◆-二翼の翼(前書き)-白いウサギ(7/22-17:27)No.3532
 ┣二翼の翼 1-白いウサギ(7/22-17:31)No.3533
 ┣二翼の翼 2-白いウサギ(7/22-17:35)No.3534
 ┣二翼の翼 3-白いウサギ(7/22-17:37)No.3535
 ┣Re:二翼の翼 4-白いウサギ(7/22-17:38)No.3536
 ┣二翼の翼 4-白いウサギ(7/22-17:40)No.3537
 ┣二翼の翼 5-白いウサギ(7/22-17:42)No.3538
 ┣二翼の翼 6-白いウサギ(7/22-17:44)No.3539
 ┃┗二翼の翼おもしろかったですぅ!-おおしょ〜(7/23-00:57)No.3551
 ┃ ┗おおしょ〜さんありがとうございますっ!-白いウサギ(7/23-16:07)No.3564
 ┣二翼の翼 7-白いウサギ(7/22-17:46)No.3540
 ┣二翼の翼 8-白いウサギ(7/22-17:49)No.3541
 ┣二翼の翼 9 -白いウサギ(7/22-17:54)No.3542
 ┗二翼の翼(後書き)-白いウサギ(7/22-18:40)No.3543
  ┣Re:二翼の翼1〜9の感想-白銀の魔獣(7/23-11:24)No.3556
  ┃┗白銀の魔獣さんありがとうございますっ!-白いウサギ(7/23-15:55)No.3559
  ┣Re:二翼の翼-松原ぼたん(7/23-15:59)No.3560
  ┃┗松原ぼたん様ありがとうございますっ!-白いウサギ(7/23-16:36)No.3565
  ┣Re:二翼の翼-魔沙羅 萌(7/23-21:27)No.3580
  ┃┗魔沙羅萌さんありがとうございますっ!-白いウサギ(7/23-23:05)No.3581
  ┣Re:二翼の翼-ブラントン(7/26-00:04)No.3610
  ┃┗ブラントンさんありがとうございますっ!-白いウサギ(7/30-23:54)No.3709
  ┣Re:二翼の翼-穂波(7/26-02:51)No.3611
  ┃┗穂波さんありがとうございますっ!-白いウサギ(7/31-00:05)No.3710
  ┗Re:二翼の翼-明美(7/29-16:41)No.3669
   ┗明美さんありがとうございますっ!-白いウサギ(7/31-00:21)No.3712


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3532二翼の翼(前書き)白いウサギ E-mail 7/22-17:27

どうも。白いウサギです。
お久しぶりですになるんでしょーか。
さて、今回のは一応シリアスなんじゃあないかなーとか思ってますが、何しろ私の書いた物ですからねぇ……(遠い目)
注意!とことん長いです。
ええそれはもう……気付いたら竜宮城に行った浦島のごとく年とってるかもしれません………
………まあ、いくら何でもそれは冗談ですが。

P.S桜我さんへ
 偶然にもタイトルが「翼」ってところが同じになってすみません。
 それもすぐ後に……
 本当にごめんなさい。

 では、長くても構わないぞと言って下さる方々!
 よろしくおねがいしますっ!

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3533二翼の翼 1白いウサギ E-mail 7/22-17:31
記事番号3532へのコメント
 昨日まで緑に覆われていただろうこの場所は、すでに黒い炭へと化していた。
 その黒い炭も赤く光を放ち、熱を生み出す。
 そう、ここ、盗賊団のアジトに。
 ………もちろん、あたしがやったのだが。
「おい、リナ。
 またやったのか……」
 茂みから姿を現したガウリイはやれやれと額に手を当てる。
 うーん……またばれたか……
 いつものセリフにいつものセリフで答えるあたし。
「だぁぁぁってこいつら悪党よ?
 そんな奴らにお宝を持たせるなんてうらやまし……じゃなくて、
 馬鹿らしいじゃない♪」
 あたしは腰に左手を当て、右手を前にピコピコと振ってみせた。
「それでまた盗賊いじめか?」
「えへへ……」
 あたしは頬をぽりぽりとかきながら笑った。
 ガウリイはため息を付き、
「……あんまり無茶するなよ」
 どうせ言っても聞かないこともあんたは知っているでしょーが。   
「別に盗賊いぢめは無茶な事じゃないけど……」
 一応反論するあたし。
「それはお前さんだからだろうが。
 普通の人から見ればとことん無茶なことだぞ」
「そりゃそーかも知れないけどぉ……
 ガウリイ、あんたあたし達の旅費って何処から出てるか知ってる?」
 ガウリイは怪訝な顔をして考え込んだ。
 ほっほう……やっぱり知らなかったか……こいつは。
「盗賊さん達の涙ぐましい努力の結晶からよっ!」
 あたしはびしぃっと盗賊さん達の亡骸……もとい、ちょっぴし眠っている姿を指さす。
 しかしガウリイはまた考え込んでやがて自信がないのかあるのか解らない口調で、
「……早い話が強盗、略奪してきた物からって事か?」
「……いや……そーかもしんないけど……」
 なんかあたしが盗賊よりたち悪い奴に聞こえるのは気のせいだろーか。
 でっ、でもっ!悪人に人権はないんだし、
 悪人を強盗しよーが、略奪しよーが法律上なんの問題も無いっ!
 …………と、思う。
「とっ、ともかくっ!とっとと次の村に向かうわよっ!」
「あ、ああ」
 リナとガウリイは夜の惨劇を後にした。
  
「リナ=インバースか?」
 昨日のお仕事のおかげで懐も暖まり、豪勢な朝食をとっていた時の事である。
 あたしの隣にどことなく人を見下したような奴が立っていた。
 全身黒ずくめの姿で、夜中にその格好で街を歩いてたらまず一発で警備兵に呼び止められるよーな奴である。
 真っ黒のだぼだぼローブ、黒いフードを目深にかぶっているため、顔はおろか、体型、声さえくぐもってよく解らなかった。
 まあ、知り合いの奴なら解るかも知れないが。
 ………一応念のために言っておくが、こんな奴とは知り合いになんぞなりたくない。
 しかし、もう話しかけられてるし、昨日の稼ぎのおかげで大量な食事があったことで、あたしとガウリイが目の前の朝食を奪い合うという日常茶飯事が珍しく行われなかったため、あたしはゆっくりとその男と向き合った。
「違います。」
 ゆっくり、きっぱりと言った。
 そしてとっとと食事を再開する。
 ふっ。人がいくらゆっくり食事をとれるからって、あんな奴と話すために時間をとってやる義理はあたしにはない。
 こーゆーのは大抵ろくな奴じゃあないんだろーし。
「いや、間違いないな。
 その魔法容量(キャパシティ)………
 そう滅多にお目にかかれるものではない。」
 間違いないと思うんなら聞いて確かめるなよ……
 などと心の中でツッコミをしながらも、あたしは席を立つ。
 ガウリイもそれに続いた。
 ぐぅぅんっ!
 あたしが行動を起こす前に、それは起こった。
 感覚が一瞬変な違和感を感じ取る。
 その違和感を的確に言い表す言葉をあたしは知らない。
 強いて言うなら、自分の体が異質の自分の体となったような感覚である。
 おそらく、普通の人間の一生では決してあり得ないことだろう。
 しかしあたしは何度もこういうことを体験したことがある。
 結界――
 簡単に言うと、別の世界へと一瞬で移動する物だと思えればいい。
 結界と言っても様々な類があるのだが、今回のは第三者から切り離すタイプのようだ。
 食堂にいた人々、さっきまで聞こえていた街の生活音が全く聞こえなかった。
 食堂の内部は、古びてはいるものの決して汚れてはいない机や、少しバランスの悪いイスなど、全く変わっていない。
 ただ、生き物の気配はなくなっていた。あたし、ガウリイ、そして―――黒ずくめ以外は。
 周りの人間が姿を消した――いや、実際はあたし達が移動したのだろうが、結界の外であたし達がどう見えるかは解らない。
 しっかし………いきなり結界にご招待されるとは思ってもみなかったぞ。あたしは。
 ガウリイは油断のない顔で黒ずくめを見る。
 ほっぺにスパゲティかなんかの汚れが付いているのであんまり様にはなってないが。
「いきなりずいぶんなご招待ね。」
「こちらの方が何かとやりやすいのでな。」
 あっさりあたしの挑発をかわす黒ずくめ。
「俺達に何の用だ?」
 ガウリイは腰にぶら下げた魔法剣に手をかける。
「貴様に用はない……
 用があるのはリナ=インバース、お前だけだ。
 私の結界はそこまでは範囲を絞り込めなかったものでな。
 まあ、お前は巻き込まれただけだ。」
 ガウリイには一瞥もくれずに言う。
「で?一体あたしに何の用?」
 机にのっていたカップを指でつつき、相手を見ずに言うあたし。
「お前と契約がしたい。
 その意志があるかないかを聞きに来た。」
 契約……やっぱり魔族か……
 こういう結界を作れる者はそうそういないはずだし、いきなり人の魔法容量を見抜くなど、人間には滅多に出来るものではない。
まあ、魔族でも見抜けん奴とか居るだろーけど。
あいつが放っている人間の負の感情全てが混じり合ったもの――障気がそれを肯定していた。
 しっかし『契約がしたい』って……どっかでも聞いたなー。そーゆーの。
 まあ、あたしの魔力を考えれば気持ちはわからないものでもないのだが………
 だからといって契約してやる気など更々ない。  
「いやだ……と言ったら?」
 ざっと、間合いを取るあたしとガウリイ。
「我が糧となってもらう。」
 …………?
 どういう意味だろうか……
 てっきりお約束通りの『殺す』と言う言葉が出てくるものと思っていたのだが……
「それは一体どういう意味かしら?」
「答えを聞く。
 YesかNoか」
 こちらの質問など全く聞く気がないのか、あっさり無視する黒ずくめ。
「名前も名乗らない相手と契約しろと……?」
「契約するなら教えてやろう。」
 ………ちっ。名前だけでも知っとけば後々便利かなーとか思ったのに。
 ガウリイの目をちらりと見る。
 ガウリイは頷いて剣を抜いた。
 今ガウリイの持っている剣は光の剣ではない。
 とある所で手に入れたかなりの魔法剣なのだが間違いなく光の剣よりは劣る。
 しかし……ある程度なら魔族にも効くはずである。
「じゃ、きっと知ることはないわね。」
 あたしは黒ずくめを睨み、呪文を唱え始めた。
「そうか……残念だ。」
 契約の仕方でも学んどけ、お前は。
 あの交渉でどーやったらYesと答えるんだ………
 だったらどういった利点を用意してるのか聞け、とかつっこまれそーだが、例えどんな条件でも魔族と契約する気なんぞもとより無い。  
 黒ずくめが滑るように後ろへと下がった。
 ガウリイの剣がそれを追う。
「邪魔だ」
 黒ずくめのかざした右手に『何か』が収束される!
 そして『それ』はガウリイに向かって解き放たれた。
 ひゅぃんっ!
 白い輝きを持つ小さな刃のようなそれは真っ直ぐにガウリイへと突き進む。
 ガウリイはあっさり右にかわし、その光に直ぐ側にあった花瓶を投げつけた。
 音すら立てずに花瓶を通過した光はそのまま壁へとぶつかり、消失した。
 床には真っ二つになっている花瓶と、そこに飾られていた花が飛び散っていた。
 なるほど……ぶつかったらあーなるわけね……
 ガウリイは花瓶を投げつけた直後、また黒ずくめへと走り出す。
「はああっ!」
 気を込めて黒ずくめへと真っ直ぐに振り下ろすっ!
 黒ずくめはそれを後ろに引いてかわした。
 浅かったか――っ!?
 すぐさまガウリイは下ろした切っ先を支点に今度は柄で黒ずくめに突きを放つ。
 避けられる間合いではない。
 そして柄は黒ずくめのおそらく喉元に当たるであろう部分を捕らえた。
 黒ずくめのローブに柄をめり込ませる。
 そしてあたしの呪文が完成した!
「黒妖陣っ!」 
 黒ずくめの右横へと回り込んだため、ガウリイには当たらない。
 それを考えた上で、呪文を解き放った。
 黒い魔力光は黒ずくめの直ぐ側まで行き―――
 ―やった!―
 あたしは心の中でそう叫ぶ。
 しかし、黒ずくめはしゃがみ込み、その状態からガウリイへと体当たりをかけるっ!
 しかしガウリイは何とかすんでのところでそれをかわす。
「そういや効かないんだったっけな。
 魔族って奴は。」
 剣を構え直し、じりっと前へ詰める。
 魔族に物質的な攻撃は意味を持たない。
 柄が当たろうが黒ずくめはノー・ダメージだったってわけである。
 相手が人間だったらケリはついていただろう。
 しかし、今の相手は魔族なのだ。
 今度は黒ずくめが動いた。
 ガウリイの方へと真っ直ぐ進み、そしてまた先ほどの光を右手から放つ!
 ガウリイはあっさりそれを魔法剣で断ち切った。
 そしてすぐさま放たれるもう一つの刃!
 時間差かっ!
 しかしガウリイはこれを横へかわす。
 黒ずくめはそれを追い、右手を大きく振りかぶる!
 ガウリイは体制を立て直し相手を見る。
 その瞬間ガウリイは大きく後ろへ飛び退いた。
 斬りつけようとした剣を途中でやめて。
 一体……?
 その時――ガウリイの右足に真っ赤な血が一筋の線を描いていた――
 傷は浅いようだが、だからといって痛みを感じないわけではない。
 黒ずくめの右手には白い光を放った長剣のようなものを握っていた。
 間違いなくあれがガウリイの足を傷つけたのだろう。
 黒ずくめの刃にはガウリイの血の後など無く、白光をわずかに揺らぎながら輝きを放っていた。
 黒ずくめがさっと斜めに刃を一振りする。
 するとそこにはナイフほどの大きさの小さな光が20ぐらい生み出された。
 そしてそれがガウリイへと飛来する!
 それと同時に黒ずくめが走り出した。
 小さな光の方を受けるか、避けるかする時に生まれる隙をつく気かっ!?
 しかし、あたしだってガウリイ巻き添えにするのを恐れてただ眺めている訳じゃあない。
 呪文はすでに唱えてある。
「獣王牙繰弾っ!(ゼラス・ブリッド)」
 解き放たれた呪文は黒ずくめに直進する!
 黒ずくめはガウリイへと向かう動きを止めてそれをやりすごす。
 おしっ!これで小さな光と同時攻撃は出来まいっ!
 ガウリイは大きく横へ飛び、小さな光の集団を全弾かわす。
 多少バランスが崩れたが、黒ずくめは動きを止めてるし、直ぐに立て直すだろう。
 先ほど放った獣王牙繰弾は術者の意志通りの軌跡を描く呪文である。
 あたしは意識を集中し、軌道を返る。
 光は迂回し、体制を整えようとする黒ずくめの背中に突き刺さる!
 黒ずくめは音もなく消え失せた。
 やったか――?
 不意にガウリイの声が響く。
「リナっ!後ろだっ!」
 振り向くいとばもあらばこそ、あたしは後ろを見ずにその場を離れる。
 ひゅぃんっ!
 すぐ隣に聞こえる風を切る音。
 あたしのマントがばっさりと切られていた――
 動きを止めるのが目的だったのか、下の方を横に薙ぐ形に跡が残っていた。
 振り向くとさっきまであたしが居たところのちょうど後ろに黒ずくめが居た。
 トカゲの尻尾切り……か。
 精神体の抜け殻を残し、本体は移動したのであろう。
 黒ずくめは無傷だった。
 ならば……もう一度ぶち倒すのみっ!
 あたしは大きく間合いを取り、呪文を唱え始めた。
 その援護なのかガウリイが黒ずくめへと再び疾る!
 黒ずくめは―――動かないっ!?
 そのままガウリイの剣が黒ずくめの腹を薙ぐ―――はずだった。
 黒ずくめの姿がふっと消え、ガウリイの剣はむなしく空を切った。
 空間を渡ったか……
 瞬間――あたしの後ろで生まれる気配!
 しかしこれは予想済み。
 あたしは後ろに右手を突きだし唱えてあった呪文を解き放つ!
「青魔烈弾波!(ブラム・ブレイザー)」
 出現した瞬間を狙っての一撃である。
 避けられる間合いではない。
 しかし、黒ずくめは偶然だか、実力だかは知らないがかわした。
 っにぃぃぃっ!?
 まずいっ!
 思った瞬間、あたしの突き出した右腕を黒ずくめが掴む!
 ――――っ!
 右腕に激痛が走る。
 あたしは痛みに耐えきれず、床へと倒れ込む。
 何をされたのかは解らない。
 ただ――あたしの腕を掴んだ手に黒い霧のようなものがまとわりついていたのが見えた。
「リナっ!」
 ガウリイがこちらへと走り出し黒ずくめへと鞘を投げつける。
 もちろんダメージなど無い。
 だが、牽制にはなると思ってのことだろう。
 黒ずくめはくたりと倒れ込んだあたしの右腕を放し、光を放った。
 しかしガウリイは紙一重でそれをかわす。
 後少しでガウリイの間合いになる時に黒ずくめは姿を消した。
 ――目的は果たした――
 ――もう貴様らに用はない――
 何処からともなく聞こえる黒ずくめの声。
 目的は果たした?
 一体何が……?
 床から何とか起きあがり辺りを見渡す。
 あたしとガウリイは街の裏にある森の入り口に立っていた――
 

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3534二翼の翼 2白いウサギ E-mail 7/22-17:35
記事番号3532へのコメント
「大丈夫なのか?」
 謎の言葉を残して結界が解かれて森へと出て。
 とりあえず宿屋へ戻ったあたし達。
 あたしの部屋で心配そうな声で言ったのはガウリイだった。
 部屋に備え付けられていた机に向かい合って座った状態でいる。
「うーん……それがねぇ……」
 あたしは手袋を外してガウリイに腕を見せる。
 しかし……この右の手の甲に刻まれた黒い呪みたいなものは………
「………なんだ?それは。」
「さあ……
 さっきの攻撃を受けたときに偶然こういう形になったとは考えにくいし……」
 言ってあたしは考え込む。
 あいつは目的は果たしたと言った。
 現状から言ってこれが目的の可能性が高い。
 だが……
「お前さんは平気なのか?」
「今のところはなんともないわ。
 ただ――」
「ただ?」
「乙女の体に変な跡残すとは許せんっ!」
 あたしはばんっと足を机に叩きつける。 
 ずりりっ!
 ガウリイがイスから滑った。
 何とか右手で机を掴み、落ちていくのを止める。
「あのなぁ……」
 抗議の声を上げるガウリイ。
「右腕にこぉぉんな跡残されちゃあ誰だって怒るわよっ!」
 大抵の場合は手袋をしているので人目に晒されることがないが。
 だからといって腹は立つ。
 しかし、ただの嫌がらせが目的な訳じゃあないだろーし……
「ともあれ、痛みとかはないんだな?」
「今のところはっつったでしょ。
 これからどーなるかはわかんないわよ。」
「それじゃ……どーするんだ?」
「見つけてぶちのめすに決まってんでしょーが!」
 しかしガウリイは困ったような顔をして、
「でも用はないって言ってたろ?
 あちらさんから姿を現してくれるとは思えんが……」
 はっ!?そーいえばっ!?
「まっ、まあともかく……」
「ともかく?」
 おうむがえしに問うガウリイ。
 答えに窮するあたし。実は何も考えてなかったりする。
「………お昼ご飯でも食べに行きましょう。」
 ガウリイは直ぐに賛成した。

