◆−きおくそーしつもの−三剣 綾香(8/14-21:03)No.7499
 ┗きおくそーしつもの2−三剣 綾香(8/14-21:11)No.7501
  ┗きおくそーしつもの3−三剣 綾香(8/14-21:17)No.7502
   ┗きおくそーしつもの・おまけ−三剣 綾香(8/14-21:25)No.7504
    ┣リナは幸せ者です♪−P.I(8/16-00:36)No.7508
    ┃┗Re:リナは幸せ者です♪−三剣 綾香(8/19-11:46)No.7537
    ┗愛されてますのね……リナさん(はぁと)−庵 瑠嬌(8/27-09:38)NEWNo.7635


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7499きおくそーしつもの三剣 綾香 8/14-21:03


こんばんは皆さん。
綾香です。
今回はややありきたりのお題「きおくそーしつもの」にチャレンジして見ました。
ゼロリナでガウリナ。
前半はゼロリナ。後半はガウリナ。
……のはず。

よろしければご覧下さい。
ではでは。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

「――記憶がない?!」
アメリアの声が響く。
朝、いつものように集まった四人。
そこでガウリイが言ったのだ、「おまえだれだ」と。
言われたリナは無言だった。
衝撃を受けすぎて、冗談なんじゃないかとか、からかわれているんじゃないかなどと考える事すらできないのかと思わせた。
「じ、冗談でしょう?ガウリイさん!!――どうしちゃったんですか?!」
かわって顔色を変えて詰め寄っているのはアメリアだ。
この人はリナ=インバースといってあなたとずっと一緒に旅していた人なんですよ。
あなたは彼女の自称保護者だったんです。
そう説明されても本人はきょとんとしているばかり。
最初の衝撃が去ったのか、リナは深く考え込む瞳でガウリイを見つめていた。
問い詰めもせずにじっと相棒の端正な顔を見詰める。
「リナさんもなにか言ってあげてください!!さんざん一緒に旅してきて今更忘れるなんて無責任じゃありませんか!」
「ホントにその子俺の知ってる子なのかぁ?」
全然覚えがないんだけど。
さんざん説明されたのでいい加減うんざりもしていたし、疑わしげな口調でガウリイはぽつり、言う。
瞬間、アメリアもゼルガディスも絶対にリナは暴れ出すと思った。
”ショック療法よ!!”くらい言って呪文でふっとばすんじゃないかとひやひやしていた。
でも、実際彼女は痛そうな瞳で目を伏せただけだった。
「……リナ…さん?」
様子がおかしい、アメリアは目を伏せてしまったリナの顔を覗き込んだ。
リナはその視線に気付くと目を閉じ、ややあってから思い切るように瞼を開いた。
その紅の瞳にはもはや先程の痛々しい色はない。かわってあるのは”しょうがないわね”と言わんばかりの呆れた様子だった。
「だめじゃないアメリアもゼルも。」
「「へ?」」
「人をからかったりしちゃ。」
予想外の言葉に二人は無言で彼女を見返す。リナは何を言っているのだろう?
二人の反応には頓着せず、ぼーっとこちらを眺めているガウリイに声をかける。
「あなたの言う通りあたし達は他人です。この二人はあなたのことをからかってるんですよ、きっと。」
くすっ
面白そうに笑って、悪戯っぽい瞳でガウリイを見つめる。
その瞳は言っていた、”だまされちゃだめよ”と。
その言葉にガウリイはほっと息を付いた。
「――だよな。そうだよな。おかしいと思ったんだ、いくらなんでも一緒に旅してた仲間のこと忘れるなんてなあ。いくら俺だってそこまで物忘れはひどくないぞ。」
危うくだまされる所だった。
言って快活に笑う。
「リナさん?!何てこと言うんですか?!冗談でもそんなこと言うなんて……!!」
顔色を変えて詰め寄るアメリアにリナは更に呆れたような視線を向ける。
「ほらほらアメリア。冗談もそこまで徹底すると悪質よ?」
じゃ、あたしは出発の準備があるから。
リナはさっさと席をたって二階に上がってしまう。
「ゼルガディスさ〜ん、リナさんどうしちゃったんでしょう〜?」
縋るような目で問い掛けられてゼルガディスはややたじろいだ様子で答える。
「さ、さあなあ。旦那はともかくリナのほうは別段記憶を無くした様には見えなかったしな。」
