◆−天秤は忘れた頃に駆けつける−月読 乾 (2007/11/17 22:48:04) No.33447 ┗天秤はその名を楽に語れない−月読 乾 (2007/11/22 22:41:51) No.33455
33447 | 天秤は忘れた頃に駆けつける | 月読 乾 URL | 2007/11/17 22:48:04 |
こんばんは! 始めましての方は宜しくお願いします。 月読乾と言います。 えっと…一応ここのサイトのお世話になってる期間は長いのですが、小説投稿は随分久しぶりだったりします(って言うか、この名前になってからは初…汗)。 今回は、僕の本来のオリジナル小説のキャラを引っ張り出して、オリジ作ってみました。 作品中に出てくる、「黄道の騎士」がそれです。 一応、現時点でもすぐに終わる内容にはならないと思うので、話が進めば他のメンバーも登場すると思います。 では、本編を… ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ACT1 天秤は忘れた頃に駆けつける 「おや?」 グラウスさんがその皮肉っぽい独特の目つきを向けたその先… アトラス・シティに行き交う人々の群れの中に一際目を引く格好をした褐色の肌の男性が立っていた。 その格好は、明らかにこの時代には…いや、恐らく過去の時代にも目立つ格好だったろう。 服装はボタンをしっかり止めた半袖の濃紺のどこか礼服を髣髴とさせる上着と同じ生地のズボン。その下の白いシャツには赤いネクタイを締めている。 腰には皮の紐で二重に縛った鞘を置き、その手に異国風の造りをした剣が抜かっていた。 デモンスレイヤーまでの時代なら兎も角、この時代に剣を持った人間は目立つ。 通行人が怪訝そうに振り向くのも無理は無い。 結構、個々のパーツがはっきりとした整った顔立ちだけど、右目は抜き取ったように顔からえぐれた隻眼だった。 何か不機嫌なのかそれとも普段からなのかまるで苦虫でも噛んだかのような渋い顔つきをした人である。 年の頃は見た感じグラウスさんよりも上で、多分20代の終わりか30代に届くか…って感じかな。… この間のクロスボウの人よりも年上の外見だけど、間違いなく『同僚』の人と思っていいだろうな…うん! 「何を一人で納得してるんだ…?」 グラウスさんが、その僕を一瞬だけジト目で見てすぐにまた目の前の剣の鞘の差してある左側の腰に軽く右手を添えている、隻眼の人に注意を戻した。 と、言うよりも僕をジト目で見るという行為であえて隻眼の人の注意が僅かでも逸らされるかの反応を見てたみたいだ… 「……」 結論から言うと、グラウスさんの陽動は効を成さなかった。 仏頂面の隻眼の剣士の人は、まるでこっちに対して油断の欠片も見せずに隙あらばいつでも切りかかりそうな様子で、静かに佇んでいた。 「あんたも、黄道の騎士の一人なのか?」 グラウスは陽動を諦めて今度は直接隻眼の人に尋ねる。 … 黄道の騎士。 どうやら、僕らと同じく『デモンスレイヤー』の時代に使われた術具を狙っているらしい所謂、商売敵だ。 いや、こっちは思ったほど気楽じゃないし向こうも気楽じゃないのかも知れないけど… とにかく、黄道の騎士の一人らしい隻眼の人はその腰の異国風の剣に右手を添えながら姿勢を崩さずに一歩歩みだすと始めて静かに口を開いた。 「貴方たちの方こそ、五魔族の類型の一人でしょうか…いや、今はそんな事よりも…」 あれ? 何やら冷静な雰囲気の中に妙に怒りが篭った様子の声だ。 僕たちは、確かに手段を同にする異の目的を持つ間柄だけど、まだ黄道の騎士に関しては恨みを買うような真似なんて… 前の2人… 『矢人』と『天秤』だったらしい2人は戦ったけどそのままお互い決着どころか傷も負わずにそのまま済し崩しに事が済んだ筈だったんだけど… 「何か、殺気だって無いか?お兄さん。