◆-空を飛ぶ者-LINA(10/1-19:43)No.5006
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  ┗後書き-LINA(10/2-19:59)No.5034
   ┗Re:後書き-TRYNEXT(10/4-11:17)No.5072
    ┗Re:後書きお礼-LINA(10/4-21:47)No.5100


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5006空を飛ぶ者LINA 10/1-19:43

ガブリエフ総合医療病院の息子、ガウリイはたまたまその部屋の前を通りかかった。

「嫌よ、私は絶対にいや!!」
「馬鹿な事を言ってんじゃネエよ!!おまえなあ、しんじまうんだぞ!!俺達のアリシア・・・・・、ばあちゃんみたいに!!」
少女と青年の激しい言い争いがきこえた。
「リナ姉さん!!ケイン兄さんもルナ姉さんもグレイシア姉さんもキャナルもみんな心配しているんですよ!!どうしてそんな事!!」
別の少女の叫びにも似た涙声が木魂した。
「アメリア!!尚更よ!!うちにはアタシのほかにもケイン兄貴、ルナ姉貴、グレイシア姉貴あんたにキャナルが居るのよ!!だったら・・・・・。もう、いいじゃない。あたし一人ぐらいいなくなってもいいじゃない。第一アタシ、人殺しをしてまで自分が助かりたいとはおもわない!!」
彼女達の祖母アリシアも体が弱かった。
その形質をマトモに継いだ少女は臓器の疾患にかかり臓器移植以外助かるすべは無かった。
しかそ、それには彼女は断固として抵抗した。
一つは彼女の祖母、アリシアも断固そうだったからだ・・・・。
『人を殺してまでも自分は助かりたくは無い』と。
「おまえな!!いい加減にしろ!!そんなにばあちゃんの所にいきたいのか!!
だったろ!!苦しまないように今俺が行かせてやる!!」
いきりったた青年が近くにあった果物ナイフを少女の首筋に突き付けようとした!!
「止めてくださいい!!!ケイン兄さん!!!」
必死で止める若輩の少女。
「はなせ!!アメリア!!!!!ぐ!!!」
何者かによって与えられた衝撃。
ケインの意識は暗転した。
「・・・・・・。何で止めたんですか。このまま兄さんに殺して貰えたらどんなによかったか・・・・。」
病床の少女は蚊の鳴くような声でその人物、ガウリイに向かって呟いた。
「まあ。お前サンはよくってもこの男を妹殺しにさせる訳にはいかんだろ。」
怒ったふうもなく、ガウリイは気さくに少女に言った。
「全く・・・。兄弟そろって手の掛かる連中だな。ぼっちゃまが通りかからなければどうなっていたことやら。」
再び扉が開き入ってくる男一人。
「担当医のゼルガディス先生。」
若輩のアメリア少女が喜色の篭もった声をあげる。
「よ〜お、ゼル。なんだ〜。この娘、おまえのクランケ(患者)か?」
「ああ。リナ=インバース、こう見えても18歳・・・。ちなみの今年で19歳になるとだけ言っておこうか・・・・・。」
「18歳!!??」
ましてや今年で19歳・・・・・・・?
彼女は病気のためか小柄に見えた。やせて細っているためかどうみても15から16歳位にしか見えない。
「うるっさいなあ。もう、どうだっていいでしょ!?これでもアタシは18年いきているのよ・・・。」
紛れも無い事実である。リナはとかく年齢の事をとやかく言われる事を嫌った。
「おお〜〜〜。そ〜だなあ。わりイこといっちまったな。」
ニッパっと笑って言うガウリイに微苦笑するリナ。
それでも彼女が久々に見せた笑いだった。
なるほど。たしかに顔つきは痩せているとはいえハイ・ティーンの年齢に差し掛かった少女のものだった。寂しそうな口元や目元には微かな妖艶さが漂う。
もう少し太ればケインのような鹿のように俊敏そうな精華な雰囲気の顔になるに違いない。その、ケインをのしたのは俺だが。
そう付け加え密かにガウリイは苦笑した。
「それに・・・・。うんう、やっぱりいい。愚痴になるだけね・・・。」
自嘲的な口調でリナが呟いた。
「リナ姉さん、言って下さいよ。」
久し振りに「死ぬ」だの「もういい」などの類以外の言葉を言いかけたリナを逃がすのはアメリアの妹としての正義の心が反した。
「あたし・・・・。親父のやり方が嫌いなの・・・・。金に物を言わせて・・・。
娘を、アタシを助けるためだけに・・・・。」
リナはそこから先の言葉を紡ぐ事が出来なかった。
アメリアとてそれは同様である。
病室に暗い雰囲気がたちこもる。ガウリイは今の今まで気付かなかったがこの病室は特別室であった。普通の庶民がどうあがいてもこのような待遇は受けれないであろう。
しかし、こんな幸福な少女がなぜ?
一人思案に耽るガウリイをゼルが引きずり出すように病室からだす。




