◆−35.ガイリア・シティ−星野流 (2008/5/28 00:00:08) No.33582 ┣36.魔族 −星野流 (2008/5/31 22:46:35) No.33584 ┗37.一体どうしてそーなった?−星野流 (2008/7/5 14:01:08) No.33591
33582 | 35.ガイリア・シティ | 星野流 URL | 2008/5/28 00:00:08 |
35.ガイリア・シティ リナに遅れる事1週間。私はディルス王国首都ガイリア・シティに向けて旅立ち、目と鼻の先というところで同行者ができた。 見たところ60後半のご老人で、捻挫をして唸っているところを発見したのである。聞くところによると彼はガイリア・シティで小さな商店を営んでいるらしい。簡単な処置を施し、ついでだと言って負ぶってガイリア・シティへの道を行く。 ただ、困った事に私一人でいる時は旅人を待ち受けているらしい盗賊は全く気付く気配もなかったのだが(それもちょっと寂しい)、こういう手負いのご老人を負ぶっている時に限って気付かれるのだから腹が立つ。 盗賊達が常套句を述べている間にスリーピングを唱えて眠らせると、ご老人―ジェイドさんは私の背中でポツリと呟いた。 〈ジ〉「痛めつけてやればいいのに…」 その言葉にぎょっとし、立ち止まる。 〈G〉「そ、そんな物騒な事言わんでください」 ちょおおっとおっかない人と巡り会っちゃったかなあ? ガイリア・シティの門はいつもとは違ってすんなり入れた。今回の検問はちゃんと私の事に気付いてくれたのである!(けっこう嬉しい) そして、ジェイドさんの営む雑貨屋に入ると小さな男の子がいた。12・3歳くらいだろうか? 「おかえり!その人誰?」 〈ジ〉「ただいま、アンバー。こちらはガード=ワードさん。足を挫いたところを見つけてくれてね。負ぶってきてもらったんだよ」 〈ア〉「へえ、ありがとう!あ、そうだ。足、俺が治してやるよ。今日リカバリィを教えてもらったんだ!傷を治す呪文なんだ捻挫なんてあっという間さ」 ジェイドさんを下ろしながら、彼の勘違いを正そうと口を開く。 〈G〉「いや、捻挫にリカバリィをかけちゃだめなんだ」 〈ア〉「え、あんた魔道士なの?」 値踏みするように上から下まで見てくる。 〈G〉「よく言われるよ。だけど、私は魔道士だ。理由を話してもいいかな?」 〈ア〉「おう。聞かせてもらおうじゃねえか」 腕を組んでこちらを見据える。へえ、中々見所があるじゃないか。でも、もうちょっと礼儀というかその…子供らしさもあったほうが良いと思うな。 〈G〉「理由は簡単。リカバリィを使うと捻ったままになってしまうかもしれないからなんだ。だからこの場合、足を固定し、外部薬を塗ることだね。何なら、薬の作り方も教えるよ」 〈ア〉「あ、そう?ありがとう。ちょっと待ってて」 アンバーは外へと走っていった。 〈ジ〉「ガードさん、薬までくれるんだって?ありがとう。これ、お礼だ。受け取ってくれ」 言って、ジェイドさんは小さな袋を懐から取り出す。 〈G〉「お礼なんていりませんよ。私が言い出した事なんで」 パタパタ手を振って辞退する。 〈ジ〉「それじゃあ、気がすまん。受け取ってくれ」 でもなぁ… 〈G〉「その袋には一体何が?」 〈ジ〉「…少ないだろうが、金貨が3枚と銀貨が20枚入ってる」 やっぱり、お金かぁ…まあ、普通お金だよなぁ。でも、お金っていらないしなぁ。と、そこでおいしそうなクッキーが目に映った。 〈G〉「すみませんが、お腹がちょっと空いているのでそこにあるクッキーをもらえませんか?」 彼はポカンと口を開けた後、何故か笑い出した。 〈G〉「何で笑うんですかぁ!」 