◆−レアードの狂乱−白いウサギ(9/23-01:42)No.7892
 ┣レアードの狂乱 一 A−白いウサギ(9/23-01:49)No.7893
 ┣レアードの狂乱 一 B−白いウサギ(9/23-01:56)No.7894
 ┣レアードの狂乱 二 A−白いウサギ(9/23-02:07)No.7895
 ┣レアードの狂乱 二 B−白いウサギ(9/23-02:18)No.7896
 ┣レアードの狂乱 二 C−白いウサギ(9/23-02:21)No.7897
 ┣レアードの狂乱 三 A−白いウサギ(9/23-02:27)No.7898
 ┣レアードの狂乱 三 B−白いウサギ(9/23-02:32)No.7899
 ┣レアードの狂乱 四 A−白いウサギ(9/23-02:38)No.7900
 ┣レアードの狂乱 四 B−白いウサギ(9/23-02:45)No.7901
 ┣レアードの狂乱 四 C−白いウサギ(9/23-02:50)No.7902
 ┣レアードの狂乱 エピローグ−白いウサギ(9/23-02:54)No.7903
 ┣レアードの狂乱 あとがき−白いウサギ(9/23-02:58)No.7904
 ┃┣はじめまして−MIYA(9/24-20:04)No.7914
 ┃┃┗はじめまして&ありがとうございますっ!−白いウサギ(9/25-00:20)NEWNo.7916
 ┃┃ ┗そういうことになったんですね(笑)−MIYA(9/27-11:37)NEWNo.7950
 ┃┣Re:レアードの狂乱−ブラントン(9/25-04:55)NEWNo.7919
 ┃┃┣ごめんなさい、訂正です。−ブラントン(9/25-05:06)NEWNo.7920
 ┃┃┗毎度お世話になってます−白いウサギ(9/26-01:56)NEWNo.7930
 ┃┃ ┗いえいえ、こちらこそ−ブラントン(9/26-22:57)NEWNo.7947
 ┃┃  ┗いやいや、こちらの方が……(笑)−白いウサギ(9/27-00:41)NEWNo.7949
 ┃┗感動致しました!−庵 瑠嬌(9/26-17:00)NEWNo.7944
 ┃ ┗はじめまして&ありがとうございます(^^)−白いウサギ(9/26-23:52)NEWNo.7948
 ┗初めまして−makoto(9/25-15:57)NEWNo.7925
  ┗初めまして&ありがとうございますっ!−白いウサギ(9/26-02:00)NEWNo.7931


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7892レアードの狂乱白いウサギ E-mail 9/23-01:42


さて。
初めましての方もお久しぶりの方もいらっしゃるようですが。
どうも。白いウサギです。
今回、なんとか小説が書き上がったので投稿させていただきます。
長編、スレイヤーズ。
……まぁ……タイトルのリズムというか、調子ですぐ解った方がほとんどだと思いますが。
ともあれ。
前置きが長くてもちっとも面白くないし、とっとと進みましょう。
ま、初めましての方ならわからないでしょうが、お久しぶりとなる方には殆ど知っているとは思いますが……
例によって例の如く、長いです。
ええ。それはもういつ終わるんだか終わってるんだかわかんない今年の夏のように……
読み終わってみたら年が10歳ぐらい過ぎていた方。
いらっしゃいましたら、それはパソコンから浦島の玉手箱の煙が出ています。
すぐに治しましょう。
決して私のせいではありません。
…………結局前置きも長くなりましたが、お楽しみ頂けたら幸いです。
なお、あとがきとこの挨拶では人間違うんじゃねーか、 と思えるほど文体が違いますが、あまり気にしないで下さい。
白いウサギはこーゆー奴です。
ともあれ、では予告行ってみよーっ!



レアードの狂乱

ただ単においしーものを食べるために沿岸諸国へとやってきたあたし達。
おいしー魚料理の数々があたしを待ってるっ!
……はずだったんだけど、気が付けばまたややこしいことに巻き込まれてるみたいで……
どーやらあたしの辞書に、『平穏』と言う二文字はないよーである。
なにやらあやしー奴を追いつめてみると、思わぬ企みが見え隠れ。
おいおい……国相手に喧嘩売れってか……?
ま、あたしに関わった以上、悪人も善人もすぺぺのぺいっ! である。
さーて、ガウリイ。とっとと行きましょーかっ!




レアードの狂乱

 目 次

一、 亡き夢の 光と影が 見え隠れ 2

二、 目的地 着いてみれば お祭りで         73

三、 戦いは いつも必ず 力押し           150

四、 レアードの 狂気の宴 終わる時        213

エピローグ                         315

  あとがき                         323



『すぺしゃる・さんくす だる・せーにょ』

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7893レアードの狂乱 一 A白いウサギ E-mail 9/23-01:49
記事番号7892へのコメント


一、 亡き夢の 光と影が 見え隠れ


 どこどぐぉぉぉぉんっ!
 夜中に呪文の花が咲く。
 ……と、言ったらいつもどーりの夜中宿屋を抜け出し盗賊いぢめ(はあと)なのだが、今回はちょいと違う。
 今は真っ昼間。
 ちょいと前に激しい戦いその……いくつかはもうわかんないけど、ともあれ、どでかい魔族を退け、一段落ついたあたし達。特にすることもないので美味しい物でも食べに行こうと思い、あたし達は魚料理で有名な、フィオナレストタウンを目指していた。……いや、はずだった。
 その町へと続く街道に、盗賊達がのこのこと現れたりなんぞしなければ。
 どうやらこの世界、街道には盗賊が住み着かなきゃいけないという法律があるらしく、数人の盗賊達に絡まれたのである。で、もちろん呪文一発で吹っ飛ばし、逆に身ぐるみをはがそうと、逃げる盗賊達を追いかけ回している最中である。
 ふっ。あたしに絡むとは、よっぽど日頃の行い悪かったな……
 ……当たり前か。盗賊なら。
 あたしの魔法に追いつめられ、散り散りに逃げ出す盗賊団達。
 その数5、6名。
「ひぃぃぃっ!!」
 思わずあげた誰かの悲鳴だろうが、その声が命取りっ!
「そこだぁっ!氷結弾(フリーズ・ブリッド)っ!」
 かきかきかきぃぃぃいんっ!
 あたしの呪文の一撃は、裏に隠れた盗賊ごと木を凍り付けにした。
 但し、今回は多少アレンジしてあり、効果は弱め。
 全身氷漬けになることはないが、木にくっついて、身動きできないぐらいにはなっているはず。
 あたしはゆくっりとした足取りでその木の裏へとまわる。
「んっふっふ。
 あたしに喧嘩売っといて、無事に逃げられとでも思った?」
「あうあうあうあうあうっ!」
 思ったより若い男は思いっ切り情けない声をあげながら全身を震え……られないけどさ。今氷漬けだし。
「しっ、知らなかったんだぁぁぁっ!
 あんたがリナ=インバースだなんてっ!」
「ほっほぉぉぉう。
 だからと言って、許すと思う?
 どーせ、か弱い一般市民から通行料だか、いきなり身ぐるみはがすとかしてたんでしょ?今まで」
 あたしは腕を組みながら、悠然と男を見下ろした。
 男はだくだくと汗を流しながら、
「そっ、そりゃあ仕事ですから……」
 めりっ。
 あたしは問答無用で靴底を男の顔へとめり込ませた。
「『これも仕事だ』とか言って、何かを耐えるのならともかくっ!
 人様に迷惑かけといて、その一言てが許されるとは思ってないでしょーね!」
 あたしは顔をずずいっと、中央がめり込んだ男へと近づける。
「思ってないれす……」
 男は目に涙すら浮かべて呟いた。
「確かに俺らが全て悪いですっ!
 そりゃあちょっとワルな先輩に声をかけられ、なんとなく嬉しくてのこのこ着いていき、気が付けば盗賊団。
 親には泣かれ、妹には指差して笑われ……それでもっ!やって行くしかなかったんですぅ……」
 いつの間にか話が苦労話へと移っていたりする。
 ……どーでもいいが、こいつの妹って一体……?
「盗賊団の中で浮いている存在だからこそ働いて周りを認めさせなくてはいかず、春には街道に通りかかった子供達数人からアメを奪い、夏には通りかかった主婦達から世間話をしながらバーゲンセールのチラシを奪い、秋には柿木から柿の実を奪い、冬には猟師から罠にかかったまま放置されてたイノシシを奪い……やっとっ!やっと認められるよーになってきたんですっ!」
 目に涙を浮かべながらこちらをきっと見据える男。
 言葉の中に多少変だなー、 と言う部分もあるのだが、なんとなく迫力で押されてしまうあたし。
「そ、そりゃ大変だったわねー……」
「わかってくれましたかっ!?僕がどれだけ惨めな思いをしてきたかっ!
 ほんの少しでも可哀想だなーと思ってくれますかっ!?」
「まぁ……哀れな奴、ぐらいには……」
 あたしはぽりぽりと頬を掻く。
「じゃあっ!お願いですっ!見逃してくださいっ!」
「イヤ」
「……………………………」
 即答するあたしに沈黙する男。
「……なんでですかぁっ!?」
「いや、結局あんた盗賊だし」
 ひるるるるる……
 ふと。季節はずれの秋風が過ぎ行く。
 しばしむなしい時間が過ぎ――後ろで人の気配。
「お前さん、盗賊追いかけ回すのにどれだけ走ったんだ?
 こういう時だけ異様に足が速いんだからなぁ……」
 言わずと知れたクラゲ頭。ガウリイである。
 他の数人の相手をしていたのか、少し離れていたのだが、もう他の連中はのしたのか、こちらへ戻ってきたよーである。
「若いもんがぐだぐだ言わないの」
「見かけに寄らず年寄りみたいな事を……」
 ばきっ!
 あたしは木に張り付けられたままの男を殴り飛ばす。
「お前……戦闘不能に陥った奴相手にそれはないと思うぞ……」
 横でガウリイが呆れたような声を出すが、無視である。
「とりあえず、あんた達のアジトに案内してもらいましょーか?」
「そっ、そんなことしたら後で仲間から一生いじめられるじゃないですかぁぁぁっ!」
 しかしあたしは男の首をわしぃぃっと掴み、笑顔で言ってやる。
「あたしにいじめられるのと、仲間にいじめられるの、どっちが良い?」
「ご案内させていただきます」
 男は迷わず即答したのだった。
 なかなか素直な奴である。

 どこどぐぉぉぉんっ!
 どばひゅぉぉぉんっ!
 かきかきかきぃぃぃんっ!
 問答無用、見境なしの呪文が盗賊団のアジトを吹き飛ばす。
 先程とっ捕まえた男に脅迫して道案内をさせ、アジトに着き、そのままお宝を強奪。(まるっきし悪役)
 ぼろぼろになった盗賊達に、もう二度とこんな馬鹿なことをさせないためのアフター・サービスとして呪文をプレゼント。
 すでにアジトは跡形もなく消えている。
 あたしの顔が爽やかなのは、社会奉仕に貢献できるためであって、ストレス発散などのせいでは決してない。
「おっ、おいっ!リナっ!」
 数々の魔法のとばっちりから逃れながらガウリイはこちらへと慌てて飛んできた。
「何よ、ガウリイ」
「ちょっと呪文控えろっ!こっちまでやられちまう」
「頑張って避けなさいよ。こんぐらい」
「頑張って避けられる程度なら良いんだがな……火が森に移ってるぞ」
 をや……?
 ふと気が付くと、とりあえず視界に入る半分は焼け野原と化していた。
 ……乙女特有のはしゃぎすぎ、とゆー奴である。
「ま、教育的指導はこれぐらいにして……」
「喜んでやってたように見えたが……」
「気のせいよ」
 そう言って元来た道を戻ろうとくるりと背を向けた瞬間。
「はっ!?」 
 あたしの頬から一筋の汗が通り過ぎた。
 即ち。
「ここは一体何処っ!?」
 だごしゃぁぁぁぁっ!
 後ろで盛大な音がする。
 振り向くとそこには突っ伏したガウリイの姿。
「お、お前なぁ……道も覚えずにここまで来たのか……?」
「な、なによっ!そー言うガウリイだって覚えてないんでしょっ!?」
「俺はいつものことだからいいんだ」
 良くないって。マジで。
 しかしここで無駄なことを言っても仕方がない。
 あたしは仕方なく盗賊の誰かに町までの道を吐かせようと辺りをきょろきょろするが、何処を見てもうめき声を上げている奴らばかり。
「だぁぁぁぁっ!起きろぉぉぉっ!」 
 とりあえず手近にいて白目向いてる奴の首をがっくんがっくん揺らすが、変わったことと言えばうめき声が聞こえなくなったのみ。
 ちっ。使えん奴。
 仕方なくあたしは別の盗賊達の元へと走りより、ダメなら次へ、ダメなら次へと動き回る。
「今夜は野宿かな……?」
 妙にしみじみとした声でガウリイは呟いたのだった。

「ここ?ここはレニーマルトの村だよ」
………………………………
 あたしはとある村人Aの言葉に脱力した。
 ま、まぁ……野宿が免れただけでも良しとするか……
 あの後、結局盗賊達が目覚めることはなく、あたし達はとりあえず日の傾きや年輪の具合を見て方角を確認し、当初の予定通りのフィオナレストタウンを目指していたのだが……
 やっぱずれてたか。
「なぁ、リナ。やっぱり道、間違えたのか?」
 目的地の名前を忘れているクラゲ男は言った。
「……みたいね」
 あああああああっ!美味しひ魚料理の数々がっ!
 遠い道のりを我慢してやって来たってぇのにっ!
「うぉのれ許せんっ!
 ここに来る途中、盗賊達なんかが出るからいけないのよっ!」
「……別にお前さんが追いかけなきゃ良かったんじゃないのか?」
 う゛っ。
「ちっちっち。甘いわねガウリイ。ああいった奴らは一度心底怖い目にあわさなきゃ同じ事を繰り返すわ。
 あたし達は何度襲われても平気でしょーけど、他の一般人様が襲われたら大変じゃない」
「今『ちっちっち』の前に一呼吸あったような気がするんだが……」
 ちぃっ!ガウリイのくせにんなことに気付くとはっ!
「とにかくっ!過ぎたことを言ってもしょうがないわ。
 せっかく来たんだし、この村にちょっといましょう。
 別に急ぎの用ってわけじゃないんだし」
「あ、ああ」
 ガウリイはなんとか頷いた。

 しばらくこの村をうろついたあと、あたし達はいつの間にか村のはずれに来てしまっていた。
 どうやらあんまし広い村ではないらしい。
 すぐ側には森が見える。様々の緑の色が、木々に立体感……と言うより、命の様な物を与えていた。
 ぱきり……ぱきん……
「何の音だ?」
 もちろんあたしではない。
 音はここから少し離れた小屋の方からである。
 どうやら小屋で隠れて見えないようだが……
「行ってみよっか」
 特にすることもないのでガウリイは頷いた。
 いびつな地面に石が転がっている。日当たりがよい家らしく、辺りには色とりどりの花が咲いていた。
 小屋をぐるりと回り込んでみると、そこには一人の女性がいた。
 歳はガウリイよりはちょっと下ぐらいだろうか。透き通るような空の色の髪をしている。ショートカットの髪が、元気が良さそうな姿とピッタリ合っていた。
 先程のは薪割りをしていた音らしい。
 女性はなたを横に置くと、散らばっている、割り終わった薪の側へと寄った。
 こちらからは死角で良く見えないが、おそらく腰からだろう。肘から指先の長さ程度の棒を取り出した。
 そしてそれを勢い良く前へと突き出す。
 かちゃり。
 その棒は筒だったようだ。中から鎖につながれた同じ長さ程度の棒が二つ飛びだした。
 そして彼女はその二つを強く引っ張り元へと戻す。すると長い棒へと姿を変えた。
 何をする気だろう。
 彼女はその長い棒の端を持ち薪を棒で払う。すると全ての薪が人の頭上を越えるほどの宙に舞う!
 そして彼女は棒で一つ一つを突いていき、薪置き場へと弾き飛ばす。
 なかなか出来るもんじゃない。それを何回か繰り返した後、転がっていた薪は消えてしまっていた。
「へぇ……」
 彼女はどうやらあたしの呟きが聞こえたらしい。
 こちらを振り向くと、人なつっこい笑みを浮かべて寄ってきた。
「はじめまして。二人とも見ない顔だね。旅の人?」
 左手で棒を地面へと立てながら、右手を腰に当て、こちらを珍しそうに見る。
「ええ。まあ……」
「珍しいねー。何もないところでしょ?」
「いえ、まだ全てを廻った訳じゃないですから」
 あたしは何とか誤魔化した。
 この村に住む人に馬鹿正直に何もないところだとは言えない。
「お前さんはここに一人で住んでるのか?」
 ガウリイは辺りを見回しながら言った。
 辺りに他の人の気配はない。
「まぁね。あたしの名前はレミナ。よろしく」
 レミナは右腕を差しだそうとするが引っ込める。
「ガウリイ=ガブリエフだ」
 ガウリイは笑ってそう名乗った。
「リナ=インバースよ」
 レミナはあたしの方へと右腕を差し出す。あたしは軽く握り返して握手をした。
 この握手という行為、あまり一般の人には知られてないのだが、剣士達にとって利き腕を預けることは大きな意味を持つ。レミナはガウリイの姿格好で判断し、やめておこうと思ったのだろう。
 あたしは一応剣士にして天才魔道師というフレーズを多用してはいるが、剣士より魔道師の方にウェイトを置いているため、あまり気にしていない。
「ねね。旅の人ならさ、もしかしてジャガード=コンフォートって知らない?」
 ジャガード=コンフォート……?
 聞いたことのない名前である。
 知らないと答えようとした瞬間、後ろで声が挙がった。
「まだそんなことを言っておるのか!?レミナ!
 あの男の事は忘れろと言っておいたはずじゃぞっ!」
 んどわわわっ!!
 振り向くと、そこにはレミナを睨み付けるじーさんの姿。
 ぢぢい……人の真後ろで怒鳴るんじぢゃない……
 レミナはその声の主に気付くと、表情を堅くする。
「知りませんね、村長。あたし最近物忘れが激しくって」
 思いっ切り『しらを切ってます』の口調で言う。
 どーやらかなり気の強い人らしい……
「いい加減にせぬかっ!お前を捨てた男をいつまでも探してなんになる!?」
「別にどうしようってつもりはありませんよ」
 レミナはひょいと肩をすくめていった。
「とにかくっ!あの男の事は忘れろ。
 いいな――」
 村長くるりときびすを返し、こちらに背を向けた。
「――命に関わる事なんじゃぞ――」
 ぽつりと村長は漏らした。
 ほんの小さな声で。
 おそらくあたし以外には聞こえなかっただろう。
 こういうところで自分の聴覚の良さを実感してしまう。
 だが、命とは――
「穏やかじゃないわね……」
「いやー、ごめんごめん。
 せっかく村に来てくれたってのに、気分悪くさせちゃったわね」
 どうやらあたしの言葉の『穏やかじゃない』が、村長とのいがみ合いをするねーちゃんを指していると勘違いしたらしい。
「別に気にすることはないぞ。
 悪口の言い合いなんてこのリナと一緒にいたら日常茶飯事のことだからな」
「ちょっとガウリイっ!聞き捨てならないわねっ!」
「間違ってないと思うが……」
「間違っててもあっててもっ!関係ないっ!」
「あははははははっ!!」
 あたしがガウリイを殴り飛ばそうとしたとき、何がおかしーのかレミナは突然お腹を抱えて笑い出した。
「あのさ、さっきのお詫び代わりに今日の宿決まってないんならうちに泊まっていかない?
 さっき夕方に釣ってきた魚が大量で食べ切れそうにないのよ」
 涙を浮かべた目を拭いながら、レミナは言った。
 どうやら気に入られてしまったらしい。
「魚?丁度良いじゃないか、リナ。魚食べたがってたろ?」
 うーん。確かに美味しい魚料理を食べに来たのだが……まいっか。
 これで宿代も浮くし、何よりタダで夕食付一泊は美味しい。
「じゃ、お言葉に甘えちゃおっかな」
「決まりね」
 レミナは満足そうに頷いた。

「食べるわねー……あなたたち」
 レミナは呆れとも感嘆ともつかない声を挙げた。
 すでにテーブルが見えないほどの皿の数々っ!
 おまけに料理はタダっ!これで食が進まないわけがないっ!
 あたしはディワナウのクリームソース掛けを口に入れた。
「むわぁね。しょうふしょむぐんがなひとはうおもんぐけど」
「……しゃべるか食べるかどっちかにしてちょうだい」
 んじゃ、食べる。
 再びディワナウの乗った皿に目を落とす。
 とたんに生まれる殺気!
 ナイフっ!?あたしはフォークでその進行を止める。
 んぐっ……んぐっ……ごくん。
「……っぷはぁぁっ!
 くおらガウリイっ!あんた人の料理をっ!」
「リナちゃん……『っぷはぁぁっ!』はおやぢくさいと思うわ……」
 隣でレミナが何やら言ってるが無視である。
 だいたい文句を言うため一気に飲み干したのだからそれは仕方がないことである。
「いいじゃないか。どうせタダなんだし。
 たりなくなったらおかわりすれば済むことだろ」
「それとこれとはべつよっ!
 ――と、ゆー事でレミナ。おかわり」
 あたしはガウリイに目を向けたまま、カラになった皿をレミナに突き出す。
「どー違うのよ……?その流れで……」
 しかしあたしは指をちっちっちと振って言った。
「あまり細かいことにこだわってると楽しい人生遅れないわよ。レミナ」
「いや……そーじゃなくて……」
「あ、俺もおかわり」
「……鍋ごと持ってきます……」
 何やらもごもご言ってたレミナだが、どーやらガウリイの言葉がとどめになったらしい。
 イスから立って台所へと歩いていく。
 うーみゅ。ちょっぴり背中がすすけてるなー。
 そしてそのまま台所へと姿を消す。
 そして何やらがちゃがちゃと音をたて――聞こえなくなる。
 何やってんだいったい……
 そしてレミナは姿を現した。
『をををををををっ!!』
 あたし達はその姿を見て驚愕の声を挙げた。
 頭の上にオーブン焼きされた湯気を立てた器。
 右手には両手で一抱えぐらいある大きな深鍋っ!
 左手にはソカラルトのムニエル香草焼きを乗せたフライパンっ!
 レミナはそれを勢い良くテーブルの上へと置く。
 そしてばしんっ! と、右手をテーブルの上に置き、少しイっちゃった目をこちらに向ける。
「ふっふっふ。
 さあっ!食べられるもんなら食べてもらおうじゃないっ!」
「おうっ!」
「望むところよっ!」
 即答するあたし達。
 その答えにレミナはテーブルから転げ落ちた。
「……望むところじゃねぇだろぉぉ……」
 顔を床に向けながら何やらぶちぶち言ってるのが聞こえるが、あたし達にとってはこの大量の食べ物の方が優先である。
 あたしとガウリイは新たに出てきた食べ物を食べ尽くし始めた。

「あーさすがにもうお腹いっぱい」
「おう。食った食った」
「……ふつーは今食べた10分の1もいかずにそう言うと思うんだけど……」
 何やら寂しそうに呟いているレミナはおいといて、あたしは心地よい満足感に浸っていた。
 さて……食べる物も食べたことだし……
 その時あたしはふと思いだした。今日の夕方の村長とのことである。
「ねぇ、レミナ。
 今日の夕方言ってたジャガード=コンフォートって人だけど……恋人かなにか?」
「ふえ?いや、違うわよ。
 ジャガードってのはあたしの父親」
 なんだ……まぎわらしい……
「父親が行方不明なのか?」
「ま、ね。2年くらい前からかな。
 んでまぁ一応旅人に話を聞くとか、自分で調べてまわっているんだけど……それが気にくわないらしくてね。 村長は。
 ……確かに、あまり良い人ってんじゃなかったわ。
 この村の人達もあたしの父のことは嫌ってたみたいだし……」
「なるほどねー。
 事情は知らないけど、やっかいもんが消えてくれたんだ。探すことはない――ってことね」 
 こくり。
 レミナは頷いた。
「そうそう、知らないかって聞かれてまだ答えてなかったけど――やっぱり知らないわ」
「そう……」
 そしてレミナはテーブルから立ち上がった。
「部屋の用意するわね。
 ――あ、そうそう。部屋は一つ?二つ?」
「二つっ!!」
 あたしは力一杯答えた。
 なんつう事言い出すんだこのねーちゃんはっ!?
 だあああっ!くすくす笑ってんじゃないっ!!
「なぁリナ。どういう意味だ?」
「知らないわよっ!」
 あたしは大声を上げてテーブルを叩いた。

「はい、こちらがリナちゃん用の部屋。
 シーツもベッドも……まぁ立派なもんじゃないけど勘弁してね」
「充分よ」
 あたしは言葉少なに帰す。
 ガウリイはすでに別の部屋へと案内され、荷物を置いている。
 あたしは二階の部屋へと通された。
「……怒ってる?」
「知らないっ!」
 顔を背けたあたしの背中から再び聞こえる忍び笑い。
 だあああっ!うっとーしーぞこのねーちゃんっ!
 あたし達に隠れて酒でも飲んでたんじゃないのかっ!?  
「ごめんねー。あたし人からかうの趣味だから」
 ……悪趣味な奴である。
「あのねぇっ!あたしとガウリイは別にそんな仲じゃ――」
 途中で言葉を切る。
「別に必至になって否定する事じゃ……」
「静かにっ!――誰かいるわ」
 あたしはなおもからかおうとするレミナの言葉を制す。
 口実じゃない。確かにいるのだ。微弱な気配と――殺気が。
「いるのはわかってんのよ。
 不意打ちはもう期待できないから正々堂々かかってきたら?」
 ばたんっ!
 あたしの言葉に部屋の奥にあるタンスの影から一人の男が現れる。
 全身黒ずくめ――俗に言う暗殺者(アサシン)スタイル。
「……あたしはあなたみたいな人、お客として招待した覚えはないわよ」
 怖くないのか、それとも相手がどんな奴かわかってないのか、レミナは軽口を叩く。
「――レミナ=コンフォートだな――」
 軽口を無視してアサシンは確認をし始めた。
「……それで?あたしに何の用?」
 だあああっ!まともに受け答えすんじゃないっ!
 ふつー『必殺 人違いです 攻撃』をするもんだぞっ!
「――死んでもらう――」
 ほらっ!やっぱしまともな用じゃなかったっ!
 あたしはベッドにシーツを掴み、ひっぺがすっ!
 ばさっ!
 シーツはアサシンとあたし達を遮る。
「!?」
 アサシンが戸惑っているうちにシーツでレミナとあたしをくるみ、そのまま窓ガラスへと体当たりをし、外へとである!
 ばりぃぃぃんっ!!
 あたしとレミナは外へと飛び出した。
 シーツはアサシンへの牽制と、小さなガラスで傷を付けないためのカバーの役目を持っていたのである。
 戦うなら広い場所が有利!そしてもう一つ。今の音はガウリイにも聞こえたはず。
 ガウリイへと知らせる役目もあったのである。まさに一石えーと……いちにいさん……四鳥!
「浮遊(レビテーション)!」
 ふわりっ。
 あたしの解放した術で音もたてずに着地する。
 そしてそのままレミナの手を引いてダッシュ!
 間合いを取る方が先決である。 
 そして当然窓から飛び降り後を追うアサシン。
 その無防備の一瞬、レミナがあたしの手をふりほどいた!
 おいおいおいっ!!
「氷結弾(フリーズ・ブリッド)!」
 ぬわにぃっ!?魔法使えたのかっ!?
 レミナの突き出された右腕から青白く輝く魔力球が真っ直ぐにアサシンに飛んでいく!
 うまいっ!空中ではかわすことは不可能である。
 しかし――
「魔風(ディム・ウィン)!」
 アサシンは飛び来るフリーズ・ブリッドを吹き飛ばす!
 このパターンは予想していたか、それとも着地のショックをやわらげるために唱えて置いたか、それともその両方の可能性を考えていたか!?
 どっちにしろ関係ないっ! 
 あたしは呪文を解放する!
「氷結窟蔦(ヴァン・レイル)!」
 術者の手を起点に氷の糸を地をつたって目標へと放つ術である。
 呪文は唱えたばかり!避ける術はない!
 しかし男はばさりと上着を脱ぎそれを少し手前へと叩きつける!
 これで上着をからめ取るタイムラグが生まれた隙をついて男は呪文の範囲外へと移動する!
「明かり(ライティング)!」
 レミナの放った明かりが夜の闇を煌々と照らしだし、アサシンの姿を映し出す!
 上着を取ったとき、顔を隠す布も一緒に取れたらしい。
 金髪の短髪で、鼻に切り傷はあるが顔はそれなりに整っている。
 が――それを補ってあまりあるほどの、くすんだ瞳。
 そして、男は大きく後ろへ飛ぶ。
「逃がすかっ!」
「ストップ!レミナ!深追いは駄目よ!」
 もし相手が形振り構っていない場合、どこかの家へ押し入り人質にとる可能性があるのだ。
「おーい。結構派手に壊したな。窓」
 のんきな声は、あたしがぶち壊した窓の奥からやってきた。
 ガウリイ……
「あんたねぇっ!
 人がせっかくわかりやすく窓ぶち壊す音で知らせたってぇのに、何やってたのよ一体っ!?」
「何って……人の部屋に入り込んできた不届き者をぶちのめしてただけだが……」
「な……!もう一匹いたのっ!?
 夜中にがさがさ騒がしい奴らねー」
「……ゴキブリじゃないんだが……」
 呆れたような口調で言うガウリイ。
 しかし、夜中によく活動していることと良い、全身真っ黒なことと良い、おまけに全身真っ黒……ゴキブリと大して差はないよーな気がしないでもないぞ。
 まぁ、いいけど……
「で、そいつはっ!?」
「逃げたから追わなかった」
 あ、そ……
 あたしはマントの汚れを払った。
「……とにかく、家の中へ入らない?」
 レミナは地面に落ちていた窓ガラスを拾いながらそう言った。

 ガウリイを襲ってた奴は、右腕に傷があったらしい。
 それが唯一の手がかりと言えば手がかりだった。
 どうやら暗殺者は二人居たらしい。
 あたし達が二手に別れていたせいか、片方があたしとレミナを、もう片方がガウリイを、とでも思っていたのであろう。
 レミナに心当たりはないかと聞いては見たものの、知らないの一点張り。
 挙げ句の果てに、人違いではなかったのかとまで言い出す楽天ぶりである。
 暗殺者達が狙っていたのはレミナではなく、他の誰かだったが、暗闇に気付かずに襲撃した。
 んでもって、先程の明かり(ライティング)で人違いだと気付いたんで帰って行った。
 ……とことんのんきな奴……
 ンな間抜けな暗殺者が居るか、 とツッコミを入れてみたが、あるいはギャグで、あるいは正論でのらりくらりと言い逃れられ、結局、あたし達はレミナに言いくるめられ、翌日となる今日になったのである。
「平気って言ってたけど……本当に大丈夫なのか?」
「本人が平気ってんだから、会ってから大して日が経っていないあたし達がいつまでもあそこにいる訳いかないでしょ?」
「それはそうかもしれんが……アサシンに狙われる奴を放って置くことないと思うぞ」
「そーね」
「そうねってお前……」
 あたしはくるりとガウリイの方へと向き直り、人差し指を立て、ガウリイの鼻の先へと突きつける。
「言っておくけど――」
「きゃぁぁぁっ!やめてくださいっ!!」
 言葉の途中に悲鳴が耳に入った。
 あたしとガウリイは目を合わせ、大きく頷く。
 トラブルあるところに礼金あり!
 とっとと助けて礼金とるもよし、襲っていた奴らから金を巻き上げるのもよし!
 あたし達は全力で声のした方へと走り出した。

「やめてくださいじゃねぇだろぉ?
 人にぶつかっといて何言ってやがんだ」
「おうおう。俺達の仲間に怪我させやがって。
 慰謝料もらわねぇといけねぇよなぁ?」
 一人の女の人を取り囲んでいるのはごろつき共3人だった。
 所々にナイフ傷や入れ墨なんぞをしているが、はっきし言って見かけ倒し。
 もちろんあたし達の相手になんぞならない。
 だがどう見ても、そこらにいる普通のねーちゃんにぶつかったぐらいで怪我するほどヤワじゃない。
 ……今時そんな古い手で絡む奴もいるのか……
 ともあれ、ここで見ていても始まらない。
 あたしは金づるを助け……じゃなかった。
 見知らぬ女性を助けようと声をかけようと一歩を踏み出した。
「お待ちなさい!」
 何処からともなく聞こえる声!
 声を挙げたのはあたしじゃなかった。
「なにぃっ!?」
「どこだっ!?」
 口々に言ってきょろきょろし出すごろつき共。
 やがてその中の一人が声の主を見つけだす。
「あそこだっ!」
「なっ!?屋根の上だとぉっ!?」
 そう。声の主は太陽なんぞをバックに屋根の上で悠然と立っていた。
 このパターンは……
「そこまでよっ! 悪人どもっ!
 罪もない一般市民に大人数で因縁を付け、あまつさえか弱い女性にその仕打ち!
 影あるところに太陽あるように、悪あるところに正義有り!
 世間の目は誤魔化せても、わたしの目は誤魔化せないわっ!」
 いや……いくらなんでもあいつらを悪人じゃないと言うぐらい世間は節穴な目してないと思うぞ。たぶん。
「自らの行為を悔い改め、反省するならよし!
 さもなくば――このわたしが相手よっ!」  
 言って彼女はばさりっとマントを翻し――
「とぉっ!」
 屋根から飛び降りる!
 彼女は足を抱え込むようにして空中で二三度周り、元へと戻す。
 おそらく着地体制に入ったのであろうが――
「ガウリイ」
「おう」
 あたしの言葉に頷いて彼女の着地点へと走る。
 がしっ!
 そしてガウリイは彼女の頭が地面に直撃する寸前に足首を掴む。
 やっぱしか……
 ガウリイが掴まなきゃ首から落ちてたぞ。
「よ。久しぶりだな」
「ガウリイさんっ!?それにリナさんもっ!?」
 足首を捕まれたことでやっと気付いたか、驚きの声をあげるアメリア。
「久しぶりね、アメリア。相変わらず着地は苦手なよーね」
「う゛っ……!
 とっ、ともあれっ!このわたしが居る以上、覚悟しなさい!」
 びしぃぃっ! とごろつき共を指差すアメリア。
「へっ!コウモリみてぇな格好で何言ってやがるっ!」
 至極まっとうな意見を述べるごろつきその一。
「ふっ!ついにボロを出したわねっ!
 他人を見かけで判断する――即ち悪!」
 いや……いくらなんでも変に思うぞ。
 逆さの状態の人が何やら叫んでいたら。
 ともあれ、ガウリイはアメリアをきちんと着地させた。
「正義の裁きを受けなさいっ!」
「へっ!この村一番の力持ち、ケリット様が相手してやるぜっ!」
 言って彼は真っ直ぐアメリアへと走り出し――
「火炎球(ファイヤー・ボール)!」
「どわぁぁぁぁっ!!」
 アメリアのファイヤー・ボールでお空のお星様となる。
 魔法相手に力持ちは関係ないでしょーが。
「っよくもっ!」
「やりやがったなっ!!」
 かくて――アメリアの正義は村一杯に咲いた。

「……なるほど。そーいった理由でこの村にいたんですか」
 アメリアの正義が咲きまくった後、とりあえずゆっくり話しでも……と、落ち着いたのがここの食堂だった。
 朝には遅く、昼には早い。ただでさえ人が少ない村の食堂に、この時間帯では他に客は居ない。
 ともあれ軽く注文を済ませ、あたし達の事情を説明し終わったところである。
「で、アメリアは?仮にもセイルーンのお姫様が暇だったから、なーんて理由じゃないでしょうね?」
「あ、今回は違います」
 言ってぱたぱたと手を振るアメリア。 
 『今回は』っておい……
「少し前に、各町、各村での経営状態を記した書類の整理をしてたんですけど、何故かこの村の書類が出てきたんですよねー」
「……ここセイルーンの領内の村だったか?」
「いえ。沿岸諸国の一国、レアード国の領内の村です。
 なんかの間違いで書類が紛れこんだんでしょう」
 いーのか……?ンな大事な書類が他国に流れて……?
「とにかくその書類をどうしようかと迷っていると、どうもおかしなことが解ったんです」 
「おかしなこと?」
「はい。丁度2年ぐらい前の時から、この村の国からの援助金が跳ね上がってるんです。
 わたしが言うのも変ですけど……国は普通、何の理由もなく援助金を上げたりはしません。
 それだけじゃないんです。
 実はこの援助金、村の火事からの再興資金とされているんですが……その火事が起こってからしばらくの間、一切の援助はなかったそうです。所が半年経ってから突然……」
「――援助をしだした――」
 あたしの言葉にアメリアは頷いた。
 なるほど。確かにアメリアが気になるのも無理はない。
 半年もの間、援助を拒み続けていた国が突然援助をし始める――
 1ヶ月や2ヶ月なら、手続きが困難で遅れてしまった場合が考えられる。
 だが半年となると――何かあったと考えるのが普通である。
「その火事が起こった原因も、村おこしをしようとして魔道師さんを雇って手っ取り早く召還魔術ショーを行おうとしたらしいんですけど……その雇った魔道師さんっていうのが、制御の出来ない魔竜を呼び出したり、デッサンの狂った石竜を呼び出したりしたらしいですよ。
 そのとんでもない魔道師さんのせいで村全体が火事になったとか……」
 ずるべしっ!!
 あたしは心当たりのありすぎるセリフにイスからずり落ちた。
「リナさんっ!?どうしたんですかっ!?」
 制御の出来ない魔竜を呼び出す……デッサンの狂った石の竜……
 ………………………………………………
 ………………………………………………………
 …………………………………………………………………………………
 ……いや、やめとこう。
 あたしは深く考えることを中止した。絶対そのほーが良いよーな気がする。
「どうかしたのか?リナ」
「う、ううん別に。なんでもないわ」
 我ながら声がちょっとうわずっている。
「大丈夫ですか?
 とにかく、わたしの方はそう言った事情で調べに来たんです」
 まてよ………
「アメリア、今気付いたんだけど、なんであんたが他国のことを調べようとしているのよ?」
「もちろん――正義のためですっ!」
 アメリアは瞳に炎を燃やし、きっぱりと言った。
 いや……まぁなんとなくそー言うんじゃないかなーとは思ったけど……
「わたしの元へと現れた一枚の不審な書類……これは偶然じゃあないわっ!
 きっと天がわたしに事件を解決せよとおっしゃっているに決まってますっ!」
「いや……まだ事件と決まった訳じゃあ……」
「いーえっ!きっとそうですっ!
 わたしの正義に燃える心がそう叫んでいるんですっ!」
 いや……もぉ何でもいーけど……それって自分が勝手に思いこんでるだけとも言うんぢゃあ……?
 ともあれ、あたしは完璧に自分の世界に入り込んでいるアメリアを放って置くことにした。
 それにしても2年前……か。
 確かレミナの父親が失踪したのも同じころだったはずである。
 偶然の一致か……それとも関係しているのか……
 何にしても、調べてみる必要がありそーである。
 ……それにしても……やっぱりやっかいなことに巻き込まれるのかなぁ……
 あたしは運ばれてきたイカフライをかじりながら、溜息をついたのだった。

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7894レアードの狂乱 一 B白いウサギ E-mail 9/23-01:56
記事番号7892へのコメント

 
「何の用ですかな……?」
 玄関の扉から半分だけ顔を出した村長はそう言って、心底うさんくさげにこちらを見たのだった。
「そーです。レミナのことについてなんだけど」
 あたしはにっこりと笑いながらそう言った。
 まともに顔色を変える村長。
「……どうぞ中へ」
 あたしは後ろにいるアメリア、ガウリイへとウィンクして合図を送った。
 あの後、結局村の中を見物しながらさりげなくジャガードのことなど聞いてみたりしてから、当初の予定通り、あたし達は村長の家に来ていた。
「おじゃましまーす」
 アメリアが元気な声をあげて、あたしの後から入ってくる。
 ガウリイは何がめずらしーのか、きょろきょろ辺りを見回す。
 ……どっかにおいてくりゃよかったかな……?
 ……ま、ここまで来た以上仕方がない。
「して……どういうことでしょうか?」
 あたし達が通されたのはかなり立派な部屋だった。
 真新しく高級そうな家具、明かり……どーみてもこんな田舎の村長が住めるような部屋ではない。
 ……私腹でも肥やしてたか……
 あたし達は促され、部屋に置いてあったイスの一つに腰掛ける。
「そうね……まず最初に聞きたいことは、何故レミナにあそこまで父親を捜すのをやめさせたいのか、ね」
 とりあえず今は援助金のことは伏せておく。
「それは……ろくな男じゃないからじゃ」
「ろくな男じゃないって……それだけ?」
「それだけじゃとっ!?
 あんたらは何も知らんからそんなことが言えるが、わしらはほとほと困っておったんじゃぞっ!
 道を歩けば人から金を巻き上げ、店に行けば暴れ出す……」
「……リナみたいだな」
 げぃんっ!
 あたしは机の下のガウリイの足をかかとで踏みつける!
「……………っ!」
 ガウリイは悲鳴をかみ殺すが、顔が青ざめていくのがわかる。
 ふっ。よけーなこと言うからである。
 あたしは世間様一般には手を出した覚えはない。(とりあえず店のことはおいといて)
 あたしが金を巻き上げ……もとい、授業料を頂いてるのは悪人共だけである。
「なにか?」
「なんでもないわ。
 で、結局、村長さんの言い分としては、ろくな人間じゃないから帰ってきたら困る――と?」
「う、うむ……
 言っておくがな、これは村全体の意見でもあるんじゃ」
 確かに……あちこちに聞き廻ったところ、あまりいい顔はしなかった。
 だが……
「だからって、娘のレミナさんが父親の行方を探すのは自由なんじゃないですか?
 別にこの村に戻ってくるなんて限らないですし、調べるだけかも知れないじゃないですか。
 レミナさんには父親の失踪の理由を知る権利はあると思います!」
 何故か片足を机の上に乗せながらポーズを決めて言うアメリア。
 ポーズはともかく、言い分はあっている。
「……しかし……」
 なおも渋る村長。
 しかしあたしは反論の隙を与える前に声を低くして言った。
「あともう一つ。昨日、レミナの家に暗殺者(アサシン)が入り込んだわ」
「なっ!?」
「……昨日の夕方にあなたが言っていた、『命に関わる』って――そう言うこと?」
「ちっ、違うっ!わしはそんなの知らんぞっ!」
 ほぉぉぉ……あくまでしらをきる気ね。
「アサシンは二人。それぞれ傷があったわ」
「知らんと言っておるっ!」
「……右手に切り傷とかなんだけど、本当に知らないのね?」
「知らんっ!知らんっ!」
「……あのー……村長さん、さっきから『知らん』ばっか連呼してますけど、あたしの話ちゃんと聞いてます?」
「聞いておるわっ!」
 叫びながらこちらを睨み付ける。
 うーん、かなり血が上ってるなー。
「じゃ、あたしが話した男達の特徴言ってみて貰えます?」
 うぐっ
 聞こえるうめき声。
 追いつめられた精神上、あまり話を落ち着いて聞くと言うことは出来ないのだろう。
「……やっぱり聞いてなかったんですね」
「聞いておるっ!じゃからっ!右手に切り傷と鼻の頭に切り傷がっ!」
 このおおたわけ。
「ふっ!とうとう化けの皮がはがれましたねっ!
 リナさんは右手の切り傷のことは言いましたが、鼻の頭のことは言ってませんっ!」  
「なんじゃとっ!?そんな………!」
 まともにうろたえる村長。
 あたし達や、修羅場をくぐってきた人間ならともかく、普通一般の生活をしていた人間が次から次へと自分に不利なことが出てくると、精神状態をまともになど保ってなどいられない。
 ま、後一枚や二枚は引っかける手は用意していたのだが、今回は必要なかったようである。
「さて……と。ま、ばれた以上、観念して話したほうがいいわよ」
「そうそう。悪いことして儲けてても、いずればれるんだからさ。じーさん」
 何故かガウリイが気楽な顔で村長の肩をぽんぽん叩く。
 だぁぁぁぁぁっ!わかったフリして発言するなぁぁぁっ!!
 儲けって……まだ援助金のことは話してないでしょーがっ!
 やっぱり金貨数枚でも渡してアメ買わせて迷子にならない程度にうろうろさせとくべきだったっ!
「『儲け』……?
 そこまで知っておるのかっ!?」
 勝手に自白する村長。
 ……いや……えーと……ま、いっか。結果オーライって事で。
 あたしは深く溜息をついた。
「2年前から、国からの援助金が異様に跳ね上がっているわね。この村は」
「火事からの復興資金と表向きはなっていますけど……援助金が出されたのは火事からの半年後です。
 どう考えてもおかしいですよね?」
「……2年前って言うのはレミナの父親失踪時とほぼ同時。
 はっきし言って、偶然として片付けるには出来過ぎてるわ。
 そしてそれを裏付けるかのような異常なほどのレミナの父親探しの反対……」
 あたしの言葉に今度こそ村長はがっくりとひざを突いた。
 どうやら観念したようである。 
「そろそろ話してくれてもいいんじゃないの?」
「――その必要は――ない」

