◆-グリーンリーフ1-Merry(11/7-10:36)No.5560
 ┣君の日常5-Merry(11/8-19:20)No.5578
 ┃┣Re:君の日常5-ひなた(11/10-04:45)No.5593
 ┃┃┗Re:君の日常5-Merry(11/11-23:33)No.5613
 ┃┣君の日常6-Merry(11/21-10:02)No.5666
 ┃┃┗Re:君の日常6-T−HOPE(11/21-23:03)No.5670
 ┃┃ ┗Re:君の日常6-Merry(11/22-11:29)No.5674
 ┃┣君の日常7-Merry(11/23-13:10)No.5681
 ┃┗君の日常8-Merry(12/5-11:32)No.5728
 ┣読んで下さい-Merry(11/8-20:02)No.5579
 ┃┗無事に連絡がきました-Merry(11/12-23:30)No.5623
 ┣グリーンリーフ2-Merry(11/11-23:30)No.5612
 ┣グリーンリーフ3-Merry(11/12-23:27)No.5622
 ┗悠久の風4-Merry(11/14-20:22)No.5637
  ┣Re:悠久の風4-翼月 星(11/15-01:36)No.5640
  ┃┗Re:悠久の風4-Merry(11/15-22:02)No.5649
  ┗悠久の風5-Merry(11/21-19:31)No.5668
   ┗悠久の風6-Merry(11/21-19:32)No.5669


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5560グリーンリーフ1Merry E-mail 11/7-10:36

ネタにつまったんで、こんなのかいてみました。よければ読んでみて下さい。

グリーンリーフ
汝の日常を愛せよ

「ああっもうこんな時間!!アメリアっなんであたしの目覚ましとめちゃうのよ」
「そんな事言ったて…リナさんの事起こそうと思ったんですもの」
夕焼けが空を染め出した頃の色の髪を持つ、眉目の麗しい、ルビーのような瞳の持ち主である美少女が、急いで制服に着替えている。その美女とはあたしの事なんだけど。リナ=インバース、今年で十八歳。緑葉学園高等部三年生に在籍中。顔由、スタイル由、性格由の三拍子そろったあたしに恐いものなんてない。そう、世界はあたし中心に回っている。
そのはずなのだが、どうやらそうはうまくいかないようだ。あたしは寮生活をしているのだが、よりによって2人部屋の同室の住人のアメリアが、あたしの目覚まし時計を無断でとめてしまったので、おかげであたしは寝坊したのだ。
「それなら責任もって起こしなさーい」
「だって、ブローに時間がかかったんです」
そう言えば、気合いがこもっているぞそのうちまきのおかっぱに。アメリア=ウィル=テスラ=セイルーン、今年で十八歳。あたしと同じく高等部三年所属。夜空を切り取ったかのような髪の色に、それと同じ色の瞳。あたしほどではないが、充分美少女といっても過言ではなかった。
あたし達は急いで食堂に走ると、いつものおばちゃんに、パンだけもらうと、それをほおばりながら寮の長い廊下を駆出した。
「ああっ廊下を駆けるなんて正義のする事ではないですっ」
「何いってんの!?それならアメリアは遅刻でもすればいいじゃない」
「それも悪です!!」
アメリアがいっている事をいちいち相手しながら、下駄箱で靴に履き替えた。スリッパを投げ入れて、あたしは玄関から飛び出した。後十五分で始業だ。駅まで走って五分、隣の駅まで電車で五分、学校までの道のりを全力で坂を駆け上がれば五分。体力にすべてがかかっている。あたしとアメリアは、駅までの道のりを並んで走り出した。
私立緑葉学園。大昔は女子校の名門進学校だったこの学校も、何年か前から共学になっている。金持ちのお嬢様が通う学校だったようで、いまだにそのけが残っているのでこの学校に在籍しているというだけで、いいとこの出身であると思われがちだった。
「おはようございますリナさん」
駅から降りて、学校までの長い坂道をかけていると、目の前にいた男子学生があたしを見て丁寧に挨拶をしてきた。すぐにあたしは誰だか分かった。朝から厄介な奴にであったものだと思いながら、あたしは一応礼儀的に挨拶を返した。
「おはようゼロス、あんたこんなところでのんびりしていていいの?遅刻じゃなくて?」
すると、糸目のようだった細い切れ長の目が見開く。彼は女性徒に人気で、その大半を、その宵の開ける寸前のような色をした瞳が、魅了しているといってもよい。漆黒の闇よりも濃い色の髪が風になでられ、わずかにゆれた。
「何いってるんですか、リナさん 昨日先生が、今日は、先生方の健康診断だから始業が遅くなるっていっていたじゃありませんか」
そういえば言っていたような…?
「アメリア、知ってた?」
「そう言えば…そんな話もありましたっけ」
「そんなっもっとゆっくりしていられたんじゃない!!あたしのご飯―!!」
あたしはじとめでアメリアに抗議した。それを見て、ゼロスがくすりと笑う。
「ほんと、よく食べますよね、リナさんて またその食べっぷりが魅力的なんですけど」
ゼロスが顔の高さをあたしと同じにして瞳を覗き込むようにいった。女性徒に、人気がある瞳であるだけに、あたしはどぎまぎしながらその視線からはずれようと顔をそらした。そこには、アメリアが意味ありげに笑っていた。
「じゃあ、お邪魔しちゃ悪いですから、あたし先にいってますね」
「ちょ…ちょっ」
ちょっと、アメリア!といおうとして、ゼロスの白い手によって口をふさがれた。こいつ、絶対人をからかって楽しんでるわね。
「何よ」
「アメリアさんの好意を無にしちゃいけませんよ それに僕はリナさんと2人っきりで登校するほうが好きですから」
恥ずかしい台詞をよくも平然と言えるわね。
「リナさん、さ、いきましょ」
ゼロスはあたしの手を取ると、正門のほうに歩き出した。
いつからこいつこんな事をするようになったんだっけ?
あたしは、厄災ともいうべきゼロスとはじめてあった時のことを思い出そうとした。それは確か、一年ほど前、ちょうどその年は体育祭に当たる年で、足が速く運動神経も当然良いこのあたしが、スウェーデンリレーの選手に選ばれた時の事だ。うちの学校は四つの組つまり、赤、青、黄色、緑ブロックに分けてそれを争わせる方式を取っているから、一学年が八クラスあるので、二クラスづつそのチームに編成される。それで、1−Aだったうちのクラスと、1−Fだったゼロスのいるクラスが抽選により赤ブロックに決まったのだ。それで、1−F代表のリレーの選手ゼロスと知り合ったというわけだ。
まぁ、第一印象は最悪だったわけだから、知るうちに失望するなんて事はなくなったけどね。


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5578君の日常5Merry E-mail 11/8-19:20
記事番号5560へのコメント
君の日常5

「どうしたんですか?リナさん」
「な…なによアメリア」
「だって、顔がにやけてますよ」
とりあえず、ゼロスと修好状態になったリナは、学校からかえって来るなり、出くわしたアメリアにからかい半分で声をかけられてしまったのだ。
「そんなことないわよ」
「ははーん、ゼロスさんと何かありましたね 隠すなんて正義じゃないです」
「何いってんのよアメリア!! なんでゼロスと何かあるとにやけなきゃいけないのよ」
「まぁまぁ ところで、お暇だったら遊びにいきませんか? みんなで、久しぶりに食事にいこうってガウリイさんたちがいっていたんですが」
「いくいく、で、今日はどこの料理?」
「インド料理だそうです ガウリイさんがおいしい店を発見したとかいって」
「ガウリイが言うのならおいしい店でしょうね」
リナははずむような足取りで自分の部屋に戻った。その後ろ姿にアメリアは温かいまなざしを向けていた。


「あーおいしかった」
十分すぎるほどのインド料理を味わってお店から出ると、もう、午後九時を回っていた。それには、白銀の星星が降り注ぐかのように瞬いている。リナは軽く伸びをして、乗ってきた車に一番に乗り込んだ。ワゴン車タイプの車で、ゼルガディスの持ち物なのだが、お酒を飲んでしまったためにフィルが運転する事になった。
「ゼロスさんも誘えばよかったですね」
「何でそこにゼロスが出てくるのよ」
「だって、あの人も私たちの家族みたいなものじゃないですか」
「そうだのう ゼロス君にはいつもご飯作ってもらってるしな」
「フィルさんまで!!」
リナが顔を赤くして反論している。その後ろには、ゼルガディスとガウリイが座っていた。
「おい、気付いているか?」
ゼルガディスが、隣にすわっているガウリイのほうを向かないようにして小さな声で話し掛けた。それと変らぬ態度と声でガウリイは答えた。
「ああ、結構な人数が尾行してきているようだ」
「なにが狙いだ?リナか?アメリアか?」
「俺達全員じゃないのか?」
「何にせよ、プライバシーの侵害にはそれ相応の仕返しをしなくてはな」
そういうと、何気なくゼルガディスは運転席に座っているフィルに話し掛けて、人目の少ない裏通りに向かって運転してもらった。そこで尾行している奴等を叩きのめそうというのだ。
うら通りをしばらく走っていると、突然空から轟音が響いてきた。ホバリング音からして、ヘリコプターが低空飛行しているようだ。ガウリイが不審に思って車の窓から顔を出した。
「何だよ、あのヘリ?!民間用じゃないようだぞ」
「何でそんなものがこっちに来るのよ?」
ガウリイのほうに振り返ってリナはきいた。
「まさか本気で俺達を相手にしようというらしいな」
ゼルガディスが同じように夜空を見上げていっていたが、手直にあった空缶を手にとって、リナに渡した。
「リナ、ヘリを落としてみろよ」
「ゼルガディスさん、そんな事していいのですか?相手は何もしてませんよ」
アメリアの忠告にフィルも運転しながら肯いた。
「もうすぐ海岸のほうに出るからそれからにしてはどうかな?」
「そんな悠長な事いってられないみたいだぜ!!」
ガウリイの台詞を言い終わるか終わらないかのくらいにその怪しげなヘリからミサイルが発射された。フィルがとっさにハンドルを切って事無きを得たが、道路に命中したミサイルは轟音とすさまじい光を発して爆発した。
「ちょっと、ちょっといつから自衛隊は、いきなり民間人にミサイルを発砲するようになったのよ?!」
すごくまともな意見をリナは夜空を見上げてつぶやいた。
「そんなこともいってられないぞ!そらきた!!」
「ゼル!!いちいち解説しなくても分かるわよ!」
「どうして自衛隊のかたがたはこんな事をするんです?!そんなの正義じゃないです」
アメリアが必死にシートにしがみつきながら抗議の声を上げた。
「いつまでもやられっぱなしってわけじゃないわよ」
リナは、ゼルガディスから飲みかけのジュースの缶を奪い取ると、そのルビーのような瞳を不敵に輝かせると、ヘリコプターのプロペラの接合部分めがけてなげた。軽くボールを投げるモーションで、空高く舞あがったジュースの缶は、そのままヘリコプターのプロペラを切断して、落ちていった。ヘリコプターからは煙と、オレンジ色の光が出ていた。
「ま、こんなもんね」
「俺のジュース…」
リナがほっと息をつくのと、恨めしそうにリナを見つめるゼルガディスは、一瞬の後、されにヘリコプターが増えている事に気がついた。
「超過勤務手当目当てでしょうか…?」
「日本人は仕事にまじめすぎるってこういうところから分かるわよね」
危機感迫らない会話を仲良くリナとアメリアが繰り広げていると、ガウリイが叫んだ。
「これはよけられないぞ」
「逃げるのじゃ!」
「俺の車が…」
「いいからいいから」
「どうしてあたしがこんな目に…」
車外に飛び出してすぐ、背後で爆発が起こった。続けて、車が爆発した。とっさに身構えたが、爆風によって、全員吹き飛ばされた。無敵の運動神経を誇る彼らだから無傷で着地をしたから良いものを、一般人だったら打撲は免れなかったであろう。
「また来たぞ」
「しつこいと女の子に好かれないわよ!!」
リナが言いたい事を良いながら巧みにミサイル攻撃をかわしていった。
「海に飛び込むのじゃ!」
「どうしてよフィルさん?」
「いつまでも こうしているわけにはいかん 水中にはミサイルは届かんし、暑いしちょうど良いじゃろ?」
落ちたミサイルの位置が悪かったのか、五人はまとめて爆風で巻き上げられ、海中へと落下していった。
欠ける事のない月が、地上の騒がしさを嘲るように見つめていた。


