◆−ひとまず突発的に新ツリーをば−かお (2009/5/15 22:51:55) No.34025
 ┣リトル・スレイヤーズ〜プロローグ〜−かお (2009/5/15 22:52:42) No.34026
 ┣リトル・スレイヤーズ〜旅は道連れ?〜−かお (2009/5/15 22:53:57) No.34027
 ┣リトル・スレイヤーズ〜おやくそく?〜−かお (2009/5/15 22:54:58) No.34028
 ┣リトル・スレイヤーズ〜伝説の定説と真実〜−かお (2009/5/15 22:56:05) No.34029
 ┣リトル・スレイヤーズ〜逃げろや逃げろ囚われの身〜−かお (2009/5/15 22:57:09) No.34030
 ┣リトル・スレイヤーズ〜黒幕と真実〜−かお (2009/5/15 22:58:11) No.34031
 ┣リトルスレイヤーズ〜赤眼の魔王・シャブラニグドゥ〜−かお (2009/5/15 23:08:01) No.34032
 ┣リトルスレイヤーズ〜死闘、そして・・〜−かお (2009/5/15 23:08:49) No.34033
 ┣リトルスレイヤーズ〜エピローグ〜−かお (2009/5/15 23:09:29) No.34034
 ┗お久しぶりですv−紗希 (2009/5/28 21:18:07) No.34067
  ┗お久しぶりです♪−かお (2009/6/2 07:33:24) No.34078


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34025ひとまず突発的に新ツリーをばかお 2009/5/15 22:51:55

こんにちわ。みなさん。なにか連載が数年とどこおっていると自覚しているかおです。
はじめましての人ははじめまして。お久しぶりの人はお久しぶりです。
このたび、下のほうのツリーさんにもかきましたが、
児童書版のスレが発売されたのをうけ、何これ!?
と唖然としてしまったのでじぶんなりに改善してなおしてみました(まて
どうも最近は脳内がジャン●のぬらりひょ●の孫にうめつくされて、
なかなかスレの打ち込み気分にならない私なのです・・
何はともあれ、いきますv
ちなみに一応、一巻分のみで全7話です。
・・・なぜか自分のサイトさんに本日FFFTPがつながらない謎になってるんですよね…
とりあえず、カリテルサーパーさんに問い合わせ中。
(掲示板の書き込みはできたのでそこでも一応ご報告中)
ちなみに、児童書版のキャラ、つまり、ゼル、ナーガ、シルフィールはでますが、
私のかくものの定番キャラも当然でてきます(まて
あと、ほとんどスレイヤーズの本家原作とかぶってます。
それでもよいからみてみよう、という人のみでうぞv
ではではv
ps:これがすんだらひとまずパラレルスレを打ち込みする予定です・・・
   スレイヤーズフォーエバーシリーズはもちっとまっくださいな・・・

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34026リトル・スレイヤーズ〜プロローグ〜かお 2009/5/15 22:52:42
記事番号34025へのコメント
  まえがき&ぼやき:

  さてさて。プロローグはエル様サイドにしようか、Sサイドにしようかと悩んだ挙句。
  ひとまず一巻の裏の主人公、ともいえるレゾに視点をおいてみましたv
  彼がじっくりと闇に飲み込まれている模様をすこしばかりをば。
  では、いっきますv

#####################################


         リトル・スレイヤーズ 〜プロローグ〜


  どうして……
  「なぜっ!!!!」
  叫びは血の叫びにしかならない。
  先日、この村の人々は長きにわたるはやり病で苦しんでいたところ、その苦しみから解放された。
  ここはかつて自分が作り出した病を流行らせた場所ではない。
  あのときは、とある目的のために実験としてあの国を選んだ。
  人の欲望に嫌気がさしたのも事実ではあるが、ここまでそのことを突き付けられるとは。
  『ありがとうございます。赤法師様』
  苦しみから解放された人々達の感謝の声が耳について離れない。
  かの国も病を発現させたのち、近隣の国が各国の援助物資を横領した。
  あののち、賢者の石のことをしり、できうれば他人の体ではなくて自分の体。
  生まれたこの自分自身の体の目で世界をみたい。
  そうおもい、賢者の石を探しているこの毎日。
  たしかに先日までは人々の歓喜の声が村中に響いていたのに。
  今ではそれも聞こえない。
  自分が立ち去った翌日。
  村は盗賊に襲われ壊滅。
  生き残ったものは一人とていない。
  その現実。
  その前は、よかれとおもって手助けしたところ、そこの領主が効率がよくなったのならば。
  と税をものすごくはねあげ、結果として人々は苦しみ、そして…餓死せざるを得なかった。
  しかも、その領主が税を…というのは、その町を管理していた人物のでっちあげ。
  つまりはこれまた横領。
  力あるものは力なきものをねじふせてわが身の糧とする。
  そんな人々を助けることにより、その感謝の気持ちがここちよかった。
  自分の存在意義が認められたようで。
  それなのに…この現状は何なのか。
  「…私のしていることは、何なのでしょう……」
  自分の目が開くことによりより多くの人々を救えるはず。
  その思いにかわりはない。
  ないが…こう立て続けに自分の助けた人々が不幸になるのを目の当たりにするとわからなくなってくる。
  ――世界はくるっている。とおもわんか?
  「?誰です?…気のせい、ですか?」
  ふと、声が聞こえたような気がした。
  しかしこのあたりには他の生物の気配はまったくもって感じられない。
  声が聞こえるはずもないのである。
  最近、よくこんな幻聴がときどきある。
  こんな現状に直面したときに、たびたびに。
  おそらく心の中で悲鳴をあげているからに他ならないのだろう。
  それでも、立ち止まってはいられない。
  少しでもこのような悲劇が二度とおこらないためにも、やはり自分の目を開く必要が絶対にあるのだから。


                   −続くー

  

#####################################

  あとがきもどき:

薫:すべてのネタバレ、ともいえるレゾの回想をばv
  ちなみに、病気を蔓延させた国、というのはいうまでもなくスレの四期のスレエボの国v
  タホーラシアの国のことですv(少しいれてみましたv
  Sの干渉でどんどんと闇に染まっているレゾの心情とひととしての正しき心のせめぎ合い。
  そんな日々の一幕です(まて
  何はともあれ、次回から本編です♪
  ではまた次回にて♪



  


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34027リトル・スレイヤーズ〜旅は道連れ?〜かお 2009/5/15 22:53:57
記事番号34025へのコメント

  まえがき&ぼやき:

  このお話は、あまりにスレイヤーズの児童書版としてだされた作品が何これ!?
  だったので、スレイヤーズらしく改ざんしたものです。
  しかし、どうやら神坂先生はこれに関してはノータッチらしい。
  よく許したなぁ…いや、ほんと。
  児童書かいてる南房って作者さん、スレイヤーズを理解していない、とおもうのは私だけではないはず・・・
  あまりに設定もだけどもキャラが(涙
  とりあえず抗議をだしてみようと画策中。
  あの調子だとセイルーン編のときにナーガの正体まで間違った解釈でかかれそうだっ!!(切実
  やるからにはきちんと理解してやってくれっ!!(絶叫!
  あまりに理不尽すぎる児童書スレはともかくとして、気分転換にいくのですv
  しかし、パラレルさん、どうしよっかなぁ?
  さくっとかえすか、はたまたやっぱし一巻分の事件には巻き込まれてもらうか(まて
  ではでは♪

  #####################################


       リトル・スレイヤーズ 〜旅はみち連れ?〜


  「火炎球(ファイアーボール)!!!」
  ちょどぉっんっ!
  お〜し、もう一発!!
  「炎の矢(フレアアロー)!!」
  「「ぎゃぁ〜〜!!」」
  何ともいえない男たちの悲鳴が辺りにこだまする。
  ええいっ!
  いくら悪人とはいえ根性のないっ!
  いやまあ、根性がないからみみっちい悪人なんかしてるんだろうけど。
  放った炎の呪文が悪人…すなわち山賊達を吹き飛ばす。
  中には炎にまみれて黒こげになっている輩もいるがそれはそれ。
  どちらにしても悪人に人権はないんだし。
  山奥にあるありきたりな山賊の隠れ里。
  あたしたちは、たまたま立ち寄ったとある村で彼らの退治を依頼された。
  …まあ、連れの壊した建物の弁償かわり、ともいえなくもないが。
  山賊達の隠れ家はお約束のことに古代遺跡の中にあり、滅多と人が近づかぬ位置。
  どうしてこうも悪人って同じような場所を好むのやら。
  ちょっとした炎の術をぶっぱなしただけで今やアジトは大騒動と化している。
  「お〜ほっほっほっ!!盗賊ごときがこの白蛇(サーペント)のナーガ様に逆らおうなんて百万年早いのよっ!」
  どっご〜んっ!
  ベキベキ…
  何やら少し離れた横のほうでは目をそむけたくなるような格好の何か。
  人間だ、といったらまず普通に生きている人に申し訳ないので絶対に人外な何かとしかいいようがない。
  当人いわく『白蛇のナーガ』といい、なぜかこのあたしにひっついてくるいわば金魚のフンのようなもの。
  その容姿はまず、
  申し訳ない度にあるかないか、という程度の布でできたまるでビキニタイプのような真っ黒な水着に黒いマント。
  おどろおどろしいドクロのネックレス。
  そして何よりも無意味なほどにでかさを強調しているかのような胸っ!!
  くそ〜、あたしだっていつかはっ!!
  どこをとっても申し分のない容姿で美少女だ、と自覚しているあたしにとっての唯一の欠点。
  それはなかなか胸が大きく…つまりは成長しない、ということ。
  まあ、郷里の姉ちゃんも母さんも大きいのであたしもいつかは…とはおもってはいる。
  思ってはいるが、何かこうむなしいのも事実。
  どっかの大道芸人か何か、ともおもえなくもない格好のナーガが周囲の木々をも巻き込んでひたすらに呪文を放っている。
  教訓。
  自然は大切にしましょう。
  マル。
  敵に回すとおもしろいが味方にすればかなり面倒、もとい大迷惑。
  その歩く迷惑ともいえるナーガにつきまとわれて、あげくは腐れ縁になっているこの現状。
  そんなあたしはかなりかわいそうだと思う。
  「ちょっと!リナ!いっときますけど私があなたと一緒にいるのはあなたと決着をつけるためよっ!
    そうすれば天才魔導師の名は私のものよっ!お〜ほっほっほっ!!」
  どうでもいいが、毎度のことながら人の心を読んだかのごとくにときどきいってくるのは何ゆえか。
  まあナーガのことだから何も考えてはいないだろうけど。
  しかしこの山賊さんたち、結構はぶりがいいのか人数的には百人近くもいたりする。
  これはお宝も期待できるか!?
  田舎の山賊とはいえさすがはライゼール帝国内。
  ここまで人数がいるのもめずらしい。
  裏をかえせばそれだけまともに働く気がないやつばかり、といえるのだが。
  しかしあたしとナーガの攻撃でほとんどの山賊達はすでに戦闘不能状態と化している。
  残りはざっと十五、六人程度。
  「さってと。とっととケリをつけてお宝をいただくわよっ!!」
  「ふっ!わかったわっ!!」
  あたしの声に応じ、ナーガが呪文を唱え始め……
  「まて!そこまでだっ!」
  突然、背の高い男が声とともにあたしたちの間に割り込んでくる。
  は?
  え…えっと?
  格好からしてどうやら旅の傭兵か何かのようだけどまったくもって見ず知らずの人物である。
  いいぬきざまに抜き放った長剣があたりにいまだにくすぶっている炎にてらされきらりと反射する。
  アイアンサーペントのウロコとおぼしきもので作られたとみられる黒光りする胸甲冑(ブレストプレート)。
  すらりとした背の高さとその格好からしてどうやら技とスピードが売り物の戦士タイプとみた。
  淡い金髪が腰のあたりまでストレートにのびている。
  この兄ちゃん、何?
  歳のころは二十歳前後、といったところだろう。
  金髪兄ちゃんはあたしたちをかばうようにと、あたしたちと山賊の間にわってはいり、
  そしてあたしたちに背をむけて山賊達にと向き直る。
  え〜と……
  もしかしてもしかしなくてもあたしたちが山賊に襲われている、と勘違い?
  もしも〜し、人手はたりてるんだけど。
  というか、お宝のとりぶん減るし。
  「山賊ども。かよわき女子供に手をだすとはゆるさん」
  …かよわき女子供って誰のこと?
  ねえ?
  「やかましいっ!いきなり出てきやがって!てめえ一体何ものだっ!」
  そりゃそ〜だ。
  山賊の一人が張り上げた声におもわずうなづくあたしは間違っていないとおもう。
  「きさまらに名乗る名前はないっ!」
  ……え〜と……思わずの事態に目が点。
  そりゃよくパターン的にこういうのがいるにはいるが。
  ここまでお約束のセリフを吐くとは……
  「…リナ」
  目を点にしているあたしにナーガが横からつんつんとつついてくる。
  「ちょうどいいじゃない。そいつにやらせましょうよ」
  小さくこそっとあたしの耳にとささやくナーガ。
  「こいつに?」
  目の前であたしたちをかばう格好で立ちふさがっている男をちらりとみやる。
  「楽してお宝が手にはいるならそれにこしたことはないでしょ?」
  そりゃそ〜だ。
  ナーガの言い分ももっとも。
  ナーガにしてはえらくまともな意見である。
  おっし、ここはひとまず……
  「タスケテクダサイ。この人達、あたしたちをつかまえて売り飛ばそうとしてるんです〜」
  瞳をうるうるさせてちょっと上目づかいに相手を見上げていうのがポイント。
  まあ台詞がボウヨミになったりするときもあるがそれはそれ。
  自慢ではないがあたしは自分がかなりの美少女だと自覚している。
  ゆえにそれをも時には利用する。
  男というのはいつの時代においても単純だ、とこれはうちの姉ちゃんの格言。
  旅にでてその理由がよぉくわかっている今日この頃。
  そしてそれは旅においても有利に働く。
  「きさまら…っ!」
  金髪兄ちゃんはあたしの言葉を信じたのかその声に怒りすら浮かばせて……
  「やっちまえっ!」
  「おうっ!」
  かくして、あたしの言葉をあっさり信じ、山賊達と金髪兄ちゃんのチャンバラが開始されてゆく。

  う〜ん、こりゃ楽だわ。
  ヒロイン役に徹してワーキャー騒いでいるとふと気付けばナーガの姿がみあたらない。
  はっ!?
  このスキにお宝を一人占めにする気か!?
  「あ、おいっ!?」
  何か金髪兄ちゃんがわめいているけどさくっと無視。
  そのまま宝物庫らしきほうにとあたしもまたかけだしてゆく。
  おのれ!ナーガ!ぬけがけはゆるさないわよっ!!

  どうしてこう、宝物庫とかいう場所はわかりやすくつくってあるのか。
  ちなみに、この山賊のアジトにおいては遺跡の中にとあるとある一室。
  案の定、かけてゆく途中ナーガにおいつき言い合いをしながらもお宝さんのある部屋にとたどりつく。
  「き…きさまらはっ!金のなる商品はわたさないぞっ!!」
  「すべての力の源よ 輝き燃える紅き炎よ 我が手に集いて力となれ 火炎球(ファイアーボール)」
  「ぎゃっ!?」
  口の中ですばやく混沌の言葉(カオスワーズ)を唱え力ある言葉を解き放つ。
  そのまま見張りとおもわしき男をさくっと倒し、部屋の中にと入るあたしとナーガ。
  入口に転がっている黒い物体はほうっておく。
  「う〜ん、あまりいいものはないわね〜」
  宝石類や金貨はそこそこ。
  ナーガが金貨にみとれてそっちをうばっている隙にあたしはあたしでめぼしいものを素早く物色し、
  そしてそれらをすばやく外したマントの裏地にくくりつけて確保する。
  ついでに常に持ち歩いている皮袋の中にもはいるだけいれておく。
  この中には旅の必需品がはいっていたりするのだがそれはそれ。
  どうでもいいガラクタさんたちはあとで村人たちがきたときのためにと残しておく。
  近隣の村などにかなり被害をもたらしているようなので、そういうこともありえる。
  ゆえに多少おいとくことであたしたちは逆恨みともいえる村人たちの非難を回避できるのである。
  ちなみに没収した品々は、近くでさばくと足がつくので少し離れた場所で換金するのがミソ。
  あたしとナーガがどっちがひきとるか、でもめた品はあとできめるとしてひとまず物色し終えるあたしたち。
  それぞれが没収したお宝さんを袋の中やマントの後にくくりつけて、マントを再びはおるのとほぼ同時。
  「お〜。こんなところにいたのか。大丈夫だったか?お嬢ちゃんたち」
  入口のほうから聞こえてくる声がひとつ。
  ふりむけばさきほどの金髪兄ちゃんが一人。
  周囲に山賊達の気配がない、ということはこの兄ちゃん一人で彼らを倒したらしい。
  「え…えっと……」
  まさかお宝物色がばれた!?
  まあ何かいってくるようならさくっとこいつも倒して……
  あたしがそんなことをおもっていると、
  「しかし、うばわれた荷物をさがしていたのか?」
  …そ〜きたか。
  たしかにそういうとらえ方もできなくもない。
  「そっちの子の服はみつからなかったのか?」
  「え、えっと……」
  もともと、こいつはこんな格好です、とは言いにくい。
  というか仲間、とおもわれるのが一番いや。
  あたしが言葉をにごしていると、
  「…まあ、服がダメになっただけで無事でよかったな。二人とも。
    村長のいってたのは一人だったけど。他にもさらわれた子がいたんだな」
  え〜と?
  どうやらナーガの服はやつらに破かれたのかどうかして何かがあった、と捉えたのか何やらそんなことをいってくる。
  しかし、はて?
  あの村長があたしたちを助けてほしい、なんていうはずは思えないのだが?
  そんなあたしの思いを知ってか知らずか、
  「とにかく、ここは危ない。ルミナ村の村長さんも心配してたぞ?お嬢ちゃん」
  ・・・・・あ〜、何か話しがみえてきた。
  「えっと。人違いじゃありませんか?あたしたち、ルミナ村とは何の関わりもありませんけど」
  「え?でも嬢ちゃん、……小さいよな?」
  むかっ!今どこをみた!どこをっ!!
  ひくひくとコメカミを痙攣させつつも、
  「助けてもらったことはありがとうございます。
    けどあたしたちはその村とは関係ありませんし。また立ち寄ってもいませんし」
  つ〜かあの村は昔立ち寄ったときにナーガがむちゃくちゃしており、
  再度立ち入ったら怖いことになるのが目に見えている。
  「ちょっと。リナ。話の最中みたいだけど、ここ、みてよ」
  そんな会話をしていると、ナーガが壁の一角を示していってくる。
  「こ、これはっ!?」
  そこには失われた王国のレテディウス公国がよく用いたといわれている紋章が。
  しかし重要なのはそこではない。
  この紋章はなぜかよく隠し扉の入口などに使われることが多いのである。
  何も描かれていない壁に不自然なまでに描かれているその紋章。
  コンコン。
  軽く周囲の壁をたたくとあきらかに音が異なる。
  「壁の音からしてまだこの奥にも部屋があるみたいね」
  紋章の一部分をぐっと力を込めておす。
  と。
  ゴゴゴ……
  重い音とともに、紋章の描かれている壁が横にとずれる。
  もしかしてこれはさらなるお宝の予感?!
  ナーガも同じことをおもったのか、ナーガと顔をみあわし、一言もかわさずその中にと飛び込むあたしたち。
  「あ、おいっ!」
  何か後のほうで金髪兄ちゃんが叫んでいるけど、さくっと無視。
  飛び込んだその先は、申し訳ない程度にある明かりに照らされた狭い通路。
  その通路にあるのはすでに消えかけている松明の灯り。
  薄暗い中では身動きもとれない。
  ゆえに。
  「明かり(ライティング)」
  光量を押さえた光の術を唱え、抜き放った剣の先にともし簡単な光源を確保する。
  しばらく続く長くほそい通路。
  その通路を抜けるとやがてみえてくるいくつかの小部屋。
  よくよくみれば、部屋の中には何かの魔方陣らしきものがすべての壁や床においてきざまれており、
  特質すべきはその部屋には鉄柵のようなものがすべてにおいてはめこまれている。
  しかもそれらにも小さく魔方陣らしきものが刻まれているようである。
  一見したところ、どうも封魔の魔方陣っぽい。
  つまりは、魔術というか魔力を抑えたり封じ込めたりするための魔方陣。
  んな代物、たかが一介の山賊が持ちえる知識ではない。
  まあ直接壁に刻まれている具合と状態をみればもともとこれはあったと推測するほうが確かである。
  「誰かいるわよ。リナ」
  「・・・子供?」
  そのいくつかある一室。
  そこになぜか岩でできたベットがひとつ。
  御丁寧に岩の台の上にはふかふかのお布団。
  その上にちょこん、と自分の体よりも大きな袋のようなものをもっている子供が一人。
  大きくぱっちりと開いたつぶらな瞳に何とも愛らしい顔立ち。
  そして癖のある髪の毛。
  ……え〜と……
  「リナ。あんたいつこんな子供うんだの?」
  う…
  「う、うむか〜!!ボケっ!!」
  「だってどうみてもそのこ、あんたにそっくりよ?小さいとこまで」
  「あのねっ!ナーガ!…ちょっと。ナーガ。小さいってどういう意味かしら?ん?ん?」
  「そりゃ、その大草原のちいさなむ…」
  すぱぁっん!!
  言い終る前にそんなナーガを懐から取り出したスリッパでおもいっきりしばいておく。
  うん。
  あたしはわるくない。
  断じて。
  しかし、こりゃ、たしかに……
  「え、えっと。お嬢ちゃん?」
  おそるおそる声をかけるとぴくりとその子供…みたところ二歳か三歳くらいであろう。
  あたしの声に反応してかこちらに視線をむけてくる。
  そのぱっちりと開かれた対の瞳は海を連想させる碧い瞳。
  が、しかし何よりも気にかかるのは……
  「え。えっと。あたしたちはあやしいものじゃないんだけど」
  どうもこちらを警戒してか、ぎゅっと袋をつかんだまま固まっている。
  と。
  「お〜い。いったいどうしたってんだ?」
  ちっ。
  まだいたのか、こいつは。
  先ほどの兄ちゃんが何とおいかけてきたらしく、近づいてきながら声をかけてくる。
  そしてふと、どうみても石牢の中、としか思えない中に入れられているおんなの子に気づいてか、
  その子とあたしを見比べつつ、
  「そ〜いうことか。ちょっとまってな。今、妹さんも出してやるからな」
  いいつつなぜか剣を抜き放つこの兄ちゃん。
  「ちょっ!?」
  次の瞬間。
  キッン!
  金属音とともに、きれいに目の前の細かな魔方陣らしきものが刻まれている
  よくわからない材質の金属のようなそれを剣の一閃とともに斬りとっていたりする。
  「へ〜。この人、結構やるわね」
  横でナーガがそんなことをいっているけど。
  たしかに斬り口もきれいな断面となっており、そう生半可な腕ではこんな切口にはならないだろう。
  「と、ともかく助け出さないと」
  感心したのはあたしも同じ。
  だが今は中の女の子を助け出すのが先である。
  「え、えっと。大丈夫?」
  座っている女の子の目線にあわせて問いかける。
  その瞳に恐怖の色は浮かんではいない。
  が、こんな小さな子なのでよくわかっていない可能性のほうが高い。
  「ここは危ないから。いっしょにいこ?」
  あたしの言葉にこくん、とうなづき抱えるようにしていた袋を背負い……
  どうやらこの袋は背負うタイプの袋だったらしい。
  とにかく、女の子はその袋を背中に両手を通して背負い、きゅっ、とあたしのマントをつかんでくる。
  そのまま一緒にひとまず牢の外にと歩き出す。
  う〜む。しかし……
  「そっか。ルミナ村の村長がいっていたのはそのこか。よかったな〜。お姉ちゃんがみつかって」
  おひこらまて。
  たしかにあたしもびっくりするくらい、この子はあたしのミニチュア版、といってもいいくらいにそっくりだけど。
  違うのは髪と瞳の色だけだし。
  「え〜と、剣士さんが探していたのはこのこ?」
  名前もわからない兄ちゃん、ではたぶんわるいし。
  なので無難な問いかけをする。
  「あ。そういえば自己紹介がまだだったな。オレはガウリイ。見てのとおり旅の傭兵だ。お嬢ちゃんたちは?」
  ひくひく。
  お嬢ちゃんよばわりされておもわずコメカミがひきつるものの、
  「いえ、なるのほどでは……」
  「お〜ほっほっほっ!この私は白蛇(サーペント)のナーガ様よ!リナの最強最大のライバルよ!お〜ほっほっほっ!」
  あ〜、たしかに最凶、だわ。うん。
  「そっか。リナお嬢ちゃんにナーガお嬢ちゃんっていうのか」
  ナーガまで嬢ちゃん、ときたよ。この兄ちゃん……
  「君は?」
  「……エル」
  きゅっと名乗ったと同時にあたしの後に隠れるエル、と名乗った小さな女の子。
  「しかし、女の子ばかりの旅っていうのは物騒だな。他につれは?お父さんか誰かいないのか?」
  「い…いえ」
  つ〜か郷里の父ちゃんがいたらそれこそすごいことになりそうである。
  「そりゃあ物騒だなぁ。まだこんな小さな妹さんもいることだし。
    よし。乗り掛かった船だ。オレがお前たちを家まで送ってやろう」
  おいおい、まていっ!!
  一人勝手に決めて、ぽんっ、と手をうっているこの兄ちゃん。
  髪でかくれてこの兄ちゃんからはみえないだろうが、ひくひくと自分でコメカミのあたりが痙攣しているのがはっきりとわかる。
  「で?あんたたちの家は?おうちはどっちだい?」
  ムカムカ。
  どうもあたしに対しては完全に子供に問いかけるようにナーガとは口調すら変えてきいてくる。
  「いえ、あの。あたしたちは旅をしていまして。別に何かのアテがあるわけでもないんですけど。
    アトラス・シティにでもとりあえずいってみようかな、なんておもってるんですけど」
  とにかくてっとり早く厄介ばらいをしたい。
  まあ、アトラスにむかっているのは嘘ではないし。
  女の子は今だにあたしの足元にしがみついたまま。
  …ま、ナーガの格好と、そして剣を携えたわけのわからない兄ちゃん。
  その二人よりははるかにあたしのほうが安心できるのであろう。
  ナーガの格好をみて大人ですらひるまないモノなどいないのだから。
  小さな子供ではおしてしるべし。
  「そうか。うん。そうだったのか。いや、大変だね。君たちも」
  「「…は?」」
  なぜかあたしの説明にひとり納得し、しみじみとつぶやくこのガウリイ、と名乗った兄ちゃん。
  思わずあたしとナーガが間の抜けた声をだすのとほぼ同時、
  「いや、わかってる。いろいろとあったんだろう。いろいろとね」
  「いえ、その……」
  「あ〜。何もいわなくていいよ。わかっているんだから」
  「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
  思わずナーガと二人、顔を見合わせる。
  どうやらこの兄ちゃん、
  ”聞かれたくないことを聞かれてしまったためのリアクション”
  だとあたしとナーガの表情をみて勝手に誤解したらしい。
  ナーガのほうは隠し扉の先にあったのがお宝でなくて子供だったので少しばかりがっくりきているだけなのだが。
  「いえ。あたしはただ単に世の中をいろいろとあちこちみてまわりたくて……」
  つうか、世の中をみてこい、と郷里の姉ちゃんに放り出されたのだが。
  ナーガはたしか修行とかいってたけど、ナーガの場合はただ道に迷ってるだけだ、とあたしはおもっている。
  そんなあたしの真実の台詞に対し、
  「いいんだよ。あわてて言い繕わなくても。あれやこれやと尋ねたりはしないからね」
  子供を諭すようにといっくてる。
  …ダメだこりゃ。
  「そうか。よし。それじゃあオレがアトラスシティまでついていってやろう」
  …ちょっとまていっ!!
  「い、いえ。そこまでしていただくわけには…」
  冗談ではない。
  ここからアトラス・シティまでは約十日はかかる。
  そんな道中、こんなムカナカする子供あつかいする兄ちゃんと一緒なんてっ!
  「遠慮はいらないよ。君たちはまだちいさいんだから」
  ムカムカムカ。
  誰が小さい!誰がっ!!
  「そっちの人も男手があったほうが楽だろ?
    子供二人の面倒をみるにしても、また悪い奴らのちょっかいに巻き込まれない、ともいえないし」
  こ…こいつ、こともあろうにナーガがあたしの保護者がわりとおもってるのか!?
  ンナやつ保護者にもったらそれこそまちがいなく人の道を踏み外す。
  というか保護者してるのはあたしのほうだってばっ!!
  「それにもう夜もおそい。まず近くの村で服を調達しないといけないだろ?」
  あ〜、そういやこいつ、ナーガの格好が今だに下着か何かだと勘違いしてるままだったんだ。
  説明するのも面倒なので説明する気もさらさらないが。
  「遠慮します」
  すかさずいったあたしに対し、何か下のほうからつんつんとマントがひっぱられる感触が。
  「リナおね〜ちゃん。あたし、おなかがすいた」
  え〜と……
  どうやらこの子、あたしたちのやり取りであたし達の名前を覚えたらしい。
  「いつ残党が襲ってくるとも限らないしな。ともかく安全な場所に移動しよう」
  別に残党が襲ってきてもあたしたちの敵ではないが。
  しかし、たしかに殺伐シーンは小さな子供にみせるものでもないだろう。
  「ルミナ村の人たちも心配してるしな」
  何か説明する、というのか説明するのもかなり面倒。
  というかこの兄ちゃんのことだから話しをききそうになさそうである。
  「…は〜……」
  溜息をもらすあたしとはうってかわり、
  「お〜ほっほっほっ!おごってくれるならばどこでもついていくわよっ!お〜ほっほっほっ!」
  こらまて!
  余計に話しをややこしくしそうな台詞をナーガがのたまわる。
  そんなナーガをしばらくみたのち、そして視線がなぜか憐みの視線になり、
  「苦労してるんだなぁ。よっし、おもうぞんぶん好きなだけたべさしてやろうっ!」
  ああっ!
  完全に誤解されたっ!
  ちょっと!その憐みの視線はやめてよねっ!
  しかし、ルミナ村にはよりたくない。絶対に。
  というか以前の弁償をしろ、ともいわれかねない。
  こ、ここはひとまず……
  「ルミナ村よりこっちのパミラ村のほうが近いですし。それにもう遅いですし」
  ここは言いくるめるに限るっ!
  相手はどうもこちらを力のない女子供だ、とおもいこんでいるようだからそこにつけこむ隙があるっ!
  「そうか?それもそうだな。夜道の旅路は危険だな。
    なら、パミラ村におくったあとでオレは子供は無事に家族と再会できて無事だってルミナ村に伝えてくるよ」
  どうやら厄介ばらいができそうである。
  結局のところ、あたしたちは、小さな子供【エル】を伴い、近くのパミラ村へと移動することに。

  世の中、親切な人、というのは一応いるらしい。
  つうかよくあれで旅の傭兵なんてできている、とおもうが。
  道すがら聞けば、ルミナ村の村長に山賊に襲われさらわれた小さな女の子を助けてやってほしい。
  という依頼をうけてあの場にやってきたらしい。
  特長とか名前は教えてもらったらしいのだが、当人いわく、覚えていない、といわれたときには心底あきれたが。
  とにかく村に一件しかない宿屋。
  その宿代をもガウリイ、という兄ちゃんははらってくれてしかも食事代とばかりにいくばくかのお金をもおいてった。
  あえてあたしたちはその言葉に甘えてもらえるものいただいておいた。
  いくらムカムカする兄ちゃんとはいえ、お金さんには罪はないっ!
  「で、リナ。その子、どうするの?」
  今だにあたしにぺったりとくっついて離れないこの子。
  しかし、みればみるほどあたしによくにているので何かこう、他人、という気がしないが。
  「やっぱりリナ。あんたの子なんじゃないの?」
  「アホっ!あたしはもうすぐ十五よっ!この子はどうみても二歳か三歳でしょうがっ!」
  逆算してほしい。
  そんなことはありえるはずもない。
  そもそも、あたしは迷うことなくれっきとした乙女である。
  「じゃあ、リナの妹?」
  「あたしに妹はいないわよ?」
  姉ちゃんならいるが。
  あたしが旅にでたあとで産まれていたとしても、あたしが知らないはずもない。
  …いや、あの家族のことだから驚かそうとおもってそれくらいしてそ〜ではあるが……
  あたしが里帰りするたびにこっそりと隠してたりとか、他の人に口止めしてたりとか…あ、ありえる……
  「そりゃまあ、うちの母さんは金髪だけど……だけど妹が生まれたって聞いたことないわよ?
    一応、定期的に里帰りはしてるし」
  どうやらあたしも郷里の姉ちゃんも母さんか父さんの祖父か祖母ににたらしい。
  ちなみにあたしの父ちゃんの髪の色は黒である。
  つまりはあたしと姉ちゃんの髪の色は栗色なれど、両親の髪の色は黒と金。
  まあ、あたしはうまれてこのかた祖父母のことなんてきいたことはないし。
  そもそも、あの二人、もともとは旅のさなかに流れに流れてゼフィーリアに落ち着いたっぽい。
  何でも母さんの家がもともとゼフィーリアにあったとかその関係で。
  祖父母といったものにはあたしは出会ったことは一度もない。
  まあ、母さんたちいわく、あの親がしぬとは思えない、どっかで遊んでるんでしょう。
  とのことらしいが……
  「でも、ここまでそっくりなんだからあんたの親戚か何かの子じゃないの?」
  珍しくナーガにしては今回はまともな意見を続けていうもんだ。
  さすがのナーガもけっこう飲んだっぽいからついによっぱらったか!?
  しかし、親戚の子、というのはそれはあたしも考えた。
  もしくはものすっごい他人の空似か。
  「え〜と、エルちゃん、だったわよね?お父さんやお母さんは?」
  あたしの問いかけにふるふると首を横にふる。
  う…うわ〜…もしかして聞いてはいけないことを聞いてしまったんじゃぁ……
  ナーガなどはあわてて視線をそらしてるし。
  「いくあてあるの?」
  ふるふる。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  どうしよ?
  どうやらいくあてもないらしい。
  「あ、でももしかしたらこの子のことを誰かが知っているかもしれないし」
  「そ、そうね」
  こんな小さな子供に情報を求めるのが無理、というものだ。
  あたしの言葉にナーガがうなづき、
  「じゃあ、リナが責任もちなさいよね」
  ナーガに任せるなんて怖いことできないし。
  何より本当に親戚の子で放り出したと姉ちゃんや母さんに知られたら…
  ぶるっ。
  か、考えまい。
  「え、ええと。とりあえず、おちつける所が見つかるまでは一緒にくる?あたしはリナ。で、そっちの変なのがナーガ」
  「ちょっと!誰が変なのよっ!」
  あたしの声にナーガが声をあげてくるがあんたは自覚がないんかっ!
  あたしの言いたいことがわかったのか、女の子はにこっと笑い、
  「うん。あ、じゃあタダはわるいからこれ、どっちかあげる。あたしにはひつようのないものだし」
  いいつつも、にこりと笑みを浮かべたままでエル、と名乗った女の子は背中の背負い袋をおろし、
  ごそごそと袋の中をしばしまさぐりはじめる。
  やがて小さな箱のようなものと皮袋を一つ取り出し床の上にと置いてくる。
  ちなみにあたしたちはすでに食事を終えてひとまず宿の部屋にと入っている状態。
  ちょこん、とベットの上にこしかけている姿は何とも見ていてほほえましい。
  つうかあたしもこんな時期があったよな〜。
  あのころは、姉ちゃんのすごさを知らずに絶対に姉ちゃんに勝とうと必死になってたっけ……
  「何?これ?」
  あたしの問いかけににこにこしたままで何もこたえてはくれない。
  箱に描かれている紋章らしきものがあたしとしては気になってしょうがないんですけど。
  ゼフィーリアの城でみたことのある【神魔の樹】と言われているモチーフに【魔族の樹】と呼ばれているモチーフ。
  その二つにとてもよくにた模様。
  それらが対をなすように箱の両面に刻まれている。
  そして箱の表面には何らかの魔方陣らしきものが刻まれている。
  はっきりいってみたことないやつ。
  失われた古代文字が描かれているようにもみえなくもない。
  箱を手にとるとそれはとても軽く、中に何がはいっているかは一見したところわからない。
  そしてまた、
  「ちょっと!?これって金!?」
  何か横ではナーガが小さな皮袋を開いて中を確認しているが。
  のぞきこんでみれば、その中はどうやら砂金がぎっしりとはいっているらしい。
  量からしてちょっとした財産である。
  …もしかして、もしかしなくてもこの子ってどこかすごいところのお嬢様?
  と、とにかくまずはっと。
  すばやく頭の中で計算し、
  「じゃあ、あたしはこっちをもらうわ。ナーガはそっちね」
  いって箱を手にとりナーガに言い放つ。
  「お〜ほっほっほっ!リナ!やっぱりヤメタとかはなしよっ!お〜ほっほっ!これでこの金は私のものよっ!」
  今が夜だと失念してないか?
  まあ、ナーガにとってはいつものことだが。
  「で、臨時収入があったところで今までにあんたに立て替えたお金の一部を返してもらうわね」
  ひょいっ。
  いってナーガの手の中の皮袋をひょいっとつかみにっこりと言い放つ。
  「ちょっと!リナ!それは私のっ!」
  「じゃ、今まであたしがあんたに立て替えた宿代とか食事代。
    そのほか弁償代にいたるまで、そのほかもろもろ。それらの代金をきっちりとかえしてもらえるかしら?」
  「そんなっ!リナちゃん。私とあなたの仲じゃない〜」
  ええい!しつこいっ!
  と。
  「いたぞ!とうとう見つけたぞ!」
  いきなりバン、と宿の部屋の扉が蹴破られる。
  ふとみればそこにはなぜか廊下を埋め尽くすトロルの群れ。
  そしてその中に見え隠れしているミイラ男…と一瞬おもったが、
  よくみると体を包帯でぐるぐる巻きにしている魔導師らしき男の姿だったりする。
  しかし当然あたしたちはこんなミイラ男もどきに知り合いなどいない。
  「う〜ん。人違いじゃありません?それに乙女の部屋に入り込むなんて。そっちこそ何さま?
    あたし、ソフィアっていいますけど。きっとあなたたちの探している人とは……」
  冷やかな目でみつつも、ひとまず偽名を名のっておく。
  面倒なことに巻き込まれたくないし。
  そもそもここには小さな子供もいるんだし。
  が。
  「やかましい!名前なんぞ知るかっ!とにかくお前たちちょっと前、野盗のお宝をごっそり荒らしていったやつだっ!」
  え〜と?
  「ともかく、人違いです。あたしたちは身も知らないミイラに狙われる覚えはないですし。それに他の客への迷惑です」
  つうか、客はあたしたちだけ、というど田舎なのだが。
  「とぼけるなっ!あの隠れ家でこの俺様をこんな目に合わせたのはお前だろうがっ!
    おまえと!そっちの変な格好のドクロネックレスの女の顔を忘れるとおもったか!?」
  はて?
  そういわれてもまったくもって心当たりなし。
  そもそも、悪人いじめ…もとい退治は日常的にしているのでいつのことだか皆目不明。
  「お前のおかげでこの大怪我だっ!」
  …つまり、こいつは悪人に雇われてた魔導師ってところか。
  というか…かなり間抜け、の一言である。
  普通、魔導師ならば炎にまかれたりけがなんてしても呪文でなおせるぞ?
  「しかし。あのとき奪っていった品をすべてかえすならそれでよしとしてやるが?」
  言外にこれだけの数のトロルを相手にはできないだろう、というのがあるらしい。
  しかし!あたしたちの実力を舐めてもらってはこまるっ!
  あたしが口を開こうとしたそれより先に、
  「お〜ほっほっ!いうにことかいて人のものをよこせ、ですって!?この白蛇のナーガ様もなめられたものねっ!」
  無意味に胸をそりかえらせながら高笑い。
  ……いやな予感。
  「エルちゃん!逃げるわよっ!」
  すばやくさっきの箱をつかんで袋の中にエルちゃんが放り込むのとほぼ同時。
  あたしも又、自分の荷物をひっつかんで窓を開け放つ。
  「浮遊(レビテーション)!!」
  「火炎球(ファイアーボール)!!!」
  あたしが窓を飛び出すのと、ナーガの声が同時に重なる。
  どぐわぁぁっん!!
  …夜の村の中。
  紅い炎がの場を覆い尽くしてゆく……

