで怖いですけどね。 > な、成る程、あったまいい! > 遅刻が無しに…けがの功名ってやつですかね。 『人生全て塞翁が馬』って気もしますがねー。 > 漫才でしょうこれはもはや。 『日常会話これ漫才』ってなことなら言われてますよ?睦君も僕も。 >>「えと………、黙秘権とかけまして、どこぞの謎の獣神官と解きます」 >>「その心は」 >>「騙すんじゃなくて言わないだけ♪」 >>「…………………ぉうりゃっ!」 >> >> >>とりあえず鉄拳制裁確定。 > 軽くスレイヤーズとリンク。 > 騙すと言わないの境目はどこら辺にあるのでしょうか。 言ったらまずい所の直前で切るのが言わない、そこを曲解して持って回った言い回しで避けるのが騙す。ついでに嘘の有無ですね。 僕はそんな感じかと思ってます。 > 勘がよさそうって…どのへんで判断? 勘。 > 私ひとの地雷踏むの嫌いじゃないです(うわ) > 本音が聞けますから。 僕の兄貴は人の地雷がどこにあるのか握っておいてここぞという時に容赦なく爆発させます(うわ)。身内ながら敵に回したくないと本気で思う兄です。 > ああ、いい話… > とゆうかなとと読むのですか… > 良かったね奏人君! これで睦は奏人にしっかり覚えられましたとさ。 > 綺麗な表現です… > ここが、一番印象に残りました。 それはよかったです。説明文の次にここ苦労したのです。 冬期講習の国語の問題文が「『綺麗』を連発しないで美しい光景を表現する事」を書いてたので、参考にしてました。 > 私からも、二人の未来に幸多からんことを。 多分、彼等なら大丈夫ですよ。だって、こんなに強いんですから。 > 名付け子はゴッドチャイルドでしたっけ。 > 義理のお父さんになったまこと君。 ゴッドチャイルド?そう言うんですか。しらなかったです。 マフィアもゴッドファーザーって使うんで、お遊びで『名付け親』と使いませんでした。 そーかー…名付けると義理の親になるのか… > 始まっていなくて、終わった話。 > 矛盾しているからこそ、意味が深まります。 ただのループなのです。彼がそこで友人と話している時に家で朝の睦が居るというだけの話。数十分間だけ、朝日睦は同時刻に二人存在していました。 >> >>あンの―――――――――――確信犯がっ!!!!! > なんだか、「らしいな」とほのぼの思いました。 …らしい、ですか。睦にとっちゃぁロクでもないらしさだとは思いますけどね。 > こういう落ちでしたか…。 > ほのかに、続編を期待しております。 ……ぞ? ――――続編っ!?…今の所ネタとかそーゆーのがないので…、というかそう言うの全く考えてませんでした…。 …気が付いたらこんなに長く… ともあれ、お読みくださってありがとうございました! 別作は今も執筆中ですので、気長にお待ち下さい。 氷紅梦無でした。 それでは、またの機会に… |
32546 | こないだはありがとうございました。 | 十叶 夕海 | 2006/6/4 15:39:57 |
記事番号32526へのコメント こんにちは、十叶夕海です。 こないだの詩レスありがとうございました、 遅くなりましたが、レス行きます。 > > > > >この話の主人公こと俺、諒日睦(あさひまこと)にとって、その日はとても特別な日だった。 > > > >その朝、俺は遅刻しそうで。 >変な羽根を捕まえた時に一緒に自転車見つけて。 >迷わずかっ飛ばして。 >学校に着いたら知らない奴らがいて。 >とりあえず学校から飛び出して。 ここまでは、普通にありそう(そうか?)な感じ >どうやらタイムスリップしてるらしくって。 >不良に絡まれて。 >かるくボコして。 >親父が見てて。 >親父が好きな公園に連れてかれて。 >ちょっと話して。 >親父が去って。 >昼飯喰って。 >ちょっと寝て。 >目が覚めたら誰かいて。 >プロフィール謎だらけで。 >「タイムスリップ、したんでしょ?」と言われて。 >時が、止まって―――――― > ・・・・災難くんですね、諒日睦くん(苦笑) > > >聞くべきことはただ一つ。ついでに聞きたいことがもう一つ。 >「……で、だ。なんで俺の状況を知ってる?それと、俺は元の時間に戻れるのか?」 >「うや?ん―…と」 >じろじろと俺の格好を見てから、こくりと頷いた。 >「うん大丈夫。君こっちに来たの最近でしょ?モノには時間軸ってもんがあってそれは周囲の環境が変化すると一旦は反発するんだけどその反動か一回定着しちゃうと再び動かすのが困難に―――――…ってこんなこと話されても意味不明だよね」 >「いや言ってる事の意味ならなんとか解るが」 >今のところ、という言葉が前につくが、一応は解る。 >…意味は解るがこれ以上言われても同じように解るかは疑問だ。専門用語でてきそうだし。 >「まぁ正直な所こんな今解明されてるか不安な原理説明したって君にも僕にもなんのメリットもないんで気にしないで。とりあえず帰れないことはないから」 >「気にするなって…」 >無理な相談、という言葉を知っているのかこいつは。 >「……でさ、君何に乗ってきたの?」 >うわぁ。 >ホントに何もなかったように自分の聞きたい事だけ聞いて来やがったよ。俺がそんな意味不明で気になりすぎる会話をそう簡単に忘れられると思ってんのかこいつわ。 > > 結論:人の話を聞かないタイプだと思う。 ナイスコンビ。 普通の会話?そことなく、笑える。 というか、聞きたくなる。 > >「で、えーっと?何に乗って来たか、だっけ?」 >「うん」 >「え―――――――っと………………………あ、自転車」 >どうもあまり気にしてなかったのが災いしたらしく、思い出すのにしばし時間がかかった。 >で、その言葉に対する反応は。 >「はぁ?自転車ぁ?…………なんだってンなもんに…」 >なんか馬鹿にされた気がした。ついでに注意する前の先公みたいな口調にも聞こえた。 >「だっ…しゃーね―だろ!遅刻も皆勤賞も目の前だったんだから…!」 >「いやわかんないから。それに僕が言ってんのは別のコト。 > …しっかし…自転車、かぁ。盲点だったなー。 >今までなら時計とか車とかだったし…もうちょい索敵対象広げた方がいいか…?いやでもこれ以上広げるとヒットしすぎるんだよね…ん―――」 >今度はこっちが思考のループに陥りやがった。腕組んでなんかブツブツ言ってるし。俺も引き上げてやるべきかな? 自動車で、タイムスリップというと、『Back To Future』を思いまだします。 その関連商品の懐中時計も、そう言うアイテムっぽかった。 > >「あさひまこと。字はこんなん」 >と生徒手帳を見せる。生年月日とか書いてあるので親父に見せるわけにゃあいかなかったが、こいつは最初っからタイムスリップ云々を言ってきたやつだし問題なんぞどこにもない。 > そもそも俺の名前(特に睦)は口で言っても通じない事が多い。おかげでこういった身分証とどこでもいっしょだ。 >目の前にぶら下げられた生徒手帳に下から手を当てて角度を調節し、書かれている事を声に出して読む。 >「えーと、諒日睦。これは?…あ、まつりか。茉莉中学校三学年一組。一九九〇年十一月一五日生まれ…か」 私の名前と同ランクの難読ですもんね、名前も、学校名も。 >ぱ、と手帳から手を放すと、何を思ったか俺をまじまじと見てくる。 > > その瞳はなぜか真剣そのもので、あまりにまっすぐに物を映していて、それに映った自分はどう見えるのだろうなどとふと想像して少し怖くなった。どういう生きかたをしたらこんな綺麗な目が出来るんだろう。 >名前が無いなどという状況。もしも本当だとしたらこいつには自分を表す記号が―――ひいては自分の存在を肯定する物が無いことになる。そんな環境にあってなお、何故こんなに人懐っこく振舞えるんだろう。 > >たぶん、俺がその答えに行き着くことはない――…と、思う。 振る舞える。 ・・・ここで、病気自慢する訳じゃないけど、いわゆる『二重人格』だった時があって、その時の一人が、そうだった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・と、言っても、普通に居たら、振る舞えるのかは、私にも、疑問。 >「そーだなー…特に何ってワケじゃなかったんだけども。強いて言うなら“実は歳大学生です”とか“実は地球外からやって来ました”とか“実は国籍違います”とか“実は未分証明書はフグの調理師免許でした”とか…」 ドリーム見過ぎだよ。 実際にあったら、怖いし。 そう言う意味では、いい作品だと思う。 > >溜め息一つ。とりあえずこの後の動作が決まった。 > >そいつを横目に見ながらおもむろに立ちあがり、ベンチの後ろにまわって真後ろに立つ。俺が立ちあがったのを気付いていないのか気にしていないのか知らないが、なおも例をあげようとしているそいつの頭(こめかみの辺り)にそっと手(拳)をそえ―――― >「そーかそーか俺をそんなに普通のヒトにしたくないのかそぉかよーく解ったそしてテメェも人の事どーこー言えるはずねぇぐらい普通じゃねーのわかってんのかコラ♪」 > ちょうど骨が当たるような感じでぐりぐりと拳をえぐり込んでみる。ついでにいっそ清々しいくらい明るい声もプラスして抗議の悲鳴も聞こえないふりをしてやった。 >「あ゛いだだだだだだだだだだだだだっ!!!ギブッ!ごめんっ!ちょっとからかってみただけっ!痛い痛い!ごめんなさい―――っ!」 >「あぁ…なんか聞こえるなぁ…気のせーかな?気のせーだよなぁ…うんうん。こんな平和で和やかで微笑ましい光景に悲鳴なんぞ聞こえるはずも…」 >「認めるっ!遊んじゃってごめんー!ってか謝るからそろそろやめれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」 > とりあえず、天気図上では曇りの表示になるであろう空はそれでもやっぱり晴れているように見え、降り注ぐ光はぽかぽかと暖かかった。…一応真冬と言われそうな時期なんだがな。 >…平和だ。うん。 > 必殺・梅干し→ぐりぐりの技名。 地味ながら、痛いです。 > >「…昔々、この宇宙には別の文明が栄えてたんだ。技術なんか今の比じゃないくらい高かった。 >人の心の力――精神力をエネルギー源にする術だってあったんだよ。でも、ね。そのうち戦争が始まっちゃった。人間の性って奴なのかねぇ…?」 >「………あ……?」 > 唐突に始まった話は、今までと違う、まるで子供に御伽噺を聞かせるような口調で、内容も作り話の色彩を帯びていた。 >話しながらベンチにもたれ、視線を青空をゆっくりと流れる大きく膨らんだ雲にむける。子供っぽい口調で話す内容は、その声に不似合いな物だった。 > > > >――――――――――――それは、御伽噺だった。 > >高すぎる技術は魔法じみてくる。だが、魔法に限りなく近い技術も、過去の科学と同様に戦争の道具と成り果てた。 >そして歴史が示すように、高い技術を持てば持つほど一度の戦闘での戦死者が爆発的に増えていった。 >人を救うための技術ですら、その正逆を歩めばヒトを破壊するのだ。 >やがて、それの究極の実例を示すように、勢力の片側が恐ろしい兵器を生み出す。 >人の恐怖、憎悪、焦り…戦場で最も生まれやすいそれら全ての負の感情を糧とし、更に殺戮を撒く、意思を持った宇宙船―――― > > >そこで急に話を切ると、ふとこちらを向いた。 >「―――はい、ここで問題です。そんな宇宙船が戦争…いや、世界に出たらどうなると思う?はい、睦くん」 >と、背もたれの上に置いた左腕にあごを乗せて俺に笑いかけ、右手の手のひらをむけてくる。 > …唐突に話をふるな。しかもなんか悲惨そうな話の中で。…とはいえ返せる答えを持つ限りは答えなければならないわけで。 >「どーなるって…やっぱ創った奴らだけが残る…勝つんじゃねーか?」 >「うん。ホントはそうなるはずだったから正解。でも実際は、その“創った奴ら”が真っ先に滅ぼされた」 >「…え?」 >ポロリと零れた声は届かなかったのか、話はそのまま続いた。 >ごろりと横になるように背もたれに思いっきりよっかかり、再び空を見上げる。 > > >どこかが壊れたのかもしれない…そもそも負の感情をエネルギーにする戦闘艦という存在自体に問題があったのではないか… >幾つも説が流れたが、どれが正解だったのかなど、今となっては確かめる術も無い。 >とにかく確かなのは、その船が人類の手を離れ、人間の視点から見た“暴走”に走ったということのみ。 >そして、世代を交代するような猶予すらなく、宇宙に静寂が満ちた。 >その宇宙船と、それを護る為に製造された四隻の宇宙船によって、その文明自体が滅ぼされたことによって――― > > > > >しばらくは沈黙が落ちた。ほんの数秒だとは思うが、今の季節とやりきれない寒さを痛いほどに感じ、起きたときにかけてあった黒のロングコートを羽織った。風が遮断されることで少しずつ体が温まってくる。 > 口が開きづらかった。 >相手は柔らかく、下手したら無条件の優しささえ感じさせる笑みを浮かべて揺れる木の葉を眺めている、さっきまでじゃれ合いのようなことをしていた相手だというのに。でも、聞かないわけにはいかなかった。この話が終わらない限り、俺が元いた時間に帰ることはないのだと、何処かで勘付いていたからだ。 > だから、短く固いその沈黙を破ることが出来た。 > >「……なんだ…?その…話」 > > 言いながら、この沈黙を破る事をためらった気持ちの理由が見つかった気がした。 >――――人は、辛い記憶であればあるほど、それを茶化して語りたがる。それは自分が当時の自分に感情移入しない為であり、それは終わった事であると再認識する為の儀式に近い。自分をこれ以上傷つけないようにする為という自衛行動の一端であるという説もある―――と、俺は何処かで聞いた。 >何かで読んだのかもしれないし、テレビだったのかもしれない。だが、今は情報源が何であるかは知る必要はなかった。 > 今大事なのは、こいつの言動がどうしても『それ』に見えて仕方がない、ということだ。 >馬鹿馬鹿しい妄想かもしれないし、勘違いであるという可能性だってある。だが、なぜか…その思いがどうしても消えなかった。 そうですよね。 『思い出したくない』ことは、冗談めかさないと、話せないよなぁ////。 > > 少し掠れ気味な俺の声に、一瞬きょとんとした顔をすると、さっきまでとは違う意味を含んだ笑みを浮かべて立ちあがり、ズボンのポケットに時計モドキを落としながら答えた。 >「御伽話(おとぎばなし)だよ。この先ずっと語り継がれることも、思い出されることさえもない…ね」 それでも、話したということは、誰かに知って欲しかった。 違うかしら? > > > >しばらく不思議そうになんなのかと聞かれたが、黙秘権を行使して(ひたすらに黙りこくって)切り抜けた。 > >「――む―――…オーパーツは解るよね?」 >あまり納得はしてなさそうだが、これ以上問い詰めても進展しないと悟ったのか話題を変えてきた。 >「…あぁ。ピラミッドやら心臓の絵やら水晶ドクロやらのどー考えてもその時代の技術力じゃあ作れっこないよーなもの…だろ?年末あたりのテレビでよくやる」 >「最後のはどーかと思うけど正解。解ってんならいいやっ」 或いは、季節の節目ごとの番組改編期に、よくやる。 ちなみに、『オーパーツ』とは、その時代のものなのに、その時代の・・・その時代以前の技術ででも、作れないもの。 水晶ドクロは、現在の技術でも、作るには、多額なお金がかかる。 マヤ文明から出土した。 ・・・・・・・・でしたっけ? >「お前はエスパーか。勝手に人の考え読むんじゃねぇ」 >「違うし。人の表層意識だけ読み取るのなんか本物の読心術の使い手だって難しいんだぞー」 >「逢った事あるのかお前」 >「んーにゃ。どっかの本で読んだだけ」 私も読んだことありますよ。 ロシアが、原本のやつでしたから、信憑性は微妙にありますが。 > > >「…………えーと、こっちの右で…っと」 > うつむきがちに時計の歯車と向き合う姿を見て、何か礼をしなきゃな――…とぼんやり思う。 >「……………………………あ。」 >何をすればこいつにとって礼になるんだろうかと考えていた時、ふと気付いた。 > > > こいつは多分、ずっと一人だ、と。 > > > さっきの説明で『一団』と言っていたところから、確かに帰らなければならない場所はあるんだろう。 >だが、そこにいて尚、こいつには名前が無い。無いままで放置されている。それは、誰もこいつを気に掛けていない証拠じゃねーのか? > > 『帰れる所がある事』と『帰る所がある事』は違う。とてもよく似てるけど、違う。 確かに、微妙なようで、些細なようで、確実に違うね。 > > > > > > >そして。 > > > > > >ビビ――――――っ!! > > >「―――…ぅおうっ!?」 > いきなり背後から不機嫌そうなクラクションが聞こえ、素で心臓が跳ね上がったような気がした。 >特別な音やら光やらのあからさまな異変は起こることなく、極々普通に俺はその場に立っていた。 >テレビ画面が切り替わるようなもんだ。一瞬でさっきと違う景色が見えるようになったけど、それが不思議だと感じないのだ。だから余計に驚いた。 > まだどきどき言ってる胸に手を当てて振り返ると、黒っぽい乗用車の中で黒っぽいスーツを窮屈そうに着こみ、壮絶な目で俺を睨むおっさんと目が合った。…鋭い目つきにでっけえ身体。なんかどっかで会ったよーな気がする顔立ち…既視感(デジャビュ)ってヤツかね? > >とりあえず手を振ってみた。 > >ビビ――――――っ!! > >怒られた。 >まぁ道の真ん中にボーっと突っ立ってる中坊から手ぇ振られりゃ怒るわな。急いでそーだったんで早々に道の端により、急加速して行く車を見送った。 > >―――――おっと! > > もう少しで車が角を曲がる、というところで、俺は急にしゃがみこんだ。理由は簡単。しゃがみこんだ数瞬後に、俺の頭が在った場所をスポーツバッグが猛スピードで通り過ぎると読んだから。 > >ぶぉんっ! > >「うおぅ危ねーっ!」 >予感ってーか読み的中。ざーとらしく声を上げて相手を挑発するのは基本中の基本として。 >馬鹿みたいにでっかいバッグが空気を切る音がした時には俺はもうしゃがむ動作は終わっており、次の動きに移っていた。 > >―――すなわち、反撃の動作に。 > > すぐ後ろに居た襲撃者に同じくバックをぶん投げることで応戦!