◆−昨日で終わった時間旅行? 1−氷紅梦無 (2007/3/1 15:50:06) No.33014 ┣こんにちはー。−櫻井未央 (2007/3/4 13:30:37) No.33016 ┃┗よかったぁっ!!−氷紅梦無 (2007/3/4 17:29:30) No.33017 ┣昨日で終わった時間旅行? 2−氷紅梦無 (2007/3/7 13:10:16) No.33026 ┣昨日で終わった時間旅行? 3−氷紅梦無 (2007/3/21 22:50:51) No.33046 ┣昨日で終わった時間旅行? 4−氷紅梦無 (2007/3/26 19:53:21) No.33057 ┃┗Re:昨日で終わった時間旅行? 4−侑子紅子 (2007/4/2 13:24:57) No.33068 ┃ ┗わはぁい。−氷紅梦無 (2007/4/3 14:58:18) No.33073 ┣昨日で終わった時間旅行? 5−氷紅梦無 (2007/4/9 20:30:51) No.33081 ┗昨日で終わった時間旅行? 6−氷紅梦無 (2007/4/25 19:59:48) No.33097 ┣Re:お初にお目に掛かります−。。。 (2007/4/26 00:04:17) No.33098 ┃┗遅ればせながら。−氷紅梦無 (2007/5/13 22:53:37) No.33107 ┗や、やっと…。。。−櫻井 (2007/5/20 18:19:09) No.33134 ┗お疲れー。−氷紅梦無 (2007/5/21 15:19:52) No.33137
33014 | 昨日で終わった時間旅行? 1 | 氷紅梦無 E-mail | 2007/3/1 15:50:06 |
これから始まる物語は、『ここから始まる時間旅行!』と言う作品の続編です。 読まなくても大丈夫なようにはなっていますが、そちらを読み終えているとさらに楽しめるかと思います。 では、注意事項はこれだけです。ごゆるりとお楽しみください。 昨日で終わった時間旅行? 一。 「たまには昔の話をしようか……そんな歌詞あったよね〜」 二〇〇五年三月十一日金曜日。午後四時二十三分。 とある一軒家の一室。一人の男性が掃除を催していた。 男性の名は諒日秋海(あさひしゅうみ)。雑巾とハタキを手にしている彼は今、とても暇だった。 仕事が早めに終わり、家に早々と戻って来るまでは良かった。この仕事ではたまにあることだ。 しかし、その時秋海はそこまで暇を持て余すとは思っていなかった。卒業式が近いせいで、中学三年になる彼の息子も学校帰りが早い。息子が帰ってくれば暇はしないと踏んでいたのだ。 しかし、それは当てが外れた。 元気印の息子は時間さえあれば父親に組み手を挑んでくるはずだったのだが――――…その息子、諒日睦(あさひまこと)はただいま下のソファーで爆睡中である。 睦は、昨日帰宅した時からやたらと眠そうだった。 今日も半日は学校だったが、卒業が近いせいで授業がほぼ無く、授業中に寝るという正攻法も取れずに睡眠不足を引きずって帰ってきたようだ。 ずっと眠そうだった事もあり軽く寝る事を進めたのだが、寝たら寝たでちょっと起こしづらいほどに熟睡してしまったである。 実の所、秋海はその理由を知っている。 『昨日』、秋海と『彼』に逢ってきたのだ。 最終確認の意味もあって、先ほど寝る直前(一番無防備な時)にどうしてそんなに眠そうなのかと聞いてみると 『朝から夕方まで過ごしてまた朝に戻ったよーな時差ぼけっぽい気分〜』との答え。 つまりは睡眠時間が足りないという事なのだろうと判断し、毛布だけ掛けて放っておいた。もともとよく眠る子だ。 そこで気付いた。息子が寝てしまっては暇つぶしの相手がいなくてとても退屈になるのだという事に。 退屈へのささやかな抵抗として、息子の部屋の人形で遊んでみたり部屋で埃を被っていたゲームを封切ってみたりと色々やってみたが、時間は大して潰れてくれなかった。一人でする人形遊びなんぞやっていて虚しいだけだし、ゲームはあまりに歯ごたえがなさ過ぎた。色々とやってみて全てあっさりクリア。 終わった後に気付いた。 ………そういえばこれって全部、睦くんが『レベルが低すぎる』とか言って僕にくれたお下がりなんだよね……本体も丸ごとは豪儀だと思ったけど。 どうせ睦自身も簡単すぎて飽きたのだろう。反射神経が良すぎる事に対するささやかな弊害である。 これでRPGの一つでも持っていれば話は別なのだろうが、この家にあるのはたいていアクションかシューティングかパズルゲームだ。 ………今度もーちょっと時間のかかるRPGとか買って来ようかなぁ? 今までは借りて来るだけだったし。…でもそーゆーのは睦くんが短気だから一人でやる破目になるんだよね。レベル上げるのって楽しいんだけどな。睦くん、解ってくれないんだよね。 予期していなかった暇を持て余し、知恵を絞った結果、最終的に部屋の掃除を思い付いた訳である。 ● 「よいしょっと。―――うわっ」 久方ぶりに引き出してみた蔵書と言うものには、そりゃあもう遠慮無しに埃が乗っかっているモノである。久方と付くまで触っていなかったのだから当たり前と言えば当たり前であるが、そーゆー事を全く考えていなかった蔵書の持ち主はごく普通に本を引き出した。 そしてごく普通に埃の塊を顔で浮けることになった。 「わぅゎっ―――…ぇほけほっ。掃除してなかった罰かな…? あーもー…」 適当に切り揃えた黒髪にバンダナを三角に折った物を被っているが、埃っぽいのはどうしようもない。 ぱたぱたと頭にかかった綿ぼこりを払っている内に、右腕の時計のベルトが一冊の本に引っかかった。 「え」 ぎしり、と。本の表紙が軋んだ音をたてた。 音を立てたその本は摩擦に従って両隣の本を引っ張り、その両隣はもう片方を引っ張る。通常でも手で押さえて取り出す必要がありそうな、ざらついた表紙の本が、しかもかなりぎゅうぎゅうに詰めてある。摩擦の労働条件にはうってつけと言えよう。 そして、そんな状況下の本の背表紙に丈夫な腕時計を引っかけ、強い力で、無頓着に、ゴミを払う動きで腕を下げた。下げてしまった。 結果。 「――――あ、ぇ?」 本棚の一段が丸ごと飛び出してくる光景を目にする破目になる。そして妙に反射神経と動体視力のいい彼はそれにきちんと反応ができた。 「おっと」 一歩。それだけで秋海は全ての本の軌道からずれて見せた。 が、彼はただ避けただけであり、落ちて行く本を受け止める事もしなければ重力に勝つ術も探ろうとは思わなかった。 ようするに、落ちるに任せてしまったのだ。ついでにこの棚の本は一冊一冊がくそ重かったりする。しっかりした装丁の高い本である。 ……あーぁ…こりゃ片付けるの大変かなぁ… 秋海は、本が床に着く直前、やけにあっさりとした、むしろ他人ごとな調子で思った。 ……っどん!! 秋海は見事に一段丸ごと落ちてきた本の全てを避けた。しかし、結局本棚の本は重力にしたがって秋海に少々の驚きと不安を与えながら落ちて行く。 つまりは階下の人間に対するフォローはゼロなのであって―――もしも真下あたりのリビングのソファーに誰かが寝ていたりしたら、いきなりの音と、剥がれ落ちる天井の塗装とで驚くことだろう。 『うばのあぁあぁぁっ?! 今度はなんだっ?! 失敗かっ、だから『飲むトドカレー』の焚き火投入は止めとけって言ったんだよ俺はぁっ!!』 そう、ちょうどこんな感じの声を上げて。 「…………………」 ……えーっと……? 秋海は心の中で呟く。冬用スリッパで踏みしめたフローリングの、さらに下のリビングからは全く物音がしない。派手に動くような気配も無く、先ほどの叫び声が嘘のように完璧なる無音。実に不気味だ。どうしよう。 ……ま、睦くんが寝てたね…そういえば……。 と、秋海は再び心の中だけで呟くと、腕時計をちらりと見ながら無意味に額を拭う。 「あー、まぁ、一段分だけでよかったよねっ。本棚が全部倒れるよりは片付ける時間とか少ないし。うんうん」 後頭部にヤな汗を感じつつも誤魔化すように独り言。しかし、自分の心ごとは誤魔化せていないのが乾いた笑い声と無駄に繰り返すあたりにはっきりと表れている。 …睦くん……多分後で説教しに来るんだろうなぁ……はは。 結局ちょっぴりブルーが入りつつも、秋海は本を一冊ずつ手に取って元の位置に戻して行く。 ちなみに、彼の息子、睦くんの“説教”とは痛い所と正論と要求を嫌な感じにブレンドしてくるもんだからとても怖いのである。 「ありゃ?」 泣き笑いのような表情のまま本を事務的に戻していく手が、ふと、動きを止めた。 「あ。…行方不明者発見、ってね」 そういって微笑みながら手に取ったのは、赤茶けた色のハードカバーの本だった。どうやら他の本に押し込められて奥に落ちていたらしい。 言葉通り懐かしそうに微笑みつつ、しっかりした作りの本を開き、ぱらぱらと斜め読みをする。 「へぇ、結構前のだ。何代目かな? まだ一桁台だね…」 ページには年号と日付と曜日とその日の出来事が綴られていた。口振りから見るとどうも彼自身の日記らしい。書かれている日付は飛び飛びで、行数も一定ではない。ある日は五行ほど、次に書いたときはページの半分ほどいったかと思えば、その下には半月後に一行だけ書かれていたりもする。 「あ……っと?」 時間を急速に進めて行くその作業が、異物によって止まる。日記帳とは違う、硬い紙質の一片の紙片。単語の区切りさえも解読できないほど豪快に崩されたアルファベットでつづられているのは、英語に似た、しかしこの世で解読できる人間が存在しない言語。 短い文章が幾つも書かれていて、数行書いては一行開け、また数行。 幼い友人へとむけられた視線と、成長してしまう友人が、未来でも自分を憶えていてくれるのかという不安の二つを、優しい眼差しと握り締める手のひらにこめて。未来を見て不安を抱いている自分の思いと、隣にいる友人の思いが重なってしまうその前に、今、精一杯の誠意を。 詩のようなリズムで連ねられる文字の下には、なぜかとてもへたくそな字の日本語。それぞれの文の真下に一つずつ詰め込まれるように書かれている事から見て、どうやらこの文の訳のようだ。しかも後付けらしい。 そして、その紙片が挟まっていた日もまた、イレギュラーな存在だった。日記として連ねられた文章がとても長い。一日のことのはずなのに、両面を文で埋められた紙が三枚以上も続く。さらに、その日が特徴的なのは文量だけではなかった。 最初は短い文の羅列だったのだ。数行書いては一行開け、また数行。 紙片と同じように詩に似たリズムの文章は、紙片とは違って丁寧な文字でつづられていた。字の形の差に、秋海がくすりと笑う。 紙片と、日記の文字。少しだけ違う媒体に書かれた、二つの歌詞は、確かにその時間を過ごした証。 そっと、秋海は唄い出す。 「…ねぇ、そんな事を隣でキミも思ったりするのかな…」 紙片の方の歌詞を懐かしそうにゆっくりと眺め、諒日秋海は口ずさむ。その日にだけ聴いた懐かしい曲を。 この間のCMの印象でメロディを補正し、記憶を掘り返しながら歌う。ずっと昔から知っている、懐かしさを伴う歌を。久しく歌っていなかったメロディには少しあやふやな所もあったが、歌っている間に記憶が見つかってきた。もう歌詞が無くても大丈夫だろう。 そう思って紙片を日記に丁寧にはさみ直しながら歌の先を口ずさみ、左腕に嵌めてある腕時計に指をあてる。 黒の革ベルトに、金色の枠の時計だ。この時計ももうかれこれ十五年は使っている。しかし、時がずれることもどこかが壊れることも無く、生涯現役という言葉を連想させる堅牢さでここにある。 歌と、時計と、紙片と、日記に書いた文字。そして、確かな思い出。 それら全ては、あの日に貰ったものである。 それは多分、生涯息子ぐらいにしか話さないであろう御伽噺。 「思いが重なるその前に―――強く、手を握ろう…」 あの少年は、今日も別の時間のどこかで歌っているのだろうか――――――― ◆◇◆ こんにちはコンバンハおはよーございます氷紅梦無です。 今回始めましたのは、約一年前にこちらに投稿しました作品の正当なる続編です。 正直本当に続きを書けるとは思っていませんでしたので自分でもびっくりです。えぇ本当に。 今度は父親。 さて、彼はどんな一日になるのでしょうか? 氷紅梦無でした。 それでは、またの機会に… |
