◆-Lovers' Suicide〜sideリナ(1)-T-HOPE(9/14-10:08)No.4538
 ┣Re:Lovers' Suicide〜sideリナ(1)-T-HOPE(9/14-10:15)No.4539
 ┃┣すみません、ミスりました。-T-HOPE(9/14-10:16)No.4540
 ┃┣きゃぁぁぁぁっっ(はあと)-ひなた(9/14-16:33)No.4550
 ┃┗Lovers'Suicide〜sideリナ(3)-T−HOPE(9/14-16:36)No.4551
 ┃ ┣みうぅぅ〜♪-ひなた(9/14-20:52)No.4561
 ┃ ┃┗あぅ・・・-T−HOPE(9/15-11:47)No.4577
 ┃ ┗Lovers'Suicide〜sideリナ(4)-T−HOPE(9/15-11:29)No.4575
 ┃  ┗Lovers'Suicide〜sideリナ(5)-T−HOPE(9/15-11:36)No.4576
 ┃   ┗Lovers'Suicide〜sideリナ(6)-T−HOPE(9/16-08:36)No.4598
 ┃    ┗Re:Lovers'Suicide〜sideリナ(7)-T−HOPE(9/16-08:40)No.4599
 ┃     ┗Lovers'Suicide〜sideリナ(終)-T−HOPE(9/16-08:46)No.4600
 ┃      ┗はうはう〜(涙)-ひなた(9/16-19:13)No.4606
 ┃       ┗うれしいです☆-T-HOPE(9/17-09:54)No.4640
 ┣Lovers' Suicide〜sideガウリィ(1)-T−HOPE(9/16-21:00)No.4614
 ┃┗Lovers' Suicide〜sideガウリィ(2)-T−HOPE(9/16-21:07)No.4616
 ┃ ┗Lovers' Suicide〜sideガウリィ(終)-T−HOPE(9/16-21:14)No.4617
 ┣Lovers' Suicide〜sideゼロス(1)-T-HOPE(9/17-12:14)No.4643
 ┃┗Lovers' Suicide〜sideゼロス(2)-T-HOPE(9/17-12:35)No.4644
 ┃ ┗Lovers' Suicide〜sideゼロス(3)-T−HOPE(9/18-08:39)No.4667
 ┃  ┣いいです〜-ひなた(9/18-18:34)No.4671
 ┃  ┃┗あぁ、良かった・・・-T−HOPE(9/18-22:15)No.4679
 ┃  ┗Lovers' Suicide〜sideゼロス(4)-T−HOPE(9/18-22:23)No.4680
 ┃   ┗Lovers' Suicide〜sideゼロス(終)-T−HOPE(9/19-09:22)No.4688
 ┣真夏の太陽(Lovers'Suicide番外)-T−HOPE(9/20-21:05)No.4738
 ┗宴が果てて-T−HOPE(9/21-21:33)No.4760


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4538Lovers' Suicide〜sideリナ(1)T-HOPE E-mail URL9/14-10:08

え〜ん、へぼいのわかってるんですけど、また書いてしまいました。
・・・よければ読んでやって下さいね。


Lover's Suicide〜sideリナ(1)


 背中で何か揺らめく気配がした。
 あたしは、振り返りさえせずに、肩をすくめた。
「ちょっと……また、なわけ? よっぽど暇なのね――ゼロス?」
「いやぁ、そう見えちゃいますか? はっはっは」
 呑気に笑う声が、次の瞬間あたしの前に回りこんだ。
 途端、闇が人の形を取った。
 闇色の髪、夜色の瞳。にこやかな瞳の中に冷たい妖気を隠し持った……獣神官、ゼロス。
 獣王ゼラス=メタリオムに仕えし高位魔族。
 それを知っていながら、あえてあたしは軽く目をすがめる程度のことで対した。
「見えもするわよ。ここ数か月、何かっちゃあたしの前にふらふら現れんだから……。
で? 今日はいったい何の用なわけ?」
 ゼロスは、人差し指を立て……。
「それは、秘密です」
「……そー言うと思ったけどね……」
「…………。……ところで、ガウリィさんは?」
 疲れたように言ったあたしに、まるで態度を変えず、ゼロスは尋ねた。
「ガウリィ? ……もーすぐ来るわよ?」
「そうですか……」
 少しだけ目を伏せたゼロスに、あたしは目を丸くした。
(……何か、変よね、今日のこいつ)
「ねー、ゼロスぅ。いったいどーしたっていうのよ?」
「……僕がどうかしたように見えますか?」
 にっこり笑いながら、ゼロスは言った。あたしは首をかしげる。
「つーか……何か。何かね、いつもと雰囲気違うから……」
 相手は魔族だ。そんな、“いつもの雰囲気”があてになるような代物ではない。
 けれど……何となく……。
 ゼロスは、あたしの表現に、何故か納得したようだった。
「成程……確かに僕は、どうかしているのかも……しれません」
「ゼロス?」
 顔をしかめたあたしに、ゼロスは笑いながら道の先を指差した。
「ほら。ガウリィさん、戻られたようですよ」
 その指の先を、思わず振り返ると……確かに。あの長身長髪は、そうそう見間違い様がなかった。
 きょろきょろしている、顔だけいい脳味噌クラゲな自称保護者に手を振って合図しようとして……あたしは、固まった。
 ゼロスが……。
「じゃ、彼はお預かりしますね」
「……ちょ、ど、どういうことよ!?」
 振り向くより早く、背後の気配が消え……。
「じゃ、まぁ、そういうことなんで……」
「ま、待ちなさいっっっっっ!」
 などと言ったところで、ゼロスが待つわけはない。それは判っていた……のに。
 あたしにできたことは、目の前で闇と共に消えたガウリィのいた場所を、ただ……見つめ続けること、だけだった……。


はい、ガウリィさらわれちゃいました(笑)
実はガウリィサイドの話とゆーのもあったりするんですが・・・あはは。多分この話で一番不幸なのは、ガウリィでしょう。

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4539Re:Lovers' Suicide〜sideリナ(1)T-HOPE E-mail URL9/14-10:15
記事番号4538へのコメント

Lover's Suicide〜sideリナ(2)





 閉ざされた場所特有の、黴っぽい匂いが鼻をついた。
 近くの町で聞いたところ、百年ほど前に赤眼の魔王信仰の拠点となっていたとかいう、邪教神殿の跡だとか。
(……ったく。結構な場所を、選んでくれんじゃないの)
 悪態をつく相手は、当然のごとく、ガウリィを連れ去ってあたしをここまで連れ出した闇色のスットコ魔族だ。
 あの後。
 我に返ったあたしがまずしたのは、ガウリィに与えてあった魔法剣の探知だった。そして、それを追って、あの場所
から歩いて二日ほどかかるここまでやって来た。
 つまり、探知できたということで……。
 その事実を考えると、気が重くなってきた。
(あいつなら、探知できないようプロテクトかけることなんて造作もないだろうに、それをしなかったってことは……やっ
ぱ、目的は、あたしのおびき出しよねぇ)
 だからといって、ここでガウリィを見捨てることもできない。
 あたしは、鈍る足を励ましながら中へと進んでいった。
 ……と。
「思ったより、遅かったですね。リナさん?」
「ゼロス!?」
 闇色の魔族は、かつての祭壇の中央に置かれた水晶の柱の横に、いつもの笑顔を浮かべながら立っていた。
「……ガウリィ……」
 思わず、低い呟きが唇から漏れる。
 その水晶の中にある、背の高い人影……。
 ……まるで。
「……あんたが冥王の真似なんかするとは思わなかったわ」
「そうですか?」
 魔族は飄々と首をかしげてみせた。
「でも、僕としては、ガウリィさんに乱入されたら困ってしまいますしね。……ま、ご容赦下さい」
 にっこり。
 いつもと変わらない笑顔が、いつもと変わらないだけ……あたしには重かった。
「それにしても、リナさんが遅いんで、もしかしてガウリィさんを見捨てられるつもりなのかなぁ……なんて思ってしまい
ましたよ。はっはっは」
 ――そーしたら、ガウリィさんをずっと閉じこめておかなきゃいけませんしねぇ……。
 とぼけた声が微かに冷たい響きを宿して広い空間に溶けていく。
「あんたみたいな魔族と一緒にすんじゃないわよ。
だいたい……遅いってのが翔封界使ってを基準としてんだったら、あんたみたいなの相手にするために魔力の温
存してんだって、気づいてもよさそうなもんじゃない?」
「へぇ……」
 ゼロスは、細めた目に面白そうな色を浮かべた。
「……リナさんは、僕を相手にするつもりなんですか?」
 あたしは僅かにつまった。
「……正直言って、あんまし相手はしたくないわね」
「成程」
「……ま、だからって、ガウリィをこのまんまにしといたら寝覚め悪すぎるからね」
 あたしの言葉に、ゼロスは一拍間を置いてから言葉を返した。
「つまり……交渉に妥協の余地が見出だせればよし。さもなくば……と、いうことですか?」
 あたしは肩をすくめた。
「ひらったく言うと、そーゆーことね。
本当は、こういう手段、強い方が取るもんだけど……あたしとしては、他にとる道なかったし」
「そうですか……」
 ゼロスは、自分の手をかけた水晶柱の中をチラッと見て、あたしに目を移してきた。
「で……どの程度の条件でしたら、のんでいただけますか?」
「重破斬は、駄目だかんね」
 金色の魔王の力を使った……世界を破滅に陥れるだろう術。
 ゼロスは、その返答を、予期していたとでも言いたげに微笑んだ。
「そうですか。……では、その他のことなら、ある程度、のんでいただけるんですね?」
 その言葉に、あたしは首をかしげた。
(……どういう、こと? 他に何かあるとでも?)
 けれど、思いつかなかった。
 ゼロスなら、たとえばあたしを殺すことだってたやすい筈だ。
 あたしは真っ直ぐにゼロスを睨みつけた。
「どーゆー条件なのよ? この際すっぱり言っちゃったらどう? あたしに選択の余地なんて、そんなないんだから!」
「そう……ですね」
 ゼロスは目を伏せ、少し……笑ったみたいだった。
「僕がリナさんにお願いしたいのは、唯一つ。……僕とかりそめの不死の契約を結んでいただきたい、ということです」
 あたしは息をのんだ。
 ――不死の契約!?
 ……ゼロスと!?
「……何のために?」
「それは……」
 人差し指を立てた、いつものポーズ。
「……秘密?」
「そうですね」
 あたしは溜息をついた。
 ガウリィと……そしてあたしの生殺与奪権は、ゼロスにある。
(ゴールのない人生なんて……興味、ない)
 ――だけど……。
 ………………。
「…………。……判ったわ」
 あたしは真っ直ぐにゼロスと目を合わせ、言った。
 こいつに心弱いただの人間だと思われるほど腹立つことはない。
「結んであげようじゃないの。……不死の、契約を」
 ゼロスはにっこりと笑った。
「それは良かった」
 言葉と同時にゼロスの姿が揺らぎ……半瞬後、あたしの前に立っていた。
 思わずあたしは一歩、足を引く。
 けど……そのことが悔しくて、すぐ目を上げ、ぎりっとゼロスを睨みつけた。
 ゼロスは、そんなあたしの反応を、楽しそうに見る。と、いきなりあたしの肩に手を置いた。
 同時に周囲が黒い闇に閉ざされる。
「……ガウリィさんに、この場面を見せたくないでしょう?」
 ――ガウリィ?
(まさか……意識、あったの!?)
 思考がずれかけたその時。
「ぐぅ……っっっ」
 あたしは思わず呻いていた。
 ゼロスの手が……あたしの胸の中に潜りこみ、心臓を掴んで……いた。
(……苦し……い……)
「すみません。すぐ済みますから」
 変わらない穏やかな声で言いながら、ゼロスは何か口の中で呟いた。
 途端、あたしの心臓の中に“何か”が打ちこまれ……代わりに“何か”が出ていった。
 ゼロスがもう片方の手に捧げ持つ、紅色の石の中へ、と――。
「これが、契約の石です。……リナさんの瞳と同じ色だし、綺麗でしょう?」
「そういう……問題、じゃ……」
 笑って言うゼロスに、あたしは切れ切れに答えた。
「気に入っていただけなかったとは、残念ですねぇ」
 言うなり、手を一気に引き抜いた。
 あたしの膝が、がくっと崩れる。肩で大きく息をついて、痛みの残滓を追い払おうとした。
 その時……周囲の闇が、払われた。
 包まれる前と、何も変わらない。
 古い崩れかけた神殿跡、あたしの前に立つゼロス、水晶柱に閉じこめられたガウリィ……。
 ……ただ、あたしだけが変化していた。
 あたしは膝をついた姿勢のまま、ゼロスを思いきり睨みつけた。
「言う通りにしたわよ。さぁ……ガウリィを自由にしなさいよ!」
「ふむ」
 あたしの様子を見ながら少しだけ首をかしげると、ゼロスはふっと姿を揺らめかせ、水晶柱の前に移動した。
 チラッとこちらを振り返って、笑う。
「判りました。自由にすれば、いいんですね?」

 ――そして――

 とんっ。
 無造作に、ゼロスの白い手が、水晶柱を……。
 ……押した……。
(な……っっっ!?)