ああ、自己紹介が後回しになったけど俺の名はグラウス… んー、まあ何の因果か五代魔族の内の『覇王』の類型だったらしくてさ…」 “ザッ!!” !! 一瞬の瞬きの間にそれは起こってしまった。 僕が目を凝らした瞬間には、グラウスさんは隻眼の人の脇を逸れる様にすれ違い様に手を伸ばした姿勢のまま、えぐる様に隻眼の人の肩を貫いていた。 隻眼の人は、相変わらずの仏頂面を僅かながら更に強くしかめて苦悶の意思を覗かせていた… グラウスさんの伸ばした手の爪先から黒い霧のような…瘴気が溢れて、それから隻眼の人の肩口から遅れて血が吹き出す。 ようやく、大通りを通っていたアトラアス・シティの人たちも異変に気づいてみんなが立ち止まり、女性の人には大きく悲鳴を上げる人も何人も居た。 「グラウスさん!あれだけ、衝動に任せて無闇に人を攻撃しないと言ったでしょう!!」 僕は、思わず柄にも無く声を張り上げてグラウスさんを非難していた。 ここからは聞いた話だ。 魔族ってのは、その存在の目的として本質的に『滅び』という物を求める性質があるらしい… デモンスレイヤーがまだ存命中だった頃までは、魔族という物は純粋に精神体と言う存在だったらしくまだ人の体に性質を受け継ぐ…と言う事は無かったらしいけど… 何にせよ、その影響で魔族の… しかも五大魔族と呼ばれる影響力が特に巨大な部類に入りえる『覇王』の血を受け継いでるらしいグラウスさんは今僕に言ったような事を、自分からわざわざ説明しておきながらも同時に攻撃と破壊の衝動を抑制できず、こうして目の前の存在を傷つける行為をしてしまう時がある。 と、言うよりむしろ最初に僕と行動する事を決めた時にグラウスさん自身から警告として言われた事だった… 「大丈夫ですか…その、黄道の騎士の…」 「ノーザ。」 目の前で起こってしまった事態にうろたえながらの僕の呼びかけに、隻眼の人はやはり静かだけど、意思の強さを感じさせる低い声で初めて名前をそう名乗る。 「えっと…ノーザ…さん。その、傷の方の手当ては…」 「浅く斬った…」 まあ、確かにグラウスさんがやった事を考えれば浅い。 肩の傷は出血から見ても、恐らく神経に達してはいないだろう… グラウスさんは、その衝動からして恐らくはノーザさんの心臓に狙いを定めていた筈だ。 一見、何事も無いように見えて最小限の動きであの一撃をいなしたのは、ノーザさん が伊達にこの時代にデモンスレイヤーの居た時代のように剣を手にしてる訳では無いと言う事を示している… 「確かに、グラウスさんがやったにしては浅いでしょうね… でも、すぐに治療しないと。 グラウスさんは、僕がしっかり引き止めておきますから…」 そう、言っても抑え切れなくても引き止める方法があるから僕はグラウスさんと一緒に居られるのだ。 まずは、ノーザさんでついに負傷者が出てしまったんだしこれ以上の被害人数も、被害規模も出さない為にも、ノーザさんには治療の際に黄道の騎士の怪我の生き証人としてグラウスさんの様な存在が居ることを伝えてもらい、僕たちは手段を同じにする相手とぶつからない様に目標をやり遂げないといけない… そう思いながら、僕はふと違和感に気が付いた。 「あれ?グラウスさん…?」 そう言えば、当のグラウスさんはノーザさんを襲った踏み込みの姿勢のままだ。 幾ら衝動に任せた踏み込みだったからって、何故いつまでも同じ姿勢を…? 「そうじゃない、浅く斬ったのは…」 ノーザさんのその低い声がまた僕の耳に響いたと同時だった。 「え??」 グラウスさんの腰から肩口にかけて、今度はノーザさんの倍くらいの血が噴出した。 大きく体が傾いたと思った瞬間、グラウスさんの体がうつ伏せに倒れる。 通行人の悲鳴が所々で上がり、町は大騒ぎになった。 「…居合い…?」 確か、異国の剣術にある剣の究極系の一つ、鞘に収めた剣を一瞬で抜きその勢いで相手を斬る方法… ノーザさんは、そのまま肩で大きく息をすると屈んでグラウスさんの体を無事な方の右手で改めた。 「いずれにしても、病院に運ぶ必要があるな。俺も肩を怪我したし…この世界の町の警察とも話をつける必要はあるし…何よりも、ルーを知っている筈の相手だ。」 ノーザさんは、そう呟きながら最後に僕の方を向いて… 「お嬢さん…まずは手当てをする為の病院を。彼は俺が運びます。」 それが…『僕』 古代竜族の末裔のファン・ガーブ・コプトの記録の第一章だったのかも知れない… |