33016 | こんにちはー。 | 櫻井未央 URL | 2007/3/4 13:30:37 |
記事番号33014へのコメント こんにちはー。 遅くなりましたが、やっとこさ投稿出来るようになったので来ましたよ。 ・・・。なんか長かったなーとか思いながら(投稿するまでの時間が。 > > これから始まる物語は、『ここから始まる時間旅行!』と言う作品の続編です。 >読まなくても大丈夫なようにはなっていますが、そちらを読み終えているとさらに楽しめるかと思います。 > > では、注意事項はこれだけです。ごゆるりとお楽しみください。 > わーい。 夏から結構楽しみに待ってましたよ。 > > > >昨日で終わった時間旅行? >一。 > 一…。 今回は3つじゃないんですね。うあー楽しみ。 >「たまには昔の話をしようか……そんな歌詞あったよね〜」 > > > > 二〇〇五年三月十一日金曜日。午後四時二十三分。 > とある一軒家の一室。一人の男性が掃除を催していた。 > > 男性の名は諒日秋海(あさひしゅうみ)。雑巾とハタキを手にしている彼は今、とても暇だった。 > なんですかこの安易に想像が出来ちゃいそうな光景は。 > 仕事が早めに終わり、家に早々と戻って来るまでは良かった。この仕事ではたまにあることだ。 …何のお仕事? > しかし、その時秋海はそこまで暇を持て余すとは思っていなかった。卒業式が近いせいで、中学三年になる彼の息子も学校帰りが早い。息子が帰ってくれば暇はしないと踏んでいたのだ。 玩具ですか?玩具なのですか? 睦くんはそれに気付いているのか否か? > しかし、それは当てが外れた。 >元気印の息子は時間さえあれば父親に組み手を挑んでくるはずだったのだが――――…その息子、諒日睦(あさひまこと)はただいま下のソファーで爆睡中である。 その後夜中に目が覚めるとか無いと良いんですけどねぇ。 > > 睦は、昨日帰宅した時からやたらと眠そうだった。 >今日も半日は学校だったが、卒業が近いせいで授業がほぼ無く、授業中に寝るという正攻法も取れずに睡眠不足を引きずって帰ってきたようだ。 > ずっと眠そうだった事もあり軽く寝る事を進めたのだが、寝たら寝たでちょっと起こしづらいほどに熟睡してしまったである。 > …ってことは、あのガム相当噛んだんですね。 頑張ったんですね、睦くん。 > 実の所、秋海はその理由を知っている。 > > 『昨日』、秋海と『彼』に逢ってきたのだ。 > 最終確認の意味もあって、先ほど寝る直前(一番無防備な時)にどうしてそんなに眠そうなのかと聞いてみると > 『朝から夕方まで過ごしてまた朝に戻ったよーな時差ぼけっぽい気分〜』との答え。 > > つまりは睡眠時間が足りないという事なのだろうと判断し、毛布だけ掛けて放っておいた。もともとよく眠る子だ。 …母親目線の様に見えますねぃ。 > > > そこで気付いた。息子が寝てしまっては暇つぶしの相手がいなくてとても退屈になるのだという事に。 > あ。 > > 退屈へのささやかな抵抗として、息子の部屋の人形で遊んでみたり部屋で埃を被っていたゲームを封切ってみたりと色々やってみたが、時間は大して潰れてくれなかった。一人でする人形遊びなんぞやっていて虚しいだけだし、ゲームはあまりに歯ごたえがなさ過ぎた。色々とやってみて全てあっさりクリア。 人形…?って何があるんだろう。 とても意外な…。 > 終わった後に気付いた。 > ………そういえばこれって全部、睦くんが『レベルが低すぎる』とか言って僕にくれたお下がりなんだよね……本体も丸ごとは豪儀だと思ったけど。 > どうせ睦自身も簡単すぎて飽きたのだろう。反射神経が良すぎる事に対するささやかな弊害である。 > これでRPGの一つでも持っていれば話は別なのだろうが、この家にあるのはたいていアクションかシューティングかパズルゲームだ。 > ………今度もーちょっと時間のかかるRPGとか買って来ようかなぁ? 今までは借りて来るだけだったし。…でもそーゆーのは睦くんが短気だから一人でやる破目になるんだよね。レベル上げるのって楽しいんだけどな。睦くん、解ってくれないんだよね。 マメなのですね。 > > > 予期していなかった暇を持て余し、知恵を絞った結果、最終的に部屋の掃除を思い付いた訳である。 > > > >● > > > > >「よいしょっと。―――うわっ」 > 久方ぶりに引き出してみた蔵書と言うものには、そりゃあもう遠慮無しに埃が乗っかっているモノである。久方と付くまで触っていなかったのだから当たり前と言えば当たり前であるが、そーゆー事を全く考えていなかった蔵書の持ち主はごく普通に本を引き出した。 > > そしてごく普通に埃の塊を顔で浮けることになった。 > >「わぅゎっ―――…ぇほけほっ。掃除してなかった罰かな…? あーもー…」 > 適当に切り揃えた黒髪にバンダナを三角に折った物を被っているが、埃っぽいのはどうしようもない。 > ぱたぱたと頭にかかった綿ぼこりを払っている内に、右腕の時計のベルトが一冊の本に引っかかった。 >「え」 > ぎしり、と。本の表紙が軋んだ音をたてた。 > 音を立てたその本は摩擦に従って両隣の本を引っ張り、その両隣はもう片方を引っ張る。通常でも手で押さえて取り出す必要がありそうな、ざらついた表紙の本が、しかもかなりぎゅうぎゅうに詰めてある。摩擦の労働条件にはうってつけと言えよう。 > そして、そんな状況下の本の背表紙に丈夫な腕時計を引っかけ、強い力で、無頓着に、ゴミを払う動きで腕を下げた。下げてしまった。 > > 結果。 「――――あ、ぇ?」 > > 本棚の一段が丸ごと飛び出してくる光景を目にする破目になる。そして妙に反射神経と動体視力のいい彼はそれにきちんと反応ができた。 >「おっと」 > 一歩。それだけで秋海は全ての本の軌道からずれて見せた。 > が、彼はただ避けただけであり、落ちて行く本を受け止める事もしなければ重力に勝つ術も探ろうとは思わなかった。 > > ようするに、落ちるに任せてしまったのだ。ついでにこの棚の本は一冊一冊がくそ重かったりする。しっかりした装丁の高い本である。 > > ……あーぁ…こりゃ片付けるの大変かなぁ… > 秋海は、本が床に着く直前、やけにあっさりとした、むしろ他人ごとな調子で思った。 …っおーい。 > > ……っどん!! > > 秋海は見事に一段丸ごと落ちてきた本の全てを避けた。しかし、結局本棚の本は重力にしたがって秋海に少々の驚きと不安を与えながら落ちて行く。 > つまりは階下の人間に対するフォローはゼロなのであって―――もしも真下あたりのリビングのソファーに誰かが寝ていたりしたら、いきなりの音と、剥がれ落ちる天井の塗装とで驚くことだろう。 > >『うばのあぁあぁぁっ?! 今度はなんだっ?! 失敗かっ、だから『飲むトドカレー』の焚き火投入は止めとけって言ったんだよ俺はぁっ!!』 …なんかもうどこからどの様にツッコむべきなんだか…。 > > そう、ちょうどこんな感じの声を上げて。 > え? >「…………………」 > ……えーっと……? > 秋海は心の中で呟く。冬用スリッパで踏みしめたフローリングの、さらに下のリビングからは全く物音がしない。派手に動くような気配も無く、先ほどの叫び声が嘘のように完璧なる無音。実に不気味だ。どうしよう。 > > ……ま、睦くんが寝てたね…そういえば……。 > > と、秋海は再び心の中だけで呟くと、腕時計をちらりと見ながら無意味に額を拭う。 >「あー、まぁ、一段分だけでよかったよねっ。本棚が全部倒れるよりは片付ける時間とか少ないし。うんうん」 > 後頭部にヤな汗を感じつつも誤魔化すように独り言。しかし、自分の心ごとは誤魔化せていないのが乾いた笑い声と無駄に繰り返すあたりにはっきりと表れている。 > > …睦くん……多分後で説教しに来るんだろうなぁ……はは。 > > 結局ちょっぴりブルーが入りつつも、秋海は本を一冊ずつ手に取って元の位置に戻して行く。 > ちなみに、彼の息子、睦くんの“説教”とは痛い所と正論と要求を嫌な感じにブレンドしてくるもんだからとても怖いのである。 皿を割ってお母さんにバレる前の心境ですか? >「ありゃ?」 > > 泣き笑いのような表情のまま本を事務的に戻していく手が、ふと、動きを止めた。 > >「あ。…行方不明者発見、ってね」 者? > そういって微笑みながら手に取ったのは、赤茶けた色のハードカバーの本だった。どうやら他の本に押し込められて奥に落ちていたらしい。 > > 言葉通り懐かしそうに微笑みつつ、しっかりした作りの本を開き、ぱらぱらと斜め読みをする。 >「へぇ、結構前のだ。何代目かな? まだ一桁台だね…」 > ページには年号と日付と曜日とその日の出来事が綴られていた。口振りから見るとどうも彼自身の日記らしい。書かれている日付は飛び飛びで、行数も一定ではない。ある日は五行ほど、次に書いたときはページの半分ほどいったかと思えば、その下には半月後に一行だけ書かれていたりもする。 >「あ……っと?」 > 時間を急速に進めて行くその作業が、異物によって止まる。日記帳とは違う、硬い紙質の一片の紙片。単語の区切りさえも解読できないほど豪快に崩されたアルファベットでつづられているのは、英語に似た、しかしこの世で解読できる人間が存在しない言語。 > > 短い文章が幾つも書かれていて、数行書いては一行開け、また数行。 > > 幼い友人へとむけられた視線と、成長してしまう友人が、未来でも自分を憶えていてくれるのかという不安の二つを、優しい眼差しと握り締める手のひらにこめて。未来を見て不安を抱いている自分の思いと、隣にいる友人の思いが重なってしまうその前に、今、精一杯の誠意を。 > > 詩のようなリズムで連ねられる文字の下には、なぜかとてもへたくそな字の日本語。それぞれの文の真下に一つずつ詰め込まれるように書かれている事から見て、どうやらこの文の訳のようだ。しかも後付けらしい。 > > そして、その紙片が挟まっていた日もまた、イレギュラーな存在だった。日記として連ねられた文章がとても長い。一日のことのはずなのに、両面を文で埋められた紙が三枚以上も続く。さらに、その日が特徴的なのは文量だけではなかった。 > > 最初は短い文の羅列だったのだ。数行書いては一行開け、また数行。 > 紙片と同じように詩に似たリズムの文章は、紙片とは違って丁寧な文字でつづられていた。字の形の差に、秋海がくすりと笑う。 > > > 紙片と、日記の文字。少しだけ違う媒体に書かれた、二つの歌詞は、確かにその時間を過ごした証。 > > > そっと、秋海は唄い出す。 >「…ねぇ、そんな事を隣でキミも思ったりするのかな…」 > > 紙片の方の歌詞を懐かしそうにゆっくりと眺め、諒日秋海は口ずさむ。その日にだけ聴いた懐かしい曲を。 > この間のCMの印象でメロディを補正し、記憶を掘り返しながら歌う。ずっと昔から知っている、懐かしさを伴う歌を。久しく歌っていなかったメロディには少しあやふやな所もあったが、歌っている間に記憶が見つかってきた。もう歌詞が無くても大丈夫だろう。 > そう思って紙片を日記に丁寧にはさみ直しながら歌の先を口ずさみ、左腕に嵌めてある腕時計に指をあてる。 > 黒の革ベルトに、金色の枠の時計だ。この時計ももうかれこれ十五年は使っている。しかし、時がずれることもどこかが壊れることも無く、生涯現役という言葉を連想させる堅牢さでここにある。 > > 歌と、時計と、紙片と、日記に書いた文字。そして、確かな思い出。 > > それら全ては、あの日に貰ったものである。 > それは多分、生涯息子ぐらいにしか話さないであろう御伽噺。 > > >「思いが重なるその前に―――強く、手を握ろう…」 > > > あの少年は、今日も別の時間のどこかで歌っているのだろうか――――――― > 不思議感たっぷりになりましたね。 前回とはちょっと違う雰囲気ですね。 何にせよ楽しみです。 > >◆◇◆ > >こんにちはコンバンハおはよーございます氷紅梦無です。 こんにちは櫻井ですー! いやぁパソから久々で打ちづらい。 家のキーボード固いもんで(聞いてないよ >今回始めましたのは、約一年前にこちらに投稿しました作品の正当なる続編です。 >正直本当に続きを書けるとは思っていませんでしたので自分でもびっくりです。えぇ本当に。 え―――!私あの時からずっと待ってましたけどー!? > >今度は父親。 >さて、彼はどんな一日になるのでしょうか? 予想が半端に外れました。 お父さんかー。 > >氷紅梦無でした。 >それでは、またの機会に… > それではー。 |