 あたし達は食堂で少し早めの昼食を取っていた。
 さっきの朝食も途中で切り上げられたし、お腹が空いてない方がおかしい。
 ……まあ、おかげで食事代は踏み倒せたのだが。
 いくら懐が暖かいと言っても払わずに済むならそれに越したことはない。               
 お肉を刺したナイフを掴んでいる右手をちらりと見る。
 もちろん手袋越しなので跡は見えないが………確実に、見えるぐらいに存在感を放っていた。
 どーいったものか解らない以上対処のしようがないのだが、間違いなくろくなもんではなさそうである。
 ま、それは後で考えることにして……今は目の前にあるお昼ご飯が先決である。
 はぐはぐ……
 ラウの肉のソテーを口に運ぶ。
 ほのかな甘みが口一杯に広がってとってもでりしゃす。
「だからっ!隣のフェルス王国から派遣された者だって言ってるだろっ!」
 ごくごく……
 リーズの実のジュースの入ったコップを口に傾ける。   
 なかなかこのさっぱりしたところがいける。
「こわっぱが!お前など信じられんわい!」
 むぐむぐ……
「何だと!?それじゃあお前らで何とか出来るのか!?」
「黙れい!ホラ吹きなどと関わってられんわい!」
 びしゃぁぁぁぁっ!!
「……あたしの料理……」
「……俺の料理……」
 おそらく隣のテーブルにいたじーさんがコップに入った水を一緒にいた子供に向かって投げつけたのだろう。
 しかし、それを避けたので水はあたし達のテーブルの上――
 つまり、料理を水浸しにしていた。
「てめえ!いきなり何しやがる!」
「やかましいわ!とっととこの村から立ち去れい!」
 …………んっふっふっふ……
 あたしはガタッとイスから立ち上がり、隣のやかましい二人のテーブルをバンッと叩く。
「………人の料理台無しにして何か言うことは?」
 しかしじーさんは悪びれもせずこちらをキッと睨み、
「今取り込み中じゃ!引っ込んでおれ!」
 ぷちぃ。
 あたしが呪文を唱え、それを解き放つ前に、ガウリイもガタッとイスから立ち上がる。
「俺のも入ってたんだが……」
 しぃぃぃぃぃぃぃんっ!
 ガウリイはさすがに抜刀はしてないものの、鞘ごとテーブルに突き立てた。
 うーむ。やっぱり食べ物になると恐いなー。ガウリイ。
「す、すまんの……わしとしたことがつい……」
 さすがにこれは恐かったのか怯えきった表情で言うじーさん。
 ――ちっ。命拾いしたな……じーさん……
 あたしは火炎球(ファイヤー・ボール)の呪文を中断したのだった。

 結局――じーちゃんに台無しにされた料理+αをおごらせ、
 こうして4人並んで同じテーブルについていた。
 水をぶっかけた張本人であるこのじーさんはある程度の立派な身なりをしており、
 白いヒゲを生やしていた。
 話を聞いたところによると、この町の町長さんだったらしい。
 いかんぞ……上に立つ者が水投げつけたりしちゃ……
 ともあれ、水を避けずにいればあたし達の料理を護っていたであろうこの少年。
 アクト。
 歳はあたしより下だろう。背もあたしより少し低い。
 目つきは悪く、睨んでいるような目だが、幼さがまだまだ残っていた。
 赤い半袖の上着に茶色いズボンで肩に小さなバッグを背負っていた。
 どこの町にでもいる悪ガキAと言った風の格好だが、腰には立派な剣がぶら下がっており、それを否定していた。
 なんでも、『この町の側にある森にレッサーデーモンが出るようになったから調べて欲しい』と、 国王に頼みに町の者が行ったのだが、なかなか連絡が無く、困っていたところをこのアクトが『俺が派遣された者だ』と言って一人で現れた。
 今まで待たされた焦りも混じってか、たちの悪い悪戯だと怒鳴りつけていたところらしい。
 ……気持ちはわからんでもない。
 普通信じんぞ。それは……
「ま、なんだな……
 その……冗談はそれくらいにしといたら……」
 ガウリイが首をぽりぽりとかきながら言っているところを言い切る前にアクトが止めた。
「冗談じゃない!
 本当だっ!」
 そう言われてもねぇ……あたしとガウリイは顔を見合わせて沈黙する。
 もし――自分が危機の瀕した時に俺は味方だとか言ってアリが現れたらどうする――?
 あたしなら間違いなく踏みつぶす。  
 まともに取り合う奴はそうそう居ないだろう。
「ま、それはともかく。
 何か証明する物でもあるの?」
「う゛!?
 それは……」
 あたしに言われて低く呻くアクト。
「それ見たことか!
 じゃから偽物じゃと言っとるんじゃ!
 使いの者ならそれなりの書状かなんかを持っておるはずじゃ!」
 杖でアクトの方を指す。
「まぁ、じーさんの言ってることは正論だな。
 何か持ってないのか?」
 ガウリイがアクトの方へと向き直る。
「その………連れが持ってるんだけど……」
「連れ?ふーん……
 で、何処にいんのよ?」
「………………」
 沈黙するアクト。
「それがその……どっかではぐれてやがって………」
 信じられるか。こいつは。
 考えてもみて欲しい――
 仮にも王国から派遣された者がそうそうはぐれるか?
 ったく。嘘を付くにももうちょっとましな嘘を――
 口から出かかった言葉を言う前に、アクトの頭の両横に握り拳が出現した!
 ぐりぐりぐりっ!
「だ・れ・が・はぐれたってぇぇぇぇ?」
「いっ!?いででででっ!……ちょっ!?こらやめ……っ!」
アクトは突然現れた後ろの人物を見て凍り付く。
「あ・ん・た・が、ちょっと買い物しに商品を見て回ってる間にいなくなったんでしょ?」
 ジト目で見る少女。
 少女っつってもあたしより年上、ガウリイより下、と言ったところだろーか。
 茶色のロングヘアーを後ろで一つにまとめ、活発そうな少女であった。
 かなりの美人と言っていい。
 全体が白くて所々に金で飾られた軽鎧を着込み、腰には長剣がぶら下がっていた。
 こちらの剣も、アクト同様かなり高そうな剣である。
「朝に行ったはずなのに夕日が見えてたぞ!あん時は!」
「たまには良いでしょう?
 そうそう休みなんてとれないんだから。」
「休みじゃないだろ……」   
 額を押さえつつしぼり出すように言うアクト。
 どーやら会話からいってさっき言ってた連れのよーである。
「えーと…
 あんたがアクトの連れか?」
 二人だけの会話にいい加減困ってきたのかガウリイが聞いた。
「はい。連れが迷惑をおかけしました。
 私はフェルス王国精鋭第二部隊隊長を務めております、スィン。
 ――スィン=オードと言います。」
 言って懐から書状らしき物を取り出す。
 ふむ。確かに本物のようである。
「スィンって……
 もしかして『フェルス王国始まって以来の騎士』と言われておるあのスィンか!?」
 今まで展開に着いていけなかったのか黙り込んでいた町長さんが口を開く。
「ま、まあそう言われてるかどーかは知りませんけど……」
 困った顔で言うスィン。 
「ふむ……このこわっぱが言っとったことは本当じゃったか……」
 顎にあるヒゲをいじって信じられないと言った表情になっている町長。
「だから言っただろーが。ったくこれだから……」
 ばきぃっ!
 スィンが顔色一つ変えずアクトの頭をおもいっきり殴った。
 スィンは涼しい顔で、アクトを見た。
「騎士道第29箇条『細かいことにはこだわるな』って、忘れた?」
 ……あるのか……?
 そんなもん……… 
 だいたいそんな決まりを破ったからって制裁加えること自体細かいことなんじゃあ……?
 アクトはぶすっとしたまま沈黙した。  
「ところで……
 何でそんな偉そうな役職の奴がここに派遣されてんだ?
 それもたった二人で。」
 ガウリイが交互にスィンと、アクトを見ながら聞いた。
「あはは。
 いやー、国王陛下に
『この町がうるさいから適当に誰でも良いから二人ほど派遣しとけ』
 って言われたんで、誰でも良いなら自分が行こうって思いましてね。」
 ………なんか……国王は国王で許せないけど……
 スィンもなかなかいー根性してるなー………
「ま、そういうこった。
 と、いう訳で、レッサーデーモンのこと――詳しく教えてもらおうか。」
 アクトが町長さんの所へ向き直る。
「うむ……
 じつはここ一ヶ月ほど前からじゃったかのう。
 この町の裏にある森からデーモンがよくでるようになってしまいおった。」
 町長さんが言ったことをまとめるとこう言うことらしい。
 レッサーデーモンが出るだけで実害のないならあまり関わり合いにならずに、ほっとくことに越したことはないのだが、森に木の実や動物などを取りに行くこともあるらしく、そこを何度も襲われ被害にあっているという事だった。
 実際、行方不明になってしまった人もいるらしい。
 相手がレッサーデーモンでは普通の人では歯が立たない。
 それで王国に届け出をし、救援を待ったのだが、その王国――フェルス王国は今内乱の真っ直中でそれどころじゃなかった。
 そこで、内乱と権力争いの道具に使われることを恐れたスィンと、アクトがここにやってきたというわけである。
 しかし……今まで姿を見せなかったレッサーデーモンが急に姿を現したとなると……
 やはり何かある――
 あたしの全てがそれを感じていた。
 ここのところ起きているレッサーデーモンの大量発生とは何かが違う。
 根拠は全くない。ただあたしの勘がそう言っていた。
 先ほどのこと何か関係がある可能性もあるし。
「……ふむ。それで、他に何か変わったことはないですか?」
 突然スィンが口を開いた。
「変わったこと……ですか?
 特にないのう……」
「例えば、ここの神官とか魔法医の調子がおかしい、とか。」
 アクトが続けて言った。
「なっ!?何故それをっ!?
 わしらはその事は報告しとらんぞ!」
 顔面蒼白になって言う町長さん。
 どうやらアクトとスィンの二人、何かを掴んでいるようである。  
「まあまあ。色々調査しましたから。」
 スィンが笑って言う。
 どことなく誤魔化しているように感じるのはあたしだけだろーか。
「それが何に関係するのよ?」
「企業秘密です。」
 にっこりと笑って言うスィン。
 …………こいつ……誰かと似てる………
「町長、そのおかしくなってる奴と会いたいんだが、何とか出来るか?」
「まっ、まてっ!
 それがレッサーデーモンとどういう関係が……」
 もっともなことを言う町長さん。
 確かに、レッサーデーモンの退治を頼んだのに、別の奴と会いたいとは……
「まだ何とも言えませんので、黙らせていただきます。
 憶測でものを言うと後で痛い目を見ますから。」
 静かに言ったスィンの言葉に、町長はただ頷くしかなかった。

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3535二翼の翼 3白いウサギ E-mail 7/22-17:37
記事番号3532へのコメント
「で?何でお前らがここに居るんだ?」
 おかしくなったという魔法医の家の手前で、こめかみの辺りをぴくぴくさせながらアクトがあたし達を見ていった。
「面白そうだから。」
「リナの保護者だからだ。」
 あっさり端的に言ったあたしと何故か胸を張りながら言ったガウリイの言葉にアクトはヤな顔して沈黙した。
 実は面白そうだからと言う理由だけではないのだが。
 スィン、アクト、町長、あたし、ガウリイの順に中へと入る。
 外見も立派だが、内装も大した者だった。
 広いホールを通り抜け、奥へとずいぶん歩いた後、その一室に入っていった。
 これまた広い部屋で、大きなベット、ソファーテーブルと言った豪華たる部屋だった。
 しかし、特筆することがただ一つ。
 ベットには顔の青くなって、小刻みに震えている、若い青年が寝ていた。
「この方が……?」
 スィンが町長に聞き、町長は黙って頷いた。
「後はお願いしますぞ……」
 町長は去っていった。
 まるでここから逃げ出すように。
 まあ、こーゆー状態の人の部屋に出来るだけ長くいたい、とは思わんな。
 普通は。
「ちょっと悪いな。」
 言って、アクトがその青年の右腕を取り出し、袖をまくる。
「やはり……」
 アクトは何かを確認した後、スィンの方を向いて頷いた。
 スィンの表情はここからだと死角で見えない。
 何のことか気になったのか、ガウリイがアクトの掴んでいる腕を覗き込み、そして絶句した。    
 ……………?
 あたしもひょいっと身を乗り出して腕を見る。
 ―――――っ!?
見たとたん硬直するあたし。
 その様子に気付いたのか、アクトがこちらを向いて聞いた。
「どうかしたのか?」
 どうかしたどころではない。
 あの苦しそうにしている青年の右腕には、あたしが先ほど付けられたばかりの黒い呪文のようなものが刻まれていたのである。
「ところでアレって何なの?」
 平静を装い模様を指さし言うあたし。
 今は情報が欲しい。何よりも。
 アクトとスィンは顔を見合わせた。
「ここではこいつにとって迷惑だろうし、外に出るか」
 あたしは黙って頷き、後を追った。

「で?アレって何なの?」 
 あたしはアクト、スィンを見ていった。
 しかしスィンは言いにくそうに、
「あれは……おそらく呪いです。」
「呪い?」
 オウム替えしに問うあたし。
「はい。
 刻まれた者は魔法力を段々と失っていき………やがて死に……」
 っなっ!?
 座っていたイスからガタン、と立ち上がるガウリイ。
「治す方法はっ!?」  
 その様子に驚きながらもスィンは静かに首を横に振った。
「まだわかりません……残念ですが……」
 …………………。
「あたしもあの呪いのようなものがあるわ。」
 あたしは右腕のグローブをはずし、スィンに見せる。
 スィンとアクトは凍り付いた。
「リナっ!?」
 ガウリイが抗議の声を上げる。
 心配してくれるのは嬉しいが――
「黙っていてもどうなるもんじゃないでしょ?
 このままじゃあ、危なさそーだし。」
 なにより――こんなに謎があって、それも解けずに死ぬなんてまっぴらごめんである。
 あたしは向き直り、スィンとアクトをひたっと見つめた。
「……わかりました。
 私の知っている限り全てを――お話しします。」
 アクトはスィンが言うのを黙って聞いていた。
 スィンの知っていることはこういうことらしい。
 あの跡を付けられた者は魔力を全て吸い取られ、やがて生命力も失う。
 この跡を付けた者の服装、特徴はあたしとガウリイがさっきあった者と全く一緒であった。
 名前はグラーガと呼ぶらしい。
 そして――治す方法はただ一つ。
 あのグラーガの持つ、魔法具を破壊するのみ。
 グラーガは必ずレッサーデーモンなどを護衛代わりに周辺に存在させるらしく、その事で予想を付け、この町にいるのではないか、と言うダメもと精神で来たらしい。
「だいたいのことはわかったわ。
 で――気になったんだけど……何でグラーガを追っているの?」
 アクトもスィンもあの呪はない。
 追う必要はないはずである。
「…………仇、なんです。
 両親の………」
 うつむきながら言うスィン。
 うあ……ちょっとまずいこと聞いちゃったかな……
 その様子に気付いてか、スィンが笑って言った。
「あ、気にしないで下さい。
 悲しみはもうとっくに乗り越えてます。
 ただ……落とし前はつけとこうかなって。」
 軽い口調でとんでもないことを言う出すスィン。
「それより……あなたがそうなっているのに話してすみませんでした。」
 急に沈んだ口調で言うスィン。
 見るとガウリイ、アクトも沈んだ顔をしてうつむいている。
 ……く、暗い………
「あー、いーからいーから。
 どっちみち、そいつはり倒せば治るんでしょ?」 
 ぱたぱた手をはたきながら気楽な口調で言うあたし。
 うぉのれぃっ!グラーガ許すまじっ!
 んっふっふ。
 あぁぁんな跡付けといて、魔法具を破壊してはい、さよーならーとはすまさんぞっ!絶対に。
 あ、やっぱしスィンとアクト、驚いてる。
 しかしガウリイは静かに言った。
「――リナ、お前は残ってろ」
「ちょっと待てよ!レッサーデーモンがうようよしてるんだぞ!
 あんたがどんだけ腕のいい傭兵かは知らないが、無茶だ!
 レッサーデーモンはともかく、魔族と魔法なしでやろうなんて――」
 アクトが慌てる。
 スィンは黙ってこちらをみていた。
「無茶は承知の上だ。」   
 あたしはふぅっと、息を付いて、ガウリイの方を向く。
「あんまり無茶はするなよぉ?」
 机に片手をつき、不敵に笑ってみせる。 
「この間のあんたのセリフ、そっくりそのまま返すわ」
 軽くウィンクをして、びしぃっとガウリイを指さす。
 ガウリイが何かを言う前にあたしが言葉を続ける。
「別に今すぐ見動きが取れなくなるよーなしろもんじゃあないんでしょ?
 だったらもちろん――あたしも行くわ。」
 にっこりというあたしにアクトが顔色を変えた。
「馬鹿なこと言うなっ!
 確かに、直ぐに身動きがとれなくなるもんじゃあないが、絶対安静だっ!」
 はー……はー……と息を整えるアクトにあたしはぽんっと肩に手を置き、
「まっぴら(はあと)」
 笑顔できっぱりと言ってやる。
「あのなぁぁぁぁっ!!
 そんなこと言ってる場合じゃないだろ!?」
 もっともなことを言うアクトだが、聞き入れるつもりはない。
「だぁぁぁって、別に大したこともないのに、このあたしにベットで寝てろぉぉっ!?
 冗談じゃないわよっ!」
「十分大したことあるっ!生死に関わる………」
 アクトの言葉が途中でとぎれ、慌てて口を押さえる。 
 ま、言いにくいのはわかるけど。
 ガウリイが心配げにこちらを見る。
 なーんかやりにくなぁ……
 だけど――
「だったらなおさら本人がのほほんとベットで寝て、
 ガウリイを待ってるわけ行かないじゃない♪」
 軽い口調だが、本心でもある。
 そして自分の事は自分自身でやる。
 それは誰にも譲れない。 
「あのなぁ……全然のほほんとじゃないだろーが……」
 アクトの呟きをリナは無視した。
「……駄目だ。お前はここに残っていろ」
 ガウリイはいつになく真剣な瞳でこちらを見た。
「今のお前さんは魔法が使えなくなっていく。
 そうじゃなくても呪いがかかってるんだから……」
「だから……ガウリイが戻ってくるのを、自分の命がどうなるかをただ寝て待ってろって?」
「リナ……」
「あたしは嫌よ。そーいうのは。」
『…………………』
 部屋の中が静まり返る。
 危険は百も承知。
 だけど……ま、なんとかなるでしょ。
 なんとか――してみせる。絶対に。
「しかし……」
 なおも食い下がるガウリイ。
 うーむ。こーなったら……
「それとも『俺を信じて待ってろ』何て言う?」
 からかってうやむやにすべしっ!
「ああ……」
「―なっ!?」
 いきなし何つーことを言うんだこいつはっ!?
 冗談を真に受けるんじゃないっ!
 あああああっ!顔が真っ赤になるのが自分でもわかるっ!
「……何て言っても信じちゃくれないだろうな」
 がくっ。
 あたしは机に頬杖ついてた右手から滑り落ちた。
「あははは……」
 乾いた笑いが場に響く。
「ん?どーしたリナ?」
「知らないわよっ!」
 側にあったイスをガウリイ向かって投げ飛ばす!
「おっ、おいっ!?リナっ!」
 どぐあしゃぁぁぁんっ!
 イスはけたたましい音を立ててその形を失った。
「安静に………」
 涙をだくだく流しなら言うアクトに反応する者は誰一人としてなかった。      
 この直後――ここの魔法医が死んだことなど、この時のあたしは知る由もなかった――