  しかし、敵も見境がない、というか何というか。
  「とうとうこの村にまで……」
  呆然と村人の一人、宿屋のおかみさんが燃える宿をみつつ横でつぶやいている。
  どうやら盗賊か山賊の襲撃と勘違いしてるらしい。
  まあある意味正しいが。
  おそらくどっかの残党がしかけてきて、いつものように何も考えていないナーガが・・というのが正解なのだが。
  嫌な予感がして荷物をひっつかんで窓から外にでたのは大正解だったようである。
  しかし、それをあえていうこともない。
  ここはおかみさんには勘違いのままでいてもらおう。
  「あんたたち、大丈夫だったかい?もう一人は?」
  あたしとエルちゃんしかいないのをみて心配そうにきいてくる。
  「あ〜、アレなら大丈夫ですよ」
  というか殺しても絶対にアレは死なないし。
  ナーガを倒すならば熱湯をかけるのが一番かもしれない。
  「まったく。宿は建て替えはきくけど、お客様に何かあったらそれこそ取り返しつかないからね」
  そんなことをいってくるやどのおかみさん。
  確かに、こんな小さな田舎の宿は信用が第一、ではあろう。
  こんな小さな村など信用一つでさびれもすれば発展もする。
  「っ!?」
  やどやのおかみさん、もといおばちゃんが悲鳴に近い声をあげてくる。
  見れば炎から免れた数匹のトロルたちがあたしたちの周囲を取り囲んでいたりする。
  トロルは人間よりも通常、二回りほど大きくそれに比例して体力がありその動きも敏捷。
  そして再生能力の速さにより生半可な傷はあっというまに治ってしまう。
  ゆえに倒すならば一撃で。
  しかし、炎をこのままほうっておいて他の家に燃え広がってもわるいし。
  ここはひとまず。
  「おばちゃん。この子と荷物、お願い」
  いいつつ荷物と女の子を預けだっとかけだす。
  向かうは当然トロル。
  やたらおおぶりしてくる一撃をさけ右手をくるりとトロルの腰にとあて支点にしくるのと反回転。
  そして次の一匹へ。
  小柄でじまんではないが体力にも自信がある。
  ついでに動きが早くなるオリジナルの十も自分自身にかけている。
  トロルたちはといえばまず、倒すべきは力のない子供や大人よりまずはあたしを先に、
  とおもったらしくまんまとあたしの挑発にのってくる。
  ある程度二人からトロルたちを引き離す。
  ふと気づけばぐるのとあたしは囲まれている格好になっていたりするがこれもけいさんのうち。
  「さってと……」
  仕掛けは済んだ。
  あとは……
  ザッン!!
  あたしが走りつつもひろっていた小石を手にするとほぼ同時。
  「お嬢ちゃん。大丈夫か!?」
  え〜と……
  みればいつのまにやらやってきたのか例の金髪兄ちゃんの姿が。
  そういいつつも残りのトロル達に彼はそのまま斬りかかってゆく。
  「「ぎぐぎゃ〜〜!!」」
  何ともいえない悲鳴があたりにコダマする。
  何のことはない。
  例の金髪兄ちゃんことガウリイのつけた斬り傷により身動きできないダメージをうけたらしいトロルたち。
  が、その傷はあっというまにみるまにひろがり更なるダメージを追加する。
  「なっ!?」
  その光景に驚いたのか剣をもったまま、呆然とたちつくしているガウリイの姿。
  傷は四方八方に広がり続け、やがてトロルたちはただの肉塊もとい、肉片となり果てる。
  「消化弾(エクストボール)」
  術が成功しているのをちらりとみたのち、あたしはあたしで宿のほうにとかけてゆき、そのまま消化の術を解き放つ。
  アレは直視するのはちょっと何なのであえて逃げたのは内緒である。
  何しろ直視したら夢でまでうなされるし、あれは。
  「お〜ほっほっほっ!お〜ほっほっほっ!」
  半壊した宿の仲。
  無意味に響き渡る高笑いがひとつ。
  どうでもいいが、ちょっぴしマントが焦げてないか?ナーガのやつ。
  「ナーガ。あいつらは?」
  「何か逃げていったわよ?この白蛇のナーガ様におそれをなしたのね!お〜ほっほっほっ!」
  逃げた、というのはかなり怪しいぞ。
  もしかしたらこの燃えて崩れた瓦礫の下に埋まっているのかもしれないが。
  だからといってわざわざ確認してやるギリもない。
  そもそも、手が汚れるのも術を使うのも面倒だし。
  何よりも悪人にそこまでしてやる義理もない。
  「悪かったねぇ。お嬢ちゃん達。うちの家でかわりに休んでおくれ。宿代はいらないからさ」
  ラッキー!!
  あくまでも悪人による侵略行為、と思っているらしくそんなことをいってくる宿のおばちゃん。
  何でも村長のきまぐれでこの宿をつくったとき食事のときにいってたし。
  「もう夜もおそいし。じゃ、おねがいします」
  「お〜ほっほっほっ!お〜ほっほっほっ!」
  夜空に響く高笑。
  あたしたちはお言葉に甘えて、おばちゃんの家。
  つまりはこの村の村長の家へと移動することに。

  「しかし。あんたたちも本当に災難だなぁ。一日に二度も山賊の一味に襲われるとは」
  村長の家にと案内され、まずはテーブルにと案内されるあたしたち。
  何やら何でもどってきたのかわからないが、ガウリイとか名乗った男性がいってくる。
  そういえば、こいつにきちんと説明するのをわすれてたっけ?
  ま、いっか。
  村長の家にたどり着き、まずは気持ちを落ち着けてもらおうとおもったのか、
  あったかい牛乳があたしたちにとふるまわれる。
  外では何かトロルの死体の始末に村の男たちが駆り出されているのかときどき声が聞こえてくる。
  「しかし。何かイヤな予感がして急いでもどってきてよかったよ。
    お嬢ちゃんたちを助けたのにオレがいなかったせいで死にました。では寝ざめがわるいしな」
  いって何やらかるくわらうこのガウリイという兄ちゃん。
  いや、いなくてもまったくもって平気だったってば。
  「でも、宿代まで戻してもらうなんて。ここまでしていただいてこちらこそすいません」
  ちなみに、一度あげたお金だから、とガウリイは宿代をあたしたちにわたしてきている。
  人がいいというか何というか。
  「いやいや。本当に災難だったねぇ。ここ最近はこのあたりで山賊の被害が増えていたからね。
    聞けばあんたたちも襲われたんだって?一日に二回もとは。領主さまは何をしているのかねぇ。本当に」
  どうも村長さんまで勘違いをしているらしい。
  「あんたたち、三姉妹での旅も大変だね」
  ぶぶぅっ!
  「ちょ、ちょっとまってください!!こいつとあたしは他人ですっ!!」
  おもいっきり口に含んだミルクを吹き出し、間髪いれずに抗議する。
  「お〜ほっほっほっ!私の妹はもっとかわいいわよっ!」
  ナーガにかわいいっていわれる妹…その容姿と性格がかなり怖い。
  気にしないことにしよう。
  うん。
  「おや。ちがったのですか?」
  「まあ、旅は道づれ、というしね。はい。スープ。体があたたまるわよ」
  以外そうな村長さんの顔と、そんなことをいいながら笑顔でお皿をもってくるおばちゃんの姿。
  何だか完全に宿を壊したのが奴らだ、とおもっているのがしのびない。
  だけど下手に真実をいう必要性もないから、いっか♪
  しばしたわいのない会話をしつつ、あたしたちは今日のところはこの家で休むことに。
  …どうか滞在中。
  宿を燃やして壊したのが実はナーガ、だ、とばれませんように……
  そう心の中で願いつつ……


                   −続くー

  

  #####################################

あとがきもどき:

薫:ちなみに、これ、発売当初からちまちま〜〜と大学ノートのA4に書き続けていたりします(笑
  気がむいたらかいているのでまだ完結はしてませんけどね〜
  しかし、書いてみてわかったけどシルフィールの活躍の場がない(苦笑
  あえていうなら、彼女は悲劇のヒロイン?の位置かな?
  ではまた、次回にてv
  次回で旅のさなかの連続襲撃にいく予定v…P数的にまだまだあるけど何話しになるのかな?
  ちなみに、ここまでで大学A4ノート6ページ分です。
  何はともあれまた次回にて♪




 


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34028リトル・スレイヤーズ〜おやくそく?〜かお 2009/5/15 22:54:58
記事番号34025へのコメント

  まえがき&ぼやき:

  どうも、6P分がだいたい50K前後になるっぽい。
  ほんっと何話になるのかな?これ?
  もともとのスレイヤーズの原作そのまま、ともいっても過言でないのではありますが。
  ちなみに、↓のはナーガの夢が面白そうだったので児童書版のほうから抜粋しました。
  王宮での夢でもみてたんでしょうかね?
  カラスの学校って何だろう?(まて
  何はともあれゆくのです♪

  #####################################
  
  「むにゃむにゃ…リナちゃん。もうおなかいっぱい…しくしく、顔だけはやめて。顔だけは。
    …むにゃ…メイドたちが一等賞〜!…カラスの学校が…」
  う〜む……
  ナーガと同室の部屋を割り当てられたはいいものの、ナーガのやつ、
  一体どんな夢をみてるんだ?
  …今度、ひとの夢の内容をみれる術でも研究してみる価値があるかもしんない……


             リトル・スレイヤーズ 〜お約束?〜


  「氷の矢(フリーズアロー)!!」
  冷気の矢を立て続けに放つ。
  「ちょっとリナ!一体どうなってるのっ!?」
  「いや、あたしに聞かれても」
  それが本音。
  ナーガが実は宿を壊した、とバレないうちに、世話になったからという理由で、
  遠慮する宿のおばちゃんに小さな宝石をいくつか押しつけて村を出発したのが三日前。
  その翌日からなぜかあたしたちは正体不明の敵に襲われまくっていたりする。
  今も今で山道の中でコブリンの不意打ちがあったがあっさりと氷漬けにしてやりすごしたのだが。
  あたしもナーガも悪人達にいろんな意味で有名で、中にはあたしを倒して名を上げようとする輩も多々といる。
  かくゆうナーガもその一人だったりしたのだが。
  何の因果か腐れ縁でいっしょに行動しているここ数年。
  ひどい時には一日四、五回。
  おかげで盗賊いじめ…もとい、退治どころではない。
  襲われる原因はあたしかナーガか。
  ガウリイに聞いても心当たりがない、というかどんな依頼を今まで受けたかすらよく覚えてない、ときた。
  覚えとけよ…それくらい……
  「しかし、本当に多いいな〜」
  「エルちゃん。大丈夫?」
  こくり。
  あたしのそばにくっついているエルちゃんにきくとこくりとうなづく。
  何やかんやとあり、結局例の品物はとりあえずまだエルちゃんにもってもらっている。
  ナーガは砂金のことをすっかり忘れているようだが、とてもいい傾向である。
  ま、とりあえず何とか襲撃者を撃退したのでひとまず安心。
  ガウリイはあたしとナーガが呪文をみて驚いていたが。
  「女の子だけの旅ではそれも必要か」
  などと変な納得をしていたりする。
  というか、どうみてもあたしの格好からして魔導師以外の何ものでもない、とおもうのだが……
  道中のさなかにある少し街道沿いから離れた位置にとある小さな宿屋。
  ひとまずしばらくいくとその宿屋をみつけてそこにはいるあたしたち。
  村長さんの家であらかた没収したお宝の品定めと屑宝石類の作業はすませてある。
  傷ものの宝石類はそのままでは安く買いたたかれてしまう。
  というかお金にならないこともざら。
  ゆえに、そういった品は少し手を加えて『魔法道具(マジックアイテム)』として護符に作り替えるとかなりの値でさばける。
  それらはジュエルズアミュレット、と呼ばれペンダントなどに組み込んでも簡単な護符としても使えるし、
  武器や防具に組み込めばその性能を増す特性をもっている。
  ちなみにあたしが身につけているペンダントやバンダナ。
  そして腰に指しているショートソードにも組み込んでいる。
  オシャレでゴージャス、実用的。
  中流以上の家庭で流行中。
  …て、思わず商売人根性がでそうになり、はっと我にと戻る。
  「しかし、こう毎日だと疲れるわね」
  いいつつ、ストンとベットに腰掛けるナーガの姿。
  「で?あんたはまたそこでねるの?」
  「夜の見張りをするだけさ」
  「…どうでもいいけど、寝るときは外にでてよね」
  何でも危ないから、といってここ数日の見張りをほぼ毎日かってでているこのガウリイ。
  交代制の見張りが一番望ましいのだが。
  むろん、ナーガのみはりなんて当てにならないので問題外だが。
  彼曰く、女子供にそんな役目をさせられない、ときたもんだ。
  何でも彼の祖母の遺言が女子供には優しくしろ、というものだったらしい。
  そんな遺言をわざわざ残すこいつの祖母っていったい……
  まあ、当人がやる、というのだから無理にとめることでもない。
  結果、このやり取りはこの三日ですでに定着しはじめている。
  ふとみれば、エルちゃんはエルちゃんでボスン、とベットの中にすでにもぐりこんでいる。
  どうでもいいけどよほどあの袋は大切なものなのかいつものように腕にかかえたままで。
  そんないつものやり取りをしているそんなさなか。
  コンコン。
  扉をノックする音が。
  「こんな時間に?」
  「?お客さん?」
  「二人とも。外に何人かいるぞ」
  しかし扉の向こうから殺気は感じられない。
  最も、襲ってくるつもりの輩ならばわざわざ扉をノックなどはしないだろうが。
  しかし、感じる気配はただごとではない。
  ドアの開く側…ドアの左側に張り付いて様子をうかがうガウリイ。
  「「誰?」」
  あたしとナーガの声が重なる。
  「――あんたたちと取引がしたい。あんたたちのもっているあるものをそちらの言い値でかいとりたい」
  扉の外にいる【誰か】がそんなことをいってくる。
  「あやしいわね」
  ナーガの台詞に今回ばかりはあたしも同感。
  「当たり前だ。言ってて自分でもかなり怪しいとおもうよ。
    普通ならこんなやつ、部屋の中にいれたり話しを聞こうとはせんぞ」
  おいおい。
  自分でそういうか?
  「じゃぁ、ご忠告に従って部屋の中には入れないでおくにするわ。話し合いもね」
  何しろこっちには小さな女の子もいるのである。
  それにあたしもゆっくりと休みたい。
  「まあまってくれ。たしかに俺はあやしいが。とりあえず今はお前たちに危害を加えるつもりはない」
  今は、ときたか。
  つまりは今後はわからない、ということ。
  「部屋に入れたとたんに気をかえるんでしょ?」
  そんな至極もっともなあたしの意見に、
  「いくらこの俺でもあのリナ=インバースとやりあおうとはおもわん。そっちのナーガとかいう姉ちゃんともな」
  ふむ。
  つまりは、声の主はあたしのことを知っていてなおかついってきているのだ。
  「ちょっと!このナーガ様がどうしてリナのおまけみたいな言い方なのよっ!リナは私の子分よっ!」
  「ちょっとまていっ!誰が子分だ!誰が!あんたこそ金魚のふんのくせにっ!」
  「…何か話しがずれてないか?」
  ぽそっと何かいってくるガウリイはひとまず無視。
  ぎゃいぎゃいとあたしとナーガが言い合っていると、
  「心配するな。というほうが無理かもしれないが。そっちにはたのもしいボディーガードもついているだろう?」
  声の主も声からして多少戸惑っているようである。
  と、とにかく気をとりなおそう。
  「と…とにかく、ひとまず一時停戦よ」
  「ふっ。仕方ないわね」
  ここでナーガと言い争っていても先に進めない。
  ゆえに一時停戦を結び、
  「いっときますけど。変な真似をしようとしたらありったけの攻撃呪文をたたきこむわよ?
    このナーガなんて見境ないんだからね」
  つうか宿ごとナーガは破壊する。
  確実に。
  「お、おい。部屋にいれるつもりか?」
  そんなあたしにガウリイがといかけてくるがこくりとうなづき、
  「いいわよ。入って」
  その言葉と同時に仕方ない、というばかりに剣のつかに手をかけもう片方の手でゆっくりと扉をあけるガウリイ。
  扉の向こうにいた相手は十分すぎるほどにあやしさ大爆発。
  全身を覆う、白いマントと白いローブ。
  そして白いフードですっぽりと顔を包んで目の部分だけを出している。
  そうしてもう一人、みたことないちょっぴり体格のようおじさんと、なぜか見覚えのある包帯姿。
  ふむ。
  「そのミイラ男。あんたの知り合いなの?」
  三日前、あたしたちを襲ってきた相手である。
  つうかよくナーガの暴走に巻き込まれて生きてたよな。こいつ。
  見間違えるはずもなく、おそらくこいつは先日、とある村の宿を襲撃してきたミイラ男に違いない。
  何か前回よりも包帯がさらにすごいことになっているようではあるが。
  しかし、この白づくめ、他の二人とは格段に格が違う。
  出来る。
  「悪かったな。こいつはゾルフって名でね。責任感は強いんだがその分、先走りも多くてな。
    先日の一件はまあ簡便しておいてくれ」
  ミイラ男といわれて鼻白んだ男を白づくめが制ししつつもそんなことをいってくる。
  いや、別に名前なんてどうでもいいし。
  どうせ悪人だし。
  部屋のランプがあまりに薄暗いために今まで気づかなかったが目の前のしろづくめはどうやら人間ではないことにふと気付く。
  フードの隙間からのぞく目の周りの皮膚が岩か何かそれに類する何かでできているっぽい。
  一瞬、石人形(ゴーレム)かとも思ったがどうやら違うらしい。
  人に仕えるためだけに作りだされたそれらとは違い、この男の瞳には確かに強い意思がある。
  ってことは、もしかしてもしかしなくても人間を主体にした合成獣(キメラ)か何かの可能性が高い。
  「お前がリナ=インバースか」
  どこをみて納得したのかちらりとあたしとナーガをみてあたしにと話しかけてくる白づくめ。
  スパアッン!!
  「たたくわよっ!」
  「って、すでにたたいているだろ!?」
  彼の視線はあからさまにあたしとナーガの胸を見比べていた。
  ゆえにスリッパで叩いたあたしは断じて間違っていない。
  「こ、こいつっ!」
  「まあまて。なるほど。噂どおり手も早い」
  ちっ、強化呪文でもかけとくべきだったか。
  まったくこたえてなさそうである。
  「その噂ってのがきになるけどね」
  どうせロクな噂ではないだろうが。
  何でこんな清楚で可憐な美少女に対して根も葉もない悪い噂が立つのやら。
  …約一名、変の噂を広めている人物を一応知ってはいるが。
  彼女には釘をさしてはおいたが…あれからこりているのかいないのかはわからない。
  「あのリナ=インバースを知らないやつは裏の世界にはいないさ。
    白蛇のナーガのほうは仲間にしたら面倒な人物として害虫扱いだしな」
  「納得」
  「ちょっと!誰が害虫よっ!」
  ナーガの噂はそんなふうにある程度は伝わっているんだ。
  「ま、どうでもいいけど。いっとくけど値段は高くつくわよ?
    といっても何がほしいのか聞いてないけど。あるものをうってくれってことらしいわね」
  横でナーガが何かまだわめいているけどさくっと無視。
  「そう。お前たちがしばらく前、盗賊どものねぐらから持ち出したもののひとつだ」
  「おいおい。…おまえさんたち、そんなことをしていたのか?」
  ガウリイが呆れたような視線をあたしのほうにとむけてくる。
  「違うわよ。悪人にやられて困っている村の人々を見るに見かねて悪人退治に出かけた先で、
    盗まれたものを取り戻したとき一緒に手数料変わりにちょっと品物をもらうこともあるだけよ」
  そのちょっというのが根こそぎなのだが。
  まあ、嘘はいっていない。
  真実でもないけど。
  「……あんた、こいつのことを知らないのか?」
  心外、という様子の白づくめ。
  ま、まずい。
  「で?何なの?そのしなものってのは?」
  雲ゆきがあやしい。
  ゆえに話題を元にと戻して問いかける。
  「それはいえん」
  「?いえない?」
  おもわずそその言葉に眉をひそめるあたしは間違っていない。
  「ああ。いえない」
  それじゃ、商売のしようってものがないわね」
  あたしの意見は至極当然。
  「まあまて、最初からこいつがほしい、といえばお前たちだって好奇心が働いて手放したくなるかもしれないだろう?
    だから、さ。三日前にお前たちが手にいれた品物。それぞれがいくらでなら売ってくれるか値をつけてくれ。
    その時点でこっちのほしいものを言い値で買い取ろう」
  ふむ。
  たしかにそれならばふっかけられる心配も相手にはないわけだ。
  しかし…三日前?
  「三日前?あれ?」
  ヤバイ。
  ガウリイが何か気にしだした。
  いうまでもなく三日前はこのガウリイと初めてであったあのときのこと。
  まあ、あれから主たる盗賊いじめなどはやっていないので他に該当するのは一件もなし。
  「なるほど。でもどうして?」
  どうやらあの一味の一員、というわけでもなさそうである。
  「俺はその品物を探していた。このゾルフやこっちのロディマス。他の何人かの部下たちをあちこちに放ってな。
    やがてとある山賊がそれを手にいれたのを知り、
    ゾルフに仲間になったフリをさせてころ合いを魔はからって持ち出させよう、としていた矢先」
  なるほど。
  話しがみえてきた。
  「そこに、あたしたちが出てきたってわけね」
  「そういうことだ」
  山賊達が自らの意思で動いていたのか、はたまたこいつらの働きかけがあったのかまではわからないが。
  「ふっ。しかし山賊の持ちモノを持ち逃げしようだなんて。ずいぶんせこいわね。お〜ほっほっほっ!」
  ナーガだけにはいわれたくないとおもうぞ、あたしは。
  「あんたらはひとのことをいえんだろうが」
  何かそんなことを相手がいってくるけど、あたしは別。
  「悪人に人権なんてものはないんだからいいのよ」
  きっぱり。
  「「「・・・・・・・・・」」」
  ?あれ?
  何か呆れたような視線を白づくめだけでなくガウリイまでもが向けてきてるけど。
  あたしは間違ったことはいってないぞ。
  絶対に。
  「まあそれで、大体の事情はのみこめたわ。ならさっそく商談にうつりましょう。え〜と」
  たしかここに…
  「お前さん、そんなことにそんなもん隠してたのか」
  「ほら。ナーガも」
  ナーガとあたしのマントの裏地には最近の戦利品がところせましと結びつけられている。
  その中からあのとき奪った品を取り出してひとまず床の上にとおいてみる。
  「品物は像と剣。そして古いコインが少々ね。あ、宝石類は省くわね」
  だれがどうみてもだたの宝石を高値でほしがる輩は収集家くらいのものである。
  「ちなみに。いらくらいまで出すつもりなの?」
  あたしの言葉に男は指三本突き立ててくる。
  「たったの三百?」
  みみっちすぎる。
  商談にもならない金額提示。
  「いや、金貨で三百万枚、だ」
  ・・・・・・・・・って、ええええっ!?
  「リナ!こんなおいしい話はないわっ!うっちゃいましょうよっ!!」
  こ…こいつは〜っ!
  「まちなさいよ!どう考えてもあやしいでしょうがっ!なんでこんな品物にそんな大金!?」
  全部ひっくるめてもそう値は張らない。
  唯一、値打ちがあるであろう品はオリハルコン制とおもわれる女神像くらいであろう。
  それでもせいぜい、十から二十万くらいが相場である。
  後はよくわからない術のかかっている短剣と古いとある王国の金貨しかこの場にはない。
  「あなたねぇ。リナ。あんまりよくばっても仕方ないでしょ!?三百万枚よ!三百万!!
    山分けしても百五十万っ!!これ以上高く買ってくれる人が他にいるとおもって!?」
  「だからよっ!いると思わないから怪しんでるんでしょうがっ!!」
  あからさまにあやしすぎる。
  「お〜ほっほっほ!愚問ね!リナ!あやしかろうがそうでなかろうがそんなことどうでもいいのよ!
    三百万よ!三百万!相手に渡したあとでまた取り返せばいく度でも稼げるわよっ!」
  そ〜いう手もたしかにふつうならば考えなくもない、が。
  「売らないにきまっているでしょ?!」
  あたしの勘が告げている。
  渡してはだめだ、と。
  「うりなさい!」
  「売らないってば!!」
  そういうと同時、おそらく値をつけられたとおもわしき品。
  この中では唯一の値うち品でもある女神像をがしっと手にし引っ張りあうあたしとナーガ。
  「お〜ほっほっほっ!リナの強情もの!このチンチクリンの平原胸!」
  「この歩く厄病神!!」
  「ずんどう!」
  「あんたはゾンビかスケルトン並みの判断力しかないのかっ!人外魔境の生物がっ!!」
  「……なんか。すでに話しが関係なくなってないか?」
  横で見ていたガウリイが溜息とともにそんなことをいってくる。
  …今気づいたが、ガウリイはエルちゃんを守るように彼女がもぐりこんでいるベットの前で様子をみていたらしい。
  エルちゃんも怖いのか一度も布団の中から顔をみせないし。
  まあ気になるらしく小さな隙間をつくってそこからのぞいてはいるようではあるが。
  そして再び溜息を大きくついて、あたしたちのほうにと近づいてきてあたしたちの手からひょいっと神像を取り上げる。
  「売るか売らないかきまるまで、ひとまずこれは預かっておく」
  いきなりそんなことをいってくる。
  「ちょっと!?」
  あたしが抗議の声をあげるのと、
  「ふっ。リナ!はかない友情だったわね!あんたとはもうここまでよっ!お〜ほっほっほっ!」
  ぱさりと長い髪をかきわけ、白づくめの横にたちそんなことをいきなりいっくてるナーガ。
  こ、このパターンは……
  「ナーガ!あんたまた裏切るき!?」
  いつものことだが。
  「お〜ほっほっ!愚問ね!リナ=インバース!!さ!白のゼルガディス!リナ=インバースをぎたぎたにしましょう!」
  いって白づくめの肩に手をおいて、びっとあたしに指を突き付けてくるナーガの姿。
  「いや、こっちもあんたはほしくないんだが」
  あ、白づくめ、本音がでてる。
  つ〜か……
  「白の…ゼルガディス?」
  ナーガはたしか、今こいつのことをそういった。
  名前、こいつは名乗ってなかったような気もするんだが。
  「お〜ほっほっほっ!リナ!あなたの常識もまだまだね!私はひと目でわかったわよ!
    白のゼルガディスといえば赤法師レゾの手先でレゾに代わり裏で手を汚している人物じゃないのよ!」
  「「「なっ!?」」」
  ナーガの台詞に白づくめ達が一斉に目を丸くする。
  出た。
  ナーガのよくわからん情報網。
  しかしこれが正確だったりするのだから恐ろしい。
  「何なんだ?こいつ?」
  警戒を含んだ、それでいて戸惑い気味の声をあたしにむけてくる白づくめ。
  「みたまんまよ」
  ナーガのことを説明しろ、といって説明できる人がいるとは絶対におもえない。
  「…お前、やっかいなヤツと知り合いなんだな」
  「友達じゃないわよ。知りあいだけど。そこんとこだけははっきりさせとくわ」
  「…なるほど」
  あたしとナーガを交互にみたのちに、なぜか憐みの表情でこちらをみてくる白づくめ。
  「友達は選ばないとな」
  ぽそっとそんなことをいっていたりする。
  そりゃそ〜だ。
  「いっとくけど、ナーガ。このあたしに喧嘩をうるき?受けてたつわよ?」
  敵に回るというのなら容赦はいらない。
  というかナーガ相手に味方だとしても容赦しようだなんておもわないけど。
  「いやぁねぇ。リナちゃん。私は何もしないわ。やるのはこいつらよっ!!」
  『・・・・・・・・・・・』
  あ、男たちがナーガの言葉にだまりこんだ。
  やがて溜息ひとつつき、
  「もう一度きく。本当に売る気はないのか?そっちの男も?」
  ナーガの言葉は無視することにしたらしい。
  たしかに懸命な判断である。
  「何となくだけど、渡したらいけなそ〜だし」
  のほほんと答えるガウリイの姿。
  「なら。これが最後のアイデアなんだが。俺に手をかさんか?
    一年…いや半年後には、更にさきほどの金額の二倍、いや三倍でもいい。はらってやろう」
  「それ、本当でしょうね!?」
  ナーガがその言葉にすばやく反応しているが、そんなナーガをさらっとむしして男の視線はあたしにと向けられたまま。
  「…ふむ。それだけほしがっている、ってことはつまり。
    この提案を断れば自動的にあなたとあたしは敵同士。ってことになるんでしょうね」
  「・・・・・・・・・」
  白づくめは答えなかったが、片方の眉をぴくりと動かしたのをあたしは見逃してはいない。
  「あたしとしては、できるだけあなたみたいなタイプの人と事を構えるのは避けたいわね。
    何で、って聞かれると答えようがないけど。まあ、女の勘ね」
  「ふむ」
  あたしの言葉にうなづく白づくめ。
  今だにナーガは何やらわめいているままだけど、ここまで無視できるとは案外この男もけっこうやる。
  「で、これもあたしの勘がいっているけど。怪しすぎる提案をのむほどあたしはおろかじゃないわ」
  「…交渉、決裂、か。まあ、仕方があるまい。約束だからな。今日は大人しく退く。
    しかし、必ず力づくでも奪いとらせてもらおう。明日の朝、お前たちがこの宿を出た瞬間からお前たちと俺は敵になる」
  そんな相手の言葉に小さくうなづく。
  かなり律儀。
  交渉が決裂すれば力づくでくるか、ともおもったが、どうやらかなりマメな性格の人物のようである。
  「いくぞ。ゾルフ。ロディマス」
  「「し…しかし……」」
  一緒にきていた二人の男が何かいいかけようとする。
  と。
  バッン!!
  「とうとうみつけましたよ!ゼルガディス!」
  いきなり誰も手をふれていないのに、部屋の扉がバン、と開く。
  どうやら女性の声らしいが?
  それと同時、部屋の中に飛び込んでくるひとつの人影。
  長い黒髪を腰のあたりまでたなびかせた、みたこともない女の子。
  服装からしてどうやらどっかの巫女らしいが…
  というか、いきなり断りもなく人様の部屋にはいってくるなよ。
  「……シルフィール」
  一瞬、その黒髪の少女をみた白づくめの瞳に悲しみの色が浮かぶ。
  はて?
  今のは憐みにもにた表情のような気もするが?
  「今日こそあなたをとらえて罪のつぐないをさせますっ!」
  いきなり何か唱え始めるその女の子。
  っていきなり眠り(スリーピング)の呪文!?
  「やれやれ。これ以上騒ぎを大きくするわけにはいかないからな」
  溜息と同時にすばやく何かを唱え、
  「風魔咆裂弾(ボムディウィン)」
  ドッン!
  「きゃっ!」
  男の放った風の衝撃波により、今入ってきた女の子は部屋の壁にと叩きつけられる。
  「ひくぞ」
  「いいのですか?」
  「ひく。といったんだ。行くぞ。…そうそう。そういえばきちんと名乗っていなかったな。
    俺の名はゼルガディスという」
  「覚えておくわ」
  そういい、そのまま何もせずに本当に外にとでてゆく男たち。
  バタン、と扉のしまる音。
  ふと気付けばナーガの姿がみあたらない。
  おそらくどうやら男たちについていったらしく部屋からいなくなっている。
  ま、別にどうでもいっか。
  まず今は……
  「え、えっと。大丈夫?」
  壁に叩きつけられた見知らぬ女性を抱き起こし、かるくぐっと肩に力をいれて気付けを行う。
  それと同時、はっと気が付くその女性。
  「ありがとうございます。…って、ガウリイ様!?」
  あたしにお礼をいったのち、ぱっと立ちあがり瞳をきらきらさせてガウリイにと話しかけてくる。
  何?この子?
  ガウリイの知り合い?
  「…誰だっけ?」
  ずべっ!
  ずるっ。
  のほほんとしたガウリイの言葉にあたしはおもわずこけそうになり、女性はそのまますべりそうになっている。
  が、何とかどうやらもちなおし、
  「わ、わたくしです!サイラーグのシルフィールですっ!」
  ・・・何かこの子、気のどくになってきた。
  先ほどこの女性がみせた表情は明らかに恋する乙女の表情そのもの。
  だのに相手のほうがまったく覚えていないんじゃ……
  「サイラーグ?ああ!ゴハンのうまかったフルールかっ!」
  「…シルフィール。です。ガウリイ様……」
  え〜と、助け舟を出したほうがよさそうだ。
  おもいっきりみていて気の毒以外の何ものでもない。
  「え、えっと。ガウリイ。知りあい?」
  「顔は覚えてないけど。昔、サイラーグの町でちょっとした事件があって。
    その時、サイラーグの神官長とその家族に世話になったんだ。
    このシなんとかはその神官長の娘さん…だったよな?あれ?お手伝いさんだったっけ?」
  …あああっ!
  シルフィール、と名乗った女の子は今にも泣き出しそうだっ!
  こ…こいつはぁっ!
  「あんたはもうしゃべるなっ!!」
  好意を寄せている相手が顔も名前も覚えていない。
  それってきついぞ…かなり。
  乙女心を何とおもっているのだか。
  「と。とにかく。シルフィールさん、だっけ?えっと。はじめまして」
  ひとまず初対面なので挨拶をする。
  こういう礼儀はあたしはかなりうるさくたたきこまれているので一応うるさい。
  「え。えっと。はじめまして。わたくし、シルフィール=ネルス=ラーダと申します。
    サイラーグの神官長エルグの娘で巫女頭をやっておりました」
  きっちしとさきほどのガウリイの言葉を訂正しつつも自己紹介してくるこの女性。
  サイラーグの巫女頭?
  なんでそんな人物がこんなとこに?
  「あ、あの?あなたはあの…ガウリイ様の恋人、でしょうか?」
  この子もめげないな〜。
  「あたしはリナ。リナ=インバース。みての通り旅の天才美少女魔道士よ」
  ひとまずそんな彼女に自己紹介。
  「?お前さん。魔道士だったのか?」
  ごけっ。
  「あ、あのね!さんざんあたしは呪文をつかっていたでしょうがっ!!」
  あまりといえばあまりのセリフに思わず前のめりにずっこけつつも、体勢を整え言い返す。
  「いやぁ。魚やさんかウェイトレスの人が術をつかっているのかと……」
  「うぉひ」
  何かこのガウリイという兄ちゃんと話していたら…つ、疲れる。
  「リ…リナ=インバース!?で、ではあのドラゴンすらもまたいでとおるといわれているあの!?
    噂では実は九十歳以上は軽く過ぎている不老不死の平原胸のあのリナ=インバースさん!?あなたがっ!?」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・
  「って、まていっ!!誰が平原胸!それに何よ!?その設定はっ!!」
  「何だ。おまえさん、そんな歳だったのか。みえないな〜」
  「あ…アホかぁぁぁぁぁぁ!!あたしはこれでももうすぐピチピチの十五歳だ〜!!」
  どこをどうみたらこんな可憐な少女がそんな歳にみえるのやら。
  「……リナ。ガウリイ。うるさい」
  ひょこっと今まで布団をかぶっていたエルちゃんがむくっと起き上がりつつもいってくる。
  「そ、そんな!すでに子供まで!?いやぁぁっ!!」
  はうっ!
  エルちゃんをみて、そしてあたしとガウリイをみてその場に崩れ落ち気絶するシルフィール。
  お〜いっ!
  「つうか、十五で三歳児の子もちがいるかぁぁっ!!!!!!!」
  あたしの絶叫は、部屋の中にと響き渡ってゆく……

