◆−ヘリオドール−CANARU(10/3-14:15)No.8003
 ┗Re:ヘリオドール−P.I(10/4-21:16)No.8010
  ┗有り難うございましたー!!−CANARU(10/5-22:47)No.8016


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8003ヘリオドールCANARU 10/3-14:15


「アルフォンシーナ様!!??」
唐突にガウリイにそう言って飛びついてきた一人の老人・・。
「お!!?おい!!???」
当惑気味のガウリイをよそに彼はガウリイの手を握りしめて感涙している。
「おじいちゃん!!」
一人の少年が老人に近づいて宥める。
「あ・・・・。ティベリウス???」」
「にーちゃんのティベリウスなら先月セイルーンに修行にいっちまっただろ!!
俺はネルヴァだよ!!」
「おお・・・。そうじゃった・・・。いかん・・・。いつものボケだな・・。」
言って老人は苦笑する。
「すまねーな!!じーちゃん最近白昼夢に駆られるんだ。俺を兄貴と間違えるなんてしょっちゅうさ。」
言って少年、ネルヴァは苦笑する。
「けど。『アルフォンシーナ』って女性の名前でしょ・・・?」
どっからどーみたって(髪の毛は長いけど)男のガウリイを女性と勘違いする事を不思議に思ったリナが言う。
「いや・・・。特徴があまりにも似通っておられたんでな・・・。ワシはつい70年前の子供の頃・・・。昔住んでいた町・・・。サイラーグをあのお方に救って戴いたんだ・・。今でも良く覚えている・・・。アルフォンシーナ=ガブリエフ様だ・・・。」
「ガブリエフって・・・。」
さしものガウリイも一瞬自分で自分を指さす。
「伝説の『光りの剣』の持ち主。魔獣『ザナッファー』を倒した人だよ。」
少年、ネルヴァが口を挟む。
「そーいえば・・・。ウチの家系に女剣士が居たとか・・・居なかったとか・・。」
曖昧に口ごもるガウリイ・・・・・。
一体何があったのか・・・・・・????



アルフォンシーナ=ガブリエフ。
その金髪の美しさには誰一人並ぶモノが居ないとさえ言われた女性。
アタシの妹である。
アタシの名前はリーナ。
かつてはガブリエフ家の者だったけれども今では此処、ゼフィーリアのインバース家
に嫁いできている。
「さってと・・・。」
一家の連中が商談に遠くに言ってる間に仕事を片付けなければならない・・・・。
この辺一体一番の富豪とも成るとやらねば成らないことが山積みになる。
「えっと・・・。まずは・・・。」
リーナが言いかけて立ち上がったその時だった・・・。
家の前の広場が蜂の巣をつついたような騒ぎとなっている。
「なに・・・?」
家の外に出てリーナはその辺りに居た人に聞いてみる。
「いや・・・。一寸珍しい行列が・・・。それにあの先頭の人は・・・。」
ん・・・・・・???
仮装行列ともつかない道化師に化けた戦士の一群を率いて行進している細身の人物。
完全に人を茶化したようなおふざけの集団は笑いながら進んでくる。
しかし・・・・・。
何処かで見たことあるような・・・・・・・・。
「お久しぶりです!!姉上!!」
「なあ!!!???」
リーナは思わず声を上げる。
「アルフォンシーナ!!!???」
何て言う事だろう!!
あれほど美しかった金髪は無惨にも耳の辺りで切り揃えられたおかっぱ頭になっている!!
透けるように白かった肌は日焼けして荒れ放題!!
しかも男物のアイアン・サーペントの鎧が妙にハマっている・・・。
そのせいで日焼けした肌がよりいっそう引き締まって見える。
「お前達。かえってもいいよ。」
アルフォンシーナの一言に残念そうに道化に扮した兵士達が引き返していく。


