◆−2005年ぶり以降の連載開始です。−かお (2008/4/15 19:54:10) No.33514
 ┣○パラレル・トラベラーズ○ 〜思惑?〜−かお (2008/4/15 19:55:43) No.33515
 ┣○パラレル・トラベラーズ○ 〜願い?〜−かお (2008/4/15 19:56:25) No.33516
 ┣○パラレル・トラベラーズ○〜残されしものの役目〜−かお (2008/4/15 19:57:07) No.33517
 ┣○パラレル・トラベラーズ○ 〜死霊都市(サイラーグ)〜−かお (2008/4/15 19:57:46) No.33518
 ┣○パラレル・トラベラーズ○ 〜シルフィール=ネルス=ラーダ〜−かお (2008/4/15 19:58:30) No.33519
 ┣○パラレル・トラベラーズ○ 〜サイラーグ神官長・エルク〜−かお (2008/4/15 19:59:03) No.33520
 ┣○パラレル・トラベラーズ○ 〜辺境の村にて〜−かお (2008/4/15 19:59:41) No.33521
 ┣○パラレル・トラベラーズ○〜エリシエル=ヴルムグン〜−かお (2008/4/15 20:00:25) No.33522
 ┣○パラレル・トラベラーズ○〜責任と約束〜−かお (2008/4/15 20:01:06) No.33523
 ┣○パラレル・トラベラーズ○〜思惑〜−かお (2008/4/15 20:01:53) No.33524
 ┣○パラレル・トラベラーズ○〜感覚と真実〜−かお (2008/4/15 20:02:49) No.33525
 ┣○パラレル・トラベラーズ○〜脅威の実験〜−かお (2008/4/15 20:03:28) No.33526
 ┣○パラレル・トラベラーズ○ 〜エリシエル〜−かお (2008/4/15 20:04:09) No.33527
 ┣ ○パラレル・トラベラーズ○〜偽りの中の真実〜−かお (2008/4/15 20:04:48) No.33528
 ┣○パラレル・トラベラーズ○〜行動と結果〜−かお (2008/4/15 20:05:28) No.33529
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜旅の目的?〜−かお (2008/4/18 20:28:31) No.33535
 ┣○パラレル・トラベラーズ○〜運命?必然?偶然?どれ?〜−かお (2008/4/18 20:29:37) No.33536
 ┃┗待ってました〜−とーる (2008/4/19 23:43:27) No.33538
 ┃ ┗だからこそのパラレルですv(笑−かお (2008/4/20 09:53:14) No.33539
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン〜−かお (2008/4/20 10:00:16) No.33540
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜邂逅?〜−かお (2008/4/20 12:12:48) No.33541
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜黒の・・・〜−かお (2008/4/21 17:31:21) No.33543
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜襲撃?攻撃?〜−かお (2008/4/22 18:39:03) No.33544
 ┣○バラレル・トラベラーズ○〜神官ゼロス〜−かお (2008/4/23 23:01:19) No.33545
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜襲撃開始?〜−かお (2008/4/25 22:18:55) No.33546
 ┣○パラレル・トラベラーズ○〜レナとリナと・・・・〜−かお (2008/4/25 22:20:00) No.33547
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜写本〜−かお (2008/4/26 21:33:19) No.33549
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜秘めたる真実〜−かお (2008/4/27 19:54:58) No.33551
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜捕縛、そして・・・〜−かお (2008/4/27 20:01:53) No.33552
 ┃┗Re:○バラレル・トラペラーズ○〜捕縛、そして・・・〜−麻緒 (2008/4/27 20:49:05) No.33553
 ┃ ┗こんばんわですv−かお (2008/4/27 21:09:47) No.33555
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜閉鎖された街〜−かお (2008/4/28 22:24:37) No.33557
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜魅入られた街〜−かお (2008/4/29 09:28:36) No.33559
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜ワイザー=フレイオン〜−かお (2008/4/29 20:41:49) No.33560
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜拠点〜−かお (2008/4/29 20:42:45) No.33561
 ┣○バラレル・トラペラーズ○〜無と有〜−かお (2008/4/30 23:29:24) No.33564
 ┗○バラレル・トラペラーズ○〜それぞれの夜明け〜−かお (2008/4/30 23:30:17) No.33565


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335142005年ぶり以降の連載開始です。かお E-mail 2008/4/15 19:54:10


こんにちわ。はじめましての人ははじめまして。
題名にあるとおり、2005年からぱた、ととまっていた連載の開始です。
といってもHPのほうではちまちまと打ち込みしては随時アップしてたんですけどね。
ある程度たまってからこちらにも、とおもってたら数年が経過してしまったという(こらまて
最近は個人的な理由で精神的にもきついじょうたいですし・・・
・・・・猫が行方不明中…くすん……
それらを考慮して、さらにはめずらしく体調がわるい、というのでお休みもらえたので(いつもはそれでも出勤組み)気分転換をかねての投稿です。
それでは、いっきます。
前回までは、過去ログ、著者別リストをご参考までに。

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33515○パラレル・トラベラーズ○ 〜思惑?〜かお E-mail 2008/4/15 19:55:43
記事番号33514へのコメント


  まえがき:
  さてさて。こんにちわ。はじめましての人もおおいとおもわれます。
  ときどき書きなぐりさんの投稿小説1に出没しているかお、といいます。
  今回のこれは、2005年以後、ぱたっととまってる連載小説さんの続きですv(まて
  2006年以後、ぱたっと止まっているスレイヤーズinNextのほうはいましばらくお待ちください-・
  できればREVOLUTIONが始まるまでにはアレもこれも完結させたい今日この頃…
  何はともあれ、かぁぁぁぁなりひさかたぶりにいくのです。
  あ、前までが判らないひとは、過去ログ、または著者別リストを参考にしてください。
  それでは、いっきますv

  ##############################################
  
         ○パラレル・トラベラーズ○ 〜思惑?〜


  「……これで全員のはずです……」
  捕らえられていた子供たちや人々を全員解放し、こっそりと地下の脱出口からにがしてゆく。
  そんな彼女を傍目でみつつ。
  「でも、ほんとうにいいの?」
  気持ちはわからなくもないが問いかける。
  「あなたも早くにげて。私は……」
  そう問いかける横にいるエイルにと話しかける。
  彼女がもう一つやらなければいけないこと。
  そしてまた。
  独学で自分なりに調べて判った自分のもっている【力】。
  そして…その【力】を使えば一時とはいえ、幽体…つまりは精神体のみ。
  となっている本家の【ルビア】をその身に憑依させることが可能だ。
  ということ。
  彼女がもっている力は多少ではあるが存在そのものの力を多少増幅させること。
  ゆえに、実体化すらもかなわない力のない存在だとて一時ならば存在することができる。
  自らの身に彼女を憑依させることで【ルビア】は器を得て動くことができる。
  とはいえ長い時間はいかないが。
  「ルビアのたましいとともに、かれをとめる…か」
  そんなエイルのつぶやきに。
  「…どうしてそれを……あなたも…視えるの?」
  普通は視えるはずがない。
  彼女はゴーストなどといった存在とは違い、力がないがゆえに肉眼では見えないのだから。
  驚き目を見開くルビアの言葉に。
  「まね。」
  いってかるくウィンク一つ。
  ある程度の波長などがわかれば誰でも視ることは可能なのだが。
  だがしかし……
  「……でも、ほんとうにいいの?あなたたち?」
  そこにいるルビアと、そしてまた、魂のみとなっている【ルビア】との二人にと問いかける。
  彼女たちが望んでいること…それ即ち……
  そんな二人の想いがわかるからこそ。
  二人の意思を確認するためにも問いかける。
  そんなエイルの言葉にそれぞれが悲しく微笑みかえす。
  彼女たちの願いと想いは…ただひとつ。
  それは…『ハルシフォム』を助けること。
  そんな二人の想いをうけ、ふっとかるくため息をつき。
  「…ルビア。あなたのちからをつかえばあることがかのうよ?」
  二人が気づいていないことを指摘する。
  二人の願いは純粋なるもの。
  そしてまた……痛いほどに切実なもの。
  別に自分がかかわるわけではなく、選ぶのは…彼女たち自身。
  そう思いつつも、エイルは目の前のルビアにと問いかけてゆく……


  「ききませんね……」
  そんなっ!?
  リナ達がセイグラムたち魔族と戦っている同時刻。
  こちらもまた、ある人物と対峙しているレナとラウリィの二人。
  確認のために放った呪文。
  だが、目の前の人物に効いた様子はまったくはない。
  しかも…
  「…こいつは……」
  気配でわかる。
  人でありながら、人でない。
  この気配には彼は覚えがある。
  以前一度ほどみたことがあり、それ即ち…
  「あんたも人間をやめてる口か……」
  「…不死の契約を結んでる…というのはどうやら嘘ではないようね…」
  不死の契約。
  それは魔族と契約を交わすことによりかりそめの不死を得る、というもの。
  その契約した魔族以上の力をもってして攻撃するか、もしくは。
  その魔族と契約を交わしたときに使う、魂そのものを隔離する、という意味合いの品。
  一般に『契約の石』と呼ばれている品を壊す、もしくは契約した魔族そのものを滅ぼす。
  それらをしなければたとえどんなに攻撃などをしかけても、
  契約を交わした人間は死ぬことはなく、そのまま生きつづける。
  最も、何ごともに例外というものはつきもので。
  絶対にどんな存在が相手でも相手を滅ぼす術、というのもは存在する。
  その存在自体があまり知られてはいないが……
  そんな二人、レナとラウリィの言葉にかるく微笑み。
  「おや。よくご存知ですね。おそらくあのタリムから聞いたのでしょうが。あれも実験の一つでしてね」
  いけしゃあしゃあと言い放つ。
  真っ白いローブに身を包んだ一人の男性。
  ここ、アトラスシティの魔道士協会の評議長である人物。
  彼女を完全によみがえらせるためにも様々な実験を重ね。
  そして、完全なる状態でかつて死んだ彼女をよみがえらせる。
  それが彼の願いであり最終的な目的。
  そのために色々な魔道をかじり、人造人間(ホムンクルス)をも作り出した。
  実験の一つとして作り出したそれらは、だがしかし。
  やはり彼女を完全によみがえらせるまでにはいたらず……
  それゆえに、意識をもたないただの器のみの人造人間(ホムンクルス)を作り出した。
  あとはその器に彼女の魂を呼び戻し吹き入れることにより、よみがえらせることができる。
  魔族セイグラムとの契約は人間を捉えその生命エネルギーを吹き込むことにより。
  魂を呼び戻すきっかけとなる、そういわれそのとおりに行動している。
  そんな彼の考えや思いは知るはずもなく。
  「そうね。あのタリムって人からきいたわ。
    …あんたが恋人をよみがえらせるために魔族と契約をかわしたって。
    そなんだったら、その魔族に恋人をよみがえらせてくれって頼めばよかったのに。」
  ある程度の力をもっている魔族ならば死人をよみがえらせることも可能。
  そう郷里の姉よりレナは聞いている。
  様々な知識をもつことは、自らの身を守るためでもあり、そしてまた。
  レナの…そして、何よりも一つの体を共有している双子のリナのためにもなるがゆえに。
  そんなレナの言葉に、ふっと笑みをうかべ。
  「いくら純魔族だとてできることと出来ないことがあるのですよ。
    …さあ、おしゃべりはここまでです。あなたたちならばきっと彼女のためになってくれますね」
  目の前にいる少女の噂は聞いたことがある。
  小柄な栗色の髪に紅の瞳の少女。
  盗賊殺し(ロバーズキラー)のリナ=インバース。
  おそらくは名前がもじられてそう伝わったのだろう。
  そう彼自身としては解釈している。
  あるいみそのとおりで、だがしかし事実は異なるのであるが。
  そんな力がある存在ならばきっと彼女をよみがえらせるのに役立つはずだ。
  そんなことを思いつつも間合いをつめるハルシフォム。
  ここは仮にも町外れだとはいえ仮にも町の中。
  こんなところで大技…つまりは巨大な魔術を使えるはずもない。
  自分を傷つけるには黒魔術最高峰の竜破斬(ドラグ・スレイブ)を使うしかない。
  伊達に魔道士協会の評議長を務めていたわけではない。
  その辺りの知識は自分とてもっている。
  それがわかっているからこそ勝利を完全にと確信する。
  「では。お遊びはここまでにして。観念してもらいましょうか?」
  ハルシフォムがいいつつ、すっと一歩足を前に進みだしたその刹那。
  どくっん。
  いいようのない脱力感にと襲われる。
  力が一気に抜けてゆくようなそんな感覚。
  「…なっ……」
  自分でも判る。
  力が急激に少なくなっていき、体力そのものすらも失ってゆくのが。
  それはちょうどリナ達が契約の石を破壊したがゆえに。
  契約を交わしていたハルシフォムに肉体的な変化が見られているのであるが。
  「…馬鹿…なっ……」
  契約の石が壊れた、ということはありえない。
  だがしかし…可能性としてはそれしか思い当たらない。
  仮にもあの魔族が直に身につけているものが壊れる…など普通では考えられないこと。
  だが…この脱力感は……まさか純魔族であるあのセイグラムが滅びる。
  ということは考えられない。
  ならばたどり着く答えはただ一つ。
  「契約…が……」
  そうつぶやく彼の言葉に。
  「…これは……」
  違和感を感じつつも、だがしかし、すぐさま一つのことに思い当たる。
  それ即ち。
  「誰かがあんたの契約の石を壊したみたいね。」
  姿すらをも変えてゆくハルシフォムをみつめつつ、言い放つレナの言葉に。
  「…たぶんあのリナさんたち…かな?」
  魔族と交わした契約を壊す…などという芸当ができるのは。
  今のところリナ達しか思い浮かばないがゆえに思わずつぶやくラウリィ。
  「たぶんね」
  あの『リナ』ならばそれくらいは可能なのかもしれない。
  完全に詳しくきいたわけではないが、彼女たちと出会い彼女たちの話をも聞いている。
  何でも彼女たちは魔族に目をつけられて…そして今日に至っているらしい。
  それゆえに魔族との戦いに嫌が応なしに慣れてしまったらしいが…
  そんなことには慣れたくないし、またそんなハメにもなりたくない。
  だが…レナには判る。
  自分もその運命に関わるざるを得ない…ということが。
  二つの精神と一つの器。
  それに水竜王と赤の竜神の力。
  双子で産まれるはずの姉である【リナ】が誕生しなかったのにも理由がある。
  それは…必然という名の理由。
  それが判っているからこそ……
  そんなことをおもいつつも、ふとある気配にきづき、はっとなる。
  そしてそれはどうやら戸惑いの声を上げているハルシフォムも気づいたらしく彼の後方を振り返る。
  そこには歩いてくる大人の女性らしき人影二つと…小さな人影が一つ。
  「「……あれは……」」
  その姿をみとめ、思わず同時につぶやくレナとラウリィ。
  それは…魔道士協会の地下室にてタリムにみせられたとある人物画の人物。
  そして……
  「「エルちゃん?!」」
  二人同時に思わず叫ぶ。
  レナ達の目にとはいったのは…
  ゆっくりと歩いてくる瓜二つの赤い夕日色の髪をした女性二人と。
  そして……連れさらわれたという…エイルの姿。


  彼女たちの決意に口を挟む気はない。
  決めたのは彼女たち自身。
  意思をもたない肉体のみの人造人間。
  確かこの辺りの人々というか関係者などはそういうのを肉ゴーレム。
  といって普通のそれとはよびわけていたはずであるが。
  だが、そんな人の手により作り出した肉体のみの器に。
  様々な生体エネルギーを注ぎ込んだところで、死人が生き返るはずはない。
  生体エネルギーで多少は動くことはできたとしても、それは当人にはなりえない。
  生体エネルギーを吹き込めば動くことは可能。
  そうハルシフォムはセイグラムから聞いている。
  だからこそ…意思をもたない器の肉体に人間の生体エネルギーを注ぎ込んでいた。
  確かにセイグラムは嘘はついていない。
  基本的に魔族は嘘はつけない。
  真実もいわないが。
  彼――ハルシフォムの誤算は…そのことを知らなかった…ということ。
  だが…それもまた彼自身が選んだこと。

  少女…エイルことエルがそんなことを思っていることは…誰も知る由もない。


                              ――続く……


##############################################

あとがき:
L:・・・で?何でいまさらようやく投稿する気になったわけ?HPのほうでもきちんと明記してないこれを?
薫:気分転換です(どきっぱり
姫:まあ、熱があって体の節々いたいのに猫を探しにいきたい、とわめいている薫さんらしいけど。
薫:というか本気でいきたいんですけど……
L:あんたが、風呂上りとかでもとにかくひたすらに昼も夜もさがしにいってたからでしょ?体調くずしたのは。
  そもそも、いるだろう、とおもわれる場所から呼んでもでてこないみたいだし
薫:それをいわないでくださいぃぃ…。でも、「オーリング」占いではそこが有力ですし。
  何よりも離れた場所にいる第三者の占いでもそれがでましたしっ!
  なので二ヶ月たとうが、あきらめませんっ!
姫:そんなことしてたらこんどは持病まで悪化するわよv
L:というか。すでに悪化してるわよ?こいつは?
薫:・・・・・・・・・・・・・・・・・とにかく。はやく見つけ出すことが今は優先です!
姫:で。ふらふらして家の中あるくのすら危ういからってこれに現実逃避で逃げてる…と。
L:まあ、こいつらしい、といえばこいつらしいけどねぇ。
  そもそもあたしたちが活躍してないし。
薫:でも今の精神状況ではエル様視点とかの小説は無理ですぅぅ(くすん
L&姫:人って軟弱よねぇ〜……
薫:お二方の視点でいわないでください……
  ともあれ、そういうわけで(どういうわけよ!?)の投稿です。
  続きはまたいつになるのか皆目不明です。それではv
L&姫&薫:みなさま、またいつかvv

2008年4月16日(火)某日

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33516○パラレル・トラベラーズ○ 〜願い?〜かお E-mail 2008/4/15 19:56:25
記事番号33514へのコメント

  まえがき&ぼやき:

  とりあえず。そろそろこのアトラス編もクライマックスです。
  そういえば…一応原作に添った(?)平行世界なので。
  原作と同じく死人などがでますので、ご了解ください(おそいってば…汗
  何はともあれ。いくのですっ!

#####################################


      ○パラレル・トラベラーズ○ 〜願い?〜


  あれは……
  歩いてくる人影をみて思わず目を見開く。
  まさか…だがしかし。
  一緒にあるいてきているあの少女。
  あの娘の生体エネルギーは遥かに平均値を超えていた。
  ならば…目覚めても不思議ではないのかもしれない。
  「…お…お……」
  力のはいらない身体を何とかうごかしつつ、そちらにむかって移動する。
  もはやレナ達は眼中にはない。
  彼――ハルシフォムの目には自分のほうにやってきている女性。
  『ルビア達』の姿しかその目にはいっていない。
  一人は確実にわかるが、もう一人は…
  「ルビ…ルビア…ルビアルビア……」
  急激に衰弱してゆく身体をひこずりながらもそちらのほうにとあるいてゆき、
  真っ白いワンピースを纏っている女性をふらつきながらも抱きしめる。

  「…でも…あれは……」
  ハルシフォムは気づいていないのであろうか。
  思わずいいかける言葉がとまってしまう。
  ゆっくりとではあるが、だがしかし、確実に。
  その白いワンピースをまとった女性の身体が溶けている…という事実が嫌でも見て取れる。
  足元に目を移せばその変化は一目瞭然。
  急激に生体エネルギーを別の身体に注ぎ込んだことにより生じる副作用。
  かつて生体エネルギーではなく魔力でそのことを試しているレナだからこそ理解ができる。
  力を注ぎ込むだけではダメなのだ。
  多すぎる力は逆に肉体の衰退とそして崩壊を招く。
  それすらもこの彼はわかっていなかったのだろうか。
  そんなことをレナは思いつつも、だがしかし。
  「エルちゃん。無事だったの?」
  とりあえず彼女たちとともにやってきたエルの姿をみて安堵する。
  そんなレナの言葉に。
  「うん。あのおね〜ちゃんが助けてくれたから」
  嘘でもないが事実でもない、そんなエイルことエルの返事に。
  「…お。おい…レナ…あれ……」
  ふとハルシフォムの様子に気づきラウリィが声をあげる。
  「……あれは……」
  確実にハルシフォムは急激にその肉体を衰えさせている。
  それが意味することは即ち……
  「ルビア……」
  ずるずるとすでに勝手がままならないその体をどうにか移動させ、
  二人のルビアたちのほうにと移動し、白い服のほうの女性を抱きしめる。
  そんなハルシフォムを包み込むようにして、白い服のほうの女性。
  本家のルビアもまた、そんなハルシフォムを抱きしめるものの、
  そのまま、もうひとりの自分。
  すなわち、人造人間のほうの自分に視線をむける。
  すでに、彼女たちが心に決めていた事柄。
  生きて罪を本当ならば償わせたいが、それはかなわない。
  すでにハルシフォムは魔族と契約し。
  その本来の生きるということの意味をうしなっていたのだからして。
  一人で逝かすことはしたくない。
  それは二人とも共通の思い。
  だからこそ……
  いや、本当ならば自分もついていきたいが。
  作られた自分だからこそ、後始末をするのもまた役目。
  そう思い、その役目を本来ならば死んでいるはずの彼女に譲った、というのもまた事実。
  「ルビア……よく戻ってきてくれた……」
  ハルシフォムは彼女の体が溶けかけている、ということに気づいていない。
  彼自身もまた急激にその生気を失っていっている。
  不死の契約が解除というか解かれた状況下においては、
  今までの致命傷が一気に彼の体に押し寄せている状態。
  立ち上がることもままならない。
  そんな彼にあわせて、溶けかけたからだをゆっくりとその場にかがめる。
  そして、そっとそんな彼の体を抱きしめる。
  そんな二人の姿をみながらも、本当ならばこのまま彼を助けたい。
  だけども……彼の望みはおそらく……
  『ルビア』の視線をうけて、ぎゅっと目をつむりながらもその服のしたにと隠していたそれをそっと手渡す。
  「って、おい!あれ……っ!」
  それに気づいたラウリィがおもわず目を見開いて叫ぶと同時。
  「もう。終わりにしましょう。ハルシフォム様。一緒におともいたします」
  地面に座り込んでハルシフォムを抱きかかえている格好になっているルビアの手に握られているのは、
  さきほどもう一人の彼女から手渡されたショート・ソードが一振り。
  ドシュ……
  それは彼女の両手にしっかりと握られ、そのまま変えこんでいるような格好になっていたハルシフォムの心臓辺りをつらぬいてゆく。
  「ハルシフォム様…わたくしも……」
  【ルビア】の体はあるいみ意志力で保っていたようなもの。
  それでなくても今まで無意味に生命エネルギーをその肉体に注ぎ込まれていた。
  ゆえに肉体的においても動くことはままならなかったくらいだったというのに、
  それでも、彼を止めるためにとあえて自ら行動に出ている彼女。
  これ以上、大切な人に罪を犯させたくはない。
  それは誰でもおもうこと。
  かといって彼一人でそのまま旅立たせるのはしのびない。
  いつもそばにいたのに自分を責めるばかりで気づかなかった彼に対してできることは……
  「ルビア…お前に倒されるのならば仕方のないこと…なのだろうね……
    今度はおいてゆかないでく……れ……」
  ずるり、と力が抜けてゆくそんなハルシフォムをそっと抱きしめながらも、
  彼を突き刺したショート・ソードを自らの胸につきたてる。
  「…なっ!?」
  ばっ。
  そのあまりの光景に思わずそばにいたエイルの顔をばっと覆うレナ。
  このような光景は子供にみせるものではない。
  ずるり、とその場に崩れ落ちてゆく二つの人影。
  やがてその体はハルシフォムのほうはだんだんとやせこけていき、骨になったかとおもうと、
  そのまままるで灰のようにと崩れ落ちる。
  そして、もうひとりの女性のほうもまた、その体の輪郭を完全に保つこともなく、
  どろりと溶けるように液体のようになりはてその灰の上にと崩れてゆく。
  「い…いったい……」
  あまりの光景に思わず絶句するしかないレナ。
  レナの中にといるリナのほうもまたレナの視界を通して視ているがゆえに内部で絶句する。
  「…何がいったいどうなったんだ?……あんた、説明してくれるか?」
  その元二人がいたそばにたたずんでいるままの一人の女性。
  さきほど溶け崩れた女性とまったく瓜二つの。
  そんな彼女にと確認をこめて問いかけているラウリィ。
  みればたったままで声をころして泣いているその女性。
  彼女もまた、ハルシフォムに創造られた存在。
  それがたとえ、『ルビア』の代わりとして創造られた、とはいえ。
  それでも彼女にとっても彼は大切な存在には代わりがなかった。
  だから涙が止まらない。
  それが彼にとって一番幸せのことだとしても。
  これで彼はルビア当人とずっと一緒にいられるのだから。
  そう自分自身に言い聞かせても、それでもとまらない想い、というものはある。
  ラウリィが彼女に話しかけるのとほぼ同時。
  「エルッ!!」
  金きり声に近い声が遠くのほうから聞こえてくる。
  みれば、レナたちのほうにかけてくる人影が数名。
  その中の一人が、そこに小さな金色の髪の人影を見つけて声を上げたのだ。
  と気づくのにそうは時間はかからない。
  声の状態からどれだけ心配していたかが感じ取られる。
  それこそが親の愛情の一環である、というのも。
  そういうのにはいつもなら視ているだけであったが、今は異なる。
  自らの身で経験してみる。
  というのも確かに新鮮さを感じ、また得るものもあるような気になってくる。
  そんな【エル】の心情は当然誰にも知られるはずもなく。
  「あ。か〜さんだ。か〜さん!それにと〜さんも!あとおまけもいる」
  がくっ。
  ばっ。
  リナが駆け寄ってきて三歳の幼女―エイル=ガブリエフをがしっと抱きしめると同時。
  にこやかに邪気のない声で『おまけ』と呼ばれ、がくっとなる男性が数名。
  「ね〜さまだぁ!」
  きゃっきゃっきゃ。
  とりあえず戦闘も終わったこともあり、背中に背負っていたエイルをガウリイにと手渡し、
  身軽になっているリナは力強くエイルを抱きしめ。
  そしてまた、ガウリイに抱っこされている状態のマイナといえば、
  エルの姿をみてきゃっきゃと喜びの声をあげている。
  状況をきちんと把握できているのかいないのか。
  そんなマイナの姿からは判断がつきかねない。
  まあ、二歳児の考え…というのはなかなかに想像つきにくいであろうが。
  一瞬、駆け寄ってきたリナたちに驚くものの。
  だけども、すぐさまにそれは当然のこと。
  と思い直すレナ。
  何しろ大切な娘がかどわかされていたのである。
  必死に子供を探さない親など……たぶんいない。
  その、たぶん、というのは自分たちの親のことをおもってのこと。
  それは娘の力を信じているがゆえの信頼、とも呼べるのだが。
  「何かあったのか?」
  ふとみれば、何やら見覚えのある気配の女性がその場に一人。
  確か、この姉ちゃんは……
  そんなことを思いながらもとりあえず、そんな女性の横にいるラウリィにと話しかけるガウリイ。
  第三者がみればこの二人は、兄弟、もしくは血縁者と完全におもうのは必死。
  身長や雰囲気はともかくとして、この二人はよく似ている。
  「どこも怪我はない!?」
  パタパタ。
  てしてし。
  小さな娘の体をパタパタと触りながらも怪我などがないか確認しているリナ。
  一方で何が何だかまったくもって理解ができていないロディマスとゾルフ。
  ゼルガディスにいたっては、ラウリィやレナの顔色。
  そして、そこにある灰らしきものと何やら以前よく見ていた液体のようなもの。
  それらをみて漠然と理解する。
  かつて、よくレゾが実験につかった動物などがそのように成り果てた光景を見たことが多々とある。
  だからこそ、そこにある液体のようなものがかつて何であったのか、漠然とであるが想像がつく。
  それでなくても、タリムやデイミア。
  彼らがすでに魔族によって呪法をかけられていたのだ。
  ならば…そこにあるあれは…人の成れの果て……
  すっと無言で手をつきだし、
  「火炎球(ファイアーボール)」
  ぼしゅ。
  そこにみえている液体にと火系の呪文をいきなり投げる。
  それはせめてものたむけ。
  死した誰かわからない人に対しての。
  「いったい何がどうなったんだ?」
  「ともあれ。エイル殿が無事でほっとしましたぞ」
  自分たちのミスでもし小さな子供に何かあったら。
  それが気がかりであったロディマス。
  首をかしげまくりのゾルフとはうってかわり、ほっとした声をだす。
  そんな会話をしている最中。
  「とりあえず、ここからはなれないか?あんた。きちんと説明してくれるよな?」
  いつ何どき通行人がくるともわからない。
  まあ、こんな現状でうろうろする人もあまりいないであろうが。
  それでも万が一、ということがある。
  今まで警備兵たちがやってこなかったのが不思議なくらい。
  そんなゼルガディスの提案に、
  「たしかに。ゼルのいうとおりね。それにエルもおなかすいてるだろうし」
  うなづきながらも、ひょいっとエルを抱き上げるリナ。
  その小さな体の金色の髪がさらり、とゆれる。
  「たしかに一理あるな」
  いったい全体何がどうなったのか知りたいのは山々。
  だが、それはおそらく話をきくにしても長くなるであろう。
  というのは明白。
  それゆえに、ゼルの提案をうけいれ、彼ら。
  すなわち、リナとガウリイの家族を含め、ゼルガディス達三人。
  そしてレナとラウリィ。
  そして唯一、すべてを知っているであろう、一人の女性を伴い、
  ひとまず彼らはその場を後にしてゆく。


  くらい。
  私は……自分が今までしてきたことは間違いではなかったはず。
  そう。
  彼女がよみがえるならばこの身はどうなってもかまわなかった。
  ふと意識が浮上してくると、そこは昏い、とても昏い空間。
  ふとそばに気配を感じ、そちらをふりむき、おもわずやさしく笑みを浮かべる。
  そこにみえたのは、自分が生涯唯一愛した最愛の人の姿。
  すっと差し出された手をとり、そのまま昏い空間の中の唯一ある光に向かって突き進んでゆく。

  汝達の願いは純粋。
  その純粋な願いにより、たしかに数多の命を軽んじたことも事実。
  一度すべて無と化し、そしてまた新たな命として誕生させよう。
  その新たな正をどのようにいきるかは、汝達次第――

  リナに抱かれながらも、すっと意識を【彼ら】のほうにとむける。
  そう。
  人は自らの生き方を自らの意思で決めることができるのだから――


                     ――続く……

#########################################

あとがきもどき:

薫:やれやれ。数年ぶり(自覚あり)の打ち込み〜
  そのままほったらかしてましたよ。これ(汗
L:ほおおう。
薫:ぎくっ!と。とりあえず次はこれをさくさくっと頑張って仕上げる予定です。
  たぶんこれやっていってたら漫遊の打ち込みも少しははかどるはず。
  これのほうはエル様でてこられても、ギャグ…ではないですからねぇ。
L:で?いいたいことはそれだけなわけ?
薫:あうあうあう……
  ……否定はしませんです……
L:なら、覚悟はできてるのね♪
(何ともいえない悲鳴がこだまする)
L:さてさて。ちょっと性根を入れなおして、ちょこっと根性を入れなおしてる薫はほっといて。
  ではまた、次回にて♪
  次回は、このたびのアトラス編のそうまとめらしいわよ♪
  それでは、みなさま、ごきげんよう〜♪

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33517○パラレル・トラベラーズ○〜残されしものの役目〜かお E-mail 2008/4/15 19:57:07
記事番号33514へのコメント

  まえがき&ぼやき:


  気分がある程度のってるときに、いっきにいくのです!
  たぶんこのお話はそんなに長くならない予定(あくまで予定)ですしねぇ。
  だから20K前後で区切ってますし。一話も。


  #####################################

  全てがくるったのはいつのことだったろう。
  もはや取り返すことはできない、幸せだった日々――

  「ハルシフォム様!ハルシフォム様!」
  ぱたぱたぱた。
  必要最低限の知識は生れ落ちたときにすでに組み込まれていた。
  「ルビア。どうしたんだい?そんなにあわてて?」
  愛する人の姿を模した人造人間(ホムンクルス)。
  まだ彼女が存命だったときに、実験をするにあたり、ならば…というので、
  二人の子供のような存在にしてはどうだろう。
  という一種の思いつきだった。
  そんなことは、彼女――【ルビア】は知る由もないが。
  いつものように地下の実験室において、すでに魂のない冷凍保存されているルビアの前。
  その前にてどうにかよみがえらせる方法はないか、と思案していたハルシフォム。
  「あ。ハルシフォム様。こんなところにおられたんですか。お客さまです」
  「お客?めずらしいですね?」
  この屋敷にはめったに人はこない。
  魔道士協会評議長、という立場にいてもこの屋敷に近寄ろうするものはまずいない。
  「はい。それが変わっている人なんです。全身真っ赤なローブをきていらして……」

  それが第二の始まり。
  そして…終焉への序曲。

       ○パラレル・トラベラーズ○〜残されしものの役目〜


  「じゃぁ。あなたはやっぱり人造人間(ホムンクルス)なわけね?」
  当人にしてみれば、その事実は否定したいのかもしれない。
  だけども事実を確認しなければ話が進まない。
  「はい。私はハルシフォム様に創造られました。あのかたの大事な人の姿を模して」
  リナたちがとまっていた宿屋。
  無事にエルが見つかった、と宿の人に伝えたところ、
  それはもう大変に自分のことのように喜んでくれた宿屋のおかみ。
  他にもかなり連れがいたようではあるが、それでも客が少ないこの時期。
  しかも見た目、けっこう便りになりそうな男たちならばなおさらに歓迎できる。
  いつ、何どき何がおこるかわからない、そんな不安と恐怖に取り付かれているこの町。
  アトラス・シティ。
  そのアトラス・シティの一角にとある宿屋。
  その宿屋の一階にとある食堂にて話をすべく席に座っているリナ達数名。
  小さな子供たちはといえば、話そっちのけで必死にサービス、といって出されたパフェを口にしているが。
  そんな光景をみればおもわず気が緩む。
  この町ではこのようなほのぼのとした光景すら、ここしばらくは見受けられなかったがゆえ。
  男女の二人連れが二組。
  うち一組は家族らしく小さな子供が二人。
  それ以外はりりしく、それでいてどこか凛とした雰囲気の黒髪の青年。
  おそらく見た目、歳のころは十代後半かそこらであろう。
  そんな彼にしたがっているように見える、魔道士風の男性と、騎士風情の男性。
  一見すれば、どこかのいいところのあととりを護衛する人たち、ともとれなくもない。
  事実は激しく異なるが。
  「じゃあ。アレをやったのは、つまり契約していたヤツだ。というんだな?」
  一応、他にも人目もある。
  この中にもしかしたら、屍肉呪法(ラウグヌトルシャヴナ)の名前を聞いたことがある人物がいるとも限らない。
  だからこそ、言葉を濁して問いかけるゼルガディス。
  きちんとことの顛末を話しにいかなければいけないだろう。
  というのも理解はしている。
  だが、それよりも前にきちんと話し合いをして自分たちが理解する必要性もある。
  逃げたというか見逃した魔族・セイグラムがどのような形ででくるかもわからない。
  リナの知っている歴史どおりにいくならば、後々仕掛けてくるのは明白。
  だが、この世界はリナの知っている歴史とは多少ことなっている世界。
  だからこそ判らない。
  「ええ。すべては、私のオリジナルでもある彼女をハルシフォム様がよみがえらせるために……」
  ルビアから語られた真実。
  それはリナが知っているものとほとんどかわりのない真実。
  といってもハルシフォムにとってルビアがどのような存在であったのか。
  というのはリナは知らなかったが。
  リナが知っていた結果は、彼女がハルシフォムを止めた。
  というその真実。
  一通りのことはこの【ルビア】から説明をうけて、それぞれ納得する彼ら達。
  もっとも、ガウリイにおいてはよく理解していないようではあるが……
  とりあえず、彼女からきいてこのたびの一件における概要は理解できた。
  その大元となった人物も今はいない。
  ともあれ、ルビアから概要を聞きだした後。
  一晩ゆっくり休んだ後、明日の朝一番で魔道士協会に出向いてゆく。
  ということで話はまとまり、今日のところは各自それぞれ体を休めることに――

  「しかし…信じられませんな」
  アトラス・シティの魔道士協会。
  そこで何かがおこっている。
  それゆえに近くの町から派遣されてきている別の協会のおえらいがた。
  この町にとある教会などの神父などもこの場にはいる。
  「しかし。信じられなくても、現実にあのようなことになっていますし……」
  ルビアと共に魔道士教会にでむいているリナ達一行。
  そこでとりあえず、このたびの事件の概要を伝えたところ。
  簡単な査問委員会が執り行われている真っ只中。
  といっても、この町の福評議長二人があのようになり、ましてや評議長そのものが今回の事件の一因だとは。
  それこそ魔道士協会としては信じたくないところ。
  しかも、魔族云々…という言葉にすら疑問を感じる。
  それが一般の人々の反応。
  「しかし。それが真実なのは仕方がなかろうて」
  地下より、その顔だけになったタリムがそんな彼らに対して話しかける。
  命をつないでいる数々のチューブ。
  そして用途不明な数々の装置のようなもの。
  それらすべてをひっくるめて、意見をきくために地下よりこの場に運ばれてきているタリムの顔のはいった容器。
  生きている。
  とはいえない、生かされているだけのタリム。
  だがしかし、誰一人とてその彼の命をとめるようなまね。
  すなわち、命をつないでいるチューブをはずそうとはしない。
  顔だけになっているとはいえ、彼にはまだ意識がある。
  誰も好き好んで人を手にかけたくはない。
  「しかし…タリム殿……」
  そう別の査問委員の一人が彼に話しかけようとしたその直後。
  ぴくっ。
  「リナ!」
  いきなり叫んでリナを抱えて横にとびのくガウリイ。
  一方では少しはなれた場所にいたエイルもまた、マイナを包み込むようにして防御している。
  それと同時。
  ガシャァァッン!!
  部屋の内部に何かが割れる音が響き渡る。
  そしてまた、何かがこぼれるような音も。
  全員が何が起こったのか理解するよりも早く。
  「――まさか、あれですんだ。とはおもっていまい?」
  低く、それでいてのしかかるような声が部屋にと響きわたる。
  ゆらり、とさきほどまでタリムがいたはずのその場よりうかびあがる漆黒の闇。
  「いじになってるみたいだけど……」
  その姿をみてぽつっとつぶやくエル。
  彼女からしてみれば、そんなことはあきれる以外の何物でもない行為。
  ふとみれば、その場にいた他の面々。
  すなわち、魔道士協会のお偉い役目についている人々はといえばいきなりの異形のもの。
  あからさまに人ではないそれを目の当たりにしておもいっきり動揺していたりする。
  中には腰を抜かしていものすらも。
  「……なさけない……」
  思わず本音がこぼれるが、ここはリナ達に…リナか〜さんたちに任せておけばいいし。
  そうおもいつつ、
  「マナ。これからか〜さん達用事があるみたいだから。いいこで見物してようね?」
  「うん!」
  マナがにこやかにうなづいたのをみて、すっと誰にも気づかれないように周囲に結界を張る。
  それは魔族には自分たちの姿がみえなくするような、簡易的なもの。
  あからさまに弱いとおもわれる人間の子供を人質にして何かする。
  ともかぎらない。
  それこそ魔族の恥さらし以外の何者でもないが。
  念には念を。
  それに今ここで【彼ら】に気づかれては面白くない。
  そんなエルとは対照的に、リナのほうはといえば。
  ちらっと娘たちのほうをみてみれば、何かエルが簡易的な結界らしきものを張ったのが見て取れる。
  おそらく防御壁か何かだろう。
  そう即座に判断する。
  この魔族に子供たちの存在に気づかれて、子供たちを盾にとられてはやっかい極まりない。
  それゆえに、
  「ずいぶんなご登場ね。だけどもう契約の石はないし。あんたの元ご主人もいないはずだけど?」
  相手を挑発するかのように動じることなく言い放つリナ。
  「…確かに。我があのハルシフォムとかいう人間の男と交わした契約はすでにない。
    ゆえに、あの男の命令を実行することもないのだが……だが、貴様たちは倒しておかねばな。我の誇りの為にも」
  いいつつも、その手に青白い光の球を出現させる。
  「ゆくぞ!」
  いうなりその球をその手から解き放つ。
  誇り、というのならばこのまま静かに立ち去ることこそ、魔族の誇りの意にかなっている。
  それもわかってないみたいだし。
  その光景をみながら思わず内心あきれるエル。
  どぐわぁぁん!
  当然、その一発はあたしたちの誰にもあたることなく。
  横にある壁にとぶちあたり炸裂する。
  それと同時。
  『うわぁぁ!?』
  ようやく我に戻った魔道士協会に所属しているお偉い人々。
  そしてまた、神父など、といった人々が我にともどり騒ぎ始める。
  ちいっ。
  彼らが邪魔っ!
  できれば結界に閉じ込めてほしいのがリナの本音。
  というか、異空間ともいえる結界を作り出すことなく攻撃してきたこの魔族。
  あまり考えがないやつなんだろうな……
  そうリナの中で結論づける。
  何しろたかが人に復讐するためだけに魔族であることを捨てるような魔族なのだから。

しばし、混乱の最中。
セイグラムとの戦いが魔道士協会の一室において繰り広げられてゆく――


  ざわざわざわ。
  正式に、今までこの町でおこっていた不可解な事件。
  それらが全て解決した。
  そう魔道士協会から町中に連絡がゆきとどいたのはつい先日。
  外にたむろしているレッサーデーモン達の行動も最近はだいぶ落ち着いてきたらしい。
  それゆえに、だいぶ以前の賑わいをとりもどしつつこの町。
  当初は道に露店など並んでいなかったが、もう大丈夫。
  という安心もあってか、商魂たくましい人々が店をすぐさまに開いている。
  「しっかし。何かあんたらとかかわってから魔族がらみの一件がおおいのは気のせいか?」
  もう人目を気にすることもないがゆえか、
  空を見上げつつ表街道にてそんなことをリナ達にといってきているゼルガディス。
  だがしかし、そもそもの発端はレゾにある。
  彼の中に封じられていた赤眼の魔王・シャブラニグドゥの影響。
  「気のせいよ」
  こんな別の世界にきてまで魔族絡みの一件にかかわりまくってたまりますか。
  あたしはともかく、子供たちを危険には合わせられないし。
  そんなことを思いながらも、きっぱりとゼルガディスの意見を却下するリナ。
  「それより。ゼルはこれらどうするの?」
  少しばかり顔をしかめているゼルガディスにとといかけているレナ。
  「そういうあんたらはどうする気なんだ?」
  逆に問いかけるゼルガディス。
  ゼルガディスからすれば、レゾの遺言を果たしたい。
  彼がかつて創造ったあのコピーをまず探し出すことが先決。
  昔聞いたことがある、あの研究所にまずいってみるのが近道だろう。
  そう彼はおもっている。
  「え?あたしは、ちょっと白魔術都市・セイルーンのほうにいってみようかな?とかおもってるけど」
  噂でセイルーンのほうでちょっとしたごたごたが起こっている。
  そう魔道士協会内部で耳にした。
  どういった厄介ごとなのかはわからないが。
  そもそも、あのドワーフおうぢには会いたくはないが、いってみる価値はありそうである。
  「あたしたちは、サイラーグにいくつもりよ」
  なぜ。
  とはいわないまでも、きっぱりといいきるリナ。
  なぜサイラーグなのか。
  それは、リナ達の世界と同じような悲劇を起こさないため。
  いまだ、この町の魔道士協会はしばらくごたごたするであろうが、それもしばらくしたら収まるであろう。
  結局のところ、やはりというか案の定。
  というか。
  魔道士協会に直接仕掛けてきたあのセイグラムを滅ぼしたところ、
  デイミアの屋敷の肉塊は腐った肉が溶けるようにそのまま瓦解したらしい。
  高らかに笑い声を残したままで。
  タリムはあのセイグラムの襲撃のときの衝撃でその命をつないでいた装置が壊れ静かにいきを引き取った。
  さすがに、ただの伝説。
  としか捉えていなかった魔族。
  しかも自力で具現化している純魔族。
  その攻撃をうけた後。
  ということもあり、魔道士協会のほうの追求も深くはされてこなかった。
  そして、このたびの一件の唯一の生き証人、とおもわれるルビアの処分もまた、不問に処す。
  ということでおちついた。
  いくら何でも魔族をあいてに一般人がどうこうできるレベルではなかった。
  というのが魔道士協会のお偉いさん方の意見。
  その裏には自分たちが何の役にもたたなかったのをだまっているように。
  との意味合いもある。
  ということを、リナ達は知っている。
  「そうか。ならとりあえずここでお別れだな。何かいろいろあったが、あんたたちも元気でな」
  一緒に行動した期間はごくわずか。
  それでも力を合わせて戦った、ということは真実。
  しかもそれが、とてもかなわないような相手ならばなおさらに。
  連続して魔族がらみの事件に巻き込まれた。
  というのも仲間意識が芽生えるのには十分。
  「あんたもね。ゼル」
  「またいつか」
  そんなゼルに対してそれぞれ手をさしだすリナとレナ。
  「で?おまえはどうするんだ?」
  自分によく似ているラウリィにと問いかけているガウリイ。
  何だか人事のようには思えない。
  おそらく、このレナ、という少女とともにいることでこれから様々なことに巻き込まれてゆくだろう。
  というのが何となくであるがわかるがゆえに。
  「俺はしばらくこの子と一緒に旅をするつもりだけど?」
  もしかしたら、兄の魂を開放させる方法が見つかるかもしれない。
  それに何よりも彼女の境遇も人事とは思えない。
  それゆえにガウリイに答えているラウリィ。
  「そっか。それじゃ、ここでお別れね。…がんばってね。あなたたちも」
  「ええ。リナさんたちも。無事に元の世界にもどれるようにいのってますね」
  アトラス・シティにとはいる表門。
  そこでそれぞれ互いに別れを交わす彼ら達。
  レナとラウリィはセイルーンへ。
  ゼルガディス、ロディマス、ゾルフはレゾの研究所があった、というとある場所へ。
  そしてまた、リナ達親子はサイラーグへ。
  出会いと別れはいつも突然。
  だけど、その出会いが人の絆を強くし成長してゆく。
  それが人、というもの――


               ――続く……


##########################################

あとがきもどき:

薫:さてさて。リナ達とセイグラムとの戦いは当然のことながら魔族との戦いになれてるリナの圧勝v
  もっとも、邪魔になりまくった魔道士協会所属の人々がいますけどね。
  まあ、かなり怪我とかしてたりしたのは彼らは自業自得。
  でしょう。
  普通、しかし魔族がいきなり現れたらパニックになるでしょうねぇ……
  慣れてしまっているリナやガウリイはともかくとして……
  あの戦いにおいて魔道士協会が半壊したことのみはこのあとがきでふれておきますv(こらこら
  何はともあれ、ようやく次回からセイルーン編v
  それでは、また次回にてv
  (エル様がこられないうちに、さくっと次にすすまねばっ!それではっ!)



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33518○パラレル・トラベラーズ○ 〜死霊都市(サイラーグ)〜かお E-mail 2008/4/15 19:57:46
記事番号33514へのコメント

  まえがき&ぼやき:


  こんにちわv今回からサイラーグ編v
  ちなみに、こちらの世界のレナ(リナ)とラウリイ合流は当分先(笑
  まずは初めにシルフィールと、そしてゼルとの合流(?)ですv
  さて…サイラーグは助かるのか!?それとも……?(まて
  何はともあれ、いっきますv

#####################################


      ○パラレル・トラベラーズ○ 〜死霊都市(サイラーグ)〜


  「どうやら、まだ大丈夫みたいね」
  町の門をくぐり思わずほっとつぶやくように言っているリナ。
  今までの時間率からしても次に何かあるのはおそらくサイラーグ。
  自分達の時はあの一件から二、三ヶ月くらいしてあの手配のことを知った。
  アトラス・シティの魔道士協会評議長選びの一件ではまだ何も起こってはいなかった。
  だからこそ……ここでの悲劇を防ぐためにとアトラスからそのまま、
  サイラーグへと目的地を決めていたリナ。
  まあ、あの一件は別にリナには何の落ち度もないんだけど……
  そんなリナのつぶやきをリナの足元でききつつも、そんなことを思っているエイル。
  いうならば、聞き分けのない駄々をこねた子供がしでかしたこと。
  どんな存在においても、力の使い方やコントロール。
  果てはセーブ状況。というのは必要な事柄。
  ま、このあたしでさえ力のセーブを人の器で見誤ったんだからねぇ。
  あのときは、絶対にあいつを許す気がなかったのでそのまま力を使った。
  というのはあるにしろ……
  リナとエルがそんなことを思っているそんな視線の先にくっきりと見えるのは、
  遠めからもはっきりと確認できていた神聖樹フラグーンの存在。
  その木々の生い茂りと町の賑わいをみて、
  滅んでしまった自分達の世界のサイラーグと重ね合わせ、どこか遠くをみているリナ。
  そんなリナの思いがわかるがゆえに、リナの肩をそっと抱き寄せて胸を貸しているガウリイ。
  「ね〜ね〜。エルね〜さま?あれ、おっきなき〜!!」
  一人、それを始めて目にするマイナがフラグーンをみてきゃっきゃとはしゃいでいたりする。
  「あれは、しんせいじゅ、フラグーンっていうんだよ?マナ。」
  そんな妹にと丁寧に説明しているエル。
  おそらくリナ達はあのときのことを思いだしてきちんと説明できないであろう。
  というのが判っているがゆえに、エルが変わりに妹に教えているのであるが。
  「ふぐ〜ん?」
  「ふらぐ〜ん」
  「ふらぐら〜♪」
  「……なんでとおのくわけ?」
  そんな会話をしているエルとマナの後ろでは、
  「……で、どうすんだ?リナ?」
  未だに町並みを無言で見渡しているリナにと問いかけているガウリイの姿。
  「とりあえず。ここにもいるであろうシルフィールの家。……つまりここの神官長の家にいきましょ」
  旅をしてきたコピーレゾをあっさりと受け入れ、そして手配をかける許可を出したのも又、
  自分達の所では……ここサイラーグのエルクであった。
  それが判っているからこそ、逆に自分達が『レゾの偽者』の情報を先に耳に入れることで、
  何としてでもあの悲劇は防ぎたい。
  理不尽に一瞬のうちに跡形もなく吹き飛ばされ殺され、更には冥王(ヘルマスター)の手により仮によみがえり、
  そして冥王(ヘルマスター)フィブリゾの手足にさせられていたサイラーグの人々。
  あまりに一瞬のことで自らの死がわからずに、理解することが出来ずとどまっていたところ、
  冥王(ヘルマスター)フィブリゾに利用された。
  というのが事実なのであるが。
  それはリナは知らない事柄。
  この場でそれを理解しているのは……
  「判った」
  それ以上深く聞くこともなく、あっさりとうなづくガウリイ。
  そんなガウリイの同意の声をうけ、
  「エル。マナ。これからここのシルフィールの家にいくわよ。」
  二人の子供たちをみて言っているリナ。
  「わ〜い。しふぃ〜おね〜ちゃんのとこ〜♪」
  「マナ〜。だから。シルフィールおね〜さんだってば」
  前、おばさん、呼んだときあからさまにシルフィールが動揺したことからも、
  一応『お姉さん』と呼んでいるエルとマナ。
  もっとも、マナについては意味がまったくわかってない。
  というのもあるのであるが……
  ただ、姉がそうよんでいるからまねをしている。
  というのに他ならない。
  未だに、マナはきちんと人の名前を少しでも長かったりするといえたことがない。
  ……未だに、マナ、きちんと『シルフィール』って名前、いえないのよね〜
  そんな二女であるマナをみつつも内心思っているリナ。
  そこがまたかわいいんだけど。
  そう思うのは親の欲目なのか何なのか。
  まあ小さいこの名前の間違いなどは確かに見ていてもほほえましい。
  というのも一般的な事実であるが。
  ゼルガディスなどは幾度も間違われるので訂正するのをあきらめて、
  『ゼルでいい。』とマナにいっている現状があったりするのもまた事実。
  「まあ。マナはまだ小さいからね〜」
  そんなマナをみて苦笑しつついっているリナ。
  そしてまた、
  「それより、リナか〜さん?しるふぃーるおね〜ちゃんのところってどこ?」
  走り回ろうとしているマナの手をつかんでリナにと問いかけているエル。
  知ってはいるけども、『エイル』としてはそのあたりのことは誰にも聞いたことがないがゆえに、
  リナに確認を込めて問いかけているエル。
  「あたしたちの世界と同じだとすると。この町の神官長のところよ。…とりあえず町の人に確認してみましょ?」
「「ぐ〜」」
『・・・・・・・・・・・・・・・』
リナの言葉と同時、マナとエルのおなかが同時になる。
そういえば、そろそろお昼だっけ。
それに、ここに来るまでに盗賊団を三つばかりリナたちと一緒に壊滅もしてるし。
そんなことをふとエルは思ったりするが。
小さい子供は少し動いたりしただけで体力的にもすぐにお腹がすいてしまう。
それゆえに仕方ない反応といえばそれまでなのだが。
そんな子供たち二人を一瞬無言になりつつ眺め、
  「……その前にご飯にしましょ。ガウリイ」
  「だな。しかし、ものの見事に重なったな〜。やっぱり姉妹だからかな?」
  「あんたの子供だからだとおもうけど?」
  「リナ〜。でもエルもマナもリナの子供でもあるんだぜ♪
    何にオレたちの愛の結晶♪オレとリナが愛し合って……」
  「道のどまん中でんな恥ずかしい台詞をさらっというなっ!!」
  先をいおうとしたガウリイの台詞を真っ赤になって止めているリナ。
  この二人は…相変わらずなんだから。
  などとエルが思っているとは露にも思わず、
  未だに真っ赤になってリナはガウリイに何やらいっているのだが。
  そんな両親の対応はなれているというのか何というのか。
  「それより、ごはん〜。マナ、おなかすいた〜」
  あむっ。
  「ああ!マナ!それはマント!ばっちいからかんじゃだめぇぇ!」
  お腹がすきすぎて身に羽織っているマントの裾を手にもち口に運ぼうとしているマナに対し、
  あわててとめているリナの姿。
  「ほらほら。マナ。そぐそこにごはんやさんあるから。おと〜さんもおか〜さんも、あそこでい〜い?」
  町の南の入り口付近にとある大通りに面している食堂。
  そこを指し示しつつ言うエルの言葉に、
  「そね。ほら、ガウリイ。エルだっこして。マナも…ほら」
  ひょい。
  リナの言葉と同時、エルはガウリイに、そしてマナはリナにと抱きかかえられる。
  そしてそのままそれぞれ夫婦して子供を抱っこしてそのまま食堂に向かって歩いてゆく。
  何ともそんなほほえましい光景が大通りの中で見受けられていたりする。
  ぱっと見ただけで子供の容姿などからして夫婦であり親子ずれであることは明白。
  まあ、ずいぶんと若いお母さんね〜。
  などといった声もそんな二人をみて聞こえていたりするのだが。
  それはそれ。
  たしか、ここの世界のここの町の人々って『ラウリィ=ガブリエフ』を知ってるから、
  ガウリイのことはたぶん、兄か親戚か何かだとおもうでしょうね。
  年齢からしても……
  ガウリイに抱きかかえられてエルがそんなことを思っているとは当然リナは知る由もない。


  ざわざわざわ……
  「よいしょ…っと。エルはどうする?」
  食堂の中にとはいり、あいている四人がけのテーブルにとつき腰を下ろすリナ。
  一人で座らすのがあまりに危なっかしいので大衆の食堂などでは大概、
  リナかガウリイがマナをその膝に乗せて席にと座っているのが現状。
  「ひとり〜♪」
  膝の上だと何かくすぐったいし。
  そんなことを思いつつ、とてとてとリナの横の開いている席にと近づいてゆくエル。
  その自分の背と余り変わらない、もしくはそれよりもちょっと大きめの椅子を後ろに下げて、
  その上にぴょこんと飛び乗る。
  深く腰をかけたらテーブルに手が届かないので、とりあえず軽く腰かけテーブルの上に両手をおく。
  こういう場所の机などは大人向けにつくられているので小さな子供にとっては大きい意外の何物でもない。
  「ならオレはこっちだな」
  いってリナに向かい合うようにして座っているガウリイ。
  リナ達が席についてほぼ少しして、
  「いらっしゃいませ。……あら?もしかしてラウリィ様?」
  店の従業員らしき男性が、ガウリイをみて首をかしげて問いかけてくる。
  しかも、どうみても子供連れ。
  もしマナだけであれば、リナの子供であろう。
  というのでガウリイとは結び付けないであろうが、エルもいることから。
  二人の子供であろう。
  というのは明白。
  もっとも、エルも二人からいい場所をもらっているのでかなりの美少女であるのだが。
  まだ少女、といっても三歳なのでものすごくかわいい子供に他ならないのだが……
  「?ラ…誰だ?それ?」
  そんな人物にきょとんとした声をあげるガウリイに対し、
  「こ…このぼけっ!この前まで一緒にいたでしょうが!
    この人がいってるのはラウリィよ!ラウリィ=ガブリエフ!ほら、こっちの光の剣をもってたあの!」
  そんなガウリイの言葉に思わずマナをしっかりと片手で抱きかかえつつも、
  もう片方の手で額に手をあてて思わず叫んでいるリナ。
  「お〜。あいつか〜。…そんな名前だったっけ?」
  「……も、いい。…え。えっと。すいません。こいつクラゲで……」
  「……は…はぁ……」
  そんな二人の何ともほほえましいというか何というかやり取りをみつつ、
  思わず目を点にしていた男性が間の抜けたような声をだす。
  …確かに。
  ラウリィ様はこんなにのほほんとはしてなかったよな?
  などとは思うがそれを口にすることはなく、
  「あ。もしかしてラウリィ様のお兄様、もしくはご親戚のかたですか?
    それにしてはよく似ていらっしゃいますね。見たところ、ご夫婦とお子さんですか?」
  とりあえず気をとりなおして、どうも話が通じそうなリナにと問いかける。
  「…ふ…!?///……え、ええ…まあ」
  夫婦。
  という言葉で真っ赤になりながらこくりとうなづくリナをみて。
  ずいぶんと恥ずかしがりやな女性だな。
  などと思っていたりするのだが、ふと何やら視線を感じ見てみれば、
  ガウリイがそんな男性のみにわかるように殺気を飛ばしていたりする。
  思わずひやっと冷や汗をかきつつも、
  「かわいいお子さんたちですね。何歳ですか?」
  どうにか話題をかえようと、エルとマナをみて問いかける。
  内心冷や汗ものであるのだが。
  未だにガウリイは男性に向かって殺気を飛ばしているがゆえに。
  だがしかし、そんな男性の言葉をうけ、
  「だろ?二人ともオレのリナに似てとてもかわいくてな〜v」
  「あ…あのねっ!…え、えっと…こっちがエイルで今三歳。
    でもって、こっちがマイナで今二歳です。あ…あの?それより?
    今、ラウリィのことを呼びましたよね?彼知ってるんですか?
    私達、この前まで彼らと一緒にいたんですけど。
    あと、それとここの神官長さんの家ってどこかおしえてもらえます?」
  真っ赤になりつつも、ガウリイを制し、問いかけるリナの言葉に、
  「ああ。やっぱり知り合いなんですか。なるほど。神官長様の家ですか?それでしたら……」
  やっぱり親戚か、もしくは兄弟なんだろうな。
  それですまし、リナ達にと神官長の家の道どりを教え始めるその男性。
  そして、一通り説明しおわり、
  「……ゆきかたとしてはこうですけど。あ、長話してしまいましたね。
    えっと…ご注文は?お子様にはお子様ランチもありますが?」
  にっこりいって仕事にもどってゆく。
  「だって。どうする?」
  「あたしそれにする〜」
  「マナも、エルね〜さまとおなじ〜」
  「はいはい。…なら、あたしたちは…っと、これからここまでを五人前づつで」
  「……は!?」
  さらっといったリナの言葉に思わず目を点にしてしまう。
  「…え?えっと…五人前…ですか?」
  「でなくて。ガウリイとあたしで十人前ね。…すくなかったかしら?」
  「リナ。それだけで足りるのか?」
  「そうね〜。なら十人前でv」
  「……はぃ!?」
  そんな二人の会話と注文をうけ、目を丸くするしかない男性従業員。
  ……その反応が当然なのであろうが。
  当のリナとガウリイはそれにすら気づいていない……

  とりあえず、目を丸くしつつも、注文をうけたのは事実であるがゆえに。
  そのままその注文をもって厨房にと引っ込んでゆくその男性従業員。
  そして注文し終わり、
  「…どうやら。家とかも一緒みたいね。……間に合っていますように……」
  もし、すでにあのコピーレゾがこの町に入り込み、
  初めの偽装工作のための慈善活動をしていたりすれば、
  まず自分達の話は聞いてもらえない確立が高くなる。
  それが判っているからこそ多少不安になるリナ。
  まあ、あの魔王との一件からそれほど時間は経過していないので、
  まだあのエリシエルがレゾの噂を耳にする。
  といったことはないので、その心配は皆無なのであるが。
  そんな不安に狩られつつも、とりあえず腹ごしらえをするために、
  運ばれてきた食事に手をつけてゆくリナ達の姿が、食堂の一角において見受けられてゆく……


                    ――続く……――

########################################

あとがきもどき:
  薫:なぜか、ルビア達のシーンを打ち込みする気力がわかず(まて
    こちらを先に打ち込みしていたりする薫です。
    一応、あれ死にものだからな〜。みゅぅ……
    ちなみに。次回でこちらの世界のシルフィール登場です。
    乙女の(?)勘違いモード炸裂させる予定v(まて
    まあ、ぱっと見た目、ラウリィが子供つれて戻ってきた。
    というように見えなくもないからね〜(笑
    ちなみに、こちらの世界のシルフィールは。まだリナとの面識はありません。
    あしからず……
    何はともあれ、ではまた次回にてv

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33519○パラレル・トラベラーズ○ 〜シルフィール=ネルス=ラーダ〜かお E-mail 2008/4/15 19:58:30
記事番号33514へのコメント


  まえがき&ぼやき:

  ようやくシルフィールの登場ですv
  うふふふふv
  このサイラーグの一件は、アニメにも小説にもあまり似てないです。
  そもそも、小説のほうではすでにレゾの手下が幅きかせてましたし。
  アニメのほうはすぐさまに町ごと消滅させられちゃいましたしね(汗
  何はともあれ、ゆくのですv

#####################################


     ○パラレル・トラベラーズ○ 〜シルフィール=ネルス=ラーダ〜


  ざわざわざわ。
  人々の行き来が騒がしい。
  どこをみても神聖樹フラグーンの姿が目に入る。
  すでにもう、見ることができないその景色。
  絶対にこの世界のこの場所はあんな目にあわせたくはない。
  それがリナの想い。
  あれはリナか〜さんのせいじゃないのに。
  そんなリナの想いが判るがゆえに、そうはおもうが、まさか心が読める。
  それを知られるわけにはいかない。
  ゆえに、きゅっとそんなリナの手を小さな手でにぎりしめる。
  死霊都市と呼ばれているのはかつての伝説のせい。
  もっとも、リナ達がいた世界では言葉とおりの『死霊都市』と成り果ててしまったが……
  神聖樹フラグーンが見えてきた。
  ということは、あと少しでサイラーグの中心地。
  この世界でも北のほうって廃墟になってるのかしら?
  そんなことをおもいながらも進んでゆくリナ。
  基本はこの世界も、リナ達がいた世界も起こっていることはほぼ同じ。
  そこに住んでいる人々が多少違いがあるくらい。
  と。
  何やら道のど真ん中でたたずんでいる人影がひとつ。
  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
  くるっ。
  その姿を遠めにみて、そのままくるっと向きをかえてわざわざ瘴気の森の中に続く道にとはいってゆく。
  「リナ?」
  そんなリナに首をかしげながらも道の先のほうをみて何やら納得したような表情となるガウリイ。
  気配は嫌でもわかる。
  確かに、リナが向きを変えるわけだな。
  などと思わず苦笑していたりするけど。
  「ね〜?か〜さま?あそこにいたのってぱりおじ〜ちゃんじゃないの?」
  「マナ。それをいうなら、パシリ神官、もしくはお役所仕事のお爺さんでは?」
  リナ達がいつもそう呼ぶのでマナもその呼び方で覚えてしまっているのだが。
  もっとも、お役所仕事、という点においてはあたしもかなり同意。
  「あんなナマゴミのことはきにしなくていいの」
  どきっぱり。
  何であいつがあんな場所にいたのかはしらないけど、かかわるとロクなことになんないのは目に見えている。
  それゆえに、係わり合いにならないように別の道を選んでいるリナ。
  まあ、確かに。
  いくら気配を隠していようとも、本体と一部を切り離しててもその本質からして、
  神聖樹フラグーンに多大な影響を与えるからあいつもあそこからうごかないんでしょうけど。
  そんなことをおもいながらも思わず内心苦笑する。
  そんなあたしの思いを知るはずもなくきっぱりと断言しているリナ。
  「それより、すこし森の中をすすむけど。二人とも大丈夫?」
  小さな子供の足で舗装されていない道なき道をゆくのは多少でも不便極まりない。
  もっとも、舗装、といっても石が敷き詰められていたり、きちんと大地が均されているだけだが。
  森にと立ち込めているどんよりとした空気。
  「たしか、これってしょうきをきゅうしゅうしてせいちょうしてからこうなんだよね?」
  手をぎゅっ、とつかんだままそんなことをいっているエル。
  「そうよ。気分がわるくなったらすぐにいうのよ?二人とも?」
  そんなリナに対し、
  「それより、互いに抱いていったほうがはやくないか?」
  いうなり、ひょいっとリナの横にいたあたしを抱き上げるガウリイ。
  そして。
  「リナはマナをな」
  そういわれ。
  「たしかに。それもそうね」
  あまりぐずぐずしてもいられないし。
  まだ、急激に成長している兆しは見えていないので例のコピーは近くにはいないはず。
  もっとも、もし彼がその瘴気を完全に押さえ込むような結界みたいなものを張っていれば別だが。
  たぶん、あいつが近くにいても急激に何ともならないのってその類だろうなぁ。
  冥王フィブリゾのときにはたぶん、気配を隠すなんて面倒なことしなかったんだろうし。
  だからあまりの瘴気の大きさに耐えられずにはぜ割れた。
  それはもう、ことごとく根っこのほうから。
  ガウリイの意見ももっとも。
  確かに子供の足にあわせるよりは互いに抱っこして進んだほうがはるかに早い。
  ましてやこんな瘴気が充満している場所に子供たちを長居はさせたくない。
  ゆえに、ガウリイがあたしを抱きかかえ、そしてまたリナがマナを抱きかかえる。
  それぞれがそれぞれを抱きかかえていれば、たしかに彼らが親子だ。とあるいみ納得する。
  あたしの髪の色は父親ゆずりの金色。
  そしてまた、マナの髪の色は母親ゆずりの栗色。
  もっとも、三歳の【エイル】を抱くよりマナのほうがリナに負担が少なくてすむ。
  というのもあり、ガウリイがあたしを抱き上げたのだが。
  まあ、たしかに疲れないからこのほうがはるかに楽。
  小さな人の子供の肉体、というものは何事においても不便極まりない。
  使える力の容量すらもまた限られるのだからして。
  そもそも、この肉体そのものはリナの中に残っていたあたしの力。
  すなわち、あたしが再生したときの残留していた力を組み込んで創造ったものなので、
  普通の人よりは多少融通が利くはずだけど。
  何しろあのとき、リナに体を返すとかそんなこと思わずに行動したし。
  あたしに攻撃しかけてきたあいつにお仕置きすること。
  それだけをおもってたし。
  もっとも、あのままリナを消滅させても面白くない、というのと。
  人の肉体における限界を超えた。
  というのもあって、そのままリナに体を返したのは数年前のこと。
  ふと昔を思い出す。
  以前ならば、そんな昔、とも思えないけど、今はなぜかそう思える。
  それが、限りある人であるがゆえ、なのだろう。
  さくっ。
  大地を踏みしめるごとに、完全に枯れた雑草などが音を立てる。
  瘴気の森で、普通の植物はあまり育たない。
  それに耐久性のある植物ならばわんさと茂っているものの。
  だがしかし、植物、というものも、けっこうしぶとい。
  生き残るために、自らを改良していき、瘴気の中でも成長できるように進化している。
  それが、生き物に与えている本来の姿。
  環境にあわせ、適応し、そして未来にと命をつなげてゆく。
  さくさくさく。
  瘴気に満ちている森とはいえ、生命は存在している。
  命、というものはたくましい。
  ゆえにこそ視ていてあきない。
  軽く片手で抱っこされつつも、進んでゆくことしはらく。
  やがて森の先がほのかに明るくなってくる。
  時刻はそろそろ昼すぎ。
  「とりあえず、どこかでご飯食べてから教会にいってみましょうか?」
  リナがそんなことを歩きながらいっているけど。
  ふとみれば、マナはといえば、リナの手の中ですーすーとお昼寝タイム。
  そういえば、初めてみるものが楽しくてここしばらくあまりお昼ねしてなかったっけ?マナは?
  そういう自分もしてないけど。
  ……まだ時間かかりそうだし、肉体のみだけでも少し休ませるとしますか……
  うとうと。
  「あらら。エルまでねちゃってるわね」
  そんなリナか〜さんの声が聞こえてくるけど。
  とりあえず、肉体における眠気はどうにもらない。
  意識だけは覚醒していても、肉体が疲れていてはどうにもならない。
  このあたりが、人の体の限界でもある、ということだろう。