 声は村長のものではなかった。
 いつの間に現れたのか一人の暗殺者(アサシン)が部屋の入り口に立っている。
 村長に監視でも付けていたかっ!?
「昼間っからご出勤?大変ねー、暗殺者も。
 ま、そりゃそっか。事情話されてから村長さん口封じしても意味無いもんね」
「なっ!?わしをっ!?」
「いー加減気付きなさいよね。
 何があったか詳しいことは知らないけど、ジャガードの失踪のことに関与している村人はあなただけ。
 と、言うことは――あなたさえ口を封じればこいつらは何の心配もなくなるってことよ」
「そんな……っ!」
 おそらく、相手を油断させるつもりで関わりを持っていたのか、それともやはり危険と感じて消しに来たのか――どっちにしろああいう言い方をしておけば、村長はこっちの味方っ!
「ガウリイ、アメリア!あとはさくさく『こいつら』を倒して村長に事情聞くわよっ!」
「おうっ!そいつと、窓にいる奴二人だなっ!」
 おそらく、入り口にいる方に注意を向けさせ、残りの一人が不意打ちをかけるつもりだったのだろうが……まだまだ甘いっ!
 あたしは手近にあったイスを窓へと投げつける!
 ばりがしゃぁぁぁんっ!
 ど派手な音をたて、イスは窓ガラスを粉々に砕き、潜んでいた暗殺者に直撃する!
 ……とろい奴……
 すかさずあたしは間合いを詰め、次への対処が出来ない暗殺者へと呪文を解放する!
「烈閃槍(エルメキアランス)!」
 真っ直ぐに打ち出された光の槍は身動きの出来ない暗殺者を直撃した。
 まず一人っ!
 相手の精神にダメージを与える術である。
 極度の精神疲労を起こしてしばらく寝込むことはあっても、死ぬことはない。
 あとで背後関係を白状させるためである。
「ちっ!役立たずめがっ!」
 入り口に立っていた暗殺者が吠える。
 ほぉう……ってぇと自分はあたし達相手に役に立つ自信がある……と?
 暗殺者は懐から何かを取り出して――ナイフっ!?
「させるかっ!」
 すかさずガウリイが間合いを詰める。
 それに構わず暗殺者はナイフを投げつけたっ!
 ところがそれを首を横に振るだけであっさりガウリイはかわす。
 だが暗殺者はにやりと笑った。
 まさか――
 あたしはナイフの軌跡を追う。
 そしてその延長線上には――村長っ!?
 間に合わないっ!
「封気結界呪(ウィンディ・シールド)っ!」   
 突如発生した魔力の結界にナイフは弾き飛ばされる!
 アメリアっ!?
「ふっ!あなた達の目的が口封じである以上、村長さんを狙うのは明白!
 あなた達のもくろみなどわたしはお見通しですっ!」
 言ってびしぃぃっ! とアサシンの方へと指を指す。
 よぉぉしっ!よくやったっ!アメリアっ!
「くっ!こんな奴らにっ!」
 言って男は振り返り外へと逃げ出す!
 うわっ!根性無いなー、こいつ。
「待てっ!」
「ガウリイっ!いいわ、追わないで。
 話は窓の外に転がってる奴から聞けるでしょ」
「あ、ああ」
 ガウリイはすでに半分部屋から出ていたが、剣を鞘へと戻す。
「何故倒さんっ!?倒せるなら倒しておいた方が安全じゃろうがっ!」
 あのなぁ……じーさん……
「いい?倒そうと追いかけてたとするわね。
 相手が戦うことを選ばず逃げようとしている以上逃げられる可能性もあるわ。
 途中で見失ってこの家へと引き返した。
 ところがこの家へと戻った頃にはあなたが殺されていた――何て事があり得るのよ?」
「わたしたちを外へと連れだし、まいてから一人になったあなたを狙うつもりだったかもしれないんです」
「そーゆーこと。別にいいんならあいつの後追うけど?」
「いやっ!いいっ!やめてくれっ!」
 まるで泣きそうな顔で言う村長。
「おおっ!なるほどっ!そーいう理由だったのかっ!」
 ぽんっと手を叩きながら言うガウリイ。
 ……遅いぞ……気付くのが……
 あたしは力が抜けかけながらも窓を乗り越える。
 とにかく窓の側にいる奴から事情を――
 あたしはつい凍りつく。
「……どうかしたんですか?リナさん」
「――死んでるわ――」
 あたしは静かにそう言った。
 先程までうめき声をあげていた者が、もやはぴくりとも動かない。
 顔からも生命の色が失せている。
 あたしは男の身体を仰向けへと転がす。
 男は焦点のあっていない目を見開きながら、口から泡を吹いていた。
 ……毒か……
 秘密を護るために……
「ナンセンスな真似してくれちゃって……」
 あたしは男の目を閉じらせながらそう呟いた。
「村長っ!」
 その時、聞いたことのある声が玄関から聞こえた。
 乱暴にドアを開ける音が聞こえ、そしてそのまま足音がこちらへと真っ直ぐ進み――
「村長っ!どういうことですかっ!?
 昨夜の暗殺者とつながりがあると言う事はっ!?」
「レミナっ!?なんでそれをっ!?」
 思わず声を挙げるあたし。
「どうやって知ったかは重要な事じゃないわ!
 今は――村長、あなたに全てを話してもらいに来ました」
 レミナは真剣な眼差しで村長を見つめた。
 その雰囲気に飲まれてしまったのかあたしは声を出せなくなってしまう。
 どうやらガウリイもアメリアもそのようである。
「わしの知ってることは……少ない……」
「それでも――構いません。
 知りうる限り全てを……話していただきます」
「……全ては……2年前のことからじゃった……」
 村長はソファーに腰を下ろし、事のあらましを説明し始めた。
「ジャガードが突如、失踪した」
 おい……いきなりか……?
「原因はわしは知らん。
 だが……きちんと国へ……レアード国へ村人の失踪を報告した。
 そしてしばらくした後……その失踪した村人――ジャガードを探すなと言う命令が国から下った。
 莫大な村への援助金と引き替えに」
 つまり――口止め料――
「疑問は残ったが……正直言ってジャガードを探す気はもとよりなかった。
 ところが……レミナ……お前と母親がジャガードを探し始めた」
 母親……
 ……なるほど。どーりで家が一人暮らしにしては広いと思った……
「それが何処からか漏れたらしく奴らが……鼻頭と右腕に傷がある男達が現れた。
 そして『ジャガードの家族に探すのをやめさせろ。さもなくば――殺せ――』と……
 わしは……人を殺しとうはない。それで……」
 レミナに探すなとしつこく言い続けた――
「じゃが……お前ら親子は……せっかくわしが生かしてやろうというのに、探し続けた。無視してな。
 そして約一ヶ月前……」
 『生かしてやろう』って……
 あたしは自然と眉間に力がいった。
「あたしの母親は原因不明の事故で重傷を負った――」
 レミナは先程と表情は変わっていない。
 だが――やはり何かが変わっていた。
「そういうことじゃ。お主達が父親を忘れれば全て済むことじゃったんじゃっ!」
 勝手なことを言う。
 村長に対しての文句は山ほど有る。
 だが――言うべき人間はあたしではない。
 レミナが――言うべきなのだ。
「言いたいことはたくさんあるけど――二つに絞って言うわね。
 一つは――あたし達親子はあなたなんかに生かして貰った覚えはない。
 もう一つは――」
 言葉の途中でレミナは村長へと間合いを詰める。
 そして腰から棒を取り出してそれを村長へと突き出す!
「ひぃ……っ!」
 棒は真っ直ぐのび、村長の顔間直前で棒が三つへと折れ、曲がった棒の一つが頬のすぐ横のソファーへと突き刺さる!
「あ……う……」
 村長は何もしゃべれない。ただ顔が涙で歪んでいた。
「あんなろくでもない男でも――あたしの父親なの。
 放って置くわけにはいかない」
 そして棒を引っ込め、腰へと戻すと、くるりと背を向けてこの部屋を後にした。
 そしてあたし達三人も村長を置いて、その彼女の後を追った。

「ちょっとレミナ!ちょっと待ってってば!」
「……なに?」
 『なに』じゃないって……
「いや……えーとこれからどうするのかなと思って……」
「くそおやぢを連れ戻して詫び入れさせる」
 をい……
 あまりと言えばあまりの言葉にあたしの目は点になった。
「なぁ……それって危険じゃないのか?」
「そうです!相手は国ですよ!?」
 呆気にとられてる間にガウリイとアメリアがレミナに言った。
「なんとかなるでしょう」
 いや……ならないって。普通は。
「まぁ……確かに殆ど謎のまんまだし、すっきりしないってのもわかるけど……
 はっきり言って、あなた一人が殴り込んでいっても、門前払いされて終わり。下手すりゃ殺されるだけよ」
「……だけど……」
 振り向き、あたしの目をじっと見る。
 この時あたしはなんとなくわかった。おそらく――説得しても無駄だという事を。
「仕方ないわね。付き合うわよ、あたし達も」
「はぁ!?なんで!?」
 頭を掻きながら言うあたしに驚きの声を挙げるレミナ。
「ここまで関わっといて、謎のまんまじゃすっきりしないでしょ?
 レアード国が良くないことを考えてるならなおさらね」
「わたしもここまで来た以上、引き返すわけにはいきません!
 目の前にいるいたいけな少女が悪事を働く国へと勇敢にも戦おうとしているところを見過ごすなんて正義に反します!」
「いたいけな少女って……あたし多分あなたより年上だと思うんだけど……」
「正義の前にそんなことは関係ありません!」
 もっともなツッコミを入れるレミナに力一杯言い切るアメリア。
 ……確かに強さではアメリアの方が上だろーけど……
「まぁ……アメリアはあーいう人だから断っても勝手についてくると思うわよ。
 正義を広めるためなら悪人が困ろうが善人が困ろうが関係ない人から」
「……それで正義が広められるの……?」
「もしそーなら世の中争い事なんか起きないわ」
「………………」
 即答するあたしに何故かレミナはヤな顔して沈黙した。
「なぁ……悪いことは言わん。こいつらには逆らわない方がいいぞ。
 何するか本当にわからんから……」
 忠告のつもりなんだろーが、他の人が聞いたら脅してるよーにしか聞こえんぞ。ガウリイ。
「とにかくっ!国に対して下手すりゃ喧嘩売ろうってんだから仲間は多い方がいいでしょ?」
「それはそうかもしれないけど……」
「――それとも城の人間全員ぶち倒せるぐらいあなたが強いってんならべつだけど」
「……それはちょっと……」
 困った顔をするレミナ。まぁ……ふつーは倒せるはずないわな。
「レミナさん。言って置きますけどリナさんは城ごとぶち壊せるぐらい強いですから。
 知らないところで暴れられるより味方にしていたほーが安全だと思いますけど」
 こそこそとレミナに耳打ちするアメリア。
「ア・メ・リ・アっ!聞こえてるわよっ!」
「うっ!……や、やだなぁリナさん。冗談ですよぉ……」
 冗談をこそこそと話す奴が居るかっ!
 ……ったく……油断も隙もない……
「とにかくっ!あたし達は勝手について行くから。あなたが嫌であろうとそうであろうと」
 あたしはレミナの方へと指を指しながら、そう言った。
 国が何を企んでいるのか、それとも平和のために何かを計画しているのか。
 何であろうと、『秘密を漏らす者には死を』なんてやり方やってる連中を放って置くわけにはいかない。
「……わかりました。
 明日の朝、出発するわ。集合はこの村の入り口。
 で……いい?」
「ええ。それはいいけど……今から行かないの?
 早い方が良いと思うんだけど……」
「準備があるから……
 あたしはあなた達と違って旅なんかしたことないし……」
 なるほど。
「そーいうことならわかったわ。じゃ、また明日」
 そう言って、レミナの姿が見えなくなる。
 さてどうするか……準備とか言われてもこっちはいつも通りだから必要ないし……
 ふと気付くと、辺りはもう夕焼けの色に染まっていた。
 なんだかんだやって結局夕方になってしまったようである。
 あたし達は宿屋へと戻ることにした。 

「レミナ遅いなー」
 ガウリイはぼけーっとした顔でそう呟いた。
 結局あのまま宿屋で一晩を過ごしたあたし達。
 朝のガウリイとの食事バトルもすまし、宿屋のおっちゃんに追い出され……もとい、送り出され、集合場所である村の入り口へとあたし達三人は立っていた。
 ……のだが……
「遅いですねー。
 実は昨日納得したのは嘘で、とっくに先旅立っていたりしたら笑えますよね」
 笑えないって。
「まさか寝坊とかだったりして……」
「こんな日に寝坊する?ふつー。
 ガウリイじゃあるまいし……」
「おい……」
 何やら言いたげなガウリイだが、あたしは無視である。
 改めて辺りを見回す。
 古ぼけた柱で立てられた、村の入り口はあまり立派とは言えない。
 申し訳程度に木の杭で囲まれたところから雑草が生えている。
「あ。あの人じゃないですか?」
 きょろきょろ見回していたあたしをアメリアの声が引き戻す。
 アメリアが指差した方を向くと、遠くて見えないが人影が二つ。
 森から出てきたように見えるが……
「何であいつ、レミナと一緒なんだ?」
 へ……?あいつ……?
「ちょっとガウリイ、見えるの?」
「ああ」
 相変わらず非常識な視力を持ってる奴……
「でも、あいつって誰です?まだわたしはわからないんですけど」
「えーと……なんてったっけ……
 そうそう、ゼガルディス!」
 ずるごけしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
 あたしは盛大に地面へと倒れ込んだ。
 ゼルガディスぅぅぅぅぅっ!?
「ガウリイさん、ゼルガディスさんですって。
 ……えええええええええええっ!?」
 ワンテンポ遅れて驚くアメリア。
 なんであいつがここに……?
 あたしは何とか立ち上がり、マントの汚れを払う。
「なに驚いてるの?遅れて悪かったとは思ってるけど……」 
 あたし達が驚いてる内に、レミナは距離を縮めていたらしい。
 ひょいと顔を覗き込み、きょとんっとした顔をあたしの方へと向ける。 
「いや、あたし達が驚いてるのはそーじゃなくてっ!
 なんでレミナが……ちょっとっ!そこっ!何逃げてんのよっ!?」
 あたしがレミナと話している隙に逃げ出そうとしていたゼルガディスは仕方なく動きを止め、こちらへと振り向く。
「……久しぶりだな」
「久しぶりだなぢゃないぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!
 なぁぁぁぁんであんたがレミナと一緒にいるのよっ!?ゼルっ!」
 しかしゼルガディスはどう話したら良いのか迷っているように、視線を空へと向ける。
「知り合いなの?」
 ひょいと覗き込むレミナ。
「知り合いなんてもんじゃありませんっ!」
 代わりに握り拳を作って答えるアメリア。
 そうっ!確かに知り合いなんてもんじゃ……
「正義の仲良し四人組の一人です!」
『いや……それはちょっと……』
 同時に言うあたしとゼルガディス。
「……話が全く付いていけない……」
 頬に汗を光らせながら言うレミナ。
 確かにこんなんで話が付いていけるはずがない。
「まぁ、昔一緒に旅していた仲間よ」
「そういうことだ」
 あたしの言葉に頷くゼルガディス。
「へぇ……そうなの」
「で、ゼルガディス君?
 なぁぁんでこんな所に、おまけにレミナと一緒にいるのかな?」
「ちょっと待てっ!リナっ!首を絞めるなっ!首をっ!」
「きゃあああああっ!ゼルガディスさんに何してんですかぁっ!リナさんっ!」
 あたしは仕方なくゼルガディスの襟元を放す。
 ちっ。こんな事ぐらいで死ぬよーな奴じゃないからいーじゃないか。
 しかしゼルガディスは大げさにげほげほ咳き込む。
「大丈夫か?ゼルガディス」
 心配そうにガウリイがゼルガディスに駆け寄る。
「……げほっ……ったく、旦那もよくずっとあいつと旅なんかしてられるな……」
「ゼル、もう一回やって欲しい?」
「……いや……遠慮しておく……
 とにかく、だ。レミナとは昨日の夜ちょっと――な」
 あたしはその言葉でずざざざっと後ろに下がる。
「まさかゼル……アメリアから乗り換えたの?」
「ゼルガディスさんっ!?どういうことですかっ!?」
「何の話だっ!?何のっ!?」  
 あたしのお茶目な冗談に真っ赤になって否定するゼルガディス。
「やーね、冗談よ(はあと)」
 ぱたぱた手を振るあたし。
 うーみゅ。目が本気で怒ってるぞ。ゼルってば。
「おーい。
 一応ゼルガディス君とは昨日の夜ここからすぐ側にある洞窟であったんだけど……」
 勝手にはしゃぐあたし達に業を煮やしてかレミナが呼びかける。
「『君』はやめてくれと昨日から言ってるだろうが!」
 すかさず答えるゼルガディス。
「まぁ……ゼルをからかうのはこれぐらいにして、昨日の夜、実際何があったの?」
「おい……」
 あたしはまじめな声でレミナとゼルガディスを交互に見る。
 ゼルガディスがまたも何やら言いたそうだったが、取り合う気はない。
「実は……」
 レミナは頬を掻きながら、昨夜の出来事を話し出した。
 要約すると、こういうことらしい。
 場合によっては命が危険にさらされる事態になったため、レミナは装備を固めようとしたらしい。
 簡単な旅用の服は母親のお古を使えば済むのだが、それだけでは心許ない。
 それで思い出したのが、代々家に伝えられていた話。
 それが先程言っていた洞窟の中に眠るお宝である。
 どうやらレミナの家はそのお宝の管理人だったらしく、中の地図も家の中にあったらしい。
 そしてそのお宝を夜中に取りに行き……そしてその帰りに、元の姿に戻ろうとあちこちを調べまわっているゼルガディスに出逢った。
 で、中にあったお宝は元の身体に戻すために益のない物とわかり、レミナに近くの宿を紹介して貰おうとこの村に戻ってきて……
「あたし達と鉢合わせた――」
 レミナとゼルガディスはそれぞれで頷いた。
 あたしは肩を震わせてレミナをきっと睨み付ける。
「レミナっ!」
「はっ、はいっ!」
 あたしの剣幕に押されたか、レミナはびくんと身体を震わせ、気を付けの状態で答える。
「お宝ってどんなのっ!?洞窟の場所はどこっ!?まだ他にもあるっ!?」
「いや……そのえっと……」
「落ち着けって、リナ。レミナの奴何から答えて良いかわからなくなってるじゃないか」
 言って、ガウリイはあたしの腕を引っ張る。
「何言ってんのよっ!?こぉぉんなへんぴな村に隠された財宝!
 そこに向かわなくちゃリナ=インバースの名が廃るわっ!」
「リナさん……」
「相変わらず浅ましい奴だな」
 どやかましいぞ。アメリア、ゼル。
「宝は魔法を跳ね返す効果のある護符。
 あと、どんな強力な魔法でも吸収して溜め込み、持ち主の任意でそれを増幅して打ち返すことが出来る魔石……をペンダントにはめ込んだ物かな。
 今回使えそうな物は。
 あくまでそう言われてるだけだからどれくらいの効果があるかはしらないけど」
「ずいぶん大層なものあるのね。こんなところに」
 言って、あたしはレミナからその二つを受け取ってしげしげと眺める。
「あげるわ。それ」
 …………でぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?
「なんでっ!?いやそりゃ貰うけど……」
 こんな宝、相手の方からくれるなどと言われたのは初めてであるっ!
 おまけに、自分の装備を固めるために取ってきたんじゃあ……?
「まだいくつかあるから。
 ただし――それは依頼料って事で。
 謎を解くのに手伝ってくれるんでしょ?
 何もしないのは気が引けるわ」
 いや……別に今回は事件の解明しよーとする事がたまたまレミナの手助けになるって事だったんだけど……
 いーのか?ほんとーに?
「こいつはやっかい事に首を突っ込みたがる習性で動いてただけだったのに……いーのか?」
 習性って……あたしは動物かい。
「あたしのほうもすっきりしないのよ。
 あんまし関係ない人に関わらせるようなことじゃないと思ったし」
 ま、何はともあれ、お宝をくれるってんだから断る理由はない。
 あたしは護符とペンダントを懐にしまい込む。
「なら、遠慮なくいただくわね。
 ……そろそろ出発しようと思うんだけど……ゼルはどうするの?ついてくる?」
「ついてくるもなにもさっきから事情の説明がされてないのでわからん」
 ……そういやゼルガディスには全く事情を説明してなかったっけ……
「リナさん、とりあえずレアードの城へに向かいながら事情を説明したらどうですか?
 ついてくるかどうかはその途中でゼルガディスさんに決めて貰えばいいわけですし」
「そうね。
 ……ところでレミナ。
 昨日から不思議に思ってたんだけど、なんであの時村長の話が聞こえたの?」
 まさかどっかの村の人間みたいに屋根裏をずりずり這って聞き耳を立てていた……ってわけじゃないだろうし。
「あー。アレねー。
 盗聴してたのよ」
『……………………………』
 あまりにもさらっと言ったレミナの言葉にあたし達は沈黙した。
 と、とうちょうって……
「……それはひょっとすると正義に反するのではないでしょーか……?」
 ひょっとしなくても反すると思うぞ。アメリア。
「でもまぁ昔っから村長が何か隠してたのは気付いてたし……」
 そう言って懐からレグルス盤を取り出した。
 魔法道具店(マジック・ショップ)などで売っている、二枚一組の魔法道具(マジック・アイテム)である。
 コインのような形をしており、片方に呪文のような物をちょちょいと唱えてやると、もう片方の方へと声が届くという奴なのだが……
 悪用すんなよ……
「それに……面白そうじゃない。
 あたしってば人をからかうだけじゃなく盗聴すんのも趣味なのよねー」
 犯罪だ。それは。
「とりあえず今の話は聞かなかったことにして――
 レアードのお城に行きますかっ!」
「お、おうっ!」
 頬に冷たい汗を流しながら、あたし達はレニーマルトの村を後にした。

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7895レアードの狂乱 二 A白いウサギ E-mail 9/23-02:07
記事番号7892へのコメント


二、 目的地 着いてみれば お祭りで


「うっわー、なーんかお祭りでもあるみたいですねー」
 アメリアはいつの間にか高いところに登り、辺りを見渡しながらそう言った。
 結局、事情を説明した後、ゼルガディスはあたし達に着いてくることとなっている。
 特に他の手がかりもないので急ぐ必要はないそーだ。
 うーむ……やっぱり難しいんだなぁ……元の姿に戻るのって。
 ともあれ、あたし達は特に障害もなくレアード国の城下町へと着いていた。
 途中、暗殺者(アサシン)からの襲撃とか覚悟はしていたのだが、全くなかった。
 これではかえってストレスが溜まるよーな気がしないでもないのだが、気にしても何にもならないので気にしないこととする。
 ……まぁ……どっかで報告とかしてるんじゃないかなーとは思うのだが……
 他に考えられる行動と言えば、レニーマルト村の村長さんの口封じで時間を食っているという場合なのだが、まずそれはないだろう。
 大して事情も知らない臆病じーさんと、事件解明する気満々の好奇心の塊達と来れば、どちらを狙うのか容易に想像がつく。
 他に味方が居る場合ならあり得ないことでもないのだが、村長の家での二度目の襲撃で、あたし達の戦力に一度退却を余儀なくされたにも関わらず人数が増えていなかったことでおそらくそれもないだろう。
 ともあれ、あたし達一行の着いたレアード国では丁度お祭りが開かれている時期らしく、辺りは人や露店で一杯である。
 変な仮面をかぶって叫んでいる者、犬に追いかけ回されてる少年、おいしそーな匂いと音を出す飲食店。
 ごった返す人混み。訳もわからずただただ辺りを走り回る子供達。
 うーん……平和だなぁ……
「アメリアー、あんまうろうろして迷子になるんじゃないわよ」
 ともあれ、こんな人混みで迷子にでもなられたりしたそれこそ暗殺者1ダース相手するよりやっかいである。
「はーい」
 ぴょんっと屋根から飛び降り、あたし達の所へと戻ってくる。
「しかし一体何の騒ぎだ?」
「さあ……?レミナは何か知ってる?」
 辺りを鬱陶しそうに見るゼルガディスに、問いかけるあたし。
 顔は白いフードで隠している。
 人に自分の顔を晒すのが嫌いなのは相変わらずらしい。
 いつもなら目立ちまくることこの上ない格好なのだが、お祭り騒ぎで変な格好の人間も多々居るため、さして気にならない。
「ううん。うちの村田舎だしねー。そういう情報来ないんだわ」
 言ってからから笑い出すレミナ。
 笑うことか……?
 あたしは溜息をついて、辺りを見渡す。
 ま、あそこでいっか。
 あたしは側にあったイカ焼きの露店の側へと行き、店番のおばちゃんに話しかける。
「ね、おばちゃん。
 この町って何かお祭りの最中なの?」
「ああ、旅の人かい?
 運がいいね。今丁度武道大会の祭りの最中でね」
 言って、にっこり頼んでもいないイカ焼きを差し出す。
「ブドウ?」
 あっさりおばちゃんの戦略に引っかかってそれを受け取ったガウリイ。
 あたしに着いてこなくても待ってれば良かったのに……
「食べ物の方じゃないからね。言って置くけど」
 これ以上ぼけられる前にくぎを差すあたし。
「そう、武道大会。
 知らなかったのかい?この辺りじゃ結構有名だと思ったけど……」
 レミナ……有名とか言ってるぞ……
 どーやら村が田舎だからとかそーゆー理由で知らない訳じゃないらしい。
 父親探していたくせに情報に疎いとは何事だ……?
「剣士、魔道師、魔法戦士、の三部門で競われて、それぞれの優勝者には国から賞金が出るんだよ。
 それで腕に覚えのある人が他の国からも来てるとか……」
 しょぉきんっ!?
 俄然やる気が出てくるあたし。
 賞金と言われて目の色変えない奴ぁはっきし言って、人間おしまいであるっ!(断言)
「で、まぁその登録の締め切りが今日なんだけど受付は……
 あ、イカ焼き食べるかい?」
 言ってにっこり笑い、イカ焼きを差し出す。
 つまり……情報欲しけりゃ買え……と。
 ………商売上手なおばちゃんである。
 あたしはいくらかのお金を払い、イカ焼きを口にくわえる。
「ふぇ?」
「で、受付はここの通りを城に向かって真っ直ぐ言ったところさ。
 行ってみればそれらしい人だかりが出来てるはずだからわかるよ」
 ふむ。確かに振り向くと、そこには青空をバックにそびえ立つ城がある。
 確認をした後あたしはイカ焼きを飲み込む。
「……んぐっ。
 そっか、ありがとおばちゃん」
 礼を言い、あたしはガウリイの腕を引っ張ってその露店を離れ、アメリア達の方へと戻る。
 ……ったくこいつは……
 アメリア以上にはぐれそうな奴である。
「あー、リナさん達ずるいっ!」
 あたしとガウリイの手に半分欠けたイカ焼きの姿を見つけ、アメリアが文句を言う。
「これは情報料として買わされたんだってばっ!」
 ……おいしいけど。
「どうやらこの町……」
 どんっ!
 言葉途中で背中から衝撃を受ける。
 とっとっと……
 あたしはよろめいて数歩たたらを踏み……
 ぼとりっ
 ………………………あああああっ!あたしのイカ焼きがぁぁぁぁぁっ!!
「ぼさっとつったてんじゃねーや、ちび」
 ぴきっ。
 背後からかかった声にあたしは硬直した。
 そしてあたしはゆっくりと振り返る。
「あんたが勝手にぶつかってきたんでしょ……?」
「はぁ?だったらどーしたってんだよ、やろうってのか?
 言って置くがな、俺は今回の大会の優勝候補だぜ?」
 あたしの怒りに気付いてないのか、勝手なことをほざく自称優勝候補。
 こーゆー奴に限って弱いと世間様が保証していることは常識である。
「おっ、おいっ!そこのお前っ!悪いことは言わん、謝っとけっ!な?」
 あたしからゆっくりと距離を取り始める四人の中のガウリイが男へと忠告する。
「ああ?ふざけたこと言ってんじゃねーっ!
 うるせぇんだよっ!」
 言って自称優勝候補は右拳をあたしに向かって突き出すっ!
 遅いっ!
 ばしんっ!
「なっ!?」
 その拳を受けとめたのはあたしではなかった。
「町中で酔っぱらうのは勝手だが、他の者へと絡むのは捨て置けんな」
 突如割り込んだ、立派な鎧を着込んだ男はそう言って男の腕をひねり挙げる。
「いででででっ!悪かったっ!俺が悪かったってっ!」
 完璧に関節が決まっている。
「二度と騒ぎを起こすな。次は牢屋に行くことになるぞ」
 言って、男は表情をぴくりとも変えず自称優勝候補の手を離す。
 ぶちぶち言ってる自称優勝候補の背を押し、姿が見えなくなってからこちらへと振り向く。
 歳の頃は24、5歳だろうか。金髪の短髪で、顔がきりっと引き締まった人である。
 寡黙で、人を寄せ付けない雰囲気があった。
 どーやら兵隊か何かのよーだが……
「えーと……ありがとうございました」
 はっきし言って、あんな奴簡単に倒せたのだが、礼は言っておく。  
 いやー、我ながら人間の出来ていること。
 これもひとえに常識をすっ飛ばしたガウリイ達と旅を続けているおかげである。
「いや、すまなかったな。我が国の者が失礼した。
 気にしないでゆっくりと旅を楽しんでくれ」
 言って、男はそのまま人混みの中に消えていく。
 この町の警備兵だろうか……?
「残念だったな。ストレスが発散できなくて」
 あたしが一人思案に耽っている最中に後ろからゼルガディスが声をかける。
 あたしはゆっくりとそちらに振り向く。
「あの人の登場が後1秒遅ければ止められたのはどっちだったか……」
「その前に祭りが台無しになってると思うぞ。俺は」
 こくこく頷くアメリアとガウリイ。
 あんたらなぁ……
 あたしが文句を言う前に、レミナはずざざっ! と下がって口元を手で覆う。    
「リナちゃん……あなた一体どういう人なの……?」
「怯えながら言うなぁっ!
 あんた達がふざけてるからレミナが怯えちゃったでしょーがっ!」
 言って三人を睨み付ける。
 が――
「俺達は至って真剣だぞ。リナ」
 神妙な顔して頷く三人。
 ほっほぉぉ……そっちがその気ならお望みどーりにしてやろーじゃないのっ!
 あたしは呪文を唱え始める。
「だぁぁぁぁぁっ!やめろっ!リナっ!こんな人混みで呪文ぶっ放すんじゃないっ!」
 問・答・無・用!
 あたしは混沌の言葉(カオス・ワーズ)の詠唱を終わり、右手を大きく振り上げる。
 光球が辺りを赤く染め始め、あたしは力ある言葉を――
「何やってんだい?お嬢ちゃん達」
「うどわぁぁぁぁっ!?いきなり後ろから声を……おばちゃん!
 ……店は……?」
 そう、突然ひょっこり首を伸ばして声を掛けたのは、先程イカ焼きを売っていた商売上手のおばちゃんだった。
 先程では屋台で見えなかったが、赤とピンクを混ぜたようなエプロンをしている。
「いやねぇ。娘が手伝ってくれてね。
 祭りを見物して来いって言われたんだが……お嬢ちゃんが何やら騒いでるからどうしたのかと思ってね。
 さっき大会の参加者かなんかに因縁付けられてただろ?
 それでジャグ様が助けてくださったのを見てああ、大丈夫かと思えば今度はお嬢ちゃんがまた何やら騒ぎ始める……何となく気になってね」
 ほっといてくれれば良かったのに……
 あたしは口には出さずに心の中で呟いた。
 ……って……
「ジャグ……?さっきの人のこと?」
「ああ、そうだよ。確か3年前からやってるこの大会の初代優勝者でね。
 優勝したのがきっかけで国王様に気に入られてそのままこの町の警備隊長さ」
「ふーん。ところでおばちゃんそのイカ焼き……まだ買えって……?」
 あたしはジト目でおばちゃんの両手にしっかりと収まっている焦げた醤油の香ばしい匂いがするイカ焼きを見ながら指差した。
「いやぁ……お嬢ちゃんの他の連れにもどうかなーって持ってきたんだが……」
 言いながらにこにこアメリア達の方へと差し出していたりする。
 休憩時間じゃなかったのかい。
 なかなか商売根性が豊富な人である。
「はーいっ!いただきまーすっ!ゼルガディスさんはどうですか?」
「間に合っている」
 元気良く答えるアメリアに、溜息をつきながら言うゼルガディス。
「えー?おいしいのに……」
 言って何故か未だにじゅうじゅう音をたてているイカ焼きにアメリアはかぶりつく。
「あたしももらおーかな……」
 言って、今まできょろきょろ町を見回していたレミナが硬貨を数枚おばちゃんへと手渡す。
 渡されたイカ焼きを何故かじろじろ観察してから、一大決心をしたように大きく深呼吸をすると、そのイカをきっと睨み付け、そしてぐっと両目を閉じてかぶりつく。
 ……何やってんだ一体……
「あ、本当だ。結構おいしーや。初めて食べたけど」
 言って、ほっぺに付いた醤油を嘗めるレミナ。
 ……初めて食べたのか……?海に近い村に住んでるくせに……
 なかなか謎が多い奴である。
 ま、いーや。それより聞きたいことがあるんだった。
「ところでおばちゃん、ここ2、3年で変なこと起こってない?」
「変なことかい……?
 うーん……大会ぐらいじゃないのかい?変わったことなんか。
 ある程度礼儀をわきまえた人達が集まるんなら良いだけど、そうでない血の気の多い奴も集まるからあまり城下町に住んでる人達はいい顔してないがね。
 あ、そうそう。それでか何故か妙な噂が出てね……」
「妙な噂?」
 あたしはオウム替えしに問い返す。
「何でも優勝者は二度とこの町に姿を現さない……ってね」
 それって噂って言うのか……?
 ふと思うが話の先を聞くことにする。
「ま、暇な町人が作った話だよ。
 それで実はあの大会は呪われているだの、あまりの強さのため神隠しに会うだの……
 くだらないだろ?」
 うん。たしかに。
「ま、実際は流れの傭兵達でもその大会で認められて城の兵士になってるってことだけど……
 あ、悪いけどこれで行くわ。何やら娘がドジやらかしたみたいだ」
 言って、おばちゃんは元気良く黒い煙が吹き出した露店へと走って戻る。
 うーむ……イカ焼き作るのに何故あれほど元気良く煙が……?
「さて……どーするんだ?リナ?」
 相変わらず何も考えていないガウリイがあたしの方へと問いかける。
「うーん……
 どー思う?ゼル、さっきの話」
 あたしは顎に手を当て、しばしうつむきながらゼルガディスに問いかける。
 こういうことの相談は、アメリアやレミナはともかく、ガウリイは論外、ゼルガディスに限る。
「妙だな」
「やっぱりゼルもそう思うかぁ……」
 言ってあたしは溜息をついた。
 どーやらあたしの考えは間違ってなさそーである。
「何が妙なんですか?あの噂のことですか?」
「まーね……」
 あたしは頭を掻きながら、アメリア達三人の方へ向く。
 どー説明したもんかなぁ……
「何で妙かというと……優勝者が全員城の兵士になってるって事よ。
 確かに優勝しただけあって、それぞれそれなりには強いんでしょうけど……身元もしっかりわかんない奴を城の内部で働かせる?
 まぁ……ジャグみたいに城下町とかの警備兵ならまだ解るけど……どっかの国のスパイだったら国王とか要人とか、暗殺されかねないでしょーが」
「それはそうですけど……でもさっきのおばさんの話が全て本当とはわからないじゃないですか」
「確かにそうだ。だが、全員姿を見せんとは妙だろう」
 あたしはゼルガディスの言葉に頷く。
「まぁ……たまたまこの国には大会しか興味がなくてさんざん戦って賞金を貰った後、へとへとだけど宿屋にも行かずに帰っていく――なーんて奴が居たらべつだけどね」
 しかしガウリイはぽりぽりと頬を掻きながら、
「でもよぉ……そいつが凄く強い奴で疲れもしなかった場合だってあり得るだろ?」
「確かにあり得るわ。だけど……そんな問答無用で強い奴が、国に認められただけであっさり兵士になって旅を辞めると思う?まぁ……世界中を探せばひょっとしたらそんな奴もいるかもしんないけど……全員がそんな訳ないでしょう?」
「そうかなぁ……」
 まだいまいち納得がいかないのか首を傾げるガウリイ。
「じゃ、聞くけどガウリイ……
 あなたが大会に優勝したとして、国王にも認められたとするわ。
 で、あなたはこの国に残って一生兵士として働いてみたい?」
「いや……それは……」
 困った顔をして頬をぽりぽりと掻くガウリイ。
「でしょ?あたしだってそんなことはごめんだし、ゼルももちろん断るでしょう?」
「聞くまでもないことだろう」
 頷くゼルガディス。
 まぁ……『あの』国だったらどーするのか少し興味はあるが……
 今聞くと話が逸れそうなので黙っておく。
「じゃあ一体優勝者はどうしてると?」
 レミナは元:イカ焼きの串だけくわえて言ってくる。
 危ないぞ……それは……
「さあ……そこまでは……」
「じゃ、結局どうするんだ?俺達」
「決まってるじゃない」
 言って、ガウリイにウィンク一つ。
 びっと人差し指を立て、
「――出場すんのよ。その大会に」
 あたしは一同を見渡し、にやりと笑った。

「出場するって……本気ですかっ!?」
「あたしの父親探しのほーはどーすんのっ!?」
 とりあえず立ち話を続けたらはぐれそうなので、近くにあった飲食店へと落ち着いたあたし達。
 仲間達は思った通り、驚きの反応を示す。
 しかしあたしはそちらの方へ向いてちっちっちと指を振る。
「甘い、甘い。
 確かに、今回はレミナの父親探しが目的よ。
 ま、それから国が何を考えているのかを探るのもそれと平行する目的ね」
「わかってるんだったらなんでそんなお祭りなんかに参加するんですかっ!?」
「じゃあ、聞くけどアメリア。
 村長さんに教えて貰ったことと、さっきの噂の推測でしか妙なところはない。
 つまり、証拠はもちろん、根拠すら乏しいわけよ。
 それなのに、見ず知らずのあたし達をレアード国がほいほいと中に入れて調べさせてくれると思う?」
 案の定、言葉に詰まるアメリア。
「そ……それは……
 正義を愛する心があればなんとか……」
 ならないってば。
「でもなぁ……なんでわざわざ大会なんだ?」
 縮みこむアメリアをちらりと見ながら、ガウリイが聞いてくる。
「優勝すればいいでしょ?」
 あたしは自信満々に答え、紅茶を口に含む。
「まさかっ!?」
 騒ぎ出す一同。
 どーやらあたしのやりたいことがわかってくれたよーである。
「だから……?」
 おぷっ!
 あたしは吹き出しそうになった紅茶をすんでの所でくい止める。
「げほっ!げほっ!
 ……ちょっとゼル、パス」
 むせ返るダメージのため、ガウリイへの質問をゼルにお願いすることにする。
 ゼルガディスは溜息をついて、ガウリイの方へ向いて、頭を掻く。
「まぁ……そのだな……
 ガウリイの旦那、とりあえず大会の優勝者のその後の噂の話は覚えてるか?」
「……えーと……」
 言って辺りに視線を泳がすガウリイ。
 『えーと』じゃないっ!
「ともかく、大会の優勝者は城の兵士として働いているんだ。
 それで、優勝すればスカウトだか他の何かの事情があるのかはわからんが、城の中に入り込める」
「ま、そっから調べようってあたしは言ってるのよ」
「なんだ。そんなことか」
 何故か満足げにこくこく頷くガウリイ。
 わかってるのだろーか……本当に……
 しかし彼は何やら思いついたよーにこちらを見ると、
「でもそれなら大会に優勝するなんてまどろっこしいことしないで、いつもみたいに城の中忍び込めば良いんじゃないか?」
『なにぃぃぃぃっ!?』
 ガウリイの考えのない発言に騒ぎ出す一同。
 だぁぁぁぁぁっ!ガウリイ余計なことをっ!
「『いつもみたい』って……どーゆーことですかっ!?リナさんっ!?」
「や……やーねぇ、アメリア。別にセイルーンに忍び込んだことは……」
「あったよな。確か」
 言って頷くガウリイ。
 何故覚えてるっ!?そーゆーことだけっ!?  
「りぃぃなぁぁぁさぁぁん?」
 完っ璧疑いの目を向けるアメリア。
「うわわわっ!落ち着いてってばっ!
 その時はセイルーンのごたごたでフィルさんに頼まれて忍び込んだだけだってばっ!」
「そーだっけ……?」
 覚えてろぉっ!このくらげ頭っ!脳味噌ところてん男っ!
 都合の悪いことだけ覚えといて都合の良いとこだけ忘れるとは一体どーゆー了見だっ!?
 ……いや……了見も何も本当に覚えてないんだろーけど……
「まぁ、今は別の話だな」
 溜息をつきながら言うゼルガディス。
 その言葉にアメリアは仕方なくあたしへ詰め寄る行動を止める。
 ないす・ふぉろーっ! 
「ま、過ぎたことや細かいことはおいといて……
 他に手段があるのに、忍び込むのは乱暴でしょ?
 それで大会に参加しようって言ったのよ」
「他に手段がなければ忍び込んだの……?」
 レミナのツッコミに冷や汗を流すが、無視である。
「まぁ……そーいうことなら……」
 渋々承諾するアメリア。
「でも全員出る必要はないんだろ?一人で良いじゃないか」
「出来るだけ中に入った方が楽でしょ。
 全員が調べるんじゃないにしても、牽制役とか配置できるし……
 まぁ幸い部門は3つ有るしね」
 言ってあたしはイスに深く座り直す。
「3つ?聞いてないですけど……」
 疑問の声を挙げるアメリア。
 そーいえばあの時みんなはその場にいなかったかも知れない。
「えーと、この大会には3つの部門があって、一つが魔道師、もう一つが剣士、最後に魔法戦士。
 それぞれ別れてるみたいよ。
 あたしはもちろん魔道師部門、ガウリイは考えるまでもなく剣士部門。
 ゼルは魔法戦士部門だろーし、アメリアは……どーする?あたしがもう出るけど」
「もちろん出ますっ!国の悪事を暴くため、戦うのはあたしの使命っ!
 悪の陰謀がどんな卑怯な手を使おうともあたしの正義の……」
 瞳に炎を灯しつつ、握り拳を作って熱弁するアメリア。
 聞いてるといつまでも続きそうなので流すことにする。
 しかし……わかってんだろーか……?
 出場するって事は何処かしらであたしと戦うことになるわけだけど……
「あたしは剣士じゃないしなぁ……魔法も得意って訳じゃないし……」
 一人残念そうに呟くレミナ。
 確かに彼女の獲物は剣ではない。
 棒術や、それが三つに折れた物をつなぎ合わせた物と変形させた戦闘術のようだが……
「ま、残念かも知れないけど、今回は見物しててちょーだい」
「りょーかい」
 溜息をついて棒を元の腰の位置へと戻す。
 そんなに出たかったのか……?
「俺は出んぞ。そんな大会。見せ物は御免だ」
 燃え上がるあたし達に一人水を差したのはゼルガディスだった。
 うーん……確かにゼルは出ないんじゃないかなーとは思ったけど……
「何言ってるんですかっ!ゼルガディスさんっ!
 あなたは悪事を暴き正義を示すのと自分の誇り、どっちが大事なんですかっ!?」
「自分の誇りだ」
 きっぱり答えるゼルガディス。
 ……多分あたしもそーいうふーに『説得』されたらそう答えるだろう。
「ゼルガディスさぁぁぁんっ!お願いしますよぉぉぉっ!
 わたしと一緒に正義を示しましょうぅぅぅぅっ!!」
 泣きながらアメリアはゼルガディスに抱きつく。
「だぁぁぁっ!泣きつくんじゃないっ!人が見てるだろーがっ!」
 言ってアメリアをはがそうとするがちっともはがれない。
「おいっ!なんとかしてくれっ!」
 言ってこちらの方へと言うゼルガディス。
 それを見てあたしはにやりと笑う。
「ガウリイ、レミナ」
 手招きをしてあたしの方へと引き寄せる。
 そして耳元でごにょごにょ入れ知恵し――
「やーねー、ゼルったら。女が泣いて頼んでるって言うのに……」
「うんうん。乙女心がわかってないわ」
「えーと……男の甲斐性ってもんがないよなー……」
 レミナとガウリイが指導通りに台詞を言う。
 ガウリイはいまいちおぼろげだが、自分で人をからかうのが趣味と言っているレミナは演技とは思えないほどである。
「お前らぁぁぁぁぁぁっ!!」
 何やらわめき散らすゼルガディスをちらりと見て再びあたしはわざと聞こえるよーにガウリイ達の耳元に囁く。
「まったく……アメリアってつくづく不幸よねー………」
「あたしより年下なのに苦労してるのねぇ……アメリアちゃん……」
 そう言いながら目の端をハンカチで拭うレミナ。
 うーみゅ。芸が細かいっ!
「自分を頼ってくる女の頼みを聞けないなんて……男じゃないよなぁ……」
 しばらくそれが続き――
「わかった……出ればいいんだろう……出れば……」
 何故かゼルガディスは泣いてるよーに見えるのだった。

