◆−過去の末裔(1)−庵 瑠嬌(5/5-14:41)No.6739
 ┣過去の末裔(2)−庵 瑠嬌(5/5-14:43)No.6740
 ┃┗過去の末裔(3)−庵 瑠嬌(5/5-14:43)No.6741
 ┃ ┗過去の末裔(4)−庵 瑠嬌(5/5-14:44)No.6742
 ┃  ┗過去の末裔(5)−庵 瑠嬌(5/5-14:45)No.6743
 ┃   ┗過去の末裔(6)−庵 瑠嬌(5/5-14:46)No.6744
 ┃    ┗過去の末裔(終)−庵 瑠嬌(5/5-14:47)No.6745
 ┃     ┗Re:過去の末裔−彩(5/5-19:06)No.6749
 ┃      ┗ありがとうございます……本当に。−庵 瑠嬌(5/6-13:42)No.6753
 ┗あなたに逢ったら−庵 瑠嬌(5/5-14:50)No.6746
  ┣Re:あなたに逢ったら−彩(5/5-19:18)No.6750
  ┃┗二つも……わざわざ……ありがたすぎます……っ!−庵 瑠嬌(5/6-13:52)No.6754
  ┗Re:あなたに逢ったら−Lina(5/6-23:03)No.6760
   ┗……とっても甘いんですの(笑)−庵 瑠嬌(5/7-15:53)No.6762


トップに戻る
6739過去の末裔(1)庵 瑠嬌 5/5-14:41



 これはゼロリナです。
 ゼロリナなんです……けれどっ!
 あぁぁ……。あんまり、と言うか、ほとんど甘くないんですのっ!
 でも、せっかく書いたものをすべて没にするのは、あまりに切なかったので載せてしまいますわ。
 で、でも、最初は、結構からんでますし(凄い言い方)、部分的に甘いところも作りましたからっ……お願いです。そこを目指してでも、読んで下さいまし……。
 しかし、しみじみ題名が謎ですわね……それはともかく、ではどうぞ。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 過去の末裔


 そこには、二つの存在が在った。
 一つは圧倒的な力を誇るもの。一つは強力な力を備えたもの。
 ―――共に力にあふれた存在だった。
 しかし、双方が戦えば、一方が敗れ去るのは当然の理。
 敗れ去ったその者は、つややかな黒髪を肩で切りそろえ、冴え冴えとした深い闇色の双眸を持つ男……。
 怒りと屈辱に顔を歪めつつも、戦意失わぬ瞳で彼は、相手をにらみ据えた。
 相手はその様子を感情の宿らぬ表情で見下ろす。
「――――確かにおまえは強き者……わたし相手にここまで奮闘したことは誉めてやろう」
 そんな言葉は、彼にとってなんの意味も為さぬもの。
 傷つき、疲れ果てつつも、凍りつくような闘気を絶えさせることなく、彼は口を開いた。
「無意味なことを言うのはやめてもらいましょう………どうせ負けた身、殺すなら余計な無駄口は省いていただきたいものです………」
 その理知的な口調は、相手の趣味に合うものであった。
 氷のような容貌も、凍りつくような瞳も。そして、闇を体現したようなその色も―――。
 相手はくつり……と喉を鳴らした。
「おまえのその力を認め、その姿を……戴こう」
 それが彼の耳にした最後の言葉だった。
 後は、とどめとなる鋭い痛み、そして―――………
 ――――彼は混沌へと還ったのであった………


「きょうっはたっいりょっう、うっれしっいなーっ」
 あたしは、機嫌よく宿屋に戻る道を歩いていた。
 背中のナップザックには、確かなお宝の重み。長い距離を歩くには、少々きついが、我慢できないほどの長さではないし、なによりこの弾む心が、その重さを半減させる。
「さっすが、こういう町の近くにいる盗賊ってのは、おいしいわねぇー」
 あまり小さい町の近くだと、盗賊もあまり獲物がないらしくて、お宝もたいして持ってないし、大都市の近くだと、役人に捕まるのを恐れてあまり活発に動かない。
 中規模な町の近くの盗賊、というのが――やはりベストである。
 宿に戻ったら、傷のついてる宝石調べて……、古代金貨も結構あったわねぇ……。
 ―――いろいろと楽しくて嬉しい予定を立てていたあたしは……結構、周囲に不注意になっていたのかもしれない。
 だけど……どんなに警戒していても、あまり意味はなかった、と言えると思う。
 なにしろ、次の瞬間起こったことというのは――…
「すっみません!危ないですぅぅ……っ!」
 上空からの声にはっと空を見上げると、おかっぱ頭のスットコ魔族――が。
「うっ………」
 信じられなかった。
 力いっぱい正気を疑ってしまった。
「嘘でしょぉぉぉっっ!?」
「ごめんなさいぃぃぃっ!!」
 ごめんですむかこの阿呆神官――――!
 ド ス ―――― ン ッ !!
 衝撃に一瞬、息が止まる。
 とっさに受け身は取ったものの、緩和しきれない衝撃に、身体がじぃん、と痺れた。
 さらに、仰向けになったあたしに倒れ込んでいる奴の重みで、思うように動けない。
 ええい……っ!さっさとどかんか!
「ゼロス〜……ッ!」
 怒りに燃える心で、上空からものの見事にあたしの上に落ちてきた馬鹿男を、怒鳴りつけようとしたら………。
「すみ……ませぇん………」
 あたしの上にのっかたまま、疲れ切った声が答えるではないか!
「あ…んたねぇっ!悪ふざけも、いい加減に………!」
 殴り飛ばそうにも相手の肩が邪魔で動かせないぃぃっ!
 と。
 ………ずしぃぃん。
 重みが倍増した。
 ……しら、ない……わけじゃないぞ。……こぉ…ゆう、重みって。
「まっ……!魔族ともあろうもんがっ!気絶なんてするわけないでしょーが!いい加減にどけぇぇぇっ!!」
 この重さは意識を失った人間に共通する重み……だけどっ!!
 どこの世界に空から人の上に落っこちてきたあげく、そのまんま気絶するドジな魔族がいるってのよぉぉっ!?
 じたばた暴れながら、あたしはふと違和感を覚えた。
 綺麗な漆黒の髪……妬ましいくらいすべすべの真っ白な肌。
 そう……肌。
 本来なら、なんら温度を宿さぬその肌には―――
「………っ…!」
 温かみ、が………。
「嘘、でしょう……ッ!」
 あああああああっ!なんて激しく不本意な状況。
「こんな外見したもん、二人やら三人、いるわけないじゃないっ……!」
 あたしは途方に暮れて叫んだ。
「なんとかしなさいよ馬鹿ゼロス――――っ!!」

「―――呼びました?」

 ……え。
 嘘。
 んな、タイミング良く。 
「おやおやリナさんってば。それなりに色っぽいですけど、僕以外の男性に押し倒されてどうするんですか」
 なにやら、勝手なセリフが、上から降ってくる。
 同時に、全身にかかっていた重量がふっと消えた。
「こんな、外見だけ同じな代用品よりも、本人の方がいいでしょう?」
 にっこり。
 微笑むその顔はっ、その顔はっ!
 あたしは飛び起きた。
「ゼロス………っ!」
「ああその声。よほど僕に逢いたかったんですね。僕もそうだったんですが、近頃仕事が忙しくて」
「なっ、なに勝手なこと――!」
「いいえ、最後まで言う必要はありません。リナさんの思うことは、僕には手に取るように分かります。愛するものとは口にしなくとも想いが通じ合う。これぞ究極の―――」
「いいっかげんにしろぉぉぉっ!!」
 どこまでも続く戯れ言に付き合う趣味はないっ!
「………で。このそっくりさんと、僕はまったく関係ありませんよ」
 引っかき回したあげくの、いきなりな答えに、おもわずあたしは頭痛を覚えた。
「あたしの聞きたいことが分かってたんなら、さっさと答えなさいよっ……!」
「いやぁ、久しぶりのリナさんとの出逢いに、つい舞い上がってしまって」
 舞い上がったついでに、人をおちょくるのかっ!?
 よっぽど訊いてやろうと思ったが、どんな答えが返ってくるのか、若干恐怖を感じたので、口にするのをやめた。
 ……我ながら賢明な判断だと思う…………。
 地面に横たわっている、ゼロスのそっくりさんを横目で見やりつつ、あたしはゼロスに尋ねた。
「じゃあ、この人のことはなんにも知らない、と」
「はい。でも……どうやらエルフみたいですねぇ……」
 その言葉に目をやると、確かに耳がとがっている。
 考えてみれば、肌が透き通るように白いのも、顔の造作が異様に整っているのも、エルフによく共通する特徴だ。
「だけど……同じ顔が二つあるって、変な気分………」
 つぶやきつつ、あたしはエルフをじっと観察した。
 よくある旅人の風体――おかしな所は一つもないし、そんな金目のものも――
 と。
「う、うぅーん……」
 エルフの眉がひそめられた。
 意識が戻ってきたらしい。
 思わず固唾を呑んで見つめるあたしに、ゼロスは興味の薄い声音で。
「おや、そろそろ目が覚めそうですね……それでは僕を退散いたしますよ。自分と同じ顔の人物がいたら、驚くでしょうからね」
 そしてそのまま、その場からかき消えた。
 なっ……ちょっと待っ……
 後ろのゼロスに振り向こうとした瞬間。
 …………………すっ……。
 エルフの目が開いた。
 と、同時に唇が開く。
 ばっちりとゼロスの顔にしては異様に開いた瞳が、なんとなく妙な雰囲気である。
「………………………あ。」
 ――――あ?
「すみませんっ!痛くなかったですか!?」
 いきなし飛び起きて、エルフは謝り倒してきた。
 だぁぁっ!ゼロスの顔が本気ですまなそうな顔してるぅぅっ!!
「いや、かなり痛かったけど……」
 なんとなくたじたじとなるあたし――うー、この顔苦手だわ。
 って、それよりも、あたしというクッションがあったにもかかわらず、気絶してしまったっていう、彼の神経の方も問題あるような気がするが……。
 ―――もしや、さっきの「あ」は単なるボケか?
「って、そういえば、あんたどうして空から落ちてきたの!?」
 考えてみりゃ、絶対おかしいわよ!
「いやあ、ずっと飛行呪文で空飛んでましたら、疲れてしまいまして………」
 あはは、と頭をかくエルフ……しかし、落ちて気絶してしまうほど長時間飛ぶなんて……。
「どのくらい飛んでたのよ」
 なんで初対面の、しかもゼロス顔のエルフとこんなとこで立ち話してんだろう、などという一抹の疑問が頭をよぎったが、それはともかくと、思考をずらして。
「えっと、飛び始めたのが………日の暮れる頃ぐらいでしょうか………」
 ほけほけとした口調のエルフのその言葉に、一瞬、思考が止まった。
 ………………夕方……?
「六、七時間は飛び続けてたんじゃないっ!」
「ああ……そうですかぁ………」
「それは無茶、よ」 
 いくらエルフといえども、そんなに長い間飛んでいたら疲れ切って当然である。
 えらく考えなしな男だなぁ………。
「急いでいたもので……。あっ」
 ……はっと、エルフはいまさらながらあたしの格好に気づいた。
「あなた、魔道士ですかっ?」
 それ以外のなんに見えるのか。
 聞き返して、ただの変な人、と答えられたら救いがないので、素直にあたしは答えた。
「そうよ……」
「それじゃあ………お願いですっ、どうか」
 ……頼むから、ゼロスの顔で目に星を浮かべないで欲しい。
「僕をトゥイルー・シティに連れていってくださいっ……!」
 