〈ジ〉「あのな。銀貨10枚あれば、ちゃんとした物を食えるんだぞ?なのに、クッキーの方が良いのか?」 笑いながら、彼は言う。 〈G〉「ええ。私、もらうならお菓子のほうがいいです」 〈ジ〉「金より食い物か。面白い奴がまたいたもんだ」 未だに笑いの収まる気配がない。 そんなに面白がらなくてもいいじゃないですか。 そんなこんなで、私がクッキーを頬張っていると、見習い魔道士仲間を連れてきたアンバーに急かされて薬を作ることになった。 晩いからと彼らの家に一晩泊めてもらい、ご馳走になって翌朝、アンバーに連れられ、魔道士協会へと赴き、昼頃に声をかけられた。 ちなみに、リナ達はまだやってきていないようだ。おかしいな。追い抜くはずがないのだけど。 〈ア〉「なあ、兄ちゃん」 昨日の子達と一緒にアンバーが来ていた。 〈G〉「姉ちゃんだ」 この頃落ち込むことなく修正をかけれるようになった。 〈ア〉「あんた、結構有名だったのか?」 〈G〉「…どこをどうして有名になったのかは知らないけど、何故か有名らしいよ」 誰も気付いてくれないけど。 〈ア〉「だって。教科書の筆者がガード=ワードって書いてあるんだもん!」 〈G〉「はあっ!?」 驚きによってすっとんきょんな声を放つ。 〈ア〉「ほら。『白魔術教本(回復呪文編)ガード=ワード著』って書いてある」 うわぁ、懐かしい本が出てきた。 〈G〉「懐かしいなぁ。確か8年ぐらい前の本だ」 〈ア〉「あんたいくつだよっ!」 感慨に耽っているとアンバーからツッコミが入った。 〈G〉「19。もうすぐ20になる」 〈ア〉「じゃあ、11、2の時に書いたのか?へっ、天才って奴かよ」 天才?まさか。それはないだろ。 〈G〉「違うよ。天才ってのは…法則も何も習っていないのに見様見真似でやって一発でできてしまって、あまつさえオリジナル呪文を作ってしまうような人のことだと思う」 当に、姉はその類だった。予備軍としてリナだろうか? 〈ア〉「じゃあ、何でこんなの書けたんだ?」 〈G〉「それは…その…」 肩身が狭くなる思いがした。 〈G〉「教科書が難しくて、自分が理解できるように書き直したのがそれで、それを教官に見つかって…」 ポソポソと私は理由を述べる。だって、恥ずかしいじゃないか。こんな理由。 見習い魔道士衆は皆が皆、奇妙な顔をして俯き、何も言わない。あー…夢を持たせてやるべきだった? 〈G〉「ま、まあ、どんなバカでも努力すればそれぐらいにまでなれるということであって…って、ちょっと、何で行っちゃうの?」 彼らは黙ったまま部屋を出て行った。 ガイリア・シティに滞在する事一週間(珍しく店には帰らなかった)ついにアメリアたちに出会った!昨日の内についていたそうだが、出会えなかったようだ。 〈G〉「や、しばらくぶり。遅かったね。何やってたんだ?」 〈ア〉「色々とね。で、異界黙示録について何か聞いてない?」 〈G〉「え?買い取っちゃったよ」 〈ガ〉「へえ。ちなみに、いくらだったんだ?」 〈G〉「100万。結構値が張ったね」 値段交渉能力皆無の私は泣き寝入りすることあれど負けてもらえた事は一度もない。もうそこらへんは諦めの境地だ。 〈ゼ〉「そうか…。で?どういう内容だったんだ?」 〈G〉「内緒♪」 私はニッコリと微笑んで言う。と、ゼルガディスさんに襟元を締め上げられる。最も、襟元を掴まれて締め上げられようと身長差が5cmもないので首がしまる心配は全くない。足もしっかりとついているのだ。 〈ゼ〉「吐け」 〈G〉「絶対に嫌」 きっぱりと言い放つ。こんな内容は人には見せられない。この内容だけは人に語ることはできない。特に…大切な友人たちには。 〈ゼ〉「吐け。