◆−幼夢 向かう−白いウサギ(2/24-00:24)No.6368
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6368幼夢 向かう白いウサギ E-mail 2/24-00:24


「マスター」
 キャナル――いや、ヴォルフィードは操縦席の隅でうずくまる少年に声をかけた。
「…………………」
 しかし少年は反応を示さない。
「困りましたね。アリシアのことで悲しいのは私も同じです」
 少しぎこちない表情を曇らせ、頬に手を当てる。
「ああ、そうそう。確か20世紀の映画お好きでしたよね。
 では……」
 少し身体が輝くかと思うと、とたんに先程の女性的な姿は失われ、少女の姿となる。
 ひらひらのレースにスカート。
 うずくまりながらも目の前で組んだ腕の隙間からその姿が少年の目に届いた。
 以前との姿のあまりのギャップに少年は思わず吹き出した。
「あら?良かった。やっと笑ってくれたわ」
 少年――ケイン=ブルーリバーの反応に優しくキャナルは微笑んだ。

「マスター。お食事です」
「今行く」
 機内のリビング・ルームのソファーに埋もれていたケインは、一ヶ月前、自分をマスターと向かい入れた船の制御システムの声に返事をした。
 まあどけなさが抜けきるどころかピークの年頃である。
 ソファーを降りるのも一苦労で、細い腕で肘掛けの部分を押すが、腕が沈むだけで身体が浮いてくれない。
 仕方なく横にころんと転がり、そのまま床に落ちる。
「てっ」
 少し頭を打ったらしい。
 頭をさすりながら、これまた子供には大きすぎる、上着かけの所へ行く。
 机の上に乗って、足を上着かけの枝にかけ、器用にするすると登って行き、わざわざてっぺんの所へかけた、黒いマントをひっつかむ。
 そしてその枝に足場からジャンプをし、着地すると、そのマントをばさっと翻し、着用した。

「ジュースにしますか?コーヒーにしますか?コーラにしますか?」
「コーラ!」
「はい。わかりました」
 言って、自動調理器の横で何やら操作し、コーラを取り出す。
 差し出されたケインはそれを一気に飲み込むと、咳き込んだ。
「コーラを一気飲みしちゃ駄目ですよ。マスター」
 口元に手を当てながら、くすくすと笑うキャナル。
「あのさ、キャナル」
「あんまマスター、マスターって言うのやめてくれない?
 そりゃたまにならいいけどさ……いっつもそんな風に言われるの、おれやなんだよ」
 言って、目の前に並べられた食事の家の好物のチリドックを流し込む。
「ケインでいいよ」
「わかりました。
 ではケイン、そろそろ次の星に行きたいと思うんですけど……何処か行きたいところありますか?」
「うーん……」
 たこさんウィンナーをフォークで刺しながらピコピコ動かし、やがて放り込む。
 口が何回か動き、飲み込むと、
「まだここに居ちゃ駄目かな?」
 言われて、キャナルは一瞬寂しそうな笑みを浮かべた。
 ここは、アリシアとケインが最後にあった、宇宙空間である。
 ケインはまだ、自分の大好きなばーちゃんが帰って来るんじゃないかと思って……いや、期待していた。
「……アリシアは間違いなく死にました」
 まだこの小さな子には酷じゃないかとは思いながらも、このソードブレイカー――いや、ヴォルフィードのマスターとして、聞いて貰わなくてはならなかった。
「……何でそんなこと言うんだよ……
 ばーちゃんは強いんだ!ばーちゃんが……ばーちゃんが死ぬもんか!」
 食器を子供の力ながら思いっ切り叩きつけ、その場を後にする。
「……マスター……」
 キャナルは静かにそう呟き、宇宙空間を覗き込んだ。
「これで……良かったんでしょうか……
 いえ、いいんでしょうか……まだ今なら……」
 ――引き返すことは出来ますよね……
 その言葉を飲み込み、ヒビの入った食器を見て、静かに目を伏せた。

「……ひっく……ばあちゃん……」
 ケインは自室のベットで枕を抱え込み、声を出来るだけ殺して泣いていた。
 『私が死んだら、この船を上げようか?』
 『ばーちゃんが死んだら?
  じゃあ要らない!おればーちゃんの方がいいもん!』
 在りし日の場面を思い出し、目頭が熱くなる。
 ケインは小さな手で目を擦りながら、力一杯それを拭う。
「要らないって言ったのに……こんな船……」
『なら、降りてください』
 意外なところからあがった声に、ケインは身体を堅くする。
 いつの間にか取り付けられたのか、ベッドの横には小さなモニター。
「キャナル……?」
 目を真っ赤にはらしながら、ケインは声の主の名前を呼ぶ。
『ソードブレイカーは強い男の乗る船です』
「――!!」
 ケインは驚いた。つい昨日まであれだけ優しかったキャナルが嘘のようだった。
 それほどキャナルの顔は敵意に満ちていた。
『いつまでも死んだ人のことにすがって、泣き続ける人は強いとは言いません』
「なんだよ……っ!
 キャナルは人間じゃないからそーゆーことが言えるんだ!
 ばーちゃんを護りきれなかったくせに!」
『アリシアは弱かったから死んだんです。私の船に乗っていなかったときに死んだ。
 彼女が勝手に行動して死んだんです。アリシアは弱かった』
「……とりけせ……
 あやまれよ!ばーちゃんに!
 ばーちゃんはつよかった!死んだのはお前のせいだ!」
 きっとモニターを睨み付けるケイン。
『……この船に乗り続けますか?降りますか?』
「……っ!!
 降りるよ!こんな船、要らない!」
 ばちぃぃっ!
 モニターの壁を思いっ切り叩き、ケインは涙を一杯に浮かべながら、マントと、アリシアに貰ったコインをぽっけに詰め込んだ。
 コインは瞬く間に暖まる。
 ケインは力一杯握りしめていた。

「ここに、アリシアと仲の良かった人が迎えに来るはずです」
 キャナルはプリント・アウトした衛生港の地図をケインに手渡した。
 ケインは無言でそれを受け取る。
 会話はあれから全くなかった。
 ケインは一切口を開かなかったのだ。
「では……さようなら」
 シャトルがゆっくりと衛生に舞い降り、着地地点に着く直前にその声は聞こえ、やがて、スピーカーは他の回路との接続音と共に、この衛生港の管制員の声が流れ出した。
 やがてシャトルのハッチが開き、ケインはよじ登りながら、地面へと降り立った。
 透明になっている衛生港から、ソードブレイカーが見える。
「あ……」
 そのソードブレイカーはエンジンを起動させ、漆喰の宇宙へとその身を踊らせた。
 淡い青色の光の帯を残して。
 ケインを置いて。
 ケインはキャナルの渡された地図を、握りしめ、くちゃくちゃにして、鞄の中に乱暴に押し込んだ。
 何故か涙が止まらなかった。

