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7713前夜祭 <前奏曲>ほーんてっど・ざ・みらー URL9/5-15:54


またまた人の迷惑考えずにやってきました☆多分今回もゼロリナになる予定。本当は『こんな日があっても』落ちるまで待とうかと思ったんですが、そろそろ時期なんでやっぱ書く事にしました。んで、ミリーナを女副会長にしました。後での、ルークの報復が怖い・・・


 窓から差し込む朝日にあたしはうっすらと目を開けた。このところ夏も終わって、朝晩は少し冷え込んでいる。あたしはずり落ちていた布団を引き上げると、押し寄せてくる睡魔に身を委ねた。と、そのとき
「リナ―!朝よ―!」
どこから言ってるのかわからないが、姉ちゃんの声が聞こえてきた。と、同時に言いようの無い悪寒が走った。あたしは眠い体をなんとか起こし、ベッドから転がり落ちる。
ずぼっ!!
一瞬後、ベッドから槍が突き出てきた。槍は手応えの無いのを感じると、すすすと戻っていった。
「リナおはよう☆」
さっきの出来事の張本人が下の部屋からさわやかに言って来た。
「・・・姉ちゃんおはよ・・・」
なんとかそう答えてから、あたしはたんすを開け学校に行く支度をした。
 
「リナさんおはよーございます!」
学校近くの通学路にさしかかった時、横からやたらと元気な声が聞こえてきた。
「おはよ、アメリア」
そう答えてアメリアと歩調を合わせて歩き出す。
 アメリアはすごくいいとこのお嬢様というやつで、家はかなり大きい。おまけに外見もかわいい。問題があるとすれば、あの正義おたくの性格だろう。ちなみにあたしと同じ1−B(クラス)だ。
「そういえばリナさん、今日の古文の小テスト。予習してきました?」
「げ・・・んなもんあったっけ・・・ま、いいわ、学校に着いたらぱぱっと終わらそっと」

学校に近づけば近づくほど生徒数は増えてくる。ま、あたりまえだけど。と、前に人だかりが出来ている。もしかして・・・
「あ、ガウリイさん、ゼルガディスさん、おはよーございます!」
あたしより先に見つけたアメリアが人だかりの中心に向かって挨拶をする。
「おお、リナとアメリアじゃないか!」
「・・・・・・」
ガウリイとゼルもこちらを見つけて返事をしてくる。最もゼルの場合は右手を軽くあげたくらいだけど。
 この二人はあたしより二つ上の3−A。この二人は学校ではかなりの人気がある。いま、二人の周りにいる女の子達はその二人のファンらしい。あたしに言わせたらのーみそくらげと無愛想なやつ、なんだけど、この女の子達とアメリアがいるからあえて口には出さないでおこう。

 そんなこんなで学校まで来ると校門付近でなにやら人だかりと罵声と悲鳴が聞こえてくる。その騒ぎの中心にいるのが水色の髪を三つ編みでくくってある女の子と、なにやら木刀を振り回して暴れてる背の高い男子。
「ええいっ!シェーラに近づくなぁ!!」
これは背の高い男子。
「ひいぇぇぇ!」
これは悲鳴。
「・・・・・・」
あたしはなんだか馬鹿らしくなってきた。――いや、気のせいにしておこう。
「ちょっとグラウ!」
「ん?なんだリナか」
木刀を男子生徒に突きつけていた背の高い男子・・・もといグラウシェラーがこっちに気付いて言った。
「なんだじゃないわよ、なにやってんのまったく」
「なにって、シェーラに寄り付く変な虫を片っ端から退治してるだけだが」
「当たり前のように言うんじゃないっ!お蔭で毎朝毎朝保健室は満員よ!」
「シェーラに言い寄ってくるやつが悪い!」
・・・気のせいじゃないかも・・・
「はあ・・・ま、ともかくシェーラはあたし達がエスコートしてくから。グラウは向こうの校舎でしょ。ほら、シェーラもなんか言いなさい」
「え、えーと。それじゃ兄様また後でね」
「・・・あ、ああ・・・」
 あたしにせっつかれてシェーラがにっこりとグラウに告げる。
 シェーラ。1−C。この学校でも人気のある女子で、兄のグラウと同じく剣には長けている。頭も中の上くらい。・・・兄のグラウはシスコンだが・・・しかし、その兄もまたもてるときた。グラウもといグラウシェラーは大学2年。この学校は少し変わっていて、あたし達高校の校舎の横に大学の校舎がある。つまり、同じ敷地内にあるわけだ。したがって登校も校門もいっしょ、ゆえにさっきの事が毎朝といっていいほど起こる。・・・まぢでこまった兄妹だ・・・