「これじゃ、水も滴る良い男になってしまったのう」
水中から脱したフィルが、濡れた髪を掻き揚げてつぶやいた。
「滴らせるなら独りにしてよ あたしにはそんな必要ないじゃない」
同じようにぬれねずみとなったリナが長い髪をまとめながら反論した。
「これでミサイルには撃たれなくなったのだからよしとしましょうよ?」
「そんな事も言っていられないぞ、アメリア」
「どうしたのよ?ゼル?」
「何か船らしきものがこっちに来るぜ…」
ゼルガディスの言葉通り、ヘリポートの着いている船がこちらにやってくる。救助しに来てくれたわけではなさそうだ。
「甲板に、いかにも怪しい男がいるみたいね」
「夜なのにサングラスに黒いスーツだもんな、俺が見たって怪しいと思うよ」
「ガウリイ知恵がついたのね!」
「あのな…」
その船は、リナたちに大量の水をかけながら近づいてきた。甲板にいる男からスピーカを通した声が聞こえた。
「こっちに来た前、そうすれば命は助けよう」
「何で…」
反論しようとするリナをゼルガディスがとめた。
「ストレス解消にこいつらをつぶしてしまおう」
耳元でゼルガディスがささやいた。
「そうね…じゃ、一番に上がるのはあたしね」
リナの目に好戦的な光が輝いた。口元に余裕の笑みすら浮かべて甲板に上がるために水中だというのに跳躍した。水の抵抗が全く無かったかのように美しく飛び上がり、揺らぎもせず着地した。いつのまにか甲板には、屈強そうな男達が数人男の周りに待機していた。彼らの手にはそれぞれ武器が握られていて、サングラスの男は銃すら手にしていたのにもかかわらず、銃口をリナに向ける暇も無く、リナに蹴り上げられてしまった。それを合図にみんないっせいに這い上がった。空中を舞う拳銃を海中から飛び上がったゼルガディスが受け止めた。実弾が入っているのを確認して、にやりと悪魔の微笑みをすると屈強な男達の武器を狙って放った。
鋭い音がして、あっという間に2人の男から武器が手放された。それをすかざず、セイルーン親子が止めを刺していく。
「ゼルガディスさんいつのまに拳銃なんて使えるようになったんですか?」
「モデルガンしか使えん」
「きゃーその程度で銃を乱射しないでくださいーっっ」
アメリアの悲痛な叫びを無視してゼルガディスは次々と男達の武器を破壊していった。それにすかさず止めをいれてしまうアメリアであった。
ガウリイはゼルガディスがはじき落としたこん棒を拾い上げ、木刀を構えるようにして持ち近くにいた男を薙ぎ払った。弾き飛ばされるようにして、海中に没していく。
「この船のっとるとしよう」
ゼルガディスがいって、みんなが肯くのを見たあと、船長室に駆け込んだ。たいした抵抗も受けず占領してしまうと、ゼルガディスは操縦をはじめた。
しかし、船の操縦の経験の無いゼルガディスは、すぐにつまってしまい船を大きく揺らしてしまった。リナたちが落ちないように足を踏ん張りながら船長室になだれ込んできた。
「ゼル、あんた、船の操縦は?」
「できない」
「酔ってんじゃないの?言動がまともじゃないわよさっきから!」
「俺は素面だ」
「わしに代わるのじゃ!」
フィルがゼルガディスを押しのけるようにして、操縦管を取ると安定した航行となった。
「そう言えば、父さん手趣味でモーターボートの運転ができましたね」
アメリアが尊敬のまなざしで父親を見た。
「しかし、これはモーターボートとは違うようじゃ…」
「不安にさせるような事言うなよ」
「前にな…」
フィルが落ち着き払って前方を指すと、津波用の防波堤がこちらに迫ってきている。どこかの陸地に激突するというわけだ。
「そんな事悠長にいってないで、飛び降りるわ!」
リナが先陣を切って飛び出した。着地先の陸地で何があっても良いように用心するためだ。殿をフィルが務めて、その間をアメリア、ガウリイ、ゼルガディスの順で飛び出した。
「くっさーい ここ夢の島ね…」
リナが鼻をつまみながら島の周りを歩き出した。身長の倍くらい有りそうなフェンスの向こう側には、人間が生み出したゴミが山のように積み上げられていた。
「ここにいても仕方が無いフェンスを乗り越えて向こうにいかないと逃げ場が無くなるな」
ガウリイが周りに気を配りながらフェンスをつかんだ。
「分かった、あたしが一番でいくわ」
リナがガウリイを踏み台として軽々フェンスのてっぺんによじ登った。そのまま飛び降りる。続けてアメリア、フィル、ゼルガディスそしてガウリイという順番に上がった。全員が上り終えたとたん背後からホバリング音と突風が吹きつけてきた。
「もう追ってきたみたいですう」
「走るんだアメリア!」
ゼルガディスがぼうっとしているアメリアの手を引っ張って走り出した。それが合図となって一斉に駆出すと、ヘリコプターからミサイルが発射された。
「ゴミと一緒に始末しようなんて、なんて効率の良い事を考えたものじゃ」
「感心している場合じゃありませーん」
すぐ近くでは、光と爆発音と炎が躍り上がっている。アメリアの背後で今までとは桁違いの光の柱が上がった。
「アメリア!」
「しまったっ ゴミのメタンガスに引火したんだ!!」
「みんな散れ!」
それぞれが光の柱から逃れるように四方に散った。続いて炎の柱と轟音が響いた。
光りに目を奪われてお互いがどうなったのかしばらくは分からなかった。永遠とも思える時間、本当は一分ぐらいなのだろうが、が過ぎて、リナが這いつくばったゴミの山から体を起こした。
「みんな?生きてる?」
「げほっ ゴミが口の中に入っちまったぜ」
ゴミの所為でいくらかくすんでしまった金髪の長身の青年が答えた。
「そんなのどうやったら入るんだ?」
その隣で、銀色の髪をなで上げながらゼルガディスが立ち上がった。
「わしを引き起こしてくれ」
後方から、フィルのくぐもった声を聞いてガウリイとゼルガディスが駆けつけると、ゴミの山にフィルが半分埋まりかけていた。さっきの爆発で崩れたゴミをかぶってしまったようだ。
「ねえ?……アメリアは?」
リナは声を震わせないように気を付けながら聞いた。
誰も何も言わない。
爆発の一番近くにいたのはアメリアだったようだ。まさか、巻き込まれて…
最悪の事態を考えたリナはそれを振り払うように首を振ると、ゴミの山を駆け上がった。
「アメリア!どこ!!」
「返事をするんだ!アメリア」
ゼルガディスは、文字どおり顔を蒼くしながら少女の名を呼んだ。
少し離れたところから、アメリアのわずかな呟きが聞こえたような気がした。ゼルガディスは、一目散にそこをめがけて走り出した。
こえのした先には、ただゴミの山があるばかり、アメリアはおろか、人影すら見えない。
「くそっ…アメリア…」
ゼルガディスは地面に膝をついてこぶしを叩き付けた。
「なあ、おい、ここから声がしないか?」
ガウリイが、捨てられた冷蔵庫を指していった。
「ガウリイ、いくらなんでも…」
リナがとめても、ガウリイは良いからといって冷蔵庫の扉を軽くたたいた。するとどうだろう、返事があるではないか。
ガウリイががちゃりと冷蔵庫のドアを開けると、中からアメリアが飛び出してきた。
「助かりました ありがとうございますガウリイさん」
「例ならゼルにいってやれよ、すっごく心配していたんだぜ?」
こういう事には何故かよく気が利くガウリイは、アメリアの背中を、膝をついて座っているゼルガディスのほうに押し出した。
「あの…ゼルガディスさん」
返事をせず、ゼルガディスはアメリアを見ないようにして耳を傾けた。
「心配かけて申し訳ありませんでした」
無視されていると思ったのか、アメリアの声が硬い。返答が無いので、アメリアがリナたちのほうに行こうとした時、その背中につぶやくような声がかかった。
「無茶をするな」
アメリアは、最上の笑みを浮かべて肯いた。
「良い雰囲気のところ申し訳ありませんが もう追手が来たようなので、逃げるわよ!!」
その後、数十分にわたっておいかけっこが繰り広げられていた。


「疲れた…」
ようやく攻撃の手が休んだのか、ヘリコプターはいまだ上空にいるが何もしてこない。リナたちは、思い思いに腰掛けてつかの間の休息を楽しんだ。
「しかしこのままではな」
「でも、あの力を使えばますます追ってくると思います」
「生体兵器に使えるからのう」
ゼルガディスは、リナに、ビールビンを渡していった。
「ヘリ落しをもう一度見せてくれないか 手本にしたいんでな」
「OK よくみときなさいよ」
リナは軽く中に投げ上げ、ビンの首の部分をつかむと、ヘリコプターのプロペラの接合部分に、軽いモーションをして手首をひねっただけで命中させた。
「必殺ヘリ落し!!」
ヘリコプターからオレンジ色の光と、続いて爆発音が聞こえ、高度を下げていくのが見えた。
「なるほど」
ゼルガディスは、手にしていたビールビンを地面に落とすと、手直にあった勉強机を頭の高さにまで軽々と持ち上げた。
「ちょっと、ゼル、それは過激すぎるんじゃない?!」
リナの言っている事を無視して、もう一気のヘリコプターにゼルガディスは机を命中させた。
どうやら車の恨みがこもっているようだった。
「逃げるぞ、リナ」
いつもよりちょっとハイになっているゼルガディスに促されて、リナたちは、夢の島を後にした。まだまだ夜は始まったばかりだった。
つづく


ゼロスとの甘い話を期待していた人ごめんなさい。(いるのか?)こうなってしまいました。

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5593Re:君の日常5ひなた E-mail 11/10-04:45
記事番号5578へのコメント

こんにちわーっっ!!ひなたです♪よみました☆

ゼルがキレててナイスでした☆(笑)
ゼルもけっこう好きなんですよ〜あたし。
んで、アメリア・・・いつのまに冷蔵庫に・・・?(笑)

楽しませていただきました☆続き、まってますねん☆

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5613Re:君の日常5Merry E-mail 11/11-23:33
記事番号5593へのコメント
ひなたさんは No.5593「Re:君の日常5」で書きました。
>
>こんにちわーっっ!!ひなたです♪よみました☆
>
こんにちは
>ゼルがキレててナイスでした☆(笑)
今回のコンセプトはゼロスとリナ以外の活躍という事だったのですが?どうでしたか?
>ゼルもけっこう好きなんですよ〜あたし。
>んで、アメリア・・・いつのまに冷蔵庫に・・・?(笑)
>
爆発で吹き飛ばされてついでに入ったのです。
>楽しませていただきました☆続き、まってますねん☆
>
そう言ってくれると嬉しいです。

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5666君の日常6Merry E-mail 11/21-10:02
記事番号5578へのコメント
君の日常6


「ぐわぁっようやくかえりついた…」
ガウリイがセイルーン家の玄関で腰を下ろした。
ほかのもの立ちも、それぞれに疲労の表情をして家に入っていく。あの後、ちょっとそこラ変にある無断駐車の車を盗んだりぜず、公的機関の電車を使って帰ってきたのだ。幸い、終電はまだのようだったが家に帰りついた頃には、すでに日にちがかわっていた。諦めたらしく追撃はしてこない。だからこうして家に入る事ができるのだ。
「ちょっと、今日のはしんどかったわね」
リナがそういったが返事はない、それをする気力もないのだろう。それぞれはそうそうに部屋に入っていった。
リナは自分のベッドに倒れ込む前、冗談とも本気ともつかない一言を残して倒れ込んだ。
「あたしの睡眠を妨害する輩がいたら、即刻あの世に送ってあげる」
アメリアは、リナより少しはましではあるが、精神が兄弟といわれてもおかしくはない一言を言った後部屋に入った。
「無用に起こしたりしたら、正義の鉄槌が飛びます」
半分酔いが抜けないゼルガディスをガウリイが面倒良く部屋までつれていって、ベッドになげすてると、そこで力尽きたのか、床に倒れ込むようにして夢の世界に旅立った。
あのフィルでさえこんな事を言った。
「いまは、輝かしい長い未来よりも、一睡の睡眠がほしい心境じゃ…」
セイルーン家はこうして騒々しい夜に別れを告げたのだった。


次の日、休みの日でもないのに早く来て朝食を作り出した。その良い匂いに導かれるようにして、セイルーン家の人々は身だしなみをもろともせず、食堂になだれ込んだ。そのいつもと違う様子に察しの良いゼロスは、何が起こったのか大体見当がついているようであったが、本人の口からききたいらしくその全く崩さない切れ長の笑顔で、言った。
「たくさん作りましたから食べて下さいね 面倒な話はおなかが空いている時にしてもつまらないですし 食後に、じっくり聞かせてもらいますから」
「何の事?ゼロス」
リナが下手なごまかしをした。
ゼロスは、皿に盛られているスープが飛び散るのではないかと思うほどテーブルをこぶしでたたくと、一気にまくし立てた。おそらく何を言うか考えてあったのだろう。
「記憶にありません、なんて一昔前みたいな政治家のような台詞言わないでください リナさんがそんな低脳の言う事を口にするなんて失望しましたよ 大体、昨日は何だったんですか! 電話してもでないし、この家には五人も人がいるのに出ないなんてことはおかしいですからね 今日の朝刊を調べてみれば、東京湾謎の炎上事件なんて載っていますし、いつもはこんな格好で出てこないあなたがたが、今日は難民の群れですよ それでは リナさんのパジャマ姿はそそるといえば、そそりますが……じゃなくて、本当に心配したんですから」
「いや…あの…その 心配かけてごめんゼロス」
口ではかなわないと思ったのか、あっさりとリナは謝った。多少引っかかる事を言ったようだったが、まあ心配してくれた事には変らないわけで、おとなしくしている事にした。
「あのリナでさえゼロスには頭があがんないようだな」
「それもそうだろう」
ガウリイとゼルガディスが今の光景を見てささやきあった。
食事が終わって、ゼロスはリナから事情徴収をしようと思ったらしく、学校の支度をして速く行くように急き立てている。リナも珍しく言う事をきいていた。
「何があったんですか?」
リナが着替えているためにドア越しに話し掛けるゼロス。扉によりかかり、闇色の瞳に影が落ちる。憂いを帯びたその表情は、まだ誰も見た事がないゼロスの顔。
「自衛隊にね、追いかけられていたの」
「それで…?」
ゼロスが促した後、すぐにリナの悲鳴が聞こえた。ゼロスは躊躇せずリナの部屋の扉を蹴破った。
「リナさん?!」
視界に飛び込んだのは、尻餅を搗くように座り込んでいる着替えている途中のリナと、ベッドのあるほうの壁の窓が開いて、カーテンがなびいているというだけだった。ゼロスは、リナの体に注目しないようにしながら、リナに何があったのかを尋ねた。
「な…なめくじ…」
「はい?」
「ナメクジがそこの窓にいるのー!!」
恐怖のためすっかり幼児化してしまったのか、リナが涙を浮かべながらゼロスに抱き着いた。ゼロスはその、リナの華奢な体を布地越しに温かいと思いながら、何故かその温かが、湧き出る勇気と自信につながっていった。
「リナさん、ナメクジなら取って差し上げますから、ちょっと離れて下さい」
リナは、まるで幼児がするみたいに、いやんいやんと首を横に振っている。
「あの…ですね」
さして困っていなさそうにつぶやくと、リナを首に巻きつけたまま、ベッドに上り、窓の枠を見た。確かにゼロスの小指ほどの長さのナメクジがこちらに向いて挨拶をしているようだ。漆黒の髪を持つ青年は、窓から手を伸ばして近くのきの小枝を一本折るとそのナメクジを払い落とした。
リナを安心させようと振り向くと、今のとんでもない状況に気がついてゼロスは、しばらくの間硬直した。
ワイシャツを着てしかも半分はボタンのしまっていない、そこから伸びる形の良い足はむき出しで、両手は自分の首にしっかり巻きつけられていて、瞳は硬く閉じられていて、めの端にきらりと光る涙がついている。いつもは奇麗に解かされている紅茶色の髪は、今日は優しく波を打つように少し乱れている。そんな少女が目の前に、しかもベッドの上にいるのだ。
ゼロスは我知らず喉が鳴っている事に気がついた。ぼうっとした意識の中でそっとリナのワイシャツに手をかける。
もう少し引っ張っただけで、リナさんの……
ひぱっる直前で、ゼロスは手を止めた。
こんな事をしたら、リナさんからの絶大な信頼を失う事になる。
そんな考えが頭を過ぎったからだ。ゼロスはただリナの体をかき抱いて、耳元でささやいた。我ながら声が熱くなっているものだと、内心で苦笑しながら。
「リナさん、ナメクジは取りましたから」
その声と同時にリナは我に返ったらしく、この状況にゼロスを突き飛ばすようにして解放された。ぺたんと座り込み、胸元を押さえた。
「リナさんが離れて下さらなかったのですよ」
「何勝手な事を!とにかく出てって!!」
顔のみならず耳たぶまでその意思に反して赤く染めている。ゼロスは苦笑しながら立ち上がった。
「その姿もとても魅力的だとは思いますが、僕以外の人の前ではしないでくださいね」
「な……っ!!あんたのまえでもしないわよ!!」
リナが手直にあった枕をつかんで投げつけるそぶりを見せたので、ゼロスはそのまま部屋から出て逃げおおせた。枕が、扉にあたり抗議の声を上げた。その音と同時にリナは緊張の糸をほぐしふとつぶやいた。
「あたしって、魅力的?」
鏡に自分の姿を映してみた。その姿が、何故かいつもの自信あふれた姿とはかけ離れたものであった。