  「そ、そうですか。あなたがあのドラマタのリナさん」
  あたしがようやくシルフィールをどつきたたき起し…もとい、気付けを行い気を取り戻させたのちに延々と説明し、
  そしてようやく納得してもらえたのはすでに夜もだいぶ更けたころ。
  おそらくもう真夜中くらいであろう。
  「で。その子はほんっとうにリナさんとガウリイ様のお子様ではないのですね?!」
  あ〜しつこいっ!
  たしかにエルちゃんはあたしそっくりの容姿。
  違うのは髪とその瞳の色のみ。
  それがたまたまこのガウリイとおなじ色だからってどうしてそうなる!?
  「あたしに両親はいないけど」
  きょとん、としつつもさらっとあるいみ思い台詞をいってくるエルちゃん。
  その言葉にシルフィールが反応し、
  「で、では、もしかしてあなたも……」
  「でも何で、サイラーグの巫女頭が?」
  いいかける彼女の台詞をさえぎるかのように、気になっていたことを問いかける。
  それに確か、先日訪れたある町でサイラーグがなぞの壊滅をした、と噂をきいた。
  伝説のザナッファーが復活か!?
  というバカげた噂まである始末。
  真偽を知るためにこのあたりでは最も魔導師協会が発展しているアトラス・シティに向かっていたのも事実である。
  中にはサイラーグの壊滅も実はあたしの仕業…なんていうデマまで流れているらしいのだから放ってはおけない。
  そりゃ、ある術を使えば可能だが。
  あたしだって少しは考えて術を使用している。
  それで山や湖がたまたま壊滅したり消滅したりするのは単なる偶然である。
  「?ドラマタ、って何だ?」
  こらそこ!余計なことはきかないっ!
  「ガウリイ様。それはですね。
    あの凶悪なドラゴンでさえよけてまたいでとおり見て見ぬふりをするという。そういう意味ですわ。
    ドラゴンがかかわり合いをさけるほどの最悪の魔女!彼女が通ったあとには九サの一本も生えなというっ!」
  「まていっ!!」
  ほっといたらもっとあることないこといわれそうである。
  この子、外見はかわいいお嬢様の特徴を強く出してはいるが性格はかなりいい根性をしている。
  いや本気で。
  「しかし。ガウリイ様の好みがリナさんのような子だったとは。わかりました。
    わたくしもリナさんの得意としている黒魔法を収得しますっ!」
  「んな理由で拾得すなっ!あんた巫女でしょ!?」
  「花嫁修業ですっ!」
  「根本からまちがってるわよっ!」
  たしかにこのガウリイ、顔はいいのはみとめるが、恋人というか伴侶としてみるのはどうかとおもうぞ?
  いやまあ、憧れるだけなら問題はないだろうけど。
  たかが三日程度一緒にいたあたしですらそう思うのだから、ずっと一緒にいたら…身がもたなそうである。
  「…所で。さっきからずっときになっていたんだが。扉の前にいるヤツ、なんなんだ?」
  「「え?」」
  ふと言われてみてみれば、扉のむこうにぼつん、とたたずんでいる全身紅づくめ。
  紅いローブにマント。
  服までご丁寧に紅、というこだわりよう。
  そして一本の杖をもっている男が一人。
  いつから扉が開いていたのかすら不明だが。
  まあ鍵をかけてないのでたてつけがわるくて開いたのかもしれない。
  扉の所にたっているのは慈愛の漂う白い顔立ち。
  ちなみに年齢は不明。
  若くもみえるし年老いてもみえる。
  そして特徴的なのはしっかりと閉じられた両目。
  …先ほどのナーガの言葉が頭に浮かび警戒を強くする。
  おそらく、彼は――
  「レゾ様!!」
  あたしの考えを肯定するかのようにシルフィールがその男性をみて叫んでいたりする。
  「ずっと気配を消していたようだけど。別に殺気もなかったからほっといたが。あんたはなんなんだ?」
  そんなガウリイの声ににこやかに笑みすら浮かべたまま、
  「いやぁ、話しかけるタイミングを逃してしまいましてね。ずっとこの部屋の入口でまっていたんですよ」
  にこにこしながらいってくる。
  というかあたしもまったく気配はわからなかった。
  しかし、どうして……
  「誰?」
  「すいません。もうし遅れました。私はレゾといいます」
  やはり。
  しかし、ナーガの情報からしてみるとこのレゾという男は……
  「レゾ。ってあの赤法師レゾ?」
  「はい。こちらはレゾ様です。サイラーグの町がゼルガディスに襲われた時。わたくしを助けてくださった命の恩人です」
  赤法師レゾ。
  常に紅い法衣に身を包み、白魔術都市セイルーンの大神官と同等。
  それ以上の魔力と霊力をもちえながらどこの国にも属さず諸国を渡り歩き、人々に救済の手を差し伸べている。
  というのが世間一般表面上での通説。
  現代の五代賢者の一人としてカザえられていたりする。
  あたしとしては六番目の賢者として一部では知られているあの人物のほうが、
  賢者といわれているルオ・グランよりかまりましだ、と思うのだが。
  彼は生まれつき目が視えないらしく、どんな手を使ってもその目に光が戻ったことはないらしい。
  「?こいつ有名人なのか?」
  「「・・・・・・・・・・・・・・・」」
  あ、ガウリイの言葉にあたしだけでなくシルフィールまで目を点にしてる。
  …よくこれで旅の傭兵なんてこいつやってこれてるよな……
  「と、とりあえず。それはそうと。シルフィールさん。さっきサイラーグの町がゼルガディスに襲われた。っていってたわね?」
  まずこのレゾの真偽はともかくとして、気になっていることを聞くのが先。
  「…はい。ゼルガディスは突然。サイラーグに現れわたくしの父をとらえたのです。そして……」
  いってうつむくシルフィール。
  「神官長から【鍵】のありかを聞きだして、神官長の命を奪ったのですよ。
    そして一晩のうちに街をも破壊して。街があった場所は今は荒野になっています。
    神官長は鍵について詳しく知っている唯一ともいえる方だったのですけどね」
  …違和感。
  さっらっとすごいことをいう間、レゾと呼ばれた人物は笑みを崩してはいない。
  つまりはずっとにこにこと笑みを浮かべたままにすごいことをいっていたりする。
  シルフィールはうつむいており、そのせいでその異様性には気づいていないようである。
  「なあ?ゼル何とかって…誰だ?」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  こ、こいつはぁぁっ!
  「あんたのその頭はどうなってんのよっ!!この脳みそクラゲっ!!
    さっきあたしたちにお宝を売れっていってきたやつでしょうがっ!!」
  ほんとにこいつの頭の中はどうなってんだ?
  「脳みそクラゲ、ですか。おもしろい方ですね〜」
  「いやぁ。それほどでも」
  「ほめられてないっ!」
  むしろバカにされているのにきづけっ!
  つ…疲れる……
  「とにかく。おそらくあなたがその鍵をもたれているのでしょう。それで接触してきたのでしょう。
    彼は人間でありながら石人形(ロックゴーレム)と邪妖精(ブロウデーモン)が合成された存在です」
  裏をかえせば、つまりはだれかがあの彼を合成獣にした、ということである。
  あたしの予測ではおそらくは――
  そんなあたしの心を知るはずもなく、にこやかに淡々と、
  「その鍵こそが、リナさん。とおっしゃいましたよね。あなたのもっている盗賊のお宝の一つ。
    その鍵をつかって赤眼の魔王・シャブラニグドゥを復活させようとしているのです」
  あたしは名乗ってもいなければ、盗賊からそれを奪った、ともいっていない。
  このレゾ、と呼ばれた人物はそのことに気づいているのだろうか。
  「何だ?そのシャブシャブって?うまいのか?」
  ・・・・・・・・・無視。
  「本当なんですか?それは?」
  この場で気づいているのはおそらくあたしだけ。
  そう、【レゾ】は一度も【ゼルガディスが】とはいっていない。
  裏をかえせば、ナーガの言葉を信用するとして…あれの情報だけはやけに正確なので当人よりも信じられる。
  恩を打ったようにみせかけて、実はその当事者こそすべての黒幕…という事件をあたしはいくつも知っている。
  「まず間違いありません。魔王を復活させ世界を混沌の渦の中に沈めようとしているのですよ」
  そういう【レゾ】の表情はにこやかに笑みを崩さぬままである。
  「何でそんなバカなことを」
  というかそんなおおごとをアレがたくらんでいる、とはまったくもって思えない。
  そんなことになったりでもしたら、その前に郷里の姉ちゃんあたりがうごくだろう。
  「ともかく。そういうことです。その鍵は私が預かりましょう。そうすればあなたたちが狙われることもない」
  やっぱしそうきたか。
  だがしかし、その内容はともかくとして、渡す気なんざさらさらない。
  「というか。その鍵ってやつを紀零さっぱり壊すか。火山の溶岩の中にでも入れて消滅させたほうがはやいのでは?」
  かなり勿体ないが、一番手っとり早い方法はそれである。
  まあ、もったいないのでそんなことをする気はないのだが。
  「それもそうですね」
  あたしの台詞にうつむいていたシルフィールが顔をあげる。
  とうしてそれに今まで気づかなかったんだろう、という様子である。
  が。
  「いけませんっ!!」
  あたしたち二人のセリフにびっくりするほどの大声をだしてくる【レゾ】。
  …やっぱし。
  「そんなことをすれば、あなたたちも危険です。私に預けてください」
  なおもそんなことをいってくる。
  はいそうですか、というとおもってるのか?こいつは?
  「やめとくわ」
  「リナさん?」
  あたしの言葉にシルフィールが戸惑いの表情を浮かべる。
  「あたしはやられっぱなしというのは性にあわないですし。それに魔王云々ときいてはだまって、
    『はい。そうですか。ではあとはよろしく』というわけにはいきませんし」
  万が一にも本当というかその可能性が少しでもあるのならば、
  あたしは絶対に郷里の姉ちゃんに殺されるほどのお仕置きをうけるっ!
  それにこの【レゾ】。
  かなり怪しい、あやしすぎる。
  事実、彼の声がすると同時。
  エルちゃんは部屋の中のタンスの中に駆けこんでまったく姿すら見せていない。
  小さな子供にはそういった【よくないもの】を直感的にかぎ分ける力がある、とあたしは信じている。
  「やれやれ。…わかりました。どうやら説得はむりのようですね」
  「リナさんって、噂と違って常識あるんですね。もっと無責任かとおもっていました」
  「どういういみよっ!」
  さらっと毒づいているシルフィールのセリフにおもわずつっこむ。
  「そのままです」
  本っ当、いい性格してるわ。
  この子。
  「さてと。もう夜も遅いし。ガウリイは部屋に戻ってね。あ〜いうタイプは嘘はつかないわ。
    明日の朝、といったら明日からが勝負よ」
  「そういや、リナ。これひと先ずかえしとくぞ?何か今はお前がもっていたほうがよさそうだし」
  いってあたしに女神像を手渡してくるガウリイ。
  それを感じてか一瞬、レゾの口元に笑みが浮かんだのをあたしは見逃してはいない。
  …やっぱおそらくこいつがすべての黒幕、とみた。
  「それもそうですね。では私は少し外をみてきましょう。あなたのいうとおりもう夜も遅いですし」
  「あ。レゾ様。わたくし、部屋をとってまいります」
  つうか、部屋もとらずに勝手にあたしたちの部屋にとびこんできてたのか。
  てっきり同じ宿にとまっているのかな?とおもったのだが。
  そのまま、それぞれ部屋からおいだし…もとい、彼らが部屋からでるのを確認し、あたしはきっちりとカギをかけなおす。
  ガウリイと、そしてレゾとシルフィールが部屋からでてゆき、
  完全に気配が途絶えたのをうけてか部屋のタンスの中からひょっこりと顔をだしてくるエルちゃんの姿。
  「エルちゃん。怖かったの?」
  「アレにあいたくない」
  …子供、というのは本能的に何かをかんじる力がある。
  エルちゃんもおそらくはあのレゾに何かを感じたのであろう。
  「そうだ。エルちゃん。その袋の中にこれいれといて。それと例のタリスマンなんだけど……」
  何か少しでも補助がほしい。
  あたしの予測ではあれはおそらく魔力増幅気のようなもののはずである。
  何しろ箱の裏書にそれらしきカオスワーズがかかれてたし。
  「アレに気づかれるから今はだめ」
  一体、エルちゃんは何を感じているのやら。
  しかし、もしもレゾが黒幕だとして…これはほぼ完全に間違いないであろうが。
  下手にあたしがもっていたらレゾに奪われる可能性も高い。
  …とりあえずやめとくか。
  まあ、だからこそ、ともいえるのだが、だからこそエルちゃんに女神像を預けておく。
  一応念のために、精神探索を行えようにプロテクトの呪文をかけておくのをわすれない。
  しかし…あたしもそろそろあの日だしなぁ。
  何かまた厄介なことになりそうである……


                   −続くー

  

#####################################

あとがきもどき:

薫:
?:んふふ♪わざとひっかきまわすのは楽しいわよね♪
薫:・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(汗
?:何よ?
薫:い、いえ、何でもないです。
?:でも、結構ハタからみてて気付かれないところでちょっかいかけるのもたのしいわ♪
薫:・・・・・・・・・・・・・と、とりあえず。リナさんたちに気づかれないことを祈ります……
?:もう少しあたしを活躍させなさいね♪
薫:え?あ、あの、その手に出現されたその大鎌は?!
?:んふふ♪何でしょうねぇ?
薫:いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
?:さってと。どこかにいった薫はおいといて。それでは、まったね♪




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34029リトル・スレイヤーズ〜伝説の定説と真実〜かお 2009/5/15 22:56:05
記事番号34025へのコメント

  まえがき&ぼやき:

  さてさて、ようやくこの物語のみの設定さんとかがでしゃばる模様(まて
  あと、なつかしのメンバー?(といえるのか?)とかがちらっとでてきたり。
  そういえば、彼ら…あれからどんな処罰をうけたのでしょうねぇ?
  全体責任はまちがいない、とはおもうのですが…
  そんなことをおもいつつ、逃亡者?達に登場してもらっていたりします。
  何はともあれゆくのですv

  #####################################


        リトル・スレイヤーズ 〜伝説の定説と真実?〜


  「ガウリイ様。本当に赤眼の魔王(ルビーアイ)・シャブラニグドゥを知らないのですか?」
  翌日。
  なぜかあたしたちと行動を一緒にする、といってきたシルフィール達。
  断ってあまりしつこく断ると怪しんでいるのがわかってしまう。
  何より敵を知るに行動をともにするのはうってつけ。
  ゆえにそろって階下の食堂にて食事をしているあたしたち。
  レゾは外を外を見てくる、といって朝からどこかにいったらしい。
  あたしの予測通りならばあの彼らとコンタクトを取りにいったのであろう。
  「ん〜。やっぱりわからないな。有名なのか?」
  ・・・・・・・・・・・・・
  『は〜……』
  溜息はあたしとシルフィール、ほぼ同時。
  「あたしが説明するわ。ガウリイお兄ちゃん。昔話とおもって聞いて。
    今からこの惑星でいうと約四十五億年前からになるけど。細かいことはおいといて。ここでの通説で説明すると……」
  惑星?
  はて?
  「この世界にはここ以外にもいろいろな世界があるの。まあいろんな町や村があるのようにね。
    それが世界、という枠にかわっているだけ」
  そ〜きたか。
  しかし三歳児の説明ではないような…はて?
  「そしてそれぞれその世界ではそれぞれの理のもとにすべては動いているの」
  「?」
  「・・・子供の説明で首をかしげるなっ!!」
  気持ちはわからなくもないが。
  「子供?やっぱりこの子はお二人の!?いやぁっ!!」
  「あ〜!話しがややこしくなるでしょうがっ!違うっていってるでしょ!?」
  どうもシルフィールはまだエルちゃんの両親にあたしとガウリイを疑っているようである。
  というか数日前に初めて出会っただけで子供がいるかっ!
  「ともかく。あたしがかわりに説明するわ。
    エルちゃんのいうとおり、この世界にはあたしたちが住んでいる世界は別にいくつもの世界が存在しているの。
    そのすべての世界は遠い昔、何者かの手によって混沌の海にと付き立てられた無数の杖の上にあるのよ。
    そしてそれぞれの世界は丸く、平で…そうね。地面につったった棒の上にのっかっているパイか何か。
    そんな所を想像してもらったらいいわ」
  「…パイでなくてリンゴとか球体のほうが説明的にはいいけど……」
  ぽそっとジュースをのみつつエルちゃんがいってくる。
  あ〜、たしかに球体、といったほうがいいかもしれないが。
  こいつの説明するのにそういえば余計にこんがらがりそうである。
  かくいうあたしは以前、世界が本当に平なのか実験し……
  …結果、つきることのない大地にその可能性を考えているのでエルちゃんの言葉の意味もわからなくもない。
  そもそも、王宮で世界地図、として見せられたソレからしても平というより球体のほうがしっくりくる。
  「とにかく。そんな世界の一つがあたしたちがいますんでいるここ、よ」
  いって、とんっと下を指さす。
  ちなみにあたしがいま説明したことは、一般の魔導師仲間の中での通説になっている。
  が、あたしはそうではない、と確信している。
  いってもガウリイを混乱させるだけなのでいわないが。
  「そのそれぞれの世界を巡って、はるかな昔から戦い続けている二つの存在があるのですわ。ガウリイ様。
    ひとつはわたくしたち、巫女や神官が信仰している神々。そしてもう一つは魔族。
    この二つの勢力が戦いつづけているのですわ」
  あたしに続いてシルフィールが説明をつづけるけど。
  「神々は世界を存続させて守ろうとするもの。
    魔族はその意思と力にてこの世界そのものを滅し混沌の海へ世界を還そうとするもの。
    定説では彼らは【杖】を巡って争っている、ともいわれているわ」
  まったく見当違いの定説もいいところ。
  あたしもきっとゼフィーリアにいなければ真実は勘違いしているままだっただろう。
  「わたくしたちの住んでいるこの世界では、
    赤眼の魔王・シャブラニグドゥと赤の竜神スィーフィード様とが世界の存続をかけて争っていたのですわ。
    戦いは幾百、幾数千年にも及んだ、と伝わっております。
    しかし、我らが神、スィーフィード様は魔王の体を七つに立ちきり、
    そしてそれらをこの世界の至るところに封じ込めた、と言われています」
  シルフィールがあたしに続いて説明してくる。
  シルフィールの説明もこれまた通説だが、あたしはこれにも異議を唱えたい。
  そもそも、神々と魔族、は物質的存在であるあたしたち人間と違い精神生命体に近い存在。
  つまり、体を云々、ということ自体がまちがっている。
  その疑問をかつてうちの姉ちゃんにぶつけてあっさりと肯定されたという事実もある。
  ついでにその【いたるところへ封印】、というのは実際は『人の魂の内』であるらしい。
  説明したらややこしくなりそうなのでひとまず今はいわないでおく。
  「つまり、スィー何とかっていうのがかったのか?」
  わかってない。
  「それは違うわ。魔王の魂を七つにわけて封じただけよ」
  「?タマシイ?」
  「?でも体を七つに分けられたら死ぬじゃないか」
  あたしの言葉にシルィールが首をかしげ、ガウリイがきょとんとした声をだしてくる。
  「人間って自分の定義で物事をみて図るのが欠点といえば欠点よね」
  ぽそっとさらっとすごいことをいっているエルちゃん。
  …だから、エルちゃん、あんた本当に子供?
  まあ、ませた子供ってかなりいるし。
  かくいうあたしもその一人だったし。
  このエルちゃんもおそらく大人びた子どもの一人なのだろう。
  「まあ、エルちゃんのいうことも最もだけど。とにかくそくくらいでしぬようじゃ魔王とはいえないわよ。
    一応魔王を封じ込めはしたものの、さすがの竜神も力つき、混沌の海へと沈んでいった」
  と、言われてはいるが。
  実は違ったりするのだ、これがまた。
  「無責任なんじゃ?」
  「それは心配いりませんわ。ガウリイ様。万が一の魔王の復活を恐れ、スィーフィード様は力つきる前に、
    地竜王様、天竜王様、火竜王様、水竜王様、という四体の自らの分身ともいえる神々を創り出し、
    この世界の東西南北をまかせられたのですわ。それがいまから五千年前のことだと言われています」
  というか、永遠の女王(エターナルクイーン)いわく、四人の竜王達はそれより前からいたらしいが。
  話しがややこしくなるのでここはいわないでおくに限る。
  「今から約千年前。魔王が…正確にいえば七つに分けられていた魔王の魂の一つが復活したの。
    魔王は自らの器となった人間の肉体と精神をのっとって、そしてそれらを利用して自らをよみがえらせた。
    それは当時北を収めていた水竜王ラグラディアに対し戦いを挑んだの。
    自らの五人の部下に命じ他の竜王達が干渉できないよう結界を張らせてね。
    あたしたちの世界が【外】に出れないのはその時の結界がまだ生きているからよ。
    話によれば同じ『竜』という属性を利用して、
    魔王の部下の一人、魔竜王ガーヴをひきつれて赤眼の魔王・シャブラニグドゥは水竜王に戦いを挑んだ。
    結果、魔王が勝つにはかったけど、魔王自身も氷の封印をくらいみうごきがとれなくなってしまったの。
    それがいま、カタート山脈にいる、という北の魔王のことよ。あの地はかつては水竜王の神殿があった場所なの」
  「リナさん。ずいぶんと詳しいんですね。そのガーヴ云々、というのはわたくしも初耳ですわ」
  「ちょっとした情報を信じられるところからきいているしね」
  そもそも、ゼフィーリアの王国お抱えの神官や巫女ならば誰でも知っている。
  ゼフィーリアの魔道士協会においても、
  ある程度のレベルに達すると【王宮】から多少の真実が伝えられたりするのはゼフィーリアのお国柄。
  ちなみにいうまでもなくゼフィーリアはあたしの故郷である。
  「あいうち?しかしなんか不毛だな〜」
  「光と闇は必要ではあるけどね。バランスを保つためにも」
  ガウリイの言葉にぽそっとつぶやくエルちゃん。
  ?
  「と、とにかく魔王はうごけなくなったけど、今だに魔王の部下の張った結界は健在。
  そしてその結界の中には【竜王】はもういない。
  だから【ここ】、結界の中となるこの区域は俗にいう闇の獣が闊歩してるのよ」
  「その結界って何なんだ?」
  あ〜、そこも説明しないといけないのか。
  普通常識中の常識の知識でしょうに。
  「群狼島。滅びの砂漠。カタート山脈のさらに北の北の拠点るそして魔海。東西南北に存在している闇の拠点のことよ」
  実際、それらの場所を目指していって戻ってきたものは…いないらしい。
  「滅びの砂漠はエルメキア帝国にも隣接している砂漠地帯のこと。
    北の拠点はカタート山脈をはさんだ更に北なので詳しいことは誰にもわからないわ。
    群狼の島は…セルティーグや沿岸諸国連合のはるか南の海に位置している、といわれているわ。
    ここ、ライゼール帝国からいけばはるか東の海に魔海、と呼ばれている場所があるの。
    その四つを点としてこの区域は結界が張られているの。
  面倒なので一応、荷物の中からこのあたりの地図を取り出し丁寧にと説明しておく。
  こいつには何か目安になるものがあったほうが理解してもらえやすそうである。
  「そういや、エルメキアのはるか西に立ち入ったらもどってこられないっていう砂漠があるなぁ」
  「それが滅びの砂漠よ」
  どうやら地図と言葉で何とか納得はしたらしい。
  理解しているかはともかくとして。
  「そしてあのゼルガディスはそんな魔王を復活させようとしているのですわ。
    その為にお父様を殺し、町までも……」
  シルフィールがそういいうつむくが、あたしは実はあの彼を疑ってはいない。
  思いこんでいるシルフィールには酷ではあろうがあたしが疑っているのは…レゾである。
  「よくわからんが。でもおまえさん、あいつや、それにあの紅いやつのことあんまり信用してなかっただろ?」
  ほ〜。
  「あら、見るところはちゃんとみてるのね」
  かなり以外だが、何もかんがえてない、という訳ではなさそうである。
  「まあね。彼が本物のレゾだ、っていう保証はどこにもないわ。ほとんど伝説に近い人物だし。
    ここ十年ばかし姿をみたっていう人も噂もきかないし」
  「レゾの名をかたって近づこうとする奴らの仲間かもしれないってわけだ」
  「そういうこと」
  伊達にどうやら傭兵稼業はやってなさそうである。
  そのあたりの頭の回転は一応まともに働くらしい。
  「ひどいっ!リナさんもガウリイ様も!あの御方はレゾ様ですっ!!
    ゼルガディスのたくらみのあの御方がいなければわかりませんでした!」
  いや、だから怪しいんだってば。
  「盲目的に信じるのはどうかとおもうわよ?」
  「リナさんは知らないからっ!!町が…もどったら消滅していて呆然としているわたくしを助けてくださったのは…っ!」
  そりゃ、うちひしがれていたときに優しくされれば信じたくなる気持ちはわかる。
  わかるが。
  「あたしは可能性をいってるの。裏切られたときの可能性を含めてね」
  「レゾ様はそんな御方ではありませんっ!!」
  だんっと机をたたきながらもいいきり立ちあがるシルフィール。
  あらら。
  こりゃ、何をいっても無駄っぽいわ。
  でもほんと、アレは信じないほうが絶対にいいとおもう。
  もしかしたらこのシルフィールは今まで人を疑う、ということを知らずに育っているのかもしれない。
  まあ、神官長とかいったらけっこう裕福な家庭…だしねぇ。
  おそらくは箱入り娘、だったとみた。
  結局、あたしが何をいっても無駄らしく、険悪な雰囲気のままその場はお開きに。
  何だかな〜。

  「う〜ん。いい天気」
  「だな〜」
  「?シルフィールさん?」
  のんびりとあるきつつも、つぶやくあたしとガウリイ。
  シルフィールはあれから…すなわち、朝食のときから一言もあたしと口を聞いてはいない。
  そんなシルフィールにレゾが声をかけていたりする。
  ちなみに、レゾが先頭をいき、次にシルフィール。
  あたしとガウリイとエルちゃんはその後、という並びでの歩き旅。
  エルちゃんはずっとあたしの後に隠れるようにしているし。
  何だかなぁ。
  しかもご丁寧に宿の人にもらったのか顔をすっぽり隠す黒いフードまでかぶって顔を覆い隠している。
  レゾのやつもよくもまあここまで徹底的に嫌われているものよね。
  ちなみに、あたしたちの後にはちょっとした光景がついさっきまで広がっていた。
  「しかし。おまえさん、大丈夫なのか?」
  「平気」
  というか、ガウリイに抱っこされている状態のほうがきつい。
  先ほどレゾが様子を見てくる、とあたしたちから離れてしばらくしてあたしたちは計ったようにと襲撃をうけた。
  そのほとんどをガウリイが片づけたのだが。
  あたしとしても、呪文の一つでもはなってストレスを発散させたかったのだが。
  こればっかりは仕方がない。
  何しろ今朝がた始まってしまったのだから。
  正確にいえば今朝がたには兆候があり、つい先ほど、というほうが正しいのだが。
  うっかり、今だに怒ってずんずんと先をいっているシルフィールをかばって
  相手を帰り打ちにしたときにちょっと相手の攻撃がかすってしまったのは不覚であった。
  というか襲撃されただけでパニックにならないでよね、シルフィール……
  動くと下腹部に鈍い痛みが襲いくる。
  そろそろ、とはおもってはいたが、こういうときになるとは面倒極まりない。
  その証拠に回復呪文のききがやたらと遅い。
  理由は簡単。
  あたしは痛みに対するこらえ性があまりなく、精神集中がおざなりになっているからである。
  シルフィールをかばったときに、おもいっきりわきばらをざっくりと。
  シルフィールにそれを気づかれたくないのでのほほんとしているように見せかけて、
  あえてガウリイにすべてをまかしたのだが。
  どうやらガウリイはごまかせなかったらしく、いきなり傷口をさわってきやがったのだ。こいつは。
  シルフィールはそんなのほほんとしているあたしをみて批難の視線を向けていたが、ガウリイの手をみて顔色を変えた。
  ガウリイの手はあたしの怪我による血でべっとりと赤くそまっていたりしたのだ。
  これがまた。
  どうやら血の匂いでけがをしたのを気づかれていたらしい。
  「そんな顔しないでよ。もうちゃんと傷はふさがったから」
  痛みがあるのは別の理由だし。
  今だに心配そうな目でみてくるガウリイにひとまず答える。
  「無理するなよ?」
  「つうか、あんたの持論はわかったから。大丈夫だって」
  この男いわく、何でも女子供には優しくしろ。
  というのが彼の祖母の遺言だったらしい。
  どうやらかなりのお婆ちゃんっこだったとみた。
  「そういや。何か『鍵』とかいってたけど。その鍵ってどういう意味なんだ?どこかに錠でもあるのか?」
  こ…こいつは。
  昨日の話。
  しかも今ごろになって気づいたようにきいてきますか。
  そうですか。
  …ま、いいけどね。
  「鍵、というのは魔道の用語よ。文字通りそういうことができるのよ。
    セイルーンとか魔道の発達している都市や金持ち貴族の屋敷などにも
    そういう仕掛けがあるっていうのはきいたことがあるわ。実際にあたしもめにしたことがあるし。
    たとえば中庭にある泉に若い女の人が入ると宝物倉の扉が開く、とかね。
    この場合は【若い女の人】、というのが鍵にあたるわけ」
  しかもあれは十代の女の子、というのが条件だったので寒い冬だったのできつかった。
  しかも倉の中にあったのはろくでもない品ばかりで…いやまあ、今はそんなことはどうでもいいか。
  「つまり、カギは何でもいいんだ」
  「そういうこと」
  どうやらそれで納得したようである。
  レゾはあたしがガウリイから降ろしてもらってしばらくしてから戻ってきた。
  そして、『何かあったのですか?』ときたもんだ。
  それでもまだシルフィールはレゾを信じているっぽい。
  「何でもありません。レゾ様。レゾ様はどちらにいかれていたのですか?」
  「少し気配を感じましてね。しかし襲撃があったとは…ともかく皆さん、無事で何よりです」
  シルフィールの言葉ににこやかに答えているレゾ。
  というか、彼らと打ち合わせをしていた、とおもうのはあたしの気のせいだ、とは思えない。
  「とりあえず、この先に村があるようです。そこでひとまず休憩しましょう」
  「わかりましたわ」
  有無を言わさずとはさすがといわざるを得ない。
  シルフィールもあっさりとうなづくんじゃないっ!
  …あたしの予感ではその村にすでに何かをしかけているとみた。
  あたしのこういった場合の勘は結構よくあたる。
  「しかし。さすがに村のある人里近くでは何もしてこないでしょう」
  視線の先に見えてくるひとつの村。
  にこやかに、それが当然とばかりにそんなことをいってくるが、わざとそれを強調しているとしかおもえない。
  「どうやらリナさんはあの日に突入してしまったようですし。少しは休んで体力と魔力を回復させませんとね」
  「レゾ様?」
  「ああ。血臭、ですよ。リナさんのほうからしてきますし。怪我をされたのではないのでしょう?」
  びくり。
  怪我、という言葉にシルフィールが反応する。
  何だかなぁ。
  あからさまに血臭、といわれておもわず顔が赤くなる。
  「しかし、だからというわけではありませんけどね。注意はおこたらないでおきましょう。
    気の緩むその瞬間を狙っているかもしれませんしね」
  笑みを浮かべたままでそんなことをいってくるレゾ。
  そういうことはいわれなくても油断なんてみせないわよっ!
  それでなくてもいくらあたしが天才魔導師だからといっても今は不利。
  女性の体が子供を産むことができるようになっている以上、
  ちょっとばかり月に一度は苦しまなければならない時期がやってくる。
  人によっては月に二度、あるいは不規則。
  それに前後するかのようにそのピーク時やその前後やその期間中。
  女の魔道士、視子や僧侶などはその霊力が著しいく減退し、人によっては完全にその時のみ力を失う。
  それの間、処女性を失い普通の女になってしまうからだ、というのが世間一般での解釈。
  だが、そんなわけはない。
  ただ単に精神統一の問題である。
  その証拠に処女性云々、というのであれば子持ちの女性の僧侶とか巫女とかがかなりいる理由に説明がつかない。
  そんな理由だったとすれば、乙女でなくなったら力は使えない、ということになってしまう。
  何ともバカらしい通説である。
  それでも、それが通説となっているのはどこか神聖さをもたせたい男の身勝手だ。
  あたしはそう思っている。
  事実、あたしの周囲の人たちも子供とかいても思いっきり呪文は使えるし。
  子持ちの神官、というのもざらなのだから。
  世の中、通説と現実との矛盾、というのはよくあること。
  そんな会話をしつつも、やがてあたしたちがたどり着いたのはごく小さな村。
  街道の側面から並ぶ小さな石づくりの家々が垣間見える。
  ごく普通の小さな村。
  村の西に広がっている麦畑。
  ひとまず今日のところはあたしたちはここで一泊することに。

