-異界黙示録伝《風の書》その9-魔沙羅 萌(7/16-22:14)No.3429
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3429異界黙示録伝《風の書》その9魔沙羅 萌 7/16-22:14

どうも、魔沙羅です。
お元気でしょうか?
それではいつもの通り、異界黙示録伝、いってみましょう!
あ、ちなみにタイトルから下はパック君の一人称となっております。


神魔戦争より数年後、第2の月《リナ》。
その日もわたしは彼女に会いにいったわ。
わたしはゼラス。ゼラス=メタリオム。
ルビー・アイ様の腹心の一人としてこの世に存在している。
あの御方は今ココにはいない。いたとしても人間の中。
そんな今、わたし達はほとんど活動を停止している。
でも、神族達は違う。勝手に世界で力をつけ、今となっては第1の月《ルナ》を味方につけている。
だからこそわたしは第2の月《リナ》を仲間に付けにいったわ。その時だった。わたしが彼女と出会ったのは。

14,5歳の少女…それが彼女の第一印象だった。
茶栗色の長い髪、うす紫色のローブ、まだ幼さが残っている赤い瞳……どれ一つをとっても彼女は強そうには見えなかった……。
『わたしが…あなたなんかに負けるなんてねえ。やっぱはじめての戦いの相手をあなたにするなんて無謀だったかしら』
負けた…このわたしが……
言ってる自分でも信じられないこと。
『それはそうでしょうね、あたしはあなたと違って長生きしてますから』
長生きしてる……?
どう見ても子供にしか見えないのに。
この人いったい誰?「一番えらい人に会わせなさい」って言ったら出てきたけど……。
『不思議そうな顔をしてますね、ゼラス。まあ、無理もないでしょうけど。
あたしはリナ。この第2の月『リナ』の意志と言うのが一番ピンと来る言葉ですね。
あ、さっきいってた「魔族の仲間になりませんか?」の答えだけど断らせて頂きます。
あたし達はまだ、中立の立場に立っていたいですから。あたし達が歴史上に加われば、たくさんの犠牲者が出ます。
それに、あたしは魔族のやり方も神族のやり方も納得いきませんし』
納得がいかない……か。おもしろい事言うなあ。
うーん、なんとなく、興味がでてきたわ。
『あなた、おもしろい事言うわね』
『え?』
『気に入ったわ。ねえ、一緒にお酒飲んでいきましょうよ♪
それともわたしのお酒が飲めないって言うの?』

やんなっちゃうわよね。あまりにもリナが強くておもしろいから妙に気に入っちゃって。
こうしてわたしは毎日のようにここに遊びに来るようになったわ。
リナはいつも来るたびに青き第1の月が見える『青月光の間』にいたわ。
彼女の妹分にあたるリラとトキワをつれて。そして、今日とて例外ではなかった。
「また来たわね、ゼラス。待ってたのよ」
彼女はわたしが声を掛ける前にわたしに気付いてしまった。
うーん、流石よね、いちおう毎度気配を消して来るんだけど。
「やっぱ気付いちゃったわね、今日もお酒持ってきたんだけど。
一緒に飲まない?リラちゃん達もさ」
「ゼラス、今日はそれどころじゃないの。ねえ…相談にのってくれますか?」
いつもの彼女と違って細くて弱々しい声。それでいて相手に有無を言わせない口調。
なにかあったのかしら。
「ええ、いいわよ。珍しいじゃない。あなたが相談にのれなんて言うなんて」
「そうかしら。……ねえゼラス、あなたは白という色と黒という色についてどう思うの?」
「いきなりなに聞くのよ。…そうね、一般的には白は清らかな色、黒は暗いイメージがあると思われているわよね」
「ええ、一般的には。白と黒って確かに対極的な色だもの。仕方はないわ。
でも、考え方によっては白を清らかな色と見るのは間違っているわ。
ううん、むしろ黒の方がいろんな意味で神聖的な色よ。
白以外の考え方は全て持っているもの。白はそれ一つしかない。
でも、それでも双方ともあたしの考え方にはあってないの!」
……それって?
リナの様子は今にも泣き出しそう。いったいなにがあったのかしら?
まさか……
「リナ、もしかして誰か来たの?何を言われたの?」
「さっき、神族の方が来てあたしが彼らに従わなければ神族全体で総攻撃をココにする、と。
あたしは、どうするべきでしょう?以前、あなたにいった通りあたしは神にも間にも従うつもりはありません。『ルナ』みたいに神だけに従うなんてあたしにはできない。
あたしは白でも黒でもないものでいたい!すべての生物の思想を二つに割るなんてできる訳がないわ!それならばあえてすべてを持った灰色か何も持たない無色の方がいい……。
ごめんなさいね……ゼラス。あなたにこんなこと話したってしょうがないわよね。
ただ……ただね、もうあえないような気がしたから……」
「あなたが謝る必要なんてないんじゃないの?
ねえリナ、今日あうのが最後かもしれないんだったら、あえて一緒にお酒のみましょうよ。思い出になるじゃない」
「そうね」