33455 | 天秤はその名を楽に語れない | 月読 乾 URL | 2007/11/22 22:41:51 |
記事番号33447へのコメント こんばんは、乾です。 えっと、とりあえずオリキャラ絡みのスレ話第2弾が兎にも角にも出来ました… 今回は、説明編が長くなってますけど… 何にせよ、今後も温かい目で見ていただければ幸いです。 それでは ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ACT2 天秤はその名を楽に語れない 「とにかく、安静にしてれば大丈夫でしょう。それにしても…」 アトラスシティの中央にある病院の救急ベッドをカーテン一枚で挟んだ病室の一角で、僕…ファン・ガーブ・コプトと、 今は僕のすぐ隣に立つ切られた服の袖を捲り上げて二の腕の傷跡に包帯を巻いた、褐色の肌の隻眼の渋い顔立ちの人…ノーザさんを前に、 僕が一緒に旅をしている間柄のグラウスさんとノーザさんの手当てをしてくれた壮年の白髪をした穏やかそうな雰囲気の先生が、少しずれた丸眼鏡を片手の指先で直しながら、もう片方の手に持ったグラウスさんのカルテを目にして少し語尾のトーンを感歎した様に大きくして呟く。 「先に応急処置が施してあった様ですが、結果的に非常に適切な処置が取られていますね…とは言っても、基本的には専門でもないのに意識の無い重傷を負った患者の処置に手を出すのを認めるわけにはもちろんいかないのですが…」 先生の言葉は、言外にグラウスさんを発端はどうであれ斬り付けて、その体を病院に運ぶ前に手当てしたノーザさんを非難していた。 僕の視線は自然に隣に居るノーザさんの方に向かう。 肩の傷口をもう片方の腕で押さえながら、ノーザさんは相変わらず出会ったときから変らずのムスッとした顔つきで静かに先生の方を見据えていた。 「あの…それでグラウスさんは結局どのくらいの怪我…やっぱり、入院が必要なんでしょうか?」 とりあえず、僕は今の気まずい空気を紛らわす意味も少しだけ含めてグラウスさんの怪我の程度についての話を切り出してみた。 「ええ。命に別状はありませんし、傷も跡を残さず完治できるものですが、それでも一週間ほどは安静にして頂く必要がありますね。」 その柔和な感じの目を細めながらの先生の言葉に、僕は安堵の感情とともにあれだけの斬撃を受けたグラウスさんが少なくとも一週間の入院で全快する程度の傷…言い換えれば、あの血しぶきが立つほどの斬り口は逆に手当てさえ早ければ跡を残さないほどの精密な切断面だった事を考えて、少しだけ隣に立つノーザさん…黄道の騎士の強さ如何の程度に背筋が寒くなるのを感じた。 「…では、私とファン氏は一旦これで失礼します。色々とやる事がありますので。」 ここに来て、始めてノーザさんがそのトーンの低く強い声で静かに先生に向かって言葉を紡いだ。 …正直、僕にとっては改めて二重に驚く事だった。 まあ、その事についてはこの後に聞いてみるつもりだし。 僕にとっても色々と尋ねたい事が、このノーザさんにはあるのだ。 ノーザさんは、隣の…僕の居る位置からなら更に隣の隣に立て掛けていた鞘に納まった異国風の剣を手に取ると、そのまま立ち上がってほんの一瞬だけ先生の向こう側のカーテン越し… 救急ベッドがあるグラウスさんが寝ている筈の病室に目をやる。 「あ、僕も一旦おいとまさせてもらいます。色々とご迷惑をかけます!」 