◆−桜が舞い落ちる頃−理奈(4/7-07:25)No.6569
 ┣桜が舞い落ちる頃 2−理奈(4/7-07:27)No.6570
 ┃┗桜が舞い落ちる頃 3−理奈(4/7-07:28)No.6571
 ┃ ┗桜が舞い落ちる頃 4−理奈(4/7-07:29)No.6572
 ┃  ┗感動しちゃいました。−月影るい(4/7-11:18)No.6576
 ┃   ┗ありがとうございます!−理奈(4/8-16:16)No.6584
 ┗君の鼓動−理奈(4/8-16:22)No.6585
  ┗君の鼓動 2−理奈(4/8-16:24)No.6586
   ┗君の鼓動 3−理奈(4/8-16:28)No.6587
    ┗君の鼓動 4−理奈(4/8-16:36)No.6588


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6569桜が舞い落ちる頃理奈 4/7-07:25


桜が舞い落ちる頃

こーゆー場面、ドラマとかで見るとみんな大声で泣いてるんだよね。台の上で横になってる人にすがりついて。でもそれって絶対嘘だって思ってた。だって、本当にショックで、信じられなかったら見たとたん、泣けないと思ってた。だけど…
私は、ただボーゼンと彼女を見つめていた。
暗く、狭い部屋。彼女が横たわってる台以外なにもなかった。あたしをこの部屋まで案内してくれた人は、静かに頭をさげ、出ていった。
彼女の身体は、白い布で覆われていた。顔だけが見える。いつも「白いなぁ」と思っていた肌は、いっそう白い。奇麗な青い瞳は、かたく閉じられていて、奇麗で長い金髪は、ちゃんと束ねられていた。
私は、少しづつ彼女に近づく。台は、高く、あたしの胸まである。あたしは、背伸びをし、彼女の顔をのぞきこむ。
「…フィリア姉ちゃん…」
やっと絞り出せたのは、彼女の名前だった。とたん、あたしの瞳から涙が溢れ出す。
「ごめんね…ごめんね…」
あたしは、台に顔をうずめる。やるせない気持ちで胸が痛む。どうしようもない気持ちがあたしを包む。
「ごめんねぇええ!!!姉ちゃん!!!姉ちゃぁん!」
あたしは、大声を出して泣き始める。
「やだよぉぉおお!!こんなのやだぁあああ!!!いやだよぉぉおお!!」
あたしは、喉が痛くなるまで泣いた…

またこの季節がくる。教室の窓から見える桜の木から花びらが舞い落ちる。
人は、みんなこの桜の木を奇麗だとと言う。
だがあたしは、ため息を吐いてノートを閉じる。
放課後。あたしは、教室でノートの記入をしていた。
なんであたしがこんなことしなきゃいけないのよ。
ガラ…
「リナさぁ〜ん!」
あたしの気持ちとは、裏腹に元気のいい声が聞こえる。あたしは、声の主を見上げる。闇色の髪を肩のあたりまできりそろえ、白い肌に深く、暗い、紫の瞳。
「ゼロス」
「先生に報告してきました。さっ、かえりましょ」
ゼロスは、急いで自分の机に戻り、帰りのしたくをする。
「だから何であたしがあんたとかえんなきゃいけないのよ」
ゼロスは、きょとんとした顔でこっちを見る。
「何でって…クラス委員だし、家も同じ方向だし」
あたしは、頭を押さえる。
クラス委員。この中学に入って二年間、うんな面倒なことは、絶対しなかったし、したくもなかった。しかし三年になってなぜクラス委員なんてやんなきゃいけないはめになってしまった。いや、理由は、知っている。
あたしは、これでも有名だった。成績トップにこの美貌。それゆえに、クラス委員を決める時、クラス全員一致であたしが選ばれた。簡単に言うと面倒なことは、成績優秀な生徒にまかせれば大丈夫とみんな思ったのだろう。そしてもう一人。
あたしは、チラッとゼロスを見る。彼は、鼻歌を歌いながら帰りのしたくをしていた。
ゼロス・メタリオム。三年生になって同じクラスになった彼。ゼロスも有名だった。あたしと同じく成績優秀で、しかも学園人気No.1を誇る彼。なぜかわからないけど、あたしがクラス委員に決まった時、もう一人の委員として立候補してきた。
「二人でがんばりましょうね」
と、微笑んだ彼に少しドキリとしてしまったが。今では、うっとおしいほどこの上ない存在になってしまってる。
「さ、リナさんもしたくして、帰りましょう」
あたしは、あきらめて立ち上がる。
ゆっくりと学校の丘を下って行く。その道に咲き並ぶ桜の木。
「奇麗ですね」
ゼロスは、桜の木を見上げて言う。
「…べつに…」
あたしも桜の木を見上げたが、気持ち悪くなってしまった。
「何でですか?こんなに奇麗なのに。それともリナさんってお花の美しさがわからないんですか?」
「…」
あたしは、彼のことを無視する。
「リナさん??」
彼は、あたしの顔をのぞきこむ。あたしは、その顔をにらむ。
「うっとぉしいのよ!」
ゼロスは、あたしの剣幕にあとずさる。
「桜が奇麗だろうが、どうだろうがあたしには、関係ないのよ!」
叫んだあと、あたしは、ハッとして口を押さえる。ゼロスは、そんなあたしを不思議な顔で見る。
「ご、ごめん…ちょっとむしゃくしゃしてて…」
「いえ、怒ったリナさんもかわいいですよ」
あたしは、ゼロスの言葉にカッと熱くなる。
「あ、あたし、寄るところあるから、また明日!」
よるところなんてなかったが、こんなやつといたい気分じゃなかった。あたしは、交差点の所で、彼を残して走り出す。
さいってぇー!あたしってほんと、さいてー!
何も悪くないゼロスに八つ当たりなんかして。
あたしは、息苦しくなって足を止め、壁に寄りかかる。
風がふき、桜が舞い落ちる。
う・・ぐ・・
いきなり込上げてきた吐き気に口を押さえる。気持ち悪い…。
花粉症では、ない。その証拠に本当は、花が大好きだった。その中で桜は、あたしの一番好きな花だった。でも…三年前のあの出来事からあたしは、桜の木を見ると気持ち悪くなったり吐き気がするようになってしまった。原因は…わかってる…。
フィリア姉ちゃん…
あたしは、首を横に振る。
よそう…早く帰ってご飯食べてねよ…

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6570桜が舞い落ちる頃 2理奈 4/7-07:27
記事番号6569へのコメント


