◆-君の日常最終話-Merry(1/10-17:19)No.6017 ┣Re:君の日常最終話-理奈(1/11-12:39)No.6030 ┃┗ありがとうございますう-Merry(1/11-22:47)No.6037 ┣Re:君の日常最終話-結城(1/11-17:07)No.6036 ┃┗感想どうもです-Merry(1/11-22:52)No.6038 ┣女王蜂の分蜂に関する諸観察(前編)-Merry(1/21-21:36)No.6126 ┃┗Re:女王蜂の分蜂に関する諸観察(後編)-Merry(1/21-21:37)No.6127 ┗悠久の風7-Merry(2/4-20:31)No.6211 ┣悠久の風8-Merry(2/4-20:34)No.6212 ┃┗続きすっごい楽しみにしてたんですよ。-理奈(2/6-09:02)No.6217 ┃ ┗Re:続きすっごい楽しみにしてたんですよ。-Merry(2/6-20:27)No.6221 ┗悠久の風8-Merry(2/6-20:23)No.6219 ┗悠久の風10-Merry(2/6-20:24)No.6220 ┗感動-理奈(2/8-04:09)No.6235
6017 | 君の日常最終話 | Merry E-mail URL | 1/10-17:19 |
君の日常最終話 だいぶ長くかかってしまいましたけど、ようやく最終回です。ここまで読んで下さった方々、本当にありがとうございました。 ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------- 「…で、リナさんたちはどちらに?」 ゼロスが運命の女神を激しく内心でののしりながら、ゼルガディス達にリナの居所をきいた。 「さあ、途中まで一緒だったんだけどな お前さんたちを探すんで手分けしてからあってないんだ」 お気楽にガウリイが答えた。その返答にゼロスの顔がだんだんと青ざめていく。 「危険な目にあったらどうするんですか?」 「アメリアもいるから大丈夫だろう そうそうあの2人が危険になる事なんかはない」 ゼルガディスが冷静にそんな反応をかえした。然し、ゼロスは納得していないようで、いても立ってもいられないらしくあたりをきょろきょろとしだした。すでに攻撃は苛烈を極め、土煙が舞い上がりあたりをうかがう事も困難な上、ブラックベレーなる陸戦隊のプロがちょっかいを出してくるので悠長に構えていられないのが現状である。戦場での再会を期待して、ゼロス達は自分達のみを守るため強制的にブラックベレー達と対峙する事になる。 一向に成果の上がらない様子を見て業を煮やしたのか、フィブリゾが機嫌悪そうに舌打ちをした。双眼鏡を覗き、重力がないかのように動き回るリナたちを見て、ある決心をする。 「あの子供に、熱化学兵器ミサイルを使ってみせてよ」 外見だけは自分より年上に見える少女達をさして子供という不思議な感覚が、現実感を希薄にさせる。司令長官は一瞬のためらいの後、空戦部隊に命令を出し、ヘリコプターがミサイルを積んで標的である黒髪の少女に向かって飛び出した。 その頃、リナとアメリアは、リナが戦車を運転してアメリアが近づいてくる怪しげな黒ベレーの集団を薙ぎ払っている最中だった。いつものように正義の味方ゴッコをしながらたかだかと名乗りをあげている。少し離れたところからリナが牽制のために戦車を止めた。 リナの視界に好ましくないものが空からやってきた事に気がついた。アメリアは背後のために気がついていないようだ。警告を発しようとして大声を上げたのと同時に、ヘリコプターからミサイルが発射された。 「アメリア!!」 リナのせっぱ詰まった声に驚いて振り返った。ゆっくりと緩慢な速度でミサイルが近づいてきているように見えた。簡単によけられるとアメリアは思い、体を動かそうとしたが何故か動かなかった。明らかに自分ひとりを標的としているのが分かり、リナには危険が及ばない事が分かり少し安心した。 「アメリア!!」 リナの声がはじき飛んだ。アメリアはミサイルの爆発によって生じた光球に飲み込まれていったのだ。よける事もできずに。 「何かしらね、あの光?」 ゼラスが西の方角を見てつぶやいた。明らかに不吉な気配がする。 「まさか…」 誰もその続きを言い出そうとはしなかった。まだ希望はある。 あの2人は無敵だったじゃないか。 然し、力の制御云々といっている時期は過ぎたようで、ゼロスは自身の力をすべて解放して、その場にいたもの全員をその光の近くにテレポートさせた。 「アメリア!!」 リナが自分のみを省みず、戦車から飛び降りた。一目散に光球に向かって駆出した。自分達は無敵だ。単なる人間立ちに対しては。では、銃弾は?ミサイルは?答えは出ていない。もし、脆弱だとしたら?ブラックベレー達は、そのミサイルの恐ろしさを知っているのだろう、リナたちの周りから退避をしていた。その駆出すリナの肩を熱いものがつかんだ。リナは自分の肩に白い手が置かれているのを見た。そこから一種の波動めいたものが出て、リナを動けなくした。視線は、腕にそして、深い闇の色をたたえた瞳が映し出された。 「ゼロス」 「危険ですリナさん ここは…」 「放してゼロス、アメリアがこの中に、ここに…!!」 リナがこれほど取り乱したのをゼロスは今まで見た事がなかった。人は、失うべきではないものが失われた時豹変するというが、リナの、失うべきものではない人物とは、アメリアの事なのだろうか。 「放して、アメリアが…」 今度は反対に弱々しくつぶやく。ゼロスはリナを抱きしめ、光球から守るように立ち位置を変えた。その瞬間、アメリアを飲み込んだ光球が破裂した。その場にいたものは全員熱風にさらされるはずだった。しかし、機転を利かせたゼラスとゼルガディスがとっさに防御の体制を取り、誰一人掠り傷すら負わなかった。視界が光りに奪われた。それがさめたのは、ほんの数分の事であっただろうが、リナには永遠にも等しい時間に感じられた。 ゆっくり瞳を開けて、アメリアのいたところを見詰めた。そこはさまがわりし、クレーターができている。しかし人影はない。 その瞬間クレータから純白の光が天に向かって突き刺した。光の中から何かが現れる。へび?二つの頭を持つ…ヘビ?否、伝説上の動物である事にゼラスは気がついた。 「玄武」 四界を守る神だという。古代中国の伝説上の生き物。ヘビとカメを足したような姿の雨を司り、北を守る神玄武。ゼラスははじかれたかのように玄武について説明をした。ぽつぽつと、頬に雨がかかる。それが豪雨と称するまでになるのに数秒とかからなかった。 「あれが…アメリアなの?」 鱗が宝石のように輝き、天空でうねらせているヘビのような首。 「泣いている…泣いているんじゃないのか?アメリアは」 ガウリイが雨をしのげるところを探しながら空を見上げつぶやいた。ゼルガディスはただ呆然と空を見上げていた。 「戻れると思う…?」 リナが豪雨に負けそうなくらいの小さな声を出した。それをゼロスは聞き逃さなかった。洪水に飲み込まれないようにリナを引き寄せてつぶやいた。 「きっと、たまった力を放出しているだけでしょう アメリアさんは元に戻りますよ」 「なあ…俺達もああなるのか?」 誰に聞くというでもなく、ガウリイがつぶやいた。誰も返答できるものはいない。 「ついに現れたね…」 突然の集中豪雨に大混乱に陥っている司令部でただひとり、平然と事を受け止めている人物がいた。冥王フィブリゾ。覚醒したアメリアの力を見て、喜びに全身が打ち震えてしまいそうだった。 「あの力を僕のものにすれば…僕はずっとこのままで、不老不死でいられる……!!」 テントから飛び出し、常人なら立っているのもやっとな豪雨の中で、フィブリゾは風すら吹いていないかのように平然と立ち、アメリアに向かって、手を天空に掲げた。 「アメリアに妙な真似はさせんぞ」 いつのまにか背後にゼルガディスが立っていた。絶対零度の瞳でフィブリゾを貫いた。それをフィブリゾはおかしそうに笑った。 「どうやってとめる気?」 「力づくでもだ」 「無理だと思うよ」 くすくす笑いながら何気ない動作で、フィブリゾは、ゼルガディスの手を押さえた。全く力を入れてないようなのに、ゼルガディスは動かす事ができなかった。今まではこんな事を仲間以外にできたものはいなかったというのに。 「君たちばかりが能力者というわけじゃないよ」 フィブリゾの腕がそのまま上に伸びてきて、ゼルガディスの首を捉えた。背丈差を埋めるためにフィブリゾは宙に浮いていた。 「君の若さを吸収しいてもいいな 僕はこれでもっと長生きできる」 簡単に折れてしまいそうな指を、ゼルガディスの首に巻きつけているが、ゼルガディスは息苦しくて声すら思うように上げられない。こんな華奢な子供の体にどうしてこんな怪力が存在しているのだろうか。 「ゼルガディス」 ガウリイが、どうしたんだ?といわんばかりの声を上げた。自分達以外でこんなに手間取っているゼルガディスを見るのははじめてだった。それが余計に、フィブリゾの力を思い知らされる。 「はな…せ」 ようやく喉から声を絞り出してそれだけつぶやいた。苦しい、自分が無力な存在に思えてきてしまう。 「ゼルガディスを放せ」 フィブリゾの背後を狙って、ガウリイは蹴りつけたが、後頭部に目でもあるのか、軽々とそれを交わした。ゼルガディスの首をつかんだままだ。 リナはすばやくあたりを見回した。どこもかしこも、アメリアの超人的なパワーで降らせた雨で大洪水だ。その中で立っているのは自分達と、このフィブリゾのみ。こいつは何者なんだ?リナの疑問が不安へと変る。 「フィブリゾ、あんたがあたし達の命を狙うんならこっちは容赦はしないわ」 すでに構えているゼロスと目を合わせて、リナはかけだした。ゼロスとコンビネーションプレーをやろうというのだ。すばやくリナが駆け寄り、ゼルガディスを押え込んでいる手を狙って、炎の矢を打ち込んだ。その爆発で生じた煙の中をゼロスが煙に紛れながら突っ込んでいく。軽く両手を広げて、無数の小さな黒い円錐を飛ばした。 タイミングを合わせて、ゼルガディスは、フィブリゾの体を蹴りつけて、その魔手から離れた。