「な〜あ、ゼル、どーゆー事だ?」
「ったく。これだから世間知らずのお坊ちゃまは・・・・。あの娘の一件には
アンタの兄貴、現ガブリエフ総合病院院長、レイルも関わっているんだぞ。」
面白くなさそうにゼルが呟く。
「だから〜〜〜〜〜。どーゆーことなんだーーーーーーーーーーーーー?」
真坂レイルとあのリナとか言う少女が恋仲とでもいうんじゃああるまな?
そうだったら?
さっき会ったばかりの病床の少女。それだけなのに何故気になる?
しかし、ゼルの答えはそれとはかけ離れた物だった。
「あの娘の親父はなあ、『カネ』で臓器を『買った』んだよ。臓器提供のドナーとなるべき人物の臓器を順番も待たずに買い占めやがったんだ。娘可愛さにリナと同じ境遇の12歳の少年を見殺しにして、な。」
ゼルの口調はリナには同情的であったがその父親に向けられた憎悪はあからさまであった。
『ヒトヲコロシテマデジブンハイキタクナイ』
リナの悲痛の叫びがガウリイの心にこだました・・・・。


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5007空を飛ぶ者LINA 10/1-21:10
記事番号5006へのコメント
今日で三日目か。
ケインがのされたまんま眠りつづけているの。ガウリイさんって一体どーゆー教育受けてそだったんだろう。ケインも一応はフェンシングなんかやっててかなり強いのに。
そっと、兄貴の寝顔を盗み見るリナ。
昔はアタシの方が男っぽかったのに。
一つ年上の兄、ケインは何時も学校で女顔と馬鹿にされていた。
そのたびにケインとあたしの連合軍がいじめっ子を粉砕した。
そのあと、服を汚した、友達に怪我ををさせったとルナ姉ちゃんの鉄拳制裁を浮けまっくた。
そして・・・・。ビービー泣きじゃくるあたしとケインにアリシアおばあちゃんがそっと慰めの言葉をくれた・・・・。
ほんと。ケインってあたしに似てるよね。アリシアおばあちゃんにも・・・・。
すっかり身長なんて追い越されてる。昔は同じ位だったのに。でも兄貴がいつまでたっても妹と同じ位ってのもかなり恥ずかしいよね。敢えて言っちゃえば顔つきがあたしよりも美人、って所と綺麗な茶色いさらさらな髪の毛は許せない。
笑いながらリナはケインの額に『私はフランソワよ(はあと〕』などと油性マジックで書きこんだ。
起きたら本当にアリシアおばあちゃんとこいきね・・・。殺されるわ・・・・。
まあ・・・。それも悪くないけど。
再び無気力に青空を眺めるリナ。
高校のとき初めて行った海外への修学旅行。
あの時初めて飛行機乗った。今まで体が弱くって何処にも行けなかったもんね。
何処だっけ。そうそう、シンガポールだ。みんなは最初こそ成田から離陸したときの夜景に見とれてた。綺麗だったモンね。でも、だんだん機内に搭載されてたゲームに没頭して行ってたっけ。マルチナだったかな。コントローラーぶっ壊したの。
映画もやってたっけ。「タイタニック」を見て大泣きしてたのはシルフィールだったようなきがする。紅茶をお代わりしまくってた奴、そうそうフィリアだ。フライトアテンダント(スチュワーデス)の人、顔引きつってたなあ。料理がまずい、あたしが作ったほうがいい、なんて暴言はいてたのはミリィだ。うん、これは間違い無い。カーリー先生、ぶち切れてムチふるうしまつだったし。
「で、お前サンは何してたんだ?」
唐突にかかる声。
しかし、春の気持ち良い気候のためか、トランス状態のリナは巧みな誘導尋問にかかるよりも素直に(?)答える・・・。
「何していたとおもう?」
「う〜〜〜ん。お前サンぐらいの年頃だと・・・。彼氏とはなしまくってた、か?」
「大外れ。だって女子高だもん。」
「じゃ〜〜〜あ。物を食いまくってた。」
「エコノミークラスの物じゃなかったらそうしたかもしれない。(笑)」
「免税品の機内販売で買い物しまくってた!!」
「ンなことしたら小うるさいカーリー先生にはしたない!!とか言われて怒られるわよ。」
「じゃああああ。トイレ・・・・」
「いったら殺す!!それに、そんな訳あるはずないでしょ!!(赤面)」
「じゃ、シンプルなところで寝てた。」