  ざわざわざわ。
  鬱蒼とした森を抜けると、そこはちょっとしたレンガ造りの建物が並んでいる町。
  昼時、ということもあり、人々の活気に満ちている。
  子供たちの元気な声も飛び交い、それほどおおきな町ではないにしろ、
  それでも人々の暮らしが平穏である、というのは一目瞭然。
  この平穏な暮らしが、かつては一瞬で掻き消えた。
  あのときは、フィブリゾがその魂を留め置いて、後に利用したりもしたけども。
  今、この世界のこの場においてはそんな兆候はまったくない。
  以前は人々の昼間の元気な暮らしをリナは見る暇もなく呪文ひとつで町が壊滅していた。
  直前にみているのと、それ以前に見ていたのとでは、かなり感覚的にも異なる。
  「えっと……食堂は……」
  そうはいえど、小さな子供連れ。
  どちらかといえばゆっくりできる場所のほうがよい。
  また、早めに宿を取っておいたほうが何かと楽。
  というのもあり、ひとまず宿屋に向かい、
  大概の宿屋で営んでいるその食堂にて昼食をとることに決めているリナ。
  旅人、というのもはあまり珍しくないがゆえに二人に気をとめる人はあまりいない。
  とはいえ、親子連れの旅人、というのは珍しいらしくちらほらと二人を見ている人もいく人か見て取れる。
  やがて、サイラーグの町にとある一件の宿屋にたどり着く。
  ひとまず、今夜の宿をとり、一階にとあるまばらな客がいる食堂のテーブルに腰掛ける。
  「さて。と。ひとまず教会にいって、エルク神官長と会うべきなんだろうけど……」
  あまり教会とかには興味がないがゆえにつながりはほとんどない。
  そもそも、魔道士協会にいたっても、一応ある意味、いろいろと都合がいいから。
  という意味で各町などにいったときにはよるようにしているだけ。
  ましてや、この世界は自分たちの世界ではない。
  簡単にいって、すんなりと会ってくれるかどうかもわからない。
  こういうときに、あのラウリィがいればいいように使い勝手もいいのだが。
  「しんせき、といえばいいとおもうな〜」
  もぐもぐもぐ。
  子供用の椅子がない、というので仕方なくガウリイの膝の上に座りハンバーグをほうばる。
  ちなみに、リナの膝の上にはマナがちょこん、とすわりながら、リナがご飯を食べさせている。
  「まあ。確かに。嘘ではないとはおもうけど」
  血のつながり云々はともかく、とりあえず世界が違えどもその関係者、というのには違いない。
  ましてや、ガウリイの場合はラウリィによく似ていることからまず疑われることもない。
  あたしの言葉に、苦笑しながらも答えてくるリナ。
  「まあ、なるようにしかならないんじ’ゃないのか?」
  そんな多少考え込むようなそぶりのリナに、のほほんといっているガウリイ。
  確かに、考えていても仕方がない、といえばそれまで。
  いつものリナならぶっつけ本番で事を行うが。
  なぜかこちらの世界にきてからは、そのような傾向がすこしばかり収まっている。
  それもあたしたちになるべく負担がかからないようにするため。
  とおもって行動しているようだけど。
  こういうときの、親、というものの心情はとても何かほほえましい。
  かといえば、自分の子供に対して愛情がもてずに殺したりする親もいるのもまた事実。
  人、というのもはとても面白い。
  自然界などでは育たない、と判断すれば育児放棄、ということもしばしばおこるが。
  人は、それとは関係なく、放棄したり、また過剰に愛情を注いだりする。
  「たしかにそうね。とりあえずご飯たべたらいってみましょ」
  まだ、アレが近くに来ている気配らしき兆候はみられてない。
  そんな会話をリナとガウリイ、この二人の夫婦は交わしつつ、
  毎度のことながら食事合戦を繰り広げ、しばし食事光景が見受けられてゆく。


  「あら?」
  左右に広げられている露店市場。
  甘い果実の匂いが道中に充満し、食欲をそそられる。
  そんな道を歩いていると、手前のほうから何やら聞きなれた声が。
  ふと、その声がしたほうを見てみれば、そこには何やら大量に荷物を抱えている女性が一人。
  しなやかな長い黒い髪。
  一見したところ、おとしとやかな女性にみえるが性格的にはかなりよい。
  「もしかして…ラウリィ様…?ではないですわよね?」
  多少驚いたようにあたしたち、というかガウリイに抱かれているままのあたし。
  そしてまた、マナを抱っこしているリナをみてそんなことをいってくる。
  人ごみがけっこうな数なので迷子などにならないように、との二人の配慮。
  その声と、その姿。
  「え、えっと。もしかしてここサイラーグの巫女さん。ですか?あたしはリナ。こっちはガウリイ。
    ちょっとサイラーグの神官長さんにお話があって今から教会にいくところなんですけど」
  リナからすれば、初対面ではない。
  正確にいえば初対面ではあるが、世界が異なる場所においてはそうではない。
  相手に警戒を抱かせないようにと問いかけているリナ。
  確かに服装はどうみても教会関係者、と見て取れる。
  ここでガウリイのやつ、いらないことをいうんじゃないわよ……
  心の中でかなりはらはらしつつも、目の前にいる女性。
  すなわち、シルフィールにと話しかけているリナ。
  「まあ、父に?とりあえずご案内いたしますわ。
    それにそちらの男性のかた、ラウリィ様によく似ていらっしゃいますし。父も喜ぶとおもいますわ」
  いや、そうあっさりとにこやかに対応してもいいもの?
  一瞬リナは突っ込みそうになるが、それをぐっとこらえる。
  ……こんなんだから、あの偽者につけこまれたんだろうなぁ……
  内心そんなことをおもっていたりするリナだけど。
  ここサイラーグの人々は、どちらかというと人をうたがう、ということをしない。
  それゆえに、まああっさりとあんなこになった。
  というのもあるんだけど。
  「そうですか?ならお言葉にあまえさせていただきます」
  「?結局どういうことなんだ?リナ?」
  「あ、あのねぇ!とにかく!このシルフィール…さんについて神官長のところにいく!という話をしてるのよっ!わかった!?」
  いきなり初対面で、呼び捨て…というわけにもいかないだろう。
  それゆえに、あわてて【さん】をつけてガウリイに対して叫んでいるリナ。
  「?ね〜さま?マナ、よくわかんない??」
  きょとん、としながらもリナに抱っこされている状態で、ガウリイに抱っこされているあたしにと聞いてくるマナ。
  「このシルフィールお姉さんのところにいく。ってか〜さんたちははなしてるの。わかるかな〜?」
  「シフィールおね〜さんのところ?」
  「いや、マナ。だからシルフィール……」
  きょと、というマナに説明すると、あんの条、名前を間違っていってくるマナ。
  そんなマナにおもわずリナが突っ込みをいれてるけど。
  さて。
  とりあえず、これからがあの一件の本番…かな?
  楽しくなればいいな〜v


                     ――続く……


##########################################

あとがきもどき:

薫:ううむむ。初期のようにエル様一人称にもどしたほうがいいかな?
  客観的視点さんはなかなかに難しい……
  というわけで(何が?)今回はひさかたぶりにエル様の一人称v
  ある意味、エル様視点だといろんな場所をやっても違和感がない!
  というのが利点なんですよね(こらまて
  さてさて、何はともあれ、次回、サイラーグの教会ですv
  ではまた、次回にて〜〜vv
  (こそっと…今回はエル様、ガウリイに抱っこされているのでこられそうにないから、今のうちに……)

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33520○パラレル・トラベラーズ○ 〜サイラーグ神官長・エルク〜かお E-mail 2008/4/15 19:59:03
記事番号33514へのコメント

  

  まえがき&ぼやき:

  さてさて。ようやくエルクの父親の登場です!
  そういや、彼って原作でははっきりいってあまり出てきてないんですよねぇ。
  エル様降臨、すなわち冥王フィブリゾの最後の巻以外では……
  アニメのほうではきちん、とでてきてましたけどね。
  しかし、あっさりとコピーにだまされたあげくに、冥王フィブリゾに利用された彼ら…
  かなり気の毒すぎる、というより他にないんでしょうけど…
  もう少し、人を見る目があればあのようなことにはならなかっただろうなぁ。
  としみじみおもっていたりします。
  何はともあれ、今回、そのエルクの登場ですv

  #####################################


         ○パラレル・トラベラーズ○ 〜サイラーグ神官長・エルク〜


  「ほう。ラウリィ様のお兄様と同じお名前ですか」
  にこにこにこ。
  実際に生きている彼にとであったことかない。
  リナ達が彼に出会ったのは、すでに生ける屍の操り人形と化していた時。
  「まあ。それではラウリィ様とは親戚にあたるのですね。それでそのようによくにていらっしゃるのですわね」
  とりあえず、自己紹介するのに名前だけ、というわけにはいかず、フルネームで名乗ったリナ。
  さすがに、名前の『ガブリエフ』という言葉はここ、サイラーグではかなり有名。
  しかもそっくりとくればまず親戚か何か、とおもわれるのは間違いない。
  「え。ええ。そのようなものです」
  とりあえず敬語をつかいながらもデスマス口調で答えているリナ。
  何かシルフィールに対して猫かぶるのも不思議な気がするけど。
  だけどここは仕方ないし。
  そんなことをおもっているのがまた面白い。
  「ん〜と。んじゃぁ、これ!」
  「マナ〜。それやったらくずれ…ああっ!」
  ガラガラガラ……
  あたしとマナはといえば大人達は大人達で話がある。
  というので部屋の隅で積み木遊び。
  マナがなぜか途中、円の積み木を塔を作っている最中において、
  おもいっきり全体のバランスを崩して塔が崩れ落ちる。
  「あ〜あ。だからいったのに」
  「?なんでくずれたの?ね〜さま?」
  はうっ。
  説明してもきちんと理解がまだできないとみた。
  崩れた塔をみて、きょとん、と首をかしげているマナ。
  これはこれでたしかに無邪気でかわいいけど。
  そんなあたしたちの姿を横目でみつつ、
  「かわいいお子さんたちですね」
  ふっと笑みを漏らしているシルフィール。
  確かに、傍目からみていれば、ほほえましい光景としか写らない。
  「かなりやんちゃ盛りで目がはなせませんけどね」
  そんなシルフィールに苦笑しながらも答えているリナ。
  「それで?この私に用事、とのことですが、何でしょう?」
  いきなり本題にはいるわけにはいかず、はじめのころはとりとめのない会話をしているリナ達。
  今、この部屋にはガウリイとリナ。
  そして、シルフィールとその父親でもあるエルク。
  そして数名の教会につかえている神官や巫女たちの姿。
  椅子にこしかけ、テーブルに手をおいて、本題を切り出しているエルク。
  見た目、かなりおっとりとしている感じの人間。
  事実、この人間はかなりおっとりしているけど。
  「え。ええ。実は、……」
  いいかけて、ちらっと部屋にいたほかの人に視線を走らせる。
  それでどうやら人にはあまり聞かれたくない話であろう。
  そう判断し、
  「ああ。お前たち。少し人払いしてくれるか?」
  「はい」
  「わかりました」
  エルクの言葉をうけて、うやうやしくお辞儀をして部屋からでてゆく巫女や神官たち。
  部屋に関係者以外がいなくなったのをうけ、しばらく考えたふりをした後。
  「実は。口外無用にお願いしたいのですが。さる人物の名誉にもかかわりますので」
  言葉を選んで説明を始めるリナ。
  まあ、確かに嘘ではない。
  「?さる人物?それは話にもよりますが。わかりました。口外はいたしません。シルフィールもそれでいいね?」
  「はい」
  二人がうなづいたのをうけ、
  「実は。あたしたち、とある一件でさる人物とかかわったんですけど。
    そのときにその人物からお願いされたんです。まあ、依頼、というほどのものでもないんですけど。
    ですが、その人物がいうのにはサイラーグに関係してる、というもので……」
  もったいつけて説明するリナの言葉に、
  「?そのさる人物。とは。いったい?」
  首をかしげながらもシルフィールと顔を見合わせているエルク。
  確かに、これだけだと意味は判らないであろう。
  あたしならばわかるけど。
  「絶対に口外無用におねがいいたしますね?」
  ものすごく念を押していってくるリナの迫力に思わずこくり、とうなづくこの親子。
  その動作をみて、
  「エルク神官長たちもご存知とおもいますけど。……赤法師レゾはご存知ですよね?」
  まさか、そんな高名な名前がでてるくとは夢にもおもっていなく、
  「え。ええ。それはレゾ様。といえば有名ですし」
  現代の賢者であり聖者。
  そういわれている人物。
  一説によれば、かなりの長生きをしていて本当に実在するのか?
  という疑問視すらされている人物。
  もっとも、その彼に助けてもらった、という人々が存在する以上、確実に存在している。
  というのは明白なのだが。
  「実は。その赤法師レゾに関することなんです」
  少しいいにくそうに、それでいて二人の表情を確認しつつ、
  「……実は、その彼の人造人間(ホムンクルス)が何者かに盗まれたらしいんです」
  「「……は?」」
  いきなりといえばいきなりのリナの言葉に思わず間の抜けた声をだしているシルフィールとエルク。
  いきなりそんなことをいわれても、たしかに普通の人間ならばそのような声を出すしかないだろうが。
  「えっと。あの赤法師レゾが様々な魔術などに通じている、というのはご存知ですよね?」
  白・黒・精霊魔術。
  全てにおいて極めている、と一般にいわれている赤法師レゾ。
  一般の人でもそんな噂くらいは知っているがゆえ、サイラーグの神官長を勤めているエルクならばなおさらに。
  「え。ええ。それは定説、というか事実といわれていますし……」
  どう答えていいものか、とりあえずそう答えるエルクに対し、
  「ええ。それで、彼は自身の目を開く方法の確認をかねて、以前自身の人造人間(ホムンクルス)を創造り出したらしいんです。
    ……そのコピーがどうも、彼の弟子でよくない考えをもった人に盗まれてしまったらしく……
    もし、旅先でそのコピー、もしくはその弟子を見かけたら連絡をください。と頼まれたんです」
  嘘も方便。
  とはよくいったもの。
  「いくらコピーとはいえ、外見はやはり赤法師レゾそのものですから。
    悪用しよう、とおもえばいくらでも利用できるわけでして。それを彼は心配していたようなんです。
    何でも、その弟子、というのが以前、サイラーグの伝説に興味をもっていたらしくて。
    それで、念のためにサイラーグの神官長様がたにその旨を伝えておこう。とおもいまして……」
  歯切れも悪そうに、それでいてさも深刻そうに話すそんなリナの様子に。
  それが真実だ。
  そう彼らがおもうのはそう時間はかからない。
  「まあ。そんな……しかし。えっと。リナさん。でしたわよね。いつそんなご高名な方とお知り合いに?」
  その疑問はもっとも。
  そんなシルフィールの言葉に、しばらく考えたそぶりをし、
  「これもやはり口外無用に願いたいんですけど。裏づけは確認していただいてかまいませんけど。
    少しまえ、アトラス・シティでちょっとした騒ぎがあったんです。…そのときに」
  そう説明するリナの台詞に、
  「ああ。なるほど。それでしたら私のほうにも魔道士協会から内密に連絡が届いています」
  さすがに事件が事件であっただけに隠し通すことは不可能。
  だがしかし、それを他の者たちが面白おかしく流言することがないようにとの連絡。
  まさか、そこには魔族、とかそういった類は書かれていないが。
  それでも、屍肉呪法(ラウグヌトルシャヴナ)のような呪法を魔道士協会福評議長がかけられていた。
  というのは紛れもない事実。
  あのとき、魔道士協会の関係者は、ひとまず名のある神官や巫女など。
  そんな彼らにその術らしきものを解く方法はないか。
  と問い合わせていた、という事実もある。
  言葉を濁すリナに、いったいどんな騒ぎが…と深く問いかけようとするシルフィールであるが、
  何となくだが聞かないほうがいいような気がしてその問いかけをのみこむ。
  確かに、いきなり魔族だの何だの、といわれてもはっきりいって信憑性はまるでない。
  それでなくても先日の、いきなりのレッサーデーモンなどの大量発生。
  何かが世の中で起こっている。
  というのは巫女だからこそわかること。
  そのデーモンの大量発生と、無意味な暴走は一時して今は落ち着いたが。
  「とにかく。あたしたちがサイラーグにいく。といいましたら。その旨を伝えておいてほしい。
    とのことだったんで。念のためにお教えしにきた次第なんですが……」
  リナのやつ、ここまでよく口からでまかせいえるよなぁ。
  あるいみ、リナの説明に感心しているガウリイ。
  だが、ここでいらないことをいえば、リナに怒られる。
  というのが判るがゆえに、あえてそのまま黙ってもくもくと出されている食事から、
  ピーマンをいそいそとより分けていたりする。
  「なるほど。わかりました。して。その問題の弟子のお名前はおききしているのですか?」
  「え。ええ。たしか。エリスとか、正確にはたしか、エリシエル=ヴルムグン。といったとおもいます。
    まさか彼も女性であるその彼女がそのようなことをする。とはおもっていなかったらしいですし」
  少し考えるそぶりをして説明するリナの言葉に、しみじみうなづき。
  「判りました。とりあえずその人造人間…というのはさすがに伝達はできかねますが。
    そのエリシエル、という人のみなら各施設などに注意人物、として伝達できるでしょう」
  そういってくるエルクに対し、
  「あ。もし見つけた。という連絡が入りましたら。あたし達に連絡くださいますか?
    しばらく、あたしたちもここ、サイラーグに滞在していますので……」
  ここにきた目的は、あくまでもあのコピーによる悲劇を食い止めること。
  「わかりました」
  おそらく、見つけたら、赤法師レゾ様に連絡する手段を何かもっているんだろう。
  だが、その方法は部外者である自分が聞くことではない。
  そう判断しつつもうなづくエルク。
  「よろしくおねがいします。ほんと、ものすごく心配してましたので……
    何かその彼女って人を操る術に長けている、とかいってましたので……」
  嘘ではない。
  いっていた、というかリナ自身が経験していること。
  「さて。と。…ああ!ガウリイ!あんたまた、ピーマンよけて!
    いつもいってるでしょ!?エルやマナに悪影響及ぼすからきちんと食べないとだめって!」
  ほっと胸をなでおろしつつも、ふと横をみれば、
  ガウリイが野菜炒めからピーマンのみをより分けているのをみておもいっきり叫んでいるリナ。
  「え〜?でもこれ、苦いし……」
  「あんたがそうだから!まねしてエルたちまでが同じことをするのよ!
    栄養あるんだから、父親であるあんたが見本みせなくてどうするのよっ!」
  すばこぉぉんっ!
  リナの懐から取り出した、何ともこぎみよいスリッパの音が部屋中にと響き渡る。
  ……えっと。
  どうしてスリッパなんか懐にいれてるんでしょうか?
  そんなことをシルフィールはおもっていたりするようだけど。
  けっこう、ああいう品はかなり便利。
  おもいっきり重宝する。
  「うう……あ、ならリナが食べれば問題ないじゃないか!うん」
  「そういう問題じゃないぃ!!」
  しばし、そんな二人の夫婦漫才を目をぱちくりさせながらみつめ、
  次の瞬間。
  くすくすと笑い出すシルフィールに。
  笑いをこらえつつも、
  「仲がいいことはよいことです。あ、シルフィール。この人たちにサイラーグの町を案内してさしあげなさい」
  「はい。お父様」
  こんなに小さな子供が二人もいては、いくら小さな町とはいえ迷子とかになっても困るだろう。
  それゆえのエルクの配慮。

  とりあえず、嘘ではないが事実でもない。
  とにかくコピーが悪用されている…とある意味真実味を帯びたような話に作り変えエルクに注意を促したリナ。
  確かに、事前に何の連絡もないのと、あったのとでは対応はことなってくる。
  ともあれ、あたし達はシルフィールの案内で、しばしここサイラーグ・シティを見物することに。
  そろそろ彼女達も行動を実行に移すころあい。
  ゼルガディスもまた、自力で調査した後に、こちらのほうにむかってくるのは請け合い。
  少しはまたまたたのしめそう♪


                        ―――続く……


#########################################


あとがきもどき:

L:さてさて。みなさん。おひさしぶりv
  何か薫はどこかの雪山の中で行方不明になってるからおいといてv
  ともあれ、代理のLですv
  ようやくこのシリーズもコビーレゾ編に突入よv
  しかし、このシリーズ、あまりあたしが活躍してないのが問題よねぇ……
  リナたちに気づかれないように精神世界面でいろいろとしようとおもえばできるのに。
  気づかれたりしたらそれこそ記憶を調整すればいいわけでv
  って、当たり前なことをいいましたが。
  次回でようやくエリス登場にいける予定らしいわよv
  しかし…何で作者同様、巾着袋の中で遭難するのかしらねぇ?
  ふふふv
  何はともあれ、それではみなさん、また次回にてvv
  まったね〜〜♪

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33521○パラレル・トラベラーズ○ 〜辺境の村にて〜かお E-mail 2008/4/15 19:59:41
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:


  さってと。
  今回は前ぶりで、ゼルガディス達をばv
  この一件、彼らもかかわってきますしね(まて
  そういうわけで(どういうわけ?)でとりあえず、いっきます!
  ようやく戦闘シーンに突入のさわりともいえる移動(?)のシーンv


#####################################


  「……ちっ」
  ぱきっ。
  「ゼルガディス殿。やはり誰もいないようです」
  「こちらにもいません」
  判ってはいた。
  いたが…少しでも手がかりが得られるかもしれない。
  そうおもってきてみたが、案の定、そこにいたはずの例のモノはいなくなっており、
  また、関連したいくつかの品々も消えている。
  あまり使い道が広くないのでそのままほうっておかれたはずの、『ルビー』の姿も見当たらない。
  「レゾのことだ。おそらく、何か仕掛けをしているはず……」
  レゾは自分自身の研究に対してはかなり慎重を期していた。
  ゆえに、どこかに防犯装置、もしくは記憶装置みたいなものがかならずあるはず。
  それがどこにあるかはわからないが、それでも。
  それをみつければ、ここにあったはずの、レゾの遺言にあったアレがどこにいったか?
  という疑問が多少は改善されるはず。
  確かに、自分はすでに自由の身ではあろう。
  すでに忌まわしき合成獣の体からは解き放たれて元の肉体にと戻っている。
  それでも…レゾの…曽祖父の最後の言葉を信じたい。
  ましてや、これ以上、彼の名前を貶めたくはない。
  それゆえの行動。
  しばし、すでに無人となりはてた人気のないとある隠し研究施設において、
  施設内部を探索するゼルガディス・ゾルフ・ロディマスの姿が見受けられてゆく――

 
     ○パラレル・トラベラーズ○ 〜辺境の村にて〜


  「しかし。シルフィール。あなたまでこなくても……」
  とりあえず、『さん』づけをしばらくしたものの。
  リナのほうが年上、ということもあり、『呼び捨てにしてください』そういわれ、
  本来の呼び方というか慣れている呼び方にしているリナ。
  「いいえ。わたくしには見届ける義務がありますわ」
  はうっ。
  もしシルフィールが真実をしったらそれこそややこしくなりそうなんだけど……
  そもそも、以前、シルフィールをかばって大怪我したことがあるリナである。
  今回は相手の出方がある程度読めるのでそのようなことにはならない、とリナ自身もおもってはいるが、
  相手はある意味、わがままをいいまくる子供のようなもの。
  何をしてくるかはわからない。
  とりあえず、サイラーグに滞在すること数日。
  エルク神官長の連絡網に『赤法師レゾが村に尋ねてきた』という報告があったのがこの前のこと。
  その報告があった村にとりあえず向かっていこうとしたリナ達家族にと同行を申し出たシルフィール。
  断ったのに持ち前の彼女の行動力で無理やりについてきていたりする今の現状。
  赤法師レゾが現れた。
  というのはサイラーグ・シティよりは少し離れた場所。
  小さな集落があつまってできている村で、名前はさほど世間的には知られていない。
  だが、小さな村であるがゆえに、すぐさま伝説ともなっている聖者の出現の噂はひろまる。
  この辺りでは教会の運営に必要な特殊な薬草などが生えることもあり、
  近隣の大きな町などの教会関係者が駐在している、ということもある。
  ゆえに、その報告がサイラーグのほうに届くのもそうは時間はかからない。
  「でも。シルフィールはコピーとかみておどろくんじゃないの?」
  確か、彼女は実戦経験はないはずである。
  しかも、ここにくるまでの途中、やはりというか何というか。
  あんの条、彼女が放った攻撃魔法はかなりしょぼいもの。
  ここのシルフィールってドラスレつかえるんだろうか?
  ふとそんな疑問をリナは抱くがまさかそんなことをきくわけにはいかない。
  それゆえにそのことについては確認していない。
  「ここにくるまで、かきゅうもどきさんみてきぜつしてたし。シルフィールおね〜ちゃん」
  そんなリナに続いてとりあえず突っ込みをいれてみる。
  何しろ、このシルフィール。
  かってについてきたはいいものの、道中、ふらっと出会った野良デーモン。
  しかもたかがレッサーデーモンごときをみて気絶したりしているし。
  おそらく、見た目がかなりグロテスクと感じる場合は問答無用で攻撃を仕掛けるだろうけど。
  「そ。それは。あんなもの、サイラーグではみたことがありませんでしたし」
  まあ、たしかに。
  たかが下級風情。
  しかも、自力で具現化できないような下っ端にはあの地に出現することはまず不可能。
  何しろ神聖樹フラグーンの糧は瘴気。
  すなわち、魔族本来が持っている気でもある。
  神聖樹フラグーンにとっては魔族はあるいみごちそう。
  もっとも、その食事の制御ができない…という難点はあるにしろ。
  つまりは、下級の下っ端風情があのあたりに近づいただけでその気を吸い取られ、
  その結果、依り代を得て実体化しているしたっぱ魔族風情はその力を失い精神世界面へと戻ることになる。
  中にはそのまま全て吸い取られて消滅するような情けないやからもいるようではあるが……
  「だから。シルフィールはサイラーグでまっていたほうがよかったのに」
  そんなので、魔族二匹と合成されているコピーと対面したらまたまた気絶しかねない。
  それだと完全に足手まとい以外の何者でもない。
  だからといって、そのコピーに魔族が合成されている、などと話しても信じてもらえないのは明白。
  「お。リナ。あれじゃないのか?」
  彼女……否、エリスの性格からして長く同じ場所にとどまっている。
  とは思えない。
  ましてや、ゼルガディスがいっていたが、たしかあのコピーはまだ不完全だとか何とか。
  ゆえに、多少の定期的な魔術干渉か何かが必要らしい。
  もっとも、魔族を合成された時点でその問題は解消されているのだが、
  その事実をゼルガディス達は知らない。
  リナがとりあえずむかっているのは、その報告があった、という村より少し山間に位置している場所。
  定期的な魔術的干渉をほどこすのに、山の中、というほど人目がつかない場所はない。
  運がよければ盗賊いじめ…もとい、退治もできて資金も得られるし、一石二鳥。
  そんなことをリナはおもっていたりする。
  そんなリナにとガウリイがふと街道の先に小さな村らしきものの姿をみとめ声を上げる。
  「まあ、ここまできたのは仕方ないとしても。
    それじゃあ、シルフィールにはこの子たちのことお願いしてもいいかしら?」
  まさか小さな子供をつれてそんな危険分子とおもわれる存在の近くにいこうとは到底リナはおもわない。
  それでなくても、この間の魔王達などの戦いでこの子たちはかなり巻き込まれて大変な目にあったのに。
  そんなことをおもいながらも、シルフィールに話しかけているリナ。
  「え?でも……」
  「リナか〜さん?わたし、マナとおるすばんできるよ?」
  というか人がいないほうが何かと楽。
  「だめ!万が一、ということもあるからね。また相手に誘拐されてもこまるしね」
  「また。って……」
  必死にあたしにいってくるリナの台詞に、唖然としながらもつぶやいているシルフィール。
  まあ、たしかに、あたしはわざと幾度か相手に捕まったのは事実だけど……
  「とにかく!エルとマナはシルフィールとお留守番。いいわね?」
  小さな村なので教会があればそちらに。
  なければ宿。
  もしくは宿代わりの場所で安全な場所。
  そこにシルフィールと二人を預けて、ひとまず情報収集してみないと。
  レゾのコピーに関しては、たしかに瘴気を持っているので魔族とあまり雰囲気というか気はかわらない。
  だが、下手な下級魔族を合成しているわけではないので、その気配を隠すことなどは朝飯前。
  そのことは、リナもよく以前一度戦っているのでわかっている。
  こっそりと、数日サイラーグに滞在している間に、祝福の剣(ブレスブレード)を実はこっそりとってきていたりする。
  祝福の剣(ブレスブレード)は神聖樹フラグーンの分身。
  ゆえに、剣のみでも瘴気を吸収し、瓦解させる効果がある。
  「とにかく。シルフィールはこの子たちをお願い。
  相手がどうでてくるかわからない以上、下手をしたらこの子たちを人質に…ということもありえるし」
  エリスならばそれくらいしかねない。
  わざと、初心者の賞金稼ぎのフリをして近づいてきたような彼女ならば策士に長けているはず。
  それゆえに、シルフィールに頼んでいるリナ。
  あたしとしては、マナと二人のほうが気楽なんだけど……
  そんなあたしの思いは何のその。
  「…わかりました」
  そこまでいわれて断るわけにはいかない。
  たしかに、あのレゾのコピーを盗むような人物。
  何をしでかしてくるかわからない、というリナさんの危惧もわからなくもないですし。
  それにわたくしとしましても、こんな小さな子供たちに危険が及ぶのは避けたいですし。
  リナの説明に、少し考えたのちに、こくり、とうなづくシルフィール。
  そんな会話をしていると、やがてみえてくる村の出入り口。
  村はとても小さいらしく、村の周囲は気休め程度の木の柵で覆われている程度。
  それても、その木柵の中にはいくつかの家々が存在しており、
  小さいながらも教会らしき建物も垣間見える。
  小さい、といってもこの村ではいちばん大きな建物だが。
  「とにかく。いってみましょ」
  一度、戦ったことがあるので精神世界探査(アストラル・タンサ)は可能。
  ゆえに、定期的にそれを試してサイラーグに向かっていないか確認しているリナ。
  シルフィールはそんなリナをみて、おそらくレゾから相手の品か何かを預かっているんでしょうね。
  そう解釈していたりする。
  滅多に旅人などが尋ねてくるはずもない、というのに、今はこの村はかなりにぎわっている。
  どうやら近隣の村などからも人々があ詰まってきているらしく親子連れ、と見えるリナ達もあまりめだたない。
  とりあえず、
  「あ。あの。すいません。噂をきいてきたのですけど……その、本当なんでしょうか?」
  何の噂か、というのは一切いわない。
  しかも、何が本当なのか。
  というのも。
  それは相手の出方をみるための、いわばリナの取引。
  「あら。あなたたちも聖者様のことをきいていらしたんですか?
    ええ。本当らしいですわよ。何でもお弟子さんと一緒に近くに見えられているらしくて。
    いつも昼時になればこの村に立ち寄ってくださっているらしいんですよ。
    私も家族のことで聖者様にぜひともお話をきいてほしくて……」
  そんなリナの質問に、にこやかに答えてくるその女性。
  リナは聖者、と一言もいっていない。
  ましてやこの世界で聖者、と今呼ばれているのは赤法師レゾくらいのもの。
  間違いないわね。
  内心そう確信しつつ、
  「そうですか。ありがとうございます。あの、宿とかありますかね?」
  「そちらの人は巫女さんのようですし。教会にとめていただいてはどうでしょう?
    あなたの格好も魔道士さんのようですし。
    何でも教会では今、聖者様を接待するのに人を募集されてるようですしね」
  その女性の話からすると、昼時になりこの村にやってくる赤法師レゾとその弟子。
  その噂をききつけて近隣の村などから人があつまってきている。
  とうぜん、やっかみや倒して名を上げよう、とするようなごろつきも。
  それらを対処するために、一応臨時で人を雇っているらしい。
  それはかなりの好都合。
  その一員になれば嫌でもその弟子と赤法師レゾとに出会うことになる。
  問題は……この村でいきなり戦闘、ということになれば村に来ている人々をも巻き込み、
  かつてのサイラーグと同じ結果をたどりかねない。
  という不安要素があるのみ。
  まあ、まだ自分たちの噂をとにかく広げて仲間を募り、
  それから行動に移そう…としているエルシエルにとっては、こんな場所で仕掛けてくるはずもないけど。
  まあ、目撃者全てを消せばその必要性もない。
  というのもあるけど。
  今の彼女は仇を討つためならば、他人はどうなってもかまわない。
  その思いのみにとらわれていたりするし。
  人、というのもは本当にいろんな意味で視ていてあきない。
  自分自身が人になってみてからなおさらにそれを肌で感じる。
  「それで?リナ?どうするんだ?」
  女性に話を聞き終わったリナにきょとん、としながらも問いかけているガウリイ。
  まあ、聞かなくてもわかるとおもうけど。
  「とりあえず。教会にいってみましょ。うまくしたら寝床も確保できるし」
  人々がいまだに通ってきている、ということはまだ人々を操っていたり…とはしていない。
  以前、あのときシルフィールやゼルガディスから聞いたサイラーグの様子と、この村の様子。
  それはあきらかに格段に違う。
  まだ、彼らは猫をかぷりながら行動をしている。
  そう確信しつつもウィンクひとつ。
  「まあ。たしかに。リナさんのいわれるとおり。教会にいくのが無難ですわね」
  ウィンクしてくるリナの言葉に同意を示すシルフィール。
  サイラーグの巫女頭として、教会に出向かなければいけない彼女にとっても一石二鳥。
  「?けっきょく、マナたちどこいくの?」
  「んとね。このむらのきょ〜かいだって」
  よくわかっていないマナにと説明する。
  そんな会話をかわしつつも、とりあえずあたし達一行は村の中にと入ってゆく。
  小さな村だ、というのにかなりの人だかり。
  人目でも噂をきいて、現代の聖者を見よう、という人間や。
  はたまた、医者などに見離されたり、高額な薬が買えないがゆえに病気が治らない。
  そんな人々がこの小さな村にあつまりひしめきあっている。
  すこし、山のほうに気配をむければ、そちらのほうには多少のオーガやトロル。
  狼人間、ついでに中級よりも下っ端魔族。
  そんな気配が見て取れる。
  しかも、それらは冥王フィブリゾの配下だし……
  もう、当の赤法師レゾがいないんだから呼び戻してもいいでしょうにねぇ。
  近くにアレの気配もしてるけど……ま、別にいっか。
  わざわざリナに説明して不思議がられるよりは何もいわないほうが賢明。
  そのまま、あたし達は赤法師レゾが昼間にやってくる、と噂されている村にある教会にとむかってゆく。
  ……たぶん、まちがいなくあたしやマナは、シルフィールと留守番になるんだろうなぁ。
  ………暇……


              ――続く……



######################################### 

あとがきもどき:

薫:本来ならば、今回でエリスの登場…といきたかったんですけどね。
  どうも(いらない?)エル様の心情とかいろいろいれてたら容量が長くなりそうなので。
  次回に繰越v
  まあ、エリスと接触したら、とんとん拍子に話はすすみますしねぇ(笑
  エリスさん……助かるパターンとそうでないバターン。
  二つ考えてるけどどっちにしよう(汗
  何はともあれ、それではまた、次回にてvv

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33522○パラレル・トラベラーズ○〜エリシエル=ヴルムグン〜かお E-mail 2008/4/15 20:00:25
記事番号33514へのコメント

  

  まえがき&ぼやき:

  ようやくエリスさんの回。
  といっても、エル様…もとい、エイルの視点で今回もいくのですv
  このあたりは、本編のサイラーグの妖魔とはかぁぁぁなり異なっていますのでご了解を。
  さて、一番気の毒なのは…だ〜れだ(笑

#####################################

  「……ちっ」
  厄介。
  といえは厄介。
  なぜレゾがあれに魔族を二匹も合成したのか、それは今の自分にはわからない。
  腹いせなのか、それとも何か考えがあったのか。
  とにかくそのことによって確実にアレは意識というか自我らしきものを得たらしい。
  というのは残された記録にて把握できた。
  問題は、その後の記録。
  アレを動かすのには大量の生体エネルギーが必要。
  そのようにあの体を創造りなおしたらしい。
  自分の目は開かないのにあっさりと開いたソレへのあてつけなのか。
  はたまた、内部にいたあの赤き悪魔の仕業なのか。
  それは彼…ゼルガディスにもわからない。
  今、言えることは。
  アレを持ち出したとおもわれるエリシエルを早くみつけなければ被害は格段に増える。
  ということ――


       ○パラレル・トラベラーズ○〜エリシエル=ヴルムグン〜


  ざわっ。
  いつ目的の者が来るのか。
  それは周囲の状況から判断したら一目瞭然。
  人々がざわめきだしたので、彼らがきた、というのを理解し、
  「とりあえず。シルフィール。二人をよろしくね」
  少し離れた場所からあのエリスであるかどうかを確認すべく教会の裏口からでてゆくリナ。
  ガウリイは男手が必要。
  というのもあり力仕事に借り出されている。
  エリスがどこまで自分たちのことを知っているか不明だけど、
  あの手配書はいったい何を目安に作ったのか、ということすらリナは知らない。
  唯一、確実にいえるのは、おもいっきり悪逆非道のように書かれていた。
  というその事実のみ。
  ざわざわと、村の出入り口付近に人だかりが出来ている。
  村の中からもそちらにむけてかけてゆく人々の姿が多数見受けられる。
  おそらく、普通に見るのでは確認は不可能。
  ならば、風の結界をアレンジして他人に姿がなるべく見えないような形の術を唱え、
  ふわり、と上空にと浮かび上がる。
  上空からならばまずさえぎるものがない限り人物の確認くらいは可能。
  かといってあまり近づきすぎても相手に警戒されるのは明白。
  もし、あたしが知っているあのコピーならば自我があるはずだし……
  そんなことをおもいながらも、注意深く人が集まっている中心付近にと移動してゆくリナ。
  ざわめくひとだかり。
  その中心付近に場違いな黒いフードに黒い服らしきものを着ている一人の女性。
  その女性を取り囲むようにして村人たちがひしめきあっている。
  顔は見えないけど、おそらく間違いないであろう。
  かつてシルフィールから聞いた弟子の容姿にすっぽりと当てはまる。
  みたところ、問題のコピーのほうは一緒にはきていないらしい。
  何よりも、もしあの性格のままだとすればこの村の人たちに被害が出かねない。
  一番いいのは、彼女が帰るときにこっそりと後をつけていき本拠をつきとめ、そこに出向くか。
  はたまた、どこか人気のない場所に呼び出すか…だけど。
  呼び出しに素直に応じる、とは思えないし。
  一番いいのは、アレから魔族を分離させる方法がわかれば手っ取りはやいんだけど……
  様々な可能性を思い巡らせながらも上空でそんなことを考えているリナ。
  エリシエルのほうはといえば、自分が探している人物の一人であるリナがまさか上空で。
  しかも、自分を見ている、などとは夢にもおもっていない。
  しばらく様子をみつつも、そっとその場から離れるリナ。
  一番いいのは術をつかい、目印をつけることであるが、レゾの弟子だった。
  というのを考慮してそれは実行に移してはいない。
  人々がレゾの弟子だ、という触れ込みのエリシエルの元にいっているがゆえに、
  ここ、教会内部にははっきりいって人はまばら。
  シルフィールはここの教会の責任者と何やら話しがあるとかで話をしている。
  その間、あたしとマナはといえば教会の礼拝堂の中にて二人で遊んでいたりする。
  小さな子供からすれば、これくらいの教会の礼拝堂でもかなりの広さ。
  しかも椅子などがかなりあるのでかくれんぼなどには最適。
  この教会から出ないように。
  と念を押されているのでとりあえずそのあたりの約束はまもっているあたし達。
  しばし、妹と二人して遊んでいると、人がこの時間帯、くるはずもないのに誰かが教会の礼拝堂に入ってくる。
  ふと礼拝堂の出入り口のほうをみてみると、何やら見慣れた神官姿がひとつ。
  「?なんでおじ〜ちゃんがここにいるの?」
  その姿をみて礼拝堂の教壇にて遊んでいたマナが同じく遊んでいたあたしにと聞いてくる。
  そ〜いや、あいつ、サイラーグにいく途中にいたっけ……
  「おおかた、例のいっけんのちょぅさだとはおもうけどね」
  というか事実そうだとしか思えないけど。
  さすがにSが復活した直後に滅ぼされた。
  というのはいくらどんなに鈍い存在でも気づくはず。
  だけども、まだこちらのことを気づかれては面白くない。
  だからこそ。
  「おじちゃ〜ん。何かおきゃくさんがみえたよ〜?」
  奥の部屋にといるシルフィールと話しているこの教会の責任者にと扉のほうにいきつつ叫ぶ。
  そんなあたしの声に気がついたのか、
  「うん?おや。これはこれは……」
  ふと教会の出入り口付近にいるソレをみてそんなことをいっているこの教会の責任者というか神父。
  まあ、確かに。
  見た目はどうみてもどこにでもあるありふれたような神官服なので同業、と認識するのはわかるけど。
  人というものはどうして同業などとか思い込んだだけであまり警戒心を抱かないものなのか。
  逆に警戒しまくる人間もいたりするのでよくまあ、『十人十色』とはとある場所の格言で考えたもの。
  とりあえずあたし達はあたし達でそのまま入れ違いになるように奥の部屋にとひっこんでおく。
  何やら二人が話している声がきこえてくるけど気にしない。
  「あ。シルフィールお姉さん。もうお話おわったの?」
  肝心なことはつっこんで彼女も聞いていないのは判ってはいるけどきいてみる。
  もっとも、子供に素直にいうともおもえないけど。
  「え。ええ。ですが話しをきいてもよくわからなかったですけどね」
  そんなこちらの質問に苦笑まじりに一応答えてくるこのシルフィール。
  このあたりは、律儀、といえば律儀。
  「?なにがわからなかったの?」
  そんな彼女の言葉をきき、きょとん、と首をかしげているマナ。
  「いえ。別にたいしたことではありませんわ。ただちょっと、ここにきている人というのをきいていただけで。
    マイナちゃんたちが気にすることではありませんわ」
  いって、くしゃりとマナの頭をなでるシルフィール。
  「?ここにきてる?」
  「えっと。たぶんリナか〜さんがみにいってるひとのことだとおもうよ?マナ」
  「そなの?ならききにいく〜!!」
  「「……は?」」
  一瞬、マナが何をいいたいのか理解できずに思わず間の抜けた声をだす。
  予想外、とはこういうのをいうのかもしれない。
  「れうぃぐ!」
  って、それをいうなら翔封界(レイウィング)…って、ちょっとまってっ!
  換気のためにあけてあった天窓からそのままするっと飛んで出て行ってるし…マナ……
  一瞬のことだったのでおもわず唖然。
  「って、マナ!ちょっとまって!」
  あわててマナをおいかけてあたしもまた飛び上がる。
  …まさかそういう行動にでるとは。
  マナの行動はときどき突発的なことをするので予測不能。
  かといって心の中身までを視るというのも何となく嫌。
  何やらしばし、あとに残されているシルフィールが呆然としているようだけど気にしない。
  この天窓はかろうじて子供が通り抜けられるくらいの大きさ。
  そもそも、彼女はたしかこの術は使えないはず。
  「って、ちょっと!?マイナちゃん!?エイルちゃん!?」
  シルフィールの叫び声を後にして飛んでいったマナをあたしもまたおいかけてゆく。
  …そもそも、たしかマナってこの術…まだコントロールが不完全のはずなんだけど……
  やはりというか何というか。
  そのままあさってのほうにとんでいってるし。
  ふと視ればリナか〜さんのほうはこちらにきづいていないよう。
  ……ま、あっちのほうはたしかアレがいまいる方向だし……
  このまま流されていってみますかv


  「エリス様。ぜひとも赤法師様に……」
  村人たちに囲まれて嘆願するのは以前ならばとても喜ばしく感じていた。
  だけども、今はそれすら苦痛に感じる。
  彼らは何もしらずに……っ!
  理不尽な怒りなのかもしれないが、今の自分にとってはどうでもいい。
  そんな心の葛藤や想いは微塵も表にはださない。
  一人でも多く、あのかたの仇をうつために利用できれば……
  人というものは、助けてくれる人にはそのときにはたより、いらなくなれば排除する。
  だから、その前に利用して何がわるい。
  たとえ人々がいくら命を落としたとしてもあのかたの命には……
  「今、レゾ様はお忙しいのでこちらにはこられませんので。
    時間があるようならば私があのかたの元に案内いたしますよ?」
  にっこりとあつまった村人たちにと語りかける。
  そのために今まである程度の信頼を勝ち取った。
  これで人が行方不明になっても自分たちのせい、とは絶対におもわれない。
  だが、アレを動かすのにはどうしても人の生気が必要。
  生きている人間がもつ生体エネルギーが。
  なるべく行方不明になっても騒がれない者の選別。
  それをもかねて一人で行動をよくしている。
  エリシエルはよもや追い求めている人間のうちの一人が上空にいる。
  などとは夢にもおもっていない。
  赤法師レゾの付き人として、そしてまた弟子として。
  その全身を真っ黒いローブに包んだ一人の女性。
  それが彼女。
  エリシエル=ヴルムグン。
  ある程度のエネルギーを得た後は、この髪をぱっさりきってにっくきまずはゼルガディスを……
  あのかたの身内だからといって、やっていいこととわるいことがある。
  だからこそ、一番初めに復習をするのは彼だ、と決めている。
  たかが、村のひとつや二つ。
  消えても何とでもなる。
  そもそも、村が消えたのと自分たちの行動と結びつけて考えるものなどいるはずもないのだから。
  『おおお!!』
  そんな彼女の考えを知る由もなくエリシエルの台詞に村人よりどよめきがおこる。
  もとより、それを断る理由などはない。
  「是非ともおつれください!」
  「お弟子様!わたくしも!」
  われ先にとエリシエルにと詰め寄る村人たち。
  これまでも立ち寄った村々で人々を連れて行き、そしてその彼らは村に戻らなかった。
  そんな実績があるにもかかわらず、人は噂のみを信じて行動する。
  中には有名な伝説の赤法師レゾとお近づきになれれば自分の格が上がる。
  そんな勘違いをしている存在もいる。
  「しかし、先ほどもいいましたように、レゾ様は大変にお忙しいですので……
    時間がいくらかかってもいいようにきちんと後々困らないようにしてきてくださいね?
    とりあえず今晩、ではこの場所で。それでもいい。というひとのみレゾ様のもとにお連れいたしますわ」
  にこやかに、
  それでいて少し困ったようにいってくるエリシエルの台詞にまたまた村人たちのざわめきが大きくなる。
  その表情から第三者が読み取れるものは、たよってくるひとはほうっておけない。
  というのがレゾ様のお考えですし。
  という初日に彼女がいっていた言葉。
  彼女のその言葉の裏の意味を誰一人ともなく疑うこともなくざわざわさざわめきはひろがってゆく。

  今晩…か。
  少し離れていても風の呪文を少しアレンジすれば相手の会話は読み取れる。
  つまりは今晩、おそらくアレのところに村人たちをつれていくのか。
  でも何で村人をわざわざ?
  エリスの台詞に一人首をかしげる。
  リナが知っているのは、アレが魔族と合成されて自我をもっていたこと。
  そしてオリジナルを倒した自分たちを倒せばオリジナルを超えられる。
  とおもい、無関係な人々を一瞬のうちに消滅させ、また利用したこと。
  そして、自分を目覚めさせた一人であろう彼女をその手で殺した。
  というその事実のみ。
  そもそも、リナがあの一件にかかわったとき。
  すでにサイラーグの神官長であるエルクは洗脳され、サイラーグそのものが支配下にあった。
  リナはゼルガディスやシルフィールから情報をきいたに過ぎない。
  その光景を目の当たりにしていたわけではない。
  だからこそ、リナは知らない。
  このようにして集めた村人などの一部が。
  あのコピーの手下としてサイラーグの町にて合成獣(キメラ)化されて使われていた、ということを……
  コピーに合成されているのは魔族の中でも一応はまがりなりにも中級魔族二体。
  中級、といえども自力で人の姿になどはなれずにかろうじて実体化できるかできないか。
  という程度。
  それでも、魔族の一番の糧は人の負の感情。
  糧がつよければ強いほど力はましてゆく。
  とはいえ限界はあるにしろ。
  何もしらない無邪気な村人をそのまま実験に利用する。
  というのは負の感情を得るのにもまさにうってつけ。
  それゆえのエリスの行為。
  それで使える手ごまが…しかも使い捨てのこまが手にはいるのならばエリスにとっては一石二鳥。
  彼女にとって、赤法師レゾを倒したものたちを倒して仇をとる。
  それが一番なのだから……


                          ――続く……



#########################################


あとがきもどき:

薫:とりあえず、子供達はなぜか(確信犯?)厄介ごとに自ら進んでいっているような……
   次回かその次くらいでたぶんゼルも合流する…はず……
   しかし、リナは心労ばかりがたまってます(苦笑
   いちばんあせっているのは誰でしょうvv
   ちなみに。スレイヤーズの本編においては、リナの一人称でもあった。
   というのと、すでにサイラーグは支配下になっていた。
   というのを踏まえて彼女ならそれくらいはもしかしてしてたのでは……
   という個人の想像を元にこの回は成り立っておりますv
   騒ぎにならないのは、あまりにもレゾの噂が高名すぎて犯罪に誰も結び付けない。
   という理由も……(人は巷の噂などに左右される生き物だ、というのを象徴中)
   何はともあれ、それではまた、次回にてv

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33523○パラレル・トラベラーズ○〜責任と約束〜かお E-mail 2008/4/15 20:01:06
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  さてさて。今回ようやくゼルガディスの再登場v
  あと、そろそろ複線でまくってきておりますv
  前回、ちらっとでてきたお役所神官がどうして?というのもちらり…とv
  この一件がおわってからそのままたぶん、例のプラムの一件に移る予定v(あくまで予定v
  それがおわったらアメリア達との合流(?)ですね(笑

  #####################################

       ○パラレル・トラベラーズ○〜責任と約束〜
 

  しかし、どの種族の子供に共通すること。
  ちょっとやそっとではまったく動じることなく、逆に楽しむ。
  今、マナがやっているのがまさにそれ。
  どうでもいいけど、コントロールがきちんとできていなくてちょっとした速さでぐるぐるまわりつつ、
  さらには回転するように空を飛んでいる状態。
  霧が多少立ち込めているので地面からはこちらの様子は見えないはず。
  それでも危険、という文字は頭になくてただただ何だか楽しいらしい。
  とりあえずそれほど危険ともおもわないのでしばらく様子見。
  何かあればすぐに対処できる位置を平行して飛んでゆくことしばし。
  どさっ。
  あ、おちた。
  空を飛んでいた鳥に気をとられ意識をそちらに向けると同時。
  案の定、というかやはりそのまままっさかさまにとおちてゆく。
  まあ、下は一応森だし。
  それに……
  「…ぶっ?!」
  何やらつぶれたような声をだして上空からおっこちたマナの真下にてつぶれている人物がひとつ。
  そういえば、いまだに以前の癖が抜けてないんだっけ?
  「マナ〜。だいじょ〜ぶ?」
  とりあえず、下敷きになっている人間はほっといてマナの無事を確認。
  「…?わ〜い。おもしろぃぃ〜〜!!」
  おっこちたのは多少びっくりしたようではあるが、逆に何やらはしゃいでいるし。
  まあ、いきなりの急降下とかはたしかに風がその体全身にあたり楽しいといえば楽しいはず。
  そもそも、それを体感するための遊具もとある世界にはあるわけで。
  まだこの世界にはないにしろ。
  「ね〜さま、おもしろかった〜!!」
  一人でそのままの姿勢ではしゃいでるし。
  「……って、な…って……」
  頭を何やらかかえつつ、起き上がり、なぜかあたしとマナの姿をみてしばし絶句しているその人物。
  真っ白い服にフード。
  どうでもいいけど、服くらいは変えてもいいような気がするんだけど。
  黒い髪にすこし白い肌。
  まだあれから日付もあまりたっていないのもあり日焼けなどで肌が焼けていないらしい。
  あるいみ、ぱっと見た目病弱男児にみてとれなくもない。
  そもそも、もう以前のソレとは違うのだから耐久性とかを考えないとそれこそ問題となりえる。
  当人もそれを自覚はしていても、数年以上の感覚はすぐにはどうやら抜けていないらしい。
 「あれ?ゼルおじちゃん?」
  きょとん、としながら問いかける。
  「って、誰がおじちゃんだ!」
  反応が面白いのでわざと呼ぶ。
  そもそも、だけどまだ五歳の自分からすれば十代後半とはいえこの彼…ゼルガディスはかなりの年上。
  子供の目からすればある程度の歳の人はほとんどがそのように映らなくもない。
  いうまでもなく、マナがおもいっきり押しつぶす格好になったのはゼルガディス=グレイワーズ。
  周囲にあの二人がいない、というのは別行動をしているがゆえ。
  ちなみに、まだマナは面白いのかゼルガディスの上にのっかっているまま。
  そうひとまずこちらに言い返すと同時、ため息ひとつ。
  そのまま一人ではしゃいでいるマナを自分の上から取り除き、そのまますくっと立ち上がる。
  パンパン。
  そして何事もなかったかのように服をはたき、きょろきょろと周囲をみて、
  「って、あいつらはいないのか?何でまたこどもだけ……」
  いって腕を組んでつぶやくゼルガディス。
  腕をくんですぐに一瞬、はっと顔色をかえ、警戒しつつばっと周囲を見渡していたりする。
  彼が想像したのは、またまたあたしとマナが誘拐か何かされている。
  ということ。
  つまりは前回のレゾのときと同様に。
  彼にとって、あたしもマナもよく見知っている子供。
  ただ、一緒にいるべき両親であるリナとガウリイがいないだけ。
  辺りは鬱蒼と茂る森。
  それに霧が多少立ち込めているので普通の視界的においては悪い部類。
  だけど別に視界画悪いからといって、生き物などの気配がわからないわけでもなく。
  ただ、普通に『目』で確認しにくい。
  というだけのこと。
  「ねえねえ。なんでデリおに〜ちゃんがここにいるの?」
  「マナ〜。だから、デリ、でなくてゼル……」
  意図して間違えているのではない。
  とわかっていても、毎回名前をまちがえるので楽しい、といえば楽しい。
  とりあえず、マナ的には自分がおっこちてゼルガディスをおもいっきり押しつぶした格好になった。
  というのは気にもしていないらしい。
  まあ、別に気にするようなことでもないのも事実だけど。
  何のことはない。
  彼がここにいるのも目的はリナたちと同じ。
  つまりは、あのコピーをとめて、エリシエルのたくらみを阻止すること。
  ゼルガディスはレゾが残していた記録でアレがどのような結果を生むか。
  多少なりとの把握はできている。
  だからこそ分担して、常に連絡が取り合えるようにそれぞれに分かれて捜索にあたっているのだから。
  だが、それを知っている、もしくは判っている、などとは口には出せない。
  そもそも、あたしは非力なかよわい単なる三歳児なのだから。
  「あ。もしかしてみちにまよったとか?」
  「誰がだっ!」
  即座にあたしの意見を却下し、なおかつ。
  「それはそうと。おまえら。両親はどうした?」
  周囲にリナ達がいない、というのを気にかけて問いかけてくる。
  「んとね〜。か〜さんはおそらでひとを監視してたはずだけど」
  「えとね。えとね。マナね。えとね。りゆうきくためにとんだらぐるぐるでおもしろくて、わ〜い!だったの!」
  きょと、と首をかしげながらひとまず説明。
  それでもきちんとは説明しないでおく。
  マナのほうは…これで理解できる人がいるとすれば、おそらくはリナくらい。
  案の定、わからないらしくゼルガディスはこめかみに手をあててため息ついてるし。
  きちんと説明したら、説明したであまり面白くないし……
  ちなみに、マナの今の台詞は。
  リナか〜さんが監視している人物に話を聞こうとおもって術でとんだはいいものの。
  コントロールがきちんとできずにぐるぐるとまわって飛んで、それがおもしろかった。
  というようなことが今の言葉に要約してある。
  何がいいたいのか相変わらずよくつかめないが……
  とりあえず、こいつらに何かあったら文句いわれるのは俺だしな……
  そもそも、何であいつら家族がこんな場所に?
  短い間ではあったにしろ、ゼルガディスとてリナの性格は一応は把握したつもり。
  ましてやそれがあたしたち…すなわち、子供に関することならば遠慮は無用。
  とばかりに無茶をする。
  ということも。
  まあ、いざとなればどうにてもなるし。
  また、マナの場合はリナか〜さんたちがそばにいなくて寂しくなったら、
  自分の場所を示すためにも竜破斬(ドラグスレイブ)でも解き放つし。
  さしてさほど問題はない。
  そもそもこのあたりはほうっておいても、コピーレゾの手により壊滅させられる区域のひとつ。
  こちらとしてはそれに関してあまり手をだすつもりはさらさらない。
  もっとも、時と場合と状況に応じては臨機応変に対応するけど。
  「しかし…まさか、エリシエルをさがしててこいつらに出会うとは……」
  ぶつぶつ一人でそんなことをいっているゼルガディス。
  彼女の目的のひとつに実は異界黙示録(クレアバイブル)の写本がある。
  という事実をリナも、そしてこの目の前のゼルガディスも知らない。
  だからこそ、あの村にアレがやってきているのだし。
  あの村はあまり知られていないが、実はかつてのサイラーグの記録が唯一残っている村。
  そして、あのときの子孫がどうなったか。
  というのをしっているのもまた、あの村の長老や神官長といった存在。
  だけど、今それはこの人間にいうことではない。
  「?そのひとならリナか〜さんが今みはってるひととおなじなまえだよ?」
  とりあえず、きょとん。
  としながらもゼルガディスにと話しかける。
  「んとね〜。か〜さまたちね〜。ふぴとかいうのさがしてるんだって」
  「それをいうなら。マナ。コピー……」
  当人はきちんといっているつもりにしろ、いまだにきちんと舌がまわっていないマナ。
  まだ二歳。
  されど二歳。
  基本的に人、という種族は成長具合は人様々。
  まあ、それはそれでまた面白いのだけど。
  ともあれ、
  「それはそうと。ここで何してるの?」
  何かこの子…話をはぐらかしてないか?
  そんなあたしの質問に内心そんなことをおもいつつ、
  「いや。ちょっとまて。今、何って……同じ名前?…あのリナが見張ってる?」
  さきほどのこちらの台詞に目をばちくりさせて驚きを隠しきれていないこのゼルガディス。
  まさかリナ達がエリシエルにかかわっているなどとは夢にも彼はおもっていなかったようだし。
  「うん。何かね。リナか〜さんたち、ひげきをとめたいとか何とかいってたけど」
  正確なことはひとまず伝えないでおく。
  ここでサイラーグが壊滅したから云々いっても意味はない。
  「……なっ!?」
  悲劇。
  という言葉に反応して驚愕の表情を浮かべる。
  彼とてその悲劇が起こらない、否、起こさないために行動していたのだから。
  「そういえば、ね〜さま、ここどこ?」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  「……マナ〜……自分が飛んでいった方向くらい覚えてないの?」
  今、ここにいるのは、マナが術を失敗したがゆえ。
  まあそれも今に始まったことではないけど。
  「…ちょっとまて。どこ…って……」
  まさか…迷子!?
  はた、とそんなあたし達の会話に思わず目を丸くして問い返してくるゼルガディス。
  「迷子…といえるのかなぁ?マナがとんでったからあたしもおいかけてきたんだけど」
  戻ろうと思えば戻れるけど。
  そんなあたしの台詞になぜか額に手をあてつつ、
  「……しかたない。このままおまえらをほうっておいたらあのリナに何されるかわからないからな……」
  あの、という部分にかなり強調をおいてるけど。
  いざとなったら寂しくなってマナが竜破斬を放つ可能性がある、というのはだまっておこう。
  とりあえず、エリスが出没している、といわれている村のことは彼も知っている。
  それゆえにどうやらあたしたちをそこまで送り届けてくれるつもりらしい。
  まあ、あたし達からしても子供二人だけでは何かと不便、というのもあるし。
  「?」
  意味がわかっていないらしくきょとん、としているマナにぽん、と手をおきくしゃりとなで、
  「とにかく。小さな子供二人でこのあたりをうろうろするのは危険だしな。
    俺が両親のところに連れてもどるから。…勝手にちょろちょろしないように!!」
  最後の言葉にかなりアクセントをつけていってくる。
  空とんでいったほうがかなり早いんだけど……ま、いっかv


  「……えええええ!?」
  教会の礼拝堂。
  その内部においてリナの叫びがこだまする。
  礼拝堂のつくりは伊達ではない。
  けっこう声は深く響き渡る。
  「す、すいません!ほんとうにいきなりのことで!!」
  あたしとマナが天窓から飛んでいってしまい、しばらく呆然としていたものの、
  はっと我にと戻りあわててあたし達を追いかけるべく外にでたシルフィール。
  だがしかし、彼女は翔封界(レイウィング)の術は使えない。
  しかも霧が出始めた状況においては上空をみても見つけられるはずもない。
  もっとも、マナが使った術が翔封界(レイウィング)ではなくて浮遊(レビテーション)ならば話は別だっただろうけど。
  教会に偵察から戻ってきたリナに必死に謝っているシルフィール。
  シルフィールからすれば頼まれていたのに子供達を外にだしてしまい、恐縮しまくっていたりする。
  「突発的な行動はおまえさんゆずりだよなぁ〜……」
  「ガウリイ!そういう問題じゃないでしょうがっ!とにかく、おいかけるわよっ!」
  そんな恐縮しまくっているシルフィールとは対照的に苦笑しながらいっているガウリイ。
  そんなガウリイにきぱっと言い放っているリナ。
  ガウリイも子供達は心配ではあるけど、あの二人の実力は少々のことがあっても大丈夫だし。
  何しろリナの子だしなぁ……
  そんなことを思っているガウリイ。
  まあ、以前にも迷子になって目安にドラスレをマナなどはぶっばなした経験をもっていたりするけど。
  それもあってあまり心配していないガウリイ。
  対照的にかなり心配しつつ、
  幸い、二人には目印になる品物をもたせているし。
  大体の方向ならば術を少し使えばわかるのが幸い。
  そんなことをおもいながらも、外に出ようとするリナに対し、
  「あ。まってください!わたくしもおともいたしますっ!」
  自分のせいであの子たちに何かあっては申し訳ない。
  そんなおもいから同行を申し出ているシルフィール。
  バタバタとそのままあわてて教会をあとにしてゆくリナ、シルフィール、ガウリイの三人。
  そんな彼らを少し離れた場所からみているおかっぱ頭の神官が一人。
  「何やら人間はせっかちですねぇ〜」
  そんなことをつぶやいていたりするけど。
  まあ、それはそれ。
  ともあれ、三人はそのままその村を後にしてあたし達姉妹をおいかけるべく行動を開始してゆく。

  ゼルガディスの目的は、レゾの遺言を果たすため。
  そしてまた、シルフィールは自分の責任を果たすため。
  リナ達からすれば、子供達を見つけることと、自分たちの世界のような悲劇を起こさないため。
  三者三様。
  それぞれの思いを抱き、それぞれ進みだす――


                          ――続く……



#########################################

あとがきもどき: 

薫:さてさて。次回でエリシエル&コピーの目的?みたいなものがでるかな?
  ちなみに表現はおさえますが、ぐろいです。はい。
  それでもいいよ?という人のみ次回はみてくださいねv(閲覧してる人は皆無だろうけど)
  何はともあれ、それではまた次回にてvv
L:ちょっと!!最近あたしの活躍がまったくないのはどういうことよっ!!
薫:…ぎくうっ!!え…エル様がこられたぁぁぁ!そ、それでは!!
L:まちなさい!逃げられるとおもってるのかしら♪
薫:ひええぇぇ!!!