「…で、訳もなく襲われたと?」
「そうよ」
リナはアメリカンクラブサンドをほおばりながら答えた。ここは、学校のカフェテリアである。お昼になったので、わざわざゼロスがリナを呼び出して一緒に食べているのだ。テーブルには山のように食器が積み重ねられている。このほとんどを紅茶色の華奢な体をしている少女が食べたのだった。
「以前よりも過激になっているところを見ると、相当焦っているみたいですね」
「冥王フィブリゾって戦前の人らしいから、もう年だろうしね」
「……気をつけて下さいね」
「わかってるって」
最後の一口を食べ終えて、リナとゼロスが席を立ちあがってカフェテリアを後にした直後、姿形からいかにも怪しい人物であるという事を広告している独りの男が近づいてきた。
「リナ=インバースさまですね」
「人違いです」
「嘘をつくなっ分かっているんだ」
「なら、きくんじゃないわよ」
リナが無意識のうちに危険を感じたのか、その真紅の瞳が不敵に輝き出している。良い暇つぶしができたと思ったようだ。
「ついでにあなたがゼロス=メタリオムさん リナ=インバースさまの従兄妹ですね」
「ついでとは失礼な人ですね これからは、リナ=インバースの恋人とでも言ってほしいものですね」
「何を言うかーっ」
リナがどこから出したのかスリッパで勢いよくゼロスをはたいた。
「何のようなわけ?」
つまらなかったら吹き飛ばすわよ、とリナの目がかたっている。
「旦那様がお話があるそうです 冥王フィブリゾ様が」
真紅の瞳が微妙に揺れ動き、危険な輝きが宿る。
「良いわ、どこに行けばいいのかしら?」
「私が案内する事になっております」
「僕も行きますよ」
「フィブリゾ様からは、リナ様お独りをとご指名が来ております 今日のところはお引き取り下さい」
「大丈夫よ、ゼロス、心配しないで」
ゼロスは気乗りしない様子だったが、言い出したリナをとめる手段をゼロスは持っていない。
「わかり…ました」
2人の歩いていく後ろ姿が見えなくなった後、ゼロスは急いでアメリアに事の次第を伝えると、リナたちの後を追った。気付かれないように尾行している。
ゼロスは最初からおとなしく待っている気にはなれなかったのであった。

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5670Re:君の日常6T−HOPE E-mail URL11/21-23:03
記事番号5666へのコメント
 こんにちは〜。T-HOPEです。
 今回も、楽しませていただきましたっ。

>リナは自分のベッドに倒れ込む前、冗談とも本気ともつかない一言を残して倒れ込んだ。
>「あたしの睡眠を妨害する輩がいたら、即刻あの世に送ってあげる」

 リナだし・・・本気、でしょうねぇ(笑) 

>アメリアは、リナより少しはましではあるが、精神が兄弟といわれてもおかしくはない一言を言った後部屋に入った。
>「無用に起こしたりしたら、正義の鉄槌が飛びます」

 正義・・・ですか???(^^;)

>半分酔いが抜けないゼルガディスをガウリイが面倒良く部屋までつれていって、ベッドになげすてると、そこで力尽きたのか、床に倒れ込むようにして夢の世界に旅立った。

 ガウリィ君、やっぱし優しいですね〜。
 ・・・んで、力尽きて床で寝ちゃうあたりも、何だからしいですが・・・(笑)

>「記憶にありません、なんて一昔前みたいな政治家のような台詞言わないでください リナさんがそんな低脳の言う事を口にするなんて失望しましたよ 大体、昨日は何だったんですか! 電話してもでないし、この家には五人も人がいるのに出ないなんてことはおかしいですからね 今日の朝刊を調べてみれば、東京湾謎の炎上事件なんて載っていますし、いつもはこんな格好で出てこないあなたがたが、今日は難民の群れですよ それでは リナさんのパジャマ姿はそそるといえば、そそりますが……じゃなくて、本当に心配したんですから」

 そそるって・・・をいをいをい・・・(爆笑)
 思わず、キーボードに突っ伏しそうになりました(^^;)

>「いや…あの…その 心配かけてごめんゼロス」
>口ではかなわないと思ったのか、あっさりとリナは謝った。多少引っかかる事を言ったようだったが、まあ心配してくれた事には変らないわけで、おとなしくしている事にした。

 多少で済むんでしょうか・・・?(笑)

>リナが着替えているためにドア越しに話し掛けるゼロス。扉によりかかり、闇色の瞳に影が落ちる。憂いを帯びたその表情は、まだ誰も見た事がないゼロスの顔。

 ををっ。私、見てみたいです〜〜〜っっっ!

>ゼロスが促した後、すぐにリナの悲鳴が聞こえた。ゼロスは躊躇せずリナの部屋の扉を蹴破った。

 ところで、この扉、後でどうなったんでしょう・・・?
 それが、多少気になりました・・・(^^;)

>「な…なめくじ…」
>「はい?」
>「ナメクジがそこの窓にいるのー!!」

 ・・・・・・(笑)

>恐怖のためすっかり幼児化してしまったのか、リナが涙を浮かべながらゼロスに抱き着いた。ゼロスはその、リナの華奢な体を布地越しに温かいと思いながら、何故かその温かが、湧き出る勇気と自信につながっていった。
>「リナさん、ナメクジなら取って差し上げますから、ちょっと離れて下さい」
>リナは、まるで幼児がするみたいに、いやんいやんと首を横に振っている。

 リナちゃん、可愛いです〜〜〜(はぁと)
 やー、いっつも強気なだけ、こーゆーとこ、新鮮味がありますしねぇ(^^)

>リナを安心させようと振り向くと、今のとんでもない状況に気がついてゼロスは、しばらくの間硬直した。
>ワイシャツを着てしかも半分はボタンのしまっていない、そこから伸びる形の良い足はむき出しで、両手は自分の首にしっかり巻きつけられていて、瞳は硬く閉じられていて、めの端にきらりと光る涙がついている。いつもは奇麗に解かされている紅茶色の髪は、今日は優しく波を打つように少し乱れている。そんな少女が目の前に、しかもベッドの上にいるのだ。
>ゼロスは我知らず喉が鳴っている事に気がついた。ぼうっとした意識の中でそっとリナのワイシャツに手をかける。
>もう少し引っ張っただけで、リナさんの……

 ・・・メチャ、美味しすぎるというか、目の毒な状況ですね〜(笑)
 思わず、こちらまで息をのんでしまいました(死)

>ひぱっる直前で、ゼロスは手を止めた。
>こんな事をしたら、リナさんからの絶大な信頼を失う事になる。

 ちちぃっっっ(をいっ(殴)
 ところで、信頼・・・されてるんですか?(笑)

>顔のみならず耳たぶまでその意思に反して赤く染めている。ゼロスは苦笑しながら立ち上がった。
>「その姿もとても魅力的だとは思いますが、僕以外の人の前ではしないでくださいね」
>「な……っ!!あんたのまえでもしないわよ!!」
>リナが手直にあった枕をつかんで投げつけるそぶりを見せたので、ゼロスはそのまま部屋から出て逃げおおせた。枕が、扉にあたり抗議の声を上げた。その音と同時にリナは緊張の糸をほぐしふとつぶやいた。
>「あたしって、魅力的?」
>鏡に自分の姿を映してみた。その姿が、何故かいつもの自信あふれた姿とはかけ離れたものであった。

 らぶらぶ〜(うっとり〜)ですねっっっ。
 素敵です!

>「ついでにあなたがゼロス=メタリオムさん リナ=インバースさまの従兄妹ですね」
>「ついでとは失礼な人ですね これからは、リナ=インバースの恋人とでも言ってほしいものですね」
>「何を言うかーっ」
>リナがどこから出したのかスリッパで勢いよくゼロスをはたいた。

 二人らしくって、ついつい笑っちゃいます。
 ・・・でも、本当に、何処からスリッパ出てきてるんでしょうねぇ(笑)

>2人の歩いていく後ろ姿が見えなくなった後、ゼロスは急いでアメリアに事の次第を伝えると、リナたちの後を追った。気付かれないように尾行している。
>ゼロスは最初からおとなしく待っている気にはなれなかったのであった。

 次回、二人の活躍ですかっ!?(だったらいいなぁ〜)
 戦いの中で愛を確かめ合う二人っっっ(・・・イッちゃってます。無視してやって下さい(^^;)
 続き、楽しみにしてますね。
 あとあと、「グリーンリーフ」も!
 ・・・それでは。

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5674Re:君の日常6Merry E-mail 11/22-11:29
記事番号5670へのコメント
T−HOPEさんは No.5670「Re:君の日常6」で書きました。
> こんにちは〜。T-HOPEです。
> 今回も、楽しませていただきましたっ。
毎回ありがとうございます。
>
>>リナは自分のベッドに倒れ込む前、冗談とも本気ともつかない一言を残して倒れ込んだ。
>>「あたしの睡眠を妨害する輩がいたら、即刻あの世に送ってあげる」
>
> リナだし・・・本気、でしょうねぇ(笑)
かなり本気です。(笑) 
>
>>アメリアは、リナより少しはましではあるが、精神が兄弟といわれてもおかしくはない一言を言った後部屋に入った。
>>「無用に起こしたりしたら、正義の鉄槌が飛びます」
>
> 正義・・・ですか???(^^;)
>
>>半分酔いが抜けないゼルガディスをガウリイが面倒良く部屋までつれていって、ベッドになげすてると、そこで力尽きたのか、床に倒れ込むようにして夢の世界に旅立った。
>
> ガウリィ君、やっぱし優しいですね〜。
> ・・・んで、力尽きて床で寝ちゃうあたりも、何だからしいですが・・・(笑)
>
>>「記憶にありません、なんて一昔前みたいな政治家のような台詞言わないでください リナさんがそんな低脳の言う事を口にするなんて失望しましたよ 大体、昨日は何だったんですか! 電話してもでないし、この家には五人も人がいるのに出ないなんてことはおかしいですからね 今日の朝刊を調べてみれば、東京湾謎の炎上事件なんて載っていますし、いつもはこんな格好で出てこないあなたがたが、今日は難民の群れですよ それでは リナさんのパジャマ姿はそそるといえば、そそりますが……じゃなくて、本当に心配したんですから」
>
> そそるって・・・をいをいをい・・・(爆笑)
> 思わず、キーボードに突っ伏しそうになりました(^^;)
>
私も書いててやになりました・・・。暴走ゼロスです。
>>「いや…あの…その 心配かけてごめんゼロス」
>>口ではかなわないと思ったのか、あっさりとリナは謝った。多少引っかかる事を言ったようだったが、まあ心配してくれた事には変らないわけで、おとなしくしている事にした。
>
> 多少で済むんでしょうか・・・?(笑)
普段の行動に比べればという事です。
>
>>リナが着替えているためにドア越しに話し掛けるゼロス。扉によりかかり、闇色の瞳に影が落ちる。憂いを帯びたその表情は、まだ誰も見た事がないゼロスの顔。
>
> ををっ。私、見てみたいです〜〜〜っっっ!
>
>>ゼロスが促した後、すぐにリナの悲鳴が聞こえた。ゼロスは躊躇せずリナの部屋の扉を蹴破った。
>
> ところで、この扉、後でどうなったんでしょう・・・?
> それが、多少気になりました・・・(^^;)
>
>>「な…なめくじ…」
>>「はい?」
>>「ナメクジがそこの窓にいるのー!!」
>
> ・・・・・・(笑)
>
>>恐怖のためすっかり幼児化してしまったのか、リナが涙を浮かべながらゼロスに抱き着いた。ゼロスはその、リナの華奢な体を布地越しに温かいと思いながら、何故かその温かが、湧き出る勇気と自信につながっていった。
>>「リナさん、ナメクジなら取って差し上げますから、ちょっと離れて下さい」
>>リナは、まるで幼児がするみたいに、いやんいやんと首を横に振っている。
>
> リナちゃん、可愛いです〜〜〜(はぁと)
> やー、いっつも強気なだけ、こーゆーとこ、新鮮味がありますしねぇ(^^)
>
>>リナを安心させようと振り向くと、今のとんでもない状況に気がついてゼロスは、しばらくの間硬直した。
>>ワイシャツを着てしかも半分はボタンのしまっていない、そこから伸びる形の良い足はむき出しで、両手は自分の首にしっかり巻きつけられていて、瞳は硬く閉じられていて、めの端にきらりと光る涙がついている。いつもは奇麗に解かされている紅茶色の髪は、今日は優しく波を打つように少し乱れている。そんな少女が目の前に、しかもベッドの上にいるのだ。
>>ゼロスは我知らず喉が鳴っている事に気がついた。ぼうっとした意識の中でそっとリナのワイシャツに手をかける。
>>もう少し引っ張っただけで、リナさんの……
>
> ・・・メチャ、美味しすぎるというか、目の毒な状況ですね〜(笑)
> 思わず、こちらまで息をのんでしまいました(死)
>
>>ひぱっる直前で、ゼロスは手を止めた。
>>こんな事をしたら、リナさんからの絶大な信頼を失う事になる。
>
> ちちぃっっっ(をいっ(殴)
> ところで、信頼・・・されてるんですか?(笑)
一応幼なじみですから。この続きをしたら、無視しまくりでしょう。ゼロス君にはたえられません。
>
>>顔のみならず耳たぶまでその意思に反して赤く染めている。ゼロスは苦笑しながら立ち上がった。
>>「その姿もとても魅力的だとは思いますが、僕以外の人の前ではしないでくださいね」
>>「な……っ!!あんたのまえでもしないわよ!!」
>>リナが手直にあった枕をつかんで投げつけるそぶりを見せたので、ゼロスはそのまま部屋から出て逃げおおせた。枕が、扉にあたり抗議の声を上げた。その音と同時にリナは緊張の糸をほぐしふとつぶやいた。
>>「あたしって、魅力的?」
>>鏡に自分の姿を映してみた。その姿が、何故かいつもの自信あふれた姿とはかけ離れたものであった。
>
> らぶらぶ〜(うっとり〜)ですねっっっ。
> 素敵です!
>
>>「ついでにあなたがゼロス=メタリオムさん リナ=インバースさまの従兄妹ですね」
>>「ついでとは失礼な人ですね これからは、リナ=インバースの恋人とでも言ってほしいものですね」
>>「何を言うかーっ」
>>リナがどこから出したのかスリッパで勢いよくゼロスをはたいた。
>
> 二人らしくって、ついつい笑っちゃいます。
> ・・・でも、本当に、何処からスリッパ出てきてるんでしょうねぇ(笑)
>
>>2人の歩いていく後ろ姿が見えなくなった後、ゼロスは急いでアメリアに事の次第を伝えると、リナたちの後を追った。気付かれないように尾行している。
>>ゼロスは最初からおとなしく待っている気にはなれなかったのであった。
>
> 次回、二人の活躍ですかっ!?(だったらいいなぁ〜)
> 戦いの中で愛を確かめ合う二人っっっ(・・・イッちゃってます。無視してやって下さい(^^;)
> 続き、楽しみにしてますね。
ありがとうございます。
> あとあと、「グリーンリーフ」も!
> ・・・それでは。

