◆−馳せる思い−絹糸(6/4-12:17)No.6967
 ┗Re:馳せる思い−なゆた(6/5-21:40)No.6981
  ┗Re:多謝!なゆたさん!−絹糸(6/7-22:54)No.7005


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6967馳せる思い絹糸 6/4-12:17



       
 新月の夜、木々が生い茂る森の中、交代で見張りをしながら野宿をしている四人がいた。
一番初めの見張りはリナだった。その理由は
『途中で起こされるがイヤだから』
だそうだ。彼女らしいと言えば彼女らしいが。
 その次がアメリア、次にゼルガディス、ガウリイと続く。焚き火を四方に囲んで時計回りに見張りをする形になってる。
 今、一人で起きているのはゼルガディスだ。
 ふと、ゼルガディスが自分の右を見る。そこにはゼルガディスの肩にもたれかかって眠っているアメリアがいた。
 そんなアメリアをちらりと見て、ゼルガディスはため息をついた。

 眠くないから話をしようと言い出したのはこいつなのに、すぐに眠るとはな。まあ、夜に強いほうではないようだからしかたがないが。
だが、こう、枕にされたんじゃあな。俺を枕にしても痛いだけだろうに。かと言って下手に動かして起こすわけにもいかんし・・・

 その無防備な寝顔にふと思う。

 俺を男として意識していないのか、それともそれほど信頼しているのか・・・。
男女の関係を知らないと言うことはないな。この間それを匂わせるようなことを言っていた。
 これが俺ではなくガウリイだったとして、それで危機感を抱かないというのはまだ納得がいくが。あいつが誰かに危害を加えるというのは想像しにくいからな。
 だが、俺を信じるというのは難しいだろうに。
 信じることを多く学び、疑うことを教えられなかったのだろうか?

 焚き火が爆ぜ、一瞬周りが明るさを増した。
 アメリアを見ていたゼルガディスの目に彼女の姿が鮮やかに映った。

 ―黒い髪に白い肌。かつて俺も持っていたもの。今、俺が最も欲するもの。こいつは当然のように持っている。
いや、当たり前か。間違ってるのは俺の方だからな。よほど数奇な運命でもないかぎり、自分の身体が変わることはない。
 失って初めて気づく。当然のようにあるものがどれだけ大切だったかを。
 手を伸ばせばいつだって届く距離だった。だが今はその距離は余りにも遠い。

 ふと、眠りにつく前にアメリアがした質問を思い出す。

『誰かと一緒に旅をしようとは思わないんですか?』
 彼女の言っていた旅とは俺の旅、つまり体を戻す方法を見つける旅のことだろう。でなければリナ達と旅をしている今そんな質問をするわけがない。
 誰かと、か・・・。そんなことは思わない。そう答えたが、聞こえたかどうか。気がつけばもう眠っていたからな。

 頭の中でアメリアの問いが再び響いた。

 俺が誰かと旅をすることを望んでも俺は実際にそれはしない。ありえないだろうが、逆に誰かが俺と旅をする事を望んだとしても俺はそれを断る。
 結果はどうあれ俺は自分で望んでこの体になった。自分のケリは自分でつける。誰かに手伝わせるつもりはない。
 一時ならまだしも、終わりまでずっとということはあり得ない。そんなことができるはずはないんだ。

 そこまで考えて、ゼルガディスは少し俯いた。

 かといって、独りがいいわけじゃない。独りでいたい訳じゃない。誰かにいてほしいと思うときはある。
 この体になってから、見る夢は悪夢だった。その夢は決まってレゾの問いかけから始まる。

『強くなりたいですか?』

 夢の中で、俺は首を縦に振ってしまう。まるで見えない手が頭を押さえつけるかのように。

 そして俺は合成獣になる。
 そして笑顔が消える。
 俺からも、周りからも、あのレゾからさえ。
 そして向けられる白い、冷たい目。
 誰も彼もが白い石をはめ込んだような目で俺を見、そして去っていく。
 気付ば俺は闇に取り残されている。
 そんな悪夢。