「さあっ!次は今回の大会注目度ナンバーワン!
 盗賊殺し(ロバーズ・キラー)ことどらまた!
 破壊の申し子、混乱の生みの親、存在すること事態がこの世界の危機と言われる……」
「言われとらんわぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
 失礼極まりない発言をする実況席のアナウンサーにあたしは手近にあった大人の握り拳ほどの石を投げつける!
「んがっ!?……………………
 ……危機と……言われる……世紀の天才魔導師、リナ=インバースっ!」
『おおおおおおおおおおおおっ!!』
 わき起こる歓声。
 それにしても血をだくだく流しながらも実況を続けるアナウンサーのにーちゃん……プロだなぁ……
 あたしはしばし感心して、実況席を見上げた。
「対するは命知らずというか、アンラッキーというかっ!
 エルメキア帝国の賞金稼ぎ、ゴルヴァーナ=ヴァン=ガードっ!」
『おおおおおおっ!!』
 再びわき起こる歓声。
 なかなかノリの良い連中である。
 あたしは溜息をつきながら、対戦者の登場口へと目線を送る。
 演出効果だろうか、真っ直ぐに延びて奥まで光の届かない通路から白い霧がうっすらと出てくる。
 わざわざ登場のために幻霧召散(スァイトフラング)か何か唱えてるんだろーか……
 なかなか凝った演出である。
 あたしは対戦相手の登場をじっと待つ。
 じっと待つ。
 じぃぃぃっと待つ。
 ……………………
 しぃぃぃぃぃぃぃんっ!
 会場に静けさがました。
 先程まで無意味に盛り上がっていた連中が今ではもう声を出さない。
 しばし耳が痛くなるほどの静寂の時が流れ……上空をカラスが飛ぶ。
「かぁー、かぁー、かぁー」
 …………………をい。
「え、えーと……ゴルヴァナ=ヴァン=ガードさん?
 何やらトラブルが………あ、たった今運営委員会から報告が入りました!
 こっこれは―――!?
 大変ですっ!ゴルヴァナ=ヴァン=ガードさんが失踪しましたっ!」
 ずるべきごしゃぁぁぁぁぁっ!!
 あたしは盛大に闘技場の上で突っ伏した。
 しっ、失踪だとうっ!?
「ちょっと待ちなさいよっ!実況のにーちゃん!
 するとあたしはどーなるのよっ!?」
 あたしは何とか立ち上がり、びしぃぃぃっ! と実況席の方を指差す。
「どうやら控え室での彼の目撃者の話によると、リナ=インバースとなんか戦ったら命がいくつ会っても足りないなど、怯えていたそうです。
 うーむ、結構でりけぇとな奴だったんですねー」
 言って、何故か勝手に頷いていたりする。
 どーゆー意味だ……?
「さすがリナ=インバースっ!
 悪名はエルメキア帝国まで届いていたんですねっ!
 よって、第1回戦第3試合!リナ=インバースの悪名、噂という特殊攻撃がゴルヴァナ=ヴァン=ガードにクリティカルヒット!
 リナ=インバース選手の勝利ですっ!」
 しぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃん。
 静けさを増す……いや、凍りつく会場。
「いやー、滅多に見られない名試合でした。
 きっとこれは歴史に残る………ぐはぁっ!」
 実況のにーちゃんはあたしが石第二弾を投げつけるまでもなく、暴徒と化した観客の空き缶、長靴、やかんなどの総攻撃に会い、沈没した。
 そりゃまー怒るわなー……観客……
「てめぇっ!こんだけ盛り上げといて何言ってやがるっ!?」
「ざけんなっ!見物料返せっ!」
「こちとらリナ=インバースの殺戮ショーが見れると楽しみにしていたのにっ!」
 なにやら勘違いしてるよーな気がしないでもない罵声も飛んでるよーだが、ともあれ、これ以上この場にいても仕方ない。
 あたしは勝者退場通路へと歩いていった。
 やっぱりやめときゃ良かったかなぁ……
 あたしは今更ながらに後悔するのだった。


 
「あ、リナさんお疲れさまですっ!」
 言ってアメリアは勝利者退場口の影から姿を出した。
「お疲れもなにも何にもしてないわよ、あたしは」
「でも疲れてるよーに見えますけど?」
「別の意味でね……」
 あたしはしみじみと呟いた。
 結局、あたしとアメリアの脅迫……じゃなかった、説得により、ゼルガディスは魔法戦士部門へと出場している。ガウリイはもちろん剣士部門。
 先程待ち時間の間に覗いてきたのだが……やはりというかなんというか、ガウリイの敵は居なかった。
 試合開始の合図と同時にガウリイが相手の剣を斬り飛ばし、試合終了。
 盛り上がりも何もあったもんじゃない。
「ところでリナさん……ガウリイさんの応援は行かないんですか?」
「言ってもつまんないでしょーが。ガウリイならほっといても優勝するでしょ」
「いや……そう言う意味じゃなくて……」
 言いながらもごもごするアメリア。
 それなら一体どういう意味だと……?
「じゃあリナさん、ゼルガディスさんの応援に行きません?」
 ははぁ……
 あたしは心の中で納得する。
 ま、いいか。
「付き合ったげるわよ、アメリア」
 言ってあたしはウィンクを一つした。
 
「いけーっ!ゼルガディスさんっ!正義はあなたの味方ですっ!」
 観客席からいきなし恥ずかしい言葉を連打するアメリアに、あたしは為す術もなかった。
 ああ……アメリア……観客の視線が闘技場よりあなたに向いてることに気付いて……お願いだから……
 などという芸も、やる気も起きないほど目立ちまくっていた。
「面倒見る気で来たんじゃなかったの……?」
 同じく隣で縮こまっているレミナはぼそりとあたしに耳打ちする。
「そーだけど……なんか勇気を持って面倒見るのって全てを捨てなきゃいけないよーな気がして……」
「たしかにそーねぇ……かのリナ=インバースといえどもそんな勇気はない、と」
 あたしはこくんと頷いた。
 当然である。
「あー……帰ろっかなー……」
 あたしは空を見上げながら寂しげに呟いた。
 しかしその言葉にアメリアは気付いたらしく、こちらへと詰め寄ってくる。
「何言ってるんですか、リナさんっ!
 付き合ってくれるって言ったじゃないですかっ!」
 あたしは少し後ろへと身を引きながら、ぱたぱたと手を振る。   
「いや……確かに言ったけど、あたしが居なくてもへーきそーじゃない」
「一人じゃ恥ずかしいじゃないですかっ!」
 じゅーぶん今でも恥ずかしいわい。
 乾いた笑いをするあたし。
 隣であたしをこつんとこづくレミナ。
 その目が『面倒見るんでしょ?』と雄弁に語っていたりする。
 しくしくしくっ!他人事だと思ってっ!
「……わかったわよ。もう少しここにいるわ」
 あたしの言葉でアメリアの表情がぱっと明るくなる。
「それでこそリナさんです!」
 ……あたしって一体……?
「ゼルガディスさんそこですっ!」
 アメリアの声で闘技場へと目を戻すと、ゼルが相手の剣を弾き飛ばしたとこだった。
 うーん……これだけ時間がかかるって事は……手ぇ抜いてるなー……ゼル……
 剣を弾き飛ばした直後、ゼルが右手を突きだし呪文を解放する。
 声が歓声のせいで(アメリアのせいとも言う)聞こえないが、おそらく魔風(ディム・ウィン)だろう。
 男はバランスを崩し、隙を作る。
 ゼルガディスはそこを狙い、当て身をする。
「平和主義者クラーッシュっ!」
 アメリアの叫び声と同時に対戦相手は吹っ飛んだ。
 ぴくぴく動いてはいるが、とても戦える状態じゃあない。
 ゼルの勝利である。
 実況がゼルの勝利を告げると、場内は異様な盛り上がりを見せるが、ゼルはとっとと場を退場する。
 こちらも見ずに。
 あたしは自分の次の試合に備え、その場を後にした。

「おい、何故止めなかった……?」
 第2、第3と勝ち進み、またもや勝利者退場口へと進むあたしに、今度は影からゼルガディスが姿を現した。
「こっちがとどめの一撃を放つたびに、あれではかなわん」
 言って頬を赤らめる。
 確かにわからんでもないよーな気がする。
 アメリアは自分の試合が終わる旅にゼルガディスの試合を見に行き、声援を挙げ続け、ゼルガディスが攻撃を放つ度に、『平和主義者クラッシュ』だの、『人畜無害キック』だの、『人権擁護パンチ』だのなんだのを叫び続けていたのである。
 ふっ……思わずあたしゃ離れてしまいましたよ……
「止められるわけないでしょーが。
 それより、もう決勝は終わったの?」
 ゼルガディスは溜息を一つついた。
「まぁな。どうやら他の部門より参加人数が少なかったらしい」
 確かに剣士、魔道師の部門があるのに魔法戦士部門へと出場する者は少ないのかも知れない。
 実力は大抵どちらかに偏っている者ばかりなので、得意の部門での出場をと考えてる者が多いようだった。
「そっか。ガウリイの方は?」
「まだだな。人数がやたらと多いらしい」
「ふーん。見に行ってないからわからないけど。
 あ、そうそう。あたしこのまま決勝だったわ。悪いけど先急ぐわね」
 言ってあたしは奥へと走る。
 急いで出場口へ向かわなくてはならないのだ。
「お手柔らかに頼む」
 後ろからゼルガディスの声が聞こえた。
 あたしは手だけ上げて返事をし、奥へと引っ込んだ。

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7896レアードの狂乱 二 B白いウサギ E-mail 9/23-02:18
記事番号7892へのコメント


「さぁっ!とうとう魔道師部門も決勝戦っ!
 派手な魔法の応酬もさることながら、地味ながらも様々な駆け引きが行われるなど、他の部門にはない戦いが展開されて来ましたっ!
 数々の強敵を打ち倒し、勝ち上がってきたのはこの二人ですっ!」
『おおおおおおおおおおおおおっ!』
 実況があたしとアメリアの方へと指差すと、そこだけ神々しい光が射し込んだ。
 演出係が生んだ明かり(ライティング)である。
「アメリア……強敵っていた……?」
「……目の前になら……一人だけ……」
 まぁ……そーゆーことである。
 無遠慮な奴にはど派手な呪文一発。びくびくする奴には眠り(スリーピング)一発。
 早い話があまり盛り上がらなかったのである。この魔道師部門は。
 アメリアの試合の方は正義の口上を続け、いい加減切れだした対戦者に黙らせる呪文をぶち込むなど、もう何の部門か解らなくなっているのもあった。
 もちろんあたしやアメリアがそこらのにいるそこそこ程度に腕の立つ奴に負けるはずもなく……どころか相手にもならなかったりするのだが、そこはそれ。実況の強引な解釈により、観客の暴動をギリギリの所で押さえつけていた。
 ところが――である。
 圧倒的強さで駆け上がってきた美少女魔道師どーしの決勝戦っ!
 これで盛り上がらないわきゃない。
 観客達も、今までのつまらなさを溜めに溜め込んで、満を持しての決勝である。
「正義を広めるために登場っ!
 悪人の永遠の天敵、正義の味方、アリア=ウィラーっ!」
『おおおおおおおおおおおおっ!』
 騒ぎ出す観客。
 今まで言うのを忘れていたが、アメリアは偽名を使っている。
 理由は言わなくてもわかるだろう。
 他国の武道大会に他のお姫様が出るわけにも行かないし、この後城に入り込んだ後、マークされるのは目に見えている。
 もしこのレアードがなんの腹黒いことを考えていなかった場合、外交問題にも発展しかねない。
「負けるなよーっ!」
「リナ=インバースなんざぶっ飛ばせぇっ!」
 つくづく下品なヤジを飛ばす観客である。
 どーやら人気はあるよーだが……アメリアはあまりうれしそーではない。
 ま、当然か。
 が、辺りをきょろきょろ見渡し、何かを見つけると、そちらへとぶんぶか元気に手を振り回す。
「やっほーっ!ゼルガディスさーんっ!」 
 あ。ほんとだ。
 見ると、アメリアの声援(?)に顔を赤らめながらそっぽを向くゼルガディスが居た。
 うーん……苦労してるなぁ……ゼルガディスも……
「さて対するはっ!
 神の失敗作、戦乱の起爆剤、リナ=インバースっ!」
『おおおおおおおおおおおおおっ!』
 ……彼の口上に文句は嫌と言うほどあるのだが、こう1回1回戦っていく度に言われると、すでに怒る気も失せてくる。
「いいぞーっ!」
「派手にぶっ放せぇっ!」
「対戦相手いじめるなよーっ!」
 はいはい。勝手なことをほざく観客の声援を無視してあたしはアメリアと対峙する。
 それにしても連中、本気で呪文を派手にぶっ放しても良いと思ってるんだろーか……?
 はっきし言ってこの程度の会場、跡形もなく吹き飛ばす程の呪文のストックは沢山あるのだが……
「リナさんっ!勝負ですっ!」
「いや……あの……アメリア?
 この大会に出場した目的覚えてる?」
 この大会にはあたし達の中から優勝者が出ればそれで目的は達成したこととなる。
 あたしとアメリアが決勝に出ている以上、もうはっきし言ってどーでも良いのだが……
 しかしアメリアは言った。きっぱりと。
「正義のためですっ!」
 ……うーん……見失ってるかなー……
 状況に酔い安い奴………
「では両者準備は良いですね?
 ――試合開始っ!」
 合図と同時にアメリアはあたしから間合いを取って、呪文を唱え始める。
 だぁぁぁぁっ!やっぱし見失っているっ!
 あたしは急ぎ呪文を唱え始める。
「火炎球(ファイヤー・ボール)っ!」
「氷結弾(フリーズ・ブリッド)っ!」
 殆ど同時に放った呪文がお互いを引き寄せるように近付きあい、お互いを相殺する。
 あたしが相殺しなかったら観客の何人かは死人が出てそーなもんである。
「さぁっ!早くも火花を散らしております、魔道師部門決勝戦っ!
 アリア選手の唱えた呪文をリナ選手が相殺した模様ですっ!
 早くも余波を恐れ、ざわついている方もいるようですが、観客の皆様、御安心下さい。
 闘技場と観客席との間には魔力の通った障壁がありますので、生半可な呪文はそれを越すことは出来ませんっ!」
 それを早く言わんかいっ!
 ちぃっともしらんかったぞっ!あたしはっ!
 そうとわかればこっちも遠慮は無用っ!
 あたしは呪文を解放する!
「炎の矢(フレア・アロー)!」
 あたしの掌から突き出された数条の炎の矢は真っ直ぐアメリアに飛んでいく。
 しかしアメリアはその場を離れることなく呪文を解放する。
「炎裂壁(バルス・ウォール)!」
 向かってくる炎に対し、魔力干渉し、左右に散らす術である。
 もちろんあたしの炎の矢は吹き散らされる。
 だがそれはすでに予想済みっ!
 あたしは次なる呪文を唱えながら一気に間合いを詰める。
 アメリアはそれを予想していなかったのか僅かに反応が遅れる!
 捕らえた!
「烈閃槍(エルメキアランス)!」
 対象を極度の精神疲労に陥れる術である。当たり所がわるかろーがそーでなかろーが死ぬことはない。
 せいぜいが何日か寝込む程度である。威力も絞ってあるし、動きたくなくなる程度のもんだが、当たれば試合は終わりである。
 避けられる間合いではないっ!
 しかしいつの間に唱えていたのかアメリアは呪文を解き放つ! 
「霊王結魔弾(ヴィスファランク)!」
 術者の拳に魔力を込める術である。
 アメリアはあたしの烈閃槍を無造作に薙ぎ払う!
 ああああああああっ!なんか卑怯だぞっ!
 あたしにはあの呪文は使えない。……と、言うより、拳に魔力を込めてとは言え魔族をぶん殴ることの出来る術なんぞ、アメリアかフィルさんぐらいしか使えないに決まっている。
 そのままアメリアはあたしに殴りかかる!
「だぁぁぁぁっ!」
 すんでの所で避けるが、お世辞にも華麗とは言い難かったかも知れない。
 構わず続くアメリアの連打。
 冗談ではない。あたしは大きく間合いを取る。
「くおらアメ……じゃなかった。アリアっ!
 これじゃあ魔道師部門だか武道家部門だかわからないじゃないっ!」 
「魔力使ってるんだからいいじゃないですかっ!」
 う゛……確かにそうかも知れないが……為す術ないぞ。
 しかしあたしとて簡単に当てられるつもりはない。
 アメリアの自称正義の拳をいくつかかいくぐり、危なくなったら呪文で間合いを広げる。
 それの繰り返しである。大技使えば何とかなるのだが、いくらなんでもアメリア相手にそれは気が引ける。
 どーやらしびれをきらしているのはアメリアも同じのようだった。
 何やら気付いたように観客席を見上げる。
「あーっ!ガウリイさんが応援に来てますっ!」
「試合中によそ見すんじゃないっ!爆烈陣(メガ・ブランド)!」
 術者を中心にして周囲の土砂を吹き上げる術である。
 本来は敵を巻き込んで吹っ飛ぶ術なのだが、効果はアメリアまで届かないようにアレンジしてある。
 単なるめくらましである。
 アメリアは案の定あたしを見失う。
 そしてあたしは呪文を解放する!
 あたしから放たれた光球はおさまり始めた土煙を飛び越えると真っ直ぐアメリアの方へと飛んでいく。
 しかし、アメリアは風を切り裂く音からか気配からかなんなのかは知らないが、それを直前で察知し、拳で殴りつける!
 どぐおおおおおおおおおんっ!!
 爆音が辺りを震わせた。
「ヒットっ!クリティカルヒットっ!
 リナ=インバース選手の放った呪文に姿を見失いながらもアメリア選手、呪文をはたこうとしていましたが、呪文が悪かったっ!火炎球(ファイヤー・ボール)ですっ!」
『おおおおおおおおおおおおっ!!』
 まぁ……そーゆーことある。
 知っての通り、火炎球は最初にぶつかったところを起点に爆発、炎上をする炎の術である。
 そうとは気付かずに、アメリアははたいてしまった。
 いくらか手加減はしてあるのだが……
「おーい、生きてるー?」
 ちょっぴり焦げたアメリアをつんつんつつくあたし。  
「おおっと、アリア選手動けないっ!
 優勝は大方の予想通り、リナ=インバース選手だぁぁぁっ!!」
『おおおおおおおおっ!』
「やっぱり人類はリナ=インバースという限界を超えられないんでしょーかっ!?」
 いつあたしが人類の限界の壁になった……?
 全てが終わったらあの実況のにーチャンに礼をしに行ってやろう。
 そんなことを思うが、今はアメリアの方が大事である。
 焦げたまま突っ伏しているアメリアの肩がいつの間にか震えていたりする。
「あ、アメリア……?
 何も泣かなくても……」
「違いますっ!自分の未熟さが恥ずかしいんですっ!
 悪の権化とも言われるリナさんに勝てなくては正義の名折れ!
 わたしは必ず……次こそ勝ってみせますっ!正義の名にかけてっ!」
 言って、何やら夕日に向かって叫んでいたりする。
 うーむ。とりあえず身体の心配は必要なさそーである。
 しかしあたしはそれを遮って、ありったけの笑顔で言ってやる。
「アメリアー?もう一度同じセリフ言ってみる度胸ある?」
「……ないです……」
 ……ったく、どいつもこいつも。人を殆ど化けもんや魔物かなにかと勘違いしてんじゃないだろーか。
「ところでアメリア、あんた試合中ガウリイがどーとか言ってたけど……なんでよそ見を?」
「いえ……ああ言ったらリナさんの隙が生まれるんじゃないかと……」
 生まれるかっ!
「ほっほう……するとアメリア、あんた不意討ちしようとした訳ね?
 いいの?正義の名を語る人がそんなことして」
 あたしの言った言葉にアメリアは冷や汗を流すが、
「まぁ……結果としてそうならなかったんですからいいじゃないですか」
 失敗しただけだろーが。
 ちっとも良くないぞ。
「それより、勝利者退場出口はあちらですよ。
 今から急げばガウリイさんの決勝に間に合うんじゃないですか?」
 しかしあたしはきょとんっとした顔で言う。
「なんでわざわざ急ぐのよ?
 ガウリイの戦闘なんか嫌と言うほど見てるわ。
 なにを今更改まって……」
「いいから行きましょう!
 わたしもゼルガディスさんと一緒に先行きますから、そっちで集合ってことで。
 確かレミナさんもそう言ってましたから……」
「ま、まぁそういうことならいーけど……じゃ、また後でね」
 いまいち釈然としないまま、あたしはアメリアを見送った。

 あたしは一人、勝利者退場口を歩いていた。
 そしてその奥へと続く通路の奥から出ている気配に気付き、足を止める。
 最初の訪問者はアメリア。次はゼルガディス。
 となると次はガウリイときそうなもんなのだが、今はまだ剣士部門の会場にいるはずである。
 アメリアは敗者退場口にいるだろうし、ゼルガディスもそちらの方へ向かっているはず。
 他に心当たりがある者と言えばレミナなのだが、彼女は今剣士部門の方で観戦しているはずである。
 何でも為になるとか修行のためだとか言ってたよーな気がしたが……
 ともあれ、その中の誰でもないと言えば誰なのだろう?
 あたしはいくつかの可能性を挙げる。
 一、大会運営スタッフから賞金など何かしらの連絡。
 二、この大会であたしのファンになった人が花束を手渡そーと来ている。
 三、レニーマルトから追っかけてきた暗殺者(アサシン)。
 …………………………………………
 ……なんか……おもいっきし三のよーな気がしないでもないのだが……
 いつまでもここに留まっているわけにもいかない。
 あたしは静かに息を整えると、
「えーと……そこの陰に隠れている人、あたしに何か用?」
 ぴくり。
 影から僅かながら動揺の色が見て取れる。
 あたしは用心のためにと呪文を唱え始めた。
 しかし、そこで影が動く!
 でぇぇぇぇぇいっ!やっぱり三かっ!
 つくづく騒動に巻き込まれる自分の運命を呪いながら、あたしは右手を黒い影の方へと突き出し――
 なっ!?速いっ!
 影はいつの間にか姿を消した。
 油断をしていたつもりはない。あたしは確かに黒い影を目で追い――
 後ろっ!?
 突如出現した気配に正体すら掴めず恐怖だけが先に走り、あたしは横へと飛ぶ。
 しかし黒い影はそのままあたしを追う!
 何てスピードだっ!
 影は右手をこちらに真っ直ぐ突き出し――
「へ……?」
 あたしはつい間抜けな声を挙げていた。 
 目の前には一面の花、花、花。
 ……えーと……
 あたしは何とか現状を把握しようとする。
 とりあえず視界一杯に花が広がっているのは相手が突き出した花束が目の前にあるからで……
 ……つまり……三じゃなくて二……?
 いやただのファンがあんな身のこなしをしてまで花束を届ける必要は……
「いやぁ、優勝おめでとうございます。リナさん」
 ぴしっ。
 あたしは頭の中で何かが壊れるよーな音が確かに聞こえたよーな気がした。
 このいつ何処でもお気楽な口調。
 のほほーんと平和な口調だが平和なのは口調だけの奴……
 頭の中がそれ以上考えるのを嫌がるように、何故か故郷の姉ちゃんに川に重石を付けて蹴り落とされた大昔の思い出すらフラッシュバックした。
 しかしそれを嘲笑うかのように、彼は花束をどけ、素顔を晒す。
 おかっぱ頭。糸目男。
 自他共に認める謎の神官(プリースト)。
「ゼロス……」
 あたしは認めたくない結論を口に出した。
「いやぁ、奇遇ですねぇ。これも神様の思し召しって奴ですか?」
「あんたが神様拝んでどーすんのよっ!
 ……ってそれはまぁいいわ。あんた一体何でこんな所にいるのよ?」
 ゼロスは困ったような顔をしてしばし考えた後、
「えーと……ファンサービス(はあと)」
「間に合ってます」
 あたしはぺこりとお辞儀をしてその場を……
「ちょっと待って下さいよっ!リナさんっ!
 冗談ですってばっ!」
 慌ててゼロスが後を追いかけ、回り込む。
「で……?」
 あたしは冷たく先を促す。
「今回はちょっと調べものがありましてね。
 それでこのレアードに来ていたんですが……リナさん達がいましたから挨拶でもと。はい」
「ほぉぉぉ……するってぇと1回戦から何時間も経っているあたし達に声をかけなかった理由は何なのかしらね?」 
「ですから、花束を買いに」
 言って、花束を差し出しにっこり笑う。
 …………………………………
 だから何故花束を……?
 とことん疑問だが、どーせゼロスだしなぁ……
 あたしは花束を受け取らずに溜息をつきながらゼロスを見る。
「で、調べものって?」
「それは秘密です」
 あたしは予想した通りの答えに肩を落とす。
 どーせろくなことではないに決まっているが、残念ながらあたしはゼロスから力尽くで確実に吐かせる手段も強さも持っていない。
 ――今のところは。 
「それでわざわざあたしの前に出てきたって事は……」
「ええ。しばらくご一緒させて貰います」
 やっぱりか。
 あたしは頭を悩ました。ただでさえ何を考えているかわからない国のことやレミナの父親を捜すなどとゆーとんでもなく面倒なことを片付けようとしているのに、その上存在自体がややこしいゼロスが出てきたとなると……
「頭抱えてうずくまったりして、何か困ったことでもあったんですか?
 何でしたら僕が相談に――」
「あんたのせいで困ってるのよっ!この糸目神官っ!」
「おや……それはそれは」
 言ってにこにこ笑うゼロス。
 『それはそれは』ぢゃないぃぃぃぃぃぃっ!
「まぁ……今回リナさんとご一緒させて貰うというのは別にリナさんに対して何か考えているというわけではないですから。それほど心配することはないですよ」
「あんたがいるだけであたしは心配になってくんのよっ!
 だいたい、それじゃあ何であたしと一緒に行動する気なのよ?」
「ほら、リナさんってつくづく騒動に巻き込まれるタイプの人じゃないですか」
 言って、気楽にあたしの肩を叩く。
 いや……あっさり言うことじゃないぞ……そのセリフは……
「で、僕の調べたい事って言うのですが、どうもガードが堅いみたいなんですよね。
 それでリナさんと一緒にいれば何かトラブルが起きた時、そのガードが緩むんじゃないかと思いまして」
 ……まぁ……早い話が……あたしをうまく利用しようってことね。
 もうなんでもいーけど……
「……わかったわ。ただ他のみんなにはあんたから言っといて」
 あたしは溜息をつきながら言った。
「それはいいですけど……なんでまた?」
「めんどくさいもん」
 あたしはきっぱりと言った。


「皆さん、大変ながらくお待たせしました。
 剣士部門、決勝を始めたいと思います!」
『おおおおおおおおおおおおおっ!』
 他のどの部門に比べても野太い観客の声が響く。
 さすがに剣士なんぞ見に来ようと言うのはそれなりに腕っ節の強い奴か、血の気の多い奴が多いよーである。
 まぁ……ところどころに格好良い剣士は居ないかと物色しているミーハー根性丸出しのねーちゃん方もいるよーだけど……
「あ、リナさん。遅かったですね……
 ………えええええええええっ!?後ろにいるのはもしかしてっ!」
 こちらの姿を見つけたアメリアがぶんぶか手を振って場所を知らせるが、あたしの後ろにいる人……じゃなかった、ものに気付き、表情を変える。
「いやぁ、どうも。アメリアさんお久しぶりです。
 ゼルガディスさんも」
 相手の様子などお構いなしで朗らかに言うゼロス。
「なっ!?ゼロスかっ!?
 どういうことだっ!?何故ここにいるっ!?」
 アメリアの隣に座っていたゼルガディスも気付き、声を荒げる。
 ほらめんどくさいことになった……
「事情ならゼロスに聞いて。あたしはゆっくり観戦してるから」
 言ってあたしはアメリア達がとっといてくれた席に腰を下ろす。
 めんどくさい説明を続けるよりは試合を観戦してたほーがなんぼかマシである。……たぶん。
 隣に座っているレミナだけ、事情を知らないのだが、大して興味もないのか、無視して試合会場の方へと視線を向ける。
 こっちとしては助かるが、普通なら自己紹介とかするもんじゃないのか……?
 ともあれ、後ろでがやがや騒ぎ立てる奴らは放って置いて、あたしもそちらへと視線を降ろした。
「決勝戦は、これまで破竹の勢いで勝ち上がり、武器破壊の異名を今回の大会で作った、ガウリイ=ガブリエフ選手っ!」
『おおおおおおおっ!』
 野太い歓声と混じって、ミーハーな姉ちゃん達の黄色い歓声が飛ぶ。
 まぁ……試合会場で喋ってることなんか聞こえないし、顔と剣の腕だけで言ったらそれも解ることなのだが……
 正体を知ったらどーゆー反応すんだろ……
 興味がないわけでもないが、わざわざガウリイを連れてきて喋らせるまでする必要はない。
「対するはっ!
 今回、レアード国よりゲストで出場し、そのまま苦もなく勝ち進んできた警備隊長にして初代優勝者!
 ジャグ=グルーガン選手ですっ!」
『おおおおおおおおおっ!』
 先程よりひときわ大きい声援が沸く。
 どうやら人気はあるよーである。
 先程のミーハーねーちゃんも黄色い声援を挙げている。
 どっちの応援だ、あんたらは。
 ……って待てよ……どっかで見たことあるよーな……
 あ!昨日の警備兵っ!
 そっか……そういや初代優勝者とかおばちゃんが言ってたっけ……
「それでは両者構えて――始めっ!」
 ジャグが素早く剣を抜き放つ!それだけで分かる。かなりの腕だ。
 ガウリイは腰の剣に手をかけ――そのままの形で動きを止める。
 だぁぁぁっ!なにやってんだっ!
 へ……?
 なんかこちらの方へ向いたよーな気がしたが……まさか試合中によそ見するわけでもないだろーし……
 ともあれ、ジャグが何やらガウリイに話しかける。
 ガウリイがその言葉で笑いながら剣を抜き放ち、構えた。
 何やってんだい一体……
「何やら両者の間で会話があったようですが……
 おおっとっ!両者同時に走るっ!抜き放った剣同士で一気にぶつかりあいますっ!
 いや――手放したっ!ジャグ選手!剣を手放します!一体どうしたんでしょーかっ!?」
 代わりに解説しよう。ガウリイの持つ剣は斬妖剣(ブラスト・ソード)。
 本来の斬り味でなら鞘に収めただけで鞘がぱっくりと割れる、とんでもねー魔法剣である。
 さすがにそれじゃあ不良品と変わらないので、前に出逢ったとある黄金竜に切れ味を鈍らせる術を施して貰ったのだが……それでも剣の切れ味はそこらの剣じゃ簡単に斬れるほど……いや、かなりの魔力剣でさえ切断するであろう。
 その気配を感じ取ったジャグが、斬り飛ばされる前に剣を手放した――そう言うことである。
 ガウリイの剣の切れ味は知らないはずなのだが、嫌な気配でも感じ取ったのか、おそらく勘で手放したんだろう。盛り上がりも何もないが、ガウリイの剣技プラス斬妖剣では、仕方ないことである。
 かえって、手放す判断が出来たジャグはそれなりに強いこととなる。
「ええっと――ああっ!?ジャグ選手が両手を挙げていますっ!降参っ!?
 よって――ガウリイ選手の勝利です!」
 ざわざわざわっ!
 ざわめく場内。
 無理もない話である。見ていないからわからないが、ジャグという兵士、おそらくかなりの強さだろう。これまで勝ち進んだ様子を見ていた人から見れば、かなりの接戦を期待してたんだろーが……
 まぁ、相手が悪かったのである。
 ジャグはぺこりとガウリイと観客席に一礼し、その場を後にする。
 相手の力量を見抜くのも強さのうち――
 とは言え、場内の観客にはわかりっこないのでざわつくのは仕方ないことなのかも知れない。
「あれ?終わったんですか?」
 ひょいとこちらを覗き込み、ゼロスが言ってくる。
「まーね。それよりそっちの事情説明は終わった?」
「まだです……」
 ゼロスの服の端をしっかり握っているアメリアの方を指差して言うゼロス。
 ……まぁこれぐらいはいい気味である。
 あたしは無視して視線を戻す。こちらに気付いていたのかガウリイが手を振った。
 あたしも適当にひらひら手を振ると、席を立ち上がる。
「何処行くんですか?」
「ガウリイを迎えに行くのよ。
 ……この人込みじゃあこっち来れないでしょ。あのクラゲ頭」
 言ってぐるりと辺りの様子を見渡す。
 何やら未だに興奮している人。もやもやが消えずに暴れている人。とりあえず騒ぐ人……
 うーみゅ。どう考えても迷うなー。
「じゃあ、僕もいっしょに……」
 あたしの後を追いかけようとするゼロス。
 しかし。
「ゼロスさんっ!話はまだ終わってませんっ!」
 言って服ごとゼロスを引っ張るアメリア。
 隣には納得はしていないものの、事情を聞こえ、後を追おうとはしないゼルガディス。
「いや……僕はもう終わったんですけど……」
 ゼロスは困った顔でアメリアの方へと振り返る。
「わたしが終わってないんです!
 どうしても聞かないって言うのなら、生命の賛歌を風の呪文で増幅して――」
「わかりましたっ!
 聞きますっ!……ですけど、この人込みじゃあみんなで行った方が良いと思うんですけどねぇ……」 
「う゛っ……
 いいでしょう。ガウリイさんをみんなで迎えに行きながら、ゼロスさん。あなたに説教をします」
「……お手柔らかにお願いします……」
 軽く溜息をつきながら、ゼロスは頷いた。
 
「やっほー!ガウリイ、お疲れ」
 あたしは軽く手を振って、勝利者退場口から歩いてくるガウリイへと駆け寄った。
「ああ。リナの方は……」
 あたしはここでウィンクを返す。
「もちろん優勝よ。
 んで、アメリアが準優勝!」
 言って、アメリアの方へと指差すあたし。
「ゼルガディスさんも魔法戦士部門で優勝しましたよ!」
 アメリアも元気良く頷く。
 その奥で、ゼロスが何故かぐったりした顔をしていたりするが、一同はあまり気にしない。
「そうか。これで計画通りだな」
 言って笑顔でガウリイは頷いた。
「それにしてもみんな本当に強かったのねぇ……
 観戦してて驚いたわよ。あたし」
 腕を組みながらしみじみと頷きながら言うレミナ。
「いやーそれほどでもあるけど……
 そーだガウリイ。最後の決勝の時ジャグとなんか話してたみたいだけど?」
「ん?
 ああ、最初な。
 開始の合図でお前さんが見に来てたの気付いてついそっちに目が行ってたんだが……不意討ちは嫌だからとか言って俺が剣抜くの待ってた」
 ふつーは試合中よそ見してるほーが悪いのだが……なかなか騎士道精神だかに凝り固まった奴である。
「ガウリイの旦那。和やかに話しているところ悪いんだがな。
 何か気付いたことはないか?」
 言って、ゼロスの方を意味ありげに見るゼルガディス。
 つまり、ゼロスの存在に気付けと言っているのである。
「……ゼロスがどうかしたのか?」
 ずるべしっ!
 あまりと言えばあまりの発言に一同は突っ伏した。 
 どうかしたのかぢゃないっ!
「なんでこんな所にゼロスさんが居るのか不思議じゃないんですかっ!?」
 一番早く復活したアメリアが問いつめる。
「不思議じゃないかと言われても……この大会出場した頃からうろうろしているの気付いていたしなぁ……」
「気付いてたっ!?何でそれで黙っていたんだ?」
 ゼルガディスが額の辺りを手で覆いながら問いかける。
「いやぁ、言っても言わなくても一緒かと思って」
 言って、何故か爽やかに笑うガウリイ。
 いや……まぁ……そりゃそーかもしんないけど……
「気付かれてたんですか?僕。
 別に話しかけたりはしなかったんですけどねぇ。
 いやぁ、さすがはガウリイさん」
「いやぁそれほどでも」
 照れてどーする……ガウリイ……
 あたしはやれやれと頭に手を置いてガウリイの方へと向く。
「ま、それでゼロスがあたし達と一緒に行動する事になるんだけど……いい?ガウリイ」
「お前さんはどう思うんだ?」
「放って置く」
「そうか。わかった」
 あっさり答えるあたしに、あっさり頷くガウリイ。
 しばしアメリア達が何やら言いたそうな顔をしていたが、後ろ出かけられた声で遮られる。
「すみません。確か優勝者のリナさん、ゼルガディスさん、ガウリイさんですよね?」
「ええ。そうだけど……?」
 係りの人だろうか。走り回って探していたようで、少し汗をかいている。
「やはりそうでしたか。
 実は賞金のことなんですが受け渡しは城なんです。ご案内します」
 言って、あたし達が後に続いてくるのを確認すると、先へ進む係人。
 あたしは一同を見渡して頷いた。
 さてさて……いよいよこれからが本番である。
 あたしは勝利者退場口へと射し込む光を受けながら、不敵に笑うのだった。

 あたし達が通された部屋は、一言で言うなら豪華な控え室だった。
 そう、部屋なのである。広間ではなく。
 竜の飾り付けが施されたイス。漆喰で塗られた重みのあるテーブル。その上に並べられた豪華な軽食……
 あたし達としてもありがたいのであまり気にしては居ないのだが、普通はすぐに広間だか、謁見の場かなんかに通されて、表彰、はいおしまい、のはずである。
 どーやら国王が表彰の場に立つとわがまま言い出したらしい。
 とは言え、すぐに表彰の場に出れるほど暇じゃあないので2、3日ここで滞在して欲しいとのことだった。
 しかし……
「2、3日もこんな部屋に閉じこもり……暇よねー」
 文句の一つも言いたくなるのが人情って奴である。
 幸いこの部屋の警護の者は出入り口の扉の外。少々騒いだところで聞こえない。
「どうなんでしょうねぇ……わたし達も一緒にいていいからと言われましたけど……」
 実は誰の計らいかは知らないが、アメリア、レミナ、ゼロスもこの部屋への滞在を許可されていた。
 ま、それはともかく問題なのは……
「これが単なる国王の調整なのか、それとも罠なのか……ってことよね」
 あたしはテーブルにつき、紅茶をすする。
「罠かも知れないのに構わず滞在するんだもんなぁ……お前……」
 溜息をつきながら言うガウリイ。
 当然である。
 罠じゃなかったら失礼なことになるし、罠だったらそれをきっかけに相手の尻尾を……とまでは行かないにしろ、何かしら情報は降りてくるはずである。
「ま、今に始まったことじゃないか。
 で、ここで2、3日おとなしく待ってるのか?それともあちこちうろついてみるか?」
 無論のこと、自由に場内をうろつく権限は与えられていない。
 つまりガウリイはあちこち忍び込んでみるかと聞いているのだが……
 あたしは首を振る。
「確かに2、3日もこんな部屋でおとなしく待ってるってのはあたしの性分じゃあないけど……
 ガードが堅いわ。思ったより」
 言って、ちらりと壁越しに警備兵が居る方へと目を向ける。
「……ガードを緩くする方法ならある」
 ぽつりとゼルガディスが腕を組んだまま言った。
 とたんに皆の視線が集中するが……何となくあたしは予想がついていた。
 あたしは腕を頭の後ろに回し、イスに寄っかかる。
「確かにねー。あることにはあるんだけど……」
 そしてあたしとゼルは意味ありげな視線をゼロスに送る。
 当の本人はのほほんと茶をすすっていたりする。
 しかしあたし達の視線に気付き、茶の入ったティーカップを静かに置くと言った。はっきりと。
「お断りします」
 やっぱし……
「どういうこと?」
 訝しげにレミナが問いただす。
 あたしは頬を掻きながら、
「んーとね、平たく言うと、ゼロスが場内で何か騒ぎを起こして、その間にあたし達が辺りを調べまわるって案」
「そうすれば何か問題になってもゼロスを止めるためにやったということが出来るからな。
 それにゼロスはどう処分されようが俺達は一向に構わん」
「そゆこと(はあと)」
 言ってあたしはゼルの言葉に頷く。
「……ですからお断りします。
 だいたいそう言う問題起こす役ならリナさんが一番の適任者……いえ、なんでもないです」
 あたしの視線に気付いてか、ゼロスは慌てて謝り倒す。
「じゃあ、相手の出方を伺うんですか?」
 それしかあたし達に取る方法はないのだが……問題は、今まで何も仕掛けてこなかったことである。
 村長で取り逃がした暗殺者(アサシン)からの報告は行っているはず。
 なのに全く仕掛けてこないのはどういうことか……?
 考えられるのはあたし達を迎撃する準備を着々と進めて準備万端にするため……
 もしくは……………
 いや、やめよう。ここでどれだけ可能性の討議をしても、結局はわからないのである。
「そういうことになるわね。しばらくここでゆっくりしましょ。
 戦わないで済むなら一番だけど……どーもそう言うわけにはいかないみたいだし……」
 言ってあたしはイスに深く腰掛けた状態で部屋の扉を睨み付けた。
 誰かはわからないが盗み聞きでもしようとしたのだろう。
 こちらを伺おうとする気配が先程から壁にへばりついている。
 それも……好意の気配じゃない。
 さてさて……どうなることやら……
 あたしは静かに目を閉じて、薔薇の花びらが浮いた紅茶をすするのだった。
 
 お呼びがかかったのは1日後の昼だった。
 相手は何も仕掛けてこなかったというのもあるが、部屋の中での生活は実に静かなものだった。
 騒がしくなったことなど、ガウリイとの食事の奪い合い、アメリアの突発的正義宣誓病の発病、レミナが棒ぶん廻して花瓶を割ったこと、ゼロスへのツッコミの炎の矢(フレア・アロー)。それから……えーと……数える程度である。部屋がいつの間にか建ってから何十年も経っているようなぼろ部屋に変身するという怪奇現象も起きたりしたが、あたしにとっては実に些細な出来事である。
「こちらです」
 言って、兵士は広間へと続く扉を開ける。
 そこはガラスでできた、透明な通路だった。
 赤い絨毯が真っ直ぐのび、先へと導くが、あたしはつい周りの景色へと目が行く。
 ガラスの壁の向こうは庭園だった。
 太陽の光を一身に受け、様々な花が咲いている。
 おそらく水を撒いた直後なのだろう。
 朝露がついたように花はきらきらと光を反射する。
「きれいですね……」
 アメリアは見えない壁へと手を当て、その奥の景色を眺めた。
「この城の自慢の通路の一つです。
 後でごゆっくり観賞ください。しかし今は国王もお待ちしているので……」
 先へと急ぐ兵士の一人が声をかける。
「あっ、はい」
 アメリアはそれに気付き、慌てて駆け出す。
 あたしは名残惜しげにその景色をもう一度だけ見て、後を追った。

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7897レアードの狂乱 二 C白いウサギ E-mail 9/23-02:21
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「そなたらの活躍、とくと見せて貰った」
 言って、優しそうな笑みを浮かべたのはここ、レアード国の国王、セフィロト=セイム=レアード殿下である。 思わず拍子抜けするあたし。
 いや……あたしとしては国王が姿現したとたん、『ふっふっふ、まんまと罠にかかりおったな』とか何とか言って、これまでの悪事をべらべら喋り倒し、あっさり倒される……とゆーのを期待してたのだが……
 ……まだまだお互いの手の内のさぐり合いは続きそーである。
 あたし、ガウリイ、ゼルと続き、賞金の授与も終わる。
「もしよければこの城で働いてみる気はないか?」
 ぴくり。
 あたしとゼルはその言葉に僅かに身を固める。
 しかしあたしはすぐににっこりと笑って国王へと返事をする。
「いえ。もったいないお言葉ではございますが……所詮は流れの者。
 城仕えなどとても……」
 この言葉で僅かに国王の顔が動く。
「そうか……残念だが仕方あるまい。
 ではせめて、この国でゆっくりしていっていくが良かろう」
 言って顎の髭をいじりながら、あたし達を見つめる。
 いやにあっさり引き下がるが、さてさて心中は一体……?
「ありがとうございます。
 失礼ながら一つお聞きしたいことがあるのですが……」
「ほう?」
 国王が面白そうな顔をする。
 退屈しているのか、それとも……
 ともあれ、辺りの兵士がざわつくが、あたしはそれに構わず続ける。
「ジャガード=コンフォート……この名に心当たりはありませんか?」
「さて……?何者だ?」
「殿下の『御慈悲』で『巨額』の援助をなさっているレニーマルトの村の者です」
 あたしは意味ありげに笑いながら言ってみる。
「ほぉう……レニーマルトの……
 確かに村のことは知っているがその一人一人の村人のことは知らんな」
 確かにそうだろーけど……今回は別である。
 ともあれ……これ以上話しても無駄そーだなぁ……
 横でがやがや騒いでる兵士達もいつキレ出すかわかんないし……
 びくんっ!
 突如、あたしは全身が寒気に支配される。
 兵士達の中でも敏感な奴は気付いたよーで、辺りをおかしな顔して見渡している。
 しかし……その気配は一瞬だけであった。
 兵士達も気のせいかと元に戻る。
 無理もない。この気配は感じたことがある人間にしか解らない。
 宣戦布告か……それとも脅しのつもりかは知らないが……
「そうですか。どうやらこちらの思い違いだったようです。
 失礼しました。ではあたし達はこれで」
「う、うむ……?」
 何やら納得がいかないような顔をするが、付き合う気など更々ない。
 あたし達は一礼してその場を後にした。

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7898レアードの狂乱 三 A白いウサギ E-mail 9/23-02:27
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三、 戦いは いつも必ず 力押し


