◆−また一年あきましたが漫遊番外投稿ですv−かお (2007/10/6 17:28:42) No.33417 ┣エル様漫遊記番外編〜ランナウェイガール編〜−かお (2007/10/6 17:30:55) No.33418 ┗エル様漫遊記・番外編〜戦慄!雨の人情宿場編〜−かお (2007/10/6 17:32:17) No.33419 ┗Re:エル様漫遊記・番外編〜戦慄!雨の人情宿場編〜−星野流 (2007/10/7 11:39:26) No.33422 ┗あの二人は作者公認裏設定ですよ?−かお (2007/10/7 18:12:48) No.33423 ┗Re:あの二人は作者公認裏設定ですよ?−星野流 (2007/10/7 19:26:04) No.33424
33417 | また一年あきましたが漫遊番外投稿ですv | かお E-mail URL | 2007/10/6 17:28:42 |
こんにちわ。 またまたやってきています(爆!) 最近、かなり間隔があきすぎてる・・と自覚あり。 が…頑張ります(こらこら…汗 何はともあれ、ということで、エル様漫遊記・番外編。 ちなみに、注記しておきますがこのリナ=インバースは、金色の王(エル様)となっています。 そして、この本編にあたるのは、ここにはまだ投稿してませんので。 もし、番外編があるなら、本編もあるはず。 と、捜さないでください・・(汗) 映画版のは一つほど、ここ(書きなぐり)にも投稿してあります・・・・・。 (とゆーかすでに完全無欠版は投稿しました。) 本編がどーしても読みたい人は、このしがない私のページからどうぞ(まて!) おいおいと更新していますので・・・。 この番外編。 主に、スレイヤーズ、スペシャルが主です。 そして、たまぁぁぁぁに、オリジナルもありますが(爆!) 上記を納得の人は、お目汚しにまでお読みください・・・・。 ##################################### こんにちわ♪ やってきました♪久方ぶりに♪(まて!) ちなみに、このエル様漫遊記・番外編。 以前の話の内容は・・こーなってます(まて!) 第1話 その後前偏・後編 スペシャル7巻 影の鏡 第2話 デリィシャス4巻&スペシャル19巻 ルナテクヘステバル 第3話 なし ☆降魔戦争時☆ 第4話 デリィシャス2巻 呪術士の森 第5話 なし ☆ゼリス誕生偏☆ 第6話 スペシャル1巻 ナーガの挑戦 第7話 スペシャル1巻 セイルーンの王子 第8話 スペシャル9巻 闇に住まう村 第9話 スペシャル5巻 ジェフリー君の騎士道 第10話 RPGゲームブック 目指せサイラーグ 第11話 スペシャル5巻 レスキュウ作戦 第12話・前偏・後編 なし ☆エル樣とユニット様☆ 第13話 スペシャル13巻 BP攻防戦 第14話 日帰りクエスト(?) ☆日帰りクストキャラ☆ 第15話 スペシャル1巻 エルシアの城 第16話 スペシャル10巻 破壊神はつらいよ 第17話 スペシャル10巻 歌姫の伝説 第18話 スペシャル6巻 愛しの根性なし 第19話 スペシャル11巻 全ては真実のために 第20話 スペシャル6巻 根性なき戦い 第21話 スペシャル1巻 ロバーズキラー 第22話 スペシャル10巻 歌姫の出発 第23話 スペシャル7巻 頑張れネクロマンサー 第24話 スペシャル11巻 一把一からあげ 第25話 スペシャル9巻 イリーズの旅路 第26話 スペシャル2巻 リトル・プリンセス 第27話 スペシャル13巻 まったりとしてこくがなく 第28話 スペシャル17巻 小さな濃いメロディ 第29話 スペシャル一巻 悪役ファイト 第30話 スペシャル一巻 りべんじゃあ 第31話 スペシャル14巻 遠き日の決着 第32話 スペシャル二巻 白竜の山 第33話 スペシャル12巻 家政婦はみたかもしんない 第34話 スペシャル17巻 仁義なき場所とり 第35話 スペシャル17巻 嵐の前に 第36話 スペシャル10巻 白い暗殺者 第37話 スペシャル13巻 仰げば鬱陶し 第38話 スペシャル19巻 愛は強し 第39話 スペシャル7巻 ガッツだ!元ネクロマンサー 第40話 スペシャル23巻 オールディズ・プライド 第41話 スペシャル2巻 ラビリンス 第42話 スペシャル2巻 リナ抹殺指令 第43話 スペシャル8巻 ザ・ガードマン 第44話 スペシャル2巻 ザ・チャイルド 第45話 スペシャル2巻 リトルプリンセス2 第46話 スペシャル20巻 ミッション・ボジプル 第47話 スペシャル3巻 ヒドラ注意報 第48話 スペシャル17巻&ディリシャス3巻 巨大生物の山 第49話 スペシャル24巻 地底王国の脅威 第50話 スペシャル15巻 ブレイク・オブ・デスティニー 第51話 スペシャル25巻 騎士道のススメ 第52話 スペシャル9巻 理由なき冤罪 第53話 スペシャル3巻 復讐の刃 ちなみに、今回は♪♪ 第54話 スペシャル20巻 ランナウェイ・ガール 第55話 スペシャル20巻 戦慄!雨の人情宿場 以上となってます♪ 次回。 の予定です♪ ちなみに、これは、パロディです♪ それでもって、リナがリナではなく、金色の王であるエル様となってます♪ それでは♪ (以前のは、著者別からどーぞ♪)大概すべて読みきりですので♪ あしからず♪ ではでは♪ ちなみに、これ、リクエスト、受付中♪ (すでにただいまリクエスト、10個以上…うけてますv) リクエスト予定作品。 (はるか様) ・忍び寄る闇(SP14巻分)(ガウリイ達の方) ・ビーストストライク(SP14巻分)(ガウリイ達の方) ・汝その名はスイートポテト(SP21巻分) ・ホーンテッド・ナイト(SP14巻分) (星野様) ・SP八巻分。 ・エイプリルの事件簿(SP15巻分) ・プライド・オブ・ダークネス(SP15巻分) (水島飛鳥様 ・プライド・オブ・ダークネス(二名様受付中v) (?様←つまりは誰だったか忘れました・・・・汗) ・お子様クエスト(SP4巻分) ・ないしょの作戦(SP5巻分) ・激闘!料理人(SP6巻分) ・ランナウェイ・ガール(SP20巻分) (龍様) ・スタンプ・トゥ・キル(sp27巻分) ・ファミリー・ポートレート(SP27巻分) それでは、いくのです♪ |
33418 | エル様漫遊記番外編〜ランナウェイガール編〜 | かお E-mail URL | 2007/10/6 17:30:55 |
記事番号33417へのコメント まえがき&ぼやき: こんにちわ。 何やらおひさしぶりの漫遊記番外編の打ち込みをしている薫です…… ふときづいたら最新作の小説…どこいった?状態(まて せめて30巻に突入するまでには今までの全てのお話を掲載したいものです…… さきに、前後編になるまえのお話…全て打ち込みするかなぁ(汗 でも。過去のぶんって、ルクミリだしたほうがたのしそーになりそうのもあるし。 そういうのは以前に考えたのとはかえてそちら優先にする…かも(まて)ですv 何はともあれ、いっきまーすv 今回は、SP20巻。「ランナウェイ・ガール」ですv 時期は、「ゲーム。スレイヤーズワンダホー」が終わった後。 シルフィールをサイラーグの町に送り届け。 んでもってナーガが合流するより前のお話です。 ではではv ゆえに、登場人物は、リナ、ガウリイ、アメリア、ゼルガディス、ゼロスの五人v では、いっきまーすv ※今回のこれは95Kあります。長いからいや、というひとは回れ右してください。 ##################################### エル様漫遊記・番外編 〜ランナウェイ・ガール編〜 トリガルウの一件も完了し。 無事にシルフィールもサイラーグに送り届け。 ひとまずセイルーンに向かっているあたし達。 「…な…何をするんですか!?」 品物が崩れる音と、女の人の悲鳴とが、あたしたちの後ろの方から聞こえてくる。 あたしたちの方にまで転がってきている、道を転がるいくつものオレンジ。 そして、それらを振り向けばあわてて拾い集めている女性が一人。 彼女が手を伸ばすその前で、ブシュっとオレンジの一つが靴に踏まれてはじけてつぶれる。 やったのは、どこからどうみても、自ら『悪人です』といわんばかりの格好をしている男たち。 どうでもいいけど、どうしてみんな同じような格好するのかしらねぇ。 まったくもってひねりがないったら…… 「おう。おばはん。あんた、誰にことわってこの商売……」 ごめしっ。 そんな彼が寝言を言い終わるよりも早く。 そんな彼にたいして、しっかりとみぞおちに一撃を叩き込んでいるアメリアの姿が。 そして。 「そこまでですっ!かよわき女性に無体を働く悪党ども! しかも!食べ物を粗末にするなど言語道断!このアメリア=ウィル=テスラ=セイルーン! と仲良し四人組はあなたたちの悪事を見逃すわけにはまいりませんっ!」 何やらその場にうずくまる男性にたいして、ぴしっとポーズを決めて言い放つ。 そんなアメリアの言葉にしばし呆然とする男たち。 そして、ふと我にともどり。 「何すんだ!?このガキ…!なめんなっ!」 などと吠えてつっかかっていこうとしているごろつきその二。 だがしかし。 「火炎球(ファイアーボール)っ!」 どごがぁん! すばやく術を唱えたアメリアの一撃がそんな人間を直撃する。 「……何か。ぜったいにアメリアのやつ…リナに似てきてないか?」 「……怖いことをいわないでください。ゼルガディスさん……」 そんなアメリアの行動をみつつ、ぽつりとつぶやくゼルにと何やらいっているゼロスの姿。 ほほぉぅ。 「あんたたち。どういう意味かしらねぇv」 にこやかに、そんな二人に微笑みかけるあたしの台詞とはうらはらに。 「……ま…魔道士…か?」 などとぽつりとつぶやくごろつきその三。 「さあ!悪人さんたち! 私達正義の仲良し四人組みが、正義のなんたるかを教えてさしあげますっ!」 そんな彼らに対し、きっとかまえつつも言い放つアメリア。 ま。 面白いからこのまま傍観してる。 というのも手だけど。 とりあえず…っと。 「さってと。あんたたち。オレンジの弁償代なんだけど。 ありがね全部とあんたたちの蓄えている全てのお金。 それでもって真昼間から役にもたたない人間松明か、もしくは人間炭にされるのとどっちがいい?」 ぽんっ。 アメリアの肩に軽く手をおきつつ、男たちに言い放つ。 そんなあたしの台詞に。 「な…何だと!?」 「てめぇ!あんまり調子に……」 「どっちがいい?」 「もしくは。このまま魔獣たちのご飯にする。という手もありますけど?」 にこやかに、ゼロスがあたしたちのやり取りの間にそんなことをいってきてるけど。 「あ。それもいいわね♪もしくは人間つかったフルコースの料理とかv 魔族とか神族はよくやってるけど。人間はまだだし…ねぇv」 彼らをみつつ、にっこりとゼロスの言葉に同意するあたしの台詞に、 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 なぜか男たちはしばし沈黙。 「…いや。ちょっとまて。『よくやってる。』……って……」 ゼルが何やらいってくるけど。 「ま。リナだしなぁ」 それですませているガウリイ。 「…リ!?」 リナ。 という台詞をきいて。 ざっとあたしの容姿を確認してくるその男たち。 そして、なぜか。 『…ちいっ!』 栗色の髪に、小柄な魔道士姿…… まさか、こいつあのリナ=インバース!? などとおもいながらも、小さく舌打ちし。 そのままアメリアの放った術によって多少こげている男を一人が背負い。 何やらしたうちしつつも、その場にほうほうお財布を投げ捨て。 なぜか必死になってこの場を逃げてゆく男たち。 「あ!まちなさいっ!」 そんな彼らをアメリアが追いかけようとするけども。 「それより。アメリア。オレンジ拾って、その人の保護ねv」 ほんとは、この女性には保護なんていらないけどv ま。 それは別に説明することでもないし。 にっこりそんなアメリアに言い放ち。 そして。 軽くパチンと指を鳴らすと同時。 ふわっ。 道にころがっていた全てのオレンジが空中にと浮び。 そして空中にてちょっとした水の球を作り出し、その中で軽くあらっておく。 そして元のとおりに店の軒先にと並べておく。 なぜか、様子を伺っていた見物客がそんな光景をみて唖然としているそんな中。 「さってと。いきましょ」 完全に元のとおりに戻しておいたのちに、アメリア達を促すあたしの台詞に、 「…まったく。あまり目立つまねをしてくれるなよな……」 なぜか、あたしとアメリアをみつつ、つぶやくようにいってくるゼルに。 「どうやらこの人も怪我はなかったようですし。気をつけてくださいね」 にっこりと、先ほどの女性にむかって話しかけているアメリア。 「……何か嫌な予感……」 「同感です……」 そしてまた。 その女性のもつ雰囲気というか力を感じ取り、そんなことをいっているガウリイとゼロス。 あら。 二人とも、よくわかってるじゃない。 ま、まだアメリア達は気づいてないけど…ね。 ふふv 「先ほどはありがとうございました」 かけられた声に、アメリア達が振り向いたのはとある食堂の一角。 午後の軽いおやつをかねて、あたし達はこのあたりのお店をはしごしている真っ只中。 あたしとアメリア。 そしてガウリイとゼルとゼロスがそれぞれ二つの席にと別れ座っているそんな中。 あたし達が座っているテーブルのほぼ中央の向かいにたたずんでいるのは四十前後の女性が一人。 真ん中分けの黒い髪は、そのところどころがほつれており。 一見したところ、何やら疲れている「どこかの主婦その一」といった雰囲気をかもし出している。 きちんと洗濯しているようではあるが、着古した感じのある普段着。 といってもそれもそのように見せかけるようにしている特注の服だったりするのはそれはそれ。 そして見た目、何かを悟ったようなあきらめにもにた笑みを浮かべつつ、 あたし達に話しかけてきていたりする。 見た目、「日々の生活につかれている主婦その一」で完全にまかり通る。 アメリアとゼルの目には、細身なのだが、その全身に漂っている雰囲気…というか、 そのように感じさせるようにしているその雰囲気をうけ、やつれているように見えていたりする。 「?誰だっけ?」 などとのほほ〜んといいながらも、その内面の実力を感じ取りながら。 多少警戒しつつ、だがしかし、それを悟られないようにしていっているガウリイに。 「あ。さっきの」 「ああ。さきほどの。何かごろつきさんたちに絡まれてた果物やの人間さんですよ」 アメリアと、ゼロスの声はほぼ同時。 言うまでもなく、先ほどからまれていた果物屋の女性なんだけど。 「いえ。当然のことをしたまでです!」 そんな彼女に対して、きっぱりとアメリアが言い切ってるし。 「いえ。あなたたちに助けていただかなかったら一体どうなっていたことか……」 いって彼女はその場につったったままもじもじしながら沈黙する。 まあ。 一応、周りの人たちには普通のどこにでもいる人。 と思われてるからねぇ。 彼女…というか、彼女の家族は。 「ま。たったままでも何だから。すわれば?」 「――…はい」 あたしの言葉をうけ、そのまま無言であたしとアメリアが座っているテーブル。 すなわち、アメリアのよこにと腰をおろしてくる。 そして、あたしとアメリアを交互にみながらしばし沈黙し。 「どうやら。何か事情があるようですけど。私達に話しがあるんじゃないんですか?」 などと、そんな彼女に問いかけているアメリア。 まあ。 こういうこと。 すなわち、トラブルに関しては、アメリア。 すぐに勘が働くからねぇ。 自分が関わりたいがゆえにv そんなアメリアの言葉をうけ。 ペコリと頭を下げ。 「……申し送れました。わたしはカーシャ=ライドパークと申します。 