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5681君の日常7Merry E-mail URL11/23-13:10
記事番号5578へのコメント
君の日常7

アメリアは、今知らされた事をどうしようか悩んでいた。珍しく、ゼロスから携帯に連絡が入ったかと思えば、「リナさんが危ないです」の一言で切れてしまった。もとから危険に自ら飛び込んでいくタイプだから、多少の事は平気だろうけど、ゼロスが連絡を入れるという事はただ事ではあるまい。
しかし、口振りからして、「リナさんは僕が守るから安心して下さい」という自信がみなぎっていた事も確かだ。さて、これで手助けでもしようものならどんな仕打ちがまっているか。
悩むそぶりをしていたが一瞬で答えは見つかった。みんなで連帯責任を取ってもらうという事だった。アメリアは、授業をはじめてサボる事に罪悪感と、仲間を助けるという正義感あふれる高揚した気持ちとが入り交じった気分でゼルガディスとガウリイを探し出した。
「しかし、リナがどこにいったのか分からなければだめだろう」
大学の中庭でアメリアとゼルガディス、ガウリイが顔を寄せ合って相談をしている。
「大丈夫です、リナさんの後をつけているのはおそらくゼロスさんですから」
「だから?」
「あの人のオーラをたどっていけば良いのですよ」
「ま、確かにゼロスは妙なオーラを発してるからな…」
ゼルガディスが苦笑ともいえる表情をした。
「ガウリイさん、そういうの得意でしょ?」
「おう、まかせとけ」
車で追いかけた方が楽だというので、ゼルガディスが車をレンタルして一路追いかける事にした。妙なオーラを発しているゼロスを。


「ふう、困りましたね…」
カッコつけてリナの後を追いかけ始めたゼロスだったが、途中で車に乗られてしまい、見失ってしまったのだ。運悪く、空いているタクシーは通らないし、ゼロスにできる事といえば、車のナンバーを覚える事だけだった。
「横浜ナンバーという事は、やっぱり、鎌倉の御前とかいわれている冥王フィブリゾのところなんでしょうけど」
鎌倉は広い上に、地理に不案内な自分としてはどうする事もできない。いっそのことあの力を使えばたやすく追いかける事はできる。しかし、正体をかくして生活したがっているリナにこういう事をしたとばれれば口すらきいてもらえないだろう。そんな事をゼロスが耐えられるわけもなかった。目立たずできる事といえば、リナがどの方角にいったのか感知を試みるぐらいだ。どういうわけか、ゼロスは身内であるリナのいる場所ははっきりと分かる事ができる。場所さえ分かれば大丈夫だろうと、ゼロスは込み上げてくる不安を無理矢理押し込めた。
とりあえず、電車で追いかけようと駅に向かうと、いかにも怪しい雰囲気を持つ男達が何気なくゼロスを取り囲んだ。
「何のようですか、僕は急いでいるのです」
「ゼロス=メタリオムだな?」
「違います」
「嘘をつけ分かっているんだぞ」
「だったらきかないで下さい」
リナが使った台詞をそのまま口にした。
「これが何だか分かるか?」
話し掛けてくる男の隣にいる男から見覚えのある煙管が懐から出てきた。
これは、母さんの…
ゼロスの顔が、わずかに青くなった。
「ちょっとそこ工事現場まで来てもらおう おとなしくしてないと…」
「わかってます」
ゼロスは唇が切れるほどかみ締めた。ぷくりと血が吹き出て、苦い味が口の中に広がる。男の数は五人。人質さえいなければこんな奴等は単なる雑魚でしかないはずなのに。
「一応きいときますが、あなたもフィブリゾとやらの下僕なのですか?」
「なれなれしいくりをきくな!この痴れ者がっ」
何もできない事を良い事にゼロスの女の子みたいに色の白い奇麗なすべすべの肌に赤く紅葉の後がついた。顔をそらしたゼロスの瞳に危険な光がわずかに光った。
「まったく、これでフィブリゾとやらの下僕だって事がはっきりしましたね」
つぶやきながらゼロスの目が危険に輝き出す。容赦はしないという事だ。人質を取り返した後どうするか、ゼロスはその優れた知恵を生かす事に専念した。
つれてこられた工事現場で、2人の男に取り押さえられている自分の母親を見つけた。たおやかなウェーブを描くけぶるような金髪は埃にまみれ乱れていて、息子に伝わった肌の色は同じく埃にまみれていたが、それすらも高貴に輝かせる一つの要素でしかないように思われた。深い闇の色をたたえるその瞳にはまだ生気に満ち溢れている。おびえた様子はこれっぽちも感じない。
我が母親ながら、大胆な女ですよ。
ゼロスは感心せずに入られない。
「さて、と、月並みながらね、母親の命が惜しければ、このままおとなしくわれわれと来てもらおう」
「嫌だといったら?」
「即座に母親を殺し、お前も殺す、ただそれだけだ」
ゼロスはやれやれとため息を吐いた。自分がそう簡単に殺されないのは承知している。しかし、母親はどうだ?不思議な力を持っているなんて今まできいた事がない。たしかに、インバース一族はそういう力を持って生まれてくるようだが、中には持って生まれない人物も生まれるだろう。運命のいたずらという奴かもしれない。それが母親だったら?それで殺されてしまったら?
「ゼロス…」
とても四十代には聞こえない若々しい張りのある声がゼロスに降り注いだ。その声は、無用に優しいようにゼロスには聞こえた。
「もし、私を見捨てて殺されでもしたら、あなたを祟るわよ たとえ、リナちゃんとうまくいってても邪魔してやってよ そう、万が一にリナちゃんとうまくやっててもね」
セロスは背筋が凍る思いに必死に耐えていた。この人なら本当に実行してしまうのではないかという思いに駆られたからだ。
それに、リナとは万が一にうまくいったらなんて言葉が心に氷の刃となって突き刺さる。そこまでうまくいってないように母親の目には写るのだ。リナが、自分には話さない事をこの人には話している可能性はある。それでこんな事を言っているのだとしたら。
絶対に助けなくてはなりません。
ゼロスがおとなしくしていると、ひとりの男がセロスの腕をつかみ何かを注射してきた。
「なっ何を…?」
「冥王様が、お作りになられた化け物の力を封じるくすりと睡眠薬の混ぜたものさ 変な力さえ使わなければ、お前達はただの木偶の棒だからな」
「リナさんとの交渉材料にするつもりですね」
薄れ行く意識の中で、セロスは気がついた。自分が後を追う事なんて計算に入れていたのだ。その上で捕まえてリナの交渉材料に使う。優しいリナは、従兄妹とその叔母が捕まったという事になればどんな条件も飲むに違いない。
なんて卑劣な…!!
しかしゼロスは、何もできずそのまま意識を失った。


「おんやぁ?」
「なんて声を出しているのですか!ガウリイさん」
「いやね、ゼロスの意識が途切れたから」
「えっそれって大変な事なんじゃ?」
「でも、居眠りしてたらこんな感じだって」
のんきに言うガウリイの台詞にアメリアは正義の鉄槌を降らせた。
「ゼロスさんがリナさんの危機の時に寝るはずなんてないでしょう」
「でもよ、緊張の糸張りっぱなしで、ふっと切れてしまったのかもしれないぜ?」
「え…で…でも」
「なんか乗り物に揺られてる感じだしさ」
「どこへ向かっている?」
ゼルガディスがきいてきた。
「神奈川県だ 高速使っている」
ゼルガディスが勝ち誇ったように笑った。
「高速か、腕が鳴るな… レンタルしたのスポーツカータイプでよかったな」
その言葉を聞いたガウリイとアメリアは顔が一瞬にして青くなった。
「まっまてくれぇ ゼル、高速だけは勘弁してくれ」
「そうです!何もそんな急がなくても!!」
「リナの危機なんだろう?」
「うっそうですけど…でも、あの走り方は正義じゃありません」
刻一刻と東名高速に向かっている。
「そうだ、制限速度は八十キロだぞ」
「きこえんなぁ」
スピード狂であるゼルガディスに運転を任せた事をかなり後悔しているアメリアとガウリイであった。


「ここが、冥王様のお屋敷でございます」
鎌倉の閑静な住宅街の一角を占める巨大なお屋敷だ。ここにすんでいる人物はよっぽどの金持ちだろうとリナは思った。門をくぐりはいってみても、玄関が見えなかった。
「ここから十五分ほど歩かれますと、お屋敷でございます」
目が点になっているリナに丁寧に説明するのは初老の男だ。この屋敷の執事をしているという。
「今日はお車を御用意してございます」
ここまで来るのに使った黒塗りのベンツとは違う車だ。ロールスロイスっていったっけこの車は。のんきにリナがそんな事を考えながら車の後部座席に腰掛けた。
「いったいこの屋敷に住んでいる人は何を食べているのだろう」
自分とは格段に違う高級な料理だろうな。リナが思わずそんな事を考えてしまう。でも、この屋敷の人物と一緒に食事する気にはなれなかった。どんな高級で一流といわれおいしい料理でも、腐臭や血の匂いというものは取れないものだから。
屋敷の中は、明治時代の洋館を思わせる作りになっていた。
「どうぞここに、チェス室になっております」
「チェスなんてやらないけど」
「ここが一番狭い部屋になっておりますので、会見向きだと冥王様がおっしゃりましたので」
「狭い部屋ね…」
リナは通された部屋を見渡してつぶやいた。
どう見ても畳二十畳はある部屋だ。これが一番狭い部屋なんてなめているとしか思えない。お金持ちのお嬢様であっても庶民臭いリナはそんな事を思った。その二十畳ばかりの部屋の中心にぽつんとチェスの台が置かれ椅子が傍においてあった。何かやな予感がしたがリナはその椅子に腰掛けた。妙な肌触りの椅子だった。
リナが正確にゆっくりと二十六を数えてところであろうか、ひとりの少年が入ってきた。将来が楽しみであろう美少年だ。顔立ちなんて女の子と見まごう程だ。
「僕の招待を受け取ってくれてありがとう リナ=インバース」
「あなたがフィブリゾ?」
半信半疑でリナは尋ねた。どう見てもこの人物が戦前から生きているなんて信じられない。
「そう 冥王フィブリゾ、日本の首相なんかは僕の事を尊敬して鎌倉の御前なんていってるけどね」
リナの向かい合わせにちょこんと座るフィブリゾはあどけない表情の中にも年月を思わせる深い色を瞳に残している。
この子、本当に戦前から生きているんだ。この姿のまま。
リナは驚きと共に戦慄を覚えた。
こんな得体の知れない人物が自分に何のようだというのだろうか。
「君たちの正体を教えるかわりに、僕と手を組まないか?」
「手を組む?」
「そう、僕と一緒に世界を変えるんだよ」
「冗談 世界なんか変えても面白くないわ」
「正体が知りたいとは思わないの?」
「知ってどうするというの? あたしはリナ=インバースでそれ以外の何者でもないわ」
「その、特異な能力を持ってしても?普通の人間だといいきるの?」
「これは個性よ ピアノが弾けたり、絵を描くのがうまかったりする事とおんなじだわ」
「果たして、世間の人はそうは思ってくれるかな?」
「何を使用って言うの?」
「ただ、君たちの血液をある機関に渡そうと思ってね たったそれだけだよ」
軽く何気なくフィブリゾはいったが、リナにとっては軽くで済まされる問題ではない。もし、その事をジャーナリズムが書き立てたら、リナたちは現代の魔女として殺される可能性は大きい。最近の人たちは自分で考えるという事を止めてしまっている。何でもテレビの言う事が正しいと信じて疑わないし、ジャーナリズムだって、政府の発表や警察の発表をそのまま鵜呑みにして裏付けも取っていない。そして、違う事を言う人を暴力団を雇って脅かす。これが、言論の自由を保証された日本の現状なのだ。
「その正体とやらはどうしてあんたに分かるのよ」
リナは回答する事を避けた。時間を稼いでいれば、必ず誰かが助けてくれる。良い考えも浮かぶかもしれない。
「時間を稼いでいるようだが、誰も助けにはこないよ あれを見てご覧」
フィブリゾが軽く指を鳴らすと、壁一面がモニターに変化した。そこには、オープンカーに載せられ、猿轡を絞められてを後で縛られて座席に座らせられている、従兄妹と叔母の姿だった。その車は、どこかの陸橋の線路の上に停車している。ほかに人影はない。
「もうすぐここに電車が通る そうなったら楽しいと思わないかい?リナお姉ちゃん」
リナはものすごい目つきでフィブリゾを睨み返した。普通の人間なら腰を抜かしていたかもしれない。
リナは歯ぎしりをして、二十畳ほどの部屋を飛び出た。わずかな希望をかけて従兄妹と叔母を救出するために。