そうなのだ、リナ本人は別に記憶を無くしてはいないようなのだ。
なのになぜ”他人だ”などと言えるのか。二人は不思議でならなかった。
彼女――リナがガウリイのことを憎からず想っていることは二人も知っていた。
それどころか自己のアイデンティティーを何より尊ぶ、そのリナが自分を投げ打ってでも守るほどに彼を想っていることだってわかっていた。
なのになぜ、知らないなどと言うのだろうか?
「私、リナさんに聞いてきます!!」
アメリアは二階に駆け上がった。
自分達の部屋の前で立ち止まり大きく深呼吸を一つすると、何やら決意の瞳で扉を叩いた。
「開いてるわよ」
扉の向こうからそっけない声。
部屋の中ではリナが出発の荷物をくくっている所だった。
「何やってるんですかリナさん?!」
その様子を目にしてアメリアは慌てた。
「なにって……出発の準備」
下でそう言ったでしょ?
肩などすくめつつリナはあっさりと言う。
「だってこの町には昨日付いたばかりじゃないですか。リナさんだって何日かここで過ごそうって…」
そう、昨日この町に着いた時にリナ本人がそう言って、とりあえず三日分の宿代を前払いしたのだ。
「気が変ったの」
「気が変ったって……」
それならそれで下の二人にも伝えなくては。部屋を出ようとするアメリアを、リナが呼び止める。
「あ、アメリア。」
「はい」
「宿代勿体無いから、あんた達はもうちょっとのんびりして行きなさいね」
「はい?」なんていいました?いま?
ぎょっとして振り返るアメリアにリナは、ぽん、と皮袋をほおって寄越す。
「……なんですか?これ。」
「旅費」
????
疑問符を散らしたアメリアにリナはけろっとした顔で言う。
「今まではあたしが財政担当だったけど、あたしがいなくなる以上あんたに頼むしかないでしょーが」
いなくなる?!
「なんでですか?!」
アメリアの剣幕に押されつつリナは答える。
「なんでって……ゼルは人前に出ようとしないし、ガウリイはあの調子だし」
あんたしかいなんじゃないの。
的外れな答えを返すリナの視線を無理矢理捕まえ、きつい口調で言う。
「ごまかさないで下さい!!リナさん!!わかってるんでしょう?私が聞きたいのはそう言うことじゃありません。さっきからのリナさんの言葉を聞いていると「私たちと別れる」と言っているように聞こえるんですけど」
これはどういうわけなんですか?
アメリアに詰問されてリナは溜息を付いた。
「どういうわけって…そのまんまよ。あたしは旅立つ、あんた達は残る。そろそろ元の一人旅に戻りたいなぁ、なんて思ってた所だったから、いい機会だしガウリイと別れるわ。」
剣も見つかったんだし、こんだけ長い間保護者の真似事させて上げたんだから、あいつも満足したでしょう。
「な……」
あまりの言いように絶句する。
ショックを受けて固まってしまったアメリアを後目にリナはさっさとその前を通りすぎる。
そのまま部屋を出ていこうとして戸口の所でふと振り返り、放心したようなアメリアに言い聞かせるように言う。
「いい?折角忘れてるんだから、無理矢理思い出させるような真似、するんじゃないわよ?」
そうして今度こそ部屋を出ていった。
しばしの間の後、はっと気が付いたアメリアはあわててリナの姿を追って階下に降りた。
「それじゃああたしは行くから。」
駆け下りたアメリアの前でリナはガウリイとゼルガディスに別れの挨拶をしている所だった。
「どういう事だ。」
ゼルガディスの視線がアメリアに向けられる。
「知りませんよ、そんなこと。リナさんがあんな言い方するなんて思いませんでした。ガウリイさんのことあんな風に思っていたなんて。ガウリイさんが可哀相すぎます。」
「なんのことだ?俺が可哀相って。」
「ガウリイさんは細かいこと気にしなくて良いんです。アメリアはちょっと疲れているんですよ」
にっこり
リナは微笑んでガウリイを見やる。
「じゃ、ね。あたし行くから。」
きょとんとするガウリイと憤慨するアメリア、そして何も言わないゼルガディスを置いてリナは宿を出たのだった。

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7501きおくそーしつもの2三剣 綾香 8/14-21:11
記事番号7499へのコメント

すいませんっ
だいめい入れ忘れてました!!

