◆−セイルーン姉妹珍道中 57−神高 紅 (2007/10/28 16:14:26) No.33436


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33436セイルーン姉妹珍道中 57神高 紅 2007/10/28 16:14:26


久しぶりです。そしてもし待ってる人がいたならごめんなさい。
そして初めましてのかたがいましたらこんにちは、神高紅です。
このお話はタイトル通りアメリア、ナーガ(+レミー)のギャグっぽいものです。
話数だけは多いですが別に短編ばっかなのでどこから読んでもいいです。

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人がいて、町があり、国がある。
悪がいて、英雄がいて、正義があった。
それはたわいもない、言ってしまえば凡庸なひとつの御伽噺。
だが少年たちは憧れた。いつの時代もどこの世界も単純な英雄物語は子供たちをひきつける。
そう、そしてここにも一人、英雄(ヒーロー)に憧れたものがいた。
その名前をシルヴァといった。

「見つけたぞ。きっとあいつらの仲間だ」

木の陰に隠れながら、緑色の髪をきらめかせた少年は、その髪と同じ色の瞳をきらきらと輝かせ、そう呟いたのだった。


第57話『ヒーローコンプレックス 前編』


とある日、とある場所、とあるお昼過ぎ、それほどには険しくない山道を歩む三つの人影があった。
一人は白いマントに白い服、肩でそろえた黒髪に結構ボリュームのある体つきをした少女。名前をアメリア。
一人は長い黒髪をポニーテールにした若い女。但し、全身刃物だらけで色気もへったくれもないが。名前をレミー。
そしてもう一人は・・・・・・(略)・・・・・・。名前はナーガ。
注)ナーガについてはお持ちの小説を参考にしてください。
しかし彼女らを汁物・・・・・・いや知る者が見れば少々の違和感を抱いたかもしれない。
その違和感の正体、それは彼女らはここまで全くの無言であることであった。

「・・・・・・・・・・・・ねえ、ナーガ、アメリア」

その状態を脱却し、一番最初に口を開いたのはレミーであった。
だがしかし、視線も顔も前を向いたまま、その歩みも止めてはいない。

「レミーさん・・・・・・」

彼女と同じく、視線も向けず、歩みも止めずにアメリアはそれに答える。

「確認もせずに斬っちゃだめですよ」

割と意味不明な返答に、レミーはあからさまにいやな顔をして立ち止まる。
他の二人もそれに合わせて立ち止まる。
それと同時、彼女らの後方の木の陰で何かも立ち止まる。

「ちぃっ!何か怪しい気配を何かわからないまま斬れば、もし斬っちゃったのが善良な市民とかでもうっかりで済ませられるのに」

済ませられません。捕まります普通に。心底残念そうな顔すんじゃねえよ。

「にしても・・・・・・いつまでついてくるつもりかしらね」

とこれはナーガが、彼女たちの後ろ十メートル程の位置にある木、ではなくその後ろに隠れる何かを親指で差す。

「野盗とかにしては殺気がないんですよね。どちらかといえば好奇心に近いような?」

「まあ、本人に直接聞いてみましょ。あの木の後ろらへんよね?」

ええ、と答えるアメリアを横目にナーガは小声で呪文を唱え始める。
それはアメリアにもレミーにも聞き覚えがなく。

「地蔦狩!」

ぼそり、と呟き、そのまま右手で地面を叩く。

「ぎゃっ!!!?」

聞こえたのはボコン、という鈍い音と幼い悲鳴。
思わず三人は顔を見合わせ、その正体を確かめに近づいていったのだった。


結論として、そこにいたのは少々風変わりな子供であった。
年のころなら十にも満たないであろう、緑色をした短めの髪と目をしたなかなかに可愛らしい少年である。
その少々風変わりな部分とは、その頭に金属製であろう冠のようなものをかぶり、その背には引きずるほどに長く赤いマントが付けられているところか。
さらに言うなら、その両足を土でできた蔓に絡めとられている所もそうではあるが、これはナーガの呪文によるせいである。
風体はともかくとして、三人は再び顔を見合わせる。少なくともこのような少年に後をつけられる覚えはないと。