気持ち悪…やっぱり休めばよかったかな…
あたしは、学校がある丘を見上げる。桜が見事に咲いていた。毎年の事だけど、今年は、特にきれいに咲いている。だからだろうか、去年よりひどい吐き気におそわれる。だがここで立ち止まってもしかたがない。学校へ、行かないと。
あたしは、なんとか桜を見ないように丘を上がっていった。
「リナさん、だいじょうぶですか?」
「アメリア…だいじょうぶよ」
横からアメリアが心配そうな顔で除きこむ。
「今年もこの季節がやってきたんですね」
あたしは、彼女の言葉にうなづく。
アメリアは、小学校からのあたしの友達なのであたしの事情を知っている。
「リナさん…どうするんですか、今年の学園祭…今年は、参加しないわけには、いかなくなりましたね…」
この中学に三大祭り、つまり、秋の運動会と文化祭、そして春の学園祭がある。学園祭には、わけがあって一度も参加したことがなかったのだが…
あたしは、アメリアの問いに首をかしげる。
「どうするって…学園祭は、クラス実行委員がやるはずよ。なんであたしに聞くの?」
「リナさん、ゼロスさんから聞いていなかったんですか?今年は、クラス委員が実行委員の分もやるんですよ?」

「ゼロス!どう言うこと!?」
ホームルームが始まる前、あたしは、ゼロスを見つけ出し、締め上げる。
「く、くるしいですよ、リナさん。どーしたんですか?」
「どうしたも、こうしたも、なんであたしたち、クラス委員が学園祭実行委員もやんなきゃいけないのよ!?」
あたしは、ゼロスの首から手を離す。
「あぁ、そのことですか。いやぁ、実行委員をわざわざ決めなくても僕らだけでやれるかと思いまして」
ゼロスは、いつもどおりニコニコ顔で答える。
「あたしの意見は、どうするのよ!!」
「リナさんだったら喜んでやると思いましたけど。だめでしたか?」
「いやよ。絶対いや!学園祭には、参加しないって前から決めてるの!」
ゼロスは、あたしの答えに困った顔をする。
「困りましたね。今日のホームルームでこのクラスの出し物を決めようと思ったんですけど。今日一日だけ実行委員っていうのは、だめでしょうか?」
「今日一日だけ?」
あたしは、彼の言葉に顔をしかめる。
「はい。明日からは、誰か他の人を探しますから」
「…わかったわよ。今日一日だけね。その代わり明日からは、学園祭には、一切手を貸さないから」
「はい、わかりました」
ゼロスは、にっこり微笑む。
しかし、その後、あたしは、しっかり学園祭に参加しなければいけなくなったのを知る…

「では、次にこのクラスの出し物についてですが」
あたしとゼロスは、クラスの前に立ち、学園祭のことを説明していた。
「みなさんも知っているとおり、この三年A組の出し物は、毎年恒例になっています。そこで、その伝統とも言うべきことを守り、今年も劇の「白雪姫」をやりたいと思っています」
ゼロスの言葉にクラスのあちこちから「賛成」の言葉が聞こえる。
「では、役を決めたいと思います。だれか立候補か推薦する方、いますか?」
誰も進んで手をあげるものは、いない…が…
はっきり言って参加しないあたしにとっては、関係無いことだった。
早く終わってくれないかな…学園祭の事なんか考えたくない…
「では、僕がまずメインの白雪姫を推薦します。リナさん」
いきなり名前を呼ばれてあたしは、思わず声をあげてしまった。
「な、なんでよ!?」
「いえ、なんとなく」
「あたしは、いや!さっきも言ったでしょ、学園祭には、参加しないって!!」
ゼロスは、困った顔をする。
「そんなこと言わないで参加してくださいよ。きっと楽しいですよ、みんなで力を合わせて何かをするというのは。それに毎年恒例のことだし、三年A組がやる『白雪姫』、結構生徒や、先生方に良い評判なんですよ。そんな『白雪姫』の役をできるのがうれしくないんですか?」
「嫌よ!」
あたしは、力強く言う。
事情の知っているアメリアは、心配そうな顔でこちらを見ている。
「何でそんなに嫌がるんですか?クラス委員のあなたがそんな事言っていいんですか?」
「クラス委員なんてやりたくてやってるわけじゃないわ!!それにそんなに『白雪姫』をやりたければ自分がやったらいいわ!女みたいな顔してるんだから!」
クラスの中がざわめく。
…あたしったらなんてことを…
あたしは、顔をそらす。
またやつ当たりしてしまった…
しかしゼロスは、ポンと手を打ち、微笑む。
「それは、いいかも知れませんね。普通にやったら面白くないですね。では、僕が白雪姫をやりますから、リナさんは、王子の役をやってください」
「なぁ!?」
あたしが王子の役!?
「なんでよ!?」
「おや、リナさん。僕に女役させておいて、自分は、何もやらないっていうわけには、行きませんよね?」
「だからってなんであたしが!?」
「それともリナさん、演技に自信がないとか?知らなかったですね、成績優秀で、きれいなお方が演技が下手だったとは。あっ、それとも人前に立つのが嫌とか?」
「そんなんじゃないわよ!」
あたしは、もはや、クラスのことは、忘れて叫びまくっていた。
「だったらなぜ、嫌がるのですか?」
「やるわよ!!やってやるわよ!あたしの演技がどれだけうまいかあなたに見せてあげるわ!!」
ゼロスは、ニコッと微笑む。
「決まりですね。みなさんもこれでいいでしょうか?」
ゼロスは、クラスのみんなにたずねる。みんなから賛成の声がする。
「では、他の役を決めたいと思います」
あたしは、がっくりと肩を落とす。
…あたしって…はめられたんじゃないだろうか…

はぁ〜…あたしは、深いため息を吐く。
なんでこんなことになってしまったんだろう…
あたしは、劇に使うコスチュームを縫っていた。周りでは、劇の小道具やら
劇の大道具をクラスのみんなが作っていた。
「上手ですね、リナさん」
さっきまでペンキで板を塗っていたアメリアがやってきた。
「ありがと」
「リナさん、本当にだいじょうぶですか?あのことを思い出すようならゼロスさんに理由を話してやめればよかったのに」
「うん…でもあそこまで言われるとね…ちょっと…」
「そうですか。でも本当に辛かったら言ってくださいね」
アメリアは、あたしの手を取って言う。
「ありがとう、アメリア」
あたしは、にっこり笑うと、アメリアもつられて笑う。
「でもメインの王子役なんですから。私なんか悪い魔女役なんですよ!」
あたしは、つい笑ってしまった。
「その魔女さんのコスチュームよ。どう?」
あたしは、さっきまで縫っていたコスチュームをアメリアに見せる。
「うわぁ、すっごいじゃないですか!」
「すごいですね」
後ろからゼロスの声がする。
「ゼロス」
「はい、リナさん。台本です。さっき出来上がったばかりなんですよ。アメリアさんの分も」
「ありがと」
ゼロスは、台本の山を他のクラスメートたちにもくばる。
「学園祭まであと少し!みなさん、がんばりましょうね!」
ゼロスは、クラスの真中にたってみんなに言う。
子供みたいに目をきらきらさせちゃって…
あたしは、彼を見て思わず微笑んでしまった。