僕は、若干タイミングをずらし気味にノーザさんに続いて椅子から立ち上がると、そのまま部屋の反対側のドアに向かおうと足を直して背を向ける… 「ところで、言いそびれていましたけど…」 ?? てっきり、僕と同じくドアに真っ直ぐに向かうものと思っていたノーザさんは、ドアには向かわずにそのまま先生の方に歩みを進めると、先生の耳に口を添えるように近づけてそのまま表情を変えないままに耳打ちをしていた。 先生は… 「成る程、そうだったのですか…」 驚いたような、納得したような複雑な顔で頷いていた。 「ねえ、ノーザさん…」 病室のあった3階から2階を繋ぐ交差点の高い壁際から降り注ぐ日光が辺りを照らしていた。 病室を出て、病院の階段を隣り合わせに下りながらの状況を見計らって僕はとりあえずの聞きたかった事を切り出してみる。 「貴方が女性だって事に気づいて、その上であの医師の方に知らない振りをした事なら… すまない、謝る。」 うん?それはかなり先回りした物の言い方だ。 「う〜ん…いや、それも確かに聞きたい事の一つといえば一つだったんですけどねえ…」 今の僕の格好、 白衣を思わせる白い長袖のジャケットに、下は黒い首まで襟を伸ばしたワイシャツ。 下は長いジーンズに登山に使うタイプのブーツを履いて髪はバッサリ切っている。 ぶっちゃけ、意識した男の子に見える格好だ。 理由は、もちろん長旅の護身が半分。 後の理由も半分。 「まずはハッキリ聞きたいんですよ。…黄道の騎士…って何なんですか?」 「……」 ノーザさんは、階段を下りながら僕の方にその隻眼の渋い顔つきを向けて僕の顔を凝視した。 黄道の騎士… いや、僕はその言葉を何度も口に出しておきながら正直なところ、それが何なのか具体的な意味をさっぱり分かっていない。 同じ、デモンスレイヤーの時代に存在してた魔道具類を目的にしてる…からこそ、そこら辺に対する目的と手段の一致と不一致ははっきりさせておきたいのだ。 僕の問いに対して、ノーザさんは少しの間…予想の範疇ではあったけれど顔を僅かに俯かせるように沈黙して… それから。 「…異世界。の概念は知っているかな…?」 その唐突な物の言い方に、僕はとりあえず。まずは一応面食らった。 いや、一応今は時代だって進歩してるわけだ。 数百年の昔の、剣と魔法を直接使って戦っていた時代に比べたら知識の収集具合だって随分違う。 とりあえず、200年くらいも前のデモンスレイヤーの時代には色々とあって知ってる存在は少なかったらしいけど… 「知ってますよ!この今僕達がいる世界を始め、4つの世界が対を成すように絡みあってる。 それらの世界から、形を変えて武器が具現化する…って話もありますし。」 まくし立てる僕の言葉を、聞きだしておきながら意に介さず… と言った風情でノーザさんはそのまま前に視線を向けたまま… 「それらの世界は違っていても、繋がりのある因果律…だ。俺らのいる世界はそれらとはまた別次元と考えてもらって構わない。」 淡々と微妙に分かりにくい抽象概念を言ってくれる人だった。 でも、それを契機に僕は以前から黄道の騎士の話題が出るに連れて触れられていた言葉を反芻して、結び付けてみる… 「…ひょっとして、こことは違う惑星から来たとか…?」 飛躍もいいとこの発想だったし、根拠の無い与太話だとも一応は思った。 けど、ちょっとだけ信じるに足る事もあった。 果たして、ノーザさんは… 「まあ、それで間違ってない。俺たちの役割は、それぞれポジションと言う12ずつの役割に分かれていて…」 「…それが、黄道の星々の代行者と?」 縦軸横軸に繋がってるのでは無く、ましてやグラウスさんの様にこの世とあの世に繋がってるのでも無く、地上を離れて繋がってる話らしい。 「まあ…空を円周で等分すれば、その力も12に分かれる。俺はその内の一つだと言う事だ。」 ノーザさんは、それだけを言って少しだけ目線を遠くの方に向けた。 