隣にあるプラミズの村で小さな果樹園を営んで生計を立てているものです」 「……ライドパーク?」 …まさかな。 そんな彼女…すなわち、ライドの自己紹介をうけて、小さくつぶやいているゼル。 ま。 ゼルは彼女の夫。 すなわち、その人間のことを噂に聞いたことがあるからねぇ。 ガウリイも聞いたことがあるはずだけど、忘れてるし。 「あ。私はアメリアといいます。で、こっちがリナさんに、ガウリイさんにゼルガディスさん。 でもって、おまけでゼロスさんです」 そんなカーシャに自己紹介を改めてしているアメリア。 「…アメリアさん…おまけって……」 アメリアの今の説明に、ゼロスが何やらづふやいてるけど。 ひとまず無視。 そして、こちらも同じくそんなゼロスを完全に無視し、ぽつりと視線をテーブルの上にとおとし、 「……実はその……助けていただいた方々にこんなことを申し出るのは…… その…大変に図々しいことと重々承知してはいるのですが…… どうしても…お力をお貸しいただきたいことがあるのです……」 弱々しくもいってくるカーシャ。 「もしかして。さっきの人たちのことですか?」 問いかけるアメリアの台詞に、ゆっくりと首を横にふり、 「……私には……今年十五になる、マーリーンという娘がいます…… 手塩にかけて大事に育てたつもりだたのですが…… 退屈な暮らしに嫌気がさしたものか……悪い仲間たちと付き合うようになって…… ……とうとう、先日。家をでていってしましました……」 「家出か。」 そんなカーシャの言葉に、よこのテーブルでゼルがぽつりと見もふたもなくいってるけど。 「そんな。娘さんには話しをしたんですか?」 家出。 というのとは違うけど、なかなか戻ってこない姉のことを思いながら、 問いかけるアメリアの台詞に、 「それが……会うことができませんで……話し合う機会すらも得られないんです……」 いって再びうつむくカーシャ。 というか。 このカーシャの子供にも言い分はあるんだけど…ね。 ふふv 「つまり。あんたの娘さんが会ってくれない。というか。 その悪い仲間たちによって娘と会わせてもらえない。ということか」 カーシャの台詞に、一人納得したようにつぶやくゼルの台詞にこくりとうなづき、 「……そうなると。わたし一人の力では……どうしようもありません…… ですからその……つまり、アメリアさん達には、 わたしと娘が会話する機会をつくるお手伝いをしていただけないか……と。 もちろん。些少ながらお礼はさせていただきますので……」 いって、テーブルに頭をつけんばかりに頭を下げてくるカーシャ。 「わかりました!娘さんのことはこの私達、正義の仲良し四人組に任せてくださいっ! かならず、娘さんを悪の道からすくいだしてみせますっ!」 「…ちょっとまて。まだ俺たちは、手伝うとも……」 「きっと。娘さんは、その悪い仲間というひとたちにだまされているか。 もしくは、脅されているのにきまってますっ!」 ゼルの言葉を完全に無視して、自分の世界に浸りつつ、きっぱりはっきりいいきるアメリア。 「ま。別にいいんじゃない?どうせ急ぐ旅でもないし」 ひとまず、食後のハーブティーをのみつつ、にっこりというあたしに対し。 「あ。ありがとうございますっ…ありがとうございます……」 いって再び、カーシャは頭を深々と下げてくる。 というか。 そのほうが楽しいしね。 本当は、彼女一人でもどうとでもなる相手…なんだけど。 それはアメリア達には内緒v ふふ♪ 森に立ち込めているのは、草木の青い特有の匂い。 獣と鳥と、虫たちの鳴き声。 そして、草や木の葉の揺れる音。 「ごめんなさいね。あと少しですから」 足音を、かさりともたてずに草の中を歩みつつ、申し訳なさそうにいってくるカーシャ。 「…というか。それはいいんだが……」 そんなカーシャに何といっていいものか、口ごもりつつも何やらいっているゼル。 アメリアは別に何ともおもってないようだけど。 ちなみに、ゼルが戸惑っているのはカーシャの格好がゆえ。 カーシャの格好はといえば、黒と濃緑(ダークグリーン)、 明るい茶(ライトブラウン)のまだらにまじった服にその全身を包み、 顔を草の汁と墨とで緑と黒に染めていたりする。 その手には刃の銀色を墨で黒く塗りつぶした、肉厚、片刃の剣が一振り。 いうまでもなく、俗によくいわれている迷彩色もどき。 「…何か妙に似合ってるな……」 そんなカーシャをみながらも、ガリウイがぽつっとつぶやいていたりするけども。 何か、この格好で疲れたような笑みを浮かべられたら…… 『これ以上頃させないでよね。こっちもうんざりなんだから』 というように感じるのは…気のせいか? などとゼルが思っていたりするのはそれはそれ。 事実、そのとおりだし。 「あ。あのぉ?カーシャさん?その格好って…一体?面白い格好ですねぇ」 そんなカーシャににこやかに問いかけているゼロス。 そんなゼロスの問いに。 「――あらまあ」 多少もじもじしながらも。 「ちょっと似合ってなかったでしょうか?いえね。これ若いときに着ていた服なんですよ。 まだ着られるかどうか心配だったんですけれどね。 そんなにじろじろと見ないでくださいな。恥ずかしくなってしまいますよ」 かるく手を顔に当てつつも、そんなことをいっているカーシャ。 「・・・・・・・・・・・・」 若いときに着てた…って…… ゼルがそんなことを思いつつ、何やら無言になってるし。 そんなゼルの心情にはまったく気づかずに、にこやかに。 「けど。こうしてこの服を着ていると。思い出しますねぇ。」 ずんずん進もうとしているアメリアを手で制し、草にまぎれて張られていた、 細い糸を使ったとある罠を手際よく解除しながら、 「若い頃……わたしがまだ。『ラルティーグのハイエナ』とか呼ばれていたときのこと」 『……何か聞いたことがあるような……』 そうづふやく、カーシャの言葉に、異口同音に声を重ねているゼルとガウリイ。 まあ。 ガウリイもこれでも一応傭兵家業してたから。 そのあたりのことは聞いてるからねぇ。 ……きちんと覚えているかどうかはともかくとして。 ゼルはゼルでかつての経験上。 過去の話などもレゾに命じられていたとき、情報収集の最中に聞いていたりするし。 「?ライオンとかひょうじゃないんですか?」 そんなカーシャの台詞に、どこか違うところを疑問に感じ問いかけているアメリア。 「いやですねぇ。昔のことですよ。昔の」 アメリアの台詞に、ぱたぱたと手をふりながら立ち上がり。 そして、あたし達を促すべく、はたはた手を振ってくるカーシャ。 その動きをみて。 「……その動き……」 まさか…あの……伝説の…… とかゼルが思っていたりする。 ちなみに、今のカーシャの動きは。 知っている人は知っている。 一般的な、【トラップ解除。前進可能。】という合図。 人間というのは、面白いことに見た目である程度の第一印象をきめ。 その思い込みによって思考を惑わされたりする。 いい例が、あたしが普通の格好をして歩いていただけで言い寄ってくる男達が後を絶たない… というような。 「ですが。そういう経歴ならば。町で絡んできていたごろつきさんたち四人など。 どうにでもなったんじゃないんですか?手足の一本くらい消滅させても問題ないでしょうに」 そんなカーシャに対してにこやかに話しかけるゼロスに対し、 「え。ええ。たしかに。別にああいう人たちの手足がなくなろうが関係ないでしょうけど…… ですが、屋台をひっくりかえしただけの人にそこまでするのは、 少しかわいそうな気がしますから……」 「さらっとすごいことをいってるな。この人……」 カーシャの台詞に、ぽつりとゼルがつぶやいてるし。 くすっ。 「カーシャさんは、若いころから正義に目覚めていたんですね。 でも、そういう人の娘さんをかどわかすなんて言語道断ですっ!」 「…どこをどうとったらそ〜いう解釈になるんだ……」 きっぱりはっきり言い切るアメリアの台詞にため息まじりに再びづふやくゼル。 「ま。あそこで別に何をしようと。関係ないとおもうけどねぇ。あたしは」 「いえ。ですけど。あそこでもし、昔の自分に返ったりしたら、 それこそご近所付き合いも難しくなってしまいますから」 あたしの台詞に、笑みを浮かべていいきりながら。 そして。 「あ。みなさん。すみませんけどそろそろ頭を低くしてくださいな。そろそろ見えてきますので」 すでに幾度もやってきたことがあるがゆえに、あたし達にといってくるカーシャ。 「何かこの先に城のようなものがみえるなぁ」 カーシャの言葉につづいて、のほほんといっているガウリイ。 「…ガウリイさん。あいかわらずよく見えますね」 そんなガウリイに感心した声をだしているアメリア。 「ええ。昔の砦らしいんですけどね。今はネルローネ・ファミリーの本拠地になってるんですよ」 『……ネ!?』 さらっというカーシャの言葉に、思わず顔を見合わせて短く叫ぶアメリアとゼル。 ネルローネ・ファミリー。 このあたりではなぜか名を馳せている、一応巨大犯罪結社といわれている組織。 あたしからみれば、巨大でも何でもないんだけど。 「…もしかして。あんたの娘のつきあっている悪い仲間というのは……」 恐る恐るゼルがそんなカーシャに問い返してるけど。 「ええ。そこのかたたちです。…あら?もしかして、そういえばわたし。 まだそのことをあなたがたに申し上げていませんでしたわね。 いやだわ。わたしったら。うふふ」 そんな重要なことをそれで片付けられてもこまる(んですが)(だが)。 カーシャの台詞にまったく同じようなことを心でおもっているアメリアとゼル。 だがしかし。 「なるほど!何の穢れもない娘さんを悪の道に捉えるとは!まさに。 噂どおりの極悪非道な組織のようですね!これもきっと天のお導き! 私達正義の仲良し四人組に与えられた天命ですっ!」 逆に一人さらに張り切りだしているアメリアの姿が。 「…そういう問題か?というか……普通、そんなやつらに喧嘩吹っかけようとするのか?」 親というのもは、子供がからんだらよく無茶なことをする。 というのは知っているつもりだが…… そんなアメリアとは対照的にぶつぶつつぶやいているゼル。 くすっ。 「で?どうする?あの右側の塔のあたりに呪文でも叩き込む?」 にっこりと問いかけるあたしの台詞に。 「ええ。そうですわね。ここからみて右側の塔の下から二番目の窓に、 威力の高い火炎球(ファイアーボール)を叩き込んでいただけましたらいいのですけど。」 にこやかにさらっといってくるカーシャ。 そんなあたしたちの会話をききつつ、 「…ここからだとゴマ粒くらいの大きさにしかみえないぞ。 ……普通、できんとおもうぞ…そんな技術。……まあ、リナなら絶対に可能だろうが」 ゼルが何やらいってるけど、それはそれ。 「塔自体は、老朽化が激しくて、今は使われていないらしいんですけどね。 あそこの内部で火炎球(ファイアーボール)が炸裂すると、 塔が自重崩壊して本塔に崩れ落ちるはずなんですよね。 それで、わたしが集めた情報によりますと。その崩れ落ちる下のあたりに、 あちらの人たちの生活施設が密集しているはずらしいんですよ。食堂とか。 ちょうどこの時間に塔を崩せば、 あの人たちの戦力の六割がたは減らせるんじゃないかとおもうんですよ。 素敵なアイデアだとおもいません?」 「それはとても楽しそうなアイデアですねぇv」 にこやかに、さらっというカーシャの意見に同意しているゼロスだし。 「…ちょっとまて。その作戦だと。もしその下にあんたの娘がいたら危険なんじゃぁ…… というか。そもそもその情報はどこから……」 あたし達。 というか、あたしとゼロスならばやりかねない。 と思っているらしく、ゼルがあわてていってくる。 別にやってもどうってことないでしょうにねぇ。 それくらいv 「あらあら。心配してくださるんですね。でも大丈夫です。 情報は信頼できる情報屋さんからのものだし。 それによると、この時間。娘はあの区域にはいないはずですから」 「なら問題ないですね!さ!リナさん!さくっといきましょうっ!」 「ってまてぃっ!アメリア!お前まで賛同してどうするっ!」 「正義が守れればそれでよし。ですっ!」 「そ〜いう問題じゃないだろうがっ!」 「はいはい。二人とも。夫婦漫才しないの。とりあえず。あそこに炎を叩き込むから。 あとは、アメリアやゼルは、時々あちこちに攻撃呪文をしかけたり。 石人形を作り出して暴れさせてみたりとかすればいいとおもうわよ。 でもって、ゼロスは多少遊んでもいいわよ?」 何やら言い合っているアメリアとゼルの言葉をさえぎり、にこやかにいうあたしの言葉に。 「ゼロスのやつの遊びって…洒落にならなくないか?」 なぜか多少顔色を悪くしていってくるゼル。 「あら。別にどうってことないわよ。どうせ相手は悪人たちなんだし。」 そんなゼルに言い放ち。 そして。 ぽいっ。 軽く指の先に炎の球体をつくりだし、塔のほうにむけて投げ放つ。 と。 ごんっ! ごががっ! どすぅぅんっ! 何やら、爆発、崩壊といった音響が周囲にと響き渡り、 そして。 周囲に立ち込める、ちょっとした土煙。 その煙に紛れ、カーシャはすばやく行動を開始してこの場から立ち去っていたりする。 「それでは。僕もちょっとぱかりv」 あたしの許可がでたこともあり。 嬉々としながらも、ふいっとこの場から掻き消えているゼロスがいたりするけど。 ま。 ゼロスは放っておくとして…と。 とれと同時にあたりの地面を利用していくつかの石人形を作り出し、 それらもそのまま塔のあるほうにと移動させておく。 「さって。それじゃ、いきますかv」 なぜか未だに何やらいいあっているアメリアとゼルはそのままに。 ガウリイと二人、いまだに土煙がたっている方向にと進んでゆくことに。 「――何ものだ?」 天から降り注ぐ銀光の残像。 いうまでもなくそれらはあたし達のほうにたどり着くまえに霧散していたりするけども。 それをみてなぜか多少驚きながらも声をかけてきているのは、 一振りの長剣をもっているとある女性。 「あら。別に誰でもいいじゃない♪」 相手が誰だかわかっているがゆえに、わざと微笑みながら返事を返す。 そんなあたしの台詞に。 「目的は?」 などと警戒を崩さずに問いかけてくるこの女性。 実は、この女性こそがカーシャの娘だったりするんだけどv 「そういうあなたは何なんですか!?みたところまだ若い女の子のようですけど! 遅くはありません!今すぐに改心して悪の組織から足を洗うのですっ!」 少し遅れてついてきたアメリアが、そんな彼女に対してぴしっと指をつきつけて言い放つ。 くすっ。 「あら。アメリア。この子がカーシャの娘のマーリーンよ。マーリーン=ライドパーク♪」 そんなアメリアにひとまず説明するあたしの台詞に、 「…何者だ?なぜ…なぜ私の名前を?!」 なぜかこの程度のことであきらかに動揺してくるこのマーリーン。 「なるほど。たしかにこの姉ちゃんとあの人の気配似てるなぁ」 などとのんびりとそんなことをいっているガウリイ。 「…この子が…か?」 目の前にいる女剣士を目にして、ゼルが彼女を確認しつつもつぶやいてるし。 マーリーンの見た目は十五・六歳。 短くまとめている髪は黒。 そして。 「俺達は、カーシャという女性に頼まれたんだ。娘のあんたと話がしたいから手伝ってくれって」 ゼルが腕をくみつつも、マーリーンに向かっていったそのとたん。 がくっ。 がくがくっ。 がくがくがくがくっ! 「おかっ!おかっ!!?おかかかかかぁさまがきていらっさるのか!?ここにっ!?」 面白いまでにがくがくと全身を震わせつつもどもなりがら視線をさまよわせるマーリーン。 「?カーシャさんならきっと。そのあたりにいるとおもいますけど?」 そんなマーリーンの反応を多少疑問に思いつつも、丁寧に説明しているアメリア。 