二回バクテンをして、体操選手もかくやというぐらい優雅に着地した。 「命だなんて、僕はね、ただこの国の事が心配なだけだよ」 ゼロスの攻撃を軽く片手で受け流した。その両手からは何らかのバリアが出ているに違いなかった。 「心配?なんで?」 「僕がいなかったら戦後の混乱時は切り抜けなかったはずだよ アメリカの占領国になっていたかもしれないね」 「単なる妄想じゃないのか? アメリカがこんな小さな国を狙ってどうする」 安全距離を保った所為か、ゼルガディスがいつもの毒舌ぶりを発揮した。それに動じた風でもなく、それよりも、無知に対する同情のまなざしを向けて日本国の影の黒幕は言い放った。 「下賎の物である君たちが知らなくても無理はない この国はとっても価値ある国だよ 何しろ、選ばれた民族だからね」 この言い方に、ガウリイがつばを吐きたそうなほど渋い顔をしておおじる。彼がここまで嫌そうな顔を見た物は少ない。 「なんだよそれ 誰に選ばれたって言うんだ 神か?そんなものいるわけないのに」 「いたとしても、俺達が選ばれた民族なんだという証拠もないしな」 「無知とは罪だね 戦後、あんなに荒れ果てていたというのにここまで復興したのは選ばれた民族だからこそだよ」 「言うのは好き勝手ですけどね それなら誉められるのは、あなたではなくて、その後希望を信じて働いてきた一般市民の方じゃないのですか?あなたは何もしていないでしょう」 さすがにゼロスも嫌になったのか、闇のように深い瞳をわずかに開いていった。 「そのうち君たちも分かるようになると思うよ 誰が日本を支えているかってね」 言うなりいきなりゼルガディスの方に踏み込んだ。さっきの事があったばかりなので、ゼルガディスが必要以上に後ろに下がった。それを見計らったかのように、フィブリゾが上空に向かって何かの力の固まりをうち放った。それは、直線を描き厚い雨雲を貫いたかと思うと、いきなり天空が光った。アメリアを狙い撃ちしたのだ。空から、何か大きなものが落下してくる。そしてそれは、アメリアが変身する原因となったミサイルの爆破地点のクレーターに向かって落ちていく。 「貴様ぁ」 ゼルガディスがこれ以上ないというくらいに怒気をはらんでフィブリゾを見返した。 「これで力を貯えれば、もっと長生きできる これで、日本も安心というわけさ」 普通の子供とは思えないほどの跳躍をして、フィブリゾはアメリアに近寄っていった。させまいと後を追いかけたが、ピン差で、フィブリゾの方が速かった。 「させなくてよフィブリゾ」 今まで単なる傍観者と決め込んでいた、ゼラスが得意のセンスを投げつけて、フィブリゾの頭部を強打した。 そこへリナのドロップキックが決まる。 「好き勝手にはさせないわ あたしも、あたしの友達も、みんな あんたが引き下がってあたし達に何もしないというのならこちらからも何もしない 約束するわ」 地面に倒れたフィブリゾの頭に片足をかけて、リナがいった。それを人間とは思えない力で、何も乗っかっていないかのように、フィブリゾは起き上がった。 短く悲鳴を上げてリナは危うく転倒するところをこらえた。フィブリゾは血走った目で、リナを見返して百戦錬磨のリナですら認識できないほどのスピードで、リナの腹部を殴り飛ばした。そのままリナは後方に1メートルほど吹き飛ばされた。 「リナさん」 ゼロスが慌てて駆け寄って、リナを抱き起こした。リナは口の中を切ったらしく、唇の端から血を垂らして、大丈夫とささやいた。 フィブリゾは遮るものが無くなったのを見計らって、クレーターに沈む、アメリアに向かって何かを放とうとした。 その時、クレーターで目を回していたはずの、アメリアが天空に舞いあがった。口から、今まで見た事ないくらいの雷がただひとりの人物に向かって落ちた。 「そんな…ばかな…」 すさまじい爆発音の中で、そういう呟き声が聞こえたような気がリナはした。 視界が光で遮られた。それが復活した時、空は夕焼け色に染まり、クレーターの中央部には、何一つ身につけていないアメリアが横たわっていた。 慌ててリナが、男達に回れ右の指示を出して、ゼラスと共に駆け寄った。リナの上着と、ゼラスの上着を着せて、何とかなりそうな格好になった後、そこら辺で気絶していたブラックベレーのひとりからズボンをもらうと、アメリアにはかせた。 「リナさん…あたしどうしていたのでしょうか?」 「何でもない、何でもないよアメリア 疲れただろうから、今はやすんでなよ」 リナがそっとアメリアを抱きしめた。こうして見ると、泥塗れになったリナの外見は健康そうな乞食と言った風情である。それを疑問に思ったアメリアだが、リナの言葉が心に響き、急速に眠気が襲ってきた。ゼルガディスに寝入ったアメリアを運ぶように指示して、にんまり顔でリナはみんなの方に振り返った。 「終わりよければすべてよしってね」 本当は、何一つ分かっていない。自分達のこの力がどこから来るのか。なぜアメリアが変身してしまったのか。自分達にもその可能性があるのか。 それを知っていた唯一の人物は裁きを受けた。 これでいいと思う。たとえ、自分達がほかの人より少し違っていても、それは個性だと思うし、何より、ほかの人と違うのは自分達の所為ではないのだから。 ささやかに過ごしていた日々が取返せれば、それだけで、リナは満足だった。 「さあ、帰ろうか」 いまだ洪水の所為で混乱に陥っている自衛隊の人たちの目を盗んで、リナたちは演習場を後にした。家に帰りつけば、こんな極彩色の悪夢から覚めて、何ら変哲もない、どちらかというと無彩色に近い日常がまっている。 「リナさん(はあと)」 「なーによゼロス気色悪い」 いきなり後ろから抱き付いてきたゼロスを軽くひじで突ついて引き剥がす。いつもとかわりないにこにこ顔のゼロスを見て、リナはため息を吐いた。 あれからもう、数週間が立った。変な男達から付けねらわれる事は、今はない。然し、こちらは相変わらずの関係だった。 「おいしいケーキ屋さんを見つけたんです 今から行きませんか?」 「ゼロスさん」 カフェテリアで、みんながご飯を食べている中でアメリアは右手にフォーク、左手はびしっと伸びてゼロスをさしている。 「リナさんに授業をサボらせるという悪事を示唆するような事を言わないでください それまさに悪!!正義の戦士アメリアが、だまちゃいません 正義の鉄槌を…」 アメリアのきめ台詞が途中で中断された。最後に食べようと思っていた、たこさんウィンナーが、ガウリイによって食されてしまったのだ。 「ガ…ガウリイさん」 アメリアの声がフルフルと震えている。それにまるで気付いていないかのような声でガウリイはいった。 「ん?アメリア、残しちゃいけないぞ大きくなれないからな」 「人の好物を食べてしまうだなんて、それすなわち悪!!正義の戦士アメリアの、鉄槌を受けなさい」 ほかの学生から白い目で見られる中、アメリアはまったく気にせずガウリイに殴り掛かった。 ゼルガディスは既に少しアメリア達から遠ざかっている。コーヒーを飲みながら一向におさまらない騒ぎに、ゼルガディスはカフェテリアのおばちゃんに追加注文をしに行った。 「サンドイッチの追加、たこさんウィンナー付きで、大至急」 追加注文が運ばれた時点で、騒ぎは収まった。アメリアが一枚目のサンドイッチをほおばりながら、あたりを見回すと、リナとゼロスの姿はすでになかった。 「ああっリナさん達ったら…」 「お前達が取っ組み合いをやっていた時すでにここから出ていったぞ」 悪の道に…とアメリアが騒ぐのをゼルガディスは予想していたが、アメリアはにやりと似つかわしくない笑いをしていった。 「明日の学校中の掲示板、楽しみですね 大ニュースになっていますよきっと」 2人の仲の進展の無さにやきもきしていたアメリアが、クリティカルヒットでも出したかのような、会心の笑みをした。 その次の日、リナとゼロスの愛の逃避行が、学校中のうわさになった事は言うまでもない事実である。さらに、リナの報復を受けた、とある女性徒の悲鳴が学校に響いたと、とあるクラスの日誌に書かれていた。 こうして、何事もない日常が始まる。 あなたの日常はどうですか? おわり 次はですね、「悠久の風」を終わらせようと思っています。読んでいない方のために断り書きを入れておきますが、コンセプトは、均衡の崩れたスレイヤーズ世界です。 リナはゼロスの事が好き出し、ゼロスもリナの事が好きですが、そういうカップリングのラヴラヴとした話はほとんど出てきません。 あくまでも、降魔戦争について書いています。しかし、悲劇色が濃いので、そういうのがだめな方はおさけください。 |
6030 | Re:君の日常最終話 | 理奈 E-mail | 1/11-12:39 |
記事番号6017へのコメント こんにちはぁ~。何を言ったらいいかと考えてる理奈です。 すっごいよかったです。話ももちろん、なんて言うんですか?書き方ですか?? Merryさんが書く小説の文章ってどれもすっごい上手ですね。私もこんなふうに書けたらいいなって思ってます。 「悠久の風」もすっごい楽しみです。内容とは、全然関係ない感想ですみません。 |
6037 | ありがとうございますう | Merry E-mail URL | 1/11-22:47 |
記事番号6030へのコメント 理奈さんは No.6030「Re:君の日常最終話」で書きました。 > > こんにちはぁ~。何を言ったらいいかと考えてる理奈です。 こんにちは。 >すっごいよかったです。話ももちろん、なんて言うんですか?書き方ですか?? >Merryさんが書く小説の文章ってどれもすっごい上手ですね。私もこんなふうに書けたらいいなって思ってます。 ありがとうございます。こんな風に誉められると照れてしまいます。 > 「悠久の風」もすっごい楽しみです。内容とは、全然関係ない感想ですみません。 いえいえ、長い話だったのに最後まで付き合って下さってありがとうございました。 期待にこたえられるように頑張りますので。 |
6036 | Re:君の日常最終話 | 結城 E-mail | 1/11-17:07 |
