◆−春夏秋冬 〜The Four Season〜−理奈(9/16-05:38)No.7813
 ┣プロローグ 〜始まりは…〜−理奈(9/16-05:39)No.7814
 ┃┗第一章 夏〜出会い〜−理奈(9/16-05:40)No.7815
 ┃ ┣第一章  夏〜出会い 2〜−理奈(9/16-05:43)No.7816
 ┃ ┗第二章  秋〜気づいた気持ち〜−理奈(9/16-05:44)No.7817
 ┃  ┣第二章  秋〜気づいた気持ち 2〜−理奈(9/16-05:45)No.7818
 ┃  ┗第三章  冬〜やさしい涙〜−理奈(9/16-05:46)No.7819
 ┃   ┗エピローグ 春 〜誓い…そして…〜−理奈(9/16-05:47)No.7820
 ┣Re:春夏秋冬 〜The Four Season〜−月の人(9/17-10:09)No.7828
 ┃┗はじめまして、あぁんどありがとうございます−理奈(9/18-06:14)No.7840
 ┣Re:春夏秋冬 〜The Four Season〜−ユウリ(9/18-14:38)No.7847
 ┃┗ありがとうございますぅ!−理奈(9/20-15:44)NEWNo.7853
 ┣わーい、ゼロリナだ♪−ほーんてっど・ざ・みらー(9/20-17:45)NEWNo.7856
 ┃┗ありがとうございますぅ!−理奈(9/21-05:48)NEWNo.7867
 ┗大切なこの気持ち−理奈(9/21-06:40)NEWNo.7869
  ┗大切なこの気持ち 2−理奈(9/21-06:42)NEWNo.7870
   ┗大切なこの気持ち 3−理奈(9/21-06:43)NEWNo.7871
    ┗大切なこの気持ち 4−理奈(9/21-06:45)NEWNo.7872
     ┗大切なこの気持ち 終−理奈(9/21-06:46)NEWNo.7873
      ┗せつなかったです−月の人(9/21-09:12)NEWNo.7874
       ┗読んで下さった方がいたぁ〜−理奈(9/22-09:19)NEWNo.7885


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7813春夏秋冬 〜The Four Season〜理奈 9/16-05:38


はじめましての方の方が多いのでは、ないでしょうか。こんにちは、
理奈です。このごろ何を書いてもつまんない私のストーリー。って
言っても最後の投稿からそう長くたってないんですけどね。
 とりあえず、また書いてしまいました。今回もまたゼロリナです。
どうぞ、お暇があれば読んでください。では。

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7814プロローグ 〜始まりは…〜理奈 9/16-05:39
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春夏秋冬 〜The Four Season〜

プロローグ 〜始まりは…〜

一年は、長く、短い。春、夏、秋、冬。それぞれの季節に意味がある。どのような意味を持たせるのかは、一年を生きていく人それぞれ。

誰かにそう言われたことがある。言われた時は、何を言われたのか、理解できなかった。でも今なら理解できる。
あたしは、小さな丘の上にある、一本の木の下でくつろいでいた。季節は、春が夏に変わる頃。暖かく、心地よい風にあたしの栗色の髪が舞う。
ここで始まって…ここで終わった、あいつと過ごした一年。その一年は、長かったように思えたが、短かったようにも思える。夏に出会い、秋に一緒になって、冬に泣いて…そして春に誓いを交わした。一つ一つの季節に意味があったあの一年。あの一年だけだった…季節に意味があったのは。
それから幾度目の春が過ぎたか。もう季節に意味なんてなくなった。いや、意味は、ある。あたしの心を傷つけつづける季節。
あたしは、チラッと丘から下を見下ろす。そこには、バスケットコートが見える。
クス…
自然と笑みがこぼれる。
あそこで会ったんだよね。あれは、たしかもう5、6年前の夏…だったよね…たしかあたしが高一になったばかりの時…
あたしは、ゴロンと横になる。そしてそっと瞳を閉じる……

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7815第一章 夏〜出会い〜理奈 9/16-05:40
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第一章 夏〜出会い〜

バン!バン!バン!
あたしは、丸い、オレンジのボールを軽くコートの上に打ちつける。
「今日もいい天気ねぇ〜」
あたしは、バスケットボールをドリブルしながら真っ青な空を見上げる。
「ちょっと暑いけど」
日曜日の午前中。太陽の光がだんだん暑くなってくる。梅雨が明けてこれから夏本番。
やっぱりこうやって晴れてるほうがだんぜんいいわね。
「よっ…と」
あたしは、軽くバスケットボールをリングに投げる。パサっといい音をたててボールがリングの中へ入る。
日曜日は、いつもこの公園で過ごす。こうやって一人でバスケットを練習して汗をかくのがすっごく気持ちいい。
小さい頃からやっているバスケ。高校入っても女子バスケットに入部した。うちの高校は、バスケで結構有名でインターハイにも何回か行った事ある。で、あたしも一年生でレギュラーに選ばれている。
とにかく。あとすこしでインターハイだ。バンバン練習して絶対優勝するんだから!
あたしは、フリースローラインからボールを投げる。これまたきれいにリングに入る。
「うん!絶好調!」
あたしは、ボールを拾ってまたフリースローラインの所へ歩く。と、正面の木の下で寝ている人を見つけた。
うでは、頭の後ろで腕組みをして、足は、投げ出していた。そして顔の上には、開いている本。チラッと闇色の髪が見える。
肩まであるかな、あの髪。あの格好は、男の人よね。
白いブラウスは、腕まくりにしてあり、ベージュのズボン。
結構いいセンスのファッションね。
あたしは、ボールを手の上で転がしながら彼の事を観察する。
むくむくと好奇心がわいてきた。
どんな顔してるんだろう。
…そーだ。
あたしは、彼の方へとボールを転がす。ボールは、コロコロとバスケットコートの上を転がり、彼が寝ている芝生の上を転がる。そしてボールは、彼の足に当たる。
男性は、顔の上から本を取り、起きあがる。
ドキン…と胸がなる。
かっこいい。めちゃくちゃかっこいい。
サラっと、流れる闇色の髪。白い肌。きれいな顔立ち。そして闇色の髪と同じような、深く、暗い紫の瞳。
ん???でもどっかで見たような。
彼は、あたしを見て微笑む。
「こんにちは」
「あっ…ごめんなさい。お休みのところを」
あたしは、あわてて彼の方へと駆け寄る。
「いいえ。だいじょうぶですよ、リナさん」
……
一瞬止まる。
「え…?」
どうして名前を…?
彼は、ニッと微笑む。
「学校でリナさんを知らない者は、いないと思いますが?」
「あっ!うちの生徒会長!」
ひらめいて、思わず叫んでしまった。
そうだ!どっかで見たことあるようなと思ったら。
「はい。ゼロスといいます」
ゼロス・メタリオム。三年生で生徒会長。一回だけ見たことある。まわりにたっくさん女子を連れ歩いていたから覚えてる。
「…って、何よ、その学校であたしを知らない者は、いないって言うのは?」
あたしは、眉をひそめる。有名になるような事は、何もしてないと思うが…。
「新学期そうそう、学校のカフェテリアのメニューを全制覇、した女子。入学式のあと、三人の男子とケンかをした女子。って有名ですよ?」
「う…!た…たしかにそんなことは、したと思うけど…」
すっごいやだ。こんなので有名になるなんて。
「女子バスケに入った天才バスケ少女としても有名ですよ」
「ふ、まぁね」
あたしは、自慢下に言う。ふふふ、やっぱり見てる人は、見てるのね。
「それに、こんなにかわいらしい方なんですもんね」
彼の言葉にボッと顔が燃え上がるような感じがした。
彼は、別に恥ずかしげもなく、さらっとそれを言ったのだ。
「あ、あたりまえよ!」
内心動揺して、あたしは、ボールを拾い上げる。
あ、あんなこと言われたなんて初めてぇ〜。
そしてバスケットの方へと走る。あたしは、ボールを投げるが、それは、リングに当たって跳ねかえる。転がるボールを彼が広いあげる。
「毎週日曜日にご苦労様ですね」
「な…なんで知ってるの…?」
それを聞いて彼は、丘の方へと指す。
「いつもは、あそこで本を読んでいたんです。一ヶ月前、このコートでリナさんをお見かけしたんです。それで今日は、思いきって声をかけようと思って待っていたんですけど、どうやら眠ってしまったみたいですね」
彼は、そう言ってあたしにボールを渡す。
あたしは、それを受け取る。
……………こいつ…ずっとあたしの事を見ていたのか??
そう思っただけでまた顔が赤くなる。
「毎週楽しそうにバスケをやっているリナさんを見ているとこっちまで楽しくなります」
彼は、また微笑む。いままで、見たことのない優しく、暖かい笑み。
「…あんた…あたしを口説こうとしてんの…?」
あたしは、そっぽをむいて聞く。
…こんなこと始めてだから…なにをしたら解らない…
「もしそうだとしたら?」
ゼロスは、あたしの顔を除きこんで言う。挑戦的な…まっすぐな瞳。
あたしは、かぁーと赤くなってパクパクと口を動かす。それを見てゼロスは、ニッと意地悪そうに微笑む。
「リナさんを見ていたら僕もバスケットをして見たいと思いました」
ゼロスは、そう言ってあたしの手の中にあったバスケットボールを取って。リングへと投げる。
ここは、スリーポイントライン。入りっこないわ。でもめちゃくちゃきれいなフォーム。
「え!?」
あたしの思いとは、反対に、ボールは、きれいに弧を描いて、バスケットの中へ入る。
「これでも中学までは、バスケ部員でしたんですよ?」
「すっごい!!フォームもめちゃくちゃきれいだったし!!」
あたしは、興奮して大きな声をあげる。
「ゼロス!」
あたしは、ゼロスに駆け寄る。
「あたしにスリーポイントシュートを教えて!!」

それがあたしたちの出会いだった。
それは、夏が始まったばかりの頃だった…

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7816第一章  夏〜出会い 2〜理奈 9/16-05:43
記事番号7815へのコメント

第一章  夏〜出会い 2〜

「97…98…99…最後ですよ、リナさん」
 ゼロスは、ボールをあたしに向けて投げる。あたしは、それを思いっきり投げる。バン!とボールは、バックボードに当たったがかろうじてリングの中に入る。
「500!」
「だぁ〜〜!!!つかれたぁ〜〜!」
 あたしは、その場にしりもちをつく。
「おつかれさまです」
ゼロスは、バスケットの下に置いてあったタオルとドリンクの入ったボトルを渡す。
あたしとゼロスは、毎週日曜日にこの公園に来てシュートの練習をしていた。最初は、ゼロスからシュートのフォームを習って、そのあとは、ひたすらずーっとシュートの練習。シュート500本くらいやらされる。で、休んでからまた300…。こんなにきついコーチだとは、思わなかったわ…。
「シュートのフォームもきれいになってきてますし、5割、いや、それより入るようになりましたよ。半月ですごい上達ですね、リナさん」
「当たり前でしょう!あたしに出来ない事は、ないんだから」
あたしは、笑ってガッツポーズをする。
「それでこそリナさんです。予選の方は、どうですか?」
ゼロスは、シュートを打ちながら言う。
「順調よ。まぁ、予選で負ける事は、まずないわね。今年のうちのチームは、強いから。あと2勝すればインターハイへの切符を手に入れるわ」
「そうですか。頑張ってくださいね」
「もっちろん!さぁ、気合入れて300本やるわよ!」

毎週、ゼロスは、あたしのために来てくれた。コーチは、厳しかったけど、彼は、本気であたしのために教えてくれていた。会ったばかりでなんでこんなことをしてくれてるのかは、謎だったけど。だから一回、彼に聞いて見た。なんであたしにこんなにしてくれるのかって。
「バスケをしてる時のリナさんって輝いていて見えるんですね。そんな頑張っているリナさんの力になりたくて」
バスケだけじゃなく彼は、学校の勉強も見てくれたし、あたしの悩みの相談も聞いてくれていた。彼は、優しく、あたしは、しだいに彼にひかれていった。その時は、まだそんな事に気づいていなかったけど。
そしてあたしたちは、そのまま勝ち進んで県で優勝し、インターハイへの切符を手に入れた。だけど…

