◆-常闇の翼-桜我天秦(7/22-13:10)No.3524
 ┗Re:常闇の翼-松原ぼたん(7/22-15:49)No.3528
  ┗ありがとうございます-桜我天秦(7/23-03:49)No.3553


トップに戻る
3524常闇の翼桜我天秦 7/22-13:10

「冥将軍フェリル……覚悟っ!」
『滅ぶのは……あんたらだ……』
 目に見えない空間の歪みが爆発し、十五匹の金と黒の竜が落下して行く。
 そして、それが全て爆発し、肉塊となる……その中で一人佇む女剣士……
 冥王フィブリゾの忠実なる僕、冥将軍フェリル。その顔にはなんの感情も乗っていなかった。
 顔には……竜族の物であろう血がこびり付いていて、左半分をほとんど覆い隠していた。
『次は……誰?数だけでわたしを倒せると思っていたら……大間違いよ』
 フェリルは精神世界から、自分を囲む竜族の精神を直接破壊する。
 それだけで、竜は地上に落ちて屍となす。
 ここに竜族以外の物が来ないのは残念だ、と彼女は思う。
 来ていたら、竜族の死体を落としていただろう。そうすれば、下にいる奴も潰せるであろうから。
『竜族は不弁ね……人間の姿じゃ飛べないのだから……地上にしか罠を仕掛けられないから』
 彼女の剣が彼女よりも長く、大きい剣へと変化する。その長さは彼女の身長と同じくらい、いやそれ以上である。
『でもね……わたしは空にも罠を仕掛けられるの。将軍ってのは、策を使う物だから』
 彼女の目に、威圧するような光が輝いた。


『フェリルの奴……自分の周囲の精神世界に罠を張り巡らせるか……これでは援護に行けんな』
 もう一人のフィブリゾの忠実なる僕、冥神官フィオルは遥か先で戦っている自分の同僚を眺めていた。
 ただ、それだけではなかった。
 自らの主が作り出す結界が閑静するまでここを死守せねばならないのだ。
『我が主は我等を捨て石のするつもりなのだろう……それでも私は良い。我が命はあの方の物、どのように使われても知った事ではない』
 フィオルの足元から、無数の線が螺旋を作り出すように動き回る……そして、一分もしない内にその線が天へと延びる。
 何かの悲鳴が上がり、でかい図体をした竜が落ちてくる。線は、容赦なく落ちてきた獲物を貫く。
『……心地良い絶叫と怨恨だな……ありがたい物だ。わざわざ敵を喜ばせるのだからな』
 フィオルは口元に小さな笑みを、しかし残虐な顔のまま浮かべてその竜の頭を貫いた。
 物質ニ縛ラレタ“モノ”ナラバ、頭サエ貫ケバ終ワル……
 フィオルの牙はまだ剥かれたばかりである。


『弱いな……絶叫は心地良いが、ちと単調すぎて厭きて来た……』
 フェリルは詰まらなさそうに欠伸を噛み締める。その間にも、竜族は落ちて行く。
 落ちて弱っていても死んではいない獲物はいない。確実に仕留めているのである。
 もっとも、内臓が飛び出し、頭と身体が生き別れになりて頭が砕けた竜が生きている事はないが。
 半刻も経っていない内に、彼女を囲んでいた竜は黒と金を合わせてもう数える程しか残ってはいない。
 それを全て、彼女の罠だけで片づけられているのだ。冥将軍フェリル自身はあれから一度たりとも剣を振るってはいない。
「くそっくらえっ!」
 黄金竜の一匹が、閃光の吐息を放とうと動く。その瞬間、彼の上顎は吹っ飛び、鼻から上は削り取られた。
『馬鹿な奴だ……間接攻撃など予測しているに決まっているだろう。もちろん……』
 フェリルが動く。指を弾くだけだったが……それだけで遠くの方で爆発した。
『遠距離だろうとな』
 フェリルは真剣な顔をしていない。だが、気は一歩も緩ませてはいない。
 気の緩みが突破口にされる可能性も有るのだ。
 フェリルはゆっくりと目を瞑る。そこに隙が生じたと思い込んだ若き竜は、いまだと思って突撃を掛けようとした。
 しかし、できなかった。
 身体がいつのまにか固定されているのだ。そして、そこで始めて彼等は自分の背中に痛みを感じた。
「なぁっ!?」
 竜族の言葉で、若き竜達は驚きの声を上げる。
 彼等は透明な鉤爪でその場に固定されていたのだ。
 驚いている彼等を見て、フェリルはその後景を見てにやけていた。
「わたしに殺されるまで気づかないのではないかと思っていたぞ……」
 フェリルはにやけたまま、言葉を紡ぐ。
 フェリルが言い終えた後、若き竜の身体から血塗られた透明な巨大な鉤爪が生え、その身体を食らうかのように動き回る。
 それで、若き竜は絶命した。
 脆ク、脆弱ナ物ダ……神ノ僕トハ……繁栄シカデキテイナイ……繁栄スル事ガ、力ナキ種族ノ力カ……
 フェリルはそんな事を考えていた。油断せずに。


『ここ以外はすでに完成したか……後はマスターの終了を待つばかりだ……』
 竜族はここを集中するだろう……完成していないここを。
 フィオルは少しだけ頭を悩ませた。腹心が動き出せば、竜族に勝ち目はない。
 ならば、そこからは戦線を離脱、完成していない所に向かうのが当たり前だろう。
 数として全体の半数がここに来る……いや、もしかしたらほとんどの竜族が来る事だろう。
 自分にゼロスほどの力が有れば……と今日ばかりはそう思った。
「フェリル……戻ってこい。我が主を護らなければ……主の主に勝ち目はない」
 フィオルは聞こえないと思うが、とりあえず口に出してそれを言った……
 そして、フィオルの目の前に数え切れないぐらいの竜が現れる……
 私ガオ役ニ立テルノモ、ココマデカ……
 フィオルはそう思い、最後にこう思った。
『フェリル……私がいなくなってもフィブリゾ様を……頼む』
 