「アンタは!!何を考えているの!!その剣の持ち主のアナタは家で父上の軍務と家督を手伝うのが役目でしょう!!??」
柄にもなく説教を始めるリーナ。
「それがね。アタシ一寸おもしろ半分で『賭』をしたのよ。で・・・。勝ったんだけれども。その事を知ったあのロートル親父!!何ていいやがったと思う!!?『何という軽率!!』とか言って人のこと怒るのよ!!だからアタシ。みんなが無意味に誉める髪の毛をぶった斬って父上ご自慢の軍隊にあーんなお笑い芸人のような真似させて家出してきたわけ。」
あいかわらず向こう見ずなヤツ・・・・。
「別に良いけど・・・・。もう少し立場を弁えて欲しいわね。」
言ってリーナはアルフォンシーナの獲物・・・・。
光りの剣をみやる。
「け!!」
やおら家宝の剣をけっ飛ばすアルフォンシーナ・・・。
弾みでスネに柄が当たって一寸痛がる所が情けない・・・。
「こら!!」
「いーのよ!!こんなモン!!大体・・・。先祖がどっかから拾ってきた代物でしょ?一寸ばっかし凄い魔力があるだけの話じゃないの。だいたい・・・。こんなもん弟にくれてやりたいわよ。今すぐ。」
「・・・・・・・。」
「有る意味・・・・。天国に行く方法は地獄に行く道を熟知している事かもしれないわね。」不意にアルフォンシーナがらしくもない事を言い出す。
「アルフォンシーナ・・・???」
この娘(こ)は何を考えて居るんだろう。
リーナは時々この妹が分からなくなっていた。
「だって・・・。確かに軍隊の総司令官と言う地位を私は貰っているわ。けれど・・・。大半はこの『光りの剣』が理由じゃない。私自身が認められた訳じゃないわ。押しつけれれる役目は魔族討伐ばっかり。世間様じゃ『本当に魔族なんて居るのか?』とか言われる始末。」
言ってアルフォンシーナは苦笑する。
「栄誉と言うものは成功した人間だけが得られるとは限らないけれど・・・。屈辱も失敗した人間だけが貰うモノじゃないものだしね・・・。」
リーナにはそうとしか言うことが出来ない。
「まあね。失敗にしたってだれだって誤りを望んで誤りを犯しているわけじゃないし。」結果的に・・・・。
残酷なことだけれども。
「けれどもね。獅子の様に死ぬよりも。犬としてでも生きている方が価値があると思うのよ。私。」
けっ飛ばした光りの剣を触りながらアルフォンシーナが呟く。
「認められなくても?」
「ええ。たとえ認められなくても。アタシはそれくらいのことなら・・・。怒るけれども
我慢はするわ。だって。アタシはこの『光りの剣』がアタシの生きていた証になる事なんてこれっぽちも望まないもの。」
微かに微笑むアルフォンシーナの切り揃えられた金髪・・・・。
透けるように蒼い瞳は何時になく美しかった。



「ザナッファー!!??」
故国からゼフィーリアに滞在していたアルフォンシーナに妙な魔獣・・・・。
『ザナッファー』がサイラーグを壊滅させようとしていると言う事を急使が伝えに来たのはそれから半年後の事だった。
「で・・・・。我が国からサイラーグへの援軍は送ったの?」
何時になく真面目な口調でアルフォンシーナ。
「はい・・・。しかし・・・・。」
返ってきた答えは言うまでもない。
『潰滅』
その一言だった。



「行くの?アルフォンシーナ。」
リーナの問いかけに だいぶん伸びてきた金髪を束ねながらアルフォンシーナが頷く。
「ええ・・・・。」
その口調は重い。
「・・・・・・・。」
リーナは一言も口が利けない。
いつものアルフォンシーナでは無かった。
「『正義』や『人々のため』なんて自己弁護はしないわ。」
「アルフォンシーナ・・・・・??」
何が言いたいのだろうか・・・・?
「半年前のことを覚えてる・・・・?私に従ってきた・・・。あの道化に扮した兵士達を・・・・。」
あ・・・・・・・・・。
半年前のアルフォンシーナと彼等の陽気な行列がリーナの脳裏に鮮明に蘇った。
悪ふざけをし、だれもがとても意気揚々としていた。
「アタシが此処でのうのうとしてる間に・・・・。彼等は・・・・。」
潰滅した。
「自分の責任をとる、とも敵討ちとの・・・。自分に課せられた罰なんて格好いいこと言うつもりは毛頭ないわ。」
「・・・・・。他人の思惑も気にかけない。自分の考えだけ・・・。そうでしょ?」
「ええ。」
リーナの方を振り向きもしないで答えるアルフォンシーナ。
「死のうと生きれようと・・・。結局は運次第ね。」
言ってアルフォンシーナは光りの剣を手に持った。
「さようなら。姉上。これ以上何も言わない。言えないわ。」
初めて笑顔を見せるアルフォンシーナ。
「わかったわ・・・・。」
リーナも妹に笑顔を向ける。



サイラーグの魔獣、ザナッファーが倒されたという報告がリーナの元に届けられたのはそれからさほども時間がかからない頃だった。
トン、トン、トン。
不意に扉が叩かれる。
「はーい?」
「リーナさんですか?」
見知らぬオカッパ頭のプリースト。
やけに鮮やかな笑顔と四つのタリスマンが印象てきである。
「初めまして。僕は謎のプリーズト、ゼロスと言います。今日はアルフォンシーナさんからの用件で立ち寄らせて戴きました。」
「アルフォンシーナ!!??」
あれ以来・・・。
彼女の消息は依然つかめない。
「ええ。彼女の消息は実は僕にも分からないんです。一寸目を離した隙に消えてしまって・・・。彼女の持っていた剣については・・・。知りませんか?」
「生憎と・・・・・・・。」
知っていたとしてもどうせ今頃はアルフォンシーナは死んだものと思っている父が弟に継承させるために家に返せと迫って此処には無いだろう。
「そうですか・・・。では。彼女からの預かりモノですよ。本当は僕の職務から大いに外れているのでこーゆー事はしたくないんですがね・・・。上司様に怒られること覚悟でコレをアナタにお渡しします。アルフォンシーナさんには借りがありますからね。」
言って神官は苦笑する。
「コレは・・・?」
「フラグーン。サイラーグのザナッファーの死骸の上に植えて下されば結構です。あ、心配要りませんよ。僕が竜族の方を一寸脅迫して貰ってきたモノですので」
あっけにとらわれるリーナをよそに去っていく神官・・・・。
リーナの手によって「フラグーン」がサイラーグの町に植えられたのはそれから間もなくの事だった。
アルフォンシーナの行方は・・・・。
様としてしれない・・・・・。