でないと、頭突きをかますぞ」 〈G〉「お好きにどうぞ」 ゼルガディスさんも硬度に自信があるようだが、私も強度がかなり強いんで。何せ、岩壁をへこませるくらいの強度は持っているのだ。…自慢にならない。 諦めたのか、ゼルガディスさんは襟元を放した。 〈ア〉「ガード。そんなのは正義じゃないわ。それを必要とする人がいるのに」 〈G〉「これを必要とする人は私ぐらいさ」 ついつい自嘲気味に笑ってしまう。何故なら、金貨100万払ってでも手に入れたかったこの本には、私―新緑の守護者について書かれているのだから。 と、その時、城の方角で轟音がし、壊れ行く町並みを見た。 〈G〉「なっ!」 〈ガ〉「リナ!」 リナが向こうにいるのか!? 逃げ惑う人々とは逆に、私たちは城へと向かう。 走りながらも懸命に長ったらしい呪文を詠唱する。 〈G〉「消火陣!(エクスト・フィールド)」 こ、広範囲の強力な呪文って、かなり堪える…! 胸が苦しくなり、息も絶え絶えに三人から離れぬよう走る。 そして、目に映ったのは、ゼロスとリナ―そして、何か鋭くデカイ物体に貫かれた、10年前から変わらぬ姿の、ラーシャートさんだった。 ―登場人物― ガード=ワード L様の命により、面白いことに首をつっこむことになった。 ジェイド ガイリア・シティで小さな雑貨屋を営んでいる。 アンバー ジェイドの孫。見習い魔道士。 アメリア=セイルーン 正義感の強い、セイルーン王国の皇女。従兄の娘。 ガウリイ=ガブリエフ 光の剣士。リナと旅をしていた。 ゼルガディス 合成獣になっていた。精霊魔法が得意らしい。 リナ=インバース 「ドラまた」「盗賊殺し」などなど、様々な異名を持つ。 ゼロス 謎の神官。 ラーシャート 10年前、ガーヴさんがいた時に武術を習った事がある。 あとがき お久しぶりです。時早く、最後に投稿してから1ヶ月が経ちました。今後もよろしくおねがいします。 |
33584 | 36.魔族 | 星野流 URL | 2008/5/31 22:46:35 |
記事番号33582へのコメント 36.魔族 貫かれたラーシャートさん。彼と相対するリナとゼロス。もう一本ラーシャートさんの体に物体が突き刺さる。 そうか… その光景を見て、それが何を指すのかを理解した。戦いの場から踵を返し、その場を去る。今私にできる事。それは、魔族との戦いではない。この街の人々の手当てだ。 どうやら君の勝ちだよ。ゼラス。 実は獣神官の名前について賭けをしている。その人―人と言うのもおかしいが―と出会う前に名前を当てられたら私の勝ちだという事だった。いやいや、ちょっと待て。ゼロスと会った後のことじゃなかったか? 重傷者を見つけては復活で治していく。軽傷の者にはこの際我慢してもらおう。 「姉ちゃん!」 声をかけられ振り向く。ジェイドさんとアンバーが走ってきた。って、ジェイドさん、もう足いいのか!? 〈ア〉「リザレクションを教えて!」 突然の事に戸惑う。だって、高度な回復呪文を簡単に教える事は難しい。 〈G〉「じゃあ、今からやって見せる。それを覚えろ。考え方は―あー…全ての精霊にこの人を癒す力を貸してくれと祈るように。そう、考えればいいかな?」 私はかなり省略して教える。本当はもっと難しいんだよ?理念がどうの、患者の容態がどうのと。 〈ア〉「力を貸してもらうように祈る」 〈G〉「それじゃあ、やってみよう。復活!(リザレクション)」 その後、私たちは駆け回り、重傷者を治して行った。 時、すでに遅く夜。私は皆のいる場所へと向かう。 予想以上にピリピリした状況だった。 〈G〉「えーっと、落ち着いた?」 私は敢えてボケた言葉を吐く。 