しかし相手も慣れたもので、大きく身体を傾けることで避ける! >が、んなこととっくに予測済みだ。大きく傾いたことでバランスが崩れかけている襲撃者に容赦なく足元に回し蹴り(足払いとも言う)を仕掛けて完全にバランスを崩し、その回転を利用して立ち上がりながら襲撃者の腹のあたりに肘打ち。 > といっても腕全体で押し出したような感じなのでダメージはそう多くない。手加減もしてあるしな。 >でもそれなりに吹っ飛んでちょうど俺がさっき放り投げたバックに頭から突っ込んでいった。 >―――おぅし計算どーりっ! > しかしこのコート動きやすいなぁ…。後ろの切れ込みも深いし、両脇もちょっと切れてるし、肩の上げ下げにも支障無し…。回し蹴りすっげーやり易い。 >そんな感想を抱きつつコートやズボンの埃を払いながら、今から何を言おうか頭の中でシミュレート。 >一瞬で最適な物を見つけ、密かに笑いながらちょこっと息を吸い込み―――― > > >「おっしゃっ!!ぴったしかんかん!…コホン。 >Good Morning アオイ ヨシカワ!It’s a fine day today. > Congratulations!今朝で二〇連敗だ!」 > > > 一度ガッツポーズを決め、唯一これだけは英語教師に誉められた発音の良さを披露し、いやみにならない程度に爽やかに朝の挨拶をする。楽しい人間関係にはやっぱ挨拶は必須だしな☆ > > 爽やかに過ぎるような挨拶を受けた当人はというと、“なぜか”とてもとても恨めしそうにこっちを睨み、コンクリートに寝っ転がったままひっくい声を返してきた。 > >「まーこーと――――――…嫌味か?嫌味なんだな嫌味なんだろこん畜生はっきりきっぱり言いやがれあぁそうさ俺はどうせお前に勝負挑んでから早二〇連敗の駄目駄目ちゃんだよ一度も二〇秒持ったことない激弱だよ三年生全員に卒業までに一発も当てられっこないとか思われてるよっつーか言われ続けてるよどーせそーさってかお前が言い続けてるヤツのナンバー1だよ解ってんのかコラ――――っ!!」 > >息継ぎゼロの仰向け姿勢でよくここまでの長台詞を言えるもんだ。しかも噛まずに。放送委員会のアナウンサーとかやってみたらどうだ? > それはともかく、はっきりくっきり言うことの許可を本人直々に頂いたのだから、ここは本心をさらけ出すべきなんだろうなぁ…、ということで。 >「おう。素敵に思いっきりこれ以上無いってほどに嫌味だな。」 >「ほんとにはっきりくっきりすっぱり胸張って答えやがったよこいつ…。 > つーかお前英語赤点まであと少しだったろ。数学の次に苦手なんだっけ?無理して英語を使うな。脳みそ擦り切れんぞ」 >「ふっ。国語赤点にだけは言われたかねー台詞だなー。俺だって数学で赤点だけは取らなかったのによ」 > 姿勢的にも言葉的にも思いっきり見下して言ってやる。 >無理して国語(日本語)使うな。脳みそ擦り切れる可能性はお前の方があるだろーが。 >そしてそろそろ起きやがれ。いつまで俺のバッグを枕にしてるつもりだ。 >―――…俺もこいつもよくぞまぁ高校入学なんぞできたもんだよ。 > > こいつの名前は吉川 葵(よしかわ あおい)。一応クラスメート兼技の練習台。 >―――もとい、俺の弟子っぽいヤツ。(なんか教えた覚えはねーが)…でもどっちかって言うと悪友としての評判のほうが高かったりするんだが。 >意外に絵が上手く、趣味が雑誌への漫画の投稿というある意味すごい奴でもある。 >で、次の漫画の主人公の名付け親になってくれと頼まれてたワケだ。 仲良いですね、こういう男の友情?は好きです。 >「あれ?どうしたの睦くん。えらく疲れてるみたいだけど?」 >「…色々あった。疲れたってかむしろ眠い」 >「大変だねぇ。でも寝る時はちゃんとベッドに入りなよ?風邪引くから」 >「俺そんなにヤワじゃねーから大丈夫」 >「お母さんが困るの。睦くんもう大きいから二階まで運べないしね」 >「………」 > >そう言えば。 >俺の名前は諒日睦。 >で、あの時親父に名乗ったのも諒日睦。 >―――関連性…あるんだろうな。やっぱり。 > >親父と俺は変な所で思考回路が似ている。材料が揃うまで考えること保留とかいい例だが… >俺に睦とつけたのも何か意味があるんだろうな。 >あのぼけっぷりに相殺されてる感があるが、親父はあれで頭の回転は速い。あの後すぐに近くに親戚も同じ苗字もいないって気づいただろう。 > >じゃあ、なんで俺に――――息子に、聞いた名前をつけたんだ? > >結論:解らんことは聞くのが早い。 > >「なー親父、昔、あ――…十六、七年ぐらい前だけど…俺と同じ名前の奴と会わなかったか?」 >「え?」 >ぽかん、とした声。 >「あ、いや、覚えが無いならいいんだけど」 >その声にちょっと奏人を連想して、少し慌てて言いつくろう。だが。 > >「―――?……あ。あれやっぱり睦くん?」 > >ぽんっと手のひらにこぶしを打ちつけ、半疑問形で答えてくる。 >………………まぢ? >「よかったー。実は名前つけるとき悩んだんだよー。だってもし息子じゃなかったら何かこんがらがる事になってたでしょ?昔の僕。 > 睦くんの名前違ってたかもしれないんだもん」 > >………………。いやいやいや。よかったーって。なんですかその商店街の福引で当たりくじ引いた時みたいな軽い喜びは。 > >「ってなにいけしゃあしゃあと笑顔で肯定したあげく俺の名付け話秘話を語り始めるかボケ親父。俺がそんな事になるのかも知れないって少しでも思ってたなら小さい頃に話しとくのが道理ってもんじゃねーのかオイ」 >「おぉ。睦くんそんな長い言葉よく一息で言えるね。…そんな怖い顔しないでもちゃんと話すよ…。 > > だって、幾つの時に話したって睦くん絶対信じてくれないって確信あったし。 >現に睦くん、行って帰ってくるまでそーゆー超自然現象って信じなかったでしょ?それに、そうじゃないかもって可能生だってあったんだし… >と。それが言わなかった理由」 >「…百%否定できない要素だけで構成されてる所が妙に腹立たしいんだが… >っていうか親父こそよく信じたな。別に誰かに教えられたわけじゃねーんだろ?その…あれが実の息子だって」 >「ん―――…まぁ、勘だよ。それに、睦くんよく似てるし」 >「…誰と?」 >「僕と―――お母さん」 >「………………」 > >…惚気か? > >「それに、どこか僕に近い気配はしてたしねー。顔云々は後で気付いた。―――それにまぁ…」 >「まだあるのか?」 > > > > > > >「名無しの彼は、元気だった?」 > > >「――――――――――――――――――――――――…え゛?」 > > 親父さん、その惚気よりも、最期の台詞が気になるぞーーーーー(シャウト) > >始めましてこんにちわっ!あーコンバンワかな?それともおはようございます? >まぁいいや。 >氷紅梦無です。 > >ここに『ここから始まる時間旅行!』の完結篇をお届けします。 > >いやーよ―やく出来ました―。 >永かった……(遠い眼) >いやまぢで。 >受験を挟んだおかげで年も年度も越しちゃったしな―――――…。 > 最初書き始めたときは正直睦くんどーやって帰そーかなーって思ってたんですよねぇ…。 >不審者…もとい都邑奏人が出てくる事と、帰る時間と、雲が背中に重なって翼に見えるってのは決まってたんですけど。(先に設定決めろよ) >あ、あと時差ぼけ。 おつかれさまでした。 私も、読むのに、総時間30分かかりましたよ、この一遍だけ。 > > それと、一番最初に『これはロストユニバースやスレイヤーズとはまったく関係無いSSです』とかって書いたのですが、訂正させていただきます。 >これは『限りなくオリジナルに近いロストユニバースの二次小説』でした。 >後書きで言っても遅いかもしれないですが。 > ロストユニバースって途中で奏人が言ってた『人の不の感情をエネルギーにして動く宇宙船』をぶち倒してゆくお話なのです。ぶっちゃけちゃうと。 >…っていうか二次小説って言っていいんでしょうか。 >ロスユニの登場人物は全く出てこない上に、これから数百…下手したら千年経ってるかも知れないほど遠い時代を舞台にしてるんですよね。ロストユニバース。 > まぁここだけの話、登場人物の中で一番妙な素性してんの(元)名無しの変な人だったり「ていりゃっ!」 いや、ありなのでは。 とおもう。 > >「こぉんの無計画者ぁ!なぁにが『よーやく出来ましたー』だ!かなりの間放置してて書いてすらいなかったくせにっ!」 >(氷紅が聞ける状態じゃないことすら見ずに喚く。まぁ口調で解るだろうが本作に出てきた不審者その一こと都邑奏人である) >「つーか終わらせてすらいないくせに他のに手をつけるってどーゆー了見だよっ?!」 >うごぁ…い、言い訳っつーかこっちの言い分は無視…か…。 >「言い分ってゆーのは正当な理由がある人に限り使える言葉。よって君のたわごとは言い訳ね」 >…さりげなくと言えないくらいにすっぱりとひどいな…。 >「あれ、つーかもう話せるほどに復活しちゃったの?けっこー本気で叩きこんだんだけど」 >今もまだむっちゃ痛いし頭がふらふらしてきれーな花畑がお前の顔にかかるようにぼんやり見えているが、一応復活したぞ。