 ケインはうつむきながら、衛生港をうろうろしていた。
 もう待ち合わせの時間はとっくに過ぎている。
 ケインはキャナルから手渡されたお金で、パンを買った。
 ベンチに座り込み、黙って黙々とそのパンを食べる。
 いつもより何だかまずい気がした。
 足りないはずの量でお腹はこれ以上の物を受け付けようとはしなかった。それがどういう意味なのか、ケインにはわからなかった。
 気を抜けば涙が出てきそうな状態を、右手でずっとコインを握りしめて、それを抑える。
 その手には未だにコインが握りしめられていた。
「やあ、僕、お父さんやお母さんはどこだい?」
 突然かかった声にケインは慌ててその方へと向く。
 歳の頃は30後半、黒いヒゲがチンミリと生えていた。
 口に煙草を加えたままで、器用に話す男だが、ケインにはただ煙いだけである。
「…………」
 答えようとしないケインに男はケインの隣のベンチへと座り込む。
「迷子かい?」
「…………………」
 何を聞かれても答えようとしないケインに男はいやらしい笑みを浮かべた。
 男はさっき、ケインがパンを買うとき、後ろで並んでいた。
 それでケインの財布の中からかなりの大金と、キャッシュ・カードがはみ出しているのを見たのである。
 周りを見渡すと、それらしい親は居ない。
 それでケインの所へと歩いてきたのだ。
「じゃあ、その財布、俺が貰ってやるよ」
 無防備にケインの隣に置かれていた財布を掴もうと手を伸ばす。
 その瞬間、ケインはカレーパンの中身を当てるようにして、男の顔へと投げつけた。
「ってぇぇぇっ!!」
 香辛料の利いたそのカレーのルーがもろに目に触れ、思わず目を押さえる。
 ケインは男の方は無視し、財布をバッグに中に放り込む。
 両手をベンチに尽き、反動で降りると、そのままその場から逃げ出した。
「このガキっ!!」
 男は顔を怒りとカレーのスパイスとで真っ赤にしながらケインを追う。
 子供の足と大人の足。
 どっちが早いかは考えないでもわかる。
 あっさり男はケインに追いつき、行き止まりの通路へと追いつめる。
「へっへっへ。おとなしく財布をよこせばいてぇ目に遭わせないでやるぜ」
 にやにやしながら、歩いてくる男にケインは後ずさる。
 やがて背中が壁にくっついた。
「逃げ道はないし、助けはこねーぜ」
 ゆっくりと歩み寄る男をケインは脅えの色を見せながら、背中を壁にピッタリとくっつかせた。
 バンッと当たった衝撃で、バッグが手から落ちる。
 そのバッグから転げ出てきたのは先程くしゃくしゃにされた紙と、アリシアのサイ・ブレード。
「ばーちゃん……」
 ケインはサイ・ブレードを見つめながら、そう呟いた。
「なんだ、ばーちゃんにあいてえのか?
 財布を出したらあいにいけるぜ」
 言って、馬鹿笑い。
 『アリシアは弱かった』
 ケインはくしゃくしゃにした紙からキャナルの言葉が聞こえたような気がした。
 嘘だ。ばーちゃんは強かった。
 誰よりも。
 そしてサイ・ブレードを見る。
 『強くなりなさい、ケイン』
 いつかのアリシアの言葉を思い出す。
 『ばーちゃんみたいに強くなる!』
 続いて頭に聞こえたのは自分の声だった。
「会えないよ……
 ばーちゃんは……死んだんだ」
 ケインは足下に転がっているサイ・ブレードを掴んだ。
 バンダナ、増幅器(ブースター)を続いて装着する。
「なんだ、なんだ。
 これまたずいぶんへんてこなおもちゃだな」
 男は不思議そうな顔をし、ケインに近付く。
 瞬間。
 ぶぅぅぅぅぅんっ!!
 ケインの小さな手に握りしめられたサイ・ブレードが輝き出す。
「なっ!?なんだっ!?」
「お前なんかに負けない!おれはばーちゃんみたいになるんだからな!」
 ケインは小さな身体でその長く、光る剣をぎこちなく構え、そう言った。
 男が冷静にケインを見てみると、足下がふらついてるのがわかった。
「なんでえ。ハッタリか。
 驚かせやがって……」
 男がケインに向かって右腕を大きく振りかぶった瞬間、右頬に閃光が走る!
「あ……?」
 間抜けな声を上げ、恐怖で完璧に動けなくなった身体に気付かず、ケインを見る。
 姿は少年なれど、目はすでに鋭く光っていた。
 どぅんっ!
 やがて後ろから聞こえた音に男は硬直から脱する。
「ひいいいっ!!」
 後ろへと通りすぎたサイ・ブレードの光が壁へとぶつかったのだ。
 音で人が寄ってくるから逃げる――ではない。恐怖でその場から消えようとしたのだ。
 人々が集まって、その音のした方へ集まり始めた頃、サイ・ブレードをしっかり握った少年が、すやすや眠っているのを発見したのはすぐだった。

「で、ぼく。一体どこのこだい?」
「ばーちゃんのこのこ」
 警察官は頭を抱えた。
 騒ぎのすぐ側に少年がサイ目ブレードを持って眠っていたのだ。
 駆けつけ、保護し、署に運び込んで、サイ・ブレードを調べようと手を伸ばしたのだが、離れなかった。
 強引に取ろうとしたのだが、ケインの身体が地面から浮くだけだった。
「警部ぅ……付けっぱなしにしといたテレビ、今じゃもうニュースが流れてますよ」
 新米の刑事なのだろう。渋い色の湯飲みに湯気を立たせ、警部の横へと置いた。
「ったく。消せばいいだろうが。これだから最近の若造とガキは嫌いなんだ」
 筋が通ってないことをさも当然のように言い、警官らしくないセリフを吐く警部。
 隣の部屋へと歩き、今では古いドアを蹴って開けた。
「では次のニュースです。
 昨日未明、ロール=ワードが脱走しました。
 パトロール艇を乗っ取り、そのまま自分の船へと移った模様です。
 なお、この男はかねてから自分を投獄させた『アリシアを殺す』等と言っており、その事から、復讐に向かう可能性も高いと見て、アリシアと呼ばれる方を、心当たりはないかと調べています。
 平行して、なぜ脱獄できるようなルートが取れたのか、また独房の中で銃を何処から手に入れたのか、等も警察は調べている模様です」
「――っ!?」
 ケインはその言葉に驚愕した。
「危ねえなあ。確かそのロールって奴、とんでもなく強え船持ってるんだろ?
 脱獄した場所は………げっ。こっち側に真っ直ぐ来た場合、この辺りにもう居るんじゃないか?」
 宿直室でぼーっと新聞を読んでいた男はニュースの声だけを聞き、そう言った。
「何を言っとる。こっち側に来れば、だろうが。
 だいたい、警察が犯人来るのを怖がってどうするんだ」
 言ってぶちっとモニターをきる警部。
「へえへえ。わかってますよ。
 ……実際来たら一番に逃げ出すくせに」
 ぼそりと付け足す新聞男。
「何かいったかね」
 警部は伸ばした手を引っ込め、腰に手を当てた。
「いいえ」
 振り向きすらもせず男はさらに新聞を読みふけった。
「まあいい。そうそう、ぼく。どこに住んでるかはいいから名前だけでも……ってあれ?」
 振り向いた警部の視界に、少年の姿はすでになかった。

