◆−プレリュート−神代  桜(9/7-15:23)No.7749
 ┗Re:プレリュート−神代  桜(9/7-22:35)No.7751
  ┗はじめましてぇ〜。−理奈(9/8-03:57)No.7753
   ┗こちらこそはじめまして。−神代  桜(9/10-18:15)No.7779


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7749プレリュート神代 桜 9/7-15:23


えー、はじめまして。ゼロリナよりのルナ&ゼラス様なストーリーでございます。っていってもわかりませんね・・・。とりあえずご覧くだされば、幸いです。



(混沌にたゆたいし、すべての闇の王――)
少女は再びその言葉を胸中でくりかえした。
「そうなると、発動っていうカタチをとらせるには…」
頭の中で夢中にいくつもの魔術の構成をくみたてながら、足早に帰途をたどっていく。
夕暮れの街道には彼女をふくめての二人のみ。さすがに日のしずみかけたこの時間に、旅人の姿はみえない。
「急ぎなさい、リナ」
まさに夕陽のような色の髪の彼女に、静かな声音で声がかかった。
「今日中にはゼフィーリアに入るわよ。明日からまたバイトがはいるんだから」
「あ・うん。」
リナとはまたべつの、うっすらと夕闇のかかったような髪が彼女の前で翻る。肩よりすこし上で切り揃えられたそれは、くせっ毛の彼女に対して見事なストレートであった。
「あ、姉ちゃん」
「なに?」
「あの口伝、やっぱ本当なのかな?」
珍しく大人しい物言いの妹に、姉――ルナは内心、少しばかりの驚きをみたが、それを顔には出そうとせず、やはり静かに告げる。
「さあ? “写本の口伝”いうこと自体には、おそらく謝りはないとはおもうけれどね。」
「そっかぁ…。焼けちゃったもんなぁー、写本。ったくどこのどいつよ! んなもったいないコトした馬鹿は! たまたまあたしは口伝聞けたからよかったけどー。」
愚痴りながら、そのシンプルなデザインの防寒衣の胸元をしめなおすと、それきり緋色の瞳の少女は、再び自分の世界に没頭していた。

ゼフィーリアの気候は年間とおして比較的過ごしやすい。
ルナは少しばかり夜風をいれるため窓をあけると、書物によみふけっていた。
一足おそかったようね
「あらおひさしぶり。」
突然頭に響いてきた声。しかし彼女はさして驚いた様子もなく、さらりと返事をかえすと、よみかけの書物にしおりをはさんだ。
「最近はめっきり声がきこえなくなったから、仕事は部下に押し付けて、またなにか面白いものでも見つけたのかと思っていたわ。」
椅子の背に重心をあずけると、キィ…ときしむ音がする。
悪いけどはずれよ。わたしもそうそうに暇じゃないの
「ならわたしなどにかまっておらず、宮使いの身に精をだしなさいな。そちらもいつまでも背約者を野放しにしておく訳にはゆかないでしょう?」
あらあら、誰のことかしら?
冬の空気のような、凛とした…しかし軽い口調の声がルナに向けられて響いてくる。
彼女の精神に直接話し掛けられるこの『声』。最初に聞こえてきたのはいつだったろうか?
闇と相対せし存在を内に宿す、少女であった彼女に声の主が関心をもったのは……
「とぼけるようならばそれでもかまわないけれど…、まあせいぜいがんばって捕まえることね。『自分たちよりも先にこの世界を滅ぼされた』なんていう汚点が魔族の名に残る前に。」
ずいぶん他人事じゃない? 事の発端はどこの竜王様のしかけた呪縛か判っていて?
「まあ珍しい。息詰まった仕事の責任転嫁かしら?」
まさか
ころころと、澄んだ鈴のごとく笑い声が聞こえてくる。
ただ、今の事態が思わしくないのはそちらも同じこと。
「なにがいいたいの?」
そちらの対抗策となりうる駒に、少し興味があるのよ
ルナは無意識的に隣りの部屋に視線を移した。妹の部屋からはまだ起きてる気配がする。
「それで最初のセリフに戻るわけね」
そういうことね
まるで動揺のかけらもみせずにルナは言葉を紡ぎ出していく。対話の相手はそれを確認すると、いっそう楽しげに声のトーンをややあげた。
ディルスへ行くの…あと数年はやければ良かったのに…残念だったわねぇ
「そう思う?」
違うのかしら?
挑発的な口振りで言ってみたのだが、声の主は彼女の期待に応えることなく、遥か高みから聞き返してきた。
ルナの知る中でもっとも賢く、侮りがたい相手――。
「わたしの目的はあの口伝で充分満たされたもの。それにむしろ今回は好都合というものだったわ。」