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6571桜が舞い落ちる頃 3理奈 4/7-07:28
記事番号6570へのコメント


学園際まであと少し。劇に使う大道具や、コスチュームも出来上がり、あたしたちは、放課後、劇の練習にとりかかった。劇を行うステージは、今、使えないため、クラスの中で練習をする。まず、完璧にしたい、劇のクライマックスの場面から。
クラスの真中で横になるゼロスに、彼を囲む七人の小人達。
なんか、はたから見るとおかしいぞ。
あたしは、台本片手に彼らに近づく。
『やっと見つけた。麗しき我が姫』
あたしは、ゼロスの横にひざまづいて彼の顔を除きこむ。
『おお、なんと美しい。思っていたとおりの…』
その時だった。強い風が吹いたのは。窓の外から桜の花びらが舞い込んでくる。
体中に寒気が走る。胸の置くから熱いものがこみ上げてきた。
あたしは、口をふさぎ、急いで教室から出て、近くの女子トイレにかけこんで、吐く。
…うっ…
はぁ…はぁ…
あたしは、くちをゆすぎトイレを出る。するとゼロスが心配そうな顔であたしを待っていた。あたしたちは、屋上へと上がる。
風が気持ち良い。
「だいじょうぶですか、リナさん?どこか具合でも悪いんですか?」
「うん…ゼロス…わるいけどあたし、やっぱりできないわ…学園祭に参加できない…」
「どうしてですか?」
あたしは、ゆっくりと屋上の真中へと歩く。
「あたしね、春の学園祭に劇って言う組み合わせで嫌な思いをしたことあるの。それがトラウマになってね。だから毎年学園祭には、参加しなかったの。今年もだめみたい。ごめんね」
「そんな…」
「リナさん!」
ゼロスが何か言おうとしたらアメリアが心配そうな顔で屋上に上がってきた。
「だいじょうぶですか!?」
「だいじょうぶよ…」
「今日は、もう帰りましょう?ね?」
アメリアは、あたしの手を引いていく。
「ゼロスさん、すみませんけど、私は、リナさんを連れて帰りますから」
アメリアは、ゼロスに頭を下げあたしたちは、学校を後にした。