  足音がする。
  気のせいではない。
  あたしが宿で床についてしばらくしてのこと。
  お腹の痛みになかなか寝付けなかったのであたしのすこぶる性能のいい耳がその忍び足、ともいえる音を目ざとく捉える。
  しかもその足音は、遅くまでのんだくれていた人がやっと腰をあげて自分の部屋にともどってゆく。
  そういう部類の足音ではない。
  複数の人間ができるだけ足音を忍ばせてあるいている。
  そういった音。
  まだマントもすぐそばにおいたままの格好だったので術を唱えて痛みを緩和させた後、すばやくマントをはおる。
  「エルちゃん。念のため外にでててね」
  一階部分しかない宿屋なのでけっこう楽。
  おそらく彼らの狙いはこのあたし。
  隣のベットというか一緒のペットの中にいたエルちゃんにいうとこくり、とうなづき、
  鞄を背負ってひょいっと窓から外へとでてゆく。
  そしてそれとほぼ同時。
  突然扉が蹴破られ、いく人もの人影が部屋の中にとなだれ込んでくる。
  眠り込んでいるはずのあたしの姿は、当然ベットの上にはない。
  「どこだ!?」
  一人が叫ぶ。
  が、すでに呪文の詠唱は済んでいる。
  あたしは扉のそばでこっそりと隠れて…というか扉の向きを考えてしゃがんでいただけなのだが。
  それと同時、あたしの手の中に生まれる輝く光の球。
  「火炎球(ファイアーボール)!!」
  あたしの声をきき、あわてて人影がふりむくが、遅いっ!
  部屋の中に投げ込むと同時に、ドアを閉めて通路へと出る。
  密室ないで炸裂した火炎球はいうまでもなく威力を数倍にする。
  ゴウンッ!!
  かなり派手な音が周囲に響く。
  あたしの火炎球は絶好調のときならば鉄すら溶かす。
  が……
  「大丈夫か?!」
  ガウリイがいいつつも部屋から飛び出してくる。
  どうやらガウリイの部屋にも刺客がいたらしく、数匹のトロルらしきものが倒れているのがみてとれる。
  「刺客よ!」
  「やったのか?」
  「わからない」
  正直なところ、本当にわからない。
  気配はまだ部屋の中に残っている。
  と、バタンと部屋の扉が開き、焦げくさいにおいとともにいくつかの人影が炎にまかれながらも飛び出してくる。
  やっぱし。
  痛みのせいで術にたいして集中力が散漫になってたか!
  すかさずガウリイが剣を抜いて切りつける。
  よくよく見れば相手は剣と簡単な鎧とで武装しているトロルたちである。
  「あの子は?」
  「ひとまず外に避難させたわ」
  「ならお前はあの子を守れ!ここは何とかする」
  たしかにそれも一理ある。
  小さな子供を一人にしておくなど危険すぎる。
  幾匹か倒れているトロルたちを文声あたしはひとまず、こげたままの窓から外へとでる。
  外へでてみておもわず唖然。
  村はすでにかなりの数のトロル達によって埋め尽くされている。
  そしてまた、トロルの大群に交じって初めて見る顔がいくつもある。
  一人は獣人、とおもうがどうみても二本足でたっている犬。
  そして半魚人。
  この半魚人はひとに近い種族からまったく魚に近い種族がある。
  ここにいるのは後者。
  そして例のミイラ男。
  …まだいたのか、あいつは。
  そしてまた、がっしりした体格の先日ともにやってきた男性。
  そして何よりも……
  「お〜ほっほっほっ!ついに観念するのね!リナ!!」
  …やっぱり敵側にいるし、こいつは。
  と。
  「ゼルガディス!もうにがしません!」
  何か村の中心あたりから聞こえてくるとある声。
  村の中心にあるちょっとした広場。
  声を頼りに移動してみればシルフィールと対峙している男たちの姿が垣間見える。
  その中央の真ん中に一人の男がたっている。
  コートのような服をきた二十歳前後のけっこう整った顔立ち。
  しかしその肌は青黒い岩のような何かでできている。
  頭に頂く銀色の髪の毛はおそらく無数の金属の糸。
  そしてその手にしているブロード・ソード。
  「久しぶりね。ゼルディガス」
  あたしの声に、
  「ゼルガディスだ」
  本人がご丁寧にも訂正してくる。
  「やれやれ。名前なんかどうでもいいだろう?
    要はこの女から神像をいただければそれで終わりだ。あの御方も酔狂なこって」
  やはり、周囲を見渡してもレゾがいない。
  今のこの獣人の言葉であたしは完全にと確信する。
  やはり、本当の黒幕は――
  顔はほとんど狼。
  でも体型は人間でレーザーアーマーなんかを着こんでおおぶりの円月刀(シミター)なんぞをかついでそんなことをいってくる。
  「ディルギア!」
  「そういやこいつらにはまだものが正確には何かいってなかったってことだったな。
    でもあの御方やそこの女からいろいろ聞いているかもしれないぜ?」
  …いるのよね。
  何も考えてないやつって。
  ゼルガディスの叱責の声に何でもないように言い放ち、
  「どのみち、こいつらはここで死ぬんだしな」
  ほほ〜。
  「やけに大きいことをいってくれるわねぇ。弱そうなやつばっかで」
  この場合、この場にいるトロルたちに対しては例の術が有効っぽい。
  …あまりやりたくないけど。
  「とにかく。再度問う。大人しく女神像を渡せ。でないとこの村のやつらまで巻き込まれることになる」
  「何をいまさらっ!サイラーグをあんな目にあわせて!」
  そんなシルフィールの声をききゼルガディスの瞳にまたまたうかぶ憐みの色。
  「別にかまわないし」
  きっぱりはっきりいうあたしにたいし、なぜか呆れた顔でこちらをみてくるシルフィールとそしてなぜかゼルガディス。
  しかしここまで騒いでいても誰も出てこないとは、これはやはり……
  「ゼルガディス。こ、ここはボクが……」
  半魚人らしき男…だとおもう、とにかくそれがすっと前にでてくる。
  女なのかもしれないがこのさいそれはどうでもいい。
  「覚悟しろ。ボ、ボクはゼルガディス様のイチの子分なんだな」
  つ〜か、そのぬめっとした体は精神衛生上よろしくない。
  「お〜ほっほっほっ!何をたわけたことをいっているのかしら!
    リナを倒すのはこの白蛇のナーガ様にきまってるわっ!!」
  …だああっ!
  余計にややこしいやつがっ!!
  「あれ?何か声がする、とおもったらゼロデスじゃないか。あと何であの嬢ちゃんがあっちにいるんだ?」
  「あたしにきくなっ!」
  高笑いとともに現れたナーガをみていってくるガウリイ。
  おそらくナーガの高笑いを聞きつけてやってきたのであろう。
  しかし、あのトロル達をもうやっつけてきたのか?こいつは?
  「ナーガ!あっさりとそいつらと馴染むんじゃないわよっ!」
  「お〜ほっほっほっ!神像を売り払ったお金を一人占めにしようとしている人にいわれたくないわ!」
  …話し、やっぱしつうじないし。
  「…ゼルガディス。あんたのところ、結構人材不足よね」
  ナーガを戦力にいれるだなんて、無謀もいいところ。
  「その同情の視線はやめろ。俺だって自覚している。俺が動かせるやつはごくわずかだ」
  しみじみいうあたしの言葉にそんなことをいってくる。
  なるほど。
  「ゾルフのやつは、魔術の本質を理解してないがあいつの術は役にたつ。
    そういえば、宿に向けておいたロディマスはどうした?」
  ほ〜。
  あの体格のいいおっちゃん、ロディマスっていうんだ。
  そういや前なんかそんな名前をきいたような気もしなくもないけど、あまり覚えてないし。
  何か騎士道精神っぽい感覚を受けたけど。
  ちなみに、さきほどあたしの部屋やってきた刺客らしき人物の一人のこととみた。
  「こっちをみろ。お、お前のあいてはこの僕だ」
  どうやら無視されてさみしかったらしい。
  少しいじけているのか胸ヒレをパタパタうごかしつつ半魚人がいってくる。
  そういやあんまりにも弱そうなんですっかり存在すら忘れてた。
  「いくぞ」
  つうか、何ができるっていうんだ?こいつ?
  そういうと魚は変な格好をとると、
  にゅるん。
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  いきなり二匹になってるし……
  「なあ。あれって何かスライムとおなじ感覚がするんだけど?」
  「あたしにきくなっ!あたしにっ!」
  スライムの分裂よろしくあたしたちの目の前で増えてゆくお魚さん。
  え〜と、何といっていいものやら……
  術…にしても何だかなぁ……
  ガウリイと言い合っている間も半魚人はどんどん数を分裂させ増え続ける。
  「どうだ?おそれをなして声もでまい?」
  いやあきれてるんだってば。
  「さあ、こうさんしろ。さもないと」
  さもないと、といっても魚に何ができるのやら。
  「おどるぞ?」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・
  「「「は?」」」
  思わずあたしとガウリイ、そしてシルフィールの声が重なる。
  いや、今、何て?
  そういうと、半魚人はあたしたちをぐるりと取り囲み、いきなり変な歌詞をつけて踊りだす!
  …ひ、ひどい、あまりにひどすぎる。
  二十匹ほどの魚男が貧弱な手足をクネクネさせてそれに合わせてエラと胸ヒレを閉じたり開いたり……
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  「炸弾陣(ディルブランド)!!!」
  ドゴガッ!!
  あたしの声に応じてあたしの周囲の大地が吹き飛ぶ。
  いうまでもなく呪文のアレンジ版。
  そして続けざまにもう一発!
  「火炎球(ファイアーボール)!!」
  数か所にかたまり倒れているそれらにととどめとばかりに呪文を解き放つ。
  やがて周囲に香ばしい匂いが充満する。
  「・・・・・・・・。さすがリナ=インバース。噂は伊達ではないな」
  何か感心したようにゼルガディスがいってくるが。
  「ちょっとリナ!あなた今、どさくさにまぎれて私にも火炎球を放ったでしょう!
    さては、あなた私の実力をおそれ……」
  「氷結弾(フリーズブリッド)!」
  コッキン。
  「よっし。静かになった」
  『・・・・・・・・・・・・・・・』
  それをみてなぜかあたし以外の全員がその場に一瞬硬直する。
  「お前、それはさすがにひどいだろ?ヌンサに呪文を放った気持ちはわかるが」
  判るんだ。
  「いいのよ。ナーガだし」
  つうかほっといたら何かと面倒。
  「仕方ない。これ以上騒ぎを大きくすると村にも被害がでる。今日のところはひこう」
  ゼルガディスがそういうのとほぼ同時、ゆらりとした動作で各家からでてくる村人たち。
  しかも全員、その瞳は虚ろ。
  これは・・・・傀儡(くぐつ)の術?
  それほど難しい術ではなく、単純な生き物にはかなりの効果がある。
  しかし、これは……
  普通、この十は一人の相手に対して、それもある程度の時間と道具をつかって行うもの。
  だがこれはみたところ、村人すべてが操られているっぽい。
  それぞれ村人達が家からでてころ広場へと集まってきているのがみてとれる。
  「あなたという人は!村人に何をしたんですかっ!!」
  いや、シルフィール。
  あんたもこいつが何もしていないのをみてたでしょうに。
  それでもこいつがやった、と思いこむか?普通?
  「あいつ…眠らせる、といっていたのに……とにかく、ここはひこう。行くぞ」
  何かそれをみて苦虫をつぶしたような顔をしてつぶやくとそのままくるりと向きをかえる。
  ゼルガディスの合図とともに、残っていたトロルたちもまた退いてゆく。
  「まちなさい!ゼルガディス!」
  シルフィールがあとを追いかけようとするが、村人たちに阻まれてそれもできない。
  じわりと村人に囲まれてゆくあたしたち。
  と。
  「おやおや。何があったんですか?」
  ゼルガディスがいなくなるのと同時に、宿の方側からやってくるレゾ。
  いかにもわざとらしい。
  「何か不穏なことになってますねぇ」
  そういうなりレゾは何かを唱え、それと同時に村人たちは大地に倒れ伏す。
  「何かくるぞ!」
  「え?」
  ゼルガディス達が立ち去った方向に何か赤い光を放つものが落ちている。
  どうやらルビーぽいけど。
  それはゆっくりと巨大化していき、宝石らしき品物は人間の背丈ほどの大きさとなる。
  そしてそのまま一気に破裂する。
  パキィッン…
  「くわぁっっっっっ!!」
  何かが砕けるおとと、何ともいえない雄たけびの声。
  そこには先ほどまでいなかったはずのドラゴンが一匹。
  「ルビーの中にドラゴンが封じられていたようですね」
  あたしを含め、何があったのかなんて説明していない。
  しかもそれがルビーだ、だなんてひとこともいっていない。
  しかもレゾは目が見えない。
  なのに今、レゾははっきりとルビーといいきった。
  「レゾ様!御無事でしたか!」
  その違和感に気づかないのかレゾにかけよってゆくシルフィール。
  しかし、ドラゴンか〜。
  「いやぁ、すいません。おそくなりまして」
  「お疲れだったのでしょう。よくねていらっしゃいましたし」
  いや、絶対に違う。
  そんな二人の会話に思わず心の中で突っ込みをいれる。
  「と、とにかく。村人たちを起こして安全な場所に避難させないと」
  そういいつつ、何かを唱え始めるシルフィール。
  そういや、このシルフィール、一応巫女だった。
  あたしとしては村人たちを起こすのはやめといたほうがいいとおもう。
  シルフィールの言葉と同時に目を覚ます人々。
  が、彼らはあたしたちにむかって隠し持っていたらしい武器を手にしてむかってくる。
  「な!?どうして!?」
  シルフィールが何か叫んでいるけど。
  あたしの予想が正しければ、彼らを操っているのはレゾである。
  「リナさん。まずはドラゴンを!このままでは村に被害がでます!」
  いいつつも、村人に近寄ってゆくシルフィールだし。
  って何かんがえてんのよ!
  あのお嬢様はっ!
  「ちょっと!あぶないわよっ!」
  「わたくしの力わもって人々を正気にもどしてみせます!」
  いって村人たちにむかって何かを唱え出す。
  が。
  ドッン!
  「きゃっ!?」
  ドラゴンがいきなりシルフィールに対して攻撃を仕掛けて光を球を吐いてくる。
  咄嗟に狙われていたシルフィールを突き飛ばす。
  「何やってんのよ!あんたは!」
  状況をよくきちんとみてほしいものだ。
  「悲しい思いをするひとが、わたくしで最後にするためです。
    家族を失って泣く人々をこれ以上みたくありませんから」
  あたしの抗議の声にそんなことをいってくる。
  …何だかな〜。
  悲劇のヒロインに徹しているあまり、見なければいけない部分を見落としているとおもう。
  この子は。
  「とにかく。適材適所という言葉があるんだから。あんたは村人たちをもういっかい眠らせときなさい!」
  そんなあたしの言葉とほぼ同時。
  「お〜ほっほっほっ!よくもやってくれたわね!リナ!」
  「ナイスっ!ナーガ!」
  よくもああいいタイミングで復活してきた!
  「風魔咆裂弾(ボムディウィン)!」
  「んきゃぁぁ!?」
  つっかかってこようとしたナーガに対し、攻撃呪文を解き放つ。
  ただし、ドラゴンのほうにむかって吹き飛ばしただけ。
  案の定、ドラゴンはナーガが自分に攻撃をしかけてきた、と判断し
  問答無用でナーガに気をとられ攻撃をしかけていたりする。
  ナーガもまた必至で逃げ回っていたり、攻撃してたりするけど、まあナーガは死ぬようなタマではない。
  ドラゴンがナーガに気をとられているすきに…っと。
  ふわり。
  そのままそのあたりの木のてっぺんにふわりと浮かび上がり着地する。
  「あ。やっほ〜」
  ・・・・・・・・・・・・
  「こんなところにいたんだ。無事?」
  どうりで姿がみえない、とおもったら。
  その木のてっぺん付近にみえる小さな金の影。
  「うん」
  どうやら危険を察知してこの木の上に移動していたらしい。
  案外この子、応用力がある。
  さすがあたしにそっくりのだけはあるっ!
  って今はそれどころじゃないっ!
  「黄昏よりも昏きもの 血の流れより紅きもの」
  「「っ!その呪文は!?」」
  あたしの声に気づいたシルフィールとレゾの顔色がかわる。
  いつまでも手のひらの上で遊ばれているつもりはさらさらない。
  「時の流れに埋もれし 偉大なる汝の名において 我ここに闇に誓わん」
  これぞあたしの最も得意とする術。
  人間の使える黒魔術の中では最強のもの、といわれている。
  その名も。
  「我が前にたちふさがりし すべてのおろかなるものに 我と汝の力もて 等しく滅びを与えんことをっ!」
  「竜破斬(ドラグスレイブ)っ!!」
  ドグワァァッン!!
  あたりに…正確にいえばドラゴンを中心としたちょっとした火柱が周囲を覆い尽くしてゆく――
  この術はアレンジ加減によって国ひとつまるまる滅ぼせる威力をもっている。
  といっても使うのが人である以上、術者の魔力により威力は異なるが。
  もともと、対ドラゴン用として作り上げられた、といわれている魔法で
  一発で小さなお城くらいはらくらく軽く消し去ることができる。
  これを使える魔道士を二、三人も抱えていればその国や組織はかなりおおきな顔ができる。
  ちなみに、あたしがコレを覚えたのは十二歳のときである。
  『・・・・・・・・・・・・』
  「…おまえな〜・・・・・」
  なぜかあたしのほうに視線をむけて溜息をもらしながらつぶやいているガウリイに、
  なぜか冷たい視線であたしを見上げているシルフィール。
  ドラゴンはきれいに消え去っており、ついでにそこにはちょっとしたクレーターが出来上がっている。
  さすがにまともに集中力が保てなかったがゆえかいつもより威力がかなり小さい。
  しかも一発放っただけでむちゃくちゃに疲れる。
  「リナさん!何てことを!!」
  何かシルフィールがいってるようだけど、わざわざあたしのいる木の上のほうを見上げて。
  というか未だに村人対策、シルフィール、何もしてないし。
  村人たちはあたしの術をみてか、そのまま固まりじりじりとあとずさる。
  「仕方ないですね〜」
  にこやかな笑みを浮かべたまま自然な動作でトンっと杖を大地につくレゾ。
  次の瞬間。
  ドロリ…
  「…ひっ!?」
  シルフィールの短い悲鳴。
  木の上からでもわかる。
  一体何がおこったのかが。
  村人たちの姿がみるまに溶けて瞬く間にゾンビと化してゆく。
  「ど…どうして!?」
  シルフィールが叫ぶけど今のレゾの行動があたしはあやしいとおもう。
  しかし、相手…第三者に気づかれることなくこんな真似ができるとは……
  「何かの術がかけられていたようですね。苦しまずに逝かせてあげましょう」
  悪びれもなく言い放ち、
  「浄化結界(ホーリィブレス)」
  にこやかにレゾがそういうと同時、周囲を淡い光が覆い尽くす。
  ゾンビと化していた村人たちは一人残らずその身を滅し、光の中にと消滅してゆく――


                   −続くー

  

おまけ♪

  とうとう自分たちにまで追ってが迫ったのだ、そうおもった。
  あの金髪の剣士がいるのが何よりの証拠。
  どうにか追っての手を逃れてここに小さな村をつくり隠れて暮らしていたというのに。
  賢者としても名高い赤法師レゾ様。
  彼がそのことを教えてくださった。
  あなたたちに意思があるのならば力を貸しますよ、と。
  自分たちは表ざたになればまず罰せられるのは確実。
  何も悪いことはしていないのに。
  ただ、魔族にいわれて旅人達を殺していただけ。
  その魔族はかつて旅の剣士とよくわからない男性にと滅ぼされた。
  それから自分たちの苦難は始まった。
  誰も自分たちのことをわかってはくれない。
  脅威が他人ごとだから、正義のなのもとに自分たちをさばこうとする。
  われわれとて、理不尽な裁きをうける気などさらさらない。
  いきよう、としてどこがわるい。
  自分たちは何も悪いことなどしていないのだから。
  外に出れない以上、殺した人々の財産を奪って何がわるかった、というのか。
  …他人はどうしてそれをわかってくれないのか……


#####################################

あとがきもどき:

薫:ちなみに、こちらのスレイヤーズ世界においては、ゼフィーリアの女王のもと。
  色の称号をあたえられるまでになった魔道士には基本的な真実な知識が伝わる。
  という設定にしてあります。一応、女王は水竜王の意識、らしいですしねぇ(苦笑
  なので当事者(?)から詳しい話をゼフィーリア関係者はある程度は知っている。
  そんな世界感にしております。
  とはいえ、それらをよそに吹聴するようなお国柄の人々でもなく。
  世間一般的にはやはりどこか間違った解釈のままの定説が一般的です。
  あと、リナたちが出向いた村。
  はい。おまけでもいいましたけど、例のリナ父とガウリイが解決した事件の村の人々です(まて
  リナと出会ったのがあれからすぐしばらく後、ということなので、あのあたりにある村だと踏まえまして。
  裁きをうけるのがいやで逃げ出していた人々の村なのですよ。
  ちなみに、廃墟となっていた場所をレゾが提供して村の形を整えていた、という設定にしております。
  そのあたりの設定をリナの一人称ではわからないのであえておまけで少しばかり村人サイドの感想をばv
  何はともあれ、ではまた次回にて♪




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34030リトル・スレイヤーズ〜逃げろや逃げろ囚われの身〜かお 2009/5/15 22:57:09
記事番号34025へのコメント

  まえがき&ぼやき:

  せっかくアニメさんにナーガがでてきたんだから、アメリアが気づいてもよかったんじゃ?
  とおもうのは私だけではないでしょうね。
  というか某所でもコメントでそのようなこと書かれてたし。
  まあ、ナーガは母親っこで、アメリアは父親っこ。(これも神坂先生が対談でいってた裏設定)
  そのあたりの差?といえばそれまでかもしれないけど。
  だけど、正真正銘、ナーガの本名はグレイシア=ウル=ナーガ=セイルーンで。
  フィル殿下の第一子なのよー(涙
  神坂先生も裏設定でさらっと暴露してるんだから、外伝くらいでそれをだしてほしい…切実に…
  ちなみに、これにもかいてる、露出度の高い服云々…実際にセイルーンにあるそうです(爆
  (神坂先生監修、フルフェイスの砂時計の裏表紙から)

#####################################


         リトル・スレイヤーズ 〜逃げろや逃げろ 囚われの身〜



  「だけど。何であの像が何とかいうやつの復活のカギになるんだ?」
  これ以上、他に迷惑をかけるわけにもいかずあたし達がいまいるのは海道はずれにあるちょっとした小屋。
  おそらく狩猟小屋か何かであろう。
  ショックが大きかったらしく、シルフィールはあれからずっと気を失ったまま。
  あたしは木の上にいたので遠目だったがそのショックはよくわかる。
  おそらく自分が手を下したであろうレゾはにこやかな笑みを崩さないままだったりする。
  ナーガに聞いていなければあたしですらあっさりとだまされていたかもしんない。
  「あんたねぇ!前に説明したでしょうがっ!」
  「そうだっけ?」
  こ…こいつは……
  本気で綺麗さっぱりと忘れているらしい。
  「では私が説明しましょう」
  いっていきなりマントの後からハープを取り出し…いや、無理だから。
  いくら何でもかなり大きな体半分くらいありそうな大きなハープをマントの後に隠しておくなんて。
  おそらく空間関連の術の応用とみた。
  以前、似たような空間操作をしていた術?といえるのかわからないが、ともかくそれをみたことあるし。
  まああれをやっていたのはひとではなかったが。
  そのままハープを手にし歌い出す。
  しかし、なぜにうた?!

  〜♪むか〜し、昔、その昔〜♪この世界をかけて神たる竜神と魔王が戦い世界は混沌に満ちていた。
  竜神の名前は赤の竜神(フレアドラゴン)スィーフィード。魔王の名前は赤眼の魔王(ルビーアイ)・シャブラニグドゥ。
  神と魔は長きにわたり戦いつづけ勝利したのは赤の竜神(フレアドラゴン)スィーフィード。
  魔王はその身を引き裂かれ眠りについた。その戦いにおいて神もまた力つきた。
  しかし神は自らの分身を創り出しこの世界の東西南北に配置して世界を守らせた。
  しかし、今から約千年ほど前、魔王の七つのかけらの一つが復活し北をおさめる水竜王に戦いを挑んだ。
  戦いにおいて魔王の欠片はその身を竜王の力により氷に大地につなぎとめられ力尽きた水竜王も姿をけした。
  魔王の欠片を目覚めさせるのはカギが必要。
  それに気づいたある魔道士はそのカギをオリハルコンでつくった品の中にと封印した。
  その品物こそが女神像。
  それをつかえば魔王のかけらを目覚めさせることができる。
  〜♪

  …何というか。
  「・・・この人間も音痴なんだ」
  エルちゃんがあたしのマントの下に隠れる格好のままぽそっといい、
  そして何か失敗しただの何だのとぶつぶつとつぶやいていたりする。
  そう。
  エルちゃんの言うとおり、まったくもって音程がなっていないっ!
  無理やり、しかもそれを歌のように音程はずれまくった口調でいうのだからたまったものではない。
  聞いていてまず酔いがまわりそうなほどの音痴ぶり、である。
  「ぐ〜……」
  見ればガウリイは座ったままねているし。
  こ…こいつはぁっ!
  「って、だからあんたはねるなぁぁっ!!」
  そもそもの原因はあんたなのに寝てどうするっ!!
  「わかりましたか?わからないのならばもう一度…」
  「いや、いらないから」
  即座にきっぱりと否定する。
  んなもん、いく度も聞かされてたまるかっ!!
  「では、私は周囲を見回ってきますね」
  またまたマントの後にハーブを入れてそのまますくっと立ち上がる。
  マントに空間をいじる術でもかけてるんだろうか?
  そのまま暗闇にとレゾはかききえてゆく。
  今のうちら移動したほうが賢明だろう。
  おそらく大反対してくる…レゾを盲目的に信じているシルフイールには何をいっても無駄。
  ならば当人が意識を取り戻さぬうちにアレから離れておくのが得策である。
  だれが、『今なら簡単に襲えますよ』という報告をしているだろうその手の内で踊らされるもんですかっ!
  今のあたしの集中力でもそれぞれにプロテクトくらいはかけられる。
  主にシルフィールにソレをかけ、あたしはガウリイ達とともに小屋をあとにする。
  おそらく大きな町にでもはいってしまえばそう彼らも手だしはできないはず。
  似たような小屋を見つけて今日のところは休むことに。
  さて、相手はどうでてくるか?

  翌日。
  「レゾ様、遅いですね」
  「気にしてもしょうがないわよ」
  どうやら目覚めたシルフィールはあの村人たちを変化させたのもゼルガディスの仕業、と思い込んでいるらしい。
  しきりにヤツを批難するようなことをいっていた。
  そんなわけない、何もしてなかったのをみてたでしょう。
  という人の意見もまったく聞く耳もたず。
  仕方ないので話題をかえて朝早く出発したあたし達。
  レゾがいないのをうけてシルフィールが聞いてきたが、
  「見回りにいっている」
  と適当に答えたあたしの台詞をあっさり信じたらしく
  「ではあとからレゾ様はおいつかれるのですね」
  そう一人納得し、あたし達はひとまずアトラス・シティへとむかっている。
  この道はどうやら途中で切り立った断崖絶壁の隙間を通らないといけないらしく、
  それを過ぎたとしても足場の悪い細い道とつながる深い森がなくなるわけでもない。
  「襲撃ってよくこういうところでよくあるのよね〜」
  「だな〜」
  「まさか。そんなお約束な」
  …どうやら、一人のみ、その気配に気づいていなかったようである。
  警戒するあたしにこれまた臨戦態勢をとっているガウリイ。
  シルフィールのみわかっていないらしく、あたしとガウリイのセリフを笑とばす。
  が。
  くるっ!
  次の瞬間。
  ザザザザッ!
  森からトロルやらオーガ、ついでにコブリンといった群れが現れてあたし達の前後のゆくてをおもいっきりさえぎる。
  ミイラ男はもとより、この前宿にやってきたおっちゃん。
  ついでに犬にどこかみたことあるような半魚人。
  そして…
  「お〜ほっほっほっ!!」
  うげ。
  あたしが思わず顔をしかめたのは間違っていない。
  絶対に。
  「お〜ほっほっほっ!お〜ほっほっほっ!ここであったが百年目!リナ!大人しく女神像をこちらによこすのね!!
    そうすればあなたがコエダメにおちたのは忘れてあげるわっ!お〜ほっほっほっ!」
  ・・・・・・・・・・・・
  「それはあんたでしょうがっ!!」
  無視したいが訂正することはきちんとしておかねばっ!
  「何ですの?アレ?」
  う〜ん。
  アレ、ときたか。
  まあ、人間、というのもはばかれるからなぁ。
  あいつは。
  シルフィールがいいつつも白い目をあたしに向けてきて、
  「リナさんのお友達ですか?」
  「違うわよ!他人よ!赤のたにんっ!」
  おもいっきりそこは否定する。
  つうか事実だし。
  「何をいっているのよ!リナ=インバース!あなたはこの白蛇のナーガ様の子分でしょうが!」
  「だれがじゃぁぁっ!!」
  「ふっ。とにかく!子分は親分のいうことをきくべきよ!お〜ほっほっほっ!私にはあなたを倒す切り札があるのよ!」
  無視したらダメですか?
  というかかかわりたいになりたくはない。
  「お〜ほっほっ!よくみるのね!この私の格好をっ!」
  格好?はて?
  「いつもとかわんないじゃない。いつもその変な格好だし」
  というかあたしは断じてこいつの格好を服とは認めないっ!
  そんなの普通の服達が気の毒すぎる!
  「お〜ほっほっ!愚問ね!リナ=インバース!この違いがわからないとは!
    それに露出度の高い服を着こなすのは上流社会の常識よっ!」
  「あ…あんたに常識云々をいわれたくないわぁぁっ!つうかそんな常識があるかぁぁっ!」
  そんな常識があってたまるかっ!
  「…やっぱし。知りあいではあるんですね。やっぱりリナさんって本当は九十近い…
    ……は!?まさかガウリイ様を若さを保つための生贄に!?」
  うおいっ!
  「何でそうなるっ!」
  どうしてこのシルフィールの考えは突拍子もないことばかりなのやら。
  しかし、切り札?
  「ナーガ、一応きいてあげるけど。その切り札って何よ?」
  どうせロクでもないことではあろうけど。
  「お〜ほっほっほっ!大人しく女神像を渡さないと、あなたの大切な白蛇のナーガ様がどうなるかわからないわよ!」
  ・・・・・・・・は?
  え〜と?
  「はい?」
  「お〜ほっほっ!ついに耳も遠くなったのかしら!
    女神像を渡さないと、このナーガ様がこの私をひどい目にあわせる、といっているのよ!」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・
  ごめん。
  降参。
  こいつは何も考えていない。
  それはわかっていた、いたけど・・・っ!
  あたしはどうやらナーガのことをまだ甘くみていたらしい。
  ここまで何もかんがえていなかったとはっ!!
  「…あのかた、自分のいっていることわかっているのでしょうか?」
  シルフィールまでもがあきれ顔。
  …まあ、当然の反応だよな〜。
  「……雷撃(モノヴォルト)」
  「んきゃぁぁっ!!」
  ふぅ、すっきり♪
  あたしの放った電撃がナーガを直撃しその場に倒れるナーガ。
  「さってと。どうせこいつはすぐに復活するし。無差別に攻撃してくる前にきりぬけるわよっ!」
  「どういう人なんですか!?」
  「いったとおりの意味よ。そういうやつなのよ。このナーガは」
  「・・・・・・・・・・・・・・・・」
  あたしの言葉にシルフィールが黙り込む。
  「おいおい。自信満々に自分が倒すといっておいてあれか?」
  犬もどきが何やら溜息をついている。
  つうかナーガをあてにした時点で間違っているのがこいつらにはわからなかったんだろうか?
  きっと面倒なので半ばやけくそ、投げやり半分でナーガの主張を認めたんだろうけど。
  そうでないとず〜とナーガの耳ざわりな高笑いを延々と聞かされるハメになるのだから。
  その光景がありありと脳裏に浮かぶ。
  「この前はわけのわからん術で不覚をとったが、今日はそうはいかないぞ!」
  え〜と、この前っていつのこと?
  ミイラ男のセリフに思わず首をかしげる。
  こいつも影が薄くていちいちいつ出てきたか、なんて覚えていない、というのが本音。
  「お主、なかなかやるな」
  「いやぁ。おっさんのほうこそ」
  みればガウリイのほうは槍斧(ハウルバード)を手にした中年剣士といつのまにか交戦中。
  「ゼルガディス!覚悟!すべての力の源よ 輝き燃える紅き炎よ 炎の矢(フレアアロー)!!」
  力強く言い放ち、呪文を唱え解き放ったシルフィールの術は……
  「え〜と…人参?」
  おもわず目が点となりはてる代物。
  申し訳程度に小さな炎の矢みたいな何かが現れ、それはひょろひょろとゼルガディスにとむかってゆく。
  しいていうならば小さめの人参さん。
  いや、それよりもかなりひどい。
  「・・・・・・・・・・・」
  てし。
  「ああっ!何てことを!」
  ゼルガディスがそれをあっさりと手で地面にと払いのける。
  それをみて何かいっているシルフィール。
  いや、当たり前でしょうが。
  あんなんじゃ、赤ん坊でもそのあたりの蚊すらやっつけられないってば。
  「お〜ほっほっほっ!」
  …げっ!?
  もう復活した!?
  「よくもやってくれたわね!リナ=インバース!いくわよっ!」
  やばい!このパターンはっ!
  「翔封界(レイウィング)!!」
  「魔竜吠(グルドゥーガ)!」
  あたしの術とナーガの術が完成するのはほぼ同時。
  …やっぱし。
  すばやく飛び上り、回避をとったあたしは間違っていない。
  すぐそばにいたエルちゃんはちゃんと抱きかえているので問題なしっ!
  『うわぁ〜!?』
  …ナーガの呼びだした魔王竜(ディモスドラゴン)が予測通り暴走しているらしい。
  何か誰のものともわからない悲鳴が聞こえてくるがあたしには関係ない。
  そもそも、ナーガをきちんと理解してないと被害は敵も味方も関係なく、
  無関係なものまで巻き込まれるのは常識中の常識である。
  そういや、シルフィールやガウリイをおいてきたけど…ま、いっか。

  「リナおね〜ちゃん、うしろ」
  「くっ!」
  キッン!
  振り向きざまに腰にさしていた短剣をすばやく抜き放ち飛んできたそれを弾き飛ばす。
  「さすが、だな」
  とりあえず、森の中の小さな泉のほとりで休んでいるあたしとエルちゃんに向けられてくるとある声。
  いって森の中から姿を現したのは……
  「…あんたは巻き込まれなかったわけだ」
  ついでに巻き込まれてくれればよかったのに。
  「お前が飛んだのがみえたからな」
  ふむ。
  どうやらあたしを追いかけるのを優先したらしい。
  それはわかるが、高速飛行の術をつかって、さらには検索よけの術も一応ほどこしてはある。
  「何でわかったわけ?」
  ひろい森の中、簡単にみつけられるものでもないはずである。
  「あのナーガってヤツがお前さんの髪の毛をくれてたからな。金貨十枚で」
  「な…なんですってぇぇ?!ナーガのやつ、ひとの髪で!?あとでしっかりと金貨は没収しないと!
    あたしの髪の毛をうったんだったらとうぜん、その金貨はあたしのものだしっ!」
  しかし、いつのまにあたしの髪の毛なんかもってたんだか。
  おそるべしはナーガ。
  もう、いろんな意味で。
  「・・・・・・・・・・・・怒るところがずれてないか?」
  「どこが?」
  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。ま、まあいいとしよう。とにかく、神像を渡してもらおう。
    そうすればそっちのお前の妹には手はださん」
  どうやらエルちゃんのことを勘違いしてるっぽいが訂正してやる義理もない。
  「誰が!光よ!!」
  明かり(ライティング)を上空にむけてぶっぱなす。
  「な!?」
  むろん、これで倒すことなどできないが、まばゆい光に目がくらむがゆえに目くらましには十分。
  「すべての力の源よ 輝き燃える紅き炎よ 我が手に集い手力となれ!火炎球(ファイアーボール)!!」
  ドゴォッン!
  続けて呪文をすばやく唱えてぶっぱなす。
  おっし。
  手ごたえあり。
  が、おそらく岩の肌をもつかれには通じないだろう。
  今のは彼がもっているであろうあたしの髪の毛を燃やすために放ったのだから失敗ではない。
  そのままエルちゃんの手をつかみ、というかひょいっと抱き抱え、
  とにかくひたすらに今は逃げの一手を決め込むことに。
  今のあたしは意思力と気力とで襲いくる腹痛をどうにか押さえている状態。
  ゆえに呪文もかなり威力がそがれているこの現状。
  だからあの日ってきらいよっ!
  そもそも、二日目や三日目はかなりそれがひどいんだから乙女はいたわりなさいよね!
  裏をかえせばそういうときにしかけてきてもらっては、実力が発揮できないのでかなり厄介。
  と。
  クッン。
  いきなり体が何かに縛られたように動かなくなる。
  みれば延びたあたしの影の先のあたりに何かが突き刺さっている。
  その後にみえているゼルガディスの影。
  ちっ。
  影縛り(シャドウスナップ)か!
  精神世界面から相手の動きを束縛する術。
  小技ではあるが、けっこう重宝する。
  が、あまぁっいっ!
  「明かり(ライティング)!!」
  光明を唱え影のある方向にと戸紀は夏。
  この術をとくのは至極簡単。
  用は、”しばられている影”を消せばいいのだから。
  「リナ!」
  ふと、エルちゃんの声はあたしの真下から。
  その声に振り向くとすでにあたしの後にはゼルガディスが迫っており、
  それと同時、お腹に痛烈ない民を感じる。
  こ…こともあろうにお腹をけってくるとはっ!
  …あまりの痛みにあたしはなさけないことにも意識を手放してしまったのは…いうまでもない……

  「お〜ほっほっほっ!お〜ほっほっほっほっ!」
  あ〜、うるさい!
  というか何で耳ざわりないやな声がきこえるのよ!
  いい加減にしろぉ!
  ふつふつ湧いてくる怒りがあたしの意識を呼び覚ます。
  ふっと視界にはいりるのは、今は使われていないっぽい教会らしき内装。
  え〜と?
  一瞬状況判断ができないものの、すぐに何があったか思い出す。
  あ、そっか。
  不覚にもつかまったんだったっけ。
  動こうとするがすぐに自分の置かれている状況を理解する。
  あたしは両手をしばられ天井からつるされている格好である。
  …またベタな……
  あたしの目の前には、例のゼルガディスとなぜかナーガ。
  よく術を暴走させたであろうにまだこいつらもいっしょに行動を許しているもんである。
  まあ、ナーガがつきまとっている、というのが正しいのであろうが。
  そしてミイラ男と獣人。
  ついでにみたことない色の半魚人。
  うげ、あのきしょくわるい踊りを思い出した。
  格好は先の半魚人とまったく同じ。
  やたら平べったい体に同じく平べったくてででかい頭らしき両側についている二つの魚眼。
  ぬらぬらとひかるウロコに覆われた体。
  小さく虚ろに開いた口ははっきりいって魚そのもの。
  ただ、魚に手足が生えているだけ、といって過言でない生物。
  「お前。本当にあのリナ=インバースか?」
  なんか呆れたようにゼルガディスがいってくるけど。
  「わるかったわね。天才美少女魔導師にも失敗はあるわよ」
  「美少女?どこが?」
  むかっ。
  何か背後のほうで獣人がぽそっとつぶやいたのをあたしは聞き逃してなどはいない。
  しかし、さるぐつわをされているいのは好都合。
  この状況でも実は術の発動は可能だとこいつらは知らないのだろう。
  「お〜ほっほっほっ!観念するのね!リナ!これで金貨二百万は私のものよ!」
  つ〜か、本気でしんじてるのか?ナーガは?
  「あのねぇ。ナーガ。あんたは本気でこいつらがそんな大金払えるとおもってるの?」
  絶対に無理である。
  「お〜ほっほっほっ!みぐるしいわよ!あなたが取引を断った以上、金貨はすべて私のものよ!」
  …話しになんないし。
  「あのねぇ。そういう問題じゃないでしょうがっ!」
  そもそも、口封じに殺られるのがオチだとどうしてわからないのか。
  何も考えてないんだろうなぁ。
  こいつは。
  は!?
  「そういえばあの子は!?」
  一緒にいたはずのエルちゃんはどうしたんだろう?
  「俺は子供。しかも幼児をいたぶる趣味はない」
  ふむ。
  どうやら少しは常識がありそうだ。
  このゼルガディスというやつは。
  「お〜ほっほっほっ!あなたの体系も幼児そのものだけどね!」
  むかっ!
  「あんたにはいわれたくないわっ!この露出狂っ!!」
  「お〜ほっほっ!この私のセンスに嫉妬しても見苦しいわよ!」
  「誰が嫉妬かぁぁっ!!」
  ほんと、こいつの脳内回路はどうなってんだ!?
  「・・・・・・・・・・あ〜。こほん。とにかく。まさかあんたが神像をもっていなかったとは計算外だったが」
  何かあきれた口調で溜息まじりにいってくる。
  「?どういうことだ?」
  ゼルガディスの台詞に獣人がといかける。
  しかし、この獣人、ど〜みても、たってる犬、だよなぁ〜。
  「ディルギア。これでこいつがどこかにあの像を隠しているようにみえるか?」
  ちなみに、あたしはいつもの服装からマントと剣、そして荷物を取り上げられた格好でつるされている。
  つまり、もしく服の下に何かを隠しているのならば一目でわかる。
  「ふむ。たしかに。いやまてよ?こいつは女だ。体の中に隠すってことも。
    …いや、無理か。あんなもんつっこんだらいくら何でもあそこがさけちまうな」
  おいこら。
  何下品なことをこいつはいってるんだ!
  これだから男ってやつは……
  「あんた、バカ?」
  「なにぃぃ!?」
  「ふっ。男って、犬も人間も所詮はバカなのよね」
  一番馬鹿なのは人間だけど。
  「何だとぉぉ!?」
  「お〜ほっほっ!リナ!何当たり前のこといっているのよ!男っていうのはね!どうしようもない生き物なのよ!」
  「あんたにだけはいわれたくね〜ぞっ!!」
  珍しくあたしの意見とナーガの意見が一致してそういいきるナーガに対し、
  つっかかっているのはディルギア、と呼ばれている犬。
  「しかし。けがもないのに血臭がすることからして、あの日のようだな。
    オリハルコンの探知ができなくなっているのはプロテクトか?」
  どうやらあたしたちの言い争いはさくっと無視することにきめたらしく、
  腕をくみつつあたしに問いかけてくるゼルガディスの姿。
  あからさまに血のにおい、といわれて思わず顔があかくなる。
  「まぁね」
  「とにかく。悪いがあんたは人質だ。何かあんたの連れはそっちのやつが呼び出した魔王竜を相手にしていたらしいが。
    後できくとドラゴンは斬り倒されたらしいからおそらく助けにくるだろう」
  斬り倒れてた?
  ふむ。
  あのガウリイというやつ、そこそこかなりの腕はあるとみた。
  並みの剣士じゃ当然、竜には歯がたたないし。
  ちなみに、うちの姉ちゃんあたりならば石ころひとつで倒せそうだが。
  それは別格、というものである。
  「さて、お嬢ちゃん」
  いいつつミイラ男が前に出てきて、
  今だに無意味というか会話のかみあっていない言い争いをしているナーガとディルギアをこれまた無視し、
  あたしの目の前でその足をとめ、
  「あんたにはいろいろと世話になったからな。ぜひともお礼がしたいんだが」
  何やらそんなことをいってくる。
  こらまて。
  「あんたをひどい目にあわせたのはあたしでなくてそこのナーガっ!」
  すかさずきっぱりと言い放つ。
  「そもそも、ナーガを仲間にするなんて!三流の悪役でもしないわよっ!
    三流魔道士でもそれくらい理解しなさいっ!そいつは歩く迷惑なんだからっ!」
  『それはわかる』
  あたしの言葉にその場にいた全員が同意を示す。
  …約一名をのぞいて。
  「ちょっと!聞き捨てならないわよ!リナ!
    はっ!?さては、あなた得意の口先でこいつらを言いくるめてお宝をよこどりするきね!
    そうはいかないわよ!こいつらがためこんでいるお宝も私のものなんだから!お〜ほっほっほっ!」
  ・・・・・・それが目的か。
  『おい』
  おもわず本音をいったナーガにはいる突っ込みの声。
  「と、いうわけで!金貨と私のお宝のために口をわってもらうわよっ!」
  「誰が教えるもんですかっ!」
  「お〜ほっほっ!いってくれるわね!極悪魔道士リナ=インバース!!」
  「誰が極悪よっ!この人外魔境の生物がっ!友達いない露出狂女!」
  「お〜ほっほっ!このセンスは上流世界では常識よっ!」
  「んな常識があってたまるかぁっ!!この単純女っ!!」
  「お〜ほっほっ!さあ!あなたの恥ずかしい話を触れまわってほしくなければ…」
  ダメだ。
  ラチがあかない。
  そもそも、ナーガと話しあいをしようとするだけ無駄である。
  「……氷窟蔦(ヴァンレイル)」
  ピシ…ピシピシピシっ!
  「ん…んきやぁぁ!?」
  溜息ひとつつき、ぽそっと呪文を口の中で唱えて術を解き放つ。
  天井とつながっている糸を媒介にして氷の蔦を発生させる。
  氷の蔦は螺旋状に天井から壁、そして床をはいすすみ、接触しているものたちを氷漬けにしてゆく。
  人間、怒りが大きいと痛みなんかかんけいなく精神統一ができるようである。
  本来、この術は壁などに直接手をあててそこから氷の蔦を発生させるもの。
  『な!?』
  そのままものの見事に足元から凍りつきその場にできあがるいくつかの氷像。
  ふ〜、すっきり。
  あとは…と。
  「輝き燃える紅き炎よ」
  ぼっ。
  火炎球のこれまたアレンジ版。
  ちょっとしたモノを燃やしたり火がほしいときにとっても重宝する。
  あたしの声にともない、あたしをしばっていた手首の縄がぼっと燃える。
  ちなみに、あたしは手袋をしているまま。
  この手袋もあたしの特製のものなのでちょっとやそっとの熱などではびくともしない。
  縄が緩んだ…否、燃えてなくなったところをすきさず力をいれて両手を自由に。
  「浮遊(レビテーション)」
  ふわっ。
  そのまま下手に床に足をつくとアレンジしてある術であるがゆえに、
  しばらくの間は床や壁に触れたすべてのものを氷漬けにしてしまう。
  そういったアレンジもきちんと術の特性を把握していればなんなく出来る。
  とりあえず、床に触れないようにふわりと浮かびつつあたしは捕まっていた部屋をあとにする。
  さってと。
  あたしの荷物をとっとと奪い返してとんずらするとしますかね。
  荷物を探し出すのもいたって簡単。
  あたしは自分の荷物にはきっちりと目印になる術をかけている。
  ゆえにたとえどこかに置き忘れたりとられたりしてもすぐにわかる。
  荷物は教会の一室らしき場所にまとめておかれており、
  ついでにそこにあった他の品々を慰謝料かわりにもらいマントをはおる。
  そしてそのまま荷物をもつと建物の外へ。
  どうやら外はすでに暗くなっているらしく逃げ出すのにはうってつけ。
  そのまましばし空を飛びつつ、ある程度すすんだところで術を解除。
  と。
  「お〜。いたいた」
  何とも気の抜けた声は闇の中から。
  え〜と?
  「ね。あたしのいったとおりでしょ?」
  そしてかなり幼い声。って……
  「エルちゃん!?何でここに!?」
  というか敵のアジトに近すぎる。
  危険極まりない、というのに。
  あたしが抜けだしておそらく一時もたっていないはず。
  「さがしにきたの」
  いや、そうでなくて。
  あたしがいいたいのは……ん?
  「?シルフィールさんは?」
  なぜかそこにいるのはガウリイとエルちゃんの二人のみ。
  あのシルフィールの姿が見当たらない。
  「あの子ならどっかの宿に預けてきたぞ?何か足手まといだし。
    そもそもオレは一応お前さんたちの保護者をかってでている手前おまえさんをほっとけないだろ?」
  あ゛〜……
  何かそんなことをいっていたような。
  いまだにこいつはそのつもりなんかいっ!?
  「しかし、よく逃げだしてきたなぁ。たぶんあいつらにつかまってたんだろ?」
  「ふっ。それくらいどうってことないわよ。それより何でエルちゃんが一緒なわけ?」
  こんなところに幼い子をつれてきてほしくないものである。
  しかも、エルちゃんが例の品物をもっているのだからなおさらに。
  「妹さんが教えてくれたんだよ。ゼルガディスというやつにおまえさんが捕まったって」
  なるほど。
  どうやら本当にあの男はエルちゃんには何もしなかったようである。
  となれば、やはりシルフィールがいっていたことをやったのは……
  と。
  「お嬢ちゃん!」
  ……ど〜でもいいが、そのお嬢ちゃんはやめろ。お嬢ちゃんは。
  金髪兄ちゃんことガウリイが、あたしとエルちゃんを後にかばうような格好をとる。
  あたしも”それ”に気づきはしたが……
  月の光がこうこうと黒く佇む深い森。
  そしてその中に続いている一本の細い道。
  そこを低空飛行で飛んでくる影がひとつ。
  「ここはオレがくいとめる。お嬢ちゃんたちは先にいけ!」
  え〜と…
  ま、ここは素直に従おう。
  何よりあたしはちょっぴし水浴びをして体をさっぱりさせたい。
  それらはちょっとした女の子の事情である。
  「とにかく。それじゃ。エルちゃん。いくわよ」
  かけだすあたし達の背後でしばらくのち。
  ちょっとした爆発の音が響き渡ってゆく――