「…………で。受けたわけだな?」
 ガウリイの言葉に、あたしはうなずいた。
「何たって、報酬が凄いわよ。……前金で……ほら」
 少々重い小袋を渡す。
「金貨?」
 中身を一枚取りだしてまじまじと見やるガウリイに、あたしははぁ、とため息をついた。
「………ったく……この程度の常識も知らないで、どうすんのよ………」
 あたしはガウリイの取り出した金貨を取って、ちっちっと振ってみせる。
「古代金貨よ。……かなり古い時代のものだから、マニアにはかなりの値段で売れるわ」
「……ほー……」
「後金はこれの倍!美味しすぎるってなもんねー♪」
 ―――まぁ、こんな気前よく、報酬に金額をかけられる、というのは……けっこう厄介な仕事っぽいけど……ね。
「側にいて、なんか違和感を感じる顔してるけど………」
 あの手の顔はちょっと……苦手かもしれないんだけど……あの報酬は捨てがたいしっ。
「違和感?」
 ガウリイが怪訝そうな顔つきをしたその時。
 ばぁんっ!!
 扉が開かれた。
「リナさんっ、そろそろ行きましょう!?」
 ―――真剣この上ない表情で現れたエルフに、ガウリイは絶句した………。


◆◆◆◆◆◆◆◆

 最初の1話、けっこう長さありましたけど、あとはちゃんとそれぞれ、この半分以下程度の長さですわ。お願い致します。
 めげずに読んで下さいませ……!(必死)

トップに戻る
6740過去の末裔(2)庵 瑠嬌 5/5-14:43
記事番号6739へのコメント


 過去の末裔(2)


「僕はゼウスといいます」
 エルフはそう自己紹介した。
 名前まで似てる……っと頭を抱えるあたしに、ゼロスと同じ声が説明する。
「つい先日、僕の村の長老が亡くなったのですが……その遺言が、トゥイルー・シティの側にあるエルフの村にあるので」
「取りに行くってわけね……。で、どうしてそれだけのことに、あたしたちみたいな護衛を雇うわけ?」
「…………………」
 ゼウスはうっと、困ったような表情で詰まった。
「何?」
「そっ……それは―――」
「事情説明は別にかまわないが……」
 ふと、ガウリイがゼウスの言葉をさえぎった。
「お客さんみたいだぜ?」
 近づいてくる殺気――単なる盗賊とか、そういう輩じゃない。もっと手強い――……
「レッサー・デーモンってとこ?」
 ちらり、とゼウスを見やると、彼は蒼白になっていた。
 ほんとに違和感だわ……だいたい、こいつといるとどうしても、あいつ思い出しちゃうじゃない。
 ――この依頼、やっぱうけなきゃよかったかなぁ………。
 何度目になるかしれない軽い後悔を感じつつ、あたしは考えた。
 あの表情からすると、あながち、心当たりがないってわけじゃなさそうだし…ねぇ……。
 でも、一度受けた依頼だし。
「数十匹もの相手も……楽勝とは行かないけど」
 口の中で呪文を唱える。
「あたしを倒せる程じゃないしっ!ブラム・ブレイザーっ!」
 増幅のおまけ付き!青い光がレッサー・デーモンをまとめて貫く!
 ―――ぎぐぁぁぁぁぁっ!!
 異様な絶叫を挙げて、塵と消えるレッサー・デーモンを確認して、次の呪文を唱える。
 と、駆けるガウリイの剣が一閃した。
 ざんっ!
 ―――ぐるぉぉぉぉっ!
 そして一匹のレッサー・デーモンが無と帰す。

 戦いはあまり長く続かなかった。
「ブラスト・アッシュ!」
 あたしの攻撃呪文一発で、最後のレッサーデーモンは消滅した。
「……す、すごい―――」
 ゼウスは呆気にとられたようにつぶやく。
「まあね。で、どういう事?ここまで大量のレッサー・デーモンを操る相手と、あんたこと構えてんの?」
 尋ねるあたしに、彼は迷うような素振りを見せた。
「事態がよく分かってないと、ミスもしやすいし失敗も起こりやすいのよ。教えてくれた方が、このさきやりやすいんだけど」
 重ねて問うと、ゼウスはややあって口を開いた。
「―――亡くなった長老というのは、実は僕の祖父に当たるのですが……」
「祖父!?」
 いるのっ?
「ええ……祖父なのですが……」
 怪訝そうになるゼウス。
 ………ああ、そうよね。ゼウスはエルフだもの。魔族ならともかく、……そうに決まってるじゃない。うろたえた自分が、誰を思いだしたかいやと言うほど分かって、あたしは内心ため息をついた。
「………話を折って悪かったわ。……で、そのおじいさんが?」
「どうやら大きな秘密を隠し持っていたらしいのです」
「秘密?」
 誰しも、人に言えない秘密など、一つや二つ、あるものだが……彼のおじいちゃんについては、そういう類のものではないようである。
「祖父の父……つまり、僕の曾祖父は、降魔戦争に参戦した人です。……結局、魔族によって帰らぬ人となったのですが、その戦いの中でなにか大きなことがあったそうなのです………」
「その『大きなこと』を、知ってるのが、あんたのおじいさんだけだったってこと?」
「はい」
 ゼウスはうなずいた。
「それについてが、遺言に書かれているんです―――けれど魔族に関わることですから、知らないままの方がいい、という意見の方がいて」
 どこか辛そうに、ゼウスは顔を歪めた。
 ―――うーん……しみじみゼロスの顔でそういう表情されると、違和感だわー……。
「で、使いの僕を村に連れ戻そうとしているんです」
「このレッサー・デーモンは、そいつらが放ったってことか……だけどねぇ」
 あんまり、言いたくないけど……。
「そいつら、連れ戻すなんて穏和なこと、考えてないみたいよ?こんな量のレッサー・デーモン……戦い慣れしてる奴じゃないと、倒せやしないもの」
 ほとんど、ゼウスを殺すくらいの考えでいるだろう。
「そ、んな………」
 ゼウスの表情が悲痛に歪む……ああっ、だからゼロスの顔でそういう表情しないで欲しいっ。不気味なのよっ!
 精神安定上、非常に悪いわ。このエルフ……。
「このまま、自分の村に帰るってのも方法の一つよ?まぁ、あたしたちがいれば、レッサー・デーモンの、十匹や二十匹、軽いもんだけど」
 あたしの言葉にゼウスは迷うように瞳を揺らし……口を開いた。
「いいえ……遺言を残しているということは、祖父は村のみんなにも、知って欲しいと思っていたと言うことですから………」
 故人の意思を尊重します――と、つぶやく彼に、あたしは軽く苦笑した。
 やっぱり、同じ顔してても、全然違うわ……別人ね。
「OK。じゃ、さっさと目的地に急ぎますか……ガウリイ、行くわよ!」
 振り向くと、ガウリイは深刻な表情で考え込んでいた。
「……どしたの?」
 真顔でガウリイはあたしを見つめて問うた。
「降魔戦争って………なんだったっけ……」
 真剣極まりない表情、である。
 いつも彼は本気だ――恐ろしいボケを放つときも。
「………………なんか、あんたには何度言っても無駄なような気がしてきたわ………」
 あたしはため息をついた。



トップに戻る
6741過去の末裔(3)庵 瑠嬌 5/5-14:43
記事番号6740へのコメント


 過去の末裔(3)

