◆−アルカナの神殿 プロローグ前編−エイス(7/30-16:43)No.7298
 ┣アルカナの神殿 プロローグ後編−エイス(7/30-16:48)No.7299
 ┃┗Re:アルカナの神殿−ルイ(7/31-17:24)No.7308
 ┃ ┗Re:アルカナの神殿−エイス(7/31-22:01)No.7309
 ┃  ┗…すいません、嘘教えてました−エイス(8/1-14:20)No.7317
 ┣アルカナの神殿(1)−エイス(7/31-22:20)No.7311
 ┣アルカナの神殿(2)−エイス(7/31-22:21)No.7312
 ┣アルカナの神殿(3)−エイス(7/31-22:24)No.7313
 ┣アルカナの神殿(4)−エイス(8/1-14:26)No.7318
 ┣アルカナの神殿(5)−エイス(8/1-14:28)No.7320
 ┣アルカナの神殿(6)−エイス(8/1-14:32)No.7321
 ┣アルカナの神殿(7)−エイス(8/2-15:50)No.7331
 ┃┗Re:アルカナの神殿(7)−おどる猫(8/2-19:12)NEWNo.7335
 ┃ ┗ありがとうございます〜−エイス(8/3-09:35)NEWNo.7339
 ┣アルカナの神殿(8)−エイス(8/3-09:45)NEWNo.7340
 ┣アルカナの神殿(9)−エイス(8/3-09:49)NEWNo.7341
 ┃┣Re:アルカナの神殿(9)−琳(8/3-13:14)NEWNo.7342
 ┃┃┗頑張りますわ−エイス(8/3-15:25)NEWNo.7343
 ┃┗Re:アルカナの神殿(9)−る〜ら(8/4-00:07)NEWNo.7345
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 ┣アルカナの神殿(10)−エイス(8/4-04:01)NEWNo.7350
 ┣アルカナの神殿(11)−エイス(8/4-04:03)NEWNo.7351
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 ┗アルカナの神殿(14)−エイス(8/5-11:13)NEWNo.7376


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7298アルカナの神殿 プロローグ前編エイス E-mail 7/30-16:43


 こんにちは(こんばんは)。エイスです。
 タロットカードを見てたら唐突にこの話が書きたくなりまして、やめれば良かったかな?と思いながらも書き上げました。
 一日に1〜3話ずつぐらいUPしますので、こまめに見て下されば、とても嬉しいです。ちなみにシリアス?物ですが、時々ちゃんとゼロリナしてますので、ご安心を(笑)。
 それでは、寛大な心でお読み下さい………。

 アルカナの神殿〜運命に惑わされし時〜

  プロローグ 前編


リナたちは、リシャールという港町にいた。
ここは貿易の盛んな所で、いつも人々が行き交っていた。
 そして、たまたまここに辿り着いたリナ達は、いつものメンバーで、いつも通りに、端から見ても普通に街の中を食べ歩いていた。
「やっぱ港町は魚が美味しいわねー」
「それに、輸入したものがそのままここで売り買いされますから、珍しいものがいっぱい食べれますしね」
「でもこの前食ったのはいまいちだったなあ。味が全然しなかったぞ」
「そういう食べ物なんだろう。それに、旦那が一番たいらげてたじゃないか」
「まあガウリイさんの胃袋は底無しですからね。それに味の評価は『美味い・不味い・味がない』の三通りですし、ガウリイさんが不味いというのは極まれですしね。なにしろオーガやナメク…………」
「ゼロス、それ以上言ったら、アメリアと一緒に讃美歌を歌うわよ」
「ひぃぃぃぃぃぃ。それだけはご勘弁を」
……………普通………だよね、きっと。うん、普通。お姫様なんか、そこら中にいるし(いねーよ)、悪の魔剣士ももう出まくってるし(出ねえって)、ドラ股とその保護者なんてどこにでもいるし(んなのがそこら中にいるか)、魔族なんか結構ホイホイ見かけるよね(見かけるかぁ!)。←普通じゃないと思った方は、カッコの部分を読んで下さい
「それにしても、最近は事件がなくてつまんないわねー。なんか、むちゃくちゃ楽で、その上美味しい仕事ってないかしら」
肉の欠片に食らいつきながら言うリナに、アメリアは呆れた顔で呟いた。
「本当、リナさんって良い性格してますよね」
ぴくっとリナの耳が反応する。
「なんですって!?」
「な、なんでもありません……………まったく………」
こういうことだけ聞こえるんだから……そう言いかけた口を慌てて抑えたアメリアだった。
 ところが、普通なら言い返してくるはずのリナの声が、聞こえてこない。不思議に思ってリナを見ると、リナの視線は空の一点に集中していた。
「………………あれ………なに?」
 そこには、長方形の紙のようなものが、空で舞っていた。
「カード………でしょうか」
ゼロスが、細い目をさらに細くして言った。
ゼロスのいった通り、カードのようだ。それは、ひらひらとリナ達の所へ落ちてきた。
   パシッ
リナが、落ちてきたカードを取る。両手を合わせる形で取ったので、同時に(つまむように)取ってしまったゼロスは、指を変な格好で叩かれてしまったが。
「なに?これ」
叩かれて泣いているゼロスを無視し、リナがカードをみつめる。
「これ、タロットカードじゃないですか?」
「たるとかーどって………なんだ?」
「《タロットカード》だ。何十枚もあるカードを混ぜ、念じながら伏せてあるカードをひくと、念じた事柄が占えるらしい」
「へえ、便利だなあ」
「けれど、占いの結果は必ずしも当たるとは限らないようです。まあ、おまじないのようなものですね」
「どうしてこんな所にあるんでしょうね?それも一枚だけ」
ゼロスの疑問に、みんなが頭をひねらす。
「まあお守りかなんかで持ってて無くしたんでしょ。《運命の輪》のカードだし」
「そうですね。でも、どうしましょう。落とした人を探した方がいいんでしょうか」
「んーいいんじゃない?落とした人も探してると思うから、かえってだめだと思うし。木の影にでも置いときましょ」
リナがそう言って、木の根っこの部分にカードを置く。
「………あれ?今日なんかあった?」
「え?いえ、今日は何も………」
「……おかしいわね。船に乗んなきゃいけないような気がしたんだけど………」
「?どうしたんですか?大丈夫です。今日は何もありませんよ」
「それに、あれだけ「船には乗らない。港町で食べるだけ」と言っていたくせに、どういう心境の変化だ?」
「だから、行きたくなった…ってわけじゃないのよ。なんか………大事な用があるような……」
「まあ乗らなきゃいけないような気がする、というなら乗りましょう。どうせ皆さん、大した用事もないんでしょう」
黙り込んでしまったリナに、ゼロスが助け船(?)をだす。
「そうですね。特に用事はありませんし」
「行き先はどうするんだ?リナ」
「そうね………まあ行き先がそんなに遠くなくて、今日出るやつならなんでもいいわ」
そんなリナのいい加減な意見によって船が決まり、運悪く当たってしまった船に、予約無し、飛び入りで乗り込み、船員にむちゃくちゃ迷惑され、船旅は開始されたのだった。


「ん〜いい風ねー」
「そうですね〜波も穏やかですし」
「部屋もごうじゃすだしね」
リナ達がとったのは、ろいやるすぃーとコース。船員に説得(脅迫)をし、勝ち取った、ごうじゃすな部屋である。ちなみに、旅費は全部ゼロス持ちである。
「ああ、貰ったばかりのお給料が………なんで僕が………」
ちなみに当の本人は、リナ達の後ろでぶつぶつと独り言を言っていた。
さすがに、ガウリイとゼルガディスは哀れに思ったらしく、慰めている。
「ったく。ガウリイもゼルも、放っとけばいいのよ。どうせ本当には泣いてないんだから。ゼロスが本当に泣いたなんて時は、嵐が来る………」
その時だった。
「おーーーい。雲行きが怪しくなってきたぞーーーーー!!」
その声をした方を見ると、黒い雲がだんだん近づいてきている。
そして、声を出す暇も無く、雷雨になり、あっという間に嵐になった。
「………………うそ…」
「嵐………来ちゃいましたね………」
リナもアメリアも、呆然と(しながらもしっかり逃げているのだが)雲のやってきた方角を見つめている。
 もう少しで中に逃げ込めるという時、ゼロスがひらひらと手を振りながら言った。
「それじゃあ、僕はこれで」
がしっっっ
アストラルに逃げ出そうとしたゼロスを、ずぶ濡れになりながら掴む。
「あんたねえ……、そう易々と逃がすと思ってるの!?」
そう言うと、ゼロスがおもしろそうな顔をする。
「でも、ほら。リナさん達も早く逃げた方がいいですよ」
「へっ!?」
ゼロスはにっこり笑うと、リナの後ろを指した。
リナが恐る恐る振り返ってみると……………

「つ、津波〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」

リナ達に襲い掛かってくるのは、間違いなく津波であった。
 リナやアメリアはおろか、ガウリイやゼルガディスまでパニックに陥る。
「それじゃあ僕はこれで」
その混乱に乗じてゼロスは逃げ出したが、それに気付こうとする者はなかった。
「あ、アメリア!!ど、どうにかなさい!!」
「どうにかってどうするんですか〜〜〜〜〜!?」
結界張って、浮遊すればいいんじゃない?と、読者は言えるが、混乱している彼等には、そんな考え思い付かない(笑)。
「ゼルぅ!!どうにか出来んのか〜〜?」
「出来るわけないだろ!!リナ!!なんとかならんのか!?」
「無茶言わないでよ〜〜〜〜〜!!アメリアぁどうにかして!!」
「無理ですぅぅぅ!!」
「ゼロス〜〜〜〜〜〜〜!!出てきてどうにかしてぇ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
リナのその叫びを最後に、船は波にのみこまれた………。

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7299アルカナの神殿 プロローグ後編エイス E-mail 7/30-16:48
記事番号7298へのコメント


   プロローグ 後編

  何……?
  私を呼ぶ声がする………



リナはす…と目を開けた。
「何………これ………!!」
そこでは、荒野とすら呼べない、荒れ地が広がっていた。そしてその路なき路を歩く青年がいる。
「ま…待って!!」
リナは慌てて青年に追いつき、手を伸ばし、青年を掴んだ……はずだった
すぅっっ
その手が、青年をすり抜けてしまったのだ。
「な……!?」
リナは落ち着いて、よく周りを見てみた。
 草木は枯れ、花は散り、生き物は根絶やしにされている。
  ………………………………《世界の終わり》……………………………………
そんな言葉が浮かんでくる景色だ。
気がつけば、青年がじっとこちらを見ている。
その手には、《アルカナ》とかかれたカード入れがあった。
『おね……わ……をこ…し…をす……て………!!』
キ…ィィィィィ…ィィ
「今度…は……なに……?」
耳が痛い、気持ち悪い、吐きそう………!!
リナの意識は、そこで途切れた。



がばっっ
「っ!?つぅ!!」
ばたんとベッドへ倒れこむ。
「ここは………?」
目の前には、見慣れない景色が広がっていた。
「気がついたようですね」
そういけしゃあしゃあと出てきたのは…
「ゼロス…!!あんた……よく私の前に出てこれたわねぇ…………」
嫌なくらいに、リナが怒っていることに気付いてしまったゼロスは、なるべく気に障らないような言い方にした。
「それよりも、リナさん、大丈夫ですか?」
「あんたのお陰でね」
……いきなり気に障ってしまったらしい。
「ま、とりあえず、この状況でもご説明致しましょうか?」
「そうね、よろしく頼むわ」
声は笑っているが、目は全然笑っていない。ゼロスは恐怖を感じ(笑)、いっきに話した。
「ええと、リナさんは海に投げ出されましたよね?そのせいか、ガウリイさんたちと離れてしまったらしく、しかも大陸からう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んと離れた島に流れ着いてしまったらしいです」
「どの辺かは解る?」
「さっぱり……なんですねぇ…………」
「……いいわ、他の質問する」
リナのこめかみがぴくぴくしているのを見て、ゼロスから色が失せた。
「なんで津波が来た時逃げ出したあんたがここにいるのかしら?」
その言葉だけを見ると至極丁寧だが、実際は、遠まわしに皮肉が込められていて、しかも『これに答えないとラグナ・ブレードでぶった斬る』的な脅迫が込められていた。
「いえ……あの……逃げたはいいんですけど、やっぱり心配になって、ちょっと留まってたんですね。そうしたら、この島から何故か出られなくなってしまって………」
「本っっっっっっ当にそれだけ?」
「それだけです」
いつもの調子を取り戻し、ゼロスがにっこりと笑う。
「……まあいいわ。それで?ここはどこなの?」
「《フォーチュン》という街のようです。あと、ここに寝ているのは親切な人がリナさんを助けてくれたから、ですよ」
「そう、あんたと違って随分親切な人ね」
リナとゼロスの間の空気が険悪になってきた時、コンコン、と遠慮がちにノックがされた。
「え?どうぞ〜」
リナは誰だろうと思いながら、ベッドから立ち上がる。
「い…っっ痛ぅぅっっ」
リナがぐらりと倒れこむ。ゼロスは慌てて抱え込んだ。
「駄目ですよ。まだ全快してないんですから」
「へっ?」
扉の方角から聞こえてきたのは、可愛らしく、また大人っぽい声だった。
年は23,4だろうか。桃色という変わった色の髪をみつあみにして、青混じりの翡翠の瞳はリナじっと見つめていた。格好からして、魔導士や剣士じゃない、普通の娘のようだ。
その少女はにっこり笑うと、リナにつかつかと近づいて、顔を覗きこんだ。
「…でも、だいぶ良さそうですね。良かった…」
「あのぅ……」
リナが視線で訴えると、少女は気付いたのか謝ってきた。
「あ、ごめんなさい。自己紹介も無しに。
私は、エリス・フォーテューンといいます。あなたを助けたのは、一応私ですわ。よろしく、リナさん」
「フォー……テューン………?」
リナの口がその単語を繰り返す。
「リナさん、彼女は、この街のお偉いさんですよ」
ゼロスがリナに耳打ちする。
「ちょ、ちょっと待って。なんでこの街のお偉いさんが、こんな所にいるの!?」
リナがそう言うと、エリスの顔がふと曇る。
「突然ですが……リナさん、ゼロスさん、あなたがたは《運命の輪》のカードを手にしましたね?」
リナとゼロスは、一瞬顔を見合わせた後、こくりと頷いた。
「…………」
すっとエリスの手があがる。
「あ、それ……!?」
そのエリスの手には、あの時置いてきたはずの、《運命の輪》のカードが掴まれていた。
「どこから話せばいいんでしょうか……」
「とりあえず、最初から話してくれる?」
エリスは一瞬の沈黙の後、重く頷いた。
「遥かな昔、5百年ほど前のこと………、この島は、それは美しいところでした…。ですがある日を境に、この島は以前豊かであった面影を、見ることさえままならないほど、荒れ果ててしまいました……」
エリスの目が、伏せられる。
それは、これから語ることが酷いであろうことを、物語っていた。
「人々は、凶悪な魔物共に脅え、街を襲ってきた魔物に、数少ない剣士、魔導士も倒され、なす術はあるはずもありませんでした…。
 このままでは、この島どころか、世界が滅んでしまう程の勢いでした…。
ところがある日、一人の勇者が現れたのです。その者は怪物たちを次々に倒し、この島を、怪物から救ってくれたのです」
 勇者のことを語るエリスが、少しばかり嬉しそうに見えた。ゼロスもそう見えたのだろうか、顔をしかめていたが、島を救うほどの勇者に憧れを抱いているだけだろうと、気にしないことにした。
「それどころか勇者は、《アルカナ》というカードを持ち要り、島の各地に配置し、荒れ果てた大地を浄化してくれたのです」
「なによ、それなら良かったじゃない」
「…まだ、続きがあるんです」
話しの腰を折ったリナに、エリスが悲しげに言った。
「それからです。この島でアルカナが、タロットカードが神聖なものになったのは。そしてアルカナは、それぞれ街を作り、そこの神官が守っていくことになったのです。 
例えばここには、《運命の輪》のカードが授けられ、《フォーチュン》という街の名を与えられました」
エリスはそろそろ話し疲れてきたのか、一度深呼吸をする。
「………ですが、悲劇が起こったのです…………」
涙が溢れてきそうな表情に、リナは嫌な予感を覚えた。
「人には、欲があります。それが祈りの形になることもありますし、悪い欲望に変化することもあります。全ては、それが生み出したのです」
エリスが、リナの目を見る。
「勇者は……勇者アルドは、その実力とカリスマ故に、野心を燃やす魔導士達に………………………………………………………………………………………………………………………………………………………殺されてしまったのです……」
エリスの顔が、今にも泣き出せそうになっていた、そして、悲しさとは別に、何かの感情が混じっていたが、リナは驚きのあまり、気付かなかった。
「…………そして、数百年が経ちました。この島は、いまだ野心を燃やす魔導士達に支配されています。ですが、それすら問題にならぬほどの問題が起こったのです。だから私は《運命の輪》のカードで、その事態を救ってくれる人を探していたのです」
エリスは一呼吸おいて、言った。
「リナさん、ゼロスさん。お願いです!この島を……失われたカードを、探して下さい!!」
リナは、度重なる驚きと疲れのせいか、意識を失った……。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 気絶するなんてリナっぽくないけどお許しを。
 ちなみに、誰も聞いてくれないと思うので言いますが、アルドの名前はワールドから取りました。エリスというのはなんとなく、です。

 長くてつまらない物ですが、どうかこれからも見てやって下さい(泣)。

 それでは。
    エイス

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7308Re:アルカナの神殿ルイ E-mail 7/31-17:24
記事番号7299へのコメント


  こんにちは。ルイです。
  わ〜い♪エイスさんの小説だ〜♪
  と、言う事で(どういう事だよ)感想書きに来ました〜♪
  タロットカードって良く知らないんですけど……
  まぁ、きっと大丈夫でしょう。(運命の輪のカードってどういう…)
  では、感想書かせて頂きます。


>リナはす…と目を開けた。
>「何………これ………!!」
>そこでは、荒野とすら呼べない、荒れ地が広がっていた。そしてその路なき路を歩く青年がいる。

   これは……夢……なんでしょうか……?
   荒れ地の、道なき道を歩く青年――ビジュアル的にはかっこいいですね。

>「ま…待って!!」
>リナは慌てて青年に追いつき、手を伸ばし、青年を掴んだ……はずだった
>すぅっっ
>その手が、青年をすり抜けてしまったのだ。

   おぅっ!?何故にっ!?