「と、ゆーわけで。忍び込むわよ。城に」
 あたしは一気に飲み終えたパイン・ジュースのグラスをテーブルに勢い良く置いた。
 静かになる一同。
 とりあえず城から出て、これからどうするかを相談しようと食堂へと足を運び、いきなりなりあたしはそう宣言したのである。気持ちはわからんでもない。
「……しかしなぁ……」
 頭を掻きながら文句を言いかけたのは自称あたしの保護者、ガウリイ君だった。
 ところが皆まで言わせずあたしは続ける。
「ガウリイだって感じたでしょ?あの気配」
「……まぁ……な」
 言って、グラスの中身に口を付ける。
「気配?何のことですか?」
 アメリア達は授与の場に居合わせていない。すぐ側の控え室で待っていて貰ったのだが……
「そこにいる奴と同類の気配だ」
 言って、ゼルガディスはそいつの方へと視線を向ける。
 そうなのである。
 あの謁見の間で感じた一瞬の気配。
「僕……ですか?」
 きょとんとした顔で言うゼロス。
 つまり――障気だったのである。
「あんたねー、あの中にお仲間が居るのわかってるんでしょ?」
 あたしはグラスをこつんと傾けながら、ゼロスに問いかける。
「お仲間って……別に同類なら全て仲間ってわけではないんですけど……」
「魔族があの城にいたとなると……やはり何か企んでいることがあると考えた方が自然だな」
 言って、ゼルガディスは頷く。
「やはり悪ですねっ!
 場内に闇を住まわせ、それを受け入れているなんてっ!」
 拳をふるふると握りながら、アメリアは高々と挙げる。
「あのー……ふと思ったんだけど……魔族ってレッサーデーモンとかの?」
 場の雰囲気についていけないレミナは恐る恐る切り出した。
「ま、そうですけど……あれより手強い奴ね。
 あまり一般には知られてないけど、高位魔族ってのは人の姿がとれるのよ」
 言って、ピコピコたこさんウィンナーを刺したフォークを振るあたし。
「と、言うより高位なほど人間らしく振る舞えるわ。
 下級な奴なら人の姿になりきれていなかったり、障気――負の感情だしまくってるから」 
「魔族って会ったこと無いからさっぱりわからない……
 とりあえず、強いのね?」
 まぁ……そーだけど……
 あんまし魔族の恐怖をわかってなさそーだなぁ……
 あたしはぽりぽりと頬を掻いた。
「……僕は黙っていたほうがいいんでしょーか……?」
「黙ってて。話がややこしくなる」
 あたしは冷たくあしらった。
 魔族という者を知らない人間にゼロスのことを『実は魔族なんです』なんぞと言ったら魔族の全体像がかなりずれること間違いなしである。
 その上、何故そんなのと一緒にいて平気でいられるのかとかなんとか質問責めにされる気はなかった。  
「えーと……とりあえずあたしないがしろにされてるよーな気がするんだけど……」
「あなたのためよ」
 何やら言うレミナに、あたしはきっぱりと笑顔で言ってやる。
 やや憮然とするレミナだがあたしは間違ったことは言っていない。
「で、忍び込むメンバーだけど、あんまり大人数で行っても見つかる可能性が高くなるだけ。
 となれば二、三人がベストなんだけど……」
 言ってあたしはざっと一同を見渡す。
 ゼロスはしんよー出来ない。レミナは魔族に鉢合わせしたら足手まといにしかならない。
 となると……あたし、ガウリイ、アメリア、ゼルの中から選ぶこととなる。
「リナさん。闇に紛れて忍び込むんですよね?
 でしたら目の良いガウリイさんが居た方が良いと思います」
「となるとガウリイとリナは決まりだな」
 アメリアの言葉にゼルガディスはコップを置いて言う。
「なんで?」
 あたしは当然の疑問を口にする。
「ガウリイの面倒をリナがみるのは当然だろう?」
 言って意味ありげに笑うゼル。
 あたしが保護者じゃないんですけど……
「嫌なのか?」
 そんなあたしの反応に気付いたのかガウリイがあたしの顔を覗き込む。
「夜更かしは美容の大敵だから……」
「お前が言い出したんだろーが」
 まじめな顔で言うあたしにゼルが冷たく突っ込む。
 ちっ。冗談の通じん奴……
「ま、あたしとガウリイは決まりとして……アメリア……ついてきたそーね……」
 再び一同を見渡すあたしに、目を輝かせてこちらを見るアメリアの姿が目に入る。
「もちろんですっ!せ……」
「はいはい。正義のためね」
「リナさん最近冷たいです……」
 遮るあたしの言葉に涙するアメリア。
「ともかく、決まりね。
 今夜にでも忍び込むとするわ。
 アメリアもガウリイも今のうちに睡眠とっときなさいよ」
 言って、あたしは席を立つ。
 この食堂の二階は宿屋になっており、すでに宿泊名簿には名前が記入してある。
「あ、そうそう。リナさん」
 階段を登りかけたあたしの後ろから声をかけたのはゼロスだった。
 相変わらずの笑顔で、何を考えているかは解らない。
「気を付けて下さいね」
 ……あんたが全面的に味方なら気を付けなくてもいーんだけど……
 ふとそんなことを思うが、期待しても仕方がない。
 あたしは曖昧に笑って、手を振ったのだった。

 夜だ暗いぞ静かだぞっ!
 いつも以上に白々と明るい月っ!
 月明かりに照らされて綺麗と言うよりは威圧感があるお城っ!
 どこからか聞こえる犬の遠吠えっ!
 ……賢明な読者諸君ならもうすでにお気付きだろう。この異様なほどのハイテンション。
 そうなのである。
 あたしは夜中にたたき起こされ機嫌が悪かった。
「くっそー……ゼルやレミナとかは今頃ぐーすか寝てるってぇのに……!」
 あたしはぶちぶち言いながら、城の近くの民家の屋根の上で、城の門の周りの警護の状態を伺っていた。
「お前なぁ……自分が行くこと納得してなかったのか?」
 隣で同じく城の辺りを伺うガウリイが呆れた声で言った。
 あたし達は全身ゆったりとした服で身を固め、要所要所を革のベルトでまとめてある。
 腰に剣は差してはいるが、今回はあくまで潜入が目的なので、マントもショルダーガードも宿屋である。
 もちろん服の色は黒一色。
 死ヌ程怪しいが、致し方ないことである。
「過ぎたことは忘れたわ」
「おいおい……」
 ガウリイが様子を伺うのをやめてこちらの方へ向く。
 わがままとは言うなかれ。成長期であるあたしにとって、睡眠は大事なのである。
「リナさん、昼間からずっと寝てたじゃないですか」
 他の屋根で様子を見ていたアメリアが、やはり黒い服で身を固め、浮遊(レビテーション)の術でこちらへと戻ってくる。
 実はこの服を着るのは正義に反するなどとさんざんわがままを言っていたのだが、あたしが笑顔でくどくど『誠意のこもった話し合い』をすると、渋々承諾したのだった。
 しかし、どんなに睡眠時間をとろうが、夜中にたたき起こされりゃ機嫌が悪くなるのが人間ってもんである。
「はいはい。で、アメリア。裏の方の警護は?」
 あたし達は正門の辺りの警護の確認。アメリアはその裏の方からの確認という分担であった。
「裏なんですけどねー。警備なら誰も」
「じゃ、そっちから行くか?」
「ちょっと待ったガウリイ。警備がいないってのおかしいとか思わないの?」
「罠か?」
「でしょーね。確かにこの城の作りじゃ後ろは断崖絶壁。
 その下には流れの激しい河があるけど……魔法使えばそれをかいくぐるなんて楽勝よ」
 言ってあたしはひょいっと肩をすくめる。
「わたしもそうだと思います。
 なにぶん暗いですから誰かが隠れているとしてもわかりませんし」
 言って、アメリアが頷いた。
「魔法でふわふわ不用心に近付いてくる奴を弓矢かなんかで狙い打ち――とかってのも充分あり得るわ」
「じゃ、どうすんだ?」
 ……本気で自分で考えない奴……
 あたしは頭を掻いて、しばしガウリイを見るが、本人は全くの無自覚でその視線の意味に気付かない。
「ここからある程度の高度を保ったまま城の上空から様子を見るわ。
 様子を見るのはガウリイの役目よ。
 あたし達じゃ多分見えないぐらいまで上がらないと気付かれちゃうでしょーし」
「じゃ、わたしが呪文唱えますね」
 言って、アメリアは呪文詠唱に入る。
 あたしとガウリイがアメリアの側へ駆け寄るのを確認してからアメリアは呪文を解放する。
「浮遊(レビテーション)」
 あたし達を包み込むような球状の形に力を働かせ、闇夜へと舞う。
 そのままゆっくりと高度を上げていく。
 城の至る所に見える魔法の明かりが数を増やしていく。
 つまり視界が高度を取ることで広がっていくのだが……あたしはすでに門番の姿など見えなくなっていた。
「ガウリイ、見える?」
「ああ、まだ平気だ」
 いつも思うがどーゆー視力してんだ……?  
 あたしも目は良い方なのだが、ガウリイには及ばない。
 隣で術の制御をしているアメリアもすでに見えていないよーである。
 何とか建物の間取りとかは見えるのだが……
 正門から真っ直ぐ延びた本殿。途中少し途切れて再び大きな本殿。
 途切れているところは今日の昼通った、ガラス張りの通路から見えた庭が広がっている。
 そしてその本殿に隠れるように建っていて、右側の一階建ての建物が一つ。
 反対側の左側にはひときわ大きな塔が建っている。
 いくら小さな一国と言えど、さすがに城だけあって大きな建物がいくつも建っており、どれがどんな構造なのか、中に誰が居るのか、または何があるのかなど全くわかりゃしない。
 建物以外にも大理石で出来たイスやテーブル、数々の置物が飾られた庭。
 もちろん、その一つ一つが複雑な構造の上、頑丈にできているのは見た目でじゅーぶんわかる。
「……あたしとしてはあの離れが何となく気になるんだけど……警備兵の様子は?」
「あそこか?
 ……扉の前に二人だな。でもなんでだ?」
「構造が単純そーじゃない」
 あたしは迷わずそう答えた。
「そんなところに何か手がかりがありますかね?」
「そう見せかけといて実は……なーんてのもあるだろーし、どっちみちわからないんだから一個一個潰していくっきゃないでしょ。幸い兵士の数も少ないよーだし」
「じゃ、降りますよ」
 言ってアメリアは術を制御し、降下を始めた。
 ふわり……
 あたし達は離れの屋根に音もなく降り立った。
 あたしはそのままの状態で唱えていた呪文を解放する。
「眠り(スリーピング)」
 ……ぱたり。
 どーやら兵士が眠りについたらしい。
 あたし達は芝の上にだらしなく眠りこけた兵士の姿を確認し、扉の前へと降りる。
 ガウリイとアメリアは周囲の確認。
 あたしはドアノブとその下にある鍵穴をしげしげと眺める。
 これならなんとか……
 あたしはショルダーガードの裏に隠した一本の針金を取り出す。
 それをしばしがちゃがちゃと鍵穴の中で動かして……
 かちゃり
 ふっ。我ながら見事である。
「開いたわよ」
 後ろの二人に声をかける。
「もう?慣れてますねー。リナさん」
 んっふっふ。あたしは自慢げに胸を……
「なんで慣れてるかは聞かないほうが良いぞ」
 ……よけーなツッコミいれんじゃない……ガウリイ……
 こ、こほん。ともあれ……
「開けるわよ」
 二人は同時に頷く。
 ………………
 あたしは音をたてないようにゆっくりと扉を開けた。
 首を突っ込んで、辺りの様子を確認するが、暗くて全くわからない。
 とりあえず人の気配はないよーだが……
 あたしはゆっくりと中へ歩を進める。
 後ろから眠りこけた兵士をずりずりと引きずって中に連れ込み、入り口に放置するガウリイが外の明かりから見えるのみ。
 まさしく真っ暗闇である。
 空気でとでも言うんだろうか、雰囲気でとでも言うんだろうか、視界は全くないがやけにだだっ広いところだという事は何となくわかる。
 それも何もない、がらんとした場所のよーな感じがするのだが……
「ガウリイ、見える?」
「なんとか……しかしこの部屋、何にもないぞ」
 あたしのマントを掴んでいるガウリイが呟いた。
 どーやら本当に何もないよーであるが……
 ぞくりっ。
 あたしは言い様のない寒気に襲われ、大きく後ろへ飛ぶ。
 べばきっ!
 何かが崩れるか壊れるかの音があたしの先程まで居た場所から音が聞こえる。
「リナ……」
「わかってる。アメリア、気を付けてね。
 いるわ。――魔族が」
 あたしは闇を睨み付け、気配を探る。
 昨日、謁見の間で感じた一瞬の嫌悪感ではない。
 まだ魔族が関わっているという事は半信半疑だったのだ。
 ――今この一瞬前までは。
 それにしても……
 くっそー、やっぱり見えないのは痛いっ! 
 仕方なくあたしは呪文を唱え始め……いやっ!
「明かり(ライティング)!」
 声は後ろから聞こえた。どうやらアメリアも同じ事を考えていたよーである。
 これで侵入がばれる可能性は上がってしまったが、いくらなんでも魔族相手に視界ゼロで戦う気はない。
「ほぉ……良く気付いたな。
 我が魔族と……」
 声はかすれ、低かった。
 声の一音一音がかすれ、途切れるが、静かに、強く。
 魔族は言葉を紡ぎ出す。
 しかし一体何処に――
 上っ!?
 あたしはガウリイの視線の先を追い、天井を見上げると――
 そこには天井にへばりついている、人の姿をした者が居た。
 …………
 そいつは音もたてずにゆっくりと着地し、こちらを赤い瞳で見渡した。
 端正な顔つきではあるが、それは右目周辺を覗く。
 外見は何処からどう見ても人間なのだが、右目から頬にかけた辺りまで、石のような無機質な灰色の表面を覗かせる。 叩いたら乾いた音がするんじゃないだろーか。
「一応……戦ったことあるんでね。純魔族とは。
 気配は一回出逢ったら忘れないわ」
 即ち――障気。
「そうか……
 だが、我らが城に侵入とは頂けないな」
 魔族はこちらへゆっくりと歩み寄りながらうっすらと笑みを浮かべる。
 『我らが城』……ねえ……
「片付けろ」
 はい……?
 どばたんっ!!
 けたたましい音に周囲を見渡すと、薄っぺらい壁をはり倒したのだろう。突如現れる兵士の人だかり!
 気配を消していたっ!?
 あたしとて気配を読むことはできる。その上一緒に来たガウリイは獣並の感覚である。そしてアメリアも巫女の一人。こういうことは得意中の得意のはずなのだが……全く気付いていなかったっ!?
 いや、それよりも……何故兵士が魔族の味方を?城全体がグルなのか?
「氷の矢(フリーズ・アロー)!」
 あたしはアメリアの呪文で我へとかえる。
 どうやら深く考え込む余裕は与えてくれそーになさそうである。
 あたしは呪文を唱え始めた。
「はぁぁっ!」
 ガウリイが手近にいた兵士の剣を切り飛ばし、ぶちかましをかけ、魔族への進路を作る。
 あちらはガウリイにまかせといて――
「霊氷陣(デモナ・クリスタル)!」
 兵士の一団へと呪文を解放する!
 濃い霧が兵士達の足下へと出現し――
 かきかきかきぃぃぃぃんっ!
 あっさり数人を凍りつかせる。
 あたしにしては珍しく地味な呪文だが、いくらなんでも得意の火炎球(ファイヤー・ボール)や、爆裂陣(メガ・ブランド)は使えない。
 まだ他の警備の者達は気付いていないかも知れないのだから、あまりにも派手な呪文はかえって自分を追い込むこととなる。
 あたしは一人の兵士がこちらへめがけて突進してくるのに気付き、腰に帯びたショート・ソードを抜き放つ。
 相手の打ち下ろすような斬撃を何とか受けとめる。――が、重い。
 バランスが崩れたところを兵士が狙って横凪の一閃を放つが、
「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」
 あたしの脇腹から出現した光の矢に打ち抜かれ、届く前に崩れ落ちる。
 妙である。
 兵士達の目の濁った虚ろな瞳。そして剣の技術や戦いの駆け引きの低レベルさに比べて――
 ぎぅんっ!
 あたしは後ろから斬りつけられた剣をまたまた受けとめる。
 ――力、スピード……基本的体力が異様に高かった。


「……驚いた。良い腕だ」
 赤目の石顔とあたしが勝手に名付けた魔族は、そう言ってガウリイから間合いを取った。
 どぉもこいつ、あたし達を甘く見ているふしがある。
 ともあれ、純魔族相手に油断は禁物、ガウリイは再び柄に力を込め、構え直す。
「そいつはどうも。
 お褒めの所悪いんだが……あんまり時間をかける気はなくてねっ!」
 言って再びガウリイが一気に間合いを詰める!
 そして赤目の石顔は右手で剣を受けとめようとする。
 しめた!相手はこちらの剣の威力を甘く見ている!
 ガウリイもそれに構わず赤目の石顔の顔へと斬りつける!
 ぶうぇあん……
 しかし聞こえたのは奇妙な音だった。
「――!?」
 ガウリイも当然異変を感じ取り、その場を離れる。
 赤目の石顔の右腕には――うねうねとうごめく闇色のボールのような物が浮かび上がっていた。
「こいつは特別製でな」
 言って辺りにふよふよそれと同じ物をいくつも浮かばせる。
 しかしそれならそれを避けて斬りつければ良いだけの話である。
 ガウリイの腕なら何の問題もない。
 ――っておいまさかっ!?
 とたん、ふよふよと浮かんでいた物がぴたりと虚空に浮かぶ。
 こういうのってパターン的に言うと………
 あたしの思いを見透かすかのように黒いボールはガウリイめがけて飛んでいく!
 だぁぁぁぁぁっ!やっぱりかぁっ!
 あたしはたった今はり倒した兵士の剣を奪い取り、そのボールへと投げつけた!
 しゅぼぼぼっ!
 あっさり黒いボールはその剣との接触部分を塵へと変える。
 あああああっ!何となく嫌な予感はしたんだっ!
 斬妖剣(ブラスト・ソード)ならだいじょーぶだったよーだが、攻撃と防御では性質を変えている場合もあり得る。
 ガウリイは剣で打ち落とすことができずに避け続けるしかなかった。
 さすがというか、ガウリイはそれを全て避けきる。(すでに人間じゃない)
 どうやら連打は出来ないようで、赤目の石顔の攻撃が止んだのを見て取ると、一気に間合いを詰めにかかる。
 ――いやっ!
 そのガウリイの行く手を数人の兵士が塞ぐ。
 仕方なくそちらの剣撃を受けとめるガウリイ。
 相手にならない兵士だが、赤目の石顔の次の攻撃へのタイム・ラグを埋めるのには充分だった。
 再び赤目の石顔が黒い球をガウリイ向けて発射する!
 慌てて後ろへと飛び、下がるガウリイ。
 今の攻撃に巻き込まれて倒れ込む兵士もいるが、また別の兵士がガウリイを取り囲む。
「ちぃっ!」
 ガウリイが兵士と赤目の石顔を睨みながら舌打ちした。

「あなた達は一体何をしているのかわかっているんですかっ!?」
 ひょいっ。
 アメリアは兵士の剣撃をあっさりかわし、拳を顎にたたき込む。
 がごっ!
「魔の物を自らの元へと引き込み、あまつさえその命に従うなんてっ!」
 どげしぃぃっ!
 アメリアに気絶させられた仲間がぶつかり、バランスを崩した兵士の一人の顔面にアメリアの靴底がめり込む。
「自らの行為を恥じ、反省し、真っ当に生きようとは思わないんですかっ!?」
 どがぁっ!
 靴底がめり込んでよろよろとする兵士に肩からぶちかましをかけ、何人かを巻き込んで、壁へと激突する。
「今ならまだ間に合いますっ!」
 いや……間に合わんだろう。白目むいてちゃ。
 つい心の中で突っ込むあたし。
 あたしは兵士の異変を疑問に思い攻撃を渋り、ガウリイが魔族相手に苦戦している中。
 こちら、アメリアは絶好調。
 どことなく自分の世界に浸ったよーな瞳で、辺り構わず兵士をぶち倒す。
 そーいやアメリアって体術使えたんだっけ……
 ふと昔のある一場面を思い出す。
「いいでしょうっ!
 あなた達がどうしても譲らないと言うのなら、わたしが力尽くで正義の道へ引きずり込んであげますっ!」 
 もぉ、正義なのか悪なのかすらわからないセリフを吐いて、アメリアは呪文の詠唱に取りかかる。
 ……どーやら相手にとって自分たちは忍び込んだ怪しい奴と言うことを忘れているらしい。
 まぁ、こういう傀儡の術かそれに近そうな類で操られている兵士などに言っても全くの無駄ではあるのだが。
「直伝、愛のムチっ!炎熱鞭(バム・ロッド)!」
 アメリアの手のひらから名前の通り炎の鞭が現れる。
 そしてアメリアはそれを横へなぞるように軌跡を描く。
 そして魔力でコントロールの出来る炎の鞭は兵士達の間に、舞、踊った。
 じゅぅぅぅぅわっ!
 鎧の溶ける音と、鞭がそれを溶かしながら叩きつける音が混ざる。
 さすがに足を狙って、行動不能に陥れてるだけだが……
 直伝って……一体誰からだ……?
 それにわざわざほんとーに魔力の鞭ださんでも……
 あたしは一抹の疑問を抱えながら、正面へ回り込み、ガウリイへのフォローへ廻ろうとしたあたしを遮る兵士を睨み付けた。

「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」
 この呪文なら鎧を着込んでいようが関係ない。兵士はあっさり倒れ込む。
 よしっ!これでガウリイのフォローに………
 すかさず走ろうとするあたしの後ろから風を切る音が聞こえてくる。
 隣に剣を振りかぶった兵士が居るが、そちらの懐へ、おもいっきしぶちかましをかける!
 振りかぶった状態で体当たりを食らった兵士は見事にバランスを崩し、剣も空を切る。
 剣とて、超近距離ならあまり大して役に経たない。
 あたしは体制を整え、再びガウリイの方へ走り寄ろうとすると……
 少しずつ間隔の開けた兵士ご一行様がそれを阻む。
 だぁぁぁぁぁぁっ!きりがないっ!
 向かってくる剣をくぐり抜け、あたしは後ろへ飛ぶ。
 かたっ……
 へ……?
 あたしは思いの外軽い着地音に一瞬驚いたが、兵士の剣が空を切る音で我に返る。
 それを何とか受け流し、蹴りを一発。
 まさか……
 ――いや、考えて見れば、何故この部屋にこんなに人数が居るのだろうか?
 そしてなんでわざわざ魔族までここにいたのか?
 あたし達を待ち伏せ……いや、違う。あたし達がこの部屋を選んだのは、全くの偶然である。
 予想など、つくはずもない。
 ならば――
 あたしは足下に呪文を解放する!
「振動弾(ダム・ブラス)!」
 どぐあぁぁぁぁっ!!
 ど派手な音が部屋に響くが、今はもう関係ない。
 土煙が収まり、術が当たったところを見下ろせば――
 やっぱり……
 そこには地下室が覗いていた。

「ガウリイ、アメリア!下へ!」
 あたしは一方的に言い放ち、そのむき出しになった穴へと飛び降りる。
 暗くて見えないが、僅かな光を反射し、キラキラ光る物体がいくつも並べられている。
 ともあれ、何があるのか確認する方が先決である。
 この部屋の厳重な警備の理由はおそらく……
 ここに、知られてはいけない何かが。連中にとって大事な何かが存在するのだろう。
「明かり(ライティング)」
 あたしの手のひらから生み出された光球は、あたしの意志に従い、ふわりと浮かび上がる。
「な――っ!?」
 どぐあぁぁぁぁんっ!
 おそらくアメリアの呪文だろう。少し右へ行ったところの天井が砕け散り、あたしの驚きの声をかき消した。
 そして二人の影――ガウリイとアメリアが続いて飛び降りてくる。
 だが――それを気にしている余裕はあたしにはなかった。
 先程僅かな光を反射させていた物体――クリスタルケース。
 中には――『人間』が目を閉じて浮かんでいた。
「なんです……?これは……」
 かすれた声でアメリアが言う。
 だが……答えられるわけがない。
 あたしは無言で辺りの様子を伺う。
 数は……百は越してるのだろうか。無機質に並べられている。
 培養液が光を反射し、どことなく不気味な色を生み出す。
「これは……」
 あたしはそこで立ち止まった。
 ゆっくりとそのケースへ歩み寄る。
 これは――いや、でも――
 間違いなかった。そこには――あの町の警備隊長、ジャグ=グルーガンの姿があった。
 どういうことだろうか……?
 まさか――
「っ!」
 あたしは隣に浮かんでいるクリスタルケースに目を移し、絶句した。
 何でこんな物が……?
 …………吐き気がする。
「どうしたんだ?リナ」
「ガウリイ……斬って」
 言って、あたしはそのケースを指差す。
「あ、ああ……」
 いまいち納得がいかないようだが、ガウリイはそちらの対象物を見ずに剣を振るう!
 が、その中の正体に気付いたガウリイは剣をクリスタルの破壊までで中の者を傷つけずに剣を止める。
「リナ……?」
 ……確かに……そこにはあたしの姿があった。
 あたしはとある合成獣おたくのことを思い出す。彼は言っていた。髪の毛一本でもコピー・ホムンクルスは作り出せると。そして……城での滞在期間の間、あたしは髪一本落としていないと断言できるかどうか。
 もちろん――答えはノーだった。
 だが――
「……あたしはここよ」
 ぎりっ……
 あたしは自然と奥歯を噛み締める。
 コピーであろうと何だろうと……あたし、リナ=インバースはただ一人である。
「とっととぶち壊すわよ、こんな所」
「――そうはいかん」
 ふとその声の方へと向くと赤目の石顔と操られた――いや、自我のない『コピー・ホムンクルス』の兵士達。
「まだ実験中でな。困る。
 そんなことをされちゃ。
 被験者も、まだ少ない」
「『被験者』……?」
 あたしの呟きに赤目の石顔はわざとらしく口を押さえる。
「おっと。これはいかん。しゃべりすぎたな。
 ついでにもう一つ口を滑らしておこう。ジャガード=コンフォートを探していたな」
 そして赤い目を細め、さも楽しそうにそいつは呟く。
「――俺が殺した」
 こいつっ!
「さてと……いろいろと喋りすぎてしまったが……
 まぁいい。死人にくちなし……こういう言葉があるしな」
 言って魔族は再びあの黒いボールを浮き上がらせる。
 まずいっ!こちらは上のように幅が広くない。避けきることは不可能。
 ならば――上――か。
 あたしはゆっくりと後ずさると視線を赤目の石顔に向けたまま、アメリアへと囁く。
「奴らの天井をぶち砕いて。脱出するわ」
 頷く代わりにアメリアは呪文の詠唱に入る。
 あたしはガウリイとアメリアの服の端を握りしめる。
「ま――恨むんならごたごたに首を突っ込んだ、自分の好奇心を――」
「振動弾(ダム・ブラス)!」
 どぐらぁぁぁぁあっ!
 調子に乗って、ぺらぺらしゃべり倒す赤目の石顔の言葉を遮り、アメリアが呪文を解放する!
 丁度奴とその後ろに控える兵士達の天井が砕け、下にいる奴らはまともに食らったはず!
 しかし、兵士達はともかく、魔族にこんな物理的攻撃が効かないのは先刻承知。
「翔封界(レイ・ウィング)!」
 三人はふわりと一瞬浮かび上がると、あたしの術の制御に従い、一気に加速する!
 めくらましと障害物で相手は反応が遅れる。
 あたし達は上へと飛び出した。
 天井――一階の床を飛び越え、着地するとあたし達は外へと飛び出る。
 その直後――
 こうっ!
 地下から光の噴水が吹き上げる!
 やっぱり反撃してきたか!おそらく赤目の石顔だろう。
 しかし、ここまで騒いだ以上、見つかるのは必至。戦うことより脱出あるのみ!
 あたしは急ぎ増幅の呪文を唱える。
 あたしの術が完成するのに長いことを感じ取ったアメリアはあたし達を掴んで浮遊(レビテーション)を展開する。
 アメリアがある程度上空に運んでくれた後、あたしはアメリアに一つ頷く。
 アメリアの浮遊が解除されるのと同時に――
「翔封界(レイ・ウィング)!」
 ぐぅんっ!
 増幅の術をかけられた風の結界は三人という重量をものともせずに一気に大空へと舞う。
 あたしは宿屋へと向かいながら、ちらりと横目で先程まで居た離れに目をやった。
 一体どういうつもりであんなものを……?
 虚空に浮かび上がる満月の月も疑問と嫌悪感は消してはくれなかった。

「……一体何があった?」
 夜中にたたき起こされたせいじゃないんだろうが、ゼルが不機嫌な声でそう尋ねた。
 あの後、もうすでに素性はばれているため、尾行を撒く必要はないので真っ直ぐ宿へと向かい、ゼル、レミナ、ゼロスをたたき起こして別の場所――城下町のはずれにある、金さえ出せば誰でも泊めてくれる宿屋の一室に集まって、とりあえず状況説明を求められていたところである。
「……忍び込んだ離れに魔族が居たわ。
 やはり勘違いじゃなかったってことね。
 まだ全てがわかった訳じゃないけど――わかったこともあるわ」
 あたしは自然と低い声で喋り出す。
「一つは――まだ全てを確認した訳じゃないけど、大会の優勝者のコピーを作っているという事」
「コピー?……コピー・ホムンクルスのことか」
 あたしはこくんとゼルの言葉に頷く。
「大会に優勝したくらいだから、皆ある程度の強さ、基礎体力はあるはずよ。
 それをおそらく兵士として使っているんでしょーね。あの城は」
「なんてことを……」
 レミナが青ざめる。
 確かにこのコピー・ホムンクルス、人権問題とかで未だに論争が繰り広げられている。そいつらを城の警備などに使用していたら、何かと騒がれ、問題視されるだろう。
 だから……優勝者は姿を消した。いや、消された――
「で、話を続ける前に――レミナ、あなたはもう村に帰りなさい」
「え……?」
 レミナはゆっくりとこちらへと顔を向ける。
「昨日までは――まだ魔族が絡んでいるってはっきりしてたわけじゃなかったから言えなかったけど……
 これ以上関わったら、本当に命に関わるわ」
 仲間達は何も言わない。
「でもまだ……っ!」
「――死んでるわ。あなたのお父さんは」
「……………っ!」
 瞳が驚愕の色に染まる。
 赤目の石顔ははっきりとあたしに言った。ジャガード=コンフォートは俺が殺した、と。
 あの場合で、魔族が嘘を付く理由は見あたらない。
 しかし、ある程度は覚悟をしていたのか、レミナは気丈にもこちらへと視線を戻す。
「だけど……!」
「――ダメよ。帰りなさい」
 あたしは皆まで言わせずきつい口調で言った。
「あたし達はこれからあなたを護りながら戦う余裕はないわ。魔族が絡んできたとなると。
 殺されても構わない――何て言ったら、殴るわよ。あたし」
 あたしは出来るだけ冷たく言い放つ。
 レミナは沈黙する。
「あなたには、帰りを待っている人が居るわ。お母さんがまだ居るんでしょう?医者の所に」
 重傷を負って、それでもレミナのことを待って――
 彼女には、帰りを待つ人が居るのだ。そして、彼女を必要としている人が。
 死なすわけにはいかない。
「……わかったわ」
 彼女はくるりと背を向けて、部屋を後にした。
 震えた声だけが、この部屋に残る――
 はぁぁ……あたしは溜息をついた。
「リナさん……」
 心配そうに言うアメリアにあたしは微笑んだ。
「大丈夫よ。彼女なら。
 大して秘密を知っていなければ――知ろうとしなければ、奴らも殺さないみたいだから」
「いえ……そうじゃなくて……」
 アメリアは痛々しげにあたしを見る。
 ああ……そっか。
 『あたし』を心配してくれてんだ。
「あたしも平気よ。ありがとね。
 さてっと――」
 あたしは努めて明るい声を絞り出す。
「ゼロス、この事は知ってた?コピーのこと」
「さあ?どうでしょうねぇ」
 突然不意にかけた声もゼロスはにこにこしながらかわすだけだった。
 ちっ……ひっかからんか……
「コピーのことで、もっと重要なことがあっただろ」
 ガウリイが、暗闇に半分だけ明かりに照らされた顔で言ってくる。
 あたしは少しの間を置いてから話し出した。
 あたしのコピー・ホムンクルスがあったことを。
「リナさんのコピー・ホムンクルス?変わった趣味ですねー」
 違うだろ……ゼロス……
「その点については俺も同感だ」
 珍しく意見が合致するゼロスとゼル。
 あんたらなぁ……人がせっかくシリアスやってるときに……
「何ひとごとのよーに言ってんのよ。ゼル。
 見かけはしなかったけど……あんたのコピーも作ってるわよ。あの分じゃ」
「……たぶん、ガウリイさんもでしょうね」
 アメリアの言葉にあたしは頷いた。
「でも確かコピーって記憶や経験は写せないんだろ?別に戦って負ける訳じゃあ……」
 珍しく記憶しているガウリイが言う。
「そこなのよねー。問題は。
 確かにあたし達のコピーなら、存在能力はかなりのもんでしょーけど、確かに苦戦はしないでしょーね。
 兵士達も、力とかはあったけど、戦いの駆け引きや、剣裁きも全く駄目だったし、アレじゃあどんなに強い人間集めようがあたし達にはかなわない。
 ま、ある程度教え込めば別でしょうけど、あたし達を越えるように指導できる人間なんか居ないでしょ。あそこには」
「人間には――な」
 ゼルが意味ありげに呟く。
 そうか。確かに魔族が教え込めばなんとかならないかも知れない。だけど――
「なんで魔族がわざわざそんなことをするんでしょう?」
 そーなのである。
 魔族には何のメリットもないはずである。
 それに――大会が始まった頃から鍛えればもうちょっとまともな兵が出来そーなもんであるのだが……
 ふぅむ…… 
「魔族がわざわざコピーの制作に携わっている理由……か。
 ようはまだ謎のままって事か」
 いや……そーだけど……
 いやにさっぱりしてるゼルが席を立つ。
「俺はもう寝る。全ては明日からだな」
「あたし達と違って自分は寝てたくせに……」
 あたしの呟きが聞こえたか、ゼルはちらりとこちらを振り向いた。
「確かにリナ達と違って、夕方寝てないからな」
 そりゃそーだけど……まぁ、考えても仕方のないことなのかも知れない。
「じゃ、俺も寝るかな」
「あ、わたしも寝ます」
 次々に席を立つガウリイ、アメリア。
 とことんのんきな奴ら……
 二人が扉を閉めて、あたしとゼロスだけが取り残される。
「リナさんは寝ないんですか?」
「……あんたが居るから寝れないんでしょーが」
 あたしはじろりとゼロスを睨み付ける。
「やだなぁ、別に襲ったりなんかしませんってば。
 保証は出来ませんけど」
「あたしが笑っているうちに出ていったほーが良いわよ?ゼロス(はあと)」
 言って、右手に魔力の球を握っていたり何かする。
「……失礼します……」
 何故かゼロスは顔に青い線を走らせて、外へと出ていくのだった。

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7899レアードの狂乱 三 B白いウサギ E-mail 9/23-02:32
記事番号7892へのコメント


「おはよー……」
 あたしは目を擦りながら、1階の食堂へと姿を現した。
 すでに皆集まっている。
「おはようございます。
 リナさん、早速で悪いんですけど……これ見て下さい」
 アメリアはそう言って、一枚の紙切れをあたしに手渡した。
 あくびをかみ殺しながら、そちらの方へと目をやる。
 ……手配書……?
 大きなその文字の下にはでかでかとあたし、ガウリイ、ゼル、アメリアの四人の似顔絵が書いてある。
 ――名前はアメリアだけ偽名だったが。
「乱暴ねー。これであたし達追いつめてるつもりかしら」
「少なくともあちらはそのつもりのようだな」
 コーヒーを頼んであったのだろう。ゼルは湯気が立ったコーヒーを片手に言ってくる。
「何落ちついてんですかっ!?二人ともっ!?」
 アメリアはバンッと手をテーブルに叩きつける。
 あたしはそれに構わずウェイトレスに軽く注文すると席に着いた。
「なにって……どーせ国を敵に回してるんだからこれぐらいはするでしょーし、それぐらいは予想してたから宿屋を移したんじゃない」
「ですが……ずいぶん思い切ったことをしますねぇ。レアード国も」
 さも当然のようにあたし達と一緒にテーブルについているゼロスが呟く。
「どういうことだ?」
 ガウリイが何故かあたしの方を向いて問いかける。
 あたしは頭を掻きながら、
「あー……つまりね。
 ガウリイ、こういう手配をかけられて、あなた逃げる?」
「いや……手配を解こうと動くが……」
「そーね。元々放っておく気はなかったけど、こうなった以上、ますますそういうわけにはいかないでしょう?」
 そしてあたしはガウリイの方を向いて不敵に笑う。
「あれは、あたし達への宣戦布告――諸刃の刃よ」
 あたしは運ばれてきたお肉を、フォークでざくっと刺した。
「だからあれで追いつめてるつもりかと言ったのか?」
 ガウリイが断りもなくあたしのお肉の一切れをフォークで奪う。
 うぉのれいっ!何食わぬ顔をしてっ!
「そーよ」
 あたしは言って、白々しくガウリイの魚フライを奪い取る。 
「ふーん」
 言って、ガウリイはまたもやあたしのサラダを摘む。
 ……………………………
「………んっふっふっふ。朝からいー度胸してるじゃない。ガウリイっ!」
「別にいいじゃないか、肉やサラダの一つや二つ」
「……と、言うより、朝からそんなカロリーの高いものよく食べられますね、二人とも……」
 ゆっくりとフォークやナイフの握りしめる力を強くするあたしとガウリイを見ながら、アメリアが呟く。
 あたしはそれを無視し、しばしガウリイと睨み合い――
「リナさん、チキンが来ましたよ」
 いつの間にかゼロスがウェイトレスから受け取った骨付きチキンを、テーブルの中央に置く。
 何て所に置くんだゼロスっ!?
 ガウリイのフォークは真っ直ぐチキンへと延びるがそれをあたしはナイフをフォークとフォークの間に差し込んでそれを防ぐ。
 ぐ……っ!
 さすがにガウリイの方が力が強いか、あたしのナイフはゆっくりと押し戻される。
「ゼロス、お前わざとあんな所にチキン置いただろ?」
「やだなぁ、ゼルガディスさん。僕はただ朝から面白い物が見れると思って……」
「つまり、わざとですよね」
 アメリアがすかさず突っ込む。
「……まぁ、そういうことになりますか」
 ゼロスは落ち着いたよう腕深くイスに腰掛ける。
「後で……覚えておきなさいよゼロス……」
「おや、聞こえましたか」
 こんな近くで聞こえないわけでないでしょーがっ!
 つい叫ぼうとした一瞬に力が抜ける。
 その一瞬の隙をついてガウリイのフォークが勢い良くチキンへと延びる!
 しまっ――
「ガウリイさん、女性から物奪うんですか?」
 ぴくりっ
 ガウリイが一瞬だけ動揺する。
 今だっ!
 あたしはチキンを空いた手でつかみ取る!
「ああっ!俺のチキンっ!」
「あたしのでしょーがっ!ないすふぉろーゼロス♪」
 言って、あたしはチキンを口にほおばる。
 そう言えば依然、ガウリイはおばあさんの遺言だかなんだかに、『女子供には優しくしろ』って言われてたんだっけ。食事時はそんな感じ全然見せないけど……
「聞こえてしまった以上、後が怖いですからね。
 リナさんのご機嫌を取っておかないと」
「賢明な判断だな」
 アメリア、ゼルは二人でうんうん頷く。
「いや……そうはっきり言われますと……」
 頬を掻きながら、ゼロスは呟いた。
「ともあれ、今後の確認をするわよ」
 あたしはチキンを飲み込んで、声を出す。
「これから城に正面から乗り込んで――魔族を見かけたらとりあえずぶち倒す!」
「……通り魔みたいですね……」
 隣でゼロスが呟くが、無視である。
「で、手配をかけた以上、国王もグルだろーし、あんな研究施設、国王が知らないわけないわ。
 つまり――魔族を片っ端からぶち倒し、国王をとっ捕まえて全て白状させる!
 ついでに、怪しげな施設見つけたら証拠になりそーなもの以外ぶち壊すってのがベストね」
「……ずいぶん乱暴な手段ですね……正面から乗り込むことと良い……」
 ゼロスはなおも呟くが、正面から突破するのは、もちろん相手にこちらの存在がばれているからである。
 夜だから、裏だからと言って、相手は警備を緩めないだろう。
 ならば――広くてわかりやすい道を選ぶ。それだけである。
「さて――お腹も一杯になったし――
 行くわよっ!国王をぶち倒しにっ!」
『おうっ!』
 あたし達は薄暗い宿屋を後にした。

 あたしはにこにこしながら話しかけた。
「えっとぉ……ちょっと用事があるんですけど……」
 隣から声かけられ、振り向く兵士達の表情が凍りつく。
「……通してくれません?」
 あたしは構わず正門の門番達ににこにこ話しかける。
「貴様っ!」
 兵士達は腰の剣に手を伸ばし――
 そのまま前へと倒れ込む。
 あたしが注意を引いているうちに、ガウリイとゼルが兵士の首筋に手刀を入れたのだ。
「いやー悪いわねー。通らせてくれて助かるわ」
 あたしは倒れた兵士の肩をぱんぱん叩き、軽口を叩く。
 そして後ろでアメリアが呪文を解放する。
「振動弾(ダム・ブラス)!」
 どぐあぁらぁぁぁぁんっ!
 正門は粉々に砕け散り、でっけぇ穴を作り出す。
 あたし達はこくりと頷いて、その穴を駆け抜けた。
 正門から本殿へは真っ直ぐである。
 相手が気付くより早くとっとと中に入り込むのが上策!
 辺りを見渡しながらもスピードを緩めずに突っ込んでいく。
 しかし、おかしい。警備の数が少ないよーな……
「リナさん、開けますよっ!」
 アメリアの声に振り向き、今度はゼルが呪文を唱えているようだった。
 まさかとは思うが……念には念を。あたしは呪文を唱え出す。
「振動弾(ダム・ブラス)!」
 どぐあがらがたぁぁぁんっ!
 先程よりもど派手な音をたてて、扉が砕け散る!
 そこであたしはすかさずその大きな穴に向かって呪文を解放する!
「魔風(ディム・ウィン)!」
 ぐおうっ!
 鈍い音をたてて、風が辺りを振動させ、真っ直ぐ部屋の中へと吸い込まれていく。
 中で生まれる動揺の気配っ!
 やっぱり中で待ち伏せしてたかっ!
 恐らく飛び道具か、長距離用の魔法を唱えていたんであろうが、今の強風で吹き散らされ、運が悪けりゃ自分たちの攻撃で自滅したはずっ!
 強風が収まるのを確認してからあたし達は中へと突っ込む。
 ざっと見渡すとそこには数十人の兵士と魔道師の姿!
「ガウリイ、ゼルは突破口を!あたしとアメリアは援護!ゼロスは害のない程度にうろうろする!」
『おうっ!』
 ガウリイ、ゼルが剣を抜き放ち、敵の真っ直中に切り込んでいく。
「……うろうろって……リナさん……」
 何やらゼロスは不満げに呟いているが、こちらは気にしている暇はない。
 あたしは呪文を唱え始める。
「なるほどな。お前が主格か」
 ――!?――
 後ろの声に振り向くこともせずにあたしは間合いを取る。
 呪文は中断したが――
「不意討ちなど卑怯なことはせん。俺個人はな」
 言って、抜き身の剣を持ちながらひょいと肩をすくめる。
「立派な騎士道精神って奴かしら?
 ――ジャグ=グルーガンのコピーさん」
 ぴくりと眉を動かすジャグ。
 もしかしたら生き残ったオリジナルかとも思ったのだが、かまかけは図星だったようである。
「そうか……知ってしまったか……
 なおのこと、俺はお前らを倒さなくてはならん」
 ちらりとあたしは皆の様子を見る。
 それなりに時間はかかるだろうが、とりあえず問題なさそーである。
「――聞きたいことがあるわ」
「あるだろうな。そりゃあ沢山。
 まず、ジャガード=コンフォートがどうしているのか。
 死んでいる。彼はコピーの魔術指導者だったが……報酬の上限を望んでな。
 危険有りと見なされ殺害された」
 言って、ジャグは足を止める。
「まだ他にもあるわ。コピーは自我を持っていないはずよ。
 だけどあなたは――操られているとかそんな風には見えないわ。
 あなたは――何者――?」
 しかし、その問いかけにジャグは寂しそうな表情をして、目を閉じただけだった。
 攻撃するチャンスである。
 だが――出来なかった。
「……今は答える気はない。言ったところで……何も変わらん」
 静かにジャグは呟いた。
 何やら複雑な事情を抱えているのだろう。
「そしてもう一つ。
 あなたは知ってて――やっているの?
 大会優勝者が口封じのために殺されているという事を」
「――そうだな。知らないと言えば嘘になる」
 ジャグは静かにそう言って、あたしから間合いを取る。
「もう一つ。この城に魔族が居ることは?」
「――知らないな。
 例えそうだとしても――この国を俺は護り続ける。
 魔族からであろうと――神からであろうと」
 ジャグは静かに剣を構えた。
 何故ここまでこの国に尽くすのか。疑問は大きくなるばかりである。
「何にせよ――俺はこの国を護るためだけにいる。
 それだけが――事実だ」
「そう……なら――戦うしかないわね」
 あたしは腰の剣を抜き放ち、呪文を唱え始めた。
 ジャグは剣を再び構え直す。そしてそのままこちらへと間合いを詰める!
 あたしはもちろん後ろへと飛ぶ。
 ガウリイに適わなかったとはいえ、その実力を見抜くほどの腕である。あたしの剣の腕では太刀打ちできないだろう。
 あたしは呪文を解き放つ!
「爆裂陣(メガ・ブランド)!」
 術者を起点に破門状に大地を吹き上げる術である。
 これをかわすのは難しい。
 もちろん広範囲の術であるのだが、効果範囲内にいるのはジャグとゼロスのみである。
 ――全く問題なしっ!
 あたしは心の中で強く叫ぶ。
 土砂が真っ直ぐジャグの方へと突き進み、視界が土砂で埋め尽くされる。
 が、嫌な予感を覚え、あたしは大きく後ずさる。
「――!」
 ふと黒い影が上空に飛んだと思うと、そちらは真っ直ぐこちらへと飛んでくる。
 なるほど!避けられないまでもダメージを最小限に抑えたか!
 なかなかやる!
 ――などと感心している場合ではないっ!
 ジャグはしばし手前で着地すると、一気に間合いを詰める。
 次の呪文は――間に合わない!
 あたしは仕方なく腰を低くし、剣を構える。
 真っ直ぐに振り下ろされた剣を何とか受けとめる。が、重すぎるっ!
 あたしはすでに一発の剣撃で腕がしびれてしまった。
 やはり剣では適いそーもない。
 あたしは急ぎ呪文を唱え続ける。剣を受けながらなので集中力がいるが、出来ないなどとは言ってられない!
 しかし、ジャグは受けとめられたのを確認するやいなやさらに間合いを詰め、自分の剣をあたしの剣を支点にしてくるりと下へ滑り込ませる!
 うげげっ!
 そう思ったとたん、あたしの剣はジャグの剣に跳ね上げられていた。
 放さなければ身体ごと宙に浮かされ、無防備になったところをばっさりやられていただろう。
 とは言え、危険なのは変わらない!
 腕が伸びきって無防備になったあたしの懐へとジャグは横薙ぎに剣を切り払う!
 間に合わないかっ!?
 あたしは身をよじりながら、術を解放する!
 しかし相手の方が速い!
「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」
 精神力を奪う光の槍が相手の背中に出現したのと、ジャグの刀があたしの腹を剣で薙ぐのは、全く同じ瞬間だった――