 それから三日――とうとう、待ちわびた日が来た。
「ゼウス!長老の遺言を取りに行くのはやめろ!」
 道を塞ぐは緑の髪に青の瞳のエルフ――例によって例の如く、やっぱり美形である。
 エルフの中で、美醜って、あるんだろうか……?
 それよりもっ、とうとう黒幕登場!こいつぶちのめせば、すべては解決ねっ(はぁと)
「……ラーイさん……あなただったんですか……」
 一方、ゼウスはそのラーイというエルフを見つめる。
「魔族について、あまり知ってはならない!知識は身の滅びに繋がるんだぞ!?」
「けれど、祖父はそのことを皆に知っていて欲しくて、僕を遺言を取りに遣わしたんです!」
「その判断が誤りだって言っているんだ、俺は!」
 激しく議論しあう彼らに、あたしは考えた。
 このまま、言いたい放題言わせておくもよし。それで決着が付くならば。
 それとも――……
「エルメキア・ランス!」
「うわぁぁぁっ!?」
 ラーイがあたしの不意打ちに焦って身をひねらせる。
 ふっ、お互い議論に集中している隙を突いて、攻撃を喰らわせるもよし!
「卑怯者!!」
「馬鹿言うんじゃないわよ。自分の勝手な考えでさんざん、レッサー・デーモンやらけしかけといて、卑怯者呼ばわりなんて、笑わせてくれるじゃない!」
「なにをぉぉぉっ!」
 図星を突かれたためか、いきなり逆上して、彼は呪を唱え始めた。
 ……いや、正確には。
「とりゃぁぁぁっ!!」
 ざんっ!
「うわああっ――!」
 ―――唱えようとしただけである。
 先手必勝なガウリイの攻撃に、ラーイは、盛り上がりも何もなく、あっさり気絶した。


「あんた……ほんとにいいの?すこしは、懲らしめてやった方がいいんじゃない?」
 自分を殺しかけた相手を、宿屋まで連れていって、治療までするという、途方もないお人好しぶりに、あたしはめまいすら覚えた。
 あいつなら自分に害を加えようとした相手を、八つ裂きにだってしそうだわ。
 相変わらずの笑顔でどんな非道なことだってできるのよ。
 ……と。
 どうしても思考がそっちに向いてしまう自分に、あたしは内心舌打ちをした。
 ったく……。
「でも、ラーイさんも……自分なりの、正義をもって動いていたんですから……」
 困ったような表情で、でも、穏やかな微笑を浮かべて、ゼウスは答える。
「懲らしめるって言っても、リナさんたちによって、プライドずたずたでしょうから……これ以上はいいですよ」
 その声も、笑みも、すべて………本当に、あいつそのもので。
 あたしは錯覚しそうになって、……慌てて頭を振った。
「けどね!それだけじゃあ、あたしの気が晴れないわ」
「え!?」
 うろたえるゼウスに、あたしは、インク壺とペンをもち、にっこり笑ってウインクした。
 まぁ、どうせやるならあいつにやってやりたい気分なんだけど。
 代用に使うわよ、ラーイ君!
「やっぱり、溜飲は下げさせてもらうわ(はぁと)」


 ―――そして。
 あたしたちが宿屋を後にして、ラーイが目を覚まして……しばらくたって。
 彼の絶叫がこだました。
「あんの性悪人間―――――ッ!」
 怒髪天を突く形相の彼の端正な顔には……なんともユニークないたずら書きがあったのである――……。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 短すぎ……他に切るところがなかったんですの。
 ……しかし、我に返るとゼウスって……冗談のような名前ですわね……。
 これでも、ギリシャ神話、好きなんですけれど。



トップに戻る
6742過去の末裔(4)庵 瑠嬌 5/5-14:44
記事番号6741へのコメント


 過去の末裔(4)

 トゥイルーシティについた時点で、依頼は終了である。
「本当に、ありがとうございました」
 頭を下げるゼウスに、あたしは報酬を受け取ったほくほく笑顔で答えた。
「いいのよ、仕事だったんだし――これだけ受け取ったんだしね」
 ああ、これでこの傍迷惑な顔ともお別れだわ。
 ゼウス本人のことは、決して嫌いではないのだが、あまり側にいたくなかったので、あたしはかなりほっとしつつ、手をふった。
「じゃあ、おじいさんの遺言、ちゃんと村まで持ち帰られるといいわね」
「はい。きっと、もう……大丈夫です。ほんとうにありがとうございました。……さようなら」
 そして、背中を向けて去っていったゼウスをしばらく見送って、あたしはくるりと方向転換した。
「さて、報酬もたっぷり手に入ったんだし、美味しいもんでもたくさん食べましょうか!」
「賛成!」
 そして、あたしたちが定食屋に向かう――と。
「ああ、無事依頼が果たせたんですね。よかったですねー」
 にこにこ、機嫌のよい声。―――あたしは硬直した。
 ぎ、ぎぎぎ……と、不自然に振り返る。
 あ…あ……やっぱりぃっ……。本人―――っ!
「ゼウスさん……でしたっけ?名前もよく似てるんですねぇ」
 ゼウスも、あまり得意じゃなかったけど、本人は、もっと苦手なのよぉぉぉっ!!
「お食事、ご一緒させて下さいね」
 にっこり微笑むスットコ神官にあたしは頭痛を覚えた。


「いやあ、あれからずっと考えていたんですけどね」
 砕氷船のごとき勢いでテーブルの上の料理を片づけるあたしたちに、ゼロスはのんびりとしたようすで、しかし自分の分はしっかりあたしたちから隔離させつつ、口を開いた。
「あのゼウスさん。思い出したら、あの人本人は知らないんですけど、そのひいおじいさんと面識があったんですよ……」 
「………………」
 休まず食べ続けつつ、ゼロスの話を聞きながら、あたしはなんとなく嫌な予感を覚えていた。
 彼のひいおじいさんって、確か降魔戦争で――。
「降魔戦争のとき、僕は主に竜族を相手にしてたんですけど、エルフ族とも戦ったんですよ」
 昔話を語るときのような、どこか他人事のような口調で、ゼロスは続ける。
「その時に、一人まぁ、強い方がいらっしゃいましてねぇ。もちろん、僕が勝ったんですけど、でも、エルフにしては、本当に素晴らしい力だったんですよ」
 しみじみとした声音が混じる。
「僕はすっかり感心してしまいましてね。彼の姿を戴くことにしたんです」
 いきなし理解できなくなった。
「なにそれ」
 食べる手も止めて尋ねたあたしに、ゼロスは笑顔で答える。
「その当時、僕は今と全然違う姿だったんですよ」
 つまり、ゼロスがゼロスの顔してなかった頃ってこと……?
 魔族は、精神生命体だから、姿を自分の好きなように変えられる……だから……。
「そろそろあの姿にも飽きてましたからねぇ、ちょっと気分変える意味でも」
「じゃあ、そのゼウスのひいおじいさんの姿を真似たって事!?」
「真似ただなんて中途半端な。面白そうに思って、声音や口調、雰囲気もうつしましたよ。ゼウスさんはひいおじいさんによく似てらっしゃるんですねぇー、覇気はひいおじいさんの方がありましたけど」
「…………じゃあ。じゃあ、ゼウスのおじいさんが残した遺言って、秘密って」
 思わずかすれる声……ゼロスは頓着せずに明るく笑った。
「たぶんそのことでしょうねぇー」
 冗……談!
「あんたが……ゼウスの前に姿現さなくって………本気で助かったわ………」
 真剣にあたしはつぶやいた。
 もしゼロスを見かけた後に遺言の中身を知ったなら、ややこしいことになっていたに違いない。
 しかも、そんなのとあたしが親しくしているのを見たとしたら―――。
「――――ゼロス」
 静かにあたしはゼロスを見つめた。
「お願いだから、当分あたしの前に出てこないでくれる……?」
「………なぜです?」
「予想つくでしょ!?」
「それについては………」
 ゼロスはさらりと微笑む。
「交渉の余地がありそうですね」
「ゼロッ………」
 すいっと視線をテーブルに流して、彼はぽそりと声をもらした。
「…………残り少ないですね」
 はっ。
「ガウリイ―――っ!ああああっ、あたしの分まで取ったわねぇぇっ!?」
「ぼんやり話してるからだろっ―――!」
「ええいっ、許さないわよ、昼食セットAと軽食Bの恨み、晴らしてくれるっ!」
 ガウリイのロースト・チキンを半分奪い取り、あたしは続けざまにサラダを―――
 ガキンッ!
「そうやすやすと取られるかっ!」
「んっふっふっふ……いい根性してんじゃない」
 そして、戦闘は再開されたのであった。

◆◆◆◆◆◆◆◆

 やっとゼロスさんでてきてくれた………次は唯一かもしれない甘々場面!
 そこだけでも読んでやって下さいませ……。


トップに戻る
6743過去の末裔(5)庵 瑠嬌 5/5-14:45
記事番号6742へのコメント


 過去の末裔(5)