 この体になったばかりの頃、その夢に怯え、浅い眠りに恐怖し、眠らない日々が続いた。
夢を見ないほど深く眠るため、強い酒を何本も飲み、意識を失うことで夜を越えることもした。今思えばよく体がもったものだ。
 その夢を見なくなったのは仲間に出会ってから、ことに、リナ達と出会ってからは見ることがなくなった。
 だが、完全に見ないというわけじゃない。今でも時折見る。油断するのを待っているかのように。悪夢は忍び寄ってくる。
 そんなとき、願う。悪夢から目覚めたその時に誰かがいてくれることを。
 だがそれも、叶えられない。俺は、大切な者を側に置けない。

 ゼルガディスの脳裏に、リナ達と出会う前の、最初の仲間の顔が浮かんだ。

 ゾルフとロディマス。あの二人はあっけなく死んだ。レゾ=シャブラニグドゥが放った閃光によって。おれが殺したようなものだった。
あの二人は俺に忠誠を誓った。レゾという強大な力の持ち主がいたというのに。俺に忠誠を誓っていなければ、死んでいなかったのかはわからない。
だが、少なくとも生き延びる機会はあったかも知れない。
 俺に関わった最初の被害者。もう、あんな思いはたくさんだ。自分のせいで信じられる者が傷つくのはもうごめんだ。誰も傷つけたくはない。
 だから俺は他人と距離を置く。関わらなければ巻き込む心配はない。

 冷たい風が木々を揺らした。ゼルガディスは腕からアメリアの震えを感じた。自然にアメリアの身体に左手でマントをかけていた。
 マントを掛けると、一瞬寒さで強ばったアメリアの身体が柔らかくなった。ゼルガディスはその顔を見るが、アメリアが起きる様子は無い。

 そんな思いをこいつに言ったら、いい人だとでも思われるかも知れない。それはごめんだ。同情の目で見られるのかもしれない。そんなものはうっとうしい。
 こいつにも、誰にも話すつもりのない思いだがな。

 ゼルガディスはアメリアに視線を置いたまま思った。

 誰かと一生いたいと思うことはないだろうな。この身でその願いは叶えられない。
合成獣にされたときから俺は年をとっていない。全くというわけではないが、普通の人間とは進み具合が違う。
 共にいることを望む相手に出会ったら、俺はそいつから離れるだろう。 もっとも、それほど他人に入れ込まないようにはするが。
そいつの一生を縛るわけにはいかない。そいつにはそいつの生き方がある。そいつが生きている間に俺のからだを戻せる保証はどこにもない。

 そんなこと考えていると、かつてある魔導師に言われた言葉を思い出した。

『おぬしは合成獣になったことで、不老不死、と言うわけにはいかんが、それに近い状態になっておる。
 世の中には自ら望んでお主のようになる輩もおるじゃろう。おぬしはなぜそこまで人の身を願うのじゃ?』

 それに俺はこう応えた。

『俺は人としてこの世に生まれた。人として生を終えたい』

 それがたとえ戻って一日だけでも、そのあと死ぬ運命だとしても、おれは笑って死を迎えられるだろう。

 ゼルガディスは、一度外した視線を、またアメリアに移した。やはりすやすやと寝息をたてている。

 人の身に戻れた時、俺は何をしているだろう。
 こんな風に誰かを隣に座らせているだろうか。一生を共にしたいと願う相手がいるだろうか。そんなことが今わかるはずはない。
 だが、そうだな、人に戻れたときに何かを望むことができるなら、一つ、叶えたい願いがある。

 眠っている仲間の顔を順に見渡す。それぞれ、思い思いの寝息をたてている。

 もう一度、こいつらと巡り会いたい。

 今度は顔を隠すことなく、同じ時に、同じ道を、歩みたい。

 過度の期待はできない。期待が大きければ叶えられなかったときの絶望も大きくなるのだから。
 だが、この願いを持っていれば、独りの旅も耐えられる。そんな気がする。
 人として一生を送る以外の俺の願い。それを実現するために俺は旅をする。
 そして、必ず人に戻ってみせる。