「寝れるわけないでしょ。もったいない。」
「もったいない!?」
訳のわからないリナの言葉に面食らうガウリイ。
「アレはどー考えたって寝るしかないぞ!!第一、落っこちたらと考えてみろ!!
考えただけで怖くなるじゃねーか!!それに、あの揺れ!!どう考えてもあの恐怖から逃れるには寝るのが普通だぞ!!」
剥きになって言うガウリイを初めて見つめるリナ。
が、やおら・・・・・・・。
「ぎゃははははははははははははははははははははははははははははははは!!」
アーもう可笑しい!!!そう言った様子で笑い転げる彼女。
「なんだ!?俺、ナンカ変な事いったか!?」
仰天したようにリナを見るガウリイ。
「・・・・。違うわよ・・・ふっふふふ・・・・。」
未だ多少のひき付け笑いをおこしつつリナが口を開く。
「私が変なのかも、って改めて思って・・・・。だって。飛行機って人類の会得した唯一の翼、なんて昔そーゆーの大好きなケインがいってたわ。」
「そりゃーま、男が餓鬼の頃はどいつでも飛行機は好きだろ。」
実際そうだった(あくまだった)と言わんばかりに拗ねた感じのガウリイ。
つまりは彼はリナのはぐらかしたかのようではないマトモな答えが欲しかった。
「つまりね・・・。空をと飛ぶってこうゆうかんじなのかなって思ったの。もし
飛行機みたいに自由に飛べたら素敵じゃない。ましてやあんなに綺麗な夜間フライトを野がすテはないわ。」
子供のように瞳を輝かせ言うリナ。
「自分で言っちゃうのもナンだけれども・・・。あたし空がすきなの。純粋な空への憧れっておもって貰えれば嬉しいわ。」
言って再び窓辺に頬杖をつき2階の特別室の窓から空を見上げているリナ。
桜のピンクが眼に眩しい。
ふ、っと舞い込むそよ風と友に紙飛行機がリナの膝元に乗り上げた。
下の方ににいる7〜8歳の子供達・・・。
「いくよおおおお!!」
リナはベッドの淵につかまり立ちあがる。痩せて居れどもしゃんとした背筋が痛ましい。窓の外の子供達もリナの様子に気付いていた。
リナの飛ばした紙飛行機を受け取り
「お姉さんもはやく病気なおればいいね!!」
そういって駆け出して行った。その様子をリナは複雑そうな笑顔で見送った。
「リナ・・・・。」
ガウリイは初めてその名前を呼んだ。はっと振りかえるリナ。
「ごめんなさい!!えっと、ガウリイさんでしたよね。いらない事ベラベラ喋っちゃって。」
自嘲的な笑みが微かに広がる。
「いや、良いんだけれどもさ、別に・・・・。所で俺わりイことしちまったかな〜〜〜〜あ。」
ちらっと、うつ伏せにされてソファーに横たわっているケインに目をやるガウリイ。
「て・・・・。なんだ・・・・、こりゃ・・・・?ふらんそわ?」
「あはははははははははははははははははは・・・・・・・」
リナの乾いた笑いが室内に響いた。
「なあ、リナ。どーゆーことだ!?駄目だろ・・・。こんなに良い兄貴に悪戯しちゃ・・・・。」
半ば呆れたようなガウリイの声。
「あ、ははは。熱血看護婦のフランソワってしってる!?だめな見習い看護婦に喝をいれて立派な看護婦に育てたって人。(注、ロス・ユニより)なんか、アタシを怒ったケインってそれに似てて・・・・。ガウリイさんだってお医者サンになるんでしょ?」
医者になる・・・・・?この言葉・・・。前にもこんなことあったような・・・。
しかし・・・。だとしたら・・・。
一瞬ガウリイの脳裏にリナのこの言葉を否定したい気持ちがあった。
ともあれ。この少女に対する同情とも違う訳のわからない感情とこの気持ちの真意が解るまでこの答えは保留しておこう・・・・。別に答えようが答えまいが彼女が気にするはずは無いことは解りきっていた。しかし、今の彼はそれが大切な事のように思えてならなかった。
「・・・。他人行儀だな、リナは。ガウリイでいいよ。」
「そう、じゃあガウリイ、ね。」
そうとだけ言いリナは再び寝台に腰を下ろした。
彼女はなぜガウリイにはこんなに素直になれるのか理解できなかった。
「なあ、リナ。俺は詳しいわけではないんだが・・・・・・。」
ガウリイの言葉に絶句するリナ・・・。
自分が何を言っているのだか解らないガウリイ・・・・。
何かが変わろうとしていた・・・・・。