そんなゼルとアメリアの台詞をうけ、 「う…うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 面白いことに、手にもっていた剣をそのまま放り出し、草むらの上にとうずくまるマーリーン。 「?」 「…おい?」 そんな彼女の様子に首をかしげるアメリアに、戸惑いながらも問いかけているゼル。 「?なあ?リナ?何でこの姉ちゃん。こんなにおびえてるんだ?」 理解しておらず、あたしにのんびりときいてきているガウリイ。 「ああ。カーシャが来てるからよ」 とりあえず嘘ではない回答をガウリイにはしておくとして。 そんなあたしたちの会話をさえぎり、 「き…きさまらぁ!何でそんなことをしてくれたんだ!? にくいか!?そうか、そんなにわたしがにくいか!?ちくしょうっ!いっそ殺せ!今すぐにっ!」 面白いまでに泣き叫びながらもいってくるマーリーンの姿。 「?あの?いったい……」 反応がおもっていたのとは異なっているがゆえに、問いかけるアメリアの台詞に続き、 「?とりあえずおちつけ。いったい何だっていうんだ?」 この怯えようは…まさか…な…… あのカーシャがあの当人だ。 というわけではないだろうし。 などと思いつつも、アメリアに続き問いかけているゼル。 くすっ。 「何ってことをしてくれたのよっ!あなたたちっ!あなたたちはいいわよっ! お母様のことをしらないんだからっ!必死でお母様のもとをとびだして、 組織にかくまってもらっていた私の気もしらずっ!」 面白いまでに涙目になって叫ぶマーリーンの言葉に思わず笑みがもれる。 「かくまってもらっていた?それって……?」 戸惑いながら問いかけるアメリアの台詞に、 「またはじまるのよっ!あのお母様の手による教育の日々がっ! 動物とふれあう情操教育という名目で眼力だけでヒグマを退散させる訓練やら、 自然とのフレアイ。という題目で冬の山中十日間サバイバル訓練とかやらされる日々がっ!」 何やら泣き声でそんなことをいってくるこのマーリーン。 というか、その程度。 どうってことないでしょうにv 「わかるかっ!あんたらにそんな日々が続くというのがどういうことかっ!」 「というか。その程度、些細なことよねぇ」 「リナの側にいたらそんなの日常茶飯事だぞ?」 「まあ。ガウリイの言葉にはものすごく同意するがな」 「ですね」 さらっというあたしの台詞に、なぜかしみじみというガウリイ・ゼル・アメリアの三人。 「まあまあ。そうはいいますけどね。えっと、マーリーンさん。でしたっけ? 逃げてばかりでもどうにもなりませんよ?逆にそれは被害が拡大するのでは?」 うんうんとうなづいている三人とは対照的にそんこなとをいっているゼロスの姿。 「?ゼロスさん。やけに拡大する。というのを誇張してません?」 ゼロスのそんな台詞をうけて、アメリアがふと問いかける。 「リナさんとのがまさにそれ。ですからねぇ」 『なるほど』 ほほぉぉう。 「あんたたち、一度死んでみる?」 まあ、殺してもまた生き返らせればいいし。 もしくはしばらく性根を入れ替えるために、 死んだままで肉体のみを生かせておいて楽し…もとい、修行させてみる。 というのも手よねv 「「「「え…遠慮します……」」」 なぜかきっちりと、アメリア、ゼルガディス・ガウリイ・ゼロスの声が一致する。 そんな会話をしている最中。 「――いたぞ!」 「あそこだ!」 「殺れ!!」 何やら声がしてくるし。 みてみれば、崩れた建物のほうからこちらに向かってかけてくる組織の男達。 その数たったの五・六人程度。 「すいません。今はどうやら取り込み中のようなのでv」 にっこりとゼロスがいい錫杖をかるく一振りすると同時。 『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!』 何やら悲鳴らしきものが周囲にと響き渡る。 たかが足元から噴出したお湯に触れた程度で情けない…… 「…ゼロスさん。今何やったんですか?」 「いえ。別に。ただこの地下にあるちょっとしたお湯を表にだしただけですよ?」 「ちなみに、温度はどれくらいなんだ?」 「さあ?あ、でも触れれば人間程度なら瞬時にゆであがりますよv」 「「・・・・・・・・・・・」」 にこやかにいうゼロスの言葉になぜか無言になるアメリアとゼル。 そしてまた、 「んで?リナ?この姉ちゃんどうする気だ?」 別にいつものことだし。 そんなことを思いながらもあたしに聞いてくるガウリイ。 「あら♪面白そうだし♪カーシャからの自立を含めて協力する予定よv マーリーン。あなただってカーシャに怯えてくらす。というのは面倒でしょ? なら手っ取り早く力をつけて対等になればいいんだしv もしくは、カーシャさんのだす試練を乗り越えて認めさせればいいわけでv ねvそうよねvカーシャvv」 にこやかにいいながら、横手にある森の草木のほうにと視線をむける。 なぜかそれに気づいていたのは、あたしのほかはゼロスとガウリイだけのようだけど。 アメリア達にいたっては、そこに人の気配すら感じていなかったりするこの現状。 まったく。 普通わかるでしょうにねぇ。 アメリア達にも特訓ひつようかしらねv あたしの言葉に応じて茂みが動く。 正確にいうならば、茂みに擬態しているそれが。 ゆっくりとそれは立ち上がり、にこやかな笑みをうかべ、 「あら。さすがですわね。リナさん。わかっていましたか。 でも、そうですわね。たしかに。この子に対しては今まで甘やかしていましたし。 試練を与える。というのはいい手かもしれませんわね」 「って、…お…おか〜さま……」 にっこりと笑みを浮かべるそんなカーシャの表情になぜか凍り付いているマーリーン。 「あ…あの?話し合いはいいんですか?」 そんなカーシャの表情に多少固まりながらも、恐る恐る問いかけるアメリア。 「え?ああ。そうでしたわね。それじゃ、マーリーン」 「は…!はいっ!お母様!」 カーシャに呼びかけられて、直立不動となり固まっているマーリーンが何とも面白い。 「始めましょうかね。話し合いを」 いいながら、カーシャはにこやかに手にした剣をマーリーンにむけて構えなおす。 「って、ちょっとまてっ!」 そんなカーシャの姿をみて思わずまったをかけているゼル。 「何ですか?ゼルガディスさん?」 「『何ですか?』じゃないとおもうんだが?どうしていきなり『話し合い』で剣を構えるんだ?!」 そんなゼルの指摘に、少し驚いたかのようにカーシャは小さく息をのみ、 「…そう。そうよね。いきなり母さんの得意な剣で勝負。なんていうやり方がまちがっていたのよね」 「…そういう問題じゃないと思うんですけど……」 そんなカーシャの言葉に突っ込みをいれているアメリア。 「なるほど。エ…もとい、リナさんが首をつっこまれたわけ。よぉぉくわかりました……」 そんな様子をみながら、ぽそっとつぶやいているゼロス。 「ごめんなさいね。マーリーン。母さん。今やっとわかったわ。 自分の何が間違っていたのか。…じゃあ、あなたの好きな武器を選びなさい。それで勝負よ」 「あ…あのなぁ……。そもそも、会話せずになぜに戦う?」 リナが首をつっこんだわけ…今さらながらにわかったぞ…… そんなことを思いながら、コメカミに手をあててあきれたようにつぶやくゼル。 「え?ですけど。『親子の対話に言葉はいらない』といいますし……」 「そうそうv」 「「…それは、リナ(さん)と(あんた)カーシャさんのみの言い分かと……」」 カーシャの言葉に同意するあたしに、なぜか視線をむけて異口同音でいってくるアメリアとゼル。 まったく。 「あら?でも別に言葉とかかわさなくてもいいたいこととかはわかるんだしv 別にこういうのは力で解決うんぬん。というのでなくてたんなるスキンシップだしv 火山の火口の中に放り込んだりするのも楽し…もとい、ちょっとしたスキンシップだしね」 「あら。それいいですわね。是非ともこんど、マーリーンにも火山の中に……」 「…って、まていっっ!」 「…って、まってくださいっ!!」 「…というか、それ、普通の人間ならば絶対に死ぬぞ……」 にこやかにいうあたしの言葉に、ぽんっと手をうち同意してくるカーシャ。 そんなあたしたちに対してなぜか同時に突っ込みをいれてきているゼル・アメリア。 そしてガウリイの姿が。 「まあまあ。ひとまずは普通に言葉での話し合いをされて。それから。というのでどうですか? リナさんはともかく。死んだ人を生き返らせたりする。というのは滅多とできないですしねぇv」 さらっと何気ないようにゼロスがいってくるし。 「それもそうですわね。それじゃあ、まずは先に言葉での話し合いをして…からでいいかしら? マーリーンもそういうのがいいの?」 「そういうのがいいです。お母様。むしろ言葉だけのほうがありがたいです」 おもいっきり不満そうにいうカーシャに対して即答しているマーリーン。 「…仕方ないわねぇ……」 即答してきたマーリーンの言葉にため息まじりにつぶやく。 そんな会話をしている最中。 「何を悩んでいるのかは知らんが……」 何やら割り込んでくる声が一つ。 多少なぜか声に怒りが込められているけど。 「もう考える必要はないぞ」 振り向いたその先の茂みの外には、紳士然としたような身なりの男性。 その後ろにたかが数十人程度の剣を構えている男達の姿。 その姿をみて身構えているゼルガディスに、そして。 「あなたたち!さては悪人ですねっ!」 みたままのイメージでそう言い放ち、 「リナさんに酷い目にあわされないうちに改心してまっとうな道をあゆむんですっ!」 「あらvアメリアちゃんvどういう意味かしらねぇv」 「…リナさん。目が怖いですぅ……」 びしっと指をつきつけて男達に言い放つアメリアににっこりと微笑みかける。 「…ネルローネさんっ!」 その姿をみて叫んでいるマーリーン。 「マーリーンのお身内かな?」 ねちりとした声でそんなことをいってくる。 「お初にお目にかかる。私はクラマッド=ネルローネ。このファミリーを束ねるもの……」 まったく…… 「邪魔v」 ポシュv さってと♪ 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 なぜか無言になっているアメリア達はひとまずおいとくとして。 カーシャたちはといえば。 「でもねぇ。マーリーン。 身近に目標になる人がより成長できるんじゃあないか。って母さんはそう思うのよ」 ほっぺたに片手をあてて小首をかしげていうカーシャ。 「ほら。リナさんのお仲間さんたちをみてごらんなさい。 きっとリナさんっていうかたをみているから、 こうやって少々のことにも動じないようになってるんでしょうし」 言いながらカーシャが指差した先にはちょっとした虚無の空間が広がっていたりする。 何やらいちいちどうでもいいようなことを言ってくるようなので、 ちょぴっと男達がいる場所に虚無の塊をなげただけだ。 というのに。 「…あああ……また……」 「…たしか。あの空間って草木も一本も生えない…とかいいましたよね……」 「…というか…あれってたしか『あの』力だろう?…あっさりつかえるリナって……」 なぜかその空間をみて頭をかかえてうなっているゼロスに。 呆然としながらつぶやくアメリア。 そして、リナってやはりあの金色の王とのかかわり…絶対にあるような気がする… などと思っているゼルガディス。 ま、そう呼ばれているのはあたしそのものだし。 別に説明したらしたで面白くないから彼らが気づくまではいわないけどねv なぜかぽっかりと開いたちょっとしたクレーター。 そこから少し離れた場所にて会話しているこの母娘。 ちなみに、話が長くなりそーなのであたしとしては椅子を創造りだしてソレに座っていたりする。 アメリア達はそこいらにあるきりかぶにと腰かけて様子伺いしているようだけど。 「母さんがあれこれやらせたのも、みんなあなたのことを考えてるのことなのよ? きっといつか貴女にも謎の秘密結社に攫われて自力脱出したり。 偶然国家的秘密組織の存在を知って付けねらわれたりする……そんな日がやってくるのよ。 もしそうなっても、あわてたりしないように日ごろから訓練しなくちゃあ」 傍らではカーシャがマーリーンに至極もっともな説明を踏まえて話し合い。 「いえ…たぶん、そういう日はこないと思います。お母様」 「あら。何をいってるのよ。この子は。母さんがあなたくらいの年頃にはね。 小さいころ母さんをサラって育てた謎の組織を壊滅させて逃げ出したりる 素手でしとめたヒグマのお肉を食べて生き延びてたりしたのよ?」 硬直しながら答えるマーリーンににこやかに答えるカーシャ。 「…ずいぶん。カーシャさんって波乱万丈な生き方されてたんですね」 「というか。普通じゃないだろ……」 そんな会話を小耳にはさみ、ぽそぽそと会話しているアメアリとゼル。 ガウリイはといえば、話が長くなりそうなのでこくり、こくりと居眠りをはじめてるし。 いつものこことはいえ……ま、別にいいけどね。 「そ…そんな過去があったんですか!?お母様!?初耳なんですけど!?」 カーシャの言葉に面白いまでに驚いて引きながら叫ぶマーリーンに対し笑みを浮べ、 「ええ。よくあることだからとりたて話したこともなかったけど。 ともかく。人によって早いか遅いかの違いはあるけど、そういうことって必ずあるものなのよ。 たぶんそれがよくいう、『大人への階段』というものだって思うのよ。 リナさん達にもあったでしょう?そういう時期が」 「うちはよく昔から暗殺者とか出入りしてましたけど」 「…お前の家は事情が事情だろうが…って、昔からなのか?」 さらっというアメリアに思わずつっこみをいれているゼル。 「母さんを殺したのも暗殺者ですし。…その暗殺者は姉さんが倒したらしいですけど… 私はまだ小さかったからあまり覚えていないんですけど……」 そういうアメリアの表情は暗い。 「俺のほうは曽祖父があれだったからな……」 レゾのことを思い浮かべて顔をしかめていっているゼル。 「ほらごらんなさい。どこの人もそのようなことがあるのよ。マーリーン」 「いや、ゼルガディスさんやアメリアさんは特別だとおもうんですけどねぇv」 にこやかにマーリーンに話しかけるカーシャの台詞に、にこにこといっているゼロス。 「まあ。あたしのほうはそれらをやるほうだしv」 「…リナさん。それ洒落になってません。いくら冗談でも……」 「いやまて。アメリア。リナのことだ。どうも冗談じゃないような気がするぞ?」 いいながらため息をひとつつき、 「と…とにかく。だ。あんたは娘のことを心配している。一方娘であるマーリーンのほうは、 自分ひとりで大丈夫だからあまりかまわないでほしい。と感じているようだし。 もし今、むりに彼女を連れ戻したとしてもまた家出するだろうしな」 「そうなると。またカーシャさんがマーリーンさんを連れ戻しにでてくる。 堂々巡りですね。ここは一つ、双方が納得する方法を二人で話し合ってみればどうでしょう?」 なにやらそんなことをいってくるゼルとアメリア。 「あら。それじゃ、テストっていうのはどうかしらv」 そんなあたしの意見に、 『テスト!?』 母娘の声が綺麗に重なる。 「そ。用はマーリーンが一人前なのか。そうでないのかがはっきりすればいいわけだし。 方法については今アメリア達がいったようにじっくりと二人で話し合えばいいわけだし。 二人が納得するまで話し合う、というのも一つの手だとおもうけどv」 その話し合いをしてもらったほうがあたしとしては楽しくなるしv 「なるほど」 「そういうことでしたら納得いきますわ」 そんなあたしたちの意見に二人してうなづくマーリーンとカーシャ。 「ま、そういうわけで後はがんばってねv」 「って、リナさん?このままほっとくんですか?この二人?」 「あら♪なるようになるわよvこれは母娘の問題だしねv」 「たしかに。依頼の内容は娘を連れ戻して欲しい。ということだったしな」 これ以上この母娘に関わっていたら…何かとんでもないことになるような気がする。 