◆−ロンドン塔の月−Merry(3/17-23:43)No.6474
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6474ロンドン塔の月Merry E-mail URL3/17-23:43


ロンドン塔の月

またまたつかいまわし・・・。
ここの方が感想がダイレクトに聞けるので、
感想聞きたいやつはここにのせるようにしてるんですけど。
当然のごとくゼロリナです。
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時に十九世紀、世界経済の中心地イギリス。その都ロンドンでは、巷を震え上がらせる「切り裂きジャック事件」と、かの有名な諮問探偵シャーロック・ホームズが、スコットランドヤードに協力していると伝え聞いた頃の物語。誰が何のために殺人を侵しているのか分からないきり先ジャック事件と同じように、世間の話題に上っている者がいた。
「紅の魔女」と呼ばれる女怪盗だ。アルセーヌ・ルパン再来と呼ばれるこの怪盗は、いまだスコットランドヤードのお世話になったことはなく、この地に住まう悪徳商人や、傲慢な上流貴族達から貴金属をせしめ、弱き者、貧しき者達にそれを施しているいわゆる義賊というやつだった。
ロンドンっ子達からの支持は圧倒的で、彼の怪盗が捕まらないように祈っているものさえいた。
「だからといって、捕まえないわけには行きません」
スコットランドヤードで、まだ若い二十代前半ぐらいの青年が上司に向かって抗議口調で訴えた。漆黒の闇を切り取ったかのような神に、同じ色の瞳。肌は焼けない体質なのか白く、今は怒鳴った所為で頬が少し紅潮していた。
「そうはいってもな…市民に人気のある義賊を捕まえたとなると 抗議されるのは落ちだ」
「そんなことでは、法と秩序が守れません ここは法治国家なんですから」
「お前さんは正しい 正論だ それだけでは行かないこともあるのさ…まだ若いから分からないかもしれないが…」
青年は、ここら辺が潮時だと思ったのだろう敬礼をすると勢い良く部屋を飛び出した。そろそろ街をパトロールする時間だった。
2人一組でロンドン市内の割り当てられた区域をパトロールする。相棒がすでに玄関口でまっていて、手を振ってきた。
「遅いぞゼロス」
「ああ、すみませんガウリイさん」
少しも悪びれた表情ではないが、そんな事はガウリイと呼ばれた青年は気にもしていないのだろう、何も言わずに2人並んで歩き出した。
パトロール区域には重要地点というのがあって、女性のひとり住まいや、母子家庭、小さな子供のいる家などはちゃんと家の人に不振人物がいなかったのか聞いておくことも必要があった。本当はわざわざきく必要も無いのだが、それは名目上のことだけであって実際はそれに当てはまる家にお気に入りの女性がいたからなのであった。
オックスフォード通りの半ばまで行ったところであろうか、そこにひとりのうら若い女性が、植木鉢に水を上げていた。紅茶を薄く入れたような髪が、風に舞い女は髪を右手で掻き揚げた。処女雪のように白い肌は、傷一つついていない。ルビーのような瞳はきらきらと輝いていて、まるで太陽がルビーの中に埋め込まれているかのような印象を受けた。特に美人というわけでもない。かといって不美人かと問われると肯定できるものでもない。とても深い印象を受ける女性で、それが美人の条件であればイエスというしかないだろう。
「今日は、リナさん」
ゼロスは少し固い声で挨拶をした。いつもそうだ。この少女に会うといつも情感が刺激される。彼女としゃべっていると、清涼感を伴った感じがするのだが。他のどんな女性と話してもそのような印象を受けたことは一度足りてない。
「お役目ご苦労様、ゼロス、ガウリイ」
「よお、元気かリナ」
「ああ、ちょっとまっててね、今シルフィール呼ぶから」
じょうろを地面に置くとドアから首だけ中に入れて、その良く通る声でシルフィールをよんだ。
ぱたぱたぱたと、中から女性がかけてくる音がしてドアからひとりの少女が出てきた。リナと同じ歳ぐらいの少女だろうか、夜空を切り取ったかのような髪は濡れたような艶やかさをもっていて、瞳もそれと同じ色。健康そうな肌の色に、今はガウリイの姿を見つけ少し頬が赤くなっていた。
「が…ガウリイ様」
「よお、元気か?シルフィール」
「ええ、何事もございませんわ、ね、リナさん」
「そうね、ま、あたしがいるから大丈夫よ シルフィールに指一本触れさせないから」
リナはどんと握りこぶしで自分の胸を叩いてそらした。
「あまり無理をなさらないでくださいね」
どうした、ゼロス。
ゼロスは自分を叱咤した。女性など数え切れないほど相手にしてきたというのに、この少女のまえだと気のきいた台詞の一つも思い付かない。ただ平凡な言葉が紡がれていく。
平気平気と、リナは得意げに笑った。
「そうだ、今夜は特に注意して下さいね 『紅の魔女』から、予告状が出ていますから」
「ミルバートン家の宝石だっけ?」
「そうです、良くご存知ですね」
「タイムズ紙にだってのってたもの 知らないロンドンっ子はいないよ」
スコットランドヤードは緘口令を敷いたはずなのに…どこからかもれてしまったようですね。
ゼロスは深いため息を吐くと同時にそんな事を考えた。