 げた箱を開けたら手紙がどさどさ落ちてくる。あたしはそれをひょいとスカートで受け止めひとつにする。そして上履きを取り出し逆さにして振る。・・・がびょうがぱらぱら落ちる。・・・もう毎朝の事でなれたけど。横を見るとアメリアとシェーラも似たような状況だった。が、二人の靴にはがびょうが入ってない。なぜなら・・・
「リーナ―さんっ、おはようございます」
「・・・ゼロス」
そう、こいつのせいなのだよなあ・・・
 ゼロス・メタリオム、3−A。学年トップの成績に運動神経は抜群。白い肌によく映える闇色の髪。顔もよい。おまけに女性にやさしい。てな感じで、この学校一の人気を誇っている。そして何故かあたしにちょっかいをかけてくる。おかげで学校を歩けば嫌というほど殺気のこもった視線にさらされる。
「ゼロスさん(先輩)おはようございます」
「アメリアさんにシェーラさん、おはようございます」
「・・・なんの用?ゼロス」
「いえ、途中までご一緒しようかと」
言ってあたしに歩調を合わせて歩き出す。
・・・ま、いいけど
  ―――あ、あのことアメリアに言っとかなきゃ。
「ア、アメリア」
「なんです?」
前を行くアメリアがこちらを振り返る。
「え、えーとね。今日は用事があるから先帰っていいわよ」
「待ってるからいいですよ」
「い、いや、待ってなくてもいいから別に・・・」
あせって声が・・・やばい、不審に思われたかな?
「どーしたんです?」
案の定アメリアは不審な表情を浮かべている。と、横にいるゼロスまで・・・
きーんこーんかーんこーん・・・
どうしたものかと迷っているうちに予鈴がなった。
「ほ、ほら、遅れるから行こアメリア。ほら、ゼロスもとっとと3階に上がる!」
「はっ、そーですね」
言って駆け出すアメリア。・・・何とか誤魔化せたかな?
「じゃーね、ゼロス」
言ってあたしも駆け出す。
ゼロスはひょいと肩をすくめるときびすを返して去っていった。

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7750前夜祭 <奇想曲>ほーんてっど・ざ・みらー URL9/7-22:07
記事番号7713へのコメント

き―んこーんかーんこーん・・・
「よっしゃぁ!4限目終わりぃ!!」
一瞬遅れてみんなもいっせいに動き出す。あたしも鞄を引き寄せお弁当さんを取り出す。そして、一列隣のアメリアに声をかけた。
「ほらほら、早く行くわよアメリア」
「待ってくださいよう、もう少しで終わりますから・・・・・・できたっ!」
几帳面にしっかりノートをとるアメリア。ま、いいけど。
「じゃ、行きましょう!」
「じゃあ屋上まで競争ねっ!スタートッ!!」
「あっ、ずるいですよリナさんー」
あたしより少し遅れて走り出すアメリア。あたしは2階の階段にさしかかった所でアメリアに向かって叫ぶ。
「あたしが勝ったらデザートもらうわね☆」
「ええ――!!!!」
そしてあたしとアメリアはよりいっそうそのスピードをあげて走っていった。

ばんっ!!
「はあ・・はあ・・・な、なかなかやるわねアメリア・・・」
「・・・リナさん・・こそ・・・」
結果は引き分けだった。さすがアメリア・・・
「ま、いっか。さ、食べましょ」
「そーですね」
そしてあたしとアメリアはお弁当を開き食べ始める。
「んー、おいしー☆・・・ついでにいい天気ね―」
「本当ですね―」
「お弁当を食べるには最適ですね」
「そーでしょ・・・ってゼロスなんであんたこんなとこにって・・・ああっ!それあたしの卵焼きさんじゃない!!」
そう、いつの間に着たのやらちゃっかりあたしの横に座っているゼロス。おまけに人様のお弁当に手を出すとわ!!
「あたしの卵焼きさん返せ―!!」
ゼロスの襟をつかんでがくがくと揺さぶる。
「返せと言われましてももう食べちゃいましたし」
「あああああ・・・」
「おいしかったですよ。さすがですねリナさん」
「んなこと言われても嬉しくないぃー!!」
息を切らして喚くあたしの前にゼロスが食べていたパンを半分にして差し出した。
「・・・何よこれ」
「卵焼き食べた分です。僕からも何かあげればそれで帳消しでしょう?」
「でも多いわよ?」
「いいんです。それだけおいしかったんですから」
言ってにっこり笑う。なんかこの顔苦手なのよね・・・
「・・・不本意だけどこれで帳消しにしといてあげるわ」
そう言ってあたしはパンを受け取るとちぎって口に放りこんだ。ふと横を見るとゼロスがにこにことこちらを眺めている。
「何?」
「いえ、リナさんてかわいいなぁーって思いまして・・・」
・・・不覚にも一瞬理解不能に陥ってしまったあたしであった・・・