そんなことを思いながらもあたしの言葉にうなづくゼル。 アメリアのみが多少不服そうだけど。 「たしかに。リナさんのおっしゃるとおりです。 ありがとうございます。娘と再会させていただいて。些少ですがこれはお礼の礼金です」 「そんなものはいりませんっ!正義の前には金額など必要はありませんからっ!」 革袋を手渡そうとしてくるカーシャにきっぱりとそんなことをいっているアメリア。 ま、お金が必要ならば、ゼロスのやつにオリハルコンとかとらせてくればいいだけだしねv そんな会話をかわしつつ、ひとまずあたし達はその場をあとにすることに。 さってと♪ これで今後がたのしくなるわねv ふふふ♪ さくさく、シャキシャキ新鮮の野菜サラダ。 じっくりと煮込んでいるらしきオニオンスープ。 数種類のスパイスのかかったポークリブ。 注文した品々が次々にテーブルにと運ばれてくる。 「しかし。あのカーシャさんってかわってましたね」 「あのマーリーン、という子も気の毒ではあるだろうな」 そんな会話をしなからがらも料理にと手をつけているアメリアとゼル。 くすっ。 「危ないっ!」 どがしゃぁぁっ!! そんな二人は横から唐突にタックルをくらい情けないにもそのまま椅子ごとひっくり返る。 とりあえず料理がダメになってはもったいないのでお皿ごと空中に浮ばせているので、 アメリアとゼル以外には被害はなし。 ちなみに、あたしも巻き込まれないようにふわふわと空中に浮んでいる今現在。 「おやおやv」 ゼロスはゼロスでのんびりと椅子に座りながらその様子を眺めてにこやかにいってるし。 「あれ?さっきの子じゃないか。どうしたんだ〜?」 そしてまた、机ごとひっくりかえった。 というのに動じることなくアメリアたちにタックルをしかけてきた人物に話しかけているガウリイ。 いうまでもなく、アメリアたちにタックルをしてきたのは先ほどのマーリーン。 「ふう。間一髪。危ないところだった……」 そんなあたし達の声は何のその。 ちらり、ととある場所に視線をうつしてふうっ、と息をついているマーリーン。 店の壁。 さきほどまでアメリアとゼルが座っていた真後ろの壁。 そこに手の平ほどの長さをした針がそれぞれ一本づつ、 ぴったりアメリアとゼルが座っていた位置どおりに突き刺さっていたりする。 「だが、油断するな。まだお母様は近くにいるはずだ」 「って!?どういうことなんですか!?」 「…どういうことだ?」 アメリアはマーリーンの方にむかって。 そしてまたゼルはあたしのほうにむかって顔を上げて問いかけてくる。 ふわっ。 ひとまずそのまま浮んでいた体を床にと下ろし、そのまま軽く指を鳴らす。 それと同時。 マーリーンによってひっくり返された机や椅子が瞬時に元通りにと再生される。 それをみて、なぜか額に汗を一筋ながしつつ、 「…な、なるほど。お母様がいわれてたのも一理あるのかも……」 などとつぶやいているマーリーン。 「それはそうとして。どういうことなんですか!?というかカーシャさんがどうかしたんですか?」 「…ものすっごくいやな予感が俺としてはするんだが?」 マーリーンに問い詰めているアメリアに、つぶやくようにいっているゼル。 「え?ああ。ただ、マーリンとの話し合いで、アメリアとゼル。 二人をマーリーンが三日間守りきることができたら一人前として認める。 って話し合いの末に条件がだされただけよvね?マーリーンv」 にこやかに説明するあたしの台詞に、 「…私はまだ説明してないが?…ともかく。今リナさんが言われたとおりだ」 「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」 さらっというあたしとマーリーンの台詞になぜか二人して顔を見合わせ思わず無言となり、 そして。 「ええ!?ということは私達、あのカーシャさんに狙われているっ。てことですか!?なぜ!?」 「…どうりでリナがあっさりとさっき退いたわけだ……」 何やら叫ぶ二人に対し、 「お母様は別にお前たちに対して殺意を抱いているわけではないはずだ」 いともあっさりと言い放つマーリーン。 「というか。あんなのが普通刺さったら…死にますよね……」 「こ…この俺に気配もかんじさせなかったとは…ガウリイ。貴様はきづいてたんじゃないのか?」 「いや、動こうとしたらリナにとめられてたし」 「…やっぱしか」 何やらほのぼのとした会話をしているゼルとガウリイ。 一方で。 「というか。こちらの断りもなく一方的にきめたんですか?」 「相談したらきっと拒否されるのはみえてるからな。やもなく」 「「や…やもなく…って……」」 アメリアの問いにさらっと答えるマーリーンに面白いことにゼロスとアメリアの声が重なる。 「それはそうとして。どうしてアメリアさんとゼルガディスさんなんですか?」 どうやら多少興味があるらしくにこやかに問いかけているゼロスだけど。 「ああ。そのことでしたら。先にお母様のほうからは私がターゲットになってやりすごす。 という意見はでたんですけど。それはもう、それとして。 その場合、いろんな感情で実力が正確に発揮できなくなる。 とどうにか言いくるめ…もとい、説得しまして。 それで、別人の護衛という形が望ましいのでは?例えばリナさんとか。 という私の意見が採用されたはしたんですけど。お母様曰く、 『ゼルガディスさんとアメリアさんのほうがいい』という意見でお二人になったわけで」 そういえば、カーシャはあたしにちょっかいかけようとした輩が多少、 いなきり大地から吹き上げたマグマなどに飲み込まれたりしてる。 というのを知ってるからねぇ。 彼女の情報網で。 それに、アメリアとゼルのほうがどちらに転んでも彼女を確かにいろんな意味で頑張らせるはずだし。 「って、何で私とゼルガディスさんのほうがいいんですか!?」 「さあ?私にきかれても……」 アメリアの台詞に戸惑いを隠せないマーリーン。 「あら。簡単じゃないの?一応ゼルは白のゼルガディスとして、その筋では有名だし。 アメリアはアメリアで家柄的にいろいろと…ね♪ 暗殺に失敗しても、成功してもどちらに転んでも一応は名前が売れるしv」 「って、そういう意味ですかっ!?」 「……リナ?もしかしてとはおもうが…あのカーシャって…あの『カーシャ』…なのか?」 面白いまでに叫ぶアメリアに、そして恐る恐るなぜか聞いてきているゼル。 「そうだけど?」 「って、やっぱりかっ!ってお前しってたなっ!?」 「当然v」 「・・・・・・・・・・・・」 あ、だまったv 「ま、いいじゃないv若いころの苦労はかってでもしろ。ってことわざにあることだしv」 にこやかにいうあたしの台詞に、 「リナといたらいつも苦労じ…いや、何でもないです。はい」 ぽそっと何やら言いかけているガウリイだけど、すぐさま黙っていたりする。 「まあまあ。とりあえず三日間だけの辛抱ですから。お二人とも、協力してくださいね?」 「…うう。何でこうなるんですかぁ!?カーシャさんを説得…」 「あのお母様は一度きめたら絶対に人の意見はきかないぞ?」 「……やっかいなことになったな……ふぅ……」 にこやかにまったく悪びれた様子もなく二人に言い放つマーリーンに対して、 なぜかアメリアが泣き言のようなことをいい。 ゼルはゼルであのカーシャが『誰』かあたしの台詞で気づいて盛大にため息をついていたりする。 「さってと♪楽しくなってきたわねv」 「…って、リナさんっ!絶対に知っててあの場を離れたでしょう!?そうでしょう!?」 「そうだけど?」 「いうな。アメリア。リナに何をいっても無駄だ……」 しばしそんな会話をかわしつつ。 ひとまずあたし達は今後の対策を話し合うことに。 「ふわぁぁぁ……」 「アメリアさん。盛大なあくびですねぇ」 街中を歩きながらあくびをするアメリアににこやかに話しかけるゼロス。 「昨夜はカーシャさんのことを考えてたら少しばかり夜更かししてしまいましたので」 てへっと笑いながらいうアメリアに、 「必要最低限の防壁などは張っておいて寝る。というのは常識だぞ?アメリア?」 「まあ、アメリアは一度ねたら中々おきないからねぇ」 そんなほのぼのとした会話をしているあたし達。 「大丈夫ですよ。アメリアさん。あなたたちは私が守っているんですし。 まあゼルガディスさんはその体なのですぐに殺される。ということもないでしょうし。 それに眠っている間なら苦しまずにすみますよ?」 にこやかに、そんな二人にと話しかけているのは当事者であるマーリーン。 そんなあたし達の会話にはまったく気にも留めず、通りには人があふれている。 はしゃいで走っている子供たちの姿も多少みうけられているほのぼのとした日常風景。 道の両脇にたった露店には様々な品物が並んでいる。 小物に肉にオレンジに、野菜に服に装飾品。 「――おや」 「…ちっ!」 カンキンキンっ! ゼロスがそれに気づいて面白そうな声をだし。 ゼルもまたそれに気づき、ガウリイと剣を抜き放ったのが同時。 オレンジの屋台から数本の槍が突き出してこちらにと向かってきていたりする。 それらをガウリイとゼルが剣にてなぎ払ったのだが。 『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』 『うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ?!』 なぜかこの程度のことで周囲にいた通行人たちから沸き起こる悲鳴の数々。 「…って、だ…大丈夫ですか!?」 一瞬何がおこったのか理解できずに戸惑いながら、はっと我にもどって問いかけてくるマーリーン。 「というか。気づいてなかったの?マーリーン?あの屋台、表に誰もいなかったし」 「そういえば。マーリーンさん、以前オレンジの屋台開いてましたよね……」 あからさまに判りそうなものなのに。 いるはずの店番の売り子もいなければ屋台の後ろに誰もおらず。 ただただオレンジの屋台がそこにあるだけ。 という状況だったというのに。 しかも気配からしてもその屋台の中に人が隠れている。 というのが丸判りだった、というのに。 そんなあたし達の会話は何のその。 「…けど、よかった…本当に……」 マノーリーンは額にじっとり浮んでいる脂汗を拭きながら、 「一瞬。これでお母様の特訓をうけなければならないかとおもったが……」 「というか。そういう問題じゃないだろうが?…とりあえず。 どうにかあのカーシャに会ってこんなのはやめてもらったほうがいいのは事実だな……」 自分ひとりならばまだしも。 アメリアまで巻き込んでるし。 万が一のことがあれば国際問題確実。 そんなことを思いながらもつぶやくようにいっているゼル。 カーシャはそれもわかってて、あえてアメリアも、と指定してるんだけどねv そういえば、まだマーリーンはアメリアのフルネーム、知らないしねぇ。 面白いからあたしも教えてないけどv 「って…あの?マーリーンさん?あのカーシャさんって何をかんがえてるんですか? いくらマーリーンさんの独り立ちの訓練、とはいえ…これってどうみても……」 本当の暗殺者とかの攻撃に似てるんですけど…… 「お母様はやるときにはやるからな。訓練。といっても本気でくるだろう。 まあ、たぶん。二人が万が一死んだりしてもそれは私の力がなかったせい。 ですませるだろうな。私はそしてお母様のもう特訓をウケルハメに……」 「そうじゃなくて!ですね。まずは。きちんとカーシャさんと話し合いをする。 というのはできないんですか!?」 「あの〜?どうでもいいですけど。こんなところで騒いでいたら、みなさん。怯えてますよ?」 あからさまに狙われていたのはあたしたち一行であるのは明白。 さらにいうならば、繰り出されてきた槍は剣に叩き落された状態で地面に転がっている。 面白いまでに遠巻きにあたし達をみている街の人々。 『……あ』 ゼロスのにこやかに指摘にその事実にようやく気づき、小さく声をあげているアメリアたち。 まったく。 まだまだよねv とりあえず、未だにざわめいている通行人たちをそのままに、あたし達はその場を後にしてゆく。 「も、疲れました……」 「ガウリイのやつがいなかったら絶対に俺たち死んでたな……」 何やらものすっごく情けないことをいっているアメリアとゼル。 「そうか?気配わからないゼルたちのほうがオレ的には不思議なんだけど?」 きょとん。 としながらも、注文したステーキをきこきこときっては口にと運んでいるガウリイ。 街の片隅にとあるちょっとした食堂。 なぜか疲れたようにといっているアメリアとゼル。 たかが、朝からこの昼過ぎにいたるまで、カーシャの試練が百七十二度ほどあった。 というだけなのに。 ゼルも神経を尖らせているものの、やはりほとんどの回数が気配を捉えそこね。 繰り出されてくる物理的攻撃はことごとくガウリイの勘でどうにかなっていたりする。 ちなみに、ときどき呪文攻撃らしきものもあったりするけど。 それらはすでにゼルたちはなれているので何事も問題ないし。 「マーリーンさん。どうにかしてもう一度話し合う。というのはできないんですか?お母さんと?」 ダメもとでマーリーンにと意見するアメリアの台詞に、 「それは無理だ。一度きめたことを覆しでもしたら。それこそ。 『やっぱりまだまだ独り立ちは無理ね』とかいわれて私は再びお母様の訓練を受けるハメになるだろう」 「というか。無関係な俺たちを巻き込んでいる時点で独り立ち云々、というのは無理とおもうが?」 きっぱりと言い切るマーリーンにため息まじりにつぶやくゼル。 「でも、僕としては面白いから別にこのままでもいいとおもいますよ?」 アメリアさんとゼルガディスさんのものすごくおいしい負の感情が喰べられますし。 こんなことは滅多とありませんしね。 アメリア達の会話を手にしたミルクを飲みながらにこやかにいっているゼロス。 「ま。今日が終わればあと二日だしv二人ともこの程度のことは成し遂げないとv」 今回、あたしは完全にほぼ傍観する予定だしv 「リナさんにとってはたしかに。『この程度』でしょうけど……」 「とりあえず…だ。相手はあのカーシャだ。…宿の中でも油断は禁物だな。 ひとまず、アメリア。お前はリナと同室で寝たほうがいいだろう。 俺はガウリイと同室にする。あとは俺たちの部屋の上下の部屋を借りて……」 カーシャをどうにかやりすごすために、面白いまでに計画を練りながら言ってくるゼル。 「って!?ゼルガディスさん!?僕は?!」 「きさまは別に宿に部屋をとる必要はないだろうが?」 「あら。ゼロス。必要だとおもえば自腹でねv」 「って、いつも代金は僕がはらっ……」 ぐしゃ。 何かつぶれたような音がしたけど、とりあえず関係ないし。 ゼルガディスの作戦はいたって単純。 まずは、外に面した部屋と、その横の部屋。 外側には上れるような木がない日当たりが悪い部屋。 即ち、崖に面している部屋を一つとり、その部屋にあたしとアメリアが泊まり、 そしてその横にゼルガディスとガウリイ。 ちなみに、あたし達の部屋の下の部屋にひとまずゼロスが部屋を借り、 ゼルガディスとガウリイの隣の部屋と、その下の部屋は無人でひとまず借り受ける。 というもの。 天井裏うんぬん…という意見も出そうではあるが、そこはそれ。 この崖に面している宿屋の特徴は天井裏がない。 ということ。 すなわち、すべてがレンガ作りであるがゆえに、少々の攻撃ではびくともしない。 まあ、あたしは簡単にこの程度は壊せるけどv ちなみに、この建物、ある種の呪がかけられており、 攻撃魔法など、というものは壁が反射するようにつくられていたりする。 つまりは一種の防火設備をかねていたりする。 そのあたりの知識はかつての経験から持っているがゆえのゼルの判断。 でも、ゼル♪ あのカーシャにはそんな小手先の技は通用しないわよv とりあえず、ひとまずあたしたちはゼルの意見もあり。 