「ガウリィィィィィィィッッッッッ!?」

 ガウリィを閉じこめた水晶柱は……倒れ……。
 ……そして……。

 ……――砕けた…………。



はい。ガウリィ死んじゃいました(あっさり言うなっ・・・^^;)
・・・ところで、不死の契約の仕方って、どんなのなんでしょう? わかんないので適当にでっち上げましたが・・・。
いや、心臓に細工するってのがなんか面白そうかなぁ・・・と。
リアルに想像したらグロいかもしれません(笑)

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4540すみません、ミスりました。T-HOPE E-mail URL9/14-10:16
記事番号4539へのコメント
すみませんすみませんっ。
上の、(2)ですね。タイトル変えるの忘れてました〜(;;)

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4550きゃぁぁぁぁっっ(はあと)ひなた E-mail 9/14-16:33
記事番号4539へのコメント
よみました〜っっ!!
おもしろかったですよう。

んと、契約のところがグロくてすきです(血)
あとあと、リナが強気なとこっっ!!
めっちゃ好みですよう。うふふふふ・・・・。(変)
ゼロスも、なんかいつもと様子が違ってていいです♪

がうりん・・・かわいそーだけど、なんかいいな〜
・・・とか思っちゃうあたしってもしかして変ですか?(笑)

でわでわっっ!!続き楽しみにしてます☆

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4551Lovers'Suicide〜sideリナ(3)T−HOPE E-mail URL9/14-16:36
記事番号4539へのコメント

    Lovers'Suicide〜sideリナ(3)


 あたしは、ふらっと立ち上がった。
(……何が、起こったの?)
 足に力が入らない。
(……これは、夢? 悪夢……なの?)
 水晶柱の破片の側まで行って、すとんと座りこむ。
(……なんで……)
 ばらばらになった、ガウリィ……。
(……なんで……)
 ガウリィ…………ッ。
「……なんで。なんで、なのぉぉぉぉ!?」
 あたしは飛び跳ねるように立ち上がり、ゼロスに飛びかかった。
「なんで、なんで、なんでガウリィを……っ! なんでよぉぉぉっ」
 無我夢中で、ゼロスの胸を叩いた。
 こいつは魔族で――こんなこと、何の意味もない。
 だけど……だけど!
(ガウリィ、ガウリィ……ガウリィ!)
 ……もう、いない。
 あの、どうしようもなく手がかかって、それでも必要な時はいつだって側にいてくれた温かい人は――携帯用のあた
しの家族は、もう、いなくなってしまった……。
 本当の家族みたいな……本当に、最後、逃げこんでも許してくれる……そんな人、だったのに……っ。
「なんでぇぇぇぇっっっ」
 顔が涙でぐしゃぐしゃになった。拭っても拭っても涙はあふれてくる。
 ぽっかり胸に空いた穴を自覚しながら、あたしはゼロスを殴り続けていた。
 ゼロスは暫くそんなあたしを眺めてたみたいだけど、やがて、小さく溜息をついた。
「……今の貴女では、意味がないですね……」
 そう言うなり、なおもゼロスを叩いていたあたしの両腕を強く掴む。
 あたしは、涙を流しながら、ゼロスを思いきり睨みつけた。
「……あんた……なんて……っ」
 ゼロスは、何故か楽しそうににっこり笑った。
 いや――こいつは魔族だから、あたしの負の感情を取り込んで、喜んでいるのかもしれない。
「……僕が憎いですか?」
 ぎりぎりと、視線の密度が高くなる。
 もし――もしもあたしが魔族だったら、この視線だけで力を生み出すことができるかもしれない。それくらい……に。
「…………。……聞くまでもないでしょうに」
「なら……」
 不意に、ゼロスは、あたしを後ろに突き飛ばした。
「なら、もっともっと憎んで強くなられることですね……」
 笑っているような声が、遠くで響いた。
 ――そして……。
 あたしは、目の前が暗くなっていくのに気づいた……。


  
 リナがぶち切れております。
 どーでもいーけど、ガウリィについて、死ぬほど身勝手な台詞はいてるな〜・・・書いてから気が付きました(^^;)
 次はゼルとアメリアも出る筈・・・なんですけど、私アメリア書けなかったよーな・・・何とかなるかなぁ?
 もしよろしかったら、読んでやって下さいませ。  

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4561みうぅぅ〜♪ひなた E-mail 9/14-20:52
記事番号4551へのコメント
こんにちわ〜♪よみましたよ〜。
あぁぁぁぁぁぁっっもぉっっ!!すてきすぎですぅぅっっ!!(のたうちまわる)




> ゼロスは暫くそんなあたしを眺めてたみたいだけど、やがて、小さく溜息をついた。
>「……今の貴女では、意味がないですね……」
にゃ?それはどーゆー意味でしょ??
うぅむ。気になります。どきどき。(笑)


>「……僕が憎いですか?」
> ぎりぎりと、視線の密度が高くなる。
> もし――もしもあたしが魔族だったら、この視線だけで力を生み出すことができるかもしれない。それくらい……に。
>「…………。……聞くまでもないでしょうに」
>「なら……」
> 不意に、ゼロスは、あたしを後ろに突き飛ばした。
>「なら、もっともっと憎んで強くなられることですね……」
> 笑っているような声が、遠くで響いた。
ここすきです〜(はあと)
いや、全体通してすきなんですけど。
魔族バンザイ☆(笑)


> ――そして……。
> あたしは、目の前が暗くなっていくのに気づいた……。
はうはう〜?どーなっちゃうんでしょう??
続き、たのしみです〜☆


> 次はゼルとアメリアも出る筈・・・なんですけど、私アメリア書けなかったよーな・・・何とかなるかなぁ?
アメリア〜。頑張ってください☆こっそり影から応援してます。(嫌)

> もしよろしかったら、読んでやって下さいませ。  
はい☆もっちろんですよう。
たのしみにしてます♪

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4577あぅ・・・T−HOPE E-mail URL9/15-11:47
記事番号4561へのコメント
>こんにちわ〜♪よみましたよ〜。
>あぁぁぁぁぁぁっっもぉっっ!!すてきすぎですぅぅっっ!!(のたうちまわる)
 お褒めいただいて、恐縮です〜・・・なんか、私としてはみんな暴走してるよーな話なんですけどね(^^;)

>> ゼロスは暫くそんなあたしを眺めてたみたいだけど、やがて、小さく溜息をついた。
>>「……今の貴女では、意味がないですね……」
>にゃ?それはどーゆー意味でしょ??
>うぅむ。気になります。どきどき。(笑)
 あははは・・・(乾いた笑い)

>>「……僕が憎いですか?」
>> ぎりぎりと、視線の密度が高くなる。
>> もし――もしもあたしが魔族だったら、この視線だけで力を生み出すことができるかもしれない。それくらい……に。
>>「…………。……聞くまでもないでしょうに」
>>「なら……」
>> 不意に、ゼロスは、あたしを後ろに突き飛ばした。
>>「なら、もっともっと憎んで強くなられることですね……」
>> 笑っているような声が、遠くで響いた。
>ここすきです〜(はあと)
>いや、全体通してすきなんですけど。
>魔族バンザイ☆(笑)
 うにゃ〜・・・ありがとうございますぅ。
 私も魔族好きなんですけどね。素敵に書くのはそれとは別問題らしいです・・・(遠い目)

>> ――そして……。
>> あたしは、目の前が暗くなっていくのに気づいた……。
>はうはう〜?どーなっちゃうんでしょう??
>続き、たのしみです〜☆
 何故か、予定とは別の方向に行ってしまいました。
 そのせいでラブラブ度は上がったよーですが・・・変だなぁ。

>> 次はゼルとアメリアも出る筈・・・なんですけど、私アメリア書けなかったよーな・・・何とかなるかなぁ?
>アメリア〜。頑張ってください☆こっそり影から応援してます。(嫌)
 アメリア、結局次じゃなく次の次になってしまいました(;;)
 しかも、あんまし動いてくれなかった・・・結局、台詞くらいでしょーか。らしいのって。
 で、でもでも、ゼルにいいところをあげてしまったからだし、きっとアメリア許してくれ・・・ないかな?

>> もしよろしかったら、読んでやって下さいませ。  
>はい☆もっちろんですよう。
>たのしみにしてます♪
 ありがとうございます☆
 もーちょっとで終わると思うんですけど・・・でも、あとガウリィはともかくとして、ゼロスsideが残ってる・・・よーな・・・(笑)

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4575Lovers'Suicide〜sideリナ(4)T−HOPE E-mail URL9/15-11:29
記事番号4551へのコメント

Lovers'Suicide〜sideリナ(4)


「……あによ、ここ」
 痛む頭を抱えて身体を起こしたあたしは、途端にまた頭を抱えたい気分になった。
「…………。……こんなとこ、知らない」
 って、森の中でそんなこと言ってもしょうがないんだけどさ。
 何だって、あたし、こんなとこいるんだっけー?
 頭に靄がかかってる。
「まぁ、月が出てて明るいからいいけど――」
 そんなことを言いながら空を降り仰いで……あたしは、固まった。

 ずくんっ。
 魔に縛られた心臓が疼く。

 闇色の空に細く光る月――。
 ――白々と、何処までも冷ややかで……なのに、そこに在る。

「……ゼロス…………」
 …………。……思い出した。
 ぽつり、と、手の甲に何かが落ちた。
「……夜露よ」
 ぽつり、ぽつりと……流れていくもの。
「でなきゃ、雨よ! あたしが……このあたしが、あんな奴のために泣くだなんて……」
 星と月の輝く空を見据えたまま、あたしは自棄になったみたいに叫んだ。
「ガウリィならともかく……ゼロスみたいな大馬鹿者のために泣くだなんて、そんなのあり得ないわっ!」
(ガウリィ……ガウリィ、ガウリィ……助けて!)
 この瞳の記憶が訴えてる。
 ゼロスはガウリィをあんなにもあっさりと殺したじゃないか――と。
 ――なのに……。
 吹き出した灼熱の憎しみは凍え、脳を染め、心臓に近づき……けれど、達したりはしない。
 だって、楔を打ちこまれた心臓は訴えてる。
 あの手を、あの顔を、あの瞳を――闇色のあの存在を、忘れられない、と……!
「馬鹿……馬鹿! 大馬鹿!」
 この世の何処かにいる筈のそいつに向かって、あたしは叫んだ。
「仲間なんかじゃなくて良かったのに……味方じゃなくたって、利用してるだけだって……っ。ただ……どっかにいて
くれれば……!」
 会いたい時に会えなくたって、構わなかった。
 会えなくなったって、いつか――偶然のフリして何処かで笑って会える、そんな希望さえあれば。
「なのに……全部、ぶち壊しちゃって……っ」
 契約に縛られてるわけじゃない。でも、この心臓の痛みは本物。想いの呪縛。
 ……だけど、憎しみも、本物。
「あたしは……」
 選択はたった一つ。
「……自分の人生は、自分で選んでみせるわよっ……!」
 夜明けはまだ遥か彼方。
 あたしは――月に向かって、そう、宣言した。


◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎◎

  ・・・あ、あれ?(^^;)
  アメリアとゼルはどーしちゃったんでしょーねぇ。
  いや、本当は、リナにもっとばりばりイッちゃってもらおうと思ったんですけど、ふと、これじゃリナじゃないよな〜・・・
 と思ったものですから。
  そこで、一応、しっかり自分の気持ちを見つめてもらいました。
  ま、当初の予定とは違ったけど、前向きになったリナの方が見てて好きだからいーや(笑)

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4576Lovers'Suicide〜sideリナ(5)T−HOPE E-mail URL9/15-11:36
記事番号4575へのコメント
Lovers'Suicide〜sideリナ(5)