「リナっ!」
 ガウリイが戦いながらこちらのことを気にかけていてくれたのだろう。
 あたしが倒れ込むのと同時にこちらへと駆け寄ってくる。
「アメリア!呪文だっ!」
 敵を片付けたゼルが、アメリアへと叫ぶ。
 慌ててアメリアが今にも泣き出さんばかりの顔でこちらへと駆け寄ってくる。
「リナっ!アメリアが今呪文を唱えてるっ!もう少しの辛抱だっ!」
 ガウリイが髪を振り乱しながらあたしの身体を抱き起こす。
 が――
「何を辛抱すんのよ。あたしが」
 あたしはぱたぱたと手を振りながらそう言った。
『へ……?』
 三人は同時に間抜けな声を挙げる。
 あたしは溜息をつきながら、マントの汚れを払いながら立ち上がった。
「あの……リナさん、お腹は……?」
「空いてないわよ」
 あたしはわざと間違った答えを言ってみる。
「そーじゃないでしょうっ!
 無事なんですかっ!?」
 無事かどーかって……みりゃわかるでしょーが。
「ま、ちょっとお腹がずきずきするけど……大したことないわよ。ちょっと休めばすぐ治るわ」
 言って、あたしの呪文の一撃を受け、同じくへたり込んでいるジャグの方へと見る。
「少し手加減してくれたんでしょう?」
「まぁ……本当に少しだが……」
 完璧に疲れ切っているジャグは自嘲しながら呟いた。
 こちらはまともに烈閃槍(エルメキア・ランス)の一撃を受けたのだ。
「それにしても……本当に運がいいですねぇ、リナさん」
「まーね。狙ってやったこととは言え……こうもうまくいくとは思わなかったわ。あはははは」
 やれやれとゼロスはこちらへと歩み寄る。
「『あはははは』じゃないですよっ!何で無事なんですかっ!?」
 あたしの肩を掴んでがくがく振るアメリア。
 だぁぁぁぁぁっ!これ結構ダメージ大きいんだぞっ!
 あたしは何とかアメリアの揺さぶりが収まった後、一同を見渡す。
 しばしの間を置いて――一つ咳払い。
「……お腹のタリスマンで受けとめちった。てへっ」
 ぴきぃぃぃぃんっ!
 一瞬にして部屋の中が凍りつく。
 おー……皆も凍りついとるなー…… 
 しかし、程なくふるふると皆震え出すと――
『何考えてんだ(ですか)っ!?』
 一斉に怒鳴り出す。
「いや……考えてるも何も……剣先があたしの腹のほう狙ってたのが見えて、そのちょっと横にタリスマンが見えたんだけど……そーいや昔、火炎球(ファイヤー・ボール)手の中でぶっ放したときも傷一つついてなかったなーって……んじゃなんとかなるだろうと思って、身をよじってみたら、運良く狙い通りに剣が当たってくれた――そういうことよ」
「『そういうことよ』じゃないだろうっ!
 何て無茶なことをするんだっ!」
 ガウリイが叱りつけるが、あたしは困った顔をするのみである。
 ……だって他に手が思いつかなかったんだから仕方ないじゃない……
 などと言ったところで、さらに反撃を食らいそうなのでやめておく。
「ま、まーおしかりは後でまとめて引き受けるとして――ジャグ、あなた一人になったけどどうする?」
 しかし、ジャグはあたしの思惑とは違い、なんとか身を起こす。
 何て精神力してるんだこいつっ!
「もちろん――戦うさ。
 俺が生きているのは城を守るためだからな」
「ほう――立派な心がけだが――長生きは出来んぞ」
 ゼルは目を細めながらそう言った。
 確かにこれでジャグは仲間はもう居ない。あたし達と戦っても、万に一つも勝ち目はない。
「長生きをするために生きてたんじゃないさ――
 少なくとも――生きる理由を失ってまで生き延びても嬉しくない」
 そう言って再び自嘲的な笑みを浮かべる。
 ――生きる――理由――?
「さっき言われていた質問を返そう。
 俺の正体を聞いていたな」
 ジャグがそう言ってこちらを見るで、あたしは頷いた。
「――俺はとうの昔に死んでいる、死人だ」
 死人――?ゴースト?
 いや、そうは見えない。取り憑いているなら、それらしい雰囲気があるはずである。それがない。
 なら一体どういう……
「意識だけこのジャグ=グルーガンの中に強引に入れ込んだ存在。
 ――それが俺だ」
「そんなこと出来るわけが……」
 ゼルが言うが、ジャグがそれを遮る。
「だが、事実だ。
 コピー・ホムンクルスで優秀な存在能力を秘めたものを増やせても、しょせんそれは基礎体力、魔力など基本的な力のみ。
 だが――そいつに別に人格を入れ込んでやれば話は別だ。
 コピー・ホムンクルスは知っての通り、自我がない。
 それほど問題はないさ。理論上はな。
 ――まぁ、それでも新しい身体に拒絶反応を示し去った仲間もいくらかいたが……」
 確かに、理論上なら問題ない。だが――そんなことは不可能なのである。
 ――人間には。
「気が付けば実験台にされていて――目覚めればこの姿だ。
 その時、説明をしていた魔道師が居たが……殆ど耳に入っちゃいなかった。
 ……目の前に、元の俺の姿が炎で焼かれていた……
 そして『もう元には戻れない。お前はこの国を護るためだけに生まれ変わったんだ』――とな」
 あたしは動けなかった。
 なんて……ことを……
「その時から――俺が生きる理由はただ一つしかないんだよ。
 間違っていても――誰かを傷つけても――もう気にしない」
 再びよろよろとジャグは剣を構える。
 しかし構え終わると、そのよろめきはぴたりと止まる。
 彼の異常なほどの精神力は――追いつめられた人間が生み出すものなのだろう。
「だが――もう失いたくない。
 俺に残ってるのは生きる理由、ただ一つだからな」
 間違っている。だがもちろんそれは自覚しているのだろう。
 生きる理由を護るために――彼は死を選ぶ――
「生きる理由なら――また作ればいいじゃない。
 あなたはただ自分を殺したものから与えられた理由にすがっているだけよっ!
 それじゃあただの相手の思うつぼ――」
「わかっているっ!
 ――わかっているよ。俺がただ踊らされているだけという事も――
 だけど、もう誰かが糸を動かさないと、俺は動けない……生きていけないんだ。
 俺はもうすでに人間じゃない」
 あたしは今度ははっきりと言った。迷いは少しもない。
「あなたは――人間よ。
 自分の意志があり――誇りも捨てきってはいないわ」
「何を馬鹿な……」
「それじゃあ聞くけどっ!
 不意討ちをしないのは何故!?あたしへの剣撃を手加減したのは何故!?」
 ジャグは唇を強くかみしめる。
「しかし……!」
「生きる理由なんて、一つじゃないわよ。
 ……とは言っても、あなたの気持ちが全て分かるわけじゃないわ、あたしは。
 だから――自分の道は自分で見つけなさい。
 あたしに言えることは――それだけよ」
 言って、あたしは拳を強く握りしめる。
 そうなのだ。あたしに言えることはこれしか――出来ることはこれしかないのだ。
 何とかするのは――出来るのは彼自身しか居ないのだ。
 彼は身体を震わせて、うずくまった。戦意は消えている。
 あたしは振り向きもせずに、その場を後にした。

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7900レアードの狂乱 四 A白いウサギ E-mail 9/23-02:38
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四、 レアードの 狂気の宴 終わる時


「――急ぐわよ」
 一同があたしの言葉に大きく頷いた。
 なんとなく解ってきたのだ。この事件の仕組みが。
 そう……おそらく、この事件は、ずっと前から始まっていたのだろう。
 火種は……誰かに発見され――それを真の炎と変えられた。
 技術は幸福と不幸を。快適と混乱を作り出す。
 それはいつの時代も同じである。
 混乱と――恐怖――
 狂気の灼炎に――
 ――この国は飲み込まれた――
 誰が黒幕かはっきりとはわかっていないが――阻止しなければならないことはわかっていた。
 あたしは先へと続く白銀の扉を勢いよく開ける。
 ジャグの言葉であたしは思い出していた。
 コピー・ホムンクルスの特性――
 魔族という存在の仕方――
 ヒントは――皮肉にもあたしの戦いの中にも記されていた。
「誰もいませんね……」
「何もな」
 アメリアの言葉に訂正を入れるゼル。
 いつ魔族が出てきてもおかしくないのである。人だけを警戒すれば良いというものではない。
 しかし妙な話である。
 いつかも来た、ガラスの通路。
 まっすぐで狭い道であり、必ず通らなくてはならない通路で、何の待ち伏せもないのは妙な話だった。
「なんにしても、行くしかないんだろ?」
 あたしはガウリイの言葉に頷いた。
「振動弾(ダム・ブラス)!」
 本日もう何度目かは忘れたが、あたしの呪文がけたたましい音をたてて、扉を破壊する。
 続けざまにゼルが呪文を解放する。
「魔風(ディム・ウィン)!」
 ひゅごうっ!
 先程と同じ戦法だが、何の気配もない。
 ここでずっと様子を伺っていても仕方ない。あたし達はゆっくりとその中へと入り込んだ。
「……どうかしたのか」
 先へ進む仲間達のうちのゼルが、立ち止まっているあたしを振り返る。
「……変だと思って……」
 あたしは言葉を濁す。何かが違う。何かが間違っている。
 はっきりと指摘できるものはない。
 ただ――嫌な予感だけが――
 ぶぁっ!
 瞬間、ゼルが闇に飲まれる。
 いや違う。これは――部屋全体が……?
 あたしは自分自身の腕すらすでに見えなくなっていた。
 先程仲間達が居たところで生まれる動揺の気配。
 黒霧炎(ダーク・ミスト)かっ!?
 視界を悪くしてからの広範囲への呪文攻撃でもする気だろうか。
 あたしは呪文を唱えながら、皆の元へと歩み寄る。
 とりあえず合流して――
 ぐぅぅんっ!
 しまったっ!
 あたしは胸中で叫んだ。
 重力の上昇とも、空気の急激な変化とも違う。
 急激な違和感が体中に襲い来る。
 ――結界――
 やられた……戦力の分断が奴らの目的だったってわけか……
 見渡すと、そこには赤、青、黄、緑、様々な色を水面に垂らし、軽く混ぜたような色の壁が広がっていた。
 水面が制止しないように、色は常に蠢く。
 あたしの他に、『誰』もいない。
「――ようこそ、我らが城へ」
 そいつはむしろ優雅にあたしへと会釈した。
「まあね。
 こんなご丁寧な招待状送られたら、来ないわけいかないでしょう」
 あたしは手配書の紙切れを相手の方へと舞い散らす。
 そいつは赤い目を細め、薄い笑みを浮かべる。
「昨夜は大したおもてなしもできなかったからな」
 赤目の石顔はそう言ってわざとらしく額に手を当てる。
「あら、別に気にしなくてもいーのよ。
 あたしは一向に構わないのに」
 あたしもわざとらしくそう言うが、いつもでもこんな馬鹿のしあいをしても始まらない。
 あたしは軽く空気を吸った。
「あなたが、国王と契約を交わした魔族ね」
 魔族が面白そうにあたしの顔を見つめる。
「人間ごときに真相をばらすと不利になるかしら?」
 あたしは挑発の言葉を投げかける。
 詳しい説明は省くが、魔族にこの挑発は乗らなくてはいけない決まりがある。
「いいだろう――
 その通りだ。
 国王とは契約を交わしている」
 赤目の石顔はひょいと肩をすくめてみせる。
「よくわかったな」
 あたしの勝手なかまかけであるが、どうやら思った通りだったようである。
 この国の国王がいくらなんでもあんな大々的な研究機関を知らないわけはないし、国王を通さずに手配書なんぞ出せるわけはない。
 ならば直接魔族との関わりがあるのだろう。よって、人間を軽く見ている魔族と手を組む以上、契約という考えが一番単純だったのだが――
 ……国王が魔族と契約……ねぇ……
 とことん腐った奴である。
 恐らく目的はコピー・ホムンクルスを利用し軍事を増強させ、他国との戦争。
 ここは沿岸諸国の筆頭となろうとしたのか。もしくはさらに他の国へと手を伸ばすか。
 つくづくお偉いさんは支配欲が強いよーである。
「ま、それはそれとして――被験者である魔族ってのは一体どれくらい居るのかしら?」
 あたしの言葉に赤目の石顔は少し驚いたような仕草を見せる。
「つくづく勘のいい人間だな。昨夜のケースを見ただけでそれを?」
「ジャグ=グルーガンの話を聞いてね。
 もしかしたら――とは思っていたのよ」
 彼は自我のないクローンに自分の自我を移されたと言っていた。
 つまり、精神世界(アストラル・サイド)から人間の自我を分断させ、他の媒介に移し入れることとなる。
 人間には――そんなことは不可能なのである。
 だが、それが魔族となれば、話は別となる。
 精神世界(アストラル・サイド)に身を置く彼らならやって出来ないことはないだろう。
 ただし、ここで一つ疑問が残る。
 何故魔族がそんなことをわざわざするのか。
 あたしはこう考えていた。
 それと平行して自分たちの益となる研究をしていたのではないか――と。
 コピー・ホムンクルスの特性。
 魔族の存在の在り方。
 この二つの事実を組み合わせると表れていくるのが――
「――コピー・ホムンクルスへの魔族の憑依――
 ちょっと前に、自我の崩壊した人間に下級魔族を憑依させるなんてことがあったのよ。
 ま、それでもしかしたらとは思っていたんだけど……ね」
 レッサー・デーモンやブラス・デーモンかなんかは意思の低い小動物に下級魔族が憑依することでこの世界へ実体化を果たす。
 どこぞの腐った国家は、意志の強い人間に強引に下級魔族を憑依させ、人魔を作り出した。
 そしてそれを逆手に取るように、とある魔族は自我の崩壊した人間に下級魔族を憑依させることで魔族を作り出した。
 但し、それには大きく問題があったのだ。
 憑依した人間の資質に左右される――と。
 だが、大会を開けば資質の良い人間が集まる。
 そして優勝者のコピーを作り出す。
 優勝者のコピーならばある程度の資質はもっているのだろう。
 おまけに自我はもとよりないと、都合の良いことばかりである。
「――お前は何者だ――?」
 赤目の石顔はあたしを見つめながら静かにそう呟いた。
「大会優勝者の名前も知らないの?
 ――リナ=インバース。
 これからこのふざけた計画を潰す者よ」
 あたしは不敵に笑い、油断無く魔族との間合いを計る。
「名前は知っている。
 だが――後者は初耳だな」
 どーやらあたしの詳しいことは知らないよーである。
 はっきし言って自慢したくないことだが、あたしは魔族うちでもかなりの有名人である。
 特に高位に行けば高位に行くほど、知らない者は居ないだろう。
 なら、この赤目の石顔、大して上位の魔族ではないと言うことなのだろうが――
 魔族相手に油断は禁物である。
 あたしは軽く呼吸を整え――呪文を唱え始める。
「始める前に言っておこう。
 仲間達が心配ではないのか?」
 意味ありげに赤目の石顔がそう言った。
 あたしは呪文詠唱中のため、口では答えず、不敵な笑みで答える。
 どーせ、強引に憑依した魔族達と戦っているんだろーけど……そんなのであっさり死ぬよーな奴らじゃ決してない。
 たとえ苦戦していたとしても、こいつを倒さなきゃ状況に変化はないのだ。
 だから……あたしは迷わず呪文を解放する。
「覇王雷撃陣(ダイナスト・ブラス)!」
 セオリー無視のいきなし大技っ!
 対象の足下に五紡星を出現させ、稲妻を走らせる術である。これを食らえば下級はもちろん、中級あたりでも痛いはずっ!
 ただし――
 赤目の石顔は慌ててその場を離れ、対象を失った雷は辺りを嘗め回すのみ。
 ――当たればだけど。
 くっそー、油断している内にとっとと沈めようと思ったのにっ!
 赤目の石顔は体制を整えると、辺りに黒いボールを出現させる。
 ふわふわ漂ったボールが急にぴたりと止まると――こちらに向かって直進する!
 うげげっ! 
 あたしは慌ててその場を大きく飛んで、右にかわす。
 しゅぼぼぼっ!
 黒い塊はこのわけのわからない空間の床に突き刺さり、黒い煙とも塵ともつかないものを吹き上げた。
 ……避けるしかないな……こりゃ……
 あたしはその黒い塵を見ながら心の中で呟いた。
 そこらに転がっている剣とは言え、あっさり塵と化す黒い塊を受けとめてみる気など更々ない。
 幸い、連打は出来ないようで、今度は距離を詰めてくる赤目の――って、悠長に解説している場合じゃないっ!
 どう攻撃してくるにせよ、あたしには近距離での魔族へとの有効な攻撃パターンは極端に少ない。
 と、いうより、物理攻撃が全く効かない相手に接近戦なんぞやってられるかっ!
 あたしは迷わずダッシュで逃げだし――
 ふと軽いめまいが起こる。
 なんとかすぐに立て直したが、魔族相手にこのスキは致命的。
 後ろで生まれる冷たい感覚。
 あたしは振り向きもせずに、バランスを崩したのを利用して、そのまま力の向きを上手く流し、横へと転がる。
 ぼひゅぅっ!
 あたしが今し方まで居たところに再び黒い煙が舞い上がる。
 再びあたしは体制を立て直し、赤目の石眼を真っ向から見据える。
 これは……思ったよりやっかいである。
 奴の能力が――ではない。
 この空間が、である。
 昔、雪山で遭難し、木も、空も、土も何も見えなくなった時、吹雪に遭遇し距離感も方向も全く掴めなくなると言う話を聞いたことがあるが――恐らく、これも同じ類のものなのだろう。
 先程も言ったとは思うが、何しろ見渡す限りが水に色彩を無造作に浮かべたよーな景色(?)なのである。
 足場の位置も何もあったもんじゃない。
 壁で区切られている空間なのか、それともそんなもんは全くないのか、それすら掴めない。
 さっきのめまいのような感覚も、実はそれが原因である。
 ……言わなくてもわかってるとは思うが、純魔族である赤目の石眼(もぉ名前聞く気も起きない)にはそんなもんは関係ない。
「なるほど……ね」
「ほう……?」
 あたしの言葉に赤目の石顔は面白そーな声をあげる。
 何が『なるほど』なのかはこれこそ言わなくてもわかるだろう。
 単なるハッタリである。
 とりあえず意味ありげな言葉を呟いて相手の気を殺ぎ、よしんば精神的プレッシャーを与えるっ!
 これぞ戦いのじょーしきっ!
 あたしは赤目の石顔だけに集中して、意識を向ける。
 実はこれもただ単に方向感覚失わないためだったりするのだが……別に気にすることではないだろう。
 ともあれ、この空間で戦うのは不利以外の何物でもない。
 とっとと奴を沈めるか、もしくはここから脱出するか――
「――行くぞ」
 赤目の石顔はご丁寧にもそう宣言し、再び自分の周りの虚空に黒い球を出現させる。
 しかし、あたしに向かって放たれる前に、あたしは呪文を解放する!
「火炎球(ファイヤー・ボール)!」
 今までただ次の手を考えていただけではない。
 あたしは右手の平に生まれた灼炎の球を赤目の石眼へと投げつけるっ!
 ぐおうぅっ!
 炎の球は、うなり声をあげて赤目の石顔へと突き進む!
「馬鹿めっ!そんな術が通用するかっ!」
 言って、赤目の石眼は構わず闇の球体を打ち出した!
 魔族に精霊魔術は通用しない――が、馬鹿はそっちである。
 そんなことは百も承知!
 あたしは多数の闇の球体と火炎球が交差する瞬間、指を弾いた。
「ブレイク!」
「な――!?」
 ぶぐあらぁぁぁぁぁんっ!!
 火炎球はあたしの任意の位置で爆発、四散する。 
 そしてその爆発は闇の球体を飲み込んで赤目の石眼へと届かせる。
 もちろんダメージはない。
 単なる目眩ましである。
 確かに魔族というものは嫌悪、恐怖などと言ったモノを感じ取る能力があるが、あたしはそれを一切絶っている。
 そして、火炎球がまき散らした炎や光は辺りの空間に影を生む。
 つまり、平衡感覚を取り戻す働きもあったわけである。
 捕らえたっ!
 あたしは相手の背後に回り込み、そのまま次なる呪文を解放する!
「黒妖陣(ブラスト・アッシュ)!」
「っぐぁぁぁぁっ!!」
 よっしゃ命中っ!
 黒い光が目標を空間ごと包み込み、その空間内の命あるもの、意思あるものを塵と化す呪文である。
 赤目の石眼は絶叫と共に――なにぃっ!?
 あたしは黒い影が再び飛び来るのを目に捕らえ、思いっ切りのけぞった。
 でぇぇいっ!しぶといっ!
「ぎざマ゛ぁ゛ぁ゛ァ゛っ!」
 赤目の石顔――いや、石のようだった右頬はすでにぐにゃりと溶け、黒い先が見えない渦状の穴を生み出し、その上それすらぼたり、 と床へとこぼれ落ち、床の色を吸い込んで消えた。
 赤い目も見えないほど顔が歪んでいる。
 鼻のような物が額より上に歪み、口は端はまたもや柔らかな粘土が床に落ちるようにぼたり、 と三分の一が落ち、消えている。
 見ると腕も、足も、胸も、ところどころが溶けて下へと落ちる。
 ……とことん気持ち悪い……
「ゆ゛ル゛ざん゛っ!」
 言って、赤目の石顔はくぐもった声を……あ、もう違うか。
 えーと……やっぱ名前聞いときゃ良かったかなぁ……
 ふとそんなことを思うが、ともあれ新しいネーミングを考えている余裕はなさそうである。
「死゛ね゛ィっ!」
 ……ともあれ、魔族はそう言って、再び辺りの虚空に黒い球体を浮かべる。
 ええいっ!芸のないっ!
 あたしはまたもや迎撃の呪文を唱え出すと――魔族はあたしの予想外の行動へと移った。
 辺りに黒い球体を浮かべたまま、こちらへと突進してきたのだ。
 おら待てぃっ!
 土壇場で攻撃パターンを変えるんじゃないっ!
 こちとらひたすらめーわくだっ!
「火炎球(ファイヤー・ボール)!」
 仕方なくあたしは魔族より少し後ろの上空へと球を投げつけ、誘爆させる。
 これだけ近付かれると先程と同じ戦法を取った場合、こちらまで被害が及ぶ。
 それでは人間であるあたしが傷付くだけである。
 それで仕方なく感覚を掴むためだけに破裂させたのである。
 ともあれ、そのままあたしは後方へと下がるが、スピードは真っ直ぐ向かってくるあちらが上。かといって、相手に背を向けて逃げ出したら、あの黒い球を投げつけられ、避けることが出来ずにやられるだろう。
 あたしは唱える呪文のパターンをちょいと変えて――発動させた。
 ぱきょぉぉぉんっ!
 乾いた音があたりにこだました。
 そしてその音の方角から白い物がすぅっ、 と視界の端で動く。
 異変に気付いた魔族が足を止めそちらへと一瞬目を動かした。
 次の瞬間。
「な――っ!?」
 世界は元の城の広場へと戻っていた。
 何故自分の術が破られたか、等と戸惑っているのだろう。
 しかし。
「………!」
 そのまま彼は光の帯で飲み込まれ――消え去った。
 失念していたあたしの呪文をその身に受けて。  


 赤い絨毯。大理石の彫刻、バルコニー。
 あたしは部屋にあるそれぞれのものを指差し確認した。
 うしっ!元の世界に戻ったっ!
 自分の方に白い鳩を乗せ、自然とガッツポーズをするあたし。
 先程のはいつかセイルーンで同じ状況になった時と同じ方法で切り抜けたのである。
 とことん不安定な術をその空間から切り離された別の…………いいか。別に説明しなくても。それよりやらなくてはならないことがあるし。
 ともあれ、ここにいても仕方がない。
 仲間がいないのは痛いがとっとと先へ進むのみ。
 重い扉を勢い良く足で蹴破る。
 どがっ!……ばたっ!
 扉は勢い良く開き、そのまま壁へとぶつかった。
 あたしは呪文を唱え、油断無く構えながら中に入り込むと――
「ガウリイっ!?」
「よ」
 あたしの驚きの声に気楽に片手をあげて返事をするガウリイ。
 一応確認するが、他の気配はない。
 あたしはガウリイの元へと駆け寄った。
 近付くと、彼の足下が赤いのは絨毯の色のせいだけじゃないことに気付く。
「うわっ!酷い怪我。一体どーしたのよ?」
 言いながら、切り傷の走った右腕を持ち上げる。
 命に別状はないが、傷の量が半端じゃない。動けば激痛が走るだろう。
 剣技の腕なら超一流のガウリイにこれほど怪我を負わせるとは……なかなかやっかいな敵と戦っていたよーである。アメリアとゼルのことが心配にはなるが、ともあれ今はガウリイの治療が先決だろう。
 あたしでは大した回復魔法は使えないが、治療(リカバリィ)程度なら何とかなる。
「おやおや。手酷くやられたようですねぇ」
 ………………………………
 呪文を唱えかけていたあたしの後ろから聞こえた穏やかな声は、もちろんゼロスだった。
 そーいやこいつってまだ居たんだっけ……
 あたしは心底ヤな顔をしてゼロスへと振り向く。
「あんたねー。今まで何処行ってたのよ。
 あんたならあんな結界なんてなんとでも出来るでしょ?」
 しかしゼロスはにこにこしながら、あたしの方へと近付いてくる。
「いやぁ、ちょっと食事してたんですけどねー。
 事情が変わりまして」
「はあ?食事?事情?」
 あたしはうさんくさげにそちらの方へと歩み寄る。
「いえ。別に大したことじゃないんですけどね。
 リナさんを殺さなくちゃいけなくなりました」
 しゅぼっ!
 突然ゼロスとあたしの間に魔力球が生まれ、あたしの方へと飛んでくる!
 あたしは地を蹴って、それを横へとかわす。
「……なんで……?」
「とある人との取引なんですよ。
 今回の事件の内容と、研究内容全てを話す代わりに、リナさんを殺す気でこの砂時計が落ちるまでの時間戦えと。
 ま、退屈しのぎのゲームですか。はっはっは」
 言ってゼロスはことりと手のひらを広げたぐらいの大きさの砂時計を地面に置く。
 あの砂が落ちるまでゼロスと戦って生き残れるかどーか……か。
「どーせ、国王でしょ?とある人って」
「そうです。やっぱり気付いてましたか。さすがリナさん」
 あたしはその賛辞の言葉を軽く流し、一歩二歩と横へとずれる。
 この立ち位置では、避けたとき、ガウリイに当たってしまう。
 あの怪我ではゼロスと戦うのは無理だろう。出来るだけ巻き込まないよーにする必要がある。
「あまり長い間話してるとそれだけで砂が落ち切っちゃいますし……そろそろ始めますかね」
 ゼロスは簡単にそう言った。
 覚悟はしていたのだ。
 いくら一緒に旅をしたことがあったり、行動を共にすることがあったとしても――彼は魔族。
 長くいれば長くいるほど、敵対する可能性は高いのである。
 ゼロスの強さは良く知っている。彼一人で竜族を全滅に追い込むことが出来るほどの強さ。
 ――獣神官ゼロス――
 だけど――
「おあいにくさまだけど――あたしは簡単に命をくれてやるほど、気前は良くないわよ」
 言って、ゆっくりと間合いを計る。
 いくらあたしでも、砂時計の時間で生か死かの天秤にかけられて、死んでやるほど甘くはないし、気前も良くない。
 自分を殺すという存在を打ち倒すのに、あたしは少しも手を抜かない。
 ゼロスはそんなあたしを見ると変わらぬ笑顔で言った。
「行きます」
 ゼロスはそのまま瞬時にあたしとの間合いを詰める。
 冗談っ!いくらなんでもゼロスなんかと接近戦なんぞやってられるかっ!
 あたしは大きく後ろへと飛びながら、呪文を解放する。
「覇王雷撃陣(ダイナスト・ブラス)!」
 高速での移動中の一撃である。これは避けられないはずっ!
 しかし、ゼロスは杖を軽く左へと振る動作をすると、雷撃はあっさり霧散する。
 弾き飛ばしたっ!?
 ――さすがに強いっ!
 ぐぅぅんっ!
 うなり声をあげて、あたしの前に黒い錐が姿を現す。
 後ろへ跳んだばかりで体制が悪いっ!当たるっ!?
 がきぃぃぃぃんっ!
 剣はその黒い錐をあたしの目前、すんでの所で受けとめていた。
 ――ガウリイの剣が。
「おや。元気ですねぇ、ガウリイさん。
 先程たっぷりリナさんにやられたのに」
 ……は……?
 戦いのさなか、不注意だとは思うのだが、目が点になるあたし。
 見るとガウリイはぎっと奥歯を噛み締めながら、ゼロスを睨み付ける。
 どーやらゼロスの言ってることを肯定しているらしいが……
「どういうことよ?」
 あたしの問いに、ゼロスは面白いおもちゃを見つけた子供のような笑みを浮かべる。
「リナさんのクローンですよ。
 先程散り散りに別れたとき、ガウリイさんはリナさんのクローンと戦っていたんですよねー。実は。
 ま、一緒にいた魔族のギア……あ、いえ。名前は良いですか。
 ともあれ、その方が『リナ=インバースを操っている』と言い出しまして。
 偽物か本物か判断できる証拠はありませんでしたから、戸惑っている内に……ま、そんな姿になったわけですね」
「黙れ!」
 ガウリイが激昂する。
 ……なるほど。そーいうことか。
 あたしとて、目の前にガウリイのクローンが居て、それを傀儡の術で操っていると言われたら、攻撃できなくなるだろう。たとえ、偽物である確率がどんなに高かろうが、もし事実だったりする可能性が少しでもあるなら、攻撃は出来ない。
 ……と、待てよ……
「ゼロス、あんたさっき食事って言ってたわよね?
 まさかゼルとアメリアも……」
「とりあえず、ここに来るまではそうでしたよ。
 お二人ともかなりのごちそうを振る舞ってくれましたが」
 上機嫌でゼロスは言う。
 どーやら、ゼル達もかなりの状態になっていたらしい。
 それにしても……クローンのこんな使い方があったとは……
 油断していた。 
「ガウリイ……」
 あたしはゆっくりとガウリイの方へと手を伸ばす。
「リナ……」
「ばかくらげ」
「へ……?」
 あたしが突然言った言葉にガウリイは間抜けな声を挙げる。
 スキありっ!
 あたしはガウリイの腕から剣をひったくると、そのままガウリイを蹴り飛ばす(手加減してるぞ。一応)
「はい!怪我人はさっさと寝てる!」
「ちょっ!?おい、リナっ!?」
 ぐだぐだ言いそうなガウリイの目の前であたしはびしぃっ! と、指を突きつける。
「前にも言ったでしょ?
 あたしはここにいるわよ。――あんたの側に」
 言って、あたしはにっこりと笑う。
 そしてあたしは戸惑うガウリイに背を向け、ゼロスへと対峙する。
「ま、見てなさいって。ゼロスなんて――」
 セリフの途中で、あたしの声は途切れた。
 …………………?
 声が……出ないっ!?
 なん……
 がくんっ。
 へ…………?
 力を込めて立て直そうとするが、あたしは膝から地面へと崩れ落ちる。
「リナ……?」
 ガウリイが戸惑いの声を挙げるが、あたしの混乱した頭はそれに気付くこともなかった。
 身体に力が……入らない……?
 ふと見ると、体が小さく痙攣している。
 一体何が……?
「チキン、美味しかったですか?」
 ………?
 意味が分からず、あたしはただゼロスへと戸惑いの視線を送るのみ。
「あれ運んだの、誰だか覚えていませんか?」
 ――――っ!
 あたしは頭の中で一気に今朝のことがフラッシュバックされた。
 ガウリイと朝食の取り合いをして――ゼロスがウェイトレスから受け取ったチキンを真ん中に。
 ウェイトレスから受け取ったとき、入れたのだろう。―――毒を。
 うかつ……だった。
 あたしは毒を味で判断することが出来るが、さすがにそれはゆっくり食べた時である。
 あの時は一気に食べたので、わかるわけはない。
 しかし……やり方変わってないかっ!?
「ゼロス……」
 あたしは何とか声を絞り出し、目の前の敵を睨み付ける。
 さすがに立ち上がれはしなかったが、片足を立てて、立ち上がろうと賢明に試みるが、うまくいかない。
「はい。なんでしょう?」
 言って、ゼロスは笑顔のまま、杖であたしを弾き飛ばす!
「かはっ!………はっ……あ……」
 吹き飛ばされたあたしは受け身もとれずに壁へと激突する。
 どうやら一撃は肺に当たったらしく、肺が麻痺を起こす。
 しばらく呪文は唱えられそうにない。
 あたしは胸へと手を当てた。
 ………………?
 視界が一瞬変な色に染まったが、意識は失っていない。
 だが、斬妖剣(ブラスト・ソード)は今の衝撃で落としてしまった。
「ゼロスっ!貴様っ!」
 ガウリイはこぼれた剣を拾い上げ、こちらへと歩み寄る。
 ――が、その足取りは頼りない。歩くそのたびに、赤い跡を残す。
 ……やはり、前の戦いのダメージは深刻なものらしい。何とか治療しないと……!
「やめといた方が良いですよ。――死にますから」
 ゼロスの笑みは変わっていないのだが、一瞬顔に黒い影が映る。
「リナから離れろ!」
 言って、ゼロスへと向け、剣を構える。
「だめ……ガウリイ……傷が……」
「お前程じゃないっ!」
 あたしの気力を絞っての忠告を、あっさり一言で却下するガウリイ。
 剣を右手で握り返すと、そのままゼロスへと肉薄する!
「うーん、やはりやめておいた方が良いですよ」
 指を軽く眉間へと寄せるゼロス。
 しかしガウリイは構わずゼロスの左脇腹を狙った横への一閃を繰り出す!
 宙が赤く染まる。出血が酷い。
 やはりキレが鈍いらしく、ゼロスはひょいっと横にかわした。
「簡単に避けられますし……」
 ゼロスは変わらぬ笑顔のまま、杖をガウリイの傷口へえぐるような一撃を放つ!
「ぐあっ!」
「――自滅するだけです」
 何事もなかったかのようにゼロスはひょいと肩をすくめる。
 このっ!
「ゼロスっ!『あたし』はここよ」
 いつの間にか声ははっきりとしていた。
 身体は麻痺しているが、声を出せないこともない。
 脱力感だけが身体を支配する。
 が、そんなことに構ってなどいられないっ!
「他の者には手を出すな――ですか?」
 あたしは答えずゼロスの目を見つめ続ける。
 体はろくに動かない。ガウリイも動けない。仲間の援護はあてに出来ない。
 ――敵はゼロス。
 状況は絶望的……
 それなのに――あたしは諦めてはいなかった。
「リナさんの目はまだ死んではいませんね。
 ここまで追い込まれれば――普通は絶望するもんです」
 確かに。それが普通なのだろうと思う。
 だけど――『あたし』は違うのだ。
「あたしは生きることを諦めたりはしないわ。絶対に。
 だから――戦う以上は勝つ。
 相手が誰であろうとどんな状況であろうと――ね」
 いつかも言ったこのセリフ。
 ――いや、いつかではない。はっきりと覚えている。
 考えを覆したことは、それから一瞬たりとてない。
「――初めてですよ」
 あたしは見つめて黙っていたゼロスが静かに口を開く。
「長年生きてきましたが……命を奪うことを惜しいと思った人物は……」
「……そりゃどーも」
 本心かどーかは知らないが、あたしは不敵に笑ってみせる。
 が――身を起こそうとした体に力が入らない。
 どうやら先程のダメージと、毒のダメージは思ったより大きいようである。
 ちらりとガウリイの方へと目を向ける。
 しかし、あちらも重傷のようだった。
 先程のゼロスの一撃で下手すれば意識を失っているのかも知れない。
 とたん、右の視界が赤く染まる。
 どうやら頭からの出血が右目に入ったらしい。
 それでもあたしは右目を閉じなかった。
 拭いもせずに、ゼロスへと向き直る。
 まだ手はある。生き残る――勝つための手は。
 不思議と恐怖はなかった。
 対抗策は見つかったから。
 だが――それが通用するかどうかは――賭である。
 あたしはふらつきながらも、立ち上がった。
「まぁ、ともあれ――終わりにしましょうか」
 そう言ってゼロスはにっこりと笑った。
 ゼロスの右手に黒い光が生まれる。   

 ――四界の闇を統べる王――

 それに構わずに唱えたあたしの混沌の言葉(カオス・ワーズ)にゼロスは僅かに驚きの表情を見せる。

 ――汝の欠片の縁に従い――

「増幅した魔法で僕の力を押し切る気ですか?
 ――いいでしょう。待って差し上げます」
 ゼロスはかえって楽しげにそう言った。
 あたしはなおも呪文を続ける。印を切るぐらいなら体は動いてくれるようだった。

 ――汝ら全ての力持て――

「しかし、一体何の呪文を使う気です?」
 ゼロスはわざとらしげに額に人差し指を押しつける。
 確かに、たとえ竜破斬(ドラグ・スレイブ)でもゼロスの力を押し切ることは無理だろう。
 虚無の端末をこの世界に引き込む術。神滅斬(ラグナ・ブレード)でも具現の仕方が剣である以上、ゼロスに一太刀浴びせることはあたしの技量では難しい。
 しかし、あたしが唱えようとしている術は、そのどちらでもなかった。

 ――我にさらなる力を与えよ――

 タリスマンが淡く輝き出す。呼応しているのだ。
 あたしの魔力と、混沌の言葉(カオス・ワーズ)に。
 そして、あたしは呪文を唱えだした。
「……あのー……」
 あたしの唱える呪文の正体に気付き、ゼロスは心底困ったような声を出した。
「……それで何とかする気なんでしょーか……?」
 当然である。
 いくらなんでも自分の命がかかっているのにふざけるほど間抜けな人間じゃない。
「……まぁ、リナさんのことですから何かあるんでしょうけど……」
 そう言って、ゼロスは黒い光を灯した右手をあたしの方へと向ける。
 視界の端でガウリイがそれに気付き、止めようと走り出すが足がもつれて間に合わない。
「やめろぉぉぉっ!」
「さようなら」
 同時だった。ガウリイの叫びとゼロスが黒い魔力光を打ち出すのは。
「封気結界呪(ウィンディ・シールド)!」 
 あたしは右の手の甲に左のてのひらを重ねて呪文を発動させる!
 風の防御結界の呪文である。
 あらゆる魔法に対応し、術者を外敵から身を守る。
 しかし、増幅してあるとは言え、風の結界だけでゼロスの呪文を遮ることが出来るのか――?
 そう、ゼロスは思ったからこそ『それで何とかする気なんでしょうか』等と聞いたのである。
 ともあれ今は、あたしの全てを術に集中する。
 ゼロスの手から放たれた黒い光は真っ直ぐ直進し、あたしの視界を黒く埋め尽くす。
 あたしの風の結界に当たった瞬間、嫌な音をたてる。
 風の結界が完全にゼロスの呪文を阻んだ時間は決して長いとは言えなかった。
 とたんに結界の軋む音が耳に届き、僅かな隙間を作り出した。
 目に見えて黒い光の触手があたしの身体を嘗め回す。
 くうううっ!
 体中に激痛が走る。
 だが、術の制御を失うわけにはいかないっ!
 あたしは激痛すら集中の起点として、術を持ち直す。
 中途半端な行動は死を招く。
 だからこそ――あたしは迷うことなく術の制御に全ての力を注いだ。
 しかし、やはり限界は来る。
 一瞬とも永遠ともつかぬ時間を結界でゼロスの術を防いできたが、結界自体が乾いた音をたてて弾け散った。
 障害を失った黒い触手は先程とは比較にならない量であたしの身体を飲み込んだ。
 世界の時間の流れがゆっくりになったかと思うような錯覚。
 瞬間、あたしは魔力光ごと、白輝石の壁に叩きつけられた。
 身体の骨から伝って鈍い音が聞こえる。
 しかし、壁から跳ね返り、倒れ込むことすら黒い魔力光はそれを許さない。
 頭上から瓦礫が振ってくるが、それすら魔力光に触れたとたん粉々に砕け散る。
 どうやら身体は壁にめり込んでいるらしい。
 痛みの感覚はもうすでにない。
 ただあたしは両手を真っ直ぐに伸ばす。
「リナぁぁぁぁっ!!」
 その手をガウリイが掴もうとする瞬間、あたしは再び大きく壁へとめり込んだ。
 今度は巨大でそして大量の瓦礫が降ってくる。
 瓦礫で遮られて視界が暗くなるのと、あたしが意識を失ったのは――どっちが先だったのだろうか……?

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7901レアードの狂乱 四 B白いウサギ E-mail 9/23-02:45
記事番号7892へのコメント

 あたしの意識は空を漂っていた。
 世界はこんなにも暗かったのだろうか。
 真っ暗で何も見えない。
 それなのに浮いている感じが――いや、自分が何処にいるのかわからないのか……
 自分自身が闇に溶けていくかのように感じる。
 存在が希薄になっているのだ。
 とたん、頬に熱いものが流れた。
 何だったっけ……これは……
 ……もう、忘れてしまった……
 こりゃガウリイのこと馬鹿に出来ないな……
 ふっと笑いをこぼす。
 あたしは静かに目を閉じた。
 瞬間、世界が変わる。
 ただ唯一、闇だけは変わっていない。
 変わっているのは――ここにはあたしが居ること。
 ガウリイが居ること。
 ゼロスが居ること。
 三人は暗い闇の中にぽっかりと浮き出たようにそこにいた。
 ただ、あたしはこの二人とは違っていた点がある。
 あたしには色がないのだ。朝靄のように、少しでも動くと形が崩れてしまうような気がした。
 あたしは動けなかった。
 この世界にあたしはもう居ないのだろうか。
 ガウリイは必至になって下に転がっている何かをどけるような仕草をしている。
 ガウリイは叫んでいた。
 その声は――もう、あたしには届かない――
 ゼロスがゆっくりとガウリイの元へと行き、笑顔のまま耳元で何かを囁いた。
 ガウリイはそれを振り払う。そして剣を握りしめた。
 今度はゼロスへと叫んでいる。
 表情は――!――
 それは長年一緒に旅をしていたあたしが初めて見る顔だった。
 ガウリイは剣を振るう。ゼロスに向かって。
 振る度に目に見えて剣が鈍くなる。
 血が虚空に飛び散り、闇へと溶け込む。
 だが、ガウリイはまだやめない。
 戦いを続けていた。
 もうすでに腕が痙攣を起こしているのに、攻撃することを諦めない。
 …………………………………
 諦め……ない……
 諦めない。
 戦いはまだ――続いている。
 戦いはまだ続いている。
 ……あたしは何をやっている……?
 行かなくては。
 あたしの居るべき所は――――!
 世界が急に輝きだし、闇を一気に吹き消した。
 いや、世界に光が流れ込んでくる。
 そして再び世界は切り替わった。
 そこには傷付きながらあたしを庇おうとするガウリイ。
 ああ、ついさっきの光景だ。
 ガウリイがあたしに言われて少しばかり間の抜けた顔をする。
 そう。この後あたしがすぐに言ったことは――
『あたしはここにいるわよ。あんたのすぐ側に』
 今度こそ、声ははっきりと聞こえた。

 どくんっ!
 あたしは突然現れた痛みに悲鳴を上げそうになった。
 だが、激しい痛みは一瞬だけだった。
 全身の感覚がわずかずつだが生き返っていく。
 砂漠の中でやっと水が飲めたように。
 不思議と高揚感がある。
 それなのに、妙に頭は冷静だった。
 瓦礫はあたしの視界をを完全に覆い尽くして――いや、左か右か、感覚がまだはっきりしないが隙間から差し込んだ光が見える。
 その先にまだ剣をふるっているガウリイの姿。
 これ以上は命に関わる。
 あたしは――やるべき事をやった。
 ゼロスを目で追い続ける。
 タイミングが勝負である。
 それで――この一撃で勝負が決まる!
 まだ早い――
 まだ―――――――
 ――――――――――――今っ!
「汝の力を今こそ示せ!」
 あたしは右手の甲と左手の掌に隠していた物を解き放つ!
 ぐおらがぁぁぁぁっ!
 やたらと騒がしい音をたてて、あたしを押しつぶしていた瓦礫が吹き散らされる。
「なっ!?」
 驚愕の声は一瞬だけだった。
 そしてそのままゼロスは黒い魔力光に飲み込まれる。自らの力に。
 そしてあたしはそのゼロスへと間合いを縮めようとする。
 身体の感覚はまだない。

 ――空の戒め解き放たれし――

 身体よ動けっ!