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5010空を飛ぶ者LINA 10/1-22:32
記事番号5006へのコメント
「お前、本当に馬鹿だな。」
「良くそんなの医者になろうって思えるな。」
「剣道しか脳が無いくせに。」

容赦の無いクラスメイトの言葉。
一流の私立小学校。一見いじめ何ぞとは無関係そうな優雅なイメージの有名校である。
しかし、実態はそんなに綺麗な物ではない。
子供の頃から弱肉強食、弱い物は叩き落せ、頭の悪い者とはつきあうな・・・。
少年にしては残酷な場所でしかなかった。
いつも兄のレイルと比較されていた。
別に彼が何をしたわけではない。意思に版して家紋のため、裏口入学を強いられた。それだけの事だ。
無論、幼い彼にそれを理解できるはずは無い。
しかし、大人は違う。彼の事を知る口さがない子供達の親は言う。
「あんな頭の悪い裏口入学を使うような事はつきあってはいけません!!」
子供は残酷な生き物だ・・・。自分よりも立場の弱い者はよってたっかて虐める。
在る日、彼の限界は突如としてやってきた・・・・。
得意の剣道でクラスメートを傷付けた挙句学校から飛び出したのだった。


泣きながら道に屈む・・・。
するとどうだろうか・・・。
「だって!!おばあちゃん、あいつ等が悪いんだよ!!なーんにもしてないケインの事、女顔だってばかにするんだもん!!」
やおら大声を張り上げる可愛らしい幼稚園児の女の子。そして、なるほど。その女の子にそっくりな顔立ちの男の子が初老の金髪の美しい女性を挟んでわめいている。
2人とも髪はクシャクシャ、顔は泥だらけ、身体のあちこちに掠り傷や引っかき傷があり、ブランド物であろう幼稚園の制服は見るも無残なかたちになっている。
「そうね。リナ、ケイン。でも、人を傷付けるのはどうかしらねえ。」
「大丈夫!!正々堂々と果たし状おくりっつけたから!!」
こんどは男の子が意気揚揚と答える。
「まあまあ。そうね・・・。ぶつかり合いは必要ね・・・。」
その女性の言葉が終わるか終わらないかのうちだった。
少女がだっと、屈みこんで泣いていた少年の方に駆け寄ってきた。
つんつん、そのさらさらした金髪をつつく。
「もしも〜〜〜〜し、そこのお兄ちゃん、何泣いているの?」
はっと、してガウリイは少女の方をみつめる。
「空みたいに綺麗な蒼い目なのに。泣いてチャもったいないって、リナおもう。」
・・・・。
ガウリイは信じられない思いで女の子を見つめた。正直、殻は産まれた一度も誉められた事は無かった。ただただ兄のレイルと比較されるだけの存在だった。