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


きおくそーつもの2

――西へ続く街道。
そこに差し掛かった時リナはとても良く知った視線が自分を見ていることに気が付いた。
「隠れてないで出てらっしゃい!!――ゼロス!!」
鋭い呼びかけに次の瞬間ふうわりと闇の神官が姿を現す。
そしておもむろに辺りを見回す。
「お一人ですか?リナさん。他の皆さんはどうされました?」
ややわざとらしげなその言いようにリナは苦笑する。
「とぼけなくても良いわよ、あんたのことだから最初っから全部見てたんでしょ?」
にっこり
裏の見通せない笑みを浮かべてゼロスは頭を掻く。
「いやあ、ばれてしまいましたか。流石はリナさんです。」
その台詞を聞き流しつつリナは再び歩き始めた。
自称謎の神官はあわてて後を追う。
「暫くお供しますよ、リナさん。」
今までのぎやかな道程からいきなり独りになるとさすがのあなたでもさみしいでしょう?
人を食った物言いにさしものリナも苦笑を禁じ得ない。
リナが何も言わないのを良いことにさっさと隣につくゼロス。
「しかし……」
「なに?」
笑みを含んだ声に疑問符を乗せて問い返す。
「あなたも演技派ですねえ。」
驚きです。
何やらしみじみとした口調でリナを見つめるゼロスに苦笑いを返す。
「しょうがないじゃない。ああでもしなきゃガウリイと別れるなんてできる筈ないもの。」
アメリア達にガウリイの事を任せるには自分が悪者になってアメリア達が自主的にガウリイ側に付いてくれるようにするほうが効果的だ。
「――そう考えたからこそ、ああいった物言いをなさったんでしょう?リナさん?」
無言の肯定が返る。
暫く後。
ぽつり、リナがつぶやくように語り出した。
「これ以上あたしみたいな危険因子と一緒にいると遅かれ早かれ皆死ぬ事になるわ。」
はや暮れなずんできた秋の太陽を遠い目で見つめながら言葉を継ぐ。
アメリア達と別れるのは比較的簡単だ。彼らには彼らの目的や義務がある。
だけどガウリイにはそれがない。それが証拠にいつだったか聞いた「いつまで保護者をするつもりだ」と言う問いに殆ど即答に近い形で答えが返ってきたのだ。
曰く、「そうだなぁ一生か」と。
「なにがあってもガウリイだけは最後まであたしについてこようとするってわかっってた」
つるべ落しと言われる太陽はあっという間にすべり落ち、辺りを薄暮の闇が包み始めていた。
「言われた時ははっきり言って嬉しかったわ」
でもね。
先程から黙ったままこちらの話を聞いている闇の神官を振り返る。
「冥王の一件で思ったの」
もしかしたら自分のそう言うわがままが彼を死なせる事に繋がるのではないかと。
あの時の気持ちを思い出して、リナは自分の体を抱きしめる。
「一刻も早く別れなきゃ、そう思ったわ。だけど、できなかった。」
「――なぜです?」
寒そうに震える華奢な後ろ姿。
後ろからふうわりとマントで少女をくるみながら問いが返る。
自嘲の瞳が肩越しにゼロスを射抜く。
「あたしが一緒にいたかったからよ。きまってるでしょ?」
それが彼の命を縮める事だとわかっていても尚、離れがたかった。
「で、ずっと迷ってたんだけど最近ますます戦闘も激しくなってきたし」
「――ガウリイさんの記憶がなくなったのを良い事に置き去りにしたって言うんですか」
険のある声が響く。
はっと振り返ったリナの目に映ったのは、肩を怒らせたアメリアの姿だった。