>「な……!?」
>リナは落ち着いて、よく周りを見てみた。
> 草木は枯れ、花は散り、生き物は根絶やしにされている。
>  ………………………………《世界の終わり》……………………………………
>そんな言葉が浮かんでくる景色だ。

   世界の終わりのような光景……
   すべての生物が存在する事が出来ない、荒れ果てた土地、という感じです
   か?……うーむ……(考え中)

>気がつけば、青年がじっとこちらを見ている。
>その手には、《アルカナ》とかかれたカード入れがあった。
>『おね……わ……をこ…し…をす……て………!!』

   なんて言ってる(?)んでしょう?おね……お姉ちゃん…じゃないし……
   勝手にいろいろ想像してます。

>キ…ィィィィィ…ィィ
>「今度…は……なに……?」
>耳が痛い、気持ち悪い、吐きそう………!!
>リナの意識は、そこで途切れた。

   『キィィィ…』っていう高音の音って気持ち悪いですよね。
   なんか超音波みたいで……って、そこに感想書いてどうするんだよ!(笑) 
>がばっっ
>「っ!?つぅ!!」
>ばたんとベッドへ倒れこむ。
>「ここは………?」
>目の前には、見慣れない景色が広がっていた。
>「気がついたようですね」
>そういけしゃあしゃあと出てきたのは…
>「ゼロス…!!あんた……よく私の前に出てこれたわねぇ…………」
>嫌なくらいに、リナが怒っていることに気付いてしまったゼロスは、なるべく気に障らないような言い方にした。
>「それよりも、リナさん、大丈夫ですか?」
>「あんたのお陰でね」
>……いきなり気に障ってしまったらしい。

   そりゃあ、自分達を放って逃げられたら、リナは怒るでしょう。
   でも、おもいっきり嫌味ですよね……

>「ま、とりあえず、この状況でもご説明致しましょうか?」
>「そうね、よろしく頼むわ」
>声は笑っているが、目は全然笑っていない。ゼロスは恐怖を感じ(笑)、いっきに話した。

   ゼロスに恐怖を感じさせるリナって……?
   ある意味すごいかも……

>「ええと、リナさんは海に投げ出されましたよね?そのせいか、ガウリイさんたちと離れてしまったらしく、しかも大陸からう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んと離れた島に流れ着いてしまったらしいです」
>「どの辺かは解る?」
>「さっぱり……なんですねぇ…………」
>「……いいわ、他の質問する」
>リナのこめかみがぴくぴくしているのを見て、ゼロスから色が失せた。
>「なんで津波が来た時逃げ出したあんたがここにいるのかしら?」
>その言葉だけを見ると至極丁寧だが、実際は、遠まわしに皮肉が込められていて、しかも『これに答えないとラグナ・ブレードでぶった斬る』的な脅迫が込められていた。
>「いえ……あの……逃げたはいいんですけど、やっぱり心配になって、ちょっと留まってたんですね。そうしたら、この島から何故か出られなくなってしまって………」
>「本っっっっっっ当にそれだけ?」
>「それだけです」
>いつもの調子を取り戻し、ゼロスがにっこりと笑う。
>「……まあいいわ。それで?ここはどこなの?」
>「《フォーチュン》という街のようです。あと、ここに寝ているのは親切な人がリナさんを助けてくれたから、ですよ」
>「そう、あんたと違って随分親切な人ね」
>リナとゼロスの間の空気が険悪になってきた時、コンコン、と遠慮がちにノックがされた。

   リナとゼロス――というか、リナが一方的に怒っているだけのような……

>「え?どうぞ〜」
>リナは誰だろうと思いながら、ベッドから立ち上がる。
>「い…っっ痛ぅぅっっ」
>リナがぐらりと倒れこむ。ゼロスは慌てて抱え込んだ。
>「駄目ですよ。まだ全快してないんですから」
>「へっ?」
>扉の方角から聞こえてきたのは、可愛らしく、また大人っぽい声だった。

   ……どんな声なんだろう……?

>年は23,4だろうか。桃色という変わった色の髪をみつあみにして、青混じりの翡翠の瞳はリナじっと見つめていた。格好からして、魔導士や剣士じゃない、普通の娘のようだ。
>その少女はにっこり笑うと、リナにつかつかと近づいて、顔を覗きこんだ。
>「…でも、だいぶ良さそうですね。良かった…」
>「あのぅ……」
>リナが視線で訴えると、少女は気付いたのか謝ってきた。
>「あ、ごめんなさい。自己紹介も無しに。
>私は、エリス・フォーテューンといいます。あなたを助けたのは、一応私ですわ。よろしく、リナさん」
>「フォー……テューン………?」
>リナの口がその単語を繰り返す。
>「リナさん、彼女は、この街のお偉いさんですよ」
>ゼロスがリナに耳打ちする。
>「ちょ、ちょっと待って。なんでこの街のお偉いさんが、こんな所にいるの!?」
>リナがそう言うと、エリスの顔がふと曇る。

   ん?何故に?なんかわけありみたいですね?

>「突然ですが……リナさん、ゼロスさん、あなたがたは《運命の輪》のカードを手にしましたね?」
>リナとゼロスは、一瞬顔を見合わせた後、こくりと頷いた。
>「…………」
>すっとエリスの手があがる。
>「あ、それ……!?」
>そのエリスの手には、あの時置いてきたはずの、《運命の輪》のカードが掴まれていた。
>「どこから話せばいいんでしょうか……」
>「とりあえず、最初から話してくれる?」
>エリスは一瞬の沈黙の後、重く頷いた。
>「遥かな昔、5百年ほど前のこと………、この島は、それは美しいところでした…。ですがある日を境に、この島は以前豊かであった面影を、見ることさえままならないほど、荒れ果ててしまいました……」
>エリスの目が、伏せられる。
>それは、これから語ることが酷いであろうことを、物語っていた。
>「人々は、凶悪な魔物共に脅え、街を襲ってきた魔物に、数少ない剣士、魔導士も倒され、なす術はあるはずもありませんでした…。
> このままでは、この島どころか、世界が滅んでしまう程の勢いでした…。

   世界が滅ぶほどって……どんな魔物だったんでしょう?
   神族達は?あ、結界の中か……

>ところがある日、一人の勇者が現れたのです。その者は怪物たちを次々に倒し、この島を、怪物から救ってくれたのです」
> 勇者のことを語るエリスが、少しばかり嬉しそうに見えた。ゼロスもそう見えたのだろうか、顔をしかめていたが、島を救うほどの勇者に憧れを抱いているだけだろうと、気にしないことにした。

   なんかありそうですね〜

>「それどころか勇者は、《アルカナ》というカードを持ち要り、島の各地に配置し、荒れ果てた大地を浄化してくれたのです」
>「なによ、それなら良かったじゃない」
>「…まだ、続きがあるんです」
>話しの腰を折ったリナに、エリスが悲しげに言った。
>「それからです。この島でアルカナが、タロットカードが神聖なものになったのは。そしてアルカナは、それぞれ街を作り、そこの神官が守っていくことになったのです。 
>例えばここには、《運命の輪》のカードが授けられ、《フォーチュン》という街の名を与えられました」
>エリスはそろそろ話し疲れてきたのか、一度深呼吸をする。
>「………ですが、悲劇が起こったのです…………」
>涙が溢れてきそうな表情に、リナは嫌な予感を覚えた。
>「人には、欲があります。それが祈りの形になることもありますし、悪い欲望に変化することもあります。全ては、それが生み出したのです」
>エリスが、リナの目を見る。
>「勇者は……勇者アルドは、その実力とカリスマ故に、野心を燃やす魔導士達に………………………………………………………………………………………………………………………………………………………殺されてしまったのです……」
>エリスの顔が、今にも泣き出せそうになっていた、そして、悲しさとは別に、何かの感情が混じっていたが、リナは驚きのあまり、気付かなかった。

   魔物を倒した勇者が、そんな簡単に殺されてしまうものなのでしょうか?
   ……哀しいですね……
   それと、悲しさとは別の感情って……なんだろう?

>「…………そして、数百年が経ちました。この島は、いまだ野心を燃やす魔導士達に支配されています。ですが、それすら問題にならぬほどの問題が起こったのです。だから私は《運命の輪》のカードで、その事態を救ってくれる人を探していたのです」
>エリスは一呼吸おいて、言った。
>「リナさん、ゼロスさん。お願いです!この島を……失われたカードを、探して下さい!!」
>リナは、度重なる驚きと疲れのせいか、意識を失った……。

   失われたカード?そうか……運命の輪以外のカードなのかな?

>・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

> 気絶するなんてリナっぽくないけどお許しを。
> ちなみに、誰も聞いてくれないと思うので言いますが、アルドの名前はワールドから取りました。エリスというのはなんとなく、です。

   すいません。あの、ワールドって……なんですか?

> 長くてつまらない物ですが、どうかこれからも見てやって下さい(泣)。

   つまらないなんてそんなっ!十分おもしろいですよっ!
   (おもしろいと言うか、哀しいと言うか……)
   これからも見させて頂きます。

   それと……すいません!メール送れてごめんなさい!!
   もう少ししたら必ず出しますので、もうちょっと待って下さい。
   よろしくお願いします。

  では……


               ルイ

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7309Re:アルカナの神殿エイス E-mail 7/31-22:01
記事番号7308へのコメント

>  こんにちは。ルイです。
>  わ〜い♪エイスさんの小説だ〜♪
>  と、言う事で(どういう事だよ)感想書きに来ました〜♪

こんにちは。エイスです。わざわざありがとうございます♪

>  タロットカードって良く知らないんですけど……
>  まぁ、きっと大丈夫でしょう。(運命の輪のカードってどういう…)

 タロットカードの意味は、そのカードの章の最初にちょびっとだけ載せますので、心配なさらずに(笑)。
 運命の輪の意味も、後々出てきます(ちょっとだけど)。
 それにかなりオリジナル(?)ですので、タロットカードを知ってなくても大丈夫ですよ。

>>リナはす…と目を開けた。
>>「何………これ………!!」
>>そこでは、荒野とすら呼べない、荒れ地が広がっていた。そしてその路なき路を歩く青年がいる。
>
>   これは……夢……なんでしょうか……?
>   荒れ地の、道なき道を歩く青年――ビジュアル的にはかっこいいですね。

 夢、です。
 ちなみに青年は、私的に美形(笑)。

>>「ま…待って!!」
>>リナは慌てて青年に追いつき、手を伸ばし、青年を掴んだ……はずだった
>>すぅっっ
>>その手が、青年をすり抜けてしまったのだ。
>
>   おぅっ!?何故にっ!?

 何故でしょう?……嘘です。これも夢だからです。
 夢の風景を見てる、自分の夢なんです(わけわかんないって)。

>>「な……!?」
>>リナは落ち着いて、よく周りを見てみた。
>> 草木は枯れ、花は散り、生き物は根絶やしにされている。
>>  ………………………………《世界の終わり》……………………………………
>>そんな言葉が浮かんでくる景色だ。
>
>   世界の終わりのような光景……
>   すべての生物が存在する事が出来ない、荒れ果てた土地、という感じです
>   か?……うーむ……(考え中)

 考えてるようなので、コメントは控えときましょう♪

>>気がつけば、青年がじっとこちらを見ている。
>>その手には、《アルカナ》とかかれたカード入れがあった。
>>『おね……わ……をこ…し…をす……て………!!』
>
>   なんて言ってる(?)んでしょう?おね……お姉ちゃん…じゃないし……
>   勝手にいろいろ想像してます。

 想像してますねー(笑)。おね、は意味はありません。お願い、といってるんです。他のは教えられませんが。

>>キ…ィィィィィ…ィィ
>>「今度…は……なに……?」
>>耳が痛い、気持ち悪い、吐きそう………!!
>>リナの意識は、そこで途切れた。
>
>   『キィィィ…』っていう高音の音って気持ち悪いですよね。
>   なんか超音波みたいで……って、そこに感想書いてどうするんだよ!(笑)

 耳鳴りってどんな感じなんでしょう?誰か教えてくれないかな。
 幻聴なら聞いた事あるけど(笑)←やばいって

>>がばっっ
>>「っ!?つぅ!!」
>>ばたんとベッドへ倒れこむ。
>>「ここは………?」
>>目の前には、見慣れない景色が広がっていた。
>>「気がついたようですね」
>>そういけしゃあしゃあと出てきたのは…
>>「ゼロス…!!あんた……よく私の前に出てこれたわねぇ…………」
>>嫌なくらいに、リナが怒っていることに気付いてしまったゼロスは、なるべく気に障らないような言い方にした。
>>「それよりも、リナさん、大丈夫ですか?」
>>「あんたのお陰でね」
>>……いきなり気に障ってしまったらしい。
>
>   そりゃあ、自分達を放って逃げられたら、リナは怒るでしょう。
>   でも、おもいっきり嫌味ですよね……

 今のリナはむっちゃくちゃ機嫌悪いです。耳は痛いわ、気持ちは悪いわ、変な夢は見るわ、おまけにゼロスは出てくるわ。

>>「ま、とりあえず、この状況でもご説明致しましょうか?」
>>「そうね、よろしく頼むわ」
>>声は笑っているが、目は全然笑っていない。ゼロスは恐怖を感じ(笑)、いっきに話した。
>
>   ゼロスに恐怖を感じさせるリナって……?
>   ある意味すごいかも……

 リナちゃん。目すわってます(笑)。

>>「ええと、リナさんは海に投げ出されましたよね?そのせいか、ガウリイさんたちと離れてしまったらしく、しかも大陸からう〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜んと離れた島に流れ着いてしまったらしいです」
>>「どの辺かは解る?」
>>「さっぱり……なんですねぇ…………」
>>「……いいわ、他の質問する」
>>リナのこめかみがぴくぴくしているのを見て、ゼロスから色が失せた。
>>「なんで津波が来た時逃げ出したあんたがここにいるのかしら?」
>>その言葉だけを見ると至極丁寧だが、実際は、遠まわしに皮肉が込められていて、しかも『これに答えないとラグナ・ブレードでぶった斬る』的な脅迫が込められていた。
>>「いえ……あの……逃げたはいいんですけど、やっぱり心配になって、ちょっと留まってたんですね。そうしたら、この島から何故か出られなくなってしまって………」
>>「本っっっっっっ当にそれだけ?」
>>「それだけです」
>>いつもの調子を取り戻し、ゼロスがにっこりと笑う。
>>「……まあいいわ。それで?ここはどこなの?」
>>「《フォーチュン》という街のようです。あと、ここに寝ているのは親切な人がリナさんを助けてくれたから、ですよ」
>>「そう、あんたと違って随分親切な人ね」
>>リナとゼロスの間の空気が険悪になってきた時、コンコン、と遠慮がちにノックがされた。
>
>   リナとゼロス――というか、リナが一方的に怒っているだけのような……

 リナですもの♪

>>「え?どうぞ〜」
>>リナは誰だろうと思いながら、ベッドから立ち上がる。
>>「い…っっ痛ぅぅっっ」
>>リナがぐらりと倒れこむ。ゼロスは慌てて抱え込んだ。
>>「駄目ですよ。まだ全快してないんですから」
>>「へっ?」
>>扉の方角から聞こえてきたのは、可愛らしく、また大人っぽい声だった。
>
>   ……どんな声なんだろう……?

