◆−チョコレートの意味−月白 兎(2/11-21:35)No.6277


トップに戻る
6277チョコレートの意味月白 兎 E-mail URL2/11-21:35


 魔族派そのα 月白 兎っ!!
 バレンタインもの考え付いたんで書きます!
 皆々様よろしくお願いいたしますm(__)m

★☆★☆★☆★☆★

 存在する魔族達に、「魔族の中で一番ミーハーな魔族は?」と訪ねれば、9割が「海王ダルフィン様」だと応えるた。
 本人いわく「魔族が負の感情食べてるからって、陰湿極まりないものと考えて欲しくないわ。」だそうで・・・。
 だからといって、ミーハーだというのは何かと思ったりもするのだが。
 とりあえず、今回起こった事件の発端は 海王にある・・・・。

 獣王ゼラス=メタリオムは 職務に追われていた。
 しばし有給休暇とめいうって、遊びに出かけたが最後・・・上から 多大なる書類が回ってきていたのだった。
 ちなみに この書類の期日は 2月15日まで。
 そして・・・今日は2月12日・・・というか、後数分で13日に変わる・・・。
 ゼロスは今、別件で、人間達の世界に出しているので・・・獣王は、一人黙々とこなしていた。
 残り3分の一の書類の山をちらりと見て、獣王は、はぁっ・・とむなしいため息を吐いた。
 書類の提出先はL様ときたものだから、ため息をつかずにいられものか・・・。
 獣王は、ペンをデスクに投げ出すと ぱちんと一つ指を鳴らした。
 ひゅるんっと空中に出現したのは、愛用の長いパイプ。
 くわえて、深く吸い込むと・・・静かに息を吐いた。
 白く立ち昇る煙を見て、獣王は 逃げたくなって来ていた。
 そこへ・・・。
「獣王様、海王様がおいでです。」
 空間の入り口に立たせていた、ヴァルキューレから一報が入る。
 獣王は、ぼんやりと空を眺めたまま ヒトコト「入れて。」と呟いた。
 そう・・・この時の獣王の脳みそは完全に活動を停止していたにも等しかった。
 天然トラブルメーカ海王ダルフィンを この重要書類たっぷりの執務室に入れるなんて!!
「はぁーぃ、ゼラスー元気してる?」
 きゃろんっとした、海王は 片手に何やらの冊子を抱え 空間に出没した。
 この時ようやく、獣王の脳みそは活性化し始める。
「はぁーぃ・・って・・・ダルフィンっ!?なんでお前が入って来ているのだ?」
「え?入って来ていいといったのは、ゼラスでしょう?」
「な・・・・この私としたことが・・・。」
 頭を抱えてももう遅い、ダルフィンは既にこの執務室に入って来てしまっているのだから・・・・。
 獣王は、一旦書類を、書類室へと転送した。
 広々としたデスクの上面が見える。
「あんなに溜め込んでどうしたの?」
「ちょっと、出かけているまに上から回ってきた書類だ。」
「ふぅーん。」
「・・・ところで?お前が来た理由は?」
 獣王はそういうと、海王の顔がにぱぁっと笑っていることにあとずさった。.
「んっふっふっふっふぅー、よく聞いてくれたわーゼラスぅ。」
 きくんじゃなかったと、獣王は思った。
 海王の目は完全にいっちゃってる。
「あのねー、人間達の世界ではね?2月14日にさぁ異性にチョコを送る習慣があるそうなのよぉ・・・でねぇ・・・。」
「お前の事だから、人間達の世界へいっしょにおりないかと言い出すのだろう・・・?私はゴメンだ、書類が溜まってるし、それに私には渡すものなどいないぞ?」
 獣王は、そう言い放つが、海王は、聞く耳持たず、もっていた冊子を開く。
「あのねー・・・ゼフィーリアにある、ここのワインチョコなんて面白そうじゃない?あそこはいい所だからねー?」
「・・・聞いていたのか、ダルフィン。・・・私には渡す相手がいな・・・いっ!?」
 獣王のことばの最中に海王は 獣王の額をでこぴんした。
 クリティカルヒットしたらしく、獣王の目はわずかに涙ぐんでいる。
「なぁにいってるのよ、獣神官がいるじゃない。私は、うちの海王神官と将軍にやるのよ♪で、からかって面白い、覇王とね。」
「・・・・ゼロスだって・・・?ただの部下に、なぜ渡す、めんどくさい。」
「あら?噂じゃぁ・・・・獣王様は部下にぞっこんだってはなしよ?」
 ずがらしゃぁ・・・・・・・。
「ゼラスだいじょーぶ?」
「だいじょーぶもなにも、なんだその噂は?」
「まぁまぁ、とりあえず、ついてくるだけでいいからぁー・・・いこーいこーいきましょーれっつごー、ゼフィーリアへ!!」
 行くとも何とも言ってない獣王の襟首を引っつかみ、海王は引きずりながら、空間の入り口にずかずかと歩く。
「私は、行く気なんかないー・・・・・・書類がぁぁぁぁぁ。」
 むなしい獣王の叫び声を最後に・・・・海王と獣王は、ゼフィーリアへと跳んだのだった。