  「…何とかふりきったようだな」
  「だな」
  え〜と……
  状況説明してもらってもそろそろいいでしょうか??
  逃げているあたし達のあとからガウリイだけでなく何とあのゼルガディスまで一緒にやってきたのはたまげたが。
  どうもヤツに気づかれただの何だのとかいっていた所をみると仲間うちで何かあったのかもしんない。
  ちんたら走っていては追いつかれる。
  といって、あたしをガウリイが抱きかかえ、ゼルガディスがエルちゃんを抱きかかえ、
  そしてただひたすらに走り続けてはやしばらく。
  気付けば空は薄く明るくなってきていたりする。
  まあ、美容の大敵は睡眠不足。
  というわけで抱きかかえられて逃げている間に寝ていたりするあたしだったりするのだが。
  「つうか。逃げている途中で寝るなよな」
  何かガウリイが呆れたようにいってくるけど。
  あたし達がいまいるのは、街道からかなり離れた森の中。
  ついでに小さな滝があり、少々大きな声をだして話しても周囲には滝の音に消されおそらく伝わらない。
  「で?結局、何がどうなってるの?」
  至極当然なもっともなあたしの疑問。
  「ヤツが仕掛けてきたんだ。どうやらあいつは俺のしようとしていることを見抜いたらしい」
  苦々しい口調であたしの質問に答えるようにいってくるゼルガディス。
  「ヤツ?」
  予測はつくが決定的な言葉がほしい。
  「俺に賢者の石を探すように命令したやつさ」
  「へ〜……」
  ・・・・ん?
  「け…賢者の石ぃぃぃ!?」
  その言葉に思わず驚愕してしまう。
  「あいつが俺達に命じて探させていたもの。
    こうなったらいっちまうがあの女神像の中にはかの有名な賢者の石が封じられているらしい」
  え…
  「えええっ!!!?」
  さすがにそれにはあたしもびっくり!
  賢者の石。
  魔道をやっているものでその名を知らないものはまずいないだろう。
  古代の超魔道文明の産物だとか、世界を支える神々の杖のかけらだ、
  とか何とかいわれその正体についての説はさまざま。
  わかっているのはそれが魔力の増幅アイテム、ということ。
  それもすこぶる強力な。
  賢者の石が歴史上、登場したと確認されているのはわずかに数回のみ。
  つまりはおそらくそれだけ数が少ない、ということなのであろうが。
  あるいは記録ごと綺麗さっぱり消失しているか。
  とにかく、その石は登場するたびにその”時代”において多大な影響を与えているのも事実。
  実際、賢者の石をつかった一人の見習魔道士によって、
  ひとつの国が滅ぼされてしまった記述がしっかりと残っていたりする。
  ほとんど眉唾?ともおもわれる伝説にちかい品物だが。
  それが実在するらしい、とは一応知ってはいた。
  いたが…まさか、自分のもつアレの中にそんなもんがはいっていたとは……
  「けど、そんなモノを手にいれよう、だなんていったいどうして?」
  あたしの想像どおり、黒幕がレゾならば、世間の噂通りの能力と実力だとして十分すぎるほどに強いはず。
  その魔力も桁はずれのはず。
  それなのにどうして賢者の石を手に入れようだなんておもうのだろうか?
  まさか……
  「まさか、世界征服、なんていわないわよね?」
  あまりにベタすぎる。
  まあ、いくら本当に”賢者の石”を手にいれたとしても郷里の姉ちゃんあたりがさくっとどうにかしそうだが……
  「あいつが昔いっていたのは、ただ世の中がみてみたいだけ、といっていたがな」
  ?
  「世の中が?それってもしかしてレゾの目が視えない、というのに関係あり?」
  あたしのかまかけに大きく目を見開き、驚愕の表情をうかべる。
  こいつ、どうやら嘘のつけないタイプとみた。
  「…さすがはあのリナ=インバース。あいつと一緒にいながら疑っていたわけか」
  苦笑まじりにそんなことをいってくる。
  あの、というのが多少きになりはするが。
  「あんたの推察通り。俺達はレゾの下で働いていた。俺にとってあいつはあこがれであり、また誇りでもあった。
    こんな体にされてしまっても、あいつが世の人々のために役立てるのを手助けできるんだから。
    そう、自分自身に言い聞かせてきた。だが…だが、ヤツはっ!」
  うわ〜…何かかなり訳ありっぽい。
  「大いなる善のためには時には小さな悪も必要となってくる。
    俺達はその闇の部分で手助けをしていた。あいつにはいつも清くいてほしかった。
    聖者でいてほしかったから。人々の笑顔、そしてあいつの思いを叶えるために。
    …だがっ!あのくそ爺はこの俺達をだましていた!
    本当のことをいわず、尚嘘もいわずに平然と俺達を利用していただけだった!!
    ・・・・・・あいつの目は生まれつきみえなかった。あしつは自分の目を開かせようと。
    そのためだけに白魔術を習い始めたのさ。そして白魔術を極め諸国を歩いてさまざまな患者をみてまわった。
    そして…多くの人々をすくった。…自らの目を治療するための実験台としてヤツは人々に術を施していたんだ。
    しかし、他人の目を治すことはできても自らの目を開くことはできなかった。
    そして精霊魔術や黒魔術にも手をだし、
    それらと白魔法とを組み合わせてより高度なレベルの魔術を生み出そうとした――」
  ・・・・・・・・・よほど、何かあるのだろう。
  人間、饒舌になる時には理由がある。
  ひとつは、何もかもさらけだしてどうしようもない気持ちをどうにかしたいとき。
  そしてもう一つは嘘を嘘と思わせないために作り話をするとき。
  そして、人々を楽しませようとギャグをかまそうとしたとき。
  この三つの中では、このゼルガディスは一番初めの分野にはいるのだろう。
  言葉の端々にも信頼していた相手に裏切られ憎みたいのに憎みきれない。
  自分の気持ちがおいついていない様子がありありとあらわれている。
  「魔術においてヤツは天才的な成長ぶりと才能を発揮した。
    が、それでも自分の目を開かせることはできなかった。十数年前。ヤツはある術すらも完成させたらしい。
    そしてヤツが目をつけたのは……」
  ?ある術?
  「ある術って?」
  「さあな。俺も詳しくはしらん。ただ…俺の両親はそれゆえにレゾから離れた、ともきいたがな」
  ?
  レゾと何かかかわりがあったんだろうか?こいつの両親。
  「両親?」
  「あ〜。何かあの紅いやつとあんたが身内ってことか?」
  さらり。
  「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
  さらっといったガウリイのセリフにおもわず目がテン。
  「な!?」
  「って、あんた、それ本当!?」
  あきらかに驚いているゼルガディスにこれまたあたしもガウリイの言葉にびっくりぎょうてん。
  「?だって、あの紅いやつの中の人の気配とそっちのゼロロスの雰囲気同じだろ?気配も似てるし」
  ゼロロスって…こいつまだ覚えてないんかいっ!
  「…たしかに、あいつは俺の爺さんか曾爺さんにあたるらしいがな」
  ありりゃ…そりゃ、かなり複雑な事情だわ。コリは。
  身内に強大な力をもつものがいる、というのは誇らしくもあり常に比較される事を覚悟する必要がある。
  かくいうあたしも姉ちゃんに勝ちたくといろいろとやったものである。
  一番尊敬していて、そしてもっとも怖い相手。
  と、とにかく話題を変えよう。
  「それで?あなたはどうしたいわけ?
    まあ、あたしの勘でもあのレゾにそんなもんを渡さないほうがいいって告げてるし。渡すつもりもさらさらないけど」
  判った以上、姉ちゃんへの献上品に決定である。
  「俺はヤツの邪魔をしたいんじゃない。ヤツを倒したい。いや、倒さなければいけないんだ。
    しかし、今の俺では勝てない。だから俺はお前さんたちのもつ賢者の石がほしい」
  何かかなり顔がまじなんですけど。
  だけど……
  「悪いけど。渡す気はさらさらないわ」
  いくら憎んでいても嫌っていても、やはり血のつながり、というのは非情に徹しきれるものではない。
  ゆえに、彼に渡してもレゾに品物がわたる可能性は高い。
  「ま、難しい話はオレにはわからんが。少し休んだほうがよさそうだな。あんたもだいぶつかれてるんだろ?」
  …今の話が難しいって…こいつの頭の中、どうなってるんだろう?
  「ゆっくりできるときにしとかないと。なんか魔族の人も数人いるっぽいしな」
  ・・・・・・・・・・・・・・・って・・・・・・
  「…えええ!?」
  いや、さらっといまとんでもないことをいわなかったか!?
  つうかほんとなわけ!?
  「・・・なぜ知ってる?」
  警戒したようなゼルガディスの声。
  ってまじでいるんかいっ!魔族が!!
  「いや、だって気配でわかるだろ?」
  いや、わからんってば。
  こいつってばかなり謎すぎる……
  しかし、【なぜ】ということは、やはりレゾの手先には魔族もいるってこと!?
  ・・・・・・・・・何で何もしていないのにあたしはこんなことに巻き込まれたんだろうか?
  しかしまあ、ガウリイの言うとおり、疲れていてはいざというときに役にたたない。
  ふむ。
  とりあえず、二人には眠ってもらってあたしはちょっと水浴びでもしよっと♪
  人間、応用力が何よりも大事である。
  うん。
  ひとまず、隙をみて二人に術をかけ、あたしは滝壺に火炎球をたたきこみ、簡易的に温泉をつくりだす。
  さってと。
  「エルちゃん。今のうちにゆっくり体やすめましょうね」
  「うん!」
  しかし…魔族かぁ。
  …ま、まさか純魔族…とかいわない…わよね?
  でもどうしてこう厄介事がかかわってくるかなぁ?
  あたしは何もしてないのにぃぃっ!!!


                   −続くー

  
  #####################################

あとがきもどき:

薫:ちなみに、リナの一人称なのでわかりませんが。
  リナが逃げているとき、ガウリイ達の目の前にはレゾが立ちふさがっています。
  だから、ガウさん、紅いやつ、といっているわけで(苦笑
  さて、ガウさん、実は台詞の中に真実を含ませているんですけど、皆さんはおわかりですよね?(にやりv
  岩の体だったので、氷の呪縛から逃れたものの、レゾがゼルガディスのたくらみに気づいてやってきて。
  そのまま部下たちの氷を溶かして応戦しつつも、逃げだした、という設定となっております。
  ちなみに、ガウさんがさくっとリナのもとにつけたのは、いうまでもなく誘導されたわけですが(笑
  って、みなさん、もうエルちゃん、とリナがよんでいる幼女がだれかは…わかってますよねぇ(爆
  何はともあれ、ではまた次回にてv
  次回でようやく襲撃の回〜♪



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34031リトル・スレイヤーズ〜黒幕と真実〜かお 2009/5/15 22:58:11
記事番号34025へのコメント

  まえがき&ぼやき:


  さてさて、ようやく残りのノートのページ数もあとわずかv
  6か7あたりで完了しそうです。はい。
  何はともあれ、予定ではSの復活直後までいく予定。
  何はともあれいっきます♪

  #####################################


         リトル・スレイヤーズ 〜黒幕と真実〜



  あたしは人よりもやや小柄なぶん、瞬発力とスピードには自信がある。
  その分、逆に体力や持久力に関しては普通の戦士などに比べてかなり見劣りする、と自覚している。
  かなしいかな、女と男では根本的に体力の差、というものが存在するのも事実。
  ふっとその気配にて目を覚ます。
  昔の姉ちゃんの特訓でどんなに爆睡していても、意識の一部が覚醒しているので危ない気配などには敏感に反応する。
  そして目が覚めたのも先に述べたとおり、
  あきらかにこちらに対して隠しようのない敵意が向けられているのが感覚でわかる。
  眠ってからそれほど時間はたっていないっぽい。
  あたしの横ではいつ用意したのかちゃっかりと、
  ふかふかなまでの草を平な石の上にしきつめ、そしてそれをペットにして眠っているエルちゃんの姿。
  だふんガウリイあたりが用意したんだろう。
  殺気の数は一人や二人の比ではない。
  十人ちょいくらいまでならばあたしも正確に数を言い当てれられるが、どうやら数はそれ以上っぽい。
   「囲まれたな〜」
  「だな〜。じゃないっ!何のための見張りなのよっ!!」
  おもわずのほほんというガウリイに突っ込みをいれる。
  見張りをやっていたはずなのになぜにいわないっ!!こいつは!!
  「でもトロルが三十匹程度だぞ?」
  「あのね〜……」
  こいつと話していると何か脱力してしまうのは気のせいではないだろう。
  「たしかに。トロルがニ、三十匹ってところだな。レゾはきてないようだし。何とかなるだろうさ」
  こちらもまた気楽にいってくるゼルガディス。
  まったく、もう少し女の子はいたわってほしいものである。
  もうすこしくらいゆっくりと休ませなさいよねっ!
  「出て来いよ。気付かれていない、とおもっているわけでもないだろう?」
  ゼルガディスの声と。
  「決着をつけようぜ。ゼルの旦那よ」
  何か聞き覚えのある声はほぼ同時。
  と。
  「お〜ほっほっほっ!よくもやってくれたわね!リナ!」
  ・・・・・・・あ゛〜、またまたやっかいなやつが…ひとまずきかなかったことに、みなかったことにしよう。
  「ディルギアか」
  ゼルガディスのセリフに一匹の獣人がゆっくりと森の中から姿を表す。
  ほんっと二本足でたってる犬といっても過言ではないわ。
  「ディルギアよ。きさま、この俺に忠誠を誓ったのではなかったのか?」
  冷たく低い声で問うゼルガディスの台詞に対し、
  「おれが忠誠を誓ったのは”ゼルガディス”に対してでなく”赤法師レゾがつくった狂戦士”に対してだ。
    きさまがレゾ様を裏切った以上、もはやおれにとっては敵以外の何ものでもない!」
  つ〜か、この犬、何も考えてないんじゃぁ?
  あたしやガウリイがいるのにあっさりとレゾが黒幕だって暴露してるし。
  いるのよね〜。
  どこにでも一人は。
  あっさり重要なことをいわなくてもいい相手にいばっていうやつって。
  「・・・・あれ?」
  ふと気付くと寝ていたエルちゃんの姿がみあたらない。
  ・・・・・・・・・・・あ〜もうっ!
  あんな小さな女の子、トロルの一撃でもくらったらわやばいわよっ!
  「ガウリイはトロル達をまかせたわよ!あたしはエルちゃんを探すからっ!」
  何かゼルガディス達のほうはほうで勝手に盛り上がってるし。
  「おう!」
  ガウリイにトロル達をまかせ、あたしはいなくなったエルちゃんを探すことに専念する。
  ちらり、と滝のほうをみれば犬もどきとゼルガディスは戦いの真っ最中。
  しかし、見る限りやっぱりあの犬もどき…考えがない、としかいいようがない。
  派手っぽいことをして自分で自分の首を絞めている。
  ・・・・・何だかなぁ〜。
  ひとまずあたしはエルちゃんを探すのに専念するとしますか。

  しばらくのち。
  「・・・エルちゃん。そんなところで何やってるの?」
  「見物」
  「・・・・・・・・納得」
  エルちゃんをみつけたのはみつけたが、
  ちょうど滝の中ほどにある木の枝にすわってちょこんと眼下の様子を眺めていたりする。
  つうか、よくこんな小さな子がこんなとこまでのぼれたな〜、と一瞬おもうが、
  その木から地面にむけて蔦のようなものが生えている。
  子供の体重くらいならば支えられそうな代物である。
  きっとこれをみつけてのぼっていったのだろう。
  まさか小さな子供が高い場所にいるなどと誰もおもわないだろうから、たしかに安全地帯ではある。
  ふわり、とエルちゃんを抱きかかえて保護するあたしの耳に、
  「…お前もわすれていたようだな。この俺も三分の一は石人形(ロックゴーレム)だ、ということを。
    もしも剣で俺を倒したいんだったら赤竜の剣か、光の剣でももってくることだな。
    まあ、どうあがいてもおまえに俺は倒せんということだ」
  何でかそんなことをいっているゼルガディスの声が聞こえてくる。
  あたしの耳はエルフ並みに性能がよい。
  しかもその中に聞き捨てならない言葉があったので敏感に反応してしまったのだが。
  アレは姉ちゃんにしか扱えないとおもうぞ……
  アレをつかったときの郷里の姉ちゃんは…お、思い出すまい。
  トラウマになっている過去の一幕を思い出し思わずぶるりと身震いしてしまう。
  何かそのあとにいいあいつつも、犬男は何かを去り際に投げ放ち、そのまま、
  「覚えているがいい!」
  ・・・・・・・何とも月並みな捨てゼリフを残して森の中にと消えてゆく。
  ・・・・・・・・何しにきたんだ?あいつは?
  そういえば、独特の高笑いもいつのまにかきこえなくなっている。
  「・・・・・・・・・・・・・・・」
  ま、いっか。
  どうやら上から見た限り、トロル達もすべてやっつけられた模様。
  そのままあたしはエルちゃんをだっこして、滝のふもとにゆっくりとおりてゆくことに。

  「麗和浄(ディクリアリィ)」
  淡い、浄化の術が川面に広がってゆく。
  何かやたらと地面がでこぼこになっていたりするが別にきにすることでもなし。
  川にて手を洗おうとかがんだところ、ぴくりと反応するあたしの勘。
  先ほどと何かが違う。
  決定的なのは魚が水面にぷかぷかと浮かんでいる所。
  おそらくあの犬もどきが去り際に投げた小瓶かよくわからない何からしきものの何に毒か何かが仕込まれていたのであろう。
  しかし、見境がなさすぎる。
  他の動物さんたちや周囲の自然を何だとおもっているのやら。
  毒をもちいたいのなら目的のものだけに限定して使用しろっ!
  まったく。
  無関係な殺戮だけは絶対にしてはいけない。
  まあ、術のはずみとか術の影響で偶然にもまきこまれたりするのはのぞく。
  世界は調和によって保たれているのだから、それが壊れるととんでもないことになる。
  とは小さいころからあたしは郷里の姉ちゃんに聞かされて育っている。
  予断ではあるがあたしは毒の味を姉ちゃんに覚えこまされる訓練をうけているので少量の毒には免疫もある。
  「さってと。じゃ、これからのことを話しあいましょうか」
  浄化の呪文で川を元通りにして、目的通りに手をあらい気分を整える。
  どちらにしてもレゾはあきらめたりはしないだろう。
  その前に。
  「少しきくけど、この前、村にドラゴンとかつれてきた?」
  きになっていたことを聞いてみる。
  「?何のことだ?あのときはあのままひいたぞ?途中で何か大きな音をきいて気になって戻ってみたが。
    そういえば村人の姿がみえなかったが……まさか、な」
  …本気で知らないらしい。
  「あのあと、村をドラゴンが襲ってきて。さくっと倒したはいいけど村人たちが消えたのよ」
  しかもゾンビのように体が崩れはて。
  結果としてレゾの術で彼らは浄化した。
  …まあ、本当に浄化されたのかは怪しいが。
  「・・・・きえた?まさか、ヤツが何か……。いったい、ヤツはどうしたっていうんだ……
    ……昔は自ら動くなんてことはしなかったのに……」
  憎んでいるとはいっても憎みきれないのだろう。
  言葉に何ともいえない気持ちがありありとみてとれる。
  「サイラーグのことは?」
  「アレ、か。俺はヤツにまかせてほしい。といったのだが。ヤツは神官長に近づき情報を聞き出し、
    そして万が一にも情報がもれることを恐れてか一夜のうちに町を壊滅しやがった。
    ・・・それが俺のせいになっているのをきき驚いたがな。
    あいつは神官長一家を始めから殺すつもりだった。
    たまたま、その話をヤツがしているのを耳にしてな。
    エルグ神官長に進言しにいったが聞き入れてはもらえず…
    救いは俺をおいかけて瘴気の森にはいったシルフィールだけは助かった、ということくらいだが……」
  ・・・・・って、それって・・・・・
  つまりは、こいつはレゾの行いを止めようとしていたのを逆手にとられ、さらには犯人、と思われているわけ!?
  …それでか。
  この男のシルフィールをみる憐みの目は。
  彼女に真実をいっても信じないであろう。
  あたしがレゾを信用しないほうがいい、といったときですら彼女は頑固としてその可能性を否定したのだから。