 知りません(笑)。あ、石を投げないで。
 年の割で、しかも幼いっぽいと言いたかったんです。

>>年は23,4だろうか。桃色という変わった色の髪をみつあみにして、青混じりの翡翠の瞳はリナじっと見つめていた。格好からして、魔導士や剣士じゃない、普通の娘のようだ。
>>その少女はにっこり笑うと、リナにつかつかと近づいて、顔を覗きこんだ。
>>「…でも、だいぶ良さそうですね。良かった…」
>>「あのぅ……」
>>リナが視線で訴えると、少女は気付いたのか謝ってきた。
>>「あ、ごめんなさい。自己紹介も無しに。
>>私は、エリス・フォーテューンといいます。あなたを助けたのは、一応私ですわ。よろしく、リナさん」
>>「フォー……テューン………?」
>>リナの口がその単語を繰り返す。
>>「リナさん、彼女は、この街のお偉いさんですよ」
>>ゼロスがリナに耳打ちする。
>>「ちょ、ちょっと待って。なんでこの街のお偉いさんが、こんな所にいるの!?」
>>リナがそう言うと、エリスの顔がふと曇る。
>
>   ん?何故に?なんかわけありみたいですね?

 わけありです。思いっきり。
 彼女のわけありも、いずれ出てきます(最初は3話、最後は最後)。

>>「突然ですが……リナさん、ゼロスさん、あなたがたは《運命の輪》のカードを手にしましたね?」
>>リナとゼロスは、一瞬顔を見合わせた後、こくりと頷いた。
>>「…………」
>>すっとエリスの手があがる。
>>「あ、それ……!?」
>>そのエリスの手には、あの時置いてきたはずの、《運命の輪》のカードが掴まれていた。
>>「どこから話せばいいんでしょうか……」
>>「とりあえず、最初から話してくれる?」
>>エリスは一瞬の沈黙の後、重く頷いた。
>>「遥かな昔、5百年ほど前のこと………、この島は、それは美しいところでした…。ですがある日を境に、この島は以前豊かであった面影を、見ることさえままならないほど、荒れ果ててしまいました……」
>>エリスの目が、伏せられる。
>>それは、これから語ることが酷いであろうことを、物語っていた。
>>「人々は、凶悪な魔物共に脅え、街を襲ってきた魔物に、数少ない剣士、魔導士も倒され、なす術はあるはずもありませんでした…。
>> このままでは、この島どころか、世界が滅んでしまう程の勢いでした…。
>
>   世界が滅ぶほどって……どんな魔物だったんでしょう?
>   神族達は?あ、結界の中か……

 しまった、考えてなかった(笑)。
 えっと……−沈黙−……ば、ヴァルガーブの(強さの)5分の3が大量発生……ということにしておこう。

>>ところがある日、一人の勇者が現れたのです。その者は怪物たちを次々に倒し、この島を、怪物から救ってくれたのです」
>> 勇者のことを語るエリスが、少しばかり嬉しそうに見えた。ゼロスもそう見えたのだろうか、顔をしかめていたが、島を救うほどの勇者に憧れを抱いているだけだろうと、気にしないことにした。
>
>   なんかありそうですね〜

 うふふ←怖いって 秘密です←ゼロス風に

>>「それどころか勇者は、《アルカナ》というカードを持ち要り、島の各地に配置し、荒れ果てた大地を浄化してくれたのです」
>>「なによ、それなら良かったじゃない」
>>「…まだ、続きがあるんです」
>>話しの腰を折ったリナに、エリスが悲しげに言った。
>>「それからです。この島でアルカナが、タロットカードが神聖なものになったのは。そしてアルカナは、それぞれ街を作り、そこの神官が守っていくことになったのです。 
>>例えばここには、《運命の輪》のカードが授けられ、《フォーチュン》という街の名を与えられました」
>>エリスはそろそろ話し疲れてきたのか、一度深呼吸をする。
>>「………ですが、悲劇が起こったのです…………」
>>涙が溢れてきそうな表情に、リナは嫌な予感を覚えた。
>>「人には、欲があります。それが祈りの形になることもありますし、悪い欲望に変化することもあります。全ては、それが生み出したのです」
>>エリスが、リナの目を見る。
>>「勇者は……勇者アルドは、その実力とカリスマ故に、野心を燃やす魔導士達に………………………………………………………………………………………………………………………………………………………殺されてしまったのです……」
>>エリスの顔が、今にも泣き出せそうになっていた、そして、悲しさとは別に、何かの感情が混じっていたが、リナは驚きのあまり、気付かなかった。
>
>   魔物を倒した勇者が、そんな簡単に殺されてしまうものなのでしょうか?
>   ……哀しいですね……
>   それと、悲しさとは別の感情って……なんだろう?

 この辺の事情も、あとで出てきます。
 まあ、おおづめになってからなんですが…………。

>>「…………そして、数百年が経ちました。この島は、いまだ野心を燃やす魔導士達に支配されています。ですが、それすら問題にならぬほどの問題が起こったのです。だから私は《運命の輪》のカードで、その事態を救ってくれる人を探していたのです」
>>エリスは一呼吸おいて、言った。
>>「リナさん、ゼロスさん。お願いです!この島を……失われたカードを、探して下さい!!」
>>リナは、度重なる驚きと疲れのせいか、意識を失った……。
>
>   失われたカード?そうか……運命の輪以外のカードなのかな?

 説明不足で申し訳ありませんが、タロットカードは全部で22枚あります。
 まあ、話の流れでちゃんと説明してますので。

>> 気絶するなんてリナっぽくないけどお許しを。
>> ちなみに、誰も聞いてくれないと思うので言いますが、アルドの名前はワールドから取りました。エリスというのはなんとなく、です。
>
>   すいません。あの、ワールドって……なんですか?

 世界の英語版です。ちなみに、世界のカードってのもあります。

>> 長くてつまらない物ですが、どうかこれからも見てやって下さい(泣)。
>
>   つまらないなんてそんなっ!十分おもしろいですよっ!
>   (おもしろいと言うか、哀しいと言うか……)
>   これからも見させて頂きます。

 ありがとうございます。っていうか、プロローグ、自分でもかなりつまらないと思う。
 3話あたりから、読めるようにはなりますので。

>   それと……すいません!メール送れてごめんなさい!!
>   もう少ししたら必ず出しますので、もうちょっと待って下さい。
>   よろしくお願いします。

 そんな。メール送れないのに感想かいて下さるなんて………。
 待ってますので、ご安心を。

 それでは。ありがとうございました。
               エイス

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7317…すいません、嘘教えてましたエイス E-mail 8/1-14:20
記事番号7309へのコメント

 ルイさんへ。

すいません、嘘教えてました。
 タロットカードは全部で22枚あるとか言いましたが、本当は、タロットカードは全部で78枚あります。
その中で、最も重要なのが22枚でした。
 すいません。小説の中で22枚しか使ってないので忘れてました。
 本当にすいませんでした。

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7311アルカナの神殿(1)エイス E-mail 7/31-22:20
記事番号7298へのコメント

 こんにちわ〜。エイスです。今回は3話同時にUPします。
 それから、これからタロットカードの名称が違う!とか言う人も出てくると思うので、いっておきます。
 私は、手元にあるタロットカードの名称を使用しているのですが、そのタロットカードの名前が、より近いor良い からという理由で、変えられています。
 私も、より近い意味の名前ならそれでいいと思いましたし、それでそのまま使用してるので、名前が違う事があると思いますが、どうかそのへんはご了承ください。

 それでは、本編です。


   歩む事に戸惑う 魔術師


T《魔術師》−ことの始まり、強い意志


 リナは深層意識の中で目が覚めた。
辺りは闇、闇、闇。
その闇を凝らして見ると、人影が見えた。
リナは、不審に思いながらも、その人影に近づく。
「あのぅ……」
聞こえないのか、無視しているのか、その人影は振り向きすらしない。
 リナが怒って肩を叩くと、その人影はゆっくりとこちらを向いた。

  −目が 死んでいた

一言で表すとそうだった。
 リナは改めてゆっくりと、その人物を観察した。
年は30〜40ほどだろう。茶混じりの金髪、黒い金眼、服は星の型をしたブローチでマントを止め、腰には慰め程度の短剣が装備されている。
 そして、全身から負のオーラが漂っていた。
(魔術師ね……)
だが普通、魔術師というものは、少なかれ意志の訓練を受けている。受けていないとしても、魔術を扱うということはそうとうな意志を使うため、意志が弱いはずはないのだが………。
「あの…おじさん?」
魔術師が、ぴくりと反応する。
「どうしてこんな所にいるの?」
そう聞くと、魔術師はまた向こうを向き、膝を抱えて震えだした。
(脅えている?何に?)
「ねえ、ちょっと、おじさんってば」
リナが肩を揺さ振ると、魔術師は気付いたように震えを止めた。
「………お前は……………誰だ?」
初めて聞いた声は、なんだか擬声音的な声だった。
「私はリナ。リナ・インバース。魔導士よ」
それを聞いた途端、魔術師が振り向き、目を見開く。
「魔……導士…………?」
「そうよ。んで?あんたは誰?ここで何をしてるの?」
リナがそう聞いても、返事はない。首を項垂れて、肩を震わせている。
「………おじさん?」
リナがそう言った時だった。
「…………………………………お前もか…」
「え?」
「お前も、私を笑いに来たのか!!」
魔術師が顔を上げる。その瞳は、狂気さえ映し出していた。
「ちょ、ちょっと!」
「歩けなくなった私を、笑いに来たのか!!」
魔術師の腰につけられていた短剣が、リナを襲う。
「きゃあああああ!!」
突然の攻撃に、避けられないと感じたリナは、咄嗟に手で顔を庇い、目を強く閉じた。

………………………………………………………………………………………………

ところが、短剣が振り下ろされてこない。そして、嫌な予感を覚えた。
「………………………?」
嫌々ながら顔を上げてみると、魔術師が悶えている。そして、その目が睨み付けているところを見上げると………。
「ゼロス!!」
そうゼロスが、あのふざけた笑い方をしながら、上空を飛んでいたのだ。
「いやあ、危機一髪でしたねえ。リナさん」
へらへらとそう言いながら、リナの目の前に降りてくる。
「ゼロス、何をしたの?」
リナが睨み付けながらそう言うと、ゼロスはその笑顔を崩さず言った。
「何をしたの?とは心外ですねえ。リナさんの危機を救って差し上げたのに」
「そうじゃないわ!!何をしたの?って聞いてるのよ!!」
ゼロスがぽりぽりと頭を掻く。
「別に。その人の負を食らっただけです」
「なんですって!?」
その魔術師の方へ振り向く。
魔術師は、苦しんでいた。
「嘘言わないで!!じゃあなんであんなに苦しんでるのよ!!」
「そう言われましても………」
ゼロスの瞳が意味ありげに輝く。
途端、リナの頭に、一つの考えが思い付いた。
「もしかして………」
「そうです。あの人を構成しているのは負の感情、それのみ。つまり、その負を食らえば、少なからずとも影響を受ける……というわけですね」
でもあの人の負の感情は不味かった、と言っているゼロスを無視して、リナが魔術師と向き直る。
(なにか……なにかあるはずよ。この人が負の感情に飲まれているわけが……)
注意深く観察していると、気になることがあった。
魔術師は、一歩も動こうとしないのだ。
負の感情のみで構成されているものが負の感情を吸われた時、それは想像出来ないほどの苦しみに違いない。魔族で言えば、精神を削られたようなものだ。
そんな苦しみ悶えるほどの感覚なのに、足は一歩も動こうとしなかった。
むしろ、その場にいたがっている気がする。
(もしかして………)
こうなる前、魔術師が言っていた。
『お前も歩けなくなった私を、笑いに来たのか!!』
きっと、そのままの意味ではないはず。だとすると………。
「人生という路を歩むことを、恐れている……?」
リナがそう言った途端、魔術師の身体がびくりと震えた。
「…………そうなのね……。
《始まり》を意味するタロットカード《魔術師》のアルカナ」
魔術師が、信じられないと言った風貌で、リナを見る。
「気付いていたんですか………?」
そう聞いてきた魔術師は、いくらか理性的に見えた。
「まあ、おかしい、とは思ったけどね……………。
あんたの声は、擬声的な響きを感じるし、ゼロスが負の感情を不味いだなんて言うはずないもの。つまり、その感情は、生きてるものの感情ではない。つまり、《魔術師》のカード、ってわけよ」
でしょ?とゼロスに目で聞くと、ゼロスはただにこっと笑った。
「そうですか………」
魔術師はがっくりと、さっきよりも理性的な面持ちでそう言った。そして、苦い表情で何かを考えた後、恐る恐ると述べた。
「私は………怖いのです。いままでずっと、《ことの始まり》のカードだと、賛美されてきました。しかし、本当は違うのです。
歩めない。
暗闇の中を歩く事が怖いのです。一歩進んだところが奈落の底かもしれないということが、なにより、自分によって誰かを導くと言う事が………」
苦し気にそう訴える魔術師が、哀れでならなかった。なにより《人》に見えてならなかった。
「…………確かに、歩んでいく事は大変な事だわ。それが他人に影響を与えるのならなおさら。でも、それから逃げてどうするの?それは、ただ逃げてるだけなのよ?ことの解決にはならないわ。
それに、その力があるから、あなたはあなたになれたのよ?自信を持たなきゃ。
《始まりのカード》になれたのは、運命ではなく、あなたが導いた結果なのよ」
リナがそう言い終え、魔術師のカードに振り向くと、魔術師は嬉しそうな顔で、こう言った。
「ありがとう…………。歩むことを恐れぬ魔導士よ…………」
そう言うと、魔術師の姿が消え、眩しい光が走った。
次に目を開いた時、リナの手には《魔術師》のカードが置かれていた。

ぱちっっ
リナが目を開くと、そこは前にも見た天井が入ってきた。
「あ、気がついたんですね」
「私……いったい…………?」
エリスが、リナの手元を指差す。
《魔術師》のカード………。
「これで、あと20枚ですね」
エリスがにっこりと微笑んだ。
でも、リナにはどうでもいいことのように思えた。実感もなかったし、なにより、夢での記憶が鮮明だったからだ。
(あのカードに必要だったのは、ただ一言の慰めだったんだわ………)
ようやく起きれるように身体をベッドから起こし、これから詳しく話されるであろう、アルカナの秘密を、ゼロスと共に聞くことにした。
 …………………歩むことに戸惑う、魔術師のことを思いながら…。

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7312アルカナの神殿(2)エイス E-mail 7/31-22:21
記事番号7298へのコメント

   考える事を恐れた 女司祭長


U《女司祭長》−深い知識や考え、霊的な力


「…………というわけです」
エリスが、目の前に座っているリナ達の瞳を真っ直ぐに見て言った。
「つまり、あのカードたちを説得、なぐさめることが出来れば、カードに戻るって事?」
エリスが頷く。
「リナさんとゼロスさんの証言によると、カードは恐らく、何らかの理由があって、人の形などに具現化してると思います。だから、その理由をとりのぞき、もとのカードにもどすのです」
「そして、カードはもう、もといた位置にはおらず、どこにいるかは分からない……というわけですね」
「……正確に言えば、わかることはわかります。ですが、カードがある位置にある程度近づかなければ解らないのです。近づけば、カードが共鳴し合うので解るのですが…………」
「その《運命の輪》のカードで占うことは出来ないの?私達を見つけた時みたいに」
「《運命の輪》のカードは、運命を導く、という事柄でしか扱うことが出来ないのです。貴方達を呼ぶことは、滅びを回避する運命を呼ぶ、ということでなんとか扱えたのですが、カードを集めることも、滅びを回避することですが、それは運命ではないのです。私達がやらなければいけない範囲に収まっているので、占うことが出来ないのです………」
そこでみんなが「うーん」と唸り始める。
「結局、探し回るしかないわけね………」
「…そういうことになります………」
深い溜め息と沈黙の後、ゼロスがその場の雰囲気を取り払おうと(?)、必死に話題をそらす。
「それでエリスさん。あと何枚カードがあるんですっけ?」
「はい、もし全てのカードが失われているなら、あと20枚です」
「…もし?」
リナの訊ねたことに、エリスが丁寧に答えた。
「実は、このアルカナの全ての力《世界》のカードだけは、失われているか、その場におさまっているかすら、解らないのです。《世界》のカードは、島の真ん中にある聖域の、地下の神殿におさめられているので、入ることも、占うことも出来ず、確認が出来ないのです」
「なるほど……運がよければ19枚で済むってわけね……」
「まぁ失われてはいないでしょうが………」
「ん?なんか言った?エリスさん」
「え?いえ、なんでもないわ」
おほほ、とごまかし笑いをするエリスを、ゼロスは不審そうな目で見ていた。
「とにかく、カードを探さなければいけません。もしカードをすべて揃える前に、この島が滅んでしまえば、世界すら滅びの中に飲み込まれる事になります」
エリスが重々しい言葉を言ったが、リナはかえって前向きになったようだった。
「とにかく、カードを揃えればいいんでしょ。私も、それに便利なゼロスもいるし、大丈夫よ」
「おや?リナさん。随分協力的ですね。報酬ないのに」
便利なアイテム扱いされ、ちょっとプライドが傷ついたのか、ゼロスが反撃とばかりに言い返した。
「え?ないの?」
「「…………………」」
二人が黙り込む。そんな二人を、リナはついつい睨んでいたようだ。
「う…わかりました……。お出ししますぅ………」
リナに頼ったのが、運の尽きだろう。エリスは、リナに高額の報酬を出す羽目になったのだった。
「それにしても……次のカードはどこにあるんだろ………」
リナが唸っていると、ふ…と外に出たいという気持ちが出てきた。
 不思議に思いながらも、吸い込まれるように、ふらふらと外へ出る。
「……………?あれ?誰かからまれてる」
表に出ると、女性が数人の男達に囲まれていた。話しを聞いていると、どうやら肩をぶつけた、とかで文句を言われているらしい。
「………憂さ晴らしでもしようかな」
そう呟くと同時に、リナの唇の端が、悪戯そうにあがった。