こんな酷い成になっているというのに幸せそうだった。
自分の学校や世界では考えられない。
「お父さんたちが僕を無理矢理お医者サンにしようとするんだ。僕頭悪いから学校でも虐められて・・・・。それに。お医者サンにはなりたくない。」
「虐められているんならそいつらに正々堂々と果たし状送りっ突けて見返してやれば?がんばってやっつければ?」
事も無げに女の子は言った。
「・・・・・。やっつけたよ。得意な剣道で。でも。傷付けちゃっただけた。」
「じゃあ、本当はその人達は弱虫なんだ。で、お兄ちゃんの方がつよいんだ。実力が無い奴は威張っちゃいけないってケインお兄ちゃんもルナお姉ちゃんも言ってた。だから、お兄ちゃんの勝ちよ。」
さのそれが当然の事のように女の子は言った。
「・・・・。お医者にはなりたくない・・・・。」
「ならなければ良いじゃない。」
「でも・・・・。お父さんが・・・・・。」
「無視ムシむうううううううううし!!俗に言うならあうとおぶがんちゅーってグレイシアお姉ちゃんがいってた。リナもね、おっきくなったらたしか・・・えっと、ガウ・・・・だかガオ何だかガブティエムだがって人と結婚しなきゃいけないってパパが言ってた。でも・・・。勝手に決められる人と結婚するのいやだからしない。はい、決まり。」
現にこの時点でリナは婚約者の名前を忘却と言うなの闇に葬っていた。
「そうして・・・。いいのかな・・・・?」
「駄目っていわれても、リナそうする。」
遠くの方で金髪の女性が女の子を呼ぶ声がする。
そっちの方向に駆け足で戻って行く女に子。」
「あ、リナ・・・・。」
少年の声が届いたのだろうか届かなかったのだろうかはさだかではない。
しかし、リナは振りかえって彼に叫んだ。
「おにいちゃん、がんばってね。泣いてチャ駄目だよ!!今に良い事在るから。
リナねいまから2人めの妹のお姉ちゃんになるの。名前はキャナルってきめてるの。
『運河』って意味よ。だから、アメリアの前でもそうだったけど・・・・。キャナルの前でもリナはもう泣かない。」
そうとだけ言って彼女は去って行った。
「ありがとう・・・・。」
少年は言いそびれた言葉をクシャクシャな髪に隠れた小さな背中に向かっていった。

その後、少年の進歩は著しかった。
成績は名実ともにナンバー1をかちとった。
しかし、彼は弱肉強食の残酷な世界のの波に流される事は無かった。
その後。親友のゼルガディスを得た。クラスでも中心的な存在となった。
今の彼がありえるのは『彼女』のおかげであった。
良くは覚えていなくても・・・。拭いがたい存在。
その彼女が・・・・。今はこんなに・・・・。
全てを思い出したガウリイの胸は痛んだ・・・・。