 それからだいたい一か月後。
 あたしは、ゼルガディスとアメリアとともに、再び邪教の神殿跡にやって来ていた。
 ――ったく、あのスットコ魔族が、何をどうやったのか、景気良く人を吹っ飛ばすから!
 仕方なくあたしは、鬱憤晴らしもかねて、周辺の盗賊団をぶっつぶし、しばき倒し、旅費を稼ぎつつここまで旅する
はめにおちいったんだからねっ。
 アメリアとゼルとは、その途中で合流した。
 アメリアは、『この世の何処かでわたしの正義を待ち望む者の声が聞こえたんです!』……という叫びとともに、城
を出てきたらしい。で、ついでに――どっちがついでだか知らないけど――ゼルガディスをつかまえた。
 ゼルにしても、正義云々はともかくとして、巫女なんかやってるアメリアの直感は信頼性が高いと見たんだろう。一
緒に行動することにしてた、みたい。
 で、盗賊団壊滅の噂を追いかけて、二人は無事にあたしに合流。
 ……変わってしまったあたしに、ね。
 あたしの得たかりそめの不死に、二人は当然驚いてた。ゼルにいたっては、その話を聞いた途端、問答無用で烈
閃槍をぶちかましたくらい。とーぜん、今のあたしにんなもん効きやしなかったけど。
 けど……もしその話が嘘だったり、契約がヘボだったりして効いてたら、どーしたんだ、ゼルガディス?
 ともかく、それで相手がゼロスだってことで……。
 ゼルは元々ゼロスのこと嫌ってたし、アメリアは、『愛と正義の名の下に悪を打つため旅立ちましょう!』……だし。
で、一緒にこんなとこまで来ちゃった、ってこと。
 いちおー、止めてみたんだけどね。
「しかし……ここに来たはいいが、ゼロスの奴がまだここにいるとは限らんだろう?」
 ゼルが、チラッと辺りを見回しながら言った。
 と、アメリアが、無意味に胸を張って、
「何を言うんです、ゼルガディスさん! この邪悪と欲望に澱み腐った空気! おどろおどろしい雰囲気! これぞま
さしく悪人の巣窟(すみか)!」
 ……いや、ゼロスは悪“人”じゃないと思うぞ。
「ま、確かにあいつがまだここにいるとは限んないわね。ただ、それが何処にせよ、あたしをおびき出すための“場”
は必要でしょ?」
「成程な」
「それに……ガウリィを、いつまでもこんなとこに置いとくわけにはいかないでしょーよ」
「……リナさん」
 アメリアが、目を伏せたあたしを辛そうな顔で見た。
「何にせよ……」
 その雰囲気に気を遣ったものか、ゼルが何か言おうとした。
 ……その時。
「おや。お久しぶりですね。ゼルガディスさん、アメリアさん……リナさん」
「…………。……ゼロス……ッッッ」
 くいしばった歯の間から絞り出すような声で、あたしは、そいつの名を呼んだ。
 あたしの脳裏を、網膜を支配してやまない――闇色の髪、夜色の瞳の……負の存在を。
「ようこそ、いらっしゃいました」
 宙にフワフワ浮いたままの状態で、優雅に一礼したそいつは、常と変わらないニッコリ笑顔をこちらに向けていた。
「どうしました、リナさん?」
 自分に向けられるあたしの憎悪を、まるで楽しむかのような瞳で、ゼロスはあたしを、あたしだけを見ていた。
 と、アメリアが、あたしを庇うように一歩前に出た。そのままびしっとゼロスに人差し指を突きつける。
「ゼロスさん! かつては共に旅をし戦った仲間ではありましたけれど、闇に身を堕とし、心を染め替え、ガウリィさん
リナさんに仇をなすまでに至ってしまった以上、あなたは悪! 故に、わたし、アメリア=ウィル=テスラ=セイスーン
が、今ここに正義の鉄槌をくだします!! 覚悟はいいですか!?」
「……ですから。僕はもともと闇に属すべき魔族ですってば……」
 ゼロスは、何処か不快げに一瞬眉をひそめたが、軽く肩をすくめてそう答えた。
「やれやれ。憎悪のみに染まったリナさんを見るのも楽しいかと思ったんですが……あなた方が乱入なさったんで、
失敗しちゃいましたかね」
(……やっぱり、それが目的……か)
 あたしに我を失わせ、“あの”呪文――金色の魔王の力を借りる混沌の呪文、重破斬を唱えさせることが。
 けど……。
「残念ね。あんたの思い通りにことが運ばなくって!」
 ――そう。計画には最初から致命的な欠陥があった。
 人間の気持ちの矛盾……と、いう。
(ゼロスを殺したいほど憎んでる。でも――)
 けれど、ゼロスは余裕の態度を微々とも崩さなかった。
「構いませんよ。まだ望みを叶える方法は幾つもありますから、ねっ」
 言葉と同時に、ゼロスの持つ杓杖に埋めこまれた宝石が光り、凄まじい力がアメリアとゼルを襲った……。
「ぐっ……」
「あう……っ」
 勢いよく壁に叩きつけられ呻く二人の前に、あたしは躍り出た。
「烈閃槍!」
「あたるわけないでしょう!」
 どぅん!
 素早く空間を移動したゼロスの手から発せられた力が、あたしを吹き飛ばす。
 けど……今のあたしには、僅かな衝撃にしか感じられない。
「覇王電撃陣!」
 どぅん!
「黒妖陣!」
 どうぅ……ん!
「覇王氷河烈!」
 だん!
(……ったく、ちょこまかと!)
「動くんじゃない! 獣王牙操弾!!」
 あたしの思考に従って走る光の帯。
 きぃぃぃぃんっっっ。
 走ってくるその帯に向かって突き出された杓杖の先が、見事にそれを二つに切り裂いた……。
「はい、止まりましたよ(にっこり)」
「………………」
 ……素直で結構って、この場合、言えるわけ?
「「崩霊裂!」」
 その瞬間、アメリアとゼルの呪文が放たれた。
 けれど、ゼロスの移動が一瞬早い。
「……邪魔ですねぇ……」
 ずばぁぁぁんっっっ!
 再び吹き飛ばされ、叩きつけられる二人。
「アメリア! ゼル! ……ゼロス、あんた……っ」
 ゼロスは、心外そうに、ちょっと笑った。
「動くなといったのはリナさんでしょう? リナさんに対しては、動いてませんよ」
 その刹那、ゼロスのにこにことした笑みの向こう、暗く蠢く何かが見える気がした。
「……人の心配をする余裕がまだあるんですか、あなたには。もっと憎んでいただかないと……僕を。僕だけを……」
「……ゼロス……?」
(あんた……いったい……?)
「それとも……あの方達に消えていただかないと、できませんか?」
 杓杖が、転がって呻いている二人に向けられる。
 ……ちょっと、待て!
「竜破斬!!」
 勿論、増幅付き。
 けれど――ゼロスの唇から、人では発することのできない言葉が流れ……。
 しゅんっ。
 竜破斬の赤い光は、虚空にのまれた。
 やっぱり駄目か……。
 となると、あと、残る手段は二つ……。
「さて。どうなさいます?」
 ゼロスの細められた目が、凍った光を宿してこちらを見据えた。
 ――重破斬を使え……というのか……。
「駄目だ、リナ!」
 いったいいつ起き上がったのか、ゼルの声が、不意に割って入った。
「そいつを……その呪文を使う気なら、俺は、お前を……殺さねばならん!」
「ゼルガディスさん!?」
 横で、まだよろけながらも立ち上がろうとしているアメリアが、驚きに満ちた声をあげた。
「この世界に生きる者として……お前を。……俺は、そのためについてきたんだ」
「余計なことですねぇ……」
 ゼロスの手が軽くあがり……。
「烈閃槍!」
 素早く間に入ったあたしが呪文を浴びせた。
「させないわよ、ゼロス!」
「……リナさん」
「リナ!?」
 ゼルとアメリアが同時に声をあげた。
「何で、お前……」
「ありがとね、ゼル」
「何を……」
 あたしは、顔だけ一瞬振り返って、二人に笑ってみせた。
「それを言うために、いざって時あたしを止めるために、一緒に来てくれたんでしょ?」
「……お前……」
 最後の瞬間に、憎まれ役を引き受けてでも、あたしに……最悪の選択をさせないように。
 狼狽した色の広がるゼルの顔に、あたしは微笑みを向けた。
「ごめん。それ言ってもらいたくて……あたしも、ついてきてもらったのかも、ね」
 目を伏せ、あげる。
 映るのは、ただ、闇色の――魔族、だけ。
 選択は、ただ……一つ、だけ。
「……終わりにするわ」
 真っ直ぐ前を向いたまま、あたしは、そう言い放った。
「できますか?」
 ゼロスの瞳が、一瞬だけ、見開かれた。夜色が魔の気を宿してこちらを射る。
「……さぁ?」
 首をかしげて笑ってみせた。
 ――不思議に、心が澄んでいく。
「でも、どっちにしろ、ゲームは終わりよ。これであんたを倒せなかったら……」
 ――これ程の魔と対峙しているというのに。
「あたしは……。……あたしを殺すからね」


■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

  結構極悪なところで切れてるかもしれません(^^;)
  でも、今回、ちゃんとアメリアとゼル出てきましたよねっ。
  ・・・そのせいか、いまいち最初の方雰囲気シリアスじゃないんですけど・・・。
  急いで続き書きますんで、お見捨てなく(;;)

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4598Lovers'Suicide〜sideリナ(6)T−HOPE E-mail URL9/16-08:36
記事番号4576へのコメント

Lovers'Suicide〜sideリナ(6)

 一瞬、その場を静寂が支配した。
 ゼロスまでもが、あたしの言葉の意味を取りかねたように、口を閉ざしていた。
「リナ……それは……」
 ゼルの声に、あたしは肩をすくめた。
「ゼルが汚れ役することなんかないわ。あたしの人生の幕よ。……あたし自身が、選んで、決めて、下ろすの」
 不死の契約なんて関係ない。
 あたしのゴールはあたしが決めるの。
「……実に、リナさんらしい、ですね……」
 何かに意識を奪われているような声で、ゼロスが呟いた。
「では……終わりにしていただけますか?」
 何処か挑発するような笑顔。
 かなわないのは判りきってる。けど……でも、せめて一太刀。
 少しでも、あたしの存在をこいつに焼きつけてから、死にたかった……。
 だから。
「……神滅斬!!」
 完全版の方だ。
 おそらく……限界まで耐えても、せいぜい、五、六回振う程度しか維持できないだろう。
 それまでに決着がつかなければ……!
「行くわよ、ゼロス!」
 そのままゼロスに切りかかる。
 空間を渡るか――と思ったけど、何故かゼロスはその場にとどまり、錫杖でそれを受けた。
 びしびしと、魔力の衝突で空気がひび割れる。
 互いの力を軋らせながら、ゼロスは不意に微笑んだ。
「あなたは……本当に。最後まで、人間であろうとするのですね……」
 僅かに寂しそうに聞こえたのは……あたしの、気のせいだったのだろうか。
 一回。
 飛び離れ、またぶつかる。
 二回。
 そして……三回。
 思った以上に消耗が激しい。
 ――これまでか?
 あと一回で終わらない場合は、あたしを終わりにしなきゃならない。
 闇の刃を振りかぶる………。

 ……と。

 ゼロスが……。
 ……不意に、両腕を下ろした。
 そして――……。

 ざんっ。

 あたしの振り下ろした闇の刃は、一気に、ゼロスの身体に沈みこんでいた…………。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 さっき気がついたこと。
 錫杖の錫の字間違ってましたね〜・・・(^^;;;)
 変換ミスに気づかずそのまんまだったみたいです。あぅあぅ・・・。

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4599Re:Lovers'Suicide〜sideリナ(7)T−HOPE E-mail URL9/16-08:40
記事番号4598へのコメント

Lovers'Suicide〜sideリナ(7)


「……ここら辺が潮時……ですか。確かに……望み過ぎるのは、罪……です……ね……」
 笑みを含んで遠くから届くゼロスの声。
 あたしは、ただ黙って、崩れ落ちるゼロスの身体を見つめていた。
 ――これは、いったい……何?
「馬鹿なっ。自分から……っ?」
 ゼルが、驚きのあまり喉につまったような声で叫んだ。
 ――何が、起こったの……?
「ゼロス!?」
 ――何故……斬られたの!?
 あたしは思わず、身体中で叫んでいた。
 ――何故……。何故……。……何故!?
 避けることも、防ぐことも、ゼロスにならばたやすかった筈。
『……でも、そうしたらリナさんは一人で死んでしまったでしょう?』
 あたしの心に直接呼びかける声に、ハッとして目を上げた。
 その視線の先に、こちらを見て微笑む夜色の瞳があった。
『あなたでなければ意味がない。
 僕を滅ぼすのは、ただひたすら僕を憎み、僕だけを見るあなたでなければ……何の意味もなかったんですよ』
 腹が立つほどに、何処までも身勝手な台詞。
 なのに――あたしは、微笑っていた。
「……ゼル、アメリア」
 その場に立ったまま、振り返りもせずに二人に呼びかける。
「逃げて」
「リナさん?」
「ここ、吹っ飛ばすから、逃げて」
「リナ!? 何する気だ?」
「竜破斬で全部吹き飛ばすから……早く逃げて」
「リナさん、何でですか……?」
 あたしは一瞬瞑目した。
「…………。……あたし、死体さらすほど、悪趣味じゃないわ」
 背後の二人が、息をのむ気配がした。
「ゼロスは死ぬ。
 その魔力で縛られたあたしの命も……一緒に、かなり力を吸い取られてくのが判るわ。生き残ったとしても、長く
は保たない。
 だったらいっそ、派手に幕を引いてやるのが、主演女優の役目ってもんでしょ」
 そう。楔を打たれた心臓は、その所有者と運命を共にせんと歌っていた。
 そして……あたしは、それに従う気でいる。
「だから、早く行って」
「リナさん、でも……!」
「行かないと、問答無用で巻き込むわよ?」
 アメリアがぐっとつまったのが気配で判った。
「…………。……行くぞ」
「ゼルガディスさん!?」
「リナが決めることだ。……違うか?」
「それは……でも……そんなの、正義じゃないです……」
 ぶつぶつと何か言っているアメリアを、半ば引きずるようにゼルが遠くなっていくのが判った。けど、あたしは振り
向かない。
「……遺品は、前に言われてた通り、ゼフィーリアに届けてやるさ」
 あたしはこっくりと頷いた。
 そして、背後の気配が十分遠くなってから、ゆっくりと膝をつき、ゼロスをのぞきこんだ。
「……ゼロス。……あんた、馬鹿よ……」
 あたしどころかガウリィまで巻き込んだ無理心中。
 あくまであたしに手を下させるあたり、こいつらしく性格悪すぎて、笑うしかなかった。
 なのに……あたしの顔に浮かぶのは、今度は笑みじゃなく、何故か涙で。
「……馬鹿……」
 ゼロスは、あたしの頬を伝う水滴を、まるで子供が初めて物を見たように無垢な瞳で見つめ、そっと掬い取った。
「……温かい、ですね……」
 にこり。
 いつも浮かべている、後ろに闇を隠し持ったものとは異なる、本物の笑顔をその顔に飾り……。
 ……ゼロスは、消滅した。
 そして、あたしは……。
「……竜破斬」


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4600Lovers'Suicide〜sideリナ(終)T−HOPE E-mail URL9/16-08:46
記事番号4599へのコメント

Lovers'Suicide〜sideリナ(終)


 墜ちていく……。
 ……それとも、昇っていく……?
 紅の玉を抱いた漆黒の闇が、あたしを包みこんだ。

 けれど……。

    ――全て我の懐のうちに――
    ――愛も憎しみも消え果てた後に――

 金色の闇が、微笑みながら白き両腕をさしのべた……。

     ……そして…………。


△▽△▽△▽△▽△▽△▽

 つーことで、リナside終わりですね。
 次はゼロスsideだーっ・・・と思ったんですけど、書いてたらガウリィsideがないとわけわからない話になってしま
いました。むー・・・それはやめとく気だったのになぁ。
 ということで、まだ続くんですけど・・・気が向かれたら、目を通してみてやって下さいませ。
 

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4606はうはう〜(涙)ひなた E-mail 9/16-19:13
記事番号4600へのコメント

こんにちわっっ!!ひなたですっっ!!
読ませていただきましたぁっっ!!
なんか・・・切ないですね(泣)
ゼロスの気持ちがなんか魔族って感じ(?)でよかったですよう〜。
あたし、魔族なのに人が好きってとこがうまく出せなくて・・・(苦)
うらやましぃっす。


> つーことで、リナside終わりですね。
> 次はゼロスsideだーっ・・・と思ったんですけど、書いてたらガウリィsideがないとわけわからない話になってしま
>いました。むー・・・それはやめとく気だったのになぁ。
あぁっ!?なぜにっっ!?(笑)
ガウリイもゼロスも楽しみにしてますよ〜☆

> ということで、まだ続くんですけど・・・気が向かれたら、目を通してみてやって下さいませ。
がんばってくださいね〜♪
また読ませて頂きますんで(はあと)
 

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4640うれしいです☆T-HOPE E-mail URL9/17-09:54
記事番号4606へのコメント
>こんにちわっっ!!ひなたですっっ!!
>読ませていただきましたぁっっ!!
>なんか・・・切ないですね(泣)

ありがとうございます! 切ない系のお話好きなんですよぉ。
書けるかどーかは別問題として・・・(^^;

>ゼロスの気持ちがなんか魔族って感じ(?)でよかったですよう〜。
>あたし、魔族なのに人が好きってとこがうまく出せなくて・・・(苦)
>うらやましぃっす。

あははは・・・つーか、書いてるうちにどんどんゼロス君壊れてきてしまったのでした。
リナside、ガウリィsideはともかく・・・ゼロスsideは・・・・・・・うーん。

>> つーことで、リナside終わりですね。
>> 次はゼロスsideだーっ・・・と思ったんですけど、書いてたらガウリィsideがないとわけわからない話になってしま
>>いました。むー・・・それはやめとく気だったのになぁ。
>あぁっ!?なぜにっっ!?(笑)
>ガウリイもゼロスも楽しみにしてますよ〜☆

いえ、実のところ、ガウリィsideだけは自分のページで既にUPしてしまってたんで・・・やめとこーかなぁと思ってたの
に・・・思ってたのにぃぃぃぃ(シクシク)
ちなみにガウリィ、お呑気すぎて怖いですよ・・・。

