◆-異界黙示録伝《風の書》その10-魔沙羅 萌(8/10-21:29)No.3922
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3922異界黙示録伝《風の書》その10魔沙羅 萌 8/10-21:29

夏休み……ほとんど夏期講習詰め!
はぁ……がんばれ!受験生!
ちなみに今回は三人称。

赤き第2の月『リナ』消滅直前、青き第1の月『ルナ』。
赤月光の間――それは普段『リナ』が見える私にとって最高の場所であった。
しかし、今は赤い風が吹き荒れていた。
肩まである私の青い髪も、真っ白なローブもその風で赤く染まっている。
その風は『リナ』から吹いてきているよう。なぜか嫌な予感がする。
「そこにいたんですか、ルナ」
聞き覚えのある声。今は聞きたくない声。
それは私の真後ろから聞こえてきた。
「地竜王さんですか。久しぶりですね。今日はなにか御用ですか」
私は相手に対して振り返らずにそう聞く。
なんとなく、その竜がこの不安の原因となっているような気がしたから。
「ヒトの話を聞く時は相手の目を見るものですよ、ルナ。
まあ、今は無理も無いでしょうが。……今、『リナ』に天竜王が攻め込んでいます。
彼女は天竜王の誘いを断ったそうですから」
…………!
「どうして止めて下さらなかったんですか!
なんであの子みたいな考え方が受け入れられないんですか!
あの子はただ、中立の立場に立ちたかっただけなのに!その方が正しい判断ができ、それがあっているか間違っているかを正確に見極められると思ったからそうしただけなのに!
どうして…どうして受け入れてもらえなかったんですか……」
私、かなり気が動転している。目からは大粒の涙が流れているのが自分でもよくわかる。
ここ10年ぐらい泣いた事が無かったのに。
「…私と水竜王には止められなかったんですよ。火竜王も天竜王も喧嘩っ早いですから」
沈黙が赤月光の間を支配する。
私も地竜王さんも押し黙ったまま動かないでいる。
どうしてこうなってしまったのだろう……その一言だけが心の底で蠢いている。
そして、このかなりつらい沈黙を押し破ったのはかなり大きな何かが壊れる音だった。

この大きな音こそが『リナ』の消滅を知らせる音だったのだ。
この音の直後、『ルナ』の人口の約4分の3は一瞬にして死に絶えた。
ルナはその後、地竜王と別れを告げて、生き残ったものを連れ、『ルナ』の地下に向かったと言う。そして、青き第1の月『ルナ』は今の月になったと言う。
そう、いろいろな色をうつしだすあの月に。


Last Evolution 


相手をするのは自分ではない。
それこそまさにティタニアのよくやりそうな手であった。
そして今、彼女によって呼ばれた金髪の少年はアグニにとっても、フェアルにとっても知り合いであるものであった。
「セアフェル!」
「知り合いなんですかアグニさん」
「し、知り合いもなにも彼はフェアルのお義兄さんなの!」
「!!」
アメリアの瞳は驚愕の色に染まる。
アグニの言葉が信じきれなかったから。そんな馬鹿なことがあっていいと思えなかったから。
「信じられないという顔ですわね、3人とも。でも、これが真実という事ですわ。
現にセアフェルは私と夫につかえているのですから」
「………」
声にならない声。まったく空気を振動させない喉。
フェアルは今はじめてそれにいらだちを持った。
「ふふふ、何も言えないようね、フェアルさん。それもそうですわよね。
まさか自分の義兄が敵になるなんて思いもしませんわよね」
あなたが私から言葉を奪ったんでしょうが!
物言いたさげな目でティタニアを睨むフェアル。その碧の瞳には大粒の涙がたまっている。
「セアフェルさん!あなたは間違っています!
義兄(あに)であるものは義妹(いもうと)であるフェアルさんの手本になるべき存在です!
その義兄(あに)であるあなたがそんなんでどうするんですか!」
「そんなの個人の自由と言うものじゃないんですか、アメリアさん。
だいたいなぜ貴女が僕の行動に口をはさめるんですか?そこらへんの説明をして下さいよ」
「そ、それは……正義が通じればなんでもOKなんです!」
反論するセアフェルに対して無茶苦茶なことを言うアメリア。
ちなみにティタニアとセアフェルは引きつった笑みを浮かべてたりする。
「ねえティタニア、一つ聞いていい?」
「何でしょうかアグニ」
「リヴァイアサンはどうしたの?あなたの『かわいいペット』の水の魔物は」
「どうしたも何も無いでしょう。ねえ、セアフェル」
ティタニアは普通の人が見ただけなら自然な笑みを浮かべる。
しかし、その瞳には狂気と焦りの色が含まれている。
「そうですよ。それなら僕が倒したじゃないですか」
そういうセアフェルの顔は先ほどまでとは打って変わって無表情とかしている。
「あら、それなら言いますけど、あなたはセアフェルじゃありませんね?
セアフェルの属性は『地』。でもあなたからは『水』を感じます。
本当はあなたがリヴァイアサンなんでしょう?」
紡ぎ出される言葉は穏やかではあるが、アグニの瞳には明らかに怒りの炎が宿っている。
「ふふふふ…あはははははは!
どうやらばれてしまったようですね。
そう、あなたが言うように彼はもうセアフェルではありません。
私のかわいいリヴァなのです」
ティタニアの狂喜の笑い声は地下牢獄中に響き渡る。
「そ、それじゃあセアフェルさんはどうしたんですか!」
「それはですね、アメリアさん。
彼の精神はもう存在していませんわ。だってリヴァが全部食べ尽くしてしまいましたもの」
地下牢獄には絶望の風が吹き荒れる……。