「くっそー!!よくもやったな怪人めぇ!!」

困惑する彼女たちをよそに、少年は声を荒げる。いまだ自由な両腕をぐるんぐるん回転させながら。

「何やったんですか姉さん」

「何やったのナーガ」

二人同時に神速のつっこみ。その顔はある意味呆れながらも真剣そのものである。

「いやちょっと待ちなさいよあんたら!」

「いやだって、怪人って言ってますし」

「私イコール怪人という方程式を勝手に作らないで頂戴!!」

「違う気だったの!?」

それにはナレーターもびっくりです。
とにもかくにもその一言でさらに言い争いになる二人。
完全に置いてけぼりをくらった少年は思わず口を開け、ぽかんとする。
それにアメリアが気付き声をかける。

「ああすいません、えっと・・・・・・名前なんて呼べばいいですか?」

「・・・・・・シルヴァだ。そう呼べ」

その少年、シルヴァはわずかな沈黙の後、警戒の色を見せながらぶっきらぼうに答えた。

「えーと、それでシルヴァさん?何故私たちの後をつけてきたんです?」

「それはお前たちが悪だからだ」

悪、という言葉にぴくりとアメリアは反応する。

「それは聞き捨てなりません。正義の味方たる私を悪人呼ばわりだなんて!」

アメリアは悪呼ばわりされたことに、子供相手ではあるが、思わず激高する。
シルヴァはその勢いに思わずひるみつつ、

「・・・・・・だ・・・・・・だって、あの変な人の格好は伝承歌に出てくる悪の女幹部みたいじゃないか」

「うぐぅ!・・・・・・それを言われると・・・・・・」

ナーガのことを言われ、アメリアは逆に反論の言葉を失う。
はっきり言ってものすごい説得力であるといわざるを得ない。

ここでふとアメリアは思い出す、幼きころ、母に読んでもらった伝承歌を。
それが英雄聖戦、けっこう有名であり今ではあちこちに出回っている。
思い出してみればシルヴァの格好はその伝承歌に出てくる主人公を模している。
もしや、と思いアメリアはシルヴァに尋ねる。

「・・・・・・あなた英雄聖戦読んだことあるんですか?」

女幹部のことを説明するとき、自分のような格好だと言った母を思い出し懐かしい気分になるアメリア。
どんな母だよ。

「え!?お姉ちゃん英雄聖戦知ってるの!?」

まさかその言葉が出るとは思っていなかったのだろう、さっきまでの怪訝な表情ではなくずばり子供のような明るい顔を見せる。

「確かに姉さんの格好はどこに出しても恥ずかしくない悪の女魔道師ルックですけど、多分悪人じゃありませんから」

アメリアはシルヴァに優しく説明する。
でもはっきりとは言い切らないんだ。

「むー・・・・・・」

「それで、結局私たちをつけてきた理由はそれだけですか?」

「ふんだ、知ってるんだぞー。あの組織の人間だって事をー」

「ええっと?一体それは――」

アメリアの台詞はそこで途切れる、それと同時にナーガとレミーの口喧嘩もまたぴたりと止まる。
三人はそこで周囲の気配に気付く。それは肌を突き刺すような殺意の気配、その数にして十か。
そしてその殺気の向く先は、アメリアでもナーガでもレミーでもなく、

「その・・・・・・子供に何を聞いた?」

そこに響いたのはくぐもった声。まるでそう、分厚い布越しに話しているような。
ゆらりと、彼女たちの前に現れたのはその全身を厚手のローブで包み、口元をマスクのようなもので覆う一人の、恐らくは男。その男を除いて、残る気配は木々の間に身を潜ませたままである。
ぎらりと、その男の視線がシルヴァを射抜く。その視線を受け、思わずシルヴァの顔が生理的嫌悪を示し歪む。

「別に何も聞いていませんよ」

さっと、シルヴァと男の間をマントで遮りつつ、アメリアはそう答えた。
男は視線を上げアメリアの顔を凝視し、そこに嘘はないと見て取ったか、言葉を続ける。

「あなたたちは誰ですか?穏やかな人たちには見えませんね」

「・・・・・・知る必要はない。その子供を置いて去れ。そして今日の事は記憶の隈からすらも忘却しろ。・・・・・・その身体は大事だろう・・・・・・我々とて事を荒立てたくは無い」

これ以上ないくらいわかりやすい脅し文句である。しかも、言ってしまえばありきたりな。
断っておけば、この台詞を並の剣士や魔道師が聞けば、すくみ上がる程度の迫力は持っていた。事実、シルヴァの顔には恐怖の色が浮かんでいる。
だがはっきり言って、この三人に対してならば役者不足もいいところである。