 窓から入り込んでくる風が気持ちよかった。
 乱れる髪を撫でつけて、ぼんやりあたしは天空に浮かぶ月を見上げる。
 三日月―――深い紫紺の闇。儚げに瞬く星に囲まれて、冴え冴えと冷ややかな銀色に光を放って………。
「お月見ですか?」
「………普通は満月の日にやるもんだけどね」
 振り返った。
 やや薄暗い部屋の中に、ゼロスが立っている。
「結構……いい月じゃない?」
 我ながら突然の訪問者にも慣れてきたなぁ……などと思いつつ、あたしはゼロスを見やった。
「ちょっと冷たい感じで……悪くないわ」
「………そうですか」
 彼は小さく笑った。
 ゆっくりと歩んで来る……。
 ……………っ……。
 言い様のない感覚に縛られて、あたしは身体をかたくした。
「でもね、リナさん……」
 近づいてくるゼロス……影で目の前が翳る。
 息を詰めて、あたしは彼を見上げた。
 頭の上をゼロスの腕が通り過ぎる。
 あたしの後ろにある窓を閉めた。
「あまり窓を開けっ放しでいると、風邪を引いてしまいますよ?」
「………そんなヤワじゃないわよっ」
 一瞬でも、怯えのようなものを覚えてしまった事が腹立たしくて、あたしはわざとつんっと答えた。
「おや……リナさんは、こんなに華奢で」
 上から頭ごと抱きすくめられた。
「ゼッ……ゼロッ……」
「ちょっと力を込めたら、すぐに壊れそうなのに……?」
 ―――暗転。
 視界に色彩が散って、あたしははた、と気づくと上からの重みごと仰向けに寝台に横たわっていた。
 空間を渡った……?なんで!
「どうでしたっけねぇ……あのゼウスさんが落ちてきたときの様子」
 なんの話をしてるのかわからなかった。
「ゼロス、重いっ……どいて!」
「リナさんの頭がこの辺にあって、肩が……」
 思い出させるようにつぶやきながら、言葉通りに体勢を作っていく。
 どんどんと身体が動きにくくなって、あたしはゼロスの下でもがいた。
「ゼッ……ゼウスはっ、不慮の事故でしょ!?あんたみたいなわけのわかんな……」
「不慮の事故?」
 あたしのやや左に伏せられたゼロスの顔から、皮肉るような声が聞こえた。
 表情が、見えない。
「事故なのか……それとも故意か。それは、受け取り方によるでしょう……」
 不意に、胸の辺りの圧迫感が消える。
 ゼロスの顔で、目の前が暗くなる。両手を、あたしの肩を挟むように置いて、常はすぼめられた切れ長の瞳が、すっと開いた。
 息を呑んで至近距離のゼロスの顔を見つめるあたしに、小さく笑ってみせる。
 ―――――動けない――――
 金縛りにあったように、身体が動かなかった。すっかりうろたえて、思考が混乱を来している。
 ゆっくりと、ゼロスの顔が降りてくる。首筋に彼の唇が触れる―――。
 あたしはぎゅっと目をつむった。
 ―――そして。
「………わかりました。当分、あなたの前に姿を現しません―――」
 耳元に吐息混じりの声。そして続けてささやかれる言葉………。
 それを最後に、唐突にゼロスの気配はふっつりと消えた。
「ゼロ……ス……?」
 弾かれたように体を起こして、あたしは周りを見渡した。
 もう、ゼロスの姿はどこにもなくて、先程まで居たのが嘘みたいで。
 でも、窓は閉められているし、身体には……まだ、ゼロスの感触が残っていた。
「…………いったい………」
 口の中でつぶやいてはっと気づき、あたしは、急に機嫌が降下していった。
 最後に奴が抜かしたこと。
『これだけ極上の感情をもらったんですし……』
 ………………………………。
 ―――勝手に人を、食料供給源にするなあああっ!

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 そこまでやってしまっていいのか庵。今までの分を取り返そうと思ったら……この始末。
 わたくしはまだ中学生………なのに押し倒しネタなんてっ!(泣)
 ああ、そこのお方、退かないでぇぇぇっ!

トップに戻る
6744過去の末裔(6)庵 瑠嬌 5/5-14:46
記事番号6743へのコメント


 過去の末裔(6)


 翌日。
 あたしたちは町を出発して、街道を歩いていた。
「あっ。リナさんじゃないですかぁっ!」
 不意にかけられた声に、あたしはぶち切れそうになった。
 当分姿見せるなって言った筈―――!
「って……なんだ、ゼウスじゃない」
 こんな素直な表情を、あいつが見せるわけがない。
「はい、遺言状を受け取って村に帰る途中なんです!」
「―――で、遺言状の中身はどうだったの?」
 ……まぁ、ここにゼロスは居ないわけだし、そんな神経とがらす事もないんだけど………。
 ゼウスの表情が曇った。
「それが……古代エルフ文字で読めないんですよ……あっ、リナさん読めます!?」
 ………あ……あたしが読むのか!?
 この天才にして最強の美少女魔道士にとっちゃ、古代エルフ文字の解読なんて軽いもんだけど……。
「駄目ですか?」
 しゅんっとしぼむゼウス。
 ………かわいいっ。ゼロスの顔でも、こういう表情をすればかわいいわっ!
「わかったわ。読んであげる」
「ありがとうございます!」
 ゼウスの顔がパッと明るくなる。
 ―――分かり易い感情表現してるわねーほんと。
 見習わせたいわ。
 心の中でつぶやきつつ、あたしは手を出した。
「じゃ、その遺言状ってのを見せて頂戴」
「あ、はいっ」
 ごそごそと取りだして、あたしに渡そうとして……彼は動きを止めた。
「………でも、遺言状の内容を知っている人は、なるべく最小限にして欲しいんです……」
「ああ……ガウリイね。ガウリイ、悪いけどしばらくちょっと、どっか行っててくれる?」
 ぼけーっとあたしたちを見ていたガウリイは、自分を指して戸惑ったような表情をした。
「オレがか?」
「あっ、ガウリイさんが居なくなることありませんよ。街道には他の旅人さんも通るでしょうし……。あそこの道に外れた森の中ででも、リナさんに読んでいただければかまいません」
 慌てたようなゼウスの声に、あたしは軽く笑った。
「じゃ、あたしたちがちょっと場を外しましょうか」


 古代エルフ文字……最近では、この文字が使われていた頃の、遺跡も大体掘り尽くされて、解明され尽くしていて、昔ならともかく、今はたいして役に立つ言語ではない。
 しかし、一時期古代文字の解読に情熱を燃やしたあたしは、当然、この文字のことも知っていた。
「解読のしかた、忘れてないだろうけど……とりあえず、なかみ見せて」
「はい」
 素直にこっくり頷いて、ゼウスが遺言状を渡そうとしたその瞬間!
「―――――ッ!!」
 右足になんとも言えない激痛が走った!
「ゼッ……ゼウス!?」
 唐突に、術を放ってきたゼウスに、声に動揺が滲む。
「当分、動けませんね」
 淡々とつぶやくゼウス……あたしは既視感を覚えてぞっとした。
 ―――ゼロスが敵に対して容赦なく接するとき……あいつはこういう酷薄な表情をする!
「呪文も、唱えられません」
 冷ややかに、物事を確認する口調で言って、ゼウスは口の端を歪めた。
「お人好しですねリナさん。エルフの村の長老の孫ともあろうものが、古代エルフ文字ごとき、読めないわけがないじゃないですか」
「内容を……読んだのっ……!」
「ええ読みましたよ。僕の曾祖父の姿を、魔族が写し取ったことを……その姿が、僕によく似ていると言うこともね!」
 あたしは痛みに耐えつつまた口を開いた。
「あたしには関係ないじゃないっ……!」
「ありますとも!」
 激しくゼウスは言葉を返した。
「僕が見てないとでも思ったんですか?昨日の宿屋の食堂で……僕とまったく同じ顔をした男と一緒にいたじゃないですか!」
 しまった―――!
「馬鹿にしないで下さい。単なる他人の空似だと思うほど、僕は単純ではないです」
 冷徹に告げる彼の表情………。
 『故人の意思を尊重します』『これ以上は……いいですよ』
 おじいさんの遺言状について話したときの、自分を狙ってきたラーイを許したときの、あの微笑みとはまったく違う鋭利な表情。
「でも、だからってどうしてあたしを狙うの!」
「……だって、あなたはあの魔族……獣神官、ゼロス……の、新しい獲物でしょう?」
 抑揚のない声が問いかける。
「獲物を横取りされたら、なにか反応を起こすでしょう……」
「あんたっ……何考えてんのっ……!」
 ゼロスのことを甘く見ている。何を考えているのか。……あいつは。あの男は………っ!
「挑発して、喧嘩売って、無事で済むと思ってんの!?ゼロスは刃向かうものには容赦しないわ。しかもあいつは強い―――エルフの力じゃ勝てっこないわ!それに――」
 何を必死で訴えてるのか、誰の為ともわからず、あたしは叫んだ。
「あんたのとても強かったって言うひいおじいさんも、あいつに殺されたのよ!?」
「僕は曾祖父よりも強いですよ」
 つぶやくゼウス……あたしは気づいた。
 彼を取り巻く闘気……。
 凍りつくような。凍りつくような闘気。少しも絶えさせることなく!
 一種、魔族にも通じる気配。瘴気というわけではない。けれど、この世に存在するものとして、どうしても違和感を拭えない。
 ―――この男はいったい何―――!?
「……?」
 はっ、と気づいた。こんな異様な気配、ガウリイが悟らないはずがない。
 感じたら、すぐに来てくれる筈。彼は裏切らない、あたしを置いて逃げない人だから。
 でも、ガウリイはこない―――
「あの男だったら閉じこめましたよ」
 あたしの表情を読んだかゼウスは告げる。
「眠りの世界――どんなに強靱な精神の持ち主でも、眠りから身を守ることはできません」
 ―――決して逃げられない、夢の迷宮……閉じこめられたら、もう二度と目覚めない。
「……………!」
 体が熱くなってきた。燃えるような怒りに、熱いものがこみ上げる。
「あ………ん…た…………!」
 怒りに痛みも忘れた。気づいたら呪を唱えていた。
「ドラグ・ス……!」
 どぉぉぉんっ!!
 ゼウスの掌から光弾が放たれた、呪文障壁も突き破って、衝撃が伝わる。
「うっ………!」
 後ろの樹木に叩きつけられて一瞬、息が詰まる。衝撃によって勝手にでてきた涙で曇る目で、あたしは中途半端に解放された術の残滓を追った。
 他愛もなくゼウスがそれすらも消し去る。
「……油断も隙もない人ですね……しかし、あなたをいたぶるだけでは、ゼロスはどうする気もないようです………。しかたがない」
 その声に宿る響きはやけに残酷だった。胸の中がざわめく、身体が強ばるほどの危機感。
 衝撃と傷で痛む身体で、あたしは顔を上げた。無事な方の左足を軸に、立ち上がろう……と。
「ファイヤー・ボール」
 ゼウスのはなった術が迫る。避けられるタイミングではない。まずい、駄目。嫌……!
 やられる―――!
 ………覚悟していた衝撃はこなかった。
 ただ、もうもうと土煙が視界を覆う。
「まったく………人が黙っていれば勝手なことを………」
 不機嫌そうな声。いったい誰なのか、声だけでもよくわかる。
「おまえがゼロス………!」
「ええ、そうですよゼウスさん」
 素っ気ない口調で、あっさりとゼウスの術を消し去ったゼロスは言い切った。


トップに戻る
6745過去の末裔(終)庵 瑠嬌 5/5-14:47
記事番号6744へのコメント


 とうとう、ここで終わりですわ!
 ああ、ここまで読んで下さったなんて、あなたは、なんて寛大で善良なお方。
 頼み事をされると断りきれずに引き受けてしまうタイプですわね(汗)
 ありがとうございます!

◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 過去の末裔(終)


「こちらが我慢していれば、ずいぶんと無法な真似をしてくれましたね」
 ご機嫌斜めなゼロスは錫杖を構えた。
「リナさんは僕のものです。勝手に傷つけ、殺そうなど………」
 錫杖に埋め込まれている石が紅く光る。
「心外極まりない!」
 ヴンッ!
 異質な爆音。風が巻き起こった、傷ついた腕であたしは顔をかばう。拍子にバランスをくずし、足を崩す。
「リナさん――後で治して差し上げますね……」
 振り向かないゼロスの背中が告げる言葉。あたしはしかたなしにその場に座り込んだ。
 今のあたしは足手まといにしかならないし……もともとゼロスに助力など必要ないだろう。
「本当に……あなたのひいおじいさんの方がよっぽど強かったですよ……存在感からして違いますね」
 ゼロスの放った力を防ぎきったらしいゼウスに、しかしゼロスは嘲笑混じりに語りかける。
「魔力は確かにあなたの方が上かもしれませんが………」
 ゼウスが黒い光弾を放つ……あっさりと吹き散らすゼロス。
「それを使いこなす器量も、精神力もない!」
 どぅんっ!!
 二度目のゼロスの攻撃――今度は防ぎきれなかったらしい。ゼウスの身体が吹き飛ぶ!
「そんな力で僕と張り合おうなんて……」
 くつ……と、おかしげに喉が鳴った。
「笑っちゃいますねぇ……」
 ぞぶっ!
 ゼウスの身体を、黒い刃が貫いた………。


「まったく、ひどい目にあったもんだわ―――」
 ゼロスに怪我を治してもらい、あたしはぱんぱんと埃を払いながら立ち上がった。
「……ガウリイは?」
「夢から覚ますことはしましたよ。ただ、まだのんびり熟睡してるかもしれませんが……」
 ならばよし。
 だけど………
「なんで、ゼウスはあんたに喧嘩ふっかけようなんて思ったんだろう……?」
「ああ、それなら簡単ですよ」
 にっこりと、ゼロスは笑った。
「僕、ここ千年ばかり、ずっとこの姿で仕事してまして。で、この姿でけっこうな方々を破滅に追いやってるんですよね」
「ふ、ふぅーん………」
「で、あのゼウスさんの一族は、ときどき村をでてどこかに行くと、僕と間違えられて殺されかけたり、そうはならなくても、魔族呼ばわりされるわけで……」
 ……………あう……。
「ぜ、ゼロス、ちょっと、もう、大体わかったから、それくらいで……」
「エルフの尊厳を汚されて、屈辱ばっかりうけてきて……ひねてしまったんでしょうねぇ、しかも、ゼウスさんもけっこうな年でしたから。嫌な経験ならたくさんあったでしょう」
 そう――か……考えてみりゃ、人間に比べてエルフは成長が遅いから……。
「五十は過ぎてたでしょうからねぇ……」
 うううぅぅぅ……そんなに長いこと魔族呼ばわりされてたら、短絡的になっても、しょうがないか……!?
 こっちの方はえらい迷惑だけど。
「まぁ、本当にリナさんにはすみませんでした」
「………もう、いいわよ」
 気にしてちゃ始まらないし。何より、いちいち気にしてらんないし……。
「おや」
 ゼロスは不意に空に浮かび上がった。
「どうやら、獣王さまからお呼び出しのようです……もっと側にいたかったんですが、上司命令は絶対なので……ちょっと失礼しますね♪」
「え!?ちょっと、ゼロス……!」
「安心して下さい、僕はリナさん一筋ですから……浮気なんてしませんよ(はぁと)」
 一方的な言葉と共に、いきなり消え去るゼロス。おもわず動揺して、……苦笑が浮かんだ。
「ったく……」
 ゼロスは魔族、あたしは人間。
 これはどうしようもない事実で、変えられない現実で。
 でも、どうすることも変えることもできないなら……やっぱりそれを受け入れていくしか……ないのよね。
 軽くため息をついて空を見上げる。
 なんとなく、青い空に混ざる黒い影を、時々は探してみる気分になった………

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 ………以上でした。
 わたくしのオリキャラに対する仕打ちは、大抵冷たいようですわね……。
 そんなことより、甘くなくてすみません……!わたくしが人並み程度にかけるのは、らぶらぶだけなんですのねっ!
 テンポも悪くて、なにかぎこちない展開で、すみませんでした。
 ………甘いのを連続で書くと、反動でこういうのが書きたくなってしまうんですのっ!
 しかし、この後に、れっきとした甘々が載せてありますので、それも読んでいただければ嬉しい。
 それから、こんな代物でも最後まで読んで下さったあなた……感想……ねだっては駄目でしょうか。
 読んで下さった方が、ちゃんといるか……とても不安なんですの。これには全面的に自信がない……。
 では、ここまで読んで下さった方に、心底感謝を込めて………
                                  ―――真剣に怖がっている庵 瑠嬌でした―――

トップに戻る
6749Re:過去の末裔E-mail 5/5-19:06
記事番号6745へのコメント

庵 瑠嬌さんは No.6745「過去の末裔(終)」で書きました。
>
>
> とうとう、ここで終わりですわ!
こんにちわ〜。
彩で〜す!!

> 頼み事をされると断りきれずに引き受けてしまうタイプですわね(汗)
> ありがとうございます!
はいっ!!そうかも………、
っと言う冗談はおいといていっきに読んでしまいました〜。

>「こちらが我慢していれば、ずいぶんと無法な真似をしてくれましたね」
> ご機嫌斜めなゼロスは錫杖を構えた。
>「リナさんは僕のものです。勝手に傷つけ、殺そうなど………」
> 錫杖に埋め込まれている石が紅く光る。
>「心外極まりない!」
> ヴンッ!
> 異質な爆音。風が巻き起こった、傷ついた腕であたしは顔をかばう。拍子にバランスをくずし、足を崩す。
かっこいい〜!
僕のもの!ああっ!!(遠い世界へ)

>「そんな力で僕と張り合おうなんて……」
> くつ……と、おかしげに喉が鳴った。
>「笑っちゃいますねぇ……」
> ぞぶっ!
> ゼウスの身体を、黒い刃が貫いた………。
うわ〜、魔族です〜う。
って言うかゼウス何か言う前に………。
TVのゼロスなんとなくやられ役やってましたから
ほんとは強いのよ〜っていうのがすんっごく見たかったんです〜。

>「……ガウリイは?」
>「夢から覚ますことはしましたよ。ただ、まだのんびり熟睡してるかもしれませんが……」
> ならばよし。
ガウリイなんか蚊屋の外?

>「どうやら、獣王さまからお呼び出しのようです……もっと側にいたかったんですが、上司命令は絶対なので……ちょっと失礼しますね♪」
なぜか楽しそうな♪に目が………。

>「え!?ちょっと、ゼロス……!」
>「安心して下さい、僕はリナさん一筋ですから……浮気なんてしませんよ(はぁと)」
うわ〜い!ひ・と・す・じなんですね〜。(謎)

> そんなことより、甘くなくてすみません……!わたくしが人並み程度にかけるのは、らぶらぶだけなんですのねっ!
らぶらぶ……ふふふっ。
だーいじょうぶです!!
5はすんごく甘かったですし!!
押し倒しですよ〜。(笑)
(って子供の私がこんなこと……)

> しかし、この後に、れっきとした甘々が載せてありますので、それも読んでいただければ嬉しい。
そちらはまだ読んでないので
これから読みます!たぶんレスもつけます!!

> それから、こんな代物でも最後まで読んで下さったあなた……感想……ねだっては駄目でしょうか。
> 読んで下さった方が、ちゃんといるか……とても不安なんですの。これには全面的に自信がない……。
ええっ!!
自信もたなくっちゃ!!です!
もう〜ビバゼロリナってかんじです!!(なんだそれは)

それでわ〜。

トップに戻る
6753ありがとうございます……本当に。庵 瑠嬌 5/6-13:42
記事番号6749へのコメント


>>
>> とうとう、ここで終わりですわ!
>こんにちわ〜。
>彩で〜す!!

 こんにちは……ありがとうございます。
 ああ……嬉しいですわ……。
 もうわたくしは石川県に足を向けて、眠れません……。

>> 頼み事をされると断りきれずに引き受けてしまうタイプですわね(汗)
>> ありがとうございます!
>はいっ!!そうかも………、
>っと言う冗談はおいといていっきに読んでしまいました〜。

 冗談ではなさそうですけど……(笑)
 ほぼ全域に渡って、必死にお願いしておりましたからねぇ……わたくし。

>
>>「こちらが我慢していれば、ずいぶんと無法な真似をしてくれましたね」
>> ご機嫌斜めなゼロスは錫杖を構えた。
>>「リナさんは僕のものです。勝手に傷つけ、殺そうなど………」
>> 錫杖に埋め込まれている石が紅く光る。
>>「心外極まりない!」
>> ヴンッ!
>> 異質な爆音。風が巻き起こった、傷ついた腕であたしは顔をかばう。拍子にバランスをくずし、足を崩す。
>かっこいい〜!
>僕のもの!ああっ!!(遠い世界へ)

 さらり、といわせたかったのですが。
 なぜか、このとき、ゼロスさん、異様に不機嫌でした。
 ……怒るくらいなら、さっさと助ければよろしいものを……(それを言ってはおしまい)

>
>>「そんな力で僕と張り合おうなんて……」
>> くつ……と、おかしげに喉が鳴った。
>>「笑っちゃいますねぇ……」
>> ぞぶっ!
>> ゼウスの身体を、黒い刃が貫いた………。
>うわ〜、魔族です〜う。
>って言うかゼウス何か言う前に………。
>TVのゼロスなんとなくやられ役やってましたから
>ほんとは強いのよ〜っていうのがすんっごく見たかったんです〜。

 ゼウスさんはやられ役。何も申す必要はありませんわ!
 ……同じ顔同士で戦って、片方が圧倒的な力でねじ伏せるって……ぞくぞくしません?
 ほとんど同じ顔した、一つ下の妹がいるからかしら……危険思想危険思想(?)
 強いゼロスさんって、好きです(はぁと)
 
>
>>「……ガウリイは?」
>>「夢から覚ますことはしましたよ。ただ、まだのんびり熟睡してるかもしれませんが……」
>> ならばよし。
>ガウリイなんか蚊屋の外?