ザシュ……
しぃぃん……

L:ああもう!何かすっきりしないからsのところにでもうさばらしにいきますか♪
  それでは、みなさま、まったね♪

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33524○パラレル・トラベラーズ○〜思惑〜かお E-mail 2008/4/15 20:01:53
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  すこしばかり、というかかなり?表現をおさえて村の悲劇さんをばv
  しかし…エル様一人称からまたそろそろ客観的な三人称にしてみるかなぁ?
  あまり、エル様の思考はいれたらネタバレになりそうなのでそれてもいいような気がしてきた(汗
  何はともあれ、いっきますv


  #####################################


            ○パラレル・トラベラーズ○〜思惑〜


  「やれやれ……」
  少し小高い丘の上。
  そこから見えるのは小さな村の姿。
  まだ完全に自由に動くには【力】が足りないのは十分に承知。
  少し動いただけで体が瞬く間にいうことをきかなくなる。
  以前ならばこんなことが起こりえただろうか?
  そんなことを思うが、…以前?という疑問もまたよぎる。
  自分には以前、というものはなかった。
  気がついたときにはすでにもう様々な実験材料、としてしか扱われていなかった。
  自我、ともいうべきものが芽生えたのは自らの中に二体の魔族が取り入れられたときであろうか。
  自分の自我も、その魔族の自我なのかはわからない。
  ただ、いえることは。
  自分は今こうして生きている、ということ。
  生きていくために犠牲はやむおえない。
  というかそんなことはどうでもいい。
  とにかく、自分は自分たる証を立てればそれでいい。
  そのためには……
  「さきほど何かあの村から何名かでていったようですけど……まあ問題はないですし」
  そうつぶやきつつもすっと胸の前で手を組む。
  手渡されているアレと同じ杖などは必要ない。
  必要なのは、人々の恐怖におののくその気配。
  一番その方法が自分の力を高めることに気づいたのは不幸中の幸いかもしれない。
  彼としてはそんなことを思ってはいるが、それが内部にある魔族の影響だ。
  などとは微塵にもおもっていない。
  そして、また彼も【彼】によって新たに生み出されている命だ、というのもわかっていない。
  ただ、欠片を今後探してゆくにあたって手ごまは多いほうがいい。
  器となっていたレゾはその内部にいるソレの思惑に気づくことなく素直に無意識に手をかしただけ。
  ざわっ。
  手を組んでつぶやき始めると同時、村の周囲の空気が一変する。
  すでにリナ達は村を出ているのでこの変化には気づくはずもなく。
  村人たちはといえば、いつもの霧が深くなった。
  その程度にしか思っていない。
  その霧がもつ【力】に気づく人間など一人もいない。
  少し、大自然と共にいき、その変化に敏感であるならば気づくほどの変化。
  『が…ぐわぁぁっ!!!!!!!??』
  それに気づいたときには既に遅し。
  この霧はある力をこめたもの。
  生物にのみ反応し、その体を変化させる。
  そのあたりの精神世界面にたむろしているどうでもいい下級魔族を呼び出しその器をあたえる。
  いわば、俗世間ではレッサーデーモンやブラス・デーモン、といった亜魔族。
  それの人間版。
  といっても、生きている人間のその上に憑依させるだけの力は彼にはない。
  ゆえに、霧にこめた力にてその人の意識を完全に操り、また壊しその上に憑依させる。
  この方法はかつてレゾが彼に行おうとした実験のひとつ。
  魔族の上にさらに魔族を…という実験は器の耐強度ゆえに失敗した。
  意識は表面上に現れていなくても、他の人間などで実験した光景は彼は視えていた。
  ゆえにこその応用性。
  「おやおや。これはまた面白いことをしているモノがいますねぇ」
  バタバタと倒れてゆく村人たち。
  その力が体にあわずにその場で溶けてゆく人の姿も垣間見える。
  そんな中、まったく影響をうけることなくにこやかに笑みを浮かべたまま村の中を歩くひとつの人影。
  周囲に満ちている何ともいえない負の気配。
  それが彼にとってはとてもここちよい。
  力の波動をたどるまでもなく、この力がどちらから流れているのかは彼にとっては明白。
  「面白そうですし。すこししばらく見物するとしますかv」
  別に今受けている任務に進展なさそうですし。
  人、というものは面白い。
  危険、とわかっていてもあえて首をつっこむ。
  また、危険、とわかっても逃げようとしない。
  ましてやそれが意味不明な出来事からくればなおさらに。
  一人がパニックを起こして行動すればまたたくまにそれが伝染する。
  今回にいたってもその法則は健在。
  目の前で顔見知りでもある村人が倒れ、また体がとけてゆく様をみても理解不能。
  頭がその光景と現実についていかずにそのまま行動を起こさない人々。
  こういう閉塞的な村だからこそ、その回避行動の有無が生存への焦点となる。
  …が、この村の人々は平和になれすぎそういう危機的状況に対しては他人に依存する。
  その体質が抜けきれていない。
  瞬く間に村を覆ったきりは、村人全てにと入り込んでゆく――


  「しかし。シルフィール、浮遊(レビテーション)しか使えない、というんじゃ、問題外よね」
  そりゃ、あたし達の世界でも翔封界(レイウィング)の術はあたし以外には使えなかったようだけど。
  もっとも、ゼルに関してはあれから精進して便利だから、というので覚えてたようだけど。
  高速飛行の術はそのコントロールなどが覚えるまでが大変だし。
  それはわかっているけど、だけどももし使えたらかなり違うのに……
  そんなことを思いながらもおもわず愚痴る。
  かといって、ガウリイを抱きかかえたままで二人で飛んでいったとしても、
  残されるシルフィールの気持ちを考えるとそこまではできない。
  一番気を病んでいるのはシルフィールのはず。
  それをリナは判っているがゆえ。
  子供達のお守りを任されていたのに、ふとした出来事でその子供達を見失った。
  特に責任感の強いシルフィールであるからこそその心情は手にとるようにわかる。
  だからこそ、高速飛行の術が使えないシルフィールにあわせて普通に走っているリナ。
  とはいえ、アイテムの力を借り、
  以前にみたミルガズィアの術を応用して普通より早く走れるようにしてはいるものの。
  伊達に長年、ゼフィーリアに閉じこもっていたわけではない。
  そのあたりの応用力はこの数年でリナは格段に進歩している。
  「?リナ?何か悲鳴のようなものが聞こえたような気がするんだが……?」
  「あたしにはきこえなかったわよ?」
  走り続けることしばらく、ふと風にのって聞こえてきたような感じた声をふと漏らすガウリイ。
  ここは森の中。
  動物たちの叫びもまた悲鳴のように聞こえる生物もいてもおかしくはない。
  そもそも、あのレゾの研究施設がこの付近にあるらしい。
  レゾが住んでいる、という場所はおそらく研究施設であるであろうからして。
  それがわかっているがゆえにあまり驚かずに答えるリナ。
  あの子たちのものではない。
  それは確実に断言できる。
  それはある種の確信。
  親、というものは子供に対して何かしらの危険信号を感じ取ることができる。
  中にはその信号に気づかない親もいるにはいるが。
  「わたくしにもきこえませんでしたわ。…まさか、あの子たちに何か?」
  もしそうならば、わたくしのせいですわ……
  ガウリイのその言葉をうけて不安そうにつぶやくシルフィール。
  おそらくは、あのラウリイと同様、このガウリイの勘もかなり的確。
  それが判るがゆえに不安は募る。
  「ああ。それはないわ。何かあればわかるし」
  シルフィールの不安を瞬く間に却下する。
  「とにかく。…どうもあの子たち、移動してるようだし…こっちでいいとはおもうんだけど……」
  特殊な魔法の道具であるがゆえに、その波動で位置は判る。
  また、何かあればそのアイテムの付属効果で作り手にもわかるようになっている。
  これは先日の一件にリナが付け加えた新たなる属性。
  幾度かこの世界に迷い込んで(?)来て後、子供達が危険にさらされる回が多い。
  それを危惧しての行動。
  感じる気配はこの方向で間違いない。
  とにかく、移動している、ということはその移動具合から歩いている、いうのはよくわかる。
  たぶん、飛んでったはいいけど、帰りも飛んで戻るの危ない、とエルが判断してとめたんだろうなぁ。
  内心リナはそんなことをおもいつつも、とにかくひたすらに感じる方向にと進んでゆく。
  ガウリイのほうはあまり心配している様子が見受けられていないのは、あたしたちを信頼している証拠。
  母親、というものはどうしても子供をかなり心配してしまう傾向がある。
  それは子孫を残してゆく、という野生の本能のひとつ。
  中にはその本能が薄れてしまった存在や、もともともっていない存在もいるにはいるが。
  「まあ。何かあればあの子らはリナ同様、いきなり呪文放つからなぁ。
  その音の合図もない、というのだからたぶん大丈夫だとおもうぞ?」
  ちょっとしたことでよくドラスレ程度ならばよく確かにマナのほうは呪文を解き放つ。
  逆に神魔融合呪文などもあったりするけどそれはそれ。
  「……いきなり呪文をはなつ、って……」
  いったい、このリナさんって……
  にこやかにいうガウリイの台詞に思わず戸惑い気味につぶやくシルフィール。
  まあ、この世界のシルフィールはそういうことにまだあまりなれてないし。
  「とにかく!いくわよっ!」
  何となくだけど、子供達に関して…なのかはよくわかんないけど胸騒ぎがするのよね。
  そんなことをおもいながらも、とにかくひたすらに魔力の波動がしてくる方向に進んでゆくリナ。
  リナの胸騒ぎは当たらずしも遠からず。
  それは、今まさに先刻までリナ達が滞在していた村に襲い掛かっている出来事をあらわしている。
  よもや、誰が想像するであろう。
  村ひとつ、まるまるレゾのコピーであるあの彼の実験道具と『糧』にされている、ということを。

  「……なるほど。そういうことか」
  マナの説明では意味がわからなかったが、ひとまずあたしの説明で多少納得しうなづく。
  三歳児のいうことを素直に信じるこの彼も面白いものがあるが、まあそれもまたよし。
  「でもここではどうなるかは、あたしたちもわかんないし。たぶんリナか〜さんもわかんないだろうし」
  ひとまずあたし達の世界…というか、リナ達の世界で起こった出来事。
  あたしは視ていたのでそれを『知って』いる。
  それを、さも第三者から聞いたかのように一緒にいるゼルガディスにと説明する。
  情報を与えているのと、与えていない、との差はかなり歴然。
  ゼルガディスからかなりの負の気配が漂ってくるのもまた然り。
  何しろ、『サイラーグの事件』といえばリナ達の世界においては謎、とされている。
  原因不明の何かで消滅した町。
  そしてまた、再びいきなり復活してまた消えた町。
  その何か、とは当然いうまでもなく、コピーレゾの放った爆裂陣(メガブランド)によって。
  二度目はフィブリゾの力により仮初めに命を与えられたサイラーグの人々。
  まあ、あの町は『あたし』の意志力に耐えられずに元の姿に還りゆいた。
  というのが事実だけど、それはそれ。
  「そんなことがあったんなら、そりゃ、あいつらも必死に止めようとするわけだな……」
  なぜ、あのリナもレゾのコピーを探しているのか、というのは気になってはいた。
  だが、話をきけばその理由も一目瞭然。
  確か彼らは別の世界からやってきたとか何とかいっていたはず。
  この世界でも再び悲劇が起こらないようにしたい、とおもうのは人の常。
  少なくとも、レゾから以前きいたあの話ではまだアレは完全に動けないはず。
  止めるのならば、今しかない。
  しかし…止めるにしても、どうやって?
  話を聞く限り、こちらの世界のコピーもまた同じような力かどうかは不明だが。
  少なくともそれより力が劣る、ということはありえないであろう。
  下手をすればそれよりもかなり力が勝っている、ともいえるのかもしれない。
  あいつらの世界のアレの力がどれほどだったのかは俺はわからないしな。
  しかも、今の俺の体は普通の人のそれとかわりはない。
  かつてのような強靭な肉体ではないのだから。
  魔力に関してはレゾが残した賢者の石を使い、以前と同じ、もしくはそれ以上使いこなせるが。
  「リナか〜さんたちは、すくなくてもサイラーグ壊滅はさけたいみたいだけどね」
  その後にあったフィブリゾなどの一件はひとまず話さないでおく。
  まあ、話しても普通の人間ならば信じないだろうし。
  そもそも、あのとき、あいつが『このあたし』に気づかずに攻撃しかけてきたのがわるいっ!
  く〜く〜く〜……
  そんなゼルガディスの背中には歩きつかれたマナがすやすやと寝息をたてて寝ていたりする。
  しばらく歩いているうちにどうやらねむくなったらしく、ただいまゼルガディスがマナをおんぶしている状況。
  あたしのほうはそれとなく力をつかって少しほど足を浮かせて実は歩いていないので疲れはない。
  見た目は普通にあるいているようにみえるようにしてるけど。
  「まあ。そんな話をきけば、俺とてそれは避けたいな。その前にケリをつける」
  それがレゾの最後の望みでもあったがゆえに。
  手がかりとなる別の場所でみつけた近くの研究所。
  おそらく、完全な状態でない【それ】を定期的に調べるにしろ研究所ほど便利のいい場所はない。
  とにかく、あそこにいくまでにこの子たちをあいつらに送り届けて…それから…だな。
  かつてのリナ達の世界での出来事を聞いたがゆえに、そんな行動をとるような存在の近くに子供を。
  しかもまだこんな幼い子供をつれていくなど言語道断。
  とはいえ逆にどこかに預けておいたとしてもそこが襲撃されればそれまで。
  一番安全な場所はやはり、この子たちの両親の元だろうしな。
  めまぐるしく思考を回転させながらも、
  「……とりあえず、こっちか」
  伊達に以前少しばかり一緒に旅をしていたわけではない。
  相手の魔力パターンは一応把握している。
  ゆえにこそ、精神世界からの検索が可能。
  ゼルガディスもまた、術において検索をかけながらリナ達の方にと進んでゆく。

  再び、ゼルガディスとリナ達が合流するのはあと間近。
  さってと。
  そろそろ今回の一件も面白くなってきたわねvv


              ――続く……


#########################################

あとがきもどき:

薫:さてさて。ようやく次回でリナ&ゼルの合流vついでに戦闘の開始ですv
  ゼロスは…まあ傍観者にしておく予定(笑
  まあ、彼はお仕事以外のことには首をつっこまないとおもいますしね(確信
  次回からはエル様一人称だとネタバレオンリーになりそうなのでまたかえてみますv
  ころころかえないで!というのはおいといて(自覚あり)
  やっぱり客観的視点のほうが無難なのかなぁ?
  でもそれだと周囲まで丁寧に描写いれたくなってしまうしなぁ。
  今の表現さんは読み手の想像力にまかせてるし(それもまて
  何はともあれ、それではまた、次回にてv

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33525○パラレル・トラベラーズ○〜感覚と真実〜かお E-mail 2008/4/15 20:02:49
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  ん〜……エル様視点だとどうもネタバレしたくなって、したくなって!(笑
  というわけで(ナニが?)やはり三人称というか客観的視点でゆくのです。
  まあ、試行錯誤しまくってる…というのでご了解くださいな……
  一人称だとほんっきで楽なんですけどねぇ…
  それだと周りとかがわからない、というのがね……
  しかし、神坂先生は、あの一人称で周りまできちんと表現できてるのがすごいなぁ…
  読み手の想像力を書き立てるかきたてるかきかたなんでしょうねぇ…(しみじみ
  さて…と、以前にメモに書いてた場所まで次からいけるかな?
  ちなみに、そろそろグロテスク(!?)シーンがはいってきます。
  まあ、ゼロスというか魔族がらみですしねぇ…ある意味、このコピーレゾ編……



  #####################################


        ○パラレル・トラベラーズ○〜感覚と真実〜


  「?」
  気のせい?
  いや、気のせいではないような気がする。
  これまで様々な経験を踏まえているからか、そういったあたってほしくない勘はよくあたる。
  「……ガウリイ」
  今までは子供達のことが気にかかり、あまり空気というか周囲の雰囲気の変化に気がつかなかった。
  だからといって足をとめるでもなく、ひたすらに深くなってくる森の中を歩きながら横を歩く金ガウリイにと声をかける。
  「?リナさん?ガウリイ様?」
  そんな二人の様子に気づいて首をかしげつつもといかけるシルフィール。
  ラウリイの親戚、というのと彼にそっくり、というので様づけで呼んでいるシルフィール。
  一応、サイラーグの巫女頭であるシルフィールではあるが、リナ達が気づいた雰囲気の変化には気づいていない。
  もっとも、リナ達が気づいたのは今までの経験がモノをいっている、という典型的なもの。
  何かものすっごく嫌な予感がする。
  ここにくるまでにあのお役所神官がいたのもきになるし。
  あいつが絡んだらロクなことにはなならい。
  というのは身をもって知っている。
  ゆえにこそのリナの内心の思い。
  「とりあえず、この先に問題の建物があるらしいですわ」
  村にいたときに聞いたことをリナ達にと説明する。
  二人が何やら険しい表情をしているのが気にはなるが、自分には何もわからない。
  巫女としての能力で神託、というものもあるにしろ、今は何も感じない。
  「……何かあったのは事実のようだけど……?リナ?何かおぼえのある気配がこっちからしてるぞ?」
  険しい表情をしながら村があるであろう方向を見ながらつぶやき、ふと前方のほうをみてリナにと話しかける。
  周囲には普通ならいるはずの森に住んでいる様々な生命のさえずりすらまったくしない。
  それは森の奥に、奥にとゆくにつれてそのいわば『死の気配』は濃くなっている。
  「…覚えのある気配…って……あ!」
  がさがさっ。
  それとほぼ同時、前方のほうの茂みが揺れる。
  こう何やら瘴気にも近しい雰囲気であるがゆえに気配を捉えるのが多少鈍くなっていた。
  それでも相手に敵意などがあれば確実に捉えたであろうリナとガウリイ。
  がさがさがさ。
  「あ、いた〜」
  「た〜」
  「……こうも普通あっさりみつかるか?」
  まるで大人一人はかるく覆い隠しそうなほどの茂み。
  それをかきわけてでてくる小さな人影が二つ。
  その背後からはよくよく…といっても、ついこの間分かれたばかりの黒髪の人物が一人。
  小さな人影のうちの一人、さらに小さいほうの女の子はぱっと顔に満面の笑みを浮かべリナ達のほうにとかけよってくる。
  対して、もう一人の金髪のほうの小さな女の子のほうは背後にいる男性。
  みたところ十代後半くらいであろう。
  ともかくその人物にむかって何やらにこやかに笑みを浮かべていたりする。
  「エル!マナ!」
  「エイルちゃん!マイナちゃん!」
  「あれ〜?ゼルじゃないか。何でお前が二人といるんだ?」
  そんな茂みから出てきた人物たちにとほぼ同時。
  リナとシルフィールの声が一致し、その場にそぐわない何とものんきなガウリイの声が一致する。
  茂みよりかきわけて出てきたのは、いうまでもなく。
  リナ達が探しているエイルとマイナ。
  そして、なぜか少し前まで共に行動していたゼルガディス=グレイワーズ。
  普通ならばこの広い森の中、彼らが遭遇する確率はほとんどゼロに近い。
  それでも、彼らは普通の人ではない。
  それなりの場数は踏んでいる。
  また、がむしゃらに進んでいたわけではなく、それぞれがきちんと術により確認していた結果。
  そうはいえどもすでにリナ達が村を出発してから日はどっぷりと暮れて森の中はさらに深遠の闇に包まれている。
  そんな中で出会えた、というのはあるいみ奇跡以外の何ものでもないのかもしれない。
  と。
  どくん。
  「「「……っ!!!」」」
  再開を喜ぶ暇もないというかしつこいっ!
  駆け寄ってきたマナを抱きしめると同時、周囲の空気がさらに重くなる。
  その変化に気づき、舌打ちするリナ達三人。
  ここにくるまでも幾度も襲撃をうけている。
  森の奥に進むたびにその気配は濃くなってきていた。
  というのはわかってはいるが、こういうときくらいは空気を読んでほしい。
  と切実に願ってしまうのは仕方のないこと。
  それと同時に、周囲の闇が濃くなり。
  『ぐわぁぁぁぁぁ!!!』
  数十匹以上の異形の生き物が何もいなかったはずの空間より出現する。
  「…何かリナさんたちとご一緒したら滅多とあえない魔族に遭遇するんですけど……」
  ぽつり、とおもわずつぶやくシルフィール。
  普通に生活している以上、こういった生物に出会うことはまず少ない。
  普通の人間ならばこれだけですでに死を意味する。
  それでも、シルフィールは巫女、という立場上。
  そしてまた、昔の経験上、気絶することはない。
  ゼルガディスにおいては散々レゾがこのような生き物をこきつかい…もとい、使役していたがゆえに動じない。
  リナ達家族に関してはいうまでもなく。
  このようなことは日常茶判事の出来事。
  「だぁ!この森はいったいどうなってるんだ!?」
  奥に、奥に進むにつれて増えてくる亜魔族ともいえるレッサーデーモンの数。
  それは、暗にこの森に住んでいた生き物全てが魔族に体をのっとられ、デーモン化している。
  という事実を指し示している。
  ゼルガディスが幾度と目ともない愚痴を叫び、即座に呪文詠唱を始めるとほぼ同時。
  『が…がぁぁぁぁ!!』
  いきなり誰も呪文を唱えたわけでもないのに出現したレッサーデーモン達が光に包まれ、
  次の瞬間。
  バシュ!!
  ものの見事に全てが掻き消える。
  「……な、なんだ?何が?」
  「…え?いったい?」
  意味がわからずに戸惑いの声を上げるゼルガディスとシルフールとは対照的に、
  その先にとある木の陰をにらみつけているガウリイにため息をつき額に手をあてているリナの姿。
  「いやぁ。危ないところでしたねぇv大丈夫でしたか?しかしなんでこんなところに人間が?」
  何ともその場にそぐわない、のほほ〜んとした声。
  ゆっくりと足音すら立てずに木の影からでてくる人影がひとつ。
  暗い森の中であったがゆえに、簡単な光源を確保するためにリナやゼルガディス達は灯りをともしていた。
  その灯りがその人物の姿をゆっくりと捉える。
  まるで闇に溶け込むかのような漆黒の服。
  もっと砕けていうならば、どこにでもあるような神官服、といっても過言ではない。
  なぜかそのエリのところにある紋様がどうみてもとある器を連想させてしまうのだが。
  ニコニコと笑みを浮かべてたっているのは、おかっぱ頭をした神官服を着込んでいるリナにとっては見慣れた姿。
  な…何でこいつがここにいるのよぉぉ!!!
  リナが内心そうおもいつつも、ため息をついたのはいうまでもない。
  というか、こいつ何かんがえてるんだろ?
  こいつが絡むとろくなことはない。
  そのことについては身をもって経験しているがゆえに警戒を崩さないリナ。
  そんなリナとは対象的に、
  「まあ。今のはあなたが?ありがとうございます。おかげでたすかりました。あの、あなたは?」
  にこやかに、ぺこり、と頭を下げて挨拶しているシルフィール。
  知らない、というのはあるいみ最強よね。
  というか、こちらがこいつのことを知ってる、と気づかれたら子供達に危害が及ぶかもしれないし…
  「いやぁ。別にただあのかたたちは邪魔でしたのでvあ、僕はみたとおり……」
  「シルフィール。どうみてもこいつはみたとおりの謎の神官でしょ。かまってないでいきましょ。
    マナたちを休ませたいし。このまま進んだらもっと暗くなるわよ?」
  何やらいいかけたその言葉をあっさりとさえぎり、マナをひょい、と抱き上げつつもシルフィールに話しかけるリナ。
  そのまま、すたすたとその場を歩き出す。
  下手にこの場で何かいおうものならば、空気を読まないガウリイがこいつの名前をいいかねない。
  そんな懸念もあれば、今現在はマナは安心したのか多少うとうとしているので名前を呼ばないが。
  万が一、相手が名乗ってもいないのに名前をいうとなれば警戒されるのは明白。
  そもそも、はっきりいってリナにとっては一番かかわりたくない相手。
  「……ま、まあ。たしかにリナの言うとおり。こんな森の中を神官服を着込んだ男性がいる。
    という時点で謎の神官、という表現はぴったしだろうが……」
  しかし、一瞬にして数十匹のレッサーデーモンを消し去ったのはおそらく目の前のこの神官。
  かなりの実力がなければ出来ない芸当。
  ましてや、さきほどの中には普通のレッサーデーモンだけでなくプラスデーモンの姿も垣間見えていた。
  そんな実力がある神官ならば今まで裏の世界にいたので名前くらいは聞いたことがあるはず。
  ましてやあのレゾはそのようなことに関しての情報収集は徹底していたのだから。
  しかし…この姿……
  レゾの情報収集の中で、この目の前の神官に姿形が一致するものがひとつある。
  それは……
  まさか……な。
  似たような人間は三人はいる。
  というし。
  それゆえにその可能性をすぐさまに否定するゼルガディス。
  さもあらん、その情報は数百年前のものなのだから。
  「あ。か〜さん。まって〜」
  とてとてとて。
  くるり、と向きをかえてそのまますたすたと奥に進んでゆくリナをとてとてと走っておいかけるエル。
  「ま。たしかに。オレやゼルならなれてるだろうがシルフィールにはこんな場所で野宿。
  というのはなれてないだろうし。お〜い。リナ。まてよ〜」
  そんなリナをあわてておいかけているガウリイの姿。
  そんな夫婦の姿というかガブリエフ一家の姿をしばし唖然としてながめつつ、
  「……たしかに。あのだんなのいうとおりだろうな。それはそうと、あんたは?」
  「え。あ。はい。わたくしはシルフィール=ネルス=ラーダといいます。あなたは?」
  「俺はゼルガディス=グレイワーズだ。あいつらとはちょっとした知り合いでな」
  初対面、ということもあり挨拶を交わしているゼルガディスとシルフィール。
  「……あ、あのぉ?」
  一人、あっさりと無視されて、のんびりとした声をあげている先ほどの神官。
  「まあ。そうなんですか。あの子達を保護してくださっていてありがとうございました」
  「いや。ほっといたらあいつらの怒りをかうからな。そんなのは極力さけたい」
  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・完全に無視されてます?……まあ、いいですけど……」
  自分を無視して何やら話し込んでいる二人の人間に対しぽそっと突っ込みをいれる。
  彼にとっては人間にどうおもわれていようがどうでもいいこと。
  それは本当に『関係ない』ことだからして。
  「さて。と。あ。あの、神官様。ほんとうに助けてくれてありがとうございました。
    あの、わたくしたちはもういかなくてはならないようですので。本当にありがとうございました」
  ぺこり。
  話の切り替えが早い、といえばそれまで。
  いきなりくるり、と向きをかえていまだににこやかに笑みを浮かべてる神官にむかって深々とお辞儀をする。
  「まあ。たしかに助かったので例はいうが。あんた何ものだ?」
    そんなシルフィールとは対照的に警戒を含めて問いかけるゼルガディス。
  「みてのとおり。謎の神官ですv」
  『・・・・・・・・・・・・・・・』
  まさか先ほどリナがいったその台詞のままに返されるとはおもわずに思わず無言になる二人。
  と。
  「ね〜ね〜。か〜さんがはやく〜っていってるよ〜?」
  いつのまに戻ってきたのかくいくいとそんな二人の服のすそをひっぱっているエルの姿。
  ?
  僕ですら気配がつかめなかったですけど…この子供は?
  まあ、深く考えるほどのことではないですね。
  何らかの護符を身にまとっているのは感じられる。
  おそらくその系統でしょうしね。
  そう判断しさほどきにとめずにその場をすます。
  「げ。とにかく。俺たちもいこう」
  「そ。そうですわね。それではほんとうにありがとうございました」
  リナを怒らせたら面倒になる。
  というのは以前の付き合いで身をもって知っている。
  ゆえに多少声をうらがえしながらもシルフィールを促すゼルガディス。
  そんなゼルガディスの言葉をうけ、またまたさらに深く神官に対してお辞儀をし、
  さきほどリナ達が向かっていった方向にと歩き出す二人と子供の姿。
  そのまま、助けてくれたであろう謎としかいいようのない神官に挨拶しあわててリナ達の後をおってゆく。
  しばし、そんな彼らの姿を見送りつつ、
  「……ほ、本気で感謝されるとかなりこたえますね……」
  感謝など、といったものは自分たちにとってはあるいみ間逆の性質をもつ。
  もっとも、彼にとってはさほど堪えるようなモノでもないが。
  彼らのような人間がどうしてこのような場所にいるかはわからない。
  そもそも、たしか先ほどのゼルガディス、と名乗っていた人間は例のお方のそばにいたはず。
  しかも姿が元にもどっている、というのは……
  「もしかして。我らが王が消えたのに何か関係があるのかもしれませんね?」
  彼ら全員の姿がみえなくなり、ぽつりとつぶやきつつ。
  そのままその姿は闇にと掻き消えてゆく。
  後には何の痕跡も残さない、漆黒の森の風景がひろがるのみ――


             ――Go To NEXT


#########################################

あとがきもどき:

薫:ようやくゼロスの登場だ〜〜(こらまて
  副題と内容があってないとおもうけどまあよしとして。
  真実は「森の生物」と「ゼロス」にかけてその副題にv
L:……で?あたしの活躍は?
薫:え…えっと……あ、そういえば。
L:って話をそらすなぁぁ!!

どがしゃ……

L:さってと。なんでか失敗したスイカ割りもとい、人体ワリの残骸はSに片付けさせるとして。
  最近あたしの活躍がまったくないし!こいつは!
  あと数万回は再生させては割ってあそびますかねぇv
  まあ、関係ないことはおいときまして。
  それでは皆様、また次回であいましょうねv
  じゃ、まったね〜v

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33526○パラレル・トラベラーズ○〜脅威の実験〜かお E-mail 2008/4/15 20:03:28
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:
  表現をかなり抑えているものの、たぶん判る人にはわかるはず。
  うん。
  まあ、原作でもけっこうグロテスク系もあったから問題ないはず(いいきかせ
  というわけで、そろそろこのレゾコピー編もクライマックス近しですv
  何はともあれ、いくのです♪


  #####################################


       ○パラレル・トラベラーズ○〜脅威の実験〜


  「しかし。よくこんな場所しってたわねぇ。ゼル」
  感心することしきり。
  こんな生物の気配すらしない森の中。
  このような狩猟小屋とおもわれる小屋があるなど考えてもいなかった。
  とりあえず、夜の闇にまぎれて行動することは先ほどのようなことも否めない。
  ゆえに、ひとまず朝までどこかで休もう。
  ということになり、それならば。
  というのでゼルガディスの提案したこの小屋にたどり着いているリナ達一行。
  すでによほど疲れたのかマナはリナの腕の中ですやすやと眠っている。
  エルはエルで小屋にあった藁を上手に敷き詰めて簡単な寝床をつくりすでに横になっている。
  なんでこんなに藁があるわけ?
  とはおもったものの、あるものは現実。
  ゆえに利用できるものは利用する。
  それが生きる為いうかリナ達の教育方針。
  子供達が寝静まったのをうけて、ゼルガディスにと話をふる。
  食料を森で確保しようにもこの森はそのような植物、もしくは動物すらみあたらない。
  そもそも、感覚でしかないが森の木々全てが瘴気に侵されている、というのがわかる。
  下手にさわればすぐにでも朽ちてしまいそうなほどのもろい空間。
  「まあな」
  知っていた、というかレゾが残していた地図にあったのだが。
  そもそも、レゾは自身の目がみえなかった、ということもあり目が見えないなりの地図、というものを作成していた。
  それはつまり、精神面に作用して直接脳裏にその情報を叩き込む、というもの。
  見ることは不可能でも、視ることはどうにか修行の上に可能であった。
  といってもきちんとした色彩などはない『形』であるにしろ。
  だが、そんなことはリナ達には知る由もない。
  それにこの場所は他の者がわかりにくい、とおもったのか。
  はたまた誰かに頼んだのか知らないがきちんと別に巻物、として残っていた。
  そこに簡単な描かれている地図もあったので、この小屋の存在をゼルガディスは知っていた。
  「それで?あの?リナさん達とこのかたの関係は?」
  全身真っ白い服にフード。
  そもそも、体が元の人のソレにもどっているのだからどんな服をきてもいいとおもうのだが。
  それでも何かこだわりがあるのか、服は以前のまま。
  「え?あ。えっと少し前に一緒にちょっとした事件をかたづけた仲間よ」
  嘘ではない。
  それがちょっとしたどころではなく、実は魔王復活云々…というのを説明していないだけ。
  「しかし。あんたらもよくよくいろんなことに首をつっこむな……
    というか、まさかあんたらもアレを探していたとはな」
  マナの台詞でリナ達もまた、コピーを探していた、というのは理解しているゼルガディス。
  しかもなぜかリナ達と一緒にいるのはサイラーグの巫女頭。
  レゾが残していた記述から、あのコピーがサイラーグに目をつけるかもしれない。
  という予感はあったゼルガディス。
  だがそれは口にはしない。
  「まあ、ゼルのことはともかくとして。ともかく早くアレを止めないとね」
  「無論だな。あいつが何をしでかすか予想がつかないだけになおさら、にな」
  完全に言葉にしなくても、理解し合えるのはひとえに、ゼルガディスはレゾを。
  そしてリナのほうはかつての出来事を知っているがゆえ。
  そんな会話をききつつ。
  「それよりリナ?な〜んかかこまれてるけど、どうすんだ?」
  『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
  のほほんと、外のほうをみながらいってくるガウリイ。
  確かに何かの気配はある。
  それも殺気とも何ともいえない雰囲気というか気配。
  ゆっくととかではなく唐突に出現したような、そんな気配。
  「?え?…囲まれて……って…きゃっ!?」
  そんなガウリイの言葉に首をかしげ、小屋にとある小窓から外を確かめるシルフィール。
  この場所は少しばかり上空が開けており、月明かりが差し込み辺りを照らしている。
  だからこそ暗い夜だとはいえ、周囲がほんのりと照らし出されている。
  ガウリイの言葉をうけて外をみたシルフィールの目にとびこんできたものは、
  何ともいえない異形の生き物がこの建物を取り囲むようにうようよとしている。
  ということ。
  その背後には何やら人影らしきものも見えなくもないが、おそらく人ではないであろう。
  それはいくらおっとりしているシルフィールとてわかる。
  「ちっ。どうやらヤツのほうも同じ考えなのか、こっちのことが知られたらしいな」
  ゼルガディスもまたその気配に気づき舌打ちする。
  それとほぼ同時。
  『ああ。やはりあなたでしたか。ゼルガディス。それにお久しぶりですね。レナ=インバースさん』
  どうやらリナをレナ、と勘違いしているらしく、そんなことをいってくるそんな中にたたずむ場違いな人影ひとつ。
  それにはあからさまに生気は感じられない。
  瞬時に以前のこともあり、それが何かを理解するリナ。
  土により、器をつくり自分の端末とする方法。
  多少というかかなり高度な魔力とその知識をもっていれば誰にでも使用は可能。
  顔と体には全身黒い布が巻きつけてあり表情は垣間見えない。
  それでも、リナ達には判る。
  はうっ。
  おもわずため息。
  そして。
  「…下手したら小屋ごとしかけてくるかもしんないわね。ガウリイはマナをお願い」
  「おう」
  なれた手つきでいまだに寝ているマナを抱き上げそのままガウリイの背中に紐でくくりつける。
  紐、といっても子供などを背負うときに使用する、一般的に普及している品。
  リナはリナでそのままエルを抱き上げる。
  呪文のみならば別に普通に抱いているだけでも問題はない。
  ガウリイの場合はどうしても剣の使用があるので背中にくくりつけることになるのだが。
  「え?え?あの?」
  一人いまだによく理解できていないシルフィールはただただ戸惑うばかり。
  「あんたは危ないから俺たちの後ろにいろよ?」
  この中で一番対応できないのは、まちがいなくこのシルフィールであろう。
  そう即座に判断し、シルフィールにいいつつも、臨戦態勢を整えているゼルガディス。
  そのまま、警戒を崩さないままにゆっくりと小屋からでてゆくリナ達四人。
  正確にはおぶわれている子供と、抱かれている子供を含めると六人。

  月明かりに照らされて、その場にたたずむひとつの人影。
  その周囲には、人とも何とも形状しがたい異形の生物。
  だが、リナはその気配に何となくではあるが覚えがある。
  まさか……
  アレの気配ととてもよく似ている。
  「…ガウリイ。あれって……」
  「人、としての意識というか生きてはないぞ?」
  リナの問いかけを瞬時に悟り、そう答えているガウリイ。
  「「…人?」」
  そんなガウリイの台詞に思わず同時につぶやくゼルガディスとシルフィールであるが。
  ぱちぱちぱち。
  そんな彼らに対してなぜかパチパチとたたく手の音がなげかけられる。
  「ほう。よくわかりましたねぇ。ええ。たしかにそこにいモノたちは元、人であったモノたちですよ?
    何しろ抜け殻を利用しない手はないでしょう?人の器、というのはけっこう便利でしてねぇ。
    精神世界面から魔族を召還してそれに宿せば通常のデーモンよりも強い手ごまができますしね」
  悪びれもなくいけしゃぁしゃあといってくるそれ。
  「…で?そんな傀儡をつかってどうする気?そんなのあたし達には通用しないわよ?」
  『ええ。それはわかってますよ。ですからこれはほんのご挨拶がわり。ですよ』
  そうソレがいうと同時。
  がさっ。
  周囲にあつまっていた異形の存在、あげくはどうみても人そのもの。
  だがしかし、体が完全に溶け始め、見た目どうみてもゾンビ。
  といっても本当にゾンビなのだが。
  とにかくそんな生き物たちががさり、と音をたてながらじわり、じわりとリナ達にとにじりよってくる。
  『ああ。そうそう。そのかたたちは元この近くの村の方々ですよ。私の実験の成果です。
    みなさん協力的でして、素直に私の手ごまとなってくれましたよ』
  その台詞が意味すること。
  すなわち、近くの村人をこのような姿に変えた、ということ。
  「…そ…そんな……」
  シルフィールがにじりよってくるゾンビの一団のひとつをみて思わず絶句する。
  見覚えのある服と、そして顔立ち。
  体が半分溶けかけ、くずれかけているとはいえ元の面影は残っている。
  中には小さな子供の姿も具間みえているそれら。
  「あ…あんたねぇ!コピーといえど、人の命を何だとおもってるのよっ!」
  おもわずリナが怒りに任せて叫ぶ。
  『おや。心外ですね。私はレゾ本人ですよ。あなたがたには大きな借りがありますからねぇ』
  レゾ当人でないのに、当人、と言い放つ。
  「で?当人は安全な場所からわざわざ土くれでつくった傀儡で俺たちをあいてにして満足ってか?」
  持っている賢者の石の波動で【判る】。
  目の前の言葉を発しているソレは、生き物ではなくて魔力で生み出されたもの。
  そしてまた、魔力によって動かされ、それにうめこまれている品物により彼らと離れた位置から会話している。
  ということも。
  『さすがですね。ゼルガディス。いったでしょう?これはご挨拶ですよ。
    わざわざ私をおいかけてきたあなた方への…ね。それではまってますよ』
  いうだけいうなり、そのままソレはいきなりぐしゃり、と崩れ落ちる。
  はらり、と舞う黒い布。
  布の下には土くれが残るのみ。
  それを合図にし。
  『がぐるわぁぁ!!』
  今まで静かにそこにいた異形の存在達が一斉にと雄たけびをあげる。
  そしてまた、ゾンビとなった人間たちもまた、うなりながらもゆっくりとリナ達のほうにとにじりよってくる。
  呪文で彼らを浄化することはいたって簡単。
  それが巫女の能力をも備えているシルフィールならばなおさらに。
  だがしかし。
  「そ…そんな……だって…嘘……」
  その場にただぺたん、と座り込むシルフィール。
  シルフィールが目にしているのは、見慣れた服装と顔立ち。
  神官の服をまとっている男性らしき姿に、そしてまたまだあどけなさがのこる小さな子供達。
  つい先日まで、自分たちがお世話になっていた教会の人々。
  そしてまた、村の中で顔見知りになった人々の姿。
  わざとそのような服装と顔立ちにして仕掛けてきた、ということも考えられる。
  いや、そう考えたい。
  あの親切な村人たちがこのような異形の姿になったなど、シルフィールは信じたくない。
  「ちっ。どこの世界でもあのコピーは!!」
  こちらのほうがかなりきついのかもしれない。
  リナ達がいた世界では、レゾのコピーによってサイラーグは壊滅した。
  それこそ死体も何もあとくされなく、町ひとつ、そこにあった痕跡すら残さずに。
  崩魔陣(フロウブレイク)ならば周囲の浄化は可能。
  だがしかし、異形にされた人々が元の姿に戻るか、といえば答えは否。
  だからといってこのまま手をこまねいているわけにもいかない。
  「?おか〜さん?」
  そんな会話をしていると、先ほどまで眠っていたはずのエルが目をさまし、その眠たげな目をこする。
  正確にいえば、何がおこっているのか把握したので目を覚ましたのだが、そんなことはリナは知る由もない。
  「あ。エル。おきちゃった?…ちょっともうすこしだけねててね」
  こんな光景を子供に見せたい、と思う親はまずいない。
  レッサーデーモン達だけならまだしも、ゾンビと成り果てている元村人の姿は。
  子供の情操教育上、よろしくない。
  もっとも、この程度のことで動じるようなエルでもないのだが。
  ふとみれば、信じたくないのかいまだに地面に座り込んでいるシルフィールの姿が見て取れる。
  しかし、そのまま座り込んでいるままでは先には進めない。
  とにかく、今はこの場をどうしのぐか。
  おそらくは、彼らを元の人に戻す、というのは不可能。
  ならば自分たちの手で『大地に還す』のが一番。
  戸惑いや躊躇は逆に自分たちの命を脅かす。
  それも経験上、リナにはよくわかっている。
  と。
  バシュ!!!
  『ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……』
  リナ達が構えるのとほぼ同時。
  いくつもの光の柱が周囲を埋め尽くし、その場にいたことごとくのレッサーデーモン達を包み込む。
  青白い光に包まれ、消滅してゆくレッサーデーモン。
  そしてまた、炎に包まれもがきながらも崩れてゆくゾンビの数々。
  青白い炎に包まれ、周囲では数々のレッサーデーモンが消滅してゆき、
  また、人の姿をしたままのゾンビとなった人間たちが炎に包まれ絶叫をあげながら土くれと化してゆく。
  それはまるで地獄絵図、とどこぞの世界では言い表すかのような情景。
  「……え?いったい……」
  「…何だ?いったい何が……」
  自分たちが何かをしたわけではない。
  それゆえに、戸惑いの声をあげているシルフィールと、
  何が起こったのかわからずに目を点にしているゼルガディス。
  「……つ〜か。何であいつがおいかけてくるわけ?」
  ものすっごく嫌そうな顔をして、ため息をついているリナ。
  ゆっくりとそんな炎の奥から近づいてくる人影がひとつ。
  「おやおや。何だかとても面白そうなことになってますねぇv」
  にこやかにその笑みを崩すことなく現れたのは、つい先刻の神官服の男性。
  とはいえソレが誰か、というのがわかっているリナやガウリイにとってはいい気分ではない。
  「あ。あなたは……」
  たしか、さきほどの……
  その姿に気づき、声をあげるシルフィール。
  「まさか…これは貴様が!?」
  一瞬にして大量ともいえるレッサーデーモン達を消滅させ、あまつさえゾンビすらをも消滅させる。
  それはどう常識的に考えても並大抵の実力ではできない。
  …それを人に当てはめれば、という注釈がつくが。
  それゆえに警戒を含めて叫んでいるゼルガディス。
  「おや?あなたがたは先ほどの。いやぁ。奇遇ですねぇv」
  ・・・どこが!
  どうせこいつのことだからおいかけてきたにきまってるっ!
  内心、リナは思うものの口には出せない。
  自分がこの『神官』のことを知っている、と知られては子供達の身が危険。
  「いやぁ。何かおそわれてるっぽかったので。それに僕としても邪魔でしたしねv」
  こいつらしい、といえばこいつらしいけど……
  「で?……なんのよう?おじ〜ちゃん?」
  おじ……
  「あ。あのですねぇ。助けた人にそれですか?…まあ、小さな子供ですから仕方ないにしても…」
  リナの腕の中でそちらをみながらいうエルにつぶやきつつも何やらいっているソレ。
  と、とにかく、ガウリイがいらないことをいうまえに、どうにかしないと!
  ガウリイのこと、いきなり名前を呼びかねない。
  そんな危惧を抱きつつ、
  「それで?変な黒い物体さんが何のよう?」
  「ひ、ひど!あなたまでそれですか!?」
  「だって、名乗られてないし」
  「言われてみれば。たしかに。そこの人は名乗られてませんわね」
  「たしかに。言われてみれば黒い物体だな」
  「あのですね!僕にはゼロス、といった名前があるんです!黒い物体ってなんですかっ!」
  とにかくこいつには畳み掛けるのが一番!
  長い付き合いだからこそ、相手の性格もよくわかっている。
  こいつはけっこう乗るほうだし。
  だからこそ、リナはあえてガウリイが余計なことをいうまえにと問いかけた。
  「みたままじゃない。それとも何?黒いゴキブリのほうがいい?」
  「おか〜さん。それよりら〜めんどんぶりがいい〜」
  そんな母娘の会話をききつつも、
  「あら。ゼロスさん。とおっしゃるんですか?リナさん。一応恩人に対してそのような……」
  「あら。シルフィール。こんな得たいの知れない相手を信用したらそれこそダメよ。
    こういうやからはその笑顔のしたで何を考えてるのかわかんないんだから」
  そもそも、こいつは笑顔で人の首をかききるタイプだし。
  下手にかかわったら面倒。
  「おまえ。一応こんな怪しいやつでも恩人だとおもうんだが……」
  そんなリナの様子に多少眉をひそめつつも、警戒を解かずにリナに話しかけているゼルガディス。
  「いいのよ。それにこいつもいってたじゃない。邪魔だから。って。あたし達を助けたわけじゃないわよ」
  そもそも、魔族が人助けを率先してやるなどありえない。
  だからこそきっぱりリナは言い切れる。
  「えっと…まあ。いいですけどね。それよりお聞きしたいことがあるんですけど」
  にこやかに笑みを浮かべたまま、ぽりぽりと顔をかきながらにこやかにそんなことをいってくるゼロス。
  こいつが聞きたいこと、というのはロクなことがないっ!
  たとえ世界が違えどもかかわりたくない、というのは事実である。
  「ねえねえ。おか〜さん?さっきあの小屋の中でこんなのあったけど、これなに?」
  実際には、あったのではなくて作り出した。
  というほうが正解なのだがそれは口にはしない。
  「何?エル?・・・何かの記憶球のようね。…えっと……」
  「いやあの…また無視ですか?」
  そんなゼロスの言葉をあっさり無視し、会話しているリナとエル。
  リナがエルから手渡された小さな球を手にとり、それを再生させる。

  刹那。
  周囲に何ともいえない静けさが襲い掛かってゆく―――


                       ――Go To Next



  #########################################

あとがきもどき:

薫:悩んだ末にだしてきました、ゼロス君v
  どちらにしても彼は登場する予定ではありましたけどね(苦笑
  まあ、とりあえずゼルとシルフィールとへの顔見世、みたいなものです(笑
  ではでは。ようやく次回かその次でこのコピー編は決着ですv
  それでは、また次回にてv
  ではでは〜♪





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33527○パラレル・トラベラーズ○ 〜エリシエル〜かお E-mail 2008/4/15 20:04:09
記事番号33514へのコメント


  
   まえがき&ぼやき:

  下書きさんはかなり昔にノートとかにかきあげてたりするのでそちらを優先。
  いあ、そういうものとかなきゃ、今の状況でそんなの無理ですし…
  2008年3月現在でいまだにみつからないポンちゃん…もどっておいで〜(涙

  

  #####################################
       

           ○パラレル・トラベラーズ○ 〜エリシエル〜


  「あら?さっきの人、いつのまにかいませんけど?」
  なぜか地面にうずくまるようにしているゼルガディスに首をかしげる。
  何となく空気が変わったような気がしなくもないが、だけどそれはシルフィールにはわからない。
  ただ、何かリナがエイルから渡された記憶球。
  それに記憶されている『何か』を投影した。
  というのはわかる。
  だけども、それはシルフィールにとっては判らない言葉。
  「…な、なんでこんなところにあのさっむいミルガズィアさんのギャグが……」
  エイルがリナに差し出したのは、いうまでもなく竜族のギャグが収められている品。
  もともと、この地にはエルフも住んでおり、それゆえにそういった品もあったことは事実。
  だからこそ、レゾはこの地を研究施設を作る場所に選んだのだから。
  エルフ、という実験材料がいるがゆえに。
  下手に竜族の言葉がわかる…というのも考えものよね。
  ゼルもどうやら理解したらしく、頭をかかえてるし。
  そんなことをリナはおもいつつ。
  「と。ともかく。この場所は知られてるみたいだし。仕方ないから先にすすみましょうか?」
  ゆっくりと休みたかったが、だがしかし、ゼロスまで出てきたのならば話は別。
  「?ゼルガディスさん?大丈夫ですか?」
  何がどうなってリナの顔色が悪かったり、ゼルガディスがうずくまっているのか理解できていないシルフィール。
  ゆえにこそ心配して問いかける。
  「だ、だな。…というか、リナ。さっきのは壊しとけ」
  「そうね……」
  そもそも、何であんなところにこんなものがあったんだろ?
  そうはおもうものの、だがしかし、壊しておく、というのはあるいみいいかもしんない。
  少しばかりアレに対してこれを利用したらかなり有利に進むのでは?
  という思いはあるにしろ。
  ともあれ、リナ達は再び夜の森の中を進んでゆくことに――


  「…エリシエル。…何かが……」
  何かはわからない。
  判らないが本能が危険の部類に入る、と告げている。
  『力』はまだ満ちてはいない。
  「レゾ様。全てはレゾ様のために……」
  魔力をためる装置へと座っている彼の手をとり、そっと口づけをする。
  コピーとはいえ、今は唯一残っている愛していた男性の姿。
  その中身は異なるとはいえ、愛した人の忘れ形見であることは間違いない。
  うまくすれば、この器を利用してレゾの魂すらをも復活させることができるはず。
  そう、かつてレゾがその自信の目を開く為に行っていた研究以外に行っていた研究。
  それが、意識を持たない人造人間(ホムンクルス)に魂を移動させる、というもの。
  今あるこのコピーはその実験のさきがけ。
  彼女はそのことを知っている。
  知っているからこそ、おそらくはレゾの意思を告ぐであろうこのコピーに対して尽くしている。
  レゾを復活させる手助けとなりえるために。
  すくっ。
  そっと手をとり口付けを落としたあと、くるり、と向きを変えてその場を後にする。
  あの手勢を退けた、となれば相手はなかなか手ごわい。
  だからといって許せない。
  愛するレゾを殺したあの人間たちは。
  「まっていなさいよ。レナ=インバース……」
  レナ=インバースに子供がいる、とは聞いたことはない。
  だがしかし、おそらくレナ=インバースの親戚か何のはず。
  しかも、あのとき、あの場に間違いなく彼女たちもいた、ということをエリシエルは『知って』いる。
  だからこそ容赦する気はさらさらない。
  かつん。
  その場にいまだに自由に力が満ちていないがゆえに動けない『彼』を残し、一人進んでゆくエリシエル。
  エリシエル=ヴルムグン。
  かつてレゾに使え、そしてレゾ亡き今もまた、レゾの面影を求めている一人の女性。
  彼女にとってレゾは全てであった。
  だからこそ、彼の魂をよみがえらせ、そのためにまずはレゾを殺した人間達を自らの手で葬る。
  それが今、彼女をつきうごかしている生きる意味。

  「しかし。わたくしたちを助けてくださった神官さん。どちらにいかれたのでしょうか?」
  気づいたらいつのままにかいなかった。
  それゆえに心配しながらも言っているシルフィール。
  「そういえば。いきなり現れていきなり消えたな。あのゼロスとかいう胡散臭い神官」
  そんなシルフィールのつぶやきに、歩きながらも答えているゼルガディス。
  確かに胡散臭い、というのはあたってるけど。
  そんなことを思いつつ、
  「ゼル。それにシルフィール。あいつのことは話題にしないほうがいいわよ。
    というか気にしたらだめ。そもそもかかわらないほうがいいし」
  きっぱりはっきりいいきるリナ。
  「?リナさん?いくら何でも恩人に対してそんなに警戒しなくても?」
  理解していないがゆえに、ただ自分たちを無条件で助けてくれた。
  そう信じているがゆえにそんなことをいってきているシルフィール。
  夜はさらに深く、森の中の闇はどんどん暗闇をまし、月明かりすらも大地にとどきにくくなっている。
  それでもリナ達が普通にあるけているのは、ほのかにともした明かり(ライティング)の灯りにより周囲を照らしているがゆえ。
  まあ、アレが魔族、しかも高位魔族、といって信じるとは思えないし。
  見た目は完全に人のそれ。
  そもそも、ここのシルフィールにそんなことをいっても信じない、とおもうのが通常。
  自分たちの世界のシルフィールならばまあフィブリゾにあっているので信じるだろうけど。
  ゼルにしても、素直に信じてくれるとは思えない。
  だからこそのリナの忠告。
  「もし。あいつがあたしの知っているヤツと同じなら。あいつは談笑しながらも、笑って人の首をかききるタイプよ。
    笑みの下で何を考えてるのかわかんない。とにかく人をひっかきまわすのを楽しみにしてるタイプだし」
  そんなリナの台詞に、
  「まあ。たしかにあの神官の実力が並大抵のものではない。というのは理解できるが……」
  そもそも、人間にあんなことができる存在など、ゼルガディスは今までレゾしか知らない。
  レゾもまた、あのように一瞬にしてブラスデーモンなどを駆除していた。
  レゾのような実力者がそうそこいらにいる、とも思えないんだが……
  リナのやつ、何か隠してるな。
  そうはおもうものの、だがしかし、リナが隠していることを聞き出すことも不可能。
  というのも短い付き合いではあるがゼルガディスは理解している。
  そもそも、彼女たちは異世界からやってきている人間である。
  それを知っているがゆえになおさらに。
  「まあ。シルフィールが思いっきり本気で感謝してたし。
    さっきのこともあるからそう簡単に姿を現さない。とはおもうけどね、警戒は必要よ。
    それでなくても今はコピーのこともあるんだし」
  先ほどの光景からして、自分たちが滞在していた村人全てが犠牲になったのは明白。
  下手をしたら、自分たちの世界同様、サイラーグの壊滅、という事態にもなりかねない。
  それだけは何としても防ぎたい。
  「確かに。俺は目にしたことはないが。噂ではたしかレゾはアレに魔族を同化させてる。とか聞いたことがあるしな」
  ゆえに実用性があまりなくなってそのままほっといた。
  とも確か聞いた記憶がある。
  「…魔族、って……」
  そんなゼルガディスの言葉に顔色を悪くするシルフィール。
  シルフィールとて魔族の姿、というのをかつて昔、みたことがある。
  かつて北のサイラーグにおいておこった事件で。
  そのときは、高位魔族とかではなく、それでも一応は自力で具現化できる純魔族であったが。
  「お〜い。みえてきたぞ?あれじゃないのか?」
  そんな会話をしながら、いまだに寝ているマナを背負い、とある方向を指差しのほほんといってくるガウリイ。
  エルは目を覚ましているものの、夜道は危険、というのでいまだにリナが抱っこしているままの状態。
  ガウリイにそういわれても、リナ達の視界には何もうつらない。
  あるのはただひたすらに永遠に続くとおもわれる暗闇が視界の先に広がるのみ。
  もっとも、ガウリイがいうのだからそちらに何かがあるのは確か。
  「…よくあんた、こんな暗闇の中、先がみえるな?」
  「ま、ガウリイのは天然ものだし。さあ、気合をいれていくわよっ!」
  おそらくガウリイが指差す方向に目指している場所はある。
  レゾの隠れ研究施設。
  できれば、アレが動き出す前にカタをつけたい。
  というのがリナの本音。
  一番てっとり早いのは、あの場所ごと重破斬(ギガスレイブ)などを叩き込めばてってり早いだろうが。
  魔族と合成されている、というのを考えて空間移動ができる可能性がある。
  また、生きている実験材料となった生き物もいる可能性も捨てきれない。
  だからこそいきなりの攻撃、というのは躊躇せざるを得ない。
  「ともかく。打ち合わせどおりに。もし誰かつかまってたりしたらとにかくそれらの解放。それからコピーをたたくわよ!!」
  エリシエルがどんな手を打ってくるかはわからない。
  リナ達がいた場所においては、あのとき、彼女は見習いというか走り出しの賞金稼ぎ。
  その設定で近づいてきた。
  もし、相手を操る能力をこの世界の彼女ももっていたら厄介よね。
  だからこそ警戒は解けない。
  あのときは、祝福の剣があり、そしてまた神聖樹フラグーン、という存在があった。
  だからこそあのコピーを倒すことができた。
  だが今は?
  ここはサイラーグではないので、当然神聖樹フラグーンも、そしてまた祝福の剣もない。
  だがしかし、こちらには知識と経験がある。
  そしてそれに必要な魔力容量も。
  もっとも、免疫のないシルフィールがどう行動するかでかなりかわってくるけど……
  リナにとってはそれが気がかり。
  だけどもやらなければ、悲劇はさらにひろがる一方。
  それは先の村人達の末路をみても明白。
  あのレナたちに自分と同じような思いをさせたくない。
  今、彼女たちが何をしているのかはわからないが、おそらくはセイルーンにいく、とかいっていた。
  ならばあのお家騒動に巻き込まれている可能性は高い。
  そんなことをリナが思っていると、
  「リナ!」
  ガウリイの警戒したような声。
  ざっ。
  どごがぁっん!!
  その声とほぼ同時。
  いきなり前方のほうから光の球が出現し、先ほどまでリナ達がいた地面をなぎ払う。
  その気配に気づき、ゼルガディスがシルフィールを抱えて横にとびのき、
  リナとガウリイもまたすぐさまに退避行動をとっていたがゆえにリナ達には何の被害もない。
  「…ち。よけたわね」
  ゆっくりと暗闇よりでてくる人影がひとつ。
  その場にまったくにかわしくない、見た目十六、七の黒髪の女性。
  額にあるあざやかな赤いバンダナが印象深い。
  顔まではこの間きちんとみえなかったけど……
  だが、判る。
  彼女が誰か、ということは。
  「ようこそ。みなさん。…そしてさようなら」
  その表情には何ともいえない、侠気とも憎悪ともいえない笑みを浮かべて言い放ってくる。
  「え?え?あの??」
  「ちっ。やはりここにいたか!エリシエル!!」
  一人意味がわからずに戸惑いの声をあげるシルフィールとは対照的に叫んでいるゼルガディス。
  そんなゼルガディスにちらり、と目をやり。
  「あなたたちに私の、そしてレゾ様の邪魔はさせないわっ!
    ゼルガディス!あなたはレゾ様の身内でありながらレゾ様を裏切った罪!万死に値する!
    今ここで、この私の手にかかり死ねることを光栄におもいなさいっ!」
  いいつつも、きゅっと腰にさしていたショート・ソードを抜き放ってくるその女性。
  「ゼル!シルフィール!そいつが投げてくるルビーに気をつけて!
    こいつ、おそらく他人をコントロールする術を身につけているはずよ!」
  リナが知っている『彼女』と同じ能力ならばそれは確実。
  「あ…あの?この人は……」
  いまだに何が起こっているのかよく理解していないシルフィールが戸惑いの声を出す。
  いきなり攻撃されて、多少混乱気味。
  「こいつが。エリシエル=ヴルムグンよ。レゾのコピーを持ち出した!」
  嘘ではない。
  シルフィールに説明している彼女の説明は多少異なっているがゆえに、それだけ説明するリナ。
  でも、今、この人…赤法師レゾをこのゼルガディスさんが裏切った、とかいいませんでした?
  先ほどのことといい、今の状況といい現状についていかれない。
  「とりあえず。エル。ごめんだけどシルフィールとまっててね」
  エルを抱いたままでは戦闘にはならない。
  ガウリイのほうはまあ、マナを背負っているので問題あるにしろ。
  その言葉にようやくはっとなり、
  「あ。ガウリイ様。マナちゃんをお預かりしますわ」
  自分にできること。
  つまりは戦力にはならないものの、子供達を守ることくらいならばできる。
  リナがエルに言うと同時、はっと自分のすべきことを思い立ち、ガウリイにといっているシルフィール。
  「頼む」
  それだけいい、そのまま背負っていたマナをシルフィールにと預けているガウリイ。
  「とにかく!エリシエル!あんたの好きにはさせないわよっ!」
  自分たちがレゾを倒した云々をここで言われたらややこしいことになる。
  そこまで詳しいことをシルフィールにはリナ達は説明していない。
  だからこそ、臨戦態勢を整えつつ言い放つ。
  「うるさい!うるさい、うるさい、うるさい!レゾ様の仇!覚悟!!」
  ルォォ……
  そういうと同時、エリシエルが虚空に小さく円のような紋様を描く。
  それと同時にエリシエルの周囲に浮かび上がる逆五紡星。
  ゆっくりと、その光は収縮しやがてそこにはいくつもの異形の影。
  「召還術!?」
  まさかこいつにそんな真似ができるとは。
  コピーのほうならいざしらず。
  叫ぶゼルガディスとは対照的に、
  「おまえたち!やっておしまいっ!!」
  高らかに笑い声をあげながら命令するエリシエルの姿。
  と。
  ざしゅ……
  ……え?
  勝ち誇ったような笑い声を上げているエリシエルの背後より何かがかすめ。
  次の瞬間にはエリシエルの右肩より下がおもいっきりなぎはらわれる。
  「……がっ…っ!?」
  いきなり肩をなぎ払われ、がくり、とその場にひざまづくエリシエル。
  攻撃をうけた、というのにその腕からは血が一適も落ちていない。
  まさか……
  リナがある可能性を思いつく。
  攻撃が仕掛けられたのは視界の先にとある闇の中から。
  「……新手か?」
  「…リナ。なんであいつがまたくるんだ?」
  「……あたしにきかないで……」
  構えながらもつぶやくゼル。
  そしてまた、きょとん、としながらも問いかけてくるガウリイ。
  リナとしても答えようがない。
  今だに何が起こっているのか理解できていないシルフィールは二人の子供を抱えてその場にしゃがみこむのみ。
  そんな中、ゆっくりと闇の中からさらに濃いい闇がうかびあがってゆく――


                          ――Go To Next


  #########################################

  あとがきもどき:

薫:この辺りからちらほらとメモのほうに記帳してたのをさらに編集分〜(こらこら
  エリシエルさん、さてこの正体は!?まあ、血がでていない、というのでわかるとおもいますけどね(苦笑
  さてさて、次回、またもや登場、お役所神官v
  次回でたぶん、コピーレゾ編クライマックスですv
  彼らの活躍があまりないのはきにしないでください(おひ…
  何はともあれ、それではまた次回にて♪

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33528 ○パラレル・トラベラーズ○〜偽りの中の真実〜かお E-mail 2008/4/15 20:04:48
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  え〜と…スレイヤーズ世界の地図、地図…っと。
  ときどき位置が正確にわからなくなるときが…
  重宝するのはエンサイクロペディアv
  しかし、また細かな設定がでている設定資料集の出版希望v
  ともあれ次でおそらくこのコピー編は完了の予定。
  何はともあれゆくのです。

  #####################################


           ○パラレル・トラベラーズ○〜偽りの中の真実〜


  「いやぁ。ようやく見つけましたよv」
  にこにこにこ。
  暗闇より出てくるのは一つの人影。
  というか、でてこなくてもいいのに、何でまたこいつが……
  「く。…貴様は……」
  そんなソレをみてにがにがしげにいっているエリシエル。
  その表情、というか口ぶりからどうも知り合いのような感じが見て取れる。
  まさか……?
  いやでも、あのレゾのこと。
  ありえないことではないかもしれない。
  果てしなく嫌な予感がリナの脳裏を突き抜ける。
  ここまで執拗にこの『ゼロス』がかかわってくる理由。
  それは一つの事実を物語っている。
  そもそも、こいつは自分の仕事以外はどうでもいい、というタイプ。
  「およいでもらっていた甲斐がありました?しかし、そんなに増産されてもこまるんですよねv」
  「きさま…どうして!?」
  「とりあえず、傀儡のあなたと話しても意味ないですし。消えてくださいねv」
  ボシュ。
  にっこりと言い放ち、すっとどこにでもあるようなを錫杖を『エリシエル』へと向ける。
  それと同時に軽はずみな音をたてて、服のみ残して消えるソレ。
  はらり。
  その後に残るは、赤いバンダナ。
  そのバンダナには赤いルビーがちりばめられており、何やら文字らしきものが刻まれている。
  そのバンダナも、バシュ、という音とともに燃えて灰と化してゆく。
  「あ。あなたは…先ほどの……」
  何が起こったのか理解はできないが、それでもどうにか声をだしているシルフィール。
  その声にようやくリナ達にと気づき。
  「おや。またあなたたちですか。偶然ですねぇ。もしかしてあなたたちもさがしてるんですか?エリシエル=ヴルムグンさんを?」
  『彼』が利用するならまだしも、彼女が利用する、となれば話は別。
  それに、彼女には聞きたいこともある。
  利用できそうなものはとことん利用する。
  それが彼の主義。
  逆にいえば自分はあまり手をかけずに片をつけたい、という完全なるお役所主義。
  「そういう貴様は……今のは……」
  呪文も何も、さらには混沌の言語(力ある言葉)すら唱えていなかった。
  ただ、錫杖を相手にこの『ゼロス』は向けただけ。
  リナのいうとおり、確かに警戒せざるを得ない相手だな。
  そう心の中で警戒を強めつつも問いかけているゼルガディス。
  ふぅ。
  こいつが探してる、となればやっぱりか…そう思いながらかるくため息をつく。
  だからといって、知らない、とでもいえばしつこくつきまとわれることは必死。
  それははっきりいって避けたい。
  「それで?もしそうならどうだっていうわけ?そもそも何であんたは彼女を探すわけ?」
  答えないのはわかっていても、それでもとりあえずは問いかけるリナ。
  「それは秘密ですv」
  にっこりと、ひとさしゆびをその口にあてていいはなってくるその神官…ゼロス。
  「おか〜さん?周囲のそれ、どうするの?」
  本能的に危険を感じ取り、先ほど呼び出されたレッサーデーモン達はいまだにその場にたたずんでいる。
  「さっきのあれ利用しよっか…」
  「やめとけ。それだけは。リナ」
  ぽそっというリナに即座に却下の台詞をのべるゼルガディス。
  そんな会話をしている最中。
  「……く。まさか第三者が現れるとは……」
  ゆっくりと再び闇の中より浮かび上がってくる人影一つ。
  全身を黒い服に覆い、顔もまた黒いフードで覆っている。
  「いやぁ。やっとでてきましたね?エリシエルさん?例のものを渡してもらえますか?」
  先ほどのエリシエルは、彼女が人造人間(ホムンクルス)を作り出し、それを遠くから操っていただけの代物。
  つまりは、魂のない器。
  材料は土を利用したがゆえに、血は一滴も流れなかった。
  いわば石人形(ゴーレム)の応用版。
  「なぜ…なぜきさまが!?レゾ様にあんなに協力的だった貴様が!?」
  そういう現れた今度こそ本物のエリシエルの声は怒りに満ちている。
  あ〜……
  やっぱしあのレゾにもこいつはかかわってたのか……
  ありえないことじゃない、とは思ってたけど。
  そんなエリシエルの台詞に内心ため息をつかざるを得ないリナ。
  「それは秘密です?こちらにも都合がありましてねぇ。あの方が写していた例の品をいただきたいんですよ?」
  にこやかにそんなエリシエルにいっているゼロス。
  例の品。
  それだけではおそらく、ゼルガディスもシルフィールも判らないであろう。
  だがしかし、このゼロスが何のために行動しているか、というのを知っているリナは別。
  ……さすがレゾ、写本もってたんだ……
  どうりでこいつがしつこくかまってくるわけよね。
  話の内容を聞く限り、レゾが写本の何かの写しをもっているような口ぶりだけど。
  と。
  「それはこまりましたねぇ。あれはもうないのですよ?」
  「「!?」」
  聞き覚えのある声がリナ達の背後より聞こえてくる。
  それゆえにばっと振り向くリナ達。
  「え?え?…えっと…赤法師レゾ様?」
  その姿をみて戸惑いの声をあげているシルフィール。
  確かに見た目というか外見上の全ては赤法師レゾのそれ。
  真紅の服をきこみ、しっかりと閉じられている瞳。
  その額にあるバンダナ。
  そして手にもっているちょっとしたいくつかのわっかのついている杖。
  ゆっくりとまるで今闇から産まれたかのように現れてくる赤い影。
  「レゾ様!?」
  どうして。
  まだ動けないはずなのに。
  どうしてこんなところに…っ!!
  まだ力は満ちていない。
  だからこそ無理に動かすことはできない。
  まだ、生命エネルギーと魔力が必要。
  それが判っているからこそ驚愕の声をあげるエリシエル。
  そのまま、たたっとレゾのほうにかけよってゆく。
  ドシュ。
  「……え?」
  一瞬、何が起こったのか理解不能。
  かけよるエリシエルの背中にはあきらかに、不似合いな手が突き出ている。
  「…ど…どうし……て……」
  「「「!?」」」
  いきなりのことに絶句する。
  その光景の意味を悟り、言葉を失っているリナ達。
  シルフィールもまたいきなりのことに、目を見開いていたりする。
  普通ならばありえない。
  生きている人の体に手を突き刺すなどと。
  レゾにその体を貫かれたまま、それでもかすれる意識のしたといかけるエリシエル。
  「エリシエル。あなたは十分にやってくれましたよ。あとはあなたの命とその魔力をいただければ」
  魔力のないただの村人やそこいらの人々よりも、魔力をもっている彼女を利用したほうがはるかに能率はよい。
  笑みをにこやかに浮かべたまま、そのまま、ずっと胸から背中に突き刺した手に力をこめる。
  それと同時に、見る間にエリシエルの体が収縮してゆく。
  まるで全てを吸い取られてミイラと化してゆくかのように。
  「あ…あ…」
  さらっ……
  何もできないままに、ただひたすらにその場にたたずむリナ達の目の前でひからびてゆき、
  やがて、その体は塵のようにと霧散する。
  魂と魔力、そして生命エネルギー。
  それら全てを目の前の『レゾ』は吸い取ったのである。
  「そんな……」
  ぺたん。
  目の前で人がこのように死んでゆく、というのは信じられない現実。
  それゆえにペタリ、とその場に座り込むシルフィール。
  「あんた。最低ね。最後までその人を利用したわけ?」
  リナ達がいた世界ででもそうだった。
  あのときは、エリシエルはコピーの手により殺されたが。
  しかし…生体エネルギーをその身に取り込むなんて…
  ……レゾのやつどんな実験というか付加能力をこいつにつけてるわけ?
  このコピーレゾの中に魔族が二体、合成されていることはリナも知っている。
  そしてまたゼルガディスも。
  この場で知らないのはシルフィールのみ。
  もっとも、マナは理解しておらず、エルは当然わかっているのだが。
  そんなリナの台詞ににこやかに、
  「おや。心外ですね。彼女から私に協力したい。といったのですよ?
  使えるものは使う。何がわるいのですか?しかしお久しぶりですね。あなたたち」
  悪びれもなくいってくるソレ。
  「あんたとは初対面だし」
  「俺もあんたとは直接あったことはないしな。それよりいつまでその目をとじておくつもりだ?」
  リナとゼルガディス、二人のそんな会話に、
  「つれないですねぇ。ゼルガディス」
  少し困ったかのようなふりをして顔を横にふる。
  「…あのぉ?もしかして僕、完全に無視されてますか?」
  そんな会話をしている最中、ぽそっと何やらつぶやいているゼロスの姿。
  いったい何がどうなって…?
  詳しいことを知らされていない、というか聞かされていないシルフィールはただただ戸惑うのみ。
  目の前にいるのは確かに、噂になだかい赤法師レゾのはず。
  しかし、リナ達の会話を聞くかぎりはおそらく、話にきいていた例のコピーなのであろう。
  本物ならば、目の前で今おこった非情なことをするはずがない。
  本物でもあるレゾはもっとひどいことをしていた。
  ということをシルフィールは知らない。
  「とにかく!あたしはあんたをとめるわ!これ以上悲劇を生まないためにもね!」
  このコピーがこれまでどんなことをしてきているのか、リナは知らない。
  だけどもほうっておけばまちがいなく、サイラーグの悲劇は起こる。
  少なくとも、先日までお世話になっていた村人達が悲劇に襲われた、というのは理解できる。
  それゆえのリナの挑発。
  「……完全に無視されてますねぇ。…まあ、しばらく傍観しておくとしますか?あ、横いいですか?」
  思考をぐるぐるさせているシルフィールの横にいつのまにやらやってきて、ちょこん、と座っているゼロスだが。
  ちらり、とシルフィールと共にいるエルとマナに視線を向ける。
  …なんなんですかね?
  何かものすっごくこのお子さんの近くにいたらおちつかないのは?
  そんなことを思っているなど、当然シルフィールは知る由もない。
  「?ね〜さま?何がおこってるの?」
  いつのまにか目覚めて半分ねぼけまなこのマナが目をこすりつつエルにと問いかける。
  「おか〜さんたちと、例のコピーレゾとが対峙しはじめてるんだけど。
  あ、シルフィールお姉さん、風の結界とかつくれる?」
  「え?…え、ええ。できますけど。いったい?」
  「それじゃ、ゼロスは結界の強化。それでもってマナとあたしは空間隔離ね」
  「いやあの。空間隔離、って……」
  いきなり名前をいわれ、さらには何やらとんでもないことをさらっと言われて戸惑いの声をあげるゼロス。
  「いいからやるっ!」
  「は、はいっ!」
  「?よくわかりませんけど……」
  小さな子供に強くいわれ、それでもなぜか逆らえない。
  本能的に反射的に返事を返すゼロスの姿。
  シルフィールは対照的に首をかしげながらも風の結界を発動させる。
  「おか〜さん!そいつ、しかけてくるわよ!」
  エルの言葉をうけ、その言葉の意味を瞬時に悟り、
  「エル!姉ちゃんたちからおそわったという空間隔離でしのぎなさいよ!」
  リナもその方法をとりたいが、そんな時間はない。
  そもそも長い詠唱を唱える暇をこの相手は見逃す、ともおもえない。
  エルたちのほうはまだ離れているので唱える時間はあるであろうことは明白。
  「ゼル!とにかく風の結界を!!」
  こういうときに役に立つのが魔力増幅。
  ゼルガディスは賢者の石をもっており、リナはリナで極血玉(ティクブラッド)を持っている。
  「おや。あ…あれは……」
  リナ達から感じる魔力の波動。
  それゆえにすぐさまそれが何かを感じ、なんで人間があんなものを?とおもっているゼロス。
  ゼルガディスの賢者の石のほうはまあわかる。
  それがどうしてきちんとした魔血玉(デモンブラッド)になっているのかはともかくとして。
  だがしかし、リナ、と呼ばれている人間がもっている品となれば話は別。
  あの品を作れるのは神族関係者。
  どこかの遺跡からでも取り出したんでしょうか?
  ま、僕には関係ないことですけどね。
  お仕事の内容とは違いますし。
  「「くるっ!!」」
  ゼロスがのんびりとそんなことをおもっているのと、リナとマナの叫びが重なるのと同時。
  シャラッン…
  コピーレゾのもっていた杖がしゃらり、と音をならし大地をたたく。
  「こら!ゼロス!のんびりしてないで、強化しなさいっ!」
  「え、あ、は、はいっ!」
  ほとんど反射的。
  それと同時に、エルたち、すなわち、ゼロス、シルフィール、マイナ、エイルその四人の周囲が風によって包まれる。
  そしてまるで壁のような何かがその場に瞬時にして形成される。
  と。
  ごぐわぁぁぁぁぁぁぁっん!!!!!!
  その刹那。
  何ともいえない爆音と熱気が周囲を覆ってゆく。
  何のことはない。
  それはコピーレゾが放った一発の炸弾陣(ディルブランド)の呪文――

  くうっ。
  さすがにかなり風の結界を強化しているとはいえ堪えるものがある。
  空に逃げる、ということも可能ではあったがそれだと森の木々に邪魔されて余計に動きがとれなくなる。
  ゆえに大地にとどまり、結界を強化してたえることを決めたリナ。
  周囲に立ち上る、爆煙とそして熱気。
  ふとみれば、自分たちがたっていたはずの地面すらえぐりとられて消えている。
  浮遊の呪文と風の結界呪文。
  それらを強化することにより、この攻撃から逃れているリナ達。
  パチン♪
  それとなくエルが指を鳴らすと同時。
  さあっ。
  周囲に風が抜きぬけ、周囲を覆う煙を取り払ってゆく。
  「…え…え…ええ!?」
  いきなり何がおこったのか理解できずにただただ、子供達を抱きかかえるようにして目をつむったシルフィール。
  ゆっくりと目を見開いた先にみたものは、先ほどまでの景色とは一変した景色。
  周囲には何もない。
  そう、何も。
  唯一、自分たちが身を寄せていた木がちょこん、と一本のこるのみ。
  それ以外の大地、というか地面全てはえぐりとられ、完全なるクレーターと化している。
  その中心にたたずむのは赤い影一つ。
  「おやおや。面白いことをされましたねぇ。というかよくわかりましたね」
  なぜか強くいわれて反射的にその命令に従ったことに不思議を感じつつも、
  それでも今シルフィールから発せられている何ともいえない負の感情。
  戸惑いと恐怖、それらの感情に満足しながらもにこやかにいっているゼロス。
  「ふつうわかるし」
  「いや。わからないとおもいますけど……ま、いいですけどね」
  そういいつつも、リナ達のほうをみる。
  みれば、どうやらリナ達もまた無事らしい。
  風により、煙幕となっていた舞い上がる煙全てが取り除かれ、視界は綺麗に開けている。
  ここは確かに山の中のはずだったのに、山、といった痕跡すらない。
  ただあるのは、ちょっとした巨大なクレーターのみ。
  「…い、今のは……」
  風の結界を張っていたとはいえ衝撃はあった。
  ゆっくりと目を見開いたゼルガディスの視界にうつったのはえぐられた大地。
  「あいつが炸弾陣(ディルブランド)を放ったのよ」
  「……って、おい……」
  炸弾陣(ディルブランド)。
  普通ならばちょこっと大地を抉り取るだけの、こけおどしなどによく使われる術。
  そんなモノでこの威力。
  つまりは、目の前のコピーレゾの魔力が並大抵ではない、ということを物語っている。
  「お〜。視界が綺麗になったなぁ」
  「あんたは〜。こういうときにのほほんというなぁぁ!」
  対照的に周囲を見渡しのほほんといっているガウリイ。
  普通に考えれば被害は甚大。
  だがしかし、この山全てにおいてはほとんどすでに生命、とよべる存在は皆無に等しい。
  また、近くの村や、山の中にあった集落の数々。
  それらはすでにエリシエルの手によって壊滅、または実験材料とされている。
  もっとも、そんなことはリナ達は知る由もない――

  「おや。さすがですねぇ。今のでも無事でしたか。さて。動きやすくなったところで。ケリをつけましょうか?」
  にっこりと。
  そがれた大地にたたずむ赤き影。
  コピーレゾが笑みを浮かべながら、まったく無傷のリナ達のほうにむかって言い放つ。
  彼にとって一番重要なこと。
  それは、自らの手でリナ達を殺すこと――


                      ――Go To Next



  #########################################

  あとがきもどき:

薫:さくっとでてきて、さくっと殺されたエリシエルことエリスv
  まあ、彼女は原作においてもコピーに殺されましたしねぇ。
  アニメのほうではけっこう活躍(?)してましたけど。
  あり?そういや、コピーのってメガだったっけ?ディルだったっけ?
  …ま、いっか(こらまてや)
  さてさて、次回でようやく決着編v次は原作あとがきのみにかかれてたプラム編v
  ではまた次回にて〜♪

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33529○パラレル・トラベラーズ○〜行動と結果〜かお E-mail 2008/4/15 20:05:28
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  さてさて。ようやく終了のコピーレゾ編vv
  10話近くひっぱったわりにあっさりおわっているのはご愛嬌v(自覚あり
  何はともあれ、いっきます!
  コピーレゾ編、ラストです!!