記事番号6017へのコメント ちゃ~っす。Merryさん。 「君の日常」無事完結、おめでとう御座います。 完結した時点での感想で、ごめんなさい。 感想書くのとか、自分の意見を人に示すのって、凄く苦手なんで・・・。 アメリアが玄武。じゃ、リナちゃんは朱雀ですかね。 紅の瞳に、燃える炎のような髪の毛ですからね。何となく。 うにゃ、何となく続きそうな余韻を残して終わってますが、 続きを書かれるご予定はおありですか?あるといいな・・・。 またゼロリナだともっといいな。 今回、ろくにレスを書かなくてなのに催促だけはしてましたこと お詫びいたします。ヤな思いをさせてのではないでしょうか。 でも、嬉しかったです。結局教えてもらっといて、未だに 原作は読んでません。ごめんなさい。 え~、度々、そちらのHPにもお邪魔しておりますが、 他の小説も楽しみに待っております。え~、あまり好きな言葉ではありませんが あえて・・・、がんばってください。あなたの書く小説スキです。 ボク個人の意見としては、ゼロリナが多いと、とても幸せなのですが・・・。 長々と、しかも要領を得ない内容で、ごめんなさい。ではでは、この辺で・・・。 |
6038 | 感想どうもです | Merry E-mail URL | 1/11-22:52 |
記事番号6036へのコメント 結城さんは No.6036「Re:君の日常最終話」で書きました。 > >ちゃ~っす。Merryさん。 こんちは >「君の日常」無事完結、おめでとう御座います。 ありがとうございます >完結した時点での感想で、ごめんなさい。 書いて下さるだけで嬉しいです。 >感想書くのとか、自分の意見を人に示すのって、凄く苦手なんで・・・。 > >アメリアが玄武。じゃ、リナちゃんは朱雀ですかね。 >紅の瞳に、燃える炎のような髪の毛ですからね。何となく。 えへ、どうでしょうね。 >うにゃ、何となく続きそうな余韻を残して終わってますが、 >続きを書かれるご予定はおありですか?あるといいな・・・。 >またゼロリナだともっといいな。 > 謎は謎の方が面白いと思ってあまり書かなかったのですが。 リクエストが多ければ書かない事もありませんけど。(つづきを) 一応考えてはあるんですよ。 >今回、ろくにレスを書かなくてなのに催促だけはしてましたこと >お詫びいたします。ヤな思いをさせてのではないでしょうか。 催促してくれた方がいいです。根が怠け者なんで、誰も催促しないんなら放っておこうって思ってしまいます。(爆) >でも、嬉しかったです。結局教えてもらっといて、未だに >原作は読んでません。ごめんなさい。 > いえいえ、今読まれてしまっては、続きが分かってしまいます。(笑) >え~、度々、そちらのHPにもお邪魔しておりますが、 >他の小説も楽しみに待っております。え~、あまり好きな言葉ではありませんが >あえて・・・、がんばってください。あなたの書く小説スキです。 >ボク個人の意見としては、ゼロリナが多いと、とても幸せなのですが・・・。 > 今回は淡白なゼロリナでした。 濃い目のは、ちょっと今は予定してないですね。 キリ番ゲット頑張って下さい。(爆) >長々と、しかも要領を得ない内容で、ごめんなさい。ではでは、この辺で・・・。 長い話に最後まで付き合って下さってありがとうございました。 |
6126 | 女王蜂の分蜂に関する諸観察(前編) | Merry E-mail URL | 1/21-21:36 |
記事番号6017へのコメント 女王蜂の分蜂に関する観察日記 十八世紀イギリス。エリザベス女王に忠誠を誓い、世界の中心として栄えた国。この頃、かの有名なシャーロック・ホームズ氏は、宿敵モリアーティー教授と共にライヘンスバッハの滝壷に消えた。ホームズの読者たちは彼の死に悼み、そして心のどこかでは生きている事を信じながら過ごしていた頃の物語。 オックスフォード大学に程近いところにあるオックスフォードストリートの、とある下宿屋で、住人達のいつもの会話が繰り広げられていた。 「まあ、ミスターゼロス、これだけしか御食べにならないなんて体に毒ですよ」 金糸のように繊細な髪を腰まで伸ばした、まだ年若い女性が、お盆を手に、一口つけたかつけないかくらいの朝食を前にして、騒いでいる。暖炉の前のスツールには、軽く足を投げ出して新聞を読みふけっている、女性と同じくらいの若い男性は、夜空を切り取った髪に、宵の開ける寸前の色をした瞳をしている。もし、街ですれ違えば、女性達の熱いまなざしを受けるほどのすばらしい容姿だ。 「ミスフィリア、僕にはこれで充分だし、そろそろ仕事にしたいのでね はやいとこさげてくださいませんか?」 フィリアと呼ばれた女性は、あきれたのと、怒っているのが入り交じった表情でガチャガチャと朝食を下げている。そこに、軽く二度ドアをノックした後、勢い良く部屋の扉が開いた。 「ハーイ、ゼロス相変わらずのようね」 さっきまで重苦しかった雰囲気が嘘のように明るくなった。それはひとえにこの女性のおかげだろう。紅茶を薄く入れたような髪と、きらきらと光る最高級のルビーのような瞳。奇麗に結い上げられた髪と、女性が着る服の中では比較的シンプルで、活動的そうな服がより一層この女性の魅力を引き立てているようだ。 「こんにちは、ミスリナ」 「げんきそうね ミスフィリア」 本当は呼び捨てで親しく呼ばれたいのだが、フィリアがどうしても名字にミスをつけるという事に意固地になっていたので名前にミスをつけるという妥協策を取っている。ゼロスも同じ事が言える。 「リナさん ちょうどいいところで降りてきたくださいましたね」 リナとゼロスは同じ下宿屋の、上の部屋の住人としたのへ屋の住人なのである。昨年ここのおかみさんをやっていた、フィリアの母親が亡くなりからだの不自由な父に代わりフィリアがここの下宿屋を切り盛りしている。この時代、女性がひとりで部屋を借りる事なんて言語道断であるから、最初仕事のよきパートナー同士であった、この2人が同じ下宿を借りようと決めた時取った策は、血のつながった兄弟という事である。腹違いの兄弟は往々にしてある事出し、それなら似ていなくても不思議ではない。こうしてこの部屋を借りたのだ。しかし、ここの前おかみさんは、2人が兄弟でない事なんてとっくの御見通しだったが、死の直前までその事を明かそうとしなかった。 「何か面白い事でもあったの?」 リナの目が期待に輝き出す。それには答えず、ゼロスは一枚の封筒を差し出した。 「親愛なる ゼロス=メタリオム様 貴卿のうわさはかねがねきいている 相談に乗ってほしき事があり 十月二十三日早朝にお伺いする 国家間に関わる重大な事のため、ぜひともこの日は開けていただきたい。 なお、私のかわりに、仮面をつけたものが訪ねるが、その仮面については何も言ってほしくない。あらゆるところから私の身分が明かされたくはないのだ。それでは、失礼する」 「なかなか面白い文章だと思いませんか?」 ゼロスが暖炉の近くの開いているソファーをさしてリナに座るよう促した。リナは座りながら、封筒を透かしてみたり手紙をじっくり見たりしている。 「この紙は上等な紙ね 一束20シリングで買える紙とは大違いね それと…透かしが入っているわ この紋章は、ドイツのホーエンツォレルン家のものかしら?」 「相変わらず鋭い観察眼と、洞察力ですね 感服しますよ」 「何馬鹿な事言ってるの あんただってこのくらいの事分かったから面白そうだと思ったんでしょ?」 リナが怒ったように口を尖らせていった。 「まあまあ、ところで今日は、どうします?金のスカラベ?銀のアミュレット?」 「アミュレット…って、馬車がこの家の前で止まったみたいね」 この季節に良くある事で、外には深いきりが立ち込めている。その中で、馬車を走らせてくるとはよっぽど重大な事に違いない。 「4頭立てのようですね」 ゼロスは窓の外も見ずに馬車の音だけでそう判断した。事実それはあっていて、リナが窓の外に視線を走らせたら、ぼんやりとした明かりの中で、四頭立ての馬車が見えた。 「激しく呼び鈴を鳴らしてるわね…お客さんのようよ」 階下で、フィリアが必死に応対をしているようだが、あそこまで家に上がらせたがらないとはよっぽど怪しい身なりをしているのだろう。 フィリアの制止の声を振り切ってその人物は真っ直ぐにこの部屋に向かって歩いてきた。力強く階段を上る音に、リナは男であるという判断をした。 ノックの後に、ひとりの背の高い、優に六フィートはあるような大男が部屋に入ってきた。体格が良く、少しくすんだかのような金髪が、後ろで一つに束ねられている。着ている服も上等なものだ。然し、どういうわけか顔には黄金のマスクがつけられていた。 「お初にお目にかかる、ミスターメタリオム」 ミスターX氏は、その体格に似合った、重厚な声の持ち主であるようだ。帽子を取り、ゼロスに挨拶した時のしぐさは、優雅さを極めていた。視線をその隣に移し、女性がいる事に気がつくと、軽く優雅に会釈した後、リナの手を取り、手の甲に軽く唇を触れさせた。 「はじめまして、ミス」 「リナ=インバースです サー=ガウリイ=ガブリエフ」 その何気なく投げ込んだリナの爆弾は、驚くべき効果を発してその謎の客人に作用した。小説では良く書かれているが、現実の人物はなかなかした事がない事、つまり、口をOの字に開いて呆然といるのだ。仮面さえつけていなければ目も丸くしていた事が伺えただろう。 「なぜ…私の名を?」 「簡単な事ですわ」 リナが優雅に笑う。この女性は、やろうと思えば、宮廷のどんな美しい美女よりも優雅に、典雅に振る舞う事ができる。それをしないのは、ただ単に本人の性格によるものであるが、今回それをやったのは、相手にとって効果があると思ったからだ。 「こちらにいるミスリナは私の助手です それくらいできて当然でしょう」 ゼロスがいつも客に対して振る舞う態度に変化した。客人の正体をリナがいっても驚かなかったから、彼もその正体に気付いていた事は事実である。 