「おら姉ちゃん、俺は肩の骨を折っちまったんだ。この落とし前、どうしてくれるんだ!?あ!?」
ごろつきの一人が、その女性の胸座を掴みあげようとした、その時。
「ったく。通行人の邪魔よ。さっさとどいてくれない?」
「なんだと!?」
ごろつきが振り向くと……
…………………………………目の前に炎の玉があった…。
「ブレイク!!」
リナが指をぱちんと鳴らすと、炎の球がうまく女性を避け、ごろつき達に襲い掛かった。
 ごろつき達はなんとか炎を振り払い、逃げの体勢に入る。
「うわぁぁぁぁ!!お、憶えてやがれ!!」
「はいはい。爆裂陣」
ちゅっど――――――――ん!!
……………その光景を見ていた一人の野次馬が『みもふたもない…』と平仮名で言ったことは、誰も知らなかった………。
「ふんっ。自分の都合だけで変な言いがかりつけるからよ」
…自分の都合でごろつき達をふっ飛ばした、ということを、棚どころか屋根の上に放り投げて言ったリナの身勝手な言葉が、知らず知らずの間に、助けた女性に変化を与えていた…。
「ん、もう大丈夫よ」
リナがそう話しかけると………。
「…………自分の……都合だけで………」
「……あの〜…もしもし…?」
話しかけても話しかけても、女性はそう繰り返すだけで、何も答えない。
リナは嫌になって、項垂れた。すると、不自然な格好が目に付いた。
(神官服………?………………………まさか…!?)
「《女司祭長》のカード!?」
びくんっ
神官服をまとった女性の体が、明らかに動いた。
「……………何故、こんなところにいるの………?」
リナがそう聞くと、女司祭長は訴えるような目でリナを見つめてきた。
「助けて………助けて……………」
いつか聞いたばかりの、でも微妙に違う、擬声音。
「………何を助けてほしいの?」
そう聞きながら、周りで野次馬をしている一般市民達に威嚇をする。
すると、わらわらと集まっていた野次馬達が、蜘蛛の子を散らすように去っていった。
女司祭長も、一般市民が去ってから、リナに話し掛けた。
「助けて…。もう嫌なの………。何も考えたくない………」
「………何故?」
子供のようにすがり付いてくる女司祭長のカードに、リナはなるべく優しい声で言った。
「もう何も考えたくない。何も知りたくない。全てを産み出せし者のことも、それを破壊していく者のことも、守るべき者を失い、絶望を望む者も………もう嫌なの。考えたくない。傷つきたくない…」
ぽろぽろと腕の中で泣き崩れる女司祭長の言葉に、リナは必要以上に考えを張り巡らせていた。
(全てを産み出せし者は…ロード・オブ・ナイトメァのこと?破壊していく者は人間?それとも魔族…?…………じゃあ、守るべき者を失い、絶望を望む者って………?)
リナの意識が頭の中に行っているということも気付かず、女司祭長は泣き続ける。
「もう嫌……考えたくないの。考えれば考えるほど、頭が痛くて、辛くなるの。あの御方のことも、もう考えていたくないの」
その言葉は、リナには届いていなかった…。
 そしてリナは、慰められるか不安に思いながら、一つ一つ言葉を告げた。
「……………………考える事は辛いと思うけど………。答えのない答えを導き出すことは大変だと思うけど…………。逃げないで。貴方が望んでいることは、貴方が存在しているということまで否定してしまうものよ。
 今貴方は確かに存在しているし、心もあるのよ。欲深い人間よりも、よっぽど人間らしいのよ。
そんな貴方を築いてきたのは、紛れもなく、貴方と貴方が考えてきたことだわ。思考を止めれば、生きていないも同じ事なんだから……………だから…」
「やめてください!!」
リナがそこまで言い終えると、女司祭長が悲鳴をあげる。
だが、悲鳴ではなかった。
女司祭長は、笑っていた。
「私は、女司祭長のカードです……。全てを言われなくても、考えはつきます」
まだ戸惑っているリナに、女司祭長は抱き着いた。
ふわぁぁぁっっっ
柔らかい風と光が走ったかと思うと、そこには《女司祭長》のカードが落ちていた。
「…………答えのない謎に、苦しむ………か」
「リナさんはなさそうですねぇ」
ぼかっっ
この音は、後ろからふいに現れたゼロスを、リナが“みぞおち”した音である。
ゼロス、むっちゃ痛そう(笑)。
「な、ひどいですよリナさん」
「なーにがひどいよ。乙女の独り言を盗み聞きして、なおかつ失礼なことを言ってきたくせに。自業自得よ」
そう言って、まだ痛がっている(ふりをしてる)ゼロスを無視し、エリスの所へ走る。
 ………………………考えることを恐れた、女司祭長のカードを握りながら…。

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7313アルカナの神殿(3)エイス E-mail 7/31-22:24
記事番号7298へのコメント

   愛に飢えた 聖母


V《聖母》−慈愛、思いやり、穏やかさ


 しゅん……
エリスは、リナの持ち帰ったカードを見て、途端に元気を無くした。
「ごめんなさい……。こんなに近くにあったカードを、確認できないなんて……」
「そんな…」
リナがぶんぶんと手を顔の前で振りながら否定するが、エリスが立ち直る様子はない。
「本当、たまたま見つけただけなのよ」
必死にカードを見つけた時の状況を説明すると、エリスが顎に手を当てながら言った。
「………もしかしたら、カード達はもう、リナさん達にしか反応しないのかもしれません」
「……?どういうこと?」
リナがエリスにそう聞くと、これまでずっと黙っていたゼロスが、確信を持ったように言う。
「つまり、エリスさんが持っているカードでは、失踪しているカードとは共鳴しない、ということです。原因で考えられることは二つ。
 まず一つは“カード”であるカードでは、具現化しているカードと共鳴することが出来ないのでしょう」
ですね、とゼロスがエリスにふると、エリスはゆっくりと頷いた。
「そしてもう一つ。それは、私達が《運命の輪》のカードに触れたことで、その力が私達に移ってしまった、という可能性です」
ゼロスはにっこりとしながら言っているが、リナにとっては洒落にならなかった。
「ちょ……じゃあどうするのよ!?私たち自身で探し回って、勘に任せるしかないっていうの!?」
「そうです……」
興奮して言うリナに、エリスが苦々しく言った。
「…………運命の輪は貴方方を選びました。だから、その力も注いだのでしょう。…………ごめんなさい……。私…なんの役にもたてなくて…………」
それを言い切ると同時に、エリスの目から、涙が流れ落ちる。
「エリスさん……」
エリスはぐいっと涙を拭き取り、無理に笑って言った。
「ごめんなさい。私、頭冷やしてきます。この街の中央にある神殿にいってきますので………」
ぺこりとお辞儀をして、エリスは去っていった。

「はぁ………。私は、もう必要ないのかしら………」
とぼとぼと神殿への路を歩きながら、エリスは呟いた。
「カードはもう共鳴しないし、私自身、何も出来ない。結局、リナさん達にすべてを任せるしかないなんて……………」
そしてまた、大きな溜め息を吐いた後、誰にも聞こえないほどの小さな声で言った。
「………。私が貴方のために出来る事は、何もないの?」
そのか細い声と、少女が愛し気に口にした名は、風の音にかき消された。
 エリスは青空を見上げた後、静かに神殿へ入った。
「…あら…?な、何!?」
エリスが神殿に入ると同時に、持っていた《運命の輪》のカードが、眩く輝き始めた。そして、光の指し示す先に、一人の女性の姿が見えた。
「………アルカナ………!?」
エリスがそう叫ぶと、その女性が振り向いた。
「……くだ…い…………あ…を………」
そうぶつぶつと繰り返しながら、ゆっくりとエリスに近づいてくる。
そして女性がエリスに触れた瞬間、
「きゃああああああ!?」
カードがまた輝きを放ち、気付いた時には異空間にいた。

「な…なんなの…?これは…………?」
エリスが周りを見ると、そこには幸せそうに笑う家族や、恋人達の姿が、まるでスクリーンのように映し出されていた。
そして目の前には、虚ろな表情で膝を抱え、呟いている《聖母》がいた。
「《聖母》のカード……!!」
聖母はその声を聞くとゆっくりと顔を上げ、エリスに抱き着いた。
絞め殺すほどきつく。
「や……やめ………」
エリスも必死に抵抗したが、力及ばず、身体はどんどん絞められていった。
「く…ぅぅ…………」
だんだん意識が薄らいでいく。視界がぼやけていく。
 その中で、エリスは不思議なものを見た。
「《聖母》………な…ぜ………泣いて………るの…………?」
聖母は、涙をぽろぽろ流し、悲壮な顔でエリスに抱き着いていた。まるで、絞め殺すというより、何かを求めるという感じで。
そしてエリスは、その何かが分かった。
「愛に飢えた《聖母》………」
聖母の動きが止まった。そして、エリスから逃げるように後ずさりをした。
「逃げないで!!」
「!?」
聖母は何をされているのか解らなかった。されたことのない事。望んでいた事。
エリスに、抱きしめられていた。
「逃げないで……………」
エリスから、涙が流れる。そしてそれは、過去を思い出す引き金となった。


  いつもいつも独りだった
  まるで聖女のように扱われて 本当の私を見てくれる人はいなかった
  そして不必要なほど敬うかと思えば 途端 私を避けた
  何もしていないのに 何をしてもいないのに

  私が何をしたと言うの? 私はただ 神官の家に産まれ 育っただけなのに
  そして 人とは違う能力を持っているだけなのに

  人々の欲望が 私の中に穴を開けた
  自分より優れた能力を持った者を堕すことで 自分を満足させる輩に

   穴を開けられた
   愛を知らなかった
   愛が欲しかった
   愛に飢えていた

   ずっと感じていた空虚は 愛という存在

  そしてあの人が教えてくれた愛は あの人を失う事で 失われた
  そして 今もあの人は束縛され続けている

   だから穴が開いていた 心という魂の中に


 辛い事を思い出して、悲しみを再現して、エリスは泣き続けていた。
聖母も泣いていた。知らなかった愛を教えてもらった事で、喜びで泣いていた。

   −あの時 私もこうされたかった………

 そう思っても、もう遅い。自分は成長した。そして、こうしてくれる人を失っている。
だから、自分と同じ聖母を、満たしてあげたかった。

  今私が抱いている聖母は、私。
  愛に飢えていた自分。
  臆病で、愛を求められなかった私の代わりに抱かれている聖母。

   −これは私

「ありがとう………ありがとう………………」
聖母は今だ泣き続けながら、エリスを抱きしめ、消えていった。
エリスが痛いほどきつく《聖母》を抱きしめていた腕は、聖母が消えた瞬間、宙を抱いていた。
しばらくぼーっとしていると、いつのまにか現実の空間に戻っていて、近くにはカードが落ちていた。
『ありがとう……ありがとう………』
そう聖母の言葉が、頭の中で繰り返される。
「…………お礼を言うのは…私の方だわ…………」
今はもうカードになってしまった聖母を、まげないようにぎゅうっと抱きしめる。
遠くにリナ達の姿が見えた。手には、新しいカードが見える。自分がいない間に見つけてきたのだろう。でも、今はどうでも良かった。
「ありがとう……。全ての者に愛を注ぐ、愛に飢えていた聖母…………」
人々にとって聖母であったカードは、私にとっても聖母だった。

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7318アルカナの神殿(4)エイス E-mail 8/1-14:26
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 4話目〜。なんでもいいから感想下さい。


   支配された 支配者


W《支配者》−たくましい男性、リーダー


  −時間がさかのぼって…………

「エリスさん、大丈夫かな」
リナが頬杖をつきながら、不安そうに言った。
「大丈夫なんじゃありませんか?」
あっけらかんとした答えに、むっとなって言い返す。
「なんでそう言えるわけ!?」
「それはもちろん」
にこにこと笑って、おもいっきり間をとった後、人差し指を立て、口元にもってきて……
「秘密です♪」
 はぁ――――――――
リナがぐでぇっと机に突っ伏す。
「おや?どうしたんですか?」
「ちょっと……ね……」
なんとか起き上がって、不機嫌そうな顔をしながら答えた。
 ゼロスには、そんなリナさえ愛しく見えていた。
(どうしてそう言えるかなんて、貴方以外目に入らないからに決まってるじゃないですか)
とも言えず、やっぱりお決まりのポーズをしてしまうのは、彼の悲しい性であろうか。それとも反応を楽しんでいるだけなのだろうか。
 それは、神さえも知らない(と思う)。
「…ま、とにかく、エリスさんが神殿に行っている間、私達はどうする?」
そう聞くと、ゼロスがふぅむ…と考え出した。
「そうですねぇ……。やはりこの状況では、カードの居場所の手がかりだけでも掴むのがいいのでは?」
ゼロスがそれほど考えもせずに言うと、リナが頷いた。
「そうね。私もそう思うわ」
「やっぱりリナさんと僕は、気が合うんですね(はぁと)」
「ゼロス、あんまり調子ぶっこいてると、呪文ぶっ放すわよ」
あんまり冗談にもなってないような冗談を言って、リナは外へ出た。ゼロスも、慌ててついていった。

 リナ達はしばらく外を歩いていたが、特に変わった事はなかった。そして、大きなお屋敷の前を通ると、そのお屋敷の中から、怒鳴り声が聞こえた。
「ったく。使えん奴だ!!お前などを買ってやった、わしが馬鹿だった!!お前は、飯抜きだ!!」
  ばんっっ
突然扉が開かれたかと思うと、使用人だろうか、粗末な服を着た男が屋敷の主人に叩き出された。
「くぅぅっっっ………」
気付けば、その男の人は、体中ずたぼろで、生きているのが不思議なくらいだった。
 リナは急いで駆け寄り、治癒の呪文をかけた。
「う………」
「だめ。こんな酷い傷じゃ、治癒じゃ治らない…………」
「こんな時、アメリアさんかシルフィールさんがいれば、あっという間に治るんですけどね」
「………」
リナは、治療呪文に長けていない自分を呪ったが、その中で少しでも良くしようと、懸命に男の体を見、知識を探り出した。
 そして、違和感に気付いた。
「………………………?変だわ」
「なにがですか?」
ゼロスがいぶかしげに聞いた。
「こんなに傷がついてるけど、全部、紙の切り口のような傷だわ…………。
………………………ということは………」
「私は………《支配者》のカードです」
「!?」
リナが言い終わらぬうちに、その男が先に、言おうとしていたことを言った。
「どうしてこんな所で………」
男は、にこりと笑った。
「いえ、いつのまにか人に具現化していて、奴隷としてこの家に買われたんです。傷があるせいか、他の理由かは知りませんが、なぜかカードに戻れなくて………」
「へ………?」
リナが間抜けな声を出す。それもそうだろう。今までとは全然パターンが違うのだから。
「まあ《運命の輪》の力を持つあなたがたが来てくれたので、どうにかカードに戻れそうです。ありがとう」
そう言うと、支配者のカードはリナの手を握り、カードに戻っていった。
「………このカードには、悩みはなかったのかしら……………………」
リナがカードに手を伸ばすと、心に直接声が流れ込んだ。
『あ、それから、もうこの街にカードはありません。他のカードを探すなら、《司祭長》の街に行って下さい。まずはこの街の神殿に行って下さい。貴方の仲間が《聖母》のカードを手にして待っています』
そして『それでは…』という声を最後に、もう言葉は聞こえてこなかった。
「仲間って……エリスのこと?カードを見つけたんだ。ゼロス、急いで神殿に行くわよ」
「はいはい」
もう駆け出していったリナを、ゼロスはマイペースについていった。
(あのカードの悩みは、支配する事の苦しみ、だったんではないでしょうか)
自分には縁のない青空を見上げながら、ゼロスは思った。
(僕には関係のない事ですが……きっとあのカードは、これから優しくなれるでしょうね…………)
支配された支配者は、支配される苦しみを知った。


