◆−Piece 第二話 Dear Friend−十叶 夕海 (2008/11/5 21:56:01) No.33798 ┗久しぶりの更新!−月読 乾 (2008/11/12 15:46:57) No.33805
33798 | Piece 第二話 Dear Friend | 十叶 夕海 | 2008/11/5 21:56:01 |
久し振りね、ここ(学園都市)に帰ってくるのも。 ヴィンがいうには、アルスちゃん、もしかしたら、手に入れてるかもしれないわね。 だけど、アルスちゃんはアルスちゃんだもの。 ちゃんと、アタシはお兄さんしてあげるわ。 「あ−ぁ、でも、予定より、一ヶ月も遅れるなんて思ってなかったわ。」 アタシは、そう呟いて、学園都市の校門って呼ばれてる橋を渡り、門をくぐった。学園長先生には、明日報告でいいかしらね。 リディちゃんとルビアスも、もうホテルに向かっちゃってるし。 ま、報告は明日ね。 適当に、デリバって寝ちゃいましょ。 一人寝は趣味じゃないんだけどね。 第二話 Dear Friend 「・・・ということで、精霊は、私達人間の良き隣人であるのです。 しかし、彼らにも・・・」 私が、アレイ達と暮らし始めて、数日後。 いつも通り、大学部で講義をしていた。 今は、前期が始まったばかり。 まだまだ、熱い盛りだから、ク−ラ―がよく効いている。 そうは言っても、必須の『精霊学 基礎』は、私だけでなく、他の講師も開いている。 ・・・ま、私みたいに大教室でやっている先生はいないのだけれど。 「さて、皆さんの中には、三回生以上も、いることでしょう。 この学園では、三回生・・・専門課程に進むには、成績ともう一つ、条件があるのをご存知ですね。 ・・・ツチミカドくん、答えてください。」 「はい。 フリ−なり、ホムスなりの精霊を一柱以上従えている事っすよね。」 そう、それが、最低限の条件。 専門によっては、さらに必要だけど。 私の場合は、養父から受け継いだジョジィ。 実力で、手に入れた三柱。 先日、受け継いだ二枚だ。 もちろん、これは、私の専門に無関係ではないのだけれど。 「そう。 ただし、仮契約はともかく、本契約は、準講師以上の教員か事務員、或いは、四回生以上の魔術近接戦闘科の生徒を同伴して、所定の実習室でおこうなうようにね。 このことは、学校の掲示板にも上げておくから、確認して置くように。」 「エッケルト先生。 先生の契約精霊みたいです。」 「俺も。」 「私も見た―い。」 つらつらと考えつつ、授業を進めている。 そうしてたら、そうリクエストを出された。 ま、ある意味で、方向性を見出させるのも、教師の役目かしら。 そう思い、私は、呪をつむぐ。 「ま、演舞かしらね。 『紡げよ 其は我らとの盟約なり 其は盟約 其は悦楽 其は威力 我が描く魂の形を汝らに 答えよ。 儚き水の精霊 ティナル−ト=アレイア=クアロン。 紅き炎の精霊 エイルドゥ―ナ=アルテ=ムリュケント。 形ある虚の精霊 アルジェリド=ソ―ルタ=シャルリエ−タ。』 」 歌うように、呪を紡ぐ。 精霊と・・・特に、フリ―の場合、契約するというのは、彼らの力を使う時に代価として、それぞれ『何か』を捧げるのだ。 それが、契約なのだ。 私の呼びかけに応え、女性型2人、男性型一人が、実体化した。 女性のうち一人と男性のほうは、年の頃、二十代半ば。 女性の残りが、十代半ばの少女の姿をしていた。 ティナル−トと呼ばれ応じた彼女は、淡い青みを帯びた銀色の背丈ほどの髪を背中に流し、翡翠色の潤んだ瞳の真白に近いロ−ブを来た水属性の精霊だ。 エイルドゥ―ナと呼ばれ応じた彼女は、真紅の髪をキツク三つ編みにし、朱金色の大きな瞳に、スリットや背中が大きく開いた緋色系のドレスとチャイナ服風の上着の火属性の精霊だ。 アルジェリドと呼ばれた彼は、紫みが強い銀色の髪をおかっぱに切り揃え、金と藍色の静かな瞳、魔道士と軍人が着る服をミックスしたような法衣の虚属性の精霊だ。 「・・・呼ばれ、馳せ参じました、アルスさん。」 