「まず、手紙です あれは一般の市民には高くて買えないものです 上等すぎます それを使っているという事で、ある程度の身分が保証されているという事になります そして、便箋には、家紋が記されてありました あれは、ホーエルンツォエルン家のものです 一族の端に連なるあなたが使用していてもおかしくはありません それに、先ほど読んだ新聞に、ガブリエフ家の当主がこのイギリスに滞在していると載っていましてね 後は簡単な推理で十分なはずです」 ガウリイは、あまりに見事な説明に拍手を送った後、黄金の仮面を取った。 「失礼、私がここに来ている事を誰にも知られたくなかったのだ あなたの推理には感服した あの、シャーロック=ホームズ氏に、勝とも劣らない観察眼だ」 「ミスターホームズと私の仕事とはいささか異なりますけど」 誉められて悪い気はしないのか、素直にゼロスは賛辞を受け取った。 「ホームズ氏ではなくて、私のところに持ち込んだという事は、…ホームズ氏には持ち込みたくても転落死してはどうにもならないと思いますが、… 複雑怪奇な事件なのですね」 「事件というか…不思議な事が起きたんです」 「私には、妻との間にできた娘がいまして、その子が十歳になったので、パーティーを開いていました 一族だけを呼ぶ質素なもので そこで、怪奇現象がおこり、負傷者が出る始末で…」 「その記事新聞には載ってないわね」 「極秘事項です 負傷したのが、ホーエンツォレルン家の当主夫人なのですから」 「ご婦人方は隠したいでしょう」 ゼロスは先を促すように手振りで示した。 「それ以来、私の身近な女性つまり、一族のものや、時には私の世話をする侍女まで、怪我をするありさまで、どうしようか考えているところなんです」 「ほかに、かくしている事あるでしょ?」 リナがいたずらっ子のように微笑みながら聞いた。 「……じつは、こんど、私は再婚する事になりまして、妻が亡くなってから三年も立つ事だし、跡継ぎもいないありさまでは困るので、同じ一族の傍流である、グレイシアという女性と… そしてその女性が」 「怪我をなさったと?」 「ええ、娘と引き合わせた晩に」 「今日、娘さんはおいでですか?」 「私と一緒にロンドンに来ています」 「ふむ、分かりました あとで、僕たちを貴族階級のものとして招待して下さいますか?」 「構いませんが、その方がいいのですか?」 「もちろんですよ それでは、今夜あなたの御屋敷で」 ゼロスがさっと、部屋の扉を開けて客を外に出すしぐさをした。ガウリイは優雅に一礼すると、ゆっくりとした歩調で部屋から出ていった。 「世界初の諮問魔術師としては、どういう展開を期待するのかしら?」 リナが、窓を覗いてガウリイが馬車に乗り込むのを見守りながらいった。 「いくつもある事件の模倣に過ぎませんね 最後には、美女のキスといいたいところですが」 スツールから立ち上がって、リナの手をつかんで自分の方に引き寄せようとするのを、リナは軽く腕を払って避けた。 「お世辞だけはうまくなったようね」 リナは笑って相手にしていない。そもそも、ゼロスのこのような態度は、自分以外の女性にもしているのを見た事があるので、本気でとろうとはしない。 「とにかく準備にかかりましょうか、美しい貴婦人と、紳士に変装するために」 「行くところは、サー=ガブリエフの麗しき婚約者殿のところね」 「ええ、一緒にロンドンに滞在しているはずですからね」 ゼロスの言葉を背に、リナは階上にある自分の部屋に向かって歩き出した。約十分後、紅茶を薄く入れた美しい髪を結い上げた貴婦人が、ゼロスの部屋に現れた。 「こんなもんでいいかしら?」 「上等ですよ ほかのどんな宮廷美人でも足元にも及びません」 「あんたの舌には潤滑油が塗ってあるようね」 ゼロスは笑いながらフロックコートに腕を通した。リナと並んで歩くと、違和感がないほどつりあっている2人である。然し、その事実を一方は認めようとしない。 一階で、部屋の掃除をしていたフィリアに向かってリナは声をかけた。 「ミスフィリア あたしたち、仕事で出てくから、ランチは用意しとかなくていいわよ」 「ディナーは?」 フィリアは、手を止めてリナの方に振り返って尋ねた。 「仕事の成功と共に」 ゼロスが軽くウィンクをしてそれに答える。フィリアは、2人を送り出した後、心ひそかに考えた。今日も無事に帰ってきたほしい。こんなに楽しい同居人を失いたくないから。神よ、願わくは、彼らに加護を。 つづく |
6127 | Re:女王蜂の分蜂に関する諸観察(後編) | Merry E-mail URL | 1/21-21:37 |
記事番号6126へのコメント 二頭立ての馬車に乗り込んで、リナとゼロスはグレイシア嬢の滞在するホテルへと向かった。当然会見するには前もって連絡を入れておくものだが、そこは、ゼロスの容姿と口八丁で何とか乗り切ったのである。 「何か御用かしら、諮問魔術師さん?」 長椅子に腰掛ける、漆黒の色をした長い髪をまっすぐに背中に垂らした、リナよりいくらか年上の若い女性が答えた。容姿は、大輪の花のようにあでやかで、気品すら伺える。 「あなたの身に起きた災難についてお聞きしたいのですが」 「災難?」 グレイシア嬢は、しなやかな指先を桜色の唇に軽くふれさせると、にんまりとわらった。 「そのような記憶はないわ あるのは、婚約破棄をする十分な理由だけ」 「失礼ですが、結婚には反対でしたか?」 「もちろんよ ミスリナ この私が、結婚なんぞで縛り付けられるとでも思って?!とりあえず断りきれないところからの申し込みだったから受けては見たけど、断る理由ができたんだから最大限に利用させてもらうのよ あなたの奥さんは、ほかの女性に目をくれるのがお嫌なようですって すばらしい理由だわ」 「亡くなられた奥様が起こした事だと思われますか?」 ゼロスが有無を言わさぬような声で尋ねた。 「もちろん」 「ありがとうございました」 「ねえゼロス あたしがこういうのもなんだけどさ その、あの人はそういう人じゃないと思うの」 馬車の中で隣に座るゼロスに向かってリナはいった。 「……サ=ーガブリエフの奥さんの事ですか?…そういえば、リナさんとは知己でしたっけ?」 「…シルフィールとは、同じパブリックスクールだったから 」 「どんな感じの女性でしたか?」 「優しい娘だったわ 人を怨むという事を知らなそうな人 」 「死んでから変ったのかもしれません」 「違う…といいきれないのが悲しいわね」 リナの台詞が終わった後、馬車が止まった。目的地である、ガウリイの屋敷についたのだ。屋敷といっても別荘である。ゼロスは先に降りて、リナの方に手を差し出した。その手にわずかに触れるようにして、リナは馬車から降りた。 屋敷の入り口には、執事らしき人物がリナたちを出迎えた。 「お待ちしておりました 中で、旦那様がお待ちしております」 通された部屋は、いごごちのいいダイニングルームで、すでにガウリイと、その娘がまっていた。 「ようこそ、サー=メタリオム」 打ち合わせ通り、ゼロスを貴族のものとして扱っているようである。父親に良く似た金髪の幼い少女が父親の陰に隠れるように立っている。 「娘の、サリアです ほら あいさつなさい」 後半部分は、しがみついている娘に向けた言葉だ。空色をしたドレスがとても良く似合っていて、まるで人形のようだ。 「はじめまして、ゼロスおじちゃま、リナおねえちゃま」 たいして年の変らない、ゼロスとリナをこう呼び分けるとはすばらしい教育をしているようだ。ゼロスは半分笑いを引きつらせながら、小さなレディに挨拶をした。 「はじめまして、リトル・ミス」 しゃがんで、小さな手を取って軽く手の甲にくちづけた。見る見るうちに、サリアの顔が紅色に染まっていった。 「はじめまして、ミス・サリア」 リナが同じようにしゃがんで、サリアと目線を合わせて挨拶したが、サリアのリナを見る目は、厳しいものだった。 夜が遅いので、サリアは先に自分のへやに引き取ると、ディナーが始まった。他愛のない話でそれは終わり、それぞれが部屋に引き取った。こういう仕事の時は万が一の事を考えて、リナとゼロスは同じ部屋で寝る事にしている。 今日もしぶしぶリナがゼロスと同じ部屋に引き取った時、ゼロスが、寝る前に結界を張って置こうと、嫌がるリナを無理矢理外に連れ出した。 「寒いじゃない あんたひとりでも結界ぐらいはれるでしょ!?」 「ひとりより2人でやった方が速いですよ」 屋敷の周りをぐるりと囲うように、ゼロスは結界石を等間隔においていく。その後を追うように、リナが何か呪文をぶつぶつ言いながら通っていった。 一周し終わって、ゼロスが後は自分でやるからと、リナを先に部屋に帰した。 リナは、部屋に向かう途中の廊下で、ぼんやりと夜空に光る月を眺めているガウリイにであった。悲しそうな表情をたたえる、ガウリイに思わずリナは声をかけた。 「あの、サー=ガブリエフ?」 「ああ、ミス・リナ どうかしましたか?」 「いえ、……奥様の事を考えていたのですか?」 顔に出ていたのかと、ガウリイが苦笑して、ため息共にいった。 「あの人には、すまない事をしたと思っているのです まだ学校を卒業したてのあの人を私は、無理矢理 、自分のものにしました あのとおりの美人でしたから他に、もっとつりあう求婚者がいたはずだろうに、権力で自分のものにしたんです 結婚してから、すぐにこの子が産まれ、わずか5年で亡くなったのです あの人は本当は、私の事を怨んでいるのかもしれませんね」 今まではただ黙っていたリナだったが、最後の一言で、リナはためらいがちに口を開いた。 「…シルフィールは あなたにずっと憧れていたのです パーティーで偶然あなたを見掛けた時から 結婚が決まった時、既に離れていた私に手紙をくれました 喜びで満ち溢れていましたよ そんな彼女がどうして、あなたを怨む事がありましょうか」 ガウリイは震える声でお礼を述べた後、自分の部屋に戻った。その姿を見送りながらリナは振り返らずに後方でじっと話を立ちぎきしていた存在に声をかけた。 「リトル・ミス あなたのお父様は人の話を立ち聞きしても良いって教えたのかしら?」 壁の影から小さな影が出てきた。反省するかのように下を向いている。 