>> ということで、まだ続くんですけど・・・気が向かれたら、目を通してみてやって下さいませ。
>がんばってくださいね〜♪
>また読ませて頂きますんで(はあと)
 
うれしいですぅ(うるうるうる)
少しでも読んで頂ける甲斐のあるものを・・・と思うんですけど・・・実力がー、実力がー・・・(爆)

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4614Lovers' Suicide〜sideガウリィ(1)T−HOPE E-mail URL9/16-21:00
記事番号4538へのコメント
   Lovers’Suicide〜sideガウリィ(1)


「まぁ……じゃ、そういうことで」
「待ちなさいよっっっ」
 最後に見えたのは、リナの見開いた紅の瞳。
 それっきり、オレの意識は闇に飲まれた。
 
 
「あ、気がつかれましたかぁ?」
 ふと、意識が浮上した瞬間を見計らったかのようにかけられた声。オレは、慌てて瞬きをしようとして……目が、開
かない?
 いや、それどころか、身体もまるで動かない。
「あぁ、そうでしたね。それじゃ……」
 先刻の声が、楽しげに告げる……途端に。
「ぐ……ぐぅっ」
 物凄い力が眼球と口元付近にかかり、覚醒した意識が再び消えそうになった。
(……いったい……何なんだよ、これは……)
「どうしました? もう、目は開いている筈ですが?
 そうそう、ついでに、僕も退屈なものですから、口もきけるようにしておきましたよ」
 ハッと気づくと、オレの目は確かに開いていた。周囲を見ることができる。――何か妙なガラス越しに、だったが。
 けれど、身体は相変わらず動かない。
(しっかし……ここは……何処だ?)
 自慢にもならないことだが、たいして記憶力には自信がない。たとえ来たことがある場所でも、覚えがあるとは限
らないのだが……とりあえず、見たことのないようなところだった。
 薄暗い、何処かジメジメした雰囲気を持った、石造りの建物。
 神殿――か、何か、か?
 リナがいれば、過激な突っ込みを入れつつでも、何か説明してくれるかもしれんのになぁ……。
 自称天才美少女魔道士、世間一般では盗賊殺しだのドラまただのと言われている旅の道連れを思い出しながら、
オレは――身体が動かないから――内心で首をかしげていた。
 と、先刻からの声が、また……。
「ここは、今はもう滅んでしまった、赤眼の魔王(ルビーアイ)様を信仰する一派の神殿跡ですよ。
 と、説明しても、あなたが何処まで覚えていて下さるかは謎ですけどねぇ……」
 言葉と同時に、声の主が、俺の視界へと入ってきた。
 黒い僧衣、黒い髪。闇色の瞳の……。
「ゼロス? ゼロスじゃないか! いやぁ、久しぶりだなぁ」
 笑顔を浮かべた僧侶姿の男は、不意に、その笑みを苦笑に変えたようだった。
「……お久しぶりですね、ガウリィさん」
「お前、何だってここにいるんだ?」
「そりゃぁ……」
 にこやかに細められていたゼロスの目が、その瞬間、不意にぎらっと光った。
「あなたをここにご招待したのが、僕だから、ですよ」
「……招待……って……」
 凍りつくような気配を感じ取って、オレは身体を強張らせた。
 相手の様子が尋常じゃない。いや、この男は魔族だから、これで普通なのかもしれんが……。
「……リナはどうした?」
「…………。リナさん……?」
 ゼロスの背後で、闇が、ぞろりとした感触を持って蠢く。
 が、次の刹那、一気にかき消えた。それと一緒に、ゼロスの表情が、見慣れたにこにこ顔に変化する。
「リナさんでしたら、間もなくこちらにやっていらっしゃると思いますよ。
 いやぁ、確実にお招きしようと、先にガウリィさんをお連れしちゃいましたからね。はっはっは」
「それ……って、もしかしなくとも、さらってきたとか言わないか?」
「えー……? あぁ、そうとも言うかもしれませんね」
 ……いや、ぽんとか手を叩かれても……。
「申し訳ありませんけど、リナさんがいらっしゃるまでガウリィさんにあちこち行かれるわけにはいきませんので。
 ちょっと乱暴な手段ですけど、お止めすることにしちゃいました」
「で、オレは今、どうなってんだ?」
 聞くと、ゼロスはなおもにこにこ笑いながら、
「ま、水晶の中に閉じ込めた、とでも言いましょうか。
 冥王様がなさったのを、恐縮ですが真似させていただいてます」
「冥王……?」
「えぇ、冥王フェブリゾ様です。
 覚えてらっしゃいませんか?
 あなたをさらってリナさんに重破斬(ギガ・スレイブ)を唱えさせようとなさった方ですよ」
「重破斬だと!? ……まさかっっ」
 オレは、吠えるように叫んだ。
 が、ゼロスは、笑顔を崩しさえもしなかった。
「おや。ガウリィさんでもお気がつきになられましたか?
 まぁ……そうなってくれれば、最もベストなんですけどね。
 冥王様の例からいって、多くを望みすぎるのも問題ありでしょうし」
 ……こいつ、いったい、何が言いたい?
 魔族の気配はいいとしても、先刻から、抑えられたチクチクと棘のような殺意が刺さる。
 理由は……判らんでも、ないんだが。
「お前、いったい、リナをどうするつもりだ!?」
 なおも吠えると、ゼロスはゆらりと首をかしげた。肩の上で切りそろえられた漆黒の髪が、さらりと流れる。
「さぁて。
 ま、何にせよ、あなたに口を挟まれると邪魔になるかも知れませんのでね。
 視界の方はふさがないでおいてあげますので、暇つぶしに、どうぞじっくりと御覧下さい?」
「なっ……」
 またしても先刻の激痛がよみがえり、オレは、言葉を封じられた。


 目の前で、リナが、決断を迫られている。
 ゼロスの奴、リナに重破斬を唱えさせるのかと思ったんだが……不死の、契約だと?
 くっそぉ……オレは、リナの保護者を名乗ってきたってのに、前回といい今回といい、どうして何もできないんだ!?
 お荷物になるだなんて……。
「…………。……判ったわ」
 ――リナ!?
 大きな目を真っ直ぐに闇色の魔族に向け、リナははっきりと言った。
「結んであげようじゃないの。……不死の、契約を」
「それはよかった」
 にっこり笑ったゼロス。その姿が不意にかき消え、次の瞬間、リナの目の前に現れた。
 リナが、思わず一歩下がる。
 その肩をゼロスの手がとらえ…………。
 ――二人は、闇に閉ざされた。
 いったい、今、何が起こってるんだ!?
 もの狂おしいほどに焦燥感が溢れてくる。けれど、オレの身体は、比喩でなく、指一本すらも動かなかった。
 千年とすら思えるほど長い時間。
 けど、実際にはそうたいした時間じゃなかっただろう。
 リナとゼロスは、再び闇の中から姿を現した。
 ゼロスは以前のまま。リナは……肩で息をし、座り込んでしまっている。
 そんな姿勢のまま、リナは、ゼロスを睨みつけた。
「言う通りにしたわよ。さぁ……ガウリィを自由にしなさいよ!」
「ふむ」
 そんなリナの様子を見ながら少し首をかしげると、ゼロスはふっと姿をオレの前に移動した。
「判りました。自由にすればいいんですね?」
 
 ――そして――

 ――ゼロスの黒い服に覆われた手が――

 ――オレを――


 ドグォォォォォォォォンッッッッッッ。

――倒れる――


(うぉぉぉぉぉぉっっっ)

――激痛――

――そして――


「ガウリィィィィィッッッッ」

――……リナの……――

――…………声…………――



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4616Lovers' Suicide〜sideガウリィ(2)T−HOPE E-mail URL9/16-21:07
記事番号4614へのコメント

   Lovers’Suicide〜sideガウリィ(2)


「あ、気がつかれましたかぁ?」
 ……こんな台詞、前にも聞かなかったか?
 そう思いながら、オレは、ゆっくりと目を開けて……ギョッと息を飲んだ。
『何だよ……これは……』
 今度は、目はおとなしく開く。身体だって動く。
 けど……何だって、透けて……。
「あのぉ……あれこれ――一応――お考えなんでしょうけど、とりあえず、まず、足元を見て下さいませんか?」
 足元……?
『…………!?』
 オレが、バラバラになって、転がってる!?
 凍りづけみたいな状態になってるから、スプラッタではないんだが……って、そういう問題じゃないか。
『ど、どういうことだ、これは!?』
「いやぁ、つまり、今、ガウリィさんは、幽霊のような状況だ、ということですね」
『ゼロス!?』
 焦りまくるオレの前に、僧侶の服をまとった男が、影のように現れた。
「すみませんね。もうちょっと粉々にしておいた方が、見た感じ、穏やかだったんでしょうか……」
 いや、どっちにしろ、死体には変わりないと思うんだが……。
『に、しても、何だってオレはこんな状態なんだ?』
 どうしていいか判らないので、とりあえず、目の前の男に尋ねてみた。
 特に思い残すことなんて――一つだけ、あったか。
『それから、リナはいったいどうなったんだ!?』
 黒い髪の魔族の神官は、ニッコリ笑顔でオレを見据えた。
「ガウリィさんがこういう状況になってるのは、僕があなたを吹き飛ばした時、精神世界面からちょっと細工しておい
たからですよ。
 ま、僕の気が変わるまで、あなたが混沌に還ることはないと思って下さい」
『何だって、そんな真似……』
「…………。……ちょっとした、お茶目ですよ」
 笑みを、死んだもののように張り付けながら、ゼロスは言い切った。
「で、リナさんですが……面倒なので、放り出しちゃいました」
『ちょ、ちょっと待ってくれよ……っ』
 あっさり言われて、俺は勿論、焦った。
『放り出したって……何処へだ?』
「さぁ?」
 ……さぁって……。
「ま、そぉんな遠くではないと思いますけど……どうでしょうね。
 何にせよ、今のリナさんはそうそう危険なこともないでしょうし、構わないんじゃないですか?」
 ――どういうことだ?
「いやですねぇ。ガウリィさんも見てたじゃないですか。リナさんが僕と不死の契約を結ぶの」
『あ……あぁ』
「不死の契約を結んだ以上、契約の石を壊すか、僕を殺すか……僕以上の力でもなければ、リナさんを傷つけるこ
となんてできませんからね」
 ……ってことは、今のリナは、まさしく無敵に近いってことか?
 けど……。
『なぁ。お前、そこまでリナが大事だったのか?』
「……どういうことですか?」
 ゼロスが、相変わらずニコニコしたまま聞き返した。
『だって……お前、リナのこと好きだったみたいじゃないか。
 ずいぶん物好きな奴だなぁ……って思ってたんだけどさ』
「…………。……僕が、リナさんを……ねぇ……」
『そうだろ』
 ゼロスは、軽く肩をすくめたようだった。
「あなたの野生の勘とやらは、本当に、馬鹿になりませんねぇ。
 けど……僕は別に、リナさんが大事だから、契約を結んだわけじゃありませんよ」
『違う……のか?』
 問い返した瞬間、ゼロスの夜色の瞳が開かれた。背後の、何ともいえない暗い気配が強くなる。
「愛しているから大事にする……。
 そんな、吐き気をもよおしかねないことをするのは、あなたがた生きようとする者達でしょう?
 僕は、残念ながら、滅びを渇望する者。魔族ですからねぇ……」
『…………』
「大事にしたかったのは、あなたでしょう、ガウリィさん?
 何といっても、『保護者』ですからねぇ……あぁ、だった、ですか?」
『う…………』
 守り切れなかった……。そんな慙愧に似た念が、既にない身体を引き裂くような気がした。
 ――だっけどなぁ……。
『……ほんと、ゼロス、リナがいない時は容赦ないよなぁ』
「…………」
 この魔族がリナのことを好きなのは、見ていて判ってた。
 知識だの記憶だのとかいうもんがない代わりに、オレの勘はなかなか捨てたもんじゃないと思う。
 だから、判っちまった。
 ――リナの、気持ちも……。
『これから、どうするつもりなんだ?』
 ゼロスは、じんわりと唇を歪めた。
「これからですか? ……秘密です」
 得意の決めポーズ……って。
『おいっ』
「と、言いたい所ですが……特別に教えて差し上げましょう。
 リナさんを待ちますよ。必ずいらっしゃるでしょうからね。
 その時こそ、あなたにも、魔族の愛というものがお判りになるでしょうね……」
『ふぅ……ん』
 ――こいつは、本当に、何を望んでいるんだろう?
 オレは、透けた身体を揺らめかせながら、そんなことを考えていた。


「神滅斬!!」
 リナの声が響き渡るのが、幾らか離れたこの場所でも聞くことができた。
 もっとも……オレの声は、届かない。
「……ここら辺が潮時……ですか。確かに……望み過ぎるのは、罪……です……ね……」
 苦しげなゼロスの声。
 ……何が起こっているんだ!
「馬鹿なっ。自分から……っ?」
 リナに付いてきたらしいゼルガディスが、驚きのあまり喉につまったような声で叫ぶのが聞こえた。
「ゼロス!?」
 リナの悲痛な声。
 今この時に走っていける足を持たないオレは、激しく自分自身を罵っていた。
 ――だから、一体何が起こってるというんだ!
 その時だった。
「……滅びることができたのだな」
 何処からともなく響いてきたその声を聞いた途端、オレの背筋が、ぞわっとなった。誰もいない空間を、意味もなく
見回す。
 聞き苦しい声じゃない。むしろ、凄く美しい女性の声だった……。なのに、何故、こんなにも寒気を感じる?
『……誰だ?』
 声は、暫く戸惑うように黙っていたが、やがて笑みを含んだ調子で答えた。
「今滅びゆくあの者の、母と呼べるかもしれぬ者」
『滅びゆく……? ってのは、あの、ゼロスか!?』
「そう。……魔族が望むは滅び。
 あの者は、初めて惹かれた者の手で己が幕を下ろさせた。そして、抱きあって共に混沌へと還っていった。
 非常に幸福な存在だな」
 ――他人の幸福に、けちをつける筋合いじゃないが、はっきりいって、凄い迷惑な話だと思うのはオレだけか?
 だいたい……。
『こんな状態のまんまのオレをほっぽって……』
 ぶつぶつ言っていると、声だけの女性は何処か面白がっているような笑い声を響かせた。
「確かに……お前にとっては迷惑な話だな。
 仕方ない。子供の不始末は親がするのが人間界の道理とか。少しは手を貸してやろう」
 言葉と共に、何処からともなく白い腕が伸びてきて……。
 オレは、また、意識を失った――。


▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽
 いーけど、何でガウリィこんなのほほんしてるかなぁ・・・(汗)
 自分を殺した相手とこんな風に会話する人間が何処にいる!?
 ・・・しくしくしく・・・何で私が書くとこーなるのでせう(^^;;;

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4617Lovers' Suicide〜sideガウリィ(終)T−HOPE E-mail URL9/16-21:14
記事番号4616へのコメント
 Lovers’Suicide〜sideガウリィ(終)


 次に気がつくと、いきなり、ゼルガディスとアメリアがオレの顔をのぞきこんでいた。
『……よぉ。久しぶりだな』
「久しぶりじゃありませんよっっっ」
 いきなりアメリアが絶叫した。
「ガウリィさん……。こんな、変わり果てた姿になってしまって……」
 そんなに無残だろうか。本人、あまり、自覚がなかったりするんだけどなぁ。
『ここは……何処だ? リナは……?』
 尋ねると、ゼルとアメリアは、思わずといったように顔を見合わせた。
 ……おい?
 ゼルが、相変わらずクールさを保ったような顔でこちらを見てきた。
「ここは、リナの故郷であるゼフィーリアだ。俺達は、リナに、ここへの伝言を頼まれたんでな」
『……で、何でオレまでここにいるんだ?』
「わからん」
 ………………。
「びっくりしちゃいましたよ。
 リナさんのお姉さんと会ってたら、いきなり、悪かったねとかいう女の人の声と一緒にガウリィさんの残骸が何処か
らともなく降ってわいたんですから!」
「アメリア……残骸は、ないんじゃないか?」
「そーですか?」
 えーと、よく判らないが、ともかく、ここがゼフィーリアだということは判った……と、思う。
『……で、リナは……死んだのか?』
 聞くと、二人はまた顔を見合わせた。
『どうなんだよ?』
「……多分、な」
 ゼルが、苦い顔で答えた。
『……多分?』
「…………。……最期、リナさん、自分のいたあの場所、竜破斬でふっとばしちゃったんですよ。
 ……何も、残ってませんでした」
『………………』
「遺品は、その前に受け取ってたからな。それを届けにきたんだ」
 ――リナらしいというべきか、それとも、リナらしくないというべきか。
 ともかく、オレの意識がなくなった後のことは、少し判った。
『ゼロスは死んだよな』
 言うと、ゼルは、思いっきり顔をしかめた。
 まぁ、ゼルガディスはもともとゼロスを嫌っていたし……と思ったんだが、少し、違ったらしい。
「あぁ。……自分から、リナの完全版神滅斬にぶつかってったように見えた。
 ったく……何を考えてやがったんだか!」
 自分から……死を、滅びを、望んだ……。
 ふと、オレは、これで良かったかもしれないというような想いに捕らわれた。
 あの二人は、こんな形でしか成就できない気持ちを抱えてたのかもしれない……と。
 ――ゼロスは、リナが好きだった。
 ――そして、リナも……。
 かなり、悔しかったけど、な。
『……そんなことより、だなぁ』
「ガウリィさん! リナさんのことを、そんなことだなんてっ」
 アメリアが、握り拳を突き上げて叫んだ。んで、オレは揺らめいた。
『いや、でもなぁ……リナのことも重要だけど……オレ、これから一体どうなるんだ?』
「……それもそうだな」
「……どうしましょうか?」
 ゼルとアメリアが首をひねる。結局このまんまってことかよ、おい。
「何とかしてあげましょうか?」
 いきなり見知らぬ女性の声がかかった。
 振り向くと、何処かで見たような顔立ちの女性が、ウェイトレスの制服姿でそこに立っていた。
「あ、リナさんのお姉さん」
 オレは、ギョッとしてまじまじと相手を見返した。
 これが……“あの”リナすら恐れさせた郷里の姉さんか?
 その女性は、リナより多少おとなしめな容貌に、ニッコリと優しそうな笑みを浮かべていた。
『何とかって……?』
「貴方、このまんまほっぽっといても、五十年後くらいには無事昇天できるようになってるわ。
 でも、それじゃ困るというなら、この呪縛を解いてあげるわよ?」
 ――普通、聞くまでもなく、五十年もこのまんまほっぽっとかれたら困るような気がするんだがなぁ……。
 とか、オレがぼぉっと考えてると、アメリアがびっくりしたような声をあげた。
「ちょ、ちょっと待って下さい。
 じゃぁ、ガウリィさんのこの状態って、偶然ではなく、仕組まれたもの……ということですか?」
『あ? そーいやぁ、ゼロスが、何かそんなこと言ってたような気がするなぁ……ははは』
「笑ってる場合か。そういうことは、早く思い出せ……ったく」
 呆れたようにぼやくと、ゼルガディスはその鋭い目をリナの姉さんに向けた。
「あんた、本当にガウリィのこの状態を何とかできるのか?」
 その女性は、ゆっくりと頷いた。
「えぇ。……それにしても、本当に、面白いわね、貴方達」
 静かな瞳が、オレ達三人をなぞるように巡った。
「特にガウリィさん。
 どう考えても巻き添えを食って死ぬ羽目に陥ったというのに、どうしてそんなに平然としていられるのかしら?
 意識がある以上、何としても生にしがみつきたいとか、思わないの?」
 オレは、軽く頭をかいた。
『と、言われてもなぁ……。一応、オレも剣で身を立ててきたし、じたばたするのもみっともないからな。
 それに、こう不自由な身体で生きてたって、気分良くないじゃないか』
 リナも、守り切れなかったし……。
 リナの姉さんは、少し呆れたように軽く肩をすくめた。
「まったく……あの子も、運がいいんだか悪いんだか。こんな人に巡り合っているなんて、ね……」
 そうして、ゆっくりと両の手を伸ばしてきた。
「ごめんなさい……ね。あの子達に代わって謝るわ」
 

   ――ゆっくりと……――

   ――……ゆっくりと――

   ――闇が降りてきた――

 

 リナ達は今、幸せなんだろうか?
 ふと、そんな疑問が頭をよぎった。
 

   ――全て我の懐のうちに――
   ――幸も不幸も失われし中に――

 金色の闇が微笑みながら絡みついた。
 

      ――そして…………――


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
 
 ガウリィside終了!
 だから・・・何でこんな呑気かな・・・。
 一応、今まで剣でもって人の命を奪ったりしてきたので、いざ自分の番になってもジタバタしない・・・とゆーのが彼
の言い分のようです。・・・多分。
 次はゼロスsideですねぇ・・・いっちばんわけわからなくなりそーです(^^;;;)

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4643Lovers' Suicide〜sideゼロス(1)T-HOPE E-mail URL9/17-12:14
記事番号4538へのコメント
ゼロスsideです。
ちょっと実験的な書き方したんで、読みにくいかもしれませんねぇ・・・ごめんなさい。


  Lovers´Suicide〜sideゼロス(1)



 ――あなたが欲しい。
 ――あなたの心が。


 彼は半ば闇に身を浸したまま、目の前の水晶柱を見ていた。
 その場に残された人間の妄執が、力を、魔を求める心が、たまに彼にまとわりつこうとするのが判る。
(本当に……人間なんて、愚かなものですね)
 ――なのに……。
 彼は目を伏せ、その内に何かを追うような様子を見せた。
 が、何か感じとったように、すぐ目を開ける。
 そして、にっこり笑うと目の前の水晶柱に――その中に閉じ込められた、金髪の男に、話しかけた。
「あ、気がつかれましたかぁ?」
 男は全く動かない。けれど、彼には何かが感じとれていた。満足げに一つ頷く。
「あぁ、そうでしたね。それじゃ……」
 一瞬だけ、唇に浮かんだ笑みに、非常に楽しそうな……それでいて残酷なものが混ざった。
 ……と。
「ぐ……ぐぅっ」
 水晶柱の中の男が、くぐもった悲鳴をもらした。
 それを聞きながら、彼はくすくす笑った。
「どうしました? もう、目は開いている筈ですが?
 そうそう、ついでに、僕も退屈なものですから、口もきけるようにしておきましたよ」
 言いながら、目の前の男の反応を面白そうに見ている。
 開かれた柱の中の男の青い瞳の中に浮かんだ疑問を見て取り、軽く肩をすくめた。
「……ここは、今はもう滅んでしまった、赤眼の魔王様を信仰する一派の神殿跡ですよ。
と、説明しても、あなたが何処まで覚えていて下さるかは謎ですけどねぇ……」
 言いながら、ゆっくりと彼は一歩水晶柱から退き、中の男の視界に入る場所に立った。
「ゼロス? ゼロスじゃないか!」
 それを見た金髪の男が、急に叫ぶ。
「いやぁ、久しぶりだなぁ」
「………………」
 ゼロスと呼ばれた彼は、苦笑した。
(まったく……ガウリィさんは……)
 変わらない。だから、彼女もこの男とともにいるのかもしれない……。
 ふと、彼は理不尽な怒りを内に覚えた。けれど、現しはしない。
「……お久しぶりですね、ガウリィさん」
「お前、何だってここにいるんだ?」
 それなのに……男の声は、言葉は、どうしても神経を逆撫でする。
「そりゃぁ……」
 彼は、細めていた瞳を僅かに開いた。その途端、抑えていたものも僅かにこぼれる。
 彼の背負う――魔というもの。
「あなたをここにご招待したのが、僕だから、ですよ」
 ガウリィと呼ばれた男の表情に、ほんの少し硬いものが浮かんだ。それと同時に、最初のものとは異なる、微
量の疑問も。
「……招待……って……。……リナはどうした?」
「…………。リナさん……?」
 男の言葉を鸚鵡返しにし、彼は唇を歪めた。
 持ち得ない筈の心臓を毎夜痛めつける影。何処までも柔らかく絡めとる罠。――その名を耳にして。
 その意思を感じとり、背後で、彼に従う闇が、喜悦と苦痛を糧に蠢いた。
 が――即座に彼に押さえつけられる。
 “今”は、その時ではない……と。
 と、同時に、彼の顔が、常に纏う笑顔の仮面にすり変わった。
「リナさんでしたら、間もなくこちらにやっていらっしゃると思いますよ。
いやぁ、確実にお招きしようと、先にガウリィさんをお連れしちゃいましたからね。はっはっは」
 男の言葉にのらりくらりと演技で返事を返しながら、彼は裏で苦く笑んだ。
 本当のことを言うなら、これ以上彼女の独占を許さないように、だ。
 誰にも手が届かない、誰のものにもならない――そんな彼女ならば、まだ、彼の胸に巣くう幻の痛みの進行を
とどめることができる。
 そのための、そのためだけの、計画。
「重破斬だと!? ……まさかっっ」
 そんなことなど知り得ようもない柱の中の男が、怒りと恐怖を混ぜたような声で叫んだ。
 が、彼は笑顔を保ち続ける。
「おや。ガウリィさんでもお気がつきになられましたか?
 まぁ……そうなってくれれば、最もベストなんでしょうけどね。
冥王様の例からいって、多くを望み過ぎるのも問題ありでしょうし」
 この世全てを道連れに。それが本来の魔族の目的。
(ですが――僕は、もう……)
 闇に染め上げられている筈の脳裏に浮かぶものは二つ。
 一つは甘美なる闇。彼の創り主たる美しき方。
 もう一つは……甘やかでありながら何処までも彼を苦しめる、眩い光。短い生を燃焼させる、相入れない存在。
それでいて、深く彼に存在を焼きつけた者。
「お前、いったい、リナをどうするつもりだ!?」
 金髪の男の言葉に、彼はゆらりと首をかしげた。肩の上で切りそろえられた漆黒の髪が、さらりと流れる。
(……終わりに、したいのですよ)
 言葉にはしない。
 彼は小さく笑った。
「さぁて。
ま、何にせよ、あなたに口を挟まれると邪魔になるかもしれませんのでね。
視界の方はふさがないでおいてあげますので、暇つぶしに、どうぞじっくりと御覧下さい?」
 彼女が、あなたの、あなた達の手からもぎ取られる瞬間を――。
 影の中、彼はそう、一人、呟いた……。


ゼロス君、思いっきりわがまま路線走ってます(笑)
ガウリィがお気の毒・・・・・・・。

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4644Lovers' Suicide〜sideゼロス(2)T-HOPE E-mail URL9/17-12:35
記事番号4643へのコメント
  Lovers'Suicide〜sideゼロス〜(2)