『こちら自由なる狐(フリー・フォックス)のロール=ワードだ。
 アリシアいるか?』
 ソードブレイカーの操縦室(コックピット)にその野太い声は響いた。
 ぼさぼさに伸びた髪にヒゲ。
 何よりその黒ずんだ目。
 おやぢと呼ばれて全く問題のない人種である。
「こちらソードブレイカー、キャナル=ヴォルフィード。
 アリシアは居ません」
 きわめて表情を変えず、キャナルは答えた。
『なんでえ。本当に落っ死んじまったのか』
 少し残念そうな顔をし、頬をかくロール。
 その様子にキャナルはぴくりと表情を動かす。
「何か用ですか?」
 口調も少し敵意が混じっていた。
『わかってるだろ?その船、偉く性能が良いじゃねえか。
 俺が貰ってやるってんだよ』
 ――やはり――
 キャナルは内心呟いた。
「お断りします」
 キャナルははっきり言った。
『マスターいねえんだろ?その船。
 俺がそっちに向かったのに気付いたとき、ちいせえガキのマスターを降ろしたそうじゃねえか。
 俺を迎え入れるための準備をしたんだろ。その船は強い奴が乗るべき船だ』
 余裕たっぷりの表情で良い、腕を組むロール。
「アリシアの居たこの船に、あなたのようなヒゲ面のむさいおっさんを乗せるわけにはいきません」
 にっこりと微笑んだままで言うキャナル。
『んだとぉぉぉぉぉっ!!?
 いい性格してんじゃねえか……力ずくでも乗ってやらあ!!』 
 男は通信を一方的に切り、迎撃準備をし始めた。
「やれやれ……マスターなしとはいえ、あの程度の船で私をどうにか出来ると思ってるんでしょうか……」
 頭をちょっとかきながら、コントロールパネルを空中に出現させた。
「ずいぶん久しぶりの戦闘ですね。
 錆びてなければいいですが」
 そうキャナルは苦笑して、照準をフリー・フォックスへと合わせた。
 そのとたん、モニターがぶれる。
「故障……?
 システムチェック始動」
 静かに目を閉じ、館内全域に全神経を研ぎ澄ませる。
 中枢部分のマスター・キーが消えている。
「なななっ!?
 そんなっ!これじゃあいつもの半分も力が……っ!!」
 とたん正面に高エネルギー反応。
 慌ててそれを察知したキャナルは旋回行動を起こす。
 シークレットのためとして、マスター・キーは前に用意して置いた。
 それは記憶している。
 だが――なぜそのキーが無くなっている?
「モニターチェック再開」
 キャナルはその場のモニターの記録を再生しながら巻き戻しを始めた。
 敵艦の砲撃に何とか避けてはいるものの、所詮は予測軌道上での回避である。
 必ずしも予想通りに行くとは限らない。
 敵の操作ミスだけであっさり当たるのだ。
 キャナルの表情は険しかった。
 そのままモニターを見つめると、小さな影が現れた。
 いつか、ケインが出ていくと言った日だった。
 現れたケインはその場に座り込み、何やら話していた。
 おそらくアリシアに向かって話しているのだろう。
 あの時、情緒不安定だったのだろうか。
 キャナルはその事に気付かなかった。
 やがてその影がゆっくりとマスター・キーに手を伸ばし、それを抜いた。
「……アリシアの遺品だからでしょーか……?
 もしイタズラだったりしたらいくらなんでも私切れますよ……」
 キャナルのこめかみはぴくぴくとひきつっていた。
 コントロールパネルに触れている両手もわなわなと震えていたりする。
『へい!ソードブレイカー!!
 マスターが居なきゃ逃げるだけかい?』
 思いっ切り馬鹿にしまくった声を聞き、キャナルは低い笑いをし始めた。
『な……なんだ……?
 狂ったか……?』
「正常です!あああああっ!もうっ!!
 なんで私の周りには自分のことしか考えない人ばっか来るんですかっ!?
 アリシアもっ!ケインもっ!」
『いや……俺に言われても……』
 もっともなことを言うロール。
「警告します。これよりソードブレイカーはマスター不在のため、暴走します。
 ありったけのミサイルをストレス解消のために……もとい、敵艦から護るためいきますのでご注意を」
『さっき正常って……』
「今壊れました」
 ぶちっ
 一方的のそう言ってから切り、怪しい笑いを浮かべながらコントロールパネルを叩く。
「ふっふっふ。アリシア居た頃はさんざん注意されて加減していたし、ケインの居た頃は騒ぎを起こさないようにしてましたけど、今は誰もいませんからね……」
 言って、でたらめにパネルを押し始めた。
 ちゅどどどどどっ!!
 ソードブレイカー艦内に発射音が響き渡る。
 マスターが居ないため、サイブラスター、プラズマブラスト、サイバリアは使用不可能。
 それはまだ良い。
 その程度のハンデ、普通ならはねのける自信は充分あった。
 問題はマスター・キーが無いことである。
 防犯用にと法律の決まりに従うためにつけたそれは、無ければ機動力半分、銃火器砲の使用も四分の一。
 それでも普通の船と互角に渡り合える力はある物の、あちらはチューンナップしまくってる船マニア。
 先程はなった砲撃も、全てかわされていた。
「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる!!」
 完全に切れていたキャナルは、何かが近付きつつあることに気が付かなかった。

「ばかキャナルっ!!」
 ケインはシャトルにその身を踊らせて、開口一番にそう言った。
 コントロールパネルのうち方はアリシアの様子を見ていたので覚えている。
 なめらかにそのパネルをうっていく。
『こちら管制室。発進準備完了』
 コンピュータで自動操作しているその衛生港には、キャナルお手製のダミープログラムが流れていたので搭乗者が子供一人だとは気付かない。
「了解。協力を感謝します」
 キャナルの声が響き、ゆっくりと衛生港のハッチが開かれる。
 ケインはセンサーを使って、ソードブレイカーの航跡を辿った。
 僅かに震える右手にはアリシアのコインと、マスター・キーが握りしめられていた。