「ハッキリしないわね!!」
リナの怒声に怯むことなくガウリイ。
「しょーがねーだろ!!ザナッファー倒してフラグーンをサイラーグに植えたのはウチの先祖だって聞いていたが!!その『人物像』についてはなーんにもしらされてねーし聞かされてねーんだよ!!おっと!!忘れたんじゃねーぞ!!ついでに言えば何だか知らないが光りの剣は勝手にガブリエフ家に戻ってきたとか言っていたな・・・。で・・・・。
ザナッファー倒した剣士の弟が家督と一緒に継いだとか・・・・・。」
「けど・・・。なーんにも知らないの・・・・??忘れたんじゃなくって・・・??」
リナの一言に頷くガウリイ。
「なんか・・・。歴史の既成事実はともかく・・・。その『剣士』事態はまるで歴史上から抹消されたみたいね・・・・。もっとも・・・。」
「もっとも・・・。何だ・・・??」
先ほどの老人とネルヴァと言う少年の言っていた「アルフォンシーナ」の特徴で一寸思い当たることがリナにはあった。
「うん・・・・。ザナッファーがサイラーグを襲った季節・・・。10月頃になるとゼフィーリアでは不思議な現象があるのよ・・・・。」
「不思議な現象・・・・??」
ガウリイが興味有りそうに聞いてくる。
「夜中の十二時になると・・・。フェアリー・ソウルが大量に発生してね・・・・・。
道化師に化けた立派な騎士達と・・・・。長い金髪と蒼い瞳の女王が・・・・。それは陽気に楽しそうに野山を練り歩くのよ。」
「幽霊・・・なのか・・・??」
「分からないわ。けれども・・・。一回アタシ・・・。その女の人に会ったことが小さいときにあるの・・・。で・・・。にっこりと微笑むかけられて・・・。」
此処でリナは言葉を切る。
「どーしたんだ・・・?」
「言われたのよ。『彼』をよろしくね、って、ね。」


それがアルフォンシーナなのかどうかは・・・・。
いまだに定かではない。

(お終い)

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8010Re:ヘリオドールP.I E-mail 10/4-21:16
記事番号8003へのコメント

CANARUさん、こんばんは。
今回はガウリイのご先祖様モノですね。
ザナッファーを倒し、その瘴気からサイラーグを守ったのが
二人の女性というところがなんかとてもいいです。
タイトルのヘリオドールって宝石の名前ですよね?
太陽の贈り物・・・アルフォンシーナさんのイメージでしょうか?

しかし、リナとガウリイとゼロスの因縁は実はものすごく深かった!?
・・・出会うべくして出会ったんですねぇ。彼らは・・・
ガウリイがゼフィーリアに行って、ご先祖様に会うなんてことは
ないのかな?光の剣から解放された子孫を見たら、アルフォンシーナさんは
何て言うでしょう・・・

綺麗なお話をありがとうございました。


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8016有り難うございましたー!!CANARU 10/5-22:47
記事番号8010へのコメント

>CANARUさん、こんばんは。
>今回はガウリイのご先祖様モノですね。
>ザナッファーを倒し、その瘴気からサイラーグを守ったのが
>二人の女性というところがなんかとてもいいです。
ありがとうですー!!何となくフラグーンにしても
ザナッファー退治にしても「女性」のイメージがしてたんです!!
>タイトルのヘリオドールって宝石の名前ですよね?
>太陽の贈り物・・・アルフォンシーナさんのイメージでしょうか?
そーですー!!
「ムーンストーン」と凄く悩んだんですが・・・。
やっぱりガウリイのご先祖様ですから太陽にしました!!
>しかし、リナとガウリイとゼロスの因縁は実はものすごく深かった!?
>・・・出会うべくして出会ったんですねぇ。彼らは・・・
うーん・・・・。
ゼロスも光りの剣の存在について気にしていたよーですしねえ・・・。
途轍もない力が魔族をよぶのですねえ・・・。きっと・・。
>ガウリイがゼフィーリアに行って、ご先祖様に会うなんてことは
>ないのかな?光の剣から解放された子孫を見たら、アルフォンシーナさんは
>何て言うでしょう・・・
うーん・・・。
アルフォンシーナさんの性格からして
とにかく「はしゃぐ」と思います!!
結構イベント好きな人と言う設定ですから!!
>綺麗なお話をありがとうございました。
>
コメント、有り難うございましたー!!