今日のところは、崖の側の宿屋にて休むことに…… 「……しかし…本当に大丈夫なのか?これで?」 何やらびくびくしながらもいってくるマーリーン。 ちなみに、マーリーンはあたしとアメリアが泊まる部屋。 つまりは同じ部屋にて眠ることにしてるけど。 何しろ宿屋などにあるベットとかってあまり寝心地とかよくないからねぇ。 それゆえに、 部屋にはいり簡単に自分用のベットを創造りだしてそこで寝ることにしているあたしだけど。 ゆえに、あまったベットの一つをマーリーンに提供している今現在。 「マーリーンさん。リナさんのこんな程度でびくついてたらこの先やっていかれませんよ?」 マーリーンがびくついているのは、カーシャのこともあるにしろ。 あたしが指を軽くならしただけでベットを出現させたのにかなり驚いているかららしい。 まったく。 たかがこの程度で驚いてほんっと、どうするのかしらねぇ。 「アメリアちゃん?どういう意味かしらね?ひとまず。大丈夫。ということはないわよ? 現にゼルたちのほうでは面白いことになってるしv」 「「……え?」」 にっこりというあたしの言葉になぜか二人して顔を見合わせるアメリアとマーリーン。 あたしが説明するまでもないけどねv 二人が顔を見合わせたのとほぼ同時。 ドスッ!! 鈍い音が隣室のほうから聞こえてくる。 そして、 「……なっ!?」 何やら叫んでいるゼルの声。 「何かあったんでしょうか!?」 「まさ…か!?」 その尋常ではなさそうなゼルの声を耳にしてそのまま部屋から出てゆく二人の姿。 まったく…隠れてるのに気づきなさいよねv くすっv バタン! 隣室に駆け込んだアメリアとマーリーンが目にしたのは、 黒い刃がマットレスを突き破り貫通して二つに割れている様子。 そしてまた、壁際ににこやかにたっている全身くろづくめの人物が一人。 手にした刀身はもとより、顔までもご丁寧に墨で黒く塗りつぶしていたりする。 「って…カーシャさん!?」 「お…お母様!?ど…どうして!?」 その姿をみて驚きの声をあげているアメリアとマーリーン。 そんな二人とは対照的に、 「あら。マーリーン。それにアメリアさん。こんにちわ。 いえね。さすがにあの白のゼルガディスさんのことだけはありますし。 どう考えても場数を踏んでいらっしゃるでしょう? 先にリナさん達の部屋にもいこうとしたんですけどなぜか息苦しくなりまして、 それゆえに先にゼルガディスさんのほうを仕留めようとおもいまして」 にこやかに笑みを崩さぬまま、 「おそらく。昼間の数々の仕留めそこないをうけて、この宿にくるのはわかってましたし。 なので先に部屋に忍び込んでずっとまってたんですよ」 「…何か違和感感じてベットにははいらなかったんだが……」 にこやかにいうカーシャとは対象てきに、疲れたようにいっているゼル。 「いや。オレは何か女の人がベットの下で寝てるし、かわった趣味だな〜。っておもったけど」 「だから!気づいてるなら先にいえっ!おまえはっ!!」 何やらほのぼのとした会話をしているゼルとガウリイ。 「おやおや。何か随分と楽しそうなことになってますねぇv」 ふわふわふわ。 ふわふわと窓の外。 つまりは道側のほうの窓の外にと浮んで窓の外から言っているゼロス。 何か楽しそうなことがおこっているみたいなので、下からふわりと上がってきたようだけど。 別にそんなことしなくても、移動してくれば早いでしょうに…… 「とにかく。これで決着をつけさせていただきますわね」 いいつつもその視線をアメリアに向ける。 「アメリア!外に逃げろっ!」 「はいっ!」 ガウリイ達がほのぼのとした会話をしている間にすでにカーシャはあたしたちの後ろ。 即ち、出入り口でもある扉の前にと立ちふさがっており、進路をふさいでいる。 まあ、あたしも面白いのでほっといた、というのもあるにしろ。 ゼルにいわれて、そのまま三階の窓からそのまま外にむかって、 「とうっ!」 呪文も使わずにいつものようにと飛び降りるアメリア。 ヒュッ! それと同時、カーシャの放った短剣数本がそんなアメリアが降りた窓に向かって放たれる。 カーシャの技の一つ短剣の曲芸、【自在の円舞】。 つまりは、窓まではまっすぐに飛ぶものの、そのまま垂直にとムキを変えて地面に向かって落ちてゆく。 多少、短剣に気を込めることによって自在にその方向性を操る技。 実際はこんなのは技とも何もいえないけど。 なぜかこの程度でこの世界、【技】として通用しているのが面白い。 「あらあら……」 相手が相手である。 ならば先手必勝とばかり、 「氷結弾(フリーズブリット)!!」 ゼルの放った蒼く輝く光球がカーシャの足元にと着弾し、 そのまま普通ならぱカーシャを飲み込んで氷の彫像にと変化させるであろうが。 それを何なくふわりと飛び上がり、そのまま天上にて体制を整え、くるりと向きを変えて、 再び床にと降り立つカーシャ。 そしてそのまま。 「ひとまずはアメリアさんが先ですわね」 いうなり、カーシャもまたそのままアメリアを追いかけるようにと三階の窓から飛び降りる。 「ってまずいっ!」 そんなカーシャの姿をみてこちらもまたあわてて窓から飛び降りているゼルの姿。 「?何かみんなせちがらいな〜」 「……あんたはどうじない人だな……」 そんな光景をみながらのほほんといっているガウリイに対し、 あきれたようにいっているマーリーン。 「ま。ガウリイだし。ひとまず、あたし達もおりましょv」 とりあえず、アメリアとゼルが外にでたこともあり。 あたし達もまた、そのままのんびりと宿の階段をきちんと降りて外にでてゆく。 ギィィン! 周囲に響き渡るちょっとした金属音。 金属音とともに、地面にカランと落ちるカーシャのもっていた刀身の刃。 そしてまた。 「って、何をしてるんだい?こんなところで?」 のほほんとそんなカーシャにと話しかけている、とある男性。 どうでもいいけどそのはやした無精ひげくらいは剃りなさいよね…… 建物から飛び降りざまにアメリアに向かって放たれたカーシャの攻撃は、 いつものアメリアの着地失敗であっさりと失敗におわっているものの。 着地失敗しているアメリアにとカーシャが繰り出した刃はといえば、 その直後にカーシャの横にたった男性がひとまずそんなカーシャの刀身をへし折っていたりする。 そんな男性にようやくきづき、目をぱちくりさせ、 「おや。お父さん。お帰りですか?」 にこやかにそんなことをいっているカーシャ。 「……った〜…って、誰ですか?」 どうにかこうにか、建物から飛び降りたときの着地失敗の体制から起き上がり、 そこにカーシャ以外に人がいるのにきづいてきょとん、とした声をだしているアメリア。 「……どうやら、あのカーシャの夫らしいな……しかし…マーリーンのやつ…気の毒というか……」 父親に多少面識があるがゆえに、ため息とともにそんなことをいっているゼル。 そういえば、ゼルはレゾの元で働いていたときに彼と多少なりともかかわりもってるしねぇ。 それゆえにかなり同情の視線をマーリーンにむけていたりするし。 「お…お父様……」 呆然とつぶやくマーリーンとは裏腹に、 「あらあなた。随分と出張にしては早かったんですねぇ」 にこやかに、折れた剣をしまいながらも話しかけているカーシャ。 「ああ。ゲリラたちがあんまりにもたいしたことがなかったもんでな」 いいながら、自身も持っていたカーシャの剣を折った短剣をしまいつつ、 「けれど。かえってみればお前たちが家にいないし。探してようやくみつけたら、 何やらお前がそこの娘さんに攻撃をしかけようとしてるし。 その娘さんってあのドワーフ殿下の娘さんだろ?」 ちらり、とアメリアをみただけでさらっといっているのはカーシャの夫であり、 そしてまた、マーリーンの父親でもある人物。 ちなみに、彼の裏の世界での通り名が『新月のグール』と呼ばれていたりするのは知る人ぞしる事実。 「ええ。そうですわ。実はマーリーンがまた家出をしちゃいましてね。 連れ戻すのに力をこの方たちに貸してもらったんですけれど。 『マーリーンが一人前かどうかをテストしてあげなさい』っておっしゃられましてね。 で、今はその護衛兼任務テストに協力してもらっているところなんですよ」 「というか。俺たちは『テストに協力する』とはまったくいってないんだが……」 そんな夫婦の会話にぽそっと突っ込みをいれているゼル。 「あらあら。そうなんですか?マーリーンは、 『リナさん達なら必ず協力してくれる。自分が説得してみせる。ダメだったらダメだという』 なんていって、その後何もいってこなかったから、 てっきり許可してくださったのかとおもったんですけど」 そんなゼルの台詞に、目を丸くしてにこやかにいうカーシャに、 「う〜ん。マーリーンは相変わらずのうっかりさんだなぁ」 苦笑を浮かべてにこやかにいっているカーシャの夫であるフェーン。 「まあ、忘れる。というのはよくあることだよな。うん」 「それはお前だけだ」 「ですよ。それはガウリイさんならありえるかもしれませんけど」 うんうんうなづくガウリイに、突っ込みをいれているゼルとアメリア。 ま、ガウリイは自分に関係ないことはあまり覚える気がないし。 「あの?それより。 テストの時にそういう大事なことを言い忘れるって、多少問題があるとおもうんですけど」 私なんか重要なことを忘れてたりしたら国交に関わることもありえるので、 なるべく重要なことは忘れてても時間がたてば行うことにしてますし。 自分の立場とあわせながらも意見するアメリアに、 「まあ。たしかに。そういうのを忘れている。というのはわざとでないかぎり、 独り立ちするのにいろいろと問題があるでしょうねv」 結構楽しませてもらいましたし。 それにエル様もここで止めない。 ということは今回のコレはこのあたりでひとまずおいておく。 ということでしょうし。 そんなことを思いながらもにこやかに言っているゼロス。 「おや?例の謎の神官さんもリナさん達とご一緒でしたか」 「確かフェーンさんでしたよね。そのセツはどうもv」 「いえいえ。しかしあれから十数ねんたつのにかわってませんねぇ」 「いやぁ。それほどでもv」 そんなゼロスににこやかに話しかけているフェーン。 「って、ゼロスさん?お知り合いなんですか?」 和やかにフェーンと話しているゼロスに対して問いかけるアメリアに対し、 「ええ。以前彼が潜入していたとある組織に写本がありましてvそのときにちょっとv」 「なるほど。そういえばゼロスさん。昔も今もお役所仕事でしたっけ?」 「アメリアさぁぁん……」 ほのぼのとした会話はまったく耳に入っておらず、 「お…お父様?ど…どうしてここに?」 ようやく我にと戻り硬直しつつフェーンにと問いかける。 声が完全に裏返っているのが面白いv そんなマーリーンに向かい、カーシャはにこやかに笑みを浮かべたまま、 「そんなことより。マーリーン?あなた、このゼルガディスさん達はテストの相手を引き受けてくれる。 とはおっしゃってくれなかったらしいじゃないの」 そういうカーシャの台詞に、ぴしっと再び石化し、 「……え゛…いや…それは……でも、リナさんは引き受けてくれる。みたいなことをいってたし……」 「あら?リナさんなら人の考えてることは何でもわかる。というのは常識ですわよ? それに確か死人をも生き返らせたり、消滅した街を瞬時に再生させたり。 とかいろいろ。まさかそんなことすらも知らない。というんじゃないでしょうね?」 そういうカーシャの笑みがとても面白い。 「ま。リナさんですしねぇ」 「だな。」 「ですね」 「やっぱ有名なのか……」 そんなカーシャの台詞をきき、うんうんうなづいているアメリア、ゼル、ゼロス。 そしてガウリイにいたってはしみじみと何やらいってるし。 ほほぉぅ。 後でちょっぴりおしお…もとい、話し合いしておくとしますかねv 笑みを崩さぬまま、 「そんなんじゃ、母さん。まだまだあなたのことを一人前だなんて認められませんからね。 テストは中止よ。帰ってしっかりと今まで以上に鍛えますからね」 「え…ええ!?ちょ…ちょっ!?お母様!?」 にこやかにいうカーシャの声に面白いまでにあわてて叫ぶマーリーン。 ほんっと、みてて楽しいわよね。 こういうのってv 母親にがしっと手をつかまれ、救いを求めるように父親のほうに視線を向けるものの、 「あははは。ダメじゃないか。マーリーン。作戦遂行途中の情報伝達はしっかりとしておかないと。 そうだ。今まではお前の教育は母さんにまかせっぱなしだったけど。 今度からは父さんも手伝ってやろう。いっとくけど父さんは母さんほど甘くないからな。はははは」 彼もまたマーリーンに歩み寄り、カーシャが掴んでいるほうの手とは逆のほうの片腕をつかむ。 そんなほほえましい親子の姿をしばし唖然として眺めているアメリア達。 マーリーンはといえばなぜか両親に両手を掴まれて完全に固まってるし。 マーリーンの腕をそのまま掴んだまま、カーシャはあたし達の方に向き直り軽く会釈をし、 「それでは。みなさん。これで失礼いたしますわね。 いろいろとご迷惑をかけまして、ほんとうにすいませんでした」 それだけいって、ずるずるとマーリーンをひこずりながら立ち去ってゆく親子の姿。 「けど、これからはもっとかんばららなくちゃね。マーリーン。 母さん、今までちょっと甘やかしすぎたから、これからはびしびしいくわよ。 お父さんといっしょに」 「はっはっはっ。いいかい。マーリーン。父さんがお前くらいの年頃にはな。 攻めてくる一個中隊に一人で夜襲をしかけて隊長クラスみんなの寝首をかいたりしたんだぞ。 よく新月のグール。なんて呼ばれてからかわれたもんだ」 ほのぼのとした親子の会話が済んだ夜風にのって周囲にと響き渡る。 そんな親子三人をしばし眺めながら、 「…マーリーンさん…大丈夫でしょうか?」 「あいつもやっかいな両親をもったもんだな。しかしこちらにとばっちりはやめてほしいな」 しみじみといっているアメリアとゼル。 「とりあえず。早く宿屋にいこうぜ。お腹すいたし」 ごけっ。 ずるっ。 「ガウリイさんらしいですねぇv」 お腹を押さえながらいうガウリイの台詞に面白いリアクションをしているし。 そんなガウリイに対してにこやかにいっているゼロス。 「さってと。とりあえず。このたびの一件はおわったことだし。それじゃ、宿屋にでもいきますかv」 ひとまず、今回のこれは一応おわりだしv 「とりあえず。…というのがきになるんですけど……」 「同感」 あたしの言葉になぜか顔を見合わせてつぶやくようにいっているアメリアとゼル。 「あら。気のせいよv」 「それより、早く、メシ、メシ〜」 ほのぼのとした会話を交わしつつ、あたし達はひとまず今日の宿をとるために、 街中にともどってゆく。 さってと。 次にあの親子に会うときがまた楽しいんだけど。 それはまだアメリア達には内緒にしておきますかねv ふふふv ―――ランナウェイ・ガール編終了―― ######################################## あとがきもどき: 薫:さてさて。原作ではでてこなかった、カーシャの夫であり、マーリーンの父親。 通称『新月のグール』彼の名前はかってにこちらがつけましたv ちなみに、流れとしては。 【新月のグール→月→狼→ケルベロス→フェンネル→フェーン】 という感覚ですv エル:何か今回…あたしの活躍なくない?あんた? 薫:あはは…今回、エル様は傍観主義…ということで〜 エル:まったく。せっかくカーシャ用に部屋の中の空気を綺麗に抜いてたりしたのに。 ひっかかってくれなきゃさみしいわよねぇ…それとか…… 薫:…え、え〜……いくらカーシャさんでもそれらは絶対に死ぬかとおもわれるのですが(汗 エル:あら?あの程度で死ぬなんて情けなすぎるわよv 薫:…エル様の基準でいわないでください…… エル:ま、あんたへのお仕置き…もとい、説教はあとでするとして。 薫:い、今お仕置きとかいいませんでした!? エル:きのせいよvところで、この続きのもやるんでしょ? 薫:は…はぁ……次はナーガ合流後。ですね。 余計にややこしくなりまくってますけど…… エル:たのしければいいのよv 薫:…ど、努力します… エル:さってと。とりあえず。大体な説明がおわったところで♪ 薫:って、まってくだ……んきゃぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!!!! エル:さってと、何やら排水溝から流れている液体もどきはおいとくとして。 それでは、またあいましょうねvそれじゃ、まったね♪ |