「ああっ!当たらないっ!?」
 キャナルは一人、焦っていた。
 敵艦の砲撃も何とか避けてはいものの、こちらの攻撃も全く受け付けない。
『おい、じょーちゃん。
 さっきから本気でやってんのか?
 アリシアの居た頃はこんなもんじゃなかったぜ』
 再び入る通信にキャナルは原因を叫びそうになったが、それでは相手に弱みを見せることになる。
「ほっといてください!!
 本来はじょーちゃんなんてよばれる程幼くありません!
 だいたい、この姿はマスターの趣味です!」
『今居ねーだろーが……』
「ほっといてくださいって聞こえませんでしたっ!?」
『…………………………』
 男は沈黙した。
 いらつきながら、男から視線を逸らすため、不意と横を向くとそこには別のモニターが。
 赤いエネルギー反応がゆっくりだがこちらに真っ直ぐ近付いてくる。
「……………?」
 再びそのモニターを動かして、それを確認するキャナル。
 それはシャトルだった。
 見覚えのあるシャトルの中の映像を受信すると、そこにはケインの姿。
「ケインっ!?」
『あ……?』
 男は間抜けな声を上げ、キャナルの様子の変化に驚いた。

『ケインっ!なんでシャトルでここまで来るなんて無茶なことするんですかっ!?』
「平気だ!!こんぐらい!」
『平気じゃないですっ!!今こっちは危険です!
 お話があるなら先程の衛生港の戻っていてください!!』
「いやだ!俺はソードブレイカーのマスターだ!
 自分の船が危ないのに安全なところへ避難なんかしていられない!」
 モニターを睨み付けるケイン。
『ケイン……?』
『なんだ、お前がアリシアの孫とか言うちびか?』
 通信は横から入った。
 先程までも通信も、フリーフォックスに届いていたのである。
「ちびじゃない!ケインだ!」
『おお、すまねえ。
 ケイン、今こっちは戦ってるんだ。そのまま引き返すなら何もしねえ。
 しかし、ソードブレイカーの船の中に入ったら容赦なく攻撃する。
 それでも来るのか?』
 にやりと笑うロール。
 しばしの間、ケインは黙っていた。
「行く」
『あああああっ!!さっき何のために降ろしたと思ってるんですかぁぁぁっ!!』
 ケインの言葉を聞き、頭を抱えるキャナルに爆笑するロール。
 いつか、ケインが降りると言い出した――いや、キャナルが言わせたのは、危険を回避させるためだった。
 アリシアの忘れ形見を、戦いに巻き込ませてよいものかキャナルは考え込んでいた。
 そしてロールの接近。
 それに気付いたキャナルは、ケインを降ろした。
 そしてしばらく一人で宇宙空間を彷徨うつもりだった。
 ロールを片付けたら。
「なんか……性格変わってない?キャナル」
『あなたと一緒にいるとこーなるんです!』
 キャナルは力一杯そう言った。
『ぶはははっ!!いいぜ、面白い。
 そのおちび……じゃなかった。ケインを船に乗り込ませな。
 それまで何もしねえ』
 ロールは、腕を組み、シートに深く沈み込む。
『勝手なこと言わないで下さい!
 ――いいですか、ケイン。
 私に乗ると言うことは危険な目に沢山合うんです。
 このむさいおっさんなんか比べ物にならないほど強い相手と戦うことになります。
 あなたをアリシアと同じ目に遭わすわけには――』
「遭わせたくなきゃしっかりまもってね、キャナル」
 にっこり笑うケインに、キャナルは毒気を抜かれた。
『あのですねぇ……』
『お前さんの負けだよ。いい加減認めたらどーだ?
 さすがはアリシアの跡継ぎだ』
 溜息混じりに言うキャナルの言葉を、ロールが遮った。
「おればーちゃんの孫だもん。あたりまえじゃん」
 こくこく頷くケイン。
『……わかりました……』
 キャナルは額に手を当て、渋々承諾したのだった。

「さて……と」
 ケインは大きすぎる操縦席(パイロットシート)に座り込んで、そういった。
「『さて……と』じゃありませんっ!」
 ご丁寧に『さて……と』の部分を合成してケインそっくりの声で言った。
「敵があんな間抜けだから良かったものの、普通なら沈められてますよ!」
『間抜けっておめー……』
 通信が開きっぱなしになってるのを無視し、キャナルはなおも続ける。
「……ばーちゃんが言ってた。
 人からもらった物は大切に扱えって」
 ぽつりとそう呟いて、背もたれによっかかるケイン。
「だからこの船から降りない」
 振り返って、キャナルを見るケインの目は澄んでいた。
「……大変ですよ……これから……」
「だいじょうぶ!おればーちゃんみたいに強くなるから!」
 右手を高く挙げて、にっと笑うケイン。
 その様子を見て、キャナルは笑った。
「……頼りにしてますよ。マスター」
「おうっ!」
 ケインは通信マイクの方へ口を近づけた。
「おじちゃん長い間待ってくれてありがと。
 こっちは準備オーケーだよ」
『口近づけすぎだっ!うるせえっ!!』
 耳を押さえるロール。
「ぼくこどもだからわかんない」
『……おめーら本気でいい性格してるよ』
 ぺろっと舌を出すケインに呟くロール。
『マスターも入ったことだし、遠慮なく行かせてもらうぜっ!
 予定通りその船はもらうっ!』
「やれるもんならやってみろっ!」
『だから近付きすぎだっ!!』
 最後に聞こえた通信は笑顔が混じっていた。
 通信が切れ、相手のエネルギー反応が段々と上がっていく。
「砲撃来ます。マスターキーは……」
「ちゃんと元に戻しといた」
 ふうっと息を吐くキャナル。
「じゃ、今回は戦い方を見ていて下さい」
 言って、キャナルは目を鋭くし、フリーフォックスを見据えた。
 それに待ったをかけたのはケインだった。
「あいつってこの船をもらいたいって事はマスターになりたいんだろ?」
「まあ……多分そーだと思いますが……」
「じゃ、俺がやる。そーじゃないとフェアじゃない」
「無茶言わないでくださいっ!!まだあなたには無理ですっ!」
「平気だよっ!」
「何を根拠にそー言うんですかっ!?」
 キャナルの言葉にケインはしばしキャナルの顔を見つめる。
 やがて眉をひそめ、
「『こんきょ』って何?」
 ずるべしっ!!
 キャナルは突っ伏した。
 何とか右手を台の上に乗せ、よろよろと立ち上がる。
 こんな状況でも効果音をタイミング良く入れるところはさすがであるが。
「……そうでした……あなたはまだ子供でしたよね……」
 言うキャナルの目には涙が浮かんでいたりする。
「おれこどもじゃないよ!」
「子供なほどそーいうんです」
「ちがうもん!!」
 かくて。
 ソードブレイカー内での子供同士の喧嘩が始まる。