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3536Re:二翼の翼 4白いウサギ E-mail 7/22-17:38
記事番号3532へのコメント
白いウサギさんは No.3532「二翼の翼(前書き)」で書きました。
>どうも。白いウサギです。
>お久しぶりですになるんでしょーか。
>さて、今回のは一応シリアスなんじゃあないかなーとか思ってますが、何しろ私の書いた物ですからねぇ……(遠い目)
>注意!とことん長いです。
>ええそれはもう……気付いたら竜宮城に行った浦島のごとく年とってるかもしれません………
>………まあ、いくら何でもそれは冗談ですが。
>
>P.S桜我さんへ
> 偶然にもタイトルが「翼」ってところが同じになってすみません。
> それもすぐ後に……
> 本当にごめんなさい。
>
> では、長くても構わないぞと言って下さる方々!
> よろしくおねがいしますっ!

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3537二翼の翼 4白いウサギ E-mail 7/22-17:40
記事番号3532へのコメント
すいません……上の操作間違えました……

「だから……お前さんは残ってろって……」
 ガウリイがそう言ったのはあの後、とりあえず宿でもとって落ち着こうと、この宿屋に泊まり、宿屋から出ようと旅路の準備をしている頃だった。
「やだ。」
 あっさり端的に言うあたし。
「やだって……お前なぁ……」
「だぁかぁらぁ……自分の運命を誰かに託すってぇのは嫌なのよ。
 ガウリイでもね。………悪いけど。」 
 ガウリイが心配していることはわかるし、それはそれで有り難いのだが……
 だが、自分の運命は自分で立ち会う。
 んでもって、気に入らない運命ならねじ曲げるっ!
「それに……ガウリイ、
 あんた一人でブラスデーモンの大群なんかと出会ったらどーする気?」
「それは………でも、お前さんがいたって呪文が……」
「あ、それならまだ平気よ
 こーゆーのは段々魔力が失われてくらしいから、まだ平気よ。」
「そうなのか?」
「そう」
 にっこりと微笑むあたし。
 朝日がまぶしくあたしの顔を照らす。
 きっとガウリイにははっきりとあたしの顔が見えるはずである。
「ところで……
 あの呪いってどーゆーもんなんだ?」
 あたしのの荷物をガウリイが持ち上げる。
 どーやら一緒に行くことに観念したらしい。
 昨夜スィンから詳しいことを聞いたのだが、魔力が段々、じわりじわりと奪われ、やがて死にいたる。
 発作があるときは体がとてつもない痛みに襲われるが、そのあとは痛みはかなり減る。
 んでもって、ずっとだるい状態が続く。
 そしてたまに、呼吸が荒くなり、体の自由が利かなくなる。
 その発作の間隔、重みが強くなってきたら死が近い。
 魔力を吸い尽くした後、生命力が奪われるから。
 魔道の力を持つ者だけが狙われている。
 魔道の知識の全くない人間には被害にあった例はない。
 と、スィンから聞いたまんまの文字があたしの頭を覆い尽くす。
 いやー実に事務的で端的な説明だったこと。
 仕事的口調で言うなっ!と、枕を投げつけてやりたくなったもんである。
 しかし……呪いにかかった奴にそこまではっきりゆーか……?普通。
「聞きたい?」
 うんざりした顔で聞き返すあたし。
 説明してもどーせわからないだろーしなぁ………
 それに発作の事なんて言ったらあたしをベットに縄でくくりつけてでも置いてくだろーし………
「いや、やめとく。
 リナがせっかく説明してくれても、どーせ俺には解らないだろうしな。」
 表情から読みとってくれたのか笑いながら外へと歩き出すガウリイ。
「そりゃ助かるわ。」
 あたしも微笑んで後へと続いた。     
 太陽は高く、そして強く光っている。
 これからの旅を祝福するように。嘲笑うように。
 逆光の向こうにはスィンとアクトが立っていた――

 木々の木漏れ日があたし達一行の顔を撫でる。
 風が通り抜ける。
 大地が強く支える。
 そんなことがどれくらい続いただろうか。
 あたし達一行は問題のレッサーデーモンを見かけた所への道を聞き、この森へと入ってきた。
 スィンやアクトににどれくらいの猶予があるのかは聞かなかった。
 いや、聞けなかったのかも知れない。
 自分が後どれくらいの命であるか……
 たとえ、今までの例に頼ったいい加減な死期だろうと、聞きたくはない。
 自分は後どれくらいの命か……毎日カウントダウンしてしまうかも知れない。
 そんなことは絶対に嫌だった。
 考えても見て欲しい。
 もし、このあたしが毎日「後何日……」とかぶつぶつ言ってお空を眺めている姿をっ!!
 自分で言うのも何だが、かなり強烈である。
 とはいえ、どれくらいの猶予があるか解らないと言うことは、逆に不安はずっとつきまとうことになる。
 故に、自然と歩みが早くなってしまう。
 ガウリイはその思っているのか、いつもとは違ってあたしの前を歩いていた。
 ふとガウリイが後ろへと振り返る。
「リナ、大丈夫か」
 心配の言葉があたしへとかけられる。
 しかし無言でかえすあたし。
「おい、リナ……?」
 前へと歩いていた足を止め、あたしの元へ歩み寄る。
 あ、やっぱりスィンとアクトうんざりしてる。
「…………っだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!やかましぃぃぃぃっ!
 十歩歩くごとに言うなっ!
 あんたねー、一体何万回『大丈夫』って言えば安心するのよっ!」
 ガウリイは最初の頃はあまり聞きはしなかったが、森の奥へと進めば進むほど、心配の声をかける間隔が短くなってきていた。
 ちなみにまだ猛獣、その他の類とは出会ってなかったのだが。 
「はっはっは。リナさんの側にいて安心できる時なんて無いんじゃないですか?」
 ふっと、急にあたし達の前に姿を現す、謎の神官ゼロス。
 どーでもいいがなんかむかつくぞ。その言葉。
「ゼロスっ!?」
 驚きの声を上げるあたしとガウリイ。
 呆気にとられるスィンとアクト。
 そりゃまぁ、いきなり虚空から人らしきものが出てくりゃ驚くわな……
「はい。また会えましたね。」
 その様子を知ってか知らずか、にっこりと笑ってあたし達を見るゼロス。
「何であんたがここに………あ、先に言っとくけど
 『それは秘密です』何て言ったら暴れるからね。あたしは。」
「リナさん……酷いです………」
 心底悲しい顔をしてこちらに背を向け、
 暗い影なんぞを背負っているところを見ると、図星だったらしい。
「で、実際は何のようだ?」
 やれやれと思いながらもガウリイがゼロスに聞いた。  
「実は魔力の失われつつあるリナさんを何とか元に戻して、再び破壊への道に進んでもらおうと言うことになりまして。」
「ちょっと待て。
 何よそれは……?」
 こめかみの辺りをぴくぴくさせながら言うあたし。
「え?ですから、
 今まで通りに破壊をまき散らしてもらおうと言うのが魔族側の決定なんですよ。
 だから、今回僕はリナさんをお守りする……と、ゆーことでして。」
「い、今まで通り……」
 今度は全身をふるわせながら言ったのだが、ゼロスは涼しげに
「リナさんは魔族のブラックリストの上位者ですけど、滅びの道へ進むのには貢献している……
 と、いうのが評価されたんじゃあないですか?
 はっはっは。良かったですねぇ」
「良くないっ!」
 あたしは激昂するが、ゼロスは聞く耳持たず、である。
 魔族に良い評価されてるあたしって一体……?
「まあ、ともかく今回僕はリナさんの護衛者ですから」
「まあ……いーけど……
 あんたグラーガがどこにいるのか知ってんの?」
 ゼロスにぐいっと顔を近づける。
「はっはっは。
 一応知ってますよ。
 ここから二、三日言ったところに洞窟があるんですが、そこらしいです。」
 へぇ……珍しくちゃんとした情報を提供するじゃない。
 で、声はアクトから届いた。
「三人で勝手にごちゃごちゃと………
 いー加減どーいった奴だか説明してもらいてぇんだがな!」
 あ、そーいや全く説明してなかったっけ。
 しかしどー言った奴かって言われても……
 答えに困ってるあたしに助け船は意外なところから来た。
「いやあ、俺達にもわからん。」
 助け船じゃなかった………
 まあ、ある意味あってると言っちゃあ、あってるかも知んない。
「そーゆー奴と一緒に行動をとれと?」
 アクトはなおも食い下がる。
 呆気にとられないところを見ると少しは成長しているらしい。
「あ、大丈夫です。
 少なくとも今はリナさんの護衛者ですから。」
 軽い口調といつもと変わらない口調で言うゼロス。
「『少なくとも今は』って………」
 アクトは呟いたが、スィンがそれをほっといて言った。
「別に構いません。
 場所も教えていただきましたし。
 どうしてその場所を知っているのか気になりますが、聞いても教えて下さらないでしょうし。」
 スィンがにっこりと言った。
 ちょこっとトゲがあるように聞こえたのは気のせいだろうか。   
 しかし――何故場所を知っているのか、それはあたしも気になっていた。
 あたしを護衛するってのはきっと本当のことだと思うが、少なくともそれ自体が目的ではないはずである。
 絶対に何かある―――
 あたしはゼロスを見ながらそう思った。
 どーせあたしがそう思ってること何て気付いてるだろうけど。 


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3538二翼の翼 5白いウサギ E-mail 7/22-17:42
記事番号3532へのコメント
「っはああああっ!」
 ガウリイの刃が森の影を一閃するっ!
 森に出現した黒い色のよくわけのわからない物は音も立てずに消滅した。
「………」
 スィンは無言で斜め左方向から出現した小さな虎のようなものを剣で薙ぎ払う! 
 続けて剣を突きへと切り替え、あっさり虎らしき物は沈黙した。
 ……無言でこーゆーことやられると何となく恐いと思うのはあたしだけだろーか。
「よっとぉ!」
 アクトの拳がレッサーデーモンの腹を一撃する!
 レッサーデーモンは断末魔の声すら出せずに………って、こら。
「なんでレッサーデーモンを拳で倒すのよっ!?あんたはっ!?」
 ぜーはー息を整えながら言うあたしにアクトは自慢げに、
「へへ♪
 いーだろーこれ。このグローブには魔法がかかってるんで、
 付けときゃ物理攻撃が効かない奴にも効果有り。
 物理攻撃効く奴にも精神的苦痛を与えられるんだぜー♪」
 自慢げにグローブをこちらに突き出すアクト。
「買ったぁっ!」
「売らねぇ!!」
 ちっ。やっぱりそーか……
 うーん……でも欲しいぞっ!
 持ってもおっけー。売ってもおっけー♪
 いや、まてよ………
 ふとあたしはあることに気付く。
「騎士のあんたがなーんで体術で戦うのよっ!?
 その立派な剣はなにっ!?
 それにっ!そう言う魔法道具(マジック・アイテム)はそうそう手に入らないはずでしょーがっ!!」
 アクトは小さく呻き、
「けっ、剣術は練習中なんだっ!
 それに、このグローブは王室の宝物からぱくって………」
 どがめきぃぃぃぃっ!
 突然レッサーデーモンと戦っているはずのスィンの鞘が飛んできて、アクトの頭を直撃した。
 あ……実際戦ってるし………
 うーん……戦いながら鞘を投げつけたのだろーか……?
 なかなか器用な人である。
「そのグローブは魔法道具集めが趣味な主からお借りしたもの、でしょ?」
 レッサーデーモンから目をそらし、こちらを向くスィン。
 レッサーデーモンがスィンの方へと向かうっ!
 危ないっ!!
 そう思った瞬間、レッサーデーモンは地面へと倒れ込んだ。
 見るとレッサーデーモンの腹には真っ赤な大きな跡があった。
 スィンがやったのだろう。
 やるなー、スィン。
 そのまえに……どーやらあのグローブ、本気でぱくったな……
 いいのか……騎士がそんなことして……?
 あとでゆすって……もとい、口止め料もらおーかなー。
 いいやっ!それより、魔法剣をもらうとか……
 とかなんとか正当な取引条件を考えていると、右隣のレッサーデーモンが出現した!
「……ううう……めんどくさいよぉ……
 とか言いつつ、黒妖陣っ!(ブラスト・アッシュ)」
 レッサーデーモンはあたしの呪文一発であっさり消滅した。
 それに顔色を変えるゼロスを除く一同。
「リナっ!呪文は使うなっていっただろーがっ!」
「そうだっ!お前自分の状態忘れてんじゃないだろーなぁっ!?」
「そうですよっ!
 魔法を使うって事は魔法力を消費する事で、死期が早まることなんですよっ!?
 少しは抑えてくださいっ!」
 ガウリイ、アクト、スィンの順に口々わめき立て、こちらに詰め寄る。
「だあああっ!やかましぃぃぃっ! 
 いつもよりは抑えてるでしょーがっ!」
「それはそうだが……」
 それでもこちらを見るのをやめないガウリイ。
「そーなのか……?
 アレで抑えてると……?」
 ジト目でこちらとガウリイを交互に見るアクト。
「うん。すっごく(はあと)」
 あたしはあっさり頷いた。
「いつもならこんな森一日ともたずに灰になるな。」
 うんうんと頷くガウリイ。 
「はっはっは。いやあ、やっぱり変わりませんねー、リナさん。」
 笑いながら言うゼロス。
 あのなぁ……あんたら…… 
「ゼロスっ!あんたねー、あたしを護るのが仕事なら少しは手伝ってよねっ!
 さっきから木の上で
 『いやあ、お見事です』とかなんとか言ってるだけじゃないっ!」
 どーせ本心じゃないんだろーけど。
 心の中でそう付け加える。
「はっはっは。僕の仕事はリナさんを護ることであって、洞窟までエスコートする事じゃあないですから。」
 訳の分からないことを言ってかわし、今まで何もしてないのがゼロスだった。
 よって戦力の主力はガウリイ、スィン、アクトになっている。
 あまり戦いに魔力を消耗すると、死期を早めるから、とスィンが言ったため、あたしはすっかり要求不満である。
 くううっ!呪文の花を森一杯に咲かせてやろーかと思ったのにぃぃぃっ!
 なんぞと言ったらどーされるかわからないぐらいに心配されていた。
 うーむ……ちょっとやだな………
 あたし……心配されてんだ………
 …………………………………

「ここいらで野宿か……」
 ガウリイは湖があって開けた場所へと腰を下ろした。
 続いてあたし、アクト、スィン、ゼロスとそれに続く。
 木々はすでに深緑色。
 空は闇の光を放ち、月の放つ光、星の瞬きのみが煌々と輝いていた。
 風はひんやりと冷たい空気を運び、通り抜けた。
 森には静けさが広がっており、他の生物達の音は何も聞こえなかった。
「うーん……ま、しょうがないわね。
 あんまり暗いうちに無理して進んで迷ったりしたら意味無いし。
 それにさすがにちょっぴし疲れたしね。」
 言って、ガウリイが持っていてくれた自分の袋の中にある食料を探し始める。
「うー……やっぱ見えないかぁ……
 明かりよ(ライティング)」
 かざした右の手のひらから小さな光の球が生まれ、暗くなっていた森にほのかな輝きが降りた。
 まだ明かり(ライティング)なら使えるか……
 ま、大丈夫だとは思ってたけど………少しの不安もなかったと言えばそうでもない。
 事実、魔力は確実に弱まってきている。
 先ほど会ったブラスデーモンに覇王雷撃陣(ダイナストブラス)を使ったのだが、いつもより効果が少なかった。
 その上皆にまた騒がれたし………
 ま、それはともかく。
 覇王雷撃陣は通常なら一瞬で滅ぼすことが出来る呪文なのだが、かろうじてだがまだこの世界に具現していたものも少なくはなかった。
 明日の朝にはもう黒魔術は使えないかも知れない。
 確かに、あたしの剣の腕なら、ちんぴら、ごろつき程度なら軽くあしらえる自信はあるが、それだけでレッサーデーモン、ブラスデーモンと楽に渡り合えるとは決してて言えなかった。 
 まして魔族となると―――
「リナさん?私達はちょっと別の所へ行って、食料になりそうなもの探してきます。」
 スィンがあたしの顔を覗き込んだ。
「え……あ、ごめん。
 わかったわ。
 こっちは火でもおこしとくから。」
 言ってアクトとスィンを送り出した。
 二人はあたしの出した明かり(ライティング)の光の届く範囲から段々と遠ざかり、やがて闇へと溶け込んだ。
 月がわずかに光を放つ。
 夜の静けさと、心の静けさが嫌なぐらい同調しているように思えた――