33419 | エル様漫遊記・番外編〜戦慄!雨の人情宿場編〜 | かお E-mail URL | 2007/10/6 17:32:17 |
記事番号33417へのコメント まえがき&ぼやき: こんにちわ。お久しぶりですv って、何まだ初めのころの番外編を打ち込みしてないのに、 後半部分。つまりは新刊のほうのを先に打ち込みしてるんですかねぇ…自分(自覚あり んでもって、のんびりと打ち込みしている間に次々と新刊さんが続々と…… が、がんばらねば(滝汗 このお話は、SP20巻に収録されている、「雨の人情宿」編の漫遊記版となっておりますv 発売当初から打ち込みしてて…なかなか気分がのらずに気づいたらすでに29巻まで発売中… ……懺悔します…はい(汗 何はともあれ、いっきますv さて…下からは簡単なお話の時期的内容説明ですv さてさて。 この度のお話は。 トリガルウ(SP版、わんだほ〜)の一件が終わった後。 つまりはTRYにいく前。ついでにいえば、映画の「プレミアム」よりも前のお話です。 (詳しいことは漫遊本編のほうを参考にしてください←書きなぐりさんには投稿してません) ##################################### エル様漫遊記 〜戦慄!雨の人情宿場〜 どざぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…… 「ほんと、よく降りますねぇ」 窓から外をみてぽつりとつぶやく。 「というか。お前は姉貴のことをつっこまないのか……」 言っても無駄。 とはわかってはいても言いたいのが人の人情というもの。 そんなアメリアにむかって、ちらりと視線をとある方向にむけて言っているのは… 「すごいでしょう?姉さんってものすごい人望とかあるんですよ?」 「…いや、そうじゃなくて…も…いい……」 セイルーンの今後が果てしなく恐ろしいように思うのは絶対に俺だけじゃないよな…… そんなことを思いながら、ため息まじりにつぶやくゼル。 街道筋から少しはずれたとある川の側にぽつんと一件佇む小さな宿。 外は数日の間雨が止むことなく降り続き、川はちょぴっと増水している今現在。 それゆえに、いつもなら出ているはずの渡し舟などというものはこの程度のことで欠航中。 この川は街道からは外れてはいるものの、物流などにおいては川を利用したほうが能率がいい。 ということもあり、晴れている日はそこそこ人の出入りも頻繁だったりする。 だが雨の日となれば話は別。 いつ川が氾濫するかわからない。 というのもあり、雨になればこの宿にはまず人はあまり集まってはこない。 現実に、今この宿にいるのもあたし達のほかには数名のみ。 幾人かは街道筋に戻るためにと引き返したりした旅人もいたりする。 宿の一階にとある食堂においては、 「お〜ほっほっほっほっほっ!!」 ここ数日のようにいつものように高笑いが響き渡っていたりする。 「いやぁ。このたびの雨宿りはあきないねぇ」 「まあ、この高笑いが玉に瑕だけどね。ナーガさん。また何か面白い話をおねがいしますよ」 「お〜ほっほっほっ!いいわ!そのかわりにビールでもおごってくれるわよね!お〜ほっほっほっ!」 いうまてもなく、テーブルにてビールジョッキ片手に高笑いしているナーガ。 そして、そんなナーガに話しかけているのは、この雨で足止めをくらっているほかの客。 「ほんと、ナーガさんってかわってますよねぇ。よく酔いませんよね……」 ここ数日毎日のように飲んでいるのにまったく酔ったようには見えないナーガ。 ナーガ曰く、 『人から奢ってもらえる可能性があるときは酔ったらダメ、とお母様から教育をうけてるし』 ということだけど。 ナーガに話しかけているのは、旅の行商人トレマーと名乗った男性。 やや小太り気味でなぜか似合っていない黒ヒゲが目立つけど。 そしてま、そんなトレマー、と名乗った人物に続きナーガに話しかけているのは、 当人曰く、父親の使いで品物を客に届けた帰りにこの雨で足止めをくらっている。 と説明している赤毛の男性、トッシュ。 そして、そんなナーガをみてにこやかに場違いな笑みを浮かべていっているのはいうまでもなくゼロス。 「しかし。…ほんとうにあんたたち…姉妹?」 そんなナーガと、そして窓の外をみているアメリアを見比べて、 未だに信じられない。 という表情で問いかけてくる金髪の男性、アディス。 「はた迷惑な姉妹だがな……」 「あ〜。ひっどぉい!ゼルガディスさん!どういう意味ですかっ!」 「言葉の通りだ」 アディスの問いかけをうけ、ため息まじりにづふやくゼルにすかさず抗議しているアメリア。 そんなナーガや、アメリア達のほうをのんびりとながめつつ、手にしているコップの紅茶を一口。 「でも。こんなメンバーでよくまとまって旅ができてるねぇ。あんたたち」 コトン。 デザートのケーキをテーブルに置きながら話しかけてくるこの宿を切り盛りしている女性。 ちなみに名前をリューシャ。 もっとも、この宿は別の意味あいも込めた宿屋ではあるんだけど。 それを今アメリア達にいったら楽しくないしv ゼルもまさかここが『あの場所』とは気づいてないようだしv 「うん。いける!おばちゃん、この野菜炒めおかわり!」 「はいはい。こっちの金髪の兄ちゃんは食べ盛りだねぇ〜」 ガウリイが今食べている野菜炒めのおかわりを要求し。 何ともほのぼのとしているこの空間。 あたし達のほかにいる客はたったの四人。 つまりはこの宿にいる人数は今のところ十人ほど。 「あら?楽しいわよ?」 くすっ。 そんな彼女にくすくすと微笑みながら返事を返す。 さってと。 そろそろ…ね♪ バシャバシャバシャ…… 屋根と大地に打ち付けている雨音。 それに混じってあからさまに雨の中を走る足音がこちらにと近づいてくる。 ギィィ〜…… こんな雨降りの中を旅人が? そんなことを思いながら、ゼルや、そして他の客たちが一斉にと開け放たれた扉にと視線をむける。 「ふぅ……」 扉をくぐり、入り口付近にたったまま、 傘も差さずに走っていたがゆえに濡れたからだをひとまず軽く手で振り払っている一人の女性。 肩や髪にかかった雨を軽く振り払いながらも、ちらりとその視線をこちら。 即ち宿の中にと向けてくる。 歳のころならば、見た目十五、六歳。 事実十五になってまもなかったりするけど。 短くまとめた黒い髪に、軽装鎧(ライトアーマー)に長剣(ロングソード)を履いているいでたち。 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 しばし、その視線をうけ思わず黙り込んでいるアメリアとゼル。 面白いことにそちらのほうも固まっていたりするけど。 そして、しばしの沈黙ののち。 「って…あああ!?マーリーンさん!?」 「ってマーリーン!?なぜこんなところに!?」 「って、アメリアさんにゼルガディスさん!?それにリナさんたちまで!?」 驚愕の叫びを上げているその女性。 いうまでもなく、少し前ちょっとしたかかわりがあったマーリーン=ライドパーク。 そしてまた、あの一件が未だに印象深かったらしく覚えているがゆえに叫んでいるアメリアとゼル。 「おや?マーリーンさんじゃないですか。まさかまた家出ですか?」 そんなマーリーンのほうに視線をむけてにこやかにいっているゼロス。 宿にいるほかの客たちはあたし達と今入ってきたマーリーンを交互にみて顔を見合わせてるけども。 「また…って……」 そんなゼロスの言葉に一部のものが反応して何やらつぶやいてるけど。 ま、マーリーンはよく家出してたし。 最もすぐにカーシャたちに連れ戻されてるのはお約束。 「おやおや。まあまあ。こんな雨の中を……はい」 「あ。すいません」 手渡されたタオルをそのままつかみ、髪などを拭き始めているカーシャであるが、 律儀にもゼロスの問いかけに、 「いや。違う。今回はお父様にいいつけられたのだ。今日、ここにこい。と」 ふきふきふき。 髪を拭いて、さらには服などを軽く拭き、ついでに腕などをも軽く拭いて水気をのける。 とはいえ、完全にはのかないけど。 どうでもいいけど、体についてる水分くらい簡単に蒸発とかさせなさいよね…… 「?待ち合わせか何かですか?」 マーリーンから使い終わったタオルを受け取りながらもにこやかに問いかけるリューシャ。 「いや。多分違うとおもう。あのお父様のことだから……」 いってうつむくマーリーン。 「…もしかして、もしかしなくても……フェーンは……」 あの新月のグールのこと。 今、耳に入ったマーリーンの台詞からたどりつく結論は一つのみ。 そんなマーリーンの会話を小耳に挟み、なぜかものすごくいやそうな顔をしているゼルに、 「何かものすごく嫌な予感がするのは私の気のせいでしょうか…?」 先日のカーシャにちょっとしたことに付き合わされた一件を思い出して小さくつぶやいているアメリア。 そんな二人の心情はまったく気にせず、 「お〜ほっほっほっほっほ!どんどんおかわりもってきて!!」 一人元気よくビールジョッキ片手に高笑いを続けているナーガの姿。 くすっ。 「それで?マーリーン?何ていわれたわけ?」 判っているけどここはあえて問いかける。 マーリーンのほうに視線をむけて問いかけたあたしの言葉にはっと我にと戻り、 「あ。そういえば。お父様は『暖炉の側を探せ、それに従え』…とかいってたが……」 「それってやっぱり何かのテストか訓練なんじゃぁ……」 ぽそりというゼルの台詞は何のその。 「暖炉って…あそこにある暖炉ですか?」 まさかまた、私達カーシャさんにマーリーンさんのテストで狙われる…なんてことはないですよね? そう思う心情は声にはださず、 食堂の一角にとある暖炉にと目をやりマーリーンをみて話しかけているアメリア。 そしてしばし、ゼルとアメリアは同時に顔を見合わせ、二人同時に暖炉のほうにと駆け出して行く。 小さな火が燃えている暖炉の周り。 積み上げられている薪の下、ひび割れたレンガの隙間の一角。 その中のレンガの一つがすっぽり外れるのを発見し、 「あったぞ!」 「ありました?!」 なぜか本当にあの程度のことで懲りているらしく必死な二人だし。 別にどうってこともなかったでしょうに。 たかが、ちょぴっとマーリーンが独り立ちするのにあたり、 マーリーンの母親のカーシャによるテストが行われ、 そのテストの内容が『カーシャが狙うアメリアとゼルガディスを三日間護衛すること』だったにしろ。 最も三日ももたずにカーシャの夫の登場でもったいないことに一日と少しで終わったわけだけど。 「お父様は何と!?」 ゼルの声をうけてアメリア達のほう、即ち暖炉のほうにと駆け寄りつつゼルが手にした髪を覗く。 マーリンとゼルとアメリア。 そして興味本位でそんな三人の後ろから覗き込んでいるゼロス。 ゼルが手にしているのは二つ折りにされている羊皮紙がひとつ。 三人が覗き込んでいる中、折りたたまれている羊皮紙を開くと、そこには一言。 【―――がんばれ―――】 『何を(だ)!?』 その神にかかれている文字をみて面白いまでに同時に突っ込みをいれているアメリアとゼル。 そしてマーリーン。 「おやおや…v」 どうりで、エル様がこちらのほうこうに来られたわけですねぇ。 そんなことを思いながらもにこにこといっているゼロス。 「というか、どういうことなんですか!?マーリーンさん!?」 「わ…わたしにもわかんないわよっ! というか、何でアメリアさんやゼルガディスさん、それにリナさん達がこんなところに!?」 「話をすりかえないでくださいっ!まさかまた私達まで巻き込まれませんでしょうね!?」 そんな二人のやり取りをしばし眺め、そして再び羊皮紙に視線を落とし、ため息ひとつつき、 「…アメリア。すでにこのマーリーンがこの宿にきた時点で巻き込まれてるとおもうぞ? どうりでリナが街道筋から離れてこんな場所のほうに進んだわけだ……」 疲れたようにいっているゼル。 そして。 「そもそも。あいつのことだ。 この子がやってきたとたん、この宿から飛び出したりする人物がいたとすれば、 それは間違いなく放っておかないだろうしな。おそらくは……」 そういいかけるゼルの言葉をさえぎるように、 「というか。あんたたち…知り合いなのか?その姉ちゃんと?」 「そもそも、何いきなり暖炉をしらべてるんだ?そんなところに何かあるのか?」 先ほどまでナーガに話しかけていたトレマーとトッシュと名乗った男性達があからさまな面白い行動。 彼らにとっては挙動不審というか警戒を抱かせる行動をしたがゆえに声に固さを含んで問いかける。 ぐびぐびぐび。 そんな男達の反応とは裏腹に、 「あら?アメリア?知り合いなの?」 動じることなくビールジョッキを手にしたままでアメリアにと話しかけているナーガ。 「はい。姉さん。以前ちょっとしたことで知り合ったマーリーン=ライドパークさんです」 「…ライドパーク?」 そんなアメリアの言葉に、ジョッキをカタンとテーブルにおき、 「もしかしてあのフェーン=ライドパークとカーシャ=ライドパークに関係あるのかしら?あなた?」 カタンと椅子から立ち上がり、両手を腰にあてて胸をそらしながらマーリーンにと問いかける。 「……姉さん?」 ナーガの格好にようやく気づき、 しばし唖然としながらアメリアとナーガを見比べて戸惑いながらも声を出す。 「ええ。私の姉さんです。何か?」 「…何かって……」 この格好をみて何も思わない人がいるのか? 面白いまでに戸惑いの感情をあらわにして言葉に困っているマーリーン。 「あの?お父様とお母様を知っているのですか?」 とりあえず無難な質問を投げかける。 「ふっ!愚問ねっ!あの二人をこの白蛇(サーペント)のナーガ様が知らないとでも!? 幼いころに誘拐されて養成されていたダイナスト・ファミリーを壊滅させて逃げ出した。 なんてのはその筋では有名な話よ!お〜ほっほっほっ! それに新月のグールといえばとある国の秘密諜報部員じゃないっ! そんな常識的なことをこの私が知らないわけないでしょうが!お〜ほっほっほっ!」 ざわっ。 あ、ざわめいてるv ナーガの高らかに言い放つその台詞に店にいたほかの客たちが一斉にと殺気だつ。 「お…お父様って秘密諜報部員だったんですか!?」 逆にそんなナーガの台詞におもいっきり驚きを隠せないマーリーン。 「…というか。おまえ、自分の父親なのにしらなかったのか?」 思わずあきれ顔でそんなマーリーンに問いかけているゼルの姿があったりするけど。 「あvそうそう。言い忘れてたけど……」 一人が応援を呼ぶためにこっそりと建物の外に出てゆくが。 あたしの言葉が言い終わるより早く。 ドゴォォッン!! 「うわぁぁっ!!!」 爆発音と、トッシュの悲鳴が雨音に混じり聞こえてくる。 『何(だ)!?』 その声をききつけ、出入り口の扉を雨が降るというのにガチャリと開ける人々。 出入り口から少し離れた地面の上。 そこに何やら物体が転がっているのが見てとれる。 「明かり(ライティング)」 それをみて呪文を唱えているアディス。 アディスの放った光りに照らされた大地の上にその物体もまた照らし出される。 そこに倒れているのは、 なぜか焦げてその場に転がっている客の一人でもあった赤毛の男性トッシュの姿。 「って!?」 