あたしは、部屋の外に見える桜の木に吐き気を覚え、カーテンをしめる。
ふぅ〜…
両親に切り倒してほしいと頼みたいとこだがあれは、二人にとって記念樹みたいなものだから。
四時か…今ごろみんな劇の練習をしてる所かな…
今日、あたしは、学校へ行かなかった。気持ち悪いせいもあるけどゼロスとあまし顔を合わせたくなかった。彼のせいでは、ない。あたしがこんなのは。彼は、きっとあたしのために学園祭に参加させようとしたのだろう。なんでかは、知らないけど。
あたしは、窓のわくに置いてある写真立てを見る。きれいな、金髪の女の人に抱きしめられてる栗色の紙の少女。
あたしは、その写真立てを手に取る。
「フィリア姉ちゃん…」
コン、コン…
誰かがドアを叩く。
「はい?」
「私よ。お客さんが来てるけど、どうする?」
ルナ姉ちゃんだ。客?誰だろう?
「通して」
少ししてドアが開く。姉ちゃんの後ろにいたのは、ゼロスだった。
「ゼロス…」
「じゃ、リナ、私は、これから仕事だから。ごめんね、ゼロス君、なんにも出してあげられなくて」
「あっ、おかまいなく」
ルナ姉ちゃんは、ドアを閉めていった。
少しの間沈黙が流れる。
「あっ、すわってちょうだい」
「はい…」
ゼロスは、かばんとコートを置いて座る。
「具合は、どうですか?」
「うん…だいじょうぶよ…」
また沈黙が流れる。
………いやだな……
「あっ…げ、劇の練習は?」
「今日は、お休みと言うことで。メインの王子がいないのでは、練習のしようがありません」
「悪いけど、劇には、参加しないわ。誰か、変わりを探してちょうだい」
あたしがそう言うと、ゼロスは、真剣なひとみであたしをまっすぐ見る。深く、暗い、紫の瞳。
「それは、フィリアさんの事があったからですか?」
あたしは、目を見開く。
「アメリアから聞いたの?」
「いえ…ただ彼女の死が、トラウマになってるとかしかぐらい…」
あたしは、ため息を吐く。そしてゼロスに写真を見せる。
「あたしが六年生になったときにとったの」
ゼロスは、写真を見る。
「フィリア姉ちゃんはね、近所のお姉ちゃんで、あたしが四年生の時に引越ししてきたの。すごく綺麗でやさしいお姉ちゃんでね、あたしは、すっごく好きだったの」
ちょっとおっちょこちょいだったけど…
あたしは、クスっと笑う。
「小六の時ね、この中学みたいに春の学園祭があったの。あたしのクラスの出し物は、劇でね、『シンデレラ』だったの。それであたしがシンデレラに選ばれてね、すっごく嬉しかったのを覚えてるわ。うれしくて、うれしくて、まっさきに姉ちゃんに知らせて、絶対来てね、って言って。でも姉ちゃん来れないって。あたし、そのころめちゃくちゃわがままでね。絶対来てくれないとやだぁ、ってだだこねて。だから姉ちゃん絶対来るって約束してくれたの」
あたしは、写真を見る。幸せそうに微笑んでる姉ちゃんとあたし…
「でも劇が始まる時間になっても来なかったの。その日、姉ちゃん仕事があったから遅れてるのかなぁ、と思って。でも劇が始まっても、終わっても姉ちゃんは、来てくれなかった。劇は、大成功だったけど姉ちゃんが見てくれなかったからあたし、すっごく怒ってね…でも、本当は…」
その時の出来事…今でも覚えてる…
「姉ちゃん…両親も身寄りもいなくて…一人で暮らすのにも一生懸命だったの。バイトとか仕事とか、いろいろやってて。朝早くから夜遅くまで働いてて。でも劇の日、あたしのために仕事を早く切り上げてあたしの学校に向かってたんだって…でも途中で…交通事故にあって…」
あたしの瞳から涙が流れ落ちる。人前では、泣くのは、嫌いだった。でも今は、そんなことどうでもいい。
あたしは、手で顔をおおった。
「あたしがわがまま言わなかったら…姉ちゃん、見に来ようなんて思わなかったと思う…そしたら死なずにすんだのに…あたしのせいで…あたしが姉ちゃん、殺したのと同じ…」
ビクッと肩がふるえた。ゼロスがやさしく抱きしめてくれたのだ。あたしは、たまらず、彼の胸に顔をうずめる。
「フィリア姉ちゃんが死んだ日、こんな日みたいに桜が綺麗に咲いていて…その次の春からなの…桜を見るたびに姉ちゃんのことをおもいだして…嫌な気持ちになって、吐き気とかがおそってくるの…そして、中学入って最初の春の学園祭に参加するつもりだったけど…どうしてもフィリア姉ちゃんの事を思い出してしまって…。春になるたび、姉ちゃんの事を思い出してどうしようもない気持ちになって…」
「リナさん…」
ゼロスがやさしくあたしの名前を呼ぶ。
「僕は、フィリアさんのこと知りませんけど…これだけは、いえます。彼女は、きっとリナさんのことを恨んでなんかいないと思います。僕は、知っています。リナさんは、本当は、元気で明るい人だと言うことを。フィリアさんもきっと自分のことでこんなに悩んでるリナさんを見たくないと思います。元気なリナさんのことを見たいと思ってますよ。だから自分を責めないでください。いつものように明るいリナさんでいてください。僕がフィリアさんのことでこんなに悩まなくていいまでそばにいますから…」
ゼロスの声がすごく心地よかった。あたしを抱いてくれてる腕が力強かった。あたしは、ずっと誰かをさがしてた。こうやってあたしの悩みや気持ちをわかって、いっしょに分かち合ってくれる人を。
「ねぇ…ゼロス…なんでゼロスは、あたしを学園祭に参加させたかったの?」
「僕は、リナさんのことを中学入った日から知っていました。一目見たとき、なんて明るくて元気が良い人なんだろうと思ってました。でも春になるたびにその元気の良い人は、必ず影を落とすんです。いつもなぜだろうと思っていました。だから三年で、いっしょのクラスになった、春。春でも明るいリナさんが見たくて、学園祭ならみんなで楽しんで、リナさんもきっといつものように元気でいてくれるとおもっていたんですけど…ごめんなさい…こんな事情があったとは、知らず、むりに学園祭に参加させようとして…」
あたしは、首をふる。
事情を知っていたアメリア以外、誰もあたしのことわかってくれなかった。春になって苦しんでるあたしを励ましてくれたのは、アメリアだけだった…でもゼロスは、わかってくれてたんだ…ずっと見てくれて、あたしを元気付けようとしてたんだ…。
「ありがと…ゼロス…。…劇…参加させて…」
あたしは、ゼロスの顔を見て言う。
「いいんですか?」
「うん。やってみたい。いつまでも苦しんでいられない。姉ちゃんに怒られちゃう。それに、天国で見てる姉ちゃんにもあたしの演技、見せてあげたい。『シンデレラ』見せてあげられなかったから、今度は、ちゃんと『白雪姫』を見せてあげるんだ。主役じゃないけどね」
ゼロスは、顔を赤らめる。
「ゼロスの白雪姫、見てみたいわ。コスチュームもちゃんとできたんだから!」
「ええ。リナさんの王子役もね」
あたし達は、二人で笑い始めた…
外では、綺麗な桜の花びらが風で空に舞っていた…

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6572桜が舞い落ちる頃 4理奈 4/7-07:29
記事番号6571へのコメント

「うわぁ〜…」
クラスのあちこちからため息がもれる。女子は、目をハートマークにさせて、男子は、頬を赤らめていた。見られている彼は、笑顔を引きつらせていたが。
「やはり、やめればよかったんでしょうか…」
ゼロスは、ドレスのすそを摘み上げて言う。
「なぁ〜にいまさらいってんのよ!」
あたしは、ゼロスの前に立って言う。
ゼロスの白雪姫は、すっごくはまっていた。闇色の髪に、それこそ白い肌。まるで童話の絵本からぬけだしてきたお姫様みたいだった。でも王子より背の高い姫って…
「似合ってますよ。ねぇ、リナさん」
アメリアがゼロスを見て言う。ちなみにアメリアも魔女の格好をしていた。悪いけど、アメリアも似合ってる・・
「うん、うん。結構似合ってるよ、ゼロス。どこから見ても完璧な女!」
「そんなぁ〜…」
ゼロスは、情けない声を出して言う。
「リナさんも王子様の格好似合ってますよ」
お返しとばかりに、ゼロスもあたしの格好を見て言う。
「わるかったわね、胸がなくて」
「誰も胸のことは、言ってませんよ。たしかに男装には、もってこいですけど…」
あたしは、ゼロスをにらむ。と、同じにクラスのみんなが笑い出す。
「な、なによぉ〜!!」
あたしは、思わず叫んでしまった…が…。
ひさしぶり…こんなに楽しいなんて…
あたしは、みんなにつられて笑い出してしまった…