「お父様には内緒にしておくから お部屋に帰りましょ?」 髪の毛でサリアの表情は隠れていたが、この時リナがサリアの表情を見れたとしたら戦慄を覚えただろう。その瞳が憎悪に輝いていたのだ。 然し、かつての友人の子供にそんな疑いを持てないのがリナである。 「…で」 押し殺すような声がサリアから漏れた。リナはしゃがみこんで聞き返した。瞬間、感情が爆発してサリアは絶叫した。否、その叫び声と共に、周りの空気が破裂したのだ。 「お父さんを取らないで!!」 とっさに受け身は取ったものの、リナの全身には不快な傷が無数についてしまった。 「この子に憑いていたの?」 とっさに悪霊払いの呪文を唱えたが、ききそうにない。やがて、彼女のからだから両目が憎悪に煮えたぎる表情をした彼女が現れる。 「ちっしょうがないな 直接倒すとするか」 リナは自分の力を右手に集中させて、憎悪にも得るサリアに殴り掛かった。手応えがあり、リナが喜んだのもつかの間、悲鳴は、サリア本体から上がったのだ。 「え…こいつを倒したら…サリアちゃんも死んじゃうの?」 一瞬リナの動きが止まった。それに乗ずるかのように、取り付いているサリアが、衝撃波を放った。全身でもろに受け、リナは悲鳴を上げる間もないまま後に吹き飛ばされ後頭部をしたたかに壁にぶつけた。 真っ白な壁に真紅の血が染み付いた。リナの傷は致命傷で、もう立ち上がる事すらできない。口から血の固まりを吐いた。 止めを刺そうと近寄ってくる、少女の姿をした死神がゆっくり土地被くのをリナは平静な瞳で見詰めていたが、それも最後まで見る事ができずゆっくりと目を閉じた。 サリアがまさに手をかけようとした瞬間、動きが止まった。上から、見えない大きな手がサリアの体を押さえつけているのだ。さっきの爆発で半壊した屋敷の屋根に座ってひとりの男が地面に押さえつけられた少女を眺めた。 闇から生まれた事を証明するかのような、髪の色と、同じ色の瞳。いつもはつぶっているはずの瞳が今日は見開いていて、絶対零度の視線を放っている。 「あんまり調子に乗りすぎない方がいいですよ あなたは無力なんですから」 言葉づかいは丁寧だが、一言一言にかみそりが添えられているかのように切り裂いていく声色だ。 サリアは押さえつけられているものに抗うようにして力を解放しようとした。 「お父さんを取らないでぇ」 「落ちよ 神鳴り」 同時にゼロスも呪文を唱えると、急に空が曇り出し大きな稲光がたったひとりの少女だけを目指して落ちていった。 「気がつきましたか?」 リナの視界に最初に入ってきたのは、夜の帳を表す瞳の色。やがて、それが人の形を取った時、リナ傷の痛みをこらえてつぶやいた。 「…あのこは?サリアは?」 ふと、ゼロスの脳裏に、全身に包帯を巻いた死人同然の娘の手を取って泣き崩れる、父親の姿がよぎった。しかし、口に出した言葉はこれだった。 「大丈夫です」 「そう…」 リナは安心したかのように瞳をつぶった。馬車の程よいゆれが、リナを眠りの国に旅立たせるのには十分だった。 おわり |
6211 | 悠久の風7 | Merry E-mail URL | 2/4-20:31 |
記事番号6017へのコメント 悠久の風7 終わりなき鎮魂歌 「……いま…なんて?」 執務室につめていたアメリアは、補佐役がしてきた報告に驚いて手にしていたはねペンを机の上に落とした。紙の上を転がる音と、ペン先についていたインクが紙の上に広がった。 「……サイラーグでの戦闘により ナーガ様、フィリア様戦死なさったもようです」 「うそよ」 アメリアは自分の声がどこか遠くで聞こえているように感じた。弱々しく小さな声がどこかでしている。まるで自分の声ではないみたいだ。目の前がぼやけていくのが分かった。 「うそよ、姉さんがあたしをおいて死ぬはずない!」 「事実です…アメリア様」 雷に打たれたような衝撃にがっくりと肩を落とし、アメリアはつぶやいた。 「しばらく…ひとりにしておいてください」 人の去っていく気配と、扉の閉まる音を感じ取りアメリアは手を握り締めた。 どうして、みんな死んでいってしまうのですか? その流れた血に対して、私は何かできないのでしょうか こんなにも無力な自分が 悔しいと思った事はないです 書類の上に、水滴が流れ落ちた。重要な書類がくちゃくちゃになってしまう事なんかに今はかまっていられなかった。その日、アメリアは執務室から一歩もでてこなかったと記録に残っている。 ゼルガディスは、どうアメリアを立ち直らせるか考えていた。立ち直ってもらわなければ、このまま人類は滅亡へ大合唱しながら転がり落ちていくだろう。ゼロスの大軍がセイルーンにつくまでにどうにかして作戦を立てなければ明日はない。酷な事を承知している。わずか十八歳のか細い少女の両肩に乗っかるにしては重過ぎる期待と、責任がのしかかっている。 でも、アメリア以外の何者がリナの亡き後を埋める才能を有しているといえるだろうか。 ともかくゼルガディスは何と励ましていいのか分からないまま、アメリアの執務室の前に立った。ためらいがちにドアをノックした。 「アメリア、俺だ」 「こないでください もう少ししたら、必ず立ち直りますから…今だけは」 「…その…なんだ…あまり自分を追いつめないようにしてくれ…」 ゼルガディスは、思うように気持ちを口にできない事に腹立たしさを覚えながら、アメリアの部屋を後にした。どうする事もできない事が時にはあるもののようだ。ゼルガディスはその足で、同じように落ち込んでいるであろうヴァルの方に向かった。 やはり、というかヴァルの部屋にいざ行って見ると、部屋に鍵こそおろされていなかったものの、部屋はランプを点けていない所為で薄暗く、一歩入っただけで、アルコールの匂いが充満している事が分かった。更に踏み出すと、足に空瓶が当たった。 「ヴァル」 「どうやら幻覚がついに見えてきたようだな 不景気そうな面が俺の目の前に現れたぜ」 「これ以上のみ続けたら体に触る」 「俺は誇り高き竜族の生き残りだぜ? そんな事ぐらいで…」 「みんな心配するはずだ フィリアも…」 「そんなわけはないっ」 ヴァルが声の限りに叫んだ。ゼルガディスが一瞬見返した。 「そんなはずはないんだ…もう、何も言うはずが無い」 怒鳴った反動か、弱々しい声でヴァルはつぶやいた。ゼルガディスが言葉をつげなくなったとき、突然背後の部屋の入り口から、良く通る澄んだ声が聞こえた。 「そんな事はありません フィリアさんの声は、届いているはずです」 「シルフィール」 「ヴァル、あなたなら分かるでしょう 同族であった、フィリアさんが何を望んでいたのか 何をあなたにしてほしかったのか」 相手を威圧しないように優しく一歩一歩近づいて、そっとヴァルを包み込んだ。それは、あたかも女神が降臨したかのように、ゼルガディスの瞳には写った。 ヴァルはアルコールの靄で濁っていた瞳を、シルフィールに向けた。シルフィール優しい笑顔が、フィリアとの笑顔にダブった。その瞬間、ヴァルの瞳に理性の光が点った。 「人間と、時を過ごす事に決めたのです」 優しくつぶやいたフィリアの台詞が、ふとヴァルの記憶によみがえった。 「もう二度とこんな風に取り乱したりしねえよ 悪かったな」 ヴァルは気はずかしそうに、つぶやくと近くにあったタオルを取って共同浴場の方に向かっていった。 時を同じくして、アメリアはリナの自室に独りでいた。遺品の整理でもしようと無意識のうちにこの部屋に向かっていたのだ。そこで、アメリアは羊皮紙の、奇麗に装飾のされた日記帳を発見する。リナがこのセイルーンで軍事的な立場に関わるようになってから書かれた日記だ。これからの展望や、作戦など実務的なものが多く書かれていたが、アメリアを中心とする仲間たちの事、そして、ごく控えめに自分が唯一恋愛感情を抱いた相手についても触れられていた。それが誰であるのかリナは巧妙に書いてあり、アメリアとしては釈然としなかった。懐かしさに引き込まれて、そのまま読み進むうちにリナが魔族に対抗するために世界中の文献を調べた時の事が詳細に書かれていた。アメリアは、そのうち実際にできそうな事で、しかし、自分は魔道士だからで来そうに無いとかかれた記述を発見した。それは、巫女にだけできる呪文であるとかかれていて、それを行うための呪文も事細かに書かれていた。然し、それを実行するには、アメリア、フィリア、シルフィールを危険にさらさねばならなく、決して実行しない事のうちの一つに上げられていた。 「リナさん…あたしだったら、別に気にしなくても良かったのに 一緒に危険な橋を渡ってきた仲じゃないですか」 何故かアメリアの目から涙は零れなかった。生きる事を力強く思えるようになったのもリナから教わった事のひとつだと気がついたのだ。 「あたしが、こうして単なる正義オタクだけではなくなってしまったのもリナさんの所為、人類最後の砦が、いまだに守られて、そこで見果てる事の無いお祭りをしているのもみんな、リナ=インバースあなたの所為です 少しでも自分の責任だと思うのなら、生き返ってきて下さい たった一度だけ、正義に反する事を許してあげます 早く墓の下から出てきて下さい」 こまったわね と優しく笑いながら頭を掻くリナの姿が、アメリアの脳裏によぎった。 「リナさん、あたし、あなたにあった事決して後悔していません 会わなかった時の事に比べればずっと 幸せでしたから」 アメリアは何か吹っ切れた表情で、リナの日記をそのままもとあったところに戻した。然し、リナが発見したとされる呪文の写しをアメリアはたたんでポケットにしまった。 その日、太陽が沈みかけた頃ようやくゼルガディスはもう一度、アメリアの執務室に向かった。今度はちゃんと会わなければならないだろう。いまし方届けられた情報が、芳しいものではなかったのだ。 「アメリア、入るぞ」 「どうぞ、ゼルガディスさん」 立ち直ったかのように見えるアメリアに少しゼルガディスは安堵して、その報告書を見せた。それは、セイルーン周辺にある街が魔族によって壊滅に追い込まれているという報告だった。 「ゼルガディスさん」 アメリアは報告を読み終えると、震えるような声でゼルガディスに向かっていった。 