  #####################################


      ○パラレル・トラベラーズ○〜行動と結果〜


  風と冷気の結界。
  それらをまとっていなければこの場に普通立つことも難しい。
  大地は熱く、さきほどの影響でいまだに煮立っている。
  「ずいぶんとやってくれるじゃない?」
  その効力を目の当たりにするのはリナとガウリイは二度目。
  「…とにかく。レゾのためにも。俺はおまえを倒す!」
  あの子を助けてやってくれ。
  それがレゾの最後の望みであったがゆえに。
  そんなゼルガディスの台詞をきき、
  「倒す?…私を??…はは…はははははっ!!」
  いきなり狂ったように笑い出す。
  「そんなことが可能なわけはないでしょう?ゼルガディス。
    今は普通の人となりさがっているあなたが!それにレゾのため?私がレゾですよ?」
  「違うわ。あんたはレゾが自分の目を治す実験のために作られた人造人間(ホムンクルス)。すなわちコピー。
    だからこそあたしたちはあんたの所業をとめるっ!!」
  「おや。そこまでご存知でしたか。ですが、これは知っていますか?」
  にこやかに笑みを浮かべながらもその額につけていたバンダナにと手をかける。
  はらり。
  バンダナがはらり、と落ちると同時に即座に燃えて灰となる。
  それと同時にゆっくりと見開かれる、コピーレゾの閉じられていた瞳。

  「…な…そんな……」
  目の前で繰り広げられている光景に絶句しているシルフィール。
  しっかりと瞳をとじていたレゾ、と名乗っていたとおもわれる人物。
  その人物が目を見開いたその顔にあったものは、片方の瞳からでている何ともいえない蔦のようなもの。
  そしてまた、その瞳もまた普通ではなく洞のような中に見え隠れしている何か。
  唯一、目らしい、といえるものは額にある縦に伸びた獣のような目。
  「知ってるわよ。レゾがあんたに魔族を二匹も合成してる。ってこともね。だからこそ倒すのよ!」
  いいつつ。
  「ガウリイ!いくわよっ!」
  「おうっ!」
  こういう輩は先手必勝。
  ガウリイの腕ならば相手の魔力というか術はその剣でたたき斬ってくれる。
  それがわかっているからこそのリナの行動。
  「でやぁぁぁぁぁぁ!!」
  周囲にリナの叫びと、それに続いて攻撃をしかけるゼルガディスの声がこだましてゆく。

  「…何がどうなって……」
  自分の入り込める隙がない。
  ただただ、ガウリイやリナ、そしてゼルガディス、そしてレゾのコピー、とおもわしきもの。
  それらと戦っている彼らをみていることしかできないシルフィール。
  常識的には考えられないガウリイの剣さばき。
  どうみてもガウリイが術のことごとくを剣でたたき斬っている。
  「おやおや。人間の中にも面白い人がいたものですねぇ」
  にこやかに、まったく他人事のようにといっているゼロス。
  「マナたちのと〜さま、すごいでしょ!」
  「マナ。ここは自慢するところじゃないとおもうわよ?」
  とりあえず、そんなゼロスに自慢しているマナに苦笑しながらいっているエル。
  だがしかし、コピーレゾのほうは傷をうけてもまたたくまにその傷がふさがり回復している様子が見て取れる。
  それゆえに苦戦を強いられているリナ達。
  リナとてここで神滅斬などを使えばたやすいのだが、いかんせんすぐ近くにゼロスがいる。
  ゆえにためらっているので一撃必殺、とはなりえない。
  ち。
  あいつがいなかったら神滅斬(ラグナブレード)ですぐに方がつくのにっ!
  そんなことをリナがおもっているとは露にも思わず、
  「おやおや。そんな攻撃ではこの私を倒すどころか、ひざまづかせることもできませんよ?」
  そもそも、本家のレゾを倒したのはこんなものではないでしょう?
  そう言外に言葉を含ませリナ達を挑発するコピーレゾ。
  そんな光景をしばしながめ。
  「…なるほど。そういうことでしたか」
  にこやかに場違いな笑みを浮かべているゼロスの姿。

  「が…がぁぁぁっ!?…な…なに…っ!?」
  突如として『レゾ』と名乗っていたソレから驚愕の声が発せられる。
  ふとみれば、その胸には背中から刺されたとおもわれし、みなれている錫杖の先が垣間見える。
  そしてその背後にはやはり笑みを浮かべているままのゼロスの姿。
  「ああ。そうそう。因果横暴、って言葉しってました?」
  ずるっ。
  にこやかに笑みをうかべながらも突き刺した錫杖にぐっと力をこめそのまま一気に引き抜く。
  その杖の先にありえるはずのない何かの紙のようなものが一つ。
  本来ならば血がこびくつくはずのその杖には何の痕跡も残っていない。
  当然、といえばそれまで。
  だが、それがなぜなのか知らないゼルガディスとシルフィールは絶句する。
  先ほどまで瞬く間に回復していたコピーの傷の治りが嫌に遅い。
  「しかし。あのレゾさん、という人も考えましたねぇ。中身にコレをいれるとは」
  そういいはなち、しばし杖の先にと張り付くようにしてあるそれを手にとり、
  「ふむ。どうやら僕の探し物はこれですねv」
  にっこりとざっと目を通して笑みを浮かべ、そのまま。
  ポシュ。
  その手の中にあるそれを瞬く間にと灰にする。
  「……なるほど。そういうこと……」
  なぜ、コピーレゾが幾度も攻撃をうけても瞬く間に傷が回復していたのか。
  それは魔族が合成されているがゆえ、のことだとリナは思っていたが、どうやらその間違いに気づく。
  ゼロスがここまでして手にいれようとするもの。
  それはリナの知るかぎりはっきりいって一つしかない。
  「え?え?え?さっきまであの人、横にいたのに?!」
  さきほどまでは確かに自分の真横にいたはずの神官。
  それなのにいきなりリナ達と戦っているコピーレゾの真後ろにと出現していた。
  それもほんの瞬きする間に。
  「ま、ゼロスだし」
  というか空間移動すればどうってこともなければ瞬間移動も可能。
  そもそも、この物質世界にあの姿で具現化しているだけであり、本体は精神世界面(アストラルサイド)にある。。
  「?エルちゃん?それって??」
  自分としてはかなり驚いているというのに、対する小さな子供達二人はまったく驚いている様子はない。
  通常の状態のシルフィールならばそのことに怪訝を示すだろうが、今はその状況ではない。
  「あいつにはそんなの関係ないし」
  物質世界の制約云々が、魔族たる精神生命体にとってはなきに等しい。
  事実、等しいも何もないのだが。
  そんなシルフィールの戸惑いを含んだ声をきっぱりはっきり受け止めいいきるエル。
  一方。
  ふっ。
  「なるほど。どうやらあんたの不死身の元はそれだったみたいね!」
  軽く笑みを浮かべ、あえてそれが写本の写しであることは触れずに高らかに言い放つリナ。
  下手に何かいって今このゼロスに警戒されることだけは避けたい。
  少なくとも、子供達、マナとエルに危害が及ぶ可能性がある限りは。
  「どうやら僕のお仕事は完了したみたいですので。それではみなさん、ごきげんようv」
  にこやかに、そのままふわり、と浮かび上がるゼロス。
  確かに、こう視界が一つもさえぎられるものもない場所においては浮かんで、というか飛んで移動する。
  そのほうが第三者にとっては違和感を抱かせない。
  「って、こらまて!きさま、このままこれをほうっておく気か!?」
  そもそも、こいつもコレをさがしていたんじゃないのか!?
  はっと我にと戻り、そんなゼロスにと問いかけているゼルガディス。
  「いえ。僕のお仕事はおわりましたので。それではv」
  いうと同時に。
  ボンッv
  軽やかな音とともに周囲、というかゼロスの周辺に煙が立ち込める。
  それは一種の煙幕のようなもの。
  「あ、まて!」
  「ゼル!あんなどうでもいいゴキブリはおいといて!今はこいつをどうにかするのが先よ!」
  みれば、さきほど回復しかけていたガウリイが斬った傷が再び開きかけている。
  やはり……
  「あんたの傷が回復してた原因は、あいつが今消した品の魔力だったようね」
  そんなリナの台詞に多少顔をゆがませつつも、
  「それがどうした。というのです?それでも私の優位はかわりませんよ?」
  断言的にいいはなってくるコピーレゾ。
  「違うわ。これでおわりよ」
  いいつつ精神を集中させる。
  使うのは、いつもの術。
  だが、異なるのはいつもと違い魔力を増幅してから解き放つ。
  「黄昏よりも暗きもの…」
  ちらり、とガウリイに視線をむけて、相手が空間移動などしないように足止めを依頼する。
  言葉などはいらない、暗黙の連携。
  それがリナとガウリイの強み。
  「…くっ…!」
  相手の剣が普通ではない。
  というのに気づいたのは持っていた杖が綺麗さっぱりすっぱりと斬られたとき。
  あからさまに魔力剣。
  それも並大抵の品ではない。
  それが何なのかはコピーは知らない。
  下手に剣を受ければ自身が傷つく。
  だからこそガウリイから気をそらせられない。
  ガウリイがもつ剣は周囲の魔力を切れ味とする剣。
  相手の魔力が高ければ高いほど威力を発揮する。
  ばっ!!
  いきなりガウリイが間合いをとり、チャンスとばかりに身構えるコピーレゾ。
  だがしかし。
  「竜破斬(ドラグスレイブ)!!!!!!」
  どごぉぉぉぉぉぉぉぉん!!!!!!!!!
  周囲に、いつもの数十倍、ともいえる爆音が響き渡る。

  「ふむ。斬妖剣(ブラストソード)、ですか。やっかいなものをもっていますねぇ。ま、僕には関係ないですけどねv」
  姿は消したものの、シルフィールから発せられている負の感情。
  それらはたしかに彼にとってもここちよいもの。
  それに個人的な興味で成り行きもきになった。
  だからこそ精神世界面から成り行きを眺めていたゼロス。
  それだけいい、相手があっさりと倒されたのをうけ興味をなくしたようにそのままふいっと姿を消す。

  「リナ。あいついったようだぞ?」
  とりあえず、近くにゼロスの気配があることはわかっていた。
  だからこそ、リナに表情だけでそのことは伝えておいた。
  それゆえにリナがとった行動は竜破斬(ドラグスレイブ)を使う、という行動。
  「さんきゅ〜。ガウリイ。…さってと…まだ息があるみたいね……」
  「だけど、魔族の気配はないぞ?」
  竜破斬(ドラグスレイブ)の直撃をうければ普通ならば即消滅。
  しかも普通の竜破斬(ドラグスレイブ)の威力とはあきらかに異なった魔力が収束していた術。
  その場にころがるようにあるのは、一つの人影。
  先ほどとはうってかわった人らしき表情。
  すでに彼の中に合成されていた魔族の姿はない。
  術に逆らい、それでも『彼ら』にとっては上司の力にはあがらえずに消滅した。
  『彼』が無事なのは中にいた『彼ら』がかなり抗い抵抗したがゆえに彼まで威力が完全には及ばなかった。
  だが、それも一時のこと。
  「…なぜ……」
  ごふっ。
  問いかける口からあふれるのは赤黒い液体。
  「…なぜ…私は…まけるの…ですか…私は…私は……」
  自分は誰よりも強かったはず。
  それなのに。
  あのどうみてもひ弱そうな神官に対しても、そしてまたこのか弱そうな女性に対しても。
  「それはあんたが、人の命を命とおもっていなかったからよ。
    あんたは自分の未来の先、何がしたいかなんて考えたことがあったわけ?」
  すでにもう目の前の人物の命はつきかけている。
  いったい、彼は今までにどれだけの人の命をあやめたのだろう。
  それも理不尽な理由で。
  リナとて人の命を奪ったことがない、とご大層なことをいうつもりはない。
  自分の行動の結果で、いくつもたくさんの人が傷つき、そして死んでいった。
  それを身にしみているからなおさらに。
  「私は…そうか…私は…先をみていなかった……だから負けたのですね……」
  ――因果横暴、って言葉、知ってます?
  さきほどあの神官が自分に対して投げかけてきた言葉。
  何となくだが今さらながらに理解した。
  「…あ…あの?…リナさん?ガウリイ様?ゼルガディスさん?」
  ようやく戦闘が一息ついたのをうけ、やっと震える体でリナ達の近くに近寄っていき問いかけるシルフィール。
  シルフィールの視界に入るのは、大地にころがる一人の人間。
  「…墓はどうする?」
  自分の曽祖父がもたらした結果。
  「そんなものは…できうれば……私を神聖樹フラグーンのもとへ……」
  神聖樹フラグーン。
  復活の証。
  瘴気に負けずに、逆にそれを糧として成長してゆく木。
  自分もそうありたかった。
  自分に芽生えた意思が魔族の意思のモノとは違う、そう思いたかったから。
  さぁ……
  しずかに風が体をなでる。
  ああ、自然というものはこんなにもやさしいものだったんですね。
  今さらながらに気づくとは…私もおろか…ですね……
  そんなことをおもいつつ、ゆっくりと目を閉じる。
  そのまま意識を深い闇の中にと沈めてゆく――


  「しかし。それでこれからどうするの?ゼルは?シルフィールは?」
  とりあえず、彼の最後の望みでもあった。
  というので彼の死体をそのまま運び。
  といっても術を使い、空を飛んでの移動となったのだが。
  死体をそのまま運ぶ、というのは何なので石人形(ゴーレム)の術の応用で土で棺を作り出した。
  お棺ごとフラグーンの根元に植えた後、といかけるリナ。
  「私は…わたくしは、お父様といっしょに、これからもここサイラーグのために働きますわ」
  その言葉に心底ほっとするリナ。
  ということは、シルフィールがあのフィルさんと出会うことはない。
  ということよね。
  内心のそのうれしさをどうにか隠し、
  「それで、ゼルはどうするの?」
  そんなリナの問いかけに、しばらく考え込んだ後。
  「ちょっと思うところがあるしな。すこしばかりお前らにつきあおうとおもう」
  「「…え!?」」
  「ってまて!ゼル!せっかくの家族水入らず旅行を台無しにする気か!?」
  「これって水入らず旅行、とはいわないんじゃぁ…?」
  しいていうならば不慮の事故のようなもの。
  そもそも、早く元の世界にもどらないと。
  そうでなければ姉ちゃんの反応がかなり怖い。
  「?でもゼルのおじちゃん。あのミイラのおじちゃんとかはどうするの?」
  「だ・か・ら!そのおじちゃん、というのはやめてくれ!!」
  悪意のない瞳でといかけるマナに躍起になって突っかかっているゼルガディス。
  「そういや。ゼル。あんたの仲間いたじゃない。彼らもくるわけ?」
  「まあ、彼らには連絡をとらないといけないのは事実だな」
  「そうですか。それでは皆さんたちとはここでお別れなんですね。本当にお世話になりました。
    わたくし、何もお役にてたてなくて申し訳ないですわ」
  そんな会話をしているリナとゼルをみつつさみしく微笑むシルフィール。
  そんなシルフィールをみながら、
  「シルフィール。…えっと。とにかく元気で。…あと、気をつけてね」
  サイラーグ壊滅。
  というリナの知っている事態は何とかさけられた。
  だがしかし、その先にまっている冥王フィブリゾの行動。
  それによってはこのサイラーグの運命もまたかわってくる。
  だが、それをいうわけにはいかない。
  そもそも、シルフィールにはあのゼロスが魔族だ、ともいってないのだから。
  ひとまず軽くサイラーグの神官長であるエルクに挨拶し、リナ達はサイラーグを後にする。
  とにかくサイラーグの壊滅をどうにか防げた、という安堵感とともに――


         ――Go To Next



  #########################################

  あとがきもどき:

薫:さてさて。皆さんはもうお分かりになっているかとv
  レゾコピーの中に入れられていたもの。いうまでもなく異界黙示録の写本の写しです。
  レゾが実験をかねて人造人間の体内に埋め込んでいたものです。
  それでいろんな実験をしていた。という。
  中にいれられていたものは、例のゼナファに関するモノの写しの一部。
  なので応用が多少アドリブきいています。
  当然、ゼロスが狙っていたのはそれです(笑
  レゾのときには、相手が魔王の器、とわかっていたからほうっておいた。
  というか比較的協力的だったんですけどね(こらこら
  何はともあれ、次回は新たな展開ですvではまた〜♪


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33535○バラレル・トラペラーズ○〜旅の目的?〜かお E-mail 2008/4/18 20:28:31
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  さてさて。今回からまったく異なる展開編v
  超巨大あとがきで触れられていたあの回なのですv
  この回でようやくアメリアたちとも合流(?)です♪
  何はともあれ、いっきますv新展開v

  #####################################


           ○パラレル・トラベラーズ○〜旅の目的?〜


  「……で?」
  とりあえず、簡単ではあるが挨拶を済ませ、サイラーグを後にした。
  しばらく取りとめのない会話をしながらてくてくと歩いていった後。
  周囲に人気がないのを確認し、たちどまりながらも振り向きざまに問いかける。
  「ついてきた。ということは何か聞きたいこととか言いたいこととかあるんでしょ?ゼル?」
  「おなかすいてるとか?」
  「いや。マナ、それはない。ぜったいに。」
  そんなリナの台詞にきょとんとしながらも言っているマナに突っ込みをいれているエル。
  ゆっくりと子供の足にあわせた歩幅。
  ずっと抱いているままだと子供達がぐずるのでときどきはあるくようにしているリナとガウリイ。
  「そういや。何でついてきたんだ?ゼル?」
  言われてみればもうゼルガディスがついてくる必要性はない。
  いまさらながらにそのことに気づいて問いかけるガウリイ。
  「あんたは…今さらいうか?まあいい。あの神官。何だったんだ?リナ?
    それにあんたは、あのコピーの中にいれられていたものが何なのか、わかっていたような口ぶりだったしな」
  確かにあのときのリナは、あのゼロスが抜き去ったものが何かを知っているような口ぶりだった。
  ゼルガディスはレゾの研究所にてそれが何なのか知りえてはいたが。
  だがしかしそれは半信半疑でもあった。
  そんな簡単にほいほいとそんな品物が世間に出回っている、とは思えなかったがゆえ。
  「さすがゼルね。あの一瞬でそこまで見抜いたわけ?まあ、たしかにあたしはアレが何か。
    わかったといえばわかったわよ。まあ、あいつがあそこまで執着するもの、というモノも一つしかないし」
  「そういや。この世界のあいつもやっぱり同じ仕事してるのかなぁ?」
  リナの言葉にふと思い出したようにつぶやいているガウリイ。
  「ゼロスなんだし。そうなんじゃないの?おと〜さん。どこでもおやくしょしごとだろうし」
  いや、お役所仕事…って。
  こいつらの世界でもあのゼロスとかいう怪しい神官はいたのか。
  そんなことをゼルガディスは思いつつ、
  「仕事?あの怪しさ爆発の神官の?」
  「ああ。あたし達の世界でのあいつのもっぱらのお仕事は写本の処分だし」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  「…なっ!?ち、ちょっとまて!写本、ってもしかしてあの写本のことか!?何で!?」
  そんなに大切なものを処分する。
  など聞いたこともない。
  いや、噂では聞いたことがあるが。
  何でも古から写本あるところ謎の神官あり。
  と。
  それはただの噂話とおもっていたのだが。
  「そりゃ、あのゼロスがじょうしにめいじられてるのがしゃほんのしょぶんだからでしょ?」
  「ま、いずこの世界のゼロスもお役所仕事は健在、というわけみたいだし。
    とにかく係わり合いにならないほうがいいのは事実だしね。ここでまで利用されるのはごめんだし」
  「…上司命令?…それに処分…しかし、利用?…あんたら、どういう関係だったんだ?」
  「まあ、好きでお知り合いになりたい相手じゃないってことよ」
  まさかあれが魔族だと説明しても信じるとは到底思えない。
  まあ、このゼルならレゾのこともあるから信じるかもしれないけど。
  下手にあのゼロスに警戒心を抱かせるのは得策ではないし。
  「それはそうと。ゼル。レゾの遺言でもあったあのコピーはとりあえず止めた今。
    今度はあんたは何のために旅をするわけ?」
  質問に質問で返す、というのはあまりよくはない。
  だが、あまりこのことに関しては突っ込まれたくないがゆえに質問を投げ返すリナ。
  「それは…レゾの負の遺産の後始末だ。それは残された俺の役目だしな」
  レゾの負の遺産。
  それは様々な場所にとちらばっている。
  長く生きていた彼だからこそ、その遺産は様々。
  まず、一番問題なのは例の品。
  昔、レゾから昔話的に聞かされた品。
  「負の遺産?レゾが集めてたとか、もしくは作り出したとかそんなやつ?」
  「まあな。おそらく。あのコピーの体内にいれていたやつもその一つだろう。
  それに関連する品が悪用されないうちに、俺の手で処分する。それが次の目的だ」
  あのとき、レゾは確かにこういった。
  いくら危険な品物だとはいえ、大切なものには違いはない。
  だから、とある一族に預けて大切に管理、保管してもらったのだ…と。
  それは珍しくよっていたレゾが幼いころゼルガディスに聞かせた話。
  本当かどうかはわからない。
  だがもし、真実であれが悪用されたらとんでもないことになる。
  それこそ百年前の悲劇の再来になりかねない。
  だから、この世から消滅させる。
  そんなゼルの言葉にしばし考えこみつつも。
  「…もしかして、ゼルが探してるのって、ザナッファーのことが書かれている写本?」
  「…なっ!?」
  いきなりといえばいきなりの図星をつかれておもわず目を見開いて驚愕の声を出す。
  自分はそこまで詳しくいっていない。
  今の話だけでそれに結びつけるなどとは到底考えられない。
  だがしかし、そんなゼルガディスの表情から、その憶測が間違っていないと悟り、
  「奇遇ね。あたし達の次の目的もそれだったのよ。…あんなことはおこしたくないからね……」
  クロツによる人を人ともおもわない様々な実験。
  ただの捨て駒にされている、とわかっていながらも命を助けてくれた人だから、と従った存在達。
  リナが大切な仲間であった人たちを守れなかった、と聞いたときに。
  その後であったゼルガディスが話してくれた、ゼロスとのはじめての出会いの出来事。
  プラムとクリフという姉弟との悲劇。
  それら全てをひっくるめ、サイラーグの悲劇は防げた。
  ならば自分たちが元の世界に帰るまえにやれることはやっておきたい。
  それがリナの本心。
  少なくとも、この世界の『レナ』に今以上の悲しみと苦しみを与えないためにも。
  「…あんなこと?そうか。あんたらの世界で、『何か』があったんだな?」
  それだけの台詞で何となくリナが言いたいことを悟り、それ以上は聞かないゼルガディス。
  この世界は自分達が生きている世界。
  本来ならば自分たちがどうにかしなければいけない出来事。
  「問題は。簡易的な情報しかない。ということだったからかたっぱしからいろいろと聞き込みしようとおもってたけど。
    ゼルは何かしってるの?アレのこと?」
  すくなくとも、ここライゼール帝国の中にはない。
  ことが起こったのはカルマート。
  そして、ゼロスとゼルガディスがであった、という場所はたしかラルティーグ帝国内。
  それのことを片付けてゼフィーリアに向かってもさほど問題はないはず。
  どちらにしても、ゆくとすれば陸路、しかも山を越えての道か、もしくは海路。
  いくら何でもあんな険しい山脈をこえて、しかも子供連れで超えて移動しようとは思わない。
  だからこそ海路が通じている海辺の町にと向かっているリナ達。
  「詳しくは知らない。だが、レゾが危険、と判断したのは事実だな」
  だから昔、とある一族にそれを託して封印した。
  それが真実なのかいつのころなのかゼルガディスにはよく理解できていないが。
  「まあ。あのレゾなんだし。かかわってても不思議ではないけどね」
  あのレゾがいったい全体何歳なのかは知らない。
  だが、すくなくとも何となくだが、あの事件にかかわっていても不思議ではないような気がする。
  ひしひしと。
  様々な可能性を求めて非道な実験などもしていたはずのレゾである。
  アレ、を見逃していた、とは到底おもおない。
  街道にはリナ達のほかには人影は見えない。
  遠くから馬車の音がしていたりするが。
  普通、移動するパターンといえば、馬かもしくは馬車が通常。
  滅多に歩いて旅をしている存在などまずいない。
  もっとも、それらは旅人たちが自身の身を守るためにそのような手段を用いるのだが。
  逆に、だがしかし、馬車などではいざ、というときににげられない恐れがある。
  どちらにしてもいいところもあれば、悪いところもある。
  自由がきく歩き旅だからこそ、リナは昔からこの方法をとっている。
  それはゼルガディスらとて同じこと。
  「まあ。とりあえず。俺はこれからラルティーグに向かうつもりだ」
  あのレゾの話が真実だとして、目的のものはそこにあるはず。
  「・・・・・・・・・なるほど」
  そんなゼルガディスの言葉にしばし考え込む。
  先にあのクロツたちの本拠をたたきつぶしておきたい。
  という本音もあるにはあるが、できうれば先にアレをどうにかしておきたい。
  うまくすれば今後起こる悲劇、そしてアレの復活もどきを防げる可能性は大。
  「ねえねえ。おか〜さん?それならアレの魔力波動、おか〜さんしってるんだし。それで探索すれば?」
  『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
  そんな会話をしているリナ達にきょとん、としながらも首をかしげてにっこりといっているエル。
  そう、リナは『知っている』。
  しかもその本体とも接触しているのでそれにかかわる魔力波動は一応把握している。
  もっとも、一番初めに本体に触れたときにはそのような情報を得る機会はなかったが。
  それ以後、永遠の女王の許可の下、再びあれに接触する機会をもっているリナ。
  だからこそ、リナは『判る』。
  その方法を完全に失念しているであろうリナにとにこやかにとそれとなくいっているエル。
  下手にうろうろとするのは何かと面倒。
  それより、さくっと面白い…もとい、何かがある場所にいったほうがいい。
  そんなエルの台詞にしばし二人同時にだまりこみ。
  ぽん。
  その方法をようやく思いつき、ぽんっと手をたたくリナ。
  「ナイス!エル!そっか。その手があるわよね。そもそもあれって特殊なんだし」
  もっともその波動を簡単にたぐれれば魔族であるゼロスがなぜに見つけにくいか。
  という疑問にもつながるが。
  それはアレが神族に属するものであり、魔族とは反する属性を持つがゆえ。
  下手に探索などをかければそれに純ずる作用でダメージをうける。
  ゼロスのような高位魔族ならばいざしらず、下級魔族などは一発で消滅する。
  伊達に水竜王の知識を文字として写したわけではない。
  そもそも、その文字や言葉自体にも魔力が含まれているのだから。
  「いや。ちょっとまて。そんなことが可能なのか?」
  そんなエルとリナの会話にしばし唖然としながらも戸惑いながらもといかけているゼルガディス。
  「まあね。すっかり失念してたわ。…まあ、だけどやるとしてもここじゃぁねぇ……」
  いいつつ、視線をその先にむける。
  視界の先にはきらきらと輝く海が垣間見えている。
  海の上ででもやるかな?
  海上においてはおそらく、力がある魔道士達などがそれに気づいてもどうにもできないはず。
  それよりも、あの広大な海を利用して簡単な結界を海水を用いて使用することも可能。
  「お〜い。そろそろ町につくぞ?」
  一時足を止めていたものの、話しながら進んでいたリナ達一行。
  やがてその視界の先に垣間見えてくる海辺の町並み。
  船が港に出入りしている様が小さく見えている。
  リナ達の会話に参加することもなく、ただひたすらにのんびりと歩いていたガウリイが声をかける。
  「ま。とりあえずは…」
  「かいせんりょうり〜〜!!」
  「あ。マナもたべる〜〜!!」
  「お〜!くうぞ〜!!」
  がくっ。
  「お…お前ら家族って……」
  先ほどまでシリアスともいえる会話をしていた。
  それなのにうってかわったこの変わりよう。
  おもわずがくっと肩をすくめるゼルガディス。
  どうしても今までの癖で周囲のことを気にしてしまう。
  もっとも、リナ達と一緒にいる、というだけでかなりゼルガディスは目立つのだが。
  しかも、普通の体にもどっている、というのにいまだに顔はフードで覆い街中などでは見えないようにしている。
  そんな会話をかわしつつ、彼ら一行は港町にとはいってゆく。


  トンテン、トンテン、カンカン。
  カンカンカン。
  「お〜い。こっちもだ!」
  え〜と……
  港町にはいり、まず目にはいったのはなぜか壊れまくった町並み。
  ゆえに人々が壊れた家々などを修復している様子。
  一瞬目が点と成り果てる。
  港町なので賑わいを見せているのはわかる。
  判るが、何か違う意味でもにぎわっているように見えるのは気のせいではなさそうである。
  「と…とりあえず。まずは食事でもしましょう」
  「わ〜い、ごはん、ごはん〜!!」
  「まな、たこさんりょうり〜!!」
  「こらこら。はしゃいだらおちるぞ?」
  じたばたばた。
  抱っこされているままでじたばたさわぐマナに注意を促しているガウリイ。
  それできくようなマナでもないが。
  「ま、たしかに。ここでつったっていても何だしな」
  何となく騒がしい街中をリナ達家族とゼルガディスの五人は進んでゆく。

  「……へ…へぇぇ〜……」
  たらっ。
  食事をしにはいった酒場。
  酒場けん食堂。
  そこで何となくどうして壊れた家々が多いのかそれとなく聞いてみたリナ。
  戻ってきた答えいわく、
  『海にでていた怪物を旅の魔道士さんが退治してくれたのですが…その反動で町も壊れてしまいまして…』
  とのこと。
  その魔道士は何でも自身が召還した竜とともに一緒に高笑いしながら海を渡っていったらしい。
  それが『誰』をさしているのか瞬時に理解するリナ。
  こ…この世界でもやっぱりあいつはいるのか……
  はっきりいってリナにとってはかかわりたくない相手ランキングの首位に俗する物体。
  いや、あれを人間、と表現するのは世の中間違っている。
  うん。
  ましてやアレがセイルーンの皇女、だというのだからなおさらに。
  そんなことをおもいつつも、言葉を濁すしかないリナ。
  「しかし。お客さんたち運がいいですね。この前まで海の怪物のせいで旅船もとまっていたんですけど。ようやく数日前から復興してますし」
  「そ、そうなんですか」
  そうとしかいいようがない。
  こころなしか乾いた笑いがリナからあがるのは仕方ないであろう。
  「?リナのやつ、どうかしたのか?」
  「さあ?」
  そんなリナの様子をみつつも、首をかしげているゼルガディスとガウリイ。
  そんな大人たちとは関係なく、小さな手でひたすらに食事にありついている二人の子供。
  「と。とにかく。たべたらとっとと港にいきましょ」
  あまりここに長居したくない。
  それがリナの本音。
  近くにアレがいる、とわかればなおさらに。
  極度の方向音痴である彼女のこと、またここにもどってこない、とも限らない。
  リナの態度に対して怪訝な表情を浮かべつつも、確かに急いだほうがいいのにこしたことはない。
  それゆえに、食事をすませ、彼らは港のほうにと出向いてゆく。
  船によりラルティーグに向かうために。

  世の中、知らないほうがいい。
  ということは確かにある。
  そして、この町がこのようになっている様子もまたその部類の入るのである――


                  ――Go To Next



  #########################################

  あとがきもどき:

薫:さてさて。もう皆さん、お分かりになるかと(笑
  ちなみに、リナ達が港町にたどりつく数日前。
  ナーガが海で悪さしていた海蛇竜(シーサーペント)を同じく海蛇竜(シーサーペント)召還して町はほぼ壊滅状態に(笑
  そのまま、ごまかすために召還したソレにのってナーガは移動していってますv
  そもそも、その暴れていた海蛇竜(シーサーペント)、というのも実は以前ナーガが召還してほっといたもの。
  数日、たどり着くのがはやければリナ達もまた巻き込まれてましたけどね(笑
  この世界でもナーガは当然健在ですv
  何はともあれ、それではまた次回にて〜♪




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33536○パラレル・トラベラーズ○〜運命?必然?偶然?どれ?〜かお E-mail 2008/4/18 20:29:37
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  まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

  さてさて。ようやくまたまたレナたちとの合流ですv
  アメリアは…まあ、やっぱり原作口調、ということで(こらまて
  それでは、いっきますv

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         ○パラレル・トラベラーズ○〜運命?偶然?必然?どれ?〜


  どごがぁぁぁぁぁん!!!!!
  「ひ…ひぇぇぇぇ!!!?」
  「……まあ、たしかに手っ取りはやい、といえば早いだろうが……」
  繰り広げられている光景にただただ唖然というか苦笑するしかないゼルガディス。
  視界の先では、リナがところかまわずに呪文を叩き込み、周囲には逃げ惑う盗賊たち。
  情報収集と、そしてまた資金調達。
  それらをかねて盗賊のアジトを襲撃しているリナ。
  そんなリナに続いて楽しそうに呪文をはなちまくっている子供達の姿も気にはかかる。
  「…というか。こんなやつらにそだてられてて…あのこたち、大丈夫なのか?」
  至極もっとも、ともいえるゼルガディスのつぶやきは、ただただ周囲に満ちる爆音にかき消される。
  夜の森の中。
  ただただ、爆音と、そして男たちの悲鳴が響き渡ってゆく――

  ラルティーグ。
  それはここ、結界内部に閉じられているいくつかある国の一つ。
  その国境は様々な国々にと通じている。
  国境沿いにおいては、それぞれの国の敷居がわからずにあいまいになっている場所も多々とある。
  セイルーンを出発し、そして港町から船によりやってきているここラルティーグ。
  今、リナ達がいるのはそのラルティーグの中にとあるちょっとした深い森の中。
  いつものごとくに資金調達をかねて子供をつれて盗賊いじめ…もとい退治にいそしんでいる今現在。
  当然、そんなリナ達を止められるものなどいるはずもなく。
  結果として、ただただ盗賊たちは逃げ惑うのみ。
  もっとも、まさか彼らもこんな場所でこのような目にあうとはおもっていない。
  そもそも、先日の彼ら独自の連絡網では、あの破壊の申し子がセイルーンに出没した。
  という話をきいていたがゆえに安心していた。
  それがどうしてこんなことになっているのか。
  もっとも、セイルーンからこちら方面に進んだとすれば話のつじつまはあうが。
  だが、目の前で呪文を放っている栗色の髪の女性はあきらかにどうみても二十歳くらい。
  そしてまた、小さな子供までが呪文を放っているのに驚愕せざるを得ない。
  噂の破壊の申し子は、たしか小さく、それでいて平原胸のはず。
  その全てが目の前で破壊行為を繰り広げている人物には当てはまらない。
  まさか似たような人物がいる、などと当然噂にのぼっているはずもなく。
  結果、はじめのころはなめてかかり、痛い目にあっている彼ら達。
  もっとも、それは彼らの自業自得、という結果であろう――


  「しかし。あんたら。子供連れなのにそんな生活前からおくってたのか?」
  前々から思っていたが。
  そもそも、この家族と係わり合いになった一件も全てはその行動がゆえん。
  「あら?ゼル。悪人には人権なんかないからいいのよ」
  さすがにすでに深い森の中。
  集落、というような場所はなくひたすらに奥に、奥にとむかっていっているリナ達五人。
  「そうそう。ルナおね〜さんもそういってるし」
  「…どういう家族なんだか……」
  にこやかにいうエルの台詞にため息をつかずにはいられない。
  その、ルナ、というのは何でもこのリナの姉に当たるらしいが。
  「それより、か〜さま?まだつかないの?」
  とりあえず、川沿いに進んでいるのでお風呂などには困らない。
  簡易的にクボミを作り出し、そこに水をためて火の術で水を暖めれば簡単な露天風呂の出来上がり。
  石人形(ゴーレム)の術の応用で柵をつくればそれこと完璧。
  まあ、困るのは食事だが。
  川沿いを進んでいればすくなくとも魚などといった食べ物には困らない。
  アレを知っているリナだからこそ、似通った波動をたどることは少なくとも不可能ではない。
  だからこそ、その反応が現れた場所に向かっているリナ達。
  周囲には人が住んでいる気配はまったくない。
  鬱蒼とした森の茂みに、そしてまたその先に入る視界はきりたった断崖絶壁。
  こういう場所はリナにとってはお宝の宝庫、ともいえる。
  何しろこういう場所はけっこう悪事を働く輩が好きこのんで本拠地にしている可能性が高い。
  事実、それゆえに食事なども今のところこまってはいない。
  盗賊団、といった輩はけっこうそういった食べ物なども溜め込んでいるからして。
  「うん。そろそろとおもうけど……」
  と。
  ばさばさばさっ!!
  き〜き〜き〜!!!
  刹那、周辺の木々より鳥たちが一斉にとび立ち、羽音が周囲を埋め尽くす。
  そして、何かの動物らしき声。
  それとほぼ同時。
  ごがっん!!
  聞き間違えようのない、どう考えても自然のものではない爆発音がリナ達の耳にと聞こえてくる。
  「あっちだ!リナ!」
  「マナっ!」
  瞬時にガウリイがエルを抱きかかえ、そしてまた、リナがマナを抱きかかえて音がした方向に走り出す。
  何かがあるのは明白。
  しかも音からして誰かがいる可能性は大。
  そのまま音がしたほうに走り出す。

  「まったく。手間をかけさせてくれる」
  「お…おね〜ちゃん……」
  ぎゅっ。
  震える小さな男の子をぎゅっと抱きしめる。
  目の前にはしつこくも無理をいってきている男たちの姿。
  「ですから。私たちはしりません!何もっ!そもそもあなたたちは何ものですか!?」
  先日、いきなり村に現れ、執拗に自分たち姉弟を狙ってきているこの一味。
  おそらくは目的は『アレ』なのだろうとはおもうが、あれは外にだせる品物ではない。
  いや、むしろ世の中から抹消しなければならない品なのだから。
  木の根元においつめられている見た目、十三、四歳くらいの女の子。
  そしてまた、抱きしめられている男の子のほうは十歳程度。
  二人は何も手にしていない。
  本日のご飯のおかずを摘み取るためにと森にと出かけた。
  そこでいきなり襲撃をうけた。
  村はずれに住んでいたことが幸いしているのか、村人たちにはまだ被害はでていない。
  これは自分たちの問題。
  あそこから別の場所に移動させたのは他ならない自分たちの両親。
  だからこそ、二人は村人達の提案があるにしろ離れた場所に姉弟二人で住んでいるのだから。
  「いや。君たちは知っているはずだよ。…あの悲劇をおこしたあの人間の末裔なんだから」
  「……っ!!」
  そのどうやら一番、頭、とおもわしき男の言葉に思わず絶句する。
  いったい目の前の男たちはどこまで知っているのか。
  だがしかし、弟だけは守らなければ。
  この世界で唯一、ただ一人残された大切な肉親。
  だからといって、こんな得たいの知れない輩にアレを渡せば世の中は間違いなく破滅する。
  自分が彼らをひきつけて、弟だけでも逃がさないと。
  そう彼女がおもっていたその矢先。
  「炸弾陣(ディルブランド)!!」
  どごっん!
  ありえないはずの術が炸裂する。
  「「…なっ!?」」
  男たちの驚愕の叫びがこだまする。
  周囲に巻き上げられる土煙。
  それにともない、男たちの視界が一瞬さえぎられる。

  「こっちっ!」
  ぐいっ。
  いったい何がおこっているのかわからないおそらく姉弟とおもわれる二人の手をとりひっぱる。
  「え?え…あ、あの?」
  土煙でよく見えないが、聞いたことがない声なのは明白。
  ゆえに戸惑いを隠しきれない。
  「そっちはまかせたわよっ!」
  「おうっ!」
  その声に応じて煙の向こうより別の男性の声が返ってくる。
  いったい何が起こっているのかこの姉弟には理解不能。
  「だいじょ〜ぶ?おね〜ちゃんたち?」
  この場にいるはずのない小さな子供の声。
  ふと視線を下のほうにむければ小さな子供がふたり、ちょこまかと自分たちの後ろをついてきている。
  そして、煙の向こうに人影が別に二つ見て取れる。
  「あ。あの、あなたは?」
  とりあえず、彼女たちは自分たちを助けてくれようとしている。
  そうとしか思えない。
  だからこそ、戸惑いながらも問いかける。
  「あたしはリナ。んでその子たちがエイルとマイナ」
  「よろしく〜」
  「く〜!」
  走りながらもまったく動じていない三歳と二歳の女の子の姿に驚愕もする。
  というか、よくこの速さに子供がついてこれてる?
  と通常ならばつっこみどころは満載。
  それはエルが多少『力』を使い、走っているようにみせかけて、実は大地のほうを移動させている。
  という簡易的な術を用いているからに他ならない。
  「とにかく!あいつらはガウリイとゼルガディスにまかせてひとまず逃げるわよっ!」
  どうみても、この二人の姉弟とおもわしき人物が戦える、とはおもえない。
  だからといって巻き込んだりでもしたらもらえるもの…もとい謝礼をもらうにももらえなくなる。
  それがリナの判断。
  というか、ゼルガディス、ガウリイって…誰?
  名前を言われても、当然二人にはそれが誰なのかわかるはずもない。
  いや、たしかゼルガディスのほうは聞いたことがあるような気がしなくもない。
  それは両親が生きていたころに。
  そんな会話をしつつも、しばしリナは女の子の手をとり、森の中を駆け抜けてゆく――

  「さて。ここまでくればどうにか平気でしょう。大丈夫?」
  どれくらい走っただろうか。
  自分たちを助けてくれたのは栗色の髪の女性。
  森の中、少し開けた場所にたどり着き、ようやく足をとめる。
  「え。あ。ありがとうございます。おかげで助かりました。私はプラム。この子は弟のクリフといいます」
  とりあえず相手に敵意がない、ということと助けてくれた、ということは理解する。
  それゆえにぺこり、と頭をさげる、プラム、と名乗った先ほど襲われていた少女。
  肩くらいにかかる黒い髪に、そして黒い瞳。
  男の子のほうは短く髪を切りそろえられているものの、面影はよく似ている。
  「まあ。あんなのみたらほうっておけないし。それより平気?怪我はない?」
  ふと視線をおとせば、一緒に走ってきていた小さな二人の女の子はその場に生えている草花。
  それに気をとられてかいつのまにか花でカンムリをつくってあそびはじめていたりする。
  その光景に思わずふっと気を抜くプラム。
  「お〜い。大丈夫だったか?リナ?」
  「あいつら、何かにげていったぞ?」
  そんな会話をしている最中、のんびりとした声とともに出現してくるこれまた彼女たち姉弟が見たことがない男性が二人。
  「あ。うん。こっちは大丈夫よ。そっちは?ガウリイ。ゼル」
  「と〜さま、おかえり〜」
  「ゼルおじちゃんもおかえり〜」
  「だから!誰がおじちゃんだ!おい!リナ!ガウリイ!きちんと子供にいいきかせろっ!俺はまだ十代だっ!!」
  そんな現れた二人に、にこやかに手をぶんぶんふりつつも話しかけている子供二人。
  一人は金髪に青い瞳の言葉に表せないような人形のような美少女。
  そしてもう一人は、栗色の髪に赤みがかった茶色い瞳の少女。
  おそらく、ぱっとみくらべてみても、ガウリイ、と呼ばれた金髪の男性と、
  自分たちを助けてくれたこの栗色の髪の女性との子供なのであろう。
  というのは明白。
  「でも。子供からみればそうなのかもよ?」
  「あのなぁ!リナ!おまえ、おもしろがってるだろっ!」
  「うん」
  即答。
  「……ぶっ」
  そんなリナとゼル、と呼ばれた人物とのやり取りに思わず噴出すプラム。
  ここ最近、心から笑ったことなどなかったような気がする。
  だけども、この二人のやり取りは面白い。
  「リナ!」
  「っ!」
  そんなやり取りをしている最中。
  もう一人の男性の切羽詰まった声、それに伴いすぐさまに身構えるリナ、と呼ばれた女性。
  「え?」
  いきなりの二人の表情の変化に戸惑いを隠しきれないプラム。
  彼女は周囲の気配を読むことなどはできない。
  いや、普通の一般人にそれを求める、というのが皆目無理、というのもあるのだが。
  がさっ。
  「ちっ。まだしつこくおいかけてきてたか。いったい何ものなんだ?」
  そしてまた、気配がする方向をみつつも吐き捨てるように言い放つ。
  「さあね。だけどもゼル、今は……」
  リナとゼルガディスがそんな会話をしている最中。
  「やれやれ。それで逃げられたつもりかな?」
  がさり。
  茂みがかきわけられる音とともにでてくる影が数個。
  その影はだんだんとリナ達がいる周囲を取り囲み……
  と。
  「おまちなさいっ!」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  何かすっごく聞き覚えのある声なんですけど……
  突如として凛、として響き渡ったその声に思わず目を点にしているリナ。
  というか、何でどうして?
  という疑問のほうが先にくる。
  「かよわき旅人をおそう輩、それすなわちあく!断じて許すわけにはまいりませんっ!」
  何やら上空のほうから響いてくる声と。
  そして。
  「ああもうっ!なんでそう一人でつっぱしるのよ!っておりてこ〜い!」
  さらに聞き覚えのある声が。
  「……なあ。世の中って狭い。そうおもっていいか?」
  「…みたいね」
  ガウリイの素朴なつぶやきに思わずこたえているリナ。
  「ちっ!どうしましょう!?」
  「くそ!この場はひとまず引くぞ!!」
  がささっ。
  あまり人に見られるのは好ましくない。
  そう判断し黒尽くめのいかにも怪しい男たちはその場を立ち去ってゆく。
  「ああ!逃げるなんて卑怯ですっ!って…んきゃぁぁぁ!?」
  ・・・・・・・・・・ぺしゃ。
  あ、おちた。
  どうやら身を乗り出したときに木の枝からおっこちたらしく、そのまま地面にのめりこんでいる白い服を着ている女の子。
  思わずいきなりのことだったので冷静にそんなことをおもっているプラム。
  リナにいたってはそれをみてため息をつかざるを得ないのだが。
  男たちが逃げてゆくその先においては、
  「って、逃がすかぁぁ!火炎球(ファイアーボール)!!」
  ちゅどごぉぉん!
  何やらリナ達にとっては聞き覚えのある声と、そして何かが爆発し炎上する音。
  「おい!レナ!こんな森の中でそれはっ!」
  それに対して、また別の男性の声がどこからともなく発せられる。
  が。
  パチパチパチ……
  ごぉぉぅっ……
  刹那。
  どうやら連れらしき人物が術を唱えたらしく逃げてゆく男たちに呪文を放ったらしいが。
  ここは森の中。
  しかもここ最近雨など降っておらず乾燥中。
  そのことを危惧してつれらしき男性が叫ぶがすでにおそし。
  当然。
  その炎は瞬く間に周囲にと広がってゆく――


                   ――Go To Next



#########################################

あとがきもどき:

薫:さてさて。ようやくレナ&ラウリィ。そしてアメリアの合流ですv
  一番気の毒なのはプラム&クリフとみたv(笑
  客観的視点なので、プラムからみた視点やリナ達からみた視点入り混じってます。
  さて、乾燥している最中、火の呪文を放ったのはだぁぁれだvv
  ってまるわかりですよねvv(笑
  さてさて、次回で合流〜〜♪
  何はともあれ、それではまた、次回にてv





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33538待ってました〜とーる 2008/4/19 23:43:27
記事番号33536へのコメント

 
どもどもかおさん!こんばんは。
お久しぶりです、とーるです。

一度にたくさんの話数更新お疲れ様です。
パラレル・トラベラーズの続き気になってました♪
サイラーグ編の後はプラム編になるのですね。
まさかセイルーンに行かなかったとは思いませんでしたが、
確かにシルフィールにとっては安全な選択だったのかも……(苦笑
これからどんな展開になるのか楽しみです!
私的には“エルちゃん”がどんな事をしてくれるのかが特にv

ではでは短いですがこれにて。
 

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33539だからこそのパラレルですv(笑かお E-mail URL2008/4/20 09:53:14
記事番号33538へのコメント

こんにちわ。とーるさん。おひさしぶりです。
とーるさんこそ、上の小説、おつかれさまでしたv
リナ、あの格好でうたってるのでしょうか?
よくあのリナが折れて全国放送許したなぁ(まてv
>続き
いい加減にHPのほうにはあげてたけどこちらにも続きをアップなのです。
セイルーンにいかなかった理由。
それは、リナ達というか完全にリナからすれば、サイラーグの悲劇を防ぎたかった。
ただその一つにあります。
あとドワーフもどきにはあいたくなかった、というのも(笑
真っ先にレナ達がセイルーンにいったのであちらのお家騒動のほうも、
あまり死者がでることなくどうにか丸くおさまっていたりという裏設定v
>プラム編
ほんっきで作者にあの番外編かいてほしいですよねぇ。
四期アニメ記念、とか何とかでもいいから、切実に。
あとゼルが元の体に戻る話とか…
はい。しばらくこのプラム編に突入なのです。
今から編集してからあげる予定がアメリア登場!
>感想
わざわざコメントありがとうございます。
まさか、もらえるとはっ!(笑
何しろ数年間放置してる作品ですしね。覚えているひとはまずいないv(自覚あり
ちなみに、エル(様)の活躍ですが、それはおいおいと〜v
ではでは。
いまだに過去の小説の編集もおわっていないのに続きを先にやっているかおでしたv
それでは、また〜
byかお

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33540○バラレル・トラペラーズ○〜アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン〜かお E-mail URL2008/4/20 10:00:16
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  さてさて。本格的に登場です!
  仲良し四人組の元気娘!(まて)
  アメリア姫ですvそれでは、いくのですv

  #####################################
      

       ○パラレル・トラベラーズ○〜アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン〜


  「ちっ!!また新手か!?」
  「ど…どうしましょう?」
  彼らの口調からしてあまり他人に見られたくないらしい。
  というか……
  「あ、あのぉ?何か火事…じゃないですか?」
  あきらかに熱気と、そして煙があたりに充満している。
  いくら何でも山火事が起こっている、というのは一目瞭然。
  「だぁっ!こんな乾燥している中で普通火の属性の呪文使うか!?」
  それをみて、何やらさけんでいるゼルガディス。
  いったい何がおこっているのか、プラムとクリフにすれば理解不能。
  「ひくぞ!」
  ざっ。
  火事、ともなれば人も集まってくる。
  それゆえにこの場はひとまずは撤退を決め、そのまま逃げ去ってゆく男たち。
  がばっ。
  ふとみれば、さきほど木からおっこちた巫女の服装のような白い服を着込んだ少女ががぱっと起き上がり、
  「ここは私にまかせて!」
  いうなり、何やら言葉をつむぎ始める。
  そして。
  かっ!!
  次の瞬間。
  彼女を中心とした魔方陣が浮かび上がり、その光の中周囲に広がりだしていた火がまたたくまにと収束する。
  これは崩魔陣の応用版。
  乱れた気を強制的に戻すその術に消化の術をおりまぜた術。
  もっとも、この術は一般的にはしられておらず、しいていえば一部のものにしか知られていない。
  淡い、銀色の光に包まれるようにして掻き消えてゆく燃え広がろうとしていた炎。
  それらはゆっくりと掻き消え、やがて周囲には残存した熱気が残るのみ。
  「ふう。これでもう大丈夫。大丈夫でしたか?…って、あれ?レナ?…じゃないし。レナにそっくり?」
  ふと、ようやくリナ達のほうにと視線をむけてにこやかに話しかけてくる。
  「え?え?え?」
  戸惑いながらも、リナと、そして背後にいるであろう人物のほうにと視線を沿わす。
  こ、この世界でもこのこはこんななんだ……
  その事実に多少内心あきれつつも、それでも。
  「え。えっと。とりあえずお礼をいっとくわ。レナ達も久しぶり。ってか何でこんなところにいるわけ?」
  至極もっともなリナの疑問。
  そこにいたのは、ついこの間というか一時旅を同じくしていたレナと、そしてラウリィの姿。
  「?お姉ちゃん、この人たちとあの人たち、親戚か何かな?」
  「でしょうね。そっくりだし」
  確かに、リナとレナ。
  そしてラウリィとガウリイは瓜二つといっても過言ではない。
  その年齢などが異なるのはともかくとして。
  「え?あれ?リナさん!?それにガウリイさん!?それにゼルディガスさんもっ!」
  「ゼルガディスだ!あんた、わざと今まちがえなかったか?」
  そこにいるのがリナ達だと気づいて驚愕の声をあげてくるのは、栗色の髪の女の子。
  格好からして魔道士なのであろう。
  そうプラムたちは判断する。
  事実、まあ魔道士なのだが。
  「あれ?やっぱりレナの知り合い?というかこの人、レナの親戚?」
  きょとん、とした声をだしているさきほどの白い服を着こなしている女性。
  そもそも、どうしてこういくら何でも王位継承者をぽんっと旅にだすかなぁ?
  その疑問がどうしてもリナにはぬぐいきれない。
  とはいえ、自分が彼女が『誰か』というのを知っていれば警戒されるのは明白。
  「え、えっと。まあそんなところ。それより。どうしたんですか?こんなところで?」
  レナ達にとってもまさかこんなところでリナ達と出会うなどとは思ってもいなかった。
  レナ、と呼ばれたリナにそっくりの少女がそんな彼女にといっている。
  この人たち…一体?
  戸惑いを隠しきれないプラム。
  ぎゅっとそんな姉の服をつかんでいるクリフの姿が見て取れる。
  「ちょっとね。それより、えっと……」
  「あ。申し送れました!私、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンといいます!
    レナのお知り合いなんですね!えっと、あなたたちのお名前は?
    って、きゃぁぁ!かわいい!そのこ、あなた達のおこさんですか!?」
  いきなり自己紹介もされてないのに相手の名前をいうことはできない。
  それゆえにどうしようか迷っているリナにと元気よく答えて来る。
  そして、そこにいるエルとマナに気づいてきゃいきゃいとした声を出していたりする。
  か…かわらない。
  こっちの世界でもこの子は……
  そんな彼女の様子に思わず頭を抱えたくなってしまうリナ。
  「いやあの……セイルーン?」
  今、この女の子、セイルーン、っていわなかった?
  アメリア、と名乗った少女の名前に戸惑いを隠しきれていないプラム。
  というか、そうほいほいと皇族でもある本名を名乗っていいものだろうか。
  「えっと…ま、まあいいけど。私はリナよ。リナ=ガブリエフ。で、こっちがガウリイ。
    その子たちが上がエイルで下がマイナ。エルとマナって愛称で呼んでるけど。
    んで、こっちの白いのがゼルガディス」
  「誰が白いのだ!誰がっ!」
  すかさずリナの説明に突っ込みをいれているゼルガディス。
  まあ、確かに。
  白いの、と呼ばれてもおかしくないこの人格好ではありますけど。
  そんなリナの台詞に今さらながらにしみじみとゼルガディスをみるプラム。
  全身、白い服に白いマントにフード。
  たしかに、白い人、ですね。
  妙に納得できる説明である。
  おもわず一人内心しみじみとうなづくプラムに、どうやら同じことをおもったらしいクリフのほうも、
  「なるほど」
  と一人小さくつぶやいていたりする。
  「ガブリエフ?あ、ならレナとそこのラウリィさんは親戚なんですね。
    もう、レナったら、お姉さんがそこのラウリィさんのお兄さんと結婚してる、っていってくれれば!」
  「ちっがぁぁうっ!アメリア!何でそう突拍子もない考えにいくわけっ!?」
  にこやかにいうそんなアメリアの言葉に思わず抗議の声をあげているレナ。
  「というか。ほんとうにそっくりですね。姉妹でそこまで似るものなんですか?」
  戸惑いながらも横にいるリナにと問いかけているプラム。
  「あ〜。あたしとレナは姉妹じゃないから」
  ぱたぱたと手をふりながらもひとまず否定。
  「そんなことより。こんなところでたち話ししてたらまたあいつらくるんじゃないのか?どこかに移動しないか?」
  周囲を警戒しながらも提案してくるガウリイに対し、
  「…ガウリイ。あんた悪いものでもたべた?」
  「あ、あのなぁぁっ!」
  心底心配そうに思わずつぶやいているリナ。
  「確かに。さっきのやつ等がまたこない。ともかぎらないしな」
  「あ。それでは私たちの家にどうぞ。助けてくださったお礼もしたいですし」
  いきなり現れた人々。
  だからおそらくは、信じられる人たちなのであろう。
  無条件で人助けをしてくれる人など滅多にいるものではないが。
  「え!?ほんと!?いやぁ、たすかるわ〜。実は道に迷ってたのよね〜」
  「というか。レナとアメリアが盗賊を追いかけてこんな森の中にきたんだとおもうが?」
  「ラウリィ!そこ!余計なことはいわないっ!」
  「そうですよ!ラウリィさん!悪は徹底的に駆除しなければいけなかったんですからっ!」
  『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
  何となくだが、その言葉で瞬時に理解するリナとガウリイ。
  つまりは、アメリアとレナの二人が襲ってきたであろう盗賊をやっつけて。
  逃げ出した盗賊を追いかけてこんな森の中まで入り込み、道に迷っていた…というところだろう。
  「え。ええと。とりあえずこちらです」
  そんなやり取りに戸惑いながらも、とりあえず助けてくれたお礼を兼ねて、彼らを自宅に案内することにしているプラム。
  なぜ、こんな人たちがこんな場所にいるのか。
  それもきちんと把握しなければならない。
  少なくとも、先ほどの巫女の服装をしている少女が名乗った名前。
  セイルーン。
  かの国ならばあれを渡しても悪用などするはずもない。
  そう断言できる。
  だけども人柄を見極める必要性はある。
  深い森の中、いまだに木々が燃えた後が真新しい道なき道を案内し、
  その先にとあるプラムたち姉弟が住んでいる家にと彼らは案内されてゆくことに。

  切り立った断崖絶壁。
  まさにそういうのかもしれない。
  その背後には流れ落ちている滝が見て取れる。
  絶壁の壁をくりぬくようにして、そこに生えている木を利用して作られている一つの家。
  それが、プラムとクリフが住んでいる家。
  「あなたたち、こんなところに二人っきりですんでるんですか?ご両親は?」
  その景色のすばらしさに、見とれながらも問いかけているアメリア。
  「アメリア。そうづけづけときくものじゃないわよ。
    それはそうと。久しぶりです。リナさんたち。まだこちらにいらしたんですね」
  まさか、また彼女たちに出会うなどとは思ってもみなかったが。
  彼女をみるとほっとするのは気のせいではないだろう。
  何しろ彼女たちと別れ、セイルーンでかかわった事件が事件。
  被害が広がるまえに決着がつけてよかった。
  ともいえるのかもしれないが。
  もしくは、たまたま満月の夜が重なっていた、というのも。
  「まあね。そういうレナ達も。ってやっぱりあれからラウリィと一緒に旅をしてるわけ?」
  その台詞に、すこしばかり微笑み、
  「ラウリィとあたしの目的ってかなり似ているもので」
  レナの目的は、自身の中にいる双子の姉を一人の人間として独立させること。
  ラウリィの目的は、剣の中に封じられている兄を助けること。
  互に二人して肉体を持たない魂のみの存在を助けたい、というのには変わりない。
  「ここは、あんたら二人だけなのか?それはそうとさっきのやつ等は…一体?」
  どうみても、他に人が住んでいそうにはみえない。
  そもそもどうしてこんな辺ぴな場所に姉弟の二人っきりで住んでいるのか。
  さらには、さっきのどうみても怪しい男たち。
  そこいらにいる普通の盗賊などとは違うような気がする。
  「そ…それは……私たちにも……」
  そうといかいいようがない。
  心当たりはあるにはあるが、だがしかし。
  まだ彼らのことをよく知っているわけではない。
  「まあ、いいけど。でもあいつらどうもあきらめそうにないわよね。
    えっと、プラムとクリフっていったっけ?」
  うとうとしているマナを抱っこしながらも問いかける。
  「え。ええ。私がプラムで、そして弟がクリフです」
  そういえばばたばたしていてきちんと名乗っていなかったような、名乗っていたような……
  今さらながらにそのことにきづき、少しばかり顔を赤くするプラム。
  すでに暮れかけた太陽が窓からさしこみ、そんな彼女の頬をさらに赤くする。
  「そっか。とりあえず、あいつら、何かまた仕掛けてきそうだし……どこか安全な場所に避難するとかは?」
  いくら何でも街中などで騒ぎをおおきくしてこないはず。
  とりあえずアメリアがいることもあり、セイルーンの名前をだせば多少の無理は利くはずである。
  プラムという名前はリナは聞き覚えがある。
  全ての発端であり、はじまり。
  ということは、この近くにアレがあるはず。
  おそらく、あの黒尽くめの男たちは……
  そんなことをおもいながらも、姉弟の安全を考えて二人にと提案する。
  そもそも、こんな場所に二人だけ、というのはいくら何でも危険すぎる。
  「いえ、それは……」
  たしかに、リナ、と呼ばれている女性の台詞には一理ある。
  だがしかし、ここを離れるわけにはいかない。
  そう。
  どんなことがあっても、アレがある限りは……
  「まあ、離れたくない。というんだったら。あの襲ってきたやつらを壊滅するしかないわね。
    とりあえず、一人でも捕まえてちょっと聞き出せればよかったんだけど……」
  そんなリナに続いて、考え込むようにいっているレナ。
  「いや。あいつらはそう簡単に口はわらないとおもうが?」
  至極もっともなゼルガディスの意見。
  「まあ、口を割らす方法はいくらでもあるし」
  にっこりと微笑む笑みは何かをたくらんでいる笑み。
  「ともかく!こんなか弱い姉弟を危険にさらすなんてできませんっ!
    やはり、ここは私たちの手であの黒尽くめたちをやっつめましょう!全ては天のお導きです!」
  「……あんた、本当にあのセイルーンの姫か?」
  そんなアメリアにおもわずじと目で突っ込みをいれているゼルガディス。
  まあ、アメリアだし……
  心の中でそんなことをおもいつつ、
  「まあ、確かに。かかわった以上、ほうっておく。ともいかないしね。
    しばらくはあたし達があなたたちの護衛にあたるわ」
  「え?でも…いいのですか?」
  知り合ったばかりの人たちにそういわれ、戸惑うしかない。
  あまり人を信用してはいけない、守っているものがモノなのだから。
  「まあ、のりかかった船だし。それに、あたしが探していた壊滅しないといけない組織にかかわってかもしれないし」
  「ええ!?リナさん、そんなモノがあるんですか!?」
  「いけない。ということは、それはかなり凶悪な敵ですね!?」
  「…いや、ちょっとまて。お前ら…あんたも何かいってくれ……」
  リナの台詞に驚きながらも叫ぶレナに、瞳をきらきらさせていっているアメリア。
  そんな二人の様子を眺めてため息をつき、そこにいるラウリィにといっているゼルガディス。
  「まあ、レナと知り合ってそんなにたってないけど。いっても無駄だとおもうし」
  「まあ、オレとしてはリナの意見を尊重するしなぁ」
  「と〜さんは何も考えてないだけだとおもう」
  首をすくめながらも、あっさりといいきるラウリィに、のほほんといっているガウリイ。
  そんなガウリイにすかさず突っ込みをいれているエル。
  「エル〜。ほめても何もでないぞ?」
  「「「いや、ほめてない、ほめてない」」」
  そんなエルににこやかに返事をしているガウリイに思わず同時に突っ込みをいれる、
  リナ、レナ、そしてゼルガディスの三人。
  「…ほんっと、このガウリイさんって兄さんに似てるよなぁ〜……」
  はう。
  そんなガウリイをみながらも、ため息を一つついているラウリィ。
  「と、ともかく!かよわき姉妹に害をあだなす輩!このアメリア!
    正義の名のもとに、絶対に許しておくことはできませんっ!
    というわけで、これからよろしくおねがいしますね。プラムさん。クリフさん」
  いやあの。
  こちらはまだお願いします、とも何もいってないんですけど……
  そうは思うものの、何かこのテンションに飲み込まれてしまう。
  「え?あ、あの?よろしく。って……」
  「きまってます!これからここであなたたちの護衛をするからですっ!」
  「「・・・・・・・・・って、ええっ!?」」
  「って、ちょっとまて!?何でそうなる!?」
  おもわずそんなアメリアに突っ込みをいれるゼルに、驚愕の声をだしているプラムとクリフ。
  まあ、二人の反応が至極当然、といえば当然なのだが。
  少し小高い位置にある、小さな家。
  つくり的には木が主体として作られているので居心地は悪くない。
  しかし、だからといってこの場所にいくら何でもプラム達二人だけならいざしらず、
  レナ、アメリア、ラウリィ、そしてゼルガディスにリナ達家族。
  そこまで大人数が住めるか、といえば答えは否。
  「ん〜。まあ、そばで守る人は確かに必要よね。よっし。
    それじゃ、アメリアとそしてレナとで二人を守ってくれる?ラウリィはあたし達と襲撃者の追跡」
  「わかりました!リナさん!さ、レナ!二人であくの手からこの姉弟を守りきりましょうね!」
  「って、あたしの意見はぁぁ!?」
  リナの言葉をうけ、一人張り切るアメリアに対し、何やら叫んでいるレナの姿があったりするが。
  こうなったアメリアを止められるものなどいるはずがない。
  そういう意味ではリナは世界は違えども、性格は同じであると判断しているがゆえによくわかっている。
  「んで。ガウリイはいつもの勘を働かせて。敵がいる場所、みつけてねv」
  いや、勘をはたらかせて、って……
  にこやかにいうリナの台詞に思わず内心突っ込みをいれるしかないプラム。
  だがしかし、どうやら断れる状況ではないらしい。
  それゆえに、
  ふぅ。
  ため息をひとつつき、
  「…わかりました。お世話になります」
  ここでいこじになって断る、ということはよくないような気がする。
  そもそも、自分たちはあの男たちに対抗する手段を何ももっていないのだから。
  「よっし!それじゃ、とりあえず、詳しく話しを聞かせてもらいましょうか?」
  「…詳しく。といわれましても……」
  話せることなど数が知れている。
  そもそも、プラムはあの男たちがどこの誰かもわからないのだから。


                     ――Go To Next

 

    #########################################

  あとがきもどき:

薫:さてさて、アメリアの口調は基本、原作ですけど、まあ元気さがかなりハイテンション?
  ちなみに、リナ達のことは、年上なので、さん、づけで呼んでますけど。
  レナのことは歳が近いこともあり、原作同様、呼び捨てですv
  さてさて、それでは次回につづきます〜♪
  それでは、また次回にて♪

L:あ・た・し!の活躍はっ!?
薫:ぎ、ぎくっ!そ、それではっ!
L:まちなさいっ!!!