おやおや、と言う顔をして抱き寄せた格好のままゼロスは腕の中の少女に囁くいた。
「お迎えみたいですよ?良かったじゃないですかリナさん。お仲間に愛されてて。」
あれだけの事をしたのにねえ。にこにこしながら顔を覗き込んでくるゼロスにリナは溜息で答えた。
「喜んじゃいけないんだけど」
でも嬉しい。追いかけてきてくれる仲間がいるって事は。
でも哀しい。別れなければならない仲間だから。
さらりと別れの言葉を口にするのはどれだけの労力が要ったろうか。
――あれをするのにどれだけの精神力が必要だったか。
もう一度、もう一度やらなくてはならない。今度こそ追いかけてくる気が起きないような上手いやり方で別れなくては。
身体が震える。できるんだろうかもう一度、自分に。
少女を抱き寄せていた神官はその腕をゆるめないままその仲間――ことに保護者を自称していた青年に声をかける。
「お久しぶりですガウリイさん。」
突然声をかけられて驚いたように目を見開きつつもガウリイは答える。
「あ、ああ。久しぶりだな…ゼロス。」
へえ。
感心したように笑みを深くする。
「良い腕してますね、リナさん」
彼が失った記憶はリナ=インバースの事だけでその他の記憶には全く損傷がなかった。
「当り前でしょ、やるからには完璧を目指すの。」
トップクラスの力を持つ魔族に抱かれても尚平静を崩さない少女は賛美の言葉を素気無くあしらう。
「まさか…」
その会話を聞いて仲間達にもようやくわかったようだ、ガウリイの記憶が消えたのは正に彼の保護する少女の仕業であった事が。
「なんてこと…」
くすくす。
辺りに落ちた深淵たる闇が何より似合う神官は楽しげに笑みをこぼす。
「賭けましょうか」
リナにしか届かないであろう囁き。
「賭け?」
「ガウリイさんが思い出すかどうか。」
「――悪趣味」
心底楽しんでいるその台詞にリナは思わず悪態を付いた。
一向に答えた様子もなく更に笑みを深くして声を上げる。
「――そう言うわけでリナさんはこのまま僕が頂いていきますので。」
そのまま、ふっと宙に浮かぶ。
「なっ!!」
「ゼロス!!」
慌てたように声を上げる仲間達の中でガウリイだけが驚いたように浮かんだ二人を見上げていた。
「このくらいじゃぁ思い出さないみたいですねぇ」
「だから言ってるじゃないの。やるからには完璧を目指すって」
ちょっとやそっとのショックじゃ思い出さない。そう言う術の掛け方をしたのだから。
淡々と答える。
それを聞いて考え込むように人間達を見回し、思い付いたように紅い瞳を覗き込む。
「ショックを与えれば良いんですよね?」
楽しそうなその様子にやや気おされしつつリナは答える。
「ま、まあそうだけど……」
答えた所に地面の上から声が上がる。
「リナさんを返してください!!」
「貴様リナを連れていって今度は何を企んでいる!!」
二人に詰問されて闇に浮かぶ神官は溜息を付く。
「関係のない方は少々お静かに願えますか?」
言葉が終らない内にアメリアとゼルガディスの身体は何かに拘束され声すら上げられなくなった。
自分を睨み上げながら尚ももがき続ける二人についでのようにその問いに答える。
「何を企んでいるなんてひどいですねえ。僕は何も企んでいませんよ。ただリナさんは僕が頂いていくというだけで。」
「その子をどうするつもりだ」
楽しそうな語りに不意に割り込む声。
「わからないんですか?ガウリイさん。男が女性に向かってこの台詞を言うってことは」
身も、心も、我が物にするという事。
言って不意に笑いを消し、少女を抱き直し自分のほうを向かせた。