「リナさん…いよいよですよ…」
アメリアが小さな声であたしに言う。あたしは、うなづく。
あたしは、ステージの横でスタンバイしていた。ステージの真中では、ゼロス姫が小人達に囲まれて横になっていた。
劇のクライマックス。白雪姫を王子様のキスで目覚めさせるシーン。
あたしは、ゆっくりとステージに登場する。
『やっと見つけた、麗しき、我が姫!小人に囲まれた美しい姫!まるで良い魔女に言われたとおりだ!』
あたしは、ゼロスに近づく。
『おお!なんと美しい!思っていた以上に美しい我が姫!』
あたしは、観客に背を向けてゼロスのそばにひざまつく。
『どうしたら目覚めるのだ?』
『はい、姫が結ばれる運命の王子の愛で目覚めると…』
小人の一人が答える。
練習中にも思ってたけどこの劇のセリフってダサいのよね。ゼロス一人で考えたんだろうか?
『姫よ、どうか我が愛で目覚めてください』
あたしは、そう言ってゼロスの顔に自分の顔を近づける。そうしたら観客には、本当にキスしてるように見える。
くい…
え・・?
いきなりひっぱられる。あたしは、バランスをくずしてしまった。そのままゼロスの唇とあたしの唇がかさなってしまった。
なっ!!
あたしは、急いで顔を離す。観客は、見えないが変わりに小人の役をしていたクラスメイトたちには、バッチリと見られていた。
『ああぁ、私の王子様。きっと来てくださるとずっと信じていましたわ』
ゼロスは、何事もなかったように起き上がり、演技を続ける。
あたしは、いっしゅん言葉をうしなっていたが、そのまま演技を続ける。
『おお、我が姫、やっと合えることができました』
あたしは、ゼロスの手を取って引っ張りあげる。
『さぁ、姫。いっしょに城へ、まいりましょう』
『ええ』
あたしたちは、小人たちと共にステージ袖へ、さがる。
そしてカーテンがおりて、観客の拍手が聞こえる。
「大成功ですよ!!」
アメリアがあたしたちの手を取って言う。
「よかったですよぉ!」
クラスの何人かがあたしたちに言う。
「さぁ、みなさん、教室にもどって打ち上げでもしましょう!」
「さんせぇーい!!」

あたしは、制服に着替えて一人教室を出、校庭へ出た。校庭では、いろんなクラスの出し物がならんでいて、生徒たちが元気よく走り回っていた。
いつものように桜が綺麗に咲いていた。いや、いつもより綺麗に見えるのは、気のせいだろうか?あたしは、木に寄りかかって校庭を見ていた。
学園祭って…こんなに楽しかったんだ…
「リナさん…」
横から声がする。
「ゼロス…」
ゼロスは、近づいてあたしの隣に立つ。
「さっきは、すみません…」
「すまなかったらさいっしょからやらないでよ」
あたしは、冷たくいいはなったが微笑んでゼロスの腕を取る。
「でも…嫌じゃなかったわ…」
「リナさん…」
あたしは、彼を見上げる。ゼロスは、やさしい瞳であたしを見ている。
「秋の文化祭もいっしょに劇をやろうね…」
「ええ…でももうお姫様役は、いやですよ」
ゼロスは、微笑んで言う。
「ええ?せっかく似合ってたのに」
「嫌ですよ、もう。それに、好きな人の前では、やはり王子役がいいですよ」
ゼロスは、やさしくあたしの額にキスをしてくれた。
「僕のお姫様…」
あたしは、ゼロスの胸に顔をうずめる。
あったかい…
「あたしも、好きな人の前では、とびっきりの王女様でいたい…」
まるであたし達を祝福するように、桜の花びらがあたしたちにふりそそぐ。

“リナちゃん…私のことで苦しまないでね…あなたのこと恨んでないから…リナちゃんの事大好きだから、元気なリナちゃんのことが好きだから。ずっとここから見てるから…。『白雪姫』よかったよ…。ゼロス君と幸せにね…”

春。桜が舞い落ちる季節。
あたしは、また春が好きになった。
やさしい風があたしをつつむ…

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

このごろ何を書いても全然おもしろくない 理奈でございます。
まぁ、これもあんましおもしろくなかったのだけど、他のよりは、ましかな?と。
いかがでしたでしょうか?
日本は、もう桜が奇麗に咲いている頃では、ないでしょうか?こっちで見れる桜は、家の庭に咲いているやつだけ…それも今、雨のせいで奇麗におちてしまったけど。
ゼロス女装第二弾…いや、最初のは、完全に女ゼロスだったけど。私ってほんとにこーゆーのが好きなようで…
リナちゃん、暗いですね。こんなのリナちゃんじゃないわな。
こんなのでよかったら感想とか書いてくださるとうれしいいです。反響の声がおおそうだけど…では、こんなのを読んでくださった方に感謝して…

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6576感動しちゃいました。月影るい E-mail URL4/7-11:18
記事番号6572へのコメント

★理奈さん
 こんにちはぁ〜。月影るいです。
 桜が舞い散る頃・・感動しました♪
 目頭がじわーとなりました。
 とくに、フィリアが死ぬ経緯を話しているところ・・
 その情景が思い浮かべてとってもいいです♪
 うにゅにゅ・・今までのゼロリナと何か違った感じで
 良いです。
 新鮮でしたぁ〜♪
 また、感動する小説書いてくださいね。
 では、乱文失礼しました。
  
              月影るい

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6584ありがとうございます!理奈 4/8-16:16
記事番号6576へのコメント

 こんにちはぁ、理奈です!
 読んでくださってありがとうございます!

> 桜が舞い散る頃・・感動しました♪
> 目頭がじわーとなりました。

 ほんとうですか!?うわぁ〜、うれしいです!いつも誰かに
感動する話が書きたくて・・・ほんとうによかったぁ〜。

> うにゅにゅ・・今までのゼロリナと何か違った感じで
> 良いです。
> 新鮮でしたぁ〜♪

 ほんとうに、ほんとうにありがとうございます!!うれしいです!
 ありがとうございました!



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6585君の鼓動理奈 4/8-16:22
記事番号6569へのコメント

君の鼓動

いつもの事だけど…
あたしは、こめかみがピクピクするのをなんとか押さえようとする。が、しかし、出来ないことを無理にすることは、ないと思う。
「リナさん!」
アメリアの掛け声とともにあたしにパスしてくるバスケットボール。しかしあたしは、それを受け取らなかった。ボールは、そのままバウンスして彼の足元へと転がって行く。そう、あたしのこめかみピクピクの原因の彼。
「はい、リナさん。ボール。どうしたんですか?ボーっとして?」
彼は、わざわざあたしのところまでボールを持ってくる。ニコッと微笑んであたしにボールを渡そうとする。
「どうしたんですか?じゃないわよ!!なんで、毎日、毎日、体育の時間ここにいるのよ!?男子は、となりの体育館でしょ!?」
「いやですねぇ。リナさんも知ってるでしょう?僕は、身体が弱くて医者から運動は、止められているんですよ。男子を見学してるより、リナさんの事を見てる方が断然いいですよ」
「あたしには、全然そうには、見えないけど!すっごく健康そうな顔してるわよ」
あたしは、ゼロスからボールをひったくる。
するとゼロスは、いきなり手で口を押さえ激しくせき込む。
「や…ちょっと、大丈夫!?」
あたしは、彼の背中をさすってあげる。
「なんちゃって」
ゼロスは、大きな笑みを浮かべる。
ぶち……
「あんたはぁああああああ!!!!!」
あたしの絶叫が体育館に響く。回りの女子達は、オロオロし、アメリアは、あたしをなだめようとしていた。