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3539二翼の翼 6白いウサギ E-mail 7/22-17:44
記事番号3532へのコメント
 今回の敵は間違いなく魔族。
 それでもってあたしはたいした魔法が使えない。
 そうなると、戦力はほぼガウリイのみと言っていいだろう。
 スィンもアクトもそれなりに強いのだが、ガウリイほどではなかった。
 そしてもう一人、ゼロス――
 ゼロスは確かに強いが、あまり頼りには出来ない。
 これからの展開で簡単に敵に転がることも十分考えられた。
 またガウリイに頼ることになるのかぁ…… 
 うーん………今のあたしに出来ることは……
 ガウリイがおこしてくれた火を見つめ、一人考え込む。
「おい、リナ?」
 その様子に気付いたのかガウリイが声をかける。
「どうかしたのか?」
 ……心配させてしまった。
「別になんでもないわよ。
 これからの事考えてただけなんだから。」
 微笑んでガウリイを見る。
「そうか……」
「今のあたしが何で魔法が使えないかも解ってないし、あんまり考え込んでも意味はないのかも知れないけどね。
 それでも……対策は立てなきゃいけないわ。」
 両手を上げ、ひょいっとすくんでみせた。
「解ってないって……
 呪いのせいだろ?」
「ええ。確かに呪いが原因なのは分かるけど………
 これが魔族にどう関係するか、ね。
 相手がなんのためにこんな事をしているのかまだ解ってないわ。」
「は?」
 ガウリイが間の抜けた声を出す。
「あーつまり、
 グルーガはあたし達にこの呪いをかけて、どういった利点があるのか、よ。」
 きっと何かあるんでしょうけど……」
「何かって?」
 オウム替えしに問うガウリイ。
 あたしはすくっと立って夜空を見上げた。
「わからないから『何か』なのよ。」
 星の輝きがわずかだが見える。
 小さな――光が。
 視線をしゃがんでいるガウリイに戻す。 
 すると唐突に現れる声。
「あのー……僕魔族なんですけど……
 忘れてません?」
 ゼロスが申し訳なさそうに呟いた。
「なるほど。
 どっちみちお前さんが魔法使えないってのはかなり痛手だな。」
「まだ……何もわかんないけどね……」
 あたしは再び夜空を見上げた。
「あのー……聞いてます?」
 再びゼロスが質問した。
 こめかみがわずかに震えているのが自分でもわかる。
「どーゆー利点をグラーガが持っているのか聞かないんですか?……リナさん……?」
 ぷちぃっ!
「あんたねぇぇぇっ!
 人がせぇぇっかくシリアスやってるところに、
 あげあし入れるためだけに登場すんじゃないわよっ!」
「登場って……僕さっきからずっとここにいたじゃないですか。
 それなのに勝手にリナさんとガウリイさんだけの世界に入っちゃ……」
「何か言った?」
 にっこり言うあたしに何故か怯えるゼロス。
「い、いえ、なにも……」
 ゼロスはあたしから遠ざかるような形で去っていった。
 どーせグラーガの利点なんて話す気はなかったんでしょーが。
 その姿を見てガウリイが笑い出す。
「別にいいじゃないか。
 いくら魔族って言ってもあれは哀れだぞ。」
 つられてあたしも笑い出す。
「魔族に情けは無用よ。」
 びしぃっと指を立てるが、顔は笑っているのがわかる。
 もちろん、冗談も混ざっている。
「はいはい。
 ともかく、もう休んだ方がいいじゃないか?
 疲れてるんだろ?」
 確かに、ずっと歩き通しだったせいか、呪いの症状のせいか、体中がだるかった。
 ゼロスも何故ここにいるのか解らないことでもあるし、魔族がなにか企んでる可能性が高い。
 そう判断したほうが妥当であろう。
 しかし、光の剣もなく、魔法も使えない状態では……かなりきつくなる。
 ………一体どうすれば………?
 心の中のその呟きに答える者はもちろん誰もいなかった。
「………………………」
 森にまた静けさが広がる。
 あたしとガウリイは黙り込んでいた。
「だぁぁぁぁぁっ!」
 あたしの叫びで静けさが一瞬で消えた。
「っなっ!?
 いっ、いきなりなんだ?」
 驚いてあたしの方を見るガウリイ。
「やめたっ!」
「なにをだ?」
「考えるのを、よ。
 少しはガウリイを見習おうってね。」
「お前なぁ……」
 文句を言おうとしたガウリイをあたしは話を続けることで止めた。
「ちょっとね。
 もし魔族が出てきたらって考えてたんだけど……」
「答えが出ずに発狂したってか?」
「発狂って………猛獣じゃぁなんだから……」
 頬に汗がつたったが、この暗さのせいでガウリイには見えないだろう。
「ま、まあとにかく。
 とりあえず解ってることだけ。
 1 ここからもう少し行ったところにグラーガが居る「洞窟」がある。
 2 そこへは明日中には着く。
 3 あたしのこのままほっておいた場合の命は後一週間。
   えーと……それから……」
 人差し指を額に当て、
 あたしが考えをまとめようとするのをガウリイが腕を引っ張って止めた。
「一週間……?」
 ガウリイの顔色がさっきと違った顔へと変わった。
 様子は暗くてよくは見えないはずなのだが、なぜだかよく見えた。
「一週間、よ。
 あたしの……命は。」
「…………」
 ガウリイが握っているあたしの腕に言い様のない力がこもる。
「あんまり知りたくはなかったけどね。
 さっきスィンにアクトが聞いてるのが聞こえちゃったから。
 まあ、今までに死んでいった人達の平均らしいけどね。」
 先ほどレッサーデーモン、わけのわからない魔物達を倒した後、アクトがスィンに聞いてるところを聞いてしまったのだ。 
 きっと聞こえないつもりでいたのだろうが、エルフ並とまで言われたあたしの聴力をなめてもらっちゃぁ困る。
 ま、まあ……別になめてたわけじゃあないだろーけど……
「リナ………」
「あのねー。
 そんなこの世の終わりみたいな声出さないでよ。
 あくまでこのままほっといたらなんだから。」
 あたしは右の頬をぽりぽりとかいた。
「だいたいっ!
 こぉぉぉんなわけもわからずに黙って死んでいくなんて……あると思う?
 このあたしが。」
「それは絶対にない。」
 ガウリイは苦笑した。
「その通りっ!
 だから……」
 あたしの言葉が急にとぎれる。をガウリイが止めた。
 掴んでいたあたしの腕をぐいっと引っ張りを抱き寄せる。
「ちょっ!?」
 いきなり何をすんだあんたはぁぁぁぁっ!
 あたしがそう言う前にガウリイが言葉を紡ぎ出す。
「それと他にもそんなことがあり得ない理由がある。」
 しっかりあたしの抗議を無視してるし……
「俺が護るから、そんなことはあり得ないって理由がな。」
 強く抱きしめた後頭をぽんっとたたいてあたしを放す。
 保護者だからと言いたいんだろーか……?
 後ろ手に何処からともなく取り出したスリッパを握りしめるあたし。
「リナ、もしこのことが終わったら一緒に………」
 二人の視線がぶつかり、見つめ合う。
 暗さで目は見えないはずだが、確かにお互いの目を見れた。
 暗がりの中でもガウリイの青い目ははっきりと見える。
 あたしもつられて真剣な顔になっているのだろうか……
「…………………………………………一緒にうまい飯でも食いに行こう。」
 沢山の沈黙の後、出た言葉がそれであった。
 しばしの沈黙。
 どーしよっかなー♪どういったリアクションをとろおっかなー♪
 ……………………………どーしろってゆーのよ………
「………えーと……あんたのおごりで?」
 やっとの事で出た自分でもわけのわからない言葉にガウリイは胸を張り、
「いいやっ!俺が金持ってるわけないだろうっ!」
 ぱしぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃんっ!
 先ほど後ろ手に持って置いたスリッパを力任せにガウリイの頭を叩く。
「えばるんじゃないっ!
 レディーを食事に誘っといておごらせる気っ!?」
「れでぃーって誰だ?」
 ほっほう……
 あたしはがばっとガウリイの肩に飛び乗って、
 両手の握り拳でガウリイの頭を挟み込んだ。
「あ・た・し・のことよっ!」
 行ってぐりぐりと頭に押し当てる。
「ちょっ!?ちょっと待てっ!リナっ!
 冗談抜きで痛いぞっ!」
「や・か・ま・し・い」
 静かな森に騒がしい声がこだました。
この森に静寂が再び訪れるには、
 まだまだ時間がかかるであろう。(他人事調)
 木々のざわめきがいつまでも心に残った………

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3551二翼の翼おもしろかったですぅ!おおしょ〜 E-mail 7/23-00:57
記事番号3539へのコメント
はああっっ・・・・おもしろかったあ〜〜〜!!!
しっかし・・・長かったなあ・・・・
でも、一生懸命読んだかいあり、最後もなかなか。(^^)
ガウリナ派の私にとっては、
この辺が好きです(はあと)

> 掴んでいたあたしの腕をぐいっと引っ張りを抱き寄せる。
>「ちょっ!?」
> いきなり何をすんだあんたはぁぁぁぁっ!
> あたしがそう言う前にガウリイが言葉を紡ぎ出す。
>「それと他にもそんなことがあり得ない理由がある。」
> しっかりあたしの抗議を無視してるし……
>「俺が護るから、そんなことはあり得ないって理由がな。」
『俺が護るから』……か。いいなあ。リナっち。

> 強く抱きしめた後頭をぽんっとたたいてあたしを放す。
> 保護者だからと言いたいんだろーか……?
> 後ろ手に何処からともなく取り出したスリッパを握りしめるあたし。
>「リナ、もしこのことが終わったら一緒に………」
お?何だ?って思っちゃいました。

> 二人の視線がぶつかり、見つめ合う。
> 暗さで目は見えないはずだが、確かにお互いの目を見れた。
> 暗がりの中でもガウリイの青い目ははっきりと見える。
> あたしもつられて真剣な顔になっているのだろうか……
>「…………………………………………一緒にうまい飯でも食いに行こう。」
………ガウリイらしい。(^^;

> 沢山の沈黙の後、出た言葉がそれであった。
> しばしの沈黙。
> どーしよっかなー♪どういったリアクションをとろおっかなー♪
> ……………………………どーしろってゆーのよ………
>「………えーと……あんたのおごりで?」
> やっとの事で出た自分でもわけのわからない言葉にガウリイは胸を張り、
>「いいやっ!俺が金持ってるわけないだろうっ!」
おいおい。えらそーに言うな。

この辺あたりが一番好きですね。あたしは。
一番2人がいきいきしてるような感じがして。
でわっ。おおしょ〜でしたっ!

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3564おおしょ〜さんありがとうございますっ!白いウサギ E-mail 7/23-16:07
記事番号3551へのコメント
おおしょ〜さんは No.3551「二翼の翼おもしろかったですぅ!」で書きました。

>はああっっ・・・・おもしろかったあ〜〜〜!!!

 ありがとうございますぅぅっ!

>しっかし・・・長かったなあ・・・・

 あ、やっぱり……(^^;)

>でも、一生懸命読んだかいあり、最後もなかなか。(^^)

 最後……倒しかたですか?
 あれ……とことん悩みました……
 リナ大技使えないわ、ガウリイ光の剣持ってないは、敵は空間わたるは………
 本当に倒せるのかっ!?って、おもいましたね。
 (書いた奴が言うなって)

>>「俺が護るから、そんなことはあり得ないって理由がな。」
>『俺が護るから』……か。いいなあ。リナっち。

 早い話が保護者だから、って言ってますね。(笑)

>> 強く抱きしめた後頭をぽんっとたたいてあたしを放す。
>> 保護者だからと言いたいんだろーか……?
>> 後ろ手に何処からともなく取り出したスリッパを握りしめるあたし。
>>「リナ、もしこのことが終わったら一緒に………」
>お?何だ?って思っちゃいました。

 にゃははは……
 色々、です。(爆)

>>「…………………………………………一緒にうまい飯でも食いに行こう。」
>………ガウリイらしい。(^^;

 確かに。
 ガウリイのこの長い沈黙は何だったんでしょーか。(爆)

>>「いいやっ!俺が金持ってるわけないだろうっ!」
>おいおい。えらそーに言うな。

 そうですよねぇ。保護者でしょーに。(笑)

>この辺あたりが一番好きですね。あたしは。
>一番2人がいきいきしてるような感じがして。

 ありがとうございます。(^^)
 うーん……こう言っちゃあなんですが、
 ガウリナカットしようかとも思ってたんですよねー。
 喜んでくれる方が居て嬉しいです。
 カットしないで良かった。

>でわっ。おおしょ〜でしたっ!

 ありがとうございました。


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3540二翼の翼 7白いウサギ E-mail 7/22-17:46
記事番号3532へのコメント
 木々がざわめき、鳥たちが歌い出す。
 東の空にうっすらと白い光が見えた。
 風が新しい空気を運ぶ。
 そう、朝が来たのだ。
 それは新しい一日の始まりと、あたしの命が後一週間だという事を意味していた――

「はっはっは。リナさん、スィンさんとアクトさん逃げちゃいました。」
 朝日の眩しさに目をこすり、ぼやけて見えたゼロスの発した言葉がそれだった。
「は……?」
 この間が抜けた声は本当にあたしの声だろーか。
 冷静に状況を把握しようと目をとじるあたし。
「寝ないで下さい……リナさん……」
 違うって。
 無視しながら一生懸命考える。
 えーと……スィンとアクトが昨日食料を調達してくるみたいなこと言って、ここから湖の方向へ行って……………帰ってこなかった。
「何で帰ってこないのよっ!」
「ですから逃げ……」
「そじゃなくてっ!
 どーして逃げたって言えるのよっ!?あんたはっ!」
 ゼロスに詰め寄るあたし。
 朝からうるせーとかいっておたまが飛んできたりする日常風景も今は森の中なのでそれはない。
「そこに手紙があったんですよぉ……」
 しどろもどろに言うゼロス。
 もしかしたら眠気のせいも手伝ってかなり苛立った表情になっているのかも知れない。
 ま、ゼロスだしいっか。
 ゼロスから手渡された手紙を読むあたし。
 う゛っ!……こ、これはまあ…逃げたと思うのも無理はないかも……
「どーします?」
 いつものにこにこ顔に戻り聞くゼロス。
 どーしますって言われても………
「別に変わらないわよ。
 洞窟を目指すだけ、ね。」
 こちらもにっこりと言ってやる。
 ちょっと面白くなかったらしくゼロスの眉が下がる。
 さてはどーいった反応示すか期待してたな……
「どーでもいーけど飯まだかぁー?」
 いつの間に起きたのか
 朝日をバックに背負ったガウリイが両腕を上げてのびをしながらこちらへやってくる。
 しかし……ちったあ自分で作ろうとしろよ。お前は。
 ぶつぶつ言いながらも食料を渡すあたし。
「リナはもう食べたのか?」
「まだよ。
 で、スィンとアクトが居なくなったから今後の戦闘きつくなるだろーけど頑張ってね(はあと)」
 言って取り出した携帯用のパンにかじりつくあたし。
 ひききっ!
 ガウリイの顔が凍り付くのが面白いぐらい見て取れる。
「あれだけぽこぽこ出てくるレッサーデーモンを俺一人で戦えと……?」
「うん。」
「いやあ、頑張って下さい。
 ガウリイさん。」
 即答するあたしに、ぽんっとガウリイの肩を叩くゼロス。
 ガウリイは嫌な顔したまま沈黙した。
 ま、もともと自分一人で行くとか言ってたから文句は言わんだろーけど。
「ま、それはそれで置いとくとして、だ。」
 置いとくな。ガウリイ。
「スィンとアクトはどうして居なくなったんだ?」
 ひききっ!
 この言葉に今度はあたしが凍り付く。
 ま、まああの手紙はきっと本音ではないだろーけど、ガウリイにあきられるのは確かである。
 となれば適当なことを言って置くに越したことはない。
「まあ、色々あるんじゃない?」
 ガウリイから目をそらし、青空を見つめつつ言うあたし。
 こらゼロス!後ろで笑うんじゃないっ!
「ふーん。ま、確かに何かあるんだろうけど……」
 パンにかじりつつ言うガウリイ。
 少し気になるような事を言うガウリイ。
 スィンとアクトの事は、色々可能性の話をするときりがないのでやめておくが、何にしてもいずれ会えるだろう。
 ――と、なればとっとと洞窟目指して進むべしっ!
 あたしは残っていたパンを口にほおり込む。
「で、リナさん。
 これも一緒に置いてあったんですけど。」
 ゼロスは言って剣をあたしに手渡す。
 これって………もしかして……
 あたしが視線をゼロスに向けると変わらずにこにこ顔でこくんっと頷いた。
 やっぱり………スィンが持っていた魔法剣だ……
 ふと鞘の先に小さな紙があるのに気付く。
 引っぱり出してみるとこう書かれていた。
 『勝手な理由で離れてすみません。
  お詫びと言っては何ですが、この刀をお貸しします。
  この剣は魔法がかかっており、持ち主の意志の強さに比例しますが、光の矢を発することもできます。
  どうかお役に立てて下さい。
  P.Sこれは貸すのであって、差し上げるのではありません。
  これはアクトのグローブと同じく、主からお借りした剣ですから、持ち逃げしようしたら、盗んだのはリナ=インバースだって伝えます。』
 ………なんか……ありがたいよーな、むかつくよーな………
「ガウリイ、その剣とこっちの剣どっちがいい?」
 振り返り言うあたし。
「うーん……一応そっちにしとくか。
 じゃあ、この剣はリナ、お前が持ってたほうが良いだろ?」
 言ってこちらに剣を投げ出す。
 まあ、確かに魔法もまともに使えないんじゃあ、剣は持って置いた方が良いだろう。
 あたしは普段慣れていない長さの剣を腰に帯剣した。
「じゃ、行きますかっ!」
 あたしはにっこりと笑って歩き出したのだった。
 目指すはグラーガの居る洞窟っ!
 森は朝になったのをやっと気付いたかのように、生命の躍動を再開した――