「どうしたんですか、リナさん?」
今週もいつものようにゼロスと日曜日に練習をして、はじめの500本を終わらせて、休んでいた。
さっきまでノートを除きこんでいたゼロスがあたしを心配そうな顔で見る。
「うん?ううん。なんでもないよ」
あたしは、あわてて笑顔作る。
「そうでしょうか?今日のリナさんのフォーム、めちゃくちゃですし、シュートも全然入ってないですよ?インターハイに出場できてうれしいはずでしょう?なのにすごく暗い顔をなさって…」
やっぱり顔にでてるよね…
「うん…ちょっとね…」
あたしは、隣りに置いてあった雑誌を彼に見せる。それは、部活の時、先輩からもらって来たスポーツ雑誌だった。
「大会の組み合わせ」
彼は、それを見て、顔をしかめる。
「これ…」
「そう…2回戦は、去年優勝したチームなのよ…一回戦は、どうってことないんだけど…それを見たらチームのみんな沈んじゃって」
「リナさんらしくないですよ?」
「解ってるわよ。でもこれだけは、どうしようもなくて…」
「リナさんに出来ない事は、ないんでしょう?」
「………」
「毎週、毎週、800本やってきたんですよ。こんなに頑張ってるんですよ。今は、勝ち負けとは、関係なく、リナさんがどれだけあきらめず、頑張れるかでは、ないんでしょうか?こんな気持ちのままでしたら一回戦も勝てませんよ」
ゼロスは、一生懸命あたしを励まそうとしてくれる。
「でも…」
「…がっかりです」
「…え…」
いままで聞いたことのない冷たい声。あたしは、顔をあげる。とそこに冷たい瞳であたしを見るゼロスがいた。
「リナさんがこんな人だとは、思っても見ませんでした。いきなり大きな壁にあたって、何もしないであきらめるなんて。そんなの全然リナさんらしくありません。いままでの僕の努力も無駄でしたね」
チクチクと胸をさす。冷たい…氷のような…冷たさ。
あたしは、顔をそらす。
「逃げたければ逃げてください。僕は、知りません。時間の無駄でしたね」
彼は、そう言って立ちあがる。
「試合、見に行きますよ。あなたが負けるところをね」
ズキンと胸が痛んだ。あたしは、何かを言おうとして立ちあがる。が、何を言っていいのかわからなかった。
「さようなら」
彼は、そう言って公園をあとにた。
………………………
「…バカ…あたしのバカ…」
彼の言うとおりよ…こんなのあたしじゃない…
あたし…彼のやさしさに甘えてた…不安だったあたしを元気付けてほしくてあんなこと言った…
知らず知らずのうちに涙が溢れ出す。
言ったじゃない…ゼロスは、あたしが頑張ってるところが好きで付き合ってくれてるって…
パン!
あたしは、おもいっきり自分の頬を叩く。
あたしから彼にシュートを教えてってたのんでおいて何をやってるのよ!!
「そうよ!!」
去年優勝したからってどうなのよ!去年と今年は、違うのよ!!!
あたしは、転がっていたボールを広いあげる。
そしてシュートする。
いままで見たことないきれいな弧を描き、ボールは、リングの中へ入る。
ゼロスのためにも…がんばんなくちゃ!

その日からあたしは、前以上に練習した。シュート800本も1000本にふやして、死ぬ思いで練習してきた。ゼロスは、来てくれなかったけど。そして、一回戦、けっこう危ないところもあったけど勝った。一回戦、ゼロスは、見に来てくれなかったけど。
そして2回戦。前半は、必死になって相手にくらいつき、点差は、1桁だった。そして後半戦…。

「ハァ…ハァ…ハァ…」
「大丈夫ですか、リナさん」
チームメイトで同じ一年のアメリアは、心配そうにあたしを除きこむ。
「だ…大丈夫よ…」
あたしは、ドリンクを一口飲んで言う。
「しかたがないですよ。すばしっこいリナさんは、戦力になければいけない存在なんですから」
3年で、キャプテンのフィリアがタオルで汗をふきながら言う。
そうなのだ。あたしの最大の武器は、すばしっこさと、この小柄な身体である。誰よりも早くポジションに戻れるのと、相手のディフェンスをかいくぐって敵からポイントを奪う。チームの中でも一番体力のいる役なのだ。
「点差は?」
「2分で7点です」
あたしの問いに、3年生のシルフィールが答える。
「ミリーナさん、何か作戦は、あります?」
アメリアがチームの頭脳プレイヤーで二年のミリーナに聞く。
「ありません。ただディフェンスと、速攻ですね。ボールを取ったらとにかく相手ゴールに向かう。それしかありません」
「ミリーナの言うとおりよ。7点なんてあたしのスリーポイントを3回入れれば逆転よ」
あたしは、立ちあがる。
「そうですよ、みなさん!がんばりましょう!」
「はい!」
フィリアの掛け声にみんなが答える。
「とにかくリナさんのスリーポイントにかけるしかありません。こっちのボールになったらとにかく相手よりゴールへ走る。そしてリナさんへパスしてください。リバウンドもパスカットも、とにかくボールを手に入れたらリナさんへ」
 ミリーナが言った事にみんなうなづく。
残り2分。絶対勝つ!

「リバウンド!」
スリーポイントをうったがこれは、入る自信がない。
思ったとおりボールは、リングにあたり跳ねかえる。
それを長身のフィリアが見事にキャッチし、すかさずあたしにパスする。あたしは、またもシュートする。
「よっしゃ!戻れ!」
リングにボールが入ったのを確認してあたしは、叫ぶ。
4点差!!
あたしたちは、急いでポジションを取る。一つでもシュートされたら負け。あたしたちは、必死にディフェンスをする。
ミリーナは、必死にボールを相手から奪おうとする。そしてジャンプシュートをしようとする相手より一足先にジャンプし、ブロックする。そしてボールをすかさず、取る。
「速攻!!」
ミリーナの掛け声とともにあたしたちは、走り出す。
「リナさん!」
ミリーナからのパスを受け取りまたスリーポイントを狙う。
入れ!!
が、思い虚しくボールは、リングにあたり跳ねかえる。そして不幸にも相手がそのボールを取る。
「しまった!!」
あたしは、ボールを持った相手を追う。が、体力の限界に近いあたしは、おいつけず、シュートを許してしまった。
一分で6点差…
あたしは、ガクっとひざをついてしまった。
「だいじょうぶですか、リナさん!」
アメリアが駆け寄る。
「だ…だいじょうぶよ…」
だいじょうぶなんかじゃない。体力ももうない。
『がっかりです』
その時だった。ゼロスのあの言葉が頭の中に響いた。
「まけない!」
いきなりの叫び声にアメリアは、びっくりする。
そうよ!あきらめない!!絶対勝つって決めたんだから!!
「リナさん!!」
シルフィールのパス。あたしは、それを持って相手ゴールへと向かう。誰よりも早く。そしてノーマークのままスリーポイントを放つ。
「3点差!!」
相手より早く自分達のポジションへ戻る。
「ナイス!アメリア!」
アメリアが相手のパスをカットする。
「リナさん!」
「もう走ってる!!」
あたしは、全速力で走る。
「よっしゃ!!同点!」
全エネルギーを出してあたしたちは、相手にシュートを許さない。
「アメリア、ふんばれ!」
ボールを持ってる相手は、ひっしにアメリアのディフェンスを振りきろうとする。
「あっ!」
が、相手のフェイントに引っかかり、シュートを許してしまう。
ニ点差…!
「あきらめないで!!」
あたしは、すかさず走る。5秒!!
それに気づき、相手が必死に追ってくる。
シルフィールがあたしに向けてボールを投げる。あたしは、それを受け取り、相手ゴールへ走る。すぐ後ろに相手の一人が迫ってきた。このまま投げても後ろから落とされるだけ。
あたしは、スリーポイントラインまで来て、いきなりとまる。相手は、勢いあまってあたしを通りすぎる。あたしは、そのスキにシュートする。相手は、させまいとジャンプしてブロックしようとする。が、ボールは、相手の手をスレスレに通り越してゴールへと向かう。
入った…!!
あたしは、そう確信する。
時間は、2秒。
ガン!!
あたしは、信じられない物を見たように立ち尽くす。
ボールがリングに当たって跳ねかえる。
ブーーー!!!!
試合終了をしめすブザーが鳴る。

真っ白だった……

あたしは、一人で更衣室にいた。もうみんなは、先に出て行った。
あたしたちは、負けた。
「しかたないですよ」
「私達は、よくやりました」
みんなそう言うけど…。あの時、あたしのシュートが入っていれば勝てた試合だったんだ。あたしのせいで…。
「リナさん…」
アメリアが心配して入ってくる。
「ははは…あの時入ったと思ったんだけどな。ううん、入ってたはずよ。相手の爪が当たってなければ」
あたしは、心配をかけないよう明るい声で言った。
「リナさん…」
「さぁて!帰ろう、アメリア!お腹すいちゃった。先輩達外で待ってるんでしょう?どっか食べに行こうよ!」
あたしは、立ち上がり、荷物を持って更衣室を出る。
「待ってください、リナさん」
アメリアも急いであたしのあとを追う。
!!!
更衣室を出てあたしは、立ち止まる。
「ぜ…ゼロス…」
そこには、ニッコリと微笑んでるゼロスが立っていた。
「あ、アメリア…悪いけど先に先輩達の所で待ってて。すぐ行くから」
「はい」
アメリアがパタパタと走り去ったのを見てからあたしは、口を開く。
「負けちゃった」
泣き出したい気持ちを抑えて、あたしは、笑顔を作る。
「はい…。ですけどリナさんは、あきらめずがんばったんですよね?」
彼は、優しく微笑む。それが暖かくて…心地よくて…。
涙が溢れ出す。そんなあたしを彼は、そっと抱き寄せる。
「リナさんは、最後まであきらめず、がんばってました。コートの上でのリナさんは、誰よりも…そしていつもよりも輝いていましたよ…」
彼は、やさしくあたしの頭をなでてくれる。
「き、決めてたのに…絶対勝つ…って…それなのに…それなのに…」
あたしは、ただ彼の胸に顔をうずめて言うしかない。
「リナさん」
ゼロスは、強く言う。あたしは、ビクっと彼を見上げる。吸いこまれそうな瞳があたしを見る。
「リナさんは、十分がんばりました。シュートをふやして、毎週かかさず練習してたんですよね。コート上でも最後まであきらめず、全力でプレイしてたんですよね」
あたしは、コクっとうなづく。
「だったら十分では、ないでしょうか?ゲームには、負けましたけど、リナさんは、自分に勝ったんです。そうでしょう?」
ゼロスの言葉にあたしは、うなづく。
「…あれ?知っていたの?あたしがシュートをふやして練習してたのを?」
「ええ。あの時、少し言いすぎたと思い、謝りに行って見たらリナさんが練習してるのを見て。邪魔は、しては、いけないと思い何も言いませんでしたけど。すみませんでした」
「ううん」
あたしは、首を横にふる。
「あれは、あたしがいけなかったの。ごめんね。ゼロスは、一生懸命してくれてたのにあたしがあんな弱音はくなんて。だから叱ってくれてありがとう」
あたしは、笑みを浮かべて言う。ゼロスもそれを見て微笑む。
「さぁ、行きましょう。みんな、待ってるんでしょう?」
ゼロスは、あたしを放して言う。
かぁ〜…
そうだった、あたしずっとゼロスに抱き寄せられていたんだ。
あらためて思うと顔が赤くなる。
「う、うん!」
あたしは、なんとか彼に顔を見られないようにうなづいた。

何事にもあきらめず、がんばる事を学んだ夏だった…

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7817第二章  秋〜気づいた気持ち〜理奈 9/16-05:44
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第二章  秋〜気づいた気持ち〜
 
「ふぁああ〜…」
あたしは、大きなあくびをする。
「おはようございます、リナさん」
アメリアが後ろからパタパタと走ってくる。
今あたしたちは、学校の方へと歩いていた。通学路には、他にも生徒がたくさん歩いていた。
夏休みが終わり、二学期が始まってもう一ヶ月。暑かった毎日もだんだん涼しくなってきた。
「ちゃんとしました?宿題?」
アメリアは、あたしの顔をのぞきこんでたずねる。
うっ!
「や、やったわよ」
動揺を顔に出さないように答える。実は、全然やってない。やってないなんて言ったらなにをされるか。一回知らないで「やってない」って言った時延々と説教されたっけ。
「じゃぁ、今日のテストは、楽勝ですね?」
「テストぉ!?」
あたしは、アメリアのセリフに思わず叫んでしまった。
回りを歩いていた生徒が何人かあたしたちを見る。
「て、テストなんてしらないわよ!」
が、あたしは、回りを気にせず叫びまくる。
「その分だと、やってないんですね、宿題」
アメリアがジト目であたしを見る。
「今日も朝から元気ですね、リナさん」
後ろから声がする。
「おはよう、ゼロス」
思ったとおり振り返って見ると、そこにゼロスがいた。彼は、あたしの隣りまで来る。
「おはようございます、ゼロス先輩」
「おはようございます、アメリアさん」
「テストがどうしたんですか?リナさん」
「そうなんですよ、ゼロス先輩!リナさんったら今日、テストだって事を知らなかったんですよ。でも宿題をしてたらどうってことのないテストなんですけど、リナさん、宿題もしてないんですよ!」
ゼロスの問いにアメリアがあたしの変わりに答える。
いや、そんな迫力いっぱいにこたえなくても。ほら、ゼロスもちょっとタジタジになってるじゃん。
「そ、それでそのテストは、何時間目なんですか?」
「お昼のあとよ」
ゼロスは、それを聞いてすこし考え込む。
「では、昼、生徒会室で勉強しませんか?教えて差し上げますよ?」
「ほんと!?らっきぃ〜!」
「よかったですね、リナさん。これでテストは、ばっちりですよ」
「そうね!」
あたしたちは、いつのまにか学校に来ていた。
「僕は、こっちなんで。では、リナさん、お昼に」
「うん!またね、ゼロス!」
ゼロスが3年の靴バコの方へ行く。あたしたちも自分達の靴バコへ行く。が、あたしは、自分の靴バコの前来てとまる。そしてそぉ〜っと開ける。
バサバサバサ!!
思ったとおり。靴バコから何枚もの手紙が滑り落ちてきた。
「す、すごいですね…毎日…」
アメリアがあきれた顔で言う。
これが全部ラブレターならまだいい。まだいいのだが…
あたしは、手紙の一つを拾い上げ、開けて見る。
カシャン…
すると中からカミソリが落ちた。
『ゼロス様にこれ以上ちかづかないでください。ゼロス様ファンクラブ一同』
………………………
はぁ〜…
そうなのだ。中には、こーゆーのが入ってる。いや、この手紙ほとんどは、ゼロスがお目当ての女子からだ。まぁ、中には、ちゃんとしたラブレターも入ってるんだけど。
夏休みが終わり、いとしのゼロス様に会えると思ったら隣にしたしそうな女子がいる。なんだあの女は。私のゼロス様にしたしそうに!
と、ほとんどの女子があたしを見てそう思っただろう。
夏休みが終わってもあたしとゼロスは、よくあったりしてる。知らなかったけど、家も近くで朝は、いっしょに登校したりもする。それが女子には、面白くなく、毎日こーいった脅迫まがいのものを送りつけてくるんだけど。
はっきり言って迷惑。あたしとゼロスは、ただの友達。それ以上でもそれ以外でもないんだけど。いくら言っても誰も信じてくれないんだよね。