グシャ。

シィィン……

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33541○バラレル・トラペラーズ○〜邂逅?〜かお E-mail 2008/4/20 12:12:48
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  いい副題が見つからず〜
  さてさて、そろそろでばってきましたゼロス(笑
  まだ彼は村人に雇われてはいませんが。
  だけども内密にクロツたちの行動を追っています。
  当然目的は写本ですv
  ちなみに、ゼロスがもう一つ命じられている命令もあるのですが。
  それはまあ、あまり優先されてはいない、というかきがむけば、という程度の命令なのでv
  ……まあ、北の魔王もレゾ=シャブラニグドゥの一件のときにとある感覚をうけちゃってますしね(笑
  何はともあれ、ゆくのですv

  #####################################


          ○パラレル・トラベラーズ○〜邂逅?〜


  「いやぁ。ゼルの名前、便利よねぇ」
  「どういう意味だ」
  思わず突っ込みをいれたくなるのは仕方ないであろう。
  森の中だというのにひっそりと存在している小さな集落のような村。
  基本は自給自足であまり外とつながりを持たずに生活している彼ら達。
  プラム達が住んでいる場所から少し、といっても距離的にはだいぶある。
  もっとも、空を飛んで移動すればさほど時間はかからない距離くらいの間隔であるが。
  それでも、ゼルガディスがフルネームを名乗ったところ彼らの警戒は確かに解かれた。
  それは、この村そのものが、昔、レゾの意志をうけて作られたものであるがゆえ。
  そんなことは彼らは言葉にすることはないが、またリナ達とてそんなことは知らない。
  ただ、赤法師レゾこと、レゾ=グレイワーズが村にとっては恩人だから。
  そういう理由らしい。
  まあ、人に戻ったゼルって確かにそういえば、あのレゾに似てるわよね。
  そっくり、とはいわないまでも、やはりそれは血筋、といえのだろう。
  そんなことをおもいながら、にこやかにゼルガディスをからかっているリナ。
  ここ、最近、森の中に見かけない男たちがいて、彼らもまた迷惑しているらしい。
  そして、彼らがくる方向も大体のところ聞き込みができた。
  「そもそも。何であんたは率先してあいつらにかかわろうとするんだ?」
  ぴた。
  とりあえず情報でえた、男たちがいつもやってくる方向。
  そちらに進みながらもといかけてくるゼルガディス。
  そんなゼルガディスの言葉に思わず足をとめる。
  「……たすけたいから。…かな?」
  そう。
  理不尽に実験材料にされるであろう、あのクリフも。
  そしてまた、実験をかねて作り出された白銀の魔獣に喰べられる存在も。
  そして…あの、ズーマをも。
  心の中に巣食う悪意を取り除く術。
  それをつかえば、彼を修羅の道から救えるはず。
  魔族と好き好んで融合する道など与えたくはない。
  そういや、レナ達ってあのカンヅェル…しとめたのかな?それとも逃がしたのかな?
  それはリナには判らない。
  だがしかし、わかっていることがある。
  それは、今現在、あのクロツたちの一味が暗躍している、ということ。
  「…そうか」
  何の見返りもなく率先して何か物事をやるようなタイプには短い付き合いではあるが理解しているつもり。
  だからこそ、その言葉に含まれる意図を汲み取り、深くはきかないゼルガディス。
  おそらくは、彼女たちがいた世界でもこれと同じことが起こったのだろう。
  そして、かなりの被害がでた。
  どこか寂しそうにいうリナの言葉にそれ以上は聞かないゼルガディス。
  人間、聞かれても答えたくないことは山とある。
  ゼルガディスとてレゾに命じられてかなりの非道なことをしてきている自覚はある。
  それを好き好んで聞かれたからといって人に教えるつもりはない。
  それは、自分が背負うべき業なのだから。
  「それより、リナ。このさきに洞窟みたいなのがみえるぞ?そこじゃないのか?」
  そんな会話をしている二人とは対照的に、のほほんととある方向を指差していってくるガウリイ。
  ガウリイが指し示す先には、延々と続く森が見えるのみ。
  「…?そんなものはみえないが?」
  「あ。こいつの視界は常人じゃないから。ガウリイ、人の姿とかはみえる?」
  そこに人の気配があるかどうか、それで大概は決まってくる。
  「え〜と。何か人が入り口らしきところにたってるぞ?」
  「よしっ!ビンゴ!」
  普通、洞窟の出入り口に人…しかも見張りなどは立てない。
  つまり、そこには何かがある、ということを物語っている。
  「いや、だから…そんなものはまったくみえないんだが……」
  ひとり、つぶやくゼルガディスではあるが。
  「でも。おじちゃん?たしかにあっちから人のけはいしてるよ?」
  ガウリイに抱っこされた状態でにこやかにいっているエル。
  基本、リナとガウリイは娘たちを交互に抱っこして移動している。
  それは小さな子供に長時間歩かせるのはしのびない、というのと。
  あとは、さすがに幼児と大人の足並みが異なる、という事情もある。
  急いでいないときならば、足並みをそろえて移動するが、何かがあるときは話しは別。
  「……こ、この家族って……」
  人並みはずれた勘と視力をもっている父親に、さらっといいきる三歳児。
  さらには、これまた並外れた力をもつ魔道士の母親。
  一瞬、この二人の子供達の未来が本気で心配になってしまうゼルガディス。
  そもそも、すでに母親の影響で子供達は問答無用で魔術を使うことを覚えているのだからなおさらに。
  「とにかく、いってみましょ」
  ガウリイが指摘した方向。
  そこにあいつ自身がいるかどうかはわからないけど。
  そもそも、頭をたたければ一番はやいんだけどね。
  そんなことをリナはおもいつつ、もくもくとその方向に周囲を警戒しながらも進んでゆく。

  「ねえねえ!レナ!罠をしかけませんか!?」
  きらきらきらきら。
  異様に目をきらきらさせていきなり提案してくる。
  「え?あ、あの、アメリア…さん?」
  アメリア姫、と呼んだところアメリアでいいです。
  そう返され、それでも呼び捨てでもいい、といわれてもそういうわけにはいかない。
  だからこそ、さん、づけでよんでいるプラムではあるが。
  さすがに、その腰にセイルーンの印籠などをつけていれば、王族。
  しかも、名乗ったとおりの身分の姫君だ、とはいくらプラムでも理解できる。
  だからこそ戸惑いを隠しきれない。
  「罠。かぁ。たしかに。月並みかもしんないけど。いいかもね。あ、プラムさんたち、魔術はつかえる?」
  ふるふるふる。
  その言葉に首を振るしかないプラム。
  確かに両親はかなりの魔力をもっていた。
  自分はそれに比べてもっている魔力は微々たるもの。
  「使えるのは、明かり(ライティング)とか生活に応じたものくらいで……」
  何しろこんな辺境の地。
  夜になれば灯りというものは、外の月明かりくらいしかない。
  かといって、ランプを使用しようにも、それにともなう脂などが必要などは必須。
  その点、魔力の灯りならばそのような心配は不可能。
  少しばかりのアレンジでその灯りもまた抑えることも、明るくすることも可能なのだから。
  「う〜ん。浮遊(レビテーション)は?」
  「それは、少し」
  そもそも、ご飯を調達するのに必需品といえるその術。
  ここが、少し地面より高い位置にとあるがけのクボミを利用して作られている家だ、
  というのもそのあたりにある。
  この辺りには人に害をなす獣も生息している。
  滅多と人里には現れないが、それでも何かがあってからではおそい。
  ふむ。
  プラムの説明をうけてしばし考え込む。
  「レナ?」
  そんなレナが何を考えているのかわからずに、きょとん、とした声をだすアメリア。
  「水の上とかならけっこう楽なんだけど……周囲は森だし……」
  ぶつぶつぶつ。
  レナの事情が事情である。
  それゆえに、誰も知らないがレナはゼフィーリアの女王から様々なことを習ってもいる。
  それが何を意味していたのか、というのは、先日の騒動からして何となく理解したレナ。
  理解したくないが、だが、現実は現実。
  少なくとも、自分が望んでいることが実現可能となれば、それすらも克服できるのだから。
  『もりにかたっぱしから術かけるのは?レナ?』
  レナの脳裏に直接響いてくる声。
  「う〜ん。それだと、あれってまだコントロール難しいし……」
  誰ともかまわず、森が人々を襲いかねない。
  あるいみ、それははた迷惑、としかとれない術。
  「あ、あの?レナさん?」
  一人でなにやら独り言をいっているレナを心配そうに見ていうプラム。
  ブラムは知らない。
  レナの中にもう一人、彼女の双子の姉の精神がいる、などということは。
  もっとも、アメリアからすれば、それをセイルーンで目の当たりにしているので知っているので驚かない。
  「かたっぱしから落とし穴、というのはどうでしょう!」
  「いや、アメリア。それ、おもいっきり無駄だから」
  「でも、せっかくお母様が残してくださったトラップの仕掛けかたを実践できる機会なのに……」
  いや、母親が残したって、いったいどんな母親!?
  ものすごく残念そうにいうアメリアの台詞に内心突っ込みをいれるプラム。
  「とにかく。周囲に誰かが近づいた、とわかるような術をかけるのは必要よね」
  奇襲をしかけられても困る。
  「ですね!それじゃ、魔方陣の応用を利用して簡易結界をはりましょう!」
  「あ、それいいわね」
  いや、あの。
  その方法、かつて両親といわず先祖がやってたんですが……
  そういいかけて、口をつぐむ。
  すでにあの効力は失われている、といってもいいのだろう。
  あのような男たちが人知れず、近くにきていたのだから。
  先祖がかけていた結界は、人の目に触れない、というめくらましの結界。
  それも全てはかの品物を守るため。

  「……ほんとうに、あるし」
  おもわず目を点にする。
  とりあえず、村の周辺にも彼らが出没する。
  というので、村にラウリィを残し、ゼルガディスとリナ達家族のみで移動している今現在。
  おもわずそこにある洞窟を目にしてあきれる以外の何ものでもないゼルガディス。
  しかも、先ほどの場所からはかなり離れていたというのにもかかわらず、
  目の前のこのガウリイ、という人物は洞窟、ましてや見張りまでをも言い当てた。
  それは驚愕する以外の何ものでもない。
  「ねえねえ。おか〜さん、あたしがいってもい〜い?」
  小さな子供がうろうろしていても、別段に怪しまれることはない。
  逆に彼らならばそれを利用することを考えるはず。
  それを見越しての提案。
  いくら何でもマナにそんな危険なことはさせられない。
  というか、最近暴れ…もとい、遊び足りないし。
  そんなことをおもいつつ、瞳をきらきらさせてリナにと懇願しているエル。
  「お、おい。いくら何でもそれはきけん……いや、危険なのはあいつらのほうか?」
  ぶつぶつぶつ。
  伊達に、エルたちの実力を身にしみて判っているわけではない。
  だからこそおもわず危険、といいかけて止めるゼルガディス。
  いきなり奇襲として黒魔法などを叩き込まれでもしたらまず完全に相手のほうがかなり危険。
  「う〜ん。まあ、いいけど。だけどあぶなくなったらすぐにドラスレでも何でもいいからぶっぱなして逃げるのよ?」
  「は〜い」
  「いや、それはかなりまて」
  少し考えて、娘にそんな指示をだしているリナにと思わず突っ込みをいれるしかないゼルガディス。
  そもそも、三歳児がアレを使える、ということ事態が不思議。
  もっとも、エルに関しては魔王の力とはいえ、別の力をそのようにみせかけている。
  という点も多々とあるのだが。
  「それじゃ、いってくるね〜」
  いうなり、ふいっといなくなる。
  ふとみれば、いつのまにか逆方向からあるいてくるエルの姿が。
  空から移動したのか?
  それにしても、気配も何もつかめなかったが。
  三歳児の気配すらをもつかめなかったことも驚愕するが、だがしかし。
  普通、子供、というものはこんな場面ではこわがって親にしがみつくものではないのか?
  そんな疑問が頭をよぎる。
  「いいな〜。か〜さま。マナもね〜さまみたいにやりたい〜」
  心底残念そうにいっているマナの姿も気にかかる。
  …この両親、いったい子供にどんな教育をしているんだか……
  たらっ。
  そんな二歳と三歳の幼児の台詞をきいて、額から一筋汗を流すゼルガディス。
  「マナはもうすこし後でね。様子をみてから、にしましょうね」
  「は〜い」
  リナ達にとっては日常的な会話でも、第三者からすればそれはかなり奇異にと映る。

  くすん。
  ひっく。
  がさっ。
  「誰だ!?」
  何やら泣き声のようなものと、がさり、とゆれる茂みの音。
  警戒してみてみれば、そこからでてくる小さな女の子が一人。
  みたところ三歳程度であろう。
  金髪の髪に青い瞳。
  ととのった顔立ちにぱっちりとしたおおきな瞳。
  一件しただけでかなりの美少女、ともいえるその少女。
  なんでこんなところにこんな子供が?
  彼らはそんなことをおもいつつ、互いに顔を見合わせる。
  「ねえねえ。おじちゃんたち。おか〜さんたち、しらない?」
  潤んだ瞳でそこにいる見張りの男たちを見上げて話しかける。
  当然、うそなきなのだが、よもやこんな小さな子供がうそなきをしている。などと誰が想像するだろうか。
  「なんだ。親とはぐれたのか?」
  「ひくっ。うわぁぁん、おか〜〜さぁぁんっ!」
  「って、なくなっ!…と、とにかく。俺はクロツ様に連絡してくる」
  「わかった」
  ここで泣き叫ばれてはここに仮のアジトがあります。
  といっているようなもの。
  だからこそ彼らはあわてる。
  クロツ。
  それは彼らの親玉。
  そしてまた、このたびの騒動の始まり、ともいえる要人。
  「ほら。なくなってば。えっと、アメいるか?」
  「うん!」
  差し出されたアメをうれしそうに手にとるエル。
  今のでこの奥にクロツがいる、というのは証明された。
  あとは、ひたすらに彼の一味を壊滅するのみ。

  「……そこにいるのは、何、だ?」
  何、といったのは、気配からして人ではないがゆえ。
  とりあえず村の周辺をくまなく探索していたところ、ふと感じる背後の気配。
  気配からしてかなり高位。
  そこまでは判る。
  だが、下手にそれを口にすれば相手に隙を作らせることは不可能。
  「おやぁ?…あれ?あなたは…あ、別人ですか」
  かさり、とも足音をたてずに森の木陰よりでてくる一つの黒い影。
  にこやかな笑みを浮かべたおかっぱ頭の神官服の男性。
  どうやらこちらに対して敵意などはもっていないらしいが、だが、わからない。
  こういう輩は一番厄介。
  家族の中にもいた。
  こういうタイプが。
  常に笑みをたたえたまま、どんな残虐なことでもしでかす人物が。
  「あ。別に僕は怪しいものではないですよぉ。みてのとおり、謎の神官ですv」
  いや、それだけで十分に怪しいから。
  そもそも、何で人型をとれる魔族がこんな場所に?
  先日のセイルーンといい、今といい。
  いったい全体何が起こっている、というのだろう。
  そんなことをラウリィが思っているとは当然知る由もなくにこやかにただただ笑みを浮かべている謎の神官。
  「そもそも、その謎。というのがあやしいだろうが?」
  「いやぁ。いわれてみればそのとおりですねぇ。はっはっはっv」
  いや、そこは笑うところか?
  おもわず突っ込みをいれたくなる。
  「それで?あんたは?」
  警戒を解かずにといかけるそんな彼に、
  「え?いえ、どうやら人違いでしたようです。あ、それでは」
  「あ、おい!」
  くるり、と向きをかえてまたまた木陰にとはいってゆくその神官。
  あわててその後をおうものの、すでにそこには影も形も見えない。
  つまりは、空間移動をした、ということに他ならない。
  「…人違い?」
  自分と間違われる可能性があるのは、すなわち、あのガウリイ、という異世界の人物くらいしか思い当たらない。
  まさか、いくら何でも剣に封じられている『兄』を探している。
  などとは思えない。
  「…何が、ここでおこっているんだ?」
  先日のセイルーンでは魔族が宮廷に入り込んでいた。
  しかも、人型をとれる、かなりの高位の。
  今のアレに関してはそれよりもかなり強い力を感じた。
  おそらく、相手が本気になればかなわない。
  相手をいいくるめるか、隙を作らない限り…は。
  闇に溶け消えたソレをみて、ただただラウリィのつぶやきは風にとかき消されてゆく。


                       ――Go To Next



  #########################################

あとがきもどき:

L:んっふっふっvあとがきをのっとった…もとい、代理人のL、ですv
薫:(…ん〜〜〜!!!)
L:えっと、背後でうめき声を内部からだしている蝋人形はともかくとしして。
  ううん。まだ蝋の固め方がたりなかったかしらねぇ?
  ともかく、ひさかたぶりのあとがきよっ!
  ようやくこのあたしが、活躍しそうな気配っ!
  まったく、体がなまるったらありはしないわよねぇ。
  そもそも、Sがいらない命令だしてくれてるせいでゼロスまででばってきてるし……
  まあ、それはいいとして。
  きたとしてもつかいっぱしりにすればいいだけだし。
  それでは、みなさん、次回のあたしの活躍を期待しててねv
  活躍させなかったら薫に今度はどんなお仕置きしとこうかしら…?
  何はともあれ、それでは、まったねv



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33543○バラレル・トラペラーズ○〜黒の・・・〜かお E-mail 2008/4/21 17:31:21
記事番号33514へのコメント

  

  まえがき&ぼやき:

  さてさて。とりあえず、このたびはリナサイドたちのほうを主にv
  レナとアメリアのほうはまあ罠をしかけまくっている、そうおもってください(笑
  基本主人公はリナ家族ですしね〜。これ。
  サプライズはあるにしろ。
  何はともあれ、ゆくのです。
  副題がいいのがみつからなかったので鍵となる言葉をば……

  #####################################
  

           ○パラレル・トラベラーズ○〜黒の…〜


  「ほう。……なるほど」
  にや。
  どうしてこんな場所に子供が一人、迷い込んできていたのかは知らない。
  だが、この子供からは多少なりとも魔力を感じる。
  ならば様々なことに利用は可能。
  報告をうけたときには不思議にもおもったが、だがこの辺りまで旅人が迷い込んでくる。
  ということも多々とある。
  または、中間のあたりに救っていた盗賊にさらわれてきた子供、とも受け止められる。
  彼がそんなことを思っているのは当然エルにはまるわかり。
  少なくとも、彼らに関しては制限を設ける必要性はまったくない。
  リナおか〜さんたちは外で待機してるし。
  少しばかりこの体の制限というか限界を試すにはちょうどいい。
  「おじょうちゃん。お名前は?」
  とりあえずあいてを怖がらせないようにとその言葉の裏に悪意をこめてといかけてくる目の前にいる男性。
  「あ、おほんだ〜」
  「って、こらまてっ!」
  その背後におかれている一冊の本。
  それに指さしいいつつ、とてててて、捕まえようとする男たちの足元や手の合間をすり抜ける。
  ここにいる彼らは小さな子供をあいてにしたことがない。
  それはすなわち、子供の突拍子もない行動になれていない、ということでもある。
  もっとも、子供を抱えていたり、子供の世話をしたことがあるものにしても、
  小さな子供の突拍子もない行動はまず見抜けない。
  それゆえに、いともあっさりとその背後にあった本はエルの手にと奪われる。
  体の半分以上もあるかというそれをかかえ、
  「わ〜い、おほんだ、おほんだ〜」
  「って、こらまてぃ!」
  「とにかくつかまえろっ!」
  アレはとても重要なもの。
  子供のおもちゃにするような品物ではない。
  だからこそ躍起になって命令を下す。
  「む〜。あたしがみつけたんだから、あたしのっ!ふぁいあーぼーるっ!!」
  どごがぁっん!!!!
 『な…なにぃぃ!?』
  どうみても三歳児。
  さらには大きな本をかかえ、しかもカオスワーズすら唱えずに力ある言葉だけの術の発動。
  …彼らが驚愕するのも無理はない。

  どごがぁっん!
  洞窟内部より響いてくる爆音。
  「あ、はじめたみたい。それじゃ、あたしたちもいきましょ」
  「か〜さま、マナも、マナも〜。あそびたい〜」
  いや、遊びじゃないから。
  リナの言葉にむずるようにいっているマナの台詞に内心突っ込み。
  「しかし…洞窟の内部で術って…あぶなくないか?」
  しごくもっともなゼルガディスの意見。
  「エルはそのあたりの加減わかってはずよ?まあ時々失敗はするみたいだけど」
  「いや、その時々…って……」
  そういう前例があるなら余計に危険ではないのか?
  そう突っ込みたくなるゼルガディスの思いは仕方ないであろう。
  「とにかく!いくわよっ!」
  「おうっ!」
  そんなゼルガディスの思いは何のその、そのまま洞窟のほうにかけてゆくリナとガウリイ。
  「…ほんと、あいつらってどんな生活おくってたんだ?」
  思わずつぶやきたくなってしまうのも道理。
  こういうことに彼らはなれすぎている。
  絶対に。
  そんなことをおもいつつも、ここでのんびりしているわけにはいかない。
  ため息ともに、リナ達のあとをおいかけてゆくゼルガディスの姿。

  「くっ……」
  「わ〜い、おほん、おほん〜」
  きゃっ、きゃっきゃっ。
  相手の手の中にアレがある限り攻撃すらできない。
  精神のみにダメージを与える術を唱えるものの、相手は小さな子供。
  それゆえか、なかなか術があたらないこの現状。
  ちょこまか、ちょこまか走り回る子供相手にただただ翻弄するしかない男たち。
  下手に子供ごと吹き飛ばしてアレに傷をつけたりすることは何としても防がなければならない。
  そもそも、元なるモノがみつからない今の状況では。
  不完全とはいえ、モノがものである。
  全て暗記すにるしてもその量は膨大で、なかなかそれも難しい。
  戸惑っている間にもガラガラと崩れてくる洞窟の天井。
  子供にあたる気配がないのは、おそらくは子供が手にしている品物の影響であろう。
  そんなことを彼らは思う。
  事実は、異なるのだが、そこまで彼らがわかるはずもない。
  そのまま、天井部分から落ちてきた岩岩をくぐりぬけ、本をもったままかけてゆくエル。
  「くっ、に、にがすなっ!アレをもっていかせるなっ!」
  予定外、といえるだろう。
  まさか小さな子供にあんな重要なものをもっていかれるとは。
  すでにアレを奪われたことで周りに目がいっていない。
  いつもの彼ならばそちらに近づいてくる気配に敏感であろうに。

  「あ。か〜さん。それにと〜さんたちも」
  てとてとと走ってゆく先にみえるのは、リナとガウリイ、そしてその後ろのほうにゼルガディスの姿。
  その手の中にはしっかりと、体の半分はあろうか、というちょっとした分厚い本を抱えたまま。
  「エル!…へんなことされなかった?」
  「うん。あのね〜。何かおほんみつけたの〜」
  エルの姿に気づいて足をとめ、かがみながらといかけるリナの言葉ににこやかに答えるエル。
  背後のほうから聞こえるのは男たちの怒号の数々。
  「本?」
  「うん」
  それが何か気にかかるが、いや、まさかね。
  もう、彼らがアレを手にしている、とは思えないし。
  そんなことをおもいつつ、
  「あたし達は奥のやつらをやっつけてくるから。エルはマナとあまり無理しない程度に遊ぶのよ?」
  おそらく、ここにいる少人数だけではないであろう。
  何らかの形で周囲にいるであろう仲間たちに報告がいっているのは明らか。
  「あ。ゼルおじちゃんもいっしょにいこ?おそとのがいちゅうくじょ〜」
  ぐいっ。
  「あ。それいいわね。ゼル、子供達をおねがい」
  「ってまていっ!俺の意見は!?」
  「却下」
  「……あ、あのなぁ……」
  「わ〜い、おじちゃん、いこいこ〜」
  笑みをうかべてぐいぐいとゼルガディスのマントをひっぱるマナ。
  「あ、ゼルのおじちゃん、これもって」
  ぽいっ。
  何気なく今まで抱えていたそれをゼルガディスにと手渡すエル。
  すでにリナ達は奥のほうにと駆け出していっている。
  そもそも、この家族に出会ってから振り回されているような気がするのは気のせいではない。
  「って、…何だ?これは?」
  手渡されたそれから感じる魔力。
  確かに、普通の本のようにみえるのに、手にとっただけで感じる魔力を秘めているのはいかばかりか。
  「写本の写本のまた写本」
  さらり。
  「……な、写本!?って、まさか!?」
  さらっといったエルの台詞に思わずその場に固まるゼルガディス。
  今すぐに確認したいが、だがしかし。
  ガラッ……
  どうやらもろくなっていたらしく、洞窟の天井部分からぱらぱらと土が落ちてくる。
  それに混じり、どうやら天井部分に亀裂がはいっているのが見て取れる。
  つまりは、少しの衝撃で今にも天井が崩れ落ちてくる、というのをそれはものがたっている。
  「と、とにかく外にでるぞ」
  リナとガウリイならば少々のことでは大丈夫であろう。
  まず今保護すべきはこの子供二人。
  下手に天井が壊れかけている、といのがわかればマナに関してはいきなり泣き出す恐れもある。
  泣く子には勝てない、とはよくいうが。
  マナに関しては泣きながら問答無用で自分でもわからないままに呪文を連発する、
  というちょぴっとかわった癖がある。
  その癖を目の当たりにしたことがあるがゆえに気づかれないようにと二人を促すゼルガディス。
  ガララッ。
  とにかく外にでるのが先決。
  ゼルガディスと、そしてマナとエルが外にでるのとほぼ同時。
  ガラガラと洞窟の出入り口が岩でふさがれる。
  「…って、か〜さまたちは?ねえ?……か〜さまぁぁぁぁぁぁぁ!!」
  「って、マナ、おちついて、か〜さんたちは大丈夫だからっ!」
  魔力を暴走させかねないそんなマナのようすにあわててなだめる。
  だがしかし。
  「か〜さま、と〜さまぁぁぁぁぁ!」
  ドッンっ!
  マナの叫びというか泣き声とともに、周囲の大地が激しくゆれる。
  「…あ〜……ま、いっか」
  「よくないだろうがっ!」
  めきめきとめり込んでゆく大地。
  それをみながらのんびりといっているエルに、驚愕しながらもいっているゼルガディス。
  「ん〜と。爆裂陣(メガブランド)の術が逆方向に炸裂中、とみた」
  今、マナの魔力は地上にむけてではなく、地下のほうにとむけられている。
  ゆえに、地面が陥没する、という現象がおこっている今現在。
  「って、うわっ!?おまえら!?クロツ様をどうした!?」
  「きさまら、何ものだ!?」
  ふと気づけばそれに巻き込まれている男たちが数名。
  どうやら彼らはうごけないらしく、地面に両手をついであがらっている。
  マナを中心としてクレーターが広がっているが、
  そのクレーターの外から言葉を投げかけてきている男たちがまた数名。
  彼らからすれば、爆発らしき音をきき戻ってきてみれば、アジトとしていた洞窟の出入り口はふさがれ。
  さらには、何がおこっているのか判らないが、洞窟の前にはクレーターが広がり始めている。
  しかも、そこでいるはずのない小さな子供が泣き喚いていればさらに混乱せざるを得ない。
  「ん〜と。マナはおじちゃんにまかせた」
  「って、おいっ!」
  体にのしかかる重い何か。
  この実験はレゾがよく行っていたので動けないことはないが。
  ゼルガディスが止める間もなく、立っているのすらままならない状況だ。
  というのに、まったく問題なくクレーターの外にと飛んでゆくエル。
  「さってと。わ〜い。少し退屈してたし。みんな、あそんでねv」
  にこやかに笑みを浮かべて、戸惑っている男たちの上空にふよふよとうかぶエル。
  母であるリナ達はしばらくはあのクロツとの戦いでこちらに気づくことはないはず。
  ならば、することは一つ。
  「それじゃ、エイル=ガブリエフ。いっきま〜すっ!!」
  あちらでは、一応ルナたちの目があるゆえにそれほど遊べなかったが。
  ここならば少々は問題にならない。
  そもそも、あっちに戻ってしまえばそれまでなのだから。
  すっと片手を空にむけて高く掲げる。
  その手の先にぽっと光がともり、その光はやがてどんどんと大きな球体となってゆく。

  ……何だ?
  あの術は?
  見たことがない。
  オリジナルの術なのかもしれないが、相手は三歳児。
  いったいどういう環境でそだってるんだ……
  おもわずあきれるゼルガディスであるが、この現状をどうにかするのが先。
  魔力の暴走を止める手段など用いていない。
  賢者の石は逆に魔力を増幅するもの。
  だからこそアレは使えない。
  「ひくっ。ひくっ。か〜さまたちがぁ〜」
  そんなゼルガディスの横では、いまだに何やらぐずっているマナの姿。
  「とりあえず、この子をなきやまさないことにはどうにもならない…か」
  自由に動き回れない。
  もし、今襲われたとしてもこの場にいる限り、自由に動くことはままならないだろう。
  いまだに周囲には動けないらしい男たちが両手をついてうめいているさまが見て取れる。
  そしてまた。
  「いっきま〜す!」
  ヒュッ…ズドドドドッ!
  上空に浮かんでいるエルが言葉をつむぎだすと同時。
  エルの手の平の先に浮かんでいた光の玉より無数に地上にむかって降り注ぐ光のやり。
  いや、雨といったほうが正解かもしれない。
  だが、それらは全て槍の形をしており、光の柱が常に上空より降り注ぐ。
  この光に触れても木々は燃えることなどはない。
  しいていうならば、特定の存在にのみ影響を与えることが可能。
  それはまるで打ち上げ花火の簡易版のような光景。
  「……ひくっ。…わ〜、きれい」
  しゃくりあげていると、空から降り注ぐ光の洪水。
  おもわず、それに見とれて一瞬泣き止むマナ。
  それと同時に、ずんっとのしかかっていた重苦しい空気が一瞬開放される。
  どうやらそれは、ゼルガディスだけでなく、これにまきこまれていた人物たちにおいても同じこと。
  彼らも何がおこったのか瞬時に理解はできないが、ただ一ついえること。
  目の前にいる子供と、そして空に浮かんでいる子供。
  そして白づくめの格好をしている男性。
  彼らを排除しなければならない、ということ。
  が、しかし空から降り注ぐ光に貫かれると体の力ががっくりと抜ける。
  それだけならまだしも、こころなしか足に力が入らずに立つことすらままならなくなる。
  しいていえば、精神に影響を与える魔法である烈閃槍(エルメキアランス)などをうけたときによく似ている。
  「……洒落にならない子供達だな。本当に」
  マナといい、エルといい、通常では考えられない力をもっている。
  まあ、いきなりドラグスレイブを唱えるような子供達である。
  判ってはいた。
  判ってはいたが…やはりこう、目の当たりにするとなれない、というのが人の心情として当然。
  と。
  「……え〜と、何がどうなっているんでしょうか?」
  何とも間のぬけた声がいきなりゼルガディスの背後より聞こえてくる。
  正確にいうならば、ほぼゼルガディスの真後ろから。
  ばっ。
  人の気配などまったくなかったはず。
  それなのに振り向いたそのさきに、しかもその目と先に見えたのは。
  「こんにちわvまたおあいしましたねv」
  にこやかに笑みを浮かべた神官服の男性が一人。

  ガラガラ……
  「どうやら、出入り口がふさがったみたいね」
  「…くっ。貴様ら…何ものだ!?」
  仲間はいともあっさりと撃退された。
  かなりの腕利きのものばかりのはずなのに。
  目の前にいる栗色の髪の女性に、そしてまた金髪の男性。
  まさか…いや、そんなはずはない。
  あの噂の盗賊殺し(ロバーズキラー)には胸がないはず。
  目の前の栗色の女性にはしっかりと見た目でわかるほどに胸はある。
  ゆえに、噂の警戒すべき人物とは到底むすびつかない。
  女性の魔道の腕もかなりのものだが、男性のほうの剣の腕もかなりたつ。
  これは…デュクリスクでないと太刀打ちができそうもない相手。
  相手はたったの二人。
  それなのにここまで手がでないとは……
  「名乗る必要はないし。あんた、クロツってよばれてたわよね!?
     とすると、やっぱりあの組織の頭ね!?」
  組織のことを知っている。
  となると誰かに自分たちのことを壊滅するように頼まれた人物か。
  栗色の髪の女性、いうまでもなくリナの台詞に薄く笑みを浮かべるクロツ。
  だが、しかし。
  「…ふっ。今ここで、やられるわけにはいかないので、な」
  念には念を。
  いれておいたのがまさかこんなことで使うハメになるとは。
  そのまま、だっと奥にと駆け出してゆく。
  「あ。まちなさいっ!クロツ!」
  そんな彼をリナが追いかけようとするが。
  カチッ。
  ズドド…
  クロツが壁の一部を押すと同時にいきなり天井が崩れだす。
  ちっ。
  「地精道(ベフィスブリング)!!」
  たっん。
  即座の反応。
  そのまま横の壁に手をつき一瞬のうちに穴をほり、
  「ガウリイ!」
  「おうっ!」
  そのまま、すばやくリナが作り出した穴の中にと二人して身をおどらせる。
  ガラガラガラ…
  二人が穴の中に身を隠すとほぼ同時、洞窟はあとくされなく埋もれてゆく。
  「まったく…やってくれるわよね」
  「しかし、あいつはどうやって逃げる気だ?」
  穴の中でつぶやくリナに、素朴な疑問をぶつけているガウリイ。
  「たぶん。あの奥に何か非常脱出用の何かがある、そう考えるのが妥当でしょうね。
  ともかく、今はとりあえず外にでましょ」
  毎回おもうけど、この術で消えてゆく土ってどこにいくんだろ?
  そんなことをおもいながらも、ひたすらに術によって目の前の土と岩の壁を削ってゆく。
  魔力の調節にともない、その幅も自由自在。
  ゆえに、ちょうどガウリイとリナが立って歩ける程度の高さにしてただひたすらに新たな道を掘ってゆく。
  おそらく、ゼルに任せているので子供達に関しては心配はないが。
  一番リナにとって心配なのはマナのこと。
  洞窟の出入り口が崩れたような音がきこえ、さらには実際に洞窟は崩れ落ちた。
  ならば、パニックになってどんな呪文を連発しているとも限らない。
  「あのこって、ないたら魔力の制御がとっぴょうしもなくなるからねぇ〜」
  それでもゼフィーリアの中でならばどうにかなるが。
  それ以外の土地でとなると、どのような結果になるかは皆目検討がつかない。
  一番心配なのは、その暴走させた魔力でマナ自身が傷つかないか、という疑念。
  とはいえ、マナはまだ二歳。
  自我もまだ形成されかけているそんな幼女に細かいことを望むのはまず不可能。
  ならば、できることは周りが気にかけて注意してあげることのみ。


                ――Go To Next

#########################################

あとがきもどき:

薫:さてさて、そろそろ第一回目の核心部分vとはいえ重要部分はもう少しさきv
  次回はゼロスとのやりとりと、あとはレナサイドですね。
  まあ、エル…ちゃん(恐る恐る)の行動は…つっこまないでおくとしましょう……
  何はともあれ、それではまた、次回にてv
  しかし…予定では50で追われる予定くらいの長さだとおもってたのになぁ?
  やっぱりいつも40kくらいできってるのを20kにしたら長くなるのかな?
  ということは、簡単に計算しても100前後?……ま、とにかく、また次回〜♪





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33544○バラレル・トラペラーズ○〜襲撃?攻撃?〜かお E-mail 2008/4/22 18:39:03
記事番号33514へのコメント



 まえがき&ぼやき:

  今回の登場人物は主にゼロスです(まて
  そろそろ本編にも登場していた人物がちらほらとではじめますv
  さあ、レナ達は無事にプラム姉弟を守りきることができるのか?!
  そもそも、その表現がきちんと文章化されるのか!?
  という様々な突っ込みを心の中で抱えつつもゆくのですv
 
  #####################################
    

            ○パラレル・トラベラーズ○〜襲撃?攻撃?〜
  

  「おまえは……」
  にこにこにこ。
  にこにこと笑みを浮かべているものの、気配すら感じさせなかった。
  それすなわち、かなりの使い手だ、ということに他ならない。
  ばっとすばやく間合いをとる。
  「いやですねぇ。そう警戒しないでくださいよv」
  相変わらずのにこにこ顔の神官。
  確か名前をゼロスとかいったよな。
  こいつ。
  目の前にいる黒い神官をみつつも、警戒を解かないゼルガディス。
  「しかし……何というか、すごいですねぇ。あのお子さん」
  何やら多少おどろいているようなそんな声をだしながらも空を見上げてつぶやくゼロス。
  ふとみわたせばいつの間にや周囲にいた男たちは倒れ、ぴくりとも動いていない。
  「・・・・・・・まあ、さすがというべきなのかもしれないが……」
  いわれてそのことに気づき、おもわずあきれたような声をだす。
  「・・・おや?って、うわっ!?」
  「さってと。りとあえず、そこに倒れているひとたちから情報をえますか?
    ん〜と、手足の一、二本くらいおれば素直に聞くかなぁ?
    それも、爪の間につまようじをいれるとか……」
  ふと気づけばそんなゼロスの背後にいきなり出現し、何やらにこやかにいっているエルの姿が。
  「いや。エルちゃん。それはやりすぎだとおもうぞ。絶対に」
  そんなエルにすかさず突っ込みをいれているゼルガディス。
  「…あ、あの?あなた、いつのまに?」
  この僕にすら気配を気取られずに背後にいきなり……
  そのことに驚愕しながらも戸惑いながら問いかけているゼロス。
  人間の気配を感じ取れない。
  そんなことがありえるはずもない。
  だが現実にまったくもって気配は捉えられなかった。
  ゆえにこそ戸惑いを隠しきれずにそれでいて笑みを絶やさぬままに問いかける。
  「今。それはそうと、ゼロスおじちゃんはこんなところで何してるの?」
  「お…おじちゃん……」
  「おじちゃんがだめならおじいちゃん。それとも黒いからゴキブリとかのほうがいい?」
  「って、どうしてそう突拍子もないほうにむかうんですか!?」
  相手は人間の子供。
  しかし、どうもペースを乱されてしまう。
  おもわず叫んでいるゼロスであるが。
  「…あのぉ?この子供、どういう教育をうけてるんですか?」
  おもわず近くにいるゼルガディスにと問いかける。
  「俺に聞くな。俺に。それはそうと、何でまたおまえがここにいる?」
  偶然、というわけはない。
  だからこそ警戒を崩さずに問いかける。
  「いやぁ。僕はただ、彼らが盗んだ品物をおいかけてるだけですよ?
    ご存知ありませんか?本のようなものなんですけど……」
  本、といわれてぴくりと反応するゼルガディス。
  その様子ににこやかににっこりと笑みを浮かべ
  「ああ、ご存知なんですね。ひょっとして今はあなたがもたれてるとか?」
  満足そうにと問いかける。
  「ゼルおじちゃん。それはそうとね。あの奥にいたおじちゃんたち、にげたみたいなんだけど〜」
  気配が遠のいてゆくのを感じ取り、つんつんとゼルガディスをつつきながらもいっているエル。
  「ね〜さま?か〜さまたちは?」
  「あ〜。そろそろでてくるとおもうよ?…ほら」
  エルの言葉が終わるとほぼ同時。
  がごっ。
  「よっしゃ!これで外に出たっ…っと、って何でそいつがこんなところにいるわけ!?」
  穴を掘りながら外にとむかっていた。
  そして外にでたとおもえばなぜか周囲にできているちょっとしたクレーター。
  そしてまた、怪しさ爆発の神官と向き合っているゼルガディス達の姿が目に入る。
  それゆえにおもわず叫んでいるリナ。
  問答無用で攻撃を仕掛けたい衝動を何とか押さえ込み叫ぶリナ。
  「なあ、リナ?それより、あいつらあっちのほうにむかってるみたいだけど。
    あっちってたしかレナ達が残ってる方向だよな?」
  感覚でわかるがゆえに、のほほんといっているガウリイ。
  確かにクロツたちがむかっているのは、プラム達が住んでいる家の方角。
  「何?ってあんたら、逃がしたのか?」
  そんなリナ達の会話をきき、思わずあきれた声をだす。
  「う。しかたないでしょ。あいつらが洞窟ごと壊しにかかってきたんだし。
    とにかく!あいつらをおいかけないと!そこのナマゴミはほっといていきましょ!」
  「…いやあの、ナマゴミって…僕のことですか?」
  ぼそっとつぶやくゼロスの台詞は当然綺麗さっぱり無視し、
  「エル、マナ。無事?」
  すたすたとマナとエルのほうにと歩いてちかよるリナの姿。
  「…いやあの、無視ですか?」
  ぽそり、とつぶやくゼロスの言葉はまたまた無視。
  「うん!いいこにしてたよ?わたしたち。おか〜さん」
  嘘つけ。
  にこやかにいうエルの台詞に思わず心の中でつぶやくゼルガディス。
  リナ達はみていない。
  エルが先ほど何をやったのか。
  あのような術は聞いたことも見たこともない。
  おそらくは、オリジナル魔法なのだ、とは理解できるが。
  「とにかく!いくわよっ!」
  「お〜い。リナ。ズーマの気配が近づいてるのはどうする?」
  ・・・・・・・・・・・・って、かなりまて。
  さらっというガウリイの台詞に思わず思考が固まるゼルガディス。
  「ちょっとまて!あんた!ズーマって、あのズーマか!?」
  暗殺者ズーマ。
  裏の世界で知らないものはいない。
  トップくらすの暗殺者。
  「今はともかくクロツたちが先よっ!」
  いうなり。
  「翔封界(レイウィング)!!」
  しゅっ。
  ひょい、とそれぞれに子供達を抱えてその場から飛んでゆくリナ達家族。
  何のことはない。
  リナが魔力を増幅させて、ガウリイともども飛んでいっただけのこと。
  「…え、えっと。今の気配は……」
  自分たちとは相反する力。
  だからこそ判る。
  リナが今使用した魔力の増幅は神族の力のものである、ということが。
  と。
  ザァァ…
  刹那、ゼルガディスとゼロスの周囲に黒い霧が立ち込める。
  「おや?」
  「こ、これは!?」
  黒霧炎(ダークミスト)。
  魔力による黒い霧。
  もっぱらよく目くらましなどに使われる術。
  のんびりとした声をあげるゼロスとは対照的に、ばっと身構えているゼルガディス。
  そんな中。
  『どうやら、何かがあったらしいな』
  くぐもった低い声が闇の中より発せられてくる。
  くっ。
  噂で聞いたことがある、ズーマの得意とする術の一つにこの黒霧炎がある。
  さきほどのガウリイの言葉もある。
  つまりは、この術を放ったのは他ならないズーマだ、ともいえるのだ。
  周囲を見渡せども何もみえない。
  気配をつかもうにも相手はプロ。
  簡単に気配を捉えることはまず不可能であろう。
  警戒を崩さないゼルガディスとは対象的に、
  「おや。何かようですか?」
  にこやかにとある方向を向いて話しかけているゼロス。
  ゼロスにとってはめくらましなど何の意味もない。
  そもそも、めくらまし、といっても所詮物質世界のみでの出来事。
  そんなものに捉われる必要性もない。
  『まあいい。死にたくなければ邪魔をしないことだな』
  ざあっ。
  いうだけいって闇とともにその声も遠ざかる。
  「い…今のは…あんた、アレの姿がみえていたのか?」
  だがしかし、もし相手を確認していたのならば、こちらの口封じをしてくるはず。
  契約主ですらその姿を誰もみたことがない。
  それが暗殺者ズーマという存在。
  相手がどこにいるかわかるかのように話しかけていたゼロス。
  だからこそ問いかける。
  「え?あなたはみえなかったんですか?」
  ゼロスの基準と人のそれでは異なるがゆえに、きょとん、として逆にとといかけるゼロス。
  「まあ、それはそうとして。あなたがもっているとおもわしき、本を渡してもらえませんかねぇ?」
  魔力の波動からゼルガディスが例の品物をもっているのは明らか。
  「あんた、これを探していたのか?」
  コレが何なのかはゼルガディスは詳しくはしらない。
  だが、彼らの台詞を信じるのならばこれはあの『写本』の写しであるらしい。
  興味はあるが、だがしかし。
  目の前の神官はこれは盗まれたものだ、みたいなことをいっていた。
  つまり、おそらく彼はこれが保管されていたどこかの協会の関係者であり、
  内密に取り返すように動いていた、そういったところか。
  しかし…返さなければいなけい、というのは判るがその前に中を確認したい。
  それは写本かもしれない、というのを知っているからこそ。
  懐より本を取り出して、本とゼロスを交互にみやる。
  「え、ええ。あの、渡してもらえませんか?」
  「それはかまわんが…少し中を研究してからでもいいか?これからは魔力を感じるし、な」
  そんなゼルガディスの言葉にも笑みを絶やさぬまま、
  「ああ。それは研究する価値はないとおもわれますよ?ものすっごく偏った解釈になってますし。
    まあ、僕としましたらそれの元になったモノも探してるんですけど。しりませんよねぇ?
    どうにかクロツさん達がそれを狙ってるらしいという情報をつかんでここまできてるんですけどねぇ」
  にこやかにいっているゼロス。
  別に隠す必要でもない。
  「元…だと、まさか!?」
  「まあ、そういうことで。それはこちらにもらいますね?」
  「……なっ!?」
  その言葉に驚愕している間にふと気づけば手にしていたはずの本がなくなっている。
  ふとみれば、いつのまに奪ったのか先ほどまで手にしていたはずの本は神官の手に握られていたりする。
  リナ達ならばそれほど驚くことではなく、やってくれたし、程度のこと。
  だがしかし、ゼルガディスはこのゼロスの正体を知らない。
  だからこそ驚愕せざるを得ない。
  「ふむ。どうやら間違いないようですね。それでは、僕はクロツさん達をおいますので?」
  驚愕し、一瞬固まっているゼルガディスをそのままに、そのままくるっと向きを変えて歩き出す。
  「あ、ま、まてっ!」
  ふと我に返りあわててそんなゼロスを追いかけるものの、木陰に入ったとおもわしきゼロスの姿はすでにそこにはなく。
  しばし驚愕するゼルガディスの姿がその場において見受けられてゆく。


  「ついに現れましたね!諸悪の根源っ!」
  「……何だ?ずいぶんとかわいらしい護衛だな」
  目的は姉のほうでも弟のほうでもどちらでもよい。
  どちらかを捕まえればいやでもアレのことをいわざるを得ないはず。
  すでに家は把握していた。
  アジトがあんなわけのわからないモノたちに見つかったとなればコトは早くすすめなければならない。
  それゆえに、奇襲をかけようと出向いていった。
  そこにいたのは、何やらかわいらしい巫女の服をしている少女。
  布地からかなりいいところの娘であろうことはわかるが、なぜこんな場所にいるのかはわからない。
  「…あいつらでまちがいない?」
  こくり。
  真っ先に飛び出していったアメリアはいつものこと。
  それゆえに、レナが一人のこり、プラム達をかばいながらも外をうかがう。
  昔行ったいたずらがこんなところで巧をなすとは。
  ちょっとした仕掛けで離れた場所の映像を映し出す術。
  小さなころのレナとリナのほんの小さないたずら。
  もっとも、その後姉のルナの逆鱗に触れたのはいうまでもないが。
  レナの質問にこくり、とうなづくプラム。
  ここ最近、自分たち姉弟を付けねらっている人物と一致する。
  「ふむ。なら、先手必勝、がいいわよね」
  とにかく相手の動きを封じる必要がある。
  今きているあの男たちがたんなる下っ端ならばまだ彼女たちがおそわれることは必死。
  ならば、今きている彼らを締め上げて黒幕をはかせるのが一番いい。
  相手をまずは、動けなくするのは……
  森の中。
  烈閃槍(エルメキアランス)かそのあたり、かな?
  いつもならば周囲ごと吹き飛ばすのだが、それでは逆に情報が得られない可能性がある。
  なら、てっとりぱやく烈閃咆(エルメキアフレイム)を。
  相手もどうやら魔道に長けたものらしい。
  ならば少々死ぬようなことにはならないはず。
  「いい?ここからうごかないでよ?」
  二人に言い含め、そのまますっと二人のそばを離れるレナ。
  一方では、
  「さあ!観念しなさい!あなたたち、何の目的があってかよわき姉弟をおそうのですかっ!?」
  いまだに襲撃をしかけてこようとしていた男たちにと何やらいっているアメリアの姿が見て取れる。
  「ふっ。小娘がしる必要はない」
  「この小娘、始末しますか?」
  「あなたたち!あなたたちには人の心がないの!?いいでしょう。
    この私が正義の心であなたたちに真人間の心を取り戻させてさしあげますっ!」
  説得に応じようとしない男たち。
  ゆえにこそアメリアの闘志に炎がたぎる。
  「こざかしいっ!やれっ!」
  一人の男の合図と同時、ざっとそんなアメリアを取り囲む男たち。
  と。
  「烈閃咆(エルメキアフレイム)!!!!!!」
  突如として男たちの背後より光の柱が出現する。
  「な…なにっ!?」
  ざっとあわてて飛びのくものの、だがしかし、光の柱はそのまま男たちを追いかける。
  「くっ!…っ!」
  ばちっ。
  何かつぶやくと同時にはじける光の柱。
  まだ完全でないとはいえ、それでも簡易的に作っていただけはある。
  魔力を周囲から遮断する。
  その代償としてその体がむしばまれてゆく、とわかっていても。
  「クロウズ様っ!」
  一人が男の名前を呼ぶ。
  それと同時に男がしていた覆面がとれる。
  黒ずくめの覆面のしたより現れたのは、獣の顔。
  人のそれではないが、人の意思をもつもの。
  「あなた……」
  獣人、というわけではなさそうである。
  ならば、考えられることはただ一つ。
  「獣型の合成獣(キメラ)、ね。元は人…みたけど。違う?」
  すとっ。
  様子を伺いながらも上空から攻撃を仕掛けた。
  コントロールにより攻撃はどちらの方向からも可能。
  木の枝の上からおりざまにきっと男たちを見据えていうレナ。
  それは人の意思に関係なくされたもの、また自分から望んでなったもの。
  様々ではあるが、いえることはただ一つ。
  そのような実験を得て得た術も使い手によっては悪とも善ともなる、ということ。
  「あ、レナ!」
  そんなレナに気づいて声をだしているアメリア。
  「レナ…だと?」
  栗色の髪に魔道士風の服装。
  「きさま…盗賊殺し(ロバーズキラー)のレナ=インバースか!?」
  「ご名答〜。というわけで!」
  エルメキアフレイムの攻撃をうけて無事、ということはよほどの攻撃でなければ効果はない。
  ならば、することは一つ。
  「黄昏よりも暗きもの 血の流れより赤きもの 時の流れに埋もれし 偉大な汝の名において……」
  「くっ!きさまら!一度ひけっ!」
  ざっ。
  レナの呪文詠唱の意味をさとり、すばやく撤退を指示し、それに伴い動ける男たちはざっとその場を後にしてゆく。
  「あ、まちなさいっ!」
  逃げてゆく男たちを追いかけようとするアメリアであるが。
  「「うぎゃぁぁぁぁ〜〜〜!!!」」
  そんな彼女たちの耳に何ともいえない叫び声が聞こえてくる。
  『?』
  いったい何事?
  そう二人が思うのとほぼ同時。
  「おや?あなたたちは。奇遇ですねぇ?」
  にこやかに歩いてくる黒い神官服を着込んだ男性の姿が。
  「いやぁ、最近物騒ですねぇ?みたところリナさんと同じ容姿、ということは親戚の方か何かですか?」
  にこにこにこ。
  この場にそぐわないにこにこ顔。
  「「……誰(ですか)?」」
  そんな彼の姿をみて警戒を隠しきれないレナとアメリア。
  それとほぼ同時。
  「…やってくれたな。きさま……」
  さきほど、クロウズ、と呼ばれていた男性が何やら腕を抑えながらもゆっくりと奥からでてくる。
  みれば、腕半分がもげており、血がひたすらに流れ落ちていたりする。
  「クロウズ様。ここはこのフェルティスにお任せを。クロウズ様はクロツ様のもとへ」
  抜き身のロングソードを片手にし、剣を構えて言い放つ先ほどとはまた別の獣人が一人。
  「クロツ!?それが今度の悪の親玉の名前ですねっ!?
    あなたたちの目的、今度こそはっきりと綺麗さっぱり日の光のもと、洗いざらい白状してもらいますっ!」
  びしっ!
  どうやら口調からしてこの神官は彼らと敵対しているらしい。
  そう判断し、男たちにのみ指をつきつけて言い放つアメリア。
  目の前の神官が誰なのかは気にはなるが、すくなくとも。
  神官の姿をしているのであれば敵ではないはず。
  そう独自の間違いまくった解釈に基づいたその行動。
  「竜破斬(ドラグスレイブ)っ!!!!!」
  「「「……なっ!?」」」
  ちゅどごぉぉぉぉんっ!!!!
  刹那、レナの放った術が炸裂し、周囲を轟音と爆煙がたちこめてゆく――


                         ――Go To Next


   ########################################

あとがきもどき:

薫:さてさて、ようやくレナ達のほうにも顔見世のゼロス君(まて
   リナ達がかかわっているせいで原作の時間軸が狂いまくっている、というのはおいといて。
   さてさて。次回でリナ達も合流〜物語はそろそろ確信にせまってゆきますv
   本格ズーマも起動ですv
   何はともあれ、それではまた次回にて〜♪

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33545○バラレル・トラベラーズ○〜神官ゼロス〜かお E-mail 2008/4/23 23:01:19
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:→前書きを読まない、というひとはこちらへ。

  さてさて、このたびはお約束もいえる爆弾発言をばv(こらこらこら
  まあ、ゼロスがいつも悲しい(?)役割なのはおいとくとして。
  そろそろこのプラム編もくらいまっくすちかしv
  さてさて、そろそろマゼンダだしてくるかな?
  何はともあれ、いっきますv

  #####################################


      ○パラレル・トラベラーズ○〜神官ゼロス〜


  「レナ!いきなりはやめてくださいっ!」
  「大丈夫!永遠の女王(エターナルクイーン)直伝の結界はったから周囲に問題はなしっ!」
  「そういう問題じゃないしっ!」
  確かにレナの言うとおり、クレーターと化した部分はほんの一部。
  万が一にも逃げられて情報が得られなかったときに備え、簡易的ながらも教わっていた結界を張っておいた。
  だからこそ森の中でも黒魔法の最高峰、といわれている竜破斬を放ったのだから。
  そんなレナに抗議の声をあげているアメリア。
  「さあってと。そこに伸びてるやつ等から情報を聞き出すとしますかね」
  みれば、威力をかなり弱めたがゆえに気絶している獣人と、クロウズ、と呼ばれていた男が一人。
  顔自体は狼のような顔をしてはいるが、その瞳に宿っていた光はまぎれもなく人のそれ。
  「……あ、あのぉ?」
  人間にこんな結界が知られている、とは思えない。
  といっても簡単なものなので彼にはそんなものは通じない。
  そもそも多少力があるものならばこんな結界は意味を成さないそれほど簡単な代物。
  だがしかし、すでに人々が忘れているはずの神聖魔法の一つではある。
  ゆえにこそ戸惑いながら問いかける。
  「あれ?あんた無事だったの?」
  「ひ…ひどいです……まあ、いいですけど。ところで、あなたがたは?
    どうもあのリナさんによくにていらっしゃいますけど?」
  さらり、とレナらしい、といえばレナらしい対応に多少いじけつつも、目の前にいるレナにと問いかける。
  レナ=インバースの噂は彼とて聞いたことがある。
  というか有名すぎる。
  少なくとも、自分たちの王の復活が妨げられた一件。
  それに彼女がかかわっているであろう、というのは明白。
  まあ、彼にとって別に滅んでしまった欠片の王はどうでもいいのだが。
  栗色の髪に平らな胸。
  おそらく彼女があの噂のレナ=インバースなのであろう。
  というのは聞かずともわかる。
  わかるが、きにかかる。
  そもそも、感じる魔力波動まであのリナ、と名乗った女性とほぼ同じならばなおさらに。
  人間において同じ魔力波動をもっているものなどはまずいない。
  多少なりとも異なる魔力をもっているのが常識。
  それが造られた存在だとて同じこと。
  「リナさんを知ってるんですか?」
  その台詞にきょとん、となる。
  と。
  「ああっ!ゴキブリっ!まさかこれあんたの仕業なわけっ!?」
  何やら頭上より声が降り注がれ、
  「わ〜。すご〜い。あながじめんにぽっかりあいてる〜」
  それをみてとても楽しそうに何やらいっている子供の声。
  「って、だから!誰がゴキブリですかっ!というかどうしてその表現するんですかっ!?」
  おもわず上空を見上げて抗議の声を発する。
  このあたり、ノリがいいのはいずこも同じ、といえるのであろう。
  「レナ!それにアメリア!何かそいつに変なことされなかった!?」
  いうなり、ふわり、と空より舞い降りる。
  「いやあの、むしろ被害者は僕……」
  何やらつぶやくそんなゼロスの抗議の声は何のその。
  「え〜?ゼロスおじいちゃん、レナお姉ちゃんたちにひどいことしたの?」
  「って、だから!どうして僕がおじいちゃんなんですかっ!」
  年齢からいえば十分にそう呼ばれてもおかしくないとおもうけど。
  そんなゼロスの抗議の声に心の中で突っ込みをいれつつも、
  「アメリア!とにかく、こいつに正義とは何か、人生のすばらしさをといてあげなさいっ!
    こんな怪しさ爆発の神官にはそれが足りないでしょうからっ!」
  「はいっ!わかりましたっ!」
  「……え゛?」
  高位魔族であるがゆえに、そういった生の気には弱い。
  本気でそんなコトをとかれてもかなり困る。
  どうしてリナがそんなことをいったのかはアメリアは判らない。
  だがしかし、直感的に確かにといて改心させたほうがいい。
  そう本能的にひらめき、
  「さあ!そこの怪しさ爆発の神官さん!あなたが何ものかはしりません!
    ですが、もしあなたが悪の道にはいっているならば、今こそ正義に目覚めて真人間になるべきですっ!」
  「い、いやあの…って、どうしてそうなるんですかっ!?というか!話題がそれてませんかっ!?
    い、今はそこの人たちから何か情報を聞き出すのが先決ではないですかっ!?」
  そんなゼロスの言葉をうけ、
  「いや、あんたを退けるほうが先だから」
  もののみごとに綺麗さっぱりきっぱりと言い切るリナ。
  「まあ、ゼロスおじいちゃんだと、あいてをころしてでもじょうほうえようとするし〜」
  「でも、ね〜さま、あくにんにじんけんなんてないからもんだいないんじゃぁ?」
  「マナ。それはね。聞きたいことを聞き出した後ならどんなことでもしてもいいわけで」
  なごやかに、それでいて子供とはおもえないとてつもないことをいっているエルとマナ。
  い、いったいどういう教育を本当にこのお子さんたちはうけてるんでしょうか?
  そんなことを内心思いつつ、
  「って、リナさんの知り合いなんだ。この怪しい神官もどき」
  「しかし、どうみても正義の味方、ではないですよね?さあ!今こそ改心のときですっ!」
  そんなゼロスを冷ややかにみつつもそんなことをいっているレナとアメリア。
  「さってと。あ、マナ。エル。あんたたちもゼロスのヤツを説得するのにまわりなさいな」
  「は〜い。あ、じきでんのおうたうたってもい〜い?」
  「んとね、んとね。まなね。じょおうさまからおしえてもらったおうたうたう〜」
  「いいわよ」
  リナの言葉にぱっと瞳を輝かせ、きらきらとした表情でいっているエルとマナ。
  いやあの…女王様って…はてしなぁぁく嫌な予感がするんですけど?
  そんなことをおもいおもわず後退りするゼロスを傍目にみつつ、
  「さってと。こいつらからとにかく、情報を聞き出すわよっ!」
  「確かに。何か知ってそうですしね」
  いいつつも、レナと二人、倒れているクロウズ、と呼ばれていた人物と、そしてまた、
  フェルティス、と呼ばれていた獣人のほうにとそれぞれ向かってゆく。

  「ひ…ひどい目にあいました……」
  まさか、神聖歌をうたわれるとは。
  さすがに魔族たるゼロスにはきついいがいの何ものでもない。
  それに加え、アメリア、と呼ばれた少女の生の讃歌のような説得。
  それでもふらふらになりながらも実体化を保っているのはさすが高位魔族、といったところ。
  とにかく、理不尽ともいえる自分にとってもダメージを受けかねないそれらから逃れるため、
  あわてて自分がどうしてここにいるのかある程度説明しているゼロス。
  とある場所よりある場所で管理されていたとても大切な代物が盗まれた、ということ。
  そして、それらを追いかけて調査したところ、盗んだのはクロツ、という人物が頭を務めている組織だ、ということ。
  自分はそれらが世に出回ることのないように回収に回っている、ということ。
  嘘ではない。
  嘘では。
  ただ、事実を折り曲げて、相手に勘違いさせるような説明をしているだけ。
  「と。とにかく。そのクロツさん達一味は、
    どうもかつて約百年ほど前に封印されたはずの代物をさがしているみたいでして」
  その言葉にすっと顔色を変えるプラム。
  とりあえず、ゼロスの説明もあり完全に納得しないまでも、ひとまず話を詳しく聞こう。
  というのと。
  レナとリナが方法はアメリアはゼロスにかまけていたので知らないがどうにか聞き出した情報。
  それらを含めての話し合い。
  ゼロスの説明に、さきほどレナの中であの男たちから聞き出した情報とぴたり、と一致する。
  「百年前?…何かありましたっけ?」
  きょとん、とした声をだしているアメリアに向かい、
  「百年前。といったらザナッファーの事件くらいかな?
    もっとも確かあれはたまたま通り道に街があったから踏み潰されただけ、みたいだが」
  そんなことをいっていラウリィ。
  ラウリィとて目の前のこの神官に警戒を崩していない。
  彼もまた気づいている。
  この神官が『何』なのか。
  このあたりの勘はさすがガブリエフ一族、といえるであろう。
  「まあ、あたしが知っている限りでは、あれは生体鎧の一種の写しらしいけど。
    何でも人間の魔力では制御ができずにそれが暴走してその装着主を侵食する。
    その結果がおそらく、ザナッファー、と呼ばれていた存在らしいけどね」
  「以前はエルフのね〜ちゃんがいきなり暴走してあばれてたけどな〜」
  「ガウリイ。それをレナ達にいってもわからないってば」
  ラウリイの台詞につづき、さらりと何やら爆弾発言をしているリナとガウリイ。
  「ゼナファ・アーマーのことはともかくとして。てっとりはやいほうほうとったほうがよくない?おか〜さん?」
  「それだとこの山ごと消し去って後くされなく、が一番だけどね〜」
  「って、リナさん!それはかなりまってくださいっ!」
  「リナさん!それは正義じゃないわっ!やはり悪人は正義の味方がこらしめる!これが基本よっ!」
  エルの言葉にうなづきつつも、的確な方法を指摘しているリナ。
  そんなリナにあわてて抗議の声をあげているプラムとアメリア。
  「…あ、あのぉ?あなたたち、どうしてそこまでくわしいんですか?」
  そもそも、人間があのゼナファのことを知っている、とは思えないんですけど……
  そんなことをおもいつつ、恐る恐るといかけてきているゼロス。
  「それより。問題は他にもあるぞ」
  「「って、ゼル(ガディスさん)!?」」
  会話の最中、ふと扉のほうから別の声が聞こえてくる。
  ふとみれば、そこには今までいなかったはずのゼルガディスの姿が。
  しばらくゼロスの姿をあの場にて探していたものの、まずはリナ達と合流が先。
  そう思い戻ってきたところ、リナ達が何やら話しをしてるところにかちあわせ、声をかけたのに他ならない。
  出入り口にもたれかかるようにといっているのは他ならないいまだに戻ってきていなかったゼルガディス当人。
  ちらり、と家の中に視線をむければ例の神官の姿が見て取れる。
  それゆえに少しばかり顔をしかめ。
  「ズーマという暗殺者もどうやらやってきてるみたいだぞ。それをどうするか、というのもあるとおもうが?」
  「?ず〜?らどっくでなくて?」
  ゼルガディスの言葉にきょとん、とした声をだしているエル。
  「ラドックはズーマの本名だろうが。エル。って話したことあったっけ?」
  「どうせ姉ちゃんたちからきいたんじゃないの?まあ、たしかに。
    ここでも同じならラドック=ランザードがズーマ当人だけど。ヴェゼンディにいくにしても…ねぇ」
  彼の実家があるのがヴェゼンディ。
  確実に足止めしようとするならば、息子をつれてくれば丸くおさまるとおもうけど。
  だけど…ねぇ。
  そんなことをおもいつつ、しみじみとつぶやくリナ。
  そこまでいい、はたっときづき。
  「ガウリイ。あんたがよくあのズーマの本名、覚えてたわねぇ」
  いまさらながらに驚きの声をあげるリナの姿。
  「いやぁ、印象ふかかったからなぁ。魔族の人と同化した人間なんて滅多にみないし」
  「あ〜…たしかに」
  そんな会話をききつつ、
  「ま…魔族?」
  おびえたような声をだしているプラム。
  「…あんたら、どんな生活ほんとうにおくってたんだ?」
  おもわずそんなリナ達夫婦の会話に突っ込みをいれざるをえないゼルガディス。
  ここでも、ということはおそらく、リナ達の世界で彼らがズーマとかかわりをもっていた。
  というのを暗にものがたっている。
  「まあ、とりあえずは。マゼンダとかが出てくる前にケリをつけたいのは事実よね。
    そういや、レナ達はセイルーンでカンヅェルとかかわったわけ?」
  「って、リナさん!?どうしてそのことを!?」
  さらっというリナの言葉に驚愕の表情を浮かべているアメリア。
  「あ〜…やっぱし。となれば、これにもマゼンダがかかわっている可能性が……」
  「あ、あのぉ?少しお伺いしますけど。どうしてそこにカンヅェルさんやマゼンダさんの名前が?」
  そんな会話をききつつも、多少疑問に思い逆に問いかけてきているゼロス。
  「って、あなた!?あのカンヅェルと知り合いなんですか!?魔族と知り合いだなんてっ!
    はっ!やはりゼロスさん、あなたも悪!?」
  「「ぶっ!!」」
  さらっというアメリアの台詞に思わずむせこんでいるプラムとクリフ。
  「?何いってるんだ?アメリア?ゼロスも魔族だなんて今さら……」
  すぱこぉっんっ!!
  「あ、あんたわぁっ!さらっというなっ!さらっとっ!!こっちは知られてないように振舞ってたのにっ!」
  さらり、と爆弾発言をかますガウリイにすばやくリナのスリッパ攻撃が炸裂する。
  「あ〜。まあ、たしかにこの神官も魔族ではあるようだけどなぁ。
    しかし、ガウリイさん、高位魔族に対してそうさらっと爆弾発言はある意味危険なんじゃぁ?」
  しみじみとそんなガウリイにむかってつぶやくラウリィに対し、
  「え〜。でもさ。ゼロスおじ〜ちゃんってけっこうむがいだよ?いいつかいぱしりにもなるし」
  「うん。よくるなおね〜さんにこきつかわれてるし〜」
  何やら場違いなことをいっているエルとマナ。
  まあ、たしかにそのとおりではある。
  あるのだが、それはリナ達の世界においてのこと。
  この世界のゼロスにそのようなことをいっても判るはずもない。
  「まあ。こんなゴキブリのことはともかくとして。どうせこいつはお仕事以外は干渉しないでしょうし。
    まずはクロツたちがいる別のアジトを探さないとね……」
  「って、あの!?それですましますか!?魔族って、ほんとなんですか!?」
  さらっといいきり、クロツたちのことの話題に戻すリナに対し、半ばパニックになりなからも叫んでいるプラム。
  「そうとわかれば!ゼロスさん!あなた方は何をたくらんでいるんですか!?
    セイルーンに入り込んでいたカンヅェルさんにしろ!あなた方魔族のたくらみをきっちりとはいてもらいますっ!」
  「あ、アメリア。こいつにはけっこう生の讃歌がきくわよ」
  「わかりました!」
  「って、ちょっとまってくださいっ!あなたがた、ほんとうになにものなんですかっ!?」
  まさかいきなりそんなことを言われるとはおもっていなかったゼロスからすれば驚愕するのは当たり前。
  「ん〜。あたし達のいた世界では、カンヅェルたちはガーヴの命をうけて動いていたらしいけど。
    ここまでほぼ同じならそのあたりも一緒かもしれないわね」
  「…だから、あんたら、いったいどんな生活今までおくってきてたんだ?」
  「いやぁ。それほどでも」
  「ほめてないぞ。あんた達のところではどうだったんだ?」
  あきれたような口調で問いかけるゼルガディスの台詞ににこにこと答えるガウリイ。
  どうやら聞き方がわるかった、そう判断し問い方を変えるゼルガディス。
  「オレがしってるのでは、マゼンダとかいう魔族はクロウズとかいうやつに喰われたらしいけど」
  「ガウリイ。それをいうなら、クロウズの体をのっとったザナッファー二号、というべきじゃない?」
  『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
  何だかとても会話についていけない。
  え…ええと。
  この人たちのところ。
  そして、知っている限りでは。
  さらには自分には覚えのない、誰かに使われている云々、という台詞。
  小さな子供が嘘をついているような気配というか感覚は感じられない。
  嘘をついているときにはすくなからずその人より負の感情が発せられるもの。
  だが、それはまったくもって感じられない。
  ならば、可能性として……
  様々な可能性をおもいながらも考えあぐねるゼロス。
  「あ、あのぉ?あなた、本当に魔族なんですか?」
  「それは秘密ですv」
  戸惑いながら恐る恐るといかけてくるプラムの言葉ににこやかに答えるゼロス。
  「とにかく!!さあ、知っていること全てはいてもらいますからねっ!」
  ずいっとそんなゼロスに詰め寄っているアメリア。
  こ…困りましたねぇ。
  ここはやはり一度退散したほうがいいですかね?
  そんなことをおもいつつ、
  「あ」
  「「え?」」
  とある方向を指差してリナ達の気を引こうとする。
  その隙をすきすばやくこの場を立ち去る…はずであった。
  が。
  「ん〜と。ぜろす。これさいせいしてほしくなかったらきょうりょくしようね〜」
  にぃぃっこり。
  いつのまにかそばにきていたエル、と呼ばれていた子供が何やら記憶球のようなものをもち、
  にっこりと笑みを浮かべてゼロスにと話しかける。
  「ねえねえ。おか〜さん、これだいおんりょうにしてかたーとにながしたらどうなるんだろ?」
  何やらとてつもなく嫌な予感がするのはおそらくゼロスの気のせいではない。
  「そういや。まだ実験したことないわよね。ミルガズィアさんのギャグってどんな効果発揮するのか」
  「え、ええと。僕でよろしければお役にたちたいとおもいます」
  ミルガズィア。
  その名前は聞き覚えがある。
  そもそも、あのヒトのギャグは…あまり魔族の僕たちからすればいいものではないですし。
  ゆえにこそ、それが事実かどうかは別とてリナの台詞に本気さを感じ、すばやく反射的に答えるゼロス。
  「まあ、ゴキプリのことはほっといて。今後の作戦会議とでもいきますか」
  そんなゼロスをあっさり無視し、今後のことについて話をすすめてゆくリナ。
  結局のところ、ゼロスが本当に魔族なのか、そんな疑問を抱きつつ。
  しばし、今後の対策について話し合ってゆく彼らの姿が見受けられてゆく――