その姿をあたし達の横、すなわちリューシャたちの背後からみて小さく叫んでいるマーリーン。 「あらあら。人の話は最後まできかないとv」 くすくすくす。 くすくす笑うあたしの言葉に。 「リナさん?どういう意味ですか?」 「リナ?」 はじかれたようにあたしをみてくるアメリアとゼル。 そして、 「どういう?」 「あんた、何かしってるのか?」 思いっきり戸惑いとそして警戒心をあらわにして、 こちらもまたあたしにと問いかけてくるリューシャとアディス。 一人そのまま食堂の中にと残っていたトレマーはといえば、何やらごそごそと厨房近くでしていたりする。 くすっ。 「知ってるというか。気づかなかったの?さっき宿屋の周りをうろうろとしてた人たちがいたでしょ? あの二人がこの宿屋の周囲にトラップしかけて不用意に誰も出れなくしてるのよv」 「って、ちょっとまてっ!トラップだと!?」 「冗談じゃないよっ!何でっ!」 あ。 面白い面白い♪ 面白いまでに狼狽してうろたえているリューシャ達。 「あの?…リナさん?それってもしかして…お母様たちのことなんじゃぁ……」 考えたくない。 だけど可能性として、気配も感じさせずにそんな行動を起こせるのは両親しか思い当たらない。 そんなことを思いめぐらせつつも恐る恐るあたしにきいてくるマーリーン。 「?何だ?みんな気づいてなかったのか?何かあの夫婦が外で何かやってたの?」 『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』 きょとん、とした表情でその手にはしっかりと骨付き肉をもったままさらっと言ってくるガウリイ。 しばし、そんなガウリイの台詞にあたしとゼロス以外が全員、顔をみあわせる。 「あらあら。気配くらいつかまないとだめよねぇ」 「ですねぇ」 にこやかに言うあたしとゼロスとは対象的に、 「というと何!?この建物からでたら、 どこに仕掛けられているかわからないトラップにひっかかるってこと!?」 何やら悲鳴に近い声をあげているマーリーン。 「というか、ガウリイ!気づいてたなら早くいえっ!」 「そうですよ。ガウリイさん。何で教えてくれなかったんですか!?」 未だに手にしているお肉を手にし、かぶりついているガウリイに抗議の声をあげているゼルとアメリア。 「いや、だって聞かれなかったし」 『・・・・・・・・・・・・・・・・』 さらっというガウリイの台詞にまたまた無言になる彼らたち。 一方で、 「お〜ほっほっほっ!何も問題ないじゃないのよっ! こんな雨の中、外にでることなんてないんだし! それより、ジョッキのおかわりもらえるかしら?」 完全無欠にマイペースな口調で、ビールジョッキのおかわりを要求しているナーガ。 「…あんた、どうじないねぇ〜……」 そんなナーガの姿をみてあきれたような声をだしているトレマー、と名乗っていた男性だけど。 「お〜ほっほっほっ!このナーガ様を甘くみないでよねっ!…ところで、リナ? あの二人が関わっている、ということになると。 もしかして何かの組織とか、もしくは悪党の隠れ家とか関係してるのかしら? ふっ。よめたわよっ!リナ=インバース! あなた、この私に何もいわないのはそれらのお宝を独り占めにする気ねっ!」 びくくぅっ。 面白いまでにナーガの台詞にまともに硬直しているこの宿に元からいた客たち。 というか、自分達がそれらに関わっています。 とあからさまにいってるようなものよね。 これって。 ほんっと、人間って面白いわよねぇ。 ふふv 「ええ!?リナさん、本当に悪人が関わっているんですかっ!?どうしていってくれないんです!? それなら、ここはやはり、正義の仲良し四人組、プラス姉さんとおまけ一人でこらしめないと!」 「アメリアさぁぁん、そのオマケ、というのはいい加減にやめてください……」 ナーガの台詞に、ぴっと指をこちらにつきつけて、片手を腰に当てて言ってきているアメリア。 そんなアメリアの姿をみて、溜息ひとつつき。 「…また始まったか……」 こうなったら誰にも止められないしな。 こいつは…… そんなことを思いながらも言っているゼル。 「え。えっと?いったいどういうことなんだい!?」 多少声をうわずらせながらリューシャがあたし達にと問いかけてくる。 「ちょっとまってくださいっ!リナさんっ!すると、何ですか!? もしかして、お母様たちが、私にテストをかねて。 そのどこにいるかわからない悪人を見つけ出せということですか!?」 一方で顔面蒼白になりながらも、いまだにびしょぬれのままであたしにと聞いてきているマーリーン。 声がかなり悲鳴に近く悲壮な声になっているのが何とも面白いv 「あら?ただ。この近くにいると思われる、とあるゲリラの一味。 確か名前は【クラッシャーズ】だったかしら?ね。ゼロスv」 びくっ。 あたしのそんな問いかけに、なぜかびくり、と反応し。 「え。ええ。たしかそうですね。まああの人たちは僕達にとっては面白いのでほうってますけど」 などといいつつ、あたしのほうをみてくるゼロス。 というか…エル様…わざわざ僕にそういってくる…ということは…… ……何かたくら…もとい、考えておられますね…… そんなことを思ってるけど。 「あら?あたしは別に何もたくらんでなんかないわよvそれはそうと、ゼロスちゃん? 何、そんな『あたしが何かたくらんでる』なんていうのかしらね〜♪」 ぐしゃ。 なぜかその場につぶれるゼロスはおいとくとして。 「…いやあの?なんでその人、いきなり倒れたんですか?」 なぜか震える声でつぶやいているトレマーはおいておく。 「気にしないでください。いつものことですから」 「だな。あんたもこんな些細なことを気にしてたらやってられないぞ? それより、リナがいうんだから間違いないだろうが。 この近くに本当にあのクラッシャーズがいるのか?」 ゼロスがその場に倒れているのはいつものこと。 それゆえにあまり気にせずにさらっというアメリアに、 腕を組みながらもこの宿の女主人であるリューシャに問いかけているゼル。 玄関先の出入り口の横でなぜかつぶれているゼロスの姿があったりするけど。 ま、別にそれは関係ないしv 「さあ?どうかしら♪」 「というか、見つけ出さないとお母様たちに…お母様たちにぃ〜…… そもそも、何でお母様たちはこの宿の周りにトラップを!?」 確認を込めて宿の外にお皿を一つ投げた後になぜか悲鳴に近い声をあげているマーリーン。 お皿が地面についたとたんに爆発が起こるものの、その音は雨音にと掻き消される。 「じ…冗談じゃねえっ!この宿から逃げ出すこともできないのかよっ! 今、この姉ちゃんがお皿を投げただけで爆発したぞ!?人間なら吹っ飛ぶぞ!?ありやっ!?」 ずざっと建物の中に後退きながら、額に汗をびっしょり流しながら叫んでいるアディス。 「何でオレ達がこんな目にあわないといけないんだ!?えっ!?」 「あら?それはあなたたちのほうがわかってるんじゃないの?」 くすっ。 びくっ。 にこやかにいうあたしの言葉に、面白いまでに動揺している彼らたち。 「?リナさん?いったい、それって?」 意味がわからずに首をかしげているアメリア。 「それより。まだまだ雨はやみそうにないしv食事の続きしましょv ほら、ゼロス、いつまで寝てるのよv」 その場に固まる元々いたこの宿兼食堂の客たちをそのままに、とりあえず席にと戻る。 「それもそうだな。メシ、メシ〜。あ、おばちゃん、メニューの追加たのむな〜」 「おまえ。どうじないな……ほんっと」 あたしの言葉をうけ席にともどりながら、 その場に硬直しているリューシャにと追加注文を言っているガウリイ。 席につくガウリイをあきれてみつつもつぶやくゼル。 ま、ゼロスがいきなり倒れるのはいつものことだし。 ほんっと、あの程度で情けないわよねぇ。 たかがちょこっと精神世界面において彼にとかかる負担を少々増やしただけなのに。 これはもっと鍛える必要があるわよね。 ふふv ガタッ。 席に座りなおすあたし達にと、 「それで?リナ?いったいあなたが独り占めしようとしているお宝はどこにあるのかしら? いわないならこのナーガ様にも考えがあるわよ? はやくいったほうが身のためよっ!お〜ほっほっほっ!」 片手にジョッキを掲げたままで問いかけてくるナーガ。 「そういえば。姉さん。クラッシャーズ。って何なんですか?姉さんは知ってるようですけど」 ナーガの横に座り、きょとん、と首をかしげてナーガに問いかけているアメリアの姿。 和やかに席につくあたし達とは対照的に、 あからさまに殺気と戸惑いを含んだ視線を向けているあたし達以外の客たちの姿。 ちなみにすでに、あの二人はこの建物の中にこっそりと隠れて様子を伺ってるようだけど。 ま、別に皆に説明する必要もないしv 「おまえ、知らないのか?」 アメリアの素朴な疑問に驚いたようにといっているゼル。 ちなみに、ゼルもまたあたし達以外の客の反応に気づいて警戒を強めていたりするけども。 「いったい全体なんなんですか?」 「その手の世界ではけっこう名前がとおっている、メンバーもわからない密売組織だ。 たしか様々な組織などに武器や防具、挙句は人身販売をも担っている奴等だ。 そういえばかつてこのあたりにあいつらのアジトの一つがあるとか聞いたことがあるが……」 そんなゼルのつぶやきに、顔を見合わせている数名の人物たち。 というか、あたし達がこの建物に入ってきた時点でゼルがあの『白のゼルガディス』だ。 と気づかなかった彼らもうかつよねぇ。 ほんっとうにv 「ふっ。アメリア。こういう世界情勢はしっておかないとだめよ?それよりっ!! リナ!!いったいお宝はどこにあるのよっ!早くいわないと……」 ぐびっ。 ドッン。 手にしていたジョッキ中のビールをすべて一気に飲み干しテーブルにと押し付ける。 そして、 「よめたわよっ!リナ!!あなたどうでもこの私にお宝をよこさないつもりねっ!」 「…って、誰もそんなこといってませんよ〜?もしも〜し?」 こちらが何もいってないにも関わらず、一人で勝手に決めて、ぴしっと指をつきつけてくる。 そんなナーガにむかって、ぽそっと突っ込みをいれているゼロスの姿。 「ふっ!そうはさせないわよっ!」 「…あ、姉さん、ちょっとま……」 ナーガが何をしようとしているのか瞬時に把握し、止めようと声をかけるアメリアだけど。 それよりも早く、 「炎裂砲(ヴァイスフレア)!!」 どごぉおっんっ!! 面白いちょっとした爆音と同時、ナーガの放った術が炸裂する。 バギャ…グシャッっ!! ナーガの放った一撃によって、この宿を支えていた支柱ともいえる大黒柱。 それが壊され、建物全体を支える力が半減し、天井ともども落ちてくる。 ついでにいえば、この宿は木製。 ゆえにそのまま乾ききった室内すべてに炎が引火し崩れ落ち始めだす。 それと同時。 ザァァァ…… 壊れた建物の隙間から雨が瞬時に入り込み、そのまま一気に建物そのものが炎と雨に包まれ瓦解する。 「って!?なっ!?」 「に…にげろっ!!」 アメリアやゼルはとりあえずナーガの行動を予測して二人して防御結界を張っている。 ゆえに、あたし達の周りには瓦礫などは落ちてこないものの。 他にいた客や、元々いた宿の従業員や女主人などが何やら叫んでいたりする。 今ナーガが使った術は、 普通の人間の魔力容量程度でも家一つくらいはかるく完全燃焼させるだけの威力をもつ。 ついでにいえば、一応ナーガはそこそこ魔力容量はあるほうなので威力的には面白いことになってるし♪ この場から、というか建物の外に逃げるのは不可能。 そう判断し、即座に地下室にと続く扉のむこうに飛び込む彼らたちの姿が見て取れる。 彼らが扉の向こうに飛び込むのとほぼ同時。 グシャァァッ…ン…… 面白いまでに炎に巻かれ、 そして雨によりその炎が鎮火された建物を構成していた柱という柱が崩れ落ちてくる。 「お〜ほっほっほっ!…って、んきゃぁぁぁ……」 くすっ。 みれば、お約束のごとくにナーガは瓦礫の下敷きとなり瓦礫の中にと埋もれていたりする。 毎度のことながら、このナーガって楽しませてくれるわよね♪ 「姉さん……やっぱり、やっちゃいましたね。毎回自分の術で自分も巻き込まれてますけど」 簡単な防御結界を張っていたがゆえに、瓦礫からは逃れていたアメリアが、 そんなナーガの姿をみてしみじみといっているのもまた面白い。 ま、いつものことなのではっきりいって動じてないようだけど。 「というか。何でおまえの姉さんは、自分まで巻き込む技をつかうんだ?毎回、毎回……」 さらにいえば、俺たちまでおもいっきり巻き込む術をつかいまくるが…… その後半部分の台詞は何とかこらえながらも、あきれたようにつぶやいているゼル。 そしてまた。 「ああっ。オレのメシがぁぁ〜……」 がくっ。 宿屋が壊れたことよりも、テーブルに届けられるはずの料理を気にしてがくっとうなだれているガウリイ。 「ま、そんなことより♪面白いもの発見〜♪」 先ほどまで建物の中にいた。 というのに今は綺麗に瓦礫と燃えた柱のみとなった元宿屋。 そんな瓦礫の中に佇みながら、にこやかに軽く足元の瓦礫をふわりと浮かす。 雨に濡れてゆく瓦礫の下に垣間見えているのはちょっとした地下室。 そこには、びっしりと並んでいる槍や鎧。 つまりは、ちょっとした武器屋や防具屋の風貌。 元々は台所の奥にとある暖炉の近くにあった小さな扉。 そこが入り口だった場所。 地下室だったがゆえに、地上の破壊行為に影響されることなく残っていたりするこの現状。 「…なるほど。な」 むき出しになった地下室の姿をみて思わず苦笑まじりにつぶやくゼルに、 「え?いったい、これって??」 未だに理解していないアメリア。 そしてまた。 「お〜ほっほっほっ!」それで?そろそろ出てきたらどうかしら!? フェーン=ライドパークとカーシャ=ライドパーク!」 瓦礫の山と化しているその中で今だに瓦礫の中に埋もれたままで高笑いをしながら言っているナーガ。 そして、そのまま高笑いをしながら、 瓦礫を頭にのっけたまま、その場に何事もなかったかのようにすくっと立ち上がり、 「そこにいるのはわかっているのよっ! さあ!観念してこの私にもお宝の分け前をよこしなさいなっ!お〜ほっほっほっ!!」 少し先にと見えている川に向かっていい放つ。 そんなナーガの台詞とほぼ同時。 ざばっ…… 水かさの増している川の水が盛り上がり、そこから出現する二つの影。 そして。 「……お…お父さま…お母様…その格好って……」 迷彩服にと身をつつみ、頭にはちょっとしたヘルメットらしきかぶりもの。 ついでにいえば、体全体に水草をつけているのはお約束。 出てきた二人の正体に気づき、ぴしっと固まりつつもつぶやくマーリーン。 「あれ?カーシャさんじゃないですか」 「…新月のグールもいるぞ……」 二人の姿を認めてあまり動じることもなく、にこやかに話しかけているアメリアに、 疲れきった表情で溜息まじりにつぶやいているゼル。 「あの〜?僕はいつまで雨をとめてればいいんでしょうか……」 そんなアメリア達とは対照的に、ぽそっと何やらいってきているゼロス。 「あら?別に誰も『雨をとめておいて』なんていってないわよv」 最も、雨を止めるというか壊れた建物ゆえに、 降り注ぐ雨をどうにかしなければそれはそれでお仕置き確定だったけど。 「お久しぶりです。アメリアさんたち。 まさかあなたたちがこの場にいるなんておもってみませんでしたわ」 にこやかに、笑みを崩さずに川から上がりながらいってくるのはいうまでもなく、 マーリーンの母親でもあるカーシャだけど。 そしてまた、 「やあ。またあなた方にはお世話になったようですね。しかし。さすがですねぇ。 さすがはあのリナ=インバースさんだ。それにお連れの方々も。 気づいてなかったのは私たちの不詳の娘だけだったようですねぇ」 びくくぅっ! にこやかにあたし達にと挨拶しながらいってくるフェーンの台詞にあからさまに硬直しているマーリーン。 