放課後になった。
「リナさん、帰りましょ・・・って用あるんでしたっけ」
「そう、だから先帰ってていーわよ」
「その用事ってなんです?」
「・・・よ、用事は用事よ」
「まさかリナさん、何か良からぬ事を企んでるとか?」
「企んでない企んでない」
「まさかまた喧嘩ですか?」
「あんたあたしをどういう・・・ってま、いいわ。ともかく悪い事でもないし、喧嘩でもないから大丈夫よ」
「信用できません」
「あんたねぇ・・・」
「そう言ってこの間駅前で喧嘩してたじゃないですか。悪を成敗する時は言って下さいねっていったのに・・・」
「あ、あれは向こうから仕掛けてきたっていってるでしょ。ほら、玄関まで送るから行きましょ」
「むー・・・」
・・・納得してくれてないなぁ。ま、仕方ないけど・・・

玄関に近づくにつれきゃあきゃあと女の子が騒ぐ声が聞こえてくる。そこをあたしは極力普通に通りすぎたかったのだが、それはあえなく粉砕された。
「お、リナとアメリアじゃないか。今帰るのか?」
つくづく人の努力を無に帰すのが得意な奴である。
「ええ、そうですけど・・・」
アメリアがガウリイに言葉を返す。3年ももう終わりなのかゼルとゼロスもその場にいたりする。その分とりまきも普段の3倍。
「それじゃ、一緒に帰らないか?」
ざざっ!!
周りの女子の殺気のこもった視線がいっせいにこちらを向く。ああ、あたしはこれがいやだったのにぃ・・・あ、そーだ!
「あたしはまだ用があるから・・・アメリア、あんたがいっしょに帰りなさい」
「リナさん・・・」
アメリアの少し非難がましい視線がこちらを向く。
「いーじゃない。それにアメリア、ゼルと一緒に帰れる機会逃してもいいの?」
後半は小声で言う。
「う・・・や、やです・・・」
「じゃ、そーいう事でおっけーね。あとよろしくねガウリイ」
言ってあたしはきびすを返して教室に戻る。戻ったとき窓から見るとアメリア達が校門を出るところだった。あたしは鞄を引っ掴むとそのまま3階にある教室まで走っていった。

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7759前夜祭 <幻想曲>ほーんてっど・ざ・みらー URL9/9-23:08
記事番号7713へのコメント

そっと扉を開けて誰もいないことを確認してから教室の中に入る。だだっ広いその部屋の奥には大きなグランドピアノ。壁際にはオルガンやエレクトーン、それにどこぞの民族楽器まであったりする。そう、あたしが今いるこの部屋は音楽室なのだ。
「さてと・・・」
あたしは中央の机に座って鞄から銀色の横笛を取り出した。分かる人には分かるだろう、フルートである。それをあたしは軽く吹いてみる。
 ―――♪―
フルート特有の柔らかい音が出る。思わず顔がほころぶ。
「やっぱりこうやって吹くのが一番ねー・・・姉ちゃんにばれなきゃいいけど」
実はこのフルートは姉ちゃんが誰かから貰ってきたとかで家に持って帰ってきてたのだった。姉ちゃんは吹く気がまったく無いのでくれとせがんだんだが断じてくれなかったので、姉ちゃんが帰ってくるまでこっそり吹いてたりしたんだけど、ある日見つかって・・・いや、やめとこ。思い出したくないし・・・
「ま、まあいっか。あはは・・・」
あたしは気をとり直すと再びフルートを吹き始めた。
ふとあたしは思った。
(アメリア怒ってるかな・・・)
その事が気にかかっていた。
(でもこれを知られるわけにもいかないしなぁ・・・)
これを知ったらアメリア達はどういう反応をするだろう・・・
 アメリアは・・・驚くだろう。「ええっ!リナさんがフルートを?!・・・いえ・・・なんでも無いです・・・」とかいって。
 ガウリイは・・・「・・・熱でも出したのか?」とか言いそうだし・・・。
 ゼルは・・・「リナにもそんな繊細な事が出来た・・・いや、なんでもない・・・」
「・・・・・・・」
なんか考えてて腹が立ってきた。なんかあいつらなら本気でそういう事を言いそうだし。ふん、どーせあたしには似合わないわよ。
 そんな事を考えているうちに曲を吹き終わった。
ぱちぱちぱちぱち・・・
「いやあ、お見事です」
突然部屋に拍手と声が響いた。
(げっ!まだ人がいた?)
あたしは慌てて振り向く。
「・・・げ・・・ゼ、ゼロス・・・」
「御名答」
あたしは自分の警戒心を心から呪った。なんでもっと早く気付かなかったのかと。・・・よりによって一番説得しにくい奴に出くわすとわ・・・
「ゼ、ゼロス・・・あ、あのね・・・」
この事をこいつの姉ちゃんに漏らすわけにはいかない・・・ゼロスの姉のゼラスさんはあたしの姉ちゃんと同じ大学2年だし・・・と言うわけで、必死の説得を試みるあたし。ああ、なんでこんな事に・・・
「・・・ともかく、ここであたしが吹いてたことは一切他言無用よ!分かった?」
「はいはい・・・」
くすくす笑いながら言うゼロス。こいつは本当―に分かってるんだろーな・・・
「あれ?もう帰るんですか?僕としてはもう少しリナさんの演奏を聞いていたかったんですけどねぇ」
(こいつは〜!!)
「いいの、今日はおしまいよっ!」
あたしは片付けもそこそこに音楽室を出た。顔が火照ってるような感じがするが・・・気のせいだろう。