 ……フィオルが滅びるか……
 ……フェリルも滅びるかもしれない……
 すまない……だけど、全てはシャブラニグドゥ様の為……
 できるだけ早く仕上げなくては……

 冥王フィブリゾは最後の仕上げに取り掛かり、それが完成した……
 ただし、フィブリゾを慕った二人の部下は二度と会う事はできなかった……
 二人が付けていた、自分が買ってやった球体のイアリングと、フェリルのチョーカー以外……

 

 ギャグなしドシリアス……似合わないですね、桜我天秦です。
 先に書かれてしまってピーンチッ!なんて思いましたがまあいいかって事で書きました。
 フェリルは我が子みたいに可愛がっているってのがバレますねー、私(笑)
 フェリルってのは、ある所から生まれた冥将軍なんです。フィオルもそうなんですが。
 一応、生みの親って事になるかもしれませんね(^^;フィオルは私が生みの親じゃありません
 色々な裏設定もありますが、それは後々他の所で。
 ではでは、またおあいいたしましょう。

トップに戻る
3528Re:常闇の翼松原ぼたん E-mail URL7/22-15:49
記事番号3524へのコメント
 面白かったです。

> 顔には……竜族の物であろう血がこびり付いていて、左半分をほとんど覆い隠していた。
 それは怖い。
> 来ていたら、竜族の死体を落としていただろう。そうすれば、下にいる奴も潰せるであろうから。
 をを、合理的(笑)。
>『我が主は我等を捨て石のするつもりなのだろう……それでも私は良い。我が命はあの方の物、どのように使われても知った事ではない』
 立派と言えば立派。
>『……心地良い絶叫と怨恨だな……ありがたい物だ。わざわざ敵を喜ばせるのだからな』
 うーん、冷静に考えたら虚しいですねー。
> もっとも、内臓が飛び出し、頭と身体が生き別れになりて頭が砕けた竜が生きている事はないが。
 ひーん。
> 気の緩みが突破口にされる可能性も有るのだ。
 将軍ですね。
> 自分にゼロスほどの力が有れば……と今日ばかりはそう思った。
 ゼロスの半分でもかなり強いと思いますが・・・・向こうも必死ですからね。
>『フェリル……私がいなくなってもフィブリゾ様を……頼む』
 立派。 
> 冥王フィブリゾは最後の仕上げに取り掛かり、それが完成した……
> ただし、フィブリゾを慕った二人の部下は二度と会う事はできなかった……
> 二人が付けていた、自分が買ってやった球体のイアリングと、フェリルのチョーカー以外……
 悲しいです。

 本当に面白かったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。

トップに戻る
3553ありがとうございます桜我天秦 7/23-03:49
記事番号3528へのコメント
 今回のコンセプトは私が思う魔族像を書いて見たんですが……だいぶ悪人ですねー
 もっと残虐にしたい、なんて思ったりもしますが……それじゃスレイヤーズの枠を飛び越してしまいますね(^^;
 魔族の攻撃も結構考えたりしていますが……フェリルの攻撃方法だとあの場は生き残れたんじゃあ?
 なんて思ったりもしますが、バテたんでしょうきっと(笑)
 フィブリゾって無駄な事はまったくしないと思うんですよね(^^;合理的主義者なのかもしれませんね
 
>> 来ていたら、竜族の死体を落としていただろう。そうすれば、下にいる奴も潰せるであろうから。
> をを、合理的(笑)。
 フィブリゾって無駄な事はまったくしないと思うんですよね(^^;それだから、部下も無駄な事は極力控えると思いまして。

>>『我が主は我等を捨て石のするつもりなのだろう……それでも私は良い。我が命はあの方の物、どのように使われても知った事ではない』
> 立派と言えば立派。
 上司に忠実なサラリーマン、もとい、魔族ですから……それぐらいは当然かなっと

>> もっとも、内臓が飛び出し、頭と身体が生き別れになりて頭が砕けた竜が生きている事はないが。
> ひーん。
 ちぃとばかし残虐ですねー。まあ、竜とてそうだと思いますので。ま、竜の内臓の構造なんか知りませんから(^^;

>> 気の緩みが突破口にされる可能性も有るのだ。
> 将軍ですね。
 これは戦場での鉄則みたいなもんでしょう。その割にはこんな事言う奴ってあんまりいませんねぇ(^^;

>> 自分にゼロスほどの力が有れば……と今日ばかりはそう思った。
> ゼロスの半分でもかなり強いと思いますが・・・・向こうも必死ですからね。
 私の場合、ゼロスを基準としているからでしょうか?弱いと感じます。
 その割には強すぎる能力(精神世界の罠、線の攻撃)を持たせたのは気のせいか?(^^;

>>『フェリル……私がいなくなってもフィブリゾ様を……頼む』
> 立派。 
 いやー、この後フェリルから、当分は無理です、との返答が……(笑)
 これは冗談として、彼は滅びを決心したから同僚にって感覚なんでしょうね。

>> 冥王フィブリゾは最後の仕上げに取り掛かり、それが完成した……
>> ただし、フィブリゾを慕った二人の部下は二度と会う事はできなかった……
>> 二人が付けていた、自分が買ってやった球体のイアリングと、フェリルのチョーカー以外……
> 悲しいです。

 これは史実ですからね……ちょっと私は着色しただけです

> 本当に面白かったです。
> ではまた、ご縁がありましたなら。

 それはよかったです。では、またおあいいたしましょう