 書けないんですの――っ!
 絶対に別人になるのを確信しておりますので、とてもとても……書けやしませんわ。


>>「どうやら、獣王さまからお呼び出しのようです……もっと側にいたかったんですが、上司命令は絶対なので……ちょっと失礼しますね♪」
>なぜか楽しそうな♪に目が………。

 ゼウスさん殺して、さっぱりストレス解消したんでしょう……。
 リナさんに恩も売れて(もともとはゼロスさんのせいですが)、悪くないかなぁ……と、言うことで(笑)。
 下手に言及される前に、逃げ出せそうですし。

>
>>「え!?ちょっと、ゼロス……!」
>>「安心して下さい、僕はリナさん一筋ですから……浮気なんてしませんよ(はぁと)」
>うわ〜い!ひ・と・す・じなんですね〜。(謎)

 はぁ〜い!ひ・と・す・じっ(はぁと)でございます〜♪(謎)
 ……でも、こっそり、浮気しそうなタイプでもありますわね……って、某HPでそういう話を読んだからかしら??


>> そんなことより、甘くなくてすみません……!わたくしが人並み程度にかけるのは、らぶらぶだけなんですのねっ!
>らぶらぶ……ふふふっ。
>だーいじょうぶです!!
>5はすんごく甘かったですし!!
>押し倒しですよ〜。(笑)
>(って子供の私がこんなこと……)

 はぁい、押し倒しですの〜。
 少年法で守られている分際で、あんなの書いていいのかしら……?とも思いましたけど……このくらい、しなければ釣り合いが取れませんわっ!!


>
>> しかし、この後に、れっきとした甘々が載せてありますので、それも読んでいただければ嬉しい。
>そちらはまだ読んでないので
>これから読みます!たぶんレスもつけます!!

 ありがとうございます……ああ、彩大明神様、と言った気分ですわね。
 将来大物になれますわよっ!わけへだてなく愛をそそぐ、慈愛の女神としてっ!


>> それから、こんな代物でも最後まで読んで下さったあなた……感想……ねだっては駄目でしょうか。
>> 読んで下さった方が、ちゃんといるか……とても不安なんですの。これには全面的に自信がない……。
>ええっ!!
>自信もたなくっちゃ!!です!
>もう〜ビバゼロリナってかんじです!!(なんだそれは)

 びば?
 ……とにかくっ、一人の方には読んでいただけたと言うことでっ!
 ほっと一安心……しかも、こんなに長いのを……。感謝、ですわ。

>
>それでわ〜。

 ありがとうございました……彩さんも、頑張ってください……ね☆


トップに戻る
6746あなたに逢ったら庵 瑠嬌 5/5-14:50
記事番号6739へのコメント


 これはゼロリナです。胸張って言えますわ、ゼロリナです。
 前に載せてあるのが、ほとんど甘いところがなかったので、これは全面的に甘くなりました。
 ……お話の方向性はほとんど反動で決まるようです……。
 どうしましょう、また次も甘くないのをえんえんと書かないと、甘々書けないのかしら……。
 わたくしは、ゼロリナならなんでも書いていて楽しいのですけれど……ゼロリナならすべて楽しんでもらえるというわけではないでしょうし………(悶々)。
 …………それではどうぞ…………例によって例の如く、題名は意味不明です……。

ψψψψψψψψψψψ

 あなたに逢ったら


 ふわふわとした、淡い輪郭。
 どこか夢の世界のように、曖昧でつかみ所のない……。
「……ゼロス?」
 大好きな魔族の名を呼んで、あたしは考え込んだ。
 ―――ここはどこ。
 乳白色の世界。柔らかい光に包まれて。それはこの世に生まれる前にいた所のような……
「ゼロス……」
 なんで彼の名を呼んでいるんだろう。
 一抹の疑問が横切る。が、次の瞬間にはまたつぶやいている。
「………ゼロス………」
 眠り込みたくなるような穏やかで暖かな世界。
 幸せだよって微笑んで、一人ぼっちの彼を抱きしめてあげたくなるような――……
「ゼロス」
 目の前を黒いマントが覆った。
「呼びましたか。リナさん」
「………呼んだ」
 計四回。
 自分で、どこかふわりとした気分で、あたしはまわりを見渡して口を開いた。
「ここ……どこ」
「アストラル・サイドですよ」
「………アストラル……」
 クレアバイブルのあったところ―――そこは、性質がアストラル・サイドによく似ているって、昔会った竜族の最長老が言っていた。
 でもここは……さらに、もっと、心に影響されるんだ。
「迷い込んでしまったんですね……」
 胸が痛くなるような優しい微笑みを浮かべて、ゼロスはあたしの頬にかかった髪をかき上げた。
「そんな……簡単にいけるの」
 ……アストラル・サイドって……。
「普通は無理なんですよ」
 ちょっといたずらっぽい目になって、ゼロスはあたしの額に指で触れた。
「でも、今……リナさんは魂だけ、身体から離れてここに来てるんです」
「………なんで?」
「何ででしょうねぇ……」
 小さい子供に語りかけるような口調で、どこか愛おしむような手つきで、頭ごとあたしを腕の中におさめる。
「ゼロス?」
「リナさんは……」
 その話し方、やめて。
 胸が痛くなる。苦しくなる。なんだか妙に切な、く…な……
「リナさんは特別ですから。きっとどこにでも行ける。なんだってできる。どんな願いだってかなえられるんです………」
「そんなことない」
 ゼロスの腕の中で、あたしは首を振った。
「あたしは、何よりずっと一生懸命願ってることを、かなえられてない………」
「いつか叶います」
 髪に埋まったゼロスの顔。ささやく声が変なふうに耳に届く。
「大丈夫です、僕が……かなえてみせます」
 ちがうっ………。
 何を言いたくなったのか分からない。
 ただあたしは、突き動かされるように顔を上げようとした。
 ゼロスの胸を突っぱねて、あたしを閉じこめる腕を払って。
「あたしは、かなえてもらうんじゃなくて、自分で、自分の力でっ……」
「ああ、リナさんはそういう人ですよね。他人の力なんて借りなくても、一人で……一人でも、願いを叶えられる………」
「そういうんじゃ……」
 そういうんじゃないっ……なんでわかんないの。
「ゼロスのばかばかばかばかっ」
「どうしたんです?リナさん……」
 確かに。
(変だ……あたし……)
 心が子供になってる。我慢できない。誤解もいや。嘘もいや。分かってもらえないなんていや……。
「これ以上ここにいては、身体と魂のつながりが薄くなってしまいますね」
 この上なく柔らかい声でささやいて、ゼロスはあたしの顔を上向けた。
 おでこに優しい口づけ。
「お還りなさい。リナさん………」
 ―――意識が奪われる。記憶が消えていく。
「ゼロスっ……」
 待って、ちゃんと言いたいことが……いつものあたしは、きっと言えないから………!

        ――――大好きですよ、リナさん――――

 大好きな声が、何より欲しい言葉をくれる。でも駄目。それはあたしがちゃんと、先に、先にいわなきゃって………。
「あたしだって、あたしだって…………!」
 あんたが好き―――!
 声にならなかった言葉。想いに潰されて、必死の告白は現実の虚空の狭間にすべり込んでいく。
 …………いいもん。
 拗ねてしまった心がつぶやいた。
(―――いつか、大声で言ってやるから)
 やっぱり子供。
 余裕を持って想いを告げられない自分に、気づいたら、口元には苦笑が浮かんでいた……。

        *                *

   「ねぇっ!ゼロスっ」
    ねえねえ……ゼロス? 
    言いたいことがあったのよ。ずっとずっと。いわなきゃって。
    下手に気負ってたのかまずかったのかなぁ………。
   「大好きだよ!」
    ほら、笑顔と一緒に送り出せば……こんなに簡単。
   「僕もですよ。リナさん」
    そう、あなたはいつだって、腕を広げて受け止めてくれるんだから―――

        *                *

『リナさん、気持ちよさそうに眠ってますね』
『ここまで幸せそうに寝坊してると……』
『なかなか起こしにくいな。……しばらく放っておこうか?』
『そうしましょう!』

 仲間たちが枕元でかわした、笑い混じりの暖かい会話を、眠るあたしは知らない――……

ττττττττττ

 以上でした。
 ……さて、唐突ですが、わたくしは『告白』が好きです。
 というより、大好き、と言う単語が好きなんですのね。幸せのイメージがあるからかしら。少女趣味と思われるでしょうが……(事実、少女ですし)
 自分がちゃんと言えなかったからか、特にリナさんとかゼロスさんに言わせるのは、とっても好きです。
 と、いうわけで、最後の方のリナさんの告白は、どうしてもっ!やりたかったためにやっただけであって、別に、本当はいらない場面なのです……。
 でも好きなんだもんっ!
 ……わたくしの無駄の多い文章の理由はこんなものなのでした……。
 それでは、意味不明の後記ですが。失礼をば……
                           ―――庵 瑠嬌でした――― 

トップに戻る
6750Re:あなたに逢ったらE-mail 5/5-19:18
記事番号6746へのコメント

甘いです!!
ええっ、もうそれはそれは甘いんです!!
リナちゃんかわいすぎ!!