「思ったより、遅かったですね。リナさん?」
「ゼロス!? ……ガウリィ……」
 彼女の唇からこぼれる、二つの名。喜びと苦しみを同時に与えられ、彼は気づかれない程度に顔をしかめた。
「……あんたが冥王の真似なんかするとは思わなかったわ」
 敵意……怒り……僅かな恐怖……。
 彼女からこぼれる負の感情はどれも極上で、彼を酔わせた。けれど……足りない。まだ、全然、足りない。
 一度その味を知ればなおもと望みたくなる……まるで麻薬のように。
 だから。
(……あなたが、いけないのですよ?)
 自分にそれを教えてしまったから。
「……リナさんは、僕を相手にするつもりなんですか?」
 彼女は一瞬言葉につまったようだった。
「……正直言って、あんまし相手はしたくないわね」
 少しだけ、恐怖の量が増す。それを彼は取り込んだ。
「成程」
「……ま、だからって、ガウリィをこのまんまにしといたら寝覚め悪すぎるからね」
 ――彼の胸の痛みが、進んだ。
(僕だけを見て、僕のことだけを考えて下さい――)
 重い執着。決して叶えられないだろう、願い。
 彼女には愛するものが多くあり過ぎる。
 だから。
「つまり……交渉に妥協の余地が見出だせればよし。さもなくば……と、いうことですか?」
 普通に、なおかつ曖昧に言葉を返しながらも、彼の内の闇は暴れていた。
 そんな彼の様子に苛立ったように、彼女は強い声で言った。
「どーゆー条件なのよ? この際すっぱり言っちゃったらどう?
 あたしに選択の余地なんて、そんなないんだから!」
「そう……ですね」
 彼は目を伏せ、唇をつり上げた。
(……ガウリィさんを見捨てられない、あなたですからね……)
「僕がリナさんにお願いしたいのは、唯一つ。
……僕とかりそめの不死の契約を結んでいただきたい、ということです」
 彼女が息をのむのが判った。
 不死の契約。彼女をこの自分に縛り付けるもの。
 “人間として”生きる彼女の道を閉ざすもの。
(さぁ……あなたは、どう出ます?)
 彼は彼女を見つめた。
『ゴールのない人生なんて興味ないのよ』……と。普段の彼女に言っても、そう答えが返るだけだろう。けれど、
今は?
 顔を強張らせながら、彼女はこちらを見ていた。
「……何のために?」
 ――教えてしまっては、つまらないでしょう?
「それは……」
「……秘密?」
「そうですね」
 彼女は溜息をついた。
「…………。……判ったわ。結んであげようじゃないの。
……不死の、契約を」
 彼女は彼に真っ直ぐ視線を合わせ、背筋を伸ばし、そう言った。
 ――あたしを侮るな。
 どこまでも澄んだ紅色の瞳が、彼にそう無言の台詞を叩きつけた。
 彼はにっこりと笑った。
「それは良かった」
 言葉とほぼ同時に彼は彼女の前へ移動する。
 彼女は一歩足を引いたが、すぐ、目をあげ彼を睨みつけた。
 こんなことに怯える自分が許せないと、伝わってくる感情が教えてくれる。
(本当に、あなたらしいですよね)
 そう思いながら、周囲を自分の力で封じた。
「……ガウリィさんに、この場面を見せたくないでしょう?」
 そう言うと、柱の中の男を案じ、彼女の意識が僅かにブレる。
 それが悔しくて……彼は一気に指を彼女の中に潜りこませた。脈打つ心臓をその手の内に収める。それは、
彼女の命そのもの。
「ぐぅ……っっっ」
 彼女が呻いた。
 その苦痛すら、甘美だが、彼には足りない。
「すみません。すぐ済みますから」
 言うと、彼は彼女の心臓の中に、彼だけの楔を打ちこみ……代わって、人としての命を奪い去った。それを、も
う片方の手に捧げ持つ、紅色の石の中へと流しこむ。
「これが、契約の石です。
……リナさんの瞳と同じ色だし、綺麗でしょう?」
(これであなたは、もう逃げられませんよ……)
「そういう……問題、じゃ……」
 痛みに喘ぎながらも、彼女は反論してきた。
「気にいっていただけなかったとは、残念ですねぇ」
 言うなり、手を一気に引き抜いた。途端、彼女の膝が崩れる。
(あなたはこんなにも、ある意味弱いのに……)
 なのに、時に彼すら凌駕する強さを見せる。
 彼女は、膝をついたまま、彼を見上げた。
「言う通りにしたわよ。さぁ……ガウリィを自由にしなさいよ!」
「ふむ」
(成程……まだ、駄目ですか)
 彼女の命を縛りつけても、彼女の心は縛れない。
 だから。
 ――これは、あなたのせいです。
 水晶柱の前に移動し、彼は彼女を振り返って笑った。
「判りました。自由にすれば、いいんですね?」
 言うなり、トン。と……無造作に、柱を、押した。
(“自由”に、してあげますよ。この……世界から、ね)
 微笑みながら囁く言葉は何処にも届かない。
 彼女が目を見開きながらそれを見ていた。
 金髪の男を閉じこめた水晶柱は……倒れ……。
 ……――砕けた…………。
「ガウリィィィィィィィッッッッッ!?」
 彼女の叫び声が、澱んだ場所の空気を切り裂いて、高く…あがった。


 しばしの時の後。彼女は、ふらっと立ち上がった。
 まるで夢を見ているかのように、足元が頼りない。
 水晶柱の破片の側まで、ふらふらと歩み寄ると、すとんと座りこんだ。
 細い肩が、小さく震えていた。
 その震えが、どんどん大きくなる。
 そして――。
「……なんで。なんで、なのぉぉぉぉ!?」
 飛び跳ねるように立ち上がり、彼につかみかかった。
「なんで、なんで、なんでガウリィを……っ! なんでよぉぉぉっ」
 小さな拳が、彼の胸に叩きつけられる。何度も……何度も。
「なんでぇぇぇぇっっっ」
 愛らしい顔が、涙でぐしゃぐしゃになっていた。それを、子供のように掌で無理やり拭っている。それでも、涙が
あふれてくるのだろう。なおもこぼれ落ちる涙。
 彼は、そんな彼女をなだめるでもなく、突き放すでもなく、ただ眺めていた。
 彼女の真なる絶望、怒り、憎悪――。
 おそらく、取りこめばいかほど美味だろうか?
 けれど、彼はそうはしなかった。
 今の彼女の脳裏に浮かんでいるのは、おそらく、彼女から失われたあの男のことのみ。
 そんな彼女の負の感情など、いらなかった。
「……今のあなたでは、意味がないですね……」
 おそらく、今の彼女を挑発すれば、全てを混沌に溶かしこむであろう“あの呪文”を唱えることもあり得るかもし
れない。
 ……それでも。
 彼は、なおも拳を振り回していた彼女の両腕を、強くつかんだ。
 彼女が、涙を流しながら、彼を強く強く睨んだ。
「……あんた……なんて……っ」
 彼は、楽しそうににっこり笑った。
(そう。僕が欲しいのは、僕だけを強く憎んで、憎しみだけで心を染め上げたあなたなんですよ……)
 その瞬間、彼女の心は自分だけのもの。
 だから。
「……僕が憎いですか?」
 ぎりぎりと、視線の密度が高くなった。
 純然たる憎しみ。それを引き寄せ、彼はその中で酔った。
「…………。……聞くまでもないでしょうに」
「なら……」
 彼は、彼女を一気に後ろに突き飛ばした。
「もっともっと憎んで強くなられることですね……」
(そうして――僕のことだけ、考えて下さい…………)
 楽しげにそう告げて、彼は彼女を空間の向こうに吹き飛ばした――。

駄々っ子ゼロス君(爆)
私が書くと、どーしてこーなるんでしょう。
大人なかっこいいゼロス君書きたいです(しくしく)

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4667Lovers' Suicide〜sideゼロス(3)T−HOPE E-mail URL9/18-08:39
記事番号4644へのコメント
  Lovers'Suicide〜sideゼロス〜(3)


「あ、気がつかれましたかぁ?」
 彼は、目の前にふわふわ浮かぶ半透明の存在に向かって笑いかけた。
 己の存在に戸惑っているらしい、金髪のそれ……。
 彼は、ある意味、ずいぶん楽しそうだった。
「ガウリィさんがこういう状況になってるのは、僕があなたを吹き飛ばした時、精神世界面からちょっと細工しておい
たからですよ。
 ま、僕の気が変わるまで、あなたが混沌に還ることはないと思って下さい」
 半透明の男は、きょとんと首をかしげた。
『何だって、そんな真似……』
 彼は、笑みを張り付けたまま、答えた。
「…………。
 ……ちょっとした、お茶目ですよ」
(あなたが先に混沌に還り、彼女を迎え入れるような真似を、どうして僕が許します?)
 ――狂うような独占欲。
 けれど、自覚は何の解決ももたらさない。
 彼女の存在が、全ての鍵を握るだろう。
「で、リナさんですが……面倒なので、放り出しちゃいました」
 本当のことを言えば、目の前の男のことで心を痛めるような彼女は見たくなかったから、なのだが。
『ちょ、ちょっと待ってくれよ……っ。放り出したって……何処へだ?』
 半透明の男が焦ったように言う。
 が、残念ながら彼も、その問いに答えることはできなかった。
 探せばあっさり見つけられるが――今は、その気は、ない。
 彼女は必ずここへやって来るだろうし、それまでに彼女の身に何か起こることは……かりそめとはいえ不死の契
約を結んでいる以上、そうそうあり得ない。
 そう言ってやると、目の前の男は何やら考えているようだったが、やがて、半ば感心したような声で問いを放った。
『なぁ。お前、そこまでリナが大事だったのか?』
「……どういうことですか?」
『だって……お前、リナのこと好きだったみたいじゃないか。
 ずいぶん物好きな奴だなぁ……って思ってたんだけどさ』
(……あなたに言われたくないかもしれませんね)
 「…………。……僕が、リナさんを……ねぇ……」
『そうだろ』
 とぼけてみたが、男はあっさりそう言った。
 彼は軽く肩をすくめた。
「あなたの野生の勘とやらは、本当に、馬鹿になりませんねぇ。
 けど……僕は別に、リナさんが大事だから、契約を結んだわけじゃありませんよ」
『違う……のか?』
 問い返され、今までの彼の苛立ちが膨れ上がった。
 彼の背後、抑えこまれたものが、また立ち上がり、勢力を広げようとする。それをもう一度抑える気分には、残念
ながら今の彼はなれなかった。
「愛しているから大事にする……。
 そんな、吐き気をもよおしかねないことをするのは、あなたがた生きようとする者逹でしょう?
 僕は、残念ながら、滅びを渇望する者。魔族ですからねぇ……」
(……僕は……あなたとは、違う)
「大事にしたかったのは、あなたでしょう、ガウリィさん?
 何といっても、『保護者』ですからねぇ……あぁ、だった、ですか?」
(彼女の側に何の迷いもなくいられる、あなたとは……違う存在、なのですよ?)
 彼の容赦ない言葉に、男は顔をしかめた。
 が。
『……ほんと、ゼロス、リナがいない時は容赦ないよなぁ』
「…………」
 内にある嫉妬を見抜かれて、さすがに彼も絶句した。
 が、見抜いた男の方は、別に気にもしなかったようだ。
『これから、どうするつもりなんだ?』
 彼は、じんわりと唇を歪めた。
「これからですか? ……秘密です」
 いつものように言うと、さすがに男も声を荒げた。
『おいっ』
「と、言いたいところですが……特別に教えて差し上げましょう。
 リナさんを待ちますよ。必ずいらっしゃるでしょうからね」
(……あなたの身体がここにある以上は)
 そして――。
「その時こそ、あなたにも、魔族の愛というものがお判りになるでしょうね……」
 愛し、守り、生きる者逹とは対照的な――自分の、想い。
(あなたのように愛したかったとは思いませんけれど……もしも、僕が人間だったならと思ったことは、ありますよ。
ガウリィさん……?)
 小さく笑いながら、彼は、そんなことを考えていた……。

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4671いいです〜ひなた E-mail 9/18-18:34
記事番号4667へのコメント
こんにちわーっっ!!ひなたですっっ!!よみましたよう☆
ガウリイがのんきでステキ☆
ゼロスが魔族全開でナイス☆
って感じですね、一言(?)で言うと♪


>「愛しているから大事にする……。
> そんな、吐き気をもよおしかねないことをするのは、あなたがた生きようとする者逹でしょう?
> 僕は、残念ながら、滅びを渇望する者。魔族ですからねぇ……」
このセリフめちゃんこすきですってば☆
魔族〜(どろどろ)つてかんじです☆
わかんねーっっ!!どーん。

・・・はいいとして、
ガウリイ、優しすぎていいです〜(はあと)
またガウリイのこと好きになっちゃいました♪
でも、本気でいいですって。

ゼロスはゼロスで魔族だし・・・。
あたしも魔族なゼロスかきたいですよう。
うらやましぃ・・・。

んじゃっっ!!もうすぐ完結ですか?
がんばってくださいね♪

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4679あぁ、良かった・・・T−HOPE E-mail URL9/18-22:15
記事番号4671へのコメント
>こんにちわーっっ!!ひなたですっっ!!よみましたよう☆
>ガウリイがのんきでステキ☆
>ゼロスが魔族全開でナイス☆
>って感じですね、一言(?)で言うと♪

 良かった・・・本気で反応怖かったんですよ(笑)
 冗談抜きでガウリィぼけてたし、ゼロスはワガママ路線突っ走ってたし・・・・・・。
 でも、私が書くと、どーしてもこうなるんですよねぇ。何でだろ。

>>「愛しているから大事にする……。
>> そんな、吐き気をもよおしかねないことをするのは、あなたがた生きようとする者逹でしょう?
>> 僕は、残念ながら、滅びを渇望する者。魔族ですからねぇ……」
>このセリフめちゃんこすきですってば☆
>魔族〜(どろどろ)つてかんじです☆
>わかんねーっっ!!どーん。

 毎回、この魔族的・・・ってのには悩まされてます。
 わかるよーな、わからんよーな・・・って感じで。でも書かなきゃゼロス君じゃないし〜。

>・・・はいいとして、
>ガウリイ、優しすぎていいです〜(はあと)
>またガウリイのこと好きになっちゃいました♪
>でも、本気でいいですって。

 いい・・・ですか?(かなり懐疑的^^;)

>ゼロスはゼロスで魔族だし・・・。
>あたしも魔族なゼロスかきたいですよう。
>うらやましぃ・・・。

 魔族なゼロスとゆーより、駄々っ子なゼロス君書いてる気がすっごくしてます(爆)
 リナをさりげなく守るよーなゼロス君、一度書いてみたいんですけど・・・ご教授いただけません?(笑)

>んじゃっっ!!もうすぐ完結ですか?
>がんばってくださいね♪

 あとちょっとです。急いでUPしますんで、読んで下さいね〜。

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4680Lovers' Suicide〜sideゼロス(4)T−HOPE E-mail URL9/18-22:23
記事番号4667へのコメント
  Lovers'Suicide〜sideゼロス〜(4)


