-壊れた人形……-桜我天秦(7/19-09:09)No.3467
 ┗Re:壊れた人形……-松原ぼたん(7/19-13:12)No.3471
  ┗どもども、感想ありがとうございます-桜我天秦(7/21-04:46)No.3499


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3467壊れた人形……桜我天秦 7/19-09:09

「ダルフィン、いる?」
 冷たい声が辺りに響き渡る。だが、それに反応はない。
 変ねえ……いつもならなんかしら反応があるのに……と、呼び掛けた本人、獣王ゼラスは不思議に思った。
「……静かすぎる……まさかっ!」
 私に内緒で皆で旅行に出かけたとかっ!と、金髪の女性は頭を抱える。
「あ゛あ゛あ゛っ!そういえばゼロスもなんか旅支度していたしっ!フィブリゾも幼児用水着なんか買っていたしっ!ガーヴなんか浴衣を新着していたしっ!グラウシェラーはっ!シェーラと一緒にアロハシャツ買っていたしっ!」
 女性はごろごろと地面を転がりまわるが、誰もなんだなんだと見に来る奴はいない。見たら滅ぼされるのが関の山である。
 あれ?と、彼女はふと考えて、転がるのを止める。
 ダルフィンって……なんか用意してた?
 そうなのである。彼女の記憶を探れば、ダルフィンはしょっちゅう彼女と一緒にお酒飲んだりしているのだ。
 それで用意していたなどとは考えられない。それに、彼女はそんなに几帳面じゃない。
「ダルフィンが用意してないと考えて、彼女がどこにいるか……もちろん最初は……」と言って彼女はすくっと立ち上がり、ドアを親指で指差す。
「彼女の部屋よね」
 ゼラスはおじゃましまーす、と小さく呟いてダルフィンの部屋に侵入する。
 いつもなら、ここで海将軍と海神官が飛びついて来るのだが……それが来ないと言う事は、やはり彼女も出かけてる?
 とりあえず、彼女は部屋を漁る事にした。もっとも、漁った事がばれるとお返しは必死。
 その為、静かに漁る事にした。
 まずは下着……魔族にははっきり言って関係ないのだが、雰囲気と言う奴である。それが少しばかり、しかも彼女のお気に入りの服がなくなっているのだ。
 これは……やっぱり彼女も用意をしていた?
 もしかして、用意していないのって私だけぇっ!?
 ガーンガーンガーンガーン……と、ゼラスの頭にショックが駆け巡る。
「そ、そんな……」
 ゼラスはしなしなとしおらしく、へたりと座り込む。
 私だけが……何も知らなかったのねえぇぇぇぇぇぇ……と、演劇調によよよと泣いてみたが、やはり誰も見ていない。でも、見られてても困るけど。
「私だけ仲間外れ……ふふふふふ、仲間はずれねぇ」
 すくっと、ゼラスは立ち上がる。その背中にはなんらかの怪しいオーラが燃え上がっている。
「うふふふふ、ぜーったい、許さないっ!とりあえず、皆の部屋を徹底的に荒らすっ!」
 頬に涙を伝えながら、ゼラスはダルフィンの部屋を出た。


「うふふ、うふふふふ。後は……うっかり忘れてたダルフィンの部屋だけね……」
 ゼラスはぜえ、ぜえ、と、肩で息をしながらダルフィンの部屋、と滑らかに書かれたプレートのドアノブに手を掛けた。
 と、その時。
「ゼラス……何してんの?私の部屋の目の前で」
 びびくうっ!ゼラスは心臓があったら喉から出るほど驚いた。
 ゼラスは声が聞こえた方を向く。そこには、細長いパンやら色々な物が入った紙袋を抱えた白い髪の毛の女性がきょとん、としながら立っていた。
「ダ、ダルフィン……」
「さっき人間の街から買い物して来たんだけどさぁ……なんか、荒らされてるけど、ゼラスなんか知らない?」
「う、ううん。知らない」
 ゼラスは首を横にぷるぷると振る。ダルフィンは「そーお?」と露骨に怪しむ顔でゼラスを見るが、すぐに普段の顔に戻って自分の部屋のドアノブを回す。
「そういえば……ゼラス今日が何の日か覚えてる?」
「え?え、えーと……」
「覚えてないのね……まったく。今日は私達の休暇の日よ……皆前日入りしているんだけど、あなただけお酒でべろんべろんに酔ってその事すっかり忘れてたんじゃないの……」
「そ、そーだっけ?」
 ゼラスは頬を掻きながら、困った笑顔を浮かべる。ダルフィンはその様子を見てため息をついて、ドアを開ける。
「そうよ。それだから、私はここに残ってあなたの身支度をしていたんでしょ……とりあえず、もう荷物の用意はできたから」
「そ、そうなの……ありがと、ダルフィン」
「お礼ならゼロスに言って。あの子があなたが今日の事覚えていないかもって私に耳打ちしたんだから」
「そう……あの子が……」
 ゼラスは若干嬉しい気持ちになった。が、それと同時に何故残ってくれなかったの、との不満も積る。
「ゼロスはね、私が遊んでらっしゃいって言ったの。少しは一人にさせてあげなさいよ。いつも一緒じゃ自由にできないでしょ」
 ダルフィンはゼラスの気持ちを察したのか、ゼロスがここにいない理由を述べた。
「でも、あの子は私の部下よ」
「部下でも、たまには生き抜きが必要よ……」
 ダルフィンはゼラスの顎に人差し指を当てる。
「それにね……久しぶりに二人っきりってのも良いでしょ」
「二人きりったって……私としてはグラウシェラーの方が良かったな」
「まあ、そんな事言わないで」
 ダルフィンは紙袋を机の上に置いて、自分のタンスを開ける。
 そして……しばしの硬直……
「ねえ、ゼラス……」ダルフィンはタンスを閉めて、笑みを浮かべながらゼラスに問う。
「何?」
「私のタンス、漁った?」
「え、えーと……その……ごめん」
「漁ったのね……まあいいわ。私に用があったけど、私がいないんで漁ったんでしょ」
 その通りであるが、ゼラスは声には出さないで顔に思いっきり出している。
「ゼラス、私色々な服買ってきたから、後で着せ替え人形になる事で許してあげる」
「うっ」ゼラスは苦笑いを浮かべながら、ダルフィンの思い出をしぶしぶ従った。
 ダルフィンの着せ替え人形は、かなり大変であり、海将軍が疲れて二三日休暇くださいと申し出たぐらいである。
 その為、その餌食になったのは、壊れた人形と密かに呼ばれているが、その情報はダルフィンにはシャットアウトされている。
「それと……フィブとかの部屋で暴れたの、秘密にしといてあげるからね」
 ……こういう事には叶わないなあ、とゼラスは密かに思ったのだった。そして、後で彼女の弱みを握ってやるとも。