33017 | よかったぁっ!! | 氷紅梦無 E-mail | 2007/3/4 17:29:30 |
記事番号33016へのコメント コメントが来たぁっ!!! いやー、コメント無しって悲しい物があったので…いつもありがとね、未央ちゃん。 んでわ返レス行ってみよーかっ! >こんにちはー。 >遅くなりましたが、やっとこさ投稿出来るようになったので来ましたよ。 >・・・。なんか長かったなーとか思いながら(投稿するまでの時間が。 ははははははは。ここまでの道のりは難関辛苦な素敵過ぎるデス★ロードだったから聞かないよーに。 >わーい。 >夏から結構楽しみに待ってましたよ。 おー。奇特な人もいるもんだねぇ。すごい忍耐だ。 いやホント、ありがとうねぇ… >一…。 >今回は3つじゃないんですね。うあー楽しみ。 あったりまえじゃないかー♪ 3つで収まるはず無いんだから☆ >なんですかこの安易に想像が出来ちゃいそうな光景は。 ん、そう? いちおう三角巾装備だよー。 >…何のお仕事? サ、サラリー…マン?(聞くな) 作者にもわからんのだよなぁ。謎だ。 >玩具ですか?玩具なのですか? >睦くんはそれに気付いているのか否か? 睦自身も親父で遊んでると思ってるよ? 玩具になってるのがどっちかは解釈次第だね? >その後夜中に目が覚めるとか無いと良いんですけどねぇ。 あー、ないないない。 絶対ない。ありえない。あるはずない。 ないを三回使ってみたよ。意味も無く。 >…ってことは、あのガム相当噛んだんですね。 >頑張ったんですね、睦くん。 頑張ったさ。ガムを一気に何個も噛んで(ちょっと涙出そうになったらしい)、ふらつかないように気を張り詰めて、頑張って終えたの。 ―――…指揮だけ。 うん、その後の先生の寸評とか移動の口頭確認とかその他諸々座ってていい物は全部意識すっ飛ばしてたね。寝てた。 >…母親目線の様に見えますねぃ。 まぁ、それもあるんだろうね。 この家の家事労働は子供を巻き込んだ当番制だから。ちなみに睦も秋海も料理なら一通りできるよ。母親が一番要領悪かったりもする。共働きだから、双方ともに父親役であり母親役なんでしょ。 >> そこで気付いた。息子が寝てしまっては暇つぶしの相手がいなくてとても退屈になるのだという事に。 >あ。 うん。暇なんですよ。そこまで暇にならんと掃除しないんだけどね。 >人形…?って何があるんだろう。 >とても意外な…。 あぁ、ぬいぐるみとか工芸品とかの土産物。おもに秋海経由だね。ラジコン的な動くのもあるよー。 >マメなのですね。 …いや、じつはただ単純作業が好きなだけ。 >> ……あーぁ…こりゃ片付けるの大変かなぁ… >> 秋海は、本が床に着く直前、やけにあっさりとした、むしろ他人ごとな調子で思った。 >…っおーい。 そういう人なんだよ。 >>『うばのあぁあぁぁっ?! 今度はなんだっ?! 失敗かっ、だから『飲むトドカレー』の焚き火投入は止めとけって言ったんだよ俺はぁっ!!』 >…なんかもうどこからどの様にツッコむべきなんだか…。 んー? あぁ、トドカレーは缶詰入りの筆舌に尽くしがたい独創的かつ個性的な味で、それを受け止める為には柔軟で包容力のある味覚を必要とするというステキカレーだ。飲むタイプは見たこと無いがねー。 >> そう、ちょうどこんな感じの声を上げて。 >> >え? あぁいや、例えだよ、た と え 。『もしも』ってちゃんとついているだろう? …多分ね。 >皿を割ってお母さんにバレる前の心境ですか? いや。皿持ってた時に足を滑らせて花瓶を割っちゃった上に皿を落として、ついでの駄目押しで頭打って痛みが来る直前って感じ。わかりづらいね? >>「あ。…行方不明者発見、ってね」 >者? 言葉のアヤだっ! 流そうっ! >不思議感たっぷりになりましたね。 >前回とはちょっと違う雰囲気ですね。 >何にせよ楽しみです。 不思議感かぁ…そういう物かな。 それは多分秋海特有かとも思うよ? キャラに引きずられていくタイプだからねー。僕は。 後は…まぁ、前にここに載せた時から、どこかしら変わってては欲しいけどね。 >こんにちは櫻井ですー! >いやぁパソから久々で打ちづらい。 >家のキーボード固いもんで(聞いてないよ わかるっ! 今打ってるこのパソコンもJだけが異様に固いんだ! 嫌だよねぇ。 >え―――!私あの時からずっと待ってましたけどー!? あ、ありがとうございますっ! 待っててくれた人がいたんだなぁ…それだけで書けるな。 書くのはクソ遅い僕ですが見捨てないでくださいませー。 >予想が半端に外れました。 >お父さんかー。 斜め上ぐらいに外れて欲しかったなぁ…精進せねばっ! >それではー。 はいそれでは。 氷紅梦無でした。 それでは、またの機会に… |
33026 | 昨日で終わった時間旅行? 2 | 氷紅梦無 E-mail | 2007/3/7 13:10:16 |
記事番号33014へのコメント 昨日で終った時間旅行? 二。 「あぁ、紅い飛行機を乗りまわす豚のやつだよね? でも…昔…でいいの? これって」 その日、諒日秋海(あさひしゅうみ)の妻は入院した。 ただし、それは病気や怪我による入院ではない。新しい命を無事にこの世に生み出す準備のためだ。 『次にここから出るときは三人よ、さ・ん・に・ん! あーもうっ、楽しみだわ!』 妻のその嬉しそうな声に当てられて、彼も今から浮かれ気分で万歳である。 息子か娘かは知らない。生まれてくれば解るのだから、そんなに急いで知ることはないだろうというのが夫婦揃っての見解である。ただし、娘の場合は妻が、息子の場合は自分が名付け親になるというのは子供が出来たとわかってすぐに約束した。 ……男の子だったらどういう名前をつけようかなぁ? ずっと考えていた。実は今もかなり考え中である。 候補は色々とあるし、そろそろ生まれて来るということもあって一つ二つに絞らねばならないのだろうが…これだと決められるようなの決定打が見つからないのだ。出生後二週間までに役所に届けなくてはならないのだから、ゆっくり考えられるのも今のうちだろうと解ってはいるのだが。 「うーん…」 そんなことを考えて腕を組み、道端で立ち止まった。まだ明るい空は雲を浮かべつつもすっきりという印象で晴れ、風が無いためか十一月だと言うのにあまり寒くなかった。若い頃から愛用している真っ黒いコートと薄めのマフラーで防寒は充分。病院まで妻の着替えその他諸々を補充しに行った帰りである。 秋海は、ふと思い出したようにズボンのポケットから懐中時計を取り出した。使いこまれてくすんでいるが、綺麗な銀色をした時計だ。 文字盤を保護する蓋には柳のような葉をつけた枝に包まれ、身を曲げた片翼の天使像が彫り込まれており、その細工は丁寧の一言に尽きた。 …つまりは一目で分かるほど『いい物』だったのだ。 ボタンを押して蓋を開くと、古さゆえの風格のある針と文字盤が顔を出した。 しかし、それを見た秋海は、あれ? と眉をひそめた。二、三度ばかり縦横に振ると、確認するように呟いた。 「――…止まってるなぁ」 目の前にかざした時計の針はかなり早い時間を指しており、その秒針に震えは無い。 この時計は彼の祖父から譲り受け、三代に渡り使ってきた物で、実は今まで遅れた事はあっても止まったことは一度も無いのだ。ついでに三代にも渡って使ってきたにも関わらず、今まで修理に出したと聞いたことが無い。いい加減ガタが来てもどこもおかしくはない。 「ん――――、これから時計屋さんかな…?」 呟きながら時計の鎖の先に付いているフックをベルトから外して、今度は懐に仕舞う。 もう一度空を見上げて太陽を見つけて指差し、それの角度から大まかな時間を測り、くるりと踵を返した。どうやら時計屋さんとは逆方向にあるらしい。 空っぽのボストンバッグを丸めて収めたウエストポーチが歩調に合わせて小さく揺れて、コートに隠れながら自己主張。一房だけ切りそこねたらなんだか愛着が湧き、切るに切れなくなった一部だけ長めとなっている黒髪も同じように揺れた。 今日の予定を反芻し、特に用事がないなー、とか呟く秋海の頭の上で、烏が寒そうに声を上げ、円を描いてから飛び去っていった。 一九九〇年十一月十三日、珍しく風の少ない日だった。諒日睦が生まれるまであと二日―――でもあった。 ● 空が高い。 冬特有と言ってしまえばそれまでだが、冬としても天気が良いのだ。白い雲が映えるいい感じの青空。 ……洗濯物、干してきたほうが良かったかな…? とか妙に主婦的な思考を一瞬するが、どうせ明日も晴れると空を見て確信し、延期にする事を刹那に決めた。 「ん――――…っと、ふぅ。いい天気だしねー。お弁当とか買ってちょっと足伸ばそうかな?」 大きく伸びをして独り言。 妻がいない分、家の洗濯物や洗い物が少ないので、今すぐ戻ってやらなければいけない程に溜まってはいない。後頭部で手を組み、知らない人の家の塀の前で立ち止まる。 家の影で太陽の眩しさを軽減しながら空を見上げた。陽射しがある所為か、冬独特の冷たく微妙に硬い空気も今日は柔らかい。風が少ないせいか雲もそれなりといった感じにやる気なく流れて、天気は崩れそうにない。軽いピクニックを催すにはちょうどいいだろう。 ……うん、あの崖の上の公園まで道路通って行こうかな? ―――そんな風に予定を組み直したとき、秋海の頭上で風の巻く軽い音がした。 そして、ぱきりという細木が折れる音と、 「はえ? いやそのあのちょっと待とーか? ぼくこんなの聞いてないつまり予想外=言葉足りなさすぎだよ馬ぁぁ鹿ぁぁぁっ!!」 声が聞こえた。 それもかなり慌てたむちゃくちゃ早口な声。内容も結構むちゃくちゃだったが。 「へ?」 声と音につられてもう少し真上に近い上に首をむけた秋海は、少し驚いた。 ―――さっきまでは何もいないはずだった木の枝から人が落ちてきたのだから、少しで済んでいる時点で彼も微妙に普通ではないが。 木に居たのはどうやら十歳に手が届くかどうかといったぐらいの…たぶん少年。 一般的な日本人の特徴である黒髪は背中を隠すほど長く、飾り石のたくさんついた細布で縛っている。子供用にしては大きく長い漆黒のコートを着ている。おおかたそれに脚を取られでもしたのだろう。 その上、折れた木に靴が変に引っかかっているらしく、姿勢を整える事ができないままながらも絶妙なバランスでじたばたしている。 「あ゛っ」 ばきりっ、という、少し太めの辺りの枝が折れるような音が彼の足元からしたようなしてないような。 「とうゎあっ?! ちょっ!!」 していたらしい。老木の枝が更に短くなって、白い生木が痛々しく見え、しかし少年の靴は外れたらしい。 …ただし、完璧にバランスを崩して背中から真っ逆さまに落ちてきたが。 「あ。…おっと」 思い出したように頭上に手を伸ばし、落ちる少年のコートの背中部分を先に掴んで、こちらで姿勢を調節してやりながら引き寄せる。軽い衝撃だけでしっかりと受けとめた。 「うん? ――――…、大丈夫?」 