「ようこそ、いらっしゃいました」
 宙に浮いたまま、彼は目の前に立つ三人の人間に一礼した。
(しかし……まさか、ゼルガディスさんとアメリアさんまでいらっしゃるとは、ね)
 彼女の性格からして、好んで巻き込む筈もない。おそらく、二人が同行を申し出たのだろう。
 本命の彼女は、こちらに真っ直ぐ憎悪の視線を向けている。
「どうしました、リナさん?」
 楽しそうに、彼は問うた。
 と、彼女に同行してきた黒髪の少女がずいっと前に出、
「ゼロスさん!
 かつては共に旅をし戦った仲間ではありましたけれど、闇に身を堕とし、心を染め替え、ガウリィさんリナさんに仇
なすまでに至ってしまった以上、あなたは悪!
 故に、わたし、アメリア=ウィル=テスラ=セイルーンが、今ここに正義の鉄槌を下します!!
 覚悟はいいですか!?」
 彼は不快げに眉をひそめた。
(本当に……あなたは、一人になるということがない人ですよね)
 知ってはいたが、目のあたりにしたくはなかった。
「やれやれ。憎悪のみに染まったリナさんを見るのも楽しいかと思ったんですが……あなた方が乱入なさったんで、
失敗しちゃいましたかね」
 本当ならば、彼女とのみ対峙する気だったのだが……まぁ、世の中えてしてこんなものかもしれない。
「残念ね。あんたの思い通りにことが運ばなくって!」
 彼女はきつい目でそう言った。
 が、彼は殆ど態度を変えなかった。変える必要がない。
 目的が――彼女が予想しているだろうものとは、違うのだから。
「かまいませんよ。まだ望みを叶える方法は幾つもありますから、ねっ」
 言葉と同時に、彼の持つ錫杖に埋め込まれた宝石が光り、凄まじい力が彼女の同行者二人を襲った……。
「ぐっ……」
「あう……っ」
 殺すまではしていない。
 彼には、ここでまた、“誰かが失われた悲しみ”……などというもので心を満たした彼女を生み出す気は、なかった。
 ただ……邪魔は、されたくなかった。
 そして、彼女は彼の計画通り、真っ直ぐ彼に向かってきた。
「烈閃槍!」
 それを皮切りに、彼女の呪文が彼に向かって炸裂する。……が、人の呪文がそうそう彼に当たる筈がない。
 空間を渡り、避け、彼女を吹き飛ばす。
(今のあなたはこのくらいじゃどうもしませんよね?)
 それでも、彼女を煽る効果くらいはある。
 狙いは当たったようで、彼女の表情に、苛立ちが濃く現れた。
「動くんじゃない! 獣王牙操弾!!」
 彼の上司の力を借りた呪文が放たれた。
(……動くな、ね……)
 迫る光の帯に錫杖を突き出し、意思を添わせてそれを切り裂いた。
「はい、止まりましたよ(にっこり)」
 彼女はその態度に思わず絶句したようだった。
 ――あなたと遊んでいるのは、本当に、面白いですよね。
 ……が。
「「崩霊裂!」」
 背後から突然二重の呪文攻撃がくる。彼は、小さく舌打ちすると、素早く空間を渡った。
「……邪魔ですねぇ……」
 ずばぁぁぁんっっっ!
 本気で呟くと、前よりも強い力で、その呪文を唱えた彼女の同行者を吹き飛ばした。
(僕は、リナさんと対峙するためだけに、この舞台を作り上げたのですよ?)
 それを邪魔する存在に容赦する必要性など、彼には塵ほども思いつかなかった。
「アメリア! ゼル! ……ゼロス、あんた……っ」
 彼女が戦いの最中にもかかわらず振り向き、吹き飛ばされた二人を呼び、彼を睨みつけてきた。
(でも、いけないのは僕ですか?)
「動くなといったのはリナさんでしょう? リナさんに対しては、動いてませんよ」
(……僕と戦っているのは、あなた、でしょう……?)
 ――胸がなおも焼けつく。
 彼女を縛りつける鎖があるのならば、彼は、どんなことをしても手に入れたことだろう。
「……人の心配をする余裕がまだあるんですか、あなたには。
 もっと憎んでいただかないと……僕を。
 僕だけを……」
(僕だけを、その心に映して……下さい……)
 彼女が、ふと、不思議そうな表情になった。紅色の瞳が揺れた。
「……ゼロス……?」
(あなたの心が欲しい……憎しみで縛りつけても……)
「それとも……あの方達に消えていただかないと、できませんか?」
 憎み方が足りないように感じられ、彼はそう言った。
 犠牲が必要なら幾らでもつぎこむつもりがある。彼女にとって大切だった男だけで足りないのなら、さらにこの二人。
……まだ足りぬとあらば、国の一つや二つ滅ぼしても構わなかった。
 錫杖をかざして脅すと、さすがに彼女が焦ったような顔になった。
「竜破斬!!」
 増幅付きである。
(さすがに……これを直接どうこうするのはキツいですね)
 彼は小さく呪を唱え、彼女の放った呪文を虚空に消しさる。
 ……これで、彼女の選べる道はかなり狭くなった……。
「さて。どうなさいます?」
 彼は瞳で彼女を促した。
 彼女以外の世界に興味を失って久しい今、別段、重破斬が使われなくとも構わないが……彼女が、自分憎さ故
に禁呪を唱えるという結末も、悪くはない。
(それに、一応、“親不孝”してしまう獣王様への置き土産にもなるでしょうし……)
 目の前で、彼女が表情を揺らしている。
 それを、彼は楽しげに見ていた。
 けれど――その場に割って入る者があった。
「駄目だ、リナ! そいつを……その呪文を使う気なら、俺は、お前を……殺さねばならん!」
 彼女が驚いたように振り返る。彼は顔をしかめた。
(……また、邪魔が……)
 彼は、言葉を紡ぐ男を睨んだ。
「余計なことですねぇ……」
(邪魔なものは、早く……排除してしまうに、限るんですね)
 軽く手をあげ……。
「烈閃槍!」
 突然、間に入って呪文を浴びせてきた彼女。彼は錫杖でそれを叩き落とした。
「させないわよ、ゼロス!」
 彼女の紅の瞳が燃えている。深い、何処までも深い決意の宿された……色。
「……終わりにするわ」
 言い放たれた言葉に、彼は一瞬だけ目を見開いた。
 ――それこそが、彼の、望み……。
 けれど。
「できますか?」
「……さぁ?」
 彼女は、首をかしげ、小さく笑った。澄み切った瞳がまるで幼女のようで、彼は僅かに目をすがめた。
 彼女は、彼を、彼だけを見ていてくれる。
 ……なのに、何故、これ程に遠い?
(……あなたは、何を、考えていらっしゃるんですか?)
「ゲームは終わりよ。これであんたを倒せなかったら……」
 彼女の瞳が、あふれんばかりの生気を孕んで光った。
「あたしは……。……あたしを殺すからね」


(あなたが……あなたを、殺す…………?)
 彼は一瞬その言葉の意味が取れず、その場に固まった。
(あなたは……一人で、逝ってしまうつもり、なんですか?)
 ――僕をこの世に残したまま……?
 見つめる彼の前で、彼女は軽く肩をすくめた。
「あたしの人生の幕よ。……あたし自身が、選んで、決めて、下ろすの」
 きっぱりした語調に、彼は何故か、泣く……という行為をしてみたくなった。
 この瞬間、彼は悟ってしまったから。
(あなたの身体は手に入っても、心は……決して、手に入らないんですね……)
 契約で縛っても、憎しみを焼きつけても……。
「……実に、リナさんらしい、ですね……」
 感嘆を装った絶望の言葉。
(どうしても……手に入らないのなら……っ)
「……終わりにしていただけますか?」
(僕とともに……!)
「……神滅斬!」
 混沌の力を持つ最強の闇の刃が、彼女の声とともに現れた。
「行くわよ、ゼロス!」
 刃を振りかざし、彼女が切りかかってきた。その瞳、死を覚悟している筈の表情には……何故か、その時、もっと
も生の讚歌が似合う気がした。
「あなたは……本当に。最後まで、人間であろうとするのですね……」
(……僕には、永遠に得られないでしょうね。あなたのような心など……)
 ――できるのは……。
 彼女の力と彼の力がぶつかりあう。
 彼女の顔に、消耗していく力と……決意が、浮かんだ。
(これまで、ですか……)

 彼は……。
 ……静かに、両腕を下ろした。
 そして――……。

 ざんっ。
(……う……っくぅぅぅっっっ)
 闇の刃が、彼の身体をざっくりと裂いて、いた…………。


▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼▼

 うーん・・・ゼロス君に余裕がなひ。
 まぁ、ほっとんど最期の賭に出たよーなもんだし、この人(・・・じゃないけど)
 次で終わります、絶対!
 というわけで・・・できれば、続きも読んでやって下さいね〜。

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4688Lovers' Suicide〜sideゼロス(終)T−HOPE E-mail URL9/19-09:22
記事番号4680へのコメント
  Lovers'Suicide〜sideゼロス〜(終)


 ……ゆっくりと、彼が、崩れ落ちた。
「……ここら辺が潮時……ですか。確かに……望み過ぎるのは、罪……です……ね……」
 世界と彼女。天秤にかけ、彼女を選んだ……。
 今更世界もともにと望むのは、強欲に過ぎるだろう。
 後悔などというものを微塵も感じられないほど彼女に捕らわれた己の心のあり様に、彼は微笑んだ。
「ゼロス!?」
 彼女が、自分の名を呼ぶ。
 大きな瞳がこぼれ落ちそうなほど見開かれ、何故と。何故斬られたのかと……責めるように疑問を投げていた。
(……本当に、あなたは無茶苦茶なんですから……)
 ――何故か、なんて……当然のことなのに。
 彼にできるのは、ただそれだけだったのだから。
『……そうしたらリナさんは、一人で死んでしまったでしょう?』
 彼女の瞳がはっと上げられた。暁の光のこめられた瞳と彼の瞳がぶつかる。
『あなたでなければ意味がない。
 僕を滅ぼすのは、ただひたすら僕を憎み、僕だけを見るあなたでなければ……何の意味もなかったんですよ』
 今まで彼女に見せ続けていた偽りの殻を捨て……初めて、彼が本音を漏らした瞬間だった。
 彼女は暫く黙っていたが、やがて、唇を小さくほころばせた。
 そして、
「……ゼル、アメリア」
 同行者二人に呼びかけた。
 けれど、その間も、瞳は彼から離れない。
 彼は、まるで迷い子が母の笑みを見たように、滅びを迎えることも忘れ、向けられる彼女の微笑に安らいでいた。
「竜破斬で全部吹き飛ばすから……早く逃げて」
 彼女が、同行者に言っている。
「ゼロスは死ぬ。
 その魔力で縛られたあたしの命も……一緒に、かなり力を吸い取られてくのが判るわ。生き残ったとしても、長くは
保たない。
 だったらいっそ、派手に幕を引いてやるのが、主演女優の役目ってもんでしょ。
 ……だから、早く行って」
「リナさん、でも……!」
「行かないと、問答無用で巻き込むわよ?」
(……側に、いて、くれるんですね……)
 彼は安堵して微笑み続けていた。
 ……と。
 消えゆく意識に、何かが触れた。
(……ゼラス様……?)
『……愚かな子……』
 僅かに呆れるような響きが宿った美しい声が、精神世界面に響いた。
『……愛しい者とともに滅ぶことができて、幸せ?』
(…………。……幸せ、です)
 何処かで小さな溜息が聞こえた気がした。
『本当に、愚かな子……』
(すみません……)
 ――最後までお側に仕えることができなくて……。
(全ての源にて……お待ち申し上げて、おります……)
 その声は、小さく笑ったようだった。
『愚か者のことなど、その前に忘れてやるわ……』
 ……それっきり、気配は、絶えた……。


「……ゼロス。……あんた、馬鹿よ……」
 気がつくと、彼女が膝をついて彼をのぞきこんでいた。
 白く柔らかい頬の線を伝わっていく水滴。
(……泣いて、いるのですか……?)
 ――何故……?
「……馬鹿……」
 彼は、彼女の頬をこぼれ落ちる涙を見つめ……そっと、掬い取った。
 彼に、彼だけに向けられる……悲しみという、負の感情。
「……温かい、ですね……」
(憎しみよりも……怒りよりも……甘美です、よ……)
 ――僕だけに向けられた……あなたの……心…………。
 最後の笑みを彼女に与え……彼は…………。
 …………塵となり、崩れた……。


 あなたが欲しい……。
 ……あなたの心が。

        ――もし、僕が人間だったなら……?
        ――それでも、同じ道を選んだかもしれない……
        永遠にあなたを縛る方法なんて、他になかったから…………。

 けれど……。

        ――全て我の懐の内に――
        ――永遠も刹那も消え果てた後に――

 金色の闇が微笑みながら幕を閉ざした。

 ……そして…………。

★★★★★★★★★★★★
 ゼロスside終了!
 ということで、後は・・・書くかなぁ? 書けるかなぁ? の、ゼルとアメリアの回想、郷里の姉ちゃんと獣王様の巨
頭会談(?)。・・・書けたら書きます・・・多分。
 ということなんで、読んで下さった方、今までこんなくら〜い話におつきあい下さり、ありがとうございました。
 またの機会がありましたら・・・読んで下さると嬉しいです☆

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4738真夏の太陽(Lovers'Suicide番外)T−HOPE E-mail URL9/20-21:05
記事番号4538へのコメント
 にゃぁ〜・・・何かツリーがどんどんめちゃくちゃになっていきます。
 すみません〜〜〜っっっ。
 というわけで(何が?^^;)後日談Part1です。