「ほーっほっほっほっほっほっほ!!お約束過ぎる悪役発言ね。まったくもって器が知れるというものよ」

「やれやれね。今時そんなんじゃ、幼児でも怖がらないわよ?」

「幼き子供を誘拐すること、それ即ち悪!この私、アメリアの前で悪が栄えることなど、未来永劫ありえぬ事と知りなさい!!」

高笑いをし、嘲笑をし、朗々と名乗りをあげて、三者三様の態度でもって、男に対し否定を示す。

「・・・・・・・・・・・・」

その態度を受け、男は無言のままその右手を上げる。それと同時、彼女たちを囲んでいた気配が、

「風魔咆裂弾っ!」

吹き飛ばされ、

「火炎球っ!」

焼き飛ばされ、

「せいやぁっ!」

斬り飛ばされた。
三人同時の攻撃は攻撃態勢にはいらんとしていたローブたちを円状にすっ飛ばした。

「――へ?」

「――なっ!?」

あまりと言えばあまりのあっけなさに、思わず、男もシルヴァも唖然となる。
まあこんな場面で、真っ正直に戦う馬鹿なんそうはいないですから。
とにもかくにも一人につき綺麗に三人づつ倒され、都合残ったのはリーダー格であろう男一人とあいなった。

「んで、降参でもするのかしら?」

「・・・・・・・・・・・・一旦退かせて貰う」

「簡単に逃がすとでも?」

「・・・・・・思っちゃいない」

それを口にするのとほぼ同じく、そのローブの裾から白い煙が噴出す。
煙は急速にその視界を白亜に染め上げる。
男を捕まえんとナーガが飛び込もうとするが、

「・・・・・・毒やもしれんぞ?」

「――ッ!?」

おそらくははったり、しかしその言葉に思わずナーガはたたらを踏む。
その内にも煙は広がり、完全にその視野を奪ってしまっていた。
呪文により煙を吹き散らした後には、ローブたちの姿は一人たりとも残ってはいなかった。
一応と、辺りを見回しつつ、

「逃げられたわね」

「それにしてもなんなのよあいつら・・・・・・」

誰にかけるでもない呟き。
その傍らでシルヴァは肩を震わせて押し黙る。

「・・・・・・・・・・・・」

「あの・・・・・・シルヴァ君?」

「おおぉおおーっ!!」

「――っへ?」

アメリアはシルヴァが恐怖に震えているかと思い声をかけたが、返ってきたのは歓喜に近い雄たけび。

「口封じのために迫る悪。なんて・・・・・・なんてヒーローっぽい展開!!」

「ええええー!?」

むしろ喜んでました。このヒーローおたくめ。

「いやいやシルヴァ君?」

「はっ!?ってことはお姉さんたちは敵の組織から逃げ出してきて味方になるポジションの人たち!!」

とっぴ過ぎるお子様理論による超理論展開。
伝承歌の見すぎだよあんた。

「そー言えばアメリアも昔あんな時期があったわねぇ」

しみじみと語るナーガ。

「そこまでひどくはありませんでした・・・・・・よ・・・・・・」

反論を試みたアメリアだったが、その言葉は最後に行くほどに微小なものになっていったのだった。


(つづきます)

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あとがき

コ:こんにちは、ないし久しぶりだな。後書きによる進行役の一人、コウだ。
ク:どうもこんにちは・・・・・・上に同じく進行役の・・・・・・クロスです・・・・・・
紅:何でお前ら僕より自己紹介早いかな!?まあとにかく、お久しぶりです皆様、あらためて自己紹介、神高紅です。いやどうも短くてすいませんね。
コ:いやいや、それよりも先に言うべきことが山ほどにあるだろうに。
ク:全くですよ・・・・・・
紅:一応聞いておくとだな、なんでお前らすでに手に、剣と杖(←各々の最強武器)握ってんの?
コ:答えて欲しいのか?
ク:勇気ありますね・・・・・・
紅:・・・・・・言い訳して良い?
コ:十秒以内ならいいぞ。
紅:いえですね。そもそも作ってあったプロットがぶっ飛んだりなんかもあったわけで、学校も忙しくてまあぶっちゃけると結構な割合でサボってたわけなんですけ――

――鈍器っぽいもので殴られた音の後、鋭利な何かで斬られた音を思い浮かべてください――

コ:じゃあな。今日はこの辺で。
ク:ばいばい・・・・・・

――若干赤くなって鉄さびくさくなったコウとクロスが手を振りながら、幕――