一瞬目を細め、また普段の柔らかい――またはユルい――笑顔に戻るとそう声をかけた。 ぽかんとした表情で固まる少年は二、三回まばたきをした頃、はっと我に返った。 「ふにゃ? …あ、わわわわわっ! だ、大丈夫っ!」 バタバタと手足を振りまわして自力で秋海から逃れる。身軽な動きで着地すると、身を翻してぺこりと頭を下げた。 「えぇっと、驚かしてごめんなさいっ。で、受けとめてくれてありがとうっ。―――そいじゃっ! ぼくちょっと急いでてさ、その……ばいばいっ!」 ぱたぱたぱた… 言うだけ言って走り去る少年は、一度も振りかえらなかった。 残された秋海は少年が角を曲がるまで黙って見送り、その後でしばらく目を閉じた。軽く腕を組み、口元に指を当てる。 「…敬語くらいはちゃんとしようよ?」 首をかたむけ、何所か的外れな注意を呟き、秋海は上を見上げた。確かに折れてはいるが、老木の上に細いだけあって、一番太い枝でも人が乗れそうな太さは有していない。 それでもしっかりと手入れがされているのか、年齢のわりに健康そうな生木の傷口を眺め、不思議そうに首をかしげた。 「あの子……………………んー、ちゃんと受身取ろうとしてたよねぇ…?」 無に近い表情のままで少し考え、途中で言う言葉をすり替えた。 しかし、その後の言葉も本心だ。服越しだろうと身体が緊張し、衝撃に備えていたことくらいはわかる。しかも随分と手馴れていた。 「どっかで武術とか習ってたのかな。 …あれ?」 服の左袖になにか紅い物が残っていた。つまんでみると、軽い感触。 「…………紅い、羽?」 軸を持ってくるりと回す。根元は純白なのだが、そのすぐ上からグラデーションが始まっており、全体的な印象としては紅い。 ……さっきの子が持ってた物かな? ここまで紅い鳥なんかこのへんでは見かけてないし…。 「綺麗だけどね」 晴れた空に透かしてみる。空の蒼と羽の紅が引き立て合っていい感じだ。その時の秋海は、なにも考えてなさそうでいて、どこかで何かを探っているような、そんな表情をしていた。 しかし、すぐにその表情はなりを潜め、元のゆるいような笑顔に戻ると、羽を懐に仕舞うと一歩踏み出す。何はともあれ、時計屋へ行く途中なのだ。 ……あぁ、お昼ご飯。どこで買おうかな? と急に日常に戻った思考を進めながら、秋海がもう二、三歩進んだ時だった。 秋海の懐で、何かが動いた。 |
33046 | 昨日で終わった時間旅行? 3 | 氷紅梦無 E-mail | 2007/3/21 22:50:51 |
記事番号33014へのコメント 昨日で終った時間旅行? 三。 「いいんじゃない? 僕には昔の話だし。…でも、今更ながらにあの始め方は酷かったなー、と思うんだよ」 壊れた時計と羽くらいしか入れていない場所。そこで、何かがうごめくような感覚。 「―――――…っ!?」 秋海は、小さな動きで振りかえった。 片足の踵を上げ、両腕を軽くまげて身体に引きつける。拳は握らない。対処するべき物が何なのか見極められていないのだから。全てに対応するには下手に構えないほうがかえって柔軟になれるものだ。瞳を鋭く細め、気配によって壁の先まで確認する。 「……気のせい…………なんて甘い事は言えないよね……」 ゆっくりと壁に背中をむけ、そう呟く。秋海は知っている。自分に奇妙な感覚がある場合は何かしらが起こるのが常だと。しかし、背後には何もなく、風すらも動いていない。 ……何? 自問と共に、秋海が足を一歩だけ後ろへ動かした。 と同時に、地面がずれたような気がした。 「…っ?!」 ―――――いや、違う。地面だけではない。 まわりの、それこそ自分以外の全てが瞬く間に育って行き、完成しながら衰退し、消え去り、また新しい物が数多増え続ける。 そんな感覚―――それが一瞬で来た。常人ならば感じることも出来ない間隙の内に、だ。秋海とて懐のうごめきという兆候が無ければ気付かずに歩いていただろう。それが幸いだったのかは微妙な所だが。 「…終わった、かな。…変な感じ…うー……、酔いそう」 しばらくという言葉では長すぎる、しかし秋海の体感としてはそれ以上の時間が過ぎた後、始まりと同様に突然終わった。しかしそこは瞬間的な集中のできる人間の辛い所。集中していたが故にそれのズレを敏感に感じ取ってしまい、どうも感覚がおかしくなったらしい。 秋海は言葉通りに多少気分の悪そうな表情をしていたが、二、三回頭を振ったら復活した。 で。 「――――――んーと、ここは……どこ?」 気が付けば本当にすぐ目の前には壁があった。先ほどまで背後にあった物ではない。それはむしろ室内の壁だった。 ちなみに、先ほど最後の一歩を踏んでいなければ、この壁は目の前で済んでいたかどうかは怪しい。不幸中の幸いという奴だった。 「…こんな材質……見たことないね」 それに気付かぬ幸運な秋海は、首をひねりつつそっと壁に触れる。白っぽく硬そうな見た目とは裏腹に、触れればクッションのように衝撃が吸収され、しかし壁としての確かさが両立されている。不思議の一言に尽きた。 「……とりあえず」 ジャンバーの右ポケットに手を突っ込み、白い紙切れを取り出す。普通のメモ用紙だ。秋海は両手でそれをつまむと一息に引き裂く。念のためもう一度引き裂き、四つに分かれたそれを見て、一つうなずいた。 「よし」 そう言いながら紙を元のポケットに戻し、振りかえった。しん…としたまま動かない空気を確認すると、また前をむく。 ……どうしようかなぁ…? と思いつつもあまり困って見えないのは彼が飄々とし過ぎているからだろう。 むしろ、ちょっと楽しんでいるぐらいだ。異常な事態という事はしっかりと理解しているはずなのだが。 「ん―――…」 音と感触を確かめるようにこつこつと壁を叩き、少しリズムをつけながら秋海は歩き出した。 ● 諒日秋海とは、実は英語が話せる人だ。 小さいころにしばらく海外で過ごしてきたおかげで耳も英語なれしているし、大学の頃に留学もしている。だから外国人とも気軽に今晩のおかずについて議論ができる程度には慣れ親しんでいる。 で。そんな諒日秋海はただいま立ち止まり中だった。 秋海の目の前には、金属のような物に絵と幾つかの単語が彫り込んである板―――簡単に言えば案内板がある。書いてある文字はアルファベット。 しかし、問題がひとつ。 「…………………………………………………………………………………………………………だめか………読めないなぁ…」 読めないのだ。アルファベットである事はなんとなく解る。 だが、くずし方が半端じゃない。筆記体どころの話ではなく、むしろこれは古書の、しかも速記体に近い。 ついでに言うと、案内板でその階の構造を確認した所、気付いた事があった。 「数字はそこそこ読めるから、ここが一階だっていうのは解ったんだけど…出入り口が書いてないんだよねぇ。変なの」 案内板に彫り込まれた絵の外壁部分を指でなぞってぐるりと一周してみたが、通常書いてあるはずの扉の形が無い。常識とか表記の仕方が違うのかと思いもしたが、非常階段やエレベーターの書き方は見知っている物と全く同じだ。 それに、どうやっても出入り口やその周辺というのは独特の形をはらんでしまう。客を迎え入れるための場所であり、何かが出て行くための場所でもあるのだから。 ちなみに、地下の表示も他の階の簡単な説明とともにあった。つまり、いま立っているこの場所は確かに一階であり、このビルには本当に一階に出入り口は無いのだろう。 しかし収穫はあった。 この建物、どうやら雑居ビルに近いようなのだ。 案内板の端に、カードを指しこむ形で階の説明が入っている。おそらく社名だろう。字が読めないのでなんの会社なのかはわからないが、とりあえずこのビルは地下に五階、地上に十五階あるという、実質二十階建てのビルであり、全ての階にテナントが入っている事はわかった。 しかし、何故ここにいたのか…そもそもここはどこなのか、そしてこれからどうするかという事については 「…あ、エレベーターが近い。一回一番上まで行っちゃおうか」 かなり、と付くほどアバウトな決め方がされていた。 それでいいのか。 |
33057 | 昨日で終わった時間旅行? 4 | 氷紅梦無 E-mail | 2007/3/26 19:53:21 |
記事番号33014へのコメント 昨日で終った時間旅行? 四。 「……うん、確かにひどいかもね。でも全然動じてないあたりとか、さすがキミっ! て感じだよ」 秋海は一人、待っていた。 それは、自らが耐え切れる物だったならばその全てを乗せ、ただ上下する事だけを運命付けられた檻のごとき箱だった。 それは、自らが動く事によって搭乗者に重力の体感を余儀なくさせる、業をまといし鉄の箱だった。 それは、自らに課せられた仕事の重大さを理解する事も出来ないような、意志持たぬ機械の箱だった。 ――――まぁ、ぶっちゃけるとエレベーターである。 金属製の重たい見た目通り重量のある両開きの扉。その上にガラスのタイルがあった。 その中には電球があり、左から右に光を移していく。やがて『1』の文字のあるガラスの奥の電球が光った。エレベーターが来たのだ。 「……うん」 ふかふかと敷かれたじゅうたんの床に静かに足を踏み入れると、一番桁の大きい数字『15』が描かれたボタンを迷わず押して扉が閉まるのを待つ。完全なる無音で滑りだしたのにはやや驚いたが、秋海はそういう物かと納得。 エレベーター特有の身体が押し付けられるようなGを感じつつ扉の上のパネルに目を移す。 「うーむ…人に会わないなぁ…」 秋海は壁をまたこつこつと叩き、困った表情と笑った表情を1:3ぐらいの割合で混ぜたような曖昧な顔でそういった。どうしてもベースにユルい笑顔が来てしまうのは個性としか言えないだろう。しかし、それでも彼は何も考えてないわけでは決してない。 「でも電気は来てるしねぇ…運が悪いのかな?」 エレベーターは動くし廊下には明かりが灯っている。人はどこかに居るし、ここは廃ビルでもなければゴーストタウンでもない。つまりはそういう事だ。 しかし、ならばどうして全く人に会わないのだろうか。案内板を見つけるまでにけっこうこの中を歩き回ったし、それなりに大きいビルだから受付ぐらいならあってもおかしくは無い。 「……、でも一階に入り口が無いなら受付も無いか。案内係なんだし」 では、今度は入り口がどこにあるのだろう。 順当に考えると正逆の一番上だが、そんな所に入り口があっても外から入れない筈だ。…一応はその可能性も考えて最上階を目指しているが、途中で人が乗り込んできたら儲けものだ。 どこまで通じるかは怪しいが、頭の中を英語に切り替えておく。読めなくとも表記はアルファベットだったからだ。…切り替えるというよりは頭の中で日本語で考えないと言ったほうが正しいかもしれない。言いたいことは何語で考えるのでもないからだ。 やがて、一度も扉を開くこともなく最上階に着くべくエレベーターが減速を始めた。体の重さが元に戻る。 『あー、止まる事も人に会う事もないまま着いちゃったかぁ…』 呟くように言ったセリフは英語。 嘆息しつつも、開いた扉から外へ出た。先ほど乗ったフロアよりも華美な装飾がなされた床へ、スニーカーが音も無く降りた。 ● そこには、人のみぞおちほどの高さの壁で区切られたスペースがあった。内側には電話や放送用のマイクや数多くの会社のパンフレットが置いてある。 そして、スペースには誰も入っていなかった。人が先程まで居たような気配も無い。 秋海は、それを見ながら声を放った。 『誰かいませんかー?』 答える者は無いだろうなぁ、という諦めに満ちたやる気の無い秋海の声があたりにこだまする。 人がいないと思った理由は簡単。そこの明かりは消えていたのだ。しかし秋海が近づくと何処かから光が差して明るくなった。 秋海は詳しくは知らないが、簡単な対人感知である。廊下の明かりが点いていたのも同じ理由で、実は人がいようといまいとここには光が溢れるのである。もったいないと思うかもしれないが、実は本当に『人がいる場所』にだけしか明かりが点かないのでビル全体で言えば逆に効率がよかったりする。 