「今夜は特に注意しろ…か」
リナは自分の部屋でひとりつぶやいた。空には三日月がこちらを覗き込んでいた。長い髪を結い上げながらひとり苦笑した。
どう気を付けろって言うの…?
あたしが、『紅の魔女』なのに。
それまで着ていたワンピースを脱ぎ捨てて、いつも着ている黒いぴったりとしたレオタードに着替え、マントを付けた。裏地は赤。そして髪も赤。これが「紅の魔女」の由来だ。仮面は付けなかった。捕まればどうせ正体がばれてしまうのだ。それに、あほなスコットランドヤードの奴等なら自分の姿を見られる事はないだろう。
少し胸が痛んだ。
あいつには知られたくない。
あの、人懐っこそうなにこにこ笑顔を思い出して、それを振り払うかのようにリナは首を振った。
この稼業を止めるわけにはいかなかった。女として生まれただけなのに社会的地位は低い。そんじょそこらの男よりも優秀な頭脳と運動神経を持っているのに、職種といえば家庭教師か、貴族の娘のコンパニオンぐらい。後は、身を落として売春婦となるか、何も考えなくても言い従順な娘だけができるメイドぐらいだ。そんなのリナには耐えられなかった。一緒に住んでいるシルフィールにしたってそうだ。男に生まれていたら名医と呼ばれていてもおかしくはない。しかし、女性というだけで今では孤児院の手伝いしかできない。本人はそれでいいといっているが、本当は医者の免許を欲しがっている事をリナは知っていた。
「変らなきゃいけないのよ、この社会は」
女だってこんなに優秀なんだぞ、という事を世間に知らしめるためにリナは怪盗という手段を選んだ。だれにもできない事をして、新聞や、うわさを通じて女性の能力の高さを知ってほしかった。
「そろそろ時間ね」
最後に黒い手袋をして、音も無く部屋の窓を開けた。窓の桟に手をかけると、闇の中に消えていった。