「たいへんですね、リナさんも」
「誰のせいだと思ってんのよ」
あたしは、教科書を除きこみながらゼロスに言う。
お昼。あたしは、約束どーり生徒会室に来て勉強を教えてもらっている。
で、今朝の事も言ったんだけど。
「まったく。自分のファンをちゃんと管理しといてよ」
「僕に言ってもしかたありませんと思いますけど」
そりゃぁ、そうだけどさぁ〜。
「それより、リナさん。第十問、とけました?」
「うん。もうちょっと」
コンコン。
「入ります」
扉をノックして誰かが入ってきた。
「あっ、キャプテン」
それは、フィリアだった。
「あら、リナさん、いらしてたの。もうキャプテンは、やめてくださいよ。3年の私達は、引退してキャプテンの座は、ミリーナさんに渡したはずですよ」
「すみません。先輩」
そういえばフィリアも生徒会だったわね。たしか副会長。
「おじゃましてすみません。会長、昼までにとお渡しした書類に目をとおされましたか」
あれ?でもフィリアってたしか…
「あぁ〜、そのような物もありましたねぇ。いやぁ〜、すっかりわすれていました」
ゼロスは、のんきに笑い声を上げる。
プチ…
…今何かが切れたような音がしたけど…
「こぉんの生ゴミ生徒会長!!あなたは、会長としての自覚は、あるんですか!!??ゼロス!あれほど書類には、目をとおしてくださいと申しましたのに!」
部屋中にフィリアの叫び声が響く。あたしとゼロスは、思わず耳をふさぐ。
やっぱり。フィリアってゼロスの事がめちゃくちゃきらいなんだよね。どうしてか知らないんだけど。フィリアは、中学から嫌いって言ってたけど。
「自覚ならありますよ。ただリナさんの事で頭がいっぱいでしたから忘れていたんです」
「あたしのせいにするんか?」
あたしは、ジト目で彼を見る。
「リナさんとゼロスっておしりあいなんですか?」
「うん。ゼロスにスリーポイントシュートを教えてもらってたの」
「どうりでリナさんのシュートフォーム、この生ゴミのに似てると思いましたわ」
フィリアは、キッとゼロスを睨む。が、ゼロスは、それを受け流し、微笑む。
「リナさんのシュート、すごい戦力でしたでしょう?」
「これは、どうも後輩がお世話になりました!」
フィリアは、とげとげしく言う。
ったく。つきあってらんないわ。
「あっ、リナさん、どうなさいました?」
立ちあがるあたしを見てゼロスがたずねる。
「うん、だいぶわかったから後は、クラスに戻ってやるわ。教えてくれてありがとう」
ノートをまとめて鞄に入れる。
「じゃあ、先輩、部活で」
「ええ。またね、リナさん」
「バイバイゼロス」
「さようなら」
あたしは、部屋を出て扉を閉める。
部屋の中からフィリアの叫び声が聞こえた。
毎日こうなのかな…?

あたしは、ボールをドリブルしながらあたしをブロックしてるゼロスを見る。彼の後ろには、ゴール。
さぁ〜て。どうしたもんか。
キュッと右へ動く。が、彼もすかさずついてくる。
こいつのディフェンスってきびしいんだよね。
よし。あれやってみよう。
あたしは、また右へ動く。ゼロスもついてくるがあたしは、すばやく身体を回し、彼の左を追いぬく。
よっしゃ!
あたしは、すかさずシュートを打つが。
バン!
「ああぁ!!」
後ろからボールをはたき落とされた。
「今のは、よかったですけどまだ爪が甘いですよ」
「わかってるわよ!」
あたしは、転がったボールを拾い上げる。
夏が終わってもあたしは、毎週日曜日にゼロスとここでバスケをする。シュートだけじゃなくワン・オン・ワンもするんだけどゼロスってめちゃくちゃ上手いんだよね。
「ねぇ〜、なんでゼロスは、高校入ってバスケしないの?こんなに上手いのに」
あたしは、芝生の上に寝転がる。
「ええ。怪我をしてしまいましてね」
「怪我?」
あたしは、眉をひそめる。
そんな様子、全然しないんだけど。
「左腕をいためてしまいバスケは、もうできなくなってしまったんです。まぁ、シュートは、何本か打てるくらいですかね」
「そうだったんだ…ごめん、知らなくて…つきあわせちゃって…」
好きだった事ができなくなるのってすっごいつらいんだよね。
「いえ、僕がやりたくてやったんですから。リナさんが謝る事はありません。それにリナさんと会えてまたバスケの楽しさを知ることができましたし。むしろ感謝してるほうですよ」
彼は、微笑んで言う。それを見てあたしは、顔を赤くする。
「そーいえばもうすこしたら秋の学園祭だよね」
「そうですね。リナさんのクラスは、何をするんですか?」
「月並みよ。喫茶店。そうそう」
あたしは、ポケットから一枚の券を取り出す。
「タダ券。来てくれる?」
ゼロスは、それを受け取る。
「ええ。もちろんです」

「いらっしゃいませぇ〜!」
あたしは、元気よく入ってきた生徒にむかって叫ぶ。その入って来た一組の女子を席へとあんないする。
「何になさいます?」
「アイスコーヒー二つおねがいします」
「かしこまりました」
あたしは、注文を受けてクラスの奥へ行く。
「アイスコーヒー二つ、おねがいねぇ〜!」
結構大きいクラスを3等分に分けて、三分のニは、テーブルやイスを並べて、三分の一は、あたしたちウェイトレスの荷物や、食べ物を用意するスペースにする。
結構人入ってるよね。よしよし。
あたしは、外を見ながら微笑む。
「リナさぁ〜ん、注文お願い!」
クラスメートの呼ぶ声がしたのでそっちへ行ってみる。するとゼロスとフィリアがテーブルに座っていた。
その光景を見て胸がチクンと痛んだ。
なんでフィリア先輩とゼロスが…。
「いらっしゃいませ」
内心の動揺を隠そうと笑顔を浮かべる。
「約束通りきましたよ、リナさん。いや、残念。ウェイトレス姿が見られると期待してたんですけど制服のままでしたか」
「うんな、ウェイトレスの制服作る予算なんてないわよ」
紹介してなかったがこの学校の制服は、男子、女子ともブレザーにネクタイである。今は、ブレザーは、脱いでおり、ブラウスとスカートの上にエプロンを着ているだけである。
「どうしてフィリア先輩がゼロスと一緒なんですか?」
「私は、一人で行くと言ったんですけどこの生ゴミがどうせ同じ所へ行くんですから一緒に行きましょうなんて言って強引についてきたんです」
フィリアは、腕組みし、不機嫌な顔で言う。
そうよね…フィリアがゼロスと好んで一緒にいるはずないよね…
あたしは、ホッと胸をなでおろす。
……………なんでホッとするんだろ………
ふとそう思う。
ゼロスが誰といようが関係ないよね…?でも…
「リナさん?」
フィリアが心配そうな顔で見る。
「あ、ごめんなさい。えっと何がよろしいでしょうか?」
「私は、アイスコーヒーだけでいいですわ」
「では、僕もアイスコーヒーを」
「ちょっと、なんであなたが私と同じ物を頼むんですか?」
「いけませんか?僕は、アイスコーヒーが飲みたいから頼んだんですよ」
あたしは、巻き込まれないように早々とそこを後にする。
「ったく…」
「ねぇねぇ、ゼロス先輩とフィリア先輩ってつきあってるのかな?」
近くにいたクラスメートの女子たちがひそひそと話してるのを聞いてしまった。
「じゃないのぉ〜?あんなに中がいいんだもん」
中がいい?あれが?
あたしは、また二人の方を見る。フィリアは、ゼロスに向かって何やら怒鳴っているがゼロスは、それをさらりと流している。
…たしかに…痴話げんかには、見えるけど…
トクン…トクン…
胸の鼓動が早くなる。不安が胸をしめつける。
「リナ、これを3番テーブルにお願い」
「あっ、うん!」
あたしは、呼ばれて我に帰る。
あたしは、不安を振り払うかのように首を横にふる。

その時からだったろうか。あたしは、ゼロスを意識するようになった。その事には、気づかれないように振舞っていたけど。
あたしは、ただ大切な友達が他の人と楽しくしてるのが気に入らなかっただけだと思っていた。これが恋だなんて全然気づかなかった。
そしてあの日…。あたしは、はっきりとゼロスの事が好きだってわかった日…。

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7818第二章  秋〜気づいた気持ち 2〜理奈 9/16-05:45
記事番号7817へのコメント

第二章  秋〜気づいた気持ち 2〜

『すみません。今週の日曜日は、公園へいけません』
とゆーわけで。金曜日のお昼、ゼロスに言われあたしは、ひさしぶりに公園じゃなくショッピング(というほどでもないけど)へ来ていた。
あたしは、どっちかと言うとファッションとかそーゆーのにあんまし興味は、ないけど、やっぱり女の子よね。こーやってウィンドウショッピングするだけで楽しい。
もうすぐクリスマスか。
ウィンドウディスプレイは、ほとんどクリスマスの飾りがしてあった。
今年のイブは、どうすごそうかなぁ〜。去年は、アメリア達とわいわいさわいだし。
アメリア達の顔を思い浮かべてたらいきなりゼロスの顔が浮かぶ。
な、何考えてんのよ!!
あたしは、おもいっきり頭をふる。
いきなりの事で回りの人達が変な目で見る。
あっ、信号が変わる。
走ったが間に合わなかった。
ふぅ〜。次は、どこへ行こうかなぁ。
あっ、あの宝石店きれいぃ。入ってみようかな。
道路の反対側に大きな宝石店があった。
!!??
そっての方を見ていたら知ってる顔を見つける。
「ゼロス…にフィリア先輩…?」
二人は、その宝石店に入っていった。
信号が青に変わってもあたしは、たちどまったままだった。
…どうして…どうして…
気づいたらあたしは、走り出していた。どこへ走ってるのか自分でもわかんなかった。ただあの場所には、いたくなかった。
ドン!
「す、すみません」
だれかにぶつかってしまいあたしは、しりもちをついてしまった。が、たちあがれない。
「…痛いじゃないの…」
涙があふれてくる。
強く打ったお尻が痛いんじゃない。胸がいたかった。
「痛いよぉ…」
回りの人は、あたしをチラチラ見ながら歩いていく。
そんなことは、関係なかった。
あたしは、うれしそうにフィリアにつれられ、宝石店に入っていくゼロスの事しか考えられなかった。
「言ったじゃないぃ…」
ゼロスは、友達だって…彼が誰と付き合おうが関係ないって…なのに…
「どうしてぇ…」
「リナさん!?」
呼ばれてあたしは、ハッと顔を上げる。
「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
アメリアが駆け寄ってくる。
「あ、アメリア…」
彼女は、心配そうな顔であたしの腕を取る。
「さぁ、立ってください。だいじょうぶですか?」
「う、うん」
あたしは、アメリアの助けで立ちあがる。
「どうしたんですかリナさん?座り込んじゃって…それに…」
「アメリアぁ…」
不覚にも。アメリアの心配そうな顔を見て泣いてしまった。