『てめーら……戦う気あんのか……?』
「はっ!?」
 さんざん言い合った後、ロールの呟きでキャナルは我に返った。
「ある!」
 ケインは力一杯そう答えた。
『……あのなぁ……話聞こえたんだがよ、おめーまだ船の動かし方解ってねえだろ?』
「適当に押せば動くってばーちゃんが笑って言ってたぞ」
「そんなこと言ってたんですか……アリシア……」
 昔のポンコツ製品みたいな言い方をされ、思わず憮然とするキャナル。
『いいか。そんな適当に動かすよーな奴に勝っても勝った気がしねえ。
 もちろん何かの間違いで負けたらもっと悲しくなる』
 神妙な顔でしみじみとロールは言った。
「……まぁ……そりゃ確かにそうでしょうねー……」
『――と言うことは、だ。
 俺は戦ってもちっともメリットはねえんだよ』
「……はぁ……」
 言いたいことがいまいち解らずキャナルは適当に相づちを打つ。
「『めりっと』ってなに?」
「あとで教えます。あとで」
 またもや問いかけるケインにキャナルは即答する。
『……まあ、そんなわけで、だ。
 もう少し経ったらもう一度来るからそん時こそ本気で行く』
「もう少し経ったらって……脱獄したのにそんな余裕があるんですか?」
『いや。脱獄したっても、もともとたかが食い逃げだし……』
「食い逃げぇぇぇっ!!?
 だってニュースじゃ強い船持った奴が脱走て言ってたからもっと……っ!!」
 しかしロールは慌てず騒がず、
『話題性高い方が視聴率が高いからなぁ……
 余計なこと言わねえ方が良いと判断したんだろ』
「こっ、これだから人間てぇのは……っ!!」
『言えん言えん。人のこと言えん。
 おめえだって見たんだろーが』
 怒りに燃えるキャナルにぱたぱた手を振るロール。
「しかし食い逃げで脱獄って……」
『牢屋入ってたわけじゃなくて、留置所にいたぜ。
 それもたまたま警官が今不在だからって入っただけだ。
 話題無かったんだろーな、その星』
「だからマスコミは嫌いなんです……」
 とうとうキャナルは泣き出した。
「ねえキャナル」
「なんです……?」
 不意にケインに話しかけられ、泣くのをやめてそちらへと振り返る。
「おなかすいた」
「………………………」
 しばし真っ白な空気が流れ――
『うーむ。やはりまだ当分は後だな』
 ロールはしみじみとそう言った。
「そうしてください……」
 キャナルは目に涙を浮かべながら、自動調理器を起動させた。
「言ってくけどおじちゃん。
 おれ絶対負けないよ」
『……ああ。楽しみにしている』
 ロールは笑って、その場から消えていった。

 ――余談だが、
 すっかり忘れ去られていたケインを迎えに行った人から必至の表情での通信が入るのはこの30分後である。

………………………………………………
 あとがき
 
 いや、どーも。
 何とち狂って過去の話書いてるんでしょーねぇ(他人事調)
 前回の「哀夢 踊る」が一週間ほどで落ちるということが起きました。
 おまけに感想にレスを付ける前だったという事もあり、無視するのもまずいだろつーことで、慌てて作ったのがこの短編です。
 うーむ。このころのケイン、キャナルはどーなってんだか知りませんが、勝手に文字が出てくる出てくる。
 いつも原作より目指してるっつったって、手本がなきゃどーしよーも無いんでオリジナルが濃いですが。
 そういや、最初はただの悪役としてロールを登場させたつもりがいつの間にかえらく話の分かるおっさんになっていたり。
 うーん……船の中で「ホーム アローン」みたいなことをケインにやらせよーかと思ったんだけどなぁ……
 あんま長くなりすぎてもアレですし。
 マスター・キーってあるんでしょーかねー……(をいこら)
 今回何より面白かったのが、だんだんと『キャナル』になっていくところでしょーか。
 最初はまだ優しいお姉さん的だったのに……
 途中でキャナルが言ってますけど、ケインと一緒にいるとああなるんでしょうかねぇ。
 多分地も入りまくってるとは思いますが。
 先程、言ったとおり、間に合わせで急遽何か話を作らなくてはと思い、話を考えたんですが、そう簡単に出てくるわけはなく、思案しまくっていたんです。(決まった後はすぐだったけど)
 んで、隣を通りかかったK(白ウサの妹)に何か案はないかと聞いたところ。
K:ミリィが料理大会に出場する。
白:へえ。設定はいいんじゃない?それでストーリーは?
K:自分で考えなさい
白:………………
 書けるかぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
 キャナルの出番どころケインの出番すらなさそーだし!
 いや……まぁ外伝かなんかのつもりで書くって手はありますけどね……
 ネタ浮かびませんでした。
 んで、風呂入って、ぼーっと湯船に使ってる最中に子供時代のことを書いてみようと言うことに。
 うーん……風呂入ってる最中に浮かぶネタが結構多いですね。
 リラックスできるからでしょーか。そんで深く考え込んでどーする、自分。
 んで、冒頭にあるケインとキャナルのセリフですが、友人からコミックの話を少し教えて貰っただけなんで、細かい部分は違うかも知れません。
 コミックスの方見てないんですねー。
 貧乏なもんで。友人D。これ見てたら貸してくれ。
 とか言いつつ、自分のネットを除いた友人関係には小説書いてること誰にも話してないから無理だわな。
 うーん……ぷらいべぇとな事ばっか書いてたって面白くないでしょーし、ここら辺でやめます。
 この後には、「哀夢 踊る」で感想を書いていただいた模型飛行機さんへのレスです。
 では皆様、またいつか。

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6369模型飛行機さんへ白いウサギ E-mail 2/24-00:31
記事番号6368へのコメント

落ちちゃいましたね……すみません。
もっと早く反応してれば……(汗)
………………見てます?模型飛行機さん。

>6337Re:来年受験って・・・!?模型飛行機 2/20-16:50
>記事番号6331へのコメント
>
>高校生なんですか!?

 はい(にっこり)

>こーこーせえなんですかぁぁぁぁっ!?

 は……はい(笑)
 一応世間様の言うぢょしこーせーってな奴ですね。
 高校二年です。

>このわんだふるな文章力!
>原作の雰囲気をばっちり把握したセリフの数々!!
>心憎いまでの伏線あんどオチ!!!
>・・・・・・・・・。
>すッげえええええ!!!!!
>かっこいいいいいいい!!!!!

