◆−久しぶりです−Merry(8/26-23:56)No.7627


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7627久しぶりですMerry E-mail URL8/26-23:56


お久しぶりです。
たまにはこういう話もと思い書いてみました。

ハラスメントな一日


一応ゼロリナです。


あ〜あ、空はいい天気だって言うのに。
なんか、こうからだの調子が悪いのよね。
風邪でも引いたのかな…。
「おはようございます リナさん」
「おはようリナ」
朝から元気のいいこと。いつも一緒に学校へいってるアメリアと、ナーガだ。人が体の調子も悪くおとなしくしているというのにこいつらときたら朝からかなりのハイテンションで話しをしている。
「今日デッサンの授業だったわね?おーほほほほほほっ その様子だとリナはスケッチブックを忘れたようね」
偉そうに胸を反らしながら、ナーガがあたしのことをさしていった。
「学校に置きっぱなしにしてるのよ」
あたし達はとあるデザイン科のある大学に通っている。いわゆる美大というやつだ。
「でもリナさん具合悪そうですけど大丈夫ですか…?」
「多分風邪だと思う」
体調が悪いことをようやくアメリアは気がついたらしい。
いつものこととは家思いやりが少ない気がする…。



「あ〜っもう!ゆるせませ〜ん!!」
学校へついてみるとさっそく講義室で誰かが騒いでいるようだ。誰かとはいわなくてもわかる。特徴的な声だし、よく授業が一緒になる同じデザイン科の人だ。
「何朝からさわいでんのフィリア? しわができてよ」
ナーガがかばんをおろしながらいった。
「もう、聞いてくださいよ ナーガさん 今日痴漢に遭ったんですよ 電車で!!」
両手を握り締めてフィリアが力説している。当然共感を得るのは女性達だ。しきりに肯いたり同じように訴えている人たちが輪を作り始めている。それを少し遠巻きにしているのが男どもというわけだ。
「あの電車込むからね 特に、ラッシュ時とかで乗ってくるくせにサラリーマン風じゃないの」
あたしの一言にナーガが付け足す。
「それで、野球帽をかぶっているやつなんて特に怪しいわよね」
「でも、それってさ、それだけフィリアが魅力的ってことじゃないのか?」
ガウリイのなんともとぼけた意見に、机をどんとたたきいっせいに抗議する。
「「「それって差別的な言い方よ!」」」
台詞がは持っているため、唖然とするガウリイが気を取り直して口を開いた。
「俺も痴漢に遭ったことあるぞ」
一瞬静まる。
「お…女?」
聞いてはいけないものを聞くかのようにあたしは問い返した。
「いや、男。 なんかさ、色白でひょろくってさ暗いやつ。 ケツをさわってきてさ最初か番でも当たってるのかと思ってたんだけど、そのうち手がまえにきやんの」
「それで、どうしたんですか?」
アメリアが生唾を飲み込んで聞いた。
「手つかんでもさおとなしくしてるからそのまま次の駅で降りてトイレに連れていって…」
ごくりとみんながつばを飲んだ。
「殴る蹴るの暴行加えて捨ててきちゃった♪」
「そこまで期待させておいて何いうか!」
ナーガとフィリアがガウリイの座っている机をたたいて抗議した。気合はいってるな。
「あれって…セクハラっていいませんか?」
ぼそりとアメリアがつぶやくのを、あたしは口に人差し指を立てて止めさせた。
「命が惜しかったら何もいわないほうがいいわ」
「ところで皆さん、痴漢に遭われたらどうしてますか?」
それまで黙って聞いていたシルフィールが小さい声で言った。
「あたしはポケットにカッターを入れておいてる」
あたしはポケットからカッターを取り出してみせた。
「それ危なくないのか?」
ゼルガディスがガウリイの横から乗り出していった。
「刃は抜いてあるから ちきちきと刃を出した音だけで逃げてくいからね」
「おーほほほほほほっ あたくしはもっとすばらしい方法をしていてよ」
お得意の高笑いをしてナーガはいった。
「用意するもの油性マジック」
ナーガは放課後実践してあげるといって席に就いた。気がついてみればもう授業が始まっている。



「で、どうするのよ」
放課後ナーガといっしょに電車に乗り込んで、あたしは聞いた。大体帰る方向はいっしょだから同じ電車を使用している。
「痴漢であるということをよっく確認して…」
すばやくナーガが背後に手を回し、誰かの手をつかむと口で握っていた油性ペンのふたを外しその手の甲に“ちかん”と大きく書いていった。しかしあいても逃げようと必死に力を出すため、ナーガもすごい形相で押え込みながら書いている。“ちか”まで書いた時点で次の駅に着いて逃げられてしまった。
「はぁ、はぁ、どうも男のほうが力が強くてね ちか、までしか書けた試しはないんだけど」
汗を垂らしながら冷静な声で言った。あたしはなんだか余計頭痛がした。すると、隣でアメリアが目を輝かせていた。
「おもしろそうです!やってみてもいいですか」
あたし達が止めるのも聞かず、アメリアは翌日痴漢に遭いそうな格好をしてくるのだった。