「そうだったんですか」
あたしは、アメリアにつれられて近くの喫茶店に入った。
ちなみにアメリアは、近くのデパートに買い物にきていたらしい。
あたしは、アメリアにあたしが見た光景を話した。
「たしかにゼロス先輩とフィリア先輩がいっしょにいるのは、見ますけどそれは、生徒会だからと思っていましたが。それにフィリア先輩ってゼロス先輩の事嫌いなはずですよ?」
「あたしもそう思ってた…」
「それでリナさんは、二人が宝石店に入っていった所を見てショックを受けたと」
「…ショック…?」
あたしは、思わず問い返した。それを聞いてアメリアは、眉をひそめる。
「ええ。ゼロス先輩の事好きなんでしょう?だから彼が違う女性といっしょにいる所を見てショックを受けたと」
…あたしが…
「あたしがゼロスの事…を?」
「そうじゃないんですか?」
あたしは、うつむいてしまう。
「ゼロスとは…ただの友達で…毎週、いっしょにバスケして…学校でもお昼は、いっしょに食べて…ゼロスの優しいところ好きだし…笑ってる顔、好きだし…でも…」
「他の女性の方に優しく笑いかけるゼロスさんも好きですか?」
ゼロスがフィリアに優しく笑いかけている所を想像してしまう。
「い、いや…」
あたしは、顔を上げて言う、がまたうつむいてしまう。
「いやだけど、ゼロス誰にも優しいもん…あたしだけに笑ってほしいなんて思えないもん…」
…え…あたしだけに笑ってほしい…?
「ゼロス先輩が他の女性と親しくしてるのも?」
アメリアは、そう問う。
「い…いや…」
あたしは、首をふる。
「ゼロス先輩のこと…好きなんでしょう?」
あたしは、アメリアを見る。彼女は、微笑む。
「うん…」
自然にコクンと首を立てにふる。
「でしたらその気持ちをちゃんとゼロス先輩に伝えるべきじゃないんですか?」
「で、でもゼロスは、フィリア先輩と…」
「どうしてそう思えるんですか?たしかにそういう噂もありますし、二人は、中が…まぁ、いいとは、言えませんけど。それに宝石店に入っていったのなんて偶然バッタリ会っただけかもしれませんし」
「……」
あたしは、なにも言えない。
「教えてもらったのでしょう?あきらめず、がんばることを。でしたらゼロス先輩の事もあきらめず、がんばったらどうですか?その方がリナさんらしいですよ。こんなに弱気なリナさんなんかリナさんじゃありません」
『いきなり大きな壁にあたって、何もしないであきらめるなんて。そんなの全然リナさんらしくありません』
インターハイの時にゼロスに言われたセリフ。
そうよ。こう言われたからあたしは、がんばれた。ゼロスのおかげであきらめずがんばれたんだ。
「アメリア…あたし頑張って見る」

 始めて気づいたあたしの想い…
冷たい風とともに秋が通り過ぎて行った…

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7819第三章  冬〜やさしい涙〜理奈 9/16-05:46
記事番号7817へのコメント

第三章  冬〜やさしい涙〜

本当の気持ちに気づいたあたし。
ゼロスの事が好き。会った時から好きだった。ただアメリアに言われて初めて気づいた。『始めての恋なんでしょう?だからその気持ちが愛だなんて気づかなかっただけ』そう彼女に言われた。
だけどそのせいでこのごろゼロスとちゃんと顔をあわせられなくなった。彼の顔を見ると赤くなり、そっぽをむく。彼に笑いかけられるとうまく喋れなくなる。
今が冬でよかった。日曜日の朝は、寒くて寒くていつもの公園でバスケなんてできやしない。だからこのごろ彼と日曜日には、あってない。学校の昼休みにも彼に会わなくなった。受験生の彼は、昼休みの時間でも他の3年生と勉強していた。
ホッとする反面すごく寂しい。
 
 「リナさんは、それでいいんですか?」
アメリアは、お弁当バコをしまいながら言う。
お昼時間。外は、寒いので教室の中で食べていた。
「いいわけないじゃない」
あたしは、ソーセージをつつきながら言う。
「だったらアタックしないと!ゼロス先輩来年は、卒業するんですよ!今言わないと一生言えませんよ」
ちょっと…大きな声で言わないでよ…。
あたしは、周りを見る。よかった。聞かれてないみたいね。
 「わかってるってばぁ。でもいざって時、緊張して何も言えないのよ」
あたしは、真っ赤になって言う。
「今週がラストチャンスですよ」
「え?なんで」
「来週から三年生は、学校こないんですよ。自宅で冬休み開けの集中授業にそなえるために」
「ええぇ〜、そうなの?」
知らなかったぁ。
「はい」
そっかぁ〜…
「再来週のクリスマスイブにロマンティックな日をすごすため、がんばりましょう!」
「ちょ、ちょっとアメリア、そんな大きな声でいわないで!」
あたしは、一人で燃えているアメリアを必死になだめようとした。

三年生が来なくなって学校は、しずかになった。あたしは、結局何も言えずにいた。アメリアにまた叱られたけど。自分でもらしくないとおもってる。だいたい、恋や愛だのあたしには、似合わないんだ。そうアメリアに言ったらまたしかられた。女の子なんだから恋をするのは、あたりまえ。じゃないと一生独身のままですよって言われた。
でもどうすればいいのよ。
あたしは、トボトボと学校の帰り道を歩いていた。
今日は、いつもより暖かかく、晴れていた。
と、あたしは、公園の横を通る。
ここにもずいぶん長いこと来てないなぁ。
バン、バン、バン
コートの方から音がする。
誰か遊んでるのかな?
あたしは、フェンスから中をのぞいてみる。
!!!!!!
なんであたしってこーゆーのに出くわすんだろう。
そこには、ゼロスとフィリアがバスケのワン・オン・ワンをしていた。
「あら、リナさん」
逃げようと思ったけどそれより先にフィリアに気づかれてしまった。
「こ、こんにちは、先輩」
「リナさん!」
うれしそうに微笑むゼロス。
それを見てドキンとする。ひさしぶりに見たゼロスの笑顔。
「そこで何をしてるんですか?入ってください」
フィリアにまぬかれてあたしは、仕方なくフェンスを回ってコートの中へ入る。
「どうしたんですか、二人とも」
あたしは、何事もなく、いつものように振舞う。
「私たち今週学校へ行かなくていいでしょう?集中授業にそなえるため」
「はい」
「そんな事真面目にやってないでみんな遊んでるんですよ。で、僕達もおたがい久しぶりにバスケがしたいと思って今日来たんです。天気もいいですし」
「そ、そうなんだぁ〜」
あたしは、ゼロスと顔を合わせないようにする。
あれ、でもゼロス怪我でバスケ出来ないんじゃ。
あたしの時のワン・オン・ワンは、ブロックするだけでシュートもあまりうってなかったのに。さっき見ていたらシュートバンバンうってたもん。
「怪我のせいでバスケが出来ないのに。それでもバスケをするって聞かないんですもの」
フィリアは、『仕方がないなぁ〜』という表情を浮かべる。
それを見てズキンと心を痛める。
…心配してるんだ…ゼロスの事…
「リナさんもここでバスケをするってゼロスから聞きましたよ。私達も中学の頃は、みんなで集まって遊んでたんです」
フィリアは、あたりを懐かしそうに見まわす。
そうだったんだ…あたしとゼロスだけの特別な場所じゃなかったんだね…
すると彼女は、ゼロスを見てハッとする。
「喉が乾いてしまいましたね。私、何か買ってきます」
フィリアは、いきなりそう言って走って行ってしまった。
「先輩!?」
と言う事は、あたしとゼロスで二人っきり。
「お久しぶりですね、リナさん」
「う、うん」
あたしは、思わずうつむいてしまう。
「日曜日来なくようになりましたがどうしたんです?」
…毎週来てたの…?
「そ、そりゃぁ、寒くなったからぁ?あ、あたし寒いの駄目なの」
「そうだったんですか」
……………………
沈黙。
『リナさん!』
なぜかアメリアの声が聞こえたような気がする。
…そうよね…今がチャンスよね。
「リナさん?」
「ぜ、ゼロス…」
顔が暑くなる。絶対真っ赤になってるぞ。
「はい?」
彼は、ニッコリと微笑む。
「え、えっと…話しがあるの…」
ドクンドクンと胸の鼓動が早くなる。
「どうしたんですか?」
「…えっと…」
えぇい!!言っちゃえリナ!!
あたしは、ギュッと目を閉じる。
「す、好きなの!」
言った!!言ったぞ!!アメリアぁ!
「り、リナさん…」
ゼロスの困惑した声が聞こえる。
「えっと…あの、今、返事しないで!えっと…」
あぁ〜〜!!!パニック!!
そうだ!
「こ、今度の日曜いつもの時間にここで待ってるから!!ぜ、ゼロスの答えがイエスだったらここに来て!」
あたしは、早口でそう言って走り去る。
「あっ、リナさん!!」
後ろからゼロスが呼ぶ声がしたがあたしは、とまらなかった。
そして角を曲がったところであたしは、立ち止まる。
「はぁ〜〜〜…」
息を止めて走ったから息苦しい。
「…言っちゃった…」
ボッといきなり顔に火がついたみたいに暑くなる。
考えたらすっごい事言ったんだよね。
あぁ〜…やっぱりさっき返事聞けばよかったかな…。なんかイヤな予感がしてとっさにあんな事言っちゃったけど。この度の日曜、来てくれなかったらしゃれになんないよね。
うぅ〜〜〜…
あたしは、立ちあがる。
とりあえず、帰ってアメリアに報告しよう。

そして日曜。
晴れてるし、おみくじ(アメリアと一緒に神頼みしに行った時引いた)は、大吉だったし。今日の運勢は、いいって雑誌にも書いてあったし。だいじょうぶだよね??
あたしは、時計を見る。いつもの時間よりちょっと早い。
いつもの時間というのは、インターハイの練習の時にここでゼロスと待ち合わせていた時間だった。午前10時。
あたしは、ゴールに寄りかかって立っている。
日曜日なので公園の遊び場には、子供達が遊んでいる。
そーいえばあっちの方へは、行かなくなったな。いつもこのコートで遊んでたもんね。
ゼロスとバスケが出来てほんと、よかった。これからも一緒に出来たらどんなにうれしいだろうか。
…早く来てくれないかな…

あたしは、腕の中から顔を上げ、時計を見る。午後2時。
立っているのが出来なくなり座り込んでいる。
なんでまだ待ってるんだろう…もう時間すぎてんのに…
「…はは…バカみたい…」
ふられちゃった…
あたしは、また腕の中に顔をうずめる。
誰かが近づいてくる気配がする。あたしは、顔を上げる。
「フィリア先輩」
フィリアは、寂しそうな顔であたしを見下ろしていた。
「電話しても留守だったんでもしやと思ってきてみれば…」
「…ゼロスから聞いたのね。やっぱり先輩とゼロスって…」
「誤解です」
あたしの言葉を切って言う。
「…え?」
「私は、彼の相談相手だったんですよ」
フィリアは、そう言ってあたしのとなりに座る。
「おかしいでしょう。嫌われてる人に相談事をもちかけるなんて」
彼女は、クスクスと笑って言うがあたしは、わけがわからずただ彼女を見るだけ。彼女は、あたしを見る。
「中学からのバスケ仲間だったので相談くらいは、聞いてあげましょうって思いまして」
あたしは、顔をそらす。
「告白したんだって?」
あらためて他の人からの口で言われるとめちゃくちゃ恥ずかしい。
「は、はい…でも…もういいです。あたしふられちゃったから」
「…」
涙が込み上げてくる。があたしは、泣かないように頑張る。泣きたくない。先輩の前では、泣きたなかった。ゼロスに言うかもしれないから。
「ゼロスに言われたの。絶対リナさんには、言わないでくださいって。でもリナさんには、知って欲しいんです」
あたしは、顔を上げる。
「彼、あなたの事が好きですよ」
…・え…
「…うそ。だったらなんで来ないのよ…」
「……彼ね…卒業したら外国へ行くの」
彼女の言葉にあたしは、眉をひそめる。
外国って…だって…
「外国…?」
「そう。しかもいつ戻って来れるかわからないんですって。彼、外国の大学へ受験するんです」
「そんな…」
「リナさんの事を愛しているのですけど外国へ行く身。帰ってくるのもいつになるか解らない。リナさんを待たせるわけには、行かない。だから彼は、あえて来ないという選択をしたんです」
とめどなく涙が溢れ出していた。
彼女は、それを見てポケットから小さな紙切れを取りだした。それをあたしの手に握らせる。
「彼の携帯番号です」
「先輩…」
あたしは、ギュッとその紙を握り締める。
「ありがとうございます!」
あたしは、立ちあがり走った。

近くに公衆電話を見つけて入る。一息ついてテレカを入れる。そしてゆっくりと番号を押す。
『はい、ゼロスですけど』
「………」
『もしもし』
「あたし…」
『リナさん…?』
「あたし…ゼロスの事好き。大好き」
始めて彼にこう言った時より、自然に言葉が出る。
『り、リナさん…』
「あたし、待ってるから。ゼロスが外国行っても、ずっと待ってるから」
涙が頬をつたい、手をぬらす。があたしは、涙をぬぐわない。
『…フィリアさんから聞いたんですね』
電話の向こうからはぁ〜、っと溜息が聞こえる。
「…うん」
『…そうですか…』
「あたしゼロスの事が好き」
『…今どちらにいらっしゃるんですか』
「あの公園の近く」
『待っててください。すぐ行きます』