       ――Go To Next



  #########################################

あとがきもどき:

薫:さてさて。原作と違い、パラレルのゆえんvさらっとアメリア&レナ達にもゼロスの正体暴露v
  まあ、まだかぁぁなりの高位の魔族だ、とまではしらないにしても(笑
  次回でそろそろこのプラム編の本質ともいえる写本にいくのですv
  ではでは、また次回にて〜♪




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33546○バラレル・トラペラーズ○〜襲撃開始?〜かお E-mail 2008/4/25 22:18:55
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:。

  さてさて。ようやくラストのほうでマゼンダ登場v
  ちなみに、レナ達のほうにてクロツとの対決の予定v
  何はともあれいっきますv
  ゼロスが何やらいいようにこきつかわれかけているのはお約束v(笑
 
  #####################################


         ○パラレル・トラベラーズ○〜襲撃開始?〜


  異界黙示録(クレアバイブル)。
  それは様々な知識をもたらす書物、といわれておりその本物を見たことがあるものは皆無。
  ともいわれている伝説の書物。
  真実は、それは水竜王の知識そのものであり、そしてまたそれは異空間に存在している。
  今あるそれらに関する『写本』などは、かつての水竜王の知識を写したものなどに他ならない。
  水は全ての源ともいえ、それゆえか知識の王、とまでいわれていたらしい水竜王。
  もっとも、リナはとある事情でその水竜王が実はとある国の女王として転生している、
  という事情を知るハメになってはいるが。
  「しかし。ザナッファーを作り出す元になった写本か。面倒なものがのこっていたものだな」
  心の底からそうおもい、思わず顔をしかめるラウリィ。
  「そうとわかれば!あんな怪しい男たちに渡すわけにはいきませんっ!」
  プラムから事情を聞きだし、ひとり張り切り叫んでいるアメリア。
  「まあ、僕はあれが人間の手にわたらなければそれでいいですけどねぇ。後どうなろうがしったことじゃないですし」
  ずずっといつのまにかお茶をのみつついっているゼロス。
  結局のところ、ゼロスが魔族だ、というのはどうやら事実らしい。
  そう判断したものの今のところ敵ではない。
  それもわかり警戒を解かないまでも何やら和んでいるアメリアたち。
  プラムからはどこに隠しているか、ということは聞かされなかった。
  そもそも、下手に聞き出してどこからその情報が漏れ出すとも限らないのだから。
  この辺りの山にはオリハルコンが含まれている山があり、おそらくその付近に隠されているのであろう。
  というのは何となくだが想像はつく。
  「しかし。確かにあいつらの手に渡るのはやっかいよね。シャブラニグドゥを崇拝している組織かぁ」
  リナから説明をきき、あきれる以外の何ものでもないレナ。
  そもそも、魔王を崇拝、といったところで何にもならないであろうに。
  まあ、そんな組織だからこそ、魔族がすんなりと入り込んでいるかもしれない、というのもうなづける。
  「しかし。リナさん?いいの?ガウリイさんと子供達だけで?」
  プラム達の護衛をかねて、あと子供達には危険、という判断でマナとエルはお留守番。
  二人の護衛はとりあえずガウリイに任せて、ガウリイと子供達をのけたメンバーでの話し合い。
  「まあ、エルたちは少々のことじゃ、動じないし。
    そもそも、ガウリイがいたらまた下手な爆弾発言してくれてもこまるしねぇ」
  重要なところでさらっと爆弾発言でもされたら計画の全てが台無しになることもありえる。
  だからこその護衛、という名目をかねたお留守番。
  レナの素朴な疑問にため息まじりにこたえるリナ。
  そういいつつも、ちらり、とゼロスのほうをみる。
  当のゼロスはきにしていないらしくにこにこしているままであるが。
  「まあ、そのゴキブリ神官は勝手に動くでしょうし。まずは先手必勝。
    彼らがいると思われる場所にいって攻撃しかけるのが先決だし」
  伊達にすんなりとあのとき、逃げられただけではない。
  とっさの判断で検索する目安になる術を軽く足元の靴にとかけておいた。
  だからこそ精神(アストラル)探索でクロツ、と呼ばれていた男の捜索は可能。
  「とにかく!物騒な組織は壊滅するに限るしねっ!」
  「そうです!リナさん!そんなあからさまに怪しい組織は壊滅するのが世のためですっ!」
  「…あんた、本当にセイルーンの姫か?」
  リナの言葉にぐっと握りこぶしに力をこめて賛成するアメリアに思わずつぶやくゼルガディス。
  「何いってるんですか!?ゼルガディスさん!?あなたもレナと同じく正義の心があるんでしょう!?
    ならば!レナ同様、正義を広めるために悪を懲らしめるのは当たり前じゃないのっ!」
  「・・・・・・・・・・・・・ノーコメントといっておく」
  「とりあえず、いくつかに分かれて捜索しましょ。レナとラウリィ。そしてゼルとアメリア。
    んであたしはとりあえずこのゴキブリと一緒にいくわ」
  「って、リナさん!?それは危険でないですか!?一応それも魔族らしいですし」
  「……それって……アメリアさん……」
  アメリアの言葉に何やらつぶやくゼロス。
  「だから、よ。こいつのことだから面倒だからとかいって山ごと綺麗さっぱり消滅させかねないし。
    それだとこの山にいるほかの人たちが巻き込まれるし」
  そもそも、このゼロスが本気になればそんなことはたやすい。
  それがわかっいるからこそのリナの振り分け。
  「監視役はなれてるほうがいいでしょうしね」
  魔族、という存在…得にゼロス、という存在の性格をしっていなければ逆に利用されるのがオチ。
  リナは嫌、というほどこのゼロスとは元の世界でかかわりをもっているので多少の利用方法はわかっている。
  クロツが立ち寄った、とおもわしき場所をもしそこが仮の拠点にでもなっているなばかたっぱしからつぶす。
  そうしていき、彼らをおびき出す。
  それが作戦内容。
  「それじゃ、みんな、きをつけてね!」
  「リナさんも!」
  「さあ!ゼルガディスさん!はりきって正義のためにがんばりましょぅ!」
  「…も、好きにしてくれ……」
  簡単に会話を交わし、それぞれが分類された方角にと向かってゆく。
  つまりは、クロツが立ち寄った、とおぼしき場所がありえるであろう場所に向かうために。


  「あ、あのぉ?少しお聞きしてよろしいですか?」
  「何?」
  さくさくさく。
  とにかくひたすらにと歩いてゆく。
  そんな中、並んであるくリナにとゼロスが問いかける。
  「あなたは、いつから僕のことを…いえ、まあそれはともかくとして。
    あなた方はアレをみつけたらどうするつもりですか?」
  「即効もやすっ!」
  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そ、そ〜ですか。利用するとかではないんですか?」
  まさか燃やす、などといった返事が戻ってくるとは思わずにおもわずきょとん、とした声をだすゼロス。
  「利用するも何も。必要ないし。そもそもあんな不完全な代物、あったらあったで迷惑でしょ?
    おそらくあのクロツはアレを大量生産するつもりとおもうし」
  リナからすればその結論は当然。
  何しろあたりかまわずに取り込むような性質をもっているような生物を好き好んで誕生させたい、とはおもわない。
  「そもそも、あの組織自体をどうにかしないといけないし。
    それよりこっちにもしマゼンダがくるとしたら、魔力封じには気をつけないと……」
  あのときは、マゼンダは自分たちがかかわっているものに写本が絡んでいる。
  とは知らなかったみたいだけど。
  こっちではどうなんだろう?
  そもそも、いくら何でも獣神官ゼロスと敵対するようなことになるのを好き好むはずがない。
  勝てるはずもないのだから。
  「気になってたんですが。なぜそこにマゼンダさんの名前がでてくるんですか?先ほどもですけど?」
  先ほど聞きそびれていたそのことを疑問に思いながらも問いかけるゼロス。
  「って、本当に知らないわけ?たぶん、きっと間違いなく。セイルーンでのごたごたにしろ。
    魔族がかかわっていた、となると。きっとあのクロツの仲間にマゼンダもいるわよ?
    そういえば。あんたの役目ってやっぱしこっちでも写本関係なわけ?」
  「って、何でそのことを!?というかそもそも、あなたたちって…」
  「ん〜。ぶっちゃけていうと。事故よ。事故。
    マナがちょぴっと術を失敗しちゃって家族でこっちにきてるけど。ま、気にしない、気にしないv
    きっとゼフィーリアにいけば赤の竜神騎士(スィーフィードナイト)か、もしくは永遠の女王(エターナルクイーン)が元に戻れる方法知ってるはずだし」
  「いや、気にしない。って事故ってかなり気になるんですけど……」
  そもそも、永遠の女王(エターナルクイーン)の真実に関しては人間達は知らないはずである。
  魔族の中でもかなりの高位のものでなければその事実は知らないのだから。
  「まあ、そんなことより。…どうやら相手のほうからお出ましになったみたいよ?」
  「おや、みたいですねぇ」
  そんな会話をしている最中。
  ふと気づけば周囲に黒い霧が立ち込める。
  それと同時にいくつもの気配が感じられる。
  敵は少なくみつもっても数十人。
  そしてまた、気配を隠しているらしいが、だが判る人物が一人。
  さすがに幾度か対峙したことがあれば相手が気配を隠していてもその気配をつかむことは可能。
  「それで、どうしますか?僕としましては別にほうっておいてもいいとおもいますけど。
    そもそも、お仕事外ですし。彼らはアレを知らないでしょうしねぇ」
  何ともゼロスらしい、といえばゼロスらしい対応。
  「別にあんたに期待はしてないわよ。ただ、わかっててわざわざ人間にアレを使われて利用された。
    おおっぴらにうごけないにしろ、それはあんた達のプライド的なことをいってるわけだし」
  「うぐっ……」
  そこをついてきますか、そこを。
  リナの言葉に思わず言葉につまるゼロスであるが。
  確かに彼が上司よりうけている命はあまりおおっぴらに動いて目立つようなことはしないように。
  との勅令もある。
  それでなくてもつい先日、一つの作戦が失敗したばかり。
  まあ滅んでしまった王に関しては別に思うところもないのだが。
  「とにかく。…いつまで隠れているつもり!?出てきたらどうなの?」
  相手にむかって投げかける。
  この霧を払う術はすでに会得している。
  「…ほう。すこしはできるようだな……」
  暗い闇の中、くぐもった声とともに現れてくる一つの影。
  そんな影に続くかのように周囲を取り囲んでくる人影が十数個。
  「そういや。あっちでは神聖魔法すでに使いたい放題になってたけど。
    ここじゃあやっぱり水竜王の力くらいしかつかえないのかしら?」
  「い、いや、使いたい放題って……」
  「まあ、ここはまだ魔族の結界が生きてるはずだしねぇ。とりあえず神聖魔法、ためしてみよっかな?もしくは万物の力?とか」
  「いやあのっ!僕がやりますからっ!」
  にこやかにいうリナの言葉にあわてて提案しているゼロス。
  いくらゼロスだとて目の前で神聖魔法を使われてはかなりのダメージを負うことは請け合い。
  万物の力、というのがかなり気にはなるが、聞かないほうがいいような気がする。
  しみじみと。
  そんなことをおもいつつ、
  「まあ、そういうわけで。あなたたちのお相手は気乗りしませんけど僕がいたしますv」
  にこやかにそんな彼らに笑みを浮かべて言い放つゼロスの姿。

  「……きた、な」
  リナ達が襲撃をうけている同時刻。
  こちらもまた気配を感じて立ち上がる。
  「あ、あの?」
  「あ。ぷらむおね〜ちゃんたちはここでまっててね〜。そのなかからでないでねv」
  にっこりと微笑み床を指差すエル。
  そこにはプラムにとってはみたことすらない魔方陣が一つ。
  「な、何がおこってるんですか?いったい……」
  何かを感じているのかおびえるクリフをぎゅっと抱きしめたまま問いかけてくる。
  「いや。ただ魔族の人があんたたちを捕まえにきてるだけみたいだし」
  「…いやあの……」
  さらっというガウリイの言葉にただただ絶句するしかない。
  「そもそも。あいつらもさ。いくらじょぅしめいれいだとしても、もうすこしかんがえがひつようとおもうけどなぁ」
  しみじみつぶやくエルの言葉は至極道理。
  そもそも、彼女からしてみれば、何をやっているんだか、という部類にはいるのだが。
  「ねえねえ。ね〜さま?まなもあそんでもい〜い?」
  「しゅういにけっかいはったからべつにもんだいないよ?マナ」
  「ほんとっ!?」
  エルのにこやかな台詞に目をきらきらとさせるマナ。
  「どうでもいいけど、エル?そうほいほいとロー何とかってやつの力使うのはどうかとおもうぞ〜?」
  エルがいった結界の力の源。
  それが何なのか天性の勘で感じ取り、あきれたようにいっているガウリイ。
  かつてのリナのようにはならない、そう確信はあるものの、やはり心配なのは心配。
  そもそも、魂が何であろうが大切な娘にはかわりがないのだから。
  「え〜?でも、おと〜さん?こういうきかいでもないとなかなかつかえないし〜」
  リナが近くにいればこの方法はあまり使えない。
  彼女がどれだけ心配するかわかっているがゆえに。
  「ま、とにかく。おいでなさったようだ。それじゃ、あまり無理するなよ?マナもエルも」
  「「は〜い」」
  父親であるガウリイの台詞に、しゅたっと仲良く同時に片手をあげて元気よく返事をする。
  「…ろ〜何とか?って何?お姉ちゃん?」
  「さあ?」
  そんな父娘の会話はプラム達姉弟には判らない。
  それゆえに、ただただ首をかしげるしかないプラムとクリフ。
  戸惑いを隠しきれない二人を魔方陣の中にと残し、そのまま外にとでてゆくガウリイ・エル、マナの三人。
  外にでてみれば、あきらかに人でない気配がぐるり、と周囲を取り巻いているのが見て取れる。
  そして、ゆっくりと足音も立てずに近づいてくる気配が一つ。
  真っ赤な髪に濡れた唇。
  一見したところ目つきが多少するどい二十歳少しすぎたくらいの女性の姿。
  だがしかし、彼女は見たとおりの人ではない。
  「あ。すこししつも〜ん。まぜんだ、かんづぇるってまだいきてるわけ?」
  還ってきてはまだいない。
  ならばまだここでも生きているのであろう。
  そんなエルの言葉に多少驚愕しつつもすっと目を細め、
  「…どうやら。クロツがてこずっているだけのことはあるわね。
    あの姉弟の居場所を素直に教えれば命だけは助けてあげようかともおもってたけど……」
  警戒しつつも言い放つ。
  だが、所詮、目の前にいるのは小さな子供二人。
  さきほどまで人間の男がいたような気もするけど、今はそんなことはどうでもいい。
  ガウリイとすれば周囲を取り囲んでいるレッサーデーモンの駆除にととっとととりかかっている。
  それはあの程度の実力の魔族では子供達を傷つけることはできない。
  そう確信があるからこその行動。
  子ども達から感じる魔力の波動はとても静かなもの。
  「ん〜。と。それより、なんでまたガーヴはおもしろいことはじめてるわけ?ねえ?
    あっさりとひとのこころをぶんりしてしまえばそれですむもんだいとおもうんだけどなぁ」
  魔族本来の望みは滅びを目的とするもの。
  だが、以前の戦いにおいてガーヴの中には人の心というものが入り混じっている。
  それは何ものにもおいても生きたい、と願う正の属性をもつ命の本質。
  正と負と。
  この二つにおいて世界は成り立っている。
  片方だけでは世界が偏り、発展をも見せない、という理由から。
  一番この方法が無難なく、それでいて面白い…もといいいように発展、進化してゆく。
  だから大概はこの方法を取り入れた。
  至極もっともなエル…否、『彼女』としての意見。
  「ま、とりあえずこれからじっくりとききだせばいいことだし。マナ、いくわよ」
  「は〜い。わ〜〜い。ってことで、ぜらすぶりっど!!」
  「…なっ!?」
  獣王牙操弾。
  獣王ゼラス=メタリオムの力を借りた対象物に対してどんな障害があろうとも攻撃をしかける業。
  母であるリナがよく使っているのをみてマナはうろおぼえながらもそれを使用することが可能。
  並程度の魔族ならばいともあっさりと消滅させられるほどの威力をもつ。
  いきなりのことであわててその場を退くが、力はそのままマゼンダにとむかってくる。
  ちっ。
  がごっ。
  バシュ。
  逃れる方法はただ一つ。
  その技を何かにぶつけることのみ。
  それゆえに自身の目の前に連れてきていたレッサーデーモンを出現させ自身の身代わりとさせて回避する。
  「らぐなぶれーどっ!」
  「…なっ…って、きゃぁぁぁぁぁぁっっっっっっっっっ!!!」
  エルの放った闇の刃はもののみごとにマゼンダの右肩をなぎ払う。
  森の中、何ともいえないマゼンダの叫びがこだましてゆく――

  「正義は必ず勝つのですっ!」
  ブイッ!
  累々と横たわる襲撃者たち。
  そんな彼らを前にして何やらびしっと空に指をつきつけてブイサインをしているアメリア。
  しかもしっかりとアメリアの霊縛符(ラファスシード)にて彼らは身動き一つとれなくなっている。
  「しかし。ずいぶんとあからさまに襲撃を開始してきたものだな。やつらも」
  その露骨なまでの行動の裏に何らかの意図を感じられなくもないが。
  彼らは捨て駒のために襲撃してきたのか、もしくはかく乱のためにしてきたのか。
  そのあたりがどうしてもつかめない。
  おそらく両方の意味合いをもつ襲撃なのであろう。
  ならば、目的はおそらくは、あの姉妹。
  あちらには主要戦力が向かっているはず。
  「さあ!ゼルガディスさん!次の悪人を退治しにいきますよっ!」
  「…何か、おまえさん、趣旨がかわってないか?」
  そんなアメリアの姿におもわず突っ込む。
  今回の黒幕とおもわしき男たちがアジトにしていると思わしき場所。
  そこをかたっぱしからたずねては、相手が仕掛けてくれば敵、と判断しそのまま撃退する。
  そんな行動をとっているアメリアとゼルガディス。
  正確にいうならば、一人先走るアメリアに付き合うハメになっているゼルガディスなのだが。
  当初の目的とはどこかずれているアメリアにため息をつきざるをえない。
  まあ、たしかに。
  敵の戦力を減らす、という意味ではこの方法も間違ってはいないのであろう。
  「さ、ゼルガディスさん!正義が私たちをよんでいますっ!次にいきましょうっ!」
  「……はぁ〜」
  一人張り切るアメリアとは対象に、深くため息をつくゼルガディスの姿が、森の中、見受けられてゆく。
  アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン。
  あるいみ、一つのことに集中すると周りが見えなくなるタイプである。


                            ――Go To Next



  #########################################

あとがきもどき:

薫:さてさて。こちらでガウリイ父娘サイド、リナ&ゼロスサイド。アメリア&ゼルガディスサイド。
  をお送りいたしましたvレナ&ラウリィサイドは次回にてv
  彼らのほうがこの世界においては主要キャラなので、クロツと絡めてます(笑
  しかし、一番気の毒なのは…誰なんでしょうねぇ?(にやりv
  ともあれ、ではまた次回にて〜♪




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33547○パラレル・トラベラーズ○〜レナとリナと・・・・〜かお E-mail 2008/4/25 22:20:00
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  さてさて。そろそろ爆弾発言近し!(まてこら
  初期のころにはうやむやにして、レナもまた語らなかったもう一つの真実近し!(こらこら
  まあ、たぶん、みなさん予想はついてるでしょうねぇ。
  どうせ私、薫が考えるものさv
  何はともあれ、いっきますv(たぶん、初期のころには暴露してないはず…うん。)


  #####################################


        ○パラレル・トラベラーズ○〜レナとリナと……〜


  「やれやれ。あなたはどうしますか?」
  にこにこにこ。
  すでに他にいた襲撃者たちはその場に倒れぴくりとも動かない。
  魔道士と神官。
  二人一緒だと厄介だ、という概念のもとにそれぞれ二組にわかれてそれぞれに襲い掛かった。
  それはいいのだが。
  その結果が両方の部隊の壊滅につながるとは、一体だれが想像できようか。
  にこやかに笑みを浮かべたままで、どのようにしたのかはわからない。
  わからないが、神官にむかっていったものたちは全て体を切り刻まれてその場に倒れた。
  魔道士の格好をしている女性に関しては問答無用で高等魔術を使われていともあっさりと撃沈された。
  今、この場に残っているのは全身黒い服に身を包んでいる男性が一人のみ。
  『彼』が依頼された内容は計画の邪魔をする輩の排除。
  だがしかし……
  「殺せ。といわれれば殺す。それが暗殺者(アサシン)だ。だが…私では勝てん。貴様には……」
  相手の実力の底が知れない。
  否、人であるのかすらもわからない。
  今までに感じたことがないほどの畏怖という名の恐怖を目の前の神官より感じる。
  見た目はか弱いただのどこにでもいるような神官服をきている青年だ、というのに。
  そしてまた、もう一人のターゲットでもある魔道士の女性。
  そちらはかなり厄介な術を多様しているのが見て取れる。
  すくなくとも、あれらの黒魔術に対抗すべき術はもちあわせてはいない。
  何しろどれだけ逃げても特定の対象物にのみ攻撃を仕掛ける技などは逃げようがない。
  すでに壁とすべきほかのモノは倒されており、下手な行動は敗北を意味する。
  否、敗北=死。というべきであろう。
  そのまま、くるっと向きをかえてその場を立ち去る黒尽くめの男。
  「ふむ。いるものですねぇ。すこしは身の程をわきまえている人間も」
  その後姿を見送りつつもそんなことをつぶやいているゼロスであるが。
  「まあ、力によってはそれも可能だけどね」
  あの冥王フィブリゾですらとかげの尻尾きりでしのいだ不完全版の術。
  おそらく、ゼロスあたりならば防ぎきれるものではないのだろう。
  もっとも、あれはほいほいと軽々しく使えるような術でもないのも事実だが。
  「どういう意味ですか?それって?」
  「別に。さってと。とりあえず、ズーマも退けたことだし。クロツたちのほうにいきましょ」
  「…ま、まあ、いいですけどね。僕も彼らには用事がありますし」
  確か、彼らは調べたところ他にもアレを所有しているはずである。
  それらの行方と保存場所。
  それらを聞き出し処分すること。
  それがゼロスの仕事内容。
  一人で相手をひっかきまわすよりも、人数が多いほうがあいてをひっかきまわせ油断も生じさせられる。
  何よりもこの人間達にはすくなからずの興味をもっている。
  ソレは、他ならない『王』が滅んだ原因を知っているであろう、その予測もあるからこそ。


  「というわけらしいけど」
  「うう……」
  淡い金色の紐のようなものでつながれている女性が何やら泣いている。
  そんな彼女をにこやかに無視して、そこにいるプラムとそして父親にと説明しているエル。
  逃げようとすれば虚無の力が本体を蝕んでゆく。
  ある意味、これが人間がいうところの地獄、というのかもしれない。
  そんなことをおもわず思う。
  何しろ虚無に蝕まれつつも、そのつど光が触れるたびに再生し、また無と化してゆく。
  その繰り返し。
  なぜ人間の、しかも小さな子どもそんな術が使用できるのかは彼女、マゼンダにはわからない。
  いえるのは、唯一つ。
  この術は自分たち魔族にとってとても脅威である、ということ。
  その気になれば自分たちのような輩は後腐れなく綺麗さっぱり無と化す、というのも感覚でわかる。
  情報を得るためだけに生かされている存在。
  それゆえに自分自身がむなしく、そして情けなくなってしまう。
  たかが人間風情のしかも小さな女の子にいいように扱われるなど。
  魔族たる彼女にとっては屈辱以外の何ものでもない。
  「しかし。おまえさんも気の毒だよなぁ。そもそも、何でわざわざ写本にかかわろうとしてたんだ?」
  ぴくっ。
  そんなマゼンダにと問いかけるガウリイの台詞に、びくり、と反応し。
  「…え?し…しゃほん?」
  思わず声をかすれさせつつも逆にと問いかける。
  「うん。このおね〜ちゃんたちがまもってるの、しゃほんだよ?」
  「……嘘よぉぉっ!というか、クロツのやつそんなことはひとこともっ!!
    そうとわかってたらかかわりあいなんかもちたくないのにいっっ!!」
  にこっとガウリイに変わり答えるエルの言葉に何やら泣き喚きだすマゼンダ。
  写本に関わりをもつこと。
  それすなわち、魔族の中では一番の実力をもつ獣神官ゼロスと敵対する、ということに他ならない。
  あの彼にかなう魔族など、腹心、もしくは魔王以外にはいないのだから。
  「ふつう。すこしかんがえたらわかるとおもうけどなあ。
    とりあえず、まぜんだ、くろつたちのところにあんない、おねがいできるわよね?」
  「あ…あのぉ?まあ、腕がなくなっても血がでてないので人でない。というのはわかりますけど。
    そもそも、何であなたたちのような存在があれに興味をしめすのですか?関係ないでしょうに」
  戸惑いつつも、至極もっともなプラムの疑問。
  確かに、魔族からすれば写本のような存在は脅威でも何でもない。
  ただ、邪魔だから、という理由でゼロスにその処分が任されているのを除けば。
  率先してわざわざ神族の知識でもあるソレにすがるような魔族はまずいない。
  「まあ、こいつらからすれば、ゼロスと係わり合いをもつことになるから嫌なんじゃないのか?」
  「そういえば、ぜろすおじ〜ちゃん、しゃほんのしょぶんをおもなおしごとにしてたしねぇ」
  ガウリイの台詞にきょとん、と首をかしげながらもにこやかにいっているマナ。
  「ま、とりあえず。ぷらむおね〜ちゃんたちもなにでまきこまれたのかしるひつようはあるだろうし。
    いっしょにくろつのところにいく?」
  暗に彼らのみをこの場に残していくのは危険、そう物語っているエルの言葉。
  もっとも、常に今プラム達がいる魔法陣の中にいる限り、邪な考えをもつ存在は触れることもままならないのだが。
  エルに問いかけられてしばし考え込む。
  このまま、二人で隠れていても、彼らはおそらくほうっておいてはくれないであろう。
  そう。
  あれがある限りは。
  すくなくとも、守られていてばかりでは先にと進めない。
  たったひとりの大切な弟を守るためにも。
  ここでまっていて、万が一襲われたときに弟が無事である、という保障はない。
  ならば、それよりも。
  「そう。ですね。ご一緒させてください。…彼らの意向もきになりますので」
  何のためにアレを手にいれようとしているのか。
  アレを処分する気ならばわたしてもいいとおもう。
  だが、どうやらそんな気配ではまったくもってないらしい。
  「おね〜ちゃん、僕もいくからねっ!」
  「ええ。クリフ。私たちはいつも一緒よ?」
  両親から託された大切な弟。
  だからこそどんなことがあっても守ってみせる――


  「ついにみつけたわよっ!」
  目の前にいる男たちにむかってびしっと言い放つ。
  そもそも、オリハルコンが含まれている場所は限られている。
  今現在の場所が探索できない、ということはそういった場所にいるからだろう。
  そう確かに話し合いの中ではされていた。
  だがしかし、よもや子供をさらう場面に遭遇しようとは。
  どうやら近くの村の子供が森に遊びにでていてたまたまつかまってしまったらしい。
  もぞもぞと麻袋の中よりか細い子供の声が聞こえている。
  「何だ?貴様は……」
  「いや。まて。…お前は…まさか……」
  先日の魔道士によく似てはいるが、だがしかし。
  魔道士風の姿に栗色の髪。
  そして特徴的なのはそのあるのかないのかわからないまでの平らな胸。
  まあ、もうすぐ十五になろうか、という少女に胸の大きさを問うのもどうかともおもうが。
  そもそも、そういうものの成長は人それぞれ。
  ある年齢を境におおきくなるもの、またはそのままのもの、など人それぞれ。
  自分たちの息のかかった組織がセイルーンのほうでつぶされた。
  その報告は受けている。
  マゼンダよりその報告があったのはつい先ほど。
  「きさま…あの、レナ=インバースか!?」
  「なっ!?あの悪魔の申し子の!?」
  「破壊の申し子の!?」
  「…こらまていっ!何よ!それは!
    すくなくとも、か弱い子供をさらおうとしているあんたたちのほうがよっぽど悪魔でしょうがっ!」
  一味の首領らしき人物の声に驚愕の声をあげている周囲にいる男たち。
  そんな彼らにすばやく抗議の声を上げているレナ。
  「まあよい。今ここでお前を捉え、我らが崇拝する魔王、赤眼の魔王・シャブラニグドゥ様の生贄としてくれようっ!」
  ぴくっ。
  その言葉にレナの中にて反応するリナ。
  ――レナ、かわれる?
  お姉ちゃん?
  確かに、脳裏に聞こえてきた声は姉であるリナのもの。
  確かに今日は満月であるがゆえに、変わることは可能。
  が、しかし。
  姉から率先して変わってもらえるか、などと、しかもまだ日も落ちきっていない最中いってきたのは初めて。
  ――こいつらは、あたしが!
  リナの怒りの理由は何となくだがわかる。
  判るが……
  「リナお姉ちゃん、…無理はしないでね?」
  それでなくても、魔族が周囲にいるとも限らない。
  ならば、気づかれる恐れはかなりある。
  例え、それが赤の竜神の意志力(ちから)と水竜王の意志力(ちから)の加護があろうとも。
  ダメ、といえるかもしれない。
  だけども、気持ちがわかるがゆえに断れない。
  そう、姉は自身の体を持たないばかりか他にもその魂に重荷を背負っているのだから。
  ゆっくりとそんな会話を交わしながらも目をとじるレナ。
  基本、この体はレナのもの。
  ゆえにいつも表にでている意識もまたレナ。
  だがしかし、ある条件が重なるときにのみ、姉のリナの意識が表にでることは可能。
  それが今の現状で、吉とでるか凶、とでるかレナには判らない。
  全ては、時の示すまま、運命の導くまま。

  まったく……冗談じゃないわよっ!
  相手の言い分をきき、いてもたってもいられなくなった。
  だから、表にでてきた。
  冗談じゃない。
  そんな組織があること事態が冗談ではない。
  下手をしたら自分にとばっちりが回ってくることは請け合い。
  あの姉は躊躇なくお仕置きをしてくるであろう、ということもわかる。
  だからこそ、譲れない。
  こいつは、ここでつぶすっ!
  そんなことをおもいつつ、ゆっくりと瞳を開く。
  いつもならばブラウンの瞳が決意に燃えてか赤く、紅に染まっている。
  「まったく。いいたいほうだいいってくれるし」
  目をつむると同時に何やら雰囲気が一変した。
  そのことに疑問を覚えるものの、
  「レナ=インバースを捕らえよっ!」
  首領、とおもわしき人物より手下の男たちに指示が飛ぶ。
  今、この場にいる存在達は全てが合成獣(キメラ)化されている人間達。
  だがしかし、そんなことはどうでもいい。
  レナの中で『視ていた』今までの内容からアレの存在も気にはかかる。
  かかるが…まあ、こちらに逆らうようなことはしないはず。
  そもそも、あの子供がいる限り。
  ふぁさり、と髪をかきあげる。
  カンヅェルのときには気づかれる恐れから、表には出なかった。
  それゆえに逃がしてしまった、という失敗があるものの、今はそんなことを気にする必要はない。
  そもそも、アレは特にお役所仕事だ、という知識がある。
  「とりあえず、あんた達のアジトの全てと、たくらみを全部はいてもらうわ」
  いいつつ、すっと目の前に手を突き出す。
  「って、おい!?」
  その気配に気づき、驚いたような声をあげているラウリィであるが。
  「大丈夫!加減はするしっ!」
  「いや、そういう問題じゃなくて、あんたが今使おうとしている『力』…はっ!」
  それが何なのか感覚で判ったがゆえに叫ぶしかないラウリィ。
  「そっちと似たようなものよ」
  似たような……
  そういわれて、おもわず腰の剣にと視線を落とす。
  レナ達と出会い、付き合いはそれほど長いわけではない。
  だから、知らないこともまだある、というのは理解していたつもりではあるが。
  現実をつきつけられてただただ驚愕せざるを得ない。
  そしてまた、ほとんど自分たちの境遇に近しい状況におかれているのだ、と今さらながらに理解する。
  そう。
  レナの中に肉体を持たずに誕生した、リナ、という人格は……
  ごうっ!!
  刹那、『リナ』の口からある種の言葉がつむがれる。
  それと同時に周囲に立ち上る炎。
  この炎は通常の炎ではない。
  精神世界面(アストラルサイド)にも干渉し、特定のものたちを外に出さないための結界をもかねている。
  「まったく。かってに人の身で、しかも魔王を崇拝?まあ、それは宗教の自由もあるからいいとして!
    でも、許せないのは、誘拐とか襲撃とか問答無用の悪事を働いていることよっ!」
  体内に眠りし力もまたその叫びに呼応する。
  そもそも、『今』そのようなことは望ましくない。
  それでなくても、現状が現状。
  下手に動いて目をつけられれば、それこそ一瞬のうちに無と化すであろう。
  「…と、とにかく。俺たちもいこう!兄さん!」
  『おうっ!』
  驚愕しているままではどうにもならない。
  すぐさまに我にともどり、即座に光の剣を発動させる。
  剣を利用するときに必要不可欠なのは、剣の形を成している『魔』の中にいる『ガウリイ』の意思。
  それがなければまちがいなく、力は暴走してゆくであろう。
  人の心は弱いようでいて強い。
  そう、光も闇も関係なく、それらを全て乗り越えることができるほどに。
  人は…守りたいもののためならば、どこまでも精神的に強くなれるものなのだから。


  「これで一通りは壊滅できましたねっ!!」
  そもそも、お約束にも付近にある洞窟全てに彼らの僕ともいえる仲間たちがいる。
  というのはいかばかりか。
  プラムより付近の洞窟や、誰かが潜めるであろう場所は聞き出していた。
  そのことごとくに彼らの仲間とおもわしき男たちがたむろしていた。
  その中には、目を覆いたくなるような実験器具のようなものすらも。
  助ける方法はすでにない。
  そもそも、ゼルガディスの体はレゾが元に戻したのであって、他人のソレを治す技術はない。
  それが意思をもたないただの道具とさせられてしまった誰かの末路、だと思えども。
  大きさ的にはおそらく元子供なのであろう。
  いきながら、実験材料にされ、その魂すらをも冒涜された子ども達。
  アメリアはそのことに気づいていない。
  否、あまりに悲惨な現状を彼女に見せたくはない。
  あのように光で満ち溢れている女の子には闇の世界の出来事は似つかわしくない。
  様子をみてくる、といって先に侵入したとある洞窟。
  そこでみたものは、人を人ともおもわない実験をしている男たちの姿。
  すでにその場に実験材料としてであろう、捉えられてきていたものたちの意識も…そして魂すらなく。
  かといって、親元や家族の元にもどそうにも、その姿が生前のものとはかけ離れたものになっていれば。
  ……これ以上、悲しみを増やさないためにもとる手段は一つ。
  中で何が行われていたのか知らされていないがゆえににこやかに、
  ゼルガディスが破壊した洞窟をみながらもにこやかにいうアメリア。
  「あ。ああ。そうだな。とにかく、いこう。…クロツたちの居場所がわかった」
  「はいっ!」
  彼らの目的は、魔王の復活。
  そしてまた、それにともなう世界の悲劇。


                 ――Go To Next



#########################################

あとがきもどき:

薫:ふふふvそろそろ爆弾発言近しv次回くらいかなぁ?
  ともあれ、ようやくプラム編もクライマックス付近ですv
  このたびのこれはある程度客観的に捕らえたからか短く打ち込みをば(こらこらこら
  まあ、基本のストーリーは、みなさん、巨大あとがきをみている人ならわかりますしね。
  というわけで、次回はまたエルたちサイド、それから合流ですv
  ではまた〜♪




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33549○バラレル・トラペラーズ○〜写本〜かお E-mail 2008/4/26 21:33:19
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

 さてさて。このたびは、リナ達家族と魔族側(ゼロス&マゼンダ)
  ようやく写本の登場ですvですがあっさりとそれは消滅v(こらまて
  さてさて…ゼロスの行動をどっちのパターンにするかなぁ??ううみゅ……

  #####################################


      ○パラレル・トラベラーズ○〜写本〜


  「……あのぉ?何をなさってるんですか?マゼンダさん?」
  思わずあきれた口調で問いかける。
  リナとともに、クロツがいるであろう方角にと進んでいた。
  だがしかし、その途中でばったりとであったガウリイたち。
  ふとみれば、金色の紐のようなものでつながれたマゼンダの姿が目にとまる。
  魔族ともあろうおひとが何簡単につかまってるんでしょうか?
  そんな疑問をおもいながらもあきれつつも問いかける。
  「というか。マゼンダつかまえたんだ」
  それをみておもわずこちらもまたあきれていっているリナ。
  まあ、エルたちは姉ちゃんたちからいろんな術を聞いていたから可能かもしんないけど。
  だけど、あたしですら魔族を紐でつないで絡め捉えるなんてできないけどねぇ。
  紐をもっているエルをみながらも苦笑するしかない。
  「ひっ、ぜ…ゼロス!?」
  もっとも畏れていた姿を目の当たりにしてひきつった声をだしているマゼンダの姿。
  「あ、おか〜さん。あのね、あのね、このまぜんだにあんないしてもらってるの〜」
  「あ、か〜さま!おかえり〜。んとね、マナね、マナね、いいこしてたよ?」
  「はいはい。いい子にしてたみたいね」
  ひょいっと抱っこをせがんでくるマナを抱き上げながらも答えるリナ。
  「しかし……それって……」
  ゼロスだから判る。
  精神世界においても金色の紐のようなものでマゼンダの本体そのものが絡めとられている、ということが。
  「まあ、エルは姉ちゃんたちからいろいろときいてるだろうしね。何があっても別におかしくないし」
  「そ、そういう問題ですか?」
  さらっとしたリナの言葉に思わず戸惑いの声をだすゼロス。
  どうもこの人たちに関わりだしてから、戸惑うことだらけなのは気のせいでしょうか?
  などとゼロスが思っていたりすることは当然リナ達には判らない。
  「あ。そ〜いえば、おか〜さん。やっぱりこっちでもガーヴがなにかしてるみたい〜」
  ここにくるまでにマゼンダより聞き出したこと。
  隠していてもこの状態においては、
  使っている力が力であるがゆえにマゼンダの考えは全てエルにと筒抜けとなる。
  「しかし。プラム達までつれてきたの?ガウリイ?」
  「彼らをのこしておくより安全だろ?」
  「ま、たしかに。そうだけど。…ま、いっか。そのほうが確かに安全だしね。
    ところで、どこにむかってたわけ?」
  クロツたちがいるとおもわれる場所とはまた異なる場所のほうに進んでいるような気がする。
  そもそも、ガウリイたちがリナ達が進んでいた方向。
  そちらにむかってきていなければまず鉢合わせする距離でもない。
  「え?ああ。何だかこの子が渡したいものがあるとかで、そこにむかってたんだが」
  そんなリナの質問に、ぽりぽりと頭をかきつつも答えるガウリイ。
  すでに日は暮れかけており、周囲は夕日が落とす静かな風情をかもし出している。
  とはいえ、ここは森の中でもあるので暗くなるのもまた早いが。
  「?渡したいもの?」
  その言葉にきょとん、とした声をだす。
  「え。ええ。あなたたちに託したほうがいいような気がしまして……」
  魔族ですらあっさりと捕らえられる実力を小さな子供ですら持っている。
  ならば、彼らに渡してもさほど問題にはならないであろう。
  そう判断したがゆえの決断。
  そもそも、魔族まででてきたとなれば、いくらプラムとて弟を守りきれるものではない。
  いくら昔から続いていた役目とはいえ、それでもかけがえのない存在と比べられるはずもない。
  そもそも、かの一族の存在が現れた以上、彼に託すのが一番。
  一族の使命は、アレを他人の目に触れさせることなく守ってゆくこと。
  いつか、時がくるまで。
  今こそその時なのだ、と自分自身にいいきかせて結論をだしたプラム。
  「おや。それは助かります。プラムさん。いやぁ、これで僕のお仕事も早く終われそうで何よりですv
    あれを他人が悪用することは避けたいですからねぇ。いや、本当にv」
  彼らからすれば、別に利用されようがかまわないが、問題なのはその知識が広まること。
  どこから危惧している情報が漏れ出す、とも限らない。
  そんなプラムの言葉ににこやかにいっているゼロス。
  「…うう。アレがらみ、とわかっていれば……」
  そんなゼロスの言葉にいまだに何やらうめくような形でつぶやいているマゼンダ。
  そもそも、第三者がみれば、エルが金色の紐でマゼンダをつないでいるように見て取れる。
  エルの感覚すれば風船のようなものでしかないのだが。
  「なるほど。まあ、確かに。アレさえもっていなければ、奴等があなたたち姉弟にかまう条件はなくなるわけだし。
    でも、ほんとうにいいの?それで?あなたは?あなたたちが守ってきたものじゃないの?」
  それでなくても、写本というものはかなりの価値がある。
  長い間、こんな辺境の地にて暮らしていたのもそれが原因だ、そう考えられる。
  というかそうとしか考えられない。
  それに書かれている内容が内容なだけに下手に人とかかわることすらできずに。
  「ええ。あなたたちならば、あれを悪用するようなことはないのでしょう?
    …そこの神官さんはわかりませんけど」
  そもそも、この神官が本当に魔族なのかどうかはわからない。
  が、しかし、マゼンダのおびえようからしておそらくそれは事実なのだろう。
  魔族、といわれても完全に人のそれと変わりがない。
  ゆえにさほど恐怖感が沸かないのも事実。
  「まあ、僕としたらとっととお仕事をすませたいですからねぇ」
  「というか。見つけたとたんに確認した後に燃やすとかするわけ?あんたは?」
  「うっ!?な、なぜそれを!?」
  さらっというリナの言葉に思わず絶句しながらも図星を指されて戸惑い気味の声をだす。
  だがしかし。
  「で、でも!リナさんだって燃やすっていってたじゃないですかっ!」
  すかさずその話題をリナに振る。
  「あたしはいいのっ!あんなの世の中にでまわったらロクなことになんないんだしっ!
    そもそも、完全な知識がほしければ本家本元にいけばいいわけじゃない」
  「え〜?でも、おか〜さん?ふつ〜はあそこのでいりぐちしらないとおもうよ〜?
    まあ、じょおうさまにきけばもんだいはないけど」
  そんな母娘の会話に、
  「え?本家?…じょおう…え?」
  惑いを隠しきれないブラムであるが。
  「…やっぱし。ゼフィーリアの関係者、ですか。あなた方は。そ〜ですか……」
  その台詞にがくり、となるしかないゼロス。
  つまり、あの地の関係者となれば自分のことを知られていても、またあのことを知られていてもおかしくはない。
  ならばもしかして、もしかしなくても自分の身分をも知っているかもしれない。
  それにしては、あまりこの人たち、僕に対して警戒してないのが気がかりですけどね。
  そんなことを思わずおもうゼロス。
  普通ならば、腹心の次に実力のある高位魔族。
  そう知らされたときの人間、といわず他の生き物でもいえるのだが、ものすごい負の感情をあらわにする。
  それは、恐怖、とも何ともいえない、極上の負の心。
  それがまったくこの家族からは感じ取れない。
  それも初対面のときから。
  まあ、あの地の関係者…となればあまり詳しく詮索すると危険ですしね。
  そんなことをおもいつつ、
  「まあ、とにかく。僕のお仕事は写本の処分ですしね〜」
  そういえば、いってなかったような気もしますけど。
  ここまできたら別に隠す必要はないですし。
  そもそも、何となくですけどきちんといわないとマゼンダさんにかけているあの術。
  あれを僕に仕掛けてきかねませんし。
  何かものすっごぉぉくあの金色の光の魔力の紐…見てるだけで畏れが産まれるのはなぜでしょう?
  「処分?」
  そんなゼロスの言葉にただただ首をかしげるしかないプラム。
  「まあ、それはそれとして。その例の品物ってどこにあるの?」
  「え、ええ。この少し先の滝つぼの奥の洞窟に……」
  「それじゃ、そこにむかっていきますかっ!」
 「あ、あのぉ?私はいつまでこのままなんでしょうか?」
  「もちろん、まぜんだはぜんぶのあじとをかいめつするまでそのまんま〜」
  リナの言葉とは対照的に、情けない声をだしているマゼンダ。
  「あ、それかなんならふ〜せんのすがたになってもい〜よ?そのほ〜がいわかんないし」
  それか強制的に姿を変えるか。
  そんなエルの思いは何のその。
  「それかそいつにアジトを全部壊滅させらせるか。よね。エル。それって精神世界で束縛してたら。
    物質世界のどこに出現していようが舵取りは可能なんでしょう?」
  何となくだが、判るのは娘が使う術だからか、もしくは似たような術をリナもまた研究しているがゆえか。
  「うん。どこにいてもほんたいそのものつかまえてるし。しょうめつもかんたんだよ?」
  びくうっ。
  消滅。
  その言葉にあからさまに反応してしまうマゼンダ。
 「というか、このお子さんっていったい……」
  そんな会話をききながら、ぽそっとつぶやいているゼロス。
  「まあ、そんなどうでもいいことはおいといて。そろそろ滝の近くにきたぞ?」
  ふとガウリイの指摘に気づいてみれば、すでに滝の近くにやってきているらしく、
  森の中より滝が滝つぼにと落ちる音が響いてくる。
  ともあれ、そのままエルの術に対する突っ込みはそれ以上誰もすることなく、
  彼らは滝の裏にとある洞窟にと向かってゆく。

  天然の洞窟。
  確かにここはものを隠すのにうってつけであろう。
  岩肌にところどころオリハルコンが純度が落ちるまでも見て取れる。
  もっとも、ここでオリハルコンを採掘したところで残る品物の純度は低いのでさほどの利益もない。
  だがしかし、純度がいくら低いとはいえ、魔力を遮断する役目は負う。
  ゆえにこういった場所は過去においてよく様々な儀式の場にと利用されていた。
  「どうやら。自然の鍾乳洞のようですねぇv」
  中に入ると、まず目にはいるのは、天井よりつきだしている岩の数々。
  そして足元にひろがる幾枚ものお皿のような岩肌。
  今ここで下手な呪文などを唱えて天井がくずれれば、それこそとがった岩の直撃をうけるのは間違いない。
  もっとも、魔力そのものがどこまで発揮されるかもわからないが。
  だが、その基準は所詮、人の基準で考えてのこと。
  高位魔族であるゼロスにとってはそんなことはまったくもって関係ない。
  「たしかに。ここなら隠し場所にうってつけではあるわね」
  このような洞窟ならば隠し場所もかなりある。
  おいそれと簡単に見つけ出せれるものではないであろう。
  「あ、この奥です」
  ブラムが指差したのは、さらに地下にと続いている洞窟の小道。
  ちなみに、足場が悪いのでリナがマナを抱きかかえ、ガウリイがいつものようにエルを抱きかかえている。
  ブラムとクリフに関してはここにはよくきていたのでさほど苦労は見当たらない。
  ひんやりとした空気が何ともいえない。
  その奥のほうに何やら祭壇らしきものがあり、その中心にとある小さな箱。
  それをそっと手にとり、リナにと手渡してくるプラム。
  「これです。…ザナッファーの元になった写本、そう代々つたわっている品物は」
  そのプラムの言葉目を見開き、横にいるゼロスをおびえるようにしてみているマゼンダ。
  束縛されているので自由は利かない。
  それがいくら具現化している仮の体としても、本体そのものが束縛されているのだから当たり前。
  ひとまずマナをその場に下ろし、プラムからそれを直接うけとるリナ。
  箱はどうやらこれまたオリハルコン製らしく、普通に売るだけでも多少の値にはなるであろう代物。
  その表面には何やらびっしりと文字のようなものが書かれており、古代文字のような何か。
  「なるほど。失われた神聖文字などをつかって封印、ですか。手がこんでますねぇv」
  それをみて、にこやかに笑みをくずさないままのゼロス。
  中をみてみれば中の本にも何やらびっしりと細かな文字が刻まれていたりする。
  その効果のほどはわからないにしろ、直接手にとればその波動からどういった要素をもっててるのかは明白。
  「…多少の呪文とかじゃ、破棄…できないようになってるし。これ……」
  本に明記されているものは、少々の衝撃などは跳ね返す防御魔法。
  それだけこれを重要視していた、ということなのであろうが。
  「おやまあ。かなり手がこんでますねぇ。まあ、僕らには関係ないですけど。
    あ、それ、処分しちゃってもいいですか?」
  こにこにこ。
  それをみてもまったく動じることなくにこやかに笑みを崩さぬままリナ達にと聞いてくるゼロス。
  一応聞く、という辺りがゼロスらしい、といえばゼロスらしいが。
  「まあ、あたしはかまわないけど。プラムちゃんは?」
  いきなり話をふられ、戸惑うものの、
  「あ、あの。処分って……できるんですか?」
  幾度自身で燃やしてみようが何をしてみようがまったくうけつけなかったというのに。
  そんな戸惑いの言葉を発するプラムの言葉をにこやかに受け止めつつ、
  「それでは、いい、ということでv」
  ポシュッ。
  にこにこと閉じていた瞳をすっと見開く。
  その下から覗くのは紫色の瞳。
  こいつ、目を見開いたら一応魔族っぽく感じるのは感じるのよねぇ。
  そんなゼロスをみてリナはそんなことを思っていたりするが。
  ゼロスがすっと目を見開くと同時、リナが手にしていた箱の中の本が紫の炎を上げていきなり燃え出し。
  そのまま、やがて灰となりその灰すらも燃えつくされ、後には何も残骸すらも残らずに綺麗さっぱり消えてゆく。
  「「…なっ!?」」
  それを目の当たりにして驚きの声をあげているプラムとクリフ。
  今、ゼロスは何も手をだしていなかった。
  そもそも、リナとゼロスの一は多少ではあるが離れている。
  しかも、ゼロスは何の言葉すらをも発していない。
  まあ、ゼロスの実力を一応知っているリナやガウリイは驚くことでもないのだが。
  その実力を知らないものからすればそれは脅威以外のなにものでもない。
  「さってと。これで僕のお仕事は完了ですvいやぁ、助かりましたよv
    あ、それはそうと、そこのマゼンダさん、どうなさるおつもりですか?」
  この人たちが関わってくれたおかげでけっこうすんなりとコレの処分はいきましたねぇ。
  そんなことをおもいつつも、にこやかにリナとエルに向かってといかけてくる。
  ゼロスにとってはプラムたちが抱いた驚きはここちよい負の感情に他ならない。
  「そうねぇ。エル、どうする?」
  「ん〜。このまま還すのはなにかげいがないとおもうし〜。あ、そ〜だ。 
    なんだったらぜろすおじぃちゃんのおてつだいさせのは?どうせあのくろつたちって他にもあつめてるでしょうし」
  事実、他にも写本もどきや写本そのものを集めているクロツ。
  それを知っているが、知っているとはいわずに、にこやかに提案するエル。
  三歳児の提案するようなことでもないようなきがするのは、おそらくプラムの気のせいではない。
  「ひっ!?そ、それは……」
  そんなエルの言葉に、おもいっきり悲鳴に近い声を出しているマゼンダ。
  「あ、それいいかも。ついでにゼロスが他の支部とか壊滅してくれればそれにこしたことはないし」
  「って、どうしてそこで僕がそんなことまでしなくちゃならないんですかっ!?」
  にこやかにさも当選のような会話するエルとリナの台詞に思わず突っ込みをいれるゼロス。
  「あら?もちろん、いや、とはいわないわよね。ぜろすおじいちゃん?」
  「うっ」
  何なんでしょう。
  この感じる何ともいえない威圧感というか、断れないこの畏怖のような感覚は。
  にっこりとエルに微笑みかけられておもわず固まるゼロス。
  「って、私の意見は!?」
  悲鳴に近いマゼンダの台詞はいともあっさりと無視される。
  「だって、このまままぜんだこんとんに還してもおもしろくなくない?」
  「こ…混沌…って……」
  「だけど、エル?その魔族の姉ちゃんにかけてる術ってそれって金色の姉ちゃんの力だろ?
    いくらゼロスでも触れることはむりだろ」
  「「「いやあの、金色の姉ちゃんの力って……」」」
  さらっというガウリイの言葉に同時に突っ込みをいれるゼロス、プラム、クリフの三人。
  「それか、このままふうせんにしてからもっていくか、だけど」
  「って、ちょっと!?風船って何よっ!?風船って!?」
  「きょうせいてきにすがたをこていすればいいだけだし」
  「え?ね〜さま、ふうせん!?まな、ほしいっ!」
  抗議の声をあげてくるマゼンダとはうらはらに、にこやかな何ともほのぼのとした会話をしているこの姉妹。
  「……ええと。何かとてつもなく怖い話をしてませんか?あなたたち?」
  金色の姉ちゃんの力、というのがかなり気にはなるが。
  世の中、聞かないほうがいいこともあるような気がひしひしとしますし。
  そんなことをおもいつつも、恐る恐るいってきているゼロスの姿。
  「え〜?ただ、まぜんだのほんたいをふ〜せんもどきにしてぶっしつせかいにだしとけばもんだいないし」
  「でもねぇ。いくら風船に変えたとしても。
    まあマゼンダごときの魔力じゃあ、束縛から逃れられないのはわかるけど。
    ここはやっぱりゼロスにおしつけといたほうがいいとおもうけど」
  「まあ、大切なエルとマナの側に魔族がいる、というのも何だかだしなぁ。
    それにせっかくの家族水入らずを邪魔されたくないし」
  エルの言葉をさほど疑問に思わずに、それでなっとくしているリナとガウリイ。
  リナもまた、エルの術の実験などといってかつてやったことを知っているのでさほど問題視はしていない。
  もっとも、その事実を知らないものからすれば驚愕する以外の何ものでもないのだが。
  「そう?じゃ、やっぱりぜろすおじいちゃんにまかせようっ!
    そもそもさ。りはんしてるひとたちをほっぽってるひとにももんだいあるわけだし」
  至極もっともなエルの意見。
  「あ〜。たしかに。そもそも、セイルーンといい、今回の件といい。
    離反してるあいつをほぽてるのが原因だしねぇ」
  「って、あなたたち!?なぜそこまで詳しいんですか!?っはっ!?まさかあのひとも…」
  水竜王ならそのあたりの知識はあってもおかしくはない。
  まさか、この人たちはあの竜王さんが世情を調べるためにつかわしてるひととか!?
  かなり突拍子もないことを思いつき、思わずさけんでいるゼロス。
  「ま、話はきまったことで」
  いや、決まってない、決まってない。
  心の中でリナ達家族以外はその言葉に思わずつっこみをいれるが口にはだせない。
  「というわけで、こいつはゼロスに預けるわ。にくなりやくなりお好きにどうぞ」
  「あ、とりあえずほんたいはそのままそくばくしてるから、なにならぜろすおじいちゃんもうけてみる?」
  「え、遠慮しておきます」
  即座に嫌な予感が突き抜けてすばやく返事をかえすゼロス。
  「それじゃ、話はまとまったことだし。あ、プラムちゃん、この箱はもらってもいいのよね?」
  「え、ええ」
  「じゃ、いきますかv」
  何やらその場に固まっているままのゼロスと、身動きすらとれないマゼンダを残したまま。
  そのまま外にと向きをかえて出てゆくリナ達。
  いいのでしょうか?
  そんなことを思うものの、だがしかし好き好んで関わりたい相手ではない。
  何しろ相手は底知れない力をもっている、リナ達曰く、魔族、とのことなのだから。

  「え…ええと。僕はどうすればいいんですかねぇ?
    まあ、裏切りもののマゼンダさんをほうっておく、というのも何ですし。
    あ、少しお聞きしますけど、マゼンダさん。クロツさん達があつめているほかの品、ご存知ですか?」
  とりあえず、知っていればしばらくいかし、知らなければそのまま消滅させよう。
  そう判断を下し、にこやかにマゼンダに問いかけているゼロス。
  マゼンダからすればどちらにしても生きたここちはしない。
  目の前のゼロスにかなうはずもない。
  また、この状況ではどんな抵抗も無駄。
  そもそも、少しでも束縛から逃れようとすればいいようのない恐怖に襲われるのだから――


             ――Go To Next



   #########################################

あとがきもどき:

薫:本能的にエル(ちゃん)は逆らえないゼロス君(笑
  まあ、魔族ですし、本能は強いとおもうんですよねぇ。あしからずv
  さてさて、一番気の毒なのは、マゼンダなのか、はたまたゼロスなのか。
  もしくはそんな魔族のまっただなかにつれていかれてるプラム達姉弟なのか。
  リナ達家族にすれば、魔族がらみの事件など日常茶判事v
  何はともあれ、次回、レナ達サイドですv
  さて…この世界のレナ&リナの秘密にいけるかな?
  何はともあれ、ではまた次回にて〜♪




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33551○バラレル・トラペラーズ○〜秘めたる真実〜かお E-mail 2008/4/27 19:54:58
記事番号33514へのコメント



 まえがき&ぼやき:

 さてさて。今回は平行世界におけるインバース姉妹(レナ&リナ)の秘密〜
 といっても秘密になってない秘密ですけど(笑
 あ、でも基本的にはルナ姉ちゃんが赤の竜神の力をうけついでおり、(しかもほぼ当人)
 んでもって水竜王は裏設定とおりに当人です(笑
 原作のルナ姉ちゃんにおいては、竜神の力の欠片、らしいですどね。
 7/1の欠片と本格的に戦ってかてるかかてないか、とのところらしい。
 何はともあれ、ゆくのですv

#####################################


○パラレル・トラベラーズ○〜秘めたる真実〜


 ざあっ。
 周囲に風が吹き抜ける。
 何ともいえない瘴気に満ちた風が。
「ふはは。貴様らには何もできまい?」
 ち誇ったようにと笑い声を高らかにあげる目の前にいる男性。
 懐より何か取り出したと同時に何やらつぶやくと同時。
 周囲に黒い霧が立ち込め、その刹那、霧の中より産まれ出でるいくつもの異形の姿。
 もはや子供などはどうでもいい。
 もっといい素材が目の前にいるのだから。
 それゆえに、子供の入っている袋をそのまま放り出す。
 レナ=インバースの名前をきき、多少びくつくものもいたりするが、だがしかし。
 クロツの命令は絶対。
  そもそも、彼らはクロツに命を助けられているがゆえに、逆らうことができない。
『ぐるるるっ……』
 ふとみれば、周囲に取り囲むように召還されているレッサーデーモンやブラスデーモンの数々。
「それで?」
  だが、別に動じることはない。
  そもそも、『リナ』に彼らが攻撃を仕掛けることはまずないのだから。
「ラウリィ、ラウリィは子供をお願い」
「あ、ああ。わかった。だけどあんたは……」
 表にでてこなければわからない気配。
  だが、その気配がわかる、というのはラウリィだからこそ、といえるであろう。
 「こいつを野放しにしといたら!あたし達が姉ちゃんのお仕置きをうけるのよっ!!」
  ぐっ。
  最後の台詞におもいっきり力をこめてこぶしを握る。
  クロツたちは気づかない。
  レナと思わしき少女の雰囲気が変わったのと。
  そして、そのブラウン色であったはずの瞳の色が紅に変わっている、ということに。
  「あんたたち。選びなさい。そっちのやつに従うか。それとも『私』の言葉に従うか」
  ぴくっ。
  私、という言葉にのみとある力を乗せた。
  その言葉に周囲に出現したレッサーデーモン達がびくりと反応する。
  彼らは逆らえない。
  なぜならば……
  「な…なぜだ!?なぜ私のいうことをきかないっ!?」
  自分が呼び出したはずのレッサーデーモン達はレナ達に向かうことなく逆に自分たちの方向にと向いている。
  「冗談。魔王を崇拝した組織ですって?んなのつぶさせてもらうからねっ!」
  どちらかといえば、『使う』のは好きではない。
  どちらかといえば、しばき倒してゆくほうがはるかに性分にあっている。
  合成獣と成された男たちも何かを感じているのか動けない。
  レナの…否、紅い瞳に見つめられればうごくことすらままならない。
  紅い瞳はリナの内なる力が表にでてきている証。
  それでも、リナがリナでなくならないのは。
  「姉ちゃんたちに感謝、というわけでもないけど。だけど、覚悟なさいっ!」
  いうと同時、ばっと手を特殊な形にくみ、そのまま頭上に掲げる『リナ』。
  それと同時、周囲が刹那、何ともいえない空間にと覆われる。
  リナ=インバース。
  レナ=インバースの双子の姉であり、そしてそのレナの肉体の中に同時に存在しているもの。
  そしてまた…そのうちなる魂の奥底にあるモノを宿している存在。
  だがそれは、周囲の事情が事情であるがゆえに知られることはまずない。
  そもそも、そのことを知ったうちなるものからしても、望ましくない形なのだから。

  協定。
  それは、リナとレナの実の姉であるルナ=インバースの存在意義と。
  そしてまた、産まれた土地柄によるもの。
  いくら、『欠片』そのものだとしても、水竜王当人と、力を受け継いでいる赤の竜神騎士にかなうはずもなく。
  かといって、そのまま覚醒しても、結果は明らか。
  それは彼らの本意ではない。
  だからこそ、彼らの存在意義もあり、『協定』が結ばれ今現在になっている。
  精神と肉体の分離が成功した暁には、そのまま彼もまたいずこへ転生してゆく、ということも。
  だが、それは一部の…否、ルナ=インバースとそしてゼフィーリアの女王。
  そして、妹であるレナと当人しか知らない事実。

  『リナ』としても、ソレが判っているがゆえに、有効利用して人生をどうにかいいようにしよう、という節がある。
  そもそも、なっているものはしかたがない。
  それに対応した生活をしてゆくしかないのだから。
  そもそも、『リナ』自身には自由も何もないのだから。
  「さってと。この結界からは逃れられないわよ?
    ……赤眼の魔王(ルビーアイ)・シャブラニグドゥの力を使った結界からは、ね」
  『リナ』が今使用したのは、魔王の力。
  かつての戦いのときにリナが表にでなかったのは、欠片の意思にひっぱられないがため。
  近くにいれば欠片同士は共鳴する。
  だからこそ、あのとき、あまり『リナ』は表にでてこなかったのだから。
  『リナ』がこの組織の内容をきき、過敏に反応したのはそこ。
  つまりは、欠片を宿している自身にもそのとばっちりが回ってくることは必死。
  否、下手をすれば自分のせい、とばかりに散々お仕置きをうけらされる、ともわからない。
  それから逃れる方法は、ただ一つ。
  すなわち、自らの手で組織を壊滅させること。
  「き…貴様…いったい……」
  「こっちにも事情があってねぇ」
  「その事情、後できかせてもらうとして!今は、とにかくクロツ!貴様らの悪事もここまでだっ!」
  いいつつ、すらり、と剣を引き抜くラウリィ。
  この結界の中にいるのは、クロツたち一味とそしてラウリィと『リナ』のみ。
  捕らえられていた子供は結界の外にいるがゆえに、問題はない。
  先刻、ラウリィが放った一撃による風の衝撃刃で子供が入れられていた袋は破れている。
  おそらく自力でどうにか逃げ出せられるであろう。
  クロツたちの一味全てはこの結界の中にと招待しているのだから。
  力を表に出している『リナ』にまずかなうものはいない、といっても過言でない。
  否、勝てる存在は数名ほど存在はしているが。
  だがしかし、通常のそこらにいる存在にたちうちできるものでもない。
  そもそも、その能力なども使いこなすことができるのだから。
  それも、魔王、として覚醒せずとも、リナ、としての意識のままで。
  とにかく『あの(かた)(こ)』がくるまでにケリをつけるっ!!
  あのとき、レゾ=シャブラニグドゥとの戦いの中で気づいた事実。
  それは誰にも話してはいない。
  それを知っているのは、『リナ』とその内部にいる『魔王』のみ。
  「な……何だ?これは……」
  こんな術など聞いたことがない。
  ゆえに珍しくも戸惑いを隠しきれないクロツ。
  すでに合成獣化されている存在たちは、その体内に合成された生物の影響により身動きすらとれない。
  「まあ、前ほどではないけど……」
  伊達に、完全に復活しかけた欠片と対峙していたわけではない。
  それゆえに耐性がついてるのかそんなことをつぶやいていラウリィ。
  こういう気配を含んだ空間に閉じ込められたりするのは今に始まったことではない。
  何しろ彼の一族は中には魔族の力を借りてでも、『剣』を自らのものにしよう。
  という輩も今までいたのだから。
  当然、そんな輩は枷となる魂がいない状況で行った場合、即座にゴルンノヴァに取り込まれていたのだが。
  「く…くるな・・・ うわぁぁぁぁぁぁっ!」
  閉じられた空間の中、男たちの何ともいえない叫びと悲鳴がこだましてゆく。


  [ああ!レナ!ずるいわっ!」
  私が悪をこらしめたかったのにっ!
  そんなことをおもいつつ、目の前に広がる光景にどこかずれた文句をいっているアメリア。
  ひたすらにアジトとおもわしき場所を壊滅していっていた。
  そして、そのうちにレナ達がいる場所にと合流したのだが。
  アメリアが目にした光景は、あたりに転がる男たち。
  しかも全員が魔力の枷の紐でしばられて身動きがとれなくなっている。
  霊縛符(ラファスシード)と似た術だということはアメリアも理解はできる。
  すでに、表に出ていた『リナ』は再び奥にとひっこみ、いつものレナにと戻っている。
  この場で何がおこったのか知っているのは倒れている男たちとラウリィのみ。
  気絶している男たちはびくり、とも動かない。
  「ずるい、っていわれても。それより、アメリア。こいつら、近くの役所につれてくつもりだけど。
    あんたの名前をだしてもいいわよね?」
  セイルーン王家の名前を用いれば、いくら何でも彼らが罪を免れようと嘘をついても逃れようがない。
  そもそも、目撃者がセイルーン王家の一員なのだから。
  いくらお役所仕事の役人、とはいえ、大国であるセイルーン王家が関わった事件。
  となればうやむやに処理はできない。
  「まかせてください!彼らにはそれそうおうの罰をうけてもらいますっ!」
  レナの言葉に、どんっと胸をたたきながらも即座に答えているアメリア。
  「それはそうと。よくこいつら、捕らえられたな。あんたら」
  相手は噂ではたしか、国ですらてこずっていたという裏の組織のはず。
  しかも、見たかぎりでは、合成獣化されている存在の姿もかなりある。
  レナ達の実力は多少は理解しているつもりではあるが、さすがに戸惑いを隠しきれないゼルガディス。
  「え?あ、まあ。ちょっとね」
  「…ちょっと、ねぇ〜」
  言葉をにごすレナにじと目でいっているラウリィ。
  「と、とにかく!あとはプラムちゃんたちにもう大丈夫。というのを伝えるのと。 
    あと、これらを運ぶのがあるけど。あとは近隣の村にもう安全、と伝える役目、か」
  どうやって捕らえたのか、というのは名言をさけるレナ。
  いくら何でも『リナの中にある力』を使って捕らえた、などとは口が裂けてもいえない。
  特に目の前で実の曽祖父がそれに乗っ取られているゼルガディスがいればなおさらに。
  「しかし。これだけいれば運ぶのも大変だぞ?」
  確かに。
  浮遊を使い運ぶにしても、手間がかかる。
  賢者の石こと魔血玉(デモンブラッド)を手にしているゼルガディスだとて使えない術は使えない。
  周囲というか一箇所に集められている男たちをみつつもあきれた声をだす。
  「何をいってるんですかっ!役人たちをここにつれてくればいいんですっ!」
  きっぱり。
  きぱり言い切っているアメリア。
  「あ、それいいかも。それじゃ、アメリア、お願いね。えっととりあえずゼルがついていってくれる?」
  確かに、彼ら全員をつれてゆくより、ここに役人をつれてきたほうがはるかに早い。
  「まかせてっ!」
  「というか、あの家族はまだきてないのか?」
  この場にいまだにガウリイやリナ、そしてエルとマナといった家族が来ていないのに気づいて首をかしげるゼルガディス。
  彼らは知らない。
  リナ達はとりあえず写本を先に処分しに向かっている、ということを。
  「それじゃ、ひとまずいきますね!さあ、ゼルガディスさん!いきましょうっ!」
  「って、マントをひっぱるなっ!マントをっ!」
  「浮遊(レビテーション)!!」
  多少浮遊(レビテーション)の術だとてアレンジを加えれば歩くよりも早い移動は可能。
  魔術、とは基本応用力におうじて様々な効用をなすもの。
  そのことは、アメリアはお家柄かなり叩き込まれている。
  そしてまた、ゼルガディスにしろレゾの元でそういったことは自然と身についている。
  ゼルガディスのマントをひっつかみ、いきなり術を唱えているアメリア。
  思い立ったら即行動。
  それがアメリアのいいところでもあり、そしてまた欠点でもある。
  飛び立つそんな二人を見送りつつ、
  「さってと。とりあえず、こいつらはこのままほっぽって。リナさんたちと合流しましょ?」
  「まあ、その術は普通ならば解けないしなぁ」
  すでに目印となる印は近くの木にと刻んでいる。
  つまりは、この印を目印とするかぎり、どこにいようがその場所は把握できる。
  「そういや。ラウリィは呪文つかえないんだっけ?」
  「今まであまり必要がなかったしなぁ」
  そもそも、魔力はあるのはわかっている。
  判ってはいるが下手に使わないほうが剣をつかうのに都合がいいのもまた然り。
  何しろ基本、ラウリィがもっている『光の剣』の糧は知力ともいわれているが、魔力でも可能。
  ゆえに、自身の魔力をコントロールにと費やしているのが現実。
  それでも、たかが人間一人の魔力で異界の魔王の腹心をコントロールすることなどできるはずもなく。
  だからこそ、『生贄』をささげ、その魂により魔族をその精神で封印、コントロールする、という方法がとられているのが現状。
  「ま、いっか。とにかく、それじゃ、手を離さないでね。翔封界(レイウィング)!!」
  リナ達がいる場所はその魔力の波動でどのあたりにいるのかはつかめる。
  特に強い力がそばにあるがゆえになおさらに。
  そのまま、その場に気絶しているクロツたちをほっぽって。
  アメリアとゼルガディスは役人たちを呼びにいくために、
  そしてレナとラウリィはリナ達家族と合流するためにと術を使い移動してゆく。
  後には、そのまま完全にびくり、とも動かない男たちの姿が森の中、見受けられてゆく。