「あなたの御自慢の部下の手際のよさを知る事ができて。」
――あそこまで優秀なら、造った甲斐もありますわね――とわざとらしく語尾に付け加えて
でもそれはそちらの駒とて同じことでしょう? 聞けばそれなりの魔力容量と頭脳の持ち主だとか…。才色兼備な妹君がいてうらやましいわね
――新手の嫌味だわ。 そう胸中でぼやくルナ。いかに自分が仕込んだ妹とはいえども、向こうの部下に 魔力容量と頭脳で勝る自信など毛頭ない。そして
でも、始めに彼女に写本の方から聞かせたのは正解ね
とたんに声は深く、静かな響きをもたらした。
風に揺らめくカーテンを視界にいれながら、ルナはそれを静かに聞いている。
最初から与えるには過ぎた知識を、不完全な写本によって彼女にもたらした
その声音はなにかを面白がるように、しかしその言葉ひとつひとつに憎しみを込めるように、ゆっくりとルナの中に流れ込んでくる。
魔族から神を宿す身への、本来とるべき対応――
人は無知であるが故の生き物。だから真実は伝えず、彼女にとっては『切り札』の一言で収まる程度にしか理解させなかった…。そうでしょう――?
問われて、ルナは月夜の空に視線をなげだした。わずかな白い光を身に照らしながら、すっと窓辺に肘をつく。
「半分だけ正解ね。あの娘を直接ラグラディアの許へ連れて行かなかったのは、それだけではないもの」
いまなお夢中に術の組み立てをしている、妹の部屋の明かりを確認する。
ルナは口元に少しばかりの笑みを浮かべた。
――未来よりももっと近い場所に託した、希望の笑みとでもいうように…
「知識も理解も、所詮はあの娘が得るもの。真実を知るかどうかは、あの娘自身が決めればいいことでしょう?」
例え知らぬがゆえに、彼女の身を滅ぼすようなことがあっても?
試すように、声は迷いをもたらせてくる。
精神力だけでの、静かなる駆け引き――…
「ええ。」
いかに人間といえど、神族であることにかわりないはず…。それでも、あなたはその答えを出し続けるの?
「附に落ちない?」
いいえ――
その返答に、相手は再び鈴のような声でくすくすと笑い声をたてた。
だからこそおもしろいのよ。あなたという存在が
「?」
どういう事――とは聞かない。ただそのかわりに、ルナは少しばかり表情に変化をみせた。どうせ相手にはこちらの様子は把握できているのであろうから。
「でも面白いといえばあなたの方が一枚上手でしょう? 部下共々――ね。」
そうかしら?
「一度会ってみたいものだわ。あなたの神官さんに。神々の間じゃ悪評名高くて。」
――みんな『竜』の属性に同情をあおられてる様だから――とかすかな笑い声がまざる。
でも残念ね。あの子が出会うのはあなたじゃないわ。
「ええ、わかっているわ。」
二十六夜の月は細く、まるでなにかの爪痕のように夜の闇夜に浮かんでいる。
無へと消える…束の間の輝き――
「あなたが私に『声』を飛ばしてきた時からね…。あなたが私を『魔族』として相手に選んならば、当然それを引き継ぐ者たちも――」
そこから先は言葉にしない。ゆっくりと、月だけが傾いていく。
ルビーアイ様と対にスィーフィードが在ったように……。無は有をなくしてはありえない
「そしてそれは有もまた同じ事。だからかしらね、互いに呼び合うのは。」
――私達のように
誰が望まなくとも巡り合うもの
――互いを滅ぼすために
相容れないのならば逆に干渉しなければいいものを、求めずにはいられない。
「でもその感情は、あの娘たちが一番強くなるんじゃないかしら」
――かもしれないわね。なにせ…
『わたしが育てたんですもの』
声が、重なった。とたんにもれる笑い声。
それは、間接的ではあれど次に衝突するであろう自分たちの予感からきたもの……。それとも――
コンコンコンッ
「姉ちゃん? なんかさっきから誰かとしゃべってない? たまに声、聞こえてくんだけど」
遠まわしではあるが『うるさい』といいたいのであろう。ドアの向こうで、妹は少し不機嫌そうに言い、はぅっ、と重くため息をついている。
「悪いわね、邪魔がはいったわ。で、結局用件はなんだったのかしら?」
あぁ、いいのよ。もう済んだから
「?」
部下の売り込みよ。彼女によろしくね
まるで人間が友人におしゃべりでもするような口調で、相手は『声』を途切れさせた。
(やけに人間味のあるところは、例の部下も同じなのかしらね…。)
胸中にて呟く。
「姉ちゃぁん!? ねえ姉ちゃんってばーっ」
ドバンッ
「ぶっ」
突然開く扉に、栗色の髪の少女は思わず鼻を打った。
「リナ」
静かで軽くすごみをきかせるその声は、先程までのものとはもう違っていた。
「夜中に大声をだしてはいけないと言ったのを忘れたの?」
「え、いやだって姉ちゃんが…」
もごもごと反論する妹。
「いらっしゃい。私がもう一度いちから教えてあげるわ。」
「え、ええぇぇぇぇぇ! やだそんなの!」
「うだうだいわないでさっさとなさい。」
「やあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
絶叫につつまれながら『ルナ』とドアプレートの掛かった扉はぱたんと閉じてしまった。
(願わくば、この子とは出会って欲しくないのだけどね……)
そう、小さな祈りを残して――


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7751Re:プレリュート神代 桜 9/7-22:35
記事番号7749へのコメント

ごめんなさい。この話がいつのものかって書いてませんでしたね。
時期的にはリナがルナ姉ちゃんに「世界をみてこい」って言われるまえです。
やっぱりわかりづらかったですよね、申し訳ないです〜。

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7753はじめましてぇ〜。理奈 9/8-03:57
記事番号7751へのコメント

はじめまして、理奈といいます。

 読み終えて思った事。上手いですねぇ〜〜。感動しました。表現力とか
なんて言うんでしょう。とにかく、読みごたえがあります。ルナ姉ちゃんと
ゼラス様のやり取りもすっごくいいです。
 短いですけど。続きがすっごく楽しみです。ゼロリナよりなんですね。
ゼロリナ好きなんです、あたし。
 では、では。しつれいしまぁす。

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7779こちらこそはじめまして。神代 桜 9/10-18:15
記事番号7753へのコメント

感想ありがとうございましたぁ!
あんなシロモノを読んで下さった方がいらっしゃるなんて
感激でございます♪
でも続き――あるんでしようかねぇ・・・? 私いま一応
受験生なんで、多分今年一杯は小説はもう書けないかと・・・・・
追い込みの時期ですしネ。
理奈様の小説も読ませていただきました☆ お互いゼロリナ
を極めてゆきましょぅ!(笑)