 ――凍れる黒き虚ろの刃よ――

 今動かなければ全てが無駄になるっ!

 ――我が力 我が身となりて共に滅びの道を歩まん――

 麻痺の毒なんかで動けなくなるほどあたしは――ヤワじゃない!
 からん。
 右足元で音が聞こえる。瓦礫が落ちたのだ。
 と言うことは――いけるっ!あたしは走り出した。

 ――神々の魂すらも打ち砕き――

 ガウリイがいる気配がするが振り向くわけにはいかない。
 ゼロスがこちらに気付いた!

「神滅斬(ラグナ・ブレード)!!」
 ざうんっ!
 虚無の剣は、ゼロスの二の腕から先を宙に浮かばしていた。
「ぐっ……!!あああああああっ!!」
 絶叫がこだまする。こいつ……っ!自分の右腕を犠牲にして他の部分を護るとはっ!
 あたしは腕を切り返し、今度こそゼロスの身体を間合いに捕らえ、腕を振り切った。
 手応えはなかった。斬り飛ばしたのではない。
 虚無の刃は消えていたのだ。
 体力が尽きていたか……!
 これは大きな誤算である。
 あたしは後悔しながら床へと倒れ込んだ。
 一撃でケリを付けるはずだった。
「……相変わらず……常識がない人ですねぇ……」
 くっうっ!
 あたしはなんとか上体を起こし、ゼロスの方へと見やる。
 さすがにダメージは避けられないが、致命傷まではいっていないようだった。
 ゼロスはゆっくりとこちらへと歩み寄る。
 ――やられる――
 背中を冷たい汗が通り過ぎる。
「ま、今日は痛み分けってことにしておきましょう……ね(はあと)」
 無理に語尾にはあとを付けて、左手の人差し指を立ててポーズを決める。
「……何で……?」
 あたしとガウリイはすでに動くことすらままならない状態である。
 いくらダメージをおったと言えど、ゼロスなら今のあたし達を苦もなく倒せるはずである。
「砂時計、壊れちゃいました」
 ………………をう。
 あたしは頭の中で手をぽんっと叩く。
 そーいわれてみればそんなこともあったよーな気がする。
「ガラスの部分が粉々になっちゃってるんで、全て落ちてますから……
 僕にはこれ以上戦う理由はないです」
 つまり、あたし達が攻撃してこないならこのままとっとと帰る……と言うことらしい。
「ではこれで」
 そう言って、虚空に姿を消すゼロス。
 ――命を賭してまで戦って――
 終わりがこれかい。
 あたしはしばし呆然とゼロスが消え去った虚空を見つめ続けた。
 ゼロスらしいと言えばゼロスらしいのだが……
「いーんだろーか……これで……」
 あたしは自分自身に問いかけた。
 
「ところで、さっきのはどうやったんだ?」
 呆然としていたあたしに近寄り、ガウリイがいつもの口調で問いかけた。
「ああ、それは……ごほっ!
 ごめ……後で話したげるからちょっと休ませて……」
 未だにダメージは回復していない。
 喋ろうにも言葉の途中でむせてしまう。
「あ、ああ。わかったから休め。
 俺も今回はいくらなんでも……」
『疲れた……』
 ……あたしとガウリイは同時に呟いて、顔を見合わせる。
 自然と笑みがこぼれた。
 そしてあたしもガウリイもお互いの頭を上向けて大の字になって寝ころんだ。
 『さっきの』とはまず間違いなく先程ゼロスへの一撃の事だろう。
 実は――例によって例の如く、かなり乱暴なことをやったのだ。
 戦法を思いついたのは、ゼロスの杖で壁へと弾き飛ばされ、肺を麻痺させたときに遡る。
 肺の麻痺で胸を痛め、自然と手が胸を押さえつけていた。
 その時、胸に異物感があったのである。
 そしてその正体に気付いたときに、あたしはその戦法を取ることに決めていた。
 胸にあった異物――それは、すっかり忘れ去っていたが、レミナから貰ったお宝である。
 一つは魔法を跳ね返す効果のある護符。
 もう一つはどんな強力な魔法でも吸収して溜め込み、持ち主の任意でそれを増幅して打ち返すことが出来るペンダント。
 まぁ……もしほんとーにどんな強力な魔法でも吸収することが出来るなら、増幅版封気結界呪(ウィンディ・シールド)も、魔法を跳ね返す護符も必要ないのだが……いくらなんでもゼロスの攻撃は無理だったろう。
 『どんな強力な魔法でも』と言ってはいるが、これを作った人が一体どれだけの魔法を知っていたのだろうか。
 恐らくゼロスが操るほどの魔力は見たことはなかっただろう。
 それであたしが増幅版封気結界呪(ウィンディ・シールド)で、それをいくらか弱め、更に護符で身体への負担をなるたけ減らし、ゼロスの魔力をペンダントに封じ込めた。
 まぁ……予想通り、ゼロスの魔力全てを封じ込めることは出来ずにあたしはかなりのダメージを負い、おまけになんとなく変な世界に旅立ってたよーな気がするが、ともあれ、あれだけの逆境を乗り切るには他に手段がなかった…………と、思う。
 頭の中で思考をめぐらせていると、どうやら身体の痛みはある程度回復したらしい。
 それならば……と。
 あたしはむくりと起きあがる。
「ガウリイ、あたしの方は何とか回復してきたから傷見せて」
「へ……?
 人のこと気遣う余裕はあるのか?」
 ゆっくりと起きあがり、あたしに心配の言葉をかけるガウリイ。
 だが、起きあがった時、隠したつもりだろうが一瞬苦痛に眉をひそめたのは見逃さなかった。
「大丈夫よ。治癒(リカバリィ)ぐらい。
 それにいつまでもこんな所でのんびりなんか出来ないでしょう?」
 まぁ……もうそれほど戦力はないだろーが、今の二人の状況なら普通の兵士でも数で押されればたちまち窮地に追いつめられてしまう。
「……頼む」
 ガウリイは素直にそう言った。
 よろしい。
 あたしはまずガウリイの右腕を取り、呪文を唱え始めた。
「そう言えばお前さ。
 毒は?」
「ん?ああ、あれね。
 もう治ったわよ」
 呪文を一時中断して、あたしはガウリイの問いに答える。
「どーいう腹してんだ?」
 そう言ってガウリイはあたしのお腹へと手を当てる。
「人の腹を気安く……
 うわわっ!」
 ついツッコミ用のスリッパを取り出そうとして手を動かしたが、やはり身体はまだ疲れているらしく、それだけでバランスを崩した。
 慌ててガウリイの服を掴んでバランスを……をををっ!?
 あろう事かガウリイも一緒に倒れ込んでくる。
 だぁぁぁっ!こいつもへばってるぅぅぅぅぅっ!
 あたし達二人は勢い良く床へと倒れ込んだ。
「いたたたた……」
 あたしは打った頭へと手をやる。
 ふと前を見るとガウリイはなんとか両手をあたしの頭を挟むようにして床へとつき、バランスを保っている。
「お前なぁ……」
「あはははは。ごめんごめん。
 あー……びっくりし……た……」
 あたしはガウリイの肩越しに見える二人の影に気付き、言葉を詰まらせた。
「ゼル!アメリア!良かった無事で……」
 しかしどうやらゼルもアメリアも様子がおかしい。
 どことなく顔を赤らめながら、アメリアなんぞおもいっきしそっぽを向いている。
「お前ら……別にそう言うことをするなとは言わんが……
 その……なんだ……
 時と場所をだなぁ……」
 訳のわからないことを言うゼル。
 隣のアメリアを見てみるが、視線があった瞬間、顔を真っ赤にして慌てて視線を逸らす。
 ……一体なんだって………
 ………って、この体制は…………
「どうわぁぁぁぁぁぁっ!違うっ!誤解よ誤解っ!
 今のはちょっとした事故でっ!
 そーいうんじゃないんだってばっ!!」
 あたしも自分でわかるほど顔が赤くなっていた。
 だぁぁぁぁぁっ!アメリアっ!トマトになるんぢゃないっ!
「……何が……?」
 あたしの顔のすぐ前で、ガウリイが不思議そうな顔して言った。
 くぉの、超弩級鈍感男っ!
 どげしぃぃぃっ!
 あたしは足を蹴り上げ、ガウリイのみぞおちへとめり込ませる。
「どうわわわわわっ!?」
 おかしな悲鳴を上げて、ガウリイはそのまま吹っ飛んだ。
「ったく……こっちが死ぬ思いで魔族撃退して結界から出て見ればこれだ……やってられるか」
 心底呆れたようにゼルガディスは呟いた。
「……そっ、そうですよっ!ゼルガディスさんと二人で危ないところを必至で乗り越えて出てきたのに……えと……不真面目ですよっ!」
 でぇぇぇいっ!顔を赤くしながら言うなっ!
「いや真面目とか不真面目とかそーゆー問題じゃなくてっ!」
 あたしは慌てながら言うが、二人は聞こうともしない。
「そりゃあ俺達がお前達と別れてそれなりの年月が経っているし、二人で旅をしているわけだから、個人的には無謀だとは思うが……まぁ別に世間的に見ても変ではないしな」
「世間的とかでもなぁぁぁいっ!」
「わたし達が居る頃から何となくそんな感じはありましたし……
 人を大事に思うって事は素晴らしいことですし、別にああいう事をしても変じゃないですけど……
 ちょっとここでは……」
「ああいう事ってどんなことだっ!?」
「リナ!お前アメリアにそんなこと言わせる気かっ!?」
 あたしの言葉にゼルガディスの叱責が飛ぶ。
 だーかーらー。
 あたしは乱暴に頭の髪をくしゃくしゃに掻き上げる。
「だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!もうっ!
 こっちだって死ぬ思いで……そうだった!アメリア!ガウリイの傷の手当を――」
 アメリア達とのやりとりで忘れていたが、怪我をしている状況は変わらない。
 急いでガウリイの方へと向き――
 あ゛………
 そこには、あたしの蹴りで瓦礫に埋もれ、のびてるガウリイの姿があった。
「果てた……かな……?」
「きゃああああっ!ガウリイさんっ!しっかりしてくださいっ!」
 アメリアの悲痛な叫びがホールにこだました。

「アメリア、どう?」
 ガウリイを瓦礫の下から救出し、とりあえずひとかたまりになっているあたし達。
 ふと周りを見渡すと、すでに原形をとどめていないホールだが、別に気にする必要はないだろう。
 あたしはアメリアへと問いかけた。
 残念ながら、あたしは回復系の魔法は治癒(リカバリィ)ぐらいしか使えない。
 アメリアはこの年でセイルーンの巫女頭もやっているし、あたしとは比較にならないほど回復呪文のストックがある。
 今ガウリイにかけているのは復活(リザレクション)である。
 治癒(リカバリィ)では本人の体力を消耗する代わりに傷を塞ぐものだが、この復活は術者の周りの気を取り込み、それを傷付いた者へと送り込む呪文である。
 これからゆっくり休めるのなら別だが、まだやらなくてはない事があるので体力は消耗できなかった。
「酷い傷です……一体誰がこんな事を……」
 やはりアメリア達には話して置かなくてはなるまい。
 誰がやったのか……
「実は……」
「特にみぞおちなんて……跡消えるかしら……」
 ………………えーと…………
 あたしはつい視線を宙へと泳がす。
「何だ?『実は』って」
「いや……何でもない……わ……」
 眉をひそめて問うゼルだが、あたしは力無く答えるだけだった。
「おい、リナ。アメリアにみてもらえ」
「へ?」
 いつの間にか意識が回復した(無責任)ガウリイの問いかけにあたしはつい間抜けな声を漏らした。
「お前そこから立てるか?」
 えーと……動けない。
 体を動かそうと力を入れてみたつもりだが、どうやら本気でつもりだけのようだった。
 片手をあげることすら出来ないでいた。
 それなのに先程良くゼルとアメリアと掛け合いが出来たもんである。
 我ながら感心感心。
「アメリア、リナを頼む。あっちの方が重傷だ。毒も負っている」
「ガウリイ、あんたはどーすんのよ?」
「ゼルに頼むさ。もうだいたい治っている」
 そう言って、ガウリイは元気良く右手を振り回した。

「ところで、あんた達が倒したのは?」
 あたしはアメリアの治療を受けながら、問いかけた。
「ああ……俺やアメリアのフリをしたコピーが一体ずつ。
 それと赤いわっかの様な形をしたのと、茶色いスライム状の奴だな」
 ゼロスから聞いた話じゃかなり苦戦していたはずなのだが、それには触れずにゼルガディスは簡単に説明する。
 被験者たる魔族がどれだけ居るのかは知らないが、この計画に必要ならば国王を護ろうとするだろう。
 つまり、国王を探していればまだ居るなら反撃してくるはずである。
 逆にいなかったり、すでにどっかへ逃げ出したのなら障害がなくなるだけである。
 とっとと回復して国王を――
「で、ゼロスの方は?」
 う゛……
 思考を中断しつい呻くあたし。
 いーのかなー……?
 まんまで説明して。
「あいつならもう居る必要はないからって消えたぞ」
 困惑するあたしをよそに、ガウリイが代わりに答える。
「居る必要はない……?
 相変わらず訳のわからんやつだな……」
「まぁ、ゼロスさんだから期待はしてなかったですけど……」
 ……ま、いっか。
 ゼロスのことはこの騒ぎが終わったら話そう。
 無理に今話して怒りを別の方向へ向けることもない。
 今はなにより、この計画を潰すことが第一なのだ。
 それも後は国王だけだと思うのだが……
「アメリア、もういいわ。ありがと」
 そう言って治療中のアメリアの手のひらをどける。
 体を起こしてぴょんっ、 と、一飛び。
 うしっ!ほぼ回復っ!
「さてと。
 腐った計画立ててくれた国王ぶち倒しに行きますかっ!」
「おうっ!」
 あたし達は一気に広間を駆け抜けた。

 道のりは実に順調だった。
 なにしろ兵士も魔族も出てこない。
 これではかえって不気味である。
 しかし、不気味だからと言って様子を見ようなんぞと悠長なことは言ってられない。
 あたし達はただひたすらに走り続けた。
 まぁ……パターンから言って、国王なら多分玉座に座って待っていて、あたし達が流れ込んだとたん、『よくも計画を邪魔してくれたな』とか、『こうなったら貴様らは私自身の手で葬り去ってくれる』なんぞと高笑いをあげながら攻撃してくるはずである。
 ……いや、もしかすると国王は別に強くないかも知れないんだけど……
 魔族と契約かわしてたって言ったってもう赤目の石顔はぶち倒したし。
 ま、なんにせよ、ここまでやってくれた奴が強かろうが弱かろうが容赦するつもりは全くないっ!
「――行くぞ」
 ゼルガディスがこちらを見ずに呟いた。
 間取りはゼルも知っている。前に賞金の授与式で来ていた。
 白銀の像が門番のように扉の左右に立ち、その中央にはひときわ大きな扉。
 こちらから真っ直ぐにのびている赤い絨毯はその先へと続いている。
 ――謁見の間――
 ぎぃ……
 重く、低い音がゆっくりと辺りに広がっていく。
 ガウリイは扉を開けると、警戒しながらゆっくりと中へと入り込む。
 少し間を置いてあたし達も入り――そして絶句する。
「……生きてない……な」
 ガウリイがゆっくりとその身体へと近寄っていった。
 国王、セフィロト=セイム=レアードの――遺体である。
 たいして近付いていないあたしにもはっきりとわかる。
 彼はすでに事切れていた。
 腹部に自身の剣を生やしたその身から、生命の赤き血が玉座と、絨毯。果てや床まで飛び散っていた。
 血が乾ききっていないところを見ると、大して時間は経っていないらしい。
「追いつめられて……自害……ですかね……?」
 自信なさげにアメリアは呟いた。 
 そりゃそーだろう。いくらなんでもあそこまでど外道な計画立てた奴が魔族という力立てを失ったぐらいでここであっさり自害とは……
 ん……?
 待てよ……
「どうかしたのか?」
 隣でゼルがあたしの方へ声をかける。
「ん。ちょっとね……」
 あたしはふとあることを思いつき、玉座へと歩み寄る。
 しばらくきょろきょろ辺りを確認して――
「やっぱり……」
 あたしは玉座の足下を見て呟いた。
 玉座から床へと滴る血痕が、僅かにずれている。
 もちろん死体が死んだ後に、動かしたわけではない。
 つまり――
 あたしは玉座に力を込め、ずらす。
 少々重いが、何とか出来ないことはない。
 そしてそこから現れたものは――
「隠し通路……?」
 アメリアが覗き込んでそう言った。
 もともと大きな玉座である。
 人が降りるには充分な広さの穴があり、底を覗いて見れば、きちんと舗装されている無機質な通路。
 そして、遠くで響く足音。
 やはりそうかっ!
「追うわよっ!まだそんなに遠くはないわっ!」
 言って、あたしは仲間の返事も待たずに中へと滑り込む。
 かなりの深さだが、足場があるのでそれは問題がない。
「おっ、おいリナっ!?」
「リナさんっ!?」
 何やらわめく言葉を無視し、あたしは音のする方へと走り出す。
 入り組んでいたら音の反響で一が掴めないかと思ったのだが、どうやら一本道のようである。
「明かり(ライティング)」
 あたしの掌から生まれた光球があたしの前方を照らす。
 その間に、追いついてきたガウリイが隣であたしの方へとやはり走りながら聞いてくる。
「追うって……誰をだ?」 
「逃げてる者が居るって事はわかりますけど……」
 続いてアメリアも後ろでそう言った。
「決まってるじゃない。
 ――黒幕よ」
 あたしは振り向きもせずにそう答えた。

「待ちなさい!」
 ぴくりっ。
 あたしの言葉に前方にいる黒い影は明らかな動揺を示した。
 観念したのか、その足を止める。
 その判断は正解である。
 もし止まらなかったならあたしの呪文が飛んでいたであろう。
 あたしは術をコントロールし、明かり(ライティング)を黒い影の方へと飛ばす。
 やがてその光が影へと届き、姿を光の元へとさらけ出した。
 年の頃なら20過ぎ。
 深い緑の髪と、目がこちらを驚愕の眼差しで見つめている。
 あたしが初めて見る『姿』だった。
 腰には一振りの剣。
 物腰から察するに、それなりの使い手であろう。
 いや、物腰などを見なくても、今までの状況を考えればわかるようなもんである。
「こーんな所でネズミのまねごとやって、何処へ行く気?」
 あたしは挑発の言葉を投げかける。
「仕えていた国王が自害したので親衛隊の私が逃げようとしているだけだっ!」
 いやに説明がかった口調で言う。  
 追いつめられているせいか、その不自然さに気付かないらしい。
「どうやらリナの言った通りらしいな」
 男の言葉の不自然さにやはり気付いたゼルがそう言った。
「どういうことだっ!?」
 男はそう叫ぶが、あたしは不敵に笑って言ってやる。
「つまりね――バレてるのよ。
 『セフィロト=セイム=レアード殿下』」
「な――っ!?」
 親衛隊長の姿をした、レアード国国王は驚愕の声を挙げた。
「何を馬鹿な……」
 しどろもどろに言うが、すでにその態度で状況証拠に充分である。
「玉座の国王の遺体を見た時、どうしても納得いかなくてね。
 それで考え込んでいたら……ジャグの話を思い出したのよ。
 コピー・ホムンクルスへの自我の移転――
 その技術を持った奴が、自分の身の保身のために、身代わりを作っていても不思議じゃあないわ」
 つまり、国王は自分自身のコピーを作り出し、適当に自分の身代わりとなれる程度まで物事を教え込む。
 そして自分は別の姿形を取り、国王の近くにいてもおかしくない人物へとなりすます。
 これで自分は国王の姿をした者を言いなりに操ることによって、国を操っていたのである。
「くっ!
 おのれぇっ!」
 国王は腰の剣へと手を伸ばす。
 やはりそれなりに強い身体を選んでいたのか、動きは鋭い。
 だが――
 きぃんっ!
 あたしへと放った剣の一撃は、あっさりガウリイの剣で剣を両断させられた。
 僅かに動揺の気配を漏らす国王だが、すぐさま剣を捨て、呪文を唱え始める。
 しかし、ガウリイがその間を逃すわけはない。
 一瞬で間合いを詰め、国王の身体を一閃する!
 が、国王の腹を狙ったはずの横凪の一閃は、腕を浅く薙いだのみ。
 ガウリイは一瞬怪訝な顔をするが、もう一度返す刀で斬りつける!
 ――!?――
 国王の体のまわりに一瞬、青白い光の壁が生まれ、ガウリイの剣を流したように見えた。
 ガウリイもその異変に気付き、飛んで間合いを取る。
 その瞬間、国王の呪文が完成する!
「火炎球(ファイヤー・ボール)!」
「氷結弾(フリーズ・ブリッド)!」
 二つの光球は引かれあい、触れあった瞬間乾いた音を立ててお互いを相殺する。
 相手の呪文のリズムで何の呪文かをを掴んでいたあたしはすぐさまその対抗呪文を唱え始めたのだ。
 しかし無茶をする。
 あたしが相殺したから良いものの、この狭い空間じゃ自分にも被害がいく……はず……
 待てよ……
 この時、あたしはふとある考えが浮かんだ。
「その剣の切れ味は常識はずれだと言うことは知っている……
 だが――力を受け流すぐらいの強度の『力』は持っておるでな……」
 国王はガウリイを見ながら、静かに呟いた。
 口の端が微かに笑みの形を作っているように見えるのはあたしの気のせいだろうか。
 どことなく呼吸するのが苦しくなる。
 先程一瞬見えた青白い光の壁、そしてこんな所でも火炎球をぶちかますと言うことは……
「まさか……」
 あたしののどが渇いていくのがわかる。
 予想通りだとしたら……国王は……
「その通りじゃよ……」
 あたしの思いを見透かすかのように、国王は呟いた。
「ここまで来た以上、レビアフォナは倒してきたじゃろう……
 不死の契約はもう切れておる」
 レビアフォナと言うのは話からして、きっと赤目の石顔のことなのだろう。
「普通は不死の契約が切れたとき、今までの代償として生気を吸われていくのじゃが……
 この通りじゃ」
 そう言って、ばさりと青いマント跳ね上げる。
 顔からも、そこから覗く身体も、異変は見えない。
「わしが大して変わらぬ姿でいられる理由……
 それは――魔族と同化した人間に憑依したからに過ぎん」
 かつて、下級魔族セイグラムと暗殺者ズーマが同化したものと闘ったことがある。
 個人個人でもシャレにならない強さを持っていた者同士が同化して更に強くなっていたのだが……そいつのコピーに憑依した存在。それが今の国王なのだろう。
 だが……
「そんな無茶なこと……
 あなたの人格が耐えられるかわからないのに……っ!」
「そんなことは知らなかった――違う?」
 アメリアの言葉を遮っていたあたしの言葉に、国王はなんとも複雑な表情を浮かべて頷いた。
「どう言うことだっ!?」
 剣を抜いたままゼルガディスが怪訝な顔を浮かべてそう言った。
「つまり――国王もレビアフォナ――赤目の石顔に利用されてたのよ」
「なっ!?」
「魔道の知識がちょっとでもある人間なら、普通はそんな常識越えた奴に自分から憑依しようなんて考えないわよね。
 と、言うことは魔族のレビアフォナの提案なんでしょう。
 そしてあなたは危険性を知らずに力が手に入ると喜んで転移した」
 どことなく引っかかってはいたのだ。
 ジャグ=グルーガンの話だと、仲間の中に多数の拒絶反応者が出て、この世を去った。
 兵士ならともかく、こういう我が身かわいさだけは人一倍の人間が、そういう危険なことをするだろうか。
 答えは否。
 つまり、国王はその事を知らされず、転移の話を飲んだ。
 赤目の石顔は国王の自我が耐えきれずに崩壊することを予想していたのであろう。
「あやつの誤算はわしの予想外のしぶとさじゃった」
「悪人の欲得根性にはさすがの魔族も勝てなかったってか?」
 あたしはひょいと肩をすくめた。
「強がって軽口を叩くのはかまわんがな。
 それだけじゃあ何も変わらんぞ」
「強がっているのはどっちかしらね?」
 あたしは迷わずにそう言った。
 ぴくり。
 国王の眉が一瞬揺れる。
「どういう意味じゃ……?」
「強がっているのはあなただって言ってるのよ。
 あなたの替え玉の用意、そしてこの隠し通路への逃亡。
 何でそんなことをしたの?
 答えは単純。
 ――怖かったから」
 しばし国王とあたしの目がぶつかり合い……先に目を伏せたのは国王だった。
「……なるほどの。
 そうかも知れん」
 意外にあっさりと認める国王。
「じゃがな……力で負けると思ってはおらんよ。
 怖かったのは権力を失う事じゃ」
 そう言って、国王は邪悪な笑みを浮かべる。
 確かに、今この状況では相手の方が有利である。
 相手が人間やめてるのに対し、こちらは生身の人間。
 このくそ狭い通路で火炎球を一発爆発されれば、相手の精霊魔法の耐性がある以上、炎でやられるのはこちらだけである。
 なんとか炎を呪文で遮っても、生き埋めは避けられない。
 なおかつ、これほど狭ければ4対1という状況も、あまり有利には働かない。
 それにしても赤目の石顔の奴、魔族と人間の同化した者のコピー作りまでやってるとは……
 責任を取れっ!責任をっ!
 あたしは国王へ睨みながら心の中でそう叫ぶ。
「……ガウリイ」
「下がってろ、か?」
 あたしの呼びかけにガウリイは国王へと視線を向けたまま声を帰す。
 ……確かに、相手の『壁』はやっかいである。
 もっと広い場所で、少々魔法をぶちかましても余裕のあるスペースならともかく、こんな狭いところではガウリイの剣がとことん頼りではあるのだが……どぉも相手の能力と相性が悪い。
 剣が聞かないのではなく、受け流されてしまうのだ。
 ガウリイの腕ならば、その流そうとする力の方向すらも読んで斬りつけることも可能だろうが、この場所では思うように動けない。
 しかし。
「……そう言っても聞かないでしょ?」
「まぁな」
 ……やっぱし。
 そうなるとこの場所ではガウリイ一人に全てを任せ、あたし達三人は一列になって御見物、と言う形になるのだが……それはひたすら格好悪い。
 それに、相手が貫通性の呪文でも使いだしたら全滅である。
 ――とか何とか言ってるうちにっ!
 ひゅっ!
 国王はガウリイへと斬りかかる。
 いつの間にか出現させたのか、その手には青白い光の刃!
 ガウリイはそれを紙一重でかわし、その動きすらも利用して反撃に出る。
 膝から身体を沈め、蹴りを相手の腹にたたき込む!
 相手に物理攻撃が効くかどうかは疑問だが、バランスを崩すのには充分。
 蹴りの勢いのまま相手に背を向けるようにしてから振り向きざまに斬りつける!
 しかし体制も十分ではない一撃はまたもや青白い壁で受け流される。
「無駄だっ!」
 あざけりの表情を浮かべる国王。
 そうして斬撃を放つ!
 ガウリイはその一撃を斬妖剣(ブラスト・ソード)で受けとめる!
 ――どうやらこのままでは長期戦になりそうである。

「リナさんっ!ガウリイさんがっ!」
「落ち着きなさい!アメリア!
 ガウリイならほっぽいといても大丈夫よ」
 後ろであたしのマントを引っ張りながら、近くにいながら支援が出来ない歯痒さからか、せっぱ詰まった表情であたしを見上げるアメリア。
 大丈夫。ガウリイなら。
 ただ問題なのは、相手に対して今あたし達が有効な攻撃手段を持っていないことである。
 今はガウリイとの戦いで、集中できないせいか呪文がないが、もし使われてしまえばとたんに窮地に追い込まれる。
 何か――何かないか――!?
 あたしは必至で頭を巡らす。
「ゼルガディスさんっ!援護をっ!」
「――無茶を言うな。
 これだけ狭いところで斬りかかっても足手まといになるだけだ」
「……何も……わたし達には出来ないんですか……?」
 …………そんなはずはない。絶対にそんなことはないはずなのだ。
 何か……必ず何か道は用意されている。
 出来ることがなくなる時。
 それは――生きることを諦めたときのみなのだ。
 あたしは右拳を壁へと打ち付ける。
 落ち着かなくては。
 何か――手はあるはずだ――
 あたしは痛む右腕を開き、壁へと手を当てる。
 ひんやりと冷たい。
 そして。
 露のような物がグローブに付着した。
 水……?
 そうかっ!
「アメリア!ゼル!
 ――出来ることを見つけたわよ」
 あたしは不敵に笑ってそう言った。

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7902レアードの狂乱 四 C白いウサギ E-mail 9/23-02:50
記事番号7892へのコメント


 あたしは呪文を唱え始める。
 セフィロト=セイム=レアードを倒すために。
 この戦いに決着を付けるために。
 あたしの呪文に呼応し、だんだんと光が集まり出す。
 暗く湿った地下通路に本来あるはずのない光が生まれていた。
「ちぃっ!」
 国王が気付き、こちらへ牽制しようとするがそれをガウリイが阻む。
 慌ててガウリイの一撃を受け流す国王。
 だが、今までガウリイの鋭い剣撃を受け続けていたせいか、動きが鈍い。
 ざしゅっ!
 流しきれなかった剣が国王の右肩を捕らえていた。
「ぐぅっ!」
 苦痛に顔を歪める国王。
 そして――あたしの呪文が完成した!
「獣王操牙弾(ゼラス・ブリッド)!」
 ひゅおぉぉんっ!
 あたしの手から放たれた光の帯は国王の正面、ガウリイの背後へと真っ直ぐに突き進む!
 しかし、タイミングを知っていたかのようにガウリイが前へと倒れ込む形でそれをやり過ごす。
「なっ!?」
 突如現れた光の帯に国王は避ける暇すらなく――って、弾き飛ばされたっ!?
 そうかっ!あの青白い壁で獣王牙操弾すら受け流したかっ!
 顔に似合わずなかなか器用な芸当をする奴である。
「どうしたっ!?はずれたぞっ!?」
 はずれた……?
 何が?
 あたしは余裕の表情で、再び呪文を唱え出す。
「まぐれで二度も仲間からの攻撃は避けられんぞ」
 そう言ってあたしとガウリイを交互に見る国王。
 彼は大きな勘違いをしている。
 あたしは何故あの呪文を唱えたのかを。
 国王が再び青白い剣を生み出した瞬間。
 ………………………!
 遠くで聞こえる微かな炸裂音。
 そして。
 何かがこちらへと近寄ってくる音が続いて聞こえてくる。
「しま……っ!」
 国王がこちらの思惑に気付き振り向いた瞬間。
「烈閃槍(エルメキア・ランス)!」
 あたしの続けざまに唱えた呪文が直撃する!
 魔族と同化していようがこの呪文を受けてノー・ダメージで居られるわけはない。
 たまらず倒れ込む国王。
 そして――
 ざしゅっ!
 ガウリイの一閃が、国王の腹を切り裂いていた。
 国王は大きく目を見開いた。
 ゆっくりと自分の受けた傷へと目を移し、夢を見ているかのような目つきでその部分へと手を当てる。
「なぜ……わしは……」
 そして、何かを訴えかけるような目でこちらを見る。
 あたしは黙ってそれを見つめ返す。
「…………………………」
 最後の言葉は、声とはならなかった。
 国王はただ確かに何かを言って、目をゆっくりと伏せた。
「借り物の力で……俺達は倒せないさ……」
 ガウリイは静かに呟いた。
 無機質な通路はあまりにも小さな呟きを反響させることは出来なかった。
 暗い通路にしばらく沈黙が続いた――と、言いたいところだが、雰囲気に浸ってる暇はない。
 ずどどどどどっ!
 近付いてくる音はどんどん大きくなってくる。
「ガウリイ、感傷に浸るのは後よっ!」
「おっ、おいリナっ!
 お前何をやったんだっ!?」
「ろくでもないこと」
「……いつものことか」
 ぬわにぃぃぃぃっ!?
 とことん問いつめてやりたいところだが、今はそれどころではない。
 とっとと逃げ出さないと、とんでもない目に遭うのは間違いなしである。
「アメリア!ゼル!準備は良いっ!?」
 答える代わりに二人はこくりと頷いた。
 あたしはガウリイの手を引っ張ったまま、アメリアとゼルにしがみつく。
 その瞬間、二人の呪文が発動し、あたし達四人は宙に舞う。
 風の結界付である。
 これで多分何とかなるとは思うのだが……
「うどわぁぁぁぁっ!!
 りっ、リナっ!
 まさかろくでもない事ってアレじゃあないだろうなっ!」
「アレって?」
 あたしはすらっと、とぼけて聞き返す。
「水だ水っ!
 あの津波と言うのさえ生ぬるいよーなどとーの勢いがある大量の水だっ!」
 そう。あたしの呪文は真っ直ぐな通路を直進し――って、今は説明している場合ではないっ!
「翔封界(レイ・ウィング)!」
 あたしの増幅させた呪文をゼルとアメリアの呪文に掛け合わせ、一気に元来た道へと飛び去る。
 風の結界で外とは遮断され、音は聞こえにくいはずなのだが、はっきりと水の音が聞こえたりする。
 ちらりと振り向くと、辺りの通路を軋ませながら、白い波を立てながらこちらへと突き進む大量の水!
 船の船倉にいきなし大穴が開いたような状態だと思って貰えればよい。
 うーみゅ。覚悟はしてたものの、やっぱし怖いもんあるなー、これは。
「だから無茶だって言ったんですっ!」
「やかましいわよっ!アメリアっ!
 文句言ってる暇があるならその分術に集中しなさいっ!
 だいたい出来ることはないかって聞いたのはあんたでしょーがっ!」
「ここまで無茶したいとは言ってませんっ!」
 今更泣き言を言うアメリアを無視し、あたしは術の制御へと集中する。
「氷結弾(フリーズ・ブリッド)!」
 術の制御の片手間にゼルが呪文を放つ。
 生み出された青白い光の球はどでかい音を立てながら直進する水に直撃し――凍りつかせる。
「さすがゼルガディ……
 ああっ!もう壊れてるぞっ!」
 こういう魔法オンリーの展開になると役に立たないガウリイがあたしにしがみつきながらそう言った。
 当然である。
 氷結弾にはこれほどの勢いのある水を凍りつかせて止められるほどの威力はない。
 しばし真っ直ぐの道を突き進み――見えたっ!
 あたしは玉座へと続く出口を発見し、そこを突き破った。
 それとほとんど同時に、地下通路に大波があたし達が先程まで居た場所を飲み込んだ。
 予想通りというか、ここまでは水が来ない。
「とりあえず……終わったみたいね」
 あたしはそう言って、床にへたり込んだのだった。

「もう二度とお前の案にはのらん……」
 とりあえず一息ついて、開口一番にそう言ったのはゼルガディスだった。
「何言ってんのよ。
 こーして全員無事だったんだし、男がぐちぐち細かいこと言わないっ!」
「細かく無いぞ……ちっとも……」
 うるさいなぁ。
 助かったんだからいーじゃないか。
「で、事情は俺一人聞かされてないんだが……」
「ガウリイは戦いの真っ最中だったし、説明しようにも出来なかったのよ。
 ま、あのままじゃあいつまで経っても決着が付かない。
 ――とは言わないけど、長引くのは事実でしょ?
 そこで何とかしようと考えてたところ、通路の壁が湿ってたことから思い出したことがあるのよ」
「思い出したこと……?」
 ガウリイは訝しげにこちらを見る。
「そ。この城の作りを、よ。
 この城の真裏に何があったか覚えてる?」
「いや全く」
 …………………………………
 ……まぁ、そうじゃないかなーとは思っていたが……
「断崖絶壁とその下に流れる川」
「ふーん」
 ふーんってあんたなぁ……
 せめて『そんな物もあったよーな』ぐらいには覚えとけっ!
「で、更に思い出したんだけど、この城には他のお偉いさんには知られちゃまずい物が沢山あるじゃない?
 と、言うことは、普通は証拠隠滅するための仕掛けを作っとくもんなのよ。
 その仕掛けってのが、川の流れを地下から入り込ませ、全てを水で流す――ってもんだろうと思ってね。
 ほら、昨夜忍び込んだ場所も地下だったでしょ?
 それにさっきの地下通路も、かなりの深さだったし」
「まぁ……確かに結構深いだろうなとは……」
「そこから先は聞かない方がいいですよ……」
 隣でぼそりとアメリアが言った。
「いや……そー言われると聞きたくなるんだが……」
「んじゃ続き話すわよ。
 ま、今までのパターンから言って悪役というもんは得てして自爆というもんが好きだろーと思ってね。
 あの地下通路にも多分あるだろうなーって思ったんで呪文で直進させてぶち壊したの」
 それであたしは指向性のある獣王牙操弾(ゼラス・ブリッド)を唱えたのである。
 本当は音に注意を逸れて動揺したところを、ではなく、本当に水が押し寄せてから動揺すると思っていたのだが、そこまで追いつめられてから闘わなくちゃいけない作戦だったことをばらしたらきっとうるさいので黙っておくことにする。
 いくら水という物質を介した物で死にはしないとは言っても所詮元人間。
 びびってパニクること請け合いである。
 ……事実予想していたあたしも一瞬パニクったし。
 しかし、ガウリイは何故かそのあたしの言葉に顔を青ざめながら、
「お前……多分あるだろうなー、程度の考えで俺の背中に向かって呪文ぶち放したのか?」
「やだなーガウリイ。
 ガウリイの背中に向かってじゃないわよ。
 通路に沿って呪文を放ったらたまたまガウリイの背中があっただけで」
 言ってぱたぱた手を振るあたし。
「同じ事だっ!」
 そうかなー?
 ずいぶん違うと思うんだけどなー。
「しかし……
 あの地下通路が川へと続いていたから良い物の……そうでなかったらどうする気だったんだ?」
 ゼルが呆れたように呟いた。
「まぁ、それはその時に……」
『おい……』
 あたしの言葉に同時にツッコミを入れる三人。
 ま、実際の所、あの地下通路が川に繋がっていなかったという可能性は実に低かった。
 先程言った悪役の王道パターン、と言う意味もあるが、なにより、国王自身の言葉が確信を与えてくれた。
『じゃがな……力で負けると思ってはおらんよ。
 怖かったのは権力を失う事じゃ』
 力で負けるとは思っていないのなら、何故ここに逃げ込んだのか?
 そう。権力を失いたくなかったからと彼は言っている。
 しかし、地下通路からこの城を抜け出しただけで権力を守ることは出来るのだろうか?
 もちろんそんなことは不可能である。
 他の国が調べに来てすぐにばれる。
 と、言うことは――ばれなくなるような仕掛け、つまり証拠を全て流し去る仕掛けを発動装置か何かがあそこにあったはずである。
 発動装置がそこにあると言うことは、得てして川が近いと言うことになる。
 つまり、あの状況で地下通路が川へと続いていなかったというのはまず無かっただろう。
 結局繋がっていたしね。
 そして、本来の発動方法ではなく、魔法で強引にこじ開けたため、恐らく他の証拠品があるところまで水は行ってないだろう。
 なぜならもし何かの間違いか偶然で亀裂が入り、水が流れ込んできたとき、差し止めることも出来ずに研究したもんが全て流されて行くと言ったらただの間抜けである。
 いくつかのブロックに分け、閉鎖され、他の区画は無事だろう。
 では何故その事を皆に説明しないのかと言うと――反応を見るのが楽しいからである。
 ま、いつまでも楽しんでるわけにもいかないので、あたしは一同を見渡しこう言った。 
「実は……困ったことがあるわ」
 ……賢明な読者諸君ならすでにお気付きのことだと思うが――
「知ってる」
「リナさんの性格の問題と」
「胸がないこと」
 どかめきばきっ!
 あたしは迷うことなく三人を蹴り飛ばした。
 あんたらはぁぁぁぁっ!
「じょっ、冗談ですってばっ!」
「そっ、そうだぞっ!この場を和ませようと……」
「やかましいっ!
 どーいう思惑があったにせよ、今の発言は万死に値する!
 ――って、言うところだけど、今はそれより大事なことがあるのよ」
 ずざざざざっ!
 真面目な口調に戻ったあたしに反応するかのように、三人が一斉に後ずさる。
「リナさんが……さっきのわたし達の発言を許してる……?」
「不吉な……」
「今まで旅してたけど、初めてのよーな気がするぞ……」
 何故か額の汗を拭いながら、呟く一同。
「どーしても痛い目みたいってんなら止めないけど……」
「いっ、いや、いいっ!」
 慌ててぶんぶか首を振る一同。
 あたしはこほん、 と咳払いをし、
「ま、別にさっきの発言許す気はないから安心しなさい」
「いや……安心できんぞ……それは……」
 何やら呟くゼルだが、あたしは無視して続ける。
「ともかく、困ったことってぇのはこの国の企みを第三者にどーやって説明するかなのよ」
 あっさり言ったあたしの言葉に、一同はまともに顔色を変える。
 そうなのである。実はこれが今一番頭の痛い問題である。
「まさか……リナ、お前考えてなかったとか……?」
 一同がすがるような目つきであたしを見るが、あたしは沈痛な顔で首を縦に振った。
「どぉぉするんですかぁぁっ!?
 証言者は居ないですし、ここまで城壊しまくって、そのまま逃げるって訳にはいきませんよっ!?」
 アメリアが頭を抱えながらあたしへと詰め寄る。
「そーなのよねー。
 逃げても指名手配されてるし、すぐ疑いはこっちへ向くだろーし……」
「疑われなきゃ逃げる気だったのか……?」
 頭を掻きながら言うガウリイ。
「当たり前じゃない」
「……………………………」
「ま、他にも考えてあるには考えてあるんだけど……」
 あたしは頭を掻きながら、呟いた。
「なんだ。脅かさないでくださいよぉっ!」
 心底ほっとするアメリアの肩に手を置き、あたしはにっこりと言った。
「アメリアに全てを任せるわ」
 ぴきっ。
 一瞬にして凍りつくアメリア。
 真面目な話、流れの魔道師や傭兵であるあたし達より、社会的信用があるアメリアからの状況説明が一番だと思うんだけどなぁ……
「それって面倒なことを他人に押しつけるって言いません……?」
「言わない」
 あたしはきっぱりと言い切った。
 ふっ。言い切ってしまえばこっちのもんである。
 思った通り、アメリアは何やらぶちぶち頭の中で何かと葛藤しているらしい。
 ―――!?
 あたしは多数の気配を感じ取り、一瞬で謁見の間の入り口の方へと構えを取る。
 他のみんなも気付いたようで、それぞれ呪文、剣を構えた。
 気配は多数だが、どれも人間のものである。
 クローンの生き残りかそれとも――
 やがて扉が思い音を辺りに響かせながらゆっくりと開いた。
「こんな所で何をしているっ!?」
 扉の向こうには、今一番会いたくない奴ら。
 つまり――どっか他の正規兵。
 他の兵だとわかったのは、単に鎧など、服装のデザインが違うことからなのだが……
 ああああああああっ!!
 とことんまづいっ!
 今までの騒ぎを聞きつけ、近隣の国が調べに来たんだろーけど、辺りにはばたばた人が倒れてて、おまけに国王の遺体まで転がっている。
 その上剣を抜き放ち、魔法を唱えている最中の指名手配四人組が居たりする。
 これ以上ないシチュエーションである。
 これで疑うなと言うほーが酷である。
『いやぁ、おかまいなく。別に怪しい者じゃないですから。
 ただこの国のくそたわけた計画をぷち壊しに来ただけですんで』
 なんぞと言っても、もちろん信じちゃくれないだろう。
「……どーすんだ……?」
「……どーって言われても……どーしよ……」
 隣で剣を構えたまま間抜けな声をあげるガウリイに、同じく間抜けな声で返すあたし。
「何をしているかと聞いてるんだっ!?
 ここで一体何があったっ!?
 その玉座の人物はお前らがやったのかっ!?
 御上にも慈悲はある!
 自分たちが行った非道を認め、全てを話すというなら命だけは――」
「うるさいって。あんた」
 ぼぐぉぉっ!!
 なんだか矢継ぎ早にしゃべりだす兵士の後ろから、聞き覚えのある声が兵士を殴りつけた。
「ああっ!?隊長っ!?」
 あっさり気絶した隊長さんを慌てて支える兵士一同。
 それらの様子を無視し、隊長を殴りつけた人物がこちらへとやってくる。
「ちわっす。ども。元気してた?」
 とことん陽気で気楽な口調で、レニーマルト村へ返したはずの人物――レミナは片手をあげてこちらへと手を振った。
「ななななっ!?なんでっ!?
 あんた帰ったんじゃ……?
 いやそれより、なんでこいつらと一緒にいんのっ!?」
 しかしレミナはあたしとは対照的に冷静にちっちっちと指を振る。
「あたし素直じゃないもんで」
 ……………………あのなぁ……ねーちゃん……
「あの後、このまま帰るのもなんだかしゃくなんで、他の国へ事情説明に行ったのよねー」
 ……しゃ……しゃくってあんた……
 それにしても他の国へ事情説明に言った割には異様に早い気が……
 まぁ、大して大きな国ではないので、別れた後すぐに向かえばなんとかなるかも知れないが。
「……コネでもあるのか?
 他の国から来た、見ず知らずの娘の説明など、聞こうとしないのが普通だろう?」 
 溜息をつきながらゼルが言う。
 隣で一瞬眉をひそめるアメリアだが、今は問いつめる気はないようだ。
「あー。それねー。
 だいじょーぶ。いくらなんでも、ジャグさんとリナさんの会話聞いてたら、信じるしかないから」
「ジャグとあたしの会話って……なんであんたらの方で聞こえんのよ?」
 気楽にぱたぱたと手を振るレミナに、あたしは眉をひそめた。
「と・う・ちょ・う(はあと)」
 盗聴って………をい。もしかして……
 あたしははたはたと身の回りを確認してみる。
「ショルダーガードの裏」
 腕を組みながらにやにやというレミナの言葉にあたしはその言葉通りにショルダーガードの裏を手で探る。
 やがて、こつん、 と軽い音がする。
 それをつまみ出し、あたしはジト目でそれを見た。
「レグルス盤――」
 ぽつりとその物の名前がこぼれ出る。
 前にも言ったが、レグルス盤とは、コインのような形の、二枚一組の通信用アイテムである。
 片方がちょいとした呪文を唱えれば、もう片方で声が聞こえるという物なのだが……
 いつの間に付けたんだ。あんたは。
「正解♪」
「正解ぢゃないぃぃぃぃっ!
 村長の時といい、あたしに対してといい、人のプライバシーっとかってもんを考えたことないのっ!?」
 その言葉にレミナぽんっと手を打ち――小首をこくんと傾げながら考え込む。
「考え込むなっ!」
 つい叫ぶあたし。
「だぁぁぁぁぁぁっ!
 貴様らっ!こっちを忘れるんじゃあなぁいっ!」
 その叫び声に振り向くと、いつの間にやら復活した隊長さんの姿。
「ああ。そう言えば忘れてたわ」
「レミナ殿……」
 だくだく涙を流す隊長さん。気持ちはわからんでもない。
「ま、それはおいといて。
 この方達がこの国の企みを潰して下さった方々。
 決して怪しい者じゃあないから」
 そう言って、レミナはあたし達の方へ手を向けて兵士達の方へ示す。
「そう言うことならそうと言えば、我らとてあれほど声をあげんでも良かったものを……」
 なにやらぶちぶち言う隊長さんだが、レミナはきっぱりと言った。
「あたし、過ぎたことぶちぶち言う人嫌い」
「………う゛………
 それはジャグ殿の処遇に関してのことも含まれているのか……?」
「もちろんそーです」
「お、おい。ジャグの処遇って……どういうことだ?」
 今まで沈黙を守っていたガウリイが問いかける。
 ……まぁ、沈黙を守っていたと言っても、成り行きを見守っていたのか、それとも話についていけなかっただけかは……別のことである。
「えーと……話すと長くなるけど、とにかく一回この方達の国の方で面倒見て貰えることになったんで」
「単に重要参考人だからなだけだっ!」
 ひょいと隊長さんを指差して、からから笑うレミナに、顔をそっぽへ向けながら文句を言う隊長さん。
 はっきし言って悪いが、照れてるよーにしか見えない。
「……酷い扱いしたら……リナさんあなたの国にけしかけるから♪」
「……それは……非常に困る……」
 どーいう意味だ……?あんたら……
「まぁ、それはともかくとして……わたし達への誤解はないんですね?」
 ほっとした様子でアメリアはレミナ達の方を見て言った。
「もちろん。あたしが説明しておいたし、レグルス盤で話も聞かせたしね」
「……そー言えば、いつ頃から盗聴してたの……?」
 あたしの言葉にレミナは面白いものを見るよーな目であたしを見る。
「寝言を言ってる頃から……」
「変態か。あんたは」
 ついあたしは突っ込んだ。
「冗談だって。本当は門番の人と話をしている頃からジャグさんと話をしていたところまで。
 後は何か知らないけど壊れちゃって音が聞こえなかったのよね」
 壊れた……?
 ジャグと別れてからは……ああ。そっか。
 あの後あたしは結界に閉じこめられたからだろう。
 普通の空間とは別の空間なわけだから、通信が出来なくなっても不思議ではない。
 単なる偶然かも知れないので、それは詳しく調べてみないとわからないが。
「まぁ……なんとか終わったみたいね」
 そう言ってあたしは微笑んだ。
「何言っての?リナちゃん。
 あなた達は重要参考人なのよ?しばらく取り調べか何かで忙しくなると思うわよー」
 ちちいっ!
 後味の良い終わり方にして雰囲気に浸ってる間にうやむやにして逃げようと思ったのにっ! 
「そう言うことになるな」
「帰りたいよぉ……」
 あたし達の手を引く兵隊達に囲まれながら、ぽつりと呟いたのだった。
「――許せよ。
 我らとてあんたらを我が国に入れるのは断腸の思いなのだ……」
「だったら連れてくんじゃなぁぁぁぁぁいっ!!」
 がごっ!
 あたしは心底失礼な隊長の後ろ頭に、膝蹴りを入れた。
「ああっ!?隊長っ!?」
 ……あっさり気絶すんなよな……
 あたしは床でのびてる隊長を見ながら、溜息をついたのだった。