「なに…?」
少女の声には答えないまま、その小さな顎を指でそっと持ち上げて人差し指で唇をなぞる。
冷たい指の感覚に思わず身体を震わせた。
その様子ににっこりと微笑むとゆっくりと顔を近づけた。
!!
「いやっ!!」
なにをされるのか悟ったリナは激しく抵抗する。
力で敵わないのはわかりきっていた、でも許すわけにはいかなかった。
――彼の目の前でだけは。
たとえ自分の事を覚えていないとは言え、やさしく愛を語ってくれた彼の前でだけは。
目に涙が浮かぶ。渾身の力を篭めての拒絶にも何の拘束も受けない魔族は正に唇を重ねようとした。
「いやーっ!!――ガウリイ!!」
呼んでいた、思わず。
けれど呼んだ所でどうなるものでもない、名前を呼んだくらいで解けるような生半可な暗示のかけ方はしていないのだから。
「――んっ」
唇が、重なる。
深く強く――熱く。
抵抗を楽しむ様に、唇を味わうようにその口付けは永い。
少女のきつく瞑られたその目尻から透明な涙がガウリイの上に降った。
「――?!」
長いような一瞬。
ふいに、
「き」
「っさまぁー!!」
声と共に切りかかってくる紫の剣気。
「おっと」
からかうような声を上げつつゼロスは身を引く、宙に少女を残して。
支えを失ったリナの身体はそのままガウリイの腕の中に落ちて来る。
「――リナっリナ!!」
必死の声にリナはうっすらと目を開く。
「思い…出し……ちゃった………?」
荒い息の下からの問い。ガウリイは肯く。
「ああ。」
少女の瞳に絶望の色が宿る。
――同じ手は二度と使えない。
「おやおや」
面白そうにゼロスはつぶやく。
「こういった場面では普通ガウリイさんが持つ感情は”嫉妬”ですよねえ。」
いま少女を腕に抱く剣士からは純粋な”怒り”しか感じられない。
「リナさん、賭けは僕の勝ちですよね?」
あなたが最も望まない結果を引き出して差し上げましたよ。
リナの感じている深い絶望がこちらにまで伝わってくる。
「やっぱりリナさんの負の感情は極上の味ですねえ」
半ばうっとりとした顔で微笑んだ。
「賭けの商品はもう頂きましたし、僕はそろそろお暇いたします。」
「かけの…しょうひん……?」
リナのやや空ろな声。
「はい。ガウリイさんよりも早くあなたの唇を頂きました。」
にっこり
邪気のない笑み。
「――!!」
「ガウリイさんの記憶があそこで戻らなければ最後まで行けたでしょうに」
残念でした。くすくす笑いながらの言葉に、ガウリイはかっとしたようにかかっていきかけ、腕の中の少女に気が付いて動きを止める。
ただ視線だけをゼロスにぶつける。
「おやおや今度は”嫉妬”ですか?」
おいしい食事もいただけたので今度こそ僕はお暇いたします。
そういってその姿は闇に溶ける。
「あ、それからリナさん。――大丈夫ですよ、たかが人間の小娘一人倒すのに人質を取らなければ勝てないなんて思う魔族は冥王様くらいのものですから。」
ただ声だけが闇の中から届けられた。
リナは閉じかけていた瞳を見開く。それは制約の言葉だ。
「なんで?」
なんで魔族のゼロスがわざわざ魔族に不利になるような言葉を言うのだろう。
ああでも。
もう少しだけ、後少しだけ、ガウリイの側にいられるのかも。
もう少しだけ、仲間の中にいてもいいのかも。
リナはそっと微笑んで瞳を閉じた。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ガウリナじゃないかも……
エピローグはガウリナ……のはず。