『…うん。やっぱり誰も居ないねぇ』 声をかけるまでもなく解っていたことだが、周囲の数十メートルに渡って人の気配がない。さてどうしたものかと秋海は考えた。 目の前の受付の台は、壁に少し混ぜ物を入れたような模様の石に近い物で出来ている。御影石のような雰囲気だ。後ろの壁には案内板と同じく金属で出来たプレートがあり、それぞれに矢印が彫られている。 たぶんここが受付で間違いない。こんなロビーと台があって、エレベーター用のエントランスも一階より豪華。…とはいえ、人が居ない受付で何ができるかと言うと、当たり前だが何も出来ない。 『…つまりはここに来ても無意味だった、っていう事だね』 そんな結論だけを声に出し、腕を組んでうなずいた。 ……ん、でも、受付があるって事は入り口が近いって事でいいかな? 常識的に考えるとそうなるのだが、壁に貼りついている板に描かれた矢印は何本もあって、どれがどこに通じているのか全く解らない。単語が添えられてはいるものの、読めなければなんの意味も無い。 結局探したほうが早いと判断。一階をうろついた時と同じように、適当に歩き出した。 『う…ん………出入り口どこだろー?』 首を捻りつつ歩く。 だいたい、何故この階に受付があるのだろう。出入り口が一番近いのならばこんな高所に出入り口があること自体がおかしいし、あの受付がこの階の会社のものだとしたら、エレベーターからあれだけ遠いのもおかしい事になる。 …って事は、この階に出入り口でもあるのかな? それなら案内表示くらいはしてて欲しいんだけどねー。 『ん、と?』 壁に直接、一本の矢印が描いてあった。しかも赤で。その下に何かしら書いてはあるが、やはり恐ろしく崩れたアルファベットで読むことは出来ない。 ……こっちでいいのかな? 疑問を持ってみるが、たとえ実行しようとしまいとこれ以上ひどい事になるはずも無いので迷わずGO。間違いだったとしてもまたここに戻ってくればいいだけの話だ。 しばらく道なりに歩くと、吹き抜けになっている開けた場所に出た。ある一点に収束して行くような場所に。 収束して行くある一点には、一つのドアがあった。ノブの無い両開きの金属の板が。 |
33068 | Re:昨日で終わった時間旅行? 4 | 侑子紅子 | 2007/4/2 13:24:57 |
記事番号33057へのコメント こんにちは。お久しぶりです。 続編という事だったので、前回のものと今回のものを読んでいるうちに、大分時が過ぎてしまいました。 では、感想っぽいものに参ります。 > 秋海は一人、待っていた。 > > それは、自らが耐え切れる物だったならばその全てを乗せ、ただ上下する事だけを運命付けられた檻のごとき箱だった。 > それは、自らが動く事によって搭乗者に重力の体感を余儀なくさせる、業をまといし鉄の箱だった。 > それは、自らに課せられた仕事の重大さを理解する事も出来ないような、意志持たぬ機械の箱だった。 > > > ――――まぁ、ぶっちゃけるとエレベーターである。 エレベーターの表現、凝ってますねー。 ぶっちゃけたおかげで、前半の重い感じが吹き飛びました。 > 金属製の重たい見た目通り重量のある両開きの扉。その上にガラスのタイルがあった。 > その中には電球があり、左から右に光を移していく。やがて『1』の文字のあるガラスの奥の電球が光った。エレベーターが来たのだ。 >「……うん」 > ふかふかと敷かれたじゅうたんの床に静かに足を踏み入れると、一番桁の大きい数字『15』が描かれたボタンを迷わず押して扉が閉まるのを待つ。完全なる無音で滑りだしたのにはやや驚いたが、秋海はそういう物かと納得。 > エレベーター特有の身体が押し付けられるようなGを感じつつ扉の上のパネルに目を移す。 > >「うーむ…人に会わないなぁ…」 > > 秋海は壁をまたこつこつと叩き、困った表情と笑った表情を1:3ぐらいの割合で混ぜたような曖昧な顔でそういった。どうしてもベースにユルい笑顔が来てしまうのは個性としか言えないだろう。しかし、それでも彼は何も考えてないわけでは決してない。 >「でも電気は来てるしねぇ…運が悪いのかな?」 > エレベーターは動くし廊下には明かりが灯っている。人はどこかに居るし、ここは廃ビルでもなければゴーストタウンでもない。つまりはそういう事だ。 > しかし、ならばどうして全く人に会わないのだろうか。案内板を見つけるまでにけっこうこの中を歩き回ったし、それなりに大きいビルだから受付ぐらいならあってもおかしくは無い。 >「……、でも一階に入り口が無いなら受付も無いか。案内係なんだし」 > では、今度は入り口がどこにあるのだろう。 > 順当に考えると正逆の一番上だが、そんな所に入り口があっても外から入れない筈だ。…一応はその可能性も考えて最上階を目指しているが、途中で人が乗り込んできたら儲けものだ。 > どこまで通じるかは怪しいが、頭の中を英語に切り替えておく。読めなくとも表記はアルファベットだったからだ。…切り替えるというよりは頭の中で日本語で考えないと言ったほうが正しいかもしれない。言いたいことは何語で考えるのでもないからだ。 > > やがて、一度も扉を開くこともなく最上階に着くべくエレベーターが減速を始めた。体の重さが元に戻る。 >『あー、止まる事も人に会う事もないまま着いちゃったかぁ…』 > 呟くように言ったセリフは英語。 > 嘆息しつつも、開いた扉から外へ出た。先ほど乗ったフロアよりも華美な装飾がなされた床へ、スニーカーが音も無く降りた。 エレベーター特有のあの感じ、私苦手なんです。酔ったみたいで。 ・・・なんだか昔、そのGを感じない裏技みたいなものがあったような、なかったような。 秋海さんの場合、きっと個性という名の魅力なんですよ。のほほんとしている人と一緒にいると、此方まで和んでしまいます。 最上階に出入り口があるとすると・・・ヘリコプターでも使わなきゃ入れませんね(ヘリコプターでも危ないかな?)。なんにせよ、関係者以外立ち入り禁止区域ですね。例の紅い羽が関係しているのでしょうか。 先程は、適当に最上階を目指しているような雰囲気でしたが、ちゃんと考えあっての事だったんですね。 頭の中で切りかえる・・・日本人にはかなり困難でしょうね。それをあっさりやってのける彼は、一体何者なんでしょうか。 > そこには、人のみぞおちほどの高さの壁で区切られたスペースがあった。内側には電話や放送用のマイクや数多くの会社のパンフレットが置いてある。 >そして、スペースには誰も入っていなかった。人が先程まで居たような気配も無い。 > 秋海は、それを見ながら声を放った。 > >『誰かいませんかー?』 > > 答える者は無いだろうなぁ、という諦めに満ちたやる気の無い秋海の声があたりにこだまする。 >人がいないと思った理由は簡単。そこの明かりは消えていたのだ。しかし秋海が近づくと何処かから光が差して明るくなった。 > 秋海は詳しくは知らないが、簡単な対人感知である。廊下の明かりが点いていたのも同じ理由で、実は人がいようといまいとここには光が溢れるのである。もったいないと思うかもしれないが、実は本当に『人がいる場所』にだけしか明かりが点かないのでビル全体で言えば逆に効率がよかったりする。 >『…うん。やっぱり誰も居ないねぇ』 > 声をかけるまでもなく解っていたことだが、周囲の数十メートルに渡って人の気配がない。さてどうしたものかと秋海は考えた。 > 目の前の受付の台は、壁に少し混ぜ物を入れたような模様の石に近い物で出来ている。御影石のような雰囲気だ。後ろの壁には案内板と同じく金属で出来たプレートがあり、それぞれに矢印が彫られている。 > たぶんここが受付で間違いない。こんなロビーと台があって、エレベーター用のエントランスも一階より豪華。…とはいえ、人が居ない受付で何ができるかと言うと、当たり前だが何も出来ない。 > >『…つまりはここに来ても無意味だった、っていう事だね』 > > そんな結論だけを声に出し、腕を組んでうなずいた。 > ……ん、でも、受付があるって事は入り口が近いって事でいいかな? > 常識的に考えるとそうなるのだが、壁に貼りついている板に描かれた矢印は何本もあって、どれがどこに通じているのか全く解らない。単語が添えられてはいるものの、読めなければなんの意味も無い。 > > 結局探したほうが早いと判断。一階をうろついた時と同じように、適当に歩き出した。 対人感知とは、実在するものなんですか?私は全然全く知らないので。あったとしたら・・・便利ですね。勝手に明かりが点くんですから。 確かに、人の居ない受付じゃあ何も出来ませんよね。道を聞くことも、知り合いに掛け合うことも、楽しくおしゃべりする事も出来ません。 今更ですが、アルファベットが使用してあるということは、この会社(?)は英語圏の人々が多く居るのでしょうか。 >『う…ん………出入り口どこだろー?』 >首を捻りつつ歩く。 > だいたい、何故この階に受付があるのだろう。出入り口が一番近いのならばこんな高所に出入り口があること自体がおかしいし、あの受付がこの階の会社のものだとしたら、エレベーターからあれだけ遠いのもおかしい事になる。 > …って事は、この階に出入り口でもあるのかな? それなら案内表示くらいはしてて欲しいんだけどねー。 > >『ん、と?』 > > 壁に直接、一本の矢印が描いてあった。しかも赤で。その下に何かしら書いてはあるが、やはり恐ろしく崩れたアルファベットで読むことは出来ない。 > ……こっちでいいのかな? > 疑問を持ってみるが、たとえ実行しようとしまいとこれ以上ひどい事になるはずも無いので迷わずGO。間違いだったとしてもまたここに戻ってくればいいだけの話だ。 > > しばらく道なりに歩くと、吹き抜けになっている開けた場所に出た。ある一点に収束して行くような場所に。 >収束して行くある一点には、一つのドアがあった。ノブの無い両開きの金属の板が。 積極的というか無鉄砲というか、正論のような違うような(笑) ドアですか・・・。恐らく、彼は入ってしまうんでしょうね。 中に何が在る(居る?)のか気になります。 壊れた時計が直るのかも気になります。(そこか) 今回も楽しく読ませて頂きました。・・・でも自分の読むスピードが本当に遅いことにショックを感じたりも・・・。 次回も頑張ってください。睦君と奏人君の再登場も待ってます! ではこれにて。 |
33073 | わはぁい。 | 氷紅梦無 E-mail | 2007/4/3 14:58:18 |