  ゼルガディスを含めた逃避行。
  目指すはひとまずアトラス・シティ。
  追撃はこう何といったらいいのやら。
  午前中に二回、昼食中にも一回。
  午後からは三回以上。
  いい加減にうんざりしてしまう。
  まったく、それだけの数をいったいどこから用意しているのやら。
  トロルにコブリン、サイクロプスに狂戦士(バーサーカー)などなど。
  おちおち襲撃のおかげでふかふかのお布団で寝られやしない。
  そして…今。
  あたしたちの目の前には見慣れた顔ぶれが。
  中には初めてみる顔もいくつかある。
  まっくろいローブか何かで顔を覆っているのか、
  目だけをこちらにむけた少しばかり手の長いぼろぼろの布をまとったような老人も初顔見せである。
  あとは、昆虫人間(ワーマンテイス)にデュラハン、死霊騎士。
  ちなみに、このデュラハンに指をさされると死の呪をうける。
  という何ともポピュラーすぎる闇の生き物。
  それ以外にトロルやオーガを含め、およそ約五十。
  けっこうおおがかりな待ち伏せである。
  「たいそうなお出迎えね〜」
  おもわず呆れてしまう。
  道中、ゼルガディスがいっていたが、自分を合成獣(キメラ)にしたのはレゾなので嫌でも目印になる、と。
  あたしは一応、魔法探査を封じる術を使えはするが、
  それをやるにはまず対象となるものの魔法的な仕組みがわからなければいけない。
  つまり、ゼルガディスをレゾの目から隠すには、彼自身がどのような形で合成されたのかを知る必要性がある。
  さすがの天才のあたしでも、おそらくオリジナルの術であろうそれをさくっと解明することなどできはしない。
  時間と余裕があれば別なのだが。
  しかし、今はそんなことはどうでもいい。
  「ちょっと!ナーガ!何であんたそんな連中と一緒にいるのよ!」
  そう!
  問題はデュラハンたちの中におもいっきりなじんで混じっているナーガのみっ!
  「お〜ほっほっほっ!しれたことよ!彼らはこころよくこの私に協力してくれているのよ!
    これぞ人徳のなせるわざね!お〜ほっほっほっ!」
  あ……
  「あほかぁぁ!つうか!あんた本っ気でそっちにいて金貨をもらえるとおもってんの!?」
  というか、デュラハンたちに通じる人徳っていったい……
  「お〜ほっほっほっ!愚問ね!そんなのもらえるものもらって他のアジトも聞きだして、
    そこからもすべてお宝を没収するにきまってるじゃないっ!そしてとんずらするのよ!」
  「『おい』」
  何かあたしとナーガの言い合いにゼルガディスと犬もどきの声が同時に重なり何かいってくる。
  「何ですってぇ!?あんたお宝を一人占めにする気!?」
  「お〜ほっほっほっ!それはリナ、あなたでしょう!?」
  しかし、レゾのほかのアジト…たしかに見入りはでかそうである。
  「・・・いっとくが。レゾのほかのアジトに金目なものないぞ?
    あいつは全部研究にそそぎこんでいるはずだ。合成獣(キメラ)の実験の設備、とかにな」
  呆れた視線をナーガにむけつつも、ご丁寧に説明してくるゼルガディス。
  けっこう律儀者のようだ。
  「・・・・・・・え?」
  「あたつは他人を治すときも無償でやっているからな。いつも余分な金などもってないし。
    だいたい、村とかでも全部村人の善意で衣食住がまかなえているしな」
  そういえば赤法師レゾって世間一般での噂では見返りももとめずに善行してるってことだっけ?
  「え?」
  あ、ナーガがさらに戸惑ってる。
  「そもそも、取引をもちかけたのは俺であいつではない。ゆえに何も払わないとおもうぞ?
    よくて洗脳されて手下にかえられるのがおちだ。もしくは実験材料にされるか」
  何かさらっと何かひどいこといってない?
  ねえ?
  しかし、ナーガを洗脳…あるいみ、世の中のためにはいいかもしんない。
  「・・・・・・・・お〜ほっほっほっ!私が裏切ったようにみせていたのは作戦よ!
    見事にひっかかったわね!リナ=インバース!!」
  ・・・・やっぱしそ〜きたか。
  「この世ならざるものよ 歪みし哀れなるものよ 浄化の光もて 世界と世界を結ぶかなたにきえさらん
    浄化炎(メキドフレア)!!」
  そしてそのまま呪文を唱え始めるナーガ。
  ナーガの言葉に従い紅蓮の炎が出現する。
  悪意や敵意をやわらげ害意をもつ低級霊などを退ける術である。
  ちなみに、炎、といっても人間にはまったくもって影響はない。
  動物たちにしてもしかり。
  「ひどい!姉さん!話しがちがいますっ!」
  何かデュラハンから抗議の声があがってるぞ〜、お〜い。
  しかし、チャンス!
  「すべての力の源よ 輝き燃える紅き炎よ 炎の矢(フレアアロー)!!」
  ドッン!
  あたしはすばやく術を唱え力の限り解き放つ。
  う〜ん、絶好調♪
  ようやくあの日も終わりお腹もいたくない。
  今までふつふつ鬱積してたまったストレス解消にはもってこいのこのシュツエーション。
  炎の矢は雨のようにいくつも横なぎに降り注ぐ。
  つまりは、四方八方に炎の矢が飛び交っているこの現状。
  「むちゃくちゃするなぁっ!」
  何か犬もどきが尻尾をこげさせながら何だか抗議の声をこちらにむけてくる。
  ふっ。
  何ごとも先手必勝。
  それに何もむちゃくちゃなことなんてしてないし。
  そんな中、たった一人だけ逃げることをせずにたたずんでいる全身黒づくめの老人。
  炎にてらされて気づいたが、黒、とみえたのは実は濃い緑色の服だったらしい。
  鼻から下は白いひげのようなもので隠れている。
  ついでにいえばその瞳には黒眼がなくぽっかりとあいている二つの虚ろな目。
  ・・・うげっ!?
  「お〜、どうやら魔族の人もいるっぽいな〜」
  さらっとガウリイがそんなことをいってるけど。
  んな問題かぁぁっ!
  な、ならばこれならどうだっ!
  「烈閃槍(エルメキアランス)!!」
  そのまま口の中で次なる呪文をとなえ、老人魔族とおぼしきほうにとおもいっきりしかける。
  が。
  それは銀のムチのようなモノでかき消される。
  どうでもいいけど、ながひょろい手がさらにのびてそのままムチになってるようなんですが……
  こいつ、自分が人間ではないって隠すきはさらさらないようである。
  もっとも、魔族にそんな概念があるかどうかは不明だが。
  「このゾロムにちょっかいをだすとは。いやはや元気のいいお嬢ちゃんじゃ」
  しれっとそんなことをいいつつ、ふわりとそれは浮かびあがる。
  ちっ。
  「このリナ=インバースを相手にするなんて、そっちこそ命しらずよ!」
  まけずといいかえしつつも警戒を怠らない。
  相手が何であろうとひるんだら負けである。
  「全ての力の源よ 輝きもえる紅き炎よ 我が手に集いて光とな!」
  そのまま相手のぎんっぽい手がのびた状態のムチをさけつつ次なる術を唱え、
  手の平を胸の前であわせとびのきざまにチャンスをうかがう。
  「まさか。ファイアーボール、とかいうのではなかろうの?このゾロム相手に通用するとおもってか?」
  魔族のゾロムとなのったそれは完全に見下している。
  が、あまいっ!
  「火炎球(ファイアーボール)!!」
  そのまま術を解き放ち、
  「ブレイクっ!」
  「何!?」
  魔族の驚愕にもにたような声。
  いくつにも炸裂した炎はゾロムの周囲に炸裂し、そしてそれの視界を一時的にふさぐ。
  よっし!
  狙いどおり!
  相手が炎と爆煙に包まれたのをみてとり、ざっと間合いをとる。
  それでもムチはのびてきてあたしの足元をねらってくるが、あたしはそれをなんなく飛び越えてかわす。
  幼いころの”なわとびのリナちゃん”の名は伊達ではない。
  このスキに次の術を!
  ラティルトはつかえない。
  エルメキアフレイムも通用するかは不明。
  ならば魔竜烈火砲(ガーヴフレア)のあたりが適切か。
  紅蓮の炎に眠る暗黒の竜よ……
  そう思い次なる呪文詠唱を口の中で唱え始めるとほぼ同時、
  煙の中からいくつかの銀光があたしに向かってはしってくる。
  まずい、今呪文詠唱をとめるわけには!
  キィン!
  おもわず身構えるあたしの目の前で、銀の針らしきものが乾いた音とともに地におちる。
  「またせたな。お嬢ちゃん」
  みれば剣を片手にしたガウリイがあたしの前にとたっている。
  こいつはたしか、他の襲撃者とやりあっていたはずだが?
  あたしが魔族と対峙するのとほぼどうじ、ゼルガディスと犬。
  そしてガウリイとそのほかもろもろ。
  ついでにナーガのやつは途中で血をみて気絶中。
  いやまあ、被害が拡大するからそのほうが助かったりするんだが。
  ふとみれば、他の襲撃者たちは、皆累々と倒れており、いまだにやりあっているゼルガディスと犬もどき。
  つまりは、あたし達しかこの場にたってはいない。
  ということは、あの短い間にこいつが全部たおしたかどうかまではあたしもいちいち確認していないのでわからない。
  ないが……
  「お主もこのゾロムに逆らうか」
  ゆっくりと煙の中より再び姿を表すそれ。
  ちっ。
  おもったより目くらましの役にたたなかったか。
  まあ、基本彼らは精神世界に属しているからそれもまあ当たり前、といえば当たり前かもしれないけど。
  「わるいが。オレはこのお嬢ちゃんたちの保護者なんでね」
  たち?
  ふとみれば、いつのまにかあたしの横にはエルちゃんが。
  い…いつのまに……
  つうか、よくこの戦いのさなかで平気なもんだ。
  小さい子供ならもっと騒ぐとかしそうなのに。
  それとも、昔のあたしのように楽しんでるのかなぁ?
  もっとも、昔のあたしの場合は、その楽しみがすぐに恐ろしい訓練にとかわったが……
  それ以前に今日は高いところに移動してなかったんだ。
  「しかし。若いの。それでこのワシをきることなどできんぞ?」
  小馬鹿にしたようにいってくる。
  実際、馬鹿にしてるんだろうけど。
  言い放つと同時、魔族ゾロムから繰り出される炎のムチと銀の針。
  だが、それらをたやすくかわし、一気に間合いをつめるガウリイ。
  そしてそのまま剣が一閃する。
  早い。
  ハタでみていて太刀筋がみえない。
  ガウリイの剣技をそういやこれまでじっくりみるの初めてだったわ。
  しかし、これほどの腕をもっているとは。
  あたしがいままで太刀筋がみえなかったのは郷里の姉ちゃんとその友達くらいである。
  「みたいだな〜」
  ゾロムの言葉を何でもないようにかるくうけながしつつも、
  「でも斬れるさ」
  あっさりと言い放つガウリイ。
  おいおい、わかってるのか?
  この兄ちゃんは。
  相手は魔族。
  しかも一般に知られている亜魔族とかのレッサーデーモンやブラスデーモンとは違い純魔族。
  あたしは実は純魔族をちょっぴりしっていたりするのだが。
  その能力は洒落になんない。
  …まあ、あいつはどこか抜けていた、というか人間の常識がわかっていないからあんなだったんだろうが。
  まあ、とにかくとして。
  通常、魔族とはその身…というか、本体を精神世界にとおいている。
  核ともいうべきだろうか?
  とにかくそれゆえに普通、物理的ダメージを与えても意味をなさないのである。
  レッサーデーモンなどの知られている小物に関しては、それらが物質世界。
  つまりは、あたし達がすんでいるこの世界において器となりえる何かを得ているからに他ならない。
  たとえるならば、何の命令もださずに作れ出したゴーレムが命令をうけて動き出すかのごとくに。
  もしくは、空の器に中身をいれることにより、その器もまた生きてくる。
  そんなようなもの。
  しかし、純魔族となれば格が違う。
  ヤツラは自らの力のみで精神体を一時的に具現化させてそこに存在しているにすぎない。
  つまりは、実体のある幻のようなもの。
  そんな代物に通常の攻撃なぞききはしない。
  破魔の護符をおもいっきり組み込んだそこそこの魔法剣なら純魔族相手でも少しは役にたつかもしれないが。
  ・・・・・・しかたない。
  ドラスレ一発でケリをつけるか。
  そう決意して呪文を唱えようと身構えるとほぼ同時。
  「なら、きってみてくれるかの?できるものなら、の」
  「では、お言葉にあまえて」
  何かそんな会話をしているガウリイ達。
  …何も考えてない、というかわかってないよ、あの兄ちゃん……
  だがしかし、あたしは次の瞬間、唖然としてしまう。
  ガウリイは何をおもってか剣をパチンと鞘にとおさめ、かわりに懐から一本の針を取り出している。
  おいおい!
  「まさかその針でワシを倒す、などといいだすのではなかろうな」
  ・・・・・・・いくら何でもそこまで馬鹿ではない、と思いたい。
  「まさか。針で斬る、なんてことできるわけないだろ?」
  うちの姉ちゃんあたりはできるぞ?
  まじで。
  「なるほど。理屈じゃのぉ。ではそれでどうするつもりじゃ?」
  「こうする」
  ?
  つんっと、右手にもった針で左手で支えた剣の柄の部分をつつくガウリイ。
  たしかあのあたりは刀身を柄に固定する留め金がある場所のはず。
  もしかして柄と刀身を分解しようとしている…ことになるのだろうか?
  何かんがえてんだろ?
  何かよくわからない行動をしているがゆえに、思わず呪文詠唱すら忘れてしまう。
  そしてそのまま針を懐にしまい、
  「わかってもらえましたか?」
  「・・・・・・・・・・・・」
  わかるかっ!!
  魔族のほうもあきれてる。
  何がしたいんだ!?本気で!?
  「お若いの。おぬしのいうことはどうもいま一つ、ワシにはわからんのだがな……」
  あたしにもわかりません。
  「なら、これで!」
  いってガウリイが手にしたのは…剣。
  しかもその剣の柄の部分だけで刀身はなしっ!
  あ・・・アホかぁぁ〜〜!!
  「黄昏よりも暗きもの 血の流れより紅きもの 時の流れに埋もれし……」
  こいつははやいところケリをつけたほうがよさそうである。
  ガウリイはガウリイで剣の柄部分のみをひっつかんで、何か魔族のほうにむかって突進してるし。
  ゾロムの放った十数本の炎の矢をすべてよけて間合いをつめている。
  その反射神経はすごいとはおもう。
  おもうが…
  その様子をあきれつつ見ながらも呪文詠唱をつづけるあたし。
  それと同時、ガウリイは間合いを一気につめ――
  「光よっ!!」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・
  ・・・・え?
  え?
  えええええええ!?
  ガウリイがひと声吠える。
  思わず呪文詠唱を中断し、あたしも思わず目をみはる。
  ゾロムが硬直し、そのまま真っ向から両断された。
  悲鳴すら上げるいとまもなく、きれいさっぱりと。
  ガウリイが右手にもった剣…柄の部分しかなかったそれに光の刃が生まれている。
  「光の…剣……」
  あたしの目の前。
  ガウリイが手にしているそれは、まぎれもなくあの伝説の光の剣!!
  かつてサイラーグを滅ぼした魔獣ザナッファーすらをも倒した伝説の剣である。
  「お宝!?」
  がばっ。
  あ、ナーガが起きた。
  しかしっ!今はそれよりもっ!
  「が…ガウリイ……」
  あまりのことに呪文詠唱をやめて思わずつぶやく。
  「大丈夫だったか?二人とも」
  いいつつも剣を鞘におさめてこちらを振り向いてくる。
  そんな彼のもとにだっとかけよっていき、そのままガウリイの顔を見上げて立ち止まり見上げ…
  「ガウリイ…その剣。ちょうだいっ!!」
  こけけっ。
  なぜかガウリイがかなり大袈裟にその場につっぷした。
  そんなことはどうでもいい。
  今はとにかく光の剣を手にいれることのみをかんがえねばっ!
  「ね!お願い、それちょうだい!ね、ね!」
  「お〜ほっほっほっ!ぬけがけは許さなくてよ!リナ!それは私のものよ!」
  気絶から立ち直ったナーガまで参加してくる。
  しかぁっし!
  「ガウリイ!ナーガなんかにあげても無駄よ!ちゃんとお金は払うからっ!
    五百!五百でそれうって!!」
  「お〜ほっほっほっ!なら私は五百十よっ!」
  「何の!五百五十!!」
   あたしの値段交渉にナーガが割ってはいってくる。
  つうか……
  「あんたはお金もってないでしょうがっ!ええいっ!おもいきって五百五十五!!」
  う〜ん、あたしって太っ腹。
  「あ…あのなぁ。そんな金額じゃ細剣(レイピア)一本かえないだろ!?」
  あたしのだした値段にそんなことをいってくる。
  「んじゃ、五百六十!」
  「あのな〜……。それに、どこの世界に光の剣をそんな値段で売り渡す馬鹿がいるっていうんだ……」
  いって何か溜息ついてるし。
  「ここにいる」
  「おまえな〜」
  何をいう。
  自分の払うお金はたとえ銅貨一枚でも大金である。
  まだ銅貨ででもそれだけ払う、といっているのだからあたしとしては大譲歩。
  別に誰も、金貨で、とはいっていないので別にだましてなどはいない。
  「ちょっと!リナ!ずるいわよ!」
  「はやいもんがちなの!」
  「だってお宝よ!お宝!」
  それもとびきりの、がつく。
  「あ〜の〜な〜!あたりとも!とにかく、これはオレの家に代々伝わる大事な家宝の剣だ。
    いくらお前たちがお金をつんだって売ってやるわけにはいかん!」
  ふむ。
  「じゃあ、あたしん家で代々伝えてあげるから!タダでちょうだい!それならいいでしょ!ね!ね!」
  ないすアイデアv
  我ながらさすがと褒めざるを得ない。
  「お〜ほっほっほっ!リナの家なんかより私の家のほうがはるかにましよ!ありがたくもらってあげるわっ!」
  「ナーガの家のほうがあやしいでしょうがっ!だからあたしにちょうだい、ね!」
  「あほかっ!どういう理屈だぁ!?とにかく売らないし、やるわけもないだろ!?」
  ちっ。
  なかなかしぶとい。
  しかぁっし!
  あきらめてはリナ=インバースの名がすたるっ!
  「お〜ほっほっほっ!光の剣が家宝ってことはあなた、ガブリエフ家のものでしょう?
    光の剣を巡ってお家騒動が絶えないっていうじゃないの!
    そのゴタゴタで本家の後継ぎの長男が死に次男が嫌気をさして剣をもって飛び出した。
    それくらいの常識、誰もがしっているわよ!
    私の家のようなしっかりした場所で管理すればそんなこともおこらないわよ!お〜ほっほっほっ!」
  …出た。
  ナーガのよくわからん情報網の知識。
  これが正確だったりするんだよなぁ。
  怖いことに。
  「ちょっと!こいつの家なんて絶対にまともじゃないわよ!
    そのてん、うちは商売をやってて女王様の信頼もあるわっ!!」
  いいつつ、がしっとガウリイのソレをつかむ。
  まけずとナーガもつかんでくるが。
  まだきちんと刃と柄をひとつにしていないらしく光の剣の本体ともいえる柄の部分をあたしとナーガが奪い合う格好になる。
  そんなあたし達の間に割って入り、
  「い…いい加減に…」
  ガウリイの声と。
  「ガウリイ様!!」
  うや?
  何か聞き覚えのある声が。
  「って、リナさん!?何をなさっているんですか!?それにそっちのあなた!
    さてはゼルガディスの仲間ですね!ガウリイ様に危害を加えようとは許せません!」
  「お前らいい加減にしないかっ!!」
  え〜と、何だかおもいっきりはやとちり?
  何か頭上でガウリイがわめいているけどさくっと無視。
  「・・・やれやれ。おまえら。いい加減にしとけ」
  何かそんなあたしたちにあきれた声が投げかけられてくる。
  みればゼルガディスの後に二人ほど新たに加わり人数が増えていたりする。
  その声をきき、シルフィールはきっとそちらに顔をむけ、
  「リナさんを助けて…罪の償いのつもりですか?たくさんの人を傷つけ優しかったわたくしのお父様の命を奪い。
    サイラーグの町を滅ぼして罪のない村人たちを殺して…っ!!」
  そういうシルフィールの表情はいかにもいたいたしい。
  え〜と……
  「ナーガ。ひとまず休戦よ」
  「ふ。仕方ないわね」
  さすがのナーガも少しは場の雰囲気がわかったのかあたしの休戦申し出に同意してくる。
  その背後から近づいてきている気配にナーガも気づいたのかもしんない。
  今はどちらが所有するか、よりも先にどうにかしなければいけないことができた。
  それゆえの協定。
  「別に。自分の罪から逃れようとはおもわない。憎いのならば俺をどうする?」
  こらこら。
  ゼルガディスのやつもかなり投げやりだし。
  「あなたはっ!!」
  そんなゼルガディスの声にさらにシルフィールが何か言いつのろうとしてるけど。
  「やれやれ。ようやくおいつきましたよ」
  シルフィールの声をさえぎり聞こえてくる別の声。
  シルフィールの背後にたたずむ紅き影。
  くっ。
  「「「レゾっ!!」」」
  あたしとゼルガディス、そして新たに加わった二人の男性の声が重なる。
  ついに黒幕の登場…ってか。
  「シルフィール!こっちへ!それに誤解してるようだけど、
    サイラーグの事件もあの村のこともこいつの仕業じゃないわよ?」
  「嘘ですっ!」
  やっぱし聞く耳なんぞもっちゃいない。
  思いこみもここまでくると……
  しかし、今何より危険なのはシルフィールである。
  「それがどうやら嘘じゃないみたいなのよね。ねぇ?赤法師レゾ?」
  「・・・・・え?」
  シルフィールはあたしの言葉が理解できないのかかるく戸惑いの表情を浮かべる。
  「おやおや。さすがは噂に名高いリナ=インバース殿。いつから気付いていました?」
  否定もせずににこやかにこちらに向かっていってくる。
  「あからさまに怪しすぎるのよ。あんたは。それに毎回襲撃をうける前後にいなくなっていたしね」
  おそらく何か指示をだしていたのだろう。
  「レ…ゾ…さ…ま?」
  状況がわかっていないらしいシルフィールの戸惑いの声。
  「レゾ。どういうつもりだ?何で自分で手を下したサイラーグの神官長エルグの娘と行動をともにし旅をして、
    どうしてこいつらに近づいた?この俺に女神像を奪うように命令しておきながら」
  ゼルガディスが警戒を解かずに固い声でといかける。
  「ああ。そのことですか。だって自分たちが本当は何をもっているのか教えてさしあげないとかわいそうでしょう?
    リナさん達は女神像の中に賢者の石がはいっているとは知らなかったようですしね。
    それに、死にゆくものに正確なことを最後におしえてあげるのは悪いことではないですしね」
  さらっと何ごともないように何かとてつもないことをいっているレゾ。
  つうことは、やっぱりレゾはことがすんだらあたし達も始末する気だったわけか。
  予測はしてたけどね……
  「ゼルガディス。力を与えたこの私を裏切り私を倒すためにあなたが賢者の石を狙っていたことくらいお見通しなのですよ。
    ですから、あなたにはこのシルフィールさんに大人しく捕まってもらおうとおもったんですけどねぇ。
    そのためにあなたがやったように思いこませたんですけどねぇ」
  おいおい。
  未だに理解できないのか、シルフィールは固まったまま。
  すっとシルフィールの真後ろにいつのまにか移動したレゾが手を動かす。
  その手はシルフィールの首元に。
  キラリ、と光る何かがみえる。
  ということは、おそらく針か何かがシルフィールの首元に付きつけられているのだろう。
  「レゾ!おまえはどうかしている!
    俺は…俺達はお前の目が視えることにより、よりたくさんの人々が救われる。
    そう信じて悪事も率先して、自ら手を汚してきた!しかし、きさまは…っ!」
  ゼルガディスの血を吐くような叫び声。
  「レ…ゾ…様?嘘。ですよね?冗談だといってくださいっ!!」
  シルフィールはもはや涙声。
  「だってあなたはわたくしを助けてくださいました。悪い冗談だ。そうおっしゃってください!」
  どこまでもシルフィールはレゾを信じたいらしい。
  ほんっと根本的に人を疑うことのないお嬢様だったんだな…この人……
  「そういえばいっていませんでしたっけね?
    あなたを本当の意味で助けたのはそこのゼルガディスですよ。
    私はエルグ殿を始末したあとサイラーグの人たちすべてを滅するつもりでしたからね。
    それにこの子は反発しましてねぇ。こともあろうに私のことをエルグ殿につげたり、
    町の人たちに手のものを使って避難を進言したり…と。本当、ききわけのない子ですよ」
  やれやれ、といった風に何゛てもないことのようにそんなことをいってるし。
  こ…こいつっ!
  「ああ。動かないでくださいね。それと。呪文を唱える気配をとらえたら私はこのシルフィールさんを殺しますよ?
    ああ、でもそのほうが彼女にとっては幸せかもしれませんねぇ。
    何しろ父親を殺した同じ人物に殺されるのですから」
  にこやかな笑みを崩さぬままでタチのわるいことをいってくる。
  「それのどこが幸せなのよっ!!」
  今のあたしにできるのは言い返すことだけ。
  「モノは考えよう。ですよ。彼女にはもう帰る場所もないのですよ」
  彼女の故郷のサイラーグはすでに壊滅状態、とはきいたが……
  「それはあんたがサイラーグを滅ぼしたからだろうがっ!!」
  「私もたかが爆裂陣(メガブランド)一発で綺麗にカタがついて楽でしたけどね」
  ゼルガディスの叫びににこやかに答えるレゾ。
  つまり、爆裂陣一発でサイラーグを壊滅させたわけだ。
  こいつは。
  やはりこいつはケタが違う。
  魔力の桁が格段に違うのがその言葉でもわかる。
  「そんな…そんな……」
  がくり、とシルフィールの体から力が抜けるが、それを片手で支えるでもなく、
  そのままシルフィールの体をふわり、と何も唱えずに浮かばせる。
  そしてあたしたちにもはっきりわかるように、
  シルフィールの首筋にハリのようなものをつきつけているのをよくみえるようにと見せてくる。
  「どうして…では。ではどうして!
    途方にくれてサイラーグの跡地で呆然としていたわたくしを助けてくださったんですか!?
    どうしてっ!お父様や町を滅したのに…どうしてわたくしだけっ!!」
  さすがのシルフィールも当人の口からここまであっさりと肯定されれば認めざるを得ないらしい。
  …だから信じるなってあたしは忠告したのに。
  シルフィールの叫びはもはや血の叫びに近い。
  「簡単なことですよ。
    女神像を手にいれるのに”サイラーグの巫女頭”であるあなたがそばにいると誰も私を疑わない。それに」
  ?
  それに?
  「それに。何なのよ。あんた最低ね」
  ナーガもあまりの身勝手さにむなくそわるくなっているのか声に怒りを含ませつつもいっている。
  「ひとは、信用している人に裏切られたときに強い感情を向けてきますからね。
    私にとってそれはとてもここちいいんですよ。視えない目でもわかるほどの強い思い、ですからね」
  感情、がここちいい?
  何かがひっかかる。
  「ほんと、最っ低ね」
  ナーガがいうが、それはあたしも今回ばかりは同じ意見。
  「残念なから。楽しいお仲間ごっこはもうおしまいです。さあ女神像をこちらへ」
  いつのまに取りだしていたのか、エルちゃんの手にしっかり握られている女神像。
  シルフィールをこのまま見捨てるのも後味がわるすぎる。
  エルちゃんから像をあたしがうけとると、
  「よせっ!」
  強いゼルガディスの制止の声。
  「おやおや。ゼルガディスにしてはずいぶんと冷たい言葉ですね。
    せっかくあなたが助けた命ですよ?このシルフィールさんは」
  レゾは淡々と言い放つがシルフィールの心情を思うと何といっていいのやら。
  だから!
  あたしはあれほどレゾを信用するなっていったのにっ!!
  きちんと忠告したのにっ!
  これだから世間知らずのお嬢様は…ほんっとに……
  「ふざけるなっ!女神像を渡せばお前は魔王をよみがえらせる!
    予言が伝わっていたから、というだけの理由でお前はサイラーグを滅ぼした!」
  ・・・予言?
  「像をもって逃げてくださいっ!」
  そんなことを思っていると、シルフィールが声をかすれさせつつも、
  それでいて何か決意をこめた力づよさをこめていってくる。
  「ほう。自分はどうなってもいい。と。いやはや。
    あなたは本当にエルグ殿ににていますね。知っていますか?
    彼も私に殺されるその直前まで『世界を闇に閉ざすくらいならば死を選ぶ』といっていたんですよ?
    まあ、あまりに強情なので洗脳して聞きだしたあと、始末しましたけどね」
  にこやかに笑顔でいう台詞かっ!
  本っ当、腹がたつ。
  もし人質になっているのがシルフィールでなくてナーガとかなら問答無用で攻撃呪文をたたきこむのにっ!
  「・・・わたくしは、自業自得です。そこのリナさんが忠告してきたときもきく耳をもちませんでした。
    わたくしは予言の”力あるものの心闇に堕ちるとき”という言葉を、
    ずっとゼルガディスのことだとおもっていました。でも……」
  うや?
  どっかで聞いたようなフレーズ。
  はて?
  「レゾ。聞いてもいいかしら。あなたはいつでも女神像を奪えたはずよね?
    たとえばあんたを頭っからしんじきっていたシルフィールを利用でもしたら」
  実際、シルフィールと同室のときもあったりもした。
  「確かに。力づくで奪うこともできたのでしょうけど。それではあまり面白くありませんしね。
    私とすればあなたと表きってやりあうのは避けたかったですし」
  ・・・・・・・あたしの家族のことを言外にいっているのかもしんない。
  「それに。共に行動していれば、時が満ちたときに得られる”心”がより大きいですしね。
    知っていますか?信頼のあとにくる絶望と虚無感。そして恐怖。
    それらを感じるのがどれだけ視えない私の目にすらわかるほどくっきりとその光景を視させてくれるのか」
  心?
  またまた何かがひっかかる。
  絶望と恐怖ってまるで…まるで……
  「どうして…どうしてなのですか!?どうして!赤法師レゾ様は人々のためその力を役立ててきた。
    そんな立派なあなたがどうしてっ!」
  どこかですべてが嘘、といってほしいと願うシルフィールの気持ちがその声にも現れている。
  「・・・・・・・うんざり。なんですよ」
  うんざり?
  「・・・私はかつて、私の目を開かそうといろいろやりました。そしてその実験として多くの人々を救ってきた。
    結果として、多くの人々を私は救った。そして人々に感謝されるすばらしさを知り、
    私の目がみえればもっとたくさんの人々を救える。世の中を正しく導くことができる。
    ・・・・そう、本当に私はかつてはおもっていたんです。
    しかし、そのためには…大いなる善のためには小さな悪も必要となってくる。その矛盾……」
  綺麗ごとだけでは生きてはいかれないのが世の中。
  「・・・俺達は、常にレゾには聖者でいてほしかった。だから必要悪の部分をうけもっていたんだ……」
  蚊のなくようなゼルガディスの声。
  彼にとってレゾはとても偉大で、しかも自慢できる存在だったのだろう。
  あたしの郷里の姉ちゃんとおなじくらいに。
  「しかし!現実はちがった!私が苦しんでいる人々をすくっても、金持ちは貧しい人々を踏みにじり!
    権力者は力なき人々をしいたげる!武器を持たぬものたちは力をもたぬ人々を傷つける!
    こんな…こんなくさった世界は滅ぼすべきなんですっ!
    だからこそ、私は…私は魔王を復活させ一度世界をまっさらな状態にして誰もが幸せで暮らせる理想郷をつくる。
    そして、その為にどうしても必要なのが賢者の石なのですよ」
  そういう…ことか。
  「こんな世界。たしかにそれはみとめる。力をもとめて身うち同士ですらいがみあい、
    血をみることもよくある世の中だ。だけど、だからといって世界すべての人々がみなそうじゃないだろ!?」
  珍しくガウリイが会話に割って入ってくる。
  「そうよ!力あるものはその力を正しくつかわねば、力によってその身を滅ぼす。
    私のお母様がいっていた言葉よ。。そしてお父様は力をもつものがもたざるものと協力し、
    本当の意味で弱い人々が平和に暮らせる世の中をつくる。そのためにいきている。
    生き続けるのはその目的の向けての戦いという名の旅だって、そういっていたわ。
    あきらめたら何もかもおわりってね!」
  へ〜。
  ナーガの両親にしてはかなりまともなことをいいきかせていたんだ。
  呪術の基礎や毒の味など教育の一環として教えていた親の言葉とは思えない。
  しかもこんな娘に育てた親の言葉とはとうてい信じられない。
  「あなたたちにはわからないでしょうね。心から絶望したことなどない人には。
    さあ、女神像を渡してください」
  「渡してはだめですっ!」
  つうっと、シルフィールの首元に流れる紅い筋。
  「   ・・・・っ。わかったわ」
  「リナさん?!」
  「おいっ!!」
  このまま見殺しに、なんてできはしない。
  いくら世間知らずのお嬢様でも、彼女には罪はないのだから。
  彼女もまた被害者、なのだから。
   彼女の行動がその被害を拡大した、としていたとしても、である。
  今は人質を解放させるのが何よりも優先!
  「ナーガ。しかける準備しといて」
  「まかせて」
  こういうときのこいつのはちゃめちゃぶりは役にたつ。
  ナーガの術で混乱した隙ならばこちらにもまだ勝機はあるっ!
  「像はここにおくわ。シルフィールと向寒よ」
  「いいでしょう」
  「おい。よせっ!」
  ゼルガディスが止めてくるが、今はシルフィールの安全が優先事項。
  シルフィールの首から長い針のようなものが引き抜かれるのと、
  あたしが像を手渡しシルフィールをぐっとひっぱるのはほぼ同時。
  針はどうやら親指とおなじくらいの長さでシルフィールの首の中にもぐりこんでいたらしい。
  よくこれであれだけ話せた、ともおもう。
  それだけの技量をレゾを持ちえている、という証拠である。
  「氷の矢(フリーズアロー)!!」
  それとほぼ同時。
  背後からきこえてくるナーガの声。
  どうやら相手を氷づけにするつもりらしい。
  ナーガにしてはめずらしくまとも!
  …あたしとすれば、爆裂陣(メガブランド)か石霊呪(ヴレイワー)あたりを期待したのだが。
  もしくは魔王竜召喚か。
  こ〜いうときに限ってまともな術をつかうなよな……
  しかし、その氷はレゾにたどり着く前にばちんとはじけ消える。
  「たしかに…たしかに間違いないっ!」
  一瞬、おもわず目を疑ってしまうのは仕方がない。
  レゾの手にした女神像はいともたやすく砕け散る。
  魔力を封じる効果をもつオリハルコンが、である。
  「おお!これよ!まさしくこれよ!」
  レゾの口調が何やらかわる。
  その中に邪悪な歓喜がみてとれる。
  オリハルコンの像の中からでてきたのは一つの小さな黒い石っぽいもの。
  石炭の親戚?
  ともおもえる小さなソレがどうやら賢者の石らしい。
  どうやら石の力がレゾの魔力に呼応して魔法では砕けるはずのないオリハルコンをも砕いたらしい。
  くっ!
  「光よ わが身に集いて 閃光となりて 深遠なる闇をうちはらえ!烈閃咆(エルメキアフレイム)
  すかさず呪文をとなえてレゾに解き放つ。
  「母なるもとの 無限なる大地よ 地撃衝雷(ダグハウト)!!」
  ナーガも続けざまにとなえているが。
  ナーガの言葉に従い、大地が脈動する。
  大地が水面のごとくに揺れ動き、激しくなみうつ。
  そして大地は無数の錐と化し、そのまま針山のごとくに波となりレゾのほうにとむかってゆく。
  が。
  ピタリ。
  あたしの術もナーガの術もレゾにたどり着く前に寸止めされそのままそれらは霧散する。
  それらをレゾは何の呪文を唱えることもなくやってのけているのだ。
  いや、レゾの魔力にこちらの魔力が及ばずにかき消されているのだろう。
  「――まさかっ!?」
  ふと横からきこえる短いシルフィールの悲鳴にも近い叫び。
  みればレゾは迷うことなく手の中のソレを飲み下す。
  …何を?!
  ごうっ!
  突然、強い風が吹きつけてくる。
  思わずマントで顔を覆う。
  それと同時にこみあげてくる何ともたまらない吐き気。
  風、ではない。
  吹き付けてきたのは物質的な力さえ伴った強い瘴気。
  その瘴気の渦の中心に一人、
  レゾが立ちすくみずっと嘲笑している。
  それに対し、何かナーガがしかけたのか青白い光がレゾを包み込むる
  が、ただそれだけ。
  「おお!見える!みえるぞ!」
  歓喜もにたその声。
  そして。
  「…今こそよみがえれ!赤眼の魔王(ルビーアイ)・シャブラニグドゥよ!!」
  レゾの高々とした声が周囲に響き渡ってゆく……


                   −続くー

  

  #####################################

あとがきもどき:

薫:さってと。ようやくSさんの復活ですv
  あと面倒なのは戦闘シーン。でもまあエル様いるし(まてこら
  一番気の毒なのは誰、なんでしょうねぇ?
  心を裏切られたという点ではシルフィールかもしれませんけど。
  しかし、ひとの忠告をきかなかったのもまたシルフィールなわけですし。
  やはり、かの御方にきづいていないSでしょうねぇ…きっと(苦笑
  何はともあれ、ではまた次回にて♪




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34032リトルスレイヤーズ〜赤眼の魔王・シャブラニグドゥ〜かお 2009/5/15 23:08:01
記事番号34025へのコメント

  まえがき&ぼやき:


  ちなみに、前回のナーガの術。
  浄化炎(メギドフレア)か浄化結界(ホーリィブレス)かどちらか悩んだ挙句に無難な浄化炎にv
  いや、浄化結界だと一日一回、という使用制限があったので(笑
  ちなみに、ノートのほうは浄化結界でかいてました(こらこら
  それに、レゾが使ってますしね。ブレスの方は村人たちに対して(まて
  なのでかぶりを懸念してひとまず炎のほうに〜