「あんたまさか本当にやるとはね」
待ち合わせの場所にきたアメリアの格好はすごいものだった。白いミニスカートに、白いノースリーブのシャツ。これであほっぽそうな顔をしていれば間違いなく餌食だ。
「これで、19年間痴漢に遭わなかったあたしにも平気なんですね」
アメリアの台詞に、あたしとシルフィールは何も言えなかった。こういう子に、ああいう事をさせて言いのだろうか…と。
「友達といっしょだと会わないかもしれませんから」
そういって、あたし達を違う車両に押しのけてアメリアは電車に乗った。降りる駅に着くと先にアメリアが降りていて、どういうわけか呆然と立ち尽くしていた。
「どうしたの、アメリア」
「合わなかったんです!ちかんに!!」
本来なら喜ぶべきところなのだが、残念だったねなどとコメントしなければならない日が来るとは思わなかった。
結局帰りはあたし達と同じ車両で帰ってきた。
なんか、お尻のあたりがむずむずする。
これは…痴漢?!
なんで〜!アメリアが遭いたがってる痴漢がどうしてこっちに来るのよ!
あたしはそっとアメリアの耳元でささやいた。
「痴漢いるからあたしのところに、そいつで試していいよ」
アメリアはいきなりが嫉妬誰かの手をつかむとペンのキャップを口でくわえて文字を書き始めた。あたしも加勢してアメリアがつかんでいる手を押さえつけた。二人せいかちゃんと最後まで痴漢という文字がかけた。
「ふふふふふっこれで恥ずかしくて一間で手をさらせません! 正義の鉄槌を食らったようですね痴漢さん!」
駅を降りたとたん仁王立ちになってアメリアはそんな事を言った。まったく恥ずかしいやつ。
とにかく目的は達成されたわけだ。これで平穏な一日が来るに違いない。
しかし、そうはいかなかったのだ。

そして次の日。
「おはようゼロス どうしたんだその手?」
「おはようございますガウリイさん ちょっと…怪我を」
「きき手でしょう 大丈夫ですか?」
シルフィールが心配そうに聞き返した。
「ええ、大丈夫です」
ゼロスは軽く右手を振ってみせた。それは不自然なほどに巻かれた包帯だった。
「リナさん、あれ怪しくないですか?」
「たしかに、普通なんでもないような怪我なら利き手に包帯なんか巻かないわよ 絵描きにくいじゃない」
うんうん、とアメリアが肯く。
「それに昨日書いたのは右手だったはずよね」
ナーガが、ひそひそ声で話した。
三人で一斉にゼロスのほうを見た。いつものように右手を使っている。
「確かにゼロスさん暗いっていえば暗いですよね」
「ちょっと確かめてみたいな」
「あら、それならあたしにいい考えがあってよ」


休憩時間、ゼロスが席を立ってジュースをのみにいったのを見計らってあたし達も行動した。幸い、ゼロスは一人っきりでベンチに座ってジュースを呑んでいる。ナーガが、何気なくそのまま自動販売機でコップに入っているジュースを買った。
「ゼロスさん、その包帯大丈夫ですか?」
ゼロスの真正面にたち、アメリアが聞いた。
「大丈夫ですよ ご心配なく」
「包帯とってほしいのですけど…」
アメリアがお願いするように上目遣いでいった。
「え…それは…」
「大丈夫ならできるはずです。それとも何かやましいことでもありますか!」
アメリアがぴしっと人差し指をゼロスに突きつけて言い放った。そこへタイミング良くナーガが近づき何気なくゼロスの左手のほうにジュースを渡すとこういった。
「ちょっと持ってていただける?」
物陰から一部始終見ていたあたしがすばやくゼロスのもとへいき、すばやく右手を押さえつけるとアメリアが包帯を外しにかかった。
「え…あ…あのですね…えっと…」
柄になくゼロスが慌てているのもかまわずに包帯をはずした。
出てきたのは思ったとおりミミズがのたくったような字で書かれた“ちかん”という文字だった。
「やっぱり…あんたが痴漢だったのねゼロス!」
あたしは頭に血が上って、それを見た瞬間そう声を上げていた。
「ち…ちがいますよ!」
「昨日痴漢に遭ったときアメリアと二人でそれを書いたのよ!」
「え…じゃあ、あれはリナさんだった…」
「おーほほほほほほっ ついに自白したわね みんなに報告して絞首刑にでもかけようかしら」
「な…なんで僕がリナさんなんかに痴漢を働かなくちゃいけないのですか!」
ゼロスの一言に一瞬時がとまった。
「あ…あんたなんか痴漢の癖に! 痴漢にそんなこといわれたくないわ!!」
「そうですよ、いくらなんでもひどすぎます! 痴漢をやったことは事実なんですから」
「僕だって、リナさんに触りたいですよ! リナさんはかわいいし、魅力的だし」
「あ〜あ、開き直ったわね そこまで追いつめられるなんて哀れねゼロス」
「でも…好きな女の子に痴漢はたらくほど落ちぶれてません」
「「「!」」」



「「「どうも失礼しました」」」
三人でいっせいに頭を下げた。
まさかこんな結果になるとは。
「それよりリナさん どうですかよければ僕と付き合っていただきたいのですけど…」
「か…考えさせてください」
とりあえずその場はそれですんだものの、その後しばらく子のことがあたし達の間で話題に上った。
「ゼロスもこんな女のどこがいいのかしら…?」
「失礼ね、ナーガよりはましよ」
にらみ合っている二人の間にアメリアが割り込んでいった。
「でも、これでリナさんの意外な一面が知れたわけですからもうあきらめているかもしれませんよ」
あきらめていなかったことが後日判明するのだが、それはまた別の話である。



「ああ、その話ね。俺も痴漢に遭ったことあるぞ」
偶然遊びにきていたがーヴに電車の中で痴漢に遭ったことはあるかと聞いてみたところこの返事だ。アメリアがまた聞き返した。
「なんかさ、すっげえおとなしくしてるからそのままトイレに連れ込んで…」
またつばを飲み込む音が聞こえる。
「殴る蹴るの暴行加えておいてきた♪」
あたし達はいっせいにため息を吐いた。
そしてあたしはナーガの耳元でささやく。
「男ってどうしてこうサービス精神がないのかしら…?」
「あってもどうしろっていうのよ」
ガーヴの陽気な笑い声が部屋中に響いていた。