  「しかし、よかったのか?リナ?」
  「何が?」
  レナ達がクロツと戦っている最中、ちょうど写本の元にとたどり着いていたリナ達。
  洞窟よりでてあるきながらリナにと問いかけてきているガウリイ。
  「あの魔族のことだとおもうんですけど……」
  あのまま、あの場に残したままで外にと出てきた。
  かなり気にはなるものの、好き好んで一人ででも戻りたい、とは思わない。
  そんなことをおもいつつ、小声でつぶやいているプラム。
  「でも、お姉ちゃん、僕あの人こわい……もうあいたくない……」
  冷たいまでのまなざしは、子供にとっては恐怖以外の何者でもない。
  子供ならではの純粋さにて相手を畏れる。
  それは相手が気配をかくしていようとも、判るものにはわかる勘。
  もっとも、気取られるような力しかもっていない、というのもいえるのだが。
  「ああ。あれ?まあ、いいんじゃない?ゼロスが滅ぼすにしろ。利用して他の写本もどきをつぶすにしろ。
    どちらにしろ、好き好んでゼロス達と魔竜王ガーヴとの戦いに巻き込まれたくはないし」
  それが本音。
  ゼロスとて間違いなく命令がでていない以上、好き好んで魔竜王ガーヴ配下とことをかまえない。
  それは世界は違えども性格は同じようなものだ、と理解したがゆえに確信をもっていえるリナ。
  「む〜。マナ、ふうせんほしかった……」
  「マナ。あれの風船はばっちいから、別なのね」
  マゼンダを風船にできる、という言葉をきき、風船をもちたかったマナ。
  それゆえに多少機嫌が悪い。
  「とにかく。この箱であいつらをおびき寄せる手にはなるでしょうし」
  中に何もはいっていない。
  というのは一見しただけではわからない。
  だからこそ、相手をおびき寄せる罠ともなる。
  「?でも、たぶん、もうレナおね〜ちゃんたちがしまつつけてるとおもうよ?」
  先ほど感じたあの力。
  リナ達は気づいていないようであるが、エルは気づいているがゆえに首をかしげてきょとんと話す。
「まあ、それならそれでいいんだけどね。とにかく、いきましょ」
  エルの言葉は、ただ単に可能性を含めていっている、そう捕らえくしゃりとエルの頭をなでつつ答えるリナ。
 プラムたちからすれば、すでに守るべき写本はないものの、それでも、相手にそれをいって信じてもらえるかどうかは不明。
 というか確実に信じてもらえずにひどいことをしてくることは明白。
 ゆえにリナ達と共に行動していたほうが安全、ととらえ、しばらくリナ達とともに行動してゆくことに決めている。
  なごやかな会話をしながらも、リナ達家族と、プラム姉弟もまたレナ達がいるであろう方向にと向かってゆく。
 合流は、すぐ間近。




#########################################

あとがきもどき:

薫:
L:しかし、Sも何考えてるんだか。情けないわよねぇ。
姫:ま、そもそも、近くに赤の竜神さんと水竜王さんがいたから、という理由で、
  何かまだ幼い精神でもあったリナさんと協定結んでるしねぇ。
L:それが情けない!というのよ。まったく。
  そもそも、基本としてはリナの精神に封じられているにしろ、レナの肉体にも封印されてる状態になってるし。
薫:まあ、たしかに。こちらの世界のリナさんに関しては幾重にも重なった封印になってはいますけど。
L:まあ、復活した刹那、滅んだとしても当然お仕置きは確実だけど。
  この間のレゾの中にいたSに関してもしっかりとお仕置き中だしv
薫:・・・・だから慎重になっているのでは(汗
L:まあ、そんなことはどうでもいいとして。そろそろきめたの?今後の展開?
姫:たしか、二種類あってどちらにするかいまだに悩んでたわよねぇ。薫さんはv
薫:あ…あはは……まあ、カンヅェル再来(リナ家族にとっては初見)ははいります…
L:あたしとしては、ディルスに入り込んでるラーシャートで遊びたいんだけどねぇ。
姫:あ、いいなvそれv
薫:え、ええと。何やら話しの展開が異なる展開になりそうなので、それでは今日はここまで。
L:ほおう。いい根性してるじゃない?話のこしを折る・・と?
姫:ほんっとv
薫:いやあの…って、んきゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
L:さってと。何かもぞもぞと球体のようなものに食べられている薫はほっといて。
L&姫:それでは、まったね♪





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33552○バラレル・トラペラーズ○〜捕縛、そして・・・〜かお E-mail 2008/4/27 20:01:53
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  さてさて。このたびでプラム編は完了ですv
  台詞ばかりで周囲があまり表現されてない?
  まあ、そのあたりは台詞で読み手に想像してもらうとして(こらこらこら
  何はともあれ、ゆくのですv

  #####################################


      ○パラレル・トラベラーズ○〜捕縛、そして……〜


  「やっほ〜。あめりあおね〜ちゃんたちv」
  「「って、エルちゃん!?」」
  そこにいるはずのないエルの姿をみて思わず驚きの声をあげるアメリアとゼルガディス。
  「って、どうしたの?ひとり?」
  そもそも、小さな三歳児が一人でこられるような距離でもない。
  それゆえに心配しつつも問いかけるアメリア。
  「んとね。たぶんじかんかかるだろうから、みちつなげてきたの〜」
  リナ達がレナ達と合流し、アメリアたちが役人を呼びにいった。
  そう聞いたのはつい先刻。
  だがしかし、役人をつれて戻ってくるにしても時間はかなりかかる。
  それよりは、空間と空間をつなげて役人たちを導いたほうがはるかに早い。
  魔方陣を利用した転移魔法。
  かつてはよく利用されていた術ではあるが、今ではその利用法を知っているものはごくわずか。
  そもそも、使えるものもごく限られた人数のみ。
  一般の人々はそんな術があることすらも知らない。
  魔力により魔方陣を描き、別の場所に書いた場所との空間と空間をつなげる。
  神魔戦争より前においては、この方法で離れた場所との行き来も頻繁であったのだが。
  すでに神の力や魔の力を人々が忘れて久しいこの現状では使用方法を忘れているのが現状。
  「道をつなげた、って……」
  相手がどこにいるのかさえわかっていれば、エルにとっては移動は可能。
  だがしかし、この方法をとるにしても、エルが一人でアメリアたちのところに迎えにいく。
  といってリナが当然許可するはずもなく。
  エルは一人が勝手に道をつなげてアメリアたちがいるこの場にきているのだが。
  役所など、という場所は大概使われていない意味もない部屋が一つや二つは存在する。
  そこに道をつなげているエル。
  持続時間を限定しているので、さほど問題にはならないはず。
  戸惑い気味な声をだすアメリアとは対照的に、
  「それはそうと、両親にはいってきてるのか?」
  「いってきてないよ?」
  『・・・・・・・・・・・・・』
  ゼルガディスの質問にさらっと答えるエルの台詞に思わず言葉を失うアメリアとゼルガディス。
  「って、それってかなり大変じゃないのっ!」
  思わず叫ぶアメリアの気持ちはわからなくもないであろう。
  だがしかし、
  「え〜?だけど、すうじついじょうもあそこでまつのもたいくつだし。はやいほうがよくない?
    これつかえばひがえりでことはすむんだし」
  まあ、悪事を働いていた人間達が数日のまず食わずで放置されようが何しようがエルにとってはどうでもいいが。
  「しかし、セイルーンの高位神官ですら難しい転移方陣をそう簡単に……」
  セイルーン王家には一応、その方法は伝わっている。
  伝わっているがゆえに何か釈然としないものを感じてぶつぶつつぶやくアメリア。
  「ま、まあ。この子達には常識はあてはまらないとおもうぞ。両親が両親だし」
  以前、魔王と戦ったときのことを知っているがゆえに、あきれつつもそれですますゼルガディス。
  「とにかく、はやいところおやくにんさんつれて、あっちにいこ?」
  にっこり。
  邪気のない微笑みでにっこりとされては断るにも断れない。
  というか、断る理由すら思い当たらない。
  「とりあえず、お役人たちに話してみますね」
  いいつつも再びこの役場のお偉いさんと話をつけるために奥の部屋にと向かってゆくアメリア。
  たしかに、エルのいうとおり、早く行動できるにこしたことはないのだから。

  「ええ!?もったいないっ!」
  思わず叫んでしまうのは仕方がない。
  絶対に。
  とりあえず、クロツ達も束縛している、というのもあり一度プラムの家にと戻っているリナ達一行。
  そして、リナがプラム達が守っていた写本のことを話したところ、予想通りのレナの反応。
  「でも、あれでよかったんです。きっと。世の中にでるよりは」
  アレがあるかぎり、自分たちに自由、というものがなかったのもまた事実。
  否、自分たちといわず一族の全てが。
  どこかアレがなくなったことにより肩の荷がおりて、心なしか表情が和らいでいるプラム。
  「だけど、写本よ!?写本っ!!って、そもそも何であのゼロスってやつが燃やしたわけ!?」
  リナから聞いたのは、あのゼロスという神官が写本を燃やした、ということ。
  そのゼロスにマゼンダを押し付けた云々までは話してはいない。
  言う必要もないことは、混乱を招くがゆえにはなさない。
  「しかし。あのザナッファーの元になった写本がまだ残っていた。というのは驚愕だな」
  そもそも、あのザナッファーはラウリィの先祖が倒した、といわれている存在。
  しかも、プラムから説明をうけた限りでは、写本を元につくられた、とのこと。
  ならば、その写本が残っている限り、同じような存在が造りだされることは言うまでもなく明らか。
  プラムからひとまず、写本もなくなったこともあり、さらに詳しく説明をうけているレナ達。
  レナの反応はその写本が燃やされた、というので悔しがることしきりなのだが、
  ラウリィの反応はといえば、何ともいえない表情をしていたりする。
  うとうととしているマナを抱きかかえながらも話をしているリナ。
  「そういえば。エルは?ガウリイ?」
  「外であそんでるとおもうぞ?」
  「…まあ、遠くにいってなければ問題ないけど」
  とりあえず脅威は去っているはずである。
  ゆえに、外で遊びたいさかりの子供をとどめる必要性はない。
  実際には、エルは外で遊んでいるのではなく、アメリア達のところにいっていたりするのだが。
  そんなことはリナは知る由もない。
  「しかし。あいつらの目的って……」
  すでにリナ達がレナ達と合流したときには、クロツ達一味は全員が気絶し、束縛されていた。
  アメリアの霊縛符(ラファスシード)などをよくみたことがあるリナからすれば魔術で相手を捕らえる。
  というのはさほど驚くことでもない。
  いまだに悔しさをにじませたままつぶやくレナに対し、
  「まあ、おおかた。伝説となっている魔獣を復活させれば自分が世界を支配できる。
    とか馬鹿らしい理由だったんじゃないの?」
  リナ達がいた世界においては、あのクロツはあれを増産してセイルーンに攻め込む云々といっていた。
  もっとも、いともあっさりとゼロスの介入と、そしてまた。
  マゼンダですら生み出されたザナッファーに喰われたのだから。
  「絶対に、それって無理だとおもうけど。まあ、姉ちゃんの耳に入るまえにカタがついたからよし?」
  レナからすれば、クロツ達のことが姉の耳にはいっていなかったであろうと思われること。
  そのことのほうが重要。
  否、もしかしたらあのルナのこと、知っている可能性はかなり高いのだが。
  それでも自身の手で何とかコトを収めた、というのもあり一息ついている。
  「レナ〜!!リナさぁんっ!」
  そんな会話をしている最中、外のほうから元気のいい声が聞こえてくる。
  ふと窓の外をみてみれば、ふよふよと浮かんでいるアメリアの姿が。
  「って、アメリア?やけにはやかったわね」
  役人、もしくは兵士たちをつれて戻ってくるにしてもいやに早い。
  この近隣に駐屯部隊がいたならばこれだけ早いかもしれないが。
  そんな噂話などはきいたことすらない。
  「え。あ、ああ。それなんですけど。とりあえず、村人さんたちのほうにはお役人の方々がいってますし。
    レナやリナさんたちもクロツ達のところにきてもらえませんか?」
  ふよふよふよ。
  どうやら浮遊(レビテーション)の術を用いているらしく、家の外より浮かびながらも話しかけてきているアメリア。
  「もう役人たちをつれてきたのか?はやかったな」
  そんなアメリアの言葉にレナ同様、少し驚いたようにいっているラウリィ。
  近くの村、もしくは町からつれてくるにしても数日はかかるであろう、そうおもっていたのに。
  もっとも、つれてくる役人全てが魔術を使えるものならば確かにここまで早いかもしれないが。
  「とりあえず、私はまだお役人さんたちとお話があるので、先にいってますね!」
  「あ、ちょっと!」
  レナが呼び止めるよりも早く、そのまま再び飛んでゆくアメリア。
  しばし、そんなアメリアの飛んでゆく後姿を窓より眺めつつ、
  「ま、とりあえずいってみるか」
  「って、ちょっとまって。エル〜〜〜!!」
  「は〜い。なに?おか〜さん?」
  外にいるであろうエルにと呼びかける。
  そんなリナの言葉に呼応して、ひょこっと玄関より顔を覗かせるエルの姿が見て取れる。
  何のことはない。
  アメリアと一緒に戻ってきていただけなのだが。
  当然そんなことはリナは知らない。
  「クロツ達をほっぽってる場所に移動するわよ?」
  「は〜い」
  母親の言葉に元気よく片手をあげて返事をする。
  その光景に死んだ自分たちの両親のことを思い出し、多少寂しくなるプラム達。
  だが、うらやましがってばかりでは先に進めない。
  少なくとも、今は新しい道がひらけているのだから。


  「それでは、ご協力、ありがとうございました!」
  国際指名手配をされていたクロツ一味。
  手配をされていても、その戦力からなかなか率先して動こうとしなかったお役所。
  だがしかし、相手が完全に自分たちに手足もだせないほどに束縛されているのならば話は別。
  どうやら魔力封じをも彼らがかけられている枷は併用しているらしく、相手が魔術をつかってくる気配はない。
  びしっと敬礼し、その少し先にと設置されている魔方陣にとむかってゆく。
  転移魔方陣の存在を知らされたときには驚いたが。
  まあ、所詮、そんじょそこらの魔力をもつ存在が使おうとしても使用できるものでもない。
  セイルーンの姫だから使えるのであろう。
  そう役人たちは解釈していたりする。
  プラムや村人の立会いのもと、男たちを引き渡した。
  村人達も、リナ達から例の品物がすでに処分された、というのをきき、そのことを知っているものたちは安堵している。
  アレがあったからこそ、このような辺境ともいえる森の中に住居を彼らとて構えていたのだから。
  だがしかし、百年、という年月は短いようで長い。
  この世界の人々はそれほど長寿ではない。
  それもまた、医療関係などが充実していないがゆえの現実なのだが。
  とはいえ、別の場所に移り住むにいたってもその行動力の源にはなる。
  数千年もこの場に住んでいるわけではないのだから。
  「しかし。エル!一人で勝手をしたらだめでしょう!?」
  クロツ達がいる場所にとたどり着き、そのときに初めてエルが空間転移魔方陣を使用していた。
  というのを知り、エルにと注意しているリナ。
  確かに、それは可能であろう。
  だがしかし、ここはリナ達からすれば異世界。
  この地にやってきたときと同様に、また何かがおこる、とも限らない。
  だからこそ心配して注意しているリナ。
  「まあまあ。リナさん。でもエルちゃんのおかげで早くカタがついたのも事実ですし」
  「まあ、たしかに。いくら悪人でも数日ものまずくわずで放置しておく、というのもまずかっただろうしな」
  そんなリナをなだめるかのようにいっているアメリアとしみじみいっているゼルガディス。
  「あら?ゼル?悪人なんだし、それはどうでもいいとおもうけど」
  「あ、それは私も賛成ですっ!」
  「…レナはともかく。アメリア、おまえほんとうに巫女か?」
  そんなゼルガディスの台詞に、きょとん、と首をかしげつつもきっぱりいいきるレナに、それに同意するアメリア。
  この場には近くの村の代表者もまた役人に連れられてきており、
  彼らの供述もあり、やはりここ最近村人を襲撃していた人物に間違いない。
  その証言をうけての護送。
  アメリアの証言もあり、アメリアがつぶした彼らの本拠より保護された人々の証言もあり、
  クロツたちの極刑は免れない事実。
  転移魔方陣を使い、クロツ達を引き連れて移動してゆくそんな彼らをしばし見送るアメリア達一行。
  やがて、全員が魔方陣に消えたと思うと、魔方陣がほのかにひかり、時間切れ、ということもあり通常の大地に戻る。
  大体、三歳児の魔力容量からして、持続時間的には一週間程度が限度。
  おおきくなるにつれ器における肉体の魔力も大きくなるので幅は広くなるのは明らか。
  おそらく、クロツ達はこれから取り調べを受けることになるであろう。
  だが、それはリナやレナ達にとってはあずかり知らぬこと。
  そもそも、いくらクロツ達がどのようにしてつかまった、とか。
  レナから感じた脅威を話したところでまず信じるとは思えない。
  彼らがアジトにしていた場所から人骨などが多数みつかったことからも言い逃れはできないであろう。
  「は〜い。ごめんなさい」
  リナが心から心配しているのがわかがゆえにひとまず謝るエルではあるが本心からはあまり反省はしていない。
  そもそも、何かあってもどうにかできる自身は一応ある。
  それに体力がついてくるかどうかは別として。
  「それより、レナ。これからどうするの?」
  「ああ。それなんだけどね。少し気になってることがあるのよね」
  先日のセイルーンといい、そして今のクロツの一件といい。
  少なからず魔族がかかわってきている。
  だからこそ気にかかる。
  アメリアの素朴な疑問に考え込むレナ。
  そして、ふと。
  「そういえば。リナさんたちの世界も同じようなことがあったんですよね?
    あのゼロスの正体をはじめから知ってたみたいだし」
  リナお姉ちゃんから聞いた内容によればあのゼロスってかなりの高位魔族みたいだし。
  先ほど、リナよりその情報を得たレナ。
  だからこそリナ達にと問いかける。
  「あ〜。まあね。でもあたし達の世界では、クロツがあの写本を手にしてザナッファーが復活しちゃってたけど」
  「よく倒せたな。そんなもの」
  「あ〜。まあ、あいつはガウリイがそのときもってた光の剣だけに注意むけてたからねぇ。
    神滅斬(ラグナブレード)で綺麗さっぱり、さっくりと」
  あきれたような声をだしてくるゼルガディスに、さらっとこたえるリナ。
  「なるほど。確かに。悪夢を統べる存在(ロードオブナイトメア)の力の術ならば斬れないものはないしね」
  リナの言葉に至極納得するレナ。
  確かにあの術ははっきりいって万能すぎる。
  ただ、魔力の消費が果てしなく高いのを除けば。
  「しかし。いったい何がおこってるんでしょう?セイルーンに入り込んだ魔族といい」
  ラウリィがさくっとその正体に気づき、アメリアの正の讃歌の攻撃。
  まあ、ラウリィの提案で、歓迎会、と称して散々正の讃歌を加えた歌をうたえば、
  いくら魔族だとて堪えるものがある。
  それよえに被害があまり広がる前にどうにかできたのだが。
  「とりあえず。あたし達はゼフィーリアに向かうけど。レナ達はどうするの?」
  さりげにさらっと話題を変える。
  「私は他の国が気になります。セイルーンにまで魔族がはいりこんでいたこともありますし。
    一番気になるのはディルスなんですけど。カタート山脈に近いですし。
    まあ、ゼフィーリアはまず大丈夫のようなきがしますし」
  事情を知らないまでも、巫女としての勘でそんなことをいっているアメリア。
  「それで?ゼルはどうするの?」
  「そうだな……確かに、魔族の同行はきにかかるな。とりあえずしばらくはレナ達と行動を共にしてみようとおもう」
  もしかしたらそれにレゾが関わっていた可能性も捨てきれない。
  だからこそのゼルガディスの返事。
  「そっか。なら方向が違うわね。とりあえず近くの町にでもいって、そこでお別れしましょうか?」
  「リナさんたち、無事に元の世界に戻れることを祈ってますね」
  「あ、ありがとう。レナ達も気をつけてね!特に!ものすっごくかわいい美少年とかにはきをつけてね。
    そいつ、下手したら陰険ネクラ魔族だから」
  「リナ。それよりヘル何とかっていったほうがよくないか?」
  「そこ!うるさいっ!あいつが出てくるとも限らないじゃないのよっ!
    そもそも、あのときギガスレつかってないんだしっ!」
  「でも、らぐなぶれーどはつかったよ。おか〜さん?」
  「でも、あれマナでもつかえるよ〜?」
  そんなほのぼのとしたリナ達家族の会話をききつつ、
  「…ヘル?何なんですか?ガウリイさん?それって?」
  きょとん、と首をかしげているアメリア。
  「気にしないでいいから!」
  下手に冥王フィブリゾだのの名前をだして逆に怖がらせ…否、アメリアならば正義がどうの、
  といって率先して関わろうとすること間違いなし。
  だからこそ詳しくはいえない。
  少なくとも、リナが知っている歴史とはこの世界では異なる変化が生まれているのだから。

  「あ、あの。本当にありがとうございました」
  とりあえず、今日のところはブラムを含めて村にてお世話になり、
  朝になり出発することにしたリナ達一行。
  村をでる彼らにふかぶかとお辞儀をしているプラム。
  彼女はこれからもきっと、弟とともにつつましくいきてゆくのであろう。
  この森からでるかどうかは彼女達の心次第。
  「それじゃ、ひとまず、近くの町にいきますかっ!」
  「正義が私をよんでますっ!」
  「…なんか、今後のたびがかなり気がかりなような気がするのは俺のきのせいか?」
  「いや、気のせいじゃないとおもうぞ。ゼル」
  力いっぱいのびをしていいきるレナに続きざまにいっているアメリア。
  そんな二人の姿をみてため息まじりにつぶやいているゼルガディスにそれにこたえているラウリィ。
  一方で。
  「しかし。こっちの世界のルナ義姉さんたち、かえりかた、わかるかなぁ?」
  「わかんなかったら、それこそ帰り道がわかんないわよ。ガウリイ……」
  「あのね。か〜さま?マナがね。またやろうか?」
  「いや、それはやめといて。マナ」
  そもそも、ここにいるのはマナの術が失敗したがゆえ。
  今度失敗したらどこに飛ばされるかわかったものではない。
  三者三様。
  それぞれに思いを抱きつつ、彼らはこの森を後にしてゆく。
  後には、リナ達に感謝する村人達とプラム達姉弟の姿が、彼らの姿がみえなくなるまで、
  しばらくのあいだ見受けられてゆく。


              ――Go To Next



  #########################################

あとがきもどき:

薫:さてさて。次回から新たな展開〜v
  まあ、リナ達家族がかかわったがゆえに、クリフも合成獣になることなく、プラムも無事。
  んでもって村人たちの被害も最低限にすんでおりますv
  次回からは、またまた騒動に巻き込まれるレナたち一行&リナ家族v
  それでは、また次回にて〜♪



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33553Re:○バラレル・トラペラーズ○〜捕縛、そして・・・〜麻緒 2008/4/27 20:49:05
記事番号33552へのコメント

かおさん、こんばんは。
『パラレル』とても楽しかったです!!
レナの中の「リナ」はさすがにエルちゃんの真実に気づいたのですね。気づかなかったらエル様のお仕置きが待っていたのでしょうか。。。
何はともあれ、次回も楽しみにしています♪

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33555こんばんわですvかお E-mail 2008/4/27 21:09:47
記事番号33553へのコメント

こんばんわ。麻緒さん。おひさしぶりですv
わざわざのレスありがとうございますv
>真実
はいv『リナ&S』はエル(ちゃん)の真実に気づいております(笑
まあ、さすがにレゾ=シャブラニグドゥとの戦いの場に居合わせていますからねぇ。
だけど母親であるリナのほうは知りません(笑
気づかなかったら当然、まちがいなく。
元の世界に戻ったのちに精神面にてお仕置きがまっていたでしょう。(断言っ!
今でも人の夢の中にはいりこんで精神とかに影響及ぼすことはまったくもって問題外ですからねぇ・・・…
>続き
次回から展開が少しばかりかわりますv
でてくるのは、おそらく誰もが想像つくはずv
とりあえず、ただいま、ディルスにいくパターンと、そのままゼフィーリアにいくパターンと。どちらにしようか悩み中〜
ディルスにいけば下手をすればほんきで100話前後になってしまうという(汗
ともあれ、次回からは某ゲームもどき状態となっている街へとうつりますv

何はともあれ、わざわざ感想レス、ありがとうございましたv
それでは、また
byかお

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33557○バラレル・トラペラーズ○〜閉鎖された街〜かお E-mail 2008/4/28 22:24:37
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  さてさて、このたびでてくる街の名前は私が勝手に作成しているものです。
  まあ、原作&SPででてきた街で使い勝手がいいところがなかった。
  というのが実情ですしね。
  そもそもSPのほうはきちんとどの国のどのあたり…と明記されてないものが多いし……
  ともあれ、今回からは新展開〜
  原作にもなかったオリジナル展開ですv
  ではでは〜♪

  #####################################


             ○パラレル・トラベラーズ○〜閉鎖された街〜


  「「「ええと………」」」
  思わず三人が三人とも同時につぶやく。
  「ここってこんなに警備が厳重だったっけ?」
  ラルティーグ王国の中においても物流などの拠点として重要性が高い、ここラルド・シティ。
  ちょうどこの街からは、ディルス王国、セイルーン王国、カルマート公国。
  さらにいえば沿岸諸国連合。
  そのどこにでも街道が整備されており、街道を進んでゆけばたどり着ける。
  ゼフィーリアにむかいがてら、マインの村に立ち寄り、クロツ達の本拠地があるであろうあの場所。
  そこを確認しようとおもっていたリナにとってはこの厳重さは理解不能。
  それはどうやら、レナ達も同じおもいらしく、おもわず目を点にして同時につぶやくリナ・レナ・ラウリィの三人。
  いつもならば、重要な流通の拠点の一つでもあるので街の門は閉ざされていない。
  だがしかし、今では何やら厳重に警備にあたっている兵士の姿が目にとまる。
  「あ、あのぉ?何かあったんですか?」
  とりあえず、近くにいた旅人に話をきくレナ。
  「あんたらも旅のものかい?いやぁ、こまったよねぇ。何でも発行されている通行書。
    それがなければ何か数日前から中にはいれないらしいんだよ。
    あとは身元がしっかりしていれば問題ないらしいんだけどね。しかし、そんなことどこでも教わらなかったんだけどねぇ」
  どうやら旅の行商人らしいその人物もまた途方にくれて戸惑った声をだしていたりする。
  「まあ、定期便の荷馬車がでてるし。それにのれば今日中に他の街にいけるしね。
    あんたたちもそのほうがいいとおもうよ?」
  いいつつも、少し離れた場所に人だかりができているほうにとあるいてゆくその行商人。
  「通行所?そんなものを発行してるなんて、きいたこともないですけど?」
  その言葉に首をかしげているアメリア。
  そういう話があれば、王族であるアメリアの耳に即座に届いてきているはずである。
  たとえ、少しまえに王宮を抜け出しているとはいえ、いきなりそのようなことになるはずもない。
  「噂だけどね。街の中からは誰もでれなくなってる。という噂もあるんだよ。何がおこっているのかねぇ。
    中に入り込んだ人たちとも連絡がつかないらしいし」
  首をかしげているそんなアメリアに、こそっと別の旅人が小声でいってくる。
  どうやら見る限り、ことごとく旅人たちは町に入るのを拒まれており、
  許可されるのはいかにも怪しいような格好をしている男たちなどといったもの。
  「怪しいですね。そんな報告、私が国にいたときにもありませんでしたし」
  「たしかに。怪しいな。とりあえず門のところにいってみるか」
  「たしか、ここの領主のラルグ公はかなりの人格者、ときいているけど」
  ラルグ・シティ、というのはこの辺りを治めているラルグ家の名前をとりつけられている。
  ラルグ・シティはこの辺りを治める領主の城をも抱えており、それゆえに彼を頼ってやってくる人々も多い。
  そんな街でこのようなことがおこっている、となれば当然どこかに話題はのぼるはず。
  だが、そんな話題はアメリア達は聞いたことすらない。
  アメリアの考え込む様子に、悩んでいても仕方ないとばかりに歩き出しているゼルガディス。
  そしてまた、少し考え込むようにいっているレナ。
  「…ねえ、ガウリイ?はてしなく嫌な予感がするのって気のせいかしら?」
  「気のせいじゃないような気がするなぁ。いくつか何かの気配が中からしてるし」
  さらっ。
  さらり、というガウリイの言葉。
  『何か』つまり、それは人でない存在がいる、ということ。
  「まったく。すこしはふかふかのベットでゆっくりと休ませてよね……」
  リナのそんなつぶやきは、そのまま空気に溶け消えてゆく。

  「なぜですか!?」
  「なぜでも。ですっ!…悪いことはいいません。お引取りください。アメリア姫」
  身分がきちんとわからないものは入れられない。
  そういわれ、身分を明かして中に入れるようにお願いしたアメリア。
  だがしかし、門番から帰ってきたのはまったく別の返事。
  それゆえに、アメリアが意地になり、言い合っていたりする。
  「あのぉ?何で身分がはっきりしてるセイルーンの皇女でもダメなんですか?」
  とりあえず疑問におもったことをといかけるレナ。
  「それは……われわれもこれ以上、ことを大きくしたくないからです」
  どこか困ったように、それでいて言葉をにごしている門番の兵士。
  「いったい、ラルド公に何かあったのですか?」
  「そ…それは。とにかく、おひきとりください。あなた様の御身にまで何かありましては……」
  言外に、危険だから、という言葉を含めてアメリアに礼をとりつついっている兵士。
  「アメリア。仕方ないわよ。とりあえず、いきましょ」
  「…むぅ」
  何かを隠している。
  それは判る。
  判るが、街の中に入れられない、というのはどういうことなのか。
  兵士の対応に疑問をおもいつつも、ひとまずその場を離れるアメリア達。
  そのまましばし無言で門が少しばかりかすむ程度まで歩いてはなれ、その場にて立ち止まる。
  「絶対に何かあったに違いありません」
  「もしくは、悪質なはやり病がおこった、とも考えられるな」
  それにしては、ごろつきのような輩を街の中にいれているのが気にかかる。
  少しばかり確認した限り、街の中から誰かが出てきた、という様子もない。
  つまりは、入ることも出ることも実質的に制限されている、というのに他ならない。
  「とにかく。昼間、明るいうちは警備が厳重のようだし。夜になってはいりましょ。幸い、今日は新月だし」
  新月であるがゆえに、月明かりはさほどない。
  しかも空の具合を見る限り、おそらく夜は曇るであろう。
  ここから次の街に馬車で移動する、というのも一つの手ではあるが。
  何かありそうな場所をほうっておいてまで移動する気にはなれない。
  第六感が告げている。
  ここには何かが起こっている、と。
  「たしかに。リナの意見に同感だ。夜になって街の中にしのびこもう」
  街は壁によってはりめぐらされ、一応警備が敷かれている。
  だがしかし、どこの世界にも裏技、というものは存在しているのだ。
  特に、今この場には剣の腕が一流どころが二人と。
  そしてまた、魔術に長けた人物がそろっている。
  正面から入れなくても、入る方法はいくらでもある。
  「…まさか…ね」
  このような状況には覚えがあるがゆえにつぶやくリナ。
  リナはこのような状況を知っている。
  もっとも、それは城の中に入る云々、といったものであったが。
  とにかく、街の中で何が起こっているのか理解し把握するのが先決。
  ゼルガディスのいったとおりに、タチのわるいはやり病みたいなものがおこったのかもしれない。
  だが、それならば必ず近隣の町にも連絡がいくはずである。
  旅人の誰もが情報を知らない、というのはおかしな話。
  あれからいく人かの旅人を捕まえては聞いてみたが、このような状況になっているなど聞いたこともない、とのこと。
  それも多少疑問におもう。
  少なくとも、この街から出て他の街に行こうとするならば、そこから噂が広まってもおかしくはない。
  「つい数日前からなんでしょうか?なら誰も噂にのぼっていない、というのもうなづけますし」
  「いや。それはないんじゃないの?アメリア?ここっていちおう重要な流通経路の町だし。
    何かあればすぐに噂になるわよ。いくらそれがたとえ前日にあったことでも」
  つぶやくアメリアに即座に突っ込みをいれているレナ。
  レナとて何が起こっているのかなんかわからない。
  ぴくっ。
  「?ガウリイ?」
  「ラウリィ?」
  「あ」
  そんな会話をしている最中、ぴくり、と何かに反応しているガウリイ、ラウリィ、エルの三人。
  「ちっ。今の悲鳴は何だ!?」
  「あっちだ!」
  リナ達には聞こえてはいない。
  だがしかし、どうやらガウリイとラウリィは何かを捕らえたらしく、険しい表情にて剣に手をかけ走り出す。
  「とにかく、いってみましょっ!」
  「はいっ!」
  「とりあえず、あたしは先に飛んで様子をみてくるわっ!」
  「あ、あたしもいきますっ!」
  アメリアもゼルガディスも高速飛行の術である翔封界(レイウィング)は使えない。
  この場で使用が可能なのは、リナとレナ。
  そしてエルとマナくらいであろう。
  もっとも、マナに関してはいまだにコントロールに難点があり異なる場所にいくこともしばしばであるが。
  ガウリイの様子からして、ただならないことがおこっている。
  それは長い付き合いだからこそわかっている。
  あのような表情をガウリイがする場合、一刻を争う、ということも。
  「あ、マナもいく〜」
  「マナ。あたし達はのんびりといこ?」
  何が起こっているのか視えたがゆえに、できればマナには見せたくない。
  というか、そのまま眠らせときたいのがエルの本音。
  「あ、あたし達はだいじょうぶだし。先にいって〜」
  「そういうわけにもいかないだろうがっ!」
  「だけど。…この匂いから察するに……」
  そんなエルの台詞に思わず叫ぶゼルガディス。
  何かが起こっている状況で子供二人、この場に残してゆくわけにはいかない。
  そもそも、リナとレナはすっ飛んでいき、ガウリイとラウリィの姿はすでに見えない。
  この場にいるのは、ゼルガディスとアメリア、そして二人の子ども達のみ。
  ゼルガディスの怒鳴り声にも動じることなく、少し顔をしかめてつぶやくエル。
  そう、風にのって確かな匂いがただよってきている。
  この先でおこっている残酷な光景を示すかのごとくに。
  「とりあえず、ゼルガディスさん。エルちゃんたちは私がみていますから。
    ゼルガディスさんもむかってください」
  自分が走るのでは足手まとい。
  いつもならば、正義のために率先してかけてゆきたいが、今何よりも重要なのは子ども達の安全。
  「あ。ああ。わかった。…だが、無理をするなよ?」
  何かがおこっている。
  だから、何が起こるかわからない。
  ゆえに注意を促し、そのままリナ達が向かっていった方向に走り出してゆくゼルガディス。
  そんな彼を見送りつつ、
  「さ。エルちゃん。マナちゃん。私たちもいきましょうか?」
  子供の足並みにそろえて歩けばそれはかなり遅くなる。
  はやる気持ちを抑え、とにかくエルとマナを両脇にと移動させ、互いに手をつなぎ歩き出す。
  リナか〜さんたち、先にたどり着くまえにもどってきてくれればいいけど…
  そんなことをエルが思っているとは、アメリアは知る由もない。

  「こ…これは……」
  「そんな…っ!?」
  目の前に広がる光景。
  ガウリイやラウリィが指し示した方向。
  そこには、先ほど出発した馬車が無残にも壊されており、乗っていた人々が累々と横たわっていたりする。
  しかも、その体は無残にも引き裂かれていたり…と様々。
  追わず口元を覆うレナ。
  「とにかく!生存者を助けることが先決よっ!」
  「は、はいっ!」
  目を覆いたくなるような惨状。
  だがしかし、一縷の望みをかけて生存者を探す。
  リナ達は知らない。
  あの場所から馬車などを使い他の街に行こうとする人物はすべて、『処分』されている。
  ということを。
  そもそも、馬車自体が一種の『罠』なのだから。
  だからこそ、どの街にもあの街の噂はとどいていない。
  そう。
  真実を知るものが全て処分されている現状においては知るすべはない。

  「いったい…何だっていうのよ……」
  やるせなさだけが残る。
  かろうじて息があったものですら、まるで溶けるように体が掻き消えた。
  それは、その場に転がっていた元人であった人々もまた然り。
  中には先ほどまでリナ達と会話をしていた旅人たちの姿も垣間見えていた。
  それら全ての人間の骸がことごとくに溶けて掻き消えた。
  そこにあったはずの馬車の残骸ですら気づけばいつのまにかなくなっていた。
  後にのこるは、土にしみこんだどすぐろい染みのみ。
  レナの想いは至極当然。
  そんな中、襲ってきたレッサーデーモン達は駆けつけたガウリイとラウリィの手によってことごとく消滅させられた。
  野良デーモンが突如として偶然にも出現した、というのはあまりにも偶然すぎてありえない。
  ならば、考えられることは。
  「…誰かが、仕組んでいる。としか考えようがないわね」
  とりあえず、遅れてやってきた子ども達にあの惨劇をみせなかったことにほっとする。
  助けられなかった人々のことは悔やんでも悔やみきれないが、だがしかし、どうにもできなかった。
  というのもまた事実。
  レナの言葉に続き、少し考え込むつぶやくリナ。
  「とにかく。…やはり、答えは街の中にある。としかおもえないな」
  ゼルガディスもまた、リナ達から事情をきき、思案をめぐらせてその可能性にたどりつく。
  そう。
  全てはあの街、ラルド・シティより始まっている。
  街の中にて、何が起こっているのか。
  それを知ることこそが、命が失われた人々の供養にもなるであろうから――


  シィン。
  いつもならば虫の声くらいしてきそうなのだが。
  夜の静けさのみが静かに周囲を支配している。
  とりあえず、少し離れた場所にて夜が深まるのを待ち様子をみていたリナ達一行。
  少し視線を壁のほうにむければ、壁の上のあたりにいくつかのともし火が見て取れる。
  つまりは、上空からの進入に備え、一応は警備しているものがいる、ということ。
  「確認してみたが、壁の周囲にはほとんど見張りの姿はみえないぞ?」
  念のために、男性陣が先立って周囲を探索した。
  その結果、どうやら街の周辺には人っこ一人みあたらないらしい。
  「それじゃ、いきますか」
  く〜く〜
  すでに夜、ということもありマナは体力にまけて眠りについている。
  「んで、けっきょくどうやってはいるの?おか〜さん?」
  一方でまだおきているエルはといえば、リナ達をみあげつつきょとんとした声で問いかける。
  方法としては、壁を壊して中に進入。
  それが一番手っ取りはやい方法ではある。
  だがしかし、呪文などで吹き飛ばすのでは気づかれる恐れはかなりある。
  「さくっと斬るのでいいとおもうぞ?」
  「確かに。下手に魔力とかつかってあいてに気づかれても厄介だな」
  さらっというラウリイに、同意するかのようにいっているゼルガディス。
  「なら、ガウリイの出番ねv」
  ラウリィの光の剣の魔力をあいてに気取られる可能性もなくもない。
  だがしかし、ガウリイの剣ならばそのような心配は無用。
  「おう!まかせとけっ!」
  そんなに大きな穴でなくても、人が一人とおれるくらいの大きさの穴を壁にとあける。
  それはガウリイにとっても造作もない作業。
  「?ガウリイさんってラウリィさんみたいに剣の腕すごいんですか?」
  「たぶん。俺より上だとおもうけど」
  そんな会話をしている最中、疑問におもいながらもラウリィにとといかけているアメリア。
  夜なので声が響くがゆえに、小声で彼らは話している。
  「しかし。ここまで静かだと逆に不気味ね」
  街の中からも何の声も聞こえない。
  普通ならば昼間でも夜でもにぎわっている音や声が聞こえてくるであろうに。
  「とにかく、中にはいらないとどうにもならないし」
  レナのそんな台詞に全員が同時にこくりとうなづく。
  そのまま、闇にと紛れ、壁にと近づいてゆく。
  街の中で何が起こっているのか。
  リナ達はそのことをまだ知らない――


         ――Go To Next



#########################################

あとがきもどき:

薫:さてさて。今回からは新展開vまあ、グロシーンは表現をかなり抑えますので。
  あまり想像しないでくださいね(こらこら
  さて、次回は、閉鎖された街の実情をお送りいたします。
  それでは〜♪




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33559○バラレル・トラペラーズ○〜魅入られた街〜かお E-mail 2008/4/29 09:28:36
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  さてさて。今回からはちとオリジナル&原作にある設定を多少修正。
  のお話がすすんでゆきますv
  ちなみに、つぼはレナの金額交渉!(笑
  でも、リナよりまだまだ・・・なのかなぁ?
  リナなら確実にタダにしろ!というのは請負です……

 #####################################


     ○パラレル・トラベラーズ○〜魅入られた街〜


  キッン。
  剣を一閃させると同時に、音もなく綺麗に切り取られる壁の一部。
  「よく剣で切れますね」
  それをみて思わず感心した声をだしているアメリア。
  とりあえず、切り取った壁の一部は切り口も綺麗なので、壁を通り抜けた後にはめこんでおけば問題はない。
  傍目には少しばかり壁に亀裂がはいっているようにしか見えないであろう。
  いつでも取り外しをしてそこから出入りすることが可能。
  「まあ。ガウリイの剣は一応魔力剣だしね」
  あえて斬妖剣とはいわないリナ。
  そんなことをいって万が一、アメリアが驚きの声を上げたりすると全ては水の泡となる。
  「しかし……はいったはいいが。これは……」
  全ての家々が静まりかえり、灯りすらも見えない。
  「とにかく。裏路地にある宿屋にいってみよう。そこなら裏家業の連中が集まるから何かわかるかもしれない」
  この調子では普通の宿屋は経営していないであろう。
  だが、風体が怪しい人々が入っているのを確認している状況下においては、
  そういった場所はおそらく経営されているはず。
  そう思い、ぐるり、と周囲を見渡してそんなことをいってきているゼルガディス。
  いつもならば、この街は夜でも昼でも活気にあふれている、というのにそれがまったくない。
  まるで、そう。
  人が一人もいないゴーストタウンのごとくに。
  「とにかく。周囲に気をつけて、その路地裏の宿、というところにいってみましょ」
  「たしかに。ここでうろうろしてても下手に見回りのものにみつかっても厄介だしな」
  見回りの兵士がいるかどうかは別として。
  リナとゼルガディスの言葉をうけ、こくり、とうなづくレナ、アメリア、ラウリィの三人。
  ガウリイにいたっては周囲を警戒し、いつでも剣を抜けるように身構えている。
  しぃん、としずまりかえった夜の街。
  闇夜に紛れ、そのまま彼らは路地の隙間をたどりつつ、ゼルガディスがいった路地裏の宿にと向かってゆく。

  「あんたたち、よくまあ、この町の中にはいれたねぇ」
  かちゃ。
  暖かな飲み物がテーブルにと置かれる。
  宿の入り口にたどり着いたはいいものの、やはり扉は閉ざされているまま。
  だがしかし、裏の家業のものがあつまる宿である。
  そのあたりの連絡の仕方などは、ゼルガディスはよく心得ている。
  それはガウリイにしろラウリィにしろ同じこと。
  それゆえに、裏にと回りこみ、合言葉をいう。
  裏家業のものが使用する合言葉を。
  それをうけて、裏口から宿の中に招き入れられているレナ・アメリア・ラウリィ・ゼルガディス。
  そしてリナ・ガウリイ・マナ、エルの八人。
  大人数であることに驚いたものの、だがしかし。
  レナの容姿はかなり有名。
  さらにはラウリィにしても、その筋ではかなり有名。
  そのそっくりさんが二名、ともなれば話は別。
  周囲をみても他に客の姿はない。
  「おばさん。いったい何があったんですか?」
  出されたホットミルクを飲みながら、ずっと疑問におもっていたことを口にするレナ。
  とりあえず、夜も遅い、というのでリナは先に部屋にと向かい、エルとレナを寝かしつけている。
  「どうもこうも。この街は今、呪われているんだよ」
  顔をしかめていってくるそんな宿の女主人の言葉に、
  「「「呪われている?」」」
  レナ、ラウリィ、セルガディスが同時に聞き返す。
  「ああ。そうとしかいいようがないさ。あのおやさしかった領主様が豹変してねぇ。
    街の人たちは領主様が助けた魔道士のせいだ、ともっぱらの噂だけど。
  領主様の館にいったものは誰一人としてかえってもこなければ。
  救いをもとめて街を抜け出したものからも何の連絡もない。
  夜も遅くになれば町中に魔物が徘徊する。これが呪われている、といわずに何というのさ」
  ここ、ラルド・シティ。
  かつては賑わいをみせていた街だというのに、そのせいで今は活気すらもなくなり。
  人々は恐怖におびえ、常に家の中にとじこもっている。
  昼間ですら出歩いているといつのまにか行方不明者が続出する、という有様。
  ゆえに人々は家の中にとにかく閉じこもりがちにとなっている。
  「生活に必要な物資は定期的に兵士がそれぞれの家にとどけてくるんだけど。
    だからまあ飢えることもないんだけど、何だかねぇ〜」
  兵士たちもまた、それらの物資をどこから調達してきているのかは知らない。
  ともかく上から命じられたままに行動するのみ。
  「豹変、とは?」
  顔をしかめつつ説明してくるそんな彼女の台詞に、さらに詳しく聞くためにとといかけるゼルガディス。
  「昔はね。領主様は全てをお許しになるとても徳がたかいおかただったんだよ。
    だけど今は些細なことで公開処刑なんか平気でされてねぇ。
    しかも、無実の罪、と誰でもわかるような人でもおかまいなく、ね。
    領主様がかわったのはここ半月の間なんだけど。その間に処刑された人はもう百人近いからねぇ」
  「百人って……」
  その台詞に唖然とする。
  普通ありえない。
  「そんな。あのやさしいラルグ公が?何かの間違いではないんですか?」
  ラルグ公の人柄をしっているがゆえに戸惑いを隠しきれずに問い返すアメリア。
  「それはわたしらがききたいよ。きっとラルグ公は悪魔にとりつかれてしまったんだよ。
    なあ、あんたたち。もしできるならラルグ公を悪魔から解放してくれないかい?
    その容姿から察するに、あんた、あのレナ=インバースと。それにあのラウリィ=ガブリエフなんだろう?
    それに、ゼルガディス、とかいってたけど、あんたはあの白のゼルガディスなんじゃないのかい?
    まあ、人の体にもどってはいるようだけど、その雰囲気は以前のままだしね」
  かつて、いくどかゼルガディスはこの宿にお世話になったことがある。
  それゆえに人に戻っている今現在においても判るものにはわかる。
  レナ=インバースとラウリィ=ガブリエフ。
  その名前は裏の世界に生きるものの間ではかなり有名。
  もっとも、レナに関しては係わり合いを持ちたくない、という輩も多数いるのも事実だが。
  それでも、噂は早く伝わるもの。
  セイルーンのごたごたをレナ=インバースたちが解決した。
  という噂はすでに、ここラルグ・シティにも届いている。
  その後、このようなことになってしまっているのでそれ以後の噂話などは知る由もないが。
  「私たちは、この異変を突き止めるためにきたんです。当然、たのまれなくても事態を打破してみせますっ!」
  「まあ、ほうっておくわけにもいかないしな」
  「それはそうと。昼間けっこうこの街にはいっていっていたゴロツキ風情の男たちは?」
  てっきりこの宿に泊まっているものばかり、とおもっていた。
  それなのに、一人の客の姿もみえない、というのは常識的に考えてもおかしい。
  他の宿にとまっている、という可能性もなくはないがそれでも一人くらいはいそうなものである。
  疑問におもいつつ、といかけるラウリィのその言葉に。
  「さあ、ねぇ。昼間はここによる人もいるけど。全員領主様のお城にむかったっきり。さ」
  一応、この店に昼間は顔を見せるものはいる。
  だがしかし、彼らはそのまま領主の屋敷にむかい、そのまま二度と顔をみせることはない。
  いったい何がおこっているのか。
  「まあ、今日のところはゆっくりとしていきなよ。夜は何かと危険だしね。
  動くなら逆に昼間のほうがいいよ?全身マントとかでおおっていればあまり目立たないしね」
  本来ならばそのほうが逆に目立つが、今この街ではそういった人々はかなり多くいる。
  というか歩いている人々が通常の人とはまったくことなるのだから。
  「一人づつの部屋は十分にあるしね。最近商売あがったりだけど、やすくしとくよ?」
  にっ。
  そういって笑みをうかべてくる宿の女将。
  こんな状況の中でもきちんとお金をとる、というのはさすが商売人、といえるであろう。
  たしかに、こう暗くては何がどうなっているのか確認することすらも不可能。
  まずは情報収集するのが先決。
  そうおもいつつ、
  「それじゃ、おねがいします。ちなみに、いくらですか?」
  「本来なら一人あたり銀貨十枚なんだけどねぇ。まあ九枚でいいよ」
  「って、あまりかわらないしっ!せめて銅貨三枚!」
  「「安っ!」」
  交渉にはいったレナの台詞に思わずつっこみをいれるラウリィとゼルガディス。
  「銅貨ってそういえば私みたことないです」
  「あんたはだまってろ」
  そもそも、王宮においてお金をつかう、というのはまずないであろう。
  彼女が家から持ちだした、というお金もすべて金貨だったりするのだから。
  アメリアの言葉に即座に突っ込みをいれるゼルガディス。
  完全な一国の皇女と一般市民の金銭感覚を一緒にされてはたまったものではない。
  というか、銀貨と銅貨を秤にかけている、という時点でさすがレナ、といえるのであるが。
  そんなレナの交渉に一瞬目を丸くするものの。
  「あはは!さすがあのレナ=インバースだ!きにいったよ!
    まあ、銅貨三枚はむりだけど、なら銀貨一枚でどうだい?」
  「全員で?」
  『・・・・・・・・・・・おい』
  果てしなくどこかずれているような気がするのは何もおそらくラウリィとゼルガディスの気のせいではないであろう。
  ばんっ!
  そんなレナの背中をばんっとたたき、
  「いいねぇ。その度胸に肝の据わりぐあい!きにいったよ!いいよ。それで。
    それにあんたたち、この現状をどうにかするためにきたんだろう?」
  けらけらと笑いながらもあっさりとレナの価格交渉に応じる女将。
  「「いいのか?それで?」」
  そんなやり取りをみてつぶやくゼルガディスとラウリィの反応とは対象的に、
  「リナなら即座に無料にしろ、とかいうけどなぁ。もしくは銅貨一枚とか」
  しみじみいっているガウリイ。
  どっちもどっちだ。
  思わずそんなことを脳裏に掠めるゼルガディス達。
  まあ、似たり寄ったり、というところなのであろう。
  この宿のおかみとて、レナの噂はしっている。
  そしてかなりの量の食事をする、ということも。
  それでも全員でその金額でいい、というのだから彼女たちの腕を信頼してのこと。
  レナ達ならばすくなくともわけのわからないこの現状を打破してくれる、そう思うからこそ――


  「調子はどうだ?」
  「おかげさまで」
  あのとき、レナ達に深手を負わされ、あの国を後にした。
  そんな中、同じような思いを抱いている人間をみつけたのは、ほんの偶然。
  上司に一応確認してみれば、好きにしていい、とのこと。
  ならばやることはきまっている。
  人間、というのもは欲のためならばどんなことでもする輩は多々といる。
  そう。
  率先して関わってくるものも。
  目の前にあるちょっとした容器に入れられているのは人間達。
  否、元人間、といったほうがいいのであろうか。
  「この地では材料に困ることはありませんからね」
  ほぼ毎日のように材料は相手のほうからくるのである。
  力があるもの、ないものにしろ。
  「ふむ。我らとて戦力になるものはおおいにこしたことはないからな。ひきつづきまかせる」
  「御衣でございます。ラルド公」
  にやりと口元に笑みを浮かべる。
  実験に必要な資金も、そして場所も、そしてまた材料も。
  この彼とであってから全てがうまくいっている。
  そしてまた、ラルド公、と呼ばれた男性だとてこの現状をとても好ましくおもっている。
  そう、失われた力の回復には手っ取り早い。
  「しかし。人間というものは愚かだな」
  その愚かな人間に自分が一時でも負けて不覚をとった、とはおもいたくない。
  だがしかし、今何よりも優先なのは上司であるあのかたの命令を実行すること。
  あの方はとにかく戦力をもとめているのだから。
  実験が成功した後には、この地の領主としての地位。
  そしてまた、この国の王の力ですら過言ではない。
  そのためにあの人間達は彼の誘いにのってきた。
  野心にあふれた愚かな人間。
  それは、彼ら『魔族』にとっては何よりも貴重な食糧の宝庫となる。
  そんなことを思いながらもその部屋を後にしてゆく、ラルド公、と呼ばれた男性。
  そしてまた。
  力の重要性がわからない愚かな人間達。
  そんな彼らに復讐し、自身の国を取り戻すのも夢ではない。
  そんなことをおもいつつ、
  「ベルギス様の野望が完成するのも近いですね」
  「ああ、お前たちにもまた十分に働いてもらおう」
  『御衣』
  その場にいる黒尽くめの男たちにと指示をだしている人物が一人。
  ベルギス。
  元ルヴィナガルド王国の国王であり、今や国際指名手配となっている人物。
  その彼が今、この地においてなそうとしているのは、かつて挫折した実験の続き。
  全ては自身の野望をかなえるために。
  情報が漏れることなどはありえない。
  この街にたちより、他の街にいこうとした人々は全てある程度の距離に達すると自動的に攻撃される。
  別に契約を交わしたわでもないが、だがしかし、本家本元の魔族が理解者となり協力してくれる。
  というのは彼にとっては好都合。
  魔族のたくらみなど彼にとってはどうでもいい。
  重要なのは、自分が最強の力をえて、この世界に君臨することなのだから。


  「しかし。なかなか情報、という情報もあつまらないな」
  とりあえず、一晩ゆっくりと体を休め、朝になりそれぞれ手分けをしてこの街の現状を把握するために別行動をとった。
  行方不明となっているこの地を収めるラルド公の側近をつとめていたという男性の子供。
  その子供から聞き出したことは、セイルーン王家でのお家騒動。
  それをきいて、彼もまた何か力になれないか、そんなことをおもってある日出かけていったらしい。
  その後、戻ってきた彼は数日部屋に閉じこもった後、いきなり人がかわったようになったとか。
  そのことを気にして父がたしなめようと連日、城にと出向き…そしてついにはもどってこなかった。
  そんな情報がアメリアの聞き込みで得られている。
  父親にくっついてセイルーン王家の行事に参加したことが幾度かあるがゆえに、
  アメリアのことを知っており、町でみかけたアメリアにそのことを告げたその子供。
  子供、といっても小さな子供ではなく、歳のころならば十四、五歳。
  ちょうど多感な年頃の少年。
  一緒にもし誰もついていっていなければ、アメリアはそのままその少年と城に直接乗り込むこともしていたであろう。
  だがしかし、一緒に行動していたゼルガディスの説得により、城に乗り込もう、と策略していたその子は、
  どうにかひとまずはその考えを収めて家にともどった。
  「とにかく。やっぱり城の中で何かがおこってる。城の中にいかなきゃどうにもならない。ということよね」
  街で得られる情報はごくわずか。
  毎日のようにやってくるいかにも裏家業、といった人々が城にいったっきりもどってこない。
  ということと。
  城に勤めている兵士や傭兵達ですら最近はまともにラルド公爵の顔をみていない。
  とのこと。
  高位魔族とかがかかわっていたら、公爵に成りすますのは至極簡単。
  そう、あのときの覇王グラウシェラーのように。
  そんなことをリナは思うものの、まだ確証はない。
  すくなくとも、何かそれとは違うような気がひしひしとする。
  最近では夜といわず昼間でも街の中に魔物が出没し、人々を襲っているらしい。
  だが、そんな被害がおこっているのにもかかわらず、城からの増援はまったくなく。
  人々は日に日に憔悴していっている。
  そんな中だからこそ、事態を打破しようと動いているレナ達に協力的な市民も多々といる。
  少なくとも、表だってではなく隠れて、ではあるが……
  「とにかく。城の間取りとかわかれば……」
  「私も小さいころにいっただけなので。間取りとかはわからないんです」
  申し訳なさそうにしゅん、となるアメリア。
  アメリアはたしかに、この地にある城にきたことはあるが、それは幼いとき。
  ゆえに性格な地図などつくれるはずもない。
  しばし、彼ら以外には誰も客、という客もいない宿屋の一階にとある酒場にて腕をくみ考え込む。
  そんな彼らに料理をはこびつつ、
  「なんだい。城の地図がほしいのかい?ならこころあたりがあるけど」
  料理をテーブルにおきながらいってくる宿の女将。
  「ほんと!?」
  その言葉におもわず目をかがやかせ、ばっとそんな彼女をみるレナ。
  「ああ。もっとも裏家業のやつだけどね。貴族たちばかりを狙う盗賊が確かそんなものをもってたはずだよ?」
  「…あ。それむり。…この前、あたしが壊滅した……」
  『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
  貴族たちばかりを狙う、自称「薔薇の舞踏会」を名乗る盗賊一味。
  それはレナがアメリアとセイルーンを出てからつぶした盗賊の中の一つに含まれる。
  そんなレナの言葉にしばしそのまま全員がだまりこむ。
  と。
  「何でしたら僕がお手伝いしましょうかv」
  その場ににつかわしくない、にこやかな声。
  おもわず、ばっと振り向いたレナ達の目にとびこんできたのは
  『って、ゼロス(さん)!?』
  にこやかな笑みをたたえている神官服をまとった男性。
  「あれ?ゼロスおじいちゃんだ〜。どうしたの?」
  「だから!あのですね!そのおじいちゃん、というのはやめてくださいっ!」
  「ならゴキブリおじちゃん?」
  「……えっと。リナさんとガウリイさん、でしたよね?本当にお子さんにどういった教育をなさってるんですか?」
  そんなゼロスをみて、にこやかにホットミルクをのみながらいっているエルとマナ。
  そんな二人の台詞をうけて、リナ達にあきれたような声を投げかけているのは……
  「というか。何であんたがこんなところにいるのよっ!?」
  しごくもっともなリナの意見。
  「いやぁ。偶然、といいますかvちょこっとベルギスさん、って人をおいかけてましたら、偶然にもv」
  ぴくっ。
  ベルギス。
  その名前にあからさまに反応するリナ、レナ、そしてガウリイの三人。
  レナとガウリイにとっては忘れられない名前の一つ。
  そしてまた、レナにとってもまた因縁深いその名前。
  「なあ?リナ?世の中って狭いのか?」
  「あたしにきくなっ!あたしにっ!」
  思わずガウリイのといに叫ぶリナ。
  「ベルギス?どこかできいたような?」
  「たしか。元ルヴィナガルドの国王だな。非道な人体実験をしていて国を追われた、という」
  伊達に裏の世界の情報に詳しいわけではない。
  アメリアの素朴な疑問にかわりに答えているゼルガディス。
  「…で?あんたの目的は何なわけ?」
  親切心でいきなり出現してくる、とは絶対におもえない。
  だからこそ警戒を含めてといかけるリナ。
  「それは秘密ですvですが協力する価値はあるとおもいますけどねえ?
    すくなくとも、この街にむかった人たちが全て行方不明になっている、というのは事実のようですし」
  いつもとかわらぬにこやかな笑み。
  「で?神官さんはどこからはいってきたんだい?」
  そもそも、出入り口は全てきちんと鍵をかけていたはずである。
  それなのにいるはずのない人物がここにいる。
  「それは…」
  「はいはい。秘密です。というのはいいから。とにかく!ゼロス!知ってることを全てはいてもらうわよっ!アメリアっ!」
  「はいっ!まかせてください!リナさん!」
  とにかく、自分たちが知らない情報をこのゼロスがもっているのは確実。
  だからこそ、ゼロスを問い詰める選択をとるリナ。
  「うっ。話します。話しますから!また聖歌とかはやめてくださいっ!」
  先日のこともあり、どうやらかなり堪えているらしくあわてて返事をしてくるゼロス。
  獣神官(プリースト)ゼロス。
  彼は確かに神出鬼没、といえる存在なのであろう。


               ――Go To Next



  #########################################

あとがきもどき:

薫:はいvおそらく誰もが予想していたでしょうvベルギスの登場です!
  え?彼はもっと後じゃなかったかって?
  まあ、逃げている最中、カンヅェルの目にとまったわけです(こらこら
  彼らもまたレナにかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁなりうらみを抱いてますからね。
  あと、カンヅェル一派こと、ガーヴ一派からすれば戦力になる人間は多いにこしたことはなし。
  因縁、というやつですね(すこし違っ!
  いまだに彼らの実験は成功段階にはいっていない状態です。
  つまりは旅人たちをつかって幾度も実験を繰り返した結果、原作のようになっていった。
  という、そんな設定にしております。あしからずv
  そもそも、かなりの犠牲がないとあんな研究なんて成功しないでしょうしねぇ。(しみじみ
  ともあれ、次回で城に突入vですv(展開はやっ!というのはいわないでおく。
  ではでは〜♪



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33560○バラレル・トラペラーズ○〜ワイザー=フレイオン〜かお E-mail 2008/4/29 20:41:49
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  さてさて。今回は副題にもだしてるとおり、ワイザーのおっちゃん(笑)の登場ですv
  やはりベルギスを追いかけているのはこのおっちゃんでなければv(こらこらこらっ!
  というわけで(何が?)ともあれ、ゆくのですv

  #####################################


    ○パラレル・トラベラーズ○〜ワイザー=フレイオン〜


  「うう。いくら何でもひどいんじゃないですか?」
  何やらその場にいじけて座り込み、のの字を書きながら抗議の声をあげてくる。
  「あんただからいいのよ」
  「ゼロスさん。何なら常に人生ってすばらしい、っていってあげましょうか?」
  「え、遠慮しておきます……」
  いじけるゼロスにきっぱりといいきるリナに、にこやかにいっているアメリア。
  そんなアメリアの申し出をすばやく却下しているゼロス。
  「で?ゼロス。また何でお前がこんなところに?」
  先ほど、ベルギス、という人物を追いかけてきた。
  とか何とかいっていたが。
  そんなことをおもいつつ、問いかけるラウリィ。
  「ああ。それですか。実は僕の連れとご一緒にこの街にきたんですよ。
    ちょうど出入り可能な壁が一部ありましてv」
  『・・・・・・・・・・・・・』
  ゼロスがいう、出入り可能な壁、というのは間違いなくガウリイが壁を斬った場所をいうのであろう。
  それゆえに思わずだまりこむリナとラウリィ。
  「つれ?」
  「ええ。僕がベルギスさんを知りませんか?とかたっぱしから聞き込みをしていましたら。
    同じく探されている方がいましてね。それでご一緒にやってきたわけなんですけど」
  もっとも、ゼロスの聞き込み、というのはそれらしき盗賊などを回り聞き出す、といったもの。
  彼にとっては相手が死のうがどうなろうが別にどうってことはない。
  ゼルガディスの素朴な疑問ににこやかにこたえるゼロス。
  「そもそも、何であんたはベルギスをおってるわけ?」
  リナの疑問は至極もっとも。
  そもそも、こいつの仕事は写本の処分でしょうに。
  まさかもう、冥王フィブリゾにこいつが貸し出されてる…なんてことはないでしょうし。
  そもそも、あのときは重破斬をつかわなかったんだから問題はないとおもうし。
  そんなことをおもいながらもきちんとした返事を期待できるわけではない、とわかっていても問いかける。
  「ああ。それはですね。マゼンダさんが彼に渡した、といってましたのでv」
  正確にいうならば、マゼンダをつれて向かったクロツ達一味のアジト。
  そこで写本の一部がベルギス、という人物に出回っている、というのをゼロスは聞き出しているのだが。
  用事がすんだマゼンダは身動き一つとることなく、そのままゼロスによって滅ぼされているこの現状。
  先日のこともある。
  それが何を意味するのか理解して、顔色を変えているゼルガディス。
  「それはそうと。そのゼロスさんの連れってどこにいるんですか?」
  「ああ、彼でしたら。城を調べにいく、といってましたけど。あとは情報収集、ですかね?」
  アメリアの問いかけににこやかに答えているゼロスではあるが。
  「しっかし。この兄さん、ほんとどこからはいってきたのかしら?
    まあ、神官さんなんだから鍵のはずし方とかしっているんだろうけど……」
  だけど、神官がそんなことをするかねぇ?
  そんな会話をしているゼロス達をみながらも、ひたすらに首をかしげている宿の女将。
  まあ、このゼロスには鍵など、といったものははっきりいって意味がない。
  そもそも、本体は精神世界に属しているのだから、その気になればどこにでも一瞬で姿を現すことは可能。
  「城って、一人でか!?」
  おもわずガタン、と席を立ち上がるゼルガディス。
  城にいって戻ってきたものは一人もいない、というのに。
  「ゼロスさん!どうしてとめなかったんですか!?」
  常識的に考えれば一人でいかすなどありえない。
  だがしかし。
  「いや、でも、いく、といわれるひとをとどめる役目は僕にはありませんしv」
  「あ〜…はいはい。あんたはどこでもそうなんでしょうね。とにかく。ほうってはおけないでしょうし。
    あ、すいません。女将さん、子ども達の面倒みてもらっててもいいですか?」
  「それは私はかまわないよ?小さな子供だしねぇ」
  「ええ!?おか〜さん、あたしもあばれたいっ!」
  「マナも〜〜!!」
  リナのそんな言葉に思わず抗議の声をあげているエルとマナ。
  「だめっ!」
  「「…ぶ〜」」
  ふてくされ、むくれる様子はこの姉妹はそっくりの顔をする。
  「まあ、この子たちは私にまかせて。あんたたちはきをつけるんだよ?」
  マナとエルの肩にぽんっと手をおき、にっと笑みを浮かべながらもリナ達にと語りかける宿の女将。
  「とにかく!ゼロス!案内してもらうわよっ!」
  「って、リナさん?その手にしているハリセンは何ですか?」
  いいつつも、リナの手にはしっかりとなぜかハリセンが握られていたりする。
  「魔皇霊斬(アストラルヴァイン)かけたハリセン」
  ついでにそれにちょぴっと神力を上乗せしてるけど。
  最後の追加説明はあえて説明しないリナ。
  「って、そんなものにそんな術をかけないでくださいっ!」
  リナの台詞に思わず突っ込みをいれているゼロス。
  「とにかく。その城にむかった。とかいうやつが心配だしな。…いってみるか」
  ここでぐだぐだいっていても先に進めない、というのも明らか。
  しいてはことを仕損じる、ともいうが、虎穴にいらずんば虎子を得ず、ということわざもある。
  ともあれ、しぶるエルとマナを宿の女将に託し、リナ達は全ての原因であろうと思われるラルド城にと向かってゆく。