〈リ〉「落ち着くわけがないでしょ」 〈ゼル〉「とりあえず、どうするかは決まったがな」 〈リ〉「ガードは落ち着いてるわね」 〈G〉「だって今更だし」 ガウリイを除く全員の顔がひきつる。何?何か変な事言った? 〈ゼル〉「まさか、お前も『なんとなく分かった』とか言わないだろうな」 〈G〉「え?なんとなくで分かった人がいるのか?」 〈リ〉「実は…ガウリイはゼロスと出合った時になんとなく魔族だってことが分かったらしいのよ」 〈G〉「へえぇ。それは凄いな」 〈リ&ア〉「それで済ますの!?」 〈ガ〉「いやぁ、照れるなぁ」 ガウリイは照れて頭を掻く。 〈ゼロ〉「もーちょっと、驚いてほしいんですけどね〜…」 ゼロスがいじけて囲炉裏を火掻き棒でこねまわしている。 〈G〉「そうだ、ゼロス」 〈ゼロ〉「あ、はい。何でした?」 〈G〉「今まで済まなかったな。これからは自重するよ」 〈全員〉「何を」 〈G〉「何って…生の感情を出す事だよ」 三人が頭を抱え、二人が奇妙な顔をした。 〈ガ〉「生の感情って何だ?」 ああ、それで奇妙な顔をしたのか。 〈G〉「喜び、楽しみ、そういう心躍るような感情を生の感情と呼ぶんだ」 〈ゼロ〉「えーっと、ありがとう、ございます?」 ゼロスは困惑を隠せない。と、頭を抱え込んでいたリナが起き上がる。 〈リ〉「てか、何で自重すんのよ。あんたはっ!」 〈G〉「えー…そりゃあ、人が嫌がることはやっちゃダメって言われてるだろ?」 〈ゼル〉「人!?人なのか!?お前にとって魔族は人のうちにはいるのか!?」 〈G〉「入らないけど、犬猫に対しても嫌がることしたことないんだ。友達だったら尚更だろう?」 〈ア〉「ガード。魔族でも友達として認めるの?」 呆れたようにアメリアは言う。 〈G〉「だって。初めてのお友達、下級魔族」 流石にこの言葉へのツッコミが浮かばないのか。はたまた、私への同情か。彼らは困惑し、哀れみの情を込めた目で私を見る。 魔族であるゼロスにまで哀れみを受けるとか、かなり辛いんだけど。 〈ゼロ〉「それで、今更…ですか」 〈G〉「まあね。友達の半数魔族だし。あ、そうそうゼロス。一つ聞いてもいいか?」 〈ゼロ〉「ええ、どうぞ」 疲れた声で返答する。 〈G〉「土の中で具現化したらどうなるの?」 何言ってんだこいつ。という感じの顔が全員に映る。 〈ゼロ〉「そ、そんな疑問、どこから出るんですか」 〈G〉「カインっていうんだが、いつもカタートからの帰り道に、決まって土の中から現れて私を驚かしていくんだ。だから、次に会った魔族の知り合いに聞いてみようかなーって」 〈リ〉「で、ゼロスが魔族だって発覚したと」 〈G〉「そ」 私はにっこりと頷く。 〈ゼロ〉「あのですねぇ、ガードさん」 お、分かったのか。さらに疲れたような声で答えが返ってくる。 〈ゼロ〉「それ…土の中から出てきたように見せかけて具現化しているだけではないかと」 あ 〈G〉「その手があったかああああっ!」 何で気付かなかったんだ。私! 〈リ〉「納得してるところ悪いんだけど。聞いてくれる?」 〈G〉「ん?何だった?」 いやに真剣な顔だったので態度を改めた。 リナの話を聞き終わり、私は返答する。 〈G〉「そりゃあ、勿論着いていくさ」 〈リ〉「一応、理由を聞いてもいいかしら」 〈G〉「リナだから」 再び三人がなに言ってんだこいつ。という顔をする。 〈G〉「友達が危険な目にあってるんだ。ほっとくような事はできないさ。そういう時は手を貸すのが道理だろ?」 〈ゼロ〉「僕としては、来てほしくはありません」 〈G〉「まあそうだろうね。私に魔族を倒せるような技術はない。でもね、結界と治療呪文には自信があるよ。ゼロスの傷も癒せるようなストックがある。