 あたし達一行は順調に歩みを進めていた。
 天気は快晴。
 初夏にさしかかろうというこの季節には少々暑いが、大したことはない。
 それは森の木々たちが、光を遮るのと、新鮮な空気を作り出していたからなのかも知れない。
 ありがたいことに発作は全く起きなかった。
 あくまで今のところは、だが。
「で、どうするんだ?」
 ガウリイが歩みを止めてあたしへと振り返る。
 自分たちの進行方向に気配があるのを気付いたからである。
 それも明らかに敵意のこもった、殺気に。
 数は10ぐらい。
 悲しみ、殺意、絶望……数々の負の感情のようなものがこちらへと流れ込んできた。
 すなわち――障気――
「あたしはパスね。
 ゼロス、今回任せたわ。」
 後ろに佇んでいた黒い法衣をまとった神官の肩に手を置いて言った。
魔法を使うのは極力避けた方が良いだろう。
 それに、ゼロスにはいい加減少しは働いてもらっても罰は当たらないはずである。
「まあ、そろそろ手を貸しても良い頃だとは思ってましたけど……
 いいんですか?僕に任せちゃって。」
 にっこりと意味ありげに笑う。
「条件その一。 あたしとガウリイに被害を受けさせないこと。
 条件その二。 あいつらを的確に、素早く片付けること。
 条件その三。 森を傷つけないこと。
 以上を守れば良しっ!」
 あたしはゼロスに向かってびしっと指と立てていった。
「森を傷つけないことって……
 リナさんにしては珍しいですねぇ」
「だって火をつけられたりしたらこっちが大変だもん。」
 あっさりと言うあたし。
「………なるほど。
 別に環境保護だとかそういうことではないんですね。」
 やはり、と頷くゼロス。
 後ろでガウリイも神妙な顔で頷いていた。
「そういう奴が竜破斬(ドラグスレイブ)で山吹っ飛ばすか?」
「それはそうですねぇ。」
 二人してうんうんと頷いた。
 あ、あんたらなぁ………
「でぇぇいっ!いーからとっとと行ってこぉぉいっ!」
 どがっ!
 リナはゼロスの背中を障気を放っている茂みへと蹴り飛ばした。
「ちょっ!?リナさんっ!?」
 ゼロスは不満の声を上げながら茂みへと飛んでいった。
 ふっ。成仏してね(はあと)
 ところが、ゼロスが茂みへと飛ばされたとたん、さっきまでまがまがしい障気を放っていた所から、障気が消えた。
「………?」
 ガウリイはいかがわしげに、覗き込むように背伸びをした。
 無理もない話なのだが、だいたい想像はつく。
 おそらく、精神世界(アストラルサイド)から一瞬で滅ぼしたのだろう。
 ざわりっ!
 突然後ろに気配が生まれた。
 ハッとあたしとガウリイの二人は振り向くが、そこにはすでに一条の炎の矢が放たれていた。
 しまった――――!
 そう心の中で発言する前に体が動き、あたしは右へ、ガウリイは左へと飛び退いて何とかかわす。
 あたしは体制を整えながら口の中で呪文を唱え始める。
 ガウリイは鞘から刀を抜き放ち、放たれた場所へと走り出す!
 白刃の刃に日の光が反射する。
 木々に遮られた状態であるために移動するごとに刀身が瞬いて見えた。
 ガウリイは光が放たれたところへ左から回り込む。
 ひゅんっ!
 またもや放たれた炎の矢はガウリイの右を通り過ぎた。
 ガウリイの動きのついていけてないようである。
 ガウリイはそこへ迷わず飛び込み、視界を広げる。
 そこには一匹のレッサーデーモンが居た。
 ガウリイは気を発しながらレッサーデーモンを一閃する――はずだった。
 しかし――目の前でレッサーデーモンが消失したのだった。
 ガウリイの剣はむなしく空を切る。
「―――!?」
 今さっきまで確かにレッサーデーモンが存在した場所へと目をおろす。
 文字通り影も形もなくなっていた。
 その場所には。
 ぶんっ!
 呆然としていたガウリイの後ろにレッサーデーモンが出現するっ!
 何もなかったはずの虚空に。
 すでにレッサーデーモンの口には光が見える。
 振り向くいとまもあらばこそ、ガウリイは確かめもせずにその場を離れる。
「黒妖陣っ!(ブラストアッシュ)」
 あたしの声が森へと響きわたる!
 そう――声だけが――
 体制を整えたガウリイにレッサーデーモンが一閃されたのはその直後だった――
 もうここまで失われてるのか……
 あたしは愕然と自分の右の手のひらを見つめた。
 血の気が引いてくのが自分でも解る。
 さーっと寒気が襲いやがて体が熱くなりだした。
 どくんっ!
 心臓が大きく波打つ。
 あたしの体中から汗が噴き出す。
 世界が一瞬輝いたかと思うと、暗く闇に覆われた森へと映像が変わる。
 これってちょっとまづいんじゃあ……?
「リナっ!」
 意識が闇へと沈みそうになる時にガウリイの叫びが聞こえた。
 ガウリイの顔を確認しようと顔を動かすことさえ出来ない。
 やっぱまづい……かな?こりゃ……
 あたしはその場へ崩れ落ちた。
 意識はかろうじてあるが目を開くことさえ出来ない。
 音だけが世界をあたしに知らせる。
 慌ててガウリイがあたしを抱き起こす。
 あたしの体は汗でびっしょり濡れていた。
 眉間にしわを寄せ、唇を強く噛んで、小さく震えているのが自分でもわかった。
 気絶していたらうめき声ぐらい出してるかも知れない。
「おい!リ……」
 ガウリイが再びあたしを呼ぼうとした時に目の前にゼロスが虚空から現れた。
そういった気配だけが感じ取れる。
「ふむ……
 もう黒妖陣(ブラストアッシュ)さえ使えませんか。
 いやあ、はっはっは。
 大変ですねぇ。」
 いつもと変わらない笑顔で言うゼロス。
 あたしは崩れ落ちていため、声は上から聞こえる。
 きっとあたしを見ろしているんだろう。
 ――――いつもと変わらない笑顔で。
「……お前の仕業か?」
 静かに、そしてはっきりとガウリイはゼロスへ聞いた。
 声はあたしの方を向いてるようなので、おそらくあたしに視線を残したままで。
 明らかに悪意の感情がこもっている。
「そんな『仕業』だなんて人聞きの悪い……
 僕はリナさんがまだどれくらい魔法が使えるのか確かめただけですよ。」
 きっとゼロスはひょいっと肩をすくめているのだろう。
 表情は変わらずに。
「今回お前の仕事は『リナを護る』じゃなかったのか?」
 あたしを抱きかかえたまま、ゼロスへと声を――視線を向ける。
「そうですよ。 
 ……あ、さっき言ってた条件その二を違えちゃいましたね。
 レッサーデーモンを一匹逃して
 突然別の所へ出現させたりしちゃいましたから。」
 条件あっさり破ったな……
「そして俺の剣からも護っただろ?レッサーデーモンを。」
 なるほど。先ほど消えたのはそーゆーわけか。
「ええ。あっさりやられちゃあ解らないですからね。
 リナさんの状態が。」
「ふざけるな!」
 ガウリイは叫んだ。
 あたしを地面へと横にする。
 まづい……ガウリイ切れてる……
「おやおや。
 別にふざけてなんかいませんよ。
 リナさんをお護りするには
 どれくらいの状態か知っておく必要がありますからね。」
「……結果リナが苦しんでもか?」
「ええ。そうです。」
 平然と、さも当然のように言うゼロス。
 ガウリイの剣を握っている手に力がこもる。
「リナを苦しめる奴は許さない。」
 …………………………
 ガウリイはすらりと刀身を光にさらし、歩み寄るような音が聞こえた。
 しかし、ゼロスはその様子を見ておかしくてたまらない、と言った風に笑い出した。
「はっはっは。
 わかりましたよ。
 しばらくリナさんから姿を消しますよ。
 影ながらお護りさせて頂く、と言うことで……」
 気配が消えた。
 仕方なくガウリイは刀身を鞘へと戻す。
 そしてこちらに戻って視線をあたしへと戻した。
「大丈夫か?」
「なんとか……」
 寝返りをうちながら微笑んで言うあたし。
 我ながら弱々しい笑みであったと思うが。
 周りはもう見える。
 ガウリイはほっと胸をなで下ろした。
 静寂が森に戻った。


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3541二翼の翼 8白いウサギ E-mail 7/22-17:49
記事番号3532へのコメント

「で?だから?」
 元気回復、いつも通りに戻ったあたしの第一声がそれだった。
 その言葉にガウリイがきょとんっとした。
「だから……って、お前……」
「しょうがないじゃない。
 ゼロスなんだから。
 まさか本気であたしを護るだけってわけじゃあないだろーし。」
 起きあがってマントの汚れをはたく。
「いや……それはそうだろうが……」
「まあ、あたしの出した条件をあっさり破るとは思ってなかったけど。
 でもなんだかんだ言って適当にかわしてやっただろーしなぁ……」
 ぽりぽりと頬をかくあたし。
「そういう問題か……?」
 あきれた顔でリナを見るガウリイ。
「それとも………心配してくれたの?」
 悪戯っぽい笑顔でガウリイに聞いてみる。
「あたりまえだろうが。」
「ありがと。」
 今度はにっこりと笑ってガウリイを見た。
「お前がそのことで暴れたりしたらこっちが危な……」
「何か言った?ガウリイ?」
 さっきと変わらない笑顔で、右手にでっけぇ棒を握りしめる。
「いっ、いやっ!なんでもない!」
 ぶんぶか首を横に大きく振るガウリイ。     
 瞳に脅えの色が見えるのは気のせいではないだろう。
 ともあれ、あたし達二人は先へと歩みを進めた。
 途中何度も、また発作があるのではないか、と、ガウリイが心配して
 あたしにに話しかけるが、大丈夫、と答えは同じ。
 いい加減むかついて、『しつこいっ!』と言ってガウリイに木を投げつけ、ガウリイが軽く気絶したなど、旅の障害とも言えない些細なことであった。
 再び歩き出して日が真上に上がってきた頃、虎のような獣が姿を現したが、ガウリイがあっさり倒した。
 その一件以外、先を遮るものは何もなかった。
 ゼロスは姿を見せず、時と、場所だけが変わっていった……

「ここ……か?」
 ガウリイが周りの草を取り払い、あたしに視界を広げてくれた。
 ふむ……確かに洞窟らしき物が見える。
 周りはびっしりと緑の苔で覆われ、下手すれば気付かずに通り過ぎたんじゃないだろうかと言うぐらいに周りの木々に溶け込んでいた。
 ただ、一部分だけ苔がはがれ落ちていた。
 つまり―――誰かが少なくとも最近ここに入っていったのだ。
「でしょーね。
 んじゃ、とっとと行くわよ。」
 ガウリイは頷いて洞窟へと入っていった。
 異臭はなく、澄んだ空気であることには変わりないのだが、湿った空気が口の中を覆い尽くす。
 入っていった奥にはヒカリ苔がびっしり生えていて、魔法を使わなくても視界は悪くない。
 油断して苔に足を取られない限り、足場はしっかりしていると言っていいだろう。
 洞窟は奥深く、長かった。
 道は一本道で、迷うことはないのだが………
「何処まで続くんだこれ……」
 ガウリイがいい加減うんざりした口調で呟いた。
 あたしもいい加減腹が立って、このまま洞窟にいる奴生き埋めにしてやろーかと何度も思ったが、もしグラーガが居なくて、洞窟が壊れたことによってあたしが来たことに気付き、場所を移動したりなんぞしようもんなら本気で打つ手はなくなる。
 そう言った緻密な計算により、あたしは何とか自分を抑えていた。
「うるさいわねっ!
 さっきからあたしが何度も心の中で呟いてることを口に出すんじゃないわよっ!」
「心の中で…って俺にもぶつぶつ聞こえてたアレがそのつもりか……?」
 そーいえばもしかしたら声に出していたのかも知れない。
 ま、どっちにしろ大した問題はない。
 あたしは無視することにした。
 なんにせよ、歩くしかない。
 ………めんどいなぁ……
 きぃぃぃんっ!
 唐突に、金属音がかすかに聞こえた。
 罠の発動とかそういった類のものではない。
 剣と剣とぶつかり合う音だった。
 音は――遠くはないっ!
 あたしはガウリイの方へ向いて頷き、同時にダッシュで下へと階段を駆け下りる。
 あたしとガウリイが行き着いた場所はいやにだだっ広いとこだった――

「げっ!もうお前ら来たのかっ!?」
 奥にいる黒い影――グラーガに構えたままこちらを振り向いて言ったのは逃げ出したと思われていたアクトのものだった。
 緊張感のない言葉だけど。
 その隣にはスィンが視線をグラーガから逸らさず、同じく剣を構えていた。
まだ他にも剣持ってたのか……何処に隠し持ってたんだ……?
「やっぱり先に来てたわね……」
 ぽつりと言ったあたしの一言にアクトは反応する。
「わかってたのかっ!?」
 なんとなくだけど……
 スィンもアクトも、あの手紙通り
 『お前らには着いていけない。
  お前らなんかと戦うぐらいなら権力争いの道具になってた方が何倍もマシだ。
  と、ゆーことで後は任せた。』
 なんぞと言って姿を消す人間ではない。
 まあ、あの手紙を見たときちょっぴし殺意沸いたけど……
 ともあれ、魔法の使えないあたしが無茶して寿命を縮ませるより、自分たちで先攻して片を付けた方が良いと判断した結果だろう。  
 あの二人もなんだかんだ言ってけっこぉあたしの事心配してたし……
「ま、なんにしても――だ。」
 腰にぶら下げていた剣に手をかけるガウリイ。
 きんっという留め金がはずれる音が洞窟内に響く。
「ここで戦うことに変わりはないんだろ?」
 ガウリイが刀を抜く。
 洞窟は薄暗く、剣は鈍く光った。
「ま、そーゆーことね。
 さてと、いいわけ――もとい、説明は後で聞くから、とっとと終わらせるわよ。」
 あたしもガウリイから借りた剣を抜くと見せかけて、隣の石のでっぱりへと腰を下ろす。
「こらまてっ!
 何くつろいでるんだ!?お前は!!」
 アクトが叫びが洞窟内にこだまする。
 いや、だって魔法使えないし、あたしの剣の腕じゃあ足手まといになるだけだし……
 ここは一つ見物を――
 ま、ジト目で見られてるような気がするが、きっと気のせいだろう。
「ふっ。甘いわね。
 ただでさえ三対一なのにあたしを増やして四対一にする気?
 騎士たる者、普通は一対一でしょーがっ!」
「う゛っ!?そーゆーことを言われると……!」
 あたしの舌先三寸の言葉にアクトはきっちし反応。スィンはぴくりと耳をわずかに揺らしたのみ。
 うーん……スィンもそれはちょっと気にしてたか……
「と、ゆーことで。ここはまかせたわよ!」
 びしぃぃっ!とグラーガを指さす言うあたし。
「なんでも構わんが……こちらも早くケリを付けたいものだ……」
 だったら逃げ回るな。お前は。
 まあ、魔族ってーのも結構変わった奴多いし……
 周りにレッサーデーモンは居ないようである。
 見張り程度として配置していたのだろう。
 ………まあ、あんなのをここに出したら生き埋めにもなりかねないか……
 ともあれ、ガウリイがいきなり光を剣から解き放つ!
 しかしグラーガはあっさり右へとかわし、右手をガウリイの方へと突き出す。
 そこへ間合いを詰めていたスィンが解き放つ前に右凪へと剣を仕掛ける!
 グラーガはその瞬間右手から光をたずさえたまま、姿が消える!
 また空間を渡ったか――
 スィンは剣をくるりと翻し、自分の後ろへと切っ先を向ける。
 そこからわずかにはずれたところにグラーガが出現する。
 なるほど。グラーガの行動を予想したところへ剣を向けたと言う訳か。
 わずかにはずれたようだが。
 先ほどガウリイ用に作り出した光をスィンに向かって放つ!
 スィンはそこからすぐさま左へと飛ぶ。
 光は過ぎ行き、グラーガはスィンの後を追う。
 そのとたん、スィンの動きが止まる。
 グラーガは光の剣を作り出しスィンに斬りつける!――はずだった。
 その場にアクトが現れなければ。
 スィンの動きに合わせて動きを止めたグラーガの左脇腹にスィンの右腕がめりむ!
 ずどっ!
 鈍い音を立て、グラーガは右の壁へと叩きつけられる。
 そこへガウリイが放った光が向かうがそれはわずかにはずれた。
 そのまま間合いを詰めてたガウリイの剣が襲いかかるが、グラーガは再び姿を消した。
 またか――
 馬鹿の一つ覚えのようではあるが、こうしょっちゅうやられるとストレスがたまるもんである。
 ガウリイは前も後ろも意識を集中して、スィンとアクトは背中合わせに構えている。
 そしてそのまましばしの時――
 さらにしばしの時――
 またさらに………
 もしかして逃げたんじゃあないだろーな……
 あのままの姿で凍り付いている三人には悪いが。
「ちっ。逃げたか。」
 構えをといて、拳を下ろし、スィンの背中から離れるアクト。
「アクトっ!」
 スィンが叫ぶ。
 あたしは忘れていた――
 戦いは一瞬でも油断した方が負けなのだという事を――
 すっかり油断したアクトの胸の前に出現する光!
 避けられない――っ!?
 どっ!
 その時――光が胸を通過した――スィンの胸を―――
 ゆっくりと、スィンは地面へと倒れ込む。
「っなっ!?」
 スィンに突き飛ばされ、地面に転がったままのアクトが叫ぶ。
 しかし、暗い地面が赤く染まっていく。
 あたしは思い出した――人間とはいかに脆い者なのかを――
 あたしは駆け出す。スィンの元へ。
 抱き起こすがその顔にはすでに死の色が濃かった。
「ふん……はずしたか……」
 面白くもなさそうに、グラーガが声と共に出現する。
「貴様っ!」
 ガウリイがグラーガへと剣を振り下ろした。