「呼ばれて飛び出てジャジャ−ンッ、久しぶり、マスタ―。」 「アルジェリド=ソ―ルタ=シャルリエ−タ。 召喚により、参上いたしました。」 私の場合、そもそもが、『御飯を食べる相手が欲しい』って言うようなことで契約したのだ。 だけど、いや、だから、彼らが、その・・・だとは思わなかった。 「きゃ−、上級精霊のティナ様よ!! 先輩達が言ってたのって、これが、そうなのね!!!」 「うお−、有名魔術師たちと契約して他のばっかジャン。」 「もれなく、上級精霊の中でも上位の精霊でしょ!!」 「エッケルト先生スゲ―。」 そう、昔の学園長も含めて、有名な魔術師と契約していたことあるような人間界魔術師と長年より添っている『良き隣人』の見本というか、生き字引なのだ。 百年前から、契約はしていなかったそうなのだけれど、ど−して、12かそこらの子供と契約する気になったのか、不明だ。 一応、もう一柱いるけど、それは、こういうトコじゃ危なくて出せないし、何処にいるか不明。 そこで、私は、時計を見ると、ちょうど終了十分前・・・十二時半だった。 「は−い、それでは、終了までの十分前まで、自由に質問タイムにするわ。 私でも、この三柱でもいいからね。」 それで、この後、数十人単位でもみくちゃというか、質問攻めにされた。 正直言って、座ったままって言った方が良かったと、真面目に、思う程度ではあった。 その中で、一つの質問が、頭に残ってる。 「先生、上級精霊と契約するコツってありますか?」 「無い・・・無いわね。 うん、基本的に、ガツガツと「上級精霊!!」とかって、思わずに探す事よ。」 「先生もそうだったんですか?」 「そう、精霊は必要だったけれど、上級精霊を目指していたわけじゃないしね。」 ・・・それに、生徒には言わなかったが、上級精霊に限らず、人間と契約しようと思う精霊はその契約者を選ぶのだ。 自分が、好ましいと思う魂の形を紡げる相手を。 実際、才能云々よりも、精霊に会えず、退学や留年をする生徒も少ないといえる数ではない。 授業後―――。 講師控え室に待たせていたアレイ達を迎えがてら、教科書を置きに行き、そして、帰ろうとした時だった。 もちろん、ティナル−ト達、ティナ達三人も一緒である。 契約代償として、ご飯をおごる為で。 近くに、値段の安さとボリュ―ムを売りにしたファミレスがあるのだ。 味は悪くないレベルだ 一応、学生向けというか、学生をタ―ゲットにしているトコで、私も昼食は弁当を持ってこない日はそこで食べる。 「あら〜、アルスじゃない。 お久し振り、誕生日も近かったし、帰ってきたわよう。」 「ムチェ、いつ帰ってきたの?」 「昨日の・・・っていうか、日付変わってたし、今日の早朝よ。 学園長に挨拶だけしに来たのよ。」 そう、少し高い男性声で話し掛けられた。 悪友の範疇に入る、登録名「ム―チ−=マ−ディガン」。 ブルネットの髪を肩口でそろえていて、白いス−ツに黒いドレスシャツ、紅いネクタイに、サングラス、そろいの白に紅いリボンの帽子と、昔の日本の刑事ドラマを思い出させるようなそんな服装だ。 肌は、濃い目の褐色で、髭もある。 職業というか、魔法使いとしての職業は、『龍理使い』 徒手空拳と多彩な魔道が特色のショ−ト〜ミドルレンジを得意とする。 サブは、よく知らない。 年齢は、今日で24歳で、私より六つ年上だ。 身長は、私よりも、30センチは高い魔法使いだった。 ちなみに、女言葉を喋っているが、れっきとした男である。 なのに、その言葉遣いなのは、出身地の公用語であるスペイン語以外をその国の女性に教えて貰ったせいであるというのは、本人談。 担当科目は、特になし。 戦闘実技系全般で、一応、非常勤とはいえ、講師であるけれど、休みがちだ。 魔法使いとして、色々と仕事をしているせいなのだけれど。 「そっか、元気そうで何よりね。」 「ええ、オタクも元気そうね。 ・・・ここは、あんまり、育ってなさそうだけど。」 私を半ば抱き上げつつ、ムチェは、そう言った。 