あたしは、またゴールの横に立って待った。フィリアは、もう帰ったらしくいなかった。
「リナさん!」
ゼロスが息を切らせながら走ってきた。
「ゼロス…」
あたしは、彼を見上げる。彼は、あたしを見る。
「!」
彼は、いきなりあたしを抱きしめる。
「愛しています」
そしてあたしの耳元でささやく。
やさしく…心地よい声…
また涙が流れ出す。悲しい涙じゃない。うれしいから。ゼロスの事が大好きだから。
「お願い、ゼロス…あたし、待ってるから…何年も待ってるから…ゼロスが戻ってくるまで待ってるから…いっしょにいて…あたしのそばにいて…」
「ええ…います…リナさんのそばにいますから…」
そして彼は、あたしを離し、あたしの手を取る。そしてポケットから何かをとりだし、あたしの薬指にそれをはめる。
「クリスマスプレゼントに渡そうか、渡すまいか迷ったんです。受験生の身、バイトしてお金をためることが出来ないので、フィリアさんのご両親のお店から安く譲ってもらった物です」
それは、指輪だった。小さなルビーとダイヤの指輪。
あたしは、何を言っていいか解らずただ、その指輪を見つめるだけだった。
そうか、だからあの日、ゼロスとフィリアがいっしょにいたんだ。
「ゼロス…」
あたしは、彼を見上げる。
彼は、やさしく微笑む。
あたしが好きな笑顔。
「大好き!」
あたしは、彼に抱きつく。

 やさしい涙を流し、心が暖まった冬だった…

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7820エピローグ 春 〜誓い…そして…〜理奈 9/16-05:47
記事番号7819へのコメント

エピローグ 春 〜誓い…そして…〜

「一年…って早いものね…」
「そうですね…」
暖かい風があたしたちを包む。
お互いに寄り添って、木にもたれかかってすわっていた。
あたしとゼロスは、丘からバスケットコートを眺める。
「たのしかった…」
「僕もですよ…」
…ここから始まったんだよね…

出会って…お互いの存在を知って…楽しんで…頑張る事とあきらめない事を学んだ夏…
秋に、彼が好きだって事に気づいて…
そして彼の心とあたしの想いが交わった冬…

「リナさん…」
彼は、やさしく、そっとあたしの名を呼ぶ。
「なに…?」
「必ず帰ってきますから…リナさんのもとへ帰ってきますから…」
幸せが胸をいっぱいにする。あたしは、そっと瞳を閉じる。
「待ってるから…ずっと待ってるから…」
あたしは、彼の手に自分の手を重ねる。
「外国へ行って、あたしの事忘れて他に女作ったら許さないんだから」
「そんなことは、しませんよ」
彼は、その手を取って握り締める。
「ずっとリナさんの事を想っていますから」
「あたしも…」
あたしは、彼を見る。ゼロスもあたしを見る。
始めてあったときから魅せられていた彼の瞳。
「愛しています…」

誓いとやさしい口付け…
早くも春が…あたしたちの一年が終わろうとしていた…

それから5、6年の月日が流れて行った。
始めの頃は、お互い連絡を取り合っていたんだけど、彼は、あっちの大学で忙しく、あたしは、部活と大学受験で忙しくなり、連絡もしだいに途切れていった。
それでもあたしは、ずっと彼の事を想っていた。毎年、春になるとこの丘へ来て、彼の事を待った。が、幾度目の春が過ぎようと、彼は、帰ってこなかった。
だけどあたしは、あきらめない。彼から学んだ事だ。最後まであきらめず、頑張る事。そう…最後まで…

トン…
何かが足にあたる。
あたしは、ボーっとした頭を動かす。
眠っていたんだろうか…。いい夢を見ていた。彼と過ごした一年の夢…。
なんでこんな夢を。
あたしは、身体を起こし、足元を見る。
それは、丸い、オレンジのボールだった。
バスケットボール。
そしてそれに影が落ちる。
あたしは、ゆっくりと見上げる。
これは、まだ夢の続きであろうか…?
胸が懐かしさと、愛おしさでいっぱいになる。
あたしは、立ちあがる。
最後に見たより背が高くなっている彼。肩にかかっていた闇色の髪は、今は、後ろに束ねてある。だけど変わらない彼の瞳。深く、吸いこまれそうなほどの瞳。
そして彼のやさしい微笑み。
もう視界がぼやけて見えなかった。
あたしは、彼に抱きつく。
「お帰り…ゼロス…」
「ただいま…リナさん…」

春、夏、秋、冬、それぞれに意味がある。

春が終わり、夏が始まろうとする。
あたしたちの一年がまた始まろうとしていた…

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
スランプです。スランプなのにこんな長いものを書いている私。だからツッコムところたくさん。読みにくいし、表現力ないし。あぁ〜〜〜〜……
こんなのでも読んでくださったあなた様。どうもありがとうございました。

 

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7828Re:春夏秋冬 〜The Four Season〜月の人 9/17-10:09
記事番号7813へのコメント

理奈さんは No.7813「春夏秋冬 〜The Four Season〜」で書きました。
>
> はじめましての方の方が多いのでは、ないでしょうか。こんにちは、
>理奈です。このごろ何を書いてもつまんない私のストーリー。って
>言っても最後の投稿からそう長くたってないんですけどね。
> とりあえず、また書いてしまいました。今回もまたゼロリナです。
>どうぞ、お暇があれば読んでください。では。
  はじめまして、月の人といいます。
 ここにレスをするのは初めてなものですから、変になって
るかもしれないですけど、感想を書きます。
 読みましたよ。すごく感情移入してました。
リナちゃんが、すごくかわいかったです。ゼロス様もかっこよかったです。
 リナちゃんの恋に気づくまでの道のりがとてもうまく表現してあって、
読んでて、すごく共感しました。
 理奈さんの小説は、読んでました。感想を書いたのは初めてですけど・・・
実は、私はゼロリナ大好きなんです。もうこの2人っていいですよね〜
 また、読ませていただきますね。なかなか感想書けないですけど
ここに読者がいることを少しでも覚えてもらうと嬉しいです。(笑)
 では、短いですけどこの辺でどうもありがとうございました。 




 

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7840はじめまして、あぁんどありがとうございます理奈 9/18-06:14
記事番号7828へのコメント


>  はじめまして、月の人といいます。
> ここにレスをするのは初めてなものですから、変になって
>るかもしれないですけど、感想を書きます。
 
 はじめまして、理奈です!感想ありがとうございます!いえいえ、全然変じゃないですよ。反対に私のレスが変になってる場合も・・・

> 読みましたよ。すごく感情移入してました。

 うわぁ〜!すっごいうれしいです!私のストーリーに感情移入してくれたなんて・・・感激です!

>リナちゃんが、すごくかわいかったです。ゼロス様もかっこよかったです。
> リナちゃんの恋に気づくまでの道のりがとてもうまく表現してあって、
>読んでて、すごく共感しました。

 今回、これが一番苦労したんですよ。リナちゃんが恋に気づくまでの道のり・・・。書いていると「どうも表現しきれてないなぁ」なんて思っていたんですけど・・・よかったです。

> 理奈さんの小説は、読んでました。感想を書いたのは初めてですけど・・・
>実は、私はゼロリナ大好きなんです。もうこの2人っていいですよね〜
> また、読ませていただきますね。なかなか感想書けないですけど
>ここに読者がいることを少しでも覚えてもらうと嬉しいです。(笑)

 うわぁ〜!本当ですか!?めちゃくちゃうれしいです!!ええ、覚えますとも!
ありがとうございます。投稿するときは、是非読んでくださるとすっごくうれしい
です。

> では、短いですけどこの辺でどうもありがとうございました。 

 いえいえ。私こそ本当にありがとうございました。感想うれしいです。
では、この辺で失礼します。ありがとうございました。

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7847Re:春夏秋冬 〜The Four Season〜ユウリ 9/18-14:38
記事番号7813へのコメント



> はじめましての方の方が多いのでは、ないでしょうか。こんにちは、
>理奈です。

はじめまして,こんにちは,ユウリといいます。

>どうぞ、お暇があれば読んでください。では。

どうもっ、読ませていただきましたっ。
初めてこのHPに来て,初めて読ませていただいた小説で…うわ…超上手い!と感動しました。
なんか少女マンガみたいで好きです♪
バスケットの試合のシーンはよかったなぁぁ…(余韻)
読んでて楽しかったです。あと少し。あと少しってところで、あー!負けちゃったよー!どーするんだーリナー!みたいな(笑)

今から、理奈さんの他の小説も読ませてもらおうかなーなんて思ってます。
…いいですか?(笑)

下手な感想ですいません。楽しませてくれてどうもありがとうございました。

    byユウリ

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7853ありがとうございますぅ!理奈 9/20-15:44
記事番号7847へのコメント

はじめましてぇ!理奈です!!感想ありがとうございます!

>どうもっ、読ませていただきましたっ。
>初めてこのHPに来て,初めて読ませていただいた小説で…うわ…超上手い!と感動しました。

 初めてがあたしのこんなんでいいのだろうか・・・でもすっごくうれしいです!!あぁ、感動だなんて・・・うれしいぃです!

>なんか少女マンガみたいで好きです♪

 はは、あたしも意識して書いてました。

>バスケットの試合のシーンはよかったなぁぁ…(余韻)
>読んでて楽しかったです。あと少し。あと少しってところで、あー!負けちゃったよー!どーするんだーリナー!みたいな(笑)

 本当ですか!よかったぁ!描写がすっごくむずかしくて、書いてて「これ
読んでくれてる人は、わかってもらえてるんだろうか」とすっごく不安だったもんで。
 最初、まよったんですよねぇ。勝たせてあげようか、負けさせようかと。
結局負けの方を選んでしまったけど・・・


>今から、理奈さんの他の小説も読ませてもらおうかなーなんて思ってます。
>…いいですか?(笑)

 きゃぁ〜〜!!えええぇえ!!いいですともぉ!!どうぞ、どうぞぉ!!!
めちゃくちゃうれしぃでございますぅ!!

>下手な感想ですいません。楽しませてくれてどうもありがとうございました。

 いえいえ。感激のあまり、あたし自身が変になってしまいましたわ。
 きっと変な人だと思われたかも(笑)
 感想、本当にありがとうございます!すっごくうれしいです。では。
もし投稿したときは、是非読んでください・・・って押し売り見たいに。
では、しつれいします。

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7856わーい、ゼロリナだ♪ほーんてっど・ざ・みらー URL9/20-17:45
記事番号7813へのコメント

こんにちわ、みらーです。私が今までコメント入れなかったのは先ほどいれてきた庵さんのとこに書いたよーに口(または性格)が悪いからなんですよ・・・んで、もし失礼な事を申し上げた場合はすいませんっ、速攻で謝りますんで。
 私もゼロリナ大好きなんで、この話はひじょーに楽しく読ませていただきました。ゼロスとフィリアが一緒なとこ読んだとき「まさかゼロフィリ?!ゼロスくんの浮気者ぉ!」とかゼロリナって事忘れて思っちゃいましたが、無事ゼロリナに落ち着いてよかったです。やっぱしゼロスくんにはリナが合う!
 って、書いてる人皆にもいえる事なんですが、理奈さんとか庵さんとか澪さんとかなんでこうも文章書くの上手いんでしょうねぇ。私なんて書いて後から「書くんじゃなかったぁぁ〜」って後悔してますから・・・
スランプ中でもこれだけ書けるリナさんに乾杯☆
次のも楽しみに待ってますっ☆

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7867ありがとうございますぅ!理奈 9/21-05:48
記事番号7856へのコメント

こんにちわあ〜、理奈でございます!

>こんにちわ、みらーです。私が今までコメント入れなかったのは先ほどいれてきた庵さんのとこに書いたよーに口(または性格)が悪いからなんですよ・・・んで、もし失礼な事を申し上げた場合はすいませんっ、速攻で謝りますんで。

 いえいえ、ぜぇんぜん大丈夫ですよぉ〜!!
 コメントとってもうれしいです!

> 私もゼロリナ大好きなんで、この話はひじょーに楽しく読ませていただきました。ゼロスとフィリアが一緒なとこ読んだとき「まさかゼロフィリ?!ゼロスくんの浮気者ぉ!」とかゼロリナって事忘れて思っちゃいましたが、無事ゼロリナに落ち着いてよかったです。やっぱしゼロスくんにはリナが合う!

 ありがとうございます!
 少女漫画よろしく、あたし、こういうの好きなんですよねぇ。好きな人が他の
女といっしょにぃ〜!!!???で誤解する。というシチュエーションが。でも
最後には、ちゃぁんと両想いぃ。あたし自身少女漫画よんでるもんで・・・。

> って、書いてる人皆にもいえる事なんですが、理奈さんとか庵さんとか澪さんとかなんでこうも文章書くの上手いんでしょうねぇ。私なんて書いて後から「書くんじゃなかったぁぁ〜」って後悔してますから・・・

 きゃぁ!ありがとうございますぅ。すっごくうれしいです。
 いえいえ。あたしも結構「書くんじゃなかったぁ」と後悔する時もありますけど。でもこうやってあなた様や、みな様から感想いただくとやっぱり「書いて
よかったぁ」と思えるんです。

>スランプ中でもこれだけ書けるリナさんに乾杯☆
>次のも楽しみに待ってますっ☆

 本当に、本当にありがとうございましたぁ。すっごくうれしいです。
 では、しつれいしまぁす!