「これが最後の決戦になるでしょう いちいち、父上に出兵の報告をしている暇はありません、事後承諾という事で、みんなを非常召集させて下さい」 ゼルガディスが何かを言おうとしてそれをアメリアが遮った。 「分かっています 無駄に人を死なせたりしません 命にかえても、セイルーンを…いえ、人類を守りますから」 アメリアの断固たる口調に何を言っても無駄だと悟った、ゼルガディスはそのまま部屋を出た。部屋を出る寸前わずかに振り向き、アメリアの窓を向いて後ろ姿を見せていたのが妙に、目に焼き付いた。 三十分後、会議室に招集された幹部たちは、アメリアから無謀ともいえる作戦を聞かされた。 「私が、先頭となり魔族の本拠地に乗り込みます リナさんの調べた文献には、とある儀式により魔族達のすむ異界へいけるという事です そこで敵の親玉を打ちます その儀式には巫女が2人必要で、先頭になる巫女と、後方で空間を開く役目をする巫女です その空間を維持する役目として、シルフィールさんあなたに命令をしなければなりません」 「まって下さい、アメリア殿下はこの国を支える身、私が参ります」 シルフィールの訴えをアメリアは無言のうちに退けた。 「こんな事を言うのは卑怯だと思います でも、シルフィールさんあなたは戦闘は苦手なのでしょう リナさんが書かれた作戦にも、あたしと姉さんが先陣で、フィリアさんとシルフィールさんが後方で空間を維持するべきだとかいてありました」 シルフィールは、アメリアの思惑通り反論する事ができなくなってしまった。誰も反対するものがいなくなったので、アメリアは決定の意を次げると、準備にかかるように命じた。まだ会議室の椅子に座ってぼうっとしているシルフィールに、アメリアは声をかけた。 「ごめんなさい シルフィールさん でも、あなたに他に頼みたい事があるからこうしたんです」 「…なんでしょうか?」 「父さんを頼みます なるべく生きて帰れるようにはしますけど、何せ魔界に乗り込むわけですから もし、万が一の時、父さんを守って下さい」 シルフィールはただ肯く事しかできなかった。 セイルーンの中央にある神殿の内部の、中心にシルフィールは巫女の正装をして立った。その傍らに、武装をしたアメリア、ゼルガディス、ガーヴその他三名が付き従っている。選ばれた精鋭部隊だった。 「今から空間を繋ぎ止めます あまり長い間維持はできないので、なるべく早く戻ってきて下さい」 「力尽きたら止めてくれて結構です 仕方の無い事ですから」 アメリアが精一杯笑顔をつくってシルフィールを励ました。シルフィールはそれになんて答えたらいいのかわからず、ただ目をつぶり、呪文の詠唱に入った。やがて、空中に、空間のひずみができ始めた。そこをレビテーションでアメリア達は入っていった。 シルフィールはただ印を結び、呪文の集中を続けていた。 「うまくいったみたいですね」 アメリア達は、数分レビテーションで飛び続けると、やがてどこかの空間に抜けたようだ。空が、銀にも紫にも取れる不思議な色で、その下には島があって、緑色をしているけれどもそれは人間界に生えている草とはどこか違う代物で、島の中央部には、大きなお城といってもいいほどの建物が建っていた。 「これが…紫の群島 あれが…獣王ゼラスの居城」 アメリアは、初めて見る光景に戦慄を覚えながら他のものに戦闘体制をとらせた。長い一日が始まろうとしていた。 つづく ツリーに書き込みが無いのですが・・・読んでいる人はいるんですかね。 いなければここに上げる必要も無いんですが・・・ |
6212 | 悠久の風8 | Merry E-mail URL | 2/4-20:34 |
記事番号6211へのコメント 悠久の風8 平和へ 流血航路 アメリア達は下級魔族に発見されないように注意しながら進んでいたのだが、先方はここに来た事も先刻承知だったらしく、アメリア達を排除するように次々と魔族が繰り出てきた。それをいちいち撃退しながらアメリア達は獣王ゼラスのところを目指した。 「ほう、人間がここまで来るとは、リナ=インバースを始末しただけではだめだったようね」 「申し訳ございません」 透き通るような金髪を持つ主人に、その影は傅いた。女主人は、その形の良い唇から煙管を放し、からかうような成分の含まれた声で言った。 「お前の責任ではなくてよ それとも、この紫の群島への行き方、お前がリナ=インバースに教えたとでも言うのかしら?」 「違います 決してそんな事は…」 「ならばいいわ」 「然し、ゼラス様 このままあの者達を放置しておくのは…」 ゼラスは、また煙管を口に近づけすぐに放した。 「下級魔族達に好きな事をやらせておきなさい 我を通そうというものがいるのだからここまでたどり着いたらそれを聞いてやってもいいわ」 ゼロスは主人の言う事を聞くしかなかった。 「ただ、お前が阻止したいのならしてもいい でも、移動していいのは私の部屋の周りだけ 他の事には一切干渉してはならないわ 楽しみが減るから」 「分かりました、ゼラス様」 ようやく内部に入れたものの、アメリア達は地の利を得る事ができず、結局下級魔族に挟み撃ちをされる羽目になる。下級魔族なんか簡単に蹴散らせるほどになったが、こう数が多いと不利だ。アメリアがすばやく計算をしようとしていたその時、ヴァルの良く通る声が響いた。 「アメリア 行け いって、歴史を作れ 会って、ゼラスの首を跳ねるなり和平の交渉をするなり好きなようにするんだ」 「でも、ヴァルさん」 「事の軽重を誤まるな 俺は、お前達が交渉しやすいようにその準備をする、お前さんは交渉する…ゼルガディスと2人で行け、2人ならどうにか一人前として戦えるだろうからな」 ヴァルに付き従ってきたほかの三名も肯いた。速く行けといわんばかりだった。 「必ず、生きて会いましょう」 「あたり前だ 人間がどうやって生きていくのか見ていくって決めたんだからな」 アメリアとゼルガディスが駆出した後ろ姿を見ていたヴァルが、何気ない動作で後ろに向かってエネルギー弾を発射した。それは近づいてきたレッサーデーモンに当たり、絶息した。 「かっこいい さっすがヴァルさんっすね」 陽気な口笛と共に、ひとりがいった。 「一度やってみたかったんだ」 「さすがヴァルさんですね うまくやってますよ あれほどの使い手はなかなかいないものです フィリアさんがちゃんと育てた成果でしょうか」 ゼロスは水晶で、戦いの様子を覗き見ていた。その背後で絹の擦れる音と、主人の鈴のように美しい声が響いた。 「ゼロス、私ここに来る客人のために、着替えてこようと思うから、留守はよろしく」 「お任せ下さいゼラス様」 魔族に着替えるも何も無いが、用は気持ちの問題である。おそらく今ごろは自室で、どの格好が一番ふさわしいかあれこれ考えているのであろう。 その頃、アメリア達は必死に長い回廊を走りぬけていた。雑魚達を一撃で葬り去りながらさ迷い歩いた。そこに、影が人間の形を取った。夜空を切り取ったかのような髪の色は切り揃えられ、宵の開ける寸前の瞳の色をしている。闇から生まれた事を証明するかのような黒い神官服。見間違えるはずのない、獣神官ゼロスその人だった。 「ここから先はお通しできませんよ」 「力ずくでも通ります」 アメリアと、ゼルガディスはすばやく臨戦体制を取った。 「一つ答えてくれませんか?」 「何でしょう、アメリアさん」 「…リナさんの事 好きだったのですか?」 この問いかけに少なくともゼルガディスは驚いたようだ。いつもは冷静な彼が、目を見開いてアメリアを見た。 ゼロスにしては珍しく、ごまかすことなく返答した。 「すきですよ 誰よりも」 「私たちが…いえ私が足かせになっていなかったら リナさんは…」 「止めて下さいよ そんな事はありはしないのです あの人は、リナさんは魔族を愛するようなかたではありません 常に正道を行く、光りにあふれた人です 僕にはまぶしすぎる人ですよ」 「でも、リナさんはあなたの事がすきですよ」 アメリアは何かを吐き出すかのように言った。あの日記に書いてあった切ない思い、誰からも理解されないと思っていた事。全てがアメリアの記憶から吐き出されようとしていた。 「じゃなかったら、あんな日記記しません リナさんは本当にあなたの事が…」 「そんな事言って今更どうなるのですか? 僕はゼラス様への忠誠を取り、あの人は人間として生きた それだけですから」 おしゃべりが過ぎましたねと、ゼロスはつぶやくとアメリアに攻撃を仕掛けた。それをぎりぎりの線でアメリアはよけた。然し、次の瞬間アメリアは後方に吹き飛ばされ、したたかに腰を壁にぶつけた。 「アメリア!!」 「よそ見している暇はありませんよ ゼルガディスさん」 黒い閃光が、ゼルガディスの視界を横切った。次の瞬間気がついたら、地面に仰向けに叩き付けられていた。これが獣神官の力、差がありすぎる…。 倒れた衝撃で口を切ったらしく、鉄の味が広がった。それを吐き出して立ち上がろうとする瞬間に、黒い小さな無数の円錐がゼルガディスの体を切り付けた。 「ぐわぁっ」 「ラ・ティルト」 アメリアが壁際で、印を結んで呪文を唱えた。 「まだまだこれからですよ」 アメリアは、余裕を見せるかのようにウインクした。 「おーい、だれか図々しくも生きているやつはいないか? 独りぐらいはいるだろう…」 ヴァルは静まり返ったろうかで、歩きながら一緒に残った三人の名前を交互に呼んだ。しかし返事はない、乱戦の中はぐれてしまった事が悔やまれた。倒れている魔族の中で、かろうじて人間の姿を保っているものがいた。それが、ただ意識を失っているだけであった事をヴァルは気がついていない。ヴァルの後ろ姿めがけて、ただ憎悪にのみ光る瞳で、見つめなたら光球を放った。油断していたため、もろ背中に一撃を受けた。口から血が滴り落ちたが、一歩もふらつく事無く、ゆっくりと振り返り、自分に致命傷を負わせた魔族を見下ろした。完全に立場が逆転していた。いつもは弱い人間や竜族を踏みつけていた魔族が、今度は致命傷を負っても全く苦痛すら見せない竜族に、見下ろされている。初めて恐怖を言うものを味わった。 