◆−ゼルリナ小説です。−神無月紗羅(11/25-01:36)No.8211
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8211ゼルリナ小説です。神無月紗羅 E-mail URL11/25-01:36


こんにちわ☆
ひさびさの投稿で忘れ去られているかもしれませんが、神無月紗羅です。

今回「遠くにいても」が完結したのでこちらの方にもアップさせていただきます。
前の話はもう沈んでいるので検索かけてみつけて下さい。
再掲示するのも何なので(^^;;

それでは、楽しんでいただければ幸いです。

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8212遠くにいても8神無月紗羅 E-mail URL11/25-01:39
記事番号8211へのコメント


「娘の幸せが私の幸せだった。ジュリアがいれば・・・私は何もいらなかったんだっ!」

ほとばしる激しい感情に一瞬、息を呑む。
けれどもう後には引けなかった。

あたしは・・・間違っているのかもしれない。
単なる自己満足のために、人の古傷を抉っているだけなのかもしれない。
それでも──

「・・・あたしはあなたの事は何も知らない。だから何も言えないわ。
だけど──ジュリアさんの事なら少しはわかるつもりよ。

だって・・・同じ人を好きになったんだもの」


あたしの言葉に一瞬、言葉を失うジュリアさんの父親。

「あなたはジュリアさんの幸せが自分の幸せだっていったけど、でもそれは彼女だって同じだってあたしは思う」

「・・・同じ?」

ぽつりと呟く、その横顔はまったくの無表情で。いったい何を考えているのかまったく読み取る事が出来なかった。
それでもあたしは言葉を続ける。
言葉は伝えるためにあるものだと、そう信じていたいから。

「そう、同じ。
あなたの幸せがジュリアさんの幸せなのよ。あなたは──そう思わない?」

「・・・・・・」

「今のあなたを見て、ジュリアさんが喜ぶとあなたは本気で考えてるの?」

あたしの問いかけに、ジュリアさんの父親は黙って唇をかんだ。

「少なくとも・・・あたしには、そうは思えない」

夢の中で小さく微笑んだジュリアさん。
その瞳を曇らせていたのは怒りではなく・・・哀しみ。

怒りを狂気にかえ、自分の大切な父親が変っていく姿をジュリアさんは一体どんな気持ちで見ていたのだろう?
それはきっと、あたしには一生理解する事が出来ない感情だけど。でも──

「──幸せに、なって下さい。それをきっとジュリアさんも望んでいると、あたしは思うから」

それが・・・あたしに言える精一杯だった。

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8213遠くにいても9神無月紗羅 E-mail URL11/25-01:42
記事番号8211へのコメント


そしてあたしはゼルの元へ戻り、ゼルは微笑みであたしを迎えてくれた。

・・・ほんの少しだけ、強ばった笑顔で。

パチパチと爆ぜる火を前にあたしはぽつりぽつり今まであった事を話しはじめた。
話しおわると辺りは沈黙に支配され。そして──


「俺さえ──いなかったら」


ため息のように呟かれた言葉に胸が痛くなる。

きっと・・・誰も悪くなかった。
ただみんなが、少しづつ弱かっただけで…

「ゼル」

その背中が今にも泣き出しそうな気がして。
あたしは後ろからそっと腕をまわし、ゼルの身体を抱きしめた。

「・・・リナ?」

「好きよ。ゼルに出会えて、ゼルがここにいてくれて、本当によかった」

だから──自分を否定しないで。
全ての想いを込めてゼルを抱きしめ、その耳元で囁く。

「ずっとずっと、大好きだから」

顔を上げたゼルの唇に、あたしはそっと口付けた。


そして翌日。
真っ青な空の下、次の町へと続く街道にその人の姿があった。
ジュリアさんの・・・父親。

ゆっくりと近付き、そしてゼルの前でその歩みをとめる。
その視線に、しかしゼルは目を逸らさず見つめ返した。

「私がお前の為にジュリアを失った事実は変わらない。
だから・・・お前はお前の道を行け。一生その背中に罪を背負って、そして──生きて行け」

その瞳にあったのは、怒りでも憎しみでもなく・・・悲しみ。
でも悲しみに折り合いをつける術を、あたし達は知っているから。

「・・・・・・ありがとうございます」

そう言ってゼルは深く頭を下げた。



過去は決して変える事は出来ない
そんな事はわかってる
けれど──
未来は、変えられると
そう信じたいから

だから歩き出そう
大地を踏み締めて
一歩一歩、確実に
前に──未来に──進んで行こう

たとえどんな事があっても
2人でなら大丈夫だから

そう きっと──


「遠くにいても」 END