「リナさ―ん、せっかく一緒に帰ってるんですからもう少し相手してくれても・・・」
「・・・脅したくせに・・・」
あたしは今、不覚にもゼロスと下校中だ。
 あの後ゼロスが「一緒に帰りましょ」なんて抜かしてきたから「や―よ」って断ったら「フルートの一件どうします?」っていけしゃあしゃあと・・・
「ま、そんな事もあったような気もしますが」
「気がするんじゃなくて本当にあったけど」
「気にしない気にしない」
「あんたね・・・って、アメリアはどうだったの?一緒に帰ったんでしょ?」
「アメリアさんならゼルガディスさんと一緒に仲良く帰ってましたよ」
「ふ―ん、ならいいけど・・・ん?」
突然頬に冷たい水滴が落ちてきた。さらにだんだんその強さと速度を増してくる。そして・・・
「今日は晴れマーク出てたのに―!天気予報のうそつき―!!」
そして1分後にはあたしとゼロスはどしゃ降りのなか全力疾走していた。
「ゼロス―!どこかに雨宿りする場所ないっ?」
「僕の家ならこのすぐ側ですけど・・・」
「いったん避難させてっ!」
そしてそのままゼロスの後について走り、数分後にはゼロスの家の玄関にたどり着いた。
「・・・雨、全然止む気配ないわね・・・」
 むしろひどくなってるでやんの・・・今や雨は滝のように降り注ぎ、容赦無く地面を打ち据えている。ここまで走ってきたあたしの服はもうすでに下着までびしょびしょになっている。
「はい、リナさん」
家の中からゼロスがタオルを持ってきてくれる。と、ゼロスはタオルを渡す手をとめた。
「なに?」
「水も滴るなんとやら・・・リナさんってどんな姿でも似合いますねぇ」
「んなことしみじみと言うんじゃないっ!!!!」
あたしはその場でゼロスをはたいて手の中からタオルを取り上げた。
「リナさん痛い・・・」
「ふんっ、天罰よ」
「人災だと思いますが・・・」
「・・・う、うるさいっ!」
「それとリナさん・・・ブラウス透けてますよ(はぁと)」
あたしは問答無用でもう1回ゼロスの頭をはたいた。
「ったく・・・くしっ!」
「おや?リナさん風邪ですか?」
「わかんない。とりあえず今日はもう帰るわ・・・っくしっ!」
「家まで送ります」
「別にいらない・・・」
「でもリナさん・・・」
こうした口論の末・・・
「じゃあ、リナさん僕はこれで一応帰りますがちゃんと着替えてくださいね」
・・・結局送られてしまった。ああ、なんでこんな事に・・・
「分かったって・・・ゼロスまた明日・・・くしっ!」
「ほら・・・こんなに冷えてるじゃないですか」
ゼロスの手が頬に触れる。
「ひ、冷えてないって、全然」
上昇する体温を押さえて、くるりと背を向けようとする・・・があたしの手をゼロスが掴んでいた。
「あまり無茶しないで下さいね、リナさん」
ゼロスの声が聞こえた次の瞬間、言おうとした言葉が押し戻された。一瞬頭の中が真っ白になる。
「じゃ、リナさんまた明日♪」
そしてゼロスは満足そうにくるりと背を向けて去っていった。
「ゼロス―――――っ!!」
その姿が見えなくなる頃、ようやく事態を把握したあたしの叫びが今やすっかり晴れた空に響いていった。