「ここね」
ロンドン市内にあるひときわ大きな貴族の屋敷。ミルバートンという貴族の家だ。この家の主はチャールズ・オーガスタス・ミルバートンといって、社交界の風聞を食い物にしてやわい女性を脅しつけているという卑怯極まりないやつだ。脅して手に入れた宝石も目当てだったが、脅している原因となる手紙もついでに処分してしまおうとリナは考えていた。ただ、素直に書いた恋人あての手紙、その何年後かに別の人物と結婚。そして、その手紙を公表するぞと脅すミルバートン。女を食い物になんかするなっと、リナは怒鳴りつけたりたい。
貴族でも、普通の一市民でも、女性が愛しい人を思う気持ちは同じだろうし、普通の一市民でさえ恋愛結婚なんかままなら無いのに、階級という鎖に縛り付けられた貴婦人達を思うと心が痛んだ。
回転窓があって、その下に普通の窓がついている。普通の窓の方に鍵がついていた。リナは胸元からパテを取り出して、先についているダイヤモンドを回天窓のガラスの縁にあてがいすっと切り裂いた。よく見ると切られた後があるという程度の緻密さでリナは窓に切り込みを作った。そこから紐を通し、先についている五またに別れた鉄の爪に鍵を引っかけて開けた。
うまくいったみたいだ。リナはあたりをすばやく見回すと、窓をそっと開けて猫のように部屋の中に入った。
「今日も絶好調ね え〜と、宝石箱は…と」
前もって下調べをしておいたところだ。思った通りのところに宝石箱を見つけて、胸元から針金を出すと、ものの十秒とかからず鍵を開けた。乾いた音のする瞬間がリナは好きだった。中には大小さまざまな宝石が詰まっていた。
リナはすばやく小さくて値の張りそうなものを胸元につめていった。あまり大きくてもがさばるのでさばく時に困るのだ。
リナは手を止めて耳を澄ました。そとは風の吹く音しかしない。気のせいかと思って作業を続けようと思うと、今度ははっきり聞こえた。足音だ。しかも、廊下っ!
リナはすばやく宝石箱に鍵をかけもとの通りにおいた。窓側のカーテンに身を潜め、足音が遠ざかる事を祈った。
がちゃり、部屋のドアのノブに手がかかった。
ここに入ってくる気だ。
やっぱり入ってきた。
……この靴の響き…
ガウリイ!!
「そこにいるのは分かってるんだ 出てこい、『紅の魔女』」
リナはカーテンから一歩でた。月の光が背後から降り注ぎ、カンテラでも当たられない限り顔は分からないはずだ。どういうわけか、ガウリイはカンテラを持っていない。その代わり手には拳銃が握られていた。
「おとなしくしろ、抵抗されば女とて打つ」
「残念ね」
リナは声色を使った。色っぽい声を出して年齢を悟れれないようにした。
「もう、あなたはあたしの魔術にかかっている」
リナはすばやくポケットから金属の破片を取り出して火を付けた。この間二秒。それをガウリイめがけて投げつけた。金属は眩しい光を出しながらガウリイの方に飛んでいった。目くらましにはちょうどいい。
その間にリナは窓から出て屋根に這い上がった。
上がった瞬間、こめかみに銃が突き付けられた。
「今日ははりきってるみたいね」
「担当の指揮が僕に変りましたから、あんな無様な真似はしません」
声を聞いただけで分かる。ゼロス。
幸い髪の毛が邪魔して顔は見られていないはずだった。顔が見られていたらこんな冷酷な声を聞かないだろう。
ちがう…もしかして、見られても、こんなに冷たい?
でも、リナは振り向くわけにはいかなかった。
「せめて立ち上がらせてちょうだい」
ゼロスの拳銃の向きがほんの少しずれた瞬間にリナはすばやくてを動かし、ゼロスの拳銃を叩き落とした。そのままその拳銃をけって叩き落とした。
「手が滑っちゃったわ、ごめんなさいね」
高らかに笑いたてると、リナはそのまま屋根の上を走り出した。ゼロスはしつこく追いかけてきた。どうしても捕まえておきたかったのだ。自分の手で。
捕まえれば、昇進する。給料も上がる。そうすれば、あそこで暮らしているリナさんにプロポーズして一緒に生活しているだけのお金が手に入る。
それが望みだった。
「うわ」
なれない屋根の上なんか走った所為だろうか、足を何かに突っかけて身体のバランスを崩した。悪い事に、そのまま屋根から落ちてしまいそうだ。手を伸ばしたが、屋根につかまる事はできなかった。このまま死ぬのか…?と思った瞬間、『紅の魔女』が、走りよって何かをなげた。ロープだ。ゼロスはそれに捕まる事ができて、一命を取りとめる。『紅の魔女』はそのままゼロスを引き上げた。
リナは顔を見られないように月光をバックに立った。
「ぼうや、手をかけさせないで 今度は屋根を走る練習をした後、おいかけっこしましょうね」
普段なら使わない言葉づかい。そうでもしてないとゼロスにばれてしまいそうだった。
ゼロスは手を伸ばした。今なら捕まえれる距離にいる。手首を取った。『紅の魔女』は抵抗しなかった。ゼロスも引き寄せて捕まえようとはしなかった。ただ、手を取り、顔の見えない魔女を見上げる。
時がとまったかのようだった。
心臓が早鐘のように響いている。
このままちょっと動かすだけで、『紅の魔女』の顔を、拝む事ができる。
でも、ゼロスはしなかった。
そうさせてはならない何かを感じた。
見えない顔に、月の具現者とも言うべく美貌を想像し、そのあと、清涼感を伴う感じを受ける少女の顔が浮かんで消えた。
「次は、捕まえます」
「待ってるわ…坊や」
ゼロスはその手を放した。
紅の魔女は、また闇に溶けていった。