「エリス!!」
二人は街の中央にある神殿の中へと入っていった。神殿の中には、カードをぎゅっと抱いているエリスの姿があった。
「リナさん…………。カード、見つけたんですね………。私も見つけました」
にっこりと笑って、リナに《聖母》のカードを手渡す。
「あれ?エリスさん…………泣いてた?それに、なんか、雰囲気違う………」
リナがそう聞くと、エリスは驚いた顔で目を擦った。
「え?ええ、ちょっとね……………」
笑ってみせる表情さえ、違うように見えたが、リナは気にしない事にした。
  リナは。
 ゼロスはそのエリスの雰囲気の違いに、恐ろしいものを感じていた。
(これは………!?もしかするとこのカードは、恐ろしいものかもしれません。人の心を変えてしまう。心の持ちようを変えてしまう………)
自分も変えられてしまうのか、それは、運命だけが知っている………。

…………………………………………………………………………………………………

「なるほど……支配者のカードはそう言ったのですか………」
「ええ。司祭長の街へ行けって。どこか解る?エリスさん」
エリスが顎に手を当て、考えながら言った。
「ええ。司祭長……《ハイエロファント》の街………。確か、この街から南南東に行ったところだったと思います」
「一刻も早く行きましょう。エリスさん。嫌な予感がする」
「ええ、もちろんよ」
エリスは凛々しい表情で、そう言ってみせた。
(強くなりましたね……この数時間の間に…………)
ゼロスはほとほと感心していた。最初に会った時は、あんなに負の瘴気を発生させていたのに、今は希望という感情さえ感じられる。
(やはりこのカード……恐ろしいものです……………。人に少なからず影響を及ぼす。それも、正負どちらに傾くか解らない影響を…………。でも、さすがのカードも、僕を変える事は出来ないでしょうけどね)
ゼロスはそう結論すると、エリスを抱えた。
「さあリナさん。浮遊で一気に街まで行きましょう」
「OK!!エリスさんは、道案内お願いね」
「わかりました」
リナはカオス・ワードを唱えると、静かに浮き上がった、ゼロスも、エリスを抱えたまま浮き上がる。
「南南東だったわね。じゃ、行きましょうか」
そうしてリナ、ゼロス、エリスの三人は、カードを求めて《司祭長》のカードを祭る街へと向かった。

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7320アルカナの神殿(5)エイス E-mail 8/1-14:28
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   地に堕ちた 司祭長


X《司祭長》−救い、同情、瞑想


「エリスさん、この辺り?」
リナが飛びながらエリスに話しかけた。
「そのはずですが………」
エリスは、いまいち自身がないようだった。地理は知っているが実際に行った事などないし、なにより、この辺りが荒れ果てているからだろう。
「大丈夫ですよ。エリスさん。ほら、あそこに街が見えます」
ゼロスが指差した場所には、確かに街があった。

「な………なによこれ…………!?」
リナが呟いた。
「確かに………ひどいですね………」
ゼロスが遠くを見渡すが、風景に変わりはなかった。

    惨状だった。

まるで、死神でも暴れていったような感じだった。
「本当に、ここにカードがあるのでしょうか」
エリスがゼロスの腕の中で不安げに言った。
「大丈夫でしょ。同じカードのいうことだもの。一番信用できると思うわ」
そう言いながら、リナの視線はエリスに注がれていた。
(ったく。私には関係ない事だけど、そんなにくっついてることないんじゃない?もう目的地についてるでしょ)
イライラしてるせいだろうか、どうも誰かに当たりたくなる。
(ううん、だめだめ。ここでエリスさんに当たっても、なんにもならないわ)
すう…と深呼吸をした後で、エリス達に振り返った。
「とりあえず、カードを探しましょ。ここは、二手になった方がいいわね」
リナがそう言うと、エリスがゼロスから降ろしてもらい、言った。
「なら私が一人になります」
「え?でも、エリスさん…………」
何を心配してるか、解ったのだろう。エリスはそれを聞いて、にっこり笑った。
「大丈夫です。この間の事で、私にもカードをカードにすることが出来ると解りました。それに、私も自分の身くらい守れます」
「リナさん、エリスさんもああ言ってますし、ここは任せましょう」
リナが、エリスの目をじっと見詰め、その後、小さく溜め息を吐いた。
「解ったわ。エリスさん。だけど、絶対無事で帰ってきてね」
「ええ」
エリスは笑った。それも、絶対に約束するという、強い意志のある笑顔。
(会った時は、あんなに不安そうにしてたのに………)
負けられない。私も頑張らなきゃいけない。
「じゃあエリスさん、私達は東に行くわ」
「わかりました。では、私は西に………」
リナとゼロス、エリスは、別れてカードを捜索し始めた。


 エリスはリナ達と離れ、神殿に向かっていた。
聖母のカードに触れたせいだろうか、なぜかカードの居場所が不思議と解った。
(神殿の中にいる……)
 そして神殿の扉を開けると、やはりいた。
「《司祭長》のカード………」
「………なんですか?エリス様。あの御方のかたわれよ」
エリスはその言葉を聞いた途端、カッと熱くなった。怒りの感情によって。
「《司祭長》。カードに戻りなさい」
「……なぜですか?」
司祭長はエリスに背中を向けたままで、神殿に祭られている像を見上げていた。
「貴方が…いえ、全てのカードを元に戻さなければ、この島だけでなく、世界全てが混沌と化すわ」
「私は………もう人の役にたつことなど、止めたのです」
エリスの目が開かれる。
「《司祭長》。貴方、私の能力も忘れたの………?貴方の心は、本当にそう言っているかしら」「人の役にたちたくないのならそれでもいいわ。なら、自分のためにカードに戻りなさい」
私の能力、このせいで、人から怖がられたことが何度もあった………。
「そうでしたね………。貴女様は、私達の主を抜かして、唯一私達と心を通わせることが出来る御方………」
「そんなこと言わなくていいわ。司祭長、カードに戻って。人の役にたちたくないのならそれでもいいわ。なら、自分のためにカードに戻りなさい」
「…………エリス様は、厳しくおありなのですね。そして、優しくていらっしゃる」
すると司祭長はくるりと振り向いた。
「解りました。カードに戻りましょう。ただし、条件があります」
「いいわ、言って下さい」
エリスが覚悟を決めてそう言うと、司祭長はふ…と微笑んだ。
「あの御方を救って差し上げて下さい。そして……貴女も…………」
言い終える前に、いや、言えなかったのだろうか。とにかく、司祭長はカードと化した。
エリスはそのカードを無言で拾うと、神殿をあとにした。
 自分の能力で、司祭長の言いたかったことは、手に取るようにわかった。
「あたりまえじゃない………」
そう呟いて、地に堕ちた司祭長に誓った…。

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7321アルカナの神殿(6)エイス E-mail 8/1-14:32
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   恋を忘れた 恋人


Y《恋人》−気持ちが通じる、幸せな時


 一方リナ達は、東にそびえる大樹へと向かっていた。
「ゼロス、本当にこっち?」
「ええ、波動を感じます」
そう言いながら、リナを誘導していく。
(そういえば私、なんでさっきあんなにイライラしたんだろう。ゼロスの事なんかどうでもいいのに………)
「疲れてるのかなぁ」
リナがそう言った事にも気にせず、ゼロスはどんどん進んでいった。

 空にとどくほどの大樹の下、波動の主を、ゼロスは見つけた。
「ほらリナさん。いましたよ」
カードはリナ達に気付いたのか、自分から近づいてきた。
「こんにちは。私を探してた?」
「ええ。いきなりだけど、カードに戻ってほしいの」
リナがそう言うと、カードは残念そうに言った。
「私………もうカードに戻れないわ。恋する事を忘れてしまったの」
「《恋人》のカードですね」
「御名答」
恋人のカードはそう言って、くるっとまわってみせた。そしてすとんと地に座る。
「本当の恋なんかないわ。恋なんて、いつかは冷めるものなのよ。そう考え始めてから、恋と言う感情すら忘れてしまったわ」
「そういえば、彼はどうしたんです?」
そうゼロスが言ったのを聞いて、リナは周りを見まわした。確かに、この彼女の片割れの彼がいない。
「あの人はいるわ。でも、人に具現化できなかったの。私が具現化してしまったからかもしれないわ。一枚のカードでは一人しか具現化できないのよ。意識だけとなって、漂流してるんじゃないかしら」
恋人のカードはどこだか分からないところを指差しながら言った。
「そうすれば、カードに戻ってくれるの?」
「そうね……」
真剣に考え出したカードを見て、リナは嫌な予感がしてきた。なんというのだろうか、まるで、ゴキブリホイホイがあるとわかっている路を、通っていかなくてはいけないような………。
「決めた!!ねえ、ちょうど男女一人ずついるんだもの。一時間でいいから、恋人として過ごしてくれない?」
「……………え?」
 が――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――ん!!
「あのぅ…リナさん……?そこまで嫌がらなくても……」
「そ、そんなこと言われたってねえ!!」
実際、むちゃくちゃ嫌だった。シャブラニグドゥが頭の上に落ちてきたくらいに……いや、それに加えて何人ものガーブに周りを囲まれ、リンボーダンスを踊られているくらい、ショックだった。
「お願い。演技でもいいの。恋人同士が本当に幸せな時を過ごせるかどうか、知りたいだけなのよ。思い出したいだけなの」
恋人のカードの目は、必死なように見えた。
「……(かなりの間)……わかったわよ。演技でもいいのね?」
「ありがとう。無理言ったのに…………」
「いいのよ別に」
私はにっこり笑った。本当言うと少し、というかかなり嫌なのだが、この子が妹のように見えて、なんだか放っておけなかった。
「で?なにをすればいいのかしら?」
そう聞くと、カードはふるふると頭を振った。
「何もしなくていいわ。ただ、楽しく過ごしてくれればいいの」
「わかりました」
ゼロスが普段通り、人を食ったような(本当には食ってない)笑顔を見せた。
(あーもう。なんか下心がありそう………)
リナはそう思ったが、引き受けてしまったものは仕方ない。とりあえず、なんとか楽しむ事にした。
「ゼロス、じゃんけんしましょ。私が勝ったら今度御飯食べ放題に連れていって。もちろんあんたのおごりで。私が負けたら御飯食べ放題、割り勘で許してあげる」
「あのぅ……なんかどっちもリナさんに都合がいいような………」
「気のせいよ」
と言いながらも、リナの目はかなり本気だった。リナにとっては、全部おごりと割り勘では全然違うのだ。本気にもなるだろう。
「それじゃ不公平ですからこうしましょう。リナさんが勝ったら御飯食べ放題、僕が全部おごります。ですけど僕が勝ったら僕のいうこと、なんでも一つ聞いて下さい」
「…………しょうがないわね…」
「「せーの!!」」
二人同時に拳を出した。リナはチョキ。そしてゼロスは…
「ああああああああああああああああああああああああああああああ!?」
ゼロスの拳は、かたく握られていた。
「(にっこり)僕の勝ちです。さ、いうこと聞いて頂きましょうか」
「わ、わかったわよ」
リナが観念してそう言うと、ゼロスの目が怪しく光った。
「キスして下さい」
…………………………………………沈黙………………………………………………
「なぁぁぁんですっっってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」
大地を揺るがすリナの悲鳴にも、ゼロスは笑ったまま。
「なんでも聞くって言ったでしょう?口じゃなくてもいいですから」
「そんなぁ………………」
ファーストキスもまだなのに、と言おうとして寸前のところで踏みとどまる。そんなこと言えばからかわれるに決まってるからだ。っていうかファーストキスまだって、NEXTの最終話はどういうことじゃい(笑)。
「しょうがないですねえ」
そんなリナや作者の言葉も無視して、ゼロスが動いた。
「だ…っっっ」
リナは抗議の言葉を最後まで言う事は出来なかった。
  頬に柔らかい感触。
  冷たいようなで温かなもの。
  そしてゼロスが近くにいる………。
「ちょっと不満ですが、これで良しとしましょう」
ゼロスが離れてそう言ったが、リナは呆然として、何が起こったか分かっていなかった。
「………………え?ふぇ?あっ………あれ?え・……?あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
途端にリナの顔が真っ赤になって、震えながらゼロスを指差した。
「あ…あんた、い、今。わ、わわ私に、き…キキキキ………」
「リナさん。落ち着いて下さいよ」
「これが落ち着いていられますか――――――――――――――――――!!」
ぜぇぜぇ言いながら肩で息をするリナに、ゼロスは平然とした顔で言った。
「おや?キスくらいでどうしたんです?頬にキスくらい、なんともないでしょう?それとも、天下のリナさんが約束した事を破るなんて、ないでしょう?キスくらいで」
いちいちキスキス繰り返すところが、また嫌味くさい。ところが、リナは反論できずにいた。やはりゼロスはリナの性格をよく知っているのだろう。
「う、うるさいわね。ゼロスのくせに生意気よ」
と、某猫型ロボットの出てくる、某いじめっ子のような発言をして、リナは後ろを向いた。すると、いままで静かにしていた恋人のカードが、くすくすと笑い出す。
「…………?どうし…たの?」
「だって…(くすくす)おもしろいんだもの(くすくす)。喧嘩するほど仲がいいって聞くけど……(くすくす)こんな楽しいのは(くすくす)見た事ないわ(くすくす)」
しばらく顔を伏せてめいいっぱい笑ってから、恋人のカードはゆっくりと顔をあげた。
「ありがとう。なんだか元気になってきた。私、カードに戻れそう」
「そう、良かったわ」
リナは心底ほっとした。まあ、なんであんなことで満足するのかは疑問だったが。
「気に入ったから、一つ教えてあげる。カードってね、意志もあるしちゃんと自分を持ってるけど、その悩みはそのカードのものであって、そのカードのものじゃないの。持ち主に影響されちゃうのよね。私の持ち主も、大変だったみたいよ」
「その人って、生きてるの?」
「残念ながら死んでるわ。もし生きてたとしても生きた屍か生ける怨霊ね」
意味不明な発言をする少女に、リナ達は戸惑ったが、消えかかる少女の姿を見て我を取り戻した。
「じゃあね。けっこう楽しかったけど、演技でもいいからもうちょっといい雰囲気になってほしかったな」
その言葉に、リナが不必要に反応する。もちろん、顔は真っ赤だ。
「だ、誰がこんな奴と」
「お姉ちゃん」
カードがちっちっと指を左右に動かす。
「意地はってたら、ずっとそのままだよ」
リナの目が見開く。
 ゼロスは、不可解な笑顔を浮かべているだけだった。
「じゃあね、お姉ちゃん達。恋人達の味方、《恋人》のカードから、永遠なる祝福を…………」
そう言って、少女はカードへと変貌した。
「これでまた一枚ですね」
「そうね……………」
リナの目は宙を見つめていた。
『意地はってたら、ずっとそのままだよ……』
(ゼロスとなんかなんでもないのよ。誰があんな奴と…………)
そう強がってみても、正直言うと分からなかった。自分がゼロスをどう思ってるのか。ゼロスが自分をどう思ってるのか。
 ただ一つ言える事は、恋人のカードが言った言葉通りになったら、嬉しくて、悲しいという事だった。
「………さ、いきましょ」
今は気にしていたくなかった。まだ恋人のカードの、言葉の余韻がある今は。
 だからリナは、仲間の場所、エリスの場所へと歩いた。
…………………………………恋を忘れた、恋人達の言葉に悩まされながら………。

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7331アルカナの神殿(7)エイス E-mail 8/2-15:50
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 そろそろ虚しくなってきました。
でも、まだまだ続く。


  砕け散った 戦車 と 立ち上がれない 力 と 真理を否定した 隠者



Z《戦車》−前進、勇気を出す、やりとげる


[《力》−力強さ、敵に打ち勝つ、束縛からの解放


\《隠者》−華やかな生き方を嫌う、安全を求める


「《恋人》に《司祭長》………。でも、カードの波動が微弱ながら感じるから、まだいるはずよ」
「エリスさん、こっちからじゃないですか?」
リナが北の方向を指差した。
「そうですね。あるとすれば、まだ行っていないところにあるんでしょうから、北か南にあるのでしょう」
「じゃあ北に行きましょう。今度は3人で」
エリスはそう言って、北へ歩き出した。リナ達もそれについていった。