「お前さんの悪い臓器はどこだ?」
「大腸と肺の疾患と聞き及んでいるわ。でも・・・・。うちの親父の言ってた事だから解らない。でも、呆れちゃうよね。そうと聞いたとたん私以上に酷いかもしれない男の子の順番無視して臓器を買い占めちゃうなんて・・・。」
哀しそうにリナが呟いた。
「・・・・・。いや・・・・。何とかなるかもしれん。適合だの云々はあるが大腸と肺ならば・・・・・。」
「ガウリイ・・・・・?」
難しい顔をして呟くガウリイにリナは不安そうに問う。
「リナ・・・・。生きた人間からでもこの部分は移植可能なんだ。俺のをやる!」
「がうりい!?????冗談でしょ!!?仮に、もしそんな事可能でも・・・。
出来るわけ無いよ!!そんな事!!」
なかば上ずったリナの声。
「無理なはずないさ。そりゃーまあ、適合云々はあるけれど。」
「そーゆー意味じゃない!!どうしてそんな事しろって言うの!!見ず知らずのあたしに病院院長の弟のあなたが!!ゼル先生に聞いて知ってんだからね!
ケインをのしたのも剣道、北辰一刀流の師範だからだって仁部も無く言われたわ!!」
「あ〜〜〜〜。ゼルの奴・・・。いわなくっても良いような事を・・・・・。
ともかくさ、リナ。タダってわかでもないんだぜ。俺としては。」
「何?今はお小遣いの40000円しかもってないけれど・・・・・?」
そっと屈んで『あの時』同様にリナの目を真っ直ぐ見詰める・・・・。
「お前の婚約者のちゃんとした名前。手術が終わるまでにおもいだしてくれないか・・・・?」


そんな二人の様子を意識不明の振りをしてうっすらと目を開け見ているケイン、
何気なく見舞いに来たところ、この場面に遭遇したアメリアとキャナルがむねをなぜおろす気持ちで見守っていた・・・・。




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5033空を飛ぶ者LINA 10/2-19:52
記事番号5006へのコメント
「医者にはならないんじゃなかったの?」
意識を取り戻した彼が真っ先に聞いた台詞はそれだった。
・・・・・さっきとはまるで逆だな・・・・・。





「リナ=インバースの臓器移植の件だが、やって出来ない事はない。ただな、ガウリイよ、あいにくとお前のとは適合しないんだ。」
昼飯時。ゼルは申し訳なさそうにガウリイに言った。
「そうか・・・・。しかしよ、生きた人間からの移植、不可能じゃねーんだろ?
まあ、肺と大腸くれてやるなんて気前の言い人間はそうそう居るとは思えないが・・・・。」
リナは断固として拒むだろう。
十二歳の少年を犠牲にして自分が助かる事を。
ならば・・・。彼女を待つ運命は『死』あるのみである。
「いや。不幸中の幸いリナの大腸の疾患は人の臓器を移植する必要の無い程度のシロモノだった。患部を切り落とせば大腸は別に問題無い。」
「そうかあ。でもよ、ゼル。どうにかなりそうだぜ。」
えっ、と声をあげガウリイの指差す方向を見つめるゼルガディス。
なるほど・・・・な・・・・。