「どうだったの?ゼロス」
次の日、いつもの時間にまた彼女のもとを訪れた。いつもと変らない笑顔をリナは見せた。
「駄目でした」
罰悪そうに笑うゼロスの目が、ある物を捕らえた。
リナの胸元に飾られているペンダント。花をデザインしたそれは、とても珍しい形だ。昨日、『紅の魔女』はそれをつけていなかったか?レオタードの胸元から覗いたペンダント。自分を助けるために放ったロープの勢いで胸元から出てきたのだろう。
まさか…。
髪は紅で…。
まさか…。
「どうしたのゼロス?」
いぶかしげなめで、覗き込むリナ。
「いいえ、なんでもありません」
ゼロスは微笑んだ。
奇妙な考えが、取り付いて放さなかったがそれをゼロスは口には出さなかった。

気のせい
すべて、考え過ぎなんだ
まさかね


________________________________

いかがでした?
ここまで読んで下さった方々ありがとうございました。

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6475Re:ロンドン塔の月3/18-12:31
記事番号6474へのコメント

こんにちわ!彩といいます!
うに〜。このお話ってMerry様のページでも読みました!
リナちゃんの怪盗かっこいい〜!!うきゃ〜〜〜〜!!!!!
ゼロス様もリナ様のために!く〜。
なんてやけるシュチュエーション!
やっぱりこのあとでリナ様の正体がばれちゃたりするんでしょうかね!
そのとき二人はどうなるの〜〜!
とかいう妄想がふくらんだりして。
ああっ!また変な感想かいてしまった

以上、ゼロリナてすばらしい!としみじみ思う彩でした!

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6541Re:ロンドン塔の月Merry E-mail URL4/3-21:48
記事番号6475へのコメント

彩さんは No.6475「Re:ロンドン塔の月」で書きました。
>
>こんにちわ!彩といいます!
こんにちは、merryです。
>うに〜。このお話ってMerry様のページでも読みました!
ありがとうごさいます。
>リナちゃんの怪盗かっこいい〜!!うきゃ〜〜〜〜!!!!!
>ゼロス様もリナ様のために!く〜。
>なんてやけるシュチュエーション!
>やっぱりこのあとでリナ様の正体がばれちゃたりするんでしょうかね!
つづきは・・・。考えてません。(爆)
単発物だったので。
>そのとき二人はどうなるの〜〜!
>とかいう妄想がふくらんだりして。
>ああっ!また変な感想かいてしまった
>
>以上、ゼロリナてすばらしい!としみじみ思う彩でした!
よんで下さってありがとうございました。

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6503Re:ロンドン塔の月理奈 3/22-06:49
記事番号6474へのコメント

やっぱりMerryさんが書く小説って上手ですねぇ〜〜。ほれぼれしますわぁ。
言葉の使い方、文の組み立て方、そして何よりも表現がめちゃくちゃ上手くて。
私の書くやつなんて足元にもおよびませんわ。
リナちゃんの怪盗。実は、私も何度か頭の中でリナちゃんが怪盗になる
ストーリーを考えたんですが、全部どこかにありそうなストーリーになって
しまって。でもこのストーリーは、オリジナルティーがあります。リナちゃんが
怪盗になった理由の設定もよく出来ていて。なにもかもが上手ですごいと
しか思いません。すごくよかったし、読んでいて楽しかったです。

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6542Re:ロンドン塔の月Merry E-mail URL4/3-21:51
記事番号6503へのコメント

理奈さんは No.6503「Re:ロンドン塔の月」で書きました。
>
> やっぱりMerryさんが書く小説って上手ですねぇ〜〜。ほれぼれしますわぁ。
照れ・・・照れ。ありがとうございます。
>言葉の使い方、文の組み立て方、そして何よりも表現がめちゃくちゃ上手くて。
>私の書くやつなんて足元にもおよびませんわ。
いえいえそんな。表現方法は結構四苦八苦してます。
文の組み立ても最初と考えてたの違っちゃったりして・・・。

> リナちゃんの怪盗。実は、私も何度か頭の中でリナちゃんが怪盗になる
>ストーリーを考えたんですが、全部どこかにありそうなストーリーになって
>しまって。でもこのストーリーは、オリジナルティーがあります。リナちゃんが
>怪盗になった理由の設定もよく出来ていて。なにもかもが上手ですごいと
怪盗になった理由ですか。
この頃のイギリスの小説にそんな事がかいてあった
ような気がしたので、それの使い回しです(爆)。
>しか思いません。すごくよかったし、読んでいて楽しかったです。
ありがとうございました。
>