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7903レアードの狂乱 エピローグ白いウサギ E-mail 9/23-02:54
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エピローグ


 後日。泣きたくなるほど長かった取り調べも終わり、あたし達は解放された。
 暗く湿った部屋に閉じこめられ……るよーな事はなかったが、同じ所にずっと居れば外に出たときの開放感は一押しである。
 とりあえず落ち着いた頃に、ゼロスのことはアメリアとゼルガディスには話して置いた。
 彼らには隠し事はしたくないし、知る権利がある。
 アメリアなんぞもろに怒り心頭だったが、今更起こりだしても当のゼロスはすでにどこかに消えているだろう。
 結局、起こるだけ怒って話はそれまでとなった。
 ……どーでもいいが、あたしに対して怒ってどーする、アメリア。
 ゼルガディスの方はと言うと、『お前が良いならそれで良い』と投げやりな態度であった。
 ま、あくまで表面上は、である。
 そっぽを向いたその顔の眉間にしわが一本増えてることにあたしは気付いていた。
 やはり二人とも対応はそれぞれではあるが心配してくれているらしい。
 他に、ジャグ=グルーガンの方だが、しばらくここで滞在するらしい。
 まぁ……まだまだ色々、考えたいこともあるんだろう。
 レミナの方はと言うと、何故かジャグと気が合うらしく……と、言うより、レミナが一方的に面会しに行って、からかっているらしく、しばらく村には戻らなかったのだが、やはり母親の方が気になるらしく、帰路につくこととなった。
「いろいろありがとうね。助かったわ」
 そう言ってレミナは微笑みながらあたしの方へと手を差し出す。
 あたしは軽く握り返して苦笑した。
「あまり役に立たなかったけどね。あなたにとっては」
 事実、彼女の父親はすでに手遅れだったのである。
 つい先日、酒瓶を5、6本もってレアードの城へと出向いて別れを済ませていたが、彼女の目が赤かったのは、夕焼けだけのせいじゃないことをあたしは知っている。
「とんでもない。
 どうせいつかはわかることだったんだし、すっきり出来て良かったわ」
 そう言ってカラカラ笑い出す。
 彼女の性格もだいたい掴めてきたので、照れ笑いなのか、強がりの笑いなのか、はたまた地なのか、なんとなくわかってきた。
 今回はおそらくそのどれも当てはまるだろう。
「じゃ、あたしはこれで。
 母親ほっぽっといたまんまだからねー。
 これ以上帰らなかったら何言われるか……」
 ふと一瞬、本気で怯えたように見えたのはあたしの気のせいだろうか。
「元気でな」
「あなた達も」
 ガウリイの言葉にレミナは微笑んでそう言った。
 しばらくその後ろ姿を見送ると、くるりと背を向ける。
 ………………?
「おーい、隊長さーんっ!」
 大声を張り上げながら、あたし達と同様見送りに来ている兵隊の隊長へと声をかける。
「ジャグ君に、いつまでもうじうじしてると、またからかいに来るからって伝えといてねっ!」
 ……どーやらジャグも偉いのに気に入られてしまったよーである。
「了解したっ!」
 隊長さんも大声を張り上げてそう言った。
 その言葉に満足したように微笑むと、レミナは今度こそ姿を消した。
 ……あの様子だとすぐに戻ってきそーなもんだが……
「さて、と。
 アメリア様。そろそろ行きましょう」
 馬を引いたこの国の兵士の一人がそう言った。
 結局、取り調べをしている最中、当然と言えば当然なのだが、アメリアの素性がばれた。
 それでまぁ、このまま帰すなど、国の面子がたたんと言うことで、お供が数人ついたのである。
 アメリアはまだしばらく旅をしたいようだったが、セイルーンで心配もしているだろうし、何より相手の気持ちもわかるので、渋々承諾したのである。
「じゃあ、わたしはこれで。
 いつでも遊びに来て下さいね」
 そう言って、アメリアはマントをばさっと風にたなびかせ、颯爽と馬へまたがる。
「いいのか?リナが行っても」
「う゛っ……そう言われると……」
 ガウリイが言った言葉にアメリアは呻く。
 アメリアは頬に汗なんぞを垂らしつつ、
「……あ、あまり無理に来てとは言いません……」
「よぉぉぉしっ!
 そこまで言うんなら、絶対、無理矢理、都合付けてでも行ってあげるわっ!」
 あたしはびしぃっ! とアメリアを指差すとアメリアはまともに顔色を変えた。
「……あは、あははは……
 ………お願いですから暴れないでくださいよ……」
「うふふふふ(はあと)」
「あは、あはははは……」
 白々しいあたしの笑いとアメリアの乾いた笑いがしばし重なった。
「とっ、とにかく、失礼します。
 ゼルガディスさんも。お元気で」
「お前もな」
 そう言ってゼルガディスは片手をあげる。
「はいっ!」
 アメリアは元気良くそう言うと、兵隊と共に、去っていった。
 しばしその姿を見送って、土煙も見えなくなった頃、あたしは意地悪な瞳でゼルを見た。
「いいのかなー?
 あんなあっさり別れちゃって。追いかけないの?」
「お前……俺がアメリアをさらっていくこと期待してるだろ……」
「うん」
 あたしはきっぱりとそう言った。
 だってそっちのほーが面白いじゃないか。
 正直なあたしの言葉に何故かゼルは溜息をついた。
「……さらう気はない……」
 をを!?
 何か一瞬悟ったよーな目をしてたぞっ!?
 さてはあたし達とはぐれてた時なんかあったなっ!
「ゼルー。あたしとあなたの間に秘密なんて無いわよね♪」
 そう言って、ゼルの肩に腕を廻すあたし。
 面白いほど汗がだくだく噴き出している。
「やめろって。ゼルガディスが困ってるじゃないか」
 隣で呆れたようにガウリイが言った。
「えー?何か困ることでもあるのかなー?」
 あたしはそれを逆手にとって、ゼルを覗き込むが、ゼルはあっさりあたしの腕からするりと抜け出すと、背を向ける。
「とにかく、俺はまだ旅を続けるんでな。
 放って置いてもらおう」
 そう言って顔だけこちらを向ける。
 ちっ。逃げられたか……
「わかったわよ。頑張ってね」
 そう言うとゼルガディスは軽く手を挙げた。
 しばらくするとその姿も見えなくなって、何となくガウリイと顔を見合わせた。
「さて――と。
 どーしましょーかねー」
 そう言って腕を組んで空へと突き上げ、軽く一伸び。
 ついそのまま顔も空へと向ける。
 うーん。久々に解放されたせいか風が気持ちいい。
「そうだなー」
 ガウリイもつられて空を見上げた。
 もこもことのんびりとした形の雲がゆっくりと動いていく。
 太陽の光を受け、その姿はくっきりと明るく――
「ま、歩きながら考えましょーか」
 あたしはガウリイの方へと向き直って、そう言って微笑んだ。
「……そうだな」
 荷物を担ぎなおして、再び空を仰ぐ。
 前髪が静かに揺れた。
 とりあえず、気持ちのいい一日になりそうである――

                (レアードの狂乱:完)

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7904レアードの狂乱 あとがき白いウサギ E-mail 9/23-02:58
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  おまけ&あとがき


スレイヤーズ会議室

リナ(以下:リ)「とおとおやってきましたっ!スレイヤーズ会議室っ!
          今日の司会進行はこのあたし!リナ=インバースが務めさせて――」
ガウリイ(以下:ガ)「おいリナ、この台本には俺って書いてあるぞ」
ゼルガディス(以下:ゼ)「出来るのか……?お前に……」
アメリア(以下:ア)「ミスキャストってこう言うのを言うんですよね」
リ 「そういうわけであたしに変わることにしますっ!
   みんなが反対するならガウリイに変わるけど……
   あたしが司会進行するのに賛成する人っ!」
ア 「そう言うことなら……」
ゼ 「異議はない」
ガ 「お前らなぁ……」
リ 「はいはい、ガウリイうるさいよ。
   今日の議題1!この葉書はレアード国、レニーマルト村のスポット君……スポット……」
ア 「誰ですか?それ」
ゼ 「何でも白ウサが最初に書いたプロットじゃ出る予定だった奴らしい」
ガ 「あ、そうそう。確かレミナの飼い犬だったんだよな」
ゼ 「ま、早い話が没キャラ1って所だな」
リ 「まぁ……名前は偶然の一致らしいけど……」
ガ 「誰と一致したんだ?」
ゼ 「忘れといてやれ。本人が哀れだ」
ア 「確かに……ちょっと可哀想ですよね」
ガ 「……?
   で、手紙には何て書いてあったんだ?」
リ 「自分を主張するでっけぇ手形一つ」
ゼ 「おい……」
ア 「そりゃ犬が手紙書けるわけないですよね……」
ガ 「じゃ、なんでそんな手紙選んだんだ?リナ」
リ 「そんなこと言ったって、この黒い箱の中から適当に抜き取って会議をしろって言われてたんだから、
   仕方ないわよ」
ゼ 「抽選のプレゼントじゃないんだぞ……」
リ 「プロデューサーに文句言ってちょーだい。
   さ、次行くわよ。じゃ、次はガウリイが抜いてみよっか」
ガ 「おうっ!これでいいか?」
リ 「どれどれ……えーと今度は悩み相談のコーナーの奴ね」
ア 「リナさんに悩み事の相談っ!?」
ゼ 「なんて物好きな……」
ガ 「人生捨ててるよな」
リ 「あんたら……血ぃ見るわよ」
ア 「怖いです……ファンが減りますよっ!リナさんっ!」
ゼ 「とにかく先に進めてやれ、ここで暴れたら召集がつかなくなるぞ」
リ 「う……えーと……ライゼール帝国のサイラーグの元居住者さんから。
   『僕が住んでいたサイラーグが消えたり現れたりして困ってます。どうすればいんでしょう?』」
一同沈黙 
リ 「ま、まぁ過ぎたことはしょうがないって言うし……」
ア 「そ、そうですよねっ!いつまでもくよくよしてちゃ駄目ですっ!」
ゼ 「いや……俺達当事者が……むぐっ!?」
リ 「しーっ!黙ってればわかんないんだから余計なこと言わないのっ!」
ア 「そうですっ!目撃者は生きてるはずないんですからっ!」
ガ 「巫女が恐ろしいこと言うなよな……」
リ 「あはははは……
   次いこ。次。んじゃゼル選んで」
ゼ「俺が選ぶのか?じゃ……これを」
リナ「はいはーい。次はゼフィーリアのル………うぎゃあああああっ!!烈火陣(フレアビット)!」
  ちゅどどどどっ!
一同「うどわわわわっ!!」
ア「はがきが燃えて……」
ゼ「もう読めんな」
ガ「どうしたんだ?リナ。そんなに震えて」
リ「……………いや……………別に……………」
ゼ「『別に』で手紙燃やす奴がいるか」
ア「そうですよ。送ってくれた人に失礼ですよ」
リ「う゛っ。すみませんっ!すみませんでしたっ!だから許してくださいっ!」
ガ「リナが……謝ってるっ!?」
ゼ「不吉な……」
ア「明日あたり魔王でも降って来るんじゃないでしょーか」
リ「あんた達……聞こえてるわよ……」
ガ「まあまあ。別に悪気は……ないわけじゃないがあるわけでもないかもしれんだろ?」
ア「ガウリイさん……フォローになってないです……」
ゼ「で、結局誰からだったんだ?さっきのは」
リ「……お願いだから触れないで……」
ガ「リナが……怯えているっ!?」
ゼ「面妖な……」
ア「明日あたり竜破斬(ドラグスレイブ)でも降って来るんじゃないでしょーか」
リ「あんたたちねぇぇぇぇっ!!同じパターンであたしを挑発すんじゃないっ!」
ガ「冗談だっ!リナっ!落ち着けっ!」
ア「そうですっ!ですから次の手紙いきましょうっ!はいっ!リナさんこれっ!」
リ「……ま、まーいーわ。この話は後でたっぷりとしましょ」
ゼ「いや……俺はこの後またあてのない旅が……」
ア「わたしもセイルーンの政の手伝いが……」
ガ「お前らずるいぞ……」
リ「んっふっふ。逃げたら地の底まで追いかけるんでよろしく。
  つーことで次っ!
  カルマート公国、ニレーヴァのヴァイン=シュトライザーさん。質問のはがきね。
  『今回の話をみなさんそれぞれ振り返って作者(白いウサギ)に何を言いたいですか』」
ア「はぁ……言いたいこと、ですか」
ゼ「精進しろ」
リ「いや……そう言うことを聞きたかったんじゃないと思うな……」
ガ「よくわからん」
ア「わたしは……ゼルガディスさんと一緒に戦ったシーンをカットしないで欲しかったです」
リ「いや……あたしの一人称だからそれはちょっと……」
ゼ「俺は『出番を増やせ』それだけだ」
リ「……今回あんまあたしと一緒に行動してなかったもんねー……」
ア「そう言うリナさんは?」
リ「あたしを何度殺しかければ気が済む」
一同沈黙
ゼ「今……殺気こもってなかったか……?」
ア「……気のせいじゃなければそーです……」
ガ「でもこれから確か白いウサギここに来るんだろ?そこで文句を言えばいいじゃないか」
リ「来るのっ!?
  んっふっふ。首洗ってきなさいっ!白ウサっ!」
ア「ひえええええ……」
ゼ「そう言えば遅れるから、と、確か手紙を預かってたんだが……ああ、これか」
リ「ちょいパスっ!
  なになに……
  『前略皆様 今回会議室に出席予定だったのですが、命の危険を感じたので、帰らせていただきます』
  ……………………………」
ア「さすがに逃げ足だけは早いですね……」
リ「だぁぁぁぁぁっ!うぉのれ許せんっ!」
ガ「落ち着けって!リナ」
ゼ「……怒りがぶつけられなくなったな」
リ「……ふぅっ……」
ア「リナさん……?」
ガ「何だ?今の意味ありげな溜息は」
リ「怒りを手近にぶつけることにしたわ。つーわけであんた達覚悟しなさいっ!
  さっきはよくも言いたい放題言ってくれたわねっ!」
ガ「ちょっ!?おいっ!」
ア「まさか白ウサさんって……」
ゼ「俺達への怒りを白ウサに押しつけようとしたことを読んでいたのかっ!?」
ア「そんなこと考えていたんですか……ゼルガディスさん……」
ガ「お前ら喋ってないでリナを止めろっ!」
リ「もう遅いっ!怒りの竜破斬(ドラグ・スレイブ)ぅぅぅぅぅぅぅっ!」
ガ&ア&ゼ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ちゅどごぉぉぉぉんっ!
リ「ふうっ。すっきりした」
会議室崩壊のため会議終了。



超巨大あとがき


(劇中、夏休み後半)
一人の少女が何やら上機嫌で机の上でものを書いている。私はちらりとそれを覗き込んだ。
『夏休みの宿題 読書感想文』
宿題である。本のタイトルは、『魔女狩り』と書かれている。
私は人の趣味にあえて口出しする気はないので、そのまま黙って見続けた。
少女は少し考えたような仕草をすると、おもむろに原稿用紙に言葉を書き始める。
『リナがこの時代にいなくて良かったと思いました。 以上』
…………………
「ふぅっ。これでよし(はあと)」
少女は爽やかな顔で額の汗を――
って、ちょっと待てぃっ!

白ウサ(私):『これでよし(はあと)』ぢゃないっ!!人の読書感想文の原稿用紙になに書いてんだっ!?
K(少女):いやー、真っ白だったから、書かなきゃいけないかなーって。 
白:だからってらくがきすんなぁっ!人の原稿用紙にっ!
K:だって、あたしのじゃ怒られちゃうじゃない。
白:……お前な……
K:で、小説の方は?
白ウサ:ふっ!よくぞ聞いてくれたっ!――って、誤魔化すなっ!
K:のってるくせに……後であんたの言い分はたっぷりと聞いてあげるから、とっとと進めなさい。
白:聞いてあげるって……悪いことしたのはこっちじゃないぞ……
K:後でって聞こえなかった?(怒気)
白:………………………

 するすると幕が下りてくる。
 しばらくガタガタ音が聞こえて――
 幕が上がる。

白:とうとう書き終わりましたっ!スレイヤーズ長編、レアードの狂乱(仮)!
K:何故に『仮』……?
白:うどわっ!突然現れるなっ!(どうやら仕切り直すことにしたらしい)
K:何言ってんのよ、あんたの小説のあとがきにはしょっちゅう登場してたでしょ?あたしは。
白:いや……小説書いたの久しぶりなんで、誰もお前のことは覚えてないと思うぞ……
K:ふっ。つまりあんたのぐーたらのせいであたしは忘れ去られたってわけね。
白:ぐーたらとはなんだっ!いちおー受験生なんだから去年と違って小説ばっか書いてられんわっ!
K:……で、小説書かない代わりにきちんと勉強してた……と?
白:う゛っ……そぉ言われるとちっともしてないよーな気もっ!
K:やっぱりぐーたらじゃない。
白:……まぁ……はずれてはいないかな……
K:泣くなよ、姉ちゃん。つーわけで、結局あたしは白ウサの妹です。
白:ま、自己紹介も終わったところで……
K:ストップ!
白:は?
K:よぉく見ると上に超巨大あとがきって書いてあるけど……
  ああああああっ!なにっ!?このページ数はっ!?
白:いや、ホームページにページ数はないぞ。本じゃないんだから。
  それにまだ書いてる最中だからどれくらいかわからんだろーが。
K:人がせっかくどっかのシーン彷彿とさせるセリフ言ってあげたってぇのに……
  じゃあ何で超巨大あとがきなんて書いてあるのよ……?
白:いやぁ、プロット書いた時点で絶対長くなるなーって思って。短く済んだらこの部分カットするから。
K:そういやまだ書き終わってないわね。この小説。書き終わったと言えるのはプロットだけ。
白:うくっ!?何故ここで読んでいる人には絶対解らないことをわざわざばらすっ!?
K:あんたが苦しむかなーと思って。
白:がふっ!
K:おー苦しんどる苦しんどる。……でもそうなると、『あとがき』じゃないわね。これは。
白:ふっ。細かいこと気にしてると楽しい人生送れないわよ。
K:ふっ。勉強しないと楽しい大学生活送れないわよ。
白:どちくしょうぅぅぅっ!!受験生にはとんでもないカウンターだぞっ!今のはっ!
K:あたしはまだ高校一年だもん。
白:それは受験生に対する挑戦と取っていいんだなっ!?いいんだなっ!?
K:目ぇイっちゃってるぞ。姉ちゃん。
白:ふっ……なんだか知らないけど母方の婆ちゃんの代から大学行ったことある奴一人も居なくて親戚からのプレッシャーがでかいんだよぅ……
K:……どんどん話がずれてくけどいーの?
白:はっ!?そーだったっ!これはレアードの狂乱(仮)の前書きだけどあとがきだったっ!
K:さっきも言ってたけどその『(仮)』って……?
白:あ、実はまだプロットしかあがってないでしょ?だからまだ題名も決定じゃないもんで。
K:……なるほど……ところで何であとがきから先書いてるの?
白:本編となる小説が詰まった。
K:をい……
白:いや……まぁだいたいの話はもう固まってるんで厳密に言うとそーじゃないんだが……
   なんかいまいち文のノリが悪いんで気分転換にあとがき書いてるだけ。
K:どんなあとがきだ……?
白:ま、いーから。じゃ、疑問点とかさくさく解消していくか。
K:では東京都練馬区の……
白:もういいって。そのノリは。会議室で止めとこ。な。
K:……まぁいーけど……
  んじゃ、その会議室でも出てきた最初の段階でのプロットの話にいってもらいましょーか。
白:あー……あれねー……
  つーか今ではもう完璧別もんの話になってるんだが……話すの?
K:うん。
白:んじゃあ一応大まかな筋書きを。
  リナ達道に迷ってレニーマルト村に着く。お宝のある洞窟へ行く。お宝ゲットしてどっかの邪教集団をぶちのめし、めでたしめでたし。
K:本気で大まかな……話全く想像できんぞ。おまけに本気で別もんの話だし。
白:だから言ったでしょ。
  あ、そうそう。この話ではジャガードが召還魔法の得意な人で、邪教集団にさらわれ、助けに行こうとしたレミナにリナ達が手を貸すって構図になってたんだけど……
K:そこで何か問題でも起きたの?
白:そーなんです。実はお宝のある洞窟でとある宝探し屋二人組と再会する予定になっていたんだが……
K:それって……
白:おそらくご想像の通り。プロット書いてる途中にスレイヤーズ14巻を読んだんだけど……
  14巻でああなっちゃった二人を出すのはどうかなーと……悩んだ末、登場を見送りました。
K:まぁ……確かに難しいものがあるかも知れんが……
白:ちょぉぉっと勇気いるなーって。
  ギャグの部分で掛け合いが生き生きしてるとかえって辛いもんがあったから。
K:なるほど……
白:つーわけで2、3日ぐらい悩んだけど、代わりにアメリア、ゼルの登場を決めた。
  久しぶりに四人組に会ってみたい気がしたし。
  ところがどうやって登場させるか悩んだんだな。
  で、結局アメリアはああで、ゼルはそうだったと。
K:代名詞多用しすぎじゃ……?
白:説明めんどくさいから。
K:さすがぐーたら……
白:ほっとけっ!
K:まぁいーけど。
  あ、そうそう。たまにオリキャラの名前で悩んでる人とか居るみたいだけど姉ちゃんはどうしてんの?
白:適当にひらめくままに決めるか、英和や和英の辞書からとか。
K:ほうほう。
白:あ、あとチラシから。
K:は……?
白:いや別にいっつもってわけじゃないんだが……この間チラシぱらぱら見てると使えそーなもんがいくつかあることを発見した。
K:……今回から……?
白:うみゅ。えーと、ジャガードはタオルだし、レアードは眼鏡だし、コンフォートはサンダル。ジャグ=グルーガンもグルーガンって工作用品セットだしなー。
K:全くわからん……
白:いや、わかられちゃ使えないってば。それで食い入るよーにチラシ見てたら母親に変な目で見られた。
K:そりゃそーだ。
白:サンダルや工作用品セットのチラシ食い入るよーに見る女子高生見りゃ怪しいとも思うわな。
K:後ろから金属バットでどつかれても文句言えないわね。
白:いや……さすがにそれは文句言うけど……つーか、別の意味でなら言えないままあの世生きそーだけど。
K:ともかくっ!こんなあとがき書いている中でもちょびっとずつ書いているのでいつの間にやら書き始めて10日以上経過してますがっ!
白:ばらすなぁぁぁっ!仕方ないだろっ!とことん長いんだよっ!今回の話はっ!
K:まぁ……毎夜遅くまで書いているのにまだできてないってのですぐわかるけど……
白:1日に平均文庫本で言うと30P前後、原稿用紙で言うと40Pのペース。(現時点)
  ああもうっ!書いても書いてもっ!
K:おまけにそれ、書かない日もあるから、実際書いてる日だけいれたらもっとなのよねー。
白:一応、調子とかがあるから。文章にも。
K:現在、ジャグを置いてけぼりしたところだけど、すでに文庫一冊に収まるか疑問だし……
白:まーな……本気でどうしようかと思ってるよ。今も。
K:さっきから何度も言ってるけど、これってあとがきって言うよりも、『なまがき』よねー。
白:それって……なんかヤだ……
K:でも書いた後じゃなくて、書きながら――つまり生で書いてるから……そーなるでしょ?
白:ならタイトル『超巨大なまがき』になおすか……?
K:……なんかぬるぬるしてそう……
白:寒気してきたぞ……
K:………………ま、無難にあとがきで……
白:そーだなー……うん。それが平和な気がするよ……
K:遠い目してるわねー。
白:ンじゃなまがきにするか……?
K:そんなもんに出演したくない。
白:別に出なくても私は一向にかまわんのだが………あ。うそです(はあと)
K:……怯えるなら最初から挑発するんじゃないわよ……
白:それはともかく。今回小説書いて手気付いたことがあるんだが……ガウリイ強すぎっ!
K:……まぁ……斬妖剣(ブラスト・ソード)のおかげで戦闘シーンがかけなくて困ってたみたいだけど……
白:そうっ!いきなり敵と剣咬み合わせようとしたら剣ごと断ち切るしっ!
  ……まだ光の剣の頃なら光の剣を抜かずにふつーの剣の状態で闘わせることも出来るんだが……
K:ないからねー。今。
白:マジで戦闘シーンが困りまくりました。武道大会程度ならすぱすぱ切り進んでも良いだろうけど、例えば国王戦になったとき、ずばっ! はい、終わり。ってわけにはいかないし。
K:そりゃそーだ。
白:それで受け流すための『壁』を作ったんだけど、それでもガウリイならその壁の流れすら読んでざっくりいかせそーだし……
K:ま、地下通路が狭かったからそれが上手く行かないって事になってたわね。
白:そう。狭い通路で剣ぶん廻すのがどれだけ困難なことか……
  玄関でバットの素振りしてたら傷つけて怒られた経験のある私はよくわかる。
K:……玄関で素振りして物壊す女子高生はあんただけだと思うけど……
白:おうっ!郵便受けもソフトボール投げつけてぶち壊したぞっ!
K:いや……そこで威張られても……
白:まぁ、ごくごく日常的なお話はさておいて。
  そう言えば今回も結構伏線張って置いたんですが、気付いた方はどれくらいいらっしゃるでしょーか。
K:わかるか。あんな推理ともこじつけとも区別が付かないもん。
白:……そー言われると身も蓋もないんだが……
  今回結構ヒント多くしたつもりだったんだけどなー。特にクローンのこととか。
K:しつこいぐらいに言ってたわね。
白:でしょ?途中クイズ番組か、これは。とか思ったりしたけど、ま、面白いからいっか、って。
  あ、それから今回一番来そうな質問が……
K:『ゼルとアメリアは二人で何をやって居たっ!?』でしょーね。
白:うみゅ。リナの一人称という形式上、隔離されてるときの描写は無理だからなー。
K:そのくせラストとか何かあったぞーってな雰囲気出してるしね。
白:おうっ!別れの時なんかモロにっ!
K:で、実際は何があったの?
白:知らんっ!
K:をい……まさか……何にも考えてないとか……?
白:詳しいことはちっとも。
K:おい……作者……
白:まー、だいたい二人で何とかコピーと魔族撃退して、何となく気持ちの確認だか、旅の理由だかなんだか言いたいこと言い合って、すっきりしたって、とこじゃない?たぶん。知らないけど。
K:作者が『だいたい』だの、『たぶん』だの、『知らないけど』、って言葉を使うんじゃないわよ……
白:斬新で良いでしょ?
K:すでに反則です。レッドカード。
白:あうっ!?退場っ!?何故っ!?
K:わからないほーがどーかしてると思うけど……ともあれ、外伝かなんかで書く気は……
白:現時点ではないっす。
K:そ、そお…………
  ところで、今回ゼロスが出てたけど。
白:あー。あいつね。
K:なんで出てきたの?
白:本編で言わなかったっけ……?『ファン・サービス』だって。
K:………あ……そう……アレは本音だった訳ね。
白:そです。まー、とある方にも出してくれだの、リナと戦わせろだのとご要望がありましたし。
K:で、いくら何でも本気で殺し合うわけにもいかないんで砂時計という限定を作った、と。
白:まーねー。ゼロスなら別にリナだからと言って手加減するよーな奴じゃないだろーし、リナだってそうでしょ?
  だからって二人の戦いの決着書くわけにもいかなかったし。
K:ほぉ。ところでジャグ=グルーガンとレミナ=コンフォートってくっついたの?
白:げほっ!……お、お前なー。そーいうことをズバリと聞くか?ふつー。
K:遠回しに聞くのは嫌いなのよ。
白:そーすれば登場文字数が増えるのに……
K:じゃあ、次回からそーする。
白:ごめん。悪かった。やめてくれ。打つのは私だ。疲れる。
K:で、真相は?
白:知らんっ!……って、ああっ!悪かったっ!このパターンは二回目だったっけなっ!
  だからそのバットを降ろせっ!
K:パターンの回数が問題じゃないんだけど……
白:と、とにかく。知らないって言うよりは想像に任すと言うことで。何となく気ぃあいそーだったんで。
K:ジャグが鬱陶しがってるところをレミナが追いかけ回してそーよね。
白:そう。あの人、人をからかうのには命を懸ける人だから。
K:本気で悪趣味な……ジャグって傷心してるんじゃなかったっけ……?
白:だからこそ構って元気出してほしーと、からかいながらも深い言葉を言ってる。………と、思う。
K:あくまで言い切らないのね。あんたは。
白:最初は単に、悲劇のヒロイン、常識のある優しい女性。かなー?とプロットでは適当にセリフ書いてたけど……いつの間にひねくれたんだか……
K:本編見るとそんな素振り微塵も無いわよ。
白:あら、びっくり。
  …………悪かったっ!悪かったから竹刀降ろせっ!
K:……我が家にはいくらでも武器あるからねー。家族皆、武道だの、スポーツだの何かしらやっているから。
白:父ちゃん家にいなくて家には四人の女しかいないってぇのに、プロ野球の批評だのやってるからなー。
K:そうそう。打球が詰まってるとか、さきっぽだとか。配球の予想したり。
白:とある球団のファンなんだけど、ラジオだけしかやってないときもラジオ聞くからなー。
K:それで負けるとブルーに、勝つとおはしゃぎ。おやぢか。我が家の女は。
白:そこらの運動しない男子は門前払いされます。
K:……いつの間にか話ずれてるけど……いーの?
白:はっ!?えーと、他に話すことは……うーん。ジャガードのおやぢかなー。
K:レミナの父ちゃん。出番無かったけど。
白:そうっ!実はあっさり金に目が眩んでレミナと親子対決……なんちゅーシチュエーション考えてたんだが、ページに余裕がないっ!
K:ページっつーか、話が長くなっちゃいそーだからでしょ。
白:そです。よってご臨終。(一番不幸)
K:なのに何故スレイヤーズ会議室なんてものが……?
白:あれはただのおまけ。なんとなく書きたくなったんで。ほら、私ってその時の気分で行動するから。
K:それは良く知っている。世界の設定もいい加減だし。
  あれって原作だかラジオだかTVだかわかんないじゃない。
白:別にただのおまけに底まで気を使うことはないだろーと言うことであんまし気にしてない。
K:まぁ、いーか。ごっちゃになってるとでも思えば。
白:そーはっきりと言われると……まぁいいや。他には一番最後に詰まったところ、かな。
K:ああ。赤目の石顔の倒し方。
白:実はそーなんです(涙)倒し方考えずに能力取っ付けるから。
K:ほんとーはあの黒い球を連打しまくって、相手が疲れるのを待つ奴だったんだけど……
白:それじゃあ、ガウリイはともかく、リナは手がでねーな、と思いまして。
  いや、本当はパターンあるかもしんないけど、思いつかなかったんですねー。
  実はねちねちとこの攻略法考えるのに、この話書く製作期間の4分の1費やして足りして。
K:で、結局連打が効かない奴にした、と。
白:だってぇぇぇっ!リナの場合、連打しまくられたらひたすら避けながら呪文唱えるしかないけど、逃げながらで強力な呪文が唱えられるわけ無いじゃないかっ!印を切ったり、極度の精神集中が必要なんだぞっ!
K:あんたが考えたんでしょーが。自分の始末は自分で付けろ。
白:だから……変えたんじゃないか……
K:いや、そこで黒い縦線背中に背おられても……
白:……そういや他に、国王の対決シーンだけど……最初はもっとあっさりしてたんだよね。
K:大水がなだれ込むシーンもなかったし。
白:そう。まぁ城の作りは最初っからそー考えていたんだけど、実際証拠を隠すための仕掛けは作動せず、私の頭の中だけの設定で終わる……と、言う予定だったんだけど、あっさりしすぎというご指摘を頂きまして。
K:本当は一番強いゼロス(大ボス)が倒れたから一気に行きたかったんだけど、黒幕弱くてもなぁ……って奴?
白:そーですねー。まぁ、この辺は個人の趣味になると思うんだけど。
  ともあれ、こんなもんかなー。
K:他に話すことはない、と?
白:いや。思いつかないだけ。
K:……そう……
白:とりあえずこんなところで。
K:じゃ、あんたは勉強に戻りなさい。出来れば受験校減らしても平気なよーに勉強してね。
白:うげっ!……いきなし現実に引き戻された……
K:当然。都知事の案だかよくは知らないけど、公務員である我が家は今年80万近い収入のマイナスなんだからねっ!
白:知ってる……福祉とかの援助金減らすにはまず公務員の給料さっ引いて理解を高めるとか……
K:おかげで母ちゃんやりくり大変だって嘆いてたわ。
白:……その割には昨日もママさんバレーに行ってた気が……
K:それとこれとは違うんでしょ。
  それにしても命の危険が伴う仕事やって給料これ以上減らされるとは……ゼロスが増えるわよ。
白:只今の妹の発言を訳しますと、『お役所仕事』な奴が増えると言うことです。でしょ?
K:そーです。さて、いい加減話のネタも尽きたところでっ!
白:あとがきが長かったよーな短かったよーな気がしますがっ!
K:……そりゃ何日にも分けて書いてたら時間間隔無くなるわよ。始めから終わりまで、まるまる1ヶ月は経ってるじゃない。
白:うくっ……ともあれ、ここまでお読み下さった皆さん。ありがとうございましたっ!
K:あなた方には『こんぢょーあるで賞』をお送りします。
白:……あんまし嬉しくないと思うけど……
K:いーからっ!――それでは皆さんっ!
白&K:また会いましょうっ!

――幕――
  

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7914はじめましてMIYA E-mail 9/24-20:04
記事番号7904へのコメント

初めまして。MIYAと申します。

読みごたえのある長編をありがとうございます!

凄すぎたせいか、どなたも感想コメントをぶらさげていないようなので
恥を忍んで(汗)、お礼のコメントをさせて頂きます。

プロローグからあとがきまで、丁寧かつボリュームありで、
すごく読みごたえがありました!
はらはら、わくわくしながら、一気に読んでしまって、
ふと気付いたら、結構時間が経っていて、慌てたものです(笑)

ところで、ガウリイのクローンはどうなったのでしょうか?
実はゼロス、ガウリイのクローンを入手することが目的だったとか?(汗)

いえ、ゼロスの目的とガウリイのクローンの行方が全然判らなかった
もので・・・。
もしかして、次作への伏線!?(汗)

全然まとまっていませんが、最後に改めて、
読ませてくださって本当にありがとうございました!!

では。

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7916はじめまして&ありがとうございますっ!白いウサギ E-mail 9/25-00:20
記事番号7914へのコメント


>初めまして。MIYAと申します。

初めまして。白いウサギです(^^)

>読みごたえのある長編をありがとうございます!

こちらこそ感想ありがとうございます。
読んで下さった方の痕跡を見つけるだけでも非常に嬉しい限りです。
もちろん、読んでくれただけでも嬉しいのですが。

>凄すぎたせいか、どなたも感想コメントをぶらさげていないようなので
>恥を忍んで(汗)、お礼のコメントをさせて頂きます。

う、うーん……凄いんでしょーかねー……(^^;)
長いのは間違いないですけど。
レアードの狂乱の目次に数字がありましたよね?
あれ、実は富○見ファン○ジア文○(伏せ字の意味無し)
に換算した場合のページ数です。
……あとがき含めたら350以上。
……途中でええいっ!こんなのは省略だぁぁっ!
とか喚いて消えたものもあったりします。

>プロローグからあとがきまで、丁寧かつボリュームありで、
>すごく読みごたえがありました!
>はらはら、わくわくしながら、一気に読んでしまって、
>ふと気付いたら、結構時間が経っていて、慌てたものです(笑)

そりゃそーでしょう。
スレイヤーズ長編の文庫の1.5倍ぐらいはありますから。
そんな中読んでいただき本当に感謝です。

>ところで、ガウリイのクローンはどうなったのでしょうか?

……えーと……
リナのクローンはガウリイと闘って、
ゼルのクローンはアメリア。
アメリアのクローンはゼルで、
ガウリイのクローンは……あれ?(をい)

最初に忍び込んだ地下室の所に保存されてたんですが、
リナ達脱出直後の赤目の石眼の反撃の時に生き埋めになりそのままあえなく死亡。
証拠品として隣国に没収されてます。(多分!)

>実はゼロス、ガウリイのクローンを入手することが目的だったとか?(汗)

ゼロスの今回の目的は、
『なんか訳わかんねー下っ端がちまちま研究している内容をとりあえず暇だし見物してみるかなー』
ってな感じです(どんな感じだ)
ま、その研究内容、企みを教えてもらう代わりにリナとじゃれていたというわけです。
じゃれられた方はたまったもんじゃありませんが……

>いえ、ゼロスの目的とガウリイのクローンの行方が全然判らなかった
>もので・・・。
>もしかして、次作への伏線!?(汗)

あう。すんません。
私の文章力、注意力不足です。
次回より気を付けます。
……つってもしばらく受験騒ぎで書けそうにないですが(^^;)

>全然まとまっていませんが、最後に改めて、
>読ませてくださって本当にありがとうございました!!

こちらこそ読んで下さって
本当にありがとうございました。

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7950そういうことになったんですね(笑)MIYA E-mail 9/27-11:37
記事番号7916へのコメント

こんにちは!

お返事&回答ありがとうございます!

>レアードの狂乱の目次に数字がありましたよね?
>あれ、実は富○見ファン○ジア文○(伏せ字の意味無し)
>に換算した場合のページ数です。
>……あとがき含めたら350以上。
>……途中でええいっ!こんなのは省略だぁぁっ!
>とか喚いて消えたものもあったりします。

そうだったんですか(汗)
それは、すごいですね(滝汗)
では、プリントアウトするには200枚以上紙を用意しないと(笑)

>ガウリイのクローンは……あれ?(をい)

・・・あれ?(笑)

>最初に忍び込んだ地下室の所に保存されてたんですが、
>リナ達脱出直後の赤目の石眼の反撃の時に生き埋めになりそのままあえなく死亡。
>証拠品として隣国に没収されてます。(多分!)

なるほど。そういうオチですか(笑)
判りました。
用済みになった後、どっかの国の好事家に、氷漬けにして観賞用の形で
売り飛ばされているかも知れませんね(爆)

>ゼロスの今回の目的は、
>『なんか訳わかんねー下っ端がちまちま研究している内容をとりあえず暇だし見物してみるかなー』
>ってな感じです(どんな感じだ)
>ま、その研究内容、企みを教えてもらう代わりにリナとじゃれていたというわけです。
>じゃれられた方はたまったもんじゃありませんが……

なるほど・・・。
後書きでファンサービスとは書かれていたんですが、実のところは
どうなんだろ・・・と思っていたので。
とことん、お役所仕事なところがらしくて笑えましたが(笑)

>あう。すんません。
>私の文章力、注意力不足です。
>次回より気を付けます。

いえ、気にしないでください。私が裏読みする癖があるだけです。
単に、暗に次作を催促しただけという話もありますが(笑)

>……つってもしばらく受験騒ぎで書けそうにないですが(^^;)

そうですか。
月並みですが、マイペースで頑張ってください。

今回はわざわざ解説までしてくださってありがとうございました!