「名前を聞いておこうか」 「聞いてどうする」 「この俺様に傷を負わせた魔族として覚えておいてやる」 「…フィ…フィーレ」 「よろしい、フィーレよく見ておけ、竜族とはこう戦うのだ」 言うなりすばやく振り返り、致命傷を負っているからと油断して近づいてきた魔族を一瞬にして滅ぼした。 魔族は、恐怖のあまりに悲鳴を上げた。それ以上ヴァルは構わず、ゆっくりと前進した。やがて、上の階へと続く階段なのか、まだ戦いで汚れていない階段が残っていた。そこにゆっくりとヴァルは腰を下ろした。この男に何かを見上げるという事はひどく不似合いだった。 いい眺めだ…。 恐る恐る近づいてくる魔族の格好をした死神をどこか遠くで見つめながら、ヴァルは思った。 「古代竜族の生きのこり ヴァル 最期の戦いの中戦死 最期に言い残せし、我に葬儀はいらじ、ただ、美女の涙のみ死者の心を慰めん…いまいちカッコ悪いな これなら、アメリアの青二才に代筆させた方がまだマシか…」 ゆっくりと、ヴァルは眠るような動作で瞳を閉じた。闇に落ちていく意識の中で、ヴァルはつぶやいた。 「ああ、やっぱりあの女だ フィリアだ 俺が、ずっと探していた、大事な…」 ヴァルの死亡時刻は正式には分かっていない。ここが、普通の世界とは異なる紫の群島での出来事で、時間という概念がちゃんと働いているか分からなかったからである。 つづく まあ、ここまで書き上げたのでここに掲載しましたけど・・・。 こんなながい文章にわざわざ付き合って下さって、 ここまで読んで下さった方々ありがとうございました。 |
6217 | 続きすっごい楽しみにしてたんですよ。 | 理奈 E-mail | 2/6-09:02 |
記事番号6212へのコメント あぁ~ら、ひさしぶりに来てみれば!!きゃぁ!!続きだ続き!!なんて 叫びまわってる理奈です!! 「悠久の風」は、特に好きです。文章の上手さ、ストーリーの進み方、 ストーリー全体。なにをとってもすごくお上手で私が大好きなストーリーライン です。なんて言うんでしょう。スケールがおおきいぃ??私の書くそこらへんに ころがってるありがちなストーリーと違ってすごくオリジナルで、 こーゆーストーリーを考えるMerryさんは、すごいと思います。もー 他にどう言ったらわからないほどです。完結したさい、あらためてちゃんと ストーリーの感想(上は、どうみても感想じゃないから・・・)を書かせて もらいます。であ。 |
6221 | Re:続きすっごい楽しみにしてたんですよ。 | Merry E-mail URL | 2/6-20:27 |
記事番号6217へのコメント 理奈さんは No.6217「続きすっごい楽しみにしてたんですよ。」で書きました。 > > あぁ~ら、ひさしぶりに来てみれば!!きゃぁ!!続きだ続き!!なんて >叫びまわってる理奈です!! > 「悠久の風」は、特に好きです。文章の上手さ、ストーリーの進み方、 >ストーリー全体。なにをとってもすごくお上手で私が大好きなストーリーライン >です。なんて言うんでしょう。スケールがおおきいぃ??私の書くそこらへんに >ころがってるありがちなストーリーと違ってすごくオリジナルで、 >こーゆーストーリーを考えるMerryさんは、すごいと思います。もー >他にどう言ったらわからないほどです。 ありがとうございます。そこまでいっていただけると逆にこちらが照れてしまいます。 >完結したさい、あらためてちゃんと >ストーリーの感想(上は、どうみても感想じゃないから・・・)を書かせて >もらいます。であ。 > とりあえず完結しました。感想を聞かせて下さい。 |
6219 | 悠久の風8 | Merry E-mail URL | 2/6-20:23 |
記事番号6211へのコメント 悠久の風9 神の子 「あなたがたは、まだ分かっていないのですか」 容赦のない、絶対零度の冷たい声がアメリアに降り注ぐ。その声を聞きながら、踏みつけられる右足に、アメリアは苦痛の悲鳴を上げた。一撃で吹き飛ばされ、仰向けに寝そべった上からゼロスが執拗なまでに追い討ちをかけてきたのだ。さっき踏みつけられた拍子に、右足の骨は砕かれた。想像を絶するような激痛がアメリアを襲った。 「実力の差があるのですよ 高位魔族であるこの僕と、単なる屑と」 おそらく、彼の一部であろう杓杖が大きく振り上げられ、アメリアの腕の関節めがけて降りた。 「きゃぁぁぁぁっ」 「アメリアっ」 ゼルガディスが満身創意の姿で、ゆっくりと立ち上がり彼の人の名前を呼んだ。然し、止める余力は残ってはいない。気絶してもおかしくないほどの傷を負って、なおその痛みに耐えながら正気を保っている、それが、ゼルガディスの状態だった。ゼロスに一糸報いぬまま、あっさりと打ち負かされていく。 「私は、…諦めません…リナさんが言ってました 諦めたらそこで負けだからと」 右手の関節にゼロスの杓杖を埋め込まされたまま、アメリアは血を吐きながらつぶやいた。その声は小さかったものの、決して弱々しくはない。満身創意だったけれども、瞳には強い意志の光が宿っていた。アメリアは気力を奮い起こして、ゼロスの杓杖を引き抜き、立ち上がった。ゼロスはそれをただ黙ってみつづけ、アメリアが膝立ちになった時、そのあごを蹴り上げた。一瞬息が詰まる。そしてそのまま、壁に体をぶつけた。ゼロスは蹴り上げた足を反動にしてからだの向きを変えると、片手を軽く上げて切りかかってきたゼルガディスの剣先を止めた。 「いったでしょ 実力が違いすぎますって」 ゼルガディスが、ふら付く足に鞭を打って、ゼロスと対峙した。その間、アメリアは長い呪文詠唱に入っていた。 もう、これ以上ゼルガディスさんに負担はかけられない。 ここでゼロスさんに殺されるわけにはいかない。 アメリアは、リナが書き残したもう一つの秘術を唱えていた。それは、ゼルガディスにもシルフィールにも教えなかった事だ。教えたらきっと止められただろうから。もし、自分がこの呪文を他人が使おうとするのを見たら、真っ先に止めただろう。そのくらい危険で、禁呪とされているものだった。 神の降臨…コールゴット… 赤の竜神シィーフィードを自分の体に降臨させ、その力を借り受ける。しかし神という存在を受け入れるため、術者は命を落としかねない。その上、神を降臨させるのは、巫女のみ可能な事で、たとえ巫女とはいえど、心清き者、その資格を有するもの以外には降臨する事はない。そんな呪文だ。 神よ 慈悲深き竜神 赤の竜神シィーフィードよ 願わくば我が体に降臨せん事を アメリアは、みずからの巫女としての才能と奇跡にかけた。 大地の恵み、降り注ぐ優しい雨、草木の青臭い匂い。草原を長い影をつけてはだしで駆けていく子供たち。大木の根元で休憩をとる旅人達。朝から農作業をしている老夫婦。市場で、小麦粉をパンにして蜂蜜を垂らして売っているパン職人。そのパンをものほしそう見ていた子供と根競べをしていた職人が、根負けをしてそのパンを一切れ上げた事。燃え盛る熱い炎の中で、ガラス細工をしているガラス職人。形の崩れたガラス細工を見て、次ぎこそはと決意を新たにしていた事。一日の疲れを、いつも決まった酒場で過ごす者達。エール酒でほろ酔い加減でみんなで漁師達に伝わる歌を合唱した事。夜空に浮かぶ星を眺め、旅の思い出をリラの調べにのせる吟遊詩人。月が、天使のような寝顔を見せる子供たちの顔を覗く。そして、また朝日が昇る。 アメリアは、この大地の上に生きるすべての生き者達の事を考えた。それは、幾重にも織り込まれた深い色見の織物。胸の奥から、熱いものが込み上げてきた。突然圧倒的な質量がアメリアを捕らえた。魔族のそれとは違う。何だろう何故か懐かしい感じがする。 「あなた様は赤の竜神シィーフィード様でいらっしゃいますか?」 「ちがう、我は、シィーフィード様の腹心、その下においてシィーフィード様の力を借るに足るものを探すもの」 「お願いです シィーフィード様のお力をお貸し下さい」 「汝は力を欲するか?」 「はい、然し、過ぎた力はほしくありません」 アメリアは、自分の父親の政策を思い出していた。”過ぎた力は隣国に恐れを抱かせる”まさにそのとおりだとアメリアは思う。 しかし、この対話をしているのは本当にシィーフィードではないといいきれるのだろうか?この圧倒的な質量でさえまだ、腹心だというのならば竜神の力を借り受けた時、正気を保っていられるだろうか。 「ならば力を与えん 等しく力を与えるそれが、シィーフィード様のお考えだ」 「その力を返上する手段はあるのでしょうか?」 「汝はその力を永遠のものにしたいとは、思わないのか?」 「思いません あくまでも借り受けるだけです」 「その手段はある そは苦難を伴えども かつて、この力を最初に借りた若者がいた 彼の者は言った、必ず返すと」 その若者が、レイ=マグナスである事をなんとなくアメリアは感じ取った。たしか、彼は魔道士を引退した時、単なる人間になっていた。約束を守り、その力を返したのだ。 「約束は守ります お力をお貸し下さい」 「よろしい、我の力を貸そう 人間の娘よ」 やっぱり、この対話を最初っからなさっていたのは竜神だったのだ。突然湧きあがる力に、アメリアは意識を失いそうになりながらも必死に食い止めた。視界に、ゼルガディスの愛剣が宙に飛び上がるのが見えた。 アメリアはすぐに行動した。その溢れる力を一本の剣に束ね、ゼルガディスにまさに止めをささんというゼロスの背後に突き立てた。 「…!!アメリアさん…どこにそんな余力が…」 左肩が消し飛んでいくゼロスは、振り返り様、アメリア言った。然し、言ったそのすぐ後、 全てを了解したように笑った。 「…とんでもない人ですね リナさん以外にこういう手段に出る人がいたとは、竜神の降臨 アメリアさん、相打ちを狙っているのですか?」 ゼロスの顔に、苦痛の色が広がった。アメリアは、有無を言わさず、ゼロスから剣を引き抜き、振り上げた。きっと、ゼロスを睨み付けた。その目には涙が光っている。 「あなたは、してはいけない事をしました リナさんを、あなたが愛する人を殺したのです」 ゼロスは防御する事も、避ける事もできなかった。