しばらく歩いた頃、不思議な人影が見えた。
その人影は呼びかけても返事も何もせず、ただぼんやりと地を見つけていた。
よく見ると人は二人いて、二人とも大怪我をしていた。その割には血が一滴も流れていなかったが。
「カード……?」
そう呼んでも反応がないので、本当に人なのかと思ったが、血が出ていないのを見て、考えを改めた。
「こんなに大怪我をしているのに血が出ていないという事は、やはりカードなのでしょう。ただ、これらのカードは力、もしくは精神を消耗し、反応を示さないのではないでしょうか」
「つまり、人間でいうところの疲労かうつ病でしょ?」
エリスが自信なさそうに頷いた。
 そう話している間にも、カード達はぼーっとしていた。きっと目や耳からリナ達の姿や声は入っていても、意識がないのでわからないのだ。
「どうすればいいんでしょう………」
エリスとリナが唸りだした。ゼロスはのほほんとしていたが、それをつっこむ余裕がないほど考え出した。
「そうだ。ゼロス、魔術師の時みたいに、負の感情食ってみない?もしかしたら苦しくて意識を戻すかもよ」
リナが提案したきたことに、エリスも賛成したようで、ゼロスを見つめてきた。
「はぁ……それはいいんですけど……………」
「不味くて嫌、とか言い出したらラグナ・ブレードでぶった斬る」
「やります、やりますよ。もう」
リナに脅迫され、ぶつぶつ言いながら負の感情を食らう。
「う……ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!」
案の定、効果は出た。負の感情を食らってすぐに、カード達が来るしみだしたのだ。
「ゼロス、ストップ!!」
カード達が来るしみだし意識を取り戻したとわかると、すぐに負の感情を食らうのをやめさせる。負の感情を食らい尽くした時、運が良ければカードに戻るだろうが、最悪の場合、カードが消滅してしまうからだ。
「う………くぅぅ…………」
しばらく苦しみ悶えていたが、落ち着いてきたのか私達に気がついた。
「ねえ、貴方達カードでしょ?元の姿に戻らない?」
リナがそう聞くと、カード達は突然顔を上げた。
「あなたがたは………」
「私はリナ・インバース。後ろにいるのがエリスさんで、そっちでへらへら笑ってるのがゼロスよ」
「そうですか……貴方が有名な、あのリナ・インバースさん………」
どこがどう有名なのかを聞きたくなったが、今はそれどころではない。こめかみがぴくぴくしているのを感じながら、リナはなんとか癇癪を抑え切った。
カード達はしばらく二人で話し、その後こっちに振り向いた。
「わかりました。ただ、条件があるのです」
「条件によりますねぇ」
ゼロスが勝手に返事をしたが、二人のカードはそれに真剣に答えた。
「条件とは、リナさんに私達を持っていてほしい、ということです」
「へ?なんで?」
そう聞くと、数秒ほど間があってから二人は答えた。
「私の主人は絶望していました。その結果、今頃になってカードに影響が出たのです。勇気や力を意味する私達ですら、絶望の淵に追いやられました。だから、是非貴方に持っていてほしいのです。心の強い、貴方に」
「……そんなことでいいわけ?いいわ。絶対私が持っておく」
そう言うと二人のカードはよろめきながら立ち上がった。
「ありがとう。リナ・インバースよ。それから……エリスさん」
二人は後ろにいたエリスに声をかけた。まるで、知り合いのように。
「あの御方を、助けて差し上げて下さい………」
「!?」
エリスが驚愕の表情で二人のカードを見つめた。カード達は微笑したかと思うと、カードへと戻っていった。
『私達は砕け散った戦車と、立ち上がれなくなった力です……』
そういう響きと共に。
リナはカードを拾うと、カード達との約束通り、腰につけている小さな荷物入れの中にカードを入れた。
「自らで砕け散ったと称するとは、よほど辛かったんでしょうね……」
「………そうね……」
そう言ってきたゼロスの言葉に返事をしながら、リナの視線はエリスへといっていた。
苦しみとも悲しみとも、そして罪悪ともとれる、彼女の辛い表情に。
(エリスさん……)
あの御方って誰?
そう聞きたくなるのを、必死に我慢する。
 きっと、聞いてはいけないことだと思ったから。
(……エリスさんから話してくれるのを待とう……)
そう決めると、エリスさんの肩を叩き、笑ってみせた。
「さ、次のカード探そ。エリスさん」
「…………そうですね」
エリスは微笑し、来た道を引き返した。
「さ、リナさん、ゼロスさん。残りのカードを探しに行きましょう!!」
「ええ!!」
ゼロスは苦笑しながら二人についていった。
リナの腰では、砕け散った戦車と、立ちあがれない戦車が、袋の中で揺れていた。

「こっちだと思うんだけど……」
「リナさん、あそこ…!!」
リナ達は南への路を歩いていた。そしてそこで、カードを見つけたのである。 
「《隠者》!!」
振り向いたのは、初老の男。ただ、その目は生気を失っていた。
「…エリス殿…………」
隠者の目が、すっと細められた。
「隠者お願い。カードに戻って」
「私にはもう……真なる…信じられる真理がないのですよ……」
「隠者……!!」
エリスが叱咤するような声をあげた。
リナとゼロスは、ただ見守っていた。
「エリス殿、あの御方は今も苦しんでいらっしゃる………私はもう…今まで信じてきた事が信じられなくなったのです」
エリスが説得を試みようと口を開けるが、隠者は続けて言葉を放った。
「だからエリス殿……真理を作らせて頂けますか………?真実の者達は、いつか巡り逢えるという」
「………!?隠者………!?」
エリスが驚きの表情で隠者を見た。そこには、すでにカードとなった隠者の姿があった。
「エリスさん………」
今のやりとりを見てからだろうか、それとも戦車と力を手に入れた時だろうか、リナの胸には、拭っても拭い切れない疑心感が出てきていた。
(エリスさん。真実の者って……何?何を隠してるの?あの御方って?)
聞きたい。でも聞けなかった。とてつもないようなことに思えたから。ゼロスも、それを感じて何も言えない。エリスさん、貴方は誰なの?
 仲間達が抱き始めた疑心感を知ることなく、エリスは真理を否定した隠者を、苦い顔で握っていた。

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7335Re:アルカナの神殿(7)おどる猫 E-mail 8/2-19:12
記事番号7331へのコメント

エイス様江

初めまして。おどる猫と申します。
面白いですね〜アルカナの神殿。

特に「愛に飢えた聖母」の話は、
パソコンがあるのが居間にもかかわらず、
ボロボロ泣いてしまいました・・・(をいをい・・・)

これからも頑張って下さいね☆
それでは短いですが、これで。
おどる猫でした。

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7339ありがとうございます〜エイス E-mail 8/3-09:35
記事番号7335へのコメント


>エイス様江
>
>初めまして。おどる猫と申します。

 初めまして、おどる猫さん。エイスといいます。

>面白いですね〜アルカナの神殿。
>
>特に「愛に飢えた聖母」の話は、
>パソコンがあるのが居間にもかかわらず、
>ボロボロ泣いてしまいました・・・(をいをい・・・)

 そう言ってもらえてとても嬉しいですわ。
 あんな話で泣いて下さるなんて、なんて寛大で、なんて感受性の強い御方(誉めてるのか?)←誉めてます。

>これからも頑張って下さいね☆
>それでは短いですが、これで。
>おどる猫でした。

 ありがとうございます♪これからも頑張りますので、これからも見て下さい。

 それでは。
    エイス

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7340アルカナの神殿(8)エイス E-mail 8/3-09:45
記事番号7298へのコメント

 8話目。やっと半分です。

  夢を紡ぐ 運命の輪


]《運命の輪》−運命的な出来事、チャンスの到来


「今日はここで休みましょう」
隠者を手にした街から西に行った街で、エリスがそう言った。
浮遊で移動しているとはいえ、辺りはすでに真っ暗で、確かにそろそろ宿を確保しておきたいところだった。
「そうですね。今のところカードの力は感じませんし、お二人ともお疲れのようですしね」
ゼロスはそう言いながら私とエリスを見た。
「じゃあさっさと休みましょ。タイムリミットは、明日ではなくても遠い未来ではないんだから」
リナの言葉に、ゼロスとエリスが頷いた。
「じゃ、そこにしましょ。宿なんて、中程度が一番いいのよ」
そう言って指差したのは、少し小奇麗な普通の宿だった。


 食事も済み、風呂にも入って、エリスとリナは同じ部屋でくつろいでいた。
…………念のため言っておくが、もちろんゼロスはいない。寝る必要がないからと、カードを探しに行ったのだ。
 夜もとっぷりとふけ、二人は眠りの中へと入っていった………。

 サイドe
 エリスはどことも知れぬ暗闇の中にいた。
ただそこに、あの人の残像があることだけ、はっきりとわかった。
 自らの視界に入ってくるのは、幸せそうな昔の私と、懐かしい男の人。
「もう思い出さないって、決めたのにな………」
エリスがいつもと違う言い方で、その姿を見つめていた。
「ティム………」
その名前を口にした途端、涙が零れてくる。
 自分が紡いだ名前は、ただ一人愛した人。
「変わってないわね………そう、あの人だけは、私の心の中で時が止まったまま」
あの笑顔も、もう帰ってこないものだと知っていた。

   私のせいで

 エリスの目には、残酷に愛しい人だけが映っていた。

  あの時、貴方は誰よりも強くて、誰よりも残酷で、誰よりも優しい人だった。
  まるで、大アルカナ全ての意味を集めたみたいに。
  だから妬まれて、いつも虐められてた。それでも笑顔を絶やした事はなかった。
  私、貴方が好きだったわ。

 思考の中で過去形で言われた言葉は、どういう意味だったのだろうか。

  そして、悪知恵の働く奴等の手によって、当時貴方の恋人であった私は、貴方の前で汚された。それで逆上した貴方は理性を失い、そいつらに襲い掛かり、そいつらに殺されたわ。
  そしてあいつらは、正当防衛と言い張って、結局罰は与えられなかった。私を汚した事は、あの人が策略で殺された事は、誰も言わなかったから。言えなかったから。

 エリスの瞳が、今までにあったかと思うほど、怒りの炎を灯していた。憎々しい、そんな言葉を言わなくても、全身からそう感じられた。
 強く握りすぎ、ついには自分を傷つけてしまった手で。

  許せない……!私からあの人を奪ったあいつら……!!あいつらのせいで、私は巫女を続けられなくなった。親や友達は私から離れ、ついには手さえも差し伸べてくれなくなった。夢や希望もなくし、ただ朽ち果てる事だけを待っていた。
  あいつらのせいで…………………!!

 だが、その悲痛な声は、表には出なかった。
エリスは、良い子過ぎたのだ。全ての叫びが内へと響き、全ての罪悪が自分を締め付ける。
 親はそんな子に手も差し伸べなかったし、友達は、しょうがないから付き合ってあげる、的な感情がモロバレだった。
 そんな彼女から唯一の人を奪った奴等は、悠々と自分の研究に没頭している。
(あいつらのせいで…………!!)
心の中だけで叫んで、少しは落ち着いたのだろうか。誰もいないはず空間に向かって、涙を拭きながら話しかけた。
「もういいわ、運命の輪よ」
それを聞くと、暗闇の中から一つの影が浮かび上がった。
『申し訳御座いません』
「……いいえ。感謝してるわ」
忘れたいと何度も思ったけど、これは決して忘れてはいけないことなのだ。
「…リナさんは………?」
『夢の中にいます。私が作った幻覚の中に』
「そう………」
あの少女は、どんな夢を見るのだろう。
 運命の輪が作り出す幻覚に影響されるのは、今最も心の割合を占めるもの。
「でも、貴方って意地悪ね…………本当に……………」
エリスがまた泣き出した瞳の先には、薄暗い中、唯一の愛した人の姿が浮かんでいた。

 サイドl
 リナが目を開けると、不思議な空間に立っていた。
炎のように赤い風景かと思えば、空のように青い色になってみせた。
「この空間って………」
リナが疑問をそのまま口にすると、突然エリスとゼロスが現れた。
「エリスさん!ゼロス!!ねえ、ここって……?」
エリスに手を伸ばす。
「!?」
その手は、半透明なエリスの身体を、何の抵抗もなくすり抜けた。
 そして、二人は消えた。
「な…………!?」
リナが驚いている暇もなく、今度はなにか人の気配を感じた。
 不審に思いながらも、気付かれないようにそっとそちらへ近づいた。
「そんな………………!?」
そこには、先ほどエリスが見ていた、いや、エリスの思考そのものまでもがリナの脳の中に入ってきた。
 リナの心の割合の、大半を占めるもの。
   エリスの謎………。
それが夢と言う形で、簡単に知る事が出来てしまった。
 そして、知ったと同時に、知ってしまったという罪悪が生まれてくる。
「エリスさ………!」
そして今度は、ゼロスの姿が出てきた。


……………………………………………………なに?

そう思った時には、すでにそこら中にゼロスの姿があった。
へらへらと笑っているゼロスや、魔族を相手にする時のような怖いゼロス、リナをからかってるゼロスなど、実にさまざまなゼロスがいた。
そしてリナは、混乱していた。
(な……なんなのこれ……。夢……よね…………それとも、頭でもぶったのかしら………。夢とはいえこの私がゼロスなんかの夢見るわけないし、やっぱり頭をぶつけたんだわ)
 頭の中で考えがぐるぐると回る。
「リナさん」
…………………………………………………………………………嫌…………………
「リナさん」
「リナさん」
「リナさん」
「リナさん」
「リナさん」
「リナさん」
「リナさん」
「リナさん」
「リナさん」
「リナさん」
頭の中で、ゼロスの声がぐるぐると回る。
 同じ顔をした者が、いっぱい出てきて、同じように話し掛けてくる。普通の精神ならば、まず卒倒するほど気持ち悪い。
「リナさん」
そして、限界に達した。
 リナはすっと意識を手放した。

ゼロス、リナの心の大半を占める、もう一つの言葉である。



………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………話そう………………
眠りから目覚めたら………………………………………………………………………
……………リナさん達に……………………………………………………………………………………………………………私が今日眠りの中で体験したことを…………。
エリスはそう決心を固めながら、涙を流していた。

…………………………………夢を紡ぐ運命の輪に、感謝と怒りを感じながら…。

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7341アルカナの神殿(9)エイス E-mail 8/3-09:49
記事番号7298へのコメント