 うわおう……べた褒めや……
 ありがとうございます。
 伏線は勝手に出て来るんで自分でも驚いて書き続けてるんですが(をい)
 かっこいいって……うーん……(思案中)

>パソの前でこーふんしっぱなしでした(アブない・・・?)!

 私もとある方の小説読んで、そーゆーことになったことありますのでわかります。
 アブなくないですよ(笑)
 ただ、私のでそこまで言って頂けたのはすっごく嬉しいです。

>おもしろかったです!・・・もういっかい言っとこ。
>おもしろかったです!!!

 あなたの感想もおもしろかったです(爆)
 本当にありがとうございます。
 やっぱ反応あると嬉しいですしね。

>次回作が待ち遠しいぃ!と言いたいところですが、その、受験の障害にならない程度に・・・
>ぜひ発表してくださいっ(笑)!待ってます!
>勝手なことほざいちゃってすいませんしたっ!
>では!

 いえいえ。光栄です。
 あっさり別な話書いちゃってたりしますが気にしないでください。
 まぁ……また今度も気が向いたり、話が浮かんだり、今回のよーな事情があったり、受験から逃げ……もとい、気分転換に書くかも知れません。
 と言っても、いつにできるとか約束できませんがm(,,)m
 では、失礼します。
 本当にありがとうございました。


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6402Re:うああ!模型飛行機 3/6-18:32
記事番号6369へのコメント

レスがレスがレスがっっ!!!
感想が面白い、なんて言われたの初めてです!
ありがとうございます!
照れるぜこんちくしょー、いやん。(注:錯乱中)

ぢつは、ただいま大変時間が押し迫っておりますので、またゆっくりお礼あーんど感想(そーなんですよ!読ませていただきました新作!ブラボゥ!!)を述べたいと思います。
それでは取り急ぎこれまで。

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6386Re:哀夢 踊るブラントン 2/28-19:09
記事番号6368へのコメント


 どうもです。遅れて申し訳ありません。
 いや、「書いて下さい」と頼んだ張本人が感想書かないのは、正直人の道に反するんで(爆)

 もう凄かったの一言ですっ!
 私、読み終わった瞬間思わず「……完璧だ……」と呟いてました。(実話)
 多少の気になる点など(そんなもの自体元からほとんどないんですが)、どうでもよくするほどの雰囲気があります。本当に。

 何が凄いかって……全部。
 ……いや、それじゃ身も蓋もないですから、あえて一つ挙げさせていただくのならば……
 ケインもミリィもキャナルも、そしてレイルも。
 みんなそのままの彼らだったということです。
 前作を読んで、ソードブレイカーの面々についてはまるっきり安心していましたが、レイルまでそのままというのが、なおすごいですっ!
 あのセリフのかけあいが、どこもかしこもずっと繰り広げられているのですよ!
 まったく一度も疑問に思うようなセリフや行動なんてなかったです。それはつまりキャラを把握しきっているということ。
 そしてなおかつ、あのかけあいを自分で作り出すのですから……脱帽です。
 特にレイルの口調の使い分けが自然すぎるのには感服しました。

 そしてリナ一人称との違いである地の文の表現方法。
 いや、それだけでなく同じシーンでもどういった文字を使うかによって面白さが全然違うということを思い知らされます。
 神坂先生のすごいところは「!」を使わない普通の文で笑いを取れるところだと思うのです。
 この話にもまさにそれがあてはまるのではないでしょうか。

 で、このあと気に入ったセリフをピックアップしていったんですが……
 あまりに多すぎて3章で断念(実話)
 本当にすごすぎです……MVPに推したいようなセリフがここそこあそこに転がっているんですから。
 どこも選べる場所がないから、逆に感想を書くことができないのです。
 私の場合原作に対して感想言えないのと同じで、この作品にも本当に「言うことなし」です。
 すみません。

 ゲストキャラとなるウィオール。
 かっこいい大人。めっちゃ好みです♪
>「――ま、深いことは聞かないでおこう」
 このセリフで決定しました。あなたは私の好きなタイプだっ!(笑)
 持つ背景が珍しく暗いタイプだと思いますが、感情を持ったベールという存在がうまく明るさを増していて救われているのではないでしょうか。
 お亡くなりになるのは……やっぱりジンクスですからねえ……仕方ないですよね……
 最後。『?』ってなんじゃい、と思っていたら本当に『?』だったのがすごいです。名前ありませんからねー。
 殺される前のベールとの会話が悲劇色を強めている気がして、唸らされます。
 ただちょっと……最後の数行はダークさがなくてあっけない気がしないでもないのですが……ここだけ、本当にこの話でここだけが不自然な感じがしました。

 キャラのらしさや長さ(私としてはこのぐらいの長さはくるだろうという予想通りでした)、そして文章の雰囲気などについては、白いウサギ様なら大丈夫、とまったくもって安心していた私にとっていちばん興味があったのは、ロストシップの設定とナイトメアの動きでした。
 普通のロストシップでは盛り上がりに欠けますし、かといって奴らを出すわけにもいかない。
 ナイトメアも、まったく動かないということはないし、かといって動かれすぎても困る。
 そこらへんの原作のお約束をどう乗り切るかが楽しみでした。
 結果、前者は数でカバーし、なおかつ新手のタイプを持ってきて、さらに少し度は弱いですが原作とも関連づけてあって問題なし。まあ、それでも戦力的に劣るのは……もう仕方がないのですが……
 後者は途中全く動かないように見えますが、じつはレイルが動いていて、しかも最後にちゃんと出てくるのでクリア。
 ただ私にはあとがき読むまでわからなかったです(殴)
 レイルがそれっぽい動きをする場面はダイと話すシーンであるのですが、そこにある動機の説明をまるっきり信用して考えもしなかった私はまだまだ未熟です(泣)はい。

 それにしても……原作から既にそうですが、いくら圧力かけても絶対ソードブレイカーが遺失宇宙船だという噂ぐらいは流れると思うんですが、私は……

 では、最後にまいMVPセリフ&シーンを。

 前者は

そんなミリィの肩にケインは優しく肩に触れ、見上げたミリィの目をひたっと見つめる。
「いいか、ミリィ――とっとと探し出さないと給料に響くぞ」
「それはすんごく良く理解してる」

「はっはっは。もしそーなら――斬る」

「お前にはコーヒーなんか出んぞ。水すらも出ん」

 ――言ってはいけなさそうなのも話したけど

「ケインが行くんじゃ仕方ないわね」

「誰も入ってるとか、こぼす、とか言ってないわよ?