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7502きおくそーしつもの3三剣 綾香 8/14-21:17
記事番号7501へのコメント

ふう。
投稿の仕方間違えちゃいました。
すみません。
不慣れなモンでごめんなさい

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆

きおくそーしつもの
    〜エピローグ〜

――後日、元の町の宿屋にて。
「まぁーったく、リナさんば考えてそうで考えてないんですから!!」
ベッドの上で半身を起したリナは周りを囲んだ仲間達に責められていた。
「ごめんてば」
「誤ってすむ問題じゃありませんよ。」
アメリアは容赦がない。
今までの戦いだってこれからの戦いだっていつだってアメリアは自分の意志で参加してきた。
その自負もあるから、危ないからといって勝手に自分達を遠ざけようとしたリナが許せないのだった。
「あたし達を信用してないんですか?」
しかしリナは首を振る。
「ちがうの」
「ちがう?」
「そう、ちがうの。あたしはあんた達を信用してるし信頼してる。今までの戦いだってこれからの戦いだって、あんた達はあんた達の意志と責任でもって臨んできたんだろう事も、臨んでいくんだろう事も知ってるの」
各人の意志でなされた結果がたとえ最悪のものであったとしても、その全てが自分の責任だと思うほど傲慢な人間じゃない。
「だったらなぜこんなことしたんです!?」
ガウリイもゼルガディスも黙ったまま。アメリアが詰問しているから黙っているが、怒りのオーラがひしひしと伝わってきている。
それを感じたリナは、やや拗ねたように仲間を見やる。
「だって、戦いで傷つくのは個人の責任にしても、あたしに言う事聞かせる為に取られる人質は――やっぱあたしの所為じゃない。」
「そんなこと……」
「――あんな思いはもうたくさんなの!!」
アメリアの反論を張り詰めような声が遮る。
「あたしに言う事を聞かせるただそれだけの為に誰かが」
仲間を見回して、うつむくと布団の端をきゅっと握る。
「いなくなるなんて。」
あたし恐かった、苦しかった、哀しくてたまらなかったの。
痛々しい光を瞳に宿して自分の手を見つめる。
「そんな思いするくらいなら」
「――別れようと思った?」
呟きの後をガウリイが引き取る。
こくり
小さな肯きに次いで、小さな手で顔を擦る。
ぽふぽふ
大きな手が栗色の頭をやさしく撫でる。
「お前頭良いくせに時々馬鹿な事するよな。」
手と同じにやさしいガウリイの声。
「――どこが馬鹿だって言うの?」
まだ幾分潤んだ瞳をベッドに浅く腰掛けた青年に向ける。
「お前さん、俺達が自分の所為で人質に取られるのがいやだから、辛いから俺達と離れようって思ったんだろ?」
「うん…そう」
「でもな、お前にいきなりいなくなられた俺達の気持ちは考えたか?」
リナの赴く戦いが、命のやり取りどころか世界の存亡を賭けた過酷な戦いである事を仲間たちは知っている。
「お前が俺達を巻き込みたくないと感じるのと同じ気持ちで、俺達はお前を独りで行かせたくないと思ってるんだ」
「――!」
リナは驚きを浮かべて他の二人を振り返る。
二人からの反論はない。無言の肯定が返ってくる。
思いもしなかった、そんなこと。
「あんな思いはさせないで下さい。」
先刻とは打って変わったやさしい口調でアメリアは言う。
「リナさんのあんな姿、もう見たくありません――怖かったです。」
独りでいかせてしまった事が。
ひどい言い方に最初は憤慨したけど、でもすぐに自分達を危険な旅から遠ざける為にリナが仕組んだお芝居だと気が付いた。
だから慌てて追いかけて来たのだ。
反省の色をうかべるリナに今まで黙っていたゼルガディスが溜息を付いた。
「今回の事はリナらしくない短絡な考え方だったが、次からは相談してくれこういう事は」
――仲間なんだから。とこれはそっぽを向いた一言だ。
リナは微笑む。
「――で?お前、まさかまたやるつもりじゃなかろうな。」
ゼルガディスはリナの微笑みに照れたように言葉を継ぐ。
リナはゆっくりと首をふった。
「ううん、やらない。やる必要がないもの。」
ゼロスは言った”たかが人間の小娘一人倒すのに人質を取らなければ勝てないなんて思う魔族は冥王くらいのものだ”と。
裏を返せば、リナをどうこうする為に仲間を人質に取るような真似はしない、と明言したのだ。
言いはしないがあの言葉がなかったらリナはもう一度やった事だろう――たとえそれでどんな誹りをうけたとしても。
でももうその心配もない。あの誓約は絶対の効果を持つものだから。
リナは、もう一度心から笑んで仲間を見まわした。
「心配掛けて、わるかったわ。もうしない――ごめんね」
仲間たちはようやく安心したのか、気を利かせたのか部屋を出て行き、後にはガウリイだけが残る。
二人きりになって、ガウリイはそっとリナの肩を抱いた。