   魔に染まる 正義 と 希望を捨てた 吊るし人


]T《正義》−バランスがとれている、無理をしない状態、調停


]U《吊るし人》−困難、どうしようもない状態、忍耐


 次の日、エリスはリナに夢で見た事を話そうとしたが、リナはもう知っている、と聞こうとしなかった。自分で言いたかったのだが知っているならしょうがないので、それをあきらめ、宿を出た。
「ゼロス、帰ってこないわね〜」
リナはのんきに言っているが、目の方は充血していた。夢のせいでよく眠れなかったのだろう、エリスは聞かない事にした。
「帰ってくるまでの間、カードを探しましょう」
そう言うと、エリスはすたすたと歩き始めた。
「そう言えばエリスさん。なんかこのごろ、よくカードが見つかると思わない?勘にまかせてるのに」
前を歩くエリスに、リナが話しかけた。
 エリスは少し考えた後、そのまま歩きながら言った。
「きっと、カードが集まってきた事で、私達に注がれた力が、本物に近づいてきたのでしょう。これらのカードは22枚全て集まってこそ本当の力が出ます。そのせいではないでしょうか」
エリスが言い終わった後に、立ち止まった。リナも同じように立ち止まる。
「今度は何のカード?」
リナがおもしろそうに聞いた。
「《正義》と《吊るし人》………でしょうね」
エリスが目の前にいる者を見ながら言った。
「正義……ね。アメリアがいればおもしろい事になったと思うんだけど」
リナが、はぐれてしまった娘の名前を出す。
(そういえば、このごろ忙しくて記憶の片隅にすらなかったのよね……。アメリアもゼルも元気かしら)
「リナさん。何を考えてるかは知りませんが、今はカードを」
「はいはい」
エリスにつつかれ、リナが二人のカードを見つめた。
「《正義》《吊るし人》よ。カードに戻りなさい」
エリスがそう言うと、女−正義の方−がエリスに向き合った。
「正義?正義とは、こういうことを言うのですか?」
そう言いながら、人形を取り出した。
 その人形は、よく見るとぼろぼろの服を着ていて、顔も汚れていた。
−……………………………………………………人形?…………違う………!!−
「子…供…………!?」
正義が、その名前にふさわしくない笑いをした。
「そんな…!カードが人に害を与えるなんて………!!」
すると、隣で黙っていた男−吊るし人−が口を開けた。
「カードだからと言って、人に害を与えないわけではありません」
その言い方にははけがなく、なにより気力が感じられなかった。
「正義!!吊るし人!!カードに戻りなさい!!約束するわ。もう貴方達が絶望を感じなくてもいいと!!」
(エリスさん………)
昨日の夢を覗いたものの、まだ謎が残っていた。
 あの御方と、エリスの関係……。
(あの御方は、正体すらわからないけど、カード達はエリスとなにか関係があるような言い回しをしてた)
リナはいつの間にか考えていた事を振り払うと、エリスの説得を見守った。
「絶望……?笑っちゃうわね………私はそんなの感じてないわ………」
そう言いながらも、《正義》の瞳は戸惑いを覚えていた。
「エリス様……本当ですか………?もう、絶望を感じなくてもいいと………」
《吊るし人》が乞うような瞳をした。
「ええ……。だからカードに戻って」
エリスが優しくそう言うと、吊るし人のカードは、カードに戻った。
「リナさん。持ってあげて」
リナはエリスからカードを受け取ると、ぎゅっと握った。
 正義の表情は、困惑していた。
「《正義》。貴方もわかるでしょう?この人は、絶っっっっっっっっっ対絶望したりしないわ。そんなことするほうがおかしいくらいにね」
(エリスさん。どういう意味よ)
普通なら爆裂陣ものの台詞を、リナはなんとか堪えきった。
「だからカードに戻って。正義よ。昔の貴方はこんなんじゃなかったでしょう?
もうこんなことしなくていいから。カードに戻って」
「………………はい……」
正義のカードは、さっきまでとはあきらかに違う態度で、素直にカードに戻っていった。
「正義のカードすら、すたれてしまうなんて………」
エリスの目には、先ほどの正義のカードのような、困惑が混じっていた。
「エリスさん………」
声をかけようとした時、上空にゼロスの姿が見えた。数枚見慣れないカードがある。
「…どこであんな荒稼ぎしてきたのよ。あいつ」
エリスがくすりと笑った。
ゼロスはカードだけではなく、次のカードの情報まで集めてきたようで、北西の方角へ私達を誘導する。
私の手の中で、魔に染まる正義と、希望を捨てた吊るし人のカードが、泣いているような気がした。



 9話終わり。
ちなみに次の3話はゼロスの独壇場です。
 ゼロスファンは必見……かな?
あ、文章力の無さで怒らないでね。

 それでは。

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7342Re:アルカナの神殿(9)8/3-13:14
記事番号7341へのコメント

初めまして。琳と申します。
(いつも、読み逃げしてるので、感想書くのは初めてだったりします。)

タロットカード、私は持ってないんですが、すごく好きなのでとても楽しく読ませていただいてます。
これからのゼロス様がご活躍、楽しみにしてますので、がんばってくださいね(はぁと)。

それでは、失礼します。

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7343頑張りますわエイス E-mail 8/3-15:25
記事番号7342へのコメント


>初めまして。琳と申します。
>(いつも、読み逃げしてるので、感想書くのは初めてだったりします。)

 初めまして、琳さん。エイスです。
 いつも読んでるだけなのにこんな奴のために感想書いて下さるなんて、本当に嬉しいですわ。

>タロットカード、私は持ってないんですが、すごく好きなのでとても楽しく読ませていただいてます。

 ありがとうございます〜♪

>これからのゼロス様がご活躍、楽しみにしてますので、がんばってくださいね(はぁと)。

 はい、頑張らせていただきます。

 次はゼロスくん、3話独占です。ゼロスっぽくないかもしれませんが、まあその辺は大目に見てやって下さい。

>それでは、失礼します。

 はい、ありがとうございました。これからも読んでやって下さい。

 それでは。
    エイス

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7345Re:アルカナの神殿(9)る〜ら E-mail URL8/4-00:07
記事番号7341へのコメント


えーっとはじめまして。(^_^;
アルカナの神殿・・・・・なんか変な感じ・・・・・
タロットカードの事はよくわからないけど、ファンタジーみたいのはなかなかなかったのですっごいおもしろかったです。

次をもんのっっっっっっっすごく楽しみにしてます。
短いけどごめんなさい。それでは。

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7349ファンタジーだったのか…エイス E-mail 8/4-03:57
記事番号7345へのコメント


> えーっとはじめまして。(^_^;

 こんばんは。る〜らさん。
 ……ありゃ?会ってませんでした?
 ……………………気のせいだったらすいません。

>アルカナの神殿・・・・・なんか変な感じ・・・・・
>タロットカードの事はよくわからないけど、ファンタジーみたいのはなかなかなかったのですっごいおもしろかったです。

 これってファンタジーだったのか←おい
 そういうのって意識してなかったんですよ……。

>次をもんのっっっっっっっすごく楽しみにしてます。
>短いけどごめんなさい。それでは。

 ありがとうございます!!
 その『っ』の多さを信じて頑張りますわ。

 短くてもいいので、よければまた感想ください。

 それでは。
    エイス

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7350アルカナの神殿(10)エイス E-mail 8/4-04:01
記事番号7298へのコメント

 こんばんは。エイスです。
 なんでこんな早起きしちゃったんだろう……。


   死を撒く 死神 と 孤独に慣れた 節制



]V《死神》−不幸、絶望、精神的に深刻な打撃


]W《節制》−しんぼう、ひかえめな態度、中立


 エリスとリナが、運命の輪のカードに翻弄されている頃、ゼロスは一人、夜の町へ繰り出していた。といっても、明かりは全て消え、夜を照らす月すら雨雲に隠されていた。
「さて、どこにいるんでしょうねぇ」
そう言いながら、確信を持ったように、街の外へ出る。そこには、予想した通りの姿があった。
「司祭長の街を荒らしていたのは貴方ですね。《死神》さん」
そこには、血の雨が降っていた。そしてその中で、ただたたずむ者があった。

              −血と死を振り撒く死神が………

「だったらどうするのだ?魔族よ」
ゼロスが口笛を吹いた。
「おやおや。カードである貴方にも知られているとは、僕って有名なんですねぇ」
言葉だけを聞くとふざけているように聞こえるが、そうではなかった。その証拠に、滅多に開かれない漆黒の瞳が死神を見ていた。
死神も、その瞳が開かれているのを見て、身構える。
「おっと、安心して下さい。殺しはしませんよ。貴方がいなくなるとリナさんに怒られちゃいますので。単刀直入に言います。カードに戻って下さい。もちろん、死神さんの後ろに隠れている貴方もですよ」
ゼロスがそう言うと、死神の後ろから女性が現れた。
「ばれないようにしたのですが。さすがは魔族、といったところでしょうか」
「僕はそんなこと聞いてませんよ」
ゼロスがにっこりと笑った。
「さあ、戻って頂きましょう。でなければ、半殺しにしちゃいますよ?」
その言葉に、女性の方が冷や汗を流した。
 ゼロスはその様子を見て笑うと、死神が作り上げた死体置き場に移動した。
「さて、死神さんは見慣れてるでしょうが《節制》さんはどうでしょうね?」
答えを聞く気はないというような質問の仕方をすると、死体に手を伸ばした。
   びちゃぁぁぁっっ
「!?」
節制の顔が歪む。死神は平然と見ていた。
ゼロスの手には、無残にも腕を引き裂かれた、いや、もぎ取られたといった方がふさわしい、子供の死体があった。
「さあ、カードに戻って下さい。でなければ、今度は貴方がそうなりますよ。それとも、節制さんには異空間に飛ばしてさしあげたほうがよろしいでしょうか」
ゼロスの顔には鮮やかな返り血が充分にかかっていて、その言葉に凄みをだしていた。
「魔族。まるで私が孤独が怖い、というような言い方をするのですね」
「そう言ってるんですよ」
二人のカードの顔が歪む。
(気付いてる……?私が具現化した理由に)
孤独に慣れすぎ、孤独を恐れた。
 まるでその思考を完全に読んでいるかのように、ゼロスはただ笑うだけだった。
「………………わかりました」
節制は不満そうに、だが負けたような顔をして、カードに戻った。
ゼロスはカードを魔法で引き寄せて、手で取った。
「さて死神さん。貴方もカードに戻ったらいかがです?」
「笑止。我が望むは死と絶望のみ」
「ん〜困りましたねぇ。死を望むなら説得も出来ませんし、強行突破になるんでしょうか」
そう言いながらも、ゼロスの唇の端は、明らかなほどに上がっていた。
「してみるがいい。魔族よ」
死神がそう言うと、ゼロスはにっこり笑って、消えた。
「!?」
うろたえ、周りを見回す。途端、
ばしゅっっっ
死神の真っ黒なローブが、風に切り裂かれた。
「な……!?」
「死神さん。油断大敵ですよ」
死神が上を見ると、そこには杖に死神のローブの一部を引っ掛けた、ゼロスの姿があった。
「今のはこれで済ましてあげました。さあ、カードに戻って下さい」
死神の顔が、初めて苦の表情を見せた。
(そろそろですかね……)
ゼロスは忌々しそうに、引っ掛かっているローブの一部を消滅させると、すとんと地上に降り立った。
「貴方はなぜ死を撒くんです?」
死神が狼狽した。
「死神は地上に生が溢れすぎないよう、調節するのが役目なはず。なぜ無駄に死を撒くんですか?」
「く………」
(わかりやすくて結構ですよ)
「貴方の主がどうなっても、いいようですね」
「!?なぜそのことを!?」
死神が必死の表情を見せ、ゼロスに聞いた。
「それは秘密です♪」
死神はその真意を確かめようと、ゼロスの瞳を見るが、ゼロスはどちらともつかない瞳で、笑っているだけだった。
「……我が元の姿に戻るのは、貴様のためではない。我が主のためだということを、憶えておいてもらおう」
死神はそう言ってから、静かにカードに戻った。
ゼロスはそれを拾い上げ、溜め息を吐いた。
「口からでまかせだったんですけど、なんとかなるものですねぇ。さて、次のカードには、この方達に案内して頂きましょうか」
ゼロスはそう言うとカードを投げた。
 すると空中でカードが止まり、カードがあると思われる方向に、光が走った。
「あっちですね」
ゼロスは空中でカードを掴むと、カードが指し示しめした方向へ向かっていった。

 死を撒く死神と、孤独に慣れた節制が作った赤い雨の降る夜は、まだ続くのだった………。

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7351アルカナの神殿(11)エイス E-mail 8/4-04:03
記事番号7298へのコメント

   狂った 悪魔 と 光に憧れた 落雷


]X《悪魔》−よくない行為、黒魔術


]Y《落雷》−恐ろしい出来事、危険、事故


 ゼロスはカードの指し示した光の通りに進んでいた。その辺りは死神達がいた場所に負けず劣らず荒れており、同じ位に死体の山が出来ていた。
「荒れてますねぇ………」
雨上がりの湿った空気の中、ゼロスはカードの気配を感じ取った。

下へ降り、周りを見ると、死体の山の前に、カードの気配を持った人影を発見した。
「カードさんですね」
ゼロスがそう聞くと、カードはこちらに振り向き、近づいてきた。
「魔族か……」
「貴方のお仲間でしょう?《悪魔》」
「《落雷》。冗談じゃねえな………」
(お約束な人達ですねぇ。聞かれる前に名前を言うなんて)
ゼロスはそう思いながら、さっそく説得に入った。
「悪魔さん。落雷さん。カードに戻って頂けますか?」
「けっ。冗談じゃねえ。俺は望むのは狂気さ。けけけけけ」
(狂ってますね………)
しかも悪い意味で。とまで考えが浮かんだが、自分らしくないと、思考を追いやる。
「悪魔と同じ意見を言うつもりはありませんが、私だって冗談じゃありません。私はカードである時、人々に災厄をもたらすだけ。私は光の存在となりたいのです」
(ふむ。やっかいですねぇ。これは悪魔から片付けたほうが良さそうですね)
ゼロスはそう判断すると、悪魔の方へ振り返った。
「悪魔さん。狂気を振りまくのも結構ですが、何故具現化していなければいけないんです?貴方は悪魔なんですから、カードのままのほうが堂々と出来るのでは?」
我ながら説得力のない、とは思いながらも、悪魔にそう説得した。無駄だと思いながら。
 だが悪魔は、神妙な顔で聞いていて、顎に手をついて考えていた。
「確かにそうだな……じゃ、戻るか。ありがとよ」
(う…嘘でしょう?)
拍子抜けするほど簡単にカードに戻った悪魔に、ゼロスはしばらく呆然としていた。が、落雷のカードに呼ばれ、はっと我を取り戻す。
「まったく悪魔と言う人は………。狂ってるというより脳がないだけなんではないでしょうか。あったとしても、あの大きい体を動かすために、全てを使ってますね」
(むちゃくちゃ言ってますね………)
どうやら落雷のカードは、悪魔のことが嫌いらしい。頭が痛くなるのを感じながら、ゼロスは説得をし始めた。
「で、落雷さん。あなたもカードに戻ってはいただけないでしょうか」
「断ります。私は光に憧れてしまいました。もう人を不幸にする役目など、嫌になったのです」
ゼロスはそれを聞いて、にっこりと笑った。
「光に憧れるなんて、辛いだけですよ」
落雷は、驚いた顔でゼロスを見た。それほど、ゼロスの声が説得力を放っていたのだ。
「光と闇は、決して相いれません。そして闇が光に憧れるなんて、愚かそのものなのです。どんなに光に憧れたって、手の届くものではないのです」
落雷は、笑顔で言葉を繰り出すゼロスを、目を見開いて見ていた。
「貴方は闇に属する者ではありませんが、決して光とは相いれない者です。そんな者が光に憧れた時、光を汚すか、自らを滅ぼすか、どちらかしかないんですよ
忠告しておきます。やめたほうが無難です」
「……………それは、闇に属するものとして、先輩としてでしょうか?」

                      −光に憧れた、その先輩として−

「さあ?どうでしょうね」
ゼロスは、ただ意味ありげな笑みを浮かべるだけだった。
「もう一度言いましょう。光に憧れるなんて馬鹿です。貴方には自分の役目があるのですから、それを果たせばいかがですか?」
馬鹿、と言う言葉を聞いて、落雷が動いた。
「…………貴方はどうなんですか?」
「僕ですか?」
聞かれるとは思っていなかったので、一瞬戸惑ったが、すぐにもとの笑顔に戻った。
「秘密……と言いたいところですがお教えしましょう。僕は愚かで、馬鹿ですよ」
そして、落雷は悟った。
「………わかりました。戻りましょう。お馬鹿さんに免じて」
彼は……………。
「それはどうも」
落雷は一瞬躊躇してカードに戻った。
ゼロスはカードを満足気に見つめ、明るくなりかけの空に舞いあがった。
「じゃあ、次のカードを探しましょうか」
誰に言ったのかその言葉は、まだ自我の残っている落雷のカードには、はっきりと聞こえた。


     −光に……恋をしたんだ…………−


 ゼロスは狂った悪魔と、光に憧れた落雷に、少し親近感を抱いていた……。

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7352アルカナの神殿(12)エイス E-mail 8/4-04:15
記事番号7298へのコメント

   涙に暮れた 星 と 呪われた 月


]Z《星》−よい状態、素直、美しさ


][《月》−母性愛、逆境に耐える


 夕闇がその姿を消そうとする頃、ゼロスは悪魔達がいたところから、新しく感じ取った、カードの気配がする場所へ移動していた。
「さーてと。後少しでリナさん達が起きちゃいますね。あと少し稼いできましょうか」
まるでお金を集めているみたいな言い方をしながら、ゼロスが地上を見下ろした。
 すると、予想していなかった方向から、声がかけられた。
「そっちにはいないわ」
「ここにいますのよ」
ゼロスが後ろを振り返ると、ゼロスと同じように浮かんでいる、女性達がいた。