  #####################################


         リトル・スレイヤーズ 〜赤眼の魔王・シャブラニグドゥ〜



  ・・・・・・・・・あたしは生まれて初めてそれをみた。
  おそらくこの場にいる誰もがそうだろう。
  それぞれが息をのむ音が聞こえてくる。
  目の前でひとが異質のものへと変化してゆく。
  ひらいたレゾの瞳に封じられしもの…それは、紅玉のような血のような色をした一対の瞳。
  ごとり、とレゾの頬の肉がそげおちる。
  腐った匂いと瘴気とで息をするのもやっと。
  「何!?」
  誰かの叫び声。
  声が男のものであるからして、この場にいるゼルガディスか、ガウリイ。
  もしくはゼルガディスの仲間らしき二人のうちの誰かの声だろう。
  ごそっと次には額の肉もそげおちる。
  …ここにいたり、あたしは嫌々ながら確信してしまう。
  レゾの中に封じられていたソレの存在を。
  今やレゾの顔は目の部分に紅玉をはめ込んだ白い石の仮面と化している。
  そして全身を覆うローブも又、硬質の紅い何かにかわりゆいている。
  「「・・・まさか・・・そんな……」」
  ゼルガディスとシルフィールの呻きはほぼ同時。
  おそらく二人は気づいたのだろう。
  赤眼の魔王・シャブラニグドゥがこの地に再び再臨したことを。
  「こ…これは、本格的にまずくない?」
  さすがのナーガもこの状況に危機感を抱いたらしい。
  周囲に立ちこめている瘴気はさらに濃さをましている。
  「…逃げろ」
  ゼルガディスが固い声で部下たちらしき人物に命じているが、
  「いえ。おともいたします」
  中年風のたしか、ロディ何とかいっていた剣士がそんなことをいっているが。
  はっきりいって普通の剣士や魔導師では太刀打ちできる相手ではない。
  「じゃ、お言葉に甘えて…」
  「あんたはにげるんじゃないっ!!」
  どさくさにまぎれてソンザラしようとしたナーガのマントをひっつかむ。
  こいつはぁっ!
  一人だけ楽をさせてたまるかっ!
  ちなみに、あたしもまた瘴気の風におされてか、ナーガたちやゼルガディス達とおなじ位置にとたっている。
  ふとみれば、ガウリイのうしろにちょこんとエルちゃんの姿が垣間見える。
  ・・・よく平気だなぁ。
  あんな小さい子が、こんな濃い瘴気の渦の中で……
  「い、いやねぇ。リナちゃん。私、逃げようとなんてしてないわよ。ただちょっとお花畑に……」
  「見苦しい言い訳すなぁっ!」
  こんなやつでもこのナーガ。
  なぜか白魔法や精霊魔法の使い手なのだ。
  その暴走率はともかくとして。
  今は藁をもつかみ、猫の手もかりたい状況なのだから逃がしてたまるかっ!
 『このレゾという男。みごとに我の役にたってくれたな』
  そういうレゾの声はもはやレゾのものではなく別のもの。
  「あんた…レゾを内側から操っていたのね?」
  むせかえるほどの瘴気が渦巻いている。
  空も暗雲に覆われ、周囲の木々もあっという間に立ち枯れる。
  『ヤツの弱き心が我が声にこたえたまでのこと。ひととはおろかなものでその欲によりその身を滅す。
    …愚かな人間よ。すべては我の仕組んだこととはしらず、
    本気で今ある世界が滅べば新しい世界が訪れる、と信じてな』
  かつてレゾであったそれが口を開く。
  その口調すべてがもはやレゾのものではない。
  「・・・では。レゾが治療した人々がその翌日、盗賊に村ごと責め殺されたり。
    病を治した村に領主が無理難題をおしつけて村人たちが死をえらばざるを得ない状況にしたり・・・
    …すべて、すべてキサマがレゾの心をくじけさせるためにやったのか!?」
  ・・・んなこともあったんかいっ!
  そりゃ、レゾがひねくれるのもわからなくもない。
  ないが……
  ゼルガディスの声におもわずゼルガディスと、かつてレゾであったものを見比べてしまう。
  『人、とはおろかなものよ。我が力をうけて欲深いものはその欲を強くしたにすぎん。
    ……さて、おしゃべりはここまでにしておこう。汝らには選択の余地を与えよう。
    選ばせてやろう。好きな道を』
  そういう姿はもはやレゾにあらず。
  ゆっくりとその姿は巨大化しており、レゾであったものを核としてそこに巨大な何か、が出現している。
  『この我に再び生を与える手助けをしたそのささやかな礼として。
    この我に従うのならば天寿を全うすることもできよう。
    しかしもしもそれがどうしてもイヤだというのであれば仕方がない。
    水竜王に動きを封じられた北の魔王、もう一人の我を解き放つ前に相手をしてやろう。選ぶがよい。好きな道を』
  とんでもないことをいいだすし。
  こいつは。
  北の魔王を解き放つ。
  それはとりもなおさずに世界を再び破滅に導く、といっているのと同意碁。
  今、この地には魔王の腹心達により結界が張られ他の竜王達の手助けは期待できない。
  そして、【魔族】そのものの存在を否定しているお偉方は対策をとっているはずもない。
  よくて戦力になりそうなのはうちの姉ちゃんとゼフィーリアの女王様くらいだとあたしはふんでいる。
  世界の破滅。
  それはすなわち、生きているものたちすべてに死を宣告しているに他ならない。
  同じ死ぬなら綺麗に思い残すことなく死にたい。
  そう思うのはひとに限らず、ほとんどの命ある生物ならばそうだろう。
  かつての本体ともいえる【魔王】の力より、七分の一に削がれてはいるが腐っても魔王。
  その力はおそらく生半可なものではない。
  人、でしかない器のあたし達には抗えない。
  …普通は、そうおもう。
  しかし人間、あきらめたらそこで最後。
  「何をたわけたことを!!」
  きちんと事態を理解しているのかいないのか。
  たしか元ミイラ男が声を張り上げる。
  いつのまにか包帯はとりはらっているようである。
  まあ、魔導師なんだからけがくらい自力でなおせなきゃ嘘だしね……
  「おごるな!お前が時間の裏側に封印されていた間。人間も進歩している!
    旧時代の魔王などこのゾルフが片づけてくれるっ!!」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・り、理解してないいぃっっ!!
  おもわず頭をかかえてしまうあたしは間違っていない。
  絶対に。
  ゾルフはそう言い放ち、たかだかと両手を振り上げ、
  「黄昏よりも暗きもの 血の流れよりも紅きもの 時の流れに埋もれし 偉大なる汝のなにおいて」
  いきなり呪文詠唱をはじめていたりする。
  って、この術は!?
  竜破斬(ドラグスレイブ)!?
  あんな三流魔道士でしかない、とおもっていたミイラ男がドラスレを使えるとは!
  それで、前、理論を理解してないけど使えるとか何とかいってたのか。
  ゼルガディスは。
  ようやく一つの謎がとけた感じが否めない。
  しかし……
  「ムダよっ!!」
  「やめなさい!ムダよ!」
  「ムダですっ!」
  ナーガとあたし、シルフィールの三つの声がきっちし重なる。
  しかし、あたしたちの叫びなんかまったくききはしない。
  『…ほぅ』
  魔王はあたし達の声をきき、面白そうな感心したような声をだす。
  「よせっ!」
  ゼルガディスが制止の声をかけるが、時すでにおそし。
  「竜破斬(ドラグスレイブ)!!」
  してやったり、という表情の元ミイラ男。
  今はもう包帯を巻いてはいないけどミイラ男で十分である。
  本来ならば大爆発が起こるこの術。
  が、まったくその気配は皆無。
  当然といえば当然なんだけど。
  「な…何!?」
  驚愕したようなミイラ男の声。
  ほんっきで理解してないんだ…魔法論理…こいつって……
  魔王の手の中にそのままにぎられている紅き球。
  『愚かな。我が力で我を滅しようとは。所詮は人間。考えがないな。…これはかえすぞ』
  「にげろ!ゾルフ!」
  魔王の声をきき顔色を変えてもう一人の男が本能的に叫ぶ。
  魔術を使用しないっぽい剣士ですら本能的に気づいたっぽいのに、
  しかけた当の当人はその場にたちつくしたまままで理解ができない、という表情でたっている。
  「・・・ちっ!何でもいいからはやく!」
  剣士はしたうちし、ミイラ男…ゾルフ、と呼んだ彼のほうにむかってかけだし、
  そのままがっと手をつかんでその場から駈け出してそこから離脱しようとする。
  が。
  ごうっ!!
  その瞬間。
  炎の塊が二人を飲み込み、二人の姿は炎の中に塵となりつつきえてゆく。
  「きゃぁっ!!」
  シルフィールの悲鳴がこだまする。
  「ロディマス!ゾルフ!!」
  ゼルガディスが叫ぶ。
  ――違う……
  炎の音にまぎれて誰かの声がしたような…気のせいか?
  『愚かな。力のなんたるかわからぬ愚か者をかばうとは。
    愚かな虫けらとおまえたちも同じ道をたどるか?答えをきこう』
  魔王の感情のこもっていない、淡々とした問いかけ。
  むしけら…ですって?
  おもわずそのことばにぴくりと反応してしまう。
  そりゃ、たしかにあのミイラ男はあきれるくらいバカだとはおもっていた。
  剣士のほうはよくしらないけど、しかし身を挺して仲間をかばおうとした。
  しかしその行為をおろかだなんていってほしくないし、断じていわせない。
  「おあいにくさま。あたしは誰の手先にも配下にもなるつもりはないわ。レゾ=シャブラニグドゥ」
  ぴくり。
  魔王の体が小さく震える。
  みのがしてしまいそうなほどにものすごく微弱に。
  「わたくしもいいなりになんてなりません!サイラーグの町とお父様のためにも!
    わたくしはあなたを止める責任があります!」
  震えつつも何とか足をふんばりそういうシルフィールの顔色は真白。
  どうやら青を通り越して完全な顔面蒼白となり果てている。
  『ほう。自ら死を選ぶか。やはりひととはおろかだな』
  完全に馬鹿にしたような魔王の声。
  「だ〜れがしぬつもりっていったかしら?死ぬつもりで戦うなんてそれこそ馬鹿げてるわよ。
    意地や使命感で戦っても意味がないわ。そんなんで死んだら終わりだしね。
    でも、戦うからには絶対に勝つわよ!あたしは!
    あんたのことだからどうせ『負けるとわかっているけど戦いを挑んで絶望感の中でしぬ』
    その時の負の心を喰らうつもらでしょうけど、そうはいかないわよっ!
    だ〜れが、あんたたち魔族の餌にすきこのんでなるものですかっ!」
  魔族の望みは滅び。
  そしてまた、彼らがその力の糧とするものは負の心。
  つまりは畏れや不安、絶望と恐怖。
  それらすべては魔族の糧となり更にヤツラに力をつけさせてしまう。
  「あんたたちも!い〜い!?たとえ勝てる確率が一%だとしても!
  負けるとわかっているけど戦うなんてそんな後むきの根性と姿勢で戦えばその一%もゼロになるのよ!
  弱気は逆に相手にスキをみせるようなものよ!」
  どうせゼルガディスは今、魔王の攻撃で死んでしまった二人に申し訳ないとかで死ぬ気で戦おうとしているんだろうし。
  ガウリイのほうは…よくわかんない。
  シルフィールは責任感から命をかけても無駄だとおもっているが何とかしよう、というのがみえみえ。
  ナーガは…どうなんだろ?
  「ふっ。たしかに。魔族はすべてのいきとしいける者たちに死と恐怖と絶望をもたらしふりまくものたち。
    リナの言うとおり、私も負ける気なんかこれっぽっちもないけどね!お〜ほっほっほっ!」
  高笑いをしつつもそういうナーガの額にはしっかりと脂汗とも冷や汗ともいえないものがうかんでいる。
  …つまりは、見栄でいってるわけか。
  「・・・なあ、リナ?」
  「何よ?」
  そんな中、なぜかガウリイがあたしに何かをきいてくる。
  「何であいつにさっき術がつうじなかったんだ?」
  ・・・・・・・・・・・・・
  ごけっ。
  おもわずおもいっきりガウリイの質問にこけそうになってしまう。
  こ…こいつはぁぁ…状況を理解しているのか!?
  「あのねぇ。そもそも、相手はその本体を精神世界にその身をおいているの。わかる?」
  「?」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・
  だああっ!
  「魔王!ちょっとこの大ボケ男に状況を教えるから少し時間をもらえるかしら!
    それとも何?この脳ミソスライムに説明するのを待つこともレゾ=シャブラニグドゥにはできないのかしら?
    たかが人間なんかの説明時間にゆとりをもつほどの余裕もないっていうのなら別だけどね」
  裏を返せば、人間が他人に説明する時間もまてないのならば魔王の力はその程度。
  つまりは人間フゼイに警戒をしている、ということに他ならない。
  『死にゆくものにはそれくらいのゆとりをあたえてもいいだろう。好きにしろ』
  魔族って人間をかなり下にみているがゆえになりたつこの言い方。
  逆に今、魔王がそれもまてない、というのであればつまりは人間なんかにそんな時間をもたす余裕すらない。
  という形になる。
  精神生命体である魔族にとってはそれは自分の力を否定することにもなり弱体化にもつながり、
  下手をすれば自分の力を否定することでその存在そのものを否定したことになる。
  『我とてトレーニングがてらに戦いをするのに汝たちにも全力でかかってきてほしいしな』
  トレーニング、とくるか。
  ともあれ、時間はかせげそうである。
  そのままその場で目をつむり、何やら精神統一らしきものをしている魔王。
  「…おまえ、よくアレを口先だけでいいくるめられるな」
  何かどこか感心したようにあたしにいってくるゼルガディス。
  とりあえずあたし達はガウリイに説明しがてら今後のことを話しあうためにひとまず一か所に固まり陣をつくる。
  「魔族ってね。基本的にプライドの塊みたいな存在なのよ。
    だからあえて名前でよんだのもあるけどね。まあ、それは神族にもいえるらしいんだけどね」
  魔族や神族は基本は精神生命体に近い存在。
  ゆえに変なところでプライドが高いらしい。
  姉ちゃんいわく、人の身になってそれがよくわかるとか何とかいってたが。
  「まあ、あいつらはね〜……」
  ぽそっと、何か思うところがあるのかエルちゃんがつぶやいてるけど。
  って、そういえば。
  「そえいえばエルちゃん、平気?」
  「何が?」
  「いや、何が…って……」
  あたしたちですらけっこうきついのに、どうしてエルちゃんは平気な顔をしてるんだろう?
  そういやこのエルちゃんって呪文つかえたっけ?
  あ、でも使えてたらもともと山賊につかまってないか。
  あ、でもあそこは魔力封じがなされてた場所だし…う〜む。
  今さら聞くのもなぁ〜……
  「それより。何でアレに呪文がきかないんだ?さっき放たれた技を手で捕まえてたし」
  見えてたんかいっ!
  その視えてたこと自体がすごいとおもうが。
  「ガウリイ。あんた魔族のことどこまでしってる?」
  とりあえずこいつに説明するのにはそこから教えなければいけなさそうである。
  といっても、精神世界云々とこいつに説明してわかるだろうか?
  …理解しないような気がする……
  「ひとでないやつら、だろ?それにあの紅い奴の中に人と魔族がいたのはみんなしってたんだろ?」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・
  「は!?」
  「おい。ちょっとまて。いたのを知ってた…ってどういうことだ!?」
  おもわず目を丸くするあたしと、こちらもまた目を見開いて問いかけているゼルガディス。
  「え?だってみたらわかるだろ?面白いな〜、とはおもったけど。別に聞かれなかったし」
  ・・・・・・・・え〜と……
  「みたらわかる。って……」
  またうちの姉ちゃんみたいなことをこいつはいってくるし……
  「ガウリイ様。どうしてはじめにおっしゃってくれなかったのですか!?
    ガウリイ様のいうことでしたら、わたくし…わたくし……」
  いや、シルフィール。
  悪いけど、ガウリイの言う言葉でもあんたは絶対に信じなかったとおもうよ?
  「シルルも知ってて一緒にいたんじゃなかったのか?」
  あ〜……
  「…あんた、名前くらいきちんといってやれよ……」
  それはあたしも同感。
  「お〜ほっほっほっ!たしかにレゾの中から魔族の気配はしていなくもなかったけど。
    てっきり周りにいるいくつかの魔族の気配と私はおもっていたわ!まあお宝の前なのできにならなかったけど」
  「あ…あんたもきにしろぉぉっ!!」
  ガウリイといい、ナーガといい…も、いや……
  はっ!?
  今はそんな話をしている場合ではないんだった。
  魔王がいつまで待ってくれているかわからない以上、時間は無駄にはできない。
  「と。とにかく。まあその人でない存在であることには間違いないわ。
    そして、魔族は基本、この世界、つまり目にみえる世界とは別の世界に存在している。
    そして、さっきミイラ男がはなった技。あれは竜破斬(ドラグスレイブ)っていうんだけど。
    あれは本元、魔王の力をかりて強制的にその力を引き出して破壊力とする術なのよ」
  そういえば、ナーガたちが何かアレにしかけていたけど。
  「そういえば。さっきアレにしかけた術、何しかけたの?ナーガ?」
  「しれたことよ。瘴気が強くなったので崩霊裂(ラティルト)しかけたんだけどムダだったわ」
  「・・・げっ?!」
  ちょっとまて!
  「ちょっ!崩霊裂(ラティルト)もムダだったわけ!?」
  おもわず口調がつよくなってしまうのは仕方がない。
  魔王にはいうまでもなく黒魔術系統の術は通用しない。
  その理由はいたって簡単。
  黒魔術、といわれている技のほとんどがその主たる力をすべているのが魔王当人であるがゆえ。
  ならば対抗できるのは、白魔術か精霊魔術の二点のみ。
  そして崩霊裂は白魔術の分野では精神の部類にはいり、最も最強ともいわれている術である。
  「?だから何なんだ?」
  ・・・・・
  つうか、この場で理解してないのはあんただけだとおもうぞ。
  あたしは。
  「崩霊裂(ラティルト)。この世界においては聖令魔術中、最強と呼ばれている呪文。
    精神面(アストラルサイド)から相手を滅する技で人間の魔力容量程度でも簡単につかえる術の一つ」
  「…あんた、こんな小さな子供に説明させてなさけなくない?」
  あたし達にかわり、エルちゃんがガウリイに説明しているし。
  そもそも、三歳児に物事をおそわるこいつっていったい……
  エルちゃん、しかしかなり魔術関係の知識は豊富とみた。
  「とりあえず、今。エルちゃんがいったとおり。
    生き物に対しての攻撃力は黒魔術の竜破斬(ドラグスレイブ)に匹敵すると言われている術。それが崩霊裂(ラティルト)よ」
  「ドラ何とかって何だ?」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・
  「だああっ!!さっき説明したばかりでしょぅがぁぁっ!!」
  つうか、こいつの頭の中本当にからっぽなんじゃないの!?
  「ガウリイ様。竜破斬は人間の使える黒魔術の中では最強のもの、といわれています。
    最初にこれをおつくりになった賢者レイ=マグナス様が、
    千六百歳のアークドラゴンを倒したと伝わることからドラゴンスレイヤー。
    ドラグスレイブ、の名前がついた、といわれております」
  「シルフィール。追加説明ありがとね」
  「い、いえ」
  そもそも、さっきの説明でもわかってなかったこいつがこれで理解したとは思えないが。
  ちなみに、実は竜破斬よりも最強の術があるにはある。
  が、アレはあまりに危険極まりない。
  もちろんあたしが編み出したのだが、危険すぎて公表する気はさらさらない。
  「アレに魔法が効かなかったのはいたって単純明快。
    精霊魔術は基本、地・水・火・風の四代元素。そして精神世界とを利用した魔術の組み合わせによる行使。
    魔王とかああいった上位の存在は基本、精神生命体なのよ。
    ゆえに精神世界面に対する干渉力もおおきい。
    人の作りだした精神力程度で突破できるか否か、はまあ根性次第、でしょうね」
  根性をだせば人間、なせばなるものである。
  「つまり。少なくともアストラル系の精霊魔術ではあいつはたおせんだろう。
    かといって四大元素を利用した魔術は人間同士でもうち破ることができる。
    無論、術者の力量によって結果は違ってくるが……」
  あたしに続いてゼルガディスがご丁寧に説明してくる。
  しかし、ガウリイのやつ、ちゃんときいてるんだろうか?
  「黒魔術なんかは問題外ね。主に黒魔術の源となっているのが憎悪や恐怖、敵意などといった暗黒の意思の力。
    その暗黒の力を束ねているのが他ならないルビーアイよ」
  珍しくナーガがあたし達につづいてまともなことを説明してくる。
  知識だけは豊富みたいなんだけどね。
  このナーガ…
  裏ワザもかなり多いのに…術の制御とその常識がなぁ〜……
  「とにかく。さっきのミイラ男みたいに術を唱えることは、
    『今からお前を攻撃するからお前の力をかしてくれ』というのと同意語なわけよ。わかる?
    いくらあんたでも『お前を殺すから手伝ってくれ』ってその殺す本人に頼む。
    これがどれほどあきれる以外のなにものでもない大馬鹿な行動だ。ってわかるでしょ?」
  「…その、オレにでも、っていうのがきになるんだが……」
  「言葉のままよ」
  ここまでいってもこいつに理解できているかあたしははっきりいって怪しいとおもってるし。
  「でもたぶん、理解してないとおもうな〜」
  ぽそっとそんなあたしに同意を示すようにぽつりとつぶやいているエルちゃん。
  「…あんた、こんな小さな子にここまでいわれてなさけなくない?」
  「そっか?いやぁ。まいったなぁ」
  呆れて問いかけるあたしに、なぜかてれたようにいっているガウリイ。
  って…おいっ!
  「って、褒めてるんじゃないわっ!!」
  こいつの脳みそ、ほんとうにどうなってるんだ!?
  …何もはいってなかったりして……
  まだスライムとかのほうがはるかにまし、とおもうのはあたしだけ?
  ねえ?
  「と…とにかく、ですわ。わたくしが得意とします白魔術にも攻撃呪文は存在していません。
    浄化系の呪文では死霊やゾンビならともかく、伝説の魔王に通用するとはおもえません。
    ですが、ガウリイ様の光の剣があります」
  たしかに。
  「たしかに。今はあんたのその光の剣にかけるしかないか」
  シルフィールの言葉にゼルガディスも静かにうなづく。
  「あのなぁ。何で術があいつに使えないのかはよくわからんが。つまり。つまり、オレ一人で戦えってことか?」
  『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
  あ…あれだけ説明してもまだわからんとかいうか!?
  こいつはっ!
  さすがに呆れたらしく、ゼルガディスとナーガですら呆れた視線をガウリイへと向けている。
  「大丈夫ですわ。ガウリイ様。サイラーグに昔から伝わる予言がいまこそ現実になるときなのですわ」
  はて?
  予言?
  前にもそんなことを聞いたような?
  「その予言って?」
  何となく気になるのでシルフィールにと問いかける。
  「今から百年ばかし前。ザナッファーが現れる少し前。
    サイラーグの神殿に一つの予言が下された、といいます。
    ”力あるものの心闇におつる時 其は魔王と化し 世界を滅びの淵ほと導かん。
      されど人よ絶望するなかれ 光掲げる剣士と魔導師現れ出て 深き闇を打ち払うであろう”
    これがサイラーグの代々の神官長にと伝わる予言です」
  ん?…んんん!?
  な〜んか、どっかで聞いたような……?
  「…ねえ。リナ。今のって、ニブス村の……」
  「って、ああっ!?」
  ナーガのぽそっといった台詞にようやくひっかかっていた出来事を思い出す。
  あの村長の祖父が羊皮紙に書いたという大迷惑きわまりなかったあの予言だしっ!
  あのときはおいしいお芋につられていろいろあったが……
  う〜む。
  子供相手のお遊び予言ごっこ、とばかりあのときは思ってたし。
  しかし、サイラーグの神官長に代々伝わっていたというあたりを考えると、
  あながちあの村長のお爺さん、そこそこの能力者だったのかもしれない。
  もしくは、サイラーグにてそれを何らかの拍子でききかじり、子供相手に遊び感覚で教えたか。
  あたしの予測ではおそらく後者。
  何かしらの力があるのならば名前がのこっていなければおかしいし。
  「・・・ま、ともあれ。とにかく今はレゾ=シャブラニグドゥをどうにかするのが先よ!
    あんたもアレを倒さなきゃいけないってことくらいはいくら何でもわかるでしょ?」
  とりあえず話しを進めよう。
  うん。
  「リナさん。ガウリイ様にむかってそのようないい方!
    ガウリイ様はただ単に何も考えておられないだけですわ!!」
  「いや、それフォーローになってないぞ……」
  シルフィールの台詞にぽそっとつっこみをいれているゼルガディス。
  たしかにフォーローになってない。
  「でも、光の剣だけ、だというのもね。ナーガ。あんた何か裏ワザ隠し持ってるでしょ?」
  こいつは予測不可能な技をけっこうもってたりするからなぁ。
  しかもあっさりと他人の技すらをも身につけたりするし。
  ほんと、底が知れないやつではある。
  「え〜?いやぁよ。私。赤の竜神(フレアドラゴン)の力を使った術ってね、かなり疲れるんだから」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ・・・・・・・・
  「「は?」」
  いや、今、何て?
  ナーガの言葉に思わず目が点。
  どうやらゼルガディスとシルフィールも同じ状態になり果てている。
  「あんた、そんなのつかえたの!?」
  つうか、今では失われた神聖呪文ってことだよな?
  郷里の姉ちゃんはよくつかってたが、姉ちゃんは別格だし。
  そもそも、規格外だし。
  「いってなかったかしら?我が家では女性は特に魔術教育に力をいれているのよ。
    私も昔からお母さまやお婆様にいろいろならったものだわ」
  …こ、こいつの家っていったい……
  まあ、ナーガの家の追及はあとできっちりするとして。
  「と、とにかく。なら光の剣とソレで何とかなりそうね」
  とりあえずそれらでめくらましで時間は稼げる。
  おそらく魔王に通じる技はあたしの裏ワザくらいしかないだろうし。
  そのためにも時間稼ぎはどうしても必要である。
  ちなみに、赤の竜神スィーフィードは滅んだ、と一節にはいわれてはいるが。
  実はその力を引き出すのは比較的簡単だったりするのだ。
  これが。
  竜神の力は自然界にも微弱ながらに満ちており、それらを集めることにより力を引き出して使用することも可能。
  ただ、その集めて引き出すという行為にはかなりの実力を要する。
  それができるとは、ナーガ…ほんっと侮りがたし。
  「何ならてっとり早くそれで術の威力を増幅させてみたら?
    いくらこんなDの世界から召喚されてそのままいすわっているヤツでもそれくらいは利用できるし」
  D?
 「エルちゃん?」
  エルちゃんは何がいいたいんだろうか?
  そもそも、Dの世界って何?ねえ?
  「ん〜。人の精神力程度の増幅はソレでもできるとおもうし」
  人の精神力程度、って……
  しかし、小さい子供の勘ってあなどれないしな〜。
  実際、エルちゃんはレゾに対してかなり警戒していたし。
  おそらくレゾの中にいた魔王に敏感に反応していたんだろう、きっと。
  何はともあれ、今は目下のところレゾ=シャブラニグドゥを何とかしなければっ!
  「光の剣。たしかにレゾの研究の中で光の剣はひとの精神力を形となすものではないか。
    といわれていたしな。…よし。それでいこう」
  レゾ、そんな研究もしてたんだ。
  しかし、ひとの精神力を形にする、かぁ。
  「なら、ゼルガディス達は光の剣に術をかけて援護ね」
  以前、ある一件にて光の剣に竜破斬ですら上乗せできるのしってるし。
  ”人”の思いは時として奇跡すらをも呼び覚ます。
  それは身をもって経験したあたしだからこそよくわかる。
  とりあえず、当面の方向もきまったようである。
  と。
  「ようやく話しもまとまったようだな」
  そんなあたし達にむけられてくるとある声。
  振り向けばそこにたたずんでいるのは先ほどとはうってかわった姿をしている魔王の姿。
  その容姿はまさにレゾそのもの。
  異なるのはその瞳が開かれており、紅玉の瞳を開いている、という点のみ。
  そして手にしている杖もまたレゾが手にしていた杖ではなく骸骨に近い形状のもの。
  おそらくはあれこそ伝説にある魔王の武器餓骨杖だろう。
  レゾの姿でレゾの声でない声が紡がれる。
さきほどまでの異形の姿はどこへやら、という感じである。
「え?レゾ…様?え?」
その姿をみてあきらかに戸惑いの表情を浮かべているシルフィール。
「…いい趣味してるわね。その姿ならあたし達が全力をだせない、とでも?」
おそらく”人”の姿をとることで、こちらの戸惑いの感情を糧とするつもりであろう。
  「我とてこのものの中に永きにわたり封じられていたがゆえにこの姿がおちつくだけのこと。
    何より動くのにひとの姿のほうが何かと都合がいいものでな」
  なるほど、納得。
  「それで。その姿で人々を滅するのか」
  どこか敵意をこめたゼルガディスの問い。
  姿形はまさしくレゾのまま。
  その身に満ちる力を相手が完全に隠していないので【異質】の存在とわかるが。
  彼ら魔族はその気になれば気配すら変えることもできるはず。
  それが魔族の王、となればなおさらに。
  「先ほどまではおろかにもこの人間が我に抵抗してきていたがゆえに形をかえたが。
    汝らの話のさなか、”レゾ”という人間の意思はすでに我が内にある」
  ・・・つまり、レゾの魂は魔王に喰い尽されたってこと?
  ――違う……
  ?
  ふと、聞こえる別の声。
  それはかすかではあるが、たしかに。
  ・・・もしかして……
  ふとあたしの中に浮かぶとある可能性。
  「どんな姿だろうがあたしは遠慮なんかしないわよ。レゾ=シャブラニグドゥ」
  ぴくり。
  あたしの言葉に魔王の手が一瞬ピクリと反応する。
  …やはり。
  おそらくまだ、”レゾ”の人としての魂は消失していない!
  人としてのレゾの正しき心が残っているならば、あたしはひととしてのレゾの心を信じたい。
  人は弱さゆえに過ちを犯す。
  が、それらを乗り越えてゆく力をも持ちえている。
  それが光にも闇にも属さず、またどちらにも属しているという人間、なのだから。
  その魂…心の強さにて【魔王の魂を封じる】ことすらもできるほどに、人の心は強くもあり、そしてもろくもある。
  だからこそ…あたしは絶対にあきらめない。
  「――たわけたことを。人間ふぜいがこの我に挑もうとは。
    ひととはおろかなものよ。限りある命を無意味に散らそうとは。
    まあよい。我とて永きにわたり封じられ、いまいち力がしっくりこぬ。
    正直、あのゾロムやロディマスといった人間を殺したところでトレーニングにもならぬしな。
    しかし、汝らとならば少しは肩習し程度には楽しめそうだ」
  そう”レゾ”がいうのと同時、周囲の空気からして一気にかわる。
  【レゾ】から感じる圧倒的な力。
  気を抜けば飲み込まれてしまいそうなほどの。
  「…いってくれるわね。やってやろうじゃないっ!シルフィールは後方支援を!」
  肩慣らし。
  トレーニング、ですって?
  たしかに、あのミイラ男は救いようがないバカだったかもしれない。
  ロディマスとかいう中年剣士もハンサムとはいいがたかった。
  だけども彼らも彼らなりに生きていた。
  自分たちの行動の先に人々の幸せがある、おそらくそう信じていたのであろう。
  それを殺したところで肩慣らしにもならない、など。
  あたしとて人を殺したこともある。
  それはガウリイにしろゼルガディスにしろ同じだろう。
  レゾの目指すものが人々の幸せのためにある、とおもったからこそ彼らはついていっていたはずなのだ。
  そんな彼らをないがしろにするこの発言だけは人として許せない。
  「だけど。後悔することになるわよ?」
  魔族にひとの心なんてものが判る、などとはあたしはおもってない。
  魔族にも譲れないプライドがあるように、人間にだって譲れないものがある。
  「そうでなくてはつまらんからな。…では『はじめるとしましょうか』」
  最後の声はレゾのもの。
  こいつ、完全に人をからかっている、としか思えない。
  魔王であるレゾ=シャブラニグドゥがいうと同時、トンッとその手にしている杖を地面に落とす。
  瞬間。
  足元の大地が揺らぐ。
  大地から木の根にもにた無数の岩の蔓が出現し、魔王の力によってであろう。
  生き物のごとくにあたりをうねりあたし達のほうにむかってくる。
  「総ての命を育みし 母なる無限のこの大地 我が手に集い手力となれ!地撃衝雷(ダグハウト)!!」
  タンっと地面に手をつき素早くカオスワーズを唱え力ある言葉を解き放っているナーガ。
  術と”力”の相互作用、とでもいえるのか。
  蛇のようにうねっていたそれらはあたしたちの周囲のみただの土くれともどり脆くも崩れ去る。
  ちらりと視線をゼルガディスへとむけ、視線のみで言いたいことを伝える。
  「優しき風よ光よ 我が指し示す先に 暖かな祝福をあたえたもう 聖光壁(ライトシールド)!」
  そんなあたし達に対してシルフィールが簡単な防御呪文をかけている。
  この術は光と風の属性を利用しているがゆえに、多少、闇関係の術に対して効果がある。
  すなわち、闇の力を使用する魔王に対しては
  人ができうる範囲の一応最低限の防御呪文ともいえるだろう。
  「次!リナ=インバース、いっきます!」
  いってちらりと後をみればどうやらエルちゃんはちゃんとシルフィールの後に隠れているっぽい。
  あいかわらずフードを深くかぶっているままでぱっと見た目、周囲に溶け込みわからない。
  周囲はすでに黄昏時のごとくに染まっている。
  かろうじて太陽が西側から差し込むことにより紅暗いかんじとなっている。
  魔王の力が太陽の光を覆い尽くすのが先か。
  日が沈むのが先か。
  かなり際どい明かりの確保。
  いくら夜目がきくあたしとはいえ、魔王相手に不利な暗闇で戦うなんざごめんである。
  とにかく、とっととケリをつけるのみ!
  周囲には魔王のものであろう魔力が満ちているのが感覚でわかる。
  口の中で呪文を唱え、手の平に光の球をつくりだす。
  一見したところ、ただの赤い光る球。
  火球はふわふわとホタルのごとくにレゾ=シャブラニグドゥのほうにむかって飛んでゆく。
  「永久と無限をたゆたいし 総ての心の源よ 尽きること無き蒼き炎よ……」
  あたしのしたいことを瞬時に判断してか、ゼルガディスが小さく呪文を唱え出す。
  「ほぅ。火炎球(ファイアーボール)。おもしろいアレンジですね」
  口調もすべてレゾのまま。
  こいつ絶対にあたし達を戸惑わせて楽しんでいるにちがいないっ!
  「しかし。これでは私をどうにかすることなどできませんよ?」
  そんなの百も承知。
  「そうね、でも」
  意味深にいうあたしとは対照的に、レゾ=シャブラニグドゥは興味なさそうに、すっと手にした杖をかるく振りかざす。
  今だ!
  「ブレイク!!」
  パチン。
  あたしが指を鳴らすと同時、光の球が分裂し螺旋を描いてレゾ=シャブラニグドゥの周りに降り注ぐ。
  「こ…これは」
  魔王の少し驚いたような感心したような声。
  それと同時、一気に炎と砂煙がまきおこり、魔王の体を一瞬覆い隠す。
  「ガウリイ!」
  「おう!光よっ!!」
  ヴッン!
  「崩霊裂(ラティルト)!!」
  ガウリイが吠えるのと、ゼルガディスの術が解き放たれるのはほぼ同時。
  ゼルガディスの放った術は光の剣に上乗せされ、光の刃がさらにと伸びる。
  「ガウリイ様っ!」
  そんなガウリイにむけられるシルフィールの声。
  「でや〜!」
  そのまま光の刃をたずさえて、魔王にむかって攻撃をしかけるガウリイ。
  「…ほぅ。なかなかやります。ね」
  ガウリイのおそらく渾身の一撃は【レゾ】の手にした杖によって寸止めされる。
  どこか面白そうにいっている魔王。
  「光の剣。ですか。人間の世界ではサイラーグを死の都と化したザナッファーを倒した伝説の剣。
    として伝わっていますね。しかしこの私がゼナファごときとおなじとおおもいですか?」
  キイッン!
  杖と刃がぶつかりあう。
  ガウリイもまた、間合いをとりつつきりかかる。
  が、魔王はそれらすべてを片手のみでなんなくあしらっている。
  ぶつかりあうたびに刃の長さと刃の光り具合が失われていっている。
  おそらくは魔王の力によってその術の力が削がれて失われていっているのだろう。
  「ガウリイ様!永久と無限をたゆたいし 総ての心の源よ 尽きることなき蒼き炎よ
    我が魂の内に眠り死その力 無限より来たりて裁きを今ここに 崩霊裂(ラティルト)!!」
  ごうっ!!
  ガウリイの様子をみかねてか、シルフィールもまた術を解き放ち光の剣にさらなる崩霊裂を上乗せする。
  ガウリイの手にした刃がさらに輝きを増し刀身もまた伸びる。
  「人間にしては剣の腕はなかなかのものですね。この私に手をださせるのですから。
    ……しかし、所詮は人間」
  そう【レゾ】がいうと同時、もう片方の手をすっと付き出す。
  と。
  どぐわっ!!
  その瞬間、爆発が巻き起こる。
  「くっ!?」
  爆風はすざまじく立っているのもやっと。
  「ガウリイ様!」
  吹き飛ばされ、おそらくは攻撃が直撃したであろうに受け身をとりつつ体勢を整えているガウリイ。
  そんなガウリイにシルフィールがかけより、
  「今、回復いたします」
  いって素早く治癒(リカバリィ)の術を唱え出す。
  「ちっ!」
  吹き飛ばされた衝撃であろう。
  転がっている光の刃のきえた柄のみをひろいつつ、手にして身構え
  「永久と無限をたゆたいし 総ての心の源よ 尽きることなき蒼き炎よ……」
  光の剣を出現させ崩霊裂の詠唱を始めているゼルガディス。
  どうやら上乗せするのではなく増幅させて解き放つつもりらしい。
  ちらり、とナーガに目くばせするとナーガもすっと印を切り始める。
  と。
  「ぐわっ!?」
  次の瞬間、ゼルガディスの体が一瞬のうちに炎にと包まれる。
  「ゼルガディスの体は岩の体ですしね。死にはしませんよ。
    安心してください。すぐには殺しませんから」
  にこやかにわらいつつも、視線をあたしのほうにとむけてきて、
  「本気でかかってきてくれなくてはこまりますよ?…では、次は私からいきましょう」
  そういうと同時。
  レゾから巨大な力が発せられ、それは巨大な光を帯びた球体となる。
  …まずいっ!
  「みんな!にげてっ!」
  光の球はあたし達をもまきこんで、やがて巨大な爆発を巻き起こす。
  …まにあわないっ!!


                   −続くー

  

#####################################

あとがきもどき:

薫:さて、サイラーグに伝わる予言。それはニブス村のものとおなじでした(笑
  ニブス村?何それ?という人は、SPの「魔王降臨」を参考をばv
  ルナテクヘステバルの回にのってますよ〜♪
  あれって村人の解釈は違えど正しい予言だったですよねぇ(爆
  さてさて、そろそろちらほらと、エル様本領発揮中(こらこらこら!
  ってもう皆さんわかってるから暴露しても問題ないですよね(笑
  知らないのはリナたちばかりなり〜♪
  ちなみに、聖光壁(ライトシールド)は私の創作の術でスレイヤーズには出てきませんので、あしからず。
  ゲームにもでてませんよ?念のため〜
  しかし、原作カオスワーズより、ロイヤルとかのほうのカオスワーズのほうがはるかに充実している(笑
  まあ、ゲームはリナが崩霊裂つかえたりといろいろと?のところはありますけどね(苦笑
  次回で決戦&決着その後の予定〜
  何はともあれ、ではまた次回にて♪



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34033リトルスレイヤーズ〜死闘、そして・・〜かお 2009/5/15 23:08:49
記事番号34025へのコメント


  まえがき&ぼやき:


  魔王との戦いの描写はあえて避けます。
  リナの一人称にしてるので面倒だし(こらこらこら
  しかも、リナ、ギガスレ唱えているとき、回りみえてないですしねぇ。
  つうかそんな余裕ないとおもわれます(苦笑
  アニメのレボさんで周囲がみえてたのは、あれは絶対にエル様の気まぐれだ・・・(確信
  しかも完全版制御だし(エル様の干渉がなければ絶対にむりだとおもう完全版制御
  何はともあれ、今回、決着、そしてその後、です♪
  ではでは〜♪

  #####################################


           リトル・スレイヤーズ 〜死闘、そして……〜



  目の前にあるのはすでに大地、とは呼べない溶岩の海。
  その中にすくっとたつように浮かんでいるひとつの人影。
  「みんな、無事!?」
  ばっと周囲を見渡せば、どうやら全員無事らしい。
  あの爆発に巻き込まれたはずなのに。
  …どうやらあたし達は【転移】してきているらしい。
  いったい誰が?
  …って、そんなことができるのはおそらく……
  うわ〜。
  本当に嫌な性格してるわ、魔王。
  おそらく自分はいつでもあたしたちに対して手を下せる、とみせつけるためにあたし達を移動させたとみた。
  「危ない!」
  「ゼルガディス!?」
  ドッン!
  叫ぶとともにシルフィールを突き飛ばすゼルガディス。
  その直後。
  溶岩から発生したらしき炎の龍がゼルガディスの体を再び貫く。
  間一髪よけたものの、その肩はおおきくなぎ払われ岩の肌から血がとめどもなくあふれだす。
  さきほどの炎につつまれた影響だろう、それでなくても満身創痍、としかみえないゼルガディスの姿。
  たっているのがやっと、というような様子である。
  「…リナ。時間は私がかせぐわ」
  いつもなら血をみて気絶するナーガが顔色を悪くしつつも真剣な表情でいってくる。
  「永久と無限をたゆたいし 総ての心の源よ 我に集い力となれ 
    魔皇霊斬(アストラルヴァイン)。ガウリイ、これを使え」
  ごふっ。
  何か自らの剣に術をかけてガウリイに渡しているゼルガディス。
  その直後、口から血がどばりと噴き出ていたりする。
  そんなゼルガディスの手から剣を受け取っているガウリイの姿が目にはいる。
  「話してはダメです!なぜ、なぜわたくしをかばったのですか!?」
  自分を治療するのでもなく自らの剣に何かの術をかけて先にガウリイに手渡しているゼルガディス。
  おそらくふつうの剣に魔力を持たす術とみた。
  この戦いがおわったらじっくりと聞いてみよう。
  そしてそんなゼルガディスにむかってかけより何やら叫んでいるシルフィール。
  「……レゾに…あんたまでころさせるわけにはいかないからな……
    …俺は…レゾをとめられなかった……」
  レゾではなく魔王。
  そう頭ではわかっていても、やはり姿形がレゾのまま、というのでゼルガディスとしても苦しいのだろう。
  その気持ちはよくわかる。
  だからこそ、無意識のうちにシルフィールをかばった、というところだろう。
  彼とて身うちであり、そして誰よりも尊敬していた人に人殺しなどはさせたくないのが本音なのだろうから。
  「はい」
  そんな中、あたしの下のほうから聞こえてくる幼い声。
  ふとみればあたしの間横にエルちゃんの姿が。
  ・・・うや?
  何でエルちゃん、こんな状況なのに平気なんだろう?
  フードでかくれてその表情がみえないだけ?
  小さな手に握られている剣の柄。
  おそらくそのあたりにころがっているのをエルちゃんが拾ったのであろう。
  エルちゃんの小さな手からあたしに差し出されている剣の柄の部分。
  「ナーガ。これに上乗せしてつかって」
  エルちゃんからそれをうけとり、ナーガに話しかける。
  「ふっ。まかせて」
  こちらの言いたいことがわかったのかそれを手にとり、そして、
  「暁よりもまぶしきもの 命の輝きを愛しむもの 母なる大地に宿りしその力…」
  きいたことのない混沌の言葉(カオスワーズ)を紡ぎ出す。
  「神聖呪文かっ!しかし、させぬっ!」
  ナーガのカオスワーズをきき、魔王がその手にした杖をかざししかけてくる。
  「させませんっ!…きゃぁ!!」
  四霊封陣(ヴァルマシード)にて炎をさえぎろうとしたシルフィールがそのままの勢いで背後に叩きつけられる。
  この術はある程度の時間、地水火風に対して高い防御力を持つ。
  しかし持続時間は極端に短い。
  が、突発的な壁をつくるにはうってつけ。
  しかしやはり【人】と【魔王】のその魔力容量(キャパシティ)の差は歴然。
  当然、さえぎられるはずもなく、そのまま吹き飛ばされてしまったのだろう。
  「シルフィールっ!」
  おもわずシルフィールに声をかけかけよるものの、
  「レゾ様…お願いです…もう……」
  よわよわしい声で、それでもなおレゾに懇願しているシルフィールの姿。
  「…っ!もうやめろ…やめるんだ!レゾ!!」
  ぴくり。
  ゼルガディスの血を吐くような声にレゾの動きが一瞬とまる。
  「我は願う 愛しみしその力 我にひととき汝らの力を我らに貸しあたえたまわらん!」
  ぽうっ。
  ナーガの周囲に発生する暁よりもまぶしき光。
  周囲のいたるところから発生したそれらはナーガの元へと集い、あつまってゆく。
  「光よ!聖なる力をその刃にやどし 我に力をかしあたえんっ!」
  ナーガの声と。
  「あんたはあれほど、あれほど『世界は美しいのでしょうね』そういっていたあんたが!
    あんたが世界を滅ぼす気か!レゾ!」
  ゼルガディスのさらなる叫び。
  …レゾの動きが、とまる。
  …やはり。
  まだ”レゾ”は消滅していない!
  「赤法師レゾ!選びなさい!このままシャブラニグドゥにその魂を喰いつくされるか。
    あるいは自らの仇をとるかっ!」
  「何を馬鹿な―『私は―』」
  異なる二つのこえが同時に発せられる。
  「闇よりもなお暗きもの 夜よりもなお深きもの 混沌の海よ たゆたいし存在 金色なりし闇の王」
  魔王相手に不完全なものが通用するとはおまえない。
  かといってこの術はとんでもない力を呼び覚ますものであることを自覚している。
  「な…なぜにお前のようなものがあの御方のことをしっている!?」
  【レゾ】の口から発せられる驚愕の声。
  「でやっ!」
  そんな中、ゼルガディスから受け取った剣をつかい、向かいくる炎の龍をなぎ倒していっているガウリイ。
  竜の数はさらに勢いをまし、あたしとナーガのほうにむかって襲いくる。
  「こっちはまかせろ!あんたたちは術を!」
  いいつつも、次々と襲いかかってくる竜を倒していっているガウリイの姿。
  斬っても斬ってもとめどもなく竜はその場にあふれかえる。
  「聖暁砲(フレアブレス)!!」
  ナーガが光の剣に術を上乗せし、魔王に向けて解き放つ。
  「…そうか!きさま…ニブヘイムの末裔っ!…くっ!!」
  何か魔王が叫び、それと同時、周囲をまぶしき暁よりもまぶしき光が覆い尽くす。
  「我、ここに汝に願う 我、ここに汝に誓う 我が前に立ちふさがりし すべてのおろかるものに
    我と汝が力もて 等しく滅びをあたえんことをっ!!」
  両手を掲げたあたしの頭上に闇が生まれる。
  夜よりもなお深き、無明の闇が。
  くっ。
  思っていた以上に…きついっ!
  気をぬけばあたしも闇にと飲み込まれ、おそらくこの術により世界もろとも混沌の還るだろう。
  魂が深い闇にと堕ちてゆく感覚。
  そして流れ込んでくる【誰か】の想い。
  意識が沈んでゆく。
  制御するのにすべての魂のそこから力を引き出している、そんな感覚。
  そこには何もない、無明の闇。
  このまま闇に飲み込まれてはそれこそ姉ちゃんのお仕置きがまっているっ!
  姉ちゃんのとこだから、死んだあたしの魂すら見つけ出してお仕置きするにきまってるっ!
  「――ルシファサイスっ!!」
  ふっとひとつの声により意識が向上する。
  その直前、魂の中に金色の光がはじけたような気がするのはおそらく気のせいではないだろう。
  …この術は、かの金色の母、そのものともいえる力を召喚するものなのだから――

  ふっと目にはいったのは、倒れているナーガの姿る
  そしてそんなナーガの前にたっているその身長よりも大きな大鎌を手にしているエルちゃんのず肩。
  そして何よりも…魔王の動きがとまっている。
  はて?
  なぜかはわからないが、チャンスは一度きり!
  今にも暴れ出しそうな虚無の闇。
  闇は周囲のもの、光すらのみこみそこにある。
  「な…なぜ…!?」
  「重破斬(ギガスレイブ)!!」
  最後の力をふりしぼり、何かいっているらしき魔王にむけて投げ放つ。
  なぜ、といったのは魔王かそれともレゾか……
  ドウッン!!
  瞬間。
  闇は魔王、そして周囲の総てのものをのみこみすべてを虚無へと導いてゆく。
  ぐらりと体が崩れ落ちる。
  意識が沈んでゆく。
  アレを制御するのにほんっと魂の底から総ての力を出し切った。
  完全版を唱えたのはこれがはじめて。
  に…二度とするもんかぁっ!!
  そう自分自身に固く決意するあたしは間違っていないだろう。
  ――ありがとう。しかし……
  そんな中、ふときこえるとある声。
  意識の沈んだ闇の中にて浮かぶはレゾの姿。
  それとともに意識がゆっくりと浮上する。
  「…まさか、人間にここまでのことができるとは…な。
    気に入ったぞ。リナ=インバース。そしてニブヘイムの末裔よ。
    神魔戦争の折り、すべて滅したはずであったのにな……」
  闇に飲み込まれていきながら、
  魔王、レゾ=シャブラニグドゥは騒ぐでもなくこちらに視線をむけたままそんなことをいっくてる。
  すでに周囲の溶岩ですら闇に飲み込まれどんどん無と化している。
  それでも魔王が術の影響下から逃れられないのは明白。
  魔王の体もまた闇にと吸いこまれ、その姿はだんだんと薄くなっている。
  「・・・・・・・・に、敬意を表して大人しく混沌の眠りにつこう。汝らとは再びあいまみえたいものよ・・・・・」
  どっん!!
  魔王が言葉を言い終るとほぼ同時。
  更にとてつもない衝撃波があたし達のほうにまで降り注ぎ、闇はしばしその猛威をふるってゆく――


  さわっ。
  肌にふれる風がここちよい。
  「リナさん!」
  ゆっくりと開いた目に飛び込んできたのは、突き抜けるほどの青空と、
  そして心配そうにその瞳に涙をためてのぞきこんでいるシルフィールの姿。
  ――どうか、これで”私”を止めてください。
  ふとさきほど意識の中で聞いた”声”を思い出す。
  夢か現か幻か。
  ことりと固い感触がしてゆっくりと右手をひらくとそこには小さな赤い宝玉がひとつ。
  「よかった…リナさんっ!」
  がばっ。
  「ちょっ!?シルフィール!?」
  いきなり涙をながされ抱きつかれて、とまどってしまうのは仕方がない。
  「リナおね〜ちゃんがなかなか目をさまさないから心配してたのよ?」
  つうか、エルちゃん。
  その姿でいわれても何か違和感が……
  というかその手にしている大鎌は何?
  「わたくしが気がついたら皆さんたおれていてぴくりともしませんし……
    リナさんとナーガさんは髪の毛が真白になっていますし……」
  いわれてみればたしかに。
 「お〜ほっほっほっ!リナ!ずいぶん長く気をうしなっていたものね!お〜ほっほっほっ!」
  あ゛〜…いつもどおりだわ。こいつは。
  たしかにいつもごとくに高いをしているナーガの髪の毛は真っ白。
  ついでにさらりと見えるあたしの髪の毛も真っ白。
  これは魔力の使い過ぎによる生体エネルギー低下の影響によるものである。
  「そこのエルちゃんのその鎌は自らの力を形となし刃にする術だそうだ。
    …俺も初めてみる技だがな」
  あれほど大けがを負っていたはずのゼルガディスのけがはどこにも見当たらない。
  「けがは?」
  「そこのシルフィールが俺達をなおしてくれた。
    そっちのナーガのほうはちょっとこげめがついているだけでけが一つなかったらしいがな」
  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
  ナーガらしいというか何というか・・・・・・
  空気がとてもすがすがしい。
  まるで雨上がりの空のごとくに。
  ただ一ついえるのは……あたし達の周囲には【何もない】、ということのみ。
  どこまでつづいているかわからない荒野。
  ただの大地のみが延々とひろがっている。
  ごろごろ転がる岩はどうも火成岩っぽい。
  しかしそれらも触れるともろく崩れて砂と化す。
  …おそらく重破斬の後遺症だろう。
  「お〜ほっほっほっ!これでリナ!あなたに貸しひとつよ!」
  ・・・・・・・・・・・
  「って、何でそうなるっ!」
  そもそも、ナーガもまきこまれていたんだから貸しとかそういう問題じゃないっ!
  だいいち、こいつが裏切ったせいで話しがややこしくなったのも事実なわけだしっ!
  「あ〜。こほん。いいあいはあとにして。…結局、何がどうなったんだ?そいつに聞いても要領をえないしな」
  ?
  「見てなかったの?」
  「途中から意識がなくなったからな」
  ということはそれほど大けがだったってことか。
  …まあ、ちらりとしかみえなかったけど骨までみえてたっぽいからなぁ……
  よくすぐに気をうしなわなかったものである。
  こいつも。
  「わたくしは…吹き飛ばされたところまではおぼえていますが。
    目覚めるとあたり一面この様子。しかもみなさん、その子以外は倒れていますし。
    しかもガウリイ様にしろそこのゼルガディスにしろかなりの怪我をおってましたし……」
  よくあの中で無事だったな、エルちゃん……
  「オレは炎の龍を相手にしていたら黒い衝撃をうけて吹き飛ばされて、何とかこらええたど。
    そのあとをよく覚えてないし」
  ・・・・・・・・まあ、あたしもこいつの記憶力なんぞ期待してない。
  短い付き合いでもこいつがモノ覚えがものすっごくわるいことはよ〜くわかったし。
  「レゾ様は……」
  「レゾは…いや、魔王はどうした?」
  シルフィールとゼルガディスの問いかけはほぼ同時。
  「お〜ほっほっほっ!この白蛇(サーペント)のナーガ様の術でひるんだところリナがとどめをさしたのよ!
    魔王を倒せたのもすべては私のおかげね!お〜ほっほっほっ!」
  ぐっ。
  下手に間違っていないがゆえに突っ込みができない。
  しかしっ!
  「そもそもあんた、あんな大技ができるなら出し惜しみするんじゃないわよっ!」
  ナーガが神聖呪文つかえるなんざあたしもしらなかったぞ?!
  「お〜ほっほっほ!愚問ね!リナ=インバース!
    あの術の制御は私もまだ完全じゃないのよ!
    このたびは運がよくて周囲の誰も仮死状態にならなかっただけよ!お〜ほっほっほっ!」
  「って、いばるな〜!!…って仮死状態?」
  何か今怖いことをきいたような?
  「あの術はすべての生き物の中にある赤の竜神スィーフィードの力を強制的に引き出して集める技なのよ。
    一歩間違えたら対象物の命ごと奪うことにもなるけどね。お〜ほっほっほっ!」
  『・・・・・・・・・・・・・・・』
  「って、笑いごとかぁぁっ!!」
  いや、あたしの術も洒落になんないけど…けどっ!
  ナーガの術も洒落になんないぞ!?
  どうやら他のみんな。
  シルフィールやゼルガディスもあたしとおなじ思いに駆られたらしい。
  無言でナーガを信じられない、というような眼でみていたりするのだが。
  …あたしの術の危険性はいわないでおこう。
  うん。
  そうこうしているうちにいつのまにかエルちゃんが手にしていた大鎌を無産させる。
  「そういえば、エルちゃん、大丈夫だった?」
  ここはひとまず話題をかえるのが勝ち!
  「あたしは何ともないけど。とりあえずあいつはちょっかいかけてこられないでしょ」
  「お仕置きしたし」
  ?
  最後にぽそっとおしおきとか聞こえたが気のせいか?
  「ならいいけど。…とりあえず、本当におわったのね……」
  おもいっきり伸びをする。
  景色はともかく空気がとてもおいしい。
  魔道を駆使したところで生きて数百年、か。
  流れこんできた”声”がそういっていた。
  レゾもおそらくその長い時を生き、じんわりと確実に魔王にその魂をむしばまれていったのであろう。
  「どうやらそうみただけど……」
  どこか戸惑いを含んだガウリイの声。
  「それで、いったい何がどうなって……」
  あの魔王に勝てたのが信じられないのであろう。
  実力的には圧倒的にこちらが劣っていたのだから。
  「ええ。おわったのよ。レゾのおかげでね」
  「レゾの?」
  アレが本当に滅びたのか信じられないらしく周囲を見渡しそうきいてくるゼルガディス。
  みわたせど、すでに岩と化した大地がどこまでも広がるのみ。
  小鳥の声ひとつきこえない、あるいみ死の大地。
  「アレの中にまだレゾの魂がのこっていたのよ。
    長い年月をかけて内側から魔王に蝕まれながらも残っていたレゾの心が。
    本当はわかっていたんでしょうね。自分のやろうとしていることが間違っているって。
    だけど…とまることはできなかった。魔王の心と人の心がせめぎあっていたんでしょう。
    だからこそどこか矛盾な行動をとり…結果、自ら魔王とともに滅ぶ道を選んだ……」
  おそらくレゾはわかっていたはずである。
  いくら人が愚かでどうしようもなくても、それらを滅ぼして新たな世界を…などというものができる。
  そんなことはありえない、と。
  もしそんなことでひとが愚かでなくなるのならばすでに数千年前以上に人は理想郷にむかって進んでいるはずなのだから。
  神魔戦争より前、かなり高度な文明が築かれていた、と聞いたことがある。
  そしてその戦争のあと、人類は疲弊し、文明もまた衰退し…そして今にいたる。
  おそらく古代の遺跡発掘などからさっするに、その高度な文明、というのはあながちまちがっていない。
  というのはすでに世間での常識中の常識。
  「しかし…あんたもそっちもたいたもんだな。まさか神聖呪文がつかえるとは」
  あたしとナーガをみつついう、苦笑まじりのゼルガディス。
  確かに、この世界において神聖呪文なんざほとんど伝説の中の力にすぎない。
  「私の家の教育の一環で叩きこまれたのよ」
  いやだから、あんたの家って…いや、きくまい。
  何となく怖いし。
  「…なあ。とりあえず、どっかでメシにしないか?」
  ぐ〜……
  ガウリイのその言葉と、おもいっきりお腹のなる音が同時におこり思わず顔を見合わせるあたしたち。
  ぶっ…
  「「あはははは!!!」」
  その場に何ともいえない笑い声が満ち溢れてゆく。
  そ〜いえば、さいきんあまりロクにたべてなかったわ。
  シリアスな雰囲気から一点、あたし達はひとまずどこかで食事をすることに。