「おいっ!スィンっ!」
 狂ったようにアクトが叫ぶ。何度も。何度も。
 それを無視し、あたしは回復の呪文を唱える。
 治癒(リカバリィ)で助かるとは思えないが、それでも何にもしないよりはマシだろう。
 あたしは祈る。
 ――あたしの魔法力よ一瞬でいい――
 ――一瞬でいいからあたしに戻れ――
 ――少しでも―――   
 混沌の言葉を終わり、力ある言葉を解き放とうとした瞬間、あたしの口をスィンが自分の右手でそれを押さえる。
「いい……から……無茶しちゃ……ダメ……でしょ」
「そんなこと言ってる場合じゃないでしょっ!」 
 再び呪文を唱え始めるが、それをスィンがまた止めた。
 微笑んでる……
 彼女は弱々しくも微笑んでいた――
 あたしには解らない。何故回復の呪文を受けようとはしないのか。
 生きることを何で放棄するのか?
 もう諦めているとでも?
 1%でも可能性があればそれに賭けようという気は起きないのだろうか。
「何で俺をかばった!?」
 悲しみと、怒りと――全ての感情を隠しもせず、アクトは叫ぶ。
「勝手に……体が動いただけよ……」
 笑って瞳をとじた。
「スィンっ!まだお前と決闘させてもらってねえんだぞっ!
 約束破る気じゃあないだろうなっ!!」
 アクトは涙を浮かべ、スィンへと怒鳴りつける。
「まさか……約束は守るわよ……
 この世界じゃあ出来ないかも知れないけど………
 あの世でも……来世でも……」
「ふざけるなっ!
 そんなの許さねえからなっ!」
 微笑むスィンにまたまた怒鳴りつけるアクト。
「言っておくけど……すぐあの世に来たら……
 決闘なんかしてあげないからね……せめて……グラーガぐらいは倒してきなさい……
 それが最低条件だからね……その直後に来ても相手にしてあげないけど……」
 スィンは笑う。
 アクトに向かって。
 スィンは返事も出来ずに、ただ見ていた――
 スィンは最後に目を開きそれを見て、再び瞳を閉じて息を引き取った――
 微笑んだままで―― 
 何で……笑えるのよ……


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3542二翼の翼 9 白いウサギ E-mail 7/22-17:54
記事番号3532へのコメント
あたしは――助けられなかった――  
 言い訳はしない。その事実はどうやったって変わらないものだから。
 あたしは腰の剣を抜き放つ。
 そしてガウリイと攻防しているグラーガへと向かう。
 その足を止めたのはアクトの声だった。
「また……助けられなかった……
 女子供は俺が護るって決めたのに……
 妹も……家族も助けられなかった……
 スィンも……」
 地面へと右腕を打ち付ける。
 顔は地面につくんじゃないかと言う位に伏せており、表情はこちらから見えない。
「ふざけるなっ!勝手に死にやがってっ!
 俺はまだ一度もお前に勝ったことはないんだぞっ!」
 再び左腕を地面へと打ち付ける。
 ほっとくことは出来ない。
 このまま――アクトをほっておくことは――
「で、どーするの?」
 あたしは冷たく言い放つ。
 アクトは黙っていた。
「このままわめいて、あたしとガウリイが戦っているのを見てる?」
「………………」
 まずいなぁ……心が痛い……
 だけど……止めるわけにはいかない。
「……わかったわ。一生そうしてなさい。
 スィンに助けてもらった命を無駄にして、ね。」
 あのまま黙っていればあたしは傷つくことはない。
 だがアクトは一生気に病んで過ごすだろう。
 あたしは傷つくことは恐くない。
 ただこれで平気でいられるほど――強くはないが。
「冗談じゃねえ……」
 アクトは立ち上がった。
 地面から。運命から。
「フェルス王国精鋭第二隊隊員アクト=レスペクト。
 スィン=オードの意志を継ぎ、グラーガを倒す!」
 端的に、事務的口調だが決意が込められた言葉だった。
 アクトはグラーガへと走り出し、それにあたしも続いた。
 あたしのやったことは――あっていたのだろうか―――

 いい加減に終わりにしよう。
 この悪夢にケリを付けよう。
 くい止めなくてはならない。
 グラーガを――
 スィンのためにも――アクトのためにも――
 ―――そして何よりあたし自身のために――!

「―くっ!」
 防戦にまわっているのはガウリイだった。
 剣の腕はガウリイが上。
 但し奴には遠距離攻撃可能な光と、空間を渡ることが出来た。
 剣で押しては空間を渡られ、決定的チャンスを逃す。
 それが何度も続いていた。
 そしてやがて疲労するのは人間であるガウリイの方――
 これ以上長引いてもガウリイは疲労がたまり、あたしはますます魔法力が奪われる。
 速攻で片を付けなくてはならない。
 グラーガが再び光を放つ。ガウリイに向かって。
「しつこいっ!」
 ガウリイはあっさりとそれをかわす。
 ガウリイは間合いを詰め、剣をグラーガへと振り下ろし、それをグラーガの出した光で出来た長剣が受けとめる。
 そのままガウリイは返す刀でグラーガへと斬りつけるが、それもなんとかグラーガは受けとめていた。
 その瞬間、アクトが地を蹴る!
「――っ!?」
 突然現れた敵にグラーガは慌てる。
 そこにわずかな隙が生まれた。
 その一瞬をガウリイは見逃さなかった。
 ガウリイは受けとめられていた刀を滑らし、グラーガへと突きを放つ!
 しかしそれはローブを少し裂いたのみ。
 ――また空間を渡られた。
「くそっ!
 きりがないぜ……」
 ガウリイは毒づいて呟いた。

「いきなり出てきたので驚いたが……
 わかっていれさえすれば、
 お前のような体術だけのの小僧にやられはせん……
 お前とて同じ事だ。」
 グラーガはこちらを向いていった。
「いかにリナ=インバースといえど、
 魔法が使えなければ翼をもがれた鳥と同じ。
 恐るるに足らん……」
 勝手なことを言う。
「さあて――それはどうかしらね?」
 言って不敵に笑ってみせる。
「強がっても変わらんぞ……」
 そうグラーガが話している間に、アクトが疾るっ!
 地を蹴り、グラーガへと右腕を突き出す!
 それをグラーガはひょいっと頭を右へとずらし、アクトの右腕を左腕で挟み込んだ。
 身動きが出来なくなったアクトに向かってグラーガが右手で光を放ち、それはアクトに突き刺さる――はずだった。
「地精道(ベフィズ・ブリング)!」
 あたしの放った術は本来トンネル掘りの呪文である。
 もちろん、攻撃力はないが、相手にバランスを崩させることは出来るっ!
 魔法は使えないと思ってノーマークだったのが運の尽きよっ!
 突然地面に出来た穴にまともにバランスを崩し、光はアクトから遥か離れたところへ通り過ぎる。
 アクトは捕まれた左腕を思い切り殴りつける!
 どがっ!
 グラーガの左腕から解放された右手をグラーガの顔へと放つ!
「ぐっ!」
 さすがに予想外の出来事だったため、空間を渡ることは出来なかったのか、グラーガの頭にもともにアクトの右腕がめり込んだ。
 その反動を利用し、グラーガから離れ、体制を整えるアクト。
 ガウリイはこちらに駆け寄り、何かを言っている。
 いーからとっととケリを付けてきなさいってっ!
 そう言うことは出来なかった。
 あたしは呪文を使った反動で、また発作が出てきたのだから――
 とうとう地精道までダメか……
 ううっ……情けないよお……
「おいっ!大丈夫かっ!?リナっ!」
 ガウリイあたしをが抱き起こす。
「平気だから……後、よろしく。」
 微笑んでいったあたしにガウリイは怪訝な顔をしていった。
「言っておくが……さっきのスィンみたいな事したら許さんからな。
 スィンには悪いが……生きるのを諦めるなって言ったのはお前だぞ。」
「わかってるって。死ぬつもりなんかこれっぽっちもないわよ。」
 あたしは笑って返した。
 アクトには聞こえないように小声で。
 あたしはスィンとは違う。
 スィンには悪いが、あたしは最後の最後まで生きるのを諦めない。
 逃げ出したりもしない。
 戦って――必ず勝って――そして生き抜くっ!
 ガウリイは安心したようにあたしから離れ、グラーガへと向かう。
 ガウリイには後は任せると言ったものの、このまま眺めている気は更々ない。
 実は先ほど気付いたことがある。
 あたしが呪文を放った瞬間、ローブ越しだが、グラーガの右腕が鈍く光ったことに。
 もしかしたら―――
 あたしはきしむ体に鞭打ち、立ち上がり移動した。
 戦いを――終わらせるために――
 
「しつこいな……」
「それはお互い様だ。」
 ガウリイが不敵に笑う。
 アクトが顔に一撃を放った後、やはり空間を渡り、体勢を立て直したグラーガと、また追いかけあいが始まった。
 何度も同じ事を繰り返す。
 ガウリイもアクトも疲労が目に見える。
 このままではいずれやられるのはこちらだろう。
「いい加減こちらも嫌になってきたのでな……
 ここらで終幕としよう……」
 右手に持っていた光で出来た長剣を斜めに振り、無数の小さな光を生み出した。
 最初にあったときと同じ戦法だろう。
 放つと同時にグラーガが走った!
 ガウリイは大きく右へと避け、アクトは左へとかわす。
 アクトはバランスを崩しながらもそれを全て避けた。
 グラーガはガウリイの方へ向かっている。
 ガウリイの横には壁があり、これ以上移動することは出来ない。
 ガウリイはいくつかの小さな光と、グラーガに対して構えを取った。
「愚かな……
 小さな光か、この長剣か、どちらかは避けられまい……」
 グラーガは自分の持っている剣に力を込めた!
 ガウリイは――不敵に笑っていた――
「それはどうかな?」
 ずどっ!
 剣が体を貫いた――
 グラーガの右胸を――
「な……!?」
 グラーガが事態を理解するより速く、その刀は引き抜かれ、再びグラーガの右腕――魔法具を突き刺した。
 あたしの――剣が。
 そのままガウリイの剣もグラーガの体を斜めに走る。
 あの後、あたしはグラーガ、ガウリイ、アクトの全てに死角となるような場所へと移動し、えっちらおっちら地精道を唱えまくっていたのである。
 言うのは簡単ではあるのだが、あの呪いのため、あたしは何度も意識を失いかけた。
 ……情けないことに。
 先ほどガウリイの右にあった壁はあたしの呪文で薄っぺらになっており、タイミングを見計らって剣を突き出したというわけである。
 はっきり言おう――まともに当たるかどうかは賭だった。
 そして――ガウリイがこちらへとおびき寄せてくれることなど、打ち合わせはおろか、目線すら合わせていなかった。
 長い付き合いのなせる技だろうか。
「馬鹿なっ!?」
 よろめきながらグラーガは言う。
「さっき――あんたはあたしのことを翼をもがれた鳥と同じって言ったけど――
 残念だったわね。
 鳥には二つの翼があるわ。
 あたしは一つでも翼があれば飛べるのよ。
 一つはあたし自身の心、もう一つは魔力――
 そしてあんたに奪われていた一つの翼も取り戻したわ。
 あんたの負けよ。」
 先ほど鈍く光っていたのは魔力を奪う魔法具(マジック・アイテム)だったのだろう。
 それを破壊し、魔力は取り戻した。
 今でも急激にあたしに力が注がれているのが解る。
 いや――戻ってきていることが――
「まだだっ!まだ終わらんぞっ!」
 よろめきながら、言うグラーガに油断無く構えるあたし達。
 その時突然に、グラーガの左腕が黒い錐によって貫かれる!
『……な……!?』
 グラーガとあたし達三人の声がハモる。
 そして――あたしは理解した――誰がやったのかを――

「いやあ、どーも。
 ちょっと遅れちゃいましたね。」
 洞窟内に響いたのはあたしの想像通りの声だった。
「きっ、貴様っ!?」
 驚きと、焦りと、脅えと。
 様々な感情の奔流により、グラーガは動けない。
「だめじゃないですか。
 グラーガさん。
 魔族たる者、人間ごときの魔力を奪って力を付けようなんて。
 もっとプライドを持たなくちゃ行けませんよ。」  
 相変わらずの笑顔で喋り出すゼロス。
 杖をグラーガへと指す。
「くっ、くそおぉぉぉぉぉっ!」   
 ぼんっ!
 黒い錐に貫かれ、グラーガはあっさりと滅んだ。
「――で、どーゆーことか説明してもらいたいんだけど。」
 あたしは構えたまま、ゼロスをにらみつける。
「そうですねぇ。
 実はあのグラーガさんは獣毛様の部下だったんですが、命令に従うのは嫌だ、とか言って姿を消したんですよ。
 あのグラーガさんは最下級の魔族だったんですけど。
 それでやはり身の危険を感じたのか、何処からか手に入れたあの道具で人間達の魔法力を奪い、自分のものにしようとしたんでしょうね、きっと。
 まあ、魔法力を奪うって言ってもその力を全て変換できるわけじゃあないみたいですが。
 それでも、秩序を護るのと、今後の不安要素を消すために――――」
「獣王に消すよう命令された、と。」
「その通りです。
 他の腹心様達に知れたら後々やっかいですからね。」
 いけしゃーしゃーと言うゼロス。
 なるほど、それならグラーガが身を潜めていたのかは説明が付く。
 逃げ回っていたのは、人間の復讐を恐れたのではなく、魔族の追撃を恐れたのだろう。
「で、また毎度の如く、ごたごたに関わっているあたし達を利用した、と。」
「はい。
 いやー、リナさんが関わっていると聞いたときは驚きましたけど。」
 頭をかきながら、変わらず笑顔で言うゼロス。
「で、どうする?」
「はい?」
 いまいちわかっていないようである。
「他の腹心達に知られちゃまずいんでしょ?
 あたし達の口封じはしないのかって聞いてるのよ。」
 ガウリイとアクトが凍り付く。
 しかし、ゼロスは静かに首を振ってにっこりと言った。
「命令されてませんのでしません。」
 本気でお役所仕事な奴………
「今回の命令はあくまでリナさんを護ることですから。
 それに……リナさん達はそんなこと言おうとはしないでしょう?」
 ま、たしかに……他の腹心どもに言いつけてやろうという気は起きんが……
 あんたがいつあたしを護った……?
「では僕はこれで。」
 あたしがツッコむ前に、ゼロスはその場から消えた。
 あたしは右腕のグローブをはずした。
 そこにはもう呪文などはなく、いつものあたしの手だった。
 これで――やっと終わった――
 後味は良くないが――

 アクトにゼロスのことは何とか誤魔化し、洞窟から出て、スィンを森の一つの木の元へ眠らし、アクトはこう言った。
「お前らとは二度と関わり合いになりたくない。
 俺はここで別れさせてもらうからな。」
 そう言って笑った。
「スィンの事とか……報告しないでいいのか?」
 ガウリイが言いにくそうに言った。
「いやー……命令は適当に誤魔化すは、剣はぱくるは、ゼロスとか言う変な奴は一瞬で現れるは一瞬で消えちゃうは……スィンは死んじゃうは……
 報告したらどーなると思う?」
「死刑……かな……?」
 あたしの呟きにこっくりとアクトは頷いた。
 ひえええええっ!
「ま、今いざこざが多いからなー。
 機嫌悪いのも手伝ってその場で切り捨てられるんじゃないか?俺。」
 言って笑い出す。
 いや……笑ってる場合じゃないと思うんですけど……
「ま、そーゆーことで、国には戻らないで、適当に旅をするさ。
 まあ、あそこの町長のじーさんにも俺が説明しといてやるよ。」
「また会えるかもしれんな。」
 ガウリイはスィンの刀をアクトに投げつけた。
 アクトはそれを受け取り、剣をじっと見つめ、やがてこちらを向いてこう言った。
「言っただろ?二度と関わり合いになりたくないって。」
 そう言って、アクトはくるりと背を向け、ここから離れていった。
 アクトはこちらに手を振った――振り向きもせず――
 右手にしっかりとスィンの剣を握りしめたままで――

「ね、ガウリイ。」
 あたしはアクトが去った後、ガウリイに聞いた。
「ん?」
「何であの時……壁の所にあたしが居るってわかったの?」
「……さあ……?」
 さあ……って、あんた……
「うーん……なんとなく、かな。
 それにあのままお前さんがじっとしているとは思ってなかったしなぁ。」
 いや……まあそーなんですけど……
「あのねぇ!
 あの時あたしがあそこにいなかったらどーする気だったのよっ!?」
「さあ……」
 ……こらまて。ガウリイ。 
「それより、大丈夫か?」
「へ……?」
「体……まだだるいんじゃないのか?」
 ……ばれてる……
 実はまだ魔力が急激に戻ったせいか、体中が痛むのである。
 しかし……何故わかったっ!?ガウリイっ!?
 さっきのおびき寄せ作戦も不思議だが、こーまであてられると………
 ……………………
「ま、だいたいは平気ね。」
「本当か?」
「本当だってば!
 ただ……」
 ここで少しあたしは顔をうつむく。
「ただ?」     
 オウム替えしに問うガウリイ。
「ちょっと……スィンの剣を返したのはもったいなかったかなって……」
「お前なぁ……」
「冗談よ。」
 あたしは笑ってガウリイを見る。
「なぁ……無茶するなよ……」
 あーあ。やっぱりばれてるや。
 スィンのこと……こたえてないと言えば嘘になる。
 だけど……
「平気だって。
 じゃ、行こーか。」
 あたしは歩き出す。一歩一歩前へ。
「どこへ?」
「ご・は・ん!
 一緒にうまい飯でも食べに行こうってガウリイ言ったでしょっ!?」
「そうだっけ?」
「そ・うっ!」
 あたしとガウリイは歩き出す。
 あたし達の旅はきっと終わらない。
 一つの旅が終わったらまた次の旅が始まるから。
 一つの場所にとどまることはないだろう――

               二翼の翼  Fin

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3543二翼の翼(後書き)白いウサギ E-mail 7/22-18:40
記事番号3532へのコメント
はい。長かったです。
ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
で、あつかましいとは思いつつももう一つお願いなんですが、ちょっとサイブレード持ってくれます?
……………………
あ、やっぱり。根性ありますねー、皆さん。
あれだけの駄文、その上長文を読むなとはかなりの根性の持ち主です。(笑)

さて、今回の二翼の翼なんですが、結構色々なところで仕掛けをしております。
某OPにちなんだ近い言葉を入れたり、…………後忘れた………
えーと、記憶があってれば、「あ、これってもしかしたら…」何て思うところもあるかも知れません。

さて、今回の一番苦労したところ。
リナの心理描写ですね。
いやーリナが死ぬと言われてどう反応するのか何て私には解りません。
んじゃ書くなって言われそーですが、書きたかったんですよぉ……
リナがこんなこと思うわけねぇぇっ!と、絶叫された方々、どーもすいません。
それとですねー。何処までガウリナを入れようかも迷いましたね。
あの焚き火でのシーンカットしようか何度も悩みました。
悩んだ所は他にもたっくさんありました。
ともあれ、いー勉強になった話でした。(^^;)