 新たな決意を胸に納め、ゼルガディスは焚き火に目を落とした。炎が大分小さくなっている。
 左手で薪をくべる。薪を取るため体を動かしたときアメリアがずり落ちそうになり、それを右手で支えた。
 アメリアの顔を見る。初めと変わらない安心しきった顔。

 無邪気なもんだ。まだまだ子供だな。

 ゼルガディスはアメリアの肩を抱き、ずれたマントを腕の上から掛け直した。
「ん・・・」
 ガウリイが起きた。見張りの交代の時間になると自然に起き出すから不思議だ。
「起きたかガウリイ。交代してくれ、俺は寝る」
「ん、ああ・・・そのままで、か?」
 ゼルガディスは横を見た。そこには彼のマントと腕に抱かれたアメリアが今もなお眠っている。
「ああ」
 ゼルガディスは静かに答えた。その顔は少し笑っている。
「そっか・・・おやすみ」
「おやすみ」
 ゼルガディスは瞼を閉じた。

 目を閉じると、腕からアメリアの温もりがはっきりと伝わってくる。
 温かい。
 とうの昔に俺がなくしたもの。懐かしい、人の温もり。

 今夜は悪夢を見ないだろう。

               〜Fin〜

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初めまして、絹糸です。
いやぁ、けっこう前から書き殴りに投稿してみたいな〜。なんて思ってたんですよね。
んで、自分がゼルファンなもんだからやっぱり投稿するのもゼル物にしようと決めてまして。
それで考えた結果がこの『馳せる思い』
ほとんど、て言うか完璧にゼルの独り言と化してるし・・・。駄文だし・・・。恥ずい・・・。
こんな超初心者な自分の作品でも読んで下されば感激です!
ゼル物まだ温めてるもの幾つかあるんで、それも書ければ良いなと思ってます。
では!
            以上 ゼルアメ派*絹糸でした。 再見!



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6981Re:馳せる思いなゆた E-mail 6/5-21:40
記事番号6967へのコメント

 はじめまして。なゆたです。
 いや〜。ゼルアメですねぇ。うれしいです!
 もう、読みながら、ほとりでくすくす笑ってしまいました。(こ、こわひ)
 それにしても、ゼルやん。孤独の似合う男(笑)
 でも、淋しがりや(爆笑)あなたのそんな所にフォーリン、ラ〜ヴ(はぁと)

・・・・・・馬鹿ですね、私。いいです、私は彼一筋○年(覚えてない)
 なんだかとっても、幸せでした。これからもゼルアメ派としてがんばりませう!!

           以上、なゆたでした!!

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7005Re:多謝!なゆたさん!絹糸 6/7-22:54
記事番号6981へのコメント


おおおっ!!こ、こんな駄文に感想を書いてもらえるなんて!ありがとうございまふ〜〜!(号泣)←実話
嬉しさのあまりもう、キーボードを打つ手が震えまくって文字、間違う間違う(笑)←でも実話
あ!挨拶を忘れてましたね。これは失礼。
では、改めまして。
こんばんは、初めまして、絹糸といいます。

> いや〜。ゼルアメですねぇ。うれしいです!
いや〜、ゼルアメ派って後書きしときながらそんな感じあんまりしてなくてお恥ずかしい。

> もう、読みながら、ほとりでくすくす笑ってしまいました。(こ、こわひ)
だいじょぶです。わたしもゼルアメ読みながら(考えながら)笑ってますから。(ぶきみ)
ところで『ほとり』ってなんですか?

> それにしても、ゼルやん。孤独の似合う男(笑)
> でも、淋しがりや(爆笑)あなたのそんな所にフォーリン、ラ〜ヴ(はぁと)
イエッサー!!  ←意味不明ですいません。
>
>・・・・・・馬鹿ですね、私。いいです、私は彼一筋○年(覚えてない)
> なんだかとっても、幸せでした。これからもゼルアメ派としてがんばりませう!!
はい!がんばりましょう!わたしも読んでますよなゆたさんのゼルアメ!
ただ・・・題名が読めない・・・馬鹿だから・・・
それはともかく、ありがとう、なゆたさん!!今日、新作置いてきます!ゼルアメじゃないけど・・・