  歩けどあるけど見渡すのはただの岩肌。
  え〜と……
  つかんでみた土ですら、もろくもすぐさま砂と化す。
  この大地には命がやどっていない。
  「しかし、魔王の力とは…すざましいものだな」
  ぽそり、と歩きながらもいっているゼルガディス。
  結局のところ、あの場でゆっくりしていてもラチがあかず、どこか休める場所にでも移動しよう。
  ということになり、とにかくひたすらに西にむかってあるいているあたし達。
  ちなみに、場所的にいえばひたすら西にむかっていればアトラス・シティにつくはず…なのだが。
  ここまで街道も何もかも、きれいさっぱりと消えてしまっていてはそう断言できるかどうかすら怪しい。
  たぶん、これって魔王云々、というより重破斬の後遺症だ、と自覚しているあたしとしては黙っているほかない。
  かつてあたしがあの不完全な術をつかったとある場所は浜辺に大きな入り江をつくりだし、
  今でもなぜか魚いっぴきよりつかず、水こけすらも生えないときく。
  ゆえにおそらくこれもあの術の影響とみた。
  …口がさけてもそれはいえないけど。
  「お。あそこに水発見」
  ガウリイの示したその先にたしかにキラリと光る何かがみえる。
  何もない荒地にただひとつ、ぽっかりと空いたくぼみにたたえられている水がとても奇異に映りこむ。
  よくこんな中で泉が残っていたもんだ。
  近づいてみてみれば、何やらくぼみに湧水がたまり、小さな泉を形成しているっぽい。
  「ふむ」
  この水が飲み水に適しているか調べるのがともかく先。
  何しろ人間、のまずくわずでいるわけにはいられない。
  ぽうっとオリジナルの水質検査の術を唱えれば、どうやら飲料に適している模様。
  ちなみにこれらもまた旅の必需品としてあたしがオリジナルに開発した術の一つである。
  他には魚釣りようの術など、いろいろオリジナルの技は限りがない。
  「とりあえず。今日のところはここで休むしかないな」
  「・・・そうね」
  あるけどあるけど荒野ばかり。
  水がある、というだけでもかなり違う。
  あたしもまだ魔力が完全ではないので今のような簡単な術しか使用はできない。
  魔力が戻ればまだ高速飛行の術で町か村まで飛んでゆくことは可能であろうに。
  ちらりと全員を見渡せば、どうやら誰からも却下の意見はでてこないっぽい。
  あたし達が目覚めたとき、すでに太陽は頭上よりすこしかたむいていた。
  つまり、逆算するとあたし達は半日以上も気をうしなっていたことになるのだが。
  それだけ疲れていた証拠であろう。
  …まさか、アトラスシティのほうまで荒野になってしまった…なんてことは…ま…まさかねぇ。
  あはははは……
  ほのかにともる明かり(ライティング)の明りがあたし達の表情を照らし出す。
  水を安心してのんだところ、睡魔におそわれ気付けばもう夜は更けていた。
  そのまま魔法でアカリをともし、それぞれもっていた携帯食糧にての夕食タイム。
  「あ…あの……」
  「?何だ?」
  そんな中、戸惑い気味にゼルガディスに話しかけているシルフィール。
  「あの、わたくし、あなたにあやまらなくてはいけません。
    …わたくし、ずっとあなたのことを誤解していました。あなたが町を…そしてお父様を…と。申し訳ありませんでした」
  おそらくシルフィールもまた気にしていたのであろう。
  まあ、気にしない、というような人間はあまりはず。
  「…きにするな。それにあんたは俺をたすけてくれた。お互い様だ。
    それに、こんな見た目怪しいやつよりあいつの言葉を信じるほうが人の心理だ」
  心理、と言い切るか。
  しかも自分でまだ自分があやしい、と断言してるし。
  たしかにまあそうかもしれないけど。
  シルフィールの場合は思いこみで回りがみえなくなってた、というのもあるだろうしねぇ。
  すこし冷静に考えれば何かがおかしい、とわかったであろうに。
  まあ、大切なものが目の前で失われて冷静でいられる人間がいたらそれこそそれはそれで怖いのかもしれないけど。
  気まずい沈黙が支配する。
  「…もう、あいつを憎んでいないのか?」
  そういうあんたは?
  あたしとしてはそうききたいけど、きくだけ野暮というものなのだろう。
  彼とレゾの関係は言葉でなんか言い表せないものなのだろうからして。
  「はい。…不思議ですね。あのかたに騙されていたという憎しみよりも、あのかたのやさしい笑顔ばかりが思い出されて……」
  「そういってもらえればあいつも救われるさ。…あいつはたしかに、人々のためになることを心底喜んでいたんだ。
    そう…そのはずなんだ……」
  え〜と…
  何だかまたまたしんみりした何ともいえない雰囲気に。
  と、とにかく雰囲気を変えよう。
  それでなくてもくそまずい携帯食糧がさらにまずくなる。
  「あ。そうだ。これ、ゼルガディスに渡しとくわ」
  今の今までわすれてたけど。
  いいつつも、ズボンのポケットにいれておいた小さな宝玉を取り出してゼルガディスにと手渡す。
  「?これは?」
  「おそらく、レゾの形見、かしら?意識の中でたしかにレゾの声をきいたのよ。
    何ていったかはよく覚えてないけど。目覚めたらそれが実際に手の中にあったし。
    …きっと、レゾはあなたに伝えたかったんじゃないのかしら?」
  自らの血縁であるゼルガディスに、おそらくレゾは何かを託したかったのだろう。
  「…そうか」
  実はこの宝玉、かなりの魔力をかんじはするが、あたしとてネコババするほど人は悪くない。
  おそらくこれはきっとゼルガディスにとっても、レゾにとっても大切なものなのだ。
  そうなぜか確信がもえるがゆえになおさらに。
  ぎゅっとソレを手にしてどこか目をつむり何かを考えているゼルガディスの姿。
  「あ。そうだ。リナおね〜ちゃん。これもうわたしとくね。アレがもういないからもんだいないし」
  いいつつも、ごそごそと背中に背負った袋の中から小さな箱を取り出してくる。
  箱の中にはちょっとした宝玉がいくつか。
  「そういえば。何でエルちゃん。これ先に渡してくれなかったの?」
  気になっていたことを問いかける。
  そもそもおそらくこれがあればかなり戦いも楽だったはずなのだ。
  「?でもアレにはそれ通用しないし。おそらくもってても封じられて役に立たないし」
  ?
  横ではすでにナーガが寝息をたてている。
  よほどつかれているとみた。
  「?何なんだ?これ?」
  ガウリイがそれをのぞきこんで何かきいてるけど。
  あんたがきいてわかるのか?
  絶対にわからないとおもうぞ?
  あたしは。
  「魔力増幅道具。魔血玉(デモンブラッド)っていうの」
  へ〜。
  これまたかなり変わった名前というか聞いたことのない名前である。
  「そのペンダントになってる紅いのがS…赤眼の魔王・シャブラニグドゥさしてて。んで、他の蒼、黒、白のが……」
  いや、ちょっとまていっ!
  いま、さらっととんでもない名前がでなかったか!?
  ルビーアイはともかくとして、何で蒼穹の王(カオテックブルー)や闇を撒くもの(ダークスター)、白霧(ディスフォッグ)がでてくる!?
  「ちょっと!エルちゃん。何でそんなことしってるの!?」
  あたしとしてはそちらのほうが驚愕である。
  そういえば、このエルちゃんに関してはあたし達まだまだ知らないことだらけだったんだった…
  今更ながらに思い知らされる。
  そもそも、術が使えることすらあたしは知らなかったんだから。
  「だって、これの後ろにかいてあるし」
  『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
  え〜と。
  これつくったの誰ですか?
  といいたいのはあたしの気のせい?
  ねえ?
  確かに箱からとりだしてみてみれば、四つのタリスマンの後にしっかりと、
  御叮嚀にシンボルマークとおもわしき紋章とそしてこれまたご丁寧にそれぞれの名前が刻まれている。
  表だけみればそれらはわからないけど、たしかに子供にもわかるようにしかもフリガナまでふってあるし…
  え〜と……
  ほんっとこれつくったのって誰?
  丁寧、というか何というか……
  「闇を撒くもの(ダークスター)は知っているが。他のは何なんだ?」
  どうやらゼルガディスは闇を撒くもの、という単語は知っているらしい。
  「ゼルは知ってるの?」
  とりあえずゼルガディス、と御叮嚀に呼んでいたが面倒なので短縮して問いかける。
 「ああ。以前にレゾが光の剣の研究をしていたときにな。
    あんたがもっているその光の剣はもともと、異世界の武器で闇を撒くもの(ダークスター)という魔王がいたところの武器らしい」
  ふむ。
  つまり、かつて宮殿でみた四界のうちの一つの世界か。
「そういえば、あいつは光の剣のレプリカ作成したはいいが持続時間がもたずに役にたたなかった。
  とか以前いってたな。今はそれがどこにあるかわからないが」
ちょっとまて。
それってかなり重要なお宝情報!?
「しかし。あんたの妹さんは何でそんなのもってるんだ?」
「え?」
あ、そ〜いえば、まだ説明してなかったっけ。
エルちゃんのこと。
「このこ、あたしの妹じゃないわよ?」
「え?それにしてはおまえらそっくりだろ?てっきりそいつとあんたとが兄妹かとおもってたんだが」
「冗談!こんな脳みそクラゲの兄なんてまっぴらごめんよっ!」
確かにガウリイの髪の色と瞳の色。
それらがエルちゃんとおなじだからってこいつと兄妹なんて冗談ではないっ!
「そうか。なら親戚か何かなのか?」
「それがわからないのよ。たまたま山賊につかまってたところを助けてね。
  あたしとそっくりのよしみでこの子を血縁者、もしくは親戚のいるところまで送っていこうかと。
  といっても、この子もどこに親戚がいるとかわかってないみたいだから人づてに話しをききながらしかないけどね」
  嘘ではないし。
  まあ、一番の理由は本当に親戚で放り出したあとで姉ちゃんや母さんに知られたら…というのがあるにしろ。
  それは言わぬが花である。
  「そうか。まああんたにそっくりなんだから。たぶん何かしら関係あるんだろうしな。
    しかし、何でその子がそんなものもってるんだ?」
  「あたしに聞いてもしらないわよ。って…あ、ねてる」
  みればいつのまにかエルちゃんはあたしの膝枕ですやすやと寝息をたてている。
  「とりあえず、この子がいうには、タダじゃわるいからって、これくれる約束してたのよ。
    何かレゾの前では気づかれるとか何とかいって渡してくれなかったんだけどね」
  「…なるほど。小さい子は勘が強いしな。おそらく危険を察知したんだろう。
    たしかに、異世界の魔王に関係ある品かもしれない、となればレゾもだまってはいなかったろうしな」
  そんなあたし達の会話をききつつも、
  「そういえば。リナさん。きになっていたんですが。どうやって魔王を倒したのですか?」
  ぎくっ!
  「そういえば聞いてなかったな。いったいどうやったんだ?」
  こらこら!
  ゼルガディスまでうなづいてきいてくるなっ!
  「え〜と、赤眼の魔王・シャブラニグドゥではない他の魔王の力をかりた呪文を唱えて、それでね」
  「ほぅ。あんた研究家なんだな。しかし、魔王にそれが通用したとは…いったいどんな魔王の…」
  「とりあえず魔王より上位の魔王の力、とだけいっとくわ」
  「?まさか、それは…あの金色の魔王(ロードオブナイトメア)のことではないだろうな?」
  ぎくぅっ!
  「って、何であんたがその名前をしってるのよ!?」
  「俺がまだレゾに合成獣にされる前。レゾとともにディルスの王宮を訪ねたことがあってな。
    ディルスの司祭長が教えてくれた」
  …お〜い、ディルスの関係者…誰にでもはなしていいことか?
  もしかして訪ねてきたひとにほいほいと話しているんじゃぁ……
  そんな不安がふとよぎる。
  まあ、あたしもひともことはいえないけど。
  昔、姉ちゃんにくっついていったディルスの王宮で初めてあれはきいたわけだし。
  「たしか、魔王の中の魔王。天空より堕とされた金色の魔王、とかの地では言われていたが。
    そういえば、あれを聞いてしばらくレゾは何だか落ち付きがなくなっていたな……」
  そりゃ、レゾの中の魔王が反応したんじゃないのかなぁ?
  何しろアレは魔族の母でもあり、そしてあたしたち人類の母であり世界の母でもあるのだから。
  「そんな存在がいるのですか?」
  「こいつの術が発動した、ということは実在はしているんだろう。俺も半信半疑だったがな」
  …あのイルマートの入り江のことは絶対にだまっていよう。
  うん。
  「ま、とりあえず。明日もどこまで歩くのかわからないし。とにかく今は休みましょ」
  「だな。じゃあ、交代で見張りをしながら休むとしよう」
  とりあえずあたしの話題転換を気にすることもなく、あたしの意見に同意してくるゼルガディス達。
  しかし…ゼルガディスがアレのことを知っていたとは…以外だわ……
  とりあえず、今日のところはお休みなさい…ほんっとようやくゆっくりとこんな場所だけど休めそうだわ……



  「やっとみえたぁぁっ!!」
  いやほんと、長かった!!
  「本当。携帯食糧もつきかけてましたしね」
  どうやらシルフィールも同じ意見っぽい。
  数日後。
  延々と続くかとおもわれた荒野はゆっくりと自然をとりもどしていき、ようやく町並みがみえているこの現状。
  しかし自然が見えてきた、とはいえ魔王の瘴気にあてられたのかほとんど立ち枯れていたが。
  つまりは、そこに森などがあった痕跡はあれどすべて蝕まれ立ち枯れている状態。
  ゆえに森などでの食料調達は当然できるはずもなく。
  たよりはあたし達がそれぞれにもっている携帯食糧のみ。
  そんな状況ではや数日。
  水はどうにか浄化水(アクアクリエイト)を使って確保できたからいいものの。
  あんなまずい食事でかなり餓えてきていたのも事実である。
  何しろここにくるまで河という河もみなかったし。
  川の一つでもあればお魚さんくらいはいるものを。
  歩く途中で廃墟とかした村もいくつかみた。
  こびりついている血の匂いとすでに蝕まれた人であったであろう死体の姿。
  どうやら魔王の瘴気にあてられて人の死体までもが朽ち果てたらしい。
  予測ではあるが、魔王の復活にともないレッサーデーモンなどが大量発生したはず。
  おそらくそれらの襲撃をうけたのであろう。
  大きな町や村ならどうにか自衛手段があるであろうが小さな村など自衛手段などもちえるはずもない。
  視界の先にみえるのは、しっかりとした門構え。
  門構えからしてどうやら視界の先にあるのはアトラスシティに間違いない。
  「これでようやくふかふかのベットとおいしいものがたべられる〜!!」
  心からそう思う。
  ずっと野宿はさすがにきついぞ!
  まあ、廃墟とかした村とかで休んでいても何かこうゆっくり休めなかったのも事実だし。
  しかも、荒野がようやく途切れたかとおもったら、なぜかいるわいるわの野良デーモンたち。
  エルちゃんにもらった魔血玉で何とか魔力が完全回復してないまでも撃退はできてはいるが。
  はっきりいってもう少しゆっくりと休みたいのが本音である。
  「ようやくまともなご飯がたべられるのね……」
  ナーガもまたそんなことをいっていたりする。
  野良デーモンとかって倒したら消滅してしまうので何ものこらないし。
  まだ、オーガやトロルとかなら死体がのこるからまずいけど肉くらい確保できるのに。
  あたしもナーガも今だに髪の毛の色は完全に回復していない。
  ぱっとみため、薄い栗色なので光加減によっては金髪にみえなくもない。
  ナーガにおいては薄茶色っぽくなっている。
  「何だかえらく長い旅になっちまったなぁ〜」
  たしかに。
  ガウリイと出会ってからほんといろいろあったからなぁ。
  あの場からアトラスまで約十日もかからない距離だったというのに。
  「そういえば。シルフィール。あんたこれからどうするの?」
  「そうですね。まずは光の剣を狙う邪悪な魔導師からガウリイ様をお守りしようかと」
  ・・・・・・・・
  「ってまていっ!まさかその邪悪な魔導師ってあたしのことじゃないでしょうね!?」
  「他にいないでしょう?それでなくてもガウリイ様が寝ているスキに剣に手をかけていましたわよね?」
  うぐっ。
  「そ、それはただほら。あたしも魔道士として純粋に光の剣の仕組みが気になるわけで……
    それに、ガウリイは光の剣をあたしにくれる約束してるしっ!」
  「してないっ!」
  間髪いれずにあたしの言葉にガウリイが突っ込みをいれてくる。
  ちっ。
  なかなかしぶとい。
  このあたりで観念してあたしにくれればいいものを。
  「わたくしの親戚はもうセイルーンにしかおりません。故郷であるサイラーグもすでに壊滅してますし…
    ここから一人でセイルーンに向かうより、わたくしはガウリイ様をお守りすることを優先します。
    それに、そちららのエルちゃんの家族のことも気になりますし」
  「…本当はガウリイと一緒にいたいだけだったりして……」
  「そ、そんなことはありませんわっ!」
  あ、真っ赤になった。
  というか、いまだにガウリイに愛想尽かしてないのがあたしとしてはすごいとおもう。
  ガウリイのやつ、いまだにシルフィールの名前…まちがえてるし……
  「ゼルガディスさんはどうするんですか?」
  仇、とおもっていたときにはさんづけなどしていなかったが、魔王との戦い以後、シルフィールはゼルガディスをさんづけして呼んでいる。
  どこかできっとふっきれた証だとあたしはみているが。
  「そうだな。俺はそろそろこのへんで失礼させてもらう」
  「え?」
  唐突といえば唐突のゼルガディスのセリフ。
  「何でだ?ゼロガディスもおいしいものたべたいだろ?」
  「ゼ・ル・ガ・ディスだ!いい加減に人の名前を間違えるのはやめてくれ!
  俺はいままでいろんなことをやらかしてきてるしな。顔もそこそこ知られている。
  ああいう大きな町はやばいんだ。こういう目立つ風貌しているしな」
  こいつもな〜。
  そこまで自分を卑下しなくてもいいとおもうけど。
  「なぁにいってるのよ!大丈夫にきまってるでしょ!それに!
    まだあんたにあたしは何もおごってもらってないわよっ!」
  「って誰がおごるっていった!」
  「あたしが今きめた」
  「あ、あのなぁっ!」
  「何いってるのよ!あの宝石、結構ねが張るものだとおもうのにあたしはちゃんとあんたにあげたのよ!
    それくらいの見返りあってもいいじゃないっ!!」
  魔力がかなり感じたことからあれも一種の魔力増幅アイテムのはずなのに!
  それをあたしは親切にもレゾの形見になるだろうから、とゼルガディスに渡したのだ。
  それくらいの見返りをもとめて何がわるいっ!
  「風貌云々いうんだったら今のアトラスは問題ないとおもうぞ?何かいろいろと傭兵募集してたみたいだし」
  そういえば、ここさいきん、広く傭兵募集をアトラスシティの誰かが募集してたっけ?
  「お〜ほっほっほっ!ここで逃げ出すなんてゆるさないわよ!
    まだ私に約束した金貨もはらってもらってないしね!」
  ナーガのやつはいまだにどうやらゼルガディスがはじめのころにいっていた女神像の金額をいっているらしい。
  お金のことに関してはナーガは執念深いからなぁ。
  …とりあえず、きれいさっぱりと砂金のことは忘れているっぽいのでいわないでおこう。
  「…こいつがこういいだしたらず〜〜とおいかけるわよ?それより何かおごっといたほうがみのためよ?」
  「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
  あたしの言葉になぜかしばらく無言となり、大きく溜息をつき、
  「…しかたがない。ならここの宿代と食事代は俺がもとう……」
  どこか諦めの境地に悟ったようにいってくる。
  おっしゃ!
  「よかったわねぇ。エルちゃん。ゼルがあたしたち全員の食事代と宿代おごってくれるって」
  「うん」
  「って誰が全員分っていった!」
  「今あんたがいったじゃない。宿代と食事代はもとう、って」
  男たるもの、口に出した以上守ってもらわねば。
  「…まったく。あんたはほんとうにあのリナ=インバースだよ。わかった。それでいい」
  「お〜ほっほっほっ!たべるわよぉぉ!」
  「そういえば、ガウリイはどうするの?約束はここまで、だったわよね?
    もっとも、あたしはガウリイが剣をゆずってくれるまでずっと追っかけするけどね!」
  「何いってるのよ!リナ!光の剣は私のものよ!」
  「いいや!あたしの!」
  「二人とも!ガウリイ様の剣はガウリイ様だけのものですっ!ガウリイ様のものならわたくしがほしいですっ!」
  「何いってんのよ!光の剣よ!光の剣!魔道の研究もかなりはかどる品よ!」
  「お〜ほっほっ!安心して!私の家で家宝にしてさしあげるわっ!」
  「ナーガの家なんて安心できるか!あんたのことだからどっかに売り飛ばすにきまってるっ!」
  「・・・なあ、何かオレそっちのけで話しがすすんでないか?」
  「あきらめろ。こいつらにはおそらく何をいっても無駄だ」
  どういう意味かしら?
  負けずと言い合うあたし達の横でそんな会話をしているガウリイとゼルガディス。
  「そんなことより。はやくみんな、町の中にはいりましょ?」
  「…おまえら。小さな子供にいわれてどうする……」
  今だにいいあっているあたし達とは対照的に、すたすたと町のほうにとあるいてゆくエルちゃんの姿。
  「ふっ。一時休戦よ。こうなったら食べ比べで勝負よ!」
  「お〜ほっほっほっ!のぞむところよっ!」
  「わ、わたくしもまけませんわっ!」
  「いや、だからオレは誰にもやらないって……」
  何かぼそっとガウリイがいってるけど、このさいそれは問題ではない!
  絶対に光の剣は手にいれてみせるわよ!
  そのまえに、たらふくおいしいものを食べるのを忘れずに。
  そういえば、あれだけ広い範囲で荒野になり果ててたけど・・・報告、必要かなぁ?
  …下手にしないほうがいいか。
  ……ややこしい手続きとか面倒なことに巻き込まれてもいやだし。
  それに少しきになっているんだけど、サイラーグの今の状況。
  シルフィールはすでに廃墟となっている。
  とはいうけど、それも少しきになるしね。
  アトラス・シティによったらまずは魔道士協会にたちよってみますか。
  しっかし。
  ナーガのやつ、ぬけがけしないように見張っとかないとなぁ。
  あいつだけはほんっと信用ならないんだからっ!

  目指すアトラス・シティはすぐ目の前。
  しばらくこの町でゆっくりと体力回復かねて情報収集とでもいくとしますかね♪


                   −終わり・エピローグへー

  

#####################################

あとがきもどき:

薫:ちなみに、シルフィールは復活(リザレクション)にてゼルガディス達のけがを直してます。
  その効果がちと異なり、?マークをシルフィールが浮かべたのはここだけの話(笑
  こっそりとエル様が干渉して金色の光につつまれての完治となってますのですよvええ(こらこら
  さくっと決着ついた魔王戦。
  しかし内容はかなりリナたちからしてみればかなりハードです。
  さくっと流してはいますがたえず炎の龍がおそいかかり、ガウさんが頑張って駆逐してます。
  しかし、その原動力が魔王の魔力。
  ゆえにつきることなくふえていき、あるいみ無限ともいえる敵さんと戦っているガウリイだったり(まて
  とうぜん、やけどとかもガウリイも体力的にきつくてするわけで…
  リナやナーガは自分たちの術の制御でそこまで気がまわっておりませんがね。
  え?エル様は何してるのかって?
  もちろん、おもしろがって傍観しておりますが、リナの意識の浮上したあの言葉。
  あれがけっこうネックになってたり。
  というわけで(何が?)エピローグも魔王&レゾサイドにするのですv
  ではエピローグにて〜♪
  しかし、ぽそっと…死の入り江…イルマートであってたよな?(確認せずに打ち込みしたひと)




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34034リトルスレイヤーズ〜エピローグ〜かお 2009/5/15 23:09:29
記事番号34025へのコメント


  まえがき&ぼやき:

  さてさて、一巻分のエピローグですv
  二巻分の打ち込みどうしましょう?
  かなりすでにアトラスにもゼルが一緒にいってたり、と原作(児童書も本体も)とは変わってますが(爆
  さて、前回でいったように、今回は魔王&レゾさんサイドさんv
  今までかかなかった実はエル様視点でいくのですvではでは♪
  ちなみに、客観的にかいつまんでの視点です(こらこら
  いや、全部やったら長くなるの見えてますし…
  みなさん、エル様のことよぉく御存じでしょうしね(原作あとがきにて
  では、何はともあれいっきます♪

  #####################################


          リトル・スレイヤーズ 〜エピローグ〜



  まったく……
  せっかく新たにあの世界において新たな形の出版というのに。
  何であたしの出番がこれまたないのよっ!
  作者だけでなくあの児童書版かいてるやつのところにも誠意ある話し合いに行くべきかしらねぇ。
  とりあえず…っと。
  あまりに理不尽すぎる扱いなので、あたしはあたしで新たに世界を創ってみたのはみたけども。
  ただ視ているだけじゃ面白くないし。
  傍観者をかねて少しばかり遊ぶとしますかね♪
  「リナ、あんたいつこんな子供うんだの?」
  「う…うむかぁ!ぼけぇ!」
  スパァッン!
  こぎみよい音が響き渡る。
  「だってどうみてもあんたにそっくりよ?小さいとこまで」
  そんなことを彼女はいっているけど。
  そりゃ、そのように姿を創ったわけだし。
  案の定、このリナ=インバースそっくりの容姿にリナはリナで戸惑ってるし。
  グレイシアのほうもわかっていてもそんなリナにからかいの言葉をいれている。
  ただ、近くの村で多少の村人たちの治療をほどこして、
  ついでに山賊達がおそってくる日を選んでその場に逗留していただけのこと。
  それなのにここまでよくまあこちらの筋書き通りに山賊達はうごいてくれること。
  まあ、あたしが多少なりとも干渉した、というのはあるにしろ。
  少しの干渉でおもしろいまでに計画通りにいくのもまた面白い。
  人の心まではあたしは干渉していないのだから。
  今のあたしの容姿は、まぎれもなくリナの小さいときのそのままの容姿。
  理由は簡単。
  いつもとっている姿だとSに気づかれかねないし。
  こちらの姿ならばリナの気配とあわせてあたしの気配を隠すのにはうってつけ。
  下手に完全に気配を隠すよりリナの気配とおなじにしてまぎれさせたほうが面白い。
  そのままリナ達はあたしの思惑どおりにあたしを連れて旅にでるつもりになってたり。
  だから人間って面白いのよね。
  案の定、あいつはあいつでこちらに気づいていない。
  いくらリナの気配とだぶらせているとはいえ、気づかないとは…やはりSはSなのよねぇ。
  まったく……
  万が一にもすぐに気付かれたら面白くないのでとりあえず服に周囲の気配となじむように細工を施して…っと。
  あとは、ゼロスから買い取るであろう魔血玉を先にリナに見せることによって、依頼料という名目のもと渡して・・っと。
  そのほうが何かとおもしろくなるし楽しめるし。
  ガウリイ=ガブリエフという人間は何となくその勘であたしがひとではない、と気づいたようだけど。
  自分の気のせいかな?で今のところはすんでるし。
  ま、彼は誰かに聞かれない限り話さないからそれはそれで問題ないし。
  まあ、同じ気配の人間、というのはまずあり得ないからそのあたりで気づいたらしいけど。
  しかし、人間のガウリイですら気づくのに気づかないSって…
  あとでみっちりとお仕置き決定ね♪

  ここまであたしのもくろみ通り、というか何というか……
  リナ達とともに行動しはじめてこの世界ではや数日。
  案の定、Sがちょっかいかけてきているこの現状。
  だ・け・ど!
  あたしがいるのわかってないわね!ほんっとぉにっ!
  あたしがいるのに攻撃なんかしかけてきて!あいつはぁぁっ!!
  どうやらリナは転移させたのはSのやつ、と思い込んでいるようだけど。
  いうまでもなく転移させたのは実はあたし。
  なのに、それでもまだあいつは気づいてないってこれってどうよ!?
  …お仕置き決定♪
  ちょうどリナがあたしの術、すなわちあたしそのものを召喚ともいえる技を使うようだし。
  これに丈じて少しばかりリナ達に気づかれることなくお仕置きするとしますかね♪


  「堕天の鎌(ルシファサイズ)!」
  リナとグレイシアの術に気を取られている今が好機。
  ガウリイもゼルガディスもシルフィールもあたしの行動にはまったくもって気づいていない。
  ふいっとSの背後に出現し、言葉と同時に愛用の鎌を具現化させる。
  「な…!?え…エエエエエ!?」
  まったく……
  「まったく。今の今まで気づかなかったわけ?Sのくせして?」
  「なななななぜ!?」
  本気で気づいてなかったようねぇ。
  こいつは。
  「ずっとリナたちと一緒にあたしもいたでしょうが?しかもあんた、このあたしにむかって攻撃しかけてきたわよねぇ?」
  ズザァ。
  なぜかあたしの言葉にSの感情が大きく揺れ動く。
  それと同時に深い部分に沈んでいたレゾ、としての人の心が浮上してくる。
  「ま、とりあえず、あんたはお仕置き決定ね♪」
  「あああああああっ!!!!」
  えい♪
  ザシュ♪
  かるく大鎌を突き刺しただけでなぜか精神世界で絶叫しているSの姿。
  まったく。
  これしきのことで…ねぇ?
  さってと。
  あとは…っと。
  『レゾ。汝が望みし結末はなんぞや?』
  とりあえず、Sの中で喰らい尽されそうになっていたレゾの魂にと語りかける。
  なぜかそれにたいして驚いているレゾの様子が視てとれる。
  そもそも、こいつらってかつての行いゆえにS達を封じているわけなんだけど。
  また同じ過ちをするとはひととは何とおろかなことか。
  「な…なぜ……」
  かすれる声をあげているSと、そして戸惑いまくっているレゾ。
  『汝は汝が行ったことの始末をつけねばならぬ』
  そう。
  このレゾは自分の魂にとある術をかけている。
  そしてその結末を迎えるのもまた彼自身でなければいけない。
  誰かの干渉や実力行使でなく、自分で選ぶことが何よりも必要。
  かつて、彼らは自分たちの力を過信し、命をないがしろにする研究にと手を染めた。
  この世界の存在達は一部のものをのぞいて忘れてしまったようであるが、
  それらの反省をこめてスィーフィードは彼らの中にSの魂を封じ込めた。
  自分たちがいかに命をないがしろにした行為をしたのか自覚してもらうために。
  命は正しく導かねばそのまま滅びに突き進む。
  ゆえにこそ、あたしは光と闇、といった相反する属性をもつ存在をそれぞれの世界に創りだしておいている。
  どちらにいこうにも、それらを正しくつかさどるものがいることにより、世界は正しくありつづける。
  そしてまた、そんな彼らの魂には、光に属する力も実は一応封印されている。
  光と闇を正しく理解すること。
  それが彼らに課した使命。
  もっとも、ほとんどの存在がその光に気づくことなく闇に飲み込まれたままになっていたり、
  そのまま自信を闇に置くことをきめてSとその精神と魂を同化させたり、としてはいるが。
  白霧(デスフォッグ)の世界においてはその身をそのまま変えることをよしとする存在も出始めている。
  まあ、それはそれで別に問題はないにしろ。
  用はきちんと光と闇。
  それらを含む相互する力が正しく満ちていれば世界の存続は可能なのだから。
  再び、このレゾが目覚めるとき。
  それは、自分がかつて行った術による後遺症ともいえるもの。
  『ひとたび眠りにつくがよい。めざめしときこそ汝の新たな決意が必要になるであろう』
  あたしの言葉と同時、レゾの意識が眠りについてゆく。
  その前に、リナに何かいいたいことがあるみたいだから一応伝言するゆとりだけはあたえておくとしますか。
  レゾの魂はこのままあたしの元…混沌に還るわけでなくかつて術をほどこしてあるとある場所にと移動する。
  彼自身も感じてはいるであろうが彼の魂に蓄積したSの痕跡が消えるわけではない。
  それらをどうにかするのもまた【レゾ】という人間の役目であり責任。
  あたしがあのリナに力を貸す理由もそこにある。
  彼女は命の何たるかをきちんと理解して、それでも前をむいて生きているからに他ならない。
  まあ、面白い、というのも一因ではあるにしろ。
  何はともあれ、とりあえず…
  「S♪あんた、すんなりと眠れるとはおもってないわよねぇ?」
  んっふっふっ♪
  いくらここの世界で七つに分断された魂のかけらとはいえ、このあたしにちょっかいかけて攻撃しかたけこと。
  許されるとおもってるのかしら?
  んふふふふ♪
  しばらくリナたちに気づかれないようにSをこき使うとしますかね♪


                   −終わりー

 
#####################################

あとがきもどき:

薫:エル様語り(?)でした♪
  さて、暴露してますとおり、いうまでもなく、リナがどこの子?とおもってるのはエル様です。はい(まて
  ま、みなさん気づいていたでしょうけどねぇ。
  エル様、おもしろがってリナ達と行動をともにしているわけで。
  ちなみに気配もまったくリナとかぶらせているのでガウリイが不審がってはいますが(笑
  いや、まったく同じ気配の人間ってまずいませんし。
  コピーにしろ必ずどこかしらは違いがでてきますからねぇ。
  でもまあ、その不審さんもまあ、親戚の子ならありえるのかな?
  というガウさんは認識です。はい(ま、ガウリイだし
  7話で、リナの意識が浮上したあれ。
  実はエル様がSに攻撃…もといお仕置きしかけたからだったりするわけで。
  だけどリナがふっと意識を戻したときにはすでにエル様はリナたちの横にいるようにみせかけてます。
  つまり、リナの知らないところで精神世界面でSはかなりのお仕置きうけてるわけなのですよ。んふふふふv
  あと、Sがいったニブヘイムの末裔。
  あれは薫オンリーの設定です。
  ナーガの母親が神魔戦争で魔族に滅ぼされた一族の末裔さん、という設定にしております。
  その一族は神魔融合呪文をあみ出した一族、という裏設定にしております。
  そんな一族なので、フィル殿下と結ばれて、とんでもない娘が生まれたわけで(苦笑
  フィルさんはそんなことはきいても理解しておりません(こらこらこら
  もし、三巻分のあたりまでいくのであればこのあたりの裏設定が生きてきます(そのようにしてるし
  さて、ここまでお付き合いいただきありがとうございましたv
  …これで一巻分は完了です。
  二巻分からは…どうするかいまだに不明です。
  さて、どうしますかねぇ?はて?
  何はともあれ、ではまたどこかでお会いしましょう♪
  ではでは〜♪



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34067お久しぶりですv紗希 2009/5/28 21:18:07
記事番号34025へのコメント

>こんにちわ。みなさん。なにか連載が数年とどこおっていると自覚しているかおです。
>はじめましての人ははじめまして。お久しぶりの人はお久しぶりです。
こんばんわ、かおさん。
連載が滞っている?わかります。自分もその状態なので(汗)
なんだか、懐かしい思いでいっぱいです…。

>どうも最近は脳内がジャン●のぬらりひょ●の孫にうめつくされて、
>なかなかスレの打ち込み気分にならない私なのです・・
孫は、何か風の噂で聞いた事ありますよ。
ああ、ハマるものがあると手に付かないですよね…
私もその状態ですよ( ̄▽ ̄;

一通り読まさせていただきました。
さすが、の一言ですよ。
かお様の技量が良いから、アレンジができるのですね♪
Sの情けなさっぷりがツボです(笑)

では、また会いましょうv

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34078お久しぶりです♪かお 2009/6/2 07:33:24
記事番号34067へのコメント

こんにちわ。お久しぶりです。紗希さん。かきこみありがとうございますv
>連載が滞っている?わかります。自分もその状態なので(汗)
>なんだか、懐かしい思いでいっぱいです…。
なんか脳内の関係と忙しさの関係ですすまないときってありますよね(汗
それが数年になろうとも(かなりまて
最近は仕事の関係もあって以前のように仕事からもどって、
一本打ちこみおわってねる、というきりょくすらなくなってきている状況です・・
年かな(汗
>孫は、何か風の噂で聞いた事ありますよ。
そうなんですか?たのしいですよ〜、あれ(笑
妖怪さんとかすきなのでもろにつぼついてますv
>ああ、ハマるものがあると手に付かないですよね…
>私もその状態ですよ( ̄▽ ̄;
脳内がそっちにうめつくされちゃいますからねぇ。
最近はパソするよりいぜんのDVDとかみだしてたり・・
最近タチノワルスギルウィルスはやってるので以前のようにさくさくネットサーフィンする度胸が(あうっ・・
>一通り読まさせていただきました。
>さすが、の一言ですよ。
>かお様の技量が良いから、アレンジができるのですね♪
>Sの情けなさっぷりがツボです(笑)
わざわざよんでくださってありがとうございますv
いや、あまりに変革がひどすぎたので・・・児童書・・
いくら神坂先生が監修してないといってもあれはひどい・・・
ガウに野生の勘がなければガウでないー!(絶叫
まあ、シルフィールはいい性格よくあらわしてるな、とはおもったですけどv
こわいのがナーガの裏設定すらしらずにかいてそうな予感・・・
それまでかえてたらもうそれこそスレではない・・・
>では、また会いましょうv
はいvわたしも続きをたのしみにしておりますv
ちなみにわかったでしょうけど、これにでてきてる幼女、当然エル様です(まて
ではでは、感想のお返事おそくなってもうしわけありませんでしたv
それでは、またv