二翼の翼……このタイトル最初は「強き翼が失われたとき」の予定だったんですけど、
リナは魔法無くても強いだろ、と思いだし、今のタイトルにしました。
本当は最後にタイトルのネタ晴らしのセリフは無しの予定だったんですけど、
ま、いーか、と入れちゃいました。
入れない方が良かったかなぁ……

さて、今回のオリキャラ、アクト&スィン。
この二人は私のオリジナル小説の主人公です。
まあ、アイデアだけで書いてないですけど。(^^;)
しかし……スィンが死ぬとは思わなかった………
書いてる奴が言うなとかこれまたツッコまれそうですが、スィンが勝手に死んだんですよぉ……本当に。
アクトはですが、あの後、一人でしばらく黙って泣いてます。
涙は出てないんですけど、表情を少しも変えず、ずーっと床を見つめてるんですねー。
彼の憧れ、と言うか目標だった人ですから。スィンは。
あんまり言うと、自己満足になりそうなのでこの辺で。

今回の「………………」ってのはかなり深い意味を入れています。
例えばガウリイの「一緒に」の後の長い沈黙は、言いたいことを変えた沈黙か、忘れた沈黙か。
それは読んだ貴方が判断して下さい。
それが真実です。(^^)
私の話の場合、結構どうとでもとれる部分があると思います。
それは貴方が読んで思ったことが正解です。
人それぞれで感じたことが違うっての好きなんで、そーゆーのを入れました。(^^)

で、今回の謝罪。
リナが変わってるかも知れません。
口調がスィンの死で一気に変わりましたからねー。
まあ、変わらない方がおかしいとか、変わるのはおかしいとかあると思いますが、
すいませんけど、解りませんでした。m(,,)m
リナがどう反応するのか。

さて、ではこの辺で……
ここまで読んで下さりありがとうございました。
もう感謝の涙でいっぱいです。
またお逢いできることを楽しみにしております。

P.S 今回のお話は九尾さんのHPに投稿します。
     長いですけど、九尾さん……お願いしますね(はあと)
    公開されたら九尾さんの絵だけでも見に来て下さい。

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3556Re:二翼の翼1〜9の感想白銀の魔獣 7/23-11:24
記事番号3543へのコメント
 
 魔法力って一体………?
魔力って吸い取られるような物なんでしょうか?
 スレイヤーズ世界では精神力=魔力で、アストラルサイドから
隔離されると干渉力を失って魔法を使えなくなったりはするみたいですけど?
 ……とまあ細かい事はおいといて、面白かったです。
 重箱の隅をつつくようにすればまだまだ疑問点は残りますが、
そんなものを気にさせないくらい面白かったです。
 駄文なんてとんでもない!
 私の頭の中には(精神力=魔力)という構図が有った為
魔力を吸い取られる=弱気なリナが見れるのだろうか?と期待してしまいましたが……
 やっぱりリナはリナでしたね。
 それにしてもゼロスの価値って、狂言回しと解説にしかないん
でしょうか?強すぎるのが問題だと思いますけどね。
 まともにゼロスを主人公(中心)にして話を進めると、L様談の
ように十数行で話が終わりそうです。
 いや…その、このお話でゼロスが出てくる意味があまり無い
ように思えたので、ちょっと語らせて貰いましたが……あまり意味が有りませんでしたね。
 それでは、次なる作品を楽しみにしています。

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3559白銀の魔獣さんありがとうございますっ!白いウサギ E-mail 7/23-15:55
記事番号3556へのコメント
白銀の魔獣さんは No.3556「Re:二翼の翼1〜9の感想」で書きました。

感想、ありがとうございます(^^)

 
> 魔法力って一体………?
>魔力って吸い取られるような物なんでしょうか?

 うー……わからないんですけど……
 今回はそう言う設定にさせてもらいました。
 ああ……身も蓋もない……(泣)
 
> スレイヤーズ世界では精神力=魔力で、アストラルサイドから
>隔離されると干渉力を失って魔法を使えなくなったりはするみたいですけど?

あんまり深いことは考えてないです。(こら)
精神力……
光の剣を使えるガウリイもそれなりにあるんでしょうね。
ただ……呪文を覚えられなかったんでしょうか。(笑)
発音も人間が出来るギリギリの発音だって聞いたことありますし。

> ……とまあ細かい事はおいといて、面白かったです。
> 重箱の隅をつつくようにすればまだまだ疑問点は残りますが、

 あはは(笑)
 自分でもありますねー。疑問点は。
 本気で難しかったですから。今回。

>そんなものを気にさせないくらい面白かったです。
> 駄文なんてとんでもない!

 あう……お褒めの言葉ありがとうございます。

> 私の頭の中には(精神力=魔力)という構図が有った為
>魔力を吸い取られる=弱気なリナが見れるのだろうか?と期待してしまいましたが……
> やっぱりリナはリナでしたね。

ちょっとそれについては私も悩みました。
白銀の魔獣さんとは違う解釈ですが、
死ぬと言われてリナはああいった反応するかどうか、ですね。
でもまあ、魔力を封じられたときも強く行動してましたし(別問題)
諦めないんじゃないかと。
諦めなければああいう風にいられるかどうかは別問題ですが。

> いや…その、このお話でゼロスが出てくる意味があまり無い
>ように思えたので、ちょっと語らせて貰いましたが……あまり意味が有りませんでしたね。

 とんでもないです。
 そう言ったツッコミ大いに歓迎です。
 たしかに、ゼロスって必要なかったかも……(爆)
 えと……ゲストキャラという事で。(笑)
 今回設定がめちゃくちゃな上に難しかったからですねー。
 「ま、ゼロスだし。」とでもなると説明が楽かなーって。
 これを「怠慢」と言います。

 
> それでは、次なる作品を楽しみにしています。

 ありがとうございます。
 とりあえず、まだシリアスなものは考えてないんですけど。(爆)

 ではこれで……

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3560Re:二翼の翼松原ぼたん E-mail URL7/23-15:59
記事番号3543へのコメント
 面白かったです。凄いですね、こんな長いの書けるなんて。

> ガウリイ、あんたあたし達の旅費って何処から出てるか知ってる?」
 どこって・・・・(笑)。
> 周りの人間が姿を消した――いや、実際はあたし達が移動したのだろうが、結界の外であたし達がどう見えるかは解らない。
 考えたらかなりヤだよね、どれにしろ。
>――目的は果たした――
 何をしたの?
> あたしとガウリイは街の裏にある森の入り口に立っていた――
 うーん、状況についていけない。
>「乙女の体に変な跡残すとは許せんっ!」
 そうよっ!!
> つまり、料理を水浸しにしていた。
 ひぃぃ。
> ……あるのか……?
 あったりして(笑)。
> …………こいつ……誰かと似てる………
 うん(きっぱり)。
> あの苦しそうにしている青年の右腕には、あたしが先ほど付けられたばかりの黒い呪文のようなものが刻まれていたのである。
 やっばい状況ですねぇ。
>「まっぴら(はあと)」
 そうよっ、それでこそリナよ。
> もし、このあたしが毎日「後何日……」とかぶつぶつ言ってお空を眺めている姿をっ!!
 ひーん、怖いよぉぉ。
> どーでもいいがなんかむかつくぞ。その言葉。
 けど正論(笑)。
> 魔族に良い評価されてるあたしって一体……?
 破壊神。
>「なんでレッサーデーモンを拳で倒すのよっ!?あんたはっ!?」
 まぁ、器用(はぁと)。
>「はっはっは。いやあ、やっぱり変わりませんねー、リナさん。」
 なんか平和だね、あんたら。
> あげあし入れるためだけに登場すんじゃないわよっ!」
 それでこぞゼロスぢゃないですか。
> ……………………………どーしろってゆーのよ………
 確かに。
> ゼロスから手渡された手紙を読むあたし。
 どんな内容?
>  この剣は魔法がかかっており、持ち主の意志の強さに比例しますが、光の矢を発することもできます。
 をを、凄いのでは?
> 別に環境保護だとかそういうことではないんですね。」
 けど、ねーちゃんには環境保護言われてるよね。
> ――――いつもと変わらない笑顔で。
 それでこそゼロス。
> そう言った緻密な計算により、あたしは何とか自分を抑えていた。
 けーさんしなくても呪文つかえないんでしょうが。
> まあ、あの手紙を見たときちょっぴし殺意沸いたけど……
 はっはっはっ(笑)。
> スィンは最後に目を開きそれを見て、再び瞳を閉じて息を引き取った――
 にー、悲しいです。
> 本気でお役所仕事な奴………
 それでこそゼロス。
> ま、たしかに……他の腹心どもに言いつけてやろうという気は起きんが……
 というか、どうやって言いつける?
> 右手にしっかりとスィンの剣を握りしめたままで――
 アクトも大変ですよね。
>で、あつかましいとは思いつつももう一つお願いなんですが、ちょっとサイブレード持ってくれます?
 は、はい(笑)。
>入れない方が良かったかなぁ……
 あたしはあそこ好きです。
>書いてる奴が言うなとかこれまたツッコまれそうですが、スィンが勝手に死んだんですよぉ……本当に。
 勝手に動いたんですね。
>    公開されたら九尾さんの絵だけでも見に来て下さい。
 はーい。

 本当に面白かったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。

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3565松原ぼたん様ありがとうございますっ!白いウサギ E-mail 7/23-16:36
記事番号3560へのコメント
松原ぼたんさんは No.3560「Re:二翼の翼」で書きました。
> 面白かったです。凄いですね、こんな長いの書けるなんて。

 ありがとうございます。
 でも無駄に長い気がしないでもないですが(;;)
 
>> ガウリイ、あんたあたし達の旅費って何処から出てるか知ってる?」
> どこって・・・・(笑)。

 ねぇ……(笑)
>> 周りの人間が姿を消した――いや、実際はあたし達が移動したのだろうが、結界の外であたし達がどう見えるかは解らない。
> 考えたらかなりヤだよね、どれにしろ。

 とりあえず、変な目で見られますね。(爆)

>>――目的は果たした――
> 何をしたの?

 リナに呪いをかけたんです。
 魔力の強い人間の力を少しでも多く集めたかったんです。
 魔族の追っ手(今回はゼロスですけど)から逃げるために。

>> あたしとガウリイは街の裏にある森の入り口に立っていた――
> うーん、状況についていけない。

 特に意味はないんですけど。(爆)
 ただ、また食堂に戻ったらその場にいた人達の反応書くだけで、また長くなっちゃいますし……

>>「乙女の体に変な跡残すとは許せんっ!」
> そうよっ!!

 そのとおりっ!(笑)
 
>> つまり、料理を水浸しにしていた。
> ひぃぃ。

 恐いですよ……本気で。

>> ……あるのか……?
> あったりして(笑)。

 本来は「依頼主には敬意を払い、相手を尊重すべし」
 ただ、スィンが要約しただけですけど……無理あるな……

>> …………こいつ……誰かと似てる………
> うん(きっぱり)。

 あはは(^^;)

>> あの苦しそうにしている青年の右腕には、あたしが先ほど付けられたばかりの黒い呪文のようなものが刻まれていたのである。
> やっばい状況ですねぇ。

 ここんところスレイヤーズじゃないです。(笑)
 ホラーになってますねぇ……

>>「まっぴら(はあと)」
> そうよっ、それでこそリナよ。

 その通りっ!
 じっとしてる何てリナじゃないっ!
 (をいをい言いきって良いのか……?)

>> もし、このあたしが毎日「後何日……」とかぶつぶつ言ってお空を眺めている姿をっ!!
> ひーん、怖いよぉぉ。

 ナーガの高笑い以上に恐いですね。

>> どーでもいいがなんかむかつくぞ。その言葉。
> けど正論(笑)。

 確かに。(笑)

>> 魔族に良い評価されてるあたしって一体……?
> 破壊神。

 ああっ!はっきりとっ!!

>>「なんでレッサーデーモンを拳で倒すのよっ!?あんたはっ!?」
> まぁ、器用(はぁと)。

 アメリア、フィルさんみたい(笑)

>>「はっはっは。いやあ、やっぱり変わりませんねー、リナさん。」
> なんか平和だね、あんたら。

 人が死ぬかも知れないってのに……(泣)

>> あげあし入れるためだけに登場すんじゃないわよっ!」
> それでこぞゼロスぢゃないですか。

  なるほど。(笑)

>> ……………………………どーしろってゆーのよ………
> 確かに。

 さすがに解りませんよねー。(^^;)

>> ゼロスから手渡された手紙を読むあたし。
> どんな内容?

 殺意沸いた文(笑)
 スィンと、アクトからの手紙のことです。
 そう言えば不十分でしたね。すみません。

>>  この剣は魔法がかかっており、持ち主の意志の強さに比例しますが、光の矢を発することもできます。
> をを、凄いのでは?

 魔法道具集めの主、お気に入りの品ですから(爆)
 但し、そんなに強くないです。

>> 別に環境保護だとかそういうことではないんですね。」
> けど、ねーちゃんには環境保護言われてるよね。

 でもきっちし破ってるし。リナ。
 平気なんですかねー、言われてたこと無視して。

>> ――――いつもと変わらない笑顔で。
> それでこそゼロス。

 うみゅ。魔族ですし。

>> そう言った緻密な計算により、あたしは何とか自分を抑えていた。
> けーさんしなくても呪文つかえないんでしょうが。

 (笑)
 ストレスたまりまくってたリナがストレス解消に自慢げに言っただけです。(爆)
 ギャグ部分ですから。

>> まあ、あの手紙を見たときちょっぴし殺意沸いたけど……
> はっはっはっ(笑)。

 でもちょっと気持ちが分かるよーな…(爆)

>> スィンは最後に目を開きそれを見て、再び瞳を閉じて息を引き取った――
> にー、悲しいです。

 本当に。
 死なせたくなかったですね。(こらこら)
 
>> ま、たしかに……他の腹心どもに言いつけてやろうという気は起きんが……
> というか、どうやって言いつける?

 あ、考えてなかった。(爆)
 まあ、シェーラと会う予感はしてたんで、シェーラを通して言いつけるとか………信じないか、シェーラ。
 その前にこのときシェーラに会ってるかどーか不明だし…

>> 右手にしっかりとスィンの剣を握りしめたままで――
> アクトも大変ですよね。

 うーん……つらい……

>>で、あつかましいとは思いつつももう一つお願いなんですが、ちょっとサイブレード持ってくれます?
> は、はい(笑)。

 やっぱり刀身でました?(笑)

>>入れない方が良かったかなぁ……
> あたしはあそこ好きです。

 ありがとうございますっ!
 入れて良かった……(うるうる)

>>書いてる奴が言うなとかこれまたツッコまれそうですが、スィンが勝手に死んだんですよぉ……本当に。
> 勝手に動いたんですね。

 はい。言うことを聞かずに。
 ……あう……つらい……

> 本当に面白かったです。
> ではまた、ご縁がありましたなら。

 ありがとうございましたぁぁぁっ!

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3580Re:二翼の翼魔沙羅 萌 7/23-21:27
記事番号3543へのコメント
どうも、魔沙羅です。

>あ、やっぱり。根性ありますねー、皆さん。
>あれだけの駄文、その上長文を読むなとはかなりの根性の持ち主です。(笑)
いえいえ、駄文なんて。心の底からおもしろかったです。
それにしても白いうさぎさんって小説書くの上手ですね。
うらやましいですよ。
そこそこガウリナで、なおかつゼロスの扱いがうまい(笑)。
しかも必ず死ぬ呪にかかったリナの出方がとってもリナらしくてぐっとです。
次回作、期待してます。

>P.S 今回のお話は九尾さんのHPに投稿します。
>     長いですけど、九尾さん……お願いしますね(はあと)
>    公開されたら九尾さんの絵だけでも見に来て下さい。
絶対見に行きます。

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3581魔沙羅萌さんありがとうございますっ!白いウサギ E-mail 7/23-23:05
記事番号3580へのコメント
魔沙羅 萌さん 感想ありがとうございますぅぅぅっ!
(何故かハイテンション)
いやー皆さん長いのに読んで下さって……(うるうる)

>>あ、やっぱり。根性ありますねー、皆さん。
>>あれだけの駄文、その上長文を読むなとはかなりの根性の持ち主です。(笑)
>いえいえ、駄文なんて。心の底からおもしろかったです。

 ありがとうございます。
 うれしいです。

>それにしても白いうさぎさんって小説書くの上手ですね。
>うらやましいですよ。

 うーん……そうですか?ありがとうございます。(^^)
 でもあんまり誉めすぎると図に乗っちゃうんでご注意を。(爆)
 あ、でもまだ大した数書いてないです。
 沢山書いて勉強したいですねー。
 その前に学業をしっかりやれって親にツッコまれそう……(涙)

>そこそこガウリナで、なおかつゼロスの扱いがうまい(笑)。

 本当に、そこそこ。(笑)
 照れが入っちゃうんですよ。
 アレでも結構照れましたからねー。
 ついラブラブから抜け出そうとギャグを強引に入れたり、
 リナの反応をギャグに行くようにしむけたり(笑)
 ゼロスはいつも笑顔、んでもってあーゆー奴だ、と。(笑)
 
>しかも必ず死ぬ呪にかかったリナの出方がとってもリナらしくてぐっとです。

 ありがとうございます。
 ここ苦労しました。
 もう少し落ち込ませるかどーしよーか迷ったんですけど。
 やっぱリナは強い人間だと思ったんで。
 まぁ、その点については本当に悩みました。

>次回作、期待してます。

 あはは(ひきつり笑い)
 なぁぁんも考えてません。
 また何か浮かんだら書きますのでよろしくお願いします。
 次回はきっとギャグでしょうけど(爆)
 
>>P.S 今回のお話は九尾さんのHPに投稿します。
>>     長いですけど、九尾さん……お願いしますね(はあと)
>>    公開されたら九尾さんの絵だけでも見に来て下さい。
>絶対見に行きます。

 ありがとうございますぅぅっ!
 良かったー。(^^)

 ではまた……

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3610Re:二翼の翼ブラントン 7/26-00:04
記事番号3543へのコメント

 どうも。じつはこちらでは初めましてですね。

 いやー、すごいです。
 長いのにさくさくいっぺんに読めるし、オリキャラは立っているし、リナ一人称を上手に使っているし。
 後ろ二つはある意味才能のような気もします(=あたしにはない)。

 私が個人的にいちばん気に入っているのは1です。
 ……これは出来良すぎですって。
 2が出てきた瞬間に、「おおっ、まだ1だったのか!?」と本気で驚きましたもの。それだけボリュームがあったという意味ですね。
 なにせ、初戦が早い。私のなんて(例に出してすみません)「一」には一つもないなんて暴挙を犯しまくってますから。
 しかもその前のリナとガウリイの会話がまたレベル高いんですよね……
 たった60行ぐらいなのに、なぜそこまで詰め込められる? とつくづく感じました。