つづく

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5728君の日常8Merry E-mail URL12/5-11:32
記事番号5578へのコメント
君の日常8
どこにいるとも知れない、従兄妹と叔母を助け出すためにリナは駆出した。分かっているのはどこかの陸橋と、線路に載せられているオープンカーというだけだ。でも、リナにはなぜだかどこにいるのか分かっていた。それが特殊能力がもたらすものであるという事も、その力を使えばますますフィブリゾがその力を欲するであろう事も、すべて分かった上でリナはゼロス達を見捨てる事はできなかった。
そんな事をすれば自分が後悔する事が目に見えて分かったいる。今でさえ、ふと脳裏に幼き日のゼロスがびーびー泣きながら自分の助けを求めていた姿が浮かぶ。本当にあたしがいないとだめなんだから。リナは無意識のうちにそう思った。
「リナしゃん、リナしゃん助けてくだしゃい」
何かって言うとすぐないて、いつも傍にいたリナに助けを求めていたゼロス。リナの真似をして木に登って、案の定滑らせてまっさかさまに落ちてしたたかに腰を打って泣き出した時もリナの名を呼んでいた。
彼の父親が、亡くなった時もリナにべったりとくっついてないていた。その時は声を殺して泣いていたが、その時の大人達の同情と哀れみがこもった声をリナは一生忘れないだろう。
ぜろすはふこうじゃない。あたしがまだいる。おばさまも、おねえちゃんも、みんないる。だからかわいそうなんかじゃないっ。
小さいリナはそう大人達に訴えた。精一杯胸を張って、堂々と大人達に言い聞かせた。今思えば、こまっしゃくれた小生意気ながきだと思ったが、あの時は真剣そのものだったのだ。自分より、体も、年齢も大きいゼロスをリナはまるで忠実なナイトのように守ってきたのだから。
ってことは、あいつは囚われのお姫さまって事?
何だか馬鹿らしくなって笑えてきた。あそこまで不純なお姫さまもあったものではないだろう。然し、自分がお姫さまといわれるよりははるかにいい。何にもできずに親のすねばかり齧っているお姫さまや王子さまよりも、自分の足でちゃんと立っているナイトの方がリナは高い評価をしてもらっていると思う。
やっぱり、大事な人は自分の手で守りたいと思う。


今はいったい時速いくつで走っているだろう?到底人間では出せない速さで走っているに違いない。でも、そうしなければ死んでしまうかもしれない。それでも一応人目のないところを選んで走っていた。
やがて陸橋が見えてきた。車は?ある。間違いないここだ。
リナが安堵のため息を吐こうとした時、背後が急に明るくなった。電車のライトが当たりを照らしている。リナは一気に跳躍した。運転席に座り込み、見よう見まねで覚えた運転の仕方で一気に陸橋から転がり落ちた。川に落ちる事だけを避けて衝撃に耐えようとおなかに力を入れた。間一髪見事に陸地に着地して、その上を電車が何も知らずに通過していった。とりあえず車を止めて、後部座席に寝かされている2人を気付かせようと頬を叩こうとした時、木々の影から、プロペラ音と、ライトが出てきた。最初からヘリコプターが待機していたようだ。
「ちょっとそれはないんじゃないの?!」
ここでヘリを爆破させてもいいが、この2人を巻き添えにならないようにさせる自信はリナにはない。自分は絶対に助かる自信があるが、この2人は果たしてどうか。起きているのなら全然問題はないだろうが、気絶していては普通の人間と変らないと思ったため、リナは車を運転して逃げ出す事にした。ジャリ道だからがたがたと車体がゆれる。さらに悪い事にヘリコプターがかまわずミサイルを打ってきたのだ。それをよけるためにほとんど奇跡に近いハンドルさばきを見せながら、さらに車体はがたがたとゆれる。それが刺激となったのか、ゼラスが気がついたらしく陥りつつある危機に不機嫌そうにコメントした。
「私の知らない間で楽しい事をはじめるんじゃなくってよ」
「叔母様気がついたの?」
「嫌ならこのまま寝ていてよ」
「そんな、叔母様この状況を何とかして下さい」
「そうね、じゃあとりあえずうちの馬鹿息子でも起こしましょうか」
ゼラスは息子の襟首を片手で持ち軽々と持ち上げて、空いている手で往復びんたをした。
「おきなさいゼロス」
絶対零度よりも冷たい声で言うゼラスだったが睡眠薬の方が強いのか、ゼロスは相変わらず寝たままだ。白い肌に紅葉色の跡が美しく生えている。
ゼラスは今度は違う趣向でしようと思ったのか、ゼロスの耳元に口を近づけた。その上をミサイルがすれすれで飛んでいく。
「リナちゃんがね、あなたなら、あんな事や、こ~んな事までさせてあげてもいい(はあと)だって」
「叔母様?!」
かってに名前を使われた本人は耳たぶまで頬を紅潮させていた。ゼラスはもっとも有効な手段なのよと悠然と微笑んでいる。これをいわれてゼロスが起きなかった事はないらしい。
「本当ですか?!」
高速の速さでゼロスは返事を返して文字どおり飛び起きた。前方にリナがいるのを見つけて、人目をはばからず背後からぴたっとべったりくっつく。そこにリナの痛恨のひじうちをくらい後部座席でよろめいたところで、ゼラスが小ばかにしたように高笑いをした。
「おや、母さんいたのですか」
「馬鹿な息子と一緒に囚われていたのよ」
「どうでもいいけど、2人ともこの追撃を何とかしてよ!!」
「リナさん、車の運転は…?」
「これがはじめてよ!」
「何事も初めが感心よ」
「何、母さんは悠長な事言ってるんですか!僕が変ります、危ないですから!」
「だったらあのヘリ何とかして」
「どうにかしたいんですけど…」
ゼロスが気の進まないかのようにいった。
「実は、母さんを人質に取られて妙なくすりを注射されたんですよ その所為で特殊な能力が使えなくなってしまったのです」
「あら、あんたそんなの注射されていたの?」
「母さんだってされてるはずですよ」
「私はそんなへまはやらないわ インバース家の血なんか引いていない単なる嫁ですって訴えたら何にもしてこなかったわよ 演技力って大事よねぇ」
この人がやるんだから徹底したに違いない。うるうるした瞳と、そのナイスバディで男達を悩殺した後でゆうことをきかせたのだろう。悪魔。そうリナは思った。口にはこれっぽちも出さなかったが。
「…それに、そんなの自分の能力でいくらでも無効化できたでしょうに 本当にお馬鹿ね これだからリナちゃんを守る前に守られてしまうんだわ お母さん情けなくてよ」
ゼロスが反論できないでいるのを横目で見ながら、ゼラスは懐から扇子を出して狭い車内で立ち上がった。
「母さん、そんなところで立ち上がらないでください いい標的ですよ」
「だまらっしゃい よく見てるのよ、ゼロス」
ゼラスは扇子をバット開くと、それをブーメランのように投げつけた。空中で回転しながら更なるスピードとパワーをもってヘリコプターの方に飛んでいった。プロペラの接合部分を見事に切断し、奇麗に弧を描いてまたゼラスの手のひらに戻ってきた。
「こんな事ぐらい力を使わなくてもできるようになさい リナちゃんはできるようだけどこのこときたら」
「僕はこういう力仕事は苦手なんです」
おいしいところを母親にごっそりと持っていかれて少々不機嫌になっているようだ。ゼロスはリナと運転をかわると、とりあえず東京と思われる方向に行こうとした。すると、更なる追撃部隊が姿を見せた。今度はヘリとジープである。
「フィブリゾってやつどのくらいの金を持ってるのかしら?」
振り返ってジープの運転手に向かってあっかんべーをしながらリナはいった。
「さあどのくらいかしらね この日本が買えてしまう事だけは、たしかのようだわ それより、この大人数じゃ、こちらに被害が出るかもしれなくてよ」
ゼラスがちらりと前の席で運転しているゼロスを見た。被害とはどうやらゼロスの事を行っているようだ。
「力が使えないんじゃ、あなたもただの人間ですものね」
「それが普通なんです」
「薬の効力ってどのくらいなの?」
「そんなのわかれば苦労は…」
ゼロスの常識的な台詞はその母親によって打ち消された。
「特殊な状態になれば消えるのよ 急激に感情が高ぶるとかね びっくりしたり、かんしゃくを起こしたりとか」
「そんな薬あるんですか?」
もはやゼロスの存在など一万光年の彼方に残してリナが話しを聞いた。
「薬というより、小さなマクロチップを注入されたって感じかしら」
「うわぁっそんなのゼロス体内に入れたの?!」
嫌そうな顔と嫌そうな表情をゼロスはバックミラーで確認した。
「気付かなかったんですから…って、母さん、どのくらい感情が高ぶればいいのですか」
「心臓がバクバク言うくらい」
「結構ファジーなんですね」
「でも、あなたの場合さめすぎちゃってるから、どうにもならないかもしれなくてよ リナちゃんみたいに感情が豊かなら問題はないんだけど…」
「まるで僕が異常者じゃないですか」
「ちがって?私も、死んだ父さんもまともになるように一生懸命に育てたのにこの子ってば…」
わざとらしく涙をぬぐってみせたりするゼラスは、次第に激しくなる追撃戦に飽きてきたようだ。
「ね、リナちゃん」
何かを思い付いたのか、まるでいたずらを思いついた少年のように無邪気な表情をして、名の耳元に口を寄せた。やがて数語ぼそぼそというと、リナが頬だけでなく耳たぶまでばら色に染めて、首を横に振った。
「お願いリナちゃん、そうでもしないとゼロスの力は戻らなくなってしまうわ」
「別にあたしじゃなくても…」
「リナちゃんじゃなきゃだめなのよ」
リナはしぶしぶ肯き、ゼロスの方ににじり寄った。
「ね、ゼロス…」
「何ですか、リナさん?」
「あの…その…」
リナが耳たぶまで紅潮させて何か言おうとしている。明らかに不信なまなざしでゼロスはリナを見た。そして、自分の母親を見つめる。
「リナさんに何か言わせて僕を驚かせようというのでしょうけど、リナさんが嫌がっているのですから止めて下さい 僕はしばらくこのままでいいですよ ほかの事でびっくりするだろうし」
「ゼロス…」
珍しくリナが素直なまなざしで従兄妹を見た。不思議と安堵感が訪れる。
「ふ…ん ま、いいわよ 恥を捨ててリナちゃんにでも守ってもらいなさい」
ゼラスがまた戦闘体制に入った。今度はリナも身構えた。そして第一射目を放とうとした瞬間、前方から聞きなれた声と、車の音が聞こえた。
「リナさーん、ゼロスさーん無事ですかぁ?!」
正義の味方の到着だった。

つづく

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5579読んで下さいMerry E-mail 11/8-20:02
記事番号5560へのコメント
私にメールをくれた結城さん、メールアドレスが分からないのでお返事が送れません。
読んでいたら私あてにもう一度メール書いてくださーい。
お願いします。

ここって、こういう事に使ってはいけないのかもしれませんが、ほかに手段がなかったので・・・

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5623無事に連絡がきましたMerry E-mail 11/12-23:30
記事番号5579へのコメント
結城さんから連絡がきました。
二三日前に、メールを出したので、もう届いていると思います。
お騒がせしました。

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5612グリーンリーフ2Merry E-mail 11/11-23:30
記事番号5560へのコメント
グリーンリーフ2
始まりの始まり
「あなたは、リナ=インバースさんですね」
質問というより確認を取っている言い方だった。宵の開ける直前の瞳があたしを映し出した。
「そうだけど、あんたは?」
もちろんオモテになるゼロス=メタリオムだって事は百も承知で聞いた。そんな事をしたのもあたしを値踏みするかのような瞳で見詰めるからだ。
「僕の事を覚えておいででない方も珍しいですね ゼロス、ゼロス=メタリオムです」
普通のおんなのこだったら、黄色い声が飛びそうな笑顔を見せたが、あたしにそんなのは効きもしなかった。このあたしが、そこら辺の女達と一緒だと思ってほしくなかった。
「容姿に自信があるようだけど、足手まといにならないようにせいぜい頑張るのね」
ゼロスのその笑顔を鼻で一周して睨みながらいった。リレーの練習をはじめる指示が出たのであたしはみんなの集まっているほうに向かった。そこで、グランドで練習をしているあたし達を見詰めているおんなのこ達から棘のような視線を受けた。どうせあたしとゼロスのやり取りを見て、生意気とか、ゼロス様になんて事を言うのよなんて思っているんでしょうね。
ふん、馬鹿らしい。
「リナさんまって下さいよ」
なれなれしくも、早速あたしの事を名前でよんでいるし。
「何で名前で呼ぶのよ?」
「嫌ですか?」
「あんたにそう呼ばれるのは嫌ね」
「そんなにはっきりといわなくても…悲しいです」
「泣きまねしても無駄!あんたを取り巻いている女とは違うの!!そんな表情にだまされるのはあそこにいる女達ぐらいだって覚えときなさいよ!!」
言いたい事をいって、例のおんなのこの集団を見ると、棘どころか針だらけの視線をあたしに向けている。
ま、もし何かやってくるようだったら軽く転がしてあげるけどね。
「気に入りましたよ ぜひ、こちらを向かせてみせましょう」
ゼロスの呟きは、風に乗ってあたしの耳にちゃんと届いているわけで、きびすを返して、思いっきりあかんべーをしてまた振り返り歩きだした。
あたしは、そんなへらへらした男に負けない。って強く思いながら。