「俺がテメェの息子だって?そんなの嘘だ!!」
謁見の間にパックの絶叫が響き渡る。
「落ち着けパック!いまのは俺たちを惑わせるために言った嘘かもしれないんだぞ!」
「ほう、ゼルガディスとやらよ。我が嘘をついたとでも申すか。
くっくっく…実におもしろい。我は嘘など申さぬ。
パックは正真正銘の我とティタニアの息子だ」
絶望。そこにはもうそればかりしか存在していない。
「嘘だ!おれの親父はもういない!オマエたちが殺したんじゃないか!
絶対に信じないからな!!」
「では聞こう。それらは本当にお前の家族だったか?」
沈黙……。
一瞬ではあったが重苦しいほどの沈黙がその場を支配する。
「おれの家族は……」
「もういいパック。それ以上は何も考えるな。
おい貴様!こんなこと本当にしていいと思ってるのか!」
ゼルガディスは今にも泣き出しそうなパックを自分の後ろにかばいながらそう叫ぶ。
「何を言うか。ゼルガディス=グレイワーズとやらよ。自らの息子に本当のことを言ってなにが悪い。それに見よ。パックは今、言葉がつまって出てこないではないか。
という事は否定もできないのだよ」
冷たいオベロンの言葉によりまたしても謁見の間は絶望に包まれて行った。
そこには悲哀の嵐が渦巻いている。


焦り、恨み、悲しみ、痛み、絶望、狂喜、驚愕、苛立ち、怒り、狂気、哀しみ……。
それらは渦巻き、1つの形を生そうとしている。
絶望の宴は闇の誕生を願っているかのように辛く、深くなって行く。
妖精界を新たな悲哀の進化に導こうとして行く。
これこそ時の望みなのであろうか?
こたえが出されないまま進か革命はいま始まろうとしている……。

[続く]

てなわけで、《Last Evolution》でした。
今回も遅くなって本当にごめんなさい。
なんかストーリーもだんだん変な方向に進みはじめてるし。
しかもとことん長い。
本当にすみませんでした。

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3964Re:異界黙示録伝《風の書》その10松原ぼたん E-mail 8/12-22:46
記事番号3922へのコメント
 面白かったです。

>はぁ……がんばれ!受験生!
 がんばってください。
>どうして…どうして受け入れてもらえなかったんですか……」
 受け入れられるような奴なら戦争なんかしないって(笑)。
>「そ、それは……正義が通じればなんでもOKなんです!」
 理屈になってないって。
>「では聞こう。それらは本当にお前の家族だったか?」
 ひどい奴・・・・。

 本当におもしろかったです。
 ではまた、ご縁がありましたなら。