「あら?だってここが彼らのアジトってわかっててよったんだしv」 「「やっぱりかっ!!」」 なぜかあたしの台詞に同時に突っ込みしてくるゼルとガウリイの姿があったりするけど。 「ええ!?それならそうと何で早くリナさん、いってくれなかったんですかっ!? もしかして、この壊れた宿にいた人たち全員悪人だったんですかっ!?」 「って、アメリアさん…突っ込むところはそこですか?」 ものすごく残念そうに言ってくるアメリアにぽつっとつぶやきをもらしているゼロス。 「リ…リナさん。どうしてそれをもっと早くに……」 震える声でづふやくそんなマーリーンの台詞をさえぎり、 「ん?何だ、あんたきづいてなかったのか?ほら。あの宿の中にいた人たち。 何か雰囲気が普通と違う仕事をしてるな〜。というくらいわかるだろ?普通?」 「わかりませんっ!」 「…まあ、たしかに。普通の一般人ではない雰囲気をもってはいたのは事実だが。 まさか…あの一味だとは……で?この瓦礫と化した下にとある地下倉庫が奴等の隠し倉庫か?」 きっぱり言い切るアメリアに、そんなアメリア達の会話を無視してかが見込んで地面を調べているゼル。 そんな彼らの会話は何のその、 「さあっ!観念してお宝のありかをいうのねっ!お〜ほっほっほっ!!」 未だに雨の中、高笑いを延々と続けているナーガの姿が見て取れる。 ザァァ…… 周囲には絶え間なく雨が降り続いてはいるものの、あたし達にはまったくもってあたっていない。 ゼロスが薄い膜をあたし達の上空に張り巡らせ、簡易的な傘代わりとなしている今の現状。 そんなナーガの問いかけというか台詞はあっさりと無視し、 「なるほど。さすがはリナ=インバースさんですわね。 それにしても、マーリーン。あなた結局何もわかっていなかったのね?」 「いけないなぁ。マーリーン。何が起こっているのか、というのもわからずに。 ただただ戸惑っているだけだったみたいだしねぇ。 行き当たりばったりなことしかやってなかったようだし。 これはやっぱり帰ってしっかりと鍛えなおす必要があるようだねぇ」 「ひょどげぅえっ!?いや、でもお父さ……」 悲鳴をあげ、どうにかこうにかかすれる声で抗議の台詞を言おうとしたマーリーンであるが、 その台詞は言い切るまえにさえぎられる。 「…というか。いつのまに移動したんでしょうか?この人たち?」 ふとみれば、さきほどまで目の前にいたはずの二人がマーリーンの横に移動しているのをみて、 きょとん、としながらつぶやいているアメリア。 マーリーンが言いかけるよりも早く、マーリーンの横に移動している彼女の両親。 そしてそのまま問答無用で彼女の両脇から、がしっとマーリーンの肩や腕をつかみ、 「さ。それじゃ、帰ろうか。マーリーン。リナさんたち。うちの不肖の娘がお世話になりました」 「マーリーン。せっかくお母さんたちがこの壊れた宿が彼らのアジトだと突き止めて、 あなたをこの場に送り込んだというのに。力試しも何もあったものじゃないわねぇ。 やっぱり、マーリーンには一人で何かする、というのは早いみたいね」 両脇からにこやかに、マーリーンに話しかけているフェーンとカーシャ。 そんな二人の会話をききつつ、 「ふっ。なるほど。な。 つまりあんたたちはこの場所がクラッシャーズのアジトの一つと突き止めたはいいものの、 宿屋もかねているこの場所で誰が客で誰が一味の仲間かわからなかた。 だから、娘であるそのマーリーンを腕試しをかねて送り込んできた。というわけか……」 一人、腕をくんで考え込むようにといっているゼルだけど。 「ええ。そのとおりですわ。でもうちの娘はまったくもって何もできませんでしたわねぇ」 「まったくだ。マーリーン、これからはびしびしとさらに鍛えるからな」 「え?え?あ、あのお父様、お母様……っ!!」 マーリーンの声が擦れてゆくのが何とも面白い。 「おやまあ。これは結構な食事ではありますねぇ」 そんなマーリーンから発せられる負の感情を楽しみながらもそんなことをいっているゼロス。 ちなみに、あたし達の周りのみにゼロスが張っている傘代わりの結界はまだ生きているので、 あたしの周辺にはまったくもって雨は一つも落ちてきてはいない。 最も、雨のほうからあたしをよける。 というのもあるにしろ。 「まあ、よしとしましょう!これで悪が一つ滅びたわけですしっ!」 「そういう問題か?」 何が何だかよくわかりませんけど、確実にいえるのは悪が滅びた。 ということですから何も問題ないですしっ! そう思いながらもぴしっと言い放つアメリア。 そんなアメリアにあきれつつもつっこみをいれているゼル。 アメリア達のそんな会話をききつつも、 「それでは。私達は、これにて。お世話になりました。リナさんたち。さ、マーリーン。かえろうか」 言葉の終わりとともにマーリーンをがっしりと掴んだまま、 ずるずるとひこずるようにしてその場を歩き出す二人の姿。 「ひ…ひぃぃっ!」 ザァァァ…… マーリーンの面白いまでの何ともいえないか細い叫びは雨の音に掻き消される。 そのまま、ずるずると雨の中、ひこずられてゆくマーリーン。 「ちょっと!まだ話しはおわってないわよっ!お宝はどこ!?」 そんな彼らの姿を見送りつつも、未だに何やらわめいているナーガだし。 「というか。この瓦礫の下にあるんじゃないのか?」 「ええ!?ガウリイさんがまともなことをいってますっ!!」 「なるほど。それで雨が降り止まないのか」 すでにこの場に本来いたはずのクラッシャーズの一味たちは地下の収納庫にあけていた穴。 そこからすでにカーシャとフェーンが運び出しているがゆえにこの場にはいない。 術の応用で彼らを完全に動けなくして特定の場所にすでに飛ばしていたりする。 最も、そのままだと面白くないのでちょぴっと干渉して別の場所に移動するように仕向けてはいるけどv 「なあ?リナ?そこかしこにある金色のやつ、何なんだ?」 地下から溶け出すかのように広がっている金色の何か。 何となく、これって金に見えるというか、そう思えるんだけど。 何でこんなに広がってるんだ? そんなことを疑問に思いながらも、 アメリアとゼルの台詞をさらっと無視してあたしにと聞いてきているガウリイ。 「そういえば。これって金みたいですね」 「…大方、おまえの姉さんが呪文つかったから、あれで溶けたんじゃないのか?」 かがみこみながら、そこかしこに広がっているそれをみつつ言うアメリアに溜息まじりにいっているゼル。 「あら♪ゼル、正解v」 このあたりに広がっている金色の塊はナーガが先ほど使った炎の術により溶けたもの。 金の融解度は千百五十℃。 ついでに一般的な火災現場の温度は八百℃から千二百℃。 さらにいえば、地下室はおもいっきり密室であったがゆえにその温度はさらに上昇していたりする。 ゆえに、地下に隠してあった金の延べ棒や金塊すべてが溶けて周囲に溶け出しているこの現状。 そんなアメリア達の会話を小耳に挟み、ぴたっと今の今までわめいていたナーガがわめくのをやめ、 がばっとそのあたりにしゃがみこむ。 そして、周囲の瓦礫などにくっついている金の残骸を確認し、 「わ…私のお宝がぁぁ〜〜!!!」 などとわめいていたりするけど。 「炎の術なんて使うから♪さってと。とりあえず、このまま。というのも何だし。 そろそろ日も暮れて暗くなってきてるしね〜v」 未だに雨は降り止まないものの、周囲は夜の闇が落ち始めている。 このあたりに他に宿屋とかはなく、この一件のみ。 自分で作り出したり、簡易的な建物を出してもいいけど、元があったのだからそれを使わない手はないしv おもむろにいいつつ、ふわっと指先に光りの玉を出現し、上空にと放り投げる。 それと同時。 かっ!! あたし達がいる上空の中心にその光りの玉が停滞し、一瞬まばゆいばかりの光を放つ。 そのまぶしさにアメリア達が目を瞑ったその一瞬。 瞬時にして焼け落ち崩れ、原型をまっくたとどめていなかった宿が瞬く間にと再生される。 ついでに初めのときよりは多少居心地がいいように作り直していたりするのはそれとして。 「さってと。これで今晩の宿は確保だしvとりあえず食事の続きしましょv」 「…だから。リナ。おまえはなんでこんなに簡単に再生とかできるんだ?」 「ま、リナさんですし。それはそうと、食事を作る人がいないのでは……」 じと目であたしをみながらもいっくてるゼルの言葉をさえぎるように、あわてていい。 そして、先ほどまで張っていた雨をしのぐための結界を解除してあたしにと問いかけてくるゼロス。 「あら?そのあたりは問題ないわよv」 再生させると同時に、ついでに食べ物も作りだしておいたし。 ゆえに、再生された宿の中の一室のテーブルには所狭しと食事がすでに並んでいる状態。 「おお!めし、めし〜〜!!」 「おまえは。こんな状況なのにおどろくとかしないのか!?」 「お〜ほっほっほっ!愚問ね!ゼルガディス=グレイワーズ!! リナと関わっていたらこんなのは些細な日常的なことよっ!それより、私のお宝はどうしたのよっ!!」 「リナさん!さすがですっ!これで今日は野宿をして濡れずにすみますっ!」 「だから!アメリアも順応するなっ!!」 三者三様。 そんな会話をかわしつつ、ひとまず復活した宿の中にと入り、用意されている食事をとることにする あたし達。 このたびは、面白いのでここに立ち寄っただけなのであたしはほぼ傍観。 たまには傍観して楽しみながら他の存在の反応をみるのも面白いし…ね♪ 「さあ!クラッシャーズのアジトにむかっていきましょぅっ!正義の仲良し組みの出番ですっ!!」 次の日の朝。 からっと晴れた空をみて、高らかに空に指を突きつけて言い放っているアメリア。 「こうなったらとめられないな…こいつは……」 はうっ。 そんなアメリアをみて溜息をつきながらつぶやいているゼル。 「お〜ほっほっほっ!私のお宝、まってなさいよ〜!!お〜ほっほっほっ!!」 そんなアメリアの横では、いつものごとくに胸をそらせて高笑いをしながら言っているナーガ。 結局のところ、再生させた宿屋で一晩過ごしたあたし達。 壊れた建物などを再生させたりするのは別に誰でもできること。 ナーガは未だに『どうしてそんなことができるのかしら?』といっていたりするけども。 とりあえず、何事もなかったかのようにあたし達しかいない宿屋にと泊まり。 そして、今朝というか今。 昨日までの雨は綺麗にやんで、空気は澄み切っている。 溶けていた金はこの宿の内装に使ったがゆえにすでに残っていない。 「しかし、よく降ったな〜」 昨日までの雨の影響で未だに川の水は増水しているまま。 だがしかし、だからといって別にわたれないことはない。 川の渡し船は未だに欠航しているが、空を飛ぶ。 もしくは橋をかければ何なく通れる。 宿の内装で余った金の残りは昨夜、宿を再生したと同時にこの川に橋を作るのに使っている。 金で出来ている。 と判れば騒ぐ人間などもでてくるので、 その上にコーティングとして別の素材をかぶせているがゆえに気づかないはずである。 人間というものは結構見た目に惑わされる生き物。 しかも、それが初めからあったかのように古ぼけたように見えるのならばなおさらに。 「お〜ほっほっほっ!まってなさいよっ!私のお宝〜!!お〜ほっほっほっほっ!!」 「ああ。まってください!姉さんっ!!」 そこに橋があるのをまったく気にもとめずに駆け出してゆくナーガと。 そして、そんなナーガに続いて駆け出してゆくアメリアの姿。 さってと。 しばらくは、密売組織クラッシャーズをからかって楽しむとしますかね♪ ふふふふ♪ ――雨の人情宿場編完了―― ######################################### あとがきもどき: 薫:はい。ひさかたぶりの漫遊記、番外編ですっ! L:ちょっと!! 薫:・・・びくっ。 L:あたしがこの度、まったくもって活躍してないじゃないのよっ!! 薫:いや、あのでも…それはエル様が傍観される、ときめたのでは…… L:問答無用っ!!!!!!!! 薫:いやあのっ!?その手にもたれてるそのカプセルは何ですか!? L:さあ?何のことかしら♪ パリッ…ン…… 何かが割れる音…… 薫:んきゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ…… L:さってと。何だかアメーバもどきがいるのはなぜかしら? とりあえず、えい♪ バシュッ。 L:さってと。なぜか薫の変わりに出現したアメーバもどきは消滅させたし♪ まったく。あたしの漫遊、というわりにこのあたしが活躍してないっ! というのはどういうわけかしらねぇ。 ほんっと…もう少しお仕置きしとかないと…… まあ、それはそれとして。 それでは、改めましてv薫の変わりのエルですv さてさて。今回はランナウェイガールのその後の雨の人情宿場編をお送りいたしました♪ このたびはまったもくってこのあたしが活躍していませんっ!ゆるせませんっ! というわけで、さっきの人間をアメーバに変化させる小動物。 とある世界では、微生物ともいうけど。空気感染で煮沸消毒もまったくきかないv これをひとまずランダムにふりまくとしますかね♪ それでは、また次回にてv みなさま、ごきげんよう〜vv |
33422 | Re:エル様漫遊記・番外編〜戦慄!雨の人情宿場編〜 | 星野流 E-mail | 2007/10/7 11:39:26 |
記事番号33419へのコメント 初めまして。星野流と申します。 リナがL様と言う設定は凄いですね。 かなりの無茶をなさっています。 それに加え、すぺしゃるが本編の間にあるようで。 ナーガとアメリアが姉妹だったと言うのは初めて知りました。 よくご存知ですね。ご自分で調べたのですか? 本編の方も気になるのでこれからホーム・ページの方へ行かせて頂きます。 これから、末永くお付き合い下さい。 |
33423 | あの二人は作者公認裏設定ですよ? | かお E-mail URL | 2007/10/7 18:12:48 |
記事番号33422へのコメント こんにちわ。始めまして。 ガード・ワードさんのころから小説は拝見させていただいておりますv コメントありがとうございますv >アメリアとナーガ ?ご存知なかったんですか? あの二人が姉妹だ、というのは作者公認の裏設定ですよ? メガブランド企画さんにおいても、作者対談でもきっぱり公言してますし (ご存知とはおもいますけど、作者公認のFCHPです) 最も、SP本編の中とかでは語られてない裏設定ですけどね(苦笑 ともあれ、コメントありがとうございますv この漫遊はリナ=エル様。という設定ですのではっきりいってはちゃめちゃですv これからも気がむきましたらよろしくおねがいいたしますv (ぽそっと…ガードの子供の父親が気になってます・・・・) それではvまたv お互いに無理せずに頑張りましょうねv ではではv かしこ |
33424 | Re:あの二人は作者公認裏設定ですよ? | 星野流 E-mail | 2007/10/7 19:26:04 |
記事番号33423へのコメント ガード・ワードの頃から見ていただき、ありがとうございます。 アメリアとナーガは作者公認でも、本とアニメのNEXT・TRYを合わせて5・6話くらいしか知らないので全く知りませんでした。 スレイヤーズを知ったのも四年前の事でした。勿論、アニメは再放送を偶然見れたくらいです。 エル様漫遊記、コメントさせていただいてから見せていただきました。小説の量が凄いですね。圧倒です。 これからもじっくりと読ませていただきます。 ガードの父親が気になるということですが、彼は一見平凡な人です。 しかし、遺言が「まっとうに生きてくれ」でした。 そうですね。お互い無理なく頑張りましょう。 また会えたら…見れたら?嬉しいです。 これからもよろしくお願いします。 |