Fin
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ああっ
らぶらぶなところまで行かなかった!!
おかしいなあ……
三人称がまずかったのかしら?
てな訳で番外も書いてみました。
絶対ガウリナなやつです。

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7504きおくそーしつもの・おまけ三剣 綾香 8/14-21:25
記事番号7502へのコメント

三人称だとどうもあまあまには出来ないみたいなので
リナちゃんに出張っていただきました。
ガウリナです。って連呼しておかないとそうなってはくれない……。

◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


おまけ1 リナ ヴァージョン

「ごめんね」
あたしの肩を抱いたまま目を閉じていたガウリイは穏やかな瞳で振り返る。
「なにが?」
あたしは彼によりかかった。服越しに伝わる暖かいぬくみ。
ガウリイはまだここにいてくれてる。
別れなくてすんでホントに良かった。あたしはしみじみと思う。
「ゼロスを拒みきれなかった事。」
「ああ。」
ガウリイは首を振ってあたしを更に抱き寄せ、瞼に唇を落とす。
「しょうがないさ。お前、俺の記憶いじるのでかなり体力消耗してたんだろ。」
気付いてたんだ、ちょっと違うけど。
今回あたしが使った暗示はかけるの自体はさほど難しくない。
問題は解ける時にある。この暗示はあたしの精神力をキーにしてかけたものなので、本来かけた本人が自ら解くか、術者が死ぬかするまで解けない類の暗示だった。
今もこうしてベッドにいるのは無理矢理解かれた暗示の反動が戻ってきてる所為なのだ。
ガウリイには言わないけど。
「――って言ってしまえるほど俺は寛大じゃないだけどな。」
え?
言葉の意味を掴む前にくるっと視界が回り、仰向けになってベッドに背中を押しつけられる。
「ガ、ガウリイ?!」
「逃げるなよ」
焦るあたしを簡単に押さえつけて、こつ、と額を合わせる。
う……。
逃げられない。押さえつけられているからだけじゃなく、その瞳に捕らわれて身動きができなかった。
どぎまぎするほどに近い蒼。それはふとふせられて更に近づく。
そっと、唇が重なった。
やさしく、何度も。
深く熱く。
泣きたくなるほど幸せだと思った。
両手でガウリイの肩を引き寄せる。
暫くして彼は身を起した。
「今日はもう寝ろ。疲れてるんだろ?」
ちょっと照れたように。
あたしは乱れた息を整えながらガウリイを見上げる。
彼はあたしの頭を優しく撫でると髪の一房に口付けて立ち上がった。
ううう、普通のキスよかこういうののほうが恥ずいのは何でなんだろう?
「じゃあな。」
ガウリイはも一度微笑んで部屋を出ていこうとする。
くいっ
「いてっ」
え?
手に感触。
「あ、あれっ?」
うあああっやばいぃっ
どうやら無意識の内にガウリイの髪を掴んでたみたいだ。
「いかないで」
え?
な、なに?! 今あたしなに言った?!
無意識の内にするっと口から滑り出た言葉は、ガウリイに溜息を付かせるには十分だった様だ。
「おまえなあ。この状況で俺をひきとめたらなにするかわからんぞ」
頃はすでに灯ともしごろ。
雰囲気も満点である。
へ、変な事言っちゃった……かな?
でも、一人になりたくなかった。これからは一人でやっていかなくちゃ、ってあんまり思い詰めてた所為かな、ちゃんと皆とガウリイと一緒にいるって言うのがなんだか信じられないような気がしてた。
「目で訴えるなっての」
ガウリイは深い溜息と共に枕元にしゃがみこんだ。
片手で頬を包まれる。
「わかった。わかったから、眠るまでそばにいてやるから。まあもうすぐ夕飯だけどな」
心配しなくてもちゃんと起してやるから少しでも寝てくれ。
額にやさしく唇を落としながら彼はあたしに囁いたのだった。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
……
というわけで記憶喪失ものでした。
ホントはゼロス君にも出張ってもらう(もう一つおまけを書く)つもりだったんですけど、今回の話はちょっと、いやかなり自信がないので様子を見てからにしようかなあと思います。
そんじゃ失礼致しました。