ゼラスと彼女が最後にあってから1週間後、赤き第2の月『リナ』はこの世界から消え去ったとされている。その数字が正しいかどうかはさだかではない。


月の家〜大いなる過去から未来へのメッセージ〜


「そーれい!」
おれはいつもの通りある一種の商売道具である『よいこの絵本』を放りなげた!
ちゅどおーーーん!!
いつもの通り絵本はやってきた兵士もろとも空の彼方へ吹っ飛ぶ。
へっへっへっ、今日はいつもの2倍の火薬を使ってるのさ。
ここは妖精城にある謁見の間直前の渡り廊下。
え、なぜ兵士が空の彼方へ吹っ飛ぶのかって?決まってるじゃん。屋根なんてとっくに吹っ飛ばしちゃったもん。
だいたい、謁見の間が『扉』の塔を除いて一番高い場所になってるのが悪いんだい!おれのせいじゃないやい!
「おいパック、やりすぎだぞ!」
ごもっとも、心の底からその事はわかってるよ、ゼルガディスの兄ちゃん。
でも別に悪気がある訳じゃないし。
「おいパック、聞いてるのか?そろそろ謁見の間に入るぞ」
「へいへい」

いっぽうここはオベロンのいる謁見の間。
彼はのんきなことに今日で4杯目のお茶を飲もうとしていた。
そろそろ来るか、パックよ。
おそらく火の神はもうティタニアと接触しておる頃であろう。
ここは一つパックともう一人の者の実力でも見るとするか。
などと考えつつ。
やはりこの極悪妖精王は根っからののんき者さんのようだ。
そのくせじつに恐ろしいことを考えたりもしているけど……。

ちゅどーーん!
中身はこじんまりしてるくせに妙にでかい謁見の間の扉は破壊された。
無論、このおれが新開発の『ふつうに使っても大丈夫だけどなげると爆発しちゃうよーんなオルゴール』でぷち壊したんだけどね。
「をいパック……」
「なんだい?ゼルガディスの兄ちゃん」
「アグニがいないからといって建物を壊すなよ。そのうち死人が出るぞ」
ぎく。…ちょっとやり過ぎたかな。
「はっはっは!だいじょーぶ。おれも兄ちゃんも死なないから」
「そういう問題ではないと思うんだが……」
「……すまんが俺のティータイムの邪魔をするのだったら出て行ってもらえんか?」
……部屋のすみっこのほうから聞こえてきたのは聞き覚えのある声。
あいかわらず年がら年中お茶飲んでる変なやろー。
「オ、オベロン!何時からそこにいたんだ!」
「最初っからここに居ったぞ。3年前といいお前は破壊活動しかできんようだな」
「う、うるせいやい!あんときはもっと威力の小さいのでなおかつマジメにやってただろ!」
…破壊活動を。
「……3年前も同じようなことをやったのか、お前は」
うっ。ゼルガディスの兄ちゃんの鋭いつっこみ。
「そ、そんなことよりもオベロン!この妖精界を解放するんだ!」
「何故だ?この国の民がそれを望んだとでも言うのか?
この城に使える兵士もこの国の民だというに」
「そうかも知れんがそれは貴様が操っているんだろ!
この国の者が無理矢理すべてを作り替えようとするものを認める訳がないだろ!」
お、ゼルガディスの兄ちゃん、いいこと言うね!
「それはどうだろうな、リヴァ…いやセアフェルは自分から進んで俺につかえたのだぞ」
「セアが……?うそだ!あいつはそんなことするはずがない!
あいつは……あいつは俺たちの仲間だぞ!」
「まだ分からぬか。世の中と言うものはこういうモノなのだ。
パック……いや、我が息子よ」
え?息子だぁぁーー?

〔続く〕

…すみません、遅くなりました。
しかも中途半端で終わります。
しかも吹っ飛んでます。
ほんっっきですみません。

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3432Re:異界黙示録伝《風の書》その9松原ぼたん E-mail URL7/17-13:59
記事番号3429へのコメント
 面白かったです。先日は粗筋有り難う御座います。

>わたしはゼラス。ゼラス=メタリオム。
 生きてらしたんですね。
>でも、神族達は違う。勝手に世界で力をつけ、今となっては第1の月《ルナ》を味方につけている。
 けっこおちゃっかりしてたんですね(笑)。
>やんなっちゃうわよね。あまりにもリナが強くておもしろいから妙に気に入っちゃって。
 確かになんか気が合いそうですよね。
>「さっき、神族の方が来てあたしが彼らに従わなければ神族全体で総攻撃をココにする、と。
 神族、やり口汚いぞ。
>ゼラスと彼女が最後にあってから1週間後、赤き第2の月『リナ』はこの世界から消え去ったとされている。その数字が正しいかどうかはさだかではない。
 にー、悲しいです。
>いつもの通り絵本はやってきた兵士もろとも空の彼方へ吹っ飛ぶ。
 絵本に仕込むなよ。
>無論、このおれが新開発の『ふつうに使っても大丈夫だけどなげると爆発しちゃうよーんなオルゴール』でぷち壊したんだけどね。
 投げると爆発するものを普通に使っても大丈夫とはいいません。落としたらどーするのよ。
>え?息子だぁぁーー?
 え゛!?

 本当に面白かったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。