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7869大切なこの気持ち理奈 9/21-06:40
記事番号7813へのコメント

 
 こんにちは、理奈です。またまた投稿してしまいました。このストーリーは、前々から考えていた物で何時かは、書きたいと思っていたものです。
内容は、あたしが書いてるんだからゼロリナ。ダークです。シリアスです。ラブラブじゃないです。リナちゃんひどい目にあってます。ゼロス君、魔族してます。って魔族なんですけど彼。いつも現代もの書くあたしなんですが今回は、スレイヤーズ世界のゼロリナです。
お互い想いを寄せている。でもそれが「愛」だと気づかない二人。そんな時ゼロスが獣王からリナを傷つけ、負の感情を食べながら殺せと命じられる。彼は、それを実行にうつす。リナを傷つける中、ゼロスの中に何か不思議な感覚が生まれる。そのせいでリナを傷つけるのに少しためらいが出てきた。はたして彼は、命令通りリナを殺すのだろうか…。
というのがだいたいのあらすじ。
リナちゃん、かわいそうです。しかもストーリーの中には、かなり、やばめの発言もいくつか……。
ですからこーゆーのが好きでは、ない方は、さけた方が…。
あっ、でも最後は、あたし的には、ハッピーエンドですが。みなさんには、どう思われるか。
それでも読む!って言う方、どうぞ、お読みください。ただあとになってやっぱり読むんじゃなかったって言っても…あまり苦情は、書かないでくださいね…。一応忠告しましたから…。まぁ、苦情でも感想書いてくださるとうれしいです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

胸の中に渦巻いているこの気持ち
何時からだろう?覚えてない
知らないうちからだった
この気持ちは、何?
懐かしさ?違う
せつなさ?似ている
寂しさ?だろうか
わからない。でも大切な気がする
こんなことは、始めて
でもこの気持ちは、あいつにだけ
あいつと話す時、あいつを見る時
そしてあいつがあたしの名を呼ぶ時
そういった時に感じるこの気持ち
これは、一体何?

これは、一体何でしょうか
何か不思議な感じがする
感じ?僕に“感じる”と言う事は、あるはずがない
では、この気持ちは、一体…
気持ち?それこそあるはずがない
感情なんてこの僕に存在するはずがない
では、“これ”は、一体何でしょうか
あの人の隣にいると何時もそうです
あの人の瞳を見る時
あの人の笑顔を見る時
何時からでしょうか
知らないうちから
これは、一体何でしょうか

大切なこの気持ち

青い空。ううん、そんな一言でかたづけられないほどの空。見た事もない深い色の青。まぶしすぎて目を細めてしまう。雲は、一つもない。広く、どこまでも続く空。
ここは、広い草原の中。地平線が見える。空の青から緑の草原に変わる。走り回ったら気持ちいいだろうな。
暖かい風がふき、さぁ〜…と草が心地よい音をたてる。ぽかぽかの日差しは、昼寝にもってこい。げんに一人昼寝をしている。
平和ねぇ…
でも…
「ひまぁ〜!!」
あたしは、いきなり叫ぶ。
「うわ!」
あたしの隣りで昼寝をしていたガウリィが勢いよく起きあがる。
「なんだ、なんだ」
彼は、あたりを見まわす。が、何もないと知り、また寝る。
「どうしたんですか、リナさん。いきなり大声を上げて」
頭の上から声がする。
「なんでもないの、ゼロス。ただ暇だなぁって思っただけ」
「びっくりしましたよ。もう少ししたら落ちて怪我をするところでした」
「怪我って…魔族がよく言うよ」
あたしは、あきれながら言う。
アメリアとゼルと別れて結構経つ。あたしとガウリィは、目的もなくふらふらと旅をしていた。
あたし自身は、また一人旅でもしようかなぁ〜、なんて思ってるんだけど。このクラゲをほうっておくと心配だ。ってこいつ、出会う前まで一人旅していたはずなんだよね。
そんな時こいつが現れた。
あたしは、チラッと上を見る。
ゼロスは、枝の上に座って木にもたれかかりながら、どこから取り出したか謎の本を読んでいた。
ふらっと現れたこいつ。
こいつ。また何かやっかいごとを持ってきたのかと思ったらそうでは、ないらしい。休暇をもらったのであたしたちの様子を見に来たのだ。これは、あくまで彼が言ったことで、どこまで本当なのかは、わかんないけど。とりあえず今は、一緒にいる。
まぁ、彼が来て何か目的が出来たわけでもなく、あたしたちは、ふらふらと旅をしていた。
「暇って言いましても、リナさん。昨日は、盗賊団を二つも壊滅し、おとといは、通りかかった村の依頼を片付けて、報酬をもらい、その前は、温泉でのんびりし。十分楽しんでると思いますが」
「たしかにあれは、あれで楽しかったけど」
あたしは、頭の後ろで腕組みをする。
「でもなんか、こう刺激が欲しいのよねぇー」
「魔族とかかわりすぎたからでしょう」
「そうかなぁ」
最近まで魔族のゴタゴタにかかわってきたあたしたち。そんな生活になれてしまったんだろうか?そうだったらなんか、いや。
「なんでしたら僕がやっかいごと持ってきましょうか?休暇中といいましても、片付けなければいけないやっかいごとが山のように残ってるんですから」
ゼロスは、こちらを見下ろす。
「いい。持ってこなくていい」
だれが好き好んでやっかい事に首を突っ込むか。
あたしは、ガウリィを見る。
「それにしてもよく寝るわねぇ」
「そうですね」
「こいつってどうしてこう、クラゲなんだろう」
「戦闘中は、するどいですのにね」
「このクラゲでもあたしと出会う前は、ちゃんと一人で旅をしてたんでしょうね」
あたしは、ガウリィの頬をつねる。そして伸ばして見る。
「彼の過去が気になります?」
「気になる」
ガウリィは、顔をしかめるだけで、起きない。あたしは、彼の頬を離す。
めちゃくちゃ気になる。だってこのクラゲがよ。ものごとすぐに忘れるやつがよ。どうやって生活していたのか知りたいじゃん。
「想いを寄せている方の過去は、知りたいと」
…………
「はぁ〜〜?」
一瞬ゼロスが何を言ったか解らなく、間抜けな声をだしてしまった。
「いえ。人間って想いをよせている方の事は、全てしりたいのかと」
あたしがガウリィを…?冗談。
「うぅ〜ん、それは、間違ってないと思うけど。でもあたしがこいつの事を?やめてよ。ガウリィの事、そんな風に思ってないわ」
「おや。ちがうんですか?」
ゼロスは、「意外」といったふうに言う。
「大切な仲間、信頼できるやつ。それだけよ」
「ほんとうにそうですか?」
「ほんとうも何も。こいつに対して恋愛感情なんてないわよ」
「素直になった方がいいですよ」
「はりたおすわよ」
ゼロスの言葉にそく答えるあたし。
「こわいですね」
「ったく」
あたしは、チラッとガウリィを見る。彼は、幸せそうに寝息を立てている。たべもんの夢でも見ているにちがいない。
こいつの事を好きになれるだろうか?たしかに大切には、思っているけど。
あたしは、視線を上へと上げる。
「バカ魔族」
あたしは、ポツリとささやく。

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7870大切なこの気持ち 2理奈 9/21-06:42
記事番号7869へのコメント

僕は、数ヶ月の事を思い出す。いつものように色々と仕事を片付けていた時、獣王様に呼ばれた時。
「リナ・インバースを殺して来い」
僕は、一瞬ゼラス様が仰った事が理解できなかった。いや、命令の内容は、わかったのだけど。
「なぜいまさら」
冥王様の事からずいぶん経つ。あれ以来リナさんの事は、ほうっておけと言われていたのに。
僕は、顔を上げ、たずねる。
「おまえは、知らなくてよい」
「しかし…」
「上からの命令だ。これは、絶対だ。お前は、命じられた事をするだけだ」
「…」
「そうだな。ただ殺すだけでは、もったいない。彼女を傷つけ、痛めつけ、負の感情でも食らいながら殺すがいい。そうだ、あのガウリィ・ガブリエフと言うやつも殺して来い。あやつも結構厄介だからな。あのリナ・インバースの負の感情だ。さぞかし美味かろう」
そう言ったゼラス様の瞳が冷たく輝く。
ゾクっと身体中に何かが走る。
まことにおそろしい方ですね。
「わかりました…」
僕は、一礼しそこを去る。

僕は、下を見下ろす。
リナさんが気持ちよさそうに昼寝を始めたようだ。
あの命令を受け、僕は、すぐにリナさんの元へ来た。ひさしぶりに会った彼女は、変わらず、輝いていた。そんな彼女に会い、この身体だけでは、なく精神体の僕にも何か、不思議なモノが走り抜けた。それは、彼女と始めて会って、行動をともにした時に感じたと同じモノだった。が、僕は、その正体がわからず、そのモノを身体から打ち消す。が、何時も何時ももどってくるのだ。
ふぅ〜…
考えてもしかたがない。もうそろそろ実行しないと。
リナさん…あなたには、死んでもらいます…

「へぇ〜、結構大きな街ねぇ」
あたしは、あたりを見まわして言う。
あのあと。少し歩いて行くとあたしたちは、この街を見つけた。
ここらへんは、とおったことないので街があるなんて知らなかった。
「街の名は、ヴェルデ」
ゼロスがまたどこから取り出したかわからないガイドブックを開く。
「魔導師協会もありますね」
「ここは、武器屋や、剣の道場が多いんだ」
ガウリィがめずらしく口を挟む。
「なんでしってんの?」
「いや、以前ここで短い間仕事をしていたからな」
ガウリィは、てれた様子で言う。
へぇ〜、そうだったんだぁ〜。
「どうしましょうか?今日は、ここで一泊しましょうか?」
いつのまにかガイドブックをしまってゼロスは、今度は、街の地図を広げる。
どっから手に入れるんだ、んなもん。
「そうね。そうしよう。じゃぁ、悪いけどゼロス、宿さがしてくれる?あたし、一応魔導師協会に顔出ししてくるから」
「いいですよ」
「俺も出かけていいか?前の仕事仲間に挨拶したいし」
「いいですよ。では、宿を見つけたらお迎えに上がりますから」

あたしは、歩きながらまわりを見まわす。今市場を歩いている。横には、小さなお店が並んでいる。フルーツ屋に魚屋。肉屋に野菜屋。それだけでは、なく服屋にアクセサリー屋が並んでいた。
「へぇ〜。なかなかいい街じゃない」
そしてそこをぬけると住宅街に入り、さらにそこをぬけると魔導師協会の建物がある。あたしは、そこで一応挨拶をする。そして市場の方へと戻るため、住宅街を歩いていた。
さぁーて。このあと買い物でもしようかな。
「だけどその前に」
あたしは、声に出して言う。そして角を曲がる。そこは、行き止まり。後ろには、さっきまでつけてきた者が道をふさぐ。
「わざわざ行き止まりに入ってあげたんだからなんでつけてるか教えなさいよ」
あたしは、そう言いながら振りかえる。男が二人。長髪とハゲ。普通のライトアーマー見たいなのと手には、剣。
「ほほう。ガウリィの旦那の言ったように気の強いお嬢ちゃんだぜ」
長髪の方が笑みを浮かべながら言う。あたしは、眉をひそめる。
「ガウリイ?あなたたちガウリィの知り合い?」
「ああ、そうさ」
ハゲの方が言う。
「ガウリィの知り合いがあたしになんのよう?」
「見りゃぁ、わかるだろう。お嬢ちゃんを殺しに来たんだよ」
「冗談きついわね。ったくガウリィも何厄介事にまきこまれてるんだか。でっ、本当の目的は、なんなの?」
男二人は、ニッと笑う。そしてあたしめがけて走ってくる。
バカね。
「ファイアーボール!」
これで片付いた…はずだった。が、あたしが放った炎の玉は、男達に当たり、消えたのだ。
「なっ!?」
あたしは、驚愕の声をあげる。
「おじょうちゃん。なぜガウリィの旦那が俺たちがあんたを殺すために選ばれたかわかるか?」
長髪が言う。
「旦那は、知ってるんだよ。仮にも長い間一緒に旅をして来た嬢ちゃんだ。普通のやつじゃあんたは、殺せねぇ。あんたの魔術の前じゃたちうちできねぇからな。俺たちは、これでもハイレベルな魔導師と戦ってきたし、魔族とも何度か戦ってきた事があるんだ。対魔術戦は、なれてるさ」
…そんな…
「じゃぁ…本当にガウリィは…」
「ああ。あんたを殺し、以前と同じく俺達と仕事をする」
頭が真っ白になる。
ガウリィがあたしを…?
「し…仕事…?」
「ああ。人殺しさ」
!!!!!!!!!!
あたしは、座り込んでしまう。
「う、うそよ…」
「本当さ!」
そして男は、あたしに向かって剣を振り下ろす。
あたしは、ギュッと目を閉じる。
キン!
剣と何かがぶつかり合う音。
あたしは、顔を上げる。
ゼロスの後姿。彼が杖で男の剣を受け止めたのだ。
「ちぃ!ガウリィの旦那が言っていた魔族か」
「退くぞ」
そして男達は、走り去る。
「ガウリィさん…?」
ゼロスは、首をかしげる。
「だいじょうぶですかリナさん?」
ゼロスは、あたしの横にひざをつく。
「リナさん?」
あたしは、答えない。
ただ今起きた事を整理しようとしていた…