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5622グリーンリーフ3Merry E-mail 11/12-23:27
記事番号5560へのコメント
グリーンリーフ3
始まりの終わり

それで一年たってこの状況だ。最初こそいちいち奴の口説き文句に反論していたけど、今では面倒くさくなり、そのままにしている。順応性が高いのか、ゼロスはいつのまにかあたし達と仲良くなってしまっているのだ。多少印象はよくなった事といえば、ゼロスと知り合うきっかけともなった体育祭の時の話だ。
体育祭当日は九月である事もあってか、なぜか夏日で、さんさんと太陽が降り注いでいた。
なるべく、日陰にいるように心がけたのだけど、どうにもならないくらい暑かった。日陰にいても汗はかくわけで、それにつれて水分を補給して、でも、喉が渇いてしまって。という悪循環を繰り返していた。喉がからりとしていて、土と、砂と太陽の匂いのするグランドで、マイクで拡張された生徒の声が響き渡り、時折、声援が飛ぶ。
昼食の時間になって何だか具合が悪いような気がしたのだけど、うちのチームはビケで、一番になるには、スウェーデンリレーでいち番になるしかなかった。当然負ける事が嫌いなあたしとしては、走るつもりだったからアメリアには具合の悪い事を言わないで置いた。
残すプログラムも後わずかとなって、スウェーデンリレーに出る選手の招集がかかり、日陰で座るあたしのところに、ゼロスが迎えに来た。
「いきましょうリナさん」
「そうね」
招集場所は、あたり一面日向の正門の近くで、あたしは、さんさんと降り注ぐ太陽に負けまいと必死に意識を保っていた。
まっている間は体育座りで待機をしているのだが、待機場所内で移動になって、立ち上がろうとしたら、いきなり目の前が暗くなった。仲間の騒がしい声と、誰かが先生を呼ぶ声、そして、ゼロスのあたしの名前を呼ぶ声が薄れる意識の中で聞こえた気がした。
次に気がつくと、あたしは、入場門の近くの日陰でタオルを枕にして横たわっていた。すぐに視界にゼロスの心配そうに覗き込む顔がめに入った。声を出そうとしたが、思うように声が出なかった。それを察したのか、ゼロスがあたしに飲み物を渡してくれた。ペットボトルに入っているスポーツ飲料で、一口くちつけただけで甘く感じた。
「どうして…?」
「大丈夫ですか?リナさん ほんの少しの間意識がなかったんですよ」
「日射病なんてあたしらしくもない…失態だわ」
あたしが起き上がろうとするのをゼロスがとめた。
「まだスウェーデンリレーまで時間がありますよ 休んでいたらどうですか? あなたの足の速さに優勝が懸かっているようですから」
「とうぜんね」
チームで練習している時でも、あたしは一番良い成績を出しつづけていた。そのあたしに期待がかかっているのは当然だろう。それに、その実力がまぐれではない事がみんな分かっているはずだ。あたしが出た競技すべて、あたしは一番だったのだから。
「期待していますよ、その俊足に」
「あんたが足を引っ張らなければ言いのよ」
リナは、周りに目をむけた。誰一人として、リナの親友たるアメリアでさえ、ここには近寄ってこない。あたしが倒れたというのに、アメリアはこないなんて薄情な。それに、どうして、ほかの人たちはあたしを遠巻きにしているのだろう。
あたし…じゃなさそうね、あたし達というところかな…。あたしはそう思った。大体ゼロスの取り巻きたちが何もしてこないのはおかしすぎる。こんなにおいしいシチュエーションをほおって置くはずがない。
これは、ゼロスが何かやったわね。
「ゼロス…君、また何かやったのかしら?」
本当は呼び捨てにしたいところだが、それほどなかが良いというわけではない。馴れ合ってもいけないと思うし。
「そんな、僕はただ一言、『リナさんは具合悪いそうですから、僕以外の人間に近づいてほしくないといっていました』といっただけです」
「何でそんな事を言ったのよ?!」
「野暮ですね、それにちゃんと看病したじゃないですか」
図々しい…。
あたしは額に青筋をぴくぴく言わせながら、ゼロスを睨み付けた。しかし当の本人はどこ吹く風である。
「ともかく、それだけ元気があれば大丈夫そうですね そろそろ皆さんと合流しましょうか」
あたしに笑いかけた時、夜の闇を切り取ったかのような漆黒の髪が風にゆれた。その瞬間、宵の開ける寸前の空の色の瞳が、わずかに覗いた。すごい奇麗だとあたしは思った。まるで闇に魅入られたように、天使が通過するぐらいの時間ゼロスから目をそらす事ができなかった。
「どうしました?リナさん」
あたしはびっくりして立ち止まった。このあたしが、こんな奴に見とれるなんて。一生の不覚だわ。
「目に…ゴミが入っただけよ」
あたしは入りもしない目をこすりながらそっぽを向いた。顔が上気しないように気持ちを押え込むのがやっとだった。しかも、ゼロスが心配そうに覗き込んできた。秀麗な顔立ちがいきなり目の前にあったので、あたしは我知らず顔を赤くしていた。
そんなあたしを見てか、ゼロスは意味ありげににやりと笑うと、何事も無かったかのように、待機場所まであたしと歩いていった。
すぐにトラックに入り、スタートした。あたしは最後から二番目で、ゼロスがアンカーをしている。つまり、あたしはゼロスにバトンをパスするのだ。しかも、スウェーデンリレーは走者がアンカーに近づくほど、走る距離が長くなるという逆転狙いのできるリレーだった。
一番目、二番目と順調だった。順位は二位に位置していたけど、トップとの差はそんなに広がっていないし、このままでいけば逆転も充分考えられる。当然うちのブロックの応援団は張り切り出した。500M走り終わって、次の人にバトンを渡す時になって、その走者はバトンを落としてしまい、その間に二人の走者に抜かれてしまった。トップとの差は、かなり開き始めていた。
バトンをもらった走者は、焦るあまりか、途中で転んでしまい、ついにびりとなってしまう。トップとはトラック一周分の差がある。次の走者にわたっても、その状況は変らなかった。
「これは、本気になる必要があるかもね」
あたしは心の中でうそぶいた。こんなところで負けるなんてあたしには似合わない。あたしに似合うのは輝かしい一番だ。ほかの人は、あたしの後から走る事しか許されていないのだから。
あたしはトラックの、バトンゾーンに入って待機した。あたしが走るのは1000M。うまくいけば、最後のほうでトップとならべるかもしれない。走者が見えてきた。あたしは、バトンを早く正確にもらう事だけに精神を集中した。ゼロスが、声援を送った事など、後になって知った事だった。
あたしにバトンを渡してくれた人は、頼むといってバトンを渡した。後が無い事が分かっていたからだ。あたしは、その人に見えるように余裕の笑みを見せ、ダッシュした。
とりあえず、第一コーナーの手前で、後ろから二番目のブロックを抜いた。5,6Mのさはあったようだが今のあたしには関係の無い事だった。必ず一番になってやる。
誰かの後からゴールするなんてことはしない。
ゼロスの鼻を明かしてやりたい。
ただ、それだけを思って、あたしはトラックを爆走した。
また独り、人を抜かした。その度に観客の声援が高まるのが分かった。時折聞こえる、生徒が行っている実況中継でさえ、あたしには心地の良い応援歌だった。
ようやくトップが見えてきた。トラック一周分の後れは、このあたしが縮めた。後、半周で抜かさないと、一番になれない。
あたしは、さらに加速した。でも、後、ほんの腕を伸ばせばその人に触れられるくらいまで迫ったとたん、あたしの息は上がり始めた。
情けないぞ、リナ。
あたしは自分を叱咤して、差を縮めていった。ほんのわづかづづだったけど。バトンゾーンにゼロスが立っているのが見えた。どうしよう、後百メートルも無い。このまま、あたしは、ゼロスに活躍の機会を与えて終わるの?
そんな事はしない。
だったら、バトンを渡す時に一番で渡すとしよう。
途切れそうになる自分の意識を必死に繋ぎ止めて、バトンゾーンを駆け抜ける。上半身を前に伸ばすようにして、ゼロスにバトンを手渡した。わづかな差だったろうが、あたしは確実に一番にゼロスに手渡した。
渡した瞬間、ゼロスから称賛の声が聞こえた。
「流石です、リナさん」
その言葉に笑顔で答えようとして、笑おうとしたが、そうはいかなかった。あれ?と思ううちに視界が下がった。あたしは、膝をついてしまったようだ。いきなり、目の前が暗くなった。こんなところで気絶なんかしたらカッコ悪いと思いつつ、あたしの意識は闇の中に入っていった。
気がつくと、あたしは養護用のテントの中のベッドに寝かされていた。側には、心配そうに、シルフィールが付き従ってくれていた。
「リナさん、大丈夫ですか?」
「平気よ、シルフィールところで、リレーは?」
「今、最終トラックですよ、ご覧になりますか?」
あたしは、ベッドから起き上がって、グランドのほうに目をむけた。みんなの歓声が聞こえる。特におんなのこの熱狂的な声があたしの耳についた。
ゼロスは、ぶっちぎりのトップでゴールインするところだった。表情一つ崩さないで観客の声援に笑顔でこたえていた。あっという間におんなのこの群集に埋もれたあいつを見て、何だか少し腹が立った。
ゼロスは、おんなのこ達を軽くあしらって群集から抜け出そうと歩き出した。
こっちに向かってる?
あたしは自分の目を疑った。あいつが、一直線にあたしのほうに歩いてくるのだ。顔に、満面の笑みを浮かべて。汗にまみれ、風に吹かれて、髪は少し乱れていたけど、それすらも美しさを引き立てるために存在しているように見える美しい容姿。あたしは、黙ってその姿を見続けていた。
「リナさんのおかげで、優勝する事ができましたよ」
「当然ね」
あたしは、ゼロスに笑顔を向けた。今日ぐらいは、こいつにこうゆう表情を見せても良いかもしれない。
ゼロスは、細い目を見開きその美しい瞳を覗かせた。それと同時に、わずかに頬がばら色に染まる。色白の肌だから分かったようなものだが、これで小麦色の奇麗な肌の色をしていたら分からないだろうと思われるほど、ほんのわずかな変化だった。
「顔が赤いわよゼロス君」
「なっなにいってるんですかっ」
慌てたように反論するゼロスの顔が、さらに赤くなった。
もしかしたらこいつ、結構純情で女の子にはたいしてなれていないのかもしれない。あたしは内心でほくそえんだ。
「リナさんの笑顔があまりにもかわいかったからですよ」
突然面と向かって真顔で言われたので、何の心の準備もしていなかったあたしは、すぐに顔を赤くした。頬が火照っているのが分かる。
「そんな表情も魅力的ですよ」
あたしの右頬を左手で軽くなでると、いつもの笑顔を見せた。
あたしはそんなゼロスの手を振り払って叫んだ。
「二度と近づくな!!女の敵!」


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5637悠久の風4Merry E-mail 11/14-20:22
記事番号5560へのコメント
悠久の風4
祭りの後
「リナさーん返事をして下さい!!私です、アメリアですリナさん!!」
アメリアは、声の限りに叫びながら砦の中を駆け巡っていた。頭の奥で、何かが警告を発した。真っ直ぐのびた廊下と、右に曲がる廊下があるだけだ。目の前の廊下には、人影はない。右の道には…人影が在った。立ってはいない、膝をついて座っている。そこに一歩踏み込んだ。足元に見慣れたショートソードが落ちていた。冷たく刃が光っている。
戦闘体制はとっていない。顔は伏せられていて、紅茶を薄く入れた髪がその顔を隠していた。頭では分かっていないのに、体が知覚したようだ。進んじゃいけないって頭では思っているのに、足が勝手に進んでいく。分かりたくないのに、知りたくないのに、足が進むのを止められない。
足が、水溜まりの中に入った事に気がついた。下を見ると、血だまりが在った。それが座っている人物から流れ出ていたようだ。こんなに出血がひどいなんて。アメリアはどこか遠いところでそんな事を考えた。足がいつのまにか震えていた。
リナ=インバースは座っていた。まるで、待ちきれなくて眠ってしまったかのように。アメリアは言葉が出なかった。ただ、呆然とそこに立っていた。何かが近づいてくる気配に気がついて、身構えながら振り返ると、レッサーデーモンが、アメリアに気がついて襲ってこようとしていた。アメリアはすばやく呪文を唱えた。手に魔力をためて、思いっきり殴り飛ばした。もう一匹ががら空きになった脇を狙って爪を振り下ろすのを、アメリアは、軽く交わし、その反動で、思いっきり殴り飛ばして、消し去った。わずか五秒で、二匹のレッサーデーモンを倒し、さらに踏み込んで、正確にレッサーデーモンの弱点を突いて抹消していった。この時アメリアはこの世で一番獰猛な存在だった。激情に身を任せているアメリアを、細くて力強い腕が背後から破壊締めにした。
「離して下さい!!ゼルガディスさん こいつらは、それだけの事をやったんです 誰一人生きて帰らせなんてしません!!」
「落ちつけアメリア、もう誰もいない」
その言葉に、アメリアは荒い息をしながら抵抗するのを止めた。瞳に理性らしき光が宿るのを見て、ゼルガディスはそっと腕から開放した。アメリアは糸が切れた人形みたいに、その場に膝をついた。
「ごめんなさい、リナさん私は嘘言家です。約束を守る事ができませんでした。」
リナが魔法が使えなくなったと知ったとき、自分はなんて言った?必ず守って差し上げますといったはずだ。正義の名のもとに。だが、結果はどうだ?守る事はできなかった、ましてや息を引き取るときにそばにいてあげる事すらできなかった。最後の言葉も聞けなかった。
ガウリイさんになんて言ったらいいのだろう。
「アメリア、このままではリナがかわいそうだろう こんな冷たいところで座っていて」
「……そうですね」
アメリアはまるで生きている人に声をかけているかのように、優しく言った。
「セイルーンに帰りましょうリナさん セイルーンは、私たち全員の家ですから」
返事がないと分かってはいても、思わず返事を待ってしまう。ゼルガディスがそっとリナを抱き上げた。それにつられるようにアメリアも立ち上がった。何も考えられなかった。なぜか急に感情があふれてきた。鳴咽をあげてアメリアは泣き出した。
ゼルガディスはそれを見て何かつぶやいたようだ。先に泣いてしまったほうが勝ちだ。そういったのかもしれなかったが、アメリアは知覚していなかった。分かっているのは、頬を伝う熱い潤いだけだった。
アメリアは出会ってからの事を思い出していた。2520日に及ぶ、日々の事がありありと思い出された。思い出の数は脳細胞の数に等しかった。それが今後どんどん増えていくはずだった。それがこんな形で中断してしまうとは。
絶大な魔力を誇り、天才魔道士と呼ばれ、生きる事に一生懸命で、本当は争いごとが嫌いだった少女はもうこの世にはいないのだ。