 ――がんがん派手にやっちゃって下さい。

「あまりにも弱いんで相手する必要ないと忘れてました」

「ばーちゃんが言ってたぜ。
 『売られた喧嘩は全て買え』ってな!」
「言ってませんっ!!」

「左後方部に軽微っ!
 車に10円玉で傷を付ける子供くらいの力ですっ!」

  「助けてやるとは言って貰えましたが、護ってやるとは言われてませんね」

 ケインのそんな様子を見て、キャナルはちっちっちっと指を振る動作をし、
『人間の欲望は限りないんです』

 以上です。
 いや……先ほど書いたとおりシャレにならない数なんで……これでも絞ってるんです(泣)
 最初と最後のは、動作も含めて素晴らしさが際だつのではないかと思いましたので、一緒に引用させていただきました。
 この中であえていえば
>「ケインが行くんじゃ仕方ないわね」
 でしょうか。キャナルも似たようなものがありますが、私ミリィの方が好きなので(蹴)
 原作のケインたちの関係を端的に表す言葉として選ばせていただきます。
>「助けてやるとは言って貰えましたが、護ってやるとは言われてませんね」
 こちらも大好きです♪ すぐに浮かぶようなセリフとも思えませんし。
 で、ギャグではこちら。
>「お前にはコーヒーなんか出んぞ。水すらも出ん」

 後者は、

>お帰りな―――」
>ぶつっ。

 この伏線。私には到底無理です……

 ではでは。引用ばかりで中身あんまりないのが申し訳ないのですが、これにて失礼させていただきます。
 最後に一つ質問させてください。
 どうしてスターゲイザーが出てこなかったんですかっ!?
 いや、私なんつーか原作のあの彼がお気に入りなので(アニメのは違います)、正直登場を期待してたんですが……


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6405ブラントンさんありがとうございます白いウサギ E-mail 3/7-03:51
記事番号6386へのコメント

> どうもです。遅れて申し訳ありません。
> いや、「書いて下さい」と頼んだ張本人が感想書かないのは、正直人の道に反するんで(爆)

 
 すいません。感想書いてもらったのに、反応遅れて。
 テスト&風邪でダウンしてました(汗)
 (いつからンな病弱になった。白ウサ)

> もう凄かったの一言ですっ!
> 私、読み終わった瞬間思わず「……完璧だ……」と呟いてました。(実話)

 ……ま……マジですか……?
 ンな恐れ多い……

> 多少の気になる点など(そんなもの自体元からほとんどないんですが)、どうでもよくするほどの雰囲気があります。本当に。

 そう言っていただけると嬉しいです。
 しかしまぁ……完璧にはほど遠いんですけどね……

> 何が凄いかって……全部。
> ……いや、それじゃ身も蓋もないですから、あえて一つ挙げさせていただくのならば……
> ケインもミリィもキャナルも、そしてレイルも。
> みんなそのままの彼らだったということです。

 そうですねぇ……
 なんか勝手に動いてくれましたねー。
 私は馬車の手綱さえ待たずに前ににんじんぶらさげたよーなもんですが。

> あのセリフのかけあいが、どこもかしこもずっと繰り広げられているのですよ!
> まったく一度も疑問に思うようなセリフや行動なんてなかったです。それはつまりキャラを把握しきっているということ。
> そしてなおかつ、あのかけあいを自分で作り出すのですから……脱帽です。

 ありがとうございます。
 今回意外にキャラがぺらぺら喋ってくれて、やりやすかったです。ミリィも前よりはうまく動いてくれたかなと思っております。
 しかし、ど素人の私にでも何とか書けたのは、神坂さんの特有のキャラの色のせいでしょう。

> 特にレイルの口調の使い分けが自然すぎるのには感服しました。

 レイル君は……今回初めてだしましたからねー。
 何か扱いやすいキャラでした。
 ニーナとの掛け合い期待してた人には悪いんですが、原作の方にしちゃいました(^^;)
 アニメしか見たこと無かった人はビックリしただろーなぁ……

> 神坂先生のすごいところは「!」を使わない普通の文で笑いを取れるところだと思うのです。
> この話にもまさにそれがあてはまるのではないでしょうか。

 同感です。
 本気で神坂先生は凄いですよね。
 パロディ書いてる際、出来るだけそういうのを入れたいなぁと思って書いてるので嬉しいです。

> で、このあと気に入ったセリフをピックアップしていったんですが……
> あまりに多すぎて3章で断念(実話)

 あ……お手数かけます(汗)
 そうですねー。今回セリフがうまく続いてくれたかな。

> ゲストキャラとなるウィオール。
> かっこいい大人。めっちゃ好みです♪

 同じく私も好きですね。
 私の書いたキャラで珍しく大人のキャラです。
 しっかし……我ながら元トラコンのくせに学者とゆーのは、
 てめーいくつだ、とか思ったりしましたが。

> 殺される前のベールとの会話が悲劇色を強めている気がして、唸らされます。

 書いてる私自身うわー……つらいよー……とか思いましたねー。
 新しく生きる道を見つけて、まさに一歩を歩こうとした瞬間、ですからね。

> ただちょっと……最後の数行はダークさがなくてあっけない気がしないでもないのですが……ここだけ、本当にこの話でここだけが不自然な感じがしました。

 確かに読み返してると不自然です。
 きっと……疲れてたんですね……(をいこら)
 あと詳しいことは後半スターゲイザー不出現理由とともに書きます。

> キャラのらしさや長さ(私としてはこのぐらいの長さはくるだろうという予想通りでした)、

 っにぃぃぃぃぃぃっ!?
 予想通り……って……マジですか……?
 書き始めた頃でさえこれの3分の2程度だったんですが……
 ……そーですか……んー……パターン読まれてるなー……

>そして文章の雰囲気などについては、白いウサギ様なら大丈夫、とまったくもって安心していた私にとっていちばん興味があったのは、ロストシップの設定とナイトメアの動きでした。

うっ……っ!?
 確かに……一番めんどい上に難しい部分でしたねー……
 (以下文全く同感。やはりパターン読まれてます)
 それと今だから言える話なんですが、最初に書き上がったロストシップもどきとの戦闘は、一隻だけなのに、異様に苦戦することになってたんです。
 設定に無理がありすぎるし、盛り上がりが全くないんでやめました。

> ただ私にはあとがき読むまでわからなかったです(殴)
> レイルがそれっぽい動きをする場面はダイと話すシーンであるのですが、そこにある動機の説明をまるっきり信用して考えもしなかった私はまだまだ未熟です(泣)はい。

 いやー……気付いた人居ないんじゃないでしょーか。
 とことん原作に似せまくってもう少しわかりやすくすることは出来たんですが……
 本気でどろどろになりそーでしたからね……