あたしは、ベッドの上で顔をうずめて泣いていた。
ここは、ゼロスが見つけた宿の、あたしの部屋。
あのあと、ゼロスがここへつれてきてくれて、今は、ガウリィの事をさがしている。
……………
ガウリィが…あたしを裏切るなんて…
コンコン
「リナさん…?」
ゼロスが入ってくる。
「この街のどこをさがしてもガウリィさんは、いませんでした。街の人は、金髪の長髪の男が他の男達と一緒に街を出て行ったと言っていましたが…。リナさん?」
ゼロスは、あたしに近づく。あたしは、身体を起こし、彼を見上げる。
彼は、あたしの顔を見て動揺する。きっとあたしの顔は、涙でグチャグチャだろう。
「リナさん…」
彼は、悲痛な表情を浮かべる。
「…信じていたのに…あたし…信頼してた仲間だったのに…」
ゼロスは、あたしの隣りに腰掛ける。
「仲間…だと思っていたのに…」
「リナさん…」
あたしは、彼にしがみつき、泣き始める。
ゼロスは、あたしの頬に手をそえて上を向かせる。
「僕が…彼の事を忘れさせてあげます」
「…え…」
そして…
「んっ…!?」
あたしの唇が彼の唇と重ね合わされる。
「んー!」
あたしは、暴れ出す。が、彼は、あたしを離さない。
「!」
あたしは、彼の唇をかむ。痛くは、ないはずだけど彼は、あたしを離す。
ポロポロと瞳から大粒の涙が零れ落ちる。
「ち…ちがうのに…こんな…こんな…」
言葉にならない。言いたい事は、わかってるのに言葉にならない。
「彼の事を忘れたくないんですか?」
ゼロスは、まっすぐとあたしを見る。
魅せられるような…深い…瞳…
彼は、今度は、ゆっくりとあたしに口付ける。
あたしは、瞳を閉じ…

そして・・・・・・・

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7871大切なこの気持ち 3理奈 9/21-06:43
記事番号7870へのコメント

僕は、身体を起こす。横には、軽い寝息をたてて眠っている彼女。その瞳から涙がこぼれる。
「リナさん…」
僕は、ゆっくりと彼女の名を呼ぶ。
…………
何もしなかった。何もできなかった。
「ちっ…」
僕は、舌打ちする。
何故…あのような事を…
自分でも解らない。ただ自分のコントロールがきかなかった。まるで自分じゃない何かがあんな事をさせたみたいな…
あのまま彼女を抱く事も出来た。
無理やり抱いて…傷つける事もできたのに。
彼女は、抵抗しなかった。むしろ僕を受け入れようとした。それほどまでに彼の事を忘れたかったのか。それほどまでに彼の事を想っていたのか。
僕は、彼女を抱かなかった。いや、抱けなかったのだ。そうしては、いけないと思ったのだ。なぜ、そう思ったのか解らないけど、そうしたら取り返しのつかないことになると思ったのだ。
僕は、彼女を見下ろす。胸元が乱れている。彼女は、僕が彼女を抱いたと思っているだろうか………。
アストラルに移動する。
もう実行しているのだ。ここで立ち止まっては、いけない。
僕は、この状況を利用し、彼女に偽の記憶を埋めつける。僕に無理やり抱かれたという記憶を…。そして彼女の魔力を封じる。
そして空間を渡る。
そこは、暗闇の中。僕は、目の前のクリスタルを見上げる。
「あなたが彼女を裏切るだけで彼女は、ああなってしまった」
光り輝いていた彼女が、光りを失った彼女に。
「彼女は、それほどまでにあなたの事を想っていたんですね、ガウリィさん」
僕は、彼を見上げる。
「く…」
不意に…彼が憎く見えた。殺してやりたいほど。何故だろうか。たしかに命令で殺さなければいけない男なのだ。僕個人的には、殺す理由なんてない。だが、今。彼女の事を考えたら彼の事を殺してやりたいと思った。
僕は、首をふり、その思いを断ち切ろうとする。
「まだ…殺しません…」
彼は、まだ死んでは、いない。ただ眠っているだけだ。
彼が彼女を裏切ったと言うのは、作り話だ。この街に入る前に彼に昔ここで仕事をしていたと言う偽の記憶を植付ける。そしてその事を証言してもらい、近くにいた僕より下の魔族を呼び寄せ芝居をしてもらった。それがあの二人の男だ。
彼女を傷つけ、殺す。この男の裏切りが彼女を一番傷つける方法だと思ったのだ。思ったとおりそれは、成功した。
「……まだ……殺しません……」
もう用済みのはずだ。だがまだ殺さない。この男には、苦痛を味わいながら死んでもらうのだから…。
僕は、クッ…と口の端を吊り上げ…冷たく笑う…

顔にかかった光にあたしは、目を覚ます。
…朝…
あたしは、起きあがりながらあたりを見る。
ボーっとした頭を動かす。
…そうだ…あたし…
あたしは、自分の肩を抱く。
『ばっかねぇ〜、あんた』
頭の中で自分自身があざけ笑うように言う。
『魔族なんかに身体を許すなんて。そんなにガウリィの、好きな人の裏切りがショックだったんだ』
「ち、ちがう…」
あたしは、首をふる。
身体が震える。
『何が違うのよ』
「が…ガウリィの事…たしかにショックだけど…好きだから…とかそういうんじゃない…」
『じゃぁ、なんで魔族に身体をゆるしたの。無理やりされて。なんで抵抗しなかったの』
「…あたし…抵抗しなかった…?無理やり…だったのに…?」
それは、なんで…?
あたしは、ギュッと自分を抱く。
『だったらあいつに言われたみたいにガウリィを忘れたかったから』
「違う!」
あたしは、思わず叫ぶ。
「あたしが好きなのは…あたしが好きなのは…」
あたしが好きなのは…?
なにそれ。
あたしが好きな人と…ゼロスに何故…身体を許したかが関係するの…?
わかんない…わかんない…
あたしは、ふらりとたちあがり部屋を出た……

あたしは、あてもなくふらふらと街をさまよっていた。
何も考えられない。何も考えたくない。
ただボーっとしてるだけ。
だから気づかなかった。住宅街。しかも寂れている方へ入っていったなんて。そしてつけられてると言う事を。
「むぐ!」
あたしは、いきなり後ろから口を抑えられる。そして引っ張られるように裏の道へとつれて行かれる。
ドサ!
袋小路に入り、あたしは、突き飛ばされる。
昨日の男二人かと思ったが違う。どうやら普通のチンピラが三人。
「な、なによ…」
あたしは、キッと彼等をにらみつける。
「女一人でここらへんをうろついて。襲ってくださいって言ってるのと同じだぜ」
男Aが腰のダガーをちらつかせて言う。
「だから襲ってやってるんだ」
男Bが下品な笑みを浮かべる。
あたしは、すぐに呪文を唱える。
「ファイアーボール」
呪文が完成し、あたしは、叫ぶ。が、何もおきない。
「…え?」
なんで!?
「何をしようとしたんだ」
男Cが首をかしげる。
魔術が使えなくなっている!?
男三人が近づいてくる。
「…や…」
あたしは、あとずさる。が、後ろは、壁。
男Aがあたしの腕を取る。
あたしは、それをふりほどこうとするが出来ない。
そして彼は、あたしを押し倒し、頭の方へと回ってあたしの腕を抑えこむ。
「離して!離してぇ!」
そして男Bがあたしの脚を抑える。
「いやだ!はなして!誰か!」
「誰もこねーよ。いや、来たとしても俺達と一緒になるだろうな。ここらへんは、そーゆーやつらが多いから」
男Cは、そう言って近づく。
「…い…いや…」
あたしは、恐怖に震える。瞳から涙が溢れ出す。
魔術が使えない今、同じ人間がこんなにも怖いものなんて…。
あたしは、ジタバタと暴れる。
「そうやって抵抗するほどその気にさせるんだよ」
「はなしてぇ!!いや、いやぁ!」
男は、近づき、あたしの服に手をかける。
「ゼロスぅ!!!」

僕は、がたがたと震えている彼女に近づく。
「だいじょうぶですか、リナさん」
「あっ…あっ…」
彼女は、涙もぬぐわず震えるだけ。
男達は、もういない。僕が消したのだ。
僕は、彼女に手を差し伸べる。
「やっ!」
リナさんは、その手をはらう。
そうか。昨夜の事を…。それを思いだし、恐怖に震えているのだ。計算通りだ。考えもしなかった今回の出来事も結果的に彼女に恐怖をあたえてくれた。
僕は、手を引いてすまなそうに言う。
「すみません…リナさん…昨夜、あんな…」
「ち、ちがうの!」
「…はい…?」
一瞬動揺する。
何が違うというのだろうか。
「あたし…あたし…いやじゃなかった…」
彼女は、うつむいて言う。言ってる事が理解できなかった。
「ガウリィの事忘れるとか、そんなんじゃなくて…あたし、抵抗しなかった…いやじゃなかった…」
彼の事を忘れるために僕に身体を許した…のでは、なかったのか…?
そんなはずは、ない。ちゃんとそう思うように記憶を植え付けたはずなのだが…失敗…?いや、ちがう。
彼女の強い思いが僕が植付けた記憶を変えたというのか…!?
「たしかにガウリィの事は、ショックだったけど…それは、彼の事が好きとかじゃなく…」
そして彼女は、まっすぐと僕を見る。完全に光りを失ったと思った瞳にかすかだが光りが戻っている。
「あたし、ゼロスの事が好き」
僕は、目見開く。
「リナさん…」
彼女は、顔を赤くして目をそらす。
「魔族を好きになるなんて…変だよね…でもね…あたし、ずっと前からゼロスの事が好きだったの…。ただ気づかなかっただけなの…。でもずっと前からゼロスに対して不思議な気持ちがあったの…。さっきゼロスが助けにきてくれたときわかったの…。ゼロスの事が好きなんだって…」
なんと言う事か。彼女が魔族の僕を好きになるなんて。考えられない事だ。
その時だった。不思議な感覚が身体をつつむ。
こ、これは…。
前々からあった感覚。そうだ。いつも彼女と一緒にいるときに感じる感覚。だが、今この感覚に気を取られてる場合では、ない。
植付けた記憶のせいでは、ないはず。だとしたら彼女は、本気で…。
いや、そんな事より。これを利用する手は、ない。
僕は、ひざまつき、彼女の頬に手を添える。
「リナさん…僕もリナさんの事が好きです」
少し、身体にこたえるが…。
彼女は、瞳を見開く。
「ほ…ほんと…?」
「はい…」
「ゼロスぅ!」
そして彼女は、僕に抱きつく。
「さぁ。とりあえず、宿へ戻りましょう」

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7872大切なこの気持ち 4理奈 9/21-06:45
記事番号7871へのコメント

ずっと前からゼロスに対してあったこの気持ち。それがなんなのかは、全然わからなかった。だけど…今はっきりわかったの。あたし…ゼロスの事が好き…。

あたしは、荷物を持って部屋を出る。そして宿屋の階段を降りて行く。一階の酒場にゼロスがコーヒーを飲んで座っていた。
「おはよ、ゼロス!」
彼は、あたしを見て驚く。
「り、リナさん…。よろしいんですか?」
「うん!いつまでもくらぁーくしてるなんてあたしらしくないじゃん!」
あたしは、彼の向かいにすわる。
「おっちゃぁ〜ん!モーニングセットを三人前ねぇ!」
あたしは、とりあえず朝食をたのむ。
「これからどうするおつもりなのですか」
「とりあえずガウリィを探すわ」
彼は、それを聞いて眉をひそめる。
「何故…?」
「理由を聞くために。そしてしばきたおすために」
「でもリナさん、魔力が…危険です」
「大丈夫、あんたがいるから」
「は?」
彼は、まぬけな声をあげる。
「あんたがあたしのかわりにあいつをしばきたおすのよ」
「はは、それでこそリナさんですね」
ゼロスは、そう言って笑う。
 
僕達は、ヴェルデの街を後にして東へ向かう。東には、傭兵や、戦士たちが集まるという有名な酒場がある街があるとリナさんは、言う。もしかしたらそこでガウリィさんの情報を手に入れることができるかもと彼女は、言う。
僕は、前を歩くリナさんを見る。
心は、ボロボロのはずなのに。元気になるなんて…
なん心の強い人なのだろう。
これでは、僕の考えたとおりに事がはこばらない。どうしたものか。
「どうしたの、ゼロス?」
彼女は、立ち止まり僕の方を見る。
「あっ、いえ。なんでもありません」
「ほんと?」
彼女は、僕の顔をのぞきこむ。
「はい。本当です」
「本当ね」
そして彼女は、思いっきり微笑む。
「!」
まただ。またあの感覚に身体がかすかに震える。
彼女の笑顔を見たとたん。
一体これは、なんだろうか。
うざったい。けど、なぜか消したくないこの感覚。以前から感じていた。彼女と初めてあってから。
「ゼロス…?」
「あっ…いえ。なんでもありません。さぁ。先を急ぎましょう」
「うん」
僕達は、また歩き出す。