もちろん、白人種にしては小さい胸をさしてのことだ。 いつも通りの挨拶とは言え、怒らないわけではない。 頭突きをかます。 ゴチン、と聞いている人が顔をしかめそうなそんな音がした。 本人的には、涙目になるぐらいには痛かった。 それこそ、ひよこが、頭の上をぴよぴよ飛ぶぐらいには。 「んも−、そんな反応されると、帰ってきたと実感しちゃうわ。 それに、オタクのこと、抱き締めたくなっちゃうじゃない。」 「・・・えっと、アルス、そいつは?」 「マスタ―、敵ならば殲滅いたしますが。」 ムチュを知らないアレイとティスは、そういう。 一応、魔法使いといえど、普通の人間なのだから、そういうこと言わないの。 あと、ムチュ、『良いじゃない、遣り合いましょ』的に、にんまりしない。 「で、これからヒマ?」 「そうね、もう、試験とかも近いし、実技はいってないからヒマもヒマ。 赤色死女神に、また挑もうかしら?何て考えるほどよ。」 「なら、いっしょにご飯食べよ。 その後、家に来て。 ムチェにも話したい事があるのよ。」 「いいわよう。 どうせ、その可愛い双子ちゃんのことでしょ?」 「「か、可愛い?」」 「あ−、一応言っておくけど、こいつは、変態は変態でも。 バイじゃなくて、戦闘狂って意味の変態、」 「んもう、酷いわねぇ。 ・・・本当だけど。」 使役精霊三柱は、いつものことだと分かっているのか、黙っている。 ただ、アレイ達は、無言ながらも、距離をとっている。 side:三柱のリ−ダ−格 ティナル−ト 数週間ぶりに呼び出され、アルスさんの元へ赴きました、 呼ばれては、久し振りでしたが、私も含め、エイルも、アルも、召喚無しで訪れていますので、あまり関係はないのですが。 それにしても、あの『タロットスピリッツ』を受け継いでしまわれましたか。 この世界の成り立ちに近い。 いえ、この学園が出来た理由をまだ、幼いといっても、さほど失礼ではない年齢のあの子が受け継ぐとは、世も末ですね。 あのと出合ったのは、七年ほど前でしょうか。 あの『プロフェッサ』が死んでしばらくした後のことでしょう。 昔ながらの・・・そういうにも、古すぎる方法で、精霊を呼び出そうとしていた少女。 それが、アルスさんでした。 他の2人も、同じ時に彼女に出会いました。 しかも、『強くなりたい』とか、そんなありふれた理由ではなく。 いえ、その理由もありふれてはいましたが、ですが、その年頃の少女がもつにしても、少々寂しすぎる理由でした。 曰く、『一緒にご飯を食べる相手が欲しい』とのことです。 『強くなりたい』というような、私達を『道具』ではなく、対等な相手としてみた上での。 ・・・いえ、そんな小難しいことではなく、ただ、本当にそう思っていたのでしょう。 あのディ−ト老が、ああいう形でいると知っていれば、また別でしたが。 いえ、それでも、私は、私たちは、アルスさんと契約を結んだのでしょうね。 彼女は、魔法使いでした。 そう、『魔法の書を携えせし賢者(グリモワルハンドラ)』。 今は、多々に分かれてはいますが、主々には、魔法書をもつものだけが魔法使いでした。 ―――≪万能無限≫ それを目指す彼らにしてみれば、私達は、道具。 私を生んだマスタ―もそう言う人でした。 それが、魔法使いとしては、普通なのです。 目指すモノの道すがらで、犠牲が出るのが普通だというのが。 だけれど、アルスさんは、魔法使い・・・使役精霊を欲しがる者としては異端かもしれませんが、そんな代償契約を持ちかけられたことは、私の中でも。 千年以上を生きた中でも、とても嬉しい申し出でした。 もしも、アルスさんが、≪タロット精霊を巡る争い(タロウラグナログ)≫で命を落としそうになりましても、私は、もちろん、他の二人も、この身を。 この身を構成する魔力を削ってでも、アルスさんを守りますわ。 例え、滅んでも、それは変りないことでしょう。 同時に、私は、それが現実になるだろうことも予感しています。 生きていた中で出会った≪タロウマスタ―≫達がそうであったように。 