小さい頃から知ってるゼロス。幼なじみってやつね。闇色の髪を肩まで切りそろえて、肌は、白い。そして髪と同じ色の瞳。昔っから女の子みたいにかわいかったけど成長した今では、美少年。
たしかに彼は、小さい頃から身体が弱かった。風邪なんかいっつもひいていたし、月一回は、必ず医者のところへ行っていた。なんかひどい病気にかかっていたらしい。その病気を治すため、彼は、小学校六年の時外国へ行ってそこで養生していた。そしてあたしが高校へ、入学した頃、病気が治ったと連絡があり、彼は、こっちへ、戻って来た。
彼は、変わっていた。美少年になってどこで覚えたからわからん口説き文句であたしにちょっかいを出すようになった。これがすっごくうっとおしくて、じゃまでしかたがない。病気のせいでおかしくなったのでは…

「リナさん、今日も体育で大活躍でしたね」
「あったりまえでしょう。あんた、あたしを誰だと思っているの」
「それもそうですね…」
ゼロスは、苦笑する。
あたしたちは、いっしょに帰り道を歩いていた。家が隣同士だからだ。じゃなかったらこんなやつといっしょに歩くなんて、うんなことわざわざしない。
「ゼラスさん、元気にしてる?」
「姉さんですか?ええ、元気ですよ。あの人は、元気のかたまりですから」
あたしたちは、笑い出す。
「あたしの姉ちゃんも。あたし達の姉ちゃんって似てるよねぇ。特に逆らえないところが」
「そうですね」
「世界中飛び回ってるんでしょ?売れっ子デザイナーもたいへんね」
「ええ。でもリナさんのお姉さんもすごいですよ。有名フランスレストランのオーナーなんて。リナさんも将来、お姉さんのような方になるんですか?」
「レストランのオーナー?まっさかぁ」
あたしは、それを聞いてわらいだしてしまった。
「では、将来なにに?」
「将来のことなんてまだ考えてないわよ。今は、今で、たのしくってしかたないの。ゼロスは、どうするの?もう高三でしょう?そろそろ
そういう事、考えないといけないんでしょう?」
「そうですねえ…今の所考えていませんね」
「考えていないって…じゃ、将来何になりたいとか?」
「ええ。全然考えていません」
「そうなんだぁー」
「ええ。では、リナさん、また明日」
あたしたちは、家についていた。
「うん、明日ね」

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6586君の鼓動 2理奈 4/8-16:24
記事番号6585へのコメント

「あれ?リナさん、ゼロスさんは?」
学校への通学路を歩いていたらアメリアが後ろからやってきた。
「ゼロス、今日は、具合がわるいんだって。だからおやすみ」
「そうですか。残念ですね、リナさん」
あたしは、アメリアの言葉に顔をしかめる。
「なんでゼロスがいなくて残念なの?」
「え?だって寂しいでしょ?彼氏がいなくて」
「誰が彼氏ですって!?」
アメリアは、あたしの剣幕に一歩あとずさる。
「え…ぜ、ゼロスさんが…」
「あんなやつ彼氏じゃないわよ!」
「あんなに仲がいいのにですか?」
「あいつがあたしにちょっかい出してきてるだけよ。だんじて付き合ってるわけじゃないわ!」
「ええ?もったいないですよぉ〜。ゼロスさん、女子の間では、すごい人気なんですよ」
「ゼロスがぁ?」
「ええ」
たしかにかっこいいが…あんなのどこがいいんだろう?
「そういえば、再来週の月曜日、学園創立記念日でしたよね。その休み、どうすごすんですか?」
「うぅ〜ん。まだ考えてないけど。きっと姉ちゃんに店手伝わされると思う」
「そうですか」
ったく…あたしとゼロス?あんなやつの事なんか…好き…じゃない…よね…

コン、コン
あたしは、ゼロスの部屋のドアをたたく。
「はい?」
中から弱々しい声が聞こえる。
「あたしよ」
「リナさん?どうぞ」
あたしと知ったのか、いきなり元気のいい声がする。
あたしは、ドアを開けて中に入る。ベッドには、青い顔をしたゼロスが横たわっていた。
「具合は、どう?」
「ええ、朝よりは、結構楽になりました」
あたしは、床にかばんとコートを置いてゼロスに近づく。あたしは、彼の額に自分の手を重ねる。
「まだ熱は、あるみたいね。なにかほしいものは、ない?」
「いえ、今のところは」
「そう」
あたしは、かばんからノートを取り出す。
「ゼルからノート借りてきておいたから。宿題とテストの課題は、中に書いてあるって」
「いつもすみません」
「いいわよ、別に」
あたしは、ノートを彼の机の上においてあげる。
「再来週って学園創立記念日でしたよね」
「うん、そうだけど」
「リナさんは、なにか予定とかあるんですか?」
「いまんとこは、ないけど?」
「だったらいっしょに遊園地へ行きましょうか?」
「遊園地?いっしょに?」
それって…
「ええ。僕とデートしませんか?」
「でぇーとぉ?」
「ええ。嫌ですか?」
ゼロスは、まるで小猫のような目つきであたしを見る。
うっ…そんな顔されちゃぁ、断れなくなるじゃない。
「そ、そうねぇ…。そうだ!来週の体育の時間マラソンでしょ?上位に入れたらいっしょに行って上げる」
きっと断るだろう。だってゼロスは、医者に運動は、止められてるはず。
しかしゼロスは、微笑む。
「それでいっしょに行っていただけるんですね?」
あたしは、彼の言葉で顔をしかめてしまった。あたしの冗談にあわせてるのか?
「え、ええ」
「約束ですよ」

「うひぃぃ〜〜、さぶぅぅ〜!」
あたしは、自分を抱くようにして、アメリアの影に隠れる。
「そんな事言わないで、リナさん。こんな寒い日に思いっきり身体を動かすなんて、健康的でいいじゃないですか?」
アメリアは、寒さにも動じないような口調で言う。
「風邪ひいて寝込むわよ!」
あたしは、身体を震わせながら回りを見る。他のクラスの子達も震えながら立っていたが、一人、わくわく顔で立っている人がいた。ゼロスだ。
あいつ、まさか本気で走るつもりじゃないでしょうね。本当に病気は、なおってるのかな。
「トラックを十周!いいか!」
十周か。軽い、軽い。
先生の掛け声とともにみんな走り始める。
こうなりゃぁ、走って暖まろう。
ゼロスは、だいじょうぶだろうか?
あたしが、五周くらい回った時、ゼロスをさがす。反対側にヨロヨロと走っているあいつを見つける。
あたしは、足を速めて彼に追いつく。
「ゼロス、だいじょうぶ?」
顔、真っ青だよ。
「だ、だいじょうぶですよ…」
彼は、にっこりと微笑む。しかし、その顔は、弱々しかった。
「もう、やめてよ。このままだったらあんた死ぬよ」
「平気ですよ…」
ゼロスは、そう言って足を速める。が、しかしいきなり膝をついて倒れてしまった。
「ぜ、ゼロス!」
あたしは、ゼロスを抱き起こす。顔に血の気がない。
「先生!あたし、メタリオム君を保健室に連れて行きます!!」