 では順番を追います。
 まず2。
 ここの「まいMVP」(わけわからんぞ)は、じーさんの「今取り込み中じゃ!引っ込んでおれ!」です。
 名無しのキャラにすら個性を持たせる。神坂先生の特長を引き継いでいた感を受け、なんだか感嘆してしまいました。
 アクトは……どーもこのときはルーク2号のイメージを受けてましたね……(後に続きます)
 スィンは、登場時から個性を発揮していて良かったと思います。「騎士道」うんぬんではミリーナ系冷静沈着的ヒロインかなぁ、と思ったりしましたが、登場シーン自体が既にその範囲を超えてますし、「まあまあ。色々調査しましたから。」という一言も何気なくらしさを表している気がします。

 続いて3。
 ここの「まいMVP」は、やはりスィンの「ただ……落とし前はつけとこうかなって。」ですね。
 この瞬間、私の中ではスィンというキャラがはっきり形成された気がしました。
 後半のガウリナ的展開は、6を……
 ま、このパートは前半は説明でしたから、あまり言うことはないです。

 では4。
 ここではゼロスの「え?」です。
 この聞き返しがないとゼロスらしさが失われる気がします。
 なにげなーいとこですが、「はっはっは。良かったですねぇ」までつなげる部分は全部見事につながって素晴らしいと思います。
 ゼロスの登場については、後でまとめて。

 そして5。
 ここは、
>あたし……心配されてんだ………
 です。
 ここらへんはめちゃめちゃ難しかったと思いますが、避けて通れない道。
 それが正しいかどうかではなく、逃げずにちゃんと書いたこと自体が十分に偉いと思います。私だったら逃げる、というよりそういうシーンを作りませんから。
 ここらへんから路線がガウリナに入ってくんですよね……
 まあ、3の
>座っていたイスからガタン、と立ち上がるガウリイ。
 のあたりからなんとなくその気は感じてはいたのですが……

 さらに6。
 ここはガウリナオンリーなんで言うことはありません。
 いえ、ガウリナが嫌いとかそういうのではなく、私が語る題としては対象外、ということです。
 ただ言えるのは、ここはまさにゼロスがいらないと思います、ということかと。

 怒濤に7。
 ここは1と同じぐらい素晴らしいと思います。
 戦闘シーンも動いているし、ゼロスもいい味出しまくってるし、リナの発作の描写なんてもう。
 「まいMVP」はやっぱりスィンの手紙です。これはやってくれたなー、と感嘆しました。
 他には、
>ひききっ!
 こういう表現を使うのは難しいと思ったので。
 最後の文も締めとしていいと思いました。

 でもって8。
 スィン〜ですぅ。
 ぴくりと耳を揺らすところから始まって、最後に死ぬところまで。
 はっきりいって独壇場でした。オリキャラとは思えないです、ホントに!
 で、「まいMVP」はもうこれしかないでしょう。
>何で……笑えるのよ……
 私の解釈したこの話の読み方では、この場所はことごとく心に響きました。
 7同様、最後の一文はすばらしいです。
 ……ま、決闘云々は別の物語ですから……

 最後に9。
>「スィン=オードの意志を継ぎ、グラーガを倒す!」
 ここで、ようやくアクトが一人立ちした気がします。
 ルークは同じ境遇にあっていないために想像できなかったからなのかもしれませんが……
 でもエピローグでは立派に完全なオリキャラになってましたから。それだけではないでしょう。
 そして倒し方。
 これはうまいですねー♪ 地精道もちゃんと最初に使っていて突拍子でもないですし、リナが知恵をフルに使わせていて理論で倒してますし。神滅斬しか思い浮かばない私としてはまったく頭が上がりません。
 それと、ガウリイとの呼吸とか、最後にゼロスがとどめを指すことなどについてはまったく気になどなりません。問題ないと思います。
 ところで、最後の一文は翼と関係づけているのでしょうか……?

 では、後でまとめての部分を。

 えーっと、ゼロスの必要性ですね。
 私は少なくともゼロスがいらない、とは思いません。
 ただ、いなくても話として成り立つとは思います。
 今回のゼロスの役回しとしては、最後の部分で説明するキャラがいないからそれで、ということだったのでしょうが……そこらへんは考えればなんとかなると思います。
 でも登場が早かったのはきっと白いウサギ様自身の意向でしょう。なにせ登場するのは最後でも良かったのですから。
 で、出てくるなら出てくるでリナの反応をもっと出してほしかったです。また登場もあっさりしすぎている気もします。
 きっとピンチで出てくる、という定番の構図を嫌ってあえてそうしたのだと思いますが、それにしても自然すぎるように思えました。
 まあ、それは作品をどうとらえて書いているかに関わってくるので、ガウリナ長編として書いていたのであれば別に気にすることでもないと思うのですが……

 タイトルのネタばらしセリフは、私だったら「あたしは一つでも翼があれば飛べるのよ。」で止めますねー。といっても芸術センスだと思うのでこれは人それぞれでしょう。

 またガウリナシーンをカットするかどうかは、上記の通り、作者がこの作品をどんな物として書いているか、にかかっていると思いますので、こちらから意見することはありません。

 ……よし、そこそこ長かったですね。

 それでは〜♪

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3709ブラントンさんありがとうございますっ!白いウサギ E-mail 7/30-23:54
記事番号3610へのコメント
ブラントンさんは No.3610「Re:二翼の翼」で書きました。

感想ありがとうございますっ!
部活の合宿で返事が遅くなりました。
すみません。

> いやー、すごいです。
> 長いのにさくさくいっぺんに読めるし、オリキャラは立っているし、リナ一人称を上手に使っているし。

 ありがとうございます。
 でも、リナの一人称は自分的にはいまひとつでした。
 描写が難しいから少ない少ない。(^^;)

> 2が出てきた瞬間に、「おおっ、まだ1だったのか!?」と本気で驚きましたもの。それだけボリュームがあったという意味ですね。
> なにせ、初戦が早い。

  うう……やっぱり指摘されましたか。(^^;)
  自分でも早すぎるぞこれは……と、思いましたね。
  でもあーしないと呪い(?)がかかってる状態のリナとか周りの様子が書けなくなるか、これ以上に長くなるんで、あーいった形になってます。
  苦し紛れに盗賊いぢめやってますけど(笑)

> たった60行ぐらいなのに、なぜそこまで詰め込められる? とつくづく感じました。

  毎朝の通勤ラッシュ時の駅員さんの気分でした。
  詰め込みすぎや(笑)

> そして5。
> ここは、
>>あたし……心配されてんだ………
> です。
> ここらへんはめちゃめちゃ難しかったと思いますが、避けて通れない道。
> それが正しいかどうかではなく、逃げずにちゃんと書いたこと自体が十分に偉いと思います。私だったら逃げる、というよりそういうシーンを作りませんから。

  うーん……充分逃げてます……
  少なくとも逃げ腰(^^;)

> ただ言えるのは、ここはまさにゼロスがいらないと思います、ということかと。

  なるほど。
  ただゼロスが存在感消えてたんで……(おろおろ)

> 怒濤に7。
> ここは1と同じぐらい素晴らしいと思います。
> 戦闘シーンも動いているし、ゼロスもいい味出しまくってるし、リナの発作の描写なんてもう。

  すっごく嬉しいです。(力を込めて)
  一番……か、どうかはわかりませんが、
  力を入れて書いた部分ですから。
  リナの発作の描写……あれって自分自身の経験です。
  あ、生きてますから、私。(手をぱたぱたと)
  もう記憶が薄れてるんですけどねー、
  確かにあーいった経験がありました。
  どーゆー時か、
  その後どーなったかは全く覚えてないんですけど。

> 「まいMVP」はやっぱりスィンの手紙です。これはやってくれたなー、と感嘆しました。

  ある意味、ライトに似てます。(内輪ネタ)

> で、「まいMVP」はもうこれしかないでしょう。
>>何で……笑えるのよ……
> 私の解釈したこの話の読み方では、この場所はことごとく心に響きました。

  難しさの極み、でした。
  リナの考えとスィンの考え方は対照的で、
  だけど一部通じるものがあります。
  スィンの考え方は理解できる、だけど……あたしは違う。
  あたし……リナ=インバースは………違う……!
  生き続ける。先を見つめて。生を放棄したりはしない。
  絶対に………
  って、感じでしょうか。
  心の中で葛藤があるからちょっとリナが変わってます。
  ……そこの部分泣きそうになりましたけど……

> そして倒し方。
> これはうまいですねー♪ 地精道もちゃんと最初に使っていて突拍子でもないですし、リナが知恵をフルに使わせていて理論で倒してますし。神滅斬しか思い浮かばない私としてはまったく頭が上がりません。

  いやー最初はガウリイと自分自身の危機に全力を振り絞って
  大技一発使うって、なってたんですけど………
  どっかで書いたように無理がありすぎます。
  それに何処でも見られるような展開だったんで、
  絶対にそれだけはやめるぞっ!
  と、握り拳を空高く突き上げましたね。
  んで、考えて考えて、グラーガの空間を渡る能力付けたのを   後悔して(こら)、それでも何とか考えました。
  良く思いついたなぁ……偶然とは恐ろしいものよのぉ……

> それと、ガウリイとの呼吸とか、最後にゼロスがとどめを指すことなどについてはまったく気になどなりません。問題ないと思います。

  それについては人それぞれでしょうね。
  ガウリイとの呼吸はNEXTのマゼンダ戦彷彿とさせますね。
  書いてる最中に気付きました。(^^;)
  ま、いろいろとかけてるところがあるんでいーんじゃないかなぁ
  と思い、そのままです。
  まぁ……とどめについてはどーしようか迷ったんですけど……

> ところで、最後の一文は翼と関係づけているのでしょうか……?

  関係づけてないでーす♪
  ああ、身も蓋もない……
  あの部分はかなり変形させてますけど、

  ゴールにもたれたりはしない
  たとえ辿り着いたって
  新しい夢がきっとあたしの背中を押すから

  という、某曲の一節と関連させてます。

  ではちょこっとまとめて指摘されたキャラごとに

  アクト
  ルーク二号……やっぱそー思われますよね……
  あれだけじゃあ、そう思われても仕方のないことです。
  スィンはアクトより強い設定があります。
  アクトはスィンに対する挑戦者です。
  負けず嫌いですから。
  この「負けず嫌い」ってのもアクトの心情に関わってきますが。
  
  スィン
  殺す気はなかったんですけど、
  リナとの考え方の違いを使って対比させ、
  そうしてリナの考えを引き出す役目になってしまった
  不幸なキャラです。
  彼女は何故最後で笑えたんでしょう?
  何故無駄かも知れないとはいえ、治療を拒否したのでしょう?
  まあ、私は考えてありますが、それでも、
  「なんで……笑えるのよ……」
  ですね。矛盾してるかも知れませんがそーゆー気持ちです。

  オリキャラ二人について
  書ききれませんでした。はい。
  もっとキャラを立たせようとすれば出来たんですけど、
  全てを書くと主役になってしまいます。二人が。
  「スレイヤーズ」じゃなくなっちゃいますから。

  ゼロスについて
  どーしよーか迷いました。
  最後だけじゃなかったのは、
  それじゃああまりにも突拍子過ぎるのでは、と思ったのと、
  ファンサービスです。(笑)  

> ……よし、そこそこ長かったですね。

  長さもそうですけど、良く読んでくれてるのが解りました。
  すっごく嬉しかったです〜♪

> それでは〜♪

  ありがとうございました♪

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3611Re:二翼の翼穂波 7/26-02:51
記事番号3543へのコメント
 はぁ、満腹って感じです。
 謎有り、戦闘有り、恋愛有りと、たっぷり楽しませていただきました。

 あくまでも「生」に執着する(良い意味で、です)リナが、すごくらしいなぁと感じました。
 あと、心配性なガウリイもなかなか・・・。
 焚き火のシーン、私は好きなので、カットされなくて良かった(笑)。

 ただ一つだけ残念なのが、スィンの扱いでしょうか。
 予定外の死だったようですが・・・読んでいてもびっくりしました。
 なんというか、彼女は謎有りのキャラなのかな、と勝手に思っていたもので・・・謎を抱えたままなくなってしまったというか。
 もう少し彼女について、知りたかったなぁと思います。  

 とはいえ、とっても楽しませてもらったことは確かですし、スィンについてもそれだけ魅力のあるゲストということだと思います。

 また何か書かれたら、読ませて下さいね。 

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3710穂波さんありがとうございますっ!白いウサギ E-mail 7/31-00:05
記事番号3611へのコメント
穂波さんは No.3611「Re:二翼の翼」で書きました。

 感想ありがとうございます。
 レスが遅くなってすみません。

> はぁ、満腹って感じです。
> 謎有り、戦闘有り、恋愛有りと、たっぷり楽しませていただきました。

  あはは。そう言ってくださると嬉しいです。

> あくまでも「生」に執着する(良い意味で、です)リナが、すごくらしいなぁと感じました。

  今回の話の主題です!(笑)
  きっとああなるんじゃないかなぁ……と。
  それとどんな時でも前を向いているリナが書きたかったんです。
  自分自身の命の残り期限を告げられてもリナのままでいられるかどうかは解りませんが、今回の話ではああしました。
  
> 焚き火のシーン、私は好きなので、カットされなくて良かった(笑)。

  それは良かったです(笑)

> ただ一つだけ残念なのが、スィンの扱いでしょうか。
> 予定外の死だったようですが・・・読んでいてもびっくりしました。
> なんというか、彼女は謎有りのキャラなのかな、と勝手に思っていたもので・・・謎を抱えたままなくなってしまったというか。
> もう少し彼女について、知りたかったなぁと思います。  


  ブラントンさんへのレスでも書きましたが、
  書ききれませんでした。
  全部書くと主役が入れ替わる恐れがありました。
  少なくともリナが薄れます。
  あくまで、「スレイヤーズ」にするため、泣く泣くああなりました。
  とは言え、謎を書ききれなかったのは自分でも残念でした。

> とはいえ、とっても楽しませてもらったことは確かですし、スィンについてもそれだけ魅力のあるゲストということだと思います。

  ゲスト……本当にそうかもしれません。
  オリジナルの話からひょっこり現れましたから。

> また何か書かれたら、読ませて下さいね。 

  もちろんです〜♪
  喜んでっ!

 では……

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3669Re:二翼の翼明美 E-mail 7/29-16:41
記事番号3543へのコメント
>はい。長かったです。
>ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
長くても、おもしろければいいんです。
>あ、やっぱり。根性ありますねー、皆さん。
>あれだけの駄文、その上長文を読むなとはかなりの根性の持ち主です。(笑)
こんじょー、ないでーす。色々読みたくって……勉強になるし。
>さて、今回の二翼の翼なんですが、結構色々なところで仕掛けをしております。
>某OPにちなんだ近い言葉を入れたり、…………後忘れた………
>えーと、記憶があってれば、「あ、これってもしかしたら…」何て思うところもあるかも知れません。
すみません。私、記憶力ないんです。しくしく。
>さて、今回の一番苦労したところ。
>リナの心理描写ですね。
>いやーリナが死ぬと言われてどう反応するのか何て私には解りません。
>んじゃ書くなって言われそーですが、書きたかったんですよぉ……
>リナがこんなこと思うわけねぇぇっ!と、絶叫された方々、どーもすいません。
心理描写、とてもうまかったと思うんですけど。
>それとですねー。何処までガウリナを入れようかも迷いましたね。
>あの焚き火でのシーンカットしようか何度も悩みました。
>悩んだ所は他にもたっくさんありました。
>ともあれ、いー勉強になった話でした。(^^;)
私も、勉強になりました。
>二翼の翼……このタイトル最初は「強き翼が失われたとき」の予定だったんですけど、
>リナは魔法無くても強いだろ、と思いだし、今のタイトルにしました。
うーん、強いですねー。この強さにはあこがれます(はあと)
>今回の「………………」ってのはかなり深い意味を入れています。
>例えばガウリイの「一緒に」の後の長い沈黙は、言いたいことを変えた沈黙か、忘れた沈黙か。
>それは読んだ貴方が判断して下さい。
思いっきり、自分のいーように判断しました(笑)
九尾さんのHP見に行こうっと。


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3712明美さんありがとうございますっ!白いウサギ E-mail 7/31-00:21
記事番号3669へのコメント
明美さんは No.3669「Re:二翼の翼」で書きました。

 感想ありがとうございます。
 レスが遅くなってすみません。

>>はい。長かったです。
>>ここまで読んで下さり、ありがとうございました。
>長くても、おもしろければいいんです。

 そう言ってくださると助かります。(^^)

>>あ、やっぱり。根性ありますねー、皆さん。
>>あれだけの駄文、その上長文を読むなとはかなりの根性の持ち主です。(笑)
>こんじょー、ないでーす。色々読みたくって……勉強になるし。

 確かに、いろいろと読むと勉強になりますよね。
 それだけの理由でじゃあないですけど、
 私もあっちこっち読んでます。
 
>>さて、今回の一番苦労したところ。
>>リナの心理描写ですね。
>>いやーリナが死ぬと言われてどう反応するのか何て私には解りません。
>>んじゃ書くなって言われそーですが、書きたかったんですよぉ……
>>リナがこんなこと思うわけねぇぇっ!と、絶叫された方々、どーもすいません。
>心理描写、とてもうまかったと思うんですけど。

 ありがとうございます。
 でもちょっと少ないんですよ。心理描写。

>>ともあれ、いー勉強になった話でした。(^^;)
>私も、勉強になりました。

 お互い勉強ですね(^^)

>>二翼の翼……このタイトル最初は「強き翼が失われたとき」の予定だったんですけど、
>>リナは魔法無くても強いだろ、と思いだし、今のタイトルにしました。
>うーん、強いですねー。この強さにはあこがれます(はあと)

 私がスレイヤーズを好きになった理由の一つです。
 他にももちろんありますけど。(^^)

>>今回の「………………」ってのはかなり深い意味を入れています。
>>例えばガウリイの「一緒に」の後の長い沈黙は、言いたいことを変えた沈黙か、忘れた沈黙か。
>>それは読んだ貴方が判断して下さい。
>思いっきり、自分のいーように判断しました(笑)

 それでいーんです!(笑)
>九尾さんのHP見に行こうっと。

 わーい。ありがとうございます♪

では

>