  まだ日は高い、というのに城の周りはしずまりかえっている。
  城を警戒している兵士たちの様子もどこかがおかしい。
  全て全員生気のないような表情をしている。
  「たしか。ここって地下から入れたはずですけど」
  城の周囲に張り巡らされているお堀。
  そこから城の中にとつづく非常用の脱出口があるのをアメリアは知っている。
  なぜか、といえばそこの中はスライムの宝庫でもあり、
  ここに以前きたときにはその地下通路でアメリアはかなり遊んだ経験をもっている。
  いかだが見当たらないが、それは関係ない。
  そもそも、簡単な浮遊の術を使い移動すればいいこと。
  極力魔力を押さえ、水の上をあるくようにして進む。
  アメリアのいうとおり、城の表門のしたにその出入り口らしき場所があり、そこから中にとはいるリナ達。
  「誰かが確かに進入した形跡があるな」
  いくら地下道とはいえ、侵入者よけの仕掛けはある。
  その仕掛けが解除されて、奥に続く扉が開いている。
  それゆえにつぶやくようにいっているゼルガディス。
  「ここって、スライムの宝庫なんですよ?」
  「そ…そう」
  その台詞につぶやくようにいっているレナ。
  「まあ、たぶんそうじゃないか、とおもって。これもってきてるし」
  以前お宝目当てにリナ達の世界にてこの城の地下室にもぐりこんだことがあるリナ。
  収穫はたかがオリハルコンの短剣が一本であったが。
  ちょうどその日はしろのほうで何やら騒ぎがあったらしく、それゆえにリナの犯行は誰も気づいていない。
  という事実があったりするのだが。
  「?何ですか?それ?」
  きょとん、としつつ問いかけてくるアメリアに対し。
  「塩」
  いとも完結にあっさりとこたえるリナ。
  以前、ちょっとした依頼をうけたときに依頼主が塩でスライムを撃退していた。
  というのを覚えているがゆえのリナの行動。
  「とにかく。下手に呪文とかつかって騒ぎにしたら面倒だしね」
  地下室で使える呪文、というものも限られているが。
  あまり騒ぎをおおきくすることなく、どうにか城の中に潜入したい。
  それがある。
  「とにかく、いこう」
  そんな会話をききながらも、そのまますたすたと奥にと歩き出してゆくゼルガディス。
  「スライムかぁ。あいつら、きってもきっても分離するからなぁ」
  剣士にとっては面倒な相手のひとつ。
  何しろ普通に剣できれば、そのまま斬った数だけ分裂して増える。
  それゆえに、おもわずつぶやいているラウリィ。
  光の剣モードで相手を倒せば、問題はないのだが。
  「それより。奥のほうから何か剣があわさる音のようなものがしてないか?」
  奥のほうをみながらも、そんなことをいきなりのほほんといっているガウリイ。
  「え?あたしにはきこえないけど?」
  ガウリイの台詞にきょとん、とした声をあげるリナではあるが。
  ガウリイの耳のよさと目のよさは十分に理解している。
  「ガウリイ。どっちから?」
  「えっと。こっちだ!」
  そんなもの、きこえないが?
  そんなもの、きこえませんけど?
  首をかしげ、心の中で突っ込みをいれているゼルガディスとアメリアはただただ顔を見合わせ首をかしげるのみ。
  そのまま、ガウリイが指摘したほうこうに駆け出してゆくリナとガウリイ。
  「たぶん、ワイザーさんとザインさんたちがたたかってるんじゃないんですか?」
  ぴくっ。
  さらっというゼロスの台詞におもいっきりレナが反応する。
  「って、ちょっとまていっ!あんたのつれって、あのワイザーなわけ!?」
  いぜん、かなりいいように利用されまくったのでよくレナは覚えている。
  「あれ?いってませんでしたっけ?」
  「きいてないわよっ!とにかく、あたしたちもいきましょ!」
  のほほんとした声をあげるゼロスをそのままに。
  そのままリナ達を追いかけて走り出してゆくレナとラウリィ。
  「やれやれ。せっかちな人たちですねぇ」
  「って、ゼロスさんはいかないんですか?」
  「別に急ぐ必要もないですし。僕には関係ないですしねぇ」
  さも人事、といったようにさらっといいきるゼロス。
  事実、人事なのだが。
  「まあ、そいつにかまってる暇はないぞ。アメリア。俺たちもいこう」
  「そうですね」
  ゼロスにまだ言いたいことはたくさんある。
  だがしかし、誰かが襲われているかもしれない、という今の状況でゼロスを延々と説得するのも気がひける。
  それは後からでもしっかりとできることなのだから。

  カンッ。
  キンッ。
  ガグワッ!
  「ふ。なかなかやるな」
  「さすがだな」
  対峙しながらも、警戒と間合いは確実にとりつつおもわずつぶやく。
  どうでもいいが、対峙している人物の姿はどっちもどっち、といった姿。
  片方は全身黒尽くめに、どうみても暗殺者スタイル。
  かくして片方もまた黒づくめではあるが、なぜかその顔にマスクをすっぽりとかぶっている。
  傍目からみれば、どちらも怪しい人物には違いはない。
  地下道に、剣と剣が重なり響きあうおとと、何かが炸裂する音が響き渡る。
  相手はかなりの使い手だということは明らか。
  元、国王近衛団であったがゆえに、腕のほどは確か。
  そんな自分についてこられるこのマスクの男は…ともおもうが。
  何よりも今は侵入者の排除が先決。
  この計画は今度こそ邪魔されてはならないもの。
  主の、そして自分たちの野望をかなえるためにも。

  「そこまでよっ!」
  すばやく呪文を唱え
  「烈閃槍(エルメキアランス)っ!!」
  「…っ!!」
  突如として第三者の声が響き、二人の中心にと光の槍が投げ入れられる。
  普通の人間がくらえば数日はおきられない、精神にのみダメージをあたえる術。
  みれば、マスクの男と暗殺者スタイルの男らしき人物が応戦している姿が目にはいる。
  …やっぱしか。
  ベルギス、という名前をきいたときに予測はしていたが、やはりというか何というか。
  暗殺者スタイルのほうはともかくとして、マスクの男に関してはリナは心当たりがありすぎる。
  というか、何で今、ここなわけ?
  リナ達の世界では彼らとかかわったのはかなり後のはずである。
  あのときに、ガウリイの斬妖剣を手にいれたのだから。
  まあ、世界が違うし、こういうこともあるかもしれないけど。
  だがしかし、気になるのはあのときと同じような実験の成果がでているか否か、ということ。
  暗殺者スタイルの男たちに関してもまた然り。
  「おまえたちは……いや、ちがうな。にてるが……」
  いきなり現れたリナとガウリイをみて、驚愕の声をあげている暗殺者スタイルの人物。
  そして、リナのほうをみて一瞬おどろくものの、だがしかし、視線を一箇所にととめてそんなことをつぶやいていたりする。
  「…レナ殿?いや、違うか。胸があるし」
  「って、どういう基準じゃいっ!」
  そしてまた、リナをみてつぶやく覆面の男性の台詞に思わず突っ込みをいれるリナ。
  自身とて散々昔いわれていたのでそういう見分け方はかなり問題外。
  「たしかに。レナ=インバースは平原胸だしな」
  ぷちぷちぷち。
  それが以前の自分にいわれていたこととおもわずかさなる。
  「まとめてふっとべぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!火炎球(ファイアーボール)っ!!!」
  ごがぁぁぁっん!!!!!
  狭い地下道の中、リナの放ったファイアーボールが男たちにむけて炸裂する。
  胸がない。
  それは、今では昔よりは胸が大きくなっているリナにとってもまだ禁句の一つ。
  それゆえに問答無用でリナの術が炸裂する。
  「け…けほっ」
  狭い地下道のこと。
  空に霧散するわけもなく、地下、という性質上、ただひたすらにその場にたたず土煙。
  ふとみれば、覆面の男性が何やらむせこんでおり、もう一人いたはずの人物は消えている。
  「なあ、リナ。こんな場所でそれはないとおもうぞ?」
  慣れているがゆえに、冷静にそんなことをいっているガウリイ。
  「うっさいっ!相手がわるいのっ!」
  すかさずそんなガウリイに突っ込みをいれる。
  「…さすが、そっくりのだけはあるな。あんた、あのレナ=インバースの親戚か何かか?」
  むせこみながらもそんなリナ達にと話しかけてくる覆面の男性。
  いいつつも、顔を隠していた覆面をとる。
  「って、ああ!?ワイザーのおっちゃん!?」
  と、背後のほうから聞こえてくる声。
  みればどうやら、今の爆発の音で場所が特定できたのか、やってきたレナとラウリィの姿が。
  ワイザー=フレイオン。
  ルヴィナガルド共和国の特別捜査官。
  レナとはかつてのルヴィナガルドの事件にて面識があり、そしてまた。
  リナも自分たちの世界にて彼とは面識があるがゆえにさほどおどろかない。
  「いやぁ。ワイザーさん。災難でしたねぇv」
  にこにこにこ。
  ふと気づけばいつのまにかやってきていたらしく、
  そんな彼の後ろにちょこん、と壁にできている突起に腰掛けているゼロスの姿。
  「おお。ゼロス殿ではないか。この方たちとはお知り合いですかな?」
  「ええ、まあv」
  まあ確かに知り合い、といえば知り合いのうちにははいるであろうが。
  「えっと。ワイザーのおっちゃん。お久しぶり〜」
  そんな彼にとにこやかに話しかけているレナの姿。
  「おお。レナ殿。これは奇遇ですな。そこのおひとはレナ殿の親戚か何かですかな?」
  確かレナ殿の姉妹は故郷にいるはずの姉と、そしてまた精神を共有してきて産まれたというリナ殿だけのはずですが。
  そんなことをおもいつつも、そこにいるレナにむかって話しかけているワイザー。
  見た目はどこにでもいるような普通の男性。
  もっとも、その全身を黒尽くめの格好で覆い隠していれば怪しい、以外の何者でもないが。
  「まあ、そんなところだけど。というか、何で一人で潜入捜索を?」
  レナの疑問は至極もっとも。
  「おや。ゼロス殿からおききになりましたか?いやぁ、こちらにも事情がありましてな」
  まさか、元自分たちの国王がよその土地でまた非道なことをしているので手伝ってください。
  とは到底公にいえるものではない。
  「しかし。さっきのやつ……」
  あの黒ずくめの格好には嫌というほどに見覚えがあるリナ。
  そもそも、アレが全ての発端だったのだから。
  「おお。そういえば。自己紹介が遅れましたな。儂はワイザー=フレイオン。
    とある事情である人物を追っている最中、そこのゼロス殿とご一緒になりましてな」
  「いやぁ、彼もベルギスさんを探してる、というのでご一緒してたんですよ。あっはっはっv」
  ゼロスからすれば、利用できるものは利用する。
  といったところなのだろう。
  「は。はぁ。えっと。あたしはリナ。こっちがガウリイです」
  「ほう。リナ殿…ですか。これはまた。それはそうとして、あなた方はどうしてこんなところに?」
  ワイザーがそうリナ達に問いかけるのとほぼ同時。
  「あ、ようやくいたっ!レナ!それにリナさんたちもっ!」
  「…狭い地下だというのに誰か火炎系の技つかっただろう?」
  もくもくと煙が漂ってきたので位置が把握できた、といっても過言ではないのだが。
  「ゼル。細かいことはきにしたらハゲルわよ?」
  「って、俺のどこがハゲてるんだ!?」
  さらっというリナの言葉に思わず抗議の声をあげているゼルガディス。
  「まあまあ。ところで、そちらの人がゼロスさんのお連れさんですか?」
  そこにいる見慣れない人物を目にして話題転換をかねてといかけてきているアメリア。
  「これはまた。ずいぶんと大所帯ですなぁ」
  「まあ、人数が多いと逆に目くらましにはなりますけどv」
  「…あんた、目的はそれかいっ!」
  ゼロスのにこやかに台詞に思わず叫ぶリナ。
  まあ、こいつのことだからあたし達を利用しまくる気がありまくり、というのはわかっていたけど。
  だけども何かむかつくことにはかわりがない。
  「まあまあ。それより、どうやら先ほどの方が親切にも城に続く道を示してくださったようですよ?」
  確かにみてみれば、城に続いているであろう隠し通路の仕掛けがはずされているのが見て取れる。
  あの煙の中、そこまで仕掛けを元通りにするまでの知恵はどうやらなかったらしい。
  「あ〜。ほんとだ」
  「とにかく!城の中にいきましょう!」
  ガコン。
  仕掛けを押すと現れる上にとのびる階段。
  ともあれ、リナ達六名を伴い、ゼロスとワイザーも加わって、彼らはラルド城にと潜入してゆく。


             ――Go To Next



#########################################

あとがきもどき:

薫:さてさて。今回のこれは原作とはまた異なる展開となっておりますv
   まあ、懲りない人は、何をいわれても懲りない、という典型的な例ですね(しみじみ
   次回で、城の中で行われている実験&たくらみにいくのですv
   ではまたvv




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33561○バラレル・トラペラーズ○〜拠点〜かお E-mail 2008/4/29 20:42:45
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  ちなみに、魔族たちとの因縁は原作通りに沿ってますvあしからずv
  基本、リナ達の世界では原作どおりにコトがすすんでいる世界ですのでv
  まあ、異なるのはエル(ちゃん)の存在くらいか?(こらこらこら

  #####################################


          ○パラレル・トラベラーズ○〜拠点〜


  「ええと……」
  何といっていいものか。
  確かに城の中に入れたはいいものの、あるはずの活気がない。
  「お城の中でここまで静か、というのは絶対におかしいです」
  伊達に産まれてこのかたお城で過ごしているわけではないアメリアの力説。
  「少し、周囲をみてきたが、兵士たちの様子も何かおかしいぞ?」
  とりあえず、念のために、と先にと周囲を見回りにでたゼルガディスとラウリィ。
  ガウリイはいってもいかなくても同じこと、というのでリナに却下された。
  まともな説明がガウリイにできるはずがない、というのがリナの言い分。
  「うむ。それは周囲にいた兵士たちにもいえるのだがな」
  その説明をきき、しみじみというワイザー。
  今、リナ達がいるのは地下道から出てすぐよこにとあった小部屋の一室。
  そこはどうやら小さな書庫のような場所らしく、ずらりと壁には巻物の本が並んでいる。
  確かに、兵士たちの様子はあきらかに生気がない、といえるのであろう。
  ただ、ぼ〜と、まるで、そう何かに操られているかのごとくに。
  「とりあえず、僕はベルギスさんを探しにいきますのでv」
  パタン。
  そういうなり扉から外にでてゆくゼロス。
  「って、ゼロスさん!?…っていないし」
  そんなゼロスをあわてて追うアメリアだが、すでにそこにはゼロスの姿はない。
  まあ、その場からいきなり掻き消えないだけまし、といえるけどね。
  そんなことを思いつつも、
  「とにかく。ここで何かがおこっているのは確かだし。それぞれに分かれて探索しましょ」
  ゼロスのことはさくっと無視して提案しているリナ。
  「しかし。あんたたち、油断は禁物だぞ?…あと、レナ殿。
  いくら腹がたったりすることがあっても黒魔法で城ごと吹き飛ばした、とかいうのはなしな」
  「あ〜。その手が一番てってりばやいわね。たしかに」
  「いえてる」
  「ってそこっ!レナもリナさんも納得しないっ!ワイザーさんの言葉に納得しないでくださいっ!」
  半ば本気でレナにといっているワイザーの言葉に、ぽんっと手をうちながらも答えるレナに。
  それにともない、しみじみとつぶやいているリナ。
  確かに、その方法は一番確実、といえば確実。
  周囲に及ぼす被害をまったく考えなければ、であるが。
  「とにかくそれじゃあ、三手に分かれて行動しましょ?」
  「あたしとガウリイと。あとはアメリアとゼルとワイザー。それとラウリィとレナね」
  「って、儂は一人でも平気なんじゃが……」
  「そこのアメリアの暴走をとめてください」
  「ひどっ!リナさん!私はそんなに暴走しませんっ!レナじゃあるまいしっ!」
  「どういう意味よっ!アメリア!」
  まあ、レナのことを知っているものからすればアメリアの意見も至極もっとも。
  そしてまた、アメリアの性格をしっているものからすれば、リナの危惧もよくわかる。
  リナが思っているとおりのことがこの城の中において行われているとすればなおさらに。
  まあ、ワイザーのおっちゃんとゼルがいればどうにか止めることは可能だろうし。
  「そんなことより。あまり騒いでたらきづかれるんじゃないのか?」
  のほほんとしたガウリイの台詞。
  「いや、もう気づかれてるみたいだぜ?」
  いいつつも、部屋の隅のほうの天井をにらんでいるラウリィ。
  「「「…なっ!?」」」
  そこにたたずむ影をみて思わず短い声をあげているアメリア・ゼルガディス・ワイザーの三人。
  「って、やっぱしまた魔族がらみかぁぁっ!?」
  それをみて思わず叫んでいるリナに。
  「なぁぁんか、あんた達にかかわってからこれっておおくないか?」
  そもそも、レナ達と…というか、リナ達と知り合ってから格段に魔族がらみの事件に巻き込まれるのは気のせいではない。
  おもわずリナ達のほうをみてじと目でいっているラウリィ。
  ふよふよと、部屋の天井の隅付近にただよっているのは、何ともいえない物体。
  だが、それはあからさまに人でないのは明らか。
  何しろ人の上半身のみが浮かんでおり、さらには途切れた下半身からはいくつもの触手のようなものが出ているのがみてとれる。
  これでご丁寧に血のりのようなものまで具現化していれば、まず気絶してもおかしくはない。
  「なるほど。あれが魔族というものですか」
  「あんた、何妙に冷静にいってるんだ?」
  それをみてしみじみとあごに手をあててつぶやくワイザーに思わず突っ込みをいれているゼルガディス。
  まあ、普通ならばこの光景をみてパニックになるのが通常の人であろうが。
  そうならない、というのはさすが、というべきなのであろう。
  『お前たち。何しにきた?我らのたくらみを邪魔する輩は……』
  「崩霊裂(ラティルト)!」
  ぼびゅっ。
  『・・・・・・・・・・・・・』
  相手が何かをいいかけるよりも早く、小声で口の中で唱えていた呪文を唱え終わり、即座に開放しているリナ。
  『…って、な…ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!?』
  まさかいきなり攻撃をしかけてくる、とはおもっていなかったらしくまともに直撃をうけそのまま掻き消えてゆくその魔族。
  しばし、それをみて無言になるアメリア・レナ・ラウリィ・ゼルガディスの四人。
  「というか、みもふたもなくないか?」
  思わずつっこみをいれるラウリィの言葉に、きっぱりと。
  「何いってんのよ。魔族との戦いのコツは、先手必勝!スキをつくっ!にかぎるし!
    とにかく、この城の中で魔族がらみの何かが起こっているのは確かね」
  そうでなければあのような一応純魔族がでてくる、とは思えない。
  まあ、ラルド公、とよばれている人物が魔族と契約を交わした、とも考えられるが。
  人格者、と名高かったラルド公に限って…と普通ならば思う。
  だがしかし、世の中、人の噂に上る事実と真実は異なる、ということをリナはよくわかっている。
  いい例があの赤法師レゾであろう。
  世間的には聖人、として名高いレゾ。
  だが、真実はそんなモノではない、というのをリナは身にしみて知っている。
  それはどうやらこの世界でも同じであった、ということも。
  「とにかく。魔族まででてきたからには、十分に気をつけないといけないのは確かだな」
  リナの言い分は至極もっとも。
  それゆえにうなづきながらもいってくるラウリィ。
  「とにかく、それぞれ分担して捜索よっ!」
  「はいっ!」
  「まあ、そのほうが能率はいいであろうが…ゼロス殿、平気なのかのぉ?」
  「あいつのことは心配無用とおもいますけど」
  まあ、そのまま相手をさくっと殺しかねない、というのを除けばまず心配はない。
  一人出て行ったゼロスを心配しているワイザーにすばやく突っ込み。
  「まあ、確かに。リナのいうとおり。ゼロスだしな」
  短い付き合いではあるが、あのゼロスがかなり力をもっている魔族らしい、というのは何となくだが理解している。
  それがどこまで実力があるのか、というのはゼルガディス達は知らないが。
  「それじゃ、何かあったらここでまたおちあいましょ」
  ひとまず、集合場所は決めておいたほうがいい。
  それゆえに、ひとまずこの場を集合場所ときめ、先ほど決めたメンバーにおいて分かれて城の中を探索することに――


  「これは……」
  その光景を目の当たりにして思わず絶句するアメリア。
  とりあえず、アメリア達の一行が選んだ探索ポイントは牢獄。
  こういった城には必ず地下室があり、大概はそこが牢獄と化している。
  ほとんど生気がない、といっても過言でない見張りの兵士たちをかわしつつも牢獄にとたどり着いているアメリア達。
  「やはり。あやつめ。また同じことをくりかえすつもりか……」
  目の前の牢獄の中にいるのは、あからさまにかつて人であったであろう、という生き物たち。
  かろうじて人の部分が具間見えてはいるが、いまだに人の心をもっているかどうかまではわからない。
  あのときは、まだ完全に計画はすすんでいなかった。
  だがしかし、この光景をみれば、どうやらアレからまったくあきらめることはしていなかったらしい。
  「たしか。前国王は人と魔族を合成させる実験をしていた、とかいう噂だな」
  伊達に長い間レゾの下で動いていたわけではない。
  そのあたりの情報もゼルガディスはつかんでいる。
  おそらくは、手始めに人と、そして別の生き物を合成した結果がこれなのであろう。
  属にいう合成獣(きめら)化する術を失敗している、といったところか。
  「この人たち…元にはもどせないのですか?」
  「いや。それは俺の知る限りは難しいとおもうぞ?」
  以前、レゾの元にいながらも、とある有名な魔術師に問いかけたことがある。
  合成獣(キメラ)となっている自身の体を元にもどす方法はないか、と。
  そのときに戻ってきた返事は、
  ミックスジュースから混入されている品物を全てわけることができるか。
  というもの。
  今のゼルガディスはレゾの最後の力にて元の人間の体にもどっているものの。
  もしそうでなければ、いまだに合成獣化されたからだを元に戻す方法を求めて旅をしていであろう。
  だからこそ、目の前に広がる光景が他人事とは思えない。
  牢屋の中に無尽蔵に詰め込まれるようにしている元、人であったであろう生き物たち。
  おそらく食事もまともに与えられていないのであろう、ほぼびくりとも身動き一つすらとらない。
  また、ところどころに見えるのは骨らしきもの。
  弱肉強食。
  弱ったものは、とにかくおなかがすいた別のものに食べられる。
  そしてまた、餓死したものはそのまま捨て置かれ、その場に別の生き物が入れられる。
  この牢屋は上の部屋から落とす形式で中に入れることも可能。
  ほとんどの存在が上から落とされてこのまま閉じ込められているのに他ならない。
  ここにいるのは失敗作、と彼らが判断したものたち。
  もっとも、それをアメリア達がしるすべはないが。
  「…とにかく。奥にいってみよう」
  どこまで、国の恥をさらすつもりだ?ベルギス……
  そんなことを心の内に秘めおもいつつも、何か情報が得られないかどうかしばし牢獄内を探索してゆくワイザーたち三人の姿。

  「みつけたわよっ!ラルド公!!」
  ダメもとでガウリイに聞いてみた甲斐があったわよね。
  おもわずしみじみおもうリナ。
  とりあえず、あてどもなく探索するよりも、まずガウリイに人でない気配がする場所がわかるか。
  と問いかけたところ、いともあっさりとその場所を指定してきた。
  それゆえに、まずはそちらからたたくのが先決、とばかりにここ謁見室にとやってきているリナとガウリイ。
  目の前には、いかにも人がよさそうな青年が一人。
  「きさまらは……また、私の邪魔をするきか!?」
  二人の姿を認めると同時、否、正確にいうならばリナの姿を見て取ると同時にどこかで聞き覚えのある声をはっする『ラルド公』。
  彼らには人の見分け方、などといったものはあまり実は認識されていない。
  基本はその魔力で相手を判断する。
  彼らにとっては人間、というものは認識することすら馬鹿らしい愚かな存在。
  「…なあ、リナ?こいつ、あのカンヅェル。とかいうやつと同じ気配だぞ?」
  「って、カンヅェル?!…よくあんた、覚えてたわねぇ」
  さらっというガウリイの台詞に逆に驚くリナ。
  カンヅェルといえば、セイルーンに入り込み裏から国を操ろうとしていた魔族の名前。
  「そりゃ、なぁ」
  リナの驚愕はもっともであるが、ガウリイにとって忘れられない魔族であるのは明らか。
  何しろリナとであって自分がついていながら初めてリナに大怪我を負わせてしまった魔族なのだから。
  この城から感じる気配で一番強い気配がするほうこうにとリナを導いたガウリイ。
  もう片方のほうはおそらく、気配的にラウリィたちがいっているみたいだし。
  そんなことをおもいつつも、言葉には出していないガウリイ。
  「きさまら…そうか。そのはどう…あのレナとかいう人間の縁者だな?」
  似すぎているレナとリナと魔力の波動。
  もっとも、それは当たり前、といえばそれまでなのだが。
  だがしかし、今はもうひとりの男性から感じる魔力がない。
  それは、あの異界の魔族がいない、という証。
  アレさえなければうつ手はある。
  そう勝利を確信し、にやり、と笑い。
  「まあいい。きさまらには私の邪魔は今度こそさせん」
  いいつつ、ゆっくりと立ち上がる。
  魔族の彼らにとって姿形はどうにでもなる。
  ゆえにこそ、多少の力がある魔族ならばこそ他の人間に成りすますことなどは朝飯前。
  そう、かつての覇王(ダイナスト)グラウシェラーのように。
  「それはどうかしらね?それより!何をたくらんでるの!?セイルーンといい、このたびのことといいっ!」
  魔族、というものは人間を見下すがゆえにプライドが高い。
  「それとも。何?あんたたちの計画を話したらあたし達のような人間につぶされるのを恐れていえないわけ?」
  だからこそ相手を挑発するかのごとくに問い詰める。
  この辺りの駆け引きは、さすがリナ、といえる。
  「ほざくな。か弱いごみのような人間が。まあいい。そこまでいうのならば冥土の土産に聞かせてやる。
    どうせきさまたちの命はここでおわるのだからな。全ては、我らが主、魔竜王(カオスドラゴン)ガーヴ様のため」
  ガーヴが今必要としているのは、何よりも戦力であり、そして盾となる存在。
  愚かな人間はその盾にはちょうどいい。
  そして、その愚かな盾が多少なりとも力をもっていればそれにこしたことはない。
  「ガーヴ!?」
  あいつは冥王(ヘルマスター)フィブリゾに…ってこの世界ではまだ滅ぼされてないんだった。
  いいかけて思わずあわてて口をつぐむリナ。
  「魔王の腹心がなぜ!?」
  「われわれは命じられれば行動する。ただそれだけのこと。ガーヴ様は拠点となる地を求めておられる。
    さあ、お前たちは今ここで、私じきじきにおくってやろう」
  いうなり、姿がゆらり、と歪み、そこにいるのは緑の生物が一つ。
  どうやらこれがカンヅェルの魔族形態の一つのようであるが。
  それに驚くようなリナ達ではない。
  何しろ経験してきているモノが違うのだから。

  「ここから先はとおさん……」
  何やらものすごく聞き覚えのある声。
  「あ、あんたはっ!」
  「お前はっ!」
  レナと、そしてラウリィの声が同時に重なる。
  確かに、人でない気配がする方向に向かってきた。
  その気配が何かしっているような気配がしたのも事実。
  確証はなかったが。
  ゆらり、と城の廊下の角の影より浮かび上がってくる一つの影。
  真っ黒な何もないようにみえるフードの下から紅い瞳だけが異様に輝いている。
  「またあったな…きさまら。こんどこそ、あのときのうらみ、はらしてくれよう…」
  「って、なんであの逃げ出した仮面魔族がこんなところに!?」
  レナの驚きは至極もっとも。
  あのとき、この魔族はガウリイの光の剣に確か片腕をいっぽんもっていかれて退却したはずなのだから。
  あのとき、リナ達と判れてセイルーンに向かう途中。
  誇りのためなどといって再びしかけてきたこの魔族。
  まさかこんなところで再び合間見えるとは。
  腕はかつてのようについている。
  まあ、彼らは精神体を具現化させているのでそういう基準はあてにはならないが。
  「ともあれ、きさまらは……が…ぐわぁっっっっっっ!!」
  ゆっくりと歩きながら出現してくるセイグラム。
  が、しかし。
  その刹那、いきなり絶叫をあげる。
  ふとみれば、闇、としかいいようのない彼の体の背後から何かが彼の体を貫いている。
  「な…なぜ……」
  何やら驚愕し、信じられない、といったような声をあげているセイグラム。
  だがしかし。
  「なぜ?ですか?それはあなたがよくご存知でしょう?離反してわざわざガーヴさんのもとに走るとは。いやはや」
  緊張感も何もないその声。
  その声と同時に、今度は四方八方からそのままセイグラムの体が黒い何かに貫かれる。
  しいていうならば、黒い三角錐のようなそれに。
  「ゼ…ゼロス……」
  「まったく。下っ端とはいえ。知った限りはきちんと排除しておきませんとねv
    別に人間風情に加担して何をしようが僕的にはかまいませんけど。
    あなたが獣王様の配下を離れてガーヴのもとにいく、というのならば話は別ですしねv」
  苦痛な声をあげつつ振り向いたその先にはにこやかに笑みをたたえている神官服の人物が一人。
  「それでは、セイグラムさん。さようならv」
  ドッ。
  「が…がぁぁぁぁっっっっっっっ!!」
  とどめとばかりに、軽くとんっと手にしていた錫杖にてセイグラムの背中から突くゼロス。
  それと同時に、セイグラムの体はまるで霧のごとくに掻き消える。
  それも気配すらのこさずに一欠けらものこさず、確実に。
  そう。
  別にそのまま離反してふらふらとさまようのもまた一驚。
  それで人間がどうなろうと知ったことではない。
  だがしかし、赤眼の魔王・シャブラニグドゥに反旗を翻した魔竜王ガーヴの元に下ったのならば話は別。
  そもそも、離反者には容赦しなくてもいい。
  という上司からお達しがでているのだから。
  「……あ、あんた……」
  何となくだが、判る。
  今のはゼロスの本体による攻撃なのだ、と。
  「助けなくてもあたしたちで十分だったけど?」
  「つれないですねぇ。まあ、お礼をいわれてもこちらは困りますけどね。
    僕はただ、離反者を処分しただけですしv」
  魔族であるゼロスにとって人に感謝される、ということははっきりいって好ましくない。
  むしろ力を削がれる原因ともなりかねない。
  彼らが糧とするのは負の感情。
  ゆえに、感謝、などといった対極に存在するモノは望ましくない。
  レナの言葉ににこやかに笑みをくずさずに言い放つゼロス。
  「離反者…って……」
  どうやら魔族の中でも何かがおこっているのは確かみたいね。
  おそらくゼロスを問い詰めても詳しいことはいわないであろう。
  そう、かつてセイルーンでカンヅェルに問い詰めたときと同様に。
  「それはそうと、あんた、何もってるんだ?」
  ふとみれば、ゼロスの錫杖をもっている方向とは逆の手に何やら本のようなものが握られていたりする。
  それに気づいてといかけているラウリィ。
  「ああ。これですか?いやぁ、ずいぶんと判りやすいところにありましてv
    まあ、これで僕のお仕事はおしまいですvレナさんたちがうろうろしてくれたおかげで、
    いともあっさりと相手さんが動いてくれましてねぇv」
  侵入者の報告はワイザーと地下で対峙していたものよりつたわっている。
  人、というのもは大切なものを何かがあったときのために隠そうとする。
  その動きをゼロスはただ利用しただけ。
  「というわけで、あと僕は傍観してますので、あとは頑張ってくださいねv」
  ふいっ。
  それだけ言うと同時にそのままその場から姿をかき消すゼロス。
  別にもう魔族、ということがばれているのであまり気にしてはいないらしい。
  「ってこらまていっ!最後までかかわっていけぇぇ!」
  「まあ、あいつにいっても無駄だとおもうぞ。たぶん」
  虚空にむかって叫ぶレナに、ため息とともにいっているラウリィ。
  どうやら短い付き合いではあるが何となく相手の性格はラウリィのほうがよくつかめているようである。
  ゼロスからすれば、自身の仕事がすめばあとはかかわりのないこと。
  ただ、しばらく傍観することに決めたのは、おそらく生じるであろうレナ達の負の感情目当てに過ぎない。
  さて、と。
  あのひとたちは今度はどんなことをして楽しませてくれますかねぇ?
  そう思うゼロスの感覚はおそらく間違ってはいないであろう……


               ――Go To Next



#########################################

あとがきもどき:

薫:さてさて。いつものごとくにお役所仕事全開のゼロスでした(笑
L:んふふvようやく次回、あたし達のでばんね!!
薫:……街中であまりあばれないほうが……ぎゃっ!?
L:あら?どこかにいった薫はおいといて。次回ようやくあたしの活躍よっ!
  まったく、リナったらこのあたしをおいてけぼりにするなんて…まったく。
  ほんっと、子供を心配する親心って面白いわよねぇ。
  それが本来あるべきはずの親、としての心なんだけど。
  その本能すらどこか間違った方向にいってる存在も多々といるしねぇ。
  まあ、どうでもいいことはおいといて。
  何か薫によくにたヒラヒラのマッドは汚れているのでごみにでもだすとして。
  それでは、みなさま、まったね♪




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33564○バラレル・トラペラーズ○〜無と有〜かお E-mail 2008/4/30 23:29:24
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:


  さてさて、ようやくエル様サイドvv
  リナ達がお城にいっている間のエル&マナのほうのサイドですv
  あと2こくらいでこのイベントも完了ですv
  何はともあれ、いっきますv
  しかし…日に日にノートパソさんのヒビワレがひどくなってるのはきのせいだろうか(汗
  いまだにデスクさんは修理にだしてません。
  というか、今のうちに修理にだしとくかなぁ…まったくつかわないし。
  使うとすれば、印刷するときだけ、だしなぁ。うむむ……

  #####################################


          ○パラレル・トラベラーズ○〜無と有〜


  「な…なに?」
  外からきこえてくる不気味な声。
  それゆえに、きょとん、とした声をだす。
  リナ達がお城にむかってはや数時間は経過している。
  すでに日も傾きかけ、外は暗くなりかけている。
  夕暮れの灯りが街全体を照らし出すものの、やはり住民の姿はない。
  「今日も。かい。いいかい?窓から顔をだしてもダメだよ?」
  もぐもぐとアップルパイをたべているエルとマナにと注意を促す女将。
  「きょうも?なにかあるの?」
  何が起こっているのかは理解している。
  してはいるが、一応はといかける。
  「最近ね。日没近くになると魔物が街中を徘徊するんだよ。まったく。この街はどうなってしまったんだか」
  魔物が出ようが何があろうが、兵士たちがそれらを駆除しにくる気配すらない。
  だからこそ日々人々の心は疲弊していっている。
  自分たちは見捨てられたのだ、と。
  中には自分の意思で魔物と戦う兵士もいたりするが、そういう兵士は翌日、または三日以内に行方不明となる。
  上より命じられているのは何があろうが出動は不可能、ということ。
  さらにいえば、城の中に新たに入ることすら城の周辺を警備している彼らには許されない。
  「とにかく。おじょうちゃんたちは、お部屋にもどっても絶対に窓から外をみちゃいけないよ?」
  この女将の家族もまた外に様子をみにいき行方不明となっている。
  好奇心小さな子供がダメ、といわれてはいそうですか、とひきさがるはずもなく。
  それでも、行方不明にはなっていても、必ず生きている、そう信じている。
  信じていなければやっていかれない。
  そもそも、このような現状になり町を捨ててこっそりと抜け出す人が続出している最中、宿を営んでいる。
  というのもいずれもどってくるであろう子ども達のため。
  夫であり、この宿の本来の主人は子ども達を探しに行ってもどってきていない。
  確かに、いまだにまだ子ども達は使われてはいない。
  おそらくリナ達が城に隠された研究施設から助け出すであろうことはエルはわかっている。
  「大丈夫。大丈夫さ。外にさえ出なければ……」
  そう、外にさえでなければ家の中にまではやってこない。
  そう。
  今までは。
  「?なにかそとがあかるいよ?」
  夕刻の明るさではない、何か異なる明るさ。
  それに気づき、ひょい、とテーブルの上にとのり、小さな窓から外をみるマナ。
  窓には別にガラスといったものがはめ込まれているわけでもなく。
  普通に木枠により外と中が隔たれている。
  夜になれば外の雨どいを落とすことにより雨風より家の中を守る手法。
  ちょこん、と除くにしても背丈はおもいっきり足りない。
  だからこそ少しばかり風の呪文をつかい浮かび上がる。
  ひょっこりと窓枠に手をかけて外をみる。
  夕焼けの灯りとは別にほのかに街全体があかるく染まっているように感じられる。
  空に飛び交う無数の黒い何か。
  「ね〜ね〜。ね〜さま?おそとがほのおでまっかだよ〜」
  マナの視界に入ったのは、街のところどころで炎をあげている家々の姿。
  もう少し詳しくみれば、街のいたるところに出現している異形の生き物が炎を巻いている。
  とわかるであろうが、マナはそこまで気がまわらない。
  まあ、二歳児にそこまで詳しく説明しろ、というのが無理、といえばそれまでなのだが。
  「…何だって?まさか……」
  炎で真っ赤。
  ということはどこかで火事がおこっているのかもしれない。
  それゆえに、マナが除いている窓とは別の小窓から外を確認する女将。
  彼女の視界に移りこんだのは空に飛び交う黒いはねをもった異形の魔物と炎をあげて燃えている家の姿。
  裏路地に位置しているので、詳しく完全な街の様子まではわからない。
  わからないが、ただごとならぬことがおこっているのは明らか。
  「とにかく。にかいから外にでて屋根にあがってみてみよ?」
  「あ、ちょっとおまちっ!」
  唖然とする女将をそのままに、術にて一気に二階にと駆け上がるマナとエル。
  そのまま部屋の窓から外にとでる。
  マナは屋根の上にとのぼり、周囲を見渡して何やら花火のようで綺麗だ。
  と違う意味で喜んでいたりするが。
  そんなマナをあわてておいかけてきた女将がしっかりと抱きしめている姿が目にはいる。
  ふよふよふよ。
  「ふむ……」
  エルは風の呪文をつかい、屋根からは離れているがゆえに女将の手は届かない。
  周囲をぐるり、と確認して『視て』みる。
  どうやら、侵入者、という報告をうけて第二段の計画に街に潜伏していた存在達が動いたらしい。
  何しろ一度完全に街を破壊してしまえば、その後に入居したものはまず怪しまれない。
  また、破壊された、と外にもれなければその人々に成りすますことも可能。
  しかし、雨を降らせ炎を鎮めることは簡単だけど……
  そこまでおもい、ふと思いつく。
  この体ではまだ実験していない本来の力。
  どのあたりまでが限度なのかちょうどいい機会だから確認してみる価値はある。
  かつてのときは、『リナ』という人間の器がよくわからずに力をおもいっきりつかった結果、
  ちょこっと面白くない結果におわったのは、『エル』にとっては記憶にあたらしい。
  そもそも、あのとき、フィブリゾにわからせるために、リナの体をそのままに戻した。
  というのも失敗だったし。
  そんなことをふと思う。
  人、という限度がある器を使用する以上、何かと制限はある。
  人の器、というものは弱い。
  だがしかし、光にも闇にも属することがないので使い勝手はよい。
  どちらにも属さないからこそ、自身の力をしようしてもまず不都合はない種族。
  それが人、というもの。
  「とりあえず、いってみますかv」
  ふわりと近くの別の家の屋根の上にと舞い降りる。
  「エルちゃん!危ないからもどっておいで!」
  窓から乗り出して、宿の女将がそんなことを叫んでいるが。
  どうやらマナを抱きかかえてひとまず部屋の中に入れたらしい。
  このあたりの上空には羽の生えたレッサーデーモンなどの姿は見えないが。
  それらがみえるのは、街の中心地のあたり。
  ここは街の中心地から離れた路地裏、ということもありあまり見向きもされていないらしい。
  ゆっくりと目を閉じる。
  すっと片手を前にと突き出す。
  「わが身、わが意思、わが力、わが意思をもちて、我が望みに応じよ」
  青い瞳がふわり、と金色にと変化する。
  「我が意思は我が力、我が力は我が意思なり」
  ざわっ。
  その言葉と同時に、エルの体を金色の淡い光が包み込む。
  肉体を使わずに精神のみだけで使用する場合は言葉はいらない。
  だがしかし、人の肉体、という器がある以上、言葉を発したほうが負担は減る。
  「無は有に、有は無に、全てはあるがままの望みの姿に」
  その言葉と同時に、片手を突き出した手の平の上に小さな黒い球体が出現する。
  「我は命ず、かのものたちに無と有を」
  そういうと同時に、手の平の上に出現していた黒い球体をきゅっと握り締める。
  その刹那。
  ポシュ。
  空に浮かんでいた数多の羽の生えたレッサーデーモン、そしてまた、街の至るところから発生していた炎。
  さらには、街の中を闊歩していた魔物たち。
  この街の周辺に存在していたいくつかの魔物や魔族。
  それらの元に刹那、黒い炎が出現し、瞬く間にそれらを全て飲み込んでゆく。
  黒き炎は金色の炎となりて周囲を覆いつくす。
  今、エルが放ったものは、エルが指定した全てのものに対してその効力を無と化すもの。
  つまりはレッサーデーモンなどにおいては、その存在が無と化し。
  炎にいたっては無となり金色の光において有の力にと変化し焼き尽くしたはずの物質を再生させる。
  それはほんの一瞬の出来事。
  おそらく、ハタからみれば何がおこったか理解できるものはまずいないであろう。
  重破斬は周囲に虚無を誘い込む術。
  だが、今エルが使った術はそれとはまた異なる力。
  虚無はまた創生の力をも生み出す。
  「さ…さすがに…体に負担すごいわ……」
  肉体的に感じるはてしない疲労。
  たかが、ちょっとした力でもないモノをしようしただけだ、というのに。
  この喪失感。
  ふらり、と一瞬体がよろめくと同時、エルの体をまとっていた金色の光もまた掻き消える。
  だけども、今ここで気絶すれば、そのまま屋根の上かに地面にまっさかさま。
  肉体における疲労はすでにピークを達している。
  そのまま、がくっと膝と両手を屋根の上につきながら、
  よつんばいになっているままの格好で虚空にとある紋様を描き出す。
  転移魔方陣の応用。
  そのまま、その魔方陣を自身の体に絡めるように移動させる。
  それと同時、魔方陣がエルを中心にしてほのかに光を発し、
  次の瞬間、エルの体は魔方陣の光とともに掻き消える。
  「って、あぶないっ!」
  指定した場所は宿屋の部屋の中のはずだったのに、どうやら肉体的な体力が足りなかったらしい。
  窓のすぐそばに移動し、そんなエルをあわててがしっと受け止めている宿の女将。
  突如として移動する術などは彼女はみたことがないが、だがしかし。
  そういう術があっても魔術に関しては何でもありのような気がするのでさほどおどろいてはいない。
  実際は、今エルが使った術はかなり高度なものであり、まず使用できるものは皆無、といってもいいのだが。
  「って、エルちゃん!?」
  いきなり身を乗り出している窓の前に出現したエルを抱きとめたはいいものの。
  その体は異様に冷たい。
  精神的な意識は覚醒しているものの、肉体的にはそうはいかない。
  まぶたはしっかりと閉じられており、はたからみれば顔面蒼白に成り果てているように垣間見える。
  「と、とにかく。早くベットに」
  何がどうなっているのかは理解不能。
  だが、確実にいえるのは、今この子供が何らかの術を用いた、ということ。
  そしてまた、その術の過負荷にて小さな体に負担がかかってこのようになっている。
  ということ。
  ぬくもりが一つも感じられないその小さな体の心臓もまたゆっくりと動いているのみ。
  とにかく、体を温めないと。
  そう思い、エルをそのままベットに寝かし、お湯を沸かしにとぱたぱたと降りてゆく女将の姿。

  「え…ええと……」
  い…今のは?
  一瞬のことではあったが、たしかに感じた畏れ。
  街の中が面白いことになっており、いまだにのこっている人々からほどよい負の気配が漂っていた。
  というのに。
  それら全てをもかき消すような、何ともいえない畏れと畏怖。
  このような感覚に陥るような技や術などはゼロスは知らない。
  否、唯一、それに近いもの…といえば……
  「……死の…入り江?」
  たしか噂では魔道士が術をぶっばなして死の入り江と化した。
  そうゼロスは旅の最中、情報を得てはいる。
  それが誰が放った技か、ということまではつかめてはいないが。
  あの場にたったときと同じような、畏怖、という名前の感情。
  誰かが、『あのおかた』の力を…つかった?
  にしては、人間が一瞬にして炎や挙句はレッサーデーモン、それらを消し去ることができるであろうか。
  あの存在の正確な知識をもっていたとしても、使われる魔力や体力は並大抵のものではない。
  ぐるり、と周辺を見渡してみれば、精神世界面においてもやはり、同じようなことがおこっている。
  それも痕跡すらまったく残さずに。
  普通ならば、何らかの力を使えばそれにともなう残り香は残る。
  それすらもまったくもって綺麗にと感じさせないみごとなもの。
  つまりは、直接にそれを経験していなければ何があったのかは絶対にわからない。
  魔王様や赤の竜神だとて力をつかえば残り香は残る。
  それすらもまったく感じさせない、というのは……高度すぎる力、といっても過言ではない。
  「誰が……」
  あのリナさんでしょうか?
  いえ、今リナさんはあのカンヅェルさんと対峙してますし。
  えっと、レナさんのほうは…実験施設に乗り込んでいらしゃいますし。
  アメリアさんとゼルガディスさんにおいては地下の研究施設を壊していますし。
  なら、他の人?
  まさか、あの子ども達がこんな力を使えるはずもない…とおもいますし。
  というか、おもいたいです。
  あのエル、と呼ばれていた子供からときおり感じる何らかの本能的に逆らえない何か。
  どうしてもそれと今の現象を結びつけたくなってしまう。
  だがしかし、結びつける、ということはありえないであろう可能性をも視野にいれなければならない。
  ということ。
  そして、万が一そうならば、確実に上司に報告しないとまずいであろう。
  というもの。
  「……ま、まあ、気づかなかったことにしましょう。ええ」
  面倒なことは嫌ですし。
  そもそも、そうとなればゼフィーリアに出向け、といわれる可能性はほぼ確実。
  あんな場所好き好んでいきたくないですしね。
  ならば、おそらく、今のほんの一瞬の力の波動はどこにも感じ取られていないはず。
  ゆえに、自身がだまっていれば問題はない。
  聞かれれば答えるまで。
  そう自身の中で判断し、再び城の中に舞い戻ってゆくゼロス。
  もやもやした気分は、やっぱり、アメリアさんたちの負の感情をもらうことではらさせてもらいましょうv
  そんなことを思いつつ。

  「こんな研究!まちがってるわ!」
  延々と地下の牢獄を探索していたアメリア達。
  その結果、牢獄の奥のほうに実験施設のような、研究施設のような開かれた部屋があり。
  そこに閉じ込められている様々な人々の姿。
  全員、どうやら眠らされているらしく、生きてはいるが意識はない。
  しかも、そこにいた黒いフードをかぶっている数名の男たちに問いつめたところ。
  何でも人と他の生き物、特に魔族との合成を目的とした実験であり研究。
  ということ。
  人はどうしてもか弱い。
  だがしかし、魔族のその強靭な力を意志をもったまま手にいられれれば?
  それが彼らの実験の本質。
  合成獣化などとはまた異なる。
  全ての能力を人あらざるものにする、というその実験。
  究極の目標は外見は人のそれのまま、その力を得る、ということ。
  すでに実験に使われた人々のうめきが何とも痛々しい。
  だがしかし、アメリア達にできることなどありはしない。
  人としての意識をもったまま、実験材料にされている人々。
  それが何もしらない旅人達だ、というのだからなおさらに。
  まずは、力のない普通の一般人と、力が多少なりともあるであろう傭兵や魔道士達。
  それらにおいてそれぞれ実験を繰り返していた彼ら達。
  助けようにも助けられない。
  それが何とももどかしい。
  唯一、助ける方法があるとすれば、彼らの命を自分たちが断ち切ってやることのみ。
  そもそも、合成されたという魔族と、人間の精神を分離する方法などアメリア達は知らないのだから。
  それが、普通の合成獣化のように肉体的における能力だけならば方法はある。
  だがしかし、この実験は魂ともよべる精神にそれらを融合させる、というもの。
  かつて、この研究におぼれ、滅んでいった国が多々とある、という禁忌ともいえる研究。
  とにかく、できることからするしかない。
  それゆえに、捕らわれていた人々を目覚めさせ、ワイザーの案内で彼らを城の外にと案内してゆく。
  ワイザーは呪文を使えない。
  それゆえに、まずは人々の安全を優先させる。
  もっとも、彼とて簡単な魔術はしよう可能だが、こういったときに対処できる術は持ち合わせていない。
  その分、頭脳で彼は何とかするタイプなのだから。
  累々と並んでいるうめき声をあげているカプセルの前で理不尽ともいえる扱いに怒りを抑えきれず、
  思わず叫んでいるアメリア。
  「しかし…どうする?」
  アメリアの怒りは至極当然。
  だがしかし、彼らをこのままにしておく、というわけにもいかないであろう。
  だがしかし、自分たちの手で命を絶つ、というのもそれは究極の選択。
  かといって、このまま彼らを苦痛のままに生かしておく、というのもまた非情。
  打つ手がないがゆえに怒りを言葉に表して叫ぶしかないアメリア。
  と。
  ザシュっ!!!
  アメリア達の目の前にて、カプセルの中にはいっている異形と化した人々の体に黒い錐が貫かれる。
  それはほぼ一瞬の出来事。
  三角推のような錐にそのまま貫かれ、まるで生命の水に漂うソレラはまたたくまに肉片となり掻き消える。
  まるで、水の中に溶けこむかのごとくに。
  「なっ!?…って、ゼロス!?」
  「な!?今のはゼロスさんが!?どうして!?」
  そこにいるはずのないゼロスの姿を目にして驚愕の声をだすゼルガディスとアメリア。
  そこには、いつものように笑みを浮かべたままにこやかに部屋の中心にたっているゼロスの姿が。
  「どうして?僕はただ、彼らを解放しただけですよ?それとも、他に方法があったとでも?」
  「そ…それは。それでもっ!」
  理不尽ともいえるゼロスの言葉。
  ゼロスのいうことはもっともだ、と理解はできるが、納得できるものではない。
  カプセルの中にはいっていた人々は確かに意識があった。
  アメリア達の姿をみて、殺してくれ、と嘆願していたことからも。
  ゼロスにより消滅させられた実験の道具とされた人々。
  彼らにとってそれは幸せだったのかどうかは、それはアメリア達には知る由もない。


                 ――Go To Next


  #########################################

あとがきもどき:

薫:さてさて。エル様の活躍〜は、はっきりいってかなり少ない(まてっ!
  しかし、使った力ははっきりいって途方もない普通から考えればレベルです。
  何しろ炎に焼かれた町並みなどもその炎自体を逆の性質にと変換させて、創生の力となして。
  などとしているので町並み再生、ということも実はやってのけてたりするこの事実。
  もっとも、それに気づいたのはゼロスのみであり。
  家の外などに出ることもなかった残された人々などは気づいておりません。
  当然、城の中に入り込んでいるリナ達は知る由もありませんv
  ちなみに、エル様、肉体がまだ三歳児のそれ、ということあり。
  その力において負担がかかり、あるいみ肉体的にはただいま仮死状態中〜
  といっても、精神のみはしっかりと覚醒しているので問題はないんですけどね〜
  ともあれ、ではまた次回にて〜♪





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33565○バラレル・トラペラーズ○〜それぞれの夜明け〜かお E-mail 2008/4/30 23:30:17
記事番号33514へのコメント



  まえがき&ぼやき:

  さてさて。今回でようやくラルド・シティ編は完了ですv
  いともあっさりと魔族が倒されているのはともかくとして(笑)
  まんまと逃げ出している元国王さんはやはりあの事件を引き起こします
  まあ、それはしばらく後のレナ達がかかわる事件ですけどねぇ。
  何はともあれ、ゆくのですv

  #####################################


       ○パラレル・トラベラーズ○〜それぞれの夜明け〜


  な…何だ?
  今のは?
  一瞬感じた何ともいいがたい力の波動。
  それゆえに、一瞬隙が生じる。
  そもそも、目の前にいる二人は人間だ、というのに隙がない。
  相手のもつ剣が魔力剣である、ということは理解はできたが。
  それでも自身の魔力に普通人間がついてこれるものではない。
  生半可な魔力剣などでは魔族であるカンヅェルの魔力に耐えられずに折れるのが必然。
  だが、そんなカンヅェルの隙を対峙していたリナとガウリイが見逃すはずもない。
  「リナっ!」
  「神滅斬(ラグナブレード)っ!!」
  だっとその隙を見逃さずに間合いをとりながらすばやくガウリイが斬りかかる。
  相手がその一撃にひるんだ隙をつき、すかさず呪文を発動させるリナ。
  ラグナブレード。
  金色の王の力を借りた術であり、切れないものは何もない。
  リナが今つかっているのは完全版のラグナブレード。
  カンヅェル程度の中級魔族はひとたまりもない。
  高位魔族である魔竜王ガーヴなども逃れることはまず不可能に近い技なのだから。
  「が…ば…馬鹿な…ぐぁぁぁぁぁぁっっっっっ!」
  謁見室に、カンヅェルの断末魔がこだまする。

  「だあっ!逃げ足だけはあいかわらず早いしっ!!」
  おそらく、今回のこの事件の鍵を握るであろう一人、ベルギス。
  その彼がいるとおもわれる部屋にとたどり着いたのはつい先ほど。
  何だか一瞬、レナの中にいるレナの精神の負担が軽くなったような気がしなくもないが。
  今はそれよりも、この一件をどうにかするのが先決。
  襲撃者の情報はおそらく、事前に彼にと報告がなされたのであろう。
  ベルギスが選んだのは、その場よりの撤退。
  城の中にいくつもの監視用の術を設けていた゛かゆえに、魔族であるセイグラムの失敗。
  そしてまた、地下室における実験材料たちの解放。
  それらは手にとるようにと理解できていた。
  すでにある程度のデータは彼的にはそろっている。
  あとは、それらを完全に利用できる場所を確実に得るのが何よりも重要。
  魔族の後押しがあれども、失敗することはこのたびのことでわかった。
  だからこそ、彼らのみでこの場を脱出した。
  そこに実験の成果ともいえる元人間達を放置して。
  彼らが元人間であった、ときいても躊躇していては自分たちが殺される。
  だからこそ、その命を自身の手で絶ったレナとラウリィ。
  世の中、綺麗ごとだけでは生きていかれない、というのはよくわかっているがゆえに。
  元に戻す方法がないのならば、せめて安楽の死を。
  それしかレナ達には方法がないから。
  異形の魔物と化したそれらを全て片付けて、追い詰めていたはずのベルギスたちがむかった部屋。
  そこに向かったリナ達がみたのは、完全にと破壊されている抜け道らしき場所。
  何らかの魔力を感じる、ということはおそらく、そこに何かの仕掛けがあったのであろう。
  それが何なのかはレナ達には知る由もないが。
  そこにあったのは、古より伝わる今では誰も使用するものがいなくなっていた古の転移魔法陣。
  魔族であるカンヅェルの協力により、その利用は可能となっていた。
  ベルギスたちはそれを用いてこの城より脱出を図っている。
  すでにもう彼らは別の場所、つまりはこの近くには存在していない。
  おそらく、逃げた、ということはあきらめていないのであろう。
  「またどこかであうかもしれないわね……」
  そもそも、とっとと見つけ出して成敗していたほうが世のため人のためになるわよね。
  あいつらって。
  そんなことをしみじみおもうレナ。
  だが、何をどうしようが、すでに相手が逃げた、という事実はかわるものではない……

  「ああっ!?ラルド公!?」
  とにかくひたすらに地下を探索していた。
  異様に魔物やレッサーデーモンなどで警戒が厳しい一つの地下牢につづく道。
  それらを駆除しつつ、先に進んでいった先にみたものは。
  衰弱しきった、だがしかし、面影がどこかのこっているらしい男性の姿。
  といってもすでに骨と皮だけ、といったような形になっているのだが。
  飲まず喰わずでこの場に幽閉され、それでも何らかのおそらく魔術がこの場にはかけられているのであろう。
  地下牢の中にさらにあった隠し通路。
  そこを見つけ出したのはゼルガディス。
  遺跡などに慣れている彼だからこそ見つけ出されたその空間。
  アメリア達がその部屋にたどり着くのと、リナ達がカンヅェルを滅ぼすのとほぼ同時。
  それゆえに魔力である意味幽閉されていた男性の肉体的な時間の活動が開始される。
  主に肉体における時間率を止められていたがゆえに彼は飲まず喰わずでも死ぬことはなかった。
  空間そのものを変化させ、物質世界とは切り離していたがゆえ。
  いわば、魔力の檻。
  服装からして、領主の服装をしていることからして彼がラルグ公である。
  という事実は疑いようがない。
  そもそも、このような場所に幽閉されている、ということからしてもそのことは明白。
  皮とほぼ骨だけにと成り果てたその姿をみて思わず叫んでいるアメリア。
  「これは……どうやら、まだ息はあるようだな。できるか?アメリア?」
  そんな彼の元に近寄り、そっと脈をとるゼルガディス。
  できるか、というのは彼を元に戻すことができるかどうか、ということ。
  ここまで衰弱している人物を回復させるような高度な魔法をゼルガディスは持ち合わせていない。
  「任せてください!」
  伊達に、セイルーンの巫女頭を勤めているわけではない。
  そのまま、横たわる彼のそばにいき精神を集中させる。
  復活(リザレクション)。
  復活(リザレクション)の術ではこの場においては要素が少なすぎる。
  だが、それに応用した術はある。
  魔術は全ては使用者の応用次第。
  精神を集中し、力ある言葉を唱えるアメリアの詠唱により、ほのかに横たわる男性の体が光に包まれてゆく。


  ざわざわざわ。
  今までまったく活気、というものがなかった街の中に賑わいが舞い戻る。
  それぞれ行方不明になっていた子ども達や人々は無事なものは帰路にとついた。
  そしてまた、地下深くに幽閉されて今にも死に掛けていた本物のラルド公。
  その彼をワイザーが救出した。
  今までラルド公をかたっていたのは、いうまでもなく魔族であるカンヅェル。
  いざ、というときのコマにするために彼を彼らは生かしておいたのだが。
  それがこの街にとっては幸いしている、といってもいいであろう。
  こまごまとした事情聴取はすべてワイザーに押し付け…もとい、アメリアの一言でどうにか解決している。
  何しろアメリアの身元が身元。
  まさか、魔族が絡んでいました、とも真実をいっても信じるものがいるはずもなく。
  その事実は一部のもののみが知るだけとなっている。
  一般の人々には、ラルド公に成りすましていた何者かがたくらんでいたこと。
  として伝えられ、その間にだされた法令の全てはなかったものとみなされているこの現状。
  「リナさん。レナ。やっぱり国に協力をあおぎましたところ。
    すくなくとも千人以上が行方不明のまま、ということです」
  セイルーン王国とラルティーグ王国。
  その二大巨大大国において調査したところ、ラルド・シティにむかい行方不明になっている人々は千人以上に軽くのぼる。
  おそらく、ラルド・シティに向かったと判らないものたちを入れればかなりの数になるであろう。
  城の中から救出されたのは、数的にはおよそ百人程度。
  兵士たちは全員すでに殺され、死してなお操られていたらしい。
  それでもまだ、死体がきちんとあるだけまし…といえるのかもしれないが。
  「そう。しかし、いったい何がおこってるの?」
  レナの疑問は至極もっとも。
  とりあえず、城に捕らえられていた人々を伴い、城から出たのはつい数日前。
  ひとまず、様々な機関に報告に追われるアメリアやワイザー、そしてレナはともかくとして。
  ひとまず子ども達が心配だから、と宿に戻ったリナが目にしたのは。
  なぜかぐったりとしているエルの姿。
  何でもリナ達が城に突入している間、町に襲撃があったらしくそれらを一人でどうにかしたらしい。
  ということ。
  女将とて魔術に詳しくはないのでどのような力をつかったのかは不明だが。
  だが、リナへの説明はそれだけで十分。
  まだ、エルの肉体年齢は三歳。
  精神年齢もリナからすればまだ三歳のかわいいサカリの子ども。
  もっとも、エルに関してはその精神年齢は歳相応…とはいえないのだが。
  無理な魔力を肉体に負担がかかるほどに使用して疲れているだろう。
  というのも理解できる。
  何しろ眠るエルの髪の色がいつもの凄然とした金色でなくどこか淡い金色にと変化している。
  光の反射具合によっては様々な色に見て取れないほどに。
  リナは魔力を使いすぎたときには、髪が真っ白になる。
  という経験を幾度もしている。
  だからこそ、リナには判る。
  魔力を使い切り、エルはぐったりとしているのだ、と。
  とにかくそうなっているときには安静が第一。
  かといってエルだけ宿においてマナをつれて移動する、というのも問題外。
  だからこそ、面倒くさい事後処理はレナ達にとまかせ、リナとガウリイは日々子ども達の面倒をみている今現在。
  アメリアの術により何とか動ける程度にまで回復したラルド公はワイザーに連れられ外にとでた。
  そしてまた、ラルド・シティにとある魔道士協会の隔幻話室よりセイルーン王家や、ラルティーグ王家。
  それらにことの次第が伝えられた。
  どうやらラルティーグ王国そのものからしても、ラルド・シティにむかったっきり行方不明となっている。
  という情報が最近多々と寄せられているので本格的に行動を起こしだす前だったらしい。
  失われた命や実験に使われた人々の命は戻らない。
  だからこそ完全に喜べるものではないが、アメリア達が行動したことにより助けられた人もいるのもまた事実。
  「さあねぇ。まあ、セイルーンにしろ、このラルティーグにしろ、一応大国、だしね」
  大体の予測はつくが、それをいうわけにはいかないであろう。
  それゆえに、リナは至極無難な返事を返す。
  「大国。だから。か。なら他にも怪しいのはエルメキア帝国と、ディルス王国。
    あとセイルーン王国にライゼール帝国、くらいか?」
  他は小さい国であいるし、沿岸諸国連合にいたっては小さな国がひしめき合っている。
  「あ。ゼフィーリアは絶対にないわよ。ぜったいに」
  そんなゼルガディスのつぶやきに、即座に反応して訂正をいれているレナ。
  「まあ、あの国は僕らですらはいったら脱出不可能。よくて再起不能になるお国柄ですからねぇv」
  そんなレナの台詞ににこやかに返事をしているゼロス。
  『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
  毎度のこととはいえ、いきなり会話にさらっと入り込むのはゼロスらしい、といえるのだが。
  そもそも、さきほどまで誰もすわっていなかった隣の席にいつのまにか座りお茶をすすっているゼロスの姿。
  その言葉に思わず全員がだまりこむ。
  「って、あんたまだいたの?」
  至極もっともなリナの言葉。
  「ひどっ!リナさん!それってあんまりじゃないですか?」
  そんなリナの台詞に抗議の声をあげているゼロスではあるが。
  「しかし。あんた今度は何のよう?」
  「いやぁ。すこしばかりここの街に滞在してみようかとv」
  言外に、いくらもう大丈夫、と立証されたとはいえ人々の恐怖は消えるものではない。
  ましてや家族を失った人々にとってはなおさらに。
  表だっては目立たないが、たしかにこの街には今現在負の感情が満ち溢れている。
  ゼロスの目的はその負の感情。
  彼ら魔族にとってはそれらは至極極上の糧となる。
  「まあ、いるならいるで、別にいいですけど。ゼロスさん。今晩から毎日枕元で、正義とは何か。
    徹底的に説得してさしあげますからっ!」
  目の前にて異形の存在に変えられた人々をこのゼロスによって殺された。
  そのときの何ともいえない理不尽さはいまだにアメリアやゼルガディスの中でくすぶっている。
  だからこそのアメリアの言葉。
  「い、いえ。それは遠慮いたします。ところで。みなさんはこれからどうされるんですか?」
  今、この場にワイザーの姿はない。
  一応、ルヴィナガルド共和国の特別捜査官ということでいろいろと仕事があるらしくほぼ別行動をとっている。
  彼曰く、この事後処理が終わり次第、また逃走したベルギス一味を追うらしいが。
  そんなゼロスの問いに、
  「ん〜。これ、といって目的もないけど。とりあえずディルスに向かってみようか。とはおもうけどね」
  助け出した人々の中には傭兵家業のものもいた。
  彼らがいうには、ディルスで今、なぜか戦力となる人物を大々的に募集しているらしい。
  ここ、ラルド・シティにたちよったのはそのための補給をかねていた存在も多々といた。
  ここは様々な地域への流通の場でもあることから、防具などといったものも充実している。
  特にセイーン国内では多くみられる魔法道具(マジックアイテム)系統に関してもまた然り。
  そんなレナの台詞に、
  「そういえば。父さんも気にしてたし。それもいいかも」
  アメリアの父親は実質的にセイルーンの国王のようなもの。
  何しろ国王エルドランが病に伏せ、実質第一皇子であるフィリオネルが様々なことを成している。
  父の手を煩わすことなく、自分の手で解決できればそれにこしたことはなし。
  それゆえに、レナのことばにしみじみうなづくアメリア。
  「そういえば、リナさんとガウリイさんはどうするんですか?」
  ゼロスの言葉をうけて、こういったことがあった以上、彼らがどうするのかも気にかかる。
  それゆえに確認をこめて問いかけているラウリィ。
  そもそも、リナとガウリイは…といっても、リナのみであるが。
  リナとレナは似すぎている。
  ゆえに、レナがらみのトラブルにも巻き込まれるであろうことは明白。
  ラウリィとガウリイは雰囲気こそにてはいれどもどこかが違う。
  まあ、黙っていればそっくり、といっても過言ではないが、どことなく違うのである。
  それはおそらく、それぞれがもっている雰囲気がかもし出す違いからであろう。
  「あたし達は当初の予定通り。ゼフィーリアにむかうわよ」
  あまりこの地で長いするわけにはいかない。
  リナからすれば、長く留守にしている家のこと…否。
  黙って旅にでてしまったようなものであるこの現状を好ましくおもっていない。
  もしそれがルナに気づかれでもしたらどんなお仕置きをうけるか、たまったものではない。
  この世界の行く末も気にはかかるが、とりあえずサイラーグの壊滅。
  そしてまた、ズーマとセイグラムの融合。
  そういったものが回避された今となってはあまりこの地にこだわる必要性はない。
  まあ、ディルスのほうでおこっている事情も気にはなるが、下手に介入してゼロスの思い通りにさせるのは好ましくない。
  あと気にかかるのはシェーラの動向であるが。
  まあ、今はおそらく動いていないはず。
  それゆえに、ゼフィーリアを優先しているリナ。
  また失敗する可能性があるままの術よりもかの地にいったほうが確実、とおもえるからこそ。
  「そ。そうですか……あ、あの。くれぐれもルナ姉ちゃんにへんなことはいわないでくださいね……」
  そんなリナの台詞にその瞳に恐怖と不安の色をたたえつつ、本気でいってきているレナ。
  「あたしだってルナ姉ちゃんの怖さはよぉぉぉぉくわかってるつもりだし」
  「まあ、ルナ義姉さんだしなぁ」
  そんな二人の会話をききつつも、のほほんといっているガウリイ。
  「でも、るなおね〜ちゃん、おもしろいよ?まなによくあそびあいてくれるし」
  その遊び相手、というのがルナに勝負を挑んできている人物たち、ということはリナはよくわかっている。
  まあ、勝負をいどんでくるものたちとて、二歳の子どもに負けたとなれば二度と再起不能なまでに落ち込むことは請負。
  「何となくその遊び相手、というのが想像がつくから聞かないことにするわ。マナちゃん」
  そんなマナの言葉にため息をつきながらもこたえているレナ。
  「それじゃ、私はレナと一緒にいくってきめてるし。リナさんたちはどのルートでゼフィーリアに?
    そこまではなら一緒にいきませんか?」
  ゼフィーリアに向かうルートもいくつかある。
  どのルートを通ってもゼフィーリアには必ずつく。
  「ん〜。遠慮しとくわ。それにエルの体調がもどるのももう少しかかりそうだし」
  かなりの魔力をつかったらしく、エルの体力はまだ万全ではない。
  それでなくても小さな子どもの長旅はかなり体に負担はかかるはず。
  だからこそ、ここ数年はいい子であまり旅にでることもなくゼフィーリアにおちついていたのだから。
  「そうですか。残念です。せっかく一緒に正義をひろめたかったのに……」
  「そういえば。ゼルはどうするんだ?」
  しゅん、となるアメリアの様子におもわず苦笑するリナ。
  そんなリナとは対照的に、ゼルガディスにと問いかけているガウリイ。
  「たしかに。たしかレゾの負の遺産がどうのとかいってたけど」
  ガウリイの言葉に、ふと思い出したようにいっているラウリィ。
  たしかゼルガディスはレゾが残した負の遺産をどうにかするために旅をする、とか以前いっていたはず。
  ゆえに、自分たちと行動を一緒にする必要性も彼も感じていないはずである。
  「そうだな……」
  ガウリイとラウリィの言葉にしばし考えこむゼルガディスに対し、
  「ええ!?ゼルガディスさん!一緒にいきましょう!そして正義をひろめましょうっ!」
  「って、その正義をひろめる。というのは何だ?!」
  「悪を懲らしめ正義をつらぬく!これぞ正義の味方といわず何といいますかっ!?」
  「何かかなり違うような気がするんだが?」
  「まあ、アメリアだし」
  そんなアメリアの言葉に、思わずつっこみをいれるゼルガディス。
  そんなゼルガディスに間髪いれずに突っ込みをいれているレナ。
  「とりあえず。事後処理もそろそろおわりそうだしね。まあ、アメリア。無理強いはだめよ」
  ごたごたしていた事後処理も二つの国が率先して動いているためかあとレナ達がすることはない。
  あるとすれば、しつこいほどの事情聴取くらいなもの。
  まあ、そのあたりもワイザーが一緒にいた、というのもありかなり考慮されている。
  「しかし。ほんと。あんたらにかかわったら魔族がらみの事件が多いな」
  「気のせいよ」
  「気のせいです」
  ため息まじりのゼルガディスの言葉に、同時にきっぱり間髪いれずにいいきるレナとリナ。
  リナにとっては魔族がらみの事件、というのはもはや日常的なものと化している。
  慣れてしまった、といえばそれまでなのだが。
  レナからしても、人あらざる力はもはや物心ついたころから十分に身にしみてわかっている。
  だからこそ魔族がらみといえどもさほど動じない。
  ラウリィからすれば、すでにあのときから魔族とのかかわりは決定づけられていたようなもの。
  そう、兄が剣の中に封じられたあのときから。
  「ま、しばらくゆっくりして。それからそれぞれに別れましょ」
  リナの意見は至極もっとも。
  今ここで何をいおうが、数日はこの街にまだ足止めをくらいそうなのだから。

  ともあれ、しばらくの間、この町、ラルド・シティにと彼らは足止めをくらい、
  その後、それぞれに片方はディルスへ、片方はゼフィーリアへ。
  そしてまた、一人いずこか別の場所にと旅たつ彼らの姿が数日後、見受けられてゆく。


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あとがきもどき:

薫:さてさて。ごたごた面倒な事後処理報告は割愛して(かなりまて)
  まあ、延々と事情聴取みたいなのを誰も読みたくもないでしょうしねぇ(しみじみと
  ともあれ、次回よりゼフィーリアにむけての旅路の開始ですv
  ではまたv