「カード……ですね」
そう聞くと、一人はにっこりと、もう一人は柔らかく微笑んだ。
「私は《星》。そっちが《月》よ」
「初めまして。魔族さん」
その声は、大抵の男なら落ちそうな、魅惑的な声だった。声だけではない。顔や身体だって、男を惑わすに充分だった。
魔族であり、しかもリナに惚れているゼロスには、どうとも感じられなかったが。
「《星》に《月》ですね。話がまとまったところで、カードに戻って頂きましょうか」
何がどうまとまったのかわからないが、ゼロスが話を切り出すために、そう言い、本題に入った。
「嫌……だな」
「申し訳ありませんが………」
二人のカードが、まるで双子のように同時に言った。こころなしか、声や顔付きも似ているような気がする。
「どうすれば、戻って頂けるのですか?」
「慰めてくれる?」
「私に関わらない方がいいと思いますが」
今度は、違う反応を同時にした。
「星さん。何を慰めればいいんでしょうか?月さんも、何故関わらない方がいいと言い切れるんです?」
数度カード達を説得してきて、ゼロスは聞く事や説得に、かなり慣れつつあった。そのせいで、すらすらと説得のための言葉が出てくる。
 その言葉に星と月は、まるで聞いてほしかったとでも言うように、すぐにかえした。
「悲しいのよ。切ないの。なんだかわからないけど涙が出るのよ」
「私は呪われています。それをわかっているからこそ、全ての者に影響するのを恐れ、具現化したのです」
(ふぅむ………)
ゼロスはそれを聞いた後、考えるような素振りを見せた。実際、どちらからどう説得しようか、考えているのだ。
「月さん。呪われているとは、具体的にはどこをどう呪われてるんです?」
そう聞いたところを見ると、まず月から説得する事にしたようだ。月は何故そんな事を聞くのかと、怪訝な顔をしながら答えた。
「具体的に……と言われると、少し困ります。ただ私に近づく者が、数日後には不幸に襲われています。平気だったのは、私の姉妹的な星だけ」
「それが、貴方方の主人のせいだと言ったら、どうします?」
「!?まさか!?」
「ちょ、嘘でしょう!?」
ゼロスの言葉に、二人ともが反応した。
「月さん。星さん。あなたがたが元の姿に戻らなければ、もっと酷い事になるんですよ。それでも、具現化したままでいる、と言うんですか?」
「「……………」」
星と月が、急に黙り込んだ。
(ふむ……。あとひと押しですね)
「貴方方のお仲間の内の数人は、もうすでに、人々に害をもたらしているんですよ。そのせいで、何十人、下手をすると何百人と言う人が、混沌へと帰っています」
「「!?」」
星と月が、悲壮な顔になった。それほど、責任感と人々を思う気持ちが強いのだろう。
「………わかりました…。星も………もう戻りましょう…………」
「うん……」
二人は手を繋ぐと、カードに戻るための集中を始めた。その途中、月がゼロスに問い掛ける。
「魔族よ。貴方も世界の滅びを望む者のはず。何故助けるための手助けをするのですか」
「そんなの決まってます。いつか自分達で滅ぼすために、守って差し上げてるんですよ。それに……………」
言うつもりのなかった言葉が出てきそうになって、ゼロスは慌てて口を噤んだ。
その仕草に、月が十分といったようなことを言う。
「…………まあ、感謝しますわ………。闇がそれを消滅させる者に惹かれるなんて、大変な事なんでしょうしね……………………」
そして月と星は同時にカードに戻った。いままでと違ったのは、カードになったその場で浮かんでいる、ということだった。
「宇宙(そら)に関係するカードな分、魔力が強かったんでしょうか……?」
そう言いながら、カードを手に取る。
すると、まだ自我のある月のカードから、意志が伝わってきた。
『北西に行って下さい……。ここにはもうカードはありません…………
どうか………………あの御方を………………………』
意志は、もう聞こえてこなかった。
「あの御方……ねぇ」
だが、ゼロスにはリナと違って、だいたい予想がついていた。あの御方の正体が。
「まあ、確信は出来ませんけどね………」
そう言いながら、ゼロスはリナ達の元へ、帰って行った。

ゼロスの手の中では涙に暮れた星と、呪われた月が、幸せを祈っていた……。


 ゼロスの話終わり。
ゼロスが影が薄いと思って書いた話なんですが、この後もやっぱり影が薄いのよね…。まあ、ここで活躍してると思って大目に見てやって下さい。

 それから、もう最終話書き上がってるんですが、最終話とエピローグとあるので、聞きたいことがあります。
 エピローグは最終話の中にいれたほうがいいですか?それとも普通に「エピローグ」でツリーにいれます?
 っていうか、反応ないと虚しい質問……。

 「どっちでもいいよ〜」でもいいので、答えて下さると嬉しいです。

 それでは。
    エイス

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7356エイスさ〜ん(はあと)おどる猫 E-mail 8/4-10:44
記事番号7352へのコメント

エイス様江

おはようございます☆
おどる猫です

お話書くの早いですね〜(尊敬)
しかも早起き・・・
私なんか今起きたばっかりなのに(駄目人間!・・・笑)

えぴろうぐ・・・
そういう話題がでるってことは
もうすぐ終わり・・・なんですか?
寂しいなあ・・・
あ、私は最終話に入れても、ツリーに別にしていれても
どっちでもいいと思いますよ?
とりあえず読むことができるのには変わりないわけだし。
ってなんてアバウトな・・・

ああ、でも私的には最終話とは別にしていただいた方が嬉しいかも・・・
少しでも余韻に浸りたいですし。

・・・そうそう!
今回ゼロス君大活躍でしたね(はあと)
ゼロス君かなり好きなんですよ私☆(3番目ぐらいに・・・ってをい!)
しかし三話全部主役をさらっていくとは・・・やるなゼロス

それでは!
続き、楽しみにお待ちしてますエイスさん!
おどる猫でしたっ



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7358Re:エイスさ〜ん(はあと)エイス E-mail 8/4-11:52
記事番号7356へのコメント


>エイス様江
>
>おはようございます☆
>おどる猫です

おはようございます♪おどる猫様の二度目の訪問に、頬が緩みっぱなしですわ♪←危ない奴

>お話書くの早いですね〜(尊敬)
>しかも早起き・・・
>私なんか今起きたばっかりなのに(駄目人間!・・・笑)

 話は、あらかじめ10話ほど書いておいて、それを載せている間に書いてない話を書いてました。
 ペースとしては、まあ一日辺り0,2〜1,5話ほどでしょうか?
 早起きのことに関しては…なんか、この頃朝目が覚めてしまって……(11:00ごろに起きようと思ったら、6時に起きちゃったりとか)。

>えぴろうぐ・・・
>そういう話題がでるってことは
>もうすぐ終わり・・・なんですか?
>寂しいなあ・・・

 はい、あと4話+エピローグで完結ですね。あと、皆様の希望があれば、外伝を載せたいと思います(っていうかすでに書いてます)。

>あ、私は最終話に入れても、ツリーに別にしていれても
>どっちでもいいと思いますよ?
>とりあえず読むことができるのには変わりないわけだし。
>ってなんてアバウトな・・・

 いえ、貴重なご意見、参考にさせていただきます。

>ああ、でも私的には最終話とは別にしていただいた方が嬉しいかも・・・
>少しでも余韻に浸りたいですし。

 はい、別々に一票ですね(笑)。
 記録しておかなくては(笑)。

>・・・そうそう!
>今回ゼロス君大活躍でしたね(はあと)
>ゼロス君かなり好きなんですよ私☆(3番目ぐらいに・・・ってをい!)
>しかし三話全部主役をさらっていくとは・・・やるなゼロス

 ゼロスくん活躍しましたね〜。でも、書き上げてみて解ったんですが、ゼロスくん、影薄い・・・・・・(爆)。
 3話全部主役というのは、そのためです(せっかくリナと3人きりなのに、影薄いなんて可哀相でしょう?)。

>それでは!
>続き、楽しみにお待ちしてますエイスさん!
>おどる猫でしたっ

 はい、ありがとうございました!!後はもう載せるだけですので、頑張って見ていって下さい(笑)。

 それでは!!
     エイス
 

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7375アルカナの神殿(13)エイス E-mail 8/5-11:10
記事番号7298へのコメント

 13話目。ちょっとパターンを変えてみました。

   輝きを無くした 太陽 と 迷いを告げる 審判


]\《太陽》−幸せ、強い力がみなぎる


U]《審判》−復活、強い信念、許される


 私は、いつのまにか人の姿へと具現化していた。
自分がすること、それが正しいのか、疑問に感じて………。
 一緒にいるカードは、ただ地を見つめるだけで、私の疑問に答えてくれなかった。
 そのせいか、疑問は日増しに不安へと変わっていった。

 そうなってから数日がたって、時間も太陽も高くなってきた頃、私達の前に、人間達がやってきた。
 そのうちの一人は、あの御方の片割れの、エリス様だった。
一人はあの悪名高いリナ・インバースで、もう一人は魔族のようだった。
 その一見どころが二見三見しても風変わりなパーティーに戸惑いを覚えながら、エリス様の言葉に、耳を傾けてみた。
 それは、大変な事だった。私達が具現化し、本来あるべき所から離れたせいで、この島のバランスが崩れ、いずれはこの島も、世界も滅んでしまうという事だった。
私達は悩みがあるせいで具現化しているから、その悩みを聞いてあげるとも。
 太陽は、その言葉に安心を覚え、悩みを告げた。エリス様達はその悩みを包み込んで、太陽は解放された。
 だけれど私は、悩みを告げていいものか、また悩んでいた。
そうしたら、リナとかいう者が私に話し掛けてきた。
 その内容は『言いたくないのなら言わなくてもいい。それを貴方がいいと感じたなら』ということだった。
私は、なぜか胸の中から熱いものが込み上げてきて、悩みを打ち明けた。
 エリス様も、リナという者も、そして魔族すら、私の話を親身に聞いてくれた。
そうしたら、とても救われた気持ちになって、とても安らかな気持ちになれた。私は、エリス様に、そしてリナという者にお礼を告げ、カードに戻る事にした。
 そうしたらエリス様達は安心したような表情をして『残るカードはあと1枚だから、どこにあるのか教えてほしい』と聞いてきた。
 私は、もう二度と具現化できなくなる覚悟で、魔法力を最大限に使って《愚者》のカードを探し出した。

 愚者は東の方角に感じられたけれど、詳しく探したら異空間にいることがわかった。
 私は申し訳ないような気持ちになって、正直に告げた。
でもエリス様達は、怒るどころかお礼まで言ってきた。
 私は、あんな悩みを持っていた事そのものが馬鹿らしくなって、こんな気持ちを知るためにこの世に在るのかもしれないとも思えた。
 カードになる瞬間、エリス様の笑顔が見えた。
「エリス様。もう二度と、不幸の少女になんかならないで下さいね………」
そして私は、カードへと戻った。

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7376アルカナの神殿(14)エイス E-mail 8/5-11:13
記事番号7298へのコメント

   喜びを知った 愚者


0《愚者》−異常な精神状態、狂気、解放を望む


「な……なにこれ………」
リナ達は《太陽》と《審判》のカードを手に入れ、東に歩いていた。そしてカードの気配が感じられるところに、巨大な空間の歪みが発見されたのだ。
「これが、愚者のいる異空間への入り口でしょうか………」
「多分……いえ、きっとそうだと思います」
エリスが確信を持ったように言った。
「どうする?エリスさん。私は、みんなで行くのも、別行動をするのもキケンに感じるんだけど………」
愚者は解放と狂気を司っている。もし一人で動いたりすれば、愚者に狙われてしまうかもしれない。かと言って、みんなでこの空間の中に入って、出られなくなったりしたらそれこそ終わりだ。
「………みんなで行きましょう。最後のカードくらい、みんなで捕まえたいの」
「え…?」
エリスさん、どういう意味?
言葉にならなかった問いを、見破っているかのように、エリスはにこっと笑った。
「リナさん。エリスさん。来ましたよ」
三人に、空間の歪みが迫ってきた。
「みなさん!!はぐれないでください!!」
そしてそのまま、異空間へと引きずり込まれた。

「……ここは…」
リナが周りを見て瞬間的に思ったのが、これだった。
周りは、オーロラのように淡い光を放っていて、そうかと思うとどす黒い血を思わせる色合いになる。
「リナさん。あそこに………」
「!?愚者!!」
三人が見つめるところには、旅人風の男がいた。
「愚者!カードに戻って!!」
エリスが叫んだ。
その叫びを、愚者が嘲笑うかのように言った。
「嫌だ………」
「戻って下さい!!」
ゼロスが珍しく、声を荒げた。
「私は平和と幸せを知ってしまった………もう崖の上を歩くような事はしたくないんだ!!」
「なにを言って……!!」
リナが一歩踏み出す。
  がくんっっ!!
「きゃああああああああああああ!!」
どさっとリナ達が地に落ちた。
「いた……」
リナがぶつけてしまったお尻をさすっていると、エリスが驚愕の声をあげた。
「元の空間に戻ってる………?」
「!?な……!?」
リナが辺りをみまわした。そこには、普通の風景が広がっていた。
「東の方角に司祭長の街が見えます。やはり元の空間のようです」
ゼロスが空中からそう言った。
「東って……!?一歩歩いただけでそんなに移動してしまうものなの!?」
「確かに、理解し難い事ですが……愚者が作り出した空間です。そのくらいのことは、あるのではないでしょうか…………」
エリスがまだ納得していないリナにそう言った。
「そんな……」
リナが困惑の表情を浮かべていると………
「リナさん!エリスさん!愚者が!!」
ゼロスの指差している方向には、リナ達から逃げるように走っている愚者の姿があった。
「!待ちなさい!!」
リナが一歩すすむと………。
  ずぶぅ………っ
 空間が歪む…。
「!?」
「こんなことが………!?」
そこは、フォーチュンの街だった。

「そんな、嘘でしょう!?ここは島とはいえ、そんなことがあるわけ………」
「エリスさん、落ち着いて!!」
半狂乱のエリスを、リナが必死におさめる。
「それにしても………」
ゼロスは、今まで歩いた道を思い出していた。

  まず、この島の一番北に配置する街から、司祭長の街のある南南東の方角へ。
  その後、太陽のカードを見つけたのが北西の方角。
  そして真っ直ぐ東に行って、愚者を見つけ
  一歩歩いたところでは、東に司祭長の街、北に太陽の街が見えた。
  そして今はまた戻ってきた………。

「もしや………!?」
「ゼロス、エリスさん!!愚者が!!」
ゼロスがなにかを気付きかけた時、前方に愚者の姿があった。
「こんどこそ!!」
リナは袋からカードを取り出すと、愚者へ向かって一歩踏み出した。

「さぁて…あんたの言い分でも聞いておこうかしら………」
三人は、愚者と同じ異空間に来る事が出来た。リナが取り出したカードのおかげで、愚者と同じ空間にいることに、無理がなくなったからだろう。
愚者は、追いつめられた事を意識もせずに、ただ悔しそうにしていた。
「愚者………」
「…エリスさん………」
愚者のカードは、今までのカードと違って、エリスをさん付けで呼んだ。それは、“0”のカードだからだろうか。
エリスは、それを聞いて満足そうな顔をすると、辛そうにしながらも立ち上がり、愚者へ向かった。
「愚者………もう自由を求める事は辛いでしょう?安定を望みたいでしょう?」
エリスの問いかけとも思えぬ問いかけに、愚者はただ沈黙していた。
「でもね愚者。私は知ってるわ………。安定こそ貴方を苦しめるという事を。貴方はだからこそ自由を求めたという事を。思い出して……貴方が狂気のカードと呼ばれてまで求めていた物を………。安定の中には、それは存在しない事を………」
「エリスさん………」
愚者の顔が、初めて表情をつけた。
「貴方の本当の幸せは、果てる事無き夢。貴方はそれを追い求め、束縛される事を否定し、彼方に沈む世界を、求めていたのではないの?」
愚者は、何も言わなかった。ただ感じ取れる事は、カードに戻る事を決意した、ということだけだった。
「エリスさん。すいませんでした………。私は……勇者としてのあの御方が……辛そうに思えたのです………。だから、貴方と恋仲であったあの御方になりたかった………。それは間違いだったのですね………。私は勇者に戻ります。果て無き冒険に、身を投げる勇者に………」
愚者は泣きそうな顔でそう言うとカードに戻り、エリスの手の中へ戻っていった。
そして、愚者がカードに戻った事で、歪められていた空間が中和されていった。
轟音が響き渡る中、エリスは愚者のカードだけを見つめていた。

気がつけば、そこは元の空間であった。ただ、また移動してしまったらしく、見慣れない場所だった。
「リナさん、あそこがこの島の中心《世界》の神殿です」
エリスが指差した先には、これまでに見た神殿の、どれよりも勝る、立派な神殿が建っていた。本来ならば、それで感動でもするべきなのだろうが、今のリナとゼロスには、それよりも大事な問題が発生していた。
「エリスさん。さっきの愚者の言葉、どういうこと」
リナの言葉は、問い詰めるような、厳しい声だった。
「……いつかは言わなくてはいけないと、思っていたのですが………」
エリスが、あきらめたように、そして決心したようにリナ達に言った。
「勇者アルドは、私の前世の恋人です」
二人は、厳しい視線を止められなかった。



 はい、やっとクライマックスです。次は最終話の前編を載せます。