> …………それではどうぞ…………例によって例の如く、題名は意味不明です……。
(……なんかばれちゃったみたいなので普通うに書きます!!)
私なんか題名ないんですよ!!(泣)

> ふわふわとした、淡い輪郭。
> どこか夢の世界のように、曖昧でつかみ所のない……。
ああっ、私には幻想的な表現はできない……。
かっこよすぎです!!

>「……ゼロス?」
> 大好きな魔族の名を呼んで、あたしは考え込んだ。
大好き……きゅわ〜。(誰か私の指をとめてください)


>   「大好きだよ!」
>    ほら、笑顔と一緒に送り出せば……こんなに簡単。
>   「僕もですよ。リナさん」
>    そう、あなたはいつだって、腕を広げて受け止めてくれるんだから―――
幸せそうです〜。
ああっ、甘い!

> ……さて、唐突ですが、わたくしは『告白』が好きです。
> というより、大好き、と言う単語が好きなんですのね。幸せのイメージがあるからかしら。少女趣味と思われるでしょうが……(事実、少女ですし)
告白……大好き少女趣味なんですか?
私もシュチュエーション的に大好きです!!
ドリームです〜。

> 自分がちゃんと言えなかったからか、特にリナさんとかゼロスさんに言わせるのは、とっても好きです。
ゼロスはあんがいさらっといえそうですよね?
リナはあんまりいってくれなさそうなのにこの作品ってば!!(謎)

> と、いうわけで、最後の方のリナさんの告白は、どうしてもっ!やりたかったためにやっただけであって、別に、本当はいらない場面なのです……。
> でも好きなんだもんっ!
そうです!!
好きならやっちゃえばいいです!!
いろいろと………(さらに謎)

> ……わたくしの無駄の多い文章の理由はこんなものなのでした……。
> それでは、意味不明の後記ですが。失礼をば……
無駄じゃありません!!
同じゼロリナなら見たいです!!(かってに……)
でわ、書くことはいっしょですが
次作楽しみにしてます!

トップに戻る
6754二つも……わざわざ……ありがたすぎます……っ!庵 瑠嬌 5/6-13:52
記事番号6750へのコメント


 ああああ……彩さん……わざわざ……ありがとうございます……!
 では!あふれる感謝の心のままに!

>
>甘いです!!
>ええっ、もうそれはそれは甘いんです!!
>リナちゃんかわいすぎ!!

 それは嬉しい……リナさんの性格が別人なような気もしてるんですが……(汗)

>
>> …………それではどうぞ…………例によって例の如く、題名は意味不明です……。
>(……なんかばれちゃったみたいなので普通うに書きます!!)
>私なんか題名ないんですよ!!(泣)

 全然、気にすることありませんよ!
 わたくし、一度題名『どうしましょう、題名が思い浮かびませんわ』
 という、本人大真面目でしたけど、今冷静に帰ると、ふざけてるとしか言いようの無い話、書きましたものっ!!
 しかも、彩さんみたいな立派なのじゃなくて、駄文駄作駄目駄目……なのを。

>
>> ふわふわとした、淡い輪郭。
>> どこか夢の世界のように、曖昧でつかみ所のない……。
>ああっ、私には幻想的な表現はできない……。
>かっこよすぎです!!

 幻想的……そうですか。
 嬉しいですわ……しかし、それは受け取る側の感性がずば抜けていたのでは……。

>
>>「……ゼロス?」
>> 大好きな魔族の名を呼んで、あたしは考え込んだ。
>大好き……きゅわ〜。(誰か私の指をとめてください)

 普通、こんな素直に言うわきゃ無いでしょうが……夢の世界みたいなものですから(はぁと)

>
>>   「大好きだよ!」
>>    ほら、笑顔と一緒に送り出せば……こんなに簡単。
>>   「僕もですよ。リナさん」
>>    そう、あなたはいつだって、腕を広げて受け止めてくれるんだから―――
>幸せそうです〜。
>ああっ、甘い!

 反動反動。
 前が甘くないと、次のは甘くなりますの。
 彩さん!幸せなのは、リナさんでもゼロスさんでもなく……実は、わたくしなのです……!

>
>> ……さて、唐突ですが、わたくしは『告白』が好きです。
>> というより、大好き、と言う単語が好きなんですのね。幸せのイメージがあるからかしら。少女趣味と思われるでしょうが……(事実、少女ですし)
>告白……大好き少女趣味なんですか?
>私もシュチュエーション的に大好きです!!
>ドリームです〜。

 夢ですわよねぇ……うっとりとしちゃいますわ。
 現実はそんな甘いものではないと知りながらも……(泣)。

>
>> 自分がちゃんと言えなかったからか、特にリナさんとかゼロスさんに言わせるのは、とっても好きです。
>ゼロスはあんがいさらっといえそうですよね?
>リナはあんまりいってくれなさそうなのにこの作品ってば!!(謎)

 だから、半ば眠ってるんですこのリナさんはっ!!
 幼児化しているので、思っていることも、素直に言える、と……
 それ言えば、ゼロスさんが、異様に優しいのが怖いですわね……

>
>> と、いうわけで、最後の方のリナさんの告白は、どうしてもっ!やりたかったためにやっただけであって、別に、本当はいらない場面なのです……。
>> でも好きなんだもんっ!
>そうです!!
>好きならやっちゃえばいいです!!
>いろいろと………(さらに謎)

 ……何を?(訊いちゃいけない)
 まぁ、どうせわたくしの作品は、趣味に凝り固まったものなんですし……
 そうですよねっ、彩さんが認めてくれるなら……言いことにしちゃいますわ(はぁと←死)


>> ……わたくしの無駄の多い文章の理由はこんなものなのでした……。
>> それでは、意味不明の後記ですが。失礼をば……
>無駄じゃありません!!
>同じゼロリナなら見たいです!!(かってに……)

 少なくとも、彩さんとわたくしの望むゼロリナの方向性が、良く似ていることは、解りましたわね……(勝手に同類扱いしちゃいけませんね^^;;)
  

>でわ、書くことはいっしょですが
>次作楽しみにしてます!

 はい、本当に、二つも、同時に、ありがとうございました! 


トップに戻る
6760Re:あなたに逢ったらLina E-mail 5/6-23:03
記事番号6746へのコメント

庵 瑠嬌さんは No.6746「あなたに逢ったら」で書きました。
>
>
> これはゼロリナです。胸張って言えますわ、ゼロリナです。
> 前に載せてあるのが、ほとんど甘いところがなかったので、これは全面的に甘くなりました。

それは、嬉しいですね♪

> ……お話の方向性はほとんど反動で決まるようです……。
> どうしましょう、また次も甘くないのをえんえんと書かないと、甘々書けないのかしら……。
> わたくしは、ゼロリナならなんでも書いていて楽しいのですけれど……ゼロリナならすべて楽しんでもらえるというわけではないでしょうし………(悶々)。

 私は、けっこうなんでも楽しいです。

> …………それではどうぞ…………例によって例の如く、題名は意味不明です……。
>
>ψψψψψψψψψψψ
>
> あなたに逢ったら
>
>
> ふわふわとした、淡い輪郭。
> どこか夢の世界のように、曖昧でつかみ所のない……。
>「……ゼロス?」
> 大好きな魔族の名を呼んで、あたしは考え込んだ。
 
  ↑ 大好きだなんてもぉ、リナちゃんってば最初から♪

> ―――ここはどこ。
> 乳白色の世界。柔らかい光に包まれて。それはこの世に生まれる前にいた所のような……
>「ゼロス……」
> なんで彼の名を呼んでいるんだろう。
> 一抹の疑問が横切る。が、次の瞬間にはまたつぶやいている。
>「………ゼロス………」
> 眠り込みたくなるような穏やかで暖かな世界。
> 幸せだよって微笑んで、一人ぼっちの彼を抱きしめてあげたくなるような――……
>「ゼロス」
> 目の前を黒いマントが覆った。
>「呼びましたか。リナさん」
>「………呼んだ」

      ↑それでも、いつものリナちゃんですね。

> 計四回。
> 自分で、どこかふわりとした気分で、あたしはまわりを見渡して口を開いた。
>「ここ……どこ」
>「アストラル・サイドですよ」
>「………アストラル……」
> クレアバイブルのあったところ―――そこは、性質がアストラル・サイドによく似ているって、昔会った竜族の最長老が言っていた。
> でもここは……さらに、もっと、心に影響されるんだ。
>「迷い込んでしまったんですね……」
> 胸が痛くなるような優しい微笑みを浮かべて、ゼロスはあたしの頬にかかった髪をかき上げた。

 はぅ。なんかいいです。

>「そんな……簡単にいけるの」
> ……アストラル・サイドって……。
>「普通は無理なんですよ」
> ちょっといたずらっぽい目になって、ゼロスはあたしの額に指で触れた。
>「でも、今……リナさんは魂だけ、身体から離れてここに来てるんです」
>「………なんで?」
>「何ででしょうねぇ……」
> 小さい子供に語りかけるような口調で、どこか愛おしむような手つきで、頭ごとあたしを腕の中におさめる。

 おぉ、甘々ですな。
 あたしには、とてもかけないィ…。

>「ゼロス?」
>「リナさんは……」
> その話し方、やめて。
> 胸が痛くなる。苦しくなる。なんだか妙に切な、く…な……
>「リナさんは特別ですから。きっとどこにでも行ける。なんだってできる。どんな願いだってかなえられるんです………」
>「そんなことない」
> ゼロスの腕の中で、あたしは首を振った。
>「あたしは、何よりずっと一生懸命願ってることを、かなえられてない………」