それに、たかが魔族に怪我させられるような軟な体してないし」 〈ゼロ〉「たかがって、どういうことですか」 〈G〉「北の魔王に聞いてみろ」 その言葉に戸惑う一同(ガウリイ除く)。 〈リ〉「とりあえず、明日早くに出発するから、早めに寝ましょう」 どうやら聞かなかったことにしたらしい。私たちは夕食を食べて寝た。 やられた!そう思ったのは起きたときだった。そう、もう昼になっている。私の他に誰もいない。足手まといはいらない、と。しかし、納得が行かないので後を追う。 リナ達には悪いが、ここらの地理はかなり詳しい。近道のために少し離れたところにある空間の歪みの中に入り込む。 歩み行く事しばし。目印を見つけてくるりと回る。出口から出ようとする。が、出れない。何で!?嘘だろっ!?ここで出れないってか!? 右往左往しながら考え込み、少しはなれたところで小規模のフロウブレイクを解き放つ。 見慣れた光景が見えた。少々怖い手段だったが、とりあえず成功したようだ。ホッとするのも束の間。頭頂部に激痛が走る。 〈G〉「ったぁっ!」 頭を抑えながら振り向く。そこには、ガーヴさんがいた。 あれ? 〈ゼロ〉「ガード…さん?」 振り向くと腕を失くしたゼロスがいた。 〈リ〉「なんでっ!?」 いやぁ、何でて言われても、今の状況理解できない。とりあえず、やるべきは…しかえし? ガスッ 私は渾身の力を込めてガーヴさんの顎にアッパーをかける。 〈ガー〉「何っ!?」 たたらを踏んで止まる。 〈リ〉「ガードっ!離れて!」 〈ゼロ〉「獣王様にはどうか、という事でしたが。それは秘密です」 ゼロスは私の腕を掴んだ。突如襲う眩暈。一体!? 眩暈が治まり、膝をつく。眩暈は治まったが気分の悪さは変わらない。 〈ゼロ〉「で、この前言われた治療呪文、お願いできますか?」 〈G〉「ああ、うん…精神復活(アストラル・リザレクション)」 ゼロスを治し、再び突っ伏す。て、そんな場合じゃない! 〈G〉「リナああああっ!」 どこ、ここ。あ、カタートの中腹?よし、行こう。 〈G〉「じゃあ、ゼロス。私行くから」 〈ゼロ〉「…ここがどこか分かるんですか?」 〈G〉「分かるよ。何度ここを通った事か」 ひょこっとカインが土の中から顔を出す。 〈G〉「いやいや、この状況でそれいいから。いらないから」 〈ゼロ〉「ほ、本当にそういう事があるんですねぇ…」 〈G〉「そうそう。ここから1kmほど登った所に店があるんだ。体調が戻るまでそこにいろ。運さえ良けりゃSさんじゃなくてラギアソーンやノーストがいるはずだ」 上の者だけだったら恐らく寛げないだろう。 レイ・ウィングで飛び立ち、竜の峰に着いた頃には時既に遅く、彼らは旅立った後だった。 お、い、て、か、れ、たあああああっ! かなり悔しい。これからどうしよ。 ここで諦めたら…諦めたら…L様に叱られる! L:どういう意味よ。 〈G〉「そのままの意味ですっ!」 言ってから、はっと口を押さえる。 予想通り、天罰は下された。 ―登場人物― (特別バージョン) L様 ロード・オブ・ナイトメア。全ての王と渾名される創造者。通称・L様。 長くてサラサラな金髪美女。あらゆることでNo.1! ガード=ワード L様の命により、面白いことに首をつっこむことになった。 アメリア=セイルーン 正義感の強い、セイルーン王国の皇女。従兄の娘。 ガウリイ=ガブリエフ 光の剣士。リナと旅をしていた。 ゼルガディス 合成獣になっていた。精霊魔法が得意らしい。 リナ=インバース 「ドラまた」「盗賊殺し」などなど、様々な異名を持つ。 ゼロス 獣神官 ラーシャート 10年前、ガーヴさんがいた時に武術を習った事がある。 ジェイド ガイリア・シティで小さな雑貨屋を営んでいる。 アンバー ジェイドの孫。見習い魔道士。 ガーヴ 10年前魔族に対する嫌がらせを依頼してきた。今回本物の魔竜王だったと知る。 カイン 下級魔族。カタートを下りるガードを土の中から現れて驚かせながらお見送りする変わり者。 |