記事番号33068へのコメント コメントが来たー♪ 良かった―――…見捨てられてんじゃないかといつもドキドキものでして。小心者は辛いねっ! では、色々と答えさせていただきます! >こんにちは。お久しぶりです。 >続編という事だったので、前回のものと今回のものを読んでいるうちに、大分時が過ぎてしまいました。 >では、感想っぽいものに参ります。 いえいえー。ちゃんと反応を返して頂けるだけで充分ですハイ。 > エレベーターの表現、凝ってますねー。 > ぶっちゃけたおかげで、前半の重い感じが吹き飛びました。 …その場のノリでガタガタ打ったらいつでも雰囲気ぶち壊しがパターン化しちゃってます。前作でもこういう箇条書きを最初の方でやっていたような気がするので(確認してない)、出来るならば既視感みたいな物を、と思いまして。 > エレベーター特有のあの感じ、私苦手なんです。酔ったみたいで。 > ・・・なんだか昔、そのGを感じない裏技みたいなものがあったような、なかったような。 えっ? それは知らないです。でも出来たら面白いだろうなぁ… > 秋海さんの場合、きっと個性という名の魅力なんですよ。のほほんとしている人と一緒にいると、此方まで和んでしまいます。 …個性にまで発展しているのほほんですか…すごいなぁ。息子は全然似てないのに。 > 最上階に出入り口があるとすると・・・ヘリコプターでも使わなきゃ入れませんね(ヘリコプターでも危ないかな?)。なんにせよ、関係者以外立ち入り禁止区域ですね。例の紅い羽が関係しているのでしょうか。 > 先程は、適当に最上階を目指しているような雰囲気でしたが、ちゃんと考えあっての事だったんですね。 考えながら動いてますから。最初からそう思っていた訳ではないです。実は。 > 頭の中で切りかえる・・・日本人にはかなり困難でしょうね。それをあっさりやってのける彼は、一体何者なんでしょうか。 複数の言語を喋れる人は出来るはずですよ? この『頭の中での切り替え』という言葉はとあるエッセイ漫画からですし。イメージを伝えるのが言葉であって、外にだす際の媒体を変えているだけ…って余計わかりづらいな。 『日本語』ではなく『言いたいこと』で考えている、って感じですね。 > 対人感知とは、実在するものなんですか?私は全然全く知らないので。あったとしたら・・・便利ですね。勝手に明かりが点くんですから。 んー…玄関にたまにあるライト。それが人が来た時にだけ点く仕掛けになっているのがあるはずですが…今でもそういう小さな所には使われてますね。 > 確かに、人の居ない受付じゃあ何も出来ませんよね。道を聞くことも、知り合いに掛け合うことも、楽しくおしゃべりする事も出来ません。 > 今更ですが、アルファベットが使用してあるということは、この会社(?)は英語圏の人々が多く居るのでしょうか。 …英語圏…とはちょっとだけ違います。ほんの少しですが。ネタに掛かってしまうのでご勘弁をー。 > ドアですか・・・。恐らく、彼は入ってしまうんでしょうね。 > 中に何が在る(居る?)のか気になります。 > 壊れた時計が直るのかも気になります。(そこか) 時計は…まぁ、気にしていてください。 秋海がドアを開けることで目にする光景は、この世界その物でしょうね。この物語で舞台となっている場所です。 >今回も楽しく読ませて頂きました。・・・でも自分の読むスピードが本当に遅いことにショックを感じたりも・・・。 いえいえー。それでも読んでいただけたのなら光栄ですよ♪ >次回も頑張ってください。睦君と奏人君の再登場も待ってます! …奏人は出ます! アイツ案内役ですから! って言うよりこれと前作を繋ぐのってアイツしか居ないですから!(笑 >ではこれにて。 はい。では。 氷紅梦無でした。 それでは、またの機会に… |
33081 | 昨日で終わった時間旅行? 5 | 氷紅梦無 E-mail | 2007/4/9 20:30:51 |
記事番号33014へのコメント 昨日で終わった時間旅行? 五。 「えっと、何が流石なの? いつもの事だよ?」 階段を降りて行く。 辺りが静かなのはもう今更なので何も言わない。足音もなく階段を下る男性は、ある一段で立ち止まった。 『………人の気配がする……? けど、なんか変な位置だね』 んー? と首をかしげつつも再び階段を降り始める。 彼が感知したのは大量の人だった。 しかし、言葉にしたとおり位置がおかしい。 『ずっとむこうの空中に二百人ほど、そこから高度を三十メートルほど落とした所にまた同じくらい。 この太さは連絡橋とかじゃ無いよね。ビルとビルの間にこんなに橋はいらないし。……なんで屋上と同じ高度に人がいっぱい居るのかな…?』 首を捻るも、答えがそこら辺に書いてある訳もなく。結局見るのが一番早いだろう、と止めた足を再び動かした。 『……とりあえず、ここは人がいる世界だ。それは間違いなくなった』 呟いた。今更、という感想は適切ではない。 この場所に至るまで、全く人の気配が無かったのである。灯りが点く時点でゴーストタウンではないと判断はしていたが、それはただ単に今もなお環境を維持する機構が生きているというだけの意味だ。人が居るか否かは別だ。 しかし、今確かに人の気配をとらえる事が出来た。これでこの場所は街であると確信を持つことが出来たのだ。 『普通の街…ではないようだけどね』 苦笑のような声で呟き、髪の間に指を入れた。適当に掻きまわして腕を下ろすと同時に、階段の最後の一段を降りた。 さらに数メートル歩くと、秋海は立ち止まった。すぐ先にはこのビルの終わりがある。 『さて、と』 ドアノブの無い扉の前に立ち、背中で一房だけ伸びた黒髪を揺らした男性は、口に指を当てて呟いた。 『…ものすごく崩れた標準文字に屋上にしか出入り口が無いビル、かぁ。ここは何処でどーなってるんだろうね』 目を細め、家族にもあまり見せない表情をしつつドアに片手を当てる。冷たい感触は確かに存在し、この扉の硬さを指先で覚えた。 諒日秋海、とは。 あまり悩みが無さそうだのなに考えてるか解らないだの御気楽そうだのと色々言われる。それは本人も納得している。 しかし、実際の所彼は思索家な方だ。頭の回転が悪い訳ではないし、その辺の謎かけ本なんか目じゃないぐらいには柔軟な思考回路をしている。勉強やらそういった類にはまず使わないが、記憶力は結構なものだ。二年前に一度逢ったきりの人物のフルネームを漢字で思い出せる程だ。 こんな性格なのも、ただ、この世には色々なことがあるのだなと納得しているだけである。だから並大抵の不思議や理不尽は受け流せるし受けとめられる。それゆえに無節操だのつかみ所が無いだのと言われるのだ。パウダービーズのクッションでも想像すれば解りやすいだろう。思いきりわしづかみにしようと手からするりと抜け出て行く。つかんだ感触があるのに振りまわすほどしっかりとは掴めない。諒日秋海とはそんな感じだ。 手を離し、一歩を踏み出すと、扉が音も無く開いた。自動ドアだった。 ● 開いた扉は、確かに出入り口だった。なにせ、他のビルも全て最上階に出入り口が存在するのだ、この世界は。 それで不便は無い。むしろそうでないほうが不便なのだ。超高層ビルが当たり前のこの場所では十五階建てはむしろ小さいほうに分類されてしまう。周囲のビルは皆、囲いのように高い。わずかに見える空は夕方が近く、薄く紅が混じり始めていて、雲が塊でごろごろと流れている。上空の風は強そうだ。 そんな空も今は色が見づらい。 理由は簡単。 『うわ…車が空飛んでる……胡麻みたいだなぁ』 そう、空に道路を見ているかのように車が走っている。 秋海のすぐ目の前を、タイヤのように四隅が膨らんだ、しかし下部も覆うカバーで印象は一気に変わった車が。その上には一回り小さな白い車体が通って行く。その後ろをついて行くように走っているのはトラックだろう。その後ろはグレーのワゴン車。 交差点が上下で分かれているからか信号が無い。ただ同じ方向にむけて高さだけを合わせて進んでいる。曲がる事が出来る場所にはある程度の間隔が設けられており、中間点には吊り竿についている浮きみたいなものが浮かんでいる。恐らくは車列間の調節用だろう。 道路標識も宙に浮かんでいる。秋海も漫画やらテレビやらであんな物を見た気がする。たしか立体映像(ホログラフ)とか言う技術。 まぁ、彼の覚えている限りではあれは思いっきり夢物語でしかなかったが。 更には高速道路みたいな物も存在するらしく、高度が上がるにつれて車の速度が上がっていた。 ビルも空中道路に対応している。中空にターミナルのような窪みやテラスがあったり、駐車場としてビルにいくつも穴が開いていたり。 この光景を見た今なら納得できた。確かに車が空を飛ぶのならば一階に出入り口は不要だ。地上への通用口はこのビルには無かった。 歩行者も地面からは遠く離れた場所を歩いていた。ビルとビルを繋ぐロータリーが、これまた高さを違えていくつか掛かっている。 しかし、空は障害物もなく普通に見える。上に掛かるロータリーの底面に、その上に広がる景色を投影…いや透過しているのだ。恐らくはこの足元も風景の一部として下の人間には見えているだろう。 秋海がそれに気付いたのは近くを走った車がロータリー上の映像へと変わる瞬間にわずかな違和感を感じ取ったからにすぎない。条件が揃って、動体視力がいい人間しか見抜くことは出来ないだろう。それほどに精巧な映像だった。 「…へぇ……」 更に下があるのだろうかと、屋上の端まで歩いていった。覗きこんだ下はやはり幾つものビルや、それどうしを繋ぐ橋、ちらほらとあるロータリーが幾重にも重なった風景が広がっている。夕暮れ時だからか街灯が点いており、まるで朝露のついたクモの巣がたくさん重なったようにも見える。 秋海のいるこのビルはあまり通路としては便利ではないらしい。しかし、最寄のロータリーには人の波があった。地面の面積自体が違いすぎるので渋谷や新宿の雑踏と比べるべくもないが、それでも人の波は存在していた。 秋海がいる場所よりも低いその場所を行く人々は、その姿まで一望できる。しかし、がやがやと眼下を通りゆく人々の服装には少し違和感があった。 服装だ。 和・洋・中がごっちゃなのはいいとして、全体的にツナギのような上下一体形がベースとされているのだ。 …といっても、女性のほうが形のバリエーションがあるのはいつの世も変わらぬようで。細身の服が大半で没個性バンザイな男性とは逆に、女性はふくらみの多い華やかな中世のドレスに似た形が主流のようだ。たまに和服やチャイナドレスを着た女性が居たりして変な感じだが。 逆に、ズボンにトレーナーにジャンバーといった、ボトムスとトップスを分ける秋海の格好は、ここでは少数派のようだ。いない訳ではないのだが、秋海が元いた時代のツナギやオーバーオールとの割合反転だと考えてもらえると解りやすいだろうか。 そんな、まんま映画の世界な光景を目の当たりにして、秋海は思った。 『……お昼ご飯、どこで買えるかな。というか日本の通貨は有効かな?』 もうすでに昼食の心配である。あっさりと、なおかつ完璧に受け入れ、順応していた。 |
33097 | 昨日で終わった時間旅行? 6 | 氷紅梦無 E-mail | 2007/4/25 19:59:48 |
記事番号33014へのコメント 昨日で終わった時間旅行? 六。 「…あー……うん、普通じゃないのもいつも通りだよね」 『―――…さぁて。ここってどこなんだろうね?』 ベンチに座り、ぐるりとあたりを見まわして秋海は呟いた。 目の前を泳ぐように歩き行く人々は楽しそうで、しかし話している内容は全く見当もつかない。 雑踏の中の話し声が聞き分けられる人間なんざいねーじゃねーかと思ったそこの君、一応正しい。確かに聖徳太子が百人いても無理な芸当だ。 ただし、一組の人達に限って注意して話を聞いてみれば内容ぐらいなら聞ける。集中力とは偉大なり。 しかし、そのはずなのに、どの人に注意してみても皆一様に解らないのだ。どうも言葉が根っこの方から違うようだ。 ……でも顔立ちは日本人が多いんだよね。話してる言葉も単語一つ一つは英語と日本語を基礎としてるみたいだし。たまに日本語の言葉が聞こえる。 『…時間でも跳んだのかなぁ…? 科学技術がこれだし……』 と、隣に首を回す。 そこにあったのは小さな円盤。足の少ないクラゲのような形の銀の円盤で、少ない足で空き缶やら煙草の吸殻やらを一つ一つ拾って自分の中へと食べるようにしまい込んでいる。ずっと見ていると、許容量を越えたのかゴミ箱に小さな塊を捨てていた。圧縮機能すらついているご様子。 しかもその円盤、浮いている。ふよふよと音もなく漂い、たまに外殻の隙間から赤や緑の光を放ってむきを変えてまた進んでゆく。足を揺らして身体ごとたゆたうその様子は『海月』というクラゲの漢字がしっくりくる。…なんとなく和むのは仕様だろうか。 『うん…可愛いのはいいんだけどさ』 呟いて上を見上げれば、よくもこれだけと呆れたくなるような高さのビル群に、空飛ぶ大量の車であろう黒胡麻。 今、秋海が居るのはロータリーでもひときわ高い所にある物で、「最上階」の愛称で親しまれている場所だ。 例えるならば新宿のど真ん中ぐらいの認知度。当然先程いた所よりも人は多いし、ビルの壁面がモニターになっていたりするので情報量も段違いだ。 