その頃、ナーガは、ティーラウンジで、仲間を見下ろしていた。血だまりの中で息も絶え絶えにガウリィがつぶやいた。
「…リナは逃げ切ったか?」
ナーガはどう答えたらいいのか分からなかった。
「大丈夫よ、あたしの妹が助けに向かったから」
「そうか…それはよかった あいつ、どこかとろいところがあるからな…」
「助かっているはずよ」
ナーガはしゃがんで、治癒呪文を唱えようとした。
「……あいつが生きてないと、このさき面白くないからな」
リナを守るために命を懸けた青年は、その少女に五分遅れて絶息した。ナーガは、治癒呪文を唱えるために差し出した手を、引っ込めて祈りをささげるように手が組まれた。人の気配がして振り返った。それが見知ったものだと知ると、ナーガは緊張をほぐして話し掛けた。
「アメリア、調べてみたんだけど…」
ナーガは、ゼルガディスに抱きかかえられているリナを見て、言葉を失った。二三語発したようだが、口がわずかに動いただけだった。
「じょ…冗談は止めてよ ここは演劇学校じゃないのよ 悲劇のヒロインなんてやりたくもないわ!…」
返事がないのを見て、ナーガは顔を青くして、肩で深く息を何度もした。それが彼女にとって現実を受け入れる儀式だった。そして、セイルーンに住む人だったら誰でも知っている、神に対して行う最敬礼をナーガはした。手がわずかに二回震えただけだった。
「じつはね、アメリアリナを襲った奴等は…」
「聞きたくないです!!リナさんが死んだばかりだって言うのに」
「アメリア、耳をふさいじゃだめ!!しっかり聞いて、リナは死んだのよ」
「だって…」
「獣王ゼラスの仕業よ」
「ゼラス? まさか、ゼロスさんが…直接指揮を…」
「可能性はあるな」
魔族の抵抗はまだ続いている。すっかり意気消沈しているアメリアに代わり、ナーガが指揮をとった。
「こんな雑魚にかまわず、怪我人と仲間の死体を回収して撤収するわよ!!急いで」
彼らは失意の凱旋をした。大きな喪失感と共に。


セイルーンの日は落ちた。陽気な祭りは終わりを告げたのだ。誰もが想像しなかった種類のベルが鳴り響いて。セイルーンの国中の人々は、沈んでいた。
偉大なる魔道士の死を悼んで。
しかし、それが我に返った時、次にまっているのは混乱であろう。リナがいたからセイルーンに来たという人物が多いはずである。それほど、リナの名は輝けるものだったからだ。
アメリア達は、悲しみに暮れる時間も無く、責務をこなしていた。幹部とはそういう者なのだ。
アメリアもその独りだった。悲しみを古い捨てるように激務に身を任せていた。ただ、戻ってきた時の、留守を任されていた仲間たちの顔が焼き付いて離れない。
「アメリア…」
彼女の父が、自分に負けず劣らずの悲痛な表情を浮かべている。そういえば、父は自分より名声もあるリナの事を嫉妬もせずに受け入れていたと思う。むしろそれを誇りにすら思っていたようだ。なんて、懐の大きい人だろう。野心の強いものなら嫉妬して、リナを取りたてないだろうし、反対にリナの名声に負けて、萎縮してもおかしくはないのに。今更すごい人だと思った。
「のう、アメリア お前さんはリナ殿よりも二つほど若い 順番的にいってもリナ殿を送ってやるのは当然の事だ。遅かれ早かれそうなっていただろう しかし…わしは?親子ほど年が離れているのだぞ わしは、リナ殿が心にも無い弔辞をいってくれるのをあの世で聞いていようと楽しみにしておったのだぞ それをなんでリナ殿を送らなければ…」
語尾は言葉にならなかった。フィルは目頭を押さえて涙を押さえた。
「父さん…」
アメリアも必死に泣くのをこらえた。ともすれば、大声で泣き出してしまいそうだった。
「フィリアさん…」
ただ黙って立っている竜族の巫女に、アメリアは声をかけた。
フィリアは、何かつぶやいた。それが神聖語の神に対する祈りの言葉である事をアメリアは知っていた。
アメリアはここにはいない仲間について尋ねた。
「…シルフィールさんは、部屋で泣いていました……ガウリイさんと、リナさんの名前を交互に呼んで……ヴァルは…酒ビンを抱えて部屋にこもっています」
リナの凶報を知った後、「死んだリナ=インバースに用はねぇ」といって、十二ダースほどの酒ビンを抱えて今まで部屋にこもっている。フィリアが呼びかけても応じようとしないようだ。


とりあえず、仮葬儀の準備をはじめた。本当は国葬を挙げてやるべきなのだろうが、戦時中なのでそんな事もできない。でも、国に大きく貢献した人が葬られるお墓にリナは入れられる事になった。本当なら故郷のゼフィーリアに帰らせてやるべきだろうが、おそらく荒廃してしまってどうにもならないだろうと考えたからだ。墓碑銘は、アメリアが考えた。後の世まで、長く伝えられた有名な墓碑銘だ。彼女の性格を正確に記してあるとして、歴史研究かは一様に高く評価していた。
「天才にして偉大なる魔道士 その実は 信頼を裏切る事無き一生」
この墓碑銘は、アメリア自身で彫ったとされているが残されている彼女の筆跡から見てもありえないという研究家は大勢いる。ともあれ、彼女がこの墓碑銘を考えたという事実は本当のようだ。後に、フィリアがこの時の様子を日記に書いている。
「まるで、神から授けられた言葉のように、リナ=インバースという人物をあますところ無く照らし出している言葉です。長年友とも、かけがいのない仲間とも、もう独りの姉とも慕ってきたアメリア王女の信頼の様子が伺えます」
後世の評価はどうであれ、アメリアは自分が決めた墓碑銘を父王に知らせ、了解を得ると、そのまま葬儀の準備にかかった。リナの体は、丁寧に作られたお棺に入れられ、周りを白い奇麗な花で飾られていた。
会場は、幻術の魔法をかけてリナの肖像と、名もない白い花々で死者を悼んでいた。参列者はほぼ、セイルーンの国にいるものが来ていた。


つづく

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5640Re:悠久の風4翼月 星 E-mail URL11/15-01:36
記事番号5637へのコメント
Merryさんは No.5637「悠久の風4」で書きました。
>悠久の風4

>ヴァルは…酒ビンを抱えて部屋にこもっています
  わははははは!!(爆笑)

>十二ダースほどの酒ビンを抱えて今まで部屋にこもっている
  見事なやけ酒の量……(笑)


 ……すみません これだけのためにレスしました
 …ウケたもので…(爆)
 ……他人の小説にレス入れたのは久しぶりだ…(爆)
 でもまあ、いつも読んでるので、頑張って下さいね
 では

              翼月 星

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5649Re:悠久の風4Merry E-mail 11/15-22:02
記事番号5640へのコメント
翼月 星さんは No.5640「Re:悠久の風4」で書きました。
>Merryさんは No.5637「悠久の風4」で書きました。
>>悠久の風4
>
>>ヴァルは…酒ビンを抱えて部屋にこもっています
>  わははははは!!(爆笑)
>
そこまで受けていただけるとは。思ってもみませんでした。
>>十二ダースほどの酒ビンを抱えて今まで部屋にこもっている
>  見事なやけ酒の量……(笑)
>
>
> ……すみません これだけのためにレスしました
> …ウケたもので…(爆)
> ……他人の小説にレス入れたのは久しぶりだ…(爆)
> でもまあ、いつも読んでるので、頑張って下さいね
> では
>
実は、翼月さんの私もいつも読んでます。でも、レス書く時機を逃してしまうのですよ。
>              翼月 星
>

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5668悠久の風5Merry E-mail 11/21-19:31
記事番号5637へのコメント
悠久の風5
黒薔薇園の歌

空が、銀とも、紫とも黒とも取れる色に染まりあがる紫の群島で、そこにある城の主が、忠実で有能なる部下に一つの命令を出した。
「ゼロス」
対照的な属性である太陽のように輝く豪奢な黄金の金髪が外から射し込む光に反射して輝く。繊細な肌と、細い切れ長の瞳が全てを映し出すように透き通り、時折深い闇の色を示す。どんな色、問われても答えられない不思議な色。その瞳が傅く独りの青年に向けられていた。真紅の薔薇のように美しい色をした唇から煙管が離れ、煙を吐き出した。それすらも、美しい弧を描いている。
「このたびの活躍嬉しく思いますよ あの、リナ=インバースを見事に滅ぼしたという事ですものね」
青年の肩がわずかに震えた。それに気付いた女主人だったがあえて何も言わない。
「褒美を取らせましょう 何がお望みかしら 好きなものを取らせてよ 新しい力でも、優秀な部下でも」
初めて青年が顔を上げた。女主人に似て繊細な肌の色と、切れ長の瞳。ただ違うのは、豪奢な金髪に対して、彼は闇から生まれたものの証のような漆黒の髪の色。瞳は、宵が開ける寸前の空の色をしていて、ただ、時折深い闇の色を示すのが主人と似ている点だ。いま、その顔に今まで絶対に見せた事のない迷いの表情を浮かべている。恩賞をもらえるというのに全然嬉しそうでない部下を見て、ゼラスは内心苦笑した。
「やはり、リナ=インバースを殺したのは間違いだったかしら…?」
しかし、そうしなければ魔族の被害は甚大であっただろう。どうせなら楽に世界を滅ぼしたいものだ。とゼラスは考えていた。しかし、この複雑な、最も魔族とは遠い異色の存在であるゼロスの思い人を殺して良いものかとも考えた。殺せば、憎しみが自分に向けられてくるはずだろうし、何より、生きるのは、自分を作り出した女主人ではなく、その少女と共にいるためだった。魔族だの何だのといわれても、滅びを望んでいても、彼の強烈な存在と一緒にいたいと願ったのだ。
その思いがゼラスには痛いほど伝わる。元々自分の一部の結晶化したものがゼロスだ。どこかでつながっているのだと思う。もちろんゼロスは気付いていない事であるが。考えてみれば、自分自身、あのリナ=インバースという人間には興味があった。それが歪んで無意識のうちに伝わってしまったのが原因の一つかもしれない。
ゼロスが何を望むかもゼラスには分かっている。しかし、それを承認する事は今のゼラスにはできない事であった。
「……もし、お許しいただければ、僕を混沌の世界にかえして下さい」
「それは…できないわね」
頬にかかる金髪を軽くとかしあげながらゼラスはつぶやいた。
「なぜですか?」
「今、お前を混沌に帰しては獣王軍は圧倒的に不利よ」
お前は優秀なのだからと、暗にゼラスは言っている。
「しかし…僕は」
「混沌の世界で、リナ=インバースも暇でしょうから仲間も連れて行かないと行けないでしょう お前も手伝いなさい」
人間を滅ぼすという次の作戦と、混沌に帰さないという意思表示である。
「承知しました 獣王ゼラス様と、ルビーアイ様に、あのお方の加護がございますように」
恭しく挨拶をしてゼロスは去った。次の戦いまで回復を済ませておくつもりなのだ。
「ゼロス…かわいそうな我が子…」
女主人の声は誰にも届かなかった。