その道は、人からも、人外からも、平坦ではない事を知っているせいなのかもしれません。 しかし、それでも、アルスさんには、平穏な人としての生を歩んで欲しいのです。 side:ム―チ―=マ−ディガン 数ヶ月ぶりにかしらね、5月の中間が始まってすぐからずっと会っていなかったもの。 ちょっと、大きな依頼だったの。 孤雀姫って言うド派手なモンストル。 それに支配された北欧のとある街を参人で解放して来いって言う『中央(セントラル)』からの命令よう。 一人は、元転生者で、シュタインズ花嫁のリ−ドリア=フレイ二−こと、リディちゃんとそのシュタインで、彼女の恋人だったクルト=ランア―ベック。 一人は、元僧侶で、魔剣遣いのルビアス=シュヴァツェンって子。 楽勝といえば、楽勝よ。 なんてたって、当代切っての一流どころだもの だけど、街一個って言っても、観光都市ってわけじゃないっても、人口数十万人なのよ。 それをなるべく傷つけるなって言うのよ。 古城に陣取ってる狐雀姫とその配下以外。 ふざけんじゃないわよう。 でも、やったわよ、やってやったわよ。 『雷風ノ髪鞭』っていうレアアイテムを消費してね。 んもう、また、赤色女神ちゃんに挑まなくちゃ。 そんなこんなで、帰ってきたら、アルスちゃんの側に、いつもの参人と見慣れない2人がいたのよ。 すぐに分かったわよ。 ヴィンフレド・・・『私』の所有している『タロットの精霊』ちゃんのお仲間だってこと。 一応、ね。 そんなのもってても、アレは御伽噺だって思ってたもの。 でなきゃ、いけないって思ってたっていうべきかしらね。 ・・・私が、あの子に出会ったのは、私が養父でここの教授だったフェ―ドって師匠に引き合わされた時だったから。 ええと、多分、あの子が、六歳か七歳で、私が十三歳ぐらいだったかしら。 それから、結構良く遊んだり、勉強したりしたわ。 一時期ちょっと疎遠になった事もあったけれどね。 だけど、あの子が、十一歳の頃かしらね、あの子の養父のマティアスさんが死んだの。 詳しくは知らないわよう。 師匠に引っ張られて、高等部の課外実習の講師やってたんだから。 帰ってきたら、ティナちゃんとかの精霊と契約してたんだもの。 しかも、直前であった時みたいな明るさって言うか、子供らしさって言うの? あってしかるべくそれを根こそぎに無くして。 それから、七年ね。 色々あったわ。 それなりに、私の前では、子供らしい明るさを取りもしつつあるけれど、それでも、ね。 結局、あの子が、講師であることすら、あの化石の教授たちには、目障りだもの。 それに、この間にね、師匠のフェ―ドが死んだのは。 最期の際に、師匠が隠し持っていた先代の≪タロウマスタ―≫から預かった≪戦車≫を受け継いだのは。 一応、私と契約は結んでるけど、スンゴイ堅物なのよ。 ともかく、アルスちゃんが、話したいって言うのは、その子関連なのよね、多分。 どうでもいいけど、アルスちゃんと夕食できるっていうのが、一番嬉しいって言ったら、怒られるかしらね? *後書き* 二ヶ月、三ヶ月ぶりです。 ええと、はい、仕事が忙しかったのはなんも言い訳にはなりません。 ともあれ、今年中に三話目をお届けしたいと思います。 それでは、貴方に優しい悪夢を。 |
33805 | 久しぶりの更新! | 月読 乾 | 2008/11/12 15:46:57 |
記事番号33798へのコメント こんにちは! 月読乾です。 久しぶりの更新お疲れ様でした! 最近、お忙しいみたいですがあれから続きがどうなったのか楽しみです! > >久し振りね、ここ(学園都市)に帰ってくるのも。 >ヴィンがいうには、アルスちゃん、もしかしたら、手に入れてるかもしれないわね。 >だけど、アルスちゃんはアルスちゃんだもの。 >ちゃんと、アタシはお兄さんしてあげるわ。 >「あ−ぁ、でも、予定より、一ヶ月も遅れるなんて思ってなかったわ。」 >アタシは、そう呟いて、学園都市の校門って呼ばれてる橋を渡り、門をくぐった。学園長先生には、明日報告でいいかしらね。 >リディちゃんとルビアスも、もうホテルに向かっちゃってるし。 >ま、報告は明日ね。 >適当に、デリバって寝ちゃいましょ。 >一人寝は趣味じゃないんだけどね。 冒頭から、今までと違う雰囲気がひしひしと……? 前回までの展開に、大きく絡みそうな謎のお姉さま(?)ですね。 >「・・・ということで、精霊は、私達人間の良き隣人であるのです。 > しかし、彼らにも・・・」 >私が、アレイ達と暮らし始めて、数日後。 >いつも通り、大学部で講義をしていた。 >今は、前期が始まったばかり。 >まだまだ、熱い盛りだから、ク−ラ―がよく効いている。 >そうは言っても、必須の『精霊学 基礎』は、私だけでなく、他の講師も開いている。 >・・・ま、私みたいに大教室でやっている先生はいないのだけれど。 >「さて、皆さんの中には、三回生以上も、いることでしょう。 > この学園では、三回生・・・専門課程に進むには、成績ともう一つ、条件があるのをご存知ですね。 > ・・・ツチミカドくん、答えてください。」 >「はい。 > フリ−なり、ホムスなりの精霊を一柱以上従えている事っすよね。」 >そう、それが、最低限の条件。 >専門によっては、さらに必要だけど。 >私の場合は、養父から受け継いだジョジィ。 >実力で、手に入れた三柱。 >先日、受け継いだ二枚だ。 >もちろん、これは、私の専門に無関係ではないのだけれど。 >「そう。 > ただし、仮契約はともかく、本契約は、準講師以上の教員か事務員、或いは、四回生以上の魔術近接戦闘科の生徒を同伴して、所定の実習室でおこうなうようにね。 >このことは、学校の掲示板にも上げておくから、確認して置くように。」 >「エッケルト先生。 > 先生の契約精霊みたいです。」 >「俺も。」 >「私も見た―い。」 >つらつらと考えつつ、授業を進めている。 >そうしてたら、そうリクエストを出された。 >ま、ある意味で、方向性を見出させるのも、教師の役目かしら。 >そう思い、私は、呪をつむぐ。 >「ま、演舞かしらね。 >『紡げよ 其は我らとの盟約なり > 其は盟約 其は悦楽 其は威力 > 我が描く魂の形を汝らに 答えよ。 > 儚き水の精霊 ティナル−ト=アレイア=クアロン。 > 紅き炎の精霊 エイルドゥ―ナ=アルテ=ムリュケント。 > 形ある虚の精霊 アルジェリド=ソ―ルタ=シャルリエ−タ。』 」 >歌うように、呪を紡ぐ。 >精霊と・・・特に、フリ―の場合、契約するというのは、彼らの力を使う時に代価として、それぞれ『何か』を捧げるのだ。 >それが、契約なのだ。 読んでいて、某天才物理学教授の講義を思い出しました(笑)。 尤もこのケースの場合は、意思のある存在に自らも代償を差し出す分、『論理的』には行かないようですが。 >私の呼びかけに応え、女性型2人、男性型一人が、実体化した。 >女性のうち一人と男性のほうは、年の頃、二十代半ば。 >女性の残りが、十代半ばの少女の姿をしていた。 >ティナル−トと呼ばれ応じた彼女は、淡い青みを帯びた銀色の背丈ほどの髪を背中に流し、翡翠色の潤んだ瞳の真白に近いロ−ブを来た水属性の精霊だ。 >エイルドゥ―ナと呼ばれ応じた彼女は、真紅の髪をキツク三つ編みにし、朱金色の大きな瞳に、スリットや背中が大きく開いた緋色系のドレスとチャイナ服風の上着の火属性の精霊だ。 >アルジェリドと呼ばれた彼は、紫みが強い銀色の髪をおかっぱに切り揃え、金と藍色の静かな瞳、魔道士と軍人が着る服をミックスしたような法衣の虚属性の精霊だ。 水、火、虚…… 格好や風貌に、それぞれの特徴が出ている気がします。 これも、属性の影響? >「・・・呼ばれ、馳せ参じました、アルスさん。」 >「呼ばれて飛び出てジャジャ−ンッ、久しぶり、マスタ―。」 >「アルジェリド=ソ―ルタ=シャルリエ−タ。 > 召喚により、参上いたしました。」 >私の場合、そもそもが、『御飯を食べる相手が欲しい』って言うようなことで契約したのだ。 >だけど、いや、だから、彼らが、その・・・だとは思わなかった。 