 何を、願っているのでしょうねぇ♪

>「いつか叶います」
> 髪に埋まったゼロスの顔。ささやく声が変なふうに耳に届く。
>「大丈夫です、僕が……かなえてみせます」
> ちがうっ………。
> 何を言いたくなったのか分からない。
> ただあたしは、突き動かされるように顔を上げようとした。
> ゼロスの胸を突っぱねて、あたしを閉じこめる腕を払って。
>「あたしは、かなえてもらうんじゃなくて、自分で、自分の力でっ……」
>「ああ、リナさんはそういう人ですよね。他人の力なんて借りなくても、一人で……一人でも、願いを叶えられる………」
>「そういうんじゃ……」
> そういうんじゃないっ……なんでわかんないの。
>「ゼロスのばかばかばかばかっ」
>「どうしたんです?リナさん……」
> 確かに。
>(変だ……あたし……)
> 心が子供になってる。我慢できない。誤解もいや。嘘もいや。分かってもらえないなんていや……。
>「これ以上ここにいては、身体と魂のつながりが薄くなってしまいますね」
> この上なく柔らかい声でささやいて、ゼロスはあたしの顔を上向けた。
> おでこに優しい口づけ。
>「お還りなさい。リナさん………」
> ―――意識が奪われる。記憶が消えていく。
>「ゼロスっ……」
> 待って、ちゃんと言いたいことが……いつものあたしは、きっと言えないから………!
>
>        ――――大好きですよ、リナさん――――
>
> 大好きな声が、何より欲しい言葉をくれる。でも駄目。それはあたしがちゃんと、先に、先にいわなきゃって………。
>「あたしだって、あたしだって…………!」
> あんたが好き―――!
> 声にならなかった言葉。想いに潰されて、必死の告白は現実の虚空の狭間にすべり込んでいく。
> …………いいもん。
> 拗ねてしまった心がつぶやいた。
>(―――いつか、大声で言ってやるから)
> やっぱり子供。
> 余裕を持って想いを告げられない自分に、気づいたら、口元には苦笑が浮かんでいた……。 
>
>        *                *
>
>   「ねぇっ!ゼロスっ」
>    ねえねえ……ゼロス? 
>    言いたいことがあったのよ。ずっとずっと。いわなきゃって。
>    下手に気負ってたのかまずかったのかなぁ………。
>   「大好きだよ!」
>    ほら、笑顔と一緒に送り出せば……こんなに簡単。
>   「僕もですよ。リナさん」
>    そう、あなたはいつだって、腕を広げて受け止めてくれるんだから―――
>
 なんか、リナちゃんがちっちゃい子供って感じに
 感じられますねェ…。

>        *                *
>
>『リナさん、気持ちよさそうに眠ってますね』
>『ここまで幸せそうに寝坊してると……』
>『なかなか起こしにくいな。……しばらく放っておこうか?』
>『そうしましょう!』
>
> 仲間たちが枕元でかわした、笑い混じりの暖かい会話を、眠るあたしは知らない――……
>

 知ったら後が恐そうな気が………。

>ττττττττττ
>
> 以上でした。
> ……さて、唐突ですが、わたくしは『告白』が好きです。
> というより、大好き、と言う単語が好きなんですのね。幸せのイメージがあるからかしら。少女趣味と思われるでしょうが……(事実、少女ですし)
> 自分がちゃんと言えなかったからか、特にリナさんとかゼロスさんに言わせるのは、とっても好きです。
> と、いうわけで、最後の方のリナさんの告白は、どうしてもっ!やりたかったためにやっただけであって、別に、本当はいらない場面なのです……。
> でも好きなんだもんっ!
> ……わたくしの無駄の多い文章の理由はこんなものなのでした……。
> それでは、意味不明の後記ですが。失礼をば……
>                           ―――庵 瑠嬌でした――― 
>
 あぅ〜。甘々!いいですねぇ〜。
 あたしもこーゆーものを書いてみたいです…。
 
       それでは、短くてすいませんがここらへんで………。

トップに戻る
6762……とっても甘いんですの(笑)庵 瑠嬌 5/7-15:53
記事番号6760へのコメント


 はじめまして。お初にお目にかかります。庵 瑠嬌でございます。
 ゼロリナもの中心に(というかそれ専門に)、駄文駄作を撒き散らしておるものでございます。
 これからよろしくお願いします(勝手に縁作り)。

>> これはゼロリナです。胸張って言えますわ、ゼロリナです。
>> 前に載せてあるのが、ほとんど甘いところがなかったので、これは全面的に甘くなりました。
>
> それは、嬉しいですね♪

 ……わたくしも読むならば、甘々のほうが、往々にして好みなのですが……。
 己の手が望むままに進むことは少ないらしく……時にはダークを書いているときもあります……それでも主な分野は甘々ですが。


>> ……お話の方向性はほとんど反動で決まるようです……。
>> どうしましょう、また次も甘くないのをえんえんと書かないと、甘々書けないのかしら……。
>> わたくしは、ゼロリナならなんでも書いていて楽しいのですけれど……ゼロリナならすべて楽しんでもらえるというわけではないでしょうし………(悶々)。
>
> 私は、けっこうなんでも楽しいです。

 そうおっしゃっていただけるとありがたい……。
 でも、なんでも楽しめた方が、人生明るそうなのは、間違いないと思いますし、こちらも嬉しいので、その精神でいてください……。


>> ふわふわとした、淡い輪郭。
>> どこか夢の世界のように、曖昧でつかみ所のない……。
>>「……ゼロス?」
>> 大好きな魔族の名を呼んで、あたしは考え込んだ。
> 
>  ↑ 大好きだなんてもぉ、リナちゃんってば最初から♪

 半ば眠ってるんです!普段の性格拭い去り、ただ、己の心を忠実に認めているだけですのっ!!
 ………最初から使いたかった言いまわしでもあります……『大好きな魔族』……あぅ……趣味だわ。


>>「ゼロス」
>> 目の前を黒いマントが覆った。
>>「呼びましたか。リナさん」
>>「………呼んだ」
>
>      ↑それでも、いつものリナちゃんですね。

 リナさんらしいですか?そう言う意味だと嬉しいのですけれど。
 『呼びました?』と聞かれたら、事実の通り『呼んだ』と答える……正直でしょう!?(笑)


>>「迷い込んでしまったんですね……」
>> 胸が痛くなるような優しい微笑みを浮かべて、ゼロスはあたしの頬にかかった髪をかき上げた。
>
> はぅ。なんかいいです。

 異様にゼロスさんが優しいのが怖いかしらぁ〜とも思うのですが、でも、まぁ、状況が状況で、普段と違いますから……それにやっぱり、目指せ甘々!ですし。

>>「………なんで?」
>>「何ででしょうねぇ……」
>> 小さい子供に語りかけるような口調で、どこか愛おしむような手つきで、頭ごとあたしを腕の中におさめる。
>
> おぉ、甘々ですな。
> あたしには、とてもかけないィ…。

 そんなことおっしゃらずに!
 そう言えば、Linaさんのお話を、わたくし知りませんわ!読んでみたいです!


>>「リナさんは特別ですから。きっとどこにでも行ける。なんだってできる。どんな願いだってかなえられるんです………」
>>「そんなことない」
>> ゼロスの腕の中で、あたしは首を振った。
>>「あたしは、何よりずっと一生懸命願ってることを、かなえられてない………」
>
> 何を、願っているのでしょうねぇ♪

 それは秘密です♪(死)
 ……それはともかく、彼女が願っているのは……。
 そこはそれ、女の子ですもの(はぁと)わかりますでしょ?


>> …………いいもん。
>> 拗ねてしまった心がつぶやいた。
>>(―――いつか、大声で言ってやるから)
>> やっぱり子供。
>> 余裕を持って想いを告げられない自分に、気づいたら、口元には苦笑が浮かんでいた……。 
>>
>>        *                *
>>
>>   「ねぇっ!ゼロスっ」
>>    ねえねえ……ゼロス? 
>>    言いたいことがあったのよ。ずっとずっと。いわなきゃって。
>>    下手に気負ってたのかまずかったのかなぁ………。
>>   「大好きだよ!」
>>    ほら、笑顔と一緒に送り出せば……こんなに簡単。
>>   「僕もですよ。リナさん」
>>    そう、あなたはいつだって、腕を広げて受け止めてくれるんだから―――
>>
> なんか、リナちゃんがちっちゃい子供って感じに
> 感じられますねェ…。

 このリナさんは、ほんーっのすこぉっしだけ!ちょっとだけですよ、それこそアリの触覚の先ほどだけ……わたくしに、似た部分が、あるかしらー……といった感がありますの。
 ……あまりの子供っぽさに、冷静に見てみると、どこか自分のような部分がないこともないことに気づいて、少し愕然としました(笑)。
 これで分かることといったら……まだまだ自分は子供だわ……ってことでしたね。

>
>>        *                *
>>
>>『リナさん、気持ちよさそうに眠ってますね』
>>『ここまで幸せそうに寝坊してると……』
>>『なかなか起こしにくいな。……しばらく放っておこうか?』
>>『そうしましょう!』
>>
>> 仲間たちが枕元でかわした、笑い混じりの暖かい会話を、眠るあたしは知らない――……
>>
>
> 知ったら後が恐そうな気が………。

 『なに好き勝手言ってんのよ――!?』って?
 その後、一撃必殺呪文連打の後、最強魔術、ドラグ・スレイブを――
 ……そこまでやるわきゃないでしょうけど(笑)。



>> ……わたくしの無駄の多い文章の理由はこんなものなのでした……。
>> それでは、意味不明の後記ですが。失礼をば……
>>                           ―――庵 瑠嬌でした――― 
>>
> あぅ〜。甘々!いいですねぇ〜。
> あたしもこーゆーものを書いてみたいです…。

 書いてみてください!なに、わたくし風情が書けるもの(本当に書けているのかは謎)が、ほかの方に書けないはずがありません!
 心を落ち着けて、妄想心を野放しにしてみて下さい?
 きっと、気がついたなら甘々が……(←ちょっと嫌かも)

> 
>       それでは、短くてすいませんがここらへんで………。

 いいえ!わざわざありがとうございました!
 また、機会がありましたら、読んでいただければ光栄ですわ。