リナ=インバースの葬儀と、その後の事務処理によってあわただしく日々を忙殺されていくうちに、アメリアは、次第に立ち直っていった。しなやかな強さを持って一生懸命に人類最後の砦を守ろうとしていた。しかし、世間の風はアメリアには強すぎる気がした。旅に出て嵐という嵐全てを経験したはずなのに、傘を差していないように強くのしかかるのだ。リナがそれをすべて支えていてくれていたのだとアメリアは悟った。リナは、セイルーンにいる人々全てのコートの役割をしていたのだ。強い雨風をしのぎ、やがて来るはずの太陽に向かってみんなを内側に覆うように守ってきたのだ。アメリアは、自分が、そのコートに成り代わる事を自らに誓約した。たとえそれをしたとしても、約束を守る事ができなかったという贖罪を癒せるとは思っていない。それでも、償いたかった。
「とうさん」
「何じゃ、アメリア」
「リナさんの、後任を決めようと思うの」
「作戦参謀か、誰じゃ?」
「ゼルガディスさんがよろしいかと」
「わしも適任だと思う 補給部隊を預かった時の見事な作戦は目をみはるものがあったからのう」
「それと、サイラーグの駐在部隊の指揮官ですが、姉さんに任せようと」
「そうか、ご苦労であったアメリア」
アメリアは一礼して退出した。この後すぐにフィルから勅令が下るだろう。その時、この人事にゼルガディスと、ナーガがどんな反応をするかを考えると、頭の痛いアメリアであった。どうせ、嫌がるのが目に見えていた。しかし、意外にも帰ってきたのはそのまま人事に従う事が報告された。
ナーガはさっそくサイラーグに赴任するはずの、駐在部隊の編成をし、いつでもサイラーグにいけるように準備をはじめた。それを政務の間を縫ってアメリアが手伝った。仕事が終わって一段落下後、2人でいつものクラブへ向かった後ナーガにしては珍しくこんな事をきいてきた。
「ゼルガディスとはどうなっているの?」
「な…っ何をおっしゃっているのですかっ姉さん」
耳元まで上気させてアメリアは反論した。その分かりやすい返事にナーガは苦笑していった。
「さっさとものにしちゃいなさいよ ぐずぐずしていると、ほかの女に取られてしまうわよ」
「ねっ…姉さんこそ、そういう方はいらっしゃらないのですか」
「私のこの美貌をあまたの男どもがほしがっているのだけれど、余りの人数の多さに独りに絞れないのが現状ね」
高笑いと共にナーガは言い放った。アメリアはあきれてみていると、その視線を感じたのか急にまじめな表情をしてナーガは言った。
「…幸せにおなりなさい、アメリア」
「姉さん…?!」
いつもと違う雰囲気を感じ取ったが、結構なお酒をのんだ事と、その後ナーガに何らいつもと違ったとこが見受けられなかったので何もしないでいた。アメリアはこの日の事を後々まで詳しく思い出す事ができた。ナーガの声、抑揚、雰囲気など。その時間がどれほど貴重であったものなのか、それを失ったその時知る事になる。
その翌日、ナーガは部隊を引き連れて、サイラーグへと赴任していった。


「天才にして偉大なる魔道士 しかしその実は信頼を裏切る事無き一生」
誰もいない墓場で、風に吹かれながらたたずむ一つの影がある。アメリアあたりが見れば、憎悪の感情をむき出しにして詰め寄ったであろう相手。リナ暗殺の実行犯であるゼロスだ。漆黒の闇に似た髪が顔を覆い、その表情を隠している。しかし、そこの墓場に刻まれている墓碑銘を見てわずかだが彼は苦笑したようだ。
「あなた…らしいですね 最高の賛辞ですよ」
ゼロスはうっとおしいかのように、髪を掻き揚げいつもの糸目のにっこり笑顔を見せてつぶやいた。
「あなたが、好きですよリナさん 誰よりも」
意識しないままに影の瞳から熱いしずくが流れ落ちた。
「この、僕が仕事に対して後悔してしまうほどに …いつか、あの方の前で会いましょう…おそらく遠い未来ではないでしょうけど」
ゼロスは流れ落ちる潤いを気にもとめずそのまま姿を消した。風に乗り、きらりと輝くひとしづくが舞い落ちた。
空中から付け足すように声がした。
「そうそう、言い忘れてました 取り替えされてしまったサイラーグですが、今度総攻撃をかける事になりましたから そこの駐在司令官はどなたになるのかは存じませんが、間違いなく僕たちには勝てませんよ あなたがいればどうなったかは分かりませんが」
立てられたばかりの墓石に添えられている白いゆりが風にゆれてそのかぐわしい芳香を当たり一面にばらまいた。
そして運命の時は来た。

つづく

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5669悠久の風6Merry E-mail 11/21-19:32
記事番号5668へのコメント
悠久の風6
広野の会戦
3,4人を人グループとして、で、サイラーグ周辺の哨戒に当たっていると、その内の人グループがとんでもないものを見つけた。獣神官ゼロスに引き入られた魔族の大軍であった。その数はおよそ五万。それに対し、サイラーグの駐在部隊は、二万。圧倒的に不利な状況が大合唱してやってきた。すぐに、サイラーグに連絡を入れた。
食後の紅茶をのんきに楽しんでいたナーガのもとに敵と遭遇してきた報が入った。ナーガはすぐに第一級の臨戦体制を取らせた。こんな時のためにと、かねてから考えていた作戦をナーガは実行する事にした。従卒をしている、まだ十代前半の少年にその高貴な雰囲気の笑顔は、セイルーン王族一と言われた笑みを浮かべていった。
「私の部屋の棚に、300年物の逸品のワインが二本あるの 取ってきてくれないかしら?」
少年は黙ってお辞儀をすると出ていった。ナーガはもっとも信頼する部下を呼び寄せて作戦の一部の実行に役立ってもらおうとした。
「あんたには、特別な任務があるの」
呼び寄せられた青年は緊張のために体を固くした。
「30歳未満のお子様を引き連れてここから脱出しなさい」
青年は、何をいわれたのか分からなくて、思わず聞き返した。
「これから行うのは、大人のパーティーよ お子様には退場願いたいわけ」
「然し小官は…!!」
「おだまり!!……今本当に軍を必要としているのは、アメリア卿よ …行きなさい」
「でも、司令官閣下は、まだ30前ではございませんか!!」
「司令官が逃げ出せるとでも思っているの?! それに私がそう簡単に死ぬとでも思って?」
景気よく高笑いするナーガを見て、青年は命令を承知した事を告げた。
ちょうど、従卒がワインをもって戻ってきたところだった。
「このワインの1本をアメリア卿に渡してきなさい」
従卒にそう命令をした。驚いたように目を見開く少年に、ナーガは微笑んだ。
「生きて、アメリア卿に会うのよ、良いわね できなかったら、厳罰に処すわよ」
ナーガは、従卒の少年をうまく脱出させるための名目を作ったのだ。少年は、ナーガが命を懸けてここを死守するつもりである事に気がついて、目から涙が零れた。
「しゃんとなさい!誰の従卒をやってるの!!」
「…ハイ」
少年は涙をこらえながら言った。それでも、とどめる事を知らない涙が流れ落ちていた。
その時、執務室のドアがたたかれる音がして、ナーガが返事をすると独りの女性が入ってきた。
「私はつれていってくれるのでしょう?」
どう見ても30を過ぎているようには見えない女性で、美しい金髪が緩やかなカーブを描いている。ナーガがこの地にやってきた時に補佐としてきた女性だ。
「フィリア…」
「当の昔に30なんて年齢は過ぎましたわ 条件は適っているでしょう」
「それは、竜族だから……」
言葉に詰まるナーガを見てフィリアは苦笑した。
「卑怯な事を言っているのは分かっています でも…」
「竜族は、神の側に立って戦わなくて言いの?」
「私は、…人間と共に時を過ごす事を決めましたから」
フィリアの決意の固さを見て、ナーガは深くため息を吐いてつぶやいた。
「本当は、アメリアこそ人材を欲しがっているでしょうに」
「これ以上年上の人がいても厄介物になるだけでしょう 先輩面はシルフィールさんあたりにでもまかせて 私たちは大人の楽しみをしましょう」
2人は顔を見合わせて微笑んだ。
すぐにリストアップをはじめ、夜の闇に乗じてまんまとサイラーグを脱出する事に成功した。その数はおよそ一万。

サイラーグに程近い、広野の両側に陣を引いた両軍は、それぞれ陣形を組みながら前進した。両方の司令官が命令を出したのはほぼ同時だった。
「全軍突撃」
ナーガは、セイルーンに敵襲の報を入れて、自ら先陣を切って突撃した。安全な後方で指令を出しているのは性に合わなかった。巧みに兵を動かし、数の少なさをどうにか補っている。目指すは司令官の首なのだが、五万という兵は壁というにはあまりに大きすぎる。ゼロスのところまでたどり着くには、少なからず犠牲がつくようであった。
「紡錘陣を作りなさい!中央突破を図るわよ」
ナーガが普段は使わないレイピアを高らかに掲げた。降り注ぐ太陽の光に反射して白刃が煌いている。
ナーガは中央突破をし、敵の後方に回り込んで背後を撃とうというのだ。本当ならもう少し敵が疲弊したところでやるのがベストなのだが、そんな事を言っていたらこちらが殲滅されてしまうだろう。
なるべく壁の薄いところを選んで進軍していく。少しでもこの陣形に楔を入れる事ができればその後は簡単だ。ナーガは魔法で一気に突き崩す事に決めて、魔法部隊に攻撃命令を出した。みずからもそれに加わる。
包囲しようと両翼を伸ばしていた獣王軍に、その魔法攻撃は耐えられなかった。わずかに先端部分に隙間ができた。そこを突進して一気に切り口を広げていった。
「突撃!周りは敵だらけよ 何の魔法でも撃てばあたるわよ」
ナーガがレイピアを振り下ろした。すると、一気に味方の軍が進撃を開始した。まるでチーズに切り込みを入れるように陣形を崩していく。
「はっなかなかやるようですね」
ゼロスは後方からその様子を見ている。しばらく部下からの報告を聞いた後、しばらく思案する表情を取ると、すぐに伝令に伝えた。
「我が軍を二分します 敵に見事に中央突破を図られたかのように偽造しなさい」
すべてに伝令が行き渡った頃、ナーガのほうも大詰めだった。報告を聞く限り、見事に中央突破をしているようだ。然し、何かが違う。そうナーガの戦場で鍛えた勘みたいなものが警告を発していた。然し、途中で止めれば包囲されてしまうのは目に見えている。とにかくここを突破するまでは何もできない。
見事に獣王軍が分断された頃、分断されたはずの獣王軍が移動速度を上げてナーガの軍背後に食らいつこうと前進をはじめた。
「しまった、偽装だったのね」
ナーガは舌打ちをした。分断したと見せかけて背後に回るとは。
「流石…獣王軍ね」
今まで手玉に取れていた魔族の軍隊とは一味違う。ナーガは急いで前進する事を伝えた。時計周りに回りさらに敵の背後をつくためだ。然し、ここで恐怖に駆られたのか突然振り返った小部隊があった。それにつられほかの部隊が反転しようか混乱していた時を狙い一斉に獣王軍から魔法が放出された。それは、光の柱となりナーガの軍の中枢を焼いた。激しい魔法合戦が始まった。気がつけば、全軍の約八割が今の攻撃で失われている。ナーガは肩を落とし命令を出した。
「ここは、撤退するわ 各小部隊は、密集体型を取りつつ撤退」
先陣を逃げ足が速くて有名な一つの小部隊に任せた。そして、司令部を率いている仲間にナーガは話し掛けた。
「私は、最後まで残ってほかの人たちを脱出させねばならないわ」
「殿の役は、司令部がやるものです 司令部は、司令官と共にあるものです そう人は言いましたよね」
フィリアが、美しい顔も、その髪も砂でくすんでしまっている。ナーガも似たような状況だ。2人は顔を見合わせて笑うと、退路に背を向けて戦った。独りでも多くの仲間が生きて帰れるように。
突然一時の方向から魔法が飛んできた。ナーガがよけきれずに食らう事を覚悟した時、寸前で何かにはじかれたように消し飛んだ。びっくりしてナーガがあたりを見渡すと、逃げるように行った仲間の部隊が数部隊残って一緒に殿を務めている。
「あれは…なんなの?」
「味方です」
「そんな事は分かってるわよ!…どうして残ってるのよ」
フィリアが頭に巻きつけた包帯を直しながらいった。
「私たちだけでは、頼りないと思ったのでしょう」
「案外、馬鹿が多いものね」
言っている事は冷たい事だが、その声には言い表せない優しさが込められていた。
ゼロスが余裕を見せ付けようと、攻撃を止めさせた。
「降伏してください あなたほど優秀な人なら魔族として歓迎しましょう」
ゼロス自らが降伏勧告をした。単なる皮肉で言っただけだから断られる事の分かっていた。然し、すぐに司令官と直接話がしたいという返事が返ってきた。以外に思いゼロスはそれを承知した。魔力を使い自分の姿を空中に大きく投影した。同じように敵の司令官と思われる正義オタクの少女と同じ髪の色をした女性が現れた。
「お初にお目にかかりますわ 獣神官殿」
ナーガが丁寧にそして典雅にお辞儀をした。やろうと思えばこの人は宮廷一の淑女として振る舞う事ができるのだ。
「はじめまして 王女殿下」
「私もいましてよ」
「おや、フィリアさんも相変わらずですね」
「獣神官ゼロス殿 私はあんたの才能と器量を高く評価しているつもりよ 友人を持つのならあんたみたいな人を持っても良いと思う しかし、魔族の臣下にはなれないわ」
ナーガが視線を動かした。頭部に血のにじんだ包帯を巻きつけて、彼女の補佐役が、一本のワインと、二個のグラスを掲げてみせた。セイルーンの王女は微笑して視線をゼロスに戻した。
「アメリアも、リナも、あなたの友人にはなれるけれど、やはり臣下にはなれないわ 他人事だけど保証しても良いくらいだわ」
ナーガの伸ばした手にグラスが握られるのをゼロスは一言も発せず見守っている。
「なぜなら、偉そうに言わせてもらったら人間とはみんなで生きていこうと思い友人をつくろうとするもであって、滅びを導くために絶対的な主従の関係を結ぶためではないからよ」
乾杯の動作を王女はしてみせた。
「私はよい友人がほしいし、誰かにとってよい友人でありたいと思うわ でも、絶対的な主君も、絶対的な臣下も持ちたいとは思わないわ だからこそ、あんたと私は同じ旗を仰ぐ事はできなかったのよ 御厚意には感謝するが、今更あんたにこの凡人は必要ないでしょ?」
グラスが、王女の口の位置で傾いた。
「……生きとし生けるものに乾杯!」
竜族の巫女がそれに和した。破滅と死を目前にして彼女たちは淡々とすらしていたが、王女の顔にはやや照れくさそうな表情が浮かんでいた。
ゼロスは、右手を上げて魔力を凝縮し始めた。そしてそれを振り下ろした。中央で火球が炸裂した。セイルーン王家の第一王女と、黄金竜最後の巫女がこの世から消滅したのだ。
ゼロスは、不屈のままに、しかも毅然として死んでいった単なる人間の王女の姿が、当分忘れえそうになかった。傍にいた竜族の巫女と乾杯の声をかわしつつ光と熱の中で消滅していったのだろう。

サイラーグは再び魔族の手に落ちた。リナが取返してわずか一月と経たない期間であった。

つづく