んー…そちら側はそちら側で事情はある…んだろうなぁ。 当たり前の事だろうけど… 「えーと…僕としては、ここでノーザさんがどの星の辺りにいて、お仲間は… まあ、これはさすがに教えにくい事でしょうけど。 僕の知ってる情報と引き換えに話してくれる…って条件を提示したらどうします?」 ここに来て、カマをかけてみる事にした。 僕とグラウスさんとしても、黄道の騎士を名乗る人とは既に2人接触しているのだ。 ここら辺で、概ねの情報を聞き出しておく必要はあるだろう。 詳しく教えてくれる事は望めないとしても、ここで人数と大体分かる範囲での他のメンバーの活動地域を知らせるのは、向こうにとっても余計な干渉を避ける事になると一応踏んではいるのだけれど… 「…そうだな。信じる信じないは別として、俺は『天秤』。基点になる位置から数えて7番目のポジションだ。」 ん! 黄道の騎士には嘘つきが居るのか? まあ、ノーザさんが混乱させようと嘘を言ってる方向で考えれば今回は運が悪かった事になる。 何しろ… 「僕達が黄道の騎士と会ったのは既に2人…一人は『矢人』。2人目は既に『天秤』を名乗って居ました… 2人目の…女の子でしたね。 彼女は未だにこのアトラスシティのすぐ近くに居るはずです。」 ノーザさんの顔が突然引きつった。 … … ? いや、これって嘘がばれて気まずいとか、そういう表情じゃない…よな。 それに、この人はしょうもない嘘がばれて無様なうろたえ方をする精神持って無さそうだし… ってか、いきなり心当たりのある人間に触れてしまったかのような思い起こすような真剣さのある顔だった。 気が付けば、僕たちは丁度階段を下りて2階の病室に来ていた。 3階と2階の階段の間の交差点から漏れる光は、まだ僕らを照らし出していて… ?? そこに来て、僕はノーザさんとは別にある事に思い当たった。 (ノーザさんは、既にその時表情をさっきまでのクールな雰囲気に戻して振り向いていた。) 階段の上の四角窓から直接射す光が、随分下に居る僕たちに直接射してる…? 僕が、ノーザさんにワンテンポ遅れて振り向いたその階段から射した光が、まるで波の様に。 霧のように形を作り、それが無数の矢の様なエネルギー体になって僕らに向かってきた! “シャキン!!” ノーザさんの右手が前のグラウスさんにやった時と同じ様に腰の剣の鞘に触れたと思ったとき… 僕らの前に降り注いでいたエネルギー体のほとんどが縦に切断され、拡散する様に消えていく。 この人、良くは分からないけどエネルギー体を斬れるらしい。 と、そんな事を考えてる暇では無かった。 僕らの前に降り注いでいたエネルギー体の多くはノーザさんの斬撃で消滅したけれど、残ったエネルギー体はそのまま地にベッタリと張り付くように廊下に広がると、僕らを蛇行する様に避けて、それから僕らの周りに渦を巻くようにまとわり付いて、輝く円筒形の壁になって僕らを包む。 って…僕らをこのまま四方八方から襲うつもりか。 僕としても、騒ぎを最低限に済ませる! そう思って、ポケットの中の“その”ナイフに手を伸ばした矢先… “ズゴオオンン!!” 外から体内から全身を揺らすような衝撃が走って、僕は頭上に頭をぶつけ背中をしたたかに叩きつけられて… あうう… 床を無様に転がっていたことに気づくのに、掛かった時間3秒ほど… もう片方のノーザさんに何とか目をやると… ノーザさんは剣の刃を鞘から僅かに覗かせて、それを盾の様に構えた姿勢で踏みとどまっていた。 その表情には、破顔のような諭すような厳しさと優しさの感じられる顔で… 「あー!良く見たらノーザパパじゃん!こんなとこで何してんの〜!!」 2階の病室の廊下の向かい側に、ハイネックの服で長い髪をお団子にまとめた10歳くらいの少女… 「ルー…」 ノーザさんの呟いた名前と、その少女は僕がこの間出会った『天秤』の騎士を名乗った娘だった。 |