ビルの窓の前に投影されているらしい立体映像製のモニターでは、音楽番組をやっているらしく、様々なテロップのついた画面の中、マイクを握った男女が熱唱している。…当たり前のように歌詞は全く分からない。 歌声に日本語が混じっても、テロップの文字がまた難解でどこを歌っているのかすら解らない。 『それはいいとして……帰らないと心配されちゃうよね。明日も行くって言ったんだし……っと』 早く帰らないと妻に心配されてしまう。出産を控えた彼女にはあまり負担をかけたくないな、と秋海は思う。 しかし、今は何も手が無いのも事実。思いっきりベンチで手足を伸ばし、ついでに深呼吸をして体から力を抜いた。そして、何の気なしに懐に手を突っ込んだ。壊れている懐中時計でも秋海にとっては形見であり大切なお守りなのだ。 そこで、ぴたり、と秋海の動きが止まった。 ● 『……あ、れ?』 二回、三回と懐を探り、顔色を本格的に変えた。しばらく考え込むと、素早い動きで思い当たるだけのポケットを探る。…無い。 ここに来る前はあった。確かにあった。壊れているのを確認して、懐の落ちにくいところにわざわざ入れ直したのだ。無い訳がない。なのに。 「―――――――――――――――――…うそ」 思わず日本語に戻って呟く。 ゆっくりとベンチから立ち上がり、ぱたぱたともう一度空港のボディチェックのような事を繰り返した。これも先程よりもゆっくりだ。 落ち着こう落ち着こうと二回繰り返し、深呼吸も二回。 そして最後に、うん、落ち着いたと言うと―――――――――…いきなり走り出して叫んだ。 「え―――――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!!! 嘘嘘嘘ぉぉっ?! ちょっと待ってよ何で無いのっ!? だって僕ちゃんとポッケに入れたしさっきはあったよぉ? あそこってなかなか落ちないから信用してたのにこんな時に裏切らないで―――っ!!!! 何でよりによって今なのか誰か説明ーっ! ってぎゃぁぁ? 何で穴もなにも空いてないのかなぁっ? じゃーどーして落ちたのーっ?! 壊れただけならまだいーけど行方不明は勘弁だぁ―――っ! だいたいあれ形見だよぅ?! おとーさんとかおじーちゃんになに言われるか解んないじゃないかぁっ!! あぁさらに会うのが嫌になったっ! 僕はちゃんっと手入れしてたよ、止まったのは不可抗力だし直そうって思ってたのに無くなるって何さぁっ?!」 訂正。 全っ然、まったく、これ……っぽっちも、落ち着いてなかった。 走る方向はさっき知らぬ間に中にいたビル。叫びながらもここに来るまでの道筋を迷うことなく逆走し、あちこちをざっと見てまわる。 見つからないままビルまで着いて、やはり迷うことなくその中へと飛びこんでいった。 ……一応彼の名誉のために言っておくが、秋海は普段からあそこまでオーバーリアクションな訳ではない。むしろ無駄に冷静過ぎて少しは慌てろお前とか言われまくるような人種だ。 しかし、そんな秋海とて一応人間なのだ。怖い物だって一応あるし、混乱だってする時はする。パニックに陥る事だって無い訳ではないのだ。他人に驚かされる事も皆無ではないし、慌てておろおろする事だって絶無ではない。 ……フォローに全然なっていない気が現在進行形でしているが、それでもそういう反応もするということは覚えて欲しい。 そして、あの時計はそれだけ大切な物であるという事。あれは秋海が叫んでいる通り、形見なのだ。三代続けて使い続けて来た思い出も歴史も思い入れもたくさんある時計。そんな物が無くなったのである。しかもよりにってこんなよく解らない場所で。怖いのは誰だって…である。 叫びがぜんぶ日本語だったのは使用頻度の差だろう。最近使っているのがそちらだったからか自然と日本語に戻っている。 しばらくして、秋海がベンチに戻ってきた。走りながらも喚いていたおかげでとりあえず思いの丈を吐き出し終えたらしく(今度は本当に)落ち着いてきた。よろよろと元の位置に腰を下ろし、両膝に肘をついて指を組んであごを乗せた。 『…と、とりあえずだよ。無くなった…んだよね、あの時計…』 現状を受け入れるべく、青ざめた顔と沈んだ声で“無い事”を確認する。今度は英語だ。 叫んでいる間も走っている間もいろんな所を探したが、やはり無し。 『う―――そ―――…』 手をくずし、ゆっくりと真横に倒れ、ベンチに横になる。さすがに笑えない。 ゆっくりと、しかし滞りなく流れて行く上空の車の列は途切れることなく、ビルで囲われた空はまだ昼間の延長線上で明るい。 しかし時間的には夜が近い故だろうか。目の前を横切る人ごみには小さな鞄を持った学生らしき集団や、足を引きずるように歩くお疲れ顔の大人が多い。後者は恐らくサラリーマン…経済的に発展した後の社会とはこういう光景が当たり前になるのだろうか。 ぼんやりとしたままに秋海は人ごみから目を離した。背もたれのあるベンチの上で転がり、真上をむく。空は明るくもなく、暗くもなく、しかし少し前よりも確実に明度を落としている。夜が来るのだ。 『……暗くなったらどこに行けばいいのかねー……』 声が暗い。さすがに時計が無くなった直後まで笑っていられる人間ではない。 しかし、どうやら秋海とはただ沈んでいる事すらも許されないらしい。問屋はいつの世も不公平である。 『キャアァァァッ!!』 「…え、えぇっ?!」 叫び声が聞こえた。反射的に起き上がり、声のした方へと視線を巡らせる。そこには、往来を塞ぐような大きな人だかりが出来ていた。 |
33098 | Re:お初にお目に掛かります | 。。。 | 2007/4/26 00:04:17 |
記事番号33097へのコメント 初めまして いつも楽しく読ませて頂いております。 前作を知らないので、キャラをあまり知らず それゆえにコメントを控えさせて頂いた事、お許し下さい 今回、遂に、コメントしたいょメーターが超えてしまったので 遅ればせながらも、コメントさせて頂きます。 > そこにあったのは小さな円盤。足の少ないクラゲのような形の銀の円盤で、少ない足で空き缶やら煙草の吸殻やらを一つ一つ拾って自分の中へと食べるようにしまい込んでいる。ずっと見ていると、許容量を越えたのかゴミ箱に小さな塊を捨てていた。圧縮機能すらついているご様子。 > しかもその円盤、浮いている。ふよふよと音もなく漂い、たまに外殻の隙間から赤や緑の光を放ってむきを変えてまた進んでゆく。足を揺らして身体ごとたゆたうその様子は『海月』というクラゲの漢字がしっくりくる。…なんとなく和むのは仕様だろうか。 > >『うん…可愛いのはいいんだけどさ』 凄い!広場だけでなく人の心も掃除するんだねっ☆(煩 > ビルの窓の前に投影されているらしい立体映像製のモニターでは、音楽番組をやっているらしく、様々なテロップのついた画面の中、マイクを握った男女が熱唱している。…当たり前のように歌詞は全く分からない。 > 歌声に日本語が混じっても、テロップの文字がまた難解でどこを歌っているのかすら解らない。 残念ですね、これが解れば未来のヒットソングのヒントが分かったハズですのに・・・ >『……あ、れ?』 > 二回、三回と懐を探り、顔色を本格的に変えた。しばらく考え込むと、素早い動きで思い当たるだけのポケットを探る。…無い。 > ここに来る前はあった。確かにあった。壊れているのを確認して、懐の落ちにくいところにわざわざ入れ直したのだ。無い訳がない。なのに。 >「―――――――――――――――――…うそ」 > 思わず日本語に戻って呟く。 > ゆっくりとベンチから立ち上がり、ぱたぱたともう一度空港のボディチェックのような事を繰り返した。これも先程よりもゆっくりだ。 >落ち着こう落ち着こうと二回繰り返し、深呼吸も二回。 > そして最後に、うん、落ち着いたと言うと―――――――――…いきなり走り出して叫んだ。 > > >「え―――――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!!! 嘘嘘嘘ぉぉっ?! > ちょっと待ってよ何で無いのっ!? だって僕ちゃんとポッケに入れたしさっきはあったよぉ? あそこってなかなか落ちないから信用してたのにこんな時に裏切らないで―――っ!!!! 何でよりによって今なのか誰か説明ーっ! > ってぎゃぁぁ? 何で穴もなにも空いてないのかなぁっ? じゃーどーして落ちたのーっ?! 壊れただけならまだいーけど行方不明は勘弁だぁ―――っ! だいたいあれ形見だよぅ?! おとーさんとかおじーちゃんになに言われるか解んないじゃないかぁっ!! あぁさらに会うのが嫌になったっ! > 僕はちゃんっと手入れしてたよ、止まったのは不可抗力だし直そうって思ってたのに無くなるって何さぁっ?!」 普通はこんな世界に来た時点で、コレぐらい驚いても良いんですがね 常に動じない彼だからこそ、この慌てっぷりは最早清々しいです > ……一応彼の名誉のために言っておくが、秋海は普段からあそこまでオーバーリアクションな訳ではない。むしろ無駄に冷静過ぎて少しは慌てろお前とか言われまくるような人種だ。 > しかし、そんな秋海とて一応人間なのだ。怖い物だって一応あるし、混乱だってする時はする。パニックに陥る事だって無い訳ではないのだ。他人に驚かされる事も皆無ではないし、慌てておろおろする事だって絶無ではない。 > ……フォローに全然なっていない気が現在進行形でしているが、それでもそういう反応もするということは覚えて欲しい。 > そして、あの時計はそれだけ大切な物であるという事。あれは秋海が叫んでいる通り、形見なのだ。三代続けて使い続けて来た思い出も歴史も思い入れもたくさんある時計。そんな物が無くなったのである。しかもよりにってこんなよく解らない場所で。怖いのは誰だって…である。 大丈夫です。分かってます、分かってますよ。 やっぱり人の子ですもんね >『…と、とりあえずだよ。無くなった…んだよね、あの時計…』 > > 現状を受け入れるべく、青ざめた顔と沈んだ声で“無い事”を確認する。今度は英語だ。 > 叫んでいる間も走っている間もいろんな所を探したが、やはり無し。 >『う―――そ―――…』 > 手をくずし、ゆっくりと真横に倒れ、ベンチに横になる。さすがに笑えない。 > ゆっくりと、しかし滞りなく流れて行く上空の車の列は途切れることなく、ビルで囲われた空はまだ昼間の延長線上で明るい。 > しかし時間的には夜が近い故だろうか。目の前を横切る人ごみには小さな鞄を持った学生らしき集団や、足を引きずるように歩くお疲れ顔の大人が多い。後者は恐らくサラリーマン…経済的に発展した後の社会とはこういう光景が当たり前になるのだろうか。 > ぼんやりとしたままに秋海は人ごみから目を離した。背もたれのあるベンチの上で転がり、真上をむく。空は明るくもなく、暗くもなく、しかし少し前よりも確実に明度を落としている。夜が来るのだ。 >『……暗くなったらどこに行けばいいのかねー……』 >声が暗い。さすがに時計が無くなった直後まで笑っていられる人間ではない。 例え、未来の珍しい景色が見えていても、 そんな事どうでも良いっていうくらいの勢いで落ち込んでますね。 時計の重要性が分かる様です あぁ、英語がペラペラなんて羨ましい限りです コイツのお陰で何度赤点の魔の手に襲われたやら。 何か普通に話がそれましたが、 これからも面白い展開になりそうですねv これからも頑張って下さい 期待して待っております。 それでは。 |
33107 | 遅ればせながら。 | 氷紅梦無 E-mail | 2007/5/13 22:53:37 |