「ごめんね…ゼロス…」
ゼロスは、あたしの言葉に苦笑する。
「リナさんが僕にあやまるなんて…初めてですね。気にしないでください。走ったのは、僕の意志でですから」
「でもあたしがあんな約束したから」
「そんな顔しないでください。笑ってるリナさんが一番ですよ」
「…いっしょに遊園地行ってあげる」
「え?」
「あたしのせいでこんな目に合わせたんだもん」
「いいんですか?」
弱々しかったゼロスの顔にたちまち笑顔が浮かぶ。
「うん」

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6587君の鼓動 3理奈 4/8-16:28
記事番号6586へのコメント

暗い闇の中。回りには、何もない。
すると誰かが表れる。その人は、あたしに背を向けているので顔は、わからないけど、闇色の髪は、まちがいなくゼロスのものだった。
“ゼロス!!”
あたしは、彼に呼びかける、がゼロスは、気づかないのか歩き始める。
“ちょっと!ゼロス!”
あたしも走り出そうとするが足が動かない。
ゼロスは、なおも歩きつづける。彼の背がどんどん小さくなっていく。
どうしようもない不安があたしをつつむ。胸の鼓動が早くなっていく。
“やだ!ゼロス!ゼロスぅ!!”
あたしは、必死になって叫ぶ。
そして完全にゼロスの姿が見えなくなった…

あたしは、ゆっくりと目を開ける。
いやな…夢だった…
あたしは、起き上がり目をこする。
どうやら泣いていたらしい。
なんであんな夢なんか…ゼロスと会う日に…
今日は、デートの日だった。あたしは、起き上がり、シャワーを浴びてしたくする。約束の時間は、10時。
…デート…って…何を来ていけばいいんだろう。
あたしは、カガミの前に立って悩む。
……
やっぱり動きやすいためにズボンだね。
あたしは、ベージュのズボンとそれに合うシャツを取ってコートをはおる。
よし。
ピンポーン…
来たみたいね。
あたしは、バックを取って玄関へ走る。ドアを開けるとゼロスがなんともうれしそうな顔で待っていた。
「な…なによ…」
「いえ。これからリナさんとデートが出来るなんて思っただけでうれしくて!」
「はいはい。行くわよ」
「ええ!」
するとゼロスは、あたしの腕に自分の腕を絡める。
「な、なによ」
「デートですから腕くらいくまないと!」
あたしは、一瞬もんくを言おうとしたが。
まぁ、今日は、いいでしょう。

あたしは、ジェットコースターを見上げる。
「ほんとに大丈夫?」
「ええ!大丈夫ですよ!いくら僕の身体が弱くてもこれに乗って死ぬことは、ないでしょう」
「変な事言わないでよ。まぁ、あんたがそーゆーんだったら乗りましょう!」
実は、こーゆーのが好きなあたしは、ゼロスの腕をひっぱって列に並ぶ。
その後、あたしたちは、続けざまに絶叫マシーンに乗ったが気持ち悪いと言ったゼロスをベンチにすわらせる。
「だから言ったじゃない」
あたしは、近くの自動販売機から冷たいジュースを買ってゼロスにわたす。彼は、それを受け取って額に当てる。
「つめたいです…」
あたしは、ゼロスのとなりにすわる。
「次は、もっとやさしい乗り物に乗ろう?」
「ええ」
「何に乗る?」
ゼロスは、少し考え込んだが、正面の乗り物を指す。
うっ…
観覧車。これだけは、避けたいと思っていたが…しかたがないか…
「じゃ、いきましょ」
あたし達は、観覧車の列に並んだ。
「もう!」
「ははは」
げっ…目の前にラブラブカップル…
あたしは、目をそらす。
嫌なのよぉ〜…こーゆーカップルが目の前にいると。殺したくなるから。
男の方は、女の腰に手をまわしていた。
やめろよぉ〜、人前で!ぶっとばすぞ!!
それが顔に出てたのかな?ゼロスは、苦笑する。そしてあたしの肩に手を回してきた。
「ぜ、ゼロス」
あたしは、あわてて逃げようとするがゼロスは、あたしを逃がさない。
「今日だけでいいですから。恋人気分でいさせてください」
あたしは、ため息を吐く。
「しかたないわね」
「さっ、リナさん。僕たちの番ですよ」
ゼロすは、あたしの手を引っ張り、観覧車に乗る。

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6588君の鼓動 4理奈 4/8-16:36
記事番号6587へのコメント