見事に息が合っている……? いや、だから、彼らは……ですねえ……(はっきり言え!) >「きゃ−、上級精霊のティナ様よ!! > 先輩達が言ってたのって、これが、そうなのね!!!」 >「うお−、有名魔術師たちと契約して他のばっかジャン。」 >「もれなく、上級精霊の中でも上位の精霊でしょ!!」 >「エッケルト先生スゲ―。」 >そう、昔の学園長も含めて、有名な魔術師と契約していたことあるような人間界魔術師と長年より添っている『良き隣人』の見本というか、生き字引なのだ。 >百年前から、契約はしていなかったそうなのだけれど、ど−して、12かそこらの子供と契約する気になったのか、不明だ。 >一応、もう一柱いるけど、それは、こういうトコじゃ危なくて出せないし、何処にいるか不明。 >そこで、私は、時計を見ると、ちょうど終了十分前・・・十二時半だった。 >「は−い、それでは、終了までの十分前まで、自由に質問タイムにするわ。 > 私でも、この三柱でもいいからね。」 >それで、この後、数十人単位でもみくちゃというか、質問攻めにされた。 >正直言って、座ったままって言った方が良かったと、真面目に、思う程度ではあった。 >その中で、一つの質問が、頭に残ってる。 >「先生、上級精霊と契約するコツってありますか?」 >「無い・・・無いわね。 > うん、基本的に、ガツガツと「上級精霊!!」とかって、思わずに探す事よ。」 >「先生もそうだったんですか?」 >「そう、精霊は必要だったけれど、上級精霊を目指していたわけじゃないしね。」 >・・・それに、生徒には言わなかったが、上級精霊に限らず、人間と契約しようと思う精霊はその契約者を選ぶのだ。 >自分が、好ましいと思う魂の形を紡げる相手を。 >実際、才能云々よりも、精霊に会えず、退学や留年をする生徒も少ないといえる数ではない。 そう聞くと、かなりリスキーな学問と言う気がします…… しかし、この世界のあらゆる先人と出会っているということは知識面に関してかなり膨大な量を有している? いい意味でも、悪い意味でも。 >授業後―――。 >講師控え室に待たせていたアレイ達を迎えがてら、教科書を置きに行き、そして、帰ろうとした時だった。 >もちろん、ティナル−ト達、ティナ達三人も一緒である。 >契約代償として、ご飯をおごる為で。 >近くに、値段の安さとボリュ―ムを売りにしたファミレスがあるのだ。 >味は悪くないレベルだ >一応、学生向けというか、学生をタ―ゲットにしているトコで、私も昼食は弁当を持ってこない日はそこで食べる。 >「あら〜、アルスじゃない。 > お久し振り、誕生日も近かったし、帰ってきたわよう。」 >「ムチェ、いつ帰ってきたの?」 >「昨日の・・・っていうか、日付変わってたし、今日の早朝よ。 > 学園長に挨拶だけしに来たのよ。」 >そう、少し高い男性声で話し掛けられた。 >悪友の範疇に入る、登録名「ム―チ−=マ−ディガン」。 >ブルネットの髪を肩口でそろえていて、白いス−ツに黒いドレスシャツ、紅いネクタイに、サングラス、そろいの白に紅いリボンの帽子と、昔の日本の刑事ドラマを思い出させるようなそんな服装だ。 >肌は、濃い目の褐色で、髭もある。 >職業というか、魔法使いとしての職業は、『龍理使い』 >徒手空拳と多彩な魔道が特色のショ−ト〜ミドルレンジを得意とする。 >サブは、よく知らない。 >年齢は、今日で24歳で、私より六つ年上だ。 >身長は、私よりも、30センチは高い魔法使いだった。 >ちなみに、女言葉を喋っているが、れっきとした男である。 >なのに、その言葉遣いなのは、出身地の公用語であるスペイン語以外をその国の女性に教えて貰ったせいであるというのは、本人談。 >担当科目は、特になし。 >戦闘実技系全般で、一応、非常勤とはいえ、講師であるけれど、休みがちだ。 >魔法使いとして、色々と仕事をしているせいなのだけれど。 うおう! 麗人の正体はそんな御仁だったのですか(汗)! 