 みちゆく人々が振りかえる。
 それもそのはず、高い背に、長い黄金の髪にぴしっと着こなす男物の服がかっこいい・・・男かと思えばが、胸は豊満で、眉目秀麗なる顔立ちの女性。そしてその隣に 背は普通で 蒼い髪をゆったりと上で結い 白のローブが褐色の肌にさえる 顔にたたえる笑顔が眩しい女性。
 いわずと知れた、獣王と海王である。
 観光名所にもなっているゼフィーリアの通りは活気が良かった。
 とおる人間はたいてい女が多い。
 しかも包みを抱えている者が・・・。
「えーっと・・・ここらあたりなんだけど・・・・。」
 海王はきょろきょろとあたりを見渡し、目指すべく店を探していた。獣王は、周りの好奇の目が嫌なのか、周囲にむける瞳は凍るほど冷たい。だが、その冷たさが、クールに見えるのか、行き交う人々の視線をもっと集めていた。
「あ・・・ゼラス、こっち。あったわよ。」
 獣王の服の裾を引っ張って 海王は一つの店の中に入った。
 店の中は、女女女女・・・でうめつくされていた。
 並ぶ商品が次々ときえゆく中、店員が新たなる商品を並べて行く。
「賑わってるわねーさすが、5つ星のお店♪」
 海王は 場慣れしているのか ひょいひょいと女の子達をかき分けて、商品を選んでいく。
 だが、獣王は、入り口から動こうとはしなかった・・・・というか、動きたくなかったというのが一番かもしれない。
 店内を見渡すばかりの人間達・・・この中にいるだけで不快感を覚えるといった顔で 獣王は入り口に立ち止まっていた。
 この時の獣王は、まだ人間に興味など示していないころの獣王で・・・人間を毛嫌いしていたのだった。
 しばらくして、海王が 立ち止まったままの獣王を見つけて駆け寄ってくる。
「どうしたのゼラス?ゼラスは選ばないの?」
「あのなぁ・・・私は、お前に引きずられてきただけで、興味はないといったはずだぞ?」
「そうだったかしら?ま、選ばないんだったら、ならむかいのカフェででもまってて♪」
 先に帰っててもいいとはいってくれないのか、海王・・・・獣王は、外に出ると、むかいのカフェテラスの一席に座った。
 ウェイトレスに エクスプレッソを頼むとぼんやりと空を眺めた。
 ハートのカタチで、ピンクや赤といった色の物でつつまれた チョコレートという甘いお菓子・・・。
 お菓子は食べたるだけのもの 送ってなんの意味があるのだろうか?
 ウェイトレスが持ってきたエクスプレッソを 獣王は飲み始めた。
 そこへ・・・売り歩きの商人らしき少女が近づいてきた。
 小さなラッピングチョコを籠に詰め込み、少女達の間を掻き分けながら、売り歩き 入り口の獣王の所までたどり着いたのだ。
「あのぅ、チョコいかがですか?」
 カフェテラスに座っていた獣王にそういうが、
「悪いが私は買わない。興味はないからな。」
 獣王はつっけんどんにそういった。
 少女は、やや寂しげな笑みを浮かべると、とことこと次の客席へと行こうとしたとき・・・・。
 獣王は、思わず疑問を口にした。
「チョコレートなんて食べるだけのものを贈ってなんとするんだ?」
 少女はしばしきょとんとした後 にっこり微笑むと力いっぱい応えた。 
「チョコを贈る時に心込めるんです。愛してますとか 大好きですとか。手紙なんかそえたりもしたり・・・。」
「ことばで言えば済むだけじゃないか、無意味だな。」
「心無い人みたいです。だって、ことばって難しいから、自分の気持ちを言葉にするって勇気がいるから。」
 獣王は、しばし沈黙した。人間とはやはり分からないものだと。
「そうそう、好きな人だけじゃなくて尊敬する人とか、友達とかにも、感謝の気持ちで渡すこともあるんですよ。あなたには、そう人とかいませんか?」
 獣王は、しばし考えると・・・。
「2.3人いないこともないが・・・・。」
 少女はにっこりと微笑むと籠の中から 3つのチョコレートを取り出した。
 ハートが一粒包まれたラッピングチョコを三つ、少女は机の上に置く。
「お代はいりません。心無いなんて人間じゃないですよ、心育てて下さいね。」
 そういうと、すたすたと去っていく。
 獣王は、机の上に残された 三つぶのチョコレートを眺めていた・・・・。
 感謝の気持ち・・・?
 利用するかされるかだけの存在の私達に感謝の気持ちなどという感情があるものか・・・しかし・・・私は何故あそこで「いないこともない。」と応えたんだ・・・?
 葛藤する心・・・心育てて下さいね・とは何だろう?
 そこへ、包みを抱えた海王が帰ってくる。
「あれ?ゼラスは、買わないって言ったんじゃなかったの?」
「あ?これか・・・買ったわけじゃないんだが・・・。」
 チョコに視線を落とし、つぶやく獣王。
「ならなんであるの?まさか、盗ったのー?」
「人聞き悪いこというな・・・で?買うものは買ったんだな?」
「買ったわー。」
「なら帰るぞ・・・。」
 エクスプレッソの代金を、カップの隣に置くと 獣王はさっさと立ちあがる。
「もーせっかちねー・・・はいはい、かえりゃいーんでしょ。」
 獣王がすたすた歩き出したのに続く海王の顔は笑っていた。
 ちゃっかりと チョコを獣王はポケットに仕舞い込んでいたからだ。
 人ごみに紛れて二匹の魔族の姿が掻き消える。
 二匹の魔族は、アストラルに戻ったのだ。