「うわぁ〜、きれいねぇ〜!」
あたしは、外を見て言う。
この遊園地は、海に近くて奇麗な夕日が見える。
「そうですね」
あたしは、ゼロスを見る。彼は、まぶしそうな瞳であたしを見ていた。
一気に顔が熱くなるのがわかる。あたしは、あわてて顔をそらす。
「本当に…奇麗な景色ですね…明日も…こんな景色が見れるといいですね…」
ゼロスの言葉にあたしの胸がドキっとする。どうしてかは、わからない。一瞬、不安になる。
「な、なにいってんのよ。こんなのいつでも見れるじゃない」
自分の笑顔がひきつってるのがわかる。
ゼロスは、フッと微笑む。
「そう…ですね…」
ゼロスの紫の瞳があたしの紅い瞳をとらえる。
そらそうとしてもできない。
長い沈黙が流れる…
「どうぞぉ〜!」
その沈黙を破ったのが遊園地の人だった。いつのまに一周したんだろうか。
「あっ、はい…」
あたしは、急いで観覧車から出る。ゼロスもその後を続く。
「つ、次、なんに乗ろうか?」
あたしは、何とかドキドキなってる胸を押さえ、ゼロスにたずねる。
「あの景色がまた見たいんですけど…」
「また観覧車に乗る?」
「いえ、もっといい場所を知ってるんですけど、遊園地を出なければ行けないんですけど」
「いいよ」
観覧車以外だったらどこでもよかった。ただ、またあの小さな観覧車に二人っきりは、避けたかった。
あたしは、ゼロスに着いていく。
遊園地を出て、電車に乗る。そして下りて、少し歩く。ついたところは、公園だった。
「こっちです」
ゼロスは、あたしの手を取り、引っ張る。
あたしたちは、公園の奥にある丘を上がる。
「う…わぁ…」
目の前に広がった光景を見て、思わず声が出る。
丘から見える海。夕日が半分海から顔をのぞかせていた。空も、海も赤い。
「きれぇ〜」
「リナさん」
ゼロスに呼ばれてふりむく。彼は、木によりかかって座っていた。ゼロスは、あたしを手招きする。
あたしは、いっしゅん、とまどったが、ゼロスのとなりに腰掛ける。するとゼロスは、あたしの肩に手をまわし、抱き寄せる。
「わっ…」
あたしは、勢いでゼロスの胸に顔をうずめてしまった。
「リナさん…今日は、とても楽しかったです。付き合ってくださって、ありがとうございます。きっとわすれません」
「…あたしもよ…」
あたしは、顔を上げていう。
さみしそうなゼロスの瞳。
また観覧車で感じた不安が胸をつつむ。
「…ゼロス…どっか行っちゃうの?」
「…」
何も言わない。
「あたし、嫌な夢を見たの。ゼロスがいなくなっちゃう夢」
あたしは、今朝見た夢をゼロスに話す。
「いやだよ…あたし、ゼロスがいなくなるの嫌だから…」
ゼロスの腕に力が入る。
「小学校の時、ゼロスが外国へ行った時、あたしたくさん泣いたんだからね。ゼロスが帰ってきた時、あたしがどれだけうれしかったか、わからないでしょう?だからまたどっか行っちゃうなんて言わないで。おねがいだから…」
ゼロスの唇があたしの額にふれるのを感じる。
「どこにも…行きません…もうどこにも…ずっとリナさんのそばにいますから…」
「ゼロス…」
トクン…トクン…トクン…
胸の奥から聞こえるゼロスの鼓動…
あたたかいゼロスの腕…
それがすごく心地よくて…

頬にあたった風が冷たくて目をさましてしまった。
「…ん…」
回りは、暗く、何も聞こえなかった。
何も……
「ゼロス?」
ゼロスの鼓動も…
「ゼロス?」
あたしは、起き上がる。そのとたんあたしの肩に回してあったゼロスの腕が力なく、落ちる。
「ちょっと、ねぇ、おきてよ、ゼロス」
さっきの不安が胸を駆け巡る。鼓動が早くなる。
ゼロスは、まるで眠っているようだった。奇麗な紫の瞳は、閉じられている。顔には、幸せそうな笑顔が浮かんでいた。
「ゼロス…いやだよ…さっきそばにいるって行ったじゃない…もうどこにも行かないっていったじゃない」
あたしは、ゼロスの身体を揺さ振る。
「おきてよ!ねぇ、おきてよぉぉぉおお!!目ぇえ、あけてよぉぉおお!!!」
冷たい風が吹き、ゼロスの闇色の髪とあたしの栗色の髪が舞う。
「ゼロスぅうううううううう!!!!!」

“リナさんへ
きっとリナさんへ書く手紙は、これが最初で最後でしょうね。遊園地、いっしょに付き合ってくださってありがとうございました。すごく楽しかったです。いえ、その前の日に書いているんですが…。でもきっと楽しいはずです。リナさんといっしょなんですから。
リナさんも知っているように、僕は、小学校のころ外国へ行って病気の養生をしていました。手術も何度もして…。でも結局直らなかったんです。なんか新種の病気で…直す手がなにもないらしいんです。医者に言われました。きっとあと六年ぐらいしか生きられないだろうって。そう高三くらいまでしか生きられないだろうっていわれました。この前、リナさん、僕に聞きましたよね。将来、なにになりたいか。僕は、死んでもリナさんの中で生き続ける存在になりたいんです。
リナさんと遊園地へ行こうと思ったのは、最後にいい思い出が作りたかっただけです。死んだら思い出なんか関係ないと思うでしょうが、僕は、たぶん死んでも忘れないと思います。愛しいリナさんといっしょの思い出ですから。
リナさん。僕は、リナさんのことをとても愛しています。死ぬと知ったから僕は、どうしてもリナさんといっしょになりたかったんです。毎日リナさんの気をひくようなことばかりして、どうしてもあなたを振り向かせたかったんです。うっとおしいと思われたでしょうね。でもこうするしか方法は、なかったんです。病気の事教えるわけには、行きませんでしたから。
僕が死んでも僕のこと、忘れないでください。おねがいします。リナさん。僕は、あなたのことを愛しています。ずっとあなたのそばで、あなたを見守っています。どうかお幸せに…

ゼロス・メタリオム“

あたしは、手紙を封筒に戻す。何度も読んだのにいまだに読むたび、涙が流れる。
あたしは、その涙をぬぐう。
「わっ…」
いきなり吹いた風に髪が乱れる。あたしは、彼の墓を見下ろす。
ゼロス…よかったね。ゼラスさんのおかげでこんないい所をさがしてもらった。
海に近い教会の裏。この丘の上からなら海が奇麗に見える。青く、光る海が…。
そう…あの日、四年前…二人いっしょに見た光景のような…
あたしは、ふっと微笑む。そして、彼の墓標の前で横になる。彼の身体があるはずの大地の上にあたしは、彼の上に身体を重ねる。
暖かいよ…ゼロス…
そして耳を澄ます。
そう…彼の鼓動を聞くために…

トクン…トクン…トクン…

数年後、彼を含め、何百人もの人々を死へとおいやった病気の治療をある女性が見つける。そして彼女は、「歴史上、最高の医者」と呼ばれるようになる…

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

 あぁ・・・ゼロス、殺しちゃいました・・・
魔族で、リナちゃんに滅ぼされるのなら、まぁ、わかるけど・・・
人間ゼロス君が・・・・何を考えてるんでしょうね、私は。
 ゼロス君が死ぬシーン、悲しいいシーンなのに、私は、
「下手だな、私」なんて言いながら書いてました。こー、もっと
気持ちを表現できないかな、私。もっと、練習しなくちゃ。
 それでは、読んでくださってありがとうございます。
 このごろ下手な(前々からそうだったけど)小説した書けない理奈でした。