熱い・・・・。
リナはただそう感じた。麻酔をかけられて意識は無いはずなのに。
数時間前。あたしの為に自分の肺を半分取り出したあの人もこんなだったのだろうか・・・・。
手術の成功と失敗の確立は5分と5分。
別にドウだって良い。生きればケインやアメリアたちが。死ねばアリシアがあたしを迎えてくれるだけだもの。
ケインにアリシアか・・・・。子供の時、あたしこんなに無気力な事を言わない子だったよね・・・・。
アリシアは・・・・。大好きな祖母は・・・。もういない。
じゃあ、ケインは!?ケインはどこ!?アタシの大好きなお兄さんは何処!?
何時も一緒に居たじゃないの!!どこ、ドコ、何処、何所!!!???
熱いかんかくと身体を刻み付ける冷たい刃物の感覚がアタシの神経を狂わせる。
無意識に手が虚空をさ迷う。
暖かい・・・。何かがあたしの手をしっかりと、力強く包む・・・。
だれかが手を握っててくれている・・・・。入院中苦しくなるとこうしてくれた人は大勢居た。
けれどもアメリアやキャナルの柔らかい手。ルナ姉ちゃんやグレイシア姉ちゃんの
母親のような手・・・。同じように力強いのにケインの手とは随分違うような気がした。あの人なの!?真坂ね。第一あの人は医者ではない。ならない・・・。
成りたくないってそう言った!!
綺麗な、空のような蒼い眼を涙で濡らしながら。
でも、もし『彼』なら・・・。立場が逆転したね・・・。あの時と・・・。
そう、敢えて言うなら。すっかり忘れ去ってたアタシの婚約者サン。



「どれ位の間、眠ってた・・・・?」
あの後。リナの手術がああなって・・・・。
ブラックアウトしたところまでは覚えている。
その張本人が目の前に居て泣きそうな顔をしながらこちらを見ている。
まあ、簡単に考えれば『助かった』ということか。彼女はしっかりと手を握ってくれている。
「馬鹿!!なんて無茶したのよ!!肺を取り出した身体でアタシの手術にのこのこと出てくるなんて!!!」
泣きながら彼女は彼の胸にすがり付いてきた。しかし、ガウリイは事態が飲み込めないが、やおらぽんと手を打ち。
「あ〜、わりイ。俺の肺、お前にやれなかった。」
と、本当に申し訳なさそうにのたまう。
「え・・・・・?じゃあ、いったい・・・・・・?」
困惑したリナにそっとドアの方を向かせるガウリイ。
「アイツだよ・・・・。」
リナは我が眼を疑った・・・・・・。
「け・・・・・・・い・・・・・・・ん・・・。」
そこには青い病院の備品のパジャマを着、片腕に輸血を受けたまま進んでくる彼女の実兄・・・・。ケインの姿があった。
「よお。リナ。俺よりも元気そうで何よりだぜ。」
にっぱあ、っと笑うケイン。その後ろにアメリア、キャナルもしたがっている。
「ケイン兄さんね、進んで姉さんの為に臓器を提供したの。でもね、姉さん。自分を責めないで。もしも・・・・。もしもキャナルが姉さんのような病気になって姉さんの臓器がキャナルに適合する、って言われたら・・・。姉さんだってケイン兄さんと同じことキャナルにしてくれるでしょ?」
言って悪戯っぽく微笑む末の妹。
全くその通りである・・・。そして、それ以上の説明は不要だった。
「グレイシア姉さんとルナ姉さん・・・・。来れなかったんですけど・・・。
責めないで下さいね・・・。アリシアおばあちゃんのお墓にお祈りにいってるんですから・・・。」
アメリアのキャナルに続ける。
「・・・・。ケイン兄貴・・・・。お願い・・・・。傷を見せて・・・・。」
こみ上げてくる物をこらえるようにリナは言った。
そっと胸元をはだいて傷をあらわにするケイン。
目立ちこそはしないが・・・・・。白い傷跡・・・・・・・。
リナはただ・・・・。大好きな兄の傷跡をそっとなぜる事しか出来なかった。
ケインはずっと側に居てくれてたんだ・・・・。ガウリイと一緒に。
「ガウリイの旦那とキャナルにも礼を言っとけよ。あと、執刀医のゼルガディスさんにも、な。」
照れ臭そうにケインが言った。
「リナ姉さん、キャナルはね、この子の一番大切な『ソテちゃん』を手術室に一緒に連れて行かせたんですよ。まあ、蘇鉄の木が置いてある手術室ってのも聞いた事ありませんけれどもね。」
感慨無量、と言った感じでアメリアが説明する。そして、続ける・・・。
「で・・・。ガウリイさんは一時リナ姉さんが危篤状態に成った時・・・・。
規定を無視して450mlも輸血してくれたんですよ・・・。血液型同じだったんですしね・・・。もっとも一向に良くならないリナ姉さん見て気絶しちゃいましたけれどもね。」
「で。ゼルガディス先生のご活躍で一命を採りとめた、ってわけだ。」
ケインが面白そうにガウリイを眺めながら続けた。