あぁ、ちょっと先には川が見えるな。 >「…それは復活と言っちゃいけない…そしてそれ渡ったら多分帰れないから…」 >まぁそこは置いといてだ。 >さっきお前が喚いてた『次のに手をつける云々』だが。ぶっちゃけネタが浮かべば僕はあっさりとそっちを始めるぞ?それで他のほうに使えるネタが浮かべばそっちに行くし。これをほっぽらかしているように見えたのだってただネタが見つかんなかっただけだし。 >「ふむ。ようは天気屋で移り気で気分にムラがあるタイプ、と」 >嫌になるほどぶっちゃけてくれてありがとうっ。 >…そしてそのとてつもなく何かを言いたそーな眼はなんだ? >「…うん。言いたいことならあるよー。言っていいんだよね?いいっつったと見なすよ今の言葉。 >…君さ、今までの後書きとかコメントとかとかなり口調違うよね?そっちが素?」 >―――素の一つ、だな。正確に言えば。どれが素なのかとかは自分でもしょーじき解らん。 >「ふーん。あとさ、あとがきって本来本文のフォローとかなんじゃないの?」 >それについては何も言わんがな…ただそーいったフォローだけが後書きじゃないぞ?世の中には後書きで『本書の使用上の注意』とかを薬よろしく書き綴った小説家がいるんだし。 >「…電撃文庫?」 >内輪ネタだしわかる人にしか解らんがな。 >「んじゃ一番言いたい事言うよ?いいかげんこのくそ長いあとがき終わらせないとね。 > >――――つぅかっ!こんなくそ長いの書いてる暇あるなら勉強すりゃぁよかったじゃんよ“元”受験生っ!第一志望校落ちたくせに――――っ!!!」 > >してたわいっ!五月蝿いわっ!過去のことを掘り返すな戸籍無しーっ!!それに滑り込みでも公立校だ文句あるかっ?っつーかいちばん言いたいことってそれかぁっ! >「そーだよ悪いかっ!それと戸籍無しゆーなーっ!名前出来たしあとで造るもんっ!」 >開き直ったなこん畜生!造るってなんだ造るって!おもくそ偽造臭い字じゃんか! >「しょーがないでしょ実際偽造なんだし後から割り込ませる以上偽造って言われても文句言えないんだよ! >つーか誰のせいでこんな事出来る設定になったぁっ!!」 >ん?僕。てーか偽造は認めるんだなお前。(ニヤリと笑いながら) >「…………殴っていいかな。蹴っ飛ばすでも可」 >どっちも却下だンなもん。それにお前さっきイイ感じに上段回し蹴り叩きこんだろ首筋に。(首狩りとも言う)それで我慢しろ。花畑見えるかと思ったわい。つーか見えたけどな。これ以上誰が好きこのんで痛い思いなんざするか。 ちなみに、延髄切りでも可。 >「………君ってさ、なんかすっごい理不尽だー、とか言われたことない?」 >…………。何故それを知っているっ?!友人からなら違う言い回しも含めて死ぬほど言われた覚えがあるぞっ!? >「………………………もういいよ…」 >なんだ、もういいのか? >一人寂しくオーパーツの調査回収および破壊を頑張ってる都邑奏人くん。『僕ら』とか言って変なところで鋭いとみた少年をはぐらかしたつもりだったのが見事に思惑が外れてしっかりと同情されて名前まで貰っちゃった気分はどーよ? >「……ていっ」(首筋に音も無く手刀を叩きこんでみる) > >あぐっ > >「……………落ちたかな?…うん。動かない」 >(つま先でちょっとつつき、動かないのを確認。思いっきり爽やかな笑顔で振りかえり) >「さてと。“何故か急に”作者が倒れてしまったので、僕が代理で締めさせていただきます。 > > んじゃ、中篇でも前編でもやりましたが。 > > この物語は、面白かったですか? > それともつまらなかったですか? > たくさんたくさん笑いましたか? > もう読みたくないと思いましたか? > > >意見、感想、何でもいいです。書いてください。教えてください。 面白い方だと思うし。 他の作品も読みたいとは思う。 思うが、いっぺんが長過ぎです。 せめて、一遍をこの半分にしてほしいかも。 > > >そして、こんな非常識な長さの駄文にここまで付き合ってくださった貴方に心からの感謝を。 >叶うならば、もしも再びこの名を目にした時、貴方が物語の扉を開いて下さらん事を… > > >それでは、またの機会に…」 > >(奏人、優雅に一礼。全てが闇に消える) > はい、では、また何処かで。 |
32566 | こちらこそありがとうございます。 | 氷紅梦無 | 2006/6/17 17:05:20 |