草原を抜けると今度は、森が広がる。
「とりあえず今日は、ここで野宿ね」
リナさんは、そう言って、大きな木の下に荷物を置く。
僕は、適当に木の枝を集めて火をつける。
そして夕食をすませて。僕達は、休む。
木によりかかり、火を見つめているときだった。
「ゼロス…」
眠っていたはずのリナさんが僕の名を呼ぶ。
「なんですか?」
「そっち、言ってもいい?」
「…いいですよ」
少し考えたがうなづく。
リナさんは、僕に寄りそう。。
「あったかぁい…」
暖かい…?
「僕がですか…?」
「へへ…そんな事ないはずなのにね」
彼女は、僕の肩に頭を乗せる。
不思議な感覚。またですか…。
このままでは、狂ってしまいそうになる…・
彼女は、僕の手を握り締める。彼女の手から体温が伝わってくる。
「…リナさんの方こそ…暖かいですよ…」
…自然にこぼれた…言葉だった…

そして彼女が眠ったのを確認し、空間を渡った。

目的の町に入ったとたんみんなの視線があたしに集まった…ような気がする。すると一人の男の子があたしの所に駆け寄ってきた。
デジャヴを感じる。
「姉ちゃん、リナ・インバースだろ?」
……………
いやな予感がした。
「ううん。似てるってよく言われるんだけど、ちがうよ」
あたしは、あやしまれないように微笑んで言う。
「どうしてなの?」
「二日前にね、白ずくめの人が来てこの人を探してるって…」
男の子は、そう言ってあたしに一枚の紙を渡す。
「白ずくめ?」
あたしの知ってる限り、ゼルしか思い当たらないのだが。
あたしは、紙を受け取る。
“手配書”
イヤな予感があたった。
そこには、あたしの名とあたしの様子が書かれてあった。が、目をひいたのは、そこじゃない。
紙を持つ手がふるえる。
ゼロスは、それに気づき、あたしの手から紙を取る。そして眉をひそめる。
「リナ・インバースを殺し、その亡骸をセイルーンまで持ってこせし者に報酬を払う。セイルーン第二王女アメリア・ウィル・テスラ・セイルーン…」
めまいがする。が、あたしは、倒れないように必死に意識をたもつ。
「ね…ねぇ…。その白ずくめの人…は、どうして…このリナ・インバースって言う人をさがしてるのかな…?」
あたしにこの事をつたえようとしてるのか…?それとも…。
「そりゃぁー、殺して報酬手に入れるためじゃない。そう言ってたよ。今この町の宿にいるから呼んで来ようか?」
今度こそ倒れそうになる。だけどゼロスが後ろから支えてくれた。
「リナさん、ゼルガディスさんに見つかる前に町を出ましょう」
ゼロスは、あたしに小声で言う。
「ありがとうございました。それでは、僕等は、先を急いでるので」
ゼロスは、男の子に紙を返す。
そしてあたしたちは、町を出る。

あたしたちは、町の人に見つからないように森の中へ入る。
ゼロスは、あたしを座らせる。
身体が震える。
…ガウリィに続いて…アメリア、それにゼルにまでも…
それが一緒に旅をして来た人たちのすることだろうか…
一体あたしが…何をしたというのだ…
…あたしだけが仲間だと思っていただけなのだろうか…
「リナさん…」
ゼロスは、あたしの手を取る。
「…ゼロス…ゼロス…」
もう涙さえ流れない。
ただ空っぽ。
真っ白。
ぽっかりと穴が開いたような気持ち。
もう……

僕は、リナさんを見る。
生気のない瞳。数日前まで少しだけ取り戻していた瞳は、もう…。
やはり仲間の裏切りは、こたえるか。人間というのは、わからない生き物ですね。
まぁ、とりあえず。彼女は、もうだめですね。
「…ゼロス…」
呼ばれ、僕は、彼女の顔をのぞきこむ。
……!!
なぜかビクっとふるえる。
彼女が見せた事のない表情。
いや、表情と呼べないもの。
まるで人形の顔。
ザワッと身体中に走り抜ける感覚。あの、狂ってしまいそうな感覚。
これ以上彼女といると僕自身をうしなってしまいそうな…モノ。
「リナさん…」
仕上げですね。
「どうやら獣王様がお呼びです」
僕は、そう言っていったんアストラルに入る。

白ずくめの格好で僕が作った偽の手配書を配る。それがアメリアさんとゼルガディスさんの裏切りとリナさんに思わせる。
ガウリィさんに続き、二人にも裏切られたリナさん。そして仕上げに。
僕は、リナさんの元に姿をあらわす。
彼女は、僕を見上げる。
「リナさん…」
「…あたしを殺すんでしょ…」
!!
「な、なぜ…」
「…だいたい想像がつくわよ…」
最後に…想いをよせていた僕に殺される…
恐怖に震えながら、そして心を傷つけながら…
そう考えていたのだが。
僕は、彼女を見る。
怖がってる様子は、ない。むしろすべてを受け入れ、安らいでいる感じさえする。
「…いいよ…殺して…」
僕は、顔をしかめてしまった。
まさか彼女の口からこのような言葉を耳にするとは…。
もう彼女は、僕が知っているリナ・インバースでは、なかった。
「…ゼロスの手で殺して…」
お望み通り…。
僕は、手をかかげる。
彼女は、僕を見る。
「最後に…言わせて…ゼロス…」
…愛してる…
!!!!!!!!
その瞬間、彼女の瞳が、光りを失っていたはずの瞳が…光り輝いた…
…………………………
以前から感じていたこの不思議な感覚…
………
「どうやら…滅びなければいけないのは、僕の方ですね……」
「…え…?」
僕は、フッと笑い、リナさんを眠らせる。
そして彼女を抱きかかえ、空間を渡る。

ここは、ヴェルデの街に入る前に休んだ木の下。
僕は、そこにリナさんを横にする。そして空間からガウリィさんを取りだし、リナさんの横に寝かせる。
僕は、リナさんを見下ろす。
ふっ…
彼女が目覚めた時は、全て元通りにもどっているだろう……

考えて見ればこんな回りくどい事をしなくてよかったのだ。初めからリナさんの前でガウリィさんをジワジワと傷つけ、殺せばよかったのだ。だけど僕は、それをせず、こんな回りくどい事をした。それは、何故?

………僕は、本当は、リナさんを傷つけたくなかった……?
………僕は、本当にリナさんの事を……?

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7873大切なこの気持ち 終理奈 9/21-06:46
記事番号7872へのコメント

「う…ん…」
あたしは、ゆっくりと目を開ける。
……あれ?
「おめざめですか、リナさん…?」
頭上からゼロスの声がする。
あれ?あたし、いつのまに眠ったの?
あたしは、あたりをみまわす。そこは、かわらず草原の一本の木の下だった。
「あれ?」
「どうなさいました?」
あたしは、上を見上げる。上には、さっきと変わらず、ゼロスがいた。そして横には、あいかわらず眠っているガウリィ…。
「ううん。なんでもない」
えっと…なんだっけ…ゼロスがあたしがガウリィの事好きとかなんとかほざいて、はりたおそうかと思って…
そこまで覚えてるんだけど。
あたしは、首をかしげる。
「まぁ、いっか」
「リナさん…」
ゼロスは、ひらりと枝から飛び降りる。
「突然ですが、もうもどらなくては、いけません」
彼は、そう言う。
「ええ!?」
あたしは、思わず立ち上がってしまう。
「どうして突然?」
「獣王様がお呼びです。いつも当然ですから、あの方」
「そ、そうなんだ…」
あれ…?どうしてあたし、残念なんだろう…?
どうして…行ってほしくないんだろう…?
「では、リナさん。ガウリィさんによろしく」
ゼロスは、そう言ってクルッとあたしに背をむき…
「待って!」
あたしは、無意識に叫んでしまった。
ゼロスは、おどろいてあたしを見る。
「リナさん…」
「あっ、えっと…」
あたしも何故止めたのかわからなかった。でも何か言わなければいけないことがあるような気がして…・
「あの、えっと…あぁ…」
何を言っていいのかわからなかった。何が言いたいのかさえ、わからなかった。
だけど…だけど…何か大切で…大事な事を…言わなければいけないような気がした。
「リナさん」
彼が…彼の口から聞いた事のない、やさしい声で…あたしの名を呼ぶ。
ドクンと胸がなる。
あたしは、彼を見る。
彼は、やさしく微笑む。
彼は、あたしに近づき…
……え……
「愛しています」
そして彼は、姿を消す。
あとは、口を抑えているあたしがボーっとして立っていた……

 

胸の中に渦巻いているこの気持ち
何時からだろう?覚えてない
知らないうちからだった
この気持ちは、何?
懐かしさ?違う
せつなさ?似ている
寂しさ?だろうか
わからない。でも大切な気がする
こんなことは、始めて
でもこの気持ちは、あいつにだけ
あいつと話す時、あいつを見る時
そしてあいつがあたしの名を呼ぶ時
そういった時に感じるこの気持ち
これは、一体何?

これは、一体何でしょうか
何か不思議な感じがする
感じ?僕に“感じる”と言う事は、あるはずがない
では、この気持ちは、一体…
気持ち?それこそあるはずがない
感情なんてこの僕に存在するはずがない
では、“これ”は、一体何でしょうか
あの人の隣にいると何時もそうです
あの人の瞳を見る時
あの人の笑顔を見る時
何時からでしょうか
知らないうちから
これは、一体何でしょうか

そう………
今わかった
この気持ち
この感覚

それは、大切
それは、大事

それは…たいせつなこの気持ち…


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

いかがでしたでしょうか。あたし的には、最後は、ハッピーエンドです。少なくともお互いの気持ちは、つうじたんですが。
さてゼロス君。この後どうなったかと言うと。考えていません。いえ、いちおう考えてあったんです。ゼラス様に滅ぼされると言う筋書きを。でもやっぱりゼロス君には、滅んでほしくなかったので書きませんでした。だから今どうしてるのかは、さっぱり。
ゼロス君。むずかしかったです。魔族のゼロス君、すっごく書きにくかったです。でもなんとか書けました。
最初、こんなもん投稿してよかったのかなぁ、なんておもっていたんですけど。投稿してよかったと思っています。
では、では。またどこかでお会いしましょうね。

………ダーク、シリアス、むずい…やっぱし甘い現代モノゼロリナの方が簡単だわ…

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7874せつなかったです月の人 9/21-09:12
記事番号7873へのコメント

 こんばんわ、理奈様、月の人といいます。では感想です。
なんか読んでて、すごく切なくなりました。リナちゃんもゼロス様も
今の自分の気持ちに気づくまでが・・・
 魔族してるゼロス様なんですけど、本当にひどいんですけど、
でも、なんかそういうことをしている割には、いろんなゼロス様の気持ち
があふれていて、それがかえって切なくて・・・ダークでしたけど、読んで
よかったと思ってます。
 甘いところもありましたしね。ゼロス様とリナちゃんのキスシーンが・・・
あ〜いいです。もう、私この二人に壊れてますので(笑)
 では、変な感想ですけどこの辺で、また読ませてもらいますね。
どうも、ありがとうございました。

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7885読んで下さった方がいたぁ〜理奈 9/22-09:19
記事番号7874へのコメント


> こんばんわ、理奈様、月の人といいます。では感想です。

 こんにちはぁ、理奈ですぅ!感想ありがとうございます。
 これは、さすがに誰も読まないかなぁ〜・・・なんて思っていましたから
うれしいです!

>なんか読んでて、すごく切なくなりました。リナちゃんもゼロス様も
>今の自分の気持ちに気づくまでが・・・

 前にどなたか様にも書きましたけど、あたし、「せつない」感じを書くのが
どうも下手でして。書いても書いても切ない感じが出ずぐちゃぐちゃになる
ことが多いので。ですからその感じが出ていたと知ってうれしいです。

> 魔族してるゼロス様なんですけど、本当にひどいんですけど、
>でも、なんかそういうことをしている割には、いろんなゼロス様の気持ち
>があふれていて、それがかえって切なくて・・・ダークでしたけど、読んで
>よかったと思ってます。

 今回、これを書いたのは、ゼロス君が魔族、魔族してるところが書きたいだけ
だったんですね。いつもラブラブ、おとぼけ、なゼロス君を書いてきましたか
魔族のゼロスは、どうなんだろうと思いまして。と、同時にゼロス君の気持ち
っていったいどんなのだろう、とか、ゼロス君にもこういう気持ちを持てるのか、
と不思議に思い、書いていました。
 ダークというのは、やっぱり魔族してるゼロス君のストーリーは、ダーク・・・かと。
 
> 甘いところもありましたしね。ゼロス様とリナちゃんのキスシーンが・・・
>あ〜いいです。もう、私この二人に壊れてますので(笑)

 いやぁ、やっぱりダークしすぎるといけないかなぁ、と思い、あのシーンを
いれました。甘かったですか?よかったぁ。
 あたしも壊れてますので。この二人の事を考えると色々妄想します(おいおいおい)

> では、変な感想ですけどこの辺で、また読ませてもらいますね。
>どうも、ありがとうございました。

 こちらこそありがとうございましたぁ〜!!すっごくうれしいです!
ではぁ、失礼しまぁす。