 ゼラス×ダルフィンです。はっきり言って博打モンです。
 ダルフィンの方が今回ゼラスよりお姉さんになってますねー(^^;
 ダルフィンって色々なイメージがありますからある意味難しいんですが(^^;とりあえず女性です。
 ま、これは遊びだと考えてください。
 受け悪いだろーなー、こーゆーのって(苦笑)

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3471Re:壊れた人形……松原ぼたん E-mail URL7/19-13:12
記事番号3467へのコメント
 面白かったです。

>「あ゛あ゛あ゛っ!そういえばゼロスもなんか旅支度していたしっ!フィブリゾも幼児用水着なんか買っていたしっ!ガーヴなんか浴衣を新着していたしっ!グラウシェラーはっ!シェーラと一緒にアロハシャツ買っていたしっ!」
 それはみてみたいっ。
> いつもなら、ここで海将軍と海神官が飛びついて来るのだが……それが来ないと言う事は、やはり彼女も出かけてる?
 いつもやってるのか(笑)。
>「私だけ仲間外れ……ふふふふふ、仲間はずれねぇ」
 仲間外れにショックを受ける魔族(笑)。まあ、ショックだろうけど。
>「お礼ならゼロスに言って。あの子があなたが今日の事覚えていないかもって私に耳打ちしたんだから」
 気がきくというか、何というか。
> ……こういう事には叶わないなあ、とゼラスは密かに思ったのだった。そして、後で彼女の弱みを握ってやるとも。
 転んでもただではおきませんね。

 本当に面白かったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。

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3499どもども、感想ありがとうございます桜我天秦 7/21-04:46
記事番号3471へのコメント
どもども、桜我天秦です。

>>「あ゛あ゛あ゛っ!そういえばゼロスもなんか旅支度していたしっ!フィブリゾも幼児用水着なんか買っていたしっ!ガーヴなんか浴衣を新着していたしっ!グラウシェラーはっ!シェーラと一緒にアロハシャツ買っていたしっ!」
> それはみてみたいっ。
 全員似合いそうなのを買いに行かせてみたんです(^^)

>> いつもなら、ここで海将軍と海神官が飛びついて来るのだが……それが来ないと言う事は、やはり彼女も出かけてる?
> いつもやってるのか(笑)。
 まあ、入ってくる魔族を脅かす為にやってるんですけどね、マンネリして効果ないんです(笑)

>>「私だけ仲間外れ……ふふふふふ、仲間はずれねぇ」
> 仲間外れにショックを受ける魔族(笑)。まあ、ショックだろうけど。
 ギャグなんでショックを受けた方が良いかと(^^;シリアスだったらショック受けないと思いますが。

>>「お礼ならゼロスに言って。あの子があなたが今日の事覚えていないかもって私に耳打ちしたんだから」
> 気がきくというか、何というか。
 自分は遊びに出かけたかったんでしょう(笑)実は、海で泳いだ事がないとか(おぃおぃ)

>> ……こういう事には叶わないなあ、とゼラスは密かに思ったのだった。そして、後で彼女の弱みを握ってやるとも。
> 転んでもただではおきませんね。
 これでこそ、魔族です(^^;


> 本当に面白かったです。
> ではまた、ご縁がありましたなら。
 ではでは、また次回作で……