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7919Re:レアードの狂乱ブラントン 9/25-04:55
記事番号7904へのコメント

 どうも、白いウサギ様。予告通り参上いたしました。
 今回も、十分にっ! 楽しめました。もう白いウサギ様の作品の場合面白いことはあらかじめ分かっているため、今回は一歩踏み込んで無謀にも物語を読み進めつつ随時自分の推論を展開し、白ウサ様のちりばめた伏線と謎に挑戦する――という自身初の試みをいたしまして、以下にその様子を記しております。
 結果からいくと――もう見事なまでの惨敗です。はい。
 各シーンごとにその部分を読み終えたところでの思ったことを書き出しておりますので、私のハズしっぷりをご覧になって、してやったりと笑って下さいませ(^^;)




 セイルーン城に忍び込んだことがあるという時点で原作の設定だとわかる(アニメにはそんなのはなかったはず)。「リナさん」の呼び方とゼルアメ度が高いところが気になる。おそらく厳密に考えてはいないのだろう。

二 城下町

 レミナの父親は何か研究してる魔道士で国にさらわれて研究に携わっていると思われる。
 レミナ自身も何らか影響を受けている<いろいろ無知なのは伏線
  ・数年前に生み出されたばかりだから>それは村長の話からしてなさそう
  ・何か実験受けたから
 大会に参加した人は全員実験台。<いなくなってることから
 沿岸諸国連合という辺りから「亡き夢」と絡めてルヴィナガルドあたりがまた本命か。ワイザーのおっちゃんの再登場も考えていいかも。「光と影」はキーワード。特に「光」には要注意>でも一ではそんなこと全く出てきてないし

二 ゼロス登場〜ガウリイの決勝戦

 調べものとなると異界黙示録の写本と考えるのが妥当か。
 となると行われている研究もなかなか大がかりと考えられる。
 作者の性格からいって獣将軍とか設定に関わりそうなキャラが出て来るとも思えないし、獣王軍の魔族関係は「二翼の翼」でやっちゃってるからもっかい使うとは思えない。
 こういう話では他人の行動などにリナが予測や解説を加えているところが怪しい。とりあえず読者を納得させるためカモフラージュの理由を持ってくるものである。

二―B ラスト

 庭園怪しすぎ。でなきゃそもそも描かれるわけないし。
 何らかのエネルギーを吸って成長しているのか、それとも逆にその花自体が何らかのエネルギーの元なのか。
 おおっぴらにしているあたり、とりあえず直接害を持っているわけではなさそうである。

二 終了

 国王はどこらへんまで関わっているのか。
 不意を付いて実は国家自体が全然関係ありませんでした、というオチもありうるが、多額の援助を認めていることから自体を全く知らないわけではないらしい。
 それで国王が黒幕自身でないとすると、どう考えても怪しいのは警備隊長のジャグ。彼が何らか吹き込んでいる可能性が十分に高い。
 いまんとこ注目しておくべきキャラは国王とジャグとレミナ。村長とおばちゃんがもし重要キャラだったら泣く。マジで。
 ともあれ、もう一人ぐらいキャラが増えそうな気がしてよさそうなのだが……

三 食堂

 いきなり魔族出てるし(TT) さっそく予測が外れだしているようだ。
 ゼロスは嘘をつかない。そのため捜し物をしていること自体は間違いない。魔法道具という可能性もある。考えてみればレミナからもらったのも出番がない。ボス戦で有効に働いてくれることだと信じる。
 ゼロスの目的が看破できれば謎も解けるはず。とりあえずはリナたちに城に行かせているうちに自身が動くつもりか。
 レミナと――特にゼルを残した理由も気にかかる。単純に考えれば――戦いの都合上か。

三 クリスタルケースを目にして

 どうやらコピー関係の話らしい。ますますゼロスの関わり方が分からなくなってくる。
 コピーの技術自体には関心はないだろう。となると、誰かのコピーに用があるのか、それとも首謀者か。
 しかもジャガートは死んだと出てくる。殺すとなると用済みになったか、逆に利用するためかと考えられる。ともあれ金を積んでまで探してもらっちゃ困ることからすると重要キャラなのは間違いない。今のところ本当に死んだかどうかは半々。そいつ自身が取り込んでいる可能性も浮かんでくる。

三 A 終了

 原作の十三巻の後の設定というのを考えなければならないかもしれない。そんな気がする。
 レミナがすんなり変えるわけがないのは当たり前。さらわれるのが定番だが、はてさて。

三 ジャグ・コピーの話

 伏線張りまくりでぞくぞくさせられる。
 コピーの自我は……きっと新しく登場する技術かなんかで解説してくれると思って考えないことにする。オリジナルからダウンロード(笑)する方法があるのかもしれない。
 国を護る……これは国王と関係がありそうだ。「守る」だと外敵から、だが「護る」となると守護霊か守護月天(^^;)系か。
 護るのはこいつ一人なのかどうかで変わるかもしれない。他のコピーはどうなのか。
 とか思ったら次に「守る」と出てきた。ただの思い過ごし?

三 終了

 って、もう上に書いた謎解けてるし……こうもあっさり来るとなるとジャグは要注意人物から消してよさそうだ。残るは国王とレミナの二人。例の魔族は既に一度戦っているためラスボスではない。ここまで断言して外したら自信喪失間違いなし。
 でも国王がラスボスってのはソラリアであるから同じ手を使うとも思えないが……

四 冒頭 十数行

 コピーの特性……? 原作を読み返したほうがいいのかもしれないが、さすがに深夜なのでそこまでの気力はない。そもそも夜中の3時頃なので頭が正常に回っていないのかもしれない、と外したときのいいわけを早くも考えている辺り敗北宣言は近いか(爆) とりあえず少し前でリナのいっていた「自我がない」ことに注目しておく。
 魔族の存在意義……14巻の最後でも出てくるがそれから2ヶ月で書き上げたとも思えないため、もっと前の巻から持ってくる部分だろう。負の感情、滅びへの道……13巻の覇王のセリフに注目してみよう。うろ覚えだが。
 「あたしの戦いの中にもヒントが記されていた」の「戦い」とは原作のこれまでの「戦い」なのか、それともこの話での「戦い」なのか。おそらく前者だと考え、リナの戦いを「生きるための戦い」ととらえる。7巻でのガーヴと対峙したときのがいちばん印象に残っている。
 いろいろ考えて戦いを起こすことが目的なのではと見当を付け、先を読むことにする。

四 リナの謎解き

 な、なるへそ……
 いよいよ敗北宣言。ベースは13巻か。ジャグの性格から、魔族が憑依しているとは思わなかった。
 上で費やした数行はただの恥へと消え去る。ごめんなさい、所詮私はこんなもんです(泣)
 こうなったらゼロスの絡みを真剣に考えるしかない。魔族として誇り、というか人間に憑依する行為自体を気に入らないのかもしれないが……そんな単純な理由ではないだろう。ここまで来たら誰に用があるのかがもっとも気になるところだ。
 それに何よりも気になるのはレミナである。再登場してくんないと暴れちゃうぞ(笑)

四 ゼロスとの戦闘前

 ゼロスは計画をつぶしに来たのだとずっと思っていたが、ここに来てそうでない可能性が出てきた。これは完全に予想外。
 国王ラスボス説がにわかに強まってくる。ゼロスと取引をするほどだとするとかなりのものだ。
 ただそれが最初に出てきたあの国王自身かというと疑問も残る。単純にそうだとやっぱりソラリアと同じになるし……魔族と契約という点ではハルシフォムが懐かしい。
 あっと驚くどんでん返しを期待。というより絶対あるだろう。
 なんだか既に驚かされることを期待して予測と謎解きを放棄している自分がいる。

四 VSゼロス

 毒については謎多し。取り引きする前から入れていたということになり、こうなると最初からの目的に関係あるのかと思えてくる。毒の発動はゼロスの任意でできるのだろう。フィブリゾの使ったような手もあるかもしれない。

四 回復してる間

 どうも最後が近いのでここで考えをまとめなければならないようだ。
 国王はダミーで、契約の相手は実はレミナの父親(で、これがホントの国王)――とかいうのが私の本命。ここでレミナ自身が契約の相手とは思えない。でもやっぱり彼女は出てこないとおかしい。でも逆に出てくるはずだ――と頑なに思っている自分を考えれば、いっそ出てこない方が意表をついていていいのかもしれない、と思いつつ。
 いよいよ最終決戦へとページを進める。

四&エピローグ 終了

 はっはっはっはっは……(もはや笑うしかないらしい)
 くうぅ! 負けました! 私負けましたわ! もう完敗ですっ! 惨敗です! 圧敗ですっ!←そんな言葉はありません
 うーん、最初から私は見るべきところがずれてたわけですねー……固定観念にとらわれている現れなのでしょう。私の観点で物事を決めにかかってはいけません。はい。
 でも、ここまで途中でいろいろ考えつつ読み進めていったの初めてですし、貴重な体験をさせていただきました。結局2時間半かかってしまいましたが……
 改めて白ウサ様の凄さを再確認させられ終わりました。



 と、今回はいつもと違う感想になったのですが……いかがでしょうか。←いろいろ試行錯誤してはいるらしい
 ベストシーン&セリフ等入ったいつものようなのは短めにしてこの後に付けさせていただきます。
 ではでは。

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7920ごめんなさい、訂正です。ブラントン 9/25-05:06
記事番号7919へのコメント

 城に忍び込んだことあるって話は二の飲食店のところですね。
 この話が原作の設定かアニメの設定かというのを悩んでいて、この話題は二人が出てきた一に統一してしまえとそこで入れてしまった次第です。すみません。

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7930毎度お世話になってます白いウサギ E-mail 9/26-01:56
記事番号7919へのコメント

> どうも、白いウサギ様。予告通り参上いたしました。

どうも。お早いおつきで(笑)

> 今回も、十分にっ! 楽しめました。もう白いウサギ様の作品の場合面白いことはあらかじめ分かっているため、今回は一歩踏み込んで無謀にも物語を読み進めつつ随時自分の推論を展開し、白ウサ様のちりばめた伏線と謎に挑戦する――という自身初の試みをいたしまして、以下にその様子を記しております。

…………やばい……
伏線なんて後から
「そーか、アレが伏線だったのか」などとやってく始末です。
……ふっ……伏線なんて後から沸いてでて来るんですよ……
(真似しちゃいけません)
推論されてくとどんどんぼろが出ていく気が……

> 結果からいくと――もう見事なまでの惨敗です。はい。

いや。
正しい答えを導けるほど
きちんとした問題提起じゃないですから……

> 各シーンごとにその部分を読み終えたところでの思ったことを書き出しておりますので、私のハズしっぷりをご覧になって、してやったりと笑って下さいませ(^^;)

うーん。
自分のいい加減さがバレるよーな気がしてならない……(^^;)


以下の文章を読むに当たっての注意

きっと何度かくらくらすると思いますんで、濡れタオルを用意しておくか、すぐに救助が呼べる状態にして置いて下さい。

>一
>
> セイルーン城に忍び込んだことがあるという時点で原作の設定だとわかる(アニメにはそんなのはなかったはず)。「リナさん」の呼び方とゼルアメ度が高いところが気になる。おそらく厳密に考えてはいないのだろう。

正解です。別に細かいことは考えてなかったです(をい)
アメリアの「リナさん」は単に私がTVからスレイヤーズを見始めたのでイメージ的にもうこっちになってるんで、個人的な趣味です。
ゼルアメ度はまぁ展開かなんかに流されて……
設定は今回本当にバラバラですね。
中盤辺りの大会に入ると、
「まぁ、ラジオかTVのノリでいーか……」
と、なってます。
(ぢつはこの時久しぶりにラジオドラマを聞いていたのも影響する)
後半に入ると殆ど原作。
文章のリズムとか話の展開とかそんな感じですね。

>二 城下町
>
> レミナの父親は何か研究してる魔道士で国にさらわれて研究に携わっていると思われる。

近い……(^^;)
前のプロットでは本気で正解だしなぁ……

> レミナ自身も何らか影響を受けている<いろいろ無知なのは伏線

色々無知なのは単なるキャラの位置づけです。
……すんません……期待裏切って……

> 大会に参加した人は全員実験台。<いなくなってることから

参加した人ではなく優勝者、もしくは成績優秀だった者のみですが、殆ど正解です。

> 沿岸諸国連合という辺りから「亡き夢」と絡めてルヴィナガルドあたりがまた本命か。ワイザーのおっちゃんの再登場も考えていいかも。「光と影」はキーワード。特に「光」には要注意>でも一ではそんなこと全く出てきてないし

ぎくっ……だぁぁぁぁっ!Kっ!
やっぱり変だって言っただろーがっ!
タイトル一は……気にしないでください。
そーですねー……スレ13巻、「降魔の道標」と同じです。
単に、かっこいいから………
…………すみませんっ!

>二 ゼロス登場〜ガウリイの決勝戦
>
> 調べものとなると異界黙示録の写本と考えるのが妥当か。
> となると行われている研究もなかなか大がかりと考えられる。
> 作者の性格からいって獣将軍とか設定に関わりそうなキャラが出て来るとも思えないし、獣王軍の魔族関係は「二翼の翼」でやっちゃってるからもっかい使うとは思えない。
> こういう話では他人の行動などにリナが予測や解説を加えているところが怪しい。とりあえず読者を納得させるためカモフラージュの理由を持ってくるものである。

さて。ここで私の小説の書き方ですが……
リナと同化してますっ!
はっきり言ってカモフラージュなんざありませんっ!
とりあえずぜってーこいつ怪しいよなと思ったら、疑いの目をリナに向けさせるっ!(たとえ全然違うって知ってても)
目を逸らすためのことなどちっとも…………
……いや、ちっともって事はないかも知れませんが……
(ここで弱気になってどーする)

>二―B ラスト
>
> 庭園怪しすぎ。でなきゃそもそも描かれるわけないし。

……いやー……単に城の様子全く書いてないから書かなきゃいかんなーと思ってた所、映像が頭に浮かんだため採用。
……特に害なくても描いちゃいました……

> 不意を付いて実は国家自体が全然関係ありませんでした、というオチもありうるが、多額の援助を認めていることから自体を全く知らないわけではないらしい。

あ。そのオチ良いなー……
使った時点で読んで下さった方々から刺されそうですが。

> それで国王が黒幕自身でないとすると、どう考えても怪しいのは警備隊長のジャグ。彼が何らか吹き込んでいる可能性が十分に高い。

ま、確かに怪しいですよね。
裏で操っていたという設定にこの時点で切り替えても差し支えはありません。

> いまんとこ注目しておくべきキャラは国王とジャグとレミナ。村長とおばちゃんがもし重要キャラだったら泣く。マジで。

(爆笑)
……いや、おばちゃんは情報提供者用キャラですから……

>三 食堂

> ゼロスは嘘をつかない。そのため捜し物をしていること自体は間違いない。魔法道具という可能性もある。考えてみればレミナからもらったのも出番がない。ボス戦で有効に働いてくれることだと信じる。

あう……良く覚えてましたね……
レミナから貰った道具。
ゼロス戦を考えて持たして置いたんですが、この時点、私は存在を忘れてましたよ……
ゼロス戦に入ってから、
「お。そーいやあったっけ。そんなもん」状態です。
どーにかしろ。作者。

> レミナと――特にゼルを残した理由も気にかかる。単純に考えれば――戦いの都合上か。

レミナは足手まといになるから泣く泣く却下。
ほんとーはもっと出番増やしてあげたかったんですけどねー。
ゼルを残した理由はいくらなんでも四人組で忍び込むのは変だろ、と思ったまでです。
この辺のリナの考えはまるっきし私と同じです。
シンクロ中。

>三 クリスタルケースを目にして
>
> どうやらコピー関係の話らしい。ますますゼロスの関わり方が分からなくなってくる。

あんまし深いことは考えないで下さい……(涙)

> しかもジャガートは死んだと出てくる。

あとがき参照。ぺぇじの都合上です。
あとお金を積んでまでと言うのは、単に国家が情報の露呈を防ぐためであり、ジャガーと自体はあんまし感心ないです。

>三 A 終了
>
> 原作の十三巻の後の設定というのを考えなければならないかもしれない。そんな気がする。

みゅ……?

> レミナがすんなり変えるわけがないのは当たり前。さらわれるのが定番だが、はてさて。

「帰る」ですね。
確かにこのまま消えたんじゃ、
おめー何のために出てきたんだって奴ですね。
本当はもうちょっと闘ってから去って欲しかったんだけどなぁ……
三節棍まで持たせたのに……(漢字自信なし)

>三 ジャグ・コピーの話
>
> 伏線張りまくりでぞくぞくさせられる。
> コピーの自我は……きっと新しく登場する技術かなんかで解説してくれると思って考えないことにする。

賢明ですね。正解です。<新しい技術

> とか思ったら次に「守る」と出てきた。ただの思い過ごし?

そです。
………あああああっ!怒っちゃダメですっ!
精神衛生上良くないですよっ!(元凶が言うな)
その漢字はチェックしてなかったですね。

>三 終了
>
> って、もう上に書いた謎解けてるし……こうもあっさり来るとなるとジャグは要注意人物から消してよさそうだ。残るは国王とレミナの二人。例の魔族は既に一度戦っているためラスボスではない。ここまで断言して外したら自信喪失間違いなし。

そーなんですよねー。<ラスボスではない
本当は国王と契約したなんて言う設定なかったんだけどなぁ……
単なる雑魚魔族その一。
……作者がいい加減なおかげで出世できたキャラの一つです。

> でも国王がラスボスってのはソラリアであるから同じ手を使うとも思えないが……

………………………(滝汗)

>四 冒頭 十数行
>
> コピーの特性……? 原作を読み返したほうがいいのかもしれないが、さすがに深夜なのでそこまでの気力はない。そもそも夜中の3時頃なので頭が正常に回っていないのかもしれない、と外したときのいいわけを早くも考えている辺り敗北宣言は近いか(爆) とりあえず少し前でリナのいっていた「自我がない」ことに注目しておく。

そんな時間に読んでたんですか……(^^;)
コピーに関してはえんさいくろぺでぃあをぱらぱらめくったりしましたけどね。

> 魔族の存在意義……14巻の最後でも出てくるがそれから2ヶ月で書き上げたとも思えないため、もっと前の巻から持ってくる部分だろう。負の感情、滅びへの道……13巻の覇王のセリフに注目してみよう。うろ覚えだが。

……いや、あのー……
2ヶ月で書き上げたんですけど……
正確に言うと、7月30日を丸一日費やしてプロット仕上げました
(この時点では今と多少違うが)


> 「あたしの戦いの中にもヒントが記されていた」の「戦い」とは原作のこれまでの「戦い」なのか、それともこの話での「戦い」なのか。おそらく前者だと考え、リナの戦いを「生きるための戦い」ととらえる。7巻でのガーヴと対峙したときのがいちばん印象に残っている。

確かに生きるための戦いならガーヴ戦が印象的ですよねー。
……って、思い出話してもしょーがない。
戦いとは今まで生きてきた中での戦い。
具体的に指すとシェーラが一番近いですかね。

>四 リナの謎解き
>
> な、なるへそ……
> いよいよ敗北宣言。ベースは13巻か。ジャグの性格から、魔族が憑依しているとは思わなかった。

あ、まージャグは魔族なんか本気で知りませんでしたから。
魔道技術もジャガードに教わった丸暗記の呪文のみ。
と、言う設定でしたが……そー言えばジャグって呪文一度も使ってなかった……

> 上で費やした数行はただの恥へと消え去る。ごめんなさい、所詮私はこんなもんです(泣)

いや。私のいい加減な文章が間違った方向へと導いてるのでしょう。

> こうなったらゼロスの絡みを真剣に考えるしかない。

……………………(滝汗)
ゼロスのことを真剣に考えられるとマジで困るんですが……

> それに何よりも気になるのはレミナである。再登場してくんないと暴れちゃうぞ(笑)

暴れて結構です。止めません。大いに暴れて下さい。

>四 ゼロスとの戦闘前

> 国王ラスボス説がにわかに強まってくる。ゼロスと取引をするほどだとするとかなりのものだ。

さあ!ゼロスの登場シーンを思い出してみようっ!
ゼロスにとって、魔法も使えない威勢だけが良いおこちゃま(本人に言うと殺されそうですが)にタリスマン売ってしまってますよね。
その場のノリです。別に国王が大人物という訳じゃありません。
……あ。立ちくらみ起こしましたか?

> ただそれが最初に出てきたあの国王自身かというと疑問も残る。単純にそうだとやっぱりソラリアと同じになるし……魔族と契約という点ではハルシフォムが懐かしい。

ま、あの国王のまんまというのが最初のプロットでしたが、いくらなんでもそりゃまづいだろ。つー事で、コピーに決定(キャラの人生弄びすぎ)
ハルシフォムですが、やっぱり2巻読み直しました!
最初は単にセイグラムとどう闘ってたかなーと読み返すのが目的でしたが、契約の部分の確認もしました。
さてさて。契約の石は一体何処にあるんでしょう……?
(注:物語上必要なしと判断したため、考えても正解も不正解もありません)

> なんだか既に驚かされることを期待して予測と謎解きを放棄している自分がいる。

(爆笑)
驚かせることが出来たのなら良いのですが。

>四 VSゼロス
>
> 毒については謎多し。取り引きする前から入れていたということになり、こうなると最初からの目的に関係あるのかと思えてくる。毒の発動はゼロスの任意でできるのだろう。フィブリゾの使ったような手もあるかもしれない。

あ。その設定良いですね<ゼロスの任意
…………ふふふ……白いウサギ、今回マジで深いことは考えませんでしたからねー。
毒はゼロスの遊び半分。
取引を持ちかけられたのは毒を食わせる前です。
だいたいお城に滞在期間中が物語上支障無いかなぁと思ってます(おーい)

>四 回復してる間
>
> どうも最後が近いのでここで考えをまとめなければならないようだ。

最初のプロットではもう戦闘なしでした。
と、言うより、二日前まで国王が実は別の人間に転移してたことが発覚、追いつめて、はい。おしまい。
さすがに盛り上がりに欠けるとすぺしゃる・さんくすの方からご指摘があり、なら、なんとか国王強くしてやろーじゃねーか。
と、言うことで魔族と兼ね合わせ、おまけに実は魔族に利用されてたことが二日前に決定。(おいおいおい)
……国王戦は本気でその場の勢いですね。
リナとシンクロがめちゃくちゃ高かったよーな。
伏線なんざ、おし!アレが伏線だったんだ!と強引に納得し、(解釈じゃないところがみそ)押し進めました。
でも違和感ないところが凄いと本気で思ったりして(^^;)

> 国王はダミーで、契約の相手は実はレミナの父親(で、これがホントの国王)――とかいうのが私の本命。ここでレミナ自身が契約の相手とは思えない。でもやっぱり彼女は出てこないとおかしい。でも逆に出てくるはずだ――と頑なに思っている自分を考えれば、いっそ出てこない方が意表をついていていいのかもしれない、と思いつつ。

国王がダミーってのは正解ですね。
しかし、プロット当初ではダミーでもなかった(^^;)
こうなるといっそ、プロットHPに公開して冷たい視線を受けようかと思えてくるから不思議です。

>四&エピローグ 終了
>
> はっはっはっはっは……(もはや笑うしかないらしい)
> くうぅ! 負けました! 私負けましたわ! もう完敗ですっ! 惨敗です! 圧敗ですっ!←そんな言葉はありません

ああ……だから深いことは考えない方が良いって言ったのに……
と、言っても、実際は読み終わったことにこれ言ってることになりますね。

> でも、ここまで途中でいろいろ考えつつ読み進めていったの初めてですし、貴重な体験をさせていただきました。結局2時間半かかってしまいましたが……

そ、それはお疲れさまでした……
が、もう少しまともな物を読み進めていれば満足のいく結果だったかも知れません。

> 改めて白ウサ様の凄さを再確認させられ終わりました。

いや。単にいい加減なだけです(あっさり)

> と、今回はいつもと違う感想になったのですが……いかがでしょうか。←いろいろ試行錯誤してはいるらしい

面白かったです。
感想読んでいくのにどきどきはらはらしたのは初めてです(そりゃそうだ)
本気で冷や汗かきそーになりましたし……

> ベストシーン&セリフ等入ったいつものようなのは短めにしてこの後に付けさせていただきます。

あ。どうもありがとうございます。

> ではでは。

どうも、ありがとうございましたっ!

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7947いえいえ、こちらこそブラントン 9/26-22:57
記事番号7930へのコメント

 本当にもうすぐ落ちてしまいそうなのであわてて再投稿。
 どうも、またまた予告通り参上いたしました。

 上のはリアルタイムで書いたものなので文体とかいろいろ乱れまくっておりますが、今回は落ち着いていきたいと思います。

 まずはせっかく何ページにも渡ってあるのですし、個人的に気に入っているので超巨大あとがきの方から。

>K:……なるほど……ところで何であとがきから先書いてるの?
>白:本編となる小説が詰まった。

 ありますー! これ本当にありますよねー。書き終わる前にあとがき考えるの。プロットはあるのであとがきのネタはありますし。
 私なんて、一行も書いてないのに投稿の最初に載せる挨拶文が頭の中でできてたりします(蹴蹴蹴)
 気分転換には最適です♪

>白:おそらくご想像の通り。プロット書いてる途中にスレイヤーズ14巻を読んだんだけど……
14巻でああなっちゃった二人を出すのはどうかなーと……悩んだ末、登場を見送りました。

 なるほど。最初からゼルとアメリアを出す予定があったのではなかったのですね。
 もしその二人で同じ話だったら……と考えると白ウサ様の書かれるルーミリにも期待してしまうものがあります。大会のシーンとか全然変わってしまいますしね。いちばん変わるのはゼロスについてでしょうが……正体ごまかしていれば大丈夫かも? いや、ガウリイがバラしそうだ……

>K:さっきから何度も言ってるけど、これってあとがきって言うよりも、『なまがき』よねー。
>白:それって……なんかヤだ……

 (爆笑)
 ここは文句なしで笑いました。『なかがき』ならぬ『なまがき』……見事なネーミングセンスです……

>K:なんで出てきたの?
>白:本編で言わなかったっけ……?『ファン・サービス』だって。

 ―――――――――――やられました。はい。
 明らかにこれこそがこの物語最大の伏線です(心より断言)
 うう……あとがき含めて一つの作品ですね、まさに。
 <font size=小でお願いします>あとがき読んでなかったら暴れたかも……</font>

>K:なのに何故スレイヤーズ会議室なんてものが……?
>白:あれはただのおまけ。なんとなく書きたくなったんで。ほら、私ってその時の気分で行動す
   るから。

 私も書いたことありますー、キャラ同士の座談会。
 そのときは「一」と「三」が終わった後に入れてました。で「二」は「なかがき」、「四」で「あとがき」。
 気分転換に書いただけだったので本編と出来が合わず、結局話を書き終えた後全部削除したのですが……


>アメリアの「リナさん」は単に私がTVからスレイヤーズを見始めたのでイメージ的にもうこっちになってるんで、個人的な趣味です。

 私もTVから入ったのでイメージはそちらです……ので正直言って描けません。
 どうもアメリアは正義以外に使い道が浮かばなくて、それなら他の方がたくさん書いていらっしゃいますし……

>設定は今回本当にバラバラですね。

 13巻の後なのに、ゼロスに覇王軍のこととかまったく聞いたりしないのはそういう設定だからなのですね。

>タイトル一は……気にしないでください。
>そーですねー……スレ13巻、「降魔の道標」と同じです。

 ぬうぅぅぅぅ、正直ここは本気でくらくら来ました。そんなーそんなー(TT)
 かっこいい上に意味深なのでものすごくうまいタイトルだな、と心から感心していたのです。
 でも本家を出されるとどーしよーもないです(^^) 見事な返しでした(^^;)

>>原作の十三巻の後の設定というのを考えなければならないかもしれない。そんな気がする。
>みゅ……?

 いえ、なんとなく十三巻の話をベースにしての設定かもしれないという気がしたのです。こういう直感は当たるものですね(^^;)

>あ、まージャグは魔族なんか本気で知りませんでしたから。

 どうも私はよく理解できていないようです。
 ジャグ(コピー)の意識になっているのは……魔族なのですよね? 誰か人間の人格を移植したわけではないのでしょう?
 でも三ラストあたりだと誰か(ジャグ自身?)の人格を移植されたような感じだったので……

>毒はゼロスの遊び半分。
>取引を持ちかけられたのは毒を食わせる前です。

 タイミングが良すぎるので任意で発動させられたのかと思っていたのですが、違うようですね。

>さすがに盛り上がりに欠けるとすぺしゃる・さんくすの方からご指摘があり、なら、なんとか国王強くしてやろーじゃねーか。
 ゼロスが大ボスだということは全く予期していなかったです。確かにゼロスというキャラで考えてみると戦うのも不自然じゃないですね、ホントに。ここは納得しました。
 14巻にもあるようにラストに戦うのがいちばん強い必要はありませんからね――

>面白かったです。

 そういっていただけると嬉しいです。


 では、最後にベストシーン&セリフを。今回の場合一つのセリフだけ取り出すのは間違っている気がしたので、シーンで2つあげたいと思います。

 まずはエピローグ付近のレミナ。
 途中しばらくいなかったので、私の頭にあまり残っていなかったのでしょう、キャラ変わってるんじゃないかと感じてしまいましたが、おそらくそんなこともなく。
 意表をつくキャラの使われ方に、ジャグとの絡みのさわやかな印象とすごくいい感じを受けました。

 そしてゼロスの登場シーン。
 ゼロスのとぼけっぷりがなんともナイスです♪ 「いやぁ」がものすっごくいい感じです♪

 他にはサブキャラとして光っていた情報提供者のおばちゃんと、食堂でゼルの大会への参加を説得するシーンもすごくおもしろかったです♪


 それにしても、半年に一作こんな長いのを書けるなんて本当に羨ましいです……
 私なんてどういう話なのかを決めるのだけで四転五転して一年、それから実際に話を考え初めて既に2ヶ月経つのにまだ半分ですからね……(もちろん一行も書いていません)
 どうせ受験が終わるまでは書けないだろうと割り切り、それまでに頭の中では最後まで創ってしまおうとがんばっているのですが……某所で語っている通り肝心の遺失宇宙船とか全然決まっていないですし……はふぅ。

 ではでは。毎度毎度レスとかいいつつ作品のことより私のことばっかり書いている気はするのですが、これにて失礼させていただきます。

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7949いやいや、こちらの方が……(笑)白いウサギ E-mail 9/27-00:41
記事番号7947へのコメント

> 本当にもうすぐ落ちてしまいそうなのであわてて再投稿。
> どうも、またまた予告通り参上いたしました。

本当に早いですよねー。ここ(^^;)
活気があって良いことです。

> まずはせっかく何ページにも渡ってあるのですし、個人的に気に入っているので超巨大あとがきの方から。

あ。なるほど……
おかげさまであとがき人気ありますねー。
皆様の反響がなきゃ『毎度毎度の事ながら…』であっさり消え失せてるはずなのですが。

>>白:本編となる小説が詰まった。
>
> ありますー! これ本当にありますよねー。書き終わる前にあとがき考えるの。プロットはあるのであとがきのネタはありますし。
> 私なんて、一行も書いてないのに投稿の最初に載せる挨拶文が頭の中でできてたりします(蹴蹴蹴)
> 気分転換には最適です♪

そーですね。気分転換に最高ですし、それで本来のリズムが戻ってくるときもあります。
しかし挨拶文浮かんできたことはないですねぇ……(^^;)

> なるほど。最初からゼルとアメリアを出す予定があったのではなかったのですね。

じつはそーです。
書いてて
「アメリアとゼルが登場……?強引じゃないかなー?」
と思ったりしましたが、やはりあまり気にせずそのまま執筆。

> もしその二人で同じ話だったら……と考えると白ウサ様の書かれるルーミリにも期待してしまうものがあります。大会のシーンとか全然変わってしまいますしね。いちばん変わるのはゼロスについてでしょうが……正体ごまかしていれば大丈夫かも? いや、ガウリイがバラしそうだ……

本当に初期のプロット(14巻発売前の)の段階ではルーミリと言うより、その二人を交えての4人の掛け合いがあったんですが、14巻読んでから痛々しくなりました……(涙)
ルーク&ミリーナ登場する予定の話では大会の話もなく、コピーの話もなかったので、全く考えていません。
しかし、ルーク&ミリーナが登場していたらゼロスはまず登場しなかったと思います(^^;)

>>K:さっきから何度も言ってるけど、これってあとがきって言うよりも、『なまがき』よねー。
>>白:それって……なんかヤだ……
>
> (爆笑)
> ここは文句なしで笑いました。『なかがき』ならぬ『なまがき』……見事なネーミングセンスです……

実際生で書き続けてましたから……(^^;)
なかがきって言うのは、何処かで一旦本当に区切って書くんでしょうけど、区切らずちょこちょこ書いて詰まったらあとがきへ、またちょこちょこ書き出して詰まったら後あとがきへ、の状態でしたから。
自分で書いててタイトルこれだけにはしちゃいけないと思いました。

>>K:なんで出てきたの?
>>白:本編で言わなかったっけ……?『ファン・サービス』だって。
>
> ―――――――――――やられました。はい。
> 明らかにこれこそがこの物語最大の伏線です(心より断言)
> うう……あとがき含めて一つの作品ですね、まさに。
> <font size=小でお願いします>あとがき読んでなかったら暴れたかも……</font>

そ、そーですねー……
書いとかないとマジで暴動起きるかもなんぞと思ってました。
と、言うより書いても暴動起きるかも知れないと思ってました。
一旦ゼロス抜きで話を展開するバージョンも考えたりと、本気でゼロスの部分全部カットしようかと迷ったときがありました。(おそらく8月中期)
しかし、やっぱファンサービスと、強い奴が居た方が良いと言うことで……

>>K:なのに何故スレイヤーズ会議室なんてものが……?
>>白:あれはただのおまけ。なんとなく書きたくなったんで。ほら、私ってその時の気分で行動す
>   るから。
>
> 私も書いたことありますー、キャラ同士の座談会。
> そのときは「一」と「三」が終わった後に入れてました。で「二」は「なかがき」、「四」で「あとがき」。

あ、あれ……?
記憶ないんですが……忘れただけでしょーか、それとも私読んでないんでしょーか?タイトル教えていただけます?
もし読んでなければ読ませていただきたいのですが……

> 気分転換に書いただけだったので本編と出来が合わず、結局話を書き終えた後全部削除したのですが……

……どーりで記憶がないはずです……
削除された物を読んでるはずがない……

> 私もTVから入ったのでイメージはそちらです……ので正直言って描けません。
> どうもアメリアは正義以外に使い道が浮かばなくて、それなら他の方がたくさん書いていらっしゃいますし……

……………
あまり深いことは考えてません(にこり)
……いや、本当に。もぉアメリアの場合、原作でもアニメでもどっちでもいーやってな感じです。
ただ、自分の中のアメリアを書いてるだけですね。
……だからたまに原作とアニメが切り替わってるセリフがいくつかあって後から訂正した覚えがあります。


>>設定は今回本当にバラバラですね。
>
> 13巻の後なのに、ゼロスに覇王軍のこととかまったく聞いたりしないのはそういう設定だからなのですね。

と、言うより、聞いたりしたらどー反応するか、描けるわけがない……
とりあえずリナはこの時忘れてました。
14巻……いや、どちらかと言うと15巻直後の話のつもりで書いてますんで、その後起こった出来事がショックで忘れていてもいーんじゃないかなぁと言う御都合主義的解釈です。

>>タイトル一は……気にしないでください。
>>そーですねー……スレ13巻、「降魔の道標」と同じです。
>
> ぬうぅぅぅぅ、正直ここは本気でくらくら来ました。そんなーそんなー(TT)
> かっこいい上に意味深なのでものすごくうまいタイトルだな、と心から感心していたのです。
> でも本家を出されるとどーしよーもないです(^^) 見事な返しでした(^^;)

とりあえずここを指摘されたら平謝りするしかないです。
誤りの文をつらつらと書き連ねているうちに、そーいや神坂さんもやってたなーと思いだしたので言い訳を。
(こーいうところまで真似せんでよろしい)

>>あ、まージャグは魔族なんか本気で知りませんでしたから。
>
> どうも私はよく理解できていないようです。
> ジャグ(コピー)の意識になっているのは……魔族なのですよね? 誰か人間の人格を移植したわけではないのでしょう?

違います。
ジャグに人格を移されたのは人間です。
魔族なら目の前で自分の身体炎で燃やされても何とも思いません。
つまり、彼の場合、赤目の石顔(本名で読んでやれよ)が国王に「ほら。協力してやってるだろ」と言うポーズのためのコピーです。
彼自身、元は忠実な騎士でした。
愛国心が強かったので、そこを狙われ、ある日実験の内容も聞かされずにいきなし実験台にされました。
そんでもって目が覚めたら目の前にそれもんの魔道士!(実は魔族)そしてその先には張り付けにされた、元:自分の身体。
で、魔道士はにやにやしながら彼の身体を燃やしてしまうわけです。
これで彼は死んだ、と言ってるわけですね。
おわかりいただけたでしょーか?
……と言うより、わかっていただけない文章書いた私に責任が……

>>毒はゼロスの遊び半分。
>>取引を持ちかけられたのは毒を食わせる前です。
>
> タイミングが良すぎるので任意で発動させられたのかと思っていたのですが、違うようですね。

うふ(はあと)
とりあえず漫画などの良くあるパターン、『良すぎるタイミング』でもいっかという気持ちでした。



> まずはエピローグ付近のレミナ。
> 途中しばらくいなかったので、私の頭にあまり残っていなかったのでしょう、キャラ変わってるんじゃないかと感じてしまいましたが、おそらくそんなこともなく。
> 意表をつくキャラの使われ方に、ジャグとの絡みのさわやかな印象とすごくいい感じを受けました。

そうですね。
何だか本当にジャグと気が合いそうなキャラでした。
実は書いてる最中、キャラ変わってねーか?と自分でも思ったりしたのですが、最初に戻ってみると、それほど違和感はなく、ただキャラが大きく出てきたので違和感があるのだろうと思いました。

> そしてゼロスの登場シーン。
> ゼロスのとぼけっぷりがなんともナイスです♪ 「いやぁ」がものすっごくいい感じです♪

実は!二翼の翼で「ゼロスの登場があっさりし過ぎている」と、ブラントンさんからご指摘があったのを覚えていまして、よぉぉしっ!今度こそはっ!と思っていたので嬉しいです。
ブラントンさんの感想がここで生かされてたのですが、気付いてましたか?

> 他にはサブキャラとして光っていた情報提供者のおばちゃんと、食堂でゼルの大会への参加を説得するシーンもすごくおもしろかったです♪

おばちゃんねぇ……プロットの段階じゃあイカ焼きもなぁぁぁんも書いてなかったんですが、スレイヤーズのキャラに特徴無いなんざいかんっ!と思って書いていれば、おや、いつの間に(笑)

大会参加の説得シーン。
実はページ数が多すぎるため、大会参加しなくてもリナのネームバリューで城に招かれる(敵さんは強いけりゃいいわけだから)と言うことにして、大会の参加もカットしようかと考えてる時があったのですが、それじゃあこのシーンをカットしなくてはならない……
このシーンは自分でも気に入ってるため、出来ませんでした。

余談ですが、プロットの段階では「ここいら辺ギャグで適当に」と言う一行で何十ページも行ってしまったと某掲示板で話していたのは、「二」の大会部分です。大会はラジオかTVのノリでいいやと思って「ギャグで適当」とか書いてたのに気付けばとんでもない量に(^^;)

> それにしても、半年に一作こんな長いのを書けるなんて本当に羨ましいです……

その場のノリです(断言)
浮かべばすぐ書けるし、逆に浮かばなければなかなか書けないでしょう。

> 私なんてどういう話なのかを決めるのだけで四転五転して一年、それから実際に話を考え初めて既に2ヶ月経つのにまだ半分ですからね……(もちろん一行も書いていません)

それだけ深く考えて書いてるって事じゃないですか。
いいことだと思います。
別にプロじゃないんですし、締め切りなんて無いんだから、満足がいく物を時間をかけて作った方がよいのでは?

> ではでは。毎度毎度レスとかいいつつ作品のことより私のことばっかり書いている気はするのですが、これにて失礼させていただきます。

いえ。読んでいてこちらも楽しいですし、関係全くない訳じゃないですし、気にしないで下さい。
本当にありがとうございました。

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7944感動致しました!庵 瑠嬌 9/26-17:00
記事番号7904へのコメント


 はじめまして、庵 瑠嬌と申します。
 実は、白いウサギさんのお話は、過去の記事でほとんど制覇していて、御作品が非常に原作に近い事を、すでに存じ上げていたのですが……。
 けれど、やはり素晴らしいと思いましたわ。

 リナさんの論理的な行動と、非論理的な振るまいが、本当にリナさんらしくて。
 ガウリイさんのナイスボケな天然さと、尋常ではない剣技と視力が、上手に活かされていて。
 アメリアさんはやる事なす事おっしゃる事、全てがアメリアさん以外のなにものでもありませんし。
 ゼルガディスさんは格好良くて冷静で、頭脳が見事ながら、リナさん達に精神的に追いつめられたりしていて。
 ゼロスさんは、もう容赦の無い冷酷さと、酔狂な遊び心が、魔族そのものでしたし。
 レミナさん達も、とてもキャラクターが立っていて、わたくし一心不乱にディスプレイを見つめていました。

 本当に、リナさん達が、原作に近くて、戦い方も神坂さんの書かれるのに似てらして。
 わたくしゼロスさんが好きなのですが、彼が登場した時には、原作でそれらしい匂いを感じたときと同じくらい、どきどき致しましたわ。

 ……量を見た時に、インク大量喪失覚悟で印刷しようかしらんなんて考えたりも致しましたが。
 そんな事をしている時間が勿体無いくらい、とにかく、必死に読んでおりました。原作を読むときと対して変わらぬくらいの、情熱を持って。

 これほどのお話、そう易々と思いつく事も、書く事も、取り掛かる事も出来ないとは思いますが……。
 また、白いウサギさんのお話を(近い内に)拝見する事ができたら、とても嬉しいですわ。
 次回作、お待ちしております。
 それでは失礼をば……

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7948はじめまして&ありがとうございます(^^)白いウサギ E-mail 9/26-23:52
記事番号7944へのコメント

> はじめまして、庵 瑠嬌と申します。

はじめまして。白いウサギです。
……実は私も庵 瑠嬌さんのお話を読んだことがあります。
すみません……感想書くのとことん苦手なんで……
あとがき冒頭のように、結局読書感想文出さなかったりします(学校の宿題だろーが)

> 実は、白いウサギさんのお話は、過去の記事でほとんど制覇していて、御作品が非常に原作に近い事を、すでに存じ上げていたのですが……。
> けれど、やはり素晴らしいと思いましたわ。

あうー。めちゃくちゃ嬉しいです。
原作に近くしたい部分は本気で似せてますから(^^;)

> リナさんの論理的な行動と、非論理的な振るまいが、本当にリナさんらしくて。

その通りなんですが……本人聞いたら怒るだろーな……(^^;)
でもそこがリナの魅力的な所であり、好きな所なんですけどね。
リナは気持ちよく描けますね。

> ガウリイさんのナイスボケな天然さと、尋常ではない剣技と視力が、上手に活かされていて。

ガウリイが一番キャラ的に難しいところがありました。
どー反応するのかいまいち掴めていない……
しかし今回視力が上手く使えて良かったと思いました。
ありがとうございます。

> アメリアさんはやる事なす事おっしゃる事、全てがアメリアさん以外のなにものでもありませんし。

実はセリフで一番困ったのは彼女なんですよねー。
悪人への説得や、颯爽とした登場シーンで難しい言葉を羅列しなくてはいけないのですが、白いウサギはボキャブラリーが少ない……
とか言って、原作やアニメから盗んでくるのも何だかアレなので、他とは違い、調べずに考えました。
そう言っていただけると推敲したかいがあります。

> ゼルガディスさんは格好良くて冷静で、頭脳が見事ながら、リナさん達に精神的に追いつめられたりしていて。

途中リナとゼルだけ納得しているシーンありましたしね。
この人は頭がいいのでリナは色々助けられています。
……ガウリイだとまず無理(^^;)
追いつめてて面白かったですねー。私も(鬼か)

> ゼロスさんは、もう容赦の無い冷酷さと、酔狂な遊び心が、魔族そのものでしたし。

ありがとうございます。
彼に関してはただ便利な魔法道具とはしたくなかったんで。

> レミナさん達も、とてもキャラクターが立っていて、わたくし一心不乱にディスプレイを見つめていました。

ありがとうございます。
まだレミナの関しては書くのが不十分で思い残すところはありますが、そう言っていただけると救われます。

> 本当に、リナさん達が、原作に近くて、戦い方も神坂さんの書かれるのに似てらして。

ありがとうございます。
他の作品では結構力押しだけで終わってしまう部分もある戦闘シーンですが、(スレイヤーズもあるときはあるけど)神坂さんは色々考えて戦闘するのが凄く好きで、私もそうありたいと思っています。

> わたくしゼロスさんが好きなのですが、彼が登場した時には、原作でそれらしい匂いを感じたときと同じくらい、どきどき致しましたわ。

登場シーンですか……そー言えばあのお花は何処行ってるんでしょう……(^^;)
リナに受け取ってもらえたんでしょーかねぇ……
それにしてもやっぱりゼロスのファンの方は多いですね。
そのファンの方にそう言って貰えて嬉しいです。

> ……量を見た時に、インク大量喪失覚悟で印刷しようかしらんなんて考えたりも致しましたが。

友人も私の書いた小説、全て印刷するからフロッピーよこせと言われて貸したら、インクが無くなったそーです。
だからよせって言ったのに……
本人である私ですら印刷してないですから(わはは)

> そんな事をしている時間が勿体無いくらい、とにかく、必死に読んでおりました。原作を読むときと対して変わらぬくらいの、情熱を持って。

うあああっ!
ありがとーございますぅっ!
情熱……私にはちと過ぎた言葉です……

> これほどのお話、そう易々と思いつく事も、書く事も、取り掛かる事も出来ないとは思いますが……。

……7月29日の風呂場でぱっと思いつく。
7月30日プロット作成から2ヶ月で書く。
取りかかったのはあっさりだが、途中挫折してあとがきに取りかかること多数……
ってな感じですが(^^;)

> また、白いウサギさんのお話を(近い内に)拝見する事ができたら、とても嬉しいですわ。

何よりの言葉です。
本当にありがとうございます。

> 次回作、お待ちしております。

す、すぐにとはいきませんが、
それでよろしければ気長にお待ち下さい。
少なくとも受験が終われば書くと思いますので。

> それでは失礼をば……

本当にありがとうございましたっ!

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7925初めましてmakoto 9/25-15:57
記事番号7892へのコメント

初めまして、makotoです
暇つぶしのつもりで読んだこの作品、なかなかおもしろかったです
色々と伏線があちこちにあってドキドキさせられました
最後のあとがきの方は・・・ちょっと笑ってしまいました(^^;
では、少し短いですが感想を終わらせてもらいます

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7931初めまして&ありがとうございますっ!白いウサギ E-mail 9/26-02:00
記事番号7925へのコメント

>初めまして、makotoです

どうも。白いウサギです。

>暇つぶしのつもりで読んだこの作品、なかなかおもしろかったです

ありがとうございます。
暇どころか大事な時間すら潰してないかと心配ですが、嬉しいです。

>色々と伏線があちこちにあってドキドキさせられました

そう言って貰えると嬉しいです。
今回複雑に絡み合ってるんで、自分でも召集つかなくなったよーな気がしますが。

>最後のあとがきの方は・・・ちょっと笑ってしまいました(^^;

これまた嬉しいです。
初めて小説書いたのが去年の3月。
それからずっとこの形式ですんで。

>では、少し短いですが感想を終わらせてもらいます

本当にありがとうございました(ぺこり)