△△△△△△△△△△△△△△△△

   真夏の太陽


 ……真夏の太陽は、没してもその熱を地上に残す――。


 白い貫頭衣に身を包んだ一人の男が、宿の一階の片隅で酒杯を傾けていた。
 と、不意に、その背後から少女の声がかけられた。
「……ゼルガディスさん。眠らないんですか?」
 呼ばれて、ゼルガディスはゆっくりと振り向いた。
「アメリアこそ。とっくに寝たかと思ってたぞ」
 アメリアは、小さく笑って肩をすくめると、ゼルガディスの前の椅子にちょこんと座った。
「……お酒ですか?」
「ああ」
「ちょっとだけ、くれませんか?」
 ゼルガディスは、驚いたような目になった。
「お前さんがそんなことを言うなんてな。だいたい、飲めるのか?」
「王宮のパーティなんかで、お付き合い程度に飲むことがありましたから。
 それに……ちょっと、気を紛らわしたくて」
 ゼルガディスは、そんなアメリアの前にもう一つ杯を置き、酒を少しだけ注いだ。
「ま、いいだろう。だが、少しにしておくんだな。
 かなり強いやつだし……明日も、早い」
「はい……」
 こくんと頷くと、アメリアは酒杯に僅かに口をつけ、顔をしかめた。
「……苦い……」
「なら、やめておけ」
「いえ……」
 首を振って、また一口含むアメリア。
「……前にも、こんなこと、ありましたよね」
 ぽつりと呟かれた台詞。ゼルガディスは無言で先を促した。
「わたしと……ゼルガディスさんと、二人でこうやって先を急いで旅をしたことが」
「冥王を倒しに、サイラーグへ行った時か」
 アメリアは、ちょっとだけ首を縦に振り、じっと手の中の揺れる酒を見ていた。
「……あの時より。冥王と戦わなきゃいけないって判ってた、あの時より、今の方が……辛いんです。
 何で、でしょうね……?」
 ゼルガディスは、何も言わず酒を呷った。
「知らんな」
「ゼルガディスさん!?」
「知りたくもない」
 見上げてくるアメリアの視線を断ち切るようにそう言うと、ゼルガディスは立ち上がった。
「――そんなことを考えたところで、リナは帰ってこない」
 はっ、と、アメリアは息をのんだ。
 童顔の中の大きな瞳が見開かれ、揺れていた。
「まだ……まだ、判らないじゃないですか……だって」
「無理だ。リナは……死んだんだ」
 震える声を紡ぎ出そうと努力するアメリアに対し、あえてゼルガディスは冷然とした言葉を返した。
 そうでなければ――その甘い言葉に説得されてしまいたくなるのだ。
 リナは、全てを竜破斬で消し飛ばした。
 彼女らしい、ある意味目茶苦茶で……潔い、最期。
 そう思う一方で、ゼルガディスのもう一つの心が囁く。
 ――彼女は、いつだって諦めなかった。だから……きっと、生きている、と。
(そんなことはありえない)
 ゼルガディスは小さくかぶりを振った。
 アメリアは立ち上がり、そんなゼルガディスを、きっ、と睨みつけた。
「リナさんが……“あの”リナさんが、そんな簡単に死ぬわけ、ありません!」
 ゼルガディスは溜息をついた。
 少女の気持ちは、判りたくないのに判ってしまった。だが……。
「その“リナ自身”が、選んで、幕を下ろしたんだろうが。
 あの最期は、諦めたからじゃない。
 きっと……リナが自分で決めたから、だ」
 従容として死を迎えるのではなく、自分で生命を爆発させてしまう道を、リナは……。
 目をつり上げていたアメリアは、ゼルガディスの言葉に、肩を落とし、座り込んだ。
 目が再び酒杯に落ちる。
「…………。……判ってるんです、本当は」
 ぽつり。
 杯の中の酒が、丸い波紋を描く。
「……判ってるんですけど……でも…………」
 ぽつり。
「…………。……どうしようもなく、胸が……」
 暫く肩を震わせていたアメリアだが、ゼルガディスが見守るうちに、やがてまた顔を上げた。
「……リナさんって、真夏の太陽みたいですよね」
「真夏の太陽?」
(――『です』、か)
 まだ過去型で言うことすらできないアメリアを前に、ゼルガディスは苦笑した。
 そんなことを思う彼自身も、逝ってしまっただろう少女のことを、いまだ過去のものにできていないことに気づいたか
らだ。
「……何で、そんな風に思った?」
「だって」
 アメリアは、何か楽しいことを思い返すようにくすくす笑った。
「真夏の太陽って、確かに明るくて暖かくて凄いんですけど、パワーが強すぎて大変でしょう?
 リナさん、そーっくり!」
「……成程」
 思わずゼルガディスも笑いながら同意してしまった。
「リナさんって、大食らいだし、お金にがめついし、ところかまわず呪文連打するし、趣味は『盗賊イヂメ』だし………
…元気すぎるほど元気だし、いつだってどんな時だって前向きだし…………。
 ……すっごく、あったかいし……!」
 一度押さえつけられた涙が、再びアメリアの頬を濡らしていた。
「真夏の太陽が沈んでしまったら……世界は、どうなっちゃうんでしょうね……?」
 アメリアは自分の心の中に空いた穴を見つめながら、そう言った。
 ……本当は、彼女だって判っているのだ。
 リナが――もう、帰ってこないだろうことくらい。
(でも……太陽が沈んじゃったら、真っ暗なんです。リナさん)
 アメリアにとっての真夏の太陽は、名残を惜しむ夕焼けすら見せることなく、天空高くから突然消えてなくなった。
 ……ぽん。
 優しく自分の頭に置かれた掌に、アメリアは、また少し俯いた。
「太陽が沈んでも……真夏の夜は、その熱を忘れたりしない」
 その言葉に、アメリアの肩が、びくんと震えた。

 ――太陽が沈んでも、真夏の夜は、その熱を忘れない……?

「リナがいなくたって、俺達リナに関わった奴等は、皆、リナを覚えてる」
 呟くようにそう言うと、ゼルガディスは、唇の端をつり上げるようにして笑った。
「誰が忘れられる? あんな目茶苦茶な奴」
 アメリアは、今度こそ涙を拭って、ゼルガディスを見た。
「そうですね。
 真夏の太陽はとんでもないパワーだから……そのパワーは、たとえ太陽が沈んだって、完全に消えたりしません
よね」
(リナさんは、本当にいろんな意味でとんでもない人だったから……絶対に、わたしだって、リナさんを忘れたりしな
い……)
「だから……真っ暗だって、大丈夫なんですよね」
 いつもの強さを取り戻したアメリアの瞳に、ゼルガディスは小さく頷いた。


 ――真夏の太陽は、没してもその熱を地上に残す。
 ――地上はその熱を抱きしめて、太陽を想うだろう……。

    ――……再び太陽が昇ることなくとも…………――

▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽▽

 ・・・ってことで、「Lovers’Suicide」番外です。
 場面は、リナとゼロスが心中(なのか、アレで^^;)した後、二人がリナの故郷に向かっている途中のお宿、ですね。
 アメリア、まだ納得していません・・・なんか、アメリアじゃないよ〜。
 思いっきり弱気ですね。
 でも、仕方ないんです。彼女の「真夏の太陽」が沈んじゃったんですからっ(と、言っておこう^^;;;)
 またしてもゼルにいい役降っちゃった気がする・・・あれぇ?
 作中の「真夏の太陽」というのは、ふと私が思いついたからできた戯言(笑)
 別に単なる太陽でもいいんですけど、リナのエネルギーを考えると・・・こんな感じかな、と。
 いかがなものでしょう?
 次は・・・ルナ姉ちゃんとゼラス様の話を吐き出しちゃおうかなぁ。
 今現在、別のものに足を取られてなかなか進まないし・・・。
 書けたら、「スレイ」SFバージョン書きたい!(でも、どーせまたゼロリナ・・・(爆))
 設定、半分だけはできてたりします・・・・・・いつか書けるといいなぁ。
 では、暗いだけであまり実のない話ですけど(真実なのが哀しひ)、できればまた読んでやって下さいませ。

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4760宴が果ててT−HOPE E-mail URL9/21-21:33
記事番号4538へのコメント
 あぅあぅ・・・ツリーをさらにわけわかんなくしてます。
 でも、これで終わりなんで・・・ご容赦下さい。
 ってことで、後日談Part2、ルナ姉ちゃんと獣王様です。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

  宴が果てて……

「……まったく。しつけに失敗したかしらね」
 ぱたんと後ろ手に扉を閉めた栗色の髪の女性は、テーブルの上に置かれたものを見て小さく溜息をもらした。
 それは、黒いバンダナ。
 世界を見に旅に出た彼女の妹が、おそらく死ぬ前日までは身につけていただろう物。
 そして、遺品として、彼女の仲間を名乗る青年と少女が届けてきた物。
 彼らに遺品を託した彼女の妹は、仲間だった青年を殺し自分にかりそめの不死を押しつけた魔族を斃すと、自らを
竜破斬で消し去って……幕を引いたという。
「ほんっとぉぉぉに、馬鹿な子逹。
 そう思いません、ねぇ?」
 女性は、誰もいない筈の部屋の中、天井を仰いで微笑みながらそう問いかけた。
 端から見る者には、意味の取れない行動。
 ……けれど。
「否定はしないが……それで、そちらはどう出る?」
 波打つ黄金と力強く優雅で伸びやかな肢体の女性が、ふ、と、急にわだかまった闇の中から現れた。非常識に整
った顔立ちの中、唇が挑戦的につりあがっている。
 それを迎える女性は、穏やかな表情を崩しもせず、テーブルにことんとお盆を置いた。
「とりあえず……せっかく来て下さったんだから、お茶でも一杯いかがですか?」
 言いながら、手慣れたしぐさでお茶とお茶菓子をセットした。
「貴女の“息子”は、結構甘い物が好きだ……と、妹から聞いているんですけど」
「まぁね……」
 金髪の女性は、軽く肩をすくめると、音もなく女性と向かい合う形で椅子に座った。
「“あれ”はかなり人間の生活に馴染んでいたからね。
 ……私は酒の方が好みなんだが……」
「ごめんなさい。お酒はいいのが常備してないから……」
 にこにこ笑いながら言うと、栗色の髪の女性も、すとんと金髪の女性と向かい合うように座り、お茶を一口含んだ。
 金髪の女性も、それに倣うようにお茶に口をつける。
「美味しい茶も嫌いではないわ。
 もっとも……どちらにせよ、“あれ”がいなくなった以上、仕入れてきてくれる部下に不自由することは確かね」
「まぁ、ねぇ。
 確かに、“あの存在”ほどの部下は、いくら“貴女とはいえ”そうそう簡単に代わりは作れないでしょうし?」
 ――“あっち”は完全に『滅んで』ましたものねぇ……。
 穏やかに笑いながら、ずいぶん物騒な台詞をさらりと言っている。
「おかげで自分でこちらまで出向いてくることになってしまった」
 渋面を作ってみせる金髪の女性に、栗色の髪の女性は少しだけ首をかしげた。
「あら? 顛末を見届けて暇をつぶすつもりだと思ってました。
 だって、もう、結界の維持は必要ないでしょう?
 五人の腹心のうち既に二人までも失われてますものね」
 ――あの子にしては、よくやりましたよね。半分くらい、魔族自身の失点だとしても。
 呟く声に個人的感情は微塵も含まれていない。
 金髪の女性は、ほんの少しだけ眉をよせた。
「否定はしないわ。
 ……しかし、よくやったはそちらだろう?
 睨みあいで動けない神族と魔族。その中に、ジョーカーを放りこむとは、ね」
 人間。儚き命のまま生き急ぐ、か弱き存在。
 そんな存在の中に、あれ程の力が抱かれていると、誰が思っただろう?
 生きようとする少女。
 世界という盤の中に放りこまれたあの駒は、期せずして魔族にぶつかり、何度も偶然という最強の手札を利用し
ながら生き残ってきた。
 彼女が世界に出会わなかったら……?
 あるいは……混沌の力の知識などまるで持たなかったら……?
 ……そこに働くのは、何者の意思……?
「本当に……上手い手だわね」
 これで魔族側は、赤眼の魔王の七分の一、冥王、魔竜王、竜将軍、竜神官、覇王将軍……獣神官を、失った……。
「対してそちらは? ……人間の娘一人、いなくなっただけ」
 金髪の女性は、挑戦的な笑みを動かさないまま、栗色の髪の女性を見やった。
 見られた女性の方は、少し困った表情になった。
「それは買いかぶりすぎというもの。
 私は……赤の竜神の騎士ではあっても、決して赤の竜神ではないのだから。
 だから、私はただ……あの子に、生き残ってほしかっただけ」
 また一口。
 お茶を口に運び、栗色の髪の女性は僅かに目を伏せた。
「私の妹であるが故に人生が曲がることを確定されたあの子に、ただ、最後の切り札を与えてあげたかっただけ……」
「そこに赤の竜神の意志がないと、どうして言えるの?」
「……言えないでしょうね」
 くくっと、小さく嗤う金の髪の女性。
「でも……あの子が死んだのは、赤の竜神の意志とは無関係」
 ……笑みが、止まった。
「監督不行き届きと?」
 一瞬、瞳に不快げな光を宿らせ、金の髪の女性は問うた。が、栗色の髪の女性は、首を振る。
「貴女の意志ではなかったでしょう?」
「“それ”こそが腹立たしいことと知りながら、そう言うの?」
「ええ」
 栗色の髪の女性は、テーブルの上のバンダナを手に取り、見つめた。
「……稀有なる魂。
 それは、赤の竜神の意志とも、魔族の思惑とも……無関係に、存在を巻きこみ、魅せる。
 巻きこまれた獣神官を哀れにこそ思え――」
「“あれ”が愚かだっただけよ」
「……そうかもしれません。
 そうでないかもしれません。
 あの子は――ある意味、赤の竜神の目すら惹いた子」
「嵐のような娘」
 間髪入れずに放たれた言葉に、栗色の髪の女性は苦笑した。
「……確かに」
「それでは、そちらは、こたびの件に関してその責を問う気はないわね?」
「あら。本当に、わざわざそのために来たのですか?」
 栗色の髪の女性は、何処かわざとらしく目を見開いてみせた。
 金の髪の女性が、ふんと笑う。
「一応、そちらの手駒を勝手に潰したことになるのでね。愚かな部下を持つと、厄介だこと」
「別に……構わなかったのに。
 この結末は、あの子自身が選んで決めたこと。それに口を出す権利は、たとえ赤の竜神だろうと、ないんですよ」
 ――それに、貴女が先程言った通り、こちらの損害よりそちらの方が大きいでしょう?
 言い放つ言葉は、無邪気そうでいながら棘を孕んでいた。
 それに、くすっと笑うと、金の髪の女性は立ち上がった。
「それでは――おそらく今度ぶつかる時は、互いに覚悟が必要でしょうね。駒は、もう、ないのだから」
 栗色の髪の女性は、座ったまま相手を見上げ、微笑んだ。
「そうね。
 愚かで、ある意味役に立って……愛しい駒は、もう、ありませんからね」
 金の髪の女性は、そのまま姿を虚空に溶けこませた。
「……赤の竜神に、よろしく……」
「……伝えておきます」
 最後に交わした言葉は、虚空にそのまま溶け消えた。

「やれやれ……」
 手の中のバンダナを見て、残された栗色の髪の女性はまた溜息をついた。
「……赤の竜神はともかく……私は」
 小さく呟かれた言葉。
「……あんたが消えたら、十分に悲しいのよ?」
 届ける相手は、もう、混沌のうちに抱かれている。
 けれど、その生き様を否定する気にはなれないと、栗色の髪の女性は心の中へ声を送った。
 あの子はあの子自身として、おそらく――駒であっても自分の生を、あの子らしく送ったのだから。
 嵐のような強さで。
 多くの心をわしづかみにして。
 ――赤の竜神の心の一部さえも。
「……でも。
 宴は……終わったわ」
 おやすみなさい、今は安らかに。
 栗色の髪の女性は、この世、この形ではおそらく二度と会うことはないであろう妹に――優しく、声を送った……。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 さーぁ。これで完全に終わり。ずいぶん長くなりましたが(笑)
 何か寒々とした会話の断片になってしまった。余裕たっぷりなお二方の巨頭会談を書いてみたいなぁ……って思
いついただけの筈、なのに。
 タイトル、ちょっと前に読み終わったばかりのとある本の影響を受けたかもしれません。 
 やばーい……(汗)
 次は何を書こうかなぁ。ゼロリナオプションもの2バージョンと、SFバージョンとその他諸々……アイディアだけはあ
るんですが、多分、絶対的に時間が足りません。
 いーけどさ。その前にこのへぼい文章をどうにかしなきゃいけないし。
 もし次の機会などありましたら、読んでいただけるととっても嬉しいです☆