シィーフィードの力に圧倒されたわけではない。アメリアの、その言葉と瞳が無数のピンとなってゼロスを押さえつけたのだ。アメリアはそのまま剣をゼロスの中心に突き立てた。 「……そばに」 ゼロスはただそれだけつぶやくと、闇に紛れるように消えていった。ゼロスは滅んだのだ。ゼルガディスは、アメリアに駆け寄り体を支えた。今にも倒れてしまいそうだったからだ。 「大丈夫です ゼルガディスさん 行きましょう この奥に、獣王がいます」 「然し、アメリア、その呪文…」 「何も、言わないでください こうするより無かったのです 大丈夫です暴走はしません わたしがおさえていますから 獣王とあって話すぐらいの時間は、まだ生きていられると思います」 ゼルガディスはそのまま、アメリアをかけるようにしてゼロスが守っていた扉に入っていった。そこは、他のところと違って、古風な調度品で囲まれていて、おそらく私室であろうと思われる。そこの中央にある椅子に、この世ならぬ美貌の持ち主、夜の精月の体現者であるかのような女性が座っている。金糸のように細い金髪は、透けるように色が薄く、肌は着きのように冷たい色白さをもっている。そして、その人の雰囲気は人を支配するものの畏怖に満ちている。これが、獣王ゼラス ゼロスとは格段に違う。 「2人とも、自分の力でこちらまで歩いてきなさいな そうすれば、話は聞いて差し上げてよ お前達の、その自分を犠牲にしてまで守りたいというものを、自分の力で証明してご覧」 鈴が鳴っているかのようだった。声まで美しい。 アメリアは、ゼルガディスから離れると、一歩一歩踏みしめるように歩いていった。たかが5,6歩の距離が無限に広がる道のりに思えた。その後をゼルガディスが気遣うように歩いていく。ゼラスの前にたどり着いた時、アメリアはそのまま膝をつきそうになった。気力を奮い起こし、両足で床を踏みしめた。魔族に膝を屈する事は、人類代表としてできなかった。 「たったままで御意を得ます 獣王ゼラス陛下」 「ほう、この私に敬語を使ってくれるの? 変った人間ね」 「あなたに交渉を申し込みに来たからです …戦う気ならこんな事はしません」 「それで、何を望む?」 「和平と共存を、拒否なさるならそれと反対のものを」 アメリアはここで深く深呼吸をした。ともすれば、ゼラスに飲み込まれそうな圧倒的な雰囲気を感じたからだ。 「魔族と、人間の新しい関係作りです それを教えて差し上げます 虚心にお聞き下さい そうすれば分かっていただけると思います リナが、何を望んでいたのかきっと…」 アメリアは、目の前が暗くなっていくのが分かった。言葉が続かない。最期に感じた感触は、倒れた後にさわった冷たい床だった。 「この私に教えてくれると? よろしい、この者の大言壮語に免じて戦いを止めさせましょう 全軍に伝達せよ 一回、魔界にすべて戻ってこいと」 ゼロスは床に倒れ伏す少女を一瞥した後、その背後に立つ若者を見つめた。 「おぬし達は、帰るが良い 非常に面白い存在故、生かしておく事にしよう」 そう言うなり軽くてを振った。何も無かった空間に、トンネルが出来上がった。 「おぬし達が通ってきた、時空のトンネルにショートカットしただけだ これをたどって帰れ 愛しき者達がまっているという、その世界へ」 ゼルガディスはアメリアを抱え上げた。最期まで警戒したままそのトンネルをくぐった。 そのトンネルの中ですぐに、ゼルガディスはシルフィールの精神に戦いが終わった事を次げた。それをシルフィールがみんなに報告すると、文字どおり踊りださんばかりに歓声が沸き起こった。しかし、ヴァル達の戦死が報告されると、それも静まり返った。 「…あの、ヴァルがね 死ぬ事もあるんだね 殺しても死なないようなやつだったのにね」 フィルは半ば呆然とつぶやいた。彼がまだ幼い姿だった頃にこのセイルーン来て、やんちゃで手におえなかった事があった。 「陛下、もうすぐアメリア殿下たちが帰ってきます」 シルフィールの伝言を、同じく巫女である少女がセイルーン国王に伝えた。 「すぐに医者を呼べ、替えって来たところで全身創痍だろうから」 つづく |
6220 | 悠久の風10 | Merry E-mail URL | 2/6-20:24 |
記事番号6219へのコメント 悠久の風10 夢、見果てたり 「ここは…」 アメリアは鉛のように重い瞼をこじ開けた。最初に視界に入ってきたのは、優しい瞳で、自分を見つめるゼルガディスに良く似た人。キメラではなかったからそう思ったのだ。 「良かった、アメリア気がついて」 「その声…ゼルガディスさん?! 人間の姿に…」 体のあちこちが痛くてうまく声が出ない。何だか遠くでしゃべっているみたいだ。 「力の使い過ぎでな 元の姿に戻ってしまった」 「良かった、ゼルガディスさん、生きていてくれて」 アメリアは笑ったつもりだったがうまくできたかどうか。 「もう少し眠った方がいい 俺はここにいるから」 アメリアの目にゼルガディスの手が優しく下りてきた。アメリアは安心した気持ちで、また眠りに就いた。 アメリアは、さっき目を開けた時よりもいくらか楽な状態で目を再び開けた。ぼんやりとした視界が、やがて焦点が合ってはっきりと見えた。ここは、セイルーンの王宮の自分の部屋だ。天幕がおろされていて、当りが居心地がいい程度に薄暗くなっている。アメリアが気がついたのが分かったのか、天幕の一つがさっと開けられて、外の眩しいほどの溢れんばかりの日の光りが入ってきた。アメリアの左手首をもち脈を計っている。 「もう大丈夫です アメリアさん 熱も下がりましたし、もう安心です」 聞き覚えのある優しい声。アメリアはそちらの方にゆっくりと首を動かした。そこにはシルフィールが神官の正装のまま優しい笑顔を向けて立っていた。 「シルフィールさん」 「お見舞いにいらしている方がいるので、私はこれで失礼しますね でも、本当に良かった」 シルフィールと入れ替えに来たのは、人間の姿に戻ったゼルガディスだった。 「アメリア、この間見た時よりだいぶ元気になったようだな」 「ゼルガディスさん、私…」 「すべては、うまくいった 新しい時代の始まりだ」 「はい、そうですね、ついにきたんですね」 アメリアのけぶるような笑顔が、ゼルガディスの目に眩しく写った。 降魔戦争終結後、数年の時が流れた。闇を切り取ったかのような漆黒の髪を肩より少し長い程度まで伸ばし、それを奇麗に結い上げている二十代前半の女性が、忘れ去られようとしている、降魔戦争時の英雄達の墓の前に立っていた。 「お久しぶりです、皆さん この前ここに訪れたのは、この子が産まれた時だったでしょうか」 腕の中で安らかな表情で、母親を見上げている乳児がいた。母親と同じ黒い髪に、父親譲りの鋭い目と、深い海の色の瞳の持ち主。 「今日は、セイルーンが復興した事をつげに来たのです もう、あの戦争の傷痕はありません 近々、シルフィールさんが中心になっているサイラーグ復興も間近な事でしょう …シルフィールさんといえば、この間お会いした時に、次の春結婚するとかいっていました お相手を紹介してもらいましたが、とても純朴そうな、優しい瞳の好青年でした。容姿はガウリイさんに似ているというわけではないのですが、どことなくガウリイさんに似ていましたよ」 風が、女性の髪を柔らかくなでていった。 もう日が暮れようとしている。 「リナさん ありがとうございます 私の人生をこんなに豊かにして下さって お会いできて本当に嬉しかったです 」 最後の言葉を聞けなかった事を悔やんではいない。きと、ありがとうか、ごめんねかのどちらかである事が他の誰でもない、自分には分かっていた。そして、おそらく後者である事も。他の誰かにそれを認めてもらわなくても良かった。自分だけがそれを理解し、分かっていたのであるから。 「アメリア、フェリックス もう風が出てきた そろそろ引き上げるとしよう」 後方からセイルーン第一王位後継者が声をかけてきた。今は、アメリアの旦那様だ。 「そうですね、ゼルガディスさん」 走って近づいてきたゼルガディスに、息子のフェリックスが抱き着きたいかのように手を差し伸べた。アメリアからフェリックスをまかされ、ゼルガディスはそっと抱えた。 フェリックスという名は、遠い国の言葉で”幸福”を意味する言葉だった。アメリアは考えずに入られない。この子はこの先どんな人と友誼をを結ぶのだろうと。自分とリナのような関係だろうか、それとも…。 フェリックスが、夜空に光る一番星に興味を示したらしく、星を掴み取る動作をした。幼児はそれを自覚して行ったのではない。その行為は人間が長い間何気ない動作として、何千回何万回と行った事であるに違いない。しかし、その行為が、人間が欲してやまない、手のとど消えぬものへの憧憬を一心に表したのではないだろうか。 ……伝説が終わり、歴史が始まる あうー上のツリー数字うつの間違えてしまいました。 最後までこんな駄文を読んで下さった方々ありがとうございました。 |
6235 | 感動 | 理奈 E-mail | 2/8-04:09 |
記事番号6220へのコメント こんにちは、理奈です! もぉ~、感動の一言です。最後の方、アメリアが呪文を唱えて世界に住んでる 人たちの事を考えていたあたり、ジーンとしてしまいました。 たくさんの人が死にました、リナをはじめてして。でも戦争には、死は、 つきものですね。やはりどの世界でも戦争は、悲劇を招くものなのですね。 あらためて戦いと言う事は、あっては、ならない事だと思いました。でも その中で強く生きようとするアメリアとゼル。人は、生きようとすると強くなれる。そう思いました。ゼロス、最後になにを言いたかったのでしょうか。 私としては、最後にリナへの素直な気持ちを言いたかったと思いたいのですが。 あぁ~、なんか変な文章ですね。何を書いていいのかわからなかったから 思った事をそのまま書こうとしたけれど。意味不明な感想になってしましました。 もっと他に色々と書きたいんですけど言葉が見つかりません。それほどまでに この作品は、すばらしかったと心からそう思います。 |