33591 | 37.一体どうしてそーなった? | 星野流 | 2008/7/5 14:01:08 |
記事番号33582へのコメント 37.一体どうしてそーなった? L様のおしおきのダメージにより気を失った私(エルフの村の宿で寝かされていた)は、耳障りな音によって起こされた。 「ほーっほっほっほっほ!」 またナーガか と、扉を開く。 しかし、そこでは恐るべき光景が展開されていた。 そこにいたのはナーガとメンフィス。そして、高笑いを上げていたのはメフィだったのだ! 〈ナ〉「違う! 手は腰にこうやって、もっと反り繰り返って! ほーっほっほっほっほっほっほっほっほ!」 〈メ〉「ほーっほっほっほっほ!」 しかも、何やら講義を受けている。 何がどうしてそーなった!? 二人の高笑いを聞きながら、私の思考は停止した。 私はナーガに声をかけられて、はっと我に返る。 〈ナ〉「どうしたの? ガード。何でここに?」 〈メ〉「あら。お知り合いなのですか?」 〈G〉「あはは。いろいろあるんだよ」 私は二人の問いを曖昧な言葉で返し、苦笑する。 いろいろあった という言葉は使い勝手が良い。 〈G〉「ところで、何故二人は高笑いを?」 〈ナ〉「話せば長くなるけど、特別に話してあげましょう!」 無意味に胸を張る。やっぱりナーガだなぁ、と思ってしまう。自分の問いにちゃんと答えられていないことに気付いていない。 〈ナ〉「道に迷ったわたしは森の中で襲われていたメフィを助けて人見知りを直すのには高飛車になれと言って手本を教えていたのよ!」 〈G〉「そっかぁ。分かりにくい説明ありがとう」 深くつっこまないことにした。 〈ナ〉「ほーっほっほ! お礼は食事をおごってくれるだけでいいわ!」 何故分かりにくい説明と言われて誇らしげに胸をはるのだろうか…? 〈G〉「ははは。何もなくてもたかっていくよね」 〈ナ〉「さあ、メフィ。私はガードについて行くから、ガードが出て行くまで総仕上げに入るわよ!」 〈メ〉「分かりました!」 〈二人〉「ほーっほっほっほっほっほ!」 高台までわざわざ上って二人は高笑いを上げる。高笑いがこだまとして帰ってくる。二人は益々音量を大きくする。 私は二人を放置して宿屋のおかみさんにお礼と代金、運んでくれた人へのお礼を言伝した。 一歩外に出れば先程より数倍けたたましくなったエルフの村。全ての民家がドアや窓をしめている。外には私を除いて一人もいない。 高台で高笑いを上げる二人にスタスタと歩み寄り、スリーピングをかける。 バッタリと倒れ付す二人。二人を肩に担ぎ、メフィを自宅に送り届ける。 「あらあら。ガードちゃん、力が強くなったわねぇ」 奥さんに言われた一言が心に突き刺さる。 〈G〉「あははははは。山登りで鍛えられてますからぁ」 「あらまぁ、そうなの。でも、女の子なんだからあまり筋肉はつけないほうがいいわよ」 〈G〉「そうですねぇ…」 すごく泣きたくなった。 未だ眠るナーガを抱えて、ガイリア・シティに向かう。背負う事は無理だった。ナーガの胸、でかすぎる。 「あ、ガードさん!」 街道に出たところで人に声をかけられる。 確か… 〈G〉「クリアさんにランツさん…久しぶり」 別々な用件で知り合った二人が一緒に行動をしている。何とも奇妙だ。そして、世間って狭い。 