記事番号32546へのコメント こんにちはコンバンハおはようございます。 氷紅梦無です。 申し訳有りません。本当に言い逃れ出来ないほど長くほったらかしにしてしまいました。レスを頂いて返事がまだというのは非常に心苦しかったです。 重ねてお詫び申し上げます。 >こんにちは、十叶夕海です。 はい…すいません本気で遅くなりました。諸事情によりパソコンにさわれる時間が極端に短くなり、レスするだけの時間がありませんでした。申し訳有りませんでした。 >こないだの詩レスありがとうございました、 >遅くなりましたが、レス行きます。 ありがとうございます。 >・・・・災難くんですね、諒日睦くん(苦笑) ある意味それがコンセプト。これの仮タイトルは『SAFETY LIFE!』でしたし。 >ナイスコンビ。 >普通の会話?そことなく、笑える。 >というか、聞きたくなる。 どうも。でもこれ結構僕の普段の会話に近いんですよねー。漫才って言われる事もしばしばです。 >自動車で、タイムスリップというと、『Back To Future』を思いまだします。 >その関連商品の懐中時計も、そう言うアイテムっぽかった。 え、そーだったんですか?『Back To Tha Future』ってあんまり見たことないんですよね。題名は聞きますけど。 >振る舞える。 >・・・ここで、病気自慢する訳じゃないけど、いわゆる『二重人格』だった時があって、その時の一人が、そうだった。 >・・・・・・・・・・・・・・・・と、言っても、普通に居たら、振る舞えるのかは、私にも、疑問。 はー…そうか、名前が無いってのは実際に起こり得るんですね…。 >ドリーム見過ぎだよ。 >実際にあったら、怖いし。 > >そう言う意味では、いい作品だと思う。 えぇ怖いです。僕自身『体験は…したくないな』って思いながら書いてましたし。 >必殺・梅干し→ぐりぐりの技名。 >地味ながら、痛いです。 あー。いったいです。これ。しかもゲンコツで意図的に骨に当てる…うわ。 それこそ体感したくないです。 >そうですよね。 >『思い出したくない』ことは、冗談めかさないと、話せないよなぁ////。 あははー。まぁ人間歳に関係なく一つや二つ思い出したくない事はありますよ。 キツイ過去を冗談めかして語るって漫画や小説でもよく見るんですけどね。逆に本当に吹っ切っているように(というか気にしていないように)書くのが難しかったり。今後の課題の一つです。 > >それでも、話したということは、誰かに知って欲しかった。 >違うかしら? …そう、ですかね。語り継がれる事がないって言ってても、彼自身が語り継いでるんですから。 >或いは、季節の節目ごとの番組改編期に、よくやる。 >ちなみに、『オーパーツ』とは、その時代のものなのに、その時代の・・・その時代以前の技術ででも、作れないもの。 >水晶ドクロは、現在の技術でも、作るには、多額なお金がかかる。 >マヤ文明から出土した。 >・・・・・・・・でしたっけ? たしかそれで合っていたかと。この間もテレビに映っててびっくりしましたが。 >私も読んだことありますよ。 >ロシアが、原本のやつでしたから、信憑性は微妙にありますが。 そういう本ってあるんですか?!…あ、えっと。すいません、心の底からフィクションとして書いていたのでびっくりしました…題名とかは解りますか?一度読んでみたいです。 >確かに、微妙なようで、些細なようで、確実に違うね。 違いを出すのが微妙に苦労した所だったり。 だからこういう言葉は嬉しいです。 >仲良いですね、こういう男の友情?は好きです。 …仲、いいんでしょうか…? いや、いいって言い切ることが正解なのかが不明です。(解りづらい) >親父さん、その惚気よりも、最期の台詞が気になるぞーーーーー(シャウト) はっはっは。言葉通りですよ(一回言ってみたかった台詞) > >おつかれさまでした。 >私も、読むのに、総時間30分かかりましたよ、この一遍だけ。 す…すいません…本当はこんなに長いはずじゃなかったんですが、前中後にすると断言してしまったので切るに切られず…。 全編通した時の総時間数は恐ろしくて聞けません。 今後投稿する時はもっと読みやすい長さでお送りします。 >いや、ありなのでは。 >とおもう。 ありがとうございます。 >ちなみに、延髄切りでも可。 あぁ!それもありました! >面白い方だと思うし。 >他の作品も読みたいとは思う。 >思うが、いっぺんが長過ぎです。 >せめて、一遍をこの半分にしてほしいかも。 済みません。努力します。そして結果を出します。 >はい、では、また何処かで。 はい!僕もできる限り十叶さんの小説には感想を書きたいと思います! いつかどこかで、またお会いしましょう! 氷紅梦無でした。 それでは、またの機会に… |