 机の上に放置されているといってもおかしくない チョコが三つ。
 獣王は、じーっとみつめて考えていた。
 あげる相手を・・・である、問題は。
 海王を別れるさい、彼女は「そのチョコの処分ちゃんと自分で決めなさいね。」といって去っていった。
 獣王は、しばし目をつむると、チョコの一つと、自分の羽を一枚とって握り締め・・・・ためらいがちに、空間を飛んだ。
 
 ついた場所は、極々普通の宿屋の一室。
 整えられたベッド・・・脇にはナイトテーブル。
 いかにも泊まるだけといった狭い部屋の光源は一つの獣脂で輝くランプ。
 獣王は、ベッドの脇にたてかけられている錫杖をちらりと見ると、微かに微笑んだ。
 獣王がそんなことをしている時、その部屋に泊まる予定者と、その者が旅を共にしているメンバーは、宿屋の食堂で、夕食を囲んでいた。
「がふがふがふがふがふがふ!!!!!!」
「はぐはぐはぐはぐはぐはぐ!!!!!!!」
「もーガウリイさんもリナさんも 食べ過ぎですよーいくらなんでもぉー。」
「まるで野獣だな。」
「恥ずかしいですわ・・・それよりもっ!!なんで同じ食卓にゼロスがいるんですの!?」
「はっはっはっはっ、成り行きじょうですねーそれは。」
 がふがふと焼き肉に食らいついているのはガウリイ。
 その隣で白身魚のフライをほおばっているのがリナ。
 2人を見て、呆れているのが、アメリア。
 2人を形容しているのが、ゼルガディス。
 2人を嘆き自分の向かいに座ってる天敵を睨むのは竜族の巫女のフィリア。
 そして・・・獣王がチョコを置いた部屋に泊まる予定の者・・・フィリアに睨まれながらそれを受け流しているのは・・・獣神官ゼロス。
 そんなパーティーの中、食後の紅茶を飲み終えたアメリアが ズボンのポケットから包みを取り出す。
「ゼルガディスさん、今日バレンタインデーだそうで、ちょっとお昼にリナさんとお店に行って来てつくってきましたー、どうぞ。」
 小さなリボンで包まれたチョコを受け取っては見るものゼルガディスは、「バレンタインデー」なるものを知らなかったようで、とりあえず受け取ってきょとんとしている。
「青春ですねー。」
 ゼロスがちゃかす。
 その隣でようやく食事を終え、紅茶を飲み始めたりなも、周りを気にしつつ ぺしっとガウリイに包みを投げつける。
 いや・・・ぺしっどころではすまなかった。
 包みのかどがガウリイの額に直撃したのだ。
「あでっ!?」
 一瞬にして、全員がガウリイを凝視する。
 リナの顔から血の気が弾いて、すぐさま血が昇り沸き立つ。
「リナーなんだこの包み?」
「このおおぼけ男ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
 はっきりいって、本当は投げつけて当たり所が悪かったという 不幸が続いただけだったのだが、ガウリイのヒトコトで、皆の視線が、リナに集まる。
「い・・・いちおーよいちおー、アメリアがどうしてもつくりたいっていったから、ついでにつくってきたの・・・ついでよつっいっでっ!」
「ふーん。さんきゅー。」
 ガウリイは、そう言いながらがさごそがさごそと包みを開け始める。
「あーーーやめてー!!!!」
 リナの悲鳴とともに・・・・・。