〈ラ〉「お前らも知り合いなのか」 〈C〉「僕はランツさんと知り合いなのが不思議です」 〈G〉「いろいろあるんだ」 〈ラ〉「そうだな」 〈C〉「お互い、どういう知り合い方なのかは知らないほうがいいみたいだね」 〈G〉「で、二人はここで何を?」 〈C〉「カタートに自生する植物をとりに行ったところ。宿で見せてあげるよ」 カタートねぇ… 〈ラ〉「で、俺はその護衛だな」 〈G〉「私はリナを探している。会ったりしなかった?」 ランツさんにたずねる。 〈ラ〉「いや。会ってない」 〈G〉「そうかぁ」 会ってないか。どこに行けばよいだろうか。 〈C〉「これからサイラーグに行くんだ。一緒にどう?」 サイラーグ。 〈G〉「うん。行く。探すあてもないし。で、フラグーンをとりに行くのか」 〈C〉「あったりー。フラグーンとったらこのまま滅びの砂漠に行って植えてくる」 熱心なやつだ。 〈G〉「砂漠。森になったらいいね」 〈C〉「うん!」 心底うれしそうに彼は笑う。よほど心待ちにしているのだろう。うまくいっても森になるには次世代、三世代になってからだろうに。 ガイリア・シティを越え、小さな村の宿。ナーガを寝かせ、食堂に向かう。 〈G〉「で、カタートの植物って?」 〈C〉「そう。これこれ」 トン、とクリアは植物の種を置く。 絶句。 私はひょいと種をつまんで暖炉の火に投げ入れる。 〈C〉「ああっ!」 〈ラ〉「おいおい。お前なんつうことを」 〈G〉「あれ、人を食べるんだ」 何度か食べられて中で焼き払い、こうして生きている。普通はすぐに溶けてしまうから、無事なのは単にこの体が頑丈だから。 〈C〉「そうなの!?」 〈ラ〉「危ない植物採取するんじゃねえっ!」 その通りだ。 〈G〉「あまり、カタートの植物に手をださないほうがいい。素人が手を出すと命を落とすから」 〈ラ〉「お前は玄人なのか?」 ランツさんのつっこみにうなずき、口を開く。 〈G〉「体の頑丈さだけで玄人になりあがった」 〈ラ&C〉「うわぁ」 〈G〉「だから。他にもあるんだったら、火にくべたほうがいい」 〈C〉「そうする」 クリアは箱をとりだした。 〈ラ〉「って、それ全部か!」 〈C〉「まあね。外で焼き払ってくるよ」 クリアは出て行く。 〈G〉「ランツさん。護衛ならついていったほうがいいのでは?」 〈ラ〉「これくらいはいいだろう。それに、男といるより女といたほうがいい」 へえ。 〈G〉「すごいな。女だって分かったんだ。殆どの人が男だって認識するのに」 〈ラ〉「それ、自分で言ってて悲しくないか?」 〈G〉「もう、どうでもよくなったから」 いいんだ。別にどう思われたって。 〈ラ〉「あんた、変わってるなぁ」 〈G〉「うん。変わってる」 〈ラ〉「普通自分で言うか?」 〈G〉「普通じゃないから自分で言うんだ」 他に言う事が見つからなかったのだろうか。はたまた、何につっこむべきか分からないほど言う事が多かったのだろうか。彼は黙り込んだ。 翌朝、私たちは朝食をすませて村を出る。無論、ナーガも一緒だ。 リナたち。見つかるといいなぁ、と盗賊と出会って興奮するナーガを三人でなだめながら私は思った。 ―登場人物― ガード=ワード L様の命により、面白いことに首をつっこむことになった。 ナーガ 白蛇のナーガ。 メンフィス=ラインソード エルフの少女。愛称:メフィ。 Madam.ラインソード メンフィスの母。小さい頃から知っているからか「ちゃん」付けで呼ばれる。私をちゃんづけするのはこの人くらいだろう。 クリア=グリーン セイルーンの神官。まだ砂漠の緑化推進中。カタートでは食人草を採取した。 ランツ 赤毛の傭兵。 あとがき とうとう、アニメが始まりましたね。うれしいかぎりです。 |