「ねえ、お医者サンにはならないんじゃなかったの?」
リナは彼女の車椅子を押す人物に尋ねる。
「ああ。ならない。リナ以外の奴の医者には、な。」
なるほど。手術中にしっかりと手を握ってもらえたのは何よりものオペだった。
「それとり、お前こそ知らない奴の嫁にはならないんじゃなかったのか?」
鸚鵡返しの質問にリナは動じる事も無く・・・・
「今更あたしのお医者様を『知らない人』呼ばわりしちゃばちがあたるわ。」
と、だけ答える。
きけば・・・。リナが守り抜こうとした12歳の少年の手術も無事成功したと言う。
「・・・・。なあ。リナ。俺が何で飛行機嫌いなのかわかるか?」
「わかんない。それに、あたし飛行機好きだもん。」
子供のような返答。
「それはなあ、空よりも海、飛行機よりも船の方が好きだからなんだ。リナは海と航海、嫌いか?あの後名、俺お前に言われた通り頑張ったんだぜ。夢だった航海士になるために!!」
バン!!とリナの目の前に一級航海士の免許書を見せつけるガウリイ。
「リナは海、嫌いか?」
同じ質問を繰り返す。リナは一寸考えたように子首をかしげて・・・・・
「解らない。船なんて乗った事ないもの。」
「なら・・・・。絶対に好きにさせてやるよ。」
「約束!!」
「ああ!!」

その日は・・・・。空も海も眩しいくらいの青さだった。

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5034後書きLINA 10/2-19:59
記事番号5033へのコメント
臓器移植法案について・・・・・云々・・・・。


ぶち切れました・・・・・。こんな事小論文に書けって言ったて、難しすぎる!!
ってなわけでこんな話が登場しました。
臓器移植にしろ、いじめにしろ、裏口入学にしろ、金銭トレードにしろ・・・。
ディープな用語使ってる割にはストーリー展開が安易なご都合主義だったような。
ケインくん役得だSか損な役だかナンだか解らないし・・・・。
では、さらばです・・・・。

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5072Re:後書きTRYNEXT E-mail 10/4-11:17
記事番号5034へのコメント
ども、TRYNEXTです。

毎度の事ながら、良かったですよ♪
今度はほとんどの人が血の繋がり持っちゃっいましたね。(^^;)
臓器移植とか難しいことは良く分かりませんが、
・・・・・・そおいえば、前もリナちゃん身体弱かったような・・・・・・。
まあいいか。
ほんとにあたしはLINAさんの小説好きです♪

次のを楽しみにしてます。(自分のは?・・・・・・待ってて下さい^^;)


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5100Re:後書きお礼LINA 10/4-21:47
記事番号5072へのコメント
有難うございました。
個人的にリナって可愛い(?)妹っていうイメージがあって、ケインは
口が悪いが頼れる優しい(?)兄貴ってイメージがあるんです。
(ナンなんでしょう・・・この?マークは・・・・・。まあ、いいか。)
それにレイルって裏でなんかやってそーなイメージがどーも抜けない・・・。
ゼルがお医者サンってのはいーとしてもガウリイが医者になったら・・・。
惨殺されますね・・・・。医療ミスで・・・・・。
やっぱりアメリアは一番可愛い妹が一番ですね。
私自身も臓器移植とかについては医療系の進路の人に聞くまであまり考えてませんでしたね(汗)
次回作のリナはバリバリげんきにします( 汗)
では。