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7508リナは幸せ者です♪P.I E-mail 8/16-00:36
記事番号7504へのコメント

三剣綾香様
また書いて下さってありがとうございます〜(^^)
仲間のために一人になろうと頑張るリナが健気で、
そしてそんなリナを一人で行かせまいとする仲間達の姿に
感動しました! 特にラストのガウリイが(はぁと)
もちろんアメリアもゼルも優しいですし、なんか
ゼロスくんまで入れ込んでますけど、やっぱりリナには
ガウリイですよね♪ 仲間(+1)のたくさんの優しさに
包まれて、リナは本当に幸せ者です!読んでる私まで
幸せな気持ちになりました!
また素敵なお話を書いてやってくださいね。
それではまた!

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7537Re:リナは幸せ者です♪三剣 綾香 8/19-11:46
記事番号7508へのコメント

ありがとうございます!!
私の書く小説はシリアスで切なげなものが多すぎると友人連からお叱りを受けまして、ハッピーエンドに挑戦してるんですよ実は。(初投稿では挫折しちゃったんですよねぇ…)
やっぱ難しいですハッピーエンドも軽めの話も。
練習中の私はさらに駄文を書きなぐる予定です!!
あたたかひ眼差しで見守ってやってくださいませ。

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7635愛されてますのね……リナさん(はぁと)庵 瑠嬌 8/27-09:38
記事番号7504へのコメント


 こんにちは、覚えていらっしゃいますか、庵 瑠嬌と申します。
 三剣さんのゼロリナを、初めて見た時からとっても気に入っていたのですが、ふふ、ガウリナもいいですわね。

 リナさんって、たとえ辛くても苦しくても、表面上は平静な顔を取り繕う事が出きる方……のような気がするんですの。
 だから、さらり、と別れを告げて、自分を大切にしてくれていたガウリイさんに、他人だ、と言えるのではないかと。
 この場合は、内心えらいつらそうでしたけれど。
 ゼロスさんがなにげにいい役ですわね、魔族らしさがよく出てて、わー鬼畜神官(はぁと)と、ちょっと喜びました(笑)
 でも、けっこう善意ですわよね。つまりは、リナさんを一人きりにしたくなかったのでしょう?
 リナさんも憎まれ役かおうとしてましたけれど、ゼロスさんはもっと凄かったですわね。ガウリイさんの前でリナさんにキスするなんて、挑発甚だしい。
 最初まずは純粋に怒るってところ、ガウリイさんがかっこいいですわ。
 わたくしにガウリイさんは書けませんから(泣)かっこよくガウリイさんが書ける方は……尊敬。

>「あ、それからリナさん。――大丈夫ですよ、たかが人間の小娘一人倒すのに人質を取らなければ勝てないなんて思う魔族は冥王様くらいのものですから。」
 
 このセリフいいですわね。
 たかが小娘一人、とかいいつつ、思いやりのある言葉。
 ガウリイさんたちから離れなければならない、と言う強迫観念から、リナさんを解放したというか。
 まっすぐ、人質なんてとりませんよ、と言わないところが、やはり魔族としての性格でしょうかねぇ?

 最後のエピローグのガウリナも、甘くて読みながらにこにこ(にやにやとも云う)してしまいましたわ。
 たぶん、ああいう状況でもキスで止めて、いくところまで(笑)はいかずセーブするんでしょうねぇ……ガウリイさんって、ケダモノのイメージがないです。

 とっても楽しく読ませていただきました。
 上のほうのお話にもレスつけようかと思うのですが……お返事が面倒かと思われたなら、片方のみにお返し下さいませ。

 新作を楽しみにしております。
 ――それでは失礼をば……