> それにしても……原作から既にそうですが、いくら圧力かけても絶対ソードブレイカーが遺失宇宙船だという噂ぐらいは流れると思うんですが、私は……

 確かに……
 いくら圧力をかけたとしても、軍、警察、会社など縦社会の場には通用しても一人一人全くの個人には無理でしょうから……
 口コミで伝わってそーなもんですが(汗)

> では、最後にまいMVPセリフ&シーンを。
>
> 前者は
> そんなミリィの肩にケインは優しく肩に触れ、見上げたミリィの目をひたっと見つめる。
> 「いいか、ミリィ――とっとと探し出さないと給料に響くぞ」
> 「それはすんごく良く理解してる」

 哀れミリィ。悲しき労働者。

> 「はっはっは。もしそーなら――斬る」

 人斬りケインここにあり。

> 「お前にはコーヒーなんか出んぞ。水すらも出ん」

 原作にレイルはミリィに席を勧めてもケインに席進めてなかったですからね。
 こんな事もあるんじゃないかなーって思ってたら書いてました。

>  ――言ってはいけなさそうなのも話したけど

 同じく原作でミリィにぺらぺらしゃべり倒してましたから。

> 「誰も入ってるとか、こぼす、とか言ってないわよ?

ここでミリィがキャナルに勝つ部分、どーしよーか迷いましたけどね……
 キャナルはミリィの紅茶、コーヒーに弱そうですから(笑)

>  ――がんがん派手にやっちゃって下さい。

あ、ここ。私も好きです(^^)
 元々ケインに対して「味方」とゆー訳でもないんで、沈められても構わないだろーなーって。
 原作でソードブレイカーの正体……とゆーより、強さも知らないですからね。
 置いてきました。

> 「あまりにも弱いんで相手する必要ないと忘れてました」

 ふっ。原作読み返したこと丸わかりの部分です。
 三巻だったかな……?
 ファントムシップに圧倒されてるときも馬鹿にしまくった口調でしたからねー。

> 「ばーちゃんが言ってたぜ。
>  『売られた喧嘩は全て買え』ってな!」
> 「言ってませんっ!!」

 言ってないでしょう……(汗)アリシアの性格考えたら。
 今回入れたケインのばーちゃん語り。
 勝手なこと書いちゃまずいかなーとか思いつつ、書いちゃいました。

> 「左後方部に軽微っ!
>  車に10円玉で傷を付ける子供くらいの力ですっ!」

 いやー、キャナルですねー……(意味不明)
 神坂さんって、変わった表現してるところありますから私もやってみようと思いまして。

>  ケインのそんな様子を見て、キャナルはちっちっちっと指を振る動作をし、
> 『人間の欲望は限りないんです』

 ここ、スレイヤーズの部分ともダブらせてます。
 リナのセリフにすぺしゃるか本編かは忘れたけどあったなぁと思い出したとたんキャナルが喋ってた、状態でした。
 『年頃の女の子に――』と言うボケ方(?)はあ・とらぶる〜の方で使いまくっちゃいましたし。

>>「ケインが行くんじゃ仕方ないわね」
> でしょうか。キャナルも似たようなものがありますが、私ミリィの方が好きなので(蹴)

 ミリィのかっこいいセリフその一でしょうか。
 しかし……TVと混ざっちゃいそうで少し怖かったです。
 『宇宙一の〜』も頭に入ってたんですけどねー。
 とりあえず今回はTVを避けようと。

>>「助けてやるとは言って貰えましたが、護ってやるとは言われてませんね」
> こちらも大好きです♪ すぐに浮かぶようなセリフとも思えませんし。

 すいません……すぐ浮かびました……
 なぜだか知らないけど書いてて頭がおかしくなったセリフですね。
 照れてるのか(何故かは知らない)、セリフがキャナル……と言うより、神坂さんワールド特有の細かいツッコミとでも言うんでしょーか。入れていいのかなぁと迷ってたと思います。
 そこまで細かい部分をベールが突っ込むかどーか(汗) 
 
> で、ギャグではこちら。
>>「お前にはコーヒーなんか出んぞ。水すらも出ん」

 やはり勝手に喋ってくれました。
 リズムも面白くて気に入ってます。
 あと、原作にレイルはミリィに席を勧めてもケインに席進めてなかったですからね。

> 後者は、
>
>>お帰りな―――」
>>ぶつっ。
>
> この伏線。私には到底無理です……

 いや……なんか……勝手にウィオールがドラマ進めてくれてたんで……
 まぁここでベールの表情の描写は避けてばれないようにはしましたけどね。
 ここはわかるかなー?わかんないかなー?
 とか面白半分の部分でした(をい)
 あとスレイヤーズと違って三人称なんだから、ケイン達がまだ会ってない奴がいきなり登場するパターンもありかなーって。
 せっかく違う書き方使ってるんですからそれを利用しないと。

> 最後に一つ質問させてください。
> どうしてスターゲイザーが出てこなかったんですかっ!?
> いや、私なんつーか原作のあの彼がお気に入りなので(アニメのは違います)、正直登場を期待してたんですが……

 えーと……その……忘れてました……
 ………………………………………………
 ………………あえて理由を付けるなら、書いても誰でも想像できる部分だろーなって所ですかね。
 闇そのもので出来たかのような部屋に佇む一人の老人。
 入るだけで体中が重く感じる。
 闇がまるで体の中まで浸入して蝕んでいくような錯覚さえ受ける。
 言い様のない重圧感に襲われた組織ナンバー2の肩書きを与えられた男はいつも通り、定時連絡のため入室をした。
 ………と、まぁあんまりパターンが浮かばなかったんですよね。
 あと加えて言うなら、今回と言うより原作はナイトメアに触れると全て暗いですからね(明るくても困りますが)
 いくら原作似に書くとは言え、パロディで……まぁ一種の娯楽の中でそこまで暗い話を書いて良い物かを考えました。
 それで、『?』を読まないと、その先の辛い現実をわからないようにしたんです。
 ハッピーエンドのままが良い人もいるかなーって。
 それでまぁナイトメアが関わってたぞっていうのがわかるのは『?』のみ。
 まぁ……ぢつはわかりにくくしてあるだけでレイルはしっかり関わっていたりするんですが、まず気付かないだろう、と。
 それではスターゲイザーが登場するには『?』しかなくなる。
 しかしそこで「片付けろ」だの何だの言ってたんじゃ、かなり間が悪いし雰囲気も壊れる。
 それプラスはっきりと殺戮の場を書いて重く暗くするのも避けました。
 まぁ……そのせいで尻切れトンボとゆーか描写がお粗末という問題もありましたが。
 ………とまぁ何のかんのとごたくを並べたところで、簡単に言うと、
 「暗いのはヤだから逃げた」ってところでしょーか(をいをい)
 ご期待に添えなくて済みませんでした(ぺこり)

 ではこれにて。
 感想ありがとうございました。