言語を間違えただけなら、この格好は無い気が…… >「そっか、元気そうで何よりね。」 >「ええ、オタクも元気そうね。 > ・・・ここは、あんまり、育ってなさそうだけど。」 >私を半ば抱き上げつつ、ムチェは、そう言った。 >もちろん、白人種にしては小さい胸をさしてのことだ。 >いつも通りの挨拶とは言え、怒らないわけではない。 >頭突きをかます。 >ゴチン、と聞いている人が顔をしかめそうなそんな音がした。 >本人的には、涙目になるぐらいには痛かった。 >それこそ、ひよこが、頭の上をぴよぴよ飛ぶぐらいには。 >「んも−、そんな反応されると、帰ってきたと実感しちゃうわ。 > それに、オタクのこと、抱き締めたくなっちゃうじゃない。」 >「・・・えっと、アルス、そいつは?」 >「マスタ―、敵ならば殲滅いたしますが。」 >ムチュを知らないアレイとティスは、そういう。 >一応、魔法使いといえど、普通の人間なのだから、そういうこと言わないの。 >あと、ムチュ、『良いじゃない、遣り合いましょ』的に、にんまりしない。 >「で、これからヒマ?」 >「そうね、もう、試験とかも近いし、実技はいってないからヒマもヒマ。 > 赤色死女神に、また挑もうかしら?何て考えるほどよ。」 >「なら、いっしょにご飯食べよ。 > その後、家に来て。 > ムチェにも話したい事があるのよ。」 >「いいわよう。 > どうせ、その可愛い双子ちゃんのことでしょ?」 >「「か、可愛い?」」 >「あ−、一応言っておくけど、こいつは、変態は変態でも。 > バイじゃなくて、戦闘狂って意味の変態、」 >「んもう、酷いわねぇ。 > ・・・本当だけど。」 >使役精霊三柱は、いつものことだと分かっているのか、黙っている。 >ただ、アレイ達は、無言ながらも、距離をとっている さり気なく知識の豊富さと見識の深さを披露? 結構、侮れない人です。 side:三柱のリ−ダ−格 ティナル−ト > > >数週間ぶりに呼び出され、アルスさんの元へ赴きました、 >呼ばれては、久し振りでしたが、私も含め、エイルも、アルも、召喚無しで訪れていますので、あまり関係はないのですが。 >それにしても、あの『タロットスピリッツ』を受け継いでしまわれましたか。 >この世界の成り立ちに近い。 >いえ、この学園が出来た理由をまだ、幼いといっても、さほど失礼ではない年齢のあの子が受け継ぐとは、世も末ですね。 >あのと出合ったのは、七年ほど前でしょうか。 >あの『プロフェッサ』が死んでしばらくした後のことでしょう。 >昔ながらの・・・そういうにも、古すぎる方法で、精霊を呼び出そうとしていた少女。 >それが、アルスさんでした。 >他の2人も、同じ時に彼女に出会いました。 >しかも、『強くなりたい』とか、そんなありふれた理由ではなく。 >いえ、その理由もありふれてはいましたが、ですが、その年頃の少女がもつにしても、少々寂しすぎる理由でした。 >曰く、『一緒にご飯を食べる相手が欲しい』とのことです。 >『強くなりたい』というような、私達を『道具』ではなく、対等な相手としてみた上での。 >・・・いえ、そんな小難しいことではなく、ただ、本当にそう思っていたのでしょう。 >あのディ−ト老が、ああいう形でいると知っていれば、また別でしたが。 >いえ、それでも、私は、私たちは、アルスさんと契約を結んだのでしょうね。 >彼女は、魔法使いでした。 >そう、『魔法の書を携えせし賢者(グリモワルハンドラ)』。 >今は、多々に分かれてはいますが、主々には、魔法書をもつものだけが魔法使いでした。 >―――≪万能無限≫ >それを目指す彼らにしてみれば、私達は、道具。 >私を生んだマスタ―もそう言う人でした。 >それが、魔法使いとしては、普通なのです。 >目指すモノの道すがらで、犠牲が出るのが普通だというのが。 >だけれど、アルスさんは、魔法使い・・・使役精霊を欲しがる者としては異端かもしれませんが、そんな代償契約を持ちかけられたことは、私の中でも。 >千年以上を生きた中でも、とても嬉しい申し出でした。 >もしも、アルスさんが、≪タロット精霊を巡る争い(タロウラグナログ)≫で命を落としそうになりましても、私は、もちろん、他の二人も、この身を。 >この身を構成する魔力を削ってでも、アルスさんを守りますわ。 >例え、滅んでも、それは変りないことでしょう。 >同時に、私は、それが現実になるだろうことも予感しています。 >生きていた中で出会った≪タロウマスタ―≫達がそうであったように。 >その道は、人からも、人外からも、平坦ではない事を知っているせいなのかもしれません。 >しかし、それでも、アルスさんには、平穏な人としての生を歩んで欲しいのです。 > 償還されたのは、偶然では無い? この学園そのものの成り立ちにも、大きな謎があるみたいですね。 > > > >side:ム―チ―=マ−ディガン > >数ヶ月ぶりにかしらね、5月の中間が始まってすぐからずっと会っていなかったもの。 >ちょっと、大きな依頼だったの。 >孤雀姫って言うド派手なモンストル。 >それに支配された北欧のとある街を参人で解放して来いって言う『中央(セントラル)』からの命令よう。 >一人は、元転生者で、シュタインズ花嫁のリ−ドリア=フレイ二−こと、リディちゃんとそのシュタインで、彼女の恋人だったクルト=ランア―ベック。 >一人は、元僧侶で、魔剣遣いのルビアス=シュヴァツェンって子。 >楽勝といえば、楽勝よ。 >なんてたって、当代切っての一流どころだもの >だけど、街一個って言っても、観光都市ってわけじゃないっても、人口数十万人なのよ。 >それをなるべく傷つけるなって言うのよ。 >古城に陣取ってる狐雀姫とその配下以外。 >ふざけんじゃないわよう。 >でも、やったわよ、やってやったわよ。 >『雷風ノ髪鞭』っていうレアアイテムを消費してね。 >んもう、また、赤色女神ちゃんに挑まなくちゃ。 >そんなこんなで、帰ってきたら、アルスちゃんの側に、いつもの参人と見慣れない2人がいたのよ。 >すぐに分かったわよ。 >ヴィンフレド・・・『私』の所有している『タロットの精霊』ちゃんのお仲間だってこと。 >一応、ね。 >そんなのもってても、アレは御伽噺だって思ってたもの。 >でなきゃ、いけないって思ってたっていうべきかしらね。 >・・・私が、あの子に出会ったのは、私が養父でここの教授だったフェ―ドって師匠に引き合わされた時だったから。 >ええと、多分、あの子が、六歳か七歳で、私が十三歳ぐらいだったかしら。 >それから、結構良く遊んだり、勉強したりしたわ。 >一時期ちょっと疎遠になった事もあったけれどね。 >だけど、あの子が、十一歳の頃かしらね、あの子の養父のマティアスさんが死んだの。 >詳しくは知らないわよう。 >師匠に引っ張られて、高等部の課外実習の講師やってたんだから。 >帰ってきたら、ティナちゃんとかの精霊と契約してたんだもの。 >しかも、直前であった時みたいな明るさって言うか、子供らしさって言うの? >あってしかるべくそれを根こそぎに無くして。 >それから、七年ね。 >色々あったわ。 >それなりに、私の前では、子供らしい明るさを取りもしつつあるけれど、それでも、ね。 >結局、あの子が、講師であることすら、あの化石の教授たちには、目障りだもの。 >それに、この間にね、師匠のフェ―ドが死んだのは。 >最期の際に、師匠が隠し持っていた先代の≪タロウマスタ―≫から預かった≪戦車≫を受け継いだのは。 >一応、私と契約は結んでるけど、スンゴイ堅物なのよ。 >ともかく、アルスちゃんが、話したいって言うのは、その子関連なのよね、多分。 >どうでもいいけど、アルスちゃんと夕食できるっていうのが、一番嬉しいって言ったら、怒られるかしらね? > > > >*後書き* >二ヶ月、三ヶ月ぶりです。 >ええと、はい、仕事が忙しかったのはなんも言い訳にはなりません。 >ともあれ、今年中に三話目をお届けしたいと思います。 > > >それでは、貴方に優しい悪夢を。 次の話で、謎と物語がどう動くのか楽しみです! |