『どあはははははははははははは!!!!!』

 全員の爆笑の渦が広がる。
 包みから出てきたのは・・・・くらげ・・・のカタチをしたチョコ。
「おーくらげのカタチだ。」
「本当はリナさんハート創る予定だったんですけどねーとちったんですよぉ。」
 アメリアのヒトコトにリナが灰皿をなげる。
 がこぉん!!
 くりてぃかるひっと・・・アメリアは沈黙してしまう。
 その隣で、ゼルガディスが不安にかられていた。
 ゼルガディスも、まさかと思いつつ、開けてみれば・・・。
 ウサギ・・・?(さー皆さんNEXTのギャグ習慣の時にゼルガディスが着ていたきぐるみを思い出して下さい)
「これは・・・・・。」
 嫌な思い出が蘇ったよーで、ゼルガディスが白髪化している。
 隣でゼロスがげらげらげらと笑い転げている。
 もちろん、フィリアはその時のことを知らないので、きょとんとしている。
 そんな談笑を打ち破ったのが・・・・獣王の来訪であった。
 獣王は、赤眼の魔王シャブラニグヅゥの腹心である・・・それなりの威圧感・・・プレッシャーなるものがある。
 そして、魔の気と。
 ここには、フィリアもいるのだ・・・おしてしるべしっ。
 がたんっとフィリアがたちあがる。
 その隣で、ゼロスからもにこやかな笑みが消える・・・この場合、懐かしさのあるプレッシャーになにかを感じていたのだろう。
「なにこのプレッシャー?」
「なんか上にいるぞ?」
「魔族?」
 一瞬にして緊張が走る・・・・。
 最初に駆け出したのは、フィリアだったが・・・ゼロスは周りの目を無視して、部屋へ跳んだ。

 ひゅるん!!!
 ゼロスが、その部屋にたどり着いた時、部屋は、ゼロスの膝下あたりまでの羽毛で覆われていた。
 微かな香水の残り香に懐かしさを覚える。
 その直後、フィリアが扉を開けた。
「これは!?」
 フィリアの声とともに、羽がすぅっと消えていく。
「幻像?」
 リナがいぶかしみながら そう言葉を呟くと ゼロスは、ひらひらと舞い下りてきた、白い羽の中の唯一の黒い羽を見つけた。
 黒いはね・・・というか褐色の大地の色の羽。
 そっと掴めば、託された言葉がある。
−私の部下へ お前の働きに・・・。−
 羽は 小さな包みへと変わる。
 チョコレート?
 ゼロスはそっと握り締めた。
「何を握っているのゼロス?」
 リナがそう訪ねると、ゼロスは にっこり微笑みながら・・・・。
「もちろん、それは秘密です。」
「そーゆーと思ったわよ!!!」
 リナはむぅっとした顔で部屋から出て行く。
 残されたゼロスは、ヒトコト「獣王様。」と呟いた。

 そして、もう一つ・・・獣王はドラゴンズピークにやってきていた。
 遥か彼方をみをろせば、ガイリアシティが見えている。
 かつて・・かつて、クレアバイブルの元へ通じた道があった場所・・・。
 元同僚が消え失せた最期の場所。
 獣王は持っていたチョコを 上へとなげる。
 高く高く投げられたチョコレートは 姿をその空のなかへと溶け込ませた。
 獣王は、何も言わず、その場から去った・・・・。
 ドラゴンズピークにその魔気だけを残し、竜達の慄きの叫び声の中を。

 そして最期の一つは・・・。
 このストーリを読んで下さった 皆々様へ、獣王ゼラス=メタリオムと月白 兎より 愛を込めて。

 END

 ここまで読んで下さって有り難うございました。
 本当は14日に投稿したかったんですけど、ちょっと諸事情により出来ないんでー今日!!
 御感想お待ちしております。

 月白 兎/拝