記事番号33098へのコメント > >初めまして > >いつも楽しく読ませて頂いております。 > 氷紅梦無と申しますー…。 返レスがめがっさ遅くて申し訳ございませんでした。我が家のパソコン状況劣悪なのですよこれがまた…。 んでも、何とか頑張ってレス行きますっ! >前作を知らないので、キャラをあまり知らず > >それゆえにコメントを控えさせて頂いた事、お許し下さい > >今回、遂に、コメントしたいょメーターが超えてしまったので > >遅ればせながらも、コメントさせて頂きます。 > やーですよぅ! 知らなくっても沢山コメントくださいよー! 放置プレイは勘弁ですし… コメントしたいよメーターですかー。すごい。メーターがちゃんとあるのは素晴らしいです。しばらくは我慢できて言いたいことが増えますもんね☆ >凄い!広場だけでなく人の心も掃除するんだねっ☆(煩 > あぁ! あのクラゲそんな効果が! じゃぁあの金髪クラゲ頭も誰か癒してるんでしょうか…? >残念ですね、これが解れば未来のヒットソングのヒントが分かったハズですのに・・・ 残念、秋海は現在のヒットソングも知りません。彼が好きなのは古めの洋楽ですから。流行関係無いんですよね。 >普通はこんな世界に来た時点で、コレぐらい驚いても良いんですがね > >常に動じない彼だからこそ、この慌てっぷりは最早清々しいです あ、あははははははははははははは☆ 普通じゃありませんので。奴は。ちょっとやそっとじゃ動じてらんない。 >大丈夫です。分かってます、分かってますよ。 > >やっぱり人の子ですもんね …秋海にそんな感想抱いてくれる方がいらっしゃったとは…。 ありがたやー。生ぬるい目で見守ってやってください。 >例え、未来の珍しい景色が見えていても、 > >そんな事どうでも良いっていうくらいの勢いで落ち込んでますね。 > >時計の重要性が分かる様です …あぁ、秋海にとって未来の光景とか正直どうでもいいですから(断言)。 時計の方がよっぽど重要。無くなったのは壊れたよりも性質が悪いですから。 >あぁ、英語がペラペラなんて羨ましい限りです > >コイツのお陰で何度赤点の魔の手に襲われたやら。 あ、赤点…ってそろそろ期末っ?! テストがくるー! 今回赤点って何点だー!? あ、すみません。僕、お気楽高校生ですので。現在進行形で襲われてまっす! >何か普通に話がそれましたが、 > >これからも面白い展開になりそうですねv > >これからも頑張って下さい > >期待して待っております。 > >それでは。 はいー。ありがとうございました。 ご期待に添えるよう頑張って…行きたい…なぁ…。(弱気になるな) おそらく今週中にでも次の話を更新したいので、その時はよろしくお願い致します。 最後になりましたが、 失礼ですが…お名前、どう読めばよろしいでしょうか…? どうにも読めませんで…。 僕は氷紅梦無(ひぐれむな)です。はい。 では、失礼なことを最後に持って来てしまいましたが、ご一読頂きありがとうございました。 またのお越しを心よりお待ちしております。 それでは、またの機会に…。 |
33134 | や、やっと…。。。 | 櫻井 URL | 2007/5/20 18:19:09 |
記事番号33097へのコメント お久しぶりですー。 やっとこさパソに触れられました。。。 懐かしすぎてどのキーも固い気がしますです。 …母親がパソをよく使う為か、『A』と『E』のキーが抉れてます。本当に。 気持ち『N』と『S』も・・・・・・。あぁ。 さて、では早速。 >昨日で終わった時間旅行? >六。 大分長くなりましたねー。 > >「…あー……うん、普通じゃないのもいつも通りだよね」 日々を想像させ易くする一言ですなぁ。。(そういうお前の文は不可解だ。 >『―――…さぁて。ここってどこなんだろうね?』 > ベンチに座り、ぐるりとあたりを見まわして秋海は呟いた。 > 目の前を泳ぐように歩き行く人々は楽しそうで、しかし話している内容は全く見当もつかない。 『楽しそう』程度の認識しか出来ないような雰囲気、って事ですか? > ……でも顔立ちは日本人が多いんだよね。話してる言葉も単語一つ一つは英語と日本語を基礎としてるみたいだし。たまに日本語の言葉が聞こえる。 基礎が英語と日本語でさっぱり分からない? ・・・・・・う、ぇ?(もう駄目だった子。 > そこにあったのは小さな円盤。足の少ないクラゲのような形の銀の円盤で、少ない足で空き缶やら煙草の吸殻やらを一つ一つ拾って自分の中へと食べるようにしまい込んでいる。ずっと見ていると、許容量を越えたのかゴミ箱に小さな塊を捨てていた。圧縮機能すらついているご様子。 > しかもその円盤、浮いている。ふよふよと音もなく漂い、たまに外殻の隙間から赤や緑の光を放ってむきを変えてまた進んでゆく。足を揺らして身体ごとたゆたうその様子は『海月』というクラゲの漢字がしっくりくる。…なんとなく和むのは仕様だろうか。 うちのおかんが好きそうだ…。イヤ、関係ないんだけどさ。 そのゴミ箱を片すのは結局誰がやるんでしょうか? そしてもって関係ない話題ですが、機械化が進んだ世界で、人間はどうやって収入を得るんでしょうか…? >『うん…可愛いのはいいんだけどさ』 じゃあいいじゃんそれで(ぇ >『それはいいとして……帰らないと心配されちゃうよね。明日も行くって言ったんだし……っと』 > 早く帰らないと妻に心配されてしまう。出産を控えた彼女にはあまり負担をかけたくないな、と秋海は思う。 …結構愛妻家さん?ふふ。。 >「え―――――――――――――――――――――――――――――――――――――っ!!! 嘘嘘嘘ぉぉっ?! > ちょっと待ってよ何で無いのっ!? だって僕ちゃんとポッケに入れたしさっきはあったよぉ? あそこってなかなか落ちないから信用してたのにこんな時に裏切らないで―――っ!!!! 何でよりによって今なのか誰か説明ーっ! > ってぎゃぁぁ? 何で穴もなにも空いてないのかなぁっ? じゃーどーして落ちたのーっ?! 壊れただけならまだいーけど行方不明は勘弁だぁ―――っ! だいたいあれ形見だよぅ?! おとーさんとかおじーちゃんになに言われるか解んないじゃないかぁっ!! あぁさらに会うのが嫌になったっ! > 僕はちゃんっと手入れしてたよ、止まったのは不可抗力だし直そうって思ってたのに無くなるって何さぁっ?!」 あ、長男さんですか? > ……一応彼の名誉のために言っておくが、秋海は普段からあそこまでオーバーリアクションな訳ではない。むしろ無駄に冷静過ぎて少しは慌てろお前とか言われまくるような人種だ。 …睦くんに? > しかし、そんな秋海とて一応人間なのだ。怖い物だって一応あるし、混乱だってする時はする。パニックに陥る事だって無い訳ではないのだ。他人に驚かされる事も皆無ではないし、慌てておろおろする事だって絶無ではない。 そゆとこさっぱり似てないんですね。。。 > ……フォローに全然なっていない気が現在進行形でしているが、それでもそういう反応もするということは覚えて欲しい。 はーい。 > 叫びがぜんぶ日本語だったのは使用頻度の差だろう。最近使っているのがそちらだったからか自然と日本語に戻っている。 > しばらくして、秋海がベンチに戻ってきた。走りながらも喚いていたおかげでとりあえず思いの丈を吐き出し終えたらしく(今度は本当に)落ち着いてきた。よろよろと元の位置に腰を下ろし、両膝に肘をついて指を組んであごを乗せた。 見てみたい(え |
33137 | お疲れー。 | 氷紅梦無 E-mail | 2007/5/21 15:19:52 |
記事番号33134へのコメント >お久しぶりですー。 >やっとこさパソに触れられました。。。 >懐かしすぎてどのキーも固い気がしますです。 >…母親がパソをよく使う為か、『A』と『E』のキーが抉れてます。本当に。 >気持ち『N』と『S』も・・・・・・。あぁ。 >さて、では早速。 はぁいおひさー。 んー。ノートパソコンでもまだえぐれてるのは無いなぁ…。 もーちょい精進せねばいかんか? ま、それはともかく氷紅梦無だ、レスどーもありがとーという訳で返レス行ってみよーか。 >大分長くなりましたねー。 まーね。…下手したら、20話越えるかもー。今の所完成はしてないから。 >日々を想像させ易くする一言ですなぁ。。(そういうお前の文は不可解だ。 ははははは。毎回こーゆー台詞を冒頭に。むしろ題名入るところに。 内容と台詞で関係は無いんだけどね。だから題名とは言わない。 >『楽しそう』程度の認識しか出来ないような雰囲気、って事ですか? うーん。むしろ外国の雑踏を眺めてる雰囲気。 >基礎が英語と日本語でさっぱり分からない? >・・・・・・う、ぇ?(もう駄目だった子。 でーじょぶだぁい! 僕自身も想像つかんからこの言語! とりあえずアレだ、昔ながらの方言で生活してるお年寄りが、新宿とか池袋とかで若者が早口で話している内容がさっぱりわからん…っていう感じに思っててくれればそれが一番近い。はず。 >うちのおかんが好きそうだ…。イヤ、関係ないんだけどさ。 >そのゴミ箱を片すのは結局誰がやるんでしょうか? たまに回収業者が来るよ。細かいのをまとめるのがくらげロボの仕事だから。 >そしてもって関係ない話題ですが、機械化が進んだ世界で、人間はどうやって収入を得るんでしょうか…? えーと…会社は普通にあるよ。株式会社の運営は機械にゃ出来ないから。製品の企画とか開発とか、発想なんかは人間の仕事だし。 死と隣り合わせみたいな仕事は少し減ったかな。でも大工はあるよ。 >>『うん…可愛いのはいいんだけどさ』 >じゃあいいじゃんそれで(ぇ まーね。可愛いって事はそれでいいの。でも、問題なのは秋海の暮らしてたとこの常識だとそんなモンは作れないはずって事。 >…結構愛妻家さん?ふふ。。 …結構と言うかものすごくというか。まぁある意味素直だからね、秋海は。 好きじゃなきゃ結婚もしないし子供もつくらんて。 >あ、長男さんですか? 一応ひとりっ子だよ。だから長男でもある。 …おとーさんとかおじーちゃんに『会うのが』更に嫌になったってとこにはツッコミ無しっすか? いいですがね。 >> ……一応彼の名誉のために言っておくが、秋海は普段からあそこまでオーバーリアクションな訳ではない。むしろ無駄に冷静過ぎて少しは慌てろお前とか言われまくるような人種だ。 >…睦くんに? 睦(まこと)、…ってそりゃ息子だろ!? まだ生まれてないですがなっ?!(ツッコミ >> しかし、そんな秋海とて一応人間なのだ。怖い物だって一応あるし、混乱だってする時はする。パニックに陥る事だって無い訳ではないのだ。他人に驚かされる事も皆無ではないし、慌てておろおろする事だって絶無ではない。 >そゆとこさっぱり似てないんですね。。。 むぅ。睦は普通にお母さんの性格受け継ぐから。 まぁ秋海に性格が似てたら結構大変なんだけどね。色々と。 >> ……フォローに全然なっていない気が現在進行形でしているが、それでもそういう反応もするということは覚えて欲しい。 >はーい。 うん。返事をしてくれるのは良い子だよ…っ! >> しばらくして、秋海がベンチに戻ってきた。走りながらも喚いていたおかげでとりあえず思いの丈を吐き出し終えたらしく(今度は本当に)落ち着いてきた。よろよろと元の位置に腰を下ろし、両膝に肘をついて指を組んであごを乗せた。 >見てみたい(え え。…まぁ、想像頑張って。いっそのこと絵で描くのも良しだし。 ずどーんと沈んでるだけだからね? ここからは半分私事。 えーと。 コメント無くとも読んでくれている貴方。 どうもありがとうございます。 。。。さんへのコメントで『今週中』とか発言してしまいましたが、訂正させてください。 すみませんホントもーちょっと時間くださいそのなんでしょう学生ならではの苦行つまり分かりやすく言ってしまえば紙に書かれた文章が答えよとシャー芯を削ることを強要して来てあぁ分かりにくいですねつまりはアレですよそうテストがテストが中間試験が先生がテスト用紙持って追いかけて来る…っ! ……………えぇ。まぁ、その。そんな諸事情が、ござい、まして。 …頑張りますのでどうか気長に待ってくださりませ。書き逃げだけは致しませんので。すみません。 では、氷紅梦無、でした。 それでは、またの機会に… |